説明

インフラストラクチャー管理システム

【課題】地理情報システムを用いてインフラ設備のネットワークの編集を効率的に行うことができるシステムを提供する。
【解決手段】インフラストラクチャー管理システムは、地理情報システムを有し、ユーザ端末からの指示に基づいて地図画像を生成する地図画像生成部と、ユーザ端末からの指示に基づいて地図画像上に設備図形を重畳し合成画像を生成する設備図形合成部と、ユーザ端末からの指示に基づいて前記合成画像上の設備図形の編集を行う編集手段と、前記編集手段によって編集が行われている設備図形について他のユーザ端末による編集を排除する排他制御を行う排他制御手段と、を有し、前記編集手段によって設備図形の編集が行われると、該編集結果は、接続管理データベースに格納された前記設備図形間の接続関係に反映される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・ガス・水道等のインフラストラクチャーを管理するシステムに関し、特に、地理情報システム= GIS(Geographic Information System)を用いてインフラストラクチャーを管理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気・ガス・水道等のインフラストラクチャー(以下、インフラ設備と称する)は、都市内に張り巡らされた電線、ガス管、水道管等のネットワークの形態で構成されており、生活を支えるライフラインとして重要な機能を果たす。そのため、インフラ設備を管理する事業者は、設備の設置場所及び設置年月、稼働状況、等の膨大な情報を常に最新の状態で保守管理する必要がある。
【0003】
例えば都市ガス設備は、各ガス事業者が独占的に営業地区内に張り巡らせたガス管のネットワークによって構成される。このネットワークを介して、ビルや工場、住宅などに都市ガスが供給され、給湯、調理、暖房、冷房、発電、蒸気などに利用される。従って、災害の発生によりガスの供給が停止すると、社会に対して大きな影響を与える。更に、配管の損傷(物理的な損傷以外にも、雨水や泥水の配管への浸入もある)や、これによるガス漏れ等の危険性が発生する。ガス配管の殆どは、地中に埋め込まれているため、地震に強い反面、被害を受けたときの復旧には時間を要する。特に阪神・淡路大震災の場合、約86万世帯へのガス供給が停止され、住民に大きな損害を与えた。その教訓から、災害時の復旧を効率的に行えるシステムの開発が必要とされている。
【0004】
電気・ガス・水道等のインフラ設備のネットワークは、基本的には、電線、配管等と、それを接続するコネクタ、継手等によって構成される。電線、配管等をラインによって表し、コネクタ、継手等をノードによって表すことによって、図形化することができる。以下に、インフラ設備を表すノード及びラインを、設備図形と称することとする。インフラ設備のネットワークは、設備図形のネットワークによって表される。
【0005】
特許文献1、及び、特許文献2に記載されているように、都市に設置されているインフラ設備の情報を一元的に管理するために、近年ではCADや地理情報システムを用いたデジタル図面上での管理方法が普及している。特許文献3には、接続関係を持つ設備の接続経路の検索などの既存データの閲覧に関する利用方法が記載されている。特許文献3には、地図情報システムを用いて地図上に下水道間網を表示する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−44684号公報
【特許文献2】特開2006−253853号公報
【特許文献3】特開2003−60569号公報
【特許文献4】特開2006−183274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、インフラ設備のネットワークは、ラインとノードからなる設備図形のネットワークによって表される。従って、地理情報システムGIS(Geographic Information System)にて管理することができる。しかしながら、一般的な地理情報システムでは、地図上の各図形に対して、属性情報が互いに独立的に付与されており、図形間の関係に関する情報が与えられていない。そのため、地理情報システムをインフラ設備のネットワークに適用すると、様々な不便が生じる。例えば、インフラ設備のネットワークにて1つのノード又はラインを削除、付加、移動等の編集を行うと、それに接続されたライン又はノードの編集も必要である。しかしながら、地理情報システムでは、そのような編集作業は極めて困難である。即ち、地理情報システムでは、図形同士のスナップ(2つの図形に対して共通の頂点で結合する処理)を行うのは便利であるが、インフラ設備のネットワークにて必要な様々な編集作業を行うのは不便である。
【0008】
地理情報システムには、地図上の図形に対して、図形間の接続情報が与えられる場合もある。しかしながら、地理情報システムでは、地図データに表示されている全ての図形に対して接続情報を取得する処理を行うため、処理速度が比較的遅くなる傾向がある。
【0009】
更に、地理情報システムでは、複数の利用者の同時処理を回避するための排他制御が用いられる。しかしながら、従来の地理情報システムの排他制御では、一人の利用者が地図画面中に表示されている全図形に対して排他制御を行うため、作業効率を低下させる原因となる。
【0010】
本発明の目的は、地理情報システムを用いてインフラ設備のネットワークの編集を効率的に行うことができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、インフラストラクチャー管理システムは、地図データを格納する地図データベースと、インフラストラクチャーの構成要素である設備図形の属性を格納する属性情報データベースと、該設備図形間の接続関係を格納する接続管理データベースと、ユーザ端末との間で通信を行う送受信部と、地理情報システムを有する。
【0012】
地理情報システムは、ユーザ端末からの指示に基づいて前記地図データベースから地図データを取り出し、地図画像を生成する地図画像生成部と、ユーザ端末からの指示に基づいて前記接続管理データベースから設備図形間の接続関係を取り出し、前記地図画像上に設備図形を重畳し合成画像を生成する設備図形合成部と、ユーザ端末からの指示に基づいて前記合成画像上の設備図形の編集を行う編集手段と、前記編集手段によって編集が行われている設備図形について他のユーザ端末による編集を排除する排他制御を行う排他制御手段とを有し、前記編集手段によって設備図形の編集が行われると、該編集結果は、前記接続管理データベースに格納された前記設備図形間の接続関係に反映される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、地理情報システムを用いてインフラ設備のネットワークの編集を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のインフラ設備管理システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明のインフラ設備管理システムの動作を説明する図である。
【図3】本発明のインフラ設備管理システムの属性情報データベースに格納されたデータ構造の例を示す図である。
【図4】本発明のインフラ設備管理システムの接続管理データベースのノード接続ライン数管理テーブルのデータ構造の例を示す図である。
【図5】本発明のインフラ設備管理システムの接続管理データベースのライン接続状況管理テーブルのデータ構造の例を示す図である。
【図6】本発明のインフラ設備管理システムの属性情報データベースから所定の項目を検索した結果の一例を示す図である。
【図7】本発明のインフラ設備管理システムの地図情報システムによって生成された合成画像の例を示す図である。
【図8】本発明のインフラ設備管理システムの地図情報システムによって生成された合成画像上にてノードを選択した状態を示す図である。
【図9】本発明のインフラ設備管理システムの地図情報システムによって生成された合成画像上にてノードを選択しそれを移動させた状態を示す図である。
【図10】本発明のインフラ設備管理システムの地図情報システムによって生成された合成画像上にて排他制御範囲を示す図である。
【図11】本発明のインフラ設備管理システムの地図情報システムによって生成された合成画像上にて選択したノードを削除した状態を示す図である。
【図12】本発明のインフラ設備管理システムの地図情報システムによって生成された合成画像上にて選択したノードを削除したときの排他制御範囲を示す図である。
【図13】本発明のインフラ設備管理システムにおいて、設備図形の編集処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施する場合の一般的な実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のインフラ設備管理システムの構成例を示す図である。本例のインフラ設備管理システムは、サーバ10、ホストシステム30、及び、ユーザ端末50〜52を有し、ホストシステム30とユーザ端末50〜52はネットワーク40を介して互いに接続されている。サーバ10にはファイルサーバ20が接続されている。
【0016】
サーバ10は、地図データベース11、属性情報データベース12、及び、接続管理データベース13を有する。地図データベース11には、地図データが格納されている。属性情報データベース12には、インフラ設備を表す設備図形データの属性が格納されている。設備図形データは、電気・ガス・水道等の設備をノードとラインによって表したものである。属性情報データベース12には、更に、ファイルサーバ20に格納されたファイルデータのパスが登録されている。属性情報データベース12の例は図3を参照して説明する。
【0017】
接続管理データベース13は、ノード接続ライン数管理テーブル(図4)とライン接続状況管理テーブル(図5)を有する。ノード接続ライン管理テーブルは、各ノードに接続されているライン数を格納する。ライン接続状況管理テーブルは、各ラインに接続されているノードの情報を格納する。
【0018】
ファイルサーバ20には、設備図形データに関連した画像や台帳などファイルデータが格納されている。
【0019】
ホストシステム30は、地図データと設備図形データの管理を行う地理情報システム31と、地理情報システム31と各ユーザ端末50〜52の間でデータ及び指示の通信を行う送受信手段32を有する。
【0020】
地理情報システムは当業者によって既知である。地理情報システムは、通常、地図の表示機能、図形の作成及び編集機能、図形の属性の作成及び編集機能、各種の検索機能等を備えている。本例の地理情報システム31でも以下に説明するように、このような通常の機能を備える。地理情報システムにて用いられるデータ形式には様々ものがあるが、ラスターデータとベクターデータが良く知られている。本発明の地理情報システム31では、どちらのデータ形式でもよい。地図データと設備図形データを容易に合成することができれば、どのようなデータ形式でもよい。
【0021】
本例の地理情報システム31は、地図画像生成手段312、設備図形合成手段313、及び、図形接続管理システム311を有する。図形接続管理システム311は、検索手段3111、編集手段3112、及び、排他制御手段3113を有する。
【0022】
地図画像生成手段312は、サーバ10の地図データベース11から地図データを取り出し、地図画像を生成する。設備図形合成手段313は、ユーザが指定した設備図形データを、地図画像上に重畳し合成画像を生成する。
【0023】
検索手段3111は、ユーザ端末50〜52からの指示に基づいて、サーバ10の属性情報データベース12から設備図形データとその属性を検索し、接続管理データベース13から設備図形データ(ノード及びライン)の接続情報を検索する。
【0024】
編集手段3112は、端末50〜52からの指示に基づいて、設備図形データとその属性の変更、削除、付加、移動等の編集を行う。
【0025】
排他制御手段3113は、編集手段3112における編集処理の排他制御を行う。即ち、排他制御手段3113は、1つの端末50〜52からの指示に基づいて、編集手段3112が設備図形データとその属性の編集を行っている間に他の端末が同一の編集対象に対して同時に編集することを阻止する機能を有する。
【0026】
図2を参照して、本発明のインフラ設備管理システムの動作を説明する。ここでは、ユーザ端末51が設備図形データの編集を行う場合を想定する。ユーザ端末51から、地理情報システム31に、地図データの指示が送信される。地図画像生成手段312は、ユーザ端末51からの指示に基づいて、サーバ10の地図データベース11から、地図データを取り出し、地図画像を生成する。
【0027】
ユーザ端末51では、地図画像上に表示したい設備図形の属性の1つを検索キーとして指定する。検索手段3111は、属性情報データベース12を参照し、ユーザ端末によって入力された検索キーに適合する設備図形データを読み出す。検索手段3111による検索結果は、ユーザ端末に送信される。ユーザ端末に表示された検索結果の例は、後に、図6を参照して説明する。検索結果には、ユーザ端末にて指定された検索キーに適合する複数の設備図形のリストが表示される。ユーザ端末51では、検索結果より、更に1つの設備図形を指定する。設備図形合成手段313は、ユーザ端末51によって指示された設備図形データを、属性情報データベース12から読み出し、地図画像上に設備図形を重畳し合成画像を生成する。合成画像は、ユーザ端末51に送信される。ユーザ端末51では、地図画像上に設備図形が重畳して表示される。このような合成画像の例は、後に図7を参照して説明する。この合成画像には、ユーザ端末51にて指定された設備図形ばかりでなく、それに接続された設備図形も表示される。このように、指定された設備図形とそれに接続された設備図形を排他制御領域と称する。
【0028】
本例では、設備図形に対して排他制御領域が設定される。地図データに対しては、排他制御領域は設定されない。従って、地図データに関して排他制御を行う場合と比較して、ユーザ端末51とホストシステム30の間のデータの通信量は十分に少ない。そのため、ユーザ端末51における表示速度は比較的早い。
【0029】
ユーザ端末51では、合成画像上にて、即ち、排他制御領域にて、設備図形の編集を行うことができる。ユーザ端末51にて、編集作業を行っている間に、他のユーザ端末52は、排他制御領域では、設備図形の編集を行うことはできない。
【0030】
編集情報はユーザ端末51から送受信手段32を介して、地理情報システム31に送信される。編集手段3112は、編集情報を、設備図形合成手段313にて生成されている合成画像上に反映させる。ユーザ端末51にて編集作業が終了すると、編集情報が反映された設備図形データとその属性が、地理情報システム31からサーバ10に送信される。こうして、サーバ10における属性情報データベース12、及び、接続管理データベース13が更新される。
【0031】
図3は属性情報データベース12に格納されているデータテーブルの例を示す。ここでは、ガス配管設備を設備図形として表した場合を説明する。ガス配管設備は、ガス配管を表すラインと、ガス配管継手を表すノードからなる。このテーブルは、各ガス配管設備に付されたユニークな識別符号であるID、各ガス配管設備がノードであるのかラインであるのかの分類を示す種別、各ガス配管設備の圧力負荷の種別を表す圧力区分、各ガス配管設備の現在の状態を表す利用状況、各ガス配管設備の設置場所(住所)、各ガス配管設備の設置年月日、及び、特記事項等を登録する備考を含む。上述にように、備考には、各ガス配管設備に関連した画像や台帳などファイルデータが格納されたファイルサーバ20のパスが格納されている。従って、各ガス設備に関連した情報及び画像を入手することができる。
【0032】
図4は、接続管理データテーブル13に格納されているデータテーブルのうち、ノード接続ライン数管理テーブル13Aの例を示す。ノード接続ライン数管理テーブル13Aは、各ノードに付されたユニークな識別符号であるノードID、各ノードに接続されているライン数を含む。例えば、識別符号IDがN1のノードには3つのラインが接続されていることがわかる。
【0033】
図5は、接続管理データテーブル13に格納されているデータテーブルのうち、ライン接続状況管理テーブル13Bの例を示す。ライン接続状況管理テーブル13Bは、各ラインに付されたユニークな識別符号であるラインID、各ラインに接続されているノードの識別符号IDを含む。例えば、識別符号IDがL1のラインには識別符号N1、N2の2つのノードが接続されていることがわかる。また、接続ノード1及び接続ノード2の縦列において、ノードID=N1を参照する、ラインID=L1、L2、L3の場合である。これは、図4のノード接続ライン数管理テーブルにおいて、ノードID=N1の横行において、ライン接続数が3となっていることに対応する。
【0034】
図6は、ユーザ端末にて検索キーとして、種別=「ノードA」を指定した場合の検索結果の例を示す。検索手段3111は、検索キーを用いて、属性情報データベース12に格納されたデータより、種別が「ノードA」と登録されているガス配管設備を検索する。検索結果は、ユーザ端末に送信される。ユーザ端末の表示装置には、図示のような検索結果が表示される。ユーザ端末の表示装置に表示された検索結果上の所定の項目、例えば、最初の行C1を選択すると、選択した行が灰色で表示される。次に、地図表示ボタンC2をクリックすると、選択したガス配管設備が地図画像上に重畳して表示される。
【0035】
図7は、地図画像上に設備図形を重畳して合成された合成画像表示の例を示す。図6を参照して説明したように、ノードID=N1を選択すると、ユーザ端末の表示装置に、地図画像上に、ノードN1が重畳して表示されている。ノードN1には、ラインL1〜L3が接続されている。地図データ上に、ノードN1ばかりでなく、ノードN1に接続されたラインL1〜L3も表示される。矢印A1はマウスポインタである。マウスポインタA1によって、合成画像上のノードN1、ラインL1〜L3のいずれかを選択することができる。
【0036】
なお、この合成画像上にて、ノードN1又はラインL1〜L3を編集した場合には、サーバ10における属性情報データベース12、及び、接続管理データベース13に格納された設備図形データが更新される。
【0037】
図8を参照して、設備図形間の接続関係を取得する処理を説明する。図7に示す合成画像上にて、マウスポインタA1によってノードN1を選択すると、ノードN1とそれに接続されているラインL1〜L3が太線によって表示される。ノード及びラインが太線によって表示されると、設備図形間の接続管理が行われる。図7では、合成画像を表示しただけであり、未だ、マウスポインタA1によってノードもラインも選択されていない。従って、設備図形間の接続管理は行われない。マウスポインタA1によってノード又はラインを選択し、太線表示されたとき、初めて設備図形間の接続関係を取得する。
【0038】
設備図形間の接続関係について説明する。マウスポインタA1によってノードN1を選択すると、検索手段3111は、図4に示す接続管理データベース13のノード接続ライン数管理テーブル13Aを参照し、ノードN1に接続されているライン数を検出する。ノードN1のライン接続数が3である。従って、図5に示す接続管理データベース13のライン接続状況管理テーブル13Bを参照し、ノードN1に接続されている3本のラインを検出する。こうして、ノードN1に接続されている3本のラインL1、L2、L3も選択状態になる。P1〜P3は頂点を表す。ラインL1〜L3がノードN1の頂点にスナップされて接続されている状態を表している。
【0039】
図9は、ノードN1を移動させた状態を示す。ラインL1〜L2は頂点P1〜P3においてノードN1に接続されているため、ノードN1を移動させると接続状態を保持するためにラインL1〜L3もノードN1に追従して移動する。
【0040】
図10を参照して、排他制御手段3113による排他制御範囲を説明する。図示のように、マウスポインタA1によってノードN1を選択すると、図8に示したノードN1とラインL1〜L3が太線によって表示される。図8及び図9にて示した合成画像は、図10ではビューV1として示されている。排他制御範囲は、ノードN1、ノードN1に付された頂点P1〜P3、頂点P1〜P3に接続されたラインL1〜L3、ラインL1〜L3の他端の頂点P4〜P6、頂点P4〜P6を含むノードN2〜N4となり、太線で表示される。即ち、図9にて示す合成画像上にて、ノード図形N1を移動させると、ノードN1〜N4、ラインL1〜L3、及び、頂点P1〜P6が排他制御の対象となり、この範囲については、他のユーザが編集を行うことはできない。ノードN1を選択すると、ノードN1に接続されたラインL1〜L3ばかりでなく、ノードN2〜N4も排他制御の対象となる理由は次に図11を参照して説明する。
【0041】
図11及び図12を参照して、ノードN1を消去する処理を説明する。図11は、図8〜図10に示した合成画像上にて、ノードN1を消去した状態を示す。図12は、図11に示す画像より大きい範囲の画像を示す。図11に示す画像は、図12ではビューV1として表示されている。ノードN1を消去すると、ラインL1〜L3の端は、接続先のノードの頂点を失うため、ラインL1〜L3も消去する。ラインL1〜L3を消去しても、ノードN2、N3、N4は削除されることない。頂点P4〜P6はN2〜N4に含まれるため消去されない。しかしながら、接続管理データベース13では、ノードN2、N3、N4の接続数を変更する必要がある。そこで、ノードN2、N3、N4も排他制御の対象にする必要である。こうして本例では、ノードを編集するとき、接続管理データベース13において変更が必要なライン及びノードを排他制御の対象とする。
【0042】
この時、図3の属性情報データベース12では、識別符号ID=N1、L1〜L3の行は消去され、図4のノード接続ライン数管理テーブル13Aでは、識別符号ID=N1の行が消去され、図5のライン接続状況管理テーブル13Bでは、識別符号ID=L1〜L3の行が消去される。
【0043】
図13を参照して、ユーザ端末におけるノードの編集処理、特に、排他制御範囲を設定する処理を説明する。これは地理情報システム31では、図形接続管理システム311によって実行される。ステップS001にて、ユーザ端末に、ユーザが編集を行いたいインフラ設備が存在する地図データを表示する。ステップS002にて、ユーザは、マウスポインタを用いて編集を行いたいノードN1を選択する。ユーザが、編集を行いたい設備図形がノードN1であることが判っている場合には、ノードN1を直接入力してもよいが、ノードN1の属性のみが判っている場合には、上述のように、属性を検索キーとして、検索を行い、検索結果より、ノードN1を選択してもよい。ステップS003にて、編集手段3112は、接続管理データベース13のノード接続ライン数管理テーブル13Aを参照し、ノードN1に接続されているラインの接続数を検出する。ステップS004にて、接続数が0であるか、又は、1以上であるかを判定する。接続数が0の場合、このノードは独立しており、追従して変形するラインが無い。そこで、ステップS010の処理を行う。接続数が1以上の場合、ステップS005に進む。ステップS005にて、サーバ10の接続管理データベース13のライン接続状況管理テーブル13Bを参照する。ステップS006にて、選択したノードに接続されたラインを抽出する。本例では、ノードN1に接続されているライン数は3である。ステップS007にて、ノード接続ライン数管理テーブル13Aから読み出した接続数と、ライン接続状況管理テーブル13Bを参照して得られたライン数が等しいか否かを判定する。等しくない場合には、ステップS008にて、エラーメッセージを表示し、編集処理を終了する。即ち、ノード接続ライン数管理テーブル13Aとライン接続状況管理テーブル13Bのデータの不整合のときは、編集処理を終了する。
【0044】
ノード接続ライン数管理テーブル13Aから読み出した接続数と、ライン接続状況管理テーブル13Bを参照して得られたライン数が等しい場合には、ステップS009にて、選択したノードとそれに接続されているラインを選択状態にする。本例では、ノードN1とラインL1〜L3が選択状態となる。ステップS010にて、選択したノードとそれに接続されているラインと、更に、そのラインに接続されているノードを読み出し、排他制御範囲の候補を設定する。本例では、ノードN1、ラインL1〜L3及びノードN2〜N4が排他制御範囲の候補となる。
【0045】
ステップS011にて、この排他制御範囲の候補において、他のユーザが既に排他制御を行っているか否かを判定する。即ち、排他制御範囲の候補について、他のユーザが既に排他制御を行っている場合には、ステップS008にて、エラーメッセージを表示し、編集処理を終了する。排他制御範囲の候補について、他のユーザが排他制御を行っていない場合には、ステップS012に進む。ステップS012にて、この排他制御範囲の候補を排他制御範囲に設定する。それ以後、他のユーザは、この排他制御範囲について、選択状態にすることはできないし、編集を行うことができない。ステップS013にて、このユーザは、ユーザ端末において、この排他制御範囲において、移動、変形、コピー、削除等の編集を行うことができる。
【0046】
本発明によると、ステップS004にて、接続数が0のとき、即ち、選択したノードにラインが接続されていない場合には、ステップS005〜S009の処理を行なわないから、編集処理を迅速に且つ効率的に実行することができる。
【0047】
本発明によると、ユーザ端末に表示装置に表示された合成画像上にて、ノードを選択すると、選択したノードとそれに接続されたライン、更に、そのラインに接続されたノードについて、排他制御を行うため、効率的な編集が可能となる。
【0048】
従来の技術では、各インフラ事業者等の地図を用いた接続情報を持つ接続形態設備の管理業務等において、画面上に表示しているもの全てに対して接続情報の取得が行われていた。
【0049】
本発明によると、選択したノードと接続されているラインの接続情報を動的に取得することで、地図上でのノードを編集・削除を行った際に接続されているラインの情報も追随して変更できる。そのため、設備図形の表示と処理を効率的に行える。また、選択された設備図形に対して動的に排他制御(ロック)がかかることで編集時には他利用者は編集できない。そのため、効率的な管理業務が可能となる。
【0050】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0051】
10・・・サーバ、11・・・地図データベース、12・・・属性情報データベース、13・・・接続管理データベース、20・・・ファイルサーバ、30・・・ホストシステム、31・・・地理情報システム、32・・・送受信手段、40・・・ネットワーク、50〜52・・・ユーザ端末、311・・・図形接続管理システム、312・・・地図画像生成手段、313・・・設備図形合成手段、3111・・・検索手段、3112・・・編集手段、3113・・・排他制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを格納する地図データベースと、インフラストラクチャーの構成要素を表す設備図形の属性を格納する属性情報データベースと、該設備図形間の接続関係を格納する接続管理データベースと、ユーザ端末との間で通信を行う送受信部と、地図情報システムとを有する、インフラストラクチャー管理システムにおいて、
前記地図情報システムは、
ユーザ端末からの指示に基づいて前記地図データベースから地図データを取り出し、地図画像を生成する地図画像生成部と、
ユーザ端末からの指示に基づいて前記接続管理データベースから設備図形間の接続関係を取り出し、前記地図画像上に設備図形を重畳し合成画像を生成する設備図形合成部と、
ユーザ端末からの指示に基づいて、前記属性情報データベースから設備図形の属性を検索し、前記接続管理データベースから設備図形間の接続関係を検索する検索手段と、
ユーザ端末からの指示に基づいて前記合成画像上の設備図形の編集を行う編集手段と、
前記編集手段によって編集が行われている設備図形について他のユーザ端末による編集を排除する排他制御を行う排他制御手段と、を有し、
前記編集手段によって設備図形の編集が行われると、該編集結果は、前記属性情報データベースに格納された前記設備図形の属性と前記接続管理データベースに格納された前記設備図形間の接続関係に反映されることを特徴とするインフラストラクチャー管理システム。
【請求項2】
請求項1記載のインフラストラクチャー管理システムにおいて、
前記検索手段は、前記地図画像生成部によって生成された前記地図画像をユーザ端末に送信するときには、前記属性情報データベースと前記接続管理データベースを参照しないが、前記ユーザ端末から、前記合成画像上の設備図形が指示されたとき初めて、前記属性情報データベースと前記接続管理データベースを参照し、前記ユーザ端末によって指示された設備図形に関する接続関係を取得することを特徴とするインフラストラクチャー管理システム。
【請求項3】
請求項1記載のインフラストラクチャー管理システムにおいて、
前記検索手段は、ユーザ端末から検索キーとして設備図形の属性が送信されたとき、前記属性情報データベースを検索し、該検索キーに適合する設備図形データを含む検索結果をユーザ端末に送信し、該ユーザ端末から、前記検索結果に含まれる設備図形が指定されたとき、前記設備図形合成部は、該ユーザ端末によって指定された設備図形を地図画像上に重畳して合成画像を生成し、該合成画像を該ユーザ端末に送信することを特徴とするインフラストラクチャー管理システム。
【請求項4】
請求項1記載のインフラストラクチャー管理システムにおいて、
前記排他制御手段によって排他制御の対象となるのは、前記合成画像上の設備図形が編集されたとき、前記接続管理データベースに格納された前記設備図形間の接続関係のうち、該編集の結果を反映させる必要がある設備図形であることを特徴とするインフラストラクチャー管理システム。
【請求項5】
請求項1記載のインフラストラクチャー管理システムにおいて、
前記設備図形はノードとラインによって表され、該ノード及びラインが、前記地図画像上に重畳されることによって前記合成画像が生成され、
ユーザ端末によって、前記合成画像上のノードが選択されたとき、該ノードに接続されたラインと、該ラインに接続された他のノードが、前記排他制御手段による排他制御の対象となることを特徴とするインフラストラクチャー管理システム。
【請求項6】
請求項1記載のインフラストラクチャー管理システムにおいて、
前記設備図形はノードとラインによって表され、該ノード及びラインが、前記地図画像上に重畳されることによって前記合成画像が生成され、
ユーザ端末によって、前記合成画像上のノードが削除されたとき、該ノードに接続されたラインも削除されることを特徴とするインフラストラクチャー管理システム。
【請求項7】
地図データを格納する地図データベースと、インフラストラクチャーの構成要素を表す設備図形の属性を格納する属性情報データベースと、該設備図形をノード又はラインによって表示し、該ノード及びラインの間の接続関係を格納する接続管理データベースと、地図情報システムを備えたサーバによるインフラストラクチャー管理方法において、
ユーザ端末からの指示に基づいて、前記地図情報システムによって、前記地図データベースから地図データを取り出し、地図画像を生成する地図画像生成ステップと、
ユーザ端末からの指示に基づいて、前記地図情報システムによって、前記接続管理データベースから設備図形を取り出し、前記地図画像上に設備図形を重畳し合成画像を生成する設備図形合成ステップと、
ユーザ端末からの指示に基づいて、前記地図情報システムによって、前記合成画像上の設備図形の編集を行う編集ステップと、
前記地図情報システムによって、前記編集が行われている設備図形について他のユーザ端末による編集を排除する排他制御を行う排他制御ステップと、を有し、
前記編集ステップによって設備図形の編集が行われると、該編集結果は、前記接続管理データベースに格納された前記設備図形間の接続関係に反映されることを特徴とするインフラストラクチャー管理方法。
【請求項8】
請求項7記載のインフラストラクチャー管理方法において、
前記設備図形合成ステップは、
ユーザ端末から設備図形の属性を受信するステップと、
前記設備図形の属性を検索キーとして前記属性情報データベースを検索し、前記検索キーに適合する設備図形を含む検索結果を得るステップと、
前記地図情報システムによって、前記検索結果を、前記ユーザ端末に送信するステップと、
前記ユーザ端末から、前記検索結果に含まれる設備図形の指定を受信するステップと、
前記指定された設備図形データの接続関係を前記接続管理データベースから取り出すステップと、
前記取り出した設備図形の接続関係を用いて、前記地図画像上に設備図形を重畳して合成するステップと、
を含むことを特徴とするインフラストラクチャー管理方法。
【請求項9】
地図データを格納する地図データベースと、インフラストラクチャーの構成要素を表す設備図形の属性を格納する属性情報データベースと、該設備図形をノード又はラインによって表示し、該ノード及びラインの間の接続関係を格納する接続管理データベースと、地図情報システムを備えたサーバによるインフラストラクチャー管理方法において、
前記地図情報システムによって、前記地図データベースから地図データを取り出し、地図画像を生成する地図画像生成ステップと、
ユーザ端末からのノードの選択を受信するステップと、
前記地図情報システムによって、前記接続管理データベースを参照し、前記選択されたノードに接続されているラインの接続数を検出するステップと、
前記地図情報システムによって、前記ラインの接続数が0であるか、又は、1以上であるかを判定するステップと、
前記地図情報システムによって、前記ラインの接続数が1以上である場合に、前記接続管理データベースを参照し、前記選択されたノードに接続されたライン数を抽出するステップと、
前記地図情報システムによって、前記抽出したライン数と、前記選択されたラインの接続数が一致するか否かを判定するステップと、
前記抽出したライン数と、前記選択されたラインの接続数が一致する場合に、ユーザ端末において、前記選択されたノードとそれに接続されているラインを選択状態にするステップと、
を有するインフラストラクチャー管理方法。
【請求項10】
地図データを格納する地図データベースと、インフラストラクチャーの構成要素を表す設備図形の属性を格納する属性情報データベースと、該設備図形をノード又はラインによって表示し、該ノード及びラインの間の接続関係を格納する接続管理データベースと、地図情報システムを備えたサーバによるインフラストラクチャー管理方法において、
ユーザ端末からの指示に基づいて、前記地図情報システムによって、前記地図データベースから地図データを取り出し、地図画像を生成する地図画像生成ステップと、
ユーザ端末からの指示に基づいて、前記地図情報システムによって、前記接続管理データベースから設備図形を取り出し、前記地図画像上に設備図形を重畳し合成画像を生成する設備図形合成ステップと、
ユーザ端末からの指示に基づいて、前記地図情報システムによって、前記合成画像上の設備図形の編集を行う編集ステップと、
前記地図情報システムによって、前記編集が行われている設備図形について他のユーザ端末による編集を排除する排他制御を行う排他制御ステップと、を有し、
ユーザ端末にて表示された前記合成画像上にて、1つのノードが選択されたとき、該選択されたノードと該ノードに接続されたラインと該ラインに接続された他のノードが太線によって表示されることを特徴とするインフラストラクチャー管理方法。
【請求項11】
請求項10記載のインフラストラクチャー管理方法において、
ユーザ端末にて表示された前記合成画像上にて、1つのノードが選択されたとき、該選択されたノードが削除されたとき、該ノードと該ノードに接続されたラインが削除されることを特徴とするインフラストラクチャー管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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