説明

インフルエンザウイルスに由来する抗原ペプチド、及び抗インフルエンザウイルス抗体を選択する方法

汎用性の高い中和抗体、すなわち広範なA型インフルエンザウイルス株に対して反応性がある抗体を誘導するために使用することのできる抗原ペプチドが提供される。該抗原ペプチドは配列番号34(EKEVLVLWG)、配列番号2(KFDKLYIWG)、配列番号71(QEDLLVLWG)、配列番号51(EGRINYYWTLLEP)、配列番号3(PSRISIYWTIVKP)及び/又は配列番号82(SGRMEFFWTILKP)に対応し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインフルエンザウイルスに由来する抗原ペプチド、該抗原ペプチドを含むインフルエンザウイルスに対するワクチン、及び抗インフルエンザウイルス抗体を選択する方法に関する。
【0002】
本願は、2009年6月17日付けで出願された先願の米国仮特許出願第61/187,702号(その全体が参照により本明細書中に援用される)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザの大流行は稀ではあるが、周期的に起こる現象である。そのような大流行は、ヒト集団が免疫を有しない新型のインフルエンザウイルスの発生と関連している。高病原性のトリA型インフルエンザウイルスH5N1が、次の大流行の原因となる候補である可能性が最も高いと広く信じられていた(非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、新たなブタ由来の流行性A型インフルエンザ(H1N1)ウイルス(その後H1N1 pdmウイルスと名付けられた)が2009年4月に発生し、ヒトでの大流行の可能性を秘めている(非特許文献3、非特許文献4)。A型インフルエンザウイルスのどの株が次の大流行を引き起こす可能性があるか事前には分からないため、交差反応性の免疫応答を広く誘導することのできるプレパンデミックワクチンが必須である。
【0004】
インフルエンザウイルスは抗原変化を高い確率で受け、新型のインフルエンザ株(複数可)を生み出す。A型インフルエンザウイルスは、それらのヘマグルチニン(HA)分子及びノイラミニダーゼ(NA)分子の抗原性に基づいて亜型(すなわち16種のHA(H1〜H16)亜型及び9種のNA(N1〜N9)亜型)に分類される(非特許文献5、非特許文献6)。ヒトA型インフルエンザウイルスの少なくとも3種のHA亜型(H1、H2及びH3)は重要な病原体として発生した。現在、A型インフルエンザウイルスのH1N1及びH3N2は季節的に広まり(circulating)、ヒト感染を引き起こしている。2003年には、トリ由来のインフルエンザウイルス亜型H5がヒト病原体として発生したが、これは以前の株よりもはるかに致死性が高い(非特許文献7)。近年では、2009年4月に新型のインフルエンザウイルスとしてH1N1ウイルスが発生し、ヒト集団において急速に蔓延している。
【0005】
インフルエンザ感染は、心臓疾患患者又は高齢者といった或る特定の個体群にとってより危険であり得る。したがって、インフルエンザに対するワクチンが非常に望まれている。A型インフルエンザウイルスは、免疫原性が高いが、非常に変異しやすい2つのタンパク質、HA及びNAをその膜中に含有している。HA中の可変ペプチドは非特許文献9及び非特許文献10に開示されている。
【0006】
HA及びNAの可変性のために、インフルエンザに対して広域スペクトルのワクチンはこれまでに開発されていない。膜タンパク質M2及びHA2サブユニットのアミノ酸残基(aa)16〜23は、特許文献1及び特許文献2において広域スペクトルのワクチンに使用される免疫防御性抗原として開示されている。幅広い保護をもたらすために使用することのできるインフルエンザタンパク質中の新たなエピトープが、ワクチン開発のために長く待ち望まれていた。
【0007】
下記に挙げる参照文献及び本明細書中で言及される全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−22186号公報
【特許文献2】国際公開第99/07839号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Carter, N.J., Plosker, G.L., 2008, "Prepandemic influenzavaccine H5N1 (split virion, inactivated, adjuvanted) [Prepandrix]: a review ofits use as an active immunization against influenza A subtype H5N1 virus,"BioDrugs 22, 279-292.
【非特許文献2】Pappaioanou, M., 2009, "Highly pathogenic H5N1 avian influenzavirus: cause of the next pandemic?" Comp. Immunol. Microbiol. Infect. Dis.32, 287-300.
【非特許文献3】Novel Swine-Origin Influenza A (H1N1) Virus Investigation Team,2009, "Emergence of a novel swine-origin influenza A (H1N1) virus inhumans," New Engl. J. Med. 361, June 18, 2009, pp.2605-2615
【非特許文献4】Shinde, V., Bridges, C.B., Uyeki, T.M., Shu, B., Balish, A., Xu, X.,Lindstrom, S., Gubareva, L.V., Deyde, V., Garten, R.J., Harris, M., Gerber, S.,Vagoski, S., Smith, F., Pascoe, N., Martin, K., Dufficy, D., Ritger, K.,Conover, C., Quinlisk, P., Klimov, A., Bresee, J.S., Finelli, L., 2009,"Triple-reassortant swine influenza virus A (H1) in humans in the UnitedStates, 2005-2009," New Engl. J. Med., June 18, 2009 pp.2616-2625
【非特許文献5】Fouchier, R.A., Munster, V., Wallenstein, A., Bestebroer, T.M.,Herfst, S., Smith, D., Rimmelzwaan, G.F., Olsen, B., Osterhaus, A.D., 2005,"Characterization of a novel influenza A virus hemagglutinin subtype (H16)obtained from black-headed gulls," J. Virol. 79, 2814-2822.
【非特許文献6】Webster, R.G., Bean, W.J., Gorman, O.T., Chambers, T.M., Kawaoka,Y., 1992, "Evolution and ecology of influenza A viruses," Microbiol.Rev. 56, 152-179.
【非特許文献7】Webby, R.J., Webster, R.G. 2003, "Are we ready for pandemicinfluenza?" Science 302, 1519-1522.
【非特許文献8】Webster, R.G., Laver, W.G., 1980, "Determination of the numberof nonoverlapping antigenic areas on Hong Kong (H3N2) influenza virushemagglutinin with monoclonal antibodies and the selection of variants withpotential epidemiological significance," Virology 104, 139-148.
【非特許文献9】Wiley, D.C., Wilson, I.A., Skehel, J.J., 1981, "Structuralidentification of the antibody-binding sites of Hong Kong influenzahaemagglutinin and their involvement in antigenic variation," Nature 289,373-378.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決すべき課題は、新たな免疫防御性抗原ペプチド及び該ペプチドを含むワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は汎用性の高い(global)中和抗体、すなわち広範なA型インフルエンザウイルス株に対して反応性がある抗体を誘導するために使用することのできる抗原ペプチドに関する。該抗原ペプチドは上方領域及び/又は下方領域、例えば配列番号2及び/又は配列番号3を含み得る。配列番号2及び配列番号3はH3N2亜型のHA中に存在し、広範なH3N2ウイルス株において高度に保存された配列であり得る。さらに、これら2つのエピトープ領域に対応する配列は、同じ亜型に属する全てのA型インフルエンザウイルスにおいて高度に保存されたものであり得る。例えば、ヒトH3N2の上記2つのエピトープ領域に対応する、ヒト、ブタ及び/又はトリに由来するH1N1(H1N1 pdmを含む)及びH5N1等の他のA型インフルエンザ亜型における配列は、同じ亜型において保存されたものであり得る。これらの配列は、異なる宿主、例えばヒト、ブタ又はトリに由来する株間で保存されたものであり得る。特に、或る特定の亜型内の或る特定の株の2つのエピトープ領域に反応する抗体は、同じ亜型内の他の株を中和することが期待される。H3N2だけでなく、H1N1及びH5N1等の他の亜型の2つのエピトープ領域も、汎用性の高い中和抗体を誘導するのに重要なヒトエピトープとして機能することができる。
【0012】
したがって、本発明の特徴は、汎用性の高い中和抗体を誘導するための抗原ペプチドを提供することである。
【0013】
本発明の別の特徴は、少なくとも1種の抗原ペプチドを含む、A型インフルエンザウイルスに対するワクチンを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる特徴は、A型インフルエンザ亜型を認識することのできる抗体(単数又は複数)を選択することである。
【0015】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の明細書において一部説明され、明細書から一部明らかであるか、又は本発明の実施によって理解することができる。本発明の目的及び他の利点は、明細書及び添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせを用いて実現及び達成される。
【0016】
これら及び他の利点を達成するために、本明細書中に具体化され、概説される本発明の目的に従うと、本発明は、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の上方領域及び/又は下方領域のアミノ酸配列を少なくとも含む抗原ペプチドに関する。
【0017】
本発明は、本発明の抗原ペプチドをコードする遺伝子のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子に更に関する。
【0018】
本発明は、抗原ペプチドを少なくとも1つ含むA型インフルエンザウイルスに対するワクチン、抗原ペプチドを少なくとも1つ含むインフルエンザ試験用の試薬、抗原ペプチドを少なくとも1つ含むインフルエンザ試験用の試薬キット、及びA型インフルエンザウイルス亜型のヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の上方領域及び/又は下方領域を認識する抗体を選択する方法に更に関する。
【0019】
上述の概要及び以下の詳細な説明は例示及び説明のみを目的とし、クレームされる本発明のさらなる説明を提供することを意図することが理解されよう。
【0020】
本願に援用され、本願の一部を構成する添付の図面は、本発明の態様を例示し、本明細書と共に本発明の原理を説明する働きをするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のペプチドは強い免疫原性を有する。具体的には、ペプチドは、該ペプチドに対する反応性を有し、ヒトPBMCを刺激してインフルエンザウイルスを中和する抗体をin vivoで惹起することができる。特に、或る亜型内の或る株に由来するペプチドによって惹起される抗体は、同じ亜型に属する他の株を中和することが期待される。本発明のペプチドを含むワクチンは、生体内の免疫系を効果的に刺激可能であることが期待される。本発明の選択方法によって得られる抗体は、生体をインフルエンザウイルスから効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ヒトA型インフルエンザウイルスH3N2の既知の中和エピトープA〜Eの配列ロゴを示す図である。
【図2A】種々の宿主に由来するH1N1の上方領域及び下方領域での配列の変異率及び累積率を示す図である。
【図2B】種々の宿主に由来するH3N2及びH5N1の上方領域及び下方領域での配列の変異率及び累積率を示す図である。
【図3】A型インフルエンザウイルスの様々な亜型の上方領域及び下方領域の配列ロゴを示す図である。
【図4】ME法による、A型インフルエンザウイルスの様々な亜型のHA1領域並びに上方領域及び下方領域の進化的関係を示す図である。
【図5】図5Aは、H3N2亜型の様々な株に由来する上方領域、及び上方領域を含む上方部分(アミノ酸配列aa167〜187)を示す図である。図5Bは、H3N2亜型の様々な株に由来する下方領域、及び下方領域を含む下方部分(アミノ酸配列aa225〜241)を示す図である。
【図6A】H1N1の上方ペプチド又は下方ペプチドに対する抗血清の反応を示す図である。
【図6B】H3N2の上方ペプチド又は下方ペプチドに対する抗血清の反応を示す図である。
【図6C】H5N1の上方ペプチド又は下方ペプチドに対する抗血清の反応を示す図である。
【図7A】H3N2の上方部分のペプチドに対するウサギ免疫血清の抗体力価を示す図である。
【図7B】H3N2の下方部分のペプチドに対するウサギ免疫血清の抗体力価を示す図である。
【図7C】HAワクチンに対するウサギ免疫血清の抗体力価を示す図である。
【図8】合成ペプチドによる中和阻害を示す図である。
【図9】合成ペプチドで刺激したヒトPBMCの培養上清を用いた中和試験を示す図である。
【図10】合成ペプチドで刺激したヒトPBMCの培養上清を用いた中和試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、広範なインフルエンザウイルス株に対して反応性がある中和抗体を誘導するために使用することのできる抗原ペプチド又はポリペプチドに関する。本発明における抗原ペプチドは、A型インフルエンザウイルス亜型のHA1領域内のβシート構造の上方領域及び/又は下方領域に対応するアミノ酸配列を含む。本発明の抗原ペプチドは、上方領域若しくは下方領域のいずれか、又は両方の領域を含み得る。
【0024】
A型インフルエンザウイルスのHA1領域内のβシート構造の「上方領域」とは、配列番号1のアミノ酸配列(A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA)中のaa173〜181(配列番号2)に対応するアミノ酸配列の領域を意味する。A型インフルエンザウイルスのHA1領域内のβシート構造の「下方領域」とは、配列番号1のアミノ酸配列(A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA)のアミノ酸配列中のaa227〜239(配列番号3)に対応するアミノ酸配列の領域を意味する。上方領域は、A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA(配列番号1)中のaa173〜181、他の株における対応領域、他の亜型における対応領域及びそれらの変異体からなる群から選択される。下方領域は、A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA(配列番号1)中のaa227〜239、他の株における対応領域、他の亜型における対応領域及びそれらの変異体からなる群から選択される。例えば、上方領域はGenBankアクセッション番号BAA08716(A/Guizhou/54/1989株)のアミノ酸配列中のaa179〜187、GenBankアクセッション番号AAT08000(A/Wyoming/3/2003株)のアミノ酸配列中のaa189〜197、又はGenBankアクセッション番号ACC66685(A/New York/55/2004株)のアミノ酸配列中のaa173〜181に対応し、下方領域はGenBankアクセッション番号BAA08716(A/Guizhou/54/1989株)のアミノ酸配列中のaa233〜245、GenBankアクセッション番号AAT08000(A/Wyoming/3/2003株)のアミノ酸配列中のaa243〜255、又はGenBankアクセッション番号ACC66685(A/New York/55/2004株)のアミノ酸配列中のaa227〜239に対応する。
【0025】
H3N2の上方領域及び/又は下方領域は、広範なH3N2ウイルス株において高度に保存された配列であり得る。さらに、他の亜型におけるこれら2つの領域に対応する配列は、同じ亜型に属する全てのA型インフルエンザウイルスにおいて高度に保存されたものであり得る。例えば、ヒトH3N2の上記2つの領域に対応する配列を、ヒト、ブタ及び/又はトリに由来するH1N1(H1N1 pdmを含む)及びH5N1等の他のA型インフルエンザ亜型において同定することができる。A型インフルエンザウイルスH3N2のHA内の上方領域及び下方領域は逆平行βシート構造を形成し、H1N1及びH5N1等の他の亜型は同様の構造を有する対応領域を有し得る。したがって、ヒトH3N2のこれらのエピトープ領域に対して反応性がある抗体は、H1N1及びH5N1等の他のA型インフルエンザウイルスを中和することが期待される。特に、或る亜型に属する或る株の2つのエピトープ領域に対して反応性がある抗体は、同じ亜型に属する他の株を中和することが期待される。H3N2だけでなく、H1N1及びH5N1等の他の亜型の2つのエピトープ領域も、個々の亜型の中和抗体を誘導するのに重要なヒトエピトープとして機能することができる。
【0026】
抗原ペプチドは、A型インフルエンザウイルスH3N2のHA内の逆平行βシート上方領域を形成するaa173〜181(配列番号2)、及び/又はA型インフルエンザウイルスH3N2のHA内の逆平行βシート下方領域を形成するaa227〜239(配列番号3)に対応するアミノ酸配列を含み得る。上方領域のアミノ酸配列は、配列番号34(EKEVLVLWG)(H1N1)、配列番号2(KFDKLYIWG)(H3N2)、配列番号71(QEDLLVLWG)(H5N1)又はそれらの変異体を含み得る。下方領域のアミノ酸配列は、配列番号51(EGRINYYWTLLEP)(H1N1)、配列番号3(PSRISIYWTIVKP)(H3N2)、配列番号82(SGRMEFFWTILKP)(H5N1)又はそれらの変異体を含み得る。配列番号2を含む領域の変異体としては、例えば配列番号34〜配列番号50(H1N1)、配列番号8〜配列番号20(H3N2)、配列番号71〜配列番号81(H5N1)、配列番号177(H1N1)、配列番号179(H3N2)及び配列番号181(H5N1)から選択されるアミノ酸配列が挙げられる。配列番号3を含む領域の変異体としては、例えば配列番号51〜配列番号70(H1N1)、配列番号21〜配列番号33(H3N2)、配列番号82〜配列番号96(H5N1)、配列番号178(H1N1)、配列番号180(H3N2)及び配列番号182(H5N1)から選択されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0027】
上方領域及び/又は下方領域のアミノ酸配列に対する抗体は、全てのA型インフルエンザウイルス亜型を中和することが期待される。A型インフルエンザウイルスはH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15又はH16亜型を含み得る。A型インフルエンザウイルスはH1N1、H1N1 pdm、H3N2又はH5N1亜型を含み得る。各々の亜型はHA領域の可変性のために、多くの異なる株を含む。例えば、H3N2亜型は、A/Hiroshima/52/2005株(GenBankアクセッション番号EU501660)、A/Aichi/2/1968株、A/Guizhou/54/1989株(GenBankアクセッション番号D49963)、A/Wyoming/3/2003株(GenBankアクセッション番号AY531033)、A/New York/55/2004株(GenBankアクセッション番号EU501486)を含む。上方領域及び/又は下方領域のアミノ酸配列に対する抗体は、同じ亜型に属する、ヒト、ブタ、トリ又は他の宿主に由来する全てのA型インフルエンザウイルス株を中和することが期待される。
【0028】
A型インフルエンザウイルス亜型の上方部分のアミノ酸配列は上方領域を含む。A型インフルエンザウイルス亜型の下方部分のアミノ酸配列は下方領域を含む。本発明の抗原ペプチドは上方部分若しくは下方部分のいずれか、又は両方の部分を含み得る。
【0029】
上方領域を含む上方部分とは、配列番号1のアミノ酸配列(A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA)中のaa167〜187(配列番号4)に対応するアミノ酸配列の部分を意味する。下方領域を含む下方部分とは、配列番号1のアミノ酸配列(A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA)中のaa225〜241(配列番号5)に対応するアミノ酸配列の部分を意味する。上方部分は、A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA(配列番号1)中のaa167〜187、他の株における対応部分、他の亜型における対応部分、及びそれらの変異体からなる群から選択される。下方部分は、A/Hiroshima/52/2005(H3N2)株のHA(配列番号1)中のaa225〜241、他の株における対応部分、他の亜型における対応部分、及びそれらの変異体からなる群から選択される。配列番号4又は配列番号5の変異体としては、H1N1又はH5N1等の他の亜型における上方部分又は下方部分のアミノ酸配列が挙げられる。配列番号4又は配列番号5の変異体は、例えば配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を含み得る。
【0030】
上方部分は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置に存在するaa167〜187(配列番号4)に対応するアミノ酸配列であり得る。A型インフルエンザヒトH3N2ウイルスの下方部分は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置に存在するaa225〜241(配列番号5)であり得る。
【0031】
本発明は、本明細書中に特定した抗原ペプチドを少なくとも1つ含む、A型インフルエンザウイルスに対するワクチンにも関する。抗原ペプチドは既知の方法、例えば大腸菌及びレトロウイルス等の既知の宿主を利用する遺伝子組み換え技法、又は一般的なペプチド化学において既知の方法によって得ることができる。"Peptide Synthesis, Maruzen, 1975"及び"Peptide Synthesis, Interscience, New York 1996"を例示することができるが、既知の方法が広く利用可能である。本発明によるペプチドは、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオンカラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の組み合わせによって認識特性を用いて精製/回収することができる。ペプチドを該ペプチドに対して作製されたポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体によって特異的に吸着/回収する方法を使用するのがより好ましい。
【0032】
抗原ペプチドは広範なインフルエンザウイルス株に対して反応性がある中和抗体を誘導することができる。本発明のワクチンは、本発明によるポリペプチドを合成又は単離すること、並びに該ポリペプチドを媒体中に溶解又は分散させること、並びに任意で他のインフルエンザウイルス抗原、及び/又はキャリア、ビヒクル及び/又はアジュバント物質を添加することによって調製することができる。本発明によるワクチンは、少なくとも2つの異なる抗原ペプチド又はポリペプチド断片を含み得る。ワクチンは好ましくは上方領域を含む抗原ペプチド及び下方領域を含む抗原ペプチド、より好ましくは上方部分を含む抗原ペプチド及び下方部分を含む抗原ペプチドを含む。
【0033】
ペプチドを活性成分として含有するワクチンの調製は、米国特許第4,608,251号、同第4,601,903号、同第4,599,231号、同第4,599,230号、同第4,596,792号及び同第4,578,770号(全て参照により本明細書中に援用される)によって例示されるように、当該技術分野において一般によく理解されている。通常、かかるワクチンは液体の溶液又は懸濁液のいずれかの注射剤として調製される。注射の前に液体の溶液又は液体の懸濁液とするのに好適な固体形態も調製することができる。調製物は乳化することもできる。免疫原性のある活性成分は、薬学的に許容可能な、活性成分と相溶性のある賦形剤と混合されることが多い。好適な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、及びそれらの組み合わせである。加えて、ワクチンは必要に応じて少量の補助物質、例えば湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、又はワクチンの有効性を高めるアジュバントを含有してもよい。
【0034】
不活化インフルエンザウイルスを製造するための種ウイルス、例えばA型インフルエンザH1N1及びH3N2ウイルス、並びにB型インフルエンザウイルスは、孵化鶏卵の尿膜腔内で十分に複製する天然のウイルス株である。さらに、病原性の高いH5N1ウイルスに対する同様のワクチンを、ニワトリ胚におけるH5ウイルスの十分な増殖を可能にするために高収量株の内在遺伝子を用いて、H5N1由来のHA遺伝子及びNA遺伝子の逆遺伝学によって調製することができた(非特許文献1、Takahashi, Y., Hasegawa, H., Hara, Y., Ato, M., Nonomiya, A.,Takagi, H., Odagiri, T., Sata, T., Tashiro, M., Kobayashi, K., 2009,"Protective immunity afforded by inactivated H5N1 (NIBRG-14) vaccinerequires antibodies against both hemagglutinin and neuraminidase in mice,"J. Infect. Dis. 199, 1629-1637)。本発明のペプチドは、上記の方法によって得られる不活化ウイルスから単離してもよい。
【0035】
ワクチンは通常、注射、例えば皮下注射又は筋内注射によって非経口的に投与することができる。他の投与形態に好適なさらなる製剤としては、坐剤、場合によっては経口製剤が挙げられる。坐剤については、従来の結合剤及びキャリアとして、例えばポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを挙げることができる。かかる坐剤は、活性成分を製剤の全重量の0.56重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜2重量%の範囲で含有する混合物から作製することができる。経口製剤としては、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の通常用いられる賦形剤が挙げられる。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出製剤又は粉末の形態をとり、製剤の全重量の10重量%〜95重量%、好ましくは25重量%〜70重量%の活性成分を含有する。
【0036】
ポリペプチド又はタンパク質は、中性形態又は塩形態としてワクチンに配合することができる。薬学的に許容可能な塩としては、(ペプチドの遊離アミノ基により形成される)酸付加塩が挙げられ、これは例えば塩酸若しくはリン酸等の無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸により形成される。また、遊離カルボキシル基により形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄等の無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基に由来し得る。
【0037】
ワクチンは投与製剤に適合する形で、治療的に有効で、免疫原性となるような量で投与される。投与すべき量は、例えば免疫応答を開始する(mount)個体の免疫系の能力、及び所望の保護の程度等、治療対象の被験体ごとに異なる。好適な投与量範囲は、1回のワクチン接種につき数百マイクログラム程度の活性成分という量であり、好ましい範囲は約0.1マイクログラム〜1000マイクログラム、例えば約1マイクログラム〜300マイクログラムの範囲、特に約10マイクログラム〜50マイクログラムの範囲である。同様に、初回投与及び追加投与(booster shots)に好適な計画は変化し得るが、初回投与に続く後続の接種又は他の投与が典型的である。
【0038】
適用方法は幅広く変化し得る。従来のワクチンの投与方法はいずれも適用可能である。これらは生理学的に許容可能な固体基剤中、又は生理学的に許容可能な分散液中での経口適用、注射等による非経口的適用を含むと考えられる。ワクチンの投与量は投与経路によって決まり、ワクチン接種を受ける者の年齢に応じて異なり、程度は少ないが、ワクチン接種を受ける者の体格に応じて異なる。
【0039】
ワクチンのポリペプチドによってはワクチン中で十分に免疫原性であるものがあるが、ワクチンがアジュバント物質を更に含む場合、その免疫応答が高められるものもある。
【0040】
ワクチンに対するアジュバント効果を達成する様々な方法としては、一般に0.05%〜0.1%のリン酸緩衝生理食塩水溶液として使用される、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム(アラム)等の薬剤の使用、0.25%溶液として使用される糖の合成ポリマー(Carbopol)との混合、70℃〜101℃の範囲の温度でそれぞれ30秒間〜2分間の熱処理によるワクチン中のタンパク質の凝集が挙げられる。アルブミンに対するペプシン処理(Fab)抗体での再活性化による凝集、クリプトスポリジウム・パルバム(C. parvum)等の細菌細胞、又はグラム陰性細菌のエンドトキシン若しくはリポ多糖成分との混合、マンニドモノオレエート(Aracel A)等の生理学的に許容可能な油性ビヒクル中での乳化、又は遮断代替物(block substitute)として使用されるペルフルオロカーボン(Fluosol−DA)の20%溶液での乳化も採用することができる。本発明によると、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)がアジュバントの一例である。フロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント、並びにQuilA及びRIBIをアジュバントとして使用することができる。さらなる例は、モノホスホリルリピドA(MPL)及びムラミルジペプチド(MDP)である。
【0041】
アジュバント効果を達成する別の方法は、Gosselin et al., 1992(参照により本明細書中に援用される)中に記載される技法を採用することである。手短に述べると、本発明の抗原等の関連抗原の提示は、該抗原を単球/マクロファージ上のFcz受容体に対する抗体(又は抗体の抗原結合断片)に結合させることによって高めることができる。特に、抗原と抗FceRIとの複合体は、ワクチン接種を目的とした免疫原性を高めることが実証されている。
【0042】
他の方法は、上記に言及されるアジュバントと組み合わせた、リンホカイン(例えばIFN−γ、IL−2及びIL−12)等の免疫調節物質又はポリI:C等の合成IFN−γ誘導因子の使用を伴う。
【0043】
ワクチンの複数回投与、一般には6回を超えないワクチン接種、より一般には4回を超えないワクチン接種、好ましくは1回以上、一般には少なくとも約3回のワクチン接種を使用することができる。ワクチン接種は通常2週間〜12週間の間隔、より一般には3週間〜5週間の間隔を置くが、他の間隔を使用してもよい。1年間〜5年間、例えば3年間の間隔を置いた周期的な追加免疫が、所望のレベルの防御免疫を維持するのに望ましい場合がある。免疫付与過程に続いて、本発明のポリペプチドと共培養したPBL(末梢血リンパ球)又はPBMCのin vitro増殖アッセイ、特に初回抗原刺激を受けたリンパ球から放出されたIFNレベルの測定を行ってもよい。アッセイは放射性核種、酵素、蛍光物質(fluorescers)等の従来の標識を用いて行うことができる。これらの技法は既知であり、これらのタイプのアッセイの例示として種々の特許、例えば米国特許第3,791,932号、同第4,174,384号及び同第3,949,064号に見ることができる。
【0044】
遺伝的変異のために、個々の個体は同じポリペプチドに対し、様々な強度の免疫応答で反応し得る。したがって、本発明によるワクチンは、免疫応答を増大させるために幾つかの異なるポリペプチド(1つ又は複数の異なるポリペプチド)を含んでいてもよい。ポリペプチドは、それら自身の免疫原性によって作用することも、又は単にアジュバントとして作用することもできる。
【0045】
本発明は、ヒト等の動物を免疫付与する方法であって、該動物に本発明のポリペプチド又は本発明のワクチン組成物を投与することを含む、方法にも関する。好ましい投与経路は、非経口経路(静脈内経路及び動脈内経路等)、腹腔内経路、筋肉内経路、皮下経路、皮内経路、経口経路、口腔内経路、舌下経路、経鼻経路、経直腸経路又は経皮経路である。
【0046】
本発明は、上記抗原ペプチドをコードする遺伝子のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子にも関する。例えば、ヌクレオチド配列は、GenBankアクセッション番号EU501660(A/Hiroshima/52/2005株)、GenBankアクセッション番号D49963(A/Guizhou/54/1989株)、GenBankアクセッション番号AY531033(A/Wyoming/3/2003株)、GenBankアクセッション番号EU501486(A/New York/55/2004株)から選択される。ヌクレオチド配列は、下記に記載の上方領域及び/又は下方領域をコードするヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列を含み得る。
(1)上方領域をコードするヌクレオチド配列
(i)AAATTTGACAAATTGTACATTTGGGGG(配列番号173)(GenBankアクセッション番号EU501486のヌクレオチド配列中の517〜543)
(ii)AAATTTGACAAATTGTACATTTGGGGG(配列番号173)(GenBankアクセッション番号AY531033のヌクレオチド配列中の565〜591)
(iii)AAATTTGACAAATTGTACATTTGGGGG(配列番号173)(GenBankアクセッション番号D49963のヌクレオチド配列中の537〜563)
(iv)AAATTTGACAAATTGTACATTTGGGGG(配列番号173)(GenBankアクセッション番号EU501660のヌクレオチド配列中の517〜543)
(2)下方領域をコードするヌクレオチド配列
(i)TCCAGCAGAATAAGCATCTATTGGACAATAGTAAAACCG(配列番号174)(GenBankアクセッション番号AY531033のヌクレオチド配列中の727〜765)
(ii)TCTAGTAGAATAAGCATCTATTGGACAATAGTAAAACCG(配列番号175)(GenBankアクセッション番号D49963のヌクレオチド配列中の699〜737)
(iii)CCCAGCAGAATAAGCATCTATTGGACAATAGTAAAACCG(配列番号176)(GenBankアクセッション番号EU501660のヌクレオチド配列中の679〜717)
(iv)CCCAGCAGAATAAGCATCTATTGGACAATAGTAAAACCG(配列番号176)(GenBankアクセッション番号EU501486のヌクレオチド配列中の679〜717)
【0047】
本発明は、少なくとも1種の抗原ペプチドを含むインフルエンザ試験用の試薬にも関する。試薬は、該試薬がインフルエンザ試験に使用される限りにおいて、抗原ペプチドに加えて任意の成分を含み得る。
【0048】
本発明は、少なくとも1種の抗原ペプチドを含むインフルエンザ試験用の試薬キットにも関する。試薬キットは、該試薬キットがインフルエンザ試験に使用される限りにおいて、抗原ペプチドに加えて任意の成分、試薬及び/又は器具を含み得る。
【0049】
本発明は、A型インフルエンザウイルスのHA1領域内のβシート構造の上方領域及び/又は下方領域を認識する抗体(単数又は複数)を選択する方法にも関する。上方領域は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置に存在するaa173〜181(配列番号2)に対応し得る。下方領域は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置に存在するaa227〜239(配列番号3)に対応し得る。上方領域のアミノ酸配列は配列番号34(EKEVLVLWG)、配列番号2(KFDKLYIWG)及び/又は配列番号71(QEDLLVLWG)を含み得る。下方領域のアミノ酸配列は配列番号51(EGRINYYWTLLEP)、配列番号3(PSRISIYWTIVKP)及び/又は配列番号82(SGRMEFFWTILKP)を含み得る。上方領域及び/又は下方領域のアミノ酸配列は、ヒト、ブタ又はトリ宿主に由来する全てのA型インフルエンザウイルス亜型において高度に保存されたものであり得る。抗体は、ヒトH3N2ウイルスの上方部分に由来するヒトH3N2ウイルスの上方領域を、及び/又はヒトH3N2ウイルスの下方部分に由来するヒトH3N2ウイルスの下方領域を認識することができる。上方部分は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置に存在するaa167〜187に対応し得る。下方部分は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置に存在するaa225〜241に対応し得る。A型インフルエンザウイルスはH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15又はH16亜型を含み得る。A型インフルエンザウイルスはH1N1、H1N1 pdm、H3N2又はH5N1亜型を含み得る。抗体(単数又は複数)を選択する方法は、候補である抗体をペプチドと共にインキュベートし、該抗体と該ペプチドとの間の結合を検出する、インキュベートすることを含み得るが、ここで該ペプチドは、A型インフルエンザウイルスのHA1領域内のβシート構造の上方領域及び/又は下方領域のアミノ酸配列を含み得る。抗体(単数又は複数)を選択する方法は、候補である抗体をペプチドと共にインキュベートし、該抗体と該ペプチドとの間の結合を検出する、インキュベートすることを含み得るが、ここで該ペプチドは、A型インフルエンザウイルスのHA1領域内のβシート構造の上方部分及び/又は下方部分のアミノ酸配列を含み得る。選択される抗体はインフルエンザウイルスの中和を示し得る。選択される抗体は血球凝集の阻害活性(HI)を示し得る。
【0050】
逆平行βシート構造を形成する、A型インフルエンザウイルスH3N2のHA内のaa173〜181(配列番号2)及びaa227〜239(配列番号3)のエピトープ配列は、HuMAb(B−1及びD−1)によって認識することができる(Kubota-Koketsu, R., Mizuta, H., Ohshita, M., Ideno, S., Yunoki, M.,Kuhara, M., Yamamoto, N., Okuno, Y., Ikuta, K., "Broad neutralizing humanmonoclonal antibodies against influenza virus from vaccinated healthydonors,"2009年6月19日に提出、7月4日に公開)。特に、HuMAbを産生する2つのハイブリドーマ細胞クローンに由来するHuMAbは、広範なH3N2ウイルス株に対して高い中和活性を有し得る。H3N2中、aa173〜181(配列番号2)及びaa227〜239(配列番号3)に2つのエピトープ領域を有する又は含むβシート領域の有意な保存が存在し得る。H1N1及びH5N1等の他の亜型は、同様の構造を有する対応領域を有し得る。2つの領域はこれらの亜型の受容体結合部位の下部に位置し得る。米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソースから利用可能な配列を用いた、これらの領域の解析によって、これらの配列が既知の中和エピトープA〜Eと比較して、ヒトH3N2(n=2594)及びブタH1N1(n=188)及びH3N2(n=95)において相当に保存されており、ヒトH1N1(n=1171)及び最近のブタ由来H1N1 pdm(n=312)、並びにヒトH5N1(n=224)及びトリH5N1(n=1534)において高度に保存されていることが明らかとなった。これらの領域についての系統樹では、由来する宿主とは無関係に、H1N1、H3N2及びH5N1について明らかに分類可能なクラスターが形成された。これらの領域を使用して、広範なインフルエンザウイルス株に対して反応性がある中和抗体を誘導することのできるワクチンを開発することができる。
【0051】
コンピューターによるH3N2ウイルスの特性化からも、2つのエピトープ領域の比較的高度な保存が明らかとなった。さらに、本発明者らは、種々の宿主のH1N1及びH5N1等のインフルエンザウイルスにおいて対応配列を同定したが、これらはH3N2における保存よりもはるかに高度の保存をそれらの配列において示した。これらのデータは、広範なウイルス株を中和し得るA型インフルエンザウイルスに対する代替ワクチンを可能にする。
【0052】
本発明者らは、B−1及びD−1 HuMAbによって認識される、ヒト由来H3N2のHA内の逆平行βシート構造を形成する上方領域及び下方領域に着目した。興味深いことに、HAのアミノ酸配列全体は亜型間であまり保存されていないが、かかるHAの構造及び機能は個々の亜型において高度に保存されている。このことは、進化及び配列変異が極端なレベルまで進行した場合であっても、構造及び機能が保存されたままであることを示唆する(Palese, P., Shaw, M.L., 2007, Chapter 47, "Orthomyxoviridae:The viruses and their replication," In: Knipe, D.M., Howley, P.M.,Griffin, D.EA., Lamb, R.A., Martin, M.A., Roizman, B., Straus, S.E., (Ed.),Fields Virology; Wolters Kluwer: Lippincott Williams & Wilkins, 5thedition, pp. 1647-1689)。主要な中和エピトープの大部分は、前者と関連することが示された。受容体結合領域の下部にある逆平行βシート構造はヒト中和エピトープの1つであるが、この領域は後者のカテゴリーを満たすこともできる。この領域が比較的高度に保存されていることが見出されたため、この構造はウイルス感染に関与し得る。
【0053】
本明細書中に記載されるアミノ酸配列はいずれも、それに対して少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の相同性(例えば95%〜98%、98%〜99%、又は約99%の相同性)を有する任意の配列を更に含み得ることを理解されたい。さらに、本発明のペプチドは、本明細書中に記載されるペプチドの断片、及び/又は1つ又は複数のアミノ酸(例えば1個〜25個、2個〜20個、3個〜15個、5個〜10個のアミノ酸)の欠失、挿入若しくは置換等のペプチドにおける、自然発生的な又は人為的に誘導した、無作為の又は対象を絞った(in a targeted fashion)突然変異を含み得る。例えば、ペプチドは、システインがそのN末端又はC末端に付加したペプチドの断片を含み得る。本発明において、「変異体」とは上記のようなペプチドを意味する。
【0054】
B−1及びD−1 HuMAbによって認識される、ヒト由来H3N2のHA内の逆平行βシート構造を形成するヒトエピトープ領域(上方領域及び下方領域)は、この亜型の広範な株に対して中和活性を示し得るが、H1N1及びB亜型とは交差反応性ではない(Kubota-Koketsu et al.)。2つの領域間の配列保存率を調べるために、ヒトH3N2に由来する2594個の完全HA配列(2009年5月15日時点で米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソースから利用可能であった)を入手した(Bao, Y., Bolotov, P., Dernovoy, D., Kiryutin, B., Zaslavsky, L.,Tatusova, T., Ostell, J., Lipman, D., 2008, "The Influenza Virus Resourceat the National Center for Biotechnology Information," J. Virol. 82,596-601)。これらのうち、上方領域及び下方領域に対してそれぞれ16個及び26個の変異体が検出された。このことから、下記表1に示されるように、これらの領域においてそれぞれ162.1個及び99.8個の株につき1つの変異体が生じることが示唆される。
【0055】
【表1】

【0056】
対照的に、同じ2594個の配列から抽出した既知の中和エピトープA〜E(非特許文献8、非特許文献9)の配列は、特にエピトープA及びB2において、はるかに変異しやすい(すなわち、それぞれ15.0個及び34.1個の株につき1回の変異体発生)(表1)。エピトープC2及び下方領域は、変異体発生について同じ頻度を示した。しかしながら、このエピトープC2がわずか5個のアミノ酸からなっていたのに対し、下方領域は13個のアミノ酸からなっていたため、この下方領域の配列におけるはるかに高い保存が示される。
【0057】
表2では、既知の中和エピトープA〜Eにおける上位10個の変異体及び個々の変異体の割合を相対的に示す。
【0058】
【表2−1】

【表2−2】

【0059】
本発明は、本発明の例示を意図するものである以下の実施例によって更に明らかにされる。
【実施例】
【0060】
実施例1:A型インフルエンザHA配列の収集、並びにHA1領域及び2つの独立したHuMAb(B−1及びD−1)によって認識されるエピトープ領域の抽出
ヒト由来、ブタ由来及びトリ由来のA型インフルエンザウイルスH1N1(H1N1 pdmを含む)、H3N2及びH5N1のHAの完全長タンパク質配列を、米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.html)(Bao et al., 2008)から入手した。次いで、HA配列をmafft v6.240を用いてアラインメントした(Katoh, K., Toh, H., 2008, "Recent developments in the MAFFTmultiple sequence alignment program," Brief. Bioinform. 9, 286-298)。HA1領域を決定するために、切断点の直後のパリンドローム配列を同定した(n’−GLFGAIAGFI−c’の位置が確認された、パリンドローム領域に下線を引いた)(Skehel, J.J., Waterfield, M.D., 1975, "Studies on the primarystructure of the influenza virus hemagglutinin," Proc. Nat. Acad. Sci. USA72, 93-97)。
【0061】
予め2つのHuMAb(B−1及びD−1)を、A型インフルエンザウイルスH3N2の広範な(global)株に対して強い中和活性を示した2人のワクチン接種済ボランティアから別個に作製した。エピトープ領域を、ヒトH3N2のHA1領域のaa1〜329にわたる合計158セットの15残基ペプチド(13アミノ酸が重複する)を用いて同定した:4個のペプチド(aa167〜181、aa169〜183、aa171〜185及びaa173〜187)(配列番号167〜配列番号170)との陽性反応によるaa173〜181(配列番号2)、並びに2個のペプチド(aa225〜239及びaa227〜241)(配列番号171、配列番号172)との陽性反応によるaa227〜239(配列番号3)(Kubota-Koketsu et al.)。A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置にあるaa167〜187の配列は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2の「上方部分」に対応し、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2のHA1領域におけるN末端からの位置にあるaa225〜241は、A型インフルエンザウイルスのヒトH3N2の「下方部分」に対応する。A型インフルエンザウイルスの様々な亜型がヒトH3N2の「上方部分」、「下方部分」、「上方領域」及び「下方領域」に対応するアミノ酸配列を含むことを理解されたい。ヒトH3N2の上方領域及び下方領域に対応する配列を同様に、種々の宿主由来のウイルス株、又は米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソース(Bao et al., 2008)から得た他のA型インフルエンザウイルス亜型に属するウイルス株から抽出した:ヒト及びブタに由来するH1N1、並びにヒトに由来するH1N1 pdm、ヒト及びブタに由来するH3N2、並びにヒト及びトリに由来するH5N1。
【0062】
既知の中和エピトープA〜E(非特許文献8、非特許文献9)を、同様に米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソース(Bao et al., 2008)のヒトH3N2配列から対照配列として抽出した。
【0063】
配列比較
B−1及びD−1によって認識されるエピトープ配列、並びにヒト由来、ブタ由来及びトリ由来のウイルスにおける対応配列についての配列ロゴをweblogoを用いて構築した(Crooks, G.E., Hon, G., Chandonia, J.M., Brenner, S.E., 2004,"WebLogo: A sequence logo generator," Genome Res. 14, 1188-1190)。
【0064】
進化的関係を最小進化(ME)法(Rzhetsky, A., Nei, M., 1992, "A simple method for estimatingand testing minimum evolution trees," Mol. Biol. Evol. 9, 945-967)を用いて推定した。系統樹は、系統樹を推定するために用いられる進化距離と同じ単位の枝の長さを使用して一定の縮尺で描く。進化距離は1つの部位当たりのアミノ酸置換の数という単位であり、ポアソン補正(Poisson correction)法(Zuckerkandl, E.,Pauling, L., 1965, "Evolutionary divergence and convergence in proteins.In Evolving Genes and Proteins," (V. Bryson, H.J. Vogel, Ed.), pp. 97-166,Academic Press, New York)を用いてコンピューターで計算した。ME樹を最近隣交換(Close-Neighbor-Interchange)アルゴリズム(Nei, M., Kumar, S., 2000, "Molecular Evolution andPhylogenetics," Oxford University Press, New York.)を用いて検索レベル1で検索した。近隣結合(Neighbor-joining)アルゴリズム(Saitou, N., Nei, M.,1987, "The neighbor-joining method: A new method for reconstructingphylogenetic trees," Mol. Biol. Evol. 4, 406-425)を用いて初期系統樹を作成した。ギャップ及び欠測データを含有する全ての位置をデータセットから除外した(完全削除(Complete deletion)オプション)。系統発生解析はMEGA4(Tamura,K., Dudley, J., Nei, M., Kumar, S., 2007, "MEGA4: Molecular EvolutionaryGenetics Analysis (MEGA) software version 4.0," Mol. Biol. Evol. 24,1596-1599)において行った。
【0065】
図1は既知の中和エピトープA〜Eの配列ロゴを示す。ヒトH3N2における既知の中和エピトープA〜Eの配列を、米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソースから抽出し、変異部位及びそれらの比率の解析のために配列ロゴを付した。個々のエピトープ領域におけるこれら全ての変異体(表1)を用いた配列ロゴ解析は、これら既知の中和エピトープ、特にエピトープA及びB2、並びにB1における高い不均一性(heterogeneity)を支持するものでもあった(図1)。
【0066】
HA分子における対応βシート領域の検出可能性を、A型インフルエンザウイルスの他の亜型において調べた。ヒト(H1N1、H1N1 pdm、H3N2及びH5N1)、ブタ(H1N1及びH3N2)及びトリ(H5N1)A型インフルエンザウイルスに由来する、合計4301個、283個及び1534個の完全長HA配列を、2009年5月15日に(2009年6月12日のH1N1 pdmを除く)米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソース(Bao et al., 2008)からそれぞれ入手した。H3N2の上方領域及び下方領域に対応する配列も、種々の宿主に由来するH1N1及びH5N1の完全長HA配列から抽出した。変異体を生じる効率は、ヒト由来よりもブタ由来のインフルエンザウイルスH1N1及びH3N2においてはるかに高かった(表1)。特にH1N1 pdmは、312個の単離体のうち、下方領域においては1種の変異体を除いて完全な保存を示した(表1)。
【0067】
上方領域及び下方領域における上位10個の変異体及び個々の配列の割合を下記表3に示す。H3N2の上方領域及び下方領域における個々の配列、並びに他のA型インフルエンザウイルス亜型におけるH3N2の上方領域及び下方領域に「対応する」配列が表3中に示されることに留意されたい。
【0068】
【表3−1】

【表3−2】

【0069】
表3中のデータは、図2A及び図2B中の個々の変異体の比率をまとめ、例示として示したものである。図2A及び図2Bは、上方配列及び下方配列での配列並びに配列の変異率及び累積率を示す。表3に示されるようなヒト及びブタに由来するH1N1、並びにH1N1 pdm;ヒト及びブタに由来するH3N2;並びにヒト及びトリに由来するH5N1における上方領域及び下方領域での上位10個の配列を図2A及び図2Bに示す。割合の最も高い配列をコンセンサスとして使用し、次の割合の配列を続けて挙げた。本願の表においては、次の割合の配列において使用されるピリオド(.)は、同じアミノ酸残基を示す。ヒトH1N1及びH1N1 pdm中の配列は、上方領域及び下方領域の両方において高度に保存されていた。ヒト及びトリのH5N1の場合、どちらの領域の配列も比較的高度に保存されていた。ヒトH3N2の下方領域は相当に保存されており、この亜型の上方領域は下方ペプチドよりも高度に保存されていた。
【0070】
図3中に示される、全ての変異体(表1)を用いた配列ロゴ解析は、この結論を支持するものであった。図3は、A型インフルエンザウイルスの様々な亜型の上方領域及び下方領域の配列ロゴを示す。上方領域及び下方領域は、米国立生物工学情報センターのインフルエンザウイルスリソースから抽出した:ヒトH1N1(n=1171)、ブタH1N1(n=188)及びH1N1 pdm(n=312);ヒトH3N2(n=2594)及びブタH3N2(n=95);並びにヒトH5N1(n=224)及びトリH5N1(n=1534)。種々の宿主に由来する個々の亜型の変異体を全て、この配列ロゴ解析に使用した。H3ナンバリングによるアミノ酸残基を配列の上部に示す。変異体の出現はほとんどの場合、主として限定的なアミノ酸残基における変異によるものであった:ヒトH3N2における残基173及び227;ブタH3N2における残基173、179、229及び230;ブタH1N1における残基173、179、237、238及び239;並びにヒト及びトリのH5N1における残基178、179、231及び239。したがって、上方領域及び下方領域はヒトH1N1及びH1N1 pdmにおいて高度に保存されていた。
【0071】
種々の宿主のウイルス株に由来する領域の系統樹解析から、H1N1、H3N2及びH5N1亜型におけるそれらの独立したクラスター化が明らかとなった(図4)。したがって、中和HuMAbによって認識されるH3N2領域、並びにH1N1及びH5N1における対応領域は、別個に進化したようである。
【0072】
ヒト由来及びトリ由来のH5N1における両方の領域の保存について明白な差はなく、トリにおいて生じた幾つかの変異体がヒトへ伝播することが示される。H1N1 pdmにおける上方領域及び下方領域の312個の配列は、上方領域における2つの配列を除いて完全に同じであった。ブタ由来のA型インフルエンザH1N1の単一の株のみがヒトへ伝播する能力を獲得したとすれば、この結果は合理的である。
【0073】
図5A及び図5Bは、HA1領域の配列、aa167〜187及びaa225〜241のアミノ酸配列(配列番号4及び配列番号5)を含む一連の重複ペプチドとのB−1及びD−1 HuMAbの反応性に基づく広範な(broadly)中和HuMAbの抗原領域を示す。どちらのMAbも、合成ペプチドに対して同じ応答性、すなわちそれぞれ重複領域aa173〜181(配列番号2)及びaa227〜239(配列番号3)にわたる、4個のペプチド(aa167〜181、aa169〜183、aa171〜185及びaa173〜187)(配列番号167〜配列番号170)及び2個のペプチド(aa225〜239及びaa227〜241)(配列番号171及び配列番号172)による2つの領域に対する有意な応答性を示した。どちらのHuMAbも、新たなヒトエピトープであるHA1の三次元構造において互いに近接して位置する2つの別個の領域(aa173〜181(配列番号2)及びaa227〜239(配列番号3))を認識した。この結果は、B−1及びD−1が立体構造エピトープを認識することを示唆するものであった。
【0074】
実施例2:合成ペプチドで刺激したヒトPBMCの培養上清を用いた中和試験
合計4人の健常ボランティアを、合成ペプチド(配列番号4(上方領域を含む上方部分)及び配列番号5(下方領域を含む下方部分))で刺激したヒトPBMCの培養上清による中和を試験するためのPBMCを得るために選択した。10ミリリットル又は20ミリリットルの血液を個々のボランティアから採取した。PBMCを、520×gで40分間のFicoll Pack Plus(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)による遠心分離によって調製した。細胞を無血清RPMI1640培養培地で洗浄し、10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地中に懸濁した。細胞を37℃、5%CO環境で1日インキュベートした。細胞を10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地中に2×10細胞/mLの濃度で懸濁し、マイトジェンPWM(1ミリリットル当たり5マイクログラム)を添加した。細胞を37℃、5%CO環境で1日インキュベートした。刺激した細胞を無血清RPMI1640培養培地で洗浄し、10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI1640培地中に懸濁し、合成ペプチド(1ミリリットル当たり10マイクログラム)又は混合ペプチド(それぞれ1ミリリットル当たり5マイクログラム)を添加した。細胞を37℃、5%CO環境で7日間インキュベートした。刺激した細胞の培養上清を回収し、RDE(II)(デンカ生研株式会社、日本)で処理した後、PBS(−)で10倍に希釈した。希釈した培養上清をマイクロウイルス中和(VN)試験(Y. Okuno, K. Tanaka, K. Baba, A. Maeda, N. Kunita, S. Ueda, Rapidfocus reduction neutralization test of influenza A and B viruses in microtitersystem, J. Clin. Microbiol. 28 (1990) 1308-1313)に使用した。ウイルスはA/Hiroshima/52/2005(H3N2)株であった。VN活性はフォーカス減少率(%)及びN比によって示した。N比は、(合成ペプチドで刺激したPBMCの培養上清のVN活性)/(合成ペプチドを用いずに刺激したPBMCの培養上清のVN活性)に等しい。
【0075】
実施例3:マウスにおけるエピトープペプチドの抗原性の評価
マウスの免疫付与
ヒトH1N1、H3N2及びH5N1のHAにおいて高度に保存される上方領域及び下方領域に対応するペプチドを、下記に記載されるように合成した。
(a)H1N1、上方ペプチド:CKEVLVLWG(配列番号177)、配列番号34のN末端にアミノ酸を1つ欠く配列のN末端にシステインを付加する。
(b)H1N1、下方ペプチド:CGRINYYWTLLEP(配列番号178)、配列番号51のN末端にアミノ酸を1つ欠く配列のN末端にシステインを付加する。
(c)H3N2、上方ペプチド:CFDKLYIWG(配列番号179)、配列番号1のaa174〜181のN末端にシステインを付加する(aa174〜181の配列は、配列番号2のN末端にアミノ酸を1つ欠いている)。
(d)H3N2、下方ペプチド:CSRISIYWTIVKP(配列番号180)、配列番号1のaa228〜239のN末端にシステインを付加する(aa228〜239の配列は、配列番号3のN末端にアミノ酸を1つ欠いている)。
(e)H5N1、上方ペプチド:QEDLLVLWGC(配列番号181)、aa173〜181(配列番号71)のC末端にシステインを付加する。
(f)H5N1、下方ペプチド:SGRMEFFWTILKPC(配列番号182)、aa227〜239(配列番号82)のC末端にシステインを付加する。
キャリアをペプチドに結合させるためにシステインを付加した。これらのペプチドをKLHと結合し、免疫原として混合した。ペプチドとフロイント完全アジュバント(1:1)との混合物25マイクロリットルの懸濁液を、1日目、7日目及び14日目にマウスに注射した。最後の注射の1週間後に、マウスから血液を採取した。
【0076】
ELISA(酵素結合免疫吸着法)
マイクロタイタープレートを、PBS1ミリリットル当たり1マイクログラムのペプチドで4℃で一晩コーティングし、5%のBSAを含有するPBSで4℃で一晩ブロッキングした。ブロッキング溶液を捨てた後、PBSで幾つかの濃度に血清を希釈し、各ウェルに添加し、室温で1時間置いた。次いで、プレートを0.05%Tween20−PBSで3回洗浄し、HRP結合ヤギ抗マウスIgG(MBL、コードNo.330)を各ウェルに添加し、室温で1時間反応させた。0.05%Tween20−PBSで3回洗浄した後、基質試薬を各ウェルに添加した。2N HSOを用いて反応を停止した。最後に、吸光度を測定した。図6A〜図6Cは、H1N1、H3N2及びH5N1の上方ペプチド又は下方ペプチドに対する抗血清の反応を示す。結果として、各々の血清が下方ペプチドよりも上方ペプチドと強く反応したことが確認された。
【0077】
実施例4:ウサギにおけるエピトープペプチドの抗原性の評価
ウサギの免疫付与
上方部分のペプチド(TMPNNEKFDKLYIWGVHHPGT)(配列番号4)又は下方部分のペプチド(NIPSRISIYWTIVKPGD)(配列番号5)をKLHと結合するか、又は8分岐MAP(多重抗原性ペプチド)形態として合成した。ニュージランドホワイトウサギを、以下のようにして皮下免疫した:1)KLHと結合した上方部分及び下方部分のペプチドを含むカクテルによって免疫付与した;2)MAP形態の上方部分及び下方部分のペプチドを含むカクテルによって免疫付与した;並びに3)KLHと結合した上方部分又は下方部分のペプチドで免疫付与した。各々のプロトコルについて2匹のウサギを免疫付与した。最初の免疫付与(ウサギ1匹当たり1mgのペプチド)については、抗原をフロイント完全アジュバントと共に投与し、その後1ヶ月間、2週間に一度の割合で3回追加免疫(ウサギ1匹当たり0.5mgのペプチド)をフロイント不完全アジュバントを用いて行った。最後の免疫付与の1週間後に血液を採取し、抗血清を調製した。
【0078】
抗エピトープペプチド抗体を検出するためのELISA
SuperBlock T20 Blocking Buffer(Thermo)1ミリリットル当たり1マイクログラムまで希釈したN末端ビオチン化エピトープペプチドを、96ウェルストレプトアビジンプレコートマイクロプレート(Nunc)のウェル(50マイクロリットル)に添加した。マイクロプレートを室温で30分間インキュベートした後、ビオチン化ペプチド溶液を捨てた。3%スキムミルクを含有するPBS(−)溶液を室温で少なくとも1時間それに添加した。マイクロプレートを水で3回洗浄した。3%スキムミルクを含有するPBS(−)溶液で希釈した抗血清をウェルに添加し、室温で1.5時間インキュベートした。マイクロプレートを0.05%Tween20を含有するPBS(−)で洗浄し、Superblock T20で4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG(CELL LAB)50uLをウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。マイクロプレートを0.05%Tween20を含有するPBS(−)で洗浄し、100マイクロリットルのペルオキシダーゼ基質溶液(SUMILON)をウェルに添加し、室温で20分間インキュベートした。その後、100マイクロリットルの反応停止液(SUMILON)をウェルに添加し、490nmでの吸光度をプレートリーダーを用いて測定した。抗血清の吸光度から免疫前血清の吸光度を差し引いて、特異反応性を求めた。
【0079】
抗HA抗体を検出するためのELISA
A/Brisbene/59/2007(H1N1)、A/Uruguay/716/2007(H3N2)及びB/Florida/4/2006を含有するHAワクチンを、PBS(−)中に溶解し(各々1ミリリットル当たり30マイクログラム超)、PBS(−)で30倍に希釈した。希釈したHAワクチン溶液を96ウェルマイクロプレート(Maxisorp、Nunc)のウェル(50マイクロリットル)に添加した。マイクロプレートを5℃で一晩インキュベートした後、HA溶液を捨てた。3%スキムミルクを含有するPBS(−)溶液を室温で少なくとも1時間それに添加した。マイクロプレートを水で3回洗浄した。3%スキムミルクを含有するPBS(−)溶液で希釈した抗血清をウェルに添加し、室温で1.5時間インキュベートした。マイクロプレートを0.05%Tween20を含有するPBS(−)で洗浄し、Superblock T20で4000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG(CELL LAB)50マイクロリットルをウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。マイクロプレートを0.05%Tween20を含有するPBS(−)で洗浄し、100マイクロリットルのペルオキシダーゼ基質溶液(SUMILON)を各々のウェルに添加し、室温で20分間インキュベートした。その後、100マイクロリットルの反応停止液(SUMILON)をウェルに添加し、490nmでの吸光度をプレートリーダーを用いて測定した。抗血清の吸光度から免疫前血清の吸光度を差し引いて、特異反応性を求めた。
【0080】
抗体検出の結果
図7A及び図7Bに示されるように、上方領域及び下方領域のペプチドの両方が、ウサギにおいて抗体を惹起することができた。上方領域ペプチドは下方領域ペプチドと比べて高い抗原性を示した。KLH−ペプチド複合体、及びKLHと結合した上方領域ペプチドでのカクテル免疫によって惹起された抗体は、図7Cに示されるようにHAと確かに反応した。この結果から、エピトープペプチドでの免疫付与がHA反応性抗体を惹起することができるという可能性が示された。図7A〜図7C中で使用される略号は、以下のように理解されたい:KLH−U−1:KLH−上方部分ペプチドで免疫付与したウサギ1;KLH−U−2:KLH−上方部分ペプチドで免疫付与したウサギ2;KLH−L−1:KLH−下方部分ペプチドで免疫付与したウサギ1;KLH−L−2:KLH−下方部分ペプチドで免疫付与したウサギ2;MAP−C−1:MAP−上方部分ペプチド及びMAP−下方部分ペプチドのカクテルで免疫付与したウサギ1;MAP−C−2:MAP−上方部分ペプチド及びMAP−下方部分ペプチドのカクテルで免疫付与したウサギ2;KLH−C−1:KLH−上方部分ペプチド及びKLH−下方部分ペプチドのカクテルで免疫付与したウサギ1;KLH−C−2:KLH−上方部分ペプチド及びKLH−下方部分ペプチドのカクテルで免疫付与したウサギ2。
【0081】
実施例5:
モノクローナル抗体D−1(Kubota-Koketsu et al.)及びA型インフルエンザウイルスを、合成ペプチド(ペプチド1(配列番号4)及びペプチド2(配列番号5))と共にインキュベートした。ペプチドによるD−1の中和活性の阻害を測定した。結果を図8A及び図8Bに示す。ペプチド1による中和阻害率は約50%、ペプチド2による阻害率は約20%であった。これらの結果から、ペプチド1及びペプチド2がD−1抗体との反応性を有することが示される。したがって、ペプチド1及びペプチド2はヒトの体内において免疫原として中和抗体を誘導することができる。
【0082】
実施例6:
ヒトに由来するPBMCを、合成ペプチド(ペプチド1(P1)(配列番号4)及びペプチド2(P2)(配列番号5))と共にインキュベートした。培養上清のインフルエンザウイルスに対する中和活性を実施例2の方法に従って測定した。結果を図9及び図10に示す。HAワクチン(A/Hiroshima/52/2005株(大阪大学微生物病研究所)の精製HAワクチン抗原)を陽性対照として使用した。図9及び図10から、混合ペプチド(ペプチド1+ペプチド2(P1+P2))によって刺激したPBMCが、高いウイルス中和活性を有することが示された。これらの結果は、混合ペプチドでの免疫付与が、ヒトの体内において中和抗体を効果的に誘導することを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0083】
免疫原性を有するペプチドを含むインフルエンザに対するワクチンは、同じ亜型に属する種々の株にわたって広域スペクトルを有することが期待される。有利なことには、該ワクチンが種々の亜型にわたって、より広域のスペクトルを有する可能性がある。本発明は、インフルエンザウイルスの可変性によって影響されないワクチンを提供することができる。また、本発明の選択方法によって得られる抗体はより広い交差反応性を有することが期待される。したがって、本発明はインフルエンザの有効な治療及び/又は予防を可能にし、医療において利益をもたらす。
【0084】
出願人は、引用した全ての参照文献の全内容を本開示に具体的に援用する。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は上位の好ましい値と下位の好ましい値との一覧として与えられる場合、任意の上限値又は上位の好ましい値と任意の下限値又は下位の好ましい値との任意の組からなる全ての範囲を、この範囲が別個に開示されているか否かにかかわらず、具体的に開示しているものとして理解すべきである。数値範囲が本明細書中に列挙される場合、特に指定のない限り、この範囲はその端点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことが意図される。範囲を規定する場合、本発明の範囲が列挙される特定の値に限定されることは意図されない。
【0085】
本発明の他の実施形態は、本明細書を検討すること、及び本明細書中に開示されている本発明を実施することにより当業者に明らかである。本明細書及び実施例が単に例示的なものであると見なされ、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲及びその均等物によって示されることが意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の上方領域及び/又は下方領域のアミノ酸配列を少なくとも含む抗原ペプチド。
【請求項2】
前記上方領域のアミノ酸配列が、A型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基173〜181(配列番号2)に対応し、前記下方領域のアミノ酸配列が、A型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基227〜239(配列番号3)に対応する、請求項1に記載の抗原ペプチド。
【請求項3】
前記上方領域のアミノ酸配列が配列番号34(EKEVLVLWG)、配列番号2(KFDKLYIWG)、配列番号71(QEDLLVLWG)、並びに配列番号34、配列番号2又は配列番号71の1つ又は2つのアミノ酸の置換、挿入、付加及び/又は欠失によって修飾されたアミノ酸配列からなる群から選択され、前記下方領域のアミノ酸配列が配列番号51(EGRINYYWTLLEP)、配列番号3(PSRISIYWTIVKP)、配列番号82(SGRMEFFWTILKP)、並びに配列番号51、配列番号3又は配列番号82の1つ又は2つのアミノ酸の置換、挿入、付加及び/又は欠失によって修飾されたアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の抗原ペプチド。
【請求項4】
前記上方領域及び/又は前記下方領域のアミノ酸配列がヒト、ブタ又はトリ宿主に由来する全てのA型インフルエンザウイルス亜型において保存されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗原ペプチド。
【請求項5】
A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の前記上方領域を含む上方部分、及び/又はA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の前記下方領域を含む下方部分のアミノ酸配列を少なくとも含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗原ペプチド。
【請求項6】
前記上方部分がA型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基167〜187(配列番号4)に対応し、前記下方部分がA型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基225〜241(配列番号5)に対応する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗原ペプチド。
【請求項7】
前記A型インフルエンザウイルスがH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15及び/又はH16亜型を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗原ペプチド。
【請求項8】
前記A型インフルエンザウイルスがH1N1、H1N1−pdm、H3N2及び/又はH5N1亜型を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗原ペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗原ペプチドをコードする遺伝子のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗原ペプチドを少なくとも1つ含む、A型インフルエンザウイルスに対するワクチン。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗原ペプチドを少なくとも1つ含む、インフルエンザ試験用の試薬。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗原ペプチドを少なくとも1つ含む、インフルエンザ試験用の試薬キット。
【請求項13】
A型インフルエンザウイルス亜型のヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の上方領域及び/又は下方領域のアミノ酸配列を認識する抗体を選択する方法。
【請求項14】
前記上方領域がA型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基173〜181(配列番号2)に対応し、前記下方領域がA型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基227〜239(配列番号3)に対応する、請求項13に記載の抗体を選択する方法。
【請求項15】
前記上方領域のアミノ酸配列が配列番号34(EKEVLVLWG)、配列番号2(KFDKLYIWG)、配列番号71(QEDLLVLWG)、並びに配列番号34、配列番号2又は配列番号71の1つ又は2つのアミノ酸残基の置換、挿入、付加及び/又は欠失により修飾されたアミノ酸配列からなる群から選択され、前記下方領域のアミノ酸配列が配列番号51(EGRINYYWTLLEP)、配列番号3(PSRISIYWTIVKP)、配列番号82(SGRMEFFWTILKP)、並びに配列番号51、配列番号3又は配列番号82の1つ又は2つのアミノ酸残基の置換、挿入、付加及び/又は欠失により修飾されたアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項13又は14に記載の抗体を選択する方法。
【請求項16】
前記上方領域及び/又は前記下方領域のアミノ酸配列がヒト、ブタ、又はトリ宿主に由来する全てのA型インフルエンザウイルス亜型において保存されている、請求項13〜15のいずれか一項に記載の抗体を選択する方法。
【請求項17】
前記抗体がA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の前記上方領域を含む上方部分、及び/又はA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の前記下方領域を含む下方部分のアミノ酸配列を認識する、請求項13〜16のいずれか一項に記載の抗体を選択する方法。
【請求項18】
前記上方部分がA型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基167〜187(配列番号4)に対応し、前記下方部分がA型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニンHA1領域内のアミノ酸残基225〜241(配列番号5)に対応する、請求項17に記載の抗体を選択する方法。
【請求項19】
前記A型インフルエンザウイルスがH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15又はH16亜型を含む、請求項13〜18のいずれか一項に記載の抗体(単数又は複数)を選択する方法。
【請求項20】
前記A型インフルエンザウイルスがH1N1、H1N1 pdm、H3N2又はH5N1亜型を含む、請求項13〜19のいずれか一項に記載の抗体(単数又は複数)を選択する方法。
【請求項21】
抗体を抗原ペプチドと共にインキュベートし、該抗体と該抗原ペプチドとの間の結合を検出することを含み、該抗原ペプチドがA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の前記上方領域及び/又は前記下方領域のアミノ酸配列を含む、請求項13〜20のいずれか一項に記載の抗体(単数又は複数)を選択する方法。
【請求項22】
抗体を抗原ペプチドと共にインキュベートし、該抗体と該抗原ペプチドとの間の結合を検出することを含み、該抗原ペプチドがA型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンHA1領域内のβシート構造の前記上方部分及び/又は前記下方部分のアミノ酸配列を含む、請求項13〜21のいずれか一項に記載の抗体を選択する方法。
【請求項23】
前記選択される抗体が前記抗原ペプチドの中和を示す、請求項13〜22のいずれか一項に記載の抗体を選択する方法。
【請求項24】
前記選択される抗体が血球凝集の阻害活性(HI)を示す、請求項13〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドを使用して抗体を作製する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−530486(P2012−530486A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553023(P2011−553023)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/JP2010/003999
【国際公開番号】WO2010/146848
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000173692)一般財団法人阪大微生物病研究会 (23)
【出願人】(504194719)株式会社ベネシス (8)
【出願人】(390004097)株式会社医学生物学研究所 (41)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】