インフルエンザウイルスワクチン
本発明は、インフルエンザウイルスの感染により起こる疾患に対するワクチン及びワクチン接種方法を提供する。本ワクチンは、キャリアタンパク質と連結させた、インフルエンザウイルスのM2及び/又はHAタンパク質由来のペプチドを含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルスが関与する疾患の予防及び処置のためのワクチン、ワクチン接種及び治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
外被のある分節型マイナス鎖RNAウイルスであるインフルエンザウイルスには、2種類の主要なタイプ、A型インフルエンザとB型インフルエンザがある。このウイルスは、ヒトにおけるインフルエンザを引き起こす原因となる感染物質である。A型インフルエンザウイルスは、2つのウイルス性膜貫通タンパク質、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)の抗原の相違に基づき、さらにサブタイプに分けられる。現在まで、ヒトにおいてA型インフルエンザの3種類のサブタイプ、H1N1、H2N2、H3N2が同定されている(Hilleman,Vaccine 20,3068−3087,2002)。ほぼヒトでのみ広がっているB型インフルエンザウイルスの特徴は、抗原変化の割合がより低いことである。最近単離されたB型インフルエンザウイルスは、インフルエンザB/Victoria/2/87サブクラスとインフルエンザB/Yamagata/16/88サブクラスの2種類の主要な系統に分類される。これら2つの系列は、抗原的及び遺伝学的に異なり、フェレットにおいて、感染後の交差中和抗体反応がほとんど見られない(Rotaら、J Gen Virol 73(Pt 10),2737−42(1992))。
【0003】
インフルエンザウイルスゲノムは分節型であるため、超感染性細胞においてウイルスが複製する間に分節の再集合が起こる。遺伝子の突然変異及び遺伝的浮動と組み合わさって、分節の再集合により、やがて各血清型群の中でインフルエンザの無数の分岐種が生じる。新種では、そのヘマグルチニン及び/又はノイラミニダーゼタンパク質において抗原変化が起こっている。
【0004】
現在の主なインフルエンザ予防法は、ワクチン接種を毎年行うことである。通常、ウイルス全体に対するワクチンが使用される。このワクチンには、A型インフルエンザ H1N1株、A型インフルエンザ H3N2株及びB型インフルエンザ株が含有されなければならない。しかし、インフルエンザ膜貫通タンパク質が常に抗原性を変化させるため、これらのタンパク質に対する単一のワクチンを毎年使用することは適切ではない。従って、インフルエンザウイルスの全体的集団の無数の株の特徴を調べ、追跡し、予想する。ある年のウイルスの個々の株の流行及び予想に基づいて、有力かつ予想されるウイルス株に対する防御的免疫反応を刺激するようにワクチンが設計される。
【0005】
単回のワクチン接種で何年にもわたる、又は一生の防御効果を付与するワクチンを使用することに比べ、毎年ワクチン接種を行うことは患者及び医師にとって不便であり、患者間で一貫性がなく、ある血清型群の中の他のインフルエンザウイルス株に対する交差防御が得られず、その結果、生物はインフルエンザに感染してしまうこととなる。従って、単回接種で行うことができるインフルエンザに対するワクチンにより、変化の大きなウイルス集団における新株に対する交差防御が可能となり、ワクチン接種を受けた人に何年にもわたり、又は生涯を通して、そのような防御効果を付与できる可能性があるが、これは非常に有用と考えられる。
【0006】
あるインフルエンザ型の全株に共通する安定したインフルエンザ抗原を基にしたワクチンにより、そのような利益が得られる可能性がある。最近、A型インフルエンザのM2タンパク質が、そのようなワクチンの基盤を形成し得る抗原タンパク質として研究されている(Slepushkinら、1995,Vaccine 13:1399−1402)。M2タンパク質は、構造的に保存されたウイルス表面タンパク質である。M2は、インフルエンザビリオンの中で比較的少ない成分である(Zebedee及びLamb,1988 J.Virol.62:2762−2772)が、ウイルス感染中に感染細胞において多量に発現される(Lambら、1985 Cell 40:627−633)。感染細胞において、M2は細胞膜に現れ、ウイルス複製のためのプロトンフラックスを作る(Helenius,1992 Cell 69:577−578)。
【0007】
A型インフルエンザの複製は、感染のインビボ及びインビトロモデルの両方でM2に対する抗体により阻害されると述べられている(Zebedee及びLamb,1998 J.Virol.62:2762−2772;Hugheyら、1995 Virology 212:411−421)。Slepushkinら(1995 Vaccine 13:1399−1402)は、全長M2をワクチン接種したマウスにおいて、異種のA型インフルエンザによる致死性の感染が防御され、感染した肺組織からのウイルス除去が促進されたことを示す実験について述べている。
【0008】
最近、疎水性膜貫通ドメインが除去された改変型M2タンパク質がワクチン調製に有用であることが報告された(米国特許第6,169,175号)。別の方向から、Neirynckら(1999 Nature Med.5:1157−1163)が、M2の細胞外ドメインをB型肝炎コア抗原のN末端に融合させたものを用いることについて述べている。肝炎コア抗原をウイルス様粒子に組み込んだ場合、M2エピトープは、B型肝炎コア抗原の露出されたN末端の一部として存在すると考えられた。この著者らは、これらの系において、ウイルス粒子及び感染細胞でのM2タンパク質の野生型の構造を模倣する形で、B型肝炎コア抗原に対するN末端融合物がM2エピトープを提示することについて述べている。
【0009】
しかし、このアプローチは、M2に相当するワクチン標的が欠けているのでB型ウイルスまで拡大することができない。B型インフルエンザウイルスにおけるM2に相当する機能を有するものとして最も有望な候補タンパク質、BM2は、5アミノ酸から7アミノ酸のみという非常に短い細胞外ドメインを有する(Mouldら、Developmental Cell 5,175−184,2003)。他の候補タンパク質、NBは、最近、インビトロにおいてウイルス複製に不要ではないことが示された(Hattaら、J.Virol.77,6050−6054,2003)。
【0010】
普遍的なB型インフルエンザワクチンを開発するための別のアプローチは、HA0と呼ばれるHA前駆体の成熟のための切断部位を利用するものである。HAの保存的エピトープ及び特にHA0の保存的エピトープを標的とするワクチンは、A型インフルエンザ及びB型インフルエンザの両方に適応可能であると考えられる。
【0011】
外被糖タンパク質HAは、ウイルスの初期接着及びそれに続く内在化の両方を仲介する(Skehelら、Annual Review of Biochemistry 69,531−69,2000)。HAは、2つのサブユニット、HA1及びHA2から構成されるが、これらはその前駆体HA0から切り出されたものである(Skehelら、Proc Natl Acad Sci USA 72,93−7 1975;Chenら、Cell 95,409−17,1998)。HA0の成熟は、細胞内プロセスであり、ウイルスが複製している細胞により分泌されるプロテアーゼが介在する(Zhirnov,Biochemistry(Mosc)68,1020−6(2003))。プラスミン、カリクレイン、ウロキナーゼ、トロンビン、血液凝固因子Xa、アクロシン、トリプターゼ クララ、トリプターゼTC30、ミニプラスミン、ヒト呼吸器洗浄液由来のプロテアーゼ及びスタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)及びシュードモナスエルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌)由来の細菌性プロテアーゼを含む、多くの分泌酵素がHA0切断に関与している。HA0がHA1−HA2となるように切断されることより、ウイルス感染が活性化されるが(Klenkら、Virology 68,426−39,1975;Lazarowiz&Choppin,Virology 68,440−54(1075))、これはヒト及び鳥類ホストにおける病原性に極めて重要である(Klenk & Garten,Trends Microbiol 2,39−43 1994;Steinhauer,Virology 258,1−20,1999)。
【0012】
ホストプロテアーゼに対する感受性を決定するHAの主な特徴は、HA0前駆体のタンパク質分解部位の構成であるが、X線結晶解析により、A型インフルエンザに対するその構造が最近解明された(Chenら、Cell 95,409−17,1998)。HA0は、プロセシングを受けた成熟HA1−HA2タンパク質とほぼ同じであり、主として切断部位周辺の18残基が異なっている。前駆体において、これらの残基は、広がった非切断ループとして折りたたまれている。サブユニット間の切断部位のアミノ酸配列は、各インフルエンザサブタイプ内、およびB型インフルエンザの2つの株内で非常によく保存されている。融合ペプチドに対応するHA2側も、A型インフルエンザサブユニットにおいてよく保存されており、H3及びH1、ならびにB型インフルエンザについてもほぼ同じである。
【0013】
本願を通して、HA0ペプチドという用語は、HA0の一次配列由来のあらゆるペプチドを表すために使用される。これにはHA0に特有の切断部位配列が含まれるが、それだけでなく、HA0前駆体及び成熟HAが共有するいかなる配列も含まれる。同様に、成熟HAは、2つの共有結合サブユニット、HA1及びHA2から構成される。このような理由から、切断部位配列と異なるHA0ペプチドは、あるいは、HAペプチド又はHA2ペプチドを意味する。これらの用語はそれぞれ、本明細書中でHA0ペプチドを意味するクラス内のペプチドのタイプを意味する。
【0014】
このアプローチの実現可能性は、まず、Nagyら(HA0(サブタイプH1)の配列317−341に相当する合成ペプチドを用いてワクチン接種したマウスにおいて、致死性のウイルス感染がある程度防御された(Nagyら、Scand J Immunol 40,281−91,1994)ことを示した。)により調べられた。ウイルス複製におけるプロテアーゼ阻害剤の効果から、HA0のHA1−HA2への転換がワクチン標的として有効であることがさらに確認された。単一タイプの切断部位を有するインフルエンザウイルスにおいて、セリンプロテアーゼ阻害剤は、HA0切断を抑え、培養細胞、ヒト気道上皮及び感染マウスの肺におけるウイルス活性化を低下させることができる(Zhirnovら、J Gen Virol 63,469−74,1982;Zhirnovら、J Gen Virol 65,191−6,1984;Zhirnovら、J Virol 76,8682−9,2002)。
【発明の開示】
【0015】
本発明の要約
本発明のある局面は、複数のペプチドが、それぞれA型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結している(conjugated)、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のその塩である。
【0016】
本発明の別の局面は、複数のペプチドが、それぞれA型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結している、タンパク質−ペプチド連結物(conjugate)又は医薬適合性のその塩である。
【0017】
本発明の別の局面は、複数のペプチドが、それぞれB型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結している、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のその塩である。
【0018】
特定の実施形態において、前記ペプチドは、前記タンパク質表面の反応部位に対する共有結合ペプチドにより前記タンパク質に連結する。得られる構造は連結物である。前記タンパク質表面における反応部位は、化学的に活性があるか、又は活性化され得、ペプチドとの共有結合のために立体的に見て利用できる部位である。好ましい反応部位は、アミノ酸リジンのイプシロン窒素である。共有結合されるとは、生理的条件下での加水分解に対して安定である共有結合の存在を意味する。好ましくは、共有結合は、付加体形成、酸化及び還元を含む、生理的条件下で起こり得る他の反応に対して安定である。ペプチドのタンパク質への共有結合は、「結合生成手段」により遂行される。そのような方法は、本明細書中に記載されている対応する構造、物質又は作用及びそれらの同等物の範囲にわたる。
【0019】
本発明のこの局面の特定の実施形態において、キャリアタンパク質は、ワクチン接種の分野で有用な抗原性タンパク質である。本発明のある特定の実施形態において、本抗原性タンパク質は、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis、髄膜炎菌)の外膜タンパク質複合体(OMPC)である。他の実施形態において、キャリアタンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗原(HBcAg)、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク又はウシもしくはヒトパピローマウイルスのウイルス様粒子(VLP)、例えば、タイプ6、11又は16の HPVのVLP、のL1タンパク質、である。
【0020】
本発明のこの局面のさらなる実施形態において、本ペプチドは、N末端又はC末端を介してキャリアタンパク質に連結する。
【0021】
さらなる実施形態において、本ペプチドは、リンカー部分を介してキャリアタンパク質に連結する。特定の実施形態において、このリンカーは、モノジェネリック(Monogeneric)又はバイジェネリックスペーサー(bigeneric spacer)である。
【0022】
さらなる実施形態において、本キャリアタンパク質は、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis、髄膜炎菌)の外膜タンパク質複合体(OMPC)であり、その連結物は、各OMPCの表面に連結した約100ペプチドから約6000ペプチドを有する。
【0023】
さらなる実施形態において、本ペプチドの配列における天然に生じるアミノ酸を、他のアミノ酸で置換する。ある特定の実施形態において、システイン残基をセリン残基で置換する。
【0024】
さらなる実施形態において、本ペプチドの配列を改変して、本ペプチドの等電点を変更する。
【0025】
本発明の別の局面は、連結物、アジュバント及び生理学的に許容可能な担体を有するワクチンである。特定の実施形態において、前記アジュバントは、アルミニウムを基にしたアジュバントである。特定の実施形態において、本ワクチンにはさらに、陽イオン性アジュバント、例えばQS21アジュバントが含まれる。
【0026】
本発明の別の局面は、M2連結物及びB型インフルエンザ由来のHA0ペプチド連結物、アジュバント及び生理学的に許容可能な担体を有するワクチンである。
【0027】
本発明の別の局面は、M2連結物及びA型インフルエンザ由来のHA0ペプチド連結物、B型インフルエンザ由来のHA0ペプチド連結物、アジュバント及び生理学的に許容可能な担体を有するワクチンである。
【0028】
本発明の別の局面は、多数のペプチドそれぞれが、A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結する、ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩を含有するワクチンを用いた、A型インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対する、患者のワクチン接種方法である。好ましい実施形態において、本発明のワクチンを有効量患者に投与する。
【0029】
本発明の別の局面は、多数のペプチドそれぞれがA型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結する、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のそれらの塩を含有するワクチンを用いた、A型インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対する、患者へのワクチン接種方法である。好ましい実施形態において、本発明のワクチンを有効量患者に投与する。
【0030】
本発明の別の局面は、多数のペプチドそれぞれが、A型又はB型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結する、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のその塩を含有するワクチンを用いた、A型又はB型インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対する、患者へのワクチン接種方法である。好ましい実施形態において、本発明のワクチンを有効量患者に投与する。
【0031】
本発明の別の局面は、インフルエンザのM2タンパク質の細胞外エピトープの配列を有するペプチドをタンパク質表面の反応部位に共有結合させることにより、ペプチド−タンパク質連結物を作成する方法である。
【0032】
本発明の別の局面は、本発明の連結物を補い、補助された本連結物を医薬適合性の担体を用いて処方することによりワクチンを作成する方法である。
【0033】
本発明の別の局面は、抗原性成分の1つが、キャリアタンパク質表面のアミノ酸に連結するA型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを有するペプチドを含有する、併用ワクチンである。特定の実施形態において、この併用ワクチンは、ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、A、B又はC型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、ロタウイルス、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumonia、肺炎球菌)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)から選択される抗原性成分を含有する。さらに、本発明ワクチンを、特に、ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ由来のエピトープを含む、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの他の抗原性成分と組み合わせることができる。
【0034】
本発明の詳細な説明
本発明は、A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを含有する複数のペプチドがキャリアタンパク質表面のアミノ酸に連結している、インフルエンザワクチンを提供する。連結物の調製及びワクチンの処方方法を本明細書中で提供する。本発明はまた、疾患に対する長期間にわたる防御効果を患者に対して付与し、A型インフルエンザウイルスの感染により起こった症状を軽減する、患者へのワクチン接種方法も提供する。
【0035】
ペプチド
A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質細胞外部分は通常、そのタンパク質の24個のN末端アミノ酸として認識される。ワクチンにおいて用いるペプチドは、この24アミノ酸配列中から選択されるアミノ酸配列を有する。そのペプチドの特定の配列は、その24個全てのアミノ酸配列又は少なくとも7アミノ酸を有し、抗原エピトープを含むその一部であり得る。
【0036】
注目すべきは、インフルエンザM2タンパク質の最初のアミノ酸がメチオニンであるという点である。本発明のあらゆる実施形態において、終末メチオニンの存在は任意である。
【0037】
24個のN末端アミノ酸の有効なサブ配列は、例えば、次の過程を介して決定し得る。最初に、産生される抗体が前記24個のアミノ酸配列に対して結合するかどうかを決めるために、サブ配列を有するペプチドを調べる。次に、そのペプチドをキャリアタンパク質に連結させ、得られた連結物を使用して、マウス、フェレット又はサル等の動物にワクチン接種する。動物から採取した血清にそのペプチドに対する抗体があるかどうかを調べる。最後に、その動物に対してインフルエンザウイルス感染処理を行う。感染の経過及びその結果起こった疾患の重症度を評価する。この過程は、多数の動物で行うことが望ましく、全ての動物にわたり結果を評価する。この連結物によるワクチン接種により感染レベルが低下したか、又はこの結果起こる疾患の重症度が低下した場合は、そのペプチドをワクチン調製において有用であるとみなす。
【0038】
好ましい実施形態において、本ペプチドのアミノ酸配列には、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14個等のM2タンパク質N末端アミノ酸が含まれる。最小サイズは、患者の免疫系に提示したいエピトープの大きさによってのみ限定される。ある好ましいアミノ酸配列は、配列番号1、10及び39である。
【0039】
【表1】
【0040】
本ペプチドのアミノ酸配列に、M2タンパク質の位置17又は位置19のシステインが含まれる実施形態において、好ましくは、このシステインをセリンに置換し得る。使用する連結技術に依存して、システインの反応性により、このペプチドの付加末端システインではなく、内部のシステインにおいて、このペプチドの多量体形成、ペプチドとペプチドとの連結又はキャリアタンパク質へのペプチドの連結が起こる可能性があるため、システインをセリンに置換することは有用である。これらの副反応の結果、この連結物に対するペプチド負荷率が低くなる。しかし、注目すべきことは、このペプチドの内部システインにおけるキャリアタンパク質へのこのペプチドの連結により、効果のないワクチンが生じないであろうという点であり、これは本発明の範囲内である。
【0041】
HA0の一定のセグメント、特に、サブユニット間切断部位領域及びHA2サブユニットにあるセグメントは非常によく保存されている。インビボの免疫原性及び広範囲に及ぶ一連の重複HA0ペプチドを用いた防御に関する研究に基づいて、防御的エピトープを含有するいくつかのHA0領域を同定した。ある領域はHA0の切断部位を包含し、他のものはHA2サブユニットに位置する(下表参照)。
【0042】
さらに、HAペプチドを用いて調製した連結物及びM2ペプチドを用いて調製した連結物の併用により、それぞれの連結物を単独で投与した場合と比較して、A型インフルエンザにより起こる疾患に対して、より優れた防御効果が得られる。従って、本発明のある好ましい実施形態は、他の保存的で防御効果のあるインフルエンザウイルスペプチドから構成される連結物と組み合わせた、M2ペプチド連結物を含有するワクチンである。本発明の方法の好ましい実施形態は、患者にそのようなワクチンを投与し、その患者が、M2ペプチド連結物のみを含有するワクチンの投与において見られる免疫反応よりも優れたA型インフルエンザに対する免疫反応を得ることである。
【0043】
HAペプチドを以下から選択することができる。
【0044】
【表2】
BrAc=ブロモアセチル
Ac=アセチル
Mal=マレイミジル
Suc=スクシニル
Ahx=6−アミノへキサン酸
b=βアラニン
Abu=2−アミノ酪酸
【0045】
さらに、B型インフルエンザHA0切断部位ペプチドを用いて調製した連結物とA型インフルエンザM2ペプチドを用いて調製した連結物との併用により、A型インフルエンザ及びB型インフルエンザ両方により起こる疾患に対する防御能を付与することができた。従って、本発明のある好ましい実施形態は、他の保存的で防御効果のあるB型インフルエンザ由来のペプチドから構成される連結物と組み合わせた、M2ペプチド連結物を含有するワクチンである。本発明のさらに好ましい実施形態は、他の保存的で防御効果のあるA型インフルエンザ由来ペプチドから構成される連結物及び他の保存的で防御効果のあるB型インフルエンザ由来ペプチドから構成される連結物と組み合わせた、M2ペプチド連結物を含有するワクチンである。本発明の方法の好ましい実施形態は、患者にそのようなワクチンを投与して、その患者が、M2ペプチド連結物のみを含有するワクチンの投与において見られる免疫反応よりも優れた、A型インフルエンザに対する免疫反応を得ることである。
【0046】
M2又はHA0ペプチド抗原もまた、リジン又は他の適切な骨格における、多抗原ペプチド(MAPs)により提示することができる。本発明の連結ワクチンにおいて、そのような方法で並べられたペプチドを使用することができる。その例を図15から18及び20から21に示す。本発明の連結ワクチンにおける、ペプチドの別の代替的提示方法は、二量体のM2又はHA0ペプチドである。この方式において、結合、好ましくは共有結合を介して、2つのペプチドを架橋し、二量体を形成させる。M2ペプチドに対する例は、図19で見ることができる。この方式で本ペプチドが並んでいる連結ワクチンは、対応する単量体ペプチド連結物を用いて調製したワクチンよりも抗原性が強いであろう。
【0047】
本分野において公知の技術を用いてペプチドを生産し得る。そのような技術には、化学的及び生化学的合成が含まれる。ペプチドの化学合成に対する技術の例は、Vincent,Peptide and Protein Drug Delivery,New York,N.Y.,Dekker,1990に記載されている。細胞への核酸導入及び核酸発現を用いた生化学的合成技術の例は、Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley,1987−1998、及びSambrookら、Molecular Cloning,A laboratory Manual,第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載されている。
【0048】
キャリアタンパク質
本明細書中で使用する場合、キャリアタンパク質は、本ペプチドが連結する免疫原性タンパク質を意味する。本分野で様々なキャリアタンパク質が知られており、多糖類−タンパク質連結ワクチンにおいて使用されている。本発明のワクチンにおいて、これら及び他の免疫原性タンパク質も使用することができる。好ましいキャリアタンパク質は、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis、髄膜炎菌)の外膜タンパク質複合体(OMPC)、破傷風トキソイド、表面抗原タンパク質(HBsAg)及びコア抗原タンパク質(HB Core)を含むB型肝炎ウイルスタンパク質、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLP、例えばタイプ6、11又は16等のHPVのVLP、のL1タンパク質である。
【0049】
製造を容易にするため、連結物の製造に1種類のキャリアタンパク質を使用し得る。しかし、それぞれにおいて、様々なキャリアタンパク質を用いて、複数の連結物を調製することもできる。次に、ワクチンを処方する際、連結物を混合することができる。この方式において、インフルエンザに対する免疫反応を生じさせることに加えて、この連結物において使用する様々なキャリアタンパク質に対する免疫反応も生じさせるワクチンを提供することができる。必要に応じて、様々なペプチド及びキャリアタンパク質を組み合わせた連結物のさらなる置換も可能である。
【0050】
好ましいキャリアタンパク質はOMPCである。OMPCには、連結に利用できる多数の反応部位が含まれる。連結に対する反応部位の利用可能性は、OMPCにおいて存在する原子の配置及びその基の位置により決定される。連結に利用できる求核性官能基は、本分野で公知の技術を用いて決定され得る。(Eminiら、米国特許第5,606,030号を参照。)。連結のための反応部位として使用できる基のうちあるタイプは、リジンのイプシロンアミノ基及びタンパク質のN末端アミノ酸のアルファアミノ基等の、アミノ酸に存在する一級アミノ基である。さらに、OMPCのチオール化型を得るためのこれらのアミノ基の変換により、チオール反応性ペプチドに対して連結に使用し得る反応性のある官能基が得られる。チオール反応性ペプチドの例は、図13で説明するような、ブロモアセチル化又はマレイミド誘導体化ペプチドである。Fu,米国特許第5,494,808号により記載されているような本分野で公知の技術を用いて、OMPCを得ることができる。
【0051】
キャリアタンパク質の別の好ましいカテゴリーは、ウイルス様粒子(VLPs)へと自己集合することができるウイルスキャプシドタンパク質に代表される。ペプチドキャリアとして使用されるVLPsの例は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)及びコア抗原(HBcAg)(Pumpensら、「Evaluation of HBs,HBc,and frCP virus−like particles for expression of human papillomavirus 16 E7 oncoprotein epitopes(ヒトパピローマウイルス16E7癌タンパク質エピトープ発現のためのHBs、HBc及びfrCPウイルス様粒子の評価)」,Intervirology,Vol.45,pp.24−32,2002)、E型肝炎ウイルス粒子(Niikuraら、「Chimeric recombinant hepatitis E virus−like particles as an oral vaccine vehicle presenting foreign epitopes(外来エピトープを提示する、経口ワクチンビヒクルとしてのキメラ組み換えE型肝炎ウイルス様粒子)」、Virology,Vol.293,pp.273−280,2002)、ポリオーマウイルス(Gedvilaiteら、「Formation of Immunogenic Virus−like particles by inserting epitopes into surface−exposed regions of hamster polyomavirus major capsid protein(ハムスターポリオーマウイルス主要キャプシドタンパク質の表面露出領域へのエピトープの挿入による免疫原性ウイルス様粒子の形成)」、Virology,Vol.273,pp.21−35,2000)、及びウシパピローマウイルス(Chackerianら、「Conjugation of self−antigen to papillomavirus−like particles allows for efficient induction of protective autoantibodies(パピローマウイルス様粒子への自己抗原の連結により、防御性のある自己抗体が効果的に誘導される。)」、J.Clin.Invest.,Vol.108(3),pp.415−423,2001)である。最近、本物のウイルス粒子の分子量及びサイズを模倣するような、抗原提示人工VLPsが構築された(Karpenkoら、「Construction of artificial virus−like particles exposing HIV epitopes and the study of their immunogenic properties(HIVエピトープを露出する人工ウイルス様粒子の構築及びその免疫原性特性の研究)」、Vaccine,pp.386−392,2003)。
【0052】
ペプチド抗原キャリアとしてパピローマウイルスVLPsを使用することにより、免疫系から最適の反応を確実に得られると考えられる規則正しい配列で抗原性配列を提示できるようになるという利益が得られ得る。ある報告において、20面体のビリオンを模倣したマトリックスにおいて抗原性配列を露出したところ、自己と外来物とを区別するという液性免疫系の能力がなくなるということが分かった(Chackerianら、「Induction of autoantibodies to mouse CCR5 with recombinant papillomavirus particles(組み換えパピローマウイルス粒子によるマウスCCR5に対する自己抗体の誘導)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.96,pp.2373−2378,1999)。マウス自己ペプチドTNF−αをパピローマウイルス VLPsと連結させることにより、タイターの高い、長期間持続する自己抗体がマウスにおいて誘導される。最小抗原キャリアとしてVLPsを用いる場合、VLPキャリアへ前もって曝露することで誘導される抗キャリア抗体の存在によって起こる発現した連結ワクチンへの免疫原性低下をいかに回避するか、ということが課題の1つとして挙げられる。
【0053】
ヒトパピローマウイルス(HPV)VLPsは、サイズが約60nmの典型的な20面体の格子構造を持ち、それぞれが、72個の L1タンパク質5量体(カプソマーと呼ばれる。)のアセンブリーにより形成される(Chenら、2000;Modisら、「Atomic model of the papilloma virus capsid(パピローマウイルスキャプシドの原子モデル)」,EMBO J.,Vol.21,pp.4754−4762,2002)。ウシパピローマウイルス VLPsは、L1タンパク質(Chackerianら、1999)又はVLPsのL2(Greenstoneら、「Chimeric papillomavirus virus−like particle elicit antitumor immunity against the E7 oncoprotein in an HPV 16 tumor model(キメラパピローマウイルス ウイルス様粒子が、HPV 16 腫瘍モデルにおいて、E7癌タンパク質に対する抗腫瘍免疫を誘導する。)」、Proc Natl.Acad.Sci USA、Vol.95,pp.1800−1805,1998)タンパク質への遺伝子融合により挿入されているか、又は後にビオチン化VLPsに結合させるストレプトアビジンと融合されている(Chackerianら、2001)かいずれかの抗原配列を運ぶためにうまく使用されている。
【0054】
上記で引用した参考文献及び次の代表的な特許及び特許明細書、米国特許第6,159,729号、第5,840,306号、第5,820,870号及び国際特許WO第01/14416号により示されるように、本分野において、ヒト及びウシパピローマウイルスVLPsの調製は公知である。
【0055】
下記の実施例において、インフルエンザのペプチド断片をヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス様粒子(VLP)に化学的に連結させることにより得られる代表的な連結ワクチンの調製及び免疫原性を説明する。その結果として生じる連結分子は、VLP1個あたり抗原ペプチド 約800コピーから4,000コピーを含有し、そのペプチドのC末端システイン残基及びマレイミド活性化HPV VLPsを反応させることにより得られる。これらの連結物の平均粒子サイズは、VLPキャリア単独の場合よりもわずかに大きく、化学的及び温度誘発性の変性に対して概して安定性が優れている。M2−HPV VLP連結物は、ある抗HPV立体配置抗体に対する結合親和性を失っていたが、抗M2抗体により完全に認識された。インフルエンザM2ペプチド−HPV VLP連結ワクチンを、アルミニウムアジュバントとともに処方した。30ngペプチドを2回投与すると、非常に高い免疫原性を示し、マウスにおける致死性のインフルエンザウイルス感染処理に対する優れた防御効果が付与された。これらの結果から、連結ワクチンにおけるインフルエンザペプチド用のキャリアとして、HPV VLPを使用し得ることが示される。
【0056】
化学的カップリングインフルエンザペプチド連結ワクチンを開発するために抗原キャリアとしてヒトパピローマウイルス VLP系を使用することにより、一定の利益が得られる。化学的カップリングにより、VLPsの正しいアセンブリーを妨害する可能性のあるL1配列へのペプチド挿入において起こり得る問題が避けられ、また、化学的カップリングはビオチン化及び結合法よりもかなり容易である。さらに、この結果から、以前に報告された方法と比較して、化学的カップリングにより、VLPあたりのペプチド負荷が非常に高くなることが分かる。さらに、以下の実施例において、ペプチド連結プロセスにより、HPV VLPsの形態における顕著な変化が誘導されなかった。従って、本発明の範囲内でワクチンを構築するために、HPV VLPs及び類似のウシパピローマウイルスVLPsを含むVLPsを使用することができる。
【0057】
連結
本分野のあらゆる連結方法を用いて、本発明のペプチド及びキャリアを連結させ得る。例えば、スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)、N−[ε−マレイミドカプロイロキシ]スルホスクシニミドエステル(sEMCS)、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(MBS)、グルタールアルデヒド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、ビス−ジアゾベンジジン(BDB)又はN−アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT)を用いて連結を遂行し得る。
【0058】
キャリアマレイミド活性化法において、スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)又はN−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(MBS)を用いて連結を遂行し得る。sSMCCを用いた方法は広く用いられ、特異性が高い(例えば、Meyerら、2002、J.of Virol.76,2150−2158を参照のこと。)。sSMCCは、システイン残基のSH基をキャリアタンパク質のリジン残基のアミノ基に架橋する。
【0059】
sSMCCを用いた連結反応において、キャリアは、sSMCC試薬をキャリアのアミン(例えばリジン)残基に結合させることにより、まず活性化される。活性化キャリアを過剰な試薬及び副産物から分離した後、システイン含有ペプチドを付加し、活性化キャリアのマレイミド官能基にSH基を付加することにより結合を生じさせる。MBSを用いた方法により、同様の機構を介してペプチドとキャリアとを連結させる。
【0060】
sSMCCを用いた連結は、SH基に対して高い特異性があり得る。従って、本ペプチド中のシステイン残基は、連結を容易に行うために必須である。ペプチドにシステイン残基がない場合、そのペプチドの好ましくはN末端又はC末端にシステイン残基を付加すべきである。そのペプチド中の望ましいエピトープにシステインが含まれる場合、sSMCC活性化キャリアを使用しない方法で連結を遂行すべきである。そのペプチドが複数のシステイン残基を含有する場合、過剰なシステイン残基を置換又は修飾することが可能でない限り、ペプチドをsSMCCを用いてキャリアと連結させるべきではない。
【0061】
結合は、そのペプチド中の望ましいエピトープを妨害するようなものであるべきではない。そのシステインは、好ましくは、望ましいエピトープ配列と、スペーサーとして少なくとも1アミノ酸は離れている。
【0062】
本発明において有用な他の連結は、N−アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT)を用いて行う。例えば、マレイミド化又はブロモアセチル化ペプチドと連結させるために、OMPCにチオール官能基を導入するためにチオラクトンを使用し得る(Tolmanら、Int.J.Peptide Protein Res.41,1993,455−466;Conleyら、Vaccine 1994,12,445−451)。
【0063】
本発明の特定の実施形態において、本ペプチドをキャリアタンパク質にカップリングさせるための連結反応には、ある反応物質における本質的な求核基の導入及び/又は使用、及びもう一方の反応物質における本質的な求電子基の導入及び/又は使用が含まれる。好ましい活性化スキーム(I)(図1)は、求核チオール基をキャリアタンパク質(好ましくはOMPC)に導入し、本ペプチドに求電子基(好ましくは、ハロゲン化アルキル又はマレイミド)を付加することと言えよう。得られる連結物は、本ペプチド及びキャリアに連結するチオールエーテル結合を持つことになる。本ペプチド求電子基(マレイミド又はハロゲン化アルキル)と、キャリアタンパク質の本質的な求核基(好ましくは、一級アミンまたはチオール)との直接反応により、二級アミン結合(スキーム(II)図2)又はチオールエーテル結合が導かれる。しかし、同じ反応条件下においてアミンに対するチオール求核試薬の反応性がより高いことが予想されるので、スキームIが好ましいであろう。代替スキームには、本キャリアへのマレイミド基の付加(III)図3又はハロゲン化アルキルの付加(IV)図4、本ペプチドへの末端システインの導入及び/又は本質的なペプチドチオールの使用が含まれるが、これもチオールエーテル結合を生じる。
【0064】
結合
イオウ含有アミノ酸は反応性のあるイオウ族を含有する。イオウ含有アミノ酸の例には、システイン及び非タンパク質アミノ酸(ホモシステイン等)が含まれる。さらに、反応性のあるイオウは、活性化及びキャリアとの反応前のジスルフィド型に存在し得る。マレイミド又はハロゲン化アルキル(スキームIII(図3)及びIV(図4))等の求電子基により活性化されたキャリアへのカップリング反応において、M2配列に存在するシステイン17及び19を使用し得る。反応性マレイミド及び活性化エステルを含有するヘテロ2官能価の架橋剤を用いたマレイミド基の導入がよく用いられる。多量体タンパク質に対する高レベルのマレイミド活性化を試みることにより、アミン基が架橋剤の両官能基と反応し得る架橋反応が起こり得る。その結果、利用可能なマレイミド基のレベルは低くなり、従って、ペプチド負荷が低くなる。多量体キャリアのサブユニットの架橋は、連結物の免疫原性及び/又は安定性にも影響を与え得る。複数のシステインを有するペプチドの場合、キャリアマレイミド又はハロゲン化アルキル基との複数の結合が1個のペプチドで起こり得る。これにより、ペプチドの負荷レベルがおそらく減少すると考えられる。この複数の結合が異なるキャリアタンパク質のマレイミドを介して生じる場合、そのペプチドを介するキャリアタンパク質サブユニットの架橋ができる可能性が生じ得る。N−アセチルシステインラクトンによるOMPC一級アミンのチオレーション反応により、チオール基が高レベルになり、その結果、適切な緩衝液反応条件下においてキャリアサブユニット架橋(ジスルフィド結合形成を介して)が最小限になる(Marburgら、1986 J.Am.Chem.Soc.108:5282−5287)。1つの末端求電子基(マレイミド又はハロゲン化アルキル)によるペプチドの活性化により、キャリア連結への高い方向性を持ったペプチドによる、高レベルのペプチド負荷が起こり得る。
【0065】
リンカー
ペプチドをキャリアに結合させる共有リンカーは生理的条件下で安定である。このようなリンカーの例は、非特異的架橋剤、モノジェネリックスペーサー(monogeneric spacer)及びバイジェネリックスペーサー(bigeneric spacer)である。非特異的架橋剤及びその使用は本分野で公知である。このような試薬及びそれらの使用の例には、グルタールアルデヒドとの反応;スクシニル化キャリアの混合を伴う、又は伴わない、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドとの反応;グリコシル化置換基の過ヨウ素酸塩酸化(その後、水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下でタンパク質キャリアの遊離アミノ基へのカップリングが行われる。);非アシル化末端セリン及びスレオニン残基の過ヨウ素酸塩酸化により、末端アルデヒドが生じ得、次にそのアルデヒドをアミン又はヒドラジドと反応させて、シアノ水素化ホウ素で2級アミンに還元することができるシッフ塩基又はヒドラゾンを生じさせる反応;芳香族アミノ基のジアゾ化を行い、その後そのタンパク質のチロシン側鎖残基でカップリングを行う反応;イソシアネートとの反応;又は混合無水物の反応が含まれる。全般的には、Briandら、1985 J.Imm.Meth.78:59を参照のこと。
【0066】
モノジェネリックスペーサー及びそれらの使用は、本分野で公知である。モノジェネリックスペーサーは2官能性であり、連結を行う前に反応ペアの一方のみの官能基化が必要である。モノジェネリックスペーサー及びその使用の例には、カルボジイミド存在下における、2官能性分子アジピン酸ジヒドラジドの片方の末端への免疫原性HCVペプチドのカップリングが含まれる。おそらく、ジアシル化ヒドラジンは、キャリアのペンダントグルタミン酸カルボキシ基又はアスパラギン酸カルボキシ基とともに形を成す。次に、カルボジイミド存在下で、キャリアタンパク質との第二のカップリング反応により連結が行われる。
【0067】
バイジェネリックスペーサー及びそれらの使用は、本分野で公知である。反応ペアの各パートナーが官能基化された後、バイジェネリックペーサーが形成される。官能基化された各パートナーがその対立するパートナーと反応して安定した共有結合(1個又は複数)を形成する際に連結が起こる(例えば、Marburgら、1986 J.Am.Chem.Soc.108:5282−5287;及びMarburgら、米国特許第4,695,624号参照。)。
【0068】
ペプチドカップリングの負荷
本発明の利点は、様々なモル比でペプチドをキャリアタンパク質に連結させることができるということである。望ましい特性を有する連結を得るために、トライアンドエラー方式で連結方法の局面を変化させることにより、キャリアタンパク質における、この「ペプチドカップリング負荷」を変化させることができる。例えば、キャリアタンパク質の全ての反応部位をペプチドと連結させるような、高いカップリング負荷が望ましい場合、キャリアタンパク質の反応部位を評価し、カップリング反応に対して過剰なモル数のペプチドを用いることができる。低密度でカップリングさせることが望ましい場合、キャリアタンパク質の反応部位1モルあたりの反応に加えるペプチドが1モル未満になるようなモル比にすることができる。
【0069】
選択する特定の条件は、最終的には、達成する回収率、連結物の生理学的特徴、得られる連結物の有効性、患者集団及び投与したい望ましい用量に基づく。ワクチンのタンパク質総量が重要な検討事項ではない場合、同じ有効用量を送達するために、様々なカップリング負荷及び様々な免疫原性の連結物の用量を処方することができる。しかし、タンパク質総量又は体積が重要である場合、例えば、連結物が、併用ワクチンにおいて使用することを意図するものである場合、最終併用ワクチンに対して連結物からもたらされるタンパク質の総体積に留意し得る。次に、様々なカップリング負荷を有するいくつかの連結物の免疫原性を評価し、その後、適切な免疫原性及びタンパク質の総量又は併用ワクチンに添加できる体積で連結物を使用するよう選択し得る。
【0070】
一般に、ペプチド負荷量を高くする際、障壁となるものが主に2つある。(i)得られる連結物の溶解度及び(ii)ペプチドの溶解度である。これらの特性は、独立したものではなく、後者を向上させる操作は、前者に対して不利益であり得る。従って、ペプチド負荷を高くすることは困難であることが多い。
【0071】
従って、米国特許出願第60/530,867号(2003年12月18日出願)に記載されているように、ペプチドの配列を改変するのが望ましいと思われる。この出願には、ペプチドの免疫原性を向上させる方法が記載されている。その方法は、ペプチドを改変することによりペプチドの等電点(pI)を調整すること及びペプチドをキャリアに連結させることを含む。本明細書中で使用する場合、「ペプチドのpIを調整する」ということは、ペプチド負荷及び連結物の溶解度の両方が向上するような範囲に、ペプチドのpIを変化させることを意味する。ペプチドのpIは、上記範囲に低くされることが多い。
【0072】
等電点電気泳動法(IEF)等の実験又は適切なソフトウェアを用いた計算のいずれかにより、ペプチドのpIを決定し得る。米国特許出願第60/530,867号に記載されているように、ペプチドのpIを、そのペプチド全体の電荷を変更する様々な方法で変更することができる。この改変は、結果としてそのペプチドの電荷が変化するような、ペプチドに対するいかなる変更でもあり得る。このような改変には、ペプチドにおけるアミノ酸残基の置換、付加又は欠失が含まれる。その改変には、ペプチドの残基又はN末端アミノ基もしくはC末端カルボキシル基の側鎖の改変も含まれ得る。そのような改変の方法は当業者の知識の範囲内である。
【0073】
免疫原性の点で活性のある配列、すなわち望ましいエピトープの外側でそのペプチドを改変すべきである。つまり、免疫原性特性を維持しなければならないということである。改変にペプチドの望ましいエピトープが含まれたり、そのエピトープが妨害されることがないようにすべきである。改変によりペプチド連結物の免疫原性特性に影響を与えてはならないので、ペプチドのN及び/又はC末端で改変を導入することが好ましい。
【0074】
カップリング負荷が最大であれば常に最大の免疫原性を有する連結物が得られる訳ではないことにも留意すべきである。いかなるキャリアタンパク質においても、ペプチドの長さ及びカップリング負荷により、連結物の全体的な免疫原性に影響が及ぼされ得る。従って、あらゆるキャリアタンパク質のあらゆる特定のペプチドの一連のカップリング負荷の免疫原性を評価すべきである。そのような情報から、患者において許容可能な免疫原性反応を刺激するために、適切な用量の連結物を付与するようにワクチンを製造及び処方することができる。
【0075】
処方
本分野で公知であり使用されている方法に従い、本発明ワクチンを処方することができる。例えば、Modern Vaccinology,Kurstak,Plenum編 Med.Co.1994;Remington’s Pharmaceutical Sciences 18版、Gennaro編,Mack Publishing,1990;及びModern Pharmaceutics 第2版、Banker及びRhodes編、Marcel Dekker,Inc.,1990において、一般的な医薬投与のガイドラインが示されている。
【0076】
本発明の連結物を酸性塩又は塩基性塩として調製することができる。医薬適合性の塩(水溶性もしくは油溶性、又は分散製品)には、例えば、無機もしくは有機酸又は塩基から形成される、従来の非毒性塩又は四級アンモニウム塩が含まれる。そのような塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩等の酸付加塩;及びアンモニウム塩、ナトリウム及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン等の有機塩基を有する塩及びアルギニン及びリジン等のアミノ酸を有する塩等の塩基性塩が含まれる。
【0077】
連結に使用する特定のキャリアタンパク質との使用ならびに最終処方物のイオン構成に適切であるようにアジュバントを選択するのが好ましい。ワクチンに連結物のみを処方するのか、又は併用ワクチンに連結物を処方するのかということも考慮すべきであろう。後者の例において、最終併用ワクチンに含有されるであろう緩衝液、アジュバント及び他の処方成分を考慮すべきである。
【0078】
本分野において、アルミニウムを用いたアジュバントが一般に使用され、それには、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化リン酸アルミニウム及び水酸化硫酸リン酸アルミニウムが含まれる。一般に使用されるアジュバントの商品名には、ADJUPHOS、MERCK ALUM及びALHYDROGELが含まれる。連結物を使用する特定のアジュバントに必要かつ適切なように、そのアジュバントと結合又は共沈殿させ得る。
【0079】
非アルミニウムアジュバントも使用可能である。非アルミニウムアジュバントには、QS21、リピッド−A及びそれらの誘導体又は変異体、フロイド完全もしくは不完全アジュバント、中性リポソーム、ワクチン及びサイトカインもしくはケモカイン含有リポソームが含まれる。
【0080】
本ワクチンはアルミニウムアジュバントとともに処方されることが好ましい。他の好ましい実施形態において、アルミニウムアジュバント及びQS21の両方とともに本ワクチンを処方する。
【0081】
ある実施形態において、本願に記載するように、B型インフルエンザ由来の免疫原とともに、及び/又は、ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、A、B又はC型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、ロタウイルス、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumonia、肺炎球菌)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococus aureus、黄色ブドウ球菌)由来の免疫原とともに、M2ペプチド−タンパク質連結物を処方することが好ましい。さらに、本発明ワクチンを、特に、ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ由来のエピトープを含むA型インフルエンザウイルスの他の抗原成分と組み合わせることができる。この方式において併用ワクチンを調製できる。併用ワクチンの利点は、患者にとって楽であり、必要な接種回数が少ないので投与コストを低く抑えられるという点である。
【0082】
併用ワクチンを処方する際、他の免疫原とともに使用されている様々な緩衝液及びアジュバントに留意すべきである。ある緩衝液は、ある免疫原−アジュバントの組み合わせに適切であり得るが、他のものには適切ではない可能性がある。特に、最終処方物における適合性を確認するために、様々な免疫原−アジュバントの組み合わせにおけるリン酸レベルの効果を評価すべきである。
【0083】
ワクチン接種
患者に対して、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内等の様々な経路により、本発明のワクチンを投与することができる。好ましい経路は、筋肉内である。対象者の年齢、体重、性別及び健康状態;投与経路;望ましい効果;及び用いる特定の連結物(例えば、ペプチド、キャリアに対するペプチド負荷等)を含む本分野で公知の要因を考慮して、適切な投薬計画を好ましく決定する。複数回投与ワクチン接種方式で本ワクチンを使用することができる。1回分は、1μgから1.0mg総タンパク質の範囲で構成されると予想される。本発明のある実施形態において、その範囲は、0.1mgから1.0mgである。しかし、送達するペプチド量に基づいて用量を調整するのが好ましいと思われる。いずれにせよ、これらの範囲はガイドラインである。免疫学的に有効な量を送達するよう、生成連結物の免疫原性を評価することにより、さらに正確な用量を決定すべきである。免疫学的有効量とは、インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対して免疫記憶が長期防御を与えるのに十分なレベルを確立できるように、患者の免疫系を刺激するものである。連結物は、アジュバントとともに処方することが好ましい。
【0084】
投与タイミングは、本分野で公知の因子に依存する。初回投与後、抗体タイターを維持するために、1回又は複数回の免疫促進投与をその後に行い得る。投与計画の例は、第1日の投与、1ヶ月又は2ヶ月の時点での第二の投与、4、6又は12ヶ月のいずれかにおける第三の投与及び必要に応じて時間間隔をおいた、さらなる免疫促進投与である。
【0085】
本明細書中で使用する場合、患者又は対象は、動物である。ワクチン接種に対して、哺乳類及び鳥類、特に家禽が適切な対象である。好ましくは、前記患者はヒトである。患者は、その患者が免疫反応を生じさせることにより本ワクチンの接種に反応することができるあらゆる年齢であり得る。そのように生じた免疫反応により、インフルエンザウイルス感染により起こった疾患及び消耗性症候群が完全に防御され得るか、又はその症状が緩和され得る。
【0086】
M2ペプチドのみを有する本発明のワクチンは、患者の細胞の感染を防御しないであろうことに着目されたい。これは、ウイルスが患者の体内に侵入し、感染を開始した際に、インフルエンザウイルスに存在する本ワクチンのペプチドのM2エピトープのコピー数が非常に少ないからである。これらのM2エピトープは、典型的には、ウイルスが感染した細胞表面でのみ見られる。つまり、このM2ペプチド−タンパク質連結物を基にしたワクチンによるワクチン接種により生じた免疫反応は、感染した細胞に対して向けられている。特定の効果理論に結びつける必要がない場合、患者の免疫反応によりウイルスのバーストサイズが減少し、全体的なウイルス感染を終結させ、それにより基本的に、最初に感染した細胞に感染が限定されると考えられている。
【0087】
本発明ワクチンの利点は、インフルエンザウイルスの保存的エピトープに対して免疫反応が生じることである。従って、本ワクチンの投与により、インフルエンザ感染に対する患者の防御能を維持するためにワクチン接種を毎年行う必要性がなくなる。
【0088】
上記のような併用ワクチンを得るために、本M2ペプチド−タンパク質連結ワクチンを、他のワクチンとともに処方し得る。次に、M2エピトープならびに併用ワクチン中の他の免疫原に対する免疫反応を生じさせるために、患者に本併用ワクチンを接種することができる。
【実施例1】
【0089】
ペプチドの調製
本分野で一般的に実施されている固相化学合成法により、M2タンパク質配列部分を提示し、C末端又はN末端反応性ブロモアセチル又はマレイミド基を含有する合成ペプチドが生産された。
【0090】
例えば、C末端ブロモアセチル化M2 15mer、CT−BrAcM2−15mer、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Aha−Lys(Nε−BrAc)−NH2− TFA塩(配列番号13)を、APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドとして合成した。0.5mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、4倍過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を使用するプロトコールを用いた。側鎖の保護は、Lys(Fmoc)、Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化によりカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中TFAを用いて、Boc基の除去を行い、そのTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。
【0091】
保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trp残基のホルミル基及びNε−Lys残基のFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、LysのNεアミノ基を、ブロモ酢酸無水物(1g/20ml、MeCl2)と1時間、又はニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。MeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量(2.70g)になるまで乾燥させた。
【0092】
0℃にて1時間、捕捉剤としてHF(30ml)及びアニソール(3ml)を用いて、保護ペプチドレジン(2.70g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(200ml)中の25%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物1.5gを回収した。
【0093】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(0.75g)を最小体積の20%酢酸−H2O(約100ml)に溶解し、90% A−10% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(WATERS,Milford,MA,DELTA−PAK,15μm、100Å、5x30cm)に汲み上げた。
【0094】
ペプチドの添加後、90% A−10% B 緩衝混合液1Lを添加した。濃度(5%)を連続的に増加させた移動相各1Lから、段階的勾配(10% Bから40% B)(増加量 100ml)を作った。生成物を溶出するために使用した流速は、80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、CT−BrAcM2−15merペプチド、200mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0095】
同様にして、他のC末端ブロモアセチル化ペプチドの合成を行うことができる。例えば、次のように、APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドとしてC末端ブロモアセチル化M2 23merペプチド、CT BrAc−M2−23mer、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Ser−Arg−Ser−Asn−Asp−Ser−Ser−Asp−Aha−Lys(Nε−BrAc)−NH2 TFA塩、(配列番号39)を合成した。0.75mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を用いる、二重カップリングプロトコールを使用した。側鎖の保護は、Ser(Bzl)Lys(Fmoc)、Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)、Asp(OcHex)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化を用いてカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中TFAを用いて、Boc基の除去を行い、このTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trpのホルミル基及びNε−LysのFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、LysのNεアミノ基を、ブロモ酢酸無水物(1g/20ml、MeCl2)と1時間、又はニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。MeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量になるまで乾燥させた。
【0096】
0℃にて1時間、捕捉剤としてHF(20ml)及びアニソール(2ml)を用いて、保護ペプチドレジンの半分(1.83g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(200ml)中の25%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物1.1gを回収した。
【0097】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(1.1g)を最小体積の20%酢酸−H2O(約100ml)に溶解し、90% A−10% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(WATERS,DELTA−PAK,Milford,MA,15μm、100Å、5x30cm)に汲み上げた。ペプチドの添加後、90% A−10% B 緩衝混合液1Lを添加した。濃度(5%)を連続的に増加させた移動相各1Lから、段階的勾配(10% Bから40% B)(増加量 100ml)を作った。生成物を溶出するために使用した流速は80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、生成物、CT−BrAcM2−23merペプチド、224mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0098】
マレイミド化ペプチドの合成を以下に説明する。ペプチド、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Aha−Lys(Nε−4−マレイミドブチリル−NH2 TFA塩(配列番号14)を、0.75mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、合成した。APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドを合成した。4倍過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を用いるプロトコールを使用した。側鎖の保護は、Lys(Fmoc),Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化を用いてカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中TFAを用いて、Boc基の除去を行い、このTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trpのホルミル基及びNε−LysのFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンのうち25%を除去し(0.188mmol)、LysのNεアミノ基を、4−マレイミド酪酸(2mmol)及びNMP中のDCC及びHOBT 2mmolと3時間、又はニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。NMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量(0.7g)まで乾燥させた。
【0099】
0℃にて1時間、捕捉剤としてHF(15ml)及びアニソール(1.5ml)を用いて、保護ペプチドレジン(0.7g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(100ml)中の25%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物0.40gを回収した。
【0100】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(0.40g)を最小体積の20%酢酸−H2O(約100ml)に溶解し、90% A−10% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(DELTA−PAK、15μm、100Å、5x30cm,WATERS,Milford,MA)に汲み上げた。ペプチドの添加後、90% A−10% B 緩衝混合液1Lを添加した。濃度(5%)を連続的に増加させた移動相各1Lから、段階的勾配(10% Bから35% B)(増加量 100ml)を作った。生成物を溶出するために使用した流速は80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、生成物 94mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0101】
分析的HPLC条件
カラム:Vydac 15cm #218TP5415,C18.
溶出:勾配 95:5(0.1%TFA/アセトニトリル)から、5:95 (0.1%TFA/アセトニトリル)、45分間。
流速:1.5ml/分
波長:214nM、254nM
保持時間:16.9分
分子式:C99H155N25O31
分子量:2190.13
【0102】
第二のマレイミド化ペプチド、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Ser−Arg−Ser−Asn−Asp−Ser−Ser−Asp−Aha−Lys(Nε−4−マレイミドブチリル−NH2 TFA塩(配列番号23)の合成を以下に説明する。0.50mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドを合成した。過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を用いる二重カップリングプロトコールを使用した。側鎖の保護は、Ser(Bzl)Lys(Fmoc)、Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)、Asp(OcHex)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化を用いてカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中のTFAを用いてBoc基の除去を行い、このTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trpのホルミル基及びNε−LysのFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンのうち50%(0.25mmol)を、4−マレイミド酪酸(2mmol)及び、DCC及びHOBT 2mmolと3時間、又は、ニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。NMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量(2.0g)まで乾燥させた。
【0103】
0℃にて1.5時間、捕捉剤としてHF(20ml)及びアニソール(2ml)を用いて、保護ペプチドレジン(2.0g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(200ml)中の50%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物1.0gを回収した。
【0104】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(1.0g)を最小体積の10%酢酸−H2O(?100ml)に溶解し、85% A−15% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(DELTA−PAK,15μm、100Å、5x30cm,WATERS,Milford,MA)に汲み上げた。ペプチドの添加後、15%Bから45%Bまでの勾配溶出を90分間にわたり行った。生成物を溶出するために使用した流速は80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、生成物 320mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0105】
分析的HPLC条件
カラム:Vydac 15cm #218TP5415,C18
溶出:勾配 95:5(0.1%TFA/アセトニトリル)から、5:95 (0.1%TFA/アセトニトリル)、45分間
流速:1.5ml/分
波長:214nM、254nM
保持時間:16.4分
分子式:C129H203N37O48
分子量:3038.46
【0106】
本合成ペプチドのチオール相当物をアッセイした。例えば、NT−BrAcM2−15(N末端 ブロモアセチル化M2 15mer 配列番号11)及びCT−BrAcM2−15(C末端 ブロモアセチル化M2 15mer 配列番号13)を、N2−注入した25mM ホウ酸塩、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH8.5緩衝液に、最終濃度が7.5mgペプチド粉末/mlになるように溶解した。0.97N NaOHでpHを8.5に調整した。この溶液を0.2ミクロンフィルターで濾過した。次に示すようなチオール消費アッセイにより、Brアセチル相当物について、等量ずつ分注したものをアッセイした。N2−注入した25mM ホウ酸塩、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH8.5緩衝液中に溶解したN−アセチル−システインを、適切なペプチドの希釈物(〜15−30μM、最終濃度)に添加し、同体積の緩衝液に添加し(50μM 最終濃度)、室温にて30分間インキュベーションを行った。インキュベーション後、5,5’−ジチオ−ビス−[2−ニトロ安息香酸](DTNB;Ellman試薬)を添加した(最終濃度、5mM、N2 飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7中の50mM DTNB保存液を使用)。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランクを差し引き、チオール濃度を測定した。本ペプチド存在及び非存在下での遊離チオールの相違から、チオール反応性相当物を推定した。
【0107】
同様にして、NT−MalM2−15(N末端マレイミド化M2 15mer 配列番号12)及びCT−MalM2−15(C末端マレイミド化M2 15mer 配列番号14)を、N2注入した0.1M HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3緩衝液に、最終濃度が7.5mgペプチド粉末/mlになるように溶解した。0.97N NaOHでpHを7.3に調整した。その溶液を0.2ミクロンフィルターで濾過した。次に示すようなチオール消費アッセイにより、マレイミド相当物について等量ずつ分注したものをアッセイした。N2注入した20mM HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3緩衝液中に溶解したN−アセチル−システイン(50μM 最終濃度)を、適切なペプチドの希釈物(〜15−30μM、最終濃度)に添加し、同体積の緩衝液に添加し、室温にて30分間インキュベーションを行った。インキュベーション後、DTNBを添加した(最終濃度、5mM、0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7中の50mM DTNB保存液を使用)。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランクを差し引き、チオール濃度を決定した。本ペプチド存在下及び非存在下の遊離チオールの相違から、チオール反応性相当物を推定した。
【0108】
チオール含有ペプチド(例えば、配列番号1、2、3、4、10等)に対して、氷冷N2−飽和0.1M HEPES、2mM EDTA、0.15M NaCl、pH7.3緩衝液にペプチドを溶解し(2.5mg/mlから7.5mg/ml)、0.2ミクロンフィルターで濾過した。N2飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7緩衝液で、本ペプチドを適切な体積になるように希釈することにより、チオール含量を測定した。0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA pH7 緩衝液中の50mM DTNB保存液を使用して、最終濃度が5mMになるようにDTNBを添加した。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランクを差し引き、チオール濃度を決定した。
【0109】
濾過したブロモアセチル又はマレイミド化ペプチドのチオール反応性相当物
【0110】
【表3】
aチオール消費アッセイにより測定
basp、glu、gly、val、ile、leu及びarg値のAAA平均により決定。
c注意:チオール消費アッセイにおけるブロモアセチル基の反応が遅いため、NT−BrAcM2−15に対する[チオール反応性相当物]は、少なく見積もって、おそらく、〜3倍から5倍であろう。
【0111】
濾過したM2ペプチド含有システインのチオール含量
【0112】
【表4】
aペプチド配列を基にしたもの
b改変Ellmanアッセイに基づいたチオール含量。
【0113】
ペプチド濃度は、M2ペプチドの1個のトリプトファンに基づいて測定(ε278nm、1cm=5,550M−1cm−1及びε288nm、1cm=4,550M−1cm−1と仮定。用いた濃度は、これらの2波長において測定した値の平均である。)。
【実施例2】
【0114】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis、髄膜炎菌)のチオール化外膜タンパク質複合体(OMPC)の調製
本分野で公知の技術及びFu,米国特許第5,494,808号で記載されている技術を用いてOMPCを得た。N−アセチルホモシステインラクトンを用いたOMPCのチオール化は、無菌法を用いている、Marburgら、1986で述べられている一般的方法により行った。NT−BrAcM2−15及びCT−BrAcM2−15に対してはN2飽和25mM ホウ酸塩、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH8.5で、NT−MalM2−15及びCT−MalM2−15を用いた反応に対しては、20mM HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3で、チオール化OMPCを最終的に再懸濁した。OMPCへのチオール化物をN2飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7 緩衝液へと適切に希釈することにより、チオール含量を測定した。N2飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA pH7緩衝液中の50mM DTNB保存液を使用して、最終濃度が5mMになるようにDTNBを添加した。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランク及びOMPCブランク(DTNBなし)を差し引いた後、チオール濃度を決定した。
【0115】
チオール化OMPCの特性
【0116】
【表5】
a改変Ellmanアッセイにより測定。
b改変Lowry法により測定。
【実施例3】
【0117】
マレイミド化又はハロゲン化アルキル活性化OMPCの調製
全ての操作を無菌的に行った。適切な量の滅菌0.5M NaHCO3を添加して、H2O中の滅菌OMPC(5.5mg/mL)を、NaHCO3 pH8.5±0.1中で50mMにした。スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)又はスルホスクシニミジル4−(ヨードセチル)アミノベンゾエート(sSIAB)(氷冷H2O中、10mM 保存液;試薬は、PIERCE CHEMICAL CO.,ROCKFORD.ILより。)を、穏やかに混合しながら緩衝OMPCに滴下添加し、最終濃度が2.5mM sSIAB又はsSMCC、及びOMPC濃度が〜3.8mg/mlになるようにした。ブロモ酢酸N−ヒドロキシスルホスクシニミドエステルも使用することができる。この反応物を4℃にて、1時間、暗所で熟成させる。1時間後、滅菌した1M リン酸ナトリウムで反応混合物のpHを7.3に調整し、300K 分子量カットオフ(MWCO)DISPODIALYZER(R)(SPECTRUM INDUSTRIES,INC.,RANCO DOMINGUEZ,CA)を用いて、滅菌した6.3mM リン酸ナトリウム、pH7.3、0.15M NaClに対して、4℃にて12から24時間にわたり徹底的に透析する。あるいは、pH調整を省いて、反応混合物を直接透析することができる。20mM HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3、他の適切な緩衝液又は水もこの透析に使用することができる。暗所でSIAB透析を行った。N2−注入した透析緩衝液を添加することができる。
【0118】
sSIAB活性化OMPC混合物に対する好ましい透析緩衝液は、NaHCO3 pH8.5±0.1中の50mM液である。アッセイ緩衝液が0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7であり、N−アセチルシステインインキュベーション時間が15分間であったことを除き、本ペプチドに対して上述したN−アセチル−システイン消費アッセイを用いて、チオール反応性相当物について、透析した活性化OMPCをアッセイする。412nmでのOMPCの影響を補正するために、OMPCブランク(DTNBなし)を測定する。Lowry法でタンパク質を測定する。pH8.5におけるマレイミド活性化に対して、0.09μmolから0.12μmol マレイミド相当物/mg(Lowryのタンパク質)が通常得られる。このレベルは、pH7.3で得られた値よりもおよそ2倍から3倍高い。滅菌した0.5M EDTA、pH8保存液を用いて、活性化OMPCを、2mM EDTA最終濃度にする。
【実施例4】
【0119】
M2ペプチドのチオール化OMPCへの連結
無菌法を用いて、次のようにチオール化OMPCをM2ペプチド NT−BrAcM2−15(N末端ブロモアセチル化M2 15mer、配列番号11)、CT−BrAcM2−15(C末端ブロモアセチル化M2 15mer、配列番号13)、NT−MalM2−15(N末端マレイミド化M2 15mer、配列番号12)及びCT−MalM2−15(C末端マレイミド化M2 15mer、配列番号14)と連結させた。様々な量のペプチドにチオール化OMPCを添加し、穏やかに混合した。その反応混合物を混合せずに4℃にて一晩、暗所にて熟成させた。
【0120】
次に、反応を停止させ、無菌状態で脱塩した。反応混合物をN−エチルマレイミド(NEM)で5mMにしてOMPCの過剰なチオールと反応させることにより、NT−BrAcM2−15及びCT−BrAcM2−15/チオール化OMPC連結反応を停止させ、4℃にて、4時間、暗所で熟成させた。4℃にて、滅菌した0.15M NaClに対して、300K MWCO DISPODIALYZER(R)を用いて透析することにより、反応停止させた反応混合物を脱塩した。反応混合物をヨードアセトアミドで5mMにすることにより、NT−MalM2−15/チオール化OMPC連結反応を停止させ、4℃にて一晩、暗所で熟成させた。4℃にて、滅菌した0.15M NaClに対して、300K 分子量MWCO DISPODIALYZER(R)を用いて透析を行い、反応停止させた反応混合物を脱塩した。
【実施例5】
【0121】
マレイミド化又はヨードアセチル化OMPCに対するM2ペプチドの連結
無菌法を用いて、マレイミド化OMPC又はヨードアセチル化OMPC(あるいは、ブロモアセチル化OMPC)のチオール含有M2ペプチド(配列番号1)との連結を次のようにして行った。穏やかに混合したマレイミド化又はヨードアセチル化OMPCに、チオール/マレイミドのモル比が〜3になるようにして、M2ペプチドを滴下添加した。逆の添加法、例えば、OMPCをペプチドに添加することも可能であり、好ましい。12時間から24時間、4℃にて暗所で混合せずに、反応混合物を熟成させる。0.2ミクロンのフィルターで濾過したβ−メルカプトエタノール(15mM 最終濃度)を用いて、その試薬を暗所、4℃にて混合せずに3時間から4時間連結物と反応させることにより、OMPCの過剰なチオール反応基を不活性化(反応停止)させた。4℃にて、滅菌した0.15M NaClに対して、300K 分子量MWCO DISPODIALYZER(R)で透析を行い、反応停止させた反応混合物を徹底的に透析した。
【実施例6】
【0122】
連結物の分析
OMPCタンパク質の測定又は連結物におけるタンパク質+ペプチドの測定のために、改変Lowry アッセイを用いた。このアッセイにおいて、キャリアデオキシコールナトリウムの存在下で、トリクロロ酢酸を用いてタンパク質試料を沈殿させた(Bensadoun及びWeinstein 1976 Anal.Biochem.70:241−250)。SDS含有Lowry試薬Aによりタンパク質ペレットを溶解させた。BSA標準物質を同様に処理した。
【0123】
アミノ酸分析(AAA)のために、試料に内部標準物質、ノルロイシンを添加し、6N HCl、0.2%フェノール(w/v)を用いて、110℃にて真空下で70時間、加水分解した。予想されるアミノ酸加水分解産物に関しては、スキームV−VIII、図5から8を参照のこと。加水分解後、試料を乾燥させ、試料緩衝液で再懸濁し、陽イオン交換クロマトグラフィーにより、ポストカラムのニンヒドリン検出を行い、分析した(BECKMAN Model 6300,Palo Alto,CA)。感受性及び/又は解像度で優れていると思われる、ACCUTAGTM(WATERS CORP.,MILFORD,MA)又はAMINO ACID DIRECTTM(DIONEX CORP.,SUNNYVALE,CA)を含む他の系を用いて、アミノ酸分析を行うこともできる。
【0124】
少なくとも2種類の方法によるアミノ酸データから、連結物のペプチド負荷を調べることができる。そのペプチド中のユニークなアミノ酸(例えば、6−アミノへキサン酸、AHA)から、ペプチド量を推定することができる。OMPCに存在するが、そのペプチドにはないアミノ量から、OMPCタンパク質の量を推定することができる。Lowry タンパク質数には、そのペプチドからのタンパク質も含まれ、ペプチド負荷が高い場合、得られた値に対して占める割合は重要なものである。代替法には、スプレッドシート方式におけるAAAデータの重回帰、最小2乗解析の使用が含まれる(Shulerら、1992 J.Immunol.Meth.156:137−149)。一般に、2種類の方法により得られた値の差は、互いに20%以内である。
【0125】
還元した連結試料のSDS−PAGE/染色分析により、ペプチド連結物の質を明らかにすることができる。マレイミド又はヨードアセチル活性化OMPC/チオール含有M2ペプチド連結物に対して、不活性/活性化OMPCの分析により、3量体として存在するOMPCの主要なクラス2タンパク質の架橋を引き起こす、SMCC又はSIABの副反応の証拠が得られる。
【実施例7】
【0126】
チオール化OMPC/マレイミド化又はブロモアセチルM2連結物の特性
透析したNT−BrAcM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0127】
【表6】
a改変Lowry法
b0.42μmolリジン/mg Lowryタンパク質及び0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値の平均に基づく。
cS−カルボキシメチルシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0128】
透析したNT−MalM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0129】
【表7】
a改変Lowry法
b0.42μmolリジン/mg Lowryタンパク質及び0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値の平均に基づく。
cS−ジカルボキシエチルホモシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0130】
透析したCT−BrAcM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0131】
【表8】
a改変Lowry法
b0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値の平均に基づく。
cS−カルボキシメチルシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0132】
透析したCT−MalM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0133】
【表9】
a改変Lowry法
b0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値に基づく。
cS−ジカルボキシエチルホモシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0134】
一般に、電荷が等しい(mol)ペプチドにおいて、マレイミド化ペプチドは、ブロモアセチル化ペプチドよりも、連結物におけるペプチド負荷が高かった。マレイミド基と比較してブロモアセチル基のチオールの速度論的な反応性が低いことがおそらくその差の原因と思われる。
【実施例8】
【0135】
マレイミド化OMPC及び選択システイン含有ペプチド連結物の特性
透析したシステイン含有ペプチド/マレイミド化OMPC連結物の特性
【0136】
【表10】
a改変Lowry法
bS−ジカルボキシエチルシステイン(DCEC)及び6−アミノへキサン(AHA)定量はAAAによる。DCEC反応因子/ASP反応因子=1.285。
c0.63μmol アラニン/mg Lowryタンパク質と仮定してするAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモル数を計算するための6−アミノへキサン酸(AHA)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0137】
システインを1個有するペプチド(例えば配列番号2)と対比して、複数のシステイン残基を含有するM2ペプチド(例えば、配列番号1)のDCEC/AHAレベルが高いことから、1個のM2ペプチドに対して複数のマレイミド/システイン結合があることが示唆される。この結果、連結物におけるペプチド負荷がより少なくなり、おそらく連結物の免疫原性に影響を与えることがあると考えられる。より小さいペプチド(配列番号10)では、1個のシステインを含有するM2ペプチド連結物に対する反応に際してのペプチド負荷量が同等の場合、ペプチド負荷がより高くなると思われる。この影響は、OMPCのマレイミド部位における立体構造上の制限及び/又は、ペプチドの反応性システイン近くの電荷の相違によるものであり得る。不活性/マレイミド活性化OMPCに対するSDS−PAGEにより、活性化及び脱塩段階の際に架橋を生じるOMPC中の本質的な求核試薬とのマレイミドの反応(Brewer及びRiehm 1967 Anal.Biochem.18:248−255参照)が示唆された。より低いpHの場合、活性化物との架橋はあまり明確ではなかった。SIAB活性化OMPCの場合、架橋が最小限となることが分かった。マレイミド基には、イミドの開環反応により、マレアミド酸に変換され得るものもある。マレアミド酸は、チオール反応性が不十分である。一般に、1個のシステインを含有するペプチド及びマレイミド活性化OMPCを用いた同様のペプチド反応と対比して、マレイミド化ペプチド及びチオール化OMPCを用いて調製された連結物のペプチド負荷数が多いことが観察された。マレイミド化(0.09μmol マレイミド/mgタンパク質から0.12μmol マレイミド/mgタンパク質)と対比して、チオール化(〜0.26μmol チオール/mgタンパク質)によるOMPC活性化レベルが高いことは、この観察から説明できる。
【実施例9】
【0138】
動物実験用の連結物
動物実験のために、NT−BrAcM2−15の場合にペプチド/OMPCチオール使用分量比(mol/mol)が〜2であったことを除き、ペプチド/OMPCチオール使用分量比(mol/mol)が〜1になるようにして連結物を調製した。0.15M NaCl中の無菌調製連結物を、アルミニウムアジュバント(MERCK alum)を用いて処方した。
【0139】
動物実験で用いた連結物の特性
【0140】
【表11】
a0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値に基づく。
bAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモル数を計算するための6−アミノへキサン酸(AHA)値により決定したタンパク質値に基づく。
【実施例10】
【0141】
ワクチンの処方
実施例11で次の連結物を使用した。「群」の番号は、ワクチン接種した動物の群を意味する。処方で使用した連結物は、群1から3で使用するCT−M2−15mer−ma−OMPC(また、連結物「A」と呼ぶ。)、群4から6で使用するCT−BrAcM2−15mer−OMPC(また、連結物「B」と呼ぶ。)、群7から9で使用するNT−BrAcM2−15mer−OMPC(また、連結物「C」と呼ぶ。)、群10から12で使用するCT−BrAcM2(SRS)−23−mer−OMPC(また、連結物「D」と呼ぶ。)、群13で使用する活性化/不活性OMPC(また、化合物「E」と呼ぶ。)である。Lowry法による保存液のタンパク質濃度測定及びアミノ酸分析によるペプチド負荷測定に基づき、希釈を行う。
【0142】
段階1 連結物AからDを1x生理食塩水で希釈する。化合物Eを0.5mg/mlのタンパク質濃度に希釈する。
【0143】
段階2 1xalum中、最終濃度50mcg/ml ペプチドになるように(化合物Eに対して、最終タンパク質濃度は、1xalum中、0.25mg/mlになるように)、段階1からの各溶液を、予め撹拌した1:1の比の2xalum(MERCK ALUM.製品番号#39943、MERCK&CO,West Point,PA)に添加する。
【0144】
段階3.室温にて2時間、回転ホイールで混合する。
【0145】
段階4.その連結物を1xalumで希釈し、各目標ペプチド濃度にする。
【0146】
4.1 段階3からの溶液を、1xalumで次のように希釈する:溶液1に対して1xalumを4(v/v)の割合で混合する。
【0147】
4.2 室温にて回転ホイールで1時間混合する。
【0148】
4.3 段階4.2の溶液を、群3、6、9、12(1mcg ペプチドを受容)及び群13(5mcg 活性化/不活性OMPCを受容)に対して必要な体積ずつ分配する。
【0149】
4.4 4.2の溶液の残りを、1xalumと次のように混合する:溶液1に対して1xalumを9(v/v)の割合で混合する。
【0150】
4.5 室温にて回転ホイールで1時間混合する。
【0151】
4.6 群2、5、8、11(0.1mcg ペプチドを受容。)に対して、段階4.5の溶液を必要な体積ずつ分配する。
【0152】
4.7 4.5の溶液の残りを1xalumと次のように混合する:溶液1に対して1xalumを9(v/v)の割合で混合する。
【0153】
4.8 室温にて回転ホイールで1時間混合する。
【0154】
4.9 段階4.8の溶液は、群1、4、7、10(0.01mcgのペプチドを受容)に対する処方に相当する。
【0155】
段階5 バイアルに分注する。
【0156】
試料の操作は全て、滅菌状態で行った。
【実施例11】
【0157】
哺乳類に対するワクチンの投与
マウス感染モデルにおける、M2ペプチド連結ワクチンの免疫原性及び防御
M2ペプチド特異的抗体反応の誘導能及びマウスにおける致死性インフルエンザウイルス感染処理に対する防御力付与能について、4種類の様々なM2ペプチド連結物を評価した。試験連結物を次の表に示す。
【0158】
【表12】
【0159】
実施例10で述べたように、全てMERCK ALUMを用いて全ての連結物を処方した。筋肉内注射により、1群あたり10匹のメスBalb/cマウスからなる各動物群に連結物を100μl免疫接種し、3週間後に同じ連結物で一度免疫促進を行った。3種類の様々な投与量、すなわち0.01μg、0.1μg及び1μg(ペプチド含量に基づく)で、動物において各連結物を試験した。例えば、処方した実施例10の連結物Aを、群1に対して0.01μg、群2に対して0.1μg、群3に対して1μgを投与し、一方、処方連結物Bを、群4に対して0.01μg、群5に対して0.1μg、群6に対して1μgというように投与した。
【0160】
同じスケジュールにより、MERCK ALUM中に処方した非連結OMPCで対照動物を免疫した。第2週(投与1の後)及び第6週(投与2の後)に、血液試料を回収した。免疫促進から4週間後に、LD90(90%が致死となる投与量)のマウス馴化A/Hong Kong/68 リアソータント(A/HK/68由来のHA遺伝子及びA/PR/8/34由来のM2遺伝子)(H2N2)(本明細書中で、「A/HK/68リアソータント」と呼ぶ。)を用いて、動物の鼻腔内に感染処理を行った。感染処理後、全部で20日間、マウスの体重減少及び死亡状況を毎日モニタリングした。
【0161】
検出抗原として非改変23アミノ酸 M2ペプチドを用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(Elisa)により、M2特異的抗体タイターを調べた。非投薬群及びOMPC群の両対照群では、抗M2抗体タイターは全く検出されなかった。連結物ワクチン接種群の結果を図9に示した。PD1及びPD2の両試料において、全ワクチン群で明らかな用量効果が観察されたことから、本ワクチンが適切な用量範囲で試験されていることが示された。全連結物が顕著なM2特異的抗体反応を誘発し得た。投与量が1μgの場合、免疫促進投与後、本連結物全てが50万以上の特異的抗体タイターを誘発した。様々なワクチンの中で、CT NBrAc23mer(SRS)−OMPCが最も高いタイターを誘導し、一方、CT15mer−ma−OMPCのタイターが最低であった。CT BrAc−15mer−OMPCとNT BrAc−15mer−OMPCとの間にははっきりとした差は見られず、このことから、N末端を介して連結させたペプチドとC末端を介して連結させたペプチドとは同程度の免疫原性を有することが示される。
【0162】
致死性のウイルス感染処理後、対照群は、予想通り90%から100%の死亡率が示された。一方、投与量が1μgのワクチン群では、全ての群で、80%から100%の生存率が示された。これにより、試験したワクチンが死亡を防ぐ効果を与え得ることが確証された。図10は、CT BrAc−15mer−OMPCとCT 15−ma−OMPCとの間の比較を示す。この2種類の連結物の間の最も顕著な違いは、投与量が0.01μgの場合に、CT BrAc−15mer−OMPCを投与されたマウスでは生存率が80%であったが、CT 15−ma−OMPCを投与されたマウスでは、本質的に対照群と同程度の死亡率であったことである。この結果から、致死性の感染処理に対する防御という点で、CT BrAc−15mer−OMPCがCT 15−ma−OMPCよりも有効であることが示される。この主張は実際、これら2群により示された相対的M2抗体タイターと合致する。図11は、CT BrAc−15mer−OMPCとCT Br−Ac−23mer(SRS)−OMPCとの比較を示す。この場合、死亡率に関して、この2種類の連結物間で明確な差はない。しかし、CT BrAc−23mer(SRS)−OMPCを投与された群では、CT BrAc−15mer−OMPCを投与された群よりも体重減少が全般的に少なく、この結果から、前者の防御力がより強い可能性が考えられ得る。図12は、CT BrAc−15mer−OMPCとNT BrAc−15mer−OMPCとの比較を示す。全般的に、CT BrAc−15mer連結物を投与された群の生存率は、NT BrAc−15mer連結物を投与された群よりも高い。この実験において、全てのM2ペプチド連結物は、致死性のウイルス感染処理に対して防御力があり、チオール化OMPCに対してC末端を介して連結しているM2 23mer(SRS)が最も効果的なワクチンであると思われる。
【実施例12】
【0163】
ペプチドA/H3/HA0−2
【0164】
【表13】
【0165】
A/H3/HA0−2のペプチド配列は、A型インフルエンザ配列、H3サブタイプ、Hong Kong A/68のヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に広がるサブユニット間領域に相当する。太字の部分のように、N末端にグリシン及びシステイン等の残基がある。これらは、スペーサーとして、及び、チオエーテル結合を介してペプチド−OMPC連結物を生成させるために、マレイミド活性化OMPCキャリアと反応するためのシステインリガンドとして必要である。
【0166】
A/H3/HA0−2のペプチド合成
Pioneer Peptide Synthesizer(APPLIED BIOSYSTEMS,Foster City,CA)で、Fmoc/t−Bu化学を用いて、固相により本ペプチドを合成した。使用したレジンは、Fmoc−Linker AM−Champion,1% 架橋(BIOSEARCH TECHNOLOGIES,INC.,Novato,CA)で、修飾Rink リンカー p−[(R,S)−α−[9H−フルオレン−9−イル−メトキシホルムアミド]−2,4−ジメトキシベンジル]−フェノキシ酢酸(Rink,H.(1987) Tetrahedron Lett.28,3787−3789;Bernatowicz,M.S.,Daniels,S.B.及びKoster,H.(1989)Tetrahedron Lett.30,4645−4667)で誘導体化された、PEG−PSを基にしたレジンであった。
【0167】
アシル化反応は全て、レジンフリーのアミノ基で、活性化アミノ酸 4倍過剰量を用いて60分間行った。等モル量のHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及び2倍モル過剰量のDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)で、アミノ酸を活性化した。側鎖保護基は、Asp、Glu,Ser、Thr及びTyrに対してtert−ブチル、;Cys、Asn、His及びGlnに対してトリチル;Lys、Trpに対してtert−ブトキシカルボニルであった。会合の最後に、乾燥ペプチドレジンを、88% TFA、5% フェノール、2% トリイソプロピルシラン及び5% 水(Sole,N.A.,及びBarany,G.(1992) J.Org.Chem.,57,5399−5403)で、室温にて1.5時間処理した。
【0168】
このレジンを濾過し、本ペプチドを沈殿させるために、冷メチル−t−ブチルエーテルにその溶液を添加した。遠心後、有機捕捉剤を除去するために、新鮮な冷メチル−t−ブチルエーテルで本ペプチドペレットを洗浄した。このプロセスを2回繰り返した。最終ペレットを乾燥させ、H2O、20%アセトニトリル中で再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0169】
セミ分取 WATERS(MILFORD,MA)RCM DELTA−PAKTM C−18カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチドを精製した。20分間にわたるB:25%−40%という勾配、流速 80ml/分という条件で、生成物に相当するピークを保持時間(tR)16’で溶出した。ULTRASHPERE、C18カラム、25x4.6mm、5μmを用いて、20分間にわたるB:20%−50%Bの勾配、流速1ml/分という条件で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(WELLSLEY,MA)API−100でエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均mwが2163.48Daのところ、測定値は、2163.6Daであった。
【0170】
ペプチドA/H3/HA0−2の、OMPCへの連結
グラム陰性細菌由来のOMPCを精製する様々な方法が考案されている(Fraschら、J.Exp.Med.140,87(1974);Fraschら、J.Exp.Med.147,629(1978);Zollingerら、米国特許第4,707,543号(1987);Heltingら、Acta Path.Microbiol.Scand.Sect.C.89,69(1981);Heltingら、米国特許第4,271,147号)。Fuによる米国特許第5,494,808号に記載されているような、本分野で公知の技術を用いて、N.meningitidis(髄膜炎菌)Bの改良外膜タンパク質複合体(iOMPC)を得ることができる。
【0171】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis、髄膜炎菌)の改良外膜タンパク質複合体(iOMPC)溶液(6.84mg/ml)、2.9mlに対して、0.5M NaHCO3(0.322ml)を、最終濃度が50mM、pH8.5になるように添加した。これに、ヘテロ2官能価の架橋剤スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC,PIERCE CHEMICAL CO.,Rockford,Il)の20μM溶液 0.83mlを、2倍過剰量として(OMPCのリジン残基について、0.42μmol リジン/mg OMPCタンパク質)、滴下添加した。4℃にて、暗所で1時間その溶液を熟成させた後、1M NaH2PO4溶液(46μl)を添加して、pHを中性まで低下させた。過剰量の試薬を除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES INC.,Rancho Dominguez CA)を用いて、20mM HEPES pH7.3 (4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、2mM EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)2Lで6回(2時間ごと)緩衝液交換を行い、この溶液を透析した。透析後に、総量8.08mlの活性化OMPC(aOMPC)を回収した。
【0172】
Cys−含有ペプチドリガンド、A/H3/HA0−2の0.7mg/ml保存溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液中で調製した。このペプチド溶液のチオール含量を、Ellmanアッセイ(Ellman,G.L.(1959)、Arch,Biochem.Biophys.,82,70)により測定したところ、230μMのSH−タイターを示した。
【0173】
沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、連結反応を最初に小規模で行い、ペプチドリガンド量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。OMPCに組み込むことができるマレイミド基の最大数は、OMPCの総リジン残基により制限される。すなわち、0.42μmol リジン/mg OMPCである。OMPCに対する平均MWが40x106Daであるとするならば、これは、16,000リジンモル数/OMPC molに相当する。これらのうち一部のみが、最高で35%、実際にsSMCCにより活性化され得るが、これは、約5000molに到達可能な最大ペプチド負荷に相当する。従って、次の、OMPC 1molあたりのモル過剰量のペプチドリガンド、すなわち、500、1000、2000、3000と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、この試料をaOMPC試料と比較した。
【0174】
A/H3/HA0−2の場合、最大2000(mol Cys−ペプチド/OMPC mol)のモル濃度過剰量を使用して1時間のインキュベーション反応を行った場合、連結反応により可溶性生成物のみが得られた。この比を超えると、OMPC溶液は完全に沈殿した。
【0175】
これらの観察を基に、大規模な反応を行った:aOMPC4ml (9.8ml)を、20mM HEPES、2mM EDTA、pH7.3 2.08mlで希釈した。穏やかにボルテックスにかけながら、ペプチド保存溶液 2.08mlをこの希釈液に滴下添加したが、これは、2000モル濃度過剰量のペプチドモル/OMPC molに相当する。マレイミド−活性化OMPC溶液の試料を、最終連結物のペプチド負荷測定用ブランクとして用いた。4℃にて17時間、暗所で連結反応混合物を熟成させた。4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるようにβ−メルカプトエタノールを添加して(総量8.6μLを添加)、あらゆるOMPCの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZERを用いて、20mM HEPES pH7.3 1Lで4時間ごとに4回緩衝液交換を行い、この溶液を透析した。
【0176】
Lowry法(Lowry,O.H.,Rosebrough,N.J.,Farr,A.L.及びRandall,R.J.(1951)、J.Biol.Chem.,193,265)により濃度を測定した結果、OMPC−A/H3/HA0−2の濃度は、1.0mg/mlであることが分かった。真空排気された密封ガラス試験管中で、共沸性のHClを用いて、110℃にて70時間、この連結物及びaOMPC試料を加水分解した。アミノ酸分析によりアミノ酸組成を調べた。この連結物アミノ酸組成を、OMPCキャリア及びペプチドリガンド両方のアミノ酸組成と比較すること及びそのデータの重回帰、最小二乗解析により(Shulerら、Journal of Immunological Methods,156,(1992)137−149)、OMPCタンパク質へのペプチドの連結負荷を調べた。連結OMPC及びA/H3/HA0−2に対して、得られたペプチド対OMPCモルのモル比は、1160であった。
【実施例13】
【0177】
ペプチドA/H3/HA0−18
A/H3/HA0−2のペプチド配列のpIは、ProMaC(Protein Mass Calculator)ソフトウェア v.1.5.3で計算すると、8.4である。そのペプチドのpI値が4.1に下がるようにこの配列を処理し、その結果、ペプチドHA0−18を得たが、これは、A/H3/HA0−2と、インフルエンザHA0前駆体由来の同じ配列を有する。太字は、連結、スペーシング及びpI処理に必要な残基である。
【0178】
【表14】
【0179】
A/H3/HA0−18のペプチド合成
A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、上記ペプチドを合成した。ペプチドC末端の酸を生成させるために、4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて既に誘導体化されたChampion PEG−PSレジン(BIOSEARCH TECHNOLOGIES,INC.,Novato,CA)で、上記ペプチドを合成した。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。上記ペプチド会合の最後に、10倍過剰量のDMF中無水酢酸との反応により、アセチル化反応を行った。
【0180】
セミ分取(WATERS,Milford,MA)RCM DELTA−PAKTM C18カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製HA0−18を精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分の条件を使用した。ULTRASHPERE、C18カラム(BECKMAN、FULLERTON、CA)、25x4.6mm、5μmで、B:30%−45%Bを20分間、80%を3分間の勾配、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(Wellesley,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2336.83Daのところ、測定値は、2336Daであった。
【0181】
A/H3/HA0−18の、OMPCへの連結
実施例12でA/H3/HA0−2に対して述べたようにして、iOMPCを活性化した。Cys−含有ペプチドリガンド、A/H3/HA0−18の保存溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液で調製した。このペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイにより測定したところ、200μMのSH−タイターを示した。沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、再び、連結反応を最初に小規模で行い、ペプチドリガンド量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。すなわち、OMPC 1molあたり、次のモル過剰量のペプチドリガンド、1000、2000、3000と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、対照aOMPC試料とその試料を比較した。pI値を低下させた処理済配列の場合、最大モル濃度過剰量のリガンド、3000モル/OMPC molを使用しても沈殿は見られず、濁度は上昇しなかった。
【0182】
これらの観察から、aOMPC溶液 2ml(4.6mg)に、ペプチド保存溶液(Ellmanアッセイにより200μM、3000モル濃度過剰量に相当)1.68mlを添加した。この連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。次に、4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるようにβ−メルカプトエタノールを添加して、あらゆるOMPCの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZERを用いて、20mM HEPES pH7.3に対して、十分にその溶液を透析した。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。連結OMPC及びA/H3/HA0−18に対して、得られたペプチド対OMPCモル比は、2542であった。
【実施例14】
【0183】
ペプチド A/H3/HA0−17
【0184】
【表15】
【0185】
A/H3/HA0−17のペプチド配列は、A型インフルエンザ配列、HK A/68、H3サブタイプのヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に相当する。この配列は、実施例1のペプチドA/H3/HA0−2の配列と同様であるが、この場合は、マレイミド活性化キャリアとの連結に必要とされるシステイン残基がC末端にある。このペプチドのpIを4に調整するために、この配列をさらに改変した。この改変は、アミドの代わりのCys末端カルボキシレート、N末端のグルタミン酸及びスクシニル付加を含む。
【0186】
A/H3/HA0−17のペプチド合成
ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで既に誘導体化されたChampion PEG−PSレジン(Biosearch Technologies,Inc.)で合成を行った。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして会合を行った。ペプチド会合の最後に、10倍過剰量のDMF中無水コハク酸との反応によりスクシニル化反応を行った。
【0187】
セミ分取 WATERS(Milford,MA)RCM Delta−PakTM C−18カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチド、A/H3/HA0−17を精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分の条件を用いた。ULTRASPHERE、C18カラム(BECKMAN、FULLERTON、CA)、25x4.6mm、5μmで、B:30%−45%Bを20分間、−80%を3分間の勾配を用いて、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(WELESLLEY,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2337.62Daのところ、測定値は、2336,8Daであった。
【0188】
A/H3/HA0−17の、OMPCへの連結
実施例12で述べたようにして、iOMPCを活性化した。HA0−17の保存溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液で調製した。このペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイにより測定したところ、200μMのSH−タイターを示した。沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、再び連結反応を最初に小規模で行い、A/H3/HA0 17の量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。すなわち、OMPC 1molあたり、次のモル過剰量のペプチドリガンド、1000、2000、3500と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、aOMPC試料とその試料を比較した。pI値を低下させるよう処理した配列の場合、最大モル濃度過剰量のリガンド、3500モル/OMPCmolを使用しても、沈殿は見られず、濁度は上がらなかった。
【0189】
これらの観察に基づき、aOMPC 3mg(0.94ml)で大規模反応を行った。穏やかにボルテックスを行いながら、ペプチド保存溶液 1.334mlをこの溶液に滴下添加したが、これは、ペプチドモル/OMPCモルの3500モル濃度過剰量に相当する。その連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるようにβ−メルカプトエタノールを添加して、あらゆるOMPCの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES,INC.,RANCHO DOMINGUEZ,CA)を用いて、20mM HEPES pH7.3に対して、十分にその溶液を透析した。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。分析により、組み込みレベルとして、1860モル(A/H3/HA0−17ペプチド/mol OMPC)の値が得られた。
【実施例15】
【0190】
ペプチド A/H3/HA2−25
【0191】
【表16】
【0192】
A/H3/HA2−25のペプチド配列は、A型インフルエンザ配列、H3サブタイプ、Hong Kong A/68のヘマグルチニンタンパク質、HA2の融合ペプチド領域に相当する。この配列には、マレイミド活性化OMPCと連結するためのシステイン、スペーサーとしてのグリシン残基及びpIを3.4の値に調整するためのC末端残基としてのグルタミン酸(太字)の取り込みが含まれる。
【0193】
A/H3/HA2−25のペプチド合成
ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで既に誘導体化したChampion PEG−PSレジン(Biosearch Technologies,Inc.)で、本ペプチドを合成した。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして会合を行った。
【0194】
セミ分取 WATERS(Milford,MA)RCM Delta−PakTM C−4カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチド、A/H3/HA2−25を精製した。B:40%−40%(5分)−60%(20分)の勾配、流速は80ml/分の条件を用いた。Phenomenex,Jupiter C4カラム、15x4.6mm、5μmにおいて、B:35%−55%(20分)−80%(3分)の勾配で、流速 1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(Wellesley,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2271,55Daのところ、測定値は、2271,2Daであった。
A/H3/HA2−25の、OMPCへの連結
実施例12で述べたようにして、iOMPCを活性化した。
【0195】
A/H3/HA2−25の溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液で調製した。このペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイにより測定したところ、250μMのSH−タイターを示した。
【0196】
沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、連結反応を最初に小規模で行い、A/H3/HA2 25の量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。すなわち、OMPC 1molあたり、次のモル過剰量のペプチドリガンド、500、1000、2000、4000、6000と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、aOMPC試料とその試料を比較した。pI値を低下させるよう処理した配列の場合、最大モル濃度過剰量のリガンド、6000モル/OMPCmolを使用しても沈殿は見られず、濁度は上昇しなかった。
【0197】
これらの観察により、aOMPC 6.3mg(2.57ml)で大規模反応を行った。穏やかにボルテックスを行いながら、この溶液に、ペプチド保存溶液 3.85mlを滴下添加したが、これは、ペプチドモル/OMPCモルの6000モル濃度過剰量に相当する。その連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。次に、4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるように添加したβ−メルカプトエタノールと反応させて、あらゆるOMPCの未反応マレイミド基を不活性化した。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZERを用いて、20mM HEPES pH7.3に対して十分にその溶液を透析した。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。分析により、A/H3/HA2−25の取り込みレベルとして、2436モルペプチド/mol OMPCの値が得られた。
【実施例16】
【0198】
ペプチドB/HA0−22
B/HA0−22のペプチド配列は、B型インフルエンザ配列(Victoria及びYamagata株、例えば、B/Ann Arbor/54、B/Hong Kong/330/2001及びB/Yamanashi/166/1998等のB型インフルエンザウイルスにおけるものと一致する。)のヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に相当する。
【0199】
【表17】
【0200】
この配列は、N末端へのブロモアセチル基の導入(それによりチオール化OMPCへの連結が可能となる(Tolmanら、Int.J.Peptide Protein Res.41,1993,455−466;Conleyら、Vaccine 1994,12,445−451))、グリシンスペーサー導入及びこのペプチドのpI値を調整するための修飾により改変されている。この改変は、カルボキサミドのC末端カルボキシレートへの置換、及びN及びC末端におけるグルタミン酸の付加を含む。
【0201】
B/HA0−22のペプチド合成
Pioneer Peptide Synthesizer(Applied Biosystems,Foster City,CA)で、Fmoc/t−Bu化学を用いて、固相により上記ペプチドを合成した。ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーにより既に誘導体化したChampion PEG−PSレジン(Biosearch Technologies,Inc.,Novato,CA)で、上記ペプチドを合成した。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。ペプチド会合の最後に、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて、3倍過剰量のブロモ酢酸との反応によりブロモアセチル化反応を行った。
【0202】
アシル化反応は全て、レジンフリーのアミノ基において、活性化アミノ酸 4倍過剰量を用いて60分間行った。等モル量のHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及び2倍モル過剰量のDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)で、アミノ酸を活性化した。側鎖保護基は、Gluに対してtert−ブチル、;Lysに対してtert−ブトキシカルボニル;Argに対して2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニルであった。会合の最後に、乾燥ペプチドレジンを、88% TFA、5%フェノール、2%トリイソプロピルシラン及び5% 水(Sole,N.A.,及びBarany,G.(1992)J.Org.Chem.,57,5399−5403)で、室温にて1.5時間処理した。このレジンを濾過し、ペプチドを沈殿させるために、冷メチル−t−ブチルエーテルにその溶液を添加した。遠心後、有機捕捉剤を除去するために、新鮮な冷メチル−t−ブチルエーテルでこのペプチドペレットを洗浄した。このプロセスを2回繰り返した。この最終ペレットを乾燥させ、H2O、20%アセトニトリルで再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0203】
セミ分取 WATERS(Milford,MA)RCM Delta−PakTM C−18カートリッジ(40x200mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチドを精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分という条件を用いた。ULTRASPHERE(BECKMAN,FULLERTON,CA)、C18カラム、25x4.6mm、5μmで、B:30%−50%B(20分)、−80%(3分)の勾配を用いて、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。Perkin−Elmer API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2500.7Daのところ、測定値は、2500.4Daであった。
【0204】
B/HA0−22の、OMPCへの連結
超遠心(Ti−70ローター、50,000RPM、45分間、4℃)及び10mg/mlの濃度でダウンス型ホモジェナイザーによりホモジェナイズ/再懸濁を行うことにより、窒素注入した濾過滅菌済みCM761(0.11M ホウ酸ナトリウム、pH11.3)にiOMPC出発物質(150mg)を最初に移した。次に、EDTA−DTT溶液(CM761中、0.57g EDTA/g OMPC、0.11g DTT/g OMPC)と併せてN−アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT)(窒素注入水中、0.89g NAHT/g OMPC)の溶液を用いてそのタンパク質をチオール化した。チオール化反応を室温(〜20℃)にて4時間進行させた。次に、2回の超遠心(50,000RPM、45分間、4℃)及びダウンス型ホモジェナイザーによるホモジェナイズ/再懸濁ステップを行うことにより、チオール化iOMPCを、25mM ホウ酸ナトリウム、pH8.0緩衝液に移した。チオール化終了時に、次の段階に進む前に、Lowry法及びEllmanアッセイを行った。チオール化OMPCのチオール含量は、0.25μmol チオール/mgであった。
【0205】
最初に25mM ホウ酸ナトリウム、pH8.0緩衝液に、濃度が5mg/mlになるようにB/HA0−22 65mgを溶解した。1N NaOHによりペプチド溶液のpHをpH8.0に戻るように再調整し、次に0.22ミクロン滅菌フィルターで濾過した。チオール化OMPC 53mg(質量による負荷量比 1.2gペプチド/g OMPC)を、軽く撹拌しながらペプチド保存溶液に滴下添加した。全く撹拌せずに、連結反応を15.5時間、室温にて進行させた。
【0206】
連結反応終了時に、6個の300kD MWCO DISPODIALYZERに、使用体積が各5mlになるように連結溶液を移した。3個のDISPODIALYZERを、濾過滅菌した水がそれぞれ3.5Lから4L入った4Lのビーカーに入れた。3インチのマグネチックスターラーバー及び速度調節可能な撹拌プレートを用いて、連結物と3.5Lから4Lの濾過滅菌水両方が入った各4L ガラスビーカーを穏やかに撹拌した。反応副産物及び過剰な遊離ペプチドを除去するために、少なくとも6時間ごとに、濾過滅菌水を用いて、全部で5回の透析液交換を行った。
【0207】
A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。これらの分析により、B/HA0−22に対する取り込みレベルとして、6500モル ペプチド/mol OMPCの値が得られた。
【実施例17】
【0208】
HA0ペプチド−OMPC連結物をワクチン接種したマウスにおける、A型インフルエンザウイルスによるマウス感染処理実験
OMPCに連結させたHAペプチドの連結物を用いて、筋肉内投与によりメスBalb/cマウスを免疫した。HA0−21(H1)及びHA0−22(H3)を用いた実験において、連結に用いた化学物質は、チオール化OMPC及びブロモアセチル化ペプチドであった。HA0−25(H3L)及びHA0−25(H1)を用いた実験において、用いた化学物質はマレイミジル−OMPC及びシステイニルペプチドであった。連結物を精製し、標準的方法を用いて処方用に調製した。
【0209】
ワクチンは全て、Merck Alum又はQS21アジュバント 20μgを用いて処方し、1回の注射につき、マウス1匹あたり100μlの体積で投与した。第0、2及び4週に、マウスに対してワクチン接種を行った。第7週に、このマウスに対して、鼻腔内に致死用量のインフルエンザウイルス PR8又はHKを用いて感染処理を行った。データを以下に示す。
【0210】
HAペプチド/OMPC連結ワクチンを用いた、マウス感染処理実験
【0211】
【表18】
aペプチド−OMPC連結物の各処方中のペプチド量
【0212】
血清試料を回収し、標準的ELISA方式で上記のようにアッセイした。
ELISA タイター
【0213】
【表19】
【実施例18】
【0214】
OMPCに連結させたB型インフルエンザウイルス由来のHA0ペプチドをワクチン接種したマウスにおける、B型インフルエンザウイルスによるマウス感染処理実験
上述のように、B型インフルエンザHA0連結物を調製した(上記の実施例参照)。B型/HA0−22 EGPAKLLKERGFFGAIAGFLEE(配列番号60)ペプチド−OMPC連結物について使用した連結は、チオール化OMPCに連結させたブロモアセチルペプチドであった。
【0215】
Merck Alum中に処方したB/HA0−22 1、10、100又は1000ng(本処方中の連結物のペプチド含量を基にしたng)を用いて、第0週及び第28週に、筋肉内投与によりメスBalb/cマウスを免疫した。第2週及び第4週に血清試料を回収し、ELISAによりHA0−特異的抗体を測定した。
【0216】
2回目の免疫から3週間後、マウス適合B型インフルエンザウイルス、B/Ann Arbor/54を、LD90の量(90%のマウスが死亡する量)、鼻腔を介してマウスへの感染処理を行った。その後20日間、マウスの生存及び体重変化を観察した。
【0217】
B/HA0−OMPC連結ワクチンは、強力なHA0−特異的な抗体反応を誘導した(図22A)。この抗体反応は用量依存的であった。本ワクチン1ngからかなりのHA0−特異的抗体タイターが誘導され得、本ワクチン 1000ngから、約100万のタイターが誘導された。
【0218】
B/HA0−OMPC連結ワクチンは、致死性のウイルス感染処理に対しても高い効果を示した。生存曲線(図22B)で示すように、B/HA0−OMPCワクチン 10ng、100ng又は1000ngを投与されたマウスでは生存率が100%であり、ワクチン 1ngを投与されたマウスでは生存率が70%であった。予想通り、非処置の対照では死亡率が90%であった。B/HA0−OMPCワクチンは、体重減少を防ぐ点でも大きな効果があった。例えば、対照マウスにおいて30%の体重減少があった一方で、本ワクチン 100ng又は1000ngを投与したマウスの場合、最大体重減少はわずか10%であった。
【0219】
亜致死性の感染処理モデルにおいて、インビボウイルス複製におけるB型インフルエンザワクチンの効果を調べた。4週間に2回の割合でマウスを免疫し、亜致死性量のB/Ann Arhor/54を用いて感染させた。第1、3、5及び7日に、鼻腔及び肺洗浄液を回収した。ワクチン接種マウス及び対照マウスは、鼻腔のウイルス排出の点では明らかな差が見られなかった。しかし、対照と比較して、免疫されたマウスにおいて、肺のウイルス排出が著しく減少した。(図23)
【実施例19】
【0220】
A/H3/HA2ペプチド−KLH連結物をワクチン接種したマウスにおける、A型インフルエンザウイルスによるマウス感染実験
マレイミド活性化KLHとの反応のためのチオール基を与えるために本ペプチドのN末端にシステイン残基を付加することにより、A/H3/HA2−6−KLH連結物(KIDLWSYNAELLVALENQHT(配列番号59)を調製した。
【0221】
第0、3及び5週に、各群10匹のBalb/cマウスに対して、20QS21中のA/H3/HA2−6−KLH連結物 20μgを皮下投与して免疫した。最後の免疫から2週間後に、LD90量のインフルエンザHK リアソータントを用いて、鼻腔を介してマウスへの感染処理を行った。HA6−KLHは、致死性感染処理に対してある程度の防御効果を示した。例えば、感染処理後、対照の死亡率が90%であったのに対して、ワクチン群の死亡率は60%であった。さらに、本ワクチンを投与したマウスにおいて、全般的に対照よりも体重減少が軽度であった(図24)。
【実施例20】
【0222】
HPV VLPsへのM2ペプチドの連結
(Toberyら、2003)に記載されているようにして、HPVタイプ16VLPsを発現させ、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae、出芽酵母)から精製した。この実験で使用した抗原は、標準的なt−Boc固相合成により調製した合成25−残基M2−ペプチドである。このペプチドの配列は、インフルエンザウイルス株、A/Aichi/470/68(H3N1)のM2タンパク質の細胞外セグメント、Ac−SLLTEVETPIRNEWGSRSNDSSD−Aha−C−NH2(配列番号2であり、非天然アミノ酸、6−アミノへキサン酸(Aha)を含有する。)と類似している。
【0223】
抗原キャリア連結物
L1タンパク質濃度が14μMである、50mM NaHCO3 pH8.4中のHPV VLPsを、市販のヘテロ2官能価架橋剤、4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)(PIERCE ENDOGEN,ROCKFORT,IL)と混合して、最終sSMCC/L1タンパク質(mol/mol)比を〜100とした。その反応を、2℃から8℃にて1時間進行させ、次に、10mM ヒスチジン、0.5M NaCl、0.015%ポリソルべート80を含有するpH6.2 緩衝液に対して透析により脱塩し、sSMCC活性化HPV VLPsを生成させた。実施例1に記載されているようなDTNBアッセイにより、マレイミド相当物を調べた。N2注入緩衝液中に溶解させたM2−ペプチドを、sSMCC活性化HPV VLPsと混合し、チオール/マレイミド(mol/mol)比が〜3になるようにした。あるいは、sSMCC活性化HPV VLPsをN−アセチルシステインと、チオール/マレイミド(mol/mol)比が〜10になるように混合することにより、活性化/不活性HPV VLP(A/Q HPV VLP)を調製した。2℃から8℃にて、この反応を〜15時間進行させた。次に、両試料をβ−メルカプトエタノールで処理し、過剰なマレイミドを全て不活性化した。最後に、0.5M NaCl及び0.015% ポリソルベート80に対して、本試料を透析(DISPODIALYSER MWCO 300,000 SPECTRUM INDUSTRIES INC.,RANCHO DOMINGUEZ、CA)した。連結前にHPV VLPs中の遊離チオールをヨードアセトアミドにより不活性化した場合、同様の結果が得られた。
【0224】
タンパク質濃度及びVLP1個あたりのペプチド負荷の測定
比色ビシンコニン酸(BCA)アッセイにより溶液中のタンパク質濃度を測定した。アミノ酸分析によりVLP1個あたりのペプチド負荷を調べた。110℃にて、6N HCl中で70時間、試料を加水分解し、次に陽イオン交換クロマトグラフィー処理後に定量した(AAA SERVICES INC.,BORING,OR)。Aha含量を参照するか、又はShulerら、1992により記載された手段に基づいた分析を行うかのいずれかにより、ペプチド量を測定した。両方法から同様の結果が得られた。
【0225】
ウイルス様粒子における抗原性ペプチド負荷
そのペプチドにおける非天然アミノ酸(Aha、6−アミノへキサン酸)の定量又はデータの重回帰最小2乗解析(Shulerら、「A simplified method for determination of peptide−protein molar ratios using amino acid analysis(アミノ酸分析を用いた、ペプチド−タンパク質モル比の測定に対する簡便法)」、J.Immunol.Meth.,Vol.156 pp.137−149,1992)のいずれかにより、アミノ酸分析を用いて、HPV VLPにおけるペプチド負荷を調べた。両方法により、L1タンパク質1分子あたり約11のペプチド負荷が示された。1個のHPV VLP中には360コピーのL1タンパク質があり(1個のVLPは、72個のL1タンパク質5量体又はカプソマーを含有する。)、従って、VLP1個あたり、全部で約4,000ペプチドコピーが負荷されているということになる。この数は、以前報告された、ウシパピローマウイルス粒子において負荷された全ペプチド数(Chackerianら、2001)よりも著しく多い。ウシパピローマウイルスの場合、抗原ペプチドは、ストレプトアビジン(SA)に融合しており、その融合構築物がビオチニル化VLPsと相互作用した。VLPsのL1タンパク質は、〜1.5SA 4量体を収容しており、その結果、L1単量体1個あたり〜6ペプチドの比になることが分かった。この負荷数は、本発明者らの、HPV VLPに対するM2ペプチドの連結物の場合の約半分である。SA 4量体は容積が大きいため、報告されたこのケースにおいては、抗原が多数負荷することができない可能性がある。
【0226】
sSMCCにより活性化された最初の部位のうちいくつがペプチドカップリングを生じさせたかを調べることで、連結効率を調べることができる。アミノ酸分析により、加水分解プロセスにおけるsSMCC架橋剤の産物であるTXA(トラネキサム酸)の量的推計を行うことができる。TXAの平均測定値から、L1タンパク質1分子あたりの活性化部位が〜19個であることが示されたが、このことから、活性化部位のうち58%(又は11/19)のみがペプチドカップリングに関与することが示唆された。活性化部位の中にはCys、Lys又はHisの近接した側鎖と相互作用することができるものがあり、その結果、そのタンパク質の架橋が起こるという可能性がある。M2−HPV VLP及び活性化/不活性(A/Q)HPV VLPsの両方が、還元条件下で、70℃にて10分間、変性溶液処理を行っても、10%SDS−Bis−Trisゲルに浸透し得ないことが観察された。非活性化HPV VLPsの場合は、ゲル添加前に同条件で処理した後、予想された移動度のタンパク質バンドが得られる。従って、マレイミド活性化後に、顕著な内部−VLP架橋が起こっていると思われる。以下に示すように、VLPサイズ測定から、VLPsの粒子サイズ分布に対するVLP間架橋の影響は無視してよいと思われる。
【0227】
HPV VLPs表面における抗原性ペプチドの空間的分布を考慮した場合、Lys側鎖の一級アミンは、sSMCC活性化が最も起こりやすい部位である。HPVタイプ16のL1タンパク質に34個のLysがあり、これらのリジンのうち9個がC末端に位置する。図25に示す分子の図から、HPVタイプ16VLPsにおける推定活性化部位は、VLP表面に均一に広がっていることが分かる。図25で示されるLys残基のNZ原子は、VLPの外側に配向している。Lys230を除き、Lys残基は全て、表面の25%超が溶媒に曝露されている。C末端領域は非常に柔軟であり、プロテアーゼに接近しやすく、従って、この領域に位置するLysの側鎖が活性化に利用され得ることは十分に考えられ得ることである。残念ながら、このC末端領域は、X線構造において明らかとならなかった(Chenら、2000)。
【実施例21】
【0228】
M2−HPV VLP連結物の医薬的特性
ELECTRON MICROSCOPY BIOSERVICES(MONROVIA,MD)により、JEOL 1200 EX Transmission Electron Microscope(透過型電子顕微鏡)を用いて、高倍率で電子顕微鏡測定が行われた。2% リンタングステン酸を用いて、風乾試料を染色した。Malvern 4700装置において、90°の角度での検出で、室温にて動的光散乱測定を行った。出力は0.25W、絞り(開口)は100、総タンパク質濃度は0.1mg/mlであった。報告されたサイズは、同じ試料における5回の連続的測定から得られたデータの単一モード解析による結果である、Z−平均流体力学的直径を表す。HPV VLP又はM2−HPV VLP連結物溶液濁度の熱誘導性の上昇を、温度調節装置 タイプ89090A付きの分光光度計 HP 8453でモニタリングした。24℃から74℃へと、〜1.5℃/分の割合で温度を上げながら、350nmの光学密度の変化を記録した。分析的超遠心機 Beckman XL−1により、An6Tiローター及びダブルセクターセルを用いて沈降速度実験を行った。ローター速度は、10,000rpmであり、280nmの吸収により境界運動を観察した。プログラムDCDT+(http://www.jphilo.mailway.com)を用いてデータを解析した。Shodex OHpak SB−805カラム及び25mM リン酸、0.75M NaCl、pH7.0を含有する溶出緩衝液を備えたHP 1100システムにおいて、SEC−HPLCを行った。
【0229】
動的光散乱(DLS)測定から、M2−HPV VLP連結物の平均粒子サイズは、非処理HPV VLPキャリアの場合は〜60nmであるが、この連結物(M2−HPV VLP)の場合は〜80nmというように、わずかに大きくなることが示された。A/Q HPV VLPsの平均流体力学サイズは65nmであることが明らかになったが、この値は非処理キャリアのサイズと非常に近い。SEC−HPLCの結果(図26A)において、A/Q又は非処理HPV VLPsと比較して、短い保持時間でM2−HPV VLP連結物の主要なピークが溶出されることが示されているが、これは、A/Q又は非処理HPV VLPsの粒子サイズよりも本連結物の粒子サイズが大きいことに対応するものである。クロマトグラムにおける小さな肩部分から、この連結物の前後に凝集物質の小さな断片が存在することが分かる。最終的に、沈降速度データ(図26B)から、M2−HPV VLPの場合の沈降係数分布において、非処理又はA/Q HPV VLPsの沈降係数よりも大きいs*値に中心があることが示される。キャリアのみの沈降係数と比較して、連結物の沈降係数がわずかに上昇しているのは、DLS及びクロマトグラフィー測定により明らかになったように、この連結物に対するサイズがわずかに大きくなっていることと一致する。全体の結果から、連結プロセスの間に、著しいVLP間架橋(及び、間接的な凝集)が起こっていないことも示唆される。
【0230】
EMによるM2−HPV VLP連結物の観察(図27)により、サイズ分布が40nmから95nmであり、平均が約65nmであることが示される。この値は、非処理HPV VLPsの値と非常に近い。しかし、非連結キャリアと比較して、この連結物がM2−HPV VLPにおいて「不鮮明な様相」を持つことが分かったが、これは連結したペプチドによるものであり得る。EM像で示される複数のVLP凝集体が、同様にHPV VLPに対して観察される。従って、これらは、EM測定のための試料操作の結果であり得、溶液中での試料の典型的な様子ではない。結論として、EMの結果により、HPV VLPsの形態が保存され、化学連結プロセスの間にHPV VLPの骨格の大きな破壊が起こらなかったということが支持される。
【0231】
処理及び非処理HPV VLPs又はこの連結物に対する溶液濁度アッセイで調べた熱誘導凝集の特徴を図28に示す。非処理HPV VLPsに対して、熱誘導性凝集(光散乱による光学密度の増加により明らかになったように)は60℃で検出可能となり、温度をさらに上げた場合、突然上昇する。A/Q VLPs又はM2−HPV VLP連結物の場合、溶液の濁度から70℃以下では検出可能な凝集が示されない。熱誘導性凝集に対する安定性が強まったのは、sSMCC処理により誘導されたVLP内架橋によるものと考えられる。sSMCCを介して形成されるさらなるVLP内結合により、L1タンパク質が部分的に折り畳まれなくなること及び疎水性表面に対する連続的な曝露を防ぎ得る。連結又はsSMCC処理により、HPV VLPsの表面特性が変化し、それがある部分、キャリアの安定性の強化に寄与し得るということは注目するに値する。
【実施例22】
【0232】
M2−HVP連結物のインビトロ抗原性の分析
抗HPV及び抗M2抗体との連結相互作用の検出
Biacore2000において表面プラスモン共鳴技術を用いて、HPVタイプ16VLPs及びM2−HPV VLP連結物の、M2又はHPVタイプ16特異的抗体に対する結合を調べた。抗HPV抗体(配座抗体(conformational antibodies) H16.V5、H16.E70及び抗体H16.J4に結合する直線状エピトープ)及び抗M2抗体を、センサーチップ タイプCM5の表面に化学的に固定化したラット抗マウスFcγ抗体に結合させた。
【0233】
M2−HPV VLP連結物及びA/Q HPV VLPの、直線状及び立体配座抗HPVマウス抗体(mAB)への結合を調べることにより、抗原の空間分布をさらに調べた。配座又は中和抗体H16.V5及びH16.E70に対する結合親和性が劇的に低下することが分かったが、一方、直線状抗体H16.J4への結合の場合は、連結への影響はごくわずかであった。配座抗体H16.V5及びH16.E70の結合に関与するエピトープは、Phe50を含有する(Whiteら、「Characterization of a Major Neutralizing Epitope on Human Papillomavirus Type 16 L1(ヒトパピローマウイルスタイプ16 L1における主要な中性化エピトープの特徴)」、J.Virol.,Vol.73(6),pp。4882−4889,1999)。図25に示すように、6個のリジン残基があるが、これは、Phe50に隣接している。Phe50周辺のいかなるLys残基に対するペプチドの連結も、抗体結合を混乱させると思われる。H16.J4は、VLPにおけるL1タンパク質の上のループと結合する。このループには、Lysが1個しかなく、そのH16.J4への結合がM2−HPV VLPにおいて変化しないので、ペプチドとは連結しないと思われる。
【0234】
1つの懸念事項は、このキャリアの表面で、ペプチドが正しい3−D立体配置を取るかどうかということである。M2タンパク質は、A型インフルエンザウイルスの内在性膜タンパク質であり、選択した抗原配列は、M2の細胞外部分を表す。M2タンパク質は、2個のジスルフィド結合二量体により形成されたホモ四量体であり(Tianら、「Initial structural and dynamic characterization of the M2 protein transmembrane and amphipathic helices in lipid bilayers(脂質二重膜におけるM2タンパク質膜貫通及び両親媒性ヘリックスの一次構造及び動的特徴)」、Prot.Sci.,Vol.12,pp.2597−2605、2003)、我々の知る限り、M2の細胞外部分に関する文献において、詳しい3D−構造は報告されていなかった。CD及び蛍光測定から、溶液中の非連結ペプチドが、大部分、ランダムな構造的配置にあることが示唆される。これらの知見は、VLPの表面の確定的な構造的配置におけるペプチド提示を支持するものではないが、表面プラスモン共鳴により得られた予備的な結果から、M2−HPV VLP連結物が抗M2抗体 L18.H12及びP6.C8に結合することが示される。同条件下で、HPV VLPs又は(A/Q) HPV VLPを用いた場合、抗M2抗体に対する結合は全く検出されなかった。
【実施例23】
【0235】
インビボ免疫評価
4週齢から10週齢のメスBalb/cマウスを、CHARLES RIVER LABORATORIES(Wilmington,MA)より入手した。Merck Aluminium Adjuvant(MAA)に様々なペプチド用量で吸着させたM2−HPV VLPを、4週間の間隔をあけて2回の注射で、0.1ml I.M. 投与した。第2回目の注射から3週間後、マウスに対して感染処理を行った。3、30及び300ngのペプチド用量は、HPV VLP 約5、50及び500ngに相当する。各注射で投与したMAA用量は、45mcgであった。各注射から2週間後に、抗M2幾何平均タイターを調べた。M2抗体ELISAに対して、50mM 重炭酸緩衝液、pH9.6中の4μg/mlの濃度のM2ペプチド、1ウェルあたり各50μlで、96ウェルプレートを4℃にて一晩被覆した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でプレートを洗浄し、0.05% Tween−20を含有するPBS中の3%スキムミルク(ミルク−PBST)でブロッキングした。4倍ずつPBSTで試験試料を連続希釈した。希釈試料 100μlを各ウェルに添加し、そのプレートを24℃にて2時間インキュベーションし、PBSTで洗浄した。所定の希釈率のミルク−PBST中のHRP連結二次抗体 50μlを各ウェルに添加し、そのプレートを24℃にて1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、100mM クエン酸ナトリウム、pH4.5中の1mg/ml o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド 100μlを各ウェルに添加した。24℃にて30分間インキュベーションした後、1N H2SO4を1ウェルあたり100μl添加して反応を停止させ、ELISAプレートリーダーを用いて、490nmでそのプレートの読み取りを行った。連結対照ウェルの平均プラス標準偏差2つ分を超えるOD490nm値を与える最大希釈の逆数として、抗体タイターを定義した。ウイルス感染に対して、マウス馴化ウイルスA/Puerto Rico/8/34(PR8;H1N1)及びX−31(H3N2)、PR8とA/Aichi/68(H3N2)との間のリアソータントを、10日齢の発育鶏卵の尿膜腔液で増殖させた。マウスをケタミン/キシラジンで麻酔した。1 LD90のウイルス20μlを鼻腔に植え付けた。感染処理後、マウス生存率を毎日記録した。(ある特定の日のマウス数/0日のマウス数)x100%として、死亡率を計算した。
【0236】
各免疫から2週間後に採取した血液試料に対するELISA測定の結果から、この連結物により、高い抗M2抗体反応が誘導されたことが示される(図29A)。M2ペプチド用量が3ngから300ngまで増えるに従い、タイターが体系的に向上するにもかかわらず、最低用量と最高用量との間のタイターの差は1対数単位内である。これらの結果から、適切なキャリアにおいて提示された場合、ナノグラム用量の抗原性ペプチドが顕著な免疫反応を誘導し得ることが示される。M2ペプチドをより大きなキャリア、上記のようなナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質複合体(OMPC)に連結させた場合、マウスにおいて同様のタイターが観察されることは注目に値する。
【0237】
致死性の感染処理に対するマウスの生存率を図29Bに示す。最低ペプチド用量(3ng)を投与した群の生存率はわずか60%であったが、一方で、30又は300ngペプチドといった最高用量を投与した群での防御効果は100%であった。対照群では、感染処理後に生存していたマウスはいなかったことから、ウイルス感染処理及びワクチン防御両方が有効であったことが確認できる。上記でM2−OMPC連結ワクチンで見られるように、感染処理後に100%生存した群においてでさえも、ある程度の体重減少が観察された。結論として、Balb/cマウスに対する、M2−HPV VLP連結ワクチンを用いたワクチン接種により、生ウイルス感染処理から動物を効果的に守ることができる。
【0238】
キャリア誘導エピトープ特異的抑制が文献(Raulyら、1999)に記載されている。従って、さらなる実験においては、インビボにおいて抗キャリア抗体の存在により、本連結物の免疫原性がどのように影響を受けるかを調べることになろう。M2−OMPC連結ワクチンを用いた、実施例26で示す実験から、キャリアへ予め曝露することにより、インフルエンザペプチド連結ワクチンに対する反応はなくならないが、わずかに低下することが示される。しかし、連続的な免疫促進により、本キャリアに対する既に存在する抗体のあらゆる有害な影響を切り抜け得ることが示唆された。
【0239】
キャリアによるプレ免疫が抗体反応を弱めることが示されたケースは多数あるが、抗キャリア抗体が存在すると連結ワクチンの免疫原性に対して悪影響が及ぼされるということを推測的にただ提案することはできない。キャリアに対する事前に存在する免疫性(破傷風トキソイド)が、抗hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン(Shahら、「Prior immunity to a carrier enhances antibody responses to hCG in recipients of an hCG−carrier conjugate vaccine(hCG−キャリア連結ワクチンのレシピエントにおいて、既に存在するキャリアに対する免疫性により、hCGに対する抗体反応が促進される。)」、Vaccine,Vol.17,pp.3116−3123,1999)又はマラリアペプチド(Liseら、「Enhanced epitopic response to a synthetic human malarial peptide by preimmunization with tetanus toxid carrier(破傷風毒素キャリアを用いたプレ免疫による、合成ヒトマラリアペプチドに対するエピトープ性反応の促進)」、Infect.Immun.,Vol.55,pp.2658−2661,1987)反応のいずれかに対する有用性が報告された。インフルエンザペプチドエピトープのキャリアとしての組み換え鞭毛について述べている様々なケースにおいて、キャリアに予め曝露しても効果がないことが分かった(Ben−Yedidia及びArnon,「Effect of pre−existing immunity on the efficacy of synthetic influenza vaccine(合成インフルエンザワクチンの効力における、既に存在する免疫の効果)」、Immunol.Lett.,Vol.64,pp.9−15,1998)。HPV VLPsの場合、非処理型(抗HPVワクチンとして)又は処理型(様々な抗原を提示するキャリアとして)のキャリアに予め曝露した動物モデルにおいて何らかの差があるかどうかについてはまだ分かっていない。反応性ヒト血清の75%超がH16.V5抗体により完全にブロックされることが分かった(Wangら、「A monoclonal antibody against intact human papillomavirus type 16 capsids blocks the serological reactivity of most human sera(インタクトなヒトパピローマウイルス タイプ16キャプシドに対するモノクローナル抗体は、ほとんどのヒト血清の血清反応性をブロックする。)」、J.Gen.Virol.,Vol.78,pp.2209−2215,1997)。H16.V5抗体が結合する立体配座エピトープを連結M2−HPV VLPが提示するということから、HPVに対して予め曝露された対象者に対して、抗原とキャリアとしてのHPV VLPsとの間における化学連結により調製したワクチンに対するキャリア抑制をそれ程懸念する必要なないであろうことが示唆される。
【0240】
本明細書中で示すM2−OMPCを用いた実験において、インフルエンザウイルスの致死性感染処理に対する防御効果を、免疫した動物血清を投与することにより受動的に移すことができることが示されているが、このことから、中和抗体が防御力を与えるのに十分であったことが示される。同じ抗原をHPV キャリアに連結させたので、M2−HPV VLP連結物を用いた免疫により、同様の液性反応が引き起こされることが予想される。細胞性免疫に関しては、以前の実験により、IL−4のCD4+T細胞産生により測定したところ、HPVタイプ16VLPsが強いTh2反応を誘導することが示された(Toberyら、「Effect of vaccine delivery system on the induction of HPV16 L1−specific humoral and cell−mediated immune responses in immunized rhesus macaques(免疫したrhesus macaques(アカゲザル)における、HPV16−L1特異的液性及び細胞性免疫反応の誘導におけるワクチン送達システムの効果)」、Vaccine,Vol.21,pp.1539−1547、2003)。HPV CLPsにより提示される非立体配座抗原性配列が、細胞性免疫反応を促進し得ることも提案された(Greenstoneら、1998)。
【実施例24】
【0241】
VLPへのヘマグルチニン由来ペプチドの連結
ペプチド、Cys−A/H3/HA0−22を、HPV VLPに連結させた。
【0242】
【表20】
【0243】
Cys−A/H3/HA0−22のペプチド配列は、A型インフルエンザコンセンサス配列、H3サブタイプのヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に広がる領域に相当する。太字で示すものは様々な機能を果たすために必要な残基であり、それぞれN末端において、グリシンはスペーサーとして、グルタミン酸はpI調整基として(本明細書で述べるように)、及びシステインはリガンドとして、マレイミド活性化HPV VLPキャリアと反応してチオエーテル結合を介したペプチド−VLP連結物を生成させるために必要な残基であり、C末端において、グルタミン酸はpI調整基として必要な残基である。
【0244】
Cys−A/H3/HA0−22のペプチド合成
PIONEER Peptide Synthesizer(APPLIED BIOSYSTEMS,FOSTER CITY,CA)において、Fmoc/t−Bu 化学を用いて、固相により本ペプチドを合成した。ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで既に誘導体化したCHAMPION PEG−PSレジン(BIOSEARCH TECHNOLOGIES,INC.,NOVATO,CA)で、本ペプチドを合成した。。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。本ペプチド会合の最後に、DMF中の10倍過剰量の無水酢酸との反応によりアセチル化反応を行った。
【0245】
アシル化反応は全て、レジンフリーのアミノ基において、活性化アミノ酸 4倍過剰量を用いて60分間行った。等モル量のHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及び2倍モル過剰量のDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)でアミノ酸を活性化した。一般的な側鎖保護基スキームは、Asp、Glu、Ser、Thr及びTyrに対してtert−ブチル、;Cys、Asn、His及びGlnに対してトリチル;Argに対して2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル;Lys、Trpに対してtert−ブトキシカルボニルであった。会合の最後に、88% TFA、5%フェノール、2%トリイソプロピルシラン及び5% 水(Sole,N.A.,及びBarany,G.(1992)J.Org.Chez.,57,5399−5403)で、乾燥ペプチドレジンを室温にて1.5時間処理した。
【0246】
そのレジンを濾過し、本ペプチドを沈殿させるために、冷メチル−t−ブチルエーテルにその溶液を添加した。遠心後、有機捕捉剤を除去するために、新鮮な冷メチル−t−ブチルエーテルでこのペプチドペレットを洗浄した。このプロセスを2回繰り返した。最終ペレットを乾燥させ、H2O、20%アセトニトリルで再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0247】
セミ分取RCM DELTA−PAKTM(WATERS,MILFORD,MA) C−18カートリッジ(40x200mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチドを精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分の条件を使用した。ULTRASPHERE(BECKMAN、FULLERTON,CA)、C18カラム、25x4.6mm、5μmで、B:30%−45%B(20分)の勾配を用いて、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(WELESLLEY,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均mwが2293.4Daのところ、測定値は、2293.8Daであった。
【0248】
HPV VLPに対する、ペプチド Cys−A/H3/HA0−22の連結
0.5M NaCl、20mM His緩衝液、0.026% PS80、pH6.2中で0.869mg/mlの濃度になるようにHPV VLP16滅菌保存溶液を調製した。活性化反応を妨害する可能性のあるHis緩衝液を除去するために、HPV VLP16保存溶液を2.5mlずつ分注したものを、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES,INC.,RANCHO DOMINGUEZ,CA)を用いて、0.5M NaCl、0.026 PS80 2Lの緩衝液を6回交換(2時間ごと)しながら、透析を行った。HPV VLP溶液(0.474mg/ml、4.58ml)に対して、0.5M NaHCO3(0.506ml)を、最終濃度が50mM、pH8.2になるように添加した。これに、ヘテロ二官能価架橋剤、スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC、PIERCE CHEMICAL CO,ROCKFORD,IL)の20μM 溶液 0.156mlを滴下添加したが、この量は、利用可能なリジン残基を超える4倍過剰量に相当する。4℃にて、暗所で2時間その溶液を熟成させた後、過剰量の試薬を除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES INC.,Rancho Dominguez CA)を用いて、10mM His緩衝液、0.5M NaCl、0.015% PS80、pH6.2 2Lの緩衝液を6回交換(少なくとも2時間ごと)しながら、活性化HPV VLPを透析した。透析後に、全部で6.1mlの活性化HPV VLP(aVLP)、0.356mg/mlを回収した。
【0249】
Cys含有ペプチドリガンド、Cys−A/H3/HA0−22の0.5mg/ml保存溶液を、0.1M His、0.5M NaCl、0.015% PS80 pH7.2の脱気溶液で調製し、0.2μで濾過した。そのペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイ(Ellman,G.L.(1959),Arch.Biochem.Biophys.,82,70)により測定したところ、218μMのSH−タイターを示した。
【0250】
沈殿を生じさせずにVLPに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、連結反応を最初に小規模で行い、ペプチドリガンドの量を増量させながらVLPをインキュベーションした。VLPに導入できるマレイミド基の最大数は、その外面に示される、つまり、化学的修飾に利用可能なリジン残基の数により制限される。L1タンパク質のX線構造を基すると、連結に利用可能なVLPは、0.36μmolリジン/mg (連結に利用可能なVLP)である。VLPの平均MW、20x106Daを考慮する場合、これは、7,200リジンモル/VLPモルに相当する。従って
、次のVLP1モルあたりのモル濃度過剰量のペプチドリガンド:1000、2000、4000、6000と、aVLPをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、aVLP試料とその試料を比較した。連結反応により、最大1000まで(mol Cys−ペプチド/VLP mol)のモル濃度過剰量を使用して1時間インキュベーション反応を行った場合、可溶性生成物のみが得られた。その比を超えると、OMPC溶液の完全な沈殿が起こった。
【0251】
これらの観察を基に大規模な反応を行った:pHを7.2に上げるために、10mM His、0.5M NaCl中の3.5ml(1.25mg)に、NaOH 0.25M 56μlを添加した。穏やかにボルテックスしながら、これに、ペプチド保存溶液 0.28mlを滴下添加したが、これは、1000モル濃度過剰量のペプチドモル/VLPmolに相当する。マレイミド−活性化VLP溶液の試料を、最終連結物のペプチド負荷測定用ブランクとして用いた。連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。4℃にて、暗所で1時間、最終濃度が15mM(総量4μLを添加した。)になるように、β−メルカプトエタノールを添加して、あらゆるVLPの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES,INC.,RANCHO DOMINGUEZ,CA)を用いて、0.5M NaCl、0.015% PS80 1Lで、5時間ごとに4回液交換を行い、その溶液を透析した。BCA法(PIERCE CHEMICAL CO.,ROCKFORD,IL)により濃度を測定したところ、VLP−A/H3/HA0−22の濃度は、0.131mg/ml(4.5ml)であることが分かった。
【0252】
真空排気された密封ガラス試験管中で、共沸性のHClを用いて、110℃にて70時間、本連結物及びaOMPC試料を加水分解した。アミノ酸分析により、アミノ酸組成を調べた。連結物アミノ酸組成を、VLPキャリア及びペプチドリガンドの両アミノ酸組成と比較すること、及び、そのデータの重回帰、最小二乗解析により(Shulerら、J.Immunol.Meth.,156,(1992)137−149)、OMPCタンパク質へのペプチドの連結負荷を調べた。VLPとA/H3/HA0−22との間の連結物に対して、モル比は770であった(ペプチド/VLP mol/mol)。
【実施例25】
【0253】
M2連結ワクチンによるウイルス排出の抑制
実施例5で述べたようにM2ペプチド配列番号1を用いて調製したM2−KLH連結ワクチンの、マウスの気道におけるウイルス複製に対する効果を評価した(図30)。各群のBalb/cマウスに対して、第0、14及び28日に、連結ワクチン、M2−KLH 20μgとQS21(M2−KLH/QS21) 20μg、又はQS21のみ 20μg(QS21)を用いて、筋肉内注射により免疫した。3回目の免疫から3週間後に、A/HK/68 リアソータントの75 TCID50を用いてマウスの鼻腔内に対して感染処理を行った。感染処理後、第1、3、5、7又は9日に、各群から8匹のマウスを屠殺し、鼻腔洗浄液及び肺洗浄液を回収した。それぞれの時間点のウイルスタイターを調べた。免疫したマウスは、対照マウスよりも全般的に鼻腔試料及び肺試料の両方においてウイルスタイターが低かった。ウイルス排出の低下は、肺においてより顕著であった。対照とワクチン接種群との間の肺における排出の差は、統計学的に有意であった(p<0.05)。
【実施例26】
【0254】
アカゲザルにおけるM2連結ワクチンの免疫原性
非免疫及びOMPC−免疫アカゲザルの両方において、M2ペプチド配列番号2を用いて、実施例5のように調製したM2−OMPC連結物を試験した(図31)。認可済みのヘモフィルスインフルエンザワクチン(PEDVAXHIB、MERCK&CO.,INC.,WEST POINT,PA)を含むいくつかの細菌性多糖類連結ワクチンに対するキャリアとして、OMPCが使用されている。従って、この実験では、OMPCに対する既存の免疫が本インフルエンザワクチンの効力に明らかに影響を及ぼすか否かを調べた。
【0255】
30匹のサルを各15匹ずつ2群に分けた。抗OMPC抗体反応を誘導するために、一方の群に、2種類のヒト用量のPEDVAXHIBを用いてプレ免疫を行った。PEDVAXHIB免疫を受けたサルでは、M2−OMPC免疫の6週間前に、OMPC GMTsが14,703であった。
【0256】
次に、OMPC免疫されたサル及び免疫を受けなかったサルを、各3匹ずつそれぞれ5群に分け、筋肉内投与により、Alum中に処方したM2−OMPC連結ワクチンを10μg、30μg、100μg及び300μg(総連結タンパク質に基づいた用量)又はAlumプラスQS21中に処方した本ワクチン 100μgを用いて免疫した。0−、8−及び25週のスケジュールを用いて免疫を行った。33週間にわたり、4週間から5週間隔で血液試料を回収した。
【0257】
1回の免疫後、M2−OMPCワクチンは、顕著なM2−特異的タイターを誘導した。2回目及び3回目の免疫後、これらの反応がさらに促進された。OMPC免疫したサル及びOMPCを免疫しなかったサルの両方で、明らかな用量効果はなく、最低用量である10μgにおいて、最高用量である300μgで誘導されたM2特異的タイターと同程度のM2特異的タイターが誘導された。AlumプラスQS21中に処方されたワクチンは、Alumのみの中に処方された同用量の連結物よりも、5倍から10倍高い抗体タイターを示した。さらに、AlumプラスQS21中のワクチンを投与されたサルにおける抗体タイターは、Alumのみの中のワクチンを投与されたサルにおいて観察されるよりも、低下速度が遅かった。
【0258】
OMPC免疫したサルとOMPCを免疫しなかったサルとを比較すると、初回注射後、OMPCを免疫しなかったサルよりも前者は、タイターがおよそ10倍低かった。このことから、キャリアに対する既存の抗体が、M2−OMPC連結ワクチンの免疫原性に対して悪影響を及ぼすことが示された。しかし、キャリアに対する既存の免疫による有害な影響は、その後の免疫促進により解消される。2回目及び3回目の免疫後、本実験の2種類の治療群における群で、同程度の抗M2タイターを得た。従って、この結果から、キャリアに対する既存の抗体の有無にかかわらず、M2−OMPCワクチンが非ヒト霊長類において免疫原性があることが示された。サルを用いた別の実験においてPEDVAXHIB及びM2−OMPC連結ワクチンの共投与を含む投薬計画についても試験し、M2ペプチドに対する全般的な抗体反応に対して悪影響が全くないことが分かった。従って、以前に他のOMPCを利用した連結ワクチンに曝露されている集団にもこのワクチンを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】チオール化したキャリア(1)とブロモアセチル化した(2)又はマレイミド化した(3)ペプチドとの反応及びその結果得られるチオールエーテル結合(スキームI)。
【図2】キャリアの本来の一級アミン(1)とブロモアセチル化した(2)又はマレイミド化した(3)ペプチドとの反応及びその結果得られる二級アミン結合(スキームII)。
【図3】マレイミド化したキャリア(1)とチオール含有ペプチド(2)との反応及びチオールエーテル結合の生成(スキームIII)。複数のチオールを含有するペプチドの場合、キャリアマレイミド基との複数の結合が1つのペプチドにより生じ得る。これにより、そのキャリアに負荷するペプチド総数が減少し得る。個々のタンパク質のマレイミドにおいて複数の結合が生じる場合、そのペプチドを介してキャリアサブユニットの架橋結合が生じ得る。
【図4】ハロゲン化アルキルキャリア(1)と、チオール含有ペプチド(2)との反応及びチオールエーテル結合の生成(スキームIV)。複数のチオールを含有するペプチドの場合、キャリアハロゲン化アルキル(示されているヨードアセチル又はブロモアセチル)基との複数の結合が、1つのペプチドにより生じ得る。これにより、そのキャリアに負荷されるペプチド総数が減少し得る。個々のタンパク質のヨードアセチル基において複数の結合が生じる場合、そのペプチドを介してキャリアサブユニットの架橋結合が生じ得る。
【図5】架橋結合したマレイミド化インフルエンザペプチド及びチオール化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(1,2−ジカルボキシエチル)−ホモシステインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、4−アミノ酪酸及び6−アミノヘキサン酸を定量することができる(スキームV)。
【図6】カップリングしたブロモアセチル化インフルエンザペプチド及びチオール化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(カルボキシメチル)−ホモシステインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、6−アミノへキサン酸を定量することができる(スキームVI)。
【図7】インフルエンザペプチドを含有するカップリングさせたシステイン及びヨードアセチル化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(カルボキシメチル)−システインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、6−アミノへキサン酸を定量することができる。OMPCと会合する架橋剤の総量を推定するために、4−アミノ安息香酸を定量することができる(スキームVII)。
【図8】Flu M2ペプチドを含有するカップリングさせたシステイン及びマレイミド化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(1,2−ジカルボキシエチル)−システインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、6−アミノへキサン酸を定量することができる。OMPCと会合する架橋剤の総量を推定するために、トラネキサム酸を定量することができる(スキームVIII)。
【図9】マウスにおける、M2ペプチド連結ワクチンによるM2特異的抗体反応の誘導。メスBalb/cマウス、各群10匹を、筋肉内注射により、指定された連結物、0.01μg、0.1μg又は1μg(ペプチド重量を基に投薬)を用いて免疫し、3週間後に1度、同用量で免疫促進した。初回免疫(PD1)から2週間後及び免疫促進(PD2)から3週間後に血液試料を回収した。酵素結合免疫吸着アッセイ(Elisa)によりM2−特異的抗体のタイターを調べた。データは、群の幾何平均±標準誤差(GMT±SE)で表す。CT M2 15mer ma −OMPC、M2−15−mer(配列番号10)をマレイミド活性化OMPCに対してC末端システインを介して連結させた;CT BrAc−M2 15mer OMPC、C末端ブロモアセチル化M2 15mer(配列番号13)をチオール化OMPCに連結させた;NT BrAc−M2 15mer OMPC、N末端ブロモアセチル化 15mer M2ペプチド(配列番号11)をチオール化OMPCに連結させた;CT BrAc−M2(SRS)OMPC、C末端ブロモアセチル化 M2 23−mer(SRS)(配列番号39)をチオール化OMPCに連結させた。GMT=幾何平均タイターである。
【図10】致死性のインフルエンザ感染処理に対する、CT M2 15mer ma−OMPC及びCT BrAc−M2 15mer OMPCによる防御。動物免疫プロトコールに対する凡例は図9のとおりである。免疫促進から4週間後に、flu A/HK/68再集合物のLD90量を動物に対して鼻腔内投与した。試験日の群平均体重/インフルエンザ投与後0日の群平均体重x100%として、体重変化の割合を計算した。試験日の動物数/インフルエンザ投与後0日の動物数x100%として、生存率を計算した。
【図11】致死性のインフルエンザ感染処理に対する、CT BrAc−M2 15mer OMPC及びCT BrAc−M2(SRS)OMPCによる防御。凡例は図9、図10のとおりである。
【図12】致死性のインフルエンザ感染処理に対する、CT BrAc−M2 15mer OMPC及びNT M2 15mer ma−OMPCによる防御。凡例は図9、図10のとおりである。
【図13A】チオール化OMPCに対する、マレイミド誘導体化インフルエンザペプチドの連結。
【図13B】チオール化OMPCに対する、ブロモアセチル化インフルエンザペプチドの連結。
【図14】ペプチド、配列番号12及び配列番号14は、図13aで概略的に示すように、キャリアタンパク質と連結させることが可能なペプチドの例である。ペプチド、配列番号11及び配列番号13は、図13bで概略的に示すように、キャリアタンパク質と連結させることが可能なペプチドの例である。ペプチド、配列番号39は、OMPC又は他のキャリアタンパク質のチオール反応誘導体に連結し得るC末端システインを有するSRS M2配列の短縮型である。配列番号2は、より長いM2の対応体を表す。
【図15】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号8
【図16】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号1
【図17】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2
【図18】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2
【図19】二量体としてリジン骨格に一緒に結合する複数のM2ペプチドの略図。DAP=L−2,3−ジアミノプロピオン酸。上の二量体には、配列番号55及び56が含まれる。下の二量体には、配列番号57及び58が含まれる。
【図20】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2。図18で表される構造へのCys残基の導入により、図17及び20で示されるような、遊離チオール官能基を持つMAPが得られる。ブロモアセチル、マレイミド又は他のチオール反応基を含有するキャリアタンパク質へ連結させるために、このようなMAPsを使用し得る。
【図21】複数のリジン骨格(その骨格が相互に結合している。)における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2。
【図22A】HA0特異的抗体は、B型インフルエンザペプチド連結ワクチンに対して反応する。
【図22B】B型インフルエンザペプチド連結ワクチンを接種したマウスにおける、B型インフルエンザ感染処理後の生存曲線。
【図23】亜致死性感染処理モデルにおいて、インビボのウイルス複製に対するB型インフルエンザワクチン成分の効果を調べた。
【図24】A型インフルエンザHA2ペプチド連結ワクチンで免疫したマウスの生存曲線。
【図25】X線により調べた、12−カプソメアVLPにおけるL1タンパク質のリボンダイヤグラム(Chenら、“Structure of small virus−like−particles assembled from the L1 protein of human papillomavirus 16(ヒトパピローマウイルス16のL1タンパク質からアセンブルさせた小ウイルス様粒子の構造)”、Mol.Cell.,Vol.5,pp.557−567,2000)。個々の灰色の丸は、VLPの外面にある19Lys鎖のNZ原子を表す。濃い灰色の部分は、H16.V5及びH16.E70抗体両方に対するエピトープ部分である、Phe50を示す。薄い灰色の部分は、H16.J4抗体に対する結合ループを表す。この図は、プログラム MolMol(Koradi,R.,Billeter,M.及びWutrich,K.1996.MOLMOL:a program for display and analysis of macromolecular structures(巨大分子構造の表示及び解析用プログラム)、J.Mol.Graphics 14,51−55)を用いて作成した。
【図26A】(27A)SEC−HPLC及び(27B)分析的超遠心により調べた、HPV VLPタイプ16(実線)、活性化/不活性 HPV−VLP(破線)及び連結M2−HPV VLP(丸付きの実線)の粒子サイズ分布。
【図26B】(27A)SEC−HPLC及び(27B)分析的超遠心により調べた、HPV VLPタイプ16(実線)、活性化/不活性 HPV−VLP(破線)及び連結M2−HPV VLP(丸付きの実線)の粒子サイズ分布。
【図27】M2−HPV VLPの電子顕微鏡像。
【図28】HPV VLPタイプ16(実線)、活性化/不活性HPV−VLP(破線)及び連結M2−HPV VLP(丸付きの実線)に対する、OD350nmで観察した温度誘発凝集。
【図29A】T=0及びT=4週間において様々なペプチド用量のM2 HPV VLPを含有するワクチンで免疫してから、T=2及び6週間後のマウスにおける、M2−HPV VLPにより誘導された抗−M2抗体の幾何平均タイター(GMT)。
【図29B】様々なペプチド用量のM2−HPV VLPを含有するワクチンで免疫したマウスの致死性の感染処理に対する生存率
【図30】マウスにおける鼻部及び肺のウイルス排出に対する、M2−KLH連結ワクチンを用いた免疫による防御。マウスにおける亜致死性感染処理後の上気道及び下気道におけるウイルス排出の特徴。データは、各日付時点の8匹のマウスのGMT+/−S.E.として表す。破線はアッセイ検出閾値である。GMT=幾何平均タイター。
【図31】アカゲザルにおける、M2−OMPC連結ワクチンによる抗体反応の誘導。30匹のアカゲザルを、各3匹ずつ10群に分けた。各データポイントは、群ごと3匹の動物の平均GMTを表す。平均/Alumは、Alum中で処方したM2−OMPCを投与した、OMPC免疫又はOMPC未免疫サルいずれかの全4群のGMTを表す。GMT=幾何平均タイター。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルスが関与する疾患の予防及び処置のためのワクチン、ワクチン接種及び治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
外被のある分節型マイナス鎖RNAウイルスであるインフルエンザウイルスには、2種類の主要なタイプ、A型インフルエンザとB型インフルエンザがある。このウイルスは、ヒトにおけるインフルエンザを引き起こす原因となる感染物質である。A型インフルエンザウイルスは、2つのウイルス性膜貫通タンパク質、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)の抗原の相違に基づき、さらにサブタイプに分けられる。現在まで、ヒトにおいてA型インフルエンザの3種類のサブタイプ、H1N1、H2N2、H3N2が同定されている(Hilleman,Vaccine 20,3068−3087,2002)。ほぼヒトでのみ広がっているB型インフルエンザウイルスの特徴は、抗原変化の割合がより低いことである。最近単離されたB型インフルエンザウイルスは、インフルエンザB/Victoria/2/87サブクラスとインフルエンザB/Yamagata/16/88サブクラスの2種類の主要な系統に分類される。これら2つの系列は、抗原的及び遺伝学的に異なり、フェレットにおいて、感染後の交差中和抗体反応がほとんど見られない(Rotaら、J Gen Virol 73(Pt 10),2737−42(1992))。
【0003】
インフルエンザウイルスゲノムは分節型であるため、超感染性細胞においてウイルスが複製する間に分節の再集合が起こる。遺伝子の突然変異及び遺伝的浮動と組み合わさって、分節の再集合により、やがて各血清型群の中でインフルエンザの無数の分岐種が生じる。新種では、そのヘマグルチニン及び/又はノイラミニダーゼタンパク質において抗原変化が起こっている。
【0004】
現在の主なインフルエンザ予防法は、ワクチン接種を毎年行うことである。通常、ウイルス全体に対するワクチンが使用される。このワクチンには、A型インフルエンザ H1N1株、A型インフルエンザ H3N2株及びB型インフルエンザ株が含有されなければならない。しかし、インフルエンザ膜貫通タンパク質が常に抗原性を変化させるため、これらのタンパク質に対する単一のワクチンを毎年使用することは適切ではない。従って、インフルエンザウイルスの全体的集団の無数の株の特徴を調べ、追跡し、予想する。ある年のウイルスの個々の株の流行及び予想に基づいて、有力かつ予想されるウイルス株に対する防御的免疫反応を刺激するようにワクチンが設計される。
【0005】
単回のワクチン接種で何年にもわたる、又は一生の防御効果を付与するワクチンを使用することに比べ、毎年ワクチン接種を行うことは患者及び医師にとって不便であり、患者間で一貫性がなく、ある血清型群の中の他のインフルエンザウイルス株に対する交差防御が得られず、その結果、生物はインフルエンザに感染してしまうこととなる。従って、単回接種で行うことができるインフルエンザに対するワクチンにより、変化の大きなウイルス集団における新株に対する交差防御が可能となり、ワクチン接種を受けた人に何年にもわたり、又は生涯を通して、そのような防御効果を付与できる可能性があるが、これは非常に有用と考えられる。
【0006】
あるインフルエンザ型の全株に共通する安定したインフルエンザ抗原を基にしたワクチンにより、そのような利益が得られる可能性がある。最近、A型インフルエンザのM2タンパク質が、そのようなワクチンの基盤を形成し得る抗原タンパク質として研究されている(Slepushkinら、1995,Vaccine 13:1399−1402)。M2タンパク質は、構造的に保存されたウイルス表面タンパク質である。M2は、インフルエンザビリオンの中で比較的少ない成分である(Zebedee及びLamb,1988 J.Virol.62:2762−2772)が、ウイルス感染中に感染細胞において多量に発現される(Lambら、1985 Cell 40:627−633)。感染細胞において、M2は細胞膜に現れ、ウイルス複製のためのプロトンフラックスを作る(Helenius,1992 Cell 69:577−578)。
【0007】
A型インフルエンザの複製は、感染のインビボ及びインビトロモデルの両方でM2に対する抗体により阻害されると述べられている(Zebedee及びLamb,1998 J.Virol.62:2762−2772;Hugheyら、1995 Virology 212:411−421)。Slepushkinら(1995 Vaccine 13:1399−1402)は、全長M2をワクチン接種したマウスにおいて、異種のA型インフルエンザによる致死性の感染が防御され、感染した肺組織からのウイルス除去が促進されたことを示す実験について述べている。
【0008】
最近、疎水性膜貫通ドメインが除去された改変型M2タンパク質がワクチン調製に有用であることが報告された(米国特許第6,169,175号)。別の方向から、Neirynckら(1999 Nature Med.5:1157−1163)が、M2の細胞外ドメインをB型肝炎コア抗原のN末端に融合させたものを用いることについて述べている。肝炎コア抗原をウイルス様粒子に組み込んだ場合、M2エピトープは、B型肝炎コア抗原の露出されたN末端の一部として存在すると考えられた。この著者らは、これらの系において、ウイルス粒子及び感染細胞でのM2タンパク質の野生型の構造を模倣する形で、B型肝炎コア抗原に対するN末端融合物がM2エピトープを提示することについて述べている。
【0009】
しかし、このアプローチは、M2に相当するワクチン標的が欠けているのでB型ウイルスまで拡大することができない。B型インフルエンザウイルスにおけるM2に相当する機能を有するものとして最も有望な候補タンパク質、BM2は、5アミノ酸から7アミノ酸のみという非常に短い細胞外ドメインを有する(Mouldら、Developmental Cell 5,175−184,2003)。他の候補タンパク質、NBは、最近、インビトロにおいてウイルス複製に不要ではないことが示された(Hattaら、J.Virol.77,6050−6054,2003)。
【0010】
普遍的なB型インフルエンザワクチンを開発するための別のアプローチは、HA0と呼ばれるHA前駆体の成熟のための切断部位を利用するものである。HAの保存的エピトープ及び特にHA0の保存的エピトープを標的とするワクチンは、A型インフルエンザ及びB型インフルエンザの両方に適応可能であると考えられる。
【0011】
外被糖タンパク質HAは、ウイルスの初期接着及びそれに続く内在化の両方を仲介する(Skehelら、Annual Review of Biochemistry 69,531−69,2000)。HAは、2つのサブユニット、HA1及びHA2から構成されるが、これらはその前駆体HA0から切り出されたものである(Skehelら、Proc Natl Acad Sci USA 72,93−7 1975;Chenら、Cell 95,409−17,1998)。HA0の成熟は、細胞内プロセスであり、ウイルスが複製している細胞により分泌されるプロテアーゼが介在する(Zhirnov,Biochemistry(Mosc)68,1020−6(2003))。プラスミン、カリクレイン、ウロキナーゼ、トロンビン、血液凝固因子Xa、アクロシン、トリプターゼ クララ、トリプターゼTC30、ミニプラスミン、ヒト呼吸器洗浄液由来のプロテアーゼ及びスタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)及びシュードモナスエルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌)由来の細菌性プロテアーゼを含む、多くの分泌酵素がHA0切断に関与している。HA0がHA1−HA2となるように切断されることより、ウイルス感染が活性化されるが(Klenkら、Virology 68,426−39,1975;Lazarowiz&Choppin,Virology 68,440−54(1075))、これはヒト及び鳥類ホストにおける病原性に極めて重要である(Klenk & Garten,Trends Microbiol 2,39−43 1994;Steinhauer,Virology 258,1−20,1999)。
【0012】
ホストプロテアーゼに対する感受性を決定するHAの主な特徴は、HA0前駆体のタンパク質分解部位の構成であるが、X線結晶解析により、A型インフルエンザに対するその構造が最近解明された(Chenら、Cell 95,409−17,1998)。HA0は、プロセシングを受けた成熟HA1−HA2タンパク質とほぼ同じであり、主として切断部位周辺の18残基が異なっている。前駆体において、これらの残基は、広がった非切断ループとして折りたたまれている。サブユニット間の切断部位のアミノ酸配列は、各インフルエンザサブタイプ内、およびB型インフルエンザの2つの株内で非常によく保存されている。融合ペプチドに対応するHA2側も、A型インフルエンザサブユニットにおいてよく保存されており、H3及びH1、ならびにB型インフルエンザについてもほぼ同じである。
【0013】
本願を通して、HA0ペプチドという用語は、HA0の一次配列由来のあらゆるペプチドを表すために使用される。これにはHA0に特有の切断部位配列が含まれるが、それだけでなく、HA0前駆体及び成熟HAが共有するいかなる配列も含まれる。同様に、成熟HAは、2つの共有結合サブユニット、HA1及びHA2から構成される。このような理由から、切断部位配列と異なるHA0ペプチドは、あるいは、HAペプチド又はHA2ペプチドを意味する。これらの用語はそれぞれ、本明細書中でHA0ペプチドを意味するクラス内のペプチドのタイプを意味する。
【0014】
このアプローチの実現可能性は、まず、Nagyら(HA0(サブタイプH1)の配列317−341に相当する合成ペプチドを用いてワクチン接種したマウスにおいて、致死性のウイルス感染がある程度防御された(Nagyら、Scand J Immunol 40,281−91,1994)ことを示した。)により調べられた。ウイルス複製におけるプロテアーゼ阻害剤の効果から、HA0のHA1−HA2への転換がワクチン標的として有効であることがさらに確認された。単一タイプの切断部位を有するインフルエンザウイルスにおいて、セリンプロテアーゼ阻害剤は、HA0切断を抑え、培養細胞、ヒト気道上皮及び感染マウスの肺におけるウイルス活性化を低下させることができる(Zhirnovら、J Gen Virol 63,469−74,1982;Zhirnovら、J Gen Virol 65,191−6,1984;Zhirnovら、J Virol 76,8682−9,2002)。
【発明の開示】
【0015】
本発明の要約
本発明のある局面は、複数のペプチドが、それぞれA型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結している(conjugated)、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のその塩である。
【0016】
本発明の別の局面は、複数のペプチドが、それぞれA型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結している、タンパク質−ペプチド連結物(conjugate)又は医薬適合性のその塩である。
【0017】
本発明の別の局面は、複数のペプチドが、それぞれB型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結している、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のその塩である。
【0018】
特定の実施形態において、前記ペプチドは、前記タンパク質表面の反応部位に対する共有結合ペプチドにより前記タンパク質に連結する。得られる構造は連結物である。前記タンパク質表面における反応部位は、化学的に活性があるか、又は活性化され得、ペプチドとの共有結合のために立体的に見て利用できる部位である。好ましい反応部位は、アミノ酸リジンのイプシロン窒素である。共有結合されるとは、生理的条件下での加水分解に対して安定である共有結合の存在を意味する。好ましくは、共有結合は、付加体形成、酸化及び還元を含む、生理的条件下で起こり得る他の反応に対して安定である。ペプチドのタンパク質への共有結合は、「結合生成手段」により遂行される。そのような方法は、本明細書中に記載されている対応する構造、物質又は作用及びそれらの同等物の範囲にわたる。
【0019】
本発明のこの局面の特定の実施形態において、キャリアタンパク質は、ワクチン接種の分野で有用な抗原性タンパク質である。本発明のある特定の実施形態において、本抗原性タンパク質は、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis、髄膜炎菌)の外膜タンパク質複合体(OMPC)である。他の実施形態において、キャリアタンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗原(HBcAg)、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク又はウシもしくはヒトパピローマウイルスのウイルス様粒子(VLP)、例えば、タイプ6、11又は16の HPVのVLP、のL1タンパク質、である。
【0020】
本発明のこの局面のさらなる実施形態において、本ペプチドは、N末端又はC末端を介してキャリアタンパク質に連結する。
【0021】
さらなる実施形態において、本ペプチドは、リンカー部分を介してキャリアタンパク質に連結する。特定の実施形態において、このリンカーは、モノジェネリック(Monogeneric)又はバイジェネリックスペーサー(bigeneric spacer)である。
【0022】
さらなる実施形態において、本キャリアタンパク質は、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis、髄膜炎菌)の外膜タンパク質複合体(OMPC)であり、その連結物は、各OMPCの表面に連結した約100ペプチドから約6000ペプチドを有する。
【0023】
さらなる実施形態において、本ペプチドの配列における天然に生じるアミノ酸を、他のアミノ酸で置換する。ある特定の実施形態において、システイン残基をセリン残基で置換する。
【0024】
さらなる実施形態において、本ペプチドの配列を改変して、本ペプチドの等電点を変更する。
【0025】
本発明の別の局面は、連結物、アジュバント及び生理学的に許容可能な担体を有するワクチンである。特定の実施形態において、前記アジュバントは、アルミニウムを基にしたアジュバントである。特定の実施形態において、本ワクチンにはさらに、陽イオン性アジュバント、例えばQS21アジュバントが含まれる。
【0026】
本発明の別の局面は、M2連結物及びB型インフルエンザ由来のHA0ペプチド連結物、アジュバント及び生理学的に許容可能な担体を有するワクチンである。
【0027】
本発明の別の局面は、M2連結物及びA型インフルエンザ由来のHA0ペプチド連結物、B型インフルエンザ由来のHA0ペプチド連結物、アジュバント及び生理学的に許容可能な担体を有するワクチンである。
【0028】
本発明の別の局面は、多数のペプチドそれぞれが、A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結する、ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩を含有するワクチンを用いた、A型インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対する、患者のワクチン接種方法である。好ましい実施形態において、本発明のワクチンを有効量患者に投与する。
【0029】
本発明の別の局面は、多数のペプチドそれぞれがA型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結する、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のそれらの塩を含有するワクチンを用いた、A型インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対する、患者へのワクチン接種方法である。好ましい実施形態において、本発明のワクチンを有効量患者に投与する。
【0030】
本発明の別の局面は、多数のペプチドそれぞれが、A型又はB型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質のエピトープを含有し、キャリアタンパク質の表面に連結する、タンパク質−ペプチド連結物又は医薬適合性のその塩を含有するワクチンを用いた、A型又はB型インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対する、患者へのワクチン接種方法である。好ましい実施形態において、本発明のワクチンを有効量患者に投与する。
【0031】
本発明の別の局面は、インフルエンザのM2タンパク質の細胞外エピトープの配列を有するペプチドをタンパク質表面の反応部位に共有結合させることにより、ペプチド−タンパク質連結物を作成する方法である。
【0032】
本発明の別の局面は、本発明の連結物を補い、補助された本連結物を医薬適合性の担体を用いて処方することによりワクチンを作成する方法である。
【0033】
本発明の別の局面は、抗原性成分の1つが、キャリアタンパク質表面のアミノ酸に連結するA型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを有するペプチドを含有する、併用ワクチンである。特定の実施形態において、この併用ワクチンは、ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、A、B又はC型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、ロタウイルス、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumonia、肺炎球菌)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)から選択される抗原性成分を含有する。さらに、本発明ワクチンを、特に、ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ由来のエピトープを含む、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスの他の抗原性成分と組み合わせることができる。
【0034】
本発明の詳細な説明
本発明は、A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外エピトープを含有する複数のペプチドがキャリアタンパク質表面のアミノ酸に連結している、インフルエンザワクチンを提供する。連結物の調製及びワクチンの処方方法を本明細書中で提供する。本発明はまた、疾患に対する長期間にわたる防御効果を患者に対して付与し、A型インフルエンザウイルスの感染により起こった症状を軽減する、患者へのワクチン接種方法も提供する。
【0035】
ペプチド
A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質細胞外部分は通常、そのタンパク質の24個のN末端アミノ酸として認識される。ワクチンにおいて用いるペプチドは、この24アミノ酸配列中から選択されるアミノ酸配列を有する。そのペプチドの特定の配列は、その24個全てのアミノ酸配列又は少なくとも7アミノ酸を有し、抗原エピトープを含むその一部であり得る。
【0036】
注目すべきは、インフルエンザM2タンパク質の最初のアミノ酸がメチオニンであるという点である。本発明のあらゆる実施形態において、終末メチオニンの存在は任意である。
【0037】
24個のN末端アミノ酸の有効なサブ配列は、例えば、次の過程を介して決定し得る。最初に、産生される抗体が前記24個のアミノ酸配列に対して結合するかどうかを決めるために、サブ配列を有するペプチドを調べる。次に、そのペプチドをキャリアタンパク質に連結させ、得られた連結物を使用して、マウス、フェレット又はサル等の動物にワクチン接種する。動物から採取した血清にそのペプチドに対する抗体があるかどうかを調べる。最後に、その動物に対してインフルエンザウイルス感染処理を行う。感染の経過及びその結果起こった疾患の重症度を評価する。この過程は、多数の動物で行うことが望ましく、全ての動物にわたり結果を評価する。この連結物によるワクチン接種により感染レベルが低下したか、又はこの結果起こる疾患の重症度が低下した場合は、そのペプチドをワクチン調製において有用であるとみなす。
【0038】
好ましい実施形態において、本ペプチドのアミノ酸配列には、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14個等のM2タンパク質N末端アミノ酸が含まれる。最小サイズは、患者の免疫系に提示したいエピトープの大きさによってのみ限定される。ある好ましいアミノ酸配列は、配列番号1、10及び39である。
【0039】
【表1】
【0040】
本ペプチドのアミノ酸配列に、M2タンパク質の位置17又は位置19のシステインが含まれる実施形態において、好ましくは、このシステインをセリンに置換し得る。使用する連結技術に依存して、システインの反応性により、このペプチドの付加末端システインではなく、内部のシステインにおいて、このペプチドの多量体形成、ペプチドとペプチドとの連結又はキャリアタンパク質へのペプチドの連結が起こる可能性があるため、システインをセリンに置換することは有用である。これらの副反応の結果、この連結物に対するペプチド負荷率が低くなる。しかし、注目すべきことは、このペプチドの内部システインにおけるキャリアタンパク質へのこのペプチドの連結により、効果のないワクチンが生じないであろうという点であり、これは本発明の範囲内である。
【0041】
HA0の一定のセグメント、特に、サブユニット間切断部位領域及びHA2サブユニットにあるセグメントは非常によく保存されている。インビボの免疫原性及び広範囲に及ぶ一連の重複HA0ペプチドを用いた防御に関する研究に基づいて、防御的エピトープを含有するいくつかのHA0領域を同定した。ある領域はHA0の切断部位を包含し、他のものはHA2サブユニットに位置する(下表参照)。
【0042】
さらに、HAペプチドを用いて調製した連結物及びM2ペプチドを用いて調製した連結物の併用により、それぞれの連結物を単独で投与した場合と比較して、A型インフルエンザにより起こる疾患に対して、より優れた防御効果が得られる。従って、本発明のある好ましい実施形態は、他の保存的で防御効果のあるインフルエンザウイルスペプチドから構成される連結物と組み合わせた、M2ペプチド連結物を含有するワクチンである。本発明の方法の好ましい実施形態は、患者にそのようなワクチンを投与し、その患者が、M2ペプチド連結物のみを含有するワクチンの投与において見られる免疫反応よりも優れたA型インフルエンザに対する免疫反応を得ることである。
【0043】
HAペプチドを以下から選択することができる。
【0044】
【表2】
BrAc=ブロモアセチル
Ac=アセチル
Mal=マレイミジル
Suc=スクシニル
Ahx=6−アミノへキサン酸
b=βアラニン
Abu=2−アミノ酪酸
【0045】
さらに、B型インフルエンザHA0切断部位ペプチドを用いて調製した連結物とA型インフルエンザM2ペプチドを用いて調製した連結物との併用により、A型インフルエンザ及びB型インフルエンザ両方により起こる疾患に対する防御能を付与することができた。従って、本発明のある好ましい実施形態は、他の保存的で防御効果のあるB型インフルエンザ由来のペプチドから構成される連結物と組み合わせた、M2ペプチド連結物を含有するワクチンである。本発明のさらに好ましい実施形態は、他の保存的で防御効果のあるA型インフルエンザ由来ペプチドから構成される連結物及び他の保存的で防御効果のあるB型インフルエンザ由来ペプチドから構成される連結物と組み合わせた、M2ペプチド連結物を含有するワクチンである。本発明の方法の好ましい実施形態は、患者にそのようなワクチンを投与して、その患者が、M2ペプチド連結物のみを含有するワクチンの投与において見られる免疫反応よりも優れた、A型インフルエンザに対する免疫反応を得ることである。
【0046】
M2又はHA0ペプチド抗原もまた、リジン又は他の適切な骨格における、多抗原ペプチド(MAPs)により提示することができる。本発明の連結ワクチンにおいて、そのような方法で並べられたペプチドを使用することができる。その例を図15から18及び20から21に示す。本発明の連結ワクチンにおける、ペプチドの別の代替的提示方法は、二量体のM2又はHA0ペプチドである。この方式において、結合、好ましくは共有結合を介して、2つのペプチドを架橋し、二量体を形成させる。M2ペプチドに対する例は、図19で見ることができる。この方式で本ペプチドが並んでいる連結ワクチンは、対応する単量体ペプチド連結物を用いて調製したワクチンよりも抗原性が強いであろう。
【0047】
本分野において公知の技術を用いてペプチドを生産し得る。そのような技術には、化学的及び生化学的合成が含まれる。ペプチドの化学合成に対する技術の例は、Vincent,Peptide and Protein Drug Delivery,New York,N.Y.,Dekker,1990に記載されている。細胞への核酸導入及び核酸発現を用いた生化学的合成技術の例は、Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley,1987−1998、及びSambrookら、Molecular Cloning,A laboratory Manual,第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載されている。
【0048】
キャリアタンパク質
本明細書中で使用する場合、キャリアタンパク質は、本ペプチドが連結する免疫原性タンパク質を意味する。本分野で様々なキャリアタンパク質が知られており、多糖類−タンパク質連結ワクチンにおいて使用されている。本発明のワクチンにおいて、これら及び他の免疫原性タンパク質も使用することができる。好ましいキャリアタンパク質は、ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis、髄膜炎菌)の外膜タンパク質複合体(OMPC)、破傷風トキソイド、表面抗原タンパク質(HBsAg)及びコア抗原タンパク質(HB Core)を含むB型肝炎ウイルスタンパク質、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLP、例えばタイプ6、11又は16等のHPVのVLP、のL1タンパク質である。
【0049】
製造を容易にするため、連結物の製造に1種類のキャリアタンパク質を使用し得る。しかし、それぞれにおいて、様々なキャリアタンパク質を用いて、複数の連結物を調製することもできる。次に、ワクチンを処方する際、連結物を混合することができる。この方式において、インフルエンザに対する免疫反応を生じさせることに加えて、この連結物において使用する様々なキャリアタンパク質に対する免疫反応も生じさせるワクチンを提供することができる。必要に応じて、様々なペプチド及びキャリアタンパク質を組み合わせた連結物のさらなる置換も可能である。
【0050】
好ましいキャリアタンパク質はOMPCである。OMPCには、連結に利用できる多数の反応部位が含まれる。連結に対する反応部位の利用可能性は、OMPCにおいて存在する原子の配置及びその基の位置により決定される。連結に利用できる求核性官能基は、本分野で公知の技術を用いて決定され得る。(Eminiら、米国特許第5,606,030号を参照。)。連結のための反応部位として使用できる基のうちあるタイプは、リジンのイプシロンアミノ基及びタンパク質のN末端アミノ酸のアルファアミノ基等の、アミノ酸に存在する一級アミノ基である。さらに、OMPCのチオール化型を得るためのこれらのアミノ基の変換により、チオール反応性ペプチドに対して連結に使用し得る反応性のある官能基が得られる。チオール反応性ペプチドの例は、図13で説明するような、ブロモアセチル化又はマレイミド誘導体化ペプチドである。Fu,米国特許第5,494,808号により記載されているような本分野で公知の技術を用いて、OMPCを得ることができる。
【0051】
キャリアタンパク質の別の好ましいカテゴリーは、ウイルス様粒子(VLPs)へと自己集合することができるウイルスキャプシドタンパク質に代表される。ペプチドキャリアとして使用されるVLPsの例は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)及びコア抗原(HBcAg)(Pumpensら、「Evaluation of HBs,HBc,and frCP virus−like particles for expression of human papillomavirus 16 E7 oncoprotein epitopes(ヒトパピローマウイルス16E7癌タンパク質エピトープ発現のためのHBs、HBc及びfrCPウイルス様粒子の評価)」,Intervirology,Vol.45,pp.24−32,2002)、E型肝炎ウイルス粒子(Niikuraら、「Chimeric recombinant hepatitis E virus−like particles as an oral vaccine vehicle presenting foreign epitopes(外来エピトープを提示する、経口ワクチンビヒクルとしてのキメラ組み換えE型肝炎ウイルス様粒子)」、Virology,Vol.293,pp.273−280,2002)、ポリオーマウイルス(Gedvilaiteら、「Formation of Immunogenic Virus−like particles by inserting epitopes into surface−exposed regions of hamster polyomavirus major capsid protein(ハムスターポリオーマウイルス主要キャプシドタンパク質の表面露出領域へのエピトープの挿入による免疫原性ウイルス様粒子の形成)」、Virology,Vol.273,pp.21−35,2000)、及びウシパピローマウイルス(Chackerianら、「Conjugation of self−antigen to papillomavirus−like particles allows for efficient induction of protective autoantibodies(パピローマウイルス様粒子への自己抗原の連結により、防御性のある自己抗体が効果的に誘導される。)」、J.Clin.Invest.,Vol.108(3),pp.415−423,2001)である。最近、本物のウイルス粒子の分子量及びサイズを模倣するような、抗原提示人工VLPsが構築された(Karpenkoら、「Construction of artificial virus−like particles exposing HIV epitopes and the study of their immunogenic properties(HIVエピトープを露出する人工ウイルス様粒子の構築及びその免疫原性特性の研究)」、Vaccine,pp.386−392,2003)。
【0052】
ペプチド抗原キャリアとしてパピローマウイルスVLPsを使用することにより、免疫系から最適の反応を確実に得られると考えられる規則正しい配列で抗原性配列を提示できるようになるという利益が得られ得る。ある報告において、20面体のビリオンを模倣したマトリックスにおいて抗原性配列を露出したところ、自己と外来物とを区別するという液性免疫系の能力がなくなるということが分かった(Chackerianら、「Induction of autoantibodies to mouse CCR5 with recombinant papillomavirus particles(組み換えパピローマウイルス粒子によるマウスCCR5に対する自己抗体の誘導)」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.96,pp.2373−2378,1999)。マウス自己ペプチドTNF−αをパピローマウイルス VLPsと連結させることにより、タイターの高い、長期間持続する自己抗体がマウスにおいて誘導される。最小抗原キャリアとしてVLPsを用いる場合、VLPキャリアへ前もって曝露することで誘導される抗キャリア抗体の存在によって起こる発現した連結ワクチンへの免疫原性低下をいかに回避するか、ということが課題の1つとして挙げられる。
【0053】
ヒトパピローマウイルス(HPV)VLPsは、サイズが約60nmの典型的な20面体の格子構造を持ち、それぞれが、72個の L1タンパク質5量体(カプソマーと呼ばれる。)のアセンブリーにより形成される(Chenら、2000;Modisら、「Atomic model of the papilloma virus capsid(パピローマウイルスキャプシドの原子モデル)」,EMBO J.,Vol.21,pp.4754−4762,2002)。ウシパピローマウイルス VLPsは、L1タンパク質(Chackerianら、1999)又はVLPsのL2(Greenstoneら、「Chimeric papillomavirus virus−like particle elicit antitumor immunity against the E7 oncoprotein in an HPV 16 tumor model(キメラパピローマウイルス ウイルス様粒子が、HPV 16 腫瘍モデルにおいて、E7癌タンパク質に対する抗腫瘍免疫を誘導する。)」、Proc Natl.Acad.Sci USA、Vol.95,pp.1800−1805,1998)タンパク質への遺伝子融合により挿入されているか、又は後にビオチン化VLPsに結合させるストレプトアビジンと融合されている(Chackerianら、2001)かいずれかの抗原配列を運ぶためにうまく使用されている。
【0054】
上記で引用した参考文献及び次の代表的な特許及び特許明細書、米国特許第6,159,729号、第5,840,306号、第5,820,870号及び国際特許WO第01/14416号により示されるように、本分野において、ヒト及びウシパピローマウイルスVLPsの調製は公知である。
【0055】
下記の実施例において、インフルエンザのペプチド断片をヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス様粒子(VLP)に化学的に連結させることにより得られる代表的な連結ワクチンの調製及び免疫原性を説明する。その結果として生じる連結分子は、VLP1個あたり抗原ペプチド 約800コピーから4,000コピーを含有し、そのペプチドのC末端システイン残基及びマレイミド活性化HPV VLPsを反応させることにより得られる。これらの連結物の平均粒子サイズは、VLPキャリア単独の場合よりもわずかに大きく、化学的及び温度誘発性の変性に対して概して安定性が優れている。M2−HPV VLP連結物は、ある抗HPV立体配置抗体に対する結合親和性を失っていたが、抗M2抗体により完全に認識された。インフルエンザM2ペプチド−HPV VLP連結ワクチンを、アルミニウムアジュバントとともに処方した。30ngペプチドを2回投与すると、非常に高い免疫原性を示し、マウスにおける致死性のインフルエンザウイルス感染処理に対する優れた防御効果が付与された。これらの結果から、連結ワクチンにおけるインフルエンザペプチド用のキャリアとして、HPV VLPを使用し得ることが示される。
【0056】
化学的カップリングインフルエンザペプチド連結ワクチンを開発するために抗原キャリアとしてヒトパピローマウイルス VLP系を使用することにより、一定の利益が得られる。化学的カップリングにより、VLPsの正しいアセンブリーを妨害する可能性のあるL1配列へのペプチド挿入において起こり得る問題が避けられ、また、化学的カップリングはビオチン化及び結合法よりもかなり容易である。さらに、この結果から、以前に報告された方法と比較して、化学的カップリングにより、VLPあたりのペプチド負荷が非常に高くなることが分かる。さらに、以下の実施例において、ペプチド連結プロセスにより、HPV VLPsの形態における顕著な変化が誘導されなかった。従って、本発明の範囲内でワクチンを構築するために、HPV VLPs及び類似のウシパピローマウイルスVLPsを含むVLPsを使用することができる。
【0057】
連結
本分野のあらゆる連結方法を用いて、本発明のペプチド及びキャリアを連結させ得る。例えば、スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)、N−[ε−マレイミドカプロイロキシ]スルホスクシニミドエステル(sEMCS)、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(MBS)、グルタールアルデヒド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、ビス−ジアゾベンジジン(BDB)又はN−アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT)を用いて連結を遂行し得る。
【0058】
キャリアマレイミド活性化法において、スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)又はN−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(MBS)を用いて連結を遂行し得る。sSMCCを用いた方法は広く用いられ、特異性が高い(例えば、Meyerら、2002、J.of Virol.76,2150−2158を参照のこと。)。sSMCCは、システイン残基のSH基をキャリアタンパク質のリジン残基のアミノ基に架橋する。
【0059】
sSMCCを用いた連結反応において、キャリアは、sSMCC試薬をキャリアのアミン(例えばリジン)残基に結合させることにより、まず活性化される。活性化キャリアを過剰な試薬及び副産物から分離した後、システイン含有ペプチドを付加し、活性化キャリアのマレイミド官能基にSH基を付加することにより結合を生じさせる。MBSを用いた方法により、同様の機構を介してペプチドとキャリアとを連結させる。
【0060】
sSMCCを用いた連結は、SH基に対して高い特異性があり得る。従って、本ペプチド中のシステイン残基は、連結を容易に行うために必須である。ペプチドにシステイン残基がない場合、そのペプチドの好ましくはN末端又はC末端にシステイン残基を付加すべきである。そのペプチド中の望ましいエピトープにシステインが含まれる場合、sSMCC活性化キャリアを使用しない方法で連結を遂行すべきである。そのペプチドが複数のシステイン残基を含有する場合、過剰なシステイン残基を置換又は修飾することが可能でない限り、ペプチドをsSMCCを用いてキャリアと連結させるべきではない。
【0061】
結合は、そのペプチド中の望ましいエピトープを妨害するようなものであるべきではない。そのシステインは、好ましくは、望ましいエピトープ配列と、スペーサーとして少なくとも1アミノ酸は離れている。
【0062】
本発明において有用な他の連結は、N−アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT)を用いて行う。例えば、マレイミド化又はブロモアセチル化ペプチドと連結させるために、OMPCにチオール官能基を導入するためにチオラクトンを使用し得る(Tolmanら、Int.J.Peptide Protein Res.41,1993,455−466;Conleyら、Vaccine 1994,12,445−451)。
【0063】
本発明の特定の実施形態において、本ペプチドをキャリアタンパク質にカップリングさせるための連結反応には、ある反応物質における本質的な求核基の導入及び/又は使用、及びもう一方の反応物質における本質的な求電子基の導入及び/又は使用が含まれる。好ましい活性化スキーム(I)(図1)は、求核チオール基をキャリアタンパク質(好ましくはOMPC)に導入し、本ペプチドに求電子基(好ましくは、ハロゲン化アルキル又はマレイミド)を付加することと言えよう。得られる連結物は、本ペプチド及びキャリアに連結するチオールエーテル結合を持つことになる。本ペプチド求電子基(マレイミド又はハロゲン化アルキル)と、キャリアタンパク質の本質的な求核基(好ましくは、一級アミンまたはチオール)との直接反応により、二級アミン結合(スキーム(II)図2)又はチオールエーテル結合が導かれる。しかし、同じ反応条件下においてアミンに対するチオール求核試薬の反応性がより高いことが予想されるので、スキームIが好ましいであろう。代替スキームには、本キャリアへのマレイミド基の付加(III)図3又はハロゲン化アルキルの付加(IV)図4、本ペプチドへの末端システインの導入及び/又は本質的なペプチドチオールの使用が含まれるが、これもチオールエーテル結合を生じる。
【0064】
結合
イオウ含有アミノ酸は反応性のあるイオウ族を含有する。イオウ含有アミノ酸の例には、システイン及び非タンパク質アミノ酸(ホモシステイン等)が含まれる。さらに、反応性のあるイオウは、活性化及びキャリアとの反応前のジスルフィド型に存在し得る。マレイミド又はハロゲン化アルキル(スキームIII(図3)及びIV(図4))等の求電子基により活性化されたキャリアへのカップリング反応において、M2配列に存在するシステイン17及び19を使用し得る。反応性マレイミド及び活性化エステルを含有するヘテロ2官能価の架橋剤を用いたマレイミド基の導入がよく用いられる。多量体タンパク質に対する高レベルのマレイミド活性化を試みることにより、アミン基が架橋剤の両官能基と反応し得る架橋反応が起こり得る。その結果、利用可能なマレイミド基のレベルは低くなり、従って、ペプチド負荷が低くなる。多量体キャリアのサブユニットの架橋は、連結物の免疫原性及び/又は安定性にも影響を与え得る。複数のシステインを有するペプチドの場合、キャリアマレイミド又はハロゲン化アルキル基との複数の結合が1個のペプチドで起こり得る。これにより、ペプチドの負荷レベルがおそらく減少すると考えられる。この複数の結合が異なるキャリアタンパク質のマレイミドを介して生じる場合、そのペプチドを介するキャリアタンパク質サブユニットの架橋ができる可能性が生じ得る。N−アセチルシステインラクトンによるOMPC一級アミンのチオレーション反応により、チオール基が高レベルになり、その結果、適切な緩衝液反応条件下においてキャリアサブユニット架橋(ジスルフィド結合形成を介して)が最小限になる(Marburgら、1986 J.Am.Chem.Soc.108:5282−5287)。1つの末端求電子基(マレイミド又はハロゲン化アルキル)によるペプチドの活性化により、キャリア連結への高い方向性を持ったペプチドによる、高レベルのペプチド負荷が起こり得る。
【0065】
リンカー
ペプチドをキャリアに結合させる共有リンカーは生理的条件下で安定である。このようなリンカーの例は、非特異的架橋剤、モノジェネリックスペーサー(monogeneric spacer)及びバイジェネリックスペーサー(bigeneric spacer)である。非特異的架橋剤及びその使用は本分野で公知である。このような試薬及びそれらの使用の例には、グルタールアルデヒドとの反応;スクシニル化キャリアの混合を伴う、又は伴わない、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドとの反応;グリコシル化置換基の過ヨウ素酸塩酸化(その後、水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下でタンパク質キャリアの遊離アミノ基へのカップリングが行われる。);非アシル化末端セリン及びスレオニン残基の過ヨウ素酸塩酸化により、末端アルデヒドが生じ得、次にそのアルデヒドをアミン又はヒドラジドと反応させて、シアノ水素化ホウ素で2級アミンに還元することができるシッフ塩基又はヒドラゾンを生じさせる反応;芳香族アミノ基のジアゾ化を行い、その後そのタンパク質のチロシン側鎖残基でカップリングを行う反応;イソシアネートとの反応;又は混合無水物の反応が含まれる。全般的には、Briandら、1985 J.Imm.Meth.78:59を参照のこと。
【0066】
モノジェネリックスペーサー及びそれらの使用は、本分野で公知である。モノジェネリックスペーサーは2官能性であり、連結を行う前に反応ペアの一方のみの官能基化が必要である。モノジェネリックスペーサー及びその使用の例には、カルボジイミド存在下における、2官能性分子アジピン酸ジヒドラジドの片方の末端への免疫原性HCVペプチドのカップリングが含まれる。おそらく、ジアシル化ヒドラジンは、キャリアのペンダントグルタミン酸カルボキシ基又はアスパラギン酸カルボキシ基とともに形を成す。次に、カルボジイミド存在下で、キャリアタンパク質との第二のカップリング反応により連結が行われる。
【0067】
バイジェネリックスペーサー及びそれらの使用は、本分野で公知である。反応ペアの各パートナーが官能基化された後、バイジェネリックペーサーが形成される。官能基化された各パートナーがその対立するパートナーと反応して安定した共有結合(1個又は複数)を形成する際に連結が起こる(例えば、Marburgら、1986 J.Am.Chem.Soc.108:5282−5287;及びMarburgら、米国特許第4,695,624号参照。)。
【0068】
ペプチドカップリングの負荷
本発明の利点は、様々なモル比でペプチドをキャリアタンパク質に連結させることができるということである。望ましい特性を有する連結を得るために、トライアンドエラー方式で連結方法の局面を変化させることにより、キャリアタンパク質における、この「ペプチドカップリング負荷」を変化させることができる。例えば、キャリアタンパク質の全ての反応部位をペプチドと連結させるような、高いカップリング負荷が望ましい場合、キャリアタンパク質の反応部位を評価し、カップリング反応に対して過剰なモル数のペプチドを用いることができる。低密度でカップリングさせることが望ましい場合、キャリアタンパク質の反応部位1モルあたりの反応に加えるペプチドが1モル未満になるようなモル比にすることができる。
【0069】
選択する特定の条件は、最終的には、達成する回収率、連結物の生理学的特徴、得られる連結物の有効性、患者集団及び投与したい望ましい用量に基づく。ワクチンのタンパク質総量が重要な検討事項ではない場合、同じ有効用量を送達するために、様々なカップリング負荷及び様々な免疫原性の連結物の用量を処方することができる。しかし、タンパク質総量又は体積が重要である場合、例えば、連結物が、併用ワクチンにおいて使用することを意図するものである場合、最終併用ワクチンに対して連結物からもたらされるタンパク質の総体積に留意し得る。次に、様々なカップリング負荷を有するいくつかの連結物の免疫原性を評価し、その後、適切な免疫原性及びタンパク質の総量又は併用ワクチンに添加できる体積で連結物を使用するよう選択し得る。
【0070】
一般に、ペプチド負荷量を高くする際、障壁となるものが主に2つある。(i)得られる連結物の溶解度及び(ii)ペプチドの溶解度である。これらの特性は、独立したものではなく、後者を向上させる操作は、前者に対して不利益であり得る。従って、ペプチド負荷を高くすることは困難であることが多い。
【0071】
従って、米国特許出願第60/530,867号(2003年12月18日出願)に記載されているように、ペプチドの配列を改変するのが望ましいと思われる。この出願には、ペプチドの免疫原性を向上させる方法が記載されている。その方法は、ペプチドを改変することによりペプチドの等電点(pI)を調整すること及びペプチドをキャリアに連結させることを含む。本明細書中で使用する場合、「ペプチドのpIを調整する」ということは、ペプチド負荷及び連結物の溶解度の両方が向上するような範囲に、ペプチドのpIを変化させることを意味する。ペプチドのpIは、上記範囲に低くされることが多い。
【0072】
等電点電気泳動法(IEF)等の実験又は適切なソフトウェアを用いた計算のいずれかにより、ペプチドのpIを決定し得る。米国特許出願第60/530,867号に記載されているように、ペプチドのpIを、そのペプチド全体の電荷を変更する様々な方法で変更することができる。この改変は、結果としてそのペプチドの電荷が変化するような、ペプチドに対するいかなる変更でもあり得る。このような改変には、ペプチドにおけるアミノ酸残基の置換、付加又は欠失が含まれる。その改変には、ペプチドの残基又はN末端アミノ基もしくはC末端カルボキシル基の側鎖の改変も含まれ得る。そのような改変の方法は当業者の知識の範囲内である。
【0073】
免疫原性の点で活性のある配列、すなわち望ましいエピトープの外側でそのペプチドを改変すべきである。つまり、免疫原性特性を維持しなければならないということである。改変にペプチドの望ましいエピトープが含まれたり、そのエピトープが妨害されることがないようにすべきである。改変によりペプチド連結物の免疫原性特性に影響を与えてはならないので、ペプチドのN及び/又はC末端で改変を導入することが好ましい。
【0074】
カップリング負荷が最大であれば常に最大の免疫原性を有する連結物が得られる訳ではないことにも留意すべきである。いかなるキャリアタンパク質においても、ペプチドの長さ及びカップリング負荷により、連結物の全体的な免疫原性に影響が及ぼされ得る。従って、あらゆるキャリアタンパク質のあらゆる特定のペプチドの一連のカップリング負荷の免疫原性を評価すべきである。そのような情報から、患者において許容可能な免疫原性反応を刺激するために、適切な用量の連結物を付与するようにワクチンを製造及び処方することができる。
【0075】
処方
本分野で公知であり使用されている方法に従い、本発明ワクチンを処方することができる。例えば、Modern Vaccinology,Kurstak,Plenum編 Med.Co.1994;Remington’s Pharmaceutical Sciences 18版、Gennaro編,Mack Publishing,1990;及びModern Pharmaceutics 第2版、Banker及びRhodes編、Marcel Dekker,Inc.,1990において、一般的な医薬投与のガイドラインが示されている。
【0076】
本発明の連結物を酸性塩又は塩基性塩として調製することができる。医薬適合性の塩(水溶性もしくは油溶性、又は分散製品)には、例えば、無機もしくは有機酸又は塩基から形成される、従来の非毒性塩又は四級アンモニウム塩が含まれる。そのような塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩等の酸付加塩;及びアンモニウム塩、ナトリウム及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン等の有機塩基を有する塩及びアルギニン及びリジン等のアミノ酸を有する塩等の塩基性塩が含まれる。
【0077】
連結に使用する特定のキャリアタンパク質との使用ならびに最終処方物のイオン構成に適切であるようにアジュバントを選択するのが好ましい。ワクチンに連結物のみを処方するのか、又は併用ワクチンに連結物を処方するのかということも考慮すべきであろう。後者の例において、最終併用ワクチンに含有されるであろう緩衝液、アジュバント及び他の処方成分を考慮すべきである。
【0078】
本分野において、アルミニウムを用いたアジュバントが一般に使用され、それには、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化リン酸アルミニウム及び水酸化硫酸リン酸アルミニウムが含まれる。一般に使用されるアジュバントの商品名には、ADJUPHOS、MERCK ALUM及びALHYDROGELが含まれる。連結物を使用する特定のアジュバントに必要かつ適切なように、そのアジュバントと結合又は共沈殿させ得る。
【0079】
非アルミニウムアジュバントも使用可能である。非アルミニウムアジュバントには、QS21、リピッド−A及びそれらの誘導体又は変異体、フロイド完全もしくは不完全アジュバント、中性リポソーム、ワクチン及びサイトカインもしくはケモカイン含有リポソームが含まれる。
【0080】
本ワクチンはアルミニウムアジュバントとともに処方されることが好ましい。他の好ましい実施形態において、アルミニウムアジュバント及びQS21の両方とともに本ワクチンを処方する。
【0081】
ある実施形態において、本願に記載するように、B型インフルエンザ由来の免疫原とともに、及び/又は、ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、A、B又はC型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、ロタウイルス、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumonia、肺炎球菌)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococus aureus、黄色ブドウ球菌)由来の免疫原とともに、M2ペプチド−タンパク質連結物を処方することが好ましい。さらに、本発明ワクチンを、特に、ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ由来のエピトープを含むA型インフルエンザウイルスの他の抗原成分と組み合わせることができる。この方式において併用ワクチンを調製できる。併用ワクチンの利点は、患者にとって楽であり、必要な接種回数が少ないので投与コストを低く抑えられるという点である。
【0082】
併用ワクチンを処方する際、他の免疫原とともに使用されている様々な緩衝液及びアジュバントに留意すべきである。ある緩衝液は、ある免疫原−アジュバントの組み合わせに適切であり得るが、他のものには適切ではない可能性がある。特に、最終処方物における適合性を確認するために、様々な免疫原−アジュバントの組み合わせにおけるリン酸レベルの効果を評価すべきである。
【0083】
ワクチン接種
患者に対して、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内等の様々な経路により、本発明のワクチンを投与することができる。好ましい経路は、筋肉内である。対象者の年齢、体重、性別及び健康状態;投与経路;望ましい効果;及び用いる特定の連結物(例えば、ペプチド、キャリアに対するペプチド負荷等)を含む本分野で公知の要因を考慮して、適切な投薬計画を好ましく決定する。複数回投与ワクチン接種方式で本ワクチンを使用することができる。1回分は、1μgから1.0mg総タンパク質の範囲で構成されると予想される。本発明のある実施形態において、その範囲は、0.1mgから1.0mgである。しかし、送達するペプチド量に基づいて用量を調整するのが好ましいと思われる。いずれにせよ、これらの範囲はガイドラインである。免疫学的に有効な量を送達するよう、生成連結物の免疫原性を評価することにより、さらに正確な用量を決定すべきである。免疫学的有効量とは、インフルエンザウイルス感染により起こる疾患に対して免疫記憶が長期防御を与えるのに十分なレベルを確立できるように、患者の免疫系を刺激するものである。連結物は、アジュバントとともに処方することが好ましい。
【0084】
投与タイミングは、本分野で公知の因子に依存する。初回投与後、抗体タイターを維持するために、1回又は複数回の免疫促進投与をその後に行い得る。投与計画の例は、第1日の投与、1ヶ月又は2ヶ月の時点での第二の投与、4、6又は12ヶ月のいずれかにおける第三の投与及び必要に応じて時間間隔をおいた、さらなる免疫促進投与である。
【0085】
本明細書中で使用する場合、患者又は対象は、動物である。ワクチン接種に対して、哺乳類及び鳥類、特に家禽が適切な対象である。好ましくは、前記患者はヒトである。患者は、その患者が免疫反応を生じさせることにより本ワクチンの接種に反応することができるあらゆる年齢であり得る。そのように生じた免疫反応により、インフルエンザウイルス感染により起こった疾患及び消耗性症候群が完全に防御され得るか、又はその症状が緩和され得る。
【0086】
M2ペプチドのみを有する本発明のワクチンは、患者の細胞の感染を防御しないであろうことに着目されたい。これは、ウイルスが患者の体内に侵入し、感染を開始した際に、インフルエンザウイルスに存在する本ワクチンのペプチドのM2エピトープのコピー数が非常に少ないからである。これらのM2エピトープは、典型的には、ウイルスが感染した細胞表面でのみ見られる。つまり、このM2ペプチド−タンパク質連結物を基にしたワクチンによるワクチン接種により生じた免疫反応は、感染した細胞に対して向けられている。特定の効果理論に結びつける必要がない場合、患者の免疫反応によりウイルスのバーストサイズが減少し、全体的なウイルス感染を終結させ、それにより基本的に、最初に感染した細胞に感染が限定されると考えられている。
【0087】
本発明ワクチンの利点は、インフルエンザウイルスの保存的エピトープに対して免疫反応が生じることである。従って、本ワクチンの投与により、インフルエンザ感染に対する患者の防御能を維持するためにワクチン接種を毎年行う必要性がなくなる。
【0088】
上記のような併用ワクチンを得るために、本M2ペプチド−タンパク質連結ワクチンを、他のワクチンとともに処方し得る。次に、M2エピトープならびに併用ワクチン中の他の免疫原に対する免疫反応を生じさせるために、患者に本併用ワクチンを接種することができる。
【実施例1】
【0089】
ペプチドの調製
本分野で一般的に実施されている固相化学合成法により、M2タンパク質配列部分を提示し、C末端又はN末端反応性ブロモアセチル又はマレイミド基を含有する合成ペプチドが生産された。
【0090】
例えば、C末端ブロモアセチル化M2 15mer、CT−BrAcM2−15mer、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Aha−Lys(Nε−BrAc)−NH2− TFA塩(配列番号13)を、APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドとして合成した。0.5mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、4倍過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を使用するプロトコールを用いた。側鎖の保護は、Lys(Fmoc)、Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化によりカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中TFAを用いて、Boc基の除去を行い、そのTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。
【0091】
保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trp残基のホルミル基及びNε−Lys残基のFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、LysのNεアミノ基を、ブロモ酢酸無水物(1g/20ml、MeCl2)と1時間、又はニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。MeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量(2.70g)になるまで乾燥させた。
【0092】
0℃にて1時間、捕捉剤としてHF(30ml)及びアニソール(3ml)を用いて、保護ペプチドレジン(2.70g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(200ml)中の25%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物1.5gを回収した。
【0093】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(0.75g)を最小体積の20%酢酸−H2O(約100ml)に溶解し、90% A−10% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(WATERS,Milford,MA,DELTA−PAK,15μm、100Å、5x30cm)に汲み上げた。
【0094】
ペプチドの添加後、90% A−10% B 緩衝混合液1Lを添加した。濃度(5%)を連続的に増加させた移動相各1Lから、段階的勾配(10% Bから40% B)(増加量 100ml)を作った。生成物を溶出するために使用した流速は、80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、CT−BrAcM2−15merペプチド、200mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0095】
同様にして、他のC末端ブロモアセチル化ペプチドの合成を行うことができる。例えば、次のように、APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドとしてC末端ブロモアセチル化M2 23merペプチド、CT BrAc−M2−23mer、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Ser−Arg−Ser−Asn−Asp−Ser−Ser−Asp−Aha−Lys(Nε−BrAc)−NH2 TFA塩、(配列番号39)を合成した。0.75mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を用いる、二重カップリングプロトコールを使用した。側鎖の保護は、Ser(Bzl)Lys(Fmoc)、Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)、Asp(OcHex)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化を用いてカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中TFAを用いて、Boc基の除去を行い、このTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trpのホルミル基及びNε−LysのFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、LysのNεアミノ基を、ブロモ酢酸無水物(1g/20ml、MeCl2)と1時間、又はニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。MeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量になるまで乾燥させた。
【0096】
0℃にて1時間、捕捉剤としてHF(20ml)及びアニソール(2ml)を用いて、保護ペプチドレジンの半分(1.83g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(200ml)中の25%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物1.1gを回収した。
【0097】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(1.1g)を最小体積の20%酢酸−H2O(約100ml)に溶解し、90% A−10% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(WATERS,DELTA−PAK,Milford,MA,15μm、100Å、5x30cm)に汲み上げた。ペプチドの添加後、90% A−10% B 緩衝混合液1Lを添加した。濃度(5%)を連続的に増加させた移動相各1Lから、段階的勾配(10% Bから40% B)(増加量 100ml)を作った。生成物を溶出するために使用した流速は80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、生成物、CT−BrAcM2−23merペプチド、224mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0098】
マレイミド化ペプチドの合成を以下に説明する。ペプチド、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Aha−Lys(Nε−4−マレイミドブチリル−NH2 TFA塩(配列番号14)を、0.75mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、合成した。APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドを合成した。4倍過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を用いるプロトコールを使用した。側鎖の保護は、Lys(Fmoc),Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化を用いてカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中TFAを用いて、Boc基の除去を行い、このTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trpのホルミル基及びNε−LysのFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンのうち25%を除去し(0.188mmol)、LysのNεアミノ基を、4−マレイミド酪酸(2mmol)及びNMP中のDCC及びHOBT 2mmolと3時間、又はニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。NMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量(0.7g)まで乾燥させた。
【0099】
0℃にて1時間、捕捉剤としてHF(15ml)及びアニソール(1.5ml)を用いて、保護ペプチドレジン(0.7g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(100ml)中の25%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物0.40gを回収した。
【0100】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(0.40g)を最小体積の20%酢酸−H2O(約100ml)に溶解し、90% A−10% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(DELTA−PAK、15μm、100Å、5x30cm,WATERS,Milford,MA)に汲み上げた。ペプチドの添加後、90% A−10% B 緩衝混合液1Lを添加した。濃度(5%)を連続的に増加させた移動相各1Lから、段階的勾配(10% Bから35% B)(増加量 100ml)を作った。生成物を溶出するために使用した流速は80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、生成物 94mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0101】
分析的HPLC条件
カラム:Vydac 15cm #218TP5415,C18.
溶出:勾配 95:5(0.1%TFA/アセトニトリル)から、5:95 (0.1%TFA/アセトニトリル)、45分間。
流速:1.5ml/分
波長:214nM、254nM
保持時間:16.9分
分子式:C99H155N25O31
分子量:2190.13
【0102】
第二のマレイミド化ペプチド、Ac−Ser−Leu−Leu−Thr−Glu−Val−Glu−Thr−Pro−Ile−Arg−Asn−Glu−Trp−Gly−Ser−Arg−Ser−Asn−Asp−Ser−Ser−Asp−Aha−Lys(Nε−4−マレイミドブチリル−NH2 TFA塩(配列番号23)の合成を以下に説明する。0.50mmolのp−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)レジンを用いて開始し、APPLIED BIOSYSTEMS 430Aペプチドシンセサイザー(APPLIED BIOSYSTEMS,CITY STATE)で、保護レジン結合ペプチドを合成した。過剰量(2mmol)の各Nα−Boc保護アミノ酸を用いる二重カップリングプロトコールを使用した。側鎖の保護は、Ser(Bzl)Lys(Fmoc)、Trp(ホルミル)、Glu(OcHex)、Arg(Tos)、Thr(Bzl)、Asp(OcHex)であった。メチル−2−ピロリジノン(NMP)中で、DCC及びHOBT活性化を用いてカップリングを遂行した。N末端アセチル基を導入するために、酢酸をカップリングさせた。1:1の塩化メチレン(MeCl2)中のTFAを用いてBoc基の除去を行い、このTFA塩をジイソプロピルエチルアミンで中性化した。保護ペプチドレジンの会合に続いて、NMP中の25%ピペリジンを用いて、10分間、Trpのホルミル基及びNε−LysのFmoc保護を手動処理で除去した。このレジンをNMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンのうち50%(0.25mmol)を、4−マレイミド酪酸(2mmol)及び、DCC及びHOBT 2mmolと3時間、又は、ニンヒドリン反応が陰性になるまで反応させた。NMP及びMeCl2で洗浄した後、このレジンを恒量(2.0g)まで乾燥させた。
【0103】
0℃にて1.5時間、捕捉剤としてHF(20ml)及びアニソール(2ml)を用いて、保護ペプチドレジン(2.0g)を処理した。HF及びアニソールを蒸発させた後、残渣をエーテルでよく洗浄し、濾過し、H2O(200ml)中の50%酢酸で抽出した。濾過物を凍結乾燥させて、未精製生成物1.0gを回収した。
【0104】
分取HPLC、緩衝液A=0.1% TFA−H2O;B=0.1% TFA−CH3CNにより未精製生成物の精製を行った。未精製生成物(1.0g)を最小体積の10%酢酸−H2O(?100ml)に溶解し、85% A−15% B緩衝液で平衡化したC−18逆相HPLCラジアル加圧(radial compression)カラム(DELTA−PAK,15μm、100Å、5x30cm,WATERS,Milford,MA)に汲み上げた。ペプチドの添加後、15%Bから45%Bまでの勾配溶出を90分間にわたり行った。生成物を溶出するために使用した流速は80ml/分であった。214nmのUV吸収をモニタリングすることにより検出を行った。均一な生成物分画(分析的HPLCによる純度は、>98%)を集め、凍結乾燥させ、生成物 320mgを得た。アミノ酸分析及びマススペクトル解析により同一性を確認した。
【0105】
分析的HPLC条件
カラム:Vydac 15cm #218TP5415,C18
溶出:勾配 95:5(0.1%TFA/アセトニトリル)から、5:95 (0.1%TFA/アセトニトリル)、45分間
流速:1.5ml/分
波長:214nM、254nM
保持時間:16.4分
分子式:C129H203N37O48
分子量:3038.46
【0106】
本合成ペプチドのチオール相当物をアッセイした。例えば、NT−BrAcM2−15(N末端 ブロモアセチル化M2 15mer 配列番号11)及びCT−BrAcM2−15(C末端 ブロモアセチル化M2 15mer 配列番号13)を、N2−注入した25mM ホウ酸塩、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH8.5緩衝液に、最終濃度が7.5mgペプチド粉末/mlになるように溶解した。0.97N NaOHでpHを8.5に調整した。この溶液を0.2ミクロンフィルターで濾過した。次に示すようなチオール消費アッセイにより、Brアセチル相当物について、等量ずつ分注したものをアッセイした。N2−注入した25mM ホウ酸塩、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH8.5緩衝液中に溶解したN−アセチル−システインを、適切なペプチドの希釈物(〜15−30μM、最終濃度)に添加し、同体積の緩衝液に添加し(50μM 最終濃度)、室温にて30分間インキュベーションを行った。インキュベーション後、5,5’−ジチオ−ビス−[2−ニトロ安息香酸](DTNB;Ellman試薬)を添加した(最終濃度、5mM、N2 飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7中の50mM DTNB保存液を使用)。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランクを差し引き、チオール濃度を測定した。本ペプチド存在及び非存在下での遊離チオールの相違から、チオール反応性相当物を推定した。
【0107】
同様にして、NT−MalM2−15(N末端マレイミド化M2 15mer 配列番号12)及びCT−MalM2−15(C末端マレイミド化M2 15mer 配列番号14)を、N2注入した0.1M HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3緩衝液に、最終濃度が7.5mgペプチド粉末/mlになるように溶解した。0.97N NaOHでpHを7.3に調整した。その溶液を0.2ミクロンフィルターで濾過した。次に示すようなチオール消費アッセイにより、マレイミド相当物について等量ずつ分注したものをアッセイした。N2注入した20mM HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3緩衝液中に溶解したN−アセチル−システイン(50μM 最終濃度)を、適切なペプチドの希釈物(〜15−30μM、最終濃度)に添加し、同体積の緩衝液に添加し、室温にて30分間インキュベーションを行った。インキュベーション後、DTNBを添加した(最終濃度、5mM、0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7中の50mM DTNB保存液を使用)。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランクを差し引き、チオール濃度を決定した。本ペプチド存在下及び非存在下の遊離チオールの相違から、チオール反応性相当物を推定した。
【0108】
チオール含有ペプチド(例えば、配列番号1、2、3、4、10等)に対して、氷冷N2−飽和0.1M HEPES、2mM EDTA、0.15M NaCl、pH7.3緩衝液にペプチドを溶解し(2.5mg/mlから7.5mg/ml)、0.2ミクロンフィルターで濾過した。N2飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7緩衝液で、本ペプチドを適切な体積になるように希釈することにより、チオール含量を測定した。0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA pH7 緩衝液中の50mM DTNB保存液を使用して、最終濃度が5mMになるようにDTNBを添加した。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランクを差し引き、チオール濃度を決定した。
【0109】
濾過したブロモアセチル又はマレイミド化ペプチドのチオール反応性相当物
【0110】
【表3】
aチオール消費アッセイにより測定
basp、glu、gly、val、ile、leu及びarg値のAAA平均により決定。
c注意:チオール消費アッセイにおけるブロモアセチル基の反応が遅いため、NT−BrAcM2−15に対する[チオール反応性相当物]は、少なく見積もって、おそらく、〜3倍から5倍であろう。
【0111】
濾過したM2ペプチド含有システインのチオール含量
【0112】
【表4】
aペプチド配列を基にしたもの
b改変Ellmanアッセイに基づいたチオール含量。
【0113】
ペプチド濃度は、M2ペプチドの1個のトリプトファンに基づいて測定(ε278nm、1cm=5,550M−1cm−1及びε288nm、1cm=4,550M−1cm−1と仮定。用いた濃度は、これらの2波長において測定した値の平均である。)。
【実施例2】
【0114】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis、髄膜炎菌)のチオール化外膜タンパク質複合体(OMPC)の調製
本分野で公知の技術及びFu,米国特許第5,494,808号で記載されている技術を用いてOMPCを得た。N−アセチルホモシステインラクトンを用いたOMPCのチオール化は、無菌法を用いている、Marburgら、1986で述べられている一般的方法により行った。NT−BrAcM2−15及びCT−BrAcM2−15に対してはN2飽和25mM ホウ酸塩、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH8.5で、NT−MalM2−15及びCT−MalM2−15を用いた反応に対しては、20mM HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3で、チオール化OMPCを最終的に再懸濁した。OMPCへのチオール化物をN2飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7 緩衝液へと適切に希釈することにより、チオール含量を測定した。N2飽和0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA pH7緩衝液中の50mM DTNB保存液を使用して、最終濃度が5mMになるようにDTNBを添加した。室温にて15分間インキュベーションを行った後、ε412nm、1cm=14.15x103M−1cm−1を用いて、適切なDTNBブランク及びOMPCブランク(DTNBなし)を差し引いた後、チオール濃度を決定した。
【0115】
チオール化OMPCの特性
【0116】
【表5】
a改変Ellmanアッセイにより測定。
b改変Lowry法により測定。
【実施例3】
【0117】
マレイミド化又はハロゲン化アルキル活性化OMPCの調製
全ての操作を無菌的に行った。適切な量の滅菌0.5M NaHCO3を添加して、H2O中の滅菌OMPC(5.5mg/mL)を、NaHCO3 pH8.5±0.1中で50mMにした。スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)又はスルホスクシニミジル4−(ヨードセチル)アミノベンゾエート(sSIAB)(氷冷H2O中、10mM 保存液;試薬は、PIERCE CHEMICAL CO.,ROCKFORD.ILより。)を、穏やかに混合しながら緩衝OMPCに滴下添加し、最終濃度が2.5mM sSIAB又はsSMCC、及びOMPC濃度が〜3.8mg/mlになるようにした。ブロモ酢酸N−ヒドロキシスルホスクシニミドエステルも使用することができる。この反応物を4℃にて、1時間、暗所で熟成させる。1時間後、滅菌した1M リン酸ナトリウムで反応混合物のpHを7.3に調整し、300K 分子量カットオフ(MWCO)DISPODIALYZER(R)(SPECTRUM INDUSTRIES,INC.,RANCO DOMINGUEZ,CA)を用いて、滅菌した6.3mM リン酸ナトリウム、pH7.3、0.15M NaClに対して、4℃にて12から24時間にわたり徹底的に透析する。あるいは、pH調整を省いて、反応混合物を直接透析することができる。20mM HEPES、0.15M NaCl、2mM EDTA、pH7.3、他の適切な緩衝液又は水もこの透析に使用することができる。暗所でSIAB透析を行った。N2−注入した透析緩衝液を添加することができる。
【0118】
sSIAB活性化OMPC混合物に対する好ましい透析緩衝液は、NaHCO3 pH8.5±0.1中の50mM液である。アッセイ緩衝液が0.1M リン酸ナトリウム、0.1M NaCl、2mM EDTA、pH7であり、N−アセチルシステインインキュベーション時間が15分間であったことを除き、本ペプチドに対して上述したN−アセチル−システイン消費アッセイを用いて、チオール反応性相当物について、透析した活性化OMPCをアッセイする。412nmでのOMPCの影響を補正するために、OMPCブランク(DTNBなし)を測定する。Lowry法でタンパク質を測定する。pH8.5におけるマレイミド活性化に対して、0.09μmolから0.12μmol マレイミド相当物/mg(Lowryのタンパク質)が通常得られる。このレベルは、pH7.3で得られた値よりもおよそ2倍から3倍高い。滅菌した0.5M EDTA、pH8保存液を用いて、活性化OMPCを、2mM EDTA最終濃度にする。
【実施例4】
【0119】
M2ペプチドのチオール化OMPCへの連結
無菌法を用いて、次のようにチオール化OMPCをM2ペプチド NT−BrAcM2−15(N末端ブロモアセチル化M2 15mer、配列番号11)、CT−BrAcM2−15(C末端ブロモアセチル化M2 15mer、配列番号13)、NT−MalM2−15(N末端マレイミド化M2 15mer、配列番号12)及びCT−MalM2−15(C末端マレイミド化M2 15mer、配列番号14)と連結させた。様々な量のペプチドにチオール化OMPCを添加し、穏やかに混合した。その反応混合物を混合せずに4℃にて一晩、暗所にて熟成させた。
【0120】
次に、反応を停止させ、無菌状態で脱塩した。反応混合物をN−エチルマレイミド(NEM)で5mMにしてOMPCの過剰なチオールと反応させることにより、NT−BrAcM2−15及びCT−BrAcM2−15/チオール化OMPC連結反応を停止させ、4℃にて、4時間、暗所で熟成させた。4℃にて、滅菌した0.15M NaClに対して、300K MWCO DISPODIALYZER(R)を用いて透析することにより、反応停止させた反応混合物を脱塩した。反応混合物をヨードアセトアミドで5mMにすることにより、NT−MalM2−15/チオール化OMPC連結反応を停止させ、4℃にて一晩、暗所で熟成させた。4℃にて、滅菌した0.15M NaClに対して、300K 分子量MWCO DISPODIALYZER(R)を用いて透析を行い、反応停止させた反応混合物を脱塩した。
【実施例5】
【0121】
マレイミド化又はヨードアセチル化OMPCに対するM2ペプチドの連結
無菌法を用いて、マレイミド化OMPC又はヨードアセチル化OMPC(あるいは、ブロモアセチル化OMPC)のチオール含有M2ペプチド(配列番号1)との連結を次のようにして行った。穏やかに混合したマレイミド化又はヨードアセチル化OMPCに、チオール/マレイミドのモル比が〜3になるようにして、M2ペプチドを滴下添加した。逆の添加法、例えば、OMPCをペプチドに添加することも可能であり、好ましい。12時間から24時間、4℃にて暗所で混合せずに、反応混合物を熟成させる。0.2ミクロンのフィルターで濾過したβ−メルカプトエタノール(15mM 最終濃度)を用いて、その試薬を暗所、4℃にて混合せずに3時間から4時間連結物と反応させることにより、OMPCの過剰なチオール反応基を不活性化(反応停止)させた。4℃にて、滅菌した0.15M NaClに対して、300K 分子量MWCO DISPODIALYZER(R)で透析を行い、反応停止させた反応混合物を徹底的に透析した。
【実施例6】
【0122】
連結物の分析
OMPCタンパク質の測定又は連結物におけるタンパク質+ペプチドの測定のために、改変Lowry アッセイを用いた。このアッセイにおいて、キャリアデオキシコールナトリウムの存在下で、トリクロロ酢酸を用いてタンパク質試料を沈殿させた(Bensadoun及びWeinstein 1976 Anal.Biochem.70:241−250)。SDS含有Lowry試薬Aによりタンパク質ペレットを溶解させた。BSA標準物質を同様に処理した。
【0123】
アミノ酸分析(AAA)のために、試料に内部標準物質、ノルロイシンを添加し、6N HCl、0.2%フェノール(w/v)を用いて、110℃にて真空下で70時間、加水分解した。予想されるアミノ酸加水分解産物に関しては、スキームV−VIII、図5から8を参照のこと。加水分解後、試料を乾燥させ、試料緩衝液で再懸濁し、陽イオン交換クロマトグラフィーにより、ポストカラムのニンヒドリン検出を行い、分析した(BECKMAN Model 6300,Palo Alto,CA)。感受性及び/又は解像度で優れていると思われる、ACCUTAGTM(WATERS CORP.,MILFORD,MA)又はAMINO ACID DIRECTTM(DIONEX CORP.,SUNNYVALE,CA)を含む他の系を用いて、アミノ酸分析を行うこともできる。
【0124】
少なくとも2種類の方法によるアミノ酸データから、連結物のペプチド負荷を調べることができる。そのペプチド中のユニークなアミノ酸(例えば、6−アミノへキサン酸、AHA)から、ペプチド量を推定することができる。OMPCに存在するが、そのペプチドにはないアミノ量から、OMPCタンパク質の量を推定することができる。Lowry タンパク質数には、そのペプチドからのタンパク質も含まれ、ペプチド負荷が高い場合、得られた値に対して占める割合は重要なものである。代替法には、スプレッドシート方式におけるAAAデータの重回帰、最小2乗解析の使用が含まれる(Shulerら、1992 J.Immunol.Meth.156:137−149)。一般に、2種類の方法により得られた値の差は、互いに20%以内である。
【0125】
還元した連結試料のSDS−PAGE/染色分析により、ペプチド連結物の質を明らかにすることができる。マレイミド又はヨードアセチル活性化OMPC/チオール含有M2ペプチド連結物に対して、不活性/活性化OMPCの分析により、3量体として存在するOMPCの主要なクラス2タンパク質の架橋を引き起こす、SMCC又はSIABの副反応の証拠が得られる。
【実施例7】
【0126】
チオール化OMPC/マレイミド化又はブロモアセチルM2連結物の特性
透析したNT−BrAcM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0127】
【表6】
a改変Lowry法
b0.42μmolリジン/mg Lowryタンパク質及び0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値の平均に基づく。
cS−カルボキシメチルシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0128】
透析したNT−MalM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0129】
【表7】
a改変Lowry法
b0.42μmolリジン/mg Lowryタンパク質及び0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値の平均に基づく。
cS−ジカルボキシエチルホモシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0130】
透析したCT−BrAcM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0131】
【表8】
a改変Lowry法
b0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値の平均に基づく。
cS−カルボキシメチルシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0132】
透析したCT−MalM2−15/チオール化OMPC連結物の特性
【0133】
【表9】
a改変Lowry法
b0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値に基づく。
cS−ジカルボキシエチルホモシステイン分析は、定性分析的であった。
dAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモルを算出するためのAAAタンパク質/6−アミノへキサン酸(Aha)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0134】
一般に、電荷が等しい(mol)ペプチドにおいて、マレイミド化ペプチドは、ブロモアセチル化ペプチドよりも、連結物におけるペプチド負荷が高かった。マレイミド基と比較してブロモアセチル基のチオールの速度論的な反応性が低いことがおそらくその差の原因と思われる。
【実施例8】
【0135】
マレイミド化OMPC及び選択システイン含有ペプチド連結物の特性
透析したシステイン含有ペプチド/マレイミド化OMPC連結物の特性
【0136】
【表10】
a改変Lowry法
bS−ジカルボキシエチルシステイン(DCEC)及び6−アミノへキサン(AHA)定量はAAAによる。DCEC反応因子/ASP反応因子=1.285。
c0.63μmol アラニン/mg Lowryタンパク質と仮定してするAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモル数を計算するための6−アミノへキサン酸(AHA)値により決定したタンパク質値に基づく。
【0137】
システインを1個有するペプチド(例えば配列番号2)と対比して、複数のシステイン残基を含有するM2ペプチド(例えば、配列番号1)のDCEC/AHAレベルが高いことから、1個のM2ペプチドに対して複数のマレイミド/システイン結合があることが示唆される。この結果、連結物におけるペプチド負荷がより少なくなり、おそらく連結物の免疫原性に影響を与えることがあると考えられる。より小さいペプチド(配列番号10)では、1個のシステインを含有するM2ペプチド連結物に対する反応に際してのペプチド負荷量が同等の場合、ペプチド負荷がより高くなると思われる。この影響は、OMPCのマレイミド部位における立体構造上の制限及び/又は、ペプチドの反応性システイン近くの電荷の相違によるものであり得る。不活性/マレイミド活性化OMPCに対するSDS−PAGEにより、活性化及び脱塩段階の際に架橋を生じるOMPC中の本質的な求核試薬とのマレイミドの反応(Brewer及びRiehm 1967 Anal.Biochem.18:248−255参照)が示唆された。より低いpHの場合、活性化物との架橋はあまり明確ではなかった。SIAB活性化OMPCの場合、架橋が最小限となることが分かった。マレイミド基には、イミドの開環反応により、マレアミド酸に変換され得るものもある。マレアミド酸は、チオール反応性が不十分である。一般に、1個のシステインを含有するペプチド及びマレイミド活性化OMPCを用いた同様のペプチド反応と対比して、マレイミド化ペプチド及びチオール化OMPCを用いて調製された連結物のペプチド負荷数が多いことが観察された。マレイミド化(0.09μmol マレイミド/mgタンパク質から0.12μmol マレイミド/mgタンパク質)と対比して、チオール化(〜0.26μmol チオール/mgタンパク質)によるOMPC活性化レベルが高いことは、この観察から説明できる。
【実施例9】
【0138】
動物実験用の連結物
動物実験のために、NT−BrAcM2−15の場合にペプチド/OMPCチオール使用分量比(mol/mol)が〜2であったことを除き、ペプチド/OMPCチオール使用分量比(mol/mol)が〜1になるようにして連結物を調製した。0.15M NaCl中の無菌調製連結物を、アルミニウムアジュバント(MERCK alum)を用いて処方した。
【0139】
動物実験で用いた連結物の特性
【0140】
【表11】
a0.63μmolアラニン/mg Lowryタンパク質と仮定するAAAデータから計算した値に基づく。
bAAA、推定OMPC MW=40x106及びペプチドのモル数を計算するための6−アミノへキサン酸(AHA)値により決定したタンパク質値に基づく。
【実施例10】
【0141】
ワクチンの処方
実施例11で次の連結物を使用した。「群」の番号は、ワクチン接種した動物の群を意味する。処方で使用した連結物は、群1から3で使用するCT−M2−15mer−ma−OMPC(また、連結物「A」と呼ぶ。)、群4から6で使用するCT−BrAcM2−15mer−OMPC(また、連結物「B」と呼ぶ。)、群7から9で使用するNT−BrAcM2−15mer−OMPC(また、連結物「C」と呼ぶ。)、群10から12で使用するCT−BrAcM2(SRS)−23−mer−OMPC(また、連結物「D」と呼ぶ。)、群13で使用する活性化/不活性OMPC(また、化合物「E」と呼ぶ。)である。Lowry法による保存液のタンパク質濃度測定及びアミノ酸分析によるペプチド負荷測定に基づき、希釈を行う。
【0142】
段階1 連結物AからDを1x生理食塩水で希釈する。化合物Eを0.5mg/mlのタンパク質濃度に希釈する。
【0143】
段階2 1xalum中、最終濃度50mcg/ml ペプチドになるように(化合物Eに対して、最終タンパク質濃度は、1xalum中、0.25mg/mlになるように)、段階1からの各溶液を、予め撹拌した1:1の比の2xalum(MERCK ALUM.製品番号#39943、MERCK&CO,West Point,PA)に添加する。
【0144】
段階3.室温にて2時間、回転ホイールで混合する。
【0145】
段階4.その連結物を1xalumで希釈し、各目標ペプチド濃度にする。
【0146】
4.1 段階3からの溶液を、1xalumで次のように希釈する:溶液1に対して1xalumを4(v/v)の割合で混合する。
【0147】
4.2 室温にて回転ホイールで1時間混合する。
【0148】
4.3 段階4.2の溶液を、群3、6、9、12(1mcg ペプチドを受容)及び群13(5mcg 活性化/不活性OMPCを受容)に対して必要な体積ずつ分配する。
【0149】
4.4 4.2の溶液の残りを、1xalumと次のように混合する:溶液1に対して1xalumを9(v/v)の割合で混合する。
【0150】
4.5 室温にて回転ホイールで1時間混合する。
【0151】
4.6 群2、5、8、11(0.1mcg ペプチドを受容。)に対して、段階4.5の溶液を必要な体積ずつ分配する。
【0152】
4.7 4.5の溶液の残りを1xalumと次のように混合する:溶液1に対して1xalumを9(v/v)の割合で混合する。
【0153】
4.8 室温にて回転ホイールで1時間混合する。
【0154】
4.9 段階4.8の溶液は、群1、4、7、10(0.01mcgのペプチドを受容)に対する処方に相当する。
【0155】
段階5 バイアルに分注する。
【0156】
試料の操作は全て、滅菌状態で行った。
【実施例11】
【0157】
哺乳類に対するワクチンの投与
マウス感染モデルにおける、M2ペプチド連結ワクチンの免疫原性及び防御
M2ペプチド特異的抗体反応の誘導能及びマウスにおける致死性インフルエンザウイルス感染処理に対する防御力付与能について、4種類の様々なM2ペプチド連結物を評価した。試験連結物を次の表に示す。
【0158】
【表12】
【0159】
実施例10で述べたように、全てMERCK ALUMを用いて全ての連結物を処方した。筋肉内注射により、1群あたり10匹のメスBalb/cマウスからなる各動物群に連結物を100μl免疫接種し、3週間後に同じ連結物で一度免疫促進を行った。3種類の様々な投与量、すなわち0.01μg、0.1μg及び1μg(ペプチド含量に基づく)で、動物において各連結物を試験した。例えば、処方した実施例10の連結物Aを、群1に対して0.01μg、群2に対して0.1μg、群3に対して1μgを投与し、一方、処方連結物Bを、群4に対して0.01μg、群5に対して0.1μg、群6に対して1μgというように投与した。
【0160】
同じスケジュールにより、MERCK ALUM中に処方した非連結OMPCで対照動物を免疫した。第2週(投与1の後)及び第6週(投与2の後)に、血液試料を回収した。免疫促進から4週間後に、LD90(90%が致死となる投与量)のマウス馴化A/Hong Kong/68 リアソータント(A/HK/68由来のHA遺伝子及びA/PR/8/34由来のM2遺伝子)(H2N2)(本明細書中で、「A/HK/68リアソータント」と呼ぶ。)を用いて、動物の鼻腔内に感染処理を行った。感染処理後、全部で20日間、マウスの体重減少及び死亡状況を毎日モニタリングした。
【0161】
検出抗原として非改変23アミノ酸 M2ペプチドを用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(Elisa)により、M2特異的抗体タイターを調べた。非投薬群及びOMPC群の両対照群では、抗M2抗体タイターは全く検出されなかった。連結物ワクチン接種群の結果を図9に示した。PD1及びPD2の両試料において、全ワクチン群で明らかな用量効果が観察されたことから、本ワクチンが適切な用量範囲で試験されていることが示された。全連結物が顕著なM2特異的抗体反応を誘発し得た。投与量が1μgの場合、免疫促進投与後、本連結物全てが50万以上の特異的抗体タイターを誘発した。様々なワクチンの中で、CT NBrAc23mer(SRS)−OMPCが最も高いタイターを誘導し、一方、CT15mer−ma−OMPCのタイターが最低であった。CT BrAc−15mer−OMPCとNT BrAc−15mer−OMPCとの間にははっきりとした差は見られず、このことから、N末端を介して連結させたペプチドとC末端を介して連結させたペプチドとは同程度の免疫原性を有することが示される。
【0162】
致死性のウイルス感染処理後、対照群は、予想通り90%から100%の死亡率が示された。一方、投与量が1μgのワクチン群では、全ての群で、80%から100%の生存率が示された。これにより、試験したワクチンが死亡を防ぐ効果を与え得ることが確証された。図10は、CT BrAc−15mer−OMPCとCT 15−ma−OMPCとの間の比較を示す。この2種類の連結物の間の最も顕著な違いは、投与量が0.01μgの場合に、CT BrAc−15mer−OMPCを投与されたマウスでは生存率が80%であったが、CT 15−ma−OMPCを投与されたマウスでは、本質的に対照群と同程度の死亡率であったことである。この結果から、致死性の感染処理に対する防御という点で、CT BrAc−15mer−OMPCがCT 15−ma−OMPCよりも有効であることが示される。この主張は実際、これら2群により示された相対的M2抗体タイターと合致する。図11は、CT BrAc−15mer−OMPCとCT Br−Ac−23mer(SRS)−OMPCとの比較を示す。この場合、死亡率に関して、この2種類の連結物間で明確な差はない。しかし、CT BrAc−23mer(SRS)−OMPCを投与された群では、CT BrAc−15mer−OMPCを投与された群よりも体重減少が全般的に少なく、この結果から、前者の防御力がより強い可能性が考えられ得る。図12は、CT BrAc−15mer−OMPCとNT BrAc−15mer−OMPCとの比較を示す。全般的に、CT BrAc−15mer連結物を投与された群の生存率は、NT BrAc−15mer連結物を投与された群よりも高い。この実験において、全てのM2ペプチド連結物は、致死性のウイルス感染処理に対して防御力があり、チオール化OMPCに対してC末端を介して連結しているM2 23mer(SRS)が最も効果的なワクチンであると思われる。
【実施例12】
【0163】
ペプチドA/H3/HA0−2
【0164】
【表13】
【0165】
A/H3/HA0−2のペプチド配列は、A型インフルエンザ配列、H3サブタイプ、Hong Kong A/68のヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に広がるサブユニット間領域に相当する。太字の部分のように、N末端にグリシン及びシステイン等の残基がある。これらは、スペーサーとして、及び、チオエーテル結合を介してペプチド−OMPC連結物を生成させるために、マレイミド活性化OMPCキャリアと反応するためのシステインリガンドとして必要である。
【0166】
A/H3/HA0−2のペプチド合成
Pioneer Peptide Synthesizer(APPLIED BIOSYSTEMS,Foster City,CA)で、Fmoc/t−Bu化学を用いて、固相により本ペプチドを合成した。使用したレジンは、Fmoc−Linker AM−Champion,1% 架橋(BIOSEARCH TECHNOLOGIES,INC.,Novato,CA)で、修飾Rink リンカー p−[(R,S)−α−[9H−フルオレン−9−イル−メトキシホルムアミド]−2,4−ジメトキシベンジル]−フェノキシ酢酸(Rink,H.(1987) Tetrahedron Lett.28,3787−3789;Bernatowicz,M.S.,Daniels,S.B.及びKoster,H.(1989)Tetrahedron Lett.30,4645−4667)で誘導体化された、PEG−PSを基にしたレジンであった。
【0167】
アシル化反応は全て、レジンフリーのアミノ基で、活性化アミノ酸 4倍過剰量を用いて60分間行った。等モル量のHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及び2倍モル過剰量のDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)で、アミノ酸を活性化した。側鎖保護基は、Asp、Glu,Ser、Thr及びTyrに対してtert−ブチル、;Cys、Asn、His及びGlnに対してトリチル;Lys、Trpに対してtert−ブトキシカルボニルであった。会合の最後に、乾燥ペプチドレジンを、88% TFA、5% フェノール、2% トリイソプロピルシラン及び5% 水(Sole,N.A.,及びBarany,G.(1992) J.Org.Chem.,57,5399−5403)で、室温にて1.5時間処理した。
【0168】
このレジンを濾過し、本ペプチドを沈殿させるために、冷メチル−t−ブチルエーテルにその溶液を添加した。遠心後、有機捕捉剤を除去するために、新鮮な冷メチル−t−ブチルエーテルで本ペプチドペレットを洗浄した。このプロセスを2回繰り返した。最終ペレットを乾燥させ、H2O、20%アセトニトリル中で再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0169】
セミ分取 WATERS(MILFORD,MA)RCM DELTA−PAKTM C−18カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチドを精製した。20分間にわたるB:25%−40%という勾配、流速 80ml/分という条件で、生成物に相当するピークを保持時間(tR)16’で溶出した。ULTRASHPERE、C18カラム、25x4.6mm、5μmを用いて、20分間にわたるB:20%−50%Bの勾配、流速1ml/分という条件で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(WELLSLEY,MA)API−100でエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均mwが2163.48Daのところ、測定値は、2163.6Daであった。
【0170】
ペプチドA/H3/HA0−2の、OMPCへの連結
グラム陰性細菌由来のOMPCを精製する様々な方法が考案されている(Fraschら、J.Exp.Med.140,87(1974);Fraschら、J.Exp.Med.147,629(1978);Zollingerら、米国特許第4,707,543号(1987);Heltingら、Acta Path.Microbiol.Scand.Sect.C.89,69(1981);Heltingら、米国特許第4,271,147号)。Fuによる米国特許第5,494,808号に記載されているような、本分野で公知の技術を用いて、N.meningitidis(髄膜炎菌)Bの改良外膜タンパク質複合体(iOMPC)を得ることができる。
【0171】
ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis、髄膜炎菌)の改良外膜タンパク質複合体(iOMPC)溶液(6.84mg/ml)、2.9mlに対して、0.5M NaHCO3(0.322ml)を、最終濃度が50mM、pH8.5になるように添加した。これに、ヘテロ2官能価の架橋剤スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC,PIERCE CHEMICAL CO.,Rockford,Il)の20μM溶液 0.83mlを、2倍過剰量として(OMPCのリジン残基について、0.42μmol リジン/mg OMPCタンパク質)、滴下添加した。4℃にて、暗所で1時間その溶液を熟成させた後、1M NaH2PO4溶液(46μl)を添加して、pHを中性まで低下させた。過剰量の試薬を除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES INC.,Rancho Dominguez CA)を用いて、20mM HEPES pH7.3 (4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸)、2mM EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)2Lで6回(2時間ごと)緩衝液交換を行い、この溶液を透析した。透析後に、総量8.08mlの活性化OMPC(aOMPC)を回収した。
【0172】
Cys−含有ペプチドリガンド、A/H3/HA0−2の0.7mg/ml保存溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液中で調製した。このペプチド溶液のチオール含量を、Ellmanアッセイ(Ellman,G.L.(1959)、Arch,Biochem.Biophys.,82,70)により測定したところ、230μMのSH−タイターを示した。
【0173】
沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、連結反応を最初に小規模で行い、ペプチドリガンド量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。OMPCに組み込むことができるマレイミド基の最大数は、OMPCの総リジン残基により制限される。すなわち、0.42μmol リジン/mg OMPCである。OMPCに対する平均MWが40x106Daであるとするならば、これは、16,000リジンモル数/OMPC molに相当する。これらのうち一部のみが、最高で35%、実際にsSMCCにより活性化され得るが、これは、約5000molに到達可能な最大ペプチド負荷に相当する。従って、次の、OMPC 1molあたりのモル過剰量のペプチドリガンド、すなわち、500、1000、2000、3000と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、この試料をaOMPC試料と比較した。
【0174】
A/H3/HA0−2の場合、最大2000(mol Cys−ペプチド/OMPC mol)のモル濃度過剰量を使用して1時間のインキュベーション反応を行った場合、連結反応により可溶性生成物のみが得られた。この比を超えると、OMPC溶液は完全に沈殿した。
【0175】
これらの観察を基に、大規模な反応を行った:aOMPC4ml (9.8ml)を、20mM HEPES、2mM EDTA、pH7.3 2.08mlで希釈した。穏やかにボルテックスにかけながら、ペプチド保存溶液 2.08mlをこの希釈液に滴下添加したが、これは、2000モル濃度過剰量のペプチドモル/OMPC molに相当する。マレイミド−活性化OMPC溶液の試料を、最終連結物のペプチド負荷測定用ブランクとして用いた。4℃にて17時間、暗所で連結反応混合物を熟成させた。4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるようにβ−メルカプトエタノールを添加して(総量8.6μLを添加)、あらゆるOMPCの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZERを用いて、20mM HEPES pH7.3 1Lで4時間ごとに4回緩衝液交換を行い、この溶液を透析した。
【0176】
Lowry法(Lowry,O.H.,Rosebrough,N.J.,Farr,A.L.及びRandall,R.J.(1951)、J.Biol.Chem.,193,265)により濃度を測定した結果、OMPC−A/H3/HA0−2の濃度は、1.0mg/mlであることが分かった。真空排気された密封ガラス試験管中で、共沸性のHClを用いて、110℃にて70時間、この連結物及びaOMPC試料を加水分解した。アミノ酸分析によりアミノ酸組成を調べた。この連結物アミノ酸組成を、OMPCキャリア及びペプチドリガンド両方のアミノ酸組成と比較すること及びそのデータの重回帰、最小二乗解析により(Shulerら、Journal of Immunological Methods,156,(1992)137−149)、OMPCタンパク質へのペプチドの連結負荷を調べた。連結OMPC及びA/H3/HA0−2に対して、得られたペプチド対OMPCモルのモル比は、1160であった。
【実施例13】
【0177】
ペプチドA/H3/HA0−18
A/H3/HA0−2のペプチド配列のpIは、ProMaC(Protein Mass Calculator)ソフトウェア v.1.5.3で計算すると、8.4である。そのペプチドのpI値が4.1に下がるようにこの配列を処理し、その結果、ペプチドHA0−18を得たが、これは、A/H3/HA0−2と、インフルエンザHA0前駆体由来の同じ配列を有する。太字は、連結、スペーシング及びpI処理に必要な残基である。
【0178】
【表14】
【0179】
A/H3/HA0−18のペプチド合成
A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、上記ペプチドを合成した。ペプチドC末端の酸を生成させるために、4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて既に誘導体化されたChampion PEG−PSレジン(BIOSEARCH TECHNOLOGIES,INC.,Novato,CA)で、上記ペプチドを合成した。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。上記ペプチド会合の最後に、10倍過剰量のDMF中無水酢酸との反応により、アセチル化反応を行った。
【0180】
セミ分取(WATERS,Milford,MA)RCM DELTA−PAKTM C18カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製HA0−18を精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分の条件を使用した。ULTRASHPERE、C18カラム(BECKMAN、FULLERTON、CA)、25x4.6mm、5μmで、B:30%−45%Bを20分間、80%を3分間の勾配、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(Wellesley,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2336.83Daのところ、測定値は、2336Daであった。
【0181】
A/H3/HA0−18の、OMPCへの連結
実施例12でA/H3/HA0−2に対して述べたようにして、iOMPCを活性化した。Cys−含有ペプチドリガンド、A/H3/HA0−18の保存溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液で調製した。このペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイにより測定したところ、200μMのSH−タイターを示した。沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、再び、連結反応を最初に小規模で行い、ペプチドリガンド量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。すなわち、OMPC 1molあたり、次のモル過剰量のペプチドリガンド、1000、2000、3000と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、対照aOMPC試料とその試料を比較した。pI値を低下させた処理済配列の場合、最大モル濃度過剰量のリガンド、3000モル/OMPC molを使用しても沈殿は見られず、濁度は上昇しなかった。
【0182】
これらの観察から、aOMPC溶液 2ml(4.6mg)に、ペプチド保存溶液(Ellmanアッセイにより200μM、3000モル濃度過剰量に相当)1.68mlを添加した。この連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。次に、4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるようにβ−メルカプトエタノールを添加して、あらゆるOMPCの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZERを用いて、20mM HEPES pH7.3に対して、十分にその溶液を透析した。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。連結OMPC及びA/H3/HA0−18に対して、得られたペプチド対OMPCモル比は、2542であった。
【実施例14】
【0183】
ペプチド A/H3/HA0−17
【0184】
【表15】
【0185】
A/H3/HA0−17のペプチド配列は、A型インフルエンザ配列、HK A/68、H3サブタイプのヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に相当する。この配列は、実施例1のペプチドA/H3/HA0−2の配列と同様であるが、この場合は、マレイミド活性化キャリアとの連結に必要とされるシステイン残基がC末端にある。このペプチドのpIを4に調整するために、この配列をさらに改変した。この改変は、アミドの代わりのCys末端カルボキシレート、N末端のグルタミン酸及びスクシニル付加を含む。
【0186】
A/H3/HA0−17のペプチド合成
ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで既に誘導体化されたChampion PEG−PSレジン(Biosearch Technologies,Inc.)で合成を行った。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして会合を行った。ペプチド会合の最後に、10倍過剰量のDMF中無水コハク酸との反応によりスクシニル化反応を行った。
【0187】
セミ分取 WATERS(Milford,MA)RCM Delta−PakTM C−18カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチド、A/H3/HA0−17を精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分の条件を用いた。ULTRASPHERE、C18カラム(BECKMAN、FULLERTON、CA)、25x4.6mm、5μmで、B:30%−45%Bを20分間、−80%を3分間の勾配を用いて、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(WELESLLEY,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2337.62Daのところ、測定値は、2336,8Daであった。
【0188】
A/H3/HA0−17の、OMPCへの連結
実施例12で述べたようにして、iOMPCを活性化した。HA0−17の保存溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液で調製した。このペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイにより測定したところ、200μMのSH−タイターを示した。沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、再び連結反応を最初に小規模で行い、A/H3/HA0 17の量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。すなわち、OMPC 1molあたり、次のモル過剰量のペプチドリガンド、1000、2000、3500と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、aOMPC試料とその試料を比較した。pI値を低下させるよう処理した配列の場合、最大モル濃度過剰量のリガンド、3500モル/OMPCmolを使用しても、沈殿は見られず、濁度は上がらなかった。
【0189】
これらの観察に基づき、aOMPC 3mg(0.94ml)で大規模反応を行った。穏やかにボルテックスを行いながら、ペプチド保存溶液 1.334mlをこの溶液に滴下添加したが、これは、ペプチドモル/OMPCモルの3500モル濃度過剰量に相当する。その連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるようにβ−メルカプトエタノールを添加して、あらゆるOMPCの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES,INC.,RANCHO DOMINGUEZ,CA)を用いて、20mM HEPES pH7.3に対して、十分にその溶液を透析した。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。分析により、組み込みレベルとして、1860モル(A/H3/HA0−17ペプチド/mol OMPC)の値が得られた。
【実施例15】
【0190】
ペプチド A/H3/HA2−25
【0191】
【表16】
【0192】
A/H3/HA2−25のペプチド配列は、A型インフルエンザ配列、H3サブタイプ、Hong Kong A/68のヘマグルチニンタンパク質、HA2の融合ペプチド領域に相当する。この配列には、マレイミド活性化OMPCと連結するためのシステイン、スペーサーとしてのグリシン残基及びpIを3.4の値に調整するためのC末端残基としてのグルタミン酸(太字)の取り込みが含まれる。
【0193】
A/H3/HA2−25のペプチド合成
ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで既に誘導体化したChampion PEG−PSレジン(Biosearch Technologies,Inc.)で、本ペプチドを合成した。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして会合を行った。
【0194】
セミ分取 WATERS(Milford,MA)RCM Delta−PakTM C−4カートリッジ(40x100mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチド、A/H3/HA2−25を精製した。B:40%−40%(5分)−60%(20分)の勾配、流速は80ml/分の条件を用いた。Phenomenex,Jupiter C4カラム、15x4.6mm、5μmにおいて、B:35%−55%(20分)−80%(3分)の勾配で、流速 1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(Wellesley,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2271,55Daのところ、測定値は、2271,2Daであった。
A/H3/HA2−25の、OMPCへの連結
実施例12で述べたようにして、iOMPCを活性化した。
【0195】
A/H3/HA2−25の溶液を、0.1M HEPES、2mM EDTA pH7.3の脱気溶液で調製した。このペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイにより測定したところ、250μMのSH−タイターを示した。
【0196】
沈殿を生じさせずにaOMPCに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、連結反応を最初に小規模で行い、A/H3/HA2 25の量を増量させながらaOMPCをインキュベーションした。すなわち、OMPC 1molあたり、次のモル過剰量のペプチドリガンド、500、1000、2000、4000、6000と、aOMPCをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、aOMPC試料とその試料を比較した。pI値を低下させるよう処理した配列の場合、最大モル濃度過剰量のリガンド、6000モル/OMPCmolを使用しても沈殿は見られず、濁度は上昇しなかった。
【0197】
これらの観察により、aOMPC 6.3mg(2.57ml)で大規模反応を行った。穏やかにボルテックスを行いながら、この溶液に、ペプチド保存溶液 3.85mlを滴下添加したが、これは、ペプチドモル/OMPCモルの6000モル濃度過剰量に相当する。その連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。次に、4℃にて暗所で1時間、最終濃度が15mMになるように添加したβ−メルカプトエタノールと反応させて、あらゆるOMPCの未反応マレイミド基を不活性化した。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZERを用いて、20mM HEPES pH7.3に対して十分にその溶液を透析した。A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。分析により、A/H3/HA2−25の取り込みレベルとして、2436モルペプチド/mol OMPCの値が得られた。
【実施例16】
【0198】
ペプチドB/HA0−22
B/HA0−22のペプチド配列は、B型インフルエンザ配列(Victoria及びYamagata株、例えば、B/Ann Arbor/54、B/Hong Kong/330/2001及びB/Yamanashi/166/1998等のB型インフルエンザウイルスにおけるものと一致する。)のヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に相当する。
【0199】
【表17】
【0200】
この配列は、N末端へのブロモアセチル基の導入(それによりチオール化OMPCへの連結が可能となる(Tolmanら、Int.J.Peptide Protein Res.41,1993,455−466;Conleyら、Vaccine 1994,12,445−451))、グリシンスペーサー導入及びこのペプチドのpI値を調整するための修飾により改変されている。この改変は、カルボキサミドのC末端カルボキシレートへの置換、及びN及びC末端におけるグルタミン酸の付加を含む。
【0201】
B/HA0−22のペプチド合成
Pioneer Peptide Synthesizer(Applied Biosystems,Foster City,CA)で、Fmoc/t−Bu化学を用いて、固相により上記ペプチドを合成した。ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーにより既に誘導体化したChampion PEG−PSレジン(Biosearch Technologies,Inc.,Novato,CA)で、上記ペプチドを合成した。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。ペプチド会合の最後に、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて、3倍過剰量のブロモ酢酸との反応によりブロモアセチル化反応を行った。
【0202】
アシル化反応は全て、レジンフリーのアミノ基において、活性化アミノ酸 4倍過剰量を用いて60分間行った。等モル量のHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及び2倍モル過剰量のDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)で、アミノ酸を活性化した。側鎖保護基は、Gluに対してtert−ブチル、;Lysに対してtert−ブトキシカルボニル;Argに対して2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニルであった。会合の最後に、乾燥ペプチドレジンを、88% TFA、5%フェノール、2%トリイソプロピルシラン及び5% 水(Sole,N.A.,及びBarany,G.(1992)J.Org.Chem.,57,5399−5403)で、室温にて1.5時間処理した。このレジンを濾過し、ペプチドを沈殿させるために、冷メチル−t−ブチルエーテルにその溶液を添加した。遠心後、有機捕捉剤を除去するために、新鮮な冷メチル−t−ブチルエーテルでこのペプチドペレットを洗浄した。このプロセスを2回繰り返した。この最終ペレットを乾燥させ、H2O、20%アセトニトリルで再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0203】
セミ分取 WATERS(Milford,MA)RCM Delta−PakTM C−18カートリッジ(40x200mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチドを精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分という条件を用いた。ULTRASPHERE(BECKMAN,FULLERTON,CA)、C18カラム、25x4.6mm、5μmで、B:30%−50%B(20分)、−80%(3分)の勾配を用いて、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。Perkin−Elmer API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均MWが2500.7Daのところ、測定値は、2500.4Daであった。
【0204】
B/HA0−22の、OMPCへの連結
超遠心(Ti−70ローター、50,000RPM、45分間、4℃)及び10mg/mlの濃度でダウンス型ホモジェナイザーによりホモジェナイズ/再懸濁を行うことにより、窒素注入した濾過滅菌済みCM761(0.11M ホウ酸ナトリウム、pH11.3)にiOMPC出発物質(150mg)を最初に移した。次に、EDTA−DTT溶液(CM761中、0.57g EDTA/g OMPC、0.11g DTT/g OMPC)と併せてN−アセチルホモシステインチオラクトン(NAHT)(窒素注入水中、0.89g NAHT/g OMPC)の溶液を用いてそのタンパク質をチオール化した。チオール化反応を室温(〜20℃)にて4時間進行させた。次に、2回の超遠心(50,000RPM、45分間、4℃)及びダウンス型ホモジェナイザーによるホモジェナイズ/再懸濁ステップを行うことにより、チオール化iOMPCを、25mM ホウ酸ナトリウム、pH8.0緩衝液に移した。チオール化終了時に、次の段階に進む前に、Lowry法及びEllmanアッセイを行った。チオール化OMPCのチオール含量は、0.25μmol チオール/mgであった。
【0205】
最初に25mM ホウ酸ナトリウム、pH8.0緩衝液に、濃度が5mg/mlになるようにB/HA0−22 65mgを溶解した。1N NaOHによりペプチド溶液のpHをpH8.0に戻るように再調整し、次に0.22ミクロン滅菌フィルターで濾過した。チオール化OMPC 53mg(質量による負荷量比 1.2gペプチド/g OMPC)を、軽く撹拌しながらペプチド保存溶液に滴下添加した。全く撹拌せずに、連結反応を15.5時間、室温にて進行させた。
【0206】
連結反応終了時に、6個の300kD MWCO DISPODIALYZERに、使用体積が各5mlになるように連結溶液を移した。3個のDISPODIALYZERを、濾過滅菌した水がそれぞれ3.5Lから4L入った4Lのビーカーに入れた。3インチのマグネチックスターラーバー及び速度調節可能な撹拌プレートを用いて、連結物と3.5Lから4Lの濾過滅菌水両方が入った各4L ガラスビーカーを穏やかに撹拌した。反応副産物及び過剰な遊離ペプチドを除去するために、少なくとも6時間ごとに、濾過滅菌水を用いて、全部で5回の透析液交換を行った。
【0207】
A/H3/HA0−2に対して述べたようにして、Lowry法及びアミノ酸分析により最終連結物を分析した。これらの分析により、B/HA0−22に対する取り込みレベルとして、6500モル ペプチド/mol OMPCの値が得られた。
【実施例17】
【0208】
HA0ペプチド−OMPC連結物をワクチン接種したマウスにおける、A型インフルエンザウイルスによるマウス感染処理実験
OMPCに連結させたHAペプチドの連結物を用いて、筋肉内投与によりメスBalb/cマウスを免疫した。HA0−21(H1)及びHA0−22(H3)を用いた実験において、連結に用いた化学物質は、チオール化OMPC及びブロモアセチル化ペプチドであった。HA0−25(H3L)及びHA0−25(H1)を用いた実験において、用いた化学物質はマレイミジル−OMPC及びシステイニルペプチドであった。連結物を精製し、標準的方法を用いて処方用に調製した。
【0209】
ワクチンは全て、Merck Alum又はQS21アジュバント 20μgを用いて処方し、1回の注射につき、マウス1匹あたり100μlの体積で投与した。第0、2及び4週に、マウスに対してワクチン接種を行った。第7週に、このマウスに対して、鼻腔内に致死用量のインフルエンザウイルス PR8又はHKを用いて感染処理を行った。データを以下に示す。
【0210】
HAペプチド/OMPC連結ワクチンを用いた、マウス感染処理実験
【0211】
【表18】
aペプチド−OMPC連結物の各処方中のペプチド量
【0212】
血清試料を回収し、標準的ELISA方式で上記のようにアッセイした。
ELISA タイター
【0213】
【表19】
【実施例18】
【0214】
OMPCに連結させたB型インフルエンザウイルス由来のHA0ペプチドをワクチン接種したマウスにおける、B型インフルエンザウイルスによるマウス感染処理実験
上述のように、B型インフルエンザHA0連結物を調製した(上記の実施例参照)。B型/HA0−22 EGPAKLLKERGFFGAIAGFLEE(配列番号60)ペプチド−OMPC連結物について使用した連結は、チオール化OMPCに連結させたブロモアセチルペプチドであった。
【0215】
Merck Alum中に処方したB/HA0−22 1、10、100又は1000ng(本処方中の連結物のペプチド含量を基にしたng)を用いて、第0週及び第28週に、筋肉内投与によりメスBalb/cマウスを免疫した。第2週及び第4週に血清試料を回収し、ELISAによりHA0−特異的抗体を測定した。
【0216】
2回目の免疫から3週間後、マウス適合B型インフルエンザウイルス、B/Ann Arbor/54を、LD90の量(90%のマウスが死亡する量)、鼻腔を介してマウスへの感染処理を行った。その後20日間、マウスの生存及び体重変化を観察した。
【0217】
B/HA0−OMPC連結ワクチンは、強力なHA0−特異的な抗体反応を誘導した(図22A)。この抗体反応は用量依存的であった。本ワクチン1ngからかなりのHA0−特異的抗体タイターが誘導され得、本ワクチン 1000ngから、約100万のタイターが誘導された。
【0218】
B/HA0−OMPC連結ワクチンは、致死性のウイルス感染処理に対しても高い効果を示した。生存曲線(図22B)で示すように、B/HA0−OMPCワクチン 10ng、100ng又は1000ngを投与されたマウスでは生存率が100%であり、ワクチン 1ngを投与されたマウスでは生存率が70%であった。予想通り、非処置の対照では死亡率が90%であった。B/HA0−OMPCワクチンは、体重減少を防ぐ点でも大きな効果があった。例えば、対照マウスにおいて30%の体重減少があった一方で、本ワクチン 100ng又は1000ngを投与したマウスの場合、最大体重減少はわずか10%であった。
【0219】
亜致死性の感染処理モデルにおいて、インビボウイルス複製におけるB型インフルエンザワクチンの効果を調べた。4週間に2回の割合でマウスを免疫し、亜致死性量のB/Ann Arhor/54を用いて感染させた。第1、3、5及び7日に、鼻腔及び肺洗浄液を回収した。ワクチン接種マウス及び対照マウスは、鼻腔のウイルス排出の点では明らかな差が見られなかった。しかし、対照と比較して、免疫されたマウスにおいて、肺のウイルス排出が著しく減少した。(図23)
【実施例19】
【0220】
A/H3/HA2ペプチド−KLH連結物をワクチン接種したマウスにおける、A型インフルエンザウイルスによるマウス感染実験
マレイミド活性化KLHとの反応のためのチオール基を与えるために本ペプチドのN末端にシステイン残基を付加することにより、A/H3/HA2−6−KLH連結物(KIDLWSYNAELLVALENQHT(配列番号59)を調製した。
【0221】
第0、3及び5週に、各群10匹のBalb/cマウスに対して、20QS21中のA/H3/HA2−6−KLH連結物 20μgを皮下投与して免疫した。最後の免疫から2週間後に、LD90量のインフルエンザHK リアソータントを用いて、鼻腔を介してマウスへの感染処理を行った。HA6−KLHは、致死性感染処理に対してある程度の防御効果を示した。例えば、感染処理後、対照の死亡率が90%であったのに対して、ワクチン群の死亡率は60%であった。さらに、本ワクチンを投与したマウスにおいて、全般的に対照よりも体重減少が軽度であった(図24)。
【実施例20】
【0222】
HPV VLPsへのM2ペプチドの連結
(Toberyら、2003)に記載されているようにして、HPVタイプ16VLPsを発現させ、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae、出芽酵母)から精製した。この実験で使用した抗原は、標準的なt−Boc固相合成により調製した合成25−残基M2−ペプチドである。このペプチドの配列は、インフルエンザウイルス株、A/Aichi/470/68(H3N1)のM2タンパク質の細胞外セグメント、Ac−SLLTEVETPIRNEWGSRSNDSSD−Aha−C−NH2(配列番号2であり、非天然アミノ酸、6−アミノへキサン酸(Aha)を含有する。)と類似している。
【0223】
抗原キャリア連結物
L1タンパク質濃度が14μMである、50mM NaHCO3 pH8.4中のHPV VLPsを、市販のヘテロ2官能価架橋剤、4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC)(PIERCE ENDOGEN,ROCKFORT,IL)と混合して、最終sSMCC/L1タンパク質(mol/mol)比を〜100とした。その反応を、2℃から8℃にて1時間進行させ、次に、10mM ヒスチジン、0.5M NaCl、0.015%ポリソルべート80を含有するpH6.2 緩衝液に対して透析により脱塩し、sSMCC活性化HPV VLPsを生成させた。実施例1に記載されているようなDTNBアッセイにより、マレイミド相当物を調べた。N2注入緩衝液中に溶解させたM2−ペプチドを、sSMCC活性化HPV VLPsと混合し、チオール/マレイミド(mol/mol)比が〜3になるようにした。あるいは、sSMCC活性化HPV VLPsをN−アセチルシステインと、チオール/マレイミド(mol/mol)比が〜10になるように混合することにより、活性化/不活性HPV VLP(A/Q HPV VLP)を調製した。2℃から8℃にて、この反応を〜15時間進行させた。次に、両試料をβ−メルカプトエタノールで処理し、過剰なマレイミドを全て不活性化した。最後に、0.5M NaCl及び0.015% ポリソルベート80に対して、本試料を透析(DISPODIALYSER MWCO 300,000 SPECTRUM INDUSTRIES INC.,RANCHO DOMINGUEZ、CA)した。連結前にHPV VLPs中の遊離チオールをヨードアセトアミドにより不活性化した場合、同様の結果が得られた。
【0224】
タンパク質濃度及びVLP1個あたりのペプチド負荷の測定
比色ビシンコニン酸(BCA)アッセイにより溶液中のタンパク質濃度を測定した。アミノ酸分析によりVLP1個あたりのペプチド負荷を調べた。110℃にて、6N HCl中で70時間、試料を加水分解し、次に陽イオン交換クロマトグラフィー処理後に定量した(AAA SERVICES INC.,BORING,OR)。Aha含量を参照するか、又はShulerら、1992により記載された手段に基づいた分析を行うかのいずれかにより、ペプチド量を測定した。両方法から同様の結果が得られた。
【0225】
ウイルス様粒子における抗原性ペプチド負荷
そのペプチドにおける非天然アミノ酸(Aha、6−アミノへキサン酸)の定量又はデータの重回帰最小2乗解析(Shulerら、「A simplified method for determination of peptide−protein molar ratios using amino acid analysis(アミノ酸分析を用いた、ペプチド−タンパク質モル比の測定に対する簡便法)」、J.Immunol.Meth.,Vol.156 pp.137−149,1992)のいずれかにより、アミノ酸分析を用いて、HPV VLPにおけるペプチド負荷を調べた。両方法により、L1タンパク質1分子あたり約11のペプチド負荷が示された。1個のHPV VLP中には360コピーのL1タンパク質があり(1個のVLPは、72個のL1タンパク質5量体又はカプソマーを含有する。)、従って、VLP1個あたり、全部で約4,000ペプチドコピーが負荷されているということになる。この数は、以前報告された、ウシパピローマウイルス粒子において負荷された全ペプチド数(Chackerianら、2001)よりも著しく多い。ウシパピローマウイルスの場合、抗原ペプチドは、ストレプトアビジン(SA)に融合しており、その融合構築物がビオチニル化VLPsと相互作用した。VLPsのL1タンパク質は、〜1.5SA 4量体を収容しており、その結果、L1単量体1個あたり〜6ペプチドの比になることが分かった。この負荷数は、本発明者らの、HPV VLPに対するM2ペプチドの連結物の場合の約半分である。SA 4量体は容積が大きいため、報告されたこのケースにおいては、抗原が多数負荷することができない可能性がある。
【0226】
sSMCCにより活性化された最初の部位のうちいくつがペプチドカップリングを生じさせたかを調べることで、連結効率を調べることができる。アミノ酸分析により、加水分解プロセスにおけるsSMCC架橋剤の産物であるTXA(トラネキサム酸)の量的推計を行うことができる。TXAの平均測定値から、L1タンパク質1分子あたりの活性化部位が〜19個であることが示されたが、このことから、活性化部位のうち58%(又は11/19)のみがペプチドカップリングに関与することが示唆された。活性化部位の中にはCys、Lys又はHisの近接した側鎖と相互作用することができるものがあり、その結果、そのタンパク質の架橋が起こるという可能性がある。M2−HPV VLP及び活性化/不活性(A/Q)HPV VLPsの両方が、還元条件下で、70℃にて10分間、変性溶液処理を行っても、10%SDS−Bis−Trisゲルに浸透し得ないことが観察された。非活性化HPV VLPsの場合は、ゲル添加前に同条件で処理した後、予想された移動度のタンパク質バンドが得られる。従って、マレイミド活性化後に、顕著な内部−VLP架橋が起こっていると思われる。以下に示すように、VLPサイズ測定から、VLPsの粒子サイズ分布に対するVLP間架橋の影響は無視してよいと思われる。
【0227】
HPV VLPs表面における抗原性ペプチドの空間的分布を考慮した場合、Lys側鎖の一級アミンは、sSMCC活性化が最も起こりやすい部位である。HPVタイプ16のL1タンパク質に34個のLysがあり、これらのリジンのうち9個がC末端に位置する。図25に示す分子の図から、HPVタイプ16VLPsにおける推定活性化部位は、VLP表面に均一に広がっていることが分かる。図25で示されるLys残基のNZ原子は、VLPの外側に配向している。Lys230を除き、Lys残基は全て、表面の25%超が溶媒に曝露されている。C末端領域は非常に柔軟であり、プロテアーゼに接近しやすく、従って、この領域に位置するLysの側鎖が活性化に利用され得ることは十分に考えられ得ることである。残念ながら、このC末端領域は、X線構造において明らかとならなかった(Chenら、2000)。
【実施例21】
【0228】
M2−HPV VLP連結物の医薬的特性
ELECTRON MICROSCOPY BIOSERVICES(MONROVIA,MD)により、JEOL 1200 EX Transmission Electron Microscope(透過型電子顕微鏡)を用いて、高倍率で電子顕微鏡測定が行われた。2% リンタングステン酸を用いて、風乾試料を染色した。Malvern 4700装置において、90°の角度での検出で、室温にて動的光散乱測定を行った。出力は0.25W、絞り(開口)は100、総タンパク質濃度は0.1mg/mlであった。報告されたサイズは、同じ試料における5回の連続的測定から得られたデータの単一モード解析による結果である、Z−平均流体力学的直径を表す。HPV VLP又はM2−HPV VLP連結物溶液濁度の熱誘導性の上昇を、温度調節装置 タイプ89090A付きの分光光度計 HP 8453でモニタリングした。24℃から74℃へと、〜1.5℃/分の割合で温度を上げながら、350nmの光学密度の変化を記録した。分析的超遠心機 Beckman XL−1により、An6Tiローター及びダブルセクターセルを用いて沈降速度実験を行った。ローター速度は、10,000rpmであり、280nmの吸収により境界運動を観察した。プログラムDCDT+(http://www.jphilo.mailway.com)を用いてデータを解析した。Shodex OHpak SB−805カラム及び25mM リン酸、0.75M NaCl、pH7.0を含有する溶出緩衝液を備えたHP 1100システムにおいて、SEC−HPLCを行った。
【0229】
動的光散乱(DLS)測定から、M2−HPV VLP連結物の平均粒子サイズは、非処理HPV VLPキャリアの場合は〜60nmであるが、この連結物(M2−HPV VLP)の場合は〜80nmというように、わずかに大きくなることが示された。A/Q HPV VLPsの平均流体力学サイズは65nmであることが明らかになったが、この値は非処理キャリアのサイズと非常に近い。SEC−HPLCの結果(図26A)において、A/Q又は非処理HPV VLPsと比較して、短い保持時間でM2−HPV VLP連結物の主要なピークが溶出されることが示されているが、これは、A/Q又は非処理HPV VLPsの粒子サイズよりも本連結物の粒子サイズが大きいことに対応するものである。クロマトグラムにおける小さな肩部分から、この連結物の前後に凝集物質の小さな断片が存在することが分かる。最終的に、沈降速度データ(図26B)から、M2−HPV VLPの場合の沈降係数分布において、非処理又はA/Q HPV VLPsの沈降係数よりも大きいs*値に中心があることが示される。キャリアのみの沈降係数と比較して、連結物の沈降係数がわずかに上昇しているのは、DLS及びクロマトグラフィー測定により明らかになったように、この連結物に対するサイズがわずかに大きくなっていることと一致する。全体の結果から、連結プロセスの間に、著しいVLP間架橋(及び、間接的な凝集)が起こっていないことも示唆される。
【0230】
EMによるM2−HPV VLP連結物の観察(図27)により、サイズ分布が40nmから95nmであり、平均が約65nmであることが示される。この値は、非処理HPV VLPsの値と非常に近い。しかし、非連結キャリアと比較して、この連結物がM2−HPV VLPにおいて「不鮮明な様相」を持つことが分かったが、これは連結したペプチドによるものであり得る。EM像で示される複数のVLP凝集体が、同様にHPV VLPに対して観察される。従って、これらは、EM測定のための試料操作の結果であり得、溶液中での試料の典型的な様子ではない。結論として、EMの結果により、HPV VLPsの形態が保存され、化学連結プロセスの間にHPV VLPの骨格の大きな破壊が起こらなかったということが支持される。
【0231】
処理及び非処理HPV VLPs又はこの連結物に対する溶液濁度アッセイで調べた熱誘導凝集の特徴を図28に示す。非処理HPV VLPsに対して、熱誘導性凝集(光散乱による光学密度の増加により明らかになったように)は60℃で検出可能となり、温度をさらに上げた場合、突然上昇する。A/Q VLPs又はM2−HPV VLP連結物の場合、溶液の濁度から70℃以下では検出可能な凝集が示されない。熱誘導性凝集に対する安定性が強まったのは、sSMCC処理により誘導されたVLP内架橋によるものと考えられる。sSMCCを介して形成されるさらなるVLP内結合により、L1タンパク質が部分的に折り畳まれなくなること及び疎水性表面に対する連続的な曝露を防ぎ得る。連結又はsSMCC処理により、HPV VLPsの表面特性が変化し、それがある部分、キャリアの安定性の強化に寄与し得るということは注目するに値する。
【実施例22】
【0232】
M2−HVP連結物のインビトロ抗原性の分析
抗HPV及び抗M2抗体との連結相互作用の検出
Biacore2000において表面プラスモン共鳴技術を用いて、HPVタイプ16VLPs及びM2−HPV VLP連結物の、M2又はHPVタイプ16特異的抗体に対する結合を調べた。抗HPV抗体(配座抗体(conformational antibodies) H16.V5、H16.E70及び抗体H16.J4に結合する直線状エピトープ)及び抗M2抗体を、センサーチップ タイプCM5の表面に化学的に固定化したラット抗マウスFcγ抗体に結合させた。
【0233】
M2−HPV VLP連結物及びA/Q HPV VLPの、直線状及び立体配座抗HPVマウス抗体(mAB)への結合を調べることにより、抗原の空間分布をさらに調べた。配座又は中和抗体H16.V5及びH16.E70に対する結合親和性が劇的に低下することが分かったが、一方、直線状抗体H16.J4への結合の場合は、連結への影響はごくわずかであった。配座抗体H16.V5及びH16.E70の結合に関与するエピトープは、Phe50を含有する(Whiteら、「Characterization of a Major Neutralizing Epitope on Human Papillomavirus Type 16 L1(ヒトパピローマウイルスタイプ16 L1における主要な中性化エピトープの特徴)」、J.Virol.,Vol.73(6),pp。4882−4889,1999)。図25に示すように、6個のリジン残基があるが、これは、Phe50に隣接している。Phe50周辺のいかなるLys残基に対するペプチドの連結も、抗体結合を混乱させると思われる。H16.J4は、VLPにおけるL1タンパク質の上のループと結合する。このループには、Lysが1個しかなく、そのH16.J4への結合がM2−HPV VLPにおいて変化しないので、ペプチドとは連結しないと思われる。
【0234】
1つの懸念事項は、このキャリアの表面で、ペプチドが正しい3−D立体配置を取るかどうかということである。M2タンパク質は、A型インフルエンザウイルスの内在性膜タンパク質であり、選択した抗原配列は、M2の細胞外部分を表す。M2タンパク質は、2個のジスルフィド結合二量体により形成されたホモ四量体であり(Tianら、「Initial structural and dynamic characterization of the M2 protein transmembrane and amphipathic helices in lipid bilayers(脂質二重膜におけるM2タンパク質膜貫通及び両親媒性ヘリックスの一次構造及び動的特徴)」、Prot.Sci.,Vol.12,pp.2597−2605、2003)、我々の知る限り、M2の細胞外部分に関する文献において、詳しい3D−構造は報告されていなかった。CD及び蛍光測定から、溶液中の非連結ペプチドが、大部分、ランダムな構造的配置にあることが示唆される。これらの知見は、VLPの表面の確定的な構造的配置におけるペプチド提示を支持するものではないが、表面プラスモン共鳴により得られた予備的な結果から、M2−HPV VLP連結物が抗M2抗体 L18.H12及びP6.C8に結合することが示される。同条件下で、HPV VLPs又は(A/Q) HPV VLPを用いた場合、抗M2抗体に対する結合は全く検出されなかった。
【実施例23】
【0235】
インビボ免疫評価
4週齢から10週齢のメスBalb/cマウスを、CHARLES RIVER LABORATORIES(Wilmington,MA)より入手した。Merck Aluminium Adjuvant(MAA)に様々なペプチド用量で吸着させたM2−HPV VLPを、4週間の間隔をあけて2回の注射で、0.1ml I.M. 投与した。第2回目の注射から3週間後、マウスに対して感染処理を行った。3、30及び300ngのペプチド用量は、HPV VLP 約5、50及び500ngに相当する。各注射で投与したMAA用量は、45mcgであった。各注射から2週間後に、抗M2幾何平均タイターを調べた。M2抗体ELISAに対して、50mM 重炭酸緩衝液、pH9.6中の4μg/mlの濃度のM2ペプチド、1ウェルあたり各50μlで、96ウェルプレートを4℃にて一晩被覆した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でプレートを洗浄し、0.05% Tween−20を含有するPBS中の3%スキムミルク(ミルク−PBST)でブロッキングした。4倍ずつPBSTで試験試料を連続希釈した。希釈試料 100μlを各ウェルに添加し、そのプレートを24℃にて2時間インキュベーションし、PBSTで洗浄した。所定の希釈率のミルク−PBST中のHRP連結二次抗体 50μlを各ウェルに添加し、そのプレートを24℃にて1時間インキュベーションした。プレートを洗浄し、100mM クエン酸ナトリウム、pH4.5中の1mg/ml o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド 100μlを各ウェルに添加した。24℃にて30分間インキュベーションした後、1N H2SO4を1ウェルあたり100μl添加して反応を停止させ、ELISAプレートリーダーを用いて、490nmでそのプレートの読み取りを行った。連結対照ウェルの平均プラス標準偏差2つ分を超えるOD490nm値を与える最大希釈の逆数として、抗体タイターを定義した。ウイルス感染に対して、マウス馴化ウイルスA/Puerto Rico/8/34(PR8;H1N1)及びX−31(H3N2)、PR8とA/Aichi/68(H3N2)との間のリアソータントを、10日齢の発育鶏卵の尿膜腔液で増殖させた。マウスをケタミン/キシラジンで麻酔した。1 LD90のウイルス20μlを鼻腔に植え付けた。感染処理後、マウス生存率を毎日記録した。(ある特定の日のマウス数/0日のマウス数)x100%として、死亡率を計算した。
【0236】
各免疫から2週間後に採取した血液試料に対するELISA測定の結果から、この連結物により、高い抗M2抗体反応が誘導されたことが示される(図29A)。M2ペプチド用量が3ngから300ngまで増えるに従い、タイターが体系的に向上するにもかかわらず、最低用量と最高用量との間のタイターの差は1対数単位内である。これらの結果から、適切なキャリアにおいて提示された場合、ナノグラム用量の抗原性ペプチドが顕著な免疫反応を誘導し得ることが示される。M2ペプチドをより大きなキャリア、上記のようなナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)の外膜タンパク質複合体(OMPC)に連結させた場合、マウスにおいて同様のタイターが観察されることは注目に値する。
【0237】
致死性の感染処理に対するマウスの生存率を図29Bに示す。最低ペプチド用量(3ng)を投与した群の生存率はわずか60%であったが、一方で、30又は300ngペプチドといった最高用量を投与した群での防御効果は100%であった。対照群では、感染処理後に生存していたマウスはいなかったことから、ウイルス感染処理及びワクチン防御両方が有効であったことが確認できる。上記でM2−OMPC連結ワクチンで見られるように、感染処理後に100%生存した群においてでさえも、ある程度の体重減少が観察された。結論として、Balb/cマウスに対する、M2−HPV VLP連結ワクチンを用いたワクチン接種により、生ウイルス感染処理から動物を効果的に守ることができる。
【0238】
キャリア誘導エピトープ特異的抑制が文献(Raulyら、1999)に記載されている。従って、さらなる実験においては、インビボにおいて抗キャリア抗体の存在により、本連結物の免疫原性がどのように影響を受けるかを調べることになろう。M2−OMPC連結ワクチンを用いた、実施例26で示す実験から、キャリアへ予め曝露することにより、インフルエンザペプチド連結ワクチンに対する反応はなくならないが、わずかに低下することが示される。しかし、連続的な免疫促進により、本キャリアに対する既に存在する抗体のあらゆる有害な影響を切り抜け得ることが示唆された。
【0239】
キャリアによるプレ免疫が抗体反応を弱めることが示されたケースは多数あるが、抗キャリア抗体が存在すると連結ワクチンの免疫原性に対して悪影響が及ぼされるということを推測的にただ提案することはできない。キャリアに対する事前に存在する免疫性(破傷風トキソイド)が、抗hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン(Shahら、「Prior immunity to a carrier enhances antibody responses to hCG in recipients of an hCG−carrier conjugate vaccine(hCG−キャリア連結ワクチンのレシピエントにおいて、既に存在するキャリアに対する免疫性により、hCGに対する抗体反応が促進される。)」、Vaccine,Vol.17,pp.3116−3123,1999)又はマラリアペプチド(Liseら、「Enhanced epitopic response to a synthetic human malarial peptide by preimmunization with tetanus toxid carrier(破傷風毒素キャリアを用いたプレ免疫による、合成ヒトマラリアペプチドに対するエピトープ性反応の促進)」、Infect.Immun.,Vol.55,pp.2658−2661,1987)反応のいずれかに対する有用性が報告された。インフルエンザペプチドエピトープのキャリアとしての組み換え鞭毛について述べている様々なケースにおいて、キャリアに予め曝露しても効果がないことが分かった(Ben−Yedidia及びArnon,「Effect of pre−existing immunity on the efficacy of synthetic influenza vaccine(合成インフルエンザワクチンの効力における、既に存在する免疫の効果)」、Immunol.Lett.,Vol.64,pp.9−15,1998)。HPV VLPsの場合、非処理型(抗HPVワクチンとして)又は処理型(様々な抗原を提示するキャリアとして)のキャリアに予め曝露した動物モデルにおいて何らかの差があるかどうかについてはまだ分かっていない。反応性ヒト血清の75%超がH16.V5抗体により完全にブロックされることが分かった(Wangら、「A monoclonal antibody against intact human papillomavirus type 16 capsids blocks the serological reactivity of most human sera(インタクトなヒトパピローマウイルス タイプ16キャプシドに対するモノクローナル抗体は、ほとんどのヒト血清の血清反応性をブロックする。)」、J.Gen.Virol.,Vol.78,pp.2209−2215,1997)。H16.V5抗体が結合する立体配座エピトープを連結M2−HPV VLPが提示するということから、HPVに対して予め曝露された対象者に対して、抗原とキャリアとしてのHPV VLPsとの間における化学連結により調製したワクチンに対するキャリア抑制をそれ程懸念する必要なないであろうことが示唆される。
【0240】
本明細書中で示すM2−OMPCを用いた実験において、インフルエンザウイルスの致死性感染処理に対する防御効果を、免疫した動物血清を投与することにより受動的に移すことができることが示されているが、このことから、中和抗体が防御力を与えるのに十分であったことが示される。同じ抗原をHPV キャリアに連結させたので、M2−HPV VLP連結物を用いた免疫により、同様の液性反応が引き起こされることが予想される。細胞性免疫に関しては、以前の実験により、IL−4のCD4+T細胞産生により測定したところ、HPVタイプ16VLPsが強いTh2反応を誘導することが示された(Toberyら、「Effect of vaccine delivery system on the induction of HPV16 L1−specific humoral and cell−mediated immune responses in immunized rhesus macaques(免疫したrhesus macaques(アカゲザル)における、HPV16−L1特異的液性及び細胞性免疫反応の誘導におけるワクチン送達システムの効果)」、Vaccine,Vol.21,pp.1539−1547、2003)。HPV CLPsにより提示される非立体配座抗原性配列が、細胞性免疫反応を促進し得ることも提案された(Greenstoneら、1998)。
【実施例24】
【0241】
VLPへのヘマグルチニン由来ペプチドの連結
ペプチド、Cys−A/H3/HA0−22を、HPV VLPに連結させた。
【0242】
【表20】
【0243】
Cys−A/H3/HA0−22のペプチド配列は、A型インフルエンザコンセンサス配列、H3サブタイプのヘマグルチニンタンパク質前駆体、HA0の切断部位に広がる領域に相当する。太字で示すものは様々な機能を果たすために必要な残基であり、それぞれN末端において、グリシンはスペーサーとして、グルタミン酸はpI調整基として(本明細書で述べるように)、及びシステインはリガンドとして、マレイミド活性化HPV VLPキャリアと反応してチオエーテル結合を介したペプチド−VLP連結物を生成させるために必要な残基であり、C末端において、グルタミン酸はpI調整基として必要な残基である。
【0244】
Cys−A/H3/HA0−22のペプチド合成
PIONEER Peptide Synthesizer(APPLIED BIOSYSTEMS,FOSTER CITY,CA)において、Fmoc/t−Bu 化学を用いて、固相により本ペプチドを合成した。ペプチドC末端の酸を生成させるために、活性剤としてDIPCDI/HOBtを用いて4−ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸リンカーで既に誘導体化したCHAMPION PEG−PSレジン(BIOSEARCH TECHNOLOGIES,INC.,NOVATO,CA)で、本ペプチドを合成した。。DIPC(ジイソプロピルカルボジイミド)で、最初のアミノ酸、グルタミン酸を対称無水物として活性化し、触媒量のDMAP(ジメチルアミノピリジン)の存在下でそのレジンとエステル結合させた。本ペプチド会合の最後に、DMF中の10倍過剰量の無水酢酸との反応によりアセチル化反応を行った。
【0245】
アシル化反応は全て、レジンフリーのアミノ基において、活性化アミノ酸 4倍過剰量を用いて60分間行った。等モル量のHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)及び2倍モル過剰量のDIEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)でアミノ酸を活性化した。一般的な側鎖保護基スキームは、Asp、Glu、Ser、Thr及びTyrに対してtert−ブチル、;Cys、Asn、His及びGlnに対してトリチル;Argに対して2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル;Lys、Trpに対してtert−ブトキシカルボニルであった。会合の最後に、88% TFA、5%フェノール、2%トリイソプロピルシラン及び5% 水(Sole,N.A.,及びBarany,G.(1992)J.Org.Chez.,57,5399−5403)で、乾燥ペプチドレジンを室温にて1.5時間処理した。
【0246】
そのレジンを濾過し、本ペプチドを沈殿させるために、冷メチル−t−ブチルエーテルにその溶液を添加した。遠心後、有機捕捉剤を除去するために、新鮮な冷メチル−t−ブチルエーテルでこのペプチドペレットを洗浄した。このプロセスを2回繰り返した。最終ペレットを乾燥させ、H2O、20%アセトニトリルで再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0247】
セミ分取RCM DELTA−PAKTM(WATERS,MILFORD,MA) C−18カートリッジ(40x200mm、15μm)を用いて、溶出液として(A)水中の0.1% トリフルオロ酢酸及び(B)アセトニトリル中の0.1% トリフルオロ酢酸を使用して、逆相HPLCにより未精製ペプチドを精製した。20分間にわたるB:30%−45%の勾配、流速 80ml/分の条件を使用した。ULTRASPHERE(BECKMAN、FULLERTON,CA)、C18カラム、25x4.6mm、5μmで、B:30%−45%B(20分)の勾配を用いて、流速1ml/分で分析的HPLCを行った。PERKIN−ELMER(WELESLLEY,MA)API−100でのエレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより、精製ペプチドの特徴を調べた。理論的平均mwが2293.4Daのところ、測定値は、2293.8Daであった。
【0248】
HPV VLPに対する、ペプチド Cys−A/H3/HA0−22の連結
0.5M NaCl、20mM His緩衝液、0.026% PS80、pH6.2中で0.869mg/mlの濃度になるようにHPV VLP16滅菌保存溶液を調製した。活性化反応を妨害する可能性のあるHis緩衝液を除去するために、HPV VLP16保存溶液を2.5mlずつ分注したものを、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES,INC.,RANCHO DOMINGUEZ,CA)を用いて、0.5M NaCl、0.026 PS80 2Lの緩衝液を6回交換(2時間ごと)しながら、透析を行った。HPV VLP溶液(0.474mg/ml、4.58ml)に対して、0.5M NaHCO3(0.506ml)を、最終濃度が50mM、pH8.2になるように添加した。これに、ヘテロ二官能価架橋剤、スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(sSMCC、PIERCE CHEMICAL CO,ROCKFORD,IL)の20μM 溶液 0.156mlを滴下添加したが、この量は、利用可能なリジン残基を超える4倍過剰量に相当する。4℃にて、暗所で2時間その溶液を熟成させた後、過剰量の試薬を除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES INC.,Rancho Dominguez CA)を用いて、10mM His緩衝液、0.5M NaCl、0.015% PS80、pH6.2 2Lの緩衝液を6回交換(少なくとも2時間ごと)しながら、活性化HPV VLPを透析した。透析後に、全部で6.1mlの活性化HPV VLP(aVLP)、0.356mg/mlを回収した。
【0249】
Cys含有ペプチドリガンド、Cys−A/H3/HA0−22の0.5mg/ml保存溶液を、0.1M His、0.5M NaCl、0.015% PS80 pH7.2の脱気溶液で調製し、0.2μで濾過した。そのペプチド溶液のチオール含量をEllmanアッセイ(Ellman,G.L.(1959),Arch.Biochem.Biophys.,82,70)により測定したところ、218μMのSH−タイターを示した。
【0250】
沈殿を生じさせずにVLPに安全に取り込むことができるペプチドリガンドの最大量を定義するために、連結反応を最初に小規模で行い、ペプチドリガンドの量を増量させながらVLPをインキュベーションした。VLPに導入できるマレイミド基の最大数は、その外面に示される、つまり、化学的修飾に利用可能なリジン残基の数により制限される。L1タンパク質のX線構造を基すると、連結に利用可能なVLPは、0.36μmolリジン/mg (連結に利用可能なVLP)である。VLPの平均MW、20x106Daを考慮する場合、これは、7,200リジンモル/VLPモルに相当する。従って
、次のVLP1モルあたりのモル濃度過剰量のペプチドリガンド:1000、2000、4000、6000と、aVLPをインキュベーションした。1時間後、何らかの沈殿の有無又は濁度の上昇について調べるために、aVLP試料とその試料を比較した。連結反応により、最大1000まで(mol Cys−ペプチド/VLP mol)のモル濃度過剰量を使用して1時間インキュベーション反応を行った場合、可溶性生成物のみが得られた。その比を超えると、OMPC溶液の完全な沈殿が起こった。
【0251】
これらの観察を基に大規模な反応を行った:pHを7.2に上げるために、10mM His、0.5M NaCl中の3.5ml(1.25mg)に、NaOH 0.25M 56μlを添加した。穏やかにボルテックスしながら、これに、ペプチド保存溶液 0.28mlを滴下添加したが、これは、1000モル濃度過剰量のペプチドモル/VLPmolに相当する。マレイミド−活性化VLP溶液の試料を、最終連結物のペプチド負荷測定用ブランクとして用いた。連結反応混合物を、4℃にて17時間、暗所で熟成させた。4℃にて、暗所で1時間、最終濃度が15mM(総量4μLを添加した。)になるように、β−メルカプトエタノールを添加して、あらゆるVLPの残留マレイミド基を不活性化させた。非連結ペプチド及びβ−メルカプトエタノールを除去するために、4℃にて、300K MWCO DISPODIALYZER(SPECTRUM LABORATORIES,INC.,RANCHO DOMINGUEZ,CA)を用いて、0.5M NaCl、0.015% PS80 1Lで、5時間ごとに4回液交換を行い、その溶液を透析した。BCA法(PIERCE CHEMICAL CO.,ROCKFORD,IL)により濃度を測定したところ、VLP−A/H3/HA0−22の濃度は、0.131mg/ml(4.5ml)であることが分かった。
【0252】
真空排気された密封ガラス試験管中で、共沸性のHClを用いて、110℃にて70時間、本連結物及びaOMPC試料を加水分解した。アミノ酸分析により、アミノ酸組成を調べた。連結物アミノ酸組成を、VLPキャリア及びペプチドリガンドの両アミノ酸組成と比較すること、及び、そのデータの重回帰、最小二乗解析により(Shulerら、J.Immunol.Meth.,156,(1992)137−149)、OMPCタンパク質へのペプチドの連結負荷を調べた。VLPとA/H3/HA0−22との間の連結物に対して、モル比は770であった(ペプチド/VLP mol/mol)。
【実施例25】
【0253】
M2連結ワクチンによるウイルス排出の抑制
実施例5で述べたようにM2ペプチド配列番号1を用いて調製したM2−KLH連結ワクチンの、マウスの気道におけるウイルス複製に対する効果を評価した(図30)。各群のBalb/cマウスに対して、第0、14及び28日に、連結ワクチン、M2−KLH 20μgとQS21(M2−KLH/QS21) 20μg、又はQS21のみ 20μg(QS21)を用いて、筋肉内注射により免疫した。3回目の免疫から3週間後に、A/HK/68 リアソータントの75 TCID50を用いてマウスの鼻腔内に対して感染処理を行った。感染処理後、第1、3、5、7又は9日に、各群から8匹のマウスを屠殺し、鼻腔洗浄液及び肺洗浄液を回収した。それぞれの時間点のウイルスタイターを調べた。免疫したマウスは、対照マウスよりも全般的に鼻腔試料及び肺試料の両方においてウイルスタイターが低かった。ウイルス排出の低下は、肺においてより顕著であった。対照とワクチン接種群との間の肺における排出の差は、統計学的に有意であった(p<0.05)。
【実施例26】
【0254】
アカゲザルにおけるM2連結ワクチンの免疫原性
非免疫及びOMPC−免疫アカゲザルの両方において、M2ペプチド配列番号2を用いて、実施例5のように調製したM2−OMPC連結物を試験した(図31)。認可済みのヘモフィルスインフルエンザワクチン(PEDVAXHIB、MERCK&CO.,INC.,WEST POINT,PA)を含むいくつかの細菌性多糖類連結ワクチンに対するキャリアとして、OMPCが使用されている。従って、この実験では、OMPCに対する既存の免疫が本インフルエンザワクチンの効力に明らかに影響を及ぼすか否かを調べた。
【0255】
30匹のサルを各15匹ずつ2群に分けた。抗OMPC抗体反応を誘導するために、一方の群に、2種類のヒト用量のPEDVAXHIBを用いてプレ免疫を行った。PEDVAXHIB免疫を受けたサルでは、M2−OMPC免疫の6週間前に、OMPC GMTsが14,703であった。
【0256】
次に、OMPC免疫されたサル及び免疫を受けなかったサルを、各3匹ずつそれぞれ5群に分け、筋肉内投与により、Alum中に処方したM2−OMPC連結ワクチンを10μg、30μg、100μg及び300μg(総連結タンパク質に基づいた用量)又はAlumプラスQS21中に処方した本ワクチン 100μgを用いて免疫した。0−、8−及び25週のスケジュールを用いて免疫を行った。33週間にわたり、4週間から5週間隔で血液試料を回収した。
【0257】
1回の免疫後、M2−OMPCワクチンは、顕著なM2−特異的タイターを誘導した。2回目及び3回目の免疫後、これらの反応がさらに促進された。OMPC免疫したサル及びOMPCを免疫しなかったサルの両方で、明らかな用量効果はなく、最低用量である10μgにおいて、最高用量である300μgで誘導されたM2特異的タイターと同程度のM2特異的タイターが誘導された。AlumプラスQS21中に処方されたワクチンは、Alumのみの中に処方された同用量の連結物よりも、5倍から10倍高い抗体タイターを示した。さらに、AlumプラスQS21中のワクチンを投与されたサルにおける抗体タイターは、Alumのみの中のワクチンを投与されたサルにおいて観察されるよりも、低下速度が遅かった。
【0258】
OMPC免疫したサルとOMPCを免疫しなかったサルとを比較すると、初回注射後、OMPCを免疫しなかったサルよりも前者は、タイターがおよそ10倍低かった。このことから、キャリアに対する既存の抗体が、M2−OMPC連結ワクチンの免疫原性に対して悪影響を及ぼすことが示された。しかし、キャリアに対する既存の免疫による有害な影響は、その後の免疫促進により解消される。2回目及び3回目の免疫後、本実験の2種類の治療群における群で、同程度の抗M2タイターを得た。従って、この結果から、キャリアに対する既存の抗体の有無にかかわらず、M2−OMPCワクチンが非ヒト霊長類において免疫原性があることが示された。サルを用いた別の実験においてPEDVAXHIB及びM2−OMPC連結ワクチンの共投与を含む投薬計画についても試験し、M2ペプチドに対する全般的な抗体反応に対して悪影響が全くないことが分かった。従って、以前に他のOMPCを利用した連結ワクチンに曝露されている集団にもこのワクチンを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】チオール化したキャリア(1)とブロモアセチル化した(2)又はマレイミド化した(3)ペプチドとの反応及びその結果得られるチオールエーテル結合(スキームI)。
【図2】キャリアの本来の一級アミン(1)とブロモアセチル化した(2)又はマレイミド化した(3)ペプチドとの反応及びその結果得られる二級アミン結合(スキームII)。
【図3】マレイミド化したキャリア(1)とチオール含有ペプチド(2)との反応及びチオールエーテル結合の生成(スキームIII)。複数のチオールを含有するペプチドの場合、キャリアマレイミド基との複数の結合が1つのペプチドにより生じ得る。これにより、そのキャリアに負荷するペプチド総数が減少し得る。個々のタンパク質のマレイミドにおいて複数の結合が生じる場合、そのペプチドを介してキャリアサブユニットの架橋結合が生じ得る。
【図4】ハロゲン化アルキルキャリア(1)と、チオール含有ペプチド(2)との反応及びチオールエーテル結合の生成(スキームIV)。複数のチオールを含有するペプチドの場合、キャリアハロゲン化アルキル(示されているヨードアセチル又はブロモアセチル)基との複数の結合が、1つのペプチドにより生じ得る。これにより、そのキャリアに負荷されるペプチド総数が減少し得る。個々のタンパク質のヨードアセチル基において複数の結合が生じる場合、そのペプチドを介してキャリアサブユニットの架橋結合が生じ得る。
【図5】架橋結合したマレイミド化インフルエンザペプチド及びチオール化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(1,2−ジカルボキシエチル)−ホモシステインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、4−アミノ酪酸及び6−アミノヘキサン酸を定量することができる(スキームV)。
【図6】カップリングしたブロモアセチル化インフルエンザペプチド及びチオール化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(カルボキシメチル)−ホモシステインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、6−アミノへキサン酸を定量することができる(スキームVI)。
【図7】インフルエンザペプチドを含有するカップリングさせたシステイン及びヨードアセチル化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(カルボキシメチル)−システインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、6−アミノへキサン酸を定量することができる。OMPCと会合する架橋剤の総量を推定するために、4−アミノ安息香酸を定量することができる(スキームVII)。
【図8】Flu M2ペプチドを含有するカップリングさせたシステイン及びマレイミド化OMPCの加水分解。共有結合があることを証明するために、非タンパク質アミノ酸 S−(1,2−ジカルボキシエチル)−システインを定量することができる。存在する総ペプチドを推定するために、6−アミノへキサン酸を定量することができる。OMPCと会合する架橋剤の総量を推定するために、トラネキサム酸を定量することができる(スキームVIII)。
【図9】マウスにおける、M2ペプチド連結ワクチンによるM2特異的抗体反応の誘導。メスBalb/cマウス、各群10匹を、筋肉内注射により、指定された連結物、0.01μg、0.1μg又は1μg(ペプチド重量を基に投薬)を用いて免疫し、3週間後に1度、同用量で免疫促進した。初回免疫(PD1)から2週間後及び免疫促進(PD2)から3週間後に血液試料を回収した。酵素結合免疫吸着アッセイ(Elisa)によりM2−特異的抗体のタイターを調べた。データは、群の幾何平均±標準誤差(GMT±SE)で表す。CT M2 15mer ma −OMPC、M2−15−mer(配列番号10)をマレイミド活性化OMPCに対してC末端システインを介して連結させた;CT BrAc−M2 15mer OMPC、C末端ブロモアセチル化M2 15mer(配列番号13)をチオール化OMPCに連結させた;NT BrAc−M2 15mer OMPC、N末端ブロモアセチル化 15mer M2ペプチド(配列番号11)をチオール化OMPCに連結させた;CT BrAc−M2(SRS)OMPC、C末端ブロモアセチル化 M2 23−mer(SRS)(配列番号39)をチオール化OMPCに連結させた。GMT=幾何平均タイターである。
【図10】致死性のインフルエンザ感染処理に対する、CT M2 15mer ma−OMPC及びCT BrAc−M2 15mer OMPCによる防御。動物免疫プロトコールに対する凡例は図9のとおりである。免疫促進から4週間後に、flu A/HK/68再集合物のLD90量を動物に対して鼻腔内投与した。試験日の群平均体重/インフルエンザ投与後0日の群平均体重x100%として、体重変化の割合を計算した。試験日の動物数/インフルエンザ投与後0日の動物数x100%として、生存率を計算した。
【図11】致死性のインフルエンザ感染処理に対する、CT BrAc−M2 15mer OMPC及びCT BrAc−M2(SRS)OMPCによる防御。凡例は図9、図10のとおりである。
【図12】致死性のインフルエンザ感染処理に対する、CT BrAc−M2 15mer OMPC及びNT M2 15mer ma−OMPCによる防御。凡例は図9、図10のとおりである。
【図13A】チオール化OMPCに対する、マレイミド誘導体化インフルエンザペプチドの連結。
【図13B】チオール化OMPCに対する、ブロモアセチル化インフルエンザペプチドの連結。
【図14】ペプチド、配列番号12及び配列番号14は、図13aで概略的に示すように、キャリアタンパク質と連結させることが可能なペプチドの例である。ペプチド、配列番号11及び配列番号13は、図13bで概略的に示すように、キャリアタンパク質と連結させることが可能なペプチドの例である。ペプチド、配列番号39は、OMPC又は他のキャリアタンパク質のチオール反応誘導体に連結し得るC末端システインを有するSRS M2配列の短縮型である。配列番号2は、より長いM2の対応体を表す。
【図15】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号8
【図16】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号1
【図17】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2
【図18】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2
【図19】二量体としてリジン骨格に一緒に結合する複数のM2ペプチドの略図。DAP=L−2,3−ジアミノプロピオン酸。上の二量体には、配列番号55及び56が含まれる。下の二量体には、配列番号57及び58が含まれる。
【図20】リジン骨格における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2。図18で表される構造へのCys残基の導入により、図17及び20で示されるような、遊離チオール官能基を持つMAPが得られる。ブロモアセチル、マレイミド又は他のチオール反応基を含有するキャリアタンパク質へ連結させるために、このようなMAPsを使用し得る。
【図21】複数のリジン骨格(その骨格が相互に結合している。)における複数のM2ペプチドの略図。R=配列番号2。
【図22A】HA0特異的抗体は、B型インフルエンザペプチド連結ワクチンに対して反応する。
【図22B】B型インフルエンザペプチド連結ワクチンを接種したマウスにおける、B型インフルエンザ感染処理後の生存曲線。
【図23】亜致死性感染処理モデルにおいて、インビボのウイルス複製に対するB型インフルエンザワクチン成分の効果を調べた。
【図24】A型インフルエンザHA2ペプチド連結ワクチンで免疫したマウスの生存曲線。
【図25】X線により調べた、12−カプソメアVLPにおけるL1タンパク質のリボンダイヤグラム(Chenら、“Structure of small virus−like−particles assembled from the L1 protein of human papillomavirus 16(ヒトパピローマウイルス16のL1タンパク質からアセンブルさせた小ウイルス様粒子の構造)”、Mol.Cell.,Vol.5,pp.557−567,2000)。個々の灰色の丸は、VLPの外面にある19Lys鎖のNZ原子を表す。濃い灰色の部分は、H16.V5及びH16.E70抗体両方に対するエピトープ部分である、Phe50を示す。薄い灰色の部分は、H16.J4抗体に対する結合ループを表す。この図は、プログラム MolMol(Koradi,R.,Billeter,M.及びWutrich,K.1996.MOLMOL:a program for display and analysis of macromolecular structures(巨大分子構造の表示及び解析用プログラム)、J.Mol.Graphics 14,51−55)を用いて作成した。
【図26A】(27A)SEC−HPLC及び(27B)分析的超遠心により調べた、HPV VLPタイプ16(実線)、活性化/不活性 HPV−VLP(破線)及び連結M2−HPV VLP(丸付きの実線)の粒子サイズ分布。
【図26B】(27A)SEC−HPLC及び(27B)分析的超遠心により調べた、HPV VLPタイプ16(実線)、活性化/不活性 HPV−VLP(破線)及び連結M2−HPV VLP(丸付きの実線)の粒子サイズ分布。
【図27】M2−HPV VLPの電子顕微鏡像。
【図28】HPV VLPタイプ16(実線)、活性化/不活性HPV−VLP(破線)及び連結M2−HPV VLP(丸付きの実線)に対する、OD350nmで観察した温度誘発凝集。
【図29A】T=0及びT=4週間において様々なペプチド用量のM2 HPV VLPを含有するワクチンで免疫してから、T=2及び6週間後のマウスにおける、M2−HPV VLPにより誘導された抗−M2抗体の幾何平均タイター(GMT)。
【図29B】様々なペプチド用量のM2−HPV VLPを含有するワクチンで免疫したマウスの致死性の感染処理に対する生存率
【図30】マウスにおける鼻部及び肺のウイルス排出に対する、M2−KLH連結ワクチンを用いた免疫による防御。マウスにおける亜致死性感染処理後の上気道及び下気道におけるウイルス排出の特徴。データは、各日付時点の8匹のマウスのGMT+/−S.E.として表す。破線はアッセイ検出閾値である。GMT=幾何平均タイター。
【図31】アカゲザルにおける、M2−OMPC連結ワクチンによる抗体反応の誘導。30匹のアカゲザルを、各3匹ずつ10群に分けた。各データポイントは、群ごと3匹の動物の平均GMTを表す。平均/Alumは、Alum中で処方したM2−OMPCを投与した、OMPC免疫又はOMPC未免疫サルいずれかの全4群のGMTを表す。GMT=幾何平均タイター。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外ドメイン由来のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記複数のペプチドがキャリアタンパク質の表面に共有結合されており、前記結合の各々が、ペプチドの一方の末端と前記タンパク質の表面にある反応部位との間にあり、前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体、破傷風トキソイド、B型肝炎表面抗原、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLPのL1タンパク質からなる群から選択される、M2ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩。
【請求項2】
前記ペプチドのアミノ酸配列が配列番号1、2、10及び39からなる群から選択される、請求項1に記載の連結物。
【請求項3】
前記ペプチドが配列番号39の配列を有する、請求項2に記載の連結物。
【請求項4】
前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項1に記載の連結物。
【請求項5】
前記ペプチドが配列番号39のアミノ酸配列を有し、前記免疫原性タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項4に記載の連結物。
【請求項6】
前記ペプチドがチオエーテルリンカーを介して前記タンパク質に共有結合されている、請求項1に記載の連結物。
【請求項7】
少なくとも1つの、請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、A型インフルエンザウイルスによる哺乳類の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項8】
前記アジュバントがアルミニウム含有アジュバントを含む、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記アジュバントがアルミニウム及びQS21を含む、請求項7に記載のワクチン。
【請求項10】
前記ペプチド−タンパク質連結物が配列番号39のアミノ酸配列を有する複数のペプチドを含有し、前記タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項7に記載のワクチン。
【請求項11】
請求項1に記載の連結物の有効量を患者に接種する段階を含む、患者において免疫反応を誘導する方法。
【請求項12】
前記患者がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
A型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質由来のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記複数のペプチドがキャリアタンパク質の表面に共有結合されており、前記結合の各々が、ペプチドの一方の末端と前記タンパク質表面にある反応部位との間にある、HA0ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩。
【請求項14】
前記ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号59、60、61及び62からなる群から選択される、請求項13に記載の連結物。
【請求項15】
前記ペプチドが配列番号62の配列を有する、請求項14に記載の連結物。
【請求項16】
前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体、破傷風トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLPのL1タンパク質からなる群から選択される、請求項13に記載の連結物。
【請求項17】
前記ペプチドが配列番号62のアミノ酸配列を有し、前記免疫原性タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項16に記載の連結物。
【請求項18】
前記ペプチドがチオエーテルリンカーを介して前記タンパク質に共有結合されている、請求項13に記載の連結物。
【請求項19】
少なくとも1つの、請求項13に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、A型インフルエンザウイルスによる対象者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項20】
前記アジュバントがアルミニウム含有アジュバントを含む、請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
前記アジュバントがアルミニウム及びQS21を含む、請求項19に記載のワクチン。
【請求項22】
前記ペプチド−タンパク質連結物が、配列番号62のアミノ酸配列を有する複数のペプチドを含有し、前記タンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項19に記載のワクチン。
【請求項23】
請求項13に記載の連結物の有効量を患者に接種する段階を含む、患者において免疫反応を誘導する方法。
【請求項24】
前記患者がヒトである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
B型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質由来のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記複数のペプチドがキャリアタンパク質の表面に共有結合されており、前記結合の各々がペプチドの一方の末端と前記タンパク質表面にある反応部位との間にある、HA0ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩。
【請求項26】
前記ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号60、126ないし168からなる群から選択される、請求項25に記載の連結物。
【請求項27】
前記ペプチドが配列番号60の配列を有する、請求項26に記載の連結物。
【請求項28】
前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体、破傷風トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLPのL1タンパク質からなる群から選択される、請求項25に記載の連結物。
【請求項29】
前記ペプチドが配列番号60のアミノ酸配列を有し、前記免疫原性タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項28に記載の連結物。
【請求項30】
前記ペプチドがチオエーテルリンカーを介して前記タンパク質に共有結合されている、請求項25に記載の連結物。
【請求項31】
少なくとも一つの請求項25に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、B型インフルエンザウイルスによる対象者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項32】
前記アジュバントがアルミニウム含有アジュバントを含む、請求項31に記載のワクチン。
【請求項33】
前記アジュバントがアルミニウム及びQS21を含む、請求項31に記載のワクチン。
【請求項34】
前記ペプチド−タンパク質連結物が、配列番号60のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記タンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項31に記載のワクチン。
【請求項35】
請求項25に記載の連結物の有効量を患者に接種する段階を含む、患者において免疫反応を誘導する方法。
【請求項36】
前記患者がヒトである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項13に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、インフルエンザウイルスによる患者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項38】
少なくとも1つの請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項25に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、インフルエンザウイルスによる患者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項39】
少なくとも1つの請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項13に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項25に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、インフルエンザウイルスによる患者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項1】
A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質の細胞外ドメイン由来のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記複数のペプチドがキャリアタンパク質の表面に共有結合されており、前記結合の各々が、ペプチドの一方の末端と前記タンパク質の表面にある反応部位との間にあり、前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体、破傷風トキソイド、B型肝炎表面抗原、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLPのL1タンパク質からなる群から選択される、M2ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩。
【請求項2】
前記ペプチドのアミノ酸配列が配列番号1、2、10及び39からなる群から選択される、請求項1に記載の連結物。
【請求項3】
前記ペプチドが配列番号39の配列を有する、請求項2に記載の連結物。
【請求項4】
前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項1に記載の連結物。
【請求項5】
前記ペプチドが配列番号39のアミノ酸配列を有し、前記免疫原性タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項4に記載の連結物。
【請求項6】
前記ペプチドがチオエーテルリンカーを介して前記タンパク質に共有結合されている、請求項1に記載の連結物。
【請求項7】
少なくとも1つの、請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、A型インフルエンザウイルスによる哺乳類の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項8】
前記アジュバントがアルミニウム含有アジュバントを含む、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記アジュバントがアルミニウム及びQS21を含む、請求項7に記載のワクチン。
【請求項10】
前記ペプチド−タンパク質連結物が配列番号39のアミノ酸配列を有する複数のペプチドを含有し、前記タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項7に記載のワクチン。
【請求項11】
請求項1に記載の連結物の有効量を患者に接種する段階を含む、患者において免疫反応を誘導する方法。
【請求項12】
前記患者がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
A型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質由来のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記複数のペプチドがキャリアタンパク質の表面に共有結合されており、前記結合の各々が、ペプチドの一方の末端と前記タンパク質表面にある反応部位との間にある、HA0ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩。
【請求項14】
前記ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号59、60、61及び62からなる群から選択される、請求項13に記載の連結物。
【請求項15】
前記ペプチドが配列番号62の配列を有する、請求項14に記載の連結物。
【請求項16】
前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体、破傷風トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLPのL1タンパク質からなる群から選択される、請求項13に記載の連結物。
【請求項17】
前記ペプチドが配列番号62のアミノ酸配列を有し、前記免疫原性タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項16に記載の連結物。
【請求項18】
前記ペプチドがチオエーテルリンカーを介して前記タンパク質に共有結合されている、請求項13に記載の連結物。
【請求項19】
少なくとも1つの、請求項13に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、A型インフルエンザウイルスによる対象者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項20】
前記アジュバントがアルミニウム含有アジュバントを含む、請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
前記アジュバントがアルミニウム及びQS21を含む、請求項19に記載のワクチン。
【請求項22】
前記ペプチド−タンパク質連結物が、配列番号62のアミノ酸配列を有する複数のペプチドを含有し、前記タンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項19に記載のワクチン。
【請求項23】
請求項13に記載の連結物の有効量を患者に接種する段階を含む、患者において免疫反応を誘導する方法。
【請求項24】
前記患者がヒトである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
B型インフルエンザウイルスのHA0タンパク質由来のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記複数のペプチドがキャリアタンパク質の表面に共有結合されており、前記結合の各々がペプチドの一方の末端と前記タンパク質表面にある反応部位との間にある、HA0ペプチド−タンパク質連結物又は医薬適合性のその塩。
【請求項26】
前記ペプチドのアミノ酸配列が、配列番号60、126ないし168からなる群から選択される、請求項25に記載の連結物。
【請求項27】
前記ペプチドが配列番号60の配列を有する、請求項26に記載の連結物。
【請求項28】
前記キャリアタンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体、破傷風トキソイド、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗原、キーホールリンペットヘモシアニン、ロタウイルスキャプシドタンパク質及びウシ又はヒトパピローマウイルス VLPのL1タンパク質からなる群から選択される、請求項25に記載の連結物。
【請求項29】
前記ペプチドが配列番号60のアミノ酸配列を有し、前記免疫原性タンパク質がナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項28に記載の連結物。
【請求項30】
前記ペプチドがチオエーテルリンカーを介して前記タンパク質に共有結合されている、請求項25に記載の連結物。
【請求項31】
少なくとも一つの請求項25に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、B型インフルエンザウイルスによる対象者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項32】
前記アジュバントがアルミニウム含有アジュバントを含む、請求項31に記載のワクチン。
【請求項33】
前記アジュバントがアルミニウム及びQS21を含む、請求項31に記載のワクチン。
【請求項34】
前記ペプチド−タンパク質連結物が、配列番号60のアミノ酸配列を有するペプチドを複数含有し、前記タンパク質が、ナイセリア・メニンジティディス(Neiserria meningitidis)の外膜タンパク質複合体である、請求項31に記載のワクチン。
【請求項35】
請求項25に記載の連結物の有効量を患者に接種する段階を含む、患者において免疫反応を誘導する方法。
【請求項36】
前記患者がヒトである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項13に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、インフルエンザウイルスによる患者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項38】
少なくとも1つの請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項25に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、インフルエンザウイルスによる患者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【請求項39】
少なくとも1つの請求項1に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項13に記載のペプチド−タンパク質連結物と、少なくとも1つの請求項25に記載のペプチド−タンパク質連結物と、アジュバントと、生理学的に許容可能な担体とを含有する、インフルエンザウイルスによる患者の感染を予防又は改善するためのワクチン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26A】
【図26B】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2006−519775(P2006−519775A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501224(P2006−501224)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/006978
【国際公開番号】WO2004/080403
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/006978
【国際公開番号】WO2004/080403
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
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