説明

インフルエンザワクチンによりもたらされる防御を増大させるためのラクトバシラス・カゼイの使用

本発明は、インフルエンザワクチンの後にインフルエンザに対する防御を、該ワクチンにより生じる体液性応答を強化することにより増大させるための経口投与可能な組成物における、ラクトバシラス・カゼイの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老齢個体においてインフルエンザワクチン接種により生じる体液性応答を強化し、それによりワクチン接種後のインフルエンザに対する防御を増大させるためのラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、呼吸器系感染症の主な原因である。
冬期のインフルエンザの流行は、人口の1〜5%に影響を及ぼし、子供における非常に高い感染率と、老齢個体における致命的な合併症を引き起こす。65歳を超える個体、EHPAD(housing for the dependent elderly;依存性老齢者のための住宅)に居住する個体、又は深刻な病状により健康上の問題を抱える個体に対しては、年に一度のインフルエンザのワクチン接種が、保健機関により(WHOの合意の下に)推奨されている。ワクチン接種が疾患を予防できない場合でさえも、インフルエンザに関連する重篤度、期間及び合併症の危険性(重複感染、入院、死)を低減することが可能である。
【0003】
しかし、インフルエンザワクチン接種は、大多数の成人個体(70〜90%)において、防御性であると考えられる抗体力価(抗ヘマグルチニン力価が40以上;WHO週間疫学記録(WHO weekly epideomiological record), No.33, p.283, 2005年8月19日)を与えるが、老齢個体においてはそうではなく、その抗体力価は、個体の30〜40%にしか達しない(COXら, Scand. J. Immunol., 59, 1〜15, 2004)。老齢個体におけるインフルエンザワクチンに対するこの最適以下の応答は、年齢及び/又は個体の生理的状態と関連する免疫系における機能的欠陥による(DENGら, J. Immunol., 172, 3437-46, 2004; KANGら, J. Immunol., 173, 673〜81, 2004)。
【0004】
免疫応答を改善するある方法は、アジュバントの役割を果たす免疫刺激物質を投与することである。従ってアジュバント(例えば、<250nmのサイズの安定な小滴からなり、代謝可能な油であるスクアレンと2種類の界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート及びソルビタントリオレエート)により構成されるMF59)を含む新しいワクチンは、老齢個体の免疫応答を強化するために、フランスで販売され始めている(BALDOら, Vaccine, 19, 3472〜5, 2001)。さらに、食餌は、免疫応答を調節できる。セレニウム及び亜鉛のサプリメント、特定のビタミン類並びに微量成分を2〜6ヶ月間摂取することにより、ワクチン接種に対する応答の創出における老齢個体の免疫応答を増大できることが示されている (ALLSUPら, J. Am. Geriatr. Soc., 52, 20〜4, 2004; BUNOUTら, JPEN J. Parenter. Enteral. Nutr., 28, 348〜54, 2004; BUNOUTら, JPEN J. Parenter. Enteral. Nutr., 26, 372〜6, 2002; CHANDRA, Lancet, 340, 1124〜7, 1992; GIRODON ら, Arch. Intern. Med., 159, 748〜54, 1999; LANGKAMP-HENKENら, J. Am. Geriatr. Soc., 52, 3〜12, 2004; PROVINCIALIら, Age Ageing, 27, 715 22, 1998)。また、特定のプロバイオティクスが、ポリオワクチンのようなワクチンに対する応答を調節できることも報告されている (DE VRESEら, Eur. J. Nutr., 44, 406 13, 2005)。
【0005】
以前に、ラクトバシラス・カゼイの投与により、インフルエンザウイルスを含む様々な病原性微生物に対する、細胞媒介免疫応答(Tリンパ球により媒介される)を増大できることが観察された(PCT出願WO 2001/089541)。一方、インフルエンザワクチンの接種により与えられる防御に関与する体液性免疫に対するラクトバシラス・カゼイの潜在的な効果については、ほとんど解明されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、老齢個体におけるインフルエンザワクチン接種によって生じる特定の血清抗体力価の変化に対する、ラクトバシラス・カゼイの摂取の効果を研究している。本発明者らは、特に、セロコンバージョンの頻度及びセロプロテクションの頻度の増加をもたらすこれらの抗体力価の増加に注目した。
【0007】
「セロプロテクション」とは、個体における、防御閾値に等しい又はそれより多い量の、インフルエンザウイルスに指向された血清抗体の存在と定義される。この防御閾値とは、血球凝集阻害(HAI)により測定される、40に等しいか又はそれより大きい抗ヘマグルチニン血清抗体力価と定義される。「セロプロテクションの頻度」とは、集団における、セロプロテクションが観察される個体の割合に相当する。40に等しいか又はそれより大きいHAIにより測定される抗体力価は、ワクチン中に含まれ、かつ見出される株に対する防御に関連することが、一般的に受け入れられている(COX N.J.ら, Lancet, 1999: 354: 1277〜82)。
【0008】
「セロコンバージョン」とは、本明細書では、ワクチン接種後の抗体濃度がワクチン接種前に測定された抗体レベルの少なくとも4倍に等しい、個体における、インフルエンザウイルスに対するワクチン接種の後に起こる、インフルエンザウイルスに指向された血清抗体の量の増加として定義される。集団における「セロコンバージョンの頻度」とは、セロコンバージョンが観察される個人の割合に相当する。
【0009】
本発明者らは、インフルエンザワクチンの接種により生じる血清抗体力価の変化に対する、ラクトバシラス・カゼイの摂取の正の効果が、特定の部類の老齢個体、すなわち低い程度の依存性を示し、女性である個体で特に強く見られることにも注目した。
依存性の程度は、AGGIR (Autonomie Gerontologie Groupes Iso-Ressources [老年自律性の同種リソース群]) 分類格子を用いて定義した(VETELら, Soins Gerontol., 23 7, 1998)。AGGIR格子の群1、2及び3には、依存性の高い個体が分類され、群4及び5には、依存性の低い個体が分類され、群6には、依存性のない個体が分類される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって、本発明の主題は、ワクチン接種後のインフルエンザに対する防御を増大するための経口投与可能な組成物の製造のための、エル・カゼイ種の細菌株の使用である。本発明はインフルエンザワクチン接種時に与えられる体液性免疫の増大も可能にする。このことにより、特に防御抗体力価(セロプロテクション)を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の研究の経過を模式的に示す。
【図2】ITT母集団に対する抗体力価の結果を示す。
【図3】ITT母集団についてのセロコンバージョンの結果を示す。
【図4】ITT母集団についてのセロプロテクションの結果を示す。
【図5】部分母集団についての抗体力価の結果を示す。
【図6】部分母集団についてのセロコンバージョンの結果を示す。
【図7】部分母集団についてのセロプロテクションの結果を示す。
【図8】女性部分母集団についての抗体力価の結果を示す。
【図9】女性部分母集団についてのセロコンバージョンの結果を示す。
【図10】女性部分母集団についてのセロプロテクションの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記の組成物は、インフルエンザワクチン接種を受けた、65歳以上の老齢個体に投与されることが意図される。好ましくは、上記の個体は少なくとも70歳である。
特に有利には、上記の組成物は、非依存性の個体、或いは依存性レベルが低く、及び/又は女性である個体に投与されることが意図される。
【0013】
本発明の実施の関係においては、上記のエル・カゼイ株は単独で、又はエル・カゼイ種若しくはその他の種の他の乳酸菌の組み合わせで使用してよい。有利には、ヨーグルト発酵素、すなわちラクトバシラス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)との組み合わせで用いてよい。
好ましくは、本発明の使用に関して調製される組成物は、1ml当たり少なくとも105、好ましくは少なくとも106、一般的には1×108〜1.5×109個のエル・カゼイの細胞を含む。
【0014】
ヨーグルト発酵素との組み合わせでエル・カゼイを使用する場合は、上記の組成物は、有利には、1ml当たり少なくとも107、好ましくは2×108〜1×109個のエス・サーモフィラスの細胞、及び1ml当たり少なくとも5×105、好ましくは4×106〜2×107個のエル・ブルガリカスの細胞も含む。
【0015】
本発明の使用のために最も適するエル・カゼイ株は、1994年12月30日にCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes [国立微生物培養コレクション]、25 rue du Docteur Roux, Paris)に、I-1518という番号で寄託された株である。
【0016】
本発明に従って調製される組成物は、食品又は食品サプリメントの形で投与が可能である。これらは、例えば乳製品、特に、上記で定義されるように、例えばヨーグルト発酵素などの他の乳酸菌と任意に組み合わせた、少なくともエル・カゼイ株を含む発酵乳製品であってよい。
最善の効果を得るためには、上記のエル・カゼイ株は、インフルエンザワクチン接種前に少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、有利には少なくとも3週間、最も好ましくは少なくとも4週間投与されることが好ましい。ワクチン接種により生じる免疫の増大を維持するように、エル・カゼイの投与は、その後、所望する限り継続してよい。1日あたりに投与されるエル・カゼイの量は、好ましくは少なくとも1010、有利には少なくとも2×1010CFUのエル・カゼイである。この量は、1日当たり1回もしくはそれより多い回数の摂取で投与可能である。
【0017】
本発明は、インフルエンザワクチン接種により生じる体液性免疫を増大させるためのラクトバシラス・カゼイの特性を説明する限定しない実施例に言及する、以下のより詳細な記述からより明確に理解される。
【実施例】
【0018】
ワクチン接種後3週目(ワクチン接種後2〜4週間の応答ピーク時)、並びに製品の消費を停止した状態におけるワクチン接種後3ヶ月目及び5ヶ月目(血清抗体力価の変化を監視するため)の、インフルエンザワクチンの接種により生じる特異的血清抗体力価に対する、エル・カゼイCNCM I-1518を含む発酵乳製品(Actimel(登録商標))の消費の効果を評価するために、研究を行った。
【0019】
研究の概要
この研究は、無作為プラシーボ対照二重盲検多施設パイロット試験である。86名の個体を、43人からなる2つの均等な群に分け、一方の群はActimel(登録商標)を摂取し、他方の群は対照製品(プラシーボ)を摂取する。
本研究の経過を、図1に模式的に示す。
研究の合計期間は、178日であった。
【0020】
本研究は、老齢個体の選抜を目的とする選抜訪問(V1)を含んだ。この訪問は、組み入れ訪問(inclusion visit) (V2)に先行する月の間に行った。V2 (D0)での個体の組み入れ及び無作為化は、全ての施設の全ての個体に対して2週間にわたって行った。
研究製品(無作為化に応じてActimel(登録商標)又は対照製品)の消費を、D0 (V2)にて全ての個体について開始し、7週間(ワクチン接種前の4週間及び接種後3週間)継続した。
個体は全て、D28 (V3)、すなわち研究製品の消費開始後4週目にて、三角筋への筋肉注射によりインフルエンザ(Vaxigripワクチンの同じバッチ)に対してワクチン接種を受けた。
医療訪問は、D28 (V3)、D49 (V4)、D118 (V4)及びD178 (V6)にて行った。
【0021】
個体の選抜
この研究に含まれる個体は、依存的な老齢者のための住居(EHPAD)に居住する老齢個体である。
【0022】
組み入れ基準
- 少なくとも70歳の男性又は女性;
- 2〜5の間(境界を含む)のAGGIRスコアを持つ個体;
- 選抜(V1)において血液試料を採取した際に、変異体A/カリフォルニア/7/2004(ワクチン原型)に関連する株による、モルモットの赤血球の凝集を阻害する抗体の力価が40未満の個体;
- 16〜27kg/m2(境界を含む)の肥満度指数(BMI)を持つ個体;
- 本研究への参加のために彼若しくは彼女の署名による同意が得られ、かつ与えられた情報を理解できる個体;
【0023】
非組み入れ基準
- 6ヶ月未満の寿命が見込まれる重篤で進行性の病変を患う個体;
- 不安定なI型若しくはII型の糖尿病の個体;
- 乳蛋白質及び/又は卵に対しアレルギー又は過敏症を持つ個体;
- 既知のラクトース不耐性を持つ個体;
- 慢性又は医原性の免疫抑制をされた個体、特に、選抜(V1)に先行する2ヶ月間を通して2週間を上回って、経口コルチコステロイド治療又は免疫抑制剤による治療を施された個体;
【0024】
無作為化
「製品」群又は「対照」群への個体の配分は、無作為な抽選により決定され、「A」または「B」と識別された2つの群で均等であった。
患者の自律性の状態(よって、個体の生理的状態を反映する)に従い、2段階の層を決定した。:2又は3に等しいAGGIR(Autonomie Gerontologie Groupes Iso-Ressources [老年自律性の同種リソース群])スコアを持つ個体は、第1層を構成し、4又は5のAGGIRスコアを持つ個体は、第2層を構成する。
【0025】
調査製品
Actimel(登録商標)製品は、市販の製品である。
対照製品は、Actimel(登録商標)製品と同等の官能性品質、同等の酸度、同等のエネルギー価、及び同等のテクスチャを持つが、乳酸発酵素を含まない製品である。2つの製品を、100mlの無記名のボトルに入れ、コード文字(A又はB)によって識別した。
以下の表1に、これらの2つの製品の特徴をまとめる。
【0026】
【表1】

【0027】
研究の経過
選抜訪問の終了時に、上記で定義される全ての組み入れ基準を満たし、かつどの非組み入れ基準も満たさない個体を採用した。
彼らは、研究開始に先行する7日間(D-7からD0までの間)、及び訪問V4(D49)までの間は、発酵乳製品(ヨーグルト、フロマージュブラン、プチ・スイス[生クリームチーズ]及び大豆ヨーグルト)の消費を控えるよう要求された。
基本の抗インフルエンザ抗体力価を測定するために、血液試料を採取した。
【0028】
D0に、組み入れ及び無作為化訪問(V2)を行った。
D0から開始して、個体は、毎日、無作為化により割り当てられた研究製品(A又はB)を、朝食時に100mlのボトル1本分及び夕食時に100mlのボトル1本分の割合で、49日間連続で消費した。
D28 (V3)にて、個体は、三角筋への筋肉内注射により、インフルエンザに対するワクチン接種を受けた。使用されたワクチン(Vaxigrip)は、不活化分割ビリオンワクチンであり、各々の用量は、以下のそれぞれの株のヘマグルチニンを15μg含む:A型の2株(H1N1株及びH3N2株)、及びB型の1株。記載したこれらのそれぞれの株のヘマグルチニンを用量あたり15μg。このワクチンはアジュバントを含まない。
【0029】
H1N1株は、ニューカレドニア/20/99株である。H3N2株はカリフォルニア/7/2004株であり、B型は、シャンハイ/361/2002株(2005〜2006年の北半球におけるワクチン接種についてのWHOの勧告による)である。
D49 (V4)、D118 (V5)及びD178 (V6)に行われたその後の訪問のそれぞれにおいて、インフルエンザワクチン接種により生じた、ワクチン中に存在する株のそれぞれに特異的な血清抗体を測定するために、血液試料を採取した。臨床試験も行い、生じた病状又は前回の訪問の後に受けた治療を、毎回記録した。
【0030】
抗体の測定
血液試料(7mlのチューブ1本)を、V1、V4及びV5の訪問の間に、全ての個体において、前腕の静脈から採取した。試料を乾燥したチューブに採取し、次いで、血清が分離するように遠心分離した。各々の血清は、測定を行うまで-20℃〜-80℃で保管するよう、凍結チューブ(チューブ当たり500μl)に分注した。これらの測定は、フランス、パリのパスツール研究所の、インフルエンザウイルスに関する国立リファレンスセンター(CNR)で行った。
【0031】
使用した試験は、WHOの勧告(動物インフルエンザの診断及び調査に関するWHO手引き:WHO/CDS/CSR/NCS/2002-5)に従って行われる血球凝集阻害(HAI)試験である。この試験は、試験される血清中に含まれる各ウイルス株に特異的な抗ヘマグルチニン抗体が、ウイルスの表面で発現されるヘマグルチニンに結合し、それによりこれらのウイルスが赤血球に結合するのを妨げる能力に基づく。特異的抗体がない場合には、赤血球とウイルスとの間のネットワークの形成(培養ウェルが均一に赤い)が観察される。一方、特異的抗体が存在する場合には、ウェルの底に赤血球の沈殿が観察される。
【0032】
各血清を、RDE(受容体破壊酵素)とのインキュベーションにより処理し、次いで、血清が原因でありかつインフルエンザウイルスが原因ではない非特異的凝集を排除するために、雄鶏の赤血球に吸収させた。各々の血清は、2倍に系列希釈し、培養皿へ分注し、標準化したウイルス懸濁液(50μlあたり4ヘマグルチニンユニット)と一緒にインキュベートした。次いで、モルモットの赤血球細胞を加えて、抗体により中和されないウイルス性のヘマグルチニンの存在を明らかにした。
【0033】
各試験は、血球凝集阻害試験についてCNR [国立リファレンスセンター]から得られる陽性及び陰性対照を同時に測定することにより、有効にした。
抗体力価は、血球凝集阻害をまだ示す最高希釈の逆数として表す。
【0034】
統計学的解析
データの解析は、以下の母集団及び部分母集団に対して行った。
- 無作為化され、研究製品の少なくとも1つを受けた、研究に参加した全ての個体を含む「治療企図」(ITT)母集団;
- AGGIR層及び性別に従う部分母集団。
【0035】
検定は、5%の有意性閾値及び両側検定で行った。5%〜10%の有意性閾値が、傾向を示すとみなした。
実験計画は、2つの「製品」対「対照」群を有する並行群のものである。
研究の目的に鑑みて、本研究の主効果は、「製品」である。
「AGGIRスコア」、BMI、年齢及び基本の抗体力価の効果も研究した。
抗体力価について、このパラメータは、正規対数型の法則に従って分布することが知られている。パラメータ分析を行うために、抗体力価のlog変換を行うことが必要であり、それにより、抗体力価logの正規性を確認して議論した。
【0036】
パラメータ解析は、共変数の性質に応じて、分散及び/又は共分散分析の慣習的なガウスモデルである。
分散及び/又は共分散の非パラメータ解析(フリードマン検定)を、併せて行う。
以下の共変数を、分析において考慮した:「AGGIRスコア」、BMI、年齢及び基本の抗体力価。
【0037】
製品間のデータの比較は、Chi-2検定又はChi-2検定の使用に固執しない条件の場合はフィッシャーの正確確率検定により行った。ロジスティック回帰モデルも、種々の効果(「AGGIRスコア」、BMI、年齢及び基本の抗体力価)を考慮するために行った。
同じ解析を、それぞれの層化変数クラス(「AGGIRスコア」)についても行った。
【0038】
判定基準
研究した製品の影響についての主基準
選択した主基準は、3つのウイルス株について、訪問4 (D49)でのインフルエンザ抗体力価である。
この基準の主発現は、基本の値に比較した、訪問4での抗体力価の変動である。
【0039】
研究した製品の影響についての副次基準
選択した副次基準は、3つのウイルス株のそれぞれについて:
- 訪問4 (D49)でのセロコンバージョン(基本レベルに比較して、抗体力価が少なくとも4倍増加した個体)。
- 訪問4 (D49)でのセロプロテクション(抗体力価≧40の個体)。
【0040】
結果
ITT母集団について
抗体力価
結果を、図2に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、それぞれのインフルエンザ株に対するワクチン接種の3週間後に、プラシーボの消費の場合に観察されるよりも高い抗体力価を生じることを示す。
【0041】
セロコンバージョン
結果を、図3に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、ワクチン接種の3週間後に、それぞれのインフルエンザ株に関して、プラシーボの消費の場合に観察されるよりも高いセロコンバージョンの頻度を生じることを示す。
【0042】
セロプロテクション
結果を、図4に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、それぞれのインフルエンザ株に対するワクチン接種の3週間後に、プラシーボの消費の場合に観察されるものに比較して、防御された個体のパーセンテージの増加を生じることを示す。この効果は、H1N1血清型の株の場合に統計的傾向を示す。
【0043】
部分母集団について
AGGIR 4-5部分母集団
抗体力価
結果を、図5に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、それぞれのインフルエンザ株に対するワクチン接種の3週間後に、プラシーボの消費の場合に観察されるよりも高い抗体力価を生じることを示す。
【0044】
セロコンバージョン
結果を、図6に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、ワクチン接種の3週間後に、それぞれのインフルエンザ株に関して、プラシーボの消費の場合に観察されるよりも高いセロコンバージョンの頻度を生じることを示す。この効果は、H3N2血清型の株について統計的に有意である。
【0045】
セロプロテクション
結果を、図7に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、それぞれのインフルエンザ株に対するワクチン接種の3週間後に、プラシーボの消費の場合に観察されるものに比較して、防御された個体のパーセンテージの増加を生じることを示す。この効果は、H3N2血清型の株について統計的に有意である。
【0046】
女性部分母集団
抗体力価
結果を、図8に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、それぞれのインフルエンザ株に対するワクチン接種の3週間後に、プラシーボの消費の場合に観察されるよりも高い抗体力価を生じることを示す。
【0047】
セロコンバージョン
結果を、図9に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、ワクチン接種の3週間後に、それぞれのインフルエンザ株に関して、プラシーボの消費の場合に観察されるよりも高いセロコンバージョンの頻度を生じることを示す。この効果は、H1N1血清型の株の場合に統計的に有意である。
【0048】
セロプロテクション
結果を、図10に示す。これらの結果は、Actimelの消費が、それぞれのインフルエンザ株に対するワクチン接種の3週間後に、プラシーボの消費の場合に観察されるものに比較して、防御された個体のパーセンテージの増加を生じることを示す。この効果は、A群の株(H3N2株についての統計的傾向)の場合に、より具体的にはH1N1血清型の株について(差は統計的に有意である)、より際立っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン接種の後のインフルエンザに対する防御を増加させるための経口投与可能な組成物の製造のための、エル・カゼイ種の細菌株の使用。
【請求項2】
前記細菌株が、インフルエンザワクチン接種時に与えられる体液性免疫を増大できることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が、65歳以上の個体に投与されることを意図することを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記エル・カゼイ株が、CNCM I-1518株であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物が、食品又は食品サプリメントの形であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が、発酵乳製品の形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−518151(P2010−518151A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549442(P2009−549442)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000181
【国際公開番号】WO2008/129148
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(507394503)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【住所又は居所原語表記】17,Bd Haussmann,F−75009 Paris,FRANCE
【Fターム(参考)】