インフルエンザ抗原、ワクチン組成物、および関連する方法
本発明は、免疫学分野およびタンパク質工学分野の共通部分に、特に、インフルエンザウイルスによる感染の予防に有用な抗原およびワクチンに関する。かかる抗原およびワクチン組成物の産生および使用のための組換えタンパク質抗原、組成物および方法を提供する。本発明は、植物において産生されるインフルエンザ抗原およびワクチン成分を提供する。本発明は、熱安定性タンパク質との融合として生成される1種類以上のインフルエンザ抗原を提供する。本発明は、さらに、インフルエンザ抗原を含有するワクチン組成物を提供する。さらにまた、本発明は、少なくとも2種類の異なるインフルエンザ抗原を含むインフルエンザワクチンを提供する。一部の実施形態において、本発明の組成物は、1種類以上の植物成分を含む。さらには、本発明の抗原およびワクチン組成物の産生および使用のための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、米国特許法119(e)の下、2006年2月13日に出願されたU.S.S.N.60/773,378(‘378出願)および2006年6月15日に出願されたU.S.S.N.60/813,955(‘955出願)に関し、これらへの優先権を主張する。‘139出願および‘955出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インフルエンザは、汎発流行、一時的流行、再流行および大流行の波を特徴とする長い歴史を有する。インフルエンザは、伝染性の高い疾患であり、発展途上国と先進国の両方において等しく打撃を与え得る。インフルエンザウイルスは、ヒト集団に対する大きな脅威の1つである。毎年のワクチン接種の取り組みにもかかわらず、インフルエンザ感染は、相当な罹患率および死亡率をもたらす。インフルエンザの流行はほぼ毎年起こるが、幸い、汎発流行はあまり頻繁に起こらない。しかし、最近、再びインフルエンザの汎発流行の可能性に直面するようなインフルエンザ株が出現した。H5N1型トリインフルエンザウイルスは、現在、アジアや東欧地域で家禽に汎発流行を引き起こし、世界中で、持続的に蔓延した。感染の急速な蔓延ならびにトリからヒト被験体への異種間感染により、ヒト集団における大流行の可能性および汎発流行のリスクが増大している。このウイルスは、病原性が高く、トリでは50%を超える死亡率をもたらし、わずかであるが、ヒト症例も確認されている。該ウイルスがヒトからヒトへ感染するようになった場合、疾病および死亡率が急速に広がる可能性が生じ得る。
【0003】
インフルエンザに対する主な防御はワクチン接種である。インフルエンザウイルスは、セグメント化された、オルトミクソウイルス科に属するマイナス鎖RNAウイルスである。ウイルス抗原は、非常に有効な免疫原であり、全身性抗体応答および粘膜抗体応答の両方を惹起し得る。インフルエンザウイルスの血球凝集素糖タンパク質(HA)は、一般的に、中和抗体の刺激およびワクチン設計に関して最も重要なウイルス抗原と考えられている。ウイルスノイラミニダーゼ(NA)の存在は、該ウイルスに対する多アーム保護免疫応答を起こすのに重要であることが示されている。ノイラミニダーゼ活性を阻害する抗ウイルス薬が開発されており、感染時の追加的抗ウイルス処置であり得る。インフルエンザ抗ウイルス薬およびワクチンの開発に有用と考えられる第3の成分は、イオンチャネルタンパク質M2である。
【0004】
インフルエンザウイルスのサブタイプは、抗原不連続変異に起因する異なるHAおよびNAによって指定される。さらにまた、同じサブタイプの新たな株は、抗原連続変異、または新たな異なるエピトープをもたらすHAもしくはNA分子における変異により生じる。15種類のHA抗原サブタイプが示されているが、これらのサブタイプのうち3種類H1、H2およびH3のみが、ヒトにおいて広く循環している。ワクチン接種は、先進工業国および後進国の両方で、生活の質の改善の追求に最重要となっている。利用可能なワクチンの大部分は、関連する感染を防御し得る免疫応答を誘導するために、依然として感染の態様を模倣する基本原理に従う。しかしながら、弱毒化ウイルスの種々のサブタイプおよび組合せの作製は、時間と費用がかかるものであり得る。新たな技術が出現したため、病原体の分子生物学、病因論および個体の免疫系の相互作用の徹底的な理解によって、ワクチン開発およびワクチン送達に対する新たなアプローチがもたらされた。したがって、技術進歩により、改善されたインフルエンザ抗原ワクチン組成物を生成する能力は改善されたが、インフルエンザのサブタイプおよび株の出現に取り組むためのワクチンおよびワクチンの生成のための新たな抗原のさらなる供給源を提供する必要性がなお存在する。インフルエンザウイルスのサブタイプに対するワクチンの設計および開発の改善、ならびに廉価で非常に入手し易いかかる治療用組成物の供給源を提供する、かかる物質の組成物の作製および使用方法が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、植物において産生されるインフルエンザ抗原およびワクチン成分を提供する。本発明は、熱安定性タンパク質との融合として生成される1種類以上のインフルエンザ抗原を提供する。本発明は、さらに、インフルエンザ抗原を含有するワクチン組成物を提供する。さらにまた、本発明は、少なくとも2種類の異なるインフルエンザ抗原を含むインフルエンザワクチンを提供する。一部の実施形態において、本発明の組成物は、1種類以上の植物成分を含む。さらには、本発明の抗原およびワクチン組成物の産生および使用のための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、インフルエンザ感染に対するワクチンの調製に有用なインフルエンザ抗原、および熱安定性タンパク質に作動可能に連結したかかるインフルエンザ抗原を含む融合タンパク質に関する。本発明は、例えば限定されないが、植物系内での産生を含む、提供された抗原の産生方法に関する。さらに、本発明は、本発明の抗原および融合タンパク質を含むベクター、融合タンパク質、植物細胞、植物およびワクチン組成物に関する。さらには、被験体に本発明のワクチン組成物を投与することを含む、被験体においてインフルエンザ感染に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0007】
インフルエンザ抗原
本発明のインフルエンザ抗原タンパク質としては、インフルエンザウイルスに対する免疫応答を惹起し得る任意の免疫原性のタンパク質またはペプチドが挙げられる。一般的に、免疫原性の目的のタンパク質としては、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質、融合タンパク質など)、その免疫原性部分、またはその免疫原性変異体および前述の任意のものとの組合せが挙げられる。
【0008】
本発明による使用のためのインフルエンザ抗原は、完全長インフルエンザタンパク質もしくはインフルエンザタンパク質の断片および/または完全長インフルエンザタンパク質もしくはインフルエンザタンパク質の断片を含む融合タンパク質を含むものであり得る。インフルエンザタンパク質の断片を用いる場合、単独であれ融合タンパク質の状態であれ、かかる断片は免疫学的活性(例えば、抗インフルエンザ抗体との交差反応性)を保持する。ウイルス感染に対する免疫防御的応答を誘導するその能力に基づき、血球凝集素およびノイラミニダーゼは、ワクチンの作製における目的の一次抗原である。膜イオンチャネルM2などのさらなる抗原も、免疫保護の有効性を改善するためにワクチン(例えば、組合せワクチン)の作製に有用であり得る。
【0009】
したがって、本発明は、異種タンパク質(例えば、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質またはその断片、インフルエンザタンパク質もしくはその断片を含む融合タンパク質)を発現する植物細胞および植物を提供する。本発明の異種タンパク質は、任意の目的のインフルエンザ抗原、例えば限定されないが、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、膜イオンチャネルM2(M2)、血球凝集素(HA)の一部分、ノイラミニダーゼ(NA)の一部分および膜イオンチャネル(M2)の一部分、あるいは血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、膜イオンチャネルM2(M2)、血球凝集素(HA)の一部分、ノイラミニダーゼ(NA)の一部分および/または膜イオンチャネル(M2)の一部分の融合タンパク質、断片、もしくは組合せを含むものであり得る。
【0010】
さまざまな異なるインフルエンザHA、NAおよびM2タンパク質(例えば、異なるサブタイプまたは株もしくは単離株由来)のアミノ酸配列が当該技術分野で知られており、GenBankなどの公のデータベースにおいて入手可能である。現在、特に重要な2種類のインフルエンザサブタイプのHAおよびNAの例示的な完全長タンパク質の配列、ならびにM2の配列を以下に示す。
【0011】
V:ベトナム型H5N1
HA(HAV)配列番号1
【0012】
【化1】
NA(NAV)配列番号2:
【0013】
【化2】
W:ワイオミング型H3N2
HA (HAW)配列番号3:
【0014】
【化3】
NA(NAW)配列番号4:
【0015】
【化4】
インフルエンザホンコン型M2タンパク質配列番号5:
LTEVETPIRNEWGCRCNDSSDP
インフルエンザタンパク質
血球凝集素
特定の実施形態において、完全長血球凝集素(HA)が本発明のワクチン組成物に使用される。一部の実施形態では、HAの1つ以上のドメインが使用される。特定の実施形態では、2つもしくは3つまたはそれ以上のドメインが、1種類以上の独立したポリペプチドとして、または1種類以上の融合ポリペプチド内で互いに連結して使用される。特定の例示的な実施形態は、HAの完全長、ドメイン1−2およびドメイン2−1(本明細書においてHA1_2という)、またはドメイン3を含むインフルエンザ抗原を提供する。
【0016】
HAベトナム型[H5N1]:
H5N1 HAシグナルペプチド配列番号6:AKAGVQSVKMEKIVLLFAIVSLVKS
H5N1 HAドメイン1−2 配列番号7:
【0017】
【化5】
H5N1 HAドメイン3 配列番号33:
【0018】
【化6】
H5N1 HAドメイン2−1 配列番号8:
【0019】
【化7】
H5N1 HA膜貫通ドメイン 配列番号9:
【0020】
【化8】
HA A/ワイオミング型(H3N2)
H3N2 HAシグナルペプチド配列番号10:MKTIIALSYILCLVFS
H3N2 HAドメイン1−2 配列番号11:
QKLPGNDNSTATLCLGHHAVPNGTIVKTITNDQIEVTNATELVQSSSTGGI
H3N2 HAドメイン3 配列番号12:
【0021】
【化9】
H3N2 HAドメイン2−1 配列番号13:
【0022】
【化10】
H3N2 HA膜貫通ドメイン 配列番号14:
【0023】
【化11】
特定の実施形態において、完全長ノイラミニダーゼ(NA)抗原が本発明のワクチン抗原に使用される。一部の実施形態では、NAのドメインが使用される。特定の実施形態では、2つもしくは3つまたはそれ以上のドメインが、本発明の抗原において提供される。特定の例示的な実施形態は、完全長NAを含み、アンカーペプチド配列を欠くインフルエンザ抗原を提供する。
【0024】
ノイラミニダーゼ
NAベトナム型
H5N1 NAアンカーペプチド配列番号15:MNPNQKIITIGSICMVTGIVS
H5N1 NA 配列番号16:
【0025】
【化12】
H3N2 NAアンカーペプチド配列番号17:
MNPNQKIITIGSVSLTISTICFFMQIAILITTVTLHF
H3N2 NA配列番号18:
【0026】
【化13】
例示的なインフルエンザ抗原の配列を本明細書に示し、HAおよびNAのそれぞれならびにM2について示したドメインを例示的な株として示したが、HAおよび/またはNAおよび/またはM2のドメインの免疫原性特性を有する任意の配列が択一的に使用され得ることが認識される。当業者は、提供する抗原と少なくとも75%、80%、85%もしくは90%またはそれ以上の同一性を有する配列を容易に生成することができる。特定の実施形態において、インフルエンザ抗原は、例えば、HAおよび/もしくはNAおよび/もしくはM2のドメインまたはHAおよび/もしくはNAおよび/もしくはM2のドメインの一部分と少なくとも95%、96%、97%、98%またはそれ以上の同一性を有するものを包含するタンパク質を含む、抗原タンパク質は免疫原性の活性を保持する。例えば、免疫原性特性を保持しているインフルエンザ抗原(1種類または複数種)と充分な同一性を有する配列は、本明細書に示したドメイン(抗原(1種類または複数種))と反応する抗体と結合し得る。免疫原性特性は、多くの場合、関連するアミノ酸または側鎖基の3次元的提示を包含する。当業者は、配列に適度な差を有する(例えば、境界部における差および/または一部の配列代替部を有するが、なお免疫原性特性は保持されている)配列を容易に同定することができよう。例えば、その境界部が、本明細書において指定したドメイン境界部の指定したアミノ酸配列のいずれかの末端付近(例えば、約15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸6アミノ酸、5アミノ酸4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、または1アミノ酸以内)にある配列は、本発明による関連するドメインを含むとみなされ得る。したがって、本発明では、ドメイン指定に近似した残基を含めるためのインフルエンザ抗原の配列の使用を意図する。例えば、本発明の抗原として、HAのドメイン(1つまたは複数)が操作され、インフレーム融合タンパク質として発現された(本明細書の実施例を参照のこと)。さらに、本明細書に示す構築物および方法を用いて、インフルエンザ抗原(例えば、HA、NA、M2)のアミノ酸配列の免疫原性である任意のドメイン、部分ドメインまたは領域が生成され得ることが認識される。さらには、インフルエンザ抗原を産生するために、ドメインまたはサブドメインを独立して、および/または連続的に結合することができる。
【0027】
例示的な抗原として、本発明者らは、特定のサブタイプの血球凝集素、ノイラミニダーゼおよびM2由来の配列を用い、これを本明細書において詳細に説明する。インフルエンザウイルスの種々のサブタイプが存在し、新たなサブタイプとして同定され続ける。当業者には、本明細書に示す方法および組成物を、さらなるサブタイプの配列の使用に適し得ることが理解される。かかる変異は、本明細書に示す方法および組成物において意図され、包含される。
【0028】
熱安定性タンパク質とのインフルエンザポリペプチド融合体
本発明の特定の態様では、熱安定性タンパク質に作動可能に連結されたインフルエンザタンパク質(またはその断片もしくは変異体)を構成する融合ポリペプチドを含むインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を提供する。本発明の融合ポリペプチドは、当該技術分野で知られた任意の利用可能な発現系において産生される得る。特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、植物またはその一部分(例えば、植物、植物細胞、根、芽など)において産生される。
【0029】
ヒトまたは動物の細胞内に天然に見られない酵素または他のタンパク質は、本発明の融合ポリペプチドにおける使用に特に適切である。融合させると、融合体生成物に熱安定性が付与される熱安定性タンパク質が有用である。熱安定性により、産生されるタンパク質がコンホメーションを維持すること、および産生されるタンパク質を室温で維持することが可能になる。この特徴により、容易で時間効率がよく、コスト効率のよい融合ポリペプチドの回収が助長される。本発明において有用な代表的な熱安定性酵素ファミリーは、グルカノヒドロラーゼファミリーである。これらの酵素は、混合型連結多糖内の1,3−β連結部に隣接する1,4−βグルコシド結合を特異的に切断する(Hahnら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、91:10417)。かかる酵素は、穀類、例えばオートムギおよびオオムギに見られ、また、いくつかの真菌および細菌種、例えば、C.サーモセラムにも見られる(Goldenkovaら、2002、Mol.Biol.、36:698)。したがって、本発明の融合ポリペプチドにおける使用に望ましい熱安定性タンパク質としては、グリコシダーゼ酵素が挙げられる。例示的な熱安定性のグリコシダーゼタンパク質としては、表Aに示すものから選択されるGenBank受託番号で示されるものが挙げられ、その各々の内容は、各参照番号のGenBank受託情報全体の組み込みによる引用により本明細書に組み込まれる。本発明の融合タンパク質に有用な例示的な熱安定性酵素としては、クロストリディウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)P29716、ブレビバシラス・ブレビス(Brevibacillus brevis)P37073、およびロドサーマス・マリナス(Rhodthermus marinus)P45798(これらは各々、そのGenBank受託番号を引用することにより本明細書に組み込まれる)が挙げられる。実施例に示した代表的な融合タンパク質は、クロストリディウム・サーモセラムから単離された修飾型の熱安定性酵素を使用したものであるが、任意の熱安定性タンパク質が、本発明に従って同様に使用され得る。
【0030】
表A:熱安定性グリコシダーゼタンパク質
【表A】
【0031】
本発明による融合タンパク質およびポリペプチドを設計する場合、もちろん、その抗原の免疫原性を保存することが望ましい。さらには、本発明の特定の態様において、融合タンパク質の熱安定性をもたらす構築物を提供することが望ましい。この特徴により、容易で時間効率がよく、コスト効率のよい標的抗原の回収が助長される。特定の態様では、さらなる利点、例えば、免疫原性の増進、多数の抗原決定基の組込みの可能性、ワクチン接種被験体に事前の免疫原性曝露を欠く可能性をもたらす抗原融合パートナーが選択され得る。さらに有益な特質の目的の融合ペプチドとしては、1種類以上の抗原の組込み操作の容易性をもたらすタンパク質、ならびにワクチン調製物の産生、精製および/または製剤化の容易性をもたらす可能性を有するタンパク質が挙げられる。当業者には、このような有益な各特性は、3次元的提示によって影響され得ることが認識される。したがって、免疫性または優先的特質の保存は、例えば、融合パートナーの選択および/または融合位置の選択(例えば、N末端、C末端、内部、その組合せ)に影響を及ぼし得る。あるいはまたさらに、優先性は、融合のために選択されるセグメントの長さ(それが抗原の長さであれ)、または選択される融合パートナーの長さに影響を及ぼし得る。
【0032】
本発明者らは、さまざまな抗原と熱安定性タンパク質との成功した融合を実証した。例えば、本発明者らは、熱安定性の担体分子LicB(リケナーゼともいう)を、融合タンパク質の産生に使用した。LicBは、クロストリディウム・サーモセラム(GenBank受託:X63355[gi:40697])由来の1,3−1,4−βグルカナーゼ(LicB)である。LicBは、球状タンパク質ファミリーに属する。LicBの3次元構造に基づくと、そのN−およびC−末端は、活性ドメインのすぐ近くの表面上で互いに近接して存在する。また、LicBは、活性ドメインから遠くに存在する表面上に露出したループ構造を有する。本発明者らは、タンパク質の該ループ構造ならびにN−およびC−末端が、インフルエンザ抗原ポリペプチドの挿入部位として使用され得るような構築物を作製した。インフルエンザ抗原ポリペプチドは、N−もしくはC−末端融合物として、または表面ループ内への挿入物として発現され得る。重要なことに、LicBはその酵素活性を、低pHおよび高温(75℃まで)で維持している。したがって、担体分子としてのLicBの使用は、例えば、おそらく標的の特異的免疫原性の増進、多くのワクチン決定基の組込みの可能性、ならびに経鼻、経口または非経口で送達され得るワクチンの直接的な製剤化という利点に寄与する。さらにまた、植物内でのLicB融合体の産生により、動物またはヒトの病原体による汚染のリスクが低減されるはずである。本明細書に示す例を参照のこと。
【0033】
インフルエンザ抗原を含む本発明の融合タンパク質は、任意のさまざまな発現系(インビトロ系およびインビボ系の両方を含む)において産生され得る。当業者には、多くの場合、特定の発現系のための核酸配列の最適化が望ましいことが容易に認識される。例えば、本明細書に示した例示において、植物内でのインフルエンザ抗原LicB融合体の発現に最適化された配列を示している。実施例1を参照のこと。したがって、本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)融合タンパク質(1種類または複数種)およびその断片をコードする任意の関連する核酸が、本発明の核酸構築物内に包含されることが意図される。
【0034】
植物系内での産生には、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類または複数種)またはその断片もしくは融合体)を発現するトランスジェニック植物が使用され得る。あるいはまたさらに、トランスジェニック植物は、当該技術分野でよく知られた方法を使用し、安定な産生作物を作製するために生成され得る。さらに、一過性発現系を利用した植物が、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生に使用され得る。植物発現系を用いる場合、植物において遺伝子導入または一過性発現のいずれが使用されてようと、任意の核内発現、葉緑体内発現、ミトコンドリア内発現またはウイルス系発現が、所望の抗原に対する該系の適用可能性に従って利用され得る。さらにまた、本発明による抗原および融合タンパク質の産生のためのさらなる発現系を使用してもよい。例えば、哺乳動物の発現系(例えば、哺乳動物細胞株(例えば、CHOなど))、細菌発現系(例えば、大腸菌)、昆虫発現系(例えば、バキュロウイルス)、酵母発現系、およびインビトロ発現系(例えば、網状ライセート)が、本発明の抗原および融合タンパク質の発現に使用され得る。
【0035】
インフルエンザ抗原の産生
本発明によれば、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)、その断片、変異体および/または融合体)は、任意の望ましい系において産生させ得る。産生は植物系に限定されない。ベクター構築物および発現系は、当該技術分野でよく知られており、本明細書に示すインフルエンザ抗原の使用の組込みに適合させ得る。例えば、インフルエンザ抗原(断片、変異体および/または融合体を含む)は、既知の発現系、例えば、哺乳動物細胞系、遺伝子導入動物、微生物発現系、昆虫細胞系および植物系(例えば、遺伝子導入および一過性の植物系)において産生させ得る。特に、インフルエンザ抗原を融合タンパク質として産生させる場合、かかる融合タンパク質を非植物系内で産生させるのが望ましいことがあり得る。
【0036】
本発明の一部の実施形態において、インフルエンザ抗原は、望ましくは、植物系内で産生される。植物は、遺伝子操作が比較的容易であり、ヒト体液、動物細胞株、組換え微生物および遺伝子導入動物などの択一的供給源に渡り、いくつかの利点を有する。植物は、哺乳動物のものと類似した精巧なタンパク質翻訳後修飾機構を有する(しかし、植物と哺乳動物との間にはグリコシル化パターンにいくらか差があることに注意されたい)。これにより、植物組織内での生物活性試薬の産生が可能になる。また、植物は、精巧な施設を必要とすることなく、非常に多量のバイオマスを経済的に生成させ得る。さらに、植物は、動物病原体による汚染に供されない。リポソームおよびマイクロカプセルと同様、植物細胞は、胃腸管への抗原の通過に対する保護をもたらすことが期待される。
【0037】
植物は、種々の産生系の使用による異種タンパク質の産生に使用され得る。かかる系の一例としては、標的生成物をコードする遺伝子が植物のゲノム内に永続的に組み込まれたトランスジェニック植物/遺伝子修飾植物の使用が挙げられる。遺伝子導入系により、作物産生系がもたらされ得る。さまざまな外来タンパク質、例えば、多くの哺乳動物起源の抗原および多くのワクチン候補抗原が、トランスジェニック植物において発現され、機能的活性を有することが示されている(Tacketら、2000、J.Infect.Dis.、182:302;and Thanavalaら、2005、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、102:3378)。さらに、B型肝炎主要表面抗原を発現するトランスジェニック植物を、非免疫処置ヒト志願者に投与すると、免疫応答の発生がもたらされた(Kapustaら、1999、FASEBJ.、13:1796)。
【0038】
植物においてポリペプチドを発現させるための一つの系では、外来配列を発現(例えば、一過性発現)するように操作された植物ウイルスベクターが使用される。このアプローチにより、急速産生系として健常非トランスジェニック植物の使用が可能になる。したがって、遺伝子操作された植物および組換え植物ウイルスに感染させた植物は、特定の目的のタンパク質を速やかに生成および産生するための「グリーンファクトリー」として働き得る。植物ウイルスは、自身を外来タンパク質産生のための発現ベクターとして魅力的にするという一定の利点を有する。植物RNAウイルスのいくつかの構成員が、良好に特性決定されており、遺伝子操作を容易にするために、感染性cDNAクローンが利用可能である。感染性のウイルスの遺伝物質は、易感染性の宿主細胞内に進入すると、高レベルまで複製され、速やかに植物全体に拡延する。植物ウイルス発現ベクターを用いて標的ポリペプチドを産生させるためには、いくつかのアプローチがあり、ウイルスゲノム内への標的ポリペプチドの組込みが挙げられる。アプローチの一例は、細菌、動物または植物に感染して抗原性ペプチドの担体分子としての機能を果たすウイルスの外被タンパク質の操作を伴う。かかる担体タンパク質は、その表面上に所望の抗原エピトープを表示する組換えウイルス様粒子を集合させるおよび形成する可能性を有する。このアプローチでは、ワクチン候補の微粒子状の性質により、植物組織からの容易でコスト効率のよい回収が助長されるため、ワクチン候補の時間効率のよい産生が可能になる。さらなる利点としては、標的特異的免疫原性の増進、多くのワクチン決定基の組込みの可能性、ならびに経鼻、経口または非経口で送達され得るワクチンへの容易な製剤化が挙げられる。一例として、外被タンパク質に融合されたウイルスエピトープを担持する組換え植物ウイルス粒子を含有するホウレンソウの葉は、投与すると、免疫応答がもたらされた(Modelskaら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、95:2481;およびYusibovら、2002、Vaccine、19/20:3155)。
【0039】
植物発現系
異種核酸の組込みおよび/または維持が行なわれ易く、異種タンパク質を産生し得る任意の植物が、本発明に従って使用され得る。一般に、多くの場合、規定の条件下、例えば、温室および/または水性系で生長させ易い植物を用いることが望ましい。典型的には人間もしくは家畜動物が消費しない、および/または典型的にはヒト食物連鎖の一部ではないため、発現されるポリヌクレオチドが不要に摂取され得る懸念なく外部で生長させ得る植物を選択することが望ましい。しかしながら、一部の実施形態では、食用植物を用いることが望ましい。特別な実施形態では、発現されたポリペプチドが植物の食用部分に蓄積される植物を用いることが望ましい。
【0040】
多くの場合、特定の望ましい植物特性は、発現させる具体的なポリヌクレオチドによって決定される。数少ないが一例を示すと、ポリヌクレオチドが、高収率で産生されるタンパク質をコードしている場合(多くの場合がそうであり、例えば、抗原タンパク質を発現させる場合)、多くの場合、比較的高いバイオマスを有する植物(例えば;タバコ、これは、ウイルス感染に対して高度に易感染性であり、生長期間が短く、ヒト食物連鎖に存在しないというさらなる利点を有する)を選択することが望ましい。ポリヌクレオチドが、完全な活性に特定の翻訳後修飾が必要とされる(または該修飾によって阻害される)抗原タンパク質をコードしている場合、特定の植物種において、関連する修飾(例えば、特定のグリコシル化)を行うことができること(またはできないこと)によって、選択が指示され得る。例えば、植物は、特定の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)が行なわれ得るものであるが、植物は、哺乳動物の翻訳後修飾に見られるシアレーションパターンをもたらさない。したがって、植物の抗原産生により、択一的な系で産生される同一のタンパク質の配列と異なる存在体の生成がもたらされ得る。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、作物植物または作物関連植物が用いられる。特定の具体的な実施形態では、食用植物が用いられる。
【0042】
本発明による使用のための植物としては、被子植物、苔植物類(例えば、苔類、蘚類など)、シダ植物(例えば、シダ類、ツクシ類、ヒカゲノカズラ類)、裸子植物(例えば、針葉類、ソテツ類、イチョウ類、マオウ類)、および藻類(例えば、緑藻網、褐藻網、紅藻網、藍藻網、黄緑藻網、およびウーグレナ藻網)が挙げられる。例示的な植物は、マメ科の構成員(マメ科(Fabaceae)植物;例えば、エンドウ豆、アルファルファ、大豆);イネ科(Gramineae)(イネ科(Poaceae);例えば、トウモロコシ、小麦、米);ナス科、特にリコペリシコン属のもの(例えば、トマト)、ナス属(例えば、ジャガイモ、ナス)、トウガラシ属(例えば、コショウ)、またはタバコ(例えば、タバコ);セリ科、特にダウクス属のもの(例えば、ニンジン)、アピウム属(例えば、セロリ)、またはミカン科(例えば、オレンジ);キク科、特にアキノノゲシ属(例えば、レタス);アブラナ科、特にアブラナ属または白カラシ属である。特定のある態様において、本発明の植物は、アブラナ属またはシロイヌナズナ属の植物であり得る。一部の例示的なアブラナ科の構成員としては、アブラナ(Brassica campestris)、アビシニアカラシ(B.carinata)、アザミナ(B.juncea)、スウェーデンカブ(B.napus)、クロガラシ(B.nigra)、カイラン(B.oleraceae)、ハリゲナタネ(B.tournifortii)、シロガラシ(Sinapis alba)、およびダイコン(Raphanus sativus)が挙げられる。形質転換に修正可能であり、発芽種苗(sprouted seedling)として食用である一部の好適な植物としては、アルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシ、ホウレンソウ、ニンジン、ビーツ、タマネギ、ニンニク、セロリ、ルーバーブ、葉菜植物(キャベツまたはレタス、オランダカラシまたはコショウソウなど)、ハーブ(パセリ、ミントまたはクローバーなど)、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズマメ、食用花(ヒマワリなど)などが挙げられる。
【0043】
植物へのベクターの導入
一般に、ベクターは植物に、既知の手法に従って送達され得る。例えば、ベクターそれ自体を直接、植物に適用してもよい(例えば、表皮剥脱接種、機械化噴霧接種、真空浸潤、パーティクル・ボンバードメント、またはエレクトロポレーションによって)。あるいはまたさらに、ビリオンを調製してもよく(例えば、既に感染させた植物から)、それを既知の手法に従って他の植物に適用してもよい。
【0044】
種々の植物種に感染する多種多様なウイルスが知られており、本発明によるポリヌクレオチド発現に使用され得る(例えば、The Classification and Nomenclature of Viruses、「Sixth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses」(Murphyら編)、Springer Verlag:New York、1995(その全内容は、引用により本明細書に組み込まれる);Griersonら、Plant Molecular Biology、Blackie、London、pp.126−146、1984;Gluzmanら、Communications in Molecular Biology:Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、pp.172−189、1988;およびMathew、Plant Viruses Online(http://image.fs.uidaho.edu/vide/を参照のこと)。本発明の特定のある実施形態では、単一のウイルスベクターを植物細胞に送達するのではなく、一緒になってウイルスベクター(1つまたは複数)の複製(ならびに任意選択で、細胞間および/または長距離移動)を可能にする多くの異なるベクターを送達する。そのタンパク質の一部または全部が、トランスジェニック植物のゲノムにコードされ得る。本明細書においてさらに詳細に記載した特定のある態様において、このような系には、1種類以上のウイルスベクター成分が含まれる。
【0045】
広範な植物型に容易に感染するが、感染性が広がるリスクはほとんどまたは全くない系を得るために2種類の異種植物ウイルスの成分を含むベクター系。例示的な系は、以前に報告されている(例えば、PCT公開公報WO00/25574および米国特許公開公報第2005/0026291号(これらはともに、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本明細書に記載のように、本発明の特別な態様では、ウイルスベクターは植物(例えば、植物、植物の一部分、芽など)に、例えば、浸潤または機械的接種、噴霧などにより適用される。感染が植物へのウイルスゲノムの直接適用によって行なわれる場合、任意の利用可能な手法を用いて該ゲノムが調製され得る。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスはssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムDNAコピーの転写またはRNAコピーの複製によって、インビボまたはインビトロのいずれかで調製され得る。使い易いインビトロ転写系(例えば、SP6、T7、網状赤血球ライセートなど)が容易に入手可能であること、また、RNAベクターのDNAコピーの維持が簡便であることを考慮すると、本発明のssRNAベクターは、多くの場合、インビトロ転写によって特にT7またはSP6ポリメラーゼを用いて調製されることが予測される。
【0046】
本発明の特定のある実施形態では、単一のウイルスベクター型を植物細胞に導入するのではなく、多くの異なるウイルスベクターを導入する。かかるベクターは、例えば、複製、細胞間移動および/または長距離移動などの機能に関して互いにトランス対補体であり得る。ベクターは、本発明のインフルエンザ抗原をコードする異なるポリヌクレオチドを含有するものであり得る。1種類以上のインフルエンザ抗原をコードする多くのポリペプチドを発現する植物(1種類または複数種)またはその一部分の選択は、単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドについて上記のようにして行なわれ得る。
【0047】
植物組織発現系
上記のように、本発明によれば、インフルエンザ抗原は、任意の望ましい系内で産生され得る。ベクター構築物および発現系は、当該技術分野でよく知られており、本明細書に示すインフルエンザ抗原の使用の組込みに適し得る。例えば、トランスジェニック植物の産生は、既知であり、構築物の作製および植物産生は、当該技術分野で知られた手法に従って適し得る。一部のある実施形態では、植物における一過性発現系が望ましい。このような系の2つの例として、クローン根およびクローン植物系およびその誘導体の産生、ならびに発芽種苗系の産生が挙げられる。
【0048】
クローン植物
クローン根は、RNAウイルス発現ベクターを維持し、標的タンパク質を安定的に、根全体において、および多数回の継代培養で均一に長期間にわたって産生する。植物とは対照的に、標的遺伝子が細胞間または長距離移動中に組換えによって排除された場合、根の培養物では、ウイルスベクターの完全性が維持され、経時的に産生される標的タンパク質のレベルは、初期スクリーニング中に観察されるものと同様である。クローン根により、抗原およびワクチン組成物の経口製剤のための異種タンパク質材料の容易な産生が可能になる。抗原(例えば、本発明の抗原タンパク質)の産生に有用な植物由来のさまざまなクローン存在体を作製するための方法および試薬は、以前に報告されており、当該技術分野で知られている(例えば、PCT公開公報WO 05/81905(これは、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。クローン存在体としては、抗原(例えば、本発明の抗原タンパク質)を産生し得るクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株およびクローン植物が挙げられる。本発明は、さらに、種々の植物組織(例えば、根、葉)に由来するクローン細胞株、および単一細胞(クローン植物)に由来する完全体の植物における抗原ポリヌクレオチドおよびポリペプチド産物の発現のための方法および試薬を提供する。かかる方法は、典型的には、種々の型の植物ウイルスベクターの使用に基づく。
【0049】
例えば、一態様において、本発明は、(i)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを、植物またはその一部分に導入する工程;および(ii)1種類以上のクローン根株を植物から作製する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株を得る方法を提供する。クローン根株は、例えば、植物または植物の一部分(例えば、採取した葉片)を、毛状根の形成を引き起こすアグロバクテリウム(例えば、A.リゾゲネス)に感染させることにより作製され得る。クローン根株は、ウイルスを維持する株、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する株などを同定するために種々の様式でスクリーニングされ得る。本発明は、さらに、クローン根株(例えば、本発明の方法に従って作製されるクローン根株)を提供し、さらに、クローン根株を用いて、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチドを発現させる方法、およびそのポリペプチド(1種類または複数種)を産生させる方法を包含する。
【0050】
本発明は、さらに、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)細胞を、根細胞増殖に適した条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根細胞株を作製する方法を提供する。本発明は、クローン根細胞株ならびにクローン根細胞株を用いたポリヌクレオチドの発現方法およびポリペプチドの産生方法を提供する。
【0051】
一態様において、本発明は、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)細胞を培養状態で、植物細胞増殖に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作製する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドウイルスベクターを、培養状態で維持された植物細胞株の細胞内に導入する工程;および(ii)該ウイルスベクターを含有する細胞を富化する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株の作製方法を提供する。富化は、例えば、(i)一部の細胞を培養物から取り出し、(ii)取り出した細胞を、細胞濃度が低下するように希釈し、(iii)希釈された細胞を増殖させ、(iv)該ウイルスベクターを含有する細胞についてスクリーニングすることにより行なわれ得る。クローン植物細胞株は、本発明によるインフルエンザ抗原の作製に使用され得る。
【0052】
本発明には、その細胞が、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含有するクローン植物を作製するためのいくつかの方法が含まれる。例えば、本発明は、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)放出された細胞を植物の形成に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作製する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン植物細胞株を作製する工程;および(ii)細胞を植物の形成に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作製する方法を提供する。一般に、本発明によるクローン植物は、本発明のインフルエンザ抗原をコードする任意のポリヌクレオチドを発現するものであり得る。かかるクローン植物は、抗原ポリペプチドの作製に使用され得る。
【0053】
上記のように、本発明は、クローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株(例えば、葉、茎などに由来する細胞株)、およびクローン植物において、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする1種類または複数種類のポリヌクレオチドを発現させるための系を提供する。本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドは、植物ウイルスベクターを用い、そのゲノムが、プロモーターに作動可能に連結された(すなわち、その制御下にある)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む祖先植物細胞内に導入される。クローン根株またはクローン植物細胞株は、任意のいくつかの手法(さらに後述する)に従ってウイルスを含有する細胞から樹立される。植物ウイルスベクターまたはその一部分は植物細胞内に、感染、ウイルス転写物または感染性cDNAクローンの接種、エレクトロポレーション、T−DNA媒介性遺伝子導入などによって導入され得る。
【0054】
以下のセクションに、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株およびクローン植物の作製方法を記載する。「根株」は、根株により実際に根様構造または根がもたらされるのに対し、根細胞株は、根様構造を形成しない根細胞からなるという点で、「根細胞株」と区別される。用語「株」の使用は、その株の細胞が増殖し、遺伝情報を子孫細胞に伝え得ることを示すことが意図される。細胞株の細胞は、典型的には、そのままの植物に見られるものなどの組織化された構造の一部ではなく、培養状態で増殖させる。用語「根株」の使用は、根構造内の細胞が、完全な植物の一部ではなく、増殖し得ることを示すことが意図される。用語「植物細胞」には根細胞が包含されることに注意されたい。しかしながら、根株および根細胞株を作製するための本発明の方法を、非根組織から植物細胞株を直接作製する(クローン根株またはクローン根株由来のクローン植物からのクローン植物細胞株の作製とは反対)ために使用されるものと区別するため、用語「植物細胞」および「植物細胞株」は、本明細書で用いる場合、一般的には、非根植物組織からなる細胞および細胞株をいう。植物細胞は、例えば、葉、茎、芽、花の部分などであり得る。種子は、本明細書において誘導されるようにして作製されたクローン植物に由来のものであり得ることに注意されたい。かかる種子は、ウイルスベクターを含有するものであり得、かかる種子から得られる植物も同様である。種子ストックを得るための方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、米国特許公開公報第2004/0093643号を参照のこと)。
【0055】
クローン根株
本発明は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの発現を指令するのに植物ウイルスベクターを用いる、クローン根株の作製のための系を提供する。プロモーターに作動可能に連結された本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む1種類以上のウイルス発現ベクターを、植物またはその一部分に、任意のさまざまな既知の方法に従って導入する。例えば、植物葉に、ウイルス転写物が接種され得る。ベクターそれ自体を直接、植物に適用してもよい(例えば、表皮剥脱接種、機械化噴霧接種、真空浸潤、パーティクル・ボンバードメント、またはエレクトロポレーションによって)。あるいはまたさらに、ビリオンを調製してもよく(例えば、既に感染させた植物から)、それを既知の手法に従って他の植物に適用してもよい。
【0056】
感染が植物へのウイルスゲノムの直接適用によって行なわれる場合、任意の利用可能な手法を用いてウイルスゲノムが調製され得る。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスはssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムDNAコピーの転写またはRNAコピーの複製によって、インビボまたはインビトロのいずれかで調製され得る。使い易いインビトロ転写系(例えば、SP6、T7、網状赤血球ライセートなど)が容易に入手可能であること、また、RNAベクターのDNAコピーの維持が簡便であることを考慮すると、本発明のssRNAベクターは、多くの場合、インビトロ転写によって特にT7またはSP6ポリメラーゼを用いて調製されることが予測される。感染性cDNAクローンを使用してもよい。アグロバクテリウムによる媒介性遺伝子導入を使用し、ウイルス核酸(例えば、ウイルスベクター(ウイルスゲノム全体またはその一部分のいずれか)など)が植物細胞に、例えばアグロインフィルトレーションを用いて当該技術分野で知られた方法に従って導入され得る。
【0057】
次いで、植物または植物の一部分は、ウイルス転写物の複製に適した条件下に維持(例えば、培養または増殖)され得る。本発明の特定のある実施形態において、ウイルスは、最初に接種した細胞を越えて(例えば、細胞間で局所的に、および/または最初に接種した葉から別の葉に全体的に)拡延する。しかしながら、本発明の一部のある実施形態では、ウイルス拡延しない。したがって、ウイルスベクターは、機能的MPおよび/またはCPをコードする遺伝子を含有するものであり得るが、かかる遺伝子の一方または両方を欠くものであってもよい。一般に、ウイルスベクターは、植物またはその一部分の多くの細胞内に導入される(感染する)。
【0058】
植物へのウイルスベクターの導入後、葉を採取する。一般に、葉は、ウイルスベクターの導入後の任意の時点で採取され得る。しかしながら、植物へのウイルスベクターの導入後、植物をある一定期間(例えば、ウイルスの複製に充分な期間および任意選択で、最初に導入された細胞からのウイルスの拡延に充分な期間)、維持することが望ましい場合もあり得る。クローン根の培養物(または多重培養物)は、例えば、以下にさらに説明する既知の方法によって調製される。
【0059】
一般に、任意の利用可能な方法を用いて、ウイルスベクターを導入した植物または植物組織からクローン根の培養物が調製され得る。かかる方法の一例では、ある種の細菌プラスミド内に存在する遺伝子が使用される。このようなプラスミドは、多種多様な生物体に感染し、DNAを転移させる種々の種アグロバクテリウムに見られる。一例として、アグロバクテリウム属は、多くの多様な組の植物型(例えば、数多くの双子葉植物および単子葉植物の被子植物種および裸子植物)に、DNAを転移させることができる(Gelvinら、2003、Microbiol.Mol.Biol.Rev.、67:16およびそこに挙げられた参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。植物細胞の遺伝的形質転換の分子的根拠は、細菌からの転移と、植物の核内ゲノムへの種々のアグロバクテリウム種に存在する大きな腫瘍誘導性(Ti)または発根性(rhizogenic)(Ri)プラスミド領域の組込みである。この領域は、プラスミド内に存在する場合はT−領域と呼ばれ、プラスミドから切除された場合はT−DNAと呼ばれる。一般的に、単鎖T−DNA分子は、天然のアグロバクテリウム感染において植物細胞内に転移され、最終的にゲノム内に組み込まれる(二本鎖形態で)。Tiプラスミドを主体とする系は、植物への外来遺伝物質の導入およびトランスジェニック植物の作製に広く使用されている。
【0060】
種々のアグロバクテリウム種による植物の感染およびT−DNAの導入は、いくつかの効果を有する。例えば、A.ツメファシエンスは、クラウンゴール病を引き起こし、一方、A.リゾゲネスは、感染部位において、「毛状根病」として知られる状態の毛状根の発生を引き起こす。各根は、単一の遺伝的形質転換細胞から生じる。したがって、根の根細胞はクローンであり、各根は、細胞のクローン集団である。A.リゾゲネス感染によってもたらされる根は、高い生長速度と遺伝的安定性を特徴とする(Giriら、2000、Biotechn.Adv.、18:1、およびそこに挙げられた参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる))。また、かかる根は、遺伝的に安定な植物を再生する能力を有する(Giriら、2000、前掲)。
【0061】
一般に、本発明には、植物細胞からの根の形成を誘導する能力を有する任意の株のアグロバクテリウム(例えば、任意のA.リゾゲネス株)の使用が包含される。上記のように、Riプラスミドの一部分(Ri T−DNA)は、毛状根病の原因を担う。Riプラスミドのこの部分の植物細胞への導入は、Riプラスミドを保有するアグロバクテリウムによる感染によって簡便に行なわれ得るが、本発明には、関連する領域を植物細胞内に導入する択一的な方法の使用が包含される。かかる方法としては、植物細胞内に遺伝物質を導入する任意の利用可能な方法、例えば限定されないが、粒子銃、エレクトロポレーション、PEG媒介性DNA取込み、Ti系ベクターなどが挙げられる。Ri T−DNAの関連する領域は植物細胞内に、ウイルスベクターの使用によって導入され得る。Ri遺伝子は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含有する同じベクター内に含めてもよく、異なるウイルスベクター(本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターと同じ型であっても異なる型であってもよい)に含めてもよい。毛状根の発生には、Ri T−DNA全体が必要とされるわけではないこともあり得、本発明には、当該技術分野で知られているような、根形成を誘導するのに充分な遺伝物質を含有していれば、Ri T−DNAの一部分の使用が包含されることに注意されたい。さらなる遺伝物質、例えば、Riプラスミド内に存在するがT−DNAには存在しない遺伝子(特に、その発現産物によって植物細胞DNA内へのT−DNAの組込みが助長される遺伝子)を、本発明に従って植物細胞に導入してもよい。
【0062】
本発明の特定の実施形態によるクローン根株を調製するため、採取した葉部分をA.リゾゲネスと、感染および形質転換に適した条件下で接触させる。葉部分を培養状態で維持し、毛状根を発生させる。各根はクローンである、すなわち、根の細胞は、Ri T−DNAが導入された単一の祖先細胞に由来している。本発明によれば、一部のかかる祖先細胞は、ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、かかる祖先細胞に由来する根の細胞は、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン根の娘細胞に受け継がれるため、根内のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターをその根中に維持するものである必要はないことに注意されたい。個々のクローン毛状根を葉部分から取り出し、さらに培養してもよい。かかる根を、本明細書では根株ともいう。単離したクローン根は、単離後、継続して培養される。
【0063】
さまざまな異なるクローン根株が、本発明の方法を用いて作製された。これらの根株は、本発明のインフルエンザ抗原をコードする(例えば、インフルエンザポリペプチド(1種類または複数種)、またはその断片もしくは融合タンパク質をコードする)ポリヌクレオチド(1種類または複数種)を含有するウイルスベクターを用いて作製した。根株をウエスタンブロットによって試験した。根株は、種々のポリペプチドのさまざまな異なる発現レベルを示した。高発現を示す根株を選択し、さらに培養した。続いて、これらの根株を再度試験すると、長期間にわたって高レベルの発現を維持していることが示され、これは、安定性を示す。発現レベルは、クローン根株を作製するのに用いたのと同じウイルスベクターに感染させたそのままの植物における発現と同等またはそれ以上であった。また、根株の発現の安定性は、同じウイルスベクターに感染させた植物で得られるものより優れていた。かかるウイルス感染植物の80%までが、2〜3回の継代後に野生型に復帰した(かかる継代は、植物に転写物を接種すること、感染させて(局所または全体的)樹立させること、葉試料を採取すること、および新たな植物に接種を行ない、続いて、これを発現について試験することを伴うものであった)。
【0064】
根株を、以下にさらに説明するように、大規模で培養し、本発明の抗原ポリペプチドを生成させてもよい。クローン根株(およびクローン根株由来の細胞株)は、一般的に、根および植物細胞の培養に典型的に使用される種々の化合物(例えば、植物生長ホルモン(オーキシン、サイトカインなど))を含有しない培地中で維持できることに注意されたい。この特徴により、組織培養に伴う費用が大きく低減され、本発明者らは、該特徴が、植物を用いたタンパク質作製の経済的な実現可能性に大いに寄与すると予測する。
【0065】
任意のさまざまな方法を用いて、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチド(1種類または複数種)を発現するクローン根が選択され得る。ウエスタンブロット、ELISAアッセイなどが、コードポリペプチドの検出に使用され得る。GFPなどの検出可能なマーカーの場合は、択一的な方法、例えば、視覚的スクリーニングが行なわれ得る。選択可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターが使用される場合、適切な選択が課され得る(例えば、葉材料および/またはこれに由来する根が、適切な抗生物質の存在下または栄養条件下で培養され、生存根が同定および単離され得る)。ある種のウイルスベクターは、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする2種類以上のポリヌクレオチド(例えば、異なるポリペプチドをコードする2種類以上のポリヌクレオチド)を含有する。これらのうちの一方が選択可能または検出可能なマーカーである場合、マーカーを選択するまたはその発現を検出することにより選択または検出されたクローン根は、第2のポリヌクレオチドも発現する高い確率を有する。また、特定のポリヌクレオチドを含有する根株のスクリーニングが、PCRおよび他の核酸検出方法を用いて行なわれ得る。
【0066】
あるいはまたさらに、クローン根株は、ウイルス感染の結果、局所病変を形成する宿主植物(例えば、過敏性宿主植物)に接種することにより、ウイルスの存在についてスクリーニングされ得る。例えば、5mgの根組織を50μlのリン酸塩バッファー中でホモジナイズし、これを、タバコ植物の単一の葉に接種するために使用し得る。ウイルスが根の培養物中に存在する場合、2〜3日以内に特徴的な病変が、感染させた葉に出現する。これは、根株が、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチド(標的遺伝子)を担持する組換えウイルスを含有することを意味する。局所病変が形成されない場合、ウイルスは存在せず、根株は陰性として却下される。この方法は、非常に時間効率およびコスト効率がよい。ウイルスの存在について最初にスクリーニングした後、ウイルスを含有する根は、二次スクリーニング、例えば、ウエスタンブロットまたはELISAに供され、高発現体が選択され得る。さらなるスクリーニング、例えば、急速生長、特定の培地中または特定の環境条件下での生長についてのスクリーニングなどが適用され得る。これらのスクリーニング方法は、一般に、本明細書に記載の任意のクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株および/またはクローン植物の開発に適用され得る。
【0067】
当業者には自明のように、ウイルスベクターを含有するクローン根株を作製するための本発明の方法の記載に対して、さまざまな変形が行なわれ得る。かかる変形は、本発明の範囲に含まれる。例えば、一般的には、ウイルスベクターをそのままの植物またはその一部分に、Ri T−DNA遺伝子の導入前に導入することが望ましいが、本発明の特定のある実施形態では、Ri−DNAが、ウイルスベクターの導入前に導入される。また、葉部分を採取し、次いでこれらを細菌に曝露するのではなく、そのままの植物をA.リゾゲネスと接触させることも可能である。
【0068】
ウイルスベクターを保有する植物またはその一部分の単一細胞からクローン根株を作製する他の方法を使用してもよい(すなわち、A.リゾゲネスまたはRiプラスミド由来の遺伝物質を使用しない方法)。例えば、ある種の植物ホルモンまたは植物ホルモンの組合せでの処理により、植物組織からの根の発生がもたらされることが知られている。
【0069】
クローン根株由来のクローン細胞株
上記のように、本発明は、その細胞がウイルスベクターを含有するクローン根株の作製方法を提供する。当該技術分野でよく知られているように、さまざまな異なる細胞株を、根から生成させ得る。例えば、根細胞株は、根から得られる個々の根細胞から、さまざまな既知の方法を用いて生成させ得る。かかる根細胞株は、根内の種々の異なる根細胞型から得られ得る。一般に、根材料を採取して解離させ(例えば、物理的に、および/または酵素的消化により)、個々の根細胞に解放し、次いで、これをさらに培養する。完全なプロトプラスト形成は、一般的には必要でない。所望により、根細胞は、単一の根細胞から根細胞株が得られるように、非常に薄い細胞濃度でプレーティングされ得る。この様式で誘導された根細胞株は、ウイルスベクターを含有するクローン根細胞株である。したがって、かかる根細胞株は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの安定な発現を示す。クローン植物細胞株は、同様にクローン根から、例えば、解離させた根細胞を適切な植物ホルモンの存在下で培養することにより得られ得る。スクリーニングおよび連続的な富化の繰り返しを用いて、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する細胞株が同定され得る。しかしながら、細胞株を誘導するクローン根株が、既に高レベル発現を示す場合は、かかるさらなるスクリーニングは不必要であり得る。
【0070】
クローン根株の場合と同様、クローン根細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン根細胞株の娘細胞に受け継がれるため、細胞間のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。クローン根細胞株は、後述のようにして、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの産生に使用され得る。
【0071】
クローン植物細胞株
本発明は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの直接的な発現に植物ウイルスベクターが使用される、クローン植物細胞株を作製するための方法を提供する。本発明の方法によれば、プロモーターに作動可能に連結された本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む1種類以上のウイルス発現ベクターが、細胞培養物の状態で維持された植物細胞株の細胞内に導入される。種々の植物型に由来するいくつかの植物細胞株が当該技術分野で知られており、その任意のものが使用され得る。新たに誘導される細胞株は、本発明の実施における使用のための既知の方法に従って作製され得る。ウイルスベクターは植物細胞株の細胞内に、任意のいくつかの方法に従って導入される。例えば、プロトプラストを作製し、次いで、ウイルス転写物を細胞内にエレクトロポレーションしてもよい。植物ウイルスベクターを植物細胞株の細胞内に導入するための他の方法を使用してもよい。
【0072】
本発明によるクローン植物細胞株の作製方法および植物細胞(例えば、プロトプラスト)の導入に適したウイルスベクターは、以下のようにして使用され得る。ウイルスベクターの導入後、植物細胞株は、組織培養状態で維持され得る。この期間中、ウイルスベクターが複製され得、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチド(1種類または複数種)が発現され得る。クローン植物細胞株は、例えば、連続的な富化プロセスにより、培養物に由来する。例えば、試料は、培養物から取り出され、任意選択で、細胞濃度が低くなるように希釈して、ペトリ皿に個々の液滴状態でプレーティングされ得る。次いで、液滴を維持し、細胞分裂させる。
【0073】
液滴には、培養物の初期密度および希釈物の量に応じて種々の数の細胞が含有され得ることが認識される。1回だけの富化後に本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン細胞株を得ることが所望される場合、細胞は、ほとんどの液滴が0または1つのいずれかの細胞を含有するように希釈され得る。しかしながら、各液滴に多くの細胞が存在し、次いで液滴をスクリーニングすると、発現細胞を含有するものが同定されるような濃度を選択することが、より効率的であり得る。一般に、任意の適切なスクリーニング手順が使用され得る。例えば、GFPなどの検出可能なマーカーの選択または検出が使用され得る。ウエスタンブロットまたはELISAアッセイが使用され得る。個々の液滴(100μl)は、このようなアッセイを実施するのに充分量より多くの細胞を含む。多数回の富化を行なうと、高発現細胞株が連続的に単離される。単一のクローン植物細胞株(すなわち、単一の祖先細胞に由来する集団)は、単一細胞クローニングのための標準的な方法を使用し、さらに限界希釈することによって生成され得る。しかしながら、個々のクローン株を単離する必要はない。多くのクローン細胞株を含む集団を、本発明の1種類以上のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの発現に使用してもよい。
【0074】
一般に、クローン根株の作製について上記した一定の考慮事項は、クローン植物細胞株の作製に当てはまる。例えば、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする1種類以上のポリヌクレオチドを含有する多様なウイルスベクターが使用され得、多くの異なるベクターの組合せであってもよい。同様のスクリーニング方法が使用され得る。クローン根株およびクローン根細胞株の場合と同様、クローン植物細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン植物細胞株の娘細胞に受け継がれるため、細胞内のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。クローン植物細胞株は、後述のようにして、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリペプチドの作製に使用され得る。
【0075】
クローン植物
クローン植物は、上記の種々の方法に従って作製されるクローン根、クローン根細胞株および/またはクローン植物細胞株から産生され得る。根、根細胞株および植物細胞株(例えば、本明細書に記載のクローン根株、クローン根細胞株およびクローン植物細胞株)からの植物の作製方法は当該技術分野でよく知られている(例えば、Peresら、2001、Plant Cell、Tissue、Organ Culture、65:37;および本明細書の別の箇所に挙げた植物分子生物学およびバイオテクノロジーに関する標準的な参考研究論文を参照のこと)。したがって、本発明は、(i)上記の任意の本発明の方法によりクローン根株、クローン根細胞株またはクローン植物細胞株を作製する工程;および(ii)クローン根株、クローン根細胞株またはクローン植物から完全体の植物を作製する工程を含む、クローン植物を作製する方法を提供する。クローン植物は、標準的な方法に従って繁殖および生長させ得る。
【0076】
クローン根株、クローン根細胞株およびクローン植物細胞株の場合と同様、クローン植物の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン植物の娘細胞に受け継がれるため、細胞間のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。
【0077】
芽および発芽種苗の植物発現系
本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生に有用な、さまざまな芽および発芽種苗を作製するための系および試薬は、以前に報告されており、当該技術分野で知られている(例えば、PCT公開公報WO04/43886(これは、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本発明は、さらに、インフルエンザ抗原を含有するバイオマスとしての、摂食可能であり得る発芽種苗を提供する。特定の態様において、バイオマスは、抗原含有組成物の消費に直接提供される。一部の態様では、バイオマスは、消費前に、例えばホモジネーション、破砕、乾燥または抽出により加工される。特定の態様において、インフルエンザ抗原は、バイオマスから精製され、医薬組成物に製剤化される。
【0078】
さらに、生で消費または採取され得る発芽種苗(例えば、アブラナ属の芽、発芽種苗)において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を産生させるための方法を提供する。特定の態様では、本発明は、種子を食用発芽種苗まで、収容型の調節可能な環境内(例えば、屋内、容器内など)で生長させることを伴う。種子は、インフルエンザ抗原をコードする発現カセットを含有し、その発現が外来誘導プロモーターによって駆動される遺伝子操作された種子であってもよい。例えば、光、熱、植物ホルモン、栄養素などによって誘導され得るさまざまな外来誘導プロモーターが使用され得る。
【0079】
関連する実施形態において、本発明は、アグロバクテリウム形質転換系を用い、インフルエンザ抗原の発現が誘導プロモーターによって駆動されるインフルエンザ抗原をコードする発現カセットで植物を形質転換することによって、最初に発芽種苗用の種子ストックを作製することにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発芽種苗において産生させる方法を提供する。遺伝子導入種子は、収容型の調節可能な環境内で生長させ、インフルエンザ抗原を発現するように誘導した形質転換植物から得られ得る。
【0080】
一部の実施形態では、発現が任意のウイルスプロモーターまたは誘導プロモーターによって駆動され得るインフルエンザ抗原をコードするウイルス系発現カセットに、発芽種苗を感染させることを伴う方法を提供する。発芽種苗は、収容型の調節可能な環境内で2〜14日間、または少なくとも、消費もしくは採取に充分なレベルのインフルエンザ抗原が得られるまで生長させる。
【0081】
本発明は、さらに、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発芽種苗において産生させるための系であって、温度調節器を備えた収容ユニットと、1種類以上のインフルエンザ抗原をコードし、その発現が構成的または誘導プロモーターによって駆動される発現カセットを含む発芽種苗とを含む系を提供する。系により、屋外環境または温室では制御不可能な特有の利点がもたらされ得る。したがって、本発明により、栽培者が、インフルエンザ抗原の発現の誘導に、正確に測定することが可能になる。これにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生の時間とコストが大きく低減され得る。
【0082】
特定の態様において、一過的にトランスフェクトされた芽は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするウイルスベクター配列を含有する。種苗は、芽におけるウイルス核酸の生成が可能となるような期間生長させた後、多くの複製のウイルスが産生される生長期間生長させる。それにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生がもたらされる。
【0083】
特定の態様において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする核酸を含有する遺伝子操作された種子または胚を発芽種苗段階まで、収容型の調節可能な環境内で生長させる。収容型の調節可能な環境は、種子が屋内で生長させ得る収容ユニットまたは部屋であり得る。収容型の調節可能な環境のあらゆる環境因子は制御され得る。芽は、生長に光を必要とせず、照明は高価であり得るため、遺伝子操作された種子または胚は発芽種苗段階まで、屋内で光の非存在下で生長させ得る。
【0084】
本発明の収容型の調節可能な環境内で調節され得る他の環境因子としては、温度、湿度、水、栄養素、ガス(例えば、O2もしくはCO2含量または空気循環)、化学薬品(小分子(例えば、糖類および糖誘導体)またはホルモン(例えば、植物ホルモンであるジベレリン酸またはアブシジン酸など)などが挙げられる。
【0085】
本発明の特定のある方法によれば、インフルエンザ抗原をコードする核酸の発現は、外来誘導プロモーターによって制御され得る。外来誘導プロモーターが生じ、内部刺激ではなく、外部刺激に応答して核酸の発現を増減する。いくつかの環境因子は、遺伝子操作された芽の発現カセットに担持された核酸発現の誘導因子として作用し得る。プロモーターは、熱誘導プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターであってもよい。例えば、熱ショックプロモーターとして使用すると、収容型の環境の温度が簡単に上昇し、核酸の発現が誘導され得る。他のプロモーターとしては、光誘導プロモーターが挙げられる。光誘導プロモーターは、収容型の調節可能な環境内の光を常にオンにしておくと、構成的プロモーターとして維持され得る。あるいはまたさらに、単に点灯することにより、核酸の発現を発育中の特定の時点でオンをすることができる。プロモーターは、化学的誘導プロモーターであってもよく、核酸の発現に使用される。このような実施形態によれば、単に化学薬品を種子、胚または種苗上に霧吹きまたは噴霧すると、核酸の発現が誘導され得る。噴霧および霧吹きは、意図する標的種子、胚または種苗上に正確に制御および指向され得る。収容型の環境には、化学薬品を意図する標的から離れるように分散させ得る風または空気流がなく、そのため、化学薬品は、意図する標的上に留まる。
【0086】
本発明によれば、発現を誘導する時間は、採取時点までに発芽種苗におけるインフルエンザ抗原の発現が最大限となるように選択され得る。特定の生長段階での胚における発現の誘導、例えば、発芽の特定の日数後の胚における発現の誘導により、採取時点でインフルエンザ抗原の最大の合成がもたらされ得る。例えば、発芽4日後のプロモーターからの発現の誘導では、3日後または5日後でのプロモーターからの発現の誘導より多くのタンパク質合成がもたらされ得る。当業者には、発現の最大化が常套的な実験手法によって達成され得ることが認識される。一部の方法では、発芽種苗は、発芽の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日後に採取される。
【0087】
発現ベクターが、誘導プロモーターの代わりに構成的プロモーターを有する場合、発芽種苗は、発芽種苗の形質転換の一定期間後に採取され得る。例えば、発芽種苗を発育の初期段階(例えば、胚段階)でウイルスにより形質転換した場合、発芽種苗は、発現が形質転換後に最大となる時点で、例えば、形質転換の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に採取され得る。芽は、種子の発芽に応じて、形質転換の1、2、3ヶ月後またはそれ以上に発育し得る。
【0088】
一般的には、インフルエンザ抗原の発現(1種類または複数種)が開始されると、種子、胚または発芽種苗を、充分なレベルのインフルエンザ抗原(1種類または複数種)が発現されるまで生長させる。特定の態様において、充分なレベルは、採取されたバイオマスを生で摂食されると、患者に対して治療的有益性をもたらし得るレベルである。あるいはまたさらに、充分なレベルは、バイオマスからインフルエンザ抗原を濃縮または精製することができ、患者に投与されると治療的有益性がもたらされる医薬組成物に製剤化することができるレベルである。典型的には、インフルエンザ抗原は、自然界の発芽種苗において発現されるタンパク質ではない。任意の速度において、インフルエンザ抗原は、典型的には、自然界の発芽種苗に存在し得るものより高い濃度で発現される。
【0089】
インフルエンザ抗原の発現が誘導されたら、発芽種苗段階まで生長を継続させ、該段階の時点で発芽種苗を採取する。発芽種苗は生きた状態で採取され得る。発芽種苗を生で採取することは、いくつかの利点(例えば、労力および破損が最小限であること)を有する。本発明の発芽種苗は水栽培で生長させ得、採取は、発芽種苗をその水栽培溶液から摘みあげるという単純なものになる。土壌は、本発明の発芽種苗の生長に必要とされないが、当業者が必要または望ましいと考えれば供給してもよい。芽は、土壌なしで生長され得るため、採取時点で発芽種苗材料の清浄は必要とされない。発芽種苗を直接その水栽培環境から、洗浄または擦ることなく採取できることにより、採取される材料の破損が最小限に抑えられる。植物の破損およびしおれは、アポトーシスを誘導する。アポトーシス中、ある種のタンパク質分解酵素が活性となり、これによって、発芽種苗において発現された医薬用タンパク質が分解され、該タンパク質の治療活性の低下がもたらされ得る。アポトーシス誘導型タンパク質分解により、成熟植物からのタンパク質の収量が有意に低下し得る。本発明の方法を用いると、タンパク質を植物から抽出する時点まで採取を行わない場合、アポトーシスが回避され得る。
【0090】
例えば、生きている芽を磨砕、破砕またはブレンドし、発芽種苗バイオマスをプロテアーゼインヒビター含有バッファー中に含むスラリーを作製してもよい。バッファーは約4℃に維持され得る。一部の態様において、発芽種苗バイオマスは、風乾、噴霧乾燥、凍結または凍結乾燥される。成熟植物の場合と同様、一部のこれらの方法(例えば、風乾など)により、医薬用タンパク質の活性の低下がもたらされることがあり得る。しかしながら、発芽種苗は非常に小さく、体積に対して大きな表面積比を有するため、これが起こる可能性はかなり低い。当業者には、発現されたタンパク質のタンパク質分解を最小限に抑える多くのバイオマス採取手法が利用可能であり、本発明に適用され得ることが認識される。
【0091】
一部の実施形態において、発芽種苗は食用のものである。特定の実施形態では、充分なレベルのインフルエンザ抗原を発現する発芽種苗が、採取時に(例えば、採取直後、採取後最小限の期間内)消費され、そのため、発芽種苗が消費される前に加工処理は全く行われない。このように、処置を必要とする患者へのインフルエンザ抗原の投与前でのインフルエンザ抗原の任意の採取誘導性タンパク質分解的破壊は、最小限に抑えられる。例えば、消費されるよう準備された発芽種苗は、直接患者に送達され得る。あるいはまたさらに、遺伝子操作された種子または胚は、処置を必要とする患者に送達され、患者によって発芽種苗段階まで生長される。一態様では、遺伝子操作された発芽種苗の供給源が、患者または患者を処置する医師に提供され、その結果、ある種の望ましいインフルエンザ抗原を発現する発芽種苗の継続的なストックは栽培されるものであり得る。これは、高価な医薬品が手ごろな価格または送達可能でない発展途上国の集団にとって特に有益であり得る。本発明の発芽種苗を容易に生長させ得ることにより、本発明の発芽種苗は、かかる開発途上国の集団に特に望ましいものとなる。
【0092】
収容型の環境が調節可能である特質により、本発明に対し、屋外環境で植物を生長させることと比べて利点が付与される。一般に、植物において医薬用タンパク質を発現する遺伝子操作された発芽種苗を生長させることにより、遺伝子操作された植物を生長させるよりも速く(幼若な植物を採取するため)、労力、リスクおよび規制の考慮事項が少ない医薬用生成物がもたらされる。本発明において使用される収容型の調節可能な環境により、自然界の植物との異花受粉のリスクが低減または排除される。
【0093】
例えば、熱誘導プロモーターは、屋外温度を制御することができないため、おそらく屋外では使用され得ない。該プロモーターは、屋外温度が一定レベルを超えて上昇した任意の時点でオン状態となり得る。同様に、該プロモーターは、屋外温度が下がるごとにオフ状態となり得る。かかる温度シフトは1日のうち起こり得、例えば、日中に発現がオン状態となり、夜間にオフとなり得る。熱誘導プロモーター(例えば、本明細書に記載のものなど)は、屋外とほぼ同じ程度に気候の変化を受け易い温室における使用ですら実用的でないことがあり得る。温室内での遺伝子操作された植物の生長は、かなり費用がかかる。対照的に、本発明の系では、どの可変量も、採取ごとに最大量の発現が達成され得るように制御することができる。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の発芽種苗を、発芽種苗の発育中の任意の時点で給水、噴霧または霧吹きができるトレイ内で生長させる。例えば、トレイは、発芽種苗の発育中の特定の時点で正確な量で水、栄養素、化学薬品などを送達および/または除去することができる1種類以上の給水、噴霧、霧吹きおよび排水装置を取り付けてもよい。例えば、種子は、自身を湿潤状態に維持するために充分な水分を必要とする。過剰な水分は、トレイ内の孔から部屋の床の排水部へと排出される。典型的には、排水は適宜、廃棄して環境内に戻す前に有害な化学薬品の除去のために処理される。
【0095】
トレイの別の利点は、非常に小さいスペース内に収容され得ることである。発芽種苗を生長させるのに光は必要とされないため、種子、胚または発芽種苗を入れたトレイを互いの上面に縦方向に密接して積み重ねてもよく、このような目的のために特別に構築された収容施設の単位床空間あたり大量のバイオマスが提供される。また、積み重ねたトレイは、収容ユニット内で水平に何列にも配列され得る。種苗が採取に適切な段階まで生長したら(約2〜14日間)、個々の種苗トレイを加工処理施設内に、手動または自動手段(ベルトコンベアなど)のいずれかによって移動させる。
【0096】
本発明の系は、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の供給源である発芽種苗バイオマスが提供されるという点で、特殊である。直接消費されようと、医薬組成物の形態に加工処理されようと、発芽種苗を収容型の調節可能な環境内で生長させるため、発芽種苗バイオマスおよび/またはバイオマスから誘導される医薬組成物は、消費者に低コストで提供され得る。また、発芽種苗の生長条件を制御できることにより、生成物の品質および純度が一貫性となる。本発明の収容型の調節可能な環境により、科学者が遺伝子操作された農作物を屋外で生長させるのを妨げ得るEPAの多くの安全性の規制が回避される。
【0097】
形質転換された芽
さまざまな方法を用いて、植物細胞が形質転換され、遺伝子操作された発芽種苗が作製され得る。トランスジェニック植物細胞株をインビトロで作製した後、完全体の植物への細胞株の再生が必要とされる植物の形質転換に利用可能な方法の2つの例として、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介性遺伝子導入と、マイクロプロジェクタイルボンバードメントまたはエレクトロポレーションとが挙げられる。ウイルスによる形質転換は、所望の生成物を得る前に実験または作製による遅れを伴うことなく採取され得る胚および発芽種苗を形質転換する高速であまり高価でない方法である。任意のこれらの手法について、当業者には、植物、種子、胚または発芽種苗に対して伝統的に使用されている形質転換プロトコルを、どのように調整および最適化するかが認識され得る。
【0098】
アグロバクテリウム形質転換発現カセット
アグロバクテリウムは、グラム陰性リゾビウム科の代表的な属である。この種は、クラウンゴールおよび毛状根病などの植物腫瘍の原因を担う。腫瘍に特徴的な脱分化植物組織では、オピンとして知られるアミノ酸誘導体がアグロバクテリウムによって産生され、該植物によって異化作用を受ける。オピンの発現を担う細菌遺伝子は、キメラ発現カセット用の制御エレメントの簡便な供給源である。本発明によれば、アグロバクテリウム形質転換系を用いて食用発芽種苗が作製され得、これにより、成熟する前の植物が簡単に採取される。アグロバクテリウム形質転換方法は、インフルエンザ抗原を発現する発芽種苗の再生に容易に適用され得る。
【0099】
一般に、植物の形質転換は、植物/細菌系ベクターを保有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスとの共培養による、組織培養で生長させた植物細胞の形質転換を伴う。該ベクターは、インフルエンザ抗原をコードする遺伝子を含有する。アグロバクテリウムは、ベクターを植物宿主細胞に転移させ、次いで、抗生物質処理を用いて排除される。インフルエンザ抗原を発現する形質転換植物細胞を選択し、分化させ、最終的に完全体の小さな植物に再生させる(Hellensら、2000、Plant Mol.Biol.、42:819;Pilon−Smitsら、1999、Plant Physiolog.、119:123;Barfieldら、1991、Plant Cell Reports、10:308;およびRivaら、1998、J.Biotech、1(3);これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる。
【0100】
本発明における使用のための発現ベクターとしては、植物における操作のために設計されたインフルエンザ抗原をコードする遺伝子(または発現カセット)であって、その発現カセットの上流および下流に随伴配列を有するものが挙げられる。随伴配列は、一般的にはプラスミドまたはウイルス起源のものであり、ベクターによってDNAが細菌から所望の植物宿主に転移されるのに必要な特性をもたらす。
【0101】
基本的な細菌系/植物ベクター構築物は、望ましくは、広範囲の宿主に、原核生物系の選択可能なマーカーである原核生物の複製起点を提供するものであり得る。好適な原核生物系の選択可能なマーカーとしては、アンピシリンまたはテトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性が挙げられる。当該技術分野でよく知られたさらなる機能をコードする他のDNA配列を、該ベクターに存在させてもよい。
【0102】
アグロバクテリウムT−DNA配列は、植物の染色体へのDNAのアグロバクテリウム媒介性転移に必要とされる。典型的には、腫瘍誘導遺伝子であるT−DNAを除去し、インフルエンザ抗原をコードする配列と置き換える。T−DNAボーダー配列は、植物ゲノム内へのT−DNA領域の組込みを開始させるため、保持しておく。インフルエンザ抗原の発現が容易に検出されにくい場合は、細菌系/植物ベクター構築物に、植物細胞が形質転換されたかどうかの判定に適した選択可能なマーカー遺伝子(例えば、nptIIカナマイシン耐性遺伝子)を含めてもよい。Ti配列は、同じまたは異なる細菌系/植物ベクター(Tiプラスミド)上に存在させる。Ti配列は、T−DNAの切除、転移および植物ゲノム内への組込みを担う一組のタンパク質をコードするビルレンス遺伝子を含む(Schell、1987、Science、237:1176)。植物ゲノム内への異種配列の組込みを許容するのに適した他の配列としては、相同組換えのためのトランスポゾン配列などが挙げられ得る。
【0103】
ある種の構築物は、抗原タンパク質をコードする発現カセットを含む。1つ、2つまたはそれ以上の発現カセットが、所与の形質転換に使用され得る。組換え発現カセットには、インフルエンザ抗原コード配列に加えて、少なくとも以下のエレメント:プロモーター領域、植物の5’非翻訳配列、開始コドン(発現される遺伝子がそれ自身のものを有するか否かに依存する)、ならびに転写および翻訳終結配列が含有される。また、転写および翻訳ターミネーターを、本発明の発現カセットまたはキメラ遺伝子に含めてもよい。タンパク質のプロセッシングおよびトランスロケーションを可能にするシグナル分泌配列を、適宜、発現カセットに含めてもよい。さまざまなプロモーター、シグナル配列、ならびに転写および翻訳ターミネーターが、例えば、Lawtonら(1987、Plant Mol.Biol.、9:315)および米国特許第5,888,789号(これらはともに、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。また、抗生物質耐性の構造遺伝子が選択因子として一般に使用されている(Fraleyら1983、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、80:4803(引用により本明細書に組み込まれる))。カセットの5’および3’末端の特殊な制限酵素部位により、既存のベクター内への容易な挿入が可能になる。少なくとも1つのT−DNAボーダー配列を担持するアグロバクテリウム媒介性形質転換のための他のバイナリーベクター系が報告されている(PCT/EP99/07414、引用により本明細書に組み込まれる)。
【0104】
再生
形質転換植物の種子は、採取、乾燥、清浄化され、所望の遺伝子産物の生存能力ならびに存在および発現について試験され得る。これを測定したら、種子ストックは、典型的には、必要時に使用されるまで適切な温度、湿度、衛生およびセキュリティ条件下で保存される。次いで、完全体の植物を培養プロトプラストから、例えば、Evansら(Handbook of Plant Cell Cultures、第1巻、MacMillan Publishing Co.、New York、NY、1983、引用により本明細書に組み込まれる);ならびにVasil(編集、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、Acad.Press、Orlando、FL、第I巻、1984、および第III巻、1986、引用により本明細書に組み込まれる)に記載のようにして再生され得る。特定の態様では、植物を発芽種苗段階までしか再生されない。一部のる態様では、完全体の植物を種子ストックが得られるまで再生させ、該種子ストックの種子から発芽種苗を発生させる。
【0105】
プロトプラストを単離および培養して完全体の再生植物を得ることができるあらゆる植物が、本発明によって形質転換され得、その結果、導入遺伝子を含有する完全体の植物が回収される。事実上すべての植物(例えば限定されないが、食用の芽を発生するあらゆる主要な種の植物)が、培養細胞または組織から再生され得ることがわかっている。適当な植物の一例としては、アルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシ、ホウレンソウ、ニンジン、ビーツ、タマネギ、ニンニク、セロリ、ルーバーブ、葉菜植物(キャベツまたはレタス、オランダカラシまたはコショウソウなど)、ハーブ(パセリ、ミントまたはクローバーなど)、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズマメ、食用花(ヒマワリなど)などが挙げられる。
【0106】
再生手段は、植物の種によって異なる。しかしながら、当業者には、一般的に、異種遺伝子コピーを含有する形質転換原始植物の懸濁液を最初に準備することが認識される。カルス組織を形成され、芽をカルスから誘導し、続いて根付かせ得る。あるいはまたさらに、胚形成をプロトプラスト懸濁液から誘導してもよい。このような胚は、自然な胚として発芽し、植物を形成する。水中に種子を浸すこと、または種子に水を噴霧することで種子の含水量を35〜45%まで増大させると、発芽が開始される。発芽を進行させるためには、種子を、典型的には、制御された温度および空気流条件下、水分で飽和した空気中で維持する。培養培地は、一般的に、種々のアミノ酸およびホルモン(例えば、オーキシンおよびサイトカインなど)を含有する。グルタミン酸およびプロリンを培地に添加することは、特にアルファルファなどの種では、好都合である。苗条および根は、通常、同時に発育する。効率的な再生は、培地、遺伝子型および培養歴に依存する。これらの3つの可変量を制御すると、再生は、充分に再現可能および反復可能となる。
【0107】
形質転換植物細胞から生長させた成熟植物を自家受粉させ、非分離性のホモ接合型トランスジェニック植物が確認される。同系交配植物により、本発明の抗原をコードする配列を含む種子が得られる。かかる種子を発芽させ、発芽種苗段階まで生長させると、本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)が産生される。
【0108】
関連する実施形態では、本発明の種子は、種子製品に形成され、どのようにして種苗を投与または採取に適切な発芽種苗段階まで生長させて医薬組成物にするかに関する使用説明書とともに販売され得る。関連する一部のある実施形態では、所望の形質を具現化するハイブリッドまたは新規な変種が、本発明の同系交配植物から開発され得る。
【0109】
直接組込み
マイクロプロジェクタイルボンバードメントまたはエレクトロポレーションによる植物細胞のゲノム内へのDNA断片の直接組込みが本発明において使用され得る(例えば、Kikkertら、1999、Plant:J.Tiss.Cult.Assoc.、35:43;Bates、1994、Mol.Biotech.、2:135を参照のこと)。より具体的には、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発現するベクターが植物細胞内に、さまざまな手法によって導入され得る。上記のように、ベクターは、植物細胞における使用のための選択可能なマーカーを含むものであってもよい。ベクターは、二次宿主内でのその選択および増殖を可能にする配列、(例えば、複製起点および選択可能なマーカーを含む配列など)を含むものであってもよい。典型的には、二次宿主としては、細菌および酵母が挙げられる。一実施形態において、二次宿主が細菌であり(例えば大腸菌であり、複製起点はcolE1型複製起点である)、選択可能なマーカーが、アンピシリン耐性をコードする遺伝子である。かかる配列は当該技術分野でよく知られており、市販されている(例えば、Clontech、Palo Alto、CAまたはStratagene、La Jolla、CA)。
【0110】
本発明のベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスベクターに対して相同性の領域、アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のT−DNAボーダー領域、および上記の抗原コード核酸または発現カセットを含む植物形質転換プラスミドに介在するように修飾されたものであり得る。さらなるベクターとしては、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの不活化植物腫瘍誘導プラスミドが挙げられ得る。
【0111】
この実施形態によれば、本発明のベクターの直接的な形質転換は、組換えDNAを機械的に導入するためのマイクロピペットの使用によってベクターを直接植物細胞内にマイクロインジェクションすることを伴うものであり得る(例えば、Crossway、1985、Mol.Gen.Genet.、202:179(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。遺伝物質は植物細胞内に、ポリエチレングリコールを用いて転移させ得る(例えば、Krensら、1982、Nature、296:72を参照のこと)。小さいビーズもしくは粒子のマトリックス内または表面上のいずれかに核酸を有する小さい粒子により、高速度バリスティック浸透によって植物内に核酸を導入する別の方法(例えば、Kleinら、1987、Nature、327:70;Knudsenら、Planta、185:330を参照のこと)。また別の導入方法は、プロトプラストと他の存在体(ミニ細胞、細胞、リソソームまたは他の融合可能な脂質表面体のいずれか)の融合である(例えば、Fraleyら、1982、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、79:1859を参照のこと)。本発明のベクターは植物細胞内に、エレクトロポレーションによって導入され得る(例えば、Frommら 1985、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、82:5824を参照のこと)。この手法によれば、植物プロトプラストは、遺伝子構築物を含有するプラスミドの存在下でエレクトロポレーションされる。高い磁界強度の電気インパルスによって生体膜を可逆的に透過性とし、プラスミドの導入を可能にする。エレクトロポレーションされた植物のプロトプラストでは、細胞壁が再構成され、分裂し、植物カルスが形成され、これを再生させて、本発明の発芽種苗が形成され得る。当業者には、どのようにしてこれらの方法を、食用発芽種苗を再生させるために使用され得る植物細胞の形質転換に使用するかが認識される。
【0112】
ウイルス形質転換
慣用的な発現系と同様、植物ウイルスベクターを用いて完全長タンパク質(例えば、完全長抗原)を産生させ得る。本発明によれば、植物ウイルスベクターを用いて種子、胚、発芽種苗などを感染させ、抗原(1種類または複数種)を産生させ得る。単鎖ペプチドから大きな複合タンパク質まであらゆるものを発現させるために使用され得るウイルス系。具体的には、トバモウイルスベクターの使用は、McCormickら(1999、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、96:703;Kumagaiら 2000、Gene、245:169;およびVerchら、1998、J.Immunol.Methods、220:69;これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。したがって、植物ウイルスベクターは、単鎖ペプチドならびに大きな複合タンパク質を発現する実証された能力を有する。
【0113】
特定の実施形態において、インフルエンザ抗原を発現する遺伝子導入芽は、宿主/ウイルス系を用いて作製される。ウイルス感染によって得られる遺伝子導入芽は、安全であることが既に実証された遺伝子導入タンパク質の供給源を提供する。例えば、芽には動物病原体による汚染がない。例えばタバコとは異なり、食用芽由来のタンパク質は、少なくとも理論的には、精製せずに経口適用において使用され得、したがって、コストが有意に削減され得る。また、ウイルス/芽系は、導入遺伝子がウイルス内に導入されており、これは2〜3日間以内に市販規模まで増殖し得るため、規模拡大および製造のためのずっと簡単であまり高価でない経路をもたらす。対照的に、トランスジェニック植物は、充分な種子または植物材料が大規模な試行または商業化に利用可能となるまでに5〜7年が必要とされ得る。
【0114】
本発明によれば、植物RNAウイルスは、外来タンパク質発現のためのベクターとして魅力的となる一定の利点を有する。いくつかの植物RNAウイルスの分子生物学および病理学は充分に特徴づけられており、ウイルス生物学、遺伝学および調節配列の知識は相当ある。ほとんどの植物RNAウイルスは、小さいゲノムを有し、遺伝子操作を簡単にするために感染性cDNAクローンが利用可能である。感染性のウイルス物質は、易感染性の宿主細胞に侵入すると、高レベルまで複製され、発芽種苗全体に速やかに拡延する(接種後、1〜10日間)。ウイルス粒子は、感染発芽種苗組織から容易かつ経済的に回収される。ウイルスは広範な宿主範囲を有し、いくつかの易感染性種の感染に対して単一の構築物の使用が可能となる。このような特性は、芽に容易に伝達され得る。
【0115】
外来配列は植物RNAウイルスから、典型的には、ウイルス遺伝子の1つを所望の配列と置き換えること、外来配列をウイルスゲノム内の適切な位置に挿入すること、または外来ペプチドをウイルスの構造タンパク質に融合させることにより発現させ得る。さらに、任意のこれらのアプローチを組み合わせ、ウイルスの生命機能のトランス相補性によって外来配列を発現させてもよい。タバコモザイクウイルス(TMV)、アルファルファモザイクウイルス(AlMV)、およびそのキメラを使用し、ウイルス感染植物において外来配列を発現させるためのツールとして、いくつかの異なるストラテジーが存在する。
【0116】
AlMVのゲノムは、ブロモウイルス科ウイルスの代表例であり、3つのゲノムRNA(RNA1〜3)およびサブゲノムRNA(RNA4)からなる。ゲノムRNA1および2は、それぞれ、ウイルスレプリカーゼタンパク質P1および2をコードする。ゲノムRNA3は、細胞間移動タンパク質P3および外被タンパク質(CP)をコードする。CPは、サブゲノムRNA4(ゲノムRNA3から合成される)から翻訳され、感染の開始に必要とされる。諸研究により、多くの機能、例えば、ゲノム活性化、複製、RNA安定性、症状の形成、およびRNAキャプシド封入におけるCPの関与が示されている(例えば、Bolら、1971、Virology、46:73;Van Der Vossenら、1994、Virology 202:891;Yusibovら、Virology、208:405;Yusibovら、1998、Virology、242:1;Bolら、(概説、100件の参考文献)、1999、J.Gen.Virol、80:1089;De Graaff、1995、Virology、208:583;Jasparsら、1974、Adv.VirusRes.、19:37;Loesch−Fries、1985、Virology、146:177;Neelemanら、1991、Virology、181:687;Neelemanら、1993、Virology、196:883;Van DerKuylら、1991、Virology、183:731;およびVan Der Kuylら、1991、Virology、185:496を参照のこと)。
【0117】
ウイルス粒子のキャプシド封入は、典型的には、種子、胚もしくは発芽種苗の接種部分から非接種部分までのウイルスの長距離移動のため、および全体感染のために必要とされる。本発明によれば、接種は、植物発育の任意の段階で行なわれ得る。胚および芽では、接種ウイルスの拡延は非常に速いはずである。AlMVのビリオンは、特殊なCP(24kD)にキャプシド封入されており、1種類より多くの型の粒子を形成している。粒子の大きさ(30〜60nmの長さおよび18nmの直径)ならびに形状(球形、楕円形または桿状)は、キャプシド封入されるRNAの大きさに依存する。構築されると、ALMV CPのN末端は、ウイルス粒子の表面上に存在すると考えられ、ウイルス合成を妨げないようである(Bolら、1971、Virology、6:73)。そのうえ、さらに38アミノ酸ペプチドをN末端に有するALMV CPは、インビトロで粒子を形成し、生物学的活性を保持している(Yusibovら、1995、J.Gen.Virol、77:567)。
【0118】
AlMVは広範な宿主範囲を有し、これには、いくつかの農学的に価値のある作物植物、例えば、植物種子、胚および芽が含まれる。合わせると、これらの特性により、ALMV CPは、担体分子として優れた候補となり、AlMVは、植物の発育の発芽段階における外来配列の発現のための魅力的な候補ベクターとなる。さらに、TMVなどの異種ベクターから発現されると、AlMV CPは、ウイルス感染性を妨げることなくTMVゲノムをキャプシド封入する(Yusibovら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、94:5784(引用により本明細書に組み込まれる))。これにより、外来配列に融合させたAlMV CPのための担体ウイルスとしてのTMVの使用が可能になる。
【0119】
トバモウイルスの基本型であるTMVは、杆状形状粒子(300nmの長さ)をもたらす17.0kDのCPにキャプシド封入された単一+センスRNAからなるゲノムを有する。CPは、TMVの唯一の構造タンパク質であり、キャプシド封入および感染宿主内でのウイルスの長距離移動に必要とされる(Saitoら、1990、Virology、176:329)。183kDおよび126kDのタンパク質がゲノムRNAから翻訳され、ウイルス複製に必要とされる(Ishikawaら、1986、Nucleic Acids Res.、14:8291)。30kDのタンパク質は、ウイルスの細胞間移動タンパク質である(Meshiら、1987、EMBO J.、6:2557)。移動タンパク質および外被タンパク質は、サブゲノムmRNAから翻訳される(Hunterら、1976、Nature、260:759;Brueningら、1976、Virology、71:498;およびBeachyら、1976、Virology、73:498;これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)。
【0120】
植物組織の他の形質転換方法としては、植物の花の形質転換が挙げられる。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の形質転換は、植物の花をアグロバクテリウム・ツメファシエンスの溶液中に浸漬することにより達成され得る(Curtisら、2001、Transgenic Research、10:363;Qingら、2000、Molecular Breeding:New Strategies in Plant Improvement、1:67)。形質転換された植物は、「浸漬」植物によって発生する種子集団に形成される。花の発育中の特定の時点では、子房壁内に孔が存在し、それを通してアグロバクテリウム・ツメファシエンスが該子房の内部に到達する。子房内部に入ると、アグロバクテリウム・ツメファシエンスは増殖し、個々の胚珠を形質転換させる(Desfeuxら、2000、Plant Physiology、123:895)。形質転換された胚珠は、子房内で典型的な種子形成経路に従う。
【0121】
抗原の作製および単離
一般に、当該技術分野で知られた標準的な方法が、抗原(1種類または複数種)の産生のための本発明の植物、植物細胞、および/または植物組織(例えば、クローン植物、クローン植物細胞、クローン根、クローン根株、芽、発芽種苗、植物など)の培養または生長に使用され得る。多種多様な培養培地およびバイオリアクターが、毛状根細胞、根細胞株および植物細胞の培養に使用されている(例えば、Giriら、2000、Biotechnol.Adv.、18:1;Raoら、2002、Biotechnol Adv.、20:101;および前記の両文献中の参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。クローン植物は、任意の適当な様式で生長させ得る。
【0122】
特定のある実施形態において、本発明のインフルエンザ抗原は、任意の既知の方法で作製され得る。一部のある実施形態において、インフルエンザ抗原は、植物またはその一部分において発現させる。タンパク質は、慣用的な条件および当該技術分野で知られた手法に従って単離および精製される。このようなものとしては、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、電気泳動などの方法が挙げられる。本発明は、当該技術分野で知られた、および本明細書に示す任意のさまざまな植物発現系(例えば、本明細書に記載のウイルスの植物発現系)を用いたインフルエンザ抗原(1種類または複数種)の精製および手ごろな価格の作製規模拡大を伴う。
【0123】
本発明の多くの実施形態では、抗体生成物を生成させるためにインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を単離することが望ましい、および/または生成されたインフルエンザ抗体もしくは抗原結合断片を単離することが望ましい。本発明のタンパク質を該タンパク質を発現する植物組織(1種類または複数種)またはその一部分(例えば、根、根細胞、植物、植物細胞)から産生させる場合、本明細書においてさらに詳細に記載する方法、または当該技術分野で知られた任意の適用可能な方法が、植物材料からの任意の部分的または完全な単離に使用され得る。発現産物を、これを発現する植物細胞または組織の一部または全部から単離することが望ましい場合、任意の利用可能な精製手法が使用され得る。当業者は、広範な分画および分離手順を熟知している(例えば、Scopesら、Protein Purification:Principles and Practice、第3版 Jansonら、1993;Protein Purification:Principles、High Resolution Methods,and Applications、Wiley−VCH、1998;Springer−Verlag、NY、1993;およびRoe、Protein Purification Techniques、Oxford University Press、2001を参照のこと;これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)。多くの場合、生成物を約50%より高い、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%純粋にすることが望ましい。例えば、植物組織または液からの物質の精製に有用な特定の方法の論考については、米国特許第6,740,740号および同第6,841,659号を参照のこと。
【0124】
当業者には、所望のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)生成物(1種類または複数種)を得る方法は、抽出によるものであることが認識される。植物材料(例えば、根、葉など)を抽出すると、所望の生成物が残余のバイオマスから取り出され得、それにより生成物の濃度および純度が増大する。植物は、緩衝溶液中で抽出され得る。例えば、植物材料は、例えばリン酸塩バッファーで緩衝化されたある量の氷冷水中に、1:1の重量比で移され得る。必要に応じて、プロテアーゼインヒビターを添加してもよい。植物材料は、バッファー溶液中に懸濁しながら激しくブレンドまたは摩砕することによって破砕され得、濾過または遠心分離によって抽出され、バイオマスから取り出される。溶液中に担持された生成物は、さらなる工程によってさらに精製してもよく、フリーズドライまたは沈殿によって乾燥粉末に変換してもよい。抽出は圧搾により行われ得る。植物または根は、圧搾機内で圧搾することにより、または間隔の狭いローラー間に通して破砕することにより抽出され得る。破砕された植物または根から搾り出された液は、当該技術分野でよく知られた方法に従って回収および加工処理される。圧搾による抽出によって、より濃縮された形態での生成物の放出が可能になる。しかしながら、生成物の全体収率は、生成物を溶液中で抽出した場合よりも低いことがあり得る。
【0125】
ワクチン
本発明は、治療的使用のための医薬用抗原タンパク質、例えば、インフルエンザ感染の治療的および/または予防的処置のためのワクチンとして活性な、インフルエンザ抗原(1種類もしくは複数種)(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)もしくはその免疫原性部分(1種類もしくは複数種)、あるいはインフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)またはその免疫原性部分(1種類もしくは複数種))を含む融合タンパク質などを提供する。さらに、本発明は、かかるインフルエンザ抗原が獣医学的適用において活性であるため、獣医学的使用を提供する。特定のある実施形態において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)は、本発明の植物(1種類または複数種)またはその一部分(例えば、根、細胞、芽、細胞株、植物など)によって産生させたものであり得る。特定の実施形態では、提供するインフルエンザ抗原を、植物、植物細胞および/または植物組織(例えば、芽、発芽種苗、根、根の培養、クローンの細胞、クローン細胞株、クローン植物など)において発現させ、植物から直接、または一部精製もしくは精製して調製物において、医薬投与のために被験体に使用され得る。
【0126】
本発明は、その投与を必要とする被験体に投与されたとき医薬活性が維持されるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発現する植物、植物細胞および植物組織を提供する。例示的な被験体としては、脊椎動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)が挙げられる。本発明によれば、被験体としては、獣医学的被験体、例えば、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。特定の態様において、食用植物またはその一部分(例えば、芽、根)が被験体に、治療有効量で経口投与される。一部のある態様では、1種類以上のインフルエンザ抗原が、本明細書に記載のようにして医薬調製物にて提供される。
【0127】
本発明のワクチン組成物は、1種類以上のインフルエンザ抗原を含む。特定の実施形態では、少なくとも2種類の本発明のインフルエンザ抗原を、投与するワクチン組成物に含む。
【0128】
本発明によれば、インフルエンザ抗原ワクチンでの被験体の処置は、生理学的効果を惹起することが意図される。ワクチンタンパク質は、障害または疾患に対して治癒性の治療的または予防的特性を有するものであり得、疾患または障害の症状または重症度を改善、軽減、緩和するため、その発症を遅滞させるため、逆転または低減させるために投与され得る。インフルエンザ抗原を含むワクチンは、予防特性を有するものであり得、疾患の発症を予防もしくは遅滞させるため、またはかかる疾患、障害の重症度、あるいは病状が現れたときはこれを低減させるために使用され得る。本発明による抗原での被験体の処置によって惹起される生理学的効果としては、生物体による感染が阻止されるような有効な免疫応答が挙げられ得る。
【0129】
一部の実施形態において、本発明のワクチンは、経口および/または粘膜経路によって送達される。経口および/または粘膜送達は、多くの病原体の感染の主な進入口である粘膜の組織の感染を予防する可能性を有する。経口および/または粘膜送達は、全身性免疫応答を得る。粘膜免疫系を刺激し、全身性免疫を得ることができる抗原の経口投与のための異種発現系の開発は、相当進歩している。しかしながら、経口ワクチン送達におけるこれまでの取り組みにより、有効性が達成されるには相当な量の抗原が必要であることが示された。したがって、大量の標的抗原を経済的に産生することが、有効な経口ワクチンの作製のための必須条件である。抗原(例えば、熱安定性の抗原)を発現する植物の開発は、かかる問題に対するより現実的なアプローチである。
【0130】
本発明の医薬調製物は被験体に、多種多様な様式で、例えば、経口、経鼻、経腸、非経口、筋肉内もしくは静脈内、経直腸、経膣、経表面的、眼経由、肺経由など、または接触適用によって投与され得る。特定の実施形態において、植物またはその一部分において発現させたインフルエンザ抗原は被験体に、被験体への植物の直接投与によって経口投与される。一部のある態様では、植物またはその一部分において発現させたワクチンタンパク質を抽出および/または精製し、医薬組成物の調製に使用する。かかる単離した生成物を、その意図される用途のために(例えば、医薬用薬剤、ワクチン組成物などとして)製剤化することが望ましい場合もあり得る。一部のある実施形態では、該生成物を、該生成物を発現する植物組織の一部または全部と一緒に製剤化することが望ましい。
【0131】
該生成物をその植物材料と一緒に製剤化することが望ましい場合、これは、多くの場合、関連するレシピエント(例えば、ヒトまたは他の動物)に対して毒性でない植物を用いたものであることが望ましい。関連する植物組織(例えば、細胞、根、葉)は、発現される生成物の活性が維持するように充分考慮して、当該技術分野で知られた手法に従って、簡単に採取および加工処理されてもよい。本発明の特定の実施形態では、インフルエンザ抗原を食用植物(特に、その植物の食用部分)において発現させ、その後、該植物を食べることができるようにすることが望ましい。例えば、ワクチン抗原が経口送達後に活性である場合(適切に製剤化されている場合)、抗原タンパク質を食用植物の一部分において産生させ、発現されたインフルエンザ抗原を経口送達用に、該タンパク質を発現させた植物材料の一部または全部と一緒に製剤化すること望ましい場合があり得る。
【0132】
提供するワクチン抗原(すなわち、本発明のインフルエンザ抗原)は、既知の手法に従って製剤化され得る。例えば、有効量のワクチン生成物は、1種類以上の有機または無機系の液状または固形の医薬用に適した担体材料と一緒に製剤化され得る。本発明に従って産生されるワクチン抗原は、該タンパク質の生物学的活性がその投薬形態破壊されない限り、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、ゲルカプセル剤、丸剤、カプレット剤、クリーム剤、軟膏、エアロゾル剤、粉剤薬包、液状の液剤、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、および固形結合剤などの投薬形態で使用され得る。
【0133】
一般に、組成物は、任意のさまざまな異なる薬学的に許容され得る担体(1種類または複数種)、アジュバント(1種類または複数種)、もしくはビヒクル(1種類または複数種)、あるいは1種類以上のかかる担体(1種類または複数種)、アジュバント(1種類または複数種)、もしくはビヒクル(1種類または複数種)の組合せを含むものであり得る。本明細書で用いる場合、文言「薬学的に許容され得る担体、アジュバント、またはビヒクル」には、医薬投与に適合性である溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容され得る担体として働き得る物質としては、限定されないが、糖類(ラクトース、グルコースおよびスクロースなど);デンプン(トウモロコシデンプンおよびイモデンプンなど);セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど);粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(ココアバターおよび坐剤用ワックスなど);油類(ピーナツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油など);グリコール(プロピレングリコールなど);エステル類(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);寒天;緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の無毒性で適合性の滑沢剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、フレーバー剤および香料剤が挙げられ、製剤者の判断に従って保存剤および抗酸化剤を組成物中に存在させてもよい(また、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、E.W.Martin、Mack Publishing Co.、イーストン、PA、1975も参照のこと)。例えば、ワクチン抗原生成物は、慣用的な混合、造粒、糖衣作製、溶解、凍結乾燥または同様のプロセスによって医薬組成物として提供され得る。
【0134】
さらなるワクチン成分
本発明のワクチンは、被験体に投与されたときのワクチンの免疫原性を増強するため、さらに任意の適当なアジュバントを含むものであってもよい。例えば、かかるアジュバント(1種類または複数種)としては、限定されないが、キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)(QS)の抽出物、例えば、食品等級QSの精製部分画分(Quil AおよびQS−21など)、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、MF59、Malp2、不完全フロイントアジュバント;完全フロイントアジュバント;3 De−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が挙げられ得る。さらなるアジュバントとしては、免疫調節性オリゴヌクレオチド(例えば、WO96/02555に開示された非メチル化CpG配列)が挙げられる。上記に記載のものなどの種々のアジュバントの組合せが、TH1細胞応答の優先的な刺激因子であるアジュバントを提供することが想定される。例えば、QS21が3D−MPLと一緒に製剤化され得る。QS21:3D−MPLの比は、典型的には、1:10〜10:1;1:5〜5:1程度であり、多くの場合、実質的に1:1である。最適な相乗効果の所望の範囲は、3D−MPL:QS21が2.5:1〜1:1であり得る。ヒトワクチン製剤における使用に適した精製QS抽出物の用量は、0.01mg〜10mg/kg体重である。
【0135】
ある種の熱安定性タンパク質(例えば、リケナーゼ)は、それ自身が免疫応答増強活性を示すものであり得、その結果、インフルエンザ抗原との融合体であれ別々の状態であれ、かかるタンパク質の使用は、アジュバントのの使用とみなされ得ることに注意されたい。したがって、組成物は、さらに、1種類以上のアジュバントを含むものであり得る。ある種の組成物は、2種類以上のアジュバントを含むものであり得る。さらにまた、製剤および投与経路に応じて、ある種のアジュバントは、特に製剤および/または組合せにおいて好ましいことがあり得る。
【0136】
ある種の状況において、皮下または筋肉内注射されるワクチン用生成物(例えば、タンパク質)の1種類以上の成分の吸収を遅滞させることにより、本発明のワクチンの効果を延長させることが望ましい場合があり得る。これは、水溶性が不充分な結晶性または非晶質の物質の液状懸濁液の使用により達成され得る。このとき、該生成物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、該速度は、大きさおよび形態に依存し得る。あるいはまたさらに、非経口投与される生成物の吸収の遅延は、該生成物を油性ビヒクル中に溶解または懸濁することにより達成される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリドなど)中にタンパク質のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製される。ポリマーに対する該生成物の比および使用される具体的なポリマーの性質に応じて、放出速度が制御され得る。生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、該生成物を、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に封入することにより調製され得る。経口製剤のために、択一的なポリマー系送達ビヒクルは、使用され得る。例えば、生分解性で生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などが使用され得る。抗原(1種類または複数種)またはその免疫原性部分は、例えばポリマー系送達ビヒクルとの組合せで微粒子として製剤化され得る。
【0137】
経腸投与されるワクチン抗原調製物は、固体、半固体、懸濁液またはエマルジョンの形態で導入され得、任意の薬学的に許容され得る担体(水、懸濁剤および乳化剤など)とともに配合され得る。抗原は、ポンプまたは徐放形態(特に、予防的手段として投与される場合)によって、被験体において疾患の発症が予防されるように、または既に確立された疾患が改善もしくは遅滞されるように投与され得る。補助的活性化合物、例えば、処置対象の疾患もしくは臨床状態に対して独立して活性な化合物、または本発明の化合物の活性を向上させる化合物が、組成物に組み込まれ得るか、または組成物とともに投与され得る。フレーバー剤および着色剤を使用してもい。
【0138】
本発明のワクチン生成物は、任意選択で植物組織と一緒になっており、医薬組成物として、特に経口投与によく適している。液状の経口製剤が使用され得、小児集団に特に有用であり得る。採取された植物材料は、所望の治療用生成物の特性およびその所望される形態に応じて、任意のさまざまな様式(例えば、風乾、フリーズドライ、抽出など)で加工処理され得る。上記のかかる組成物は、単独で経口摂取され得るか、または食品もしくは飼料もしくは飲料と一緒に摂取され得る。経口投与用組成物は、植物;植物の抽出物および感染植物から精製されたタンパク質(乾燥粉末、食料品として提供される)、水性または非水性溶媒、懸濁液またはエマルジョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油および注射用有機エステルである。水性担体としては、水、水−アルコール溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば、生理食塩水および医療用緩衝非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース溶液、デキストロース+塩化ナトリウム溶液、ラクトース含有リンゲル液または固定油が挙げられる。乾燥粉末の例としては、乾燥(例えば、フリーズドライ、風乾または噴霧乾燥)させた任意の植物バイオマスが挙げられる。例えば、植物は、カ氏約120度の市販の風乾装置内に、バイオマスが含有する湿分が5重量%未満になるまで入れることにより風乾させ得る。乾燥させた植物は、さらなる加工処理のためにバルク固形物として保存してもよく、所望のメッシュ径粉末に摩砕することによりさらに加工処理してもよい。あるいはまたさらに、風乾に感受性の生成物に対しては、フリーズドライが使用され得る。生成物は、真空乾燥機内に入れることによりフリーズドライさせ、バイオマスが含有する湿分が5重量%未満になるまで真空下で凍結乾燥させ得る。乾燥させた物質は、本明細書に記載のようにしてさらに加工処理してもよい。
【0139】
植物由来の物質は、1種類以上のハーブ調製物として、または該調製物と一緒に投与され得る。有用なハーブ調製物としては、液所および固形のハーブ調製物が挙げられる。ハーブ調製物の一例としては、チンキ剤、エキス(例えば、水性エキス、アルコールエキス)、煎剤、乾燥調製物(例えば、風乾、噴霧乾燥、凍結または凍結乾燥されたもの)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液状物が挙げられる。ハーブ調製物は、任意の標準的な送達ビヒクル中にて、例えば、カプセル剤、錠剤、坐剤、液状投薬形態などにて提供され得る。当業者には、本発明に適用され得るハーブ調製物の種々の製剤および送達モダリティが認識される。
【0140】
本発明の根株、細胞株、植物、抽出物、粉末、乾燥調製物および精製タンパク質または核酸生成物などは、上記の1種類以上の賦形剤を含む、または含まないカプセル封入形態であり得る。固形投薬形態、例えば、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などは、コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび医薬製剤分野でよく知られた他のコーティングなど)を用いて調製され得る。かかる固形投薬形態では、活性薬剤は、少なくとも1種類の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプンなど)と混合され得る。かかる投薬形態は、通常の常套手段と同様、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、打錠滑沢剤および他の打錠助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微晶質セルロースなど)を含むものであり得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投薬形態には緩衝剤が含まれ得る。該形態は、任意選択で不透明化剤を含むものであり得、活性成分(1種類または複数主)のみを、または優先的に腸管の特定部分において放出する、および/または遅延様式で放出する組成のものであり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー系物質およびワックスが挙げられる。
【0141】
一部の方法では、本発明によるインフルエンザ抗原を発現する植物もしくはその一部分、またはそのバイオマスは、薬用食品として経口投与される。かかる食用組成物は、典型的には、固形形態の場合は生で食べることにより、または液状形態の場合は飲むことにより消費される。植物材料は、事前の加工処理工程なしで直接、または最小限の調理調製後に摂取され得る。例えば、ワクチンタンパク質を芽において発現させ、直接摂食することができる。例えば、アルファルファの芽、緑豆の芽、またはホウレンソウもしくはレタスの葉の芽などにおいて発現させたタンパク質。一実施形態において、植物バイオマスを加工処理してもよく、加工処理工程後に回収した物質が摂取される。
【0142】
本発明による有用な加工処理方法は、食品または飼料産業界で一般に使用されている方法である。かかる方法の最終生成物は、典型的には相当な量の発現抗原を含み、簡便に食べたり飲んだりできる。最終生成物を、他の食品または飼料形態、例えば、塩、担体、風味向上剤、抗生物質などと混合してもよく、固形、半固形、懸濁液、エマルジョンまたは液状形態で消費され得る。かかる方法は、保存工程、例えば、低温殺菌、加熱調理または保存剤および防腐剤の添加などを含むものであり得る。任意の植物が本発明において使用および加工処理され、食用または飲用植物物質が得られ得る。植物由来調製物中のインフルエンザ抗原の量は、当該技術分野で標準的な方法、例えば、ゲル電気泳動、ELISAまたはウエスタンブロット解析(生成物に特異的なプローブもしくは抗体を使用する)によって試験され得る。この測定を用いて、摂取されるワクチン抗体タンパク質の量が標準化され得る。例えば、ワクチン抗体の量を測定し、、例えば、単回用量で摂取される飲用または食用物質の量が標準化され得るように、異なるレベルの生成物を有する生成物のバッチを混合することにより調節し得る。しかしながら、本発明の収容型の調節可能な環境では、かかる標準化手順を行う必要性が最小限に抑えられるはずである。
【0143】
植物細胞または組織において産生させ、被験体によって摂食されるワクチンタンパク質は、好ましくは消化器系によって吸収されるものであり得る。最小限した加工処理されていない植物組織の摂取の利点の1つは、植物細胞内へのタンパク質の封入または封鎖が提供されることである。したがって、生成物は、消化管または腸に達する前に上部消化管において消化から少なくとも一部の保護を受け、より高率の活性生成物が取込みに利用可能となり得る。
【0144】
本発明の医薬組成物は、治療的または予防的に投与され得る。該組成物は、疾患を処置または予防するために使用され得る。例えば、疾患に苦しむ任意の個体または疾患を発症するリスクのある任意の個体が処置され得る。個体は、その疾患の任意の症状について診断されていなくても疾患を発症するリスクがあるとみなされ得ることが認識される。例えば、個体がインフルエンザ感染への曝露に対して比較的高いリスクにあったことがわかっているか、または該リスクにあることが意図されるか、または該リスクの状況におかれている場合、該個体は、疾患を発症するリスクがあるとみなされる。同様に、個体の家族の構成員または友人がインフルエンザ感染と診断された場合、該個体は、疾患を発症するリスクがあるとみなされ得る。
【0145】
経口投与のための液状投薬形態としては、限定されないが、薬学的に許容され得るエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性薬剤に加え、液状投薬形態には、当該技術分野で一般に使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などが含有され得る。不活性希釈剤の他に、経口組成物には、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、フレーバーおよび香料剤など含めてもよい。
【0146】
経直腸または経膣投与のための組成物は、坐剤または貯留型注腸剤であり得、これらは、本発明の組成物を、周囲温度では固形であるが、体温では液状となり、したがって直腸または膣腔内で融解され、活性タンパク質が放出される適当な非刺激性賦形剤または担体(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ワックスなど)と混合することにより調製され得る。
【0147】
本発明の組成物の経表面、経粘膜または経皮投与のための投薬形態としては、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、吸入剤または貼付剤が挙げられる。活性薬剤またはその調製物を、滅菌条件下、薬学的に許容され得る担体および任意の必要とされる保存剤または緩衝剤(必要に応じて)と混合する。経粘膜または経皮投与では、障壁を通過するのに適切な浸透剤が製剤に使用され得る。かかる浸透剤は、一般的に、当該技術分野で知られており、例えば、経粘膜の投与では、デタージェント、胆汁塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻スプレー剤または坐剤の使用により行われ得る。経皮投与のためには、抗原またはその免疫原性部分は、当該技術分野で一般的に知られているようにして、軟膏、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化され得る。眼科用製剤、点耳剤、点眼剤も、本発明の範囲に包含されることが想定される。さらに、本発明では経皮パッチの使用が想定され、これは、身体へのタンパク質の制御送達をもたらす付加的な利点を有する。かかる投薬形態は、ワクチン生成物を適正な媒体中に懸濁または分散させることにより作製され得る。吸収向上剤を使用し、皮膚を通過するワクチンタンパク質流入を増大させ得る。その速度は、速度制御膜を設けること、またはワクチンタンパク質をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散させることのいずれかにより制御され得る。
【0148】
本発明の組成物は、所望の結果が得られるのに必要な量と時間で投与され得る。本発明の特定のある実施形態において、医薬組成物の「治療有効量」は、被験体において疾患を処置、減衰または予防するのに有効な量である。したがって、「疾患を処置、減衰または予防するのに有効な量」は、本明細書で用いる場合、任意の被験体において無毒性だが疾患を処置、減衰または予防するのに充分な医薬組成物の量をいう。例えば、「治療有効量」は、感染(例えば、ウイルス感染、インフルエンザ感染)などを処置、減衰または予防する量であり得る。
【0149】
必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および一般状態、疾患の病期、具体的な医薬混合物、その投与様式などに応じて、被験体ごとに異なり得る。本発明のインフルエンザ抗原、例えば、抗原(1種類または複数種)を発現する植物および/またはその調製物は、容易な投与および均一な投薬のための単位投薬形態に製剤化され得る。表現「単位投薬形態」は、本明細書で用いる場合、処置対象の患者に適切な組成物の物理的に分離された単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、典型的には、担当医師によって充分な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されよう。任意の特定の患者または生物体に対する具体的な治療有効用量レベルは、さまざまな要素、例えば、感染の重症度またはリスク;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、一般健康状態、性別、患者の食生活、患者の薬物動態学的状態、投与期間、投与経路、および使用される特異的抗原(1種類または複数種)の排出速度;処置期間;使用されるワクチン組成物と併用または同時使用される薬物;などの医学分野でよく知られた要素に依存し得る。
【0150】
本発明の組成物は、併用療法(例えば、併用ワクチン療法)において使用され得ること、すなわち、医薬組成物は、1種類以上の他の所望の医薬および/またはワクチン接種手順と同時に、一緒に、その前または後に投与され得ることが認識される。併用レジメンに使用される具体的な併用療法(例えば、インフルエンザ感染のワクチン、治療的処置)では、一般的に、所望の治療薬および/または手順の適合性ならびに得られる所望の治療効果が考慮される。使用する治療および/またはワクチンによっては、同じ障害に対して所望の効果が得られることもあり(例えば、本発明の抗原が別のインフルエンザ抗体と同時に投与され得る)、異なる効果が得られることもあり得ることが認識される。
【0151】
特定の実施形態において、ワクチン組成物は、少なくとも2種類のインフルエンザ抗原を含む。例えば、特定のあるワクチン組成物は、少なくとも2種類の本発明のインフルエンザ抗原(例えば、本発明のHAドメインおよびNAドメイン含有抗原)を含むものであり得る。一部のある態様では、かかる組合せワクチンは、インフルエンザ抗原を含む1種類の熱安定性の融合タンパク質を含むものであり得、一部のある態様では、インフルエンザ抗原を含む2種類以上の熱安定性の融合タンパク質が提供される。
組合せワクチンが使用される場合、インフルエンザ抗原の任意の組合せが、かかる組合せに使用され得ることを理解されたい。組成物は、多くのインフルエンザ抗原、例えば、本明細書に示す多くの抗原を含むものであり得る。さらにまた、組成物は、本明細書に示す1種類以上の抗原を、1種類以上のさらなる抗原とともに含むものであり得る。インフルエンザ抗原の組合せとしては、免疫処置により1種類より多くの感染型に対する免疫応答が賦与されるような、1種類以上の種々のサブタイプまたは株に由来するインフルエンザ抗原が挙げられる。インフルエンザ抗原の組合せは、異なるサブタイプまたは株に由来する少なくとも1種類、少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類またはそれ以上の抗原を含むものであり得る。一部の組合せでは、異なるサブタイプに由来する少なくとも2種類または少なくとも3種類の抗原を1つのワクチン組成物中で合わせる。さらにまた、組合せワクチンには、インフルエンザ抗原と、1種類以上の特殊な感染性因子由来の抗原とが使用され得る。
【0152】
キット
一態様において、本発明は、本発明によるインフルエンザ抗原を含む医薬用パックまたはキットを提供する。特定の実施形態において、医薬用パックまたはキットは、本発明によるインフルエンザ抗原を産生する生きた発芽種苗、クローン存在体もしくは植物、またはワクチンを含有する調製物、抽出物もしくは医薬組成物を、任意選択で本発明の医薬組成物の1種類以上のさらなる成分を充填した1つ以上の容器内に含む。一部の実施形態において、医薬用パックまたはキットは、精製された本発明によるインフルエンザ抗原を含む医薬組成物を、任意選択で本発明の医薬組成物の1種類以上のさらなる成分が充填された1つ以上の容器内に含む。特定の実施形態では、医薬用パックまたはキットは、併用療法剤としての使用に承認されたさらなる治療用薬剤(例えば、インフルエンザ抗原、インフルエンザワクチン)を含む。任意選択で、かかる容器(1つまたは複数)は、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定される形態の通知書と関連していることがあり得、該通知書は、当該機関によるヒト投与のための製造、使用または販売の承認を反映する。
【0153】
治療用試薬を含むを含むキットを提供する。非限定的な一例として、インフルエンザワクチンは、経口製剤として提供され得、治療として投与され得る。あるいはまたさらに、インフルエンザワクチンは、投与のための注射用製剤にて提供され得る。一部の実施形態では、インフルエンザワクチンは、投与のための吸入用製剤として提供され得る。したがって、医薬用量またはその使用説明書を、インフルエンザ感染に苦しむ、またはそのリスクのある個体への投与のためにキットに提供してもよい。
【0154】
以下の代表的な実施例は、本発明の例示を補助することが意図され、本発明の範囲の限定は意図されず、そう解釈されるべきでもない。実際、本明細書において示し記載したものに加え、本発明の種々の変形例および多くのそのさらなる実施形態が、以下の実施例を含む本文書の全内容から、ならびに本明細書に挙げた科学文献および特許文献を参照すると、当業者に自明となろう。以下の実施例は、本発明の種々の実施形態およびその均等物において、本発明の実施に適合させ得る情報、例示および手引きを含む。
【実施例】
【0155】
実施例1.ワクチン候補構築物の作製
インフルエンザウイルス血球凝集素由来の抗原配列の作製
ベトナム型H5N1(NAV)およびワイオミング型H3N2(NAW)のインフルエンザウイルスのそれぞれのウイルスHA幹ドメイン(SD)1−2およびHA球状ドメイン(GD)3をコードするヌクレオチド配列を合成し、正しいことを確認した。産生した核酸を制限エンドヌクレアーゼBglII/HindIIIで、ドメインをコードする配列にいずれかの末端が操作された部位を消化した。得られたDNA断片を、操作された熱安定性担体分子をコードする配列にインフレームで融合させた。
【0156】
HA ベトナム型 [TH5N1]
(SD ドメイン1−2):HA1_2V:(配列番号19):
【0157】
【化14】
(SD ドメイン1−2):HA1_2V:(配列番号20):
【0158】
【化15】
(GD ドメイン3):HA3V:(配列番号21):
【0159】
【化16】
(GD ドメイン3):HA V3:(配列番号8):
【0160】
【化17】
(完全長):HAS_V:(配列番号22):
【0161】
【化18】
HA A/ワイオミング型(H3N2)
(SD ドメイン1−2):HA1_2W:(配列番号23):
【0162】
【化19】
(SD ドメイン1−2):HA1_2:(配列番号24):
【0163】
【化20】
(GD ドメイン3):HA3W:(配列番号25):
【0164】
【化21】
(GDドメイン3):HA3W:(配列番号12):
【0165】
【化22】
(完全長):HASW:(配列番号26):
【0166】
【化23】
インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ由来の抗原配列の作製
ベトナム型H5N1(NAV)およびワイオミング型H3N2(NAW)のインフルエンザウイルスのそれぞれのノイラミニダーゼをコードするヌクレオチド配列を合成し、正しいことを確認した。作製した核酸を制限エンドヌクレアーゼSalIで、ドメインコード配列にいずれかの末端が操作された部位を消化した。得られたDNA断片をC末端において、操作された熱安定性担体分子をコードする配列にインフレームで融合させた。
【0167】
NAV(N1):(配列番号27):
【0168】
【化24】
NAV:(配列番号16):
【0169】
【化25】
NAW(N2):(配列番号28):
【0170】
【化26】
NAW:(配列番号18):
【0171】
【化27】
熱安定性の担体構築物の作製
完全長の天然C.サーモセラムリケナーゼLicBは、順次、リーダーペプチド(Lp)、N末端部分(A)、表面ループ(1)、C末端部分(C)、Pro−Thrボックス、およびセルロソーム結合ドメイン(C−BD)からなる。本発明者らは、Lp、Pro−ThrボックスおよびC−BDコード配列をLicBコード遺伝子から除去し、該分子を環状に入れ替えてN末端とC末端を反転させ(Musiychukら、2007、Influenza and Other Respiratory Viruses、1:1)、標的配列のクローニングするための特殊な制限エンドヌクレアーゼ部位をN−およびC−末端ならびに表面ループ(1)内に組み込んだ。得られた操作担体分子配列を確認す、これをLicKMと命名する。
【0172】
配列番号29:
【0173】
【化28】
配列番号30:
【0174】
【化29】
特定のある構築物では、本発明者らは、LicKMのN−およびC−末端のPRlaシグナルペプチドおよびKDEL配列を操作した。このような構築物の核酸配列およびアミノ酸配列を、配列番号31および配列番号32に示す。
【0175】
配列番号31:
【0176】
【化30】
配列番号32:
【0177】
【化31】
組換え抗原構築物の作製
本発明者らは、pBR322プラスミドに由来し、高レベルの転写および翻訳を促進するT7バクテリオファージ遺伝子10の特徴が利用されるように操作したpET発現ベクターを使用した。該バクテリオファージコードRNAポリメラーゼは、T7ファージゲノム以外のゲノムに見られるのは稀であるT7プロモーター配列に対して高度に特異的である(図2)。pET−32を用いて、HAおよびNA構築物を、このベクター内でクローニングしておいた修飾リケナーゼ配列のループ領域内に融合させた。上流配列PR−1A(「病原体関連タンパク質1A」)(小胞体(KDEL)または空胞保持配列(VAC)を有する)および下流His6タグを有するリケナーゼ遺伝子の触媒性ドメインを、修飾pET−32ベクター(T7プロモーターとT7ターミネーターとの間の領域が切除されている)内のPacI部位およびXhoI部位の間にクローニングした。このようにして、pET−PR−LicKM−KDELおよびpET−PR−LicKM−VACを得た(図3)。
【0178】
DNA断片HAドメインまたはNAをLicKMのループ(I)部分内にサブクローニングし、翻訳のための正しいリーディングフレームにおいて融合体を得た。LicKM−NA融合体を構築した。NAWまたはNAVのDNA断片を、SalI部位を用いてLicKMのC−末端内にサブクローニングし、翻訳のための正しいリーディングフレームにおいて融合体を得た。
【0179】
実施例2.ワクチン候補抗原ベクターの作製
標的抗原構築物LicKM−HA(SD)、LicKM−HA(GD)、LicKM−NAを、個々に、選択したウイルスベクター(pBI−D4)内にサブクローニングした。pBI−D4は、大腸菌β−D−グルクロニダーゼ(GUS)をコードするレポーター遺伝子がXbaI部位とSacI部位との間で「ポリリンカー」に置き換えられたpBI121由来バイナリーベクターであり、TMV由来ベクターをクローニングした(図4)。pBI−D4は、発現させる外来遺伝子(例えば、標的抗原(例えば、LicKM−HA(SD)、LicKM−HA(GD)、LicKM−NA)をTMVの外被タンパク質(CP)遺伝子に置き換えるTMV系構築物である。該ウイルスは、TMV 126/183kDa遺伝子、移動タンパク質(MP)遺伝子、およびCPサブゲノムmRNAプロモーター(sgp)(これは、CPオープンリーディングフレーム(ORF)内に延在している)を保持している。CPの開始コドンは変異されている。該ウイルスはCPを欠き、したがって、師部を介して宿主植物中を移動することができない。しかしながら、ウイルス感染の細胞間移動は機能性のままであり、ウイルスは、この様式で上方の葉までゆっくりと移動することができる。マルチクローニング部位(PacI−PmeI−AgeI−XhoI)が、外来遺伝子の発現のためにsgpの末端において操作されており、その後にTMV3’非翻訳領域(NTR)が存在する。35Sプロモーターをウイルス配列の5’末端に融合させる。ベクター配列を、pBI121のBamH1部位とSac1部位との間に配置する。ハンマーヘッド型リボザイムをウイルス配列の3’に配置する(Chenら、2003、Mol.Breed.、11:287)。このような構築物としては、LicKM−HA−SD、LicK−HA(GD)、またはNAをコードする配列のタバコPR−1aタンパク質由来のシグナルペプチドをコードする配列、6×HisタグおよびER−保持アンカー配列KDELまたは空胞配列への融合体が挙げられる(図5)。PR−LicKM−HA(SD)−KDEL、PR−LicKM−HA(GD)−KDEL、およびPR−LicKM−NA−KDELをコードする配列を含む構築物では、コードDNAをPacI−XhoI断片として、pBI−D4内に導入した。さらにまた、HAW(HAワイオミング型)、HAV(HAベトナム型)、NAW(NAワイオミング型)、およびNAV(NAベトナム型)を直接、PacI−XhoI断片としてpBI−D4内に導入した。続いて、ヌクレオチド配列を、最終発現構築物の接合部をサブクローニングするパニングによって確認した(図6)。
【0180】
実施例3:植物の作製および抗原産生
植物のアグロバクテリウム浸潤
アグロバクテリウム浸潤によって得られるアグロバクテリウム媒介性一過性発現系がしようされ得る(Turpenら、1993、J.Virol.Methods、42:227)。ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の健常な葉に、LicKM−HAまたはLicKM−NAを発現するように操作したA.リゾゲネス含有ウイルスベクターを浸潤させた。
【0181】
A.リゾゲネスA4(ATCC 43057)を、構築物pBI−D4−PR−LicKM−HA(SD)−KDEL、PR−LicKM−HA(GD)−KDEL、およびpBI−D4−PR−LicKM−NA−KDELで形質転換した。アグロバクテリウム培養物を、既報のようにして培養および誘導した(Kapilaら1997、Plant Sci.、122:101)。2mlの出発培養物(新たなコロニーから選出)を、一晩、25μg/mlのカナマイシンを加えたYEB(5g/lの牛肉抽出物、1g/lの酵母抽出物、5g/lのペプトン、5g/lのスクロース、2mM MgSO4)中、28℃で培養した。出発培養物を、500mlのYEB(25μg/mlのカナマイシン、10mMの2−4(−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)pH5.6、2mMのさらなるMgSO4および20μMのアセトシリンゴン含有)中で1:500に希釈した。次いで、希釈培養物を、約1.7のO.D.600まで28℃で一晩培養した。細胞を3,000×gで15分間遠心分離し、MMA培地(MS塩、10mMのMES pH 5.6、20g/lのスクロース、200μMのアセトシリンゴン)中に、2.4のO.D.600まで再懸濁し、室温で1〜3時間維持し、アグロバクテリウム浸潤に使用した。ベンサミアナタバコ葉にアグロバクテリウム懸濁液を、針なしの使い捨てシリンジを用いて注射した。浸潤の4〜7日後(例えば、6日後)に浸潤葉を採取した。
【0182】
植物を、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット解析の評価によって標的抗原発現の存在についてスクリーニングしてもよい(図7、8、9および10)。ザイモグラム解析により、試験したベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)の湿潤葉においてHAおよびNAキメラタンパク質の両方の発現が示された。該発現はリケナーゼ活性と関連している(図7および9)。融合タンパク質に関連する活性バンドは、リケナーゼ対照より大きい分子量、およびアグロ感染後に植物によって発現される産物と同じ分子量を示し、完全体の融合体生成物の存在が確認される。
【0183】
クローン根およびクローン根株の作製
1cm×1cm幅のベンサミアナタバコ葉外植片を、0.1%NH4Cl中での消毒および滅菌dH2O中での6回の洗浄後の葉から得る。この外植片に、ナイフで無菌側面上にわずかに傷をつけ、pBID4−Lic−HA−KDELまたはpBID4−Lic−NA−KDELのいずれかを含有するアグロバクテリウムリゾゲネス株A4とともに共培養する。該外植片を2分間、アグロバクテリウムの一晩培養物(O.D.600nm=0.8〜1)とともにインキュベートし、10分間3000rpmで4℃にて遠心分離し、MMA培地中に、20mMアセトシリンゴンの存在下で最終O.D.600nm=0.5まで再懸濁する。インキュベーションの最後に、該外植片を滅菌紙上で乾燥させ、1%グルコースおよび20mMアセトシリンゴンの存在下で0.8%寒天MSプレート上に移す。プレートをパラフィルムで覆い、室温で2日間維持する。次いで、外植片を、500mg/lのセフォタキシム(Cif)、100mg/lのチメンチン(Tim)および25mg/lのカナマイシンの存在下でMSプレート上に移す。ほぼ5週間後、pBID4−Lic−HA−KDELおよびpBID4−Lic−NA−KDEL構築物を含有するアグロバクテリウムリゾゲネスで形質転換したベンサミアナタバコ葉の外植片から遺伝子導入根の生成が得られる。
【0184】
形質転換後、毛状根を切り取り、固形のホルモン無含有K3培地中に一列に配置し得る。4〜6日後、最も活発に生長している根を単離し、液状K3培地に移す。選択した根を、暗所にて24℃で回転式振とう機において培養し、クローン株を単離し、毎週継代培養する。根および/またはクローン株は、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット解析の評価によって標的抗原発現の存在についてスクリーニングされ得る。
【0185】
実施例4:ワクチン候補の産生
感染の4、5、6および7日後、ベンサミアナタバコの浸潤葉材料の100mg試料を採取した。新鮮な組織を、採取直後にタンパク質発現について解析するか、またはその後の粗製植物抽出物の調製のため、または融合タンパク質の精製のために−80℃で回収した。
【0186】
新鮮な試料を、冷PBS 1x+プロテアーゼインヒビター(Roche)中に1/3w/v比(1ml/0.3gの組織)で再懸濁し、乳棒で磨砕した。このホモジネートをSDSゲル負荷バッファー中で5分間煮沸し、次いで、4℃にて12,000rpmで5分間の遠心分離によって清澄化した。上清みを新たなチューブ内に移し、20μl、1μlまたはその希釈物を12%SDS−PAGE上で分離し、抗HiS6−HAマウスもしくはウサギ抗リケナーゼポリクローナル抗体を用いたウエスタン解析によって、および/または機能性リケナーゼ活性を示すタンパク質分解活性を評価するザイモグラム解析によって解析した。ザイモグラフィーは、タンパク質分解活性を測定するための電気泳動による方法である。該方法は、インキュベーション期間中に分離されるそのプロテアーゼによって分解されるタンパク質基質を含浸させたドデシル硫酸ナトリウムゲルを主体とするものである。ゲルの染色により、タンパク質分解部位が、暗青色の背景上に白いバンドとして示される。一定の範囲内では、バンド強度は、プロテアーゼの負荷量と線形に関連し得る。
【0187】
プラスミドpBID4−LicKM−HA(SD)−KDELまたはpBID4−LicKM−HA(GD)−KDELを含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウムリゾゲネスのいずれかを浸潤させたベンサミアナタバコ植物におけるHA発現により、融合タンパク質におけるHAタンパク質の電気泳動移動度が理論的MW(リケナーゼ酵素のMWは約28kD)に相当する場合、キメラタンパク質LicKN−HA(SD)−KDELまたはLicKN−HA(GD)−KDELの分子量に相当する特異的バンドがもたらされる。
【0188】
粗製抽出物中の発現キメラタンパク質Lic−HA−KDELおよびLic−NA−KDELの定量は、手作業浸潤組織および真空浸潤組織の両方におけるイムノブロッティングによって行なわれ得る。
【0189】
抗原の精製
pBID4−LicKM−HA(SD)−KDEL構築物、pBID4−LicKM−HA(GD)−KDEL構築物およびpBID4−完全長NA−KDEL構築物を含む組換えアグロバクテリウム・ツメファシエンスを浸潤させた植物の葉を、ホモジネーションによって磨砕した。「EDTA無含有」プロテアーゼインヒビター(Roche)および1%Triton X−100を含む抽出バッファーを、3容量(w/v)の比で使用し、4℃で30分間ロックした。抽出物を4℃にて10分あたり、9000×gでの遠心分離によって清澄化した。上清みを逐次、Miraクロスに通して濾過し、4℃にて30分間20,000×gで遠心分離し、0.45μmフィルターに通して濾過した後、クロマトグラフィー精製した。
【0190】
得られた抽出物を、硫酸アンモニウム沈殿を用いてカット(cut)した。簡単には、(NH4)2SO4を抽出物に20%飽和まで添加し、氷上で1時間インキュベートし、18,000×gで15分間遠沈させた。ペレットをを廃棄し、(NH4)2SO4をゆっくりと60%飽和まで添加し、氷上で1時間インキュベートし、18,000×gで15分間遠沈させた。上清みを廃棄し、得られたペレットをバッファー中に再懸濁し、次いで、氷上で20分間維持した後、18,000×gで30分間遠心分離した。上清みを10,000容量の洗浄バッファーに対して一晩透析した。
【0191】
Hisタグ化LicKM−HA(SD)−KDEL、LicKM−HA(GD)−KDELおよび完全長NA−KDELキメラタンパク質を、IMAC(「固定化金属アフィニティークロマトグラフィー」、GE Healthcare)を使用することにより、室温にて重力下で精製した。精製は、非変性条件下で行った。タンパク質を0.5mlの画分として回収し、これらを1つにまとめ、20mM EDTAを添加し、1×PBSに対して一晩4℃で透析し、SDS−PAGEによって解析した。
【0192】
あるいはまた、次いで、画分を一緒に回収し、20mM EDTAを添加し、10mM NaH2PO4に対して一晩4℃で透析し、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。LicKM−HA(SD)−KDEL、LicKM−HA(GD)−KDELおよび完全長NA−KDELの精製は、アニオン交換カラムQ Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biosciences)を使用した。LicKM−HA(SD)−KDEL、LicKM−HA(GD)−KDELおよび完全長NA−KDELの親和性またはイオン交換精製キメラタンパク質の試料を、12%ポリアクリルアミドゲル上で分離した後、クマシー染色を行った。また、分離したタンパク質をさらに膜を電気泳動によりPDVF膜上に移し、ポリクローナル抗リケナーゼ抗体、続いて、抗ウサギIgG ウマラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を用いたウエスタンブロット解析を行った。
【0193】
透析後に回収した画分を、pAb α−リケナーゼおよびpAb α−His6の両方を用いたイムノブロッティングによって解析した。Hisタグは、発現されたキメラタンパク質によって維持され、精製タンパク質の最終濃度をソフトウェアによって評価した。
【0194】
血球凝集アッセイ
2つの異なる供給源由来の3つの種の赤血球(RBC)を使用し、インフルエンザワクチンの植物産生調製物における血球凝集活性を実証した。アッセイしたワクチン材料を、A型インフルエンザ/ワイオミング型/03/03(H3N2ウイルス)またはA型インフルエンザ/ベトナム型/1194/2004(H5N1ウイルス)のいずれかに由来する「ドメイン3」(球状ドメイン)と称した。
【0195】
ニワトリ、シチメンチョウおよびウマ由来のRBCを個々に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3回洗浄し、PBSで0.5%v/vに調整した。丸底96ウェルマイクロタイタープレートをPBS単独で、Falconプレートのみが一貫して、陽性結果と陰性結果間の明白な表示をもたらすことを示す品質保証に関して試験した。ワクチン材料は2連でアッセイし、0.5mg/mlで開始し、25μlの材料を25μlのPBS中に段階的にピペッティングすることによりプレート上で2倍希釈した。次いで、プレートあたり、1つの種のRBCの0.5%懸濁液25μlを、該プレートのすべてのウェル内に分注した。プレートを振とうしてRBCを分布させ、4℃で4時間インキュベートした後、陽性結果と陰性結果を判定した。
【0196】
A型インフルエンザ/ベトナム型/1194/2004(H5N1ウイルス)由来のドメイン3は、一貫して、および再現可能に、トリRBCにおいて陽性結果をもたらしたが、ウマRBCではそうではなかった。エンドポイント希釈は、2連および反復実験において一貫して8であり、これは、H5ドメイン3が62.5μgの濃度でトリRBCを血球凝集させ得ることを示す(図11)。
【0197】
実施例5:免疫原性試験
初期免疫原性試験
初期免疫原性試験を行ない、植物産生LicKM−抗原融合体が、腹腔内免疫処置したマウスにおいて特異的血清IgGを誘導し得るか否か、および誘導された抗体がインフルエンザウイルスをインビトロで中和し得るかか否かを調べた。試験では、上記のような、LicKM、LicKM−HA(SD)、LicKM−HA(SD)、およびベンサミアナタバコ(N.benthamiana)のアグロバクテリウム浸潤葉から75%純度まで富化した組換えNAを使用した。
【0198】
8週齢の雌BALB/cマウスを、100μg/用量の組換えLicKM−HA(SD)、LicKMHA(GD)の用量および50μg/用量の組換えNAで免疫処置した。3種類の免疫処置の免疫原を第1日、最初の追加攻撃の14日後、その後、2回目の追加攻撃の10日後に腹腔内投与した。最初の用量には、完全フロイントアジュバントを1:1容量比で含め、2回目の用量には、アジュバントをなんら含まなかった。陰性対照群には、250μg/用量の組換えLicKMを与えた。各群はマウス3匹とした。免疫前血清を最初の投与の1日前に採取し、続いて、血清を2回目の追加攻撃後、第28日に採取した。インフルエンザ特異的IgG抗体の力価を、ELISAアッセイを用いて測定した(図12)。
【0199】
インフルエンザワクチンに対して生成された免疫血清によるウイルスの血球凝集活性の阻害
上記のようにして免疫処置したマウス由来の免疫前血清および2回目の追加攻撃後の血清を、不活化インフルエンザウイルスの血球凝集活性を阻害する抗体力価の能力について評価した。4HA単位の不活化A型インフルエンザ/ベトナム型/1194/2004ウイルス(H5N1ウイルス)を、免疫前血清またはワクチンの2回目の追加攻撃後に採取した血清の25μlの希釈物と合わせた。トリRBCにおける血球凝集活性の阻害を、実施例4に記載のようにして評価した。得られた抗体力価は、ウイルスの血球凝集の阻害に有効であった。例示的な結果を図13に示し、表1にまとめるが、これらは、生成された抗体が、ウイルスの血球凝集活性を防御し得ることを示す。
【0200】
表1:実験的インフルエンザワクチンに対して生成された免疫血清による血球凝集阻害
【0201】
【表1】
実施例6:インフルエンザワクチン接種のモデル系
A.筋肉内ワクチン接種
フェレットは、インフルエンザ感染の試験のための確立された動物モデルであり、インフルエンザワクチンの有効性を調べるために使用されている(例えば、Boydら、1975;Chenら、1995;Scheiblauerら、1995;Sweetら、1980、Microbiol.Rev.、44:303;Maassabら、1982、J.Infect.Dis.、146:780;Tomsら、1977;Websterら、1994;Fentonら、1981;およびWebsterら、1994)。フェレット動物モデルを用いた伝染試験では、ドナーからレシピエントへのインフルエンザウイルスの拡延だけでなく、ウイルスのビルレンスに対する変異の影響もまた示された(Herlocherら、2001;およびHerlocherら、2002)。本明細書に記載の試験に用いた異種初回攻撃−ワクチン−攻撃モデルは、アジュバントなしの不活化インフルエンザワクチンを用いて、うまく試験された。
【0202】
被験物質の生成
本発明者らは、植物産生抗原の免疫原性および防御的有効性をフェレットにおいて評価した。被験物質は、植物において産生させた精製標的抗原からなるものであった。A型インフルエンザ株(A/ワイオミング型/3/03[H3N2])由来のHAドメインを、熱安定性の担体分子との融合体として操作し、上記のような植物系の発現系において産生させた。同じ株由来のNAを、上記のような植物系の発現系において産生させた。被験物質には、なんら核酸、毒性物質または感染性因子は含まれなかった。
【0203】
具体的には、HAのアミノ酸17〜67+294〜532(これは、幹ドメインを一緒に含む)をコードするヌクレオチド配列(Wilsonら、1981、Nature 289:366)をLicKM(GenBank受託番号 DQ776900)内に挿入し、LicKM−HA(SD)を得た。球状ドメイン(Wilsonら、前掲)を含むHAのアミノ酸68〜293をコードするヌクレオチド配列を、同様に挿入し、LicKM−HA(GD)を得た。タバコ(Nicotiana tabacum)病原関連タンパク質PR1a(Pfitznerら、1987、Nucleic Acids Res.、15:4449)のシグナルペプチドをコードする配列を、該融合体のN末端に含めた。ポリ−ヒスチジン親和性精製タグ(6×His)および小胞体保持シグナル(KDEL)をコードする配列をC末端に含めた。LicKM融合体をハイブリッドベクターpBID4(Wilsonら、前掲)(これは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターからのウイルスゲノム転写、続いて、タバコモザイクウイルス(TMV)外被タンパク質サブゲノムmRNAからのウイルスの複製および標的配列発現を可能にし(Shivprasadら、1999、Virology、255:312)、アグロバクテリウムバイナリープラスミドpBI121由来のものである(Chenら、2003、Mol、Breed.、11:287))内に導入し、葉において標的の一過性発現を行った。また、同じインフルエンザ株由来のNAのアミノ酸38〜469をコードする配列を、事前にLicKMに融合せずにpBID4に導入した。上記のように、PR1aのシグナルペプチドをN末端に含め、6×His+KDELをC末端に含む。
【0204】
インフルエンザ抗原を含有する操作ベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス株GV3101に、エレクトロポレーションによって導入した。組換えA.ツメファシエンスの懸濁液をベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamian)植物に、標的配列を葉組織内に導入するため、播種のほぼ6週間後に葉に接種することにより導入した。植物は鉢植え土壌内で、12時間明/12時間暗条件下、21℃にて生長させた。発現構築物に応じて接種の4〜7日後に葉を採取した。タンパク質抽出物を、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0;100mM塩化ナトリウム;10mMナトリウムジエチルジチオカルバメート;および10mM β−メルカプトエタノールを含むバッファー中で葉を摩砕することにより調製した。組換え抗原を、硫酸アンモニウム沈殿、続いて固定化金属親和性クロマトグラフィー(例えば、6×Hisタグを用いることにより)およびアニオン交換クロマトグラフィー(各工程後に透析を伴う)によって少なくとも80%純度まで富化させた。
【0205】
植物産生抗原と参照抗血清との反応をELISA解析(図16A)および変性条件下でのイムノブロッティング(図16B)によって評価した。ELISAでは、96ウェルプレートに、植物から精製したLicKM−HA(SD)、LicKM−HA(GD)またはNAをコートするか、または不活化A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスをコートした。コートしたプレートを、A/ワイオミング型/3/03ウイルスの精製HAに対して生成させたヒツジ抗血清、NEBRG−18(H7N2)組合せウイルスに対して生成させたヒツジ抗血清、またはNIBRG−17(H7N1)組合せウイルスに対して生成させたヒツジ抗血清とともにインキュベートした。イムノブロット解析では、100ngのLicKM−HA(SD)、100ngのLicKM−HA(GD)、および100ngのHAに相当する量の不活化A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03をSDS−PAGEによって分離し、ポリフッ化ビニリデン膜に移し、LicKMに対して生成させたウサギ抗血清またはA/ワイオミング型/3/03ウイルス由来の精製HAに対して生成させたヒツジ抗血清とともにインキュベートした。NA活性を、標準的なWHOプロトコル WHO/CDS/CSR/NCS 2002.5 Rev.1に従ってアッセイした。NA活性の阻害は、ノイラミニダーゼアッセイを行う前に、植物産生NAを、同種(NIBRG−18[H7N2])または異種(NIBRG−17[H7N1])組合せウイルスに対して生成させたヒツジ抗血清とともにプレインキュベートすることにより評価した。
【0206】
ELISAおよびイムノブロットアッセイの両方において、LicKM−HA(SD)は、参照血清によってLicKM−HA(GD)よりもより強く認識されたが、LicKMに対して生成させたポリクローナルウサギ血清は、各融合を同程度に認識した(図16B)。また、植物産生NAは、組合せH7N2ウイルスに対して生成させた参照ポリクローナルヒツジ血清によって認識され(図16C)、株特異的様式で参照血清によって阻害される酵素活性を示した(図16C)。
【0207】
ワクチン接種
フェレット試験は、動物(研究手続)法(UK Animal (Scientific Procedures)Act)(1986年)の定めにより、UK内務省の許可の下に行なった。雄のケナガイタチまたは白色フェレット(High gate Farm、ハイゲート、英国)(試験開始時、4.5月齢、体重441〜629gであり、高密度フェレット試験用飼料5L15(IPS Product Supplies、ロンドン、UK)で維持)を、表2に示す処置群に割り当てた。
【0208】
表2.処置群
【0209】
【表2】
* TCID50 (「組織培養感染容量(Tissue Culture Infecting Dose)」)=一連の実験ウェルの半数が活性で増殖中のウイルスを含むウイルスの希釈レベル
8匹のフェレットの3つの群に、植物産生インフルエンザ抗原の組合せを含有する候補ワクチン製剤(VC1+アジュバント、VC2、およびVC2+アジュバント)(表1)を用いて、初回攻撃および追加攻撃を2回(第0、14および28日)行うことにより皮下免疫処置した。VC1動物には、100μgのLicKM−HA(SD)および100μgのLicKM−GD+1.3mgミョウバンを与えた。VC2動物には、100μgのLicKM−(SD)、100μgのLicKM−(GD)および50μgのNA+1.3mg ミョウバン(「+アジュバント」)または+ミョウバンなし(「アジュバントなし」)を与えた。一緒に送達された100μgのLicKM−(SD)および100μgのLicKM−(GD)は、ほぼ100μgのHAに相当する。陰性対照動物には、ミョウバンアジュバント単独を与え、陽性対照動物には、鼻腔内単回用量のA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス(第0日、105.5TCID50/mlの濃度で0.5ml)を与えた。免疫処置後、動物を、病変または刺激、運動性、紅斑および一般活動について毎日モニターした。
【0210】
動物には、麻酔下で、0.5mlのA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスを105.5TCID50/mlの濃度で、最終用量後、10日間鼻腔内にて攻撃した。血液試料を表在尾静脈から、ワクチン接種の日、攻撃の日、および攻撃の4日後に採取し、鼻洗浄液を攻撃の4日後に採取した。血清HTの力価を、同種A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスならびに異種A型インフルエンザ/シドニー型/5/97(H3N2)、A/カリフォルニア型/7/04(H3N2)およびA/ニューカレドニア型/20/99(H1N1)ウイルスについて測定した。
【0211】
インフルエンザワクチンの接種、手順およびウイルス攻撃は、表3に示す計画に従って行なった。有害効果は、植物産生ワクチン候補を与えたいずれの動物にも認められなかった。動物にトランスポンダーを埋入し、個々の同定および体温のモニタリングを行った。投与は、試験計画に詳述した時点の3つの別々の状況において行なった(表3)。事前に調製した試験物質は、各用量に対して等分した。試験物質は、投与直前にアジュバントと混合した。
【0212】
表3.試験計画
【0213】
【表3】
解析
臨床徴候(健康スコア)、体重および体温の変化を記録した。感染後、1日1回、各動物を病変または刺激、運動性、紅斑および一般活動についてについて調べ、観察結果を記録し、健康スコアを決定した。各動物は、以下:くしゃみまたは鼻で音をたてる(1ポイント);外鼻孔からの化膿性排出物(1ポイント);自発的な活動または遊びの低下(1ポイント);自発的な活動なしまたは敏捷性の低下(2ポイント)のようにスコア化した。「自発的な活動または遊びの減少」および「自発的な活動なしまたは敏捷性の低下」は、互いにスコアポイントを排他的とした。感染日からの体重の最大減少を、各動物について計算した。また、感染日からの体温の最大増加も各動物について計算した。任意の日における各動物の最大の健康スコア、体重減少および体温変化の平均および標準偏差を、処置群ごとに計算し、ANOVAによって比較した。感染後の各日に総合健康、体重減少および体温変化のスコアを含むAUC様測定を各動物について計算し、処置群の平均、メジアンおよび標準偏差を計算し、適宜、ANOVAまたはKruskal−Wallis検定によって比較した。生ウイルスの攻撃後、各処置群は、臨床徴候ならびに温度および体重の変化によって示される攻撃からの回復を示した。試験ワクチンを受けた動物群は防御され、同種インフルエンザウイルスでの攻撃後、疾患症状をほとんど、または全く示さなかった。両方の試験ワクチン候補は、動物に対して充分な防御をもたらした(図14)。
【0214】
ウイルス攻撃後、鼻洗浄液を回収した。回収された鼻洗浄液の容量を測定し、鼻洗浄液の重量をモニターした。炎症細胞応答を攻撃後の鼻洗浄液において、トリパンブルーでの染色(全細胞計数を測定するために使用)および白血球の計数によって評価した。鼻洗浄液中の細胞計数を、感染後の各資料採取日におけるlog−変換データの平均、メジアンおよび標準偏差によってまとめ、処置群間で、適宜、ANOVAまたはKruskal−Wallis検定によって比較した。上記の臨床徴候と同様に、鼻洗浄液のモニタリングにより、各試験処置ワクチンを受けた処置群は、陽性対照群と同等またはそれ以上の感染からの防御を示すことが示された(図14)。
【0215】
ウイルス排出は、鼻洗浄液試料において、イヌ腎臓由来Madin−Darby(MDCK)細胞滴定を用いて測定した。MDCK細胞滴定アッセイのエンドポイントは、シチメンチョウ赤血球を用いた血球凝集アッセイを行うことにより決定した。Karber計算を使用し、各試料についてlog10 TCID50/mlを測定した。鼻洗浄液試料からのウイルス排出を、感染後の鼻洗浄液試料において測定した。各動物での排出最大力価をlog−変換し、処置群の平均、メジアンおよび標準偏差を計算し、Kruskal−Wallis検定によって比較した。任意の時点で任意のウイルス排出を伴った各処置群の動物の割合を表にし、独立性について、カイ二乗検定を用いて群間で対比した。排出ウイルスの結果を図15に示す。陰性対照処置群のみ、優位なウイルス排出をもたらした(図15)。
【0216】
血球凝集素 阻害アッセイ(HAI)を、実施例5に記載のようにして、同種ウイルス(A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/2003(H3N2)ウイルス)に対するワクチン接種前および接種後の血清試料を用いて行ない、ベースラインでの動物のセロネガティブ性ならびに免疫処置および感染後に動物にセロコンバージョンがあるか否かを確認した。HAIの力価を表にし、第0日から最終日の間で≧4倍上昇を有する動物を特定した。
【0217】
免疫処置動物由来血清の血球凝集阻害(HI)活性を、防御の相関因子とみなす(Brownら、2004、Dev.Biol.(Basel)、115:1;およびHobsonら、1972、J.Hyg.、70:767)。かかる実験の一例の結果を表4に示す。H3N2または陽性対照に対する試験ワクチンで免疫処置した群のすべての動物では、高い血清血球凝集阻害活性を伴う強い標的特異的免疫応答が開始された。最初の用量のワクチン後、VC2+アジュバントにより、高いHAI力価がもたらされた。アジュバントなしでのVC2では、防御的応答がもたらされたが、力価は、最初の用量後のアジュバントでの場合ほど高くなかった。しかしながら、2回目の用量後、力価は、アジュバントを伴うCMB1と同等レベルに達した。また、VC1+アジュバントでも保護レベルの抗体の生成がもたらされ、これは、2回目の用量のワクチン後、有意に高かった(表4)。
【0218】
表4:フェレットHAIデータのまとめ
【0219】
【表4】
第2のHAアッセイ実験の結果を図17に示す。HI活性は、いずれの動物由来の免疫処置前血清またはNC動物血清では観察されなかった(図17)。しかしながら、VC2+アジュバントをワクチン接種したすべてのフェレット由来の血清は、最初の用量後、1:320〜1:2560(平均力価1273)範囲の高いHI力価を示した(図17)。VC1+アジュバントを受けた動物間では、最初の用量後に観察されたレスポンダー動物はより少なく、HI力価は低く(図17)、これは、NAが免疫応答をモジュレートした可能性があることを示す。VC2を受けた8匹の動物のうち5匹は、1:160〜1:1280の範囲のHI力価を示したが、アジュバントなしの市販の不活化インフルエンザワクチンは、典型的には、非常に低い(誘導する場合は)HI力価を誘導する(Potterら、1972、Br.J.Exp.Pathol、53:168;Potterら、1973、J.Hyg.(Lond.)、71:97;およびPotterら、1973、Arch.Gesamte Virusforsch.、42:285)。VC1+アジュバント、VC2またはVC2+アジュバントの2回目の用量後、すべてのフェレット由来の血清は、1:640〜1:2560の範囲のHI力価を有し、これらは、第3の用量後、同様に高く保持されていた(図17)。これらの動物すべてに由来する血清は、1:40過剰の力価有し、一部は、ヒトにおける防御に整合する最小HI力価とみなされた(Brownら、2004、Dev.Biol.(Basel)、115:1;およびHobsonら、1972、J.Hyg.、70:767)。
【0220】
2または3回の用量の任意の植物産生ワクチン候補を受けたフェレット由来の血清におけるHI力価は、鼻腔内感染した陽性対照動物由来の血清のものと同等またはそれ以上であり(図17)、他のフェレット試験で観察されたものよりも過剰であった。例えば、市販の不活化H3N2インフルエンザワクチンで筋肉内免疫処置したフェレットは、2回の用量を受けた後、1:20のHI力価を示すことが報告された(Lambkinら、2004、Vaccine、22:4390)。VC1+アジュバント、VC2またはVC2+アジュバントで免疫処置したフェレット由来の血清は、異種H3N2ウイルス株A/シドニー型/5/97およびA/カリフォルニア型/7/04に対し、A/ワイオミング型/3/03に対するよりも4〜20倍低いHI力価を有したが、これらの力価はすべて閾値の1:40過剰であり、防御と整合し、これらのワクチン候補が異種H3N2株を防御する可能性を示す。A型インフルエンザ/ニューカレドニア型/20/99(H1N1)に対しては、1:10未満のHI力価が観察され、これは、HI抗体応答のH3サブタイプ特異性を示す。
【0221】
免疫原性および防御的有効性の追跡試験を行ない、卵から成長させた生きているA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスでの鼻腔内攻撃による植物産生HAおよびNA抗原の防御的有効性を、免疫処置フェレットにおいて評価した。
【0222】
攻撃後のウイルス感染の程度を、鼻洗浄液中の排出ウイルスの力価を攻撃後4日間モニタリングすることにより、各動物について測定した。3種類の候補ワクチン製剤のいずれかを受けた1匹の動物のみが検出可能なウイルス排出を示し、次いで102 TCID50であっても示したが、NC群の動物は、106〜107の範囲のTCID50のウイルス排出を示した(図18A)。PC群におけるウイルス排出レベルは、102〜103の範囲のTCID50であり、候補ワクチン群の任意の動物のものより大きかった(図18A)。
【0223】
保護の証拠は、任意の候補ワクチン製剤を受けた動物で観察された。感染後の体重減少は、NC群のものと比べ、VC1+アジュバント、VC2+アジュバントまたは同種ウイルスを受けたフェレットにおいて大きく低下した(図18B)。VC2を受けた動物での体重減少の低下は、あまり顕著でなかった(図18B)。また、任意の候補ワクチン製剤で免疫処置したフェレットにおける体温上昇は、NCまたはPCいずれかの群の動物で観察されたものと比べて低下した(図18C)。さらにまた、攻撃後のいくつかのインフルエンザ関連症状の頻度のを示す指標である症状スコアの平均ピークは、NC群のものと比べ、候補ワクチン製剤を受けた動物において減少した(図18D)。同様に、上気道感染のインジケータとみなされるフェレットの鼻洗浄液中の白血球計数は、NC群の動物と比べ、候補ワクチンレシピエントにおいて減少した(図18E)。
【0224】
この攻撃試験は、植物産生HAおよびNA抗原が、フェレットにおいて高度の防御的免疫性を賦与することを示し、ワクチン開発に対する有望性を示す。将来的な研究において、本発明者らは、個々に投与したときのLicKM−SDおよびLicKM−GDの保護役割、ならびにさならる免疫応答の促進におけるNAの役割を解明する。
【0225】
B.鼻腔内ワクチン接種
候補ワクチンの免疫原性は、Balb/cマウスまたはフェレットモデル動物において、鼻腔内免疫処置に従って評価する。この試験計画は、上記の実施例に記載の筋肉内免疫処置のものと類似している。簡単には、マウス群またはフェレット群(ほぼ8〜10匹の動物/群)を、ほぼ第0、14および28日の3回の標的抗原投与(100μg/投与)で、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、MALP−2など)の存在下または非存在下にて鼻腔内免疫処置する。血清試料および鼻洗浄液を、抗原投与前の各ワクチン接種日および3回目の用量の10日後に採取する。免疫処置動物には、最後の用量後、経鼻経路により、動物に感染して発熱を伴う呼吸器感染症状をもたらすことがわかっている同種株のインフルエンザウイルスで攻撃する。ウイルス攻撃後に測定される、ウイルス排出レベル、感染後の体重減少、体温の上昇、症状スコアの平均ピーク、および鼻洗浄液中の白血球計数を測定することにより、免疫応答の性質を調べる。NAおよび/またはHAに対する抗体の存在、ならびにHIおよび
ウイルス中和活性を調べる。
【0226】
C.用量増大試験
抗原とアジュバントの最適な組成および用量、投与経路、ならびに免疫処置レジメンは、用量増大試験を用いてさらに評価され得る。本発明者らは、この試験において、6種類の試験ワクチン組成物のうち3種類の試験を予測する。該試験は、筋肉内経路(表3)および鼻腔内経路の両方を用いて行なう。上記の実施例に記載の筋肉内および鼻腔内免疫処置のものと同様に、動物群(ほぼ8〜10匹の動物/群)を種々の用量の試験ワクチンで、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、MALP−2など)の存在下または非存在下にて鼻腔内免疫処置する。例示的な投薬計画については表5を参照のこと。
【0227】
他の試験の場合と同様、血清試料および鼻洗浄液を、抗原投与前の各ワクチン接種日および3回目の用量の10日後に採取する。免疫処置動物には、最後の用量後、経鼻経路により、動物に感染して発熱を伴う呼吸器感染症状をもたらすことがわかっている同種株のインフルエンザウイルスで攻撃する。免疫応答の性質は、ウイルス排出レベル;感染後の体重減少;体温の上昇;症状スコアの平均ピーク;鼻洗浄液中の白血球計数;NA、HA、および/またはM2に対する抗体の存在;血球凝集阻害;および/またはウイルス中和活性を調べることにより測定され得る。
【0228】
表5:動物における用量増大試験のための例示的な設計
【0229】
【表5】
* i.m.= 筋肉内注射
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】図1は、血球凝集素(HA)タンパク質およびタンパク質ドメインの概略図である。左上の数字1、2および3は、本明細書に記載のドメイン1、2および3に対応する。ドメイン1、2および2、1は一緒に折り畳まれ、幹ドメイン(SD)を形成する。ドメイン3は球状ドメイン(GD)である。項目1〜6に示す範囲は、HAのアミノ酸位置に対応する。
【図2】図2は、pET32プラスミドマップである。左上は、標的抗原のクローニングに使用した修飾プラスミドにはない、T7プロモーターおよびT7ターミネーターの間の領域を示す。
【図3】図3は、修飾pET32aベクター内に挿入されたpET−PR−LicKM−KDEL構築物およびpET−PR−LicKM−VAC構築物の概略図である。
【図4】図4は、pBI121ベクター構成の概略図である。
【図5】図5は、GUS遺伝子の切除およびTMV由来プラスミドの付加後の、pBIベクターからのpBID4プラスミドの誘導の概略構成図である。
【図6】図6は、ベクター内に配置された標的化配列を有する、または有しない、リケナーゼ配列内のHA、HAドメインおよびNAの融合体の概略図である。
【図7】図7A、Bは、LicKMおよび融合タンパク質を発現する植物の抽出物のリケナーゼアッセイである。(7A)ベンサミアナタバコにおけるリケナーゼの一過性発現。(7B)植物中のリケナーゼHA融合タンパク質のザイモグラム(矢印)。
【図8】図8は、抗HA抗体および抗LicB抗体を用いた、Lic−HA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のウエスタン解析である。
【図9】図9は、Lic−NA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のリケナーゼアッセイである。
【図10】図10は、Lic−HA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のウエスタン解析である。
【図11】図11は、HAリケナーゼ融合タンパク質を発現した植物を用いた赤血球凝集アッセイである。
【図12】図12は、アジュバントとともに、およびなしで試験H5N1インフルエンザワクチンで免疫処置したマウスの抗体応答である。
【図13】図13は、アジュバントとともに、およびなしでH5N1試験ワクチンで免疫処置したマウスから得た血清希釈物による血球凝集活性阻害である。
【図14】図14A〜Dは、H3N2インフルエンザ試験ワクチン処置群および対照処置群におけるH3N2ウイルス攻撃後の症状である。(14A)臨床症状スコアの全体平均最大結果。(14B)ウイルス攻撃後の鼻洗浄液中の細胞計数の全体平均最大結果。(14C)動物における体重減少の全体平均最大結果。(14D)動物の体温変化の全体平均最大値。
【図15】図15は、H3N2インフルエンザ試験ワクチン処置群および対照処置群におけるH3N2ウイルス攻撃後のウイルス排出である。第1群は、陰性対照処置群の結果を示す;第2群は、被験物質1(CMB F1)で処置した動物の結果を示す;第3群は、被験物質2(CMB F2)で処置した動物の結果を示す;第4群は、被験物質3(CMB F3)で処置した動物の結果を示す;および第D群は、陽性対照処置動物の結果を示す。Nは、各群で評価された動物の数を示す(各群8匹)。
【図16】図16は、植物において産生されたA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス抗原の特性決定である。(16A)A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス由来の精製HAに対して生成されたヒツジ血清を用いたLicKM−(SD)およびLicKM−(GD)のELlSA解析。同種ウイルス(A/W/3/03)および植物産生NAを、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。(16B)LicKM(抗LicKM)に対して生成されたウサギ血清およびA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス(抗HA)の精製HAに対して生成されたヒツジ血清を用いたLicKM−HA(SD)(レーン4)およびLicKM−HA(GD)(レーン3)のイムノブロット解析。LicKM(レーン2)および同種ウイルス(レーン1)を対照として使用した。(16C)NIBRG−18再組合せウイルス(抗H7N2)およびNIBRG−17再組合せウイルス(抗H7Nl)に対して生成されたヒツジ血清を用いたNAのELISA解析。NIBRG−18(抗H7N2)に対するヒツジ血清を用いて評価した同種ウイルス(A/W/3/03)を陽性対照として使用した。(16D)NIBRG−18(抗H7N2)またはNIBRG−17(抗H7Nl)に対して生成されたヒツジ血清とのプレインキュベーション後のノイラミニダーゼ活性の種特異的阻害。3連実験の平均酵素活性を標準偏差とともに示す。
【図17】図17は、VC1+アジュバント、VC2アジュバントなし、またはVC2+アジュバントで免疫処置したフェレット由来血清の血球凝集阻害力価である。血清試料は、最初の用量前(Pre−imm)、最初の用量の14日後(D1)、第2の用量の14日後(D2)、第3の用量の10日後(D3)、および攻撃の4日後(Post−Ch)に採取した。幾何平均力価を標準偏差とともに示す。
【図18】図18は、VC1+アジュバント、VC2アジュバントなし、またはVC2+アジュバントで免疫処置したフェレットの攻撃後のモニタリングである。平均値を標準偏差とともに示し、多重検定のためのボンフェローニの補正とともにANOVAを使用し、データの統計学的解析を行った。統計学的有意性はp≦0.05と規定した。(18A)感染後に流入したウイルスのピーク。(18B)感染後の最大体重減少。(18C)感染後のピーク温度上昇。(18D)感染後の症状スコアのピーク。(18E)感染後の鼻洗浄液試料1mlあたりの総白血球計数のピーク。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、米国特許法119(e)の下、2006年2月13日に出願されたU.S.S.N.60/773,378(‘378出願)および2006年6月15日に出願されたU.S.S.N.60/813,955(‘955出願)に関し、これらへの優先権を主張する。‘139出願および‘955出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インフルエンザは、汎発流行、一時的流行、再流行および大流行の波を特徴とする長い歴史を有する。インフルエンザは、伝染性の高い疾患であり、発展途上国と先進国の両方において等しく打撃を与え得る。インフルエンザウイルスは、ヒト集団に対する大きな脅威の1つである。毎年のワクチン接種の取り組みにもかかわらず、インフルエンザ感染は、相当な罹患率および死亡率をもたらす。インフルエンザの流行はほぼ毎年起こるが、幸い、汎発流行はあまり頻繁に起こらない。しかし、最近、再びインフルエンザの汎発流行の可能性に直面するようなインフルエンザ株が出現した。H5N1型トリインフルエンザウイルスは、現在、アジアや東欧地域で家禽に汎発流行を引き起こし、世界中で、持続的に蔓延した。感染の急速な蔓延ならびにトリからヒト被験体への異種間感染により、ヒト集団における大流行の可能性および汎発流行のリスクが増大している。このウイルスは、病原性が高く、トリでは50%を超える死亡率をもたらし、わずかであるが、ヒト症例も確認されている。該ウイルスがヒトからヒトへ感染するようになった場合、疾病および死亡率が急速に広がる可能性が生じ得る。
【0003】
インフルエンザに対する主な防御はワクチン接種である。インフルエンザウイルスは、セグメント化された、オルトミクソウイルス科に属するマイナス鎖RNAウイルスである。ウイルス抗原は、非常に有効な免疫原であり、全身性抗体応答および粘膜抗体応答の両方を惹起し得る。インフルエンザウイルスの血球凝集素糖タンパク質(HA)は、一般的に、中和抗体の刺激およびワクチン設計に関して最も重要なウイルス抗原と考えられている。ウイルスノイラミニダーゼ(NA)の存在は、該ウイルスに対する多アーム保護免疫応答を起こすのに重要であることが示されている。ノイラミニダーゼ活性を阻害する抗ウイルス薬が開発されており、感染時の追加的抗ウイルス処置であり得る。インフルエンザ抗ウイルス薬およびワクチンの開発に有用と考えられる第3の成分は、イオンチャネルタンパク質M2である。
【0004】
インフルエンザウイルスのサブタイプは、抗原不連続変異に起因する異なるHAおよびNAによって指定される。さらにまた、同じサブタイプの新たな株は、抗原連続変異、または新たな異なるエピトープをもたらすHAもしくはNA分子における変異により生じる。15種類のHA抗原サブタイプが示されているが、これらのサブタイプのうち3種類H1、H2およびH3のみが、ヒトにおいて広く循環している。ワクチン接種は、先進工業国および後進国の両方で、生活の質の改善の追求に最重要となっている。利用可能なワクチンの大部分は、関連する感染を防御し得る免疫応答を誘導するために、依然として感染の態様を模倣する基本原理に従う。しかしながら、弱毒化ウイルスの種々のサブタイプおよび組合せの作製は、時間と費用がかかるものであり得る。新たな技術が出現したため、病原体の分子生物学、病因論および個体の免疫系の相互作用の徹底的な理解によって、ワクチン開発およびワクチン送達に対する新たなアプローチがもたらされた。したがって、技術進歩により、改善されたインフルエンザ抗原ワクチン組成物を生成する能力は改善されたが、インフルエンザのサブタイプおよび株の出現に取り組むためのワクチンおよびワクチンの生成のための新たな抗原のさらなる供給源を提供する必要性がなお存在する。インフルエンザウイルスのサブタイプに対するワクチンの設計および開発の改善、ならびに廉価で非常に入手し易いかかる治療用組成物の供給源を提供する、かかる物質の組成物の作製および使用方法が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、植物において産生されるインフルエンザ抗原およびワクチン成分を提供する。本発明は、熱安定性タンパク質との融合として生成される1種類以上のインフルエンザ抗原を提供する。本発明は、さらに、インフルエンザ抗原を含有するワクチン組成物を提供する。さらにまた、本発明は、少なくとも2種類の異なるインフルエンザ抗原を含むインフルエンザワクチンを提供する。一部の実施形態において、本発明の組成物は、1種類以上の植物成分を含む。さらには、本発明の抗原およびワクチン組成物の産生および使用のための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、インフルエンザ感染に対するワクチンの調製に有用なインフルエンザ抗原、および熱安定性タンパク質に作動可能に連結したかかるインフルエンザ抗原を含む融合タンパク質に関する。本発明は、例えば限定されないが、植物系内での産生を含む、提供された抗原の産生方法に関する。さらに、本発明は、本発明の抗原および融合タンパク質を含むベクター、融合タンパク質、植物細胞、植物およびワクチン組成物に関する。さらには、被験体に本発明のワクチン組成物を投与することを含む、被験体においてインフルエンザ感染に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0007】
インフルエンザ抗原
本発明のインフルエンザ抗原タンパク質としては、インフルエンザウイルスに対する免疫応答を惹起し得る任意の免疫原性のタンパク質またはペプチドが挙げられる。一般的に、免疫原性の目的のタンパク質としては、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質、融合タンパク質など)、その免疫原性部分、またはその免疫原性変異体および前述の任意のものとの組合せが挙げられる。
【0008】
本発明による使用のためのインフルエンザ抗原は、完全長インフルエンザタンパク質もしくはインフルエンザタンパク質の断片および/または完全長インフルエンザタンパク質もしくはインフルエンザタンパク質の断片を含む融合タンパク質を含むものであり得る。インフルエンザタンパク質の断片を用いる場合、単独であれ融合タンパク質の状態であれ、かかる断片は免疫学的活性(例えば、抗インフルエンザ抗体との交差反応性)を保持する。ウイルス感染に対する免疫防御的応答を誘導するその能力に基づき、血球凝集素およびノイラミニダーゼは、ワクチンの作製における目的の一次抗原である。膜イオンチャネルM2などのさらなる抗原も、免疫保護の有効性を改善するためにワクチン(例えば、組合せワクチン)の作製に有用であり得る。
【0009】
したがって、本発明は、異種タンパク質(例えば、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質またはその断片、インフルエンザタンパク質もしくはその断片を含む融合タンパク質)を発現する植物細胞および植物を提供する。本発明の異種タンパク質は、任意の目的のインフルエンザ抗原、例えば限定されないが、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、膜イオンチャネルM2(M2)、血球凝集素(HA)の一部分、ノイラミニダーゼ(NA)の一部分および膜イオンチャネル(M2)の一部分、あるいは血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、膜イオンチャネルM2(M2)、血球凝集素(HA)の一部分、ノイラミニダーゼ(NA)の一部分および/または膜イオンチャネル(M2)の一部分の融合タンパク質、断片、もしくは組合せを含むものであり得る。
【0010】
さまざまな異なるインフルエンザHA、NAおよびM2タンパク質(例えば、異なるサブタイプまたは株もしくは単離株由来)のアミノ酸配列が当該技術分野で知られており、GenBankなどの公のデータベースにおいて入手可能である。現在、特に重要な2種類のインフルエンザサブタイプのHAおよびNAの例示的な完全長タンパク質の配列、ならびにM2の配列を以下に示す。
【0011】
V:ベトナム型H5N1
HA(HAV)配列番号1
【0012】
【化1】
NA(NAV)配列番号2:
【0013】
【化2】
W:ワイオミング型H3N2
HA (HAW)配列番号3:
【0014】
【化3】
NA(NAW)配列番号4:
【0015】
【化4】
インフルエンザホンコン型M2タンパク質配列番号5:
LTEVETPIRNEWGCRCNDSSDP
インフルエンザタンパク質
血球凝集素
特定の実施形態において、完全長血球凝集素(HA)が本発明のワクチン組成物に使用される。一部の実施形態では、HAの1つ以上のドメインが使用される。特定の実施形態では、2つもしくは3つまたはそれ以上のドメインが、1種類以上の独立したポリペプチドとして、または1種類以上の融合ポリペプチド内で互いに連結して使用される。特定の例示的な実施形態は、HAの完全長、ドメイン1−2およびドメイン2−1(本明細書においてHA1_2という)、またはドメイン3を含むインフルエンザ抗原を提供する。
【0016】
HAベトナム型[H5N1]:
H5N1 HAシグナルペプチド配列番号6:AKAGVQSVKMEKIVLLFAIVSLVKS
H5N1 HAドメイン1−2 配列番号7:
【0017】
【化5】
H5N1 HAドメイン3 配列番号33:
【0018】
【化6】
H5N1 HAドメイン2−1 配列番号8:
【0019】
【化7】
H5N1 HA膜貫通ドメイン 配列番号9:
【0020】
【化8】
HA A/ワイオミング型(H3N2)
H3N2 HAシグナルペプチド配列番号10:MKTIIALSYILCLVFS
H3N2 HAドメイン1−2 配列番号11:
QKLPGNDNSTATLCLGHHAVPNGTIVKTITNDQIEVTNATELVQSSSTGGI
H3N2 HAドメイン3 配列番号12:
【0021】
【化9】
H3N2 HAドメイン2−1 配列番号13:
【0022】
【化10】
H3N2 HA膜貫通ドメイン 配列番号14:
【0023】
【化11】
特定の実施形態において、完全長ノイラミニダーゼ(NA)抗原が本発明のワクチン抗原に使用される。一部の実施形態では、NAのドメインが使用される。特定の実施形態では、2つもしくは3つまたはそれ以上のドメインが、本発明の抗原において提供される。特定の例示的な実施形態は、完全長NAを含み、アンカーペプチド配列を欠くインフルエンザ抗原を提供する。
【0024】
ノイラミニダーゼ
NAベトナム型
H5N1 NAアンカーペプチド配列番号15:MNPNQKIITIGSICMVTGIVS
H5N1 NA 配列番号16:
【0025】
【化12】
H3N2 NAアンカーペプチド配列番号17:
MNPNQKIITIGSVSLTISTICFFMQIAILITTVTLHF
H3N2 NA配列番号18:
【0026】
【化13】
例示的なインフルエンザ抗原の配列を本明細書に示し、HAおよびNAのそれぞれならびにM2について示したドメインを例示的な株として示したが、HAおよび/またはNAおよび/またはM2のドメインの免疫原性特性を有する任意の配列が択一的に使用され得ることが認識される。当業者は、提供する抗原と少なくとも75%、80%、85%もしくは90%またはそれ以上の同一性を有する配列を容易に生成することができる。特定の実施形態において、インフルエンザ抗原は、例えば、HAおよび/もしくはNAおよび/もしくはM2のドメインまたはHAおよび/もしくはNAおよび/もしくはM2のドメインの一部分と少なくとも95%、96%、97%、98%またはそれ以上の同一性を有するものを包含するタンパク質を含む、抗原タンパク質は免疫原性の活性を保持する。例えば、免疫原性特性を保持しているインフルエンザ抗原(1種類または複数種)と充分な同一性を有する配列は、本明細書に示したドメイン(抗原(1種類または複数種))と反応する抗体と結合し得る。免疫原性特性は、多くの場合、関連するアミノ酸または側鎖基の3次元的提示を包含する。当業者は、配列に適度な差を有する(例えば、境界部における差および/または一部の配列代替部を有するが、なお免疫原性特性は保持されている)配列を容易に同定することができよう。例えば、その境界部が、本明細書において指定したドメイン境界部の指定したアミノ酸配列のいずれかの末端付近(例えば、約15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸6アミノ酸、5アミノ酸4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、または1アミノ酸以内)にある配列は、本発明による関連するドメインを含むとみなされ得る。したがって、本発明では、ドメイン指定に近似した残基を含めるためのインフルエンザ抗原の配列の使用を意図する。例えば、本発明の抗原として、HAのドメイン(1つまたは複数)が操作され、インフレーム融合タンパク質として発現された(本明細書の実施例を参照のこと)。さらに、本明細書に示す構築物および方法を用いて、インフルエンザ抗原(例えば、HA、NA、M2)のアミノ酸配列の免疫原性である任意のドメイン、部分ドメインまたは領域が生成され得ることが認識される。さらには、インフルエンザ抗原を産生するために、ドメインまたはサブドメインを独立して、および/または連続的に結合することができる。
【0027】
例示的な抗原として、本発明者らは、特定のサブタイプの血球凝集素、ノイラミニダーゼおよびM2由来の配列を用い、これを本明細書において詳細に説明する。インフルエンザウイルスの種々のサブタイプが存在し、新たなサブタイプとして同定され続ける。当業者には、本明細書に示す方法および組成物を、さらなるサブタイプの配列の使用に適し得ることが理解される。かかる変異は、本明細書に示す方法および組成物において意図され、包含される。
【0028】
熱安定性タンパク質とのインフルエンザポリペプチド融合体
本発明の特定の態様では、熱安定性タンパク質に作動可能に連結されたインフルエンザタンパク質(またはその断片もしくは変異体)を構成する融合ポリペプチドを含むインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を提供する。本発明の融合ポリペプチドは、当該技術分野で知られた任意の利用可能な発現系において産生される得る。特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、植物またはその一部分(例えば、植物、植物細胞、根、芽など)において産生される。
【0029】
ヒトまたは動物の細胞内に天然に見られない酵素または他のタンパク質は、本発明の融合ポリペプチドにおける使用に特に適切である。融合させると、融合体生成物に熱安定性が付与される熱安定性タンパク質が有用である。熱安定性により、産生されるタンパク質がコンホメーションを維持すること、および産生されるタンパク質を室温で維持することが可能になる。この特徴により、容易で時間効率がよく、コスト効率のよい融合ポリペプチドの回収が助長される。本発明において有用な代表的な熱安定性酵素ファミリーは、グルカノヒドロラーゼファミリーである。これらの酵素は、混合型連結多糖内の1,3−β連結部に隣接する1,4−βグルコシド結合を特異的に切断する(Hahnら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、91:10417)。かかる酵素は、穀類、例えばオートムギおよびオオムギに見られ、また、いくつかの真菌および細菌種、例えば、C.サーモセラムにも見られる(Goldenkovaら、2002、Mol.Biol.、36:698)。したがって、本発明の融合ポリペプチドにおける使用に望ましい熱安定性タンパク質としては、グリコシダーゼ酵素が挙げられる。例示的な熱安定性のグリコシダーゼタンパク質としては、表Aに示すものから選択されるGenBank受託番号で示されるものが挙げられ、その各々の内容は、各参照番号のGenBank受託情報全体の組み込みによる引用により本明細書に組み込まれる。本発明の融合タンパク質に有用な例示的な熱安定性酵素としては、クロストリディウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)P29716、ブレビバシラス・ブレビス(Brevibacillus brevis)P37073、およびロドサーマス・マリナス(Rhodthermus marinus)P45798(これらは各々、そのGenBank受託番号を引用することにより本明細書に組み込まれる)が挙げられる。実施例に示した代表的な融合タンパク質は、クロストリディウム・サーモセラムから単離された修飾型の熱安定性酵素を使用したものであるが、任意の熱安定性タンパク質が、本発明に従って同様に使用され得る。
【0030】
表A:熱安定性グリコシダーゼタンパク質
【表A】
【0031】
本発明による融合タンパク質およびポリペプチドを設計する場合、もちろん、その抗原の免疫原性を保存することが望ましい。さらには、本発明の特定の態様において、融合タンパク質の熱安定性をもたらす構築物を提供することが望ましい。この特徴により、容易で時間効率がよく、コスト効率のよい標的抗原の回収が助長される。特定の態様では、さらなる利点、例えば、免疫原性の増進、多数の抗原決定基の組込みの可能性、ワクチン接種被験体に事前の免疫原性曝露を欠く可能性をもたらす抗原融合パートナーが選択され得る。さらに有益な特質の目的の融合ペプチドとしては、1種類以上の抗原の組込み操作の容易性をもたらすタンパク質、ならびにワクチン調製物の産生、精製および/または製剤化の容易性をもたらす可能性を有するタンパク質が挙げられる。当業者には、このような有益な各特性は、3次元的提示によって影響され得ることが認識される。したがって、免疫性または優先的特質の保存は、例えば、融合パートナーの選択および/または融合位置の選択(例えば、N末端、C末端、内部、その組合せ)に影響を及ぼし得る。あるいはまたさらに、優先性は、融合のために選択されるセグメントの長さ(それが抗原の長さであれ)、または選択される融合パートナーの長さに影響を及ぼし得る。
【0032】
本発明者らは、さまざまな抗原と熱安定性タンパク質との成功した融合を実証した。例えば、本発明者らは、熱安定性の担体分子LicB(リケナーゼともいう)を、融合タンパク質の産生に使用した。LicBは、クロストリディウム・サーモセラム(GenBank受託:X63355[gi:40697])由来の1,3−1,4−βグルカナーゼ(LicB)である。LicBは、球状タンパク質ファミリーに属する。LicBの3次元構造に基づくと、そのN−およびC−末端は、活性ドメインのすぐ近くの表面上で互いに近接して存在する。また、LicBは、活性ドメインから遠くに存在する表面上に露出したループ構造を有する。本発明者らは、タンパク質の該ループ構造ならびにN−およびC−末端が、インフルエンザ抗原ポリペプチドの挿入部位として使用され得るような構築物を作製した。インフルエンザ抗原ポリペプチドは、N−もしくはC−末端融合物として、または表面ループ内への挿入物として発現され得る。重要なことに、LicBはその酵素活性を、低pHおよび高温(75℃まで)で維持している。したがって、担体分子としてのLicBの使用は、例えば、おそらく標的の特異的免疫原性の増進、多くのワクチン決定基の組込みの可能性、ならびに経鼻、経口または非経口で送達され得るワクチンの直接的な製剤化という利点に寄与する。さらにまた、植物内でのLicB融合体の産生により、動物またはヒトの病原体による汚染のリスクが低減されるはずである。本明細書に示す例を参照のこと。
【0033】
インフルエンザ抗原を含む本発明の融合タンパク質は、任意のさまざまな発現系(インビトロ系およびインビボ系の両方を含む)において産生され得る。当業者には、多くの場合、特定の発現系のための核酸配列の最適化が望ましいことが容易に認識される。例えば、本明細書に示した例示において、植物内でのインフルエンザ抗原LicB融合体の発現に最適化された配列を示している。実施例1を参照のこと。したがって、本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)融合タンパク質(1種類または複数種)およびその断片をコードする任意の関連する核酸が、本発明の核酸構築物内に包含されることが意図される。
【0034】
植物系内での産生には、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類または複数種)またはその断片もしくは融合体)を発現するトランスジェニック植物が使用され得る。あるいはまたさらに、トランスジェニック植物は、当該技術分野でよく知られた方法を使用し、安定な産生作物を作製するために生成され得る。さらに、一過性発現系を利用した植物が、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生に使用され得る。植物発現系を用いる場合、植物において遺伝子導入または一過性発現のいずれが使用されてようと、任意の核内発現、葉緑体内発現、ミトコンドリア内発現またはウイルス系発現が、所望の抗原に対する該系の適用可能性に従って利用され得る。さらにまた、本発明による抗原および融合タンパク質の産生のためのさらなる発現系を使用してもよい。例えば、哺乳動物の発現系(例えば、哺乳動物細胞株(例えば、CHOなど))、細菌発現系(例えば、大腸菌)、昆虫発現系(例えば、バキュロウイルス)、酵母発現系、およびインビトロ発現系(例えば、網状ライセート)が、本発明の抗原および融合タンパク質の発現に使用され得る。
【0035】
インフルエンザ抗原の産生
本発明によれば、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)、その断片、変異体および/または融合体)は、任意の望ましい系において産生させ得る。産生は植物系に限定されない。ベクター構築物および発現系は、当該技術分野でよく知られており、本明細書に示すインフルエンザ抗原の使用の組込みに適合させ得る。例えば、インフルエンザ抗原(断片、変異体および/または融合体を含む)は、既知の発現系、例えば、哺乳動物細胞系、遺伝子導入動物、微生物発現系、昆虫細胞系および植物系(例えば、遺伝子導入および一過性の植物系)において産生させ得る。特に、インフルエンザ抗原を融合タンパク質として産生させる場合、かかる融合タンパク質を非植物系内で産生させるのが望ましいことがあり得る。
【0036】
本発明の一部の実施形態において、インフルエンザ抗原は、望ましくは、植物系内で産生される。植物は、遺伝子操作が比較的容易であり、ヒト体液、動物細胞株、組換え微生物および遺伝子導入動物などの択一的供給源に渡り、いくつかの利点を有する。植物は、哺乳動物のものと類似した精巧なタンパク質翻訳後修飾機構を有する(しかし、植物と哺乳動物との間にはグリコシル化パターンにいくらか差があることに注意されたい)。これにより、植物組織内での生物活性試薬の産生が可能になる。また、植物は、精巧な施設を必要とすることなく、非常に多量のバイオマスを経済的に生成させ得る。さらに、植物は、動物病原体による汚染に供されない。リポソームおよびマイクロカプセルと同様、植物細胞は、胃腸管への抗原の通過に対する保護をもたらすことが期待される。
【0037】
植物は、種々の産生系の使用による異種タンパク質の産生に使用され得る。かかる系の一例としては、標的生成物をコードする遺伝子が植物のゲノム内に永続的に組み込まれたトランスジェニック植物/遺伝子修飾植物の使用が挙げられる。遺伝子導入系により、作物産生系がもたらされ得る。さまざまな外来タンパク質、例えば、多くの哺乳動物起源の抗原および多くのワクチン候補抗原が、トランスジェニック植物において発現され、機能的活性を有することが示されている(Tacketら、2000、J.Infect.Dis.、182:302;and Thanavalaら、2005、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、102:3378)。さらに、B型肝炎主要表面抗原を発現するトランスジェニック植物を、非免疫処置ヒト志願者に投与すると、免疫応答の発生がもたらされた(Kapustaら、1999、FASEBJ.、13:1796)。
【0038】
植物においてポリペプチドを発現させるための一つの系では、外来配列を発現(例えば、一過性発現)するように操作された植物ウイルスベクターが使用される。このアプローチにより、急速産生系として健常非トランスジェニック植物の使用が可能になる。したがって、遺伝子操作された植物および組換え植物ウイルスに感染させた植物は、特定の目的のタンパク質を速やかに生成および産生するための「グリーンファクトリー」として働き得る。植物ウイルスは、自身を外来タンパク質産生のための発現ベクターとして魅力的にするという一定の利点を有する。植物RNAウイルスのいくつかの構成員が、良好に特性決定されており、遺伝子操作を容易にするために、感染性cDNAクローンが利用可能である。感染性のウイルスの遺伝物質は、易感染性の宿主細胞内に進入すると、高レベルまで複製され、速やかに植物全体に拡延する。植物ウイルス発現ベクターを用いて標的ポリペプチドを産生させるためには、いくつかのアプローチがあり、ウイルスゲノム内への標的ポリペプチドの組込みが挙げられる。アプローチの一例は、細菌、動物または植物に感染して抗原性ペプチドの担体分子としての機能を果たすウイルスの外被タンパク質の操作を伴う。かかる担体タンパク質は、その表面上に所望の抗原エピトープを表示する組換えウイルス様粒子を集合させるおよび形成する可能性を有する。このアプローチでは、ワクチン候補の微粒子状の性質により、植物組織からの容易でコスト効率のよい回収が助長されるため、ワクチン候補の時間効率のよい産生が可能になる。さらなる利点としては、標的特異的免疫原性の増進、多くのワクチン決定基の組込みの可能性、ならびに経鼻、経口または非経口で送達され得るワクチンへの容易な製剤化が挙げられる。一例として、外被タンパク質に融合されたウイルスエピトープを担持する組換え植物ウイルス粒子を含有するホウレンソウの葉は、投与すると、免疫応答がもたらされた(Modelskaら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、95:2481;およびYusibovら、2002、Vaccine、19/20:3155)。
【0039】
植物発現系
異種核酸の組込みおよび/または維持が行なわれ易く、異種タンパク質を産生し得る任意の植物が、本発明に従って使用され得る。一般に、多くの場合、規定の条件下、例えば、温室および/または水性系で生長させ易い植物を用いることが望ましい。典型的には人間もしくは家畜動物が消費しない、および/または典型的にはヒト食物連鎖の一部ではないため、発現されるポリヌクレオチドが不要に摂取され得る懸念なく外部で生長させ得る植物を選択することが望ましい。しかしながら、一部の実施形態では、食用植物を用いることが望ましい。特別な実施形態では、発現されたポリペプチドが植物の食用部分に蓄積される植物を用いることが望ましい。
【0040】
多くの場合、特定の望ましい植物特性は、発現させる具体的なポリヌクレオチドによって決定される。数少ないが一例を示すと、ポリヌクレオチドが、高収率で産生されるタンパク質をコードしている場合(多くの場合がそうであり、例えば、抗原タンパク質を発現させる場合)、多くの場合、比較的高いバイオマスを有する植物(例えば;タバコ、これは、ウイルス感染に対して高度に易感染性であり、生長期間が短く、ヒト食物連鎖に存在しないというさらなる利点を有する)を選択することが望ましい。ポリヌクレオチドが、完全な活性に特定の翻訳後修飾が必要とされる(または該修飾によって阻害される)抗原タンパク質をコードしている場合、特定の植物種において、関連する修飾(例えば、特定のグリコシル化)を行うことができること(またはできないこと)によって、選択が指示され得る。例えば、植物は、特定の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)が行なわれ得るものであるが、植物は、哺乳動物の翻訳後修飾に見られるシアレーションパターンをもたらさない。したがって、植物の抗原産生により、択一的な系で産生される同一のタンパク質の配列と異なる存在体の生成がもたらされ得る。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、作物植物または作物関連植物が用いられる。特定の具体的な実施形態では、食用植物が用いられる。
【0042】
本発明による使用のための植物としては、被子植物、苔植物類(例えば、苔類、蘚類など)、シダ植物(例えば、シダ類、ツクシ類、ヒカゲノカズラ類)、裸子植物(例えば、針葉類、ソテツ類、イチョウ類、マオウ類)、および藻類(例えば、緑藻網、褐藻網、紅藻網、藍藻網、黄緑藻網、およびウーグレナ藻網)が挙げられる。例示的な植物は、マメ科の構成員(マメ科(Fabaceae)植物;例えば、エンドウ豆、アルファルファ、大豆);イネ科(Gramineae)(イネ科(Poaceae);例えば、トウモロコシ、小麦、米);ナス科、特にリコペリシコン属のもの(例えば、トマト)、ナス属(例えば、ジャガイモ、ナス)、トウガラシ属(例えば、コショウ)、またはタバコ(例えば、タバコ);セリ科、特にダウクス属のもの(例えば、ニンジン)、アピウム属(例えば、セロリ)、またはミカン科(例えば、オレンジ);キク科、特にアキノノゲシ属(例えば、レタス);アブラナ科、特にアブラナ属または白カラシ属である。特定のある態様において、本発明の植物は、アブラナ属またはシロイヌナズナ属の植物であり得る。一部の例示的なアブラナ科の構成員としては、アブラナ(Brassica campestris)、アビシニアカラシ(B.carinata)、アザミナ(B.juncea)、スウェーデンカブ(B.napus)、クロガラシ(B.nigra)、カイラン(B.oleraceae)、ハリゲナタネ(B.tournifortii)、シロガラシ(Sinapis alba)、およびダイコン(Raphanus sativus)が挙げられる。形質転換に修正可能であり、発芽種苗(sprouted seedling)として食用である一部の好適な植物としては、アルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシ、ホウレンソウ、ニンジン、ビーツ、タマネギ、ニンニク、セロリ、ルーバーブ、葉菜植物(キャベツまたはレタス、オランダカラシまたはコショウソウなど)、ハーブ(パセリ、ミントまたはクローバーなど)、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズマメ、食用花(ヒマワリなど)などが挙げられる。
【0043】
植物へのベクターの導入
一般に、ベクターは植物に、既知の手法に従って送達され得る。例えば、ベクターそれ自体を直接、植物に適用してもよい(例えば、表皮剥脱接種、機械化噴霧接種、真空浸潤、パーティクル・ボンバードメント、またはエレクトロポレーションによって)。あるいはまたさらに、ビリオンを調製してもよく(例えば、既に感染させた植物から)、それを既知の手法に従って他の植物に適用してもよい。
【0044】
種々の植物種に感染する多種多様なウイルスが知られており、本発明によるポリヌクレオチド発現に使用され得る(例えば、The Classification and Nomenclature of Viruses、「Sixth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses」(Murphyら編)、Springer Verlag:New York、1995(その全内容は、引用により本明細書に組み込まれる);Griersonら、Plant Molecular Biology、Blackie、London、pp.126−146、1984;Gluzmanら、Communications in Molecular Biology:Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、pp.172−189、1988;およびMathew、Plant Viruses Online(http://image.fs.uidaho.edu/vide/を参照のこと)。本発明の特定のある実施形態では、単一のウイルスベクターを植物細胞に送達するのではなく、一緒になってウイルスベクター(1つまたは複数)の複製(ならびに任意選択で、細胞間および/または長距離移動)を可能にする多くの異なるベクターを送達する。そのタンパク質の一部または全部が、トランスジェニック植物のゲノムにコードされ得る。本明細書においてさらに詳細に記載した特定のある態様において、このような系には、1種類以上のウイルスベクター成分が含まれる。
【0045】
広範な植物型に容易に感染するが、感染性が広がるリスクはほとんどまたは全くない系を得るために2種類の異種植物ウイルスの成分を含むベクター系。例示的な系は、以前に報告されている(例えば、PCT公開公報WO00/25574および米国特許公開公報第2005/0026291号(これらはともに、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本明細書に記載のように、本発明の特別な態様では、ウイルスベクターは植物(例えば、植物、植物の一部分、芽など)に、例えば、浸潤または機械的接種、噴霧などにより適用される。感染が植物へのウイルスゲノムの直接適用によって行なわれる場合、任意の利用可能な手法を用いて該ゲノムが調製され得る。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスはssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムDNAコピーの転写またはRNAコピーの複製によって、インビボまたはインビトロのいずれかで調製され得る。使い易いインビトロ転写系(例えば、SP6、T7、網状赤血球ライセートなど)が容易に入手可能であること、また、RNAベクターのDNAコピーの維持が簡便であることを考慮すると、本発明のssRNAベクターは、多くの場合、インビトロ転写によって特にT7またはSP6ポリメラーゼを用いて調製されることが予測される。
【0046】
本発明の特定のある実施形態では、単一のウイルスベクター型を植物細胞に導入するのではなく、多くの異なるウイルスベクターを導入する。かかるベクターは、例えば、複製、細胞間移動および/または長距離移動などの機能に関して互いにトランス対補体であり得る。ベクターは、本発明のインフルエンザ抗原をコードする異なるポリヌクレオチドを含有するものであり得る。1種類以上のインフルエンザ抗原をコードする多くのポリペプチドを発現する植物(1種類または複数種)またはその一部分の選択は、単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドについて上記のようにして行なわれ得る。
【0047】
植物組織発現系
上記のように、本発明によれば、インフルエンザ抗原は、任意の望ましい系内で産生され得る。ベクター構築物および発現系は、当該技術分野でよく知られており、本明細書に示すインフルエンザ抗原の使用の組込みに適し得る。例えば、トランスジェニック植物の産生は、既知であり、構築物の作製および植物産生は、当該技術分野で知られた手法に従って適し得る。一部のある実施形態では、植物における一過性発現系が望ましい。このような系の2つの例として、クローン根およびクローン植物系およびその誘導体の産生、ならびに発芽種苗系の産生が挙げられる。
【0048】
クローン植物
クローン根は、RNAウイルス発現ベクターを維持し、標的タンパク質を安定的に、根全体において、および多数回の継代培養で均一に長期間にわたって産生する。植物とは対照的に、標的遺伝子が細胞間または長距離移動中に組換えによって排除された場合、根の培養物では、ウイルスベクターの完全性が維持され、経時的に産生される標的タンパク質のレベルは、初期スクリーニング中に観察されるものと同様である。クローン根により、抗原およびワクチン組成物の経口製剤のための異種タンパク質材料の容易な産生が可能になる。抗原(例えば、本発明の抗原タンパク質)の産生に有用な植物由来のさまざまなクローン存在体を作製するための方法および試薬は、以前に報告されており、当該技術分野で知られている(例えば、PCT公開公報WO 05/81905(これは、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。クローン存在体としては、抗原(例えば、本発明の抗原タンパク質)を産生し得るクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株およびクローン植物が挙げられる。本発明は、さらに、種々の植物組織(例えば、根、葉)に由来するクローン細胞株、および単一細胞(クローン植物)に由来する完全体の植物における抗原ポリヌクレオチドおよびポリペプチド産物の発現のための方法および試薬を提供する。かかる方法は、典型的には、種々の型の植物ウイルスベクターの使用に基づく。
【0049】
例えば、一態様において、本発明は、(i)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを、植物またはその一部分に導入する工程;および(ii)1種類以上のクローン根株を植物から作製する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株を得る方法を提供する。クローン根株は、例えば、植物または植物の一部分(例えば、採取した葉片)を、毛状根の形成を引き起こすアグロバクテリウム(例えば、A.リゾゲネス)に感染させることにより作製され得る。クローン根株は、ウイルスを維持する株、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する株などを同定するために種々の様式でスクリーニングされ得る。本発明は、さらに、クローン根株(例えば、本発明の方法に従って作製されるクローン根株)を提供し、さらに、クローン根株を用いて、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチドを発現させる方法、およびそのポリペプチド(1種類または複数種)を産生させる方法を包含する。
【0050】
本発明は、さらに、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)細胞を、根細胞増殖に適した条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根細胞株を作製する方法を提供する。本発明は、クローン根細胞株ならびにクローン根細胞株を用いたポリヌクレオチドの発現方法およびポリペプチドの産生方法を提供する。
【0051】
一態様において、本発明は、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)細胞を培養状態で、植物細胞増殖に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作製する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドウイルスベクターを、培養状態で維持された植物細胞株の細胞内に導入する工程;および(ii)該ウイルスベクターを含有する細胞を富化する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株の作製方法を提供する。富化は、例えば、(i)一部の細胞を培養物から取り出し、(ii)取り出した細胞を、細胞濃度が低下するように希釈し、(iii)希釈された細胞を増殖させ、(iv)該ウイルスベクターを含有する細胞についてスクリーニングすることにより行なわれ得る。クローン植物細胞株は、本発明によるインフルエンザ抗原の作製に使用され得る。
【0052】
本発明には、その細胞が、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含有するクローン植物を作製するためのいくつかの方法が含まれる。例えば、本発明は、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)放出された細胞を植物の形成に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作製する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン植物細胞株を作製する工程;および(ii)細胞を植物の形成に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作製する方法を提供する。一般に、本発明によるクローン植物は、本発明のインフルエンザ抗原をコードする任意のポリヌクレオチドを発現するものであり得る。かかるクローン植物は、抗原ポリペプチドの作製に使用され得る。
【0053】
上記のように、本発明は、クローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株(例えば、葉、茎などに由来する細胞株)、およびクローン植物において、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする1種類または複数種類のポリヌクレオチドを発現させるための系を提供する。本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドは、植物ウイルスベクターを用い、そのゲノムが、プロモーターに作動可能に連結された(すなわち、その制御下にある)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む祖先植物細胞内に導入される。クローン根株またはクローン植物細胞株は、任意のいくつかの手法(さらに後述する)に従ってウイルスを含有する細胞から樹立される。植物ウイルスベクターまたはその一部分は植物細胞内に、感染、ウイルス転写物または感染性cDNAクローンの接種、エレクトロポレーション、T−DNA媒介性遺伝子導入などによって導入され得る。
【0054】
以下のセクションに、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株およびクローン植物の作製方法を記載する。「根株」は、根株により実際に根様構造または根がもたらされるのに対し、根細胞株は、根様構造を形成しない根細胞からなるという点で、「根細胞株」と区別される。用語「株」の使用は、その株の細胞が増殖し、遺伝情報を子孫細胞に伝え得ることを示すことが意図される。細胞株の細胞は、典型的には、そのままの植物に見られるものなどの組織化された構造の一部ではなく、培養状態で増殖させる。用語「根株」の使用は、根構造内の細胞が、完全な植物の一部ではなく、増殖し得ることを示すことが意図される。用語「植物細胞」には根細胞が包含されることに注意されたい。しかしながら、根株および根細胞株を作製するための本発明の方法を、非根組織から植物細胞株を直接作製する(クローン根株またはクローン根株由来のクローン植物からのクローン植物細胞株の作製とは反対)ために使用されるものと区別するため、用語「植物細胞」および「植物細胞株」は、本明細書で用いる場合、一般的には、非根植物組織からなる細胞および細胞株をいう。植物細胞は、例えば、葉、茎、芽、花の部分などであり得る。種子は、本明細書において誘導されるようにして作製されたクローン植物に由来のものであり得ることに注意されたい。かかる種子は、ウイルスベクターを含有するものであり得、かかる種子から得られる植物も同様である。種子ストックを得るための方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、米国特許公開公報第2004/0093643号を参照のこと)。
【0055】
クローン根株
本発明は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの発現を指令するのに植物ウイルスベクターを用いる、クローン根株の作製のための系を提供する。プロモーターに作動可能に連結された本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む1種類以上のウイルス発現ベクターを、植物またはその一部分に、任意のさまざまな既知の方法に従って導入する。例えば、植物葉に、ウイルス転写物が接種され得る。ベクターそれ自体を直接、植物に適用してもよい(例えば、表皮剥脱接種、機械化噴霧接種、真空浸潤、パーティクル・ボンバードメント、またはエレクトロポレーションによって)。あるいはまたさらに、ビリオンを調製してもよく(例えば、既に感染させた植物から)、それを既知の手法に従って他の植物に適用してもよい。
【0056】
感染が植物へのウイルスゲノムの直接適用によって行なわれる場合、任意の利用可能な手法を用いてウイルスゲノムが調製され得る。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスはssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムDNAコピーの転写またはRNAコピーの複製によって、インビボまたはインビトロのいずれかで調製され得る。使い易いインビトロ転写系(例えば、SP6、T7、網状赤血球ライセートなど)が容易に入手可能であること、また、RNAベクターのDNAコピーの維持が簡便であることを考慮すると、本発明のssRNAベクターは、多くの場合、インビトロ転写によって特にT7またはSP6ポリメラーゼを用いて調製されることが予測される。感染性cDNAクローンを使用してもよい。アグロバクテリウムによる媒介性遺伝子導入を使用し、ウイルス核酸(例えば、ウイルスベクター(ウイルスゲノム全体またはその一部分のいずれか)など)が植物細胞に、例えばアグロインフィルトレーションを用いて当該技術分野で知られた方法に従って導入され得る。
【0057】
次いで、植物または植物の一部分は、ウイルス転写物の複製に適した条件下に維持(例えば、培養または増殖)され得る。本発明の特定のある実施形態において、ウイルスは、最初に接種した細胞を越えて(例えば、細胞間で局所的に、および/または最初に接種した葉から別の葉に全体的に)拡延する。しかしながら、本発明の一部のある実施形態では、ウイルス拡延しない。したがって、ウイルスベクターは、機能的MPおよび/またはCPをコードする遺伝子を含有するものであり得るが、かかる遺伝子の一方または両方を欠くものであってもよい。一般に、ウイルスベクターは、植物またはその一部分の多くの細胞内に導入される(感染する)。
【0058】
植物へのウイルスベクターの導入後、葉を採取する。一般に、葉は、ウイルスベクターの導入後の任意の時点で採取され得る。しかしながら、植物へのウイルスベクターの導入後、植物をある一定期間(例えば、ウイルスの複製に充分な期間および任意選択で、最初に導入された細胞からのウイルスの拡延に充分な期間)、維持することが望ましい場合もあり得る。クローン根の培養物(または多重培養物)は、例えば、以下にさらに説明する既知の方法によって調製される。
【0059】
一般に、任意の利用可能な方法を用いて、ウイルスベクターを導入した植物または植物組織からクローン根の培養物が調製され得る。かかる方法の一例では、ある種の細菌プラスミド内に存在する遺伝子が使用される。このようなプラスミドは、多種多様な生物体に感染し、DNAを転移させる種々の種アグロバクテリウムに見られる。一例として、アグロバクテリウム属は、多くの多様な組の植物型(例えば、数多くの双子葉植物および単子葉植物の被子植物種および裸子植物)に、DNAを転移させることができる(Gelvinら、2003、Microbiol.Mol.Biol.Rev.、67:16およびそこに挙げられた参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。植物細胞の遺伝的形質転換の分子的根拠は、細菌からの転移と、植物の核内ゲノムへの種々のアグロバクテリウム種に存在する大きな腫瘍誘導性(Ti)または発根性(rhizogenic)(Ri)プラスミド領域の組込みである。この領域は、プラスミド内に存在する場合はT−領域と呼ばれ、プラスミドから切除された場合はT−DNAと呼ばれる。一般的に、単鎖T−DNA分子は、天然のアグロバクテリウム感染において植物細胞内に転移され、最終的にゲノム内に組み込まれる(二本鎖形態で)。Tiプラスミドを主体とする系は、植物への外来遺伝物質の導入およびトランスジェニック植物の作製に広く使用されている。
【0060】
種々のアグロバクテリウム種による植物の感染およびT−DNAの導入は、いくつかの効果を有する。例えば、A.ツメファシエンスは、クラウンゴール病を引き起こし、一方、A.リゾゲネスは、感染部位において、「毛状根病」として知られる状態の毛状根の発生を引き起こす。各根は、単一の遺伝的形質転換細胞から生じる。したがって、根の根細胞はクローンであり、各根は、細胞のクローン集団である。A.リゾゲネス感染によってもたらされる根は、高い生長速度と遺伝的安定性を特徴とする(Giriら、2000、Biotechn.Adv.、18:1、およびそこに挙げられた参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる))。また、かかる根は、遺伝的に安定な植物を再生する能力を有する(Giriら、2000、前掲)。
【0061】
一般に、本発明には、植物細胞からの根の形成を誘導する能力を有する任意の株のアグロバクテリウム(例えば、任意のA.リゾゲネス株)の使用が包含される。上記のように、Riプラスミドの一部分(Ri T−DNA)は、毛状根病の原因を担う。Riプラスミドのこの部分の植物細胞への導入は、Riプラスミドを保有するアグロバクテリウムによる感染によって簡便に行なわれ得るが、本発明には、関連する領域を植物細胞内に導入する択一的な方法の使用が包含される。かかる方法としては、植物細胞内に遺伝物質を導入する任意の利用可能な方法、例えば限定されないが、粒子銃、エレクトロポレーション、PEG媒介性DNA取込み、Ti系ベクターなどが挙げられる。Ri T−DNAの関連する領域は植物細胞内に、ウイルスベクターの使用によって導入され得る。Ri遺伝子は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含有する同じベクター内に含めてもよく、異なるウイルスベクター(本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターと同じ型であっても異なる型であってもよい)に含めてもよい。毛状根の発生には、Ri T−DNA全体が必要とされるわけではないこともあり得、本発明には、当該技術分野で知られているような、根形成を誘導するのに充分な遺伝物質を含有していれば、Ri T−DNAの一部分の使用が包含されることに注意されたい。さらなる遺伝物質、例えば、Riプラスミド内に存在するがT−DNAには存在しない遺伝子(特に、その発現産物によって植物細胞DNA内へのT−DNAの組込みが助長される遺伝子)を、本発明に従って植物細胞に導入してもよい。
【0062】
本発明の特定の実施形態によるクローン根株を調製するため、採取した葉部分をA.リゾゲネスと、感染および形質転換に適した条件下で接触させる。葉部分を培養状態で維持し、毛状根を発生させる。各根はクローンである、すなわち、根の細胞は、Ri T−DNAが導入された単一の祖先細胞に由来している。本発明によれば、一部のかかる祖先細胞は、ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、かかる祖先細胞に由来する根の細胞は、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン根の娘細胞に受け継がれるため、根内のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターをその根中に維持するものである必要はないことに注意されたい。個々のクローン毛状根を葉部分から取り出し、さらに培養してもよい。かかる根を、本明細書では根株ともいう。単離したクローン根は、単離後、継続して培養される。
【0063】
さまざまな異なるクローン根株が、本発明の方法を用いて作製された。これらの根株は、本発明のインフルエンザ抗原をコードする(例えば、インフルエンザポリペプチド(1種類または複数種)、またはその断片もしくは融合タンパク質をコードする)ポリヌクレオチド(1種類または複数種)を含有するウイルスベクターを用いて作製した。根株をウエスタンブロットによって試験した。根株は、種々のポリペプチドのさまざまな異なる発現レベルを示した。高発現を示す根株を選択し、さらに培養した。続いて、これらの根株を再度試験すると、長期間にわたって高レベルの発現を維持していることが示され、これは、安定性を示す。発現レベルは、クローン根株を作製するのに用いたのと同じウイルスベクターに感染させたそのままの植物における発現と同等またはそれ以上であった。また、根株の発現の安定性は、同じウイルスベクターに感染させた植物で得られるものより優れていた。かかるウイルス感染植物の80%までが、2〜3回の継代後に野生型に復帰した(かかる継代は、植物に転写物を接種すること、感染させて(局所または全体的)樹立させること、葉試料を採取すること、および新たな植物に接種を行ない、続いて、これを発現について試験することを伴うものであった)。
【0064】
根株を、以下にさらに説明するように、大規模で培養し、本発明の抗原ポリペプチドを生成させてもよい。クローン根株(およびクローン根株由来の細胞株)は、一般的に、根および植物細胞の培養に典型的に使用される種々の化合物(例えば、植物生長ホルモン(オーキシン、サイトカインなど))を含有しない培地中で維持できることに注意されたい。この特徴により、組織培養に伴う費用が大きく低減され、本発明者らは、該特徴が、植物を用いたタンパク質作製の経済的な実現可能性に大いに寄与すると予測する。
【0065】
任意のさまざまな方法を用いて、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチド(1種類または複数種)を発現するクローン根が選択され得る。ウエスタンブロット、ELISAアッセイなどが、コードポリペプチドの検出に使用され得る。GFPなどの検出可能なマーカーの場合は、択一的な方法、例えば、視覚的スクリーニングが行なわれ得る。選択可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターが使用される場合、適切な選択が課され得る(例えば、葉材料および/またはこれに由来する根が、適切な抗生物質の存在下または栄養条件下で培養され、生存根が同定および単離され得る)。ある種のウイルスベクターは、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする2種類以上のポリヌクレオチド(例えば、異なるポリペプチドをコードする2種類以上のポリヌクレオチド)を含有する。これらのうちの一方が選択可能または検出可能なマーカーである場合、マーカーを選択するまたはその発現を検出することにより選択または検出されたクローン根は、第2のポリヌクレオチドも発現する高い確率を有する。また、特定のポリヌクレオチドを含有する根株のスクリーニングが、PCRおよび他の核酸検出方法を用いて行なわれ得る。
【0066】
あるいはまたさらに、クローン根株は、ウイルス感染の結果、局所病変を形成する宿主植物(例えば、過敏性宿主植物)に接種することにより、ウイルスの存在についてスクリーニングされ得る。例えば、5mgの根組織を50μlのリン酸塩バッファー中でホモジナイズし、これを、タバコ植物の単一の葉に接種するために使用し得る。ウイルスが根の培養物中に存在する場合、2〜3日以内に特徴的な病変が、感染させた葉に出現する。これは、根株が、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチド(標的遺伝子)を担持する組換えウイルスを含有することを意味する。局所病変が形成されない場合、ウイルスは存在せず、根株は陰性として却下される。この方法は、非常に時間効率およびコスト効率がよい。ウイルスの存在について最初にスクリーニングした後、ウイルスを含有する根は、二次スクリーニング、例えば、ウエスタンブロットまたはELISAに供され、高発現体が選択され得る。さらなるスクリーニング、例えば、急速生長、特定の培地中または特定の環境条件下での生長についてのスクリーニングなどが適用され得る。これらのスクリーニング方法は、一般に、本明細書に記載の任意のクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株および/またはクローン植物の開発に適用され得る。
【0067】
当業者には自明のように、ウイルスベクターを含有するクローン根株を作製するための本発明の方法の記載に対して、さまざまな変形が行なわれ得る。かかる変形は、本発明の範囲に含まれる。例えば、一般的には、ウイルスベクターをそのままの植物またはその一部分に、Ri T−DNA遺伝子の導入前に導入することが望ましいが、本発明の特定のある実施形態では、Ri−DNAが、ウイルスベクターの導入前に導入される。また、葉部分を採取し、次いでこれらを細菌に曝露するのではなく、そのままの植物をA.リゾゲネスと接触させることも可能である。
【0068】
ウイルスベクターを保有する植物またはその一部分の単一細胞からクローン根株を作製する他の方法を使用してもよい(すなわち、A.リゾゲネスまたはRiプラスミド由来の遺伝物質を使用しない方法)。例えば、ある種の植物ホルモンまたは植物ホルモンの組合せでの処理により、植物組織からの根の発生がもたらされることが知られている。
【0069】
クローン根株由来のクローン細胞株
上記のように、本発明は、その細胞がウイルスベクターを含有するクローン根株の作製方法を提供する。当該技術分野でよく知られているように、さまざまな異なる細胞株を、根から生成させ得る。例えば、根細胞株は、根から得られる個々の根細胞から、さまざまな既知の方法を用いて生成させ得る。かかる根細胞株は、根内の種々の異なる根細胞型から得られ得る。一般に、根材料を採取して解離させ(例えば、物理的に、および/または酵素的消化により)、個々の根細胞に解放し、次いで、これをさらに培養する。完全なプロトプラスト形成は、一般的には必要でない。所望により、根細胞は、単一の根細胞から根細胞株が得られるように、非常に薄い細胞濃度でプレーティングされ得る。この様式で誘導された根細胞株は、ウイルスベクターを含有するクローン根細胞株である。したがって、かかる根細胞株は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの安定な発現を示す。クローン植物細胞株は、同様にクローン根から、例えば、解離させた根細胞を適切な植物ホルモンの存在下で培養することにより得られ得る。スクリーニングおよび連続的な富化の繰り返しを用いて、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する細胞株が同定され得る。しかしながら、細胞株を誘導するクローン根株が、既に高レベル発現を示す場合は、かかるさらなるスクリーニングは不必要であり得る。
【0070】
クローン根株の場合と同様、クローン根細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン根細胞株の娘細胞に受け継がれるため、細胞間のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。クローン根細胞株は、後述のようにして、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの産生に使用され得る。
【0071】
クローン植物細胞株
本発明は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの直接的な発現に植物ウイルスベクターが使用される、クローン植物細胞株を作製するための方法を提供する。本発明の方法によれば、プロモーターに作動可能に連結された本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む1種類以上のウイルス発現ベクターが、細胞培養物の状態で維持された植物細胞株の細胞内に導入される。種々の植物型に由来するいくつかの植物細胞株が当該技術分野で知られており、その任意のものが使用され得る。新たに誘導される細胞株は、本発明の実施における使用のための既知の方法に従って作製され得る。ウイルスベクターは植物細胞株の細胞内に、任意のいくつかの方法に従って導入される。例えば、プロトプラストを作製し、次いで、ウイルス転写物を細胞内にエレクトロポレーションしてもよい。植物ウイルスベクターを植物細胞株の細胞内に導入するための他の方法を使用してもよい。
【0072】
本発明によるクローン植物細胞株の作製方法および植物細胞(例えば、プロトプラスト)の導入に適したウイルスベクターは、以下のようにして使用され得る。ウイルスベクターの導入後、植物細胞株は、組織培養状態で維持され得る。この期間中、ウイルスベクターが複製され得、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチド(1種類または複数種)が発現され得る。クローン植物細胞株は、例えば、連続的な富化プロセスにより、培養物に由来する。例えば、試料は、培養物から取り出され、任意選択で、細胞濃度が低くなるように希釈して、ペトリ皿に個々の液滴状態でプレーティングされ得る。次いで、液滴を維持し、細胞分裂させる。
【0073】
液滴には、培養物の初期密度および希釈物の量に応じて種々の数の細胞が含有され得ることが認識される。1回だけの富化後に本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン細胞株を得ることが所望される場合、細胞は、ほとんどの液滴が0または1つのいずれかの細胞を含有するように希釈され得る。しかしながら、各液滴に多くの細胞が存在し、次いで液滴をスクリーニングすると、発現細胞を含有するものが同定されるような濃度を選択することが、より効率的であり得る。一般に、任意の適切なスクリーニング手順が使用され得る。例えば、GFPなどの検出可能なマーカーの選択または検出が使用され得る。ウエスタンブロットまたはELISAアッセイが使用され得る。個々の液滴(100μl)は、このようなアッセイを実施するのに充分量より多くの細胞を含む。多数回の富化を行なうと、高発現細胞株が連続的に単離される。単一のクローン植物細胞株(すなわち、単一の祖先細胞に由来する集団)は、単一細胞クローニングのための標準的な方法を使用し、さらに限界希釈することによって生成され得る。しかしながら、個々のクローン株を単離する必要はない。多くのクローン細胞株を含む集団を、本発明の1種類以上のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの発現に使用してもよい。
【0074】
一般に、クローン根株の作製について上記した一定の考慮事項は、クローン植物細胞株の作製に当てはまる。例えば、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする1種類以上のポリヌクレオチドを含有する多様なウイルスベクターが使用され得、多くの異なるベクターの組合せであってもよい。同様のスクリーニング方法が使用され得る。クローン根株およびクローン根細胞株の場合と同様、クローン植物細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン植物細胞株の娘細胞に受け継がれるため、細胞内のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。クローン植物細胞株は、後述のようにして、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリペプチドの作製に使用され得る。
【0075】
クローン植物
クローン植物は、上記の種々の方法に従って作製されるクローン根、クローン根細胞株および/またはクローン植物細胞株から産生され得る。根、根細胞株および植物細胞株(例えば、本明細書に記載のクローン根株、クローン根細胞株およびクローン植物細胞株)からの植物の作製方法は当該技術分野でよく知られている(例えば、Peresら、2001、Plant Cell、Tissue、Organ Culture、65:37;および本明細書の別の箇所に挙げた植物分子生物学およびバイオテクノロジーに関する標準的な参考研究論文を参照のこと)。したがって、本発明は、(i)上記の任意の本発明の方法によりクローン根株、クローン根細胞株またはクローン植物細胞株を作製する工程;および(ii)クローン根株、クローン根細胞株またはクローン植物から完全体の植物を作製する工程を含む、クローン植物を作製する方法を提供する。クローン植物は、標準的な方法に従って繁殖および生長させ得る。
【0076】
クローン根株、クローン根細胞株およびクローン植物細胞株の場合と同様、クローン植物の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞分裂中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン植物の娘細胞に受け継がれるため、細胞間のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。
【0077】
芽および発芽種苗の植物発現系
本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生に有用な、さまざまな芽および発芽種苗を作製するための系および試薬は、以前に報告されており、当該技術分野で知られている(例えば、PCT公開公報WO04/43886(これは、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本発明は、さらに、インフルエンザ抗原を含有するバイオマスとしての、摂食可能であり得る発芽種苗を提供する。特定の態様において、バイオマスは、抗原含有組成物の消費に直接提供される。一部の態様では、バイオマスは、消費前に、例えばホモジネーション、破砕、乾燥または抽出により加工される。特定の態様において、インフルエンザ抗原は、バイオマスから精製され、医薬組成物に製剤化される。
【0078】
さらに、生で消費または採取され得る発芽種苗(例えば、アブラナ属の芽、発芽種苗)において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を産生させるための方法を提供する。特定の態様では、本発明は、種子を食用発芽種苗まで、収容型の調節可能な環境内(例えば、屋内、容器内など)で生長させることを伴う。種子は、インフルエンザ抗原をコードする発現カセットを含有し、その発現が外来誘導プロモーターによって駆動される遺伝子操作された種子であってもよい。例えば、光、熱、植物ホルモン、栄養素などによって誘導され得るさまざまな外来誘導プロモーターが使用され得る。
【0079】
関連する実施形態において、本発明は、アグロバクテリウム形質転換系を用い、インフルエンザ抗原の発現が誘導プロモーターによって駆動されるインフルエンザ抗原をコードする発現カセットで植物を形質転換することによって、最初に発芽種苗用の種子ストックを作製することにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発芽種苗において産生させる方法を提供する。遺伝子導入種子は、収容型の調節可能な環境内で生長させ、インフルエンザ抗原を発現するように誘導した形質転換植物から得られ得る。
【0080】
一部の実施形態では、発現が任意のウイルスプロモーターまたは誘導プロモーターによって駆動され得るインフルエンザ抗原をコードするウイルス系発現カセットに、発芽種苗を感染させることを伴う方法を提供する。発芽種苗は、収容型の調節可能な環境内で2〜14日間、または少なくとも、消費もしくは採取に充分なレベルのインフルエンザ抗原が得られるまで生長させる。
【0081】
本発明は、さらに、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発芽種苗において産生させるための系であって、温度調節器を備えた収容ユニットと、1種類以上のインフルエンザ抗原をコードし、その発現が構成的または誘導プロモーターによって駆動される発現カセットを含む発芽種苗とを含む系を提供する。系により、屋外環境または温室では制御不可能な特有の利点がもたらされ得る。したがって、本発明により、栽培者が、インフルエンザ抗原の発現の誘導に、正確に測定することが可能になる。これにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生の時間とコストが大きく低減され得る。
【0082】
特定の態様において、一過的にトランスフェクトされた芽は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするウイルスベクター配列を含有する。種苗は、芽におけるウイルス核酸の生成が可能となるような期間生長させた後、多くの複製のウイルスが産生される生長期間生長させる。それにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生がもたらされる。
【0083】
特定の態様において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする核酸を含有する遺伝子操作された種子または胚を発芽種苗段階まで、収容型の調節可能な環境内で生長させる。収容型の調節可能な環境は、種子が屋内で生長させ得る収容ユニットまたは部屋であり得る。収容型の調節可能な環境のあらゆる環境因子は制御され得る。芽は、生長に光を必要とせず、照明は高価であり得るため、遺伝子操作された種子または胚は発芽種苗段階まで、屋内で光の非存在下で生長させ得る。
【0084】
本発明の収容型の調節可能な環境内で調節され得る他の環境因子としては、温度、湿度、水、栄養素、ガス(例えば、O2もしくはCO2含量または空気循環)、化学薬品(小分子(例えば、糖類および糖誘導体)またはホルモン(例えば、植物ホルモンであるジベレリン酸またはアブシジン酸など)などが挙げられる。
【0085】
本発明の特定のある方法によれば、インフルエンザ抗原をコードする核酸の発現は、外来誘導プロモーターによって制御され得る。外来誘導プロモーターが生じ、内部刺激ではなく、外部刺激に応答して核酸の発現を増減する。いくつかの環境因子は、遺伝子操作された芽の発現カセットに担持された核酸発現の誘導因子として作用し得る。プロモーターは、熱誘導プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターであってもよい。例えば、熱ショックプロモーターとして使用すると、収容型の環境の温度が簡単に上昇し、核酸の発現が誘導され得る。他のプロモーターとしては、光誘導プロモーターが挙げられる。光誘導プロモーターは、収容型の調節可能な環境内の光を常にオンにしておくと、構成的プロモーターとして維持され得る。あるいはまたさらに、単に点灯することにより、核酸の発現を発育中の特定の時点でオンをすることができる。プロモーターは、化学的誘導プロモーターであってもよく、核酸の発現に使用される。このような実施形態によれば、単に化学薬品を種子、胚または種苗上に霧吹きまたは噴霧すると、核酸の発現が誘導され得る。噴霧および霧吹きは、意図する標的種子、胚または種苗上に正確に制御および指向され得る。収容型の環境には、化学薬品を意図する標的から離れるように分散させ得る風または空気流がなく、そのため、化学薬品は、意図する標的上に留まる。
【0086】
本発明によれば、発現を誘導する時間は、採取時点までに発芽種苗におけるインフルエンザ抗原の発現が最大限となるように選択され得る。特定の生長段階での胚における発現の誘導、例えば、発芽の特定の日数後の胚における発現の誘導により、採取時点でインフルエンザ抗原の最大の合成がもたらされ得る。例えば、発芽4日後のプロモーターからの発現の誘導では、3日後または5日後でのプロモーターからの発現の誘導より多くのタンパク質合成がもたらされ得る。当業者には、発現の最大化が常套的な実験手法によって達成され得ることが認識される。一部の方法では、発芽種苗は、発芽の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日後に採取される。
【0087】
発現ベクターが、誘導プロモーターの代わりに構成的プロモーターを有する場合、発芽種苗は、発芽種苗の形質転換の一定期間後に採取され得る。例えば、発芽種苗を発育の初期段階(例えば、胚段階)でウイルスにより形質転換した場合、発芽種苗は、発現が形質転換後に最大となる時点で、例えば、形質転換の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に採取され得る。芽は、種子の発芽に応じて、形質転換の1、2、3ヶ月後またはそれ以上に発育し得る。
【0088】
一般的には、インフルエンザ抗原の発現(1種類または複数種)が開始されると、種子、胚または発芽種苗を、充分なレベルのインフルエンザ抗原(1種類または複数種)が発現されるまで生長させる。特定の態様において、充分なレベルは、採取されたバイオマスを生で摂食されると、患者に対して治療的有益性をもたらし得るレベルである。あるいはまたさらに、充分なレベルは、バイオマスからインフルエンザ抗原を濃縮または精製することができ、患者に投与されると治療的有益性がもたらされる医薬組成物に製剤化することができるレベルである。典型的には、インフルエンザ抗原は、自然界の発芽種苗において発現されるタンパク質ではない。任意の速度において、インフルエンザ抗原は、典型的には、自然界の発芽種苗に存在し得るものより高い濃度で発現される。
【0089】
インフルエンザ抗原の発現が誘導されたら、発芽種苗段階まで生長を継続させ、該段階の時点で発芽種苗を採取する。発芽種苗は生きた状態で採取され得る。発芽種苗を生で採取することは、いくつかの利点(例えば、労力および破損が最小限であること)を有する。本発明の発芽種苗は水栽培で生長させ得、採取は、発芽種苗をその水栽培溶液から摘みあげるという単純なものになる。土壌は、本発明の発芽種苗の生長に必要とされないが、当業者が必要または望ましいと考えれば供給してもよい。芽は、土壌なしで生長され得るため、採取時点で発芽種苗材料の清浄は必要とされない。発芽種苗を直接その水栽培環境から、洗浄または擦ることなく採取できることにより、採取される材料の破損が最小限に抑えられる。植物の破損およびしおれは、アポトーシスを誘導する。アポトーシス中、ある種のタンパク質分解酵素が活性となり、これによって、発芽種苗において発現された医薬用タンパク質が分解され、該タンパク質の治療活性の低下がもたらされ得る。アポトーシス誘導型タンパク質分解により、成熟植物からのタンパク質の収量が有意に低下し得る。本発明の方法を用いると、タンパク質を植物から抽出する時点まで採取を行わない場合、アポトーシスが回避され得る。
【0090】
例えば、生きている芽を磨砕、破砕またはブレンドし、発芽種苗バイオマスをプロテアーゼインヒビター含有バッファー中に含むスラリーを作製してもよい。バッファーは約4℃に維持され得る。一部の態様において、発芽種苗バイオマスは、風乾、噴霧乾燥、凍結または凍結乾燥される。成熟植物の場合と同様、一部のこれらの方法(例えば、風乾など)により、医薬用タンパク質の活性の低下がもたらされることがあり得る。しかしながら、発芽種苗は非常に小さく、体積に対して大きな表面積比を有するため、これが起こる可能性はかなり低い。当業者には、発現されたタンパク質のタンパク質分解を最小限に抑える多くのバイオマス採取手法が利用可能であり、本発明に適用され得ることが認識される。
【0091】
一部の実施形態において、発芽種苗は食用のものである。特定の実施形態では、充分なレベルのインフルエンザ抗原を発現する発芽種苗が、採取時に(例えば、採取直後、採取後最小限の期間内)消費され、そのため、発芽種苗が消費される前に加工処理は全く行われない。このように、処置を必要とする患者へのインフルエンザ抗原の投与前でのインフルエンザ抗原の任意の採取誘導性タンパク質分解的破壊は、最小限に抑えられる。例えば、消費されるよう準備された発芽種苗は、直接患者に送達され得る。あるいはまたさらに、遺伝子操作された種子または胚は、処置を必要とする患者に送達され、患者によって発芽種苗段階まで生長される。一態様では、遺伝子操作された発芽種苗の供給源が、患者または患者を処置する医師に提供され、その結果、ある種の望ましいインフルエンザ抗原を発現する発芽種苗の継続的なストックは栽培されるものであり得る。これは、高価な医薬品が手ごろな価格または送達可能でない発展途上国の集団にとって特に有益であり得る。本発明の発芽種苗を容易に生長させ得ることにより、本発明の発芽種苗は、かかる開発途上国の集団に特に望ましいものとなる。
【0092】
収容型の環境が調節可能である特質により、本発明に対し、屋外環境で植物を生長させることと比べて利点が付与される。一般に、植物において医薬用タンパク質を発現する遺伝子操作された発芽種苗を生長させることにより、遺伝子操作された植物を生長させるよりも速く(幼若な植物を採取するため)、労力、リスクおよび規制の考慮事項が少ない医薬用生成物がもたらされる。本発明において使用される収容型の調節可能な環境により、自然界の植物との異花受粉のリスクが低減または排除される。
【0093】
例えば、熱誘導プロモーターは、屋外温度を制御することができないため、おそらく屋外では使用され得ない。該プロモーターは、屋外温度が一定レベルを超えて上昇した任意の時点でオン状態となり得る。同様に、該プロモーターは、屋外温度が下がるごとにオフ状態となり得る。かかる温度シフトは1日のうち起こり得、例えば、日中に発現がオン状態となり、夜間にオフとなり得る。熱誘導プロモーター(例えば、本明細書に記載のものなど)は、屋外とほぼ同じ程度に気候の変化を受け易い温室における使用ですら実用的でないことがあり得る。温室内での遺伝子操作された植物の生長は、かなり費用がかかる。対照的に、本発明の系では、どの可変量も、採取ごとに最大量の発現が達成され得るように制御することができる。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の発芽種苗を、発芽種苗の発育中の任意の時点で給水、噴霧または霧吹きができるトレイ内で生長させる。例えば、トレイは、発芽種苗の発育中の特定の時点で正確な量で水、栄養素、化学薬品などを送達および/または除去することができる1種類以上の給水、噴霧、霧吹きおよび排水装置を取り付けてもよい。例えば、種子は、自身を湿潤状態に維持するために充分な水分を必要とする。過剰な水分は、トレイ内の孔から部屋の床の排水部へと排出される。典型的には、排水は適宜、廃棄して環境内に戻す前に有害な化学薬品の除去のために処理される。
【0095】
トレイの別の利点は、非常に小さいスペース内に収容され得ることである。発芽種苗を生長させるのに光は必要とされないため、種子、胚または発芽種苗を入れたトレイを互いの上面に縦方向に密接して積み重ねてもよく、このような目的のために特別に構築された収容施設の単位床空間あたり大量のバイオマスが提供される。また、積み重ねたトレイは、収容ユニット内で水平に何列にも配列され得る。種苗が採取に適切な段階まで生長したら(約2〜14日間)、個々の種苗トレイを加工処理施設内に、手動または自動手段(ベルトコンベアなど)のいずれかによって移動させる。
【0096】
本発明の系は、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の供給源である発芽種苗バイオマスが提供されるという点で、特殊である。直接消費されようと、医薬組成物の形態に加工処理されようと、発芽種苗を収容型の調節可能な環境内で生長させるため、発芽種苗バイオマスおよび/またはバイオマスから誘導される医薬組成物は、消費者に低コストで提供され得る。また、発芽種苗の生長条件を制御できることにより、生成物の品質および純度が一貫性となる。本発明の収容型の調節可能な環境により、科学者が遺伝子操作された農作物を屋外で生長させるのを妨げ得るEPAの多くの安全性の規制が回避される。
【0097】
形質転換された芽
さまざまな方法を用いて、植物細胞が形質転換され、遺伝子操作された発芽種苗が作製され得る。トランスジェニック植物細胞株をインビトロで作製した後、完全体の植物への細胞株の再生が必要とされる植物の形質転換に利用可能な方法の2つの例として、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介性遺伝子導入と、マイクロプロジェクタイルボンバードメントまたはエレクトロポレーションとが挙げられる。ウイルスによる形質転換は、所望の生成物を得る前に実験または作製による遅れを伴うことなく採取され得る胚および発芽種苗を形質転換する高速であまり高価でない方法である。任意のこれらの手法について、当業者には、植物、種子、胚または発芽種苗に対して伝統的に使用されている形質転換プロトコルを、どのように調整および最適化するかが認識され得る。
【0098】
アグロバクテリウム形質転換発現カセット
アグロバクテリウムは、グラム陰性リゾビウム科の代表的な属である。この種は、クラウンゴールおよび毛状根病などの植物腫瘍の原因を担う。腫瘍に特徴的な脱分化植物組織では、オピンとして知られるアミノ酸誘導体がアグロバクテリウムによって産生され、該植物によって異化作用を受ける。オピンの発現を担う細菌遺伝子は、キメラ発現カセット用の制御エレメントの簡便な供給源である。本発明によれば、アグロバクテリウム形質転換系を用いて食用発芽種苗が作製され得、これにより、成熟する前の植物が簡単に採取される。アグロバクテリウム形質転換方法は、インフルエンザ抗原を発現する発芽種苗の再生に容易に適用され得る。
【0099】
一般に、植物の形質転換は、植物/細菌系ベクターを保有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスとの共培養による、組織培養で生長させた植物細胞の形質転換を伴う。該ベクターは、インフルエンザ抗原をコードする遺伝子を含有する。アグロバクテリウムは、ベクターを植物宿主細胞に転移させ、次いで、抗生物質処理を用いて排除される。インフルエンザ抗原を発現する形質転換植物細胞を選択し、分化させ、最終的に完全体の小さな植物に再生させる(Hellensら、2000、Plant Mol.Biol.、42:819;Pilon−Smitsら、1999、Plant Physiolog.、119:123;Barfieldら、1991、Plant Cell Reports、10:308;およびRivaら、1998、J.Biotech、1(3);これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる。
【0100】
本発明における使用のための発現ベクターとしては、植物における操作のために設計されたインフルエンザ抗原をコードする遺伝子(または発現カセット)であって、その発現カセットの上流および下流に随伴配列を有するものが挙げられる。随伴配列は、一般的にはプラスミドまたはウイルス起源のものであり、ベクターによってDNAが細菌から所望の植物宿主に転移されるのに必要な特性をもたらす。
【0101】
基本的な細菌系/植物ベクター構築物は、望ましくは、広範囲の宿主に、原核生物系の選択可能なマーカーである原核生物の複製起点を提供するものであり得る。好適な原核生物系の選択可能なマーカーとしては、アンピシリンまたはテトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性が挙げられる。当該技術分野でよく知られたさらなる機能をコードする他のDNA配列を、該ベクターに存在させてもよい。
【0102】
アグロバクテリウムT−DNA配列は、植物の染色体へのDNAのアグロバクテリウム媒介性転移に必要とされる。典型的には、腫瘍誘導遺伝子であるT−DNAを除去し、インフルエンザ抗原をコードする配列と置き換える。T−DNAボーダー配列は、植物ゲノム内へのT−DNA領域の組込みを開始させるため、保持しておく。インフルエンザ抗原の発現が容易に検出されにくい場合は、細菌系/植物ベクター構築物に、植物細胞が形質転換されたかどうかの判定に適した選択可能なマーカー遺伝子(例えば、nptIIカナマイシン耐性遺伝子)を含めてもよい。Ti配列は、同じまたは異なる細菌系/植物ベクター(Tiプラスミド)上に存在させる。Ti配列は、T−DNAの切除、転移および植物ゲノム内への組込みを担う一組のタンパク質をコードするビルレンス遺伝子を含む(Schell、1987、Science、237:1176)。植物ゲノム内への異種配列の組込みを許容するのに適した他の配列としては、相同組換えのためのトランスポゾン配列などが挙げられ得る。
【0103】
ある種の構築物は、抗原タンパク質をコードする発現カセットを含む。1つ、2つまたはそれ以上の発現カセットが、所与の形質転換に使用され得る。組換え発現カセットには、インフルエンザ抗原コード配列に加えて、少なくとも以下のエレメント:プロモーター領域、植物の5’非翻訳配列、開始コドン(発現される遺伝子がそれ自身のものを有するか否かに依存する)、ならびに転写および翻訳終結配列が含有される。また、転写および翻訳ターミネーターを、本発明の発現カセットまたはキメラ遺伝子に含めてもよい。タンパク質のプロセッシングおよびトランスロケーションを可能にするシグナル分泌配列を、適宜、発現カセットに含めてもよい。さまざまなプロモーター、シグナル配列、ならびに転写および翻訳ターミネーターが、例えば、Lawtonら(1987、Plant Mol.Biol.、9:315)および米国特許第5,888,789号(これらはともに、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。また、抗生物質耐性の構造遺伝子が選択因子として一般に使用されている(Fraleyら1983、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、80:4803(引用により本明細書に組み込まれる))。カセットの5’および3’末端の特殊な制限酵素部位により、既存のベクター内への容易な挿入が可能になる。少なくとも1つのT−DNAボーダー配列を担持するアグロバクテリウム媒介性形質転換のための他のバイナリーベクター系が報告されている(PCT/EP99/07414、引用により本明細書に組み込まれる)。
【0104】
再生
形質転換植物の種子は、採取、乾燥、清浄化され、所望の遺伝子産物の生存能力ならびに存在および発現について試験され得る。これを測定したら、種子ストックは、典型的には、必要時に使用されるまで適切な温度、湿度、衛生およびセキュリティ条件下で保存される。次いで、完全体の植物を培養プロトプラストから、例えば、Evansら(Handbook of Plant Cell Cultures、第1巻、MacMillan Publishing Co.、New York、NY、1983、引用により本明細書に組み込まれる);ならびにVasil(編集、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、Acad.Press、Orlando、FL、第I巻、1984、および第III巻、1986、引用により本明細書に組み込まれる)に記載のようにして再生され得る。特定の態様では、植物を発芽種苗段階までしか再生されない。一部のる態様では、完全体の植物を種子ストックが得られるまで再生させ、該種子ストックの種子から発芽種苗を発生させる。
【0105】
プロトプラストを単離および培養して完全体の再生植物を得ることができるあらゆる植物が、本発明によって形質転換され得、その結果、導入遺伝子を含有する完全体の植物が回収される。事実上すべての植物(例えば限定されないが、食用の芽を発生するあらゆる主要な種の植物)が、培養細胞または組織から再生され得ることがわかっている。適当な植物の一例としては、アルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシ、ホウレンソウ、ニンジン、ビーツ、タマネギ、ニンニク、セロリ、ルーバーブ、葉菜植物(キャベツまたはレタス、オランダカラシまたはコショウソウなど)、ハーブ(パセリ、ミントまたはクローバーなど)、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズマメ、食用花(ヒマワリなど)などが挙げられる。
【0106】
再生手段は、植物の種によって異なる。しかしながら、当業者には、一般的に、異種遺伝子コピーを含有する形質転換原始植物の懸濁液を最初に準備することが認識される。カルス組織を形成され、芽をカルスから誘導し、続いて根付かせ得る。あるいはまたさらに、胚形成をプロトプラスト懸濁液から誘導してもよい。このような胚は、自然な胚として発芽し、植物を形成する。水中に種子を浸すこと、または種子に水を噴霧することで種子の含水量を35〜45%まで増大させると、発芽が開始される。発芽を進行させるためには、種子を、典型的には、制御された温度および空気流条件下、水分で飽和した空気中で維持する。培養培地は、一般的に、種々のアミノ酸およびホルモン(例えば、オーキシンおよびサイトカインなど)を含有する。グルタミン酸およびプロリンを培地に添加することは、特にアルファルファなどの種では、好都合である。苗条および根は、通常、同時に発育する。効率的な再生は、培地、遺伝子型および培養歴に依存する。これらの3つの可変量を制御すると、再生は、充分に再現可能および反復可能となる。
【0107】
形質転換植物細胞から生長させた成熟植物を自家受粉させ、非分離性のホモ接合型トランスジェニック植物が確認される。同系交配植物により、本発明の抗原をコードする配列を含む種子が得られる。かかる種子を発芽させ、発芽種苗段階まで生長させると、本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)が産生される。
【0108】
関連する実施形態では、本発明の種子は、種子製品に形成され、どのようにして種苗を投与または採取に適切な発芽種苗段階まで生長させて医薬組成物にするかに関する使用説明書とともに販売され得る。関連する一部のある実施形態では、所望の形質を具現化するハイブリッドまたは新規な変種が、本発明の同系交配植物から開発され得る。
【0109】
直接組込み
マイクロプロジェクタイルボンバードメントまたはエレクトロポレーションによる植物細胞のゲノム内へのDNA断片の直接組込みが本発明において使用され得る(例えば、Kikkertら、1999、Plant:J.Tiss.Cult.Assoc.、35:43;Bates、1994、Mol.Biotech.、2:135を参照のこと)。より具体的には、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発現するベクターが植物細胞内に、さまざまな手法によって導入され得る。上記のように、ベクターは、植物細胞における使用のための選択可能なマーカーを含むものであってもよい。ベクターは、二次宿主内でのその選択および増殖を可能にする配列、(例えば、複製起点および選択可能なマーカーを含む配列など)を含むものであってもよい。典型的には、二次宿主としては、細菌および酵母が挙げられる。一実施形態において、二次宿主が細菌であり(例えば大腸菌であり、複製起点はcolE1型複製起点である)、選択可能なマーカーが、アンピシリン耐性をコードする遺伝子である。かかる配列は当該技術分野でよく知られており、市販されている(例えば、Clontech、Palo Alto、CAまたはStratagene、La Jolla、CA)。
【0110】
本発明のベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスベクターに対して相同性の領域、アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のT−DNAボーダー領域、および上記の抗原コード核酸または発現カセットを含む植物形質転換プラスミドに介在するように修飾されたものであり得る。さらなるベクターとしては、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの不活化植物腫瘍誘導プラスミドが挙げられ得る。
【0111】
この実施形態によれば、本発明のベクターの直接的な形質転換は、組換えDNAを機械的に導入するためのマイクロピペットの使用によってベクターを直接植物細胞内にマイクロインジェクションすることを伴うものであり得る(例えば、Crossway、1985、Mol.Gen.Genet.、202:179(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。遺伝物質は植物細胞内に、ポリエチレングリコールを用いて転移させ得る(例えば、Krensら、1982、Nature、296:72を参照のこと)。小さいビーズもしくは粒子のマトリックス内または表面上のいずれかに核酸を有する小さい粒子により、高速度バリスティック浸透によって植物内に核酸を導入する別の方法(例えば、Kleinら、1987、Nature、327:70;Knudsenら、Planta、185:330を参照のこと)。また別の導入方法は、プロトプラストと他の存在体(ミニ細胞、細胞、リソソームまたは他の融合可能な脂質表面体のいずれか)の融合である(例えば、Fraleyら、1982、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、79:1859を参照のこと)。本発明のベクターは植物細胞内に、エレクトロポレーションによって導入され得る(例えば、Frommら 1985、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、82:5824を参照のこと)。この手法によれば、植物プロトプラストは、遺伝子構築物を含有するプラスミドの存在下でエレクトロポレーションされる。高い磁界強度の電気インパルスによって生体膜を可逆的に透過性とし、プラスミドの導入を可能にする。エレクトロポレーションされた植物のプロトプラストでは、細胞壁が再構成され、分裂し、植物カルスが形成され、これを再生させて、本発明の発芽種苗が形成され得る。当業者には、どのようにしてこれらの方法を、食用発芽種苗を再生させるために使用され得る植物細胞の形質転換に使用するかが認識される。
【0112】
ウイルス形質転換
慣用的な発現系と同様、植物ウイルスベクターを用いて完全長タンパク質(例えば、完全長抗原)を産生させ得る。本発明によれば、植物ウイルスベクターを用いて種子、胚、発芽種苗などを感染させ、抗原(1種類または複数種)を産生させ得る。単鎖ペプチドから大きな複合タンパク質まであらゆるものを発現させるために使用され得るウイルス系。具体的には、トバモウイルスベクターの使用は、McCormickら(1999、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、96:703;Kumagaiら 2000、Gene、245:169;およびVerchら、1998、J.Immunol.Methods、220:69;これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。したがって、植物ウイルスベクターは、単鎖ペプチドならびに大きな複合タンパク質を発現する実証された能力を有する。
【0113】
特定の実施形態において、インフルエンザ抗原を発現する遺伝子導入芽は、宿主/ウイルス系を用いて作製される。ウイルス感染によって得られる遺伝子導入芽は、安全であることが既に実証された遺伝子導入タンパク質の供給源を提供する。例えば、芽には動物病原体による汚染がない。例えばタバコとは異なり、食用芽由来のタンパク質は、少なくとも理論的には、精製せずに経口適用において使用され得、したがって、コストが有意に削減され得る。また、ウイルス/芽系は、導入遺伝子がウイルス内に導入されており、これは2〜3日間以内に市販規模まで増殖し得るため、規模拡大および製造のためのずっと簡単であまり高価でない経路をもたらす。対照的に、トランスジェニック植物は、充分な種子または植物材料が大規模な試行または商業化に利用可能となるまでに5〜7年が必要とされ得る。
【0114】
本発明によれば、植物RNAウイルスは、外来タンパク質発現のためのベクターとして魅力的となる一定の利点を有する。いくつかの植物RNAウイルスの分子生物学および病理学は充分に特徴づけられており、ウイルス生物学、遺伝学および調節配列の知識は相当ある。ほとんどの植物RNAウイルスは、小さいゲノムを有し、遺伝子操作を簡単にするために感染性cDNAクローンが利用可能である。感染性のウイルス物質は、易感染性の宿主細胞に侵入すると、高レベルまで複製され、発芽種苗全体に速やかに拡延する(接種後、1〜10日間)。ウイルス粒子は、感染発芽種苗組織から容易かつ経済的に回収される。ウイルスは広範な宿主範囲を有し、いくつかの易感染性種の感染に対して単一の構築物の使用が可能となる。このような特性は、芽に容易に伝達され得る。
【0115】
外来配列は植物RNAウイルスから、典型的には、ウイルス遺伝子の1つを所望の配列と置き換えること、外来配列をウイルスゲノム内の適切な位置に挿入すること、または外来ペプチドをウイルスの構造タンパク質に融合させることにより発現させ得る。さらに、任意のこれらのアプローチを組み合わせ、ウイルスの生命機能のトランス相補性によって外来配列を発現させてもよい。タバコモザイクウイルス(TMV)、アルファルファモザイクウイルス(AlMV)、およびそのキメラを使用し、ウイルス感染植物において外来配列を発現させるためのツールとして、いくつかの異なるストラテジーが存在する。
【0116】
AlMVのゲノムは、ブロモウイルス科ウイルスの代表例であり、3つのゲノムRNA(RNA1〜3)およびサブゲノムRNA(RNA4)からなる。ゲノムRNA1および2は、それぞれ、ウイルスレプリカーゼタンパク質P1および2をコードする。ゲノムRNA3は、細胞間移動タンパク質P3および外被タンパク質(CP)をコードする。CPは、サブゲノムRNA4(ゲノムRNA3から合成される)から翻訳され、感染の開始に必要とされる。諸研究により、多くの機能、例えば、ゲノム活性化、複製、RNA安定性、症状の形成、およびRNAキャプシド封入におけるCPの関与が示されている(例えば、Bolら、1971、Virology、46:73;Van Der Vossenら、1994、Virology 202:891;Yusibovら、Virology、208:405;Yusibovら、1998、Virology、242:1;Bolら、(概説、100件の参考文献)、1999、J.Gen.Virol、80:1089;De Graaff、1995、Virology、208:583;Jasparsら、1974、Adv.VirusRes.、19:37;Loesch−Fries、1985、Virology、146:177;Neelemanら、1991、Virology、181:687;Neelemanら、1993、Virology、196:883;Van DerKuylら、1991、Virology、183:731;およびVan Der Kuylら、1991、Virology、185:496を参照のこと)。
【0117】
ウイルス粒子のキャプシド封入は、典型的には、種子、胚もしくは発芽種苗の接種部分から非接種部分までのウイルスの長距離移動のため、および全体感染のために必要とされる。本発明によれば、接種は、植物発育の任意の段階で行なわれ得る。胚および芽では、接種ウイルスの拡延は非常に速いはずである。AlMVのビリオンは、特殊なCP(24kD)にキャプシド封入されており、1種類より多くの型の粒子を形成している。粒子の大きさ(30〜60nmの長さおよび18nmの直径)ならびに形状(球形、楕円形または桿状)は、キャプシド封入されるRNAの大きさに依存する。構築されると、ALMV CPのN末端は、ウイルス粒子の表面上に存在すると考えられ、ウイルス合成を妨げないようである(Bolら、1971、Virology、6:73)。そのうえ、さらに38アミノ酸ペプチドをN末端に有するALMV CPは、インビトロで粒子を形成し、生物学的活性を保持している(Yusibovら、1995、J.Gen.Virol、77:567)。
【0118】
AlMVは広範な宿主範囲を有し、これには、いくつかの農学的に価値のある作物植物、例えば、植物種子、胚および芽が含まれる。合わせると、これらの特性により、ALMV CPは、担体分子として優れた候補となり、AlMVは、植物の発育の発芽段階における外来配列の発現のための魅力的な候補ベクターとなる。さらに、TMVなどの異種ベクターから発現されると、AlMV CPは、ウイルス感染性を妨げることなくTMVゲノムをキャプシド封入する(Yusibovら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、94:5784(引用により本明細書に組み込まれる))。これにより、外来配列に融合させたAlMV CPのための担体ウイルスとしてのTMVの使用が可能になる。
【0119】
トバモウイルスの基本型であるTMVは、杆状形状粒子(300nmの長さ)をもたらす17.0kDのCPにキャプシド封入された単一+センスRNAからなるゲノムを有する。CPは、TMVの唯一の構造タンパク質であり、キャプシド封入および感染宿主内でのウイルスの長距離移動に必要とされる(Saitoら、1990、Virology、176:329)。183kDおよび126kDのタンパク質がゲノムRNAから翻訳され、ウイルス複製に必要とされる(Ishikawaら、1986、Nucleic Acids Res.、14:8291)。30kDのタンパク質は、ウイルスの細胞間移動タンパク質である(Meshiら、1987、EMBO J.、6:2557)。移動タンパク質および外被タンパク質は、サブゲノムmRNAから翻訳される(Hunterら、1976、Nature、260:759;Brueningら、1976、Virology、71:498;およびBeachyら、1976、Virology、73:498;これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)。
【0120】
植物組織の他の形質転換方法としては、植物の花の形質転換が挙げられる。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の形質転換は、植物の花をアグロバクテリウム・ツメファシエンスの溶液中に浸漬することにより達成され得る(Curtisら、2001、Transgenic Research、10:363;Qingら、2000、Molecular Breeding:New Strategies in Plant Improvement、1:67)。形質転換された植物は、「浸漬」植物によって発生する種子集団に形成される。花の発育中の特定の時点では、子房壁内に孔が存在し、それを通してアグロバクテリウム・ツメファシエンスが該子房の内部に到達する。子房内部に入ると、アグロバクテリウム・ツメファシエンスは増殖し、個々の胚珠を形質転換させる(Desfeuxら、2000、Plant Physiology、123:895)。形質転換された胚珠は、子房内で典型的な種子形成経路に従う。
【0121】
抗原の作製および単離
一般に、当該技術分野で知られた標準的な方法が、抗原(1種類または複数種)の産生のための本発明の植物、植物細胞、および/または植物組織(例えば、クローン植物、クローン植物細胞、クローン根、クローン根株、芽、発芽種苗、植物など)の培養または生長に使用され得る。多種多様な培養培地およびバイオリアクターが、毛状根細胞、根細胞株および植物細胞の培養に使用されている(例えば、Giriら、2000、Biotechnol.Adv.、18:1;Raoら、2002、Biotechnol Adv.、20:101;および前記の両文献中の参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。クローン植物は、任意の適当な様式で生長させ得る。
【0122】
特定のある実施形態において、本発明のインフルエンザ抗原は、任意の既知の方法で作製され得る。一部のある実施形態において、インフルエンザ抗原は、植物またはその一部分において発現させる。タンパク質は、慣用的な条件および当該技術分野で知られた手法に従って単離および精製される。このようなものとしては、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、電気泳動などの方法が挙げられる。本発明は、当該技術分野で知られた、および本明細書に示す任意のさまざまな植物発現系(例えば、本明細書に記載のウイルスの植物発現系)を用いたインフルエンザ抗原(1種類または複数種)の精製および手ごろな価格の作製規模拡大を伴う。
【0123】
本発明の多くの実施形態では、抗体生成物を生成させるためにインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を単離することが望ましい、および/または生成されたインフルエンザ抗体もしくは抗原結合断片を単離することが望ましい。本発明のタンパク質を該タンパク質を発現する植物組織(1種類または複数種)またはその一部分(例えば、根、根細胞、植物、植物細胞)から産生させる場合、本明細書においてさらに詳細に記載する方法、または当該技術分野で知られた任意の適用可能な方法が、植物材料からの任意の部分的または完全な単離に使用され得る。発現産物を、これを発現する植物細胞または組織の一部または全部から単離することが望ましい場合、任意の利用可能な精製手法が使用され得る。当業者は、広範な分画および分離手順を熟知している(例えば、Scopesら、Protein Purification:Principles and Practice、第3版 Jansonら、1993;Protein Purification:Principles、High Resolution Methods,and Applications、Wiley−VCH、1998;Springer−Verlag、NY、1993;およびRoe、Protein Purification Techniques、Oxford University Press、2001を参照のこと;これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)。多くの場合、生成物を約50%より高い、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%純粋にすることが望ましい。例えば、植物組織または液からの物質の精製に有用な特定の方法の論考については、米国特許第6,740,740号および同第6,841,659号を参照のこと。
【0124】
当業者には、所望のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)生成物(1種類または複数種)を得る方法は、抽出によるものであることが認識される。植物材料(例えば、根、葉など)を抽出すると、所望の生成物が残余のバイオマスから取り出され得、それにより生成物の濃度および純度が増大する。植物は、緩衝溶液中で抽出され得る。例えば、植物材料は、例えばリン酸塩バッファーで緩衝化されたある量の氷冷水中に、1:1の重量比で移され得る。必要に応じて、プロテアーゼインヒビターを添加してもよい。植物材料は、バッファー溶液中に懸濁しながら激しくブレンドまたは摩砕することによって破砕され得、濾過または遠心分離によって抽出され、バイオマスから取り出される。溶液中に担持された生成物は、さらなる工程によってさらに精製してもよく、フリーズドライまたは沈殿によって乾燥粉末に変換してもよい。抽出は圧搾により行われ得る。植物または根は、圧搾機内で圧搾することにより、または間隔の狭いローラー間に通して破砕することにより抽出され得る。破砕された植物または根から搾り出された液は、当該技術分野でよく知られた方法に従って回収および加工処理される。圧搾による抽出によって、より濃縮された形態での生成物の放出が可能になる。しかしながら、生成物の全体収率は、生成物を溶液中で抽出した場合よりも低いことがあり得る。
【0125】
ワクチン
本発明は、治療的使用のための医薬用抗原タンパク質、例えば、インフルエンザ感染の治療的および/または予防的処置のためのワクチンとして活性な、インフルエンザ抗原(1種類もしくは複数種)(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)もしくはその免疫原性部分(1種類もしくは複数種)、あるいはインフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)またはその免疫原性部分(1種類もしくは複数種))を含む融合タンパク質などを提供する。さらに、本発明は、かかるインフルエンザ抗原が獣医学的適用において活性であるため、獣医学的使用を提供する。特定のある実施形態において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)は、本発明の植物(1種類または複数種)またはその一部分(例えば、根、細胞、芽、細胞株、植物など)によって産生させたものであり得る。特定の実施形態では、提供するインフルエンザ抗原を、植物、植物細胞および/または植物組織(例えば、芽、発芽種苗、根、根の培養、クローンの細胞、クローン細胞株、クローン植物など)において発現させ、植物から直接、または一部精製もしくは精製して調製物において、医薬投与のために被験体に使用され得る。
【0126】
本発明は、その投与を必要とする被験体に投与されたとき医薬活性が維持されるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発現する植物、植物細胞および植物組織を提供する。例示的な被験体としては、脊椎動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)が挙げられる。本発明によれば、被験体としては、獣医学的被験体、例えば、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。特定の態様において、食用植物またはその一部分(例えば、芽、根)が被験体に、治療有効量で経口投与される。一部のある態様では、1種類以上のインフルエンザ抗原が、本明細書に記載のようにして医薬調製物にて提供される。
【0127】
本発明のワクチン組成物は、1種類以上のインフルエンザ抗原を含む。特定の実施形態では、少なくとも2種類の本発明のインフルエンザ抗原を、投与するワクチン組成物に含む。
【0128】
本発明によれば、インフルエンザ抗原ワクチンでの被験体の処置は、生理学的効果を惹起することが意図される。ワクチンタンパク質は、障害または疾患に対して治癒性の治療的または予防的特性を有するものであり得、疾患または障害の症状または重症度を改善、軽減、緩和するため、その発症を遅滞させるため、逆転または低減させるために投与され得る。インフルエンザ抗原を含むワクチンは、予防特性を有するものであり得、疾患の発症を予防もしくは遅滞させるため、またはかかる疾患、障害の重症度、あるいは病状が現れたときはこれを低減させるために使用され得る。本発明による抗原での被験体の処置によって惹起される生理学的効果としては、生物体による感染が阻止されるような有効な免疫応答が挙げられ得る。
【0129】
一部の実施形態において、本発明のワクチンは、経口および/または粘膜経路によって送達される。経口および/または粘膜送達は、多くの病原体の感染の主な進入口である粘膜の組織の感染を予防する可能性を有する。経口および/または粘膜送達は、全身性免疫応答を得る。粘膜免疫系を刺激し、全身性免疫を得ることができる抗原の経口投与のための異種発現系の開発は、相当進歩している。しかしながら、経口ワクチン送達におけるこれまでの取り組みにより、有効性が達成されるには相当な量の抗原が必要であることが示された。したがって、大量の標的抗原を経済的に産生することが、有効な経口ワクチンの作製のための必須条件である。抗原(例えば、熱安定性の抗原)を発現する植物の開発は、かかる問題に対するより現実的なアプローチである。
【0130】
本発明の医薬調製物は被験体に、多種多様な様式で、例えば、経口、経鼻、経腸、非経口、筋肉内もしくは静脈内、経直腸、経膣、経表面的、眼経由、肺経由など、または接触適用によって投与され得る。特定の実施形態において、植物またはその一部分において発現させたインフルエンザ抗原は被験体に、被験体への植物の直接投与によって経口投与される。一部のある態様では、植物またはその一部分において発現させたワクチンタンパク質を抽出および/または精製し、医薬組成物の調製に使用する。かかる単離した生成物を、その意図される用途のために(例えば、医薬用薬剤、ワクチン組成物などとして)製剤化することが望ましい場合もあり得る。一部のある実施形態では、該生成物を、該生成物を発現する植物組織の一部または全部と一緒に製剤化することが望ましい。
【0131】
該生成物をその植物材料と一緒に製剤化することが望ましい場合、これは、多くの場合、関連するレシピエント(例えば、ヒトまたは他の動物)に対して毒性でない植物を用いたものであることが望ましい。関連する植物組織(例えば、細胞、根、葉)は、発現される生成物の活性が維持するように充分考慮して、当該技術分野で知られた手法に従って、簡単に採取および加工処理されてもよい。本発明の特定の実施形態では、インフルエンザ抗原を食用植物(特に、その植物の食用部分)において発現させ、その後、該植物を食べることができるようにすることが望ましい。例えば、ワクチン抗原が経口送達後に活性である場合(適切に製剤化されている場合)、抗原タンパク質を食用植物の一部分において産生させ、発現されたインフルエンザ抗原を経口送達用に、該タンパク質を発現させた植物材料の一部または全部と一緒に製剤化すること望ましい場合があり得る。
【0132】
提供するワクチン抗原(すなわち、本発明のインフルエンザ抗原)は、既知の手法に従って製剤化され得る。例えば、有効量のワクチン生成物は、1種類以上の有機または無機系の液状または固形の医薬用に適した担体材料と一緒に製剤化され得る。本発明に従って産生されるワクチン抗原は、該タンパク質の生物学的活性がその投薬形態破壊されない限り、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、ゲルカプセル剤、丸剤、カプレット剤、クリーム剤、軟膏、エアロゾル剤、粉剤薬包、液状の液剤、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、および固形結合剤などの投薬形態で使用され得る。
【0133】
一般に、組成物は、任意のさまざまな異なる薬学的に許容され得る担体(1種類または複数種)、アジュバント(1種類または複数種)、もしくはビヒクル(1種類または複数種)、あるいは1種類以上のかかる担体(1種類または複数種)、アジュバント(1種類または複数種)、もしくはビヒクル(1種類または複数種)の組合せを含むものであり得る。本明細書で用いる場合、文言「薬学的に許容され得る担体、アジュバント、またはビヒクル」には、医薬投与に適合性である溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容され得る担体として働き得る物質としては、限定されないが、糖類(ラクトース、グルコースおよびスクロースなど);デンプン(トウモロコシデンプンおよびイモデンプンなど);セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど);粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(ココアバターおよび坐剤用ワックスなど);油類(ピーナツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油など);グリコール(プロピレングリコールなど);エステル類(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);寒天;緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の無毒性で適合性の滑沢剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、フレーバー剤および香料剤が挙げられ、製剤者の判断に従って保存剤および抗酸化剤を組成物中に存在させてもよい(また、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、E.W.Martin、Mack Publishing Co.、イーストン、PA、1975も参照のこと)。例えば、ワクチン抗原生成物は、慣用的な混合、造粒、糖衣作製、溶解、凍結乾燥または同様のプロセスによって医薬組成物として提供され得る。
【0134】
さらなるワクチン成分
本発明のワクチンは、被験体に投与されたときのワクチンの免疫原性を増強するため、さらに任意の適当なアジュバントを含むものであってもよい。例えば、かかるアジュバント(1種類または複数種)としては、限定されないが、キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)(QS)の抽出物、例えば、食品等級QSの精製部分画分(Quil AおよびQS−21など)、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、MF59、Malp2、不完全フロイントアジュバント;完全フロイントアジュバント;3 De−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が挙げられ得る。さらなるアジュバントとしては、免疫調節性オリゴヌクレオチド(例えば、WO96/02555に開示された非メチル化CpG配列)が挙げられる。上記に記載のものなどの種々のアジュバントの組合せが、TH1細胞応答の優先的な刺激因子であるアジュバントを提供することが想定される。例えば、QS21が3D−MPLと一緒に製剤化され得る。QS21:3D−MPLの比は、典型的には、1:10〜10:1;1:5〜5:1程度であり、多くの場合、実質的に1:1である。最適な相乗効果の所望の範囲は、3D−MPL:QS21が2.5:1〜1:1であり得る。ヒトワクチン製剤における使用に適した精製QS抽出物の用量は、0.01mg〜10mg/kg体重である。
【0135】
ある種の熱安定性タンパク質(例えば、リケナーゼ)は、それ自身が免疫応答増強活性を示すものであり得、その結果、インフルエンザ抗原との融合体であれ別々の状態であれ、かかるタンパク質の使用は、アジュバントのの使用とみなされ得ることに注意されたい。したがって、組成物は、さらに、1種類以上のアジュバントを含むものであり得る。ある種の組成物は、2種類以上のアジュバントを含むものであり得る。さらにまた、製剤および投与経路に応じて、ある種のアジュバントは、特に製剤および/または組合せにおいて好ましいことがあり得る。
【0136】
ある種の状況において、皮下または筋肉内注射されるワクチン用生成物(例えば、タンパク質)の1種類以上の成分の吸収を遅滞させることにより、本発明のワクチンの効果を延長させることが望ましい場合があり得る。これは、水溶性が不充分な結晶性または非晶質の物質の液状懸濁液の使用により達成され得る。このとき、該生成物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、該速度は、大きさおよび形態に依存し得る。あるいはまたさらに、非経口投与される生成物の吸収の遅延は、該生成物を油性ビヒクル中に溶解または懸濁することにより達成される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリドなど)中にタンパク質のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製される。ポリマーに対する該生成物の比および使用される具体的なポリマーの性質に応じて、放出速度が制御され得る。生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、該生成物を、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に封入することにより調製され得る。経口製剤のために、択一的なポリマー系送達ビヒクルは、使用され得る。例えば、生分解性で生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などが使用され得る。抗原(1種類または複数種)またはその免疫原性部分は、例えばポリマー系送達ビヒクルとの組合せで微粒子として製剤化され得る。
【0137】
経腸投与されるワクチン抗原調製物は、固体、半固体、懸濁液またはエマルジョンの形態で導入され得、任意の薬学的に許容され得る担体(水、懸濁剤および乳化剤など)とともに配合され得る。抗原は、ポンプまたは徐放形態(特に、予防的手段として投与される場合)によって、被験体において疾患の発症が予防されるように、または既に確立された疾患が改善もしくは遅滞されるように投与され得る。補助的活性化合物、例えば、処置対象の疾患もしくは臨床状態に対して独立して活性な化合物、または本発明の化合物の活性を向上させる化合物が、組成物に組み込まれ得るか、または組成物とともに投与され得る。フレーバー剤および着色剤を使用してもい。
【0138】
本発明のワクチン生成物は、任意選択で植物組織と一緒になっており、医薬組成物として、特に経口投与によく適している。液状の経口製剤が使用され得、小児集団に特に有用であり得る。採取された植物材料は、所望の治療用生成物の特性およびその所望される形態に応じて、任意のさまざまな様式(例えば、風乾、フリーズドライ、抽出など)で加工処理され得る。上記のかかる組成物は、単独で経口摂取され得るか、または食品もしくは飼料もしくは飲料と一緒に摂取され得る。経口投与用組成物は、植物;植物の抽出物および感染植物から精製されたタンパク質(乾燥粉末、食料品として提供される)、水性または非水性溶媒、懸濁液またはエマルジョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油および注射用有機エステルである。水性担体としては、水、水−アルコール溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば、生理食塩水および医療用緩衝非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース溶液、デキストロース+塩化ナトリウム溶液、ラクトース含有リンゲル液または固定油が挙げられる。乾燥粉末の例としては、乾燥(例えば、フリーズドライ、風乾または噴霧乾燥)させた任意の植物バイオマスが挙げられる。例えば、植物は、カ氏約120度の市販の風乾装置内に、バイオマスが含有する湿分が5重量%未満になるまで入れることにより風乾させ得る。乾燥させた植物は、さらなる加工処理のためにバルク固形物として保存してもよく、所望のメッシュ径粉末に摩砕することによりさらに加工処理してもよい。あるいはまたさらに、風乾に感受性の生成物に対しては、フリーズドライが使用され得る。生成物は、真空乾燥機内に入れることによりフリーズドライさせ、バイオマスが含有する湿分が5重量%未満になるまで真空下で凍結乾燥させ得る。乾燥させた物質は、本明細書に記載のようにしてさらに加工処理してもよい。
【0139】
植物由来の物質は、1種類以上のハーブ調製物として、または該調製物と一緒に投与され得る。有用なハーブ調製物としては、液所および固形のハーブ調製物が挙げられる。ハーブ調製物の一例としては、チンキ剤、エキス(例えば、水性エキス、アルコールエキス)、煎剤、乾燥調製物(例えば、風乾、噴霧乾燥、凍結または凍結乾燥されたもの)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液状物が挙げられる。ハーブ調製物は、任意の標準的な送達ビヒクル中にて、例えば、カプセル剤、錠剤、坐剤、液状投薬形態などにて提供され得る。当業者には、本発明に適用され得るハーブ調製物の種々の製剤および送達モダリティが認識される。
【0140】
本発明の根株、細胞株、植物、抽出物、粉末、乾燥調製物および精製タンパク質または核酸生成物などは、上記の1種類以上の賦形剤を含む、または含まないカプセル封入形態であり得る。固形投薬形態、例えば、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などは、コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび医薬製剤分野でよく知られた他のコーティングなど)を用いて調製され得る。かかる固形投薬形態では、活性薬剤は、少なくとも1種類の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプンなど)と混合され得る。かかる投薬形態は、通常の常套手段と同様、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、打錠滑沢剤および他の打錠助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微晶質セルロースなど)を含むものであり得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投薬形態には緩衝剤が含まれ得る。該形態は、任意選択で不透明化剤を含むものであり得、活性成分(1種類または複数主)のみを、または優先的に腸管の特定部分において放出する、および/または遅延様式で放出する組成のものであり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー系物質およびワックスが挙げられる。
【0141】
一部の方法では、本発明によるインフルエンザ抗原を発現する植物もしくはその一部分、またはそのバイオマスは、薬用食品として経口投与される。かかる食用組成物は、典型的には、固形形態の場合は生で食べることにより、または液状形態の場合は飲むことにより消費される。植物材料は、事前の加工処理工程なしで直接、または最小限の調理調製後に摂取され得る。例えば、ワクチンタンパク質を芽において発現させ、直接摂食することができる。例えば、アルファルファの芽、緑豆の芽、またはホウレンソウもしくはレタスの葉の芽などにおいて発現させたタンパク質。一実施形態において、植物バイオマスを加工処理してもよく、加工処理工程後に回収した物質が摂取される。
【0142】
本発明による有用な加工処理方法は、食品または飼料産業界で一般に使用されている方法である。かかる方法の最終生成物は、典型的には相当な量の発現抗原を含み、簡便に食べたり飲んだりできる。最終生成物を、他の食品または飼料形態、例えば、塩、担体、風味向上剤、抗生物質などと混合してもよく、固形、半固形、懸濁液、エマルジョンまたは液状形態で消費され得る。かかる方法は、保存工程、例えば、低温殺菌、加熱調理または保存剤および防腐剤の添加などを含むものであり得る。任意の植物が本発明において使用および加工処理され、食用または飲用植物物質が得られ得る。植物由来調製物中のインフルエンザ抗原の量は、当該技術分野で標準的な方法、例えば、ゲル電気泳動、ELISAまたはウエスタンブロット解析(生成物に特異的なプローブもしくは抗体を使用する)によって試験され得る。この測定を用いて、摂取されるワクチン抗体タンパク質の量が標準化され得る。例えば、ワクチン抗体の量を測定し、、例えば、単回用量で摂取される飲用または食用物質の量が標準化され得るように、異なるレベルの生成物を有する生成物のバッチを混合することにより調節し得る。しかしながら、本発明の収容型の調節可能な環境では、かかる標準化手順を行う必要性が最小限に抑えられるはずである。
【0143】
植物細胞または組織において産生させ、被験体によって摂食されるワクチンタンパク質は、好ましくは消化器系によって吸収されるものであり得る。最小限した加工処理されていない植物組織の摂取の利点の1つは、植物細胞内へのタンパク質の封入または封鎖が提供されることである。したがって、生成物は、消化管または腸に達する前に上部消化管において消化から少なくとも一部の保護を受け、より高率の活性生成物が取込みに利用可能となり得る。
【0144】
本発明の医薬組成物は、治療的または予防的に投与され得る。該組成物は、疾患を処置または予防するために使用され得る。例えば、疾患に苦しむ任意の個体または疾患を発症するリスクのある任意の個体が処置され得る。個体は、その疾患の任意の症状について診断されていなくても疾患を発症するリスクがあるとみなされ得ることが認識される。例えば、個体がインフルエンザ感染への曝露に対して比較的高いリスクにあったことがわかっているか、または該リスクにあることが意図されるか、または該リスクの状況におかれている場合、該個体は、疾患を発症するリスクがあるとみなされる。同様に、個体の家族の構成員または友人がインフルエンザ感染と診断された場合、該個体は、疾患を発症するリスクがあるとみなされ得る。
【0145】
経口投与のための液状投薬形態としては、限定されないが、薬学的に許容され得るエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性薬剤に加え、液状投薬形態には、当該技術分野で一般に使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などが含有され得る。不活性希釈剤の他に、経口組成物には、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、フレーバーおよび香料剤など含めてもよい。
【0146】
経直腸または経膣投与のための組成物は、坐剤または貯留型注腸剤であり得、これらは、本発明の組成物を、周囲温度では固形であるが、体温では液状となり、したがって直腸または膣腔内で融解され、活性タンパク質が放出される適当な非刺激性賦形剤または担体(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ワックスなど)と混合することにより調製され得る。
【0147】
本発明の組成物の経表面、経粘膜または経皮投与のための投薬形態としては、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、吸入剤または貼付剤が挙げられる。活性薬剤またはその調製物を、滅菌条件下、薬学的に許容され得る担体および任意の必要とされる保存剤または緩衝剤(必要に応じて)と混合する。経粘膜または経皮投与では、障壁を通過するのに適切な浸透剤が製剤に使用され得る。かかる浸透剤は、一般的に、当該技術分野で知られており、例えば、経粘膜の投与では、デタージェント、胆汁塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻スプレー剤または坐剤の使用により行われ得る。経皮投与のためには、抗原またはその免疫原性部分は、当該技術分野で一般的に知られているようにして、軟膏、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化され得る。眼科用製剤、点耳剤、点眼剤も、本発明の範囲に包含されることが想定される。さらに、本発明では経皮パッチの使用が想定され、これは、身体へのタンパク質の制御送達をもたらす付加的な利点を有する。かかる投薬形態は、ワクチン生成物を適正な媒体中に懸濁または分散させることにより作製され得る。吸収向上剤を使用し、皮膚を通過するワクチンタンパク質流入を増大させ得る。その速度は、速度制御膜を設けること、またはワクチンタンパク質をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散させることのいずれかにより制御され得る。
【0148】
本発明の組成物は、所望の結果が得られるのに必要な量と時間で投与され得る。本発明の特定のある実施形態において、医薬組成物の「治療有効量」は、被験体において疾患を処置、減衰または予防するのに有効な量である。したがって、「疾患を処置、減衰または予防するのに有効な量」は、本明細書で用いる場合、任意の被験体において無毒性だが疾患を処置、減衰または予防するのに充分な医薬組成物の量をいう。例えば、「治療有効量」は、感染(例えば、ウイルス感染、インフルエンザ感染)などを処置、減衰または予防する量であり得る。
【0149】
必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢および一般状態、疾患の病期、具体的な医薬混合物、その投与様式などに応じて、被験体ごとに異なり得る。本発明のインフルエンザ抗原、例えば、抗原(1種類または複数種)を発現する植物および/またはその調製物は、容易な投与および均一な投薬のための単位投薬形態に製剤化され得る。表現「単位投薬形態」は、本明細書で用いる場合、処置対象の患者に適切な組成物の物理的に分離された単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、典型的には、担当医師によって充分な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されよう。任意の特定の患者または生物体に対する具体的な治療有効用量レベルは、さまざまな要素、例えば、感染の重症度またはリスク;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、一般健康状態、性別、患者の食生活、患者の薬物動態学的状態、投与期間、投与経路、および使用される特異的抗原(1種類または複数種)の排出速度;処置期間;使用されるワクチン組成物と併用または同時使用される薬物;などの医学分野でよく知られた要素に依存し得る。
【0150】
本発明の組成物は、併用療法(例えば、併用ワクチン療法)において使用され得ること、すなわち、医薬組成物は、1種類以上の他の所望の医薬および/またはワクチン接種手順と同時に、一緒に、その前または後に投与され得ることが認識される。併用レジメンに使用される具体的な併用療法(例えば、インフルエンザ感染のワクチン、治療的処置)では、一般的に、所望の治療薬および/または手順の適合性ならびに得られる所望の治療効果が考慮される。使用する治療および/またはワクチンによっては、同じ障害に対して所望の効果が得られることもあり(例えば、本発明の抗原が別のインフルエンザ抗体と同時に投与され得る)、異なる効果が得られることもあり得ることが認識される。
【0151】
特定の実施形態において、ワクチン組成物は、少なくとも2種類のインフルエンザ抗原を含む。例えば、特定のあるワクチン組成物は、少なくとも2種類の本発明のインフルエンザ抗原(例えば、本発明のHAドメインおよびNAドメイン含有抗原)を含むものであり得る。一部のある態様では、かかる組合せワクチンは、インフルエンザ抗原を含む1種類の熱安定性の融合タンパク質を含むものであり得、一部のある態様では、インフルエンザ抗原を含む2種類以上の熱安定性の融合タンパク質が提供される。
組合せワクチンが使用される場合、インフルエンザ抗原の任意の組合せが、かかる組合せに使用され得ることを理解されたい。組成物は、多くのインフルエンザ抗原、例えば、本明細書に示す多くの抗原を含むものであり得る。さらにまた、組成物は、本明細書に示す1種類以上の抗原を、1種類以上のさらなる抗原とともに含むものであり得る。インフルエンザ抗原の組合せとしては、免疫処置により1種類より多くの感染型に対する免疫応答が賦与されるような、1種類以上の種々のサブタイプまたは株に由来するインフルエンザ抗原が挙げられる。インフルエンザ抗原の組合せは、異なるサブタイプまたは株に由来する少なくとも1種類、少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類またはそれ以上の抗原を含むものであり得る。一部の組合せでは、異なるサブタイプに由来する少なくとも2種類または少なくとも3種類の抗原を1つのワクチン組成物中で合わせる。さらにまた、組合せワクチンには、インフルエンザ抗原と、1種類以上の特殊な感染性因子由来の抗原とが使用され得る。
【0152】
キット
一態様において、本発明は、本発明によるインフルエンザ抗原を含む医薬用パックまたはキットを提供する。特定の実施形態において、医薬用パックまたはキットは、本発明によるインフルエンザ抗原を産生する生きた発芽種苗、クローン存在体もしくは植物、またはワクチンを含有する調製物、抽出物もしくは医薬組成物を、任意選択で本発明の医薬組成物の1種類以上のさらなる成分を充填した1つ以上の容器内に含む。一部の実施形態において、医薬用パックまたはキットは、精製された本発明によるインフルエンザ抗原を含む医薬組成物を、任意選択で本発明の医薬組成物の1種類以上のさらなる成分が充填された1つ以上の容器内に含む。特定の実施形態では、医薬用パックまたはキットは、併用療法剤としての使用に承認されたさらなる治療用薬剤(例えば、インフルエンザ抗原、インフルエンザワクチン)を含む。任意選択で、かかる容器(1つまたは複数)は、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定される形態の通知書と関連していることがあり得、該通知書は、当該機関によるヒト投与のための製造、使用または販売の承認を反映する。
【0153】
治療用試薬を含むを含むキットを提供する。非限定的な一例として、インフルエンザワクチンは、経口製剤として提供され得、治療として投与され得る。あるいはまたさらに、インフルエンザワクチンは、投与のための注射用製剤にて提供され得る。一部の実施形態では、インフルエンザワクチンは、投与のための吸入用製剤として提供され得る。したがって、医薬用量またはその使用説明書を、インフルエンザ感染に苦しむ、またはそのリスクのある個体への投与のためにキットに提供してもよい。
【0154】
以下の代表的な実施例は、本発明の例示を補助することが意図され、本発明の範囲の限定は意図されず、そう解釈されるべきでもない。実際、本明細書において示し記載したものに加え、本発明の種々の変形例および多くのそのさらなる実施形態が、以下の実施例を含む本文書の全内容から、ならびに本明細書に挙げた科学文献および特許文献を参照すると、当業者に自明となろう。以下の実施例は、本発明の種々の実施形態およびその均等物において、本発明の実施に適合させ得る情報、例示および手引きを含む。
【実施例】
【0155】
実施例1.ワクチン候補構築物の作製
インフルエンザウイルス血球凝集素由来の抗原配列の作製
ベトナム型H5N1(NAV)およびワイオミング型H3N2(NAW)のインフルエンザウイルスのそれぞれのウイルスHA幹ドメイン(SD)1−2およびHA球状ドメイン(GD)3をコードするヌクレオチド配列を合成し、正しいことを確認した。産生した核酸を制限エンドヌクレアーゼBglII/HindIIIで、ドメインをコードする配列にいずれかの末端が操作された部位を消化した。得られたDNA断片を、操作された熱安定性担体分子をコードする配列にインフレームで融合させた。
【0156】
HA ベトナム型 [TH5N1]
(SD ドメイン1−2):HA1_2V:(配列番号19):
【0157】
【化14】
(SD ドメイン1−2):HA1_2V:(配列番号20):
【0158】
【化15】
(GD ドメイン3):HA3V:(配列番号21):
【0159】
【化16】
(GD ドメイン3):HA V3:(配列番号8):
【0160】
【化17】
(完全長):HAS_V:(配列番号22):
【0161】
【化18】
HA A/ワイオミング型(H3N2)
(SD ドメイン1−2):HA1_2W:(配列番号23):
【0162】
【化19】
(SD ドメイン1−2):HA1_2:(配列番号24):
【0163】
【化20】
(GD ドメイン3):HA3W:(配列番号25):
【0164】
【化21】
(GDドメイン3):HA3W:(配列番号12):
【0165】
【化22】
(完全長):HASW:(配列番号26):
【0166】
【化23】
インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ由来の抗原配列の作製
ベトナム型H5N1(NAV)およびワイオミング型H3N2(NAW)のインフルエンザウイルスのそれぞれのノイラミニダーゼをコードするヌクレオチド配列を合成し、正しいことを確認した。作製した核酸を制限エンドヌクレアーゼSalIで、ドメインコード配列にいずれかの末端が操作された部位を消化した。得られたDNA断片をC末端において、操作された熱安定性担体分子をコードする配列にインフレームで融合させた。
【0167】
NAV(N1):(配列番号27):
【0168】
【化24】
NAV:(配列番号16):
【0169】
【化25】
NAW(N2):(配列番号28):
【0170】
【化26】
NAW:(配列番号18):
【0171】
【化27】
熱安定性の担体構築物の作製
完全長の天然C.サーモセラムリケナーゼLicBは、順次、リーダーペプチド(Lp)、N末端部分(A)、表面ループ(1)、C末端部分(C)、Pro−Thrボックス、およびセルロソーム結合ドメイン(C−BD)からなる。本発明者らは、Lp、Pro−ThrボックスおよびC−BDコード配列をLicBコード遺伝子から除去し、該分子を環状に入れ替えてN末端とC末端を反転させ(Musiychukら、2007、Influenza and Other Respiratory Viruses、1:1)、標的配列のクローニングするための特殊な制限エンドヌクレアーゼ部位をN−およびC−末端ならびに表面ループ(1)内に組み込んだ。得られた操作担体分子配列を確認す、これをLicKMと命名する。
【0172】
配列番号29:
【0173】
【化28】
配列番号30:
【0174】
【化29】
特定のある構築物では、本発明者らは、LicKMのN−およびC−末端のPRlaシグナルペプチドおよびKDEL配列を操作した。このような構築物の核酸配列およびアミノ酸配列を、配列番号31および配列番号32に示す。
【0175】
配列番号31:
【0176】
【化30】
配列番号32:
【0177】
【化31】
組換え抗原構築物の作製
本発明者らは、pBR322プラスミドに由来し、高レベルの転写および翻訳を促進するT7バクテリオファージ遺伝子10の特徴が利用されるように操作したpET発現ベクターを使用した。該バクテリオファージコードRNAポリメラーゼは、T7ファージゲノム以外のゲノムに見られるのは稀であるT7プロモーター配列に対して高度に特異的である(図2)。pET−32を用いて、HAおよびNA構築物を、このベクター内でクローニングしておいた修飾リケナーゼ配列のループ領域内に融合させた。上流配列PR−1A(「病原体関連タンパク質1A」)(小胞体(KDEL)または空胞保持配列(VAC)を有する)および下流His6タグを有するリケナーゼ遺伝子の触媒性ドメインを、修飾pET−32ベクター(T7プロモーターとT7ターミネーターとの間の領域が切除されている)内のPacI部位およびXhoI部位の間にクローニングした。このようにして、pET−PR−LicKM−KDELおよびpET−PR−LicKM−VACを得た(図3)。
【0178】
DNA断片HAドメインまたはNAをLicKMのループ(I)部分内にサブクローニングし、翻訳のための正しいリーディングフレームにおいて融合体を得た。LicKM−NA融合体を構築した。NAWまたはNAVのDNA断片を、SalI部位を用いてLicKMのC−末端内にサブクローニングし、翻訳のための正しいリーディングフレームにおいて融合体を得た。
【0179】
実施例2.ワクチン候補抗原ベクターの作製
標的抗原構築物LicKM−HA(SD)、LicKM−HA(GD)、LicKM−NAを、個々に、選択したウイルスベクター(pBI−D4)内にサブクローニングした。pBI−D4は、大腸菌β−D−グルクロニダーゼ(GUS)をコードするレポーター遺伝子がXbaI部位とSacI部位との間で「ポリリンカー」に置き換えられたpBI121由来バイナリーベクターであり、TMV由来ベクターをクローニングした(図4)。pBI−D4は、発現させる外来遺伝子(例えば、標的抗原(例えば、LicKM−HA(SD)、LicKM−HA(GD)、LicKM−NA)をTMVの外被タンパク質(CP)遺伝子に置き換えるTMV系構築物である。該ウイルスは、TMV 126/183kDa遺伝子、移動タンパク質(MP)遺伝子、およびCPサブゲノムmRNAプロモーター(sgp)(これは、CPオープンリーディングフレーム(ORF)内に延在している)を保持している。CPの開始コドンは変異されている。該ウイルスはCPを欠き、したがって、師部を介して宿主植物中を移動することができない。しかしながら、ウイルス感染の細胞間移動は機能性のままであり、ウイルスは、この様式で上方の葉までゆっくりと移動することができる。マルチクローニング部位(PacI−PmeI−AgeI−XhoI)が、外来遺伝子の発現のためにsgpの末端において操作されており、その後にTMV3’非翻訳領域(NTR)が存在する。35Sプロモーターをウイルス配列の5’末端に融合させる。ベクター配列を、pBI121のBamH1部位とSac1部位との間に配置する。ハンマーヘッド型リボザイムをウイルス配列の3’に配置する(Chenら、2003、Mol.Breed.、11:287)。このような構築物としては、LicKM−HA−SD、LicK−HA(GD)、またはNAをコードする配列のタバコPR−1aタンパク質由来のシグナルペプチドをコードする配列、6×HisタグおよびER−保持アンカー配列KDELまたは空胞配列への融合体が挙げられる(図5)。PR−LicKM−HA(SD)−KDEL、PR−LicKM−HA(GD)−KDEL、およびPR−LicKM−NA−KDELをコードする配列を含む構築物では、コードDNAをPacI−XhoI断片として、pBI−D4内に導入した。さらにまた、HAW(HAワイオミング型)、HAV(HAベトナム型)、NAW(NAワイオミング型)、およびNAV(NAベトナム型)を直接、PacI−XhoI断片としてpBI−D4内に導入した。続いて、ヌクレオチド配列を、最終発現構築物の接合部をサブクローニングするパニングによって確認した(図6)。
【0180】
実施例3:植物の作製および抗原産生
植物のアグロバクテリウム浸潤
アグロバクテリウム浸潤によって得られるアグロバクテリウム媒介性一過性発現系がしようされ得る(Turpenら、1993、J.Virol.Methods、42:227)。ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の健常な葉に、LicKM−HAまたはLicKM−NAを発現するように操作したA.リゾゲネス含有ウイルスベクターを浸潤させた。
【0181】
A.リゾゲネスA4(ATCC 43057)を、構築物pBI−D4−PR−LicKM−HA(SD)−KDEL、PR−LicKM−HA(GD)−KDEL、およびpBI−D4−PR−LicKM−NA−KDELで形質転換した。アグロバクテリウム培養物を、既報のようにして培養および誘導した(Kapilaら1997、Plant Sci.、122:101)。2mlの出発培養物(新たなコロニーから選出)を、一晩、25μg/mlのカナマイシンを加えたYEB(5g/lの牛肉抽出物、1g/lの酵母抽出物、5g/lのペプトン、5g/lのスクロース、2mM MgSO4)中、28℃で培養した。出発培養物を、500mlのYEB(25μg/mlのカナマイシン、10mMの2−4(−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)pH5.6、2mMのさらなるMgSO4および20μMのアセトシリンゴン含有)中で1:500に希釈した。次いで、希釈培養物を、約1.7のO.D.600まで28℃で一晩培養した。細胞を3,000×gで15分間遠心分離し、MMA培地(MS塩、10mMのMES pH 5.6、20g/lのスクロース、200μMのアセトシリンゴン)中に、2.4のO.D.600まで再懸濁し、室温で1〜3時間維持し、アグロバクテリウム浸潤に使用した。ベンサミアナタバコ葉にアグロバクテリウム懸濁液を、針なしの使い捨てシリンジを用いて注射した。浸潤の4〜7日後(例えば、6日後)に浸潤葉を採取した。
【0182】
植物を、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット解析の評価によって標的抗原発現の存在についてスクリーニングしてもよい(図7、8、9および10)。ザイモグラム解析により、試験したベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)の湿潤葉においてHAおよびNAキメラタンパク質の両方の発現が示された。該発現はリケナーゼ活性と関連している(図7および9)。融合タンパク質に関連する活性バンドは、リケナーゼ対照より大きい分子量、およびアグロ感染後に植物によって発現される産物と同じ分子量を示し、完全体の融合体生成物の存在が確認される。
【0183】
クローン根およびクローン根株の作製
1cm×1cm幅のベンサミアナタバコ葉外植片を、0.1%NH4Cl中での消毒および滅菌dH2O中での6回の洗浄後の葉から得る。この外植片に、ナイフで無菌側面上にわずかに傷をつけ、pBID4−Lic−HA−KDELまたはpBID4−Lic−NA−KDELのいずれかを含有するアグロバクテリウムリゾゲネス株A4とともに共培養する。該外植片を2分間、アグロバクテリウムの一晩培養物(O.D.600nm=0.8〜1)とともにインキュベートし、10分間3000rpmで4℃にて遠心分離し、MMA培地中に、20mMアセトシリンゴンの存在下で最終O.D.600nm=0.5まで再懸濁する。インキュベーションの最後に、該外植片を滅菌紙上で乾燥させ、1%グルコースおよび20mMアセトシリンゴンの存在下で0.8%寒天MSプレート上に移す。プレートをパラフィルムで覆い、室温で2日間維持する。次いで、外植片を、500mg/lのセフォタキシム(Cif)、100mg/lのチメンチン(Tim)および25mg/lのカナマイシンの存在下でMSプレート上に移す。ほぼ5週間後、pBID4−Lic−HA−KDELおよびpBID4−Lic−NA−KDEL構築物を含有するアグロバクテリウムリゾゲネスで形質転換したベンサミアナタバコ葉の外植片から遺伝子導入根の生成が得られる。
【0184】
形質転換後、毛状根を切り取り、固形のホルモン無含有K3培地中に一列に配置し得る。4〜6日後、最も活発に生長している根を単離し、液状K3培地に移す。選択した根を、暗所にて24℃で回転式振とう機において培養し、クローン株を単離し、毎週継代培養する。根および/またはクローン株は、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット解析の評価によって標的抗原発現の存在についてスクリーニングされ得る。
【0185】
実施例4:ワクチン候補の産生
感染の4、5、6および7日後、ベンサミアナタバコの浸潤葉材料の100mg試料を採取した。新鮮な組織を、採取直後にタンパク質発現について解析するか、またはその後の粗製植物抽出物の調製のため、または融合タンパク質の精製のために−80℃で回収した。
【0186】
新鮮な試料を、冷PBS 1x+プロテアーゼインヒビター(Roche)中に1/3w/v比(1ml/0.3gの組織)で再懸濁し、乳棒で磨砕した。このホモジネートをSDSゲル負荷バッファー中で5分間煮沸し、次いで、4℃にて12,000rpmで5分間の遠心分離によって清澄化した。上清みを新たなチューブ内に移し、20μl、1μlまたはその希釈物を12%SDS−PAGE上で分離し、抗HiS6−HAマウスもしくはウサギ抗リケナーゼポリクローナル抗体を用いたウエスタン解析によって、および/または機能性リケナーゼ活性を示すタンパク質分解活性を評価するザイモグラム解析によって解析した。ザイモグラフィーは、タンパク質分解活性を測定するための電気泳動による方法である。該方法は、インキュベーション期間中に分離されるそのプロテアーゼによって分解されるタンパク質基質を含浸させたドデシル硫酸ナトリウムゲルを主体とするものである。ゲルの染色により、タンパク質分解部位が、暗青色の背景上に白いバンドとして示される。一定の範囲内では、バンド強度は、プロテアーゼの負荷量と線形に関連し得る。
【0187】
プラスミドpBID4−LicKM−HA(SD)−KDELまたはpBID4−LicKM−HA(GD)−KDELを含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウムリゾゲネスのいずれかを浸潤させたベンサミアナタバコ植物におけるHA発現により、融合タンパク質におけるHAタンパク質の電気泳動移動度が理論的MW(リケナーゼ酵素のMWは約28kD)に相当する場合、キメラタンパク質LicKN−HA(SD)−KDELまたはLicKN−HA(GD)−KDELの分子量に相当する特異的バンドがもたらされる。
【0188】
粗製抽出物中の発現キメラタンパク質Lic−HA−KDELおよびLic−NA−KDELの定量は、手作業浸潤組織および真空浸潤組織の両方におけるイムノブロッティングによって行なわれ得る。
【0189】
抗原の精製
pBID4−LicKM−HA(SD)−KDEL構築物、pBID4−LicKM−HA(GD)−KDEL構築物およびpBID4−完全長NA−KDEL構築物を含む組換えアグロバクテリウム・ツメファシエンスを浸潤させた植物の葉を、ホモジネーションによって磨砕した。「EDTA無含有」プロテアーゼインヒビター(Roche)および1%Triton X−100を含む抽出バッファーを、3容量(w/v)の比で使用し、4℃で30分間ロックした。抽出物を4℃にて10分あたり、9000×gでの遠心分離によって清澄化した。上清みを逐次、Miraクロスに通して濾過し、4℃にて30分間20,000×gで遠心分離し、0.45μmフィルターに通して濾過した後、クロマトグラフィー精製した。
【0190】
得られた抽出物を、硫酸アンモニウム沈殿を用いてカット(cut)した。簡単には、(NH4)2SO4を抽出物に20%飽和まで添加し、氷上で1時間インキュベートし、18,000×gで15分間遠沈させた。ペレットをを廃棄し、(NH4)2SO4をゆっくりと60%飽和まで添加し、氷上で1時間インキュベートし、18,000×gで15分間遠沈させた。上清みを廃棄し、得られたペレットをバッファー中に再懸濁し、次いで、氷上で20分間維持した後、18,000×gで30分間遠心分離した。上清みを10,000容量の洗浄バッファーに対して一晩透析した。
【0191】
Hisタグ化LicKM−HA(SD)−KDEL、LicKM−HA(GD)−KDELおよび完全長NA−KDELキメラタンパク質を、IMAC(「固定化金属アフィニティークロマトグラフィー」、GE Healthcare)を使用することにより、室温にて重力下で精製した。精製は、非変性条件下で行った。タンパク質を0.5mlの画分として回収し、これらを1つにまとめ、20mM EDTAを添加し、1×PBSに対して一晩4℃で透析し、SDS−PAGEによって解析した。
【0192】
あるいはまた、次いで、画分を一緒に回収し、20mM EDTAを添加し、10mM NaH2PO4に対して一晩4℃で透析し、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。LicKM−HA(SD)−KDEL、LicKM−HA(GD)−KDELおよび完全長NA−KDELの精製は、アニオン交換カラムQ Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biosciences)を使用した。LicKM−HA(SD)−KDEL、LicKM−HA(GD)−KDELおよび完全長NA−KDELの親和性またはイオン交換精製キメラタンパク質の試料を、12%ポリアクリルアミドゲル上で分離した後、クマシー染色を行った。また、分離したタンパク質をさらに膜を電気泳動によりPDVF膜上に移し、ポリクローナル抗リケナーゼ抗体、続いて、抗ウサギIgG ウマラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を用いたウエスタンブロット解析を行った。
【0193】
透析後に回収した画分を、pAb α−リケナーゼおよびpAb α−His6の両方を用いたイムノブロッティングによって解析した。Hisタグは、発現されたキメラタンパク質によって維持され、精製タンパク質の最終濃度をソフトウェアによって評価した。
【0194】
血球凝集アッセイ
2つの異なる供給源由来の3つの種の赤血球(RBC)を使用し、インフルエンザワクチンの植物産生調製物における血球凝集活性を実証した。アッセイしたワクチン材料を、A型インフルエンザ/ワイオミング型/03/03(H3N2ウイルス)またはA型インフルエンザ/ベトナム型/1194/2004(H5N1ウイルス)のいずれかに由来する「ドメイン3」(球状ドメイン)と称した。
【0195】
ニワトリ、シチメンチョウおよびウマ由来のRBCを個々に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3回洗浄し、PBSで0.5%v/vに調整した。丸底96ウェルマイクロタイタープレートをPBS単独で、Falconプレートのみが一貫して、陽性結果と陰性結果間の明白な表示をもたらすことを示す品質保証に関して試験した。ワクチン材料は2連でアッセイし、0.5mg/mlで開始し、25μlの材料を25μlのPBS中に段階的にピペッティングすることによりプレート上で2倍希釈した。次いで、プレートあたり、1つの種のRBCの0.5%懸濁液25μlを、該プレートのすべてのウェル内に分注した。プレートを振とうしてRBCを分布させ、4℃で4時間インキュベートした後、陽性結果と陰性結果を判定した。
【0196】
A型インフルエンザ/ベトナム型/1194/2004(H5N1ウイルス)由来のドメイン3は、一貫して、および再現可能に、トリRBCにおいて陽性結果をもたらしたが、ウマRBCではそうではなかった。エンドポイント希釈は、2連および反復実験において一貫して8であり、これは、H5ドメイン3が62.5μgの濃度でトリRBCを血球凝集させ得ることを示す(図11)。
【0197】
実施例5:免疫原性試験
初期免疫原性試験
初期免疫原性試験を行ない、植物産生LicKM−抗原融合体が、腹腔内免疫処置したマウスにおいて特異的血清IgGを誘導し得るか否か、および誘導された抗体がインフルエンザウイルスをインビトロで中和し得るかか否かを調べた。試験では、上記のような、LicKM、LicKM−HA(SD)、LicKM−HA(SD)、およびベンサミアナタバコ(N.benthamiana)のアグロバクテリウム浸潤葉から75%純度まで富化した組換えNAを使用した。
【0198】
8週齢の雌BALB/cマウスを、100μg/用量の組換えLicKM−HA(SD)、LicKMHA(GD)の用量および50μg/用量の組換えNAで免疫処置した。3種類の免疫処置の免疫原を第1日、最初の追加攻撃の14日後、その後、2回目の追加攻撃の10日後に腹腔内投与した。最初の用量には、完全フロイントアジュバントを1:1容量比で含め、2回目の用量には、アジュバントをなんら含まなかった。陰性対照群には、250μg/用量の組換えLicKMを与えた。各群はマウス3匹とした。免疫前血清を最初の投与の1日前に採取し、続いて、血清を2回目の追加攻撃後、第28日に採取した。インフルエンザ特異的IgG抗体の力価を、ELISAアッセイを用いて測定した(図12)。
【0199】
インフルエンザワクチンに対して生成された免疫血清によるウイルスの血球凝集活性の阻害
上記のようにして免疫処置したマウス由来の免疫前血清および2回目の追加攻撃後の血清を、不活化インフルエンザウイルスの血球凝集活性を阻害する抗体力価の能力について評価した。4HA単位の不活化A型インフルエンザ/ベトナム型/1194/2004ウイルス(H5N1ウイルス)を、免疫前血清またはワクチンの2回目の追加攻撃後に採取した血清の25μlの希釈物と合わせた。トリRBCにおける血球凝集活性の阻害を、実施例4に記載のようにして評価した。得られた抗体力価は、ウイルスの血球凝集の阻害に有効であった。例示的な結果を図13に示し、表1にまとめるが、これらは、生成された抗体が、ウイルスの血球凝集活性を防御し得ることを示す。
【0200】
表1:実験的インフルエンザワクチンに対して生成された免疫血清による血球凝集阻害
【0201】
【表1】
実施例6:インフルエンザワクチン接種のモデル系
A.筋肉内ワクチン接種
フェレットは、インフルエンザ感染の試験のための確立された動物モデルであり、インフルエンザワクチンの有効性を調べるために使用されている(例えば、Boydら、1975;Chenら、1995;Scheiblauerら、1995;Sweetら、1980、Microbiol.Rev.、44:303;Maassabら、1982、J.Infect.Dis.、146:780;Tomsら、1977;Websterら、1994;Fentonら、1981;およびWebsterら、1994)。フェレット動物モデルを用いた伝染試験では、ドナーからレシピエントへのインフルエンザウイルスの拡延だけでなく、ウイルスのビルレンスに対する変異の影響もまた示された(Herlocherら、2001;およびHerlocherら、2002)。本明細書に記載の試験に用いた異種初回攻撃−ワクチン−攻撃モデルは、アジュバントなしの不活化インフルエンザワクチンを用いて、うまく試験された。
【0202】
被験物質の生成
本発明者らは、植物産生抗原の免疫原性および防御的有効性をフェレットにおいて評価した。被験物質は、植物において産生させた精製標的抗原からなるものであった。A型インフルエンザ株(A/ワイオミング型/3/03[H3N2])由来のHAドメインを、熱安定性の担体分子との融合体として操作し、上記のような植物系の発現系において産生させた。同じ株由来のNAを、上記のような植物系の発現系において産生させた。被験物質には、なんら核酸、毒性物質または感染性因子は含まれなかった。
【0203】
具体的には、HAのアミノ酸17〜67+294〜532(これは、幹ドメインを一緒に含む)をコードするヌクレオチド配列(Wilsonら、1981、Nature 289:366)をLicKM(GenBank受託番号 DQ776900)内に挿入し、LicKM−HA(SD)を得た。球状ドメイン(Wilsonら、前掲)を含むHAのアミノ酸68〜293をコードするヌクレオチド配列を、同様に挿入し、LicKM−HA(GD)を得た。タバコ(Nicotiana tabacum)病原関連タンパク質PR1a(Pfitznerら、1987、Nucleic Acids Res.、15:4449)のシグナルペプチドをコードする配列を、該融合体のN末端に含めた。ポリ−ヒスチジン親和性精製タグ(6×His)および小胞体保持シグナル(KDEL)をコードする配列をC末端に含めた。LicKM融合体をハイブリッドベクターpBID4(Wilsonら、前掲)(これは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターからのウイルスゲノム転写、続いて、タバコモザイクウイルス(TMV)外被タンパク質サブゲノムmRNAからのウイルスの複製および標的配列発現を可能にし(Shivprasadら、1999、Virology、255:312)、アグロバクテリウムバイナリープラスミドpBI121由来のものである(Chenら、2003、Mol、Breed.、11:287))内に導入し、葉において標的の一過性発現を行った。また、同じインフルエンザ株由来のNAのアミノ酸38〜469をコードする配列を、事前にLicKMに融合せずにpBID4に導入した。上記のように、PR1aのシグナルペプチドをN末端に含め、6×His+KDELをC末端に含む。
【0204】
インフルエンザ抗原を含有する操作ベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス株GV3101に、エレクトロポレーションによって導入した。組換えA.ツメファシエンスの懸濁液をベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamian)植物に、標的配列を葉組織内に導入するため、播種のほぼ6週間後に葉に接種することにより導入した。植物は鉢植え土壌内で、12時間明/12時間暗条件下、21℃にて生長させた。発現構築物に応じて接種の4〜7日後に葉を採取した。タンパク質抽出物を、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0;100mM塩化ナトリウム;10mMナトリウムジエチルジチオカルバメート;および10mM β−メルカプトエタノールを含むバッファー中で葉を摩砕することにより調製した。組換え抗原を、硫酸アンモニウム沈殿、続いて固定化金属親和性クロマトグラフィー(例えば、6×Hisタグを用いることにより)およびアニオン交換クロマトグラフィー(各工程後に透析を伴う)によって少なくとも80%純度まで富化させた。
【0205】
植物産生抗原と参照抗血清との反応をELISA解析(図16A)および変性条件下でのイムノブロッティング(図16B)によって評価した。ELISAでは、96ウェルプレートに、植物から精製したLicKM−HA(SD)、LicKM−HA(GD)またはNAをコートするか、または不活化A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスをコートした。コートしたプレートを、A/ワイオミング型/3/03ウイルスの精製HAに対して生成させたヒツジ抗血清、NEBRG−18(H7N2)組合せウイルスに対して生成させたヒツジ抗血清、またはNIBRG−17(H7N1)組合せウイルスに対して生成させたヒツジ抗血清とともにインキュベートした。イムノブロット解析では、100ngのLicKM−HA(SD)、100ngのLicKM−HA(GD)、および100ngのHAに相当する量の不活化A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03をSDS−PAGEによって分離し、ポリフッ化ビニリデン膜に移し、LicKMに対して生成させたウサギ抗血清またはA/ワイオミング型/3/03ウイルス由来の精製HAに対して生成させたヒツジ抗血清とともにインキュベートした。NA活性を、標準的なWHOプロトコル WHO/CDS/CSR/NCS 2002.5 Rev.1に従ってアッセイした。NA活性の阻害は、ノイラミニダーゼアッセイを行う前に、植物産生NAを、同種(NIBRG−18[H7N2])または異種(NIBRG−17[H7N1])組合せウイルスに対して生成させたヒツジ抗血清とともにプレインキュベートすることにより評価した。
【0206】
ELISAおよびイムノブロットアッセイの両方において、LicKM−HA(SD)は、参照血清によってLicKM−HA(GD)よりもより強く認識されたが、LicKMに対して生成させたポリクローナルウサギ血清は、各融合を同程度に認識した(図16B)。また、植物産生NAは、組合せH7N2ウイルスに対して生成させた参照ポリクローナルヒツジ血清によって認識され(図16C)、株特異的様式で参照血清によって阻害される酵素活性を示した(図16C)。
【0207】
ワクチン接種
フェレット試験は、動物(研究手続)法(UK Animal (Scientific Procedures)Act)(1986年)の定めにより、UK内務省の許可の下に行なった。雄のケナガイタチまたは白色フェレット(High gate Farm、ハイゲート、英国)(試験開始時、4.5月齢、体重441〜629gであり、高密度フェレット試験用飼料5L15(IPS Product Supplies、ロンドン、UK)で維持)を、表2に示す処置群に割り当てた。
【0208】
表2.処置群
【0209】
【表2】
* TCID50 (「組織培養感染容量(Tissue Culture Infecting Dose)」)=一連の実験ウェルの半数が活性で増殖中のウイルスを含むウイルスの希釈レベル
8匹のフェレットの3つの群に、植物産生インフルエンザ抗原の組合せを含有する候補ワクチン製剤(VC1+アジュバント、VC2、およびVC2+アジュバント)(表1)を用いて、初回攻撃および追加攻撃を2回(第0、14および28日)行うことにより皮下免疫処置した。VC1動物には、100μgのLicKM−HA(SD)および100μgのLicKM−GD+1.3mgミョウバンを与えた。VC2動物には、100μgのLicKM−(SD)、100μgのLicKM−(GD)および50μgのNA+1.3mg ミョウバン(「+アジュバント」)または+ミョウバンなし(「アジュバントなし」)を与えた。一緒に送達された100μgのLicKM−(SD)および100μgのLicKM−(GD)は、ほぼ100μgのHAに相当する。陰性対照動物には、ミョウバンアジュバント単独を与え、陽性対照動物には、鼻腔内単回用量のA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス(第0日、105.5TCID50/mlの濃度で0.5ml)を与えた。免疫処置後、動物を、病変または刺激、運動性、紅斑および一般活動について毎日モニターした。
【0210】
動物には、麻酔下で、0.5mlのA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスを105.5TCID50/mlの濃度で、最終用量後、10日間鼻腔内にて攻撃した。血液試料を表在尾静脈から、ワクチン接種の日、攻撃の日、および攻撃の4日後に採取し、鼻洗浄液を攻撃の4日後に採取した。血清HTの力価を、同種A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスならびに異種A型インフルエンザ/シドニー型/5/97(H3N2)、A/カリフォルニア型/7/04(H3N2)およびA/ニューカレドニア型/20/99(H1N1)ウイルスについて測定した。
【0211】
インフルエンザワクチンの接種、手順およびウイルス攻撃は、表3に示す計画に従って行なった。有害効果は、植物産生ワクチン候補を与えたいずれの動物にも認められなかった。動物にトランスポンダーを埋入し、個々の同定および体温のモニタリングを行った。投与は、試験計画に詳述した時点の3つの別々の状況において行なった(表3)。事前に調製した試験物質は、各用量に対して等分した。試験物質は、投与直前にアジュバントと混合した。
【0212】
表3.試験計画
【0213】
【表3】
解析
臨床徴候(健康スコア)、体重および体温の変化を記録した。感染後、1日1回、各動物を病変または刺激、運動性、紅斑および一般活動についてについて調べ、観察結果を記録し、健康スコアを決定した。各動物は、以下:くしゃみまたは鼻で音をたてる(1ポイント);外鼻孔からの化膿性排出物(1ポイント);自発的な活動または遊びの低下(1ポイント);自発的な活動なしまたは敏捷性の低下(2ポイント)のようにスコア化した。「自発的な活動または遊びの減少」および「自発的な活動なしまたは敏捷性の低下」は、互いにスコアポイントを排他的とした。感染日からの体重の最大減少を、各動物について計算した。また、感染日からの体温の最大増加も各動物について計算した。任意の日における各動物の最大の健康スコア、体重減少および体温変化の平均および標準偏差を、処置群ごとに計算し、ANOVAによって比較した。感染後の各日に総合健康、体重減少および体温変化のスコアを含むAUC様測定を各動物について計算し、処置群の平均、メジアンおよび標準偏差を計算し、適宜、ANOVAまたはKruskal−Wallis検定によって比較した。生ウイルスの攻撃後、各処置群は、臨床徴候ならびに温度および体重の変化によって示される攻撃からの回復を示した。試験ワクチンを受けた動物群は防御され、同種インフルエンザウイルスでの攻撃後、疾患症状をほとんど、または全く示さなかった。両方の試験ワクチン候補は、動物に対して充分な防御をもたらした(図14)。
【0214】
ウイルス攻撃後、鼻洗浄液を回収した。回収された鼻洗浄液の容量を測定し、鼻洗浄液の重量をモニターした。炎症細胞応答を攻撃後の鼻洗浄液において、トリパンブルーでの染色(全細胞計数を測定するために使用)および白血球の計数によって評価した。鼻洗浄液中の細胞計数を、感染後の各資料採取日におけるlog−変換データの平均、メジアンおよび標準偏差によってまとめ、処置群間で、適宜、ANOVAまたはKruskal−Wallis検定によって比較した。上記の臨床徴候と同様に、鼻洗浄液のモニタリングにより、各試験処置ワクチンを受けた処置群は、陽性対照群と同等またはそれ以上の感染からの防御を示すことが示された(図14)。
【0215】
ウイルス排出は、鼻洗浄液試料において、イヌ腎臓由来Madin−Darby(MDCK)細胞滴定を用いて測定した。MDCK細胞滴定アッセイのエンドポイントは、シチメンチョウ赤血球を用いた血球凝集アッセイを行うことにより決定した。Karber計算を使用し、各試料についてlog10 TCID50/mlを測定した。鼻洗浄液試料からのウイルス排出を、感染後の鼻洗浄液試料において測定した。各動物での排出最大力価をlog−変換し、処置群の平均、メジアンおよび標準偏差を計算し、Kruskal−Wallis検定によって比較した。任意の時点で任意のウイルス排出を伴った各処置群の動物の割合を表にし、独立性について、カイ二乗検定を用いて群間で対比した。排出ウイルスの結果を図15に示す。陰性対照処置群のみ、優位なウイルス排出をもたらした(図15)。
【0216】
血球凝集素 阻害アッセイ(HAI)を、実施例5に記載のようにして、同種ウイルス(A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/2003(H3N2)ウイルス)に対するワクチン接種前および接種後の血清試料を用いて行ない、ベースラインでの動物のセロネガティブ性ならびに免疫処置および感染後に動物にセロコンバージョンがあるか否かを確認した。HAIの力価を表にし、第0日から最終日の間で≧4倍上昇を有する動物を特定した。
【0217】
免疫処置動物由来血清の血球凝集阻害(HI)活性を、防御の相関因子とみなす(Brownら、2004、Dev.Biol.(Basel)、115:1;およびHobsonら、1972、J.Hyg.、70:767)。かかる実験の一例の結果を表4に示す。H3N2または陽性対照に対する試験ワクチンで免疫処置した群のすべての動物では、高い血清血球凝集阻害活性を伴う強い標的特異的免疫応答が開始された。最初の用量のワクチン後、VC2+アジュバントにより、高いHAI力価がもたらされた。アジュバントなしでのVC2では、防御的応答がもたらされたが、力価は、最初の用量後のアジュバントでの場合ほど高くなかった。しかしながら、2回目の用量後、力価は、アジュバントを伴うCMB1と同等レベルに達した。また、VC1+アジュバントでも保護レベルの抗体の生成がもたらされ、これは、2回目の用量のワクチン後、有意に高かった(表4)。
【0218】
表4:フェレットHAIデータのまとめ
【0219】
【表4】
第2のHAアッセイ実験の結果を図17に示す。HI活性は、いずれの動物由来の免疫処置前血清またはNC動物血清では観察されなかった(図17)。しかしながら、VC2+アジュバントをワクチン接種したすべてのフェレット由来の血清は、最初の用量後、1:320〜1:2560(平均力価1273)範囲の高いHI力価を示した(図17)。VC1+アジュバントを受けた動物間では、最初の用量後に観察されたレスポンダー動物はより少なく、HI力価は低く(図17)、これは、NAが免疫応答をモジュレートした可能性があることを示す。VC2を受けた8匹の動物のうち5匹は、1:160〜1:1280の範囲のHI力価を示したが、アジュバントなしの市販の不活化インフルエンザワクチンは、典型的には、非常に低い(誘導する場合は)HI力価を誘導する(Potterら、1972、Br.J.Exp.Pathol、53:168;Potterら、1973、J.Hyg.(Lond.)、71:97;およびPotterら、1973、Arch.Gesamte Virusforsch.、42:285)。VC1+アジュバント、VC2またはVC2+アジュバントの2回目の用量後、すべてのフェレット由来の血清は、1:640〜1:2560の範囲のHI力価を有し、これらは、第3の用量後、同様に高く保持されていた(図17)。これらの動物すべてに由来する血清は、1:40過剰の力価有し、一部は、ヒトにおける防御に整合する最小HI力価とみなされた(Brownら、2004、Dev.Biol.(Basel)、115:1;およびHobsonら、1972、J.Hyg.、70:767)。
【0220】
2または3回の用量の任意の植物産生ワクチン候補を受けたフェレット由来の血清におけるHI力価は、鼻腔内感染した陽性対照動物由来の血清のものと同等またはそれ以上であり(図17)、他のフェレット試験で観察されたものよりも過剰であった。例えば、市販の不活化H3N2インフルエンザワクチンで筋肉内免疫処置したフェレットは、2回の用量を受けた後、1:20のHI力価を示すことが報告された(Lambkinら、2004、Vaccine、22:4390)。VC1+アジュバント、VC2またはVC2+アジュバントで免疫処置したフェレット由来の血清は、異種H3N2ウイルス株A/シドニー型/5/97およびA/カリフォルニア型/7/04に対し、A/ワイオミング型/3/03に対するよりも4〜20倍低いHI力価を有したが、これらの力価はすべて閾値の1:40過剰であり、防御と整合し、これらのワクチン候補が異種H3N2株を防御する可能性を示す。A型インフルエンザ/ニューカレドニア型/20/99(H1N1)に対しては、1:10未満のHI力価が観察され、これは、HI抗体応答のH3サブタイプ特異性を示す。
【0221】
免疫原性および防御的有効性の追跡試験を行ない、卵から成長させた生きているA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルスでの鼻腔内攻撃による植物産生HAおよびNA抗原の防御的有効性を、免疫処置フェレットにおいて評価した。
【0222】
攻撃後のウイルス感染の程度を、鼻洗浄液中の排出ウイルスの力価を攻撃後4日間モニタリングすることにより、各動物について測定した。3種類の候補ワクチン製剤のいずれかを受けた1匹の動物のみが検出可能なウイルス排出を示し、次いで102 TCID50であっても示したが、NC群の動物は、106〜107の範囲のTCID50のウイルス排出を示した(図18A)。PC群におけるウイルス排出レベルは、102〜103の範囲のTCID50であり、候補ワクチン群の任意の動物のものより大きかった(図18A)。
【0223】
保護の証拠は、任意の候補ワクチン製剤を受けた動物で観察された。感染後の体重減少は、NC群のものと比べ、VC1+アジュバント、VC2+アジュバントまたは同種ウイルスを受けたフェレットにおいて大きく低下した(図18B)。VC2を受けた動物での体重減少の低下は、あまり顕著でなかった(図18B)。また、任意の候補ワクチン製剤で免疫処置したフェレットにおける体温上昇は、NCまたはPCいずれかの群の動物で観察されたものと比べて低下した(図18C)。さらにまた、攻撃後のいくつかのインフルエンザ関連症状の頻度のを示す指標である症状スコアの平均ピークは、NC群のものと比べ、候補ワクチン製剤を受けた動物において減少した(図18D)。同様に、上気道感染のインジケータとみなされるフェレットの鼻洗浄液中の白血球計数は、NC群の動物と比べ、候補ワクチンレシピエントにおいて減少した(図18E)。
【0224】
この攻撃試験は、植物産生HAおよびNA抗原が、フェレットにおいて高度の防御的免疫性を賦与することを示し、ワクチン開発に対する有望性を示す。将来的な研究において、本発明者らは、個々に投与したときのLicKM−SDおよびLicKM−GDの保護役割、ならびにさならる免疫応答の促進におけるNAの役割を解明する。
【0225】
B.鼻腔内ワクチン接種
候補ワクチンの免疫原性は、Balb/cマウスまたはフェレットモデル動物において、鼻腔内免疫処置に従って評価する。この試験計画は、上記の実施例に記載の筋肉内免疫処置のものと類似している。簡単には、マウス群またはフェレット群(ほぼ8〜10匹の動物/群)を、ほぼ第0、14および28日の3回の標的抗原投与(100μg/投与)で、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、MALP−2など)の存在下または非存在下にて鼻腔内免疫処置する。血清試料および鼻洗浄液を、抗原投与前の各ワクチン接種日および3回目の用量の10日後に採取する。免疫処置動物には、最後の用量後、経鼻経路により、動物に感染して発熱を伴う呼吸器感染症状をもたらすことがわかっている同種株のインフルエンザウイルスで攻撃する。ウイルス攻撃後に測定される、ウイルス排出レベル、感染後の体重減少、体温の上昇、症状スコアの平均ピーク、および鼻洗浄液中の白血球計数を測定することにより、免疫応答の性質を調べる。NAおよび/またはHAに対する抗体の存在、ならびにHIおよび
ウイルス中和活性を調べる。
【0226】
C.用量増大試験
抗原とアジュバントの最適な組成および用量、投与経路、ならびに免疫処置レジメンは、用量増大試験を用いてさらに評価され得る。本発明者らは、この試験において、6種類の試験ワクチン組成物のうち3種類の試験を予測する。該試験は、筋肉内経路(表3)および鼻腔内経路の両方を用いて行なう。上記の実施例に記載の筋肉内および鼻腔内免疫処置のものと同様に、動物群(ほぼ8〜10匹の動物/群)を種々の用量の試験ワクチンで、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、MALP−2など)の存在下または非存在下にて鼻腔内免疫処置する。例示的な投薬計画については表5を参照のこと。
【0227】
他の試験の場合と同様、血清試料および鼻洗浄液を、抗原投与前の各ワクチン接種日および3回目の用量の10日後に採取する。免疫処置動物には、最後の用量後、経鼻経路により、動物に感染して発熱を伴う呼吸器感染症状をもたらすことがわかっている同種株のインフルエンザウイルスで攻撃する。免疫応答の性質は、ウイルス排出レベル;感染後の体重減少;体温の上昇;症状スコアの平均ピーク;鼻洗浄液中の白血球計数;NA、HA、および/またはM2に対する抗体の存在;血球凝集阻害;および/またはウイルス中和活性を調べることにより測定され得る。
【0228】
表5:動物における用量増大試験のための例示的な設計
【0229】
【表5】
* i.m.= 筋肉内注射
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】図1は、血球凝集素(HA)タンパク質およびタンパク質ドメインの概略図である。左上の数字1、2および3は、本明細書に記載のドメイン1、2および3に対応する。ドメイン1、2および2、1は一緒に折り畳まれ、幹ドメイン(SD)を形成する。ドメイン3は球状ドメイン(GD)である。項目1〜6に示す範囲は、HAのアミノ酸位置に対応する。
【図2】図2は、pET32プラスミドマップである。左上は、標的抗原のクローニングに使用した修飾プラスミドにはない、T7プロモーターおよびT7ターミネーターの間の領域を示す。
【図3】図3は、修飾pET32aベクター内に挿入されたpET−PR−LicKM−KDEL構築物およびpET−PR−LicKM−VAC構築物の概略図である。
【図4】図4は、pBI121ベクター構成の概略図である。
【図5】図5は、GUS遺伝子の切除およびTMV由来プラスミドの付加後の、pBIベクターからのpBID4プラスミドの誘導の概略構成図である。
【図6】図6は、ベクター内に配置された標的化配列を有する、または有しない、リケナーゼ配列内のHA、HAドメインおよびNAの融合体の概略図である。
【図7】図7A、Bは、LicKMおよび融合タンパク質を発現する植物の抽出物のリケナーゼアッセイである。(7A)ベンサミアナタバコにおけるリケナーゼの一過性発現。(7B)植物中のリケナーゼHA融合タンパク質のザイモグラム(矢印)。
【図8】図8は、抗HA抗体および抗LicB抗体を用いた、Lic−HA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のウエスタン解析である。
【図9】図9は、Lic−NA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のリケナーゼアッセイである。
【図10】図10は、Lic−HA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のウエスタン解析である。
【図11】図11は、HAリケナーゼ融合タンパク質を発現した植物を用いた赤血球凝集アッセイである。
【図12】図12は、アジュバントとともに、およびなしで試験H5N1インフルエンザワクチンで免疫処置したマウスの抗体応答である。
【図13】図13は、アジュバントとともに、およびなしでH5N1試験ワクチンで免疫処置したマウスから得た血清希釈物による血球凝集活性阻害である。
【図14】図14A〜Dは、H3N2インフルエンザ試験ワクチン処置群および対照処置群におけるH3N2ウイルス攻撃後の症状である。(14A)臨床症状スコアの全体平均最大結果。(14B)ウイルス攻撃後の鼻洗浄液中の細胞計数の全体平均最大結果。(14C)動物における体重減少の全体平均最大結果。(14D)動物の体温変化の全体平均最大値。
【図15】図15は、H3N2インフルエンザ試験ワクチン処置群および対照処置群におけるH3N2ウイルス攻撃後のウイルス排出である。第1群は、陰性対照処置群の結果を示す;第2群は、被験物質1(CMB F1)で処置した動物の結果を示す;第3群は、被験物質2(CMB F2)で処置した動物の結果を示す;第4群は、被験物質3(CMB F3)で処置した動物の結果を示す;および第D群は、陽性対照処置動物の結果を示す。Nは、各群で評価された動物の数を示す(各群8匹)。
【図16】図16は、植物において産生されたA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス抗原の特性決定である。(16A)A型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス由来の精製HAに対して生成されたヒツジ血清を用いたLicKM−(SD)およびLicKM−(GD)のELlSA解析。同種ウイルス(A/W/3/03)および植物産生NAを、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。(16B)LicKM(抗LicKM)に対して生成されたウサギ血清およびA型インフルエンザ/ワイオミング型/3/03ウイルス(抗HA)の精製HAに対して生成されたヒツジ血清を用いたLicKM−HA(SD)(レーン4)およびLicKM−HA(GD)(レーン3)のイムノブロット解析。LicKM(レーン2)および同種ウイルス(レーン1)を対照として使用した。(16C)NIBRG−18再組合せウイルス(抗H7N2)およびNIBRG−17再組合せウイルス(抗H7Nl)に対して生成されたヒツジ血清を用いたNAのELISA解析。NIBRG−18(抗H7N2)に対するヒツジ血清を用いて評価した同種ウイルス(A/W/3/03)を陽性対照として使用した。(16D)NIBRG−18(抗H7N2)またはNIBRG−17(抗H7Nl)に対して生成されたヒツジ血清とのプレインキュベーション後のノイラミニダーゼ活性の種特異的阻害。3連実験の平均酵素活性を標準偏差とともに示す。
【図17】図17は、VC1+アジュバント、VC2アジュバントなし、またはVC2+アジュバントで免疫処置したフェレット由来血清の血球凝集阻害力価である。血清試料は、最初の用量前(Pre−imm)、最初の用量の14日後(D1)、第2の用量の14日後(D2)、第3の用量の10日後(D3)、および攻撃の4日後(Post−Ch)に採取した。幾何平均力価を標準偏差とともに示す。
【図18】図18は、VC1+アジュバント、VC2アジュバントなし、またはVC2+アジュバントで免疫処置したフェレットの攻撃後のモニタリングである。平均値を標準偏差とともに示し、多重検定のためのボンフェローニの補正とともにANOVAを使用し、データの統計学的解析を行った。統計学的有意性はp≦0.05と規定した。(18A)感染後に流入したウイルスのピーク。(18B)感染後の最大体重減少。(18C)感染後のピーク温度上昇。(18D)感染後の症状スコアのピーク。(18E)感染後の鼻洗浄液試料1mlあたりの総白血球計数のピーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱安定性タンパク質と融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む単離された抗原であって、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
単離された抗原。
【請求項2】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインからなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項3】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項4】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項5】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項6】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項7】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項6に記載の単離された抗原。
【請求項8】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼLicBのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項6に記載の単離された抗原。
【請求項9】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項10】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20、配列番号24、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含む、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項11】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項10に記載の単離された抗原。
【請求項12】
熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原、および薬学的に許容され得る担体を含むワクチン組成物であって、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、ワクチン組成物。
【請求項13】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインからなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記熱安定性タンパク質が、クロストリディウム・サーモセラム由来の修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20、配列番号24、配列番号2、4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含み、被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項22に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記内在性膜タンパク質成分が、完全長血球凝集素(HA)および完全長ノイラミニダーゼ(NA)を含む、請求項22に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
さらに第2の抗原を含み、動物に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
前記第2の抗原が、熱安定性タンパク質および薬学的に許容され得る担体に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含み、
第1の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含み、前記第2の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される該第1の抗原とは異なる少なくとも1つのドメインを含む、
被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記第1の抗原の内在性膜タンパク質成分が血球凝集素(HA)ドメインを含み、前記第2の抗原の内在性膜タンパク質成分がノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項26に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記抗原が、トランスジェニック植物および該抗原を一過的に発現する植物から選択される植物において産生される、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
植物細胞、植物、種子、果実またはその抽出物から精製された、一部精製された、または未精製の抗原を含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項30】
さらに少なくとも1種類のワクチンアジュバントを含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項31】
前記アジュバントが、ミョウバン、MF59、サポニンおよびMALP2からなる群より選択される、請求項30に記載のワクチン組成物。
【請求項32】
各々がA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む少なくとも2種類の抗原を含むワクチン組成物であって、該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含み、少なくとも1種類の抗原が、熱安定性タンパク質および薬学的に許容され得る担体に融合され、被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、ワクチン組成物。
【請求項33】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインを含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項34】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項35】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項36】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項37】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項38】
前記熱安定性タンパク質が、クロストリディウム・サーモセラム由来の修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項39】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項37に記載のワクチン組成物。
【請求項40】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項37に記載のワクチン組成物。
【請求項41】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項40に記載のワクチン組成物。
【請求項42】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20、配列番号24、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含み、被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項43】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項42に記載のワクチン組成物。
【請求項44】
前記内在性膜タンパク質成分が、完全長血球凝集素(HA)および完全長ノイラミニダーゼ(NA)を含む、請求項42に記載のワクチン組成物。
【請求項45】
さらに第3の抗原を含み、動物に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項46】
前記第3の抗原が、熱安定性タンパク質および薬学的に許容され得る担体に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含み、
第1の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含み、前記第2の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される該第1の抗原とは異なる少なくとも1つのドメインを含み、
被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項45に記載のワクチン組成物。
【請求項47】
前記抗原が、トランスジェニック植物および該抗原を一過的に発現する植物から選択される植物において産生される、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項48】
植物細胞、植物、種子、果実またはその抽出物から精製された、一部精製された、または未精製の抗原を含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項49】
さらに少なくとも1種類のワクチンアジュバントを含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項50】
前記アジュバントが、ミョウバン、MF59、サポニンおよびMALP2からなる群より選択される、請求項49に記載のワクチン組成物。
【請求項51】
被験体に有効量の抗A型インフルエンザワクチン組成物を投与することを含み、該投与が、抗原特異的抗体の産生を刺激するのに充分であるか、または該被験体による細胞性免疫応答を刺激するのに充分であり、それにより防御的免疫応答が誘導される、該被験体においてA型インフルエンザ感染に対する保護免疫応答を誘導するための方法であって、
該ワクチン組成物が、熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原を含み;かつ
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
方法。
【請求項52】
前記組成物が、経口、鼻腔内、皮下、静脈内、腹腔内または筋肉内投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物が、植物細胞を摂食することによって前記被験体に経口投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記被験体がヒトである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記被験体が、トリ、ブタおよびウマからなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原タンパク質を生成するための方法であって、該方法が、
a.熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原をコードする核酸構築物を調製する工程;
b.工程aの核酸を細胞内に導入する工程;および
c.該細胞を、該抗原タンパク質の発現に有利な条件下でインキュベートし、それにより該抗原タンパク質を産生させる工程、
を包含し、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
方法。
【請求項57】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインからなる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
前記抗原タンパク質の発現がウイルスプロモーターの制御下にある、請求項56に記載の方法。
【請求項68】
前記核酸構築物が、さらにベクター核酸配列を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項69】
前記ベクターがバイナリーベクターである、請求項56に記載の方法。
【請求項70】
前記核酸構築物が、さらに、ウイルスタンパク質をコードする配列を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が植物細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項72】
前記植物細胞が、アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダカラシ、大豆、小麦 ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン(nicotine)、ホウレンソウ、およびレンズマメの細胞からなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記抗原タンパク質がクローン根細胞において産生される、請求項56に記載の方法。
【請求項74】
前記抗原タンパク質が発芽種苗において産生される、請求項56に記載の方法。
【請求項75】
さらに、産生された一部精製または精製抗原タンパク質を回収する工程を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項76】
熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分をコードする核酸配列を含む単離された核酸構築物であって、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、核酸構築物。
【請求項77】
前記内在性膜成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインを含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項78】
前記内在性膜成分が、少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項79】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項80】
前記内在性膜成分が、少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項81】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項82】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項83】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項84】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項85】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項86】
前記内在性膜タンパク質成分が、少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインおよび少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項85に記載の単離された核酸構築物。
【請求項87】
さらにベクター核酸配列を含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項88】
さらにウイルスプロモーター核酸配列を含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項89】
前記ベクターがバイナリーベクターである、請求項76に記載の方法。
【請求項90】
さらに、ウイルスタンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項91】
請求項76に記載の核酸構築物を含む宿主細胞。
【請求項92】
植物細胞である、請求項91に記載の宿主細胞。
【請求項93】
アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダカラシ、大豆、小麦 ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン(nicotine)、ホウレンソウ、およびレンズマメからなる群より選択される、請求項92に記載の植物。
【請求項94】
アブラナ属、ニコチアナ(Nicotana)属、およびペチュニア属から選択される属のものである、請求項92に記載の植物。
【請求項1】
熱安定性タンパク質と融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む単離された抗原であって、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
単離された抗原。
【請求項2】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインからなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項3】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項4】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項5】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項6】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項7】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項6に記載の単離された抗原。
【請求項8】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼLicBのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項6に記載の単離された抗原。
【請求項9】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項10】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20、配列番号24、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含む、請求項1に記載の単離された抗原。
【請求項11】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項10に記載の単離された抗原。
【請求項12】
熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原、および薬学的に許容され得る担体を含むワクチン組成物であって、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、ワクチン組成物。
【請求項13】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインからなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記熱安定性タンパク質が、クロストリディウム・サーモセラム由来の修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20、配列番号24、配列番号2、4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含み、被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項22に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記内在性膜タンパク質成分が、完全長血球凝集素(HA)および完全長ノイラミニダーゼ(NA)を含む、請求項22に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
さらに第2の抗原を含み、動物に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
前記第2の抗原が、熱安定性タンパク質および薬学的に許容され得る担体に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含み、
第1の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含み、前記第2の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される該第1の抗原とは異なる少なくとも1つのドメインを含む、
被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記第1の抗原の内在性膜タンパク質成分が血球凝集素(HA)ドメインを含み、前記第2の抗原の内在性膜タンパク質成分がノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項26に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記抗原が、トランスジェニック植物および該抗原を一過的に発現する植物から選択される植物において産生される、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
植物細胞、植物、種子、果実またはその抽出物から精製された、一部精製された、または未精製の抗原を含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項30】
さらに少なくとも1種類のワクチンアジュバントを含む、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項31】
前記アジュバントが、ミョウバン、MF59、サポニンおよびMALP2からなる群より選択される、請求項30に記載のワクチン組成物。
【請求項32】
各々がA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む少なくとも2種類の抗原を含むワクチン組成物であって、該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含み、少なくとも1種類の抗原が、熱安定性タンパク質および薬学的に許容され得る担体に融合され、被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、ワクチン組成物。
【請求項33】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインを含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項34】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項35】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項36】
少なくとも1種類の内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項37】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項38】
前記熱安定性タンパク質が、クロストリディウム・サーモセラム由来の修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項39】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項37に記載のワクチン組成物。
【請求項40】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項37に記載のワクチン組成物。
【請求項41】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項40に記載のワクチン組成物。
【請求項42】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20、配列番号24、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含み、被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項43】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項42に記載のワクチン組成物。
【請求項44】
前記内在性膜タンパク質成分が、完全長血球凝集素(HA)および完全長ノイラミニダーゼ(NA)を含む、請求項42に記載のワクチン組成物。
【請求項45】
さらに第3の抗原を含み、動物に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項46】
前記第3の抗原が、熱安定性タンパク質および薬学的に許容され得る担体に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含み、
第1の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含み、前記第2の抗原の内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される該第1の抗原とは異なる少なくとも1つのドメインを含み、
被験体に投与されると免疫応答を惹起し得る、請求項45に記載のワクチン組成物。
【請求項47】
前記抗原が、トランスジェニック植物および該抗原を一過的に発現する植物から選択される植物において産生される、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項48】
植物細胞、植物、種子、果実またはその抽出物から精製された、一部精製された、または未精製の抗原を含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項49】
さらに少なくとも1種類のワクチンアジュバントを含む、請求項32に記載のワクチン組成物。
【請求項50】
前記アジュバントが、ミョウバン、MF59、サポニンおよびMALP2からなる群より選択される、請求項49に記載のワクチン組成物。
【請求項51】
被験体に有効量の抗A型インフルエンザワクチン組成物を投与することを含み、該投与が、抗原特異的抗体の産生を刺激するのに充分であるか、または該被験体による細胞性免疫応答を刺激するのに充分であり、それにより防御的免疫応答が誘導される、該被験体においてA型インフルエンザ感染に対する保護免疫応答を誘導するための方法であって、
該ワクチン組成物が、熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原を含み;かつ
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメイン、ノイラミニダーゼ(NA)ドメインおよびM2ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
方法。
【請求項52】
前記組成物が、経口、鼻腔内、皮下、静脈内、腹腔内または筋肉内投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物が、植物細胞を摂食することによって前記被験体に経口投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記被験体がヒトである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記被験体が、トリ、ブタおよびウマからなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原タンパク質を生成するための方法であって、該方法が、
a.熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分を含む抗原をコードする核酸構築物を調製する工程;
b.工程aの核酸を細胞内に導入する工程;および
c.該細胞を、該抗原タンパク質の発現に有利な条件下でインキュベートし、それにより該抗原タンパク質を産生させる工程、
を包含し、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、
方法。
【請求項57】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインからなる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
前記内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項67】
前記抗原タンパク質の発現がウイルスプロモーターの制御下にある、請求項56に記載の方法。
【請求項68】
前記核酸構築物が、さらにベクター核酸配列を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項69】
前記ベクターがバイナリーベクターである、請求項56に記載の方法。
【請求項70】
前記核酸構築物が、さらに、ウイルスタンパク質をコードする配列を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が植物細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項72】
前記植物細胞が、アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダカラシ、大豆、小麦 ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン(nicotine)、ホウレンソウ、およびレンズマメの細胞からなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記抗原タンパク質がクローン根細胞において産生される、請求項56に記載の方法。
【請求項74】
前記抗原タンパク質が発芽種苗において産生される、請求項56に記載の方法。
【請求項75】
さらに、産生された一部精製または精製抗原タンパク質を回収する工程を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項76】
熱安定性タンパク質に融合させたA型インフルエンザ内在性膜タンパク質成分をコードする核酸配列を含む単離された核酸構築物であって、
該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも1つのドメインを含む、核酸構築物。
【請求項77】
前記内在性膜成分が、配列番号1、配列番号3、配列番号7、配列番号8、配列番号33、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号20および配列番号24からなる群より選択される少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインを含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項78】
前記内在性膜成分が、少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、配列番号2、配列番号4、配列番号16および配列番号18からなる群より選択される少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項79】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、配列番号1または配列番号3から選択される完全長血球凝集素(HA)からなる、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項80】
前記内在性膜成分が、少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、配列番号2または配列番号4から選択される完全長ノイラミニダーゼ(NA)からなる、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項81】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記熱安定性タンパク質が修飾リケナーゼタンパク質の配列を含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項82】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記リケナーゼのコード配列が植物におけるタンパク質発現のために最適化されている、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項83】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記リケナーゼタンパク質の配列が、リケナーゼのN末端ドメイン、C末端ドメインおよび表面ループドメインを含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項84】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、前記リケナーゼに融合させた内在性膜タンパク質成分が、N末端融合タンパク質、C末端融合タンパク質または表面ループ挿入融合タンパク質のいずれか1つである、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項85】
前記内在性膜成分が少なくとも1つの血球凝集素ドメインを含み、該内在性膜タンパク質成分が、血球凝集素(HA)ドメインおよびノイラミニダーゼ(NA)ドメインからなる群より選択される少なくとも2つのドメインを含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項86】
前記内在性膜タンパク質成分が、少なくとも1つの血球凝集素(HA)ドメインおよび少なくとも1つのノイラミニダーゼ(NA)ドメインを含む、請求項85に記載の単離された核酸構築物。
【請求項87】
さらにベクター核酸配列を含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項88】
さらにウイルスプロモーター核酸配列を含む、請求項76に記載の単離された核酸構築物。
【請求項89】
前記ベクターがバイナリーベクターである、請求項76に記載の方法。
【請求項90】
さらに、ウイルスタンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項91】
請求項76に記載の核酸構築物を含む宿主細胞。
【請求項92】
植物細胞である、請求項91に記載の宿主細胞。
【請求項93】
アルファルファ、ラディッシュ、カラシ、緑豆、ブロッコリー、オランダカラシ、大豆、小麦 ヒマワリ、キャベツ、クローバー、ペチュニア、トマト、ジャガイモ、ニコチン(nicotine)、ホウレンソウ、およびレンズマメからなる群より選択される、請求項92に記載の植物。
【請求項94】
アブラナ属、ニコチアナ(Nicotana)属、およびペチュニア属から選択される属のものである、請求項92に記載の植物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2009−526526(P2009−526526A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554442(P2008−554442)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/003969
【国際公開番号】WO2007/095318
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508033591)フラウンホーファー ユーエスエー, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/003969
【国際公開番号】WO2007/095318
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508033591)フラウンホーファー ユーエスエー, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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