説明

インフルエンザ赤血球凝集素の組成物とその使用

本発明は医学、公衆衛生、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野にある。本発明はインフルエンザの治療、寛解、及び/又は予防のための組成物、ワクチン組成物及び薬学的組成物を提供する。本発明の組成物、ワクチン組成物及び薬学的組成物はRNAバクテリオファージのウイルス様粒子及び少なくとも一つの抗原を含み、前記少なくとも一つの抗原はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の外部ドメイン又はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの断片である。動物、好ましくはヒトに投与される場合、前記組成物、ワクチン組成物及び薬学的組成物は効果的に免疫応答、特に抗体応答を誘導し、典型的にかつ好ましくは前記抗体応答はインフルエンザウイルスに対する。従って、本発明はインフルエンザウイルス感染の治療、寛解、及び/又は予防の方法を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学、公衆衛生、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分野にある。本発明は、インフルエンザの治療、寛解、及び/又は予防のための組成物、ワクチン組成物及び薬学的組成物を提供する。本発明の組成物、ワクチン組成物及び薬学的組成物はRNAバクテリオファージのウイルス様粒子及び少なくとも一つの抗原を含み、前記の少なくとも一つの抗体はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメイン又はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片である。動物、好ましくはヒトに投与されると、前記組成物、ワクチン組成物及び薬学的組成物は効率良く免疫応答、特に抗体応答を誘導し、典型的かつ好ましくは前記抗体応答はインフルエンザウイルスに対する。従って、本発明はインフルエンザウイルス感染の治療、寛解、及び/又は予防の方法を更に提供する。
【背景技術】
【0002】
家禽における強毒型鳥インフルエンザウイルスの出現及び鳥インフルエンザウイルス又は異なるサブタイプの豚ウイルスのヒトへの増加する感染例数、続くそれらのウイルスのヒトの集団における直接感染は、これらのウイルスの汎発性流行の可能性のため公衆衛生にとって多大な驚異である(Subbarao等 2007、Nature reviews 7:267−278)。
【0003】
インフルエンザウイルスにはインフルエンザA、B、及びCの3つのタイプがある。インフルエンザB型ウイルスはほぼ例外なくヒトに感染し、ただ一つの型の主要表面糖タンパク質、赤血球凝集素(HA)及びノイラミダーゼ(NA)しか含まない。
【0004】
インフルエンザA型ウイルスは主要表面糖タンパク質、赤血球凝集素(HA)及びノイラミダーゼ(NA)の遺伝学的及び抗原性の相違に基づき異なるサブタイプに分類される(Wright等 2001、Fields Virology 第4版;編集KnipeD.M. & Howley、P.M. 1533−1579)。少なくとも16の異なるHA抗原が知られている。これらのサブタイプはH1からH16まで命名されている。
【0005】
HAタンパク質はウイルスの宿主細胞への付着と細胞の細胞質ゾルへウイルスが貫通する間のウイルス性細胞膜融合を媒介する。インフルエンザウイルスゲノムは8本の一本鎖マイナス鎖RNA断片からなり、その4番目に大きな断片がHAタンパク質をコードする。
【0006】
インフルエンザHAはビリオンの表面上及び感染細胞上に存在するホモ三量体の内在性膜糖タンパク質である。HAタンパク質は三つの単量体おのおのの配列にまたがっている膜貫通部分によって膜に固定されている。主なインフルエンザワクチンの予防効果は、付着を阻害し故に細胞の感染を阻害する抗赤血球凝集素抗体によるものである(Virelizier J. L.1975 J.Immunol.115:434−439)。ウイルス付着の阻害は人々を感染症又は重い病気から守る。防御の程度は抗HA力価に相関する。HA糖タンパク質は、翻訳後にHA1とHA2サブユニットに切断されるHA0前駆体として合成される。この開裂は融合ペプチドのN末端で起き、融合が起きるためには不可欠である(Steinhauer D.A.1999 Virology 258:1−20)。融合の過程はHAがホモ三量体を形成することを必要とする(Danieli等 1996 J.Cell Biol.133:559−569)。インフルエンザウイルスは型、地理的な起源、系統番号、分離の年、及びHAとHBのサブタイプを含む命名法、例えば、A/California/04/09)(H1N1)と記述される。少なくとも16のHAサブタイプ(H1−H16)及び9つのNA(N1−N9)サブタイプが知られている(Murphy及びWebster, ”Orthomyxoviruses”,Virology,編集 Fields,B.N.,Knipe,D.M.,Chanock,R.M.,1091−1152(Raven Press,New York 1990))。16HAサブタイプのうち6つのH1、H2、H3、H5、H7及びH9はヒトに感染するインフルエンザA型ウイルスに既に同定されている(Cox等、2003 Scandanavian、J.of Immun.59:1−15)。
【0007】
HAに対する抗体はインフルエンザ感染を中和することができ、インフルエンザに対する自然免疫の基礎である(Clements、 ”influenza Vaccines”,in Vaccines:New Approaches to Immunological Problems、編集 Ronald W. Ellis、頁129−150(Butterworth−Heinemann、Stoneham、Mass.1992)。HA分子中の抗原性変異はインフルエンザの頻発な発生及びワクチンによる感染の限定的な制御の原因である。インフルエンザウイルスのHA部分は防御免疫反応の標的であり、抗原連続変異と抗原不連続変異の結果として変化しうる。
【0008】
抗原連続変異は主要表面タンパク質である赤血球凝集素及びノイラミダーゼを産生する遺伝物質を含む2つの遺伝子中の点変位により起きる小さな段階的変化を言う。これらの点変位は予期せずに起き、これらの表面タンパク質に小さな変化をもたらす。抗原連続変異は、以前のインフルエンザ株に対する抗体により認識され得ない新しいウイルス株を生みだす。このことは、なぜ人々は1回以上インフルエンザに感染し、なぜ毎年のインフルエンザワクチンの生産に含まれるべき株の選択のために、ヒトインフルエンザウイルス株の進化をモニターするための大規模な調査が重要なのかについて主な理由の一つである。ほとんどの年でインフルエンザウイルスの3種のウイルス株のうち1つ又は2つが、蔓延するインフルエンザウイルスの変化に後れないために更新される。この理由により、インフルエンザに対して免疫を付与されることを望む人々は毎年ワクチン摂取を受ける必要がある(Center for Disease control and Prevention、Subbarao等、2007 Nature reviews 7:267−278)。抗原不連続変異はインフルエンザA型ウイルスに観察された現象である。それは、現在は人々に蔓延していないヒトの新種のインフルエンザA型ウイルスサブタイプを生じさせる突然の主要な変化を言う。抗原不連続変異は直接動物からヒトへの伝染を通じて、又はヒトインフルエンザA型ウイルスと動物インフルエンザA型ウイルスが混合することで起こり得、遺伝子再集合と呼ばれるプロセスを通じて新種のヒトインフルエンザA型サブタイプウイルスを作り出す。大規模なインフルエンザの世界的流行(世界中に広がった)は仮に3つの条件を満たすと起きうる。(i)インフルエンザA型ウイルスの新規サブタイプがヒト集団に導入される。(ii)そのウイルスがヒトに重篤な病気を引き起こす。(iii)そのウイルスが容易にヒトからヒトへ持続的に広がる可能性がある。
【0009】
市販のインフルエンザワクチンの大半は鶏の孵化卵中で産生される。毎年のインフルエンザワクチンを生育させるために卵を使用することはいくつか良く知られた不利な点、特に流行又は世界的大流行の状況に応じて迅速にワクチンを生産することができないという不利な点を持っている。抗原の組換え発現に基づいたアプローチが新たなインフルエンザワクチンの代わりとして研究されている。これらのワクチンではタンパク質抗原は大腸菌、酵母、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞等の原核生物と真核生物の発現系において産生される。インフルエンザに対する組換えサブユニットワクチンの開発はウイルスを生育する必要性が除外されるため魅力的な選択肢である。
【0010】
2つの主な問題が組換えインフルエンザタンパク質の開発に妨げになっている。ひとつは低い発現レベル、及びもうひとつは原核細胞で天然のコンフォーメーションを持ったタンパク質を発現させることの困難さである。例えば、インフルエンザワクチンの主要成分であるHAは組換え体として発現させることが困難であることが判明している。膜へのアンカーを欠損したHA分子のピチア属での発現が報告されている(Saelens等、1999 Eur.J.Biochem.260:166−175)。その他の研究において、Mc Ewen等は(1992 Vaccine;10:405−411)、サルモネラのフラジェリン遺伝子の中へクローン化したインフルエンザH3サブタイプのHA分子の18アミノ酸残基の抗原決定基を含む合成ペプチドが、マウスモデルにて肺で局所的IgAを誘導し、インフルエンザ曝露に対する部分的な防御を与えることが可能であることを示した。同様に、Jeon等は(2002 Viral Immunology 15:165−176)、肺ホモジネートの赤血球凝集アッセイに基づき、タンパク質断片HA91−261で免疫したマウスはウイルス曝露に対する著しい防御を誘導したことを報告した。Song等は(2008 PLoS one 3:e2257)、HA抗原の球状頭部ドメインが強力なTLR5リガンドのフラジェリンと融合したワクチンを産生した。
【発明の概要】
【0011】
主な態様において、本発明は、(a)少なくとも一つの第一付着部位を持つウイルス様粒子(VLP)であって、前記ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であるウイルス様粒子と、(b)少なくとも一つの第二付着部位を持つ少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の外部ドメイン又はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の該外部ドメインの断片であり、インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の該外部ドメインの該断片がインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の該外部ドメインの少なくとも80の連続アミノ酸を含む抗原を含み、(a)及び(b)が前記少なくとも一つの第一付着部位及び前記少なくとも一つの第二付着部位を介して結合している組成物に関する。我々は今や驚くべきことに、本発明の組成物は免疫応答、特に抗体応答を誘導する能力があり、インフルエンザに対する動物モデルにおいてインフルエンザウイルスによる致死的曝露に対して防御する高い抗体力価をもたらすことを見いだした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「アジュバント」:本明細書で使用する「アジュバント」なる用語は、本発明のワクチン組成物及び薬学的組成物と組合わせると、前記ワクチン組成物又は薬学的組成物のみよりも、より亢進した免疫応答を与える貯蔵所を宿主内において生成することを可能にする物質又は免疫応答の非特異的刺激因子を意味する。アジュバントは(a)ゲル状鉱物、好ましくは水酸化アルミニウム、(b)リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、及びジニトロフェノール、及び(c)ヒトアジュバント、好ましくはBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルバムを含む。アジュバントは完全及び不完全フロインドアジュバント、修飾ムラミールジペプチド、モノホスホリル脂質免疫調節物質、AdjuVax 100a、QS−21、QS−18、CRL1005、MF−59、OM−174、OM−197、OM−294、及びビロソームアジュバント技術を更に含む。好ましいアジュバントはアルミニウム含有アジュバントであり、好ましくはアルミニウム塩、最も好ましくは水酸化アルミニウム(アラム)である。アジュバントなる用語はまた、これらの物質の混合物を網羅する。VLPは一般的にアジュバントとして記載されている。しかしながら、本出願書類の枠の中で使用される「アジュバント」なる用語は、発明組成物、ワクチン組成物、及び/又は薬学的組成物によるVLPを含まないアジュバントを指す。より正確には、アジュバントなる用語は、前記組成物の付加的で特徴的な組成物、ワクチン組成物及び/又は薬学的組成物をを指す。
【0013】
「抗原」:本明細書で使用する「抗原」なる用語は、MHC分子に提示されると抗体又はT細胞受容体(TCR)が結合する能力を有する分子を指す。本明細書で使用する「抗原」なる用語はまた、T細胞抗原決定基を指す。抗原は加えて、免疫系により認識される能力、及び/又は体液性免疫応答、及び/又は細胞性免疫応答を誘導する能力を有し、B−、及び/又はT−リンパ球の活性化を導く。このことはしかしながら、少なくとも所定の場合において、抗原がTh細胞抗原決定基を含むか又は結合している、及び/又はアジュバントに与えられていることを必要とし得る。抗原は一つ以上の抗原決定基(B−及びT−抗原決定基)を有することが可能である。上で述べられた特異的反応は、抗原は他の抗原により誘発され得る多くの他の抗体又はTCRとではなく、対応する抗体又はTCRとともに、一般的には高度に選択的な方法で好ましくは反応するであろうことを示していることを意味する。もし他で示されなければ、本明細書で使用する「抗原」なる用語は、本発明の組成物、ワクチン組成物、及び/又は薬学的組成物に含まれるウイルス様粒子は言及しない。
【0014】
「「対応する」アミノ酸の位置(H3番号付け)」:インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質HA1及びHA2のアミノ酸配列は非常に可変である。従って、これらのサブユニットのアミノ酸の位置は一般的には直接的には指定されず、インフルエンザウイルスの参考株のHA1及びHA2サブユニットのアミノ酸配列のアミノ酸配列位置に対し、好ましくは構造のアラインメントを経由してマッピングされる。当該技術分野で一般的に使用され、又本明細書中で使用される参考株はインフルエンザA型ウイルスH3 1968(Wilson等、1981、Nature 289:366−373)である。それに応じて、赤血球凝集素HA1サブユニットはインフルエンザA型ウイルスH31968(配列番号75)に対してマッピングされ、赤血球凝集素HA2サブユニットのアミノ酸位置はヒトインフルエンザA型ウイルスH3 1968(配列番号76)に対し、好ましくは構造のアラインメントを経由してマッピングされる。得られたアミノ酸位置の番号付けは、従って、しばしば「H3番号付け」として言及される。典型的かつ好ましくは結晶構造データに基づいて構造アラインメントが行われる。結晶構造データはサブタイプH1(Gamblin等、2004 Science 303:1838−1842、及び該論文に引用された参照文献)、H3 (Wilson等、1981、Nature 289:366−373)、H5(Stevens等、2006、Science 312:404−410)について入手可能である。結晶構造が入手できないHAサブタイプの構造情報は、アミノ酸配列に基づく構造モデル構築により得ることができる。本発明の目的のために、ソフトウエアSWISS−MODELにより構造モデル構築が望ましく行われる。構造データに基づくアラインメントを発生させるツール及びアルゴリズムは技術者が容易に入手できる(例えば、Weis WI等、1990、Refinement of the influenza virus hemagglutinin by simulated annealing.J Mol Biol、1990 Apr 20;212(4):737−61)。典型的かつ好ましくは、インフルエンザA型サブタイプのH1、H2、H3、H5及びH9の既知のHA1又はHA2サブユニットのアミノ酸位置のマッピングは、Stevens等により提供されたアラインメントに基づく(Science 303:1866−1870、追加のオンラインコンテンツの図S1)。インフルエンザB型ウイルス赤血球凝集素の構造は2008年にWang等から知られている(J.Virol.、頁3011−3020)。典型的かつ好ましくは、既知のインフルエンザB型ウイルス赤血球凝集素HA1サブユニットのアミノ酸位置のH3マッピングは、2004年にTung等により提供されたアラインメントに基づく(J Virol.85:3249−59)。既知のアミノ酸配列は、前記既知アミノ酸配列が前記参考アミノ酸配列の連続する部分に対しマッピングされ得、すなわち構造的にアラインメントされ得る場合、前記の連続部分が前記アミノ酸位置として定義され、参考アミノ酸配列上の所定のアミノ酸位置に“対応している”と見なされる。典型的かつ好ましくは、参考アミノ酸配列上の所定のアミノ酸位置に対応する既知のアミノ酸配列は、参考アミノ酸配列に対しマッピングできないいかなるフランキング配列をも含まない。従って、「配列番号75のアミノ酸位置11からアミノ酸位置328に“対応する”アミノ酸配列」、「配列番号75のアミノ酸位置11からアミノ酸位置329に“対応する”アミノ酸配列」、「配列番号76のアミノ酸位置1からアミノ酸位置176に“対応する”アミノ酸配列」、又は「配列番号75の位置115から位置261からなるアミノ酸配列に“対応する”アミノ酸配列」等の用語は、位置番号により定義される参考アミノ酸配列のその連続部分に対し、マッピングされ得、すなわち構造的にアラインメントされ得るアミノ酸配列を言う。
【0015】
「インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメイン(HA外部ドメイン)」:本明細書で使用する、「インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメイン(HA外部ドメイン)」なる用語は、(i)タンパク質であって、前記タンパク質は(a)配列番号75のアミノ酸位置11からアミノ酸位置328を含むか、又は好ましくは該アミノ酸からなるHA1サブユニット、(b)配列番号76の位置1から176からなるHA2サブユニットからなるタンパク質を指し、及び(ii)アミノ酸配列同一性をそれらに対し、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも98%、及び最も好ましくは少なくとも99%有し、さらにまた好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインである任意のタンパク質を指す。「インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメイン」なる用語は好ましくは、(i)(a)配列番号75のアミノ酸位置11から329からなるHA1サブユニット、及び(b)配列番号76の位置1から176からなるHA2サブユニットからなるタンパク質、(ii)(a)配列番号75のアミノ酸位置11からアミノ酸位置328からなるHA1サブユニット及び(b)配列番号76の位置1から176からなるHA2サブユニットからなるタンパク質、(iii)(a)天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のHA1サブユニットであって、前記天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記HA1サブユニットは配列番号75のアミノ酸位置11からアミノ酸位置329に対応するアミノ酸配列からなり、及び(b)天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のHA2サブユニットであって、前記天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のHA2サブユニットは配列番号76のアミノ酸位置1からアミノ酸位置176に対応するアミノ酸配列からなる、前記(a)及び(b)からなるタンパク質、(iv)(a)天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のHA1サブユニットであって、前記天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のHA1サブユニットは配列番号75のアミノ酸位置11から328に対応するアミノ酸配列からなり、及び、(b)天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のHA2サブユニットであって、前記天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のHA2サブユニットは配列番号76のアミノ酸位置1から176に対応するアミノ酸配列からなる、前記(a)及び(b)からなるタンパク質、及び(v)アミノ酸配列の同一性を(i)、(ii)、(iii)、又は(iv)に定義されたタンパク質の何れか一と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、及び最も好ましくは少なくとも99%有し、更に好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインであるタンパク質、からなる群から選択されるタンパク質を指す。本発明に係るHA1外部ドメインにおいて、前記HA1サブユニット(a)は典型的かつ好ましくは前記HA2サブユニット(b)に、少なくとも一本の、好ましくは一本又は二本の共有結合を経由して結合し、前記共有結合はペプチド結合及びジスルフィド結合からなる群から選択される。非常に好ましくは、前記HA1サブユニット(a)は前記HA2サブユニット(b)に、少なくとも一本の、好ましくは一本又は二本の共有結合を経由して結合し、前記共有結合の少なくとも一本はジスルフィド結合である。非常に好ましくは、前記HA1サブユニット(a)は遺伝子的に前記HA2サブユニット(b)のN末端と融合しており、前記HA1サブユニット(a)は更に前記HA2サブユニット(b)に少なくとも一本の、好ましくは一本のジスルフィド結合によって更に結合する。本発明の所定の実施態様において、前記HA1とHA2の間のペプチド結合は融合産物の成熟化の間に切断され得、その間前記ジスルフィド結合はもとの状態のままである。従って、前記HA1サブユニット(a)は好ましくは前記HA2サブユニット(b)に厳密に一本の共有結合を経由して結合し、前記共有結合はジスルフィド結合である。しかしながら、HA1とHA2の融合産物であるHA外部ドメインは、HA1とHA2サブユニット間のペプチド結合はもとの状態のままであり、本発明によってまた包含される。従って、本発明に係る更に好まれるHA外部ドメインにおいて、前記HA1サブユニット(a)は遺伝子的に前記HA2サブユニット(b)のN末端に融合し、前記HA1サブユニット(a)は前記HA2サブユニット(b)に一本の第一の共有結合を経由して、及び少なくとも一本の、好ましくは一本の、第二の共有結合を経由して結合し、前記第一の共有結合はペプチド結合であり及び前記の少なくとも一本の第二の共有結合はジスルフィド結合である。
【0016】
「天然に存在する」:「天然に存在する」なる用語は、インフルエンザウイルス又はインフルエンザウイルス株に関して、自然宿主集団に、好ましくはヒトの集団に存在するインフルエンザウイルス又はインフルエンザウイルス株を指す。典型的かつ好ましくは、天燃に存在するインフルエンザウイルス又はインフルエンザウイルス株は前記集団の一感染個体から単離される。インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質又はHA外部ドメインに関して、「天然に存在する」なる用語は、天然に存在するインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質、又は天然に存在するインフルエンザウイルス又は天然に存在するインフルエンザウイルス株のHA外部ドメインを指す。
【0017】
「インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片」:本明細書で使用する、「インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片」なる用語は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の一部分を指し、インフルエンザA型又はB型ウイルスのインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインの、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインの、少なくとも80、又は少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも180、又は少なくとも190、又は少なくとも200、又は少なくとも210、又は少なくとも220、又は少なくとも230、又は少なくとも250、又は少なくとも270、又は少なくとも290、又は少なくとも310、又は少なくとも320の連続するアミノ酸を含む。インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインという用語はまた、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の一部分を包含し、前記断片はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質のN末端、及び/又はC末端の一つ以上のアミノ酸の欠失に由来する。インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片は好ましくはその2次構造に所定の要素を含む。そのような構造要素は先行技術から入手できる構造データに基づいて技術者により容易に同定可能である。非常に好ましい実施態様では、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の少なくとも一つの8本鎖ジェリーロールバレル及び少なくとも一本のαヘリックスを含む。好ましい実施態様では、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、受容体結合ドメインを含むか、又は好ましくは、受容体結合ドメインからなる。更に好ましい実施態様では、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、痕跡エステラーゼドメインを更に含む。典型的かつ好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、分子内ジスルフィド結合形成能を有する少なくとも一対の、及び最大でも四対のシステイン残基を含む。より好ましくは、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、分子内ジスルフィド結合形成能を有する二対のシステイン残基を含む。インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片は、好ましくは真核生物又は原核生物の発現系における組換え体発現により、好ましくは原核生物の発現系で、最も好ましくは大腸菌で得られる。典型的かつ好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、本発明に係るウイルス様粒子に共有結合すると、赤血球の赤血球凝集を誘導することができ、前記赤血球は好ましくは鶏、七面鳥、馬、又はヒトに由来する。本発明に係るウイルス様粒子に結合しているインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片は、1μlの1%赤血球中の接合体が0.5μg以下の濃度で観察されると、赤血球の赤血球凝集を誘導可能であると考えられている。赤血球凝集アッセイは本明細書では好ましくは実施例35に記載の通り実施される。
【0018】
「インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのHA1サブユニットの位置54a」:インフルエンザウイルスA型又はB型の天然に存在するアミノ酸配列は非相同アミノ酸残基の挿入を有し得る。例えば、位置「54a」は2004年のRussell等(Virology 325:287−296)の図1に記述された挿入を指す。従って、インフルエンザA型サブタイプH1において、位置54aのアミノ酸はリジンである。
【0019】
「結合した」:本明細書で使用する「結合した」又は「結合」なる用語は化学的、及び/又は物理的相互作用を指し、それにより二分子が一緒に結合される。化学的相互作用は共有結合性及び非共有結合性相互作用を含む。好ましい非共有結合性の相互作用はイオン相互作用、疎水性相互作用又は水素結合である。好ましい共有結合性相互作用は共有結合であり、最も好ましくはエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素−リン結合、チオエステル等の炭素−硫黄結合、又はイミド結合である。
【0020】
「第一付着部位」:本明細書で使用する「第一付着部位」は、VLPとともに天然に存在し又は人工的にVLPに付加され、第二付着部位が結合することが可能な要素を指す。第一付着部位は好ましくは化学的反応基、好ましくはアミノ酸、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジニル基、又はその組合わせを含むか、又は該基である。非常に好ましくは、第一付着部位はアミノ基を含むか、又はアミノ基である。第一付着部位は従ってまた、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び好ましくはアミノ酸残基を含む。第一付着部位は更に、糖、ビオチン、フルオレセイン、レチノール、及びジゴキシゲニンを含む他の反応性化学残基を含む。好ましい実施態様では、第一付着部位は化学的反応基であり、好ましくはアミノ酸残基のアミノ基、最も好ましくはリジン残基のアミノ基である。更に好ましい実施態様では、第一付着部位はアミノ基又はカルボニル基であり、好ましくはアミノ基又はアミノ酸残基のカルボニル基である。第一付着部位は好ましくは表面に、最も好ましくはVLPの外表面に位置する。更に好ましくは、複数の第一付着部位が表面に存在し、好ましくはVLPの外表面に、典型的かつ好ましくは繰り返し構造で存在する。好ましい実施態様では、第一付着部位は少なくとも一本の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一本のペプチド結合を介してVLPと結合する。更に好ましい実施態様では、第一付着部位はVLPと共に天然に存在する。非常に好ましい実施態様では、前記第一付着部位はVLPに含まれるタンパク質のアミノ酸残基のアミノ基であり、更に好ましくは前記第一付着部位はVLPのタンパク質に含まれるリジン残基のアミノ基である。更に非常に好ましい実施態様では、前記第一付着部位はVLPに含まれるコートタンパク質のアミノ酸残基のアミノ基であり、更に好ましくは前記第一付着部位はVLPのコートタンパク質に含まれるリジン残基のアミノ基である。あるいは、好ましい実施態様では、第一付着部位は人工的にVLPに付加される。
【0021】
「第二付着部位」:本明細書で使用する「第二付着部位」は、抗原とともに天然に存在し又は人工的に抗原に付加され、第一付着部位が結合することが可能な要素を指す。抗原の第二付着部位は好ましくはタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、又はアミノ基、カルボキシル基、又はスルフヒドリル基等の化学的反応基である。好ましい実施態様では、第二付着部位は化学的反応基、好ましくはアミノ酸の化学反応基である。非常に好ましい実施態様では第二付着部位はスルフヒドリル基であり、好ましくはアミノ酸のスルフヒドリル基、最も好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基である。更に好ましい実施態様では第二付着部位はアミノ基又はカルボキシル基であり、好ましくはアミノ酸のアミノ基又はカルボキシル基である。「少なくとも一つの第二付着部位を持つ抗原」なる用語は、従って、抗原及び少なくとも一つの第二付着部位を含むコンストラクトを指す。一実施態様では、第二付着部位は抗原の中に天然に存在する。その他の実施態様では、第二付着部位は好ましくはリンカーを介して人工的に抗原に付加される。それゆえ、少なくとも一つの第二付着部位を持つ抗原は、前記第二付着部位は前記抗原の中で天然に存在せず、典型的かつ好ましくは更に「リンカー」を含む。好ましい実施態様では第二付着部位は少なくとも一共有結合、好ましくは少なくとも一本のペプチド結合を介して抗原と結合する。
【0022】
「リンカー」:本明細書で使用する「リンカー」は第二付着部位と抗原を結合させるか、又は第二付着部位を含むか、本質的に該部位からなるか、又は該部位からなる。好ましくは、「リンカー」は第二付着部位を含むか、又は代わりに該部位からなり、更に好ましくは前記第二付着部位は一つのアミノ酸であり、好ましくはシステイン残基である。少なくとも一つのアミノ酸残基を含むリンカーはまたアミノ酸リンカーを指す。非常に好ましい実施態様では、リンカーはアミノ酸リンカーであり、好ましくは前記アミノ酸リンカーはアミノ酸残基だけからなる。本発明に従ったリンカーの更に好ましい実施態様はスルフヒドリル基、又はシステイン残基を含む分子である。抗原とリンカーの結合は好ましくは少なくとも一本の共有結合を介して、より好ましくは少なくとも一本のペプチド結合を介す。遺伝子融合によるVLPと抗原の結合との関連で、リンカーは欠損しているか、又は好ましくはアミノ酸リンカー、より好ましくはアミノ酸残基だけからなるアミノ酸リンカーであり得る。
【0023】
「規則的で反復性の抗原アレイ」:本明細書で使用される「規則的で反復性の抗原アレイ」なる用語は抗原の反復性パターンを指す。規則的な反復性抗原アレイは、ウイルス様粒子に関して抗原の空間的配置における典型的かつ好ましい高次均一性に特徴がある。本発明による一実施態様では、反復パターンは幾何学的パターンである。望ましい規則的で反復性の抗原アレイはRNAバクテリオファージのVLPと結合する抗原により形成される。規則的で反復性の抗原アレイは、RNAバクテリオファージのVLPと結合する抗原により形成され、典型的かつ好ましくは、好ましくは1から30ナノメーターの間隔、好ましくは2から15ナノメーターの間隔、より好ましくは2から10ナノメーターの間隔、より好ましくは2から8ナノメーターの間隔、更により好ましくは1.6から7ナノメーターの間隔を有する厳密に反復的な準結晶性の抗原の配列を持つ。
【0024】
「ポリペプチド」:本明細書で使用する「ポリペプチド」なる用語は、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結したモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。これはアミノ酸の分子鎖を示し、特定の長さの生成物を指すわけではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義中に含まれる。たとえば、グリコシル化、アシル化、リン酸化など、ポリペプチドの翻訳後修飾も包含する。
【0025】
「配列同一性(アミノ酸配列)」:二つの所定のアミノ酸配列間の配列同一性のパーセンテージは任意の標準的なアルゴルズム、好ましくはベストフィット(Bestfit)プログラムに組み入れられたアルゴリズムにより決定される。典型的かつ好ましくは前記アルゴリズムのデフォルトのパラメーター設定は、好ましくはベストフィットの設定が適用される。本方法は本発明で開示された任意のタンパク質、ポリペプチド又はその断片のアミノ酸配列間の配列同一性の決定に適用できる。
【0026】
「コートタンパク質」:本明細書で使用する「コートタンパク質」なる用語はウイルスキャプシド又はVLPに組み込まれることができる、ウイルスタンパク質、好ましくはウイルスの、好ましくはRNAバクテリオファージの天然のキャプシドサブユニットを指す。コートタンパク質なる用語は天然に存在するコートタンパク質ならびに組換え発現コートタンパク質を包含する。更に包含されるのはコートタンパク質の変異体及び断片であり、前記変異体及び断片はVLPを形成する能力を保持する。
【0027】
「ウイルス様粒子(VLP)」:本明細書で用いられるウイルス様粒子(VLP)は、非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性のウイルス粒子を指し、又はウイルス粒子、好ましくはウイルスのキャプシドに類似する非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性の構造を指す。本明細書で用いる「非複製性」なる用語は、VLPに含まれるゲノムを複製することができないことを意味する。本明細書中で用いる「非感染性」なる用語は、宿主細胞に侵入できないことを意味する。好ましくは、本発明のウイルス様粒子は、ウイルスゲノムないしはウイルスゲノム機能の全て又は一部を欠いているため、非複製性、及び/又は非感染性である。一実施態様では、ウイルス様粒子はウイルス粒子であり、このウイルスゲノムは物理的又は化学的に不活性化されている。典型的かつより好ましくは、ウイルス様粒子はウイルスゲノムの複製性及び感染性の成分の全て又は一部を欠いている。本発明のウイルス様粒子は、それらのゲノムと異なる核酸を含みうる。本発明のウイルス様粒子の典型的かつ好ましい実施態様では、対応するウイルス、バクテリオファージ、好ましくはRNAファージのウイルスキャプシド等の、ウイルスキャプシドである。「ウイルスキャプシド」又は「キャプシド」なる用語は、ウイルスタンパク質のサブユニットから構成される巨大分子の集合体を指し、好ましくは前記ウイルスタンパク質サブユニットは前記ウイルスのコートタンパク質である。典型的には、60、120、180、240、300、360及び360以上のウイルスタンパク質サブユニットであり、好ましくはコートタンパク質サブユニットである。典型的かつ好ましくは、これらのサブユニットの相互作用により、固有に反復して組織化されたウイルスキャプシドが形成され、前記構造は典型的には球状又はチューブ状である。例えば、RNAバクテリオファージのキャプシドは正20面体対称の球形である。ウイルス様粒子の一つの特徴は、そのサブユニットの高次に規則的かつ反復性配置である。
【0028】
「RNAバクテリオファージのウイルス様粒子」:本明細書で使用する「RNA−バクテリオファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNA−バクテリオファージのコートタンパク質、突然変異体又はその断片を含むか、又は好ましくは本質的に該タンパク質からなるか、又は該タンパク質からなる。加えて、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は、RNA−バクテリオファージの構造に似ており、非複製性で非感染性であり、RNAバクテリオファージ複製装置をコードする少なくともその遺伝子を欠如しており、典型的には宿主へのウイルス付着又は侵入の役割を果たしているタンパク質をコードする遺伝子を欠如している。また含まれるものはRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であり、上述の遺伝子は依然として存在するが不活性であり、従ってまたRNAバクテリオファージの非複製性、及び/又は非感染性のウイルス様粒子へと導く。RNAバクテリオファージ由来の好ましいVLPは正20面体対称を示し180サブユニット(モノマー)からなる。RNAバクテリオファージのウイルス様粒子を非複製性、及び/又は非感染性にする好ましい方法は、UV照射、ホルムアミド処理、典型的かつ好ましくは遺伝子操作等の物理的、化学的不活性化による
【0029】
「組換えVLP」:本明細書で使用される「組換えVLP」なる用語は、少なくとも一工程の組換えDNA技術を含む方法によって得られるVLPを指す。典型的かつ好ましくは、組換えVLPは、宿主、好ましくは微生物細胞中で組換えウイルスコートタンパク質の発現により得られる。
【0030】
「免疫賦活性核酸」:本明細書で使用する場合、免疫賦活性核酸なる用語は、免疫応答を誘導するか、及び/又は高めることができる核酸を指す。免疫賦活性核酸は、リボ核酸、特にデオキシリボ核酸を含み、リボ核酸及びデオキシリボ核酸双方とも、2本鎖又は1本鎖であり得る。好ましいISS−NAはデオキシリボ核酸であり、更に好ましくは前記デオキシリボ核酸は1本鎖である。好ましくは、免疫賦活性核酸は、非メチル化Cを含有する少なくとも1つのCpGモチーフを含む。非常に好ましい免疫賦活性核酸は少なくとも1つのCpGモチーフを含み、前記の少なくとも1つのCpGモチーフは、Cが非メチル化状態である少なくとも1つの、好ましくは1つのCGジヌクレオチドを含む。好ましくは、しかし限らないが、前記CGジヌクレオチドはパリンドローム配列の一部である。免疫賦活性核酸なる用語はまた、修飾塩基、好ましくは4−ブロモシトシンを含む核酸を指す。本発明の文脈において特に好まれるのは、樹枝状細胞におけるIFN−アルファの生産を刺激する能力があるISS−NAである。本発明の目的に有用な免疫賦活性核酸は、例えば、国際公開第2007/068747A1号に記載されている。
【0031】
「オリゴヌクレオチド」:本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド」なる用語は、2個以上のヌクレオチド、好ましくは約6から約200個のヌクレオチド、及びより好ましくは約20から約100個のヌクレオチド、及び最も好ましくは約20から約40個のヌクレオチドを含む核酸配列を指す。非常に好ましくは、オリゴヌクレオチドは厳密に30個のヌクレオチドを含み、最も好ましくはオリゴヌクレオチドは厳密に30個のヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、ポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドであり、好ましくは(a)非修飾RNA又はDNA、及び(b)修飾RNA又はDNAから選択される。修飾はバックボーン又はヌクレオチドアナログを含み得る。オリゴヌクレオチドは好ましくは、(a)一本鎖及び2本鎖DNA、(b)一本鎖及び2本鎖領域の混合物であるDNA、(c)一本鎖及び2本鎖RNA、(d)一本鎖及び2本鎖領域の混合物であるRNA、及び(e)一本鎖又は、より好ましくは2本鎖、又は一本鎖及び2本鎖領域の混合物であるDNA及びRNAを含むハイブリッド分子、からなる群から選択される。好ましいヌクレオチド修飾/アナログは(a)ペプチド核酸、(b)イノシン、(c)トリチル化塩基、(d)ホスホロチオエート、(e)アルキルホスホロチオエート、(f)5−ニトロインドールデスオキシリボフラノシル、(g)5−メチルデスオキシシトシン、及び(h)5,6−ジヒドロ−5,6ジヒドロオキシデスオキシチミジンからなる群から選択される。ホスホチオール化ヌクレオチドは細胞又は臓器中で分解に対して保護され、従って望ましいヌクレオチド修飾である。ホスホジエステル結合ヌクレオチドのみからなる非修飾オリゴヌクレオチドは、典型的には修飾ヌクレオチドより活性があり、従って本発明の関連において一般的に望まれる。最も好まれるのは、ホスホジエステル結合デオキシヌクレオチドのみからなるオリゴヌクレオチドであり、更に好ましくは前記オリゴヌクレオチドは一本鎖である。更に好ましいのは、細胞内で、好ましくは樹状細胞においてIFN−アルファ産物を刺激することのできるオリゴヌクレオチドである。細胞内でIFN−アルファ産物を刺激することのできる非常に好ましいオリゴヌクレオチドはA型のCpG及びC型のCpGから選択される。
【0032】
「CpGモチーフ」:本明細書で使用する「CpGモチーフ」なる用語は、非メチル化状態の中央のCpG、すなわち、Cが非メチル化状態であり、少なくとも一個の塩基で、好ましくは中央のCpGに隣接(3’及び5’側に)する、一個又は二個のヌクレオチドで囲まれた非メチル化CpGジヌクレオチドを含むヌクレオチドパターンを指す。典型的にかつ好ましくは、本明細書で使用されるCpGモチーフは、非メチル化状態のCpGジヌクレオチド及びその5’及び3’末端の2個のヌクレオチドを含むか、又は代わりに該ヌクレオチドからなる。
【0033】
「非メチル化CpG−含有オリゴヌクレオチド」:本明細書で使用する「非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチド」又は「CpG」なる用語は、少なくとも一つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド、好ましくはオリゴデスオキシヌクレオチドを意味する。よって、CpGは少なくとも一つの非メチル化シトシン、グアニジンヌクレオチドを含む。好ましいCpGは、脊椎動物骨髄由来細胞の分裂促進効果を刺激/活性化し、例えば有し、あるいは該細胞によるサイトカインの発現を誘導又は増大させる、例えば、CpGはB細胞、NK細胞及び抗原提示細胞、例えば樹状細胞、単球及びマクロファージの活性化に有用でありうる。好ましくは、CpGは、3’にグアノシンが続く非メチル化シトシンを含むオリゴデスオキシヌクレオチド、好ましくは一本鎖オリゴデスオキシヌクレオチドを意味し、前記非メチル化シトシン及び前記グアノシンはホスフェート結合によって結合され、好ましくは前記ホスフェート結合はホスホジエステル結合又はホスホチオエート結合であり、更に好ましくは前記ホスフェート結合はホスホジエステル結合である。CpGは、ヌクレオチドアナログ、例えばホスホロチオエステル結合を含むアナログなどを含むことができ、二本鎖又は一本鎖であってよい。一般に、二本鎖分子はインビボにおいてより安定性がある一方、一本鎖分子は高い免疫活性を有する。好ましくは、本明細書で使用する場合、CpGは、少なくとも約10のヌクレオチド長で、少なくとも一つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドであり、更に好ましくは、前記CpGは10から60、より好ましくは15から60、更により好ましくは20から40,更により好ましくは約30、最も好ましくは正確に30のヌクレオチド長である。CpGは、メチル化、及び/又は非メチル化ヌクレオチドからなり得、前記少なくとも一つのCpGモチーフは、Cが非メチル化の少なくとも一つのCGジヌクレオチドを含む。CpGはまたメチル化及び非メチル化配列ストレッチを含み得、前記少なくとも一つのCpGモチーフは、Cが非メチル化の少なくとも一つのCGジヌクレオチドを含む。非常に好ましくは、CpGは、3’端にグアノシンが続く非メチル化シトシンを含む一本鎖オリゴデスオキシヌクレオチドに関連し、前記非メチル化シトシンと前記グアノシンはホスホジエステル結合によって結合している。CpGはホスホロチオエステル結合を含むアナログのようなヌクレオチドアナログを含み得、二本鎖又は一本鎖でありうる。一般に、ホスホジエステルCpGは以下に示すようにA型CpGであり、ホスホチオエステル安定化CpGはB型CpGである。本発明に関連して好ましいCpGオリゴヌクレオチドはA型CpGである。
【0034】
「A型CpG」:本明細書で使用する「A型CpG」又は「D型CpG」は、少なくとも一つのCpGモチーフを有するオリゴデスオキシヌクレオチド(ODN)を意味する。A型CpGは優先的にT細胞の活性化及び樹状細胞の成熟を刺激し、IFN-α産生を刺激可能である。A型CpGでは、少なくとも一つのCpGモチーフのヌクレオチドが少なくとも一つのホスホジエステル結合によって結合している。A型CpGは、その5’端、及び/又は好ましくはその3’端にホスホロチオエート結合ヌクレオチドが隣接しうる少なくとも一つのホスホジエステル結合CpGモチーフを含む。好ましくは、CpGモチーフ、よって好ましくはCGジヌクレオチド及び少なくとも一つ、好ましくは二つのヌクレオチドを含むその直ぐ隣接する領域はホスホジエステルヌクレオチドからなる。好ましいA型CpGは専らホスホジエステル(PO)結合ヌクレオチドからなる。典型的には、また好ましくは、本明細書で使用される「A型CpG」又は「D型CpG」なる用語は、少なくとも一つのCpGモチーフと、5’及び/又は3’端にポリGモチーフを含むオリゴデスオキシヌクレオチド(ODN)を意味する。典型的にかつ好ましくは、ポリGモチーフは、少なくとも一つ、好ましくは少なくとも3つ、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のG(グアノシン)、最も好ましくは少なくとも10個のGを含むか、あるいは該グアノシンからなる。ある実施態様では、5’及び/又は3’端、典型的にかつ好ましくは、5’及び/又は3’端のポリGモチーフの少なくとも一つのG、好ましくはポリGモチーフの少なくとも二つ、三つ又は四つ、更により好ましくは全てのGが、ホスホロチオエート修飾されている。しかしながら、非常に好ましい実施態様では、ポリGモチーフの全てのGはホスホジエステル結合によって結合している。好ましくは、本発明のA型CpGはパリンドローム配列を含むかあるいは該配列からなる。
【0035】
「パリンドローム配列」:パリンドローム配列は、規則的な塩基対(A/T;C/G)を有する二本鎖核酸の形態で存在する場合、5’−3’方向に同一配列の二つの一本鎖からなるヌクレオチド配列である。
【0036】
「パッケージ化」:本明細書で使用する「パッケージ化」という用語は、VLPと関係がある免疫賦活物質、特に免疫賦活性核酸の状態を指す。本明細書で使用する場合、「パッケージ化」という用語は、共有、たとえば化学的結合による、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などでありうる結合を含む。該用語はまた免疫賦活性核酸の封入化、又は部分的封入化を含む。従って、免疫賦活性核酸はVLPにより、実際の結合、特に共有結合の存在なしに封入できる。好ましい実施態様では、免疫賦活性核酸はVLP内にパッケージ化され、最も好ましくは、非共有結合の様式で該パッケージ化される。前記免疫賦活性核酸がDNA、好ましくは非メチル化CpG−含有オリゴヌクレオチドである場合、パッケージ化なる用語は前記免疫賦活性核酸、好ましくは前記非メチル化CpG−含有オリゴヌクレオチドが、ヌクレアーゼ加水分解、望むらくはDNAseによる加水分解(例えばDNaseI又はBenzonase)、に曝されないことを示し、望ましくは該露出度は国際公開第2003/024481A2号の実施例11−17の記載によりアッセイされる。
【0037】
One、a、又はan:用語「one」、「a」、又は「an」を本開示中で使用するとき、それらは、特に示さない限りは、「少なくとも一」又は「一つ以上」を意味する。
【0038】
一態様では、本発明は(a)少なくとも一つの第一付着部位を持つウイルス様粒子(VLP)であって、好ましくは前記ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であり、及び(b)少なくとも一つの第二付着部位を持つ一抗体であって、前記の少なくとも一つの抗体はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメイン(HA外部ドメイン)又はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片であって、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの少なくとも80個の連続アミノ酸を含有し、(a)及び(b)は前記の少なくとも1つの第一結合部位、及び少なくとも1つの第二結合部位を介して連結している、該(a)及び(b)を含む組成物に関する。
【0039】
好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインはタンパク質であり、前記タンパク質は(a)配列番号75のアミノ酸位置11からアミノ酸位置328を含むか、又は好ましくは前記アミノ酸からなるHA1サブユニット、及び(b)配列番号76の位置1から176からなるHA2サブユニット、から構成されるタンパク質である。
【0040】
更に好まれる実施態様では前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルスのHA外部ドメインであり、好ましくは前記インフルエンザA型ウイルスは天然に存在するインフルエンザA型株に属す。更に好ましい実施態様では、前記の天然に存在するインフルエンザA型ウイルス株は、(a)A/California/04/2009(H1N1)(ジェンバンク受託番号:ACP41105.1)(配列番号74);(b)A/Brisbane/59/2007(H1N1)(ジェンバンク受託番号:ACA28844.1)(配列番号73);(c)A/Albany/1/1968(H2N2)(ジェンバンク受託番号:ABO52247.1);(d)A/northern shoveler/California/HKWF1128/2007(H2N7)(ジェンバンク受託番号:ACF47420.1);(e)A/Uruguay/716/2007 X−175 (H3N2)(ジェンバンク受託番号:ACD47234.1)(配列番号40);(f)A/ruddy turnstone/New Jersey/Sg−00542/2008 (H4N6)(ジェンバンク受託番号:ACN86642.1);(g)A/Viet Nam/1203/2004 (H5N1)(ジェンバンク受託番号:ABP51977.1)(配列番号41);(h)A/Indonesia/5/2005(H5N1)(ジェンバンク受託番号:ABW06108.1)(配列番号42);(i)A/Egypt/2321−NAMRU3/2007(H5N1)(ジェンバンク受託番号:ABP96850.1)(配列番号43);(j)A/northern shoveler/California/HKWF383/2007(H6N1)(ジェンバンク受託番号:ACE76614.1;(k)A/Canada/rv504/2004(H7N3)(ジェンバンク受託番号:ABI85000.1);(l)A/duck/Mongolia/119/2008(H7N9)(ジェンバンク受託番号:BAH22785.1);(m)A/mallard/Minnesota/Sg−00570/2008(H8N4)(ジェンバンク受託番号:ACN86714.1);(n)A/HK/2108/2003(H9N2)(ジェンバンク受託番号:ABB58945.1);(o)A/Korea/KBNP−0028/2000(H9N2)(ジェンバンク受託番号:ABQ57378.1);(p)A/chicken/Anhui/AH16/2008(H9N2)(ジェンバンク受託番号:ACJ35235.1);(q)A/ruddy turnstone/New Jersey/Sg−00490/2008(H10N7)(ジェンバンク受託番号:ACN86516.1);(r)A/ruddy turnstone/New Jersey/Sg−00561/2008 (H11N9)(ジェンバンク受託番号:ACN86684.1);(s)A/ruddy turnstone/New Jersey/Sg−00484/2008(H12N5)(ジェンバンク受託番号:ACN86498.1);(t)A/herring gull/Norway/10_2336/2006(H13N6)(ジェンバンク受託番号:CAQ77191.1);(u)A/mallard duck/Astrakhan/263/1982(H14N5)(ジェンバンク受託番号:ABI84453.1);(v)A/Australian shelduck/Western Australia/1756/1983(H15N2)(ジェンバンク受託番号:ABB90704.1);(w)A/herring gull/Norway/10_1623/2006(H16N3)(ジェンバンク受託番号:CAQ77189.1);(x)A/California/07/2009(H1N1)(ジェンバンク受託番号:ACP44189.1)、及び(y)A/Perth/16/2009(H3N2)(ジェンバンク受託番号:ACS71642.1)を含む群から選択される。非常に好ましい実施態様では、前記天然に存在するインフルエンザA型ウイルス株は、A/California/07/2009(H1N1)(ジェンバンク受託番号:ACP44189.1)又はA/Perth/16/2009(H3N2)(ジェンバンク受託番号:ACS71642.1)である。
【0041】
本発明の好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15及びH16の外部ドメインからなる群から選択される。好ましくは、前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH1、H2、H3、H5、H7、及びH9の外部ドメインからなる群から選択され、より好ましくは、前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH1、H2、H3、H5、及びH9の外部ドメインからなる群から選択され、更により好ましくは、前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH1,H3,及びH5の外部ドメインからなる群から選択される。更に好ましくは前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH1、H2、及びH3の外部ドメインからなる群から選択される。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH1の外部ドメインである。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH3の外部ドメインである。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質サブタイプH5の外部ドメインである。
【0042】
更に好ましい実施態様では、前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号39に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号39に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を持つ該アミノ酸配列からなる群から選択され、更に好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の天然に存在する外部ドメインである。
【0043】
更に好ましい実施態様では、前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号40に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号40に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を持つ該アミノ酸配列からなる群から選択され、更に好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の天然に存在する外部ドメインである。
【0044】
更に好ましい実施態様では、前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号41に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号41に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を持つ該アミノ酸配列からなる群から選択され、更に好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の天然に存在する外部ドメインである。
【0045】
更に好ましい実施態様では、前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号42に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号42に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を持つ該アミノ酸配列からなる群から選択され、更に好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の天然に存在する外部ドメインである。
【0046】
更に好ましい実施態様では、前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号43に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号43に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を持つ該アミノ酸配列からなる群から選択され、更に好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の天然に存在する外部ドメインである。
【0047】
更に好ましい実施態様では、前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号73に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号73に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を持つ該アミノ酸配列からなる群から選択され、更に好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の天然に存在する外部ドメインである。
【0048】
更に好ましい実施態様では、前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号74に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号74に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を持つ該アミノ酸配列からなる群から選択され、更に好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集素タンパク質の天然に存在する外部ドメインである。
【0049】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインはインフルエンザB型ウイルスのHA外部ドメインであり、好ましくは前記インフルエンザB型ウイルスは天然に存在するインフルエンザB型ウイルス株に属す。好ましい実施態様では、前記の天然に存在するインフルエンザB型ウイルス株は、(a)B/Brisbane/33/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29387.1);(b)B/Guangzhou/01/2007(ジェンバンク受託番号:ABX71684.1)、及び(c)B/Brisbane/60/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29383.1)からなる群から選択される。
【0050】
更に好ましい実施態様では、前記抗原はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインであり、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインは三量体型である。更に好ましい実施態様では、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記三量体型は、(i)バクテリオファージT4タンパク質フィブリチンの三量体ドメイン、又はその機能性断片を、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインに、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのC末端に融合することにより組換えによりコンストランクトを作成し、(ii)前記コンストラクトを真核又は原核細胞に基づく系、好ましくはバキュロウイルス/昆虫細胞系にてにおいて発現させ、(iii)前記三量体を精製する工程、を含む方法により得られる。非常に好ましい実施態様では、バクテリオファージT4タンパク質フィブリチンの前記三量体ドメインは配列番号95又はその機能断片である。非常に好ましい実施態様では、バクテリオファージT4タンパク質フィブリチンの前記三量体ドメインは配列番号95である。コンストラクトの発現は好ましくはHi5又はsf21昆虫細胞、好ましくはsf21昆虫細胞で行われる。抗原は精製を可能にするために更にインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのC末端にHisタグを組み込み得る。前記Hisタグは、三量体形成配列を含むインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインのC末端か、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集素の前記外部ドメインのC末端に融合した、好ましくは3から6個のヒスチジン残基か、好ましくは6個のヒスチジン残基を含む。
【0051】
更に好ましい実施態様では、前記抗原は前記HA外部ドメインの断片であり、好ましくは前記HA外部ドメインの前記断片は前記HA外部ドメインのHA1サブユニット又は前記HA外部ドメインの前記HA1サブユニットの機能性断片である。
【0052】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置11から位置328に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置11から位置329に対応するアミノ酸配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置115から位置261に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置50から位置261に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置98から位置195に対応するアミノ酸残基チロシン、配列番号75の位置153に対応するトリプトファン、及び配列番号75の位置183に対応するヒスチジンを含む。
【0053】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は少なくとも1つのジスルフィド結合、好ましくは少なくとも2つのジスルフィド結合、より好ましくは少なくとも3つのジスルフィド結合、及び更により好ましくは少なくとも4つのジスルフィド結合を含む。従って、更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置97から139に対応するシステイン残基を含み、好ましくは前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置64、76、97、139に対応するシステイン残基を含み、より好ましくは前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置52、64、76、97、139、277、281、305に対応するシステイン残基を含む。
【0054】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は前記HA外部ドメインのHA1サブユニットの断片である。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置57から270に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置57から276に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる。
【0055】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置46から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置46から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなり、前記HA外部ドメインは、インフルエンザA型ウイルス株A/California/07/2009(H1N1)(ジェンバンク受託番号:ACP44189.1)又はA/Perth/16/2009(H3N2)(ジェンバンク受託番号:ACS71642.1)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインである。
【0056】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置46から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなり、前記HA外部ドメインは、インフルエンザB型ウイルス株B/Brisbane/33/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29387.1),B/Guangzhou/01/2007(ジェンバンク受託番号:ABX71684.1),又はB/Brisbane/60/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29383.1)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインである。
【0057】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置42から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置42から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなり、前記HA外部ドメインは、インフルエンザA型ウイルス株A/California/07/2009(H1N1)(ジェンバンク受託番号:ACP44189.1)又はA/Perth/16/2009(H3N2)(ジェンバンク受託番号:ACS71642.1)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインである。
【0058】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置42から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなり、前記HA外部ドメインは、インフルエンザB型ウイルス株B/Brisbane/33/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29387.1),B/Guangzhou/01/2007(ジェンバンク受託番号:ABX71684.1)、又はB/Brisbane/60/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29383.1)に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインである。
【0059】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置54から位置276に対応するアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置54から位置270に対応するアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置54aから位置276に対応するアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片は配列番号75の位置54aから位置270に対応するアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列からなる。
【0060】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片のアミノ酸配列は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、及び最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を、(a)配列番号67の位置2から277;(b)配列番号68の位置2から273;(c)配列番号69の位置2から230;(d)配列番号70の位置2から230;(e)配列番号71の位置2から224;(f)配列番号72の位置2から221;(g)配列番号84;(h)配列番号85;(i)配列番号86;(j)配列番号88;(k)配列番号89;及び(l)配列番号90かななる群から選択されるアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列である。
【0061】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片のアミノ酸配列は、(a)配列番号67の位置2から277;(b)配列番号68の位置2から273;(c)配列番号69の位置2から230;(d)配列番号70の位置2から230;(e)配列番号71の位置2から224;(f)配列番号72の位置2から221;(g)配列番号84;(h)配列番号85;(i)配列番号86;(j)配列番号88;(k)配列番号89;及び(l)配列番号90かななる群から選択されるアミノ酸配列である。
【0062】
更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片のアミノ酸配列は少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、及び最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を配列番号87に対して有するアミノ酸配列である。更に好ましい実施態様では、前記HA外部ドメインの前記断片のアミノ酸配列は配列番号87である。
【0063】
更に好ましい実施態様では、少なくとも1つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも1つの抗原はリンカーを更に含み、前記リンカーは前記第二付着部位を含むか、又は該部位からなる。好ましい実施態様では、前記リンカーは1本のペプチド結合を介して前記抗原に結合し、好ましくは前記リンカーは(a)システイン残基、(b)CGG、及び(c)GGCからなる群から選択される。少なくとも1つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも1つの抗原は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の外部ドメインのC末端に更にHisタグを組み込み得る。
【0064】
従って、更に好ましい実施態様では、少なくとも1つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも1つの抗原は、配列番号67から72の何れか一つを含むか、又は好ましくは該配列番号からなる。組換え体として産生したポリペプチドが開裂され得ることは本明細書により技術者によって理解される。従って、更に好ましい実施態様では、前記の少なくとも1つの抗原は配列番号84から90の何れか一つを含む。
【0065】
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、1%赤血球1μl中にて前記組成物が0.50μg未満の濃度で、赤血球の赤血球凝集反応を誘導することが可能である。本明細書では赤血球凝集反応アッセイは好ましくは実施例35に記載の条件で実施される。
【0066】
本発明は好ましくは国際公開2007/068747A1号の46−52頁に開示されたウイルスのウイルス様粒子に係り、参照によりここに組込まれる。好ましい実施態様では、VLPは組換えVLPである。組換えVLPは宿主細胞中で、好ましくは微生物細胞中で、最も好ましくは大腸菌でコートタンパク質を発現させることで得られる。
【0067】
更に好ましい実施態様では、VLPはRNAバクテリオファージのVLPである。本発明は好ましくは国際公開2007/068747A1号の49−50頁に開示されたRNAバクテリオファージのウイルス様粒子に係り、参照によりここに組込まれる。
【0068】
RNAバクテリオファージのコートタンパク質が微生物発現系、特に大腸菌で容易に発現できることは該タンパク質の特別な利点である。従って、本発明の好ましい一実施態様では、ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージの組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。RNAバクテリオファージの好ましいコートタンパク質は国際公開2007/068747A1号の配列番号3から23として開示されたコートタンパク質である。好ましい実施態様では、ウイルス様粒子は組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなる、又は代わりに該タンパク質からなり、好ましくは前記組換えコートタンパク質はRNAバクテリオファージの組換えコートタンパク質である。更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージQβ、RNAバクテリオファージAP205、又はRNAバクテリオファージφCb5の組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子は、(a)配列番号1(Qβコートタンパク質);(b)配列番号1、及び、配列番号2(Qβ A1タンパク質)の混合物;(c)配列番号19(AP205コートタンパク質);(d)配列番号92(φCb5 R21);(e)配列番号93(φCb5 K21);及び(f)配列番号94(φCb5 K21 double Cys)からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなる組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。
【0069】
好ましい一実施態様では、VLPはRNAバクテリオファージQβのVLPである。従って、更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージQβの組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子は配列番号1を含むか、又は好ましくは該配列からなる組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。RNAバクテリオファージ、特にバクテリオファージQβ及びバクテリオファージfrの更に好ましいウイルス様粒子は、国際公開第02/056905号に開示されており、ここにその開示はその全体において参照により組込まれる。特に、国際公開第02/056905号の実施例18はバクテリオファージQβのVLP粒子の調製法の詳述を含む。
【0070】
更に好ましい実施態様では、VLPはバクテリオファージAP205のVLPである。従って、更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージAP205の組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子は配列番号19を含むか、又は好ましくは配列番号19からなる組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。バクテリオファージAP205の更に好ましいVLPは、国際公開2004/007538号の特に実施例1及び2に記述されたVLPである。
【0071】
更に好ましい実施態様では、VLPはRNAバクテリオファージφCb5のVLPである。従って、更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージφCb5の組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなる。更に好ましい実施態様では、ウイルス様粒子は配列番号92から94の何れか一つ、好ましくは配列番号92を含むか、好ましくは該配列番号からなる組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該コートタンパク質からなるか、又は代わりに該コートタンパク質からなる。
【0072】
更なる態様では、本発明は、(a)少なくとも一つの第一付着部位を持つウイルス様粒子であって、前記ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージのウイルス様粒子である該ウイルス様粒子を提供し、(b)少なくとも一つの第二付着部位を持つ少なくとも1つの抗原であって、前記の少なくとも一つの抗原はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメイン又はインフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの断片であって、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素タンパク質の前記外部ドメインの少なくとも80個の連続アミノ酸を含む該抗原を提供し、及び(c)前記ウイルス様粒子及び前記の少なくとも一つの抗原を組合わせ、該少なくとも一つの抗原と該ウイルス様粒子が第一及び第二付着部位を通じて連結した組成物を産生することを含む、本発明の該組成物を産生する方法に関する。好ましい実施態様では、少なくとも一つの第二付着部位を持つ少なくとも1つの抗原の提供は、発現によって、好ましくは微生物系での発現により、好ましくは大腸菌による発現による。
【0073】
好ましい一実施態様では、少なくとも一つの第一付着部位を持つ該ウイルス様粒子、及び前記の少なくとも一つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも1つの抗原は少なくとも1本のペプチド共有結合を介して結合している。前記抗原をコードする遺伝子はコートタンパク質をコードする遺伝子の内部、又は好ましくはN又はC末端へインフレーム連結しており、融合タンパク質は好ましくはウイルス様粒子を形成する能力を保持している。更なる実施態様では、「Kozlovska, T.M.等,Intervirology 39:9−15(1996)、Pushko P.等,Prot.Eng.6:883−891(1993)、国際公開第92/13081号)、又は米国特許第5,698,424号」に記載された、抗原のコートタンパク質への融合を包含する。
【0074】
更に好ましい実施態様では、少なくとも一つの第一付着部位を持つ前記ウイルス様粒子と前記の少なくとも一つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも1つの抗原は、少なくとも1本の非ペプチド性共有結合を介して連結している。更に好ましい実施態様では、前記第一付着部位と前記第二付着部位は少なくとも1本の非ペプチド性共有結合で連結している。
【0075】
ジスルフィド結合を介したキャプシドと抗原性タンパク質の付着は、とりわけ、スルフィドリル部分を含む分子に対して不安定であり、更に、例えばチオエーテル結合よりも血清中でより不安定である(Martin FJ.及びPapahadjopoulos D.(1982)、Irreversible Coupling of Immunoglobulin Fragments to Preformed Vesicles.J.Biol.Chem.257:286−288)。従って、更に非常に好ましい実施態様にて、少なくとも一つの第一付着部位を持つ前記ウイルス様粒子と、前記の少なくとも一つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも一つの抗原との間の付着又は連結では、硫黄−硫黄結合は含まない。更なる非常に好ましい実施態様では、前記の少なくとも一つの第一付着部位はスルフィドリル基ではないか、又は該基を含まない。再び更なる非常に好ましい実施態様では、前記の少なくとも一つの第一付着部位はシステインのスルフィドリル基ではないか、又は該基を含まない。
【0076】
好ましい実施態様では、第一付着部位はアミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、又は該基であり、好ましくは前記リジン残基は前記ウイルス様粒子のコートタンパク質に含まれ、また更に好ましくは前記リジン残基は、RNAバクテリオファージ、最も好ましくはRNAバクテリオファージQβ、RNAバクテリオファージAP205、又はRNAバクテリオファージφCb5の組換えコートタンパク質に含まれる。非常に好ましい実施態様では、前記リジン残基は配列番号1、19、又は、配列番号92又は93の何れか一のリジン残基である。その他の好ましい実施態様では、第二付着部位はスルフィドリル基、好ましくはシステインのスルフィドリル基を含むか、又は好ましくは該基である。
【0077】
更に好ましい実施態様では、前記の少なくとも一つの第一付着はアミノ基を含み、前記の第二付着はスルフィドリル基を含む。更に好ましい実施態様では、前記第一付着部位はアミノ基であり、前記第二付着部位はスルフィドリル基である。更になお好ましい実施態様では、前記第一付着はリジン残基のアミノ基であり、好ましくは前記リジン残基は前記ウイルス様粒子のコートタンパク質に含まれるリジン残基であり、かつ前記第二付着部位はシステイン残基のスルフィドリル基である。
【0078】
更に好ましい実施態様では、少なくとも1つの第一付着部位を持つ前記ウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージの組換えコートタンパク質を含むか、本質的に該タンパク質からなるか、又は代わりに該タンパク質からなり、前記組換えコートタンパク質は配列番号1、19、及び配列番号92から94の何れか一つのアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなり、また前記の第一付着部位は前記アミノ酸配列のリジン残基のアミノ基を含むか、又は好ましくは該アミノ基である。更に好ましい実施態様では、前記組換えコートタンパク質は配列番号1のアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなり、かつ前記第一付着部位は配列番号1のリジン残基のアミノ基を含むか、又は好ましくは該アミノ基である。
【0079】
更に好ましい実施態様では、前記第二付着部位のうちのただ一つが少なくとも1本の非ペプチド性共有結合により前記第一付着部位と結合し、前記抗原の前記ウイルス様粒子に対する単一かつ均一な型をもたらし、前記第一付着部位に結合する前記の唯一の第二付着部位はスルフィドリル基であり、前記抗原と前記ウイルス様粒子は前記結合によって相互作用し、整列した反復抗原アレイを形成する。
【0080】
ヘテロ二官能性架橋剤を用いた抗原のVLPへの連結は、抗原をVLPへ配向して結合させることを可能とする。従って、好ましい実施態様では、少なくとも1カ所の第一付着部位を持つ前記ウイルス様粒子と少なくとも1カ所の第二付着部位を持つ1個の抗原が、典型的かつ好ましくはヘテロ二官能性架橋剤を用いた化学的架橋結合によって連結される。好ましい実施態様では、ヘテロ二官能性架橋剤は、(a)好ましくは第一付着部位、好ましくはアミノ基、より好ましくはVLPのリジン残基のアミノ基と反応する官能基、及び(b)好ましい第二付着部位、好ましくはスルフィドリル基、最も好ましくはシステイン残基のスルフィドリル基と反応する更なる官能基であって、抗原に固有であり、又は人工的に付加され、また任意で還元による反応に利用される該官能基、を含む。従って、好ましいヘテロ二官能性架橋剤は、アミノ基に対して反応的である1つの官能基とスルフィドリル基に対して反応的な1つの官能基を含む。非常に好ましいヘテロ二官能性架橋剤は、SMPH(Pierce)、Sulfo−MBS、Sulfo−EMCS、Sulfo−GMBS、Sulfo−SIAB、Sulfo−SMPB、Sulfo−SMCC、Sulfo−KMUS、SVSB、及びSIAからなる群から選択され、最も好ましくは前記ヘテロ二官能性架橋剤はSMPHである。上記の架橋剤は全て、アミノ基との反応後にアミド結合を形成し、及びスルフィドリル基によるチオエーテル結合の形成をもたらす。
【0081】
好ましい実施態様では、少なくとも1つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも1つの抗原は更にリンカーを含み、好ましくは前記リンカーは前記第二付着部位を含むか、又は該第二付着部位からなる。好ましい実施態様では、前記リンカーは前記の少なくとも1つの第一結合部位と前記の少なくとも1つの第二結合部位に結合する。本発明の更に好ましい実施態様では、リンカーは少なくとも1本の共有結合、好ましくは、少なくとも1本の、好ましくは1本のペプチド結合を介して抗原に結合する。更に好ましい実施態様では、前記の少なくとも1つの第二付着部位を持つ前記の少なくとも1つの抗原はリンカーを含み、前記リンカーは前記第二付着部位を含み、好ましくは前記リンカーは前記抗原に1本のペプチド結合を介して結合し、更に好ましくは前記リンカーはシステイン残基を含むか、又は代わりに該システイン残基からなる。好ましくは、リンカーは第二付着部位を含むか、又は代わりに該部位からなる。更に好ましい実施態様では、リンカーはスルフィドリル基、好ましくはシステイン残基を含む。その他の好ましい実施態様では、リンカーはシステイン残基を含むか、又は好ましくはシステイン残基である。更に好ましい実施態様では、前記リンカーは(a)CGG;(b)N末端グリシンリンカー、好ましくはGCGGGG;(c)GGC;及び(d)C−末端グリシン残基、好ましくはGGGGCGからなる群から選択される。本発明に有用な更なるリンカーは、例えば、国際公開第2007/039552(A1)号(32頁の段落111及び112)に開示されている。好ましい実施態様では、リンカーは抗原のC末端に付加されている。
【0082】
更に好ましい実施態様では、前記組成物は更に少なくとも1つの免疫賦活物質を含む。本発明に有用な免疫賦活物質は一般的に前記技術分野で知られており、とりわけ国際公開2003/024481A2号に開示されている。
【0083】
更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活物質は前記ウイルス様粒子に結合している。更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活物質は前記ウイルス様粒子と混合される。更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活物質は(a)免疫賦活性核酸、(b)ペプチドグリカン、(c)リポ多糖、(d)リポタイコ酸、(e)イミダゾキノリン化合物、(f)フラジェリン、(g)リポタンパク質、及び(h)(a)から(g)の少なくとも一つの物質の任意の混合物からなる。
【0084】
更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活物質は免疫賦活性核酸であり、好ましくは前記免疫賦活性核酸は、(a)リボ核酸、(b)デオキシリボ核酸、(c)キメラ核酸、及び(d)(a)、(b)及び/又は(c)の任意の混合物からなる群から選択される。
【0085】
更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活性核酸はリボ核酸であり、該リボ核酸は宿主細胞由来のRNAである。更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活性核酸はポリ−(I:C)又はその誘導体である。
【0086】
更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活性核酸はデオキシリボ核酸であり、好ましくは前記デオキシリボ核酸は非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドである。更に好ましい実施態様では、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドはA型CpGである。
【0087】
更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活性核酸、及び本明細書で好ましい前記デオキシリボ核酸、及び本明細書で更に好ましい前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは前記ウイルス様粒子の中に含まれている。
【0088】
更に好ましい実施態様では、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドはパリンドローム配列を含む。更に好ましい実施態様では、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドのCpGモチーフはパリンドローム配列の一部である。更に好ましい実施態様では、前記パリンドローム配列はGACGATCGTC(配列番号96)である。
【0089】
更に好ましい実施態様では、前記パリンドローム配列はその5’末端及びその3’末端にグアノシン実体が隣接している。更に好ましい実施態様では、前記パリンドローム配列はその5’末端に少なくとも3個、最大で15個のグアノシン実体が隣接し、かつ前記パリンドローム配列はその3’末端に少なくとも3個、最大で15個のグアノシン実体が隣接する。更に好ましい実施態様では、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは、(a)“G6−6”GGGGGGGACGATCGTCGGGGGG(配列番号97);(b)“G7−7”GGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGG(配列番号98);(c)“G8−8”GGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGG(配列番号99);(d)“G9−9”GGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGG(配列番号100);及び(e)“G10”GGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG(配列番号101)なる群から選択された配列を含むか、又は代わりに該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは、GGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG(配列番号101)配列を含むか、又は代わりに該配列からなる。更に好ましい実施態様では、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは、リン酸ジエステル結合ヌクレオチドのみからなり、好ましくは前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは前記VLPの中に含まれる。
【0090】
更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活性核酸、好ましくは前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレアーゼ加水分解に曝されない。更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活性核酸は非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドであり、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドはベンゾナーゼ加水分解に曝されない。更に好ましい実施態様では、前記免疫賦活性核酸はGGGGGGGGGGGACGATCGTCGGGGGGGGGG(配列番号101)の配列からなる非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドであり、前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドはリン酸ジエステル結合ヌクレオチドのみからなり、かつ好ましくは前記非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドは前記VLPの中に含まれる。
【0091】
本発明の更なる態様では、本発明の組成物を含むか、又は好ましくは該組成物からなるワクチン組成物であり、好ましくは前記ワクチン組成物は本発明の組成物を有効量含み、かつ更に好ましくは前記ワクチン組成物は本発明の組成物を治療に有効な量含む。本明細書で「有効な量」とは望まれる生理学的、好ましくは免疫学的効果を生みだす量を指す。「治療に有効な量」とは、望まれる治療効果を生みだす量を指す。本発明の関係では、望まれる治療効果とは動物、好ましくはヒトにおけるインフルエンザウイルス感染の予防、又は寛解である。
【0092】
本発明の有利な特徴は、アジュバント非存在下でさえも、組成物の免疫原性が高いことである。従って、好ましい実施態様では、ワクチン組成物にアジュバントを欠いている。アジュバントが存在しないことは、更に、好ましからざる副作用の発生を最小限度に押さえている。従って、患者に対するワクチン組成物の投与は、同一患者にワクチン組成物の投与の前か、同時か又は後にアジュバントを投与すること無く行われるであろう。
【0093】
更に好ましい実施態様では、ワクチン組成物は更に少なくとも1つのアジュバントを含む。アジュバントが投与される場合、少なくとも1つのアジュバントの投与が、本発明の組成物又はワクチン組成物の投与の前か、同時か又は後に行われうる。
【0094】
本発明の更なる態様は(1)本発明の組成物又はワクチン組成物、及び(2)薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物である。本発明の組成物、及び/又はワクチン組成物は薬学的に許容される形態で個体に投与される。本発明の薬学的組成物はそれらの投与が受容個体、好ましくはヒトによって忍容できる場合には、薬学的に許容されると考えられている。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、塩、バッファー、アジュバント、又はコンジュゲートの効能を向上するために望ましい他の物質を含み得る。ワクチン組成物又は薬学的組成物の調製の使用に適した原料の例は、例えば、RemingtonによるPharmaceutical Sciences(Osol,A,編集、Mack Publishing Co.、(1990))に与えられる。これは無菌性水溶液(例、生理食塩水)又は非水性溶液及び懸濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。担体又は閉鎖包帯は皮膚透過性を高め、抗原吸収を強化することに使用可能である。
【0095】
更なる態様では、本発明は好ましくは、インフルエンザに対する、最も好ましくは流感に対する免疫化の方法に関し、前記方法は本発明の組成物、ワクチン組成物、又は薬学的組成物を、動物、好ましくはヒトに投与することを含む。
【0096】
更なる態様では本発明は、動物、好ましくはヒトにおけるインフルエンザウイルス感染、好ましくはインフルエンザA型ウイルス感染を治療、寛解、及び/又は予防する方法に関し、前記方法は本発明の組成物、ワクチン組成物、又は薬学的組成物を前記動物に、好ましくは前記ヒトに投与することを含む。
【0097】
更なる態様では、本発明は、医薬として使用するための本発明の組成物、ワクチン組成物、又は薬学的組成物に関する。
【0098】
更なる態様では、本発明は、インフルエンザウイルス感染、好ましくはインフルエンザA型ウイルスの治療、寛解、及び/又は予防の方法に使用のための本発明の組成物、ワクチン組成物又は薬学的組成物に関する。
【0099】
更なる態様では、本発明は、インフルエンザ、好ましくはA型インフルエンザの治療、寛解、及び/又は予防の方法に係り、前記方法は本発明の組成物、ワクチン組成物、又は薬学的組成物を動物に、好ましくはヒトに投与することを含み、好ましくは前記組成物、前記ワクチン組成物、及び/又は前記薬学的組成物は、前記動物に、より好ましくは前記ヒトに、効果的な量、好ましくは免疫学的に効果的な量、投与される。免疫学的に効果的な量とは、本明細書では検出可能な免疫応答、好ましくは前記個体、好ましくは前記ヒトにおける抗体応答を高めることが可能な量を指す。
【0100】
一実施態様では、組成物、ワクチン組成物、及び/又は薬学的組成物は、前記動物、好ましくは前記ヒトに注射、点滴、吸入、経口投与、又は他の適切な物理的方法により投与される。更に好ましい実施態様では、組成物、ワクチン組成物、及び/又は薬学的組成物は、前記動物、好ましくは前記ヒトに筋肉内、静脈内、経粘膜、経皮、鼻腔内、腹腔内、皮下、又は直接リンパ節に投与される。
【0101】
更なる態様では、本発明はインフルエンザ、好ましくはインフルエンザA型の治療、寛解、及び/又は予防のための本発明の組成物、ワクチン組成物、及び/又は薬学的組成物の使用に関する。
【0102】
更なる本発明の態様では、インフルエンザ、好ましくはインフルエンザA型の治療、寛解、及び/又は予防のための医薬の製造のための本発明の組成物、ワクチン組成物、及び/又は薬学的組成物の使用である。
【0103】
更なる態様では、本発明は抗原に関し、前記抗原は本明細書に定義されたHA外部ドメイン又はHA外部ドメインの断片である。好ましい実施態様では、前記抗原は本明細書に定義されたHA外部ドメインの断片である。更に好ましい実施態様では、前記抗原は配列番号75の位置42から位置310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該配列からなるHA外部ドメインの断片である。更に好ましい実施態様では、前記抗原は配列番号75の位置42から位置310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなるHA外部ドメインの断片であり、前記HA外部ドメインは、インフルエンザA型ウイルス株A/California/07/2009(H1N1)(ジェンバンク受託番号:ACP44189.1)又はA/Perth/16/2009(H3N2)(ジェンバンク受託番号:ACS71642.1)のHA外部ドメインに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインである。
【0104】
更に好ましい実施態様では、前記抗原は、配列番号75の位置42から位置310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなるHA外部ドメインの断片であり、前記HA外部ドメインは、インフルエンザB型ウイルス株B/Brisbane/33/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29387.1),B/Guangzhou/01/2007(ジェンバンク受託番号:ABX71684.1)、又はB/Brisbane/60/2008(ジェンバンク受託番号:ACN29383.1)のHA外部ドメインに対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のアミノ酸の同一性を有し、好ましくは前記HA外部ドメインは天然に存在するHA外部ドメインである。
【0105】
本明細書に記載される全ての技術的特徴及び実施態様、特に本発明の組成物及びその構成成分のために記載された全ての技術的特徴及び実施態様は、本発明の全ての態様に、特にワクチン組成物、薬学的組成物、その方法及び使用法に対して、単独か又は可能性のある任意の組合わせにより適用され得る。
【実施例】
【0106】
実施例1:ecHA A/PR/8/34(H1N1)のクローニング、発現及び精製
A)pFastBac1_GP67の生成
pFastBac1_GP67(配列番号33)ベクターはpFastBac1(インビトロジェン)の誘導体であり、シグナルペプチドGP67をタンパク質分泌の多重クローニング部位の前に導入した。ベクターをアニールされたオリゴPH155(配列番号20)及びPH156(配列番号21)のペア、及びアニールされたオリゴPH157(配列番号22)及びPH158(配列番号23)のペア、及びアニールされたオリゴPH159(配列番号24)及びPH160(配列番号25)のペア、及びアニールされたオリゴPH161(配列番号26)及びPH162(配列番号27)のペアを一緒にpFastBac1プラスミドと称したBamHI−EcoRIの中へ繋いで作成し、pFastBac1_GP67を得た。得られたプラスミドはその多重クローニング部位にBamHI,EcoRI,PstI,XhoI,SphI,Acc65I,KpnI及びHindIIIの制限部位を有する。
【0107】
B)マウス適合インフルエンザA/PR8/34(H1N1)のクローニングとシークエンシング
(HA0 PR8)株のHA0のcDNAを、プライマーUni12(配列番号28)を用いてインフルエンザA型PR8を感染させたMDCK細胞の上清から抽出したvRNA(−)の逆転写により作製し、続いてBM−HA−1(配列番号29)とBM−NS−890R(配列番号30)のプライマーを用いてPCRを行った。PR8由来ecHAの転写配列は配列番号39である。
【0108】
C)FastBac1_GP67_HA_PR8の作製
マウス適合PR8(Bを参照)由来のアミノ酸11−329(HA1)にアミノ酸1−176(HA2)[HAのアミノ酸位置はH3番号付けに基づく]が続き、バクテリオファージT4フィブリチン由来の3量体配列(フォールドン)、6×Hisタグ及びシステイン含有リンカーが続く該アミノ酸をコードするDNAを哺乳類細胞での発現のために最適化し、遺伝子合成により産生した(Geneart,Regensburg,Germany)。最適化されたヌクレオチド配列をオリゴヌクレオチドPH163(配列番号31)及びPH164(配列番号32)により増幅した。得られたDNA断片はBamHI及びXhoIで消化され、BamHI−XhoI消化発現ベクターpFastBac1_GP67にクローニングし、プラスミドpFastBac1_GP67_HA_PR8(配列番号34)を得た。このプラスミドは、配列番号44のN末端に融合したマウス適合PR8(HA2由来のN末端アミノ酸1−176に融合したHA1由来のアミノ酸11−329からなり、HA1及びHA2のアミノ酸位置はH3番号付けに基づく)(配列番号39)由来のN末端含有HA0からなる融合タンパク質をコードする。配列番号44のN末端に融合した配列番号34の融合タンパク質はecHA−PRと命名された。
【0109】
D)組換えバキュロウイルスの作製、ecHAの産生及び精製
ecHA−PR8を発現する組換えバキュロウイルスはBac-to-Bacバキュロウイルス発現システム(インビトロジェン)を使用してプラスミドpFastBac1_GP67_HA_PR8により作成した。発現において、Hi5昆虫細胞(インビトロジェン)を27℃で増殖し、組換えバキュロウイルスに感染効率5で感染させ72時間インキュベートした。組換え発現したタンパク質ecHA−PR8を含む上清を72時間感染後に(p.i.)採取した。上清をTFFによりGEホロー・ファイバーカートリッジUFP−5−C−35;5’000NMWCを使用して10倍に濃縮した。濃縮した上清をNi2+−NTAアガロースカラム(Qiagen,Hilden,Germany)へ適用した。洗浄バッファー(50mMのNaHPO,300mMのNaCl,20mMのイミダゾール,pH8.0)でカラムを広範に洗浄後、タンパク質を溶出バッファー(50mMのNaHPO,300mMのNaCl,200mMのイミダゾール,pH8.0)で溶出した。精製したタンパク質はPBS pH7.2に対して透析し−80℃で次の使用まで保管した。
【0110】
実施例2:A/Uruguay/716/2007 X−175(H3N2)由来ecHAのクローニング、発現及び精製
3’末端にBamHI制限酵素部位が隣接し、かつ5’末端にAscI制限酵素部位が隣接し、A/Uruguay/716/2007 X−175(H3N2)(NCBI受託番号ACD47234.1)由来のアミノ酸1−176(HA2)[HAのアミノ酸位置はH3番号付けに基づく]が続くアミノ酸11−329(HA1)をコードするDNAを昆虫細胞での発現のために最適化し、遺伝子合成により産生した(Geneart,Regensburg,Germany)。得られたDNA断片をBamHI及びAscI(配列番号35)で消化し、BamHI−AscI消化発現ベクターpFastBac1_GP67_HA_PR8(実施例1に記載)の中へクローニングし、プラスミドpFastBac1_GP67_HA_A/Uruguay/716/2007 NYMC X−175C、短くはpFastBac1_GP67_HA_A_Uruguayと称す、を得た。このプラスミドは、実施例1C(配列番号44)に記載のリンカーのN末端に融合した、インフルエンザA/Uruguay/716/2007 X−175(HA2由来のアミノ酸1−176からなるN末端に融合したHA1由来のアミノ酸11−329からなり、HA1及びHA2のアミノ酸位置はH3番号付けに基づく。)(配列番号40)由来のN末端含有HA0からなる融合タンパク質をコードする。配列番号44のN末端に融合した配列番号40の融合タンパク質はecHA−Uruguayと称された。ecHA−Uruguayは実施例1Dに記載の通り産生し精製した。
【0111】
実施例3:インフルエンザA型H5N1株A/Viet Nam/1203/2004,A/Indonesia/5/2005及びA/Egypt/2321−NAMRU3/2007由来ecHAのクローニング、発現及び精製
3’末端にBamHI制限酵素部位が隣接し、かつ5’末端にAscI制限酵素部位が隣接し、A/Viet Nam/1203/2004(H5N1)(NCBI受託番号ABP51977.1),A/Indonesia/5/2005(H5N1)(NCBI受託番号ABW06108.1)及び(A/Egypt/2321−NAMRU3/2007(H5N1))株(NCBI受託番号ABP96850.1)由来のアミノ酸1−176(HA2)[HAのアミノ酸位置はH3番号付けに基づく]が続くアミノ酸11−329(HA1)をコードするDNAを昆虫細胞での発現のために最適化し、遺伝子合成により産生した(Geneart,Regensburg,Germany)。得られたDNA断片をBamHI及びAscI(配列番号36、37,38)で消化し、BamHI−AscI消化発現ベクターpFastBac1_GP67_HA_PR8の中へクローニングし、プラスミドpFastBac1_GP67_HA_A/Viet Nam/1203/2004(短くshortly termed pFastBac1_GP67_HA_A_Viet Namと称す)、pFastBac1_GP67_HA_A/Indonesia/5/2005(pFastBac1_GP67_HA_A_Indonesiaと称す)、及びpFastBac1_GP67_HA_A/Egypt/2321−NAMRU3/2007(短くpFastBac1_GP67_HA_A_Egyptと称す)を得るであろう。このプラスミドは、実施例1C(配列番号44)に記載のリンカーのN末端に融合した、HA2由来のアミノ酸1−176のN末端に融合したHA1由来のアミノ酸11−329(HA1及びHA2のアミノ酸位置はH3番号付けに基づく)からなる各々のウイルス株(ecHA_A_Viet_Nam.配列番号41,ecHA_A_Indonesia配列番号42及びecHA_A_Egypt 配列番号43)由来のN末端含有HA0からなる融合タンパク質をコードするであろう。配列番号44を伴ったそれぞれの融合タンパク質はそれぞれecHA−Vietnam.ecHA−Indonesia及びecHA−Egyptと称されるであろう。これらのタンパク質は実施例1Dに記載の通りに産生され精製されるであろう。
【0112】
実施例4:インフルエンザA型H1N1株A/Brisbane/59/2007及びA/California/04/09のクローニング、発現及び精製
3’末端にBamHI制限酵素部位が隣接し、かつ5’末端にAscI制限酵素部位が隣接し、A/Brisbane/59/2007(NCBI受託番号ACA28844.1)及びA/California/04/09(NCBI受託番号ACP41105.1)由来のアミノ酸1−176(HA2)[HAのアミノ酸位置はH3番号付けに基づく]が続くアミノ酸11−329(HA1)をコードするDNAを昆虫細胞での発現のために最適化し、遺伝子合成により産生した(Geneart,Regensburg,Germany)。得られたDNA断片はBamHI及びAscIで消化され、BamHI−AscI消化発現ベクターにクローニングされ、pFastBac1_GP67_HA_A_Brisbaneと短く称されるpFastBac1_GP67_A/Brisbane/59/2007プラスミド、pFastBac1_GP67_HA_A_Californiaと短く称されるpFastBac1_GP67_A_California_04_09プラスミドを得るであろう。これらのプラスミドは実施例1Dに記載のアミノ酸リンカー(配列番号44)のN末端に融合したHA2由来のアミノ酸1−176のN末端(HA1及びHA2のアミノ酸位置はH3番号付けに基づく)に融合したHA1由来アミノ酸11−329からなる各々のウイルス株(ecHA A/Brisbane/59/2007_ACA28844.1,配列番号73及びecHA A_California/04/2009_ACP41105.1,配列番号74)由来のN末端含有HA0からなる融合タンパク質をコードするであろう。配列番号44を伴ったそれぞれの融合タンパク質はそれぞれecHA−Brisbane及びecHA−Californiaと称されるであろう。これらのタンパク質は実施例1Cに記載の通りに産生され精製されるであろう。
【0113】
実施例5:Qβ及びAP205ウイルス様粒子へのecHA−PR8(H1N1)の結合
PBS pH7.2に溶解した実施例1由来の精製ecHA−PR8タンパク質(配列番号44のN末端に遺伝的に融合させた配列番号39)1mg/mlを含有する溶液を、C末端システイン残基の還元のために5分間室温で3倍モル過剰のTCEPとともにインキュベートした。20mMのHEPS pH7.2に溶解した1mg/mlのQβ VLPタンパク質の4ml溶液を、30分間室温で85.2μlのSMPH溶液(DMSO中に50mM)とともに反応させた。反応液を4℃で20mMのHEPES、pH7.2の4l交換を2回、それぞれ12時間と2時間にわたって透析した。誘導体化され透析したQβ溶液1mlを、TCEPで処理したecHA−PR8[1mg/ml]の3700,1850又は925μlと混合し、化学的架橋のため4時間室温でインキュベートし、それぞれワクチンのバッチQβ−ecHA(PR8)−1,Qβ−ecHA(PR8)−2又はQβ−ecHA(PR8)−3を得た。分離したタンパク質はセファロースCL4Bカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーで除いた。結合産物は還元条件下で4−12%のビス−トリス−ポリアクリルアミドゲルで分析した。クーマシー染色したゲルはQβ単量体及びecHA−PR8単量体に関して分子量が増加したいくつかのバンドを現し、明らかにecHA−PR8タンパク質がQβ VLPに首尾良く架橋したことを示していた。カップリングバンドのデンシトメトリーによる定量化によって、異なるワクチンバッチに対して以下のカップリング密度が明らかになった。:Qβ−ecHA(PR8)−1:40 ecHA/VLP,Qβ−ecHA(PR8)−2:29 ecHA/VLP及びQβ−ecHA(PR8)−3:17 ecHA/VLP。AP205 VLPへの結合のために20mMのHEPES、pH7.2に溶解した1mg/mlのAP205 VLPの5ml溶液を、90分間室温で106.5μlのSMPH溶液(DMSO中に50mM)とともに反応させた。反応溶液を4℃で20mMのHEPES、pH7.2の5l交換を3回、それぞれ12時間、2時間、2時間にわたって透析した。誘導体化され透析したAP205溶液2mlを、TCEPで処理したecHA−PR8(H1N1)5500μlと混合し、化学的架橋のため4時間室温でインキュベートし、AP205−ecHA(PR8)を得た。分離したタンパク質はセファロースCL4Bカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーで除いた。結合産物は還元条件下で4−12%のビス−トリス−ポリアクリルアミドゲルで分析した。クーマシー染色したゲルはVLP単量体及びecHA−PR8単量体に関して分子量が増加したいくつかのバンドが現れ、明らかにecHA−PR8 タンパク質がAP205に首尾良く架橋したことを示していた。カップリングバンドのデンシトメトリーによる定量化によって、30 ecHA/VLPのカップリング密度が明らかになった。
【0114】
実施例6:酵素結合免疫測定法
HA特異的抗体力価を決定するために、ELISAプレートを実施例1で得られたecHA−PR8、実施例2で得られたecHA−Uruguay、又はProtein Sciencesから入手した組換えインフルエンザHAタンパク質(rHA)(rHA_A/Brisbane/59/2007、rHA_A/Vietnam/1203/2004、rHA_A/Indonesia/05/2005、rHA_A/California/04/2009、rHA_B/Florida/04/2006)でコーティングし、又は別の方法としてELISAプレートを実施例3又は実施例4で得られたecHAタンパク質を1μg/mlの濃度で、又はQβ又はAP205 VLPを10μg/mlの濃度でコーティングされるであろう。プレートをブロックし次いでマウス血清を連続的に希釈しインキュベートした。結合抗体を酵素的に標識した抗マウスIgG,抗マウスIgG1又は抗マウスIgG2a抗体で検出した。全IgG抗体力価を飽和状態で測定された光学密度(OD450nm)の50%に到達に必要な希釈の逆数として決定した。IgG1及びIgG2について終点力価を計算した。平均抗体力価を示す。
【0115】
実施例7:インフルエンザウイルスPR8の血球凝集阻害力価の決定
マウス血清をインフルエンザウイルスPR8によるニワトリ赤血球の凝集を阻害する能力について試験した。非特異的阻害剤を不活化するために、まず血清を受容体破壊酵素(RDE,Seiken,Japan)で処理した。簡単に述べると、RDE3部を1部の血清に添加し37℃で一晩インキュベートした。RDEは56℃で30分間インキュベートして不活性化した。血清の希釈に応じて、血清を最終的に4倍から10倍希釈するために0から6倍のPBSを添加した。RDE処理した血清をv底型マイクロタイタープレート中で連続的に2倍に希釈した。8HAU/50ulに調整した等量のインフルエンザPR8ウイルスを各穴に添加した。プレートを覆い、室温で30分間インキュベートし続いてPBS溶解1%ニワトリ赤血球を添加した。プレートを攪拌により混合し、覆い、RBCを室温で1時間沈降させた。HA1力価は非凝集RBCを含む最終列の希釈の逆数として決定された。他のインフルエンザウイルス株に対するHA1力価を決定するために、各ウイルス株を(インフルエンザA/PR/8/34の代わりに)RBCの凝集のために使用した。これらの他のインフルエンザ株に対しては、異なる種(例えば七面鳥や馬)のRBCを凝集に用いられねばならないであろう。
【0116】
実施例8:マウスインフルエンザモデル
以下のインフルエンザA型ウイルスが異なる研究に使用された:A/PR/8/34(H1N1)、A/FM/1/47(H1N1)、A/Aichi/2/68(X31)(H3N2)及びA/WSN/33(H1N1)。各々のウイルスの致死量を決定するために、マウスにウイルスの連続希釈(2×50μl)をイソフランによる浅麻酔下で経鼻投与した。感染させたマウスの体重と体温を感染後少なくとも20日間モニターした。初期体重が30%以上減ったか、又は体温が30℃以下のマウスは安楽死させた。LD50力価をReedとMunchの方法(Reed LJ等、1938.Am.J.Hyg.27、493−497)に従って各々のウイルス株に対して計算した。異なるワクチンの有効性を決定するために、上記の各々の実施例で示されかつモニターした通りに、マウスは指示された化合物で免疫を与え、同種又は異種のインフルエンザウイルスの致死量(4LD50又は10LD50)に曝露させた。初期体重が30%以上減った、又は体温が30℃以下のマウスは安楽死させた。各々の処置群について感染後(p.i.)20日間生存動物の%をそれぞれの実施例に示す。
【0117】
実施例9:致死量の同種インフルエンザ曝露からのQβ−ecHA(PR8)及びAP205−ecHA(PR8)ワクチン防御
1群あたり3匹のメスのbalb/cマウスは第0日に、200μlのPBSに処方したQβ−ecHA(PR8)−1、Qβ−ecHA(PR8)−2又はQβ−ecHA(PR8)−3(実施例5で得た)を50、5又は0.5μg、又はecHA(PR8)(実施例1で得た)を45又は4.5μg、又はQβ VLPを50μgにより皮下注射で免疫した。血清を第20日に後眼窩から採取し、実施例6及び7に記載の通りecHA(PR8)−特異的ELISA又は赤血球凝集阻害(HAI)アッセイで分析した。第21日に全てのマウスはマウス適合インフルエンザウイルスA/PR/8/34の4LD50により曝露され、実施例8に記載の通り生存について20日間モニターした。この実験の結果を表1に示す。表1に示した通り、3つのQβ−ecHA(PR8)接合体の何れかにより免疫された全ての動物は、試験した全ての濃度で致死的曝露を生き延びたが、一方担体のみ(Qβ)で免疫された動物は死亡した。試験した両方の濃度にてecHA(PR8)のみを受けた動物においては部分的な防御のみ観察された。同様にecHA(PR8)特異的力価及びHA1力価は、ecHA(PR8)のみで免疫された動物に比べて、Qβ−ecHA(PR8)を受けた全ての動物で著しく増加した。誘導されたHAI力価は抗ecHA(PR8)抗体ELISA力価に比例し、誘導された抗体がウイルスの天然のHAを認識することを示唆している。これらの結果はecHA−PR8のQβ VLPに対する結合は、低いカップリング密度でさえもecHA−PR8の免疫原性を強く増強し、一方、担体に誘導されたエピトープ抑制のリスクを最小限にするVLPに抗原が結合したとき、Qβ VLPの免疫応答は強く減少する。更に、Qβ−ecHA(PR8)を0.5μgによる、低カップリング密度(17HA/VLP)による単一免疫化は、マウスを完全に同種のインフルエンザウイルスA/PR8/34による致死的曝露から完全に防御することができた。
【0118】

【0119】
実施例10:致死的曝露研究におけるQβ−ecHA(PR8)の投与量滴定
ワクチンによる防御の可能性を更に決定するために、1群あたり5匹のメスのbalb/cマウスにQβ−ecHA(PR8)−1(実施例5で得た)を5、1、0.2、0.04、0.008μg、又はecHA(PR8)総タンパク質15μg(実施例1で得た)又はネガティブコントロールとして50μgのQβ VLPで免疫した。全ての化合物は200mlのPBSに処方され第0日に皮下注射された。マウスは第21日に後眼窩から採血し、血清はecHA(PR8)−特異的ELIZA又はHAIアッセイを用いて分析した。第63日に全てのマウスはマウス適合インフルエンザウイルスA/PR/8/34の4LD50で曝露され、20日間生存をモニターした(実施例8に記載の通り)。この実験結果を表2に示す。表2に示した通り、Qβ−ecHA(PR8)−1を0.008μg単回注射は、ecHA(PR8)15μgよりも高い抗HA(PR8)−IgG及びHAI力価を誘導した。更に、マウス適合インフルエンザA/PR/8/34による致死的曝露に対する同様の防御は、15μgのecHA(PR8)よりも0.008μgのQβ−ecHA(PR8)−1において観察された。このことは、0.008μgのQβ−ecHA(PR8)−1は市販のTIVインフルエンザワクチンに含まれるインフルエンザHAの標準的投与量である15μgのecHA(PR8)よりも、同様の応答及び防御を誘導したという理由で、ecHA−PR8のQβ VLPへの結合はecHA−PR8抗原の投与量を約1000倍節約可能であることを示している。
【0120】

【0121】
実施例11:致死的曝露研究におけるQβ−ecHA(PR8)及びAP205−ecHA(PR8)の投与量滴定
次に、その他のバクテリオファージ担体に基づいたHAワクチンによる防御の可能性を評価した。この目的のため、1群あたり4匹のメスのbalb/cマウスを、実施例5で得たAP205−ecHA(PR8)を15、3、0.6、0.12、0.024、0.0046μg、又は実施例5で得たQβ−ecHA(PR8)−1を15μg、又は実施例1で得たecHA(PR8)を15μg、又はQβ VLPを50μgで免疫した。全ての化合物は200μlのPBSに処方し、第0日に皮下注射した。マウスは第21日に後眼窩から採血し、血清はecHA(PR8)特異的ELISA又はHAIアッセイを用いて実施例6及び7に記載の通りに分析した。第27日に全てのマウスはマウス適合インフルエンザウイルスA/PR/8/34の4LD50で曝露され、実施例8に記載の通りに20日間生存をモニターした。この実験の結果を表3に示す。表3に示した通り、ecHA−PR8のAP205 VLPへの結合はecHA−PR8の免疫原性を強く増強し、0.024μgのAP205−ecHA(PR8)は市販のTIVインフルエンザワクチンに含まれるインフルエンザHAの標準的投与量である15μgのHA(PR8)よりも、同様の抗HA(PR8)−IgG力価及びHAI力価を誘導したという理由で、ecHA−PR8抗原の投与量を約625倍節約可能であることを示している。更に、AP205−ecHAを0.024μgの単回投与では、致死的なインフルエンザ曝露からマウスを完全に防御した。興味深いことに、AP205 VLPに結合したecHAにより誘導された応答はIgG1力価よりも高いIgG2a力価を誘導し、一方ecHA(PR8)だけではIgG2a力価よりも高いIgG1力価を誘導し、VlPへの結合はTH2からTH1免疫応答へのシフトを誘導することを示唆している。
【0122】

【0123】
実施例12:致死的インフルエンザ曝露実験におけるQβ−ecHA(PR8)及びAP205−ecHA(PR8)による交差防御の誘導
HAワクチンの防御可能性を更に決定するために、実験群あたり6匹のメスのbalb/cマウスを実施例5で得たQβ−ecHA(PR8)−1を15μg、又は実施例5で得たAP205−ecHA(PR8)を15μg、又は実施例1で得たecHA(PR8)を15μg又はQβ又はAP205を15μgにより免疫した。全てのタンパク質は200μlのPBSに処方し、2回(第0日及び第21日)又は第21日に1回だけ皮下注射した(より詳細は表4を参照)。マウスは第35日に後眼窩から採血し、血清は実施例6及び7に記載の通りELISA又はHAIアッセイを用いて分析した。第39日にそれぞれの群は表4に概説の通り、A/PR/8/34(H1N1)を10LD50、A/WSN/33(H1N1)を10LD50、A/FM/1/47(H1N1)を10LD50又はA/Aichi/2/68(X31)(H3N2)を10LD50で曝露させた。マウスは次いで実施例8に記載された通りに生存についてモニターした。この実験の結果を表4に示す。表4に示した通り、Qβ又はAP205に結合したecHA(PR8)によるマウスの免疫化は、単回投与後に高致死量(10LD50)の相同インフルエンザA/PR8/34及び異種A/WSN/33ウイルスによる感染に対する防御を誘導している。その一方、ecHA(PR8)による1回の免疫化は、A/WSN/33による異種曝露に対して防御に失敗し、A/PR/8/34による同種曝露に対して部分的にのみ防御した。同種又はA/WSN/33による異種曝露に対する完全なる防御のために、ecHA(PR8)による2度目の免疫化が必要であった。同様に1回又は2回のecHA(PR8)による投与だけでは完全には致死的曝露からマウスを防御できなかったため、Qβ又はAP205に結合したecHA(PR8)は、マウスをA/FM/1/47−MA(H1N1)株で曝露した場合、ecHA(PR8)と比較して明らかに向上した交差防御を示した。ecHA(PR8)単独又はQβ又はAP20に結合したecHA(PR8)によるマウスの免疫化は、H3N1インフルエンザ株A/Aichi/2/68(X31)ウイルスによるマウスの致死的感染(10LD50)に対してある程度の交差防御を誘導した。交差防御の水準は抗−ecHA(PR8)IgG抗体力価には相関せず、ecHA(PR8)−特異的IgG抗体はこの場合交差防御に関与し得ないことを意味しており、これらの実験群に交差防御の異なる機構が所を得ていことを示唆している。まとめると、これらの実験はecHAのバクテリオファージ(AP205又はQβ)VLP表面への結合が明らかに免疫原性を強め、かつHAに対して誘導された防御応答を向上させることを更に強調している。これは特にバクテリオファージ−ecHAワクチンは異種ウイルスによる曝露に対し完全に防御可能であり、一方−ecHA単独では不可能であるという事実により明らかにされる。
【0124】

【0125】
実施例13:インフルエンザH3N2に対するワクチンの産生と試験
実施例2から得られたecHA−A−Uruguayを実施例5に記載の通りQβ VLPに結合させた。このワクチンの免疫原性をマウスで試験した。簡潔には、1群あたり4匹のメスのbalb/cマウスに実施例2で得られたQβ−ecHA(Uruguay)を15、3、0.6、0.12、0.024、0.0046μg、又はecHA(Uruguay)を15μgにて免疫化した。全ての化合物は200μlのPBSに処方し、第0日に皮下注射投与した。マウスを第21日に後眼窩から採血し、血清をecHA−Uruguay−特異的ELIZAを使用して分析した。結果を表5に要約する。表5に示した通り、ワクチン0.0046μgは単独ecHA(Uruguay)15μgよりも高いecHA特異的ELIZAを誘導したため、ecHA−UruguayのQβ VLPへの結合は劇的に免疫原性を増加させた。
【0126】

【0127】
実施例14:インフルエンザH5N1及びH1N1株に対するワクチンの産生及び試験
実施例3及び4から得られたecHA−Vietnam、ecHA−Indonesia、ecHA−Egypt、ecHA−Brisbane及びecHA−Californiaは実施例5に記載の通りQβ及びAP205 VLPに結合するであろう。これらのワクチンの有効性は実施例8に記載の通りインフルエンザ感染に対してマウスモデルで試験されるであろう。免疫化したマウスの血清のELIZA抗体力価及びHAI力価は実施例6又は7に記載の通り、適切なコーティング剤と赤血球凝集試験に使用したウイルス株で決定されるであろう。加えて、免疫化した動物が実施例10に記載の実験に似た同種ウイルスで曝露されるであろう投与量滴定実験が行われるであろう。その上、防御可能性を更に評価するために、動物が同種インフルエンザウイルス又は異種インフルエンザウイルスで曝露されであろう、実施例12に記載の実験に似た交差防御実験が行われるであろう。
【0128】
実施例15:ワクチン投与を受けた動物由来の血清によるインフルエンザウイルスのインビトロ中和
実施例9−14及び26−33で得られた免疫化されたマウスの血清はインビトロ中和アッセイに使用されるであろう。簡潔には、同種及び異種インフルエンザウイルスは各々の血清の連続希釈とともにインキュベートされ、各々のインフルエンザウイルスによるMDCK細胞を阻害する能力が決定されるであろう。ウイルス中和力価はマイクロタイタープレートのMDCK単層に各々のインフルエンザウイルス200TCID50を完全に感染させないようにすることが可能な最も高い血清希釈倍数の逆数として定義されるであろう。感染は細胞内に産生したウイルスNPタンパク質を決定するELIZAにより測定されるであろう。
【0129】
実施例16:マウス適合インフルエンザA/PR/8/34(H1N1)ウイルスのHA(gdHA)の球状ドメインの異なる断片のクローニング、発現、精製、及びリフォールディング
A)pET−42T(+)の生成
pET−42T(+)はpET−42a(+)(ノバジェン)の誘導体であり、配列番号91のアミノ酸配列をコードする、C末端を持つ融合タンパク質を発現させるための多重クローニング部位の後ろに、6×His−タグ及び停止コドンが続くアミノ酸リンカー(GGC)を導入した。第一工程で中間ベクターpET−42S(+)はオリゴ42−1(配列番号45)とオリゴ42−2(配列番号46)のアニールしたペアをNdeI−AvrII消化pET−42a(+)プラスミドへ結合して構築しpET−42S(+)を得た。第二工程でオリゴ42T−1(配列番号47)とオリゴ42T−2(配列番号48)のアニールしたペアをXhoI−AvrII消化pET−42S(+)プラスミドに結合させ、ベクターpET−42T(+)(配列番号60)を得た。得られたプラスミドは多重クローニング部位にNdeI,EcoRV,EcoRI,HindIII,PstI,PvuII,XhoI,XcmI,AvrII制限部位を有している。
【0130】
B)コンストラクトgdHA_PR8_42_310,gdHA_PR8_46_310,gdHA_PR8_57_276,gdHA_PR8_54a_276,gdHA_PR8_54a_270,gdHA_PR8_57_270の生成
マウス適合インフルエンザA型A/PR/8/34(H1N1)ウイルス(プロトタイプH1 HA断片)のHA(gdHA)外部ドメインの断片を、Gamblin SJ 等により Science,2004 303:1838−4に記載されたプロトタイプヒト(1934−ヒト)H1インフルエンザウイルスA/Puerto Rico/8/34 HAのタンパク質構造(PDB 1RVX)に基づいて設計した。マウス適合A/PR/8/34(実施例1Bで得られた配列番号39)とプロトタイプヒト(1934−ヒト)H1インフルエンザウイルスA/Puerto Rico/8/34 HA(Gamblin SJ等、Science,2004 303:1838−42)とのアミノ酸配列アラインメントに基づき、H3番号付けに基づくアミノ酸42−310(HA1)に対応するアミノ酸36−311(HA1)をコードし、N末端にNdeI制限部位を、かつC末端にXhoI制限部位を持つヌクレオチド配列を大腸菌による発現のために最適化し、遺伝子合成により生成した(Geneart,Regensburg,Germany)。最適ヌクレオチド配列はNdeIとXhoIで消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニング意し、プラスミドpET42T_HA1_PR8_42_310(配列番号61)を得た。このベクターは表6に概説した通りPCRによる異なった短い断片の生成に使用された。簡潔には、PCR反応はpET42T_HA1_PR8_42_310に表示されたプライマーで実施し、得られた産物はNdeIとXhoIで消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニングし、表6の最終行に示されたコンストラクトを得た。これらのプラスミドは、配列番号91のN末端に遺伝子的に融合した、マウス適合インフルエンザウイルスA/PR/8/34(配列番号39)の外部ドメインのアミノ酸配列である、アミノ酸42−310(配列番号67)、アミノ酸46−310(配列番号68)、アミノ酸57−276(配列番号69)、アミノ酸54a−276(配列番号70)、アミノ酸54a−270(配列番号71)、及びアミノ酸57−270(配列番号72)、からなる融合タンパク質をコードする。アミノ酸位置はStevens J.等、Science 2004 303,1866−1870)から由来するH3番号付けに従う。得られたタンパク質はそれぞれgdHA_PR8_42_310、gdHA_PR8_46_310、gdHA_PR8_57_276、gdHA_PR8_54a_276、gdHA_PR8_54a_270、gdHA_PR8_57_270と命名された。
【0131】

【0132】
C)gdHAコンストラクトの発現、精製及びリフォールディング
発現のために、何れのプラスミドも内包する大腸菌BL21細胞を37℃で、600nmでOD値が1.0になるまで増殖させ、次いで濃度1mMののイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドの添加により誘導した。細菌は更に4時間37℃で培養し、遠心分離で採集し、グラム湿重量あたり5mlのリシスバッファー(50mMのNaHPO、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール、pH8.0)に再懸濁し、細胞を1mg/mlのリゾチームで30分間インキュベートにより溶解した。細胞を次いで超音波で破砕し細胞のDNAは氷上で5μg/mlのDNAseIとともに15分間のインキュベーションにより消化した。封入体(IB)は遠心分離(10’000xg、4℃ 30分)で採集し、B−PER I試薬(Pierce)を用いて精製し、IB可溶化バッファー(8Mの尿素、50mMのTris−Cl pH8.0、50mMのジチオスレイトール)に0.5mg/mlの濃度に可溶化した。タンパク質のリフォールディングはリフォールディングバッファー2(2Mの尿素、50mMのNaHPO、0.5Mのアルギニン、10%のグリセロール(v/v)、5mMの還元グルタチオン、0.5mMの酸化グルタチオン、pH8.5)に対して透析し、次いでリフォールディングバッファー3(50mMのNaHPO、0.5Mのアルギニン、10%のグリセロール(v/v)、5mMの還元グルタチオン、0.5mMの酸化グルタチオン、pH8.5)に対して透析し、リフォールディングバッファー4(20mMのリン酸ナトリウム、10%のグリセロール(v/v)、pH7.2)に対して透析した。リフォールドされたタンパク質は次の使用まで−80℃で保管した。
【0133】
実施例17:天然に存在するインフルエンザA型ウイルス及びインフルエンザB型ウイルスのインフルエンザA型サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16 HAの外部ドメイン断片の設計と番号付け
ヒト1934−H1N1インフルエンザA型株のH1HAの構造(pdb 1RVX)(Gamblin SJ等、Science,2004 303,1838−1842)に基づき、インフルエンザA型 H1 HAプロトタイプ断片を実施例16Bに記載の通り設計した。インフルエンザA型 H1 HAプロトタイプ断片は、H3サブタイプのインフルエンザHAの構造を(ヒト1968−H3N2 インフルエンザA型株(pdb 1E08),Wilson IA等、Nature(1981)289,366−373)、H5サブタイプのインフルエンザHA、つまりヒト2004−H5N1インフルエンザA型株の構造(pdb 2FK0)(Stevens J等、Science(2006)312,404−410)、及びヒトインフルエンザB型ウイルスB/Hong Kong/8/73の構造(pdb 3BT6)(Wang Q等、J.Virol(2008)3011−3020)に構造的にアラインし、インフルエンザA型H1 HAプロトタイプ断片と同じような構造を持ったインフルエンザA型H3プロトタイプ、インフルエンザA型H5プロトタイプHA断片、及びインフルエンザB型プロトタイプHA断片を設計した。断片の番号付けはヒト1968−H3N2インフルエンザA型株(pdb 1E08)(Wilson IA等、Nature(1981)289、366−373)に基づいた。インフルエンザウイルスの天然に存在するインフルエンザA型H1,H3及びH5断片は、インフルエンザA型ウイルス株の対応するサブタイプのプロトタイプHA断片とのアミノ酸のアラインメントによって設計した。天然に存在するインフルエンザA型ウイルスのインフルエンザA型H6、H13、H11、H16 HA断片は、アミノ酸アラインメント又は構造モデリング及びプロトタイプH1 HA断片との構造アラインメントで設計され、天然に存在するインフルエンザウイルスのインフルエンザA型H4、H7、H10、H14、H15 HA断片は、アミノ酸アラインメント又は構造モデリング及びプロトタイプH3HA断片との構造アラインメントにより設計され、天然に存在するインフルエンザウイルスのインフルエンザA型H2、H8、H9、H12 HA断片は、アミノ酸アラインメント又は構造モデリング及びプロトタイプH5 HA断片との構造アラインメントにより設計され、H3の番号付け(Wilson IA等、Nature(1981)289,366−373)に従って番号付けされるであろう。モデル構築はプログラムSWISS−MODELを使用して実施されるであろう。
【0134】
実施例18:インフルエンザA/California/04/2009由来のgdHA断片のクローニング、発現、精製及びリフォールディング
アミノ酸42−310(H3番号付けに基づく)をコードし、3’末端にNdeI制限部位を、5’末端にXhoI制限部位を持つインフルエンザA型(A/California/04/09)(H1N1))株(NCBI受託番号ACP41105.1)のHA0のcDNAは大腸菌での発現のために最適化され、Geneart,Regensburg,Germanyによる遺伝子合成により生成した。最適化したヌクレオチド配列はNdeI及びXhoI(配列番号77)で消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニングし、プラスミドpET42T_HA1_AC0409_42_310を得た。このプラスミドは配列番号91のN末端に融合したインフルエンザウイルスA/California/04/09(配列番号84)の外部ドメインのアミン酸42−310をコードし、実施例16Cに記載の通りに産生し、精製し、リフォールドさせた。あるいは、A/California/04/2009の球状ドメインの短い断片(H3の番号付けに基づく、アミノ酸46−310,アミノ酸57−276,アミノ酸54a−276,アミノ酸54a−270及びアミノ酸57−270)を含み、両側にNdeI及びXhoI部位が伴うpET−42T(+)発現コンストラクトは実施例16Bに類似の方法で適当なオリグヌクレオチドで増幅され、pET−42T(+)へクローニングされるであろう。これらのタンパク質は実施例16Cに記載の通りに精製されリフォールドされるであろう。
【0135】
実施例19:インフルエンザA/Brisbane/59/2007 IVR148(H1N1)由来gdHA断片のクローニング、発現、精製及びリフォールディング
H3の番号付けに基づくアミノ酸42−310をコードし、3’末端にNdeI制限部位を、5’末端にXhoI制限部位を伴う、インフルエンザA型(A/Brisbane/59/2007)(H1N1))株(NCBI受託番号ACA28844.1)のHA0のcDNAを大腸菌での発現のために最適化し、Geneart,Regensburg,Germanyによる遺伝子合成により生成した。最適化したヌクレオチド配列はNdeI及びXhoI(配列番号78)で消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニングし、プラスミドpET42T_HA1_AB5907_42_310を得た。このプラスミドは配列番号91のN末端に融合したインフルエンザウイルスA/Brisbane/59/2007(H1N1)(配列番号85)の外部ドメインのアミノ酸42−310をコードし、gdHA_AB5907_42_310と命名され、実施例16Cに記載の通りに、産生し、精製し、リフォールドさせた。あるいは、A/Brisbane/59/2007 IVR148の球状ドメインの短い断片(H3の番号付けに基づく、アミノ酸46−310,アミノ酸57−276,アミノ酸54a−276,アミノ酸54a−270及びアミノ酸57−270)を含み、NdeI及びXhoI部位を伴うpET−42T(+)発現コンストラクトは適当なオリゴヌクレオチドで増幅され、実施例16Cに類似の方法でpET−42T(+)へクローニングされるであろう。これらのタンパク質は実施例16Cに記載の通りに精製され、リフォールドされるであろう。
【0136】
実施例20:インフルエンザA/Uruguay/716/2007/NYMC/X/175C(H3N2)由来のgdHAのクローニング、発現、精製及びリフォールディング
アミノ酸42−310をコードし(H3の番号付けに基づく)、3’末端にNdeI制限部位を、5’末端にXhoI制限部位を伴う、インフルエンザA型(A/Uruguay/716/2007 X−175(H3N2))株(NCBI受託番号ACD47234.1)のHA0のcDNAを大腸菌で発現のために最適化し、Geneart,Regensburg,Germanyによる遺伝子合成により生成した。最適化したヌクレオチド配列はNdeI及びXhoI(配列番号79)で消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニングし、プラスミドpET42T_HA1_AU71607_42_310を得た。このプラスミドは配列番号91のN末端に融合したインフルエンザウイルスA/Uruguay/716/2007(X−175)H3N2(配列番号86)の外部ドメインのアミノ酸42−310をコードし、gdHA_AU71607_42_310と命名され、実施例16Cに記載の通りに、産生し、精製してリフォールドさせた。あるいは、A/Uruguay/716/2007/NYMC/X/175Cの球状ドメインの短い断片(H3の番号付けに基づく、アミノ酸46−310、アミノ酸57−276、アミノ酸54a−276、アミノ酸54a−270及びアミノ酸57−270)を含み、NdeI及びXhoI部位を伴うpET−42T(+)発現コンストラクトは適当なオリゴヌクレオチドで増幅され、実施例16Bに類似の方法でpET−42T(+)へクローニングされるであろう。これらのタンパク質は実施例16Cに記載の通りに精製され、リフォールドされるであろう。
【0137】
実施例21:インフルエンザ由来のgdHAのクローニング、発現、精製及びリフォールディング
アミノ酸42−310をコードし(H3の番号付けに基づく)、3’末端にNdeI制限部位を、5’末端にXhoI制限部位を伴う、インフルエンザA型(A/Viet Nam/1203/2004(H5N1))株(NCBI受託番号ABP51977.1)のHA0のcDNAを大腸菌で発現のために最適化し、Geneart,Regensburg,Germanyによる遺伝子合成により生成した。最適化したヌクレオチド配列はNdeI及びXhoI(配列番号81)で消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニングし、プラスミドpET42T_HA1_AV120304_42_310を得た。このプラスミドは配列番号91のN末端に融合したインフルエンザウイルスA/VietNam/1203/2004(H5N1)(配列番号88)の外部ドメインのアミノ酸42−310をコードし、gdHA_AV120304_42_310と命名され、実施例16Cに記載の通りに、産生し、精製してリフォールドさせた。あるいは、A/Viet Nam/1203/2004の球状ドメインの短い断片(H3の番号付けに基づく、アミノ酸46−310、アミノ酸57−276、アミノ酸54a−276、アミノ酸54a−270及びアミノ酸57−270)を含み、NdeI及びXhoI部位を伴うpET−42T(+)発現コンストラクトは適当なオリゴヌクレオチドで増幅され、実施例16Bに類似の方法でpET−42T(+)へクローニングされるであろう。これらのタンパク質は実施例16Cに記載の通りに精製され、リフォールドされるであろう。
【0138】
実施例22:インフルエンザA/Indonesia/5/2005(H5N1)由来のgdHAのクローニング、発現、精製及びリフォールディング
アミノ酸42−310をコードし(H3の番号付けに基づく)、3’末端にNdeI制限部位を、5’末端にXhoI制限部位を伴う、インフルエンザA型(A/Indonesia/5/2005(H5N1))株(NCBI受託番号ABW06108.1)のHA0のcDNAを大腸菌で発現のために最適化し、Geneart,Regensburg,Germanyによる遺伝子合成により生成した。最適化したヌクレオチド配列はNdeI及びXhoI(配列番号82)で消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニングし、プラスミドpET42T_HA1_AI505_42_310を得た。このプラスミドは配列番号91のN末端に融合したインフルエンザウイルスA/Indonesia/5/2005(H5N1)(配列番号91)の外部ドメインのアミノ酸42−310をコードし、gdHA_AI505_42_310(配列番号89)と命名され、実施例16Cに記載の通りに、産生し、精製してリフォールドさせた。あるいは、A/Indonesia/5/2005の球状ドメインの短い断片(H3の番号付けに基づく、アミノ酸46−310、アミノ酸57−276、アミノ酸54a−276、アミノ酸54a−270及びアミノ酸57−270)を含み、NdeI及びXhoI部位を伴うpET−42T(+)発現コンストラクトは適当なオリゴヌクレオチドで増幅され、実施例16Bに類似の方法でpET−42T(+)へクローニングされるであろう。これらのタンパク質は実施例16Cに記載の通りに精製され、リフォールドされるであろう。
【0139】
実施例23:インフルエンザinfluenza B/Brisbane/3/07由来のgdHAのクローニング、発現、精製及びリフォールディング
アミノ酸42−310をコードし(H3の番号付けに基づく)、3’末端にNdeI制限部位を、5’末端にXhoI制限部位を伴う、インフルエンザB型(B/Brisbane/3/2007)株(受託番号ISDN263782)のHA0のcDNAを大腸菌で発現のために最適化し、Geneart,Regensburg,Germanyによる遺伝子合成により生成した。最適化したヌクレオチド配列はNdeI及びXhoI(配列番号80)で消化しpET−42T(+)のNdeI−XhoI部位へクローニングし、プラスミドpET42T_HA1_BB307_42_310を得た。このプラスミドは配列番号91のN末端に融合したインフルエンザウイルスB/Brisbane/3/2007(配列番号87)の外部ドメインのアミノ酸42−310をコードし、gdHA_BB307_42_310と命名され、実施例16Cに記載の通りに、産生し、精製してリフォールドさせた。あるいは、B/Brisbane/3/07の球状ドメインの短い断片(H3の番号付けに基づく、アミノ酸46−310、アミノ酸57−276、アミノ酸54a−276、アミノ酸54a−270及びアミノ酸57−270)を含み、NdeI及びXhoI部位を伴うpET−42T(+)発現コンストラクトは適当なオリゴヌクレオチドで増幅され、実施例16Bに類似の方法でpET−42T(+)へクローニングされるであろう。これらのタンパク質は実施例16Cに記載の通りに精製され、リフォールドされるであろう。
【0140】
実施例24:インフルエンザA/California/07/2009(H1N1)由来のgdHAのクローニング、発現、精製及びリフォールディング
アミノ酸42−310をコードし(H3の番号付けに基づく)、3’末端にNdeI制限部位を、5’末端にXhoI制限部位を伴う、インフルエンザA型(A/California/07/09)(H1N1))株(NCBI受託番号ACR78583)のHA0のcDNAを大腸菌で発現のために最適化し、Geneart,Regensburg,Germanyによる遺伝子合成により生成した。最適化したヌクレオチド配列はXbaI−HindIII(配列番号83)で消化しpET−42T(+)のXbaI−HindIII部位へクローニングし、プラスミドpET_HA1_AC0709_42_310を得た。このプラスミドはリンカーGGCGのN末端に融合したインフルエンザウイルスA/California/07/09(H1N1)(配列番号90)の外部ドメインのアミノ酸42−310をコードし、gdHA_AC0709_42_310と命名され、実施例16Cに記載の通りに産生し、精製し、リフォールドさせた。あるいは、A/California/07/2009の球状ドメインの短い断片(H3の番号付けに基づく、アミノ酸46−310、アミノ酸57−276、アミノ酸54a−276、アミノ酸54a−270及びアミノ酸57−270)を含み、XbaI及びHindIII部位を伴うpET−42T(+)発現コンストラクトは適当なオリゴヌクレオチドで増幅され、実施例16Bに類似の方法でpET−42T(+)へクローニングされるであろう。これらのタンパク質は実施例16Cに記載の通りに精製され、リフォールドされるであろう。
【0141】
実施例25:A/PR/A/34 HAの球状ドメインのQβ及びAP205 VLPへのカップリング
20mMのHEPES,pH7.2に可溶の1mg/mlQβ VLPタンパク質の6ml溶液を30分間室温でSMPH溶液(DMSO中に50mM)128μlと反応させた。反応溶液は4℃で20mMのHEPES pH7.2の6l交換を2回、それぞれ12時間と2時間、透析した。誘導体化され透析されたQβ溶液1mlを実施例16から得られたgdHA_PR8_42_310[0.5mg/ml]を4’400μl、gdHA_PR8_46_310[0.4mg/ml]を5’450μl、gdHA_PR8_54a_276[0.45mg/ml]を2’090μl、gdHA_PR8_57_276[0.45mg/ml]を2’000μl、gdHA_PR8_54a_270[0.6mg/ml]を2’950μl及びgdHA_PR8_57_270を3’529μlと混合し、Qβ_gdHA_PR8_42_310、Qβ_gdHA_PR8_46_310、Qβ_gdHA_PR8_54a_276、Qβ_gdHA_PR8_57_276、Qβ_gdHA_PR8_54a_270を得た。非結合タンパク質はセファロースCL4Bカラムを使用してサイズ排除クロマトグラフィーで除去した。結合産物は還元条件下で4−12%のビス−トリス−ポリアクリルアミドゲル上で分析した。Qβ単量体及びgdHA−PR8単量体に関して分子量の増加した複数のバンドが目視でき、明らかに全てのPR8の球状ドメイン断片がQβ VLPに首尾良く架橋したことを示していた。20mMのHEPES pH7.2に溶解した1mg/mlのAP205キャプシドタンパク質溶液6mlを、60分間室温で128μlのSMPH溶液(DMSO中に50mM)とともに反応させた。反応液を4℃で20mMのHEPES、pH7.2の6l交換を2回、それぞれ12時間と2時間、透析した。誘導体化され透析されたAP205溶液1mlをgdHA_PR8_42_310[0.5mg/ml]を4’400μl、gdHA_PR8_46_310[0.4mg/ml]を5’450μl、gdHA_PR8_54a_276[0.45mg/ml]を2’090μl、gdHA_PR8_57_276[0.45mg/ml]を2’000μl、gdHA_PR8_54a_270[0.6mg/ml]を2’950μl及びgdHA_PR8_57_270を3’529μlと混合し、AP205_gdHA_PR8_42_310、AP205_gdHA_PR8_46_310、AP205_gdHA_PR8_54a_276、AP205_gdHA_PR8_57_276、AP205_gdHA_PR8_54a_270、AP205_gdHA_PR8_57_270を得た。非結合タンパク質はセファロースCL4Bカラムを使用してサイズ排除クロマトグラフィーで除去した。結合産物は還元条件下で4−12%のビス−トリス−ポリアクリルアミドゲル上で分析した。AP205キャプシド単量体及びgdHA−PR8単量体に関して分子量の増加した複数のバンドが目視でき、明らかに全てのPR8の球状ドメイン断片がAP205VLPに首尾良く架橋したことを示していた。
【0142】
実施例26:ma A/PR/8/34由来の異なるgdHAの有効性試験
実施例16のA/PR/8/34から生成した異なる球状ドメインのコンストラクトが防御的免疫応答を誘導可能か否かを試験するために、実施例25で得られたこれらの球状ドメインとともに生成したワクチンをインフルエンザマウスモデルで試験した。陽性コントロールとして、全細胞外ドメイン(実施例5で得られたQβ−ecHA(PR8)を使用した)を含むワクチンを使用した。簡潔には、群あたり4匹のメスのbalb/cマウスを200μlのPBSに処方した表7の最初の列に示した抗原を15μg、第0日に皮下注射し免疫化した。マウスを第21日に後眼窩から採血し、血清を実施例6に記載の通りにecHA(PR8)−特異的ELIZA、実施例7に記載の通りに赤血球凝集阻害(HAI)アッセイを使用して分析した。ワクチンによる防御可能性を試験するために、全てのマウスは第28日に、致死用量(10LD50)のインフルエンザA/PR/8/34により曝露され、実施例8に記載の通りにモニターした。抗体力価、HAI力価並びに曝露後の生存率を表7に要約する。まとめると、これらの結果はワクチン産生に使用した球状ドメインの大半は、あたかも細胞外ドメイン全体が同一のVLPに結合しているかのようにバクテリオファージVLPに結合すると、より高い力価を示し、用いた断片は正しい抗原決定基とコンフォメーションを有していることを示唆している。更に、球状ドメインによって作られた全てのワクチンはマウスを同種ウイルスによる致死的曝露から完全に防御し、一方球状ドメインのみの大部分はマウスを致死的曝露から防御することに失敗し、バクテリオファージVLP上の表示が結合した抗原の免疫原性を強く増強することを更に明示している。更に、抗原がVLPに結合するとQβに対する免疫応答は強く減少し、担体に誘導される抗原決定基の抑制のリスクが最小限となる。
【0143】

【0144】
実施例27:異種ウイルス曝露に対する防御
gdHAに基づくワクチンの防御可能性を更に理解するために、群あたり6匹のbalb/cマウスを第0日に200μlのPBSに処方したQβ_gdHA_PR8_42_310又はQβ_gdHA_PR8_46_310(実施例16で得た)を15μl、又はQβ_ecHA(PR8)(実施例5で得た)を15μg、又はecHA(PR8)総タンパク質(実施例1で得た)を15μg、又はQβ総タンパク質を15μgで皮下注射免疫した。マウスを第16日に後眼窩から採血し、血清を実施例6に記載の通りにecHA(PR8)−特異的ELIZA、及び実施例7に記載の通りに赤血球凝集阻害(HAI)アッセイを使用して分析した。ワクチンによる防御可能性を試験するために、全てのマウスは第23日に致死用量(10LD50)のインフルエンザA型株A/WSN/33及びA/FM/1/47により曝露され、実施例8に記載の通りにモニターした。抗体力価、HAI力価並びに曝露後の生存率を表8に要約する。表8に示した通り、Qβ VLPに結合したHAの2つの球状ドメインは同種ウイルス由来の天然型HAに対して高い抗体力価を誘導した。同様に同種ウイルスに対する良好なHAI力価が誘導された。これらの抗体及びHAI力価は、VLPに結合した全細胞外ドメインからなるワクチンにより誘導されたものと同様か又はより良好である。球状ドメインを持つ両方のワクチンは、2つの異なるH1N1株(A/FM/47又はA/WSN/33)による異種曝露から完全にマウスを防御し、一方完全な天然型細胞外ドメインによる免疫化は完全なる防御を与え得なかったことに言及することは重要である。この結果は、インフルエンザワクチンの産生のために選ばれた細胞外ドメイン断片の可能性を更に強調している。
【0145】

【0146】
実施例28:Qβに結合した球状ドメインの投与量滴定
ワクチンの防御可能性を更に理解するために、群あたり4匹のメスのbalb/cマウスを第0日に200μlのPBSに処方した、Qβに結合したgdHA_PR8_42_310又はgdHA_PR8_46_310(実施例16で得た)を15、3、0.6、0.12、0.024又は0.0046μg、又はecHA(PR8)を15μgで(実施例1で得た)又はQβを15μgで皮下注射で免疫した(表9の最初の2列を参照)。マウスを第18日に後眼窩から採血し、血清を実施例6及び7のそれぞれに記載の通りにecHA(PR8)−特異的ELIZA、又は赤血球凝集阻害(HAI)アッセイを使用して分析した。ワクチンの防御可能性を試験するために、全てのマウスは第21日に、致死用量(4LD50)のインフルエンザA/PR/8/34により曝露され、実施例8に記載の通りにモニターした。抗体力価、HAI力価並びに曝露後の生存率を表9に要約する。表9に示した通り、調査した両方の球状ドメインを持つワクチンは同種ウイルス由来の天然のHAに対して高い抗体力価、及び同種ウイルス株により決定された良好なHAI力価を誘導した。更に、ワクチン120ngの単回注射では同種ウイルスによる致死的曝露からマウスを完全に防御することができた。真核細胞発現系で産生したHA細胞外ドメイン15μgでは致死的曝露からマウスを完全には防御できなかった点に言及することは重要であり、HAの球状ドメインに基づくワクチンの有効性を更に強調している。上に観察されたように、抗原のバクテリオファージVLPへの結合は担体特異的な免疫応答を強く減少させる。
【0147】

【0148】
実施例29:AP205に結合した球状ドメインの投与量滴定
ワクチンの防御可能性をより理解するために、群あたり4匹のメスのbalb/cマウスを第0日に200μlのPBSに処方した、AP205に結合したgdHA_PR8_42_310又はgdHA_PR8_46_310(実施例16で得た)を15、3、0.6、0.12、0.024又は0.0046μg、又はecHA(PR8)(実施例1で得た)を15μg、又はAP205を15μgで皮下注射で免疫した(表10の最初の2列を参照)。マウスを第21日に後眼窩から採血し、血清を実施例6及び7それぞれ記載の通りにecHA(PR8)−特異的ELIZA又は赤血球凝集阻害(HAI)アッセイを使用して分析した。ワクチンの防御可能性を試験するために、全てのマウスは第34日にインフルエンザA/PR/8/34の致死用量(4LD50)により曝露され、実施例8に記載の通りにモニターした。抗体力価、HAI力価並びに曝露後の生存率を表10に要約する。表10に示した通り、調査した両方の球状ドメインを持つワクチンは同種ウイルス由来の天然のHAに対して高い抗体力価及び同種ウイルス株により決定された良好なHAI力価を誘導した。更に、ワクチンを24ng又は120ngの単回注射により(使用した球状ドメインに依存)同種ウイルスによる致死的曝露からマウスを完全に防御することができ、HAの球状ドメインに基づくワクチンの有効性を更に強調している。上に観察されたように、抗原のバクテリオファージVLPへの結合は担体特異的な免疫応答を強く減少させる。
【0149】

【0150】
実施例30:バクテリオファージVLP+/−アラム、+/−追加免疫 に結合したgdHA_PR8_42_310及びgdHA_PR8_46_310による免疫化
アジュバントと併用したワクチンの免疫原性を更に探求するために、群あたり4匹のメスbalb/cマウスを第0日及び24日に、200μlのPBSに処方した、Qβ_gdHA_PR8_42_310,Qβ_gdHA_PR8_46_310,AP205_gdHA_PR8_42_310又はAP205_gdHA_PR8_46_310(実施例16で得た)を15、3、0.6又は0.12μgで、アラム(マウスあたり、注射あたり、8.3μlのアルハイドロゲル2%(Brenntag,Biosector))と共に、又は、該アラム無しで、マウスあたり、注射あたり)皮下注射免疫化した。マウスを第24日及び第48日に後眼窩から採血し、血清をecHA(PR8)−特異的ELIZA又は赤血球凝集阻害(HAI)アッセイを使用して分析した。第24日と第48日における抗ecHA−PR8抗体力価の平均を表11に示す。表11の結果は全てのワクチンは試験した各濃度で同種ウイルスの天然の細胞外ドメインに対して良好な抗体応答を誘導したことを明示している。同じことはHAI力価にも当てはまる。初期の力価(ELIZA及びHAI)は同投与量のワクチンの第2回目の注射によって著しく上昇することが可能であった。更にデータはワクチンへのアラムの添加は誘導される免疫応答を更にもっと増加させたことを示している。
【0151】

【0152】
実施例31:バクテリオファージVLPに結合したA/California/04/09の球状ドメインからなるワクチンの有効性
インフルエンザA/California/04/2009(H1N1)由来の球状ドメインを試験するために、ワクチンを産生し、異種ウイルス曝露によるマウス有効性試験で試験した。簡潔には、基本的に実施例25に記載の通りにインフルエンザA型A/California/04/2009(実施例18で得た)をQβ及びAP205に結合させ離れたタンパク質をとり除いた。得られたワクチンはQβ_gdHA_AC0409_42_310及びAP205_gdHA_AC0409_42_310と命名した。群あたり4匹のbalb/cマウスを、第0日及び28日に200μlのPBSに処方した、Qβ_gdHA_AC0409_42_310又はAP205_gdHA_AC0409_42_310を75、15、3、0.6又は0.12μgで、アラム(マウスあたり、注射あたり、8.3μlのアルハイドロゲル2%(Brenntag,Biosector))と共に、又は、該アラム無しで、皮下注射免疫化した。マウスを第21日及び第49日に後眼窩から採血し、血清を実施例6に記載の通りにrHA(A/California/04/09)−特異的ELIZAを使用して分析した。第65日に、マウスは異種マウス適合インフルエンザA/PR/8/34ウイルスの致死的用量4LD50で曝露され、実施例8に記載の通りに生存についてモニターした。この実験結果を表12に要約する。表12に示された結果は大腸菌で発現されリフォールドした、インフルエンザA/California/04/09ウイルス血球凝集素の外部ドメインの変異体によるマウスの免疫化により誘導されたIgG抗体は、インフルエンザA/California/04/09赤血球凝集タンパク質の天然の3量体型を認識することを明示している。両方のワクチンが、試験した各濃度で同種ウイルスの天然の細胞外ドメインに対して良好な抗体応答を誘導した。初期の力価(ELIZA及びHAI)は同投与量のワクチンの第2回目の注射によって著しく上昇することが可能であった。更にデータはワクチンへのアラムの添加は結合した抗原に対する免疫応答を更により増加させたことを示している。重要なのは、一実験群を除いて、バクテリオファージVLPに結合した球状タンパク質で免疫化された全てのマウスが、単独あるいはアラムと一緒に投与されても、異種ウイルスによる致死的曝露の中を生き延びた。全く対照的に、アラムとともに球状ドメインのみ15μgを投与すると部分的防御だけが観察された。同様にアラム無しで球状ドメインのみを受けた全ての動物は死亡した。まとめるとこれらの結果はバクテリオファージVLPに球状ドメインが結合すると著しくその防御の可能性を向上することを明示している。
【0153】

【0154】
実施例32:マウスの異なるインフルエンザ株由来のgdHAの免疫原性
異なるインフルエンザサブタイプ由来の球状ドメインが、それぞれのサブタイプの天然のHAを認識するワクチンの産生に使用可能かを試験するために、異なるサブタイプの球状ドメインを持つワクチンが産生され、マウスにおける免疫原性について試験した。簡潔には、基本的に実施例25に記載された通りに、インフルエンザA型H1N1(実施例19及び実施例24で得た)、インフルエンザA型H3N2の球状ドメイン(実施例20で得た)、インフルエンザA型H5N1株の球状ドメイン(実施例21及び22で得た)及びインフルエンザB型の球状ドメイン(実施例23で得た)をQβ、及び/又はAP205に結合させ、離れたタンパク質を取り除いた。得られたワクチンはVLP(Qβ又はAP205)及び結合した球状ドメインに従い命名された(例、Qβ_gdHA_AB5907_42_310)。群あたり3匹から5匹のメスのbalb/cマウスに、第0日に200μlのPBSに処方した表13の最初の列に示した抗原15μgで1回の皮下注射で免疫化した。マウスを第21日に後眼窩から採血し、血清を表13の第二列に示されたコーティングを使用し実施例6に記載の通りにHA−特異的ELIZAを使用して分析した。表13に示した通り、試験した全ての異なるインフルエンザA型サブタイプ(H1、H5及びH3)及びインフルエンザB型株は、インフルエンザサブタイプそれぞれに由来する天然のHAを認識する抗体応答を引き出すことができた。いずれの場合も、gdHAドメインのVLPへの結合は、gdHA単独による免疫化と比較して明らかにその免疫原性を増加させた。重要なことには、その方法は調査した全ての株及びサブタイプに有効であったという事実は、ワクチンとして作用するであろう球状ドメインは将来現れるインフルエンザ株及びサブタイプについて予測されることが可能と強く示している。
【0155】

【0156】
実施例34 CB5:
A)gdHA_PR8_42_310(H1N1)のCb5ウイルス様粒子への結合
PBS/10%グリセロール pH7.2に溶解した1mg/mlのCb5VLPタンパク質(配列番号92)の2ml溶液を60分間室温でSMPH溶液(DMSO中に50mM)42.6μlとともに反応させた。反応溶液を4℃で20mMのHEPES/10%グリセロール、pH7.2の2l交換を2回、12時間と4時間にわたり透析した。誘導体化され透析したCb5溶液1.4mlを、PBS pH7.2に可溶の実施例16で得得られた精製したgdHA_PR8_42_310タンパク質を1mg/ml含む溶液2mlと混合し、化学的架橋のため4時間室温でインキュベートし、Cb5−gdHA_PR8_42_310を得た。分離タンパク質はセファロースCL4Bカラムを使用してサイズ排除クロマトグラフィーにより除去した。結合産物は還元条件下で12%のビス−トリスポリアクリルアミドゲル上で分析した。Cb5キャプシド単量体に関する増加した分子量のバンドが目視でき、明らかにgdHA_PR8_42_310タンパク質がCb5 VLPに首尾良く架橋したことを示している。
B)Cb5キャプシド(Cb5−gdHA(PR8)に結合したgdHA−PR8(H1N1)タンパク質によるマウスの免疫化
Cb5−gdHA(PR8)免疫化の有効性を実施例8に記載の通りインフルエンザ感染のマウスモデルで試験した。簡潔に、群あたり4匹のメスのbalb/cマウスを200μlのPBSに処方したCb5−gdHA_PR8_42_310ワクチンを15μl又はCb5 VLPを15μlで免疫化し、第0日に皮下注射した。マウスを第34日に後眼窩から採血し、血清をecHA_PR8−特異的及びCb5−特異的ELIZAを使用して分析した。ついでマウスは第41日に致死量(4×LD50)のマウス適合インフルエンザA/PR/8/34で曝露した。この実験の結果を表14に示す。表14に示した結果はgdHA(PR8)のCb5VLPへの結合は高い抗ecHA(PR8)抗体応答の誘導を可能とすることを明示している。更にCb5−gdHA(PR8)ワクチンによるマウスの単回免疫化は、マウス適合インフルエンザA/PR/8/34による致死的曝露に対して防御的抗体応答を誘導し、Cb5がHAの球状ドメインに基づくインフルエンザワクチンの良い担体であることを明示している。
【0157】

【0158】
実施例35:赤血球凝集アッセイ
実施例24に記載の通り産生し、及び、実施例25に記載の通りQβ又はAP205に結合したgdHA断片が天然のHAタンパク質と構造が似ているかを試験するために、赤血球凝集アッセイをQβ又はAP205に結合したgdHA_PR8_42_310又はgdHA_PR8_46_310で行った。インフルエンザウイルスに存在する天然のHAタンパク質は、赤血球表面の受容体(RBC)に結合する結果として赤血球を凝集させることが可能である。ニワトリRBCのインフルエンザウイルスによるこの凝集は実施例7に記載の通り抗体を中和することによる赤血球凝集阻害アッセイで阻害される。Qβ又はAP205に結合したgdHA断片がインフルエンザウイルス表面の天然のHAタンパク質と似た構造を持ち、従ってRBC上の受容体に結合することができ、結果としてニワトリRBCの凝集を誘導できるかを試験するために、Qβ−gdHA_PR8_42_310、Qβ−gdHA_PR8_46_310、AP205−gdHA_PR8_42_310及びAP205−gdHA_PR8_46_310溶液をPBS中で連続的に希釈し96穴プレートの中で1%ニワトリRBC50μlと混合した。プレートを撹拌して混合し、覆い、RBCを1時間室温で沈降させた。ニワトリRBCを更に凝集可能なQβ−gdHA_PR8_42_310、Qβ−gdHA_PR8_46_310、AP205−gdHA_PR8_42_310及びAP205−gdHA_PR8_46_310の最小量が決定され、Qβ−gdHA_PR8_42_310に対して80ng/ウエル、Qβ−gdHA_PR8_42_310に対して80ng/ウエル、AP205−gdHA_PR8_42_310に対して40ng/ウエル、及びAP205−gdHA_PR8_46_310に対して10ngとなった。この実験結果はgdHA断片は天然のHAタンパク質の受容体に結合でき、従って天然のHAタンパク質に構造的に似ていなければならないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも一つの第一付着部位を持つウイルス様粒子(VLP)であって、前記ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であるウイルス様粒子と、
(b)少なくとも一つの第二付着部位を持つ少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の外部ドメイン又はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の該外部ドメインの断片であり、インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の該外部ドメインの該断片がインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の該外部ドメインの少なくとも80の連続アミノ酸を含む抗原
を含み、
(a)及び(b)が前記少なくとも一つの第一付着部位及び前記少なくとも一つの第二付着部位を介して結合している組成物。
【請求項2】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインがタンパク質であり、該タンパク質が(a)配列番号75のアミノ酸位置11からアミノ酸位置328を含むか又は好ましくは該アミノ酸位置からなるHA1サブユニットと(b)配列番号76の位置1から176からなるHA2サブユニットから構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の外部ドメインである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインは、インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質サブタイプH1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8,H9,H10,H11,H12,H13,H14,H15,及びH16からなる群から選択されるインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質サブタイプの外部ドメインであり、好ましくは前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインは、インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質サブタイプH1,H2,H3からなる群から選択されるインフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質サブタイプの外部ドメインである、請求項1から3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の天然に存在する外部ドメインである、請求項1から4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は(i)配列番号39に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号39と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性であるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号40に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号40と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性であるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号41に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号41と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性であるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号42に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号42と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性であるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号43に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号43と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性であるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号73に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号73と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性であるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記インフルエンザA型ウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのアミノ酸配列は、(i)配列番号74に記載のアミノ酸配列、及び(ii)配列番号74と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性であるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザB型ウイルス赤血球凝集タンパク質の外部ドメインである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の外部ドメインであり、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインは3量体型である、請求項1から13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの断片であり、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインのHA1サブユニット又はインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記HA1サブユニットの断片である、請求項1から13に記載の何れか一項に記載の組成物。
【請求項16】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、少なくとも一つの8本鎖ジェリーロールバレルとインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の少なくとも一本のαヘリックスを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、受容体結合ドメインを含むか、又は好ましくは該ドメインからなる、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、更に痕跡エステラーゼドメインを含む、請求項15から17の何れか一の組成物。
【請求項19】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置98及び195に対応するアミノ酸残基チロシン、配列番号75の位置153に対応するトリプトファン、及び配列番号75の対応するヒスチジンを含む、請求項15から18の何れか一項に記載の組成物。
【請求項20】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の対応するシステイン残基を含み、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置64,76,97,139に対応するシステイン残基を含み、より好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置52,64,76,97,139,277,281,305に対応するシステイン残基を含む、請求項15から19の何れか一項に記載の組成物。
【請求項21】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置57から276に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる、請求項15から20の何れか一項に記載の組成物。
【請求項22】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置46から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる、請求項15から21の何れか一項に記載の組成物。
【請求項23】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置42から310に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる、請求項15から22の何れか一項に記載の組成物。
【請求項24】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置54から276に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる、請求項15から23の何れか一項に記載の組成物。
【請求項25】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置54から270に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる、請求項15から24の何れか一項に記載の組成物。
【請求項26】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置54aから276に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる、請求項15から25の何れか一項に記載の組成物。
【請求項27】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインの前記断片は、配列番号75の位置54aから270に対応するアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる、請求項15から26の何れか一項に記載の組成物。
【請求項28】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザA型ウイルス株A/California/07/2009(H1N1)(ジェンバンク受託番号ACP44189.1)又はA/Perth/16/2009(H3N2)(ジェンバンク受託番号ACS71642.1)のHA外部ドメインと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の天然に存在する前記外部ドメインである、請求項15から27の何れか一項に記載の組成物。
【請求項29】
インフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザB型ウイルス株B/Brisbane/33/2008(ジェンバンク受託番号ACN29387.1)、B/Guangzhou/01/2007(ジェンバンク受託番号ABX71684.1又はB/Brisbane/60/2008(ジェンバンク受託番号ACN29383.1)のHA外部ドメインと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の前記外部ドメインはインフルエンザウイルス赤血球凝集タンパク質の天然に存在する前記外部ドメインである、請求項15から27の何れか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記ウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージの組換えコートタンパク質を含むか、該タンパク質から本質的になるか、又は代わりに該タンパク質からなる、請求項1から29の何れか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記ウイルス様粒子はRNAバクテリオファージQβ、RNAバクテリオファージAP205、又はRNAバクテリオファージφCb5の組換えコートタンパク質を含むか、該タンパク質から本質的になるか、又は代わりに該タンパク質からなる、請求項1から30の何れか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記ウイルス様粒子は、(a)配列番号1、(b)配列番号1及び2の混合物、(c)配列番号19、(d)配列番号92、(e)配列番号93、及び(f)配列番号94、からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むか、又は好ましくは該アミノ酸配列からなる組換えコートタンパク質を含むか、該タンパク質から本質的になるか、又は代わりに該タンパク質からなる、請求項1から31の何れか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記VLPはRNAバクテリオファージQβのVLPである、請求項1から32の何れか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記ウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージQβの組換えコートタンパク質を含む、該タンパク質のみから実質的になる、又は代わりに該タンパク質からなる、請求項1から33の何れか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記ウイルス様粒子は、配列番号1を含むか又は好ましくは配列番号1からなる組換えコートタンパク質を含むか、該タンパク質のみから実質的になるか、又は代わりに該タンパク質からなる、請求項1から34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記第一付着部位及び前記第二付着部位は少なくとも一の非ペプチド性共有結合を介して結合している、請求項1から35の何れか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記第一付着部位はアミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、又は好ましくは該アミノ基である、請求項1から36の何れか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記第二付着部位はスルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含むか、又は好ましくは該スルフヒドリル基である、請求項1から37の何れか一項に記載の組成物。
【請求項39】
請求項1から38の何れか一項に記載の組成物を有効な量含むワクチン組成物であって、好ましくは該ワクチン組成物は更にアジュバントを含むワクチン組成物。
【請求項40】
(a)請求項1から38の何れか一項に記載の組成物又は請求項39に記載のワクチン組成物と、
(b)薬学的に許容される担体と
を含む薬学的組成物。
【請求項41】
免疫化方法であって、請求項1から38の何れか一項に記載の組成物、請求項39に記載のワクチン組成物、又は請求項40に記載の薬学的組成物を動物に、好ましくはヒトに投与することを含む方法。
【請求項42】
医薬として使用するための請求項1から38の何れか一項に記載の組成物、請求項39に記載のワクチン組成物、又は請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
インフルエンザの治療方法に使用するための請求項1から38の何れか一項に記載の組成物、請求項39に記載のワクチン組成物、又は請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
インフルエンザの治療、寛解、及び/又は予防の方法であって、請求項1から38の何れか一項に記載の組成物、請求項39に記載のワクチン組成物、及び/又は請求項40に記載の薬学的組成物を動物に、好ましくはヒトに、免疫学的に有効な量、投与することを含む方法。

【公表番号】特表2012−525134(P2012−525134A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507784(P2012−507784)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055944
【国際公開番号】WO2010/125202
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】