インフレータ処理装置
【課題】密閉性の高い閉空間を形成するインフレータ処理装置100を提供する。
【解決手段】
【請求項1】
開口部20を開閉する開閉扉30を有し、インフレータ50を作動させるための閉空間25を形成する筐体10を備え、この筐体10の内部に、インフレータ50を支持する支持機40と、支持されたインフレータ50の周囲に配置され、インフレータ50を処理する際に発生する風圧を受けて回動するシロッコファン60と、このシロッコファン60と開閉扉30とに係合するとともに、シロッコファン60の移動により開口部20を閉鎖する方向に開閉扉30を移動させる密閉機構70とを備えた。
【解決手段】
【請求項1】
開口部20を開閉する開閉扉30を有し、インフレータ50を作動させるための閉空間25を形成する筐体10を備え、この筐体10の内部に、インフレータ50を支持する支持機40と、支持されたインフレータ50の周囲に配置され、インフレータ50を処理する際に発生する風圧を受けて回動するシロッコファン60と、このシロッコファン60と開閉扉30とに係合するとともに、シロッコファン60の移動により開口部20を閉鎖する方向に開閉扉30を移動させる密閉機構70とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させるための閉空間が形成される筐体を有するインフレータ処理装置であって、特に、エアバッグ展開処理時に生じる風圧を利用して、筐体内に形成される閉空間の密閉性を向上させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置が搭載された自動車を廃棄する場合、エアバッグ装置のインフレータを作動させ、金属材料等の回収可能な資源を回収・再利用することが行われている。インフレータ作動時に発生するガスは無害であるものの臭気性があるため、この種の装置では、ガスを拡散させないように閉空間の密閉性を確保する必要がある。
しかしながら、インフレータの作動時には爆発に伴う多量の高圧ガスが発生するため、閉空間の密閉性を保つことは困難であるという問題があった。特に、作業性向上の観点から複数のインフレータを同時に展開させる装置にあっては、閉空間の容積が非常に大きなものとなり、閉空間の密閉性の確保がさらに困難であるという問題があった。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、以上の課題を鑑みてなされたものであり、筐体内に形成される閉空間の密閉性を向上させることを目的とする。
本発明によれば、開口部と、その開口部を開閉する開閉扉とを有し、エアバッグ装置のインフレータを作動させる閉空間を形成する筐体内に、処理するインフレータを前記閉空間内で支持する支持手段と、支持されたインフレータの周囲に配置され、インフレータを処理する際に発生する風圧を受けて移動するファン部材と、ファン部材と開閉扉とに直接又は間接的に係合し、ファン部材の移動により開口部を閉鎖する方向に開閉扉を移動させる密閉機構とを有するインフレータ処理装置が提供される。
このように、インフレータ処理時に発生する風圧を受けるファン部材の移動に伴い開閉扉を閉鎖方向に引きつけるため、爆発時の風圧を利用して閉空間の密閉性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
<第1実施形態>
以下、図面に基づいて、本発明に係る第1実施形態のエアバッグ処理装置100を説明する。図1及び図2に本実施形態のエアバッグ処理装置100の斜視図を示した。本実施形態のエアバッグ処理装置100は、開口部20と、この開口部20を開閉する開閉扉30とを備え、不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させる閉空間25を形成する筐体10を有する。図1は開閉扉30が閉じた(閉鎖された)状態を示し、図2は開閉扉30が開いた(開放された)状態を示す。開閉扉30は、図2に示す開放状態から図中矢印a方向に沿って移動して図1に示す閉鎖状態となる。密閉状態を保つため、ロック機構31により開閉扉30がロックされる。また、開閉扉30は、図1に示す閉鎖状態から図2に示す矢印b方向に沿って移動して図2の開放状態となる。閉鎖された開閉扉30及び筐体10の外壁に囲まれた領域には、インフレータを作動させるための閉空間25が形成される。なお、筐体10及び開閉扉30は防音壁で構成することが好ましい。防音壁の具体的構造は特に限定されないが、その内壁面は硬質多孔材を含む難燃性吸音材で構成することが好ましい。筐体10の形状は特に限定されず、インフレータ50の取り付け・取り外し作業性、通電装置の保守作業性等を考慮して適宜設計することができる。
【0005】
本実施形態ではエアバッグ処理装置100の天井には筐体10の閉空間に連通する排気口が形成され、排気口の上部に排気ダクト16が設けられている。排気ダクト16は排気管17を介してフィルタ機18に接続されている。フィルタ機18には筐体10内で発生した気体の臭気成分を除去するフィルタ材が用いられる。
【0006】
筐体10の内部、すなわち閉空間25には、処理すべきエアバッグ装置50のインフレータ52を支持する支持機(支持手段に対応する)40が設けられている。本実施形態では、複数のインフレータ52を同時に処理できるように、複数の支持機40が閉空間内に設けられている。支持機40の態様は特に限定されないが、本実施形態の支持機40の具体的態様を図3に示した。
【0007】
図3に示すように、筐体10には、インフレータ52を下方から支持して鉛直上下方向に移動可能な支持機40と、支持されたインフレータを上方から固定する固定機41と、固定機41を保持する保持台42と、支持されたインフレータの周囲に配置されたファン部材60とが設けられている。本装置100では、処理対象となるインフレータ52を固定機41の開口から挿入し、支持機40に装着した後、インフレータ52をその上面が固定機20に当接するように鉛直方向に上昇させ、支持機40と固定機41とによりインフレータ52を固定しながらインフレータ52を作動させる。
【0008】
本装置の処理の対象となるエアバッグ装置50の一例を、図4及び図5に示した。図4は、助手席用エアバッグ装置50a(サイドエアバッグ装置や後部座席用エアバッグ装置も同様の構造である)の例を示し、助手席用エアバッグ装置50aが実装された状態のインストルメントパネルの断面図、図5はそのインフレータを示す断面図である。後述する図9及び図10に示した運転席用エアバッグ装置50bも電気式エアバッグであれば基本的な構造は共通し、気体袋であるエアバッグ51と、これを膨らませるためのインフレータ52とを有している。エアバッグ51は図4に示すようにステアリング(STR)やインストルメントパネル(IST)内に折り畳まれて収納されており、後述するインフレータ52のハウジング521の通孔522を包むように装着され、これによりインフレータ52で発生したガスがエアバッグ51内に導入されて膨張することになる。インフレータ52は、自動車の衝突時に減速度センサで検出された衝撃が電気信号として伝わり、これにより点火するスクイブ(点火器)523と、このスクイブ523による火炎で着火燃焼するエンハンサ(伝火薬524)と、このエンハンサ524による火炎及び熱により着火燃焼してガスを発生させるガス発生剤525とを有している。
【0009】
図4及び図5に示す助手席用エアバッグ装置50aのインフレータ52は、長筒状のハウジング521の中央一端にスクイブ523が設けられ、また筒状ハウジング521の中央全域にわたってエンハンサ524が設けられている。また、エンハンサ524の周囲の燃焼室526にガス発生剤525が充填され、さらにその周囲にスクリーン527が設けられている。この助手席用インフレータ52は、同図に示すリード線528から衝撃信号が入力されると、スクイブ523が点火し、この火炎でエンハンサ524が着火燃焼し、さらにこの火炎と熱は通孔529を介して燃焼室526に入り、ガス発生剤525を着火燃焼させる。このガス発生剤525の着火燃焼により生じたガスは、スクリーン527を通過してハウジング521の周囲に設けられた複数の通孔522から流出し、エアバッグ51を膨らませることになる。
【0010】
図6は、上述したエアバッグ処理装置100にエアバッグ装置50のインフレータ52を装着した状態の要部断面図である。図6に示すように、インフレータ52は、鉛直上下方向に移動可能な支持機40により下方から支持されるとともに、固定機41により上方から保持される。固定機41から導出されたリード線528は、コネクタ91を介して筐体10内部に引かれたリード線90に電気的に接続されている。支持機40と固定機41との間には、インフレータ52の胴部周囲を囲むファン部材60が配置されている。ファン部材60を支えるため支持板61を設けてもよい。ファン部材60は、インフレータ52の通孔522と対向する位置に設けられることが好ましい。ファン部材60の羽がインフレータ処理時に発生する風圧を受けることができるようにするためである。本実施形態のファン部材60は、インフレータ52爆発時の風圧を受けて、所定方向に移動(回動)する。本例では多翼のファンであるシロッコファン(sirocco fan)60を用いた。
【0011】
本実施形態のエアバッグ処理装置100は、シロッコファン(ファン部材)60と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、シロッコファン(ファン部材)60の移動に伴い開閉扉30を開口部の閉鎖方向へ引き付ける密閉機構70と、シロッコファン(ファン部材)60と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、シロッコファン(ファン部材)60の移動により開口部を開放する方向へ開閉扉30を押す開放機構80とを有する。密閉機構70は、ファン部材60の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構であり、開放機構80は、ファン部材60の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構である。密閉機構70及び開放機構80の構造及び配置位置は特に限定されず、他の部材との干渉を考慮して適宜設計することができる。
【0012】
なお、ここでは、1つのインフレータ52の処理に係る例を説明したが、閉空間25内に支持機40が2以上設けられた場合には、シロッコファン(ファン部材)60は、2以上の支持機40に支持されたインフレータ52の周囲にそれぞれ配置され、密閉機構70は、各シロッコファン(ファン部材)60と開閉扉30の取っ手33と直接又は間接に係合するように構成する。
【0013】
密閉機構70及び開放機構80の具体的構成は特に限定されないが、密閉機構70及び開放機構80の構成及び動作の一例を図7に基づいて説明する。図7は、図6に示すVII−VII断面の断面概要図である。図7に示すように、本実施形態のシロッコファン60は、円筒形状のインフレータ52の回転中心を回転軸として回動自在に設けられている。開閉扉30の閉空間側には取っ手33が設けられている。密閉機構70はカム部材71と、伝動部材72とを有し、シロッコファン(ファン部材)60の移動により生じた動力を開閉扉30に伝えて、開閉扉30を閉空間方向に引き付ける。カム部材71は、シロッコファン60の回転とともに移動するようにシロッコファン60の縁部に設けられており、伝動部材72は、カム部材71とその一端で接触するとともに他端で開閉扉30の取っ手33に係合するように設けられている。また、本実施形態の密閉機構70は、閉空間方向に引き付けられた開閉扉30を停止させて閉空間の密閉機構を維持する密閉状態維持機能を備える。具体的に、本例の密閉機構70は、カム部材71と歯合するカム部材71にラチェット機構を、密閉状態維持機能として有する。ラチェット機構は、シロッコファン60の移動に伴い回転したカム部材71の反対方向への移動を禁止する。
【0014】
開放機構80は、インフレータ52の展開処理後、開閉扉30を開放する際に機能し、密閉機構70による密閉状態を解除する。本例の開放機構80は、ファン部材60を反回転させることにより、密閉機構70による密閉動作(取っ手33が閉空間25側(Z方向)に引っ張られている状態)を解除する。開放機構80の構成及び機能は、密閉状態を解除するものに限定されず、ファン部材60の移動により開閉扉30を開放方向(閉鎖する方向に対して相対的に反対方向)に移動させるものとしてもよい。具体的に、本実施形態の開放機構80は、シロッコファン(ファン部材)60に設けられた係合部81と、係合部81に係合するロッド82aと、ロッド82aを直線駆動させるエアシリンダ82とを有する。開放機構80のエアシリンダ82に送り込まれた空気は、ロッド82aを閉空間側の矢印P方向に押し出す。ロッド82aの先端は係合部81においてシロッコファン60と係合するため、ロッド82aはシロッコファン60を開閉扉30の閉鎖時とは反対方向(矢印Q)へ移動させる。
【0015】
このように構成された本実施形態のエアバッグ処理装置100を用いてインフレータ52を作動処理するには、まず目的とするインフレータ52を、固定機41を介して支持機40に装着し、支持機40を操作してインフレータ52が固定器41に当接する位置となるように高さを調節し、開閉扉30を閉めるとともに、ロック機構31をロック状態とする。これにより、筐体100内には閉空間25が形成される。図示しない装置外部の制御装置により、リード線90及びコネクタ91を介してインフレータ52に電気信号を送り、インフレータ52を作動させる。インフレータ52が作動すると、スクイブ523が点火し、スクイブ523の火炎によりエンハンサ524が着火燃焼して、ガス発生剤525によりガスが発生する。
【0016】
インフレータ52が爆発した際に生じたガスは、インフレータ52の外周側に設けられた複数の通孔522(図6参照)から噴出し、噴出ガスの風圧によりシロッコファン(ファン部材)60を所定方向(矢印X方向)に移動(回動)させる。このシロッコファン(ファン部材)60の端部に設けられたカム部材71は、シロッコファン60と同じ方向(矢印X方向)に移動する。カム部材71の移動により、カム部材71と接触する伝動部材72の一端が押し上げられ、Y1方向に移動する。伝動部材71は回転中心72aを中心に回動するため、伝動部材71の他端はY2方向に移動する。伝動部材72の他端の移動により、この伝動部材72と接触する開閉扉30の取っ手33は閉空間25側に向かうZ方向に引っ張られる。伝動部材72が取っ手33を閉空間25側に引っ張ることにより、開閉扉30は開口部20に圧接され、閉空間は密閉される。
【0017】
インフレータ52の展開処理後、筐体10内の温度の低下を待って、ガスが漏洩しないように筐体10内の吸引浄化処理を行う。吸引浄化処理が終了したら、開放機構80のエアシリンダ82へ空気を送り込む。エアーの圧力により押し出されたロッド82aは、シロッコファン60を閉鎖時と反対の方向Qに回転させる。シロッコファン60が矢印Q方向に移動すると、伝動部材72とカム部材71との係合が解除され、伝動部材72と取っ手33との係合が解除され、開閉扉30が開口部に圧接されて(引っ張られて)いた状態が解除され、密閉機構70による密閉状態が解除され、開閉扉30を開くことができる。開閉扉30を開き、処理後のインフレータ52を取り外し、次に処理するインフレータ52を取り付けて展開処理を行う。
【0018】
<第2実施形態>
本発明のエアバッグ処理装置は上述した実施形態にのみ限定されず、種々に改変することができる。図1及び図2は本発明の他の実施形態に係るエアバッグ処理装置200の全体斜視図、図8は本実施形態に係るエアバッグ処理装置200の筐体内部を示す斜視図、図9はインフレータ252をセットした状態の要部断面図、図10はインフレータ252を示す図、図11はインフレータ252をエアバッグ処理装置200にセットした図、図12は図11のXII−XIIの要部断面図、図13は本実施形態の閉鎖機構270のチャック付ロッドを示す図、図14は図13に示したチャック付ロッドが開放された状態を説明するための図、図15(A)は本実施形態の密閉状態維持機能を示し、図15(B)は本実施形態の開放機構を示す図である。
【0019】
本実施形態のエアバッグ処理装置200は、ファン部材260として1翼のプレート状部材を用いた点を特徴とする。本実施形態のエアバッグ処理装置200の基本構造は、第1実施形態のエアバッグ処理装置100の基本構造と共通するため、ここでは重複する説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0020】
本実施形態のエアバッグ処理装置200の内部を図8に基づいて説明する。本実施形態のエアバッグ処理装置200は、運転席用のエアバッグ装置50bの処理に適するように構成されている。エアバッグ処理装置200の筐体210の内部には、インフレータ252を支持する2つの支持機240と、支持機240により支持されたインフレータ252を押圧して固定する固定機241と、これら支持機240と固定器241とを保持する保持台242が設けられている。処理対象となるインフレータ252は、支持機240に支持されるとともに固定機241により押圧された状態で、作動させられ展開処理される。さらに、支持されたインフレータ252の外周側にはファン部材260が設けられている。ファン部材260は、ファン支持軸261を回動軸として回動自在に設けられている。
【0021】
本実施形態において処理対象となるインフレータ252は、図9及び図10に示すような運転席用エアバッグ装置50bである。運転席用エアバッグ装置50bは、気体袋であるエアバッグ251と、これを膨らませるためにインフレータ252とを有し、基本的な構造は図4および図5に基づいて説明した助手席用エアバッグ装置50aと共通する。図10に示すように、運転席用エアバッグ装置50bのインフレータ252では、円筒状のハウジング2521の中央にスクイブ2523とエンハンサ2524とが設けられ、その周囲の燃焼室2526にガス発生剤2525が充填され、さらにその周囲にスクリーン2527が設けられている。そして、同図に示すリード線2528から衝撃信号が入力されると、スクイブ2523が点火し、この火炎でエンハンサ2524が着火燃焼し、さらにこの火炎と熱は通孔2529を介して燃焼室2526に入り、ガス発生剤2525を着火燃焼させる。このガス発生剤2525の着火燃焼により生じたガスは、スクリーン2527を通過してハウジング2521の周囲に設けられた複数の通孔2522から流出し、図9に示すエアバッグ251を膨らませることになる。
【0022】
図11は、上述したエアバッグ処理装置200にエアバッグ装置50のインフレータ252を装着した状態の要部断面図である。図11に示すように、インフレータ252は、支持機240に載置され、固定機241により上方から保持される。インフレータ252のリード線2528は、コネクタ291を介して筐体10内部に引かれたリード線290に電気的に接続されている。支持されたインフレータ252の胴部の外周側にはファン部材260が配置されている。インフレータ252の中心軸に沿ってファン支持軸261が設けられ、ファン支持軸261はファン部材260を回動自在に支持する。ファン部材260は、インフレータ252の通孔2522と対向する位置に設けられることが好ましい。本実施形態のファン部材260は、インフレータ252爆発時の風圧を受けて、所定方向(図11矢印f)に移動(回動)する。本例では1翼のファン260を用いた。
【0023】
本実施形態のエアバッグ処理装置200は、1翼のファン部材260と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、ファン部材260の移動により開口部を閉鎖する方向に開閉扉30を引き付ける密閉機構270と、ファン部材260と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、密閉機構270の動作を解除させる開放機構280とを有する。開放機構280は、ファン部材260の移動により開口部を開放する方向に開閉扉30を押す機構であってもよい。密閉機構270は、ファン部材260の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構であり、開放機構280は、ファン部材260の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構である。密閉機構270及び開放機構280の構造及び配置位置は特に限定されず、他の部材との干渉を考慮して適宜設計することができる。
【0024】
密閉機構270及び開放機構280の具体的構成は特に限定されないが、密閉機構270及び開放機構280の構成及び動作の一例を図12〜図14に基づいて説明する。図12は、図11に示すXII−XII断面の断面概要図である。図12に示すように、本実施形態の1翼ファン260は、円筒形状のインフレータ252の回転中心に沿って設けられたファン支持軸261を回動軸として回動自在に設けられている。また、開閉扉30の閉空間側には扉側ロッド231が設けられている。密閉機構270は、ファン部材260と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、ファン部材260の移動に伴い開閉扉30を開口部20が閉鎖される方向に移動させる。本実施形態の密閉機構270は、ファン部材260の移動により生じた動力を開閉扉30へ伝える機構を備える。具体的に、本実施形態の密閉機構270は、ファン260を軸支するファン支持軸261に軸着された第1ロッド可動用ギア262と歯合するとともに、開閉扉30の扉側ロッド231と係合するチャック付ロッド273を備える。密閉機構270は、ファン部材260の移動(矢印P方向の移動)により生じた動力を第1ロッド可動用ギア262の回転(矢印Q方向)に変換し、この第1ロッド可動用ギア262と歯合するチャック付ロッド273を開閉扉30から離隔する方向(矢印R方向)へ移動させる。チャック付ロッド273に係合する扉側ロッド231も開閉扉30から離隔する方向(矢印R方向)へ移動させられ、開閉扉30は閉空間方向に引き付けられる。
【0025】
なお、ここでは、1つのインフレータ252の処理に係る例を説明したが、閉空間25内に支持機240を2以上設けられた場合、ファン部材260は、2以上の支持機240に支持されたインフレータ252の外周側にそれぞれ配置され、密閉機構270は、各ファン部材260と開閉扉30の扉側ロッド231と直接又は間接に係合するように構成する。
【0026】
本実施形態の密閉機構270の具体的な構成を図13に示した。密閉機構270は、チャック付ロッド273を有する。チャック付ロッド273は、開閉扉30側に設けられた扉側ロッド231と解除可能に係合するチャック部272を有する。チャック部272は、チャック付ロッド273に連なり、開閉自在に設けられた(開閉中心272b,272c)クランプ272d,272eと、これらクランプ272d,272eを開放させる開放シリンダ272iと、これらクランプ272d,272eを閉じるスプリング272fとを有する。密閉機構270が動作する際、クランプ272d,272eは閉じて、扉側ロッド231を保持する。扉側ロッド231は、ロッド保持部231aと、ロッド保持部231aとスプリング231cで係止されたロッド231bとを有している。
【0027】
ちなみに、密閉状態解除に際して開閉扉30を開放する際、チャック付ロッド273は扉側ロッド231を開放する。この状態を図14に示した。図14に示すように、チャック付ロッド273にはエアシリンダ機構274を介してエアーが送り込まれ、開放エアシリンダ272iが左右に延びて、クランプ272d,272eを拡開させる。拡開されたクランプ272d,272eは扉側ロッド231を開放する。これにより、開閉扉30は、開放可能となる。
【0028】
本実施形態の密閉機構270は、開口部が閉鎖される方向に移動した開閉扉30を停止させて、閉空間の密閉状態を維持させる密閉状態維持機能270Aを有する。本実施形態では、チャック付ロッド273を一方向のみに移動させるワンウェイクラッチを採用することにより、密閉状態を(開放機構280を作動させるまで)維持する。
【0029】
本実施形態は、密閉状態維持機能270Aと開放機能とを1のエアシリンダ機構で実現する。
【0030】
密閉状態維持機能270Aは、エアシリンダ282によりチャック付ロッド273を往動又は復動させることにより密閉状態を維持する。具体的に、本実施形態の密閉状態維持機能270Aは、図12に示すように、エアシリンダ282と、エアシリンダの空気圧によって往復運動可能なロッド281と、このロッド281及びチャック付ロッド273と歯合する第2ロッド可動用ギア263とを有する。図15(A)に示すように、第2ロッド可動用ギア263は、上側にワンウェイクラッチ付ギア263aを備える。エアシリンダ282がロッド281を開閉扉30から離隔する矢印V1方向(図12参照)に移動させると、ロッド281とTスロット結合する2段の第2ロッド可動用ギア263は、チャック付ロッド273に対して相対的に下方向に移動する。第2ロッド可動用ギア263が下方向に移動することにより、チャック付ロッド273は上側のワンウェイクラッチ付ギア263aと歯合する。ワンウェイクラッチ付ギア263aは、チャック付ロッド273を閉空間側に引っ張る方向にのみ移動させ、逆方向へ移動させない。これにより、密閉機構270によって実現された密閉状態は維持される。
【0031】
開放機構280は、インフレータ252の展開処理後、開閉扉30を開放する際に機能し、密閉機構270の動作によって実現された密閉状態を解除する。本例の開放機構280は、エアシリンダ282によりチャック付ロッド273を往動又は復動可能とし、密閉状態(扉側ロッド231が閉空間25側(S方向)に引っ張られている状態)を解除する。具体的に、本実施形態の開放機構280は、図12に示すように、エアシリンダ282と、エアシリンダの空気圧によって往復運動可能なロッド281と、このロッド281及びチャック付ロッド273と歯合する第2ロッド可動用ギア263とを有する。図15(B)に示すように、第2ロッド可動用ギア263は下側にフリーギア263bを備える。エアシリンダ282がロッド281を矢印V2(図12参照)方向に移動させると、ロッド281とTスロット結合する2段の第2ロッド可動用ギア263は、チャック付ロッド273に対して相対的に上方向に移動する。第2ロッド可動用ギア263が上方向に移動することにより、チャック付ロッド273は下側のフリーギア263bと歯合する。フリーギア263bはチャック付ロッド273が開閉扉30側へ移動することを妨げない。これにより、密閉機構270によって閉空間側(図12の矢印S方向)に引っ張られていた扉側ロッド131を、反対方向(相対的に)に移動させることができ、密閉状態を解除することができる。
【0032】
次に動作を説明する。本実施形態のエアバッグ処理装置200を用いてインフレータ252を作動処理するには、まず目的とするインフレータ252を支持機240に装着し、固定器241で固定する。開閉扉30を閉めるとともに、ロック機構31をロック状態とする。これにより、筐体100内には閉空間25が形成される。図示しない装置外部の制御装置により、リード線290及びコネクタ291を介してインフレータ252に電気信号を送り、インフレータ252を作動させる。インフレータ252が作動すると、スクイブ2523が点火し、スクイブ2523の火炎によりエンハンサ2524が着火燃焼して、ガス発生剤2525によりガスが発生する。
【0033】
インフレータ252が爆発した際に生じたガスは、インフレータ252の外周側に設けられた複数の通孔2522から噴出し(図12参照)、噴出ガスの風圧によりファン部材260を所定方向(矢印P方向)に移動(回動)させる。このファン部材260の端部に設けられたファン軸支ギア262は矢印Q方向に回転する。これに伴い、ファン軸支ギア262と歯合するチャック付ロッド273は扉側ロッド231を保持した状態で矢印R方向に移動させられ、扉側ロッド231は閉空間25側に向かうS方向に引っ張られる。チャック付ロッド273が扉側ロッド231を閉空間25側に引っ張ることにより、開閉扉30は開口部20に圧接され、閉空間の密閉性が向上する。また、チャック付ロッド273が歯合するワンウェイクラッチギア263aは、チャック付ロッド273の位置を維持する。
【0034】
インフレータ252の展開処理後、筐体10内の温度の低下を待って、ガスが漏洩しないように筐体10内の吸引浄化処理を行う。吸引浄化処理が終了したら、開放機構280のエアシリンダ282へ空気を送り込む。チャック付ロッド273はフリーギア263bと歯合し、密閉機能270及び密閉状態維持機能270Aの動作を解除することができる。その後、密閉機構270のエアシリンダ274に空気を送り込み、クランプ272d及びクランプ272eを拡開させて、扉側ロッド231を開放させる。これにより、チャック付ロッド281と扉側ロッドとの係合が解除され、開閉扉30を開くことができる。開閉扉30を開き、処理後のインフレータ252を取り外し、次に処理するインフレータ252を取り付けて展開処理を行う。
【0035】
第1実施形態及び第2実施形態のインフレータ処理装置100,200は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
【0036】
インフレータ252の展開処理時において、開閉扉30が開口部20に圧接されることにより、閉空間25が密閉されるので、ガス発生時の騒音や発生したガスが外部に漏れることがなくなる。また、展開処理時に生じた風圧を利用するため、爆発瞬時に密閉機構70を作動させることができ、ガスの発生タイミングに遅れることなく閉空間を密閉し、閉空間内の圧力上昇時においても閉空間の密閉状態を保つことができる。
【0037】
また、本実施形態の密閉機構70,270により閉空間が密閉されるため、筐体の巨大化を避け、装置全体の小型化・計量化を図ることができる。特に複数のインフレータ52,252を一の閉空間内で一括処理する場合、密閉強度の観点から筐体を巨大化する傾向があったが、本実施形態のインフレータ処理装置100,200によれば小型でありながら高い密閉性を維持することができるため、処理効率の高いインフレータ処理装置100,200を提供することができる。本例では、複数のインフレータ52を同時に処理する場合、各支持手段40,240に支持されたインフレータの外周側にファン部材60,260と、これに係合する密閉機構70,270とをそれぞれ設けたため、処理インフレータの増加に伴い開閉扉30を閉空間側に引っ張る力を増大させることができる。これにより、インフレータ52の処理数の増加させるために閉空間の容積を増大させても、閉空間の密閉性を確保することができる。
【0038】
本実施形態では、開閉扉30を閉空間側に引っ張って閉空間の密閉性を高めるため、開閉扉30の支持構造(ロック機構31、ヒンジ機構32等)の負担を軽減させ、それらの耐久性を高めることができる。これにより、支持構造(ロック機構31、ヒンジ機構32等)を簡易な構造にすることができ、装置全体のコストを低減させることができる。
【0039】
本実施形態では、開閉扉30を開口部20に圧接させるため、開閉扉30と開口部20との間に介在させたシール部材への負担を軽減させ、その耐久性を高めることができる。これにより、シール部材の寿命を延ばすことができ、装置のランニングコストを低減させることができる。
【0040】
また、開口部20が閉鎖する方向に開閉扉30を移動させるエネルギーは、廃棄処理するインフレータ52,252の爆発反応から得ることができるため、別途エネルギーを供給する必要がない。
【0041】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態のエアバッグ処理装置の開閉扉が閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のエアバッグ処理装置の開閉扉が開いた状態を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態のエアバッグ処理装置の筐体内部の一例を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態のエアバッグ処理装置において処理対象となるエアバッグ装置の一例を示すステアリングの断面図である。
【図5】図4に示すインフレータを示す断面図である。
【図6】第1実施形態のエアバッグ処理装置の断面要部図である。
【図7】図6のVII−VII断面の要部を示す図である。
【図8】第2実施形態のエアバッグ処理装置の筐体内部の一例を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態のエアバッグ処理装置において処理対象となるエアバッグ装置の他の例を示すインストルメントパネルの断面図である。
【図10】図9に示すインフレータを示す断面図である。
【図11】本実施形態のエアバッグ処理装置の断面要部図である。
【図12】図11のXII−XII断面の要部を示す図である。
【図13】チャック付ロッドの第1の状態を示す図である。
【図14】チャック付ロッドの第2の状態を示す図である。
【図15】図15(A)は密閉状態維持機能を説明するための図、図15(B)は開放機構を説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
100,200…インフレータ処理装置
10,210…筐体
20,220…開口部
30,230…開閉扉
40,240…支持手段,支持機
50,250(50a,50b)…エアバッグ装置
60,260…ファン部材、シロッコファン
70,270…密閉機構
80,280…開放機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させるための閉空間が形成される筐体を有するインフレータ処理装置であって、特に、エアバッグ展開処理時に生じる風圧を利用して、筐体内に形成される閉空間の密閉性を向上させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置が搭載された自動車を廃棄する場合、エアバッグ装置のインフレータを作動させ、金属材料等の回収可能な資源を回収・再利用することが行われている。インフレータ作動時に発生するガスは無害であるものの臭気性があるため、この種の装置では、ガスを拡散させないように閉空間の密閉性を確保する必要がある。
しかしながら、インフレータの作動時には爆発に伴う多量の高圧ガスが発生するため、閉空間の密閉性を保つことは困難であるという問題があった。特に、作業性向上の観点から複数のインフレータを同時に展開させる装置にあっては、閉空間の容積が非常に大きなものとなり、閉空間の密閉性の確保がさらに困難であるという問題があった。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、以上の課題を鑑みてなされたものであり、筐体内に形成される閉空間の密閉性を向上させることを目的とする。
本発明によれば、開口部と、その開口部を開閉する開閉扉とを有し、エアバッグ装置のインフレータを作動させる閉空間を形成する筐体内に、処理するインフレータを前記閉空間内で支持する支持手段と、支持されたインフレータの周囲に配置され、インフレータを処理する際に発生する風圧を受けて移動するファン部材と、ファン部材と開閉扉とに直接又は間接的に係合し、ファン部材の移動により開口部を閉鎖する方向に開閉扉を移動させる密閉機構とを有するインフレータ処理装置が提供される。
このように、インフレータ処理時に発生する風圧を受けるファン部材の移動に伴い開閉扉を閉鎖方向に引きつけるため、爆発時の風圧を利用して閉空間の密閉性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
<第1実施形態>
以下、図面に基づいて、本発明に係る第1実施形態のエアバッグ処理装置100を説明する。図1及び図2に本実施形態のエアバッグ処理装置100の斜視図を示した。本実施形態のエアバッグ処理装置100は、開口部20と、この開口部20を開閉する開閉扉30とを備え、不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させる閉空間25を形成する筐体10を有する。図1は開閉扉30が閉じた(閉鎖された)状態を示し、図2は開閉扉30が開いた(開放された)状態を示す。開閉扉30は、図2に示す開放状態から図中矢印a方向に沿って移動して図1に示す閉鎖状態となる。密閉状態を保つため、ロック機構31により開閉扉30がロックされる。また、開閉扉30は、図1に示す閉鎖状態から図2に示す矢印b方向に沿って移動して図2の開放状態となる。閉鎖された開閉扉30及び筐体10の外壁に囲まれた領域には、インフレータを作動させるための閉空間25が形成される。なお、筐体10及び開閉扉30は防音壁で構成することが好ましい。防音壁の具体的構造は特に限定されないが、その内壁面は硬質多孔材を含む難燃性吸音材で構成することが好ましい。筐体10の形状は特に限定されず、インフレータ50の取り付け・取り外し作業性、通電装置の保守作業性等を考慮して適宜設計することができる。
【0005】
本実施形態ではエアバッグ処理装置100の天井には筐体10の閉空間に連通する排気口が形成され、排気口の上部に排気ダクト16が設けられている。排気ダクト16は排気管17を介してフィルタ機18に接続されている。フィルタ機18には筐体10内で発生した気体の臭気成分を除去するフィルタ材が用いられる。
【0006】
筐体10の内部、すなわち閉空間25には、処理すべきエアバッグ装置50のインフレータ52を支持する支持機(支持手段に対応する)40が設けられている。本実施形態では、複数のインフレータ52を同時に処理できるように、複数の支持機40が閉空間内に設けられている。支持機40の態様は特に限定されないが、本実施形態の支持機40の具体的態様を図3に示した。
【0007】
図3に示すように、筐体10には、インフレータ52を下方から支持して鉛直上下方向に移動可能な支持機40と、支持されたインフレータを上方から固定する固定機41と、固定機41を保持する保持台42と、支持されたインフレータの周囲に配置されたファン部材60とが設けられている。本装置100では、処理対象となるインフレータ52を固定機41の開口から挿入し、支持機40に装着した後、インフレータ52をその上面が固定機20に当接するように鉛直方向に上昇させ、支持機40と固定機41とによりインフレータ52を固定しながらインフレータ52を作動させる。
【0008】
本装置の処理の対象となるエアバッグ装置50の一例を、図4及び図5に示した。図4は、助手席用エアバッグ装置50a(サイドエアバッグ装置や後部座席用エアバッグ装置も同様の構造である)の例を示し、助手席用エアバッグ装置50aが実装された状態のインストルメントパネルの断面図、図5はそのインフレータを示す断面図である。後述する図9及び図10に示した運転席用エアバッグ装置50bも電気式エアバッグであれば基本的な構造は共通し、気体袋であるエアバッグ51と、これを膨らませるためのインフレータ52とを有している。エアバッグ51は図4に示すようにステアリング(STR)やインストルメントパネル(IST)内に折り畳まれて収納されており、後述するインフレータ52のハウジング521の通孔522を包むように装着され、これによりインフレータ52で発生したガスがエアバッグ51内に導入されて膨張することになる。インフレータ52は、自動車の衝突時に減速度センサで検出された衝撃が電気信号として伝わり、これにより点火するスクイブ(点火器)523と、このスクイブ523による火炎で着火燃焼するエンハンサ(伝火薬524)と、このエンハンサ524による火炎及び熱により着火燃焼してガスを発生させるガス発生剤525とを有している。
【0009】
図4及び図5に示す助手席用エアバッグ装置50aのインフレータ52は、長筒状のハウジング521の中央一端にスクイブ523が設けられ、また筒状ハウジング521の中央全域にわたってエンハンサ524が設けられている。また、エンハンサ524の周囲の燃焼室526にガス発生剤525が充填され、さらにその周囲にスクリーン527が設けられている。この助手席用インフレータ52は、同図に示すリード線528から衝撃信号が入力されると、スクイブ523が点火し、この火炎でエンハンサ524が着火燃焼し、さらにこの火炎と熱は通孔529を介して燃焼室526に入り、ガス発生剤525を着火燃焼させる。このガス発生剤525の着火燃焼により生じたガスは、スクリーン527を通過してハウジング521の周囲に設けられた複数の通孔522から流出し、エアバッグ51を膨らませることになる。
【0010】
図6は、上述したエアバッグ処理装置100にエアバッグ装置50のインフレータ52を装着した状態の要部断面図である。図6に示すように、インフレータ52は、鉛直上下方向に移動可能な支持機40により下方から支持されるとともに、固定機41により上方から保持される。固定機41から導出されたリード線528は、コネクタ91を介して筐体10内部に引かれたリード線90に電気的に接続されている。支持機40と固定機41との間には、インフレータ52の胴部周囲を囲むファン部材60が配置されている。ファン部材60を支えるため支持板61を設けてもよい。ファン部材60は、インフレータ52の通孔522と対向する位置に設けられることが好ましい。ファン部材60の羽がインフレータ処理時に発生する風圧を受けることができるようにするためである。本実施形態のファン部材60は、インフレータ52爆発時の風圧を受けて、所定方向に移動(回動)する。本例では多翼のファンであるシロッコファン(sirocco fan)60を用いた。
【0011】
本実施形態のエアバッグ処理装置100は、シロッコファン(ファン部材)60と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、シロッコファン(ファン部材)60の移動に伴い開閉扉30を開口部の閉鎖方向へ引き付ける密閉機構70と、シロッコファン(ファン部材)60と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、シロッコファン(ファン部材)60の移動により開口部を開放する方向へ開閉扉30を押す開放機構80とを有する。密閉機構70は、ファン部材60の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構であり、開放機構80は、ファン部材60の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構である。密閉機構70及び開放機構80の構造及び配置位置は特に限定されず、他の部材との干渉を考慮して適宜設計することができる。
【0012】
なお、ここでは、1つのインフレータ52の処理に係る例を説明したが、閉空間25内に支持機40が2以上設けられた場合には、シロッコファン(ファン部材)60は、2以上の支持機40に支持されたインフレータ52の周囲にそれぞれ配置され、密閉機構70は、各シロッコファン(ファン部材)60と開閉扉30の取っ手33と直接又は間接に係合するように構成する。
【0013】
密閉機構70及び開放機構80の具体的構成は特に限定されないが、密閉機構70及び開放機構80の構成及び動作の一例を図7に基づいて説明する。図7は、図6に示すVII−VII断面の断面概要図である。図7に示すように、本実施形態のシロッコファン60は、円筒形状のインフレータ52の回転中心を回転軸として回動自在に設けられている。開閉扉30の閉空間側には取っ手33が設けられている。密閉機構70はカム部材71と、伝動部材72とを有し、シロッコファン(ファン部材)60の移動により生じた動力を開閉扉30に伝えて、開閉扉30を閉空間方向に引き付ける。カム部材71は、シロッコファン60の回転とともに移動するようにシロッコファン60の縁部に設けられており、伝動部材72は、カム部材71とその一端で接触するとともに他端で開閉扉30の取っ手33に係合するように設けられている。また、本実施形態の密閉機構70は、閉空間方向に引き付けられた開閉扉30を停止させて閉空間の密閉機構を維持する密閉状態維持機能を備える。具体的に、本例の密閉機構70は、カム部材71と歯合するカム部材71にラチェット機構を、密閉状態維持機能として有する。ラチェット機構は、シロッコファン60の移動に伴い回転したカム部材71の反対方向への移動を禁止する。
【0014】
開放機構80は、インフレータ52の展開処理後、開閉扉30を開放する際に機能し、密閉機構70による密閉状態を解除する。本例の開放機構80は、ファン部材60を反回転させることにより、密閉機構70による密閉動作(取っ手33が閉空間25側(Z方向)に引っ張られている状態)を解除する。開放機構80の構成及び機能は、密閉状態を解除するものに限定されず、ファン部材60の移動により開閉扉30を開放方向(閉鎖する方向に対して相対的に反対方向)に移動させるものとしてもよい。具体的に、本実施形態の開放機構80は、シロッコファン(ファン部材)60に設けられた係合部81と、係合部81に係合するロッド82aと、ロッド82aを直線駆動させるエアシリンダ82とを有する。開放機構80のエアシリンダ82に送り込まれた空気は、ロッド82aを閉空間側の矢印P方向に押し出す。ロッド82aの先端は係合部81においてシロッコファン60と係合するため、ロッド82aはシロッコファン60を開閉扉30の閉鎖時とは反対方向(矢印Q)へ移動させる。
【0015】
このように構成された本実施形態のエアバッグ処理装置100を用いてインフレータ52を作動処理するには、まず目的とするインフレータ52を、固定機41を介して支持機40に装着し、支持機40を操作してインフレータ52が固定器41に当接する位置となるように高さを調節し、開閉扉30を閉めるとともに、ロック機構31をロック状態とする。これにより、筐体100内には閉空間25が形成される。図示しない装置外部の制御装置により、リード線90及びコネクタ91を介してインフレータ52に電気信号を送り、インフレータ52を作動させる。インフレータ52が作動すると、スクイブ523が点火し、スクイブ523の火炎によりエンハンサ524が着火燃焼して、ガス発生剤525によりガスが発生する。
【0016】
インフレータ52が爆発した際に生じたガスは、インフレータ52の外周側に設けられた複数の通孔522(図6参照)から噴出し、噴出ガスの風圧によりシロッコファン(ファン部材)60を所定方向(矢印X方向)に移動(回動)させる。このシロッコファン(ファン部材)60の端部に設けられたカム部材71は、シロッコファン60と同じ方向(矢印X方向)に移動する。カム部材71の移動により、カム部材71と接触する伝動部材72の一端が押し上げられ、Y1方向に移動する。伝動部材71は回転中心72aを中心に回動するため、伝動部材71の他端はY2方向に移動する。伝動部材72の他端の移動により、この伝動部材72と接触する開閉扉30の取っ手33は閉空間25側に向かうZ方向に引っ張られる。伝動部材72が取っ手33を閉空間25側に引っ張ることにより、開閉扉30は開口部20に圧接され、閉空間は密閉される。
【0017】
インフレータ52の展開処理後、筐体10内の温度の低下を待って、ガスが漏洩しないように筐体10内の吸引浄化処理を行う。吸引浄化処理が終了したら、開放機構80のエアシリンダ82へ空気を送り込む。エアーの圧力により押し出されたロッド82aは、シロッコファン60を閉鎖時と反対の方向Qに回転させる。シロッコファン60が矢印Q方向に移動すると、伝動部材72とカム部材71との係合が解除され、伝動部材72と取っ手33との係合が解除され、開閉扉30が開口部に圧接されて(引っ張られて)いた状態が解除され、密閉機構70による密閉状態が解除され、開閉扉30を開くことができる。開閉扉30を開き、処理後のインフレータ52を取り外し、次に処理するインフレータ52を取り付けて展開処理を行う。
【0018】
<第2実施形態>
本発明のエアバッグ処理装置は上述した実施形態にのみ限定されず、種々に改変することができる。図1及び図2は本発明の他の実施形態に係るエアバッグ処理装置200の全体斜視図、図8は本実施形態に係るエアバッグ処理装置200の筐体内部を示す斜視図、図9はインフレータ252をセットした状態の要部断面図、図10はインフレータ252を示す図、図11はインフレータ252をエアバッグ処理装置200にセットした図、図12は図11のXII−XIIの要部断面図、図13は本実施形態の閉鎖機構270のチャック付ロッドを示す図、図14は図13に示したチャック付ロッドが開放された状態を説明するための図、図15(A)は本実施形態の密閉状態維持機能を示し、図15(B)は本実施形態の開放機構を示す図である。
【0019】
本実施形態のエアバッグ処理装置200は、ファン部材260として1翼のプレート状部材を用いた点を特徴とする。本実施形態のエアバッグ処理装置200の基本構造は、第1実施形態のエアバッグ処理装置100の基本構造と共通するため、ここでは重複する説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0020】
本実施形態のエアバッグ処理装置200の内部を図8に基づいて説明する。本実施形態のエアバッグ処理装置200は、運転席用のエアバッグ装置50bの処理に適するように構成されている。エアバッグ処理装置200の筐体210の内部には、インフレータ252を支持する2つの支持機240と、支持機240により支持されたインフレータ252を押圧して固定する固定機241と、これら支持機240と固定器241とを保持する保持台242が設けられている。処理対象となるインフレータ252は、支持機240に支持されるとともに固定機241により押圧された状態で、作動させられ展開処理される。さらに、支持されたインフレータ252の外周側にはファン部材260が設けられている。ファン部材260は、ファン支持軸261を回動軸として回動自在に設けられている。
【0021】
本実施形態において処理対象となるインフレータ252は、図9及び図10に示すような運転席用エアバッグ装置50bである。運転席用エアバッグ装置50bは、気体袋であるエアバッグ251と、これを膨らませるためにインフレータ252とを有し、基本的な構造は図4および図5に基づいて説明した助手席用エアバッグ装置50aと共通する。図10に示すように、運転席用エアバッグ装置50bのインフレータ252では、円筒状のハウジング2521の中央にスクイブ2523とエンハンサ2524とが設けられ、その周囲の燃焼室2526にガス発生剤2525が充填され、さらにその周囲にスクリーン2527が設けられている。そして、同図に示すリード線2528から衝撃信号が入力されると、スクイブ2523が点火し、この火炎でエンハンサ2524が着火燃焼し、さらにこの火炎と熱は通孔2529を介して燃焼室2526に入り、ガス発生剤2525を着火燃焼させる。このガス発生剤2525の着火燃焼により生じたガスは、スクリーン2527を通過してハウジング2521の周囲に設けられた複数の通孔2522から流出し、図9に示すエアバッグ251を膨らませることになる。
【0022】
図11は、上述したエアバッグ処理装置200にエアバッグ装置50のインフレータ252を装着した状態の要部断面図である。図11に示すように、インフレータ252は、支持機240に載置され、固定機241により上方から保持される。インフレータ252のリード線2528は、コネクタ291を介して筐体10内部に引かれたリード線290に電気的に接続されている。支持されたインフレータ252の胴部の外周側にはファン部材260が配置されている。インフレータ252の中心軸に沿ってファン支持軸261が設けられ、ファン支持軸261はファン部材260を回動自在に支持する。ファン部材260は、インフレータ252の通孔2522と対向する位置に設けられることが好ましい。本実施形態のファン部材260は、インフレータ252爆発時の風圧を受けて、所定方向(図11矢印f)に移動(回動)する。本例では1翼のファン260を用いた。
【0023】
本実施形態のエアバッグ処理装置200は、1翼のファン部材260と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、ファン部材260の移動により開口部を閉鎖する方向に開閉扉30を引き付ける密閉機構270と、ファン部材260と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、密閉機構270の動作を解除させる開放機構280とを有する。開放機構280は、ファン部材260の移動により開口部を開放する方向に開閉扉30を押す機構であってもよい。密閉機構270は、ファン部材260の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構であり、開放機構280は、ファン部材260の移動により生じた動力を開閉扉30に伝える機構である。密閉機構270及び開放機構280の構造及び配置位置は特に限定されず、他の部材との干渉を考慮して適宜設計することができる。
【0024】
密閉機構270及び開放機構280の具体的構成は特に限定されないが、密閉機構270及び開放機構280の構成及び動作の一例を図12〜図14に基づいて説明する。図12は、図11に示すXII−XII断面の断面概要図である。図12に示すように、本実施形態の1翼ファン260は、円筒形状のインフレータ252の回転中心に沿って設けられたファン支持軸261を回動軸として回動自在に設けられている。また、開閉扉30の閉空間側には扉側ロッド231が設けられている。密閉機構270は、ファン部材260と開閉扉30とに直接的又は間接的に係合し、ファン部材260の移動に伴い開閉扉30を開口部20が閉鎖される方向に移動させる。本実施形態の密閉機構270は、ファン部材260の移動により生じた動力を開閉扉30へ伝える機構を備える。具体的に、本実施形態の密閉機構270は、ファン260を軸支するファン支持軸261に軸着された第1ロッド可動用ギア262と歯合するとともに、開閉扉30の扉側ロッド231と係合するチャック付ロッド273を備える。密閉機構270は、ファン部材260の移動(矢印P方向の移動)により生じた動力を第1ロッド可動用ギア262の回転(矢印Q方向)に変換し、この第1ロッド可動用ギア262と歯合するチャック付ロッド273を開閉扉30から離隔する方向(矢印R方向)へ移動させる。チャック付ロッド273に係合する扉側ロッド231も開閉扉30から離隔する方向(矢印R方向)へ移動させられ、開閉扉30は閉空間方向に引き付けられる。
【0025】
なお、ここでは、1つのインフレータ252の処理に係る例を説明したが、閉空間25内に支持機240を2以上設けられた場合、ファン部材260は、2以上の支持機240に支持されたインフレータ252の外周側にそれぞれ配置され、密閉機構270は、各ファン部材260と開閉扉30の扉側ロッド231と直接又は間接に係合するように構成する。
【0026】
本実施形態の密閉機構270の具体的な構成を図13に示した。密閉機構270は、チャック付ロッド273を有する。チャック付ロッド273は、開閉扉30側に設けられた扉側ロッド231と解除可能に係合するチャック部272を有する。チャック部272は、チャック付ロッド273に連なり、開閉自在に設けられた(開閉中心272b,272c)クランプ272d,272eと、これらクランプ272d,272eを開放させる開放シリンダ272iと、これらクランプ272d,272eを閉じるスプリング272fとを有する。密閉機構270が動作する際、クランプ272d,272eは閉じて、扉側ロッド231を保持する。扉側ロッド231は、ロッド保持部231aと、ロッド保持部231aとスプリング231cで係止されたロッド231bとを有している。
【0027】
ちなみに、密閉状態解除に際して開閉扉30を開放する際、チャック付ロッド273は扉側ロッド231を開放する。この状態を図14に示した。図14に示すように、チャック付ロッド273にはエアシリンダ機構274を介してエアーが送り込まれ、開放エアシリンダ272iが左右に延びて、クランプ272d,272eを拡開させる。拡開されたクランプ272d,272eは扉側ロッド231を開放する。これにより、開閉扉30は、開放可能となる。
【0028】
本実施形態の密閉機構270は、開口部が閉鎖される方向に移動した開閉扉30を停止させて、閉空間の密閉状態を維持させる密閉状態維持機能270Aを有する。本実施形態では、チャック付ロッド273を一方向のみに移動させるワンウェイクラッチを採用することにより、密閉状態を(開放機構280を作動させるまで)維持する。
【0029】
本実施形態は、密閉状態維持機能270Aと開放機能とを1のエアシリンダ機構で実現する。
【0030】
密閉状態維持機能270Aは、エアシリンダ282によりチャック付ロッド273を往動又は復動させることにより密閉状態を維持する。具体的に、本実施形態の密閉状態維持機能270Aは、図12に示すように、エアシリンダ282と、エアシリンダの空気圧によって往復運動可能なロッド281と、このロッド281及びチャック付ロッド273と歯合する第2ロッド可動用ギア263とを有する。図15(A)に示すように、第2ロッド可動用ギア263は、上側にワンウェイクラッチ付ギア263aを備える。エアシリンダ282がロッド281を開閉扉30から離隔する矢印V1方向(図12参照)に移動させると、ロッド281とTスロット結合する2段の第2ロッド可動用ギア263は、チャック付ロッド273に対して相対的に下方向に移動する。第2ロッド可動用ギア263が下方向に移動することにより、チャック付ロッド273は上側のワンウェイクラッチ付ギア263aと歯合する。ワンウェイクラッチ付ギア263aは、チャック付ロッド273を閉空間側に引っ張る方向にのみ移動させ、逆方向へ移動させない。これにより、密閉機構270によって実現された密閉状態は維持される。
【0031】
開放機構280は、インフレータ252の展開処理後、開閉扉30を開放する際に機能し、密閉機構270の動作によって実現された密閉状態を解除する。本例の開放機構280は、エアシリンダ282によりチャック付ロッド273を往動又は復動可能とし、密閉状態(扉側ロッド231が閉空間25側(S方向)に引っ張られている状態)を解除する。具体的に、本実施形態の開放機構280は、図12に示すように、エアシリンダ282と、エアシリンダの空気圧によって往復運動可能なロッド281と、このロッド281及びチャック付ロッド273と歯合する第2ロッド可動用ギア263とを有する。図15(B)に示すように、第2ロッド可動用ギア263は下側にフリーギア263bを備える。エアシリンダ282がロッド281を矢印V2(図12参照)方向に移動させると、ロッド281とTスロット結合する2段の第2ロッド可動用ギア263は、チャック付ロッド273に対して相対的に上方向に移動する。第2ロッド可動用ギア263が上方向に移動することにより、チャック付ロッド273は下側のフリーギア263bと歯合する。フリーギア263bはチャック付ロッド273が開閉扉30側へ移動することを妨げない。これにより、密閉機構270によって閉空間側(図12の矢印S方向)に引っ張られていた扉側ロッド131を、反対方向(相対的に)に移動させることができ、密閉状態を解除することができる。
【0032】
次に動作を説明する。本実施形態のエアバッグ処理装置200を用いてインフレータ252を作動処理するには、まず目的とするインフレータ252を支持機240に装着し、固定器241で固定する。開閉扉30を閉めるとともに、ロック機構31をロック状態とする。これにより、筐体100内には閉空間25が形成される。図示しない装置外部の制御装置により、リード線290及びコネクタ291を介してインフレータ252に電気信号を送り、インフレータ252を作動させる。インフレータ252が作動すると、スクイブ2523が点火し、スクイブ2523の火炎によりエンハンサ2524が着火燃焼して、ガス発生剤2525によりガスが発生する。
【0033】
インフレータ252が爆発した際に生じたガスは、インフレータ252の外周側に設けられた複数の通孔2522から噴出し(図12参照)、噴出ガスの風圧によりファン部材260を所定方向(矢印P方向)に移動(回動)させる。このファン部材260の端部に設けられたファン軸支ギア262は矢印Q方向に回転する。これに伴い、ファン軸支ギア262と歯合するチャック付ロッド273は扉側ロッド231を保持した状態で矢印R方向に移動させられ、扉側ロッド231は閉空間25側に向かうS方向に引っ張られる。チャック付ロッド273が扉側ロッド231を閉空間25側に引っ張ることにより、開閉扉30は開口部20に圧接され、閉空間の密閉性が向上する。また、チャック付ロッド273が歯合するワンウェイクラッチギア263aは、チャック付ロッド273の位置を維持する。
【0034】
インフレータ252の展開処理後、筐体10内の温度の低下を待って、ガスが漏洩しないように筐体10内の吸引浄化処理を行う。吸引浄化処理が終了したら、開放機構280のエアシリンダ282へ空気を送り込む。チャック付ロッド273はフリーギア263bと歯合し、密閉機能270及び密閉状態維持機能270Aの動作を解除することができる。その後、密閉機構270のエアシリンダ274に空気を送り込み、クランプ272d及びクランプ272eを拡開させて、扉側ロッド231を開放させる。これにより、チャック付ロッド281と扉側ロッドとの係合が解除され、開閉扉30を開くことができる。開閉扉30を開き、処理後のインフレータ252を取り外し、次に処理するインフレータ252を取り付けて展開処理を行う。
【0035】
第1実施形態及び第2実施形態のインフレータ処理装置100,200は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
【0036】
インフレータ252の展開処理時において、開閉扉30が開口部20に圧接されることにより、閉空間25が密閉されるので、ガス発生時の騒音や発生したガスが外部に漏れることがなくなる。また、展開処理時に生じた風圧を利用するため、爆発瞬時に密閉機構70を作動させることができ、ガスの発生タイミングに遅れることなく閉空間を密閉し、閉空間内の圧力上昇時においても閉空間の密閉状態を保つことができる。
【0037】
また、本実施形態の密閉機構70,270により閉空間が密閉されるため、筐体の巨大化を避け、装置全体の小型化・計量化を図ることができる。特に複数のインフレータ52,252を一の閉空間内で一括処理する場合、密閉強度の観点から筐体を巨大化する傾向があったが、本実施形態のインフレータ処理装置100,200によれば小型でありながら高い密閉性を維持することができるため、処理効率の高いインフレータ処理装置100,200を提供することができる。本例では、複数のインフレータ52を同時に処理する場合、各支持手段40,240に支持されたインフレータの外周側にファン部材60,260と、これに係合する密閉機構70,270とをそれぞれ設けたため、処理インフレータの増加に伴い開閉扉30を閉空間側に引っ張る力を増大させることができる。これにより、インフレータ52の処理数の増加させるために閉空間の容積を増大させても、閉空間の密閉性を確保することができる。
【0038】
本実施形態では、開閉扉30を閉空間側に引っ張って閉空間の密閉性を高めるため、開閉扉30の支持構造(ロック機構31、ヒンジ機構32等)の負担を軽減させ、それらの耐久性を高めることができる。これにより、支持構造(ロック機構31、ヒンジ機構32等)を簡易な構造にすることができ、装置全体のコストを低減させることができる。
【0039】
本実施形態では、開閉扉30を開口部20に圧接させるため、開閉扉30と開口部20との間に介在させたシール部材への負担を軽減させ、その耐久性を高めることができる。これにより、シール部材の寿命を延ばすことができ、装置のランニングコストを低減させることができる。
【0040】
また、開口部20が閉鎖する方向に開閉扉30を移動させるエネルギーは、廃棄処理するインフレータ52,252の爆発反応から得ることができるため、別途エネルギーを供給する必要がない。
【0041】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態のエアバッグ処理装置の開閉扉が閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のエアバッグ処理装置の開閉扉が開いた状態を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態のエアバッグ処理装置の筐体内部の一例を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態のエアバッグ処理装置において処理対象となるエアバッグ装置の一例を示すステアリングの断面図である。
【図5】図4に示すインフレータを示す断面図である。
【図6】第1実施形態のエアバッグ処理装置の断面要部図である。
【図7】図6のVII−VII断面の要部を示す図である。
【図8】第2実施形態のエアバッグ処理装置の筐体内部の一例を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態のエアバッグ処理装置において処理対象となるエアバッグ装置の他の例を示すインストルメントパネルの断面図である。
【図10】図9に示すインフレータを示す断面図である。
【図11】本実施形態のエアバッグ処理装置の断面要部図である。
【図12】図11のXII−XII断面の要部を示す図である。
【図13】チャック付ロッドの第1の状態を示す図である。
【図14】チャック付ロッドの第2の状態を示す図である。
【図15】図15(A)は密閉状態維持機能を説明するための図、図15(B)は開放機構を説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
100,200…インフレータ処理装置
10,210…筐体
20,220…開口部
30,230…開閉扉
40,240…支持手段,支持機
50,250(50a,50b)…エアバッグ装置
60,260…ファン部材、シロッコファン
70,270…密閉機構
80,280…開放機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、当該開口部を開閉する開閉扉とを備え、不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させるための閉空間が形成される筐体を有するインフレータ処理装置であって、
前記筐体は、
前記インフレータを前記閉空間内で支持する支持手段と、
前記支持手段により支持されたインフレータの外周側に配置され、前記インフレータを処理する際に発生する風圧を受けて移動するファン部材と、
前記ファン部材と前記開閉扉とに直接的又は間接的に係合し、前記ファン部材の移動に伴い前記開閉扉を前記開口部の閉鎖方向へ引き付ける密閉機構とを備えたインフレータ処理装置。
【請求項2】
前記密閉機構は、前記ファン部材の移動により生じた動力を前記開閉扉に伝える機構である請求項1に記載のインフレータ装置。
【請求項3】
前記密閉機構は、前記開口部の閉鎖方向へ引き付けられた開閉扉を停止させて閉空間の密閉状態を維持させる密閉状態維持機能を備えた請求項1又は2に記載のインフレータ装置。
【請求項4】
前記密閉機構の動作を解除させる開放機構を、さらに有する請求項1〜3のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【請求項5】
前記開放機構は、前記ファン部材と前記開閉扉とに直接的又は間接的に係合し、前記開閉扉を前記開口部が開放される方向に押す請求項4に記載のインフレータ処理装置。
【請求項6】
前記ファン部材は、シロッコファンである請求項1〜5のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【請求項7】
前記ファン部材は、1翼のファンである請求項1〜5のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【請求項8】
前記閉空間内に前記支持手段が2以上設けられ、
前記ファン部材は、前記2以上の支持手段に支持されたインフレータの周囲にそれぞれ配置され、
前記密閉機構は、前記各ファン部材と前記開閉扉とに直接又は間接的に係合する請求項1〜7のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【請求項1】
開口部と、当該開口部を開閉する開閉扉とを備え、不要となったエアバッグ装置のインフレータを作動させるための閉空間が形成される筐体を有するインフレータ処理装置であって、
前記筐体は、
前記インフレータを前記閉空間内で支持する支持手段と、
前記支持手段により支持されたインフレータの外周側に配置され、前記インフレータを処理する際に発生する風圧を受けて移動するファン部材と、
前記ファン部材と前記開閉扉とに直接的又は間接的に係合し、前記ファン部材の移動に伴い前記開閉扉を前記開口部の閉鎖方向へ引き付ける密閉機構とを備えたインフレータ処理装置。
【請求項2】
前記密閉機構は、前記ファン部材の移動により生じた動力を前記開閉扉に伝える機構である請求項1に記載のインフレータ装置。
【請求項3】
前記密閉機構は、前記開口部の閉鎖方向へ引き付けられた開閉扉を停止させて閉空間の密閉状態を維持させる密閉状態維持機能を備えた請求項1又は2に記載のインフレータ装置。
【請求項4】
前記密閉機構の動作を解除させる開放機構を、さらに有する請求項1〜3のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【請求項5】
前記開放機構は、前記ファン部材と前記開閉扉とに直接的又は間接的に係合し、前記開閉扉を前記開口部が開放される方向に押す請求項4に記載のインフレータ処理装置。
【請求項6】
前記ファン部材は、シロッコファンである請求項1〜5のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【請求項7】
前記ファン部材は、1翼のファンである請求項1〜5のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【請求項8】
前記閉空間内に前記支持手段が2以上設けられ、
前記ファン部材は、前記2以上の支持手段に支持されたインフレータの周囲にそれぞれ配置され、
前記密閉機構は、前記各ファン部材と前記開閉扉とに直接又は間接的に係合する請求項1〜7のいずれかに記載のインフレータ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−192408(P2006−192408A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9209(P2005−9209)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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