インプラントおよびインプラント部材
【課題】改良された表面特性および良好な生体適合性を有するインプラント及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ヒト又は動物の生きた生体組織への取付手段9.12を含むインプラントである。生物組織との生体適合性がそれぞれ異なる特性の第1部分及び第2部分を含む外表面を有し、第1部分を構成する研磨面21と、第2部分を構成する一以上の区切られた領域22、23、24、25、26、27、28、29、30、31とを含む一以上の表面部分20を含む。穴開きマスキングユニットがインプラントに適用されるインプラントの製造方法のためのマスキングユニットも提供する。
【解決手段】ヒト又は動物の生きた生体組織への取付手段9.12を含むインプラントである。生物組織との生体適合性がそれぞれ異なる特性の第1部分及び第2部分を含む外表面を有し、第1部分を構成する研磨面21と、第2部分を構成する一以上の区切られた領域22、23、24、25、26、27、28、29、30、31とを含む一以上の表面部分20を含む。穴開きマスキングユニットがインプラントに適用されるインプラントの製造方法のためのマスキングユニットも提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラントであって、生体組織とのそれぞれの生体適合性に関して異なる特性を有する第1の部分と第2の部分とを備える外表面を有するインプラント、そのようなインプラントを製造する方法、ならびに前記方法において使用するマスキングユニットに関する。さらに、本発明は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラント部材であって、インプラントが外表面を有するインプラント部材、ならびにそのインプラント部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長い間、各種の材料から製造される様々な種類のインプラントが、例えば、患者の治療において、骨折の固定のために、除去した骨組織の代替物として、歯科手術において義歯または歯科ブリッジを固定するために、また他の用途において使用されてきた。19世紀の末には、金、ポーセレン(陶材)、および銀など、様々な種類のインプラント材料を用いた実験が実施された。1930年代には、生体適合性材料である合金のビタリウムの使用が提案され、その合金のビタリウムはそれ以降多数の研究がなされており、今日も依然として使用されている。チタンの有利な生体適合性は1950年代に偶然により発見され、この時に、チタン製のインプラントは骨組織と一体化できることが判明した。このことから、オッセオインテグレーション(骨結合)の構想の基礎が形成された。それ以来、チタンは、その優れた生体適合性により、純粋な形式で、または合金の形式で、インプラントに使用されてきた。やがて、チタンおよびチタン合金は優れた長期的結果を示したが、とりわけ、チタンは発癌性のないことが判明し、この結果は十分に実証されている。しかしながら、周囲の組織などの生体系とより良好に相互作用できるより生体活性を有する材料とは対照的に、チタンおよびチタン合金は比較的生体不活性であり、すなわち生体系と相互作用することができないため、初期には、チタンおよびチタン合金をインプラントに使用することは、質のよい骨組織に限定されていた。
【0003】
インプラントが周囲の組織と相互作用する能力を向上させる目的で表面を変更するには、実質的に2つの手法がある。その手法の1つは、例えばインプラントと組織との接触を改善するように表面をパターン形成または浮き彫り加工/テクスチャリングすることによって、インプラントをトポグラフ的に変更することであり、もう1つは、インプラントの表面を化学的に改質することであるが、これらの2つの手法を組み合わせることもまた可能である。
【0004】
今日、表面の化学的改質に関し、生体系と相互作用する能力を有し、かつ、例えば、プラズマ噴射、パルスレーザー蒸着、スパッタリング、ブラストコーティングなどのような様々な蒸着技法によってインプラントの外表面に付着させることができる複数の既知の好適な生体活性材料が存在する。そのような生体活性材料の例として、例えば、ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウムがある。
【0005】
しかしながら、新たな材料および物質の長期的な影響は未知であるため、そのような材料および物質の使用には欠点が伴う。
【0006】
生体組織とのインプラントの相互作用を調整する必要がある。第1の材料がインプラントの表面のある部分を覆い、第2の材料がインプラントの表面の他の部分を覆う、2つの異なる材料のインプラントを製造することは、以前から知られている。この結果、インプラントを異なる要件に適合させることがある程度可能となる。しかしながら、この解決策は十分に柔軟ではなく、また十分に適合可能なインプラントを提供するものではない。
【0007】
さらに、生体活性な特性を有する表面を備え、それによって周囲の組織と相互作用し、同時に十分に実証された長期的効果を有するインプラントが提供されるように、生体組織とのインプラントの相互作用を調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的はしたがって、改良された表面特性および良好な生体適合性を有するインプラント、とりわけ、十分に実証された長期的効果を同時に有する生体活性な特性を有するインプラントを提供することである。さらに、本発明の目的は、そのようなインプラントを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、前記第1の部分を構成する研磨面(グラウンド面)と、前記第2の部分を構成する1つまたは複数の区切られた領域とを備える少なくとも1つの表面部分を備える、請求項1の導入部で定義された類のインプラントを提供することによって、ならびに、請求項17、または18および19の特徴を述べる部分にそれぞれ記載された特別な処置および特徴をそれぞれ備える、請求項17および19の導入部で定義された類の方法およびマスキングユニットを提供することによって達成される。
【0010】
研磨面および1つまたは複数の故意に分布された区切られた領域を備え、生体組織との生体適合性に関する研磨面の特性が前記1つまたは複数の区切られた領域の特性とは異なる表面部分を設けることにより、表面の均一な構造がもたらされ、それによって異なる特定の生体系とのインプラントの相互作用を適合させる可能性が生じるが、このことは、インプラントの外表面が、同じ材料の大きな領域など、生体適合性に関して同じ特性を有する大きな領域を備える、表面の均一な構造では達成するのが不可能である。前記表面部分は、移植後に生体系の特定の領域とのある相互作用を有することが望ましい、インプラント上の特定の位置に設けられる。研磨面が、インプラントの残りの外表面、すなわち前記表面部分の外側の外表面と同じ材料でできていてもよく、または、区切られた領域が、インプラントの残りの外表面と同じ材料でできていてもよい。
【0011】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、異なる特性が、前記生体組織に対する距離効果に関して、かつ/または生体組織との各部の相互作用の経時的様相に関して異なる。
【0012】
本発明によるインプラントのさらに有利な実施形態によれば、前記1つまたは複数の区切られた領域は、多数の区切られた範囲からなり、その区切られた範囲の数は5を超える。前記区切られた範囲の数は有利には20を超え、場合によっては50を超える。前記区切られた範囲は、それぞれ0.1mm2から0.3mm2の大きさを有し、また、最も隣接する他の区切られた範囲まで少なくとも1mmから3mm、有利には少なくとも2mmの距離を有する。このように、生体組織との生体適合性に関して第1の特性を有する範囲が、生体組織との生体適合性に関して他の特性を有する研磨面によって囲まれて分布することにより、インプラントは、特定の生体適合性を特定の領域に与えられることができ、それによって前記インプラントを組織に一体化することが促進される。
【0013】
本発明によるインプラントの別の有利な実施形態によれば、前記1つまたは複数の区切られた領域は、実質的に円、楕円および/もしくは帯の形状または前記形状の中間的な形状である区切られた範囲を形成する。
【0014】
本発明によるインプラントのさらなる別の有利な実施形態によれば、前記1つまたは複数の区切られた領域は、研磨面に付着された蒸着物または被覆物からなり、その蒸着物は、0.05μmから5μm、好ましくは0.1μmから3μmの厚さを有することができる。有利にも、これらの蒸着物は不均一な厚さを有しており、それらの蒸着物の境界領域に向かって薄くなっている。蒸着物の不均一な厚さおよび平坦でない表面によって、インプラントと組織との接触が促進される。
【0015】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、研磨面は、インプラントの表面部分の50%から98%、ある場合にはインプラントの表面部分の70%から95%、またある場合にはインプラントの表面部分の85%から95%を覆う。
【0016】
本発明によるインプラントのさらに有利な実施形態によれば、インプラントの外表面は少なくとも2つの異なる材料を含み、前記研磨面は第1の材料からなり、前記1つまたは複数の区切られた領域は少なくとも1つの第2の材料からなる。この実施形態では、とりわけ、生体活性な特性を有し、同時に十分に実証された長期的効果を有するある生体適合性インプラントの製造が可能となり、そのインプラントにおいて、前記第1の材料は、例えば、十分に実証された既知の長期的効果を有するチタン、酸化チタン、および/またはチタン合金であり、前記少なくとも1つの第2の材料は、生体活性な方式で周囲の生体組織と相互作用する、またはその逆に相互作用する、1つまたは複数の生体活性材料を備える。
【0017】
チタンの代わりに使用することができる他の材料の例には、例えば、元素のニオビウム、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、および各種の合金または前記元素の酸化物、ならびにステンレス鋼、コバルトクロムなどの他の合金がある。
【0018】
生体活性材料の例には、カルシウムを含む、周期表の化学基の塩類、例えばりん酸カルシウムを含む材料、または、より正確には、ヒドロキシアパタイト、ポリマー、高分子、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、薬理学的薬剤、細胞、ならびに他の結晶状態および/もしくは非晶状態の生体活性セラミックスを含む材料がある。これらの材料は、再吸収可能であっても再吸収不可能であってもよい。ヒドロキシアパタイトは、歯科インプラントに特に有利であることが判明している。
【0019】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、第1の材料と少なくとも1つの第2の材料の双方は、上述の生体活性材料のうちの1つまたは複数を含む材料からなる。
【0020】
本発明によるインプラントのさらに有利な実施形態によれば、前記少なくとも1つの表面部分の表面は、例えばパターン形成または浮き彫り加工/テクスチャリングすることによって、トポグラフ的に変更される。表面のトポグラフ的な変更は有利にも、例えば、機械加工、微細加工、吹き付け、低温吹き付け、エッチング、研磨、磨耗によって、または各種のレーザ技法によって達成することができる。
【0021】
本発明によるインプラントの別の有利な実施形態によれば、取り付け手段は少なくとも1つのねじ山を設けられるが、取り付けの他の手段も可能である。ねじ山に代わるのは、例えば、圧力によって骨組織に取り付けられる粗い表面などを、または長手方向の溝などを取り付け手段に設けることである。
【0022】
さらに、上述の目的は、請求項21の導入部で定義する類のあるインプラント部材を提供することによって達成され、そのインプラント部材において、前記外表面は少なくとも1つの表面領域を備え、その表面領域の表面は、パターン形成または浮き彫り加工/テクスチャリングすることによってトポグラフ的に変更されており、また請求項32の導入部で定義される類のある方法を提供することによって達成され、その方法は、レーザによって前記表面領域にパターン形成する特定の処置を含んでいる。
【0023】
本発明によるインプラント部材の有利な実施形態によれば、表面領域は、複数の凹部を設けることによってパターン形成され、また、その表面領域は、取り付け手段の領域内に配置される。
【0024】
本発明によるインプラント部材の別の有利な実施形態によれば、取り付け手段は、少なくとも1つのねじ山を設けられ、表面領域は前記少なくとも1つのねじ山の谷底/谷に配置され、前記凹部は、谷底の長手方向の延長部に沿って互いに連なって設けられる。
【0025】
本発明によるインプラント部材の他の有利な実施形態によれば、表面領域は、前記凹部を通して、取り付け手段の断面において波の形状を有し、また、その表面領域は、ねじ山の少なくとも1回転分または1ピッチ分延びる。
【0026】
本発明によるインプラント部材の有利な実施形態によれば、表面領域は、0.8μmと10μmの間、好ましくは1.2μmと5μmの間のSaを有する表面を有し、Saは次式によって計算される。
【数1】
【0027】
Saは、インプラントの技術分野において表面の粗さを指定するための認められたパラメータである。パラメータSaおよび上式の変数の完全な定義は、とりわけ、Wennerbergの論文、「On Surface Roughness and Implant Incorporation」、Dept.of Biomaterials/Handicap Research、Institute for Surgical Sciences and Dept. of Prosthetic Dentistry、Goteborg University、スウェーデン国、1996年、ISBN91−628−1940−2に開示されている。
【0028】
Richard Branemarkの論文、「A Biomechanical Study of Osseointegration In-vivo Mesurements in Rat,Rabbit,Dog and Man」、Goteborg、スウェーデン国、1996年、ISBN91−628−2267−5が開示することころでは、低いSaを有する機械加工された表面は弾性変形性が乏しく、代わりに塑性変形性が著しく、このことは、骨を境界面からさらに離れて係合させるには表面がミクロレベルであまりにも平滑であることを意味すると、生体力学的に解釈することができる。さらに、歯科インプラントに関する研究には、例えば、200μmから400μmの直径を有する孔を含むか、または100μm〜5000μmの直径を有する球と焼結する、表面の「大きな」または「粗い」構造には問題があることを示すものがある。
【0029】
本出願人の研究において、本発明によるインプラント部材の前記実施形態の表面領域のSaに対する指定した間隔は、生体組織とのインプラント部材の相互作用に関して非常に有利であることが判明しており、また、最適化された生体力学をもたらすことが判明している。上述の間隔に従ったSaを有する表面を有する表面領域が、取り付け手段の断面において表面領域に波の形状を与える前記凹部と組み合わされる場合、組織とインプラントの境界面における非晶区間を通過するように組織内に深く達することが可能となり、同時に、「粗い」表面構造の存在下で生じる問題は現れない。
【0030】
本発明によるインプラント部材の別の有利な実施形態によれば、インプラント部材の外表面は、チタンおよび/またはチタン合金からなる。
【0031】
本発明によるインプラント部材のさらなる別の有利な実施形態によれば、インプラント部材は、請求項1から16のいずれか1項に記載の、インプラントの特別な特徴を備えている。
【0032】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、インプラントは、請求項21から28のいずれか1項に記載の、インプラント部材の特別な特徴を備えている。
【0033】
請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラントの特別な特徴と、請求項21から28のいずれか1項に記載のインプラント部材の特別な特徴とを組み合わせることにより、生体組織とのインプラントまたはインプラント部材の生体適合性に関して非常に有利である外表面の形式で相乗効果がもたらされ、また、相互作用は、組織内に深く係合することによって力学的/生体力学的な安定性を生じるねじ山、フランジなどの存在下でより一層高められる。
【0034】
これから本発明について、例示を目的として、実施形態によってまた添付の図面を参照して、より詳細に述べることにする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、いくつかの区切られた範囲を蒸着物の形で有する、本発明によるインプラントの実施形態の側面図である。
【図2】図2は、本発明による方法の実施形態によって付着された第1の蒸着物のトポグラフィーの概略側面図である。
【図3】図3は、本発明による方法の実施形態によって付着された第2の付着物のトポグラフィーの概略側面図である。
【図4】図4は、本発明によるマスキングユニットの実施形態の側面図である。
【図5】図5は、図4のマスキングユニットを使用して、本発明による方法の実施形態によって帯の形状の蒸着物で被覆することが意図される区切られた範囲を指示したインプラントの実施形態の側面図である。
【図6】図6は、図5の指示した区切られた範囲を拡大したものである。
【図7】図7は、本発明による方法の実施形態を表す概略流れ図である。
【図8】図8は、本発明によるインプラントの有利な実施形態の概略側面図である。
【図9】図9は、本発明によるインプラントの第2の有利な実施形態の概略側面図である。
【図10】図10は、本発明によるインプラント部材の実施形態の一部分の概略図である。
【図11】図11は、図10の線AAに沿った断面を示す。
【図12】図12は、図10の実施形態と生体組織との間の相互作用を示す棒グラフである。
【図13】図13は、本発明によるインプラント部材の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、ヒトまたは動物の生きた生体組織へ永久的または一時的に取り付けるための手段1を備える歯科インプラントを示し、その組織は硬質であっても軟質であってもよい。取り付け手段1はこの場合、ねじ付きの固定部分を備えている。インプラントは、2つの異なる材料の外表面を有しており、その外表面において、第1の材料が表面の第1の部分を形成し、少なくとも1つの第2の材料が表面の第2の部分を形成している。第1の材料はチタンであるが、他の生体適合性材料も可能であり、第2の材料は、生体適合性を有し且つ生体活性を有するヒドロキシアパタイトを含む材料であるが、生体活性を有し且つ/または生体適合性を有する他の材料も可能である。チタンおよびヒドロキシアパタイトは、各材料と生体組織との生体適合性に関して異なる特性を有しており、その異なる特性は、前記生体組織に対する距離効果に関して異なっている。外表面は、表面部分2の70%から90%を覆うチタン製の研磨面3と、複数の区切られた範囲とからなる表面部分2を含んでおり、その複数の区切られた範囲は、ヒドロキシアパタイトを含む材料からなる複数の蒸着物4、5、6、7からなり、その複数の蒸着物4、5、6、7は、取り付け手段1のねじ山の谷底8に付着されており、このことは有利であることが判明している。蒸着物4、5、6、7は、0.1μmから3μmの厚さを有しかつ不均一な厚さを有し、蒸着物の境界領域に向かって薄くなっているが、その境界領域は、本発明による方法の実施形態によって付着された第1および第2の蒸着物をそれぞれ示す図2および3に示されている。この結果として、表面は10μm未満のSaを有する。蒸着物4、5、6、7は、実質的に円、楕円および/もしくは帯の形状または前記形状の中間的な形状である区切られた範囲を覆っている。蒸着物4、5、6、7は、所望の生物学的効果を達成するように、特定の領域にまたは特定のパターンで付着させることができる。歯科インプラントの基部の直径は約4.1mmであり、歯科インプラントの先端部の直径は約3.75mmである。ねじ切りは、2つのねじ山の頂の間に約0.6mmの距離が存在するように寸法が決められている。
【0037】
図4は、本発明によるマスキングユニットの実施形態を示し、このマスキングユニットは、本発明によるインプラントを製造する方法において使用することができる(図7参照)。ねじの形状のインプラント上に、蒸着物を付着させるとき、または他の方式で例えば吹き付けによって表面構造を設けるとき、中空の円筒状マスキングユニット9が使用され、その円筒状マスキングユニットの内周部はインプラントの外周部に適合されている。具体的には、マスキングユニット9が工程後に除去されるときに、付着された蒸着物がこすり取られないように、インプラントの外周部とマスキングユニット9の内周部との間には十分な距離が存在しなければならない。マスキングユニット9は複数の縦方向の開口部10を備えており、材料は本発明による方法においてその開口部10を通過し、インプラントに達することができる。マスキングユニット9はチタンからなるが、チタン合金または他の好適な材料からなっていてもよい。
【0038】
図5において、図4のマスキングユニットを切り取ったものであるマスキングユニット5.9が示され、したがって、インプラントがマスキングユニット5.9によって囲まれ、指示した区切られた範囲11を有するところが示されており、図4に示す開口部10は、インプラントがマスキングユニット5.9に挿入されるとき、この区切られた範囲11の上に配置される。
【0039】
図6は、前記指示した区切られた範囲6.11を拡大したものを示す。
【0040】
図7は、本発明による方法の実施形態を表す概略流れ図を示し、この方法において、本発明によるマスキングユニットが使用される。最初に、7.1において穴あきマスキングユニットがインプラント上に取り付けられる。7.2において、マスキングユニットを設けられたインプラントがスパッタリングチャンバ内に挿入され、そのスパッタリングチャンバにおいて、ヒドロキシアパタイトを含む材料を有するターゲットが与えられ、チャンバが好適な基本圧力で加圧される。7.3において、スパッタガス(スパッタリングガス)、この場合はアルゴンが、反応ガスの混合気と共に、好適な使用圧力に達するまでチャンバ内に案内される。7.4において、高周波発生器が、約100ワットでかつ約13.56MHzの周波数で動作され、したがって高周波数の高電圧が、ターゲットとマスキングユニットを設けられたインプラントとの間に印加され、それによって、不活性ガスがイオン化され、そのイオンが粒子をターゲットから叩き出す。7.5において、これらの粒子が、コーティングを目的とした範囲を画定するマスキングユニットの開口部をある角度で通過し、開口部の形状に対応するインプラントの前記範囲に付着する。このスパッタリング工程は1時間にわたって継続され、それによって約0.1μmの蒸着物が与えられる。その後に、ヒドロキシアパタイトを含む材料または他の任意の好適な材料の所望の蒸着物を達成する目的で、インプラントを第2の角度でスパッタリングにさらすように、マスキングユニットを設けられたインプラントが7.6において回転され、その結果、7.5において、前記ターゲットからの新たな粒子がマスキングユニットの開口部を通過し、インプラントの前記範囲に蒸着される。スパッタリングが実施される所望数のさらなる角度の後、7.7において、インプラントの被覆が終了する。
【0041】
さらに、類似のマスキングユニットをある方法において使用することができるが、その方法では、チタン製のインプラントがまずヒドロキシアパタイトを含む材料で被覆され、その後に、穴あけされたマスキングユニットに挿入され、そこで、ヒドロキシアパタイトを含む材料がマスキングユニットの開口部の範囲から除去される。
【0042】
マスキングユニットの開口部パターンは、インプラントの表面部分に蒸着される蒸着物のパターンに適合されている。当然ながら、本発明によるインプラント上に前記表面部分を製作する方法は、エッチングなど、他にもいくつか考えられる。
【0043】
図8は、ねじ付きの固定部分の形式とした手段12を備える第2の歯科インプラントを示し、この手段12は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に永久的または一時的に取り付けるためのものである。組織は硬質であっても軟質であってもよい。さらに、インプラントは基部13と先端部14とを有しており、先端部14は任意選択で設計される。インプラントは、2つの異なる材料を含む外表面を有している。外表面は、表面部分15の50%から80%を覆うチタン製の研磨面16と、複数の区切られた範囲とからなる表面部分15を備えており、その複数の区切られた範囲は、ヒドロキシアパタイトを含む材料からなる蒸着物17からなり、その蒸着物17は、取り付け手段12のねじ山の谷底18に付着されている。蒸着物17は、ねじ山の谷底18に連続的に巻き付く螺旋形状を有しており、0.1μmから3μmの厚さを有している。しかしながら、インプラントは、基部13に隣接する基底部分19を有しており、その基底部分19において、ねじ山の2回転分は前記蒸着物17を有していない。
【0044】
図9は、実質的に図8の歯科インプラントと同じ方式で設計された第3の歯科インプラントを示しているが、この第3のインプラントは、表面部分20の55%から85%を覆うチタン製の研磨面21と、複数の区切られた範囲とからなる表面部分20を有する外表面を備えており、その複数の区切られた範囲は、ヒドロキシアパタイトを含む材料からなる複数の蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31を備える不連続な螺旋形状からなり、その複数の蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31は、取り付け手段9.12のねじ山の谷底9.18に付着されている。蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31は、研磨面21からなる間隔だけ互いに離され、ねじ山の谷底9.18に沿って延びており、その結果、蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31の間隔は歯科インプラントの中心軸の周りに不規則に配置されている。蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31はまた、好都合にも、蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31の間隔が歯科インプラントの中心軸の周りに規則的に配置され、その結果、その間隔がインプラントの長手方向の延長部に沿って互いに位置合わせされるような方式で、ねじ山の谷底9.18に沿って延びるように分布させることができる。
【0045】
図10は、歯科インプラントの形式の本発明によるインプラント部材の実施形態の一部分を示す。より正確には、図10は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための取り付け手段40の一部分を示す。取り付け手段40は、少なくとも1つのねじ山を設けられている。歯科インプラントの外表面は、チタンおよび/またはチタン合金からなり、前記外表面は少なくとも1つの表面領域41を備え、その表面領域41の表面は、例えばレーザを用いてパターン形成することによって、トポグラフ的に(輪郭について)変更される。前記少なくとも1つの表面領域41は、ねじ山の頂43の間の前記少なくとも1つのねじ山の谷底42に配置されている。取り付け手段40の大径、すなわちねじ山の頂43と正反対のねじ山の頂との間の距離は3.75mmであり、取り付け手段40の小径は3.11mmである。表面領域は、複数の凹部を設けることによってパターンが形成され、その複数の凹部は谷底42の長手方向の延長部に沿って互いに連なって設けられている。谷底42において、凹部は互いに対して横方向に変位させて、わずかな「ジグザグ」構造が設けられるようにすることができる。表面領域は、少なくとも1回転分ねじ山に沿って延びている。
【0046】
図11は、図10の断面AAを示すが、この断面AAは一定の尺度に従って示されたものではない。表面領域は、取り付け手段の断面において波の形状を有しており、その波の形状は実質的に正弦波状である。波の各頂44、55は、波の谷46の上に距離50だけ上昇し、その距離50は、200μm以下であり、有利には150μm以下であり、また有利には、距離50は5μmと40μmの間であり、これは図11の事例である。波の2つの隣接する頂45、55の間の距離51は、有利には50μmと200μmの間であり、より有利には70μmと150μmの間であり、より正確には90μmと120μmの間である。しかしながら、この実施形態において、距離51は100μmと110μmの間である。表面領域は、Saが1.2μmと5μmの間である表面を有し、ここでSaは次式によって計算される。
【数2】
【0047】
上述のように、Saは、インプラントの技術分野において表面の粗さを指定するための認められたパラメータである。Saの完全な定義は、とりわけ、発明の開示で述べたAnn Wennerbergによる論文において開示されている。表面領域のこの上述の表面によって、完全に石化した骨組織に骨の再構築後に達することが可能となり、また、それと共に所望の生体力学的効果が達成される。表面領域の前記表面は、インプラントを挿入するときの損傷をほとんどなくすのに十分に小さな表面の変更を有しているが、同時に、生体力学的効果がもたらされるような粗い表面の変更をも有している。対照的に、大きな/粗い表面構造は、完全な確実性はなくても力学的効果を向上させるが、挿入時に結果として組織の損傷を増し、また、さらには、同じ効果を得るために骨が成長しなければならない距離がより長くなり、その結果、粗い表面が組織にまで回復する期間がより長くなるはずである。
【0048】
図12は、本出願人が実施した動物に対する実験的研究の結果を概略的に示す。棒「1」は、本発明によるインプラントに対する取り外しトルクを示し、棒「2」は、通常の方式で機械加工のみされたインプラントに対する取り外しトルクを示す。さらに、この研究が示すところでは、棒グラフによれば取り外しトルクがより高くなることに加えて、異なる破壊力学が達成され、その結果として別の破壊を生じている。このことは、通常の方式で機械加工されたインプラントの境界面においては塑性変形が優勢であるというこれまでの見解とは対照的に、所望の弾性変形が本発明によるインプラントの取り外しトルクの後に生じたという仮説を支持している。
【0049】
図13は、図10に示す種の概略的な歯科インプラントを示し、前記少なくとも1つの表面領域の位置に関する4つの異なる代替物を表している。第1の代替物Alt.1によれば、取り付け手段40全体に沿って1つまたは複数の表面領域が設けられる。第2の代替物Alt.2によれば、歯科インプラントの基部47に最も近いねじ山の第1の回転または第1および第2の回転を除き、ねじ山の全回転に沿って、1つまたは複数の表面領域が設けられる。第3の代替物Alt.3によれば、互いに隣接するねじ山の2回転、好ましくは歯科インプラントの基部47に対するねじ山の第3および第4の回転に沿って、1つまたは複数の表面領域が設けられる。第4の代替物Alt.4によれば、ねじ山のわずか1回転、好ましくは歯科インプラントの基部47に対するねじ山の第3の回転に沿って、1つまたは複数の表面領域が設けられる。
【0050】
前記1つまたは複数の表面領域の位置は有利にも、図8および図9の各表面部分内の1つまたは複数の蒸着物にそれぞれ対応することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラントであって、生体組織とのそれぞれの生体適合性に関して異なる特性を有する第1の部分と第2の部分とを備える外表面を有するインプラント、そのようなインプラントを製造する方法、ならびに前記方法において使用するマスキングユニットに関する。さらに、本発明は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラント部材であって、インプラントが外表面を有するインプラント部材、ならびにそのインプラント部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長い間、各種の材料から製造される様々な種類のインプラントが、例えば、患者の治療において、骨折の固定のために、除去した骨組織の代替物として、歯科手術において義歯または歯科ブリッジを固定するために、また他の用途において使用されてきた。19世紀の末には、金、ポーセレン(陶材)、および銀など、様々な種類のインプラント材料を用いた実験が実施された。1930年代には、生体適合性材料である合金のビタリウムの使用が提案され、その合金のビタリウムはそれ以降多数の研究がなされており、今日も依然として使用されている。チタンの有利な生体適合性は1950年代に偶然により発見され、この時に、チタン製のインプラントは骨組織と一体化できることが判明した。このことから、オッセオインテグレーション(骨結合)の構想の基礎が形成された。それ以来、チタンは、その優れた生体適合性により、純粋な形式で、または合金の形式で、インプラントに使用されてきた。やがて、チタンおよびチタン合金は優れた長期的結果を示したが、とりわけ、チタンは発癌性のないことが判明し、この結果は十分に実証されている。しかしながら、周囲の組織などの生体系とより良好に相互作用できるより生体活性を有する材料とは対照的に、チタンおよびチタン合金は比較的生体不活性であり、すなわち生体系と相互作用することができないため、初期には、チタンおよびチタン合金をインプラントに使用することは、質のよい骨組織に限定されていた。
【0003】
インプラントが周囲の組織と相互作用する能力を向上させる目的で表面を変更するには、実質的に2つの手法がある。その手法の1つは、例えばインプラントと組織との接触を改善するように表面をパターン形成または浮き彫り加工/テクスチャリングすることによって、インプラントをトポグラフ的に変更することであり、もう1つは、インプラントの表面を化学的に改質することであるが、これらの2つの手法を組み合わせることもまた可能である。
【0004】
今日、表面の化学的改質に関し、生体系と相互作用する能力を有し、かつ、例えば、プラズマ噴射、パルスレーザー蒸着、スパッタリング、ブラストコーティングなどのような様々な蒸着技法によってインプラントの外表面に付着させることができる複数の既知の好適な生体活性材料が存在する。そのような生体活性材料の例として、例えば、ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウムがある。
【0005】
しかしながら、新たな材料および物質の長期的な影響は未知であるため、そのような材料および物質の使用には欠点が伴う。
【0006】
生体組織とのインプラントの相互作用を調整する必要がある。第1の材料がインプラントの表面のある部分を覆い、第2の材料がインプラントの表面の他の部分を覆う、2つの異なる材料のインプラントを製造することは、以前から知られている。この結果、インプラントを異なる要件に適合させることがある程度可能となる。しかしながら、この解決策は十分に柔軟ではなく、また十分に適合可能なインプラントを提供するものではない。
【0007】
さらに、生体活性な特性を有する表面を備え、それによって周囲の組織と相互作用し、同時に十分に実証された長期的効果を有するインプラントが提供されるように、生体組織とのインプラントの相互作用を調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的はしたがって、改良された表面特性および良好な生体適合性を有するインプラント、とりわけ、十分に実証された長期的効果を同時に有する生体活性な特性を有するインプラントを提供することである。さらに、本発明の目的は、そのようなインプラントを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、前記第1の部分を構成する研磨面(グラウンド面)と、前記第2の部分を構成する1つまたは複数の区切られた領域とを備える少なくとも1つの表面部分を備える、請求項1の導入部で定義された類のインプラントを提供することによって、ならびに、請求項17、または18および19の特徴を述べる部分にそれぞれ記載された特別な処置および特徴をそれぞれ備える、請求項17および19の導入部で定義された類の方法およびマスキングユニットを提供することによって達成される。
【0010】
研磨面および1つまたは複数の故意に分布された区切られた領域を備え、生体組織との生体適合性に関する研磨面の特性が前記1つまたは複数の区切られた領域の特性とは異なる表面部分を設けることにより、表面の均一な構造がもたらされ、それによって異なる特定の生体系とのインプラントの相互作用を適合させる可能性が生じるが、このことは、インプラントの外表面が、同じ材料の大きな領域など、生体適合性に関して同じ特性を有する大きな領域を備える、表面の均一な構造では達成するのが不可能である。前記表面部分は、移植後に生体系の特定の領域とのある相互作用を有することが望ましい、インプラント上の特定の位置に設けられる。研磨面が、インプラントの残りの外表面、すなわち前記表面部分の外側の外表面と同じ材料でできていてもよく、または、区切られた領域が、インプラントの残りの外表面と同じ材料でできていてもよい。
【0011】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、異なる特性が、前記生体組織に対する距離効果に関して、かつ/または生体組織との各部の相互作用の経時的様相に関して異なる。
【0012】
本発明によるインプラントのさらに有利な実施形態によれば、前記1つまたは複数の区切られた領域は、多数の区切られた範囲からなり、その区切られた範囲の数は5を超える。前記区切られた範囲の数は有利には20を超え、場合によっては50を超える。前記区切られた範囲は、それぞれ0.1mm2から0.3mm2の大きさを有し、また、最も隣接する他の区切られた範囲まで少なくとも1mmから3mm、有利には少なくとも2mmの距離を有する。このように、生体組織との生体適合性に関して第1の特性を有する範囲が、生体組織との生体適合性に関して他の特性を有する研磨面によって囲まれて分布することにより、インプラントは、特定の生体適合性を特定の領域に与えられることができ、それによって前記インプラントを組織に一体化することが促進される。
【0013】
本発明によるインプラントの別の有利な実施形態によれば、前記1つまたは複数の区切られた領域は、実質的に円、楕円および/もしくは帯の形状または前記形状の中間的な形状である区切られた範囲を形成する。
【0014】
本発明によるインプラントのさらなる別の有利な実施形態によれば、前記1つまたは複数の区切られた領域は、研磨面に付着された蒸着物または被覆物からなり、その蒸着物は、0.05μmから5μm、好ましくは0.1μmから3μmの厚さを有することができる。有利にも、これらの蒸着物は不均一な厚さを有しており、それらの蒸着物の境界領域に向かって薄くなっている。蒸着物の不均一な厚さおよび平坦でない表面によって、インプラントと組織との接触が促進される。
【0015】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、研磨面は、インプラントの表面部分の50%から98%、ある場合にはインプラントの表面部分の70%から95%、またある場合にはインプラントの表面部分の85%から95%を覆う。
【0016】
本発明によるインプラントのさらに有利な実施形態によれば、インプラントの外表面は少なくとも2つの異なる材料を含み、前記研磨面は第1の材料からなり、前記1つまたは複数の区切られた領域は少なくとも1つの第2の材料からなる。この実施形態では、とりわけ、生体活性な特性を有し、同時に十分に実証された長期的効果を有するある生体適合性インプラントの製造が可能となり、そのインプラントにおいて、前記第1の材料は、例えば、十分に実証された既知の長期的効果を有するチタン、酸化チタン、および/またはチタン合金であり、前記少なくとも1つの第2の材料は、生体活性な方式で周囲の生体組織と相互作用する、またはその逆に相互作用する、1つまたは複数の生体活性材料を備える。
【0017】
チタンの代わりに使用することができる他の材料の例には、例えば、元素のニオビウム、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、および各種の合金または前記元素の酸化物、ならびにステンレス鋼、コバルトクロムなどの他の合金がある。
【0018】
生体活性材料の例には、カルシウムを含む、周期表の化学基の塩類、例えばりん酸カルシウムを含む材料、または、より正確には、ヒドロキシアパタイト、ポリマー、高分子、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、薬理学的薬剤、細胞、ならびに他の結晶状態および/もしくは非晶状態の生体活性セラミックスを含む材料がある。これらの材料は、再吸収可能であっても再吸収不可能であってもよい。ヒドロキシアパタイトは、歯科インプラントに特に有利であることが判明している。
【0019】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、第1の材料と少なくとも1つの第2の材料の双方は、上述の生体活性材料のうちの1つまたは複数を含む材料からなる。
【0020】
本発明によるインプラントのさらに有利な実施形態によれば、前記少なくとも1つの表面部分の表面は、例えばパターン形成または浮き彫り加工/テクスチャリングすることによって、トポグラフ的に変更される。表面のトポグラフ的な変更は有利にも、例えば、機械加工、微細加工、吹き付け、低温吹き付け、エッチング、研磨、磨耗によって、または各種のレーザ技法によって達成することができる。
【0021】
本発明によるインプラントの別の有利な実施形態によれば、取り付け手段は少なくとも1つのねじ山を設けられるが、取り付けの他の手段も可能である。ねじ山に代わるのは、例えば、圧力によって骨組織に取り付けられる粗い表面などを、または長手方向の溝などを取り付け手段に設けることである。
【0022】
さらに、上述の目的は、請求項21の導入部で定義する類のあるインプラント部材を提供することによって達成され、そのインプラント部材において、前記外表面は少なくとも1つの表面領域を備え、その表面領域の表面は、パターン形成または浮き彫り加工/テクスチャリングすることによってトポグラフ的に変更されており、また請求項32の導入部で定義される類のある方法を提供することによって達成され、その方法は、レーザによって前記表面領域にパターン形成する特定の処置を含んでいる。
【0023】
本発明によるインプラント部材の有利な実施形態によれば、表面領域は、複数の凹部を設けることによってパターン形成され、また、その表面領域は、取り付け手段の領域内に配置される。
【0024】
本発明によるインプラント部材の別の有利な実施形態によれば、取り付け手段は、少なくとも1つのねじ山を設けられ、表面領域は前記少なくとも1つのねじ山の谷底/谷に配置され、前記凹部は、谷底の長手方向の延長部に沿って互いに連なって設けられる。
【0025】
本発明によるインプラント部材の他の有利な実施形態によれば、表面領域は、前記凹部を通して、取り付け手段の断面において波の形状を有し、また、その表面領域は、ねじ山の少なくとも1回転分または1ピッチ分延びる。
【0026】
本発明によるインプラント部材の有利な実施形態によれば、表面領域は、0.8μmと10μmの間、好ましくは1.2μmと5μmの間のSaを有する表面を有し、Saは次式によって計算される。
【数1】
【0027】
Saは、インプラントの技術分野において表面の粗さを指定するための認められたパラメータである。パラメータSaおよび上式の変数の完全な定義は、とりわけ、Wennerbergの論文、「On Surface Roughness and Implant Incorporation」、Dept.of Biomaterials/Handicap Research、Institute for Surgical Sciences and Dept. of Prosthetic Dentistry、Goteborg University、スウェーデン国、1996年、ISBN91−628−1940−2に開示されている。
【0028】
Richard Branemarkの論文、「A Biomechanical Study of Osseointegration In-vivo Mesurements in Rat,Rabbit,Dog and Man」、Goteborg、スウェーデン国、1996年、ISBN91−628−2267−5が開示することころでは、低いSaを有する機械加工された表面は弾性変形性が乏しく、代わりに塑性変形性が著しく、このことは、骨を境界面からさらに離れて係合させるには表面がミクロレベルであまりにも平滑であることを意味すると、生体力学的に解釈することができる。さらに、歯科インプラントに関する研究には、例えば、200μmから400μmの直径を有する孔を含むか、または100μm〜5000μmの直径を有する球と焼結する、表面の「大きな」または「粗い」構造には問題があることを示すものがある。
【0029】
本出願人の研究において、本発明によるインプラント部材の前記実施形態の表面領域のSaに対する指定した間隔は、生体組織とのインプラント部材の相互作用に関して非常に有利であることが判明しており、また、最適化された生体力学をもたらすことが判明している。上述の間隔に従ったSaを有する表面を有する表面領域が、取り付け手段の断面において表面領域に波の形状を与える前記凹部と組み合わされる場合、組織とインプラントの境界面における非晶区間を通過するように組織内に深く達することが可能となり、同時に、「粗い」表面構造の存在下で生じる問題は現れない。
【0030】
本発明によるインプラント部材の別の有利な実施形態によれば、インプラント部材の外表面は、チタンおよび/またはチタン合金からなる。
【0031】
本発明によるインプラント部材のさらなる別の有利な実施形態によれば、インプラント部材は、請求項1から16のいずれか1項に記載の、インプラントの特別な特徴を備えている。
【0032】
本発明によるインプラントの有利な実施形態によれば、インプラントは、請求項21から28のいずれか1項に記載の、インプラント部材の特別な特徴を備えている。
【0033】
請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラントの特別な特徴と、請求項21から28のいずれか1項に記載のインプラント部材の特別な特徴とを組み合わせることにより、生体組織とのインプラントまたはインプラント部材の生体適合性に関して非常に有利である外表面の形式で相乗効果がもたらされ、また、相互作用は、組織内に深く係合することによって力学的/生体力学的な安定性を生じるねじ山、フランジなどの存在下でより一層高められる。
【0034】
これから本発明について、例示を目的として、実施形態によってまた添付の図面を参照して、より詳細に述べることにする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、いくつかの区切られた範囲を蒸着物の形で有する、本発明によるインプラントの実施形態の側面図である。
【図2】図2は、本発明による方法の実施形態によって付着された第1の蒸着物のトポグラフィーの概略側面図である。
【図3】図3は、本発明による方法の実施形態によって付着された第2の付着物のトポグラフィーの概略側面図である。
【図4】図4は、本発明によるマスキングユニットの実施形態の側面図である。
【図5】図5は、図4のマスキングユニットを使用して、本発明による方法の実施形態によって帯の形状の蒸着物で被覆することが意図される区切られた範囲を指示したインプラントの実施形態の側面図である。
【図6】図6は、図5の指示した区切られた範囲を拡大したものである。
【図7】図7は、本発明による方法の実施形態を表す概略流れ図である。
【図8】図8は、本発明によるインプラントの有利な実施形態の概略側面図である。
【図9】図9は、本発明によるインプラントの第2の有利な実施形態の概略側面図である。
【図10】図10は、本発明によるインプラント部材の実施形態の一部分の概略図である。
【図11】図11は、図10の線AAに沿った断面を示す。
【図12】図12は、図10の実施形態と生体組織との間の相互作用を示す棒グラフである。
【図13】図13は、本発明によるインプラント部材の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、ヒトまたは動物の生きた生体組織へ永久的または一時的に取り付けるための手段1を備える歯科インプラントを示し、その組織は硬質であっても軟質であってもよい。取り付け手段1はこの場合、ねじ付きの固定部分を備えている。インプラントは、2つの異なる材料の外表面を有しており、その外表面において、第1の材料が表面の第1の部分を形成し、少なくとも1つの第2の材料が表面の第2の部分を形成している。第1の材料はチタンであるが、他の生体適合性材料も可能であり、第2の材料は、生体適合性を有し且つ生体活性を有するヒドロキシアパタイトを含む材料であるが、生体活性を有し且つ/または生体適合性を有する他の材料も可能である。チタンおよびヒドロキシアパタイトは、各材料と生体組織との生体適合性に関して異なる特性を有しており、その異なる特性は、前記生体組織に対する距離効果に関して異なっている。外表面は、表面部分2の70%から90%を覆うチタン製の研磨面3と、複数の区切られた範囲とからなる表面部分2を含んでおり、その複数の区切られた範囲は、ヒドロキシアパタイトを含む材料からなる複数の蒸着物4、5、6、7からなり、その複数の蒸着物4、5、6、7は、取り付け手段1のねじ山の谷底8に付着されており、このことは有利であることが判明している。蒸着物4、5、6、7は、0.1μmから3μmの厚さを有しかつ不均一な厚さを有し、蒸着物の境界領域に向かって薄くなっているが、その境界領域は、本発明による方法の実施形態によって付着された第1および第2の蒸着物をそれぞれ示す図2および3に示されている。この結果として、表面は10μm未満のSaを有する。蒸着物4、5、6、7は、実質的に円、楕円および/もしくは帯の形状または前記形状の中間的な形状である区切られた範囲を覆っている。蒸着物4、5、6、7は、所望の生物学的効果を達成するように、特定の領域にまたは特定のパターンで付着させることができる。歯科インプラントの基部の直径は約4.1mmであり、歯科インプラントの先端部の直径は約3.75mmである。ねじ切りは、2つのねじ山の頂の間に約0.6mmの距離が存在するように寸法が決められている。
【0037】
図4は、本発明によるマスキングユニットの実施形態を示し、このマスキングユニットは、本発明によるインプラントを製造する方法において使用することができる(図7参照)。ねじの形状のインプラント上に、蒸着物を付着させるとき、または他の方式で例えば吹き付けによって表面構造を設けるとき、中空の円筒状マスキングユニット9が使用され、その円筒状マスキングユニットの内周部はインプラントの外周部に適合されている。具体的には、マスキングユニット9が工程後に除去されるときに、付着された蒸着物がこすり取られないように、インプラントの外周部とマスキングユニット9の内周部との間には十分な距離が存在しなければならない。マスキングユニット9は複数の縦方向の開口部10を備えており、材料は本発明による方法においてその開口部10を通過し、インプラントに達することができる。マスキングユニット9はチタンからなるが、チタン合金または他の好適な材料からなっていてもよい。
【0038】
図5において、図4のマスキングユニットを切り取ったものであるマスキングユニット5.9が示され、したがって、インプラントがマスキングユニット5.9によって囲まれ、指示した区切られた範囲11を有するところが示されており、図4に示す開口部10は、インプラントがマスキングユニット5.9に挿入されるとき、この区切られた範囲11の上に配置される。
【0039】
図6は、前記指示した区切られた範囲6.11を拡大したものを示す。
【0040】
図7は、本発明による方法の実施形態を表す概略流れ図を示し、この方法において、本発明によるマスキングユニットが使用される。最初に、7.1において穴あきマスキングユニットがインプラント上に取り付けられる。7.2において、マスキングユニットを設けられたインプラントがスパッタリングチャンバ内に挿入され、そのスパッタリングチャンバにおいて、ヒドロキシアパタイトを含む材料を有するターゲットが与えられ、チャンバが好適な基本圧力で加圧される。7.3において、スパッタガス(スパッタリングガス)、この場合はアルゴンが、反応ガスの混合気と共に、好適な使用圧力に達するまでチャンバ内に案内される。7.4において、高周波発生器が、約100ワットでかつ約13.56MHzの周波数で動作され、したがって高周波数の高電圧が、ターゲットとマスキングユニットを設けられたインプラントとの間に印加され、それによって、不活性ガスがイオン化され、そのイオンが粒子をターゲットから叩き出す。7.5において、これらの粒子が、コーティングを目的とした範囲を画定するマスキングユニットの開口部をある角度で通過し、開口部の形状に対応するインプラントの前記範囲に付着する。このスパッタリング工程は1時間にわたって継続され、それによって約0.1μmの蒸着物が与えられる。その後に、ヒドロキシアパタイトを含む材料または他の任意の好適な材料の所望の蒸着物を達成する目的で、インプラントを第2の角度でスパッタリングにさらすように、マスキングユニットを設けられたインプラントが7.6において回転され、その結果、7.5において、前記ターゲットからの新たな粒子がマスキングユニットの開口部を通過し、インプラントの前記範囲に蒸着される。スパッタリングが実施される所望数のさらなる角度の後、7.7において、インプラントの被覆が終了する。
【0041】
さらに、類似のマスキングユニットをある方法において使用することができるが、その方法では、チタン製のインプラントがまずヒドロキシアパタイトを含む材料で被覆され、その後に、穴あけされたマスキングユニットに挿入され、そこで、ヒドロキシアパタイトを含む材料がマスキングユニットの開口部の範囲から除去される。
【0042】
マスキングユニットの開口部パターンは、インプラントの表面部分に蒸着される蒸着物のパターンに適合されている。当然ながら、本発明によるインプラント上に前記表面部分を製作する方法は、エッチングなど、他にもいくつか考えられる。
【0043】
図8は、ねじ付きの固定部分の形式とした手段12を備える第2の歯科インプラントを示し、この手段12は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に永久的または一時的に取り付けるためのものである。組織は硬質であっても軟質であってもよい。さらに、インプラントは基部13と先端部14とを有しており、先端部14は任意選択で設計される。インプラントは、2つの異なる材料を含む外表面を有している。外表面は、表面部分15の50%から80%を覆うチタン製の研磨面16と、複数の区切られた範囲とからなる表面部分15を備えており、その複数の区切られた範囲は、ヒドロキシアパタイトを含む材料からなる蒸着物17からなり、その蒸着物17は、取り付け手段12のねじ山の谷底18に付着されている。蒸着物17は、ねじ山の谷底18に連続的に巻き付く螺旋形状を有しており、0.1μmから3μmの厚さを有している。しかしながら、インプラントは、基部13に隣接する基底部分19を有しており、その基底部分19において、ねじ山の2回転分は前記蒸着物17を有していない。
【0044】
図9は、実質的に図8の歯科インプラントと同じ方式で設計された第3の歯科インプラントを示しているが、この第3のインプラントは、表面部分20の55%から85%を覆うチタン製の研磨面21と、複数の区切られた範囲とからなる表面部分20を有する外表面を備えており、その複数の区切られた範囲は、ヒドロキシアパタイトを含む材料からなる複数の蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31を備える不連続な螺旋形状からなり、その複数の蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31は、取り付け手段9.12のねじ山の谷底9.18に付着されている。蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31は、研磨面21からなる間隔だけ互いに離され、ねじ山の谷底9.18に沿って延びており、その結果、蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31の間隔は歯科インプラントの中心軸の周りに不規則に配置されている。蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31はまた、好都合にも、蒸着物22、23、24、25、26、27、28、29、30、31の間隔が歯科インプラントの中心軸の周りに規則的に配置され、その結果、その間隔がインプラントの長手方向の延長部に沿って互いに位置合わせされるような方式で、ねじ山の谷底9.18に沿って延びるように分布させることができる。
【0045】
図10は、歯科インプラントの形式の本発明によるインプラント部材の実施形態の一部分を示す。より正確には、図10は、ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための取り付け手段40の一部分を示す。取り付け手段40は、少なくとも1つのねじ山を設けられている。歯科インプラントの外表面は、チタンおよび/またはチタン合金からなり、前記外表面は少なくとも1つの表面領域41を備え、その表面領域41の表面は、例えばレーザを用いてパターン形成することによって、トポグラフ的に(輪郭について)変更される。前記少なくとも1つの表面領域41は、ねじ山の頂43の間の前記少なくとも1つのねじ山の谷底42に配置されている。取り付け手段40の大径、すなわちねじ山の頂43と正反対のねじ山の頂との間の距離は3.75mmであり、取り付け手段40の小径は3.11mmである。表面領域は、複数の凹部を設けることによってパターンが形成され、その複数の凹部は谷底42の長手方向の延長部に沿って互いに連なって設けられている。谷底42において、凹部は互いに対して横方向に変位させて、わずかな「ジグザグ」構造が設けられるようにすることができる。表面領域は、少なくとも1回転分ねじ山に沿って延びている。
【0046】
図11は、図10の断面AAを示すが、この断面AAは一定の尺度に従って示されたものではない。表面領域は、取り付け手段の断面において波の形状を有しており、その波の形状は実質的に正弦波状である。波の各頂44、55は、波の谷46の上に距離50だけ上昇し、その距離50は、200μm以下であり、有利には150μm以下であり、また有利には、距離50は5μmと40μmの間であり、これは図11の事例である。波の2つの隣接する頂45、55の間の距離51は、有利には50μmと200μmの間であり、より有利には70μmと150μmの間であり、より正確には90μmと120μmの間である。しかしながら、この実施形態において、距離51は100μmと110μmの間である。表面領域は、Saが1.2μmと5μmの間である表面を有し、ここでSaは次式によって計算される。
【数2】
【0047】
上述のように、Saは、インプラントの技術分野において表面の粗さを指定するための認められたパラメータである。Saの完全な定義は、とりわけ、発明の開示で述べたAnn Wennerbergによる論文において開示されている。表面領域のこの上述の表面によって、完全に石化した骨組織に骨の再構築後に達することが可能となり、また、それと共に所望の生体力学的効果が達成される。表面領域の前記表面は、インプラントを挿入するときの損傷をほとんどなくすのに十分に小さな表面の変更を有しているが、同時に、生体力学的効果がもたらされるような粗い表面の変更をも有している。対照的に、大きな/粗い表面構造は、完全な確実性はなくても力学的効果を向上させるが、挿入時に結果として組織の損傷を増し、また、さらには、同じ効果を得るために骨が成長しなければならない距離がより長くなり、その結果、粗い表面が組織にまで回復する期間がより長くなるはずである。
【0048】
図12は、本出願人が実施した動物に対する実験的研究の結果を概略的に示す。棒「1」は、本発明によるインプラントに対する取り外しトルクを示し、棒「2」は、通常の方式で機械加工のみされたインプラントに対する取り外しトルクを示す。さらに、この研究が示すところでは、棒グラフによれば取り外しトルクがより高くなることに加えて、異なる破壊力学が達成され、その結果として別の破壊を生じている。このことは、通常の方式で機械加工されたインプラントの境界面においては塑性変形が優勢であるというこれまでの見解とは対照的に、所望の弾性変形が本発明によるインプラントの取り外しトルクの後に生じたという仮説を支持している。
【0049】
図13は、図10に示す種の概略的な歯科インプラントを示し、前記少なくとも1つの表面領域の位置に関する4つの異なる代替物を表している。第1の代替物Alt.1によれば、取り付け手段40全体に沿って1つまたは複数の表面領域が設けられる。第2の代替物Alt.2によれば、歯科インプラントの基部47に最も近いねじ山の第1の回転または第1および第2の回転を除き、ねじ山の全回転に沿って、1つまたは複数の表面領域が設けられる。第3の代替物Alt.3によれば、互いに隣接するねじ山の2回転、好ましくは歯科インプラントの基部47に対するねじ山の第3および第4の回転に沿って、1つまたは複数の表面領域が設けられる。第4の代替物Alt.4によれば、ねじ山のわずか1回転、好ましくは歯科インプラントの基部47に対するねじ山の第3の回転に沿って、1つまたは複数の表面領域が設けられる。
【0050】
前記1つまたは複数の表面領域の位置は有利にも、図8および図9の各表面部分内の1つまたは複数の蒸着物にそれぞれ対応することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラントであって、
前記生体組織との各部分の生体適合性に関して特性が異なる第1の部分と第2の部分とを備える外表面を有し、
前記外表面は、
前記第1の部分を構成する研磨面と、
前記第2の部分を構成する前記インプラントの周方向に区切られた複数の領域と
を備える少なくとも1つの表面部分を含むインプラント。
【請求項2】
前記異なる特性は、前記生体組織に対する距離効果と、各部の前記生体組織との相互作用の経時的様相とのいずれか一方又はその双方が異なる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記複数の区切られた領域は、5を超える多数の区切られた範囲を含む、請求項1または2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記複数の区切られた領域は、実質的に円、楕円および/もしくは帯の形状または前記形状の中間的な形状をなす区切られた範囲を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記複数の区切られた領域は、前記研磨面に付着された蒸着物を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項6】
前記蒸着物が不均一な厚さを有し、前記蒸着物の境界領域に向かって薄くなっている、請求項5に記載のインプラント。
【請求項7】
前記インプラントの前記外表面が少なくとも2つの異なる材料を含み、
前記研磨面が第1の材料を含み、前記複数の区切られた領域が少なくとも1つの第2の材料を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第1の材料がチタン、酸化チタン、および/またはチタン合金である、請求項7に記載のインプラント。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2の材料がチタン、酸化チタン、および/またはチタン合金である、請求項7に記載のインプラント。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2の材料が、カルシウムを含む塩類を含む材料、好ましくはリン酸カルシウムを含む材料、より好ましくはヒドロキシアパタイトを含む材料を含む、請求項7または8に記載のインプラント。
【請求項11】
前記第1の材料が、請求項10で定義される材料を含む、請求項7または9に記載のインプラント。
【請求項12】
前記第1の材料と前記少なくとも1つの第2の材料との双方が、請求項10で定義される材料を含む、請求項7に記載のインプラント。
【請求項13】
前記少なくとも1つの表面部分が、パターン形成またはテクスチャリングすることによってトポグラフ的に変更される、請求項1から12のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項14】
前記取り付け手段が少なくとも1つのねじ山を設けられている、請求項1から13のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項15】
前記少なくとも1つの表面部分が、前記取り付け手段の少なくとも一部分を構成し、
前記手段が少なくとも1つのねじ山を設けられ、前記ねじ山の谷底に前記少なくとも1つの第2の材料が集中する、請求項7、8または10のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項16】
前記少なくとも1つの表面部分が、前記取り付け手段の少なくとも一部分を構成し、
前記手段が少なくとも1つのねじ山を設けられ、前記ねじ山の谷底に前記第1の材料が集中する、請求項7、9または11のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラントを製造する方法であって、
まず、穴あけされたマスキングユニットを前記インプラントに配置し、
前記マスキングユニットの外側から前記複数の区切られた領域を蒸着物の形で付着させ、
前記マスキングユニットの開口部が前記表面の前記第2の部分を画定する方法。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラントを製造する方法であって、
まず、前記インプラントを被覆剤で被覆し、
その後に、穴あけされたマスキングユニットを前記インプラントに配置し、
前記マスキングユニットの前記開口部の範囲から前記被覆を除去し、
それによって前記1つまたは複数の区切られた領域が設けられる方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の方法において使用するように構成されたマスキングユニット。
【請求項20】
前記マスキングユニットは、チタンまたはチタン合金を含む、請求項19に記載のマスキングユニット。
【請求項21】
ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラント部材であって、
前記インプラント部材は、少なくとも1つの表面領域を備える外表面を有し、
前記表面領域の表面がトポグラフ的に変更され、前記トポグラフ的に変更された前記表面領域は、前記インプラント部材の周方向に区切られた複数の領域を含むインプラント部材。
【請求項22】
前記表面領域が前記取り付けるための手段の領域に配置される、請求項21に記載のインプラント部材。
【請求項23】
前記取り付けるための手段が少なくとも1つのねじ山を設けられ、
前記表面領域が前記少なくとも1つのねじ山の谷底に配置される、請求項22に記載のインプラント部材。
【請求項24】
前記表面領域が前記ねじ山の少なくとも1回転分延びる、請求項23に記載のインプラント部材。
【請求項25】
前記表面領域が、複数の凹部を設けることによってパターン形成される、請求項21から24のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項26】
前記凹部が、前記少なくとも1つのねじ山の谷底の長手方向の延長部に沿って、互いに連なって設けられる、請求項23および25に記載のインプラント部材。
【請求項27】
前記表面領域が、前記凹部を通して、前記取り付けるための手段の断面において波の形状を有する、請求項26に記載のインプラント部材。
【請求項28】
前記表面領域が、Saが0.8μmと10μmの間、好ましくは1.2μmと5μmの間である表面を有し、Saが次式によって計算される、請求項21から27のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【数1】
【請求項29】
前記インプラント部材の前記外表面は、チタン及び/またはチタン合金を含む、請求項21から28のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項30】
前記インプラント部材が、請求項1から16のいずれか1項で述べられた前記インプラントの特別な特徴を備える、請求項21から28のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項31】
前記インプラントが、請求項21から28のいずれか1項で述べられた前記インプラント部材の特別な特徴を備える、請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項32】
請求項21から30のいずれか1項に記載のインプラント部材を製造する方法であって、
レーザによって前記表面領域にパターン形成する方法。
【請求項1】
ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラントであって、
前記生体組織との各部分の生体適合性に関して特性が異なる第1の部分と第2の部分とを備える外表面を有し、
前記外表面は、
前記第1の部分を構成する研磨面と、
前記第2の部分を構成する前記インプラントの周方向に区切られた複数の領域と
を備える少なくとも1つの表面部分を含むインプラント。
【請求項2】
前記異なる特性は、前記生体組織に対する距離効果と、各部の前記生体組織との相互作用の経時的様相とのいずれか一方又はその双方が異なる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記複数の区切られた領域は、5を超える多数の区切られた範囲を含む、請求項1または2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記複数の区切られた領域は、実質的に円、楕円および/もしくは帯の形状または前記形状の中間的な形状をなす区切られた範囲を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記複数の区切られた領域は、前記研磨面に付着された蒸着物を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項6】
前記蒸着物が不均一な厚さを有し、前記蒸着物の境界領域に向かって薄くなっている、請求項5に記載のインプラント。
【請求項7】
前記インプラントの前記外表面が少なくとも2つの異なる材料を含み、
前記研磨面が第1の材料を含み、前記複数の区切られた領域が少なくとも1つの第2の材料を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第1の材料がチタン、酸化チタン、および/またはチタン合金である、請求項7に記載のインプラント。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2の材料がチタン、酸化チタン、および/またはチタン合金である、請求項7に記載のインプラント。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2の材料が、カルシウムを含む塩類を含む材料、好ましくはリン酸カルシウムを含む材料、より好ましくはヒドロキシアパタイトを含む材料を含む、請求項7または8に記載のインプラント。
【請求項11】
前記第1の材料が、請求項10で定義される材料を含む、請求項7または9に記載のインプラント。
【請求項12】
前記第1の材料と前記少なくとも1つの第2の材料との双方が、請求項10で定義される材料を含む、請求項7に記載のインプラント。
【請求項13】
前記少なくとも1つの表面部分が、パターン形成またはテクスチャリングすることによってトポグラフ的に変更される、請求項1から12のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項14】
前記取り付け手段が少なくとも1つのねじ山を設けられている、請求項1から13のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項15】
前記少なくとも1つの表面部分が、前記取り付け手段の少なくとも一部分を構成し、
前記手段が少なくとも1つのねじ山を設けられ、前記ねじ山の谷底に前記少なくとも1つの第2の材料が集中する、請求項7、8または10のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項16】
前記少なくとも1つの表面部分が、前記取り付け手段の少なくとも一部分を構成し、
前記手段が少なくとも1つのねじ山を設けられ、前記ねじ山の谷底に前記第1の材料が集中する、請求項7、9または11のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラントを製造する方法であって、
まず、穴あけされたマスキングユニットを前記インプラントに配置し、
前記マスキングユニットの外側から前記複数の区切られた領域を蒸着物の形で付着させ、
前記マスキングユニットの開口部が前記表面の前記第2の部分を画定する方法。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラントを製造する方法であって、
まず、前記インプラントを被覆剤で被覆し、
その後に、穴あけされたマスキングユニットを前記インプラントに配置し、
前記マスキングユニットの前記開口部の範囲から前記被覆を除去し、
それによって前記1つまたは複数の区切られた領域が設けられる方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の方法において使用するように構成されたマスキングユニット。
【請求項20】
前記マスキングユニットは、チタンまたはチタン合金を含む、請求項19に記載のマスキングユニット。
【請求項21】
ヒトまたは動物の生きた生体組織に取り付けるための手段を備えるインプラント部材であって、
前記インプラント部材は、少なくとも1つの表面領域を備える外表面を有し、
前記表面領域の表面がトポグラフ的に変更され、前記トポグラフ的に変更された前記表面領域は、前記インプラント部材の周方向に区切られた複数の領域を含むインプラント部材。
【請求項22】
前記表面領域が前記取り付けるための手段の領域に配置される、請求項21に記載のインプラント部材。
【請求項23】
前記取り付けるための手段が少なくとも1つのねじ山を設けられ、
前記表面領域が前記少なくとも1つのねじ山の谷底に配置される、請求項22に記載のインプラント部材。
【請求項24】
前記表面領域が前記ねじ山の少なくとも1回転分延びる、請求項23に記載のインプラント部材。
【請求項25】
前記表面領域が、複数の凹部を設けることによってパターン形成される、請求項21から24のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項26】
前記凹部が、前記少なくとも1つのねじ山の谷底の長手方向の延長部に沿って、互いに連なって設けられる、請求項23および25に記載のインプラント部材。
【請求項27】
前記表面領域が、前記凹部を通して、前記取り付けるための手段の断面において波の形状を有する、請求項26に記載のインプラント部材。
【請求項28】
前記表面領域が、Saが0.8μmと10μmの間、好ましくは1.2μmと5μmの間である表面を有し、Saが次式によって計算される、請求項21から27のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【数1】
【請求項29】
前記インプラント部材の前記外表面は、チタン及び/またはチタン合金を含む、請求項21から28のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項30】
前記インプラント部材が、請求項1から16のいずれか1項で述べられた前記インプラントの特別な特徴を備える、請求項21から28のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項31】
前記インプラントが、請求項21から28のいずれか1項で述べられた前記インプラント部材の特別な特徴を備える、請求項1から16のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項32】
請求項21から30のいずれか1項に記載のインプラント部材を製造する方法であって、
レーザによって前記表面領域にパターン形成する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−176243(P2012−176243A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−94428(P2012−94428)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【分割の表示】特願2007−545425(P2007−545425)の分割
【原出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(507195081)リカード ブレーンマーク コンサルティング アーベー (2)
【出願人】(507195092)バイオマテリアル ディベロップメント イェーテボリ アーベー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94428(P2012−94428)
【出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【分割の表示】特願2007−545425(P2007−545425)の分割
【原出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(507195081)リカード ブレーンマーク コンサルティング アーベー (2)
【出願人】(507195092)バイオマテリアル ディベロップメント イェーテボリ アーベー (2)
【Fターム(参考)】
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