説明

インプリントリソグラフィ用の材料

本発明は、関連する粘度を有し、かつ界面活性剤と、重合可能な成分と、応答して粘度を変化させるために刺激に応答する開始剤を含む組成物であって、液体状態で、約100センチポアズ未満の粘度と、約20トール未満の蒸気圧を、かつ固体硬化状態で、約100MPaを超える引っ張り係数と、約3MPaを超える破壊応力と、約2%を超える破断点伸びを有する組成物を特徴とする、インプリントリソグラフィ用の材料を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1つ以上の実施態様は、一般的にインプリントリソグラフィに関する。特に、本発明の1つ以上の実施態様は、インプリントリソグラフィ用の材料に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工は非常に小さな構造、例えば、但し限定されないが約数マイクロメートル以下のフィーチャを有する構造の製造を含む。微細加工が相当に大きな影響を有した1つの領域は集積回路の加工である。半導体加工産業が、基板上に形成される単位面積当たりの回路を増大させながら、より高い生産収率のために努力し続けており、形成される構造の最小フィーチャ寸法の縮小を可能にしながら、より高いプロセス制御を微細加工が提供するので、微細加工は一層重要になっている。微細加工が用いられる他の開発領域には、バイオテクノロジー、光学技術、機械系等が含まれる。
【0003】
代表的な微細加工技術は、Willsonらの特許文献1に開示されている。特に、Willsonらの特許は、構造内にレリーフパターンを形成するためのインプリントリソグラフィ方法を開示している。この方法は、(通常、スピン塗布された)転写層を有し、かつ次に(通常、小滴の形状の)低粘度の重合可能な(通常、紫外線硬化性の)流体組成物によって、転写層を被覆する基板を提供することを含む。この方法は、重合可能な流体組成物と、レリーフ構造を有するインプリントテンプレート又はモールドを機械的に接触させることを更に含み、重合可能な流体組成物が、インプリントテンプレートと、基板の間のギャップを充填し、かつインプリントテンプレートのレリーフ構造を充填する。次に、この方法は、重合可能な流体組成物を凝固させ、かつ重合させる条件に晒し(通常、重合可能な流体組成物を紫外線に曝露し、それを架橋させ)、それによりインプリントテンプレートのレリーフ構造と相補的なレリーフ構造を含む転写層上に凝固した高分子材料を形成することを含む。次に、この方法は、基板からインプリントテンプレートを分離し、基板上に固体高分子材料を残す。その固体高分子材料は相補的レリーフ構造の形状のレリーフパターンを含む。次に、凝固した高分子材料及び転写層は、凝固した高分子材料に対して転写層を選択的にエッチングする環境に晒され、レリーフ像を転写層内に形成する。
【0004】
凝固した高分子材料の様々な表面への選択的接着に関する次の問題は、凝固した高分子材料内の微細フィーチャのレリーフパターン形成に有用な方法及び/又は材料を開発する時に、通常、考察される。第1に、凝固した高分子材料は、基板上の転写層に良好に接着すべきであり、かつ第2に、インプリントテンプレート表面から容易に剥離されるべきである。これらの問題は、通常、剥離性と呼ばれ、かつそれらが満たされるなら、凝固した高分子材料に記録されたレリーフパターンは、インプリントテンプレートを基板からの分離させるときに歪められない。
【0005】
上記剥離性に加え、インプリントリソグラフィ用のインプリント材料を設計する時に、更に考慮すべき事項には、次のものが含まれる(a)基板やインプリントテンプレート表面の両方に速く広がり、かつインプリント材料をレリーフパターンに速く充填するために、例えば、但し限定されないが、25℃で5センチポアズ以下の粘度の低粘度。インプリント材料をインプリントテンプレート上のレリーフパターンに移動させるために、最小圧力、例えば、但し限定されないが、約2−4psiの圧力が必要であり、かつ追加の加熱が必要ないように、粘度が、十分に低ければ、更に良い;(b)ほとんど蒸発がないように、低い蒸気圧(蒸発は問題である。インプリント材料の小滴は約80ピコリットルであり、かつこのことで、表面積と体積の間の大きな比率を有する小滴となるからである)及び(c)硬化インプリント材料の凝集強さ。
【0006】
上記事項に照らして、1つ以上の上記特定設計基準を満たすインプリントリソグラフィ用のインプリント材料の必要性がある。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6334960号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、関連する粘度を有し、かつ界面活性剤と、重合可能な成分と、応答して粘度を変化させるために刺激に応答する開始剤とを含む組成物であって、その組成物が、液体状態で、約100センチポアズ未満の粘度と約20トル未満の蒸気圧とを有し、かつ固体硬化状態で、約100MPaを超える引っ張り係数と、約3MPaを超える破壊応力と、約2%を超える破断点伸びとを有することを特徴とする、インプリントリソグラフィ用の材料を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の1つ以上の実施形態によってインプリントリソグラフィを実行するために使用され、かつ本発明の1つ以上の実施形態によって製造されるインプリント材料を利用できるリソグラフィシステム10を示す。図1に示すように、システム10は、一対の離間したブリッジ支持体12を含み、ブリッジ支持体12は、その間に伸長するブリッジ14とステージ支持体16を有する。図1に更に示すように、ブリッジ14とステージ支持体16は離間している。インプリントヘッド18はブリッジ14に結合され、かつブリッジ14からステージ支持体16に向かって延びている。移動ステージ20は、インプリントヘッド18と対向するために、ステージ支持体16上に配置され、かつ移動ステージ20は、X、Y軸に沿ってステージ支持体16に対して移動するように構成される。放射線源22が、化学線を移動ステージ20に向けるようにシステム10に結合されている。図1に更に示すように、放射線源22は、ブリッジ14に結合され、かつ放射線源22に接続される発電機23を含む。代表的なシステムは、1807−C Braker Lane,Suite 100,Austin,Texas 78758に事業所を有するMolecular Imprints,Inc.から商品名IMPRIO 100(商標)で入手可能である。IMPRIO 100(商標)のシステム説明書は、www.molecularimprints.comで入手可能であり、かつ本明細書に参考として組み込む。
【0010】
図1、2を参照すると、インプリントヘッド18に、モールド28を有するインプリントテンプレート26が接続される。モールド28は、複数の離間した凹部28aと凸部28bによって形成される複数のフィーチャを含む。複数のフィーチャは、移動ステージ20上に位置決めされる基板31に転写される元のパターンである。基板31は、むき出しのウェハ、又は上に配置される1つ以上の層を有するウェハを含むことができる。そのために、インプリントヘッド18は、Z軸に沿って移動し、モールド28と基板31の間の距離「d」を変化させるように構成されている。このようにして、以下でより十分に論じるように、モールド28のフィーチャが基板31の成形可能領域にインプリントされる。放射線源22は、その放射線源22と基板31の間にモールド28が位置決めされるように位置する。結果として、モールド28は、放射線源22によって生成された放射線を実質的に通すことができる材料から製造される。
【0011】
図2、3を参照すると、インプリント層34のような成形可能領域が、実質的に平坦な輪郭を示す表面32の一部上に設けられる。成形可能領域は、表面32上で成形可能材料を生成するいかなる公知の技術も使用して形成できることが理解されるべきである。本発明の1つの実施形態によれば、成形可能領域は、以下でより十分に論じるように、基板31上に材料36aの複数の離間した離散小滴36として堆積されるインプリント層34からなる。インプリント層34は、同時に重合され、かつ架橋され、内部の元のパターンを記録し、かつ記録されたパターンを特定する低分子量材料36aから形成される。重合され、かつ架橋されて架橋高分子材料36cを形成した材料36aが図4に示されている。架橋は点36bに示す。
【0012】
図2、3、5を参照すると、インプリント層34に記録されるパターンは、一部はモールド28との機械的接触によって生成される。このために、インプリントヘッド18は、インプリント層34が距離「d」を減少させ、モールド28に機械的に接触し、表面32の上に材料36aが連続的に形成されたインプリント層34を形成するように小滴36を広げる。1つの実施形態において、距離「d」は、インプリント層34の一部分34aが、凹部28aに進入し、かつ充填できるように減少させられる。
【0013】
凹部28aの充填を容易にするために、材料36aを連続的に形成して、表面32を被覆しながら、凹部28aを完全に充填するという必須の特性が材料36aに備えられる。本発明の1つの実施形態によれば、凸部28bと重ね合わせたインプリント層34の一部分34bは、所望の、通常は最小距離「d」に達した後に残り、厚さt1を有する一部分34aと、厚さt2を有する一部分34bが残る。厚さ「t1」と「t2」は、用途に応じて所望のいかなる厚さであっても良い。
【0014】
図2、3、4を参照すると、所望の距離「d」に達した後、重要な部分が架橋した高分子材料36cを形成するように、材料36aを重合し、架橋する化学線を放射線源22が生成する。結果として、材料36aは、図5に示す、固体であり、インプリント層134が形成された材料36cに変形する。具体的には、材料36cは、凝固し、凹部30を有するインプリント層134によって、インプリント層134の面側34cに、モールド28の表面28cの形状に一致する形状を与える(凹部の底部は、残留層と呼ばれる)。インプリント層134が、図4に示す材料36cからなるように変形された後、図2に示すインプリントヘッド18は、移動し、モールド28と、インプリント層134が離間するように、距離「d」を増加させる。
【0015】
図5を参照すると、基板31のパターニングを完成させるために、追加の加工を用いることができる。例えば、基板31と、インプリント層134は、インプリント層134のパターンを基板31に転写し、パターン化表面(図示せず)を形成させるために、エッチングされても良い。エッチングを容易にするために、インプリント層134を形成する材料を変えて、基板31に対する相対エッチング率を、所望のように定めることができる。
【0016】
そのために、エッチングは、2段階プロセスで実行されてもよい。S.C.Johnson、T.C.Bailey、M.D.Dickey、B.J.Smith、E.K.Kim、A.T.Jamieson、N.A.Stacey、J.G.Ekerdt及びC.G.Willsonは、www.molecularimprints.comでインターネットで入手可能であり、かつ本明細書に参考として組み込まれる「Advances in Step and Flash Imprint Lithography」、SPIE Microlithography Conference、February 2003と題した論文において、適切なエッチングプロセスを記載している。この論文に示されるように、「ブレイクスルーエッチング」と呼ばれる第1エッチングステップは、下層転写層までブレークスルーする(除去する)ために残留架橋材料134を異方性除去する(この点において、残留層を小さく保つことによってより良いエッチング選択性が可能となる)。「転写エッチング」と呼ばれる第2エッチングステップは、パターンを下層転写層に転写するためのエッチングマスクとして、架橋材料134内の残存パターンを使用する。1つの実施形態において、架橋材料134内のシリコンがあり、転写層内にシリコンが不足していることは、その間のエッチング選択性を提供する。そのような一実施形態におけるエッチングは、Fremont,CaliforniaのLam Research,Inc.から得られるLAM Research 9400SEでなされる。例えば、但し限定されないが、フッ素が豊富な、すなわち、前駆体の少なくとも1つが、フッ素含有材料である(例えば、但し限定されないが、CHF3とO2の組み合わせ、これは架橋材料134の有機ケイ素性質がハロゲンガスの使用を必要とする)異方性ハロゲン反応性イオンエッチング(「RIE」)を含む、ハロゲン「ブレイクスルーエッチング」を利用できる。他の適切なハロゲン化合物には、例えば、但し限定されないが、CF4が含まれる。このエッチングは、現代の集積回路加工で実行される標準SiO2エッチングと類似する。次に、異方性酸素反応性イオンエッチングが下層基板31にフィーチャを転写するために使用される。残存シリコンを含むフィーチャが、パターンを下層基板31に転写するためのエッチングマスクとして役立つ。「転写エッチング」は、例えば、但し限定されないが、標準的な、異方性酸素RIE加工ツールによって達成できる。しかしながら、一般的に所望のエッチング率と、基板31及びインプリント層134を形成する下層成分に応じて、いかなる適切なエッチングプロセスも用いることができる。代表的なエッチングプロセスには、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、化学的ウェットエッチング等が含まれる。
【0017】
図1、2の両方を参照すると、代表的放射線源22は紫外線を生成するが、いかなる公知の放射線源も用いることができる。インプリント層34内で材料の重合を開始するために用いられる放射線の選択は、当業者に公知であり、かつ通常、所望の特定の用途によって決まる。その上、モールド28上の複数のフィーチャは、モールド28の断片に狭間つき胸壁の形状を与える、凸部28bと平行な方向に沿って伸長する凹部28aとして示される。しかしながら、凹部28aと、凸部28bは、集積回路を作るために必要とされる事実上いかなるフィーチャにも対応でき、かつ10分の数ナノメートル程度に小さくできる。
【0018】
図1、2、5を参照すると、本パターニング技術によって生成されるパターンは、30:1程度の大きさのアスペクト比を有するフィーチャを得るために、基板31に転写できる。そのために、モールド28の1つの実施形態は、1:1から10:1の範囲にアスペクト比とされた凹部28aを有する。具体的には、凸部28bは、約10nmから約5000μmの範囲の幅W1を有し、かつ凹部28aは、約10nmから約5000μmの範囲の幅W2を有する。結果として、モールド28及び/又はテンプレート26は、種々の従来の材料、例えば、但し限定されないが、溶融シリカ、石英、シリコン、有機重合体、シロキサン重合体、ホウケイ酸ガラス、フッ化炭素重合体、金属、硬化サファイア等から形成できる。
【0019】
図1、2、3を参照すると、材料36aの特性は、用いられる堆積プロセスに照らして、基板31を効果的にパターン化するために重要である。上記のように、材料36aは、複数の離散し、かつ離間した小滴36として基板31上に堆積される。小滴36の組み合わされた量は、材料36aが、インプリント層34が形成される表面32の面積にわたって適切に分布するようになっている。結果として、インプリント層34は、同時に広げられ、かつパターン化され、パターンは、紫外線のような放射線への曝露によって、インプリント層34内にその後に設けられる。堆積プロセスの結果として、全ての厚さt1が、実質的に均質であり、かつ全ての厚さt2が、実質的に均質であるように、表面32にわたって小滴36内の材料36aの迅速かつ均等な広がりを容易にするために、材料36aが、ある種の特性を有することが望ましい。望ましい特性には、例えば、但し限定されないが、約0.5から約5センチポアズ(cps)の範囲の低粘度、及び基板31の表面とモールド28を湿らせ、かつ重合後に後続のピット又は穴の形成を回避する能力を有することが含まれる。これらの特性が満たされると、インプリント層34は、十分に薄く作られ、他方で図5に示す一部分34bのような薄い領域でピット又は穴の形成が回避される。しかしながら、材料36aの特性は、プロセスに依存し、かつ所望のように変化させられる。例えば、粘度は、100cps以上であっても良い。
【0020】
前記特性を提供するために材料36aを形成する構成成分は異なっても良い。このことは、多数の異なる材料から形成される基板31に起因する。結果として、表面32の化学組成は、基板31が形成される材料に応じて変化する。例えば、基板31は、シリカ、リン化インジウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、シリコン、プラスチック、砒化ガリウム、テルル化水銀等から形成される。その上、基板31は、一部分34b内に1つ以上の層、例えば誘電体層、金属層、半導体層、平坦化層等を含むことがある。
【0021】
しかしながら、図2、3、4を参照すると、モールド28が、材料36aと材料36cの両方と接触する時、材料36aは所望の剥離性を満たす成分を含むことが望ましい。具体的には、モールド28のフィーチャの効果的な充填を確実に行うために、モールド28と材料36aの界面が、インプリント材料36aによってモールド28を湿らせることを容易とするように構築されることが望ましい。しかしながら、一旦材料36aが材料36cに凝固すると、材料36aが基板31の表面32に優先的に接着し、モールド28から容易に剥離されるはずである。このようにして、凝固した材料36c内に記録されるパターンの歪みは、最小限に抑えられる。材料36cの基板31への優先的な接着は、剥離性と呼ばれる。インプリント材料36cの剥離性は、TaniguchiらによってMeasurement of Adhesive Force Between Mold and Photocurable Resin in Imprint Technology、Japanese Journal of Applied Physics,part 1,vol.40、4194頁から始まる(2002)に記載された接着テストを用いて測定される。これらの剥離性の望ましい値が:(a)例えば、但し限定されないが、モールド28への接着力が約0.15kg以下で、(b)例えば、但し限定されないが、基板31への接着力が約1.14kg以上であることが発見された。接着力の比、すなわち基板31の接着力/モールド28の接着力[以下で、接着比と呼ぶ]が、5以上であることが望ましい。
【0022】
上記剥離性に加え、インプリントリソグラフィ用にインプリント材料を設計する時は、更に考慮すべき事項には、次のものが含まれる。(a)基板上に望ましい湿りと広がりを与え、かつインプリントテンプレート上にフィーチャを速く充填させるための低粘度、例えば、但し限定されないが、5センチポアズ以下の粘度(最小の追加加熱又は追加加熱なしによる最小圧力(例えば、但し限定されないが、約2−4psiの圧力)が、インプリント材料をインプリントテンプレートのフィーチャに移動させるように、粘度が、十分に低いほうが良い)。(b)ほとんど蒸発がないように、低い蒸気圧(インプリント材料の小滴が、約80ピコリットルであり、かつこのことが、表面積と体積の間の大きな比率を有する小滴をもたらすので、蒸発は問題である)。(c)化学線、例えば紫外線、熱放射線等への曝露後に重合を開始する適切な開始剤の使用。(d)組成物の液体状態において、低粘度特性を満たし、かつ組成物の固体硬化状態で適切な機械的強度を提供する単量体成分、(e)エッチング選択性を提供するために望ましいシリコンを提供するためのシリル化単量体。
【0023】
上記に加えて、我々は、適切なインプリント材料を設計する時に考慮されることが望ましい、重合されたインプリント材料の巨視的な機械的性質を発見した。それらには、(a)例えば、但し限定されないが、約100−400MPa以上の引っ張り係数、通常、高い方が良い、(b)例えば、但し限定されないが、約3−12MPa以上の破壊応力、通常、高い方が良い、(c)例えば、但し限定されないが、2%以上の破断点伸びが含まれる。
【0024】
適切なインプリント材料の設計は、次の順で材料に焦点を当てる繰り返し手順である。(a)揮発性処方(すなわち低蒸気圧成分の使用)、(b)粘度制御(すなわち低粘度成分の使用)、(c)例えば1分未満、かつより適切には2秒未満の迅速な重合動特性、(d)成分相溶性、(e)機械的性質(引っ張り係数、破壊応力、破断点伸び、Tg)、(f)湿りと広がり(流動行動)、(g)接着性(インプリントテンプレートには低く、かつ基板には高い)。
【0025】
低粘度の要件は、インプリント材料を製造するために使用される成分の選択を制限する。非極性単量体に基づき、重合された材料の強さを増やすために、妥協して、高い粘度の成分を加えることができる。例えば、エッチング選択性用のシリコンとするために添加されるシリコン含有アクリル酸単量体成分を有するビルディングブロックとして、イソボルニルアクリレートが特定される。通常、高粘度成分は、インプリント材料36aの全体的な粘度を5cps未満に維持するために、思慮深く添加される。
【0026】
以上に示した設計上の考慮すべき事項を勘案し、かつ所望の剥離性を満たすために、フッ化界面活性剤の使用を加えることによって、我々は、インプリント材料を設計した。フッ化界面活性剤を利用する材料36aの代表的な組成は:(i)Morrisville,PennsylvaniaのGelest,Inc.から記号XG−1064で入手可能な、アクリロキシメチルペンタメチルジシロキサン(例えば、但し限定されないが、約37gm)と、(ii)Milwaukee,WisconsinのAldrich Chemical Companyから入手可能な、イソボルニルアクリレート(「IBOA」)(例えば、但し限定されないが、約42gm)と、(iii)Milwaukee,WisconsinのAldrich Chemical Companyから入手可能な、エチレングリコールジアクリレート(例えば、但し限定されないが、約18gm)と、(iv)紫外光開始剤、例えば、但し限定されないが、Tarrytown,New YorkのCIBA(登録商標)から記号Darocur 1173で入手可能な、2−ヒドロジ(hydrozy)−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、但し限定されないが、約3gm)と、(v)FSO−100が、DUPONT商標から記号ZONYL(登録商標)FSO−100で入手可能な、界面活性剤である{FSO−100は、R1R2[式中、R1=F(CF2CF2)Y、但しYは、1から7までの範囲であり、かつR2=CH2CH2O(CH2CH2O)XH、但しXは、0から15までの範囲である]の一般的構造を有する}FSO−100(例えば、但し限定されないが、約0.5gm)とを混合することによって生成される(代表的比率を、重量で示した)。
【0027】
材料36aの代替的な組成は:(i)Morrisville,PennsylvaniaのGelest,Inc.から記号XG−1064で入手可能な、アクリロキシメチルペンタメチルジシロキサン(例えば、但し限定されないが、約37gm)と、(ii)Milwaukee,WisconsinのAldrich Chemical Companyから入手可能な、イソボルニルアクリレート(「IBOA」)(例えば、但し限定されないが、約42gm)と、(iii)Milwaukee,WisconsinのAldrich Chemical Companyから入手可能な、エチレングリコールジアクリレート(例えば、但し限定されないが、約18gm)と、(iv)紫外光開始剤、例えば、但し限定されないが、Tarrytown,New YorkのCIBA(登録商標)から記号Darocur 1173で入手可能な、2−ヒドロジ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、但し限定されないが、約3gm)と、(v)FC4432が、記号FLUORAD(登録商標)FC4432で3M Companyから入手可能な、高分子界面活性剤であるFC4432(例えば、但し限定されないが、約0.5gm)とを混合することによって生成される(代表的比率を、重量で示した)。
【0028】
材料36aのもう1つの代替的な組成は:(i)Morrisville,PennsylvaniaのGelest,Inc.から記号XG−1064で入手可能な、アクリロキシメチルペンタメチルジシロキサン(例えば、但し限定されないが、約37gm)と、(ii)Milwaukee,WisconsinのAldrich Chemical Companyから入手可能な、イソボルニルアクリレート(「IBOA」)(例えば、但し限定されないが、約42gm)と、(iii)Milwaukee,WisconsinのAldrich Chemical Companyから入手可能な、エチレングリコールジアクリレート(例えば、但し限定されないが、約18gm)と、(iv)紫外光開始剤、例えば、但し限定されないが、Tarrytown,New YorkのCIBA(登録商標)から記号Darocur 1173で入手可能な、2−ヒドロジ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、但し限定されないが、約3gm)と、(v)FC4430が、記号FLUORAD(登録商標)FC4430で3M Companyから入手可能な、高分子界面活性剤である、FC4430(例えば、但し限定されないが、約0.5gm)とを混合することによって生成される(代表的比率を、重量で示した)。
【0029】
材料36aのシリコン含有組成物に加えて、材料36aの非シリコン含有組成物を用いることができる。代表的な非シリコン含有組成物には、i)約55gmのイソボルニルアクリレート、ii)約27gmのn−ヘキシルジアクリレート、iii)約15gmのエチレングリコールジアクリレート、iv)約0.5gmのZONYL(登録商標)FSO−100界面活性剤、v)組成物の約3gmであるDAROCUR(登録商標)開始剤が含まれる。
【0030】
材料36aの追加の非シリコン含有組成物には、i)約55gmのイソボルニルアクリレート、ii)約27gmのn−ヘキシルジアクリレート、iii)約15gmのエチレングリコールジアクリレート、iv)約0.5gmのFC4432界面活性剤、v)組成物の約3gmであるDAROCUR(登録商標)開始剤が含まれる。
【0031】
材料36aのもう1つの非シリコン含有組成物には、i)約55gmのイソボルニルアクリレート、ii)約27gmのn−ヘキシルジアクリレート、iii)約15gmのエチレングリコールジアクリレート、iv)約0.5gmのFC4430界面活性剤、v)組成物の約3gmであるDAROCUR(登録商標)開始剤を含む。上記組成物の各々は、組成物の運用年数を増加させるために、化学の技術分野において周知の安定剤も含まれる。
【0032】
非シリコン含有組成物の更にもう1つの例には、i)約47gmのイソボルニルアクリレート、ii)約25gmのn−ヘキシルジアクリレート、iii)約25gmのエチレングリコールジアクリレート、iv)約0.5gmのZONYL(登録商標)FSO−100界面活性剤、v)組成物の約3gmであるDAROCUR(登録商標)開始剤が含まれる。
【0033】
材料36aの更にもう1つの非シリコン含有組成物において、非フッ化界面活性剤とフッ化界面活性剤を含む界面活性剤混合物が含まれる。代表的な組成物には、i)約55gmのイソボルニルアクリレート、ii)約27gmのn−ヘキシルジアクリレート、iii)約15gmのエチレングリコールジアクリレート、iv)組成物の約3gm、かつ界面活性剤混合物の0.5gmであるDAROCUR(登録商標)開始剤が含まれる。代表的な界面活性剤混合物は、0.25gmのFC4432及び、Auburn,MichiganのDow Corning Corporationから記号Sylgard(登録商標)309で入手可能な、0.25gmのトリシロキサン界面活性剤を含む。
【0034】
同様に、界面活性剤混合物は、上記のシリコン含有組成物と併せて使用できる。代表的な組成物には、(i)アクリロキシメチルペンタメチルジシロキサン(例えば、但し限定されないが、約37gm)、(ii)イソボルニルアクリレート(「IBOA」)(例えば、但し限定されないが、約42gm)、(iii)エチレングリコールジアクリレート(例えば、但し限定されないが、約18gm)、(iv)Darocur 1173開始剤(例えば、但し限定されないが、約3gm)、(v)0.25gmのFC4432とAuburn,MichiganのDow Corning CorporationからSylgard(登録商標)309で入手可能な0.25gmのトリシロキサン界面活性剤とからなる代表的な界面活性剤混合物が含まれる。
【0035】
上記組成物の各々は、組成物の運用年数を増加させるために、化学の技術分野において周知の安定剤も含むことができる。界面活性剤は1%未満のインプリント材料を含む。しかしながら、界面活性剤の割合は1%より高くても良い。
【0036】
上記インプリント材料によって提供される利点は、アプリオリ剥離層、すなわちインプリントテンプレート28上に配置される、別個の疎水性及び/又は低表面エネルギー剥離層の必要性をなくすことである。具体的には、組成物内に界面活性剤を含むことは、インプリント層34内に記録されたパターンの劣化又は歪みを回避しないとしても、減少させるために、モールド28とインプリント層34に望ましい剥離性を与える。
【0037】
図6を参照すると、インプリント材料の小滴36内の界面活性剤分子は、約1秒未満で気液界面に向かって優先的に移動すると考えられる。このようにして、小滴36は、重合可能な成分が濃縮される領域137と比較して、領域136において高い界面活性剤濃度を有すると考えられる。これは、界面活性剤が、気液界面に向かって移動する傾向があり、かつその疎水性端部が気体に向かって整列するエネルギー最小化プロセスの結果であると考えられる。例えば、界面活性剤の疎水性端部は、整列し、液体から外に、かつ気体内に突き出し、かつ親水性端部は、整列し、液体内に突き出すと考えられる。しかしながら、インプリント材料が、インプリントテンプレート表面に接触する時、インプリントテンプレート表面上の曝露されたシラノール結合は、界面活性剤分子の親水性端部に、反転させ、かつ疎水性端部が、下方に、例えば接着減少を可能にするために、インプリントテンプレートの表面から外側に面するように、曝露されたシラノール結合と接触させることが考えられる。弱く結合された界面活性剤ラメラも、インプリントテンプレート表面に形成でき、そのラメラは、例えば2層の界面活性剤分子を含むことが更に考えられる。
【0038】
図2を参照すると、上記インプリント材料によって提供される追加の利点は、テンプレート洗浄と調製時間が短縮され、それ故に、全体的プロセスが簡略化されることである。当然に、上記インプリント材料は、先行技術において公知であるような、アプリオリ剥離層と共に用いることができる。
【0039】
モールド28の剥離性を改善するもう1つの方法には、モールド表面の表面エネルギーを減少させるために、モールド28上に残留する添加剤を含む調整混合物に、モールド28を曝露することによる、モールド28のパターンのアプリオリ調整が含まれる。代表的な添加剤は界面活性剤である。
【0040】
上記インプリント材料は、インプリントテンプレートに適切な運用年数を提供しながら、実質的に高いフィーチャ忠実性インプリントリソグラフィを提供する際に有用である。例えば、40から50nmのフィーチャを有する25×25mmのパターニング領域、すなわちモールドを有するインプリントテンプレートは、最小のパターンフィーチャ劣化及び歪みを有する500のインプリントを発生させるために用いられた。
【0041】
上記インプリント材料を使用する代表的なインプリント方法には、第1ステップとして、表面に親水性結合、例えば、但し限定されないが、シラノール(Si−OH)結合を作るために、石英インプリントテンプレート表面の前処理が含まれる。本発明の1つ以上の実施形態によれば、インプリントテンプレート表面は、表面を加水分解するために、すなわち表面にシラノール結合を作るために、H2SO4とH22の2.5:1溶液中に浸漬される。これは、ピラニア洗浄と呼ばれる。
【0042】
次のステップとして、表面は、インプリントテンプレート表面を希釈された界面活性剤溶液(例えば、但し限定されないが、0.1%イソプロピルアルコール(IPA))によって噴霧することによって更に前処理される。界面活性剤は、インプリントテンプレート表面で効果的に、疎水性端部が表面から外側に突き出す。かかる整列は、表面にシラノール結合を作るための、表面のピラニア洗浄によって促進される。インプリントテンプレート表面の曝露は、表面を多量の前処理溶液に浸漬すること、表面を前処理溶液が浸透した布で拭くこと、表面に前処理溶液の流れを噴霧することを含む、当該技術分野において事実上いかなる公知の方法によっても達成できる。前処理溶液内のIPAは、モールド28を使用する前に蒸発させられる。このようにして、IPAによって、界面活性剤を表面に吸着させたままにしながら、表面から望ましくない汚染物質を除去することが容易になる。界面活性剤は、疎水性端部と、親水性端部を含むので、シラノール結合は、親水性端部が、シラノール結合の−OH端部に「付着し」、かつ疎水性端部が、表面から離れて向くように、界面活性剤の整列を促進する。次のステップにおいて、インプリントテンプレートと基板の間のギャップから、例えば、但し限定されないが、〜5psiヘリウムパージを使用して空気をパージする。
【0043】
次のステップにおいて、界面活性剤を含むインプリント材料は、例えば、但し限定されないが、基板上に次のインプリント材料の実質的に等距離に小滴のパターンを置くことによって、又はスピン塗布によって、又は当業者に公知の他のいずれかの方法によって基板に設けられる。この例において、基板は、上層が架橋されたBARC材料である転写層によって被覆される(BARC又は「底部反射防止膜」は、通常スピン工程によって生成される有機反射防止膜である)。BARC層は、インプリント材料と転写層との間の混合を防ぐために使用される。その混合は、本明細書で使用される低粘度成分からなるインプリント材料を使用する時に、かかる成分が多数の重合体に対して溶解力を有するので、特に問題となるであろう。実質的な混合は、例えば、但し限定されないが、後続のエッチングプロセス中でのフィーチャの歪みのような問題を引き起こすことがある。このことは、フィーチャの厚さが50から100nm程度に小さい時、特に問題となる。次に、インプリントリソグラフィの普通のステップが実行される、すなわちインプリント材料を重合するための化学線への曝露、インプリントテンプレートと基板の分離、フィーチャパターンを基板に転写するための選択的エッチングである。
【0044】
1種以上の界面活性剤を利用して、上記のようにインプリントテンプレート表面を前処理する時でも、1種以上の界面活性剤は、最終的に摩耗するインプリントテンプレートのシラノール表面に吸着されると考えられる。しかしながら、上記のように、インプリント材料内に含まれる界面活性剤は、小滴の気液表面に迅速に達し、インプリントテンプレート表面は、インプリントの正常な結果として再度塗布される。このようにして、本発明の1つ以上の実施形態により、界面活性剤溶液をインプリントテンプレート表面に適用する前処理ステップが削除できる。実際、本発明の1つ以上の更なる実施形態によれば、インプリントテンプレートは、界面活性剤溶液を表面に適用する前処理ステップの代わりとして、インプリント材料と数回、接触させることができる。
【0045】
上記の本発明の実施形態は、代表的なものである。本発明の範囲内に留まりながら、多くの変更及び修正を、以上に説明した開示内容に行うことができる。従って、本発明の範囲は、上記説明を参照して決定されるべきでなく、代わりに添付の請求項を、同等物の全範囲と共に参照して決定されるべきある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の1つ以上の実施形態の実行に有用なリソグラフィシステムの斜視図である。
【図2】図1に示したリソグラフィシステムの簡略化した立面図である。
【図3】図2に示すインプリント層が、重合され、かつ架橋される前に、構成される材料の簡略化した表示である。
【図4】図3に示す材料が、放射線に晒された後に変形された架橋高分子材料の簡略化した表示である。
【図5】インプリント層のパターニング及び凝固/重合後に、図1に示すインプリント層から離間したモールドの簡略化した立面図である。
【図6】本発明によって基板上に配置されたインプリント材料の簡略化した立面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリントリソグラフィ用のインプリント材料であって、
関連する粘度を有し、かつ界面活性剤と、重合可能な成分と、応答して粘度を変化させるために刺激に応答する開始剤とを含む組成物を備え、その組成物が液体状態で約100センチポアズ未満の粘度と約20トル未満の蒸気圧とを有し、かつ固体硬化状態で、約100MPaを超える引っ張り係数と、約3MPaを超える破壊応力と、約2%を超える破断点伸びを有することを特徴とするインプリント材料。
【請求項2】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含む請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項3】
前記界面活性剤がフッ化界面活性剤を含む請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項4】
前記界面活性剤がフッ化非イオン性界面活性剤を含む請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項5】
前記単量体が、エポキシと、アクリレートと、メタクリレートと、ビニルエーテルとから本質的になる一組の単量体から選択される請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項6】
前記単量体が、シリコンを内部に含む一組の重合可能な成分から選択される請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項7】
前記単量体が、置換アクリレートである請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項8】
前記単量体が、シリコン含有アクリレートである請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項9】
前記単量体が、一置換アクリレートと多官能置換アクリレートとから本質的になる一組の置換アクリレートから選択される請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項10】
前記開始剤が、光開始剤と熱開始剤とから本質的になる一組の開始剤から選択される請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項11】
前記開始剤が、ラジカル光開始剤から本質的になる一組の開始剤から選択される請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項12】
前記液体状態の前記粘度が、25センチポアズ未満である請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項13】
前記液体状態の前記粘度が、10センチポアズ未満である請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項14】
前記液体状態の前記粘度が、5センチポアズ未満である請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項15】
前記蒸気圧が5トル未満である請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項16】
前記蒸気圧が2トル未満である請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項17】
前記引っ張り係数は100MPa以上である請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項18】
前記破壊応力は3MPa以上である請求項1に記載のインプリント材料。
【請求項19】
前記破断点伸びが8%以上である請求項1に記載のインプリント材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−523249(P2007−523249A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554142(P2006−554142)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/004415
【国際公開番号】WO2005/082992
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(503193362)モレキュラー・インプリンツ・インコーポレーテッド (94)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】