説明

インプリント成型用光硬化性樹脂組成物、インプリント成型硬化体及びこれらの製造方法

【課題】インプリント成型硬化体を製造する過程において、インプリント成型硬化体の基材密着性と型剥離性を両立ができるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物、基材密着性と型剥離性に優れたインプリント成型硬化体及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、光ラジカル重合開始剤(成分B)とを含むインプリント成型用光硬化性樹脂組成物であって、
成分A中、光ラジカル反応する官能基を6以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A1)と、芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー(成分A2)(但し、成分A1は除く)の合計の含有量が10〜100重量%であり、成分A1と成分A2の合計中、前記成分A2が0〜90重量%であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なインプリント成型用光硬化性樹脂組成物、インプリント成型硬化体及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂を使用するインプリント成型は、室温でインプリント成型硬化体を成型でき、熱可塑性樹脂を使用する場合(例えば、特許文献1)のように金型を加温する必要がなく、金型の熱膨張を考慮した金型設計が不要であることから、様々なインプリント成型用の光硬化性樹脂が提案されてきた。
【0003】
特許文献2には、硬化性化合物、ウレタン化合物、重合開始剤及び界面活性剤を含有する成形型用硬化性樹脂組成物であって、高精度かつ高アスペクト比のパターンを形成する観点から、硬化性化合物が光硬化性化合物であることが好ましいとする成形型用硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献3には、光硬化性転写シートに使用される、加圧により変形可能な光硬化性組成物であって、滑剤としてシリコーン樹脂及び/又はフッ素原子含有エチレン性化合物を含む光硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−107088号公報
【特許文献2】特開2009−073873号公報
【特許文献3】特開2010−161186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような光硬化性樹脂組成物を使用してインプリント成型する場合、通常、
・光硬化性樹脂組成物を基材に塗布し、
・基材上に塗布された光硬化性樹脂組成物をスタンパした後、
・スタンパされた光硬化性樹脂組成物を光硬化させてインプリント成型硬化体とし、
・インプリント成型硬化体をスタンパから剥離する工程からなる。
この工程において、
・基材上に塗布された光硬化性樹脂組成物が基材に密着していること(基材密着性)と、
・インプリント成型硬化体が金型から剥離し易いこと(型剥離性)
とが要求され、特に、大量に高速でこの工程が実施されるロールtoロール方式で高度に要求される。
従来、型剥離性を解決する手段として、特許文献2及び3のように、光硬化性樹脂組成物に界面活性剤又は滑剤(以下、界面活性剤等ともいう)を添加することが行われた。
しかし、界面活性剤等を光硬化性樹脂組成物中に含めると、それが多量、もしくは極性などの相性が悪い場合、型剥離性は改善されるが、基材密着性が低下する、インプリント成型する過程で、界面活性剤等が分離してインプリント成型硬化体の透明性を低下させる、界面活性剤等のブリードが原因と思われる他の部材への悪影響がある等の問題が発生する場合があった。
【0007】
本発明は、インプリント成型硬化体を製造する過程において、インプリント成型硬化体の基材密着性と型剥離性を両立させることができるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物、基材密着性と型剥離性を両立させることができるインプリント成型硬化体及びこれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を内容とする。
(1)ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、
光ラジカル重合開始剤(成分B)
とを含むインプリント成型用光硬化性樹脂組成物であって、
前記成分A中、
光ラジカル反応する官能基を6以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A1)と、
芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー(成分A2)(但し、前記成分A1は除く)の合計の含有量が10〜100重量%であり、
前記成分A1と成分A2の合計中、前記成分A2が0〜90重量%であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
(2)上記(1)のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を、インプリント成型してなるインプリント成型硬化体。
(3)光ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、
光ラジカル重合開始剤(成分B)
とを配合する工程Xを有するインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
さらに、前記工程Xが、
光ラジカル反応する官能基を6以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A1)と、
芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー(成分A2)(但し、前記成分A1は除く)を配合して前記成分Aを得る工程X1を含有し、
前記成分A中、前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量が10〜100重量%であり、
前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量中、前記成分A2が0〜90重量%であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法。
(4)インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を製造する工程1、
前記工程1で得たインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程2、
前記基材上に塗布されたインプリント成型用光硬化性樹脂組成物をスタンパでする工程3、
前記スタンパされた前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を光硬化させてインプリント成型硬化体を得る工程4、及び、
前記インプリント成型硬化体をスタンパから剥離する工程5を有するインプリント成型硬化体の製造方法であって、
前記工程1における前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造が、請求項8〜10いずれか記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法によるインプリント成型硬化体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インプリント成型硬化体を製造する過程において、インプリント成型硬化体の基材密着性と型剥離性を両立させることができるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物、基材密着性と型剥離性を両立させることができるインプリント成型硬化体及びこれらの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔インプリント成型用光硬化性樹脂組成物〕
本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物(以下、光硬化性樹脂組成物ともいう)は、
ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、
光ラジカル重合開始剤(成分B)
とを含むインプリント成型用光硬化性樹脂組成物であって、
前記成分A中、
光ラジカル反応する官能基を6以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A1)と、
芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー(成分A2)(但し、前記成分A1は除く)の合計の含有量が10〜100重量%であり、
前記成分A1と成分A2の合計中、前記成分A2が0〜90重量%であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物である。
【0011】
成分Aは、ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマーであり、
基材密着性と型剥離性を両立させる観点から、成分A1を含み、
基材密着性をさらに安定にする観点から、成分A2を含むことが好ましい。
【0012】
成分A1としては、
後述する有機ジイソシアネートと下記式(1)で表されるジペンタエリスリトールポリアクリレートの反応物、
有機ジイソシアネートと下記式(2)で表されるようなペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの反応物、
イソホロンジイソシアネートとジペンタエリスリトール(メタ)ポリアクリレートから得られる下記式(3)で表される6官能ウレタンアクリレート、
ポリカーボネートポリオール系6官能ウレタンアクリレート(例えば、アートレジンUN−9000H(根上工業))、
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物である10官能ウレタンアクリレート(例えば、アートレジンUN−904(商品名、根上工業))
等が挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
(式(1)中、RはHである。)
【0015】
【化2】

【0016】
なお、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに自体は3官能だが、有機ジイソシアネートの2つのイソシアネート基と反応させることによりできるウレタンアクリレートは、下記式(3)で表される化合物のように6官能となる。
【0017】
【化3】

【0018】
(式中Rは、独立にH又はCHである。)
【0019】
成分A1は、例えば、特開2008−260898号公報に記載されているような方法で、有機ジイソシアネートと6官能以上の(メタ)アクリレートとを反応して製造することができる。
有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系等のジイソシアネートが挙げられ、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート類が挙げられる。
【0020】
成分A1の好ましい市販品として、
UV−7605B(日本合成化学)、UN3320HA(根上工業)、ビームセット575(荒川化学工業)、UA-6HA(新中村化学)等が挙げられる。
【0021】
成分A2としては、基材密着性をさらに安定にする観点から、
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレートなどが好ましく、
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノール(メタ)アクリレート、がより好ましく、
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、が更に好ましく、
ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0022】
成分A2の好ましい市販品として、BZ(共栄社化学)(ベンジルメタクリレート)、
A−BZ(新中村化学)(ベンジルアクリレート)、PO(共栄社化学)(フェノキシエチルメタクリレート)、A−LEN−10(新中村化学)(フェニルフェノールアクリレート)等が挙げられる。
【0023】
成分A中、成分A1と成分A2の合計は、基材密着性と型剥離性を両立させる観点から、10〜100重量%であり、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは40〜100重量%、更に好ましくは60〜100重量%、更に好ましくは80〜100重量%であり、更に好ましくは100重量%、即ち、成分Aの全てが成分A1及び成分A2であることであり、
【0024】
成分A1と成分A2の合計中、成分A2は、基材密着性と型剥離性を両立させる観点から、基材密着性をより安定にする観点から、
0〜90重量%であり、
基材密着性をより安定にする観点から、
好ましくは20〜90重量%であり、
より好ましくは30〜90重量%であり、
更に好ましくは40〜80重量%であり、
更に好ましくは50〜70重量%である。
【0025】
成分A1及びA2以外の成分A(以下、成分A3ともいう)としては、本発明の光硬化性樹脂組成物の組成物粘度、膜硬度、可とう性等の改良を目的に以下が挙げられる。
エチレン性飽和結合含有基を少なくとも1個有するラジカル重合性不飽和単量体及び/又はオリゴマー(以下、成分A3−1ともいう)、
エチレン性不飽和結合含有基を2個以上有する多官能ラジカル重合性不飽和単量体(以下、成分A3−2ともいう)、
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能ラジカル重合性不飽和単量体(以下、成分A3−3ともいう)、及び
その他の多官能ラジカル重合性オリゴマーやポリマー(以下、成分A3−4ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー。
【0026】
成分A3−1としては、本発明の光硬化性樹脂組成物の組成物粘度、膜硬度、可とう性の確保の観点から、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びtert−ブチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、
イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物がより好ましい。
【0027】
成分A3−2としては、本発明の光硬化性樹脂組成物の組成物粘度、膜硬度、可とう性の確保の観点から、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート及びトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、
ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート及び/又は変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0028】
成分A3−3としては、本発明の光硬化性樹脂組成物の組成物粘度、膜硬度、可とう性の確保の観点から、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、
EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート及び/又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0029】
成分A3−4としては、硬化収縮による基材のそりを低減させる目的で、上記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能のポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。
基材密着性と型剥離性を両立させ、かつ硬化収縮による基材のそりを低減させる観点から、成分A3は、ウレタンアクリレートであることが好ましく、2〜5官能ウレタンアクリレートであることがより好ましく、2〜3官能ウレタンアクリレートであることが更に好ましく、2官能ウレタンアクリレートであることが更に好ましい。
【0030】
成分Bは、光ラジカル重合開始剤であり、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。また、光重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上用いてもよい。
【0031】
成分Bは、インプリントを形成する基材や型越しに光照射するため、これらの基材や型が透過する波長に対して適時に選択する必要があるが、硬化速度が速く、樹脂との相溶性に優れ、硬化後の黄変が少ないものが好ましい。
硬化速度の速いものは、低エネルギー量の光線にて硬化出来るため、ロールtoロール方式などでの大量生産という観点で好ましい。
相溶性に優れるものは、結晶化などによる開始剤の析出が起き難く、また黄変が少ないものは、透明性に優れるなどの観点でそれぞれ好ましい。
【0032】
成分Bとしては、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。
Ciba社の、
Irgacure184、Irgacure819等のIrgacure(登録商標)シリーズ、
Darocur1173等のDarocur(登録商標)シリーズ、
BASF社の、
Lucirin TPO等のLucirin(登録商標)シリーズ、
ESACUR日本シイベルヘグナー社のESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン等が挙げられる
【0033】
光ラジカル重合開始のための光は、紫外光、近紫外光、遠紫外光、可視光、赤外光等の領域の波長の光または、電磁波だけでなく、放射線も含まれ、放射線には、例えば、マイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、さらに全面露光することも可能である。
【0034】
成分Cを含む本発明の光硬化性樹脂組成物は、インプリント成型が、インプリント成型され硬化したインプリント成型用光硬化性樹脂組成物硬化体上に金属膜を形成する工程を含むインプリント成型用として好ましい。
【0035】
成分Cとしては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、
ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン;
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン;
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;
N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;および、
その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が好ましいが、反応性もしくは金属との密着性の観点から、この中では、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン及び/又はγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシランがより好ましい。
【0036】
成分Aは、光硬化性樹脂組成物の主剤として、光硬化性樹脂組成物中、好ましくは80〜99.5重量%であり、より好ましくは84〜98重量%であり、更に好ましくはより好ましくは90〜95重量%である。
【0037】
成分Bは、硬化速度や低黄変、粘度などの観点から、成分A100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、3〜5重量部が更に好ましい。
【0038】
インプリント成型硬化体上に金属膜を成形した際のインプリント成型硬化体と金属膜の界面の密着性を安定にする観点から、光硬化性樹脂組成物には、さらに、シランカップリング剤(成分C)を含有することが好ましく、成分Cは、成分A100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、2〜5重量部が更に好ましい。
【0039】
光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、界面活性剤等、重合禁止剤、光増感剤、酸化防止剤などをさらに含めることができる。
但し、光硬化性樹脂組成物において、基材密着性と型剥離性を両立させ、基材密着性の低下の抑止、インプリント成型する過程での界面活性剤等の分離によるインプリント成型硬化体の透明性の低下の抑止、界面活性剤等のブリードによる他の部材への影響の抑止の観点から、界面活性剤等は、光硬化性樹脂組成物中、0.4重量%以下が好ましく、0.2重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下が更に好ましく、0.05重量%以下が更に好ましく、0.01重量%以下が更に好ましく、0.001重量%以下が更に好ましく、含まれないことが更に好ましい。
【0040】
このように、本発明の光硬化性樹脂組成物は、好ましくは。界面活性剤を最小限の量の含有又は配合で、若しくは、界面活性剤を含有又は配合していなくても、基材密着性と型剥離性を両立させることができるので、界面活性剤に起因すると考えられる透明性の低下や、ブリードアウトによる他の部材の汚染等が抑制され、樹脂組成物本来の透明性や種々特性をインプリント成形硬化体及びそれを組み込んだ電子機器に反映することができる。
【0041】
本発明において、離型性を改善するために界面活性剤等を加える場合は、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0042】
光硬化性樹脂組成物の粘度は、光硬化性樹脂組成物を、金型又はフィルム等の基材上に斑無く塗布して安定した基材密着性と型剥離性の両立を確保する観点から、300mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下が更に好ましく、60mPa・s以下が更に好ましい。
光硬化性樹脂組成物の粘度は、成分A1の粘度が通常は高いので、成分A中に、粘度の低い成分A3を配合して調製する。また、成分A3による粘度調製のし易さの観点から、成分A1の粘度は60000mPa・s以下が好ましい。
【0043】
近年、インプリント成形において、インプリント成形体を薄膜化するために、基材上にインクジェット描画方式で光硬化性樹脂組成物を、好ましくは離散的に塗布する工程を経た後、基材上に塗布された光硬化性樹脂組成物を金型でスタンパする技術が進展している。本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物は、基材上にインクジェット描画方式で塗布する場合でも、良好な描画性を有するため、インクジェット描画によって直接凹凸パターンを成形できるだけでなく、金型でスタンパした場合に、基材密着性と型剥離性が両立したより薄膜のインプリント成形体を形成できる。
【0044】
〔インプリント成型硬化体〕
光硬化性樹脂組成物を、インプリント成型して本発明のインプリント成型硬化体を得ることができ、本発明のインプリント成型硬化体を電子機器に組み込むことによって、本発明のインプリント成型硬化体を備える電子機器を得ることができる。
【0045】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、例えば、
半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサ、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、
その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用できる。
【0046】
また、光硬化性樹脂組成物は、光硬化性転写層が微細凹凸パターンを有するスタンパ等の金型との剥離性、及び製品の硬化した光硬化性樹脂との剥離性が良好で、且つ基材フィルムとの密着性が良好であるので、金型のパターンを忠実に転写することができ、樹脂の付着により金型を損傷することが無く、且つ膜自立性が優れた光硬化性転写シートを形成できる。このため、光硬化性樹脂組成物は、光ナノインプリントプロセス法等の微細な凹凸パターンの形成方法により、金型のパターンを忠実に形成することができ、高価なスタンパを損傷することが無い。
更に、光硬化性転写シートの膜自立性が良好であるため、シートのハンドリング性が優れており、連続製造する場合のタクト(処理に必要な時間)を短縮することで、生産性の向上が可能となり、コスト低減を図ることができる。
【0047】
従って、本発明の凹凸パターンの形成方法により、電子ディスプレイリブ、電子デバイス(リソグラフィ、トランジスタ)、光学部品(マイクロレンズアレイ、導波路、光学フィルタ、フォトニックス結晶)、バイオ関連材料(DNAチップ、マイクロリアクタ)、記録媒体(パターンドメディア、DVD)を有利に得ることができる。
【0048】
このような本発明の光硬化性樹脂組成物を使用したインプリント成形硬化体を組み込んだ電子機器としては、特に、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、蛍光表示管、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、発光ダイオードなどの平面ディスプレイが好適に挙げられる。
【0049】
〔インプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法〕
本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法は、
光ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、
光ラジカル重合開始剤(成分B)
とを配合する工程Xを有するインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
さらに、前記工程Xが、
光ラジカル反応する官能基を6以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A1)と、
芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー(成分A2)(但し、前記成分A1は除く)を配合して前記成分Aを得る工程X1を含有し、
前記成分A中、前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量が10〜100重量%であり、
前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量中、前記成分A2が0〜90重量%であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法である。
【0050】
本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法によって、インプリント成型硬化体の透明性を低下やブリードの発生を抑制しつつ、基材密着性と型剥離性を両立させることができるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0051】
さらに、安定した基材密着性と型剥離性を両立するインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を得る観点から、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法においては、
前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量中、前記成分A2が好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜90重量%、更に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは50〜70重量%である。
【0052】
さらに、インプリント成型硬化体上に金属膜を成形した際のインプリント成型硬化体と金属膜の界面の密着性を安定にする光硬化性樹脂組成物を得る観点から、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法においては、
前記工程Xが、さらに、シランカップリング剤(成分C)を配合する工程X2を有することが好ましい。
工程X2において、成分Cの配合量は、成分A100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、2〜5重量部が更に好ましい。
【0053】
また、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法においては、
上記のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、界面活性剤等、重合禁止剤、光増感剤、酸化防止剤などをさらに配合する工程を有することができる。
【0054】
但し、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法においては、インプリント成型用光硬化性樹脂組成物の基材密着性と型剥離性を両立させ、基材密着性の低下の抑止、インプリント成型する過程での界面活性剤等の分離によるインプリント成型硬化体の透明性の低下の抑止、界面活性剤等のブリードによる他の部材への影響の抑止の観点から、界面活性剤等の配合量は、得られるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物中、0.4重量%以下が好ましく、0.2重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下が更に好ましく、0.05重量%以下が更に好ましく、0.01重量%以下が更に好ましく、0.001重量%以下が更に好ましく、配合されないことが更に好ましい。
【0055】
即ち、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法で得られるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物は、得られるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物中、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましくは10〜100重量%、より好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは10〜50重量%、
界面活性剤等が、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下、更に好ましく0.05重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下、更に好ましくは0.001重量%以下、更に好ましくは0重量%、
芳香環を有する(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A2)が、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと芳香環を有する(メタ)アクリレートオリゴマーの合計中、好ましくは0〜90重量%、より好ましくは20〜90重量%、更に好ましくは30〜90重量%、
シランカップリング剤(成分C)が、
得られるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物中、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%、更に好ましくは2〜5重量%である。
【0056】
成分A、A1、A2、B、C、成分A1及びA2以外の成分Aである成分A3並びに必要に応じて配合される界面活性剤等、重合禁止剤、光増感剤及び酸化防止剤の好適な具体例と配合量は、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物におけるこれらの成分の好適な具体例と含有量と同じである。
【0057】
〔インプリント成型硬化体の製造方法〕
本発明のインプリント成型硬化体の製造方法は、
インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を製造する工程1、
前記工程1で得たインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程2、
前記基材上に塗布されたインプリント成型用光硬化性樹脂組成物をスタンパでする工程3、
前記スタンパされた前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を光硬化させてインプリント成型硬化体を得る工程4、及び、
前記インプリント成型硬化体をスタンパから剥離する工程5を有するインプリント成型硬化体の製造方法であって、
前記工程1におけるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造が、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法によるインプリント成型硬化体の製造方法である。
【0058】
工程1が、成分Cを配合する工程X2を有し、得られるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物が成分Cを含む場合、インプリント成型硬化体と金属膜の界面の安定した密着性を有する金属膜を備えるインプリント成型硬化体を得る観点から、
本発明のインプリント成型硬化体の製造方法は、さらに、インプリント成型硬化体上に金属膜を形成する工程6を含むことが好ましい。
【0059】
さらに、より薄膜のインプリント成型硬化体を製造する観点から、
前記工程2において、
前記工程1で得たインプリント成型用光硬化性樹脂組成物をインクジェット描画方式で基材に塗布することが好ましい。
【0060】
本発明のインプリント成型硬化体の製造方法では、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物が工程2〜5、好ましくは工程2〜6で使用されることによって、インプリント成型体の基材密着性と型剥離性が両立し、基材密着性の低下、インプリント成型する過程での界面活性剤等の分離によるインプリント成型硬化体の透明性の低下、界面活性剤等のブリードによる他の部材への影響等が抑止されるため、基材密着性、好ましくはインプリント成型硬化体上に形成された金属膜の密着性に優れる本発明のインプリント成型硬化体を得ることができ、特に、大量に高速でこの工程が実施されるロールtoロール方式に適用されることが好ましい。
【0061】
本発明の組成物は、光により硬化させることが好ましい。具体的には、基材上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布形成してパターン受容体を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面に金型を圧接し、金型パターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射により硬化させる。本発明のインプリント成型硬化体の製造方法によるインプリント成型硬化体は、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0062】
本発明のインプリント成型硬化体は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、本発明の組成物を塗布することにより形成することができる。本発明の組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmである。また、本発明の組成物は、多重塗布してもよい。
【0063】
本発明の組成物を塗布するための基材は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基材、TFTアレイ基材、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基材、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基材など特に制約されない。基材の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0064】
本発明の組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いても良いし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でも良い。
【0065】
露光に際しては、露光照度を20〜500mW/cmの範囲にすることが望ましい。20mW/cm以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、500mW/cm以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。
露光量は、光硬化が十分に進行させ、安定した硬度と屈折率を確保し、黄変を抑制する観点から、500〜6000mJ/cmの範囲にすることが望ましい。
更に、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0066】
本発明の組成物を用いたインプリント成型硬化体の製造においては、基材及び/又は金型は、光透過性の材料であることが好ましい。
基材の上に本発明の組成物塗布し、光透過性金型を押し当て、金型の裏面から光を照射し、本発明の組成物を硬化させる。
また、光透過性基材上に本発明の組成物塗布し、金型を押し当て、基材の裏面から光を照射し、本発明の組成物硬化させることもできる。
光照射は、金型を付着させた状態で行ってもよいし、金型剥離後に行ってもよいが、本発明では、金型を密着させた状態で行うのが好ましい。
【0067】
本発明で用いることのできる金型は、転写されるべきパターンを有する金型が使われる。金型は、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できる。
本発明において用いられる光透過性金型は、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0068】
透明基材を用いた場合で使われる非光透過型金型としては、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属金型、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの金型などが例示される。形状は板状金型、ロール状金型等のいずれでもよい。ロール状金型は、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0069】
上記本発明で用いられる金型は、本発明の組成物と金型との剥離性を向上するために離型処理を行ったものを用いてもよい。シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業製、オプツールDSXや住友スリーエム製、Novec EGC−1720等の市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0070】
本発明のインプリント成型硬化体の製造方法を用いてインプリント成型硬化体の製造を行う場合、通常、金型の圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。金型圧力を10気圧以下とすることにより、金型や基材が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。金型の圧力は、金型凸部の本発明の組成物の残膜が少なくなる範囲で、金型転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0071】
本発明において、インプリント成型硬化体の製造を行う場合における光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、本発明の組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、光照射の際の基材温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、金型と本発明の組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射しても良い。本発明において、好ましい真空度は、0.1Paから常圧の範囲で行われる。
【0072】
本発明のインプリント成型硬化体の製造方法を適用できる、インプリント成型硬化体を備える電子機器の製造方法としては、
インプリント成型体を製造する工程Pと、
前記インプリント成型体を組み込む工程Q
とを有する前記インプリント成型体を備える電子機器の製造方法であって、
前記工程Pにおけるインプリント成型体の製造が、本発明のインプリント成型硬化体の製造方法によるインプリント成型硬化体を備える電子機器の製造方法が挙げられる。
【0073】
インプリント成型硬化体を備える電子機器の製造方法に、本発明のインプリント成型硬化体の製造方法により得られるインプリント成型硬化体を使用すると、このインプリント成型硬化体は基材密着性と、好ましくはインプリント成型硬化体上に形成された金属膜の密着性が良好であるため、これを備える電子機器の輝度や光拡散性等が向上する。
【0074】
このようなインプリント成型硬化体又は電子機器としては、本発明のインプリント成型硬化体及び本発明のインプリント成型硬化体を組み込んだ電子機器で説明したものが好適に挙げられる。
【実施例】
【0075】
〔評価条件〕
(1)離型性
幅30μm高さ1μmのラインパターンのある銅製金型(φ12cm、厚み2cm)に表1の成分A,B、C及び界面活性剤からなる本発明の組成物又は比較の組成物それぞれ0.1gを銅製金型全面に略均一に塗布し、その上に、3cm角の易接着PET(ポリエステル)フィルム(東洋紡工業製 コスモシャイン(登録商標) 厚み100μm)を貼り合せ、UV照射して前記組成物が硬化してインプリント成型硬化体となった後、易接着PETフィルムを指でつまんで0.5〜1.0秒の間に剥がして、銅製金型からの剥がれやすさを確認した。
なお、UV照射の条件は、メタルハライドランプ(アイグラフィックス製 M06−L31)にて1500mJ/cmである。
易接着PETフィルムは破壊せずインプリント成型硬化体と一体となって手応えなく剥がれ、インプリント成型硬化体は金型に残らない ◎
易接着PETフィルムは破壊せずインプリント成型硬化体と一体となって剥がれるが、若干の手応えあり、インプリント成型硬化体が金型に残ることはない ○
易接着PETフィルムは破壊せずインプリント成型硬化体と一体となって剥がれるが、剥がれにくく、インプリント成型硬化体が金型に残ることはない △
易接着PETフィルムは破壊せずインプリント成型硬化体と一体となって剥がれるが、インプリント成型硬化体の一部が金型に残る ×
【0076】
(2)易接着PET接着性
3cm角の易接着PETフィルム(東洋紡工業製 コスモシャイン(登録商標) 厚み100μm)(以下、易接着PETフィルム1ともいう)に表1の成分A,B、C及び界面活性剤からなる本発明の組成物0.1g又は比較の組成物0.1gを易接着PETフィルム全面に略均一に塗布してから、易接着PETフィルム1と同じ大きさと厚みの別の上記易接着PETフィルム(以下、易接着PETフィルム2ともいう)を貼り合せ、UV照射して前記組成物が硬化して本発明のインプリント成型硬化体又は比較のインプリント成型硬化体となった後、易接着PETフィルム2を手で0.5〜1.0秒の間に剥がした。
なお、UV照射の条件は、メタルハライドランプ(アイグラフィックス製 M06−L31)にて1500mJ/cmである。
易接着PETフィルム2が破れるか又は切れた ◎
易接着PETフィルム2の破れ又は切れはなかったが、易接着PETフィルム2の表面の一部が剥がれて易接着PETフィルム1上のインプリント成型硬化体に付着して残った ○
易接着PETフィルム2の破れ又は切れはなく、かつ、易接着PETフィルム2の表面が易接着PETフィルム1上のインプリント成型硬化体に付着して残ることもなかった △
【0077】
(3)PC接着性
3cm角のPC(ポリカーボネート)フィルム(三菱ガス化学製 ユーピロン(登録商標)厚み100μm)(以下、PCフィルム1ともいう)に表1の成分A,B、C及び界面活性剤からなる本発明の組成物0.1g又は比較の組成物0.1gをPCフィルム1全面に略均一に塗布してから、PCフィルム1と同じ大きさと厚みの別の上記PCフィルム(以下、PCフィルム2ともいう)を貼り合せ、UV照射して前記組成物が硬化して本発明のインプリント成型硬化体又は比較のインプリント成型硬化体となった後、PCフィルム2を手で0.5〜1.0秒の間に剥がした。
なお、UV照射の条件は、メタルハライドランプ(アイグラフィックス製 M06−L31)にて1500mJ/cmである。
PCフィルム2が破れるか又は切れた ◎
PCフィルム2の破れ又は切れはなかったが、PCフィルム2の表面の一部が剥がれてPCフィルム1上のインプリント成型硬化体に付着して残った ○
PCフィルム2の破れ又は切れはなく、かつ、PCフィルム1上のインプリント成型硬化体への付着もなかった △
【0078】
(4)クロスカットテープ剥離
幅30μm高さ1μmのラインパターンのある銅製金型(φ12cm、厚み2cm)に表1の成分A,B、C及び界面活性剤からなる本発明の組成物0.1g又は比較の組成物0.1gを銅製金型全面に略均一に塗布し、その上に、3cm角の易接着PET(ポリエステル)フィルム(東洋紡工業製 コスモシャイン(登録商標) 厚み100μm)を貼り合せ、UV照射して前記組成物が硬化してインプリント成型硬化体となったものを試験片とした。試験片上に電子線過熱方式を利用した真空蒸着機(アルバック社製EX−200)によりアルミニウムを12nmの厚さにて成膜した。
JIS−K5400による100マスクロスカット試験によってアルミニウムがその下のインプリント成型硬化体から剥がれるか剥がれないかを確認した。
1マスも剥離しない場合を○
1マスでも剥離した場合を×
と判断した。
【0079】
(5)インクジェット描画性
実施例9の光硬化性樹脂組成物を、インクジェット塗出機として、
インクジェットヘッド:コニカミノルタ社製 KM512、
X−Yステージ:武蔵エンジニアリング製 SHOT MASTER 500
を用いて、直径100μm、高さ3μmのドットを、130μm間隔で、縦100点、横100点が分布するパターン描画をした。
【0080】
〔インプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造条件〕
成分A1、A2、A3、B及びCとして、以下の化合物を使用した。
成分A1:UV−7605B(商品名、日本合成化学)(6官能ウレタンアクリレート)
成分A1:式(3)で表される化合物(6官能ウレタンアクリレート)
成分A1:アートレジンUN−9000H(商品名、根上工業)(6官能ウレタンアクリレート(分子量5000))
成分A1:アートレジンUN−904(商品名、根上工業)(10官能ウレタンアクリレート(分子量4900))
成分A2:BZ(商品名、共栄社化学)(ベンジルメタクリレート)
成分A3:UV−7510B(商品名、日本合成化学)(3官能ウレタンアクリレート)
成分A3:UV−7461TE(商品名、日本合成化学)(2〜3官能ウレタンアクリレート)
成分A3:IB(商品名、新中村化学)(イソボロニルメタクリレート)
成分A3:150D(商品名、大阪有機)(テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル)
成分B:Irgacure−184(商品名、BASF)(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(以下、I−184と略す)
成分B:IrgacureI−819(商品名、BASF)(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)(以下、I−819と略す)
成分C:KBM503(商品名、信越化学)(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン)
【0081】
(1)実施例1
成分A1として、UV−7605B100重量部、及び、
成分Bとして、I−184を3重量部とI−819を0.5重量部とを、成分A1及び成分Bの合計で0.1kgを、手動にて撹拌した後自転・公転ミキサーあわとり錬太郎(THINKY社製、品番ARV−200)に投入し、1800rpm、室温25℃で3分間混錬して排出したものを実施例1のインプリント用光硬化性樹脂組成物とした。
【0082】
(2)実施例2〜17及び比較例1〜5
成分A、成分B、成分C及び界面活性剤を表1に記載される重量部及び重量%にて、成分A、成分B、成分C及び界面活性剤の合計で0.1kgを、実施例1と同じ条件で混錬して排出したものをそれぞれの例のインプリント用光硬化性樹脂組成物とした。
【0083】
(3)実施例9の光硬化性樹脂組成物を使用することによって、設定したパターンのインクジェット描画をすることができた。
【表1】

【0084】
表1から、本発明のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物は、インプリント成型硬化体を製造する過程において、インプリント成型硬化体の透明性を低下やブリードの発生を抑制しつつ、基材密着性と型剥離性を両立させることができ、透明性が高く、基材密着性に優れたインプリント成型硬化体及びこれらの製造方法を提供できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、
光ラジカル重合開始剤(成分B)
とを含むインプリント成型用光硬化性樹脂組成物であって、
前記成分A中、
光ラジカル反応する官能基を6以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A1)と、
芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー(成分A2)(但し、前記成分A1は除く)の合計の含有量が10〜100重量%であり、
前記成分A1と成分A2の合計中、前記成分A2が0〜90重量%であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分A1と前記成分A2の合計中、前記成分A2が20〜90重量%である請求項1記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、シランカップリング剤(成分C)を含有する請求項1又は2記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記インプリント成型が、インプリント成型され硬化した前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物硬化体上に金属膜を形成する工程を含む請求項3記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記インプリント成型が、基材上にインクジェット描画方式で前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を塗布する工程を有する請求項1〜4いずれか1項記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物の粘度が300mPa・s以下である請求項1〜5いずれか記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物中、界面活性剤の含有量が0.4重量%以下である請求項1〜6いずれか記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を、インプリント成型してなるインプリント成型硬化体。
【請求項9】
光ラジカル重合反応性モノマー及び/又はオリゴマー(成分A)と、
光ラジカル重合開始剤(成分B)
とを配合する工程Xを有するインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
さらに、前記工程Xが、
光ラジカル反応する官能基を6以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(成分A1)と、
芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー(成分A2)(但し、前記成分A1は除く)を配合して前記成分Aを得る工程X1を含有し、
前記成分A中、前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量が10〜100重量%であり、
前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量中、前記成分A2が0〜90重量%であるインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記成分A1と前記成分A2の合計の配合量中、前記成分A2が20〜90重量%である請求項9記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記工程Xが、さらに、シランカップリング剤(成分C)を配合する工程X2を有する請求項9又は10記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法
【請求項12】
インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を製造する工程1、
前記工程1で得たインプリント成型用光硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程2、
前記基材上に塗布されたインプリント成型用光硬化性樹脂組成物をスタンパでする工程3、
前記スタンパされた前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物を光硬化させてインプリント成型硬化体を得る工程4、及び、
前記インプリント成型硬化体をスタンパから剥離する工程5を有するインプリント成型硬化体の製造方法であって、
前記工程1における前記インプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造が、請求項9〜11いずれか記載のインプリント成型用光硬化性樹脂組成物の製造方法によるインプリント成型硬化体の製造方法。
【請求項13】
前記工程2において、
前記工程1で得たインプリント成型用光硬化性樹脂組成物をインクジェット描画方式で基材に塗布する請求項12記載のインプリント成型硬化体の製造方法。
【請求項14】
さらに、前記インプリント成型硬化体上に金属膜を形成する工程6を含む請求項12又は13記載のインプリント成型硬化体の製造方法。

【公開番号】特開2012−214716(P2012−214716A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−55947(P2012−55947)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】