説明

インプリント用硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、並びに、液晶表示装置用部材

【課題】良好なインプリント性と光硬化性を有し、機械的特性や各種耐久性、中でも光硬化性、耐熱性および弾性回復率に優れたインプリント用硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、並びに、液晶表示装置用部材を提供する。
【解決手段】光重合性単量体と、光重合開始剤と、酸化防止剤と、含有する光インプリント用組成物であって前記光重合性単量体の含有量が80〜99質量%であり、前記酸化防止剤の含有量が0.3〜7.質量%であり、前記酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とセミヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物、またはヒンダードアミン系酸化防止剤のみ、のいずれかであることを特徴とするインプリント用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、ならびに、該硬化物を用いた液晶表示装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、光硬化性組成物を用いる光インプリント(例えば、非特許文献2参照)との2通りの技術が提案されている。熱インプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は、多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、下記特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成する熱インプリントの方法が開示されている。
【0003】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光硬化性組成物を光硬化させる光インプリント法では、モールドのプレス時にパターンを転写する材料を加熱する必要がなく、室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント方法などの新しい展開も報告されている。
【0004】
このようなインプリント法においては、以下のようなナノスケールへの応用技術が提案されている。第一の技術としては、高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製等に適用しようとするものである。第二の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合であり、その例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。なお、さらにその他の技術としては、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、μ−TAS(Micro - Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第三の技術としては、高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィに代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製等に適用しようとするものもある。前述の技術を含め、これらの応用に関するインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0005】
前記第一の技術における高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化の要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを満たすのが困難となってきている。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術として、インプリントリソグラフィ技術、特にナノインプリントリソグラフィ技術(光ナノインプリント法)を用いることが提案された。例えば、下記特許文献1には、シリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造をパターン転写によって形成するナノインプリント技術が開示されている。この流れに伴って半導体集積回路の作製にナノインプリントリソグラフィを適用するため、モールドと樹脂との剥離性、インプリント均一性、パターン転写精度などをはじめとした性質の検討が活発化し始めている。
【0006】
前記第二の技術における液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットデイスプレイへの光インプリント法の応用例について説明する。LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴って、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとしてインプリントリソグラフィが、近年注目されており、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。また、LCDなどの構造部材として用いられる透明保護膜材料や、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサーなどに対しても、インプリント法の応用が検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、上述のエッチングレジストとは異なり、最終的にフラットディスプレイパネル等のディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
【0007】
従来のフォトリソグラフィ技術を適用した永久膜としては、例えば、液晶パネルのTFT基板上に設けられる保護膜や、R,G、B層間の段差を低減しITO膜のスパッタ製膜時の高温処理に対する耐性を付与するためにカラーフィルタ上に設けられる保護膜等が挙げられる。これらの保護膜(永久膜)の形成においては、塗布膜の均一性、200℃を超える加熱処理後の高い光透過性、耐擦傷性等の種々の特性が要求されているため、これらの特性を満たすインプリント用硬化性組成物の開発が求められている。また、前記液晶ディスプレイに用いられるスペーサーは、一般には、カラーフィルタ形成後または前記カラーフィルタ用保護膜形成後に、カラーフィルタ基板上に光硬化性組成物を用いてフォオトリソグラフィによって10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。このような前記液晶ディスプレイに用いられるスペーサーには、硬度、パターン精度等のほか、特に高弾性回復率が要求されており、これらの特性を満たすインプリント用硬化性組成物の開発が求められている。
【0008】
さらに、インプリント法においては、パターンが形成されたモールド表面凹部のキャビティ内におけるインプリント用硬化性組成物の流動性を高める必要がある。また、モールドとレジストとの間の剥離性をよくしつつ、レジストと基材(基板、支持体)との間の密着性をよくする必要がある。
【0009】
以上のように、インプリントリソグラフィに用いられる材料の要求特性は適用する用途によって異なる場合が多い。しかし、インプリント用組成物に関し、例えば粘度に関する要望の記載は従来からあるものの、各用途に適合させるための材料の設計指針についての報告例は、これまでになかった。
【0010】
したがって、永久膜としての主要技術課題としては、パターン精度、耐熱性、硬度など多くの課題が挙げられる。インプリント用硬化性組成物を永久膜として適用した場合においても、従来のアクリル樹脂などを用いたレジストと同様に、(1)パターン転写精度(インプリントリソグラフィにおけるインプリント性)、(2)耐熱性、(3)硬化性の付与が重要である。
【0011】
光インプリント用硬化性組成物特有の課題としては、上記(1)〜(3)の性能以外に、機械的特性の1つとして永久膜としての使用に耐えうるような(4)高弾性回復率の付与が重要である。さらに、インプリント用硬化性組成物の組成物を設計する場合、上記(1)〜(4)の点に加えて、同時に(5)モールドの凹部へのレジストの流動性を確保し、無溶剤もしくは少量の溶剤使用下での低粘度化(5mPa.s以下が好ましい)が必要となること、(6)電気回路の構造部材として使用するために電圧特性を改善すること、を考慮する必要があり、組成物設計の技術的難易度が一層高くなる。
【0012】
近年、退色抑制を目的として、酸化防止剤をインプリント用硬化性組成物に用いる提案がなされている(特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、実際に酸化防止剤をインプリント用硬化性組成物に用いる検討は未だなされていないのが現状である。
【0013】
また、従来酸化防止剤をその他の用途の光硬化性組成物に添加することが検討されている。例えば、光ディスク用接着剤組成物において貼り合わせる金属面の酸化を防止し、接着剤の接着力を高めることを目的とした例が挙げられる(特許文献5)。同文献では光硬化性組成物中に、酸化防止剤を0.2質量%弱用いている例が記載されているが、インプリント性、耐熱性、光硬化性、高弾性回復率、低粘度化、電圧特性などのインプリント用硬化性組成物に求められる特性を満たすことを示唆するような記載はない。特に、酸化防止剤を0.2質量%弱用いている例では組成物の粘度が380mPa.s(25℃)となっており、特許文献5に記載の組成物は低粘度化が求められるインプリント用硬化性組成物には応用しえないものであった。
【0014】
また、粘度を改善することを目的として、活性光線硬化型インクジェットインク用組成物に酸化防止剤を0.15質量%添加する例が報告されている(特許文献6)。しかしながら、同文献では粘度の改善に関する記述はあるものの、インプリント性、耐熱性、光硬化性、高弾性回復率および電圧特性に関しては記載が無い。
【0015】
特許文献5や特許文献6に記載のとおり、光硬化性樹脂組成物に酸化防止剤を添加する公知文献の目的は、空気中の酸素による酸化を防止する目的や、低粘度化する目的であり、従来それ以上の詳細な検討はなされていなかった。また、熱硬化性樹脂に酸化防止剤を添加する公知文献の目的も、加熱時における酸化による樹脂の変色を抑制する程度であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】特開2008−105414号公報
【特許文献4】特開2008−92099号公報
【特許文献5】特開2002−256228号公報
【特許文献6】特開2006−124636号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の課題に鑑みて、上記の特許文献6に記載されている組成物をインプリント用途にそのまま用いたところ、耐熱性、弾性回復率および電圧特性の面で、劣るものであることがわかった。
【0019】
本発明の目的は、良好なインプリント性と光硬化性を有し、機械的特性や各種耐久性、中でも光硬化性、耐熱性および弾性回復率に優れたインプリント用硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、並びに、液晶表示装置用部材を提供することである。より具体的な本発明の目的は、特にフラットパネルディスプレイ等の透明保護膜やスペーサーなどの永久膜に好適なインプリント用硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題のもと、本願発明者らが鋭意検討を行った結果、特定量の酸化防止剤をインプリント用硬化性組成物中に含有させることにより、上記(1)〜(6)の特性をすべて満たす組成物、その中でも特に(4)高弾性回復率が得られる組成物を設計できることを見出した。すなわち、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
【0021】
[1] A)光重合性単量体と、B)光重合開始剤と、C)酸化防止剤と、含有する光インプリント用組成物であって前記A)光重合性単量体の含有量が80〜99質量%であり、前記C)酸化防止剤の含有量が0.3〜7質量%であり、前記C)酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とセミヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物、またはヒンダードアミン系酸化防止剤のみ、のいずれかであることを特徴とするインプリント用硬化性組成物。
[2] 前記酸化防止剤がセミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみからなることを特徴とする[1]に記載のインプリント用硬化性組成物。
[3] A)光重合性単量体と、B)光重合開始剤と、C)酸化防止剤と、含有する光インプリント用組成物であって前記A)光重合性単量体の含有量が80〜99質量%であって、前記C)酸化防止剤の含有量が0.3〜7質量%であり、前記C)酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物、または、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物であることを特徴とするインプリント用硬化性組成物。
[4] 前記酸化防止剤がセミヒンダードフェノール系とチオエーテル系の混合物であることを特徴とする[3]に記載のインプリント用硬化性組成物。
[5] 前記酸化防止剤の含有量が0.5〜5質量%であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のインプリント用組成物。
[6] 弾性回復率が70%以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のインプリント用組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
[8] [7]に記載の硬化物を含むことを特徴とする液晶表示装置用部材。
[9] [1]〜[7]のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、
を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
[10] さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする[9]に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加熱硬化後のパターン精度、表面硬度、光透過性および耐熱性に優れたインプリント用硬化性組成物、これを用いた硬化物およびその製造方法、並びに、液晶表示装置用部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0024】
また、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”を表し、“(メタ)アクリル”は“アクリル”および“メタクリル”を表し、“(メタ)アクリロイル”は“アクリロイル”および“メタクリロイル”を表す。さらに、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”は同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“官能基”は重合に関与する基をいう。
また、本発明でいうインプリントとは、およそ数十nmから数十μmのサイズのパターン転写をいい、ナノインプリントも含むが、ナノオーダーのものに限定されるものではない。
また、本明細書中において、“ヒンダードフェノール系酸化防止剤”と“セミヒンダードフェノール系”は重複しない概念であり、明確に区別される。
【0025】
[インプリント用硬化性組成物]
本発明のインプリント用硬化性組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある)は、光重合性単量体と、光重合開始剤と、酸化防止剤とを含有する光インプリント用組成物であり、前記光重合性単量体の含有量が80〜99質量%であり、前記酸化防止剤の含有量が0.3〜7質量%である。さらに、本発明のインプリント用硬化性組成物の第一の態様では、前記酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とセミヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物、またはヒンダードアミン系酸化防止剤のみ、のいずれかであることを特徴とする。一方、本発明のインプリント用硬化性組成物第二の態様では、前記酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物、または、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物であることを特徴とする。
本発明の組成物は、特定の範囲の量の光重合性単量体と光重合開始剤とに加えて特定の範囲の量の酸化防止剤を含有することで、インプリント性、光硬化性、耐熱性、電圧特性を同時に高いレベルで達成し、さらに、弾性回復率をも高いレベルにすることが可能となった。従来の酸化防止剤の機能から弾性回復率を高める効果は予想することができないことから、特に弾性回復率が高まったことは驚くべきことであった。
【0026】
また、本発明のインプリント用硬化性組成物は、光インプリントリソグラフィ(光ナノインプリントリソグラフィを含む)に広く用いることができ、以下のような特徴を有するものとすることができる。
(1)本発明の組成物は、室温での溶液流動性に優れるため、モールド凹部のキャビティ内に該組成物が流れ込みやすく、大気が取り込まれにくいためバブル欠陥を引き起こすことがなく、モールド凸部、凹部のいずれにおいても光硬化後に残渣が残りにくい。
(2)本発明の組成物を硬化した後の硬化膜は、機械的性質に優れ、塗膜と基材との密着性に優れ、かつ、塗膜とモールドとの剥離性に優れるため、モールドを引き剥がす際にパターン崩れや塗膜表面に糸引きが生じて表面荒れを引き起こすことがないため良好なパターンを形成できる(良好なインプリント性)。
(3)塗布均一性に優れるため、大型基材への塗布・微細加工分野などに適する。
(4)光硬化性、耐熱性、弾性回復率などの機械特性が高いので、各種の永久膜としてとして好適に用いることができる
(5)電圧特性に優れるため、電子回路用材料などに適する、等の特徴を有するものとすることができる。
【0027】
このため、本発明のインプリント用硬化性組成物は、例えば、これまで展開が難しかった半導体集積回路や液晶表示装置用部材(特に、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材の微細加工用途等)に好適に適用でき、その他の用途、例えば、プラズマディスプレイパネル用隔壁材、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーデイスク等の磁気記録媒体、回折格子ヤレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、光学フィルムや偏光素子、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用リブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶等の作製にも幅広く適用することができる。
【0028】
(光重合性単量体)
本発明のインプリント用硬化性組成物には光重合性単量体が含有される。本発明の組成物は、光重合性単量体を含有することで、光照射後に良好なパターン精度(インプリント性)を得ることができる。本発明において、「光重合性単量体」とは、光照射によって重合反応を起こし,高分子量体を形成することのできる単量体を意味する。
【0029】
本発明で用いられる光重合性単量体の主な機能としては、組成物の粘度調整や、硬化膜の機械特性を目的に適宜選択される。組成物の粘度調整の観点からは、低粘度の光重合性単量体を使用することが好ましい。また、硬化物のパターン精度を向上させるためには組成物の粘度が、通常、18mPa・s以下であることが好ましく、その目的では、できうる限り低粘度の重合性単量体を用いることが好ましい。光重合性単量体の粘度は、分子量、分子間相互作用等と関連がありことから、光ラジカル重合性単量の低粘度化は、低分子量、低分子間相互作用を考慮することで達成することができる。
【0030】
本発明で用いられる光重合性単量体は、組成物の粘度の調整の観点から、100mPa・s以下の粘度を有する化合物が好ましく、50mPa・s以下が更に好ましく、10mPa・s以下が特に好ましい。
本発明における光重合性単量体の重量平均分子量は、組成物の粘度の調整の観点から、500以下が好ましく、100〜400がさらに好ましく、100〜300が特に好ましい。
【0031】
また、本発明における光重合性単量体が有する光ラジカル重合性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基 スチリル基が好ましい。本発明の組成物に含まれる光重合性単量体は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、本発明の組成物は、光ラジカル重合性官能基を有する光重合性単量体と、これを有しない光重合性単量体(例えば、カチオン性重合性基を有する重合性単量体)とを併用してもよい。
【0032】
また、硬化膜の機械特性付与の観点からは、2官能以上の多官能単量体の使用が好ましい。このような多官能単量体は必然的に分子量が大きくなるため粘度が高く、組成物の高粘度化によりパターン精度が低下することもある。そこで、本発明に用いられる重合性単量体は、粘度の調整用の低粘度モノマーと硬化膜の機械特性付与の為の多官能モノマーとの組み合わせや、本発明におけるオキセタン化合物や官能性酸無水物の組み合せを考慮して、総合的に選択される。
【0033】
本発明のインプリント用硬化性組成物において、全組成物中における光重合性単量体の含有量は、光照射後のパターン精度の観点から、20〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。但し、本発明における光重合性単量体の含有量は、上述の通り、本発明の組成物中におけるラジカル重合性官能基を有する化合物の含有量を考慮して決定される。
【0034】
本発明では、シルセスキオキサン化合物を1種類のみ含んでいても、2種類以上含んでいてもよい。また、本発明の組成物中、シルセスキオキサン化合物は、1〜40質量%の割合で含んでいることが好ましく、1〜20質量%の割合で含んでいることがより好ましい。このような範囲とすることにより、組成物粘度と硬化膜の機械特性を両立できる。
【0035】
本発明における光重合性単量体としては、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を挙げることができる。具体的には、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、エチルオキセタニルメチルアクリレート、が例示される。
さらに、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシランが例示される。
これらの中でも特に、アクリレートモノマーが本発明に好適に用いられる。
【0036】
また、本発明における光重合性単量体としては、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体も好ましく用いることができる。前記2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(ジ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、が例示される。
【0037】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0038】
本発明における光重合性単量体としては、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体も好ましく用いることができる。前記多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0040】
本発明で用いる光重合性単量体としては、ビニルエーテル化合物を用いてもよい。
前記ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0041】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、本発明で用いる光重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0043】
その他、本発明の1官能重合体と併用できるスチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。さらに、本発明においては、ビニルナフタレン誘導体を使用することもでき、例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等を挙げることができる。
【0044】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッソ原子を有する化合物も本発明における光重合性単量体として使用または本発明における光重合性単量体と併用することができる。
【0045】
さらに、本発明に用いられる光重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを配合できる。例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0046】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、本発明に用いられる光重合性単量体として、光ラジカル重合性官能基を有するオキセタン環を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」または「オキセタンモノマー」という場合がある)を光重合性単量体として含有してもよい。本発明の組成物が、オキセタン環を有する化合物を含有する場合、加熱により優れた硬度を得ることができるため好ましい。
本発明におけるオキセタン環を有する化合物に含まれるオキセタン環構造(オキセタニル基)の数としては、硬化速度と硬化膜物性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がさらに好ましい。
また、本発明におけるオキセタン環を有する化合物の総炭素数としては、組成物の粘度低減の観点から、5〜50が好ましく、5〜20がさらに好ましい。
本発明におけるオキセタン環を有する化合物の分子量としては、組成物の粘度低減の観点から、100〜1000が好ましく、100〜400がさらに好ましい。
【0047】
また、本発明における光重合性単量体としてのオキセタン化合物は、光ラジカル重合性官能基を有する。前記光ラジカル重合性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基,スチリル基が好ましい。本発明におけるオキセタン環を有する化合物に含まれる光ラジカル重合性基の数としては、光照射時のパターン精度と基板との密着性の観点から、1〜4が好ましく、1〜2がさらに好ましい。本発明の組成物に含まれるオキセタン環を有する化合物は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、本発明の組成物は、光ラジカル重合性官能基を有するオキセタン化合物と、これを有しないオキセタン化合物とを併用してもよい。光ラジカル重合性官能基を有する化合物(x)と、これを有しないオキセタン化合物(y)とを併用する場合、その含有比(x:y、x基準)としては、光照射後のパターン精度と加熱時の未反応成分揮発抑制の観点から、1/2〜5/1が好ましく、1/1〜2/1がさらに好ましい。
【0048】
なお、本発明のインプリント用硬化性組成物は、本発明の趣旨に反しない限り、光重合性単量体以外としてオキセタン環を有する化合物を含んでいてもよい。
【0049】
本発明のインプリント用硬化性組成物において、全組成物中におけるオキセタン化合物の含有量は、光照射後のパターン精度の観点から、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。但し、本発明におけるオキセタン環を有する化合物が光ラジカル重合性官能基を有する場合、その含有量は、上述の通り、本発明の組成物中におけるラジカル重合性官能基を有する化合物の含有量を考慮して決定することができる。この際、光ラジカル重合性官能基を有するオキセタン化合物の含有量は、他のラジカル重合性官能基を有する化合物の含有量との関係や光ラジカル重合性官能基を有しないオキセタン化合物の含有量との関係から適宜決定される。
【0050】
本発明におけるオキセタニル基を有する化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(商品名:OXT−101、東亞合成(株)製)、1,4−ビス[[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル]ベンゼン(商品名:OXT−121、東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(商品名:OXT−211、東亞合成(株)製)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(商品名:OXT−221、東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(商品名:OXT−212、東亞合成(株)製)、4,4’−ビス[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(商品名:ETERNACOLL OXBP、宇部興産(株)製)、シルセスキオキサン変性型オキセタン(商品名:OX−SQ、東亞合成(株)製)、オキセタン(メタ)アクリレート(商品名:OXE−10、30、大阪有機化学(株)製)等が挙げられる。
【0051】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、官能性酸無水物を含有してもよい。本発明における酸無水物化合物は、前記オキセタン化合物の硬化剤としての機能を有する。本発明の組成物が官能性酸無水物を含有する場合、加熱硬化後に高い表面硬度を得ることができるため好ましい。
本発明において「官能性酸無水物」とは、オキソ酸2分子が脱水縮合した化合物であって、加熱などにより他の官能基と化学結合するものを意味する。
前記官能性酸無水物としては、例えば、無水フタル酸類、無水シトラコン酸類、無水コハク酸類、無水プロピオン酸類、無水マレイン酸類、無水酢酸類等が挙げられ、粘度低減と組成物安定性の観点から、無水フタル酸類、無水マレイン酸類が好ましい。
【0052】
また、本発明における官能性酸無水物の総炭素数としては、組成物の粘度低減の観点から、10〜100が好ましく、10〜50がさらに好ましい。
本発明における官能性酸無水物の分子量としては、組成物の粘度低減の観点から、100〜1000が好ましく、100〜500がさらに好ましい。
【0053】
また、前記官能性酸無水物は、光重合性単量体を前記範囲にする観点から、光ラジカル重合性官能基を有することが好ましい。前記光ラジカル重合性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基が好ましい。本発明における官能性酸無水物に含まれる光ラジカル重合性基の数としては、光照射時のパターン精度と基板との密着性の観点から、1〜3が好ましく、1〜2がさらに好ましい。本発明の組成物に含まれる官能性酸無水物は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、本発明の組成物は、光ラジカル重合性官能基を有する官能性酸無水物と、これを有しない官能性酸無水物とを併用してもよい。光ラジカル重合性官能基を有する化合物(q)と、これを有しない官能性酸無水物(w)とを併用する場合、その含有比(q:w、q基準)としては、光照射後のパターン精度と加熱時の未反応成分揮発抑制の観点から、1/2〜5/1が好ましく、1/1〜2/1がさらに好ましい。
【0054】
本発明のインプリント用硬化性組成物において、全組成物中における官能性酸無水物の含有量は、光照射後のパターン精度の観点から、5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。但し、本発明における官能性酸無水物が光ラジカル重合性官能基を有する場合、その含有量は、上述の通り、本発明の組成物中におけるラジカル重合性官能基を有する化合物の含有量を考慮して決定することができる。この際、光ラジカル重合性官能基を有する官能性酸無水物の含有量は、他のラジカル重合性官能基を有する化合物の含有量との関係や光ラジカル重合性官能基を有しない官能性酸無水物の含有量との関係から適宜決定される。
【0055】
また、本発明のインプリント用硬化性組成物において、本発明におけるオキセタン化合物(a)と官能性酸無水物(b)との含有比(a:b、a基準)としては、未反応官能基の量をできるだけ少なくする観点から、3/1〜1/3が好ましく、2/1〜1/2がさらに好ましい。
【0056】
本発明における官能性酸無水物としては、例えば、メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(商品名:エピクロンB570、大日本インキ化学工業(株)製)、メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名:エピクロンB650、大日本インキ化学工業(株)製)、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(商品名:MHAC−P、日立化成工業(株)製)、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名:リカシッドM H−700、新日本理化(株)製)、無水シトラコン酸、ドデセン無水コハク酸(商品名:リカシッドDDSA、新日本理化(株)製)、グリセロールビス(無水トリメリテート)モノアセテート(商品名:リカシッドMTA−10、新日本理化(株)製)、日本ゼオン(株)製のクインハード−200(商品名)、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピキュアYH−306(商品名)、Aldrich試薬(P25205、294152,B9750、B4600、412287、N818、N1607、330736)等が挙げられる。
【0057】
次に、本発明における光重合性単量体の好ましいブレンド形態について説明する。
【0058】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、組成物中の光重合性単量体の総含有量が80〜99質量%である。“光重合性単量体”とは、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性官能基を有する化合物である。例えば、前記オキセタン環を有する化合物のオキセタン(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル基がラジカル重合性官能基であることから、前記光重合性単量体に該当する。
【0059】
本発明の組成物中における光重合性単量体の総含有量が80質量%未満であると、光照射を行っても十分に硬化できず、モールドパターンを精度よく転写することができないうえ、硬化膜の硬度などの物性も不十分である。また、本発明の組成物中におけるラジカル重合性官能基を有する化合物の総含有量が99質量%を越えると、光ラジカル重合開始剤や界面活性剤などの添加剤が十分に機能せず、パターン精度や硬化膜の物性が悪化してしまう。パターン精度と硬化膜物性の観点から、本発明の組成物中におけるラジカル重合性官能基を有する化合物の総含有量としては、60〜99質量%が好ましく、80〜98質量%がさらに好ましい。
【0060】
前記1官能の重合性不飽和単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明の組成物の粘度を下げるのに有効であり、通常、全重合性不飽和単量体の10質量%以上添加される。好ましくは、20〜80質量%、より好ましくは、25〜70質量%、特に好ましくは、30〜60質量%の範囲で添加される。
前記1官能の重合性不飽和単量体は、反応性希釈剤としてより良好であるため、全重合性不飽和単量体の10質量%以上添加されることが好ましい。
前記不飽和結合含有基を2個有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、全重合性不飽和単量体の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは、70質量%以下の範囲で添加される。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは1〜95質量%、より好ましくは3〜95質量%、特に好ましくは、5〜90質量%の範囲で添加される。前記不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは、60質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
【0061】
(光ラジカル重合開始剤)
本発明のインプリント用硬化性組成物には、光ラジカル重合開始剤が含まれる。本発明の組成物は、光照射によりラジカル重合反応を開始させる光ラジカル重合開始剤を含むことで、光照射後のパターン精度を良好なものとすることができる。光ラジカル重合開始剤本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤の含有量としては、全組成物中、例えば、0.1〜15質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜12質量%であり、特に好ましくは、0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記光ラジカル重合開始剤の割合が0.1質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光ラジカル重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリントリソグラフィ用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本発明の組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶デイスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0062】
本発明で用いる光ラジカル重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。
【0063】
本発明で使用される光ラジカル重合開始剤としては、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959:(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184:(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)50:(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651:(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369:(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907:(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819:(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800:(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800:(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01:(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173:(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242:(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO:(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L:(2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド)、日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M:(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414:(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717:(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606:(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン:(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン:(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン:(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113:(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4‘−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイル ビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等が挙げられる。
【0064】
(酸化防止剤)
本発明のインプリント用硬化性組成物には、酸化防止剤が含まれる。
本発明のインプリント用硬化性組成物の第一の態様では、前記酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とセミヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物、またはヒンダードアミン系酸化防止剤のみ、のいずれかであることを特徴とする。
一方、本発明のインプリント用硬化性組成物第二の態様では、前記酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物、または、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物であることを特徴とする。
本発明の特徴として、上記の本発明の2つの態様で酸化防止剤を用いることで、光硬化性、耐熱性、弾性回復率が向上することなる点が挙げられる。特に、酸化防止剤を本発明の上記2つの態様で酸化防止剤を添加することで、本発明の組成物を効果させた後の硬化膜の弾性回復率が向上することは、従来の酸化防止剤を添加していた光硬化性樹脂組成物分野の技術を鑑みるに、驚くべきことであった。
なお、ヒンダードフェノール系またはセミヒンダードフェノール系酸化防止剤以外のフェノール系酸化防止剤は、重合阻害が大きいため、好ましくない。
【0065】
本発明のインプリント用硬化性組成物に用いられる酸化防止剤の含有量は、全組成物中、0.3〜7質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1.5〜5質量%である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。前記酸化防止剤の含有量が0.3質量%以上であると耐熱性、弾性回復率が向上するため好ましく、7質量%以下であると光硬化性が向上するため好ましい。また、前記酸化防止剤の含有量0.5質量%以上であると、さらに耐熱性および弾性回復率が向上するためより好ましく、5質量%以下であると、さらに光硬化性が向上するためより好ましい。さらに、前記酸化防止剤の含有量が1.5質量%以上であるとよりさらに耐熱性および弾性回復率が向上するため、1.5〜5質量%であることが特に好ましい。
【0066】
本発明におけるヒンダードフェノール系酸化防止剤とは以下の一般式(1)で表される構造を有する物質のことである。
【0067】
【化1】

【0068】
一般式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、tert-ブチル基または−C(R45)−R6を表し、R3は水素原子、または、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、L1は一価の置換基を表す。R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R6は下記一般式(2)で表される構造の置換基を表す。
【0069】
【化2】

【0070】
一般式(2)中、X1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリレート基、カルボキシル基を表し、X1がヒドロキシル基の場合R7はtert-ブチル基を表し、X1がヒドロキシル基以外の場合R7は水素原子、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R8は水素原子、または、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、L2は一価の置換基を表し、*は結合部位を表す。
【0071】
一般式(1)において、前記R1および前記R2は、tert-ブチル基であることが好ましい。
前記R3は、水素原子であることが好ましい。
前記R4およびR5は水素原子であることが好ましい。
前記L1は、水素原子、または、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基であることが好ましい。より好ましくは、メチル基、アルコキシ基もしくはアミノ基を置換基として有する炭素数1〜4のアルキル基である。
前記R6が複数ある場合は、複数のR6はそれぞれ異なっても、同一であってもよい。
【0072】
一般式(2)において、前記X1は水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリレート基、カルボキシル基であることが好ましく、ヒドロキシル基であることがより好ましい。
前記X1がヒドロキシル基以外の場合前記R7は、水素原子、メチル基、tert-ブチル基であることが好ましく、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記R8は、水素原子であることが好ましい。
前記L2は、前記L1の好ましい範囲と同様である。
【0073】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等が挙げられる。なお、これら具体例の例示は本発明を制限するものではない。
【0074】
本発明におけるセミヒンダードフェノール系酸化防止剤とは以下の一般式(3)で表される構造を有する物質のことである。
【0075】
【化3】

【0076】
一般式(3)中、R11は水素原子またはメチル基を表し、R12はtert-ブチル基または−C(R1415)−R16を表し、R13は水素原子、または、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、L11は一価の置換基を表す。R14およびR15はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R16は下記一般式(4)で表される構造の置換基を表す。
【0077】
【化4】

【0078】
一般式(4)中、X11は水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリレート基、カルボキシル基を表し、X11がヒドロキシル基の場合R17は水素原子またはメチル基を表し、X11がヒドロキシル基以外の場合R17は水素原子、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R18は水素原子、または、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、L12は一価の置換基を表し、*は結合部位を表す。
【0079】
一般式(3)において、前記R11は、メチル基であることが好ましい。
前記R12は、tert-ブチル基であることが好ましい。
前記R13は、水素原子であることが好ましい。
前記R14およびR15は水素原子であることが好ましい。
前記L11は、前記L1の好ましい範囲と同様である。
【0080】
一般式(4)において、前記X11は水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリレート基、カルボキシル基であることが好ましく、ヒドロキシル基であることがより好ましい。
前記X11がヒドロキシル基の場合前記R17は、tert-ブチル基であることが好ましい。
前記X11がヒドロキシル基以外の場合前記R17は、水素原子、メチル基、tert-ブチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
前記R8は、水素原子であることが好ましい。
前記L2は、前記L1の好ましい範囲と同様である。
【0081】
セミヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチル−4−メチルフェノール、6−tert−ブチル−4−メチルフェノール、6−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(4,6−ジメチルフェノール)等が挙げられる。なお、これら具体例の例示は本発明を制限するものではない。
【0082】
本発明におけるヒンダードアミン系酸化防止剤としては特に限定されないが、下記一般式(5)で表される構造を部分構造として有する化合物が例示される。
【0083】
【化5】

【0084】
一般式(5)中、R21は一価の置換基を表し、L21は一価の置換基を表す。
【0085】
前記R21は水素原子、または、炭素数1〜6の分枝もしくは直鎖の置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基であることが好ましく、水素原子またはアルコキシ基であることがより好ましい。
前記L21の好ましい範囲は、前記L1の好ましい範囲と同様である。
【0086】
ヒンダードアミン系酸化防止剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチル{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔(6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、N,N′−4,7−テトラキス〔4,6−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が挙げられる。なお、これら具体例の例示は本発明を制限するものではない。
【0087】
本発明におけるチオエーテル系酸化防止剤とは、一般式R−S−R'で表される化合物である。ここでRおよびR'はそれぞれアルキル基またはアルキルエステル基であり、アルキルエステル基が好ましい。
前記チオエーテル系酸化防止剤の例としては、ジートリデシルーチオジプロピオネートなどを挙げることができる。なお、これら具体例の例示は本発明を制限するものではない。
【0088】
なお、本発明の範囲外であるフェノール系酸化防止剤は以下の一般式(6)で表される構造を有する物質のことである。
【0089】
【化6】

【0090】
一般式(6)中、R31およびR32は水素原子またはメチル基を表し、R33およびL31は一価の置換基を表す。
【0091】
本発明のインプリント用硬化性組成物第一の態様では、前記酸化防止剤がセミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみからなることが、より酸化防止能力を高め、重合阻害を低減し、光硬化性を向上させる観点から、より好ましい。
また、本発明のインプリント用硬化性組成物第二の態様では、前記酸化防止剤がセミヒンダードフェノール系とチオエーテル系の混合物であることが、より酸化防止能力を高め、重合阻害を低減し、光硬化性を向上させる観点から、より好ましい。
【0092】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。
【0093】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名 Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
また、前記酸化防止剤は公知の方法に従って合成してもよい。
【0094】
(界面活性剤)
本発明のインプリント用硬化性組成物は界面活性剤を含んでいてもよい。本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との両方または、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・シリコーン系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、“フッ素・シリコーン系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のインプリント硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のインプリント組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0095】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガファック171、172、173、178K、178A、(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガファックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0096】
(その他の成分)
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて、非重合性分子、ポリマー成分、離型剤、有機金属カップリング剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、光塩基発生剤、着色剤、エラストマー粒子、光増感剤、塩基性化合物、および、その他流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
本発明の組成物には、密着性の付与や硬化膜物性の制御を目的として、前記非重合性分子を添加することができる。このような非重合性分子の添加量は、光重合性分子の添加量を本発明の範囲に制御できる範囲で決めることができる。このような非重合性分子として、例えば、セバシン酸ジオクチルのようなアルキルエステル、(チオ)ウレア化合物、有機微粒子、無機微粒子などを挙げることができる。
【0097】
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマー、トリメトキシシリルプロピルアクリレートの加水分解縮合物が挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては、組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
本発明のインプリント用硬化性組成物はインプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性化合物との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。また、パターン形成性の観点から樹脂成分はできる限り少ない法が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0098】
剥離性をさらに向上する目的で、本発明の組成物には、離型剤を任意に配合することができる。具体的には、本発明の組成物の層に押し付けたモールドを、樹脂層の面荒れや版取られを起こさずにきれいに剥離できるようにする目的で添加される。離型剤としては従来公知の離型剤、例えば、シリコーン系離型剤、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等の固形ワックス、弗素系、リン酸エステル系化合物等が何れも使用可能である。また、これらの離型剤をモールドに付着させておくこともできる。
【0099】
前記シリコーン系離型剤は、本発明で用いられる前記光硬化性樹脂と組み合わせた時にモールドからの剥離性が特に良好であり、版取られ現象が起こり難くなる。前記シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とする離型剤であり、例えば、未変性または変性シリコーンオイル、トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサン、シリコーン系アクリル樹脂等が該当し、一般的にハードコート用組成物で用いられているシリコーン系レベリング剤の適用も可能である。
【0100】
前記変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖および/または末端を変性したものであり、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性等が挙げられる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性等が挙げられる。
一つのポリシロキサン分子に前記したような変性方法の2つ以上を行うこともできる。
【0101】
前記変性シリコーンオイルは組成物成分との適度な相溶性があることが好ましい。特に、組成物中に必要に応じて配合される他の塗膜形成成分に対して反応性がある反応性シリコーンオイルを用いる場合には、本発明の組成物を硬化した硬化膜中に化学結合よって固定されるので、当該硬化膜の密着性阻害、汚染、劣化等の問題が起き難い。特に、蒸着工程での蒸着層との密着性向上には有効である。また、(メタ)アクリロイル変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等の、光硬化性を有する官能基で変性されたシリコーンの場合は、本発明の組成物と架橋するため、硬化後の特性に優れる。
【0102】
前記トリメチルシロキシケイ酸を含有するポリシロキサンは表面にブリードアウトし易く剥離性に優れており、表面にブリードアウトしても密着性に優れ、金属蒸着やオーバーコート層との密着性にも優れている点で好ましい。
前記離型剤は1種類のみ或いは2種類以上を組み合わせて添加することができる。
【0103】
離型剤を本発明のインプリント用硬化性組成物に添加する場合、組成物全量中に0.001〜10質量%の割合で配合することが好ましく、0.01〜5質量%の範囲で添加することがさらに好ましい。離型剤の含有量が0.01〜5質量%の範囲内にあると、モールドとインプリント用硬化性組成物層との剥離性向上効果が向上し、さらに組成物の塗工時のはじきによる塗膜面の面荒れの問題が生じたり、製品において基材自身や近接する層、例えば、蒸着層の密着性を阻害したり、転写時における皮膜破壊等(膜強度が弱くなりすぎる)が生じるのを抑制することができる。
【0104】
本発明の組成物には、微細凹凸パターンを有する表面構造の耐熱性、強度、或いは、金属蒸着層との密着性を高めるために、有機金属カップリング剤を配合してもよい。また、有機金属カップリング剤は、熱硬化反応を促進させる効果も持つため有効である。前記有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。
【0105】
本発明の組成物に用いることのできるシランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;および、その他のシランカップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0106】
前記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0107】
前記ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0108】
前記アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0109】
前記有機金属カップリング剤は、本発明のインプリント用硬化性組成物の固形分全量中に0.001〜10質量%の割合で任意に配合できる。有機金属カップリング剤の割合を0.001質量%以上とすることにより、耐熱性、強度、蒸着層との密着性の付与の向上についてより効果的な傾向にある。一方、有機金属カップリング剤の割合を10質量%以下とすることにより、組成物の安定性、成膜性の欠損を抑止できる傾向にあり好ましい。
【0110】
本発明のインプリント用硬化性組成物には、貯蔵安定性等を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、本発明の組成物の全量に対して任意に0.001〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0111】
本発明のインプリント用硬化性組成物には紫外線吸収剤を用いることもできる。前記紫外線吸収剤の市販品としては、Tinuvin P、234、320、326、327、328、213(以上、チバガイギー(株)製)、Sumisorb110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、インプリント用硬化性組成物の全量に対して任意に0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0112】
本発明のインプリント用硬化性組成物には光安定剤を用いることもできる。前記光安定剤の市販品としては、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバガイギー(株)製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられる。光安定剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0113】
本発明のインプリント用硬化性組成物には老化防止剤を用いることもできる。前記老化防止剤の市販品としては、Antigene W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。老化防止剤は組成物の全量に対し、0.01〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0114】
本発明のインプリント用硬化性組成物には基板との接着性や膜の柔軟性、硬度等を調整するために可塑剤を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジ(n−ブチル)アジペート、ジメチルスベレート、ジエチルスベレート、ジ(n−ブチル)スベレート等があり、可塑剤は組成物中の30質量%以下で任意に添加することができる。好ましくは20質量%以下で、より好ましくは10質量%以下である。可塑剤の添加効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0115】
本発明のインプリント用硬化性組成物には基板との接着性等を調整するために密着促進剤を添加してもよい。前記密着促進剤として、ベンズイミダゾール類やポリベンズイミダゾール類、低級ヒドロキシアルキル置換ピリジン誘導体、含窒素複素環化合物、ウレアまたはチオウレア、有機リン化合物、8−オキシキノリン、4−ヒドロキシプテリジン、1,10−フェナントロリン、2,2‘−ビピリジン誘導体、ベンゾトリアゾール類、有機リン化合物とフェニレンジアミン化合物、2−アミノ−1−フェニルエタノール、N−フェニルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンおよび誘導体、ベンゾチアゾール誘導体などを使用することができる。密着促進剤は、組成物中の好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。密着促進剤の添加は効果を得るためには、0.1質量%以上が好ましい。
【0116】
本発明の組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も添加することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。熱重合開始剤は、組成物中の好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下である。熱重合開始剤の添加は効果を得るためには、3.0質量%以上が好ましい。
【0117】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、パターン形状、感度等を調整する目的で、必要に応じて光塩基発生剤を添加してもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が好ましいものとして挙げられる。
【0118】
本発明のインプリント用硬化性組成物には、塗膜の視認性を向上するなどの目的で、着色剤を任意に添加してもよい。着色剤は、UVインクジェット組成物、カラーフィルタ用組成物およびCCDイメージセンサ用組成物等で用いられている顔料や染料を本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。本発明で用いることができる顔料としては、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物であり、具体的には鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、金属複合酸化物を挙げることができる。有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 11, 24, 31, 53, 83, 99, 108, 109, 110, 138, 139,151, 154, 167、C.I.Pigment Orange 36, 38, 43、C.I.Pigment Red 105, 122, 149, 150, 155, 171, 175, 176, 177, 209、C.I.Pigment Violet 19, 23, 32, 39、C.I.Pigment Blue 1, 2, 15, 16, 22, 60, 66、C.I.Pigment Green 7, 36, 37、C.I.Pigment Brown 25, 28、C.I.Pigment Black 1, 7および、カーボンブラックを例示できる。着色剤は組成物の全量に対し、0.001〜2質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0119】
また、本発明のインプリント用硬化性組成物では、機械的強度、柔軟性等を向上するなどの目的で、任意成分としてエラストマー粒子を添加してもよい。
本発明の組成物に任意成分として添加できるエラストマー粒子は、平均粒子サイズが好ましくは10nm〜700nm、より好ましくは30〜300nmである。例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α−オレフィン/ポリエン共重合体、アクリルゴム、ブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体などのエラストマーの粒子である。またこれらエラストマー粒子を、メチルメタアクリレートポリマー、メチルメタアクリレート/グリシジルメタアクリレート共重合体などで被覆したコア/シェル型の粒子を用いることができる。エラストマー粒子は架橋構造をとっていてもよい。
【0120】
エラストマー粒子の市販品としては、例えば、レジナスボンドRKB(レジナス化成(株)製)、テクノMBS−61、MBS−69(以上、テクノポリマー(株)製)等を挙げることができる。
【0121】
これらエラストマー粒子は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。本発明の組成物におけるエラストマー成分の含有割合は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。
【0122】
さらに本発明のインプリント用硬化性組成物には、光ラジカル重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J. V. Crivello, Adv. in Polymer Sci, 62, 1 (1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0123】
本発明の組成物には、硬化収縮の抑制、熱安定性を向上するなどの目的で、塩基性化合物を任意に添加してもよい。塩基性化合物としては、アミンならびに、キノリンおよびキノリジンなど含窒素複素環化合物、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、光重合成モノマーとの相溶性の面からアミンが好ましく、例えば、オクチルアミン、ナフチルアミン、キシレンジアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルアニリン、キヌクリジン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0124】
本発明の組成物には、光硬化性向上のために、連鎖移動剤を添加してもよい。前記連鎖移動剤としては、具体的には、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)を挙げることができる。
【0125】
なお、本発明のインプリント用硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0126】
また、本発明のインプリント用硬化性組成物には溶剤を用いることもできる。前記有機溶剤の含有量は、全組成物中、3質量%以下であることが好ましい。すなわち本発明の組成物は、好ましくは前記のような1官能およびまたは2官能の他の単量体を反応性希釈剤として含むため、本発明の組成物の成分を溶解させるための有機溶剤は、必ずしも含有する必要がない。本発明の組成物では、有機溶剤の含有量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。このように、本発明の組成物は、必ずしも、有機溶剤を含むものではないが、反応性希釈剤では、溶解しない化合物などを、本発明の組成物として溶解させる場合や粘度を微調整する際など、任意に添加してもよい。本発明の組成物に好ましく使用できる有機溶剤の種類としては、光インプリント用硬化性組成物やフォトレジストで一般的に用いられている溶剤であり、本発明で用いる化合物を溶解および均一分散させるものであればよく、かつこれらの成分と反応しないものであれば特に限定されない。
【0127】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソフチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類等のエステル類などが挙げられる。
さらに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。これらは1種を単独使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
これらの中でも、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが特に好ましい。
【0128】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、表面張力が、18〜30mN/mの範囲にあることが好ましく、20〜28mN/mの範囲にあることがより好ましい。このような範囲とすることにより、表面平滑性を向上させるという効果が得られる。
なお、本発明のインプリント用硬化性組成物は、調製時における水分量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調製時における水分量を2.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0129】
本発明のインプリント用硬化性組成物の粘度について説明する。本発明における粘度は特に述べない限り、25℃における粘度をいう。本発明のインプリント用硬化性組成物は、25℃における粘度が、3〜18mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは5〜15mPa・sであり、特に好ましくは7〜12mPa・sである。本発明の組成物の粘度を3mPa・s以上とすることにより、基板塗布適性の問題や膜の機械的強度の低下が生じにくい傾向にある。具体的には、粘度を3mPa・s以上とすることによって、組成物の塗布の際に面上ムラを生じたり、塗布時に基板から組成物が流れ出たりするのを抑止できる傾向にあり、好ましい。また、粘度が3mPa・s以上の組成物は、粘度3mPa・s未満の組成物に較べて調製も容易である。一方、本発明の組成物の粘度を18mPa・s以下とすることにより、微細な凹凸パターンを有するモールドを組成物に密着させた場合でも、モールドの凹部のキャビティ内にも組成物が流れ込み、大気が取り込まれにくくなるため、バブル欠陥を引き起こしにくくなり、モールド凸部において光硬化後に残渣が残りにくくなり好ましい。また、本発明の組成物の粘度が18mPa・s以下であると、微細なパターンの形成に粘度が影響を与えにくい。
一般的に、組成物の粘度は、粘度の異なる各種の単量体、オリゴマー、ポリマーをプレンドすることで調整可能である。本発明のインプリント用硬化性組成物の粘度を前記範囲内に設計するためには、単体の粘度が5.0mPa・s以下の組成物を添加して粘度を調整することが好ましい。
【0130】
[硬化物の製造方法]
次に、本発明のインプリント用硬化性組成物を用いた硬化物(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のインプリント用硬化性組成物を基板または支持体(基材)上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。特に本発明においては、硬化物の硬化度を向上させるために、更に、光照射後にパターン形成層を加熱する工程を含むことが好ましい。即ち、本発明のインプリント用硬化性組成物は、光および熱によって硬化させることが好ましい。
本発明の硬化物の製造方法によって得られた硬化物は、パターン精密度、硬化性、光透過性に優れ、特に、液晶カラーフィルタの保護膜、スペーサー、その他の液晶表示装置用部材として好適に用いることができる。
【0131】
具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射および加熱により硬化させる。光照射および加熱は複数回に渡って行ってもよい。本発明のパターン形成方法(硬化物の製造方法)による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0132】
なお、本発明のインプリント用硬化性組成物の応用として、基板または、支持体上に本発明の組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることにより、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜を作製することもできる。
【0133】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが望ましく、その濃度としては、1000ppm以下、望ましくは100ppm以下である。
【0134】
以下において、本発明のインプリント用硬化性組成物を用いた硬化物の製造方法(パターン形成方法(パターン転写方法))について具体的に述べる。
本発明の硬化物の製造方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する。
本発明のインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布する際の塗布方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、塗布することにより形成することができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。尚、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。
【0135】
本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG(スピンオングラスガラス)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。さらに、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0136】
次いで、本発明の硬化物の製造方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを(押圧)押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンをパターン形成層に転写することができる。
【0137】
本発明のインプリント用硬化性組成物を用いた光インプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押圧し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、インプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0138】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0139】
本発明の透明基板を用いた場合で使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0140】
本発明の硬化物の製造方法で用いられるモールドは、インプリント用硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコーン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0141】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明の硬化物の製造方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることによって、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部のインプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0142】
本発明の硬化物の製造方法において、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、インプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいて、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明の硬化物の製造方法中、光照射時における好ましい真空度は、10−1Paから常圧の範囲である。
【0143】
本発明のインプリント用硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0144】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2以上であると、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生するのを防止できる。また。露光量が1000mJ/cm2以下であると組成物の分解による永久膜の劣化を抑制することができる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0145】
本発明の硬化物の製造方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程(ポストベーク工程)を含むのが好ましい。尚、加熱は、光照射後のパターン形成層からモールドを剥離する前後のいずれに行ってもよいが、モールドの剥離後にパターン形成層を加熱するほうが好ましい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0146】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、インプリントリソグラフィ用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
【0147】
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとインプリントリソグラフィ用硬化性組成物の密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。本発明において、好ましい真空度は、10−1Paから常圧の範囲で行われる。
【0148】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、上記各成分を混合した後、例えば、孔径0.05μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することができる。インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用する材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されない。
【0149】
[硬化物]
上述のように本発明の硬化物の製造方法によって形成された本発明の硬化物は、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。また、前記永久膜は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、より永久膜の変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【0150】
本発明の硬化物の弾性回復率は、液晶表示装置用部材として好適に用いる観点から、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0151】
[液晶表示装置用部材]
また、本発明のインプリント用硬化性組成物は、半導体集積回路、記録材料、液晶表示装置用部材として適用することができ、その中でも液晶表示装置用部材であることが好ましく、フラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することがより好ましい。
本発明のインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明の硬化物の製造方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。
【実施例】
【0152】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0153】
[実施例1]
下記表2に示す組成で、下記表1に記載の光重合性単量体M1〜M3、下記光ラジカル重合開始剤P−1、下記界面活性剤W−1およびW−2、下記酸化防止剤AO1を加えて実施例1のインプリント用硬化性組成物を調製した。なお、表2中の数値は質量%である。
【表1】

【0154】
[実施例2〜66、比較例1〜21および25〜37]
下記表2〜6の組成とした以外は実施例1の組成物と同様にして、これらの組成物を得た。
【0155】
[比較例22〜24]
特開2006−124636号公報の表18に記載のNo.8、No.9およびNo.11のうち、顔料を除いた比較例22〜24の組成物を調製した。前記No.8では酸化防止剤を含有せず、前記No.9ではヒンダードフェノール系酸化防止剤としてスミライザーMDP−S(住友化学工業製)を0.15質量%含有し、前記No.11ではヒンダードアミン系酸化防止剤としてホスタビンN−24(クラリアント社製)を0.15質量%含有している。
【0156】
[インプリント用硬化性組成物の評価]
各実施例および比較例の組成物をについて、インプリント性、光硬化性、耐熱性、弾性回復率および電圧特性について下記評価方法に従って測定・評価を行った。結果を下記表2〜表6に示す。
【0157】
<インプリント性>
レジストに転写されたパターンがモールドの形状をどの程度再現できているかを評価した。具体的には、各組成物について、膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートした。スピンコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯(ランプパワー2000mW/cm2)を光源とするインプリント装置にセットし、モールド加圧力0.8kN、露光中の真空度は10Torr((約1.33×104Pa)の条件で、モールドとして、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmのポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)製の「SILPOT184」を80℃60分で硬化させたもの)を材質とするものを用いて押圧し、さらに、モールドの表面から240mJ/cm2の条件で露光した。露光後、モールドを離し、レジストパターンを得た。
更に、得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱して完全に硬化させた。転写後のパターン形状を走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡にて観察し、パターン形状を以下の基準に従って評価した。
5:モールド形状の転写率95%以上であった。
4:モールド形状の転写率90%以上、95%未満であった。
3:モールド形状の転写率80%以上、90%未満であった。
2:モールド形状の転写率70%以上、80%未満であった。
1:モールド形状の転写率70%未満であった。
【0158】
<光硬化性の評価>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で、10mW、300mJ/cm2の条件で露光した。その後、膜の表面にプラスチックフィルムを押し付け、プラスチックフィルムを剥がした際の跡の残り具合(タック性)を評価し、光硬化性を測定した。
5:跡がまったく残らない。
4:跡が残るが、数秒で消える。
3:跡が残るが、数分で消える。
2:跡が残り、時間がたっても消えない。
1:膜が硬化していない。
【0159】
<耐熱性>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で、10mW、300mJ/cm2の条件で露光した。その後、オーブンで230℃、15分間加熱して硬化させた。オーブンでベークする前後の膜厚を測定し、その減少率を求め下記の基準に従って加熱による膜の減少率(膜減り)について評価した。
5:230℃−150minのベーク前後の膜減りが5%以下であった。
4:230℃−150minのベーク前後の膜減りが5%以上、10%未満であった。
3:230℃−150minのベーク前後の膜減りが10%以上、15%未満であった。
2:230℃−150minのベーク前後の膜減りが15%以上、20%未満であった。
1:230℃−150minのベーク前後の膜減りが20%以上であった。
【0160】
<弾性回復率の評価>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で10mW−200mJで露光した。その後オーブンで230℃、30分間加熱して硬化させた膜を、20x30x4μmの柱形状として、島津製作所製DUH−W201にて弾性回復率を測定した。
5:弾性回復率が80%以上であった。
4:弾性回復率が75%以上、80%未満であった。
3:弾性回復率が70%以上、75%未満であった。
2:弾性回復率が60%以上、75%未満であった。
1:弾性回復率が60%未満であった。
【0161】
<電圧特性の評価>
各組成物を膜厚3.0μmとなるようにガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せず、窒素雰囲気下で10mW−200mJで露光した。その後オーブンで230℃、30分間加熱して硬化させた膜の体積抵抗を2重リング法にて測定し、電圧特性を測定した。得られた電圧特性を下記評価にしたがって評価した。
5:体積抵抗が1×10E15Ω・m以上であった。
4:体積抵抗が5×10E14Ω・m以上、1×10E15Ω・m未満であった。
3:体積抵抗が1×10E14Ω・m以上、5×10E14Ω・m未満であった。
2:体積抵抗が1×10E13Ω・m以上、1×10E14Ω・m未満であった。
1:体積抵抗が1×10E13Ω・m未満であった。
【0162】
ここで、実施例1〜7および比較例26は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のみを用いる態様で酸化防止剤の添加量を変化させたものである。実施例8〜14および比較例27は、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみを用いる態様で酸化防止剤の添加量を変化させて比較したものである。実施例15〜21および比較例28は、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみを用いる態様で酸化防止剤の添加量を変化させて比較したものである。実施例22〜28および比較例29は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤との混合物を用いる態様で酸化防止剤の添加量を変化させて比較したものである。実施例29〜35および比較例30は、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤との混合物を用いる態様で酸化防止剤の添加量を変化させて比較したものである。実施例36、37および比較例17〜21は、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみを用いる態様において、さらに非重合性分子C1を添加して添加量を増加させた場合の比較を行ったものである。実施例38〜44、比較例25および比較例31は、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみを用いる態様において、実施例8〜14の光重合性単量体M1〜M3を、光重合性オキセタン化合物M4〜M6に変更して添加量を変化させたときの比較を行ったものである。また、比較例1は酸化防止剤を添加しない場合の比較を行った。比較例2は光重合開始剤を添加しない場合の比較を行った。比較例3〜8は、フェノール系酸化防止剤を用いて添加量を変化させ、本発明実施例の特定の酸化防止剤の効果と比較した。比較例9および10はフェノール系酸化防止剤を用いて光重合開始剤の添加量を増加させた場合の比較例である。比較例11〜16は、チオエーテル系酸化防止剤のみを単独で用いて添加量を変化させ、本発明実施例の特定の酸化防止剤の効果と比較した。特開2006−124636号公報の表18に記載のNo.8、No.9およびNo.11のうち顔料を除いた比較例22〜24と、本願の実施例1〜44とを全般的に比較した。
【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4】


【0166】
上記表4中、比較例2の耐熱性、弾性回復率および電圧特性は測定不能であった。
【0167】
【表5】

【0168】
【表6】

【0169】
上記表2〜表4からわかるように、特開2006−124636号公報の表18に記載のNo.8、No.9およびNo.11のうち顔料を除いた比較例22〜24に対し、実施例の各組成物はいずれもインプリント性、光硬化性、耐熱性、弾性回復率および電圧特性が良好であった。なお、オキセタン化合物を用いた実施例38〜44は、その他の実施例と比較して電圧特性の改善効果が低かった。
一方、比較例1は酸化防止剤を含まないため、耐熱性および弾性回復率が低評価であった。比較例2は光重合開始剤を含まないため、非常に評価が低かった。比較例3〜10からフェノール系酸化防止剤のみを用いた場合、明らかに光硬化性の評価が下がることが判明し、これは耐熱性や弾性回復率を犠牲にして光重合剤の添加量を増やした比較例9および10でも本発明で求める性質の硬化膜を得ることはできなかった。比較例11〜16より、チオエーテル系酸化防止剤のみを用いた場合、明らかに耐熱性と弾性回復率が低評価となった。実施例36、37および比較例17〜21の比較から、例えセミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみを用いる態様であっても、光重合性単量体の添加量が本発明の範囲内(80質量%〜99質量%)であると、光硬化性、耐熱性および弾性回復率が同時に改善されることが判明し、これは顕著な効果であった。なお、単官能、二官能および三官能モノマーの配合量を微調整した比較例19〜21においても耐熱性や弾性回復率は向上させることはできなかったことから、光重合性単量体の添加量が重要な要素であることがわかった。実施例38〜44、比較例25および比較例31の比較から、酸化防止剤の添加量が本願発明の範囲内(0.3〜7質量%)であれば、耐熱性および弾性回復率が顕著に改善されることが判明した。
また、表5および表6からも、酸化防止剤の含量が高い本発明の実施例は、酸化防止剤の含量が少ない比較例よりも耐熱性および弾性回復率が顕著に改善されることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)光重合性単量体と、
B)光重合開始剤と、
C)酸化防止剤と、
を含有する光インプリント用組成物であって
前記A)光重合性単量体の含有量が80〜99質量%であり、
前記C)酸化防止剤の含有量が0.3〜7質量%であり、
前記C)酸化防止剤が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とセミヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物、またはヒンダードアミン系酸化防止剤のみ、のいずれかであることを特徴とするインプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
前記酸化防止剤がセミヒンダードフェノール系酸化防止剤のみからなることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
A)光重合性単量体と、
B)光重合開始剤と、
C)酸化防止剤と、
を含有する光インプリント用組成物であって
前記A)光重合性単量体の含有量が80〜99質量%であって、
前記C)酸化防止剤の含有量が0.3〜7質量%であり、
前記C)酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物、または、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤の混合物であることを特徴とするインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤がセミヒンダードフェノール系とチオエーテル系の混合物であることを特徴とする請求項3に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
前記酸化防止剤の含有量が0.5〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインプリント用組成物。
【請求項6】
弾性回復率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインプリント用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を含むことを特徴とする液晶表示装置用部材。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を基材上に塗布してパターン形成層を形成する工程と、
前記パターン形成層表面にモールドを押圧する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、
を含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項10】
さらに、光が照射された前記パターン形成層を加熱する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の硬化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−34513(P2010−34513A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128778(P2009−128778)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】