説明

インプリント用金型、インプリント方法、及びインプリント装置

【課題】厚みが10μm以下で、かつ、残膜の平行度を4’未満とする成形品を作製可能なインプリント用金型、インプリント方法、及びインプリント装置を提供する。
【解決手段】プリントパターンが形成されたインプリント形成面と、該インプリント形成面に延在する延在面とを備え、前記インプリント形成面は、前記延在面に対する凹部に形成されていることを特徴とするインプリント用金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型表面に形成された微細形状のパターンを被成形体に転写するインプリント用金型、インプリント方法、及び該インプリント用金型を搭載したインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細パターンを形成できるインプリント技術が注目を浴びている。
【0003】
インプリント技術とは、金型の表面に形成した凹凸の微細パターンを樹脂材料に押し付けて転写し、または、該微細パターンをエネルギー硬化型樹脂に転写する技術である。
【0004】
インプリント技術は、金型のインプリント領域の高アスペクト比の微細パターンを、高い精度をもって大面積で低コストに転写することが可能であるという特長を有する。
【0005】
かかるインプリント技術によれば、金型の表面のナノメートルオーダーの微細パターンを被成形体の表面へ転写できる一方、成形品の全体形状、特に成形品の厚みは金型の全体形状で決定される。
【0006】
そこで、インプリント技術を採用しつつ、成形品の厚みを任意に制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1には、金型にスペーサを取り付け、該スペーサによって成形品の厚みを任意に規定するインプリント装置が開示されている。スペーサの高さは、2〜1000μmであり、スペーサの高さと同等の厚みの成形品を作製できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2006−519711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
昨今、インプリント技術には、インプリントの残膜を含めて、成形品の厚みが10μm以下で、かつ、成形品の残膜の平行度を4’未満とする高精度化が要求されている。かかる精度を満たすためには、1辺が1mmの光学素子の場合、1μm以下の厚みばらつき(平行度)を達成する必要がある。
【0010】
一方、特許文献1に記載のインプリント用金型によれば、スペーサを用いるので、成形品の厚みや残膜の平行度は、スペーサの大きさが小さい程向上する。
【0011】
従って、成形品の厚みや残膜の平行度の限界はスペーサの微小化の限界に一致する。
【0012】
しかるに、特許文献1の記載によればスペーサの厚みは大きいので、成形品の薄型化、平行度の確保には限界がある。
【0013】
本発明は、厚みが10μm以下で、かつ、残膜の平行度を4’未満とする成形品を作製可能なインプリント用金型、インプリント方法、及びインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0015】
1.プリントパターンが形成されたインプリント形成面と、該インプリント形成面に延在する延在面とを備え、
前記インプリント形成面は、前記延在面に対する凹部に形成されていることを特徴とするインプリント用金型。
【0016】
2.前記プリントパターンの断面は露出されており、
前記プリントパターンの断面を覆い、一面が前記延在面と同一平面内に存在するガイドを有することを特徴とする前記1に記載のインプリント用金型。
【0017】
3.プリントパターンが形成されたインプリント形成面を備えるインプリント用金型と、変形可能な被成形体とを接触させることにより、前記被成形体を前記プリントパターンの形状に成形するインプリント方法であって、
前記インプリント用金型は、前記インプリント形成面に延在する延在面を備え、
前記インプリント形成面は、前記延在面に対する凹部に形成されていることを特徴とするインプリント方法。
【0018】
4.前記プリントパターンの断面は露出されており、
前記プリントパターンの断面を覆い、一面が前記延在面と同一平面内に存在するガイドを有することを特徴とする前記3に記載のインプリント方法。
【0019】
5.前記被成形体はエネルギー硬化型樹脂であり、
前記被成形体を前記プリントパターン上にインクジェット法により塗布する工程を有することを特徴とする前記3または4に記載のインプリント方法。
【0020】
6.前記1または2に記載のインプリント用金型を有することを特徴とするインプリント装置。
【発明の効果】
【0021】
厚みが10μm以下で、かつ、残膜の平行度を4’未満とする成形品を作製可能なインプリント用金型、及びインプリント装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】回折格子のインプリント用金型1の斜視図である。
【図2】回折格子のインプリント用金型1の断面図である。
【図3】延在面3が曲面のインプリント用金型1の斜視図である。
【図4】円筒面を備える光学素子のインプリント用金型100、110の斜視図である。
【図5】所定サイズ、所定厚みに形成された平板11の斜視図である。
【図6】回折格子の切削の様子を示す図である。
【図7】ダイヤモンドバイト21をy軸方向に直進駆動する様子を示す図である。
【図8】インプリント用金型100の切削の方法を説明する図である。
【図9】円筒面の接線Tとダイヤモンドバイト21との関係を示す図である。
【図10】インプリント工程のフロー図である。
【図11】ディスペンサ31により2P樹脂32を塗布する様子を示す図である。
【図12】インクジェット方式により2P樹脂32を塗布する様子を示す図である。
【図13】インプリント用金型1上の2P樹脂32に透明ガラス基板36を接触させた状態を示す図である。
【図14】透明ガラス基板36の背面から2P樹脂32にUV光を照射する状態を示す図である。
【図15】インプリント用金型1から成形体37を剥離する様子を示す図である。
【図16】ダイシングソーを用いて成形体37を切断する説明図である。
【図17】個片化された成形体39の斜視図である。
【図18】図4(a)で示したインプリント用金型100を用いて上記と同様にインプリント工程を経て得た成形体40の斜視図である。
【図19】成形体40をカットして個片化されたシリンドリカルレンズCL1の斜視図である。
【図20】図4(b)で示したインプリント用金型110を用いて上記と同様にインプリント工程を経て得た成形体42の斜視図である。
【図21】成形体42をカットして個片化された円筒面44を備えるシリンドリカルレンズCL2の斜視図である。
【図22】凹状の円筒反射面46を備えるミラー45の斜視図である。
【図23】シリンドリカルレンズCL2を切断するラインLを示す図である。
【図24】基板50が、インプリント形成面2の一部のみに対面する状態を示す図である。
【図25】側面にガイド52a,52bを設けたインプリント用金型1の斜視図である。
【図26】インプリント形成面2の全てに基板50を対面させて配置する様子を示す図である。
【図27】基板50を重力方向下側に配置する様子を示す図である。
【図28】基板50に透明ガラス基板36を用いた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して第1の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、回折格子のインプリント用金型1の斜視図である。
【0025】
図2は、回折格子のインプリント用金型1の断面図である。
【0026】
インプリント用金型1は、プリントパターンが形成されたインプリント形成面2と、該インプリント形成面2に延在する延在面3とを備え、インプリント形成面2は、延在面3に対するインプリント用金型1の凹部に形成されている。
【0027】
インプリント形成面2は、被成形体(図示せず)に接触して、被成形体にプリントパターンを転写する面である。図1に示したインプリント形成面2には、プリントパターンとしてブレーズ型の回折格子が形成されている。回折格子の形状は、ブレーズ型に限られず、対象形状(例えば矩形形状)の回折格子でもよい。また、回折格子のピッチや深さは、場所によって異なっていてもよいし、回折光にレンズ機能等の特性をもたせてもよい。
【0028】
図1に示したインプリント用金型1の各寸法abcは、それぞれ5〜20mmが望ましい。
【0029】
インプリント形成面2は、インプリント用金型1の側面6にインプリント形成面2のプリントパターンの断面が露わになっている。
【0030】
インプリント形成面2は、延在面3に対してインプリント用金型1の凹部に形成されている。インプリント形成面2が延在面3に対してインプリント用金型1の凹部に形成されているとは、インプリント形成面2の最も外側の部位が、延在面3に対してインプリント用金型1側にあるということである。図1,2では、回折格子の山部の頂点5は、延在面3に対してインプリント用金型1側に位置している。延在面3と頂点5との間隔eは正の値を有し、望ましくは5μm以下である。
【0031】
回折格子のピッチpと高さhはそれぞれ、50〜1000nmであり、アスペクト比(p:h)は、(0.5:1)〜(3:1)程度が望ましい。回折格子のピッチpは小さいほど回折効率を高く制御できるので望ましい。回折格子の高さhは、用途に応じて、また、成形物が透過型回折格子か反射型回折格子かによって所望の回折効率が得られるように、使用波長に対して最適化することが望ましい。
【0032】
なお、延在面3の面積の大きさは特に問われない。延在面3の幅sは、小さくても良い。また延在面3は平面が望ましいが、図3に示すように曲面でもよい。
【0033】
プリントパターンは、回折格子に限らない。図4は、円筒面を備える光学素子のインプリント用金型100,110の斜視図である。図4(a)は、凹面状の円筒面を備える光学素子のインプリント用金型100の斜視図であり、図4(b)は、凸面状の円筒面を備える光学素子のインプリント用金型110の斜視図である。
【0034】
かかるインプリント用金型100,110を用いれば、円筒面を備えた光学素子を成形することができる。円筒面を備えた光学素子とは、例えばシリンドリカルレンズや、円筒反射面を備えたミラーなどである。
【0035】
次いで、インプリント用金型の製造方法を説明する。
【0036】
インプリント用金型用に、所定サイズ、所定厚みに形成された平板11を用意し(図5参照)、切削法によってプリントパターンを形成する。
【0037】
インプリント用金型に用いられる材質としては、例えばSi、SiO、SiC、Ni、NiP、Al合金、ステンレス鋼等を用いることができる。
【0038】
プリントパターンの切削について説明する。最初にインプリント用金型1について説明する。
【0039】
インプリント用金型1の作製の際には、作製する回折格子の形状に合わせたダイヤモンドバイト21を用意する。頂点の角度がθ1の回折格子の作製には、図6に示すように、刃先20の角度がθ1のダイヤモンドバイト21を用意する。かかるダイヤモンドバイト21を図示しない回転駆動部を用いて図中の座標系のy軸方向を軸として回転させる。このように、刃先20の角度がθ1のダイヤモンドバイト21をy軸方向を回転軸として回転させることで、平板11上にダイヤモンドバイト21の刃先20の形状と同じ断面の形状を備えた溝部22が形成される。そして、ダイヤモンドバイト21を前述のように回転させながら、直進駆動部(図示せず)を用いて平板11とダイヤモンドバイト21とを相対的にx軸方向に直進移動させると、溝部22がx軸方向に延伸され、平板11の端から端までの長さにまで切削される。
【0040】
ダイヤモンドバイト21の刃先20が平板11を切削しない位置にまで離れると、ダイヤモンドバイト21をy軸方向に、図7に示すように、回折格子のピッチpだけ直進駆動部を用いて移動させ、前述と同様に、ダイヤモンドバイト21を回転させながら、直進駆動部を用いて平板11とダイヤモンドバイト21とを相対的にx軸方向に直進移動させる。かかる動作を回折格子の溝の数だけ行うことで、回折格子のプリントパターンを完成させることができる。
【0041】
次いで、インプリント用金型100について説明する。図8は、インプリント用金型100の切削の方法を説明する図である。
【0042】
円筒面101を切削するには円筒面101の形状を備えた刃先を用いることもできるが、高い形状精度を得るには、図5に示したような鋭利な刃先を備えるダイヤモンドバイトを用い、微小ピッチで刃先を移動させて円筒面101を形成することが望ましい。
【0043】
ただし、刃先の角度が形状を規定する箇所があるので、図9に示すように、インプリント形成面2の平面部102と円筒面101とが交わる部分の円筒面の接線Tと、平面部102とが成す各θ2と同じ角度の刃先を備えたダイヤモンドバイト21を採用する。
【0044】
かかるダイヤモンドバイト21を採用し、ダイヤモンドバイト21の先端が円筒面101とインプリント形成面2の平面部102とをなぞるように、平板11とダイヤモンドバイト21と相対的に移動させる。このような方法を用いることで、円筒面のプリントパターンを完成させることができる。
【0045】
なお、インプリント用金型110も同様に作製することができる。
【0046】
次いで、インプリント工程について、インプリント用金型1を例にとり説明する。
【0047】
上記で作製したインプリント用金型1を用いて回折格子をインプリントにより作製する。
【0048】
図10は、インプリント工程のフロー図である。図11は、ディスペンサ31により2P樹脂32を塗布する様子を示す図である。
【0049】
インプリント工程における被成形体とは、インプリント形成面2のプリントパターンを転写して成形する目的物となるべき物である。言い換えれば、プリントパターンをポジ形状とすると、被成形体がプリントパターンのネガ形状に相当する。
【0050】
例えば、液体であって変形可能なエネルギー硬化型樹脂を被成形体として用いることもできるし、加熱により変形可能とされた熱可塑性樹脂を被成形体として用いることもできる。エネルギー硬化型樹脂とは、光エネルギーで硬化する2P樹脂(photo polymer 樹脂)や、熱エネルギーで硬化する熱硬化型樹脂のことを指す。
【0051】
例えばエネルギー硬化型樹脂を用いる場合、エネルギー硬化型樹脂をインプリント形成面2に滴下して、エネルギー硬化型樹脂をインプリント形成面2に接触させ、エネルギー硬化型樹脂でプリントパターンを埋め、エネルギーを供給してエネルギー硬化型樹脂を固化させ、エネルギー硬化型樹脂をインプリント形成面2から剥離することで、プリントの目的物である成形体を得ることができる。
【0052】
エネルギー硬化型樹脂を硬化させる際に、エネルギー硬化型樹脂にプラスティックやガラスの基板を重ねれば、基板上に装荷される状態でプリントの目的物である成形体を得ることができる。
【0053】
また、被成形体に熱可塑性樹脂を用いる場合、加熱された熱可塑性樹脂をインプリント形成面2に接触させ、熱可塑性樹脂でプリントパターンを埋め、加熱後に熱可塑性樹脂をインプリント形成面2から剥離することで、プリントの目的物である成形体を得ることができる。
【0054】
本実施形態においては、例として2P樹脂を被成形体に採用して説明する。
【0055】
最初にステップS1にて、インプリント用金型1のインプリント形成面2上に2P樹脂32を滴下する。照射する光としては一般にUV光が用いられるが樹脂によっては可視光を用いることもできる。なお、光硬化性樹脂の代わりに熱硬化型樹脂を採用しても良い。上記のように、エネルギー硬化性樹脂であれば、光硬化性樹脂または熱硬化型樹脂のどちらでも良い。
【0056】
2P樹脂32を滴下するにはディスペンサ31を用いる。2P樹脂32の滴下量は、成形品の体積を基に硬化時に収縮率等を参考にして決定する。滴下された2P樹脂は表面張力により図11に示すような形状になる。
【0057】
また、ディスペンサ31の代わりにインクジェット方式により2P樹脂32をインプリント形成面2上に塗布してもよいし、マイクロピペット(図示せず)を用いても良い。
【0058】
図12は、インクジェット方式により2P樹脂32を塗布する様子を示す図である。
【0059】
インクジェットヘッドHは、2P樹脂が充填されたインクタンクと、インクノズルと、インクノズルからインクを吐出させるように圧力を発生させる圧力部と、を備える。圧力部には圧電方式、バブルジェット(登録商標)方式を採用できる。圧電方式とは圧電素子を採用した方式であり、バブルジェット(登録商標)方式とは気体の膨張圧を利用した方式である。インクノズルは複数の開口であることが望ましい。
【0060】
このようにインクジェットヘッドHを用いることで、エネルギー硬化性樹脂の塗布位置と塗布量をより精密にコントロールすることが可能となる。
【0061】
また、インクノズルに複数の開口を用いることで、図12に示すように、2P樹脂列Pが形成され、短時間に多くの2P樹脂をインプリント形成面2上に塗布できるので、工程に短縮化に繋がる。また、インクジェットヘッドHを複数用いれば、より短時間にエネルギー硬化性樹脂を塗布することができるので望ましい。
【0062】
次いで、ステップ2にて、透明ガラス基板36を用意し、透明ガラス基板36を2P樹脂32上に接触させる。図13は、インプリント用金型1上の2P樹脂32に透明ガラス基板36を接触させた状態を示す図である。
【0063】
透明ガラス基板36には、他にプラスティック基板を採用してもよい。また、レンズの表面に直接微細パターンを形成させる場合には、透明ガラス基板36の代わりにレンズ自体を用いてもよい。
【0064】
透明ガラス基板36を2P樹脂32上に接触させる際には、透明ガラス基板36の自重で接触させてもよいし、透明ガラス基板36とインプリント用金型1との間に圧力を加えても良い。2P樹脂32の粘度が小さければ自重によって2P樹脂32は回折格子の溝部22へ容易に充填されるが、粘度が高い2P樹脂32を採用する場合には、溝部22に空気層が残る場合もある。そこで、粘度が高い2P樹脂32を採用する場合には、透明ガラス基板36とインプリント用金型1の間に圧力を加えることで、2P樹脂32を回折格子の溝部22へ充填させることができる。
【0065】
次いで、ステップ3にて、2P樹脂32にUV光を所定時間照射し、硬化エネルギーを2P樹脂32に供給して硬化させる。
【0066】
図14は、透明ガラス基板36の背面から2P樹脂32にUV光を照射する状態を示す図である。
【0067】
2P樹脂32はUV光を照射されることにより、重合開始剤の働きにも助けられて樹脂成分が重合して固形化される。2P樹脂32は透明ガラス基板36の表面に接合される。プリントパターンが形成された2P樹脂32が成形体37を成すこととなる。
【0068】
UV光の光強度は、一定であってもよいし、例えば、プリキャア、ポストキュアのように時間の関数として変化させてもよい。2P樹脂32は、UV光源に近い場所から硬化が始まり、UV光源から遠い場所が硬化し切る前に、硬化したUV光源に近い場所にも継続してUV光が照射される。そのため、成形品に変形が生じたり、硬化したUV光源に近い場所に黄濁が生じる場合もあるので、2P樹脂32の厚みはなるべく薄い方が好ましい。また、2P樹脂32の厚みを薄くすると、次ステップの剥離工程において2P樹脂32が部分的に剥離される虞れも少なくなるので好ましい。
【0069】
なお、インプリントの残膜の厚みtは、10μm以下が望ましい。
【0070】
次いで、ステップ4にて、成形体37を剥離する。図15は、インプリント用金型1から成形体37を剥離する様子を示す図である。
【0071】
成形体37をインプリント用金型1から剥離する際には、図示しない剥離装置を用いて透明ガラス基板36の背面に一様に引っ張り圧力をかけてもよいし、透明ガラス基板36の周辺の端部に引っ張り圧力をかけてもよい。また、回折格子の格子ベクトルの垂直方向に沿って回折格子が徐々に剥離されるように、透明ガラス基板36の周辺の端部の図中手前側(または奥側)に引っ張り圧力をかけてもよい。このようにすることで、回折格子が倒れることがなくなり、プリントパターンのネガパターンを忠実に再現できる。
【0072】
次いで、ステップ5にて、成形体37を切断する。図16は、ダイシングソーを用いて成形体37を切断する説明図である。
【0073】
成形体37をダイシングソーの図示しないワーク保持台上に両面テープを用いて固定する。そして図示しない研磨液を流しながら成形体37をy軸上で移動させ、高速回転しているブレード38によって点線に沿って切断する。切断後、ワーク保持台の備えられた図示しない回転機構を用いて成形体37を90度回転させ、同様にブレードを用いて切断する。図17は、かかる方法によって得られた個片化された成形体39の斜視図である。以上でインプリント工程を終了する。
【0074】
以上のように、インプリント用金型1を用いて回折格子をインプリント技術により作製する工程を示したが、透明ガラス基板36とインプリント用金型1とは重力方向で反対側に位置させてもよい。このように、透明ガラス基板36とインプリント用金型1とを重力方向で反対側に位置させる場合には、透明ガラス基板36の上に2P樹脂32を滴下し、さらにその上にインプリント用金型1を配置し、透明ガラス基板36とインプリント用金型1との相対位置を変化させて双方を接触させる。
【0075】
なお、図4で示したインプリント用金型100、110を用いて同様に成形体を作製することができる。
【0076】
図18は、図4(a)で示したインプリント用金型100を用いて上記と同様にインプリント工程を経て得た成形体40の斜視図である。図19は、成形体40をカットして個片化されたシリンドリカルレンズCL1の斜視図である。
【0077】
図20は、図4(b)で示したインプリント用金型110を用いて上記と同様にインプリント工程を経て得た成形体42の斜視図である。図21は、成形体42をカットして個片化された円筒面44を備えるシリンドリカルレンズCL2の斜視図である。
【0078】
また、シリンドリカルレンズCL2を基に、凹状の円筒反射面を備えるミラー45を作製することも可能である。図22は、凹状の円筒反射面46を備えるミラー45の斜視図である。
【0079】
ミラー45は、シリンドリカルレンズCL2の円筒面44に反射膜が形成され、また、円筒面44を分割するように切断されてなる。
【0080】
反射膜にはアルミ、金などの金属や誘電体多層膜が好適である。かかる反射膜は蒸着装置やスパッタ装置などの真空成膜装置で容易に作製できる。図23は、シリンドリカルレンズCL2を切断するラインLを示す図である。かかるラインLに沿って、例えばダイシングソーを用いて切断する。
【0081】
(第2の実施形態)
次いで、第2の実施形態について説明する。
【0082】
インプリント技術によって、小さい成形体を得ようとする場合には、成形体となるべき被成形体を装荷する基板50自体が小さいので、インプリント形成面2の一部のみに基板50が対面する状態となる場合がある。
【0083】
図24は、基板50が、インプリント形成面2の一部のみに対面する状態を示す図である。
【0084】
基板50の被成形面の長手方向に山部が沿うように回折格子を成形しようとすると、インプリント用金型1上には、基板50を支持する箇所がないので、基板50は、インプリント形成面2に直に接触してしまい、インプリント形成面2を傷つける虞がある。そこで、基板50がインプリント形成面2に接触しないように、インプリント用金型1の側面であって、インプリント形成面2の断面に沿うようにガイド52a,52bを設ける。
【0085】
図25は、側面にガイド52a,52bを設けたインプリント用金型1の斜視図である。
【0086】
インプリント用金型1の図中の座標系における2つのyz面にガイド52a,52bを、例えばネジ54を用いて固定する。各ガイドのxy面は、延在面3と同一平面を成すように配置する。このように、各ガイドのxy面を、延在面3と同一平面を成すように配置することで、図1で示したように、延在面3とインプリント形成面2との所望の間隔eを成すように設定でき、インプリント形成面2を傷つけることがない。
【0087】
しかし、図25のように一つの基板50をインプリント用金型1上に装荷した際には、インプリント形成面2の一部が露出することとなる。このような場合には、UV露光後には、基板50に接合されない2P樹脂32はインプリント形成面2上に残るので、残った2P樹脂32を別途除去する必要がある。そこで、図26で示すように、インプリント形成面2の全てに対面させるように基板50を配置し、インプリントを行えば、複数の成形体を得ることができるので好ましい。
【0088】
また、インプリント形成面2の全てに対面させるように基板50を配置する場合には、図27に示すように、基板50を重力方向下側に配置してもよい。延在面3と、ガイド52a,52bのxy面とが、同一平面内に存在するので、延在面3と、ガイド52a,52bのxy面とが、複数並べられた基板50のインプリント形成面2に対向する面に密着する。そのため、成形体の残膜の厚みtの値を正確に再現できる。
【0089】
なお、図28に示すように、基板50は、前述した透明ガラス基板36のように、インプリント形成面2の全体に対向するものを用いても良い。
【0090】
その他の工程については、第1の実施形態におけるインプリント工程と同じであるので、説明を省略する。
【0091】
以上のように、本実施形態によれば、プリントパターンが形成されたインプリント形成面と、該インプリント形成面に延在する延在面とを備え、前記インプリント形成面は、前記延在面に対する凹部に形成されていることから、延在面とインプリント形成面とを一つの平板から切削で作製するので、延在面とインプリント形成面とを所望の小さい間隔で作製できるので、小さい厚みの残膜を有する成形体を作製できる。これにより、厚みが10μm以下で、かつ、残膜の平行度を4’未満とする成形品を作製可能なインプリント用金型を提供できる。
【0092】
また、他の実施形態によれば、前記プリントパターンの断面は露出されており、前記プリントパターンの断面を覆い、一面が前記延在面と同一平面内に存在するガイドを有することから、基板がインプリント形成面の一部のみに対面する状態であっても、インプリント形成面2を傷つけることがなくインプリント工程を実施できるインプリント用金型を提供できる。
【0093】
また、他の実施形態によれば、プリントパターンが形成されたインプリント形成面を備えるインプリント用金型と、変形可能な被成形体とを接触させることにより、前記被成形体を前記プリントパターンの形状に成形するインプリント方法であって、前記インプリント用金型は、前記インプリント形成面に延在する延在面を備え、前記インプリント形成面は、前記延在面に対する凹部に形成されていることから、延在面とインプリント形成面とを一つの平板から切削で作製するので、延在面とインプリント形成面とを所望の小さい間隔で作製できるので、小さい厚みの残膜を有する成形体を作製できる。これにより、厚みが10μm以下で、かつ、残膜の平行度を4’未満とする成形品を作製可能なインプリント方法を提供できる。
【0094】
また、他の実施形態によれば、前記プリントパターンの断面は露出されており、前記プリントパターンの断面を覆い、一面が前記延在面と同一平面内に存在するガイドを有することから、基板がインプリント形成面の一部のみに対面する状態であっても、インプリント形成面2を傷つけることがないインプリント方法を提供できる。
【0095】
また、他の実施形態によれば、前記被成形体はエネルギー硬化型樹脂であり、前記被成形体を前記プリントパターン上にインクジェット法により塗布する工程を有することから、エネルギー硬化性樹脂の塗布位置と塗布量をより精密にコントロールすることが可能となるインプリント方法を提供できる。
【0096】
また、他の実施形態によれば、上記のインプリント用金型を有することから、厚みが10μm以下で、かつ、残膜の平行度を4’未満とする成形品を作製可能であり、また、インプリント形成面2を傷つけることのないインプリント装置を提供できる。
【符号の説明】
【0097】
1 インプリント用金型
2 インプリント形成面
3 延在面
5 頂点
6 側面
11 平板
20 刃先
21 ダイヤモンドバイト
22 溝部
31 ディスペンサ
32 2P樹脂
36 透明ガラス基板
38 ブレード
37,39,40,42 成形体
44 円筒面
45 ミラー
46 円筒反射面
50 基板
54 ネジ
100,110 インプリント用金型
101 円筒面
102 平面部
52a,52b ガイド
CL1,CL2 シリンドリカルレンズ
e 間隔
H インクジェットヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントパターンが形成されたインプリント形成面と、該インプリント形成面に延在する延在面とを備え、
前記インプリント形成面は、前記延在面に対する凹部に形成されていることを特徴とするインプリント用金型。
【請求項2】
前記プリントパターンの断面は露出されており、
前記プリントパターンの断面を覆い、一面が前記延在面と同一平面内に存在するガイドを有することを特徴とする請求項1に記載のインプリント用金型。
【請求項3】
プリントパターンが形成されたインプリント形成面を備えるインプリント用金型と、変形可能な被成形体とを接触させることにより、前記被成形体を前記プリントパターンの形状に成形するインプリント方法であって、
前記インプリント用金型は、前記インプリント形成面に延在する延在面を備え、
前記インプリント形成面は、前記延在面に対する凹部に形成されていることを特徴とするインプリント方法。
【請求項4】
前記プリントパターンの断面は露出されており、
前記プリントパターンの断面を覆い、一面が前記延在面と同一平面内に存在するガイドを有することを特徴とする請求項3に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記被成形体はエネルギー硬化型樹脂であり、
前記被成形体を前記プリントパターン上にインクジェット法により塗布する工程を有することを特徴とする請求項3または4に記載のインプリント方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載のインプリント用金型を有することを特徴とするインプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−192544(P2012−192544A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56308(P2011−56308)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】