説明

インホイールモータ冷却構造

【課題】モータ本体の冷却に用いるオイルの熱を効率的に大気に伝達してオイルを冷却することにより、モータ本体を効率的に冷却するインホイールモータ冷却構造を提供する。
【解決手段】インホイールモータ100とホイールキャップ200との間に構成されるインホイールモータ冷却構造1であって、インホイールモータ100は、モータ本体110において発生した回転駆動力が伝達されて回転するとともに前記回転駆動力をホイール700に伝達する伝達部材に固定されることにより前記伝達部材と一体的に回転するとともに前記オイルを流通する経路181が形成された冷却部材180と、前記伝達部材に形成されるとともにオイルポンプ140と経路181とを連通する油路190と、を具備し、ホイールキャップ200にはホイール700の内部と外部とを連通する連通孔210が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インホイールモータ冷却構造に関し、より詳細には、ホイールを回転させるモータ本体にオイルを供給してモータ本体を冷却するインホイールモータにおいて、モータ本体を効率的に冷却するインホイールモータ冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インホイールモータにおいて、ホイールを回転させるモータ本体にオイルを供給することにより、オイルにモータ本体の熱を吸収させてモータ本体を冷却する技術は公知となっている。
【0003】
前記技術を用いたモータ本体の冷却は、車両が走行しているときにホイールの内部において、オイルリザーバに貯留されるオイルを、オイルリザーバとモータ本体との間で循環させ続けることにより行われる。
この循環の過程において、前記オイルは、モータ本体に供給されたときにモータ本体の熱を吸収することにより昇温し、循環して再びモータ本体に供給されるまでの間にホイールの内部の大気に熱を伝達することにより冷却(循環冷却)される。
【0004】
しかし、ホイールの内部は、車体、ホイールのリム等で囲まれているので、車両が走行しているときに走行風を受けず、大気の流れが発生し難い。
このため、循環冷却をしているときに(車両が走行しているときに)、オイルから大気への熱伝達率が低くなり、オイルの循環冷却が不十分になり得る。
循環冷却が不十分な高温のオイルがモータ本体に供給されると、オイルはモータ本体の熱を十分に吸収できず、モータ本体の冷却が不十分になり得るという問題を有する。
【0005】
前記問題を解消する技術として、特許文献1に記載の技術が挙げられる。特許文献1に記載の技術は、ハウジングと、このハウジングの内部に固定した環状のステータと、このステータに回転可能に配置したロータとでモータ本体を構成し、このモータ本体を冷却する冷却部材を設け、これらのモータ本体、および冷却部材をホイールのリム内に組込んだインホイールモータにおいて、前記冷却部材は、前記ステータのコイル部と前記ハウジングとの間を、伝熱体によって電気的に絶縁しつつ接続した構成である。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、コイル部とハウジングとの間を、伝熱体によって電気的に絶縁しつつ接続した構成の冷却部材を用いて、コイル部で発生したモータ本体の熱を、コイル部から伝熱体にてハウジングに速やかに逃がし、ハウジングから大気に伝達することにより、モータ本体を冷却しようとする。
【0007】
しかし、前記冷却部材がハブに囲まれており、対流のみに依存しているため、大気への熱伝達率が低くなり、前記モータ本体の冷却が不十分になり得るという問題を有する。
また、前記冷却部材とコイル部とは、ハウジング、その他の部材と多数の接触部を有しており、前記モータ本体の熱はこの多数の接触部を介して伝導されるため、熱抵抗が大きくなり、モータ本体の冷却が不十分になり得るという問題を有する。
【特許文献1】特開2006−282158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑み、モータ本体を効率的に冷却することができるインホイールモータ冷却構造の提供をするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
第一発明のインホイールモータ冷却構造は、ホイールを回転させる回転駆動力を発生するモータ本体、オイルが貯留されるオイルリザーバ、前記モータ本体により駆動され前記オイルを吸入して吐出することにより前記モータ本体にオイルを供給するオイルポンプ、および前記モータ本体において発生した回転駆動力が伝達されて回転するとともに前記回転駆動力を前記ホイールに伝達する伝達部材を具備し、前記ホイールの内部に構成されるインホイールモータと、前記ホイールの内部と外部とを仕切るホイールキャップと、の間に構成されるインホイールモータ冷却構造であって、前記インホイールモータは、前記伝達部材に固定されることにより前記伝達部材と一体的に回転するとともに、前記オイルを流通する経路が形成された冷却部材と、前記伝達部材に形成されるとともに、前記オイルポンプと前記経路とを連通する油路と、を具備し、前記ホイールキャップには、前記ホイールの内部と外部とを連通する通気孔が形成される。
【0011】
第二発明のインホイールモータ冷却構造は、前記伝達部材は、前記モータ本体の回転軸に接続され、前記モータ本体において発生した回転駆動力が伝達されて回転する駆動軸と、前記駆動軸に固定されることにより前記駆動軸と一体的に回転するハブと、を有し、前記冷却部材は、前記ハブに固定されることにより前記ハブと一体的に回転し、前記油路は、前記駆動軸、および前記ハブに形成される。
【0012】
第三発明のインホイールモータ冷却構造は、前記伝達部材は、ハブと同軸に配置される遊星歯車機構を有し、前記遊星歯車機構は、前記モータ本体の回転軸に接続され前記モータ本体において発生した回転駆動力が伝達されて回転する入力軸を有するとともに、前記入力軸の回転速度を減速して前記ハブに出力し、前記冷却部材は、前記入力軸に固定されることにより前記入力軸と一体的に回転し、前記油路は、前記入力軸に形成される。
【0013】
第四発明のインホイールモータ冷却構造は、前記ホイールキャップは、前記ホイールに回転自在に取り付けられることにより前記ホイールに対して相対的に回転可能であるとともに、導風部材、フィン、および錘を有し、前記導風部材、および前記フィンは、前記ホイールの外部側において前記ホイールキャップに固定されることにより前記ホイールキャップと一体的に回転可能であり、前記錘は、前記ホイールキャップにおいて前記フィンの近傍に固定されることにより前記ホイールキャップと一体的に回転可能であり、前記ホイールキャップには、前記導風部材により形成される導風通路と前記ホイールの内部とを連通する連通孔が形成され、前記導風部材は、前記ホイールキャップの径方向、かつ、一方向に向かって突出しているとともに、この突出している側の先端が開放され、前記フィンは、前記導風部材の回転軸に関して前記導風部材の突出している方向とは対称な方向に向かって突出し、前記ホイールキャップは、前記フィンが受けた風力により回転して、前記フィンに対して風の流れている方向に向かって、前記フィンが突出している姿勢になる。
【0014】
第五発明のインホイールモータ冷却構造は、前記フィンは、前記錘を兼ねる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、モータ本体を効率的に冷却することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第一実施形態]
以下では、図1、図2、および図3を用いて本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態であるインホイールモータ冷却構造1について説明する。図1に示す如く、インホイールモータ冷却構造1は、インホイールモータ100とホイールキャップ200との間に構成される。 インホイールモータ100は、ホイール700の内部に構成される。ホイール700の内部はホイール700のリム(不図示)の内周面で囲まれる空間を、ホイール700の外部は当該空間以外の空間を、それぞれ指す。なお、インホイールモータ100の全体がホイール700の内部に構成される必要はなく、インホイールモータ100の一部がホイール700の内部からはみ出す構成でもよい。
【0017】
ホイールキャップ200は、ホイール700に取り付けられる。ホイール700のホイールディスク710中心部には、ハブ孔フランジ720が設けられる。ハブ孔フランジ720は、ホイール700の内部と外部とを連通する中空円筒状に形成される。ホイールキャップ200はハブ孔フランジ720の反車体(不図示)側端部に取り付けられる。これにより、ホイールキャップ200とハブ孔フランジ720とで囲まれる空間730が、ホイールキャップ200で塞がれる。
【0018】
以下では、インホイールモータ100について説明する。インホイールモータ100は、ホイール700の駆動源である。インホイールモータ100は、駆動装置、およびオイル供給装置を具備する。図1に示す如く、前記駆動装置は、ホイール700を回転駆動する。前記駆動装置は、モータ本体110、および伝達部材を具備する。モータ本体110は、ホイール700を回転させる回転駆動力を発生し、インホイールモータ100のうちホイール700の駆動源としての機能を果たす主たる部分である。モータ本体110は、モータケース111、ステータコア112、ロータ113、ギア114、およびステータコア112に巻回されるステータコイル(不図示)を具備する。モータケース111は、モータ本体110の主たる構造体をなす部材である。モータケース111の内部には、ステータコア112、ロータ113、および前記ステータコイルが設けられる。ロータ113には平歯車であるギア114が形成され、ロータ113とギア114とは一体的に回転する。モータ本体110は、インバータ(不図示)により回転する(詳細には、当該インバータにより前記ステータコイルに三相交流が供給されて回転磁界が形成され、永久磁石を有するロータ113が当該回転磁界に引きつけられて回転することによりギア114が回転する)同期電動機である。
【0019】
前記伝達部材は、モータ本体110において発生した回転駆動力をホイール700に伝達する。前記伝達部材は、駆動軸121、およびハブ122を具備する。駆動軸121は、モータ本体110の回転駆動力が伝達されて回転する。駆動軸121は、ハブ122と同軸に配置される。駆動軸121は、一端が車体側に配置され、他端がホイールキャップ200側に配置される。駆動軸121の一端は、端面中心部を凹ませることにより中空円筒状に形成され、この一端の外周側面に沿って歯12aが形成される。駆動軸121の歯12aとモータ本体110のロータ113に形成されるギア114とが噛合することにより駆動軸121とモータ本体110とが接続されており、モータ本体110(ギア114)が回転することにより駆動軸121が回転する。
【0020】
ハブ122は、駆動軸121に伝達されたモータ本体110の回転駆動力をホイール700に伝達する。ハブ122は、駆動軸121、およびホイール700に取り付けられる。ハブ122は、第一冷却ケース部12b、軸部12c、およびフランジ部12dを具備する。第一冷却ケース部12bは、取付部13a、および凸部13bを具備する。取付部13aは、略円盤状に形成される。取付部13aは、駆動軸121の軸心に対して取付部13aの盤面が直交する向きに、配置される。取付部13aの車体側盤面の中心部に駆動軸121の他端が固定され、取付部13aは駆動軸121と一体的に回転する。
【0021】
凸部13bは、空間730内において取付部13aと一体に構成され、取付部13aと一体的に回転する。凸部13bは、突起部14a、複数(本実施形態では四つ)の突起部14b・14b・・・、および複数(本実施形態では四つ)の突起部14c・14c・・・を具備する。突起部14a、突起部14b、および突起部14cは、中空円筒状に形成される。突起部14aは、一端が取付部13aの反車体側盤面の中心部に取り付けられ、他端がこの取り付け位置から駆動軸121の軸心に沿いつつホイールキャップ200に向かって突出する。それぞれの突起部14bは、一端が突起部14aの他端に取り付けられ、他端がこの取り付け位置を中心として駆動軸121の軸心に直交しつつ十字方向に突出する。それぞれの突起部14cは、一端がそれぞれの突起部14bの他端に取り付けられ、他端がこの取り付け位置から駆動軸121の軸心と平行に取付部13aに向かって突出して取付部13aに取り付けられる。
【0022】
軸部12cは、中空円筒状に形成され、駆動軸121と同軸になる位置に配置される。軸部12cのホイールキャップ200側の側部は取付部13aの周端部に固定され、軸部12cは取付部13aと一体的に回転する。フランジ部12dは、軸部12cの外周面に沿って配置される。フランジ部12dは、軸部12cと一体に構成され、軸部12cと一体的に回転する。ホイール700は、ホイールディスクロータ900を介してフランジ部12dにハブボルト12eで固定され、フランジ部12dと一体的に回転する。以上の如く、モータ本体110において発生した回転駆動力は、前記伝達部材(駆動軸121→ハブ122)→ホイール700の順で伝達されてホイール700が回転する。
【0023】
以下では、前記オイル供給装置について説明する。前記オイル供給装置は、前記駆動装置にオイルを供給する。図2に示す如く、前記オイル供給装置は、オイルリザーバ130、オイルポンプ140、吸入油路150、供給油路160、排出油路17a、冷却部材180・180、第一冷却油路190、および排出油路17bを具備する。
オイルリザーバ130には、前記駆動装置の潤滑・冷却等に用いるオイルが貯留される。
オイルポンプ140は、オイルリザーバ130に貯留されるオイルを吸入して吐出する。オイルポンプ140は、駆動軸121の一端における凹んだ空間(駆動軸121の一端における端面の凹んだ面と内周側面とで囲まれる空間)に収納される(図1参照)。オイルポンプ140の入力軸(回転軸)は、駆動軸121の一端に接続され、駆動軸121と一体的に回転する。モータ本体110において発生した回転駆動力は、駆動軸121を介してオイルポンプ140に伝達されてオイルポンプ140を駆動させる。
【0024】
吸入油路150は、オイルリザーバ130に貯留されるオイルをオイルポンプ140に搬送する。吸入油路150は、オイルリザーバ130とオイルポンプ140とを連通する。オイルポンプ140が駆動すると、オイルリザーバ130に貯留されるオイルが吸入油路150を通じて搬送されてオイルポンプ140に吸入される。そして、オイルポンプ140は、この吸入したオイルを吐出する。なお、本実施形態においてオイルポンプ140の入力軸は駆動軸121と別体で構成したが、本発明はこれに限定されず、一体で構成してもよい。また、本発明はオイルポンプの構成について、モータ本体の回転を利用して駆動するものであれば特に限定するものではない。
【0025】
供給油路160は、オイルポンプ140から吐出されたオイルの一部をモータ本体110(モータケース111の内部のステータコイル)に供給する。供給油路160は、オイルポンプ140とモータケース111の内部とを連通する。オイルポンプ140から吐出されたオイルの一部は供給油路160を通じて搬送されてモータケース111の内部(前記ステータコイル)に供給される。排出油路17aは、モータ本体110に供給されたオイルをオイルリザーバ130に排出する。排出油路17aは、モータケース111の内部とオイルリザーバ130とを連通する。モータケース111の内部に供給されたオイルは、排出油路17aを通じて搬送されてオイルリザーバ130に排出される。
【0026】
図1に示す如く、空間730には、複数(本実施形態では二つ)の冷却部材180・180が、所定間隔を開けて平行に配置される。図3(a)、および図3(b)に示す如く、冷却部材180は、オイルの熱を大気に伝達する。冷却部材180の主たる材質は、アルミである。冷却部材180は、円盤状に形成される。図1に示す如く、冷却部材180は、駆動軸121の軸心に対して冷却部材180の盤面が直交する向きに、配置される。図3(a)、および図3(b)に示す如く、冷却部材180には、冷却部材180を貫通する孔である、複数(本実施形態では一の冷却部材180につきそれぞれ五つずつ)の流通経路181・181・・・が形成される。冷却部材180の流通経路181には、突起部14a、および四つの突起部14c・14c・・・がそれぞれ密接に挿入される。言い換えれば、突起部14a、および突起部14cの途中に冷却部材180・180がそれぞれ固定される。これにより、前記伝達部材(ハブ122(突起部14a、および突起部14c))、および冷却部材180・180が一体的に回転する。なお、本実施形態は冷却部材180の主たる材質としてアルミを用いたが、本発明はこれに限定されず、銅、鉄等の熱伝達率の良いものを用いてもよい。また、本発明は、冷却部材の形状、数、および配置方向について特に限定するものではない。
【0027】
第一冷却油路190は、オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部を冷却部材180の流通経路181に搬送する。図1に示す如く、第一冷却油路190は、冷却油路191、冷却油路19a、複数(本実施形態では四つ)の冷却油路19b・19b・・・、および複数(本実施形態では四つ)の冷却油路19c・19c・・・を具備する。冷却油路191は、駆動軸121に形成され、駆動軸121の軸心方向に延設される。駆動軸121の一端における端面中心部には、冷却油路191の開口部が形成される。オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部は前記開口部から冷却油路191に流入し、冷却油路191を通じて搬送される。
【0028】
図1、および図3(a)に示す如く、冷却油路19aは、取付部13a、および突起部14aに形成され、突起部14aの突出方向に延設される。冷却油路19aは冷却油路191に接続され、冷却油路191を通じて搬送されたオイルは、その後冷却油路19aに流入して冷却油路19aを通じて搬送される。冷却油路19bは、突起部14bに形成され、突起部14bの突出方向に延設される。冷却油路19bは、冷却油路19aに接続され、冷却油路19aを通じて搬送されたオイルは、その後分散されて冷却油路19bを通じて搬送される。冷却油路19cは、突起部14c、および取付部13aに形成され、突起部14cの突出方向に延設される。冷却油路19cは、冷却油路19bに接続され、冷却油路19bを通じて搬送されたオイルは、その後冷却油路19cを通じて搬送される。図3(a)に示す如く、取付部13aの車体側盤面には、冷却油路19c・19c・・・の開口部19d・19d・・・が、それぞれ形成される。冷却油路19cを通じて搬送されたオイルは、開口部19dからそれぞれ流出する。
【0029】
前述の如く、流通経路181には突起部14a、および突起部14c・14c・・・がそれぞれ密接に挿入されて取り付けられる。したがって、冷却油路19a、および冷却油路19cを通じて搬送されるオイルは、この搬送される過程において流通経路181を流通(通過)する。つまり、オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部は第一冷却油路190を通じて搬送される過程において流通経路181を流通する。このように、第一冷却油路190は、オイルポンプ140と流通経路181とを連通する。図2、および図3(a)に示す如く、排出油路17bは、一端が開口部19dを介して冷却油路19cに接続され、他端がオイルリザーバ130に接続される。冷却油路19cの開口部19dから流出したオイルは、排出油路17bを通じて搬送されて、その後オイルリザーバ130に排出される。以下では、オイルリザーバ130に貯留されるオイルの循環経路について説明する。
【0030】
図2に示す如く、車両が走行しているとき(モータ本体110が回転しているとき)、オイルポンプ140が駆動する。これにより、オイルリザーバ130に貯留されるオイルが吸入油路150を通じて搬送されてオイルポンプ140に吸入される。そして、オイルポンプ140は、この吸入したオイルを吐出する。オイルポンプ140から吐出されたオイルの一部は、供給油路160を通じて搬送されてモータ本体110のステータコイルに供給される。前記ステータコイルに供給されたオイルは、排出油路17aを通じて搬送されてオイルリザーバ130に排出される。
【0031】
オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部は、第一冷却油路190(冷却油路191、冷却油路19a、冷却油路19b、および冷却油路19c)を搬送され、第一冷却油路190を通じて搬送される過程において冷却部材180・180の流通経路181を流通する(図3(a)、および図3(b)参照)。第一冷却油路190を通じて搬送されたオイルは、その後排出油路17bを通じて搬送されてオイルリザーバ130に排出される。以上の如く、オイルリザーバ130に貯留されるオイルは循環する。車両が走行しているときは、このオイルの循環が繰り返される。
【0032】
モータ本体110の主要な発熱源は前記ステータコイルであり、前記ステータコイルは通電されて発熱する。前述のオイルの循環の過程において、循環するオイルが前記ステータコイルに供給されたときに前記ステータコイルの熱を吸収することにより、モータ本体110が冷却される。そして、このステータコイルの熱を吸収したオイルは、循環して再び前記ステータコイルに供給されるまでの間に熱を大気に伝達することにより冷却(循環冷却)される。以下では、ホイールキャップ200について説明する。
【0033】
前述の如くホイールキャップ200はハブ孔フランジ720の反車体側端部に取り付けられており、ホイールキャップ200でホイール700の内部と外部とが仕切られる。図1に示す如く、ホイールキャップ200にはホイール700の内部と外部とを連通する複数の連通孔210・210・・・が形成される。これにより、ホイール700の外部の大気は、連通孔210を通って空間730に流入することができる。また、ホイール700の内部(空間730)の大気は、連通孔210を通ってホイール700の外部に流出することができる。連通孔210は、冷却部材180の近傍に形成されればよい。冷却部材180の近傍は、冷却部材180からオイルの熱を伝達されたホイール700の内部の大気が、ホイール700の外部へ流出可能な位置である。なお、ホイールの内部と外部とを連通する連通孔の数について本発明は、当該ホイールの外部の空気が当該ホイールの内部に流入してくるためのものと、当該ホイールの内部の空気が当該ホイールの外部に流出するためのものと、がホイールキャップに形成されればよく、少なくとも二つあればよい。
【0034】
以上の如く、インホイールモータ冷却構造1は、ホイール700を回転させる回転駆動力を発生するモータ本体110、オイルが貯留されるオイルリザーバ130、モータ本体110により駆動され当該オイルを吸入して吐出することによりモータ本体110のステータコイルにオイルを供給するオイルポンプ140、およびモータ本体110において発生した回転駆動力が伝達されて回転するとともに前記回転駆動力をホイール700に伝達する伝達部材を具備し、ホイール700の内部に構成されるインホイールモータ100と、ホイール700の内部と外部とを仕切るホイールキャップ200と、の間で構成されるインホイールモータ冷却構造1であって、前記伝達部材は、モータ本体110のロータ(回転軸)113に形成されるギア114と噛合し、モータ本体110において発生した回転駆動力が伝達されて回転する駆動軸121と、駆動軸121に固定されることにより駆動軸121と一体的に回転するハブ122と、を有し、インホイールモータ100は、ハブ122(詳細には、第一冷却ケース部12bの凸部13bにおける突起部14a、および突起部14c)に固定されることによりハブ122と一体的に回転するとともに、前記オイルを流通する流通経路181が形成された冷却部材180・180と、駆動軸121、およびハブ122に形成され、オイルポンプ140と流通経路181とを連通する第一冷却油路190(冷却油路191、冷却油路19a、冷却油路19b、および冷却油路19c)と、を具備し、ホイールキャップ200には、ホイール700の内部と外部とを連通する連通孔210が形成される。
【0035】
これによれば、車両が走行(ホイール700が回転)しているときに冷却部材180・180が回転して、この冷却部材180・180の回転により冷却部材180・180の表面を流れる大気の流速(レイノルズ数)を増加させることができ、冷却部材180・180と大気との熱伝達率を向上させることができる。また、ホイールキャップ200に形成される連通孔210によりホイール700の内部と外部との間で大気が流れるので、ホイール700の内部においてオイルから伝達される熱によりホイール700の内部における大気の温度が上昇する程度を低減させることができ、冷却部材180・180と大気との熱伝達率を向上させることができる。これにより、オイルが第一冷却油路190を通じて搬送されて流通経路181を流通するときに、多くのオイル熱が冷却部材180・180を介して大気に伝達されてオイルが冷却されるので、効率的に循環冷却された温度の低いオイルをモータ本体110のステータコイルに供給することができ、モータ本体110を効率的に冷却することができる。
【0036】
[第二実施形態]
以下では、図4を用いて本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第二実施形態であるインホイールモータ冷却構造2について説明する。図4に示す如く、インホイールモータ冷却構造2は、インホイールモータ300とホイールキャップ200との間に構成される。インホイールモータ300は、伝達部材、およびオイル供給装置を具備する。前記伝達部材は、遊星歯車機構を具備する。前記遊星歯車機構は、モータ本体110において発生した回転駆動力が伝達されて回転する入力軸323の回転速度を減速してハブ322に出力する。ハブ322は、軸部12c、およびフランジ部12dを具備する。前記遊星歯車機構(入力軸323)は、ハブ322と同軸に配置される。前記遊星歯車機構は、入力軸323、プラネタリギア324、およびリングギア325を具備する。
【0037】
入力軸323は、モータ本体110において発生した回転駆動力が伝達されて回転する。入力軸323は、軸部32a、および第二冷却ケース部32bを具備する。軸部32aは、ハブ322と同軸に配置される。軸部32aは、一端が車体側に配置され、他端がホイールキャップ200側に配置される。軸部32aの他端は空間730まで延設される。軸部32aの歯12aはモータ本体110のギア114と噛合しており、これにより入力軸323とモータ本体110のロータ(回転軸)113とが接続されている。そして、軸部32aにモータ本体110の回転駆動力が伝達されることにより(モータ本体110(ギア114)が回転することにより)、軸部32aが回転する。
【0038】
第二冷却ケース部32bは、空間730内において軸部32aの他端部に固定されることにより、軸部32aと一体的に回転する。第二冷却ケース部32bは、複数(本実施形態では四つ)の突起部34a・34a・・・、複数(本実施形態では四つ)の突起部34b・34b・・・、複数(本実施形態では四つ)の突起部34c・34c・・・、および接続部34dを具備する。突起部34a、突起部34b、および突起部34cは、円柱状に形成される。それぞれの突起部34aは、一端が入力軸323の他端側周面に取り付けられ、他端が入力軸323の他端側端面における取り付け位置を中心として、入力軸323の軸心に直交しつつ十字方向に突出する。それぞれの突起部34bは、一端がそれぞれの突起部34aの他端に取り付けられ、他端がこの取り付け位置から軸部32aの軸心と平行に、かつ、軸部32aの一端側に向かって突出する。それぞれの突起部34cは、一端がそれぞれの突起部34bの他端に取り付けられ、他端がこの取り付け位置から軸部32aの軸心に直交しつつ軸部32aに向かって突出する。接続部34dは、軸部32aの中途部において軸部32aを覆うように形成され、それぞれの突起部34cの他端が取り付けられる。
【0039】
プラネタリギア324は軸部32aの中途部で軸部32aの周面に形成される歯と噛合しており、軸部32aが回転することによりプラネタリギア324が、回転(自転、および軸部32aを中心に公転)する。リングギア325はプラネタリギア324と噛合しており、プラネタリギア324が回転することによりリングギア325が回転する。リングギア325は、ハブ322の軸部12cのホイールキャップ200側の側部に固定され、軸部12c(ひいてはハブ322、およびホイール700)はリングギア325と一体的に回転する。
【0040】
以上の如く、モータ本体110において発生する回転駆動力は、前記伝達部材(前記遊星歯車機構(入力軸323(軸部32a)→プラネタリギア324→リングギア325)→ハブ322)→ホイール700の順で伝達されてホイール700が回転する。
なお、モータ本体110の回転駆動力が伝達されて回転する入力軸323の回転速度は、モータ本体110において発生する回転駆動力が、入力軸323→プラネタリギア324→リングギア325と伝達される過程で減速されてホイール700に伝達(出力)される。つまり、入力軸323の回転速度に比べてホイール700の回転速度は遅いものとなる。
【0041】
以下では、前記オイル供給装置について説明する。図4に示す如く、空間730には、複数(本実施形態では二つ)の冷却部材180・180が、所定間隔を開けて平行に配置される。図5に示す如く、前記オイル供給装置は、冷却部材180・180、第二冷却油路390、および排出油路37bを具備する。図6(a)、および図6(b)に示す如く、冷却部材180に形成される流通経路181・181・・・には、軸部32a、および四つの突起部34b・34b・・・がそれぞれ密接に挿入される。言い換えれば、軸部32a、および突起部34bの途中に冷却部材180・180がそれぞれ固定される。これにより、入力軸323(軸部32a、および突起部34b)、および冷却部材180・180が一体的に回転する。
【0042】
第二冷却油路390は、オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部を冷却部材180の流通経路181に搬送する。図4に示す如く、第二冷却油路390は、冷却油路391、複数(本実施形態では四つ)の冷却油路39a・39a・・・、複数(本実施形態では四つ)の冷却油路39b・39b・・・、複数(本実施形態では四つ)の冷却油路39c・39c・・・、および冷却油路39dを具備する。冷却油路391は、入力軸323に形成され、入力軸323の軸心方向に延設される。入力軸323の一端における端面中心部には、冷却油路391の開口部が形成される。オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部は前記開口部から冷却油路391に流入し、冷却油路391を通じて搬送される。
【0043】
冷却油路39aは、突起部34aに形成され、突起部34aの突出方向に延設される。冷却油路39aは、冷却油路391に接続され、冷却油路391を通じて搬送されたオイルは、その後分散されて冷却油路39aを通じて搬送される。図6(a)に示す如く、冷却油路39bは、突起部34bに形成され、突起部34bの突出方向にそれぞれ延設される。冷却油路39bは、冷却油路39aに接続され、冷却油路39aを通じて搬送されたオイルは、その後冷却油路39bを通じて搬送される。冷却油路39cは、突起部34cに形成され、突起部34cの突出方向に延設される。冷却油路39cは、冷却油路39bに接続され、冷却油路39bを通じて搬送されたオイルは、その後冷却油路39cを通じて搬送される。
【0044】
冷却油路39dは、接続部34dに形成され、入力軸323の周面を覆うとともに入力軸323の一端側に向かって延設される。冷却油路39cは、冷却油路39dに接続され、冷却油路39cを通じて搬送されたオイルは、その後冷却油路39dを通じて搬送される。前述の如く、流通経路181には軸部32a、および突起部34b・34b・34b・34bがそれぞれ密接に挿入されて取り付けられる。したがって、冷却油路391、および冷却油路39bを通じて搬送されるオイルは、この搬送される過程において流通経路181を流通(通過)する。つまり、オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部は第二冷却油路390を通じて搬送される過程において流通経路181を流通する。このように、第二冷却油路390は、オイルポンプ140と流通経路181とを連通する。
【0045】
図5に示す如く、排出油路37bは、第二冷却油路390(冷却油路39d)を通じて搬送されたオイルをオイルリザーバ130に排出する。排出油路37bは、一端が第二冷却油路390(冷却油路39d)に接続され、他端がオイルリザーバ130に接続される。冷却油路39dを通じて搬送されたオイルは、その後排出油路37bを通じて搬送される。そして、オイルリザーバ130に排出される。オイルの循環経路について、図5に示す如く、オイルポンプ140から吐出されたオイルの残部は、第二冷却油路390(冷却油路391、冷却油路39a、冷却油路39b、冷却油路39c、および冷却油路39d)を搬送され、第二冷却油路390を通じて搬送される過程において冷却部材180・180の流通経路181を流通する(図6(a)、および図6(b)参照)。第二冷却油路390を通じて搬送されたオイルは、その後排出油路37bを通じて搬送されてオイルリザーバ130に排出される。
【0046】
以上の如く、前記伝達部材は、ハブ322と同軸に配置される前記遊星歯車機構を有し、前記遊星歯車機構は、モータ本体110のロータ(回転軸)113に形成されるギア114と噛合しモータ本体110において発生した回転駆動力が伝達されて回転する入力軸323を有するとともに、入力軸323の回転速度を減速してハブ322に出力し、冷却部材180・180は、入力軸323(詳細には、第二冷却ケース部32bにおける突起部34a、および突起部34c)に固定されることにより入力軸323と一体的に回転し、第二冷却油路390(詳細には、冷却油路391、冷却油路39a、冷却油路39b、冷却油路39c、および冷却油路39d)は、入力軸323に形成される。
【0047】
これによれば、第一実施形態、および第二実施形態において同じ回転速度でそれぞれホイール700を回転させたとき、第一実施形態に比べて第二実施形態の方が前記遊星歯車機構により入力軸323の回転速度が減速される分、入力軸323の回転速度を増加させる必要がある。これにより、第一実施形態に比べて第二実施形態の方が、入力軸323と一体的に回転する冷却部材180・180の回転速度も速くなり、冷却部材180・180の表面を流れる大気の流速がより増加して、冷却部材180・180と大気との熱伝達率がより向上する。これにより、オイルが第二冷却油路390を通じて搬送されて流通経路181を流通するときに、より多くのオイル熱が冷却部材180・180を介して大気に伝達されてオイルが冷却されるので、より効率的に循環冷却された温度の低いオイルをステータコイルに供給することができ、モータ本体110を効率的に冷却することができる。
【0048】
なお、図7(a)、および図7(b)に示す如く、第一実施形態において、冷却部材180、180の形状をリング状にするとともに、冷却部材180・180の間に複数の板状の部材836・836・・・を挟むことにより、冷却部材180・180をファン形状にしてもよい。これによれば、車両が走行しているときに、冷却部材180・180、および部材836が回転することにより、空間730の大気(オイルの熱が冷却部材180・180を介して伝達されることにより昇温した大気)が強制的に連通孔210からホイール700の外部に流出して、空間730の大気が交換される。これにより、空間730の大気の温度を下げることができるので、冷却部材180・180と大気との熱伝達率を向上させることができる。
【0049】
また、図8に示す如く、第一実施形態において、ホイールディスク710に空間730とホイール700の外部とを連通する導風路750を形成してもよい。導風路750は、空間730からホイールディスク710の外周部側に向かって放射状に形成される。これによれば、車両が走行しているときに、ホイール700の回転による遠心力で、空間730の大気(オイルの熱が冷却部材180・180を介して伝達されることにより昇温した大気)を、導風路750を通じてホイール700の外部に排出することができる。これにより、空間730の大気の温度を下げることができるので、冷却部材180・180と大気との熱伝達率を向上させることができる。なお、導風路750を複数形成してもよい。
【0050】
また、図9、および図10(a)に示す如く、第一実施形態において、ホイールキャップ800を用いてもよい。ホイールキャップ800は、ホイール700に回転自在に取り付けられることによりホイール700に対して相対的に回転する。ホイールキャップ800は、キャップ部80a、導風部材810、および錘830を有する。キャップ部80aは、ハブ孔フランジ720の反車体側端部に回転可能に取り付けられる。これにより、ホイールキャップ200とハブ孔フランジ720とで囲まれる空間730が、キャップ部80aで塞がれるとともに、キャップ部80aはホイール700に対して相対的に回転する。キャップ部80aにはホイール700の内部と外部とを連通する複数の連通孔210・210・・・が形成される。導風部材810は、キャップ部80aの反車体側に固定されることによりホイールキャップ800と一体的に回転する。錘830は、ホイールキャップ800に固定されることによりホイールキャップ800と一体的に回転する。キャップ部80aには、空間730と導風通路811とを連通する連通孔815が形成される。導風通路811は、導風部材810により形成され、キャップ部80aの反車体側を覆うように導風部材810をキャップ部80aに固定することにより形成される空間(導風部材810とキャップ部80aとの間の空間)からなる。
【0051】
図10(a)に示す如く、導風部材810は、ホイールキャップ800(キャップ部80a)の周方向、かつ、一方向に向かって突出しているとともに、この突出している側の先端が開放され、導風通路811の開口部812を成す。車両が前進する方向と略一致する方向に向かって、導風部材810が突出している姿勢になる位置(開口部812が走行風と対向する姿勢になる位置)に、錘830は固定される。これにより、車両が走行し続けているときに、走行風が開口部812から流入されて導風通路811を通じて搬送され、その後連通孔815から空間730に導入され続ける(図9参照)。これにより、車両が走行し続けているときにおいて、空間730に温度の低い大気(走行風)を導入し続けることができてオイルの冷却効率が向上するので、温度の低いオイルをステータコイルに供給することができ、モータ本体110を効率的に冷却することができる。
【0052】
[第三実施形態]
以下では、図10(b)、図11、および図12を用いて本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第三実施形態であるインホイールモータ冷却構造3について説明する。図11、および図12に示す如く、インホイールモータ冷却構造3は、インホイールモータ100とホイールキャップ600との間に構成される。ホイールキャップ600は、ホイールディスク710中心部に設けられるハブ孔フランジ720の反車体側端部に回転自在に取り付けられる。これにより、ホイールキャップ600はホイール700に対して相対的に回転する。ホイールキャップ600は、キャップ部60a、導風部材610、フィン620、および錘630を具備する。
【0053】
キャップ部60aは、ハブ孔フランジ720の反車体側端部に回転可能に取り付けられる。これにより、ホイールキャップ200とハブ孔フランジ720とで囲まれる空間730が、キャップ部60aで塞がれるとともに、キャップ部60aはホイール700に対して相対的に回転する。導風部材610により形成される導風通路611は、車両が走行しているときに走行風をホイール700の内部に導入する導入経路になり、車両が停止しているときにホイール700の内部の大気をホイール700の外部に排出する排出経路になる。導風部材610は、キャップ部60aの反車体側に固定されることにより、キャップ部60aと一体的に回転する。図10(b)に示す如く、導風部材610は、ホイールキャップ600(キャップ部60a)の径方向、かつ、一方向に向かって突出している。図12に示す如く、導風部材610は、この突出している側の先端が開放され、導風通路611の開口部612を成す。開口部612の開口面は、導風部材610の突出方向に対して略直交している。
【0054】
キャップ部60aには、空間730と導風通路611とを連通する連通孔615が形成される。導風通路611は導風部材610により形成され、キャップ部60aの反車体側を覆うように板状の導風部材610をキャップ部60aに固定することにより形成される空間(導風部材610とキャップ部60aとの間の空間)と、当該空間に連続して設けられる中空半円筒状の導風部材610の内部空間と、からなる。つまり、導風部材610は導風通路611の外枠を形成する。これにより、ホイール700の外部の大気を、開口部612から導風通路611に流入させて、導風通路611を通じて搬送し、その後連通孔615からホイール700の内部(空間730)に導入することができる。また、空間730の大気を、連通孔615から導風通路611に流入させて導風通路611を通じて搬送し、その後開口部612からホイール700の外部に排出することができる。
【0055】
フィン620は、車両が走行しているときに導風部材610の姿勢を、フィン620に対して走行風の流れている方向と略反対方向に向かって導風部材610が突出している姿勢(導風部材610の開口部612が走行風と対向する姿勢)である車両走行姿勢にする。フィン620は、直方体状に形成される複数(本実施形態では四つ)の板状部材からなり、この板状部材は適宜間隔を開けて平行に配置される。フィン620は、ホイール700の外部側においてキャップ部60aに固定(キャップ部60aの反車体側に固定)されることにより、キャップ部60aと一体的に回転する。図10(b)に示す如く、フィン620(前記板状部材)は、導風部材610(ホイールキャップ600)の回転軸に関して導風部材610の突出している方向とは対称な方向に突出している。つまり、フィン620は、ホイールキャップ600の回転軸を中心に導風部材610の突出している方向とは反対方向に突出している。
【0056】
図11に示す如く、車両が走行し始めると、走行風がフィン620に当たることにより、フィン620に風力が作用する。これによりフィン620は、ホイールキャップ600の回転軸を中心に、フィン620に対して走行風の流れている方向に向かって、キャップ部60a、および導風部材610と一体的に回転していく。そして、フィン620は、所定値以上の風力を受けると、フィン620に対して走行風の流れている方向と略一致する方向に向かって、フィン620が突出している姿勢(言い換えれば、フィン620に対して走行風の流れている方向と略反対方向に向かって、導風部材610が突出している姿勢、つまり前記車両走行姿勢)になるまで回転する。フィン620が前記所定値以上の風力を受け続けているときは、導風部材610の姿勢は前記車両走行姿勢に保持され続ける。なお、導風部材610の姿勢が前記車両走行姿勢になるとき、導風部材610の突出している方向、およびフィン620の突出している方向は、通常、路面に対して略平行になる。また、前記所定値以上の風力は、車両が通常に走行しているときに受ける風力以上の風力である。車両が走行しているとき、走行風がフィン620の板状部材の間をフィン620の突出している方向に向かって流れて行く。このように、フィン620の形状は、突出している方向に風を流す形状である。なお、本実施形態ではフィン620の板状部材を四つ設けたが、本発明はフィンの板状部材の数について特に限定するものではない。
【0057】
図12に示す如く、錘630は、車両が停止しているときに導風部材610の姿勢を、略反重力方向(略上方向)に向かって導風部材610が突出している姿勢である車両停止姿勢にする。錘630は、ホイールキャップ600に固定され、ホイールキャップ600と一体的に回転する。これにより錘630は、ホイールキャップ600と一体的に回転するときの回転軌跡上の範囲内で移動できる。錘630は、ホイールキャップ600を回転させることにより、錘630が前記回転軌跡上において下方位置にくるようホイールキャップ600に作用する。錘630はフィン620の近傍に固定される。これにより、フィン620と錘630との位置関係は、フィン620が略下方向に向かって突出している姿勢(言い換えれば、略上方向に向かって導風部材610が突出している姿勢、つまり前記車両停止姿勢)になるときに、錘630が前記回転軌跡上において略下方位置にある関係になる。これにより、車両が停止し続けているときは、錘630が前記回転軌跡上において略下方位置にきて、導風部材610が前記車両停止姿勢を保持し続ける。
【0058】
以上の如く、ホイールキャップ600は、ホイール700に回転自在に取り付けられることによりホイール700に対して相対的に回転可能であるとともに、導風部材610、フィン620、および錘630を有し、導風部材610、およびフィン620は、ホイール700の外部側においてホイールキャップ600(キャップ部60a)に固定されることによりホイールキャップ600と一体的に回転可能であり、錘630は、ホイールキャップ600においてフィン620の近傍に固定されることによりホイールキャップ600と一体的に回転可能であり、ホイールキャップ600(キャップ部60a)には、ホイール700の内部と導風部材610により形成される導風通路611とを連通する連通孔615が形成され、導風部材610は、ホイールキャップ600の径方向、かつ、一方向に向かって突出しているとともに、この突出している側の先端が開放され、フィン620は、導風部材610の回転軸に関して導風部材610の突出している方向とは対称な方向に向かって突出しており、ホイールキャップ600は、フィン620が受けた風力により回転して、フィン620に対して風の流れている方向と略一致する方向に向かって、フィン620が突出している姿勢になる。
【0059】
これによれば、車両が走行し続けているときにおいて、フィン620が走行風を受けて風力で回転することにより、導風部材610の突出している方向、およびフィン620の突出している方向が路面に対して略平行になり、導風部材610が前記車両走行姿勢になる。つまり、導風通路611の開口部612(導風部材610の突出している側の解放された先端)が、走行風と対向する姿勢になる。これにより、走行風が開口部612から流入して導風通路611を通じて搬送され、その後連通孔615からホイール700の内部(空間730)に導入され続ける(図11参照)。これにより、車両が走行し続けているときにおいて、空間730に温度の低い大気(走行風)を導入し続けることができてオイルの冷却効率が向上するので、温度の低いオイルをステータコイルに供給することができ、モータ本体110を効率的に冷却することができる。
【0060】
また、車両が停止し続けているときにおいて、フィン620が略下方位置にくるよう、錘630がホイールキャップ600に作用することにより、導風部材610が前記車両停止姿勢を保持し続ける。つまり、導風部材610が、略上方向に突出している姿勢を保持し続ける。これにより、ホイール700の内部(空間730)の温度の高い大気が、連通孔615から導風通路611に流入して導風通路611を通じて搬送され、その後開口部612からホイール700の外部に排出される(図12参照)。このとき、導風部材610が略上方向に突出している姿勢にあるため、導風通路611を通じてホイール700の内部における温度の高い大気(車両が走行しているとき、冷却部材180・180を介してオイルの熱が伝達されて昇温した大気)を、車両が停止しているとき、ホイール700の外部に煙突効果により効率的に排出することができ、ホイール700の内部の換気を合理的に行うことができる。なお、フィン620が錘630を兼ねるものとし、錘630を用いない構成にしてもよい。つまり、導風部材610に比べて重量が大きいフィン620を用いることにより、フィン620が錘630を兼ねるものとする。これによれば、錘630を用いないので部品点数を減少させることができる。
【0061】
また、第一実施形態に対応する第三実施形態の如く、第二実施形態において、インホイールモータ冷却構造2を、インホイールモータ300とホイールキャップ600との間に構成してもよい。また、モータ本体にオイルを供給するときのオイルを供給する場所について、第一実施形態、第二実施形態、および第三実施形態では、モータケース111の内部(ステータコイル)に供給したが、本発明はこれに限定されず、モータ本体の熱をオイルが吸収可能な場所であればよい。例えば、モータケースを覆う冷却ジャケットを具備するモータ本体において、当該冷却ジャケットにオイルを供給してもよい。また、第一実施形態、第二実施形態、および第三実施形態において、ホイールディスク710中心部(ハブ孔フランジ720)に取り付けるホイールキャップ200・600を用いたが、本発明はこれに限定されず、フルホイールキャップを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態を示す概略構成図。
【図2】図1に示すインホイールモータ冷却構造におけるオイルの循環経路を示す概略構成図。
【図3】(a)図1の一部拡大図、(b)図3(a)のA−A断面図。
【図4】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第二実施形態を示す概略構成図。
【図5】図4に示すインホイールモータ冷却構造におけるオイルの循環経路を示す概略構成図。
【図6】(a)図4の一部拡大図、(b)図6(a)のA−A断面図。
【図7】(a)本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態における別実施形態の一部拡大図、(b)図7(a)のA−A断面図。
【図8】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態における別実施形態を示す概略構成図。
【図9】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態における別実施形態を示す概略構成図。
【図10】(a)本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態における別実施形態の一部拡大図、(b)本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第三実施形態の一部拡大図。
【図11】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第三実施形態を示す概略構成図。
【図12】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第三実施形態を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0063】
1・2・3 インホイールモータ冷却構造
110 モータ本体
121 駆動軸
122.322 ハブ
130 オイルリザーバ
140 オイルポンプ
180 流通経路
181 流通経路
190 第一冷却油路
200・600 ホイールキャップ
210・615 連通孔
323 入力軸
390 第二冷却油路
610 導風部材
611 導風通路
620 フィン
630 錘
700 ホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールを回転させる回転駆動力を発生するモータ本体、オイルが貯留されるオイルリザーバ、前記モータ本体により駆動され前記オイルを吸入して吐出することにより前記モータ本体にオイルを供給するオイルポンプ、および前記モータ本体において発生した回転駆動力が伝達されて回転するとともに前記回転駆動力を前記ホイールに伝達する伝達部材を具備し、前記ホイールの内部に構成されるインホイールモータと、
前記ホイールの内部と外部とを仕切るホイールキャップと、
の間に構成されるインホイールモータ冷却構造であって、
前記インホイールモータは、
前記伝達部材に固定されることにより前記伝達部材と一体的に回転するとともに、前記オイルを流通する経路が形成された冷却部材と、
前記伝達部材に形成されるとともに、前記オイルポンプと前記経路とを連通する油路と、
を具備し、
前記ホイールキャップには、前記ホイールの内部と外部とを連通する通気孔が形成されるインホイールモータ冷却構造。
【請求項2】
前記伝達部材は、
前記モータ本体の回転軸に接続され、前記モータ本体において発生した回転駆動力が伝達されて回転する駆動軸と、
前記駆動軸に固定されることにより前記駆動軸と一体的に回転するハブと、
を有し、
前記冷却部材は、前記ハブに固定されることにより前記ハブと一体的に回転し、
前記油路は、前記駆動軸、および前記ハブに形成される請求項1に記載のインホイールモータ冷却構造。
【請求項3】
前記伝達部材は、ハブと同軸に配置される遊星歯車機構を有し、
前記遊星歯車機構は、前記モータ本体の回転軸に接続され前記モータ本体において発生した回転駆動力が伝達されて回転する入力軸を有するとともに、前記入力軸の回転速度を減速して前記ハブに出力し、
前記冷却部材は、前記入力軸に固定されることにより前記入力軸と一体的に回転し、
前記油路は、前記入力軸に形成される請求項1に記載のインホイールモータ冷却構造。
【請求項4】
前記ホイールキャップは、前記ホイールに回転自在に取り付けられることにより前記ホイールに対して相対的に回転可能であるとともに、導風部材、フィン、および錘を有し、
前記導風部材、および前記フィンは、前記ホイールの外部側において前記ホイールキャップに固定されることにより前記ホイールキャップと一体的に回転可能であり、
前記錘は、前記ホイールキャップにおいて前記フィンの近傍に固定されることにより前記ホイールキャップと一体的に回転可能であり、
前記ホイールキャップには、前記導風部材により形成される導風通路と前記ホイールの内部とを連通する連通孔が形成され、
前記導風部材は、前記ホイールキャップの径方向、かつ、一方向に向かって突出しているとともに、この突出している側の先端が開放され、
前記フィンは、前記導風部材の回転軸に関して前記導風部材の突出している方向とは対称な方向に向かって突出し、
前記ホイールキャップは、前記フィンが受けた風力により回転して、前記フィンに対して風の流れている方向に向かって、前記フィンが突出している姿勢になる請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインホイールモータ冷却構造。
【請求項5】
前記フィンは、前記錘を兼ねる請求項4に記載のインホイールモータ冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−292184(P2009−292184A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145207(P2008−145207)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】