説明

インホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置

【課題】リヤホイールハウスに配置される駆動モータユニットの冷却性向上を図ること。
【解決手段】4輪インホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置は、フロントホイールハウス3と、リヤホイールハウス4と、フロント駆動モータ5と、リヤ駆動モータ6と、床下気流通路7と、を備える。フロント駆動モータ5は、フロントホイールハウス3内に配置される。リヤ駆動モータ6は、リヤホイールハウス4内に配置される。床下気流通路7は、フロアパネル13とサイドシルインナー14とサイドメンバ15で囲まれる凹溝空間に設けられ、フロントホイールハウス3の後端に気流入口が開口し、リヤホイールハウス4の前端に気流出口が開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪のホイールハウス内に駆動用モータユニットを配置したインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置としては、車体のアンダーカバーの一部を上方に凸にすることで下側の開放された冷却用のダクトを形成するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記ダクトは、アンダーカバーの前後方向の中途位置から始まり、後方に行くにしたがってその高さが漸増する。そしてダクトは、側端に向けて曲げられ、インホイールモータに対向するアンダーカバーの側端部が出口となる。これにより、ダクトを通った空気がインホイールモータに当たり、インホイールモータが冷やされるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−199828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ホイール内ユニット冷却装置にあっては、第一に、ダクトへの気流を車両の床下から導いている、第二に、ダクトが走行方向に対して曲がっている。このため、気流通路となるダクト内の圧力損失が大きく、ダクトを通った空気の流速が減速し、効果的にインホイールモータへ導風できず、リヤホイールハウスに配置されるインホイールモータの冷却性向上を望めない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、リヤホイールハウスに配置される駆動モータユニットの冷却性向上を図ることができるインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置は、フロントホイールハウスと、リヤホイールハウスと、アンダーフロア部材と、駆動モータユニットと、床下気流通路と、を備える手段とした。
前記アンダーフロア部材は、前記フロントホイールハウスと前記リヤホイールハウスとの間を連結する。
前記駆動モータユニットは、少なくとも前記リヤホイールハウス内に配置される。
前記床下気流通路は、前記アンダーフロア部材に設けられ、前記フロントホイールハウスの後端に気流入口が開口し、前記リヤホイールハウスの前端に気流出口が開口する。
【発明の効果】
【0008】
よって、フロントホイールハウスとリヤホイールハウスとの間を連結するアンダーフロア部材に、フロントホイールハウスの後端に気流入口が開口し、リヤホイールハウスの前端に気流出口が開口する床下気流通路が設けられる。
このように、フロントホイールハウスの後端に床下気流通路の気流入口が開口していることで、フロントホイールハウスを通過する気流の通気抵抗が低く抑えられ、フロントホイールハウスの気流抜け性(風抜け性)が良くなる。加えて、リヤホイールハウスの前端に床下気流通路の気流出口が開口していることで、リヤホイールハウス(後輪)へ向けて気流が直線的に導入されるというように、リヤホイールハウスの気流導入性(導風性)が良くなる。そして、リヤホイールハウスに配置される駆動モータユニットの熱を、床下気流通路を抜けてリヤホイールハウスに導入された気流により抜熱する。
このように、フロントホイールハウスの気流抜け性とリヤホイールハウスの気流導入性が良くなる結果、リヤホイールハウスに配置される駆動モータユニットの冷却性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車(インホイールモータ車の一例)を示す全体側面図である。
【図2】実施例1のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車を示す全体底面図である。
【図3】実施例1のホイール内ユニット冷却装置の床下気流通路を示す図2A−A線断面図である。
【図4】比較例の4輪インホイールモータ車における走行風による駆動モータユニットの空冷作用を示す作用説明図である。
【図5】実施例1のホイール内ユニット冷却装置での走行風による駆動モータユニットの空冷作用を示す作用説明図である。
【図6】実施例2のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車を示す全体側面図である。
【図7】実施例3のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車を示す全体側面図である。
【図8】実施例4のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
実施例1のインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置の構成を、「全体構成」、「床下気流通路の詳細構成」に分けて説明する。
【0012】
[全体構成]
図1及び図2は、実施例1のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車(インホイールモータ車の一例)を示す全体側面図及び全体底面図である。以下、図1及び図2に基づき、全体構成を説明する。
【0013】
実施例1のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車は、図1及び図2に示すように、前面開口部1と、導風ダクト2と、フロントホイールハウス3と、リヤホイールハウス4と、フロント駆動モータ5(駆動モータユニット)と、リヤ駆動モータ6(駆動モータユニット)と、床下気流通路7と、を備えている。
【0014】
前記前面開口部1は、車両前面のうちフロントバンパーの位置に左右一対開口され、走行時に走行風を導入する。この左右一対の前面開口部1は、図2に示すように、フロントホイールハウス3とリヤホイールハウス4と床下気流通路7を車両前後方向直線で繋いだとき、車両前後方向直線を車両前方に延長した位置に設定される。
【0015】
前記導風ダクト2は、図2に示すように、前面開口部1にダクト入口が開口し、フロントホイールハウス3の前端にダクト出口が開口する位置に左右一対配置される。この左右一対の導風ダクト2は、左右一対の前面開口部1と同様に、フロントホイールハウス3とリヤホイールハウス4と床下気流通路7を車両前後方向直線で繋いだとき、車両前後方向直線を車両前方に延長した位置に設定される。
【0016】
前記フロントホイールハウス3は、車体の前側左右位置に、前輪タイヤ8及び前輪ホイール9を覆うように左右一対形成される。このフロントホイールハウス3の形状は、フロントサスペンションによる最大変位量のときに前輪タイヤ8と干渉しないように、前輪タイヤ8の外周面から十分な隙間を介した半円弧形状とされている。
【0017】
前記リヤホイールハウス4は、車体の後側左右位置に、後輪タイヤ10及び後輪ホイール11を覆うように左右一対形成される。このリヤホイールハウス4の形状は、フロントホイールハウス3と同様に、リヤサスペンションによる最大変位量のときに後輪タイヤ10と干渉しないように、後輪タイヤ10の外周面から十分な隙間を介した半円弧形状とされている。
【0018】
前記フロント駆動モータ5は、図2に示すように、左右一対のフロントホイールハウス3の内側位置にそれぞれ配置され、左右の前輪タイヤ8及び前輪ホイール9をそれぞれ独立に駆動する。このフロント駆動モータ5は、全体を床下気流通路7側に露出してレイアウトしている(図5参照)。
【0019】
前記リヤ駆動モータ6は、図2に示すように、左右一対のリヤホイールハウス4の内側位置にそれぞれ配置され、左右の後輪タイヤ10及び後輪ホイール11をそれぞれ独立に駆動する。このリヤ駆動モータ6は、全体を床下気流通路7側に露出してレイアウトしている(図5参照)。
【0020】
前記床下気流通路7は、フロントホイールハウス3とリヤホイールハウス4との間を連結する位置に設けられ、フロントホイールハウス3の後端に気流入口が開口し、リヤホイールハウス4の前端に気流出口が開口する。この左右一対の床下気流通路7は、図2に示すように、CD値(空気抵抗係数)を抑えるように4輪インホイールモータ車の底面を覆って配置されるアンダーカバー12に形成されている。そして、床下気流通路7は、図2に示すように、前面開口部1と導風ダクト2と共に車両前後方向に並ぶ直列配置によりレイアウトしている。また、床下気流通路7のうちフロントホイールハウス3との連結部位には、図1に示すように、前方からの気流を滑らかな円弧曲面に沿って導入する気流導入円弧部7aを有する。
【0021】
[床下気流通路の詳細構成]
図3は、実施例1のホイール内ユニット冷却装置の床下気流通路を示す図2A−A線断面図である。以下、図3に基づき、床下気流通路の詳細構成を説明する。
【0022】
前記フロントホイールハウス3とリヤホイールハウス4との間を連結する車体構造部材であるアンダーフロア部材に、床下気流通路7が設けられる。このアンダーフロア部材としては、図3に示すように、アンダーカバー12、フロアパネル13、サイドシルインナー14、サイドメンバ15、アウトリガー16を有する。
【0023】
前記アンダーフロア部材は、図3に示すように、フロアパネル13と、フロアパネル13の両側に車両前後方向に設けられるサイドシルインナー14と、フロアパネル13の下面に車両前後方向に設けられるサイドメンバ15と、で囲まれた凹溝空間を構成する。そして、フロアパネル13の下面位置であって、サイドシルインナー14とサイドメンバ15に挟まれた位置に、車体安定性を確保するためアウトリガー16を設ける。さらに、サイドシルインナー14の一部と、アウトリガー16の内面と、サイドメンバ15を、アンダーカバー12により覆うとき、アンダーカバー12に方形状断面あるいは台形状断面の樋溝12aを形成する。
【0024】
前記床下気流通路7は、車体構造部材であるアンダーフロア部材により構成される凹溝空間を利用し、凹溝空間に符合する樋溝12aをアンダーカバー12に形成することで、車両前後方向に連通する左右一対の下開き通路により構成される。
【0025】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1の4輪インホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置における作用を、「フロント駆動モータの冷却作用」、「リヤ駆動モータの冷却作用」に分けて説明する。
【0026】
[比較例の課題]
4輪インホイールモータ車において、図4に示すように、駆動モータの空冷構造を特に有さないものを比較例1とする。
【0027】
比較例1の4輪インホイールモータ車による走行中、図4の破線矢印に示すように、車両前面の下部開口から導入された走行風は、フロントホイールハウスの周りに回り込むように導かれる。その後、フロントホイールハウスの後端から車体床下空間を通過し、さらに、リヤホイールハウスの下部空間を通過し、そのまま車両後方に向かって流出するという気流の流れパターンとなる。
したがって、タイヤ回転に伴う逆流域があるフロントホイールハウス周りの流速が十分でなく、フロント駆動モータユニットの冷却性に劣る。加えて、リヤホイールハウス周りの流速は、リヤホイールハウスの下部空間を気流が通過することで、リヤ駆動モータユニットの冷却性は、フロント駆動モータユニットの冷却性に比べて劣る。
【0028】
そこで、4輪インホイールモータ車において、車両前方からフロントホイールハウスの周りに走行風を積極的に導入するようにしたものを比較例2とする。
この比較例2の場合、比較例1に比べ、フロントホイールハウス周りに導入される気流の流量が増し、フロント駆動モータユニットの冷却性は向上するものの、リヤ側への気流の抜けが悪く、フロントホイールハウス内の圧力上昇により車両のフロント側が持ち上がるフロントリフトが増大する。加えて、リヤホイールハウス周りについては、比較例1と同様であり、リヤ駆動モータユニットの冷却性は、フロント駆動モータユニットの冷却性に比べて劣る。
【0029】
このように、4輪インホイールモータ車を空冷する場合、フロント側とリヤ側で空冷性能が大きく異なるため、駆動モータユニットをフロント側とリヤ側とで共通化できない。そして、抜熱量が低いほうのリヤ側にあわせて設計することになるので、駆動モータユニットが大きくなる。
【0030】
[フロント駆動モータの冷却作用]
上記のように、4輪インホイールモータ車を空冷する場合、フロントリフトを増大させることなくフロント側での空冷性能を向上させることが必要である。以下、図1及び図5に基づき、これを反映するフロント駆動モータの冷却作用を説明する。
【0031】
実施例1の4輪インホイールモータ車による走行中、図1の破線矢印に示すように、車両前面の前面開口部1から導入された走行風による気流は、導風ダクト2を通過してフロントホイールハウス3の前端に流入する。そして、フロントホイールハウス3の周りに流れ込んだ気流は、フロントホイールハウス3の後端から床下気流通路7の気流入口へとスムーズに抜け、床下気流通路7を車両後方に向かって直線的に流れるという気流の流れパターンとなる。
【0032】
すなわち、フロントホイールハウス3の後端に床下気流通路7の気流入口が開口していることで、フロントホイールハウス3を通過する気流の通気抵抗が低く抑えられる。このため、図5の矢印Cに示すように、フロントホイールハウス3の気流抜け性が良くなり、フロントホイールハウス周りの流速が増し、圧力上昇が抑えられることに伴ってフロントリフトの増大が抑制される。
【0033】
このため、フロントホイールハウス3に配置されるフロント駆動モータ5の熱を、フロントホイールハウス3に導入された十分な流量の気流により抜熱する。このように、フロントホイールハウス3の気流抜け性が良くなる結果、フロントリフトを増大させることなく、フロントホイールハウス3に配置されるフロント駆動モータ5の冷却性が向上する。
【0034】
実施例1では、車両前面に開口された前面開口部1と、前面開口部1にダクト入口が開口し、フロントホイールハウス3の前端にダクト出口が開口する導風ダクト2と、を備えた構成を採用している。
この構成により、図5の矢印Bに示すように、前面開口部1から導風ダクト2を経過してフロントホイールハウス3へと気流を直線的に導入する。したがって、前面開口部1と導風ダクト2が無い場合に比べ、フロントホイールハウス3への気流導入性能が向上し、これに伴ってフロント駆動モータ5の冷却性向上が図られる。
【0035】
実施例1では、フロント駆動モータ5の全体を、床下気流通路7側に露出するレイアウト構成を採用している。
この構成により、フロント駆動モータ5の全体が、フロントホイールハウス3の周りを流れる気流の主流線に含まれる。したがって、フロントホイールハウス3の周りに導入した気流をフロント駆動モータ5に直接当てるので効率的に冷却される。
【0036】
[リヤ駆動モータの冷却作用]
上記のように、4輪インホイールモータ車で駆動モータユニットの共通化を目指す場合、フロント側での空冷性能とリヤ側での空冷性能の差をできる限り小さく抑えることが必要である。以下、図1及び図5に基づき、これを反映するリヤ駆動モータの冷却作用を説明する。
【0037】
実施例1の4輪インホイールモータ車による走行中、図1の破線矢印に示すように、フロントホイールハウス3の周りを流れた気流(走行風)は、フロントホイールハウス3の後端から床下気流通路7の気流入口へと抜ける。そして、床下気流通路7を車両後方に向かって直線的に流れ、床下気流通路7の気流出口からリヤホイールハウス4の前端に流入する。そして、リヤホイールハウス4の周りを流れた気流は、車両の下部空間を通過し、車両後方に流出するという気流の流れパターンとなる。
【0038】
すなわち、フロントホイールハウス3の後端に床下気流通路7の気流入口が開口している。このため、フロントホイールハウス3を通過する気流の通気抵抗が低く抑えられ、フロントホイールハウス3の気流抜け性(風抜け性)が良くなる。加えて、リヤホイールハウス4の前端に床下気流通路7の気流出口が開口している。このため、図5の矢印Dに示すように、リヤホイールハウス4へ向けて気流が直線的に導入されるというように、リヤホイールハウス4の気流導入性(導風性)が良くなる。
【0039】
このように、フロントホイールハウス3の気流抜け性とリヤホイールハウス4の気流導入性が良くなる結果、リヤホイールハウス4に配置されるリヤ駆動モータ6の熱を、床下気流通路7からリヤホイールハウス4に導入された気流により抜熱する。したがって、比較例1,2に比べたとき、リヤホイールハウス4に配置されるリヤ駆動モータ6の冷却性向上が図られ、フロント側の空冷性能とリヤ側の空冷性能の差が縮まる。このため、例えば、4輪インホイールモータ車を空冷する場合、フロント駆動モータ5とリヤ駆動モータ6を小型共通化することが可能となる。
【0040】
実施例1では、前面開口部1と導風ダクト2と床下気流通路7を、車両前後方向に並ぶ直列配置によるレイアウト構成を採用している。
この構成により、前面開口部1から導入された気流が流路曲げ抵抗を受けることによる損失が抑えられ、前面開口部1→導風ダクト2→フロントホイールハウス3を直線的に経過する。したがって、床下気流通路7に流れ込む気流の流量、言い換えると、リヤホイールハウス4の周りに流れ込む気流の流量が増大し、リヤ駆動モータ6の冷却性をさらに向上する。
【0041】
実施例1では、リヤ駆動モータ6の全体を、床下気流通路7側に露出するレイアウト構成を採用している。
この構成により、リヤ駆動モータ6の全体が、リヤホイールハウス4の周りを流れる気流の主流線に含まれる。したがって、リヤホイールハウス4の周りに導入した気流をリヤ駆動モータ6に直接当てるので効率的に冷却される。
【0042】
実施例1では、床下気流通路7を、フロアパネル13と、フロアパネル13の両側に車両前後方向に設けられるサイドシルインナー14と、フロアパネル13の下面に車両前後方向に設けられるサイドメンバ15と、で囲まれた凹溝空間に構成した。
この構成により、車体構造に基づいて車体底面に形成される凹溝空間を利用し、床下気流通路7が、車体底面を覆うアンダーカバー12により実現される。したがって、アンダーカバー12を大型化することなく、車体底面の凹溝空間に床下気流通路7が設けられる。
【0043】
実施例1では、床下気流通路7のフロントホイールハウス3との連結部位に、フロントホイールハウス3からの気流を導入する気流導入円弧部7aを有する構成を採用している。
この構成により、フロントホイールハウス3から床下気流通路7へ導入される気流の流速が増速される。したがって、リヤホイールハウス4へ向かって床下気流通路7を流れる気流の流速が確保され、リヤホイールハウス4へ導入する気流の流量が増大される。
【0044】
次に、効果を説明する。
実施例1の4輪インホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0045】
(1) フロントホイールハウス3と、
リヤホイールハウス4と、
前記フロントホイールハウス3と前記リヤホイールハウス4との間を連結するアンダーフロア部材(アンダーカバー12、フロアパネル13、サイドシルインナー14、サイドメンバ15等)と、
少なくとも前記リヤホイールハウス4内に配置されるリヤ駆動モータ6(駆動モータユニット)と、
前記アンダーフロア部材に設けられ、前記フロントホイールハウス3の後端に気流入口が開口し、前記リヤホイールハウス4の前端に気流出口が開口する床下気流通路7と、
を備える。
このため、リヤホイールハウス4に配置されるリヤ駆動モータ6(駆動モータユニット)の冷却性向上を図ることができる。
【0046】
(2) 車両前面に開口された前面開口部1と、
前記前面開口部1にダクト入口が開口し、前記フロントホイールハウス3の前端にダクト出口が開口する導風ダクト2と、
を備える。
このため、(1)の効果に加え、フロントホイールハウス3への気流導入性能が向上し、これに伴ってフロント駆動モータ5(駆動モータユニット)の冷却向上を図ることができる。
【0047】
(3) 前記駆動モータユニット(フロント駆動モータ5,リヤ駆動モータ6)は、前記フロントホイールハウス3内と前記リヤホイールハウス4内に配置される。
このため、(2)の効果に加え、フロントリフトの増大を抑制しつつ駆動モータユニット(フロント駆動モータ5)の冷却性向上と、駆動モータユニット(リヤ駆動モータ6)の冷却性向上と、併せて達成することができる。
【0048】
(4) 前記前面開口部1と前記導風ダクト2と前記床下気流通路7を、車両前後方向に並ぶ直列配置によりレイアウトした。
このため、(3)の効果に加え、リヤホイールハウス4の周りに流れ込む気流の流量が増大し、駆動モータユニット(リヤ駆動モータ6)の冷却性をさらに向上させることができる。
【0049】
(5) 前記駆動モータユニット(フロント駆動モータ5,リヤ駆動モータ6)は、少なくともユニット一部分を、前記床下気流通路7側に露出してレイアウトした。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、フロントホイールハウス3とリヤホイールハウス4の周りに導入した気流を駆動モータユニット(フロント駆動モータ5,リヤ駆動モータ6)に直接当てるので効率的に冷却することができる。
【0050】
(6) 前記床下気流通路7は、フロアパネル13と、該フロアパネル13の両側に車両前後方向に設けられるサイドシルインナー14と、前記フロアパネル13の下面に車両前後方向に設けられるサイドメンバ15と、で囲まれた凹溝空間に構成される。
このため、(1)〜(5)の効果に加え、アンダーカバー12を大型化することなく、車体底面の凹溝空間に床下気流通路7を設けることができる。
【0051】
(7) 前記床下気流通路7は、前記フロントホイールハウス3との連結部位に、前記フロントホイールハウス3からの気流を導入する気流導入円弧部7aを有する。
このため、(1)〜(6)の効果に加え、リヤホイールハウス4へ向かって床下気流通路7を流れる気流の流速が確保され、リヤホイールハウス4へ導入する気流の流量を増大することができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2は、床下気流通路のうちリヤホイールハウスとの連結部位に、リヤホイールハウスへ気流を導くディフューザー部を有する例である。
【0053】
まず、構成を説明する。
図6は、実施例2のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車を示す全体側面図である。以下、図6に基づき、実施例2の構成を説明する。
【0054】
実施例2のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車は、図6に示すように、前面開口部1と、導風ダクト2と、フロントホイールハウス3と、リヤホイールハウス4と、床下気流通路7と、前輪タイヤ8と、前輪ホイール9と、後輪タイヤ10と、後輪ホイール11と、を備えている。
【0055】
前記床下気流通路7は、フロントホイールハウス3との連結部位に、フロントホイールハウス3からの気流を滑らかな円弧曲面に沿って導入する気流導入円弧部7aを有する。加えて、リヤホイールハウス4との連結部位に、通路出口に向けて断面積を徐々に拡大することで、リヤホイールハウス4へ気流を導くディフューザー部7bを有する。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
作用を説明すると、実施例2では、床下気流通路7のリヤホイールハウス4との連結部位に、リヤホイールハウス4へ気流を導くディフューザー部7bを有する構成を採用している。
この構成により、床下気流通路7からリヤホイールハウス4へ導入される気流の流速を落とし、気流の圧力を増加させることで、タイヤ回転に伴う逆流域に対抗してリヤホイールハウス4の周りに気流を導入する作用を示す。すなわち、ディフューザー部7bは、流体のもつ運動エネルギーを圧力エネルギーに変換する流路である。したがって、ディフューザー部7bを有することで、床下気流通路7からリヤホイールハウス4の周りへの気流導入量が増大される。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
次に、効果を説明する。
実施例2のインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0058】
(8) 前記床下気流通路7は、前記リヤホイールハウス4との連結部位に、前記リヤホイールハウス4へ気流を導くディフューザー部7bを有する。
このため、実施例1の(1)〜(7)の効果に加え、床下気流通路7からリヤホイールハウス4の周りへ導入する気流導入量を増大することができる。
【実施例3】
【0059】
実施例3は、実施例2の構成に加え、車両後面の位置に後面開口部を設けた例である。
【0060】
まず、構成を説明する。
図7は、実施例3のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車を示す全体側面図である。以下、図7に基づき、実施例3の構成を説明する。
【0061】
実施例3のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車は、図7に示すように、前面開口部1と、導風ダクト2と、フロントホイールハウス3と、リヤホイールハウス4と、床下気流通路7と、前輪タイヤ8と、前輪ホイール9と、後輪タイヤ10と、後輪ホイール11と、後面開口部17と、を備えている。
【0062】
前記後面開口部17は、車両後面に設けられ、リヤホイールハウス4の後端と車両前後方向に対向するリヤバンパーの位置に開口する。
なお、他の構成は、実施例1,2と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
作用を説明すると、実施例3では、車両後面にリヤホイールハウス4の後端と車両前後方向に対向する位置に開口する後面開口部17を設けた構成を採用している。
この構成により、リヤホイールハウス4を通過する気流の通気抵抗が低く抑えられ、リヤホイールハウス4の気流抜け性(風抜け性)が良くなる。したがって、リヤホイールハウス4に配置されているリヤ駆動モータ6の冷却性能が向上する。
なお、他の作用は、実施例1,2と同様であるので、説明を省略する。
【0064】
次に、効果を説明する。
実施例3のインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0065】
(9) 車両後面に設けられ、リヤホイールハウス4の後端と車両前後方向に対向する位置に開口する後面開口部17とを備える。
このため、実施例1の(1)〜(7)の効果及び実施例2の(8)の効果に加え、リヤホイールハウス4の気流抜け性を高めることで、リヤホイールハウス4に配置されているリヤ駆動モータ6の冷却性能を向上させることができる。
【実施例4】
【0066】
実施例4は、実施例3の構成において、床下気流通路のうちリヤホイールハウスとの連結部位に、ディフューザー部に代えて気流導入円弧部を有する例である。
【0067】
まず、構成を説明する。
図8は、実施例4のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車を示す全体側面図である。以下、図8に基づき、実施例4の構成を説明する。なお、実施例4のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車は、例えば、日産PIVOのような車両の前後が入れ替わる車両である。
【0068】
実施例4のホイール内ユニット冷却装置が適用された4輪インホイールモータ車は、図8に示すように、前面開口部1と、導風ダクト2と、フロントホイールハウス3と、リヤホイールハウス4と、床下気流通路7と、前輪タイヤ8と、前輪ホイール9と、後輪タイヤ10と、後輪ホイール11と、後面開口部17と、を備えている。
【0069】
前記床下気流通路7は、フロントホイールハウス3との連結部位に、フロントホイールハウス3からの気流を滑らかな円弧曲面に沿って導入する気流導入円弧部7aを有する。加えて、リヤホイールハウス4との連結部位に、車両の前後が入れ替わったとき、リヤホイールハウス4からの気流を滑らかな円弧曲面に沿って導入する気流導入円弧部7cを有する。
なお、他の構成は、実施例1〜3と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
作用を説明すると、実施例4では、床下気流通路7のリヤホイールハウス4との連結部位に、リヤホイールハウス4からの気流を滑らかな円弧曲面に沿って導入する気流導入円弧部7cを有する構成を採用している。
この構成により、図8の左方向に走行するときは、気流導入円弧部7aにより床下気流通路7の流速や流量を増大し、図8の右方向に走行するときは、気流導入円弧部7cにより床下気流通路7の流速や流量を増大する作用を示す。すなわち、車両の前後が入れ替わったとしても、床下気流通路7へ導入される気流を増速し、後側となるホイールハウスの周りへの気流導入量を増大させる。
なお、他の作用は、実施例1〜3と同様であるので、説明を省略する。また、効果についても、実施例1〜3と同様であるので省略する。
【0071】
以上、本発明のインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置を実施例1〜実施例4に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0072】
実施例1〜4では、駆動モータユニットとして、フロント駆動モータ5とリヤ駆動モータ6とする例を示した。しかし、駆動モータユニットとしては、駆動モータ単体のみならず、駆動モータとインバータ等のモータ駆動回路を一体に有する駆動モータユニットとしたものでも勿論含まれる。
【0073】
実施例1〜4では、フロント駆動モータ5とリヤ駆動モータ6の全体を床下気流通路7側に露出してレイアウトする例を示した。しかし、駆動モータユニットは、全体ではなく少なくとも一部を床下気流通路側に露出してレイアウトする例も含まれる。
【0074】
実施例1〜4では、インホイールモータ車として、4輪インホイールモータ車の例を示した。しかし、インホイールモータ車としては、後輪側だけにインホイールモータを搭載した後輪インホイールモータ車であっても本発明のホイール内ユニット冷却装置を適用できる。この場合、フロント側の気流を床下気流通路によりリヤホイールハウスまで導く機能により、リヤホイールハウス内のリヤ駆動モータあるいはリヤ駆動モータユニットの冷却性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 前面開口部
2 導風ダクト
3 フロントホイールハウス
4 リヤホイールハウス
5 フロント駆動モータ(駆動モータユニット)
6 リヤ駆動モータ(駆動モータユニット)
7 床下気流通路
7a 気流導入円弧部
7b ディフューザー部
7c 気流導入円弧部
8 前輪タイヤ
9 前輪ホイール
10 後輪タイヤ
11 後輪ホイール
12 アンダーカバー(アンダーフロア部材)
13 フロアパネル(アンダーフロア部材)
14 サイドシルインナー(アンダーフロア部材)
15 サイドメンバ(アンダーフロア部材)
16 アウトリガー(アンダーフロア部材)
17 後面開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントホイールハウスと、
リヤホイールハウスと、
前記フロントホイールハウスと前記リヤホイールハウスとの間を連結するアンダーフロア部材と、
少なくとも前記リヤホイールハウス内に配置される駆動モータユニットと、
前記アンダーフロア部材に設けられ、前記フロントホイールハウスの後端に気流入口が開口し、前記リヤホイールハウスの前端に気流出口が開口する床下気流通路と、
を備えることを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
車両前面に開口された前面開口部と、
前記前面開口部にダクト入口が開口し、前記フロントホイールハウスの前端にダクト出口が開口する導風ダクトと、
を備えることを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
前記駆動モータユニットは、前記フロントホイールハウス内と前記リヤホイールハウス内に配置される
ことを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
前記前面開口部と前記導風ダクトと前記床下気流通路を、車両前後方向に並ぶ直列配置によりレイアウトした
ことを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
前記駆動モータユニットは、少なくともユニット一部分を、前記床下気流通路側に露出してレイアウトした
ことを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
前記床下気流通路は、フロアパネルと、該フロアパネルの両側に車両前後方向に設けられるサイドシルインナーと、前記フロアパネルの下面に車両前後方向に設けられるサイドメンバと、で囲まれた凹溝空間に構成される
ことを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
前記床下気流通路は、前記フロントホイールハウスとの連結部位に、前記フロントホイールハウスからの気流を導入する気流導入円弧部を有する
ことを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか1項に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
前記床下気流通路は、前記リヤホイールハウスとの連結部位に、前記リヤホイールハウスへ気流を導くディフューザー部を有する
ことを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか1項に記載されたインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置において、
車両後面に設けられ、前記リヤホイールハウスの後端と車両前後方向に対向する位置に開口する後面開口部と、
を備えることを特徴とするインホイールモータ車のホイール内ユニット冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67217(P2013−67217A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205574(P2011−205574)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】