説明

インモールド成形用ラベルを貼着した中空容器

【課題】容器材料が高密度ポリエチレンでもポリプロピレンであってもラベルとの密着性がよく、かつ、ラベル打ち抜きが容易でヒゲの発生がなく、かつ、ラベルの金型内への供給が容易なインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器を提供する。
【解決手段】表面に印刷が施こされた熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)の裏面に、該フィルムの素材樹脂の融点より低い融点を有するヒートシール性樹脂層(II)を設けたインモールド成形用ラベルであって、前記ヒートシール性樹脂層(II)の樹脂基材が、エチレン40〜98重量%と炭素数が3〜30のα−オレフィン60〜2重量%とをメタロセン触媒を用いて共重合させて得たエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするものであるインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルを、予め金型内に該ラベルの印刷が施こされた表面側が金型壁面に接するようにセットし、金型内に溶融した熱可塑性樹脂のパリソンを導き中空成形して、或いは溶融した熱可塑性樹脂シートを真空成形もしくは圧空成形してラベル貼合容器を製造するインモールド成形に用いるラベルを貼着した中空容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラベル付きの樹脂成形容器を一体成形するには、金型内に予めブランク又はラベルをインサートし、次いで射出成形、中空成形、差圧成形、発泡成形などにより該金型内で容器を成形して、容器に絵付けなどを行なっている(特許文献1、2参照)。この様なインモールド用ラベルとしては、グラビア印刷された樹脂フィルム、オフセット多色印刷された合成紙(例えば、特許文献3、4参照)、或いは、アルミニウム箔の裏面に高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体をラミネートし、その箔の表面にグラビア印刷したアルミニウムラベルなどが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−69015号公報
【特許文献2】ヨーロッパ公開特許第254923号明細書
【特許文献3】特公平2−7814号公報
【特許文献4】特開平2−84319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のインモールドラベルやブランクを用いてインモールド成形によりラベルで加飾されたラベル貼合容器を製造する方法においては、ヒートシール性樹脂として高圧法低密度ポリエチレンを用いたものは、容器の素材が高密度ポリエチレンの場合はラベルと容器の密着性は良好であるが容器の素材がポリプロピレンの場合はラベルと容器の密着性が低く、ラベルが容器より剥れてしまう欠点があった。又、エチレン・酢酸ビニル共重合体をヒートシール性樹脂として用いた場合は、ポリプロピレン製中空容器とラベルとの密着性は向上するが、ラベル打抜性が悪く、ラベルにヒゲ(バリ)が発生し、ラベルの不良率が高くなるという欠点があった。
又、ラベルの製造工程における印刷加工(オフセット、フレキソ、UVオフセット、活版)時の給排紙性が悪化したり、断裁、打ち抜き加工時の切り口にブロッキングが生じたり、該ラベルを重ね合わせた時にブロッキングが生じ易い等の欠点があった。
本発明は、容器材料が高密度ポリエチレンでもポリプロピレンであってもラベルとの密着性がよく、かつ、ラベル打ち抜きが容易でヒゲの発生がなく、かつ、ラベルの金型内への供給が容易なインモールド成形用ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、表面に印刷が施こされた熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)の裏面に、該フィルムの素材樹脂の融点より低い融点を有するヒートシール性樹脂層(II)を設けたインモールド成形用ラベルであって、前記ヒートシール性樹脂層(II)の樹脂基材が、エチレン40〜98重量%と炭素数が3〜30のα−オレフィン60〜2重量%とをメタロセン触媒を用いて共重合させて得たエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするものであることを特徴とするインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
ラベルの打ち抜き時のヒゲの発生がなく、高密度ポリエチレン中空容器は勿論のこと、ポリプロピレン容器とも良好な密着性を示すインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
インモールド成形用ラベルの構造:
本発明のインモールド成形用ラベルについてさらに詳細に説明する。
図1は、中空成形用インモールドラベルの断面図を示したものであり、図中、1はラベル、2は熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)、3は印刷、4はヒートシール性樹脂層(II)である。ヒートシール性樹脂層(II)は、必要によりエンボス加工を施こし、それによりラベル貼合容器のラベルのブリスターの発生を防ぐことができる(特開平2−84319号公報、特開平3−260689号公報参照)。5はエンボス模様の山を、6はエンボス模様の谷を示す。
【0008】
図2は、そのラベル1のヒートシール性樹脂層4側(ラベルの裏面側)の平面図である。図3はラベルの断面の部分拡大図である。
基材層フィルム(I):
ラベルの基材層(I)の熱可塑性樹脂としては、従来使用されるラベルの基材層を使用することができる。すなわち、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの融点が135〜264℃の樹脂フィルム、あるいは、特公昭46−40794号公報に開示されているような無機充填剤を8〜65重量%含有させたポリプロピレンフィルムを延伸して得られる合成紙、あるいは、前記樹脂フィルムもしくは合成紙の表面上に無機充填剤含有ラテックス(塗工剤)を塗工した塗工フィルム、あるいは、前記フィルムにアルミニウム蒸着したもの、もしくは、前記フィルムにアルミニウム箔を貼着したもの等が用いられる。
【0009】
これらの中でも、印刷性、ラベルの金型内への供給性、熱収縮防止性の面から、基材層(I)としては、無機微細粉末を5〜30重量%、高密度ポリエチレン3〜20重量%およびプロピレン系樹脂を92〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物の二軸延伸フィルム基材層(A)の片面に、無機微細粉末を35〜65重量%、高密度ポリエチレン0〜10重量%およびプロピレン系樹脂を55〜35重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムの紙状層(B)を、この紙状層(B)とは反対の基材層(A)の片面には無機微細粉末を35〜65重量%、高密度ポリエチレン0〜10重量%およびプロピレン系樹脂55〜35重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムよりなる紙状層(C)が貼合された微多孔性積層樹脂フィルムが好ましい。
【0010】
又、基材層(I)の密度調整のため、上記基材層(A)と紙状層(B)間に密度調整用の層を設けた次の基材層フィルムも好ましい。例えば、無機微細粉末を5〜30重量%、高密度ポリエチレン3〜20重量%およびプロピレン系樹脂を92〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物の二軸延伸フィルム基材層(A)の片面に、無機微細粉末を35〜65重量%、高密度ポリエチレン0〜10重量%およびプロピレン系樹脂を55〜35重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムの紙状層(C)を、この紙状層(C)とは反対の基材層(A)の片面には無機微細粉末を35〜65重量%、高密度ポリエチレン0〜10重量%およびプロピレン系樹脂55〜35重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムよりなる中間層(D)と、無機微細粉末を35〜65重量%、高密度ポリエチレン0〜10重量%、およびプロピレン系樹脂を55〜35重量%の割合で含有し、かつ、中間層(D)とは無機微細粉末の含有率が異なる樹脂組成物の一軸延伸フィルムよりなる紙状層(B)が貼合された微多孔性積層樹脂フィルム、である。
【0011】
これら微多孔性積層延伸樹脂フィルムの密度は、0.65〜1.02g/cm3 の範囲
である。これら微多孔性積層延伸樹脂フィルム(I)において、印刷は紙状層(B)側に、ヒートシール性樹脂層(II)は紙状層(C)側に設けられる。
基材層(I)の肉厚は、20〜200μm、好ましくは40〜150μmの範囲である。
ヒートシール性樹脂層(II):
ヒートシール性樹脂層(II)は、エチレン40〜98重量%と炭素数が3〜30のα−オレフィン60〜2重量%とをメタロセン触媒を用いて共重合させて得たエチレン・α−オレフィン共重合体(直鎖状ポリエチレン)を主成分とするものである。
【0012】
中でも次の(1)、(2)および(3)の条件を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
(1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が2〜30g/10分
(2)密度が0.935g/cm3 以下
(3)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり:該ピーク温度が20〜85℃であり:該ピークの高さをHとし、該ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上であり:該ピークの溶出温度以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線に存在することがある。
【0013】
特に、(a)上記(1)、(2)および(3)の条件を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体50〜90重量%と
(b)次に示す(1’),(2’),(3’)および(4’)の物性を示す高圧法低密度ポリエチレン
(1’)MFRが0.1〜20g/10分
(2’)密度が0.915〜0.93g/cm3
(3’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(4’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
50〜10重量%との樹脂組成物が好ましい。
【0014】
(a)成分の線状低密度ポリエチレンであるエチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、または、例えば、国際公開公報WO92/01723号公報等に開示されているようなメタロセン化合物と後述するメタロセン化合物と反応して安定なアニオンをなす化合物からなる触媒を使用して、主成分のエチレンと従成分のα−オレフィンとを共重合させることにより得られる。
エチレンは、40〜98重量%、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは70〜93重量%の割合で用いられる。
【0015】
エチレンと共重合される炭素数が3〜30のα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1、オクタデセン等が挙げられる。これらの中でも1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1が好ましい。
α−オレフィンは、2〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは7〜30重量%である。
また、メタロセン触媒としては、次式に示されるメタロセン化合物が挙げられる。
【0016】
【化1】

〔式中、MはZr、Ti、Hf、V、Nb、TaおよびCrからなる群から選ばれる遷
移金属であり、Lは遷移金属に配位する配位子であり、少なくとも1個のLはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、SO3 R基(ただしRはハロゲンなどの置換基を有していてもよい炭素数1〜8の炭化水素基)、ハロゲン原子または水素原子であり、xは遷移金属の原子価である。〕
【0017】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、たとえば、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、などのアルキル置換シクロペンタジエニル基あるいはインデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などを例示することができる。これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0018】
これらの遷移金属に配位する配位子の中では、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。上記一般式で表される化合物がシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0019】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、具体的に下記のようなものが挙げられる。炭素数1〜12の炭化水素基はしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などが例示され、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが例示され、アリール基としては、フェニル基、トリル基などが例示され、アラルキル基としては、ベンジル基、ネオフィル基などが例示される。また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが例示され、アリーロキシ基としては、フェノキシ基などが例示され、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。
【0020】
SO3 Rで表される配位子としては、p−トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基などが例示される。
このようなシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含むメタロセン化合物は、たとえば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記式で示される。
【0021】
【化2】

(式中、Mは上記遷移金属であり、R2 はシクロペンタジエニル骨格を有する基(配位子)であり、R3 、R4 およびR5 はシクロペンタジエニル骨格を有する基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、SO3 R基、ハロゲン原子または水素原子であり、kは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。)
【0022】
本発明では上記式R2 k 3 l 4 m 5 n Mにおいて、R2 、R3 、R4 およびR5 のうち少なくとも2個すなわちR2 およびR3 がシクロペンタジエニル骨格を有する基(
配位子)であるメタロセン化合物が好ましく用いられる。これらのシクロペンタジエニル骨格を有する基はエチレン、プロピレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンなどの置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン基などの置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。またR4 およびR5 はシクロペンタジエニル骨格を有する基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、SO3 R、ハロゲン原子または水素原子である。
【0023】
以下に、Mがジルコニウムである遷移金属化合物について具体的な化合物を例示する。ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p−トルエンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタ
ジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド。
【0024】
なお、上記例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2−および1,3−置換体を含み、三置換体は1,2,3−および1,2,4−置換体を含む。またプロピル、ブチルなどのアルキル基は、n−、i−、sec−、tert−などの異性体を含む。
【0025】
また、上記のようなジルコニウム化合物において、ジルコニウムを、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルまたはクロムに置換えた化合物を用いることもできる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、炭化水素あるいはハロゲン化炭化水素に希釈して用いてもよい。本発明では、メタロセン化合物として、中心の金属原子がジルコニウムであり、少なくとも2個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有するジルコノセン化合物が好ましく用いられる。
このメタロセン化合物と組み合せて使用されるアルミノオキサンとしては、具体的には一般式(1)および(2)で表されるアルミノオキサン類を例示することができる。
【0026】
【化3】

〔一般式(1)および(2)において、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、とくに好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましく5〜40の整数である。〕
【0027】
ここで、このアルミノオキサンは式(OAl(R1 ))で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R2 ))で表わされるアルキルオキシアルミニウム単位〔ここで、R1 およびR2 はRと同様の炭化水素基を例示することができ、R1 およびR2 は相異なる基を表わす〕からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。その場合には、メチルオキシアルミニウム単位(OAl(CH3 ))を30モル%以上、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上の割合で含む混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されたアルミノオキサンが好適である。
【0028】
このようなアルミノオキサンの製造法として、たとえば次の方法を例示することができる。
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して反応させる方法。
【0029】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ化合物を反応させる方法。
【0030】
これらの方法のうちでは、(1)の方法を採用するのが好ましい。なお、該アルミノオキサンは、少量のアルミニウム以外の有機金属成分を含有していても差しつかえない。また、回収された上記アルミノオキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後に、溶媒に再溶解してもよい。
【0031】
アルミノオキサンの製造の際に用いられる有機アルミニウム化合物としては、具体的に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシド等が挙げられる。
【0032】
また、下記一般式で表わされるイソプレニルアルミニウムを用いることもできる。
【化4】

(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)
これらのうち、トリアルキルアルミニウムが特に好ましい。
【0033】
上記の有機アルミニウム化合物は、単独であるいは組合せて用いられる、またアルミノオキサンの製造の際に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ塩素化物、臭素化物等の炭化水素溶媒、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。これらのうち特に芳香族炭化水素が好ましく用いられる。
【0034】
メタセロン中の全金属に対するアルミノオキセン中のアルミニウムの比は、約0.5:
1〜約10,000:1、好ましくは約5:1〜約1000:1の範囲である。
更に、メタセロン化合物と反応して安定なアニオンとなる化合物とは、カチオンとアニオンのイオン対から形成されるイオン性化合物あるいは親電子性化合物であり、メタセロン化合物と反応して安定なイオンとなって重合活性種を形成するものである。
【0035】
具体的には、イオン性化合物は下記式で表される。
【化5】

ここで、Qはイオン性化合物のカチオン成分であり、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられ、更には、それ自身が還元され易い金属の陽イオンや有機金属の陽イオンなども挙げられる。
【0036】
これらのカチオンは特表平1−501950号公報などに開示されているようなプロトンを与えることができるカチオンだけでなく、プロトンを与えないカチオンでも良い。これらのカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、また、銀イオン、金イオン、白金イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等が挙げられる。
【0037】
また、Yはイオン性化合物のアニオン成分であり、メタセロン化合物と反応して安定なアニオンとなる成分であって、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオン等が挙げられ、具体的には、テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム、テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン、テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素、テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン、デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレート等が挙げられる。
【0038】
また、親電子性化合物としては、ルイス酸化合物として知られているものの内、メタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなって重合活性種を形成するものであり、種々のハロゲン化金属化合物や固体酸として知られている金属酸化物などが挙げられる。具体的には、ハロゲン化マグネシウムやルイス酸性無機化合物などが例示される。
重合方法としては、気相法、スラリー法、溶液法、高圧イオン重合法等を挙げることができる。これらの中では溶液法、高圧イオン重合法が好ましく、特に高圧イオン重合法で
製造することが好ましい。
なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭56−18607号、特開昭58−225106号の各公報に記載されている、圧力が100kg/cm2 以上、好ましくは200〜2,000kg/cm2 、温度が125℃以上、好ましくは130〜250℃、特に150〜200℃の反応条件下に行なわれるエチレン系重合体の連続的製造法である。
【0039】
これらメタロセン触媒を用いて得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の中でも、メタロセン化合物と、前記式
【化6】

で示されるイオン性化合物よりなる触媒を用いて得られたエチレン・α−オレフィン共重合体であって、以下の(1)〜(3)の物性、好ましくは更に(4)〜(5)の物性を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0040】
(1)MFR
JIS K7210によるMFR(メルトフローレート)が2〜30g/10分、好ましくは5〜25g/10分、特に好ましくは10〜22g/10分、最も好ましくは13〜20g/10分の範囲の物性を示すものである。
該MFRが上記範囲より大であると成膜が不安定となる。また、MFRが上記範囲より小さすぎると成形時に膜切れが起こる。
【0041】
(2)密度
JIS K7112による密度が0.935g/cm3 以下、好ましくは0.87〜0.92g/cm3 、特に好ましくは0.88〜0.913g/cm3 、最も好ましくは0.89〜0.91g/cm3 の範囲の物性を示すものである。 該密度が上記範囲より大であると、低温ヒートシール性が不良となる。また、密度があまりに小さすぎると、フィルム表面にベタつきが生じ実用性に供し得なくなり、下限は通常0.86g/cm3 程度である。
【0042】
(3)温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線のピーク温度
エチレン・α−オレフィン共重合体は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fractionation)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が20〜85℃、特に好ましくは30〜75℃、最も好ましくは40〜70℃の範囲であり、かつ、このピークの〔ピークの高さ〕/〔ピークの1/2の高さにおける幅〕(H/W)が1以上、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜15、最も好ましくは1〜10の範囲の物性を示すものである。また、さらに、該ピークの溶出温度以外の温度において溶出するものが溶出曲線に存在していてもよい〔図4の(b)および(c)参照〕。
【0043】
該溶出曲線のピーク温度が上記温度を超える場合は低温ヒートシール性が不良となるので実用性がない。
上記H/Wが上記の値未満の場合はベタツキ成分が多くなり、経時的にヒートシール性が不良となるので実用性がない。
【0044】
温度上昇溶離分別による溶出曲線の測定
温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による溶出曲線の測定は、Journal of A
pplied Polymer Science.Vol.26,4217−4231頁(1981刊)、高分子討論会予稿集 2P1C09(昭和63年)の3502−3504頁の文献に記載に基づいて実施されるもので、図5に示す独立した3つのオーブン〔TREF用カラムオーブン(ガラスビーズ充填)、バルブオーブン、SECカラムオーブン)を持つクロス分別装置を用い、対象となるエチレン系樹脂を溶媒、例えばo−ジクロロベンゼンに加熱(140℃)して溶解させ、この樹脂溶液を注射器(syringe)(d)を用いてサンプルループ(f)に注入し、次いで分析開始スイッチを押すことにより測定は自動的に実施される。
【0045】
即ち、インジェクションバルブ(g)、サンプルバルブ(e)の順に切り替わり一定体積(0.5ml)の溶液が移動した後、サンプルバルブは、元の位置に戻り、溶液がTREF用カラム(h)の中央に導入されたときインジェクションバルブは元の位置に切り替わる。TREF用カラムは140℃から0℃まで1℃/分の割合で冷却され、樹脂はカラム内の担体(ガラスビーズ)表面にコーティングされる(この際、高結晶性のものから低結晶性のものの順にガラスビーズ表面にポリマー層が形成される)。0℃まで冷却された後、同温度で一定時間(30分)保持され、TREFカラムからその温度で溶解している樹脂は、1ml/分の流速でインジェクションバルブ(g)の切り替えによりSECカラムに送液される。送液後、SECカラムで分子サイズの分別が行なわれている間にTREF用カラムは、0℃から140℃まで以下の溶出温度で30分間づつ段階的に昇温した。温度(℃):0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
【0046】
この際、TREF用カラムは次の設定温度まで昇温され一定温度に保持され、この間、先に注入された樹脂溶液は、SECカラムで分子サイズでの分別がなされる(SECカラムでの各溶出区分の測定は39分間隔で行なわれる)。分離された溶液は、赤外検出器(P)で樹脂濃度が検出され、クロマトグラムに関するデータは、コンピューターに保存される。以後、注入、昇温、分子サイズでの分別が繰り返される。図5中、(a)は溶剤タンク、(b)は補助ポンプ、(c)はポンプ、(d)は注射器、(e)は六方サンプルバルブ、(f)はサンプルループ、(g)はインジェクションバルブ、(h)はTREFカラム、(i)は六方バルブ、(j)は初期標準溶液ループ、(k)はタンク、(l)は停止バルブ、(m)は三方バルブ、(n)は内部フィルター、(o)はSECカラム、(p)は赤外検出器、(q)は停止バルブ、(r)は廃液タンクである。
【0047】
内部標準溶液は、樹脂溶液の注入後、一定時間経過して注入されるので、低分子量側の分離に影響しない。
コンピューターに保存されたデータは、微分・積分溶出曲線として処理され出力される(図4参照)。
【0048】
具体的には、内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理される。各クロマトグラムの面積を積分され、積分溶出曲線が計算される。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算される。計算結果の作図はプリンターに出力される。出力された微分溶出曲線の作図は、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3mm、縦軸に微分量(全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とする)0.1当たり76.5mmで行う。次に、この微分溶出曲線のピーク高さ(mm)を1/2高さの幅(mm)で除した値をH/Wとする。
【0049】
このTREF曲線において、まず、低温度域では対象のエチレン系樹脂中の非晶部分、すなわち、エチレン系樹脂中の短鎖分岐の分岐度の多いものが溶出する。溶出温度が上昇
すると共に、徐々に分岐度の少ないものが溶出し、ついには分岐の無い直鎖状のエチレン系樹脂部分が溶出し、測定は終了する。
【0050】
本発明の実施例においては、クロス分別装置として三菱化学(株)製CFC
T150A(商品名)を用い、TREF用カラムにはガラスビーズ製不活性担体が充填されており、SECカラムは昭和電工(株)製AD80M/S(商品名)を三本直列に用い、カラムの内部はポリスチレン系ゲルで充填されたものを用いた。
クロス分別装置のサンプルループ(f)への樹脂溶液の注入は、エチレン系樹脂をo−ジクロロベンゼンに濃度が4mg/mlとなるように溶解した樹脂溶液を0.4ml注入した。
【0051】
(4)積分溶出量
上記TREFの測定において、各溶出温度における溶出物の重量分率を積算して求めた積分溶出量が、溶出温度10℃のとき10%以下であり、90℃のとき90%以上であること、好ましくは溶出温度20℃のとき10%以下であり、90℃のとき95%以上であること、特に好ましくは溶出温度20℃のとき5%以下であり、90℃のとき97%以上である。
【0052】
(5)Q値
このエチレン・α−オレフィン共重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー(Size
Exclusion Chromatography:SEC)によって求められるQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が4以下、好ましくは3以下、特に好ましくは2.5以下の物性を示すものである。
このエチレン・α−オレフィン共重合体(a)50〜90重量%と、次に示す(1’)、(2’)、(3’)および(4’)の物性を満たす高圧法低密度ポリエチレン(b)50〜10重量%とを含有する樹脂組成物をヒートシール性樹脂として用いる場合は、更にフィルム成形性がより安定に行うことができる。
【0053】
(1’)MFR
JIS K7210によるMFR(190℃、2.16kg荷重)が0.1〜20g/10分、好ましくは1〜13g/10分、特に好ましくは2〜13g/10分の範囲の物性を示すものである。
該MFRが上記範囲より大であると、成膜が不安定となる。また、MFRが上記範囲より小さすぎると、押出性やフィルム外観が不良となる。
【0054】
(2’)密度
JIS K7112による密度が0.915〜0.93g/cm3 、好ましくは0.916〜0.925g/cm3 、特に好ましくは0.918〜0.922g/cm3 の範囲の物性を示すものである。
該密度が上記範囲より大であると、低温ヒートシール性が不良となる。また、密度が上記範囲より小さすぎると、フィルム表面にベタつきが多くなる。
【0055】
(3’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect:復元効果) ME(3g)は、1.6以上、好ましくは1.8以上、特に好ましくは2.0以上、最も好ましくは2.3以上の物性を示すものである。
該MEが上記値より小さすぎると成膜が不安定となり好ましくない。
なお、上記ME(3g)の測定は、JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分に設定して、以下のように実施される。
【0056】
装置にサンプルを充填し、ピストンのみを乗せ、6分後に規定の押出速度をかける。次に、エチルアルコールを入れたメスシリンダーをオリフィス直下に置き、真っ直ぐな押出物を採取する。
採取した押出物の直径(D)をマイクロメーターで測定し、ダイスのオリフィス径をD0 として、次式によりMEが求められる。
ME=D/D0
【0057】
(4’)メルトテンション(MT:Melt Tension:破断時溶融張力)
MTが1.5g以上、好ましくは2.5g以上、特に好ましくは5g以上のものである。MTが小さすぎると、加工性の改良効果が少なくなるので、好ましくない。
本発明で用いる該高圧法低密度ポリエチレンは、ME(3g)とMTが以下の関係を有する。
ME≧〔0.05×MT+1.3〕/g
【0058】
この高圧法低密度ポリエチレンは、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)によって求められるQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が5〜30、特に好ましくは7〜25、最も好ましくは10〜20の物性を示すものである。
このような高圧法低密度ポリエチレンは、市販品の中から適宜選んで使用することができるが、中でも、反応温度220℃以上、反応圧力1,700kg/cm2 以下でオートクレーブ法にて製造されたポリエチレンを使用するのが好ましい。
【0059】
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と高圧法低密度ポリエチレン(b)との配合割合は、成分(a)が50〜99重量%で成分(b)が1〜50重量%、好ましくは成分(a)が55〜90重量%で成分(b)が10〜45重量%、特に好ましくは成分(a)が60〜85重量%で成分(b)が15〜40重量%である。
【0060】
この成分(a)と成分(b)よりなるヒートシール性樹脂組成物の物性としては、望ましくは、MFRが5〜25g/10分、好ましくは8〜20g/10分であり;密度が0.87〜0.932g/cm3 、好ましくは0.89〜0.912g/cm3 であり;Q値が2〜10、好ましくは3〜6であり;ME(3g)が1.2〜2.3、好ましくは1.5〜2.0であり;MTが1.0g以上、好ましくは1.5g以上であり;且つ該樹脂組成物のMEとMTの関係が次式
ME≧〔0.2×MT+1〕/g
を満足するものが好適である。
【0061】
ヒートシール性樹脂層(II)の肉厚は1〜10μm、好ましくは2〜8μmである。
この肉厚は中空成形時に接着剤層のフィルムがパリソンの溶融ポリエチレンやポリプロピレンの熱により溶解し、成形品とラベルが強固に接着するために1μm以上必要であり、また、10μmを越えるとラベルがカールし、オフセット印刷が困難となったり、ラベルを金型へ固定することが困難となるので好ましくない。
【0062】
前述したようにラベルのヒートシール性樹脂層には、中空成形時のブリスターの発生を防止するために、特開平2−84319号公報、特開平3−260689号公報に記載するようにエンボス加工を施こすことが好ましい。
そのエンボス模様は、例えば2.54cm当り5〜25線のエンボス加工であって、このエンボス加工の谷の深さが1〜8μm(ミクロン)であって、かつ、ヒートシール性樹脂層の肉厚の1/3以上である。エンボス加工は、射出成形用ラベルには必要がない。
【0063】
これらのインモールド成形用ラベルは必要あればコロナ放電加工等によって表面の印刷
性、接着性を改善しておくことができる。
印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの印刷を施して、バーコード、製造元、販売会社名、キャラクター、商品名、使用方法などが印刷されたものを使用することができる。
【0064】
印刷及びエンボス加工されたラベル(1)は、打抜加工により必要な形状寸法のラベルに分離される。このインモールド成形用ラベルは容器表面の一部に貼着される部分的なものであってもよいが、通常はカップ状容器の側面を取巻くブランクとして、中空成形では瓶状容器の表及び裏に貼着されるラベルとして製造される。
【0065】
(インモールド成形)
このインモールド成形用ラベルは、該ラベルを差圧成形金型の下雌金型のキャビティ内にラベルの印刷側が金型のキャビティ面に接するように設置した後、金型吸引により金型内壁に固定され、次いで容器成形材料樹脂シートの溶融物が下雌金型の上方に導かれ、常法により差圧成形され、ラベルが容器外壁に一体に融着されたラベル貼合容器が成形される。
【0066】
差圧成形は、真空成形、圧空成形のいずれも採用できるが、一般には両者を併用し、かつプラグアシストを利用した差圧成形が好ましい。また、このラベルは、溶融樹脂パリソンを圧空により金型内壁に圧着する中空成形にも適用可能である。
このようにして製造されたラベル貼合容器は、ラベル(1)が金型内で固定された後に、ラベルと樹脂容器が一体に成形されるので、ラベル(1)の変形もなく、容器本体とラベル(1)の密着強度が強固であり、ブリスターもなく、ラベルにより加飾された外観が良好な容器となる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例及び比較例よりなる本発明を更に具体的に説明する。
〔I〕物性の測定方法と評価方法
実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。
(1)物性の測定
(a)MFR:JIS K7210に準拠(190℃,2.16kg荷重)
(b)密度:JIS K7112に準拠
(c)ME(Memory Effect:復元効果):JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、低速押出量3g/分に設定して行なった。
【0068】
装置にサンプルを充填し、ピストンのみを乗せ、6分後に規定の押出速度をかける。次に、エチルアルコールを入れたメスシリンダーをオリフィス直下に置き、真っ直ぐな押出物を採取する。採取した押出物の直径(D)をマイクロメーターで測定し、ダイスのオリフィス径をD0 として次式によりMEを求める。
ME=D/D0
【0069】
(d)溶出曲線の測定
図5の装置を用いて前述の如く測定した。
(e)Q値:サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)を用いて、以下に示す測定条件下で測定し、重量平均分子量/数平均分子量よりQ値を求めた。単分散ポリスチレンで、ユニバーサルな検量線を作成し、直鎖のポリエチレンの分子量として計算した。
【0070】
(f)MT(Melt Tension:破断時溶融張力):東洋精機社製キャピログ
ラフ1−Bにて、試験温度190℃、押出速度1cm/分、押し出された溶融樹脂を引き取る際の引き取り速度を徐々に速くして、樹脂フィラメントが破断した時の応力とする。なお、使用したダイ径は、長さ8.00mm、内径2.095mm、外径9.50mmである。
【0071】
(g)ラベル打抜性
(株)ダンベル製の20mm×80mmのスーパーストレートカッターを用いてラベルを50枚重ねたものを垂直に打抜き、その後その切断面に付着したヒートシール性樹脂のヒゲ(切断時のカス)の発生の度合いを目視にて評価した。
○──発生なし
△──やや発生するが実用上問題なし
×──実用上問題となる。
【0072】
(h)ラベルの容器への密着強度
貼着されたラベルを15mm幅に切り取り、ラベルと容器との間の接着強度を、島津製作所製の引張試験機「オートグラフ AGS−D形」を用い、300mm/minの引張速度で、T字剥離することにより求めた。
【0073】
(i)ラベルの熱収縮の有無
ラベルの収縮による容器の変形を、以下の方法にて評価した。
成形下2日後に、5個の容器につき、ラベル貼着面とラベルの貼着されていない面の2か所の胴回り寸法を、それぞれノギスで正確に測定した。両者の寸法の差がいずれも1mm未満であれば○(良好)、1〜2mmのものがあれば△、2mmを超えるものがあれば×(不良)とした。
【0074】
(j)摩擦係数
ASTM D−1894に準じ、ラベルの被印刷面と、ヒートシール層を設けた面との静摩擦係数を、(株)オリエンテック製引張試験機RTM−250を用いて測定した。
【0075】
(k)ラベルの金型内への挿入適性
60mm×110mmに打抜いたラベルを、ぺんてる(株)製の自動ラベル供給装置にて、100枚連続で、ブロー成形用割型へ供給を行なった時のミス(2枚差しや、型よりラベルが落下する)の回数を計測した。
○──1回もミスが発生しない
△──1〜5枚ミスが発生する
×──6枚以上ミスが発生する。
【0076】
エチレン・α−オレフィン共重合体の製造例
触媒の調製は、特開昭61−130314号公報に開示された調製方法で実施した。すなわち、錯体エチレン−ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド2.0ミリモルに、東洋ストファー社製メチルアルモキサンを上記錯体に対し1,000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製し、以下の方法で重合を行なった。内容積1.5リットルの攪拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1−ヘキセンとの混合物をエチレンの組成が80重量%となるように供給し、反応器内の圧力を1,600kg/cm2 に保ち、160℃で反応を行なった。
【0077】
反応終了後、MFRが18g/10分、密度が0.898g/cm3 、Q値が1.9、TREF溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が50℃、該ピーク温度のH/Wが1.5のエチレン・α−オレフィン共重合体(1−ヘキセン含量22重量%)を得た。
積分溶出量は、10℃で2.1%、20℃で3.0%、80℃で100%であった。
【0078】
高圧法低密度ポリエチレンの製造例
反応温度260℃、反応圧力1,500kg/cm2 で、オートクレーブ法にて製造した。MFRが4g/10分、密度が0.92g/cm3 、MEが2.4、Q値が10の高圧法低密度ポリエチレンを得た。
【0079】
ラベルの製造例
(実施例1)
(1)三菱化学(株)製ポリプロピレン“三菱ポリプロMA−8”(商品名、融点164℃)67重量部、三菱化学(株)製、高密度ポリエチレン“三菱ポリエチEY−40”(商品名、融点132℃、密度0.950g/cm3 )10重量部および粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末23重量部よりなる樹脂組成物(A)を押出機を用いて溶融混練したのち、ダイより250℃の温度でシート状に押出し、約50℃の温度となるまでこのシートを冷却した。
次いで、このシートを約153℃に加熱したのち、ロール群の周速度を利用して縦方向に4倍延伸して、一軸延伸フィルムを得た。
【0080】
(2)別に、三菱化学(株)製ポリプロピレン“三菱ポリプロMA−3”(商品名;融点165℃)51.5重量部、密度0.950g/cm3 の高密度ポリエチレン“EY−40”3.5重量部、粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末42重量部、粒径0.8μmの酸化チタン粉末3重量部よりなる組成物(B)を別の押出機を用いて240℃で溶融混練し、これを前記縦延伸フィルムの表面にダイよりフィルム状に押し出し、積層した。
【0081】
他方、それぞれ別々の押出機を用い、ポリプロピレン“MA−3”51.5重量部、高密度ポリエチレン“EY−40”3.5重量部、粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末42重量部および粒径0.8μmの酸化チタン粉末3重量部よりなる組成物(C)と、ヒートシール性樹脂層用として、前記製造例で得たエチレン・α−オレフィン(1−ヘキセン)共重合体75重量%と、前記製造例で得た高圧法低密度ポリエチレン25重量%との樹脂組成物(II)を200℃で溶融混練し、一台の共押出ダイに供給しダイ内で積層し、その後、ダイよりそれぞれフィルム状に押し出し、前記(A)の縦方向4倍延伸フィルムの裏面に押出ラミネートした。
【0082】
この四層フィルム(B/A/C/II)をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後テンターを用いて横方向に7倍延伸し、次いで164℃で熱セットし、更にコロナ放電処理をし、55℃迄冷却し、耳部をスリットして、密度0.790g/cm3 、肉厚が100μm(B/A/C/II=30/40/25/5μm)の四積構造の微多孔性樹脂延伸フィルムを得た。
【0083】
この四層構造の積層延伸樹脂フィルムの紙状層(B)側にオフセット印刷を施した後、エンボスロールに通して1.27mm間隔(20線)、谷の深さ8μmのドットをヒートシール性樹脂層(II)側にエンボス加工した。該エンボス加工の模様の拡大図は図2に示すとおりのものである。層(II)のベック平滑度は480秒であった。
【0084】
次いで、これを打抜加工して中空成形用ラベル(横60mm、縦110mm)とした。
このラベルをブロー成形用割型の一方に真空を利用して印刷面が金型と接するように固定した後、密度0.960g/cm3 、メルトインデックス0.8g/10分の高密度ポリエチレン“三菱ポリエチHD BZ−53A”(商品名)(融点134℃)のパリソンを230℃で溶融押出し、次いで割型を型締した後、4.2kg/cm2 の圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨張させて型に密着させて容器状とするとともにラベルと融着
させ、次いで型を冷却し、型開きをしてラベル貼合中空容器を得た。
【0085】
このラベル貼合中空容器は印刷の退色もなく、ラベルの収縮やブリスターの発生も見受けられなかった。容器とラベルの密着強度は750g/15mm幅であった。
又、パリソンとして、高密度ポリエチレンに代えて、MFRが1.0g/10分のプロピレン単独重合体を用いたところ、容器とラベルとの密着強度は620g/15mm幅であった。
他の物性を表1に示す。
【0086】
(実施例2)
(1)メルトフローレート(MFR)0.8g/10分、融点164℃のホモポリプロピレン70重量%、融点134℃の高密度ポリエチレン12重量%及び平均粒径1.5μmの重質炭酸カルシウム18重量%を配合(A)し、270℃に設定した押出機にて混練した後、シート状に押し出し、冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。次いで、このシートを145℃に加熱した後、縦方向に5倍延伸して(A層)の縦方向5倍延伸フィルムを得た。
【0087】
(2)MFR4g/10分、融点164℃のホモポリプロピレン51.5重量%、高密度ポリエチレン3.5重量%および粒径1.2μmの炭酸カルシウム45重量%よりなる組成物(C)と、MFR4.0g/10分のホモポリプロピレン41.5重量%、高密度ポリエチレン3.5重量%および粒径1.5μmの炭酸カルシウム55重量%よりなる組成物(B)を、それぞれ別々の押出機を用いて250℃で溶融混練し、これを一台の共押出ダイに供給し、ダイ内で積層し、次いで250℃で共押出し、上記(1)の(A層)の縦延伸フィルムの表面側に積層した。
【0088】
(3)一方、MFRが4.0g/10分のホモポリプロピレン51.5重量%、高密度ポリエチレン3.5重量%および粒径1.2μmの炭酸カルシウム45重量%よりなる組成物(C)と、前記製造例で得たMFR18g/10分、密度0.898g/cm3 、Q値1.9のエチレン・1−ヘキセン共重合体、75重量%と、同じく前記製造例で得たMFRが4g/10分、密度0.92g/cm3 、MEが2.4、Q値が10の高圧法低密度ポリエチレン25重量%よりなるヒートシール性樹脂組成物(II)をそれぞれ別の押出機を用いて270℃の温度で溶融混練した後、一台のダイに供給して、該ダイ内で積層した後、この積層物をダイよりフィルム状に押し出して、前記(A層)の縦方向5倍延伸フィルムの裏面側に(II)層が外側になるように押し出し、これを積層した。
【0089】
(4)次いで、この積層フィルムを約155℃まで再加熱した後、横方向に7倍延伸し、次いで紙状層(B層)にコロナ放電処理を行なった後、これを55℃まで冷却した後、金属ロールとゴムロールよりなるエンボスロールに通して、該積層構造フィルムのD層側に、0.3mm間隔(80線)、谷部の深さ5μmのドットを有するグラビア型のパターンをエンボス加工した。
ついで耳部をスリットして、密度が0.91g/cm3 のインモールド成形用ラベル用紙を得た。
このヒートシール性樹脂(II)層のベック平滑度は750秒であった。
【0090】
(実施例3〜5、比較例1〜3)
ヒートシール性樹脂組成物(II)として、表1に示す樹脂組成物を用いる他は、実施例2と同様にしてインモールド成形用ラベル用紙を得た。これら実施例、比較例で得たラベル用紙をオフセット印刷、断裁及び打抜加工して、インモールド用ラベル(1)(横60mm、縦110mm)を得た。このラベルの摩擦係数、オフセット連続印刷性、ラベル打ち抜き適性の評価を行なった。
【0091】
又、これらのインモールド用ラベル(1)をブロー成形用割型の一方に真空を利用して印刷面側が金型と接するように固定した後、高密度ポリエチレン(融点134℃)のパリソンを200℃で溶融押出し、次いで割型を型締めした後、4.2kg/cm2 の圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨張させて型に密着させて容器状とすると共にインモールド用ラベルと融着させ、次いで該型を冷却した後、型開きをしてラベルが貼着した中空容器を取り出した。
【0092】
このもののブリスターの発生の有無、ラベルの熱収縮の有無、ラベルの密着強度を表1に示す。
又、パリソン材料として、高密度ポリエチレンに代えて、プロピレン単独重合体(融点165℃、MFR1.0g/10分)を用い、230℃でパリソンを押し出す他は同様にしてラベル貼合中空容器を得た。
評価結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0094】
容器材料が高密度ポリエチレンでもポリプロピレンであってもラベルとの密着性がよく
、かつ、ラベル打ち抜きが容易でヒゲの発生がなく、かつ、ラベルの金型内への供給が容易なインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】インモールド成形用ラベルの断面図である。
【図2】インモールド成形用ラベルの裏面からみた平面の拡大図(表面粗さ計で測定した図で示す)である。
【図3】インモールド成形用ラベルの部分断面拡大図である。
【図4】TREF曲線である。
【図5】樹脂の温度上昇溶融分別(TREF)を測定に用いる装置のフロシートである。
【符号の説明】
【0096】
1:ラベル
2:熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)
3:印刷
4:ヒートシール樹脂層(II)
5:エンボス模様の山
6:エンボス模様の谷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に印刷が施こされた熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)の裏面に、該フィルムの素材樹脂の融点より低い融点を有するヒートシール性樹脂層(II)を設けたインモールド成形用ラベルであって、前記ヒートシール性樹脂層(II)の樹脂基材が、エチレン40〜98重量%と炭素数が3〜30のα−オレフィン60〜2重量%とをメタロセン触媒を用いて共重合させて得たエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするものであることを特徴とするインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器。
【請求項2】
エチレン・α−オレフィン共重合体が、次の(1),(2)および(3)の物性を満たすものである、請求項1記載のインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器。
(1)MFRが2〜30g/10分
(2)密度が0.935g/cm3 以下
(3)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり:該ピーク温度が20〜85℃であり:該ピークの高さをHとし、該ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上であり:該ピークの溶出温度以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線に存在することがある
【請求項3】
ヒートシール性樹脂層(II)が、
(a)エチレン40〜98重量%と炭素数が3〜30のα−オレフィン60〜2重量%とをメタロセン触媒を用いて共重合させて得た次の(1)、(2)および(3)の物性を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体
(1)MFRが2〜30g/10分
(2)密度が0.935g/cm3 以下
(3)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり:該ピーク温度が20〜85℃であり:該ピークの高さをHとし、該ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上であり:該ピークの溶出温度以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線に存在することがある50〜90重量%と、
(b)次に示す(1’),(2’),(3’)および(4’)の物性を示す高圧法低密度ポリエチレン
(1’)MFRが0.1〜20g/10分
(2’)密度が0.915〜0.93g/cm3
(3’)メモリーエフェクト(ME:MemoryEffect)が1.6以上
(4’)メルトテンション(MT:MeltTension)が1.5g以上50〜10重量%の樹脂組成物を基材とするものである請求項1記載のインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルム基材層(I)が、無機微細粉末を5〜30重量%、高密度ポリエチレン3〜20重量%およびプロピレン系樹脂を92〜50重量%の割合で含有する樹脂組成物の二軸延伸フィルム基材層(A)の片面に、無機微細粉末を35〜65重量%、高密度ポリエチレン0〜10重量%およびプロピレン系樹脂を55〜35重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムの紙状層(B)を、この紙状層(B)とは反対の基材層(A)の片面には無機微細粉末を35〜65重量%、高密度ポリエチレン0〜10重量%およびプロピレン系樹脂55〜35重量%の割合で含有する樹脂組成物の一軸延伸フィルムよりなる紙状層(C)が貼合された微多孔性積層樹脂フィルムであり、紙状層(B)側に印刷が施こされ、ヒートシール性樹脂層(II)が紙状層(C)側に設けられている請求項1〜3記載のいずれか記載のインモールド成形用ラベルを貼着した中空容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−69674(P2006−69674A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300428(P2005−300428)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【分割の表示】特願平8−39128の分割
【原出願日】平成8年2月2日(1996.2.2)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】