説明

インモールド成形用ラベル及びそれを用いた成形品

【課題】成形品の素材を問わずラベルと成形品の密着が強固で、また広範囲の成形品成形条件に対応可能で、且つ、印刷の仕上がり性に優れたインモールド成形用ラベルを提供する。
【解決手段】ヒートシール層と印刷層を含む少なくとも2層の樹脂フィルムからなるインモールド成形用ラベルであって、該ヒートシール層が表面開口率が6〜30%の多孔質表面を有し、印刷層が網点柄を印刷した際のドットスキップが5%以下、かつ印刷層のベック平滑度(JIS−P−8119)が650〜20000秒であることを特徴とするインモールド成形用ラベル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷面の仕上がりが高精細であるインモールド成形に用いるラベルに関する。また本発明は、該ラベルを貼着したラベル付き成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラベルが貼着した樹脂成形体を一体成形によって製造する方法として、インモールド成形法が知られている。この方法は、金型の内壁に予めラベルを装着しておき、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの成形用樹脂を溶融して該金型内に直接供給し、射出成形、中空成形、差圧成形または発泡成形などで成形するとともにラベルを貼着するものであり、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている。この様なインモールド成形用ラベルとしては、グラビア印刷された樹脂フィルム、オフセット多色印刷された合成紙が例えば、特許文献3、特許文献4に開示さあれており、或いは、アルミニウム箔の裏面に高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体などをラミネートし、その箔の表面にグラビア印刷したアルミニウムラベルなどが知られている。
【0003】
しかしながら、これらのインモールド成形用ラベルを用いてインモールド成形により加飾されたラベル貼合成形品を製造する方法においては、ラベルのヒートシール層樹脂として高圧法低密度ポリエチレンを用いたものは、成形品の素材が高密度ポリエチレン成形品の場合はラベルと成形品の密着性が強固で良好であるが成形品の素材がポリプロピレンやポリスチレン等の他素材である場合は、ラベルと成形品の密着性が低く、輸送途中にラベルが成形品より剥がれてしまうといった欠点があった。ラベルと成形品の密着性を強固とするには、成形品と同素材の樹脂をラベルのヒートシール層として用いたラベルを各々用意する必要があり、ラベルの在庫管理が複雑化するといった問題や、成形品の成形温度が低いと成形品とラベルに十分な密着強度が得られず、それ故成形品の成形温度を高く設定する必要があり成形品の成形温度が極端に限定され生産性が低下するといった問題も指摘されている。
さらにラベルに印刷を施す際、例えばグラビア印刷で印刷層表面に網点印刷した場合、印刷層の表面が粗過ぎるとインキ抜けが多く発生し、印刷外観が著しく低下するといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−069015号公報
【特許文献2】特開平01−125225号公報
【特許文献3】特公平02−007814号公報
【特許文献4】特開平02−084319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、成形品の素材を問わずラベルと成形品の密着が強固で、また広範囲の成形品成形条件に対応可能で、且つ印刷の仕上がり性に優れたインモールド成形用ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ラベルのヒートシール層が特定の表面開口率である多孔質表面であり、且つ印刷層に網点印刷した際のドットスキップが特定率以下の平滑な表面とすることで、ヒートシール層には成形品樹脂が成形時の圧力でヒートシール層の表面開口部に入り込む投錨効果が得られる為、成形品の素材を問わずラベルと成形品との密着が強固であり、さらに広範囲の成形品成形条件でラベルの貼合が可能であり、且つ印刷層の印刷仕上がり性が優れるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、ヒートシール層と印刷層を含む少なくとも2層の樹脂フィルムからなるインモールド成形用ラベルであって、該ヒートシール層が熱可塑性樹脂(A)と無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B’)を含有した少なくとも1軸方向に延伸された表面開孔率が6〜30%の多孔質層であり、且つ該印刷層が網点印刷した際のドットスキップが5%以下であり、ベック平滑度が650〜20000秒以下であることを特徴とするインモールド成形用ラベルを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、印刷面の仕上がり性に優れ、且つ印刷が高精細であるインモールド成形が可能であり、成形品の素材を問わずラベルと成形品との密着が強固であり、さらに広範囲の成形品成形条件でラベルの貼合が可能であり、かつ、インモールド成形後の成形品の外観も良好であるインモールド成形用ラベル及びそれを用いた成形品が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のインモールド成形用ラベルについてさらに詳細に説明する。
・ヒートシール層
[1]熱可塑性樹脂(A)
本発明のヒートシール層に用いられる熱可塑性樹脂素材としては、ポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレンなどの結晶性ポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1〜8)、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等の結晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ABS樹脂、アイオノマー樹脂等のフィルムを挙げることができるが、好ましくはポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の融点が130〜280℃の範囲の熱可塑性樹脂であり、これらの樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
【0009】
これらの中でも、耐薬品性や生産コスト等の観点より、結晶性ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。結晶性ポリオレフィン系樹脂は、結晶性を示すものであり、その結晶化度は、通常20%以上が好ましく、35〜75%がより好ましい。結晶性を示すものを用いれば、延伸により樹脂フィルム表面に空孔(開口)が十分に形成されるため好ましい。該結晶化度はX線回折、赤外線スペクトル分析等の方法によって測定することができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体またはシンジオタクティック重合体を用いることが好ましい。また、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとプロピレンとを共重合させた様々な立体規則性を有するプロピレンを主成分とする共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
本発明のヒートシール層としての樹脂フィルムにおける熱可塑性樹脂(A)の含有量は、通常20〜50重量%、好ましくは25〜50重量%、特に好ましくは35〜50重量%である。熱可塑性樹脂(A)の含有量が50重量%を超えると、所望の表面開口率が得られずにインモールド成形で成形品とラベル密着改善が不十分になる傾向がある。逆に20重量%未満だと、延伸が困難になる傾向がある。
【0010】
[2]無機微細粉末(B)、有機フィラー(B’)
本発明のヒートシール層に用いられる無機微細粉末及び/又は有機フィラーの種類は特に限定されない。無機微細粉末としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、硫酸バリウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素などが挙げられ、またこれらは脂肪酸等で表面処理されていても良い。なかでも、重質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルクが、安価で成形性が良く好ましい。
本発明のヒートシール層としての樹脂フィルムにおける無機微細粉末(B)の含有量は、通常50〜80重量%、好ましくは50〜75重量%、特に好ましくは50〜65重量%である。無機微細粉末(B)の含有量が80重量%を超えると、延伸が困難になる傾向がある。逆に50重量%未満だと、所望の表面開口率が得られずにインモールド成形で成形品とラベル密着改善が不十分になる傾向がある。
【0011】
有機フィラー(B’)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイト、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で、融点が120〜300℃、ないしはガラス転移温度が120〜280℃を有するものなどが挙げられる。上記の無機微細粉末及び/又は有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
[3]分散剤(C)
本発明のヒートシール層には、必要により分散剤を添加することが可能であり、例えば、酸変性ポリオレフィン、シラノール変性ポリオレフィンなどを例示することができる。この中でも酸変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸をランダム共重合もしくはグラフト共重合した無水カルボン酸基含有ポリオレフィン、あるいはメタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸をランダム共重合もしくはグラフト共重合したカルボン酸基含有ポリオレフィン、グリシジルメタクリレートをランダム共重合もしくはグラフト共重合したエポキシ基含有ポリオレフィンなどが挙げられる。具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリプロピレン、エチレン・メタクリル酸ランダム共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレートランダム共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレートグラフト共重合体、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレンなどが挙げられ、なかでも好ましくは無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよび無水マレイン酸変性ポリエチレンである。
【0013】
無水マレイン酸変性ポリプロピレンおよび無水マレイン酸変性ポリエチレンの具体例としては、三菱化学(株)のモディックAP[P513V](商品名)やモディックAP[M513](商品名)、三洋化成工業(株)のYumex1001、1010(商品名)やYumex2000(商品名)、三井・デュポンポリケミカル(株)のHPR[VR101](商品名)が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンの酸変性率は、0.01〜20%が好ましく、0.05〜15%がより好ましく、0.1〜10%がさらに好ましい。 酸変性率が0.01%未満では、表面処理した無機微細粉末の熱可塑性樹脂中への分散効果が不十分になる傾向があり、20%を超えると酸変性ポリオレフィンの軟化点が低くなりすぎて熱可塑性樹脂との混合が困難になる傾向がある。
【0014】
・印刷層
本発明の印刷層は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む層である。印刷層の素材としては、特に限定されず、ヒートシ−ル層の項で前述した熱可塑性樹脂(A)、無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B’)、分散剤(C)等を任意に配合して所望の平滑な表面とすることが可能で、特に好ましい配合としては、熱可塑性樹脂にはポリプロピレン系樹脂としてのプロピレン単独重合体またはプロピレン共重合体、ポリエチレン系樹脂としての高密度ポリエチレンの両者を組み合わせた配合が好ましく使用できる。
プロピレン単独重合体またはプロピレン共重合体と高密度ポリエチレンの配合比率としては4対6から6対4が好ましく、5対5が更に好ましい。プロピレン単独重合体またはプロピレン共重合体の比率が多過ぎると印刷層の平滑度が高過ぎて印刷物の耐擦過性が劣る傾向にあり、また高密度ポリエチレンの配合比が多過ぎると印刷層の平滑度が低過ぎてドッドスキップ不良が発生しやすい。
【0015】
本発明の印刷層は、網点柄を印刷した際のドットスキップ(網点の一部が印刷層に転写しない現象)が5%以下であることが好ましく、0〜3%であることがより好ましい。また該印刷層のベック平滑度(JIS−P−8119)としては650〜20000秒であることが好ましく、700〜5000秒であることがより好ましい。ベック平滑度が650秒未満であると、例えば、グラビア印刷で網点柄を印刷した際のドットスキップ(網点の一部が印刷面に転移しない現象)が5%を越えて印刷外観が著しく低下する為実用上問題となる。また20000秒を越えると印刷物の耐擦過性が不足しインキが脱落する傾向にあり実用上問題となる。
また、本発明では、印刷層の表面に、鏡面または梨地等の加工が施されたロールで加熱圧着処理することで、印刷層を目的とする平滑度にすることもできる。
【0016】
・任意成分
本発明の樹脂フィルムでは、任意成分として目的とするヒートシール性や印刷性等を阻害しない範囲で公知の他の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。該添加剤としては、脂肪酸アミドなどのスリップ剤、アンチブロッキング剤、染料、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
・コア層、中間層
本発明の樹脂フィルムでは、印刷時の寸法安定性、ラベルの金型内への供給性、熱収縮防止性などの面からヒートシール層と印刷層の間にコア層または中間層を設けても良く、例えば、印刷層/コア層/ヒートシール層、印刷層/コア層/中間層/ヒートシール層、印刷層/中間層/コア層/中間層/ヒートシール層といった構成を例示することが出来る。
【0017】
・ラベル全厚み
本発明の樹脂フィルムであるラベルの全厚みは、30〜250μmが好ましく、さらに好ましくは35〜150μmである。250μmを超えると剛度が高すぎてラベルを金型へ固定することが困難となる傾向があり好ましくない。また、25μm未満では剛度が低く過ぎて枚葉でのオフセット印刷性が劣るといった欠点やインモールド成形時にシワが発生するといった問題が発生する。
・樹脂フィルムの製造
本発明のインモールド成形用ラベルの樹脂フィルムは、当業者間で公知の種々の方法を組み合わせることによって製造することができる。いかなる方法により製造された樹脂フィルムであっても、本発明の構成要件を満たすものである限り本発明の範囲内に包含される。
【0018】
本発明のインモールド成形用ラベルを構成する樹脂フィルムは少なくとも1軸方向に延伸されているものが好ましく、さらに2軸方向に延伸されていてもよい。例えば、コア層として無機微細粉末(B)を0〜40重量%、好ましくは3〜33重量%含有する結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムを該樹脂の融点より低い温度で1方向に延伸して得られる1軸方向に配向した樹脂フィルムに、ヒートシール層として熱可塑性樹脂(A)20〜50重量%および無機微細粉末(B)と有機フィラー(B’)合計80〜50重量%からなる樹脂組成物に、分散剤(C)を前記熱可塑性樹脂(A)と無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B’)の合計100重量部に対して通常0.01〜100重量部を含有する樹脂組成物の溶融フィルムをコア層の片面に積層し、さらに印刷層として熱可塑性樹脂(A)からなる結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムをヒートシール層とは反対側のコア層面に積層し、次いで前記延伸方向と直角方向にこの積層フィルムを延伸することにより、最外層は横1軸方向に配向し、コア層が2軸方向に配向した積層構造物の樹脂フィルムが得られる。好ましい製造方法は各々の樹脂フィルムを積層した後にまとめて延伸する工程を含むものである。別個に延伸して積層する場合に比べると簡便であり製造コストも安くなる。
【0019】
延伸には、公知の種々の方法を使用することができる。
延伸の具体的な方法としては、ロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸などを挙げることができる。
ロール間延伸によれば、延伸倍率を任意に調整して、任意の剛性、不透明度、光沢度のフィルムを得ることが容易であるので好ましい。延伸倍率は特に限定されるものではなく、本発明の樹脂フィルムの使用目的と、用いる樹脂の特性を考慮して決定する。通常は2〜11倍であり、好ましくは3〜10倍、更に好ましくは4〜7倍である。
テンターオーブンを利用したクリップ延伸の場合は4〜11倍であり、好ましくは5〜10倍である。面積延伸倍率としては、2〜80倍であり、好ましくは3〜60倍、より好ましくは4〜50倍である。面積倍率が2倍未満では、樹脂フィルム表面に所定の表面開口率が得られず、インモールド成形時に成形品とラベルで十分な密着が得られなくなる傾向がある。
【0020】
本発明のインモールド成形用ラベルのヒートシール層は、熱可塑性樹脂(A)と無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B’)を所定の割合で混合し、押出し等の方法により製膜する。その後、熱可塑性樹脂(A)としてのポリプロピレン系樹脂の融点より1〜60℃低い温度、より好ましくは3〜55℃低い温度、で1軸方向または2軸方向に延伸を行うことにより、無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B’)を核として樹脂フィルム内部には微細な空孔(ボイド)を有し、フィルム表面には微細な亀裂(表面開口)を有した多孔質な表面が得られる。
またヒートシール層の延伸温度がポリプロピレン系樹脂の融点を越えると、所望の表面開口率が得られず、成形品と接着が低下する為好ましくない。
ヒートシール層の面積延伸倍率としては、2〜80倍であり、好ましくは3〜60倍、より好ましくは4〜50倍である。面積倍率が2倍未満では、樹脂フィルム表面に所定の表面開口率が得られず、インモールド成形時に成形品とラベルで十分な密着が得られなくなる傾向がある。
このような方法により製造した本発明の樹脂フィルムにおけるヒートシール層は、以下の手法により測定される最外層の表面開口率が6〜30%、好ましくは7%〜29%である。表面開口率が6%未満ではインモールド成形時に成形品とラベルに十分な投錨効果が得られず成形品とラベルの密着強度が低下し好ましくない。また表面開口率が30%を越えてはラベルの表面強度が低すぎて容易に表面で材料破壊が起こるため高い密着強度が得られず実用上問題となる。
【0021】
表面開口率は、本発明における樹脂フィルムの表面を電子顕微鏡で観察した領域の空孔(開口)が占める面積割合を示す。
具体的には、樹脂フィルム試料より任意の一部を切り取り、観察試料台に貼り付け、その観察面に金ないしは金−パラジウム等を蒸着して電子顕微鏡(例えば、日立製作所(株)製の走査型顕微鏡:S−2400)を使用して観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍〜3000倍に拡大)にて表面の空孔を観察する。さらに観察した領域を写真等に撮影し、空孔をトレーシングフィルムにトレースして塗りつぶした図を画像解析装置(ニレコ(株)製:型式ルーゼックスIID)で画像処理を行い、空孔の面積率を樹脂フィルム表面の開口率とする。
また、本発明のインモールド成形用ラベルのヒートシール層を構成する樹脂フィルム層の透気度(JIS−P−8117)は20000秒以内であることが好ましく、さらに好ましくは15000秒以内である。透気度が20000秒を越えると中空成形用のインモールドラベルとした場合にエアー抜けによるブリスターの改善効果が期待できなくなる。
【0022】
・印刷
これらのインモールド成形用ラベルは、コロナ放電処理や、フレームプラズマ処理等の表面加工を施すことにより、印刷を施す印刷層の表面の印刷性を改善しておくことが好ましい。印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷(油性、UV)、フレキソ印刷、レタープレス(UV)、スクリーン印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷等を施して、バーコード、製造元、販売会社名、キャラクター、商品名、使用方法などを記入する。
印刷されたラベルは打抜加工により必要な形状寸法のラベルに分離される。このインモールド成形用ラベルは、通常はカップ状成形品の側面を取巻くブランクとして、中空成形では瓶状成形品の表側及び/又は裏側に貼着されるラベルとして製造される。
【0023】
・成形品
このインモールド成形用ラベルは、該ラベルを差圧成形金型の下雌金型の内面にラベルの印刷面が接するように設置した後、吸引により金型内壁に固定させ、次いで成形品成形材料用の樹脂シートの溶融物が下雌金型の上方に導かれ、常法により差圧成形され、ラベルが成形品外壁に一体に融着されたラベル貼合成形品が成形される。差圧成形は、真空成形、圧空成形のいずれも採用できるが、一般には両者を併用し、かつプラグアシストを利用した差圧成形が好ましい。
また本発明のインモールド成形用ラベルラベルは、溶融樹脂パリソンを圧空により金型内壁に圧着するダイレクトブロー成形やプリフォームを用いた延伸ブロー成形に、又は射出装置で金型内に溶融樹脂を注入し冷却固化するインジェクション成形に好適に使用できる。中でも本発明のインモールド成形用ラベルラベルは、ダイレクトブロー成形、インジェクション成形に好適である。
このようにして製造されたラベルが貼着一体化した成形品は、ラベルが金型内で固定された後に、ラベルと樹脂成形品が一体に成形されるので、ラベルの変形もなく、成形品とラベルの密着強度が強固であり、ブリスターもなく、ラベルにより加飾された外観が良好な成形品が得られる。成形品としては、例えばボトル、容器などが挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明における実施例、比較例および試験例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明は以下に示す具体例などにより何等限定されるものではない。以下の実施例および比較例で使用する材料を表1にまとめて示す。なお、表中のMFRはメルトフローレートを意味する。
・物性の測定方法と評価方法
実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。
【0025】
・物性の測定
(イ)表面開口率:樹脂フィルムの表面を電子顕微鏡で観察した領域の空孔(開口)が占める面積割合を示す。
具体的には、樹脂フィルム試料より任意の一部を切り取り、観察試料台に貼り付け、その観察面に金ないしは金−パラジウム等を蒸着して電子顕微鏡(例えば日立製作所(株)製の走査型顕微鏡:S−2400)を使用して観察しやすい任意の倍率(例えば500倍〜3000倍に拡大)にて表面の空孔を観察することができる。さらに観察した領域を写真等に撮影し、空孔をトレーシングフィルムにトレースして塗りつぶした図を画像解析装置(ニレコ(株)製:型式ルーゼックスIID)で画像処理を行い、空孔の面積率を樹脂フィルム表面の開口率とした。
(ロ)透気度:JIS−P−8117に準拠して測定した。
(ハ)ベック平滑度:JIS−P−8119に準拠して測定した。
(ニ)MFR:JIS−K−7210に準拠して測定した。
【0026】
以下の手順に従って本発明の樹脂フィルム(実施例1〜8)および比較用の樹脂フィルム(比較例1〜4)を製造した。表1に各樹脂フィルムの製造にあたって使用した材料の種類を示し、表2で各配合量(重量%)と延伸条件および各層の厚みを示した。
(実施例1)
表2に記載の配合物[a]を260℃に設定された押出機で溶融混練して押出成形し、冷却装置にて70℃まで冷却して単層の無延伸シートを得た。
この無延伸シートを表2に記載の延伸温度(1)に加熱した後、縦方向にロール間で5倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムを得た。次いで配合物[b]を250℃に設定された押出機で溶融混練して、前記縦一軸延伸された樹脂フィルムの片面に積層した後、更に配合物[c]と配合物[d]をそれぞれ別の押出機を用い250℃で溶融混練して前記で積層した反対面に配合物[d]が外側になるように積層して、配合物[b]/配合物[a]/配合物[c]/配合物[d](印刷層/コア層/中間層/ヒートシール層)の積層物とした。更に次いで前記積層物を表2に記載の延伸温度(2)に加熱してテンター延伸機を用いて横方向に8倍延伸し、1軸/2軸/1軸/1軸に延伸された4層の樹脂フィルムを得た。
【0027】
(実施例2〜5及び比較例1)
実施例1において、配合物[d]の配合を表2記載のものに変更した以外は、実施例1に記載と同様の方法で樹脂フィルムを得た。
(実施例6〜8)
実施例1において、配合物[b]の配合を表2記載のものに変更した以外は、実施例1に記載と同様の方法で樹脂フィルムを得た。
(比較例2)
実施例4において、延伸温度(2)を表2記載の温度に変更した以外は、実施例4に記載と同様の方法で樹脂フィルムを得た。
(比較例3〜4)
実施例1において、配合物[b]の配合を表2記載のものに変更した以外は、実施例1に記載と同様の方法で樹脂フィルムを得た。
【0028】
印刷:上記で作成した樹脂フィルムを熊谷理機工業(株)製グラビア印刷試験機を使用して、インキは大日精化工業(株)製CSUP(商品名)を用い、網点率10%柄の版胴でA4サイズに断裁した基材を成形品とラベルが貼着される面とは反対の面に印刷を行った。印刷適性としては以下項目を評価して実施した。
ドットスキップ:ルーペを使用して印刷層にインキが転写しなかった網点100個中ドット個数を数えて以下の基準で評価した。
○:0〜3個:ドットスキップが目視できず、実用上問題ないレベル
△:4〜5個:ドットスキップが肉眼で目立ち、実用上問題となるレベル
×:6個以上:ドットスキップが非常に目立ち、実用上問題があるレベル
【0029】
耐擦過適性:スガ試験機(株)製の学震型摩擦試験機を使用し、印刷された表面同士を200gの荷重をかけて1000回擦り、擦過後のインキ脱落状態を以下の基準で評価した。
○:インキが脱落せず良好なレベル
△:インキの脱落が見られ実用上問題あるレベル
×:インキ脱落が多く絵柄が見えず実用上使用ができないレベル
次いで該印刷が施された延伸樹脂フィルムを打ち抜き加工して、横70mm、縦90mmのインモールド成形用ラベルを得た。
【0030】
インモールド成形:
1)(株)新潟鐵工所製の射出成形機(NV50ST/型締め50トン、縦型配置式)を使用し、製品の成形品のサイズが横130mm、縦150mm、肉厚1mmの平板となる射出成形用割型を用い、下部固定盤側に取り付けられた雌型の金型表面に印刷面側が金型と接するようにラベルを固定し、次いで割型を型締めした後、230℃に設定した射出装置よりポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、「ノバテックPP、MA3、MFR11[230℃、2.16kg荷重]」)を745kgf/cm2 の圧力でゲート部より型内に注入し溶融樹脂を冷却固化させるとともにラベルを融着させた後、型開きをしてラベルが貼着した平板状のPP製射出成形品を得た。
【0031】
2)成形品の素材を直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、「ノバテックLL、UJ990、MFR35[190℃、2.16kg荷重]」)に変更し、射出装置の温度を220℃と180℃の2条件で前記と同様に成形しラベルが貼着したPE製射出成形品を得た。
3)さらに成形品の素材をポリスチレン(PSジャパン(株)製、「HIPS、433、MFR21[200℃、5kg荷重]」)に変え、射出装置の温度を230℃とし同様の方法でラベルが貼着したPS製射出成形品を得た。
【0032】
4)(株)プラコー製のダイレクト中空成形機(V−50型)を使用し、ぺんてる(株)製の自動ラベル供給装置を用いて、打ち抜き加工したインモールド成形用ラベル(横62mm、縦124mm)を、ブロー成形用割型(容量400ml)の一方に真空を利用して印刷面側が金型と接するように固定した後、ペット(日本ユニペット(株)製、「RD383、融点235℃、密度1.40g/cm3 」)のパリソンを250℃で溶融押出し、次いで割型を型締めした後、4.9kg/cm2 の圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨張させて型に密着させて容器状とすると共にインモールド用ラベルと融着させ、次いで該型を冷却した後、型開きをしてラベルが貼着したポリエチレンテレフタレート(PET)製ダイレクト中空容器を取り出した。
【0033】
ラベルと成形品の密着強度:
上記で作成した成形品に貼着したラベルを15mm幅に切り取り、ラベルと成形品との間の接着強度を、島津製作所製の引張試験機「オートグラフ、AGS−D形」を用い、300mm/分の引張速度で、T字剥離することにより求めた。ラベル使用上の判断基準は次の通りである。
○:400(g/15mm)以上であり、接着が強固で実用上全く問題がないレベル
△:200以上〜400未満(g/15mm)であり、やや接着性が弱く成形品の形状によっては衝撃で剥がれてしまいやや実用上問題となるレベル
×:200未満(g/15mm)であり、容易にラベルが剥がれてしまうため実用上問題であるレベル
各試験結果を表3にまとめて示した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、印刷面の仕上がりが高精細であるインモールド成形が可能となり、かつ、インモールド成形後の成形品の外観も良好であるインモールド成形用ラベル及びそれを用いた成形品がえられた。
本発明の該ラベルは、溶融した熱可塑性樹脂を射出成形して、或いは溶融した熱可塑性シートを真空成形もしくは圧空成形してラベルを貼合した成形品を製造するインモールド成形に用いるラベルであり、樹脂を成形する産業分野で好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層と印刷層を含む少なくとも2層の樹脂フィルムからなるインモールド成形用ラベルであって、該ヒートシール層が表面開口率が6〜30%の多孔質表面を有し、印刷層が網点柄を印刷した際のドットスキップが5%以下であり、かつ印刷層のベック平滑度(JIS−P−8119)が650〜20000秒であることを特徴とするインモールド成形用ラベル。
【請求項2】
ヒートシール層の透気度(JIS−P−8117)が20000秒以内であることを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項3】
ヒートシール層が、熱可塑性樹脂(A)、無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B’)を含有した樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(A)が、結晶性ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項5】
ヒートシール層が、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が2〜80倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項6】
ヒートシール層が、無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B’)を50〜80%含有し、熱可塑性樹脂(A)としてポリプロピレン系樹脂を含み、且つ延伸温度が該ポリプロピレン系樹脂の融点より1〜60℃低い温度で延伸されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項7】
印刷層が、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含み、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の配合比率が4対6から6対4であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のインモールド成形用ラベルを用いたことを特徴とする成形品。
【請求項9】
ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形若しくはインジェクション成形により成形されたことを特徴とする請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
成形品が、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項8または9に記載の成形品。

【公開番号】特開2006−309175(P2006−309175A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73758(P2006−73758)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】