説明

インモールド成形用ラベル

【課題】 強度と耐水性、及び接着強度に優れ、屋内外を問わず、水中でも用いることが出来、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器、製造工程管理用途、物流管理用途、通い箱などに使用可能であるインモールド成形用ラベル及び該ラベル付き熱可塑性樹脂コンテナを提供する。 このインモールド成形用ラベルは、ICラベルとしての機能を有し、かつ表面への印刷や印字が可能であり、また内部のICチップやアンテナが透けて見えてしまうというセキュリティ上の心配がない。
【解決手段】 インモールド成形に用いられるインモールド成形用ラベルであって、該インモールド成形用ラベルがヒートシール性層を有する熱可塑性樹脂フィルムと印刷可能な熱可塑性樹脂フィルムよりなり、該熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの間に非接触でデータを送受信するアンテナとICチップを有するインモールド成形用ラベル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でデータの送受信を行い得るアンテナとICチップを積層構成の内部に持ち、データの読み出しや書き込みが行えるインモールド成形用ラベルに関するものである。
本発明により得られるインモールド成形用ラベルは、表面への印刷や印字が可能であり、また内部のICチップやアンテナ(以下、ICモジュールと表記)が透けて見えてしまうというセキュリティ上の心配がなく、更に該ラベルを熱可塑性樹脂コンテナに貼着する際、内部のICモジュールが溶融した熱可塑性樹脂の熱や圧力によりダメージを受けることがない。
さらに該インモールド成形用ラベルは、強度と耐水性、及び接着強度に優れるので、該ラベル付き熱可塑性樹脂コンテナは屋内外を問わず、水中でも用いることが出来、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器、製造工程管理用途、物流管理用途、通い箱などに使用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、ICモジュールを内包し、外部のリーダやライタを介してデータを非接触で送受信するカードが普及している。同様な用途で粘着層を持ち、被着体に貼付、使用されるICラベルの提案もなされている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
ラベルの態様の一つとして、ラベルを予め金型壁面に接するようにセットし、金型内に溶融した熱可塑性樹脂を射出成形して、或いは溶融した熱可塑性樹脂のパリソンを導き中空成形して、或いは溶融した熱可塑性樹脂シートを真空成形もしくは圧空成形してラベル付き樹脂成形品を製造可能なインモールド成形用ラベルは公知である(例えば、特許文献4、5参照)。
【0003】
このようなインモールド成形用ラベルは、感圧粘着剤を用いた粘着ラベルと比較して、高い接着強度が得られる点、耐水性、耐久性に優れる点、感圧粘着剤のガラス転移点を下回る低温環境下であっても安定した接着強度が保持できる点で有利である。また、貼着後は貼り直しが出来ないので偽装や改ざん等の不正を防止できる点で有利である。
ICモジュールの繰り返しデータの送受信が可能である特性を活かし、ICラベルを熱可塑性樹脂フィルムよりなり、インモールド成形法により樹脂成形品に貼着させるインモールド成形用ラベルとして用い、該ラベルと一体として得られる樹脂成形品は、屋内外を問わず、水中でも用いることが出来、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器、製造工程管理用途、物流管理用途、通い箱など厳しい環境下であっても好適に使用することができ、またラベルの貼り替えによる偽装や改ざん等の不正を防止することができる。
【0004】
特許文献6には、金型内の定位置にICモジュールをそのままセットし、金型内に熱溶融樹脂を押出してICモジュールを封入した、樹脂押出成形品が提案されている。このようにICモジュールは、これを樹脂成形品の中に封入するような製品を製造するプロセスにおいて加熱過程を経ることになるが、従来、ICモジュールは熱可塑性樹脂成形品の成形に必要な程度の温度ならば、問題なく耐えうる耐熱性を持つと言われている。これらは回路保護の為に非常に嵩張り、また高価なものでもあった。
しかし近年開発された小型のICモジュールは、ICチップとアンテナとの接合に高熱をかける必要がなくなり、これを構成するベースフィルムには耐熱性の高いポリイミド製のフィルムを使う必要がなくなり、ICモジュール自体のコスト低減の目的もあって安価なポリエステル製のフィルムやポリエチレン製のフィルムが使われるようになった。またICチップ自体の小型化も、熱容量の低下に伴う熱ストレスへの耐性低下が進むものと懸念され、今後は同様の樹脂押出成形品の製造プロセスであっても、ICモジュールへの熱履歴が十分に配慮されなければ、製品歩留まり悪化などの問題が生じるものと推定される。
【0005】
また特許文献7には、インモールド成形に用い得る非接触データキャリアラベルに関する記載がある。しかし特許文献7においてもインモールド成形時にICモジュールが直接、熱溶融した樹脂に直接触れる形態であり、上記同様、急激な温度変化によるICモジュールの破損や、溶融樹脂の押出圧力によるアンテナ部の変形などの不具合を生じしめ、インモールド成形という技術背景の元、ICモジュール保護の観点で不充分である。
ICチップは非常に静電気に弱く、ラベル成形時、印刷や印字時、インモールド成形時のラベル素材の帯電により破損する可能性も考えられるため、静電気対策も重要である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−134460号公報
【特許文献2】特開平11−231782号公報
【特許文献3】特開2002−074303号公報
【特許文献4】特開平02−084319号公報
【特許文献5】特開平09−207166号公報
【特許文献6】特開平08−056799号公報
【特許文献7】特開2002−049905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち本発明では、ラベル成形時、印刷や印字時、インモールド成形時の熱、圧力、静電気からのICモジュールの保護を課題とし、生産上の不具合を解決し得るICモジュールを内包したインモールド成形用ラベル及び該ラベル付き熱可塑性樹脂コンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、インモールド成形に好適なICモジュールを内包するインモールド成形用ラベルにつき検討を重ねた結果、ICモジュールを少なくとも2枚の熱可塑性樹脂フィルム間に封止し、固定化することにより上記の問題を解決しうることを見出した。
すなわち本発明では、以下の構成を有するインモールド成形用ラベル及び該ラベル付き熱可塑性樹脂コンテナを提供するものである。
【0009】
《1》インモールドラベル成形用ラベルであって、該インモールドラベル成形用ラベルがヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)と印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)よりなり、該熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間に非接触でデータを送受信するアンテナとICチップを有するインモールド成形用ラベル。
《2》 熱可塑性樹脂フィルム(1)が、層内に空孔を有するフィルム層(1b)を有し、熱可塑性樹脂フィルム(1)の次式より求められる空孔率が1〜60%であり、熱可塑性樹脂フィルム(1)の熱伝導度が0.01〜0.5W/m・Kである上記《1》に記載のインモールド成形用ラベル。
空孔率(%)=〔(ρ0−ρ)/ρ0〕×100
(式中、ρ0はフィルムの真密度であり、ρはフィルムの密度である。)
《3》フィルム層(1b)が少なくとも一軸方向に延伸されている上記《2》に記載のインモールド成形用ラベル。
【0010】
《4》熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)の熱収縮率が0〜5%である上記《1》〜《3》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《5》熱可塑性樹脂フィルム(1)、及び熱可塑性樹脂フィルム(2)、及びインモールド成形用ラベルの少なくとも1つが、不透明度が70〜100%である上記《1》〜《4》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《6》熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間に接着剤層(3)を有し、該接着剤層(3)が感圧接着剤、硬化性樹脂接着剤、紫外線硬化型接着剤、及び電子線硬化型接着剤の少なくとも一種を含有する上記《1》〜《5》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《7》熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間の接着強度が300gf/25mm以上である上記《1》〜《6》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【0011】
《8》熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一方が波長380nmの光線透過率を60%以上とし、かつ接着剤層(3)が紫外線硬化型接着剤よりなる上記《6》又は《7》に記載のインモールド成形用ラベル。
《9》熱可塑性樹脂フィルム(2)が、少なくとも片面に印刷適性層(2a)を備えている上記《1》〜《8》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《10》印刷適性層(2a)上に、バーコード、又は二次元バーコードを含む情報が印刷、印字されている上記《9》に記載のインモールド成形用ラベル。
《11》熱可塑性樹脂フィルム(2)が、少なくとも片面に隠蔽性層(2b)を備えている上記《1》〜《10》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【0012】
《12》隠蔽性層(2b)が、金属薄膜、白色ピグメントコート、白ベタ印刷、及び黒ベタ印刷の少なくとも1つからなる上記《11》に記載のインモールド成形用ラベル。
《13》熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一つが結晶性ポリオレフィン系樹脂を含有する上記《1》〜《12》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《14》結晶性ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂である上記《13》に記載のインモールド成形用ラベル。
《15》熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一つが無機微細粉末、及び有機フィラーの少なくとも1ツを含有する上記《1》〜《14》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【0013】
《16》ヒートシール性層(1a)が、融点50〜130℃のエチレン系樹脂を含有するヒートシール性樹脂よりなる上記《1》〜《15》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《17》ヒートシール性層(1a)が、相転移温度50〜140℃のヒートシール性樹脂ディスパージョンを含む水系塗工液を熱可塑性樹脂フィルム(1)上に塗工、乾燥させることにより設けられた上記《1》〜《16》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《18》非接触でデータを送受信するアンテナとICチップが、RFID、スマートタグ、アクティブタグのいずれかの機能を有する上記《1》〜《17》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【0014】
《19》少なくとも片面に帯電防止性能を有する上記《1》〜《18》のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
《20》上記《1》〜《19》に記載のインモールド成形用ラベルを、金型内成形時に一体に貼着した熱可塑性樹脂コンテナ。
《21》熱可塑性樹脂コンテナとインモールド成形用ラベルとの接着強度が300gf/25mm以上である上記《20》に記載の熱可塑性樹脂コンテナ。
《22》射出成形、中空成形、差圧成形、及び発泡成形の少なくとも1つの成形手段で金型内で成形された上記《20》又は《21》に記載の熱可塑性樹脂コンテナ。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインモールド成形用ラベルは、ICラベルとしての機能を有し、強度と耐水性、及び接着強度に優れ、かつ表面への印刷や印字が可能であり、またラベルの貼り替えによる偽装や改ざん等の不正を防止することができる。内部のICチップやアンテナが透けて見えてしまうというセキュリティ上の心配もなく、更に該ラベルを熱可塑性樹脂コンテナに貼着する際、内部のICチップやアンテナが加工に伴うダメージを受けることがない。
該ラベル付き熱可塑性樹脂コンテナは屋内外を問わず、水中でも用いることが出来、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器、製造工程管理用途、物流管理用途、通い箱などに好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明のインモールド成形用ラベル及び該ラベル付き熱可塑性樹脂コンテナについて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明のインモールド成形用ラベルは、ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)と印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)よりなり、該熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間に非接触でデータを送受信するアンテナとICチップを有するものである。
【0017】
本発明においてヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)は、インモールド成形時に熱可塑性樹脂コンテナを形作る溶融樹脂に直接接し、ヒートシール性層(1a)が活性化して樹脂フィルム(1)を該コンテナへ強固に接着させるとともに、アンテナ及びICチップを溶融樹脂に直接触れない様にし、熱や応力のダメージから保護する働きを有する。熱可塑性樹脂フィルム(2)はアンテナ及びICチップを外部へ露出しないように被覆し、耐水性、耐久性を付与するとともに、ラベルとして少なくとも片面にバーコード等の情報を印刷、印字することが可能であり、利便性や意匠性を高めることができる。通常、熱可塑性樹脂フィルム(2)は不透明であり、ラベル内部のアンテナ及びICチップが透けて見えないようにする。
【0018】
また、熱可塑性樹脂フィルム(1)が層内に空孔を有するフィルム層(1b)を有し、熱可塑性樹脂フィルム(1)の次式より求められる空孔率が1〜60%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、20〜45%であることが特に好ましい。
空孔率(%)=〔(ρ0−ρ)/ρ0〕×100
(式中、ρ0はフィルムの真密度であり、ρはフィルムの密度である。)
熱可塑性樹脂フィルム(1)の熱伝導度は0.01〜0.5W/m・Kであることが好ましく、0.05〜0.15W/m・Kであることがより好ましく、0.08〜0.12W/m・Kであることが特に好ましい。
空孔を有するフィルム層(1b)を設けることで熱可塑性樹脂フィルム(1)のクッション性及び断熱性を高めて、アンテナ及びICチップの保護をより確実なものとする。またインモールド成形用ラベルの接着時にヒートシール性層(1a)の活性化の温度を効果的に保持することも可能となる。
【0019】
空孔率が1%に満たない場合は断熱性が不充分であり、空孔率が60%を越えてはインモールド成形時に空孔のつぶれに起因する柚肌のような外観不良が発生しやすい。熱伝導度が0.01W/m・Kに満たない熱可塑性樹脂フィルムは一般に得づらく、0.5W/m・Kを越えては断熱性が不充分である。
フィルム層(1b)は少なくとも一軸方向に延伸されていることが好ましい。延伸に関しては後述にてより詳細に説明するが、延伸によりフィルム層(1b)に空孔を付与し、その空孔率を容易に調整することが可能となる。更にフィルム層(1b)に含有される熱可塑性樹脂の延伸配向により、印刷を含む後加工やラベルに好適な厚み均一性、剛性等を付与することができる。
【0020】
本発明のインモールド成形用ラベルを構成する熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)の熱収縮率は、それぞれ0〜5%であることが好ましく、0〜4%であることがより好ましい。ラベルの熱収縮率が5%を越えて大きい場合は、熱可塑性樹脂コンテナへのラベル貼着時に溶融樹脂の熱によりラベルが変形しやすく外観悪化を引き起こし易い。特に本発明のように少なくとも2層の熱可塑性樹脂フィルムの積層構造よりなるインモールド成形用ラベルの場合は、インモールド成形後に熱可塑性樹脂コンテナの型収縮や、フィルム(1)、フィルム(2)の熱履歴の差違により、ラベル表面となる熱可塑性樹脂フィルム(2)が浮き上がり易く、ブリスター(フクレ)による外観不良が発生しやすい。またラベルの収縮に伴いこれに固定されるアンテナ部の変形も懸念される。従って本発明のインモールド成形用ラベルを構成する熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)は熱収縮率が極力小さく、それぞれが強固に接着固定されており、剛性は高い方が良い。
【0021】
熱可塑性樹脂フィルム(1)、及び熱可塑性樹脂フィルム(2)、及びインモールド成形用ラベルの少なくとも1つが、不透明度が70〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがより好ましく、90〜100%であることが特に好ましい。特に熱可塑性樹脂フィルム(2)の不透明度を70%以上とすることにより、内部のICチップやアンテナが透けて見えてしまうというセキュリティ上の心配がなく、外観上は通常のラベルのように取り扱うことができる。加えて熱可塑性樹脂フィルム(1)及びインモールド成形用ラベルの何れかの不透明度を70%以上とすることにより、熱可塑性樹脂コンテナの地が透けて見えることが無く、ラベルに加飾された印刷の意匠性やバーコード印字の読み取り率の向上を図ることができる。
【0022】
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間にアンテナ及びICチップを封止し固定化する具体的な手法としては、熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間に接着剤層(3)を有することが好ましい。
該接着剤層(3)は感圧接着剤、硬化型樹脂接着剤、紫外線硬化型接着剤、及び電子線硬化型接着剤の少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。インモールド成形用ラベルの耐水性、耐久性、セキュリティを高めるためには、熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間の接着強度は高いほど良く、具体的には300gf/25mm以上であることが好ましく、300〜8000gf/25mmであることがより好ましく、500〜7000f/25mmであることが特に好ましい。フィルム(1)とフィルム(2)間の接着強度が300gf/25mmに満たない場合は剥離が容易となり、ラベル表面となる熱可塑性樹脂フィルム(2)が浮き上がり易く、ブリスター(フクレ)などによる外観悪化が発生しやすくなる。
【0023】
熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一方のフィルムを波長380nmの光線の透過率を60%以上とし、かつ接着剤層(3)に紫外線硬化型接着剤を用いてフィルム(1)とフィルム(2)を紫外線照射しながら接着する場合、短い加工時間で強固な接着力を得ることができ、硬化後はフィルム(1)とフィルム(2)がずれることもないので特に好ましい。 熱可塑性樹脂フィルム(2)は少なくとも片面に印刷適性層(2a)を備えることが好ましい。印刷適性層(2a)は本発明をラベルとして用いる際の各種印刷や、プリンタ印字を適正に行うために設けられるものである。従って、印刷適性層(2a)上にはバーコード、二次元バーコード等の情報のみならず、例えばラベルを貼着した熱可塑性樹脂コンテナに関連する製品の商品名、製造会社名、販売会社名、製品の使用方法、注意書き、キャラクター、商標、ロゴマーク、模様などの情報を印刷、印字することができる。
【0024】
また、熱可塑性樹脂フィルム(2)は少なくとも片面に隠蔽性層(2b)を備えることが好ましい。隠蔽性層(2b)は、金属薄膜、白色ピグメントコート、白ベタ印刷、及び黒ベタ印刷の中から少なくとも1つを選択することができる。 隠蔽性層(2b)は熱可塑性樹脂フィルム(2)の不透明度を向上させるものであり、これを設けることにより内部のICチップやアンテナが透けて見えてしまうというセキュリティ上の心配がなく、通常のラベルのように取り扱うことができる。
ICモジュールによるデータの送受信を阻害・干渉しない程度に熱可塑性樹脂フィルム(2)上に設けられた金属薄膜は、金属様の外観を供することでラベルの意匠性向上に寄与する。また白色ピグメントコート、白ベタ印刷等はバーコードの読み取り率の向上に寄与する。
【0025】
<熱可塑性樹脂フィルム(1)および(2)>
本発明のインモールド成形用ラベルを構成する熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)は、これに用いる熱可塑性樹脂として、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ABS樹脂、アイオノマー、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は2種以上を混合して用いることもできる。
【0026】
これらの中でも加工適正、成形性、強度、柔軟性、耐水性、耐薬品性、耐候性の観点から、フィルムの少なくとも一方がポリオレフィン系樹脂を含有するものであることが好ましく、結晶性ポリオレフィン系樹脂を含有するものであることがより好ましく、熱伝導率の低いプロピレン系樹脂を含有するものであることが特に好ましい。
かかるプロピレン系樹脂としては、アイソタクティック又はシンジオタクティックな立体規則性を示すプロピレン単独重合体や、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。これらの共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0027】
また、上記の熱可塑性樹脂には無機微細粉末あるいは有機フィラーなどを適宜配合することができる。熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一つが無機微細粉末、及び有機フィラーの少なくとも1つを含有するものとし、これを延伸した際にフィルム内にこれらを核とする微細な空孔を多数設けることが可能となり、ラベルの熱伝導率の低下、不透明度の向上等に寄与するために好ましい。
無機微細粉末や有機フィラーの種類は、特に制限されない。無機微細粉末としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、硫酸バリウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素が挙げられる。中でも重質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルクは安価で成形性がよいために好ましい。
【0028】
有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイト、環状オレフィンの単独重合体、および環状オレフィンとエチレンなどとの共重合体等が挙げられる。中でもフィルムに使用する熱可塑性樹脂よりも融点が高く、非相溶性の有機フィラーを使用するのが好ましい。
上記の無機微細粉末又は有機フィラーは1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を選択して組み合わせて使用しても良い。2種類以上を組み合わせて使用する場合には、無機微細粉末と有機フィラーを混合して使用してもよい。
さらに必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、相溶化剤、紫外線安定剤、アンチブロッキング剤、永久帯電防止剤等を熱可塑性樹脂に添加することができる。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)は単層であっても、複層であってもよい。複層の場合は、基層とその片面乃至両面に表面層が配置された構造で、各層は同一の熱可塑性樹脂で構成されてもよいし、異なる種類の熱可塑性樹脂で構成されてもよい。また、これらに無機微細粉末又は有機フィラーを配合する場合、それらの種類及び配合量は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)は、少なくとも一軸方向に延伸されている層を含むことが好ましい。複数層を延伸する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後に全体を延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に更に延伸しても差し支えない。
延伸には、公知の種々の方法を使用することができるが、具体例としては、延伸の温度は使用する熱可塑性樹脂が非結晶性樹脂の場合はガラス転移点以上、結晶性樹脂の場合は非結晶部のガラス転移点以上から結晶部の融点以下の、それぞれの熱可塑性樹脂に好適な温度範囲で行うことができ、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸、あるいはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0030】
延伸倍率は特に限定されず、目的と使用する熱可塑性樹脂の特性により適宜選択される。例を挙げると、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用する時には一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは10〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用する時には一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。更に、必要に応じて高温での熱処理が施される。
熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)の厚さは、用いる材質やラベルの適用対象、使用目的、使用環境、保存環境などに応じて適宜決定される。熱可塑性樹脂フィルム(1)の厚さは、5〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルム(2)の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜300μmであることがより好ましい。
【0031】
<ヒートシール性層(1a)>
本発明のインモールド成形用ラベルに用いるヒートシール性層(1a)を構成するヒートシール性樹脂には、公知のものを選択することができ、インモールド成形の際に加熱によりラベルを貼着するコンテナを構成する樹脂材料に貼着する機能を有するものであれば、その種類は特に限定されるものではない。
好ましい樹脂の例としては、密度が0.900〜0.935g/cm3の低密度ないし中密度ポリエチレン、密度が0.880〜0.940g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1〜8)、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩(Zn、Al、Li、K、Naなど)等の融点が50〜130℃のエチレン系樹脂を挙げることができる。
【0032】
これらの中でも、上記密度で、結晶化度(X線法)が10〜60%、数平均分子量が10,000〜40,000の高圧法ポリエチレン、又は直鎖線状ポリエチレンが好ましい。これらの中でも樹脂コンテナへの接着性から、エチレン40〜98重量%と炭素数3〜30のα−オレフィン60〜2重量%とを、メタロセン触媒(特にメタロセン・アルモキサン触媒、又は例えば国際公開92/01723号パンフレット等に開示されているようなメタロセン化合物、メタロセン化合物と反応して安定なアニオンを形成する化合物とからなるメタロセン触媒)を使用して、共重合させることにより得られる直鎖線上ポリエチレンが特に好ましい。これらのエチレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。上記エチレン系樹脂をポリプロピレンなど他の樹脂と混合して使用する場合、エチレン系樹脂を主として(50重量%以上)含む形態が好ましい。
【0033】
上記のヒートシール性樹脂を、熱可塑性樹脂フィルム(1)上に設けてヒートシール性層(1a)とする方法としては、多層ダイ内部で熱可塑性樹脂フィルム(1)を構成する前述の樹脂層(例えばフィルム層(1b))の溶融樹脂と該ヒートシール性樹脂接着剤の溶融樹脂とを積層しフィルム状に押し出す共押出し方法、該ヒートシール性樹脂接着剤の溶融樹脂をTダイよりフィルム状に押し出して前述の樹脂層上に積層する押出ラミネーション方法、該ヒートシール性樹脂をトルエン、エチルセロソルブ等の溶剤に溶かした樹脂溶液を前述の樹脂層に塗布した後に乾燥させて積層する方法などが挙げられる。
この場合ヒートシール性層(1a)の厚さは1〜100μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましい。ヒートシール性層は、コンテナの原料となる溶融樹脂の熱により融解し、コンテナとラベルとを一体に融着させる必要がある。十分な接着強度を得るためにヒートシール性層の厚さは1μm以上であることが好ましい。また、100μm以下であればラベルがカールしにくく、インモールド成形時に成形金型へのセットが比較的容易である。
【0034】
ヒートシール性層(1a)には公知の方法で表面にエンボス模様を付形することで、インモールド成形用ラベルとコンテナとの間に空気が入り込んでラベルが部分的に膨れあがる現象(ブリスタリング)を防止することができる。
ヒートシール性層(1a)には、ヒートシールに要求される性能を阻害しない範囲で、公知の樹脂添加剤を任意に添加することができる。このような添加剤としては、染料、核剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
また、本発明のインモールド成形用ラベルに用いるヒートシール性層(1a)を構成するヒートシール性樹脂として、インモールド成形用ラベルに適した水系のヒートシール性樹脂を適宜選択して使用することもできる。この手法によれば、コンテナを形成する熱可塑性樹脂の種類に依らず、ラベルの接着強度向上を図ることができる。特に、相転移温度50〜140℃のヒートシール性樹脂ディスパージョンを含む水系塗工液を熱可塑性樹脂フィルム(1)上に塗工、乾燥させることにより設けられたヒートシール性樹脂を選択することが好ましい。
【0035】
水系ヒートシール性樹脂には、インモールド成形に適したヒートシール性(熱活性)を有する樹脂のディスパージョンが好ましい。ヒートシール性を有する樹脂のディスパージョンとしては、例えばエマルジョン重合したものや、懸濁重合したもの、或いは押し出し機などで機械的に粉砕して水溶媒中に分散させたものなどが挙げられる。ディスパージョンの粒子形態を残したままヒートシール性層を形成したものは、インモールド成形用ラベルのブリスタリングや、ラベル同士のブロッキングを防止することができる。
好ましい水系ヒートシール性樹脂の例としては、アクリル系重合体、酢酸ビニル重合体、スチレン系重合体、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、ポリエチレンを含むエチレン系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、石油樹脂、ロジンエステル、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、ポリブタジエン、ブタジエン共重合体、ポリブテン、ブチルゴム、ポリプロピレン、ポリクロロプレン、ポリイソプレンなどが使用できる。
これらの中でも、アクリル系重合体、酢酸ビニル重合体、スチレン系重合体が好ましく、この中でもエチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体がより好ましい。
【0036】
これらの樹脂ディスパージョンの相転移温度は、インモールド成形適性から好ましくは50〜140℃、より好ましくは55〜130℃の範囲である。相転移温度が140℃を超えると低温ヒートシール性が悪化し、ラベルの接着強度が低下する傾向がある。また、相転移温度が50℃に満たない場合は、ディスパージョンの粒子形態を残したままヒートシール性層を形成することが難しく、高温で乾燥させると粒子形状が残らずヒートシール性樹脂がラベル表面を平滑な状態で覆うため、インモールド成形時にブリスタリングが発生したり、印刷時あるいはラベル加工時にブロッキングが発生する傾向がある。そのため、ディスパージョン液塗工後の乾燥を相転移温度よりも低い温度で実施すれば生産性が低下する傾向がある。更に、ラベルのヒートシール性層が常温でもべたついたり、夏期のラベル保管時にラベル同士がブロッキングしやすい問題がある。
【0037】
これらの樹脂ディスパージョンの塗工方法としては、コンマ方式、ロール方式、ロッド方式、カーテン方式、グラビア方式、ブレード方式、エアーナイフ方式、サイズプレス方式、ワイヤーバー方式、スライドホッパー方式、リバースグラビア方式等の一般的な塗工方法が用いられる。またこれら一般的な塗工方法を適宜組み合わせて塗工する方法も用いられる。
塗工後の乾燥方法としては、公知の手段で行われるが、乾燥過程では使用するヒートシール性樹脂ディスパージョンの相転移温度を超えないような条件で乾燥されなければならない。
この場合ヒートシール性層(1a)の乾燥塗工量は、通常0.05〜30g/m2が好ましく、0.1〜20g/m2がより好ましく、0.2〜10g/m2が更に好ましい。乾燥塗工量が0.05g/m2未満では、インモールド成形時にコンテナとの十分な接着強度を得ることができなくなる傾向がある。また乾燥塗工量が30g/m2を超えると、接着強度は十分であるが、塗工表面が平滑となりブリスタリングが発生しやすくなる傾向がある。また塗工量が多くなると、1回の工程では塗工しきれず、複数回の重ね塗工が必要となり生産コストも高くなる等の問題が生じる。
【0038】
更に、塗工乾燥後のヒートシール性層(1a)は熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面の30〜100%、好ましくは40〜90%、更に好ましくは50〜80%を覆っている場合がインモールド成形に向いている。30%未満の場合には、インモールド成形の際にコンテナとの接着強度が低下する傾向がある。
水系ヒートシール性樹脂のディスパージョンよりなるヒートシール性層(1a)には、熱可塑性樹脂フィルム(1)を構成する前述の樹脂層(例えばフィルム層(1b))との密着性を向上させるための各種バインダー樹脂や、ラベルに加工した時のブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤、及び印刷時の給排紙適性を向上させるためのスリップ剤や帯電防止剤等を添加することが好ましい。
更には必要に応じて、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、染料、顔料、帯電防止剤等を適宜添加することができる。
【0039】
<印刷適性層(2a)>
印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)には、各種印刷方法による印刷適性、各種印字方法による印字適性の向上のため、少なくとも片面上に表面処理を行い、印刷適性層(2a)を形成することが好ましい。この様な印刷適性層(2a)としては表面改質層、印刷品質向上のためのピグメントコート層、感熱記録層、レーザープリント受容層、熱転写受容層、インクジェット受容層など必要に応じて種々のものを用い得る。
また、本発明のインモールド成形用ラベルには静電気対策として、少なくとも片面に帯電防止性能を有することが好ましい。具体的には、前述のヒートシール性層(1a)に帯電防止剤を添加してもよく、印刷適性層(2a)が後述のように帯電防止剤を含み帯電防止性能を兼ねるものであってもよい。
【0040】
<表面改質層>
熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも表面側には表面処理を行って表面改質層を形成することが好ましい。表面処理の方法としては、表面酸化処理と表面処理剤の組み合わせである。表面酸化処理としては、フィルムに一般的に使用されるコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理などを単独または組み合わせて使用する。これらのうちで好ましくはコロナ処理、フレーム処理であり、処理量はコロナ処理の場合、600〜12,000J/m2 (10〜200W・分/m2 )、好ましくは1,200〜9, 000J/m2 (20〜150W・分/m2 )、フレーム処理の場合、8,000〜200, 000J/m2 、好ましくは20, 000〜100, 000J/m2 が用いられる。
【0041】
[表面処理剤]
前段の表面処理剤は、主として下記のプライマー、帯電防止性ポリマーより選ばれたものであり、単独あるいは2成分以上の混合物である。印刷時のインキ密着性向上と帯電防止の観点から、表面処理剤として好ましいものはプライマーないしはプライマーと帯電防止性ポリマーとの組み合わせである。
プライマー: プライマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物及びポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、オキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体及びポリアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、樹脂等の水溶性樹脂、またポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリプロピレン及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の水分散性樹脂等が用いられる。
これらの内で好ましくは、ポリエチレンイミン系重合体、ウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル等であり、より好ましくはポリエチレンイミン系重合体であり、更に好ましくは重合度が20〜3, 000のポリエチレンイミン、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加体、ないしはこれらが炭素数1〜24のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化シクロアルキル、ハロゲン化ベンジル基によって変性された変性ポリエチレンイミンである。
【0042】
帯電防止ポリマー: 帯電防止ポリマーとしてはカチオン系、アニオン系、両性系等の高分子型ものが挙げられ、カチオン系としては、四級アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するポリマー、窒素含有アクリル系ポリマー、四級アンモニウム塩構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマー、またアニオン系としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体ないしはそのアルカリ金属塩、エチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩ないしはエチレン−メタクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、また両性系としては、ベタイン構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマーなどが挙げられ、特に四級アンモニウム塩構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマーが好ましい。
【0043】
帯電防止ポリマーの分子量は、重合温度、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。一般には得られる重合体の分子量は1, 000〜1, 000, 000であるが、中でも1, 000〜500, 000の範囲が好ましい。本発明の前段の表面処理剤は、必要に応じて以下の任意成分を含有するものであってもよい。
任意成分1: 架橋剤架橋剤を添加することにより、さらに塗膜強度や耐水性を向上させることができる。架橋剤としては、グリシジルエーテル、グリシジルエステル等のエポキシ系化合物、エポキシ樹脂、イソシアネート系、オキサゾリン系、ホルマリン系、ヒドラジド系等の水分散型樹脂が挙げられる。架橋剤の添加量は、通常、上記の表面改質剤の溶媒を除いた有効成分100重量部に対して100重量部以下の範囲である。
【0044】
任意成分2: アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩表面改質剤にはアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が添加され、それらの塩としては、水溶性の無機塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、その他のアルカリ性塩、及び塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、アンモニウム明礬等が挙げられる。任意成分の量は、通常、上記の表面改質剤の溶媒を除いた有効成分100重量部に対して50重量部以下である。
任意成分3: 表面改質剤には、更に、界面活性剤、消泡剤、水溶性或いは水分散性の微粉末物質その他の助剤を含ませることもできる。任意成分の量は、通常、上記の表面改質剤の溶媒を除いた有効成分100重量部に対して20重量部以下である。
【0045】
[表面改質層の形成]
上記表面改質剤の各成分は、水或いはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の親水性溶剤に溶解させてから用いるものであるが、中でも水溶液の形態で用いるのが好ましい。溶液濃度は通常0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%程度である。塗工方法はダイ方式、リップ方式、ロール方式、グラビア方式、スプレー方式、ブレード方式、リバース方式、エアーナイフ方式、サイズプレス方式、メイヤーバー方式等により行われ、必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、余分な水や親水性溶剤が除去される。塗工量は乾燥後の固形分として0.005〜5g/m2 、好ましくは0.01〜2g/m2 である。
熱可塑性樹脂フィルム層(A)を形成する熱可塑性樹脂フィルムが延伸フィルムの場合、表面改質層の塗工はその縦または横延伸の前後を問わず、一段の塗工でも多段の塗工でも構わない。熱可塑性樹脂フィルム層(A)の表面には、前述の表面処理の後、あるいは表面改質層形成の後に、必要に応じて表面に筆記性付与層、印刷品質向上層(ピグメントコート層)、熱転写受容層、レーザープリント層、感熱記録層、インクジェット受容層などを表面改質層の形成と同様の塗工方法で設けることができる。
【0046】
<ピグメントコート層>
本発明に用いる印刷品質向上のためのピグメントコート層としては、特開平4−77530号公報、特開平3−10894号公報、特開2003−127290号公報等にて詳細説明されているような、通常、塗工紙の塗工剤として使用される公知のものを用いることができる。これにより印刷インキの密着性、乾燥性、発色性の良好な印刷物を得ることができる。また鉛筆による筆記性も良好である。
【0047】
<感熱記録層、レーザープリント受容層、熱転写受容層>
本発明に用いる印字のための感熱記録層、レーザープリント受容層、熱転写受容層としては、特開平9−164768号公報等に詳細説明されているような公知のものを用いることができる。これらの層を設けることで、適合したプリンタにてバーコード、商品名など可変情報の印字を好適に実施でき、高精細で耐水性のある印字物を得ることができる。
【0048】
<インクジェット受容層>
本発明に用いる印字のためのインクジェット受容層としては、特開平9−156208号公報等に詳細説明されているような公知のものを用いることができる。これらの層を設けることで、適合したプリンタでの印字を好適に実施でき、樹脂フィルムや樹脂コンテナの耐水性に併せて、耐水性のある印字物を得ることができる。
【0049】
<隠蔽性層(2b)>
本発明の熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも片面には、隠蔽性層(2b)を設けても良い。隠蔽性層は活版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等により厚さ1〜50μm、好ましくは5〜40μmの白ベタ印刷、黒ベタ印刷を行うことにより形成することができる。ピグメントコート層が隠蔽性層を兼ねても良い。また意匠性を高めるため、隠蔽性層は、金属直接蒸着、金属転写蒸着、金属箔転写、金属粉含有塗料塗工、パール顔料含有塗料塗工、感光性樹脂に干渉縞を露光して現像する(ホログラムの成形)方法などにより形成することができる。このような隠蔽性層を設けることにより、ラベルとしての意匠性を高めたり、透明な樹脂フィルムを不透明化したり、その両面に上記印刷適性層(2a)を設けたりすることができるという利点がある。
【0050】
<接着剤層(3)>
本発明のインモールド成形用ラベルに用いる接着剤層(3)は、熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間に設けることができ、それぞれのフィルムを接着させるとともに、アンテナとICチップを包埋して固定化することができるものである。接着剤層(3)に用いられる接着剤は、感圧接着剤、硬化型樹脂接着剤、紫外線硬化型接着剤、及び電子線硬化型接着剤の少なくとも一種を含有することが好ましく、特に感圧接着剤、硬化型樹脂接着剤、紫外線硬化型接着剤の何れかを用いることが好ましい。
また、インモールド成形用ラベルの耐水性、耐久性、セキュリティを高めるためには、熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間の接着強度は高いほど良く、具体的には300gf/25mm以上であることが好ましく、300〜8000gf/25mmであることがより好ましく、500〜7000gf/25mmであることが特に好ましい。フィルム(1)とフィルム(2)間の接着強度が300gf/25mmに満たない場合は剥離が容易であり、熱可塑性樹脂フィルム(2)がコンテナより脱落したり、ブリスターなどによる外観悪化が発生しやすく、セキュリティ上の問題も懸念される。
【0051】
<感圧接着剤>
接着剤層(3)として感圧接着剤を用いる方法は、本発明のインモールド成形用ラベルを形成するに当たり最も簡便な方法である。例えば、ヒートシール性層を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)上にアンテナとICチップを設置し、その上に感圧接着剤層を予め設けた熱可塑性樹脂フィルム(2)を、感圧接着剤層がアンテナとICチップを包埋しつつ熱可塑性樹脂フィルム(1)と接するように積層接着すれば、本発明のインモールド成形用ラベルを得ることができる。
感圧接着剤の種類や厚さ(塗工量)は、用いる熱可塑性樹脂フィルムの種類やラベルの使用される環境、接着の強度等により種々選択が可能である。一般に用いられる水系もしくは溶剤系の感圧接着剤を塗工し、乾燥して形成でき、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、シリコーン系等が使用でき、これらの合成高分子系感圧接着剤は、有機溶媒溶液や、ディスパージョンやエマルジョンといった水に分散された形態で使用可能である。
【0052】
感圧接着剤の塗工方式は何ら限定されないが、例えばキスコート方式、ダイコート方式、バーコート方式、コンマコート方式、ナイフコート方式、リップコート方式、ロールコート方式、カーテンコート方式、グラビアコート方式、スプレーコート方式、ブレードコート方式、リバースコート方式、リバースグラビア方式等で熱可塑性樹脂フィルム上に直接塗布する方法、および工程紙にこれらの方式で塗布したものを転写させる転写法などが挙げられる。
ゴム系感圧接着剤の具体例としては、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴムとこれらの混合物、或いは、これらゴム系感圧接着剤剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものが挙げられる。アクリル系感圧接着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のものが挙げられる。ラベルの不透明度向上の為、接着剤にチタンホワイト等の顔料を含有したものを使用することも可能である。
該感圧接着剤の塗工量は特に限定されないが、通常は固形分量で3〜60g/m2 、好ましくは10〜40g/m2 の範囲である。
【0053】
<硬化型樹脂接着剤>
接着剤層(3)として用い得る硬化型樹脂接着剤とは、一般に常温一液硬化型、常温二液硬化型などに分類される化学反応硬化型の樹脂接着剤であり、一度硬化すれば非常に強い接着強度を得ることができるものである。通常は常温もしくは加熱した状態で加圧接着できるものであり、本願では少ない加熱で硬化する物で有れば熱硬化型接着剤も使用可能である。一般的にはシアノアクリレート系、ブチラール系、シリコーン系、ポリエーテルポリオール・ポリイソシアネート接着剤およびポリエステルポリオール・ポリイソシアネート接着剤等を含むポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系等の組成物が使用できる。
該接着剤の具体例としては、例えば、液状の樹脂接着剤、例えばポリウレタン系樹脂接着剤として東洋モートン(株)製のEL−150(商品名)、又はBLS−2080AとBLS−2080Bの混合物が、ポリエステル系樹脂接着剤として同社製のAD−503(商品名)を適用することができる。これらは感圧接着剤と同様の方法で乾燥塗工量が0.5〜25g/m2 となるように塗工され、ドライラミネーションもしくはウェットラミネーションと呼ばれる手法により熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)を積層する。
【0054】
<紫外線硬化型接着剤>
接着剤層(3)として用い得る紫外線硬化型接着剤とは、一般に紫外線を照射することで反応硬化する接着剤であり、化学反応硬化型の樹脂接着剤より取り扱いが容易であり、紫外線照射後は硬化に要する時間は短く、一度硬化すれば非常に強い接着強度を得ることができるものである。該紫外線硬化型接着剤の組成は、プレポリマーとしてウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系の樹脂が使用され、モノマーとしてアクリル酸エステル等が使用される。また、添加剤として光重合開始剤、光重合抑制剤、必要に応じてシリコーン樹脂が使用される。本発明では可視光硬化型接着剤もこの属に含むものと見なす。
この場合は、熱可塑性樹脂フィルム(1)および熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一方の紫外線領域(波長380nm)における光線透過率を60%以上とし、該フィルム層側から紫外線照射して接着剤層(3)の紫外線硬化型接着剤の硬化を行うことが好ましい。
【0055】
<電子線硬化型接着剤>
接着剤層(3)として用い得る電子線硬化型接着剤とは、一般に電子線を照射することで反応硬化する接着剤であり、化学反応硬化型の樹脂接着剤より取り扱いが容易であり、電子線照射後は硬化に要する時間は短く、一度硬化すれば非常に強い接着強度を得ることができるものである。電子線硬化型接着剤を用いる場合は熱可塑性樹脂フィルム(1)および熱可塑性樹脂フィルム(2)が不透明な樹脂フィルムであっても好適に使用できる。該電子線硬化型接着剤の組成は、プレポリマーとしてポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が使用され、モノマーとしてアクリル酸エステル等が使用される。なお、電子線で硬化させる場合には光重合開始剤等の添加剤は特に必要無いが、硬化性を促進させる場合には公知の光重合開始剤を添加することができる。
紫外線硬化型接着剤および電子線硬化型接着剤の塗工方法は感圧接着剤と同様の方法、または活版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等が好ましく使用できる。
【0056】
<アンテナ及びICチップ>
本発明のインモールド成形用ラベルに用いる非接触でデータを送受信するアンテナとICチップ(ICモジュール)は、RFIDタグ、スマートタグ、アクティブタグのいずれかの機能を有することが好ましい。
非接触でデータを送受信するアンテナとICチップ(ICモジュール)に関する文献は多くあるが、ここでRFIDタグとは、ICチップが特にPROM、EPROM、EEPROMなどのメモリカードからなるものである。これらのROMには識別のためのコードが記録されるが、これらのコードは工場焼き込みにより改変は不可、或いはアクセスを制御する回路を有し認証を通過した状態で書き込みが可能であり、非常に小型化できるのが特徴で、大きさまで含めた再現は難しく、耐コピー性のあるものである。
【0057】
スマートタグとは、RFIDよりもソフトウェアやハードウェアが備える内部構造や記憶しているデータなどの解析が困難なものとなっており、一般にはICチップがCPU(MPUとも呼ばれる)を内蔵したCPUカードからなるものである。カード自身に演算機能があるため、ICチップとリーダ/ライタ間で暗号を使った認証を行うことができ、データの読み書きの際にアクセスが正当なものかどうかをタグ自身判断することができる。そのため第三者による不正アクセスや改ざんを行うことは非常に困難であり、高いセキュリティを実現できる。
非接触でデータを送受信するICモジュールは、接触型のICモジュールの様に外部から回路起動のための電圧を供給することができない。そのためリーダ/ライタからの電磁波(電波あるいは磁界)またはマイクロ波を静電的に起動電圧に変換し回路を動作させるが、用いる電磁波の種類やICモジュールとリーダ/ライタ間の距離、向きなどの受信の状態などによっては十分な起動電圧を得ることができず、動作が不安定になる場合がある。アクティブタグとは、長寿命電池もしくは自己発電機能(光発電等)を有し、被アクセス時以外でも安定して動作することができるものである。これに対し前者はパッシブタグと呼ばれることもある。
現状の技術では後者になる程ICモジュールは大きくなり、フィルム間に封止することが困難なものもあるため、本発明のインモールド成形用ラベルではICモジュールとしてRFIDまたはスマートタグを用いることがより好ましく、RFIDを用いることが特に好ましい。
【0058】
ICモジュールは、回路基板上にIC回路と配線回路を形成して設けられる。回路基板用の基板材は目的に沿って、一般的な紙フェノール、ガラスエポキシ、BTレジン、FR4、コンポジット等のリジッドタイプ、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム等のフレキシブルタイプ、および両者の複合タイプが使用される。配線回路は金属導線をコイル状にしたものを前記基板材上に接着剤を用いて設置したり、加熱加圧してフィルムを変形させて設ける方法、銅やアルミ等の金属を張った基板材の金属部分をエッチングして設ける方法、銀などの導電性の金属で形成された金属箔を基板上に転写して設ける方法、および導電ペースト塗料を用いてシルクスクリーン印刷やインクジェット印刷等で印刷、乾燥して基板上に配線パターンを設ける方法により形成することができる。これは直接、熱可塑性樹脂フィルム(1)もしくは熱可塑性樹脂フィルム(2)上に設けても良い。
【0059】
ICモジュールは、上記方法により配線回路を形成した基板上にIC回路を実装し、アンテナとIC回路を電気的に導通接続して形成される。基板上へのIC回路の実装は、ワイヤー・ボンディング、テープ・オートメイテッド・ボンディング、チップ・オン・ボードやフリップチップ実装が用いられる。IC回路の実装やアンテナとの接続には、通常のはんだ付けや、導電性接着剤の使用、超音波が使用できるが、加工の際、回路基板材が耐えうる温度条件のものを採用する必要がある。
ICチップは小さい物で0.3〜0.4mm角、厚さ60μmのものが存在する。アンテナを含めこのものは前述の接着剤層(3)中に容易に包埋することができ、得られるインモールド成形用ラベルの外観からはICモジュールの存在を容易に確認することはできない。ICモジュールは実装されたIC回路や配線回路の保護のために、エポキシ樹脂などで包埋(パッケージング)して用いることができる。この場合ICモジュールの厚みはエポキシ樹脂等で包埋後150μm〜1mmである。
【0060】
<インモールド成形用ラベルの形成>
本発明のインモールド成形用ラベルの成形方法としては、熱可塑性樹脂フィルム(1)または熱可塑性樹脂フィルム(2)のいずれかの表面上に、接着剤層(3)を設けた後に、ICチップ及びアンテナを該接着剤上に実装して、もう一方のフィルムを積層貼合すれば良い。これは、用いる熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)の両者がロール形態である場合はドライラミネーション法、片方がシート形態である場合はプリントラミネーション法、両者がシート形態である場合は熱プレスラミネーション法を好ましく用いることができる。また、シート同士を手作業により貼り合わせても良い。
上記方法の貼り合わせに際して、熱可塑性樹脂フィルム(2)への印刷、印字はインモールド成形用ラベルの成形前(貼り合わせ前)に行っても良く、成形後(貼り合わせ後)に行っても良い。
【0061】
<熱可塑性樹脂コンテナ>
本発明のインモールド成形用ラベルは、種々の樹脂製コンテナに使用できる。例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどからなるコンテナに使用でき、中でも高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレンからなるコンテナに適している。本発明のインモールド成形用ラベルは該コンテナの金型内成形時に一体に貼着して熱可塑性樹脂コンテナを提供する。
本発明では、熱可塑性樹脂コンテナとインモールド成形用ラベルとの接着強度は300gf/25mm以上であることが好ましく、300〜8000gf/25mmであることがより好ましく、500〜7000gf/25mmであることが特に好ましい。インモールド成形用ラベルとコンテナ間の接着強度が300gf/25mmに満たない場合は剥離が容易であり、インモールド成形用ラベルがコンテナより脱落し、ラベルとしての機能が不充分である。
本発明の熱可塑性樹脂コンテナは、射出成形、中空成形、差圧成形、及び発泡成形の少なくとも1つの方法によって金型内で製造される。中でも射出成形、中空成形、差圧成形に適している。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の示す材料、使用量、割合、処理方法、処理手順などは本発明の要旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により何ら限定的に解釈されるべきものではない。
なお、本発明では以下の方法に従って各物性値及びその範囲を測定した。
厚さ :JIS−P−8118(1998)
密度 :JIS−P−8124(1998)
白色度:JIS−P−8148(2001)
空孔率:次式により求めた。
空孔率(%)=〔(ρ0−ρ)/ρ0〕×100
(式中、ρ0はフィルムの真密度であり、ρはフィルムの密度である。)
熱伝導度:京都電子工業製の熱伝導計「QTM−D3」(商品名)を用いプローブ法にて測定した。
熱収縮率:熱可塑性樹脂フィルムを縦横ともに100mmの正方形に断裁し、気温23℃、相対湿度50%の恒温湿室内でその実寸法を測定した後、120℃の通風オーブン中に30分間熱処理し、取り出した後、再び恒温湿室内で1時間放冷し、その実寸法を測定してオーブン熱処理前と比較して寸法変化を算出することにより求めた。
不透明度:JIS P−8138に記載の方法に準拠し、試料背面に黒色板を当てて測定した値を、同試料背面に白色板を当てて測定した値で徐した数値を百分率で求めた。
【0063】
<製造例1>
<ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)の製造>
メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体80重量%と高密度ポリエチレン5重量%の混合物に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム15重量%を配合した組成物(1b)を、270℃の温度に設定した押出機にて混練させた後、これをTダイにてシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを140℃の温度に加熱した後、ロール群の周速度を利用して縦方向に4倍延伸して、4倍縦延伸シートを得た。
MFRが4g/10分のプロピレン単独重合体55重量%に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム45重量%を混合した表面層用組成物(1c)を270℃に設定した押出機にて混練して押し出したシートを上記の工程で得られた4倍縦延伸シートの片面に積層した。
【0064】
メタロセン触媒を用いてエチレンと1−ヘキセンを共重合させて得たMFRが18g/10分、密度が0.898g/cm3 、融点90℃であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(1−ヘキセン含量22重量%、結晶化度30、数平均分子量23、000)70重量%と、MFRが4g/10分、密度が0.92g/cm3 、融点110℃の高圧法低密度ポリエチレン30重量%の混合物をタンブラーミキサーで3分間混合し、これをダイよりストランド状に押し出しカッティングしてヒートシール性層ペレット(1a)を得た。
このものと、(1c)と同配合の組成物(1d)をそれぞれ別の押出機を用い250℃で溶融混練し、一台の共押出ダイに供給して該ダイ内で230℃にて積層した後、上記の工程で得られた4倍縦延伸シートのもう一方の片面に、(1a)層が外側となるように積層した。
【0065】
この4層フィルムをテンターオーブンに導き、155℃まで再加熱した後、横方向に8倍延伸し、引き続き160℃で熱セットした後、55℃まで冷却し耳部をスリットした。更に表面層(1c)側に、70W/m2 /分のコロナ放電処理をした。このものの密度は0.80g/cm3 、肉厚が100μm(各層厚み(1c/1b/1d/1a)=15/70/10/5μm)の4層構造(1c/1b/1d/1a=一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸/一軸延伸)の、ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)を得た。
このものの白色度96%、空孔率35%、熱伝導度0.115W/m・K、熱収縮率3.5%、不透明度95%であった。
【0066】
<製造例2>
<ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)の製造>
メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体94重量%と高密度ポリエチレン5重量%の混合物に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム1重量%を配合した組成物(1b)を、270℃の温度に設定した押出機にて混練させた後、これをTダイにてシート状に押し出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを140℃の温度に加熱した後、ロール群の周速度を利用して縦方向に4倍延伸して、4倍縦延伸シートを得た。
MFRが4g/10分のプロピレン単独重合体99重量%に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム1重量%を混合した表面層用組成物(1c)を270℃に設定した押出機にて混練して押し出したシートを上記の工程で得られた4倍縦延伸シートの片面に積層した。
【0067】
メタロセン触媒を用いてエチレンと1−ヘキセンを共重合させて得たMFRが18g/10分、密度が0.898g/cm3 、融点90℃であるエチレン・1−ヘキセン共重合体(1−ヘキセン含量22重量%、結晶化度30、数平均分子量23、000)70重量%と、MFRが4g/10分、密度が0.92g/cm3 、融点110℃の高圧法低密度ポリエチレン30重量%の混合物をタンブラーミキサーで3分間混合し、これをダイよりストランド状に押し出しカッティングしてヒートシール性層ペレット(1a)を得た。
このものと、(1c)と同配合の組成物(1d)をそれぞれ別の押出機を用い250℃で溶融混練し、一台の共押出ダイに供給して該ダイ内で230℃にて積層した後、上記の工程で得られた4倍縦延伸シートのもう一方の片面に、(1a)層が外側となるように積層した。
【0068】
この4層フィルムをテンターオーブンに導き、170℃まで再加熱した後、横方向に8倍延伸し、引き続き172℃で熱セットした後、55℃まで冷却し耳部をスリットした。更に表面層(1c)側に、70W/m2 /分のコロナ放電処理をした。このものの密度は0.910g/cm3 、肉厚が75μm(各層厚み(1c/1b/1d/1a)=17/41/12/5μm)の4層構造(1c/1b/1d/1a=一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸/一軸延伸)の、ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)を得た。
このものの白色度89%、空孔率1%、熱伝導度0.135W/m・K、熱収縮率2.3%、不透明度15%であった。
【0069】
<製造例3>
メルトフローレート(MFR)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体65重量%と高密度ポリエチレン10重量%の混合物に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム25重量%を配合した組成物(A)と、メルトフローレート(MFR)が4g/10分のプロピレン単独重合体99重量%と二酸化チタン1重量%を混合した組成物(B)と、組成物(B)と同配合の組成物(C)とを、それぞれ別々の3台の押出機を用いて250℃で溶融混練した。その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で積層した後(B/A/C)、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層フィルムを得た。
この積層フィルムを145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、再び約150℃まで再加熱してテンターで横方向に8.5倍延伸した。その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして3層構造(B/A/C=二軸延伸/二軸延伸/二軸延伸)の厚さ100μm(3μm/94μm/3μm)の積層フィルムとし、密度0.66g/cm3 、白色度96%、空孔率40%、熱伝導度0.091W/m・K、熱収縮率2.5%、不透明度90%の二軸延伸フィルムを得た。
【0070】
<製造例4>
メルトフローレート(MFR)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体81重量%と高密度ポリエチレン3重量%の混合物に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム16重量%を配合した組成物(1c)を270℃の温度に設定した押出機にて混練させた後、シート状に押し出し、更に冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。次いで、このシートを160℃の温度にまで再度加熱した後、縦方向5倍の延伸を行って5倍縦延伸フィルムを得た。
MFRが4g/10分のプロピレン単独重合体54重量%に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム46重量%を混合した表面層用組成物(1d)を210℃に設定した押出機で混練させた後、これをダイによりシート状に押し出し、これを上記工程で得られた5倍縦延伸シートの両面に積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃の温度にまで冷却した後、再び約160℃の温度にまで加熱し、テンターを用いて横方向に7.5倍延伸し、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットして3層構造(1d/1c/1d=一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の厚さ80μm(1d/1c/1d=17μm/46μm/17μm)の積層フィルムで密度1.02g/cm3 、白色度94%、空孔率29%、熱伝導度0.13W/m・K、熱収縮率1.2%、不透明度72%の積層延伸フィルムを得た。
【0071】
<製造例5>
メルトフローレート(MFR)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体96重量%と高密度ポリエチレン3重量%の混合物に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム1重量%を配合した組成物を270℃の温度に設定した押出機にて混練させた後、シート状に押し出し、更に冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。次いで、このシートを180℃の温度にまで再度加熱した後、縦方向5倍の延伸を行い、次いで182℃でアニーリング処理を行い、一軸延伸フィルムを得た。
この一軸延伸フィルムを60℃の温度にまで冷却し、厚さ80μm、密度0.90g/cm3 、空孔率0.5%、熱伝導度0.137W/m・K、熱収縮率1.0%、不透明度10%の一軸延伸フィルムを得た。
【0072】
<製造例6>
<ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)の製造>
製造例3で得た二軸延伸フィルムの片面に、相転移温度90℃、平均粒子径0.7μmのエチレン・メタクリル酸共重合体(中央理化工業(株)製、商品名:アクアテックスAC−3100)45重量%、相転移温度108℃のエチレン・メタクリル酸メチル共重合体(中央理化工業(株)製、商品名:リカボンドES−90)5重量%、水50重量%からなる樹脂ディスパージョンを、スロットダイコーターにてライン速度20m/minで乾燥塗工量が4g/m2となるように塗工し、乾燥温度80℃に設定した長さ10mのオーブンで乾燥させて水系ヒートシール性樹脂よりなるヒートシール性層(1a)を設け、熱可塑性樹脂フィルム(1)を得た。
【0073】
<製造例7>
<ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)の製造>
製造例4で得た積層延伸フィルムを用いる以外は、製造例6と同様にしてヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)を得た。
<製造例8>
<ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)の製造>
製造例5で得た一軸延伸フィルムを用いる以外は、製造例6と同様にしてヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)を得た。
【0074】
<製造例9>
<印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)の製造>
メルトフローレート(MFR)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体81重量%と高密度ポリエチレン3重量%の混合物に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム16重量%を配合した組成物(2c)を270℃の温度に設定した押出機にて混練させた後、シート状に押し出し、更に冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。次いで、このシートを150℃の温度にまで再度加熱した後、縦方向5倍の延伸を行って5倍縦延伸フィルムを得た。
【0075】
MFRが4g/10分のプロピレン単独重合体54重量%に、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム46重量%を混合した表面層用組成物(2d)を210℃に設定した押出機で混練させた後、これをダイによりシート状に押し出し、これを上記工程で得られた5倍縦延伸シートの両面に積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃の温度にまで冷却した後、再び約155℃の温度にまで加熱し、テンターを用いて横方向に7.5倍延伸し、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットして3層構造(2d/2c/2d=一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の厚さ60μm(2d/2c/2d=10μm/40μm/10μm)の積層フィルムで密度0.79g/cm3 、白色度96%、空孔率32%、熱収縮率1.9%、不透明度87%の積層延伸フィルムを得た。
【0076】
得られた積層延伸フィルムの両表面層に印刷適性層(2a)として、以下の手法で表面改質層を設けた。
<表面酸化処理>
熱可塑性樹脂フィルム(2)の両面に以下のようにコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理機は春日電気(株)製コロナ放電処理機HFS400Fを用い、アルミ電極、トリータロールにはシリコーン被覆ロールを用い、電極とロールとのギャップを2mmとし、ライン速度約30m/分、印加エネルギー密度50W・分/m2 にて処理を行った。
<表面改質層の形成>
その後、下記方法で調整した表面処理剤を、コロナ放電処理を行った熱可塑性樹脂フィルム(2)の両面にロールコーターにて乾燥後の塗工量が片面で0.06g/m2 となるように塗工し、オーブン中、約65℃の温度で数十秒乾燥させたものを巻き取り、印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)を得た。熱収縮率、不透明度は積層延伸フィルムと同等であった。
【0077】
<表面処理剤の調整>
プライマーの製造:
攪拌装置、環流冷却器、温度計及び窒素置換用導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン「エポミンP−1000(重合度1600)」(日本触媒(株)製、商品名)の25重量%水溶液100部、n−ブチルクロライド10部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル10部を加えて、窒素気流下で攪拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行って固形分として20重量%のブチル変性ポリエチレンイミン水溶液よりなるプライマーを得た。
【0078】
帯電防止ポリマーの製造:
攪拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素置換用導入管を備えた四つ口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタアクリレート35部、エチルメタアクリレート20部、シクロヘキシルメタアクリレート20部、ステアリルメタアクリレート25部、エチルアルコール150部と、アゾビスイソブチロニトリル1部を加えて、窒素気流下、80℃の温度で6時間重合反応を行った。次いで、3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの60%水溶液70部を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20重量%の第四級アンモニウム塩型共重合体よりなる帯電防止ポリマーを得た。
任意成分1の製造:
ポリアミンポリアミド・エピクロルヒドリン付加物として以下のものを使用した。
日本PMC(株)製「WS−570」(商品名)、固形分25重量%
上記より製造した各配合成分の固形分量が、表面処理剤100部中、プライマー0.5部、帯電防止ポリマー0.5部、任意成分1が0.5部となるように水媒介中に配合し、充分攪拌して表面処理剤を調製した。
【0079】
<製造例10>
<印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)の製造>
製造例9で得た印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)の片面に更に、オフセット印刷にて黒ベタ印刷を行い、隠蔽性層(2b)を設けた。このものの不透明度は100%であった。
<製造例11>
<印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)の製造>
製造例3で得た二軸延伸フィルムの片面に、次の組成を含む熱転写受容層用塗工液をワイヤーバーコーティングにより乾燥時の厚さが4μmとなるように塗布し、乾燥させて印刷適性層(2a)とし、印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)を得た。このものの熱収縮率は二軸延伸フィルムと同等であり、不透明度は95%であった。
【0080】
<熱転写受容層用塗工液の組成>
下記の各組成を混合して、熱転写受容層用塗工液を調製した。
・バイロン200(東洋紡社製飽和ポリエステル:TK=67℃) 5.3重量部
・バイロン290(東洋紡社製飽和ポリエステル:TK=77℃) 5.3重量部
・ビニライトVYHH(ユニオンカーバイド社製塩化ビニル共重合体) 4.5重量部 ・酸化チタン(チタン工業社製KA−10) 1.5重量部
・KF−393(信越シリコーン社製アミノ変性シリコーンオイル) 1.1重量部
・X−22−343(信越シリコーン社製エポキシ変性シリコーンオイル) 1.1重 量部
・トルエン 30重量部
・メチルエチルケトン 30重量部
・シクロヘキサノン 22重量部
【0081】
<製造例12>
<ICチップおよびアンテナの製造>
厚さ125μmのポリエステルフィルムの片面上にイソシアネート系の溶剤系銀ペーストをシルクスクリーン印刷によりアンテナ回路を印刷し、熱風乾燥の後、80℃の恒温室に3時間放置してから取り出した。その後、該アンテナ面にICチップ(厚さ60μm)を実装し、エポキシ樹脂で表面を包埋し、ICチップおよびアンテナよりなり、RFIDの機能を有するICモジュール(厚さ300μm)を得た。
【0082】
〔実施例1〕
製造例9で得た印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)の片面に、アクリル系感圧接着剤(商品名:オリバインBPS−1109、東洋インキ化学工業(株)製)を固形分量で25g/m2 となるように塗工した後、乾燥させて接着剤層(3)を形成した。該接着剤層(3)上に、製造例12で得たICチップおよびアンテナを実装し、製造例1で得たヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面層(1c)側と、熱可塑性樹脂フィルム(2)上の接着剤(3)を接するように重ねて積層して、圧着ロールを介して接着させて本発明のインモールド成形用ラベルを得た。
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)間の接着強度は800gf/25mmであった。
【0083】
〔実施例2〕
製造例10で得た印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)の隠蔽性層(2b)側に、紫外線硬化型の接着剤(商品名:UV SPA、帝国インキ製造(株)製)を固形分量で20g/m2 となるように塗工した後、製造例12で得たICチップおよびアンテナを実装し、製造例2で得たヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面層(1c)側と、熱可塑性樹脂フィルム(2)上の接着剤を接するように重ねて積層して、圧着ロールを介して接着させた。次いで熱可塑性樹脂フィルム(1)側より紫外線照射器にて紫外線を照射した。この時、紫外線はメタルハライドランプを使用し、280W/cmの出力で照射した。この時の紫外線強度は2100mW/cm2であった。紫外線の照射幅が77mmでライン速度が40m/minであったので、紫外線の積算光量は242mJ/cm2であった。このような硬化条件にて紫外線硬化型の接着剤を硬化させ、接着剤層(3)を形成し、本発明のインモールド成形用ラベルを得た。
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)間の接着強度は4000gf/25mmであった。
【0084】
〔実施例3〕
製造例11で得た印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)の印刷適性層(2a)ではない側に、接着剤(商品名:TM265、東洋モートン(株)製)を固形分量で20g/m2 となるように塗工した後、乾燥させて接着剤層(3)を形成した。該接着剤層(3)上に、製造例12で得たICチップおよびアンテナを実装し、製造例6で得たヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)のヒートシール性層(1a)でない側と、熱可塑性樹脂フィルム(2)上の接着剤(3)を接するように重ねて積層して、圧着ロールを介して接着させて本発明のインモールド成形用ラベルを得た。
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)間の接着強度は5000gf/25mmであった。
【0085】
〔実施例4〕
製造例7で得たヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)のヒートシール性層(1a)でない側に、東洋モートン(株)のポリウレタン系二液硬化型樹脂接着剤(商品名:BLS−2080A、BLS−2080B)を25g/m2 (固型分の割合)で塗布し接着剤層(3)を形成した。該接着剤層(3)上に、製造例12で得たICチップ及びアンテナを実装し、製造例11で得た印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)を熱転写受容層(印刷適正層(2a))が外側となるように、接着剤層(3)上に重ねて積層して、圧着ロールを介して接着させて本発明のインモールド成形用ラベルを得た。
接着剤硬化後の熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)間の接着強度は6000gf/25mmであった。
【0086】
〔実施例5〕
ヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)として製造例8で得たものを用いる以外は実施例2と同様にして、本発明のインモールド成形用ラベルを得た。 熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)間の接着強度は4000gf/25mmであった。
〔実施例6〜8〕
実施例1〜3で得たインモールド成形用ラベルを、ラベルサイズ(横70mm、縦90mm)に打ち抜き、自動ラベル供給装置を用いてブロー成形用割型の一方に真空を利用して印刷面側が金型と接するように固定した後、高密度ポリエチレン(融点134℃)のパリソンを200℃で溶融押出し、次いで割型を型締めした後、4.2kg/cm2 の圧空をパリソン内に供給し、パリソンを膨張させて型に密着させて容器状とすると共にインモールド成形用ラベルと融着させ、次いで該型を冷却した後、型開きをしてラベルが貼着した中空容器からなる熱可塑性樹脂コンテナを得た。
インモールド成形用ラベルとコンテナ間の接着強度はそれぞれ830、800、350gf/25mmであった。
【0087】
〔実施例9〜10〕
実施例4〜5で得たインモールド成形用ラベルを、ラベルサイズ(横70mm、縦90mm)に打ち抜き、自動ラベル供給装置を用いて射出成形用割型の一方に真空を利用して印刷面側が金型と接するように固定し型締めした後、高密度ポリエチレン(融点134℃)を溶融押出し、射出成形により容器状とすると共にインモールド成形用ラベルと融着させ、次いで該型を冷却した後、型開きをしてラベルが貼着した容器からなる熱可塑性樹脂コンテナ(ドリンク用ケース)を得た。
インモールド成形用ラベルとコンテナ間の接着強度はそれぞれ350、370gf/25mmであった。
【0088】
<評価>
実施例1〜5で得たインモールド成形用ラベルの印刷適性層面に、オフセット印刷機(三菱重工社製、型式:ダイヤII型)を使用し、UVオフセットインキ(T&K TOKA社製、商品名:ベストキュア161S)によって文字などを印刷した。このものは印刷機上でも問題なく給排紙することができた。次いでこれを打ち抜き加工して横70mm、縦90mmのインモールド成形用ラベルを得た。得られたラベルおよび実施例6〜10の方法で得たコンテナは耐水性があるものであり、冷凍保存環境下でも不具合の生じないものであった。また、ICモジュールの機能にも不具合は生じなかった。
実施例3、4で得たインモールド成形用ラベルを打ち抜き加工して横70mm、縦90mmのものを得た。この印刷適性層面に(株)テック製の印字装置「バーコードプリンタB−30−S5(商品名)」と(株)フジコピアン製の熱溶融型インクリボン「ワックス型FTR(商品名)」を用いてバーコード等を印字した。得られたラベルおよび実施例8、9の方法で得たコンテナは耐水性があるものであり、冷凍保存環境下でも不具合の生じないものであった。また、ICモジュールの機能にも不具合は生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、ラベル成形時、印刷や印字時、インモールド成形時の熱、圧力、静電気からのICモジュールの保護を課題とし、生産上の不具合を解決し得るICモジュールを内包したインモールド成形用ラベル及び該ラベル付き熱可塑性樹脂コンテナの分野で用いることができる。
このインモールド成形用ラベルは、ICラベルとしての機能を有し、かつ表面への印刷や印字が可能であり、また内部のICチップやアンテナが透けて見えてしまうというセキュリティ上の心配がない。更に該ラベルを成形する際、印刷・印字等の加工をする際、そして熱可塑性樹脂コンテナに貼着する際に内部のICチップやアンテナが該プロセスにおいてダメージを受けることがない。
また得られる熱可塑性樹脂コンテナ、およびこれと一体に成形されたラベルは強度と耐水性、及び接着強度に優れ、屋内外を問わず、水中でも用いることが出来、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器、製造工程管理用途、物流管理用途、通い箱などに使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インモールド成形に用いられるインモールド成形用ラベルであって、該インモールド成形用ラベルがヒートシール性層(1a)を有する熱可塑性樹脂フィルム(1)と印刷可能な熱可塑性樹脂フィルム(2)よりなり、該熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間に非接触でデータを送受信するアンテナとICチップを有することを特徴とするインモールド成形用ラベル。
【請求項2】
熱可塑性樹脂フィルム(1)が、層内に空孔を有するフィルム層(1b)を有し、熱可塑性樹脂フィルム(1)の次式より求められる空孔率が1〜60%であり、熱可塑性樹脂フィルム(1)の熱伝導度が0.01〜0.5W/m・Kであることを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形用ラベル。
空孔率(%)=〔(ρ0−ρ)/ρ0〕×100
(式中、ρ0はフィルムの真密度であり、ρはフィルムの密度である。)
【請求項3】
フィルム層(1b)が、少なくとも一軸方向に延伸されていることを特徴とする請求項2に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)の熱収縮率が0〜5%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項5】
熱可塑性樹脂フィルム(1)、及び熱可塑性樹脂フィルム(2)、及びインモールド成形用ラベルの少なくとも1つが、不透明度が70〜100%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項6】
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間に接着剤層(3)を有し、該接着剤層(3)が感圧接着剤、硬化型樹脂接着剤、紫外線硬化型接着剤、及び電子線硬化型接着剤の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項7】
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)との間の接着強度が300gf/25mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項8】
熱可塑性樹脂フィルム(1)及び熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一方が波長380nmの光線透過率を60%以上とし、かつ接着剤層(3)が紫外線硬化型接着剤よりなることを特徴とする請求項6または7に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項9】
熱可塑性樹脂フィルム(2)が、少なくとも片面に印刷適性層(2a)を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項10】
印刷適性層(2a)上に、バーコード、又は二次元バーコードを含む情報が印刷、印字されていることを特徴とする請求項9に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項11】
熱可塑性樹脂フィルム(2)が、少なくとも片面に隠蔽性層(2b)を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項12】
隠蔽性層(2b)が、金属薄膜、白色ピグメントコート、白ベタ印刷、及び黒ベタ印刷の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項11に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項13】
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一つが結晶性ポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項14】
結晶性ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項13に記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項15】
熱可塑性樹脂フィルム(1)と熱可塑性樹脂フィルム(2)の少なくとも一つが無機微細粉末、及び有機フィラーの少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項16】
ヒートシール性層(1a)が、融点50〜130℃のエチレン系樹脂を含有するヒートシール性樹脂よりなることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項17】
ヒートシール性層(1a)が、相転移温度50〜140℃のヒートシール性樹脂ディスパージョンを含む水系塗工液を熱可塑性樹脂フィルム(1)上に塗工、乾燥させることにより設けられたことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項18】
非接触でデータを送受信するアンテナとICチップが、RFID、スマートタグ、アクティブタグのいずれかの機能を有することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項19】
少なくとも片面に帯電防止性能を有することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載のインモールド成形用ラベル。
【請求項20】
請求項1〜19に記載のインモールド成形用ラベルを、金型内成形時に一体に貼着した熱可塑性樹脂コンテナ。
【請求項21】
熱可塑性樹脂コンテナとインモールド成形用ラベルとの接着強度が300gf/25mm以上であることを特徴とする請求項20に記載の熱可塑性樹脂コンテナ。
【請求項22】
射出成形、中空成形、差圧成形、及び発泡成形の少なくとも1つの成形手段により、金型内で成形されることを特徴とする請求項20又は21に記載の熱可塑性樹脂コンテナ。

【公開番号】特開2006−48016(P2006−48016A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189502(P2005−189502)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】