説明

インモールド成形用金型及びインモールド成形装置及びインモールド成形方法

【課題】 深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができるようにする。
【解決手段】 成形品13に応じた形状にフィルム形成雄型17で金属箔膜付フィルム9を予め型押しし、フィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18をスライドさせて型押しされた金属箔膜付フィルム9を射出成形用雄型18で挟み込んで射出成形を行い、金属箔膜付フィルム9の金属箔膜が破損することがない状態で、深い凹凸面を有する製品に対して金属箔膜を転写し、製品としての品質を確保した状態で金属箔膜付フィルム9の金属箔膜を転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の射出成形と同時に柄付フィルムのフィルム柄を加飾するインモールド成形用金型に関する。
また、本発明は、樹脂の射出成形と同時に柄付フィルムのフィルム柄を加飾するインモールド成形装置に関する。
また、本発明は、樹脂の射出成形と同時に柄付フィルムのフィルム柄を加飾するインモールド成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム柄が施された柄付フィルム(例えば、金属箔膜付フィルム)を金型内に挿入し、射出成形の熱と圧力によりフィルム柄(金属箔膜)を加飾(転写)するインモールド成形が知られている。インモールド成形は、メッキや塗装を行わずに加飾された成形品が得られるため、環境に対して有利であり、また、成形品の形状の制約等も少なく、多種の分野で適用されてきている。
【0003】
柄付フィルム、例えば、金属箔膜付フィルムを用いてインモールド成形を実施する場合、固定金型と可動金型の間に金属箔膜付フィルムを通し、金属箔膜付フィルムが介在した金型に樹脂を射出してインモールド成形品を得ることが一般的である(特許文献1、特許文献2等参照)。これらの技術では、例えば、連続した金属箔膜付フィルムを固定金型と可動金型の間に通過させ、連続した金属箔膜付フィルムの間に樹脂を射出して成形品を得ている。金属箔膜付フィルムを用いてインモールド成形を実施することにより、段差以外の凹凸であれば、表面の形状に拘わらず射出成形の熱と圧力により金属箔膜を転写して表面を加飾することができる。これらの技術では、射出成形に先立ち、予め連続した金属箔膜付フィルムを加熱しておくことで金属箔膜の破れ等を防止することも行われている。
【0004】
近年、製品の多様化や差別化が図られるようになってきており、インモールド成形品にあっても深い凹凸の形状を有する製品に対してのインモールド成形が要求されてきている。予め連続した金属箔膜付フィルムを加熱することにより、ある程度の凹凸面に対して金属箔膜に破れ等が生じない状態でインモールド成形を行うことができる。しかし、予め連続した金属箔膜付フィルムを加熱した場合であっても、深い凹凸面を有する製品に対して確実に金属箔膜を転写して製品として十分な品質が確保できているとは言えないのが現状であった。このため、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態で金属箔膜を転写することができるインモールド成形の技術の確立が望まれているのが実情である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−277294号公報
【特許文献2】特開昭59−202830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができるインモールド成形用金型及びインモールド成形装置及びインモールド成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のインモールド成形用金型は、成形品に応じた形状に柄付フィルムを予め型押しするためのフィルム形成雄型及び射出成形用雄型を隣接して雄型本体に設けると共に、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型を並設方向に往復移動自在に雄型本体に支持し、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型の往復移動によりフィルム形成雄型もしくは射出成形用雄型に対向する形成雌型を雌型本体に設け、形成雌型に対向させる位置にフィルム形成雄型及び射出成形用雄型を移動させる移動手段を雄型本体に設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、雄型本体のフィルム形成雄型と雌型本体の形成雌型により、成形品に応じた形状の型押しを行うと共に、柄付フィルムの位置を固定した状態でフィルム形成雄型及び射出成形用雄型を移動手段により移動させて射出成形用雄型と形成雌型を対向させ、射出成形用雄型と形成雌型により射出成形を行い、一つの金型で柄付きフィルムの位置を固定したまま、破損させることなく、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができる。
【0009】
深い凹凸面を有する製品に対する型押しを行った場合、離型時に柄付きフィルムには平面に戻る状態の張力が働くが、柄付フィルムの位置を固定しているため、柄付きフィルムに働く張力は自身の戻る力だけであり、柄付きフィルムを送る場合に対して引張り力が冗長されずに深い凹凸面の型押しが可能になる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明のインモールド成形用金型は、請求項1に記載のインモールド成形用金型において、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型の並設方向は、柄付フィルムの送り方向に対して交差する方向にされていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型が柄付フィルムの送り方向に対して交差する方向に並設されているので、柄付フィルムの送り方向のスペースを抑制することができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明のインモールド成形用金型は、請求項1または請求項2に記載のインモールド成形用金型において、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型は断熱材を介して雄型本体に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型は断熱材を介して雄型本体に設けられているので、成形品に応じた形状の型押しのための温度に独立して制御することができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明のインモールド成形用金型は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインモールド成形用金型において、雄型本体にはスライドガイドが設けられ、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型が一体的にスライドガイドに支持され、駆動部がスライドガイドに沿って平行に配される移動手段としてのエアシリンダ本体が雄型本体に設けられ、一体的にされたフィルム形成雄型及び射出成形用雄型がエアシリンダの駆動部に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、エアシリンダの駆動部がスライドガイドに沿って平行に配されているので、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型の移動方向のスペースを抑制することができる。
【0016】
また、請求項5に係る本発明のインモールド成形用金型は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のインモールド成形用金型において、雄型本体、雌型本体で型押し及び射出成形される柄付フィルムは金属箔膜付フィルムであり、金属箔膜付フィルムの金属箔膜を成形と同時に転写することで金属箔膜が加飾された成形品を得ることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、金属箔膜が転写された成形品を得ることができる。
【0018】
上記目的を達成するための請求項6に係る本発明のインモールド成形装置は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の雄型本体を支持する固定支持台と、雄型本体に対向して請求項1〜請求項4のいずれかに記載の雌型本体を支持する可動支持台と、固定支持台に支持された雄型本体の雄型側に成形品材料を圧送する材料圧送手段と、可動支持台側に設けられ柄付フィルムを雄型本体と雌型本体の間で送るフィルム送り手段と、可動支持台の可動による型締め動作及び移動手段によるフィルム形成雄型、射出成形用雄型の移動動作及びフィルム送り手段による柄付フィルムの送り動作及び材料圧送手段による成形品材料の圧送動作を連動させる制御手段とを備え、フィルム形成雄型及び形成雌型による成形品に応じた形状への柄付フィルムのフィルム形成雄型押しを行うと共に、離型時にフィルム形成雄型、射出成形用雄型を移動させた後、型押しされた柄付フィルムを射出成形用雄型及び形成雌型に挟み込んで射出成形を行うことで柄付フィルム柄を加飾した成形品を得る成形とを行い、成形品を得た後の離型時に柄付フィルムの送りを行う動作を繰り返すことで加飾した成形品を連続して得ることを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る本発明では、柄付フィルムの位置を固定した状態でフィルム形成雄型及び射出成形用雄型を移動手段により移動させて射出成形用雄型と形成雌型を対向させ、射出成形用雄型と形成雌型により射出成形を行い、一つの金型で柄付きフィルムの位置を固定したまま、破損させることなく、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができる。
【0020】
尚、固定支持台に雄型本体を支持する代わりに雌型本体を支持し、可動支持台に雌型本体を支持する代わりに雄型本体を支持する構成としてもよい。
【0021】
そして、請求項7に係る本発明のインモールド成形装置は、請求項6に記載のインモールド成形装置において、柄付フィルムは金属箔膜付フィルムであり、金属箔膜付フィルムの金属箔膜を成形と同時に転写することで柄付フィルム柄が加飾された成形品を得ることを特徴とする。
【0022】
請求項7に係る本発明では、金属箔膜が転写された成形品を得ることができる。
【0023】
上記目的を達成するための請求項8に係る本発明のインモールド成形方法は、成形品に応じた形状に柄付フィルムをフィルム形成雄型で予め型押しし、同一の金型でフィルム形成雄型及び成形型を移動し、型押しされた柄付フィルムを成形型に挟み込んで射出成形を行うことで柄付フィルム柄を加飾した成形品を得ることを特徴とする。
【0024】
請求項8に係る本発明では、柄付フィルムの位置を固定した状態でフィルム形成雄型及び射出成形用雄型を移動手段により移動させて射出成形用雄型と形成雌型を対向させ、射出成形用雄型と形成雌型により射出成形を行い、一つの金型で柄付きフィルムの位置を固定したまま、破損させることなく、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができる。
【0025】
そして、請求項9に係る本発明のインモールド成形方法は、請求項8に記載のインモールド成形方法において、フィルム形成雄型及び成形型に対向する形成雌型は共通の形成雌型であり、同一の金型でフィルム形成雄型及び成形型のみを移動することを特徴とする。
【0026】
請求項9に係る本発明では、フィルム形成雄型及び成形型のみを移動することで深い凹凸面を有する製品に対してフィルム柄を加飾することができる。
【0027】
また、請求項10に係る本発明のインモールド成形方法は、請求項8または請求項9に記載のインモールド成形方法において、雄型本体、雌型本体で型押し及び射出成形される柄付フィルムは金属箔膜付フィルムであり、金属箔膜付フィルムの金属箔膜を成形と同時に転写することで金属箔膜が加飾された成形品を得ることを特徴とする。
【0028】
請求項10に係る本発明では、金属箔膜が転写された成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のインモールド成形用金型は、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができるインモールド成形用金型となる。
【0030】
また、本発明のインモールド成形装置は、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができるインモールド成形装置となる。
【0031】
また、本発明のインモールド成形方法は、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態でフィルム柄を加飾することができるインモールド成形方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1には本発明の一実施形態例に係るインモールド成形方法を実施するインモールド成形装置の概略側面、図2〜図4には本発明の一実施形態例に係るインモールド成形用金型の斜視状況を示してあり、図2、図3はフィルム形成雄型及び射出成形用雄型側を視認する状態、図4は形成雌型側を視認する状態を示してある。また、図5にはインモールド成形品の一例を示してある。
【0033】
図1〜図4に基づいてインモールド成形装置の概略構成を説明する。
【0034】
図1に示すように、インモールド成形装置1は射出成形機にフィルム送り手段としてのフィルム送り装置2を取り付けた構成となっている。インモールド成形装置1のベース台3には固定支持台としての固定ダイプレート4が設けられ、固定ダイプレート4には溶融樹脂を送り込むバレル5が接続されている。バレル5には図示しないスクリュー等の送り手段が備えられ、送り手段は射出駆動部6により送り駆動され、ホッパー7に投入された樹脂材料が加熱・溶融されてバレル5内を固定ダイプレート4側に圧送される(材料圧送手段)。
【0035】
固定ダイプレート4を挟んでバレル5の反対側には型締駆動部8が設けられ、型締駆動部8には可動支持台としての可動ダイプレート55が設けられている。可動ダイプレート55は型締駆動部8により固定ダイプレート4側に可動自在とされている。可動ダイプレート55にはフィルム送り装置2が設けられている。フィルム送り装置2は、金属箔膜付フィルム9(柄付フィルム)を繰り出す送りロール10と金属箔膜が転写された後の金属箔膜付フィルム9を回収する回収ロール11とを備えている。フィルム送り装置2により、固定ダイプレート4と可動ダイプレート55の間で金属箔膜付フィルム9が間欠送りされる。
【0036】
図1〜図4に示すように、固定ダイプレート4には雄型本体としての固定型本体15が固定され、可動ダイプレート55には固定型本体15に対向して雌型本体としての可動型本体16が固定されている。
【0037】
固定型本体15には、成形品に応じた形状に金属箔膜付フィルム9を予め型押しするためのフィルム形成雄型17が設けられると共に、フィルム形成雄型17に隣接して射出成形用雄型18が設けられている。フィルム形成雄型17と射出成形用雄型18は図示しない連結部材を介して一体的にされている。
【0038】
固定型本体15には金属箔膜付フィルム9の送り方向に対して直交する(交差する)水平方向に延びるスライドガイド60が設けられ、フィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18は一体的な状態でスライドガイド60に移動自在に支持されている。また、固定型本体15の上部には移動手段としてのエアシリンダ61の本体62が取り付けられ、本体62には駆動部としての駆動ロッド63がスライドガイド60に沿って(一体的な状態のフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18の並設方向に沿って)平行に配されている。
【0039】
駆動ロッド63の先端には連結バー64の上端部が固定され、連結バー64の下端部は、射出成形用雄型18と一体的にされたフィルム形成雄型17に固定されている。つまり、エアシリンダ61の駆動により駆動ロッド63が伸縮し、一体的にされたフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18が連結バー64を介してスライドガイド60に沿って往復移動する。
【0040】
尚、移動手段としては、エアシリンダ61に限らず、送りねじを用いた機械的な送り機構等、他の機構を適用することも可能である。また、エアシリンダ61を設ける位置もフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18と並列に設ける以外に、直列状態で配置することも可能であり、他の機器との関係により移動手段を設ける位置は種々変更することが可能である。
【0041】
一方、可動型本体16には、成形品に応じた形状に金属箔膜付フィルム9を予め型押しすると共に、型押しされた金属箔膜付フィルム9を挟んで射出成形を行うための形成雌型19が取り付けられている。形成雌型19は、一体的にされたフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18の往復移動により、フィルム形成雄型17が対向して型締めされた場合に金属箔膜付フィルム9の型押しを行い、射出成形用雄型18が対向して型締めされた場合に金属箔膜付フィルム9を挟んでの射出成形を行う。
【0042】
尚、フィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18に対向して形成雌型をそれぞれ設け、フィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18の往復移動に連動してそれぞれの形成雌型を往復移動させることも可能である。
【0043】
射出成形用雄型18にはバレル5から溶融樹脂が圧送され、形成雌型19には図示しない真空装置が接続されている。フィルム形成雄型17と形成雌型19が対向している状態で、可動ダイプレート55が固定ダイプレート4側に送られ、金属箔膜付フィルム9を挟んで固定型本体15と可動型本体16が型締めされると、フィルム形成雄型17と形成雌型19により金属箔膜付フィルム9が予め型押しされる。
【0044】
その後、一旦型を開いて金属箔膜付フィルム9の位置を固定したままフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18を移動させ、射出成形用雄型18と形成雌型19が対向した状態で固定型本体15と可動型本体16が型締めされ、射出成形用雄型18と形成雌型19との間に溶融樹脂が圧送されて金属箔膜12(図5参照)が表面に転写された成形品13(図5参照)が得られる。
【0045】
図2〜図4及び図6〜図11に基づいてインモールド成形用金型である固定型本体15及び可動型本体16を具体的に説明する。
【0046】
図6にはフィルム形成雄型と形成雌型が対向している状態のインモールド成形用金型の成形面を表す展開状況、図7には図6中のVII−VII線矢視、図8には図6中のVIII−VIII線矢視、図9には射出成形用雄型と形成雌型が対向している状態のインモールド成形用金型の成形面を表す展開状況、図10には図9中のX−X線矢視、図11には図9中のXI−XI線矢視を示してある。
【0047】
固定型本体15は、固定ダイプレート4(図1参照)に固定される固定取付板21を備え、固定取付板21には雄母型24が固定されている。雄母型24にはフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18が取り付けられ、フィルム形成雄型17は断熱材25を介して雄母型24に固定されている。
【0048】
フィルム形成雄型17は断熱材25を介して雄母型24に取り付けられているので、同じ雄母型24に射出成形用雄型18が取り付けられていても、射出成形時の温度の影響を受けずにフィルム形成雄型17を金属箔膜付フィルム9の型押しのための温度に維持することができる。
【0049】
雄母型24には図6、図8中左右方向に延びるスライドガイド60が設けられ、フィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18が一体的な状態でスライドガイド60に移動自在に支持されている。雄母型24(固定型本体15)の上部にはエアシリンダ61の本体62が取り付けられ、本体62には駆動ロッド63がスライドガイド60に沿って平行に配されている。駆動ロッド63の先端には連結バー64の上端部が固定され、連結バー64の下端部は、射出成形用雄型18と一体的にされたフィルム形成雄型17に固定されている。
【0050】
雄母型24の上部にエアシリンダ61を設けたことにより、金属箔膜付フィルム9の幅方向のスペースを広げることなくフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18を往復移動させることができる。
【0051】
スライドガイド60としては、リニアベアリングによりフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18の摺動面を案内する構成を用いたり、案内面にボールや針状コロの一部を臨ませボールや針状コロの転動によりフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18の摺動面を案内する構成を用いることが可能である。
【0052】
固定取付板21の背面側(図7、図10中上側、図8、図11中左側)にはバレル5(図1参照)のノズルが嵌合するロケートリング26が設けられ、ロケートリング26に対応して固定取付板21にはスプルーブッシュ27が設けられている。スプルーブッシュ27に繋がる樹脂流路28が雄母型24に設けられ、射出成形用雄型18には流路ブロック22が一体に設けられている。流路ブロック22には連結流路23が設けられ、連結流路23に繋がる樹脂流入路29が射出成形用雄型18に設けられている。
【0053】
雄母型24に設けられた樹脂流路28は、エアシリンダ61の駆動ロッド63が伸長して射出成形用雄型18が雄母型24に対向した際に(図9〜図11の状態)、流路ブロック22の連結流路23に繋がる位置に設けられている(図11参照)。射出成形用雄型18が雄母型24に対向した時に、樹脂流路28から連結流路23、樹脂流入路29を介してスプルーブッシュ27からの溶融樹脂が射出成形用雄型18と形成雌型19との間のキャビティ内に送られる。
【0054】
可動型本体16は、可動ダイプレート55(図1参照)に固定される可動取付板35を備え、可動取付板35には雌母型37が固定されている。雌母型37には形成雌型19が取り付けられている。雌母型37の形成雌型19には図示しない真空手段が接続され、真空手段により、フィルム形成雄型17もしくは射出成形用雄型18と形成雌型19との間のキャビティが所定の真空雰囲気にされる。
【0055】
上述したインモールド成形用金型では、成形品に応じた形状に金属箔膜付フィルム9をフィルム形成雄型17と形成雌型19で予め型押しし、金属箔膜付フィルム9を送ることなく、同一の金型でフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18を移動し、型押しされた金属箔膜付フィルム9を射出成形用雄型18と形成雌型19に挟み込んで射出成形を行うことで金属箔膜付フィルム9の金属箔膜12が転写された成形品を得る。
【0056】
予め型押しした状態の金属箔膜付フィルム9を挟んで射出成形を行うため、金属箔膜(フィルム柄)12が破損することがなく、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態で金属箔膜を転写(加飾)することができる。
【0057】
そして、金属箔膜付フィルム9の位置を固定したままフィルム形成雄型17と射出成形用雄型18を移動することで、型押しと射出成形とを行うので、金属箔膜付フィルム9の送りの位置決めを行うことなく、位置決めの精度を安定して確保できるフィルム形成雄型17と形成雌型19の移動により予め型押しされた金属箔膜付フィルム9に対して射出成形を行うことができる。更に、予め型押しされて張力が付加されている金属箔膜付フィルム9に対して張力が加わる送りを行う必要がないので、深い凹凸面に対する金属箔膜12の破損を確実に防止することができる。
【0058】
このため、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態で、金属箔膜付フィルム9の破損を確実になくして金属箔膜12を加飾することができる。
【0059】
図12〜図15に基づいて上述したインモールド成形用金型を有するインモールド成形装置によるインモールド成形方法の工程を説明する。図12〜図15には本発明の一実施形態例に係るインモールド成形方法の工程説明を示してある。
【0060】
エアシリンダ61の駆動により駆動ロッド63を縮動させてフィルム形成雄型17と形成雌型19が対向する状態にする。この状態で、固定型本体15と可動型本体16の間に金属箔膜付フィルム9を挟み、可動ダイプレート55(図1参照)の移動により固定型本体15と可動型本体16の型締めを行い、図12に示すように、成形品13(図3参照)に応じた形状の型押し部51を形成する。図12は所定の型押しのための型締めが完了した後、可動ダイプレート55の後退移動により固定型本体15と可動型本体16が型開きされた状態である。
【0061】
次に、金属箔膜付フィルム9の位置を固定したまま、エアシリンダ61の駆動により駆動ロッド63を伸長させて射出成形用雄型18と形成雌型19が対向する状態にする。この状態で、可動ダイプレート55(図1参照)の移動により固定型本体15と可動型本体16の型締めを行い、射出成形用雄型18と形成雌型19で型押し部51を挟みこんで射出成形(転写)を行う。図13に示すように、射出成形が完了した後、可動ダイプレート55の後退移動により固定型本体15と可動型本体16が型開きされて成形品13が型から押し出され、金属箔膜付フィルム9の型押し部51に金属箔膜が抜けた転写部位52が残される。成形品13の押し出しは、例えば、流体を用いた押し出し機構により実施される。
【0062】
再び、エアシリンダ61の駆動により駆動ロッド63を縮動させてフィルム形成雄型17と形成雌型19が対向する状態にすると共に、フィルム送り装置2(図1参照)の送りロール10を動作させて金属箔膜付フィルム9を所定量送る。この状態で、固定型本体15と可動型本体16の間に金属箔膜付フィルム9を挟み、可動ダイプレート55(図1参照)の移動により固定型本体15と可動型本体16の型締めを行い、図14に示すように、再び成形品13(図3参照)に応じた形状の型押し部51を形成する。図14は所定の型押しのための型締めが完了した後、可動ダイプレート55の後退移動により固定型本体15と可動型本体16が型開きされた状態である。
【0063】
そして、金属箔膜付フィルム9の位置を固定したまま、エアシリンダ61の駆動により駆動ロッド63を伸長させて射出成形用雄型18と形成雌型19が対向する状態にする。この状態で、可動ダイプレート55(図1参照)の移動により固定型本体15と可動型本体16の型締めを行い、射出成形用雄型18と形成雌型19で新たな型押し部51を挟みこんで射出成形(転写)を行う。図15に示すように、射出成形が完了した後、可動ダイプレート55の後退移動により固定型本体15と可動型本体16が型開きされて成形品13が型から押し出され、金属箔膜付フィルム9の新たな型押し部51に金属箔膜が抜けた新たな転写部位52が残される。
【0064】
以上の動作を繰り返すことにより、フィルム形成雄型17及び形成雌型19による成形品に応じた形状への金属箔膜付フィルム9のフィルム形成雄型押しと、射出成形用雄型18及び形成雌型19の間に型押し部51を挟み込んだ射出成形を行うことで金属箔膜が転写された成形品13を得ることができる。そして、離型時のフィルム形成雄型17及び射出成形用雄型18の往復移動と金属箔膜付フィルム9の送りを繰り返すことで金属箔膜が転写された成形品13を連続して得ることができる。
【0065】
従って、金属箔膜12が破損することがなく、深い凹凸面を有する製品に対しても製品としての品質を確保した状態で金属箔膜を転写(加飾)することができる。また、金属箔膜付フィルム9の位置を固定したままフィルム形成雄型17と射出成形用雄型18を移動することで、型押しと射出成形とを行うので、予め型押しされた金属箔膜付フィルム9に対して位置決めを確実にして射出成形を行うことができる。更に、予め型押しされて張力が付加されている金属箔膜付フィルム9に対して張力が加わる送りを行う必要がないので、深い凹凸面に対する金属箔膜12の破損を確実に防止することができる。
【0066】
上述したインモールド成形装置は、成形品13に応じた形状に予め型押しされた金属箔膜付フィルム9を固定型本体15と可動型本体16の射出成形用雄型18及び形成雌型19の間に挟み込んで射出成形を行うので、金属箔膜付フィルム9の金属箔膜が破損することがなく、文字や縁部とで形成される角度が小さい部位に深い凹凸(例えば、3mm〜10mm程度の深さの凹凸)を有する成形品13のように、深い凹凸面を有する製品に対しても、金属箔膜が破損することなく転写され、製品としての品質を確保した状態で金属箔膜付フィルム9の金属箔膜を転写することができる。
【0067】
上述した実施形態例では、柄付フィルムとして金属箔膜付フィルム9を用い、フィルム柄として金属箔膜を転写するインモールド成形を例に挙げて説明したが、図柄や文字柄を転写するその他のインモールド成形に対しても適用することができる。また、金属箔膜を転写してベース柄付フィルムを残すインモールド成形を例に挙げて説明したが、柄付フィルムをそのまま転写することで製品の加飾を行うインモールド成形に対しても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、樹脂の射出成形と同時に柄付フィルムのフィルム柄を加飾するインモールド成形用金型及びインモールド成形装置の産業分野で利用することができる。
また、本発明は、樹脂の射出成形と同時に柄付フィルムのフィルム柄を加飾するインモールド成形方法の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形方法を実施するインモールド成形装置の概略側面図である。
【図2】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形用金型の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形用金型の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形用金型の斜視図である。
【図5】インモールド成形品の一例の外観図である。
【図6】フィルム形成雄型と形成雌型が対向している状態のインモールド成形用金型の成形面を表す展開図である。
【図7】図6中のVII−VII線矢視図である。
【図8】図6中のVIII−VIII線矢視図である。
【図9】射出成形用雄型と形成雌型が対向している状態のインモールド成形用金型の成形面を表す展開図である。
【図10】図9中のX−X線矢視図である。
【図11】図9中のXI−XI線矢視図である。
【図12】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形方法の工程説明図である。
【図13】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形方法の工程説明図である。
【図14】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形方法の工程説明図である。
【図15】本発明の一実施形態例に係るインモールド成形方法の工程説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 インモールド成形装置
2 フィルム送り装置
3 ベース台
4 固定ダイプレート
5 バレル
6 射出駆動部
7 ホッパー
8 型締め駆動部
9 金属箔膜付フィルム
10 送りロール
11 回収ロール
12 金属箔膜
13 成形品
15 固定型本体
16 可動型本体
17 フィルム形成雄型
18 射出成形用雄型
19 形成雌型
21 固定取付板
22 流路ブロック
23 連結流路
24 雄母型
25 断熱材
26 ロケートリング
27 スプルーブッシュ
28 樹脂流路
29 樹脂流入路
35 可動取付板
37 雌母型
51 型押し部
52 転写部位
55 可動ダイプレート
60 スライドガイド
61 エアシリンダ
62 本体
63 駆動ロッド
64 連結バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品に応じた形状に柄付フィルムを予め型押しするためのフィルム形成雄型及び射出成形用雄型を隣接して雄型本体に設けると共に、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型を並設方向に往復移動自在に雄型本体に支持し、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型の往復移動によりフィルム形成雄型もしくは射出成形用雄型に対向する形成雌型を雌型本体に設け、形成雌型に対向させる位置にフィルム形成雄型及び射出成形用雄型を移動させる移動手段を雄型本体に設けたことを特徴とするインモールド成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載のインモールド成形用金型において、
フィルム形成雄型及び射出成形用雄型の並設方向は、柄付フィルムの送り方向に対して交差する方向にされている
ことを特徴とするインモールド成形用金型。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインモールド成形用金型において、
フィルム形成雄型及び射出成形用雄型は断熱材を介して雄型本体に設けられている
ことを特徴とするインモールド成形用金型。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインモールド成形用金型において、
雄型本体にはスライドガイドが設けられ、フィルム形成雄型及び射出成形用雄型が一体的にスライドガイドに支持され、駆動部がスライドガイドに沿って平行に配される移動手段としてのエアシリンダ本体が雄型本体に設けられ、一体的にされたフィルム形成雄型及び射出成形用雄型がエアシリンダの駆動部に取り付けられている
ことを特徴とするインモールド成形用金型。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のインモールド成形用金型において、
雄型本体、雌型本体で型押し及び射出成形される柄付フィルムは金属箔膜付フィルムであり、金属箔膜付フィルムの金属箔膜を成形と同時に転写することで金属箔膜が加飾された成形品を得る
ことを特徴とするインモールド成形用金型。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の雄型本体を支持する固定支持台と、
雄型本体に対向して請求項1〜請求項4のいずれかに記載の雌型本体を支持する可動支持台と、
固定支持台に支持された雄型本体の雄型側に成形品材料を圧送する材料圧送手段と、
可動支持台側に設けられ柄付フィルムを雄型本体と雌型本体の間で送るフィルム送り手段と、
可動支持台の可動による型締め動作及び移動手段によるフィルム形成雄型、射出成形用雄型の移動動作及びフィルム送り手段による柄付フィルムの送り動作及び材料圧送手段による成形品材料の圧送動作を連動させる制御手段と
を備え、
フィルム形成雄型及び形成雌型による成形品に応じた形状への柄付フィルムのフィルム形成雄型押しを行うと共に、離型時にフィルム形成雄型、射出成形用雄型を移動させた後、型押しされた柄付フィルムを射出成形用雄型及び形成雌型に挟み込んで射出成形を行うことで柄付フィルム柄を加飾した成形品を得る成形とを行い、成形品を得た後の離型時に柄付フィルムの送りを行う動作を繰り返すことで加飾した成形品を連続して得る
ことを特徴とするインモールド成形装置。
【請求項7】
請求項6に記載のインモールド成形装置において、
柄付フィルムは金属箔膜付フィルムであり、金属箔膜付フィルムの金属箔膜を成形と同時に転写することで柄付フィルム柄が加飾された成形品を得る
ことを特徴とするインモールド成形装置。
【請求項8】
成形品に応じた形状に柄付フィルムをフィルム形成雄型で予め型押しし、同一の金型でフィルム形成雄型及び成形型を移動し、型押しされた柄付フィルムを成形型に挟み込んで射出成形を行うことで柄付フィルム柄を加飾した成形品を得ることを特徴とするインモールド成形方法。
【請求項9】
請求項8に記載のインモールド成形方法において、
フィルム形成雄型及び成形型に対向する形成雌型は共通の形成雌型であり、同一の金型でフィルム形成雄型及び成形型のみを移動する
ことを特徴とするインモールド成形方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のインモールド成形方法において、
雄型本体、雌型本体で型押し及び射出成形される柄付フィルムは金属箔膜付フィルムであり、金属箔膜付フィルムの金属箔膜を成形と同時に転写することで金属箔膜が加飾された成形品を得る
ことを特徴とするインモールド成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−68604(P2008−68604A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251622(P2006−251622)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(592190866)株式会社江東彫刻 (8)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】