説明

インラインストレーナ

【課題】ストレーナエレメントの掃除頻度が少なくて済み、ストレーナエレメントの夾雑物除去が容易なインラインストレーナが嘱望されている。
【解決手段】インラインストレーナ1は、筒状に形成されたハウジング2の一方の筒端が液体の流入口6であり、ハウジング2の他方の筒端が前記流入口6と略同軸心の流出口7であり、ハウジング2内にストレーナエレメント22が配備されているものであって、先端に向かうにつれて内径が小さくなる縮径筒部30と、他端側に形成されたサイクロン流入口とを有するサイクロン筒体28が、縮径筒部30をハウジング2の流入口6寄りにしサイクロン流入口をハウジング2の流出口7寄りに配置してハウジング2内に設けられ、一端が閉塞し他端が開口する筒状に形成されたストレーナエレメント22がサイクロン筒体28内に収納され、ストレーナエレメント22の他端開口25がハウジング2の流出口7に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬液などの液体を散布する配管ラインの途中に、該配管ラインと同軸心に介装されるインラインストレーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインラインストレーナの一例を図11(a)に示す。図示のインラインストレーナ61Aは、一方の筒端に流入口66が設けられた円筒状の本体ケース63と、本体ケース63の他方の筒端に密封状に装着された本体蓋64とから成るハウジング62を備えている。このハウジング62内で流入口66の近傍には弁座95が形成され、弁座95を開閉する弁体92が内装されている。本体ケース63の内周面と弁体92との間には円筒状のストレーナエレメント83Aがハウジングと同軸心で配備されている。ストレーナエレメント83Aは本体蓋64の下面で押下される通水可能な保持部材90により保持される。弁体92は保持部材90との間に介装されたコイルバネ91により弁座95を閉止する方向に付勢されている。流入口66にはポンプとつながったホースなどが接続され、流出口67にはノズル付きの薬液散布管が接続される。
このインラインストレーナ61Aでは、流入口66から農薬液が流入すると、農薬液は弁体92を押して弁座95を開きストレーナエレメント83A内に流入する。その後、農薬液はストレーナエレメント83Aを外向きに通過してゴミや砂利などの夾雑物を濾し取られた後に保持部材90を経て流出口67から薬液散布管へ流れるようになっている。このように農薬液がストレーナエレメントの内側から外側へ通過する型式のインラインストレーナは、例えば下記の特許文献1に記載されている
【0003】
一方で、この種のインラインストレーナの別例を図11(b)に示す。図示のインラインストレーナ61Bは、前述したインラインストレーナ61Aと同様のハウジング62を備えている。このハウジング62内に弁座95はないが、円筒状のストレーナエレメント83Bが配備されている。ストレーナエレメント83Bは一端が周方向4ヶ所でカシメ部94の形成により閉塞されて他端が開口している。このストレーナエレメント83Bの他端開口は本体蓋64の内周面とコイルバネ93により保持されて流出口67と連結されている。
このインラインストレーナ61Bにおいて、流入口66から本体ケース63内に流入した農薬液は、ストレーナエレメント83Bの外側から内側へ通過して夾雑物を濾し取られたのち流出口67から出て薬液散布管へ流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、散布作業を行なっている最中にストレーナエレメント83A,83Bが詰ってくると、噴霧の勢いが弱くなり散布量も減るので、満足のいく散布作業ができなくなる。そこで、現地でインラインストレーナ61A,61Bを分解して夾雑物を除去する必要が生じる。このような場合、操作者はインラインストレーナ61A,61Bの上流側にある開閉弁を閉止し、ストレーナエレメント83A,83Bを取り出すために、本体蓋64を本体ケース63から外さなければならない。すると、ポンプからノズルまでの一連の配管ラインが途中で開放されることとなり、多量の農薬液が本体ケース63から流失することがある。また、取り出したストレーナエレメント83A,83Bは、ブラシなどを用いて夾雑物を削ぎ落としたりするのであるが、強固にへばり付いた夾雑物は簡単に除去できない。特に、ストレーナエレメント83Aの場合は、エレメント内面に夾雑物が溜まるので、ブラシを用いること自体が困難である。
一方で、ストレーナエレメントの開目が粗すぎると、径の大きな夾雑物がストレーナエレメントを通過し下流側のノズルを詰まらせるおそれがある。そこで、比較的開目の細かいストレーナエレメントが使用されるが、それによって、微粒のものから大粒のものまでがストレーナエレメントで捕捉される。そのために、ストレーナエレメントの掃除頻度が多くならざるを得なかった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、ストレーナエレメントの掃除頻度が少なくて済み、ストレーナエレメントの夾雑物除去が容易なインラインストレーナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るインラインストレーナは、筒状に形成されたハウジングの一方の筒端が液体の流入口であり、ハウジングの他方の筒端が前記流入口と略同軸心の流出口であり、ハウジング内にストレーナエレメントが配備されているインラインストレーナにおいて、一端に向かうにつれて内径が小さくなる縮径筒部と他端開口に形成されたサイクロン流出口とを有するサイクロン筒体が、縮径筒部をハウジングの流入口寄りに配置しサイクロン流出口をハウジングの流出口に連結してハウジング内に設けられ、サイクロン流出口近傍のサイクロン筒体の周壁にサイクロン流入口が形成され、ストレーナエレメントが、ハウジングの流出口とサイクロン流出口との間のハウジングに取り付けられた構成にしてある。
【0008】
また、前記構成において、サイクロン筒体の縮径筒部の先端に取出開口部が形成され、ハウジングの筒壁に外部と連通する外部開口部が形成され、該外部開口部に前記サイクロン筒体の取出開口部が連結される構成にされているものである。
【0009】
更に、前記した構成において、ストレーナエレメントは、一端が閉塞し他端が開口する筒状に形成されてサイクロン筒体内に収納され、閉塞部の先端がサイクロン筒体内で縮径筒部の先端を向いているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインラインストレーナによれば、サイクロン筒体がハウジング内に設けられ、ストレーナエレメントがサイクロン筒体内に収納され、ストレーナエレメントがハウジングの流出口とサイクロン流出口との間のハウジングに取り付けられているので、液体中の夾雑物の一部をサイクロン筒体で捕捉し、夾雑物の残りをストレーナエレメントで捕捉できる。これにより、ストレーナ全体の濾過負荷をサイクロン筒体とストレーナエレメントとに分担させることができる。その結果、ストレーナエレメントで捕捉すべき夾雑物が少なくなるので、ストレーナエレメントの掃除頻度を少なくできる。
【0011】
また、ハウジングの外部と連通する外部開口部に、サイクロン筒体の縮径筒部先端の取出開口部が連結されるものでは、サイクロン筒体の縮径筒部内に溜まった夾雑物を取出開口部から外部開口部を経て外部に取り出すことができる。
【0012】
更に、ストレーナエレメントの閉塞部の先端がサイクロン筒体内で縮径筒部の先端を向いているものでは、サイクロン筒体の縮径筒部内で流れの向きを変えてストレーナエレメントに向かう液体が、ストレーナエレメントの閉塞部の外周に沿って円滑に案内されてストレーナエレメントの外方位置に導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るインラインストレーナの斜視図である。
【図2】前記インラインストレーナの正面図である。
【図3】前記インラインストレーナの底面図である。
【図4】前記インラインストレーナの側断面図である。
【図5】図4におけるB−B線矢視断面図である。
【図6】図4におけるA−A線矢視断面図である。
【図7】前記インラインストレーナのサイクロン筒体の斜視図である。
【図8】前記インラインストレーナの分解斜視図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係るインラインストレーナを示し、(a)はその分解斜視図、(b)はその側断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るインラインストレーナを示し、(a)はその分解斜視図、(b)はその側断面図である。
【図11】(a)は従来のインラインストレーナの一例を示す側断面図、(b)は従来のインラインストレーナの別例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1〜図6において、この実施形態のインラインストレーナ1は、一方の筒端に流入口6が設けられ他方の筒端に開口部5が設けられた円筒状の本体ケース3と、本体ケース3の他方の筒端に装着されて開口部5を封止する本体蓋4とから成るハウジング2を備えている。ハウジング2内には、後で詳述する、ストレーナエレメント22とサイクロン筒体28が内装される。上記の本体蓋4は例えば真鍮製であり、本体ケース3は透明材料である例えばポリエチレンナフタレートで構成されている。このポリエチレンナフタレートは透明性、耐衝撃性、耐薬品性、耐候性に富んだ合成樹脂であり、インラインストレーナ1に好適に用いられる。
【0015】
本体蓋4の内周面には雌ネジ部10が刻設されている。この雌ネジ部10は、本体ケース3の他方の筒端外周面に刻設された雄ネジ部9と螺合するようになっている。また、本体蓋4には、本体蓋4が本体ケース3の開口部5を封止した状態で流入口6と同軸心となる位置に、管部40が突設されている。管部40の内部は流出口7となっており、管部40の外周面に雄ネジ部11が刻設されている。使用にあたり、雄ネジ部11には例えば薬液散布管(図示省略)の雌ネジ部が螺止される。
【0016】
本体ケース3の流入口6側の先端部には嵌合溝部35が形成されており、円筒状の嵌着部材12が嵌合溝部35に嵌着されている。嵌着部材12の内周面には雌ネジ部13が刻設されている。使用にあたり、この雌ネジ部13には例えばホース先端の雄ネジ部(図示省略)が螺止される。流入口6近傍位置の本体ケース3の筒壁には、本体ケース3の筒心に対し直角方向外向きに延びる枝管14が形成されている。この枝管14には本体ケース3の内部と外部とを連通する外部開口部15が形成されている。また、枝管14の外周面には雄ネジ部16が刻設されている。枝管14の外部開口部15を封止する蓋体17は、その底面に円柱状の栓体19が突設されている。また、蓋体17の内周面には雌ネジ部18が刻設されている。
【0017】
本体ケース3の内周面において枝管14の外部開口部15とつながる位置には、半円受台状の受口45が形成されている。この受口45にサイクロン筒体28の先端が載置されることにより、サイクロン筒体28が本体ケース3内で位置決め支持される。そして、本体ケース3の内周面の上部には、縦溝状に形成された1対の係合溝部37,37(図6参照)が対角位置に形成されている。そして、符号の8はストレーナエレメント22の他端開口25近傍に装着され、本体ケース3の開口部5の端面と本体蓋4の下面との間で挟圧されるパッキングである。20は蓋体17の栓体19の根元部分に装着されるパッキングである。36は管部40の根元部分に装着されるパッキングである。
【0018】
ストレーナエレメント22は、一端開口24および他端開口25を有する円筒状に形成された通液自在の濾材23と、濾材23に装着されて一端開口24を閉塞する濾材27(閉塞部)とから構成されている。濾材27は円形皿状に形成されており、濾材23の一端開口24に嵌め付けられ溶接などで固着される。濾材23の他端開口25の周縁部には、径方向外向きに延在する周鍔部26が全周にわたって形成されている。このストレーナエレメント22は本体ケース3と同軸心で配置され、他端開口25が本体蓋4の内面に装着されて流出口7に連結される。濾材23および濾材27は例えばステンレス線材製の金網で構成され、例えば40メッシュの目開きのものが使用される。
【0019】
サイクロン筒体28は、図7にも示すように、円筒状に形成された筒胴部29と、筒胴部29から延在して一体に形成され一端に向かうにつれて内径が徐々に小さくなる縮径筒部30とから成っている。縮径筒部30の外周面は、先端に向かうにつれて外径が小さくなるテーパ面47として形成されている。縮径筒部30の先端には、筒胴部29の筒心(図7の1点鎖線C)に対し直角の方向に延びる取出管31が一体に形成されている。この取出管31には、縮径筒部30の内部と外部とを連通する取出開口部32が形成されている。この取出開口部32には、蓋体17の栓体19が枝管14の外部開口部15から挿入される。筒胴部29の外周面の対角位置には、1対の係止突起33,33が径方向外向きに突出して形成されている。筒胴部29における縮径筒部30と反対側の端面はサイクロン流出口39となっている。このサイクロン流出口39近傍の筒胴部29には、1対のサイクロン流入口34,34が対角位置に形成されている。各サイクロン流入口34を構成する一方のガイドエッジ部38は径方向外向きに張り出して形成され、ガイドエッジ部38と対面する他方のガイドエッジ部44は径方向内向きに陥入して形成されている。
【0020】
前記したガイドエッジ部38,44の特徴形状により、サイクロン流入口34から流入した液体が筒胴部29の内周面をその接線方向に沿って流動するようになっている。このサイクロン筒体28も、透明材料である例えばポリエチレンナフタレートを原料として成型により得られる。すなわち、サイクロン筒体28は、本体ケース3の内周面とストレーナエレメント22の外周面との間の空間に配備され、本体ケース3と同軸心に配置される。また、サイクロン筒体28の縮径筒部30は本体ケース3の流入口6寄りに配置され、サイクロン流入口34が流入口7寄りに配置される。そして、ストレーナエレメント22の先端である濾材27がサイクロン筒体28内で縮径筒部30の先端を指向するように配置されている。筒胴部29と縮径筒部30の筒心方向の長さはほぼ同じである。そして、サイクロン筒体28およびストレーナエレメント22がハウジング2内の所定位置に配置された状態で、ハウジング2の濾材27の先端は筒胴部29内に位置しており、縮径筒部30内に達していない。これにより、縮径筒部30内でのサイクロン流の流れを阻害しないようになっている。
【0021】
上記した構成のインラインストレーナ1において、ハウジング2の内部は、流入口6と流出口7とを連通する液体通路となっている。この液体通路は、流入口6からつながる第1通路41と、サイクロン筒体28により第1通路41と区画されてサイクロン筒体28内に形成される第2通路42と、ストレーナエレメント22により通液自在に第2通路42と区画されて流出口7につながる濾材23内の第3通路43とから成っている。第1通路41と第2通路42はサイクロン流入口34,34により連通している。
【0022】
このインラインストレーナ1の組立手順の一例を説明する。本体ケース3の嵌合溝部35には予め嵌着部材12が嵌着されている。そこで、図8に示すように、作業者は本体蓋4の管部40の根元部分にパッキング36を装着する。そして、サイクロン筒体28を本体ケース3の開口部5から装入する。その際に、サイクロン筒体28の係止突起33,33を本体ケース3の係合溝部37,37内に挿入して案内させる。そのうち、取出管31が本体ケース3の受口45に当接することにより、サイクロン筒体28が本体ケース3内で位置決め支持される。この状態で、取出管31の取出開口部32が枝管14の外部開口部15と対面して連結され、サイクロン筒体28のサイクロン流出口39の端面位置は、本体ケース3の開口部5の端面位置とほぼ面一になる。
【0023】
次に、ストレーナエレメント22の外周面の他端開口25側にパッキング8を装着する。このストレーナエレメント22をサイクロン筒体28のサイクロン流出口39から装入する。そのうち、パッキング8がサイクロン筒体28のサイクロン流出口39および本体ケース3の開口部5の各周縁部に当接することにより、パッキング8およびストレーナエレメント22が支持される。更に、本体蓋4の雌ネジ部10を本体ケース3の雄ネジ部9に螺合させることにより、パッキング8が圧縮されて本体ケース3の開口部5が封止され、ストレーナエレメント22の他端開口25の周縁部が本体蓋4の下面に密着して他端開口25が流出口7と連通する。
【0024】
続いて、蓋体17の栓体19の根元部分にパッキング20を装着する。次に、栓体19を枝管14の外部開口部15から装入する。そして、雄ネジ部16に雌ネジ部18を螺合させることにより、パッキング20が圧縮されて枝管14の外部開口部15が封止され、栓体19の先端部がサイクロン筒体28の取出管31内に入り込む。これにより、インラインストレーナ1の一連の組立が終わる。尚、本発明のインラインストレーナの組立手順は幾通りもあり、上記した手順に限定されるものでない。
【0025】
上記のように構成されたインラインストレーナ1は、例えば先端にノズルを有する薬液散布管の末端雄ネジ部(図示省略)に雌ネジ部11が螺止され、ポンプの吐出管とつながったホース先端の雄ネジ部(図示省略)に嵌着部材12の雌ネジ部13が螺止されて使用される。そこで、ポンプからホースに吐出された農薬液は本体ケース3の流入口6から第1通路41に流入する。第1通路41の農薬液は他端開口5に向かうが、その際に、サイクロン筒部28の外周のテーパ面47に沿って径方向に広がるように円滑に案内される。このテーパ面47は、第1通路41のなかで最も狭い、サイクロン筒体28の筒胴部29の外周面と本体ケース3の内周面との間の空間で農薬液の流速を高めるために、当該空間に農薬液を円滑に導いて流速を高くするという効果を呈する。
【0026】
このように流速を高められた農薬液は他端開口5近傍に達し、サイクロン流入口34,34からサイクロン筒体28内の第2通路42に高速で流入する。このとき、農薬液はガイドエッジ部38,44の特徴形状による作用によってサイクロン筒体28内の接線方向に流入し、サイクロン筒体28の内周面に沿って高速旋回しながら流れる。これにより、農薬液に混入していたゴミや砂利などの夾雑物のうち、比重の大きなものほど筒胴部29の内周面にたたきつけられて農薬液から分離される。農薬液から分離した夾雑物は、縮径筒部30の内周面に導かれて縮径筒部30内の底部に溜まる。
【0027】
一方、縮径筒部30に導かれた農薬液は旋回しながら本体蓋4の方向に向きを変える。このとき、農薬液はストレーナエレメント22の濾材27の存在により濾材27の外周部に向けて円滑に案内されたのち濾材23の外方位置に達する。因みに、濾材27を有するストレーナエレメント22に替えて、図9(b)に示したストレーナエレメント83Bのように、一端に4枚のカシメ部94が存在するものを用いることも可能である。その場合、縮径筒部30内で方向転換して本体蓋4側へ向かおうとする農薬液は4枚のカシメ部94により周方向の旋回が邪魔される。その結果、夾雑物を分離するために、旋回しながら縮径筒部30の先端に向かう農薬液の流れを邪魔することとなり、縮径筒部30での夾雑物の分離効率が低下する。
そうして、農薬液が濾材23を通過する際に、サイクロン筒体28で捕捉された夾雑物よりも比重と粒径の小さな夾雑物が濾材23で捕捉される。濾材23で夾雑物が除去された農薬液は、ストレーナエレメント22内の第3通路43を通り流出口7から薬液散布管に流入し、ノズルから農作物に散布される。
【0028】
サイクロン筒体28の縮径筒部30内に溜まった夾雑物は、いずれも透明な本体ケース3およびサイクロン筒体28を透して外から視認することができる。従って、縮径筒部30内の夾雑物の内容や状態あるいは量を確認することができ、夾雑物の取り出し時期の判断に役立つ。このように溜まった夾雑物を取り出すときは、蓋体17を緩めて枝管14から取り外す。すると、枝管14の外部開口部15およびサイクロン筒体28の取出開口部32が開放される。これにより、サイクロン流入口34,34から第2通路42に流入した農薬液が枝管14の外部開口部15から器外に噴出する。この農薬液に同伴して縮径筒部30内の夾雑物も器外に排出される。このとき、バケツなどを用意しておけば、枝管14から噴出する農薬液および夾雑物をバケツで受けられるので、ほとんど手を濡らすことなく除去作業を行なうことができる。
【0029】
上記したように、このインラインストレーナ1は、枝管14から蓋体17を外すだけで、薬液散布管やホースなどをインラインストレーナ1から取り外すことなく、また蓋体17に開閉弁を設けることでポンプを停止させることなく、サイクロン筒体28内の夾雑物を取り出すことができる。このような夾雑物の除去作業は非常に簡単なので頻繁に行なっても大きな負担にならない。そのうえ、取扱いが厳しく高価な農薬液を無駄に流失させることがない。
【0030】
また、サイクロン筒体28で夾雑物の多くが捕捉されストレーナエレメント22で夾雑物の残りが捕捉されるので、ストレーナ全体の濾過負荷がサイクロン筒体28とストレーナエレメント22とに分担される。更に、サイクロン筒体28で捕捉された夾雑物はハウジング2の外部開口部15から外部に取り出すこともできるので、ストレーナエレメント22で捕捉される夾雑物が比較的少なくなるから、ストレーナエレメント22の掃除頻度が少なくて済む。そして、このインラインストレーナ1は組立、分解が簡単で、全ての部品のメンテナンスおよび洗浄を手軽に行なうことができる。このインラインストレーナ1では、サイクロン筒体28におけるサイクロン流の発生に起因して流入口6と流出口7との間に圧力損失が生じるが、サイクロン筒体28内にストレーナエレメント22を収容したことにより、ストレーナエレメント22がサイクロン流の流れをある程度抑制するので、前記の圧力損失が低減される。
【0031】
また、例えばハウジングの周壁に流入口および流出口が形成されていて、流入口と流出口とを結ぶ線に対し直角の方向に縮径筒部の先端を向けたサイクロン筒体がハウジング内に配置されているようなストレーナも知られているが、このような配置のストレーナは嵩が大きくなるために地上設置式のものが多い。これに対し、本実施形態のインラインストレーナ1は、サイクロン筒体28を備えているにも拘わらず、ハウジング2内に流入口6、サイクロン筒体28、ストレーナエレメント22、および流出口7が同軸心で配置されているので、小型のインライン型式を採ることができ大きなスペースをとらず軽量である。従って、薬液散布管の根元部に取り付けても散布作業の邪魔にならないという利点がある。
【0032】
尚、上記の実施形態では、サイクロン筒体28内に濾材23および濾材27を収容するようにストレーナエレメント22をハウジング2に取り付けた例を示したが、本発明のストレーナエレメントはそれに限らない。ストレーナエレメント22に替えて、例えば図9に示す金網製のストレーナエレメント22Aを用いることも可能である。ストレーナエレメント22Aは、先端が半球状に形成された濾材23Aの開口部周縁に周鍔部26が設けられているものである。このストレーナエレメント22Aは、濾材23Aがハウジング2の流出口7内に配置され、周鍔部26が本体蓋4の内面とパッキング8との間に挟持されて取り付けられる。
【0033】
また、ストレーナエレメント22に替えて、例えば図10に示すストレーナエレメント22Bを用いることもできる。ストレーナエレメント22Bは、フラットな金網製の円板状に形成されたものである。このストレーナエレメント22Bは本体蓋4の内面とパッキング8との間に挟持されて取り付けられる。
【0034】
また、上記では、ストレーナエレメントの材料としてステンレス鋼製の金網を用いたが、本発明はそれに限定されるものでなく、例えば、微小孔が無数に穿設されたパンチングメタル、焼結金属、合成繊維製の不織布などを濾材として使用することもできる。また、ストレーナエレメントの閉塞部として、円形皿状の濾材27を用いたが、この濾材27に替えて、先端になるほど外径が小さくなるテーパ状面や半球状面の外周面を有する閉塞部を用いることも可能である。その場合、中空の金網でなく、中実の合成樹脂や金属で、閉塞部を構成しても構わない。
【符号の説明】
【0035】
1 インラインストレーナ
2 ハウジング
3 本体ケース
4 本体蓋
6 流入口
7 流出口
14 枝管
15 外部開口部
17 蓋体
22,22A,22B ストレーナエレメント
23 濾材
24 一端開口
25 他端開口
27 濾材(閉塞部)
28 サイクロン筒体
29 筒胴部
30 縮径筒部
31 取出管
32 取出開口部
34 サイクロン流入口
39 サイクロン流出口
C 1点鎖線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されたハウジングの一方の筒端が液体の流入口であり、ハウジングの他方の筒端が前記流入口と略同軸心の流出口であり、ハウジング内にストレーナエレメントが配備されているインラインストレーナにおいて、一端に向かうにつれて内径が小さくなる縮径筒部と他端開口に形成されたサイクロン流出口とを有するサイクロン筒体が、縮径筒部をハウジングの流入口寄りに配置しサイクロン流出口をハウジングの流出口に連結してハウジング内に設けられ、サイクロン流出口近傍のサイクロン筒体の周壁にサイクロン流入口が形成され、ストレーナエレメントが、ハウジングの流出口とサイクロン流出口との間のハウジングに取り付けられていることを特徴とするインラインストレーナ。
【請求項2】
サイクロン筒体の縮径筒部の先端に取出開口部が形成され、ハウジングの筒壁に外部と連通する外部開口部が形成され、該外部開口部に前記サイクロン筒体の取出開口部が連結される構成にされていることを特徴とする請求項1に記載のインラインストレーナ。
【請求項3】
ストレーナエレメントは、一端が閉塞し他端が開口する筒状に形成されてサイクロン筒体内に収納され、閉塞部の先端がサイクロン筒体内で縮径筒部の先端を向いていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインラインストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−25150(P2011−25150A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173132(P2009−173132)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(397002360)ヤマホ工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】