説明

インライン式成膜装置、磁気記録媒体の製造方法、及びゲートバルブ

【課題】シール部材の摩耗を抑制し、ゲートバルブの開閉動作を高速で行うことを可能としたインライン式成膜装置を提供する。
【解決手段】複数のチャンバの間に設けられて、キャリアが通過する通路101を開閉するゲートバルブ100は、通路101を分断する方向に移動操作される弁体105と、弁体105を挟んだ両側に配置されて通路101を形成する開口部102a,102bが設けられた一対の隔壁103A,103Bと、一対の隔壁103A,103Bの開口部102a,102bを囲む位置に配置されたシール部材104とを有し、弁体105は、通路101を閉塞する方向に向かって漸次幅狭となるテーパー形状を有し、通路101を閉塞する位置において、その両側面105a,105bが一対の隔壁103A,103Bと相対向しながらシール部材104と圧接可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチャンバの間で成膜対象となる基板を順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置及びこのインライン式成膜装置を用いた磁気記録媒体の製造方法、並びに通路の開閉を行うゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体の分野においては記録密度の向上が著しく、特に最近では、記録密度が10年間で100倍程度と、驚異的な速度で伸び続けている。
【0003】
このような磁気記録媒体は、例えば非磁性基板の両面又は片面に、シード膜、下地膜、磁気記録膜、保護膜及び潤滑剤膜が順次積層された構造を有しており、一般的には、キャリアに保持された基板を複数のチャンバの間で順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて製造される(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
具体的に、インライン式成膜装置は、図11に模式的に示すように、成膜処理を行う複数のチャンバ301a,301bがゲートバルブ302を介して接続された構造を有している。また、各チャンバ内301a,301bには、水平軸回りに回転自在に支持された複数のベアリング303がキャリア304の搬送方向に並んで設けられており、これら複数のベアリング303の上をキャリア304が移動することが可能となっている。
【0005】
一方、キャリア304は、支持台305の上に複数のホルダ306を有しており、これらホルダ306には、基板Dを内側に配置する孔部307と、この孔部307の周囲に弾性変形可能に取り付けられた複数の支持部材308とが設けられている。そして、ホルダ306は、複数の支持部材308に基板Dの外周部を当接させながら、これら支持部材308の内側に嵌め込まれた基板Dを着脱自在に保持することが可能となっている。
【0006】
また、インライン式成膜装置では、図12に示すように、各チャンバ301a,301bの間に設けられたゲートバルブ302によってキャリア304が通過する通路309を開閉する動作が行われる。具体的に、ゲートバルブ302は、図12(a)に示すように、上述した通路309を形成する開口部310a,310bが設けられた一対の隔壁311A,311Bと、これら一対の隔壁311A,311Bの間で移動操作される弁体312とを有している。そして、このゲートバルブ302では、図12(a)に示すように、エアシリンダ等の駆動機構により弁体312が通路309を分断する方向に移動した後に、図12(b)に示すように、弁体312が一方の隔壁311Bに接触する方向に傾動する2段階の動作によって、成膜処理中に開口部310bを閉塞することが可能となっている。一方、この動作とは逆の動作によって、キャリア304の搬送中に開口部310bを開放することが可能となっている。さらに、このようなゲートバルブ302は、各チャンバ301a,301bの間に2つ配置されており、他方の隔壁311Aに設けられた開口部310aも同様に開閉することが可能となっている。
【0007】
磁気記録媒体は、このようなインライン式成膜装置を用いて連続的に製造を行うことができ、処理基板のハンドリングに際して基板が汚染されることが無く、さらにハンドリング工程等を少なくして製造工程を効率化し、製品歩留まりを良くして磁気記録媒体の生産性を高めることができる。
【特許文献1】特開2002−288888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したインライン式成膜装置では、各チャンバをゲートバルブによって隔離した後、チャンバ内を減圧することで、各チャンバ内をそれぞれ独立した圧力条件下にして成膜処理を行うことが可能である。
【0009】
また、ゲートバルブの機能としては、大気条件と真空条件との間でチャンバを隔離する高差圧でのシール機能(大気閉という。)と、成膜工程中の各チャンバ内の運転圧力を維持する低差圧での機能(プロセス閉という。)とがある。すなわち、大気閉は、整備時に大気側と真空側とを隔離するために行われるゲートバルブの閉動作であり、プロセス閉は、チャンバ同士を独立した圧力に維持するために行われるゲートバルブの閉動作である。このうち、ゲートバルブは、低差圧条件でのシール機能が主であり、高差圧条件でのシール機能はメンテナンス時のみ使用される。
【0010】
上述したインライン式成膜装置では、図12に示すように、隔壁311A,311Bに設けられた開口部310a,310bを閉塞する際に、弁体312に設けられたOリングからなるシール部材313を隔壁311Bに押し付けた状態で開口部310bを密閉することになる。
【0011】
しかしながら、従来のゲートバルブでは、上述した非常に過酷な環境下で使用されるために、Oリングの摩耗が激しく、これに伴うダストの発生が問題となっている。また、ゲートバルブは、より高速の開閉操作が求められている。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、シール部材の摩耗を抑制し、ゲートバルブの開閉動作を高速で行うことを可能としたインライン式成膜装置、並びにそのようなインライン式成膜装置を用いた磁気記録媒体の製造方法、そのようなインライン式成膜装置に用いて好適なゲートバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 成膜処理を行う複数のチャンバと、
前記複数のチャンバ内で成膜対象となる基板を保持するキャリアと、
前記キャリアを前記複数のチャンバの間で順次搬送させる搬送機構と、
前記複数のチャンバの間に設けられて、前記キャリアが通過する通路を開閉するゲートバルブとを備え、
前記ゲートバルブは、前記通路を分断する方向に移動操作される弁体と、前記弁体を挟んだ両側に配置されて前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、前記一対の隔壁の前記開口部を囲む位置に配置されたシール部材とを有し、
前記弁体は、前記通路を閉塞する方向に向かって漸次幅狭となるテーパー形状を有し、前記通路を閉塞する位置において、その両側面が前記一対の隔壁と相対向しながら前記シール部材と圧接可能とされていることを特徴とするインライン式成膜装置。
(2) 前記ゲートバルブは、前記弁体の移動量を制御することによって、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を可変とする機能を有することを特徴とする前項(1)に記載のインライン式成膜装置。
(3) 前記ゲートバルブは、前記弁体が前記通路を閉塞する際に、前記通路を挟んだ両側のチャンバの差圧が小さい場合は、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を小さくし、前記差圧が大きい場合は、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を大きくするように、前記弁体の移動量を制御することを特徴とする前項(2)に記載のインライン式成膜装置。
(4) 前記シール部材がOリングであることを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載のインライン式成膜装置。
(5) 前項(1)〜(4)の何れか一項に記載のインライン式成膜装置を用いて、前記基板の表面に少なくとも磁性層を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(6) 通路の開閉を行うゲートバルブであって、
前記通路を分断する方向に移動操作される弁体と、
前記弁体を挟んだ両側に配置されて前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、
前記一対の隔壁の前記開口部を囲む位置に配置されたシール部材とを備え、
前記弁体は、前記通路を閉塞する方向に向かって漸次幅狭となるテーパー形状を有し、前記通路を閉塞する位置において、その両側面が前記一対の隔壁と相対向しながら前記シール部材と圧接可能とされていることを特徴とするゲートバルブ。
(7) 前記弁体の移動量を制御することによって、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を可変とする機能を有することを特徴とする前項(6)に記載のゲートバルブ。
(8) 前記シール部材がOリングであることを特徴とする前項(6)又は(7)に記載のゲートバルブ。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係るインライン式成膜装置では、シール部材の摩耗を抑制すると共に、弁体のシール部材に対する圧接具合を容易に調整することが可能である。また、ゲートバルブの開閉動作も高速で行うことが可能である。
【0015】
したがって、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、このようなインライン式成膜装置を用いることによって、磁気記録媒体の製造能力を高めると共に、高品質の磁気記録媒体を製造することが可能である。
【0016】
また、本発明に係るゲートバルブでは、シール部材の摩耗を抑制すると共に、弁体のシール部材に対する圧接具合を容易に調整することが可能であり、さらに、通路の開閉動作も高速で行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、複数のチャンバの間で成膜対象となる基板を順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて、ハードディスク装置に搭載される磁気記録媒体を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0018】
(磁気記録媒体)
本発明を適用して製造される磁気記録媒体は、例えば図1に示すように、非磁性基板80の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83及び保護層84が順次積層された構造を有し、更に最表面に潤滑膜85が形成されてなる。また、軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83によって磁性層810が構成されている。
【0019】
非磁性基板80としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。
【0020】
その中でも、Al合金基板や、結晶化ガラス等のガラス製基板、シリコン基板を用いることが好ましく、また、これら基板の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5nm以下であり、その中でも特に0.1nm以下であることが好ましい。
【0021】
磁性層810は、面内磁気記録媒体用の面内磁性層でも、垂直磁気記録媒体用の垂直磁性層でもかまわないが、より高い記録密度を実現するためには垂直磁性層が好ましい。また、記録磁性層83は、主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。例えば、垂直磁気記録媒体用の磁性層810としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる軟磁性層81と、Ru等からなる中間層82と、60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金からなる記録磁性層83とを積層したものを利用できる。また、軟磁性層81と中間層82との間にPt、Pd、NiCr、NiFeCrなどからなる配向制御膜を積層してもよい。一方、面内磁気記録媒体用の磁性層810としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層とを積層したものを利用できる。
【0022】
磁性層810の全体の厚さは、3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とし、磁性層810は使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。磁性層810の膜厚は、再生の際に一定以上の出力を得るにはある程度以上の磁性層の膜厚が必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメーターは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。
【0023】
保護層84としては、炭素(C)、水素化炭素(HC)、窒素化炭素(CN)、アルモファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO、Zr、TiNなど、通常用いられる保護層材料を用いることができる。また、保護層84は、2層以上の層から構成されていてもよい。保護層84の膜厚は、10nm未満とする必要がある。保護層84の膜厚が10nmを越えるとヘッドと記録磁性層83との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなるからである。
【0024】
潤滑膜85に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等を挙げることができ、通常は1〜4nmの厚さで潤滑層85を形成する。
【0025】
(磁気記録再生装置)
また、上記磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置としては、例えば図2に示すようなハードディスク装置を挙げることができる。このハードディスク装置は、上記磁気記録媒体である磁気ディスク86と、磁気ディスク86を回転駆動させる媒体駆動部87と、磁気ディスク86に情報を記録再生する磁気ヘッド88と、ヘッド駆動部89と、記録再生信号処理系90とを備えている。そして、磁気再生信号処理系90は、入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド88に送り、磁気ヘッド88からの再生信号を処理してデータを出力する。
【0026】
(インライン式成膜装置)
具体的に、上記磁気記録媒体を製造する際は、例えば図3に示すような本発明を適用したインライン式成膜装置(磁気記録媒体の製造装置)を用いて、成膜対象となる非磁性基板80の両面に、少なくとも軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83、保護層を順次積層し、磁性層810を形成する工程と、保護層84を形成する工程とを経ることによって、品質の高い磁気記録媒体を安定して得ることができる。
【0027】
具体的に、本発明を適用したインライン式成膜装置は、ロボット台1と、ロボット台1上に截置された基板カセット移載ロボット3と、ロボット台1に隣接する基板供給ロボット室2と、基板供給ロボット室2内に配置された基板供給ロボット34と、基板供給ロボット室2に隣接する基板取り付け室52と、キャリア25を回転させるコーナー室4、7、14、17と、各コーナー室4、7、14、17の間に配置された複数のチャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21と、チャンバ21に隣接して配置された基板取り外し室53と、基板取り外し室53に隣接して配置された基板取り外しロボット室22と、基板取り外しロボット室22内に設置された基板取り外しロボット49とを有している。
【0028】
また、これら各室の接続部には、ゲートバルブ55〜72が設けられ、これらゲートバルブ55〜72が閉状態のとき、各チャンバ内は、それぞれ独立の密閉空間となる。そして、これら各室の間で後述する搬送機構によりキャリア25を順次搬送させながら、各チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21内において、キャリア25に保持された非磁性基板80の両面に、上述した軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83、及び保護層84を順次成膜することによって、最終的に上記図1に示す磁気記録媒体が得られるように構成されている。また、各コーナー室4、7、14、17は、キャリア25の移動方向を変更する室であり、その内部にキャリア25を回転させて次のチャンバに移動させる機構が設けられている。
【0029】
基板カセット移載ロボット3は、成膜前の非磁性基板80が収納されたカセットから、基板取り付け室2に非磁性基板80を供給するとともに、基板取り外しロボット室22で取り外された成膜後の非磁性基板80(磁気記録媒体)を取り出す。この基板取り付け・取り外しロボット室2、22の一側壁には、外部に開放された開口を開閉する扉51、55が設けられている。
【0030】
基板取り付け室52の内部では、基板供給ロボット34を用いて成膜前の非磁性基板80がキャリア25に保持される。一方、基板取り外し室53の内部では、基板取り外しロボット49を用いて、キャリア25に保持された成膜後の非磁性基板80(磁気記録媒体)が取り外される。
【0031】
上記磁気記録媒体を作製するための成膜処理等を行う各チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21の構成ついては、処理内容に応じて処理装置の構成が異なる以外は基本的に同様であることから、その具体的な構成については、図5に示すチャンバ91においてまとめて説明するものとする。
【0032】
このチャンバ91には、図5に示すように、キャリア25に保持された非磁性基板80に対して成膜処理を行う2つの処理装置92が、キャリア25を挟んだ両側において互いに対向配置されている。
【0033】
2つの処理装置92は、例えば、成膜処理をスパッタリングによって行う場合は、スパッタ放電を生じさせるためのカソードユニット、成膜処理をCVD法によって行う場合は、CVD法による成膜空間を形成するための電極ユニット、成膜処理をPVD法によって行う場合は、イオンガン等から構成されている。
【0034】
また、チャンバ91には、内部に原料ガスや雰囲気ガスを導入するガス導入管93が設けられている。また、このガス導入管93には、図示しない制御機構によって開閉が制御されるバルブ94が設けられ、このバルブ94を開閉操作することにより、ガス導入管93からのガスの供給が制御される。
【0035】
また、チャンバ91には、それぞれ真空ポンプ(図示せず。)と接続されたガス排出管95が設けられている。そして、チャンバ91は、この真空ポンプに接続されたガス排出管95を通じて内部を減圧排気することが可能となっている。
【0036】
キャリア25は、図4及び図6に示すように、支持台26と、支持台26の上面に設けられた複数のホルダ27とを有している。なお、本実施形態では、ホルダ27を2基搭載した構成のため、これらホルダ27に保持される2枚の非磁性基板80を、それぞれ第1成膜用基板23及び第2成膜用基板24として扱うものとする。
【0037】
また、本実施形態では、例えば、図4中の実線で示す第1処理位置にキャリア25が停止した状態において、2つの処理装置91がキャリア25の左側の第1成膜用基板23の両面に対して成膜処理等を行い、その後、キャリア25が図5中の破線で示す第2処理位置に移動し、この第2処理位置にキャリア25が停止した状態において、2つの処理装置91がキャリア25の右側の第2成膜用基板24の両面に対して成膜処理等を行うことができる。
【0038】
なお、キャリア25を挟んだ両側に、それぞれ第1及び第2成膜用基板23、24に対向した4つの処理装置92がある場合は、キャリア25の移動は不要となり、キャリア25に保持された第1及び第2成膜用基板23、24に対して同時に成膜処理等を行うことができる。
【0039】
2つのホルダ27は、第1及び第2成膜用基板23、24が縦置き(基板23,24の主面が重力方向と平行となる状態)に保持されるように、すなわち第1及び第2成膜用基板23、24の主面が支持台26の上面に対して略直交し、且つ、略同一面上となるように、支持台26の上面に並列して設けられている。
【0040】
各ホルダ27は、第1及び第2成膜用基板23,24の厚さの1〜数倍程度の厚さを有する板体28に、これら成膜用基板23、24の外周より若干大径となされた円形状の孔部29が形成されてなる。
【0041】
また、各ホルダ27の孔部29の周囲には、複数の支持部材30が弾性変形可能に取り付けられている。これら支持部材30は、孔部29の内側に配置された第1及び第2成膜用基板23,24の外周部を、その外周上の最下位に位置する下部側支点と、この下部側支点を通る重力方向に沿った中心線に対して対称となる外周上の上部側に位置する一対の上部側支点との3点で支持するように、ホルダ27の孔部29の周囲に一定の間隔で3つ並んで設けられている。
【0042】
これにより、キャリア25は、3つの支持部材30に第1及び第2成膜用基板23、24の外周部を当接させながら、これら支持部材30の内側に嵌め込まれた第1及び第2成膜用基板23、24を着脱自在にホルダ27に保持することが可能となっている。また、ホルダ27に対する第1及び第2成膜用基板23、24の着脱は、上記基板供給ロボット34又は基板取り外しロボット49が下部側支点の支持部材30を下方に押し下げることにより行われる。
【0043】
各支持部材30は、図6に示すように、L字状に折り曲げられたバネ部材からなり、その基端側がホルダ27に固定支持されると共に、その先端側が孔部29の内側に向かって突出された状態で、それぞれホルダ27の孔部29の周囲に形成されたスリット31内に配置されている。また、各支持部材30の先端部には、図示を省略するものの、それぞれ第1及び第2成膜用基板23,24の外周部が係合されるV字状の溝部が設けられている。
【0044】
インライン式成膜装置は、図5及び図6に示すように、このようなキャリア25を搬送させる搬送機構として、キャリア25を非接触状態で駆動する駆動機構201を備えている。
【0045】
この駆動機構201は、キャリア25の下部にN極とS極とが交互に並ぶように配置された複数の磁石202と、その下方にキャリア25の搬送方向に沿って配置された回転磁石203とを備え、この回転磁石203の外周面には、N極とS極とが二重螺旋状に交互に並んで形成されている。
【0046】
また、複数の磁石202と回転磁石203との間には、真空隔壁204が介在されている。この真空隔壁204は、複数の磁石202と回転磁石203とが磁気的に結合されるように透磁率の高い材料で形成されている。また、真空隔壁204は、回転磁石203の周囲を囲むことによって、チャンバ91の内側と大気側とを隔離している。
【0047】
また、回転磁石203は、回転モータ205により回転駆動される回転軸206と互いに噛合される複数のギアを介して連結されている。これにより、回転モータ205からの駆動力を回転軸206を介して回転磁石203に伝達しながら、この回転磁石203を軸回りに回転させることが可能となっている。
【0048】
以上のように構成される駆動機構201は、キャリア25側の磁石202と回転磁石203とを非接触で磁気的に結合させながら、回転磁石203を軸回りに回転させることにより、キャリア25を回転磁石203の軸方向に沿って直線駆動する。
【0049】
また、チャンバ91内には、搬送されるキャリア25をガイドするガイド機構として、水平軸回りに回転自在に支持された複数の主ベアリング96がキャリア25の搬送方向に並んで設けられている。一方、キャリア25は、支持台26の下部側に複数の主ベアリング96が係合されるガイドレール97を有しており、このガイドレール97には、V字状の溝部が支持台26の長手方向に沿って形成されている。
【0050】
また、チャンバ91内には、垂直軸回りに回転自在に支持された一対の副ベアリング98が、その間にキャリア25を挟み込むようにして設けられている。これら一対の副ベアリング98は、複数の主ベアリング96と同様に、キャリア25の搬送方向に複数並んで設けられている。
【0051】
なお、主ベアリング96及び副ベアリング98は、機械部品の摩擦を減らし、スムーズな機械の回転運動を確保する軸受であって、具体的には転がり軸受からなり、チャンバ91内に設けられたフレーム(取付部材)に固定された支軸(図5において図示せず。)に回転自在に取り付けられている。
【0052】
キャリア25は、ガイドレール97に複数の主ベアリング96を係合させた状態で、これら複数の主ベアリング96の上を移動すると共に、一対の副ベアリング98の間に挟み込まれることによって、その傾きが防止されている。
【0053】
ところで、本発明を適用したインライン式成膜装置は、上記図12に示す従来のゲートバルブ302に代わって、図7に示すようなゲートバルブ100を備えている。なお、上記各ゲートバルブ55〜72については、基本的にゲートバルブ100と同様な構成を有することから、その具体的な構成については、ゲートバルブ100においてまとめて説明するものとする。
【0054】
このゲートバルブ100は、図7に示すように、キャリア25が通過する通路101を形成する開口部102a,102bが設けられた一対の隔壁103A,103Bと、一対の隔壁103A,103Bの開口部102a,102bを囲む位置に配置されたシール部材104と、一対の隔壁103A,103Bの間で通路101を分断する方向に移動操作される弁体105とを備えている。
【0055】
弁体105は、通路を閉塞する方向に向かって漸次幅狭となるテーパー形状を有しており、図7に示す通路101を閉塞する位置において、その両側面105a,105bが一対の隔壁103A,103Bから突出された突出部106a,106bのテーパー面107a,107b,107c,107dと相対向して開口部102a,102bを閉塞するようになっている。
【0056】
シール部材104は、フッ素ゴム等のゴム製又は樹脂製の弾性部材をリング状に形成したOリングからなる。このシール部材104は、上記テーパー面107a,107b,107c,107dの開口部102a,102bの周囲に設けられた溝部108に嵌め込まれた状態で取り付けられている。また、シール部材104は、その一部が溝部108の外側にはみ出すように溝部108内に配置されている。
【0057】
そして、このゲートバルブ100では、図8及び図9に示すように、サーボモータやエアシリンダ等の駆動機構(図示せず。)により弁体105が通路101を分断する方向に移動操作されると、弁体105の両側面105a,105bがテーパー面107a,107b,107c,107dと相対向しながらシール部材104と圧接した状態となる。これにより、一方の隔壁103Aに設けられた開口部102aと、他方の隔壁103Bに設けられた開口部102bとを弁体105によって同時に閉塞することができる。そして、成膜処理中は、このようなゲートバルブ100を介して接続された2つのチャンバ間に設けられた通路101を閉塞することが可能となっている。また、チャンバ同士を独立した圧力に維持するために行われるゲートバルブ100の閉動作(プロセス閉)と共に、整備時に大気側と真空側とを隔離するために行われるゲートバルブ100の閉動作(大気閉)を行うことが可能である。
【0058】
一方、この動作とは逆の動作によって、図7に示すように、一方の隔壁103Aに設けられた開口部102aと、他方の隔壁103Bに設けられた開口部102bとを同時に開放することができる。これにより、キャリア25の搬送中は、このようなゲートバルブ100を介して接続された2つのチャンバ間に設けられた通路101を開放することが可能となっている。
【0059】
以上のように、上述した図12に示す従来のゲートバルブ302では、弁体312による通路309の開閉操作を2段階の動作で行う必要があるのに対して、本発明を適用したゲートバルブ100では、弁体105による通路101の開閉操作を1段階の動作で行うことが可能である。
【0060】
そして、本発明を適用したゲートバルブ100では、弁体105による通路101の開閉操作を直線移動のみによって行うため、弁体105の移動量の制御が容易となり、通路101を閉塞する際に、弁体105をシール部材104に押しつけるときのシール部材104のつぶし率を可変とすることが可能である。
【0061】
ゲートバルブ100の開閉動作は、通常は、弁体105の両側のチャンバに差圧がほとんどない状態で行う。一方、ゲートバルブ100が閉じた後、チャンバ内にプロセスガス等が導入された場合は、弁体105の両側のチャンバに差圧が生ずることがある。また、チャンバ内の整備等でゲートバルブ100を挟んだ一方のチャンバのみを大気開放する場合は、ゲートバルブ100を挟んで他方のチャンバに1気圧程度の差圧が加わることになる。
【0062】
したがって、弁体105が通路101を閉塞する際に、通路101を挟んだ両側のチャンバの差圧が小さい場合は、図10(a)に示すように、弁体105に加わる力も小さいため、弁体105によるシール部材104のつぶし率を小さくし、弁体105とシール部材104との接触面積を小さくする必要がある。一方、通路101を挟んだ両側のチャンバの差圧が大きい場合は、図11(b)に示すように、弁体105に大きな力が加わるため、それに耐えうるように、弁体105によるシール部材104のつぶし率を大きくし、弁体105とシール部材104との接触面積を大きくする必要がある。
【0063】
なお、本発明において差圧が小さい場合とは、差圧が1/100気圧(約1013Pa)以下の場合、より好ましくは差圧が1/1000(約101Pa)以下の場合である。一方、本発明において差圧が大きい場合とは、差圧が1/100気圧(約1013Pa)より高い場合である。
【0064】
本発明を適用したゲートバルブ100では、弁体105の移動量を制御することによって、弁体105によるシール部材104のつぶし率を適正に制御することが可能である。すなわち、弁体105の通路101を分断する方向の移動量を大きくすることによって、弁体105によるシール部材104のつぶし率を大きくすることができ、一方、弁体105の通路101を分断する方向の移動量を小さくすることによって、弁体105によるシール部材104のつぶし率を小さくすることができる。
【0065】
このように、本発明を適用したゲートバルブ100では、弁体105によるシール部材104のつぶし率を適正に制御することができるため、シール部材104の寿命を高めることが可能である。また、シール部材104の劣化による発塵を低減することが可能である。さらに、弁体105の通路101を分断する方向に移動する動作を例えばパルスモータ等の駆動機構を用いて正確に制御することも可能である。
【0066】
また、本発明を適用したインライン式成膜装置では、各チャンバ間の差圧は一般的には小さいため、上記ゲートバルブ100を用いた場合、弁体105に加わる力を小さくすることが可能である。したがって、このインライン式成膜装置では、上記ゲートバルブ100によってキャリア25が通過する通路101を開閉する動作を高速で行うことが可能である。
【0067】
さらに、このインライン式成膜装置では、ゲートバルブ100が通路101を開閉する際の振動等の発生を抑制することが可能である。これにより、キャリア25に保持された非磁性基板80に傷等が生じたりすることを防ぐことが可能である。
【0068】
(磁気記録媒体の製造方法)
本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法は、上記インライン式成膜装置を用いて、キャリア25に保持された第1又は第2成膜用基板23、24(非磁性基板80)を複数のチャンバ2、52、4〜20、54、3Aの間で順次搬送させながら、この非磁性基板80の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83により構成される磁性層810と、保護層84とを順次積層し、更に最表面に潤滑膜85を形成することによって、磁気記録媒体を製造する。
【0069】
本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法では、上記インライン式成膜装置を用いることによって、磁気記録媒体80の製造能力を高めると共に、高品質の磁気記録媒体80を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明を適用して製造される磁気記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】磁気記録再生装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明を適用したインライン式成膜装置の構成を示す平面図である。
【図4】本発明を適用したインライン式成膜装置のキャリアを示す側面図である。
【図5】本発明を適用したインライン式成膜装置の要部を示す側面図である。
【図6】本発明を適用したインライン式成膜装置の要部を示す断面図である。
【図7】ゲートバルブの通路を開放した状態を示す断面図である。
【図8】ゲートバルブの通路を閉塞した状態を示す断面図である。
【図9】図8に示すゲートバルブの要部を拡大して示す断面図である。
【図10】(a)は弁体によるシール部材のつぶし率が小さい場合、(b)は弁体によるシール部材のつぶし率が大きい場合を示す要部断面図である。
【図11】従来のインライン式成膜装置のチャンバ間におけるキャリアの搬送を説明するための模式図である。
【図12】従来のゲートバルブの構成及び動作を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…基板カセット移載ロボット台
2…基板供給ロボット室
3…基板カセット移載ロボット
4、7、14、17…コーナー室
5、6、8〜13、15、16、18〜21…チャンバ
22…基板取り外しロボット室
23…第1成膜用基板
24…第2成膜用基板
25…キャリア
26…支持台
27…ホルダ
28…板体
29…円形状の孔部
30…支持部材
34…基板供給ロボット
49…基板取り外しロボット
52…基板取り付け室
54…基板取り外し室
55〜71…ゲートバルブ
80…非磁性基板
81…軟磁性層
82…中間層
83…記録磁性層
84…保護層
85…潤滑膜
91…チャンバ
810…磁性層
100…ゲートバルブ
101…通路
102a,102b…開口部
103A,103B…隔壁
104…シール部材
105…弁体
201…駆動機構(搬送機構)
202…磁石
203…回転磁石
204…真空隔壁
205…回転モータ
206…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜処理を行う複数のチャンバと、
前記複数のチャンバ内で成膜対象となる基板を保持するキャリアと、
前記キャリアを前記複数のチャンバの間で順次搬送させる搬送機構と、
前記複数のチャンバの間に設けられて、前記キャリアが通過する通路を開閉するゲートバルブとを備え、
前記ゲートバルブは、前記通路を分断する方向に移動操作される弁体と、前記弁体を挟んだ両側に配置されて前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、前記一対の隔壁の前記開口部を囲む位置に配置されたシール部材とを有し、
前記弁体は、前記通路を閉塞する方向に向かって漸次幅狭となるテーパー形状を有し、前記通路を閉塞する位置において、その両側面が前記一対の隔壁と相対向しながら前記シール部材と圧接可能とされていることを特徴とするインライン式成膜装置。
【請求項2】
前記ゲートバルブは、前記弁体の移動量を制御することによって、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を可変とする機能を有することを特徴とする請求項1に記載のインライン式成膜装置。
【請求項3】
前記ゲートバルブは、前記弁体が前記通路を閉塞する際に、前記通路を挟んだ両側のチャンバの差圧が小さい場合は、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を小さくし、前記差圧が大きい場合は、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を大きくするように、前記弁体の移動量を制御することを特徴とする請求項2に記載のインライン式成膜装置。
【請求項4】
前記シール部材がOリングであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のインライン式成膜装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のインライン式成膜装置を用いて、前記基板の表面に少なくとも磁性層を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
通路の開閉を行うゲートバルブであって、
前記通路を分断する方向に移動操作される弁体と、
前記弁体を挟んだ両側に配置されて前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、
前記一対の隔壁の前記開口部を囲む位置に配置されたシール部材とを備え、
前記弁体は、前記通路を閉塞する方向に向かって漸次幅狭となるテーパー形状を有し、前記通路を閉塞する位置において、その両側面が前記一対の隔壁と相対向しながら前記シール部材と圧接可能とされていることを特徴とするゲートバルブ。
【請求項7】
前記弁体の移動量を制御することによって、前記弁体による前記シール部材のつぶし率を可変とする機能を有することを特徴とする請求項6に記載のゲートバルブ。
【請求項8】
前記シール部材がOリングであることを特徴とする請求項6又は7に記載のゲートバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−92523(P2010−92523A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259716(P2008−259716)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】