説明

インライン燃料改質を伴うガスタービン燃焼システム並びにその使用方法

【課題】燃焼システムの作動性を向上させるために燃料改質する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】ガスタービンエンジンシステム(10)において1以上の燃焼器(14)に供給する燃料を形成する方法であって、プラズマ改質器システム(32、102、210、310)を用いて前記ガスタービンエンジンシステムの1以上の燃料回路(100、200、300)における燃料の一部を改質し、燃料の残りの部分と共に1以上の燃焼器に供給されることになる水素及び高次炭化水素の少なくとも1つを形成する段階と、アクティブフィードバック制御システム(18、108)を用いてプラズマ改質器システムに対する出力及び燃料流のうちの少なくとも1つを制御する段階と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全体的に、ガスタービンエンジン燃焼システムに関し、より詳細には、燃焼システムの作動性を向上させるために燃料改質する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは通常、圧縮機セクション、燃焼器セクション、及び少なくとも1つのタービンセクションを含む。圧縮機吐出空気は、燃焼器に送られ、ここで燃料が噴射され、混合されて燃焼する。次に、燃焼ガスがタービンに送られ、該タービンが燃焼ガスからエネルギーを抽出する。
【0003】
ガスタービンエンジン燃焼システムは、広い範囲の流量、圧力、温度、及び燃空比の動作条件にわたって作動する。燃焼安定性、排出、及びダイナミックスを含む燃焼器性能の制御は、満足のいく全体としてのガスタービンエンジン運転を達成し且つ維持するため、並びに許容可能な排出レベル、詳細には窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、及び未燃炭化水素(UHC)のレベルを達成するために必要とされる。
【0004】
ある種類のガスタービン燃焼器は、希薄予混合燃料燃焼プロセスを利用することによって、低NOx排出レベルを達成し、ここでは、燃料と、全燃料を燃焼するのに必要な過剰空気とが燃焼前に混合され、サーマルNOxの生成を制御及び制限する。乾式低NOx(DLN)燃焼器と呼ばれることが多いこの種類の燃焼器は、望ましくない空気汚染排出生成を更に低減しながら、より高い効率で動作することが常に求められている。DLN燃焼器の高効率は一般に、燃焼室内のガス温度全体を高めることによって達成される。排出は通常、燃焼室内の最高ガス温度を下げることにより低減される。より高温の燃焼室をもたらすことになる高効率に対する要求は、低排出DLNガスタービン燃焼システムに対する規制上の要件と対立する。
【0005】
ガスタービンにおける窒素分子の酸化は、各燃焼室の燃焼反応ゾーンの最大高温ガス温度と共に飛躍的に増大する。NOxを形成する化学反応速度は、温度の指数関数である。短時間で最大高温ガス温度に達した場合でも、NOx排出の容積が大きくなる場合がある。NOx排出を低減する一般的な方法は、希薄燃空比を維持することにより燃焼室の最大高温ガス温度を下げることである。
【0006】
希薄予混合燃焼モードで運転する1つの作用は、燃焼器が望ましくない圧力振動を生じる可能性がある点である。振動振幅の大きさに応じて、これら圧力振動が燃焼ハードウェアに損傷を与える場合がある。加えて、燃焼室内の燃料−空気混合気が希薄過剰である場合には、一酸化炭素及び未燃炭化水素の過剰排出が発生する場合がある。CO及びUHC排出は燃料の不完全燃焼によって生じる。これらの排出の発生は通常、燃料空気混合気が反応ゾーンにおいて燃焼を過度に消炎する場合に生じる。反応ゾーンの温度は、完全燃焼を維持するよう十分な温度である必要があり、又は、化学燃焼反応が消炎した後に平衡に達するようになる。
【0007】
このトレードオフを改善する1つの方法は、水素又は非メタン炭化水素燃料種を標準燃料に添加し、燃焼器での反応性を高めることに基づく。完全に予混合された高反応性燃料を標準燃料に添加することによって、燃焼器ヘッド端部は、安定した火炎並びにエンジンターンダウンを向上させるのに十分なCO及びUHC反応性を維持しながら、低い燃空比で作動することができる。水素などの反応性燃料を添加すると、低NOxを生成する特定の燃料スプリットを可能にすることができる。しかしながら、この方法は、現場での追加の水素貯蔵装置と、並びに燃料ストリームに所要量の水素を注入するための計量システムとを必要とする。これらのコストを排除するための現行の1つの方法は、ガスタービン燃料送給システム内に水素を生成するためにタービン燃料を改質することに基づく。
【0008】
燃焼器に供給する水素を燃料から生成するために、接触改質器が用いられてきた。接触改質器は、燃焼システムから遠隔に配置することができ、或いは、タービン燃料と流体連通して燃焼システム内に配置することができる。燃料自体から水素を生成することにより、現場での水素貯蔵装置が必要でなくなり、インライン改質器の場合には、水素計量システムが必要ではなくなる。しかしながら、接触改質器は定期的な保守管理を必要とする場合がある。例えば、接触改質器は、時間の経過と共に能力が漸減する可能性があるので、改質器を未使用触媒で再充填することが必要となる。別の可能性のある問題は、改質器の触媒が被毒し、水素が燃料から適切に形成できなくなることである。両方の場合において、触媒を交換することが必要になる。システム設計によっては、排気排出の増大は、接触改質器がオフラインの間に生じる可能性があり、或いは、触媒を交換するためにガスタービンをオフラインにしなければならない可能性もある。
【0009】
プラズマトロン又はプラズマ改質器は、炭化水素から水素リッチガスを生成するために電気放電を利用する装置である。すなわち、プラズマ改質器は、Siemens出願のPCT公開番号WO03/055794で提案されている。プラズマ改質器は、通常、蒸気メタン改質器又は酸化改質器などの接触改質器よりも小型である。更に、プラズマ改質器は、反応性送給ストリーム(例えば、水素送給)又はこれに関連する現場貯蔵装置を必要としない。他方、プラズマを生成する際には、追加の電気エネルギーが消費される。プラズマ改質器の主要な利点は、排出、ダイナミックス、及び火炎安定性などの所要のシステム作動目標を達成するのに必要な濃度の水素及び他の生成物を生成する要求に応えることができる点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,279,655号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明の1つの態様によれば、ガスタービンエンジンシステムにおいて1以上の燃焼器に供給する燃料を形成する方法は、プラズマ改質器システムを用いてガスタービンエンジンシステムの1以上の燃料回路における燃料の一部を改質し、燃料の残りの部分と共に1以上の燃焼器に供給されることになる水素及び高次炭化水素の少なくとも1つを形成する段階と、アクティブフィードバック制御システムを用いてプラズマ改質器システムに対する出力及び燃料流のうちの少なくとも1つを制御する段階と、を含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、ガスタービンエンジンシステムは、圧縮機と、複数の燃焼器と、タービンと、複数の燃焼器に燃料を供給するよう構成された1以上の燃料回路を含む燃料システムと、1以上の燃料回路と流体連通し、1以上の燃料回路内の燃料の一部を改質するよう構成されたプラズマ改質器システムと、プラズマ改質器システムに対する出力及び燃料流のうちの少なくとも1つを調節するよう構成された制御システムと、を備える。
【0013】
これら及び他の利点並びに特徴は、図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガスタービンエンジンシステムの概略図。
【図2】図1のガスタービンエンジンシステムの燃料回路内に配置されたプラズマ改質器システムの例示的な実施形態の概略図。
【図3】図1のガスタービンエンジンシステムの燃料回路と流体連通した側流プラズマ改質器システムの例示的な実施形態の概略図。
【図4】燃料を予熱するための熱交換器及び燃料入口圧力を下げるための膨張器を含む、燃料回路の例示的な実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明と見なされる主題は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲に具体的に指摘し且つ明確に特許請求している。本発明の上記及び他の特徴並びに利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかである。
【0016】
この詳細な説明は、例証として図面を参照し、利点及び特徴と共に本発明の例示的な実施形態を説明している。
【0017】
本明細書で記載されるのは、ガスタービンエンジン燃焼システムであり、より詳細には、燃焼システムの作動性を向上させるためインライン燃料改質する方法及び装置に関する。ガスタービンエンジン燃焼システムは、燃料回路の1以上と流体連通したプラズマ改質器システムを利用して、燃料の小部分を部分的に改質し燃料の反応性を向上させる。本明細書で使用される用語「インライン」とは一般に、プラズマ改質器システムがタービン燃料システムの一体構成部であることを意味するものとする。プラズマ改質器システムは、燃料制御システム内に、及び幾つかの実施形態では、燃料制御システムの1以上の燃料回路の燃料流路内に配置することができる。従って、プラズマ改質器システムは、ガスタービンエンジン燃焼システム内の燃料の一部に対するオンデマンド燃料調節を提供することにより出力消費量を制限しながら、ダイナミックス、火炎安定性、及び排出などの燃焼性能を向上させることができる。プラズマ改質器は、エンジン制御システムと作動可能に連通し、寄生損失を制限しながら、所要排出制御(例えば、NOx、イエロープルーム(可視NO2)、その他)又は作動性(例えば、燃焼ダイナミックス又はダイナミックスとしても知られる燃焼圧力振動)を達成するのに必要に応じて燃料調節を提供する。
【0018】
図1は、圧縮機12、燃焼器14、駆動シャフト15により圧縮機12に結合されるタービン16を含むガスタービンエンジンシステム10の概略図である。図で分かるように、システム10は、単一燃焼器又は複数の燃焼器(図では2つ)を有することができる。1つの実施形態において、燃焼器はDLN燃焼器である。別の実施形態において、燃焼器は希薄予混合燃焼器である。ガスタービンエンジンは、オペレータのコマンドと制御システムとの組み合わせによって管理される。入口ダクトシステム20は、周囲空気を燃焼器入口ガイドベーンに送り、アクチュエータ25を用いた調整によって圧縮機12への空気量を調節する。排気システム22は、例えば、消音装置、熱回収装置、及び場合によっては排出制御装置を介してタービン16の出口から燃焼ガスを送る。タービン16は、電気を生成する発電機24又は他の何らかのタイプの機械的負荷を駆動することができる。 ガスタービンエンジンシステム10の作動は、様々なセンサ26が圧縮機12、タービン16、発電機24、及び周囲環境の種々の状態を検出することによって監視することができる。例えば、センサ26は、ガスタービンエンジンシステム10を囲む周囲の温度、圧力、及び湿度、圧縮機吐出圧力及び温度、タービン排気ガス温度及び排出、並びにガスタービンエンジン内の他の圧力及び温度測定値を監視することができる。センサ26はまた、流量センサ、速度センサ、火炎検出器センサ、バルブ位置センサ、ガイドベーン角度センサ、及びガスタービンエンジンシステム10の作動に関する種々のパラメータを検知する他のセンサを含むことができる。本明細書で使用される場合、「パラメータ」とは、その値を用いてガスタービンエンジンシステム10の作動状態(温度、圧力、規定位置での流量など)を定義することができる物理的特性を指す。
【0019】
上述のセンサ26に加えて、以下で説明するプラズマ改質器32の前及び/又は後で燃料組成を判断するのに十分な燃料特性を監視又は測定するための1以上のセンサがある。センサは、分画(燃料)組成、水素含有量、燃料修正ウォッベ指数(MWI)を表すパラメータ、低位発熱量(LHV)、燃料温度、及び同様のものの1以上を検知することができる。
【0020】
燃料コントローラ28は、制御システム18からのコマンドに応答し、燃料供給源から燃焼器14に流れる燃料、及び燃焼器14の各々内に配置される複数の燃料ノズル噴射装置(すなわち、燃料回路)に対して燃料スプリット(燃料回路への供給燃料を独立して制御)を連続的に調節する。また、燃料制御システム28に対して、1つよりも多い燃料が利用可能である場合に燃焼器の燃料のタイプ又は燃料の混合を選択するようコントローラ18が指示することができる。幾つかの燃料ガス制御バルブ間で燃料コントローラ28により燃料スプリットを調整し、制御システム18が燃料噴射装置の1以上において部分燃料改質を制御することにより、機械負荷範囲にわたって排出及びダイナミックスが改善される。
【0021】
制御システム18は、プロセッサを有するコンピュータシステムとすることができ、該プロセッサは、上述のセンサ入力及び追加のオペレータからの指令を用いてガスタービンの作動を制御するプログラムを実行する。制御システム18により実行されるプログラムは、燃焼器14への流量、燃料改質、及び燃料スプリットを調節するためのスケジュールアルゴリズムを含むことができる。より具体的には、制御システムにより生成されるコマンドは、燃料コントローラ28内のアクチュエータにプラズマ改質器32及び燃料ノズル噴射装置への流量を調節させ、圧縮機上の入口ガイドベーン21を調整して、プラズマ改質器を作動させ又はガスタービンの他のシステム設定を制御させる。
【0022】
従って、アルゴリズムは、制御システム18が、燃焼器燃焼温度及び排気温度を所定温度限界の範囲まで維持し、タービン排出NOx及びCO排出を全負荷ガスタービン作動条件にわたって部分負荷で所定限度未満に維持できるようにする。DLN燃焼システムとすることができ、制御システム18は、所定の燃料スプリットスケジュールに従ってDLN燃焼システムに対する燃料スプリットを制御するようプログラムされ、修正され、あらゆる主要な燃焼器及びガスタービンの保守管理による機能停止後に生じる調整プロセスにより修正されて、排出及び燃焼ダイナミックスを改善することができる。燃料スプリットはまた、ガスタービンの作動限界に適合しながら、性能目標を満足するよう定期的調整プロセスによって設定される。全てのこのような制御機能は、ガスタービンの作動性、信頼性、及び可用性を改善するための目標を有する。
【0023】
プラズマ改質器システム32は、燃料制御システム28内の1以上の燃料回路(図示せず)の燃料流と流体連通している。同様に、プラズマ改質器システム32は、燃料の小比率を部分的に改質して燃料反応性を増大させるよう構成される。燃料の部分的改質は、非改質燃料の残りの部分と組み合わされる高次の炭化水素及び水素を形成することにより燃料反応性が高くされる。改質量を調整して低タービン負荷での安定性を向上させ、又は、希薄予混合燃焼に対する増大燃料反応性の作用により低排出を可能にすることができる。燃料の化学反応性の向上は、燃焼器でのNOx形成を大幅に低減する助けとすることができる。例えば、既存のガスタービン燃焼器は、複数の燃料ノズルの少なくとも1つを他よりも高い火炎温度で動作させ、燃料及びCOを所定距離内で燃焼し尽くすのを助けるようにする。しかしながら、より反応性が高い燃料は、燃料ノズルがこのような高い火炎温度で稼働することは必要としない。従って、上述のように、燃料ノズルの最大火炎温度を低下させることで、燃焼器内のNOxの形成が大幅に低減されることになる。更に、プラズマ改質器システム32は、燃料反応性の向上により、燃焼器をCO排出限界を超えることなく運転停止することが可能になるので、低出力低負荷状態でガスタービンエンジンシステム10を支援することができる。
【0024】
プラズマ改質器システム32を用いて、ガスタービンエンジン燃焼システムで通常使用されるあらゆる燃料を部分的に改質することができる。部分改質の例示的な燃料は、限定ではないが、ガソリン、ディーゼル燃料、天然ガス、ジェット燃料(JP4)、バイオマス由来燃料、及び炭化水素ベース燃料のような他のものを含むことができる。プラズマ改質器システム32は、燃料の小割合を改質し、高次の炭化水素及び水素を形成するよう構成される。プラズマ改質器は、燃料の約0.1容積%(vol%)から約100vol%、具体的には、約1vol%から約50vol%、より具体的には約2vol%から約35vol%、更により具体的には5vol%から20vol%を改質することができる。改質される燃料の所望の割合は、限定ではないが、タービン負荷、燃料タイプ、水及び/又は酸化添加剤、燃料温度、排出などの幾つかの要因によって決まることができる。制御システム18は、プラズマ改質器システム32への電力入力を調整し、センサ26の何れかからのフィードバックに基づいて改質される燃料の割合を制御するよう構成することができる。
【0025】
上述のように、プラズマ改質器は、プラズマ放電が燃料の少なくとも一部とインラインにされているガスタービン燃焼システムの燃料システム内の何れかの場所に配置することができる。従って、プラズマ改質器システムは、燃焼器の1以上の燃料回路内に配置することができる。燃料開路100の1つの実施形態が図2に示されている。この実施形態では、プラズマ改質器システム102は、燃料回路100の燃料導管104内に配置され、該燃料回路100は、燃料ノズル噴射装置を介して燃焼室の1つに燃料を送給するよう構成される。プラズマ改質器システム102は、導管104内の燃料流の一部が改質器のプラズマ放電部106を通過するように位置付けられる。プラズマ改質器システム102は、エンジン制御システム108と電気的に連通している。エンジン制御システム108は、プラズマ改質器102への電力及び/又はプラズマ放電部106を通過する燃料流を制御することによって、燃料の改質割合を少なくとも調節するよう構成される。
【0026】
プラズマ改質器システム102は、燃料回路100内のあらゆるポイントに配置することができるが、図2は、燃料マニホルド110の上流側に配置された改質器を示している。このようなプラズマ改質器の位置は、改質器が故障した場合に既存の燃焼システムの作動性の損失を防ぐことができる。改質器が燃料マニホルドの上流側に配置されているので、燃料回路100から燃焼器への流れは、遮断されるだけであり、ガスタービン燃焼システムは、残りの回路で動作を継続する。この特定の位置はまた、設置及びサービスのため燃焼システム内でアクセス容易なポイントを提供する。燃料回路100内にプラズマ改質器システム102を配置する更に別の利点は、場合によっては、プラズマ改質器のアクティブ冷却の必要性が排除される点である。プラズマ改質器は、経時的に冷却する必要がある相当な熱を発生する場合がある。幾つかのプラズマ改質器システムでは、冷水ラインを改質器に通してシステムを冷却することが必要である。プラズマ改質器が燃料導管104内に配置されている場合、燃料は、改質器にパッシブ冷却を提供することができる。プラズマ改質器を通る燃料の流れは、改質器を冷却するのに有効であり、冷却の追加、送水ラインの設置、及び同様のものの必要性が排除される。
【0027】
図3は、燃料回路200と流体連通したプラズマ改質器システム210の別の例示的な実施形態を示している。この実施形態では、プラズマ改質器212は、燃料導管204の外に配置される。燃料導管204からの燃料の一部は、バイパスバルブ208の作動によりプラズマ改質器システム210内に分流することができる。燃料の側流がプラズマ放電部216を通過し、ここで燃料が高次の炭化水素及び水素に変換される。バイパスバルブ208は、プラズマ改質器システム210の入口位置及び出口位置に配置され、そこへの燃料流をアクティブに制御することができる。バイパスバルブ208並びにプラズマ改質器212は、エンジン制御システムと作動可能に連通し、タービン燃料の一部のオンデマンド改質を提供することができる。更に、バイパスバルブ208を用いると、プラズマ改質器システム210は、燃料回路200から絶縁され、ガスタービン燃焼器への燃料流が遮断されることなく供用することができる。
【0028】
本明細書で説明されるプラズマ改質器システムは、プラズマ改質器にオンデマンド機能を提供するよう構成されたエンジン制御システムと作動可能に連通している。制御システムは、ガスタービンエンジン燃焼システム全体にわたり温度及び圧力などのプロセス状態を監視する。このような制御システムを利用して燃料送給速度及び/又はプラズマガス送給速度を調整し、プラズマ改質器への電力を制御し、プラズマ放電状態を監視し、相補的なプロセスガス送給速度(例えば、酸化剤)を調整し、或いはガスタービンシステム内の他の同様の状態を制御することができる。更に、このような制御システムへの追加のフィードバックを可能にするために、燃料ガス解析サブシステムを更に含めることができる。制御システムは、あらゆる数のプロセスパラメータに基づいてプラズマ改質器を作動及び制御することができる。センサ、熱電対、及び同様のものからのフィードバックは、ガスタービンシステム内の種々の状態に対する警報を制御システムに通知する。例示的なプロセスパラメータは、限定ではないが、温度(例えば、燃料温度、ノズル温度、燃焼器温度、及び同様のもの)、湿度、入口圧力損、動圧、排気背圧、排気排出(例えば、NOx、CO、UHC、及び同様のもの)、タービン負荷/出力、及び同様のものを含むことができる。監視しているパラメータと制御システムとの間のこのフィードバックループは、燃料の反応性を変える必要性、従って、プラズマ改質器をアクティブにする必要性を示すことができる。特定のパラメータが所定目標に達すると、更なる改質を中断し、プラズマ改質器を非アクティブにするのが好適とすることができる。更に、プラズマ改質器は、燃料を改質するときには、ガスタービンシステムに対して代替の電力損失となる。従って、排出制御及び/又はタービン作動性に必要ではないときには、プラズマ改質器の電源を切ることが望ましい。例えば、改質器からの小さなエネルギー消費がタービンの出力に悪影響にならない、低い負荷状態でタービンが動作しているときには、プラズマ改質器を用いて、燃料の一部を改質することができる。しかしながら、例えば、ピークエネルギー需要期間のような全負荷状態では、プラズマ改質器は、これからのエネルギー消費を排除するために電源を切ることができる。
【0029】
上述のように、プラズマ改質器システムは、ガスタービンエンジン燃焼システムの1つよりも多い燃料回路内に配置することができる。プラズマ改質器システムは、部分的燃料改質により形成される炭化水素種を変えるよう調整することができる。同様に、プラズマ改質器は、燃料回路内の燃料の一部を改質し、水素、非改質燃料炭化水素よりも高次の(例えば、より大きい)炭化水素、又はこの2つの組み合わせを生成するよう構成される。例えば、プラズマ改質器は、天然ガスを水素/より高反応性の炭化水素に変換することができる。例示的な実施形態では、燃料は、100%メタン燃料に基づいて、プラズマ改質後に約66vol%以下、具体的には約15vol%以下、より具体的には約5vol%以下の水素を含有する。改質燃料の水素含有を制限することにより、燃料ノズル噴射装置のシール問題を防ぐのを助けることができる。水素含有が多すぎる場合、DLN燃焼システムのノズルの標準的シールが、時間の経過と共に漏出又は故障を生じる可能性がある。プラズマ改質器システムが幾つかの反応性の高い炭化水素系を生成することができ、これにより燃料が同様に水素に対しても反応性が高くなるが、高い水素濃度によって生じる可能性があるシールに対する悪影響はないので、プラズマ改質器システムを調整して生成種を制御する機能は有利である。燃料調節により形成される例示的な高次炭化水素は、限定ではないが、エチレン、エタン、プロピレン、1,2ブタジエン、アセチレン、及び同様のものを含むことができる。プラズマ温度、プラズマタイプ、プラズマ動作特性、比エネルギー付与(エネルギー/分子)、及び燃料温度は全て、部分的燃料改質及び変換のエネルギー効率の製品選択性に影響を及ぼす可能性がある。更に、他の実施形態では、酸化剤送給ストリームをプラズマ改質器システムに添加することができる。酸化剤は、プラズマ放電に曝されるときには、燃料が受ける改質のタイプにも影響を与え、これにより反応生成物を変化させ、更に燃料の反応性に影響を与えることになる。例示的な酸化剤は、限定ではないが、空気、酸素、酸素リッチ空気、水、過酸化水素、メタノール、及び同様のものを含むことができる。更に、酸化剤の添加により、プラズマ改質器の所要電力が低減され、特定の製品において変換効率を向上させることができる。
【0030】
低圧及び高い入口温度で燃料改質することで、改質製品の濃度及びこの生成の効率を向上させることができる。プラズマ放電により分解された燃料は、高い入口燃料温度で熱力学的に有利である。高次の炭化水素及び水素生成並びに変換効率は、最適な燃料回路内の燃料温度を高めることによって向上させることができる。図4は、ガスタービンエンジン燃焼システムにおける燃料回路300の例示的な実施形態を示しており、燃料温度を高めるように構成された任意選択の熱交換器320を含む。熱交換器320は、プラズマ改質器システム310の上流側で燃料回路と流体連通して配置され、プラズマ放電に曝される前に燃料温度を改善できるようにする。熱交換器320は、燃料回路300内の燃料の全て又は一部の温度を高めるために熱源322を利用する。1つの実施形態において、熱源322は、ガスタービン324からの排気ガスとすることができる。プラズマ改質器による加熱燃料の一部の改質後、任意選択的に、燃料ストリームは、燃焼室に噴射される前に冷却することができる。別の任意選択の実施形態では、燃料回路300は、プラズマ改質器に対する燃料の圧力を下げるよう構成された膨張器326(例えば、ターボ膨張器)を含むことができる。膨張器326を利用することにより、システム全体の熱効率を向上させることができる。任意選択の熱交換器328は、膨張燃料の温度を高めるために、膨張器326とプラズマ改質器システム310との間に流体連通させて配置することができる。圧縮機330は、任意選択的に、燃料回路の下流端部上に配置され、再結合された燃料(改質部分と非改質部分)の圧力(すなわち、再加圧)を使用される特定のガスタービン燃料送給システムに好適なレベルまで高めるようにすることができる。更に別の任意選択の実施形態では、再結合された燃料ストリームは、圧縮機330で加圧される前に熱交換器320を介して冷却することができる。
【0031】
本明細書で説明されるガスタービンエンジン燃焼システムにおけるインラインプラズマ改質器システム及びその使用方法は、有利には、1以上の燃料回路内の燃料の一部を改質し、燃料反応性を高めることができる。プラズマ改質器システムは、アクティブフィードバック制御システムと作動可能に連通し、寄生損失を制限しながら、所要排出制御(例えば、NOx、イエロープルーム、運転停止、その他)又は作動性(例えば、ダイナミックス及び同様のもの)を達成するのに必要に応じて燃料調節を提供する。更に、プラズマ改質器システムは、プラズマ改質器が故障した場合に既存の燃焼器の作動性を失うことなく設置及びサービスのアクセスを容易にするために、燃料マニホルドの上流側に配置される。同様に、プラズマ改質器システムを用いて燃料オンデマンドの反応性を向上させることにより、ガスタービンエンジン燃焼システムの排気排出、運転停止、及びダイナミックスを変更することができる。
【0032】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本明細書で開示される範囲は、包括的でありかつ独立して組合せ可能である(例えば、「最大約25vol%までの、又はより具体的には約5vol%〜約20vol%」の範囲というのは、「約5vol%〜約25vol%」の範囲の端点及び全ての中間値などを含む)。「組み合わせ」とは、配合、混合、合金、反応生成物、及び同様のものを含む。更に、本明細書における用語「第1の」、「第2の」などは、どのような順序、数量、又は重要度を意味するものではなく、むしろ、1つの要素を別の要素と区別するために用いており、本明細書において数詞のない表現は、数量の限定を意味するものではなく、むしろ参照する要素の少なくとも1つが存在することを意味する。数量に関して使用する「約」という修飾語は、記載の数値を包含しており、前後関係によって決まる意味を有する(例えば、特定の数量の測定値に付随するある程度の誤差を含む)。本明細書で使用する場合の「数詞のない表現」の用語は、その用語が意味するものの単数及び複数の両方を含むことを意図しており、従って当該用語が意味するものの1以上を含む(例えば、「冷却剤」は、1以上の冷却剤を含む)。本明細書全体を通じて、「1つの実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」、及びその他などへの言及は、実施形態に関して記載された特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書で記載される少なくとも1つの実施形態に含まれており、他の実施形態に存在する場合もあり、存在しない場合もあることを意味する。加えて、記載された要素は、種々の実施形態においてあらゆる好適な様態で組み合わせることができる点を理解されたい。
【0033】
特に別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び化学用語を含む)は、本発明の実施形態が属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用される辞書で定義されるような用語は、関連技術及び本開示事項の関連技術の状況における意味と一致するものと解釈すべきであり、本明細書で明示的に定義されない限り、理想的な意味又は極めて正式の意味に解釈されない点は、更に理解されるであろう。
【0034】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明はこのような開示された実施形態に限定されないことは理解されたい。むしろ、本発明は、上記で説明されていない多くの変形、改造、置換、又は均等な構成を組み込むように修正することができるが、これらは、本発明の技術的思想及び範囲に相応する。加えて、本発明の種々の実施形態について説明してきたが、本発明の態様は記載された実施形態の一部のみを含むことができる点を理解されたい。従って、本発明は、上述の説明によって限定されると見なすべきではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0035】
10 ガスタービンエンジンシステム
12 圧縮機
14 燃焼器
15 駆動シャフト
16 タービン
18 制御システム
20 入口ダクトシステム
21 入口ガイドベーン
22 排気システム
24 発電機
25 アクチュエータ
26 センサ
28 燃料コントローラ
32 プラズマ改質器 システム
100 燃料 回路
102 プラズマ改質器 システム
104 導管
106 プラズマ放電部
108 エンジン制御システム
110 燃料マニホルド
200 燃料回路
204 燃料導管
208 バイパスバルブ
210 プラズマ改質器システム
212 プラズマ改質器
216 プラズマ放電部
300 燃料回路
310 プラズマ改質器システム
320 熱交換器
322 熱源
324 ガスタービン
326 膨張器
328 熱交換器
330 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンシステム(10)において1以上の燃焼器(14)に供給する燃料を形成する方法であって、
プラズマ改質器システム(32、102、210、310)を用いて前記ガスタービンエンジンシステムの1以上の燃料回路(100、200、300)における燃料の一部を改質し、前記燃料の残りの部分と共に前記1以上の燃焼器に供給されることになる水素及び高次炭化水素の少なくとも1つを形成する段階と、
アクティブフィードバック制御システム(18、108)を用いて前記プラズマ改質器システムに対する出力及び燃料流のうちの少なくとも1つを制御する段階と
を含む方法。
【請求項2】
前記燃料の残りの部分を前記プラズマ改質器システムの回りに送給することによって、プラズマ改質器システム(32、102、210、310)を冷却する段階を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマ改質器システム(32、102、210、310)に対する出力及び燃料流のうちの少なくとも1つを制御する段階が更に、燃料温度、燃料組成、燃料低位発熱量、燃料修正ウォッベ指数、湿度、入口圧力損、動圧、排気背圧、排気排出、及びタービン負荷のうちの選択した1以上を監視する段階を含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記燃料の残りの部分と組み合わされた改質後の燃料の部分が、約66容積パーセント以下の全体水素濃度を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ガスタービンエンジンシステム(10)において、
圧縮機(12)と、
複数の燃焼器(14)と、
タービン(16)と、
前記複数の燃焼器に燃料を供給するよう構成された1以上の燃料回路(100、200、300)を含む燃料システムと、
前記1以上の燃料回路と流体連通し、前記1以上の燃料回路内の燃料の一部を改質するよう構成されたプラズマ改質器システム(32、102、210、310)と、
前記プラズマ改質器システムに対する出力及び燃料流のうちの少なくとも1つを調節するよう構成された制御システム(18、108)と
を備えるシステム(10)。
【請求項6】
前記プラズマ改質器システム(32、102、210、310)が、前記燃料回路の1以上の燃料導管(104、204)のインラインに配置される、請求項5記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記プラズマ改質器システム(32、102、210、310)が、前記1以上の燃料回路内の燃料マニホルド(110)の上流側に配置される、請求項5又は請求項6記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記燃料回路(100、200、300)の1以上が、前記プラズマ改質器システム(32、102、210、310)と流体連通した側流を含み、該側流が、前記燃料の一部を前記プラズマ改質器システムに分流するよう構成される、請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記側流への燃料の流れを制御するよう構成された1以上のバイパスバルブ(208)を更に備える、請求項5乃至請求項8のいずれか1項記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記複数の燃焼器が、乾式低NOx又は希薄予混合燃焼器(14)である、請求項5乃至請求項9のいずれか1項記載のシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−276021(P2010−276021A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116841(P2010−116841)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY