説明

ウィスカ抑制表面処理方法

【解決手段】錫又は錫合金皮膜にMn,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Ga,In,Tl,Ge,Pb,Sb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の金属を連続又は不連続に、かつ上記錫又は錫合金皮膜表面の一部が露出するように被着させる表面処理により、基体上の他部材が圧接固定される面や被はんだ接合部などに形成された錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を抑制する。
【効果】Sn又はSn合金皮膜上に所定の金属を連続又は不連続に、かつ上記錫又は錫合金皮膜表面の一部が露出するように被着させることにより、接圧ウィスカの発生を抑制することができ、また、金属被着後、熱処理、リフロー処理を実施しなくとも、皮膜のはんだ濡れ性を損なうことなく、ウィスカの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体上の他部材が圧接固定される面や被はんだ接合部などに形成された錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を効果的に抑制する表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Sn、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−Bi等のSn又はSn合金めっき皮膜は、はんだ濡れ性に優れていることから電子部品等に広く利用されているが、これらのめっき皮膜に内部応力があるとウィスカと呼ばれるひげ状の結晶が発生しやすいことが知られており、このウィスカによって回路がショートするなどの問題が発生する。Sn合金めっき皮膜はSnめっき皮膜に比べウィスカの発生の抑制効果が見られるものの十分ではない。
【0003】
ウィスカの発生を抑制するために、従来、以下のような方法(三菱電機技報,1979年,vol.53,No.11(非特許文献1)参照)が用いられているが、それぞれに問題がある。
(1)Sn及びSn合金めっきの下地にNiめっきを実施する:素材のCuとめっきのSnとの金属間化合物形成のバリアーとなり、ウィスカの発生を抑える。但し、必要な特性によりNiめっきができない部品が多数あり、また、外部応力により発生する接圧ウィスカには有効ではない。
(2)Sn及びSn合金めっきの膜厚を厚くする(10〜20μm以上):膜厚を厚くすると、金属間化合物の形成により生じた内部応力の影響が、めっき表層まで及ばないためウィスカの発生が抑制される。ただし、電子部品によっては膜厚を厚くできない部品もある。
(3)Sn及びSn合金めっき後の熱処理の実施:熱処理を実施することにより、金属間化合物の形成により生じた内部応力を緩和し、ウィスカの発生を抑制する。通常150℃−1時間位の処理。めっき後の熱処理のため、熱処理後に外部圧力のかかる接圧ウィスカには有効ではない。
(4)Sn及びSn合金めっき後のリフローの実施:Sn皮膜を完全に溶融させるため、熱処理以上に効果がある。しかし、めっき膜厚が厚いとリフロー後に均一な皮膜にならない。また、リフローによりSn皮膜上に酸化皮膜が形成され、はんだ濡れ性の劣化が生じる。リフロー後に外部応力のかかる接圧ウィスカには有効ではない。
【0004】
内部応力が低減され、それ自体ウィスカが発生しにくい部材であっても、これに外部から応力が加わると、接圧ウィスカが発生する。接圧とは、例えばコネクターなどの電子部品において、コンタクトへの挿入部分に錫又は錫合金皮膜が形成されたフレキシブル基板をコンタクトに嵌合した場合に発生する錫又は錫合金皮膜にかかる外部荷重、錫又は錫合金皮膜に他部材が圧接固定された際に錫又は錫合金皮膜に加えられた外部荷重などであるが、電子部品の上記嵌合部分や圧接部分に表面処理として形成されたSn、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−Bi等のSn又はSn合金めっきには接圧ウィスカが発生する。
【0005】
接圧ウィスカの防止法としては嵌合後など外部圧力のかかった状態で熱処理を施し、外部圧力による応力を緩和することで接圧ウィスカを抑制する方法(特開2005−154835号公報(特許文献1))があるが、実際の電子部品では嵌合後に熱処理を実施することが困難な部品もあるため、電子部品によっては適用できないものもある。このような電子部品に対して有効な方法は見つかっていない。
【0006】
【特許文献1】特開2005−154835号公報
【特許文献2】特開2002−317295号公報
【特許文献3】特開平10−102266号公報
【特許文献4】特許第2942476号公報
【特許文献5】特公昭56−47955号公報
【特許文献6】特公昭56−47956号公報
【特許文献7】特開2002−53981号公報
【特許文献8】特開昭63−285943号公報
【非特許文献1】三菱電機技報,1979年,vol.53,No.11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、基体上の他部材が圧接固定される面や被はんだ接合部などに形成された錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を効果的に抑制する表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、錫又は錫合金皮膜にMn,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Ga,In,Tl,Ge,Pb,Sb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の金属を連続又は不連続に、かつ上記錫又は錫合金皮膜表面の一部が露出するように被着させることにより、基体上の他部材が圧接固定される面に形成された錫又は錫合金皮膜のような圧接される環境下における接圧ウィスカの発生を抑制できること、また、熱処理やリフロー処理などを施さずに、錫及び錫合金皮膜がもつはんだ濡れ性を低下させることなくウィスカの発生を抑制できること、更に、錫又は錫合金皮膜への上記金属の被着は、めっき等の方法で可能であり、錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を簡便な方法で効果的に抑制できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、以下のウィスカ抑制表面処理方法を提供する。
[1] 錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を抑制する表面処理方法であって、上記錫又は錫合金皮膜にMn,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Ga,In,Tl,Ge,Pb,Sb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の金属を連続又は不連続に、かつ上記錫又は錫合金皮膜表面の一部が露出するように被着させることを特徴とするウィスカ抑制表面処理方法。
[2] 上記金属を被着させた上記錫又は錫合金皮膜表面上の上記金属の占有比が0.02以上であることを特徴とする[1]記載の方法。
[3] 電気めっきにより上記金属を被着させることを特徴とする[1]又は[2]記載の方法。
[4] 上記被着させた金属の平均厚さが0.01μm以上であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 上記被着させた金属の平均厚さが0.6μm以下であることを特徴とする[4]記載の方法。
[6] 上記錫又は錫合金皮膜が、基体上の他部材が圧接固定される面に形成されていることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 上記錫又は錫合金皮膜が、基体上の被はんだ接合部に形成されていることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
Sn又はSn合金皮膜上に所定の金属を連続又は不連続に、かつ上記錫又は錫合金皮膜表面の一部が露出するように被着させることにより、接圧ウィスカの発生を抑制することができ、また、金属被着後、熱処理、リフロー処理を実施しなくとも、皮膜のはんだ濡れ性を損なうことなく、ウィスカの発生を抑制することができる。更に、室温保管等により、Sn又はSn合金皮膜と被着した金属とがそれらの界面において拡散により合金化された場合であってもウィスカ抑制効果は維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明は、錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を抑制する表面処理方法であり、上記錫又は錫合金皮膜にMn,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Ga,In,Tl,Ge,Pb,Sb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の金属(以下、被着金属という)を連続又は不連続に、かつ上記錫又は錫合金皮膜表面の一部が露出するように被着させる表面処理により、ウィスカの発生を抑制するものである。
【0012】
本発明の表面処理方法は、基体上の他部材が圧接固定される面、基体上の被はんだ接合部などに形成された錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を効果的に抑制することができ、特に、基体上の他部材が圧接固定される面に形成された錫又は錫合金皮膜においては、接圧ウィスカと呼ばれる、圧接により発生するウィスカの発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
ウィスカの発生メカニズムの一説として、Sn皮膜又はSn合金皮膜では、その皮膜上層に連続的に均一に厚いSnの酸化皮膜が形成される。その酸化皮膜に欠陥部ができると、素材(被めっき物)とSn皮膜との合金化により生じた内部応力やコネクターの嵌合部品などにおける外力により生じる応力が、その欠陥に集中しウィスカの芽ができ、その応力を駆動力として針状ウィスカに成長すると考えられている。
【0014】
本発明においては、特に、限定されるものではないが、以下のメカニズムによりウィスカの発生が抑制されるものと考えられる。即ち、Sn皮膜又はSn合金皮膜上に連続又は不連続に被着金属を被着させることで、Snの酸化皮膜が実質的に形成されないもの又はSnの酸化皮膜を不連続なものとし、Sn酸化皮膜が不連続となると、欠陥が多くできてもウィスカ発生の駆動力となる応力が分散され、ウィスカの発生が抑制される又はウィスカが発生しても針状とはならずノジュール形状にとどまる。そのため、電子部品においてウィスカを原因として生じる短絡事故を防止することができるものと考えられる。
【0015】
本発明において、被着金属は、Mn,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Ga,In,Tl,Ge,Pb,Sb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の金属であるが、被着金属は、被着金属を被着させる錫又は錫合金皮膜を構成していない金属であることが好ましい。
【0016】
なお、本発明において、不連続に被着金属を被着した状態とは、例えばいわゆる海島構造のように、被着金属がSn皮膜又はSn合金皮膜上に島状に被着した状態である。また、連続に被着金属を被着した状態とは、例えば上記海島構造の島の被着金属が線状や、網目状などに連結して被着した状態である。いずれの状態も被着金属はSn皮膜又はSn合金皮膜上で偏らずに全体に亘って存在しており、また、Sn皮膜又はSn合金皮膜は、被着金属で完全には被覆されておらず、Sn皮膜又はSn合金皮膜の表面の一部が露出している。そのため、被着金属がSn又はSn合金皮膜表面上にこのように被着した状態においては、SEM等の表面形態観察では、被着金属が被着されていないSn皮膜又はSn合金皮膜の表面形状状態の特徴、例えばSn皮膜又はSn合金皮膜の凹凸形状の輪郭を残して被着金属が被着した表面形状状態が観察される。また、EPMA(波長分散型X線分析装置)等の表面組成分析手法により、被着金属元素とSn元素又はSn元素及びSn金属を構成する金属元素とを双方とも不純物量以上の量で検出することができる。
【0017】
本発明の方法においては、錫又は錫合金皮膜表面上に被着させた被着金属の占有比が0.02以上、特に0.05以上であることが望ましく、また、被着金属を被着させた錫又は錫合金皮膜をはんだ付けする場合、そのはんだ濡れ性を良好に維持できることなどの理由から、被着金属の占有比は18以下、特に15以下であることが望ましい。この占有比は、EPMA(波長分散型X線分析装置)を用い、加速電圧15kV、照射電流1.0×10-8Aの条件で電子線を照射したときに得られる、被着させた金属を構成する金属元素と、錫又は錫合金を構成する金属元素とのピーク強度比(被着させた金属を構成する金属元素/錫又は錫合金を構成する金属元素)によって決定することができる。なお、EPMAにより検出する特性X線は、Kα線、Lα線、Mα線とすることができ、特に、Mn,Ni,Co,Fe,Cu,Zn,Ga及びGeにはKα線、Sn,Pd,Ag,Sb,In,Cd,Rh及びRuにはLα線、Bi,Pb,Tl,Au,Pt,Ir及びOsにはMα線を用いることが好ましい。
【0018】
上記錫又は錫合金皮膜に被着金属を被着させる方法としては、めっきによる方法が採用でき、この場合、上記被着金属を含むめっき浴を用いためっきにより、被着金属を含むめっき析出物として被着させることができ、電気めっき及び無電解めっきのいずれをも採用できるが、被着する金属の上述した占有比や厚さを制御しやすいという点において、電気めっきが好適である。
【0019】
被着金属の被着に用いるめっき浴及びめっき条件は公知の条件が適用可能であり、被着する金属の上述した占有比や厚さを、めっき浴中の金属成分組成、めっき時間、めっき温度等を適宜選定することにより調整することが可能であるが、特に、めっき時間を変えることにより、簡便に調整が可能である。なお、電気めっきを用いる場合の陰極電流密度は、0.1〜5A/dm2、特に0.5〜2A/dm2であることが好ましい。
【0020】
また、被着させた金属(めっき析出物)の平均厚さは0.01μm以上、特に0.02μm以上であることが好ましく、また、0.6μm以下、特に0.5μm以下であることが好ましい。被着させた金属(めっき析出物)の平均厚さが上記範囲未満であると、ウィスカの発生を十分に抑えることができないおそれがあり、上記範囲を超えると、特に、被着金属を被着させた錫又は錫合金皮膜をはんだ付けする場合に、良好なはんだ濡れ性が得られないおそれがある。この場合、被着金属を必要以上に厚付けする必要はなく、また厚さが均一でなくともよい。なお、被着させた金属(めっき析出物)の平均厚さは蛍光X線膜厚計を用いて測定することができる。
【0021】
本発明において、被着金属を被着させる対象は、例えば、コネクター上に形成された錫又は錫合金皮膜等の基体の他部材が圧接固定される面に形成された錫又は錫合金皮膜、リードフレーム上に形成された錫又は錫合金皮膜等の基体上の被はんだ接合部に形成された錫又は錫合金皮膜などが挙げられ、この錫又は錫合金皮膜については特に限定されず、従来公知のいずれの錫又は錫合金皮膜も対象となり、例えば、電気めっきにより形成された錫又は錫合金めっき皮膜などが挙げられる。
【0022】
本発明の方法は、コネクター等の嵌合部品上に形成された錫又は錫合金皮膜などの基体上の他部材が圧接固定される面に形成された錫又は錫合金皮膜に発生する接圧ウィスカの抑制に効果的である。また、めっき後に熱処理やリフロー処理を実施しなくともウィスカ発生を抑制でき、めっき後の熱処理やリフロー処理によってはんだ濡れ性を劣化させることがないため、リードフレーム上に形成された錫又は錫合金皮膜のような、基体上の被はんだ接合部に形成された錫又は錫合金皮膜に対しても効果的である。特に、この場合、被着金属として、通常めっき濡れ性が劣るとされるNi,Zn,Fe,Co,Cu,Mn等の金属を用いた場合であっても、錫又は錫合金皮膜が完全に覆われていないため、めっき濡れ性はさほど低下せず、実用上十分な程度のめっき濡れ性が確保される。
【0023】
また、錫又は錫合金皮膜に上記所定の金属を連続又は不連続に被着させた後、室温保管等により、Sn又はSn合金皮膜と被着した金属とがそれらの界面において拡散により合金化された場合であってもウィスカの発生抑制効果は維持される。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
[実施例1〜5]
Cu材(C1020)に下記工程及び条件で、Sn電気めっきを施してSn皮膜(膜厚7.2μm)を形成し、更に、Sn皮膜上にNi電気めっきを施してNiを被着させた。
【0026】
処理工程
電解脱脂(2分)→水洗(15秒)×3回→酸洗(20秒)→水洗(15秒)×3回→Snめっき(下記条件)→水洗(15秒)×3回→Niめっき(下記条件)→水洗(15秒)×3回→イオン交換水洗→乾燥
【0027】
Snめっき
めっき浴:
ソフトアロイGTC−1T[Sn塩](上村工業(株)製) 400g/L
ソフトアロイGTC−3A[遊離酸](上村工業(株)製) 270g/L
ソフトアロイGTC−2S[添加剤](上村工業(株)製) 200g/L
ソフトアロイGTC−33−A[添加剤](上村工業(株)製) 130g/L
陰極電流密度:5A/dm2
めっき時間:7.5分
めっき温度:45℃
【0028】
Niめっき
めっき浴:
硫酸ニッケル(7水和物) 280g/L
塩化ニッケル(7水和物) 40g/L
ホウ酸 45g/L
陰極電流密度:1A/dm2
めっき時間:31秒(実施例1),2.5分(実施例2),6.25分(実施例3),12.5分(実施例4)
めっき温度:55℃
pH:4.4
【0029】
得られたNiが被着したSn皮膜について、分析走査電子顕微鏡JXA−8600MX(日本電子(株)製)−EPMA(波長分散型X線分析装置)、及びエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製蛍光X線膜厚計SFT−3400を用いて、Niの占有度(EPMA分析におけるNi/Snの強度比)及びNiの平均厚さを評価した。結果を表1に示し、SEM像並びにEPMAにより測定されたNi分布及びSn分布を図2〜6に示す。なお、EPMA測定条件は以下のとおりである。
【0030】
EPMA測定条件
加速電圧:15kV
照射電流:1.0×10-8
【0031】
また、ウィスカ発生抑制効果及びはんだ濡れ性を、以下の方法で評価した。結果を表1に併記する。
【0032】
ウィスカ発生抑制効果の評価
〔評価方法1〕
C194材製リードフレームへSnめっきにて形成したSnめっき皮膜上に、Niを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。評価試料を、室温下で1000時間放置した後、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
〔評価方法2(接圧ウィスカの評価)〕
42アロイ材(Fe−42Ni合金)へSnめっきにて形成したSnめっき皮膜上に、Niを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。接圧負荷の方法としては、目玉クリップの挟み口に径1mmφのステンレススティール球(SUS球)を3個並べて真中のSUS球に評価試料が接触するように挟み、負荷状態で5日間保持する方法とした。5日間経過した後、評価試料を外し、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
【0033】
はんだ濡れ性の評価
〔評価試料〕
C194材製リードフレームへSnめっきにて形成したSnめっき皮膜上に、Niを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。
〔評価条件〕
加速劣化促進試験条件(PCT):温度105℃、相対湿度100%RH、時間8時間
測定機器:タルチンケスター(株)製SWET−2100
測定方法:急加熱昇温法(ソルダーペースト槽平衡法)
ソルダーペースト:Sn−3.0Ag−0.5質量%Cu(千住金属工業(株)製M705−ET7)
加熱温度:245℃
【0034】
[比較例1]
Cu材(C1020)に下記工程及び条件で、Sn電気めっきを施してSn皮膜を形成した。得られたSn皮膜について、実施例1と同様の方法で、Niの占有度(EPMA分析におけるNi/Snの強度比)及びNiの平均厚さを評価した。結果を表1に示し、SEM像並びにEPMAにより測定されたNi分布及びSn分布を図1に示す。
【0035】
また、ウィスカ発生抑制効果及びはんだ濡れ性を、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1に併記する。
【0036】
処理工程
電解脱脂(2分)→水洗(15秒)×3回→酸洗(20秒)→水洗(15秒)×3回→Snめっき(実施例1に同じ)→水洗(15秒)×3回→イオン交換水洗→乾燥
【0037】
【表1】

【0038】
ウィスカ発生抑制効果評価
○:ウィスカ発生本数がゼロ
△:ウィスカが観察されたが、その長さが10μm未満
×:ウィスカが観察され、その長さが10μm以上
はんだ濡れ性評価
○:ゼロクロスタイム3秒未満
×:ゼロクロスタイム3秒以上
【0039】
図1(A)〜図6(A)を対比すると、図2(A)〜図6(A)で示されるSEMにより観察された被着金属を被着させた実施例1〜5の表面形状状態が、図1(A)で示される被着金属を被着させていない比較例1の表面形状状態の輪郭が残った表面形状状態となっていることがわかる。
【0040】
[実施例6〜23、比較例2〜6]
以下のSn又はSn合金皮膜
Snめっき皮膜(膜厚:10μm)
Sn−Cu合金めっき皮膜(皮膜中のCu含有率:1.6質量% 膜厚:10μm)
Sn−Bi合金めっき皮膜(皮膜中のBi含有率:1.9質量% 膜厚:10μm)
Sn−Ag合金めっき皮膜(皮膜中のAg含有率:3.5質量% 膜厚:10μm)
Sn−Pb合金めっき皮膜(皮膜中のPb含有率:0.05質量% 膜厚:10μm)
Sn−Ni合金めっき皮膜(皮膜中のNi含有率:4質量% 膜厚:10μm)
Sn−Zn合金めっき皮膜(皮膜中のZn含有率:3質量% 膜厚:10μm)
Sn−In合金めっき皮膜(皮膜中のIn含有率:1.5質量% 膜厚:10μm)
Sn−Co合金めっき皮膜(皮膜中のCo含有率:2.2質量% 膜厚:10μm)
に対し、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを表2に示されるめっき浴を用いた電気めっきにて被着させて、ウィスカ及びはんだ濡れ性を評価した。また、被着させたAg,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdのSn又はSn合金皮膜表面上の占有比及び厚さを実施例1と同様の方法で評価した。結果を表3に示す。なお、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdの被着におけるめっき組成及び条件、並びにウィスカ及びはんだ濡れ性の評価方法は以下のとおりである。
【0041】
【表2】

【0042】
ウィスカの評価
〔評価方法1〕
C194材製リードフレームへSn又はSn合金めっきにて形成したSn又はSn合金めっき皮膜上に、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。評価試料を、室温下で1000時間放置した後、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
〔評価方法2(接圧ウィスカの評価)〕
42アロイ材(Fe−42Ni合金)へSn又はSn合金めっきにて形成したSn又はSn合金めっき皮膜上に、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。接圧負荷の方法としては、目玉クリップの挟み口に径1mmφのステンレススティール球(SUS球)を3個並べて真中のSUS球に評価試料が接触するように挟み、負荷状態で5日間保持する方法とした。5日間経過した後、評価試料を外し、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
【0043】
はんだ濡れ性の評価
〔評価試料〕
C194材製リードフレームへSn又はSn合金めっきにて形成したSn又はSn合金めっき皮膜上に、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。
〔評価条件〕
加速劣化促進試験条件(PCT):温度105℃、相対湿度100%RH、時間8時間
測定機器:タルチンケスター(株)製SWET−2100
測定方法:急加熱昇温法(ソルダーペースト槽平衡法)
ソルダーペースト:Sn−3.0Ag−0.5質量%Cu(千住金属工業(株)製M705−ET7)
加熱温度:245℃
【0044】
【表3】

【0045】
ウィスカ評価
○:ウィスカ発生本数がゼロ
△:ウィスカが観察されたが、その長さが10μm未満
×:ウィスカが観察され、その長さが10μm以上
はんだ濡れ性評価
○:ゼロクロスタイム3秒未満
×:ゼロクロスタイム3秒以上
【0046】
[実施例24〜41、比較例7〜11]
以下のSn又はSn合金皮膜
Snめっき皮膜(膜厚:2μm)
Sn−Cu合金めっき皮膜(皮膜中のCu含有率:1.6質量% 膜厚:2μm)
Sn−Bi合金めっき皮膜(皮膜中のBi含有率:1.9質量% 膜厚:2μm)
Sn−Ag合金めっき皮膜(皮膜中のAg含有率:3.5質量% 膜厚:2μm)
Sn−Pb合金めっき皮膜(皮膜中のPb含有率:0.05質量% 膜厚:2μm)
Sn−Ni合金めっき皮膜(皮膜中のNi含有率:4質量% 膜厚:2μm)
Sn−Zn合金めっき皮膜(皮膜中のZn含有率:3質量% 膜厚:2μm)
Sn−In合金めっき皮膜(皮膜中のIn含有率:1.5質量% 膜厚:2μm)
Sn−Co合金めっき皮膜(皮膜中のCo含有率:2.2質量% 膜厚:2μm)
に対し、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを表2に示されるめっき浴を用いた電気めっきにて被着させて、ウィスカ及びはんだ濡れ性を評価した。また、被着させたAg,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdのSn又はSn合金皮膜表面上の占有比及び厚さを実施例1と同様の方法で評価した。結果を表4に示す。なお、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdの被着におけるめっき組成及び条件、並びにウィスカ及びはんだ濡れ性の評価方法は以下のとおりである。
【0047】
ウィスカの評価
〔評価方法1〕
コネクタ(素材:黄銅)に下地Niめっきを平均膜厚1.5μmで施し、この上にSn又はSn合金めっきにて形成したSn又はSn合金めっき皮膜上に、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。評価試料を、室温下で1000時間放置した後、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
〔評価方法2(接圧ウィスカの評価)〕
42アロイ材(Fe−42Ni合金)へSn又はSn合金めっきにて形成したSn又はSn合金めっき皮膜上に、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。接圧負荷の方法としては、目玉クリップの挟み口に径1mmφのステンレススティール球(SUS球)を3個並べて真中のSUS球に評価試料が接触するように挟み、負荷状態で5日間保持する方法とした。5日間経過した後、評価試料を外し、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
【0048】
はんだ濡れ性の評価
〔評価試料〕
コネクタ(素材:黄銅)に下地Niめっきを平均膜厚1.5μmで施し、この上にSn又はSn合金めっきにて形成したSn又はSn合金めっき皮膜上に、Ag,Bi,Pb,In,Ni,Cu,Au,Co又はPdを電気めっきにより被着させたものを評価試料とした。
〔評価条件〕
加速劣化促進試験条件(PCT):温度105℃、相対湿度100%RH、時間8時間
測定機器:タルチンケスター(株)製SWET−2100
測定方法:はんだ槽平衡法
ソルダーペースト:Sn−3.0Ag−0.5質量%Cu(千住金属工業(株)製M705−ET7)
フラックス:タムラ化研製(株)NA−200
加熱温度:245℃
【0049】
【表4】

【0050】
ウィスカ評価
○:ウィスカ発生本数がゼロ
△:ウィスカが観察されたが、その長さが10μm未満
×:ウィスカが観察され、その長さが10μm以上
はんだ濡れ性評価
○:ゼロクロスタイム3秒未満
×:ゼロクロスタイム3秒以上
【0051】
[比較例12〜20]
以下のSn又はSn合金皮膜
Snめっき皮膜(膜厚:10μm)
Sn−Cu合金めっき皮膜(皮膜中のCu含有率:1.6質量% 膜厚:10μm)
Sn−Bi合金めっき皮膜(皮膜中のBi含有率:1.9質量% 膜厚:10μm)
Sn−Ag合金めっき皮膜(皮膜中のAg含有率:3.5質量% 膜厚:10μm)
Sn−Pb合金めっき皮膜(皮膜中のPb含有率:0.05質量% 膜厚:10μm)
Sn−Ni合金めっき皮膜(皮膜中のNi含有率:4質量% 膜厚:10μm)
Sn−Zn合金めっき皮膜(皮膜中のZn含有率:3質量% 膜厚:10μm)
Sn−In合金めっき皮膜(皮膜中のIn含有率:1.5質量% 膜厚:10μm)
Sn−Co合金めっき皮膜(皮膜中のCo含有率:2.2質量% 膜厚:10μm)
について、ウィスカ及びはんだ濡れ性を評価した。結果を表5に示す。なお、ウィスカ及びはんだ濡れ性の評価方法は以下のとおりである。
【0052】
ウィスカの評価
〔評価方法1〕
C194材製リードフレームへSn又はSn合金めっきにてSn又はSn合金めっき皮膜を形成したものを評価試料とした。評価試料を室温下で1000時間放置したもの(熱処理なし)、及びめっき皮膜形成後3時間以内に150℃で1時間の熱処理を実施したもの(熱処理あり)の2種について、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
〔評価方法2(接圧ウィスカの評価)〕
42アロイ材(Fe−42Ni合金)へSn又はSn合金めっきにてSn又はSn合金めっき皮膜を形成したものを評価試料とした。評価試料そのままのもの(熱処理なし)、及びめっき皮膜形成後3時間以内に150℃で1時間の熱処理を実施したもの(熱処理あり)の2種について評価した。接圧負荷の方法としては、目玉クリップの挟み口に径1mmφのステンレススティール球(SUS球)を3個並べて真中のSUS球に評価試料が接触するように挟み、負荷状態で5日間保持する方法とした。5日間経過した後、評価試料を外し、走査電子顕微鏡(SEM)によってウィスカを観察した。
【0053】
はんだ濡れ性の評価
〔評価試料〕
C194材製リードフレームへSn又はSn合金めっきにてSn又はSn合金めっき皮膜を形成したものを評価試料とした。
〔評価条件〕
加速劣化促進試験条件(PCT):温度105℃、相対湿度100%RH、時間8時間
測定機器:タルチンケスター(株)製SWET−2100
測定方法:急加熱昇温法(ソルダーペースト槽平衡法)
ソルダーペースト:Sn−3.0Ag−0.5質量%Cu(千住金属工業(株)製M705−ET7)
加熱温度:245℃
【0054】
【表5】

【0055】
ウィスカ評価
○:ウィスカ発生本数がゼロ
△:ウィスカが観察されたが、その長さが10μm未満
×:ウィスカが観察され、その長さが10μm以上
はんだ濡れ性評価
○:ゼロクロスタイム3秒未満
×:ゼロクロスタイム3秒以上
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】比較例1のSn皮膜の(A)SEM像、(B)EPMAにより測定されたSn分布及びNi分布である。
【図2】実施例1のNiが被着したSn皮膜の(A)SEM像、(B)EPMAにより測定されたSn分布及びNi分布である。
【図3】実施例2のNiが被着したSn皮膜の(A)SEM像、(B)EPMAにより測定されたSn分布及びNi分布である。
【図4】実施例3のNiが被着したSn皮膜の(A)SEM像、(B)EPMAにより測定されたSn分布及びNi分布である。
【図5】実施例4のNiが被着したSn皮膜の(A)SEM像、(B)EPMAにより測定されたSn分布及びNi分布である。
【図6】実施例5のNiが被着したSn皮膜の(A)SEM像、(B)EPMAにより測定されたSn分布及びNi分布である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫又は錫合金皮膜のウィスカの発生を抑制する表面処理方法であって、上記錫又は錫合金皮膜にMn,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Ga,In,Tl,Ge,Pb,Sb及びBiから選ばれる1種又は2種以上の金属を連続又は不連続に、かつ上記錫又は錫合金皮膜表面の一部が露出するように被着させることを特徴とするウィスカ抑制表面処理方法。
【請求項2】
上記金属を被着させた上記錫又は錫合金皮膜表面上の上記金属の占有比が0.02以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
電気めっきにより上記金属を被着させることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
上記被着させた金属の平均厚さが0.01μm以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
上記被着させた金属の平均厚さが0.6μm以下であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
上記錫又は錫合金皮膜が、基体上の他部材が圧接固定される面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
上記錫又は錫合金皮膜が、基体上の被はんだ接合部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−100148(P2007−100148A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289493(P2005−289493)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】