説明

ウィタノライド類の製造方法

【課題】ウィタノライド類の新規な製造方法の提供。
【解決手段】下記式(2)


(式中、R、Rは水素原子、メチル基等、R、Rは水素原子または水酸基を意味し;水素原子または水酸基を意味し;Rは、水酸基、糖鎖等を意味する)で表される化合物またはその塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィタノライド類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィタノライド類は、Withania, Acnistus(Dunalia), Physalis, Nicandra, Datura類等に属するナス科の植物より単離されうるδ−ラクトンを有するエルゴスタン系のステロイドである。
【0003】
ウィタノライド類は、ウィタフェリンA、ウィタノライドD、ウィタノライドE、ソミノン等さまざまな誘導体があり、いくつかのウィタノライド類は、抗腫瘍作用や昆虫に対する摂食阻害作用を有することが知られている。ウィタノライド類は天然から得られる量は非常に微量であり、従来から種々の合成方法が開発されてきた。
【0004】
具体的には、たとえば、ステロイド性エポキシドを原料とし、フェニルチオラクトン体を合成中間体とするウィタフェリンA、およびデオキシウィタフェリンAの合成方法、(非特許文献1)、α−フェニルチオラクトン体を原料とし、チオフェニル基のアルキル化、アリルスルホキシド−スルフェナート転移反応を利用したウィタフェリンA、およびデオキシウィタフェリンAの合成方法(非特許文献2)、プレグネノロンを原料とし、γカップリング反応、アリルスルホキシド−スルフェナート転位反応を利用したウィタノライドDの合成方法(非特許文献3)、ステロイド性ジアセテートを原料とし、ヘテロディールスアルダー反応等を利用したウィタノライドEの合成方法(非特許文献4)、20−カルボキシアルデヒドを原料とし、フリルカルビノール体を合成中間体としたウィタノライド側鎖の合成方法(非特許文献5)などが開示されている。
【0005】
しかしながら従来の合成方法は、いずれも工程数が多く、収率も低いため、より効率的なウィタノライド類の製造方法の開発が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】N. Ikekawa, et al., Chem. Lett., pp.491-494, 1982.
【非特許文献2】N. Ikekawa, et al., Tetrahedron Lett., Vol.23, No.45, pp.4725-4728, 1982.
【非特許文献3】N. Ikekawa, et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1., pp.449-454, 1984.
【非特許文献4】P. Grieco, et al., J. Am. Chem. Soc., 1991, 113, 1057-1059.
【非特許文献5】T. Honda, et al., J. Org. Chem. 1992, 57, 2930-2934.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ウィタノライド類を効率的に合成することができる新規な製造方法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、ステロイド骨格の側鎖部分に閉環メタセシス反応を適用することにより、効率的に側鎖上にラクトン環を形成させ、ウィタノライド類を容易に製造できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を含む。
〔1〕下記式(1)
【化1】

(式中、Rは、水素原子、メチル基またはCHOHを意味し;Rは、水素原子またはメチル基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子、糖鎖または保護基を意味する。)で表される化合物と触媒とを共存させて、閉環メタセシス反応を行う、下記式(2)
【化2】

(式中、R〜Rは式(1)のR〜Rと同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
〔2〕前記式(1)で表される化合物またはその塩が、下記式(3)
【化3】

(式中、R〜Rは〔1〕に記載のR〜Rと同意義を示す。)で表される化合物と、下記式(4)
【化4】

(式中、Rは〔1〕に記載のRと同意義を示し、Xはハロゲン原子を意味する。)で表される化合物とを反応させて得られる、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕前記保護基が「−TBS」である、〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕前記糖鎖が「−glcglc、」である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕前記R〜Rが以下の(a)〜(d)のいずれかの組合せからなる、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法;
(a)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=−glcglc、
(b)R=メチル基、R=メチル基、R=水酸基、R=水酸基、R=−glcglc、
(c)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=水素原子、および
(d)R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=−TBS。
〔6〕前記触媒が第一世代グラブズ触媒である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕下記工程1〜8;
【化5】

(式中、R〜Rは〔1〕に記載のR〜Rと同意義を示す。)を含む、〔1〕〜〔6〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記式(1)で表される化合物に閉環メタセシス反応を適用するものであるので効率的かつ高収率に式(2)で表される化合物またはその塩を製造することができる。また、本発明の製造方法は、温和な条件で反応を進めることができ、単離も容易であるため、工業的な利用にも優れている。
【0011】
[発明の実施の形態]
本発明は、触媒を利用した閉環メタセシス反応により下記式(1)
【化6】

(式中、Rは、水素原子、メチル基またはCHOHを意味し;Rは、水素原子またはメチル基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子、糖鎖または保護基を意味する。)で表される化合物から、下記式(2)
【化7】

(式中、R〜Rは式(1)のR〜Rと同意義を示す。)で表される化合物またはその塩(ウィタノライド類)を合成する新規な製造方法を提供するものである。
【0012】
本明細書において、「糖鎖」とは、グルコースなどの各種の糖がグリコシド結合によって結合した基のことをいう。
【0013】
前記式(1)および式(2)で表される化合物のRが糖鎖の場合、該糖鎖は、「−glcglc」が好ましい。なお、「glc」とはグルコースを意味し、「−glcglc」とは、一のグルコースの1位と式中の3位の炭素原子に結合した酸素原子とが結合し、該グルコースの6位と他のグルコースの1位とが1,6結合した基を意味する。
【0014】
本明細書における保護基には、水酸基の保護基として一般的に利用されるものが挙げられる。このような保護基として具体的には、たとえばt−ブチルジメチルシリル(TBS)基、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基などのシリルエーテル系保護基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル(PMB)基などのエーテル系保護基、メトキシメチル(MOM)基、2−メトキシエトキシメチル(MEM)基、テトラヒドロピラニル(THP)基などのアセタール系保護基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基などのアシル系保護基などが挙げられる。
【0015】
前記式(1)および式(2)で表される化合物のRが保護基の場合、該保護基は、シリルエーテル系保護基が好ましく、シリルエーテル系保護基のうちでは、TBS基が好ましい。
【0016】
前記式(1)および(2)で表される化合物の置換基としては、以下の(a)〜(d)のいずれかの組合せが好ましい;
(a)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=−glcglc、
(b)R=メチル基、R=メチル基、R=水酸基、R=水酸基、R=−glcglc、
(c)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=水素原子、および
(d)R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=−TBS。
【0017】
前記式(1)、式(2)および後述する式(3)で表される化合物における22位の立体配置は限定されないが、R体が好ましい。
【0018】
前記閉環メタセシス反応で利用される触媒は特に限定されないが、たとえば第一世代グラブス触媒;
【化8】

(式中、Cyはシクロヘキシル基を意味する。)、第二世代グラブス触媒;
【化9】

(式中、Cyはシクロヘキシル基を意味する。)またはシュロック触媒などが挙げられる。これらのうちでは、第一世代グラブス触媒が好ましい。
【0019】
前記式(1)で表される化合物に前記触媒を用いることにより、温和な条件、高収率で前記式(2)で表される化合物を合成することができる。
【0020】
前記「塩」とは、本明細書中に記載された化合物のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、またはトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、N,N−ジイソプロピルエチルアミン塩などの有機塩基塩を意味する。
【0021】
本明細書において、「閉環メタセシス反応」とは、分子内の2種類のオレフィンから二重結合の切断、生成を経て環状オレフィンを生成する触媒反応のことをいう。
【0022】
前記閉環メタセシス反応は溶媒中で行うことができる。溶媒は、無極性溶媒が好ましい。無極性溶媒のうちではCHCl、トルエンまたは1,2−ジクロロエタンが好ましく、これらのうちではCHClがより好ましい。
【0023】
前記閉環メタセシス反応の反応温度は、通常15〜40℃であり、より好ましくは室温で行うことができる。また、前記閉環メタセシス反応の反応時間は、通常1〜24時間であり、4〜6時間が好ましい。
【0024】
前記式(1)で表される化合物に閉環メタセシス反応を適用することにより効率的かつ高収率に前記式(2)で表される化合物またはその塩を製造することができる。また、本発明の製造方法は、温和な条件で反応を進めることができ、単離も容易であるため、工業的な利用にも優れている。
【0025】
本発明の別の態様としては、下記式(3)
【化10】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子、糖鎖または保護基を意味する。)で表される化合物と、下記式(4)
【化11】

(式中、Rは、水素原子、メチル基またはCHOHを意味し;Xはハロゲン原子を意味する。)で表される化合物とを反応(エステル化)させることによる、下記式(1)
【化12】

(式中、R〜Rは、前記式(3)に記載のR〜Rを示し、Rは、前記式(4)に記載のRと同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法を提供することである。
【0026】
前記式(3)で表される化合物のRが糖鎖の場合、該糖鎖は、「−glcglc」が好ましい。
【0027】
前記式(3)で表される化合物のRが保護基の場合、該保護基は、シリルエーテル系保護基が好ましく、シリルエーテル系保護基のうちでは、TBS基が好ましい。
【0028】
前記式(3)および(4)で表される化合物の置換基としては、以下の(a)〜(d)のいずれかの組合せが好ましい;
(a)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=−glcglc、
(b)R=メチル基、R=メチル基、R=水酸基、R=水酸基、R=−glcglc、
(c)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=水素原子、および
(d)R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=−TBS。
【0029】
前記式(4)で表される化合物におけるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iが挙げられ、これらのうちではClが好ましい。
【0030】
式(3)で表される化合物に式(4)で表される化合物を反応させる前記エステル化反応には、塩基を用いることができる。塩基として好ましくはジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンや、ピリジン類などが挙げられ、これらのうちではDIPEAがより好ましい。
【0031】
前記エステル化反応には溶媒を使用することができる。溶媒は、無極性溶媒が好ましく、無極性溶媒のうちではCHCl、トルエンまたはTHFがより好ましい。
【0032】
前記エステル化反応の反応温度は、通常0〜30℃であり、好ましくは室温である。また、前記エステル化反応の反応時間は、通常1〜10時間であり、2〜4時間がより好ましい。
【0033】
前記エステル化反応を利用することにより、効率的に閉環メタセシス反応の前駆体である前記式(1)で表される化合物を製造することができる。
【0034】
本発明の別の態様は、トランスデヒドロアンドロステロンまたはその誘導体を原料としたウィタノライド類の製造方法である。
該製造方法は、たとえば、以下のスキームAに沿って実施することができる。
【化13】

【0035】
前記スキームAにおいて、Rは、水素原子、メチル基またはCHOHを意味し、Rは、水素原子またはメチル基を意味し、Rは、水素原子または水酸基を意味し、Rは、水素原子または水酸基を意味し、Rは、水素原子、糖鎖または保護基を意味する。
【0036】
前記スキームAにおける第一工程は、化合物(5)の3位の水酸基にRを導入する工程である。
【0037】
として糖鎖を導入する場合、該糖鎖は、「−glcglc」が好ましい。また、糖鎖の導入は、たとえば第4版実験科学講座26巻pp267−354(伊藤幸成、小川智也著、日本化学会編(丸善)1992)に記載の方法により行うことができる。
【0038】
として保護基を導入する場合、該保護基は、その後の反応に影響を与えなければ特に限定されないが、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t−ブチルジメチルシリル(TBS)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基またはt−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基などのシリルエーテル系保護基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル(PMB)基などのエーテル系保護基、メトキシメチル(MOM)基、2−メトキシエトキシメチル(MEM)基、テトラヒドロピラニル(THP)基などのアセタール系保護基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基などのアシル系保護基を導入することができる。これらのうちでは、シリルエーテル系保護基が好ましく、シリルエーテル系保護基のうちでは、TBS基が好ましい。
【0039】
第一工程における保護基の導入は、たとえば「Greene and Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis" (第2版、John Wiley & Sons 1991)」に記載の方法により行うことができる。
【0040】
具体的には例えば、式(5)で表される化合物にR−L(式中、Rは前記と同意義を示し、Lは脱離基を意味する。)を加えることにより式(6)で表される化合物を合成することができる。脱離基として好ましくはトリフルオロメタンスルホニルオキシ(OTf)基である。
【0041】
前記スキームAにおける第二工程は、化合物(6)の17位のカルボニル基をオレフィンに変換する工程であり、たとえば、対応するリンイリドを用いたウィッティッヒ反応により得ることができる。リンイリドとしては、PhCH(R)CHBr(式中、Rは水素原子または保護された水酸基を意味する。)が好ましく、PhCHCHBrがより好ましい。また、第二工程では、t−ブトキシカリウム(t−BuOK)、n−ブチルリチウム(n−BuLi)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)などの塩基を用いることができる。
【0042】
第二工程で使用される溶媒としては、THFまたはエーテル(ジエチルエーテル)などの無極性溶媒などが挙げられ、これらのうちではTHFを好ましく用いることができる。
【0043】
第二工程の反応温度は、通常0〜100℃である。また、反応時間は、通常12〜48時間であり、好ましくは22〜26時間である。反応は還流させて行うことが好ましい。
【0044】
前記スキームAにおける第三工程は、化合物(7)を化合物(8)に変換する工程であり、たとえば、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドを利用したエン反応を用いることにより得ることができる。
【0045】
第三工程では、ジメチルアルミニウムクロリド(MeAlCl)やジエチルアルミニウムクロリド(EtAlCl)を試薬として用いることができる。
【0046】
第三工程で使用される溶媒としては、CHCl、トルエンなどの無極性溶媒などが挙げられ、これらのうちでは、CHClを好ましく用いることができる。
【0047】
第三工程の反応温度は、通常−78〜0℃であり、−78〜−40℃が好ましい。また、反応時間は、通常10分〜2時間であり、好ましくは20分〜40分である。
【0048】
前記スキームAにおける第四工程は、化合物(8)の16位−17位間の二重結合を触媒を利用した水素添加反応により単結合に還元し、化合物(9)を合成する工程である。水素源として、好ましくは、水素ガスを用いることができる。また、触媒は通常パラジウム触媒、ニッケル触媒、ルテニウム触媒、白金触媒を用いることができる。これらのうちではパラジウム触媒が好ましく、パラジウム触媒のうちでは、パラジウムカーボン(Pd/C)が好ましい。
【0049】
第四工程では、極性溶媒、無極性溶媒のいずれも使用できる。無極性溶媒のうちでは、THF、トルエンまたはCHCl、を好ましく用いることができる。
【0050】
第四工程の反応温度は、通常15〜40℃であり、室温が好ましい。また、反応時間は、通常2〜10時間であり、好ましくは4〜6時間である。
【0051】
前記スキームにおける第五工程は、化合物(9)に酸化剤を加えて化合物(10)を合成する工程である。アルコールからアルデヒドに酸化することができれば、酸化剤は特に限定されないが、ピリジニウムジクロメート(PDC)やピリジニウムクロロクロメート(PCC)が好ましく、これらのうちではPDCがより好ましい。また、反応には、モレキュラーシーブを添加することもできる。
【0052】
第五工程で使用される溶媒としては、CHCl、トルエンまたはTHFなどの無極性溶媒が挙げられ、これらのうちでは、CHClを好ましく用いることができる。
【0053】
第五工程の反応温度は、通常15〜40℃であり、室温が好ましい。また、反応時間は、通常1〜5時間であり、好ましくは2〜4時間である。
【0054】
前記スキームAにおける第六工程は、化合物(10)を化合物(4)に変換する工程であり、たとえば、グリニャー反応を用いることにより得ることができる。グリニャー試薬として、
【化14】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を意味し、Xは、ハロゲン原子を意味する。)を用いることができる。ハロゲン原子としては、F、Cl、BrまたはIが挙げられ、これらのうちではClが好ましい。
【0055】
第六工程で使用される溶媒としては、THF、トルエンまたはエーテル(ジエチルエーテル)などの無極性溶媒などが挙げられ、無極性溶媒のうちではTHFを好ましく用いることができる。
【0056】
第六工程の反応温度は、通常−78〜0℃であり、−78〜−40℃が好ましい。また、反応時間は、通常10分〜1時間であり、好ましくは20分〜40分である。
【0057】
前記スキームAにおける第七工程は、化合物(4)を化合物(1)に変換する工程であり、たとえば、下記構造を有する酸ハライド;
【化15】

(式中、Rは前記と同意義を示し、Xはハロゲン原子を意味する。)
を塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。反応条件等の詳細は化合物(1)の製造方法で示したとおりである。
【0058】
前記スキームAにおける第八工程は、化合物(1)から化合物(2)を合成する工程であり、閉環メタセシス反応により得ることができる。反応条件等の詳細は化合物(2)の製造方法で示したとおりである。
【0059】
化合物(2)のRが水素原子の場合、該水素原子は、化合物(5)の水素原子でもよく、第一工程のRとして保護基を導入し、その後のいずれかの工程の前または後に行われる脱保護反応により生じる水素原子でもよい。
【0060】
化合物(2)のRが保護基の場合、第一工程のRとして保護基を導入してもよく、その後のいずれかの工程の前または後に保護基を導入してもよい。
【0061】
化合物(2)のRが糖鎖の場合、第一工程のRとして糖鎖を導入してもよく、第一工程のRとして保護基を導入し、その後のいずれかの工程の前または後に行われる脱保護反応により遊離した水酸基に糖鎖を導入してもよい。
【0062】
また、Rが保護基である場合、脱保護反応は、たとえば「Greene and Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis" (第2版、John Wiley & Sons 1991)」に記載の方法により行うことができる。また、遊離した水酸基と前記糖鎖との結合は、たとえば第4版実験科学講座26巻pp267−354(伊藤幸成、小川智也著、日本化学会編(丸善)1992)に記載の方法により行うことができる。
【0063】
前記スキームAに沿った合成方法を利用することにより、入手容易で安価な出発原料を用いて、従来より短い工程数、かつ高収率でウィタノライド類を製造することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【0065】
実施例におけるデータ測定は下記の機器類を用いて行った。
融点は、柳本微量融点測定装置を用いて測定した。測定値は全て未補正である。また、赤外線吸収スペクトル(IR)は、JASCO FT/IR−660を用いて測定した。水素、および炭素核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、C13−NMR)は、Varian FX270、Varian Gemini300、Varian UNITY puls500核磁気共鳴装置を用いて測定した。なお、化学シフトはppm値で示し、シグナルの分裂様式は次の略号を使用した。s=singlet,d=doublet,t=triplet,q=quartet,m=multiplet,br=broad。結合定数(J)は、Hzで示した。低分解能Massスペクトル測定には島津GCMS−QP500型、JEOL D−200、LEOL AX505(70eVdirect inlet system)を使用した。
また、実施例で使用される試薬は、特に言及がない限り市販の試薬を使用した。
[実施例1]
下記スキームBに沿って、化合物(2a)を製造した。
【化16】

【0066】
第一工程:3−(t−ブチルジメチルシラニロキシ)−10,13−ジメチル−1,2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16−テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン−17−オン(化合物(6a))の合成
アルゴン雰囲気下、市販のトランスデヒドロアンドロステロン(化合物(5a))(1.44g,5.00mmol)(SIGMA−ALDRICH 製品番号D4000)のジクロロメタン(25mL)溶液に、0℃でトリエチルアミン(2.10mL,15.0mmol)とTBSOTf(1.72mL, 7.50mmol)を加え、0℃で1時間撹拌後、ジクロロメタンで希釈した反応液を10%HCl水溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl)で精製し、白色固体物質(mp151−153℃)として化合物(6a)(1.90g,4.71mmol,94%)を得た。得られた化合物(6a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0067】
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 5.35 (1H, d, J=5.1Hz), 3.52-3.45 (1H, m), 2.51-1.06 (19H, m), 1.03 (3H, s), 0.89 (12H, s), 0.06 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 221.03, 141.76, 120.37, 72.41, 51.79, 50.31, 47.51, 42.76, 37.29, 36.69, 35.81, 32.00, 31.50, 31.44, 30.80, 25.90, 21.86, 20.33, 19.43, 18.21, 13.52, -4.61; IR (KBr ): 2928, 2857, 1748, 1668 cm-1; MS (EI):m/z 345 (M+-57); HMRS Calcd for C21H33O2Si: 345.2250 (M+-57), found: 345.2271; [α]25.3D =+6.10 (c = 1.00, CHCl3)
【0068】
第二工程:t−ブチル−(17−エチリデン−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3イルオキシ)−ジメチルシラン(化合物(7a))の合成
アルゴン雰囲気下、エチルトリフェニルホスホニウム臭化物(20.87g,56.2mmol)のTHF(120mL)溶液に、t−BuOK(6.34g,56.2mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。この溶液に化合物(6a)(5.82g,14.4mmol)を加え15時間加熱還流した後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl:ヘキサン=1:4)で精製し、白色固体物質(mp127−130℃)として化合物(7a)(5.08g,12.2mmol,85%)を得た。得られた化合物(7a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0069】
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 5.32 (1H, d, J=5.4Hz), 5.13 (H, tq, J=2.2, 7.0Hz), 3.52-3.41 (1H, m), 3.47-1.02 (19H, m), 0.99 (3H, s), 0.87 (15H, m), 0.04 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 150.28, 141.58, 121.02, 113.45, 72.59, 56.57, 50.24, 44.05, 42.83, 37.34, 37.02, 36.64, 32.09, 31.76, 31.44, 25.94, 24.49, 21.22, 19.40, 18.25, 16.61, 13.13, -4.59; IR (KBr ): 3032, 2938, 1771, 1668 cm-1; MS (EI):m/z 357 (M+-57); HMRS Calcd for C23H37OSi: 357.2614 (M+-57), found: 357.2581; [α]28.1D=-45.19 (c=1.00, CHCl3)
【0070】
第三工程:2−[3−(t−ブチルジメチルシラニロキシ)−13−メチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル]−プロパン−1−オール(化合物(8a))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(7a)(1.24g,3.00mmol)のジクロロメタン(30mL)溶液に、−78℃でパラホルムアルデヒド(1.80g,60.0mmol)とジメチルアルミニウムクロライド(28.8mL,30.0mmol)を加え、−78℃で3時間撹拌した後、飽和重曹水で反応を停止した。反応液をセライトろ過し、ジクロロメタンで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過後溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl)で精製し、白色固体物質(mp154−157℃)として化合物(8a)(0.960g,2.15mmol,72%)を得た。得られた化合物(8a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0071】
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 5.41 (1H, s), 5.32 (1H, d, J=5.1Hz), 3.62-3.39 (3H, m), 2.39-1.07 (19H, m), 1.03-1.00 (6H, m), 0.87 (9H, s), 0.80 (3H, s), 0.04 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 157.59, 141.85, 122.99, 120.93, 72.57, 66.54, 57.39, 50.81, 47.01, 42.84, 37.32, 36.83, 35.37, 34.88, 32.07, 31.61, 31.23, 30.58, 25.93, 20.79, 19.35, 18.24, 18.07, 16.20, -4.59; IR (KBr): 3389, 3031, 2939, 1668, 1618 cm-1 ; MS (EI):m/z 387 (M+-57); HMRS Calcd for C24H39O2Si: 387.2720 (M+-57), found: 387.2712; [α]28.1D=-50.67 (c=1.00, CHCl3)
【0072】
第四工程:2−[3−(t−ブチルジメチルシラニロキシ)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル]プロパン−1−オール(化合物(9a))の合成
化合物(8a)(1.52g,3.41mmol)のTHF溶液(34mL)に10%Pd/C(256mg)を加えたのち水素を充填させ、室温で12.5時間撹拌させた。反応液をセライトろ過した後、溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl:ヘキサン=1:2)で精製し、白色固体物質(mp159−161℃)として化合物(9a)(1.27g,2.82mmol,83%)を得た。得られた化合物(9a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0073】
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 5.30 (1H, d, J=5.1Hz), 3.59 (1H, dd, J=3.5, 10.5Hz), 3.46 (1H, m), 3.36 (1H, dd, J=7.0, 10.5Hz), 2.25-1.05 (19H, m), 1.02 (3H, d, J=4.3Hz), 0.98 (3H, s), 0.867 (9H, s), 0.68 (3H, s), 0.04 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 141.59, 121.07, 72.63, 68.03, 56.54, 52.45, 50.20, 42.82, 42.43, 39.66, 38.75, 37.39, 36.58, 32.08, 31.93, 27.72, 25.93, 24.38, 21.05, 19.42, 18.25, 16.75, 11.92, -4.59; IR (KBr): 3306, 2936, 2882, 2857, 1669 cm-1 ; MS (EI):m/z 389 (M+-57); HMRS Calcd for C24H41O2Si: 389.2876 (M+-57), found: 389.2871; [α]24.4D=-37.87 (c=1.00, CHCl3)
【0074】
第五工程:2−[3−(t−ブチルジメチルシラニロキシ)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル]−プロピオンアルデヒド(化合物(10a))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(9a)(500mg,1.12mmol)のジクロロメタン溶液(38mL)にモルキュラーシーブス4A(206mg)とピリジニウムジクロメート(2.11g,5.60mmol)を加え、室温で3時間撹拌させた。反応液をセライトろ過した後、溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)で精製し、白色固体物質(mp127−131℃)として化合物(10a)(241mg,0.543mmol,48%)を得た。得られた化合物(10a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0075】
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 9.58 (1H, d, J=3.2Hz), 5.32 (1H, d, J=5.1Hz), 3.48-3.46 (1H, m), 2.36-1.17 (18H, m), 1.12 (3H, d, J=4.6), 1.00 (3H. s), 0.87 (9H, s), 0.73 (3H, s), 0.06 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 204.94, 141.49, 120.91, 72.53, 56.01, 51.92, 51.01, 50.16, 49.45, 42.93, 42.78, 39.47, 37.35, 32.04, 31.87, 31.84, 27.02, 25.90, 24.63, 20.97, 19.39, 18.21, 13.55, 12.19, -4.61; IR (KBr): 2936, 2898, 2856, 2819, 1730, 1670 cm-1 ; MS (EI):m/z 387 (M+-57); HMRS Calcd for C24H39O2Si: 387.2720 (M+-57), found: 387.2742; [α]24.9D=-42.36 (c=1.00, CHCl3)
【0076】
第六工程:2−[3−(t−ブチルジメチルシラニロキシ)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル]−ヘクス−5−エン−3−オール(化合物(4a))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(10a)(500mg,1.12mmol)のTHF溶液(38mL)に、−78℃でアリルマグネシウムクロライド(1.63mL,1.63mmol)を加え、−78℃で30分撹拌した後、飽和塩化アンモニウムで反応を停止させた。反応液をジクロロメタンで抽出し、有機層を10%HCl水溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)で精製し、白色固体物質(mp150−154℃)として化合物(4a)(235mg,0.482mmol,89%)(ジアステレオマー比=1:1)を得た。得られた化合物(4a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0077】
低極性側:
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 5.80-5.77 (1H, m), 5.30 (1H, d, J=5.1Hz), 5.12-5.06 (2H, m), 3.70 (1H, dd, J=5.1, 8.6Hz), 3.52-3.45 (1H, m), 2.25-1.02 (21H, m), 0.98 (3H, s), 0.90 (3H, d, J=5.1Hz), 0.87 (9H, s), 0.66 (3H, s), 0.04 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 141.57, 135.74, 121.09, 117.37, 72.62, 72.47, 56.67, 52.62, 50.16, 42.82, 42.28, 40.13, 40.09, 39.81, 37.37, 36.56, 32.08, 31.96, 31.88, 27.70, 25.94 24.20, 21.09, 19.42, 18.25, 11.74, 11.69, -4.60; IR (KBr): 3607, 3077, 2935, 2898, 2857, 1640 cm-1; MS (EI):m/z 429 (M+-57); HMRS Calcd for C27H45O2Si: 429.3189 (M+-57), found: 429.3174; [α]24.5D =-28.11 (c=1.00, CHCl3)
【0078】
高極性側:
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 5.85-5.80 (1H, m), 5.32 (1H, d, J=5.4Hz), 5.17-5.14 (2H, m), 3.71-3.67 (1H, m), 3.51-3.43 (1H, m), 2.27-1.01 (21H, m), 0.99 (3H, s), 0.93 (3H, d, J=7.0Hz), 0.88 (9H, s), 0.70 (3H, s), 0.05 (6H, s)
【0079】
第七工程:1−{1−[3−(t−ブチルジメチルシラニロキシ)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル]−エチル}−ブト−3−エニルエステル(化合物(1a))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(4a)(低極性化合物)(111mg,0.229mmol)のジクロロメタン溶液(7mL)に、0℃でジイソプロピルエチルアミン(0.20mL,1.13mmol)とアクリル酸クロリド(74.4μL,0.916mmol)を加え、室温で2.5時間反応させた。反応液をジクロロメタンで希釈し、10%HCl水溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過後溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:9)で精製し、白色固体物質(mp113−117℃)として化合物(1a)(109mg,0.202mmol,88%)を得た。得られた化合物(1a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0080】
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 6.32 (1H, dd, J=1.6, 17.0Hz), 6.09 (1H, dd, J=10.4, 17.4Hz), 5.80 (1H, dd, J=1.8, 10.1Hz), 5.70-5.68 (1H, m), 5.27 (1H, d, J=4.9Hz), 5.08-4.99 (3H, m), 3.52-3.45 (1H, m), 2.38-1.04 (20H, m), 1.01 (3H, d, J=6.8Hz), 0.97 (3H, s), 0.86 (9H, s), 0.65 (3H, s), 0.03 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 165.81, 141.43, 134.11, 130.17, 128.95, 121.10, 117.44, 75.41, 72.56, 56.59, 52.49, 50.13, 42.26, 39.73, 38.70, 37.35, 36.88, 36.53, 32.05, 31.91, 31.81, 28.03, 25.91, 24.21, 21.04, 19.40, 18.21, 12.69, 11.62, -4.60; IR (KBr): 2935, 2861, 1721, 1641 cm-1 ; MS (EI):m/z 483 (M+-57); HMRS Calcd for C30H47O3Si: 483.3295 (M+-57), found: 483.3267; [α]24.7D=-34.13 (c=0.68, CHCl3)
【0081】
第八工程:6−{1−[3−(t−ブチルジメチルシラニロキシ)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル]−エチル}−5,6−ジヒドロピラン−2−オン(化合物(2a))の合成
アルゴン雰囲気下、化合物(1a)(109mg,0.202mmol)のジクロロメタン溶液(11mL)に第一世代グラブス触媒(133mg,0.162mmol)(Fluka製品番号09587)を加え、室温で5.5時間撹拌させ、反応液の溶媒を留去した。この残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)で精製し、白色固体物質(mp213−217℃)として目的化合物(2a)(61mg,0.119mmol,59%)(第一工程〜第八工程のトータル収率8.8%)を得た。得られた化合物(2a)のNMR等の測定結果を以下に示す。
【0082】
1H-NMR (270MHz) (CDCl3):δ 6.89 (1H, td, J=2.0, 9.7Hz), 5.98 (1H, dd, J=2.1, 9.7Hz), 5.28 (1H, d, J=5.1Hz), 4.48 (1H, m), 3.48-3.45 (1H, m), 2.61-2.50 (1H, m), 2.25-1.19 (19H, m), 1.05 (3H, d, J=6.5Hz), 0.98 (3H, s), 0.87 (9H, s), 0.67 (3H, s), 0.04 (6H, s); 13C-NMR (67.5MHz) (CDCl 3):δ 164.91, 145.84, 141.44, 121.13, 121.01, 80.04, 72.54, 56.45, 51.14, 48.00, 42.77, 42.13, 39.54, 39.50, 37.28, 36.47, 32.03, 31.90, 31.76, 27.62, 27.35, 25.89, 24.09, 21.01, 19.37, 18.19, 13.18, 11.67, -4.64; IR (KBr): 2936, 2900, 2882, 2857, 1702 cm-1 ; MS (EI):m/z 455 (M+-57); HMRS Calcd for C28H43O3Si:455.2982 (M+-57), found: 455.2989; [α]24.7D=-58.51 (c=0.92, CHCl3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Rは、水素原子、メチル基またはCHOHを意味し;Rは、水素原子またはメチル基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子または水酸基を意味し;Rは、水素原子、糖鎖または保護基を意味する。)で表される化合物と触媒とを共存させて、閉環メタセシス反応を行う、下記式(2)
【化2】

(式中、R〜Rは式(1)のR〜Rと同意義を示す。)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物またはその塩が、下記式(3)
【化3】

(式中、R〜Rは請求項1に記載のR〜Rと同意義を示す。)で表される化合物と、下記式(4)
【化4】

(式中、Rは請求項1に記載のRと同意義を示し、Xはハロゲン原子を意味する。)で表される化合物とを反応させて得られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記保護基が「−TBS」である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記糖鎖が「−glcglc、」である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記R〜Rが以下の(a)〜(d)のいずれかの組合せからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法;
(a)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=−glcglc、
(b)R=メチル基、R=メチル基、R=水酸基、R=水酸基、R=−glcglc、
(c)R=CHOH、R=メチル基、R=水素原子、R=水酸基、R=水素原子、および
(d)R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=水素原子、R=−TBS。
【請求項6】
前記触媒が第一世代グラブズ触媒である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−159211(P2010−159211A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117732(P2007−117732)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年2月1日、インターネットアドレス(http://nenkai.pharm.or.jp/127/pc/ipdfview.asp?i=581)を通じて発表
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】