説明

ウィルス増殖のための不死化細胞系

【課題】ウィルス繁殖、組換タンパク質発現及び組換ウィルス製造のための基材として有用な、不死化細胞系の製造及び利用。
【解決手段】一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ、この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し、細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し、この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し、この非老衰細胞を単離し、そしてこの非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる工程を含んで成る方法により生産できる、不死化細胞系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞生物学及びウィルス学の分野に関する。詳しくは、本発明はウィルス繁殖のための不死化細胞の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
1931年において、Alice Miles Woodruff及びErnest Goodpastureはウィルスを培養するための新しい方法を紹介した。彼らはフォウル・ポックスのウィルスが発達中のヒヨコの胚の漿尿膜上で増殖できうることを報告した。ウィルスを含む損傷がウィルス接種を経た膜上に認められた。卵は、初期のウィルス研究のための基材であった動物と比べ、比較的安価であり、且つ入手し易い。卵は様々なウィルスによる感染に対して感受性であり、且つ管理された安定な環境の中に保つことができる様々な細胞及び膜を有する。ヒヨコの胚は幾多のウィルスに対して感受性である様々な細胞を簡単に供与することでウィルス学の発達に対する重要な途を寄与する。
【0003】
卵は様々なウィルス株の複製を支持するが、卵を感染させる及びウィルス増殖を維持するための方法は時間がかかり、且つめんどうである。例えば、漿尿膜接種のためには、まず卵の殻及び殻膜に穴を開ける。殻に気嚢の上で穴を設け、空気が殻膜と漿尿膜との間に入り込むようにし、サンプルを載せる人工的な気嚢を設ける。サンプルは絨毛性上皮と接触し、そしてウィルスはこの膜の上で損傷として増殖する。驚くべきことでなく、ウィルス複製のための卵の利用は細胞培養技術の到来と共に消えた。
【0004】
様々な細胞をin vitroで増殖させることができる。細胞培養物は卵と比べて維持し易く、そして高度に管理された環境の中に保つことができる。しかしながら、培養細胞の中でよりも胚入り卵細胞の中での方が良く増殖すると認められるウィルス株がまだある。更に、多くの培養細胞系は感染性因子、例えばマイクロプラズマ、低レベルの細菌夾雑物、内因性ウィルス等を担持する。ウィルス複製を支持するのに最も効率的であるいくつかの細胞タイプは、その細胞が内因性ウィルスを含む点でウィルスストック製造に関する問題を抱えている。内因性ウィルスは低レベルで複製するか、又は細胞が第二ウィルス株で感染されたときに活性化されうる。例えば、げっ歯類細胞は内因性ウィルスを担持することで知られ、そして培養物中のげっ歯類細胞の電子顕微鏡観察は往々にして細胞内での同定可能なウィルス粒子の存在を示している。汚染された細胞系は商業的な生きた又は不活性ワクチンのための基材として利用することができない。
【0005】
いくつかのウィルスにとって、ウィルス複製のための選定の手段は胚ニワトリ(embryonated chicken) である。例えば、ヒトインフレンザウィルス、ラビエス、犬のジステンパーウィルス、 Marek病ウィルス、レオウィルス及びフォウル・ポックス・ウィルスが、卵が高力価ウィルスストック増殖を支持することを理由に胚入り卵又は胚入り卵から誘導された一次細胞の中で優先的に増殖するウィルスである。その他のケースでも、ウィルスは卵の中で増殖されており、なぜなら承認可能な無ウィルス細胞基材のニーズがあるからである。
【0006】
一次細胞培養物は完全組織から単離されたばかりの細胞の培養物である。これらの細胞は往々にして良好な無ウィルス材料の起源であり、そしてウィルス複製のための宿主細胞として良く適する。一次細胞はウィルスの複製において常に効率的であるものではなく、そして一次動物細胞は限られた培養寿命を示し、事実上老衰する。老衰では、細胞は分裂するのを止め、やがて死ぬ。培養において細胞が経時的に分裂する能力はいくつかのパラメーター、例えば細胞の起源の種及び細胞を培養する時の組織の年令に依存する。老衰にかかっている細胞は培養物の中に長時間維持されることができず、それ故ウィルスストックの増殖のための再現性ある宿主とはならない。
【0007】
いくつかの一次細胞は老衰を逃避し、そして不死となる能力を獲得する。げっ歯類細胞はかなり簡単に自発性不死化するが (Curatoloら、in vitro 20 : 597-601, 1984)、正常ヒト及び鳥類細胞が自発性不死化できることはめったにない (Harveyら、Genes and Development 5 : 2375-2385, 1991 ; Pereira-Smith, J. Cell Physiol 144 : 546-9, 1990 ; SmithらScience 273 : 63-67, 1996)。なぜ特定の細胞集団が不死化を受けるかについて様々な理由がある。細胞は遺伝子突然変異を誘導することで知られる因子に対する曝露を経て不死化されるように誘導されうる。ある者は老衰に関係する増殖の停止が不死化に優先し、そして増殖抑制遺伝子を不活性化する現象が不死化をもたらしうるものと推定している(Pereira-Smithら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 85 : 6042-6046, 1988) 。
【0008】
不死化無ウィルス細胞の入手は一次動物組織培養物の利用を排除又は抑制できうる。一次培養物は一般に細胞集団に適せず、そして往々にして汚染されている。これらの培養物は往々にして商業用ワクチン製造のための規則要件に合致しない。細胞の一次培養物はシルコドナビリデ (Circodnavirideae)(例えば、ニワトリ貧血ウィルス)又はエッグ・ドロップ・シンドローム・ウィルスで汚染されていることがある。例えば、 Marek病ワクチン(生きたウィルスワクチン)は家禽ワクチン化のためにアヒルの卵の中のウィルスストックとして増殖できる。1976年において、ワクチンを受けたニワトリ群は、ワクチンストックを汚染したものと信じられ、且つニワトリの中での増殖に適応したアヒルアデノウィルスにより引き起こされるエッグ・ドロップ・シンドロームの徴候を示した。
【0009】
ワクチン産業において、製品の安定性、一貫性及び効能についての規定要件は、卵を基礎とする一次細胞ワクチン基材を利用する現状の最良の代替として、業者が細胞系を購入することへと導いている。安全性及び一貫性に対する関心は、米国及びヨーロッパの双方におけるワクチン基材に関する基準環境の厳しさの高まりに基づき、ヒト及び動物ワクチン製品の双方の製造業者にももたれている。胚入り卵を代替するウィルス増殖のための適当な細胞の同定は、US Goverment Principles for the Utilization and Care of Vertebrate Animals in Testing, Research, and Training and the Animal Welfare Act (7 U.S.C.§ 2131)の観点でも好ましい。それはどのような状況においてもin vitro生物システムの如き方法を in vivo動物モデルシステムの代わりに考慮すべきであると一部に記述している。動物ワクチン製品を作るためにウィルスを含まず、且つ外性ウィルス増殖を支持する細胞のニーズがある。
【発明の開示】
【0010】
本発明は自発性不死化ニワトリ繊維芽細胞の同定及び当該細胞系を得るための方法に関する。詳しくは、本発明はブダペスト条約の規則及び条件下でATCCに寄託した自発性不死化細胞系UMNSAH−DF1の特徴を有する一次ニワトリ胚繊維芽細胞に由来する自発性不死化細胞に関する。更に、本発明はこのような細胞の培養物及びウィルス複製を支持する不死化細胞系の不死化サブクローンに関する。
【0011】
本発明の一の観点において、本発明の不死化細胞はウィルスを含み、そして別の観点において、本発明の不死化細胞は細胞の中での組換タンパク質の発現を指令することのできる少なくとも一つのベクターを含む。一の態様において、本発明の細胞は組換タンパク質を発現し、そして本発明の別の観点において、本発明の細胞の中に含まれている当該ベクターは組換ウィルスの少なくとも一部をコードする。別の態様において、当該ベクターはレトロウィルスベクターである。
【0012】
本発明の別の観点において、下記の工程を含んで成るニワトリ胚繊維芽細胞から不死化細胞系を製造するための方法を開示する:培養物の中で一次ニワトリ胚繊維芽細胞を増殖させる;この繊維芽細胞をそれらが細胞老衰するまで培養物の中で継代する;当該細胞を細胞老衰中に約30%〜約60%の培養物集密度となるまで濃縮する;非老衰細胞のフォーカスを同定する;そして非老衰細胞を30継代より多くにわたり増殖させる。
【0013】
本発明の別の観点において、下記の工程を含んで成る細胞の中でウィルスを増殖させるための方法を開示する:培養物の中で一次ニワトリ胚繊維芽細胞に由来する自発性不死化細胞系を増殖させる;このウィルスを細胞の中で複製させる;そしてこの細胞の中で複製したウィルスを回収する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
現在、本質的に非ウィルス、非ウィルスタンパク質、又は非化学変換鳥類細胞系は入手できない。一次細胞系はウィルスストック製品を連続生産するにはめんどうであり、そしてウィルス増殖のための非汚染リザーバーとして個別に確認されなければならない。本発明はイースト・ランシング・ライン (East Lansing Line)(ELL−O)ニワトリ胚に由来する細胞を含むニワトリ胚繊維芽(CEF) 細胞の不死化を開示する。
【0015】
本明細書の中で用いる語「不死化」とは、30継代よりも多く培養物の中で増殖することができ、培養物中で約1〜約2日の倍化時間を維持し、そして約6ケ月以上連続培養される非げっ歯類細胞をいう。鳥類細胞は一般に培養物の中で約20〜約25回継代されたら不死化と考える。不死化細胞は形質転換細胞とは異なり、それが密度依存性及び/又は増殖阻止(例えば接触阻害)される点で形質転換細胞と区別される。形質転換細胞はソフトアガーの中で増殖でき、そして通常は実験動物に注射されたときに腫瘍を形成できる。本発明の細胞はウィルス増殖又は組換タンパク質もしくはウィルス発現のためのリザーバーとして、特に細胞が夾雑ウィルス又はウィルスタンパク質を有しないことが重要な場合、有用である。これらの細胞は細胞の老衰及び不死化の基本メカニズムを研究するためにも有用である。
【0016】
10日目の ELL−O卵由来のニワトリ胚繊維芽(CEF) 一次細胞は、10日目の胚の胚トルソを採取し、その組織をミンチにかけ、そしてその細胞を培地の中に入れることにより得られる。受精卵は入手できるHy−Vac (Adel, Iowa)である。卵及びその産卵鳥はその供給者により鳥類インフレンザ(A型)、鳥類レオウィルス、鳥類アデノウィルス(I−III 族)、鳥類脳脊髄炎ウィルス、フォウル・ポックス・ウィルス、ニューキャッスルウィルス、パラミキソウィルス(2型)、マイクロプラズマ、サルモネラ及びその他の家禽ストックに感染することで知られる感染因子について陰性であることが承認されている。一次細胞の単離及び不死化細胞の同定は実施例1に示す。
【0017】
これらの細胞は、不死化系の発見時に特定されるものであり、なぜなら、細胞老衰の効果を研究するために細胞集団を選定するからである。ヒト及び鳥類細胞は組織培養条件下で最も不死化しにくい細胞の一部として知られる。げっ歯類細胞とは異なり、正常ドナーからヒト又はヒヨコ繊維芽細胞を不死化するための明確な報告はない(Smithら、Science 273 : 63-67, 1996)。鳥類繊維芽細胞において、未処理細胞は典型的には20〜25継代しか続かない。即ち、30回の継代により、これらの鳥類細胞の一次培養物は死んでいる又は死ぬ。本発明において開示のように、20継代に達するには、細胞を継代し、そして約12継代目〜約20継代目で小さめのプレートに必要なだけ濃縮させる(実施例1参照)。より急速に増殖する細胞のフォーカスが観察され、そしてこれらのフォーカスをクローニングリング (Bellco Glass, Inc. Vineland, N. J.) を用いて単離し、そして培地の中で増殖させる。
【0018】
老衰は本明細書において、1日当り約 0.5以下の集団倍化を有する細胞と定義する。本発明にとって、不死化細胞は培養物の中で30回より多く継代され、1日当り約 0.6〜約 1.2の集団倍化、そして好ましくは1日当り約 0.7〜約 1.0の集団倍化の集団倍化速度(トリパンブルー排除を利用し、1日当りの総細胞計測数及び生存細胞計測数により決定)で増殖し、しかも接触阻害、密度依存性及び正常細胞形態学を示す細胞である。
【0019】
実施例1に記載の通りにして最初に同定されたフォーカスから得た細胞は 400超の集団倍化及び 160超の継代がされた。本明細書において用いる語フォーカスとは、その周囲の細胞の形態から区別できる形態学的に均質な細胞のクラスターを意味する。このような細胞のフォーカスは簡単に除去でき、そして更なる研究のためにサブクローニングできる。本発明の細胞は22〜24hr毎に倍化し続ける。これらの細胞の接触阻害され、逆転写酵素陰性であり(実施例2参照)、密度依存式に休止し、異数性であり(油浸漬顕微鏡での染色体拡布分析により観察すると、カリオタイプはジプロイド/テトラプロイドの混合物であり、一部の細胞は染色体1の見かけ上の転移を示した)、そして 1.1〜1.9 ×105 細胞/cm2 の高プレーティング密度にまで増殖した。多核巨大細胞は観察されなかった。これらの細胞は均一な表現型を有した。これらの細胞はウィルス繁殖のために重要である急速増殖の特徴的なパターンを維持した。
【0020】
これらの細胞はソフトアガーアッセイにおけるその増殖能力の欠如により証明される(実施例3参照)。更に、これらの細胞はニワトリの翼に注射したときに腫瘍を生成しなかった(実施例4参照)。本発明の典型的な細胞をUMNSAH−DF1細胞であり、そしてブダペスト条約の規則及び条件下で1996年10月11日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、 12301 Parklawn Drive, Rockville Maryland, 20852, 受託番号 CRL−12203 で寄託されている。
【0021】
本発明は培養物中の本発明の不死化ニワトリ胚繊維芽細胞及び本発明の不死化細胞のサブクローンに関する。例えば、本発明の細胞は自発性不死化細胞と特定される。これらの細胞は既知の無ウィルス、既知の化学夾雑物非含有産卵鳥(本発明の起源である胚組織を産生するメンドリ)から得られ、そして本発明の細胞を製造するのに用いた胚組織も化学夾雑物を含まず(即ち、既知の発癌物質又はげっ歯類細胞を形質転換することで知られるその他の因子)且つ既知のウィルスを含まない。本発明の不死化細胞を培養すると、細胞集団において変動し得るその他の生理学的パラメーターを選定するために細胞を更にサブクローニングし、しかも接触阻害及びウィルス感染症に対する感受性を維持することができる。
【0022】
細胞をHV7(七面鳥ヘルペスウィルス)、鳥類ヘルペスウィルス(血清型III )、フォウル・ポックス・ウィルス及びレオウィルスを複製する能力について試験した。細胞はシルコドナビリデ、ニワトリ HSV血清型II又はその他の様々なウィルスを複製する能力について試験でき、そしてトランスフェクションの基材として試験されうる。これらの細胞は鳥類及び非鳥類ウィルスの双方を繁殖するために有用である。実施例5は HVT、フォウル・ポックス・ウィルス及びレオウィルスについての方法を詳細する。これらの細胞はウィルス製造のための基材として有用であり、そして特にこれらの細胞はレトロウィルス製造のために有用であり、なぜならその細胞及びその産卵鳥(即ち、その母親)は検出可能なレトロウィルス感染をもたないからである。これらの細胞は鳥類肉腫白血病ウィルス及びラウス肉腫ウィルスの複製を支持できる。
【0023】
ウィルスストックを製造するため、本発明の細胞を組織培養フラスコ、ローラーボトル、スピンカルチャー又は中空ファイバー反応器の中に播種することができる。ローラーボトルウィルス繁殖のためには、これらの細胞は約2〜5×104 個の細胞/cm2 表面積で播種する。ウィルスストック増殖を開始させるための感染多重度(感染性ウィルス粒子、対、細胞の比)はウィルス株に依存して変わるであろう。ウィルス学の当業者並びに特定のウィルス及びウィルス株の増殖における当業者は感染多重度、温度、培地バリエーション等の標準的な操作を介し、めんどうな実験をすることなくウィルスストック収量を最大にすることができるであろう。
【0024】
感染性ウィルスストックを得るために感染後にウィルスを収穫するための方法もウィルス株で変動する。エンベロープ付ウィルスはエンベロープのないウィルスよりもゆっくりと培養培地の外へと出ていく。ウィルスのストックは培養培地のみから、又はコンディショニングした培地と共にプールした細胞リゼートから得られうる。溶解ウィルス(ウィルスが出ていく際に効率的に細胞も溶解するもの)に関し、細胞塊を除去するには、軽い遠心段階後のコンディショニング培養培地(例えば、ウィルスを含む消費培地)の回収で十分である。ここでも、多種多様なウィルス株からのウィルスの回収及び保存のための方法は当業界において周知である。
【0025】
当業界において公知の通り、細胞の培養物からウィルス増殖を定量するための様々な方法がある。例えば、ヘルペスウィルス科の構成員及び細胞単層表層上に細胞病理学フォーカスを生み出す様々なウィルスのウィルスストック力価はプラークアッセイにより(プラーク形成単位/ml培養流体として又はプラーク形成単位/ワクチン接種物のウィルス量の用量)又は組織培養感染用量−50(TCID50)として容易に定量される。迅速溶解ウィルスは規定時間において培養物の50%に感染することがでるウィルスストックの用量又は希釈率としてTCID50により一層良く定量される。ウィルスを増殖及び定量するための方法は当業界において公知であり、そしてウィルス定量方法を教示するソースは Fieldら (編)Fundamental Virology 1991, Raven Press, New York又は Mandellら (編) Principles and Practice of Infections Diseases, 1985, John Wiley & Sons, New York に見い出せる。
【0026】
ウィルス増殖を支持する他に、本発明の細胞は組換ウィルス、例えばレトロウィルス等を製造するためにも有用である。これらの細胞は組換タンパク質、例えばウィルスタンパク質を製造するためも利用されうる。組換タンパク質をコードする核酸を真核細胞、例えば本発明の不死化細胞においてタンパク質の発現を指令することのできる調節要素のコントロール下で核酸ベクターの中に組込むための方法は当業界において周知である。発現ベクターは組換タンパク質の発現を指令することのできる複製可能な核酸フラグメントである。レトロウィルスベクターを含む多くの発現ベクターが学会誌及び商業供給者を介して当業界において入手できる。複製可能な発現ベクター成分には一般に、限定することなく、下記の1又は複数のものが挙げられる:複製起点、1又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター要素、任意的なシグナル配列及び転写終止配列。選択又はマーカー遺伝子は形質転換又はトランスフェクション細胞の集団の同定を担うタンパク質をコードする。典型的な選択遺伝子は抗生物質もしくはその他の要素に対する耐性を供する、栄養要求性欠陥を相補する又は複合培地からは得られない必須栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0027】
組換タンパク質をコードする核酸を有する発現ベクターを細胞の中にトランスフェクションし、そして本発明の不死化細胞における組換タンパク質の発現を指令するのに利用される。このベクターは好ましくは鶏胚繊維芽細胞の中で発現できる任意の組換タンパク質、例えば限定することなく、ウィルスタンパク質、例えば逆転写酵素及び/又はウィルス構造タンパク質をコードしうる。細胞の中で組換タンパク質を製造するためのベクターの例には腫瘍抑制タンパク質、又はウィルス構造タンパク質、例えば GivolらOncogene 11 (12) : 2609-2618, 1995, GivolらCell Growth & Differentiation 5 (4) : 419-429, 1994, AkiyamaらVirology 203 (2) : 211-220, 1994及び BoyerらOncogene 20 : 457-66, 1993により開示のものが挙げられる。
【0028】
本発明の細胞は組換ウィルス、例えば限定することなく組換レトロウィルスを発現する基材を担いうる。本発明の細胞は遺伝子治療等のために有用な遺伝子的に操作されたウィルスのためのパッケージング細胞系を担いうるのに適する。パッケージング細胞系として特定の細胞系を利用するための構築体及び方法は当業界において公知である。例えば、Boerkoelら (Virology 195 (2) : 669-79,1993) はパッケージング細胞系として一次鶏胚繊維芽細胞を利用してウィルスをパッケージングするための方法を開示する。これらと同じ方法を本発明の不死化細胞の中でウィルスをパッケージングするのに利用できうる。
【0029】
ほとんどの鳥類細胞系及び全ての形質転換鳥類細胞、並びに事実上全てのマウス形質転換細胞系はウィルス夾雑物、例えば内因性ウィルスを含むか又はウィルスタンパク質を産生するため、それらはヒト又は動物ワクチンの製造に適さない。これらの細胞は組換タンパク質を製造するために利用することはできず、なぜなら内因性夾雑物は精製組換タンパク質調製品を汚染しうるからである。好都合には、本発明の細胞はこのような問題の適当な代替物を供する。
【0030】
本発明の細胞はその他の細胞からのウィルス増殖を支持する基材をも担うことができる。このようなその他の細胞には一次細胞又は培養細胞であって、他の細胞の存在下、又は細胞外マトリックスタンパク質、例えばコラーゲン、ラミニン等の存在下で培養物の中で向上した増殖又は寿命を示すものが挙げられる。一の態様において、細胞をウィルスと混合し、次いで本発明の細胞と好ましくは細胞:本発明の細胞の比において1:5の細胞〜約1:20の細胞、そしてより好ましくは約1:10(1個の細胞、対、10個の本発明の細胞)の比で混合する。この混合細胞を培養物の中に入れる。第二の態様において、これらの細胞をウィルスと混合し、そして組織培養表層に既に付着している本発明の不死化細胞の表層上にプレーティングする。本発明の細胞はその他の細胞のための支持体を担い、そして本発明の範囲を限定することなく、本発明の細胞は増殖因子等、並びに細胞外マトリックス成分等を、他の細胞を支持しながらそれらがウィルスを産生するように供給することができる。実施例6は細胞基材としての本発明の細胞の利用例を供する。
【0031】
本明細書において引用する文献は全て本明細書に組入れている。本発明の特定の態様を詳細に論じてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更、改良等を本発明に施すことができる。
【0032】
実施例1
自発性ニワトリ繊維芽細胞系の樹立
2ダースの ELL−O卵をイースト・ランシングUSDA家禽ストックから注文した。卵を無菌隔離インキュベーターの中で10日間インキュベーションし、そして一次培養のために処理した。胚組織をトリプシン/EDTA溶液を用いて解離し、そして10%の胎児牛血清(Gibco) 、1%の抗生物質/抗真菌物質(Gibco)及び2mMのL−グルタミン(Gibco)を含むDMEM培地(GIBCO)の中にプレーティングした。この解離細胞懸濁物を10%の胎児牛血清を含む50mLの遠沈管に集め、トリプシンを不活性させ、そして 700×gで10分遠心分離した。
【0033】
細胞を36μg/mlのインスリン(Sigma) 、 1.6μg/mlのトランスフェリン (Sigma, St. Louis, MO) 、2mMのL−グルタミン、10%の胎児牛血清、1%の抗生物質/抗真菌物質溶液の入った10mlのダルベッコ改良イーグル培地の中に再懸濁し、そして25cm2 コーニング組織培養フラスコに分注し、そして5%の CO2、95%の大気の中で40.5℃でインキュベーションした。24時間のインキュベーション後、培地を交換した。この一次培養物は上皮様細胞の中心及び放射状の繊維芽細胞を有する莫大な外植片を含んだ。
【0034】
培養物を集密となるまで増殖させ(5日)、そしてプレートからトリプシン/EDTA溶液(PBS中の0.05%のトリプシン及び0.02%のエチレンジアミン四酢酸(EDTA))を用いて除去し、そして2回目の継代のために再プレーティングした。第二継代目において、一部の細胞を50%のDMEM培地、12%のDMSO及び38%の胎児牛血清を含むコンディショニング培地の中で凍結した。これらの細胞を気相液体窒素の中で24hr凍結し、次いで水性液体窒素に長期保存のため移し入れた。
【0035】
第2継代(P2)の細胞を 2.7×104 細胞/mlの播種密度で再プレーティングした。これらの細胞を数ケ月継代培養した。培養した繊維芽細胞は8〜9継代にわたり急速増殖し、次いで多量の細胞死を伴って遅くなり始めた。クリーゼ (crises) の際、細胞を ATV溶液 (1000ml中、8g/lのNaCl、 0.4gの KCl、1gのデキストロース、0.58gのNaHCO3、 0.5gのトリプシン (Difco 1:250)、 0.2gのベルセン(二ナトリウム塩))を用いて継代した。細胞を36μg/mlのインスリン(Sigma) 、 1.6μg/mlのトランスフェリン(Sigma) 、2mMのL−グルタミン、10%の胎児牛血清及び1%の抗生物質/抗真菌物質溶液の入ったダルベッコ改良イーグル培地の中で増殖させた。大半の細胞が継代11(P11)で死んでいる又は死ぬことに注目すべきである;しかしながら、わずかな細胞は健康な繊維芽細胞であった。P11細胞を皿の上に4週間、3日毎に新鮮な培地を再供給しながら維持した。一部の細胞を凍結し、そして残りの細胞は小面積にまで濃縮し、そして2回目の継代培養のために十分に集密となるまで更に2週間増殖させた。P15では、細胞は細胞形態学において一層均一なようであり、そして1日当り0.32集団倍化速度で増殖した。P20では、集団倍化は1日当り約 0.7〜約 0.8集団倍化にまで増大した。この時点で細胞は非常に均一な形態を有すようである。細胞をUMNSAH/DF#1とし、そして19ケ月にわたり連続培養されたものである。これらの細胞は現在継代 160である。P5由来の細胞を凍結し(上記の通り)、そして融解した。サブクローニングした細胞を増殖させ、そしてこの方法の再現性を他のクローンの同定を介して確認した。いくつかの更なるクローンがP11より得られた。
【0036】
実施例2
ウィルス夾雑物についての細胞試験
本発明の細胞を夾雑核酸フラグメントを同定するために PCRを利用してウィルス夾雑物について試験した。本発明の細胞が夾雑ウィルスを含むかどうかを決定するために様々なウィルスに対する多種多様な市販検査キットがある。同様に、ウィルス抗原を検査するための商業的に有用な検査法がある(例えば、商業的に有用な ELISAアッセイ等)。抗原は様々なウィルスに由来する。これらの検査は当該培養物が夾雑ウィルスを含まないことを実証する日常の実験技術を利用する。
【0037】
一連の検査において、これらの細胞を逆転写酵素活性について検査した。急速増殖培養物由来の1×106 個の細胞を4mlの培地において単離した。この培地を−80℃での数回の凍結融解にかけ、細胞を溶解させた。溶解細胞を有する培地を10%のグリセロール勾配の上に積層した。この勾配物をSW40ローター(Beckman Instruments, Pal Alto, CA) を用い 40,000rpmで60分遠心した。存在するなら、ウィルス粒子はペレット化した。培地を捨て、そしてペレットを20μlの Nonidet P−40 (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)の中に再懸濁させた。
【0038】
エッペンドルフチューブを41℃に加熱した。5μlのサンプルを45mMのトリス、pH 7.8、2mMの2−βメルカプトエタノール、2mMの酢酸(第一)マンガン、 0.1%のTriton X−100 、10μMづつのdATP, dCTP, dGTP (Boehringer Mannheim Biochemical, Indianapolis, IN)、 2.4μgのポリA(Sigma) 、60ngのプライマー dT 12−19 (Pharmacia)、 0.4μCi/反応の 3Hチミジン三リン酸(15,000〜28,000 cpm/pmole 活性、Amersham)を含む45μlの逆転写酵素カクテルに加えた。
【0039】
この反応体を41℃で1時間インキュベーションした。陰性コントロールは5μlの ddH2O及び45μlのカクテルを使用した。2つの既知の陽性コントロールをこのアッセイに含ませた。アッセイは1mlの10%のトリクロロ酢酸(TCA, Columbus Chemical Industries, Inc., Columbus, WI) の添加により停止させた。この混合物をWhatman GF/Cガラス0.45ミクロンプレフィルターで濾過した。5%の TCAを用いて数回の洗浄を実施した。フィルターを5mlのシンチレーション計測液を含むシンチレーションバイアルを利用する Beckman Instruments Scintillationカウンターに移した。サンプルを 050〜600 ウィンドー設定値を用いて計測した。カクテルバックグランド(陰性コントロール)よりも3倍の計測値の上昇を陽性と考えた。
【0040】
一次培養物は本発明において用いた他の細胞と同じように陰性と検査された。逆転写酵素アッセイについての更なる情報はCrittendenら、Virology 57 : 128-138, 1974 を参照のこと。
【0041】
実施例3
細胞の腫瘍原潜在性を評価するためのソフトアガロースコロニー形成アッセイ
腫瘍原潜在性について検査するため、細胞をソフトアガーの中での増殖について検査した。ソフトアガロースベースを、21.6mlの濃厚McCoy's 5A培地〔 Gibco ; 120mlの胎児牛血清(熱不活性化)、5mlのNaピルベート(2.2%ストック)、1mlのL−セリン(21mg/mlストック)、5mlのL−グルタミン(200mMストック) 、12.5mlのHepes(1Mストック)〕、 5.9mlのアスパラギン(4.4mg/mlの無菌濾過ストック) の中で12mlの2%のアガロース溶液(オートクレーブにかけ、56℃に冷やしたもの)を混合することにより作った。7mlの温暖培地/アガロースを100mm2の組織培養皿に注ぎ、そして組織培養フッドの中で1hrかけて室温で固化させた。
【0042】
活発に増殖する(約40〜約70%の集密度の)培養物から細胞をトリプシン処理により除去し、10%の胎児牛血清(L−グルタミン及び抗生物質−抗真菌物質入り)を含む新鮮DMEM培地中の単一細胞懸濁物を得た。約1×106 個の細胞を10%の胎児牛血清、0.75mlの1%のアガロース及び50μlの2β−メルカプトエタノールを含む 4.2mlのDMEM培地に加えた。温暖培地/アガロースは細胞に添加される前に確実に42℃である注意が要される。すばやく、5mlの上記細胞懸濁物をアガロースプレートの上に積層した。
【0043】
細胞を5%の CO2及び95%の大気インキュベーターの中で37℃で増殖させ、そして35日間観察した。プレートを2重で3p−ニトロフェニル−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT染料)で染色し、そしてコロニー形成及び増殖について0,5,10,15,20,30及び35日目に検査した。60μmより大きい染色されたコロニーを全て陽性と考えた。
【0044】
全ての細胞が陰性と検査された。ソフトアガーアッセイについての更なる情報は Hamburgerら、Prog. Clin. Biol. Res. 48 : p 43, 135, 179, 1980から得られる。
【0045】
実施例4
不死化細胞の腫瘍原性
ミネソタ大学の動物使用プロトコール(プロトコール# 95 0300−1、1995年3月〜1996年12月)に概略してある指針に従い、細胞を試験動物に注射し、細胞が腫瘍原性であるか否かを調べた。
【0046】
活発に増殖する細胞を細胞培養プレートから除去し、そして6羽のSPAFAS系成鶏 (Hy−Vac, Adel, Iowa)に注射した。4×106 個の細胞の皮下注射をニワトリの翼に与えた。注射箇所を 3.5ケ月間毎週検査した。今日までに作製したどのトランスフェクション細胞(皮膚、心臓及び筋肉)についても注射箇所において腫瘍は観察されず、そして動物は全て健康を維持した。この実験は不死化細胞が腫瘍原性でないことを証明した。
【0047】
実施例5
ウィルス増殖を支持する細胞の能力
細胞をローラーボトルの中に 5.0×105 細胞/cm2 で播種した。細胞を24時間かけて付着させ、そして細胞計測のためにコントロールを回収した。細胞をDMEM(4.5g/lのグルコース)、4%の胎児牛血清、2mMのL−グルタミン、50mg/lのゲンタマイシンの中にウィルス感染のために増殖させた。細胞は細胞当り0.0006 HVTウィルス粒子の感染多重度で感染させた。ローラーボトルを CPEの進行について毎日検視した。ボトルを感染46hr後に回収し、そのときは約50%の CPEであった。 HVT感染細胞を10%のDMSO入りの増殖培地の中で 2.0×107 細胞/mlの濃度で凍結した。 HVTの力価はプラークアッセイにより定量した。ウィルスを増殖培地の中で系列希釈し、そして許容細胞集密の単層の上に載せた。培養物を表示時間インキュベーションし、そして細胞を固定し、そして染色した。単層上のプラークを計測し、そしてウィルス力価を用量当りのプラーク形成単位として示した。
【0048】
これらの細胞をレオウィルス生産を支持するその能力について検査した。 2.5×108 個の細胞を 8.2TCID50/mlの力価を有するレオウィルスの WSS−Reo 1733株で感染させた。細胞は0.005, 0.001又は0.0005感染性ウィルス粒子/細胞の感染多重度で感染された。感染細胞をローラーボトルの中で増殖させ、そして注射の48,64及び72時間後に検査し、そして多量のウィルス増殖が示された。
【0049】
実施例6
細胞基材としてのトランスフェクション皮膚細胞の利用
本発明の細胞は一次細胞のウィルス複製を支持するための基材として有用である。これらの実験において、不死化細胞を一次細胞と混合した。一の研究において、一次細胞を感染させ、そして当該不死化細胞と混合し、そして培養物の中に入れる。別の研究においては、一次細胞を感染させ、そして不死化細胞の上に載せる。この場合、不死化細胞は組織培養フラスコの中に菌叢として既に配置されている。一の例において、ウィルスはエッグ・ドロップ・シンドローム・ウィルスであり、そして一次細胞は一次鶏胚肝細胞である。第二の例においては、一次細胞が内皮細胞、好ましくは腎内皮細胞であり、そしてウィルスは感染性気管支炎ウィルスである。一次細胞、対、不死化細胞の好適な比は約1:5〜約1:20であり、そしてより好ましくは約1:10である。混合細胞集団の中で増殖する一次細胞のウィルス力価は培養物中の単独の一次細胞の力価より高い。不死化細胞は一次細胞が商業的条件下でのウィルス繁殖に利用されることを可能にする。
【0050】
本発明は特定の態様に限定されるものではない。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次ニワトリ胚繊維芽細胞に由来する自発性不死化細胞系であって、ここで当該細胞系は一日当たり約0.6 〜約1.2 の集団倍化速度で培養物の中で増殖できる、細胞系。
【請求項2】
ウィルス複製を支持する不死化細胞系の培養物又は不死化サブクローンである、請求項1記載の細胞系。
【請求項3】
ウィルスを含む請求項1又は2記載の細胞系。
【請求項4】
前記細胞の中での組換タンパク質の発現を指令することのできる少なくとも一つのベクターを含む、請求項1又は2記載の細胞系。
【請求項5】
組換タンパク質を発現する、請求項4記載の細胞系。
【請求項6】
前記ベクターが組換ウィルスの少なくとも一部をコードする、請求項4記載の細胞系。
【請求項7】
前記ベクターがレトロウィルスベクターである、請求項4記載の細胞系。
【請求項8】
ニワトリ胚繊維芽細胞から不死化細胞系を生産する方法であって、下記の工程:
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
を含んで成る方法。
【請求項9】
ウィルスを細胞の中で増殖させるための方法であって、下記の工程:
請求項1記載の細胞系を培養物の中で増殖させ;
この細胞をウィルスで感染させ;
このウィルスをこの細胞の中で複製させ;そして
この細胞の中で複製したウィルスを回収する;
を含んで成る方法。
【請求項10】
一次細胞からウィルスを増殖させる方法であって、下記の工程:
一次細胞をウィルスとインキュベ−ションし;
当該一次細胞を、
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
ことにより得られた不死化ニワトリ細胞と合わせ;そして
当該第一細胞と当該不死化ニワトリ細胞との組合せから生産されたウィルスを単離する;
を含んで成る方法。
【請求項11】
前記ウィルスがレトロウィルスである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ウィルスがヘルペスウィルスである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記ウィルスがマレク病ウィルスである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ウィルスがフォウル・ポックス・ウィルス及びレオウィルスから成る群から選ばれる、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記不死化細胞がATCC受託番号 CRL−12203 として特定される細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項16】
サンプル中のウィルスの量を定量する方法であって、下記の工程:
少なくとも一式のウィルス希釈系列を用意し;
当該少なくとも一式のウィルス希釈系列由来のウィルスのサンプルを、
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
ことにより得られた不死化ニワトリ細胞と接触させ;そして
当該ウィルス希釈系列の中に存在するウィルスの量を定量する;
を含んで成る方法。
【請求項17】
前記不死化細胞がATCC受託番号 CRL−12203 として特定される細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
不死化細胞から組換ウィルスを生産する方法であって、下記の工程:
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
ことにより不死化ニワトリ細胞を獲得し;
少なくとも一部が組換ウィルスをコードする少なくとも一の核酸フラグメントを当該不死化細胞の少なくとも一に導入し;そして
当該不死化細胞から当該組換ウィルスを単離する;
を含んで成る方法。
【請求項19】
前記核酸フラグメントがベクターを更に含んで成る、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記ウィルスがレトロウィルスである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記ウィルスがヘルペスウィルスである、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記ウィルスがマレク病ウィルスである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記不死化細胞がATCC受託番号 CRL−12203 として特定される細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
組換ウィルスをコードする核酸フラグメントを含んで成る細胞であって、ここで当該細胞は
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
ことにより得られた不死化ニワトリ細胞である、細胞。
【請求項25】
前記不死化細胞がATCC受託番号 CRL−12203 として特定される細胞である、請求項24記載の細胞。
【請求項26】
不死化細胞の中でタンパク質を生産する方法であって、下記の工程:
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
ことにより不死化ニワトリ細胞を獲得し;
少なくとも一種のタンパク質をコードする核酸を当該細胞に導入し;そして
当該細胞から当該タンパク質を単離する;
を含んで成る方法。
【請求項27】
前記少なくとも一種のタンパク質をコードする核酸が遺伝子ベクターである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記獲得工程がATCC受託番号 CRL−12203 として特定される細胞の獲得を含んで成る、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記遺伝子ベクターがレトロウィルスベクターである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
請求項26記載のタンパク質を生産する不死化ニワトリ細胞。
【請求項31】
細胞を増殖する方法であって、下記の工程:
一次細胞を不死化ニワトリ細胞を有する細胞培養物に入れ、ここで当該不死化ニワトリ細胞は
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
ことにより獲得したものであり;そして
当該一次細胞を培養物の中で維持する、
を含んで成る方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次ニワトリ胚繊維芽細胞に由来する自発性不死化細胞系であって、ここで当該細胞系は一日当たり約0.6 〜約1.2 の集団倍化速度で培養物の中で増殖でき、そして不死化される前にウィルス又は突然変異を誘発する因子に暴露されていない、細胞系。
【請求項2】
ウィルス複製を支持する不死化細胞系の培養物又は不死化サブクローンである、請求項1記載の細胞系。
【請求項3】
ウィルスを含む請求項1又は2記載の細胞系。
【請求項4】
前記細胞系の中での組換タンパク質の発現を指令することのできる少なくとも一つのベクターを含む、請求項1又は2記載の細胞系。
【請求項5】
組換タンパク質を発現する、請求項4記載の細胞系。
【請求項6】
前記ベクターが組換ウィルスの少なくとも一部をコードする、請求項4記載の細胞系。
【請求項7】
前記ベクターがレトロウィルスベクターである、請求項4記載の細胞系。
【請求項8】
ニワトリ胚繊維芽細胞から不死化細胞系を生産する方法であって、下記の工程:
一次ニワトリ胚繊維芽細胞を培養物の中で増殖させ;
この培養物中の繊維芽細胞をそれらが細胞老衰を開始するまで継代し;
細胞老衰中の細胞を約30%〜約60%の培養集密度が維持されるまで濃縮し;
この培養物中の非老衰細胞のフォーカスを同定し;
この非老衰細胞を単離し;そして
この非老衰細胞を30回超の継代にわたり増殖させる;
を含んで成り、ここで当該細胞系は不死化される前にウィルス又は突然変異を誘発する因子に暴露されていないものである、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法により製造された不死化細胞系。
【請求項10】
ウィルスを細胞の中で増殖させるための方法であって、下記の工程:
請求項1記載の細胞系を培養物の中で増殖させ;
この細胞をウィルスで感染させ;
このウィルスをこの細胞の中で複製させ;そして
この細胞の中で複製したウィルスを回収する;
を含んで成る方法。
【請求項11】
一次細胞からウィルスを増殖させる方法であって、下記の工程:
一次細胞をウィルスとインキュベ−ションし;
当該一次細胞を請求項1又は9に記載の不死化細胞系と組み合わせ;そして
当該一次細胞と当該不死化ニワトリ細胞系との組合せから生産されたウィルスを単離する;
を含んで成る方法。
【請求項12】
前記ウィルスがレトロウィルスである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ウィルスがヘルペスウィルスである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記ウィルスがマレク病ウィルスである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ウィルスがフォウル・ポックス・ウィルス及びレオウィルスから成る群から選ばれる、請求項11記載の方法。
【請求項16】
サンプル中のウィルスの量を定量する方法であって、下記の工程:
少なくとも一式のウィルス希釈系列を用意し;
当該少なくとも一式のウィルス希釈系列由来のウィルスのサンプルを請求項1または9記載の不死化細胞系と組み合わせ、そして
当該ウィルス希釈系列の中に存在するウィルスの量を定量する;
を含んで成る方法。
【請求項17】
不死化細胞から組換ウィルスを生産する方法であって、下記の工程:
少なくとも一部が組換ウィルスをコードする少なくとも一の核酸フラグメントを請求項1または9記載の不死化細胞系に導入し;そして
当該不死化細胞から当該組換ウィルスを単離する;
を含んで成る方法。
【請求項18】
前記核酸フラグメントがベクターを更に含んで成る、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ウィルスがレトロウィルスである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記ウィルスがヘルペスウィルスである、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記ウィルスがマレク病ウィルスである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
組換ウィルスをコードする核酸フラグメントを含んで成る細胞であって、ここで当該細胞は請求項1または9記載の不死化細胞系である、細胞。
【請求項23】
不死化細胞の中でタンパク質を生産する方法であって、下記の工程:
請求項1または9記載の不死化細胞系を獲得し;
少なくとも一種のタンパク質をコードする核酸を当該細胞に導入し;そして
当該細胞から当該タンパク質を単離する;
を含んで成る方法。
【請求項24】
前記少なくとも一種のタンパク質をコードする核酸が遺伝子ベクターである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記遺伝子ベクターがレトロウィルスベクターである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
請求項23記載のタンパク質を生産する不死化ニワトリ細胞。
【請求項27】
細胞を増殖する方法であって、下記の工程:
一次細胞を請求項1または9記載の不死化細胞系を有する細胞培養物に入れ、そして
当該一次細胞を培養物の中で維持する、
を含んで成る方法。

【公開番号】特開2006−320328(P2006−320328A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178683(P2006−178683)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【分割の表示】特願2005−11481(P2005−11481)の分割
【原出願日】平成9年8月13日(1997.8.13)
【出願人】(503411037)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (2)
【Fターム(参考)】