説明

ウィルス感染症の予防または治療用組成物

本発明によれば、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を含有するコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用組成物、および還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンを含有するコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ウィルス感染症の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
コロナウィルスは人、豚、牛、鶏などに感染するRNAウィルスであり、人では風邪の原因ウィルスとしてインフルエンザウィルスと共に古くから知られているが、コロナウィルスとインフルエンザウィルスは以下の点において異なっている。
すなわち、コロナウィルスは一本鎖のプラス鎖RNAウィルスであるのに対し、インフルエンザウィルスは一本鎖のマイナス鎖RNAウィルスである[J.Virol.,29,293−300(1979)、Am.J.Vet.Res.,37,1031−41(1976)およびウィルス、第52巻、55−59頁、2002年参照]。また、インフルエンザウィルスA、Bとコロナウィルスが認識するレセプターのシアル酸分子種は異なっている[J.Virol.,65,6232−6273(1991)およびVirology,189,121−31(1992)参照]。
また、インフルエンザウィルスの場合、膜に存在するスパイク糖蛋白質の1つであるヘマグルチニン(HA)の1塩基置換によって宿主域を変えることが報告されており、加えて抗体圧等の刺激によって抗原を変化させることで宿主からの攻撃を逃れていることが知られている(ウィルス、第51巻、193−200頁、2001年参照)のに対し、コロナウィルスの場合、以下に記載したウィルスRNAの転写過程に起因し、容易に変異すると考えられている。
インフルエンザウィルスとコロナウィルスのウィルスRNAの転写過程は、以下の点で相違する。インフルエンザウィルスのウィルスRNAの転写は宿主細胞の核内で行われ、ウィルスRNAは、宿主細胞のmRNAの5′末端部に存在するCAPを自らの3′末端部分にプライマー様に付加することによってウィルス鋳型RNAを合成する[J.Gen.Virol.,83,723−34(2002)参照]。このためインフルエンザウィルスでは、アクチノマイシンDやα−アマニチンといったRNAポリメラーゼの阻害剤によって宿主側のmRNA合成をブロックすることでその増殖が阻害されることが明らかにされている[Philos Trans R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,288,359−70(1980)およびArch.Virol.,141,1587−94(1996)参照]。
一方、コロナウィルスの転写は宿主細胞の細胞質で行われる。その過程についての詳細は現段階においては不明だが、少なくとも宿主のmRNAを利用した転写は行われないことが知られている。したがって、アクチノマイシンDやα−アマニチンといった薬剤ではほとんどの場合阻害されない[Advances in virus research,48,1−100(1997)参照]。
重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome。以下、SARSと略す)ウィルスは、野生動物が起源とも思われる新規なコロナウィルスで、SARSウィルスが引き起こすSARSの患者数は、全世界で感染者数8439人超、死亡者812人(2003年7月3日現在)と死亡率が高く、その治療、予防対策は世界的な急務となっている。SARSウィルスは、75%のアルコールなどの殺菌剤や消毒剤で死滅させることができることは知られているが、ワクチンを初めとする感染の予防や治療に有効な薬剤は知られていない。
グルタチオンはγ−L−Glu−L−Cys−Glyの構造を有するトリペプチドで、アルコールにより生じるアセトン血症の治療剤として知られている。
グルタチオンには、コロナウィルスと薬物感受性が異なる前記インフルエンザウィルス感染症の予防または治療効果があることが知られている(国際公開第98/30228号パンフレット参照)が、コロナウィルス感染症の予防または治療効果があることは知られていない。
カテキンは、木本植物に多く含まれる水溶性の多価フェノールで、インフルエンザウィルスの増殖阻害作用があることが知られている[Planta medica,67,240−43(2001)参照]。
また、グルタチオンとカテキンを含有する抗インフルエンザ用栄養食品も知られている(公表特許公報2001−511770号参照)が、カテキンを含む組成物にコロナウィルス感染症の予防または治療効果があることは知られていない。
フラビウィルス科に属するウィルスであり一本鎖プラス鎖RNAウィルスとしては、ブタコレラウィルス(CSFV)、牛ウィルス性下痢ウィルス(BVDV)などが知られている。特にBVDVは、血小板の減少を伴う致死率の高い出血性症候群を誘発するウィルスとして畜産業では大きな問題となっているウィルスであるが、BVDV感染症の有効な予防法は知られていない。
【発明の開示】
本発明は、コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療に有効な組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の(1)〜(15)に関する。
(1)還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を含有するコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療用組成物。
(2)還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンを含有する上記(1)の組成物。
(3)組成物が、1種以上の酸化防止剤を含有する上記(1)または(2)の組成物。
(4)コロナウィルス科に属するウィルスが、重症急性呼吸器症候群(以下、SARSと略す)ウィルスである上記(1)〜(3)のいずれか1つの組成物。
(5)フラビウィルス科に属するウィルスが、牛ウィルス性下痢ウィルス(以下、BVDVと略す)である上記(1)〜(3)のいずれか1つの組成物。
(6)組成物が、医薬である上記(1)〜(5)のいずれか1の組成物。
(7)医薬が、経口剤、注射剤、鼻エアロゾル剤または吸入剤である上記(6)の組成物。
(8)組成物が、食品、飼料、食品添加物または飼料添加物である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の組成物。
(9)30℃〜50℃の上記(6)の鼻エアロゾル剤を非ヒト動物の鼻内に投与することを特徴とする非ヒト動物のコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療方法。
(10)コロナウィルス科に属するウィルスが、SARSウィルスである上記(9)の予防または治療方法。
(11)フラビウィルス科に属するウィルスが、BVDVである上記(9)の予防または治療方法。
(12)コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療用組成物の製造のための還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質の使用。
(13)還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質が、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンである上記(12)の使用。
(14)還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を投与することによるコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療方法。
(15)還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンを投与することによる上記(14)の予防または治療方法。
本発明において、還元型グルタチオンとはγ−L−Glu−L−Cys−Glyの構造を有するトリペプチドを表し、酸化型グルタチオンとは還元型グルタチオン2分子がSS結合により結合したグルタチオンジペプチドを表す。
本発明で用いられる還元型グルタチオンおよび還元型グルタチオンは、どのような製造法によって得られたものであってもよく、還元型グルタチオンの製造法としては、例えば、酵母等の微生物からの抽出法[Methods in Enzymology,,603(1957)]、化学合成法[Bull.Chem.Soc.Jpn.,53,2529(1980)]、酵素法(特開昭61−74595)等、酸化型グルタチオンの製造法としては、Acta Biochim.Pol.,17,175(1970)記載の方法をあげることができる。
以下に、還元型グルタチオンの製造法として、還元型グルタチオンの化学合成法、および酵母からの抽出法を例示する。
1.還元型グルタチオンの化学合成法
還元型グルタチオンは、Bull.Chem.Soc.Jpn.,53,2592(1980)記載の方法にしたがって化学合成することができる。
N−ホルミル−L−2−アミノ−4−シアノ酪酸エチルエステルを、エチルL−システイニルグリシネートと縮合して、(4R)−2−[(3S)−3−エトキシカルボニル−3−(ホルミルアミノ)プロピル]−4−(エトキシカルボニルメチルカルバモイル)−2−チアゾリンを取得し、続いてアセトン水溶液中、約−15℃でケン化した後、希薄硫酸(pH4)で処理することにより、ホルミルグルタチオンを得る。次に、0.5mmol/lの硫酸で加水分解することによりホルミル基を除去し、遊離グルタチオンを得る。必要に応じて、さらに精製する。このさらなる精製では、遊離グルタチオンをその銅チオレートに転化した後、硫化水素で処理することにより、純粋なグルタチオンを得ることができる。
2.還元型グルタチオンの酵母からの抽出法
還元型グルタチオンは、Methods in Enzymology,,603(1957)記載の方法にしたがって酵母から抽出することができる。
酵母エキスに、等重量の10%トリクロロ酢酸(TCA)を添加する。遠心分離により得られた残留物を、TCAの最初の容積の半分でさらに二回抽出する。抽出物を合わせて、そこに、抽出物の容積の4分の1量の塩化カドミウム溶液を添加する。10mol/lの水酸化ナトリウムを添加することにより溶液のpHを5にした後、重炭酸塩でpH6.5に調整する。沈殿したカドミウム錯体を、0℃で1時間保持した後、氷冷蒸留水で2回洗浄する。沈殿を最小量の2mol/lの硫酸に溶解した後、グルタチオンの取得予想量10mg当たり3mlの0.5mol/lの硫酸を添加する。必要に応じて溶液を濾過し、グルタチオンの存在量を、アリコット単位で求める。溶液を40℃に暖め、グルタチオン10mg当たり2.5mgの酸化銅を含有する酸化銅懸濁液を、穏やかに振とうしながら滴下する。得られた沈殿を、0℃で数時間放置し、遠心分離し、0.5mol/lの硫酸で2回、蒸留水で3回及びメタノールで2回順次洗浄する。遊離グルタチオンを単離するために、グルタチオンの銅錯体を水性懸濁液中、水素により分解し、亜硫酸銅を除去した後の溶液を凍結乾燥により乾燥させる。
本発明においてカテキンとは、エピカテキン、カテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキンガレートおよびエピガロカテキンガレート(以下、EGCgと略す)から選ばれるカテキンを単独、またはそれらを任意の組み合わせで任意の量を含むものであればいずれでもよい。また、本発明で用いるカテキンは、市販品であってもよいし、カテキンを含む生物から抽出して取得したものであってもよい。カテキンを含む生物としては、例えば植物、好ましくは茶葉植物等をあげることができ、該生物から抽出して得られるカテキンは、精製物あるいは本発明の効果を有する程度にカテキンが含まれている限りにおいて、粗抽出物であってもよい。
カテキンの抽出法および精製法としては、例えば、緑茶を水で抽出し、クロロホルムでカフェインを除去し、酢酸エチルにより抽出する方法(茶業研究報告 第13号、4頁、1959年4月)、茶抽出液をヘキサンおよびクロロホルムでカフェインを除去し、酢酸エチルにより、目的物である茶カテキン類を抽出する方法(特開昭64−9922号)、茶などの植物体より低級アルコール水溶液で抽出したものを原料とし、ゲルビーズを用いて、高負荷条件が可能な多段バッチプロセスによる、カテキン重合体あるいは複合体を含めた茶カテキン類の製造法(特開平3−14572号)、茶葉を温水抽出して得た茶エキスを原料とし、クロマトカラムに吸着剤を充填し、この吸着剤に茶カテキン類を選択的に吸着させ、親水性有機溶媒により茶カテキン類を溶出回収することによって高純度の茶カテキン類を製造する方法(特開平2−311474号)などをあげることができる。
本発明の組成物は、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬理学的に許容される塩、あるいはカテキンを単独で含有する組成物であってもよいし、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬理学的に許容される塩とカテキンとを含有する組成物であってもよい。
また、本発明の組成物が還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬理学的に許容される塩を含有する場合は、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオンまたはそれらの薬理学的に許容される塩から選ばれる1つの物質を含有してもよいし、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオンおよびそれらの薬理学的に許容される塩を任意の組み合わせで含有してもよい。
還元型グルタチオンおよび酸化型グルタチオンの薬学的に許容される塩(水溶性、油溶性又は分散性生成物の形態)としては、例えば、無機酸、有機酸又は塩基から形成される通常の非毒性塩又は四級アンモニウム塩などがあげられる。無機酸または有機酸から形成される塩としては、例えば、アセテート、アジベート、アルギネート、アスパーテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビスルフェート、ブチレート、シトレート、カンファレート、カンファスルホネート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨーダイド、2−ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレエート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、オキサレート、バモエート、ペクチネート、ベルスルフェート、3−フェニルプロピオネート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、スクシネート、タートレート、チオシアネート、トシレート及びウンデカノエートなどをあげることができる。塩基から形成される塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩、およびアルギニン、リシン等のアミノ酸との塩などをあげることができる。
また、四級アンモニウム塩としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物並びにヨウ化物などの低級ハロゲン化アルキル、ジメチルスルフェート、ジエチルスルフェート及びジブチルスルフェートなどのジアルキルスルフェート、ジアミルスルフェート、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルなどの塩化物、臭化物並びにヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物、アラルキルハライド、例えば、臭化ベンジル及び臭化フェネチル等のような薬剤で四級化して取得できる塩などをあげることができる。他の薬学的に許容される塩としては、スルフェート塩エタノーレート及びスルフェート塩などがある。
本発明の組成物に含まれる酸化防止剤としては、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、銅(酸化第二銅)、亜鉛(酸化亜鉛)、鉄(第一鉄塩)、セレン(セレン酸ナトリウム)、β−カロチン、ポリフェノール類、フラビノイド類、ケルセチン等のフラバノール類、エリオジクチオール等のフラバノン類、カルノシン酸およびカルノゾル等のジテルペノイド類、ロスマリン酸、カフェー酸、クマリン酸およびケイ皮酸等のフェノール酸、コエンザイムQ10、プロブコール、アスタキサンチンおよびリコピン等のカロテノイド類、α−リポエートおよび尿酸塩からなる群より選ばれる物質をあげることができる。
本発明におけるコロナウィルス科に属するウィルスとしては、SARSウィルス、ニワトリコロナウィルス、ヒト感冒コロナウィルス、ウシコロナコロナウィルス等があげられる。
本発明におけるフラビウィスル科に属するウィルスとしては、黄熱ウィルス、テングウィルス、ブタコレラウィルス、BVDVおよびボーダ病ウィルス等があげられる。
本発明における組成物は、医薬、食品、飼料、食品添加物または飼料添加物として用いることができる。
医薬としては、経口剤、口洗浄又はうがい製剤、鼻エアロゾル剤、吸入剤、点滴剤、静脈注射および筋肉注射用の注射剤、座剤などがあげられる。
経口剤は、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬理学的に許容される塩(以下、グルタチオンを略す)およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を必要に応じ担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。
経口剤を製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。
経口剤の剤形としては、錠剤、散剤、顆粒剤、乳剤、シロップ剤、カプセル剤等があげられる。例えば、経口剤の剤形が、錠剤、散剤、顆粒剤等の場合には、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して、製剤化することができる。
経口剤の剤形が乳剤およびシロップ剤等の液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバ、ペパーミント等のフレーバ類などを添加して、製剤化することができる。上記液体調製物中のグルタチオンおよびカテキンの濃度は、いずれの濃度であってもよく、グルタチオンの濃度としては好ましくは10mmol/l〜200mmol/l、より好ましくは20〜50mmol/lの濃度をあげることができ、カテキンの濃度としては好ましくは10μmol/l〜10mmol/l、より好ましくは20μmol/l〜2mmol/lの濃度をあげることができる。また液体調製物のpHは、グルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質が安定であればいずれのpHであってもよく、好ましくは4.0〜6.0の範囲をあげることができる。
経口剤の剤形がカプセル剤である場合は、硬カプセルに充填する、またはカプセル基材で被包成型し、軟カプセル剤として製剤化することができる。カプセル基材としては、ゼラチンをあげることができ、軟カプセルでは可塑性を賦与するためにグリセリンまたはソルビトールを添加する。また、必要に応じて色素、遮光剤として酸化チタン、硫酸バリウム、沈降炭酸カルシウム、防腐剤としてパラオキシ安息香酸エステル類を添加することができる。
本発明の組成物を医薬用経口剤としてヒトに投与する場合の投与量及び投与回数は、形態、年齢、体重、症状などによって異なるが、通常、グルタチオンとして1mg〜10000mg、好ましくは20〜2000mg、より好ましくは50〜500mg、カテキンとして1μg〜500mg、好ましくは20μg〜100mg、より好ましくは50μg〜25mgを1日1回から数回投与する。
口洗浄又はうがい製剤は、グルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質に、抗菌剤、界面活性剤、共界面活性剤、油、水及び他の添加剤、製剤の技術分野において公知の甘味料/矯味矯臭剤などを添加して製剤化することができる。
口洗浄又はうがい製剤に含有されるグルタチオンおよびカテキンは、いずれの濃度であってもよく、グルタチオンの濃度としては、好ましくは10mmol/l〜200mmol/l、より好ましくは20〜50mmol/l、カテキンの濃度としては、好ましくは10nmol/l〜10mmol/l、より好ましくは20μmol〜2mmol/lの濃度をあげることができる。また液体調製物のpHは、グルタチオンおよびカテキンから選ばれる1以上の物質が安定であればいずれのpHであってもよく、好ましくは4.0〜6.0の範囲をあげることができる。
鼻エアロゾル剤、または吸入剤は、医薬製剤の技術分野において周知の手法により、ベンジルアルコール又は他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、当該技術分野において公知の他の溶解剤若しくは分散剤、界面活性剤、ゼリー化剤または緩衝剤及び他の安定化剤並びに可溶化剤を用いて、生理食塩水溶液として調製できる[Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(医薬投与剤形及び薬剤投与系),6th edition,(1995)]。
鼻内投与する場合の製剤(鼻内投与製剤)の調製法は、当業者に公知であり、これらの一部は、当該技術分野において標準的な文献であるREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,17th edition(1985)に記載されている。
鼻内投与製剤に用いられる担体は、該製剤に用いることができる担体であればいずれでも用いることができ、例えば所望の鼻内投与剤形、例えば、溶液、懸濁剤、軟膏またはゲルによって選択することができる。鼻内投与製剤は、一般的に、活性成分の他に多量の水を含有する。少量の他の成分、例えば、pH調整剤、乳化剤若しくは分散剤、保存剤、界面活性剤、ゼリー化剤または緩衝剤および他の安定化剤並びに可溶化剤も存在してよい。また、鼻内投与製剤は、鼻内分泌物と等張であることが好ましい。
上記鼻内投与製剤は、ドロップ、噴霧剤、エアロゾルなどの鼻内投与剤形により投与できる。必要に応じて、投与系は、単位投与系で投与することができる。単位投与量当たり投与される溶液または懸濁剤の容積は、好ましくは5〜400μl、より好ましくは50〜150μlである。
上記した投与製剤の投与系は、ドロッパーボトル、プラスチック製スクィーズ装置、アトマイザー、ネブライザー又は医薬エアロゾル(単位投与量又は複数投与量パッケージ)であることができる。
本発明の組成物を鼻エアロゾル剤又は吸入剤としてヒトに投与する場合、該製剤中のグルタチオンの濃度は10〜50mmol/l、カテキンの濃度は10μmol/l〜2mmol/lであることが好ましい。上記製剤の投与回数は、形態、年齢、体重、症状などによって異なるが、通常、1日に1回から数回投与する。
また、上記鼻エアロゾル剤を鼻内投与する際の該鼻エアロゾル剤の温度としては、30〜50℃、好ましくは35〜40℃、より好ましくは37℃をあげることができる。
点滴剤、静脈注射、筋肉注射用の注射剤は、グルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を水性溶剤に溶解し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。
点滴剤または注射剤を製剤化する際には、水性溶剤、非水溶性溶剤、保存剤、安定剤、無痛化剤、等張化剤、緩衝剤および賦形剤等の添加剤を用いて製剤化することができる。
水性溶剤としては、注射用水、生理食塩水およびリンゲル液など、非水溶性溶剤としては、落花生油、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油および綿実油等の植物油など、保存剤としては、フェノールおよびクレゾールなど、安定剤としては、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸ナトリウムおよびアスコルビン酸など、無痛化剤としては、ベンジルアルコールおよびクロロブタノールなど、等張化剤としては食塩およびブドウ糖など、緩衝剤としては、クエン酸塩、酢酸塩およびリン酸塩など、賦形剤としてはソルビトールなどをあげることができる。
本発明の組成物を点滴剤または注射剤としてヒトに投与する場合の投与量及び投与回数は、形態、年齢、体重、症状などによって異なるが、通常、グルタチオンとして1〜10000mg、好ましくは20〜2000mg、より好ましくは50〜500mg、カテキンとして1μg〜500mg、好ましくは20μg〜100mg、より好ましくは50μg〜20mgを1日1回から数回投与する。
上記した種々の投与剤形の投与系は、ドロッパーボトル、プラスチック製スクィーズ装置、アトマイザー、ネブライザー又は医薬エアロゾル(単位投与量又は複数投与量パッケージ)であることができる。
坐剤は、グルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を、常温で固体であるが、直腸腔中で液化または溶解して薬剤を放出する、適当な非刺激性附形剤、例えば、ココアバター、合成グリセリドエステル又はポリエチレングリコール、と混合することにより製剤化できる。
本発明の食品添加剤は、上記で説明した経口剤と同様な方法により調製することができる。食品添加剤は、通常、必要に応じて他の食品添加剤を混合または溶解し、例えば粉末、顆粒、ペレット、錠剤、各種液剤の形態に加工製造される。
本発明の飲食品としては、グルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を添加したものをあげることができる。
本発明の飲食品は、飲食品中にグルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を添加する以外は、一般的な飲食品の製造方法を用いることにより、加工製造することができる。
本発明の飲食品は、例えば流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、解砕造粒、噴霧造粒、噴射造粒等の造粒方法、パンコーティング、流動層コーティング、ドライコーティング等のコーティング方法、パフドライ、過剰水蒸気法、フォームマット方法、マイクロ波加熱方法等の膨化方法、押出造粒機やエキストルーダー等の押出方法等を用いて製造することもできる。
本発明の飲食品は、ジュース類、清涼飲料水、茶類、乳酸菌飲料、発酵乳、冷菓、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等の乳製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉製品、蒲鉾、竹輪、さつま揚げ等の魚肉練り製品、だし巻き、卵豆腐等の卵製品、クッキー、ゼリー、チューインガム、キャンデー、喉飴、スナック菓子等の菓子類、パン類、麺類、漬物類、燻製品、干物、佃煮、塩蔵品、スープ類、調味料等、いずれの形態のものであってもよい。
グルタチオンおよびカテキンから選ばれる物質を1つ以上含有する喉飴は、米国特許第3,439,089号に準じて調製することができる。
また、本発明の飲食品は、例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態のものであってもよい。
本発明の飲食品は、コロナウィルスまたはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療用健康食品または機能性食品等の飲食品として用いることができる。
本発明の飲食品または食品添加剤には、一般的に飲食品に用いられる食品添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
本発明の飲食品中へのグルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質、または本発明の食品添加剤の添加量は、飲食品の種類、当該飲食品の摂取により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、グルタチオンまたはカテキンとして、通常は0.1〜90重量%、好ましくは1〜70重量%、特に好ましくは5〜50重量%含有するように添加される。
本発明の飲食品の摂取量は、摂取形態、摂取者の年齢、体重等に応じて異なるが、通常成人に対し一日あたりグルタチオンとして、100〜10000mg、好ましくは100〜2000mg、より好ましくは200〜1000mg、カテキンとして100μg〜500mg、好ましくは100μg〜100mg、より好ましくは200μg〜50mgであり、1日に1回または数回に分けて摂取する。摂取期間は、特に限定はないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ケ月間である。
本発明の飼料添加剤は、本発明の経口剤と同様な方法により調製することができる。飼料添加剤は、通常、必要に応じて他の飼料添加物を混合または溶解し、例えば粉末、顆粒、ペレット、錠剤、各種液剤の形態に加工製造される。
飼料添加物としては、上記本発明の飲食品添加剤に添加することができる食品添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等をあげることができる。
本発明の飼料は、哺乳類または鳥類に対するコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防若しくは治療用の飼料として、例えばウシ、ウマ、ブタ等の家畜用飼料、およびニワトリ、七面鳥等の家禽用飼料として用いることができる。
本発明の飼料は、飼料中にグルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質、または本発明の飼料添加剤を添加する以外は、一般的な飼料の製造方法を用いることにより加工製造することができる。
飼料としては、穀物類、そうこう類、植物性油かす類、動物性飼料、その他の飼料、精製品、またはこれらの混合物等をあげることができる。
穀物類としては、例えばマイロ、小麦、大麦、えん麦、らい麦、玄米、そば、あわ、きび、ひえ、とうもろこし、大豆等をあげることができる。
そうこう類としては、例えば米ぬか、脱脂米ぬか、ふすま、末粉、小麦、胚芽、麦ぬか、ペレット、トウモロコシぬか、トウモロコシ胚芽等をあげることができる。
植物性油かす類としては、例えば大豆油かす、きな粉、亜麻仁油かす、綿実油かす、落花生油かす、サフラワー油かす、やし油かす、パーム油かす、胡麻油かす、ひまわり油かす、菜種油かす、カポック油かす、芥子油かす等があげられる。
動物性飼料としては、例えば北洋ミール、輸入ミール、ホールミール、沿岸ミール等の魚粉、フィッシュソルブル、肉粉、肉骨粉、血粉、分解毛、骨粉、家畜用処理副産物、フェザーミール、蚕よう、脱脂粉乳、カゼイン、乾燥ホエー等をあげることができる。
その他の飼料としては、アルファルファ、ヘイキューブ、アルファルファリーフミール、ニセアカシア粉末等の植物茎葉類、コーングルテン、ミール、コーングルテンフィード、コーンステープリカー等のトウモロコシ加工工業副産物、デンプン等のデンプン加工品、酵母、ビールかす、麦芽根、アルコールかす、しょう油かす等の発酵工業産物、柑橘加工かす、豆腐かす、コーヒーかす、ココアかす等の農産製造副産物、キャッサバ、そら豆、グアミール、海藻、オキアミ、スピルリナ、クロレラ、鉱物等をあげることができる。
精製品としては、カゼイン、アルブミン等のタンパク質、アミノ酸、スターチ、セルロース、蔗糖、グルコース等の糖質、ミネラル、ビタミン等があげられる。
本発明の飼料は、例えば流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、解砕造粒、噴霧造粒、噴射造粒等の造粒方法、パンコーティング、流動層コーティング、ドライコーティング等のコーティング方法、パフドライ、過剰水蒸気法、フォームマット方法、マイクロ波加熱方法等の膨化方法、押出造粒機やエキストルーダー等の押出方法等を用いて製造することもできる。
本発明の飼料中へのグルタチオンおよびカテキンから選ばれる1つ以上の物質、または飼料添加剤の添加量は、飼料の種類、当該飼料の摂食により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、グルタチオンまたはカテキンとして、通常は0.001〜100重量%、好ましくは0.01〜80重量%、特に好ましくは0.1〜60重量%である。
本発明の飼料の経口投与量、すなわち摂取量は、摂取形態、摂取動物の種類、該動物の年齢、体重等に応じて異なるが、動物に対し一日あたりグルタチオンとして、通常、体重1kg当たり0.1mg〜10g、好ましくは1mg〜5g、より好ましくは10mg〜1g、カテキンとして、通常、体重1kg当たり0.1μg〜0.5g、好ましくは1μg〜0.25g、より好ましくは10μg〜0.5gであり、1日に1回または数回に分けて摂取する。摂取期間は、特に限定はないが、通常は1日間〜5年間、好ましくは2週間〜1年間である。
グルタチオンのコロナウィルス科に属するウィルスの増殖抑制効果を試験例1に示す。
試験例1
Madin Darby Bovin Kidney(MDBK)cells(ATCC CCL−22)を48ウェルプレートを用いて、90%コンフェルトになるように培養した後、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄した。
ウシ胎児血清(FBS)−free Minimum Essential Medium(MEM)[Science,122,501(1952)]で希釈した各種濃度のウシコロナウィルス(BCV)Kakegawa株(日本全薬工業社から入手)[2.56〜256ヘマグルチニン(HA)価/25μl]およびMebus株(ATCC VR−874)(0.064および0.64HA価/25μl)を1ウェルあたり200μlずつ接種し、37℃で90分間、15分間おきにプレートを動かして、インキュベーションした。PBSで3回洗浄した後、1、5、10、20または30mmol/lの還元型グルタチオンを含有する5%FBS含有MEMを500μl/ウェル添加し、更に37℃でインキュベートした。インキュベーション中、24、48、72および96時間で上清を100μl回収し、ヘマグルチニン(HA)価を測定した。
HA価は、各ウェルに0.03%のBSAを含有する25μlのPBSを加え、それにBCVの培養上清25μlを培数希釈して添加し、これに0.8%のマウス固定化赤血球を添加して、3時間後に赤血球の凝集反応を測定することにより行った。
結果を第1図に示す。また、還元型グルタチオン添加後、経時的にHA価を測定した結果を第2図に示す。
第1図および第2図は、還元型グルタチオンにコロナウィルス増殖抑制効果があることを示している。
カテキンのウィルス感染予防効果を以下の試験例2および3に示す。
試験例2
MDBK細胞を48ウェルプレートに90%コンフルエントになるように培養した後、PBSで2回洗浄した。
50%Tissue Culture Infectious Dose(TCID50)が1.8×10/mlのBCV Kakegawa株と1mg/mlのカテキン(EGCg:株式会社ファーマフーズより購入)とを25℃または37℃で、それぞれ30、60または90分間接触させた後、MEMで10倍希釈列を作製した。
該希釈ウィルス液をMDBK細胞に接種し、37℃で90分間、15分間おきにプレートを動かして、インキュベーションした。PBSで3回洗浄後、5%FBS含有MEMを500μl/ウェル添加し、72時間培養後、ウィルスが感染した細胞を細胞変性効果によって識別することでTCID50を求めた。結果を第1表に示す。

第1表は、カテキンにはコロナウィルス感染症の予防効果があることを示している。
試験例3
MDBK細胞を48ウェルプレートに90%コンフルエントになるように培養した後、PBSで2回洗浄した。
1.4×10 TCID50/mlのBVDV(ATCC VR524)と1mg/mlのカテキン(EGCg:株式会社ファーマフーズ研究所から購入)とを37℃で30、60または90分間接触させた後、MDBK細胞に接種し90分間、15分間おきにプレートを動かして、インキュベーションした。PBSで3回洗浄した後、5%FBS含有MEMを添加し、さらに37℃で6日間培養した。
培養終了後、RT−PCRによりMDBK細胞中のBVDV由来のDNAを検出することで、細胞がウィルスに感染しているか否かを確認した。その結果、カテキンによる処理時間依存的にBVDV由来のDNAは検出されなくなり、90分間接触させた実験区では全く検出されなかった。
上記結果は、カテキンにはフラビウィルス感染症の予防効果があることを示している。
【図面の簡単な説明】
第1図は、還元型グルタチオンのコロナウィルス増殖抑制効果を示す図である。グラフAは、BCVとしてKakegawa株を用いた場合、グラフBは、Mebus株を用いた場合の結果を示し、グラフAの●、○および□はそれぞれ、256HA、25.6HAおよび2.56HAのKakegawa株、グラフBの●および○は0.64HAおよび0.064HAのMebus株についての結果を示す。また、グラフの横軸は、還元型グルタチオンの濃度、縦軸は、ヘマグルチニン(HA)価を表す。
第2図は、還元型グルタチオンの経時的なコロナウィルス増殖抑制効果を示す図である。グラフAは、BCVとしてKakegawa株を用いた場合、グラフBは、Mebus株を用いた場合の結果を示し、グラフの●、○、◆、□、◇および△はそれぞれ、0、1、5、10、20および30mmol/lの還元型グルタチオンについての結果を示す。また、グラフの横軸は、細胞とコロナウィルスを接触させてからの経過時間、縦軸は、ヘマグルチニン(HA)価を表す。
以下に本発明の実施例を示すが、下記実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
実施例1 コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用鼻内噴霧剤の調製
酸化型グルタチオンまたは還元型グルタチオンを含有する鼻内噴霧剤を、生理食塩水[0.9%(w/v)の塩化ナトリウム水溶液]1ml当たり3mgの酸化型グルタチオンまたは還元型グルタチオンを添加し溶解することにより調製した。
カテキンを含有する鼻内噴霧剤は、生理食塩水1mlに3mgのカテキンを溶解することにより調製する。
酸化型グルタチオンまたは還元型グルタチオンおよびカテキンを含有する鼻内噴霧剤は、生理食塩水1mlに3mgの酸化型グルタチオンまたは還元型グルタチオンおよび3mgのカテキンを溶解することにより調製する。
実施例2 コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用鼻内噴霧剤の調製(1)
以下の成分を含有する還元型グルタチオン含有鼻内噴霧剤を調製する。
還元型グルタチオン 1.0g
酢酸ナトリウム 0.3g
メチルバラベン 0.1g
プロピルバラベン 0.02g
塩化ナトリウム 張性に必要な量
塩酸または水酸化ナトリウム pH調整に必要な量
純水 総容量100mlにする量
カテキンを含有する鼻内噴霧剤は、上記組成において還元型グルタチオンの替わりにカテキンを1g用いることで調製する。
還元型グルタチオンおよびカテキンを含有する鼻内噴霧剤は、上記組成に加えカテキンを1g用いることで調製する。
実施例3 コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用鼻内噴霧剤の調製(2)
以下の成分を含有する酸化型グルタチオン含有鼻内噴霧剤を調製する。
酸化型グルタチオン 1.0g
酢酸ナトリウム 0.3g
メチルバラベン 0.1g
プロピルバラベン 0.02g
塩化ナトリウム 張性に必要な量
塩酸または水酸化ナトリウム pH調整に必要な量
純水 総容量100mlにする量
酸化型グルタチオンおよびカテキンを含有する鼻内噴霧剤は、上記組成にカテキンを1g加えることで調製する。
実施例4 コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用ドロップの調製(1)
以下に記載のあめ基剤と薬剤混合物を用いて還元型グルタチオン含有ドロップを調製する。
あめ基剤:
マルチトール(中粒度) 35.0kg
コーンシロップ43°ボーメ 21.0kg
薬剤混合物:
ポリエチレングリコール(分子量6,000) 2.75kg
還元型グルタチオン 5.0kg
クエン酸 60.0kg
ワイルドチェリー模倣フレーバ 60.0g
あめ基剤の調製は以下のように行う。
マルチトールを水5.5リットルに溶解し、グルコース含有コーンシロップを添加し、十分に混合する。この時点で、必要があればいずれかの所望の色素を添加して、所要の色を付与する。色素は、十分に溶解するものを用いる。
上記混合物を、125℃に加熱した蒸気ジャケットケトルに入れる。そこから、混合物を、ポンプで貯蔵容器に入れて、連続クッカーに供給する。シロップがクッカーにおけるコイルを通過するうちに、125〜150℃の温度に到達し、その後、スチーム真空エジェクタにより、真空28〜29インチに維持した受け入れケトルに約6〜7分間供給する。この間に、水含量が約1%以下に減少するまで水が除去され、適当な溶融あめ基剤が形成する。溶融あめ基剤をゆっくりと冷却することで、あめ基剤を調製する。
次に、還元型グルタチオン、クエン酸及び模倣フレーバ(粉末状)を、ポリエチレングリコールに添加して薬剤混合物を調製する。次に、該混合物を、約90℃で加熱することにより流動化する。得られた熱流体混合物を、溶融あめ基剤(温度を約100℃又はそれよりもわずかに低い温度に低下させたもの)に、適当に混合しながら迅速に添加する。次に、全塊を、十分に混練した後、スピニングマシーンに移し、それをロゼンジ形成ダイに押し出すことで還元型グルタチオン含有ドロップを調製する。
カテキンを含有するドロップは、上記製造法において還元型グルタチオンの替わりにカテキンを5.0kg用いることで調製する。
還元型グルタチオンおよびカテキンを含有するドロップは、上記製造法において還元型グルタチオンと共にカテキンを5.0kg用いることで調製する。
実施例5 コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用ドロップの調製(2)
実施例4で得られる薬剤混合物添加溶融あめ塊を、冷却テーブルに流し、冷却テーブル上で半固体塊に固化した後、還元型グルタチオンの単位摂取量を摂取するためのいずれか所望の形状に成形することにより、還元型グルタチオン含有ドロップ、カテキン含有ドロップまたは還元型グルタチオンおよびカテキン含有ドロップを調製する。
実施例6 コロナウィルスまたはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用ドロップの調製(3)
以下に記載のあめ基剤と薬剤混合物を用いて酸化型グルタチオン含有ドロップを調製する。
あめ基剤:
マルチトール(中粒度) 35.0kg
コーンシロップ43°ボーメ 21.0kg
薬剤混合物:
ポリエチレングリコール(分子量6,000) 2.75kg
酸化型グルタチオン 5.0kg
クエン酸 60.0kg
ワイルドチェリー模倣フレーバ 60.0g
あめ基剤の調製は以下のように行う。
マルチトールを水5.5リットルに溶解し、グルコース含有コーンシロップを添加し、十分に混合する。この時点で、必要があればいずれかの所望の色素を添加して、所要の色を付与する。色素は、十分に溶解するものを用いる。
上記混合物を、125℃に加熱した蒸気ジャケットケトルに入れる。そこから、混合物を、ポンプで貯蔵容器に入れて、連続クッカーに供給する。シロップがクッカーにおけるコイルを通過するうちに、125〜150℃の温度に到達し、その後、スチーム真空エジェクタにより、真空28〜29インチに維持した受け入れケトルに約6〜7分間供給する。この間に、水含量が約1%以下に減少するまで水が除去され、適当な溶融あめ基剤が形成する。溶融あめ基剤をゆっくりと冷却することで、あめ基剤を調製する。
次に、酸化型グルタチオン、クエン酸及び模倣フレーバ(粉末状)を、ポリエチレングリコールに添加して薬剤混合物を調製する。次に、該混合物を、約90℃で加熱することにより流動化する。得られた熱流体混合物を、溶融あめ基剤(温度を約100℃又はそれよりもわずかに低い温度に低下させたもの)に、適当に混合しながら迅速に添加する。次に、全塊を、十分に混練した後、スピニングマシーンに移し、それをロゼンジ形成ダイに押し出すことで酸化型グルタチオン含有ドロップを調製する。
カテキンを含有するドロップは、上記製造法において、酸化型グルタチオンの替わりにカテキンを5.0kg用いることで調製する。
酸化型グルタチオンおよびカテキンを含有するドロップは、上記製造法において酸化型グルタチオンと共にカテキンを5.0kg用いることで調製する。
実施例7 コロナウィルスまたはフラビウィルス科に属するウィルス感染症の予防または治療用ドロップの調製(4)
実施例6で得られる薬剤混合物添加溶融あめ塊を、冷却テーブルに流し、冷却テーブル上で半固体塊に固化した後、酸化型グルタチオンの単位摂取量を摂取するためのいずれか所望の形状に成形することにより、酸化型グルタチオン、カテキンまたは酸化型グルタチオンおよびカテキン含有ドロップを調製する。
【産業上の利用可能性】
本発明により、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1以上の物質を含有するコロナウィルスまたはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防、治療効果を有する組成物が提供される。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を含有するコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療用組成物。
【請求項2】
還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンを含有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、1種以上の酸化防止剤を含有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
コロナウィルス科に属するウィルスが、重症急性呼吸器症候群(以下、SARSと略す)ウィルスである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
フラビウィルス科に属するウィルスが、牛ウィルス性下痢ウィルス(以下、BVDVと略す)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が、医薬である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
医薬が、経口剤、注射剤、鼻エアロゾル剤または吸入剤である請求項6記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、食品、飼料、食品添加物または飼料添加物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
30℃〜50℃の請求項7記載の鼻エアロゾル剤を非ヒト動物の鼻内に投与することを特徴とする非ヒト動物のコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療方法。
【請求項10】
コロナウィルス科に属するウィルスが、SARSウィルスである請求項9記載の予防または治療法。
【請求項11】
フラビウィルス科に属するウィルスが、BVDVである請求項9に記載の予防または治療法。
【請求項12】
コロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療用組成物の製造のための還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質の使用。
【請求項13】
還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質が、還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンである請求項12に記載の使用。
【請求項14】
還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンから選ばれる1つ以上の物質を投与することによるコロナウィルス科またはフラビウィルス科に属するウィルスの感染症の予防または治療方法。
【請求項15】
還元型グルタチオン若しくは酸化型グルタチオンまたはそれらの薬学的に許容される塩およびカテキンを投与することによる請求項15に記載の予防または治療方法。

【国際公開番号】WO2005/007640
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511947(P2005−511947)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010765
【国際出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】