説明

ウィルス感染症の治療のための組成物及び方法

本発明は、安定化αらせん構造(本明細書でSAHとも称する)のウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメインを有するポリペプチドを用いる組成物、キット及び方法を提供する。この組成物は、ウィルス感染の治療及び/又は予防に有用である。本発明は、少なくともその一部が、優れたタンパク分解、酸、及び熱安定性を示し、ペプチドの本来のαらせん構造を回復する、ウィルス性炭化水素で架橋したαらせんペプチドが、ウィルス融合過程の妨害において非常に有効であり、そして対応する非改変ペプチドと比較して優れた薬理動態特性を保持することを明らかにしている、本明細書で提供されている結果に基づいている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全てを参照して本明細書に組み込まれている、2008年1月23日に出願された、米国特許仮出願第61/062,007号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ウィルスコートタンパク質が宿主細胞の表面受容体を認識して結合する、ウィルス融合の分子プロセスは、ウィルス感染症の予防及び治療における重要な標的である。宿主細胞受容体によってウィルスグリコプロテインが認識されると、ウィルス融合タンパク質はウィルスの融合及び感染に必須である構造変化を受ける。N末端及びC末端に位置する、一連の疎水性アミノ酸が体系化して宿主細胞膜を貫通する複合体を形成する。両親媒性の7アミノ酸繰り返しドメイン(heptad repeat domain)を2つ含有している隣接するウィルスグリコプロテインが互いに畳み込まれて、6個のαへリックスバンドルから成る、ヘアピンの三量体を形成する。この6へリックスバンドルモチーフは、フィロウィルス(Filovirus、エボラ)(Malashkevich, V.N. et al., PNAS, 1999. 96(6): p. 2662-2667; Weissenhorn, W., et al., Molecular Cell, 1998. 2(5): p. 605-616)、オルトミクソウィルス(Orthomyxovirus、インフルエンザ)(Wilson, I.A., J.J. Skehel, and D.C. Wiley, Nature, 1981. 289(5796): p. 366-37; Bullough, P.A., et al., Nature, 1994. 371(6492): p. 37-43)、コロナウィルス(Coronavirus、SARS)(Xu, Y.H., et al. Journal of Biological Chemistry, 2004. 279(47): p. 49414-49419)、パラミクソウィルス(Paramyxovirus、HRSV)(Zhao, X., et al., PNAS, 2000. 97(26): p. 14172-14177)及びレトロウィルス(Retrovirus、HIV)(Chan, D.C., et al., Cell, 1997. 89(2): p. 263-27; Weissenhorn, W., et al., Nature, 1997. 387(6631): p. 426-430)を含む、多くのウィルスファミリーの間で広く保存されている。
【0003】
HIVエンベロープタンパク質gp120及びgp41は互いに非共有的に結合して二量体の三量体を形成する。宿主細胞上で、gp120は、宿主細胞認識に関連しているグリコプロテインである、CD4、CXCR4、及びCCR5と特異的に相互作用する。ウィルス膜貫通グリコプロテインである、gp41は宿主細胞によるウィルス粒子の摂取をもたらす、ウィルスと細胞膜の融合に関与している。gp120がCD4に結合すると、gp41は、その生来の状態から融合性6へリックスバンドルに変換する、構造変化を受ける。この変化に関与するgp41の領域は、膜貫通ドメイン付近の、C末端7アミノ酸繰り返し(CHR又はHR−2)の43残基(C43)、及び融合ペプチドドメインの直近位に見出された、N末端7アミノ酸繰り返し(NHR又はHR−1)の51残基(N51)である。ペプチドN51及びC43は、熱及びタンパク分解に安定である、高次の三量体複合体の形成に関与する、らせん逆平行ヘテロ二量体の形成に順応している。
【0004】
このウィルス融合プロセスを阻害するペプチドをウィルス感染の予防及び治療に用いることができる。例えば、HIVのgp41N末端7アミノ酸繰り返しドメイン(HR−1)の553〜590残基及びC末端7アミノ酸繰り返しドメイン(HR−2)の630〜659及び648〜673残基に対応するペプチドが、各種HIV株の複製を阻害するということが証明されている。これらのペプチドが、HIVエンベロープグリコプロテインとの相互作用による細胞−細胞融合を阻害することが研究によって究明された。
【0005】
T20又はエンフュービルタイド(enfuvirtide)は、HIVの治療のために、gp41のCHR領域に基づいて開発された最初の融合阻害ペプチドである。エンフュービルタイドは、通常の実験室用の株及びHIV−1及びHIV−2の最初の分離株を含む、HIVの多くの株及びサブタイプに対してナノモル濃度で活性である(Wild, C.T., et al., PNAS, 1994. 91(21): p. 9770-9774)。
【0006】
しかしながら、エンフュービルタイドは、コスト、経口によるバイオアベイラビリティーが無いこと(皮下注射はアクセス容易性及びコンプライアンスを制限する)及び貧弱なインビボ安定性(Kilby, J.M., et al., Nuclic Aids Research and Human Retroviruses, 2002. 18(10): p. 685-693)及び生物活性二次構造の欠落を含む、多くの因子によって第三治療選択肢であり続けている。
従って、ウィルス融合プロセスのペプチドによる阻害は機構的に適していて、臨床的に有効であるが、両親媒性融合ペプチドの生物物理学的及び生物化学的特性には、それらの使用を妨げる多くの課題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は安定なαらせん構造(本明細書でSAHとも称する)を有するポリペプチドを用いる組成物、キット及び方法を対象にしている。組成物はウィルス感染症の治療及び/又は予防に有用である。本発明は、少なくともその一部は、ウィルスの炭化水素で架橋されたαらせんペプチドが、タンパク分解、酸、及び熱に対する優れた安定性を示し、ペプチド本来のαらせん構造を回復して、ウィルス融合プロセスの阻害に非常に有効であり、そして対応する改変していないペプチドと比較して優れた薬物動態特性を有していることを明らかにしている、本明細書で提供されている結果に基づいている。
【0008】
第一の態様では、本発明は安定なウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメインを有する改変ポリペプチドを対象にしている。αらせん7アミノ酸繰り返しドメインが少なくとも1つの炭化水素架橋で安定化されることが好ましいが、2つ、3つ又はそれ以上の炭化水素架橋を含むことができる。適切な炭化水素架橋(例えば、鎖)は本明細書に記載されている。適切なウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメインは、細胞接着及び/又は細胞融合に直接的又は間接的に関与しているαらせんドメイン又はそれらの類縁体を有する何れかのウィルスから得られる。適切な安定化αらせん7アミノ酸繰り返しドメインは、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウィルス、インフルエンザウィルス、コロナウィルス、エボラウィルス及びHIVを包含する、多数のウィルスから得ることができる。本発明の改変ポリペプチドは安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、若しくはそれらの部分)を含有することができる。
【0009】
本発明の改変ポリペプチドの何れも組成物及びキットに含有させることができる。
【0010】
別の態様では、本発明はHIVの細胞への伝播を阻害する方法を対象としている。この方法では、HIVウィルスが細胞を感染することを阻害するために、HIVウィルスを改変ポリペプチドの有効用量に接触させる。好ましくは、改変ポリペプチドが、炭化水素架橋で安定化されているHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、或いはそれらの部分)を有している。
【0011】
本発明は、HIVに感染している個体におけるAIDSを治療するか又は発症を遅らせる方法も含んでいる。安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、或いはそれらの部分)を含んでいる改変ポリペプチドを有している医薬組成物をHIVに感染している個体に投与し、それによってAIDSを治療するか又は発症を遅らせる。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0012】
更に別の態様では、本発明はHIVに感染している個体におけるCD4+細胞の数を増大する方法を対象としている。この方法は、HIVに感染している個体に安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、或いはそれらの部分)を含んでいる改変ポリペプチドを有している医薬組成物の有効用量を投与することを含んでいる。組成物の投与が、個体におけるCD4+細胞数の増大をもたらす。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、HIV感染細胞と非感染細胞の間での合胞体形成を阻害する方法を対象としている。この方法は、感染細胞を安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、或いはそれらの部分)を含んでいる改変ポリペプチドの有効用量と接触させ、それによって細胞間の合胞体形成を阻害することを含んでいる。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0014】
更に別の態様では、本発明はHIVを不活性化する方法を対象としている。この方法はウィルスを安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、或いはそれらの部分)を含んでいる改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、HIVを不活性状態にすること(例えば、非感染)を含んでいる。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0015】
更に別の態様では、本発明は個体におけるHIV感染を予防する方法を対象としている。この方法は、個体に安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、或いはそれらの部分)を含んでいる改変ポリペプチドを有している医薬組成物の有効用量を投与することを含んでいる。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインの投与は、HIVの個体に感染する能力を阻害する。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0016】
改変ポリペプチドはRSV(ラウス肉腫ウィルス)の細胞への伝播を阻害するために使用することができる。ウィルスを安定化RSVウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を有する改変ポリペプチドの有効用量と接触させ、それによってウィルスが細胞に伝播することを阻害する。7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0017】
改変ポリペプチドはパラインフルエンザウィルスの細胞への伝播を阻害するためにも使用することができる。ウィルスを安定化パラインフルエンザウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を有する改変ポリペプチドの有効用量と接触させ、それによってウィルスが細胞に伝播することを阻害する。7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0018】
別の態様では、改変ポリペプチドはインフルエンザウィルスの細胞への伝播を阻害するためにも使用することができる。ウィルスを安定化インフルエンザウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を有する改変ポリペプチドの有効用量と接触させ、それによってウィルスが細胞に伝播することを阻害する。7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0019】
更に別の態様では、本発明はコロナウィルスの細胞への伝播を阻害する方法を対象としている。この方法はコロナウィルスを安定化コロナウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を有する改変ポリペプチドの有効用量と接触させ、それによってウィルスが細胞に伝播することを阻害することを含んでいる。7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0020】
更に別の態様では、本発明はエボラウィルスの細胞への伝播を阻害する方法を対象としている。この方法はエボラウィルスを安定化エボラウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を有する改変ポリペプチドの有効用量と接触させ、それによってウィルスが細胞に伝播することを阻害することを含んでいる。7アミノ酸繰り返しドメイン類縁体を炭化水素架橋で安定化することが好ましい。
【0021】
本発明の態様では、本発明は本発明の改変ポリペプチドを医薬組成物として提供する。ある態様では、医薬組成物は腸内投与、好ましくは経口投与用である。
【0022】
更に別の態様では、αらせん7アミノ酸繰り返しドメイン及びそれらの類縁体は、ポリペプチドを対象に投与することによって、ポリペプチドに応答する抗体を生成するために用いられる。更に、ポリペプチドの投与によって直接的又は間接的に生成された抗体(例えば、ヒト化抗体)が、次いでウィルス(例えば、HIV、RSV、パラインフルエンザ、インフルエンザ、コロナウィルス、エボラウィルス)感染の予防又は治療に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、gp41グリコプロテインのドメインを示す。
【図2】図2A及びBは、A)gp160のHX株、及びB)gp160のYU2株についてのアミノ酸配列を示す。HR−1ドメインを太字及び下線付きで、そしてHR−2ドメインを太字及びイタリック体で示してある。
【図3】図3はHIV gp41 HR−1及びHR−2ドメイン、及び別のウィルスの相同領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図4A】図4Aは、HIVの6へリックスバンドル及びらせんN36及びC34の主要ならせん間相互作用を示す。N36らせんの1つ及び2つのC34らせんを明確にするために薄くしてある。らせんの輪が更に、a、b、c、d、e、f、gの命名に基づいて、らせん間の主要な接点を示している。
【図4B】図4Bは、RSV、インフルエンザ、SARS及びエボラ由来のHR−類縁ドメインによって形成された融合バンドルを示す。6らせん融合バンドルが多くの種に渡ってよく保存されている。
【図5A】図5Aは、順次N末端を欠失させたHIV−1 HR−2ドメインポリペプチド内から由来するアミノ酸配列鋳型を例示している。
【図5B】図5Bは、順次C末端を欠失させたHIV−1 HR−2ドメインポリペプチド内から由来するアミノ酸配列鋳型を例示している。
【図6】図6は、互い違いにN末端及びC末端を欠失させたHIV−1 HR2ドメイン内から由来する配列鋳型を例示する。
【図7】図7は、切断されたSAH−gp41化合物である、SAH−gp41(626−645)(A)の合成デザインを示す。X=S5アミノ酸、B=ノルロイシン。
【図8】図8は、キメラの産生を表現している、SIVのHR2ドメイン及びHIV‐1のHX及びYU2株内から由来する配列鋳型を例示する。
【図9】図9は、HIV gp41(626−663)に適用した7アミノ酸繰り返しドメインモチーフ及び関連する好ましいアミノ酸残基を説明している。HR1相互作用を保存するのに必要な特定アミノ酸残基を表現している、HIV‐1 HR2ドメイン内由来の配列鋳型を例示している。従って、ダッシュ記号で表示されている位置は活性を途絶することなく置換/変異可能である。
【図10】図10A〜Dは、A)2個のS5アミノ酸を用いるらせん1回転に渡るi、及びi+4;B)1個のS8及び1個のR5アミノ酸、又は1個のR8及び1個のS5アミノ酸を用いるらせん2回転に渡るi、及びi+7;C)2個のi、i+4、又は2個のi、i+7、又は1個のi、i+4と1個のi、i+7の架橋を用いる二重架橋;及びD)i、i+4、i、i+7、又は別の架橋(例えば、i、i+3)の何れかの組み合わせを用いる三重架橋;の位置に形成されるらせん安定化架橋の可能な組み合わせを示している。
【図11】図11は、単一架橋SAH−gp41ペプチド(例えば、N末端:Ac、FITC−βAla、ビオチン−βAla;C末端:CONH、COOH)を示している。 X=S5アミノ酸、B=ノルロイシン
【図12】図12は、二重及び三重架橋SAHgp41ペプチド(例えば、N末端:Ac、FITC−βAla、ビオチン−βAla;C末端:CONH、COOH)の配列である。 X=S5アミノ酸、B=ノルロイシン
【図13】図13は、非架橋、二重架橋及び三重架橋gp41HR−2ペプチドを説明していて、らせん中の架橋を位置決めする戦略を示している。架橋は、らせん間の相互作用面を保持及び/又は最適化するように位置付けられている。X=S5アミノ酸、B=ノルロイシン
【図14】図14A〜Fは、単一及び二重架橋SAH−gp41化合物が、改変していないgp41ペプチドとpH7及びpH2で比較して、より高いらせん安定性を示すことを説明している。 それぞれの化合物に対するらせん率(パーセント)を括弧内に示してある。 A)pH7おける、SAH−gp41(626−662)単一及び二重架橋ペプチド、 B)pH7おける、SAH−gp41(638−673)単一架橋ペプチド、 C)pH7おける、SAH−gp41(638−673)二重架橋ペプチド、 D)pH2おける、SAH−gp41(626−662)単一及び二重架橋ペプチド、 E)pH2おける、SAH−gp41(638−673)単一及び二重架橋ペプチド、 F)pH2及び7において計算したSAH−gp41化合物のらせん率を比較している 表。
【図15】図15A〜Cは、単一及び二重架橋SAH−gp−41化合物が改変していないgp41ペプチドとpH7で比較すると、より高い熱安定性を示すことを説明している。 A)選択した単一及び二重架橋SAH−gp41(626−662)化合物; B)単一架橋SAH−gp41(638−673)化合物; C)二重架橋SAH−gp41(638−673)化合物。
【図16】図16A〜Fは、SAH−gp41化合物が、改変されていないgp41化合物と比較して、pH7においてキモトリプシンに対してそしてpH2においてペプシンに対してより高いプロテアーゼ耐性を示すことを説明している。 A)SAH−gp41(626−662)、キモトリプシン、pH7、 B)SAH−gp41(638−673)、キモトリプシン、pH7、 C)キモトリプシンの存在下におけるSAH−gp41化合物の半減期の表、pH7、 D)SAH−gp41(626−662)、ペプシン、pH2、 E)SAH−gp41(638−673)、ペプシン、pH2、 F)ペプシンの存在下におけるSAH−gp41化合物の半減期の表、pH2。
【図17】図17は、gp41−5へリックスバンドルへのHIV融合阻害ペプチドの蛍光偏光結合アッセイを示し、改変されていないペプチドと比較して、SAH−gp41の5へリックスバンドルへの増大した結合を示している。
【図18】図18は、切断型SAH−gp41化合物(A)による合胞体形成の、エンフュービルタイド(T20:gp41(638−673))と比較して、向上した阻害を示す。より短い、架橋されたペプチドによる抗ウィルス活性を保持、更には増強する能力を強調表示している。
【図19】図19は、選択したSAH−gp41化合物のHIV菌株HXBc2、ADA、及びHXBc2P 3.2、及びYU2に対する抗ウィルス活性を明らかにしている。AMLVはネガティブコントロールとして供されている。
【図20】図20A-Bは、A)SAH−gp41化合物が、非改変gp41からなる融合ペプチドの結合を阻害するHIV−1HR1耐性突然変異に打ち勝つことを明らかにしている。表にした値は、示されているFITC−HR1ペプチドに対するHR2ペプチド入力限界の一部を示している。 B)は、選択したSAH−gp41化合物が、耐性HIV−1株、YU2の感染性の阻害において、対応する非改変ペプチドよりも著しく優れていることを示している。
【図21】図21は、二重架橋gp41ペプチドが、対応する非改変ペプチドと比較して、インビボにおいて著しく増強された薬理学的特性(安定性及びバイオアベイラビリティー)を有していることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は安定化αらせん構造を有するポリペプチドを用いる組成物、キット及び方法を対象としている。組成物はウィルス感染を治療及び/又は予防するために有用である。本発明は、少なくともその一部が、ウィルス性の炭化水素で架橋されたαらせんペプチドが、それらの改変されていない対応物と比較すると、優れた構造、タンパク分解、酸及び熱安定性を有し、ウィルス/細胞融合の妨害において非常に効果があり、そしてインビボにおける優れた薬理学的特性を有していることを明らかにしている本明細書で提供されている結果に基づいている。
【0025】
αらせん7アミノ酸繰り返しドメインは、少なくとも1つの炭化水素架橋(しかし2、3、又はそれ以上の炭化水素架橋を含むことができる)によって安定化される。複数の炭化水素架橋を含むことが、長さが20又はそれ以上のアミノ酸であるαらせんペプチドに特に適している。2つ以上の炭化水素架橋を包含することは実際、本明細書で示すように、改変ポリペプチドに非常に優れた構造、酸及び熱安定性をもたらし、際立って増強されたインビボ薬理学的特性を有する生物活性ペプチドを生じる。
【0026】
定義
本明細書で用いられる用語「炭化水素架橋」は、少なくとも2つの改変アミノ酸を有しているポリペプチドを安定に架橋する過程を示し、それはそのポリペプチドの元来の二次構造を配座的にもたらすのに役立つ。炭化水素架橋は、αらせん二次構造を有する性質があるポリペプチドが、元来のαらせん構造を保持できるようにする。この二次構造はこのポリペプチドのタンパク分解による開裂及び熱に対する抵抗性を増大し、そして疎水性を増大することもできる。
従って、本明細書に記載されている炭化水素架橋されたポリペプチドは、対応する非架橋ポリペプチドと比較して改善された生物活性を有している。例えば、架橋ポリペプチドは、HIVポリペプチドのαらせんドメイン(例えば、HR−1/HR−2ドメイン)を包含することができ、これはHIVの付着、融合、及び細胞の感染を妨げることができる。ある場合には、架橋ポリペプチドをウィルスの細胞への侵入を阻害するために用いることができる。
本明細書に記載されている架橋ポリペプチドを治療、例えばHIV感染及び/又はAIDSの治療に用いることができる。
【0027】
炭化水素架橋ポリペプチドは2個の非天然アミノ酸の間に1個又はそれ以上の鎖(連鎖)を包含していて、この鎖はポリペプチドのαらせん二次構造を有意に増強する。一般に、この鎖は1つ又は2つのらせん回転の長さ(すなわち、約3.4又は約7アミノ酸)にわたっている。
従って、i及びi+3;i及びi+4;又はi及びi+7に位置するアミノ酸が、化学修飾及び架橋のための理想的な候補である。従って、例えば、ペプチドが配列...X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9...を有している場合には、X1とX4の間、又はX1とX5の間、又はX1とX8の間の架橋は、X2とX5の間、X2とX6間、又はX2とX9の間等の架橋のように有用である。
複数の架橋(例えば、2個、3個、4個又はそれ以上)の使用も意図されている。複数の架橋の使用はペプチドの安定化及び最適化、特にあるgp41融合ペプチドの場合として、ペプチドの長さを増大するために非常に効果がある。
従って本発明は、更に配列を安定化するため、又はより長いポリペプチドストレッチの構造安定化、タンパク分解抵抗性、酸安定性、熱安定性及び生物活性の増強を促進するためのいずれかにポリペプチド配列内への1つ以上の架橋の組み込みを包含する。
【0028】
ポリペプチドに関連して本明細書で用いられる用語「安定な」又は「安定化」は、炭化水素架橋されて、本来のαらせん構造を保持し、そして/又はタンパク分解抵抗性を改善し、そして/又は酸安定性を改善し、そして/又は熱安定性を改善しているポリペプチドを示す。
【0029】
本明細書で用いられる「HIV」は、HIV−1及びHIV−2及びSIVを包含するように意図されている。
「HIV−1」は、ヒト免疫不全ウィルス1型を意味する。HIV−1は、これに限定されないが、細胞外ウィルス粒子及びHIV−1感染細胞に関連するHIV−1の形態を包含する。
「HIV−2」は、ヒト免疫不全ウィルス2型を意味する。HIV−2は、これに限定されないが、細胞外ウィルス粒子及びHIV−2感染細胞に関連するHIV−2の形態を包含する。
用語「SIV」は、サル、チンパンジー、及びその他の非ヒト霊長類に感染するHIVに類似したウィルスである、さる免疫不全ウィルスを示す。
SIVは、これに限定されないが、細胞外ウィルス粒子及びSIV感染細胞に関連するSIVの形態を包含する。
【0030】
本明細書で用いられる「7アミノ酸繰り返しドメイン」及び「HRドメイン」は、正確に折り畳むとαらせんを形成するポリペプチドを示す。用語「7アミノ酸繰り返しドメイン」及び「HRドメイン」は、「HR様」及び「HR類縁」ポリペプチドを包含する。細胞接着及び融合に関連している多くのウィルスタンパク質は、HIV、パラインフルエンザ、コロナウィルス及びその他を含む、HR、HR様、及びHR類縁ドメインを含有している。
一般に、HRドメインがHIVのgp41から得られるのに対して、HR類縁ドメインは非HIVウィルスのエンベロープグリコプロテインから得られる。
多くのHR及びHR類縁ドメインポリペプチドは当該技術分野で公知であって、本明細書に記載されている。
一態様では、HRドメインは、図5、図6又は配列番号1〜14と40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上同一のアミノ酸配列を有している。
HR及びHR様ドメインは低い相同性を有しているが、非相互作用面よりも相互作用面により多く保存されている、共通のαらせん構造を共有することに留意すべきである(図4及び9を参照されたい)。
【0031】
一態様では、HR改変ポリペプチドは、式:abcdefg(式中のa及びdは疎水性アミノ酸残基であり、b、c、e、f及びgは何れかのアミノ酸である):を有する7アミノ酸繰り返しドメインを包含している。式が2回又はそれ以上平行に反復することが好ましい。
【0032】
例えば、更なる態様では、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは式:W(a)、b、c、W(d)、e、f、g、I(a)、b、c、Y(d)、e、f、g、I(a)、b、c、L(d)、e、f、g、S(a)、b、c、Q(d)、e、f、g、N(a)、b、c、E(d)、e、f、g、L(a)、又はそれらの同類アミノ酸置換(式中の、b、c、e、f及びgは何れのアミノ酸であってもよい):を有している。
【0033】
更なる態様では、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは式:T(g)、W(a)、b、c、W(d)、D(e)、R(f)、g、I(a)、b、c、Y(d)、e、f、g、I(a)、b、c、L(d)、I(e)、f、g、a、Q(b)、c、d、Q(e)、E(f)、K(g)、a、E(b)、c、d、L(e)、f、E(g)、L(a)、又はそれらの同類アミノ酸置換(式中の指摘されていないアミノ酸は何れのアミノ酸であってもよい):を有している。
【0034】
HR領域は、複数の7アミノ酸残基ストレッチ又は「ヘプタド」(各ヘプタドの7個のアミノ酸は「a」〜「g」と命名される)を包含していることが知られている。式中の「a」位置及び「d」位置のアミノ酸は通常疎水性である。
通常、HR領域は、イソロイシン又はロイシンで開始して終結する、8個のアミノ酸配列を含む、1個又はそれ以上のロイシンジッパー様モチーフ(ロイシンジッパー様反復とも示される)を包含している。
ヘプタド及びロイシンジッパー様モチーフは、gp41のコイルドコイル構造、及びHR領域由来ペプチドのコイルドコイル構造の形成に寄与している。一般にコイルドコイルは、第1位(「a」)及び第4位(「d」)の疎水性残基、通常5位(「e」)及び7位(「g」)の荷電残基を有するアミノ酸の7アミノ酸繰り返しであるコイルドコイルの成果を伴い、そしてオリゴマー状態及びらせん方向に影響を及ぼす第一次決定基である「a」位及び「d」位のアミノ酸を伴い、オリゴマーを形成するために互いに巻き付く2つ又はそれ以上のらせんを含んでいることが知られている(例えば、Akey et al., 2001, Biochemistry, 40:6352-60 を参照されたい)。
【0035】
「a」及び「d」位を含む多くの位置の各種アミノ酸を置換することによるモデルコイルドコイルの安定性及びオリゴマー状態に対する影響は、既に報告されている。そこでは、三量体構造の形成が特に「d」位の置換よって決定されている(例えば、Tripet et al., J. Mol. Biol. 300:377-402 (2000); Wagschal et al., J. Mol. Biol, 285:785-803 (2000); and Dwyer et al., PNAS USA. 104:12772-12777 (2007) を参照されたい)。
【0036】
抗ウィルス活性(過度な実験を行わずに当該技術分野で標準的な方法を方法を用いて測定できるよなうな)を有していて、領域の全て又は画分を含有している、HIVgp41のHR1ドメイン又はHR2ドメインの元の配列から得られる何れのペプチドも、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、好ましくは同種置換をその中で行う元の配列として用い、ドメイン中では本発明で提供される合成ペプチドを産生するために導入できることは、当業者にとって明らかであろう。
説明の目的で、元の配列から得られるそのようなHR2ペプチド、及びそれから合成ペプチドが得られることが、これに限定されないが、図5及び6の説明に含まれている。
【0037】
幾つかのHR及びHR類縁ドメイン残基は置換傾向が低いが、その他のものは変化をより受け入れるということは当業者に明らかである。例えば、7アミノ酸繰り返しのa及びd位のアミノ酸を変異しないこと又は同類変異のみを行うことが好ましい(図9を参照されたい)。
一態様では、7アミノ酸繰り返しドメインは式:a、b、c、d、e、f、g(式中の、a及びdは疎水性アミノ酸である):を有している。
更なる態様では、7アミノ酸繰り返しドメインは式:a、b、c、d、e、f、g:の2回又はそれ以上の反復を有している。
例えば、一態様では、HRドメインは図9に示されている配列又はそれらの同類置換を有することことができる。
従って、HR及びHR様ドメインはアミノ酸配列における有意な変動性を有しているが、らせん構造及び抗ウィルス活性を保持できる。
【0038】
一態様では、改変ポリペプチドは式:a、b、c、d、e、f、g(式中の、a及びdは疎水性アミノ酸残基であって、b、c、e、f及びgは何れかのアミノ酸である):を有する7アミノ酸繰り返しドメインを包含している。この式が2回又はそれ以上平行に反復することが好ましい。
【0039】
例えば、更なる態様では、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは式:W(a)、b、c、W(d)、e、f、g、I(a)、b、c、Y(d)、e、f、g、I(a)、b、c、L(d)、e、f、g、S(a)、b、c、Q(d)、e、f、g、N(a)、b、c、E(d)、e、f、g、L(a)、又はそれらの同類アミノ酸置換(式中の、b、c、e、f及びgは何れかのアミノ酸であってよい):を有している。
【0040】
更なる態様では、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは式:T(g)、W(a)、b、c、W(d)、D(e)、R(f)、g、I(a)、b、c、Y(d)、e、f、g、I(a)、b、c、L(d)、I(e)、f、g、a、Q(b)、c、d、Q(e)、E(f)、K(g)、a、E(b)、c、d、L(e)、f、E(g)、L(a)、又はそれらの同類アミノ酸置換(ここにおいて、指摘されていないアミノ酸は何れのアミノ酸であってもよい):を有している。
【0041】
HR、HR様及びHR類縁ドメインを、当業者は、配列相同性、構造相同性及び/又は機能相同性に基づく配列によって容易に特定可能である。このような方法は当該技術分野で周知であって、残基対の相関関係に基づく生物情報プログラム(例えば、:ch.embnet.org/software/COILS_form.htmlのワールドワイドウェブ上の)を包含していて、これはタンパク質配列からのコイルドコイルを認識してそれらの構造をモデル化する能力を有している(Lupas, A., et al. Science 1991. 252(5009): p. 1162-1164 を参照されたい)。HR、HR様及びHR類縁ドメインを特定する更なる方法は、米国特許第6,824,783号、米国特許第7,273,614号、米国特許第5,464,933号、及び米国特許第7,122,190号に記載されていて、これらの全てが、その全てを参照として本明細書に組み込まれている。
【0042】
一態様では、本発明の改変ポリペプチドは、相互作用表面(interacting face)で、配列番号1〜14、図5又は図6のアミノ酸配列と70%又はそれ以上類似している。
αらせんの「相互作用表面」は、別のアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基を包含している。例えば、HIVgp41HR−2ドメインの相互作用表面は、「a」及び「d」位のアミノ酸を包含している(図4A及び9を参照されたい)のに対して、HIVgp41HR−1ドメインの相互作用表面はHR−2と相互作用するe、g位のアミノ酸及びHR1−HR1相互作用に関与するa、dを包含している(図4Aを参照されたい)。7アミノ酸繰り返し及び相互作用表面残基を特定する方法は当該技術分野において周知であって、本明細書に記載されている。
【0043】
「HIVのHR−1ドメイン」又は「HIVの7回反復1ドメイン」は、正確に折り畳まれたときにαらせんを形成する、HIVのgp41タンパク質のN末端部分(HIVエンベロープの膜貫通サブユニット)である。HIVgp41のHR−1ドメインは5〜55の間のアミノ酸残基を包含でき、そしてHIVgp41の天然型HR−1ドメインの配列、又はそれらの組み合わせ若しくはキメラに基づいている。
HIVのHR−1ドメインは、アミノ酸残基546〜581HIV−1 Envを含むN36ドメインを包含することができる(図2及び Bewley et al., J. Biol. Chem. 277:14238-14245 (2002) を参照されたい)。
HR−1ドメインポリペプチドは当該技術分野で公知であり、そして本明細書に記載されている。一態様では、HR−1ドメインは配列番号2又は14と30%又はそれ以上同一のアミノ酸配列を有している。
【0044】
「HIVのHR−2ドメイン」又は「HIVの7回反復2ドメイン」は、正確に畳み込まれたときにαらせんを形成する、HIVのgp41タンパク質のC末端部分(HIVエンベロープの膜貫通サブユニット)である。
HIVのHR−2ドメインは、HIV−1 Envのアミノ酸残基628〜661を含むC34ドメインを包含することができる(図2を参照されたい)。
HR−2ドメインポリペプチドは当該技術分野で公知であり、そして本明細書に記載されている。一態様では、HR−2ドメインは配列番号1又は13と40%又はそれ以上同一のアミノ酸配列を有している。
【0045】
本発明のポリペプチドに関連して本明細書で用いられる用語、「キメラ」又は「キメラの」は、少なくとも2つの異なったHRドメインを有するか、又は天然では見られない方法で結合している単一のHRドメイン領域を有しているポリペプチドを示す(図8)。例えば、キメラポリペプチドはHIV gp41 HR−2ドメインの第1部分及びSIV gp41 HR−2の第2部分を有することができる。
これらのキメラポリペプチドは、天然では生じないコード配列をもたらすように共に融合又は連結することができるヌクレオチド配列によってコードされる。
キメラは、野生型HRポリペプチド(HIV−1 gp41 HR−2)と実質的に類似していてもよく、類似の活性(すなわち、野生型HRの活性、例えば、融合、ウィルス感染性の阻害の最も好ましくは90%、より好ましくは70%、好ましくは40%、又は少なくとも10%)を保有している、任意の機能性誘導体、断片、変異体、類縁体、又は化学誘導体を包含する。
【0046】
本明細書で用いられる「治療する」及び「治療」は、病気の進行又は悪化を減少する、抑制する、軽減する、低下する、停止する又は安定化すること、或いはウィルス性疾患に罹病している動物において病的細胞(例えば、感染細胞)の発生を減少させることを意味することとする。治療は、例えば、対象におけるHIVの完全欠損で完了できる。治療は、対象における感染細胞の発生が、本発明を行わないで発生すると思われるものより少ないというように、部分的であってもよい。治療は感染細胞の安定化、減少又は除去、患者の生存率の増大、若しくは疾患の少なくとも1つの徴候又は症状の減少をもたらす。
【0047】
本明細書で用いられる用語「予防する」、「予防すること」、及び「予防」は、対象における疾患の発生の減少、病気に罹る危険性の減少、又は病気の少なくとも1つの徴候又は関連症状の提示の減少を示すこととする。予防は、対象において疾患又は病的細胞の完全欠損で完了できる。予防は、対象における疾患又は病的細胞の発生が、本発明を行わないで発生すると思われるものより少ないというように、部分的であってもよい。
【0048】
ウィルス感染に関連して本明細書で用いられる用語「阻害する」は、ウィルス伝播の減少、ウィルスの細胞内標的への結合の減少、又は疾患の減少を示す。
例えば、本発明のポリペプチドは、ウィルス伝播、合胞体形成、及びウィルスに関連する疾患(例えば、AIDS)を阻害するために用いられる。
本発明の化合物を、化合物がウィルス(例えば、感染性、伝播、等)を阻害するか否かを確認するために、当該技術分野で公知で本明細書に記載されている、多くのアッセイによってスクリーニングすることができる。例えば、ウィルスと培養している細胞培養を試験化合物と接触させて、本発明の化合物をウィルスの感染性を阻害する能力について試験することができる。適切なコントロール(阻害剤に曝されていない細胞の数)と比較して、試験化合物の存在下でウィルス感染性が90%、80%、75%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、又はそれ以下の場合に、化合物がウィルス感染を阻害することが分かる。
【0049】
本明細書で用いられる用語「伝播を阻害する」は、例えば、細胞−細胞融合による細胞のウイルス感染を阻害するか、又はウィル感染を取り除く薬剤の能力を示す。このような感染は、エンベロープを持ったウィルスの場合に生ずるような、膜融合、又はウィルス構造及び細胞構造に関連するその他の融合事象に関連してもよい。
【0050】
本明細書で用いられる用語「合胞体形成を阻害すること」は、薬剤の非存在下での2つ又はそれ以上の部分で生じる膜融合のレベルと比べて、2つ又はそれ以上の部分の間の膜融合事象のレベルを阻害又は減少する薬剤の能力を示す。この部分は、例えば、細胞膜又はウィルスエンベロープのようなウィルス構造であってよい。
【0051】
用語「有効量」、又は「有効用量」は、意図した薬理学的、治療的又は予防的結果を生じさせる薬剤の量を示す。薬理学的有効量は、ウィルス性疾患の1つ又はそれ以上の症状の改善をもたらすか、又はウィルス性疾患の進展を予防するか、又は疾患の軽減を引き起こすか、或いはウィルスの伝播を減少する。
例えば、治療有効量が、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上にまで、伝播の速度を減少するか、又はHIVウィルスの量を減少するか、或いは感染細胞の数を減少する、治療薬の量を示すことが好ましい。
HIVに関連する治療有効量も、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上にまで、CD4+細胞数を増大する、AIDSに進行するまでの時間を長くするか、又は生存期間を延ばすことを示している。
【0052】
用語「アミノ酸」はアミノ基とカルボキシル基の両方を含有している分子を示す。適切なアミノ酸は、これに限定されないが、ペプチド中に見出される20個の通常の天然アミノ酸(例えば、A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、V(1文字略号として知られている))の、更に有機合成又はその他の代謝経路で製造される天然又は非天然アミノ酸のD−及びL−異性体の両方を包含する。
【0053】
「非必須」アミノ酸残基は、ポリペプチドの野生型配列(例えば、HR−1又はHR−2ドメイン)から、その活性/二次構造(αらせん構造)を消失又は実質的に変えずに、改変できる残基である。
「必須」アミノ酸残基は、ポリペプチド野生型配列から改変すると、ポリペプチドの活性及び/又は二次構造の消失又は実質的な消失をもたらす、残基である。
実質的な消失は、適切なアッセイ(例えば、合胞体形成アッセイ、ウィルス融合アッセイ)において、ペプチドの活性を野生型ペプチドの約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満に減少させることと理解される。
HR及びHR様ドメインの必須及び非必須アミノ酸残基は、当該技術分野で周知で本明細書に記載されている方法によって容易に確認することができる。
一態様では、必須アミノ酸残基は、7アミノ酸繰り返しドメインの「a」又は「d」位にあるのに対して、非必須アミノ酸は「b」、「c」、[e」、「f」、又は「g」位に存在できる(図9)。 本明細書で用いる用語「必須」アミノ酸残基は、必須アミノ酸の同類置換を包含する。一般に、「必須」アミノ酸残基はαらせんの相互作用表面に見出される。例えば、HIV gp41 HR−2ドメインでは、相互作用表面は「a」及び「d」位アミノ酸を包含している(図4A及び9を参照されたい)。
別の態様では、改変ポリペプチドは、Leu−556、Leu−565、Val−570、Gly−572、及びArg−579を有しているgp41 HR−1ドメインを含有している(Lu, M., et al., J. Vir. 2001. 75(22): p. 11146-11156)。
【0054】
「同類アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸と置き換えられていることである。例えば、類似の側鎖を有しているアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸を包含している。
その他の同類アミノ酸置換は、ペプチドの電荷を修正するためにアスパラギン酸をアスパラギンで置き換えるように、アミノ酸側鎖ファミリーを越えて行うこともできる。従って、HRドメインポリペプチド中の予測できる非必須アミノ酸を、例えば、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸と、又はファミリーを越えた同族体と(例えば、アスパラギン酸をアスパラギンで、グルタミン酸をグルタミンで)置き換えることが好ましい。
【0055】
本明細書で用いられる用語「同一性」又は「パーセント同一性」は、2つの重合分子、例えば、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチドの間のサブユニット配列の類似性を示す。2つの分子の両方にあるサブユニットの位置が、同じ単量体サブユニットで占められている場合、例えば2つのペプチドのそれぞれの位置がセリンによって占められている場合、これらはその位置で同一である。2つの配列間の同一性は、整合数又は同一位置の一次関数である。例えば、2つのペプチド又は化合物の配列の位置の半分(例えば、長さが10サブユニットのポリマー中5つの位置)が同一なら、2つの配列は50%同一であり:位置の90%、例えば10個のうち9つが整合すれば、2つの配列は90%の配列同一性を共有している。
2つの配列間の同一性は整合数又は同一位置数の一次関数である。従って、参照配列の部分が特定のペプチドにおいて削除されている場合は、その削除された部分は配列同一性を計算する目的ではカウントされない。
同一性は多くの場合、配列分析ソフトウェア、例えば、BLASTN又はBLASTP(米国政府(".gov")の国立衛生研究所(".nih")の全米バイオテクノロジー情報センター(".ncbi")のワールドワイドウェブサイト("www")の”Blast”ディレクトリー("/BLAST/")から入手可能)を用いて測定されている。
BLASTN(ヌクレオチド配列用)によって2つの配列を比較する(例えば、互いに2つの配列を”Blast”−ing)ための初期パラメータは、マッチしたときの得点=1、ミスマッチしたときのペナルティー=−2、オープンギャップ=5、拡張ギャップ=2である。
タンパク質配列のためにBLASTPを使用するときの初期パラメータは、マッチしたときの得点=0、ミスマッチしたときのペナルティー=0、オープンギャップ=11、拡張ギャップ=1である。
更に、同一性を確認するコンピュータプログラムは当該技術分野で公知である。
【0056】
2つ又はそれ以上のポリペプチド配列との関連で、「類似性」又は「パーセント類似性」は、同一であるか又は特定パーセントのアミノ酸残基又はそれらの同類置換を有している2つ又はそれ以上の配列又は部分配列を示し、それは以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いるか、又は目視検査で測定すると、最大一致を比較及び位置合わせしたときに同一である。
例として、当該技術分野で公知で本明細書に記載されているコンピュータ類似性プログラムによって位置合わせをして、第1ポリペプチドに含まれている数と同じ数のアミノ酸の配列の何れかと比較したときに、第1ポリペプチドのアミノ酸配列が、HIV−1 HR−1ドメインの領域と少なくとも20%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、又は95%若しくはそれ以上も同一、又は同類置換されているときに、第1ポリペプチドはHIV−1 HR−1ドメインと類似していると見なすことができる。
第1タンパク質と第2タンパク質のポリペプチド領域が1つ又はそれ以上の同類アミノ酸残基を含んでいることが好ましい。
【0057】
本明細書で用いられる「抗体」は、抗原に対する結合親和性を有する、Fab分子、Fabタンパク質、単鎖ポリペプチド、又は多機能性抗体のような、抗体のいずれかの反応性断片(複数を含む)を包含する。この用語は、キメラ抗体、変性抗体、1価抗体、二重特異性抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト型抗体、及びヒト化抗体を包含する。抗体の作成方法は当該技術分野で周知である。
【0058】
記号
【0059】
【化1】

【0060】
は、分子構造の1部として用いられるとき単一結合又はトランス或いはシス二重結合を示す。
【0061】
用語「アミノ酸側鎖」は、アミノ酸のα−炭素に付加している部分を示す。例えば、アラニンのアミノ酸側鎖はメチルであり、フェニルアラニンのアミノ酸側鎖はフェニルメチルであり、システインのアミノ酸側鎖はチオメチルであり、アスパラギン酸のアミノ酸側鎖はカルボキシメチルであり、チロシンのアミノ酸側鎖は4−ヒドロキシフェニルメチルである等である。その他の非天然アミノ酸側鎖、例えば、天然に生じるもの(例えばアミノ酸代謝物)又は合成されるもの(例えば、α−ジ置換アミノ酸)も包含される。
【0062】
用語ポリペプチドは、共有結合(例えば、アミド結合)で結合している2個又はそれ以上の天然又は合成アミノ酸を含んでいる。本明細書に記載されているようなポリペプチドは全長タンパク質(例えば、十分に加工されたタンパク質)を、更により短いアミノ酸配列(例えば、天然タンパク質の断片、又は合成ポリペプチド断片)も包含する。
【0063】
用語「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の何れかのラジカルを示す。
用語「アルキル」は、指示されている数の炭素原子を含有し、直鎖又は分枝鎖であってよい、炭化水素鎖を示す。例えば、C〜C10はその中に1〜10個(合計)の炭素原子を有してもよい基を示す。数字表示が何も存在しないときは、「アルキル」はそこに1〜20個(合計)の炭素原子を有している鎖(直鎖又は分枝鎖の)である。
用語「アルキレン」は、2価のアルキル(すなわち、−−R−−)である。
【0064】
用語「アルケニル」は、1つ又はそれ以上の炭素‐炭素の二重結合を有する直鎖又は分枝鎖であってよい炭化水素鎖を示す。アルケニル部分は指示されている数の炭素原子を含有している。例えば、C〜C10はその基がその中に2〜10個(合計)の炭素原子を有していいてもよいということを表示している。用語「低級アルケニル」は、C〜Cアルケニル鎖を示す。数字表示が何も存在しないときは、「アルケニルは」その中に2〜20個(合計)の炭素原子を有している鎖(直鎖又は分枝鎖の)である。
【0065】
用語「アルキニル」は、1つ又はそれ以上の炭素‐炭素の三重結合を有する直鎖又は分枝鎖であってよい炭化水素鎖を示す。アルキニル部分は指示されている数の炭素原子を含有している。例えば、C〜C10はその基がその中に2〜10個(合計)の炭素原子を有していいてもよいということを表示している。用語「低級アルキニル」は、C〜Cアルキニル鎖を示す。数字表示が何も存在しないときは、「アルケニル」はその中に2〜20個(合計)の炭素原子を有している鎖(直鎖又は分枝鎖の)である。
【0066】
用語「アリール」は、炭素6個の単環式又は炭素10個の2環式芳香族環系を示し、そこではそれぞれの環の0、1、2、3、又は4個の原子が置換基で置換されていてもよい。アリール基の例は、フェニル、ナフチル等を包含する。
用語「アリールアルキル」又は用語「アラルキル」は、アリールで置換されているアルキルを示す。
用語「アリールアルコキシ」はアリールで置換されているアルコキシを示す。
【0067】
本明細書で用いられているような用語「シクロアルキル」は、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、そしてより好ましくは3〜6個の炭素を有している飽和及び部分不飽和の環状炭化水素基を包含し、ここではシクロアルキル基は更に任意に置換されていてもよい。好ましいシクロアルキル基は、これに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロへプチル、及びシクロオクチルを包含する。
【0068】
用語「ヘテロアリール」は、5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、又は11〜14員の三環式の環系を示し、単環式の場合は1〜3個のヘテロ原子、二環式の場合は1〜6個のヘテロ原子、また三環式の場合は1〜9個のヘテロ原子を有している。当該ヘテロ原子はO、N、又はSから選ばれ(例えば、単環式、二環式、又は三環式の場合それぞれに、炭素原子と1〜3個、1〜6個、又は1〜9個のN、O、又はSのヘテロ原子)、そこでは、それぞれの環の0、1、2、3、又は4個の原子が置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例は、ピリジル、フリル又はフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニル又はチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリル等を包含する。
用語「ヘテロアリールアルキル」又は用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールで置換されているアルキルを示す。
用語「ヘテロアリールアルコキシ」は、ヘテロアリールで置換されているアルコキシを示す。
【0069】
用語「ヘテロシクリル」は、非芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、又は11〜14員の三環式の環系を示し、単環式の場合は1〜3個のヘテロ原子、二環式の場合は1〜6個のヘテロ原子、また三環式の場合は1〜9個のヘテロ原子を有している。当該ヘテロ原子はO、N、又はSから選ばれ(例えば、単環式、二環式、又は三環式の場合それぞれに、炭素原子と1〜3個、1〜6個、又は1〜9個のN、O、又はSのヘテロ原子)、そこでは、それぞれの環の0、1、2、又は3個の原子が置換基で置換されていてもよい。ヘテロシクリル基の例は、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル等を包含する。
【0070】
用語「置換基」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基の何れかの原子が「置換されている」基を示す、適切な置換基は、これに限定されないが、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリール、アリール、アラルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、及びシアノ基を包含する。
【0071】
本明細書で示されている範囲は、範囲内の全ての値を省略していると理解される。例えば、範囲1〜50は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50よりなる群からの何れかの数、数の組み合わせ、又は下位の範囲を含んでいるものと理解される。
【0072】
明確に指示されているか又は内容から明瞭である場合以外は、本明細書で用いられる用語「又は」は、全てを含んでいると理解される。
【0073】
明確に指示されているか又は内容から明瞭である場合以外は、本明細書で用いられる用語「ある(a、an)」、「その(the)」は単数又は複数であると理解される。
【0074】
明確に指示されているか又は内容から明瞭である場合以外は、本明細書で用いられる用語「約」は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内であるのように理解される。約は、表示されている値の、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%内であるのように理解される。
【0075】
本明細書の可変基の何れかの定義内の化学基の列挙は、単一の基又は列挙されている基の組み合わせの何れかとしての可変基の定義を包含している。本明細書の可変基についての実施形態又は態様の記載は、何れかの単一の態様又は他の態様若しくはそれらの部分との組み合わせとしての態様を包含している。
【0076】
本明細書に示されている組成物又は方法を、本明細書に示されている組成物又は方法の1つ又はそれ以上と組み合わせることができる。
【0077】
ポリペプチド
抗ウィルス活性を示す改変ポリペプチドが本明細書に記載されている。改変ポリペプチドが、ウィルスコートタンパク質を妨げることによって、ウィルスと細胞の融合を阻害するそれらの能力を介して抗ウィルス活性を示すと考えられている。本発明の改変ポリペプチドは、ウィルス由来の安定化αらせん7アミノ酸繰り返しドメインを含有できる。このαらせん7アミノ酸繰り返しドメインを炭化水素架橋で安定化することが好ましい。適切なウィルス性αらせん7アミノ酸繰り返しドメインは、細胞への接着又は侵入に直接又は間接的に関わっている、αらせんドメインを有している何れかのウィルス(例えば、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、コロナウィルス、エボラウィルス、HIV)から得ることができる。
【0078】
動作理論に限定されないが、本明細書に記載されている改変ポリペプチドの強力な抗ウィルス活性を説明するために以下のモデルを提示する。安定化ペプチドとして合成されると、本発明の改変ポリペプチドは、恐らくウィルスのグリコプロテインと複合体を形成して、融合(fusogenic)過程;例えば元の構造から融合状態へのウィルスタンパク質の構造推移の間の;を妨げるそれらの能力によって、ウィルス感染及び融合の強力な阻害剤となる。理論に縛られないが、改変ペプチドは、ウィルスのグリコプロテイン上のそれぞれの結合部位に接近して、ウィルスが細胞と融合することを阻害する破壊的な影響を及ぼすと考えられる。この改変ポリペプチドは、それらの増大した安定性及び有効性によって、特に有用である。
【0079】
第1の態様では、本発明は、安定なウィルス性αらせん7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、HR−1、HR−2、HR様又はHR類縁)又はそれらの活性断片を有している改変ポリペプチドを対象としている。改変ポリペプチドはHRドメインのキメラも含有できる。適切なウィルス性αらせん7アミノ酸繰り返しドメインは、細胞への接着又は侵入に直接又は間接的に関わっているαらせんドメインを有する何れかのウィルスから得られる。
【0080】
別の態様では、本発明は、安定なHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、HIV−1又はHIV−2の7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2)を有している改変ポリペプチドを対象としている。7アミノ酸繰り返し−1及び7アミノ酸繰り返し−2ドメインのアミノ酸配列は当該技術分野で周知であって、それぞれ配列番号2及び配列番号1で示されるものを含んでいる。
一態様では、7アミノ酸繰り返しドメイン1は、配列番号2、配列番号3又は配列番号14のアミノ酸配列と、30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。また、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返し1ドメインは、相互作用表面の残基が配列番号1又は2のそれと同一であるか或いはそれらの同類置換である限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を同定する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0081】
別の態様では、7アミノ酸繰り返しドメイン2は、図4、図6又は配列番号1のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。また、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返し2ドメインは、相互作用表面の残基が配列番号1又は2のそれと同一であるか或いはそれらの同類置換を有する限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を同定する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0082】
一態様では、改変ポリペプチドは、式:abcdefg(式中の、a及びdは疎水性アミノ酸残基を、b、c、e、f及びgは何れかのアミノ酸である):を有する7アミノ酸繰り返しドメインを包含している。式が2回又はそれ以上平行に反復することが好ましい。
【0083】
例えば、更なる態様では、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは式:W(a)、b、c、W(d)、e、f、g、I(a)、b、c、Y(d)、e、f、g、I(a)、b、c、L(d)、e、f、g、S(a)、b、c、Q(d)、e、f、g、N(a)、b、c、E(d)、e、f、g、L(a)(式中の、b、c、e、f及びgは何れかのアミノ酸であってよい):又はそれらの同類アミノ酸置換を有している。
【0084】
更なる態様では、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは、式:T(g)、W(a)、b、c、W(d)、D(e)、R(f)、g、I(a)、b、c、Y(d)、e、f、g、I(a)、b、c、L(d)、I(e)、f、g、a、Q(b)、c、d、Q(e)、E(f)、K(g)、a、E(b)、c、d、L(e)、f、E(g)、L(a):又はそれらの同類アミノ酸置換を有し、そして式中の指定されていないアミノ酸は何れのアミノ酸であってもよい。
【0085】
別の態様では、本発明の改変ポリペプチドは、配列番号1〜14、図5又は図6のアミノ酸配列の相互作用表面と同一のアミノ酸残基、又はそれらの同類置換を有している。αらせんの「相互作用表面」は、コイルドコイル構造中の別のアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基である。例えば、HIVgp41HR−2ドメインでは、相互作用表面が「a」及び「d」位置のアミノ酸を包含している(図4A及び9を参照されたい)のに対して、HIVgp41HR−1ドメインの相互作用表面は、HR2と相互作用するe、g位置及びHR1−HR1相互作用に関与するa、d位置のアミノ酸を包含している(図4Aを参照されたい)。7アミノ酸繰り返し及び相互作用表面残基を同定する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0086】
αらせん7アミノ酸繰り返しドメインを炭化水素架橋で安定化することが好ましい(例えば、図10)。改変ポリペプチドの何れかでの使用に適している炭化水素架橋は、本明細書及び米国特許出願公開第2005/0250680号(これは参照としてその全部が本明細書に取り込まれている)に記載されている。炭化水素架橋は、ポリペプチドが、αらせん二次構造を有し、その元のαらせん配置を保持し、そしてその安定性及び有効性を増大し易くする。
一態様では、改変ポリペプチドは、円偏光2色性を測定すると、水溶液中で少なくとも10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%或いはそれ以上のらせん構造を有している。円偏光2色性を測定するアッセイは、当該技術分野で公知であって、本明細書に記載されている。
【0087】
炭化水素で架橋されたポリペプチドは、2つのアミノ酸の間に鎖(連鎖)を含有していて、この鎖がポリペプチドのαらせん二次構造を有意に強める。一般に、この鎖は、1つ又は2つのらせん回転の長さ(すなわち、約3.4又は約7アミノ酸)に広がっている。従って、i及びi+3;i及びi+4;又はi及びi+7に位置するアミノ酸が、化学修飾及び架橋のための理想的な候補である。それ故に、本発明の改変ポリペプチドの何れのアミノ酸残基も、上記に準拠して繋げる(例えば、架橋する)ことができる。適切な鎖は、本明細書及び米国特許出願公開第2005/0250680号に記載されている。
【0088】
更なる態様では、炭化水素架橋は、第1アミノ酸(i)と第1アミノ酸からアミノ酸3個下流にある第2アミノ酸(i+3)を結合するように位置している。
別の態様では、炭化水素架橋は、第1アミノ酸(i)と第1アミノ酸からアミノ酸4個下流にある第2アミノ酸(i+4)を結合する。
更に別の態様では、炭化水素架橋は、第1アミノ酸(i)と第1アミノ酸からアミノ酸7個下流にある第2アミノ酸(i+7)を結合する。
【0089】
更なる態様では、配列:
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE
(式中のXは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、Bはメチオニン又はノルロイシンである):
を有する7アミノ酸繰り返しドメインを包含している。
【0090】
改変ポリペプチドは一般に、本明細書に記載されているような、式(I)、(II)又は(III)の構造を有している。
【0091】
本発明は、とりわけ、ウィルスの細胞への接着及び/又は融合に直接的又は間接的のどちらかで関わっている、αらせんドメインを有するその他のウィルス由来の改変ポリペプチドも対象としている。例えば、本発明の一態様は、呼吸器合胞体ウィルス由来である安定なウィルスαらせん(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン)を有する改変ポリペプチドを対象にしている。αらせんは、ウィルス感染性に関与するRSV由来のαらせんドメインの何れかを含んでいてもよい。適切なRSVαらせんドメインは、
YTSVITIELSNIKENKCNGTDAKVKLIKQELDKYKNAVTELQLLMQST(配列番号4);
FYDPLVFPSDEFDASISQVNEKINQSLAFIRKSDELL(配列番号5);
SGIAVSKVLHLEGEVNKIKNALLSTNKAVVSLSNGVSVLTSKVLDLKSYINNQLLPI−(配列番号11)又は
PIINYYDPLVFPSDEFDASISQVNEKINQSLAFIRRSDELLHNVNTGKSTTNIM(配列番号12)と30%又はそれ以上同一であるものを包含し、αらせんを形成する。
【0092】
また、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返し類縁ドメインは、相互作用表面の残基が配列番号4、5、11及び12のそれと同一であるか又はそれらの同類置換である限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返し類縁体の相互作用表面を確認する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0093】
更に別の態様では、本発明は、パラインフルエンザウィルス由来の安定なウィルス性αらせん7アミノ酸繰り返しドメインを有している改変ポリペプチドを対象にしている。適切なパラインフルエンザウィルスの7アミノ酸繰り返しドメインは、
ALGVATSAQITAAVALVEAKQARSDIEKLKEAIR(配列番号6)
と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するようなものを包含する。
【0094】
また、改変パラインフルエンザポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは、相互作用表面の残基が配列番号6の残基と同一であるか又はそれらの同類置換である限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を確認する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0095】
別の態様では、本発明はパラミクソウィルス、オルトミクソウィルス、コロナウィルス、及びフィロウィルス由来の安定化ウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメインを有している改変ポリペプチドを対象にしている。
【0096】
コロナウィルスのαらせん7アミノ酸繰り返しドメインは当該技術分野で公知であって、
NVLYENQKQIANQFNKAISQIQESLTTTSTALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDKVEAE(配列番号7)又は
TSPDVDFGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKY(配列番号8)と30%又はそれ以上同一であり、そしてαらせんを形成する。
【0097】
また、改変コロナウィルスポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは、相互作用表面の残基が配列番号7及び8のそれらと同一であるか又はそれらの同類置換である限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を確認する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0098】
同様に、フィロウィルスのαらせん7アミノ酸繰り返しドメインは当該技術分野で公知であって、
DGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLL(配列番号9)又は
DWTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPD(配列番号10)と30%又はそれ以上同一のものを包含し、そしてαらせんを形成する。
【0099】
また、改変フィロウィルスポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは、相互作用表面の残基が配列番号10のそれと同一であるか又はそれらの同類置換である限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を同定する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0100】
インフルエンザウィルスの7アミノ酸繰り返しドメインも当該技術分野で公知である。例えば、インフルエンザAウィルス(A/Aichi/2/68株)中の7アミノ酸繰り返しドメインは、残基379〜436、387〜453、及び380〜456に生じる。同様に、残基383〜471が、酸性のpH下で伸展したコイルドコイルであることが、Carr及びKimによって示された(Carr and Kim, 1993, Cell 73: 823-832)。
【0101】
本発明の改変ポリペプチドは、一般に以下に提示されている式(I)、(II)又は(III)の構造を包含している。
【0102】
本明細書に記載されている何れの改変ポリペプチドも、組成物(例えば、医薬組成物)又はキット中に存在させることができる。本発明のある態様では、組成物又はキットは、2つ又はそれ以上の改変ポリペプチドを含有している。例えば、組成物は、安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを有している2つ又はそれ以上の改変ポリペプチドを含有することができる。
【0103】
検討を明確にするために、本発明を、主にHIVのHR−1及びHR−2改変ポリペプチドについて、更に記載する。しかしながら、エンベロープを持つもの及び持たないものの両方の、別のウィルス、並びに非ウィルス性生体に対して、この方式を類似方法で適用することができる。本明細書で用いられる用語「7アミノ酸繰り返し」はHR−2及びHR−1ペプチドを包含している。
【0104】
HR−2及びHR−2−ペプチド
本発明の改変ポリペプチドは、HIV−1由来のgp160(配列番号13)の638〜673及び626〜662のアミノ酸残基にそれぞれ対応し、それぞれ36個及び37個のアミノ酸配列を有するHR−2ペプチド(配列番号1及び13)を包含する。これをアミノからカルボキシ末端に読むと、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF(配列番号1)及び
MTWMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE(配列番号13)である。
【0105】
本発明で使用するためのその他の有用なHR−2ポリペプチドは、米国特許第7,273,614号に記載されており、これはその全てを参照として本明細書に取り込まれている。
【0106】
全長HR−2(配列番号1及び13)の36及び37mer、及び対応する配列、並びにHIV−1株及び変異株の多様性に見出されるそれらの変異体の使用に加えて、本発明のペプチドは、HR−2(配列番号1及び13)ペプチドの断片(truncation)、HR−2ドメインの側面に位置するgp41ポリペプチド配列(すなわち、直近上流又は下流配列)、又は抗融合(antifusogenic)活性及び抗ウィルス活性を示すキメラを含んでいてもよい。HR−2(配列番号1及び13)ペプチドの断片は、図5及び6に示されているように、3〜36個の間のアミノ酸残基のペプチドを含有することができる。この図のペプチド配列はアミノ末端(左)からカルボキシ末端(右)へ記載されている。
【0107】
本発明の改変ポリペプチドはHR−2様ペプチドも包含できる。本明細書で用いられる「HR−2様」又は「7アミノ酸繰り返し様」は、1個又はそれ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含有している、全長の及び切断された並びにキメラのHR−2ポリペプチドを、更にホモロジー検索によって同定又は確認されたペプチド配列も示す。代表的なHR−2様ポリペプチドは、図5又は図6に説明されているようなものを包含する。本発明の改変HR−2様ポリペプチドは抗融合又は抗ウィルス活性を示すことができる。
一態様では、7アミノ酸繰り返しドメイン2は、図5、図6、配列番号1又は配列番号13のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。また、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメイン2は、相互作用表面の残基が図5、図6、配列番号1又は配列番号13のそれと同一であるか又はそれらの同類置換である限り、30%又はそれ以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を同定する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0108】
HIV−1とHIV−2のエンベロープタンパク質は構造的に異なっているが、HIV−1及びHIV−2のHR−2領域内には著しいアミノ酸保存が存在している。このアミノ酸保存には周期的特性があって、構造及び/又は機能の幾つかの保存性を示唆している。従って、アミノ酸置換が考えられる種類は、本発明のHR−2ペプチドの構造を安定化することが予測されるアミノ酸変更のようなものを包含するだろう。本明細書に記載されているHR−2及びHR−2類縁配列を用いて、当業者はHR−2コンセンサス配列を容易に翻訳して、それから好ましいアミノ酸置換を示すことができる同類アミノ酸残基を確認することができる。
【0109】
アミノ酸置換は同類又は非同類特性があるものでよい。同類アミノ酸置換は、HR−2(配列番号1又は13)ペプチド配列の1個又はそれ以上のアミノ酸を同じ荷電、大きさ、及び/又は疎水性特性のアミノ酸と置き換えることから成っていて、例えば、グルタミン酸(E)をアスパラギン酸(D)に、アスパラギン酸(D)をアスパラギン(N)に、そしてグルタミン酸(E)をグルタミン(Q)にアミノ酸置換するようなことである。非同類置換は、HR−2ペプチド配列の1個又はそれ以上のアミノ酸を非類似の電荷、大きさ、及び/又は疎水性特性を有するアミノ酸で置換することから成っていて、例えば、グルタミン酸(E)をバリン(V)に置換するようなことである。
【0110】
アミノ酸挿入は、単一のアミノ酸残基又は一続きの残基から成っていてもよい。挿入は全長又は切断HR−2ペプチドのカルボキシ又はアミノ末端で、更にはペプチドの内部位置でも行うことができる。このような挿入は、通常長さが2〜15アミノ酸の範囲である。目的のペプチドのカルボキシ又はアミノ酸末端の何れかで行われる挿入は、大きさの範囲をより広くするように意図され、約2〜約50個のアミノ酸が好ましい。1個又はそれ以上のそのような挿入を、そのような挿入が抗融合又は抗ウイルス活性を示す改変ポリペプチドをもたらす限り、全長(配列番号1又は13)又は切断HR−2ポリペプチドに導入することができる。
【0111】
好ましいアミノ又はカルボキシ末端挿入は、それぞれ実際のHR−2gp41アミノ酸配列のアミノ末端又はカルボキシ末端の何れかであるgp41タンパク質領域に対応している、長さが約2〜約50アミノ酸残基の範囲のペプチドである。従って、好ましいアミノ末端又はカルボキシ末端アミノ酸挿入は、gp41タンパク質のHR−1領域に対するアミノ又はカルボキシ末端に直接見られるgp41アミノ酸配列を含有することになる。
【0112】
全長(配列番号1又は13)又は切断HR−2ポリペプチドの欠失も本発明の範囲内である。このような欠失は、HR−2又はHR−2様ペプチド配列から1個又はそれ以上のアミノ酸を除去することから成っていて、得られるペプチド配列の長さの下限は4〜6個のアミノ酸である。このような欠失は、ペプチド配列の単一連続しているか又は1個以上離れた部分に関わっていてよい。1個又はそれ以上のそのような欠失を、そのような欠失が未だに抗融合又は抗ウィルス活性を示すことができるペプチドをもたらす限り、全長(配列番号1又は13)又は切断HR−2ポリペプチドに導入することができる。
【0113】
HR−1及びHR−1ペプチド
更に、本発明の改変ペプチドは、HR−1類縁体に対応するアミノ酸配列を有しているペプチドを包含している。HR−1は、強力な抗ウィルス活性を示して、以下に示すような、HIV−1膜貫通(TM)gp41タンパク質のそれぞれ553〜590及び542〜592に対応する38及び51アミノ酸ペプチドを包含している。
【0114】
NNLLRAIEAQQHLLQLTVWGIKQLQARILAVERYLQDQ(配列番号2)又は
RQLLSGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQLTVWGIKQLQARILAVERYLQDQQL(配列番号14)。
【0115】
38merの全長HR−1に加えて、本発明の改変ペプチドは、抗融合活性又は抗ウィルス活性を示す、HR−1ペプチドの切断部を包含している。HR−1ペプチドの切断部は、HR−2について図5及び図6に例示してあるものと同様な方法で作成することができる。
【0116】
本発明の改変ペプチドはHR−1様ペプチドも包含している。本明細書で用いられている「HR−1様」又は「7アミノ酸繰り返し様」は、1個又はそれ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を包含して、抗融合又は抗ウィルス活性を示す全長及び切断HR−1ポリペプチドを示す。
一態様では、7アミノ酸繰り返しドメイン1は、配列番号2、配列番号3又は配列番号14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。
また、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメイン1は、相互作用表面の残基が配列番号2、3又は14のそれと同一であるか、又はそれらの同類置換である限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を同定する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0117】
HIV−1とHIV−2のエンベロープタンパク質は構造的に異なっているが、HIV−1及びHIV2のHR−1対応領域内には著しいアミノ酸保存が存在している。このアミノ酸保存には周期的特性があって、構造及び/又は機能の幾つかの保存性を示唆している。従って、アミノ酸置換が考えられる種類は、本発明のHR−1ペプチドの構造を安定化することが予測されるアミノ酸変更のようなものを包含するだろう。本明細書に記載されているHR−1及びHR−1類縁配列を用いて、当業者はHR−1コンセンサス配列を容易に翻訳して、それから好ましいアミノ酸置換を示すことができる同類アミノ酸残基を確認することができる。
【0118】
アミノ酸置換は同類又は非同類特性があるものでよい。同類アミノ酸置換は、HR−1ペプチド配列の1個又はそれ以上のアミノ酸を同じ荷電、大きさ、及び/又は疎水性特性のアミノ酸と置き換えることから成っていて、例えば、グルタミン酸(E)をアスパラギン酸(D)に、アスパラギン酸(D)をアスパラギン(N)に、そしてグルタミン酸(E)をグルタミン(Q)にアミノ酸置換するようなことである。非同類置換は、HR−1ペプチド配列の1個又はそれ以上のアミノ酸を非類似の電荷、大きさ、及び/又は疎水性特性を有するアミノ酸で置換することから成っていて、例えば、グルタミン酸(E)をバリン(V)に置換するようなことである。
【0119】
アミノ酸挿入は単一のアミノ酸又は一続きの残基から成っていてもよい。挿入は全長又は切断HR−1ペプチドのカルボキシ又はアミノ末端で、更にはペプチドの内部位置でも行うことができる。このような挿入は通常長さが2〜15アミノ酸の範囲である。目的のペプチドのカルボキシ又はアミノ酸末端の何れかで行われる挿入は、大きさの範囲をより広くするように意図され、約2〜約50個のアミノ酸が好ましい。1個又はそれ以上のそのような挿入を、そのような挿入が抗融合又は抗ウイルス効果を示す改変ポリペプチドをもたらす限り、全長又は切断HR−1ポリペプチドに導入することができる。
【0120】
好ましいアミノ又はカルボキシ末端挿入は、長さが約2〜約50アミノ酸残基の範囲のペプチドであって、実際のHR−1gp41アミノ酸配列のそれぞれぞれアミノ末端又はカルボキシ末端の何れかであるgp41タンパク質領域に対応している。従って、好ましいアミノ末端又はカルボキシ末端アミノ酸挿入は、gp41タンパク質のHR−1領域のアミノ又はカルボキシ末端に直接見られるgp41アミノ酸配列を含有することになる。
【0121】
全長又は切断HR−1ポリペプチドの欠失も本発明の範囲内である。このような欠失はHR−1又はHR−1様ペプチド配列から1個又はそれ以上のアミノ酸を除去することから成り、得られるペプチド配列の最低限の長さは4〜6個のアミノ酸である。このような欠失は、ペプチド配列の1個近接しているか又は1個以上離れている位置に関わっていてよい。1個又はそれ以上の欠失を、そのような欠失が未だに抗融合又は抗ウィルス活性を示しているペプチドをもたらす限り、全長又は切断HR−1ポリペプチドに導入することができる。
【0122】
HR−1及びHR−2類縁体
全長及び切断HR−1及びHR−2ポリペプチドの類縁体に対応する、上記のペプチドは、その他のウィルスにも見出すことができる。本明細書で用いられる用語「HR−1及びHR−2類縁体」は、非HIVウィルス中の7アミノ酸繰り返し類縁ドメインを有していると確認又は同定されたペプチドを示す。7アミノ酸繰り返し類縁ポリペプチドを同定する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、タンパク質配列からのコイルドコイルを認識してそれらの構造をモデル化する能力を有している、残基対の相関に基づく生物情報プログラム(例えば、:ch.embnet.org/software/COILS_form.htlmのワールドワイドウェブ上)である(参照して本明細書に取り込まれている、Lupas, A., et al. Science 1991. 252(5009): p. 1162-1164 を参照されたい)。更に、このような改変ペプチドは抗融合又は抗ウィルス活性を示してもよい。
【0123】
このようなHR−2及びHR−1類縁体は、例えば、その他のエンベロープウィルスの膜貫通タンパク質に存在するペプチド配列に対応していいてよい。このようなペプチドは抗融合又は抗ウィルス活性を示す。
【0124】
HR−2類縁体は、例えば、それからHR−2(配列番号1)が得られたgp41ペプチド領域に対応している別のウィルスのペプチド領域のアミノ酸配列から成っている。このようなウィルスは、これに限定されないが、別のHIV−1単離株、HIV−2単離株、SIV単離株、インフルエンザ、パラインフルエンザウィルス、コロナウィルス、RSV、等を包含できる。
【0125】
HR−1類縁体は、例えば、それからHR−1(配列番号2)が得られたgp41ペプチド領域に対応している別のウィルスのペプチド領域のアミノ酸配列から成っている。このようなウィルスは、これに限定されないが、別のHIV−1単離株、HIV−2単離株、SIV単離株、パラインフルエンザウィルス、コロナウィルス、RSV、等を包含できる。
【0126】
HR−1及びHR−2類縁体又はその他の7アミノ酸繰り返しポリペプチドは、そのアミノ酸配列が、例えばそれからHR−1(配列番号2又は配列番号3)及びHR−2(配列番号1)が得られたgp41ペプチド領域に対応しているその他のウィルスのペプチド領域のアミノ酸配列から成っている。これらのポリペプチドは次のものを包含する。
【0127】
(配列番号4)、(配列番号5)、(配列番号11)、又は(配列番号12)と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するRSV7アミノ酸繰り返しドメイン。
【0128】
(配列番号6)と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するパラインフルエンザウィルス7アミノ酸繰り返しドメイン。
【0129】
(配列番号7)、又は(配列番号8)と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するコロナウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメイン。
【0130】
(配列番号9)、又は(配列番号10)と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するフィロウィルスαらせん7アミノ酸繰り返しドメイン。
【0131】
本発明の改変ポリペプチドは、インフルエンザウィルス7アミノ酸繰り返しドメインの使用も意図している。
【0132】
また、改変ポリペプチドの7アミノ酸繰り返しドメインは、相互作用表面の残基が参照配列の相互作用表面のそれと同一であるか、又はそれらの同類置換である限り、30%以上異なっていてもよい。7アミノ酸繰り返しの相互作用表面残基を同定する方法は、当該技術分野で周知であって、本明細書に記載されている。
【0133】
7アミノ酸繰り返し体又は7アミノ酸繰り返し類縁体は、例えば、当該技術分野で公知のコンピュータ支援検索戦略を用いて確認又は同定される。例えば、タンパク質配列からのコイルドコイルを認識してそれらの構造をモデル化する能力を有している、残基対の相関に基づく生物情報プログラム(例えば、:ch.embnet.org/software/COILS_form.htlmのワールドワイドウェブ上)(両者の全てを参照して本明細書に取り込まれている、Lupas, A., et al. Science 1991. 252(5009): p. 1162-1164 及び米国特許第7,273,614号を参照されたい)。検索戦略はHR−1及び/又はHR−2のそれと類似の構造及び/又はアミノ酸配列特性を有することが予測される更なるペプチド領域を同定できる。
【0134】
7アミノ酸繰り返しポリペプチドの安定化
本発明の改変ポリペプチドは安定化された(例えば、架橋された)αらせんドメインを有している。ポリペプチドが炭化水素架橋されていることが好ましい。炭化水素架橋は米国特許出願公開第2005/0250680号に記載されていて、これはその全てを参照して本明細書に取り込まれている。
【0135】
ペプチドαらせんは、比較的大きい接触表面領域に渡って規則正しく正確に配列されている特定のアミノ酸残基の存在によって、非常に重要なタンパク質相互作用に寄与している(Chittenden, T., et al., Embo Journal, 1995. 14(22): p. 5589-5596; Kussie, P.H., et al. Science, 1996. 274(2589): p. 948-953; Ellenberger, T.E. et al., Cell, 1992.71(7): p. 1223-1237)。αらせんドメインは、タンパク質の残余部分にある骨格配列によって安定化されることが多く、これはαらせん構造の前形成を促進する。文脈を無視して解釈すると、αらせんペプチドのモチーフを展開して生物活性の損失に至らせることができる。重大な挑戦は、それらの元来のαらせん構造を保持していることを含むαらせんペプチドを開発すること、及びタンパク分解、酸及び熱分解に抵抗でき、それによってインビボで原形を保てるペプチドを製造することである。
【0136】
炭化水素架橋は、少なくとも二つのアミノ酸を介してポリペプチドを安定に架橋するための過程を示し、これはそのポリペプチドの元来の二次構造を構造的にもたらすのに役立つ。炭化水素架橋は、ポリペプチドを、αらせん二次構造を有して、その元来のαらせん配置を保持しやすくする。この二次構造は、タンパク分解開裂及び熱に対するポリペプチドの耐性を増大し、そして疎水性も増大することができる。従って、本明細書に記載されている炭化水素架橋された(架橋)ポリペプチドは、対応する炭化水素架橋されていない(非架橋)ポリペプチドと比較して改善された生物活性を有している。例えば、架橋ポリペプチドはHIVポリペプチドのαらせんドメイン(例えば、HR−1/HR−2ドメイン)を含有することができ、これはHIVの細胞との接着、融合及び細胞の感染を妨げる。ある場合には、架橋ポリペプチドを、ウィルスの細胞への侵入を阻害するために用いることができる。本明細書に記載されている架橋ポリペプチドは、治療的に、例えばHIVを処置するために、用いることができる。
【0137】
炭化水素架橋ポリペプチドは2個のアミノ酸の間の鎖(連鎖)を包含し、この鎖はポリペプチドのαらせん二次構造を有意に増強する。一般に、鎖は1つ又は2つのらせん回転の長さ(すなわち、約3.4又は約7アミノ酸)にわたっている。
従って、i及びi+3;i及びi+4;又はi及びi+7に位置するアミノ酸が、化学修飾及び架橋のための理想的な候補である。
従って、例えば、ペプチドが配列...X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9...を有している場合には、X1とX4の間、又はX1とX5の間、又はX1とX8の間の架橋は、X2とX5の間、X2とX6間、又はX2とX9の間等の架橋と同様に有用である。
【0138】
複数の架橋(例えば、2、3、4又はそれ以上)の使用も、個々の架橋付加物の利点を結び付けて達成されており(例えば、改善されたらせん性と活性;改善されたらせん性と熱安定性;改善されたらせん性と酸安定性)。
従って、本発明は、配列を更に安定化するために、或いはより長いポリペプチド伸長の構造安定性、タンパク分解耐性、熱安定性、酸安定性、及び生物活性増強を促進するためにポリペプチド配列内への一つ又はそれ以上の架橋の取り込みを包含する。
【0139】
一態様では、本発明の改変ポリペプチドは式(I)を有する。
【0140】
【化2】

【0141】
式中の、R及びRは、独立してH又はC〜C10のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロシクリルアルキルである。
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、又は[R−−K−−R]nであり、これらはそれぞれ0〜6個のRで置換されている。
は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである。
は、ハロ、アルキル、OR、N(R、SR、SOR、SO、CO、R、蛍光部分、又は放射性同位元素である。
KはO、S、SO、SO、CO、CO、CONR、又は
【0142】
【化3】

【0143】
である。
は、H、アルキル、又は治療薬剤である。
nは、1〜4の整数である。
xは、2〜10の整数である。
それぞれのyは、独立して0〜100の整数である。
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)である。
そしてそれぞれのXaaは、独立してアミノ酸である。
【0144】
改変ポリペプチドはαらせんを形成して、配列番号1〜14、図5、図6、
【0145】
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE
【0146】
のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を包含する。
式中の、Xは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、Bはメチオニン又はノルロイシンである。
【0147】
この鎖は、アルキル、アルケニル、又はアルキニル部分(例えば、C、C又はC11アルキル又はC、C又はC11アルケニル、又はC、C又はC11アルキニル)を包含できる。結合したアミノ酸はα−ジ置換(例えば、C〜C又はメチル)であってよい。
【0148】
ある場合は、xが2、3、又は6である。
ある場合は、それぞれのyが独立して3と15の間の整数である。
ある場合は、それぞれのyが独立して1と15の間の整数である。
ある場合は、R及びRがそれぞれ独立してH又はC〜Cアルキルである。
ある場合は、R及びRがそれぞれ独立してC〜Cアルキルである。
ある場合は、R及びRの少なくとも一方がメチルである。例えば、R及びRの両方がメチルである。
【0149】
ある場合は、Rがアルキル(例えば、Cアルキル)であって、xが3である。
ある場合は、RがC11アルキルであって、xが6である。
ある場合は、Rがアルケニル(例えば、Cアルケニル)であって、xが3である。
ある場合は、xが6であって、RがC11アルケニルである。
ある場合は、Rが直鎖のアルキル、アルケニル、又はアルキニルである。
ある場合は、Rが、−−CH−−CH−−CH−−CH=CH−−CH−−CH−−CH−− である。
【0150】
ある特定の態様では、2つのα、αジ置換立体中心の両方がR配座又はS配座(例えば、i、i+4架橋)にあるか、又は一方の立体中心がRで他方がS(例えば、i、i+7架橋)にある。従って、式Iが
【0151】
【化4】

【0152】
のように表される場合は、例えばXが3であるとき、C’及びC”ジ置換立体中心は両方がR配座にあるか又はそれらの両方がS配座にあることができる。Xが6のときは、C’ジ置換立体中心がR配座にあって、C”ジ置換立体中心はS配座にある。R二重結合はE又はZの立体化学配座であってよい。
【0153】
ある場合は、Rが[R−−K−−R]nであって、Rが直鎖のアルキル、アルケニル、又はアルキニルである。
【0154】
ある態様では、改変ポリペプチドは、7アミノ酸繰り返し又は7アミノ酸繰り返し様ドメイン、例えば、HIV−1のHR−1又はHR−2ドメインの、少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、45個、50個、又はそれ以上の連続したアミノ酸を含有している。
それぞれの[Xaa]yは、独立して7アミノ酸繰り返し又は7アミノ酸繰り返し様ドメイン、例えば、HIV−1のHR−1又はHR−2ドメインの、少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、又はそれ以上の連続したアミノ酸を含有していてよいペプチド、例えば、図5及び6の何れかで表されているポリペプチドである。
[Xaa]xは、7アミノ酸繰り返し又は7アミノ酸繰り返し様ドメイン、例えば、HIV−1のHR−1ドメイン又はHR−2ドメインの酸の、3個又は6個の連続したアミノ酸を含有していてよいペプチド、例えば、配列番号1〜14又は図5又は6のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0155】
改変ポリペプチドは、7アミノ酸繰り返し又は7アミノ酸繰り返し様ドメイン、例えば、HIV−1のHR−1又はHR−2ドメインの酸の、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個の連続したアミノ酸を含有してよく、例えば、配列番号1〜14又は図5又は6のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。ここでは、2個、3個、又は6個のアミノ酸で隔てられている2個のアミノ酸が、Rを介して結合しているアミノ酸置換によって置き換わっている。従って、少なくとも2つのアミノ酸を、連結アミノ酸又は連結アミノ酸置換で置き換えることができる。従って、式(I)を
【0156】
【化5】

【0157】
で表した場合は、[Xaa]y’及び[Xaa]y”はそれぞれ、同一又は異なった7アミノ酸繰り返し又は7アミノ酸繰り返し様ドメイン由来の連続したポリペプチド配列を含有していてよい。
【0158】
本発明は、7アミノ酸繰り返し又は7アミノ酸繰り返し様ドメイン、例えば、HIV−1のHR−1又はHR−2ドメインの10個(11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、又はそれ以上)連続したアミノ酸を含有する架橋ポリペプチド、例えば、配列番号1〜14又は図5又は6のアミノ酸配列を有するポリペプチドを特徴としている。ここでは、2個、3個、又は6個のアミノ酸で隔てられている2個のアミノ酸のα−炭素がRを介して結合しており、2つのα−炭素の一方がRで置換されていて、他方がRで置換されており、そしてそれぞれがペプチド結合を介して更なるアミノ酸と結合している。
【0159】
別の態様では、本発明の改変ポリペプチドは式(II)を有している。
【0160】
【化6】

【0161】
式中の、それぞれのR及びRは独立して、H,アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロシクリルアルキルである。
それぞれのnは、独立して1〜15の整数である。
xは、2、3、又は6である。
それぞれのyは、独立して0〜100の整数である。
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)である。
それぞれのXaaは、独立してアミノ酸である。
【0162】
改変ポリペプチドは、αらせんを形成して、配列番号1〜14、図5又は図6のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一のアミノ酸配列を有することができるか、又は改変ポリペプチドは、配列:
【0163】
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE:
【0164】
を有する7アミノ酸繰り返しドメインを含有している。式中の、Xは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、Bはメチオニン又はノルロイシンである。
【0165】
更に別の態様では、本発明の改変ポリペプチドは式(III)を有している。
【0166】
【化7】

【0167】
式中の、R及びRは、それぞれの独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロシクリルアルキルである。
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、[R−−K−−R]n、又は天然アミノ酸の側鎖であって、これらのそれぞれは0〜6個のRで置換されている。
は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである。
は、ハロ、アルキル、OR、N(R、SR、SOR、SO、CO、R、蛍光部分、又は放射性同位元素である。
Kは、O、S、SO、SO、CO、CO、CONR、又は
【0168】
【化8】

【0169】
である。
は、H、アルキル、又は治療薬剤である。
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、[R−−K−−R]n、又は天然アミノ酸の側鎖であって、これらのそれぞれは0〜6個のRで置換されている。
nは、1〜4の整数である。
xは、2〜10の整数である。
それぞれのyは、独立して0〜100の整数である。
zは、1〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)である。
それぞれのXaaは、独立してアミノ酸である。
【0170】
ポリペプチドはαらせんを形成して、配列番号1〜14、図5、図6のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一のアミノ酸配列を含有するか、又は改変ポリペプチドは、配列:
【0171】
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE:
【0172】
を有する7アミノ酸繰り返しドメインを含有している。式中の、Xは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、Bはメチオニン又はノルロイシンである。
【0173】
炭化水素鎖は記載されているが、その他の鎖も想定される。例えば、鎖は1個又はそれ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、アミン、又はアミド部分を包含できる。ある場合は、天然アミノ酸の側鎖を鎖の中に組み込むことができる。例えば、鎖を、セリン中のヒドロキシル、システイン中のチオール、リジン中の1級アミン、アスパラギン酸又はグルタミン酸中の酸、又はアスパラギン又はグルタミン中のアミドのような、官能基と結合することができる。従って、2つの非天然アミノ酸を結合して作った鎖を用いる以外にも天然のアミノ酸を用いて鎖を作ることができる。単一の非天然アミノ酸を天然のアミノ酸と共に用いることもできる。
【0174】
鎖の長さを変えることも更に想定される。例えば、二次αらせん構造に比較的高度の拘束を与えることが好ましいときに、長さがより短い鎖を用いることができるのに対して、二次αらせん構造に低い拘束を与えることが望ましい様な場合には、より長い鎖が望ましい。
【0175】
更に、主にαらせんの単一表面に鎖を提供するために、アミノ酸iからi+3、iからi+4、及びiからi+7にまたがる鎖の例が記載されているが、アミノ酸の数の何れの組み合わせにもまたがるように鎖を合成することができる。
【0176】
当業者に評価されるように、本明細書に記載されている化合物を合成する方法は当業者にとって明瞭であろう。従って、所望の化合物を得るために、代替えの配列又は順序で多くの合成工程を実施することができる。本明細書に記載されている化合物を合成するのに有用な、合成化学変換及び保護基手順(保護及び脱保護)は当該技術分野で公知であって、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformation, VCH Publishers (1989); T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Syntesis, 2d. Ed., John Wiley and Sons (1991); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagent for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); 及び L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Syntesis, John Wiley and Sons (1995) 及びこれらの続版に記載されているようなものを含む。
【0177】
ペプチドの合成
本発明のペプチドは化学合成方法によって作成することができ、これは当業者にとって周知であって、本明細書に記載されている。例えば、Fields et al., Chapter 3 in Syntehtic Peptides: A User's Guide, ed. Grant, W. H. Freeman & Co. New York, N.Y., 1992, p. 77 を参照されたい。従って、例えば、Applied Biosystems Peptide Synthesizer Model 430A 又は 431 或いは AAPPTEC multichannel synthesizer APEX 396 上で、側鎖保護アミノ酸を用いて、t−Boc又はF−moc化学の何れかで保護したα−NHで、ペプチドを固相合成の自動 Merrifield 技術を用いて合成することができる。
【0178】
本明細書に記載されているペプチドを作成する1つの方法は、固相ペプチド合成(SPPS)を用いることである。C−末端アミノ酸を、架橋ポリスチレン樹脂に、リンカー分子との酸に不安定な結合を介して接着する。この樹脂は合成に用いる溶媒に不溶性であって、過剰の試薬及び副産物を比較的単純かつ迅速に洗い流す。N末端を、酸に安定であるが、塩基で除去可能な、Fmoc基で保護する。何れの側鎖官能基も塩基に安定で酸に不安定な基で保護する。
【0179】
より長いペプチドは、個々の合成ペプチドを天然の化学ライゲーションを用いて対等接続させることによって作成できる。また、より長い合成ペプチドは、周知の遺伝子組み換えDNA技術によって合成できる。このような技術は、周知の標準的なマニュアルに詳細な手順と共に載っている。本発明のペプチドをコードする遺伝子を構築するために、好ましくは、遺伝子が発現される生体に最適なコドンを用いて、アミノ酸配列を逆翻訳してそのアミノ酸配列をコードする核酸配列を得る。次に、通常、ペプチドをコードするオリゴヌクレオチド、及び所望により、何れかの調節エレメントを合成して、合成遺伝子を作成する。合成遺伝子を適当なクローニングベクターに挿入して、宿主細胞にトランスフェクトする。更に、炭化水素架橋のために非天然アミノ酸を組み込めるように宿主細胞を改変する。次いで、選択した発現系及び宿主に適している条件下で、ペプチドが発現する。Liu et al., Proc. Nat. Acad. Sci (USA), 94:10092-10097 (1997) を参照されたい。ペプチドを標準的な方法で精製して特性化する。
【0180】
ペプチドを、高性能、コンビナトリアル方法で、例えば、Advanced Chemtech から入手できる、高性能多チャンネルコンビナトリアルシンセサイザーを用いて作成することができる。
【0181】
抗ウィルス活性のアッセイ
本発明のペプチドのような、化合物の、インビトロ及びインビボの両方で膜融合を阻害しそして/又は抗ウィルス活性を示す能力を評価する方法が本明細書に記載されている。特にこのようなアッセイは以下にそして実施例4及び5に記載されている。抗ウィルス活性を評価するための更なるアッセイは当業者に周知である。
【0182】
本発明のペプチドによって示される抗ウィルス活性は、例えば、本明細書に記載されていて、当業者に公知のもののような、インビトロアッセイを容易に実施して測定することができる。これは、合胞体形成を阻害するペプチドの能力、又は無細胞ウィルスによる感染を阻害するそれらの能力を試験できる(Madani, N., et al., Journal of Virology, 2007. 81(2): p. 532-538; Si, Z.H., M. Cayabyab, and J. Sodroski, Journal of Virology, 2001. 75(9): p. 4208-4218; Si, Z.H., et al., PNAS USA, 2004. 101(14): p. 5036-5041)。
【0183】
これらのアッセイを用いて、ウィルスの所定株に対して示すペプチドの相対的な抗ウィルス活性及び/又はペプチドの株特異的阻害活性を測定することができる。
【0184】
ペプチドの抗ウィルス能力を試験するアッセイは本発明の意図するところである。1例としてHIVを取り上げると、逆転写酵素(RT)アッセイが、無細胞HIVによるCD−4細胞の感染を阻害するペプチドの能力を試験するために利用される。このようなアッセイは、試験されるペプチドの存在下で適切な濃度(すなわち、50%組織培養感染量(Tissue Culture Infection Dose 50))のウィルスとCD−4+細胞を培養することを含むことができる。当業者に周知の培養条件が用いられる。ペプチドを添加していないコントロール培養に加えて、様々なペプチド濃度が用いられる。適切な期間(例えば7日間)培養物を培養した後、標準的な手法を用いて無細胞上澄液を調製して、成功した感染の測定として、RT活性の存在について試験する。RT活性は、例えば、Goff et al. (Goff, S. et al., 1981, J. Virol. 38:239-248) 及び/又は Willey et al. (Willey, R. et al., 1988, J. Virol. 62:139-147) に記載されているような、標準的な技術を用いて試験することができる。これらの引例はその全てが参照として本明細書に取り込まれている。
【0185】
当業者に周知である標準的な方法を、非レトロウィルス活性をアッセイするために利用することができる。呼吸器合胞体ウィルス及びパラインフルエンザウィルス活性のアッセイ技術を検討するために、例えば、Pringle et al. (Pringle, C.R. et al., 1985, J. Medical Virology 17:377-386) を参照されたい。更に、このような技術の一般的な概説について、例えば、"Zinsser Microbiology", 1988, Joklik, W.K. et al., eds., Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 19th ed., を参照されたい。これらの文献はその全てを参照して本明細書に取り込まれている。
【0186】
エンフュービルタイドによる初期治療に反応を示すHIV陽性患者が、通常最大80週間以内に生じるウィルスのリバウンドを最終的に発現するということが知られている。エンフュービルタイドに対する耐性は、gp41のHR−1ドメイン内の突然変異に由来しているが、幾つかの遺伝子変化がHR−2ドメインにも見出される(Xu, L., et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2005. 49(3): p. 1113-1119; Perez-Alvarez, L., et al., Journal of Medical Virology, 2006. 78(2): p. 141-147)。I37V、V38A/E/M、Q39R、Q40H、N42T/Q/H、N43D/Qのような、これらの突然変異は、エンフュービルタイドを経験した患者にだけ見出される(Proveda, E., et al., Journal of Medical Virology, 2004. 74(1): p. 21-28; Melby, T., et al., Aids Research and Human Retroviruses, 2006. 22(5): p. 375-385; Sista, P.R., et al., Aids 2004. 18(13): p. 1787-1794; Wei, X.P., et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2002. 46(6): p. 1896-1905)。
【0187】
本発明の改変ポリペプチドを、これらのエンフュービルタイド耐性HIV株を阻害できるように作成できる。改変ポリペプチドのこれらのエンフュービルタイド耐性HIV株を処置する能力を評価する1つの好ましい方法は、Root, M.J., M.S. Kay, and P.S. Kim, Science, 2001.291(5505): p. 884-888 に記載されているような、5へリックスバンドルアッセイ(five-helix bundle assay)である。
【0188】
つまり、5へリックスバンドルアッセイには、耐性突然変異を組み込んでいるポリペプチドが含まれる。次いで、FITC標識SAH−gp41化合物をこれらの突然変異5へリックスバンドルタンパク質に対してスクリーニングして、何れかの天然SAH−gp41化合物が、HRドメインの突然変異にも関わらず活性を保持しているかどうかを確認することができる。FITC標識突然変異SAH−gp41(mSAH−gp41)化合物を、突然変異5へリックスバンドルタンパク質に対する結合親和性について及び1次耐性株を用いるHIV感染性の抑制についてスクリーニングすることができる。
【0189】
別の態様では、本発明の改変ポリペプチドを、HIV単離株における耐性の発生をモニターするために用いることができる。SAH−gp41化合物に対する潜在的な耐性を探索するために、HIV株を細胞培養中で次第に増大する濃度のリード(lead)SAH−gp41化合物の存在下に培養することができる。耐性の発現をモニターするために耐性株の遺伝子型を同定できる(Dwyer et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 104:12772 (2007) を参照されたい)。本発明の1つのポリペプチドに対する耐性は、別の変異体に対する感受性に影響を及ぼさないが(Ray, N., et al., Journal of Virology, 2007. 81(7): p. 3240-3250)、治療は、HIVの耐性株を処置することのできる異なったSAH−gp41ポリペプチドの組み合わせを包含していてもよいことを意図している。
【0190】
例えば、本発明のペプチドの抗ウィルス活性を試験するために、インビボアッセイも利用できる。抗HIV活性を試験するために、例えば、Barnett et al.(Barnett, S.W. et al., 1994, Science 266:642-646)に記載されているインビボモデルを用いることができる。
【0191】
また、抗RSV活性を、RSVプラークアッセイを用いてインビトロで、そして周知のマウスモデル(Kong et al., Virology J. 2(1):3 (2005))によってインビボで試験することができる。例えば、RSVを各種同系交配のマウスに鼻腔内投与することができる。全ての系統の肺にウィルスが複製するが、P/N、C57L/N及びDBA/2Nマウスにおいて最も高い力価が得られる。BALB/cマウスの感染は、リンパ球浸潤及び肺組織1g当たり10〜10pfuの肺ウィルス力価を特徴とする無症候性細気管支炎を生じる(Taylor, G. et al., 1984, Infect. Immun. 43:649-655)。RSVのコットンラットモデルもよく知られている。コットンラットの鼻及び肺に高力価でウィルスが複製するが、炎症の徴候はあってもごく少ない。改変ウィルス性ポリペプチドの有効性を評価する更なるアッセイは当業者に周知である。
【0192】
医薬組成物及び投与経路
本明細書で用いられているような、本発明の化合物(例えば、本明細書に記載されている改変ポリペプチド)は、それらの薬学的に許容される誘導体又はプロドラッグを包含するように定義される。「薬学的に許容される誘導体又はプロドラッグ」は、服用者に投与すると本発明の化合物を(直接又は間接的に)もたらすことができる、本発明の化合物の薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、又はその他の誘導体の何れかを意味する。特に好適な誘導体及びプロドラッグは、そのような化合物を哺乳動物に投与したときに本発明の化合物のバイオアベイラビリティーを増大するもの(例えば、経口投与された化合物をより容易に血中に吸収できるようにすることにより)又は親種に比べて親化合物の生体部分(例えば、脳又はリンパ系)への送達を増強するようなものである。好ましいプロドラッグは、水溶性又は消化管の膜を通過する能動輸送を増大する基が本明細書に記載されている式の構造に付加されている誘導体を包含する。
【0193】
本発明の化合物を、選択的な生物的特性を増強する適切な機能を付加して、改変することができる。このような改変は、当該技術分野で公知であって、所定の生体部分(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物的侵入を増大する、経口アベラビリティーを増大するもの、注射による投与を可能にするために溶解性を増大するもの、代謝を変えるもの、及び排泄速度を変えるようなものを包含する。
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機及び有機の酸及び塩基に由来するようなものを包含する。適切な酸塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩を包含する。適切な塩基に由来する塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム、及びN−(アルキル)塩を包含する。本発明は本明細書に開示されている化合物の何れかの塩基性窒素含有基の4級化も想定している。そのような4級化によって水溶性又は油溶性又は分散性産物を得ることができる。
【0194】
本発明の化合物を、例えば、体重1kg当たり約0.001〜約100mg、又は特定の薬剤の要件に従って、そしてより好ましくは体重1kg当たり0.5〜10mgの範囲の用量で、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、又は皮下的注射で;又は経口で、頬側に、鼻腔内に、経粘膜で、膣内に、頸部に、局所に、眼科製剤で又は吸入によって投与することができる。本明細書の方法は望ましい又は所定の効果を達成する化合物又は化合物組成の有効量の投与を意図している。
通常、本発明の医薬組成物は、1日当たり約1〜約6回投与するか、或いはまた、連続注入として、又は例えば、膣内発泡剤として、又は単独で又は避妊薬と組み合わせて用いる場合に子宮頸部リング用に製剤化して投与する。このような投与は慢性又は急性治療として用いられてもよい。
単一剤形を調製するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療する宿主及び投与の特有な方法に基づいて変化する。典型的な製剤は約1%(w/w)〜約95%の活性化合物を含有している。あるいは、そのような製剤は約20%〜約80%の活性化合物を含有している。
【0195】
上で述べたより低い或いは高い用量も必要とされてもよい。特定の患者に対する特定な用量及び治療計画は、用いられる特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性、食事、投与回数、排泄速度、薬剤の組み合わせ、疾患、状態及び症状の重症度及び経過、疾患、状態及び症状に対する患者の体内動態、及び治療医師の判断を含む、多種の因子によって決まる。
【0196】
患者の状態が改善又は感染が予防されると、所望により、本発明の化合物、組成物又は組み合わせの維持用量を投与してもよい。続いて、投与の用量又は回数、或いはその両方を、症状に応じて、改善された症状を維持するレベルまで減らすことができる。しかしながら、患者は、病状の再発(例えば、HIVのウィルス負荷の増大)のために長期に渡る間欠投与を必要とすることができる。
【0197】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩;例えばモルフィン又はコデインを含む、追加薬剤;及び薬学的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含有している。本発明の別の組成物は、本発明の化合物又はそれらの薬学的に許容される塩;及び薬学的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含有している。本明細書で説明されている組成物は、本明細書で説明されている化合物、更にもしあるなら追加の治療薬剤の、HIV介在疾患又はその症状を含む、疾患又は病状の変調をもたらすのに有効な量を包含している。
【0198】
用語「薬学的に許容される担体又はアジュバント」は、本発明の化合物と共に患者に投与されて、それらの薬理学的活性を損なわず、そして化合物の治療量を送達するのに十分な量を投与しても非毒性である、担体又はアジュバントを示す。
【0199】
本発明の医薬組成物中で用いることができる薬学的に許容される担体、アジュバント及び賦形剤は、これに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルのような自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)、Tween(登録商標)又はその他の同様な重合送達マトリックスのような医薬剤形で用いられる界面活性剤、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースよりなる物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を包含する。α−、β−、及びγ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリンも、本明細書に記載されている式の化合物の送達を増強するために有利に用いられる。
【0200】
本発明の医薬組成物は経腸的に、例えば、経口投与で、非経口的に、吸入スプレーで、局所に、経直腸で、鼻腔内に、頬側に、膣内に、又は移植貯留層を介して、好ましくは経口又は膣内投与又は注射による投与で、投与される。
本発明の医薬組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含有することができる。ある場合には、製剤のpHを薬学的に許容される酸、塩基又は緩衝剤を用いて調節して製剤化した化合物又はその送達形態の安定性を増大することができる。
本明細書で用いられる用語「非経口的」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内、及び頭蓋内投与又は点滴方法を包含する。
【0201】
剤形の例は、これに限定されないが、錠剤;カプレット;ソフトエラスティックゼラチンカプセルのようなカプセル(capsules);カプセル(cachets);トローチ;ロゼンジ;分散液;坐剤;軟膏;パップ(湿布);ペースト;粉末剤;包帯剤;クリーム;硬膏;溶液;パッチ;エアゾール(例えば、経鼻スプレー又は吸入剤);ゲル;懸濁液(例えば、水性又は非水性液体懸濁液、水中油型乳剤又は油中水型乳剤)、溶液、及びエリキシル剤を含む、経口又は粘膜投与に適している液体剤形;患者への非経口投与に適している液体剤形;及び患者へ非経口投与するのに適している液体剤形を再構築できる無菌の固体(例えば、結晶性又は多形体の固体)を包含する。
【0202】
医薬組成物を無菌注射製剤(例えば、無菌水性又は油性懸濁液のような)とすることができる。この懸濁液は適切な分散又は湿潤剤(例えば、Tween(登録商標)80のような)及び懸濁剤を用いる、当該技術分野で公知の技術に従って製剤化できる。無菌注射用製剤は、非毒性の非経口に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用できる許容賦形剤及び溶媒の中には、マンニトール、水、リンゲル溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。また、無菌の固定油は溶媒又は懸濁媒体として通常用いられている。この目的のために、合成モノ−又はジ−グリセリドを含む、無菌固定油を用いることができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体のような、脂肪酸は、特にポリオキシエチル化タイプのオリーブ油及びひまし油のような、天然の薬学的に許容される油がそうであるように、注射剤の調製において有用である。これらの油性溶液又は懸濁液は、乳剤又は懸濁液のような薬学的に許容される剤形の製剤化において通常用いられている、長鎖アルコール希釈又は分散剤、又はカルボキシメチルセルロース又は同様の分散剤も含有することができる。
その他の通常用いられている、Tween、Spans及び/又は同様な乳化剤のような界面活性剤、又は薬学的に許容される固体、液体、又はその他の剤形の製造に通常用いられているバイオアベイラビリティー増強剤も製剤化のために用いられてもよい。
【0203】
本発明の医薬組成物は、これに限定されないが、カプセル、錠剤、乳剤及び水性の懸濁剤、分散剤並びに溶液をを包含する、経口投与に許容される何れかの剤形で、経口的に投与されてもよい。経口使用のための錠剤の場合、通常用いられる担体は乳糖及びコーンスターチを包含する。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も通常添加する。カプセル形態で経口投与するために、有用な希釈剤は、乳糖及び乾燥コーンスターチを包含する。水性懸濁液及び/又は乳剤を経口で投与する場合は、活性成分を油層に懸濁又は溶解して、乳化剤及び/又は懸濁化剤と混合することができる。所望により、甘味剤及び/又は着香剤及び/又は着色剤を添加できる。
【0204】
本発明の医薬組成物を、直腸内投与のための坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温では固体であるが直腸内の温度では液体であるので、直腸内で融解して活性化合物を放出する、非刺激性の賦形剤と混合することによって製造することができる。このような物質は、これに限定されないが、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールを包含する。
【0205】
本発明の医薬組成物を局所的に又は膣内に投与することができる。医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解している活性化合物を含んでいる適切な軟膏を用いて製剤化される。本発明の化合物の局所投与のための担体は、これに限定されないが、鉱物油、液化ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を包含する。
また、医薬組成物を、担体に懸濁または溶解した活性化合物を含有している適切なローションまたはクリームで製剤化することができる。
更に別の態様では医薬組成物を膣リングとして製剤化する。適切な担体は、これに限定されないが、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を包含する。
本発明の医薬組成物を、直腸坐薬製剤又は適切な浣腸製剤で下部消化管に局所的に適用することもできる。
局所経皮パッチ及びイオントホレシス投与も本発明に含まれる。
一態様では、本発明の化合物を、性感染症、例えば、HIVの予防治療として経膣的に投与する。
【0206】
本発明の医薬組成物を、経鼻エアゾール又は吸入によって投与することができる。このような組成物は医薬製剤の技術分野で周知の技術に従って製造され、そしてベンジルアルコール又はその他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増大するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当該技術分野で公知の溶解又は分散剤を用いて、食塩水溶液として調製することができる。
【0207】
本発明の組成物が本明細書に記載されている式の化合物と1つ又はそれ以上の追加の治療又は予防剤との組み合わせを含んでいる場合は、化合物及び追加薬剤の両方を単剤療法において通常投与される用量の約1〜100%の間、好ましくは約5〜95%の間の用量レベルで存在させるべきである。追加の薬剤を、併用投与療法の1部として、本発明の化合物から切り離して投与することができる。また、これらの薬剤を、単一組成物中に本発明の化合物と共に混合して、単一剤形の一部とすることができる。
【0208】
HIVに関して、本発明のペプチドをHIV感染及び/又はAIDSの治療における治療方法として用いることができる。更にペプチドを、HIVウィルスへの急性曝露後の非感染者へ予めの予防方法(例えば、曝露後予防法)として用いることができる。ペプチドのこのような予防的使用の例は、これに限定されないが、ウィルスの母子感染の予防、及び、例えば、性感染又は作業者がHIV−含有血液製剤に曝露されるような医療の場における偶発事故のような、HIV感染が存在する可能性があるその他の状況を包含する。
【0209】
投与される本発明のペプチドの有効用量は、生物学的半減期、バイオアベイラビリティー、及び毒性のようなパラメータに対処している技術分野で公知の手順を介して決定することができる。
【0210】
治療有効量は、患者における症状の改善又は生存率の延長をもたらすのに十分な化合物の量を示す。このような化合物の毒性及び治療効果は、例えば、LD50(集団の50%の致死用量)及びED50(集団の50%の治療有効用量)を測定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学の手順によって、確認できる。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数であって、比LD50/ED50として表される。より大きい治療指数を表す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータを、ヒトに用いるための用量範囲を定めるために用いることができる。このような化合物の用量は、殆ど又は全く毒性がないED50を含む血中濃度の範囲内であることが好ましい。この用量は、この範囲内で、用いられる剤形及び用いられる投与経路によって変化する。本発明の方法で用いられる何れかの化合物について、治療有効量を細胞培養アッセイから最初に見積もることができる。用量を、細胞培養中で測定したように、IC50(例えば、試験化合物の非存在下での量と比較したウィルス感染の最大半量阻害のような、融合事象の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度をもたらす動物モデルにおいて定めることができる。このような情報を、ヒトに有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は質量分析(MS)によって測定することができる。
【0211】
予防ワクチン
本発明のペプチドは、更に、予防ワクチンの役割を果たす。そこでは、宿主が本発明のペプチドに対する抗体を産生していて、次いで、例えば、更なる感染を阻害することによって、ウィルス(例えば、HIV、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、コロナウィルス、エボラウィルス)を中和するよう機能する。従って、予防ワクチンとして本発明のペプチドを投与することは、宿主に、例えば、ウィルスが細胞に感染する能力を阻害することによって、ウィルスを中和するのに十分な免疫応答を生ずるのに有効なペプチドの濃度を投与することを含んでいる。正確な濃度は、投与される特定のペプチドによって決まるが、免疫応答の進行をアッセイするための、当業者に周知である標準的な技術を用いて確認することができる。ワクチンとして用いられるペプチドは通常筋肉内投与される。
【0212】
免疫応答を増強するために適切なアジュバントを用いて、ペプチドを製剤化できる。このようなアジュバントは、これに限定されないが、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル;リゾレクチン(lysolectin)、プルロニックポリオール、ポリアニオンのような界面活性物質、その他のペプチド、油乳剤;及びBCG並びにコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)のような潜在的に有用なヒトのアジュバントを包含する。本明細書に記載されているワクチン製剤を導入するために多数の方法を用いることができる。これらの方法は、これに限定されないが、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下及び鼻腔内の経路を包含する。
【0213】
また、本発明のペプチドに対して産生されたポリクローナル又はモノクローナル抗体の有効濃度を、非感染細胞がウィルスによって感染しないように、宿主に投与することができる。このような抗体の正確な濃度は、それぞれの抗体調製物によって変化するが、当業者に周知の標準的な技術を用いて決定することができる。抗体の投与は、これに限定されないが、本項に記載されているようなものを包含する、多種の技術を用いて達成できる。
【0214】
一態様では、本発明は、改変ポリペプチドに対する抗体を作出する方法を対象としている。この方法は、改変ポリペプチドに対する抗体を作出するように、対象に本発明の改変ポリペプチドを投与することを含んでいる。
【0215】
更に別の態様では、本発明は、改変ポリペプチドに特異的に結合する抗体を対象としていて、そこでは、改変ポリペプチドは図5、6の何れかの配列のアミノ酸配列を有するか、又は改変ポリペプチドは、配列:
【0216】
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YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE:
【0217】
(配列中のXは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し;そしてBはメチオニン又はノルロイシンである)
を有する7アミノ酸繰り返しドメインを含有している。
【0218】
改変ポリペプチドの使用
【0219】
本発明のポリペプチドの抗融合機能を、膜融合事象に関与する過程によって引き起こされる症状を阻害又は治療/改善するために更に用いることができる。そのような事象は、例えば、細胞−細胞融合及びウィルス‐細胞融合を介するウィルス感染を包含してもよい。本発明のペプチドを、レトロウィルス、例えば、HIVのような遊離ウィルスの非感染細胞への感染を阻害するために用いることができ、そのウィルス感染は膜融合事象に関与しているか又はウィルス構造の細胞膜との融合に関与している。
【0220】
一態様では、本発明は、HIVの細胞への感染を阻害する方法を対象としている。この方法は、HIVウィルスが細胞を感染するのを阻害できるように、HIVウィルスを改変ポリペプチドの有効用量と接触させることを含んでいる。改変ポリペプチドが、炭化水素架橋で安定化されているHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン(例えば、7アミノ酸繰り返しドメイン1又は2、或いはこれらの組み合わせ)を有していることが好ましい。適切な改変ポリペプチドは、7アミノ酸繰り返しドメイン1に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは、配列番号2、配列番号3又は配列番号14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。その他の適切な改変ポリペプチドは、7アミノ酸繰り返しドメイン2に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは、図5、図6、配列番号1又は14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。
【0221】
更に別の態様では、本発明は、HIVに感染している個体におけるAIDSを治療するか或いはAIDSの発症を遅らせる方法を対象としている。この方法は、HIVに感染している個体に安定化したHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを持っている改変ポリペプチドを有する医薬組成物の有効用量を投与して、それによってAIDSを治療するか発症を遅らせることを含意している。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。適切なポリペプチドは7アミノ酸繰り返しドメイン1に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは配列番号2、配列番号3又は配列番号14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。その他の適切な改変ポリペプチドは、7アミノ酸繰り返しドメイン2に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは図5、図6、配列番号1又は14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。
【0222】
更に別の態様では、本発明はHIVに感染している個体においてCD4+細胞の数を増大する方法を対象としている。この方法は、HIVに感染している個体に、安定化したHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを持っている改変ポリペプチドを有する医薬組成物の有効用量を投与することを含んでいる。組成物の投与は、個体におけるCD4+細胞の数の増大をもたらす。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。適切なポリペプチドは7アミノ酸繰り返しドメイン1に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは配列番号2、配列番号3又は配列番号14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。その他の適切なポリペプチドは、7アミノ酸繰り返しドメイン2に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは図5、図6、配列番号1のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。
【0223】
更に別の態様では、本発明は、HIV感染細胞と非感染細胞の間の合胞体形成を阻害する方法を目的としている。この方法は、感染細胞を、安定化したHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを持っている改変ポリペプチドを有する組成物の有効用量と接触させて、それによって細胞間の合胞体形成を阻害することを含んでいる。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。適切なポリペプチドは、図5、図6、配列番号2、配列番号3、配列番号1、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。
【0224】
更に別の態様では、本発明は、HIVを不活性化する方法を目的としている。方法は、ウィルスを安定化したHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを持っている改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってHIVを不活性化(例えば、非感染性に)することを含んでいる。HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。 適切なポリペプチドは、図5、図6、配列番号2、配列番号3、配列番号1、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。
【0225】
更に別の態様では、本発明は、個体におけるHIV感染を予防する方法を目的としている。この方法は、個体に、安定化したHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを持っている改変ポリペプチドを有する組成物の有効用量を投与し、そこで、安定化したHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインが、HIVの個体に感染する能力を妨げることを含んでいる。適切なポリペプチドは、7アミノ酸繰り返しドメイン1に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは、配列番号2、配列番号3又は配列番号14のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。その他の適切なポリペプチドは、7アミノ酸繰り返しドメイン2に配向しているものを包含し、そのポリペプチドは図5、図6、配列番号1又は13のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成する。
【0226】
別の態様では、本発明は、RSVの細胞への伝播を阻害する方法を目的としている。この方法は、ウィルスを安定化したRSVウィルスのαらせん7アミノ酸繰り返し類縁ドメインを有する改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスの細胞への伝播を阻害することを含んでいる。7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋で安定化されていることが好ましい。適切な改変ポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号11及び配列番号12と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するようなものを包含する。
【0227】
更に別の態様では、本発明はインフルエンザウィルスの細胞への伝播を阻害する方法を目的としている。この方法は、ウィルスを、安定化したインフルエンザウィルスのαらせん7アミノ酸繰り返し類似ドメインを有している改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスの細胞への伝播を阻害することを含んでいる。7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。適切なポリペプチドは当該技術分野で公知である。
【0228】
更に別の態様では、本発明はパラインフルエンザウィルスの細胞への伝播を阻害する方法を目的としている。この方法は、ウィルスを、安定化したパラインフルエンザウィルスのαらせん7アミノ酸繰り返し類似ドメインを有している改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスの細胞への伝播を阻害することを含んでいる。7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。適切なポリペプチドは(配列番号6)と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するようなものを包含する。
【0229】
更に別の態様では、本発明は、コロナウィルスの細胞への伝播を阻害する方法を目的としている。この方法は、コロナウィルスを、安定化したコロナウィルスのαらせん7アミノ酸繰り返し類似ドメインを有している改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスの細胞への伝播を阻害することを含んでいる。7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。適切なポリペプチドは、(配列番号7)又は(配列番号8)と30%又はそれ以上同一であって、αらせんを形成するようなものを包含する。
【0230】
更に別の態様では、本発明は、エボラウィルスの細胞への伝播を阻害する方法を目的としている。この方法は、エボラウィルスを、安定化したエボラウィルスのαらせん7アミノ酸繰り返し類似ドメインを有している改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスの細胞への伝播を阻害することを含んでいる。7アミノ酸繰り返しドメインが炭化水素架橋(複数も)で安定化されていることが好ましい。適切なポリペプチドは、(配列番号9)又は(配列番号10)と30%又はそれ以上同一のアミノ酸配列を有していて、αらせんを形成するようなものを包含する。
【0231】
本発明の方法で用いられる上記改変ポリペプチドの何れも、本明細書に記載されている式(I)、(II)、又は(III)の構造を有している。
【0232】
キット
本発明は、最終的に包装されラベル付けされている医薬品も包含している。この製品は、密封されているガラス薬瓶又はその他の容器のような、適切な容器又はコンテナ中に適切な単位剤形を含有している。医薬品は、例えば、第1容器に単位剤形の本発明化合物を、そして第2容器に注射用滅菌水を含有していてよい。また、単位剤形は、経口、経皮、鼻腔内、膣内、子宮頸部リング、又は局所送達に適している固体であってよい。
【0233】
特定の態様では、単位剤形は静脈内、筋肉内、鼻腔内、経口、膣内、子宮頸部、局所又は皮下送達に適している。従って、本発明は、好ましくは無菌の、それぞれの送達経路に適している、溶液、固体、発泡体、ゲルを包含している。
【0234】
どんな医薬品もそうであるように、包装材料及び容器は、保管及び出荷中に製品の安定性を保護するように設計されている。更に、本発明の製品は、該当する疾患又は障害を如何に適切に予防又は治療するかについて医師、技術者、又は患者にアドバイスする、使用説明書又は情報資料を含んでいる。すなわち、製品は、実際の用量、モニター手段(例えば、感染の検出及び定量)及びその他のモニター情報を含む(これに限定されないが)投与計画を指示又は示唆する使用説明書を含んでいる。
【0235】
特に、本発明は、箱、瓶、チューブ、バイアル、容器、噴霧器、吸入器、静脈内投与用(i.v.)バッグ、エンベロープ等のような、包装材料;及び当該包装材料内に含まれている薬剤の少なくとも1つの単位剤形を含有している。ここで、当該薬剤は、本発明の化合物を含み、そして当該包装材料は、特定の用量を投与し、本明細書に記載されている特定の投与計画を用いることによって、ウィルス性疾患に関連している1つ又はそれ以上の症状を予防、管理、治療及び/又は改善するために当該化合物を使用することができることを示す使用説明書を含んでいる。
【0236】
以下の実施例は、本発明の多種の態様を説明するために提供されているに過ぎず、決して本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0237】
実施例1: 炭化水素架橋αらせんポリペプチドの合成。
構造分析と化学合成の組み合わせ戦略を改変ポリペプチドの構築に適用する。α,α−ジ置換アミノ酸の不斉合成を既報の通り最初に行った(Schafmeister, C.E., J. Po, and G.L. Verdine, Journal of the American Chemical Society, 2000. 122(24): p. 5891-5892; Walensky, L.D., et al., Science, 2004. 305(5689): p. 1466-1470)。2、3又は6個のアミノ酸の何れか分が隣接した離れた位置(すなわち、それぞれ「i、i+3」、「i、i+4」又は「i、i+7」位置)で少なくとも2個の天然アミノ酸をα,αジ置換非天然アミノ酸と置き換えて、改変ポリペプチド化合物を生成する。
【0238】
非天然アミノ酸及びそれに続く炭化水素架橋(複数も)の位置は、N36相互作用を妨げないように注意深く選択する(Chan, D.C., et al., Cell, 1997. 89(2): p. 263-273)。a及びd位にある残基がN36と直接相互作用するのに対して、e及びg位の残基は、6へリックスバンドルのピッチの結果、N36の核と接触する。b、f、及びc位の残基は、αらせんの反対表面に局在するので、炭化水素架橋を配置するために理想的な位置である。
【0239】
固相Fmoc化学及びルテニウム触媒オレフィンメタセシス、次いでペプチド脱保護及び開裂、逆相高速液体クロマトグラフィーによる精製、及びLC/MS質量分析及びアミノ酸分析を用いる化学特性評価を用いて、改変ポリペプチドを生成できる。
【0240】
その代わりに、確立されている断片に基づいた方法を実施することができる(Bray, B.L., Nature Reviews Drug Discovery, 2003. 2(7): p. 587-593; MYUNG-CHOL KANG, B.B. et al., Methods and compositions for peptide synthesis, U.S.P.a.T. Office, Editor. January 18, 2000 USA)。この戦略では、ペプチドを、N−末端、中央、C−末端部分を独立して合成するように、3つの断片に分割する。これらのポリペプチド断片を、超酸開裂樹脂上で、固相Fmoc化学及びルテニウム触媒オレフィンメタセシスを用いて生成でき、これはN−末端にFmocを、及びC−末端アミド(C−末端断片に対して)又は遊離カルボキシレート(中央及びN−末端断片に対して)の何れかを有する、完全に保護されたペプチドを産生する。これらの完全に保護された断片を、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製し、次いで逐次的脱保護、カップリング、及び精製すると、全長の完全に保護されたポリペプチドが得られる。広範囲の脱保護、次いで逆相高速液体クロマトグラフィーで、最終産物が得られ、これをLC/MS質量分析及びアミノ酸分析を用いて特性評価できる。
【実施例2】
【0241】
実施例2: 改変ポリペプチドの2次構造及びタンパク分解に対する安定性の確認。
架橋改変ポリペプチドのαらせん構造をそれらの非改変対応物と、円偏光二色性によって比較することができる。以下の標準測定パラメータを用いて、20℃で、Jasco J−710又はAviv 分光偏光計でCDスペクトルを得ることができる:波長:190〜260nm;ステップリソリューション、0.5nm;速度、20nm/秒;蓄積、10;応答、1秒;バンド幅、1nm;路長、0.1cm。5つの異なった2次構造分画(らせん、平行及び逆平行のβシート、β回転及びランダムコイル)を推測するために、各ペプチドのαらせん含量を、平均残基楕円率[θ]222obsをモデルらせんペプチドについて報告されている[θ]222obsで割るか(Forood, B., E.J. Feliciano, and K.P. Nambiar, PNAS, 1993. 90(3): p. 838-842; J. Martin Scholtz, Biopolymers, 1991. 31(13): p. 1463-1470; Lawless, M.K., et al., Biochemistry, 1996. 35(42):p. 13697-13708)又は、例えば、Brohm によって開発されたCDNNソフトウェアを用いるAvivマシーンを用いて、計算する。Protein Engineering, 1992. 5(3): p. 191-195
【0242】
らせんの安定化がタンパク分解酵素耐性及び血清安定化の増強を与えるか否かを評価するために、改変ポリペプチドをトリプシン/キモトリプシン分解アッセイ及びインビトロ及びインビボ血清安定性アッセイに付して、既に記載されているような(Walensky, L.D., et al., Science, 2004. 305(5689): p. 1466-1470)、それらの非改変対応物と比較する。無傷の化合物の回収物を、例えば、液体窒素中のインビトロ又は血清の標本を瞬間凍結して、凍結乾燥して、50:50のアセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸含有水に抽出して、次いでLC/MSによる検出及び定量を行って、確認する。
【実施例3】
【0243】
実施例3: ハイスループット方法で合成された多数の改変ポリペプチドライブラリーを評価することによる、改変ポリペプチドの生物物理学的及び生物化学的特性の最適化。
改変ポリペプチドの細胞及びインビボ検討に対する活性を最適化するために、ハイスループット技術を用いることができる。例えば、Apex396マルチチャンネル合成器(AAPPTEC;Louisville, Kentucky)を、生物学的評価のためのポリペプチドライブラリーを産生するために用いることができる。ポリペプチド化合物を、伸長、切断、又は天然及び選択非天然アミノ酸に渡る置換によって多様化でき、そして特異的架橋局在化をその生物物理学的及び生物化学的特性を最大化するように行うことができる。ハイスループット固相Fmoc化学及びルテニウム触媒オレフィンメタセシス、並びにペプチド脱保護及び開裂を用いて、ライブラリーを作成できる。ペプチドの精製は逆相C18HPLCで行われ、そして産生物をLC/MS質量分析及びアミノ酸分析によって特性化する。
【実施例4】
【0244】
実施例4: HIV融合を標的として阻害する改変ポリペプチドの能力を評価する。
HIV改変ポリペプチドの結合活性及び機能効果を、蛍光偏光、合胞体融合及びHIV感染性アッセイで評価することができる。平衡結合定数を、蛍光イソチオシアネート(FITC)標識化改変ポリペプチド及び漸増させる組換え5へリックスバンドルタンパク質を用いて、蛍光偏光アッセイ(FPA)によって測定できる。FPA実験は、BMG Labtech FLUOstar最適マイクロプレートリーダー、及び GraphPad ソフトウェア(Prism)を用いる回帰分析によって測定される解離定数を用いて行うことができる。Root et al. によって最初に開発された、組換え5へリックスバンドルタンパク質は、短いペプチドリンカーによって接続されている、gp41ヘアピン三量体の核を含む、6個のらせんのうち5個を含有している(Root, M.J., M.S. Kay, and P.S. Kim, Science, 2001. 291(5505):p. 884-888)。5へリックスバンドルは、第3番目のC−ペプチドらせんを欠如していて、実験条件下で可溶性で、安定で、そしてらせんであるので、6番目のC−ペプチドをFITC−改変ポリペプチドの形態に取り込むことは、結合活性の直接的尺度をもたらす。この方法で、ペプチド配列、架橋位置、及び架橋数が異なる改変ポリペプチドを、最大インビトロ結合活性についてスクリーニングすることができる。5へリックスバンドルをFITC標識化非改変HIV融合阻害ペプチドと結合し、次いで非標識化架橋gp41ペプチドを濃度を増大しながら添加し、その後蛍光偏光を測定して、上で示したように、非線形回帰分析によってKiを計算する、競合アッセイによっても、結合活性を間接的に測定することができる。
【0245】
また、Frey et al. の「gp41−5」構築物に基づいて代替えの結合アッセイを利用することができる。gp41−5は、欠失CHRの全て又は一部を含有している添加ペプチドと高い親和性で結合する。例えば、gp41−5と蛍光標識C38(残基117〜154)を用いて、Frey et al. は、3.6nMのKを示したFPA結合曲線を首尾良く作成した(Frey, G., et al., PNAS, 2006. 103(38): p. 13938-13943)。
【0246】
機能アッセイも、改変ポリペプチドの活性を評価するために用いることができる。培養で、HIV−1−感染と非感染のCD4陽性細胞の間の細胞−細胞直接融合の結果として、多核巨大細胞又は「合胞体」が形成する。合胞体形成アッセイにおいて、CD4受容体を発現する指標細胞株、及びCD4を欠損しているが表面上にHIV−1タンパク質を含有している融合細胞株が、48時間以内に培養液中で、融合して70〜100個の多核巨大細胞を産生する。次いで、倒立顕微鏡を用いて合胞体をカウントする。gp41(SAH−gp41)化合物の安定化αらせんの、用量反応形式で合胞体形成を阻害する能力を、融合阻害の機能測定として用いて、そのためにIC50を測定してペプチドT20及びT649と比較することができる(Brenner, T.J., et al., The Lancet, 1991. 337(8748): p. 1001-1005; Madani, N., et al., Journal of Virology, 2007. 81(2): p. 532-538)。
【0247】
改変ポリペプチドの抗ウィルス特性も、CD4陽性及びCCR5発現イヌ胸腺細胞のHIV感染を直接阻害するそれらの能力に基づいて定量できる。蛍ルシフェラーゼを発現して、指示されているエンベロープ糖タンパク質を含有している、組換えHIV−1ウィルス(例えば、HXBc2、YU2、及び NIH AIDS Research and Reference Reagent Program を通じて入手可能な更なる株)を、連続的に希釈したHIV改変ポリペプチドの存在下で、Cf2Th−CD4−CCR5/CXCR4細胞を感染するために用いることができる。48時間後に、細胞を溶解して、ルシフェラーゼ活性を定量する(Si, Z.H., M. Cayabyab, and J. Sodroski., Journal of Virology, 2001. 75(9): p. 4208-4218; Si, Z.H., et al., PNAS, 2004. 101(14): p. 5036-5041)。同一の実験を、両種性マウス白血病ウィルス(AMLV)を用い、改変ポリペプチドの何れかの非特異的効果をモニターするために実施する。同様なコントロールアッセイを、本発明の非HIV改変ポリペプチドを用いて実施でき、そしてこれは当該技術分野で公知である。
【実施例5】
【0248】
実施例5: エンフュービルタイド耐性に打ち勝つSAH−gp41化合物の能力評価。
エンフュービルタイドによる初期治療に応答する、抗レトロウィルス治療を濃密に受けたHIV−陽性患者は、通常最大80週間以内に発症するウィルスリバウンドを最終的に発現する。エンフュービルタイドに対する耐性は、gp41のHR−1領域内の突然変異に由来するが、HR−2ドメイン内にも幾つかの遺伝子変化が見られる(Xu, L., et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2005. 49(3): p. 1113-1119; Perez-Alvarez, L., et al., Journal of Medical Virology, 2006. 78(2): p. 141-147)。I37V、V38A/E/M、Q39R、Q40H、N42T/Q/H、N43D/Qのような、これらの突然変異は、エンフュービルタイドを経験した患者だけに見られる(Poveda, E., et al., Journal of Medical Virology, 2004. 74(1): p. 21-28; Melby, T., et al., Aids Research and Human Retroviruses, 2006. 22(5): p. 375-385; Sista, P.R., et al., Aids, 2004. 18(13): p. 1787-1794; Wei, X.P. et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2002. 46(6): p. 1896-1905)。
【0249】
構造分析及び分子モデリングを、HR−1ドメインのエンフュービルタイドとの結合界面におけるこれら突然変異の影響を評価するために用いることができる。耐性突然変異を組み込んでいる5へリックスバンドルタンパク質を、次いで、実施例4に記載されているような結合分析のために、作成することができる。次いでFITCで標識したSAH−gp41化合物を、何れかの天然SAH−gp41化合物がHRドメインの突然変異にも関わらず活性を保持しているか否かを確認するために、これらの突然変異5へリックスバンドルタンパク質に対してスクリーニングすることができる。また、耐性突然変異を含有しているHR1ペプチドを合成して、SAH−gp41化合物と直接培養し、次いで天然のゲル上に展開して、ゲルの蛍光スキャンで検出可能な、HR1−SAH−gp41複合体を表す、ヘテロ2本鎖の形成を検出及び定量することができる(図20A)。SAH−gp41化合物は、融合活性に不可欠である、2つのgp41残基(Leu−568及びTrp−571)と接触することが知られている、T649配列を含有していなければならない。この配列機能性を組み込むことによって、SAH−gp41化合物は、エンフュービルタイド耐性ウィルスに打ち勝つことができ、HR−2ドメインのN末端領域にそのような残基を欠損しているT20のような、類縁体とは対照的に、耐性ウィルスを殆ど生じない(Cao, J., et al., Journal of Virology, 1993, 67(5): p. 2747-2755; Chan, D.C., C.T. PNAS 1998. 95(26): p. 15613-15617; Rimsky, L.T., D.C. Shugars, and T.J. Matthews, J. Virol., 1998. 72(2): p. 986-993)。HIV感染性検討の追跡は、このようなSAH−gp41化合物の対応する初期耐性分離株に対する機能的活性の評価となるだろう。
【0250】
SAH−gp41活性の回復をモニターするために、FITCで標識した突然変異SAH−gp41(mSAH−gp41)化合物を、突然変異5へリックスバンドルタンパク質への結合親和性について、及び初期耐性分離株を用いるHIV感染性の抑制についてスクリーニングすることができる。
【0251】
SAH−gp41化合物に対する潜在的な耐性の進展を検討するために、HIV株を漸増させる濃度のリードSAH−gp41化合物の存在下で展開させることができる。耐性株を、この突然変異株とエンフュービルタイド耐性突然変異株の間の競合的突然変異分析のために、遺伝子型を同定することができる(Van Laethem, K., et al., Journal of Virological Methods, 2005. 123(1): p. 25-34)。1つのタイプの参入阻害剤に対する耐性株は別の変異体に対する感染能に影響を及ぼさないので(Ray, N., et al., Journal of Virology, 2007. 81(7): p. 3240-3250)、SAH−gp41とSAH−gp41ポリペプチドの併用組成物を製剤化することができる。
【0252】
また、ファージ提示戦略を利用することができる。Lai et al. は、不安定化突然変異を導入した後に、αらせんのコイルドコイル対のヘテロ二量化を回復するためにファージ提示法を首尾良く用いた(Lai, J.R., et al., Journal of the American Chemical Society, 2004. 126(34): p. 10514-10515)。核の側面に位置するらせん残基間の相補型静電気対合の優先性は容易に分かるのに対して、核の位置にある非極性残基のパッキング優先性に関しては殆ど知られていない(Lumb, K.J. and P.S. Kim, Science, 1995. 268(5209): p. 436-439)。ファージ提示法を用いると、HR−2ドメインの7ケ所までの可変位置の全ての可能なアミノ酸の組合せを、対応する5へリックスバンドルを用いて、突然変異HR−1ドメインに対する結合親和性についてスクリーニングすることができる。更に、HR−1ドメイン中の公知の突然変異の組み合わせに対する、完全ランダム化HR−2ドメインのファージ提示スクリーニングを、5−へリックスバンドルと最も安定な複合体を形成できるSAH−gp41配列を決定するために実施することができる(Xu, L., et al., Antimicrobaial Agents and Chemotherapy, 2005. 49(3): p. 1113-1119; Perez-Alvarez, L., et al., Journal of Medical Virology, 2006. 78(2): p. 141-147)。「パニング」の3周期後の、ファージDNA配列決定は、突然変異5へリックスバンドルに対して最も高い結合親和性を有しているこれらのペプチド配列を明らかにするだろう。次いで、対応するSAH−gp41誘導体を合成して、上記のような結合及び活性試験で評価されるだろう。
【実施例6】
【0253】
実施例6: SAH−gp41化合物のインビボでの安定性、薬物動態、及び生体内分布の検討。
SAH−gp41化合物の厳密なインビボ薬理学的評価を、改変ポリペプチドの治療可能性を確認して最適化するために使用することができる。インビボでの血清半減期を検討するために、5〜50mg/kgのFITC標識した、又は標識していないSAH−gp41ポリペプチドを、コントロールマウスに注射するか又は経口で送達し、例えば、注射後0、0.25、0.5、1、2、4、8、12、及び24時間目に血液試料を採取して、既報(Walensky, L.D., et al., Science, 2004. 305(5689): p. 1466-1470)のようにHPLCで、又は逆相LC/MSで、無傷の化合物の濃度を測定し、次いで、当該技術分野で公知の公式又はソフトウェアを用いて、薬物動態パラメーターを数学的に決定する。LC/MSによる代謝物の特性化も行うことができる。改変ポリペプチドの経時的な組織への取り込み、排泄、及び生体内分布を、放射性同位元素シンチレーションカウントによって測定するために、111In−DOTA−誘導体化化合物を合成し、コントロールマウスに注射できる。111In−DOTA−誘導体化改変化合物を注射したコントロールマウスのSPECT/NMR画像は、Massachusetts General Hospital のMDである、Ralph Weissleder と共同で Walensky lab が既に実施したように、リアルタイム生体内分布の高解像度画像を提供する(Hird V, V.M., et al., Br J Cancer, 1991. 64(5): p. 911-4)。脂質化、ポリシリル化、又は抗体結合を含む、実施可能な化学的改変は、改変化合物の薬物動態及び組織標的化を最適化するだろう。
【実施例7】
【0254】
実施例7: 天然gp41のC−末端7個のペプチドの大部分は、溶液中でランダムコイルである。
T20(残基638〜673)及びT649変異体、T649v(T649は628〜663であるが、残基626〜662)の配列に基づく、gp41HR−2由来ペプチドを製造して、生理的pHで円偏光二色性(CD)スペクトルを測定した。天然のペプチドは、223nm及び208nmに僅かな最小値のみを示し、溶液中で大部分がランダムコイルであるとを示唆している。実際に、計算したαらせん含量(Forood, B., E.J. Feliciano, and K.P. Nambiar, PNAS, 1939. 90(3): p. 838-84; J. Martin Scholtz, Biopolymers, 1991. 31(13): p. 1463-1470; Lawless, M.K., et al., Biochemistry, 1996. 35(42): p. 13697-13708)は、T20ではわずか〜25%であって、T649vでは14%であった。従って、合成gp41由来HR−2ペプチドは、溶液中で大部分が不規則であって、生物活性構造の顕著な損失を反映している。
【実施例8】
【0255】
実施例8: 切断C−末端7個ペプチドは同種炭化水素架橋の取り込みによって、改善されたαらせん構造を示す。
HIVgp41−HR−2ペプチドの生物化学特性を改善するために、T649vペプチドを切断して、残基626〜645からなる20−merを得た(図7)。切断したSAH−gp41化合物である、SAH−gp41(626〜645)(A)を高収率で首尾良く合成した。比較CDスペクトル分析が、その非架橋対応物と比較して、SAH−gp41(626−645)(A)に対して、αらせん含量の著明な増大(48%対20%)を明らかにした。HIV合胞体形成アッセイにおける化合物の評価では、その非架橋誘導体と比較して、SAH−gp41(626−645)(A)の顕著に増大した阻害活性を明らかにした。従って、T649vの残基の40%以上を除去したにも関わらず、炭化水素架橋は、αらせん度を殆ど有さず、抗合胞体形成活性をほんの少しだけ有している、20−merのgp41切断部を、有意な構造安定性及び強力な抗合胞体形成活性(IC90、〜100nM)を有するαらせん化合物に首尾良く変換した。
【0256】
SAH−gp41(626−645)(A)ペプチドの活性を、HXBc2株を用いるHIV感染性アッセイで、臨床的に認可されているT20ペプチドと比較した。SAH−gp41(626−645)(A)は、特に顕著に短縮した構築物をもたらして、有意な抗HXBc2活性を示した。
【実施例9】
【0257】
実施例9: SAH−gp41化合物は、顕著なαらせん構造の安定化、タンパク分解安定性、熱安定性、5へリックスバンドル結合親和性を示す。
tSAH−gp41ペプチドの活性を最適化するために、1つ又はそれ以上の炭化水素架橋を、全長のgp41−HR−2構築物に挿入することに基づいている、代替え的な戦略を進めた(図11、12)。改変していないエンフュービルタイド及びT649vは、21℃でpH7の水溶液中で、20%未満のαらせん度を示し、大部分が非構造的であった(図14A、B)。全ての架橋誘導体は、4.7倍までの構造安定化で、比較的増大したαらせん含有量を示した(図14A〜C)。1つ或いは2つの何れかの炭化水素架橋の挿入は、円偏光二色性スペクトルを、主に204nmに単一最小値を有するランダムコイルパターンから、208及び222nmに二重最小値を有するαらせん曲線へ変換する。選択したペプチド鋳型については、単一のC末端架橋は、単一のN末端架橋より高いαらせん安定性をもたらした。選択した二重架橋SAH−gp41化合物では、N末端及びC末端単一架橋ペプチドの効果に平衡した、中等度のαらせん構造の増強を示した。ペプチドらせん度の増強は、pH2において同様に観察され、多くの場合、SAH−gp41化合物はpH7よりもpH2で、尚更、らせん性であった(図14D〜F)。
【0258】
SAH−gp41ペプチドの熱変性に対する耐性を評価するために、1〜91℃の温度範囲に渡って、円偏光二色性の検討を行った。選択したHIV融合阻害ペプチドの単一及び二重架橋は、91℃であっても、最大2.3倍増強したαらせん度を保持する、顕著な耐熱性である、αらせん安定性をもたらすことを観察した(図15)。
【0259】
治療剤としてのペプチドの主な欠点は、急速なタンパク分解に対する感受性である。非常に長く、畳み込まれておらず、そしてタンパク分解部位が豊富であるエンフュービルタイドのような生物学的に活性なペプチドは、特に脆弱である。ペプチドαらせん度を強化する共有架橋戦略の潜在的利点の1つは、脆弱なアミド結合をタンパク分解から遮蔽することである。タンパク分解酵素は、アミド結合を加水分解するために、ペプチドが伸長した構造を有していることを必要とするので、炭化水素架橋によって生じたこの構造的拘束が、架橋されたペプチドをタンパク分解耐性にすることができる。炭化水素架橋、そして特に二重架橋が、36〜37merのHIV−1融合ペプチドをタンパク分解から保護できるか否かを確認するために、エンフュービルタイド、T649v、及びSAH−gp41ペプチドをインビトロで直接タンパク分解酵素に曝露した。架橋ペプチドを特に負荷するために、キモトリプシンを選択した。これはgp41 HR2ペプチドを、SAH−gp41(638〜673)では9〜11箇所そしてSAH−gp41(626〜662)では7箇所を含む、多数のコンセンサス開裂部位で開裂できる。
【0260】
0.5ng/μLのキモトリプシンの存在下で、エンフュービルタイド及びT649v(25μM)は、それぞれ12分及び14分の半減期で、急速分解を示した(図16A〜C)。相対的に、単一架橋SAH−gp41化合物は、21〜200分の、より長い半減期を示した。二重架橋化合物の大部分は、それらの単一架橋対応物を顕著に上回っていて、選択した二重架橋ペプチドは最大1275分の半減期を達成した。殆どの場合に、選択した二重架橋ポリペプチドが選ばれた単一架橋ペプチドより低いαらせん性を有しているように、二重架橋は全般的なペプチドαらせん度よりもタンパク分解安定性に対して強い影響を有しているが、さらに優れたタンパク分解耐性を示した。殆ど全ての架橋ペプチドが対応する非改変ペプチドと同数のキモトリプシン開裂部位を有していて、観察されたタンパク分解耐性は、開裂部位の除去ではなく、むしろペプチド架橋そのものに由来していることを強調している。
【0261】
ペプチドは、ある程度、近位消化管における急速な酸加水分解に起因する乏しい経口バイオアベイラビリティーを有している。中性pHにおける二重架橋SAH−gp41化合物の強力なタンパク分解酵素耐性が、酸性条件下のこれらの安定性を検討するようにし向けた。それぞれの場合に、ペプチド溶液の酸性化が、CDで測定したようにそれらのαらせん含有量を有意に増大した(図16D〜F)。0.5ng/μLのペプシンに曝露すると、エンフュービルタイド及びT649v(25μM)は、それぞれ4分及び11分の半減期で、急速分解を示した。選択した二重架橋SAH−gp41化合物は、非改変ペプチドよりも約80〜800倍大きい範囲の半減期を示して、依然として単一架橋対応物を上回った。明らかに、選択した二重架橋SAH−gp41ペプチドが、12時間以上に渡ってpH2でペプシンに曝露した後に、80%無傷で残存した。キモトリプシン耐性について観察されたように、全般的なペプチドらせん性又は開裂部位の数ではなく、むしろ二重架橋自体がペプシン加水分解に対する優れた耐性に関連していた。これらの検討は、二重架橋の、中性及び酸性pHの両方でタンパク分解加水分解に対して前代未聞の耐性を有するHIV−1融合阻害ペプチドを産生する能力を明らかにしている。
【0262】
本発明の化合物を、本明細書に記載されているような5らせん結合アッセイにおいて、それらのgp41に対する親和性についても測定した。図17に示したように、改変化合物は改変していない対照ポリペプチドより明らかに良好に結合した。
【実施例10】
【0263】
実施例10: SAH−gp41化合物は抗−合胞体形成活性及び抗−HIVウィルス融合活性を示す。
本発明の化合物を、当該技術分野で周知の方法を用いて合胞体形成の阻害についてアッセイした。アッセイの結果は図18に示されている。等量のT20/gp41(638〜673)又はSAH−gp41(626〜645)Aの何れかを培地に添加した。示されているように、改変化合物は、非改変対照ポリペプチドよりも合胞体形成を阻害した。
【0264】
gp41に基づく融合阻害活性に対する炭化水素架橋の機能的影響を確認するために、ルシフェラーゼに基づくHIV感染アッセイにおいて、SAH−gp41化合物を試験してそれらの非改変対応物と比較した(Si, Z.H., M. Cayabyab, and J. Sodroski, Journal of Virology, 2001. 75(9): p. 4208-4218; Si, Z.H. et al., PNAS, 2004, 101(14): p. 5036-5041)。3つの異なったHIV−1株、HXBc2、ADA、及びHXBc2P3.2由来のエンベロープ糖タンパク質を有する組み換えHIV−1、及び両種性ラット白血病ウィルス(A−MLV)エンベロープ糖タンパク質を有する陰性対照を評価した。エンフュービルタイドと比較すると、選択したSAH−gp41(638〜673)ペプチドは3つのHIV−1株全てにわたって、阻害活性の3〜15倍の増強を示した(図19)。エンフュービルタイドのC末端上流の末端の11残基の37アミノ酸断片を包含するHR2ペプチドである、T649vは、HXBc2、ADA、及びHXBc2P3.2エンベロープ糖タンパク質を有するウィルスに対して、エンフュービルタイドよりもそれぞれぞれ26、40、及び16倍強い阻害活性を示した。これらのウィルス株に対するT649vの著しい有効性を前提とすると、対応するSAH−gp41ペプチドが、感染性アッセイにおいて、本質的に同程度の活性を示したことが分かった。T649vに基づく架橋ペプチドの間の特異的抗ウィルス能を精査するために、より耐性の初期R5分離株由来のエンベロープ糖タンパク質を有するウィルス、YU2に対してこの化合物をスクリーニングした。T649vと比較すると、選択したSAH−gp41(626〜662)ペプチドは、増強された抗YU2活性を示した(図19,20B)。HIV−1HR1耐性変異株に抗するSAH−gp41ペプチドの能力は、HR1とHR2/SAH−gp41ペプチドの電気泳動混合物の蛍光スキャンでアッセイしたとき、非改変gp41からなる融合ペプチドと比較して、選択したSAH−gp41ペプチドの突然変異HR1ペプチドとの優れた結合活性によって、更に強調された(図20A)。
【0265】
これらの機能的なデータは、1つ又はそれ以上の炭化水素架橋の挿入が、強力で広範の抗HIV−1活性を有するSAH−1gp41ペプチドを産生できることを明らかにしている。αらせん性の安定化、タンパク分解安定性、及び抗ウィルス活性の間のバランスをとることの重要性が、中庸なαらせん性の安定化、二重架橋の特筆すべき抗タンパク分解特性、及び強力な抗ウィルス活性を組合わせて、薬理学的に最適化されたHIV−1融合阻害ペプチドを産生する、二重架橋SAH−gp41(626〜662)(A、F)ペプチドによって強調されている。
【実施例11】
【0266】
実施例11: 二重架橋SAH−gp41ペプチドは、対応する非改変ペプチドと比べて、インビボ安定性及びバイオアベイラビリティーの著しい増強を示す。
雄性C57/BL6マウスに、10mg/kgのSAH−gp41(626〜662)(A、F)又は対応する非改変ペプチドの何れかを、静脈内投与又は経口強制投与した。眼窩後方採血によって30分後に採取した血液試料を、LC/MSによる血液検査を用いて定量した。血中で測定したSAH−gp41(626〜662)(A、F)の濃度は、対応する非改変ペプチドの測定濃度よりも6倍多かった。明らかに、経口投与後30分に無傷のSAH−gp41(626〜662)(A、F)が血中で測定可能な濃度で検出されたのに対して、非改変ペプチドは検出できなかった(図21)。これらのデータは、炭化水素架橋が、それらのインビボ安定性を増強して、さらに測定可能な経口バイオアベイラビリティーをももたらす、gp41による融合ペプチド配列に対する、固有の薬理学的特性を与えることを強調している。この単回投与実験は、SAH−gp41ペプチドが、非改変ペプチド(例えば、エンフュービルタイド)の濃度に匹敵する、化合物の血清濃度をもたらす濃度で投与できることを示していて、治療有効用量をを経口で投与できることを示唆している。
【0267】
本明細書で引用されている全ての特許、特許出願、GenBankの受入番号、及び刊行文献は、それらが個々に取り込まれているように、その全てを参照して本明細書に取り込まれている。本発明はその好ましい態様に関して詳細に示され記載されているが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に多くの変更を行うことができるということを、当業者は理解できるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインの安定化αらせんを含有してなる、改変ポリペプチド。
【請求項2】
当該安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインが、炭化水素架橋で安定化されている、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項3】
当該安定化HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインが、2つ又はそれ以上の炭化水素架橋で安定化されている、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項4】
当該改変ポリペプチドが20又はそれ以上のアミノ酸である、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項5】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、式:
abcdefg
(式中の、a及びdは疎水性アミノ酸残基であって、当該式は2回又はそれ以上反復している):
を含有してなる、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項6】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、式:
−−W−−W−−−I−−Y−−−I−−L−−−S−−Q−−−N−−E−−−L
(式中の、「−」は何れのアミノ酸であってもよい):
又はそれらの同類アミノ酸置換を含有してなる、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項7】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、式:
−TW−−WDR−I−−Y−−−I−−LI−−−Q−−QEK−E−−L−EL
(式中の、「−」は何れのアミノ酸であってもよい):
又はそれらの同類アミノ酸置換を含有している、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項8】
当該ポリペプチドが式(I):
【化9】

(式中の、それぞれのR及びRは独立して、H又はC〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロシクリルアルキルであり;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、[R−−K−−R]nであり、これらはそれぞれぞれ0〜6個のRで置換されており;
は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり;
は、ハロ、アルキル、OR、N(R、SR、SOR、SO、CO、R、蛍光部分、又は放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO、CO、CO、CONR、又は
【化10】

であり;
は、H,アルキル、又は治療剤であり;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2〜10の整数であり;
それぞれのyは独立して、0〜100の整数であり、
zは、1〜10の整数であり;そして
それぞれのXaaは独立して、アミノ酸である):
を含有してなり、改変ポリペプチドはαらせんを形成して、配列番号1〜3、13、14、図5、図6、
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE
(式中の、Xは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、そしてBはメチオニン又はノルロイシンである)よりなる群から選ばれるアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一である、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項9】
当該炭化水素架橋が、当該HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインの第1アミノ酸及び第2アミノ酸を結合し、そして当該第2アミノ酸が当該第1アミノ酸から下流の3〜10個のアミノ酸残基である、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項10】
当該炭化水素架橋が、i番目とi+3番目のアミノ酸残基を結合するように位置している、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項11】
当該炭化水素架橋が、i番目とi+4番目のアミノ酸残基を結合するように位置している、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項12】
当該炭化水素架橋が、i番目とi+7番目のアミノ酸残基を結合するように位置している、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項13】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも10%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項14】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも20%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項15】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも35%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項16】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも50%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項17】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも60%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項18】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも70%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項19】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも80%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項20】
当該改変ポリペプチドが、円偏光二色性で測定すると水溶液におけるαらせん性を少なくとも90%有している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項21】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、HIV−1gp41の7アミノ酸繰り返しドメイン1である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項22】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、HIV−1gp41の7アミノ酸繰り返しドメイン2である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項23】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、HIV−2gp41の7アミノ酸繰り返しドメイン1である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項24】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、HIV−2gp41の7アミノ酸繰り返しドメイン2である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項25】
当該改変ポリペプチドがキメラである、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項26】
当該キメラが、WQEWEQKITALLEQAQIQQEKNEYELQKLDKWASLWEWFのアミノ酸配列を有している、請求項25に記載の改変ポリペプチド。
【請求項27】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、SIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインである、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項28】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、RQLISGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQLTVWGIKQLQARILAVERYLQDQQLと30%又はそれ以上同一のアミノ酸配列を含有している、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項29】
当該7アミノ酸繰り返しドメイン2が、αらせんを形成し、そして図5のアミノ酸配列よりなる群から選ばれるアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一である、請求項22に記載の改変ポリペプチド。
【請求項30】
当該7アミノ酸繰り返しドメイン2が、αらせんを形成し、そして図6のアミノ酸配列よりなる群から選ばれるアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一である、請求項22に記載の改変ポリペプチド。
【請求項31】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、αらせんを形成し、そしてYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF(配列番号1)のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項32】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、αらせんを形成し、そしてMTWMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE(配列番号13)のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項33】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、αらせんを形成し、そしてBTWBEWDREINNYTSLIHSL(配列番号3)のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項34】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが、αらせんを形成し、そしてNNLLRAIEAQQHLLQLTVWGIKQLQARILAVERYLQDQ(配列番号2)のアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項35】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが式:
BTW*BEWD*REINNYTSLIHSL
(式中の、* は炭化水素架橋によって結合されるアミノ酸残基を特定していて、Bはメチオニン又はノルロイシンである):
を有している、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項36】
当該7アミノ酸繰り返しドメインが式:
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQ*EKNE*QWLLE
(式中の、* は炭化水素架橋によって結合されるアミノ酸残基を特定していて、Bはメチオニン又はノルロイシンである):
を有している、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項37】
当該改変ポリペプチドが:
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE
(式中の、Xは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、Bはメチオニン又はノルロイシンである):
よりなる群から選ばれる式を有している、請求項2に記載の改変ポリペプチド。
【請求項38】
安定化ウィルスαらせん7アミノ酸繰り返し−類縁ドメインを含有してなる、改変ポリペプチド。
【請求項39】
当該安定化ウィルスαらせん7アミノ酸繰り返し−類縁ドメインが、呼吸器合胞体ウィルス由来である、請求項38に記載の改変ポリペプチド。
【請求項40】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そして
YTSVITIELSNIKENKCNGTDAKVKLIKQELDKYKNAVTELQLLMQST(配列番号4)、
SQIAVSKVLHLEGEVNKIKNALLSTNKAVVSLSNGVSVLTSKVLDLKSYINNQLLPI−(配列番号11)、及び
PIINYYDPLVFPSDEFDASISQVNEKINQSLAFIRRSDELLHNVNTGKSTTNIM(配列番号12)
よりなる群から選ばれるアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有してなる、請求項39に記載の改変ポリペプチド。
【請求項41】
当該改変ポリペプチドが、FYDPLVFPSDEFDASISQVNEKINQSLAFIRKSDELL(配列番号5)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項39に記載の改変ポリペプチド。
【請求項42】
当該安定化ウィルスαらせん7アミノ酸繰り返し−類縁ドメインが、パラインフルエンザウィルス由来である、請求項38に記載の改変ポリペプチド。
【請求項43】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そしてALGVATSAQITAAVALVEAKQARSDIEKLKEAIR(配列番号6)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項42に記載の改変ポリペプチド。
【請求項44】
当該安定化ウィルスαらせん7アミノ酸繰り返し−類縁ドメインが、インフルエンザウィルス由来である、請求項38に記載の改変ポリペプチド。
【請求項45】
パラミクソウィルス、オルトミクソウィルス、コロナウィルス、インフルエンザ及びフィロウィルスよりなる群から選ばれるウィルス由来の、安定化ウィルスαらせん7アミノ酸繰り返し様ドメインを含有してなる、改変ポリペプチド。
【請求項46】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そしてNVLYENQKQLANQFNKAISQIQESLTTTSTALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDKVEAE(配列番号7)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項45に記載の改変ポリペプチド。
【請求項47】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そしてTSPDVDFGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKY(配列番号8)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項45に記載の改変ポリペプチド。
【請求項48】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そしてDGLICGLRQLANETTQALQLFLRATTELRTFSILNRKAIDFLL(配列番号9)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項45に記載の改変ポリペプチド。
【請求項49】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そしてDWTKNITDKIDQIIHDFVDKTLPD(配列番号10)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項45に記載の改変ポリペプチド。
【請求項50】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そしてSGIAVSKVLHLEGEVNKIKNALLSTNKAVVSLSNGVSVLTSKVLDLKSYINNQLLPI−(配列番号11)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項45に記載の改変ポリペプチド。
【請求項51】
当該改変ポリペプチドが、αらせんを形成し、そしてPIINYYDPLVFPSDEFDASISQVNEKINQSLAFIRRSDELLHNVNTGKSTTNIM(配列番号12)と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含有している、請求項45に記載の改変ポリペプチド。
【請求項52】
式(I):
【化11】

(式中の、それぞれのR及びRは独立して、H又はC〜C10アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロシクリルアルキルであり;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、[R−−K−−R]nであり、これらはそれぞれ0〜6個のRで置換されていて;
は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり;
は、ハロ、アルキル、OR、N(R、SR、SOR、SO、CO、R、蛍光部分、又は放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO、CO、CO、CONR、又は
【化12】

であり;
は、H、アルキル、又は治療薬剤であり;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2〜10の整数であり;
それぞれのyは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数であり;そして
それぞれのXaaは独立して、アミノ酸である):
の改変ポリペプチドであって、改変ポリペプチドはαらせんを形成し、そして配列番号4〜12よりなる群から選ばれるアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を有している、改変ポリペプチド。
【請求項53】
式(II):
【化13】

(式中の、それぞれのR及びRは独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロシクリルアルキルであり;
それぞれのnは独立して、1〜15の整数であり;
xは、2、3、又は6であり;
それぞれのyは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数であり;
それぞれのXaaは独立して、アミノ酸である):
の改変ポリペプチドであり、そして改変ポリペプチドはαらせんを形成して、配列番号1〜14、図5、図6、
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE
(式中の、Xは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、Bはメチオニン又はノルロイシンである)
よりなる群から選ばれるアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を有している、改変ポリペプチド。
【請求項54】
式(III)
【化14】

(式中の、それぞれのR及びRは独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、又はヘテロシクリルアルキルであり;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、[R−−K−−R]n又は天然のアミノ酸側鎖であり、これらはそれぞれ0〜6個のRで置換されており;
は、アルキル、アルケニル、又はアルキニルであり;
は、ハロ、アルキル、OR、N(R、SR、SOR、SO、CO、R、蛍光部分、又は放射性同位元素であり;
Kは、O、S、SO、SO、CO、CO、CONR、又は
【化15】

であり;
は、H,アルキル、又は治療剤であり;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、[R−−K−−R]n又は天然のアミノ酸側鎖であって、これらのそれぞれは0〜6個のRで置換されており;
nは、1〜4の整数であり;
xは、2〜10の整数であり;
それぞれのyは独立して、0〜100の整数であり;
zは、1〜10の整数であり;そして
それぞれのXaaは独立して、アミノ酸である):
の改変ポリペプチドであり、そして改変ポリペプチドはαらせんを形成して、配列番号1〜14、図5、図6、
BTWXEWDXEINNYTSLIHSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSL、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLE、
BTWBEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDXEINXYTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINXYTSXIHSLIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBEWDREINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
BTWBXWDRXINNYTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLE、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIXSLIXESQNQQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEXNEQXLLELDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQXLLEXDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDKWXSLWXWF、
YTSLIHSLIEESQNQQXKNEXELLELDKWXSLWXWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDKWASLWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSLIHSLIEXSQNXQEKNEQELLELDXWASXWNWF、
YTSXIHSXIEESQNQQXKNEXELLELDXWASXWNWF、
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNQXEKNXQELLE、又は
BTWBXWDRXINNYTSLIHSLIEESQNXQEKXEQELLE
(式中の、Xは何れかのアミノ酸であって、炭化水素架橋によって結合しているアミノ酸残基を更に特定し、Bはメチオニン又はノルロイシンである)
よりなる群から選ばれるアミノ酸配列と30%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を有している、改変ポリペプチド。
【請求項55】
HIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインの安定化αらせんを含有してなる、組成物。
【請求項56】
パラミクソウィルス、オルトミクソウィルス、コロナウィルス、インフルエンザ及びフィロウィルスよりなる群から選ばれるウィルス由来の安定化αらせん7アミノ酸繰り返し−類縁ドメインを含有してなる、組成物。
【請求項57】
請求項1〜54の何れか一項に記載の改変ポリペプチドを含有してなる、組成物。
【請求項58】
当該組成物が医薬組成物である、請求項55〜57の何れか一項に記載の組成物。
【請求項59】
安定化αらせんHIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメインを有する組成物及び使用説明書を含有してなる、キット。
【請求項60】
パラミクソウィルス、オルトミクソウィルス、コロナウィルス、インフルエンザ及びフィロウィルスよりなる群から選ばれるウィルス由来の安定化ウィルスαらせん7アミノ酸繰り返し類縁ドメインを有する組成物及び使用説明書を含有してなる、キット。
【請求項61】
請求項55〜57の何れか一項に記載の組成物及び使用説明書を含有してなる、キット。
【請求項62】
細胞の存在下でウィルスを請求項1〜37の何れか一項に記載の改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスによる細胞の感染を阻害することを含有してなる、HIVの細胞への伝播を阻害する方法。
【請求項63】
当該改変ポリペプチドが医薬組成物中にある、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
細胞の存在下でウィルスを請求項38〜41及び52〜54の何れか一項に記載の改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスによる細胞の感染を阻害することを含有してなる、RSVの細胞への伝播を阻害する方法。
【請求項65】
当該改変ポリペプチドが医薬組成物中にある、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
細胞の存在下でウィルスを請求項42、43、又は52〜54の何れか一項に記載の改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスによる細胞の感染を阻害することを含有してなる、パラインフルエンザウィルスの細胞への伝播を阻害する方法。
【請求項67】
細胞の存在下でウィルスを請求項44に記載の改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってウィルスによる細胞の感染を阻害することを含有してなる、インフルエンザウィルスの細胞への伝播を阻害する方法。
【請求項68】
当該改変ポリペプチドが医薬組成物中にある、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
細胞の存在下でウィルスを請求項56に記載の組成物の有効用量と接触させることを含有してなる、パラミクソウィルス、オルトミクソウィルス、コロナウィルス、インフルエンザ又はフィロウィルスの細胞への伝播を阻害する方法。
【請求項70】
当該組成物が医薬組成物である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
請求項1〜37の何れか一項に記載の改変ポリペプチドを含有している医薬組成物の有効用量を個体に投与することを含有してなる、HIVに感染している個体におけるAIDSを治療するか又は発症を遅らせる方法。
【請求項72】
請求項1〜37の何れか一項に記載の改変ポリペプチドを含有している医薬組成物の有効用量を個体に投与することを含有してなる、HIVを有する個体におけるCD4細胞の数を増大する方法。
【請求項73】
感染した細胞を請求項1〜37の何れか一項に記載の改変ポリペプチドを含有している組成物の有効用量と接触させることを含有してなる、HIV感染細胞とHIV−1に感染していない細胞の間の合胞体形成を阻害する方法。
【請求項74】
ウィルスを請求項1〜37の何れか一項に記載の改変ポリペプチドの有効用量と接触させて、それによってHIVを非感染性にすることを含有してなる、HIVを不活性化する方法。
【請求項75】
請求項1〜37の何れか一項に記載の改変ポリペプチドを含有している医薬組成物の有効用量を個体に投与することを含有してなる、個体におけるHIV感染を予防する方法。
【請求項76】
請求項1〜37又は52〜54の何れか一項に記載の改変ポリペプチドを対象に投与することを含有してなる、抗体を生成する方法。
【請求項77】
請求項1〜37又は52〜54の何れか一項に記載の改変ポリペプチドに対して生成した抗体の有効用量を投与することによる、個体におけるHIV感染を予防又は治療する方法。
【請求項78】
当該7アミノ酸繰り返しドメインがSIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン1である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項79】
当該7アミノ酸繰り返しドメインがSIVgp41の7アミノ酸繰り返しドメイン2である、請求項1に記載の改変ポリペプチド。
【請求項80】
請求項1〜37又は52〜54の何れか一項に記載の改変ポリペプチドに対する抗体。
【請求項81】
当該改変ポリペプチドを子宮頸部又は膣内に投与する、請求項74又は75に記載の方法。
【請求項82】
当該改変ポリペプチドをゲル又は子宮頸部リング製剤で投与する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
ポリペプチドを経腸的に投与する、請求項62〜75の何れか一項に記載の方法。
【請求項84】
ポリペプチドを経口投与する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
ポリペプチドを非経口投与する、請求項62〜75の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A(1)】
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【図5A(2)】
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【図5A(3)】
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【図5A(4)】
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【図5B(1)】
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【図5B(2)】
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【図5B(3)】
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【図5B(4)】
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【図6(1)】
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【図6(2)】
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【図6(3)】
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【図6(4)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−510076(P2011−510076A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544340(P2010−544340)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/000438
【国際公開番号】WO2009/108261
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(510084149)ダナ ファーバー キャンサー インスティテュート インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】