説明

ウィンタースポーツ用具のための滑走コーティング

本発明に従うと、コポリマー(I)及び任意にコポリマー(II)を有するウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングが提供され、ウィンタースポーツ用具のための該滑走コーティングは、コポリマー(I)の構造的構成単位の総数に対して10%以上のプロピレンモノマーに由来する構造的構成単位を有し、かつコポリマー(I)の構造的構成単位の総数に対して1%以上の別のオレフィンに由来する構造的構成単位を有するコポリマー(I)を含んで成る。該滑走コーティングは、コポリマーの構造的構成単位の総数に対して50%以上のエチレンモノマーに由来する構造的構成単位を有するコポリマーを有さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンタースポーツ用具、特にスキー及びスノーボードのための滑走コーティングに係る。この滑走コーティングは、ポリマー材料から簡単な方法で押出し成型できる。本発明はさらに、該滑走コーティングで被覆されたウィンタースポーツ用具に係る。
【背景技術】
【0002】
例えば雪上での滑走が意図されたウィンタースポーツ用具、特にスキー及びスノーボード用具の品質は、大部分がその滑走特性によって決まる。従って、かかるウィンタースポーツ用具は通常、雪上での該用具の滑走特性を改善することが意図された滑走コーティングを有する。かかる滑走コーティングは実質的に、適当な接着剤を用いてスキー又はスノーボードに接着されたシートを含んで成る。良好な滑走を確保するため、かかる滑走コーティングはできる限り疎水性であるべきである。
【0003】
非常に広範な異なる種類の雪に対する優れた滑走特性から、まず、低圧ポリエチレンが滑走コーティングの材料として用いられてきた(CH−A 601394)が、これは機械的強度及び磨耗耐性の問題を有する。超高分子量ポリエチレン(PE−UHMW)を用いることによってこれらの問題は解決するが、PE−UHMWのコーティングは押出し成型によって製造できず、例えば加圧成型、焼結及びその後の剥離といった高価な方法で製造する必要がある(CH−A 601394)。
【0004】
これらの問題を解決して滑走コーティングを改善するための一連の提案が存在し、例えば押出し成型によって得られる架橋ポリエチレン系ポリマーを用いるもの(CH−A 601394)、又は滑走コーティングに水溶性化合物を含有させるもの(CH−A 601392)などである。最近の開発では、ポリテトラフルオロエチレンを含んで成る滑走コーティングが提案されている(AT−B 394 951)が、これは単にコスト面から見てもさほど有利ではなく、その上ウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングの問題を十分に解決するものでもない。これらのいずれの提案も実際には確立されておらず、現代のスキー及びスノーボードは通常、PE−UHMWを含んで成る滑走コーティングを有している。PE−UHMWは、その高い結晶性により、機械的及び化学的安定性の最も高いポリエチレンである。元来このポリエチレンは医療技術において股関節の製造に用いられてきたものであり、熱硬化性プラスチックと同様に粉末形状で、従来の静電気防止剤及び潤滑剤を用いた加圧成型及び焼結の工程により加工される。
【0005】
コーティングの疎水性をさらに高める表面構造を適用することにより滑走コーティングの滑走特性を向上させることも公知である。しかし、例えば使用の過程におけるわずかな機械的影響などによって該構造が損傷を受けると、表面構造による効果が失われるという難点がある。
【0006】
スキーの滑走性は特殊なワックスを用いることによっても改善され、このようなワックスは通常、滑走コーティングを施したスキーにおいてもなお必要とされる。ワックスを使用する理由は、一方では、ワックスが滑走コーティングの疎水性を高めるからであり、他方では、事実上すべてのプラスチックがそうであるのと同様、ポリエチレンの表面硬度が約+20℃から−20℃の温度範囲において変化しないのに対し、雪の滑走特性は温度の関数として変化するからである。従って、非常に広範な添加剤によりさまざまな温度及び種類の雪に合わせて設計されたワックスが使用されており、雪温が低い場合には硬い表面が望まれ、雪温が高い場合には軟らかい表面が望まれる。さらに、表面硬度の調節に加え、ワックスがナノ構造を形成することによりロータス効果を起こすため、まったく濡れることのない表面を得ることも可能である。しかし、ワックスの使用は複雑であり、ワックスを正しく選択することは困難である。実際に、様々な雪の状態に適切に対応できるよう、多数のワックスを用意しておく必要がある。
【0007】
WO 2004/069352はウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングを開示しているが、これは2種類のコポリマーの混合物をベースとしたものである。該コポリマーの一方は、プロピレンとさらに1種類以上のオレフィンのコポリマーであり、これは構造的構成単位の総数に対して少なくとも50%がプロピレンモノマー由来の構造的構成単位から成る。他方のコポリマーは、エチレンとさらに1種類以上のオレフィンのコポリマーであり、これは構造的構成単位の総数に対して少なくとも50%のエチレン由来の構造的構成単位を含む。WO 2004/069352に記載される滑走コーティング又はこれらの滑走コーティングを有するウィンタースポーツ用具はそれぞれ、特に滑走性に関しては既に優れた特性を有している。しかし、滑走コーティングを有する該ウィンタースポーツ用具の製造に用いられるコポリマー系に関しては、専門家らは大きな制約を受けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、ウィンタースポーツ用具のための滑走コーティング、及びかかる滑走コーティングを有するウィンタースポーツ用具が必要とされており、ここで該滑走コーティングは他のポリマー又はポリマー混合物で構成され、かつWO 2004/069352によってそれぞれ公知のウィンタースポーツ用具又は滑走コーティングと少なくとも同等に良好な、しかし好ましくはそれよりも良い機械的特性及び特に滑走特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本発明に従うと、WO 2004/069352に記載されるコポリマーの混合物を含まず、構造的構成単位の総数に対して10%以上のプロピレンモノマーに由来する構造的構成単位を含み、かつやはりコポリマー中の構造的構成単位の総数に対して1%以上の別のオレフィンに由来する構造的構成単位を含む少なくとも1種類のコポリマー(I)を有するウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングが、WO 2004/069352のそれに匹敵するかまたはそれ以上に優れた滑走特性を有することが見出された。
【0010】
本発明に従うと、コポリマー(I)は好ましくは200MPa−3000MPa、より好ましくは500MPa−3000MPaの範囲の曲げ強度を有する。曲げ強度の好ましい下限は700MPa及び900MPaであり、コポリマー(I)の曲げ強度の好ましい上限は2000MPa及び1500MPaである。それによって、コポリマー(I)の曲げ強度の特に好ましい範囲として700−2000MPa、より好ましくは800−1500MPa、例えば約900MPa、約1000MPa又は約1100MPaが得られる。
【0011】
本発明に従うと、驚くべきことにプロピレンと別のオレフィンから成る単一のコポリマーのみを有する滑走コーティングを提供することが可能であるが、本発明に従うと、以下コポリマー(II)と呼ばれる、プロピレンと別のオレフィンから成る1種類以上のさらなるコポリマーが存在することが好ましい。コポリマー(II)もまたプロピレンベースのコポリマーであることによって、本発明による特に好ましい滑走コーティングは、いずれもプロピレン由来の単位を含む2種類のコポリマーの混合物を有する。
【0012】
好ましくは、2種類のコポリマーの一方は、高い曲げ強度、高い軟化温度、及び高いショアD硬度を有し、プロピレンベースの第2のコポリマーは、より低い曲げ強度、より低い軟化温度、及びより低いショアD硬度を有する。
【0013】
従って本発明に従うと、ウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングが提供され、該滑走コーティングは、プロピレンモノマー由来の構造的構成単位を10%以上含み、かつ1種類以上のさらなるオレフィン由来の構造的構成単位を1%以上含む、コポリマー(I)と呼ばれる少なくとも1種類のコポリマーを有する。本発明に従うと、コポリマー(I)に加えて1種類以上のさらなるコポリマー(II)を含有する、ウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングもまた提供される。本発明はまた、かかる滑走コーティングを備えるウィンタースポーツ用具、特にスキーに係る。
【0014】
WO 2004/069352により公知の滑走コーティングとは異なり、本発明に従う滑走コーティングは、構造的構成単位の総数に対して50%以上のエチレンモノマー由来の構造的構成単位を有するコポリマーを含有しない。
【0015】
コポリマー(I)は、プロピレンと、1種類以上のさらなるオレフィンとのコポリマーである。好ましくは、コポリマー(I)は構造的構成単位の総数に対して10%以上、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは50%以上のプロピレンモノマーに由来する構造的構成単位を含有する。しかし、これらの構造的構成単位の量は、コポリマーの構造的構成単位の総数に対して99%を超えない。コポリマー(I)は、好ましくは70から99%、より好ましくは75から98%、特に80から95%、例えば約90%のプロピレンモノマー由来の構造的構成単位(各々構造的構成単位の総数に対して)を有する。
【0016】
さらに、コポリマー(I)は、少なくとも1種類のさらなるオレフィン、特にエチレン又はC−C12オレフィンに由来する構造的構成単位を含有する。該さらなるオレフィンの割合がコポリマー(I)の残余を(構造的構成単位の100%まで)補い、コポリマー(I)は好ましくはプロピレン/エチレンコポリマー、又はプロピレンと1種類以上のC−C12オレフィンとのコポリマー、又はプロピレンとエチレンと1種類以上のC−C12オレフィンとのコポリマーである。好ましくは、例えばエチレン/プロピレンジエンターポリマー(EPDM)などが用いられてもよく、これはプロピレン及びエチレン及びC−C12オレフィンに加えて、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン又は/及びヘキサジエンなどのジエンを含有し得る。高級オレフィン又はジエンもコポリマー(I)中に存在し得る。
【0017】
コポリマー(I)がコポリマー(II)とともに用いられるとき、コポリマー(I)がコポリマー(II)より高いビカット軟化温度、高い曲げ強度及び高いショアD硬度を有することが好ましい。
【0018】
本発明に従うと、コポリマー(I)の曲げ強度はコポリマー(II)の曲げ強度よりも好ましくは50MPa以上高く、より好ましくは100MPa以上高く、さらに好ましくは500MPa以上、例えば約900MPa又は1000MPa又は1100MPaだけ高い。
【0019】
本発明に従うと、コポリマー(I)のビカット軟化温度VST/A/50はコポリマー(II)のビカット軟化温度VST/A/50よりも好ましくは5℃以上高く、より好ましくは20℃、さらに好ましくは50℃以上、例えば約90℃又は95℃だけ高い。
【0020】
本発明に従うと、コポリマー(I)のショアD硬度はコポリマー(II)のショアD硬度よりも好ましくは5単位以上高く、より好ましくは10単位以上、さらに好ましくは少なくとも20単位以上、例えば約30単位又は35単位だけ高い。
【0021】
コポリマー(I)の曲げ強度は、200MPa−3000MPa、より好ましくは500MPa−3000MPaの範囲内にあることが好ましい。曲げ強度の好ましい下限値は800MPa及び1000MPaである。コポリマー(I)の曲げ強度の好ましい上限値は2000MPa及び1500MPaである。従ってコポリマー(I)の曲げ強度の好ましい範囲は800MPaから2000MPa、より好ましくは900MPaから1500MPaであり、特に約1000MPaの値が最も好ましい。
【0022】
また本発明に従うと、コポリマー(I)が80℃から250℃の範囲のビカット軟化温度VST/A/50を有することが好ましい。ビカット軟化温度VST/A/50の好ましい下限値は100℃及び130℃である。ビカット軟化温度VST/A/50の好ましい上限値は200℃及び170℃である。このことから、コポリマー(I)のビカット軟化温度VST/A/50の最も好ましい範囲は100℃から200℃までであり、より好ましくは130℃から170℃までである。約150℃のビカット軟化温度VST/A/50が最も好ましい。
【0023】
また本発明に従うと、コポリマー(I)のショアD硬度が50から90の範囲内にあることが好ましい。ショアD硬度の好ましい下限は55及び60であり、ショアD硬度の好ましい上限値は80及び70である。これによって、コポリマー(I)のショアD硬度の最も好ましい範囲は55から80までであり、より好ましくは60から70までである。約65のショアD硬度を有するコポリマー(I)が最も好ましい。
【0024】
本発明による最も好ましいコポリマー(I)は商業的に入手可能である。コポリマー(I)をプロピレンモノマー由来の単位を有するさらなるコポリマーとの混合物として用いるのでない場合、例えば、Basell社のアドスティフ(Adstif)EA648P及びアドフレックス(Adflex)X500Fなどの市販製品を利用できる。本発明に従って、以下に記載するように、コポリマー(I)をコポリマー(II)との混合物として用いる場合、例えば、Basell社の製品ホスタレン(Hostalen)PP EPD60R(曲げ強度 ISO178:1050MPa; ビカット軟化温度 ISO306A/50: 151℃; ショアD ISO868:64)が好ましい。
【0025】
コポリマー(I)をコポリマー(II)との混合物として用いるとき、コポリマー(I)は好ましくはコポリマー(I)と(II)の混合物の重量に対し1から99%、より好ましくは95から50%、特に95から70%、例えば約90%を占める。
【0026】
コポリマー(II)もまたプロピレンと少なくとも1種類のさらなるオレフィンとのコポリマーであるが、コポリマー(I)よりも低い曲げ強度、軟化温度及びショアD硬度を示すことが好ましい。コポリマー(II)の組成に関してはコポリマー(I)の説明を参照できるが、ウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングがコポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物を有する本発明に従った特に好ましい実施態様においては、コポリマー(II)の構造又は/及びコポリマー(II)中のコモノマーの含有量がコポリマー(I)のそれとは異なり、そのために曲げ強度、軟化温度及びショアD硬度に関して異なるパラメータが得られることが特に好ましい。ここで、コポリマー(II)もまたプロピレンと少なくとも1種類のさらなるオレフィン、特にエチレン又は/及びC−C12オレフィンとのコポリマーである。コポリマー(II)は好ましくはプロピレンとエチレンとのコポリマー、又はプロピレンと1種類以上のC−C12オレフィンとのコポリマー、又はプロピレンとエチレンと1種類以上のC−C12オレフィンとのコポリマーである。また、コポリマー(II)はシクロアセタジエン、ジシクロペンタジエン又は/及びヘキサジエンなどのジエンを含有し得る。また、高級オレフィン又はジエンもコポリマー(II)中に存在し得る。
【0027】
本発明に従うと、コポリマー(II)の曲げ強度は1MPaから500MPaの範囲内にあることが好ましい。コポリマー(II)の曲げ強度の好ましい下限は10MPa及び20MPaであり、コポリマー(II)の曲げ強度の好ましい上限は200MPa及び100MPaである。従って、特に好ましくはコポリマー(II)の曲げ強度は10MPaから200MPa、より好ましくは20MPaから100MPaの範囲内にある。約30MPaの曲げ強度を有するコポリマー(II)が特に好ましい。
【0028】
また本発明に従うと、コポリマー(II)のビカット軟化温度VST/A/50は1℃から80℃の範囲内にあることが好ましい。コポリマー(II)のビカット軟化温度VST/A/50の好ましい下限は30℃及び40℃であり、好ましい上限は70℃及び60℃である。よってコポリマー(II)のビカット軟化温度VST/A/50の特に好ましい範囲は30から70℃及び40から60℃である。特に、約55℃のビカット軟化温度を有するコポリマー(II)が好ましい。
【0029】
また本発明に従うと、コポリマー(II)のショアD硬度は1から50の範囲内にあることが好ましい。ショアD硬度の好ましい下限は20及び25であり、ショアD硬度の好ましい上限は35及び40である。従って、コポリマー(II)のショアD硬度の特に好ましい範囲は20から40まで及び25から35までである。特に、約30のショアD硬度を有するコポリマーが好ましい。
【0030】
本発明に従って使用する好ましいコポリマー(II)は商業的に入手可能であり、例えばBasell社のアドフレックスQ100F(曲げ強度 ISO178:80MPa; ビカット軟化温度 ISO306A/50:55℃; ショアD ISO868:30)などである。
【0031】
コポリマー(II)は、好ましくはコポリマー(I)と(II)の混合物の重量に対し1から90%、より好ましくは5から50%、特に5から30%、例えば約10%を占める。
【0032】
コポリマー(I)及びコポリマー(II)の両方が「ランダム」コポリマーであってもよい。しかし、少なくともコポリマー(I)は、コモノマーがポリプロピレンブロック上に重合したブロックコポリマーであることが好ましい。コポリマー(II)は、例えばポリプロピレンのブロックがコモノマーを通じて互いに連結したコポリマーであってもよい。該コポリマーの特性は、例えばポリプロピレンのブロック長などによって変更し得る。
【0033】
「コポリマー」という用語は、ここに記載される範囲において、2種類のモノマー単位のコポリマーだけでなく、2種類より多くの異なるモノマー単位、特に3種類又は4種類の異なるモノマー単位で構成されるコポリマーも含む。よってここで用いられる「コポリマー」という用語は、特にターポリマーも含む。ここで用いられる「オレフィン」という用語は、1個以上の二重結合、好ましくは1個又は2個の二重結合(ジエン)を有する化合物であって、好ましくは16個以下、より好ましくは10個以下の炭素原子を含有し、分岐していても直鎖であってもよい化合物を含む。
【0034】
好ましくは、コポリマー(I)及びコポリマー(II)の混合物は200MPa−3000MPa、より好ましくは500MPa−3000MPaの範囲の曲げ強度を有する。曲げ強度の好ましい下限は700MPa及び900MPaであり、ポリマー混合物の曲げ強度の好ましい上限は2000MPa及び1500MPaである。よって、コポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物の曲げ強度の特に好ましい範囲は700から2000MPaまで、より好ましくは800から1500MPaまでである。該混合物は約1000MPaの曲げ強度を有することが特に好ましい。
【0035】
コポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物を使用することにより、滑走コーティングの特性の「微調整」が可能になり、特定の要求に特によく適合させることができる。これはコポリマー(I)のみの使用では不可能である。
【0036】
2種類のコポリマーの混合物のビカット軟化温度VST/A/50は80℃から250℃の範囲内にあることが好ましい。ビカット軟化温度VST/A/50の好ましい下限は100℃及び110℃であり、好ましい上限は200℃及び170℃である。従って、2種類のコポリマーの混合物のビカット軟化温度VST/A/50の特に好ましい範囲は100から200℃、より好ましくは110から150℃、例えば130℃などである。
【0037】
好ましくは、2種類のコポリマーの混合物のショアD硬度は50から90の範囲内にある。ショアD硬度の好ましい下限は55及び60であり、好ましい上限は80及び70である。よって、2種類のコポリマーの混合物のショアD硬度の特に好ましい範囲は、55から80まで及び60から70までである。約67のショアD硬度を有するコポリマー混合物が特に好ましい。
【0038】
本発明に従って使用するコポリマーは商業的に入手可能であるか、又は、ごくわずかのルーチンな実験により当業者により製造され得る。概して、コポリマー中のプロピレンの含有量を減らすことによって、特にポリプロピレンブロックを有するコポリマーにおける曲げ強度、ショアD硬度及びビカット軟化温度を低下させ得ることは事実である。従って、コポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物を用いる本発明の実施態様において、通常コポリマー(I)はコポリマー(II)よりもプロピレン単位の含有量が高い。しかし、対応するパラメータを有するコポリマーをいかに製造し得るかは、ポリマー化学者の一般的な専門知識に属する。
【0039】
しかしながら、関係するコポリマーは商業的に、例えばBasell及びExxon並びにBorealisなどの会社からも入手可能である。
【0040】
本発明によると、軟化温度とは、常にISO 306:2004規格に定められたビカット軟化温度を意味する。このISO規格によると、熱可塑性材料のビカット軟化温度を定めるには4つの方法、すなわち10Nの力及び1時間当り50℃の加熱速度を用いる方法A50、50Nの力及び1時間当り50℃の加熱速度を用いる方法B50、10Nの力及び1時間当り120℃の加熱速度を用いる方法A120、50Nの力及び120℃の加熱速度を用いる方法B120がある。本発明によれば、すべてのビカット軟化温度は、10Nの力及び1時間当り50℃の加熱速度を用いる方法A50に従って定められた。方法の詳細については対応するISO規格を参照されたい。
【0041】
本発明によると、曲げ強度はISO 178:2001に従って定められ、すなわち23℃における3点曲げ荷重の曲げ強度である。測定の詳細については対応するISO規格を参照されたい。
【0042】
本発明に従うと、ショア硬度はISO規格868:2003に従って定められる。ISO規格868:2003はショア硬度を定めるための2つの方法、より軟らかい材料向けのタイプAと、より硬い材料向けのタイプBとを定義している。ショア硬度は主にプローブチップを用いて測定される。硬度の尺度は貫入深度であり、ここでは較正したばねによって力が加えられる。硬度は室温(23℃)にて3秒間測定される。本発明に従うと、より硬い材料に対しては、円錐(先端を丸めた針、R=0.1mm)を用いるD法(又はDスケール)に従って硬度を測定する。方法の詳細については対応するISO規格を参照されたい。
【0043】
有利には、本発明に従う滑走コーティングを製造するためのコポリマー又はコポリマー混合物は、それ自体が公知でありポリプロピレンに対して好適な1種類以上の潤滑剤を含有する。潤滑剤が存在する場合、可能であれば、コポリマー(I)又はコポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物の総重量に対して、0.1から30%、又は5から30重、より好ましくは0.5から10%、又は1から10%、例えば約1%又は約3%存在することが好ましい。潤滑剤が用いられ、該潤滑剤は例えば高温安定な第一級又は第二級脂肪酸、例えば第一級脂肪酸アミンなど、又はカルボン酸エステルなどをベースとした通常の疎水性潤滑剤であることが特に好ましい。また、高温安定な第一級脂肪酸ベースの潤滑剤と、1種類以上のカルボン酸エステルとの混合物が特に好ましい。通常の市販製品は、Hecoplast GmbH(イーザーローン、ドイツ)の製品ヘコスリップ(Hecoslip)103PO及びヘコスリップ114PPである。特に好ましくは、高温安定な第一級脂肪酸とカルボン酸エステルの混合物は、約1:2の割合で用いられる。
【0044】
さらに、本発明に従う滑走コーティングは通常の静電気防止剤、特にカルボン酸エステルなどポリプロピレン用の公知の静電気防止添加剤を含有してもよい。かかる静電気防止剤が存在するときには、適用可能であればコポリマーI又はコポリマー(I)とコポリマー(II)との混合物の総重量に対して、0.1から30%、又は5から30%の量、より好ましくは0.5から10%、例えば約1%存在することが好ましい。
【0045】
さらに、本発明に従う滑走コーティングは通常の核形成剤、特にポリプロピレンに対する通常の核形成剤を含んでもよい。核形成剤とは、安息香酸ナトリウムなど、核形成のための手段であり、60年代に最初にもたらされた。これは例えばHenkel KGaA(デュッセルドルフ、ドイツ)あるいはHecoplast GmbH(イーザーローン、ドイツ)などの会社から入手可能である。本発明に従うと、ソルビトールアセタールなど、糖ベースの核形成剤などの有機核形成剤が好ましい。好ましい市販製品は、Hecoplast社の製品ヘコヌク(Heconuk)484PPである。かかる核形成剤が存在するときには、コポリマー(I)の重量に対し、0.1から30%、より好ましくは0.5から10%、例えば約2%存在することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の好ましい実施態様において、本発明に従う滑走コーティングは、上に定義されたとおりの1種類以上の核形成剤と、上に定義されたとおりの1種類以上の潤滑剤との両方を、各々上に示した好ましい量だけ含有する。また、潤滑剤は部分的又は完全に核形成剤に結合されることが好ましい。核形成剤が存在するとき、好ましくは第一級脂肪酸又は/及び第二級脂肪酸が潤滑剤として用いられ、好ましくは核形成剤の総重量に対して1から90%の割合で、より好ましくは核形成剤の総重量に対して1から10%の割合で、特に核形成剤の総重量に対して約7%の割合で用いられる。
【0047】
滑走コーティングが核形成剤及び潤滑剤の両方を含有し、該潤滑剤が任意に又は(好ましくは)完全に核形成剤に結合されている好ましい実施態様においては、高温安定な第一級脂肪酸とカルボン酸エステルの約1:10の割合の混合物が潤滑剤として用いられることが特に好ましい。
【0048】
また、本発明に従う滑走コーティングにはさらなる通常の添加剤が存在してもよく、たとえば疎水性及び静電気防止特性又は耐候性及び擦傷耐性を改善するための添加剤などが存在してもよく、ここでは特にケイ素化合物、例えば二酸化ケイ素など特に無機ケイ素化合物、無水マレイン酸、カーボンブラック及びフッ素又はフッ化炭化水素が挙げられる。妥当な場合、TiOなどの顔料も存在する。かかる添加剤の最も好適な量はルーチンな実験により簡単に定めることができ、存在する各添加剤は、コポリマー(I)又はコポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物の重量に対し、各々0.05から3%、より好ましくは0.1から2%の量存在することが好ましい。本発明に従う滑走コーティングは、潤滑剤、核形成剤、ケイ素化合物及び無水マレイン酸を含有するものが特に好ましい。
【0049】
特に好ましくは、ケイ素化合物はナノ粒子の形で存在する疎水性の焼成ケイ酸である。好ましくは、ナノ粒子は、80から300m/gの範囲、より好ましくは110から260m/gの範囲、例えば160m/g±25m/gなどのBET(DIN 66131)による表面積を有する。かかる製品は、例えばDegussa社のアエロジル(Aerosil)という名称で入手可能である。本発明に従うと、製品アエロジルR8200が特に好ましい。
【0050】
無水マレイン酸は疎水性化剤として働くが、ナノ粒子に対する接着剤又はカップリング剤としても働く。また無水マレイン酸は商業的に入手可能であり、実施例においてはExxon Mobil社の製品エクセラー(Exxelor)が用いられているが、他の無水マレイン酸を用いてもよいことが理解される。
【0051】
さらに、通常の光安定剤、特にポリオレフィンに対する光安定システム及び特に好ましくはポリプロピレンに対する光安定システムが滑走コーティングに加えられてもよい。かかる光安定システムは先行技術において公知である。光安定システムは例えば立体障害アミンに基づくシステムであり、Hecoplast社のHALS光安定剤濃縮物ヘコスタブ(Hecostab)372を特別な製品として挙げることができる。
【0052】
スキーが、例えば競技スキーなど高性能用途に供される場合、通常の態様において、特殊な含浸が通常の態様で適用されることがあり、これは好ましくはポリプロピレンに結合でき、疎水性及び静電気防止特性を即時に向上させ、また表面硬度を高める。ここではフッ化イソプロパノールと水との混合物が挙げられる。
【0053】
驚くべきことに、コポリマー(I)は、コポリマー(II)及び任意には上に定義されたとおりのさらなる添加剤との混合物において、簡単な押出し成型法によって任意にフィルムに加工でき、それはウィンタースポーツ用具、特にスキー及びスノーボードのための滑走コーティングとして特に優れた態様で好適であることが見出された。該コーティングは+20℃から−20℃の温度範囲において温度の低下とともにより硬くなるようにその硬度を変えるが、これは以前はワックスを使用することによってのみ得られた効果である。
【0054】
さらに、本発明に従う滑走コーティングは、少なくともウィンタースポーツ用具に対する要求に関する限り、優れたノッチ衝撃強度及びポリエチレンベースの滑走コーティングの強度に匹敵する強度を示す。
【0055】
本発明に従う滑走コーティングを製造するためのコポリマー又はコポリマー混合物はそれぞれ、通常の態様で加工できる。該コポリマー又はコポリマー混合物に特有の利点は、それぞれ通常の押出し成型法、例えば平板押出し成型法などによって滑走コーティングに成型できることである。本発明に従うと、PE−UHMWなどの他のポリマーに必要とされる加圧焼結法は必要ない。従って本発明に従うと、通常の単軸又は二軸スクリュー押出し成型機、特に混合部を有する3ゾーンスクリュー押出し成型機、好ましくは混合部を有するコーミング3ゾーン二軸スクリュー押出し成型機において該加工を実施できる。押出し成型ツールは当業者に公知であり、ここでは通常のビーム又はコートハンガーツール(ダイ)が例として挙げられる。較正のためには、通常のカレンダー又は平滑化圧延装置、特にいわゆる冷却圧延装置が用いられてもよい。
【0056】
また本発明に従うと、湿潤性をできる限り低くする表面構造を滑走コーティング上に適用することが有利である。驚くべきことに、本発明に従う滑走コーティングにおいて、ある表面構造を通常の態様で適用すると、湿潤性が特に大きく低下し、ワックスを使用しなくてもロータス効果が起こることが見出された。
【0057】
そこで、本発明に従う別の利点は、プロピレンコポリマーがいわゆる「記憶効果」を有するという事実によるものであり、これは該表面構造が分子の凝固限界よりもさらに下で使用されると起こる。記憶効果により、表面構造は、機械的影響によりわずかに損傷を受けても、元に戻る。
【0058】
該表面構造は、スキーから公知であるのと同じ態様で、例えば構造平滑化ローラの使用などにより、滑走コーティングに付与される。上述のとおり、表面構造は分子の凝固点に達する前に滑走コーティングに適用されることが好ましい。
【0059】
本発明に従う滑走コーティングは通常0.1から10mm、好ましくは0.5から5mm、特に約1mmの厚さを有する。
【0060】
本発明に従う滑走コーティングは、ウィンタースポーツ用具、特にスキー及びスノーボードに、通常の態様で付加できる。ここでは、通常のホットメルト接着剤などの好適な接着剤によって、又はポリアミド樹脂もしくはエチレンビニルアセテートコポリマーもしくはその修飾形などの溶融接着プラスチックによって滑走コーティングをウィンタースポーツ用具に適用することが特に好ましい。しかし、別の公知の態様で該滑走コーティングを該用具に結合させてもよい。適用前に、ウィンタースポーツ用具、特にスキー及びスノーボードは、ブラッシング、サンドブラスト、脱脂、エッチング又は酸洗いなどの通常の前処理を受けてもよく、滑走コーティングはコロナ処理、火炎処理、プライマー処理又はオゾンシャワーなどの通常の表面処理を受けてもよい。
以下の実施例は本発明を説明するものである。
【実施例】
【0061】
実施例1
混合物:90kgのホスタレンPP EPD60R、10kgのアドフレックスQ100F、2kgのヘコヌク484PP、2kgのヘコスタブ372、1kgのヘコスリップ103PO、1kgのエクセラー無水マレイン酸、2kgのアエロジルR8200。
【0062】
実施例2
混合物:100kgのアドスティフEA648P、2kgのヘコヌク484PP、2kgのヘコスタブ372、1kgのヘコスリップ103PO、1kgのエクセラー無水マレイン酸、2kgのアエロジルR8200。
【0063】
上に示した混合物の成分を各々通常のミキサーで30分間混ぜ合わせた。その後、各々の混合物を、平滑化ロールを有する冷却圧延装置を備えた商標コリン(Colin)の3ゾーン単軸スクリュー押出し成型機を有する平板押出し成型装置により、1mm厚のフィルムに押出し成型した。表面処理は、商標モンタナ(Montana)の通常のスキーストーン研磨装置により行なった。
【0064】
試験例
実施例1及び2の生成物からの小さなサンプルプレート(5cm×5cm)を、粒度約8μmの研磨紙及び粒度約100nmのエメリーペーストで研磨することによって、滑走コーティングの表面にロータス効果を与えた。屑を洗い落とした後に極度に滑り性の高いフィルム表面が得られ、水滴はその上を球状に転がり落ちた。
【0065】
フィルム冷却時の著しい表面硬度の増加、および加熱時の表面硬度の減少が明らかになった。
【0066】
通常の接着剤を用いて該フィルムをスキー及びスノーボードに公知の態様で適用した。その後これらのウィンタースポーツ用具を、実際に定性的滑走試験を行なう目的で、湿った雪、冷たく乾いた雪及び人工雪において試験走行させた。商標P−TEXの商業的に入手可能な最高級PE−UHMW焼結コーティングを有するスキー及びスノーボードを基準とした。基準コーティングには試験されるものと同じ上述のストーン研磨装置により同一の研磨仕上げを施し、競技用に通常行なわれるとおり、それぞれの雪温に対する好適なワックスを使用し、専門的な準備が行われた。
【0067】
比較において、本発明に従った新しいコーティングを有するウィンタースポーツ用具は、いかなる態様においても従来のものに劣るようには思われなかった。一方、特に湿雪において、本発明に従う生成物は焼結コーティングよりわずかに優れているように思われた。
【0068】
以下、本発明に従った上記実施例1のコーティングをFXスマートベースNANOと呼び、実施例2のものをFXスマートベースNANO Bと呼ぶ。
【0069】
定量分析のために、本発明に従った新しいコーティングFXスマートベースNANO及びNANO Bの滑走特性とワックス加工した基準コーティングとの客観的な比較を可能にする以下の実験装置を使用した。該構成を図1に示す。
【0070】
定められた傾斜角度αを有する雪の斜面上を、試験するコーティングを滑走面として有するスライダーが滑り降りる。最初スライダーは磁石によって保持される。磁石が起動すると計時が始まり、スライダーは3つの光バリア(L1、L2、L3)を通過する。
【0071】
ここで、磁石からL1までの第1の距離x1(5.5cm)において、第1の時間t1を測定する。その後、光バリアL2までの第2の距離x2(50cm)において第2の時間t2を測定し、最後に光バリアL3までの第3の距離x3(50cm)において第3の時間t3を測定する。
【0072】
制御のために、Jetter社のnanoB型CPUを使用した。磁石は、入力電圧24VのIBS社の電磁石であった。光バリアとしては、80cmの範囲及び1msの応答時間を有するIDEC社のIR光バリアを選択した。
【0073】
面積80cmのFXスマートベースNANO及びNANO Bのコーティングサンプルを、温かい雪及び冷たい雪において、それぞれの雪の条件に基づく好適なワックスを用いて準備した基準コーティングP−Texと比較した。
【0074】
図2に示されるように、すべてのサンプルは、クリスタルグライド仕上げ法に従って、Montana社のストーン研磨機により同一のオールラウンド構造を与えた。
【0075】
温かく湿った雪の試験のために、雪温−2℃かつ気温+2℃において、Star SkiWax社のワックス、エクリプス(Eclipse)EC1 High Fluor +8°...−3℃を用いた。
【0076】
冷たく乾いた雪の試験のために、雪温−6℃かつ気温−4℃において、Star SkiWax社のワックス、エクリプスEC2 High Fluor 0°...−10℃を用いた。
【0077】
ワックスは、TOKO社のワックスアイロンを使用してP−Texサンプルに塗布した。その後、サンプルを室温にて2時間冷却した。TOKO社のスクレーパーを用いてワックスを削り落とした。その後、TOKO社の構造ブラシによって研磨構造に再びブラシをかけた。
【0078】
FXスマートベースNANOコーティング及びNANO Bはワックス加工しなかった。
【0079】
コーティングは、両面接着テープ及びねじ止めによりスライダーに装着した。
【0080】
その後、コーティング装着後のスライダーを計量した。Soehnle社の、グラム単位まで正確に測れる高精度はかり8048Cyberを使用した。
【0081】
次いで、雪の付着性を高めるため底に人工芝のある槽に雪を充填し、ルーラーで平滑化して平面を生じさせた。各走行の前に実験用滑走路に新しく雪を充填して平滑化した。
【0082】
その後、スライダーをガイドに乗せ、接地接触なしに磁石の上に誘導した。
【0083】
磁石を起動し、光バリアにおける測定を行なった。
【0084】
各コーティングにつき10回の走行を行ない、10走行すべての結果得られた時間を平均した。
【0085】
その後、得られた平均時間を相互に比較し、平均速度を算出した。
【0086】
結果:
装着コーティングを有するすべてのスライダーは同じ339gの重量を有した。すべての実験において傾斜角度αは15°であり、これは25.88%の斜面に相当する。
【0087】
1.温かく湿った雪(雪温:−2℃、気温:+2℃)での一連の実験
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
速度:v=x/t
ここで:
v:平均速度
x:距離
t:xに対して必要な時間
【0091】
その結果:
FXスマートベースNANO: v=0.932m/s
FXスマートベースNANO B: v=0.899m/s
P−Tex+EC1: v=0.767m/s
【0092】
よって、開始距離105.5cmの場合、湿った雪での試験においては、FXスマートベースNANOにより17.7%速くなり、FXスマートベースNANO Bにより14.7%速くなる。この結果を図3に示す。
【0093】
2.冷たく乾いた雪(雪温:−6℃、気温:−4℃)での一連の実験
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

【0096】
速度:v=x/t
ここで:
v:平均速度
x:距離
t:xに対して必要な時間
【0097】
その結果:
FXスマートベースNANO: v=0.890m/s
FXスマートベースNANO B: v=0.875m/s
P−Tex+EC2: v=0.826m/s
【0098】
よって、開始距離105.5cmの場合、冷たい雪での試験においては、FX−スマートベースNANOにより7.19%速くなり、FX−スマートベースNANO Bにより5.6%速くなる。この結果を図4に示す。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、定量分析のために、本発明に従った新しいコーティングFXスマートベースNANO及びNANO Bの滑走特性とワックス加工した基準コーティングとの客観的な比較を可能にする実験装置の構成である。
【図2】図2は、すべてのサンプルに施された、クリスタルグライド仕上げ法に従った、Montana社のストーン研磨機による同一のオールラウンド構造を示す。
【図3】図3に、温かく湿った雪(雪温:−2℃、気温:+2℃)での一連の実験の結果を示す。
【図4】図4に、冷たく乾いた雪(雪温:−6℃、気温:−4℃)での一連の実験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンタースポーツ用具のための滑走コーティングであって、コポリマー(I)の構造的構成単位の総数に対して10%以上のプロピレンモノマー由来の構造的構成単位を有し、かつコポリマー(I)の構造的構成単位の総数に対して1%以上の別のオレフィン由来の構造的構成単位を有するコポリマー(I)を含んで成り、コポリマーの構造的構成単位の総数に対して50%以上のエチレンモノマー由来の構造的構成単位を含むコポリマーを有さない、滑走コーティング。
【請求項2】
該滑走コーティングが、コポリマー(I)に加えて、プロピレン由来の構造的構成単位を含有する別のコポリマーを有さないことを特徴とする、請求項1に記載の滑走コーティング。
【請求項3】
コポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物を含んで成り、該コポリマー(I)及び該コポリマー(II)がプロピレンと少なくとも1種類のさらなるオレフィンとのコポリマーであり、コポリマー(I)は請求項1において定められたとおりであり、コポリマー(I)の曲げ強度がコポリマー(II)の曲げ強度よりも50MPa以上高く、コポリマー(I)のビカット軟化温度がコポリマー(II)のビカット軟化温度よりも5℃以上高く、コポリマー(I)のショアD硬度がコポリマー(II)のショアD硬度よりも5単位以上高い、請求項1に記載の滑走コーティング。
【請求項4】
コポリマー(I)が200MPa−3000MPaの範囲の曲げ強度と、80℃から250℃の範囲のビカット軟化温度VST/A/50と、50から90の範囲のショアD硬度とを有し、コポリマー(II)が存在するときには、コポリマー(II)がプロピレンと1種類以上のさらなるオレフィンとのコポリマーであり、1MPaから500MPaの範囲の曲げ強度と、1℃から80℃の範囲のビカット軟化温度VST/A/50と、1から50の範囲のショアーD硬度とを有することを特徴とする、請求項1乃至3の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項5】
コポリマー(I)が500MPaから3000MPaの範囲の曲げ強度を有することを特徴とする、請求項4に記載の滑走コーティング。
【請求項6】
コポリマー(II)が、コポリマー(I)とコポリマー(II)の総重量に対して5から50%までの量存在することを特徴とする、請求項3乃至5の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項7】
該滑走コーティングが1種類以上の潤滑剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至6の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項8】
該潤滑剤が、適用可能であればコポリマー(I)又はコポリマー(I)とコポリマー(II)の混合物の総重量に対して0.5から30%までの量含有されることを特徴とする、請求項7に記載の滑走コーティング。
【請求項9】
高温安定な第一級又は第二級脂肪酸、カルボン酸エステル及びそれらの混合物から選択される潤滑剤が含まれることを特徴とする、請求項7又は8に記載の滑走コーティング。
【請求項10】
該滑走コーティングが核形成剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至9の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項11】
該滑走コーティングが、静電気防止添加剤、疎水性を高める添加剤、耐候性を高める添加剤、擦傷耐性を高めるための添加剤、及び顔料から選択される1種類以上のさらなる添加剤を付加的に含有することを特徴とする、請求項1乃至10の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項12】
該混合物が、ケイ素化合物又は/及び無水マレイン酸を含有することを特徴とする、請求項11に記載の滑走コーティング。
【請求項13】
コポリマー(I)がプロピレン/エチレンコポリマー又はEPDMターポリマーであることを特徴とする、請求項1乃至12の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項14】
コポリマー(I)が、構造的構成単位の総数に対して、各々70%から99%のプロピレンモノマー由来の構造的構成単位と、1から30%のエチレンモノマー由来の構造的構成単位とを有するプロピレン/エチレンコポリマーであることを特徴とする、請求項13に記載の滑走コーティング。
【請求項15】
コポリマー(II)が、プロピレンと4から10個の炭素原子を有する高級オレフィンとのコポリマーであるか、又はプロピレンと、エチレンと、4から10個の炭素原子を有するオレフィンとのターポリマーであることを特徴とする、請求項3乃至14の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項16】
4から10個の炭素原子を有するオレフィンがオクテンであることを特徴とする、請求項15に記載の滑走コーティング。
【請求項17】
コポリマー(I)の曲げ強度がコポリマー(II)の曲げ強度よりも500MPa以上高く、コポリマー(I)のビカット軟化温度がコポリマー(II)のビカット軟化温度よりも50℃以上高く、コポリマー(I)のショアD硬度がコポリマー(II)のショアD硬度よりも20単位以上高いことを特徴とする、請求項3乃至16の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項18】
コポリマー(I)が800から2000MPaの範囲の曲げ強度と、100℃から200℃の範囲のビカット軟化温度VST/A/50と、55から80の範囲のショアD硬度とを有し、コポリマー(II)が存在するときには、コポリマー(II)が10MPaから200MPaの範囲の曲げ強度と、30℃から70℃の範囲のビカット軟化温度VST/A/50と、20から40の範囲のショアD硬度とを有することを特徴とする、請求項1乃至17の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項19】
分子凝固点に達する前に適用された表面構造を有することを特徴とする、請求項1乃至18の内のいずれか一項に記載の滑走コーティング。
【請求項20】
請求項1乃至19の内のいずれか一項に記載の滑走コーティングを製造する方法であって、請求項1乃至17の内のいずれか一項において定められたとおりの、コポリマー(I)、任意にはコポリマー(II)、及び任意にはさらなる成分の混合物が、平板押出し成型法によってフィルムに押出し成型され、その後該フィルム上に分子凝固点に達する前に表面構造が任意に適用されることを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項1乃至19の内のいずれか一項に記載の滑走コーティングを有することを特徴とする、ウィンタースポーツ用具。
【請求項22】
スキー又はスノーボードであることを特徴とする、請求項21に記載のウィンタースポーツ用具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−525068(P2008−525068A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547342(P2007−547342)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013797
【国際公開番号】WO2006/069706
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(505228925)
【Fターム(参考)】