説明

ウィンドウウォッシャー液加熱装置

【課題】ウォッシャー液を加熱する加熱板を流路内に密閉した状態で一体化し、ウォッシャー液の注入口と排出口にゴムホースを接続する部分以外は気密性を保持することができるウィンドウウォッシャー液加熱装置を提供する。
【解決手段】ウィンドウウォッシャー液を通過させる成形部材で作成された容器130と、容器130内に一体成形で設置された加熱板132と、電磁誘導を用いて加熱板132を加熱する加熱装置140と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラスやリアガラスに使用するウィンドウウォッシャー液を加熱するための加熱装置に関するものであり、特に、水密性の高いウィンドウウォッシャー液加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、車両のフロントガラスやリアガラスの着氷を溶解するためにウィンドウウォッシャー液をその流路内にシーズヒーターを埋め込んで温める装置が知られている。例えば、下記特許文献1(特開2010?184525号公報)に開示されたウォッシャー液加熱装置では、ウォッシャー液ポンプによってウォッシャー液タンクからウォッシャー液ノズルに送られるウォッシャー液の流路中に、そのウォッシャー液を加熱するための加熱装置を設けるとともに、流路内の圧力が増加したときにその流路の容積を増加させるように調整する調整手段を設けるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010?184525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなウォッシャー液加熱装置は、加熱装置としてのシーズヒーターを流路内に埋め込む必要があり、この部分には圧力が加わるため、シーズヒーター取り付け部にはシーズヒーターの熱に耐えるとともに、防水性および水密性が要求される。
【0005】
また、シーズヒーターには寿命があり、これを取り換えるときにはウォッシャー液流路の気密性の確保が必要になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解消することを課題とするものであり、加熱装置としての加熱板を流路内に密閉した状態で一体化し、ウォッシャー液の注入口と排出口にゴムホースを接続する部分以外は気密性を保持することができるウィンドウウォッシャー液加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、
ウィンドウウォッシャー液を通過させる成形部材で作成された容器と、
前記容器内に一体成形で設置された加熱板と、
電磁誘導を用いて前記加熱板を加熱する加熱装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、
前記容器は、ブロー成形で一体成形もしくは2つの成型品を超音波融着によって一体化されたものであり、前記ウィンドウウォッシャー液の注入口と排出口以外は開口部のない構造となっていることを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、
前記加熱板は、前記容器と一体成形もしくは超音波融着によって一体化され、接続部以外は周囲を前記ウィンドウウォッシャー液で満たされた構造となっていることを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、
前記加熱装置は、前記容器の側方近傍に配置され、電磁気を発生させることで当該容器内の加熱板に電磁誘導による発熱をもたらすことを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、
前記加熱板は、前記加熱装置からもたらされる電磁誘導によって発熱する導磁性の強い材料で構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項6に係る発明は、請求項3に係る発明において、
前記加熱板は、前記接続部と加熱される本体部分との間に穴が設けられ、もしくは前記接続部と本体部分との間が周囲より細く形成され、前記接続部の温度上昇を抑える構造となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明においては、ウィンドウウォッシャー液を通過させる成形部材で作成された容器と、前記容器内に一体成形で設置された加熱板と、電磁誘導を用いて前記加熱板を加熱する加熱装置と、を備える。
【0014】
このような構成によれば、加熱装置と加熱容器との分離が可能なため、電源が必要な電気系統とウォッシャー液等の液体が流れる水路系とを完全に切り離すことができるので、装置の信頼性が高まり、装置のメンテナンスも容易になる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記容器は、ブロー成形で一体成形もしくは2つの成型品を超音波融着によって一体化されたものであり、前記ウィンドウウォッシャー液の注入口と排出口以外は開口部のない構造となっている。
【0016】
このような構成によれば、容器は加熱板をウォッシャー液の流路内に密閉した状態で一体化されることで、ウォッシャー液の注入口と排出口にホースを接続する部分以外は容器の気密性を保持する手立てが必要無くなる。また、容器の組み込み時にホースの接続部の密封だけ行えばよいので、水密性の高い装置を提供できて信頼性を向上させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明においては、請求項1に係る発明において、前記加熱板は、前記容器と一体成形もしくは超音波融着によって一体化され、接続部以外は周囲を前記ウィンドウウォッシャー液で満たされた構造となっている。これにより、加熱板は何ら故障や交換の必要がない構造のため、容器の気密性を保持する手立てを必要とする部品の交換のメンテナンスは発生せず、メンテナンスが容易となる。
【0018】
請求項4に係る発明においては、請求項1に係る発明において、前記加熱装置は、前記容器の側方近傍に配置され、電磁気を発生させることで当該容器内の加熱板に電磁誘導による発熱をもたらす構成とする。このような構成によれば、加熱装置と加熱容器との分離が可能なため、電源が必要な電気系統とウォッシャー液等の液体が流れる水路系とを完全に切り離すことができるので、装置の信頼性が高まり、装置のメンテナンスも容易になる。
【0019】
請求項5に係る発明においては、請求項4に係る発明において、前記加熱板は、前記加熱装置からもたらされる電磁誘導によって発熱する導磁性の強い材料で構成されている。このような構成によれば、加熱板は加熱装置からもたらされる電磁誘導によって容易に発熱させることができるので、ウォッシャー液を瞬時に温めることができる加熱装置を提供することができる。屋外に車を駐車していて、寒い朝にウィンドウが霜などで凍てついたとき、速やかに温かいウォッシャー液を吹きかけて融かす機能は有効である。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記加熱板は、前記接続部と加熱される本体部分との間に穴が設けられ、もしくは前記接続部と本体部分との間が周囲より細く形成され、前記接続部の温度上昇を抑える構造となっている。これにより、加熱板が急激に発熱した場合でも接続部にその熱が伝わって接続部分が破損したり、容器の気密性が損なわれたりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係るウォッシャー液加熱装置を概略的に示す説明図である。
【図2】図1の加熱容器130についてA−A線で切断して内部を分解した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の加熱容器130についてB−B線で切断した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するためのウォッシャー液加熱装置を例示するものであって、本発明をこのウォッシャー液加熱装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のウォッシャー液加熱装置にも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0023】
図1は、本発明の実施例に係るウォッシャー液加熱装置を概略的に示す説明図である。
【0024】

本発明の実施例に係るウォッシャー液加熱装置10は自動車11のフロントボンネット
12内に搭載されている。
【0025】
ウォッシャー液加熱装置10は、図1で示すように、ウォッシャー液を貯めておく貯蔵ボトル110と、貯蔵ボトル110の出口側に配されてウォッシャー液を加熱容器130に送るポンプ120と、ウォッシャー液をその中で加熱する加熱容器130と、電磁誘導を発生する加熱装置140と、加熱されたウォッシャー液をウィンドウに噴射させるための噴射ポンプ150と、自動車11のフロントウィンドウガラス13に対向して配されて加熱されたウォッシャー液を噴射する散布口160と、これら貯蔵ボトル110、ポンプ120、加熱容器130、噴射ポンプ150及び散布口160との間に接続して設けられたホース170と、から構成されている。なお、加熱装置140は加熱容器130の外部近傍に設置されている。
【0026】
図2は、図1の加熱容器130についてA−A線で切断して内部を分解した状態を示す斜視図である。図3は、図1の加熱容器130についてB−B線で切断した状態を示す斜視図である。加熱容器130は、保温率の高い部材からなるケース131と、このケース131に収納された加熱板132とを有する。
【0027】
ケース131は、透磁性の材料からなる成形品でできた箱体からなり密封状態になっており、上部にウォッシャー液の注入口133と排出口134とが形成されている。注入口133はウォッシャー液を貯めておく貯蔵ボトル110からくるホース170が挿入されてポンプ120と連通されている。排出口134は散布口160に繋がるホース170が挿入されて噴射ポンプ150と連通されている。この結果、ウォッシャー液はポンプ120の作動によって注入口133からケース131内を通過して排出口134へと流れる。一方、ポンプ120が作動を停止するとウォッシャー液はケース131内に留まった状態になる。
【0028】
ケース131の内部は、仕切り板135によって大きく2室に分かれており、注入口133から送り込まれたウォッシャー液を下部に送る流路室と、内部に加熱板132を有する加熱室とからなる。両方の室は仕切り板135の下部に設けられた流路用貫通孔136で繋がっている。仕切り板135及び流路用貫通孔136によって蛇行するウォッシャー液の流路を形成している。なお、ケース131の内部は必ずしも2室に分離されている必要はなく、加熱室だけの構造でもよい。
【0029】
また、流路用貫通孔136を仕切り板135の下部に設けることで、注入口133から注入された水が確実に加熱板132を通って排出口134を向かう構成とすることができる(すなわち、確実に温水となった状態で排出される仕組みとすることができる)。
【0030】
加熱板132は、固定用の2個の固定用貫通穴137と、各々の固定用貫通穴137の周囲に開けられた放熱用貫通孔138を有している。加熱容器130のケース131は成型品でできており、ブロー成形などの一体成形もしくは2体に分離した形での射出成形で形成される。ケース131を一体成形する時には加熱板132をインサート成形で内部に取り込んだ状態でケース131を成形する。このとき、加熱板132の固定用の貫通穴137には成形材料である樹脂が入り込み、この加熱板132をケース131に固定する。
【0031】
図3に示すように、ケース131を2体131a、131bに分離した構造とする場合には、各々に固定用ボス139を設け、加熱板132を間に挟んだ状態で固定した後に2体の箱体のケース131を超音波融着により一体化してもよい。
【0032】
加熱板132に設けられた各々の固定用貫通穴137の周囲に開けられた放熱用貫通孔138には、加熱容器130の使用状態でウォッシャー液が満たされ、2個の取り付け貫通穴137に伝わる温度を下げる効果がある。加熱板132の固定は2か所以上であれば3か所や4か所でもよい。その場合は各々の固定用貫通穴の周囲に放熱用の貫通孔を設ける。固定用の貫通穴にはブロー成形などのインサート成形で一体化する場合には樹脂が入り込むことになり、2体で成形した成形品を超音波融着で一体化する場合には固定用のボスが入り込むことになる。
【0033】
加熱板132は、導磁性の材料からなり、その近傍の加熱容器130の外部に設置されたウォッシャー液の加熱装置140からの電磁誘導によって渦電流を生じ、その作用で発熱する。加熱容器130の使用状態で加熱板132の周囲はウォッシャー液で満たされているため、発熱した加熱板132によりウォッシャー液は加熱される。加熱装置140は、渦電流を発生させる発生回路と、発生回路の動作を制御するためのマイクロコンピュータを内蔵した制御回路と、を有する。
【0034】
ユーザが自動車11のエンジン動作をスタートさせてポンプ120を作動させると、貯蔵ボトル110から送り込まれたウォッシャー液は注入口133から加熱容器130に入り、ケース131内の流路室最下部に設けられた流路用貫通孔136を通じて加熱室に送り込まれる。ケース131内の加熱室では加熱板132の周囲がウォッシャー液で満たされているので、このウォッシャー液は加熱板132の熱で温められる。その後、加熱されたウォッシャー液は排出口134を通じて散布口160に送り込まれ、噴射ポンプ150にてフロントウィンドウガラス13に噴射される。
【0035】
以上のように、ケース131内の加熱室を含む加熱容器130は一体成形、もしくは超音波融着などによって注入口と排出口を除いた部分が水密性の高いかたちで形成されているので、特に水密性を保持するための工夫を必要としない。また、ケース131内に設けられた加熱板132の発熱制御は、加熱容器130の外部に設けられたウォッシャー液の加熱装置140において行うため、発熱制御用の電気系統とウォッシャー液が流れる水路系とを分離することができるため、装置の信頼性を向上させることができる。
【0036】
なお、上記実施例では、加熱板132をケース131に固定するための貫通穴137の周囲に放熱用貫通孔138を設けることで、固定用貫通穴137に伝わる温度を下げる構成を実現しているが、これに限らず、例えば固定用貫通穴137の周囲だけ加熱板を細く形成することで固定用貫通穴137に伝わる温度を下げるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施例では、ケース131内に加熱板132を設ける構成としたが、これに限らずケース131自体を導磁性からなる素材で構成することで、加熱板132を別途設けることなくケース131自体を加熱板として機能させることができる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・・ウォッシャー液加熱装置
11・・・・自動車
12・・・・フロントボンネット
13・・・・フロントウィンドウガラス
110・・・貯蔵ボトル
120・・・ポンプ
130・・・加熱容器
131、131a、131b・・・ケース
132・・・加熱板
133・・・注入口
134・・・排出口
135・・・仕切り板
136・・・流路用貫通孔
137・・・固定用貫通穴
138・・・放熱用貫通孔
139・・・固定用ボス
140・・・加熱装置
150・・・噴射ポンプ
160・・・散布口
170・・・ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウウォッシャー液を通過させる成形部材で作成された容器と、
前記容器内に一体成形で設置された加熱板と、
電磁誘導を用いて前記加熱板を加熱する加熱装置と、
を備えたことを特徴とするウィンドウウォッシャー液加熱装置。
【請求項2】
前記容器は、ブロー成形で一体成形もしくは2つの成型品を超音波融着によって一体化されたものであり、前記ウィンドウウォッシャー液の注入口と排出口以外は開口部のない構造となっていることを特徴とする請求項1に記載のウィンドウウォッシャー液加熱装置。
【請求項3】
前記加熱板は、前記容器と一体成形もしくは超音波融着によって一体化され、接続部以外は周囲を前記ウィンドウウォッシャー液で満たされた構造となっていることを特徴とする請求項1に記載のウィンドウウォッシャー液加熱装置。
【請求項4】
前記加熱装置は、前記容器の側方近傍に配置され、電磁気を発生させることで当該容器内の加熱板に電磁誘導による発熱をもたらすことを特徴とする請求項1に記載のウィンドウウォッシャー液加熱装置。
【請求項5】
前記加熱板は、前記加熱装置からもたらされる電磁誘導によって発熱する導磁性の強い材料で構成されていることを特徴とする請求項4に記載のウィンドウウォッシャー液加熱装置。
【請求項6】
前記加熱板は、前記接続部と加熱される本体部分との間に穴が設けられ、もしくは前記接続部と本体部分との間が周囲より細く形成され、前記接続部の温度上昇を抑える構造となっていることを特徴とする請求項3に記載のウィンドウウォッシャー液加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−10370(P2013−10370A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142508(P2011−142508)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】