説明

ウィンドバリア及びウィンドバリアを備える園芸用施設構造物並びにウィンドバリアを備える連設園芸用施設構造物

【課題】園芸用施設構造物の屋根に作用する揚圧力に起因する園芸用施設構造物の倒壊を効果的に防止するとともに、設置が容易且つ既存の園芸用施設構造物にも簡単に設置可能なウィンドバリアの提供。
【解決手段】棟Lを境に風上側と風下側方向にそれぞれ下方に傾斜する屋根R上において、風上側の屋根面上且つ前記棟に沿って配されるとともに、前記屋根上を流れる風の流線に対して平行ではない角度で配される風切面100と、前記棟より高い位置に配される上端面若しくは上端縁を備えることを特徴とするウィンドバリアである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易建築物の倒壊防止用設備に関し、より詳しくは、園芸用施設構造物に用いられる強風に対する保護設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にビニールハウスと呼ばれる園芸用施設構造物は、園芸用施設構造物内部で育成される植物の育成環境を好適な状態に保つための設備である。即ち、園芸用施設構造物は、育成温度、遮光量、給水量を調整可能とするとともに、風雨・害虫から育成植物を保護する役割を担う。したがって、園芸用施設構造物には、住居等の一般構造物と較べて、構造的強度はさほど要求されない。
したがって、園芸用施設構造物の設営者にとっては、出来る限り低廉なコストで且つ短期間で設営可能な園芸用施設構造物であることが好ましい。
【0003】
構造的強度がさほど要求されない園芸用施設構造物であっても、園芸用施設構造物の自重を支え、或いは地域によっては雪の重みに耐えうるだけの構造的強度は必然的に要求される。
このような構造的強度を得るために一般的な園芸用施設構造物は、基礎杭を地面に打ち込み、地表付近において基礎杭周囲にソイルセメントを打設した構造を基礎として、基礎杭に園芸用施設構造物の骨組となる柱を連結させるような構造を採用している。
【0004】
上記構造は、鉛直下方の荷重に対しては、比較的十分な構造的強度を発揮するが、横方向の力、即ち、風による力に対しては、十分な強度を発揮し得ない場合が多い。このため、風の力に対する構造的強度を発揮するための園芸用施設構造物の改良構造が提案されている。
耐風構造の1つとして、園芸用施設構造物周面を形成する壁の一部或いは全部に風が通過可能な通風孔を設けることが考えられる。これにより、園芸用施設構造物の壁面に対して負荷される風からの力を緩和することが可能である。
他の耐風構造として、特許文献1に開示されるように、園芸用施設構造物周囲に追加構造を設けることや、或いは園芸用施設構造物の基礎構造などを頑健に構成するなどの手段が考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−78421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7に従来の園芸用施設構造物の概略構造を示す。
従来構造の園芸用施設構造物は、雨水を流下させるために両側に向かって下方に傾斜する屋根(R)を備える。側方から風が来たとき、風はこの屋根(R)に沿って流れる。このとき、屋根(R)は航空機の翼に加わるような揚圧力が作用する。この揚圧力により、上述のような簡易な基礎構造が引き抜かれ、園芸用施設構造物が倒壊することがある。
【0007】
この揚圧力に起因する園芸用施設構造物の倒壊は、特許文献1に開示されるような技術によっては防ぐことができない。他の方法として、基礎構造自体を頑健にするという手段も考えられるが、園芸用施設構造物に対して望まれる廉価且つ短期間の設営の要求に応えることができない。特に、風上側に配される屋根には、上記揚圧力に加えて、水平方向の風の力が作用する。揚圧力と水平方向の風の力の複合的な力に耐え得る園芸用施設構造物の基礎構造及び骨組み構造は、非常に頑健なものとする必要があり、このような構造を得るための費用並びに時間は、莫大なものとなる。更には、頑健な基礎構造の構築を既存の園芸用施設構造物に適用することは非常に困難且つ手間がかかり、費用の面からみて、有効な手段とはなりえない。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、園芸用施設構造物の屋根に作用する揚圧力に起因する園芸用施設構造物の倒壊を効果的に防止するとともに、設置が容易且つ既存の園芸用施設構造物にも簡単に設置可能なウィンドバリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、棟を境に風上側と風下側方向にそれぞれ下方に傾斜する屋根上において、風上側の屋根面上且つ前記棟に沿って配されるとともに、前記屋根上を流れる風の流線に対して平行ではない角度で配される風切面と、前記棟より高い位置に配される上端面若しくは上端縁を備えることを特徴とするウィンドバリアである。
請求項2記載の発明は、前記風上側の屋根面の中間位置と前記棟との間に配されることを特徴とする請求項1記載のウィンドバリアである。
請求項3記載の発明は、前記風切面の前記風上側の屋根面に対する角度が150°以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のウィンドバリアである。
請求項4記載の発明は、上側に開いた略コ字状の受部材と、下側に開いた略コ字状の主部材とを嵌め合わせて角筒状に形成されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のウィンドバリアである。
【0010】
請求項5記載の発明は、棟と、前記棟を境に下方に傾斜した一対の屋根面を備える園芸用施設構造物であって、前記一対の屋根面のうち、風上側の屋根面上にはウィンドバリアが配され、該ウィンドバリアが、前記屋根上を流れる風の流線に対して平行ではない角度で配される風切面と、前記棟より高い位置に配される上端面若しくは上端縁を備えることを特徴とする園芸用施設構造物である。
請求項6記載の発明は、前記ウィンドバリアが、前記風上側の屋根面の中間位置と前記棟との間に配されることを特徴とする請求項5記載の園芸用施設構造物である。
請求項7記載の発明は、前記風切面の前記風上側の屋根面に対する角度が150°以下であることを特徴とする請求項5又は6記載の園芸用施設構造物である。
請求項8記載の発明は、前記ウィンドバリアが、上側に開いた略コ字状の受部材と、下側に開いた略コ字状の主部材とを嵌め合わせて角筒状に形成されることを特徴とする請求項5乃至7いずれかに記載の園芸用施設構造物である。
【0011】
請求項9記載の発明は、棟と前記棟を境に下方に傾斜した一対の屋根面を備える複数の園芸用施設構造物からなり、前記園芸用施設構造物の屋根が風上側から風下側へ凹凸を繰り返すように配列された連設園芸用施設構造物であって、前記園芸用施設構造物のうち最風上側に配される園芸用施設構造物の屋根のうち、風上側の屋根面上にウィンドバリアが配され、該ウィンドバリアが、前記屋根上を流れる風の流線に対して平行ではない角度で配される風切面と、前記最風上側の園芸用施設構造物の前記棟より高い位置に配される上端面若しくは上端縁を備えることを特徴とする連設園芸用施設構造物である。
請求項10記載の発明は、前記ウィンドバリアが、前記風上側の屋根面の中間位置と前記棟との間に配されることを特徴とする請求項9記載の連設園芸用施設構造物である。
請求項11記載の発明は、前記風切面の前記風上側の屋根面に対する角度が150°以下であることを特徴とする請求項9又は10記載の連設園芸用施設構造物である。
請求項12記載の発明は、前記ウィンドバリアが、上側に開いた略コ字状の受部材と、下側に開いた略コ字状の主部材とを嵌め合わせて角筒状に形成されることを特徴とする請求項9乃至11いずれかに記載の連設園芸用施設構造物である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、風切面が屋根上面を流れる風の流れに干渉するので、園芸用施設構造物の屋根に作用する揚圧力を低減することが可能となる。したがって、風の水平方向の力と揚圧力の複合力を消滅或いは低減せしめ、園芸用施設構造物の倒壊を防止することが可能となる。また、既存の園芸用施設構造物に対しても、多くの工程を要することなしに倒壊防止設備を構築可能となる。
請求項2記載の発明によれば、大きな揚圧力が作用する領域にウィンドバリアが配されるので、効果的に揚圧力を低減させることが可能となる。
請求項3記載の発明によれば、効果的に風の流れを妨げることが可能となり、高い揚圧力低減効果を得ることが可能となる。
請求項4記載の発明によれば、強度が低い構造の建築物の屋根上へのウィンドバリアの取付が容易となる。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、風切面が屋根上面を流れる風の流れに干渉するので、園芸用施設構造物の屋根に作用する揚圧力を低減することが可能となる。したがって、風の水平方向の力と揚圧力の複合力を消滅或いは低減し、倒壊の危険性のない園芸用施設構造物となり、作業者或いはその内部で育成される植物を倒壊により傷つけることがなくなる。
請求項6記載の発明によれば、大きな揚圧力が作用する領域にウィンドバリアが配されるので、効果的に揚圧力を低減させることが可能となり、園芸用施設構造物の倒壊が効果的に防止される。
請求項7記載の発明によれば、ウィンドバリアが、効果的に風の流れを妨げ、高い揚圧力低減効果を発揮し、倒壊の危険性のない園芸用施設構造物となる。
請求項8記載の発明によれば、設営容易且つ倒壊の危険性のない園芸用施設構造物となる。
【0014】
請求項9記載の発明によれば、風切面が屋根上面を流れる風の流れに干渉するので、園芸用施設構造物の屋根に作用する揚圧力を低減することが可能となる。したがって、風の水平方向の力と揚圧力の複合力を消滅或いは低減し、倒壊の危険性のない園芸用施設構造物となり、作業者或いはその内部で育成される植物を倒壊により傷つけることがなくなる。また複数連なる園芸用施設構造物のうち最上流にのみウィンドバリアが取付けられればよいので、簡易な構造の倒壊防止設備を備える連設園芸用施設構造物となる。
請求項10記載の発明によれば、大きな揚圧力が作用する領域にウィンドバリアが配されるので、効果的に揚圧力を低減させることが可能となり、連設園芸用施設構造物の倒壊が効果的に防止される。
請求項11記載の発明によれば、ウィンドバリアが、効果的に風の流れを妨げ、高い揚圧力低減効果を発揮し、倒壊の危険性のない連設園芸用施設構造物となる。
請求項12記載の発明によれば、設営容易且つ倒壊の危険性のない連設園芸用施設構造物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るウィンドバリア及びウィンドバリアを備える園芸用施設構造物並びにウィンドバリアを備える連接園芸用施設構造物について、図を参照しつつ説明する。
図1は、本発明のウィンドバリア(1)を園芸用施設構造物(H)に取付けた状態を示す。図1(a)は、平面図であり、図1(b)は正面図である。
ウィンドバリア(1)は、園芸用施設構造物(H)の屋根(R)の棟(L)に沿って、且つ屋根(R)の棟(L)に対して略平行に配される。ウィンドバリア(1)は、角筒或いは角柱状の部材であり、その長さは、屋根(R)の長さと略等しく形成される。
ウィンドバリア(1)の上流側の面は、鉛直方向の面に対して、略平行とされる。また、ウィンドバリア(1)の上面は、屋根の棟よりも高い位置に配される。
また、図1に示す例においては、屋根(R)上に配された棟木(2)上にウィンドバリア(1)は配されている。
【0016】
このようにウィンドバリア(1)を屋根(R)から上方に突出させて配することで、ウィンドバリア(1)が屋根(R)に沿って流れる風の流れを妨げ、屋根(R)に作用する揚圧力を低減させる。また、ウィンドバリア(1)を屋根(R)の棟(L)に対して若干風上側に配することにより、風上側にある屋根(R)の面上で風の流れを遮ることができ、揚圧力を確実に低減せしめる。
したがって、揚圧力に起因する園芸用施設構造物(H)の基礎構造を引き抜こうとする力が低減し、園芸用施設構造物(H)の倒壊を防ぐことができる。
【0017】
図2は、ウィンドバリア(1)取付部分の拡大図である。
棟木(2)は、屋根(R)の棟(L)より若干風上側に取付けられている。棟木(2)上面には、上方に突出する一対の取付棒(21)が配され、取付棒(21)は、奥行き方向に複数配列されている。
【0018】
ウィンドバリア(1)は、略コ字状に形成され、上側に開口した断面略平行四辺形の受部材(11)と、略コ字状に形成され、下側に開口した断面略台形状の主部材(12)から構成される。
受部材(11)の底面には、取付棒(21)の位置に対応する貫通孔が形成され、この貫通孔を介してねじ等の固定具が挿入され、取付棒(21)上に固定される。
主部材(12)の外部側面と受部材(11)の内部側面とが当接するように、主部材(12)が受部材(11)上に載置される。主部材(12)と受部材(11)の側面には、互いに対向する位置に貫通孔或いはねじ穴が形成され、これら貫通孔或いはねじ穴に固定具を挿入して、主部材(12)と受部材(11)が連結固定される。このようにして、屋根(R)上に角筒状のウィンドバリア(1)を配することが可能となる。
このようにウィンドバリア(1)を上下に分割可能な構造とすることで、構造的強度が低い園芸用施設構造物(H)の屋根(R)上にウィンドバリア(1)を設置する作業が容易となる。
【0019】
尚、ウィンドバリア(1)を中実構造としてもよいが、中空構造の方が軽量化の面で好ましい。また、主部材(12)途中部に複数のリブを設けて、ウィンドバリア(1)内部を仕切るような構造とすることで、ウィンドバリア(1)の強度を上げることができる。
また、ウィンドバリア(1)は、外気及び直射日光に晒されるので、耐候性・防錆性がある材料で構成されることが好ましい。このような材料として、アルミニウムやステンレスなどが挙げられる。
【0020】
図2において詳述されるような構造において、屋根(R)とウィンドバリア(1)下面との間には僅かに隙間が形成されるが、後述するように、この隙間はほとんど揚圧力低減作用に悪影響を及ぼさない。尚、ウィンドバリア(1)を直接、屋根(R)上に配置するような構造を採用することも可能である。
【0021】
(試験例1)
図3は、上記構造のウィンドバリア(1)の屋根(R)に作用する揚圧力に対する効果を確認するための風洞実験の結果を示す。
1/40縮尺模型として、断面3mm×3mmの角材をウィンドバリア(1)に見立てた。したがって、この実験において120mm×120mmの断面サイズのウィンドバリア(1)が実際の大きさとされる。尚、複数の実験結果並びに一般的な園芸用施設構造物(H)の構造強度を鑑みると、ウィンドバリア(1)の好適な断面サイズは一辺の長さが100mmから150mmの範囲とすることが好ましいと考えられる。尚、実験において、角材の位置は屋根(R)の棟(L)より若干風上側に配されている。
尚、この風洞実験において、角材有の場合と角材無の場合のCp値を測定し、角材有の条件においては、屋根(R)と角材との間に3mm程度の隙間を設けた場合と屋根(R)と角材とを密着させた2つの条件についてのCp値を測定した。これにより、ウィンドバリア(1)の設置条件、即ち、ウィンドバリア(1)と屋根(R)との間に生じうる隙間の影響を観察可能となる。
尚、Cp値が正の値をとるとき、屋根(R)には、屋根(R)の面に対して下方に押付ける力が働いており、Cp値が負の値をとるとき、屋根(R)に対して揚圧力(即ち、上方に引っ張る力)が作用している。
【0022】
図3に示すように、角材無の条件においては、風上側屋根面中間位置付近からCp値が低減し、高い揚圧力が風上側屋根面に作用していることが分かる。一方で、角材有の条件においては、風上側屋根面全体にわたって、Cp値は0付近で推移し、風上側屋根面に作用する揚圧力はほとんど生じていない。この結果から、ウィンドバリア(1)を風上側屋根面の中間位置から棟(L)の間に配することが好ましいといえる。
風上側の屋根面の揚圧力の低減は、風上側の園芸用施設構造物(H)の面に加わる揚圧力と水平方向の風の力との複合的な力の消滅或いは低減を意味する。したがって、園芸用施設構造物(H)の基礎構造及び園芸用施設構造物(H)全体の骨組構造を、水平方向の風の力にのみ耐え得るような構造とすることが可能となる。したがって、既存の園芸用施設構造物(H)の基礎構造並びに骨組構造をそのまま利用して、ウィンドバリア(1)を既存の園芸用施設構造物(H)の屋根に設置するのみで、園芸用施設構造物(H)の倒壊防止対策を施すことが可能となる。
尚、図3に示す如く、屋根面と角材との隙間の影響は、ほとんど確認されず、ウィンドバリア(1)の屋根面上への取り付けにおいて、若干の隙間が形成されていたとしても何ら問題を生じないことが確認された。
【0023】
(試験例2)
図4は、3棟の園芸用施設構造物(H)が連設した状態を示し、図5は、図4に示す3連の園芸用施設構造物(H)の模型を用いての風洞実験を行った結果を示すグラフである。
尚、模型化の条件は試験例1に示すものと同様であり、3つの縮尺模型を連設して風洞内に配して実験を行った。
図4及び図5に示す符号は、共通し、最も風上側にある園芸用施設構造物にはH1、園芸用施設構造物(H1)に隣接する園芸用施設構造物にはH2、園芸用施設構造物(H2)に隣接する最風下の園芸用施設構造物にはH3の符号を付している。また、園芸用施設構造物(H1)において、風上側の屋根面にはR1、風下側の屋根面にはR2の符号を付し、園芸用施設構造物(H2)において、風上側の屋根面にはR3、風下側の屋根面にはR4の符号を付し、園芸用施設構造物(H3)において、風上側の屋根面にはR5、風下側の屋根面にはR6の符号を付している。また、園芸用施設構造物(H1,H2,H3)の棟には、それぞれL1,L2,L3の符号を付している。
【0024】
図5に示すように、最風上にある園芸用施設構造物(H1)に対するCp値の推移は、図3に示すものと同様である。一方で、園芸用施設構造物(H2,H3)に対応するCp値の推移は、各条件とも差異のない同様な推移を示す。
【0025】
図6は、更に図5の連設園芸用施設構造物の模型の下流側に2つの追加の園芸用施設構造物(H4,H5)の模型を追加して、Cp値を測定した結果を示す。図5と同様に、園芸用施設構造物(H4)において、風上側の屋根面にはR7、風下側の屋根面にはR8の符号を付し、園芸用施設構造物(H5)において、風上側の屋根面にはR9、風下側の屋根面にはR10の符号を付している。また、角材有の条件においては、それぞれの園芸用施設構造物(H1乃至H5)の棟近傍上流側にウィンドバリア(1)を模した角材を載置した。図5と同様に、各園芸用施設構造物(H1乃至H5)の棟には、図6中それぞれ、L1乃至L5の符号を付している。
【0026】
図5と同様に、図6に示す結果においても、最風上にある園芸用施設構造物(H1)に対するCp値の推移は、図3に示すものと同様である。一方で、園芸用施設構造物(H1)よりも風下側にある園芸用施設構造物(H2乃至H5)に対応するCp値の推移は、各条件とも差異のない同様な推移を示す。
【0027】
以上の連設園芸用施設構造物(H)においては、最風上側の園芸用施設構造物(H1)にのみウィンドバリア(1)を配することで、最風上側の園芸用施設構造物(H1)の倒壊に起因する他の園芸用施設構造物の倒壊を防止することができ、また最風上側に配されるウィンドバリア(1)は、特に下流側の園芸用施設構造物に対して悪影響を与えないことが分かる。
したがって、連棟の園芸用施設構造物の場合においても、最上流側の園芸用施設構造物の棟近傍にのみウィンドバリア(1)を配することで、十分な園芸用施設構造物の倒壊防止効果を得ることができる。
【0028】
図4乃至図6に関連して説明した試験以外にも、様々な断面形状のウィンドバリア(1)を模した試験を行ったが、最上流側の揚圧力の低減効果を得るための形状・配置等の条件は以下のようなものとなる。
ウィンドバリア(1)の風の流線と対抗する風切面(図1において、符号100で示される面)が、流線と平行ではないということが必要である。即ち、ウィンドバリア(1)が設置される屋根(R)の面に対して、風切面が平行ではなく、好ましくは、上流側の屋根面に対して、0°より大きく150°以下の範囲に風切面の傾斜角度が設定される。風切面の傾斜角度が、150°以下であれば、屋根面上の風の流れが風切面に沿って舞い上がることなく、確実に風切面と衝突し、確実に風切効果即ち揚圧力の低減効果を得られることとなる。更に好ましくは、90°以上120°以下の範囲であることが好ましい。このような範囲に風切面の傾斜角度を設定することにより、屋根面上の取付作業が容易となるとともに、確実且つ効果的な揚圧力の低減作用を得られることとなる。尚、曲線輪郭の屋根面に対しては、ウィンドバリア(1)が設置される屋根の輪郭曲線の接線に対する角度を上記範囲とすることが好ましい。
ウィンドバリア(1)の上端面或いは上端縁が屋根の棟より高い位置に配されることが必要である。
【0029】
上記のようなウィンドバリア(1)の条件の範囲内で、様々な変更或いは改良を施すことが可能である。風切面(100)から上流側に突出する複数の板状の整流リブを設け、風切面(100)と衝突する風の流れの乱流に起因するウィンドバリア(1)に加わる力を低減させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、簡易な基礎構造を備える建築物倒壊防止設備に好適に利用可能であり、特に園芸用施設構造物の倒壊防止設備として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るウィンドバリアを園芸用施設構造物の屋根上に取付た状態を示す図である。
【図2】図1に示すウィンドバリアの取付部分の拡大図である。
【図3】ウィンドバリアの効果を検証するための風洞実験結果を示す図である。
【図4】3連棟の園芸用施設構造物にウィンドバリアを取付けた状態を示す図である。
【図5】図4に示す3連棟の園芸用施設構造物に対する風洞実験の結果を示す図である。
【図6】5連棟の園芸用施設構造物に対する風洞実験の結果を示す図である。
【図7】従来の園芸用施設構造物の概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・・ウィンドバリア
11・・・受部材
12・・・主部材
100・・風切面
H・・・・園芸用施設構造物
L・・・・棟
R・・・・屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棟を境に風上側と風下側方向にそれぞれ下方に傾斜する屋根上において、風上側の屋根面上且つ前記棟に沿って配されるとともに、
前記屋根上を流れる風の流線に対して平行ではない角度で配される風切面と、
前記棟より高い位置に配される上端面若しくは上端縁を備えることを特徴とするウィンドバリア。
【請求項2】
前記風上側の屋根面の中間位置と前記棟との間に配されることを特徴とする請求項1記載のウィンドバリア。
【請求項3】
前記風切面の前記風上側の屋根面に対する角度が150°以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のウィンドバリア。
【請求項4】
上側に開いた略コ字状の受部材と、
下側に開いた略コ字状の主部材とを嵌め合わせて角筒状に形成されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のウィンドバリア。
【請求項5】
棟と、
前記棟を境に下方に傾斜した一対の屋根面を備える園芸用施設構造物であって、
前記一対の屋根面のうち、風上側の屋根面上にはウィンドバリアが配され、
該ウィンドバリアが、
前記屋根上を流れる風の流線に対して平行ではない角度で配される風切面と、
前記棟より高い位置に配される上端面若しくは上端縁を備えることを特徴とする園芸用施設構造物。
【請求項6】
前記ウィンドバリアが、前記風上側の屋根面の中間位置と前記棟との間に配されることを特徴とする請求項5記載の園芸用施設構造物。
【請求項7】
前記風切面の前記風上側の屋根面に対する角度が150°以下であることを特徴とする請求項5又は6記載の園芸用施設構造物。
【請求項8】
前記ウィンドバリアが、上側に開いた略コ字状の受部材と、
下側に開いた略コ字状の主部材とを嵌め合わせて角筒状に形成されることを特徴とする請求項4乃至7いずれかに記載の園芸用施設構造物。
【請求項9】
棟と前記棟を境に下方に傾斜した一対の屋根面を備える複数の園芸用施設構造物からなり、
前記園芸用施設構造物の屋根が風上側から風下側へ凹凸を繰り返すように配列された連設園芸用施設構造物であって、
前記園芸用施設構造物のうち最風上側に配される園芸用施設構造物の屋根のうち、風上側の屋根面上にウィンドバリアが配され、
該ウィンドバリアが、
前記屋根上を流れる風の流線に対して平行ではない角度で配される風切面と、
前記最風上側の園芸用施設構造物の前記棟より高い位置に配される上端面若しくは上端縁を備えることを特徴とする連設園芸用施設構造物。
【請求項10】
前記ウィンドバリアが、前記風上側の屋根面の中間位置と前記棟との間に配されることを特徴とする請求項9記載の連設園芸用施設構造物。
【請求項11】
前記風切面の前記風上側の屋根面に対する角度が150°以下であることを特徴とする請求項9又は10記載の連設園芸用施設構造物。
【請求項12】
前記ウィンドバリアが、上側に開いた略コ字状の受部材と、
下側に開いた略コ字状の主部材とを嵌め合わせて角筒状に形成されることを特徴とする請求項9乃至11いずれかに記載の連設園芸用施設構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−314216(P2006−314216A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137921(P2005−137921)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【Fターム(参考)】