説明

ウィンドフレームの上部構造

【課題】充填材が簡易に塗布でき、塗布むらを防止し、ウィンドフレームと車体外側壁との間の防水性能を高めたウィンドフレームの上部構造を提供すること。
【解決手段】バスの天井部に設けられたルーフレールと、側壁に設けられたサイドウィンドガラスと、サイドウィンドガラスの周縁を囲み、上縁が前記ルーフレールに固定されるウィンドフレームと、前記ウィンドフレームの上方に設けられたドリップモールと、を備えたウィンドフレーム構造において、ルーフレールは、バスの外方側に、上部外壁と下部外壁とを有し、ウィンドフレームは、上部に、断面コの字状でその開口部を前記バスの外方側に有する取付部を具え、前記取付部の縦片を、前記下部外壁に固定し、前記ルーフレールと前記取付部の上壁上面との間に充填材を塗布し、更にドリップモールを前記上部外壁に取り付けてウィンドフレームの上部構造を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウィンドガラスを車体に取り付けるウィンドフレームの上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンドフレームは、サイドウィンドガラスなどのウィンドガラスの周囲を囲う枠体で、車両の側壁に取り付けてサイドウィンドガラスを固定させる。またバスなどにおいては、ウィンドフレームの上部にドリップモールを設け、天井などから落下してくる雨水をドリップモールで受け、車両の前方側に流すようになっている。従来のウィンドフレームとしては、図7に示すようにドリップモール104とウィンドフレーム102とが一体に成形されていたものが知られている。
【0003】
つまり、ウィンドフレーム102の上部に予めドリップモール104が取り付けられており、ウィンドフレーム102にサイドウィンドガラス22を取り付け、ウィンドフレーム102を車体(ルーフレール30)に取り付けると、ドリップモール104がサイドウィンドガラス22の上部に形成されるようになっている。
【特許文献1】特開平4−121221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウィンドフレーム102を車体に取り付けた後、車両外側壁(ルーフレール30)との間に充填材106を塗布し、ウィンドフレーム102の上部に防水加工を施す必要がある。上述したようにドリップモール104がウィンドフレーム102と一体に成形されている場合、ドリップモール104の排水部の内部に充填材106を塗布することとなり、ドリップモール104が、車体の外側壁から外方に突出し、かつ端部が上方に屈曲されているため、作業性があまりよくなかった。
【0005】
特に2階建てバスにおける2階客室のウィンドフレーム102へ充填材106を塗布する場合、高い位置での塗布作業となり、塗布した充填材106にむらが発生することが考えられる。
【0006】
仮に充填材106が薄く塗布された場合には、防水性能を低下させるおそれがあり、ウィンドフレーム102から水漏れを引き起こすことが考えられる。一方充填材106を過剰に塗布し排水部内に充填材106を盛り上がらせた場合には、ドリップモール104の通水性を悪化させ、水がドリップモール104内に部分的に溜まることとなる。すると、常に水に濡れた状態を形成させ、ドリップモール104の内部に汚れを生じさせたり、周囲に錆を発生させてしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、充填材が簡易に塗布でき、塗布むらを防止し、ウィンドフレームと車体外側壁との間の防水性能を高めたウィンドフレームの上部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、ウィンドフレームの上部構造を次のように構成した。
【0009】
1、 車両の天井部左右両側に、該車両の前後方向に沿って設けられたルーフレールと、前記車両の左右側壁に設けられたサイドウィンドガラスと、前記サイドウィンドガラスの周縁を囲み、上縁が前記ルーフレールに固定されるウィンドフレームと、前記ウィンドフレームの上方に設けられ、車両上方からの水を前方あるいは後方に流すドリップモールと、を備えたウィンドフレーム構造において、前記ルーフレールは、前記車両の外方側に、上部外壁と該上部外壁より車両内方側に設けられた下部外壁とを有し、前記ウィンドフレームは、上部に、断面コの字状でその開口部を車両外方側に設けた取付部を具え、前記取付部の車両内側に位置する内壁を、前記下部外壁に固定させ、前記ルーフレールと前記取付部の上壁との間に充填材を塗布し、更に前記ドリップモールを、前記上部外壁の外表面に取り付けてウィンドフレームの上部構造を構成した。
【0010】
2、 1に記載のウィンドフレームの上部構造において、前記ドリップモールは、排水部が前記上部外壁の外方に位置し、前記充填材の外方を覆うように設けられていることとした。
【0011】
3、 1または2に記載のウィンドフレームの上部構造において、前記車両は、上下に1階客室と2階客室とを備えた2階建てバスであり、前記ウィンドフレームは、前記2階客室の側壁に設けられたウィンドフレームであることとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるウィンドフレームの上部構造は、次の効果を有している。
ドリップモールがウィンドフレームから離れて取り付けられ、それらの間に充填材が塗布されるので、充填材を充填する作業が容易となり、塗布むらの発生を防止できる。充填材を排水路の内部に塗布するのではないので、充填材を塗布し過ぎても、排水性能を低下させることがなく、充填材を十分に塗布して確実にウィンドフレームの防水処理が行える。
【0013】
2階建てバスにおける、取付位置の高い天井部分のウィンドフレームに充填材を簡易に塗布でき、ウィンドフレームを2階建てバスの側壁に確実、かつ安全に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明にかかるウィンドフレームの上部構造の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、本発明にかかるウィンドフレームの上部構造を有する車両10を示す。以下、車両の進行方向を前方とし、それを基準として左右方向を定め、更に重力の方向を下方とし、その逆を上方とし、車両の中心に向かう方向を内側方向、その逆を外側方向として説明を行う。
【0015】
図1は、車両10、すなわちバスの左側面を示している。車両10は、1階客室12と2階客室14を上下に備えた後輪二軸の2階建てバスであり、1階客室12と2階客室14との間に点線で示すように隔壁13が設けられている。車両10の前方(図の左方)には、運転席15が設けられている。
【0016】
車両10の上部には、ルーフ16が設けられ、ルーフ16に連結して左右両側にそれぞれ左側壁18と右側壁(図示せず。)とが設けられている。尚右側壁は、左側壁18と扉部分などを除いてほぼ同様の構成であり、左側壁18の説明に代えて右側壁の説明を省略する。
【0017】
左側壁18には、1階客室12に設けられたサイドウィンドガラス20と、2階客室14に設けられたサイドウィンドガラス22が設けられている。サイドウィンドガラス20及びサイドウィンドガラス22は、それぞれウィンドフレーム24、26を介して左側壁18に取り付けられている。
【0018】
ウィンドフレーム24、26は、上下左右の四辺に保持片60を具えた枠体で、サイドウィンドガラス20や22を周囲から保持している。図2に、サイドウィンドガラス22におけるウィンドフレーム26の上部断面を示す。
【0019】
図2には、ルーフレール30と、2階客室14に設けられたサイドウィンドガラス22と、サイドウィンドガラス22を囲むウィンドフレーム26(上辺部分のみを示す。)と、ドリップモール28などからなる窓部の上部構造が記載されている。
【0020】
ルーフレール30は、車両10のルーフ16の左右両側に、それぞれ図1に示すように車両10の前後方向に沿って設けられている。ルーフレール30は、図2に示すように、上部壁40と、上部壁40の下方に設けられた下部壁42と、上部壁40と下部壁42とを連結する外側壁44などから形成されている。図2は、車両10のルーフ16を一部横断面した図である。上部壁40と下部壁42は、互いにほぼ平行水平に設けられている。外側壁44は、上部外壁46と下部外壁48に上下に区分され、更に上部外壁46は、下部外壁48より車両外側に位置し、かつ上部外壁46と下部外壁48の間は、傾斜壁50で連結された構造となっている。
【0021】
また上部外壁46には、図3、図5にも示すように取付ピン52が、上部外壁46(ルーフ16でもある。)に沿って所定の間隔で取り付けられている。取付ピン52は、扁平な頭部53を有し、頭部53を外方にして、溶接などにより防水性を考慮した上で、上部外壁46に取り付けられている。
【0022】
保持片60は、断面コの字状で、緩衝材としてのパッキン62を介してサイドウィンドガラス22の周囲に組み付けられている。また、保持片60とサイドウィンドガラス22の車両外側の境界にはシール部材64が接着されている。
【0023】
更に上辺の保持片60には、図4に示すように取付部66が設けられている。取付部66は、車両外側に向けて開口した断面コの字状で、アルミニウム、あるいはその合金等などの押し出し成形により、保持片60(上部の保持片60)と一体に形成されている。
【0024】
取付部66の車両内側の縦片(内壁)68には、ボルト孔70が形成されている。ボルト孔70は、ボルト72(図2、3参照。)を通すに十分な径を有し、縦片68に沿って適度な間隔で形成されている。ボルト72により図2、図3に示すように、取付部66がルーフレール30の下部外壁48にパッキン63を介して固定されている。
【0025】
また、傾斜壁50と取付部66の上壁69との間には、充填材96が塗布されている。充填材96は、上壁69の車両外方の端縁と上部外壁46の下端とを円弧状に結ぶ線まで充填されている。また取付部66の開口部には、樹脂製の蓋材98が防水と見栄え向上のため嵌められている。
【0026】
ドリップモール28は、図3に示すように取付片80と取付片80に連続して形成された排水部82からなり、断面がほぼJ字状に形成されている。取付片80は、平板状で、上部外壁46の表面に沿った形状に形成されている。取付片80には、図5に示すように取付孔84が複数形成されている。取付孔84は、少なくとも取付ピン52の頭部53が通過するに十分な直径を有し、取付片80の長手方向に沿って取付ピン52と等しい間隔で形成されている。
【0027】
排水部82は、取付片80から斜め下方に設けてあり、排水部82の車両内側の縦壁86は、斜め外方(車体に対して。)に延び、縦壁86の下端に底壁88が設けられている。底壁88は、ほぼ水平に設けられ、底壁88の車両外側の端部には、外縦壁90が立ち上げられている。
【0028】
ドリップモール28とルーフレール30の間には、パッキン材94が挟みこまれる。パッキン材94は、適度な弾性を有する部材からなり、パッキン材94に沿って取付け孔95が、頭部53が通過するに十分な直径で、取付ピン52と等しい間隔で形成されている。
【0029】
取付ピン52には、図5に示すように頭部53に嵌合するクリップ92が組み付けられる。クリップ92は、例えばばね材から形成され、下方に開いた切り込み93が中央下部に形成されている。パッキン材94を挟んで取付孔84を取付ピン52の頭部53に通した後、上方からクリップ92を取付ピン52に組み付けると、適度な弾性力でドリップモール28が図2に示すようにルーフレール30に固定される。
【0030】
図6にドリップモール28の車両先方部分を示す。ドリップモール28は、車両10の先方側で、連結具112を介してドリップモール110に連結されている。ドリップモール110は、従来例として図7に示したドリップモール104と同様にウィンドフレームと一体の構造を有し、図1に示すようにドリップモール28から直ちに下方に屈曲し、下端が開放している。連結具112は、内部に段部114を有し、ドリップモール28の流路とドリップモール110の流路とを連続させている。
【0031】
次に、上記ウィンドフレーム26の上部構造の組み付け手順、効果等について説明する。
【0032】
ルーフレール30の下部外壁48にパッキン63を接着剤等にて固定する。ウィンドフレーム26にパッキン62を介してサイドウィンドガラス22を組み付ける。サイドウィンドガラス22が組み付けられたら、ウィンドフレーム26を、ルーフレール30に、ボルト孔70に通したボルト72で固定する。また、図示しないがウィンドフレーム26の他の三辺も、それぞれボルト等で車体に固定する。
【0033】
ウィンドフレーム26をルーフレール30(車両10)に固定したなら、充填材96を取付部66の上壁69と傾斜壁50の間に形成された楔状の空間内に充填する。充填材96は、例えば注出量が一定の塗布用器具を用いて行う。
【0034】
充填材96を充填したなら次に、パッキン材94を間に挟んで、ドリップモール28を取付ピン52に取り付ける。ドリップモール28は、取付ピン52にパッキン材94を取り付けた後、取付孔84を取付ピン52の頭部53に嵌め、上方からクリップ92を取付ピン52に組み付けて行う。
【0035】
このように構成されたウィンドフレーム26では、充填材96を十分に、かつ容易に所定箇所に塗布でき、ウィンドフレーム26の上部を充填材96で確実に防水できる。またドリップモール28が充填材96の外方に位置するので、充填材96を覆い、直射日光を遮るため、充填材96の紫外線等による劣化を防止できる。クリップ92によりドリップモール28を固定するので、ドリップモール28をルーフレール30に簡易に取り付けることができる。
【0036】
ドリップモール28により、車両10の天井部分から落下する雨水などを、ドリップモール110を介して車両10の前方から車外に円滑に排水できる。また仮に充填材96の塗布量が部分的に多くなった箇所があっても、排水部82内には影響を及ぼさないので、雨水を円滑に通水し、水の溜まりなどをドリップモール28内に生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかるウィンドフレーム構造の一実施形態を備えた車両を示す側面図である。
【図2】図1に示したウィンドフレーム構造を示す断面図である。
【図3】図1に示したウィンドフレーム構造を示す分解断面図である。
【図4】ウィンドフレームを示す断面図である。
【図5】ドリップモールの取付手順の一例を示す斜視図である。
【図6】ドリップモール連結部分を示す側面図である。
【図7】従来のウィンドフレームを示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10…車両
12…1階客室
14…2階客室
16…ルーフ
18…左側壁
22…サイドウィンドガラス
26…ウィンドフレーム
28…ドリップモール
30…ルーフレール
46…上部外壁
48…下部外壁
52…取付ピン
60…保持片
66…取付部
82…排水部
92…クリップ
94…パッキン材
96…充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井部左右両側に、該車両の前後方向に沿って設けられたルーフレールと、
前記車両の左右側壁に設けられたサイドウィンドガラスと、
前記サイドウィンドガラスの周縁を囲み、上縁が前記ルーフレールに固定されるウィンドフレームと、
前記ウィンドフレームの上方に設けられ、車両上方からの水を前記車両の前方あるいは後方に流すドリップモールと、を備えたウィンドフレーム構造において、
前記ルーフレールは、前記車両の外方側に、上部外壁と該上部外壁より車両内方側に設けられた下部外壁とを有し、
前記ウィンドフレームは、上部に、断面コの字状でその開口部を車両外方側に設けた取付部を具え、
前記取付部の車両内側に位置する内壁を、前記下部外壁に固定させ、
前記ルーフレールと前記取付部の上壁との間に充填材を塗布し、
更に前記ドリップモールを、前記上部外壁の外表面に取り付けたことを特徴とするウィンドフレームの上部構造。
【請求項2】
前記ドリップモールは、排水部が前記上部外壁の外方に位置し、前記充填材の外方を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のウィンドフレームの上部構造。
【請求項3】
前記車両は、下部に1階客室、上部に2階客室を備えた2階建てバスであり、前記ウィンドフレームは、前記2階客室の側壁に設けられたウィンドフレームであることを特徴とする請求項1又は2に記載のウィンドフレームの上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255694(P2009−255694A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106107(P2008−106107)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【出願人】(595158980)三菱ふそうバス製造株式会社 (8)
【Fターム(参考)】