説明

ウイルスおよびカンプトテシン類を使用する癌の処置

【課題】ウイルスおよびカンプトテシン類を使用する癌の処置の提供。
【解決手段】新生物を有する哺乳類被験体は、ウイルスおよびカンプトテシン化合物(例えば、イリノテカンまたはトポテカン)で処置される。このウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫ウイルスからなる群より選択される。この処置はまた、上皮増殖因子レセプターに対するモノクローナル抗体(例えば、セツキシマブ)の投与の工程を包含し得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
腫瘍崩解性ウイルスと他の化学療法剤との共投与は、特許文献1(35〜36ページ)に開示される。抗癌ウイルス治療の最近の概説については、Kirn D(非特許文献1)およびBell JCら(非特許文献2)を参照されたい。そのようなウイルス治療を使用する効力の改善は、この分野にとって重要であり、是認されつつあり、このアプローチの使用が広まってきている。具体的には、ウイルスと共に用いた場合に相加的効力以上の効力を示す薬物が、最も有益である。
【0002】
カンプトテシン類の抗癌剤としての使用は、非特許文献3および非特許文献4において概説される。カンプトテシン類は、I型トポイソメラーゼへの結合および阻害に基づく抗腫瘍活性を有する。I型トポイソメラーゼは、DNA複製の間のねじれからの応力を減少させ、DNA複製において重要な役割を果たす核内酵素である。トポテカンおよびイリノテカンは、米国食品医薬品局(FDA)によって臨床での使用について承認されてきた2種のカンプトテシン類である。他のカンプトテシンは、癌治療薬として開発中である(非特許文献5;ならびに非特許文献3)。
【0003】
多数の抗癌剤(イリノテカンおよびトポテカンを含む)のうちのいずれかと組合せて特定の変異体ヘルペスウイルスを使用する癌の処置は、特許文献2(Fongら)の段落7および段落40に開示される。抗腫瘍性薬剤(イリノテカンまたはトポテカンを含む)と組み合わせて標的細胞特異的アデノウイルスベクターを使用して新形成を処置する方法は、特許文献3(Yuら)の13ページにおいて開示される。非特許文献6;および非特許文献7もまた参照されたい。イリノテカンとセツキシマブとの組合せの使用は、2004年2月に米国FDAによって結腸直腸癌を処置するために承認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/62735号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0071832号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0068307号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kirn D.「Virotherapy for cancer:current status,hurdles and future directions」、Cancer Gene Ther、2002年、第9巻、p.959−960
【非特許文献2】Bell JCら、「Oncolytic viruses:programmable tumor hunters」、Cur Gene Ther、2002年、第2巻、p.243−254
【非特許文献3】Garcia−Carboneroら、Clin.Cancer Res.、2002年3月、第8巻、p.641−661
【非特許文献4】Pizzolato JFおよびSaltz LB、「The camptothecins」、Lancet、2003年、第361巻、p.2235−42
【非特許文献5】UlukanおよびSwaan、「Camptothecins:a review of their chemotherapeutic potential」、Drugs、2002年、第62巻、p.2039−57
【非特許文献6】Nemunaitisら、Cancer Gene Ther.、2003年、第10巻、第5号、p.341−352
【非特許文献7】Meckら、Cancer Res.、2001年、第61巻、第13号、p.5083−5089
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、新生物を有する哺乳類被験体を処置するための方法を提供し、この方法は、この被験体に、ウイルスとカンプトテシン化合物とを、この被験体を処置するために有効な組合せ量で投与する工程を包含し、ここで、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫ウイルスからなる群より選択される。本発明の一実施形態において、この処置は、この被験体に、上皮増殖因子レセプターに対するモノクローナル抗体を、上記のウイルスとカンプトテシンとの組合せでの、この被験体を処置するのに有効な量で投与する工程を、さらに包含する。
【0007】
本発明は、言及される他の成分との組合せでの、新生物を有する被験体を処置するための医薬の製造における、ウイルスおよび/またはカンプトテシン化合物の使用を提供し;ここで、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫ウイルスからなる群より選択される。本発明はまた、上述のようなウイルスとカンプトテシン化合物とを組合せた、新生物を有する被験体を処置するための医薬の製造における、上皮増殖因子レセプターに対するモノクローナル抗体の使用を提供する。
【0008】
本発明は、組み合わせた抗癌ウイルスとカンプトテシン類とは、新生物細胞に対して有効であるという知見に基づく。例示すると、ニューカッスル病ウイルスの亜病原性株と、カンプトテシン化合物であるイリノテカンとは、実施例において示されるように、相加的レベルより強いインビボ抗腫瘍活性を実証した。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
新生物を有する哺乳動物被験体を処置する方法であって、該方法は、該被験体に、ウイルスとカンプトテシン化合物とを、該被験体を処置するのに有効な組合せ量で投与する工程を包含し;
ここで、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫ウイルスからなる群より選択される、方法。
(項目2)
前記被験体に、上皮増殖因子レセプターに対するモノクローナル抗体を、該被験体を処置するのに有効な量で、前記ウイルスと前記カンプトテシン化合物との組合せで投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
新生物を有する被験体を処置するための医薬の製造における、カンプトテシン化合物と組合せでの、ウイルスの使用であって;
ここで、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫ウイルスからなる群より選択される、ウイルスの使用。
(項目4)
新生物を有する被験体を処置するための医薬の製造における、ウイルスと組み合わせでの、カンプトテシン化合物の使用であって;
ここで、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫ウイルスからなる群より選択される、カンプトテシン化合物の使用。
(項目5)
新生物を有する被験体を処置するための医薬の製造における、カンプトテシン化合物およびウイルスと組み合わせての、上皮増殖因子レセプターに対するモノクローナル抗体の使用であって;
ここで、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫ウイルスからなる群より選択される、モノクローナル抗体の使用。
(項目6)
前記ウイルスは複製適合である、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目7)
前記ウイルスはニューカッスル病ウイルスである、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目8)
前記ウイルスはニューカッスル病ウイルスの亜病原性株である、項目7に記載の方法または使用。
(項目9)
前記ウイルスは、ポリオウイルス、ECHOウイルス、およびコクサッキーウイルスからなる群より選択されるピコルナウイルスである、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目10)
前記ウイルスは、A21型、A13型、A15型、およびA18型から選択されるコクサッキーウイルスである、項目9に記載の方法または使用。
(項目11)
前記ウイルスがECHOウイルス1型である、項目9に記載の方法または使用。
(項目12)
前記ウイルスが静脈内投与される、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目13)
前記カンプトテシン化合物は、イリノテカン、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、エキサテカン、カレニテシン、ルビテカン、ルトテカン、およびホモカンプトテシンからなる群より選択される、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目14)
前記カンプトテシン化合物は、イリノテカンである、項目13に記載の方法または使用。
(項目15)
前記カンプトテシン化合物および前記ウイルスが、前記被験体に、単一の24時間の期間内に投与される、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目16)
前記カンプトテシン化合物が、前記ウイルスの投与の24時間前〜1ヶ月前に投与される、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目17)
前記カンプトテシン化合物が、前記ウイルスの投与の24時間前〜1週間前に投与される、項目16に記載の方法または使用。
(項目18)
前記カンプトテシン化合物が、前記被験体に、前記ウイルスの投与の24時間後〜1ヶ月後に投与される、項目1〜項目5のいずれか一項に記載の方法または使用。
(項目19)
前記カンプトテシン化合物が、前記被験体に、前記ウイルスの投与の24時間後〜1週間後に投与される、項目18に記載の方法または使用。
(項目20)
前記モノクローナル抗体は、セツキシマブである、項目2または項目5に記載の方法または使用。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本明細書において使用される場合、移行部の用語「含む(comprising)」は、非限定的である。この用語を利用する請求項は、そのような請求項において列挙される要素に加えて、さらに要素を含み得る。従って、例えば、その請求項は、列挙される要素またはそれらの同等物が存在する限りは、その特許請求の範囲において具体的に列挙されない他の治療剤または治療ウイルスをも含む処置レジメンについて読み取り得る。
【0010】
本明細書において使用される場合、「NDV」とは、ニューカッスル病ウイルスについての略語である。本明細書において使用される場合、「DLT」とは、用量を制限する毒性のついての略語である。本明細書において使用される場合、用語「プラーク形成ユニット」(PFU)とは、一個の感染性ウイルス粒子を意味する。本明細書において使用される場合、「BPFU」とは、10億個のPFUを意味する。本明細書において使用される場合、「PP」とは、プラーク精製されることを意味する。従って、例えば、PPMK107とは、プラーク精製されたニューカッスル病ウイルス株MK107を意味する。本明細書において使用される場合、「PFU/m」とは、投薬量を表す標準的な単位であって、患者の表面積1メートル四方あたりのPFUを意味する。本明細書において使用される場合、用語「複製適合(replication−competent)」ウイルスとは、癌細胞において感染性の子孫を産生するウイルスを指す。
【0011】
本発明の一実施形態において、ウイルスは、複製適合である。
【0012】
本発明に従うと、ウイルスがニューカッスル病ウイルスである場合、このウイルスは、低(レント原性)ビルレンス、中(亜病原性)ビルレンス、または高(速現性)ビルレンスであり得る。ビルレンスのレベルは、卵の平均致死時間(MDT)試験に従って決定される(Alexander、Laboratory Manual for the Isolation and Identification of Avian Pathogens、第3版、Purchaseら編(Kendall/Hunt,Iowa)の「第27章:Newcastle Disease」、ページ117)。ウイルスは、MDT試験によって、レント原性(MDT>90時間);亜病原性(MDTが60時間〜90時間);および速現性(MDT<60時間)として分類される。亜病原性NDVが、現行では好ましい。
【0013】
本発明に従うと、被験体にウイルスを投与するための任意の従来の経路または技術が利用され得る。投与経路の例については、WO 00/62735を参照されたい。本発明の一実施形態において、ウイルスは、全身性に(例えば、静脈内で)投与される。本発明に従う治療ウイルスの静脈内投与のためには、好ましくは、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルスの亜病原性株である。本発明の好ましい実施形態において、1用量あたり12×10〜120×10PFU/m、より好ましくは、1用量あたり12×10〜48×10PFU/mのニューカッスル病ウイルスの亜病原性株が、ヒト被験体に対して静脈内投与される。本明細書において使用される場合、「mg/m」とは、患者の表面積1平方メートルあたりのミリグラム数を意味する。
【0014】
本発明の実施形態において、上記のピコルナウイルスは、ポリオウイルス、ECHOウイルス、またはコクサッキーウイルスである。本発明に関して適切なコクサッキーウイルスの例としては、以下の型が挙げられる:A21、A13、A15、およびA18。適切なECHOウイルスとして、1型ECHOウイルスが挙げられる。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「カンプトテシン化合物」とは、カンプトテシン類、カンプトテシンアナログ、カンプトテシン誘導体、またはカンプトテシン結合体と見なされる化合物のクラスを意味する。これらの化合物は、カンプトテシンの特徴的な五環の骨格に基づく。
【0016】
【化1】

本発明に従うと、任意のカンプトテシン化合物が、利用され得る。カンプトテシン化合物の例として、以下が挙げられる:イリノテカン(CAMPTOSAR;7−エチル−10−[4−(1−ピペリジノ)−1−ピペリジノ]−カルボニルオキシカンプトテシン)、トポテカン(HYCAMPTIN;(S)−9−N,N−ジメチルアミノエチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)、9−アミノカンプトテシン(9−アミノ−20(S)−カンプトテシン)、9−ニトロカンプトテシン(ルビテカン(rubitecan)とも称される)、ルトテカン(lurtotecan)(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン)、エキサテカン(exatecan)、カレニテシン(karenitecin)、およびホモカンプトテシン。数種のカンプトテシン化合物の構造および臨床学的情報は、Gracia−Carboneroら、Clin.Cancer Res.(2002年3月)8:641−661において見出され得る。カンプトテシン化合物の例はまた、以下において見出され得る:米国特許第4,604,463号、同第6,403,569号、および同第5,004,758号、ならびにWO 2004/012661、WO 2003/101998、WO 2003/101996、WO 2003/101406、WO 2003/093274、WO 2003/086471、WO 01/76597、WO 01/64194、WO 00/70275、WO 00/53607、WO 99/17805、WO 99/17804、WO 99/05103、WO 98/35969、WO 97/28164、WO 97/25332、WO 97/16454。これらの全ての内容は、本明細書において参考として援用される。
【0017】
本発明の併用治療に従うと、上記カンプトテシン化合物は、上記ウイルスの投与の一ヶ月前から、このウイルスの投与の一ヵ月後まで投与され得る。より具体的な実施例において、上記カンプトテシン化合物とウイルスとは、被験体に、単一の24時間の期間内に投与されるか;または、上記カンプトテシン化合物が、上記ウイルスの投与の24時間前〜1ヶ月前、好ましくは24時間前〜1週間前に投与されるか;または上記カンプトテシン化合物は、被験体に、上記ウイルスの投与の24時間後〜1ヶ月後、好ましくは24時間後〜1週間後に投与される。カンプトテシンおよび抗癌ウイルスのための服用および投与の技術およびスケジュールは、当該分野において公知である(例えば、Garcia−Carboneroら;WO 00/62735;WO 2004/000209;およびPecoraら、J.Clin.Oncol.(2002)20(9):2251−2266を参照のこと)、そして、特定の患者についてのそれらの最適化は、熟練した臨床医の能力の範囲内である。イリノテカンは、通常、ヒト患者に対して、62.5mg/m〜125mg/mの投薬量で週4回、もしくは、より好ましくは、80mg/m〜125mg/mで週4回;または、300mg/m〜350mg/mで3週間毎に1回、もしくはより好ましくは300mg/m〜350mg/mで3週間に1回、投与される。
【0018】
本発明に従うと、上皮増殖因子レセプターに対する任意の抗体が利用され得る。キメラのモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体が好ましい。適切な抗EGF抗体の例としては、以下が挙げられる:セツキシマブ(商品名:ERBITUX)、ABX−EGF、MDX−447、h−R3、およびEMD−7200(Mendelsohn JおよびBaselga J、「Status of epidermal growth factor receptor antagonists in the biology and treatment of cancer」、2004年、J.Clin Oncol 21:2787−2799を参照のこと)。セツキシマブは、好ましくは、ヒト患者に対して静脈内投与され、通常は、最初の200mg/m〜400mg/mの静脈内注入と、続いて、その約1週間後毎の125mg/m〜250mg/mの続きの注入とで、投与される。
【0019】
本発明に従って処置される被験体は、ヒト被験体または非ヒト哺乳動物被験体のいずれかであり得る。本発明に従うと、任意の新生物が処置され得、任意の新生物として、以下が挙げられるが、それらに限定されない:直腸癌、骨盤の癌、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、神経膠芽腫、腎臓癌、膵臓癌、頭頸部癌、子宮内膜癌、神経芽腫、カルチノイド、黒色腫、卵巣癌、肉腫、胃食道移行部の癌、胃癌、食道癌、肝臓癌、および子宮頸癌。
【0020】
上記の処置をモニタリングする工程は、本発明の本質的な局面ではないが、上記の処置の治療効果を測定するための技術が存在する。これらの技術として、上記のウイルスの投与後の腫瘍の大きさの測定が挙げられ、腫瘍の大きさの減少が、正の結果である。
【0021】
本発明は、以下の実施例への参照によってよりよく理解される。以下の実施例は、本明細書において記載される本発明を例示するが、限定しない。以下の実施例1〜実施例6において、NDVは、3回プラーク精製されたMK107であって、ニューカッスル病ウイルスの弱毒化された(亜病原性の)バージョンであって、2000年10月26日に公開された国際特許出願公開WO 00/62735(ProVirus,Inc.)において、より完全に記載される。WO 00/62735の全ての内容は、本明細書において参考として援用される。
【実施例】
【0022】
(実施例1.イリノテカンと組み合わせたNDV)
無胸腺症のマウスに、1千万個のヒトHT1080線維肉腫細胞を皮下注射した。5日後、皮下腫瘍が約100mmの大きさであった場合、数群の動物に、イリノテカン(25mg/kg)またはビヒクルを腹腔内に処置した。2日後、動物に、NDV(6×10プラーク形成ユニット、PFU)またはビヒクルのいずれかを静脈内に処置した。完全な腫瘍退行(CR、100%腫瘍減少)の出現率は、イリノテカンおよびNDVの両方を与えられた群(60%)において、イリノテカン単独を与えられた群(30%)またはNDV単独を与えられた群(0%)のいずれにおいてよりもずっと高かった;表1を参照のこと。
【0023】
表1.腫瘍を有するマウスに、NDVでの処置の2日前にイリノテカンを処置することによって、いずれかの薬剤単独より高い完全腫瘍応答を得る。
【0024】
【表1】

(実施例2.イリノテカンと組み合わせたNDV)
無胸腺症のマウスに、1千万個のヒトHT1080線維肉腫細胞を皮下注射した。7日後、皮下腫瘍が約125mmの大きさであった場合、数群の動物に、イリノテカン(25mg/kg)またはビヒクルを腹腔内に処置し、次いで、約1時間後に、これらの動物に、NDV(6×10プラーク形成ユニット、PFU)またはビヒクルのいずれかを静脈内に処置した。完全な腫瘍退行(CR、100%腫瘍減少)の出現率は、イリノテカンおよびNDVの両方を与えられた群(90%)において、イリノテカン単独を与えられた群(50%)またはNDV単独を与えられた群(0%)のいずれにおいてよりもずっと高かった;表2を参照のこと。
【0025】
表2.腫瘍を有するマウスに、NDVでの処置と同じ日にイリノテカンを処置することによって、いずれかの薬剤単独より高い完全腫瘍応答を得る。
【0026】
【表2】

(実施例3.イリノテカンと組み合わせたNDV)
無胸腺症のマウスに、1千万個のヒトHT1080線維肉腫細胞を皮下注射した。7日後、皮下腫瘍が約387mmの大きさであった場合、数群の動物に、NDV(6×10プラーク形成ユニット、PFU)またはビヒクルのいずれかを静脈内に処置した。2日後、これらのマウスに、次いで、イリノテカン(25mg/kg)またはビヒクルを腹腔
内に処置した。完全な腫瘍退行(CR、100%腫瘍減少)の出現率は、イリノテカンおよびNDVの両方を与えられた群(70%)において、イリノテカン単独を与えられた群(10%)またはNDV単独を与えられた群(0%)のいずれにおいてよりもずっと高かった;表3を参照のこと。
【0027】
表3.腫瘍を有するマウスに、NDVでの処置の2日後にイリノテカンを処置することによって、いずれかの薬剤単独より高い完全腫瘍応答を得る。
【0028】
【表3】

(実施例4.イリノテカンの毎週の服用と組み合わせたNDV)
癌患者に、NDVを処置し、続けてイリノテカンを処置する。6週サイクルのうちの各々の3週の部分において、NDV処置は、週3回2週間にわたり与える6回の合計静脈内処置と、その後の1週間の休止期間からなる(以下の表4を参照のこと)。各々のサイクルの1回目の用量は、120億PFU/m〜240億PFU/m(コース1については3時間かけて投与し、全ての他のコースについては1時間かけて投与する)と、その後の約240億PFU/m〜480億PFU/mの追加用量(各々の用量を、1時間かけて投与する)からなる。イリノテカンを、サイクル1の第3週または第4週の間に始めて、連続する4週間にわたって週一回ベースで与え、その後イリノテカン治療無しの2週間を設ける(例として、以下の表4を参照のこと)。NDVおよびイリノテカンの両方の追加の6週コース(これもまた、サイクルと称される)を、これらの患者に与える。
【0029】
表4.週1回×4で与えられるイリノテカン(80mg/m〜125mg/m)を使用するNDVの処置の組合せ。処置のサイクルを、6週間毎に繰り返す。
【0030】
【表4】

(実施例5.3週毎に1回与えられるイリノテカンと組み合わせたNDV)
癌患者に、NDVを処置し、続けてイリノテカンを処置する。NDV処置は、週3回2週間にわたって与える6回の合計静脈内処置と、その後の1週間の休止期間からなる(以下の表5を参照のこと)。6回のうちの1回目の用量は、120億PFU/m〜240億PFU/m(コース1については3時間かけて投与し、全ての他のコースについては1時間かけて投与する)と、その後の約240億PFU/m〜480億PFU/mの追加用量(各々の用量を、1時間かけて投与する)からなる。第3週の間に患者にイリノテカン治療を始めさせ、3週間毎に1用量を与えた(以下の表5を参照のこと)。NDVおよびイリノテカンの両方の追加の3週コースを、これらの患者に与える。
【0031】
表5.3週間毎に1回与えられるイリノテカンを使用するNDVの処置の組合せ。処置のサイクルを、3週間毎に繰り返す。
【0032】
【表5】

(実施例6.イリノテカンおよびセツキシマブと組み合わせたNDV)
癌患者に、セツキシマブ[ERBITUX、上皮増殖因子レセプター(EGFR)に対するモノクローナル抗体(mAb)]での処置をさらに与えることを除いては、実施例4および実施例5のように、NDVおよびイリノテカンの両方を処置する。セツキシマブの服用を、第3週または第4週に開始する。セツキシマブの用量は、1回目の静脈内(IV)注入については200mg/m〜400mg/m[120分間のIV注入として(5mL/分の最大注入速度で)投与する]であり、次いで、125mg/m〜250mg/m[60分間かけてIVで注入する]が、その後毎週投与される。数個体の患者にはまた、20mgのセツキシマブの開始試験用量を与える。ジフェンヒドラミン(diphendydramine)(50mg IV)を、セツキシマブに起因する注入反応の緩和を助けるために、共通して与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2013−47276(P2013−47276A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−262340(P2012−262340)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2007−510862(P2007−510862)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(504397480)ウェルスタット バイオロジクス コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】