説明

ウイルスインテグラーゼ阻害剤および使用方法

HIVインテグラーゼ活性を阻害するための組成物および方法が本明細書中で開示される。HIVを治療または予防することに使用するための、HIVインテグラーゼを阻害する薬剤を同定する方法も記載される。インテグラーゼ阻害剤に耐性であるHIVウイルスミュータントを阻害する薬剤を同定する方法も開示される。本発明の目的によって、本明細書中で具体化および広く記載されるように、本発明は、HIVインテグラーゼ活性を阻害する組成物および方法に関連する。HIVの治療または予防において使用するためのHIVインテグラーゼを阻害する薬剤を同定する方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
公開された統計によれば、世界中で4000万人以上の人々がヒト免疫不全ウイルス(HIV)/後天性免疫不全症候群(AIDS)に感染していると推定され、そして約2200万人の人々がAIDSによって死亡した(CDC、2000国際統計)。この流行と戦うために、徹底的な研究が、このウイルスの分子メカニズムを阻害すること、またはそれに関連する症状を治療することに集中した。
【0002】
AZTはこの病気のために最初に処方された先駆的な薬剤であったが、プロテアーゼ阻害剤、さらなるヌクレオシドアナログ転写酵素阻害剤、または非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のような多くの薬剤が、近年利用可能になった。その改善された有効性のために、これらの薬剤はHIVおよびAIDSの治療において大きく進歩した。これらの薬剤がウイルス感染のコントロールにおいて見込みを示したとしても、感染細胞のリザーバーはそのままであり、そしておそらく耐性変異体を生じる。例えば、これらの薬剤の多くは、血液/脳関門を効率的に通過せず、それは脳の以下の細胞における抑制されない複製および伝染を可能にする:毛細血管内皮細胞、星状細胞、マクロファージ(ミクログリア)、オリゴデンドロサイト、脈絡叢、神経節細胞、神経芽細胞腫細胞、グリオーマ細胞、およびニューロン。CNS感染の結果は、痴呆、認知障害、大うつ病、精神病、および多発ニューロパチーのような、神経学的および精神医学的合併症を含む。
【0003】
上記で述べた薬剤に加えて、多くの研究が、HIV DNAのゲノムへの組込みを促進する酵素である、HIVインテグラーゼ(IN)の阻害に集中した。しかし、インビトロにおける反応は、可溶性の系ではなく凝集した系で起こるので、INは研究するために問題があることが判明した。細胞において、INは、(1)2つのヌクレオチドがウイルスDNAの3’末端から切断されるHIV DNAの3’末端プロセシング工程、および(2)ウイルスDNAの3’末端が標的DNAへライゲーションされる鎖転移反応を行うという学説が立てられる。適切に機能するために、INは、ウイルスDNA、宿主DNA、およびさらなるウイルスタンパク質因子および宿主タンパク質因子と集合して複合体を構築しなければならないと考えられる。現在までに、INの多くの鎖転移阻害剤が見出され、それはラルテグラビル(IsentressまたはMK0518としても公知である)、S−1360、L−870、810、およびGS−9137のようなジケトアナログ、およびナフチリジン(naphthyridione)GSK36473(非特許文献1)を含む。しかし、INの変異のために、HIVはこれらの薬剤に対して耐性になり、従って高い失敗率および無効な治療を生じ得る。
【0004】
HIVおよびAIDSを治療するための薬剤が同定されたが、HIVインテグラーゼを阻害する新規薬剤、およびINと相互作用し、そしてその活性を阻害または抑制するペプチドまたは小分子のスクリーニングを迅速に可能にする、薬剤スクリーニング方法の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Philippe Cotelle、Recent Patents on Anti−Infective Drug Discovery、1:1−15(2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的によって、本明細書中で具体化および広く記載されるように、本発明は、HIVインテグラーゼ活性を阻害する組成物および方法に関連する。HIVの治療または予防において使用するためのHIVインテグラーゼを阻害する薬剤を同定する方法も記載される。開示される組成物(複数可)および方法(複数可)のさらなる利点が、部分的には以下の記載において述べられ、そして部分的にはその記載から理解される、または開示された組成物(複数可)および方法(複数可)の実施によって学習され得る。開示された組成物(複数可)および方法(複数可)の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された要素および組み合わせによって理解および達成される。前述の一般的な記載および以下の詳細な記載はどちらも単に例示的および説明的なものであり、そして請求された本発明を制限するものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に組み込まれ、そしてその一部を構成する付随する図面は、開示された方法および組成物のいくつかの実施態様を図示し、そしてその記載と共に、開示された方法および組成物の原理を説明するために役立つ。
【図1】図1は、酵母ツーハイブリッドスクリーニングを示し、ここで−adeプレートにおける増殖が選択レポーターの活性化を示す。
【図2】図2は、環状標的DNAのハーフサイトおよび協奏的組込み両方のモデルを示す。
【図3】図3は、除タンパク無しの協奏的DNA組込みに関するアッセイを示す。
【図4】図4は、除タンパク有りの協奏的DNA組込みに関するアッセイを示す。
【図5】図5は、本明細書中で記載されたペプチドが、DNAの追加前にINを阻害することを示す。
【図6】図6は、本明細書中で記載されたペプチドが、N末端を欠くINに結合し得、そしてまたC末端を欠くINにも結合し得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示された方法および組成物を、そこに含まれる特定の実施態様および実施例の以下の詳細な記載、および図面および先のおよび以下の記載を参照することによって、より容易に理解し得る。
【0009】
本化合物、組成物、および/または方法を開示および説明する前に、下記で説明する局面は、そのようなものはもちろん変動し得るので、特定の化合物、合成方法、または使用に制限されないことが理解される。本明細書中で使用される用語は、特定の局面を説明する目的のためだけであり、そして制限することを意図しないことも理解される。
【0010】
開示された組成物(複数可)および方法(複数可)のために使用し得る、それと組み合わせて使用し得る、その調製において使用し得る、またはその産物である材料、組成物、および構成要素が開示される。これらおよび他の材料が本明細書中で開示され、そしてこれらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合、それぞれの様々な個々およびこれらの化合物の集合的な組み合わせおよび順列の特定の言及が明確に開示されないかもしれないが、それぞれが本明細書中で明確に企図および説明されることが理解される。例えば、もしペプチドが開示および議論され、そしてそのペプチドを含む多くの分子になされ得る多くの改変が議論されるなら、それぞれのおよび全てのペプチドの組み合わせおよび順列および可能な改変が、明確に反対を示されなければ、明確に企図される。従って、もし分子A、B、およびCのクラスならびに分子D、E、およびFのクラスが開示され、そして組み合わせ分子の例A−Dが開示されるなら、それぞれは個々に列挙されないとしても、それぞれが個々におよび集合的に企図される。従って、この例において、組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、およびC−Fのそれぞれが、明確に企図され、そしてA、B、およびC;D、E、およびF;および上記例の組み合わせA−Dの開示から、開示されているとみなすべきである。同様に、これらのあらゆるサブセットまたは組み合わせも、明確に企図および開示される。従って、例えば、A−E、B−F、およびC−Eのサブグループが明確に企図され、そしてA、B、およびC;D、E、およびF;および上記例の組み合わせA−Dの開示から、開示されているとみなすべきである。このコンセプトは、開示された組成物の作製および使用方法の工程を含むがこれに限らない、この出願の全ての局面に適用される。従って、もし行い得る様々なさらなる工程があるなら、これらのさらなる工程のそれぞれを、開示された方法のあらゆる特定の実施態様または実施態様の組み合わせで行い得ること、およびそのような組み合わせはそれぞれ明確に企図され、そして開示されているとみなすべきであることが理解される。
【0011】
濃度、量、および他の数字データを、本明細書中で範囲の形式で表現または提示し得る。そのような範囲形式を、単に簡便さおよび簡潔さのために使用し、そして従ってその範囲の限界として明確に引用された数値だけでなく、それぞれの数値およびサブレンジが明確に引用されたかのように、その範囲内に含まれる全ての個々の数値またはサブレンジも含むよう、柔軟に解釈されるべきであることが理解される。説明として、「約1から5」の数の範囲は、約1から約5の明確に引用された値だけでなく、示された範囲内の個々の値およびサブレンジも含むと解釈されるべきである。従って、2、3、および4のような個々の値、および1〜3、2〜4、および3〜5等のようなサブレンジ、ならびに個々に1、2、3、4、および5がこの数字の範囲に含まれる。同じ原理が、最低または最高として1つの数値のみが引用される範囲に適用される。さらに、その範囲の幅、または記載される特徴に関わらず、そのような解釈が適用されるべきである。
【0012】
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書中で記載された組成物(複数可)および方法(複数可)の特定の実施態様の多くの同等物を認識する、または確認し得る。そのような同等物は、添付の特許請求の範囲によって含まれることが意図される。
【0013】
開示された組成物(複数可)および方法(複数可)は、これらは変動し得るので、記載された特定の方法、プロトコール、および試薬に制限されないことが理解される。本明細書中で使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的のためのみであり、そして添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0014】
本明細書中で使用される場合、複数の品目、構造的要素、組成物要素、および/または材料を、簡便さのために共通のリストに示し得る。しかし、これらのリストは、そのリストのメンバーそれぞれが、別の、および独特のメンバーとして個々に同定されるように解釈されるべきである。従って、そのようなリストのどの個々のメンバーも、反対であることを示さなければ、共通のグループにおけるそれらの呈示のみに基づいて、同じリストのあらゆる他のメンバーの事実上の同等物として解釈されるべきではない。
【0015】
他に定義されなければ、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、開示された方法および組成物が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で記載されたものと同様の、または同等のあらゆる方法および材料を、本方法および組成物の実施または試験に使用し得るが、特に有用な方法、デバイス、および材料は記載されたようなものである。本明細書中で引用された出版物およびそのためにそれらが引用された材料は、これによって明確に参考文献に組み込まれる。いかなる参考文献も先行技術を構成するということを認めない。参考文献の議論はその著者が主張することを述べ、そして出願人らは引用された文書の正確さおよび妥当性に異議を唱える権利を保持する。
【0016】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他を指示しなければ、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「ペプチド」への言及は、複数のそのようなペプチドを含み、「そのペプチド」への言及は、1つ以上のペプチドおよび当業者に公知のその同等物への言及である、等である。
【0017】
範囲は、本明細書中において、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表し得る。そのような範囲を表す場合、別の実施態様は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用によって、値を近似として表す場合、特定の値は別の実施態様を形成することが理解される。それぞれの範囲の終点は、他の終点との関連において、および他の終点と独立に、どちらにおいても重要であることがさらに理解される。本明細書中で開示される多くの値が存在すること、およびそれぞれの値はまた本明細書中において、その値自体に加えて、「約」その特定の値として開示されることも理解される。例えば、もし値「10」が開示されるなら、「約10」も開示される。当業者によって適切に理解されるように、その値「より低いまたは同等」の値が開示される場合、「その値より大きいまたは同等」ならびに値の間の潜在的な範囲も開示されることも理解される。例えば、もし値「10」が開示されるなら、「10より低いまたはそれと同等」および「10より大きいまたはそれと同等」も開示される。本出願を通じて、多くの異なる形式でデータが提供されること、およびこれらのデータは終点および開始点を示し、そしてそのデータポイントのあらゆる組み合わせの範囲であることも理解される。例えば、もし特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント「15」が開示されるなら、10および15より大きい、それより大きいまたは同等、それより低い、それより低いまたは同等、およびそれと同等、ならびに10および15の間とが開示されるとみなすことが理解される。2つの特定の単位の間のそれぞれの単位も開示されることも理解される。例えばもし10および15が開示されるなら、間の非整数の値を含む11、12、13、および14も開示される。
【0018】
この出願を通して、様々な出版物が参照される。これらの出版物のその全体としての開示は、これが属する技術の状態をより完全に記載するために、これによってこの出願の参考文献に組み込まれる。開示される参考文献はまた、その参考文献が信頼される文において議論される、それらに含まれる材料に関して、個々におよび明確に本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0019】
本明細書および続く特許請求の範囲において、多くの用語に言及し、それは以下の意味を有するように定義される。
【0020】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、続いて説明されるイベントまたは状況が起こり得るまたは起こらないかもしれないこと、およびその説明はそのイベントまたは状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「必要に応じて治療薬」という語句は、その治療薬を含み得るまたは含まないかもしれないことを意味する。
【0021】
本明細書の記載および請求を通して、「含む(comprise)」という用語および「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」のようなその用語のバリエーションは、「含むがそれに限らない」を意味し、そして例えば他の添加物、成分、整数または工程を除外することを意図しない。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「被験体」は、HIVのようなレトロウイルスを含むウイルスに感染するリスクのある、またはそれに感染した、そして本明細書中で記載された方法および組成物から利益を得る、ヒトを含む哺乳類を指す。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「ウイルスインテグラーゼ」は、HIVのようなレトロウイルスを含むウイルスによって産生される酵素を指し、それは感染細胞または組織のゲノムDNAを含む標的DNAへのウイルスDNAの組込みを可能にする、または促進する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「タンパク質ドメイン」は、構造的完全性を示す、タンパク質の部分、タンパク質の複数の部分、またはタンパク質全体を指す;この決定は、タンパク質の部分、タンパク質の複数の部分、またはタンパク質全体のアミノ酸組成に基づき得る。例えば、HIVインテグラーゼは、N末端部分、中央のコア、およびC末端部分を含む、3つのドメインに分け得る。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ペプチド」という用語は、1つのアミノ酸のカルボキシル基によって、別のもののアルファアミノ基に連結される、2つ以上のアミノ酸を含む、天然または合成分子を指して使用し得る。ペプチドは長さによって制限されない;従って「ペプチド」はポリペプチドおよびタンパク質を含み得る。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「核酸」という用語は、単一のヌクレオチドまたは1つのヌクレオチドの3’位置のリン酸基によって、別のヌクレオチドの5’末端に連結した、2つ以上のヌクレオチドを含む、天然または合成分子を指して使用し得る。核酸は長さによって制限されず、そして従って核酸はデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を含み得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「変異体」という用語は、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換(すなわち縮重変異体)、アミノ酸をコードする各コドン(すなわちDNAおよびRNA)のゆらぎ位置内の置換、ペプチドのC末端に追加されたアミノ酸、または本明細書中で記載されたような配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4と60%、70%、80%、90%、または95%の相同性を有するペプチドを有するアミノ酸またはペプチド配列を指す。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「小分子」という用語は、ウイルスインテグラーゼ活性を阻害または抑制する、小さい有機化合物、無機化合物、またはそのあらゆる組み合わせを指す;この用語は、モノマーまたは一次代謝物、二次代謝物、生物学的アミン、ステロイド、または合成または天然の非ペプチド生物学的分子(複数可)を含み得る。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「抑制する」は、例えばウイルスインテグラーゼに関連する酵素活性を、ポジティブコントロールと比較した場合に、その間の非整数値を含んで、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または99%低下させることを指す。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「阻害する」は、例えばウイルスインテグラーゼに関連する酵素活性を、ポジティブコントロールと比較した場合に、その間の非整数値を含んで、80%、85%、90%、95%、99%、または100%低下させることを指す。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「予防する」という用語は、その状態または疾患を完全に未然に防ぐことを必要としないが、その疾患または状態の発症または重症度の抑制も含み得る。従って、もし治療がその疾患の症状を有する被験体において疾患を治療し得るなら、まだその症状のいくつかまたは全てを経験していない被験体において、その疾患を予防もし得る。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「測定する」は、相対的または絶対的に関わらず、ウイルスDNAを標的DNAへ組込むことに関して、酵素活性(すなわちウイルスインテグラーゼまたは鎖転移複合体(STC)活性)の量または存在量を決定する過程を指す。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「置換する」は、例えばタンパク質ドメインおよびペプチド、タンパク質ドメインおよび化学物質、タンパク質ドメインおよび核酸配列の間の分子的または化学的相互作用を、置換されるペプチド、化学物質、または核酸よりもその特定のタンパク質ドメインに対して親和性を有する化学物質、ペプチド、または核酸(nucleic)によって妨げることを指す。
【0034】
A.組成物
1.ペプチド
HIVインテグラーゼ(IN)に結合および阻害する精製ペプチドが本明細書中で開示される。いくつかの局面において、そのペプチドは、アミノ酸配列、配列番号1(LeuTyrGluThrIleLeuIleLeuLeuPheLeuAspValAspThrGly)、配列番号2(LeuTyrGluThrIleLeuIleLeuLeuPheLeuAspValAspThrGlyLysLysArg)、または配列番号3(LeuTyrGluThrIleLeuIleLeuLeuPheLeuAspValAspThrGly AspGluAsp)を含む。いくつかの局面において、そのペプチドは、アミノ酸配列、配列番号4(LeuTyrGluThrIleLeuIleLeuLeuPheLeuAspValAspThrGly XaaXaaXaa)を含む、ここでXaaはあらゆるアミノ酸である。いくつかの局面において、Xaaは疎水性、親水性アミノ酸である。
【0035】
いくつかの局面において、そのペプチドは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3と少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同的であるアミノ酸配列を含む。従って、いくつかの局面において、そのペプチドはアミノ酸配列、配列番号1、配列番号2、または配列番号3の保存的変異体を含む。例えば、その保存的変異体は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3の1つ以上のアミノ酸残基において保存的なアミノ酸置換を含み得る。従って、その保存的変異体は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸残基の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個において保存的なアミノ酸置換を含み得る。
【0036】
特定のアミノ酸配列に関して本明細書中で使用される場合、「保存的変異体」は、第1のアミノ酸が、第1のアミノ酸のものと同様の少なくとも1つの生化学的性質を有する、別のアミノ酸またはアミノ酸アナログで置換された配列である。それに加えて、保存的変異体および変異体を、この出願を通して同義的に使用し得る。さらに明確にするために、同様の性質は、例えば同様のサイズ、電荷、親水性、疎水性、または水素結合能力を含む。
【0037】
ペプチド配列を、溶解性の増強、効力、およびより長い化学的半減期のような、多くの理由のために改変し得る。例えば、配列番号2および配列番号3は、そのそれぞれのC末端においてそれぞれ塩基性および酸性の尾部を有し、それは各アミノ酸配列の最後の3つのアミノ酸を含む(それぞれLysLysArgおよびAspGluAsp)。これらの尾部は、溶解性を増すように機能する。この局面において、配列番号4によって反映されるように、アミノ酸の複数の組み合わせを使用して安定性または溶解性を増強し得る。例えば、疎水性、親水性、塩基性、酸性、極性、非極性、芳香族、および脂肪族アミノ酸を、ペプチド安定性を増強するために容易に組み合わせおよび最適化し得る。それに加えて、ペプチド安定性をさらに最適化するために、尾部の長さを容易に変化させ得る。例えば、アミノ酸尾部の長さは、1〜20アミノ酸、2〜15アミノ酸、3〜10アミノ酸、または3〜6アミノ酸の範囲であり得る。また、これらの組み合わせは、一連の極性アミノ酸、一連の非極性アミノ酸、一連の塩基性アミノ酸、一連の酸性アミノ酸、一連の芳香族アミノ酸、一連の脂肪族アミノ酸を含み得る。
【0038】
1つの局面において、そのペプチドを、様々なアッセイにおいて用いるために改変し得る。例えば、放射性標識;フルオロフォアの追加;グルタチオンS転移酵素(GST)タグ、mycタグ、FLAGタグ、または6−Hisタグのような特異的なエピトープまたはタグの追加;ビーズ、マイクロタイタープレートのウェル、またはスライドのような固体支持体への結合;西洋ワサビペルオシキダーゼまたはアルカリホスファターゼのような比色定量検出を可能にする酵素との結合によって、ペプチドを改変し得る、または化学発光タグで標識し得、そして酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、蛍光偏光法(FP)アッセイ、フェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)、表面増強Ramen分光法(SERS)、電気化学発光イムノアッセイ、およびPCR増強イムノアッセイを含む様々なアッセイで使用して、特異的な分子相互作用をさらに同定または調査し得る(Terpe K、Applied Microbiol Biotechnol 60:523−533(2003));(Amal Elfaitouriら、Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology 12:235−241(2005));米国特許第5266498−Ligand binding assay for an analyte using surface−enhanced scattering(SERS)signal;米国特許第5376556−Surface−enhanced Raman spectroscopy immunoassay、それは本明細書中で参考文献に組み込まれる。そのような分子相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−ペプチド相互作用、タンパク質−ペプチド−小分子相互作用、またはタンパク質−ペプチド−核酸配列相互作用を含むがこれに限らない。また、上記で述べた方法は、ウイルスインテグラーゼの少なくとも1つのドメインと相互作用する、または結合する化学物質または小分子に関して、化学物質ライブラリーをスクリーニングするのに有用であり得る。別の局面において、これらの方法をハイスループットスクリーニングに適合させ得る。
【0039】
本明細書中で開示されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(すなわちゲノムDNA、cDNA、未改変mRNA、および転写後に改変されたmRNA)も開示される。これは、特定のアミノ酸配列に関連する全ての保存配列および縮重配列、すなわち1つの特定のペプチドをコードする配列を有する全てのヌクレオチド配列、ならびにそのアミノ酸配列の開示された変異体および誘導体をコードする、縮重ヌクレオチドを含む全てのヌクレオチドを含む。
【0040】
発現調節配列に操作可能に連結した、本明細書中で開示された1つ以上のペプチドをコードする核酸を含む核酸ベクターも開示される。培養した場合にその核酸によってコードされるタンパク質を産生し得る、これらのベクターを含む細胞も開示される。
【0041】
2.内部移行配列
開示されたペプチドは、さらに融合タンパク質を構成し得る、または別の方法でさらなるN末端、C末端、または中間のアミノ酸配列、例えばリンカーまたはタグを有し得る。本明細書中で使用される場合、「リンカー」は、2つの別々のポリペプチドまたはポリペプチド断片を連結する、または分けるために使用し得るアミノ酸配列または挿入であり、ここでそのリンカーは、別の方法でその組成物の本質的な機能に寄与しない。本明細書中で提供されるポリペプチドは、例えばアミノ酸GLS、ALS、またはLLAを含むアミノ酸リンカーを有し得る。本明細書中で使用される場合、「タグ」は、提供されたポリペプチドを検出または精製するために使用し得る別のアミノ酸配列を指し、ここでそのタグは別の方法でその組成物の本質的な機能に寄与しない。提供されたポリペプチドはさらに、ポリペプチドの本質的な活性に寄与しない、N末端、C末端、または中間のアミノ酸を欠失し得る。
【0042】
細胞に効率的に入るために、開示された組成物を、内部移行配列またはタンパク質伝達ドメインに連結し得る。最近の研究は、HIVウイルスのTATトランス活性化ドメイン、アンテナペディア、および細胞膜を通して分子および小さいペプチドを容易に輸送し得るトランスポータンを含む、いくつかの細胞浸透ペプチドを同定した(Schwarzeら、1999;Derossiら、1996;Yuanら、2002)。より最近には、ポリアルギニンが、形質膜を通してペプチドおよびタンパク質を輸送するさらに高い有効性を示し、それをペプチドによる輸送の魅力的なツールにした(FuchsおよびRaines、2004)。非アルギニン(R、配列番号18)が、TATまたはアンテナペディアよりも有意に高い最大取り込みを有する、最も有効なポリアルギニンに基づくタンパク質伝達ドメインの1つとして記載された。ペプチドによる細胞毒性も、ポリアルギニンに基づく内部移行配列によってより少ないことが示された。Rによる膜輸送は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン結合およびエンドサイトーシスのパッケージングによって促進される。一旦内部移行したら、ヘパランはヘパラナーゼによって分解され、Rを放出し、それは細胞質に漏出する(Deshayesら、2005)。研究は最近、ポリアルギニンの誘導体が、全長p53タンパク質を口腔癌細胞に送達し得、その増殖および転移を抑制したことを示し、ポリアルギニンを強力な細胞透過性ペプチドとして定義した(Takenobuら、2002)。
【0043】
従って、提供されたポリペプチドは、細胞内部移行トランスポーターまたは配列を含み得る。その細胞内部移行配列は、当該分野で公知の、または新しく発見されたあらゆる内部移行配列、またはその保存的変異体であり得る。細胞内部移行トランスポーターおよび配列の制限しない例は、ポリアルギニン(例えばR)、アンテナペディア配列、TAT、HIV−Tat、ペネトラチン、Antp−3A(Antpミュータント)、BuforinII、トランスポータン、MAP(モデル両親媒性ペプチド)、K−FGF、Ku70、プリオン、pVEC、Pep−1、SynB1、Pep−7、HN−1、BGSC(ビス−グアニジニウム−スペルミジン−コレステロール)、およびBGTC(ビス−グアニジニウム−Tren−コレステロール)を含む。
【0044】
現在公知の、または後に同定されるあらゆる他の内部移行配列を、本発明のペプチドと組み合わせ得る。
【0045】
3.タンパク質変異体
タンパク質変異体および誘導体は、当業者によく理解されており、そしてアミノ酸配列の改変を含み得る。例えば、アミノ酸配列の改変は、典型的には3つのクラス:置換、挿入、または欠失変異体のうち1つ以上に入る。挿入は、アミノおよび/またはカルボキシル末端の融合ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。挿入は通常、例えばおよそ1から4残基のような、アミノまたはカルボキシル末端融合のそれよりも小さい挿入である。実施例において記載されるもののような、免疫原性融合タンパク質誘導体を、インビトロにおける架橋によって、またはその融合物をコードするDNAで形質転換した組換え細胞培養によって、免疫原性を与えるために十分大きなポリペプチドを、標的配列へ融合することによって作製する。欠失は、そのタンパク質配列から1つ以上のアミノ酸残基を除去することによって特徴づけられる。典型的には、約2から6残基のみが、タンパク質分子内のいずれか1つの部位で欠失する。これらの変異体は通常、タンパク質をコードするDNAにおいてヌクレオチドの部位特異的変異誘発によって調製され、それによって変異体をコードするDNAを産生し、そしてその後組換え細胞培養においてDNAを発現する。公知の配列を有するDNAにおいて、前もって決定した部位において置換変異を作製する技術、例えばM13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発は周知である。アミノ酸置換は典型的には単一の残基であるが、一度に多くの異なる位置で起こり得る;挿入は通常約1から10アミノ酸残基の程度である;そして欠失は約1から30残基の範囲である。欠失または挿入は、好ましくは隣接するペアで、すなわち2残基の欠失または2残基の挿入が行われる。置換、欠失、挿入、またはそのあらゆる組み合わせを、最終構築物に到達するために組み合わせ得る。変異は、配列をリーディングフレームの外に置いてはならず、そして好ましくは二次的なmRNA構造を産生し得る相補的領域を作らない。置換変異体は、少なくとも1つの残基が除去され、そしてその場所に異なる残基が挿入されたものである。
【0046】
(a)置換の領域における、例えばシートまたはらせんコンフォーメーションとしてのポリペプチドバックボーンの構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の大きさを維持するその効果においてより顕著に異なる残基を選択することによって、機能または免疫学的アイデンティティーを実質的に変化させる。一般的にタンパク質の性質において最も大きい変化を生じると予測される置換は、(a)親水性残基、例えばセリン、またはスレオニン残基を、疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、またはアラニン残基に代えて(またはそれによって)置換する;(b)システインまたはプロリンを、あらゆる他の残基に代えて(またはそれによって)置換する;(c)電気的に陽性の側鎖を有する残基、例えばリシン、アルギニン、またはヒスチジン残基を、電気的に陰性の残基、例えばグルタミンまたはアスパラギン残基に代えて(またはそれによって)置換する;または(d)大きな側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンを、側鎖を有さないもの、例えばこの場合グリシンに代えて(またはそれによって)置換する、(e)硫酸化および/または糖鎖付加の部位の数を増やすことによるものである。
【0047】
例えば、1つのアミノ酸残基の、生物学的および/または化学的に同様な別のものによる置換は、保存的置換として当業者に公知である。例えば、保存的置換は、1つの疎水性残基を他のものに代えて、または1つの極性残基を他のものに代えて置換する。その置換は、例えばGly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrのような組み合わせを含む。それぞれ明確に開示された配列のそのような保存的置換変異体は、本明細書中で提供されるモザイクポリペプチドに含まれる。
【0048】
Nグリコシル化(Asn−X−Thr/Ser)またはOグリコシル化(SerまたはThr)の部位を挿入するために、置換または欠失変異誘発を採用し得る。システインまたは他の不安定な残基の欠失も望ましい場合がある。潜在的なタンパク質分解部位、例えばArgの欠失または置換を、例えば塩基性残基の1つを欠失させること、またはグルタミンまたはヒスチジン残基で置換することによって達成する。
【0049】
ある特定の翻訳後誘導体化は、発現したポリペプチドに対する組換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、しばしば翻訳後に対応するグルタミルおよびアスパルチル(asparyl)残基に脱アミド化される。あるいは、これらの残基を、軽度の酸性条件下で脱アミド化する。他の翻訳後修飾は、プロリンおよびリシンの水酸化、セリンまたはスレオニン残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のo−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman&Co.、San Francisco 79−86頁[1983])、N末端アミンのアセチル化、およびいくつかの場合において、C末端カルボキシルのアミド化を含む。
【0050】
本明細書中で開示されたタンパク質の変異体および誘導体を定義する1つの方法は、特定の公知の配列に対する相同性/同一性に関してその変異体および誘導体を定義することによる。述べた配列に対して少なくとも70%または75%または80%または85%または90%または95%の相同性を有する、本明細書中で開示されたこれらおよび他のタンパク質の変異体が特に開示される。当業者は、2つのタンパク質の相同性をどのように決定するのか容易に理解する。例えば、その相同性が最も高いレベルであるように2つの配列を並べた後にその相同性を計算し得る。
【0051】
相同性を計算する別の方法を、公開されたアルゴリズムによって行い得る。比較のために最適な配列のアラインメントを、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行によって(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または観察(inspection)によって行い得る。
【0052】
同じ型の相同性を、例えばZuker,M.Science 244:48−52、1989、Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706−7710、1989、Jaegerら、Methods Enzymol.183:281−306、1989において開示されたアルゴリズムによって、核酸に関して得ることができ、それらは少なくとも核酸アラインメントに関連する資料に関して、本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0053】
保存的変異および相同性の説明を、その変異体が保存的変異である特定の配列に少なくとも70%の相同性を有する実施態様のような、あらゆる組み合わせで一緒に組み合わせ得ることが理解される。
【0054】
本明細書は様々なタンパク質およびタンパク質配列を議論するので、それらのタンパク質配列をコードし得る核酸も開示されることが理解される。これは特定のタンパク質配列に関連した全ての縮重配列、すなわち、1つの特定のタンパク質配列をコードする配列を有する全ての核酸、ならびにそのタンパク質配列の開示された変異体および誘導体をコードする、縮重核酸を含む全ての核酸を含む。従って、特定の核酸配列それぞれが本明細書中で書かれていないかもしれないが、それぞれおよび全ての配列は、実際開示されたタンパク質配列を通して、本明細書中で開示および説明されることが理解される。
【0055】
開示された組成物に組み込み得る多くのアミノ酸およびペプチドアナログが存在することが理解される。例えば、多くのDアミノ酸または表1および表2に示すアミノ酸と異なる機能的置換基を有するアミノ酸が存在する。天然に存在するペプチドの反対の立体異性体、およびペプチドアナログの立体異性体が開示される。アナログアミノ酸を部位特異的な方法でペプチド鎖に挿入するために、tRNA分子に選択したアミノ酸をチャージすることによって、および例えばアンバーコドンを利用する遺伝的構築物を操作することによって、これらのアミノ酸を、ポリペプチド鎖に容易に組み込み得る(Thorsonら、Methods in Molec.Biol.77:43−73(1991)、Zoller、Current Opinion in Biotechnology、3:348−354(1992);Ibba、Biotechnology&Genetic Enginerring Reviews 13:197−216(1995)、Cahillら、TIBS、14(10):400−403(1989);Benner、TIB Tech、12:158−163(1994);IbbaおよびHennecke、Bio/technology、12:678−682(1994)、それらは全て、少なくともアミノ酸アナログに関連する資料に関して、本明細書中で参考文献に組み込まれる)。
【0056】
ペプチドに似ているが、天然のペプチド結合によって連結していない分子を産生し得る。例えば、アミノ酸またはアミノ酸アナログの連結は、CHNH−、−CHS−、−CH−CH−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH−、−CH(OH)CH−、および−CHHSO−を含み得る(これらおよび他のものを、Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins、B.Weinstein編、Marcel Dekker、New York、267頁(1983)のSpatola,A.F.;Spatola,A.F.、Vega Data(1983年3月)、第1巻、第3号、Peptide Backbone Modifications(一般的な概説);Morley、Trends Pharm Sci(1980)463−468頁;Hudson,D.ら、IN J Pept Prot Res 14:177−185(1979)(−CHNH−、CHCH−);Spatolaら、Life Sci 38:1243−1249(1986)(−CH H−S);Hann J.Chem.Soc Perkin Trans.I 307−314(1982)(−CH−CH−、シスおよびトランス);Almquistら、J.Med.Chem.23:1392−1398(1980)(−COCH−);Jennings−Whiteら、Tetrahedron Lett 23:2533(1982)(−COCH−);Szelkeら、European Appln、EP45665CA(1982):97:39405(1982)(−CH(OH)CH−);Holladayら、Tetrahedron.Lett 24:4401−4404(1983)(−C(OH)CH−);およびHruby Life Sci 31:189−199(1982)(−CH−S−)において見出し得る;それらはそれぞれ本明細書中で参考文献に組み込まれる)。特に好ましい非ペプチド結合は、−CHNH−である。ペプチドアナログは、b−アラニン、g−アミノ酪酸等のように、結合原子の間に1つを超える原子を有し得ることが理解される。
【0057】
アミノ酸アナログおよびペプチドアナログは、多くの場合、より経済的な産生、より大きな化学的安定性、増強された薬理学的性質(半減期、吸収、効力、有効性等)、変化した特異性(例えば広いスペクトルの生物学的活性)、抑制された抗原性、などのような、増強されたまたは望ましい性質を有する。
【0058】
Dアミノ酸は、ペプチダーゼおよびそのようなものによって認識されないので、Dアミノ酸を、より安定なペプチドを産生するために使用し得る。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の、同じ型のDアミノ酸による系統的な置換(例えばL−リシンの代わりにD−リシン)を、より安定なペプチドを産生するために使用し得る。システイン残基を、環状化または2つ以上のペプチドを結合するために使用し得る。これはペプチドを特定のコンフォメーションに束縛するために有用であり得る。(RizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992)、本明細書中で参考文献に組み込まれる)。
【0059】
B.使用の方法
1.ウイルスインテグラーゼの阻害
ウイルスインテグラーゼを、本明細書中で開示されたペプチドと接触させることによって、ウイルスインテグラーゼ活性を抑制または阻害する方法を、本明細書中で説明する。いくつかの局面において、そのウイルスインテグラーゼはHIVインテグラーゼである。
【0060】
理論によって拘束されることを望まないが、いくつかの局面において、そのペプチドは、例えばHIV INのようなウイルスインテグラーゼに結合し、そして鎖転移複合体(STC)の形成および続くウイルスDNAの組込みを阻害し得る。あるいは、そのペプチドは、STCの形成は可能にするが、続くウイルスDNAの組込みを阻害する。
【0061】
いくつかの局面において、その方法は、HIV INを、本明細書中で開示されたペプチドと接触させることを含む。例えば、その方法は、HIV INを、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4を含むペプチドと接触させることを含み得る。いくつかの局面において、そのペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4の保存的変異体である。いくつかの局面において、そのペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4と少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同的なアミノ酸配列を有する。
【0062】
いくつかの局面において、そのペプチドは、インテグラーゼを標的とする第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含む融合タンパク質である。例えば、第2のアミノ酸配列は、内部移行配列またはタグを含み得る。
【0063】
そのペプチドは、内因性、単離された、または合成的に得られたペプチドであり得る。例えばそのペプチドを、直接化学的に合成し得る。別の局面において、そのペプチドをコードする核酸配列をベクターに組込み、そして例えば細菌内で発現して、そして続いて精製し得る。
【0064】
いくつかの局面において、そのペプチドをコードする核酸配列を、融合ペプチドをコードする核酸融合遺伝子を作製するために容易に改変し得る。この組換えペプチドは、ペプチドの単離および精製工程をさらに補助するために、グルタチオンS−転移酵素(GST)タグ、mycタグ、FLAGタグ、または6−Hisタグのようなエピトープまたはタグを含み得る。精製または単離工程は、ペプチドをさらに単離するために、ペプチドを「塩析すること」、ショ糖勾配遠心を使用すること、またはサイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、HPLC、またはアフィニティークロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー工程のような、当該分野で公知の多くの技術を含み得る。1つの局面において、エピトープまたはタグを有するペプチドを、ペプチドの単離後に切断または除去し得る。別の局面において、そのエピトープまたはタグは、単離後に切断または除去されない。
【0065】
2.HIVの治療
被験体に本明細書中で開示されたペプチドを投与することを含む、被験体においてHIVを治療または予防する方法も開示される。例えば、その方法は、被験体に配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4を含むペプチドを投与することを含み得る。いくつかの局面において、その方法は被験体に配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4の保存的変異体を投与することを含む。いくつかの局面において、その方法は、被験体に配列番号1、配列番号2、または配列番号3、または配列番号4に少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同的なアミノ酸配列を投与することを含み得る。
【0066】
いくつかの局面において、その被験体はHIV感染のリスクがある。いくつかの局面において、その被験体はHIVを有する。
【0067】
いくつかの局面において、被験体、組織、または細胞への投与を増強するために、そのペプチドを改変し得る。この局面において、被験体、組織、または細胞への投与を増強するために、そのペプチドをポリマー性材料と組み合わせ得る、または複合体化し得る。さらに別の局面において、被験体、組織、または細胞への投与をさらに増強するために、そのペプチドを、HIV−1 TAT、HSV VP22、またはAntpを含む細胞内部移行配列またはタンパク質形質導入ドメインに共有結合し得る、またはそれらを有するように遺伝子操作し得る。
【0068】
これらの組成物を、カプセルの形態で経口投与し得る、静脈内、皮下、または筋肉内に投与されるワクチン、静脈内点滴、または経皮、局所クリームの形態で投与し得る。ペプチド、小分子、またはそのあらゆる組み合わせと複合体化し得るポリマー性材料の例は、両親媒性ポリマー、親水性ポリマー、疎水性ポリマー、ナノ粒子、ミセル、免疫複合体、デンドリマーおよびリポソームを含む。理論に拘束されることを望まないが、ペプチド、小分子、またはそのあらゆる組み合わせを、Particle Replication In Non−wetting Templates(PRIN)を用いて、上記で述べたポリマーの1つと結合または複合体化し得る。PRINは、コントロールされたサイズ、形、部位特異的表面化学、調整可能な粒子マトリックス組成物および調整可能な弾性率の有機粒子が、エンドサイトーシスを受けるメカニズムの解明を可能にする。「較正品質(calibration quality)」粒子を使用してエンドサイトーシス経路の知識を得ることは、特異的な細胞内部移行を増強するだけでなく、粒子の細胞内位置を操作する、および細胞毒性作用を最小限にするために必要な重要な情報をもたらす。内部移行のメカニズムが確立されたら、これらの発見を、特定の積荷の細胞内放出をより良く操作するために使用することが可能である。
【0069】
上で記載した複合体を、当該分野で公知の技術を用いて被験体に投与し得る。例えば、薬学的組成物を、その複合体で調製し得る。特定の場合における複合体の実際の好ましい量は、利用される特定の化合物、処方される特定の組成物、適用の方式、および治療される特定の位置および被験体によって変動することが認識される。所定の宿主のための投与量を、従来の判断を用いて、例えば対象化合物および公知の薬剤の差異のある活性の慣習的な比較によって、例えば適当な従来の薬理学的プロトコールによって決定し得る。医師および処方者、薬学的化合物の用量を決定する当業者は、標準的な推奨に従って用量を決定するのに問題を有さない(Physicians Desk Reference、Barnhart Publishing(1999))。
【0070】
本明細書中で記載された薬学的組成物を、生物学的システムまたは実体(entity)が許容するあらゆる賦形剤中で処方し得る。そのような賦形剤の例は、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、および他の水性生理的平衡塩類溶液を含むがこれに限らない。固定油、オリーブ油およびゴマ油のような植物油、トリグリセリド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルのような非水性ビヒクルも使用し得る。他の有用な処方物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような粘性増強剤を含む懸濁液を含む。賦形剤はまた、等張性および化学的安定性を増強する物質のような、少量の添加物も含み得る。バッファーの例は、リン酸バッファー、炭酸水素バッファー、およびTrisバッファーを含み、一方保存剤の例は、チメロサール、クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールを含む。
【0071】
薬学的キャリアは当業者に公知である。これらは最も典型的には、滅菌水、食塩水、および生理的pHの緩衝化溶液のような溶液を含む、ヒトへの投与のための標準的なキャリアである。
【0072】
薬学的送達のために意図される分子を、薬学的組成物に処方し得る。薬学的組成物は、選択した分子に加えて、キャリア、増粘剤、希釈剤、バッファー、保存剤、界面活性剤等を含み得る。
【0073】
その薬学的組成物を、局所または全身性治療が望ましいかどうか、および治療する領域に依存して、多くの方法で投与し得る。投与は、点眼および鼻腔内を含む局所であり得る、または投与は静脈内または腹腔内であり得る。
【0074】
投与のための調製物は、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルションを含む。非水性キャリアの例は、食塩水および緩衝化媒体を含む、水、アルコール/水性溶液、エマルションまたは懸濁液を含む。もし開示された組成物および方法の副次的使用のために必要なら、非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油を含み、もし開示された組成物および方法の副次的使用のために必要なら、静脈内ビヒクルは、流体および栄養補液、電解質補液(リンゲルデキストロースに基づくものなど)等を含む。例えば抗菌薬、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガス等のような、保存剤および他の添加物も存在し得る。
【0075】
局所投与のための処方物は、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、液滴、坐剤、スプレー、液体および粉末を含み得る。従来の薬学的キャリア、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤等が必要または望ましい場合がある。
【0076】
1つの局面において、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、そのあらゆる変異体、小分子、またはそのあらゆる組み合わせを含むペプチドを、HIV感染のリスクのある被験体に投与し得る。別の局面において、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、そのあらゆる変異体、小分子、またはそのあらゆる組み合わせを含むペプチドを、HIVを有する被験体に投与し得る。被験体への投与の際に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、そのあらゆる変異体、小分子、またはそのあらゆる組み合わせを含むペプチドは、HIV INに結合し、そしてHIV IN活性およびウイルスDNAの組込みを抑制、阻害、または連続的に抑制および次いで阻害する。
【0077】
開示された化合物および組成物を、あらゆる適当な方式で投与し得る。投与の方式を、例えば局所または全身性治療が望ましいかどうか、および治療する領域に基づいて選択し得る。例えば、その組成物を、経口で、非経口で(例えば静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)、吸入で、体外に、局所に(経皮で、眼に、膣に、直腸に、鼻腔内に、を含む)等で投与し得る。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「局所鼻腔内投与」は、鼻および鼻道への、その領域の1つまたは両方を通じた組成物の送達を意味し、そして、核酸またはベクターのスプレーメカニズムまたは液滴メカニズムによる、またはエアロゾル化による送達を含み得る。吸入剤による組成物の投与は、スプレーメカニズムまたは液滴メカニズムによる送達によって、鼻または口を通じたものであり得る。送達はまた、吸入(incubation)によって、直接に呼吸器系(例えば肺)のあらゆる領域に対してであり得る。
【0079】
もし使用されるなら、組成物の非経口投与は、一般的に注射によって特徴付けられる。注射剤を、液体溶液または懸濁液、注射前に溶液または液体状の懸濁液となるのに適当な固体形態として、またはエマルションとして、従来の形態で調製し得る。非経口投与のためにより最近改訂されたアプローチは、一定の投与量が維持されるように、緩徐放出または徐放性システムの使用を含む。例えば、米国特許第3,610,795号を参照のこと、それは本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0080】
必要な組成物の正確な量は、被験体の種、年齢、体重および一般的な状態、治療されるアレルギー性疾患の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、その投与方式等に依存して、被験体によって異なり得る。従って、全ての組成物に関して正確な量を特定することは可能ではない。しかし、適当な量を、本明細書中の教示を考慮して、日常的な実験のみを用いて、当業者が決定し得る。従って、その組成物を投与するための有効な投与量およびスケジュールを経験的に決定し得、そしてそのような決定をすることは、当該分野における技術の範囲内である。組成物の投与のための投与量範囲は、疾患の症状が影響を受ける望ましい効果を生じるために十分大きいものである。その投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応等のような、有害な副作用を引き起こすほど大きくすべきではない。一般的に、その投与量は、年齢、状態、性別および患者における疾患の程度、投与経路、または他の薬剤がレジメに含まれているかどうかによって変化し得、そして当業者によって決定され得る。投与量は変動し得、そして毎日1回またはそれより多くの投与で、1日または数日間投与し得る。所定のクラスの薬学的調製物に関する適当な投与量に関する文献においてガイダンスを見出し得る。
【0081】
投薬は治療する状態の重症度および反応性に依存するが、通常1日あたり1回以上の投与であり、治療の過程は数日から数カ月、または当業者が送達を中止すべきと決定するまで続く。当業者は、最適な投与量、投薬方法および反復率を容易に決定し得る。例えば、単独で使用される典型的な毎日の投与量は、上記で述べた因子に依存して、1日あたり約1μg/kg体重から100mg/kg体重またはそれを超えるまでの範囲であり得る。
【0082】
1つの局面において、細胞、組織、または被験体に対する、そのペプチド、小分子またはそのあらゆる組み合わせの投与のために最適な濃度を見出すために、用量−反応曲線を作成し得、そして最大半量阻害濃度(IC50)および半致死量(LD50)を測定し得る。細胞、組織、または被験体に、そのペプチド、小分子またはそのあらゆる組み合わせを投与するために、これらの測定値に基づいて濃度をさらに最適化し得る。この局面において、そのペプチド、小分子またはそのあらゆる組み合わせは、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、21μM、22μM、23μM、24μM、25μM、26μM、27μM、28μM、29μM、30μM、31μM、32μM、33μM、34μM、35μM、36μM、37μM、38μM、39μM、40μM、41μM、42μM、43μM、44μM、45μM、46μM、47μM、48μM、49μM、50μM、51μM、52μM、53μM、54μM、55μM、56μM、57μM、58μM、59μM、60μM、61μM、62μM、63μM、64μM、65μM、66μM、67μM、68μM、69μM、70μM、71μM、72μM、73μM、74μM、75μM、76μM、77μM、78μM、78μM、79μM、80μM、81μM、82μM、83μM、84μM、85μM、86μM、87μM、88μM、89μM、90μM、91μM、92μM、93μM、94μM、95μM、96μM、97μM、98μM、99μM、および100μMを含む治療的濃度を含み得る。この局面においてまた、治療的濃度は、1から1000μM、50から800μM、100から600μM、200から400μM、またはそのあらゆる組み合わせの範囲であり得る。別の局面において、そのペプチド、小分子、またはそのあらゆる組み合わせは、1から1000nM、50から900nM、100から850nM、150から800nM、200から750nM、250から700nM、300から650nM、350から600nM、400から550nM、450から500nM、またはそのあらゆる組み合わせを含む、μM以下の範囲内の治療的濃度を含み得る。
【0083】
本明細書中で開示されたHIV INを阻害する組成物を、HIVのリスクを有する、または新たにHIVと診断された患者または被験体に、予防的に投与し得る。
【0084】
3.ウイルスインテグラーゼ阻害剤に関するスクリーニング
HIVインテグラーゼ活性を抑制する薬剤を同定する方法も、本明細書中で提供される。いくつかの局面において、本方法は、HIV INを阻害する薬剤を同定することを含む。いくつかの局面において、本方法を、HIVを治療するために使用し得る薬剤を同定するために使用し得る。
【0085】
従って、HIV INおよびそのペプチドの結合を可能にする条件下で、HIV INの少なくとも1つのドメインおよび本明細書中で開示されたペプチドを含むサンプルを提供すること、そのサンプルを候補薬剤と接触させること、HIV IN/ペプチド結合のレベルを検出すること、その結合レベルをコントロールと比較することを含み、コントロールと比較したHIV IN/ペプチド結合の減少により、患者を治療するために使用し得る薬剤を同定する、HIV INを阻害する薬剤を同定する方法も、本明細書中で提供される。
【0086】
いくつかの局面において、HIV INの少なくとも1つのドメインは、N末端またはC末端を含む。いくつかの局面において、HIV INの少なくとも1つのドメインは、48−210a.a.の間のコアドメインを含む。HIV INの少なくとも1つのドメインを候補薬剤と接触させること、およびインテグラーゼ活性を測定することを含む、HIV INを阻害する薬剤を同定する方法も開示される。いくつかの局面において、その方法は、HIVインテグラーゼ活性をポジティブおよびネガティブコントロールと比較することを含む。
【0087】
ペプチドのインテグラーゼに対する結合を可能にする条件下で、インテグラーゼの少なくとも1つのドメインを、本明細書中で開示されたペプチドと接触させること、インテグラーゼを候補薬剤と接触させること、および候補薬剤がペプチドを置換したかどうかを決定することを含む、ウイルスインテグラーゼ活性を抑制する候補薬剤を同定する方法も開示される。
【0088】
従って、ペプチドのインテグラーゼに対する結合を可能にする条件下で、HIVインテグラーゼの少なくとも1つのドメインを、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4と少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドと接触させること、HIVインテグラーゼを候補薬剤と接触させること、および候補薬剤がペプチドを置換したかどうかを決定することを含む、HIVインテグラーゼ活性を抑制する候補薬剤を同定する方法も開示され、ここでペプチドの置換は、その候補薬剤がHIVインテグラーゼ活性を抑制することを示す。
【0089】
いくつかの局面において、その方法はさらに、インテグラーゼを含むサンプルを、ペプチドを置換した候補薬剤と接触させること、およびインテグラーゼ活性を測定して候補薬剤のインテグラーゼを阻害する能力を立証することを含む。いくつかの局面において、そのインテグラーゼ活性を、DNA組込みアッセイ、サザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、ハイスループットスクリーニングアッセイ、またはそのあらゆる組み合わせを用いて測定する。
【0090】
本明細書中で開示されたペプチドの、HIV INのようなインテグラーゼに対する結合を、タンパク質結合を妨害しない、免疫検出法のような、日常的な方法を用いて検出し得る。その方法は、細胞に基づく、または細胞を含まないアッセイであり得る。様々な有用な免疫検出法の工程が、例えばMaggioら、Enzyme−Immunoassay(1987)およびNakamuraら、Enzyme Immunoassays:Heterogeneous and Homogeneous Systems、Handbook of Experimental Immunology、第1巻:Immunochemistry、27.1−27.20(1986)のような、科学文献において記載され、それらはそれぞれその全体として、および免疫検出法に関する教示に関して明確に、本明細書中で参考文献に組み込まれる。イムノアッセイは、その最も単純および直接的な意味において、抗体および抗原の間の結合を含む結合アッセイである。多くの型および形式のイムノアッセイが公知であり、そして全ては開示されたバイオマーカーを検出するために適当である。イムノアッセイの例は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、放射免疫沈降アッセイ(RIPA)、イムノビーズ捕捉アッセイ、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、ゲルシフトアッセイ、フローサイトメトリー、タンパク質アレイ、多重ビーズアレイ、磁気捕捉、インビボイメージング、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、および光退色後蛍光回復/光退色後局在化測定(FRAP/FLAP)である。
【0091】
いくつかの局面において、その候補薬剤を、酵母ツーハイブリッドシステムまたは同様の細胞に基づくリポーターアッセイを用いて同定し得る。これらの局面において、酵母における転写活性化は、そのペプチドがHIVインテグラーゼに結合していることを示し得る。例えば、1つの局面において、HIVインテグラーゼの少なくとも1つのドメインは、DNA結合ドメインに融合したベイト(bait)を含む。そのドメインは、HIV INのN末端、中央コア、またはC末端を含み得る。例えば、HIV INのC末端を、GAL4 DNA結合ドメインに融合し得る。この局面において、本明細書中で開示されたHIV INに結合するペプチドを、活性化ドメインに融合するプレイ(prey)として使用し得る。例えば、そのペプチドをGAL4活性化ドメインに融合し得る。いくつかの局面において、アミノ酸配列、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる組み合わせを含むペプチドを、GAL4活性化ドメインに融合し得る。いくつかの局面において、もしベイトおよびプレイが相互作用するなら、HIS3、URA3、ADE3、Zsgreen、GFP、ベータガラクトシダーゼ、またはルシフェラーゼのようなリポーター遺伝子を転写および続いて翻訳し得る。リポーター遺伝子の発現に依存して、ベイトおよびプレイ相互作用の強さをさらに分析し得る。当業者はこのアッセイを容易に改変して、ベイトがDNA結合ドメインに融合したペプチドを含むこと、およびプレイが活性化ドメインに融合したHIVインテグラーゼの少なくとも1つのドメインを含むことを可能にし得る。当業者は、さらなる構築物、結合ドメイン、活性化ドメイン、および緑色蛍光タンパク質を含むリポーター遺伝子が、上記で列挙したものを容易に置換し得ることを容易に認識する。
【0092】
いくつかの局面において、その候補薬剤は、HIV INからそのペプチドを置換する。従って、その方法は、そのペプチドのインテグラーゼに対する結合を検出することを含み得る。いくつかの局面において、その方法は、インテグラーゼから置換されたペプチドを検出することを含む。この局面において、上で記載した酵母ツーハイブリッドスクリーニングを使用する場合、もし配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4を使用するなら、リポーター遺伝子の発現を観察する。
【0093】
HIV INの阻害剤に関して化学物質ライブラリーをスクリーニングするために、化学物質のHIV INの部分またはドメインに対する実際の結合をアッセイし得る。1つの局面において、化学物質ライブラリー由来の小分子を、上記で述べた酵母ツーハイブリッドシステムに加え得る。理論に拘束されることを望まないが、もしその化学物質が、ペプチドのウイルスインテグラーゼに対する親和性と同等かまたはそれより高いウイルスインテグラーゼに対する親和性を有するなら、そのペプチドは置換される。置換される際、リポーター遺伝子の発現は減少する、または完全に阻害される。この結果は、ウイルスインテグラーゼに対する化学的結合を示し、そしてその化学物質のウイルスインテグラーゼに対する結合親和性の定性的および定量的尺度を提供する。
【0094】
別の局面において、競合型アッセイを可能にするようにこのアッセイを変化させ得、ここでその化学物質または小分子およびプレイを、同時にまたは少なくとも近い時間に、特定の量で加える。プレイに対する親和性に依存して、化学物質/小分子またはプレイのいずれかが他方を上回り(out−compete the other)、そして化学物質/小分子のウイルスインテグラーゼまたはウイルスインテグラーゼドメインに対する親和性を、定性的、定量的、またはそのあらゆる組み合わせで決定し得る。
【0095】
別の局面において、これらの酵母ツーハイブリッドシステムを、ハイスループットスクリーニングに適合させ得る。例えば、細胞を96穴形式、1530または最大16640穴形式で増殖させ、そしてプレートフィラー(plate filler)で分配し得る。この形式を用いて、少なくとも5,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、または100,000アッセイを、2週間ごとに行い得る。1つの局面において、酵母スクリーニングロボットを使用し、そして実験室情報管理システム(LISM)が、サンプルを追跡し、そしてデータを扱う。LIMSはバーコード、処理記録、および品質管理を、オラクルデータベースの枠組みの中に組込む。化学物質およびペプチド濃度の範囲を、上記で述べたように試験し得る。この局面において、ペプチドまたは小分子によるHIVインテグラーゼとの相互作用に関して、および最適な濃度に関して、真の陽性を選択する。真の陽性を、約1%の率で回収し得、そして酵母増殖に対する大きな陰性の効果の頻度は低い(<10%)。陽性(平均シグナルの>2−3SD下のシグナルとして定義される)を、再スクリーニングし得、そして活性なサブセットに関して、用量/反応研究を行い得る。陽性をさらに哺乳類生物検定において評価し得、そしてHIVインテグラーゼに対してより強力な、より選択的な効果を有する化学物質または小分子を同定するために、偏ったライブラリーを発展させ得る。
【0096】
ウイルスインテグラーゼの酵素抑制または阻害をさらに分析するために、ウイルスDNAの組込みおよびSTC形成および蓄積をアッセイし得る。1つの局面において、DNAの組込みアッセイ、サザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、インテグラーゼ活性を測定するために改変されたハイスループットスクリーニングアッセイ(Johnら、Development and Application of a High−T
hroughput Screening Assay for HIV−1 Integrase Enzyme Activities. J.of Biomolecular Screening(2005)10(6):606−614が、これによってその全体として参考文献に組み込まれる)、またはそのあらゆる組み合わせを使用して、ウイルスインテグラーゼ活性の抑制または阻害を分析し得る。これらのアッセイをさらに、鎖転移複合体(STC)の形成および可能性のある蓄積を分析するために使用し得る。例えば、Craigieら、Processing of viral DNA ends channels the HIV−1 integration reaction to concerted integration.J.Biol.Chem.(2005)280(32):29334−9およびCraigieら、Retroviral DNA integration:reaction pathway and critical intermediates.EMBO J.(2006)25(6):1295−304において記載されたような、そしてこれによってその全体として参考文献に組み込まれる、DNA組込みアッセイを使用して、ペプチド、小分子、またはそのあらゆる組み合わせがウイルスDNAの組込みを阻害するかどうか決定し得る。さらなる局面において、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4またはそのあらゆる変異体を含むペプチド、小分子、またはそのあらゆる組み合わせと接触させた、または投与した細胞、組織、または被験体のウイルスDNAの組込みを、ポジティブおよびネガティブコントロールと比較して、ウイルスインテグラーゼ活性の抑制または阻害の定性的および定量的計測を提供し得る。
【0097】
a.HIVインテグラーゼ変異体
HIV INの酵素機能を阻害する薬剤は、ウイルスのゲノムへの組込みを防止し得る。Merckによって作製された、IsentressまたはMK0518としても公知であるラルテグラビルは、他の薬剤に対して耐性である患者における使用のためにFDAから認可された。他のIN阻害剤は、ジケトアナログ(DKA)S−1360、L−870、810、エルビテグラビル(GS−9137)、およびナフチリジノンGSK364735を含む。ラルテグラビルは著しい利点を示すが、HIV INをコードする遺伝子における変異が、その薬剤に対して耐性のウイルスミュータントを生じる。いくつかの研究において、MK0518およびGS−9137に対する耐性による失敗率は、それぞれ25%および40%に達した。阻害剤に対するインテグラーゼの変異は、Q148R、N155H、L74M、E92Q、ならびに他のアミノ酸を含む。IN阻害剤に対する耐性を生じるいくつかのアミノ酸変化は、IN阻害剤5CITEPと直接相互作用することが示された。
【0098】
従って、開示されたスクリーニング方法のいくつかの局面において、HIVインテグラーゼの少なくとも1つのドメインは、薬剤耐性変異を含む。例えば、その薬剤耐性変異は、T66I、T66A、T66K、E92Q、F121Y、E138A、E138K、G140A、G140S、Y143R、Y143C、Y143H、S147G、Q148H、Q148R、Q148K、S153Y、N155H、N155S、R263K、L74M、E92Q、T97A、V151I、E157Q、G163R、I203M、S230R、S230N、H51Y、Q95K、H114Y、P145S、Q146P、T125K、A128T、Q146K、N155S、K160D、V72I、A154I、V165IおよびV201I(http://hivdb.stanford.edu/cgi−bin/INIResiNote.cgi)、またはそのあらゆる組み合わせであり得る。
【0099】
従って、野生型HIV INに加えて、またはその代わりに、HIV INミュータントを阻害する候補薬剤を同定する方法も、本明細書中で開示される。いくつかの局面において、その方法は、まずミュータントHIV INに結合するペプチドを同定することを含む。ミュータントHIV INに結合するペプチドを同定する1つの方法は、野生型HIV INに結合する、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる変異体のペプチドのミュータントであるペプチド(本明細書中で「変異結合ペプチド(mutated binding peptide)」と呼ぶ)を調製および調査することである。例えば、その変異結合ペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる変異体に対して少なくとも65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相同性を有し得る。従って、ミュータント結合ペプチドを、ランダム変異誘発、縮重オリゴヌクレオチド、DNAシャフリング、部位特異的変異誘発、または望ましい配列同一性内のペプチドを含むペプチドライブラリーを作製するために適当な、当該分野で利用可能なあらゆる他の方法を用いて産生し得る。
【0100】
従って、ミュータントインテグラーゼの少なくとも1つのドメインを、本明細書中で開示されたミュータント結合ペプチドと、そのペプチドのミュータントインテグラーゼへの結合を可能にする条件下で接触させること、ミュータントインテグラーゼを候補薬剤と接触させること、その候補薬剤がミュータント結合ペプチドを置換するかどうか決定することを含む、ウイルスインテグラーゼ活性を抑制する候補薬剤を同定する方法も開示される。
【0101】
いくつかの局面において、そのミュータント結合ペプチドは、1つ以上のミュータントまたは野生型HIV INに結合し得る。従って、その方法はまた、あらゆる薬剤の、ミュータントINへ結合して、野生型HIV INおよび/または他のミュータントHIV INを阻害する能力を試験することを含み得る。RNA、DNA、およびタンパク質を含む物理的相互作用の同定および分析のための遺伝的ツールとして、対立遺伝子特異的抑制を広範囲に使用した(HartmanおよびRoth、17:1−105 Adv.Genetics(1973);NelsonおよびSauer、Cell 42:549−558(1985);Betz、J.Mol.Biol.195:495−504(1987);Adamsら、Genetics 121:675−683(1989);Parker、Methods Enzymol.180:510−517(1989);Mortin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:4864−4868(1990);Oertel−Buchheitら、J.Mol.Biol.255:609−620(1992);PhizickyおよびFields、Microbiol.Rev.59:94−123(1995))。対立遺伝子特異的抑制が起こるメカニズムの広く支持された見方は、「錠前と鍵」モデルを呼び起こし、ここでその元の接触は回復される。RNA−RNA相互作用の場合、相互作用は塩基対形成の代償性変化を可能にする変異によって回復し得る。対立遺伝子特異的抑制は、多くの場合タンパク質−タンパク質相互作用の証拠とみなされる;逆に、非対立遺伝子特異的抑制は、通常バイパス抑制の証拠とみなされる。
【0102】
対立遺伝子特異的抑制の原理を、本発明に適用してインテグラーゼ相互作用を検出する。従って、変異HIVインテグラーゼの活性を阻害する候補薬剤を同定する、酵母遺伝法も開示される。もしミュータントインテグラーゼが、ペプチド配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる変異体のような、野生型IN結合ペプチドの、ミュータントインテグラーゼとの相互作用を減少させるなら、ミュータントインテグラーゼの結合/阻害を回復するミュータント抑制ペプチドを選択し得る。野生型インテグラーゼをDNA結合ドメインに、およびペプチドを活性化ドメインに連結し得る、または逆に連結し得る。選択リポーター(例えばLEU2、URA3、HIS3、ADE2)のオペレーターに結合したDB−インテグラーゼが、活性化物(the activation)に連結したペプチドと相互作用する場合、そのリポーターは活性化され、そのリポーターによってコードされるアミノ酸を欠く培地における増殖を可能にする。HIS3の場合、3−ATの追加によってストリンジェンシーを強化し得る。自然変異に関して選択するために、3−AT(3−アミノトリアゾール)を加えた、ヒスチジンを欠く合成プレート上に菌株をプレーティングすることによって、数百万の酵母をスクリーニングし得る。選択培地上で増殖するコロニー由来のプラスミドを単離し、そして基礎菌株に再び形質転換させてプラスミドの連鎖を確認する。プラスミド連鎖解析を通過したクローンを配列決定して、ミュータントインテグラーゼとの相互作用を再現する、そのペプチドをコードするDNA領域における変異を同定する。そのペプチドミュータントを、野生型インテグラーゼならびに他のミュータントインテグラーゼ対立遺伝子で試験し得る。全ての異なるクラスの変異が可能であり、対立遺伝子特異的変異、親和性の一般的な増加、またはインテグラーゼの異なる領域に結合するミュータントが可能である。あるいは、そのペプチドをコードする領域も、縮重オリゴ、プライマーまたはスプリットライゲーション(ランダムDNAオリゴ)を用いて変異し得る。一旦変異インテグラーゼ(mutated integrase)に結合するペプチドを発見したら、それを使用して上で記載したようなペプチドを置換する化学物質に関してスクリーニングし得る。
【0103】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる変異体のペプチドに耐性であるインテグラーゼミュータントを、酵母の遺伝的アプローチを用いて同定し得る。ペプチド配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる変異体に対する結合の喪失を引き起こすインテグラーゼのミュータントをスクリーニングするために。DNA結合(DB)ペプチドおよびURA3レポーターを駆動する活性化ドメイン(AC)−インテグラーゼを含む菌株を、5−フルオロオクタン酸(5−FOA)プレートにまき得る。増殖培地中に5−フルオロオクタン酸(5−FOA)の存在下で、オロチジン5リン酸脱炭酸酵素を発現する細胞は、5−FOAを毒性化合物の5−フルオロウラシルへ変換することによって死滅する(Boeke JDら、Methods Enzymol.154:164−75(1987))。5−FOAは、Ura+細胞の集団中のUra−細胞の選択のために非常に有用な試薬である。その選択は、URA3+の喪失が望ましい形質転換および組換え研究において有効である。
【0104】
他の局面は、そのペプチドおよびインテグラーゼの間の相互作用を遮断する薬剤の使用による、上で記載した主題に対するバリエーションの適用を含む。
【0105】
酵母におけるインテグラーゼ活性アッセイ:真核細胞において唯一のレトロウイルスタンパク質として発現したHIV−1 INが、2つのウイルスLTRを含むDNAの核ゲノムへの完全な組込みを触媒するために十分であった。
【0106】
b.他のレトロウイルス
進化的種全体にわたって結合するタンパク質の多くの例が存在する。酵母および脊椎動物のフィンブリンは、一次構造および生化学的活性の両方において同様である。ヒトのTおよびLフィンブリンは、酵母S.cerevisiaeにおいてsac6ヌル欠損を補完し得る(Adamsら、Molecular and Cellular Biology 15(1):69−75(1995))。中央領域(残基50および212の間に位置する)は、通常D,D−35−Eドメインと呼ばれる、3つの不変の酸性残基(Asp64、Asp116、およびGlu152)の三つ組を含み、それはレトロウイルスINタンパク質ならびに様々な真核生物および原核生物トランスポザーゼの間で、進化的に高度に保存されている(Kulkoskyら、Molecular Cell Biology 12:2331−2338(1992);Doakら、Proc.Natl.Acad.Sci.91:942−946(1994);RiceおよびMizuuchi、Cell 82:209−220(1995))。
【0107】
レトロウイルスは、そのRNAゲノムからDNAを産生する酵素、逆転写酵素によって宿主細胞において複製するRNAウイルスである。次いでDNAはインテグラーゼ酵素によって宿主のゲノムに組み込まれる。ウイルスはその後宿主細胞のDNAの一部として複製する。レトロウイルスは、レトロウイルス科に属するエンベロープに包まれたウイルスである。ウイルス分類はグループVIである。2つの属亜科は、オルソレトロウイルス亜科およびSupumaretrovirinaeを含む。その亜科は、アルファレトロウイルス(トリ肉腫白血病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス)、ベータレトロウイルス(Betaretovirus)(マウス乳癌ウイルス)、ガンマレトロウイルス(マウス白血病ウイルス、アーベルソンマウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、異種向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス)、デルタレトロウイルス(ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV−1、HTLV−2)、ウシ白血病ウイルス)、イプシロンレトロウイルス(ワーレイ表皮過形成ウイルス)、およびレンチウイルス(ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ピューマレンチウイルス、EIA、ウシ免疫不全ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ビスナ/マエディウイルス)を含む。2番目の亜科は、スプマレトロウイルス亜科(Spumaretrovirinae)(サル泡沫状ウイルスおよびHFV)を含む。
【0108】
従って、本発明の他の実施態様は、他のレトロウイルスインテグラーゼの阻害剤を選択するためのプローブとして、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる変異体のペプチドを使用することを含む。例えば、これらのレトロウイルスのいずれかによってコードされたウイルスインテグラーゼを、ツーハイブリッドシステムにクローニングし、そして配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、またはそのあらゆる変異体のペプチドとの相互作用に関して試験し得る。相互作用が検出された場合、上で記載したように、他のレトロウイルスインテグラーゼに結合する薬剤を直接選択し得る。そのペプチドは、他のレトロウイルスインテグラーゼ(ingetrase)との相互作用に関して選択するために、ミュータントHIVインテグラーゼに関して記載したように変異し得る。他の進化的に保存されたインテグラーゼに結合するペプチドをデザインするために、3次元構造情報も採用し得る。
【0109】
c.候補薬剤
一般的に、当該分野で公知の方法によって、天然産物または合成(または半合成)抽出物の大きなライブラリーまたは化学物質ライブラリーから候補薬剤を同定し得る。薬剤発見および開発の当業者は、テスト抽出物または化合物の正確な供給源は、本発明のスクリーニング手順(複数可)にとって決定的ではないことを理解する。よって、実質的にあらゆる数の化学的抽出物または化合物を、本明細書中で記載された代表的な方法を用いてスクリーニングし得る。そのような抽出物または化合物の例は、植物、真菌、原核生物または動物に基づく抽出物、発酵ブロス、および合成化合物、ならびに存在する化合物の改変を含むがこれに限らない。糖類、脂質、ペプチド、ポリペプチド、および核酸に基づく化合物を含むがこれに限らない、あらゆる数の化学的化合物のランダムまたは指向性合成(例えば半合成または全合成)を産生するための多くの方法も利用可能である。合成化合物ライブラリーは、例えばBrandon Associates(Merrimack、NH)およびAldrich Chemical(Milwaukee、WI)から、市販で入手可能である。あるいは、細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物、および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが、Biotics(Sussex、UK)、Xenova(Slough、UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft.Pierce、Fla.)、およびPharmaMar、U.S.A.(Cambridge、Mass.)を含む多くの供給源から市販で入手可能である。それに加えて、天然および合成的に産生されたライブラリーを、もし望ましいなら、当該分野で公知の方法によって、例えば標準的な抽出および分画方法によって産生する。さらに、もし望ましいなら、あらゆるライブラリーまたは化合物を、標準的な化学的、物理的、または生化学的方法を用いて容易に改変する。それに加えて、薬剤発見および開発の当業者は、デレプリケーション(例えば分類学的デレプリケーション、生物学的デレプリケーション、および化学的デレプリケーション、またはそのあらゆる組み合わせ)、またはHIV INの活性に対するその効果に関して既知である物質の複製または反復の排除の方法を、可能な場合はいつでも採用するべきであることを容易に理解する。
【0110】
粗製の抽出物が望ましい活性を有することが見出された場合、観察された効果の原因である化学的構成要素を単離するために、陽性のリード抽出物のさらなる分画が必要である。従って抽出、分画、および精製過程の目的は、HIV INを刺激または阻害する活性を有する、粗製抽出物中の化学的実体の注意深い特徴付けおよび同定である。化合物の混合物における活性の検出に関して本明細書中で記載された同じアッセイを、活性成分を精製するために、およびその誘導体を試験するために使用し得る。そのような不均一な抽出物の分画および精製の方法は、当該分野で公知である。もし望ましいなら、治療のために有用な薬剤であることが示された化合物を、当該分野で公知の方法によって化学的に改変する。治療的に価値があると同定された化合物を、続いて本明細書中で開示されたもののような、疾患または状態の動物モデルを用いて分析し得る。
【0111】
候補薬剤は、多くの化学基を含むが、最も多くの場合、有機分子、例えば100超で約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さい有機化合物である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、そして典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、例えば少なくとも2つの化学的官能基を含む。その候補薬剤は、多くの場合、1つ以上の上記の官能基で置換された、環状炭素または複素環式構造および/または芳香族または多環芳香族構造を含む。候補薬剤はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的アナログまたはその組み合わせを含む生体分子内に見出される。さらなる実施態様において、候補薬剤はペプチドである。
【0112】
いくつかの実施態様において、その候補薬剤はタンパク質である。いくつかの局面において、その候補薬剤は、天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質の断片である。従って、例えばタンパク質を含む細胞抽出物、またはタンパク質性細胞抽出物のランダムまたは指向性消化物を使用し得る。このようにして、原核生物および真核生物タンパク質のライブラリーを、本明細書中の方法を用いたスクリーニングのために作製し得る。そのライブラリーは、細菌タンパク質、真菌タンパク質、ウイルスタンパク質、および脊椎動物タンパク質、およびヒトタンパク質であり得る。
【0113】
C.組成物を作製する方法
本明細書中で開示された組成物および開示された方法を行うために必要な組成物を、他に明確に述べなければ、その特定の試薬または化合物に関して当業者に公知のあらゆる方法を用いて作製し得る。
【0114】
1.核酸合成
例えば、プライマーとして使用するオリゴヌクレオチドのような核酸を、標準的な化学的合成方法を用いて作製し得る、または酵素的方法またはあらゆる他の公知の方法を用いて産生し得る。そのような方法は、標準的な酵素消化に続くヌクレオチド断片の単離(例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989)第5、6章を参照のこと)による方法から、例えばMilligenまたはBeckman System 1Plus DNA合成機(例えばMillegen−Biosearch、Burlington、MAのModel8700自動化合成機またはABI Model380B)を用いた、シアノエチルホスホラミダイト法による、純粋な合成方法までの範囲であり得る。オリゴヌクレオチドを作製するために有用な合成方法はまた、Ikutaら、Ann.Rev.Biochem.53:323−356(1984)(ホスホトリエステル法および亜リン酸トリエステル法)、およびNarangら、Methods Enzymol.65:610−620(1980)(ホスホトリエステル法)によって記載されている。タンパク質核酸分子を、Nielsenら、Bioconjug.Chem.5:3−7(1994)によって記載されたもののような、公知の方法を用いて作製し得る。
【0115】
2.ペプチド合成
配列番号1から4までのような、開示されたタンパク質を産生する1つの方法は、2つ以上のペプチドまたはポリペプチドを、タンパク質化学技術によって一緒に連結することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドを、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学のいずれかを用いて、現在利用可能な実験室設備を用いて化学的に合成し得る。(Applied Biosystems,Inc.、Foster City、CA)。当業者は、開示されたタンパク質に対応するペプチドまたはポリペプチドを、例えば標準的な化学反応によって合成し得ることを容易に認識し得る。例えば、ペプチドまたはポリペプチドを合成し、そしてその合成用樹脂(synthesis resin)から切断し得ない、一方ペプチドまたはタンパク質のその他の断片を合成し、そして続いてその樹脂から切断し得る、それによってその他の断片において機能的にブロックされている末端の基を露出する。ペプチド縮合反応によって、これらの2つの断片を、それぞれそのカルボキシルおよびアミノ末端においてペプチド結合によって共有結合して、抗体またはその断片を形成し得る(Grant GA(1992)Synthetic Peptides:A User Guide.W.H.Freeman and Co.、N.Y.(1992);Bodansky MおよびTrost B.編(1993)Principles of Peptide Synthesis.Springer−Verlag Inc.、NY(それは少なくともペプチド合成に関連する資料に関して、本明細書中で参考文献に組み込まれる))。あるいは、そのペプチドまたはポリペプチドを、本明細書中で記載されたように、インビボで独立に合成する。一旦単離されたら、同様のペプチド縮合反応によって、これらの独立したペプチドまたはポリペプチドを連結して、ペプチドまたはその断片を形成し得る。
【0116】
例えば、クローニングしたペプチド部分、または合成ペプチド部分の酵素的ライゲーションは、比較的短いペプチド断片を結合して、より大きなペプチド断片、ポリペプチドまたはタンパク質ドメイン全体を産生することを可能にする(Abrahmsen Lら、Biochemistry、30:4151(1991))。あるいは、合成ペプチドのネイティブケミカルライゲーションを利用して、より短いペプチド断片から、大きなペプチドまたはポリペプチドを合成的に構築し得る。この方法は、2段階の化学反応から成る(Dawsonら、Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation.Science、266:776−779(1994))。最初の工程は、最初の共有結合産物として、チオエステル結合中間体を生じるための、保護されていない合成ペプチド−チオエステルと、アミノ末端のCys残基を含む別の保護されていないペプチド部分の化学選択的反応である。反応条件の変化無しに、この中間体は自発的な、迅速な分子内反応を起こして、ライゲーション部位で天然のペプチド結合を形成する(Baggiolini Mら(1992)FEBS Lett 307:97−101;Clark−Lewis Iら、J.Biol.Chem.269:16075(1994);Clark−Lewis Iら、Biochemistry、30:3128(1991);Rajarathnam Kら、Biochemistry 33:6623−30(1994))。
【0117】
あるいは、保護されていないペプチド部分を、化学的に結合し、ここで化学的ライゲーションの結果としてそのペプチド部分の間に形成される結合は、非天然(非ペプチド)結合である(Schnolzer,M.ら、Science 256:221(1992))。この技術を、タンパク質ドメインのアナログ、ならびに完全な生物学的活性を有する大量の比較的純粋なタンパク質を合成するために使用した(deLisle Milton RCら、Techniques in Protein Chemistry IV.Academic Press、New York、257−267頁(1992))。
【0118】
D.キット
上で記載した材料ならびに他の材料を、開示された方法を行うために、またはその実施を助けるために有用なキットとして、あらゆる適当な組み合わせで一緒に包装し得る。所定のキットにおけるキットの構成要素が、開示された方法において一緒に使用するためにデザインおよび適合されるなら有用である。例えば、HIVインテグラーゼ阻害剤に関するスクリーニングのためのキットが開示され、そのキットは1つ以上の本明細書中で開示されたペプチド、およびHIVインテグラーゼの少なくとも(at lease)1つのドメインを含む。そのキットはまた、1つ以上の酵母ツーハイブリッドアッセイ試薬を含み得る。潜在的なインテグラーゼ阻害剤のライブラリーとして、本明細書中で開示された1つ以上のペプチドを含むキットも開示される。
【実施例】
【0119】
以下の実施例を、当業者に、本明細書中で請求された化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法をどのように作製および評価するかの完全な開示および説明を提供するために述べ、そして純粋に例示であることを意図し、そして開示を制限することを意図しない。数(例えば量、温度等)に関して正確性を保証するために努力したが、いくらかの誤差および偏差を考慮する必要がある。他に示されなければ、割合は重量による割合であり、温度は℃である、または周辺温度であり、そして圧は気圧またはその付近である。
【0120】
実施例1:HIV INと相互作用するペプチドの同定
INの阻害剤を同定するための、酵母に基づくスクリーニングプラットフォームを構築した。このプラットフォームにおいて、HIV INを、鋳型としてpNL4−3に基づくプロウイルス(R9)から増幅し、そして2つの発現ベクターにクローニングしてIN C末端のGAL4 DNA結合ドメイン(GALDB)およびGAL4活性化ドメイン(GALAD)それぞれへの融合を生じた。ウェスタンブロット分析によって、GALAD−INを検出した(示していない);しかし、GALDB−INはほとんど検出されなかった。活性化ドメインおよび結合ドメインに融合したINを有する酵母は、ツーハイブリッドレポーターを活性化し、先に記録された自己会合を検出するために十分な量のINが存在したことを示唆する。他の組み合わせのコントロールベクターまたはHIV gagプラスGALDB−INまたはGALAD−INは、レポーターを活性化できず、ウイルスインテグラーゼは自己活性化因子ではないことを示唆した。
【0121】
IN結合ペプチドを同定するために、HIVインテグラーゼを産生する酵母を、VP16活性化ドメインに融合したランダムペプチドライブラリー(15アミノ酸の長さ;2700万の多様性)を有する酵母と接合させた。二倍体を選択培地にまいて、ウイルス標的と親和性を有するペプチドを有するクローンを同定した。結合したものを、プラスミド連鎖解析によって確認した(図1)。ウイルス標的と相互作用するが偽のベイト(HPVE6、およびHPVE7)とはしない、単一のペプチド、LeuTyrGluThrIleLeuIleLeuLeuPheLeuAspValAspThrGly(配列番号1)が、スクリーニングから出現した。図1は、ツーハイブリッドによるペプチドとHIV INの相互作用を示す。そのペプチドを、VP16−ZsgreenとのC末端融合物としてクローニングし、そしてAH109 Mat a、trp1−901、leu2−3、112、ura3−52、his3−200、gal4Δ、gal80Δ、LYS2::GAL1UAS−GAL1TATA−HIS3、GAL2UAS−GAL2TATA−ADE2、URA3:MEL1UAS−MEL1TATA−lacZにおいて、GALDBまたはGALDB−IN融合物との相互作用に関して試験した。−adeプレートにおける増殖は、選択レポーターの活性化を示した。C末端への親水性アミノ酸の追加は、可溶性ペプチドを可能にした。配列LeuTyrGluThrIleLeuIleLeuLeuPheLeuAspValAspThrGlyLysLysArg(配列番号2)を有するペプチドを合成し、そしてさらに研究した。配列番号2は、塩基性の尾部(LysLysArg)を有し、それはペプチドの可溶性を増加させる。同様に、配列LeuTyrGluThrIleLeuIleLeuLeuPheLeuAspValAspThrGly AspGluAsp(配列番号3)を有するペプチドを合成し、そしてさらに研究した。配列番号3は、酸性の尾部(AspGluAsp)を有し、それはペプチドの可溶性を増加させた。
【0122】
実施例2:IN阻害の確認
配列番号1、配列番号2、および配列番号3によるIN阻害を確認するために、協奏的組込みアッセイテストを用いて、レトロウイルスを模倣する構築物によるDNA組込みのレベルを測定した。
【0123】
一般的に、INはエステル交換反応を触媒する;ウイルスDNA末端の3’ヒドロキシル基が、標的DNAのホスホジエステル結合の対を攻撃する。ハーフサイト(half−site)組込み反応においてウイルスインテグラーゼは1つのウイルスDNA末端と、環状DNA標的の1つの鎖をライゲーションする;協奏的組込みにおいて、2つのウイルスDNA末端が環状標的へ結合し、標的DNAの直線化を引き起こす。図2は、環状標的DNAのハーフサイトおよび協奏的組込みの両方を示す。Craigieら、J.Biol.Chem.(2005)280(32:29334−9およびCraigieら、Retroviral DNA integration:reaction pathway and critical intermediates.EMBO J.(2006)25(6):1295−304を参照のこと、およびそれらはこれによって、このアッセイに関するさらなる詳細に関して、その全体として参考文献に組み込まれる。
【0124】
このアッセイを用いて、ウイルスインテグラーゼによるプロセシングは、協奏的組込みに向かい、そしてハーフサイト反応経路から離れる反応経路を指示することが以前に示された。ウイルスインテグラーゼによるレトロウイルスDNAのプロセシングは、協奏的組込みに十分なシナプス複合体(すなわちウイルスインテグラーゼ、レトロウイルスDNA、ゲノムDNA、および様々な他の内因性タンパク質)の形成を促進すると考えられる。
【0125】
これらの実験において、ペプチドB05751(配列番号2)またはペプチドB05759(配列番号3)のいずれかを、まずHIV INと混合した。それぞれ、B05751(配列番号2)は、可溶性を増加させるためにペプチドの末端に加えた、陽性に荷電したアミノ酸を有し、そしてB05759(配列番号3)は、可溶性を増加させるためにペプチドの末端に加えた、陰性に荷電したアミノ酸を有する。いずれかのペプチドをINとプレインキュベートした場合、そのペプチドは、約5μMの範囲でインビトロの協奏的組込み活性を阻害した。そのペプチドは、ウイルスインテグラーゼおよびウイルスDNA末端の間の安定な複合体のアセンブリーを阻害するようである。これは、MK0518のような鎖転移阻害剤で見られるものとは異なっていた(MK0518のような阻害剤によって、鎖転移複合体(STC)は蓄積する;しかし、これは本明細書中で記載されたペプチドでは見られない)。図3は、除タンパク無しの協奏的DNA組込みに関するアッセイを示す。濃度依存性の方式で、STCはB05751(配列番号2)およびB05759(配列番号3)の両方によって影響された。図4は、除タンパクありの協奏的DNA組込みに関するアッセイを示す。濃度依存的な方式で、協奏的ウイルスDNA組込みは、B05751(配列番号2)およびB05759(配列番号3)濃度が増加するにつれて減少する。これらの結果は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3が、HIV INと相互作用することによって、ウイルスDNAの標的DNAへの組込みを阻害することを確認した。
【0126】
この段階において、阻害のメカニズムはまだ完全に明らかではない。そのペプチドはウイルスインテグラーゼの多量体形態を安定化させ得る、または二量体の形成を阻害し得る。それに加えて、そのペプチドは、DNAの前にウイルスインテグラーゼに加えた場合は阻害するが、DNAを加えた後では阻害しない(図5)。そのペプチドは、ウイルスインテグラーゼとDNAの相互作用の前に機能するので、理論的に同義の薬剤が作用し得る短い薬学的ウィンドウしか存在し得ない。
【0127】
実施例3:INの化学的阻害剤のスクリーニング
ペプチド−IN相互作用と共に上で記載した酵母ツーハイブリッドシステムを用いて、化学ライブラリーを、ハイスループット条件下で、酵母においてペプチド−HIV IN相互作用を破壊する化合物に関してスクリーニングし得る。ペプチドおよび標的の間の相互作用に干渉する化学物質を、そのレポーター転写を抑制する能力によって同定する。天然ライブラリー由来の化合物(すなわち海洋生物由来の単離化合物)および公知の薬剤様の性質を有する実質的に純粋な化合物を含む、高い多様性の化学物質ライブラリーを利用する。これらを、個々に、または小さいプールで(<10個の化合物/プール)、10〜100μMの濃度でスクリーニングする。スクリーニングする各化合物またはプールのネガティブコントロールとして、これらの酵母細胞を、その形成がレポーターを活性化させる無関係の複合体を発現する酵母細胞に対してスクリーニングする。
【0128】
スクリーニングに関して最も良い候補を選択するために、選択的ヒット、すなわち標的ペプチド株のシグナルを抑制するが、コントロール株は抑制しないこれらの化合物を、協奏的組込みアッセイにおいて、そのウイルスインテグラーゼ活性を阻害する能力に関して試験する。
【0129】
酵母LacZアッセイを、以下のように実施する。酵母株を、トリプトファンおよびロイシン要求性の50mlの選択培地中で(2%デキストロースを補充)、30℃において振とうしながら一晩インキュベートすることによって、飽和まで増殖させる。次いで酵母培養物を選択培地(2%デキストロースを補充した)中で、0.05の最終OD600吸光度まで希釈する。60マイクロリットルのこの細胞懸濁液を、384穴マイクロタイタープレート(CliniPlate#11310−888、Thermolabsystems、Fi)のそれぞれのウェルにアリコートにわける。次いで600nlの10mMの化学物質(またはコントロールの場合は純正の(neat)DMSO)を、384穴マイクロタイタープレートの各ウェルにおいて酵母に加える。酵母プラス化学物質を含む384穴マイクロタイタープレートを、Sterile Cultインキュベーター中で18時間増殖させる。標的ペプチド株プラス化学物質を含む320ウェルに加えて、各384穴プレートは、以下のような64個のコントロールウェルを含む:ポジティブコントロール株プラス600nlのDMSOを含む16ウェル;600nlのDMSOを含むネガティブコントロール株;および標的ぺプチド酵母プラス600nlのDMSOを含む32ウェル。インキュベーター内でのインキュベーション後、細胞を再懸濁し、そして各ウェルのOD600吸光度の値を、SaphireIIマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて測定および記録する。次いでウェルあたり9マイクロリットルの細胞を、黒色384穴マイクロプレート(Matrical低容積MP101−1−PS、Spokane WA)に移す。3マイクロリットルのYPER(Pierce Chemicals)を各ウェル(酵母を含む)に加える。酵母の溶解を可能にするために、そのプレートを室温で30分間インキュベートする。本発明者らは、次いで各ウェルに、Z−バッファー(60mMのNaHPO・7HO、40mMのNaHPO・HO、10mMのKCl、50mMのMgSO・7HO、50mMのβ−メルカプトエタノール)中で、22.5μlの1mMのCUG(β−ガラクトシダーゼ基質、Molecular Probes)を加える。その溶液を、室温で30分間インキュベートし、その後2.5μlの1M NaCOを加えて反応を停止する。次いで各ウェルの蛍光の値を、390nmにおいて励起、および455nmのカットオフフィルターを用いて460nmで発光を記録する、SapphireIIリーダー(Tecan)を用いて測定および記録する。OD600吸光度の値および蛍光の値の両方を、バックグラウンドに関して引き、そして蛍光の値(あらゆる所定のウェルに関して)を、OD600吸光度の値(対応するウェルの)で割ることによって、正規化した蛍光の値を得る。他のlacZ基質、例えばBeta−Glo(promega)を、レポーターからの転写活性の検出のために使用し得、それは1工程の添加に続いて、細胞への添加の1時間後に読み取る。
【0130】
最初に10および100μMの間の領域に集中して、ある範囲の濃度を試験する。最終的なスクリーニング濃度を、真の陽性が約1%の率で回収され、そして酵母の増殖に対する大きな負の効果の頻度が低くなり得る(<10%)ように選択する。50μMの最終アッセイ濃度を生じるために十分な濃度で、化合物をマスタープレートから作業ストックへ希釈する。陽性を、DMSOコントロール株より40%低いシグナル(%RFU/OD600)およびコントロールと比較して75%の増殖として規定する。
【0131】
次いで陽性を、上記で述べた協奏的組込みアッセイによってさらにスクリーニングする。もしこれらの化学物質が協奏的ウイルスDNA組込みを阻害すれば、これらの化学物質は、HIV INの実行可能な阻害剤であると考えられる。
【0132】
実施例4:ペプチドはHIVインテグラーゼのN末端およびC末端の欠失物に結合する
ペプチドによる阻害のメカニズムをさらに理解するために、ペプチドの結合部位(複数可)の位置を決定した。ペプチドの結合部位(複数可)の解明は、インテグラーゼとの共結晶研究、インビボ置換アッセイ、および酵母における化学的スクリーニングにおいて使用するために、全長ではなくインテグラーゼの断片の使用を可能にし得る。例えば、もしそのペプチドがインテグラーゼの2つの領域に結合するなら、ペプチドとインテグラーゼの相互作用を遮断する化学物質を単離することはより困難になり得る。HIV INにおける本発明のペプチドの相互作用の領域を決定するために、INの6つのN−(pLBal3(18〜288)、pBal4(19〜288)、pBal8(31〜288)、pBal5(40〜288)、pLBal2(43〜288)、pBal3(48〜288))、および4つのC末端欠失ミュータント(pCdelta1(1〜203)、pBalC26(1〜210)、pCdelta2(1〜220)、pCdelta3(1〜215))を試験した。そのインテグラーゼ断片を、GAL4のACドメインに融合し、そしてGAL4 DNA結合ドメインに融合したペプチドによるツーハイブリッドシステムで、相互作用を試験した。pLBal3、pBal4、pBal8、pBal5、pLBal2、pBal3、pBalC26の構築を、これによって参考文献に組み込まれるKalpanaおよびGoff、Genetics 90:10593−10597(1993)において記載する。C末端欠失物の配列決定は、DNAプラスミドにおけるストップコドンの位置のために、タンパク質のC末端の前に少数のさらなる非INアミノ酸を示す。
【0133】
プラスミドを、基礎株TSY201 MATa ura3−52、his3−200、ade2−201、lys2−801、trp1−901、PDR5delta、SNQ2delta、leu2−3,112、gal4−542、gal80−538 LYS2::GAL2UAS−GAL1TATA−HIS3、URA3::GAL417mers(X3)−CyC1TATA−lacZへ形質転換した。ペプチドのインテグラーゼとの相互作用は、lacZレポーターの発現を活性化し、そして酵母におけるベータガラクトシダーゼの蓄積を引き起こす;その相互作用はまた、HIS3レポーターを活性化して、ヒスチジンを欠く合成プレート上での増殖を可能にする。ペプチドとの相互作用を保持するINの欠失の程度を決定するために、プラスミドを有する株を、ロイシンおよびトリプトファンを欠く合成培地中で、対数期の中間まで増殖させた。PromegaのBeta−Glo基質を加えて、酵母におけるベータガラクトシダーゼ活性のレベルを測定した。
【0134】
Beta−Glo(登録商標)Assay Systemは、2つの構成要素から成り、それを組み合わせてBeta−Glo(登録商標)Reagentを形成する。この単一の試薬が、ルシフェリン−ガラクトシド基質(6−O−β−ガラクトピラノシル−ルシフェリン)を利用する結合酵素反応システムを提供する。この基質は、β−ガラクトシダーゼによって切断されてルシフェリンおよびガラクトースを形成する。次いでルシフェリンを、ホタルルシフェラーゼ反応において利用して、光を生じる。単一の試薬が細胞を溶解し、そしてβ−ガラクトシダーゼの量に比例する発光シグナルを産生するために必要な全ての構成要素を含むので、多くのプレートを迅速および効率的に処理し得る。
【0135】
N末端の欠失物および野生型は、B−Gal活性の測定できる増加を示し、INがGAL4システムにおいてペプチドに結合することを示唆した(図6)。それに加えて、C末端欠失物の全てが、DNA結合ドメインにおいてペプチドと相互作用した(図6)。pCdelta1、pBalC26、pCdelta3は、全長INよりもさらにより強くペプチドと相互作用した(図6)。融合タンパク質によって課される幾何学的制約も、融合タンパク質のGAL4部分またはIN部分の正常な機能のいずれかに対する効果のために、活性の差異に寄与し得る。
【0136】
上で記載した組成物および適用の方式は、本発明の好ましい実施態様の単なる説明であることが理解される。本発明の意図および範囲から離れることなく、多くの改変および代替の配置が、当業者によって考案され得、そして添付の特許請求の範囲は、そのような改変および配置を含むことが意図される。従って、本発明を、何が現在最も実用的および本発明の好ましい実施態様であるかに関連して、上記で具体的におよび詳細に説明したが、サイズ、材料、形、形態、機能および操作の方式、アセンブリーおよび使用におけるバリエーションを含むがこれに限らない、多くの改変を、本明細書中で述べた原理および概念から離れることなくなし得ることが当業者に明らかである。
【0137】
F.配列
【0138】
【化1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、およびそれらの変異体と少なくとも65%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む、ウイルスインテグラーゼ阻害ペプチド。
【請求項2】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、およびそれらの変異体と少なくとも90%のアミノ酸配列相同性を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、およびそれらの変異体のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
アミノ酸が、Dアミノ酸、およびLアミノ酸から独立して選択される、請求項1および3のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
アミノ末端、カルボキシル末端、または該アミノ末端および該カルボキシル末端の両方が改変される、請求項1および3のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
改変が、アセチル化、またはアミド化である、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4と少なくとも65%の配列相同性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4と少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
インテグラーゼを請求項1および6のいずれか1項に記載のペプチドと接触させる工程を含む、インテグラーゼ活性を阻害する方法。
【請求項10】
被験体におけるHIVを治療または予防する方法であって、請求項1および6のいずれか1項に記載のペプチドを該被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項11】
前記ペプチドが内部移行配列を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体がHIV感染のリスクのある、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体がHIVを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
レトロウイルスインテグラーゼに結合する候補薬剤を同定する方法であって、該方法は、
(a)レトロウイルスインテグラーゼの少なくとも1つのドメインを、請求項1および6のいずれか1項に記載のペプチドと、該ペプチドの該インテグラーゼに対する結合を可能にする条件下で、接触させる工程;
(b)該インテグラーゼを候補薬剤と接触させる工程;および
(c)該候補薬剤が該ペプチドを置換したかどうかを決定する工程
を含み、
ここで、該ペプチドの置換は、該候補薬剤が該インテグラーゼに結合することを示す、方法。
【請求項15】
前記候補薬剤が、酵母ツーハイブリッドスクリーニングシステムを用いて同定される、請求項14に記載の方法であって、ここで、酵母における転写活性化は、前記ペプチドが前記インテグラーゼに結合していることを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記候補薬剤が、酵母ツーハイブリッドスクリーニングを用いて同定される、請求項14に記載の方法であって、ここで、酵母におけるレポーター遺伝子の発現のバリエーションは、該候補薬剤が、前記ペプチドの前記インテグラーゼに対する結合を妨害していることを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記インテグラーゼの前記少なくとも1つのドメインが薬剤耐性変異を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドが、野生型インテグラーゼまたは薬剤耐性インテグラーゼへの結合についてスクリーニングするため変異させられる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記レトロウイルスインテグラーゼが、オルソレトロウイルス亜科、Supumaretrovirinae、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、イプシロンレトロウイルス、レンチウイルス、およびスプマレトロウイルス亜科からなる群から選択される、請求項9、14、および18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記レトロウイルスインテグラーゼが、トリ肉腫白血病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、アーベルソンマウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、異種向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV−1、HTLV−2)、ウシ白血病ウイルス、ワーレイ表皮過形成ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ピューマレンチウイルス、ウマ伝染性貧血(EIA)、ウシ免疫不全ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ビスナ/マエディウイルス、サル泡沫状ウイルスおよびヒト泡沫状ウイルス(HFV)からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インテグラーゼがHIVインテグラーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤耐性変異が、T66I、T66A、T66K、E92Q、F121Y、E138A、E138K、G140A、G140S、Y143R、Y143C、Y143H、S147G、Q148H、Q148R、Q148K、S153Y、N155H、N155S、R263K、L74M、E92Q、T97A、V151I、E157Q、G163R、I203M、S230R、S230N、H51Y、Q95K、H114Y、P145S、Q146P、T125K、A128T、Q146K、N155S、K160D、V72I、A154I、V165I、V201I、およびそのあらゆる組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521193(P2012−521193A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500974(P2012−500974)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027870
【国際公開番号】WO2010/108040
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(512007225)インテグラテック プロテオミクス, エルエルシー (1)
【出願人】(508285606)ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (8)
【Fターム(参考)】