説明

ウイルスキャプシドスペーサーペプチド1タンパク質のプロセシングの破壊によるHIV−1複製の阻害

CAスペーサーペプチド1(SP1)タンパク質前駆体(p25)由来のウイルスGagキャプシド(CA)タンパク質(p24)のプロセシングを破壊することによるHIV-1複製の阻害が開示される。Gag p25タンパク質における変異を含むアミノ酸配列(ジメチルスクシニルベツリン酸またはジメチルスクシニルベツリンによるp25からp24へのプロセシングの阻害の減少をもたらす変異を伴う)、このような変異した配列をコードするポリヌクレオチド、およびこのような変異した配列に選択的に結合する抗体もまた含まれる。阻害の方法、阻害化合物、およびHIV Gagタンパク質のタンパク質分解性プロセシングを標的化する阻害化合物を発見する方法が含まれる。1つの態様において、このような化合物は、プロテアーゼ酵素ではなくGagタンパク質分解切断部位への結合によって、GagとのHIVプロテアーゼ酵素の相互作用を阻害する。別の態様において、Gagタンパク質分解部位の領域における変異を含むウイルスまたは組換えタンパク質が、タンパク質分解性プロセシングを標的化する化合物を同定するためのスクリーニングアッセイ法において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって資金援助された研究開発に関する言及
米国政府は、NIH/NIAIDによって授与された助成金番号2R44AI051047-02によって規定されるように、本発明における一括払いライセンス、および妥当な条件に対して他者にライセンス供与を行うことを特許権者に要求するための限られた状況における権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、HIV感染を阻害する方法、HIV感染のインヒビター、およびHIV感染のインヒビターの発見の方法を含む。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、レトロウイルスのサブファミリーであるレンチウイルスのメンバーである。多くのレトロウイルスは周知の発癌性物質である。HIVはそれ自体、ヒトまたは他の動物において癌を引き起こすことは知られていないが、これは宿主に対して恐るべき難題を提示する。ウイルスゲノムは、休止細胞と分裂細胞の両方においてその複製の速度をウイルスが制御することを可能にする多くの調節エレメントを含む。最も重要なことは、HIVが免疫系の細胞に感染および侵入し;これが身体の免疫系を破壊し、そして患者を日和見感染および新生物に対して感受性にする。免疫欠損は、数年間で100%に達する高い死亡率を伴って、進行性および不可逆性であるようである。
【0004】
HIV-1は、細胞表面抗原CD4(OKT4、T4、およびleu3としてもまた知られる)を発現する、免疫系の細胞であるT4リンパ球に対して栄養性かつ細胞変性性である。ウイルスの栄養性は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質gpl20と細胞表面CD4分子との間の相互作用に起因する(Dalgleish et al. Nature 312:763-767(1984))。これらの相互作用はHIVによる感受性の高い細胞の感染を媒介するのみならず、感染したT細胞および感染していないT細胞のウイルス誘導性融合物の原因でもある。この細胞の融合は、HIV感染患者において巨大な多核シンシチウムの形成、細胞死、およびCD4細胞の進行性の枯渇を生じる。これらの事象は、HIV誘導性の免疫抑制およびその後の続発症、日和見感染、および新生物を生じる。
【0005】
CD4+T細胞に加えて、HIVの宿主範囲は単核食細胞系統の細胞を含み(Dalgleish et al., 前出)、これには、血液単球、組織マクロファージ、皮膚のランゲルハンス細胞、およびリンパ節中の樹枝状細網細胞が含まれる。HIVはまた、神経栄養性であり、中枢神経系において単球およびマクロファージに感染可能であり、重篤な神経学的損傷を引き起こす。マクロファージおよび単球はHIVの主要なリザーバーである。これらは、CD4保有T細胞と相互作用および融合し得、T細胞枯渇を引き起こし、従ってAIDSの病原性に寄与する。
【0006】
HIV-1治療のための薬物の開発において顕著な進歩がなされてきた。HIVの治療剤には、以下が含まれるがこれらに限定されない:AZT、3TC、ddC、d4T、ddI、テノホビル、アバカビル、ネビラピン(nevirapine)、デラビルジン(delavirdine)、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、ロピナビル、およびアンプレナビルの少なくとも1つ、または、互いに組み合わせるか、もしくは生物学的に基づく抗レトロウイルス剤もしくは抗体(例えば、gp41由来ペプチド、エンフュービルタイド(enfuvirtide)(Fuzeon;Timeris-Roche)およびT-1249(Trimeris)、または可溶性CD4、CD4に対する抗体、およびCD4もしくは抗CD4の結合体など)と併用するか、または本明細書中にさらに提示されるような、任意の他の抗レトロウイルス剤もしくは抗体。これらの薬物の組み合わせが特に有効であり、血漿中で検出不可能なレベルまでウイルスRNAのレベルを減少させ得、ウイルス耐性の発生を示し、これ伴って患者の健康および寿命の改善がもたらされる。
【0007】
これらの進歩にも関わらず、現在利用可能な薬物投与計画にはなお問題が存在する。これらの薬物の多くは重大な毒性を示し、他の副作用(例えば、脂肪の再分布)を示し、またはコンプライアンスを減少させる複雑な投薬スケジュールを必要とし、それによって効力を限定する。HIVの耐性株は、しばしば、組み合わせ治療に対してさえ長時間にわたって出現する。これらの薬物の高いコストもまた、とりわけ先進国以外でのそれらの広範囲な使用に対する制限である。
【0008】
これらの問題を回避するためのさらなる薬物の開発のための広範囲な必要性がなお存在する。理想的には、これらは、組み合わせ治療のために必要な装備一式に加え、ウイルス生活環における異なる段階を標的化し、かつ最少の毒性を示すがより低い製造コストを有する。
【0009】
HIVビリオンアセンブリーは、ウイルスGagポリタンパク質が蓄積する感染細胞の表面膜で起こり、細胞表面から出芽する未成熟ビリオンのアセンブリーをもたらす。ビリオン中では、Gagがウイルスプロテイナーゼ(PR)によって、マトリックス(MA)タンパク質、キャプシド(CA)タンパク質、ヌクレオキャプシド(NC)タンパク質、およびC末端p6構造タンパク質に切断される(Wiegers K. et al., J. Virol. 72:2846-2854 (1998))。Gagプロセシングは、内部ビリオン構造の再組織化、「成熟」と呼ばれるプロセスを誘導する。成熟HIV粒子中で、MAは膜の内部表面に整列するのに対して、CAはNCと複合体形成するゲノムRNAを入れる円錐状コアを形成する。切断および成熟は粒子形成のために必要ではないが、感染性のためには必須である(Kohl, N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4686-4690 (1998))。
【0010】
CAおよびNCならびにNCおよびp6は、それぞれ、14アミノ酸および10アミノ酸の短いスペーサーペプチド(p2)(それぞれ、スペーサーペプチド1(SP1)およびSP2)によってGagポリタンパク質上で分離される(Wiegers K. et al., J. Virol. 72:2846-2854(1998), Pettit, S.C. et al., J. Virol. 68:8017-8027 (1994), Liang et al. J. Virol. 76:11729-11737 (2002))。これらのスペーサーペプチドは、粒子成熟の間、それらのN末端およびC末端でPR-媒介性切断によって遊離される。HIV Gagポリタンパク質およびGag-Polポリタンパク質上の個々の切断部位は異なる部位でプロセシングされ、この順次的なプロセシングが最終生成物の前に一時的に現れる中間体を生じる。このような中間体は、ビリオンの形態形成または成熟のために重要であるかもしれないが、成熟ウイルス粒子の構造に寄与しない(Weigers et al. およびPettit, et al., 前出)。最初のGag切断事象はSP1のC末端で起こり、N末端MA-CA-SP1中間体を、C末端NC-SP2-p6中間体から分離する。CA-SP1からMAを、およびp6からNC-SP2を分離する引き続く切断は、約10倍遅い速度で起こる。CAのC末端からのSP1の切断は遅発性の事象であり、SP1-NC部位での切断よりも400倍遅い速度で起こる(Weigers et al. およびPettit, et al., 前出)。未切断のCA-SP1中間体タンパク質は代替的に「p25」と名付けられたのに対して、切断されたCAタンパク質は「p24」と名付けられた。
【0011】
CAのC末端からのSP1の切断は、Gagプロセシングカスケードにおける最後の事象の1つであるようであり、最終的なキャプシド凝縮および成熟した感染性ウイルス粒子の形成のために必要である。成熟ビリオンの電子顕微鏡写真は、高電子密度の円錐形コアを有する粒子を示す。他方、CA-SP1切断を欠くウイルス粒子の電子顕微鏡研究は、球状の高電子密度リボヌクレオタンパク質コアおよびウイルス膜のすぐ内側に位置する半月状の高電子密度層を有する粒子を示す(Weigers et al. 前出)。CA-SP1切断部位またはその近傍の変異は、Gagプロセシングおよび通常の成熟プロセスを破壊し、それによって非感染性ウイルス粒子の産生を生じることが示されてきた(Weigers et al. 前出)。表現型的には、これらの粒子はGagプロセシングの欠損(これは、ウェスタンブロット分析におけるp25(CA-SP1)の存在においてそれ自体を明らかにする)、および欠損性のキャプシド凝縮から生じる上記の異常な粒子形態を示す。
【0012】
以前に、ベツリン酸およびプラタン酸(platanic acid)がSyzigium claviflorumから単離され、抗HIV活性を有することが決定された。ベツリン酸およびプラタン酸は、それぞれ1.4μMおよび6.5μMのEC50値で、かつそれぞれ9.3および14の治療指数(T.I.)値で、H9リンパ球細胞中でHIV-1複製に対して阻害活性を示した。ベツリン酸の水素付加はジヒドロベツリン酸を生じ、これは、0.9のEC50値および14のT.I.値で、わずかにより強力な抗HIV活性を示した(Fujioka, T., et al., J. Nat. Prod. 57:243-247 (1994))。特定の置換型アシル基(3',3'-ジメチルグルタリル基および3',3'-ジメチルスクシニル基)を有するベツリン酸のエステル化は、増強した活性を有する誘導体を産生する(Kashiwada, Y., et al., J. Med. Chem. 39:1016-1017 (1996))。強力な抗HIV剤であるアシル化ベツリン酸およびジヒドロベツリン酸はまた、米国特許第5,679,828号において記載されている。抗HIVアッセイは、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)-ベツリン酸およびジヒドロベツリン酸アナログの両方が急性感染したH9リンパ球中で極度に強力な抗HIV活性を、それぞれ1.7×10-5μM未満のEC50値で実証することを示した。これらの化合物は、それぞれ970,000より高い、および400,000より高い顕著なT.I.値を示した。
【0013】
米国特許第5,468,888号は、ルパン(lupane)

の28アミド誘導体を開示し、これはHIV感染細胞に対して細胞保護効果を有するとして記載される。
【0014】
日本国特許出願第JP 01 143,832号は、抗癌剤の分野において有用であるベツリンおよびその3,28ジエステルを開示する。
【0015】
米国特許第6,172,110号は、以下の式または薬学的に許容されるその塩を有する、ベツリン酸およびジヒドロベツリンの誘導体を開示する。

ベツリンおよびジヒドロベツリンの誘導体

ここでR1はC2-C20置換型または非置換型のカルボキシアシルであり、R2はC2-C20置換型または非置換型のカルボキシアシルであり;かつR3は水素、ハロゲン、アミノ、置換されていてもよいモノアルキルアミノもしくはジアルキルアミノ、または--OR4であり、ここでR4は水素、C1-4アルカノイル、ベンゾイル、またはC2-C20置換型もしくは非置換型のカルボキシアシルであり;ここで破線はC20とC29の間の任意の二重結合を表す。
【0016】
米国特許出願第60/413,451号は、3,3-ジメチルスクシニルベツリンを開示し、これは参照により本明細書に組み入れられる。Zhu, Y-M. et al., Bioorg. Chem Lett. 11:3115-3118 (2001); Kashiwada Y. et al., J. Nat. Prod. 61:1090-1095 (1998); Kashiwada Y. et al., J. Nat. Prod. 63:1619-1622 (2000); およびKashiwada Y. et al., Chem. Pharm. Bull. 48:1387-1390 (2000)は、ジメチルスクシニルベツリン酸およびジメチルスクシニルオレアノール酸を開示する。コハク酸を用いるベツリンの3'炭素のエステル化は、HIV-1活性を阻害することが可能な化合物を産生した(Pokrovskii, A.G. et al., Gos. Nauchnyi Tsentr Virusol. Biotekhnol. 「Vector,」9:485-491 (2001))。
【0017】
公開された国際公開公報第02/26761号は、真菌感染を処置するためのベツリンおよびそのアナログの使用を開示する。
【0018】
ウイルスの薬物耐性株に対して有効である新規なHIV阻害方法についての必要性が存在する。本発明のストラテジーは、認可された治療とは異なる方法においてウイルスを阻害する治療方法および化合物を提供することである。
【0019】
本発明の化合物および方法は、新規な作用のメカニズムを有し、それゆえに、現在の逆転写酵素およびプロテアーゼインヒビターに対して耐性であるHIV株に対して活性である。このようにして、本発明は、HIV/AIDSを処置するための完全に新規なアプローチを提供する。
【発明の開示】
【0020】
発明の簡単な概要
一般的に、本発明は、HIV-1 Gagタンパク質のタンパク質分解性プロセシングを標的化する、阻害方法、阻害化合物、および阻害化合物を同定する方法を提供する。1つの態様において、このような化合物は、プロテアーゼ酵素のHIV-1 Gagタンパク質との相互作用を阻害する。別の態様において、相互作用のこのような阻害は、Gagへの化合物の結合を介して起こる。3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)によるHIV-1のCA-SP1タンパク質のプロテアーゼ切断の阻害は1つの例であるが、他のタンパク質分解部位が、DSBがGagと相互作用するのと同様の様式で基質と相互作用する阻害化合物を使用する同様のアプローチによって標的化され得る。
【0021】
本発明の第1の局面は、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングを阻害するが、他のGagプロセシング段階に効果を有さない方法に指向される。
【0022】
本発明の第2の局面は、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングを阻害するが、他のGagプロセシング段階に効果を有さない化合物を同定するための方法に指向される。
【0023】
本発明の第3の局面は、本明細書中に開示されるHIV-1複製を阻害する化合物を同定するための方法によって同定される化合物または薬学的組成物に及ぶ。
【0024】
本発明の第4の局面は、Gag p25タンパク質中に変異を含むアミノ酸配列をコードする配列を含むポリヌクレオチドに指向され、該変異は、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25からp24へのプロセシングの阻害の減少をもたらす。本発明のこの局面はまた、該ポリヌクレオチドを含むベクター、ウイルス、および宿主細胞、ならびに該タンパク質を作製する方法に指向される。
【0025】
本発明の第5の局面は、Gag p25タンパク質中に変異を含むアミノ酸配列に指向され、該変異は、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25からp24へのプロセシングの阻害の減少をもたらす。
【0026】
本発明の第6の局面は、Gag p25タンパク質中に変異を含むアミノ酸配列を選択的に結合する抗体に指向され、該変異は、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25からp24へのプロセシングの阻害の減少をもたらす。該抗体を作製する方法、該抗体を産生するハイブリドーマ、および該ハイブリドーマを作製する方法もまた、本発明のこの局面に含まれる。
【0027】
本発明の第7の局面は、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体を含むキットに関する。
【0028】
本発明はさらに、処理された感染細胞から放出されたウイルス粒子の成熟をブロックする化合物と該細胞を接触させることによって動物の細胞中のHIV-1感染を阻害する方法に関する。1つの態様において、放出されるウイルス粒子は、凝縮されていないコアおよびウイルス膜の近傍の独特の薄い高電子密度層を示し、かつ減少した感染性を有する。ウイルスGag p25タンパク質のプロセシングを阻害し、かつウイルス粒子の成熟を破壊することの両方を行う化合物と、動物細胞を接触させる方法が含まれる。HIV感染細胞を処理する方法もまた含まれ、ここで、該細胞に感染するHIVは他のHIV治療に応答しない。
【0029】
本発明はさらに、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングを阻害するが、他のGagプロセシング段階に効果を有さない化合物を同定するための方法をさらに含む。この方法は、HIV-1感染細胞を試験化合物と接触させる段階、およびその後で、p25の存在を検出するために、放出されるウイルス粒子を分析する段階を含む。p25を検出するための方法には、ウイルスタンパク質のウェスタンブロッティングおよびp25に対する抗体を使用する検出、ゲル電気泳動、ならびに代謝的に標識されたタンパク質の画像化が含まれる。p25を検出するための方法にはまた、p24からp25を区別するために、p25またはSP1に対する抗体を使用するイムノアッセイが含まれる。例えば、マイクロウェルアッセイが実行され得、ここでは、界面活性剤で可溶化されたウイルス中のp25が、プラスチックマイクロウェルプレートに結合するSP1に特異的な抗体を使用して捕捉される。洗浄段階の後、結合したp25が、適切な検出試薬(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイのためのアルカリホスファターゼ)に結合体化されている、p24に対する抗体を使用して検出される。このメカニズムを通して作用する化合物で処理された細胞によって放出されたウイルスは、未処理のビリオンと比較してp25のレベルの増加を有する。
【0030】
本発明はさらに、化合物を同定するための方法に指向され、この方法は、HIV-1感染細胞を試験化合物と接触させる段階、およびその後で、接触した細胞によって放出されるウイルス粒子を薄片作製および透過型電子顕微鏡によって分析する段階、ならびにビリオン粒子が、凝縮されていないコアおよびウイルス膜の近傍の独特な薄い高電子密度層を用いて検出されるか否かを同定する段階を含む。
【0031】
本発明はまた、上述のスクリーニング方法によって同定される化合物に指向される。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24タンパク質(CA)へのプロセシングを破壊する化合物を使用する段階を含み、それによって非感染性ウイルス粒子の形成を生じる、動物の細胞中のHIV-1複製を阻害する方法に指向される。
【0033】
CA-SP1切断が欠損している変異体ウイルスは非感染性であることが示された(Wiegers K. et al., J. Virol. 72:2846-2854 (1998))。3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)が、p25からp24へのプロセシングを破壊しかつHIV-1複製を強力に阻害する化合物の例である。この化合物の活性は、p25からp24へのプロセシング段階に特異的であり、Gagプロセシングにおける他の段階には特異的ではない。さらに、DSB処理は、図3に記載されるように異常なHIV粒子形態を生じる。
【0034】
変異型のHIV-1が生成ており、ここでSP1配列が改変されて、これらの株をCA-SP1プロセシングを破壊する化合物に対して耐性にしている。これらの変異体ウイルスについてのデータを使用して、これらの化合物の抗ウイルス活性に関与する天然のGag中のアミノ酸残基を同定する。1つの態様において、CA-SP1プロセシングを破壊する化合物は、これらのアミノ酸残基を含むGagタンパク質の領域とHIV-1プロテアーゼの相互作用を阻害する。別の態様において、CA-SP1プロセシングを破壊する化合物は、これらのアミノ酸残基を含む領域に結合する。別の態様において、CA-SP1プロセシングを破壊する化合物は、Gagの別の領域に結合し、それによってCA-SP1切断部位領域とのHIV-1プロテアーゼの相互作用を阻害する。別の態様において、CA-SP1切断部位領域中に変異を含むウイルスまたは組換えタンパク質は、CA-SP1プロセシングを破壊する化合物を同定するためのスクリーニングアッセイ法において使用され得る。
【0035】
3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)によるCA-SP1のプロセシングの破壊に関与するHIV-1 Gag中のアミノ酸残基は、DSBに対する耐性について選択されたウイルス単離物のGag-Pol遺伝子をスクリーニングすることによって同定された。これらの耐性ウイルスからのアミノ酸配列は、DSB感受性HIV-1単離物からのGag-Pol遺伝子配列と比較された。2つの単一のアミノ酸の変化、Gagポリタンパク質(図4を参照されたい)中での、残基364におけるアラニン(Ala)からバリン(Val)への置換(SEQ ID NO:4)および第2の単離物中での残基366における変化(SEQ ID NO:6)がDSB-耐性ウイルス中で同定された。これらの残基は、CA-SP1切断部位のすぐ下流に位置する(SP1のN末端)。アラニンは、Los Alamos National Laboratoryデータベース中ですべてのHIV-1分岐群を通してこれらの位置で高度に保存されている。CA-SP1切断部位の上流および下流の5アミノ酸残基もまた、種々の分岐群間で高度に保存されている。しかし、多数の分岐群中の切断部位の上流の1残基でイソロイシンがロイシンに置き換わっている(図4、SEQ ID NO:1を参照されたい)(「HIV Sequence Compendium 2002,」Kuiken et al.編、Los Alamos National Laboratory, Los Alamous, NM)。
【0036】

3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)の構造
【0037】
本発明はまた、動物の細胞中のHIV-1複製を阻害する方法を含み、この方法は、HIVプロテアーゼとCA-SP1との相互作用を阻害する化合物と感染細胞を接触させる段階を含み、これが、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングの阻害をもたらすが、他のGagプロセシング段階には有意な効果を有さない。
【0038】
本発明はまた、動物の細胞中のHIV-1複製を阻害する方法を含み、この方法は、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングを阻害する化合物と感染細胞を接触させる段階を含み、それによって、放出されるウイルス粒子を非感染性にするが、他のGagプロセシング段階には有意な効果を有さず、かつ/または、ここで該阻害は、処理された細胞から放出されるウイルスの量を有意に減少させず、かつ/もしくは、放出されたビリオンへのRNAの取り込みの量に対して有意な効果を有さない。本発明はまた、動物の細胞中のHIV-1複製を阻害する方法に拡張され、この方法は、処理された感染細胞から放出されたウイルス粒子の成熟を阻害する化合物と感染細胞を接触させる段階を含む。1つの態様において、これらの放出されたウイルス粒子は、球状の高電子密度コアを示し、これは、成熟ウイルス粒子に付随する円錐状コア構造ではなくむしろウイルス粒子に関して中心性でなく、ウイルス膜のすぐ内側に位置する半月状の高電子密度層を有し、かつ減少した感染性を有するかまたは感染性を有さない。あるウイルス粒子はまた、上記の変化したコア構造を示すウイルス粒子の大部分とともに円錐状コア構造を示し得る。
【0039】
異常なp25からp24へのプロセシングはまた、他の成熟出芽欠損において見られる(Wild, C.T. et al., XIV Int. AIDS Conf., Barcelona, Spain, Abstract MoPeA3030 (2002年7月))。これらの欠損は、Gag後期ドメイン(PTAP)中の変異または出芽を破壊するTSG-101媒介ウイルスアセンブリーの欠損を含んだ(Garrus, J.E et al., Cell 107:55-65 (2001)およびDemirov, D.G. et al., J. Virology 76:105-117 (2002))。しかし、これらの変異がウイルス放出の阻害を引き起こすのに対して、DSB処理はウイルス放出に対して有意な効果を有しない。これらの成熟/出芽変異体の形態はまた、DSB処理後に観察されるものとは全く異なる。さらに、ウイルスRNAダイマー化を妨害し、かつ欠損性コア構造を有する未成熟ウイルスの産生をもたらす変異は、類似のGagプロセシング表現型を与える(Liang, C. et al., J. Virology, 73:6147-6151, (1999))。しかし、これらの場合において、RNA取り込みは阻害され、粒子の形態はDSB処理後のものとは区別される。
【0040】
本明細書中で開示される動物の細胞中のHIV-1複製を阻害する方法は、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)への切断部位の近傍またはその部位に結合する化合物を含み、それによって、CA-SP1切断部位とのHIVプロテアーゼの相互作用を阻害する。
【0041】
本発明は開示された方法のいずれかを含み、ここで、該細胞に感染するHIVは他のHIV治療に応答しない。
【0042】
本発明は、HIV Gag p25タンパク質(CA-SP1)中の変異を含むアミノ酸配列をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含み、該変異は、DSBによるp25(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングの阻害の減少をもたらす。本発明のポリヌクレオチドは、CA-SP1切断部位の近傍に任意で位置するか、またはCA-SP1のSP1領域中に任意で位置する変異を含む。該変異は、KARVLVEAMS(SEQ ID NO:2)またはKARVIAEVMS(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列中に存在し得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9として示される配列に及ぶ。本発明はまた、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、ならびに、該細胞を培地中でインキュベートする段階および培地からポリペプチドを回収する段階を含む、該ポリペプチドを産生する方法を含む。
【0043】
本発明はさらに、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。本発明はまた、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:10にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含み、これは、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25からp24へのプロセシングの阻害の減少を生じ、およびまた、ここで該変異は、CA-SP1のSP1領域中に任意で位置する。本発明はまた、該ポリペプチドを含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、および該ポリペプチドを産生する方法に指向され、この方法は、培地中で該宿主細胞をインキュベートする段階、および培地から該ポリペプチドを回収する段階を含む。
【0044】
「単離された」とは、天然の状態から「人の手によって」変化されることを意味する。「単離された」組成物または物質が天然に存在する場合、これはその天然の環境から変化したかまたは取り出されたか、またはその両方である。本発明の「単離された」核酸分子はまた、核酸分子、DNA、またはRNAを意図し、その天然の環境から取り出されている。例えば、ベクター中に含まれる組換えDNA分子は、本発明の目的のために単離されると見なされる。単離されたDNA分子のさらなる例には、異種宿主細胞中に維持された組換えDNA分子、または溶液中の精製された(部分的または実質的に)DNA分子が含まれる。単離されたRNA分子には、本発明のDNA分子のインビボまたはインビトロRNA転写物が含まれる。本発明に従う単離された核酸分子はさらに、合成的に産生されたこのような分子を含む。
【0045】
「ポリヌクレオチド」とは、一般的に、修飾されていないRNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドをいう。「ポリヌクレオチド」には、非限定的に、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子(一本鎖もしくはより代表的には二本鎖、または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得る)が含まれる。さらに、「ポリヌクレオチド」とは、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域をいう。ポリヌクレオチドという用語はまた、1つまたは複数の修飾された塩基を含むDNAまたはRNA、および安定性または他の理由のために修飾されたバックボーンを有するDNAまたはRNAを含む。「修飾された」塩基には、例えば、トリチウム化塩基および通常でない塩基(イノシンなど)が含まれる。種々の修飾がDNAおよびRNAになされてきており、従って、「ポリヌクレオチド」は、典型的に天然において見い出されるようなポリヌクレオチドの、化学的、酵素的、または代謝的に修飾された型、ならびにウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学型を含む。「ポリヌクレオチド」また、比較的短いポリヌクレオチドを含み、しばしばオリゴヌクレオチドと呼ばれる。
【0046】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわち、ペプチドアイソスターによって互いに結合される2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質をいう。「ポリペプチド」とは、一般的にペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマーと一般的にいわれる短い鎖、およびタンパク質と一般的にいわれるより長い鎖の両方をいう。ポリペプチドは、20種の遺伝子にコードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。「ポリペプチド」には、天然のプロセス(例えば翻訳後プロセシング)、または当技術分野で周知の化学修飾技術によってのいずれかで修飾されるアミノ酸配列を含む。このような修飾は基本的な教科書、より詳細な学術論文、ならびに膨大な研究文献中に十分に記載されている。修飾は、ポリペプチド中のどこでも存在し得、これにはバックボーン、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシ末端が含まれる。同じ型の修飾が、所定のポリペプチド中のいくつかの部位で同じかまたは変化した程度で存在し得ることが理解される。また、所定のポリペプチドが多くの型の修飾を含み得る。ポリペプチドは、ユビキチン結合の結果として分枝され得、および分枝を有するかまたは有さない環状であり得る。環状ポリペプチド、分枝ポリペプチド、および分枝環状ポリペプチドは、翻訳後天然プロセスから生じ得、または合成方法によって作製され得る。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質への転移RNA媒介付加(例えばアルギニン化)、およびユビキチン結合が含まれる。
【0047】
「変異体」とは、この用語が本明細書中で使用される場合、参照のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとはそれぞれ異なるが、本質的な特性を保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドをいう。ポリヌクレオチドの代表的な変異体は、ヌクレオチド配列で別の参照ポリヌクレオチドとは異なる。変異体のヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させてもよいし、変化させなくてもよい。ヌクレオチドの変化は、以下に議論するように、参照配列によってコードされるポリペプチド中でのアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および短縮を生じ得る。ポリペプチドの代表的な変異体は、別の参照ポリペプチドとはアミノ酸配列で異なる。一般的に、参照ポリペプチドおよび改変体の配列が全体として密接に類似し、かつ多くの領域中で同一であるように、違いは限定される。変異体および参照ポリペプチドは、1つまたは複数の、任意の組み合わせの置換、付加、欠失によってアミノ酸配列が異なり得る。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによってコードされるものであってもよいし、そうでなくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は天然に存在してもよいし(例えば対立遺伝子改変体など)、またはこれは天然に存在することが知られていない変異体であってもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの天然に存在しない変異体は、変異誘発技術または直接的合成によって作製され得る。
【0048】
従って、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドのいずれか1つによってコードされるポリペプチドの変異体(またはその断片、誘導体、またはアナログ)は、(i)少なくとも1つまたは複数のアミノ酸残基が保存性または非保存性のアミノ酸残基(1つの保存性アミノ酸残基、または少なくとも1つであるが10を超えない保存性アミノ酸残基)で置換されており、かつこのような置換型アミノ酸残基が遺伝コードによってコードされているものでもコードされていないものでもよいもの、(ii)1つまたは複数のアミノ酸残基が置換基を含むもの、(iii)成熟ポリペプチドが別の化合物(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させるための化合物(例えば、ポリエチレングリコール)など)と融合されているもの、または(iv)さらなるアミノ酸が成熟ポリペプチドに融合されているもの(例えば、IgG:Fc融合領域ペプチドまたはリーダー配列もしくは分泌配列または成熟ポリペプチドもしくはプロタンパク質配列の精製のための利用される配列など)であり得る。このような変異体は、本明細書中の教示から、当業者の範囲内にあると見なされる。これらの変異体をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。「変異体」は、本明細書中で使用される場合、「改変体」という用語と等価である。
【0049】
荷電アミノ酸の別の荷電アミノ酸との置換、および中性または負に荷電したアミノ酸との置換が含まれる。さらに、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基(例えば、アルギニン残基およびリジン残基)の1つまたは複数が、例えば、フリン(furin)またはケキシン(kexin)などのプロテアーゼによる望ましくないプロセシングを除去するために別の残基で欠失または置換され得る。凝集の防止が高度に所望される。タンパク質の凝集は、活性の損失を生じるのみならず、薬学的処方物を調製する際にまた問題である。なぜなら、これらは免疫原性であり得る(Pinckard et al., Clin Exp. Immunol. 2:331-340 (1967); Robbins et al., Diabetes 36:838-845 (1987); Cleland et al. Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Systems 10: 307-377 (1993))。従って、本発明のポリペプチドは、天然の変異または人為的な操作のいずれかからの、1つまたは複数のアミノ酸、置換、欠失、または付加を含み得る。
【0050】
示されるように、変化は、おそらくマイナーな性質、例えば、タンパク質の折り畳みまたは活性に有意な影響を与えない保存性アミノ酸置換などである(表1を参照されたい)。
【0051】
(表1)保存性アミノ酸置換

【0052】
本発明によって含まれるポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドがCA-SP1タンパク質中の変異を含むアミノ酸をコードし、該変異が3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25からp24へのプロセシングの減少をもたらすならば、参照配列と45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し得る。本発明によってまた含まれるポリヌクレオチドは、「サイレント」である変異を含み、ここでは異なるコドンが同じアミノ酸をコードする(ゆらぎ)。
【0053】
「同一性」とは、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性の尺度である。「同一性」という用語は、本明細書中で、「相同性」という用語と交換可能に使用される。一般的に、配列は、最高の整列マッチが得られるように整列される。「同一性」とはそれ自体、当技術分野で認識されている意味を有し、公開された技術を使用して計算され得る。2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列間の同一性を測定するための多数の方法が存在しているが、「同一性」という用語は当業者に周知である。2つの配列間の同一性または類似性を決定するために一般的に使用される方法には、BaxevanisおよびOullette、Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins, 第2版、Wiley-Interscience, New York, (2001)において開示される方法が含まれるがこれらに限定されない。同一性および類似性を決定するための方法はコンピュータプログラムにコード化(codified)されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法には、GCSプログラムパッケージ(Devereux, J. et al., Nucleic Acids Research 12(1):387, (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul, S.F. et al., J. Molec. Biol. 215:403, (1990))が含まれるがこれらに限定されない。
【0054】
参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも、例えば、95%「同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5つまでの点変異を含み得ること、参照配列のヌクレオチドの5%までが欠失もしくは別のヌクレオチドで置換され得ること、または参照配列の全ヌクレオチドの5%までの多数のヌクレオチドが参照配列中に挿入され得ること以外は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることが意図される。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5'末端もしくは3'末端の位置で起こり得るか、あるいは、参照配列中のヌクレオチド間で個々に、または参照配列中の1つもしくは複数の連続する基において分散して、これらの末端位置の間で起こり得る。
【0055】
同様に、参照アミノ酸配列に対して少なくとも、例えば、95%「同一性」を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、ポリペプチド配列が参照アミノ酸の各100アミノ酸あたり5つまでの変化を含み得ること以外は、ポリペプチドのアミノ酸配列が参照配列と同一であることが意図される。参照アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、参照配列中のアミノ酸残基の5%までが欠失もしくは別のアミノ酸で置換され得、または参照配列の全アミノ酸残基の5%までの多数のヌクレオチドが参照配列中に挿入され得る。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置で起こり得るか、あるいは、参照配列中の残基間で個々に、または参照配列中の1つもしくは複数の連続する基において分散して、これらの末端位置の間で起こり得る。参照(問い合わせ)配列は本発明の配列または任意のポリヌクレオチド断片(例えば、本発明のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよび/またはC末端欠失)のいずれか1つの全体のヌクレオチド配列であり得る。
【0056】
いずれかの特定の核酸分子が、例えば本発明のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Unix用バージョン8, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)などの公知のコンピュータプログラムを使用して慣習的に決定され得る。BESTFITは、2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見い出すためにSmithおよびWaterman(Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981))の局所的相同性アルゴリズムを使用する。BESTFITまたは他の配列アラインメントプログラムを使用して、特定の配列が、例えば、本発明の配列に従う参照配列に95%同一である場合、パラメーターは、同一性のパーセンテージが参照ヌクレオチド配列の全長にわたって計算されるように、および参照配列中のヌクレオチドの総数の5%までの相同性のギャップが許容されるように設定される。
【0057】
特定の態様において、本発明の配列と対象配列の間の同一性(全体的配列アラインメントともいわれる)は、Brutlag et al. (Comp. App. Biosci. 6:237-245 (1999))のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定される。同一性の割合(%)を計算するためにDNA配列のFASTDBアラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは:Matrix=Unitary、k-tuple=4、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=30、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty 0.05、Window Size=500または対象ヌクレオチド配列の長さのいずれか短い方。この態様に従って、対象配列が、内部の欠失ではなく5'または3'欠失のために参照配列よりも短い場合、FASTDBプログラムは同一性の割合(%)を計算する際に対象配列の5'切断および3'切断を説明しないという事実を考慮するために手動の修正が結果に対してなされる。問い合わせ配列に対して5'末端または3'末端で切断された対象配列について、同一性の割合(%)は、問い合わせ配列の全塩基の割合(%)として一致/整列化されない対象配列の5'および3'である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって修正される。ヌクレオチドが一致/整列化されるか否かの決定はFASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージが同一性の割合(%)から減算され、特定のパラメーターを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算され、最終的な同一性の割合(%)スコアに到達する。修正されたスコアは、この態様の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/整列化されない、FASTDB配列によって示されるような対象配列の5'塩基および3'塩基の外側の塩基のみが、同一性の割合(%)スコアを手動で調整する目的のために計算される。例えば、90塩基の対象配列が同一性の割合(%)を決定するために100塩基問い合わせ配列に対して整列化される。欠失が対象配列の5'末端に存在し、FASTDBアラインメントは5'末端の最初の10塩基の一致/アラインメントを示さない。10個の対合しない塩基は配列の10%を表し(5'末端および3'末端の一致しない塩基の数/問い合わせ配列中の塩基の総数)、従って、10%がFASTDBプログラムによって計算される同一性の割合(%)スコアから減算される。残りの90塩基が完全に一致する場合、最終的な同一性の割合(%)は90%である。別の例において、90塩基の対象配列が100塩基の問い合わせ配列と比較される。今回は欠失が内部欠失であり、その結果、問い合わせ配列と一致/整列化されない、対象配列の5'または3'上の塩基は存在しない。この場合、FASTDBによって計算される同一性の割合(%)は手動で修正されない。問い合わせ配列と一致/整列化されない対象配列の5'および3'塩基のみが手動で修正される。他の手動の修正は、この態様の目的のためにはなされない。
【0058】
本出願は、それらが開示された機能的活性を有するポリペプチドをコードするか否かに関わりなく、本明細書中に開示される核酸配列またはその断片に対して少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸分子に対して指向される。これは、特定の核酸分子が、開示された機能的活性を有するポリペプチドをコードしない場合であっても、以前として当業者はいかにして核酸分子を使用するか(例えば、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして)を知っているからである。開示された機能的活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の使用には、とりわけ、(1)cDNAライブラリー中のその改変体の単離;(2)開示された配列の細胞内局在または存在を決定するためのインサイチューハイブリダイゼーション(例えば、「FISH」)、および(3)特定の組織中でmRNA発現を検出するためのノーザンブロット分析が含まれる。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「PCR」という用語は、Mullisらに対する米国特許第4,683,195号および4,683,202号の対象であるポリメラーゼ連鎖反応、ならびに現在当技術分野において公知の改良をいう。本発明に従って、当技術分野の技術の範囲内にある従来的な分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が利用され得る。このような技術は、文献中に十分に説明されている。例えば、Sambrook, J.およびRussell, D.W. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい。
【0060】
「ストリンジェントな条件」という用語は、本明細書中で使用される場合、ハイブリダイゼーションにおける相同性が、塩、温度、有機溶媒、およびハイブリダイゼーション反応において代表的に制御される他のパラメーターの合わせた条件に基づき、かつ当技術分野において周知である(Sambrook, et al., 前出)ことをいう。本発明は、ストリンジェントな条件下で、上記の本発明の核酸分子中のポリヌクレオチドの一部、例えば、本明細書中に記載されるような、任意のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド断片のコード配列および/または非コード配列(すなわち、転写され、翻訳されない配列)に相補的な配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を含む。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」によって、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液、またはこれらからなる溶液中における42℃で一晩のインキュベーション、その後の0.1×SSC中で約65℃での洗浄が意図される。これらのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドもまた本発明に含まれる。
【0061】
「近傍」または「隣接する」とは、本明細書中で使用される場合、HIV-1 Gag CA-SP1切断部位のいずれかの側で約15残基;より好ましくは、HIV-1 Gag CA-SP1切断部位のいずれかの側で約10残基;および最も好ましくは、HIV-1 Gag CA-SP1切断部位のいずれかの側で約5残基を含むことを意味する。
【0062】
「有意に」とは、本明細書中で他に定義されない場合、化合物の非存在下で起こるプロセスまたはプロセシングと比較して観察されるかまたは測定される+/-を意味する。
【0063】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むウイルスを含み、ここでウイルスは該ポリヌクレオチドを含むレトロウイルスを含み、ここでこのレトロウイルスは、HIV-1、HIV-2、HTLV-I、HTLV-II、SIV、トリ白血病ウイルス(ALV)、内因性トリレトロウイルス(EAV)、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、またはネコ白血病ウイルス(FeLV)からなる群のメンバーであり得る。
【0064】
本発明はさらに、CA-SP1タンパク質中に変異を含むポリペプチドを含み、該変異は3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25からp24へのプロセシングの阻害の減少を生じ、また、該変異は、任意で、CA-SP1切断部位の近傍に位置するか、またはCA-SP1タンパク質をコードするSEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:7(親のポリヌクレオチド配列)のSP1領域中に位置する。該ポリペプチドは、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされ得るか、またはKARVLVEAMS(SEQ ID NO:2)もしくはKARVIAEVMS(SEQ ID NO:3)からなる群より選択される配列を含み得る。本発明のポリペプチドはさらに、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドに高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ得る。本発明はまた、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:10からなる群より選択されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含み、これは、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25からp24へのプロセシングの阻害の減少をもたらす変異を含み、また、該変異は、任意で、CA-SP1のSP1領域中に位置する。本発明のポリペプチドは、キメラタンパク質または融合タンパク質の一部であるポリペプチドをさらに含む。該キメラタンパク質は、以下を含むがこれらに限定されない種に由来し得る:霊長類(類人猿およびヒトを含む);齧歯類(ラットおよびマウスを含む);ネコ;ウシ;ヤギおよびヒツジ(sheep)を含むヒツジ(ovine);イヌ;またはブタ。融合タンパク質は、合成ペプチド配列、二官能性抗体、上記の種由来のタンパク質またはリンカーペプチドと連結したペプチドを含み得る。本発明のポリペプチドは、検出可能な標識;金属化合物;コファクター;クロマトグラフィー分離タグ(例えば、ヒスチジン、プロテインAなどであるがこれらに限定されない)、またはリンカー;血液安定化成分(例えば、トランスフェリンなどであるがこれらに限定されない);治療剤などとさらに連結され得る。
【0065】
本発明はまた、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp24(CA)へのp25(CA-SP1)のプロセシングの阻害の減少をもたらすCA-SP1タンパク質の変異を含むアミノ酸を選択的に結合する抗体を含み、また、ここで該変異は、任意でCA-SP1のSP1領域中に位置する。本発明はまた、KARVLVEAMS(SEQ ID NO:2)またはKARVIAEVMS(SEQ ID NO:3)の1つである配列を含む変異を有するポリペプチドを選択的に結合する抗体を含む。該抗体は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを選択的に結合し得る。該抗体はまた、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドに、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを選択的に結合し得る。本発明はまた、SP1に選択的に結合する抗体を含み、これは、CA-SP1からSP1を区別することが可能である。本発明はまた、CAを選択的に結合する抗体を含み、これは、CA-SP1からCAを区別することが可能である。本発明はさらに、CA-SP1切断部位またはその近傍に選択的に結合する抗体を含む。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体であり得るか、または該抗体は、キメラもしくは二官能性、または融合タンパク質の一部であり得る。本発明はさらに、本発明の抗体の一部を含み、これには、単鎖、軽鎖、重鎖、CDR、F(ab')2、Fab、Fab'、Fv、sFv、またはdsFv、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0066】
本明細書中で使用される場合、抗体は、それが標的ペプチドに結合し、かつ関連しないタンパク質に有意に結合しない場合に「選択的に結合する」。「選択的に結合する」という用語はまた、天然の標的配列と比較して、抗体が標的変異体配列に選択的に結合するか否かを決定することを含む。標的配列に「選択的に結合する」抗体は、本明細書中で使用される場合、標的ペプチドに「特異的である」抗体と等価である。抗体は、それが標的ペプチドと実質的に相同でない他のタンパク質にも結合する場合でさえ、このようなタンパク質が抗体のペプチド標的の断片またはドメインとの相同性を有する限り、依然としてペプチドに選択的に結合すると見なされる。この場合において、ペプチドに結合する抗体は、ある程度の交差反応性にも関わらず、なお選択的であることが理解される。別の態様において、抗体が変異体標的配列に選択的に結合するか否かの決定は(a)変異体標的配列および天然の標的配列についての抗体の結合アフィニティーを決定する段階、ならびに(b)そのように決定された結合アフィニティーを比較する段階を含み、天然のアフィニティーよりも高い変異体標的配列のアフィニティーの存在は、抗体が変異体標的配列に選択的に結合することを示す。
【0067】
本発明はさらに、本明細書中に開示される抗体のいずれかを含む不溶性キャリア上に固定化された抗体に及ぶ。不溶性キャリア上に固定化された抗体には、複数ウェルプレート、培養プレート、培養管、試験管、ビーズ、球、フィルター、電気泳動材料、電子顕微鏡スライド、メンブレン、またはアフィニティークロマトグラフィー媒体が含まれる。
【0068】
本発明はまた標識された抗体を含み、これには、検出可能なシグナルが含まれる。本発明の標識された抗体は検出可能な分子で標識され、これは、酵素、蛍光物質、化学発光物質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ビオチン、アビジン、高電子密度物質、および放射性同位元素、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0069】
本発明はさらに、CA-SP1タンパク質中の変異を含むアミノ酸配列を選択的に結合するモノクローナル抗体を産生する哺乳動物B細胞と、哺乳動物ミエローマ細胞を誘導する段階を含む、ハイブリドーマを産生する方法を含み、該変異は、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、および本明細書中に開示されるモノクローナル抗体のいずれかを産生するハイブリドーマによる、p25からp24へのプロセシングの阻害の減少をもたらす。本発明はさらに、当技術分野において周知であるように、適切な培地中で本明細書中に開示されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを増殖させる段階、および培地から抗体を単離する段階をさらに含む。本発明はまた、ポリクローナル抗体の産生のために有用な当技術分野において公知の任意の動物(マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、シカ、モルモット、または霊長類を含むがこれらに限定されない)への、本発明のポリペプチドのいずれかの、単回または複数回のいずれかの注射、およびそこから産生された血清中で抗体を回収する段階を含むポリクローナル抗体の産生を含む。本発明は、そこから産生された高結合活性または高アフィニティーの抗体を含む。本発明はまた、本明細書中に開示されるようなモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの製造のために細胞融合手順においてさらに使用される、列挙された種からの産生されるB細胞を含む。
【0070】
本発明はさらに、本明細書中に開示されるような抗体またはその一部、該抗体を含む容器、および使用のための指示書を含むキット、本明細書のポリペプチドおよび使用のための指示書を含むキット、ならびに本発明のポリヌクレオチドおよび使用のための指示書をを含むキット、ならびにそれらの任意の組み合わせに及ぶ。これらのキットは、PCRキットおよびイムノアッセイキットを利用してもよいし、利用しなくてもよい核酸検出キットを含むがそれらに限定されない。このようなキットは、臨床的診断のために有用であり、現在の臨床実務において必要とされるような標準化された試薬を提供する。これらのキットは、処理の前に変異が存在することまたは存在しないことに関する情報を提供するか、または治療の間に患者の進行をモニターするかのいずれかであり得る。本発明のキットはまた、実験研究における使用のための標準化された試薬を提供するために使用され得る。
【0071】
本発明において有用である化合物には、下記の一般式IおよびIIを有するものが含まれるがこれらに限定されない。

I:ベツリン酸(左)およびジヒドロベツリン酸(右)の誘導体またはこれらの薬学的に許容される塩
式中、
RはC2-C20置換型または非置換型のカルボキシアシルであり、
R'は水素またはC2-C20置換型もしくは非置換型のアルキル基もしくはアリール基である。好ましい化合物は、Rが表2の置換基の1つであり、R'が水素である化合物である。

II:ベツリンおよびジヒドロベツリンの誘導体またはこれらの薬学的に許容される塩
式中、
R1はC2-C20置換型または非置換型のカルボキシアシルであり、
R2は水素またはC2-C20置換型もしくは非置換型のカルボキシアシルであり、かつ
R3は水素、ハロゲン、アミノ、置換されていてもよいモノアルキルアミノもしくはジアルキルアミノ、または-OR4であり、ここでR4は水素、C1-4アルカノイル、ベンゾイル、またはC2-C20置換型もしくは非置換型のカルボキシアシルであり;
ここで破線はC20とC29の間の任意の二重結合を表す。
【0072】
本発明において有用な化合物は、R1が表2中の置換基の1つであり、R2が水素または表1 2中の置換基の1つであり、かつR3が水素である。
【0073】
(表2)好ましい置換基

【0074】
最も好ましい化合物は、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン、および3-O-(3',3'-ジメチルスクシニルグルタリル)ジヒドロベツリンである。
【0075】
本発明の方法において有用な化合物には、それぞれ米国特許第5,679,828号および6,172,110号、ならびに米国特許出願第60/443,180号および10/670,797号(これらは参照により本明細書に組み入れられる)において提示されるベツリン酸またはベツリンの誘導体が含まれる。さらなる有用な化合物には、Zhu et al. (Bioorg. Chem. Lett. 11:3115-3118 (2001))によって開示されるオレアノール酸誘導体; Kashiwada et al. (J. Nat. Prod. 61:1090-1095 (1998))によって開示されたオレアノール酸誘導体およびプロモール酸(promolic acid)誘導体; Kashiwada et al. (J. Nat. Prod. 63:1619-1622 (2000))によって開示された3-O-アシルウルソル酸誘導体; およびKashiwada et al. (Chem. Pharm. Bull. 48:1387-1390 (2000))によって開示される3-アルキルアミド-3-デオキシ-ベツリン酸誘導体が含まれる(すべての引用文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0076】
特に好ましい化合物は、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸である。
【0077】
ベツリン酸およびジヒドロベツリン酸のジメチルコハク酸無水物との反応は、3-O-(2',2'-ジメチルスクシニル)およびそれぞれ3-O-(2',2'-ジメチルスクシニル)-ベツリン酸およびジヒドロベツリン酸の混合物を生じた。混合物は、純粋な試料を産生する調製スケールHPLCによって首尾よく分離された。これらの異性体の構造は長範囲1H-13C COSY試験によって与えられた。
【0078】
本発明のベツリン酸およびジヒドロベツリン酸の誘導体は、無水ピリジン(5-10mL)中、ベツリン酸またはジヒドロベツリン酸、ジメチルアミノピリジン(1等量モル)、および適切な無水物(2.5-10等量モル)の溶液を還流することによってすべて合成した。次いで、反応混合物を氷水で希釈し、CHCl3で抽出した。有機層を水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムまたは準調製(semi-preparative)スケールHPLCを使用するクロマトグラフィーに供して生成物を収集した。
【0079】
3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸の調製:
収率70%(542mgのベツリン酸で開始);MeOHからの結晶化は無色針状結晶を与えた。

【0080】
3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸:
収率24.5%(155.9mgのジヒドロベツリン酸で開始);MeOH-H2Oからの結晶化は無色針状結晶を与えた。

【0081】
3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン酸の合成は、COMPOUND No.4として米国特許第5,679,828号に開示された。
【0082】
3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ジヒドロベツリン酸:
収率93.3%(100.5mgのジヒドロベツリン酸で開始);MeOH-H2Oからの結晶化は無色針状結晶を与えた。

【0083】
3-O-ジグリコリル-ベツリン酸の合成は、COMPOUND No.5として米国特許第5,679,828号に開示された。
【0084】
3-O-ジグリコリル-ジヒドロベツリン酸:
収率79.2%(103.5mgのジヒドロベツリン酸で開始);灰色がかった白色のアモルファス粉末。

【0085】
3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリンおよび3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリンの合成は、米国特許出願第10/670,797号に開示された。
【0086】
動物の細胞中でHIV-1複製を阻害する方法は、上記の式Iまたは式IIの化合物を含み、これは、ベツリン酸、ベツリン、またはジヒドロベツリン酸もしくはジヒドロベツリンであり、および表2の好ましい置換基を含む。好ましい化合物には、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン酸、(3',3'-ジメチルグルタリル)ジヒドロベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ベツリン酸、および3-O-ジグリコリル-ジヒドロベツリン酸が含まれるがこれらに限定されない。
【0087】
本明細書中に開示される方法は、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗癌剤、免疫刺激剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種または複数の薬物と、該細胞を接触させる段階をさらに含む。本方法はヒト血液産物の処理を含み得る。
【0088】
本発明はまた、動物への1種または複数の抗新生物剤の投与、癌細胞殺傷量の放射線への動物の曝露、または両方の組み合わせを含む癌を処置する方法と組み合わせて使用され得る。
【0089】
本発明はさらに、本明細書中に開示される動物の細胞中でHIV-1複製を阻害する化合物を同定するための方法を含み、該方法は以下の段階を含む:
a.CA-SP1切断部位を含むGagタンパク質を試験化合物と接触させる段階;
b.CA-SP1切断部位またはその近傍で選択的に結合する標識された物質を加える段階;および
c.CA-SP1切断部位またはその近傍での試験化合物の結合を測定する段階。
【0090】
標識された物質には、標識された抗体または標識されたDSBが含まれ、標識には、酵素、蛍光物質、化学発光物質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ビオチン、アビジン、高電子密度物質(例えば、金、四酸化オスミウム、鉛、またはウラニルアセテート)、および放射性同位元素、このような物質分子で標識された抗体、またはこれらの組み合わせが含まれる。アッセイ法には、当技術分野において公知であるような、ELISA、シングルおよびダブルサンドイッチ技術、免疫拡散、または免疫沈殿技術が含まれ得るがこれらに限定されない(「Immunoassay Handbook, 第2版」D. Wild, Nature Publishing Group, (2001))。該同定の方法はまた、ウェスタンブロットアッセイ、比色定量アッセイ、光学顕微鏡技術および電子顕微鏡技術、共焦点顕微鏡法、または当技術分野において公知である他の技術を含み得るがこれらに限定されない。
【0091】
動物の細胞中でHIV複製を阻害する化合物を同定する方法はさらに以下の段階を含む:
a.野生型CA-SP1切断部位を含むGagタンパク質を、試験化合物の存在下でHIV-1プロテアーゼと接触させる段階;
b.別々に、変異型CA-SP1切断部位を含むGagタンパク質または代替のプロテアーゼ切断部位を含むタンパク質を、試験化合物の存在下でHIV-1プロテアーゼと接触させる段階;
c.変異型Gagタンパク質の切断量または代替のプロテアーゼ切断部位を含むタンパク質の切断量に対する天然の野生型Gagタンパク質の切断量を比較する段階。
【0092】
上記の段階(b)は、直接的に結合し得、それゆえにプロテアーゼ酵素を阻害する化合物を除去するための対照として実行される。上記の方法はまた、野生型CA-SP1、変異体CA-SP1、または代替のプロテアーゼ切断部位がポリペプチド断片または組換えペプチド中に含まれる方法を含む。
【0093】
本明細書中に開示されるHIV-1を阻害する化合物を同定するための方法はまた、該ペプチドまたはタンパク質が蛍光部分および蛍光消光部分で標識され、各々がCA-SP1切断部位の反対側に結合し、ここで検出する段階が蛍光部分からのシグナルを測定すること、または該ペプチドまたはタンパク質が2つの蛍光部分で標識され、各々がCA-SP1切断部位の反対側に結合し、ここで検出する段階は、試験化合物およびHIV-1プロテアーゼの存在下で1つの部分から他の部分への蛍光エネルギーの移動を測定すること、およびCA-SP1切断部位中に変異を含む配列を含むかまたは別の切断部位を含む配列を含むペプチドに同じ手順が適用された場合に観察される、該蛍光エネルギーの移動を比較することを含む。プロテアーゼ活性の蛍光に基づくアッセイ法の例は当技術分野において周知である。1つのこのような例において、プロテアーゼ基質はグリーン蛍光色素分子で標識され、これは、基質がプロテアーゼ酵素によって切断されるときに蛍光を発する(Molecular Probes, Protease Assay Kit)。
【0094】
上記の切断を比較する方法はまた、試験化合物がCA-SP1を阻害する程度を測定するために、CAまたはSP1に選択的に結合する標識された抗体を使用することを含む。この抗体は、酵素、蛍光物質、化学発光物質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ビオチン、アビジン、高電子密度物質、および放射性同位元素、またはこれらの組み合わせから選択される分子で標識され得る。この方法はまた、当技術分野における標準的な方法に従って、そのエピトープタグについてのアミノ酸配列が操作されたp25またはSP1を選択的に検出するための特異的エピトープタグ配列に対する抗体の使用を含む。例として、FLAGエピトープタグ(Sigma-Aldrich)が、Gag発現プラスミドのオリゴヌクレオチド特異的変異誘発によってGagのp2(SP1)領域に挿入され得る。次いで、細胞発現タンパク質中のSP1領域の存在は、市販されている抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich)を使用して検出され得る(Hopp, T.P. Biotechnology 6: 1204-1210 (1988))。
【0095】
本発明の方法はまた、HIV-1で感染した細胞への化合物の付加、ならびに細胞または放出されたビリオンを溶解および分析することによるCA-SP1切断生成物の検出を含む。本発明に含まれる方法は、ウイルスタンパク質のウェスタンブロット分析、およびp25を選択的に結合する抗体を使用するp25の検出を用いて実行され得、または、ここで該混合物は、ウイルスタンパク質のゲル電気泳動の実行および代謝的に標識されたタンパク質の画像化によって分析され、または、混合物は、p24からp25を区別するために、p25を選択的に結合するかもしくはSP1を選択的に結合する抗体を用いたイムノアッセイを使用して分析される。例えば、マイクロウェルアッセイが実行され得、ここでは、界面活性剤により可溶化されたウイルス中のp25が、プラスチックの複数ウェルプレートに結合されるSP1を選択的に結合する抗体を使用して捕捉される。洗浄段階後、結合したp25は適切な検出試薬(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイのためのアルカリホスファターゼ)に結合体化されるp24に対する抗体を使用して検出される。このメカニズムを介して作用する化合物で処理された細胞によって放出されたウイルスは、処理されていないビリオンと比較して、増加したレベルのp25を有する。
【0096】
開示された方法は、p25を選択的に結合する抗体、またはSP1を選択的に結合する抗体に及び、これは、酵素、蛍光物質、化学発光物質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ビオチン、アビジン、高電子密度物質、および放射性同位元素、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される分子で標識される。本発明はまた、当技術分野における標準的な方法に従って、そのエピトープタグについてのアミノ酸配列が操作されたp25またはSP1を選択的に検出するための特異的エピトープタグ配列に対する抗体の使用を含む。
【0097】
「感染細胞」は、本明細書中で使用される場合、膜融合およびその後の細胞へのウイルスゲノムの挿入によって天然に感染した細胞、または人工的手段を通してウイルス遺伝子物質を用いる細胞のトランスフェクションを含む。これらの方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、または感染が含まれるがこれらに限定されない。
【0098】
本発明は、適切な培養条件下で、かつ様々な期間の間、HIVの感染性株を用いてかつ試験化合物の存在下で、インビトロで標的細胞に感染することによって実施され得る。感染細胞または上清の液体は、当技術分野において周知である方法によって処理され得、かつウイルスレベルの検出のためにポリアクリルアミドゲルにロードされ得る。非感染細胞および未処理細胞は、それぞれ、ネガティブ感染対照およびポジティブ感染対照として使用され得る。代替的には、本発明は、HIV株を用いる細胞の感染の前に、試験化合物の存在下で標的細胞を培養することによって実施され得る。
【0099】
本発明はまた、動物の細胞中におけるHIV-1複製を阻害する化合物を同定するための方法を含み、この方法は以下の段階を含む:
(a)試験化合物を野生型ウイルス単離物と、および別々に、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸に対して耐性であるウイルス単離物と接触させる段階;ならびに
(b)3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸に対して耐性であるウイルス単離物と比較して、野生型ウイルス単離物に対してより活性である試験化合物を選択する段階。
【0100】
本発明はさらに、上述のメカニズムのいずれかによって作用する化合物を同定するための方法を含み、この方法は、当技術分野において周知である標準的な方法によって、HIV-1感染細胞またはHIV-1トランスフェクト細胞を化合物で処理する段階、次いで、放出されるウイルス粒子を薄片作製および透過型電子顕微鏡によって分析する段階を含む。ウイルス粒子に関して非中心性の球状の凝集したコア、およびウイルス膜のすぐ内側の半月状の高電子密度層を示す粒子が検出されるならば、化合物は上記のメカニズムによって作用する。
【0101】
電子顕微鏡研究のために、上清液体から得られた感染細胞または遠心分離したウイルスペレットが、グルタルアルデヒド、新しく調製されたパラホルムアルデヒド、および/または四酸化オスミウムなどの固定剤、または当技術分野において公知である他の電子顕微鏡適合可能な固定剤と接触され得る。上清液体または細胞からのウイルスは脱水され、エポキシ樹脂またはメタクリレートなどの電子密度の低いポリマー中に包埋され、ウルトラミクロトームを使用して薄片作製され、ウラニルアセテートおよび/またはクエン酸鉛などの高電子密度染色を使用して染色し、および透過型電子顕微鏡で観察した。非感染細胞および未処理細胞は、それぞれ、ネガティブ感染対照およびポジティブ感染対照として使用され得る。代替的には、本発明は、HIV株を用いる細胞の感染の前に、試験化合物の存在下で標的細胞を培養することによって実施され得る。本発明の化合物によって引き起こされる成熟欠損は、本明細書中に記載されるように、対照と比較した、形態学的に異常なウイルス粒子の存在によって決定される。
【0102】
細胞培養研究のために、ウイルス感染細胞は、シンシチウムの形成について観察され、または上清はHIV粒子の存在について試験され得る。上清中に存在するウイルスは、感染性を決定するために他の未処理の培養物に感染させるために収集され得る。
【0103】
個体がHIV-1に感染しているか否か、p25プロセシングを阻害する化合物による処理に感受性であるか否か、を決定する方法もまた本発明に含まれ、この方法は、患者から血液を採取する段階、ウイルスRNAを遺伝子型解析を行う段階、およびウイルスRNAがCA-SP1切断部位中の変異を含むか否かを決定する段階を含む。
【0104】
本発明はまた、上述のメカニズムによって作用する化合物を同定するための方法を含み、この方法は、本明細書中に開示される方法の組み合わせによって試験する段階を含む。
【0105】
上述のアッセイ法における使用のためのHIV Gagタンパク質およびその断片は、当業者によく知られている種々の方法を使用して発現または合成され得る。Gagはウサギ網状赤血球溶解物を使用するインビトロ転写および翻訳系において産生され得る。この系において発現されるGagは、感染細胞中で観察されるのと類似のパターンで逐次的にプロセスされることが示された(Pettit, S.C. et al. J. Virol. 76:10226-10233 (2002))。さらに、この方法によって発現されるGagは、異種D型レトロウイルス細胞質自己アセンブリードメインに融合した場合に未成熟ウイルス粒子にアセンブルすることが可能である(Sakalian, M. et al., J. Virol. 76:10811-10820 (2002))。NIH AIDS Reagent Programから利用可能であるプラスミドpDAB72は、この目的のために使用され得る(Erickson-Viitanen, S. et al., AIDS Res. Hum. Retroviruses. 5:577-91 (1989); Sidhu M.K. et al., Biotechniques, 18:20, 22, 24 (1995))。コムギ胚芽または細菌溶解物に基づく他のインビトロ転写/翻訳系もまた、この目的のために使用され得る。HIV Gagはまた、種々の市販の発現ベクターを使用してトランスフェクトされた細胞中で発現され得る。NIH AIDS Reagent Programから利用可能であるプラスミドp55-GAG/GFPは、薬物相互作用研究において哺乳動物細胞中でGag-グリーン蛍光タンパク質融合タンパク質を発現するために使用され得る(Sandefur, S. et al., J. Virol. 72:2723-2732 (1998))。この構築物は、GFP特異的モノクローナル抗体を使用してGag融合タンパク質の捕捉および精製を可能にする。さらに、Gagは、組換えウイルスベクターを使用する細胞(例えば、ワクシニアウイルス系、アデノウイルス系、またはバキュロウイルス系において使用されるものなど)中で発現され得る。Gagはまた、HIVを細胞に感染させることによって、またはプロウイルスDNAで細胞をトランスフェクトすることによって発現され得る。最後に、Gagは、適切な発現ベクターで形質転換された酵母細胞または細菌細胞中で発現され得る。
【0106】
細胞中でまたは細胞溶解物を使用してインビトロで発現されるGagタンパク質に加えて、Gagの種々の領域に対応するペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用することから、商業的に合成され得る。
【0107】
本発明はさらに、本発明の方法によって同定される化合物、および/または本発明の方法に従ってHIV-1複製を阻害する化合物、および本明細書中に開示されるような1種または複数の化合物を含む薬学的組成物、またはこれらの薬学的に許容される塩、エステル、もしくはプロドラッグ、および薬学的に許容されるキャリアを含む。
【0108】
上記の式Iおよび式IIの化合物を含む本発明において有用である化合物もまた、本発明に含まれる。好ましい化合物には、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン酸、(3',3'-ジメチルグルタリル)ジヒドロベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ジヒドロベツリン酸、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0109】
本発明の化合物の、非毒性の薬学的に許容される塩もまた、本発明の範囲内に含まれる。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製の間にインサイチューで調製され得るか、またはその遊離の酸型である精製された化合物を適切な有機塩または無機塩と別々に反応させること、およびこのようにして形成された塩を単離することによって調製され得る。これらには、アルカリおよびアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)に基づくカチオン、ならびに非毒性アンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンカチオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、N-メチルグルカミンを含むがこれらに限定されない)を含み得る。
【0110】
本発明に従う式IおよびIIの化合物は、抗レトロウイルス活性、特に抗HIV-活性を有することが見い出された。本発明の塩および他の処方物は、改善された水溶性、および増強された経口的生物学的利用能を有することが予測される。また、改善された水溶性に起因して、本発明の塩を薬学的調製物に処方することがより容易である。さらに、本発明に従う式Iおよび式IIの化合物は、改善された生物分布特性を有することが予測される。
【0111】
本発明はまた、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングを阻害するが、他のGagプロセシング段階に対して有意な効果を有さない化合物、または処理された感染細胞から放出されたウイルス粒子の成熟を阻害する化合物、例えば、式IおよびIIの化合物を含む薬学的組成物を含む。本発明は、本明細書中に開示される1種または複数の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、またはプロドラッグ、および薬学的に許容されるキャリアを含む薬学的組成物を含み、ここで、該化合物は上記の式IまたはIIの化合物であり、または好ましくは、該化合物は、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン酸、(3',3'-ジメチルグルタリル)ジヒドロベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ベツリン酸、および3-O-ジグリコリル-ジヒドロベツリン酸からなる群より選択される。本発明に従う薬学的組成物は、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗癌剤、または免疫刺激剤から選択される1種または複数の薬物をさらに含む。
【0112】
本発明の薬学的組成物は、本明細書中に開示される式IまたはIIの化合物の少なくとも1種を含み得る。本明細書に従う薬学的組成物はまた、例えば、以下のような他の抗ウイルス剤:AZT(ジドブジン、RETROVIR(登録商標)、Glaxo Wellcome)、3TC(ラミブジン、COMBIVIR(登録商標)、Glaxo Wellcome)、ddI(ジダノシン、VIDEX(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、ddC(ザルシタビン、HIVID(登録商標)、Hoffmann-La Roche)、D4T(スタブジン、ZERIT(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、アバカビル(ZIAGEN(登録商標)、Glaxo Wellcome)、ネビラピン(VIRAMUNE(登録商標)、Boehringer Ingelheim)、デラビルジン(Pharmacia and Upjohn)、エファビレンツ(SUSTIVA(登録商標)、DuPont Pharmaceuticals)、サキナビル(INVIRASE(登録商標)、FORTOVASE(登録商標)、Hoffmann-La Roche)、リトナビル(NORVIR(登録商標)、Abbott Laboratories)、インジナビル(CRIXIVAN(登録商標)、Merck and Company)、ネルフィナビル(VIRACEPT(登録商標)、Agouron Pharmaceuticals)、アンプレナビル(AGENERASE(登録商標)、Glaxo Wellcome)、アデフォビル(PREVEON(登録商標)、HEPSERA(登録商標)、Gilead Sciences)、アタザナビル(atazanavir)(Bristol-Myers Squibb)、およびヒドロキシウレア(HYDREA(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、または互いに組み合わせるかもしくは生物学的なベースの治療剤と結合した任意の他の抗レトロウイルス薬物もしくは抗体、例えば、gp41由来ペプチドエンフュービルタイド(FUZEON(登録商標)、Roche and Trimeris)およびT-1249、または、可溶性CD4、CD4に対する抗体、およびCD4もしくは抗CD4の結合体をさらに含み得、または本明細書中でさらに提示される。
【0113】
本発明の式IまたはIIの化合物の1つを用いる最適な使用のために適切なさらなる抗ウイルス剤には以下が含まれ得るがこれらに限定されない:Ethigen CorporationおよびMatrix Research Laboratoriesによって製造されたAL-721(脂質混合物);アムホテリシン B(FUNGIZONE(登録商標));DuPont/HEM Researchによって開発されたアンプリゲン(ampligen)(ミスマッチRNA);抗AIDS抗体(Nisshon Food);1 AS-101(重金属ベースの免疫刺激剤);BETASERON(登録商標)(β-インターフェロン、Triton Biosciences);ブチル化ヒドロキシトルエン;Carrosyn(ポリマンノアセテート(polymannoacetate));カスタノスペルミン(Castanospermine);コントラカン(Contracan)(ステアリン酸誘導体);Pharmalecによって製造されたクリームファーマテックス(Creme Pharmatex)(ベンズアルコニウム含有);CS-87(ジドブジンの5-非置換誘導体);ペンシクロビル(penciclovir)(DENAVIR(登録商標)、Novartis);ファムシクロビル(famciclovir)(FAMVIR(登録商標)、Novartis);アシクロビル(ZOVIRAX(登録商標)、Glaxo Wellcome);HPMPC(サイトフォビル(cytofovir)、VISTIDE(登録商標)、Gilead);DHPG(ガンシクロビル、CYTOVENE(登録商標)、Roche Pharmaceuticals);硫酸デキストラン;Carter-WallaceおよびDegussa Pharmaceuticalによって製造されたD-ペニシラミン(3-メルカプト-D-バリン);FOSCARNET(登録商標)(トリナトリウムホスホノホルメート(trisodium phosphonoformate);Astra AB);Leo Lovensによって製造されたフシジン酸;グリチルリジン(カンゾウ根の成分);HPA-23(アンモニウム-21-タングスト-9-アンチモネート; Rhone-Poulenc Sante);Porton Products Internationalによって製造されたヒト免疫ウイルス抗ウイルス剤;ORNIDYL(登録商標)(エフロルニチン(eflormithine);Merrell-Dow);ノノキシノール;Lypho Medによって製造されたペンタミジンイセチオネート(PENTAM-300);Peninsula Laboratoriesによって製造されたペプチドT(オクタペプチド配列);フェニトイン(Warner-Lambert);INHまたはイソニアジド;リバビリン(RIFADIN(登録商標)、Aventis);(VIRAZOLE(登録商標)、ICN Pharmaceuticals);リファブチン(refabutin)、アンサマイシン(ansamycin)(MYCOBUTIN(登録商標)、Pfizer);CD4-IgG2(Progenics Pharmaceuticals)または他のCD4含有またはCD4ベースの分子;Warner-Lambert Companyによって製造されたトリメトレキサート;Sanwa Kagakuによって製造されたSK-818(ゲルマニウム誘導化抗ウイルス剤);Miles Pharmaceuticalsによって製造されたスラミンおよびそのアナログ;Ueno Fine Chemicals Industryによって製造されたUA001;およびWELLFERON(登録商標)(α-インターフェロン、Glaxo Wellcome)。
【0114】
本発明の薬学的組成物はまた、免疫調節物質をさらに含み得る。本発明に従って、本発明のベツリン酸またはベツリン誘導体を用いる最適な使用のための適切な免疫調節物質には以下が含まれ得るがこれらに限定されない:ABPP(Bropririmine);アンプリゲン(ミスマッチRNA) DuPont/HEM Research;抗ヒトインターフェロン-α-抗体(Advance Biotherapy and Concepts);抗AIDS抗体(Nisshon Food);AS-101(重金属ベースの免疫刺激剤);アスコルビン酸およびその誘導体;インターフェロン-β;Ciamexon(Boehringer-Mannheim);シクロスポリン;シメチジン;CL-246,738(American Cyanamid);GM-CSFを含むコロニー刺激因子(Sandoz, Genetics Institute);ジニトロクロロベンゼン;HE2000(Hollis-Eden Pharmaceuticals);インターフェロン-γ;グルカン;超免疫γ-グロブリン(Bayer);IMREG-1(白血球透析物)およびIMREG-2(IMREG Corp.);イムチオール(immuthiol)(ジエチルチオカルバメートナトリウム)(Institut Merieux);インターロイキン-1(Cetus Corporation, Hoffmann-La Roche; Immunex)、インターロイキン-2(IL-2)(Chiron Corporation)、イソプリノシン(イノシンプラノベクス)、Krestin(Sankyo)、LC-9018(Yakult)、レンチナン(Ajinomoto/Yamanouchi);LF-1695(Fournier)、メチオニン-エンケファリン(TNI Pharmaceuticals; Sigma Chemicals)、ミノファーゲンC;ムラミルトリペプチド、MTP-PE(Ciba-Geigy)、ナルトレキソン(TREXAN(登録商標)DuPont);ニュートロピン、RNA免疫調節物質(Nippon Shingaku)、REMUNE(登録商標)(Immune Responce Corporation)、RETICULOSE(登録商標)(Advanced Viral Research Corporation)、ショウサイコトウ、人参、胸腺液性因子、TP-05(Thymopentin, Ortho Pharmaceuticals)、サイモシン因子5、サイモシン1(ZYDAXIN(登録商標)、SciClone)、サイモスチムリン(thymostimulin)、TNF(腫瘍壊死因子、Genentech)、およびビタミン調製物。
【0115】
本発明の薬学的組成物はまた、抗癌治療剤をさらに含み得る。最適な使用のための抗癌治療剤には、新生物を阻害するために有効な抗癌組成物が含まれ、これには、組み合わせ治療のために使用され得る化合物、または薬学的に許容される塩、または該抗癌剤のプロドラッグが含まれ、アルキル化剤(例えば、ブスルファン)、シスプラチン、マイトマイシンC、およびカルボプラチン、有糸分裂阻害剤(例えばコルヒチン)、ビンブラスチン、タキソール(例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Meyers Squibb)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Aventis))、topoIインヒビター(例えば、カンプトテシン、イリノテカン、およびトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、SmithKline Beecham))、topoIIインヒビター(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、およびエトポシド(例えば、VP16));RNA/DNA代謝拮抗物質(例えば、5-アザシチジン、5-フルオロウラシル、およびメトトレキサート)、DNA代謝拮抗物質(例えば、5-フルオロ-2'-デオキシ-ウリジン)、ara-C、ヒドロキシウレア、チオグアニン、および抗体(例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)およびリツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech and Idec Pharmaceuticals))、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ビンクリスチン、マイトグアゾン、エピルビシン、アクラルビシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、エリプチニウム、フルダラビン、オクトレオチド、レチノイン酸、タモキシフェン、アラノシン、およびこれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0116】
本発明はさらに、本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩と組み合わせる使用のための、抗菌治療剤、抗寄生生物治療剤、および抗真菌治療剤を提供するための方法を提供する。抗菌治療剤の例には、ペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、シクラシリン、エピシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、カルベニシリン、セファレキシン、セファラジン、セファドキシル、セファクロル、セフォキシチン、セフォタキシム、セフィチゾキシム、セフィネノキシム、セフトリアキソン、モキサラクタム、イミペネム、クラブラネート、チメンチン、スルバクタム、エリスロマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、メトロニダゾール、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、キノロン、リファンピン、スルホンアイド、バシトラシン、ポリミキシンB、バンコマイシン、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、アムホテリシン B、シクロセリン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、イソニアジド、エタンブトール、およびナリジクス酸、ならびにこれらの各化合物の誘導体および変化型などの化合物が含まれる。
【0117】
抗寄生生物治療剤の例には、ビチオノール、クエン酸ジエチルカルバマジン、メベンダゾール、メトリホネート、ニクロサミン、ニリダゾール、オキサムニキン、および他のキニン誘導体、クエン酸ピエラジン、プラジカンテル、ピランテルパモエート、およびチアベンダゾール、ならびにこれらの各化合物の誘導体および変化型が含まれる。
【0118】
抗真菌治療剤の例には、アムホテリシン B、クロトリアゾール、エコナゾールニトレート、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、およびミコナゾール、ならびにこれらの各化合物の誘導体および変化型が含まれる。抗真菌化合物にはまた、アキュレアシンAおよびパピュロカンジンBが含まれる。
【0119】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書中で使用される場合、それらの薬理学的効果を示す前に生物変換を受ける化合物をいう。薬学的な問題を克服するための薬物の化学修飾はまた、「薬物潜在化」とも呼ばれる。薬物潜在化は、インビボ酵素的攻撃が親の化合物を遊離させる際に新規な化合物を形成するための生物学的に活性な化合物の化学修飾である。親の化合物の化学的変化は、物理化学的特性における変化が、吸収、分布、および酵素的代謝に影響を与えるような変化である。薬物潜在化の定義はまた、親の化合物の非酵素的な再生を含むように拡張されている。再生は、加水分解的、解離的、および酵素媒介される必要のない他の反応の結果として起こる。「プロドラッグ」、「潜在化薬物」、および「生物可逆的誘導体」という用語は、交換可能に使用される。推測によって、潜在化は、生物活性の親の分子をインビボで再生することに関与するタイムラグエレメントまたは時間成分を含む。「プロドラッグ」という用語は、これが潜在化薬物誘導体ならびに投与後に実際の物質に転換されるこれらの物質を含むという意味で一般的である。「プロドラッグ」という用語は、それらの薬理学的作用を示す前に生物転換を受ける薬剤についての一般的用語である。
【0120】
本発明の好ましい動物被験体は哺乳動物である。「哺乳動物」という用語によって、哺乳綱に属する個体を意味する。本発明は特に、ヒト患者の処置において特に有用である。
【0121】
「処置する」という用語は、式IもしくはIIの化合物、または本発明における1つまたは複数のアッセイ法によって同定される化合物を、レトロウイルス関連病理の予防、寛解、または治療を含み得る目的のために被験体に投与することを意味する。本発明における1つまたは複数のアッセイ法によって同定される、被験体を処置するための該化合物は、本明細書中に記載されたGagプロセシングを破壊する能力を有する化合物として同定される。
【0122】
「相互作用を阻害する」という用語は、本明細書中で使用される場合、1つまたは複数の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、またはレセプターの直接的または間接的な結合を妨害するか、またはその速度を減少すること、あるいは1つまたは複数の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、またはレセプターの通常の活性を妨害または減少することを意味する。
【0123】
医薬は、それらが同時に患者に供給される場合、または各医薬の投与の間の時間が生物学的活性の重複を可能にするようなものである場合に、互いに「組み合わせて」供給される。
【0124】
1つの好ましい態様において、上記の式IまたはIIの少なくとも1つの化合物が単一の薬学的組成物を含む。
【0125】
本発明に従う投与のための薬学的組成物は、上記の式IまたはIIの少なくとも1つの化合物、または本発明における1つまたは複数のアッセイ法によって同定される化合物を含み得る。本発明における1つまたは複数のアッセイ法によって同定される、被験体を処置するための該化合物は、本明細書中に記載されるGagプロセシングを破壊する能力を有する化合物として同定される。本発明に従う化合物は、薬学的に許容されるキャリアと任意で組み合わせた、薬学的に許容される型にさらに含まれる。これらの組成物は、それらが意図される目的を達成する任意の手段によって投与され得る。本発明に従う式IおよびIIの化合物の投与のための量および投与計画は、レトロウイルス病理学を処置する臨床分野における当業者によって容易に決定され得る。
【0126】
例えば、投与は、非経口的、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、経粘膜的、眼、直腸、膣内、または口腔の経路によってであり得る。代替的に、または同時に、投与は経口経路によってであり得る。投与は、経口もしくは鼻腔スプレーとして、または局所的に、例えば散剤、軟膏、ドロップ、もしくはパッチなどであり得る。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、以前のまたは同時に実行される処置の型、もしあれば、処置の頻度、ならびに所望される効果の性質に依存する。
【0127】
本発明の範囲内にある組成物は、本発明に従う上記の式IまたはIIの少なくとも1つの化合物を含むすべての組成物を、その意図される目的を達成するために有効な量で含む。個々の必要性は変化するが、各成分の有効量の最適範囲の決定は当業者の範囲内にある。代表的な投薬量は、約0.1から約100mg/kg体重を含む。好ましい投薬量は、活性成分の約1から約100mg/kg体重を含む。最も好ましい投薬量は、約5から約50mg/kg体重を含む。
【0128】
本発明の化合物の投与はまた、任意で、免疫系ブースターまたは免疫調節物質を使用する、事前の、同時の、その後の、または付加的な治療を含み得る。薬理学的に活性な化合物に加えて、本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に使用され得る調製物への活性化合物のプロセシングを容易にする賦形剤および助剤を含む適切な薬学的に許容されるキャリアを含み得る。好ましくは、調製物、特に経口的に投与され得、かつ好ましい投与の型(例えば、錠剤、糖衣錠、およびカプセル)のために使用され得る調製物、およびまた、直腸的に投与され得る調製物(例えば、坐剤など)、ならびに注射による投与または経口的な投与のための溶液は、賦形剤とともに、活性化合物の約0.01から99%、好ましくは約20から75%を含む。
【0129】
本発明の薬学的調製物は、それ自体公知である様式で、例えば従来的な混合、顆粒化、糖衣錠混合、溶解、または凍結乾燥のプロセスによって製造される。従って、経口使用のための薬学的調製物は、固体賦形剤と活性化合物を混合すること、任意で得られる混合物を粉砕すること、および錠剤または糖衣錠のコアを得るために、望ましいかまたは必要である場合、適切な助剤を加えた後で顆粒の混合物を加工することによって得られ得る。
【0130】
適切な賦形剤は、例えば、増量剤、例えば、サッカリド(例えば、ラクトース、マンニトール、またはソルビトール);セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)など;ならびに結合剤、例えば、スターチペースト(例えば、トウモロコシスターチ、コムギスターチ、ライススターチ、ポテトスターチを使用する)、ゲラチン、トラガカント、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンである。所望される場合、崩壊剤が加えられ得、これは例えば、上記に言及したスターチ、およびまた、カルボキシメチルスターチ、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩(例えばアルギン酸ナトリウムなど)などである。助剤は、上記のすべて、流動調節剤、および滑沢剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸およびその塩(例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアには適切なコーティングが提供され、これは、所望される場合、胃液に耐性である。この目的のために、濃縮サッカリド溶液が使用され得、これは、任意でアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。胃液に対して耐性であるコーティングを作製するために、適切なセルロース調製物(例えば、アセチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)の溶液が使用される。染料および色素は、例えば、同定のため、または活性化合物用量の組み合わせを特徴付けするために錠剤または糖衣錠のコーティングに加えられ得る。
【0131】
経口的に使用される他の薬学的調製物は、ゼラチン製の押し込み式カプセル、ならびにゼラチン製のソフトな密封されたカプセル、およびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤を含む。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの増量剤、スターチなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および任意で、安定剤とともに混合され得る顆粒型で活性化合物を含み得る。ソフトカプセルにおいては、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪オイルまたは液体パラフィンなど)中に溶解または懸濁される。さらに、安定剤が加えられ得る。
【0132】
直腸で使用され得る可能な薬学的調製物は、例えば、坐剤ベースとの活性化合物の組み合わせからなる坐剤を含む。適切な坐剤ベースは、例えば、天然または合成のトリグリセリド、またはパラフィン炭化水素である。さらに、ベースと活性化合物の組み合わせからなるゼラチンカプセルを使用することもまた可能である。可能なベース材料には、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素が含まれる。
【0133】
非経口投与のための適切な処方物には、水溶性型の活性化合物(例えば、水溶性塩)の水溶液が含まれる。さらに、適切な油性注射懸濁液としての活性化合物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル)、トリグリセリド、またはグリコール-400が含まれる。懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る水性注射懸濁液には、例えば、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、および/またはデキストランが含まれる。任意で、この懸濁液は安定剤を含み得る。
【0134】
経口投与のための液体投薬形態には、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。活性化合物に加えて、液体投薬形態は、当技術分野において一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒など)、溶解剤および乳化剤(例えば、水または他の溶媒など)、安定剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(例えば、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油など)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリプロピレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物など)を含み得る。
【0135】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、セルロース、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキサイド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにこれらの組み合わせなどの懸濁剤を含み得る。
【0136】
局所的投与のための薬学的組成物には、皮膚、粘膜、肺の表面、または眼への投与のために適切な処方物が含まれる。組成物は、加圧されたかまたは加圧されていない、乾燥粉末、液体、または懸濁液として調製され得る。加圧されていない粉末処方物中の活性成分は、薬学的に許容される不活性キャリア中に微細に分割された形態で混合され得る。このキャリアには、マンニトール、フルクトース、デキストロース、スクロース、ラクトース、サッカリン、または他の糖または甘味料が含まれるがこれらに限定されない。
【0137】
加圧された組成物は、圧縮されたガス(例えば、窒素または液化ガス噴霧剤)を含み得る。この噴霧剤はまた、液体または固体の非イオン性またはアニオン性の剤である界面活性成分を含み得る。アニオン性剤はナトリウム塩の形態であり得る。
【0138】
眼における使用のための処方物は、薬学的に許容される眼科的キャリア(例えば、軟膏、オイル(植物油など)、またはカプセル化物質など)を含む。処置される眼の領域には、角膜領域、または内部領域(例えば、虹彩、レンズ、毛様体、前眼房、後眼房、眼房水、硝子体液、脈絡膜、または網膜など)が含まれる。
【0139】
直腸投与のための組成物は、坐剤の形態であり得る。膣中での使用のための組成物は、坐剤、クリーム、フォーム、または留置膣内挿入物の形態であり得る。
【0140】
本発明の組成物はリポソームの形態で投与され得る。リポソームは、当技術分野において公知であるように、天然または人工の、リン脂質、ホスファチジルコリン(レシチン)または他の類脂質性化合物から作られ得る。リポソームを形成することが可能である、任意の非毒性の薬理学的に許容される脂質が使用され得る。リポソームは、多重膜または単層膜であり得る。
【0141】
本発明に従う全身投与のための薬学的処方物は、経腸的、非経口、または局所的投与のために処方され得る。実際は、3つすべての型の処方が、活性成分の全身投与を達成するために同時に使用され得る。
【0142】
経口投与のための適切な処方物には、硬質または軟質のゼラチンカプセル、糖衣錠、丸薬、錠剤(コートされた錠剤を含む)、エリキシル、懸濁液、シロップ、または吸入剤、およびこれらの制御放出型が含まれる。
【0143】
上記の式IまたはIIの化合物、または本発明における1つもしくは複数のアッセイ法によって同定され、かつGagプロセシングを破壊する能力を有する化合物はまた、生物分解可能な遅延放出キャリアと化合した場合に、移植物の形態で投与され得る。代替的には、本発明の化合物は、活性成分の継続的放出のための経皮パッチとして処方され得る。
【0144】
以下の実施例は例示のみであって、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲を限定することを意図しない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の方法において種々の改変および変化がなされ得ることは当業者には明らかである。従って、本発明の改変および変化が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にあるならば、本発明は、それらの改変および変化を包含することが意図される。
【0145】
実施例
実施例1
一次HIV-1単離物に対する抗ウイルス活性
頑強なウイルス阻害アッセイを使用して、PMBC中で増殖した一次HIV-1単離物に対するDSBの抗ウイルス活性を評価した。手短に述べると、DSBの段階希釈を96ウェル組織培養プレート中で作製した。25-250TCID50のウイルスおよび5×105PHA刺激PBMCを各ウェルに加えた。感染後1、3、および5日後に、培地を各ウェルから除去し、適切な濃度でDSBを含む新しい培地で置き換えた。感染後7日目に、ウイルス複製のp24検出のための培養上清を取り出し、50%阻害濃度(IC50)を標準的な方法によって計算した。
【0146】
表3は、一次HIV-1単離物のパネルに対するDSBの強力な抗ウイルス活性を示す。DSBは、並行して試験した認可された薬物と同様の活性のレベルを示す。重要なことに、DSBの活性はコレセプター使用によって制限されなかった。
【0147】
(表3)一次Clade B HIV-1単離物のパネルに対する、DSBおよび2種の認可された薬物の阻害活性(IC50)

*で示された臨床的HIV-1単離物はPanacosで単離された。すべての他のウイルス単離物はNIH AIDS Reference Repositoryから得られた。
注記:R5およびX4はそれぞれケモカインレセプターCCR5およびCXCR4を示す。
【0148】
DSBの毒性を、一定の範囲の濃度で7日間、PHA刺激PBMCとともにインキュベートすること、次いで、XTT法を使用して細胞生存度を決定することによって分析した。50%細胞傷害性濃度は>30μMであり、約5000のインビトロ治療指数に対応した。
【0149】
実施例2
薬物耐性HIV-1単離物に対するDSBの抗ウイルス活性
DSBの活性を、認可された薬物に耐性であるHIV-1単離物のパネルに対して試験した。これらのウイルスを、NIH AIDS Research and Reference Reagent Programから入手した。アッセイ法を、p24終点(上記)を用いて、PBMC中で増殖したウイルスを使用して、または細胞株標的(MT-2細胞)および細胞殺傷終点を使用して実行した。MT-2アッセイ形式は以下の通りであった。DSBまたは各認可された薬物の段階希釈を95ウェルプレート中で調製した。各試料ウェルに、3×105細胞/mLのMT-2細胞を含む培地、および感染5日後(PI)で細胞標的の80%の殺傷を生じるために必要な濃度のウイルス接種物を加えた。感染後5日目に、ウイルス誘導性細胞殺傷をXTT法によって決定し、そして化合物の阻害活性を決定した。
【0150】
表4は、薬物耐性HIV-1単離物のパネルに対するDSBの強力な抗ウイルス活性を示す。これらの結果は、野生型単離物のパネルを用いて得られた結果(図3)とは有意には異ならず、DSBが、認可された薬物の主要なクラスのすべてに対して耐性であるウイルス株に対してその活性を保持していることを実証した。
【0151】
(表4)薬物耐性HIV-1のパネルに対する、DSBの阻害活性(nM IC50)

アッセイ法は、NNRTI-耐性単離物がMT-2細胞中で細胞生存度(XTT)終点を用いて実行された以外は、p24終点を用いて新しいPBMC中で行われた。
*耐性の倍数
注記:R5およびX4はそれぞれケモカインレセプターCCR5およびCXCR4を示す。
【0152】
実施例3
DSBによるウイルス生活環後期段階でのHIV-1複製阻害
初期および後期の複製標的に対するDSBの阻害活性を区別するために、ガラクトシダーゼ指標(MAGI)アッセイの多核活性化を使用した。このアッセイ法において、標的はHeLa細胞であり、これは、CD4、CXCR4、CCR5、および短縮型HIV-1 LTRによって駆動されるガラクトシダーゼ遺伝子(核に局在するように改変されている)からなるレポーター構築物を安定に発現する。これらの細胞の感染は、β-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子の活性化を駆動するTatの発現を生じる。感染細胞におけるβ-ガラクトシダーゼの発現は、色素原性基質X-galを使用して検出される。表5に示されるように、エントリーインヒビターT-20、NRTI AZT、およびNNRTIネビラピンは、Tatタンパク質発現に影響を与えるウイルス発現の初期の段階を破壊するそれらの能力に起因して、HIV-1感染したMAGI細胞におけるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子発現の有意な減少を引き起こした。対照的に、プロテアーゼインヒビターインジナビルはウイルス複製の後期段階(Tat発現の後)を標的とし、この系においてはβ-ガラクトシダーゼ遺伝子発現を妨害しない。インジナビルを用いた場合と同様の結果がDSBを用いて得られ、このことは、DSBが、プロウイルスDNA組み込みおよびウイルストランス活性化タンパク質の合成の完了後の時点でウイルス複製をブロックすることを示した(表5)。
【0153】
(表5)HIV-1感染MAGI細胞中のβ-ガラクトシダーゼの発現に対する、DSBならびにエントリー(gp41ペプチドT-20)、RT(AZTおよびネビラピン)、およびプロテアーゼ(インジナビル)のインヒビターの効果

DMSO対照は薬物を含まなかった。
【0154】
Kanamoto et al. (Antimicrob. Agents Chemother. April; 45(4):1255-30, (2002))もまた、DSBがHIV複製の後期段階で作用することを報告した。しかし、彼らはこの化合物が慢性的に感染した細胞からのウイルスの放出を阻害すると報告した。対照的に、本発明者らのデータは、種々の実験系を使用してDSBがウイルス放出に対して有意な効果を有さないことを示す(例えば、実施例6)。
【0155】
実施例4
DSBはHIV-1プロテアーゼ活性を阻害しない
本発明者らは以前に、合成ペプチド基質の切断を追跡することによっる酵素活性を特徴付けた無細胞フルオロメトリーアッセイを使用して、DSBがHIV-1プロテアーゼ機能に対して効果を有さないことを決定した。これらの実験の結果は、50μg/mLまでの濃度では、DSBはプロテアーゼ機能に効果を有さないことを示した。DSBが後期段階でウイルス複製をブロックするという観察の結果として、最初のアッセイ法において使用された合成ペプチド基質よりもより関連性のある系である、組換え型のGagタンパク質を使用する研究をまた実行した。基質としての組換えGagタンパク質の使用は、同様の実験的結果を生じた。これらの実験において、DSBは、50μg/mLまで高い濃度で、プロテアーゼ媒介Gagタンパク質プロセシングを破壊しなかった。対照的に、予想されたように、プロテアーゼインヒビターインジナビルはGagタンパク質プロセシングを5μg/mLでブロックした(図1)。
【0156】
実施例5
DSBによって引き起こされる、ウイルス成熟欠損と関連したGagプロセシングの最終段階(CA-SP1切断)の欠損
DSBの作用のメカニズムをより良好に規定するために、DSBで処理されたHIV-1感染細胞から産生されたウイルスの詳細な試験を実行した。手短に述べると、HIV-1IIIB単離物に慢性的に感染したH9細胞を、1μg/mLのDSBで48時間の間処理した。インジナビルを対照として使用した。48時間の時点で、使用済み培地を除去し、化合物を含む新しい培地を加えた。新しい化合物付加の24時間、48時間、および72時間後に、分析のために細胞と上清の両方を回収した。培養上清中のウイルスのレベルを決定し、ウェスタンブロットを使用して、細胞結合ウイルスおよび無細胞ウイルスの両方におけるウイルスタンパク質産生を特徴付けした。以前の実験において観察されたように、DSBは、慢性的に感染したH9細胞によって産生されるウイルスの量の有意な減少を引き起こさなかったが、細胞結合ウイルスおよび無細胞ウイルスの両方において、Gagプロセシングの欠損が存在した。この欠損は、ウェスタンブロットにおいてp25に対応するさらなるバンドの型を取った(図2)。このp25バンドは、キャプシドCA-SP1前駆体の不完全なプロセシングから生じる。HIV-2およびSIVで慢性的に感染した細胞株のDSB処理は、これらのウイルスに対する抗ウイルス活性の欠如の観察と一致した正常なGagプロセシングを示した。DSBの存在下で見られたGagプロセシング欠損は、プロテアーゼインヒビターインジナビルを用いて観察されたものと完全に区別される(図2)。上記に議論したように、プロセシングを妨害するp24切断部位へのp25の変異は、ウイルスの成熟および感染性の欠損と関連する(Wiegers K. et al., J. Virol. 72:2846-54 (1998))。
【0157】
以前に議論されたように(C.T. Wild et al., XIV Int. AIDS Conf. Barcelona, Spain, Abstract MoPeA3030, (July 2002))、異常なp25からp24へのプロセシングはまた、他の成熟出芽欠損において見られる。これらには、Gag後期ドメイン(PTAP)の変異または出芽を破壊するTSG-101媒介ウイルスアセンブリーの欠損が含まれる(Garrus, J.E. et al., Cell 107:55-65, (2001); Demirov, D.G. et al., J. Virology 76:105-117, (2002))。しかし、これらの変異はウイルス放出の阻害を引き起こすのに対して、DSB処理はウイルス放出に対して有意な効果を有さない。これらの成熟/出芽変異体の形態学はまた、DSB処理後のものとは完全に区別される(実施例6を参照されたい)。
【0158】
さらに、ウイルスRNAダイマー化を妨害し、かつ欠損性コア構造を有する未成熟ウイルスの産生をもたらす変異は、同様のGagプロセシング表現型を与える(Liang, C. et al., J. Virology, 73:6147-6151, (1999))。しかし、これらの場合において、RNA取り込みは阻害され、放出された粒子の形態はDSB処理後のものとは区別される(実施例6を参照されたい)。
【0159】
実施例6
DSB処理によりもたらされる電子顕微鏡法(EM)によって決定されるようなHIV-1成熟
p25からp24へのプロセシングを破壊するHIV-1 Gagの変異は、正常ウイルスから区別される内部形態学によって特徴付けられる非感染性ウイルス粒子を生じることが実証された(Wiegers K. et al., J. Virol. 72:2846-54 (1998))。DSBの存在下で生成したウイルスがこの独特の形態学を示すか否かを決定するために、以下の実験を実行した。
【0160】
HeLa細胞にHIV-1感染性分子クローンpNL4-3を感染させ、以前に記載されたようにDSBで処理した。処理後、DSB処理感染細胞をグルタルアルデヒド中に固定し、EMによって分析した。この分析の結果を図3に示す。
【0161】
これらの結果は、p25からp24へのプロセシングを破壊する化合物と一致し、これは非感染性の形態学的に異常なウイルス粒子を生成する。
【0162】
3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)は、p25からp24へのプロセシングを破壊し、かつHIV-1複製を強力に阻害する化合物の例である。しかし、この化合物は、PR活性を阻害せず、かつその作用はp25からp24へのプロセシング段階に特異的であり、Gagプロセシングの他の段階には特異的ではない。さらに、DSB処理は、上記の異常なHIV粒子形態学を生じる。
【0163】
実施例7
CAスペーサーペプチド1タンパク質前駆体からのウイルスGagキャプシド(CA)タンパク質のプロセシングを破壊する化合物に耐性であるHIV-1単離物のインビトロ選択
HIV-1成熟のインヒビターである3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)による阻害に耐性であるウイルスを選択するために、一連の実験を実行した。各実験について、NL4-3またはRFのいずれかの単離物を使用して、2つの細胞培養物に感染させた。感染後、1つの培養物を、DSBを含む増殖培地中に維持したのに対し、他方の培養物を、DSBを欠く増殖培地中で並行して維持した。
【0164】
1つの実験において、RFウイルスで感染させたH9細胞を、増加濃度のDSB(0.05から1.6μg/mL)の存在下または非存在下で維持した。細胞を、2〜3日毎に、新しい薬物を添加して継代した。ウイルス複製を7日毎にp24 ELISAによってモニターした。この時点で、高レベルのp24を有するDSB処理培養物を、1:1の細胞比で、新しい感染していないH9細胞とともに、元々のDSB濃度の1×または2×の存在下で、同時培養によって継代した。同時培養の8週間後、無細胞ウイルスを、1.6μg/mLの濃度でDSBを含む培養物から収集し、新しいH9細胞に感染させるために使用した。7日毎に、高レベルのp24を含む培地からのウイルスを、元々のDSB濃度の1×または2×の存在下で、無細胞感染によって継代した。無細胞継代の5週間後に、3.2μg/mL DSBを含む培養物からのウイルスを収集し、MT-2細胞に感染させるために使用した。MT-2細胞中のウイルス複製を、シンシチウム形成顕微鏡で観察することによってモニターした。1〜3日毎に、インプットウイルスを除去するために洗浄し、そして新しい薬物を選択下で培養物に加えた。3〜4日毎に、選択下の培養中での広範なシンシチウムの出現後、各培養からの上清を収集し、0.45μmフィルターを通して細胞細片を除去した。次いで、この濾過されたウイルス上清を使用して、新しい薬物の存在下または非存在下で新しいMT-2細胞に感染させた。4回の無細胞感染の後(約2週間の培養)、薬物の濃度は3.2μg/mLであり、ウイルスストックを収集し、さらなる分析のために凍結した。
【0165】
第2の実験において、分子クローンpNL4-3(5.7×104TCID50)に由来するウイルスのストックを使用してMT-2細胞(6×106細胞)に感染させ、そして培養を、1.6μg/mlの濃度のPA-457の存在下または非存在下で維持した。1〜3日毎に、インプットウイルスを除去するために洗浄し、そして新しい薬物を選択下で培養物に加えた。ウイルス複製を、シンシチウム形成顕微鏡で観察することによってモニターした。3〜7日毎に、選択下の培養中での広範なシンシチウムの出現後、各培養からの上清を収集し、0.45μmフィルターを通して細胞細片を除去した。次いで、この濾過されたウイルス上清を使用して、新しい薬物の存在下または非存在下で新しいMT-2細胞に感染させた。5回の無細胞感染の後、およびその後の他の回毎に、薬物の濃度は倍化した。10回の無細胞感染の後(約7週間の培養)、このとき薬物の濃度は12.8μg/mLに達し、ウイルスストックを収集し、さらなる分析のために凍結した。
【0166】
実施例8
CA-スペーサーペプチド1タンパク質前駆体からのウイルスGagキャプシド(CA)タンパク質のプロセシングを破壊する化合物に耐性であるとして選択されるHIV-1単離物の特徴付け
上記に由来するウイルスストックを、それらの薬物耐性の性質を特徴付けするために表現型的および遺伝子型解析的の両方でさらに分析した。3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸(DSB)に対するウイルスの耐性を、ウイルス複製アッセイにおいて決定した。手短に述べると、ウイルスストックを最初にH9細胞中で、感染8日後の培養物中のp24のレベルを、ウイルスの4倍段階希釈を用いて定量することによって(ELISAによって)力価決定した。次いで、ウイルスインプットを、各ウイルスが薬物の4倍段階希釈の存在下で8日間培養される第2のアッセイ法について標準化した。各ウイルスについてのIC50を、薬物なしの対照と比較した場合にp24終点を50%減少する薬物の希釈として決定した。2つの独立した起源のウイルスストックは、薬物の非存在下で並行して培養されたウイルスについての0.01μg/mlのIC50と比較して、DSBについて1μg/mlよりも高いIC50値を有した。
【0167】
耐性ウイルスが、野生型ウイルス中でDSBによって引き起こされるCA-SP1切断欠損を回避することが可能か否かを決定するために、薬物の存在下または非存在下のいずれかで増殖させた各ウイルスのストックをウェスタンブロットによって分析した。ウイルスを、感染の60時間後、および細胞を洗浄し新しい薬物を加えた18時間後に収集した濾過した培養上清から20%スクロースクッションを通してペレット化した。ウイルスを溶解し、各ウイルスの量を、各試料中のp24レベルを定量することによって標準化した。各試料中のウイルスタンパク質のウェスタンブロット分析は、薬物耐性ウイルスがDSBの存在下でCA-SP1生成物を含まないことを実証し、これらのウイルスがこの切断事象に対する薬物の効果にたいせいであったことを確証した。
【0168】
最後に、DSB耐性の遺伝的決定要因を同定するために、ウイルスゲノムの全体のGagおよびPRコード領域を、配列決定のための高忠実度RT-PCRによって増幅した。ウイルスRNAを、上記のように調製した各ウイルス溶解物から精製し、DNaseを用いて消化していかなる夾雑DNAをも除去した。次いで、RT-PCR産物をゲル精製して、いかなる非特異的PCR産物をも除去した。最後に、得られるDNA断片の両方の鎖を、重複する一連のプライマーを使用して配列決定した。DSBに対する耐性を独立して付与し得る2つのアミノ酸変異が同定された。これらは、NL4-3単離物中の残基364、およびRF単離物中の残基366の、Gagポリタンパク質中のアラニンからバリンへの置換である。これらは、CA-SP1切断部位の下流(SP1のN末端)のそれぞれ第1および第3の残基である。アラニンは、データベース中のすべてのHIV-1分岐群を通してこれらの位置の各々で高度に保存されている。耐性のさらなる決定要因は、CA-SP1切断部位の領域において、DSBに対して耐性であるSIVの配列(図10)とHIVの配列との比較、およびHIV-1 CA-SP1領域の部位特異的変異誘発によって明らかにされ得る。
【0169】
これまで本発明を十分に記載してきたが、本発明の範囲またはそのいかなる態様にも影響を与えることなく、広範かつ等価な範囲の状態、処方、および他のパラメーターの中で本発明が実施され得ることが当業者に理解される。本明細書中に引用されるすべての特許および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に完全に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】DSBは50μg/mLの濃度でHIV-1プロテアーゼの活性を破壊しない。DSB含有試料において組換えGagは正確にプロセシングされる。対照的に、インジナビルは、p24およびMA-CA前駆体に対応するバンド存在しないことよって証明されるように、5μg/mLでプロテアーゼ活性をブロックする。
【図2】DSB(1μg/mL)、インジナビル(1μg/mL)、または対照(DMSO)の存在下での慢性的に感染したH9/HIV-1IIIB、H9/HIV-2ROD、およびH9/SIDmac251に由来するビリオン結合Gagのウェスタンブロットである。Gagタンパク質は、HIV-Ig(HIV-1)またはサル抗SIVmac251血清を使用して可視化した(HIV-2およびSIV;NIH AIDS Research and Reference Reagent Program)。
【図3】DSB処理したHIV感染細胞のEM分析である。EMデータは、DSB処理試料と未処理試料の間の2つの主要な違いを示す。DSBの存在下で生成するビリオンは円錐形コアの非存在によって特徴付けられる。これらの試料において、コアは均一に球状でありかつしばしば非中心性である。第2に、多くのビリオンは脂質二重層の内側の高電子密度層を示すが、コアの外側では示さない(DSB処理試料パネルにおける矢印で示される)。DSB処理試料においては、成熟ウイルス粒子は観察されなかった。
【図4】DSB感受性HIV-1単離物NL4-3およびRF(#1;SEQ ID NO:1)およびDSB耐性HIV-1単離物(#2;SEQ ID NO:2(NL4-3)、および#3;SEQ ID NO:3(RF))からのCA-SP1切断部位の領域中のアミノ酸配列を示す。天然の配列とDSB耐性配列の間の違いには、CA-SP1切断部位(-/-)からの、第1の下流残基(#2)におけるアラニンからバリンへの変化および第3の下流残基(#3)におけるアラニンからバリンへの変化が含まれる。これらの残基は、同定を容易にするために下線を付し、太字で示す。
【図5】A364V DSB耐性NL4-3変異体(SEQ ID NO:4)についての+センスコンセンサス配列を示し、これはgagコード配列の最初の部分で開始しpolに続き、全体のプロテアーゼコード領域を含む。野生型NL4-3 GENBANK M19921配列中に見い出されないミスセンス変異は太字でかつ灰色反転表示である。コンセンサスCA-SP1切断部位についてのコード配列に下線を付す。切断部位を含む影付きの領域はSP1配列を示す。第1の変異はA364V変異である;第2のアミノ酸の違い(プロテアーゼ中)もまた親のクローン中で見い出され、元々のGENBANKエントリーにおける配列決定のエラーに対応することが確認された。従って、プロテアーゼ中には実際には変異は存在しない。
【図6】A364V変異体単離物と並列して薬物の非存在下で継代されたDSB-感受性NL4-3の親の単離物(SEQ ID NO:5)についての+センスコンセンサス配列を示す。
【図7】A366V DSB-耐性HIV-1RF変異体(SEQ ID NO:6)についての+センスコンセンサス配列を示し、これはGagコード配列の最初の部分で開始し、ProおよびRTの一部についての全てのコード配列を通して続く。野生型HIV-1RF GENBANK M17451配列中に見い出されないミスセンス変異は灰色で影付きである。CA-SP1切断部位に下線を付す。同一に継代されたDSB-感受性単離物中ではまた見い出されない唯一のミスセンス変異は、CA-SP1切断部位におけるA366V変異である。
【図8】A366V変異体単離物と並列して薬物の非存在下で継代されたDSB-感受性HIV-1RFの親の単離物(SEQ ID NO:7)についての+センスコンセンサス配列を示す。
【図9】ポリヌクレオチド配列、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9を示し、これらはそれぞれ、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3として本明細書中で示されるポリペプチドをコードする。SEQ ID NO:10は、本明細書中でSEQ ID NO:1として示される親のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を示す。
【図10】CA-SP1切断部位(-/-)の領域中におけるSIVmac239からのアミノ酸配列を示す(SEQ ID NO:11)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングを阻害するが、他のGagプロセシング段階に対して有意な効果を有さない化合物を投与することによって、患者におけるHIV-1感染を処置する方法。
【請求項2】
阻害が、処理された感染細胞から放出されたビリオンの量を有意に減少させず、かつ/または放出されるビリオンへのRNAの取り込みの量に対して有意な効果を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化合物が感染細胞から放出されたビリオンの成熟を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
処理された感染細胞から放出されたビリオンの大部分が、ウイルス粒子に関して非中心性の球状の高電子密度コアを示し、ウイルス膜のすぐ内側に位置する半月状高電子密度層を有し、かつ減少した感染性を有するかまたは感染性を有さない、請求項1記載の方法。
【請求項5】
化合物がCA-SP1とのHIVプロテアーゼの相互作用を阻害し、これがウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングの阻害をもたらすが、他のGagプロセシング段階に対して有意な効果を有さない、請求項1記載の方法。
【請求項6】
CA-SP1とのHIVプロテアーゼの相互作用が阻害されるように化合物がウイルスGagタンパク質に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
化合物が、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)への切断部位の近傍またはその部位に結合し、それによって、CA-SP1切断部位とのHIVプロテアーゼの相互作用を阻害してp25からp24へのプロセシングの阻害をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項8】
HIV感染細胞が他のHIV治療に応答しない、請求項1記載の方法。
【請求項9】
患者が少なくとも1つの抗ウイルス剤と組み合わせて化合物を投与される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
抗ウイルス剤が、ジドブジン、ラミブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、アバカビル、ネビラピン(nevirapine)、デラビルジン(delavirdine)、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、アデフォビル、アタザナビル(atazanavir)、ヒドロキシウレア、AL-721、アンプリゲン(ampligen)、ブチル化ヒドロキシトルエン、ポリマンノアセテート(polymannoacetate)、カスタノスペルミン(castanospermine)、コントラカン(contracan)、クリームファーマテックス(creme pharmatex)、CS-87、ペンシクロビル(penciclovir)、ファムシクロビル(famciclovir)、アシクロビル、サイトフォビル(cytofovir)、ガンシクロビル、硫酸デキストラン、D-ペニシラミン、トリナトリウムホスホノホルメート(trisodium phosphonoformate)、フシジン酸、HPA-23、エフロルニチン(eflormithine)、ノノキシノール、ペンタミジンイセチオネート、ペプチドT、フェニトイン、イソニアジド、リバビリン、リファブチン(refabutin)、アンサマイシン(ansamycin)、トリメトレキサート、SK-818、スラミン、UA001、エンフュービルタイド(enfuvirtide)、gp41由来ペプチド、CD4に対する抗体、可溶性CD4、CD4含有分子、CD4-IgG2、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
患者が免疫調節剤、抗癌剤、抗菌剤、抗真菌剤、またはこれらの組み合わせと組み合わせて化合物を投与される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
化合物がジメチルスクシニルベツリン酸またはジメチルスクシニルベツリン誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
化合物が、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン酸、(3',3'-ジメチルグルタリル)ジヒドロベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ジヒドロベツリン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
患者が少なくとも1種の抗ウイルス剤と組み合わせて化合物を投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
抗ウイルス剤が、ジドブジン、ラミブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、アバカビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、アデフォビル、アタザナビル、ヒドロキシウレア、AL-721、アンプリゲン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ポリマンノアセテート、カスタノスペルミン、コントラカン、クリームファーマテックス、CS-87、ペンシクロビル、ファムシクロビル、アシクロビル、サイトフォビル、ガンシクロビル、硫酸デキストラン、D-ペニシラミン、トリナトリウムホスホノホルメート、フシジン酸、HPA-23、エフロルニチン、ノノキシノール、ペンタミジンイセチオネート、ペプチドT、フェニトイン、イソニアジド、リバビリン、リファブチン、アンサマイシン、トリメトレキサート、SK-818、スラミン、UA001、エンフュービルタイド、gp41由来ペプチド、CD4に対する抗体、可溶性CD4、CD4含有分子、CD4-IgG2、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
患者が免疫調節剤、抗癌剤、抗菌剤、抗真菌剤、またはこれらの組み合わせと組み合わせて化合物を投与される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングを阻害するが、他のGagプロセシング段階に対して有意な効果を有さない化合物と、血液産物を接触させる段階を含む、ヒト血液産物を処理する方法。
【請求項18】
阻害が、処理された細胞から放出されるウイルスの量を有意に減少させず、かつ/または放出されるビリオンへのRNAの取り込みの量に対して有意な効果を有さない、請求項17記載の方法。
【請求項19】
化合物が処理された感染細胞から放出されたビリオンの成熟を阻害する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
処理された感染細胞から放出されたビリオンの大部分が、ビリオンに関して非中心性の球状の高電子密度コアを示し、ウイルス膜のすぐ内側に位置する半月状高電子密度層を有し、かつ減少した感染性を有するかまたは感染性を有さない、請求項17記載の方法。
【請求項21】
化合物がCA-SP1とのHIVプロテアーゼの相互作用を阻害し、これがウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングの阻害をもたらすが、他のGagプロセシング段階に対して有意な効果を有さない、請求項17記載の方法。
【請求項22】
化合物が、ウイルスGag p25タンパク質(CA-SP1)からp24(CA)への切断部位の近傍またはその部位に結合し、それによって、CA-SP1切断部位とのHIVプロテアーゼの相互作用を阻害てp25からp24へのプロセシングの阻害をもたらす、請求項17記載の方法。
【請求項23】
以下の段階を含む、動物の細胞におけるHIV-1複製を阻害する化合物を同定するための方法:
(a)CA-SP1切断部位を含むGagタンパク質を試験化合物と接触させる段階;
(b)CA-SP1切断部位またはその近傍に選択的に結合する、標識された物質を加える段階;および
(c)CA-SP1切断部位への、試験化合物の結合と標識された物質の結合の間の競合を測定する段階。
【請求項24】
標的部位に結合することによって、化合物が標的部位とのHIVプロテアーゼの相互作用を阻害する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
CA-SP1がポリペプチド断片または組換えペプチド中に含まれる、請求項23記載の方法。
【請求項26】
標識された物質がCA-SP1に特異的な標識された抗体であり、対照と比較した、試験化合物の存在下でタンパク質に結合した標識された抗体の量の変化を測定する、請求項23記載の方法。
【請求項27】
対照と比較して、試験化合物の存在下でタンパク質に結合した標識された3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸の量の変化を測定する段階を含み、ここで、標識された物質が3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸である、請求項23記載の方法。
【請求項28】
標識が、酵素、蛍光物質、化学発光物質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ビオチン、アビジン、高電子密度物質、放射性同位元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項29】
以下の段階を含む、動物の細胞中におけるHIV-1複製を阻害する化合物を同定するための方法:
(a)野生型CA-SP1切断部位を含むGagタンパク質を、試験化合物の存在下でHIV-1プロテアーゼと接触させる段階;
(b)別々に、変異型CA-SP1切断部位を含むGagタンパク質または代替のプロテアーゼ切断部位を含むタンパク質を、試験化合物の存在下でHIV-1プロテアーゼと接触させる段階;および
(c)変異型Gagタンパク質の切断量または代替のプロテアーゼ切断部位を含むタンパク質の切断量に対する天然の野生型Gagタンパク質の切断量を比較する段階。
【請求項30】
野生型CA-SP1または変異型CA-SP1または代替のプロテアーゼ切断部位がポリペプチド断片または組換えペプチド中に含まれる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
Gagタンパク質が蛍光部分および蛍光消光部分で標識され、各々がCA-SP1切断部位の反対側に結合し、ここで検出する段階が蛍光部分からのシグナルを測定する段階を含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
Gagタンパク質が2つの蛍光部分で標識され、各々がCA-SP1切断部位の反対側に結合し、ここで検出する段階が、試験化合物の存在下で1つの部分から他の部分への蛍光エネルギーの移動を測定する段階を含む、請求項29記載の方法。
【請求項33】
Gagタンパク質の切断に対する試験化合物の効果が、SP1またはp24(CA)に結合する標識化された抗体の量を測定することによって検出される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
CAを結合する標識化抗体、またはSP1を結合する抗体が、酵素、蛍光物質、化学発光物質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ビオチン、アビジン、高電子密度物質、放射性同位元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される分子で標識される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
以下の段階を含む、動物の細胞中におけるHIV-1複製を阻害する化合物を同定するための方法:
(a)試験化合物を、野生型ウイルス単離物と、および別々に3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸に対して耐性であるウイルス単離物と接触させる段階;ならびに
(b)3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸に対して耐性であるウイルス単離物と比較して、野生型ウイルス単離物に対してより活性である試験化合物を選択する段階。
【請求項36】
以下の段階を含む、動物の細胞中におけるHIV複製を阻害する化合物を同定するための方法:
(a)HIV-1感染細胞を試験化合物と接触させる段階;ならびに
(b)その後に、感染した細胞または放出されたウイルス粒子を溶解して溶解物を形成し、CA-SP1タンパク質の切断が起こったか否かを決定するために溶解物を分析する段階。
【請求項37】
分析する段階が、p25が存在することまたは存在しないことを測定する段階を含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
分析する段階が、ウイルスタンパク質のウェスタンブロットを実行する段階、およびp25に対する抗体を使用してp25を検出する段階を含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
分析する段階が、ウイルスタンパク質のゲル電気泳動を実行する段階、および代謝的に標識されたタンパク質の画像化を含む、請求項36記載の方法。
【請求項40】
分析する段階が、p24からp25を区別するために、切断されたp24(CA)またはSP1を選択的に結合する抗体を使用する段階を含む、請求項36記載の方法。
【請求項41】
HIV-1感染細胞を試験化合物と接触させた後に分析する段階を含む、動物の細胞中におけるHIV-1複製を阻害する化合物を同定するための方法であって、ここで、細胞によって放出されるウイルス粒子を、ウイルス粒子に関して非中心性の球状コアの存在について、およびウイルス膜のすぐ内部に位置する半月状の高電子密度層を有することについて、透過型電子顕微鏡を使用することによって分析する、方法。
【請求項42】
HIV Gag p25タンパク質(CA SP1)における変異を含むアミノ酸配列をコードする配列を含み、該変異が、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングの阻害の減少をもたらす、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項43】
p25のプロセシングの阻害の減少が、GagとのHIV-1プロテアーゼの相互作用の阻害の減少に起因する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項44】
p25のプロセシングの阻害の減少が、Gagへの3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸の結合の減少に起因する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項45】
p25のプロセシングの阻害の減少が、GagのCA-SP1切断部位またはその近傍でのDSBの結合の減少に起因する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項46】
変異がCA-SP1のSP1領域中に位置する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項47】
変異がアミノ酸配列KARVL/IAEAMS(SEQ ID NO:1)中に位置する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項48】
変異がKARVLVEAMS(SEQ ID NO:2)またはKARVIAEVMS(SEQ ID NO:3)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項49】
SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項50】
SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:6からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対して95%同一性を有する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項51】
SEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対して80%同一性を有する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項52】
SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:7からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対して95%同一性を有する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項53】
SEQ ID NO:10のポリヌクレオチドに対して80%同一性を有する、請求項42記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項54】
請求項42記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項55】
請求項54記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項56】
培地中で請求項55記載の宿主細胞をインキュベートする段階、および培地からポリペプチドを回収する段階を含む、ポリペプチドを産生する方法。
【請求項57】
請求項42記載の単離されたポリヌクレオチドを含むウイルス。
【請求項58】
請求項42記載の単離されたポリヌクレオチドを含むレトロウイルス。
【請求項59】
HIV-1、HIV-2、HTLV-I、HTLV-II、SIV、トリ白血病ウイルス(ALV)、内因性トリレトロウイルス(EAV)、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、またはネコ白血病ウイルス(FeLV)からなる群より選択される、請求項58記載のレトロウイルス。
【請求項60】
HIV-1である、請求項59記載のレトロウイルス。
【請求項61】
HIV CA-SP1タンパク質中に変異を含み、該変異が3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25のプロセシングの阻害の減少をもたらす、ポリペプチド。
【請求項62】
変異が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:10のSP1領域中に位置する、請求項61記載のポリペプチド。
【請求項63】
SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされる、請求項61記載のポリペプチド。
【請求項64】
変異がKARVLVEAMS(SEQ ID NO:2)またはKARVIAEVMS(SEQ ID NO:3)からなる群より選択される配列を含む、請求項61記載のポリペプチド。
【請求項65】
SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、および10からなる群より選択されるポリヌクレオチドに高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドによってコードされる、請求項61記載のポリペプチド。
【請求項66】
キメラタンパク質または融合タンパク質の一部である、請求項61記載のポリペプチド。
【請求項67】
3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸によるp25(CA-SP1)からp24(CA)へのプロセシングの阻害の減少をもたらすHIV CA-SP1タンパク質の変異を含むアミノ酸配列を選択的に結合する、抗体。
【請求項68】
変異がCA-SP1のSP1領域中に位置する、請求項67記載の抗体。
【請求項69】
変異がKARVLVEAMS(SEQ ID NO:2)またはKARVIAEVMS(SEQ ID NO:3)からなる群より選択される配列を含む、請求項68記載の抗体。
【請求項70】
SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3からなる群より選択されるアミノ酸配列を選択的に結合する、請求項67記載の抗体。
【請求項71】
SP1を選択的に結合するが、CA-SP1を結合しない抗体。
【請求項72】
CAを選択的に結合するが、CA-SP1を結合しない抗体。
【請求項73】
CA-SP1切断部位またはその近傍に選択的に結合する抗体。
【請求項74】
3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン酸、(3',3'-ジメチルグルタリル)ジヒドロベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ジヒドロベツリン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される化合物ではない、請求項23、29、35、36、または41記載の方法によって同定される化合物。
【請求項75】
請求項74に記載の1つまたは複数の化合物、またはその薬学的に許容される塩、エステル、もしくはそのプロドラッグ、および薬学的に許容されるキャリアを含む薬学的組成物。
【請求項76】
請求項23、29、35、36、または41に記載の方法によって同定される化合物を含み、抗ウイルス剤をさらに含む、薬学的組成物。
【請求項77】
ジメチルスクシニルベツリン酸またはジメチルスクシニルベツリン誘導体を含む、請求項76記載の薬学的組成物。
【請求項78】
化合物が、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン、3-O-(3',3'-ジメチルスクシニル)ジヒドロベツリン酸、3-O-(3',3'-ジメチルグルタリル)ベツリン酸、(3',3'-ジメチルグルタリル)ジヒドロベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ベツリン酸、3-O-ジグリコリル-ジヒドロベツリン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項76記載の薬学的組成物。
【請求項79】
抗ウイルス剤が、ジドブジン、ラミブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、アバカビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、アデフォビル、アタザナビル、ヒドロキシウレア、AL-721、アンプリゲン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ポリマンノアセテート、カスタノスペルミン、コントラカン、クリームファーマテックス、CS-87、ペンシクロビル、ファムシクロビル、アシクロビル、サイトフォビル、ガンシクロビル、硫酸デキストラン、D-ペニシラミン、トリナトリウムホスホノホルメート、フシジン酸、HPA-23、エフロルニチン、ノノキシノール、ペンタミジンイセチオネート、ペプチドT、フェニトイン、イソニアジド、リバビリン、リファブチン、アンサマイシン、トリメトレキサート、SK-818、スラミン、UA001、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項76記載の薬学的組成物。
【請求項80】
免疫調節剤、抗癌剤、抗真菌剤、抗菌剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項76記載の薬学的組成物。
【請求項81】
患者からの血液を採取する段階、ウイルスRNAの遺伝子型解析を行う段階、およびウイルスRNAがCA-SP1切断部位の領域をコードする配列中に変異を含むか否かを決定する段階を含む、個体がp25プロセシングを阻害する化合物による処置に感受性であるHIV-1に感染しているか否かを決定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−520756(P2006−520756A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503111(P2006−503111)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/002393
【国際公開番号】WO2004/069166
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(501360924)パナコス ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (3)
【出願人】(500122156)アメリカ合衆国 (3)
【Fターム(参考)】