説明

ウイルスベクターおよびその遺伝子治療のための使用

【課題】免疫学的遺伝子治療のために使用可能な、改善された効果を有するベクターを提供する。
【解決手段】ヒト単一鎖−IL12をコードする核酸配列、ヒト4−1BBリガンドをコードする核酸配列およびヒトIL−2をコードする核酸配列を含有し、その際ベクターはアデノウイルスベクターである、遺伝子治療のためのベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一鎖−インターロイキン−12(単一鎖−IL−12、"single chain IL-12"またはscIL−12)および補助刺激因子−タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクター、ならびに遺伝子治療、特に腫瘍の治療のためのこれらのベクターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クレブス病は、依然として、先進国の国民において非常の高い死亡率を示すものである。肝細胞性癌腫(HCC)は、たとえば、1個または複数個の大きな腫瘍が診断された場合に、平均生存期間が6ヶ月であるクレブズ病である(Llovet J.M. et al., Hepoatology, 1999, 29:62-67)。今日使用されている治療手段は、高周波切除、化学療法および経皮エタノール注射(PEI)を含むものであって、これらは、小さい腫瘍の場合には一定量の結果を示すものの、大きい腫瘍の撲滅に関しては十分でないことが明らかである。
【0003】
したがって、技術水準において遺伝子治療によるHCCの治療が提案されている。遺伝子治療による治療方法は、核酸の投与に基づくものであり、この場合、これらは通常は、腫瘍細胞中に導入され、かつ腫瘍細胞を崩壊させる配列を有する。その際、多くの二者択一的なストラテジーが示され、これらのストラテジーによって、導入された核酸配列が、腫瘍細胞の崩壊を生じさせることができる。多くの二者択一的なストラテジーが生じる。HCCの治療のための相当するストラテジーに関しては、Ruizら(Dig. Dis. 2001, 19:324-332)に示されている。これらの開示において、今日において、HCCの治療に関する臨床試験においてヒトで試験されている核酸を、治療戦略に応じて、以下の4グループに分類した:
(1)腫瘍抑制遺伝子の導入:
これらのストラテジーは、遺伝子治療に使用される核酸が1種の遺伝子を含むものであって、この場合、これらの遺伝子産物が腫瘍の成長を食い止めるか、あるいは腫瘍のアポトーシスを誘発することに基づく。多くの臨床試験は、p53遺伝子の導入に基づく。
(2)免疫原治療:
これらのストラテジーは、遺伝子治療に使用される核酸配列が、患者の免疫系を活性化させ、かつ腫瘍細胞をターゲットとした免疫反応を引き起こす遺伝子産物を含むことに基づくものである。免疫反応自体はその後に腫瘍の崩壊を導くものである。多くのサイトカイン、補助刺激分子および腫瘍特異的分子が、免疫治療に提案されている。
(3)自殺−遺伝子治療:
これらの方法の場合には、遺伝子治療に使用される核酸が、無毒の作用物質を、腫瘍細胞に対する細胞毒に変換する遺伝子産物、たとえば酵素をコードするものである。
(4)腫瘍崩壊性ウイルスの導入:
これらの形態に関しては、遺伝子治療は核酸ベクターを使用し、この場合、これらはウイルスの配列に基づくものである。腫瘍崩壊性のウイルスの配列を有するベクターは、ウイルスの複製を制御する腫瘍特異的プロモーターを有し、これにより、腫瘍細胞中でのウイルスの選択的増殖が可能になる。
【0004】
したがって、本発明に関連する免疫原治療(同様に免疫治療を意味する)が、核酸を使用するものである場合には、この配列は免疫系を活性化し、かつ腫瘍をターゲットとするものを含む。原則的に、免疫系は抗原に加えて、腫瘍細胞上の腫瘍−特異的構造物であるとみなされる。免疫系を活性化することで、免疫系の構成要素による腫瘍の崩壊を導くことができる。
【0005】
技術水準においては、免疫系を刺激するか、あるいは免疫反応を修飾する多くの分子が知られており、特にサイトカインである。サイトカインはすでに抗腫瘍活性を示すことが確認されている。たとえば、IL−12が細胞性免疫の刺激因子であり、かつ強力な抗腫瘍−活性を示すことが記載されている(Brunda et al., J. Exp. Med. 1993, 178: 1223-1230)。しかしながら、組み換えIL−12タンパク質自体の抗腫瘍剤としての使用については、治療用量のサイトカインは、毒性の副作用を示すことから失敗している(Lotze et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 1997, 795:440-454; und Cohen J. Science, 1995, 270:908)。
【0006】
したがって、サイトカインをコードする核酸を腫瘍中に導入し、それによって免疫系の局所的活性を可能にすることが提案された。Hockら(proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90: 2774-2778)は、たとえば、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−7(IL−7)、TNFまたはIFN−γ遺伝子の腫瘍細胞中への導入および動物において腫瘍を誘発するための腫瘍細胞の使用を開示している。すべての遺伝子導入腫瘍細胞は、腫瘍細胞に対して拒絶反応を生じ、その際、使用されるサイトカインに依存して、試験動物の免疫系の種々の細胞が拒絶反応に関与する(CD4+、CD8+、CD3+)。
【0007】
IL−12をコードするベクターについてはさらに、免疫治療に関しての適性を試験した。CMLF("細胞傷害性リンパ球成熟因子")またはNKSF("ナチュラルーキラー細胞刺激因子")とも呼称されるIL−12は、ヘテロダイマーサイトカインであり、これは、通常は周縁のB−リンパ球を活性化させることにより形成される。このタンパク質は、相対的分子量40kDaおよび35kDaを有する2種のサブユニットから構成され、この場合、これらはジスルフィド結合を介して互いに結合されている。ジスルフィド結合は、生物学的活性に関して必要不可欠なものである。これらのタンパク質が、活性化ヒトリンパ球の増殖を刺激し、かつナチュラルキラー細胞を活性化することは、すでに種々の文献で示唆されている。
【0008】
これらのタンパク質の種々のサブユニットをコードするベクターが、腫瘍の治療のために使用されている(Barajas et al., Hepatology, 2001, 33: 52-61; Mazzolini et al., Cancer Gene Therapy, 1999, 6:514-522)。さらに、これらのベクターは、他の配列との組合せで、特に補助刺激因子−タンパク質に関する配列との組合せで、この場合、これらは同一または他のベクター上に存在するものであって、腫瘍の治療のために使用する。(Gyorffy et al., J. Immunlogy, 2001, 166: 6212-6217; Matinet et al., Gene Therapy, 2002, 9: 786-792; Martinet et al., Journal of National Cancer Institute, 2000, 92:931-936; Guinn et al. J. Immunology, 1999, 162: 5003-5010; und Emtage et al., J. Immunology, 1998, 160: 2531-2538)。
【0009】
IL−12は、単一鎖−IL−12の場合には、異なるサブユニットが融合タンパク質に結合することによるタンパク質の場合よりも良好な活性で発現する(Lieschke et al., Nature Biotechnology, 1997, 15: 35-40)。他の治療方法において、患者の腫瘍細胞を採取し、かつこれらのin vitroで、プラスミドを用いて処理することが提案されており、この場合、これらのプラスミドは、単一鎖−IL−12またはIL−12および補助刺激因子をコードするものである(US2002/0018767)。その後にin vitro処理中において腫瘍細胞を再度移植する。したがってこれらの方法は、患者について数回に亘っての手術および患者への腫瘍細胞の再移植を含むものであり、これにより多くの患者にこのような治療を憂慮させる。
【0010】
従来使用されていた核酸は、哺乳類、好ましくはヒトの治療に関して成果を収めるものではなかった。たとえば、Ruizら(前記)により示された治療方法は、ベクターの極めて高い投与量(3x10-2.5x1013 "プラーク形成単位" PFU/投与量)に基づくことが確認されているが、これは、相当する臨床試験において結果がでないか、あるいは単にネガティブな結果が得られるにすぎなかった。しかしながら、核酸の投与量については、遺伝子治療に関してクリティカルな要因であるために、高すぎる投与量による副作用であるか、あるいは、腫瘍からベクターが放出されることによるベクターの遊離が予測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2002/0018767
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Llovet J.M. et al., Hepoatology, 1999, 29:62-67
【非特許文献2】Dig. Dis. 2001, 19:324-332
【非特許文献3】Brunda et al., J. Exp. Med. 1993, 178: 1223-1230
【非特許文献4】Lotze et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 1997, 795:440-454
【非特許文献5】Cohen J. Science, 1995, 270:908
【非特許文献6】proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90: 2774-2778
【非特許文献7】Barajas et al., Hepatology, 2001, 33: 52-61
【非特許文献8】Mazzolini et al., Cancer Gene Therapy, 1999, 6:514-522
【非特許文献9】Gyorffy et al., J. Immunlogy, 2001, 166:6212-6217
【非特許文献10】Matinet et al., Gene Therapy, 2002, 9: 786-792
【非特許文献11】Martinet et al., Journal of National Cancer Institute, 2000, 92:931-936
【非特許文献12】Guinn et al. J. Immunology, 1999, 162: 5003-5010
【非特許文献13】Emtage et al., J. Immunology, 1998, 160: 2531-2538
【非特許文献14】Lieschke et al., Nature Biotechnology, 1997, 15: 35-40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明は、免疫治療のために使用可能な、改善された効果を有するベクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの課題は、驚くべきことに、単一鎖−IL12および補助刺激因子−タンパク質をコードする核酸配列を含有し、その際、ベクターはウイルスベクターであることを特徴とする、ウイルスベクターによって解決される。
【0015】
したがって、本発明は、驚くべきことに、単一鎖−IL−12および補助刺激因子−タンパク質をコードするベクターが、腫瘍の治療のための特定の方法で、免疫治療の範囲内で適していることが確認された。免疫治療によって、原発腫瘍ばかりでなく転移ガンまでも取り除かれる。本発明によるコンストラクトによってコードされたタンパク質による相乗効果は、免疫刺激の際に、技術水準において提案されているものよりも、少ない用量での核酸の添加を可能にしたことである。投与量がわずかであればあるほど、副作用、たとえば患者に対する自己免疫疾患のリスクが少なくなり、それと同時に、臨床適用の場合の改善された安全性を示す。ウイルス感染の確率は公知ベクターの場合よりも少ない。少ない投与量は、さらに大きい腫瘍塊または多くの腫瘍群を同時に、副作用を示すことなく治療することを可能にする。
【0016】
単一鎖−IL−12−遺伝子の使用は、IL−12双方のサブユニットをコードする部位の遺伝子を使用する場合と比較して、ベクター中で核酸の発現に関してわずかで済む。したがってこれらの配列は、単一鎖−IL−12遺伝子の他に、免疫治療を増強させる2種またはそれ以上の外来遺伝子が存在するにもかかわらず、相対的にわずかな量のベクター、たとえばアデノウイルスベクターの使用を可能にする。
【0017】
本発明によるベクターは、哺乳類、特にヒトを治療するために使用される。定義された遺伝子配列上での以下の指示は、好ましくはヒト配列に適用される。しかしながら、遺伝子配列は、タンパク質の活性化(免疫刺激された、および/またはT−細胞形成)が、ヒト遺伝子産物の相当する活性化の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%である限りにおいて、さらに他の種由来のものであるか、あるいは定義されたホモロジーの範囲内で(本発明に関しては、BLAST−ソフトフェアで算定する)、従来技術から公知の方法で修飾されていてもよい。定義されたホモロジーの範囲は、生物学的活性に関して天然の遺伝子においてコードする範囲に適用される。融合タンパク質をコードする核酸配列が使用される場合には、ホモロジーの範囲は、示された生物学的活性(IL−12、補助刺激因子)をコードする部分に適用されてもよい。タンパク質の活性化の増強を導く配列の変更が含まれる。
【0018】
本発明の範囲内において、これに加えて用語「補助刺激因子−タンパク質をコードする配列」が使用され、配列に関しては、ヒト細胞中で発現した場合にタンパク質を生じさせ、この場合、これらのタンパク質は、細胞表面タンパク質として存在し、かつT−細胞レセプターと特異的に結合するものである。T−細胞の形成に伴って、補助刺激因子タンパク質は免疫反応を増強させる。相当する補助刺激因子−タンパク質、たとえば4−1BB(4−1BBL)、B7−1(またCD80とも呼称される)およびB7−2は、技術水準から公知のものである。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によれば、補助刺激因子タンパク質4−1BBリガンドをコードし、特に、図21に示された配列に対して少なくとも40%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の配列相同性を有する配列である、ベクター配列を含有し、その際、配列によりコードされたタンパク質は、T−細胞と特異的に結合する能力を有する。また4−1BBLの活性化試験については、技術水準から公知である(Vinay DS, Kwon BS. Semin. Immunol., 1998, 10:481-9. Review; Kwon et al., Mol Cells., 2000, 10: 119-26)。
【0020】
本発明の範囲内において、タンパク質は単一鎖−IL−12を意味し、この場合、タンパク質がアミノ酸から構成される場合には、天然のIL−12の双方のサブユニットを融合タンパク質として含む。単一鎖−IL−12をコードする核酸配列は、通常は、図19および20に示された配列に対して少なくとも40%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の配列相同性を示す。示された配列は、融合遺伝子のIL−12部分を示す。サブユニットを結合した配列は当業者から公知であり、かつホモロジーの算定を考慮する必要はない。さらに単一鎖−IL−12は、免疫刺激活性を示し、この場合、これらの活性は、ヘテロダイマーの形での天然のIL−12の相当する活性よりも、本質的に低いものではない。免疫刺激の際のヒトIL−12の効果は、γ−インターフェロンの産生を誘導することから成る。単一鎖−IL−12の免疫刺激活性は、天然のIL−12の相当する活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%に達する。タンパク質活性は、公知物と、in vitro試験で比較することができる(たとえば、Lieschke et al., a.a.o. のIL−12との活性比較のためのVitro試験を使用する)。本発明の特に好ましい実施態様によれば、単一鎖−IL−12の免疫刺激活性は、本来のIL−12の相当する活性よりもさらに高いか、あるいは本質的に高い。
【0021】
他の実施態様において、本発明は他のサイトカイン、サイトカイン−活性を有するタンパク質および/または補助刺激因子−タンパク質をコードする他のベクターを含む。サイトカイン−活性を有するタンパク質としては、サイトカインの免疫刺激活性を示すが、しかしながら、サイトカインとの間に構造的類似性はないタンパク質を意味する。相当するサイトカイン−アゴニストとして、たとえば拮抗性サイトカイン−レセプター抗体が、技術水準において知られている。
【0022】
単一鎖−IL−12および補助刺激因子−タンパク質をコードするための特定の挙げられた配列の他に、本発明によるベクターは、T−および/またはB−細胞を活性化する1種または複数種の他のサイトカインをコードする配列であるか、あるいは1種または複数種の他の補助刺激因子タンパク質をコードする配列を有していてもよい。
【0023】
本発明は、特に、単一鎖−IL−12、4−1BBリガンドおよびIL−2をコードする配列を含むベクターに関する。タンパク質は、本発明の範囲内においてIL−2を意味し、この場合、これらは、図22に示された配列に対して少なくとも40%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の配列相同性を有する配列によってコードされるものである。さらに、本発明の範囲内において使用されるIL−2をコードする配列は、本質的に天然のIL−2の免疫刺激活性を示すものであって、すなわち、本発明の範囲内においては、in vitroにおける免疫刺激活性を有するIL−2をコードする配列を使用し、この場合、これらの活性は、天然のIL−2の活性の少なくとも約70%に相当する。IL−2の活性を測定するためのin vitro試験に相当するのは、技術水準において公知のものである。好ましくは、Gillis et al.(J Immunol., 1978, 120 (6): 2027-32)に記載された活性測定のための方法を使用する。
【0024】
他の実施態様において、本発明によるベクターは、単一鎖−IL−12、4−1BBリガンドおよびIL−2をコードする配列の他に、補助刺激因子−タンパク質B7−1および/またはB7−2をコードする他の配列を包含する。
【0025】
本発明の範囲内で、補助刺激因子−タンパク質はB7−1(またはB7−2)を意味し、この場合、これらは、図23A(またはB)に示された配列に対して少なくとも40%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の配列相同性を有する遺伝子によりコードされるものである。
【0026】
本発明の実施態様によれば、ベクターは、コードされた配列の発現を可能にする他の配列を包含する。したがって、本発明によるベクターは、1種のプロモーターおよび1種または複数種の翻訳調節部位(IRES)を包含することができる。プロモーターは腫瘍−特異性を示していてもよく、すなわち腫瘍中でのみ発現するか、あるいはすべての細胞中では活性化しない。
【0027】
本発明の実施態様において、非特異的プロモーターが好ましく、それというのも相当するプロモーターは一般に良好に発現され、かつこれらのベクターを、種々の腫瘍の治療のために使用することができるためである。
【0028】
免疫刺激遺伝子の特に高い発現は、本発明によればベクターを用いて達成され、この場合、これらのベクターは、少なくとも3種の構造遺伝子(トリシストロン)を有し、さらに発現カセット当たり1種のプロモーターのみを包含することによって特徴付けられ、かつそれぞれの構造遺伝子はプロモーターのすぐ下流に存在することはなく、IRES配列を有する。それというのも、複数種のプロモーターを発現カセット中に使用する場合には、これらが互いに抑制しうることが確認されているためである。プロモーターとIRES−配列との組合わせは、良好な発現を生じる。互いに異なるIRES−配列をベクター中で使用する場合には、これらの配列下で組換え価を最小限にできることが特に有利である。
【0029】
4種の構造遺伝子(テトラシストロン)を有するベクターを使用する場合には、構造遺伝子を複数個の発現カセットに分割することが有利であってもよい(実施例参照)。これらの場合には、好ましくは発現カセット当たり1種のプロモーターを包含する。好ましくはベクター中で互いに最大の距離を示すように2個の発現カセットを分割することによって、プロモーターは空間的に独立し、これにより相互抑制を減少させる。
【0030】
本発明による配列は、特に、タンパク質が、ヒト細胞中で特に良好に発現するといった利点を示す。したがって、免疫治療のための本発明による配列の有利な作用は、これらの実施態様によれば、コーディング配列の高い発現に基づく。
【0031】
本発明の範囲内で、ベクターは好ましくはDNAまたはRNAから構成される。
【0032】
本発明の範囲内において、ベクターは「ウイルスベクター」を意味し、これらが核酸配列である場合にはウイルス由来の配列を含むものであって、この場合、これらは、ウイルス外被中での核酸のパッケージングを可能にする。
【0033】
配列がウイルス由来であることに依存して、ベクターはアデノウイルスベクター、アデノ−随伴ウイルス、レンチウイルスベクター、HSV−ベクター、レトロウイルスベクター、バキュロウイルスベクターまたはセムリキ森林ウイルスベクターを含む。アデノウイルスベクターの場合には、第一世代(AdEast-コロニー系;たとえばQBio-gene GmbH, Heidelbergから入手可能なもの、E1およびE3領域において欠失)または第二世代ものであるか(E1、E2、E3、E4で欠失)、あるいはヘルパー依存性アデノウイルスベクターであってもよい(Nicklin SA, Baker AH. Curr Gene Ther., 2002, 2: 273-93; 2: 273-93; Mah et al., Clin Pharmacokinet., 2002, 41: 901-11)。
【0034】
特に好ましい実施態様において、本発明は、単一鎖−IL−12、4−1BBリガンドおよびIL−2をコードする配列を含有するアデノウイルスベクターに関する。アデノウイルスベクターは、ヒトの遺伝子治療において使用するのに認められているベクターに相当することから特に有利である。したがって、このベクターは定義された使用に関して安全である(たとえば、局所的投与による腫瘍治療)。アデノウイルスベクターは、ベクター系に属し、この場合、これらは臨床においてしばしば使用されるものであり、かつこれについては使用の安全性に関して最も多くのデータが存在するものである。
【0035】
しかしながら、アデノウイルスベクター中に収容される外来核酸配列の量は制限される。これについては以前には、免疫刺激タンパク質をコードする2種以上の遺伝子を、相当する1個のベクター中に収容することは不可能であった。以下に詳細に記載されたベクターの開発は、これらの問題を最初に回避したものであって、アデノウイルスベクターが、公知のベクターとは対照的に、複数個の免疫刺激タンパク質をコードすることを可能にした。本発明において、アデノウイルス性の3−遺伝子ベクター(3種の構造遺伝子を有するベクターを意味するものであってもよい)を使用することは特に好ましい。さらに本発明は、4種の遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを最初に使用可能にしたものであって、これらについては、実施例では2個の発現カセットに分割されている。
【0036】
本発明は、さらに本発明によるベクターを含むウイルス粒子に関する。ウイルス粒子またはビリオンとしては、ウイルスの外被タンパク質によって包囲された核酸を意味する。
【0037】
他の実施態様によれば本発明は医薬に関するものであって、この場合、これらの医薬は、本発明によるベクターまたはウイルス粒子を含有する。本発明によるベクターまたはウイルス粒子は、1種の担持剤と一緒に簡単に混合されるか、あるいは他の助剤と一緒に加工することができる。本発明によるベクターまたはウイルス粒子は、たとえばリポソーム中、あるいは複製可能なアデノウイルス(RCAs; Curr Cancer Drug Targets, 2001, 1:85-107参照)と一緒にリポソーム中に導入され、ポリエチレン−グリコール−被覆アデノウイルスとして、抗体−結合アデノウイルス(ウイルスおよび細胞マーカー、好ましくは腫瘍細胞マーカーに対して特異性を示す抗体と結合させたウイルス)として、RCAsと混合され、RCA中のカセットとして、あるいは腫瘍中で増大させるために調製されたRCAとして存在する(調製RCA:腫瘍−特異的プロモーターの調製下でE1−官能性を有するRCA;Van der Poel et al., J Urol., 2002, 168:266-72)。
【0038】
ウイルス粒子の正確な投与量は、治療すべき患者、適用形の種類および使用されるベクターの構造に依存し、かつ個々の具体的な事例においては当業者によって標準的方法で定めることができる。本発明による核酸は、腫瘍の崩壊または顕著な減少を、特にわずかな投与量で得ることができる。この医薬品は、好ましくは、投与単位当たり1×1011以下、好ましくは1×1010以下、1×10以下または1×10以下の濃度を示す。しかしながら、これらの投与量は、定義された範囲をさらに顕著に下廻って、すなわち1×10以下にもなりうる。投与データは、感染したウイルス粒子の数に関する。ラットの腫瘍モデルにおいて、すべての個体が、腫瘍注入を1年以上の期間に亘って、5×10の感染性ウイルス粒子投与量によって治療した場合に生存することが示された。5×10の感染性ウイルス粒子の投与を含む治療では、なおも約90%の個体が生存する。これとは対照的に、コントロール群のすべての個体は、腫瘍注入後の最初の50日間で死亡した。これらの投与量は、相当する治療に関して技術水準で提案された投与量を大幅に下廻るものである。
【0039】
医薬に関しては、ベクターを良好に腫瘍に運搬できるように処方される。好ましくは、医薬は、腫瘍内注入のための溶液の形で存在する。相当する溶液の製造は、技術水準から公知である。さらに二者択一的に、医薬は担持材料として処方されてもよく、この場合、これらはベクターを腫瘍中に移植した後に、一定の期間に亘って放出される。相当する担持材料は、たとえば技術水準から公知の硫酸セルロース等である。
【0040】
最終的に本発明は、腫瘍を治療するため、特にヒトのHCC、腸ガン、乳ガン等を治療するためのベクターまたはウイルス粒子の使用に関する。
【0041】
二者択一的な実施態様によれば、本発明は、感染症またはプリオン感染症(Prionenerkrankungen)の治療のためのベクターまたはウイルス粒子の使用に関する。免疫刺激治療は、特に遺伝子治療の形で、相当する感染症の治療のためにすでに提案されている(Van det Meide et al., Vaccine., 2002, 20: 2296-302)。
【0042】
したがって、本発明によるベクターおよびウイルス粒子の免疫刺激作用は、さらに感染症の治療、たとえばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルスA型、B型、C型(HAV、HBV、HCV)、サイトメガロウイルス(CMV)および子宮頸ガンを引き起こしうるヒト パピローマウイルス HPVによる感染症の治療のための、治療有効性を示す。さらにプリオン感染症の治療に関しては、ベクターまたはウイルス粒子を、有利に使用することができ、それというのも、非特異的免疫刺激が、すでに動物モデルにおいて治癒結果を得られているためである(Sethi et al., Lancet, 2002, 36:229-30)。
【0043】
本発明による製薬学的使用に関しては、ベクターは1×1011以下、好ましくは1×1010以下、1×10以下または1×10以下の濃度で存在する。しかしながら、投与量は、定義された範囲をさらに顕著に下廻って、すなわち1×10以下であってもよい。投与データは、ここでは感染性ウイルス粒子の数に関する。
【0044】
以下の例は、本発明を例証するものである。例に挙げられたベクターの製造および使用に関する詳細な記載は、さらに"Adenovirale Immuntherapie solider Tumore a, HCC-Modell der Ratte (Rattus norvergicus, Berkenhout 1769)"des Fachbereichs Biologie der Universitaet hamburgで、Reinhard Waehlerによる論文において見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ベクターAd−1〜Ad−3を示す概略図
【図2】調整後のAd−1、Ad−2およびAd−3のIL−12レベル試験を示すグラフ図
【図3】細胞培養中での4−1BBL発現を示す図
【図4】細胞培養中でのインターロイキン−2の発現を示す図
【図5】段階的投与量拡大試験(Dosiseskalationsstudie)の結果を示す図
【図6】段階的投与量拡大試験(Dosiseskalationsstudie)のMRT−画像を示す図
【図7】Ad−1、Ad−2およびAd−3の試験について時間的経過を示す図
【図8】ウイルス注入後0週の腫瘍を示す図
【図9】ウイルス注入後3週の腫瘍を示す図
【図10】ウイルス注入後7週の腫瘍を示す図
【図11】MRTデータに基づく腫瘍の大きさの7週の経過を示すグラフ図
【図12】ウイルス注入後100日までの処理群の生存率を示すグラフ図
【図13】pTrident3を示す図
【図14】pShuttle[CMV]IL-12[IRES]4-1BBL[IRES]IL-2を示す図
【図15】pShuttle[CMV]IL-12[IRES]4-1BBLを示す図
【図16】pShuttle[CMV]IL-12を示す図
【図17】プラスミドpAd-3を示す図
【図18】図1のAd−3インサートに相当する、トリシストロン性発現カセット(マウスcDNAsを含む)の配列を示す図
【図19】ヒトIL−12p40(40kDa)のコーディング配列を示す図
【図20】ヒトIL−12p35(35kDa)のコーディング配列を示す図
【図21】ヒト4−1BBLのコーディング配列を示す図
【図22】ヒトIL−2のコーディング配列を示す図
【図23】ヒトB7−1(CD80)(図A)およびヒトB7−2(CD86)(図B)のコーディング配列を示す図
【図24】pShuttle[CMV]IL-12[IRES]4-1BBL[IRES]IL-2の配列を示す図
【図25】pShuttle[CMV]IL-12[IRES]4-1BBLの配列を示す図
【図26】pShuttle[CMV]IL-12の配列を示す図
【図27】PAd-3の配列を示す図
【図28】1年までの長期試験における効果を示すグラフ図
【図29】Ad−1およびAd−3での処理後に腫瘍成長について、コントロールベクター(Ad−GFP)と比較しての効果を示す図
【実施例】
【0046】

I.ベクターAd−1、Ad−2、Ad−3の構築およびこれらのin vitroおよびin vivo試験
II.ベクターAd−4の構築
I.ベクターAd−1、Ad−2、Ad−3の構築およびこれらのin vitroおよびin vivo試験
1.ベクターの製造
最初に、プラスミドpTrident3(図1)中で、scIL−12、4−1BBLおよびIL−2のマウスcDNAsをクローニングした。結果物は、pT3 scIL12[IRES]4−1BBL[IRES]IL2(図なし)である。
【0047】
予め3個の構成成分の読み枠の5’−側およびIRES−要素までのこれらの距離を、最適化された翻訳開始部位を形成するために修飾する。
【0048】
このようにして構築された3個の構造遺伝子を含む発現カセットは、プロモーターを用いることなく、かつ3’−非翻訳配列を、AdEasy-Systems(QBiogene GmbH; Heidelberg)のpShuttle-CMVプラスミド中でクローニングする。この結果物は、プラスミドpShuttle[CMV]scIL12[IRES]4-1BBL[IRES]IL2(図2)である。このプラスミドからのカセット[CMV]scIL12[IRES]4-1BBL[IRES]IL2は、DNAシークエンシングによりその正確性について検査した。
【0049】
その後にこれらのコンストラクトは、E.Coli株BJ5183中でプラスミドpAdEasyと一緒に同時形質転換することによって、プラスミドpAd−3(図参照)に組み換えられ、この場合、Ad−3に関して包含されるすべての組み換えDNAが挙げられる。
【0050】
pShuttle-[CMV]scIL12[IRES]4-1BBL[IRES]IL2から出発して、プラスミドはAd−2に関して、pShuttle-[CMV]scIL12[IRES]4-1BBL(図参照)、およびAd−1に関して、pShuttle-[CMV]scIL12(図参照)をクローニングし、かつ同様の方法でpAd−3を製造するために、プラスミドpAd−2およびpAd−1を製造した。
【0051】
アデノウイルスは、プラスミド準備工程においてPacI-制限酵素を用いて切断した後に、HEK293細胞中にトランスフェクションさせ、かつ得られたウイルス性プラーク(ウイルス粒子ともいう)を単離し、かつ増殖させた。
【0052】
発現カセットの概略図:図1。
【0053】
発現試験
2.1 IL−12
ラットの肝細胞ガン細胞、McA−RH7777を、ウイルス(ウイルス粒子)Ad−1、Ad−2およびAd−3を用いて感染させ、かつIL−12発現を、IL−12 p70−ELISAを用いて細胞培養上清中で、種々の時間の後に定量した。
概略図:図2。
【0054】
2.2 4−1BBL
ラットの肝細胞ガン細胞、McA−RH7777を、ウイルス(ウイルス粒子)Ad−1、Ad−2およびAd−3を用いて感染させ、かつIL−12発現を、フローサイトメトリーを用いて、4−1BBLを抗体TKS−1(BD Pharmingen, Heidelberg)で染色した後に観察した。Ad−1は、コントロールとして使用し、それというのもこれらは4−1BBL発現が見込まれないためである。
概略図:図3。
【0055】
2.3 IL−2
ラットの肝細胞ガン細胞、McA−RH7777を、ウイルス(ウイルス粒子)Ad−1、Ad−2、およびAd−3を用いて感染させ、かつIL−12発現を、細胞培養上清中で種々の期間の後に、IL−2ELISAを用いて定量した。ここでAd−1およびAd−2はコントロールとして使用し、それというのもこれらはIL−2発現が見込まれないためである(示されていない)。
概略図:図4。
【0056】
3.in vivo試験
3.1 段階的投与量拡大試験 1
ベクターAd−3(図5a)をラットモデルにおいて、肝細胞ガン性癌腫(HCC)について試験した。McA−RH7777細胞株(ラットの肝細胞ガン性癌腫)は、Buffalo−Ratte同質遺伝子群を含むものであって、腫瘍の被膜下肝移植に使用された。
【0057】
100万個の細胞移植後に腫瘍の増大について、磁気共鳴断層撮影法(MRT)によって、Dr .Gerrit Krupski−Berdien(radiologischen Klinik, UKE)との共同研究で、ウイルス注入の前後について観察した。図5bは、ウイルス注入後第3日と12日との間の腫瘍容積についての経過を示した。これらの短い期間においてベクターの顕著な効果は、投与量依存的であり、かつ最も高い投与量でのウイルス注入により、腫瘍容積は27%の大きさに減少した。これらの結果については図6において、選択されたMRT−図を用いて個々の動物について示し、腫瘍の大きさは動物の大きさに比例して改善されていることが明らかにされた。
【0058】
これらのデータに基づいて、より多くの動物群の長期間に亘っての処理に関する投与量は、腫瘍あたり5×10の感染性粒子を用いることに定めた。以下の研究において、個々のベクター(Ad−1〜Ad−3)の効果は、専らこれらのわずかな投与量で達成された。図7の概略図で示されているように、腫瘍を移植し、14日後にA−群の6個体の動物をベクターで処理し、かつ抗腫瘍免疫応答のパラメータについてはさらに2週間の後に分析した。それぞれ10個体の動物についてB−群を形成した(長期間処理群)。段階的投与量拡大試験に関する差異において(図5および6)、2個の腫瘍のみを使用し、これについて1個のみをウイルスを用いて処理し、免疫刺激の遠位の効果を算出した。B−群は、腫瘍減少の長期間に亘っての動態および生存率の分析のために用いた。3ヶ月の後に、これらの概略図中で、生存している動物について、腫瘍再発の診断および撲滅に関しての免疫記憶試験のために、さらに肝臓内腫瘍移植おこなった。さらに3ヶ月間に亘って、再度生存率を測定した。これらのデータは、5×10の選択された投与量の場合に、最初の14日間のインターバルで、腫瘍増加の封じ込めが示された。B−群はすでに100日間に亘って観察した。これらの処理による腫瘍減少の結果は、MRT−撮影の形で、図8〜10に示した。
【0059】
これらの図は、ウイルス投与後7週間に亘って選択された投与量については、肝蔵注入された腫瘍、さらには注入されていない腫瘍の完全な排除を達成したことを示している。注目すべきは、肝臓および腹腔内への転移(Ad−2、3週間)が同様に排除されたというさらなる効果である(Ad−2群、図8〜10参照)。
【0060】
MRT−データから測定された腫瘍容積の詳細については、図11で示し、かつ説明している。生存率として処理群中での%で示される試験経過は、図12に示した。
【0061】
動物実験の範囲において、IL−12はラット血清中で検出された。同様に、インターフェロン−γを測定したが、この場合、これは免疫細胞のIL−12−免疫刺激後に産出され、抗腫瘍作用の大部分を担うものである。同様にインターフェロン−γは、顕著に検出された。さらに、これらの測定については、腫瘍を特異的にターゲットとするT−細胞を、いわゆる細胞毒性試験で観察した。免疫応答が存在し、さらに処理された動物の組織標本について特徴付けた。処理された腫瘍組織は、CD8+細胞、CD4+細胞、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞を、コントロールベクターで処理された組織と比較して高められた量で検出した。
【0062】
3.2 長時間試験の実施のためのプロトコール
2種の腫瘍を、McA−RH7777−細胞を注入することによって使用した。これらの細胞は、2種の異なる肝葉に注入した。1個の腫瘍に対して、100万細胞を使用した。その後に、これらの左側の腫瘍には遅れてウイルス注入をおこなった。もう一つの腫瘍は右側であり、650.000個の細胞を使用した。これらの腫瘍については、肝臓内転移モデルとして使用した。これらの腫瘍については、刺激された免疫細胞の効果を、遠位の腫瘍病巣で再度検査した。これらの結果は、図9〜12および図28〜30に示した。
【0063】
II.Ad−4の構築
E.Coli−細胞中の相同的組み換えによる他の挿入系を用いて、B7−1のための発現カセットを、アデノウイルスE3−領域中の位置に挿入した。これらの領域は機能的に不活性であり、したがってこれら領域の大部分は、ここで使用されるベクター中で削除した。発現カセットは、ヒトホスホグリセレートキナーゼであるか、あるいは、プロモーターと類似の能力を有する固有のプロモーターを有している。
【0064】
ウイルスの製造は、前記プロトコールと同様の方法で実施した。
図面の簡単な説明
図1 ベクターAd−1〜Ad−3の概略図
図2 Ad−1、Ad−2およびAd−3での感染後の、McA−RH7777細胞の細胞培養上清中のインターロイキン量の測定。動物実験に使用するためのベクターは、同一のインターロイキン−12−発現に対して調製した。図2は、ラット肝細胞ガン細胞McA−RH7777中で3日間に亘っての発現の時間経過を示す。
方法:McA−RH7777細胞は、MOIs 10により、Ad−1、Ad−2またはAd−3を用いて感染させた。上清を、感染後0日、1日、2日および3日で測定した。scIL−12濃度について、ELISAによって、抗−マウスIL−12p70抗体を用いて測定した(Pharmingen)。
図3 McA−RH7777細胞培養中での4−1BBLの検出。4−1BBL発現のフローサイトメトリーによる測定。Ad−2およびAd−3は、4−1BBLを発現したが、Ad−1は発現しなかった。
方法:McA−RH7777細胞をAd−1、Ad−2またはAd−3を用いてMOI 10で調整されたウイルス濃度で感染させた。細胞を、感染後24時間にハーベストし、かつラット 抗−マウス4−1BBLモノクローナル抗体(TKS-1, Phraming)を用いてインキュベートし、かつR−PE−結合ヤギ−抗−ラットIgポリクローナル抗体(Pharmingen)を用いて検出するために着色した。
図4 McA−RH7777細胞中のIL−2についての3日間に亘っての発現。Ad−3は、IL−2よりも466倍大きいIL−12のモル量を発現した(第3日目の算定)。
方法;McA−RH7777細胞は、Ad−3を用いてMOI 10で感染させた。上清を第0日、第1日、第2日および第3日目のものである。IL−2の濃度は、ELISAによって、抗−マウスIL−2抗体の使用下で測定した(Pharmingen)。
図5 段階的投与量拡大試験。Ad3での処理後9日間に亘っての腫瘍の大きさの変化。
方法;腫瘍の容量はMRTを用いて、9日間のインターバルで測定した。ウイルス注入後3日目の腫瘍の大きさを100%とし(1.MRT)、ここで示された最終的な大きさについてウイルス投与後12日目に測定した(2.MRT)。ベクターAd3(a)を定められた投与量で(i.p.=感染性粒子)、直径7〜11mmの大きさの腫瘍に注入した(b)。
図6 段階的投与量拡大試験のMBT画像。
方法;10〜10個の感染性ウイルス粒子Ad−3または10個の感染性粒子Ad−GFP(コントロール)で処理した腫瘍を、注入後3日目および12日目でMRTによってスキャンした。
図7 Ad−1、Ad−2およびAd−3の使用下での動物試験の経過を示す概略図。
図8 ウイルス注入前、第0週目の腫瘍のMRT−撮影図。
図9 ウイルス注入後、第3週目の腫瘍のMRT−撮影図。
図10 ウイルス注入後、第7週目の腫瘍のMRT−撮影図。
図11 MRT−データから腫瘍の大きさの経過を示す図。
方法:全腫瘍容積は、MRTによって観察した。ウイルス投与前1日、投与後3週目および7週目に、大きさを測定した。コントロール群Ad−GFP:9個体;免疫処理群;Ad−1、Ad−2およびAd−3群それぞれ10個体。Ad−1の群では、1個体のラットのみが進行した腫瘍の成長を示した。コントロール群の動物はすべて7週間内に死亡した。
図12 ウイルス注入後100日までの試験動物の長期生存率
図13 ベクターpTrident3のマップ
図14 ベクターpShuttle[CMV]IL12[IRES]4-1BBL[IRES]IL-2のマップ
図15 ベクターpShuttle[CMV]IL12[IRES]4-1BBLのマップ
図16 ベクターpShuttle[CMV]IL12のマップ
図17 ベクターpAd−3のマップ
図18 3個の構造遺伝子を有する発現カセットの配列、この場合、これらはマウス由来のcDNAsを含有し、図1からのインサートAd−3に相当する。
図19 ヒトIL−12のコーディング配列(40kDa)
図20 ヒトIL−12のコーディング配列(35kDa)
図21 ヒト4−1BBLのコーディング配列
図22 ヒトIL−2のコーディング配列
図23 ヒトB7−1およびB7−2のコーディング配列
図24〜27 種々のベクターの配列
図28 1年までの観察期間における作用を示す図。グラフは、それぞれの時点での生存するラットの割合を示す(生存率1=1群の動物100%)。処理群:Ad−3、5×10(n=12)、Ad−3、5×10(n=10)。コントロール群:5×10 Ad−GFP(n=9)。
【0065】
これらの長期試験の場合には、個々の動物は2種の肝臓腫瘍を有していた。2週間後(図においては第0日目)に、双方の腫瘍の一つを、一度だけベクター注入によって処理した。腫瘍容積は、これらの時点では約1mlであった。図は、コントロール群の個体(Ad−GFP処理したもの)は、ベクター注入後47日間内に死亡することを示した。5×10i.u.("感染単位"または感染性粒子)で、Ad−3処理群は、90日後に1個体が死亡し、かつ5×10i.u.でのAd−3処理群は、すべての個体が生存していた。"再度の注入":5×10i.u.でのAd−3処理群では、すべての個体についてベクター注入後92日後(13週)に、再度腫瘍を肝臓中に移植した。この腫瘍細胞移植は、すべての10個体の場合にはさらに処理することなく消滅した。
図29 Ad−1およびAd−3での処理後に腫瘍成長について、コントロールベクター(Ad−GFP)のものと比較しての効果を示す図。
【0066】
その際、Ad−1およびAd−3に関しては、2種の異なる投与工程で適用し、かつ処理後2週間目の腫瘍の大きさを測定した。群毎の動物個体数:n=3。図は、Ad−1およびAd−3の異なるベクター投与の場合の腫瘍容積の変化を示した。肝臓の右葉中に1×10MH−7777A腫瘍細胞を適用し、かつ2週間後に左の腫瘍にベクターを注入した。MRT−スキャンは、ベクター適用前1日および適用後13日目で実施した。5×10i.u.のAd−1の場合には平均の腫瘍容積が顕著に増加するのに比べて、1×10i.u.Ad−1の場合には最小限の増加にとどまる。これらの最小限の増加は、Ad−3に関しての5×10i.u.の投与量の場合にすでに確認されており、1×10i.u.の場合には、これに反して、すでに減少することが明らかである。これにより、Ad−3は、Ad−1よりも著しく効果的であることが証明された。1×10i.uのAd−3に関しての値は、ベクター注入後第3日目と第12日目で算出した。コントロール(Ad−GFP)は、2週間に亘っての観察期間内に著しく増加した。動物において後に生じる肝臓外への転移については算定に考慮していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列が、
(a)天然のヒトIL−12の双方のサブユニットを融合タンパク質として含む、ヒト単一鎖−IL−12をコードする核酸配列、
(b)ヒト4−1BBリガンドをコードする核酸配列および
(c)ヒトIL−2をコードする核酸配列
を含むアデノウイルスベクターであることを特徴とする、核酸配列を含有するベクター。
【請求項2】
核酸配列(a)が配列番号2及び配列番号3に記載の配列に対して少なくとも80%の配列相同性を示す、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
核酸配列(b)が配列番号4に記載の配列に対して少なくとも80%の配列相同性を示す、請求項1又は2に記載のベクター。
【請求項4】
核酸配列(c)が配列番号5に記載の配列に対して少なくとも80%の配列相同性を示す、請求項1から3までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項5】
核酸がさらに、1種以上のプロモーターおよび1種以上のIRESを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項6】
アデノウイルスベクターが、ヘルパー依存性アデノウイルスベクターである、請求項1から5までのいずれか1項に記載のベクター。
【請求項7】
さらに以下の特徴:
(a)ベクターが、腫瘍−非特異的プロモーターを有し、この場合、このプロモーターは、免疫刺激タンパク質をコードする遺伝子配列のすべてを発現させ;かつ
(b)ベクターが、(a)で挙げられたプロモーターのすぐ下流には存在しない各遺伝子配列、IRES配列を含む、
によって特徴付けられる、請求項1に記載のベクター。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のベクターを含有する、ウイルス粒子。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のベクターまたは請求項8に記載のウイルス粒子を含有する、腫瘍及び感染症を治療するための医薬。
【請求項10】
ベクターが、投与単位当たり1×1011以下、好ましくは1×1010以下、1×109以下または1×107以下の濃度で存在する、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
医薬が、腫瘍内注入のための溶液として処方されている、請求項9または10に記載の医薬。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の医薬を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項に記載のベクターまたは請求項5に記載のウイルス粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図18−3】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図24−3】
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【図24−4】
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【図24−5】
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【図25−1】
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【図25−2】
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【図25−3】
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【図25−4】
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【図25−5】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図26−3】
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【図26−4】
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【図27−1】
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【図27−2】
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【図27−3】
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【図27−4】
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【図27−5】
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【図27−6】
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【図27−7】
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【図27−8】
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【図27−9】
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【図27−10】
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【図27−11】
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【図27−12】
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【図27−13】
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【図27−14】
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【図27−15】
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【図27−16】
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【図28】
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【図29】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−36251(P2011−36251A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192832(P2010−192832)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【分割の表示】特願2004−544141(P2004−544141)の分割
【原出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【出願人】(508359745)プロヴェクス メディカル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Provecs Medical GmbH
【住所又は居所原語表記】Martinistr.52, D−20246 Hamburg, Germany
【Fターム(参考)】