説明

ウイルスベクター精製における拡張可能な製造プラットフォームおよび遺伝子治療における使用のための高純度ウイルスベクター

【解決手段】 高純度AAVベクター製剤を調製するための方法が提供される。本明細書に記載された高純度AAV製剤は、臨床用途において優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年1月28日出願の米国仮出願第61/299,184に対して優先権の利益を主張するものであり、その全体は本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
アメリカ合衆国法典第202条(c)の規定により、本発明は、国立衛生研究所によって与えられた許諾番号HHSN268200748203Cのもとに政府支援によりつくられたものであると承認される。アメリカ政府は本発明における権利を有する。
【0003】
本発明は良好な製造実践およびウイルスベクター精製の分野に関するものである。より具体的には、組成物および方法は、遺伝子治療プロトコルにおいて使用するための高純度組換えAAVの調製を容易にする。
【背景技術】
【0004】
いくつかの刊行物および特許文献は、本発明が関係する最先端の技術を記載するために、本明細書の全体にわたって引用される。これらの各引用は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0005】
遺伝子送達は、後天性および遺伝性疾患の治療において有望な方法である。遺伝子導入目的の多くのウイルスベース系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースシステムも含めて、記載がされていた。AAVは、ディペンドウイルス属に属するヘルパー−DNA依存パルボウイルスである。AAVは、発生のための増殖感染のために、例えばアデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアのような無関係なヘルパーウイルスによる同時感染を必要とする。ヘルパーウイルスの非存在下において、AAVはそのゲノムを宿主細胞染色体に挿入することによって、潜在的な状態を決める。ヘルパーウイルスによる続発性感染は、インテグレートしたウイルスゲノムを救出し、そして、それから、感染性子孫ウイルスを生成するために、複製することができる。
【0006】
AAVは広い宿主域を有し、適当なヘルパーウイルスの存在において任意の種から複製することが可能である。例えば、ヒトAAVはイヌアデノウイルスによって同時感染したイヌ細胞において複製できる。AAVは任意のヒトまたは動物疾患と関連するものではなく、および、統合に応じて宿主細胞の生物学的特性を変更するように見えない。AAVの概説には、例えばBerns and Bohenzky (1987) Advances in Virus Research (Academic Press, Inc.) 32:243−307を参照。
【0007】
感染性組換えAAV(rAAV)ウイルス粒子の構成は、記載がされている。例えば、米国特許第5,173,414号および第5,139,941号、国際公開第92/01070号(1992年1月23日刊行)および国際公開第93/03769号(1993年3月4日刊行)、Lebkowski et al.(1988)Molec.Cell.Biol.8:3988−3996;Vincent et al.(1990)Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992)Current Opinion in Biotechnology 3:533−539;Muzyczka,N.(1992)Current Topics in Microbiol. and Immunol.158:97−129;およびKotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793−801を参照。
【0008】
AAVベクターは、AAVゲノムの内側部分を全体的あるいは部分的に削除することにより、およびITRs間にある対象となるDNA配列を挿入することにより、対象の非相同ヌクレオチド配列(例えば、治療タンパク質をコードする選択された遺伝子、アンチセンス核酸分子、リボザイム、miRNAなど)を運搬するよう設計されることができる。ITRsは、対象の非相同ヌクレオチド配列を含むrAAVの複製およびパッケージングが可能なこのようなベクターにおいて機能的なままである。非相同ヌクレオチド配列は、特定の状況下での患者の標的細胞において駆動性遺伝子発現が可能なプロモーター配列に典型的には結合している。ポリアデニル化部位のような終止信号は、ベクターに含まれることもできる。
【0009】
ウイルスベクターの免疫原性の完全なる除去が現実的な目的ではない場合、ヒト遺伝子治療のために調製されたAAVベクターの最小免疫原性が非常に望ましい。本発明の目的は、この目的を達成する組成物および方法を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって、AAVベクター粒子、空のカプシド、および宿主細胞不純物を有するAAV調製物から、治療タンパク質またはそれらのフラグメントをコードする形質導入遺伝子を有する真正(bona fide)AAVベクター粒子を精製するための方法、それによって提供される実質的にAAV空のカプシドを含まないAAV産物が提供される。例示的な精製スキームは、AAVによって形質導入された細胞を採取する工程、接線流ろ過を介して細胞を濃縮する工程、および、溶解物にするために顕微溶液化によって細胞を溶解化する工程を有する。溶解物はその後ろ過され、浄化される。浄化に続いて、AAV粒子はイオン交換カラムクロマトグラフィーによって精製され、および、随意に、接線流ろ過によってさらに濃縮される。生成された溶出液はその後、等密度勾配で階層化され、超遠心分離にかけられて、ウイルス粒子を含む層が収集され、接線流ろ過でバッファー交換にかけられる。精製されたAAV粒子はその後、界面活性剤によって製剤化され、および、結果として生じた製剤は、任意の残留不純物を除去するためにろ過され、その結果、高純度なAAV産物が生成される。そこにおいて前記真正AAVベクター粒子は、前記AAV産物中に少なくとも95%の量で、好適には98%以上の量で存在する。
【0011】
好適な実施形態において、AAV産物は、AAV粒子を1mLあたり1015粒子の濃度で有し、より好適には粒子は1mLあたり1016粒子の濃度で存在し、最も好適には、粒子は1mLあたり1017粒子の濃度で存在する。
【0012】
高純度AAVベクターは、これに限定されないが、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV8およびAAV9を含む様々な血清型でもよい。
【0013】
さらに他の実施形態において、薬学的に許容な担体において上記の方法を用いて精製されたAAV粒子を有するAAVベクター製剤は開示される。
【0014】
本発明の精製されたAAV粒子は、所望の遺伝子産物をコードする非相同核酸を有する。このような遺伝子産物は、これに限定されないが、siRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイムなどを含む。他の遺伝子産物は、代謝の先天的異常の修正に有用なホルモン、成長受容体、リガンドおよびタンパク質を含む。特定の好適な実施形態において、ベクターは、RPE65、第VIII因子および第IX因子からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】現在の業界標準の拡張可能な精製プロセスを使用して達成される精製(真正ベクターおよびベクター関連不純物の混合物)、および、使用される精製工程の順序の利点により「拡張可能」である勾配超遠心分離工程を包含する我々の拡張可能な精製方法を使用して達成された精製(ベクター関連不純物の実質的除去)の図式を含む組換え型AAVの生成の間産出されるAAV粒子のタイプの図である。
【図2】本発明のベクター精製プロセスの工程を示すフローチャート。
【図3】代表的な業界標準精製プロセス(gen1−Chr)−勾配超遠心分離によって精製されたAAVベクターの分析。明らかに「純粋な」ベクターにおけるAAV粒子の相対量および不均質、および、ベクター関連不純物から真正AAVベクターの分離において勾配超遠心分離の有効性が示されている。「gen1−Chr」は現在の「業界標準」の拡張可能な精製プロセスを代表するものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、現在の「業界標準」の拡張可能なAAVベクター精製プロセスから区別される以下の2つの特有な特徴、1)ベクター関連不純物の効果的な除去を含む高ベクター純度を提供する異なるAAV血清型/カプシド経に対の精製において使用できるモジュール・プラットフォーム、および、2)重要な超遠心分離工程に予想外の拡張可能性を与えるプロセス工程(カラムクロマトグラフィー、続いて接線流ろ過、続いて勾配超遠心分離の重要な「核心的な」順番を含む)の特有な順序を含むAAVベクター精製プラットフォームを提供するものである。
【0017】
AAVベクター生成および精製方法の最適化は、ベクター生成物がその遺伝子ペイロードを標的細胞に効果的に送達できることを確実にし、および、有害な免疫応答の活性化における可能性を最小化する。ベクター関連不純物は、予想されるヒト受容体に関して、非自己であり、免疫賦活性であるので、ヒト非経口製品の精製の間にそれらは最小化または除去されなければならない。細胞培養におけるベクター生成の間、ベクター関連不純物は真正ベクターよりもかなり大量に典型的には生成され、ベクター関連不純物が構造において類似しているため、精製の間、ベクターから分離することは困難である。ベクター生成後の粗細胞収集において、ベクター関連不純物は一般的にはバイオ合成されたAAV粒子の全量の50%以上、典型的には80%までを示し、80%以上を示すこともある。AAVベクターを生成するために現在まで開発された細胞培養システムの各々を使用することが認められた。ヒト疾患を治療するための製品として組換えAAVを精製する製造プロセスの開発は、以下の目的:1)一貫したベクター純度、効力および安全性;2)製造プロセスの拡張可能性;および3)製造の受けいれられる費用、を達成しなければならない。現在の「業界標準」拡張可能なAAVベクター精製プロセスは、上記にリストした第一の目的(一貫したベクター純度、効力および安全性)を達成するために重要である、ベクター関連不純物の除去を十分には達成しない。さらに、現在の業界標準の拡張可能な精製プロセスを使用すると、ベクター関連不純物が十分に除去できないのは、次のことによる:1)ワクチン(免疫応答は典型的には回避されるよりもむしろ引き起こされる)以外の適用のための組換えAAVのようなウイルス製品の精製プロセスの開発は比較的未発達である;2)AAVベクターのための拡張可能な精製プロセスの開発に関係する多くのグループはベクター関連不純物の高濃度に対して認識がなく、および/またはこのような不純物がベクター免疫原性の臨床的に顕著な増大に貢献しないであろうと仮定した;および3)拡張可能なプロセス工程において生体分子の生成を達成するために典型的に利用される物理化学的特徴(例えば、粒子サイズおよび粒子表面の分子トポロジーおよび電荷分布)に関して、これらのAAV粒子がお互いに密接に似ているので、ベクター関連不純物から真正ベクターを分離するために拡張可能な精製プロセスを開発することは技術的に挑戦的である。
【0018】
以下の定義は、本発明の実践を容易にするために提供される。
【0019】
「ベクター」は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ウイルス粒子などのような、適切な制御要素と関連する場合に複製でき、細胞間に遺伝子配列を移すことができる、任意の遺伝要素を意味する。したがって、この用語は、ウイルスベクターと同様にクローニングおよび発現ビヒクルを含む。
【0020】
「AAVベクター」は、これに限定されないが、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7およびAAV−8を含むアデノ随伴ウイルスから送達されたベクターを意味する。AAVベクターは、好適にはrepおよび/またはcap遺伝子を全体または部分において欠損されるAAV野生型遺伝子の1つ以上を有することができるが、機能的な隣接ITR配列を維持することができる。機能的ITR配列はAAVウイルス粒子の救助、複製、およびパッケージングにおいて必要である。したがって、AAVベクターは本明細書において、ウイルスの複製およびパッケージング(例えば、機能的ITRs)のためのcisで必要とされるこれらの配列を少なくとも含むと定義される。ITRsは野生型ヌクレオチド配列を必要とせず、および、配列が救助、複製、およびパッケージングを提供する限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変えられることがある。また、「AAVベクター」はベクター核酸を標的細胞の核に送達するための効果的なビヒクルを提供するタンパク質殻またはカプシドを意味する。
【0021】
「AAVヘルパー機能」は、AAV遺伝子産物を提供するために発現されることができるAAV由来コード配列、生産的AAV複製のためのトランスにおける機能を意味する。したがって、AAVヘルパー機能は主となるオープン・リーディング・フレーム(ORFs)であるrepおよびcapの両方を含む。Rep発現産物は、特に、認識、DNA複製のAAV起点の結合および切断、DNAヘリカーゼ活性、およびAAV(または他の非相同)プロモーターからの転写の調節を含む様々な機能を有する。Cap発現産物は必要なパッケージング機能を提供する。AAVヘルパー機能は、AAVベクターから失われたトランスにおいてAAV機能を補完するために本明細書において使用される。
【0022】
用語「AAVヘルパーコンストラクト」は、対象のヌクレオチド配列の送達のための形質導入ベクターを生成するのに使用されるAAVベクターから削除されたAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を一般的に意味する。AAVヘルパーコンストラクトは、AAV複製において必要な失われたAAV機能を補完するためにAAV repおよび/またはcap遺伝子の一時的発現を提供するのに一般的に使用される。しかしながら、ヘルパーコンストラクトはAAV ITRsが欠けており、および、それ自身で複製することもパッケージすることもできない。AAVヘルパーコンストラクトはプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはウイルス粒子の形をとることができる。RepおよびCap発現産物両方をコードする一般的なプラスミドpAAV/AdおよびPIM29+45のようなAAVヘルパーコンストラクトの多くは記載されている。例えば、Samulski et al. (1989) J. Virol. 63:3822−3828; and McCarty et al. (1991) J.Virol.65:2936−2945を参照。Repおよび/またはCap発現産物をコードする多くの他のベクターは、記載されている。例えば、米国特許第5,139,941号および第6,376,237号を参照。
【0023】
用語「ベクター関連不純物」は、真正組換えAAV粒子以外の全てのタイプのAAV粒子を意味する。ベクター関連不純物は、空のAAVカプシド(「空の」または「空の粒子」および目的のベクターゲノム以外のポリヌクレオチド配列を含むAAV粒子とも称される(「AAVカプシドに包まれた核酸不純物」または「AAVカプシドに包まれたDNA不純物」とも称される)。
【0024】
用語「補助機能」は、AAVがその複製において依存する非AAV由来のウイルスおよび/または細胞機能を意味する。したがって、この用語は、AAV遺伝子転写、発生段階依存的なAAVmRNAスプライシング、AAVDNA複製、Cap発現産物の合成、およびAAVカプシドアセンブリに含まれる部分を含むAAV複製において必要とされるタンパク質およびRNAを捕捉する。ウイルスベース補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス タイプ−1以外)およびワクシニアウイルスなどのような既知のヘルパーウイルスの任意から派生されることができる。
【0025】
用語「補助機能ベクター」は、補助機能を提供する核酸配列を含む核酸分子を一般的に意味する。補助機能ベクターは適当な宿主細胞内にトランスフェクションされ、そこにおいて、ベクターは、その後、宿主細胞内のAAVウイルス粒子産物を支持することができる。例えばアデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルス粒子のような自然において存在するウイルス粒子感染はこの用語からはっきりと除外される。したがって、補助機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、またはコスミドの形態であることができる。特に、アデノウイルス遺伝子の完全な補体は補助機能において必要とされないことが示されている。例えば、DNA複製および後期遺伝子合成ができないアデノウイルス変異体は、AAV複製において許容状態を示した。Ito et al.,(1970)J.Gen.Virol.9:243;Ishibashi et al,(1971) Virology 45:317.同様に、E2BおよびE3領域内の変異はAAV複製を支持することを示し、補助機能の提供においてE2BおよびE3領域はほぼ確実に含まれないことを示す。Carter et al., (1983) Virology 126:505.しかしながら、E1領域において欠損のある、または、E4領域を削除されたアデノウイルスはAAV複製を支持することができない。したがって、E1AおよびE4領域は、AAV複製において直接的あるいは間接的に必要であるようである。Laughlin et al., (1982) J. Virol. 41:868; Janik et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1925; Carter et al., (1983) Virology 126:505. Other characterized Ad mutants include: E1B (Laughlin et al. (1982), supra; Janik et al. (1981), supra; Ostrove et al., (1980) Virology 104:502); E2A (Handa et al., (1975) J. Gen. Virol. 29:239; Strauss et al., (1976) J. Virol. 17:140; Myers et al., (1980) J. Virol. 35:665; Jay et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2927; Myers et al., (1981) J. Biol. Chem. 256:567); E2B (Carter, Adeno−Associated Virus Helper Functions, in I CRC Handbook of Parvoviruses (P. Tijssen ed., 1990)); E3 (Carter et al. (1983), supra); and E4 (Carter et al.(1983), supra; Carter (1995)).E1Bコード領域に変異を有するアデノウイルスによって提供された補助機能の研究が矛盾した結果を有するにもかかわらず(Samulski et al.,(1988) J. Virol.62:206−210)、最近、AAVウイルス粒子産物において、E1B19kではなく、E1B55kが必要とされると報告された。加えて、国際公開公報WO 97/17458およびMatshushita et al.,(1998) Gene Therapy 5:938−945は、様々なAd遺伝子をコードする補助機能ベクターを記載している。特に好適な補助機能ベクターはアデノウイルスVA RNAコード領域、アデノウイルスE4 ORF6コード領域、アデノウイルスE2A 72kDコード領域、アデノウイルスE1Aコード領域、およびアデノウイルスE1B55kコード領域を有する。このようなベクターは国際公開第01/83797号に記載されている。
【0026】
「組換えウイルス」は、例えば、非相同核酸コンストラクトの粒子への付加または挿入によって通常改変されたウイルスを意味する。
【0027】
「AAVウイルス粒子」は、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVカプシドタンパク膜と関連した、リニア、一本鎖AAV核酸遺伝子を有する)のような完全なウイルス粒子を意味する。この点について、例えば、「センス」または「アンチセンス」らせん構造のような相補的センスのどちらか一方の一本鎖AAV核酸分子は、任意の一つのAAVウイルス粒子内にパッケージされることができ、両方のらせん構造は等しく感染性である。
【0028】
用語「組換えAAVウイルス粒子」、「rAAVウイルス粒子」、「AAVベクター粒子」、「完全なカプシド」および「完全な粒子」は、感染性、AAVタンパク質殻を含み、AAV ITRsによって両側に隣接された対象の非相同核酸配列をカプシド形成する複製欠損ウイルスとして本明細書で定義される。rAAVウイルス粒子は、AAVベクター、AAVヘルパー機能およびそこに導入された補助機能を特定する配列を有する適当な宿主細胞においてつくられる。このように、宿主細胞は、AAVベクター(対象の組換えヌクレオチド配列を含む)を次世代遺伝子送達のために感染性組換えウイルス粒子内にパッキングするために必要とされたAAVポリペプチドをコードできるようにされる。
【0029】
用語「空のカプシド」および「空の粒子」は、AAVタンパク質殻を含むが、全体または部分において、AAV ITR(s)によって両側に位置する対象の非相同ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドコンストラクトが欠損するAAV粒子を意味するものである。したがって、空のカプシドは対象の遺伝子を宿主細胞内に移動する機能はない。
【0030】
「宿主細胞」は、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳類細胞を意味し、AAVヘルパーコンストラクト、AAVベクタープラスミド、補助機能ベクター、または他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用されることができる、または、できた。当該用語は、トランスフェクションされたもとの細胞の子孫を含む。したがって、本明細書で使用される「宿主細胞」は、外来DNA配列によってトランスフェクションされた細胞を意味する。自然か、偶然か、または意図的な変異によって、単一の親細胞の子孫は、形態において、または、ゲノムにおいて完全に同一である必要はなく、または、もとの親細胞と完全にDNA相補的である必要なないことは理解されている。
【0031】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取り込みを意味するのであり、および、外来DNAが細胞膜内に導入されたときに、細胞は「トランスフェクション」した。トランスフェクション技術の多くは当業者において一般的に知られている。例えば、Graham et al. (1973) Virology, 52 :456, Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier, and Chu et al. (1981) Gene 13:197を参照。このような技術は、1つ以上の外来DNA部分を適当な宿主細胞内に導入するのに用いられることができる。
【0032】
本明細書で使用されているように、用語「細胞株」は、in vitroで連続的または持続的に成長または分割することができる細胞の集団を意味する。しばしば、細胞株は、単一の原種細胞に由来するクローン集団である。自発的な、または誘導された変化が、上記のクローン集団の貯蔵または移動の間に核型において生じることがあるのは当業者においてさらに知られている。したがって、関連される細胞株に由来する細胞は正確に祖先の細胞または培養組織と同一でなくてもよく、関連される細胞株はこの種の変異体を含む。
【0033】
AAVベクター粒子(包装されたゲノム)を有するrAAVウイルス粒子の貯蔵物または調製物は、貯蔵物中に存在するウイルス粒子の少なくとも約50%〜99%またはそれ以上が包装されたゲノム(つまりAAVベクター粒子)である場合、「実質的に」AAV空のカプシドを含まない。好適には、AAVベクターは、貯蔵物中のウイルス粒子の少なくとも約75重量%から85重量%、より好適には約90重量%を有し、さらにより好適には、貯蔵物中のウイルス粒子の少なくとも約95重量%、または99重量%でさえ有し、または、これらの範囲の間の任意の整数を有する。したがって、空のカプシドを有する結果として生じる貯蔵物の約40%から約1%またはそれ以下、好適には約25%から約15%またはそれ以下、より好適には約10%またはそれ以下、さらにより好適には約5%から約1%またはそれ以下である場合、貯蔵物は実質的にAAV空のカプシドを含まない。
【0034】
AAVベクター粒子(パッケージされたゲノム)を有するrAAVウイルス粒子の貯蔵物または調製物は、貯蔵物に存在するウイルス粒子の少なくとも約90〜99%以上が真正ゲノム(つまりAAVベクターゲノム)を有するrAAVウイルス粒子である場合、「AAVカプシドに包まれた核酸不純物」を「実質的に含まない」。好適には、AAVベクター粒子は、貯蔵物に存在するウイルス粒子の少なくとも約95%から98%、さらに好適には99%、よりさらに好適には貯蔵物に存在するウイルス粒子の少なくとも約99重量%以上またはその範囲の任意の整数を有する。したがって、結果として生じる貯蔵物の約10%から約1%以下、好適には約2%以下、さらに好適には約1%以下、よりさらに好適には約0.5%以下がAAVカプシドに包まれた核酸不純物を有する場合、貯蔵物はAAVカプシドに包まれた核酸不純物を実質的に含まない。
【0035】
「核酸」配列はDNAまたはRNA配列を意味する。用語は、例えば、これに限定されるわけではないが、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、偽イソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル−ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチル偽ウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、偽ウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、Bウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、偽ウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリンのようなDNAおよびRNAの任意の既知の塩基類似体を含む配列を捕捉する。
【0036】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適当な調節配列の制御のもとに配置されると、in vivoのポリペプチド内で転写され(DNAの場合)、および、翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより定義される。転写終止配列は、コード配列の3’に位置することがある。
【0037】
用語DNA「制御配列」は、受容細胞におけるコード配列の複製、転写および翻訳のために集合的に提供される、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを集合的に意味する。選択されたコード配列が適当な宿主細胞において、複製、転写および翻訳される限り、これらの制御配列の全てが存在することが常に必要なわけではない。
【0038】
用語「プロモーター」は、DNA調節配列を有するヌクレオチド領域を通常意味するものとして本明細書で使用されており、調節配列は、RNAポリメラーゼを結合することおよび下流(3’−方向)コード配列の転写を開始することができる遺伝子由来のものである。転写プロモーターは、「誘導プロモーター」(使用可能な状態でプロモーターに結合されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導された場合)「抑制プロモーター」(使用可能な状態で結合されたポリヌクレオチド配列の発現が分析物、補因子、調節タンパク質などによって融合された場合)および「構成的プロモーター」を含むことができる。
【0039】
「使用可能な状態で結合された」とは、記載されている構成要素がそれらの通常の機能を実行するために構成される要素の配置を意味するものである。したがって、コード配列に使用可能な状態で結合された制御配列はコード配列の発現をもたらすことができる。それらがその発現を導くように機能する限り、制御配列はコード配列に隣接する必要はない。したがって、例えば、介在翻訳されていないが、転写された配列はプロモーター配列およびコード配列との間に存在することが可能であり、プロモーター配列はコード配列に「使用可能な状態で結合された」とみなすことができる。
【0040】
本願の全体にわたって特定の核酸分子におけるヌクレオチド配列の相対的位置を記載する目的において、例えば、特定のヌクレオチド配列が他の配列と比較して「上流」、「下流」、「3’」または「5’」に位置すると記載される場合、それが従来技術において関連されるDNA分子の「センス」または「コード」らせん構造においての配列の位置であることは理解されるものである。
【0041】
例えばコード配列および制御配列のような核酸配列に関連する用語「非相同」は、通常の結合をされていない、および/または特定の細胞と通常関連のない配列を意味する。したがって、核酸コンストラクトまたはベクターの「非相同」領域は、自然の他の核酸分子と関連して発見されない他の核酸内またはその核酸にとりつけられた核酸のセグメントである。例えば、核酸コンストラクトの非相同領域は自然のコード配列と関連して発見されない配列によって隣接されたコード配列を含むことができる。非相同コード領域の他の例は、コード配列そのものが自然では発見されない(つまり、自然の遺伝子と異なるコドンを有する合成配列)コンストラクトである。同様に、細胞に通常存在しないコンストラクトによって形質転換された細胞はこの発明の目的を達成するために非相同であるとみなされる。対立遺伝子変異または自然発生的変異は、本明細書において使用されるような非相同DNAを引き起こさない。
【0042】
非相同核酸を有する導入遺伝子は、多くの有用な産物をコードすることができる。これらは、siRNA、アンチセンス分子、およびmiRNAを例えば含むことができる。あるいは、導入遺伝子は、これに限定されないが、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮成長因子(VEGF)、アンギオポエチン、アンギオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリトロポエチン(EPO)、結合組織成長因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子α(TGFα)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン成長因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGFβ、アクチビン、インヒビン、または任意の骨形態形成タンパク質(BMP)BMP(BMPs)1〜15を含む形質転換増殖因子βスーパーファミリーの任意の1つ、成長因子のヘレグリン/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーの任意の1つ、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニュートロフィンNT−3およびNT4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマホリン/コラプシンのファミリーの任意の1つ、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞成長因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグおよびチロシン水酸化酵素を含むホルモンおよび成長および分化因子をコードすることができる。
【0043】
他の有用な導入遺伝子産物は、これに限定されないが、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL1からIL−17)、単球走化性タンパク質、白血病抑制因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドのようなサイトカインおよびリンホカインを含む免疫系を調節するタンパク質を含む。免疫系によってつくられる遺伝子産物は、本発明においても有用である。これらは、これに限定されないが、改変された免疫グロブリンおよびMHC分子と同様に、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子を含む。有用な遺伝子産物はまた、補体調節タンパク質、膜補因子タンパク質(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような調節タンパク質を含む。
【0044】
他の有用な遺伝子産物は、代謝の先天的異常における修正ができるものを含む。このような導入遺伝子は、例えば、カルバモイル合成酵素I、オルニチン・トランスカルバミラーゼ、アルギニノコハク酸合成酵素、アルギニノコハク酸分解酵素、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ、フェニルアラニン水酸化酵素、アルファ−1 アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルホビリノゲン・デアミナーゼ、第V因子、第VIII因子、第IX因子、シスタチオニンβ合成酵素、側鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリルCoA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、ベータ−グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝臓ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)配列およびジストロフィンcDNA配列をコードすることができる。
【0045】
「分離された」が、ヌクレオチド配列について言及する場合、同タイプの他の生体高分子が実質的に存在しない中で、示された分子が存在することを意味する。したがって、「特定のポリペプチドをコードする分離された核酸分子」は、目的のポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を意味する。しかしながら、当該分子は組成物の基本的な性質に有害な影響を及ばさない付加的な塩基または部分を含むことができる。
【0046】
本発明は、AAVウイルス粒子の精製された貯蔵物内に含まれたAAVベクター関連不純物(例えば空のカプシドおよびAAVカプシドに包まれた核酸不純物)を、そこに含まれているAAVベクター粒子の最小限の減少で、その数を減らす、または、除去することを含む。本発明の方法は、rAAVウイルス粒子の生成におけるプロセスに関係なく使用されることができる。
【0047】
rAAVウイルス粒子を生成するための当業者においてよく知られているいくつかの方法がある:例えば、AAVヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス)の一つによる重感染と併せたベクターおよびAAVヘルパー配列を使用するトランスフェクション、または組換えAAVベクター、AAVヘルパーベクター、アクセサリー機能ベクターによるトランスフェクション。rAAVウイルス粒子を生成するための方法の詳細な記述は、米国特許第6,001,650号および第6,004,797号を参照、これらの両文献はその全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0048】
rAAVウイルス粒子(virion)の精製
組換えAAVの複製(すなわち細胞培養システムにおけるベクターの生成)に続いて、rAAVウイルス粒子は、カラムクロマトグラフィー、CsCl密度勾配等のような種々の従来の精製方法を用いて宿主細胞から精製出来る。例えば、陰イオン交換カラム、アフィニティーカラム、および/または陽イオン交換カラム上の精製のような複数のカラム精製工程を使用することが出来る。例えば、国際公開第WO 02/12455を参照。補助機能を表現するために感染を使用する場合には、残留ヘルパーウイルスは、既知の方法を用いて、不活性化出来る。例えば、アデノウイルスは約60℃の温度で、例えば、20分あるいはそれ以上加熱することによって不活性化出来る。ヘルパーアデノウイルスは熱に不安定であるが、AAVは、熱に非常に安定あるので、この処置は効果的に前記ヘルパーウイルスだけを不活性化する。
【0049】
任意の数のレポーター遺伝子を含む組換えAAVベクターを用いて感染力価を決定出来る。例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、緑色蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼを使用し得る。形質移入された宿主細胞を収集後、微溶液化(microfluidization)などの大規模生産に適した技術を用いて形質移入した宿主細胞を破壊することによって可溶化液(lysate)を形成する。該可溶化液は、次いで濾過し(例えば、0.45μmのフィルターを通して)、本明細書に記載のようなカラムクロマトグラフィー法を用いて精製する。任意のAAVベクターの感染力価を決定する他の手法も報告されている。例えば、Zhen et al."An Infectious Titer Assay for Adeno−associated Virus(AAV)Vectors with Sensitivity Sufficient to Detect Single Infectious Events."Hum.Gene Ther.(2004)15:709−715参照。清澄化した可溶化液は、カラムクロマトグラフィー法を用いて、一つ或いはそれ以上の精製工程を経て、AAV粒子(真正ベクター及びベクター関連不純物を含む)を精製する。好ましい方法では、前記AAV粒子は、陽イオンおよび/または陰イオン交換クロマトグラフィーを採用した1つ或いはそれ以上の逐次工程を用いて精製する。本発明の特に好ましい方法では、rAAV調製物は、容易に拡張可能な方法により、粗細胞可溶化液を得るよう、形質移入した細胞を溶解化することによって得られる。当該粗細胞可溶化液は、次いで濾過、遠心分離、などの当該技術分野で既知の技術によって清澄化し、細胞破片を除去し、清澄化細胞溶液を得ることが出来る。前記粗細胞可溶化液或いは清澄細胞可溶化液は、AAV粒子(真正AAVベクター、AAV空のカプシド、およびAAVベクター関連不純物)と一連の非AAVベクター関連不純物、例えば、前記感染宿主細胞由来の可溶性細胞成分の、両方を含む。これらは、望ましくない細胞タンパク質、脂質、および/または核酸、細胞培養の培地成分(例えば、ウシ血清)を含み得る。前記可溶化液は、第1陽イオン交換カラムにかける。当該第1陽イオン交換カラムは、さらに細胞可溶化液調製物中に存在する細胞や他の諸成分からAAV粒子を分離するよう作動する。細胞可溶化液の初期精製を実施する方法は既知である。一代表的な方法は、米国特許第6、593、123号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
カラムクロマトグラフィーを使用すれば、細胞培養における組換えAAVベクターの生成後の粗収集物に存在する他の大抵の不純物からAAV粒子を効率的に精製出来る。例えば、順次に不純物からAAV粒子を逐次分離するために,1つ或いはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィーの工程が使用出来る。陰イオンと陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂及び他の型のクロマトグラフィー樹脂が、様々な組み合わせで、目的とする特定のAAV血清型に応じて最適な、種々の組み合わせで使用出来る。次の組換えAAV血清型の精製のための単一クロマトグラフィー工程で、次のクロマトグラフィー樹脂が使用出来る。
【0051】
【表1】

【0052】
幾つかの場合では、2つあるいはそれ以上の逐次クロマトグラフィー工程は、より高いAAV粒子の純度を達成するためと、疾患を治療するのにヒト被験者で使用するための、組換えAAVを製造目的の要件である、外来ウイルス汚染物質の除去を確保するためとに有益であり得る。逐次クロマトグラフィー工程は、異なった組換えAAV血清型用に最適化した、種々の順序で逐次実施する、異なる樹脂を使用出来る。例えば、2つの逐次クロマトグラフィー工程によって達成するベクター粒子の精製には、次の形式を採用することが出来る。
【0053】
【表2】

【0054】
前記第一陽イオン交換カラムと第2陽イオン交換カラムの両方に適した陽イオン交換体は、使用する際、当該分野で公知の広範囲の多様な材料を含む。特に好ましいのは広いpH範囲に亘ってrAAVウイルス粒子と結合出来る強陽イオン交換体である。例えば、カルボキシメチル化及びスルホン化陽イオン交換マトリックスは、本明細書で使用するのに特に有用である。有用なマトリックス材料は、繊維状、ミクロ粒状(microgranular)、及び数珠状マトリックスのようなセルロースマトリックス;アガロース、デキストラン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、シリカおよびポリエーテルマトリックス、並びに複合材料を含むが、これらに限定されない。本明細書で特に好ましいのは、機能的リガンドR−SOを含むマトリックス、好ましくはスルホプロピルまたはスルホエチル樹脂である。代表的なマトリックスは、POROS HS、POROS SP、POROS S(Applied Biosystems,カリフォルニア州 Foster Cityから入手出来るすべて強陽イオン交換体)、POROS CM(、Applied Biosystems、カリフォルニア州 Foster Cityから入手出来る弱陽イオン交換体)、TOSOHAAS TOYOPEARL SP550CとMERCK FRACTOGEL EMDSO3−650(m)、並びにSOURCE 15S,SOURCE 30S,SEPHAROSE SP FF,SEPHAROSE SP XL(すべてAmersham Bioscience、ニュージャージー州Piscatawayから入手出来る)を含むが、これらに限定されない。
【0055】
下記のすべてのカラムクロマトグラフィーのプロトコルでは、カラムは、適切な緩衝液で当技術分野で公知の標準プロトコルを使用して調製することが出来る。ついで、試料を添加する。使用した第1陽イオン交換カラムでは、条件として、すべてのAAV粒子はカラム樹脂に結合し、その後一緒に溶出されるが、前記細胞可溶化液中に存在する他の細胞成分及び破片からは分離されるようになっている。例えば、AAV粒子は適切なイオン強度の緩衝液を用いて溶出される。適切な緩衝液は、例えば10〜50mMリン酸ナトリウム、好ましくは15〜40、例えば20、25、30、35、40mM等のリン酸ナトリウム塩であって、NaClまたはKClなどの塩を100〜700mM、例えば200〜400mM、例えば、200、300、325、350、370、380、400、等、またはこれらの範囲内で任意の濃度を含有する。当該緩衝液のpHは、約3〜約9.5、例えば4〜8、さらに、pH4、4.5、5、5.5、6、等、またはこれらの範囲内で任意のpHであり得る。当該画分は、収集され、その後、陰イオン交換カラムおよび/または第2陽イオン交換カラムのいずれかで分離条件下操作出来る。
【0056】
若し第2陽イオン交換カラムが、さらに後の工程でAAV粒子を精製するために使用される場合は、2種の溶出緩衝液として、1つの低塩緩衝液と1つの高塩緩衝液とを使用出来る。具体的には、さらなる不純物が、適切な緩衝液を用いて、pH約6〜pH12、好ましくはpH7〜pH10,さらに好ましくはpH7.5〜pH9.5、例えば、pH7.5、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、または述べた範囲の間の任意のpHでAAV粒子から分離される。適切な緩衝液は、当技術分野でよく知られており、限定されないが、以下の緩衝液イオン:酢酸;マロン酸、MES、リン酸塩、HEPES、BICINE等を有する緩衝液を含む。試料を溶出するためには、NaCl、KCl、硫酸アンモニア、または硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、および/またはリン酸塩を含む任意の他の塩を使用して該開始緩衝液のイオン強度を高める。本発明の一実施形態では、前記カラムは、先ず低塩濃度、例えば、10〜200mMの酢酸アンモニウムを用い、25、30、35、40、45、50、55、60、65〜100mMまたはこれらの範囲内で任意の濃度で処置する。この処置の結果、該カラム樹脂からAAVベクター粒子が溶出する。その後、該カラムは、より高い塩濃度で処理され、AAV空カプシドを溶出する。第2緩衝液として使用する一例は、100〜800mM濃度、好ましくは500〜700mM、さらに500、550、600、650、700、800mMまたはこれらの記述範囲内で任意の濃度の酢酸アンモニウムである。これらの条件を使用すると、前記AAVベクター粒子は初期の分画中に溶出し、空の粒子は後期に溶出する。
【0057】
上記で説明したように、本発明の別の方法では、前記第1陽イオン交換カラムからの調製物は、第2陽イオン交換カラムの代わりか、またはその追加のいずれかとして陰イオン交換カラムに添加される。陰イオン交換カラムが、前記第2陽イオン交換カラムに加えて使用される場合には、第2陽イオン交換カラムの以前または以後のどちらかで使用出来る。また、第2陰イオン交換カラムは、前記陰イオン交換カラムの以後に使用出来る。本発明での使用に適した陰イオン交換体は多く知られており、以下を含むがこれらに限定されない:MACRO PREP Q(BioRad、カリフォルニア州 Herculesから入手出来る強陰イオン交換体)、UNOSPHERE Q(BioRad、カリフォルニア州 Herculesから入手出来る強陰イオン交換体)、POROS50HQ(Applied Biosystems,カリフォルニア州 Foster Cityから入手出来る強陰イオン交換体); POROS50D(Applied Biosystems,カリフォルニア州 Foster Cityから入手出来る弱陰イオン交換体)POROS50PI(Applied Biosystems,カリフォルニア州 Foster Cityから入手出来る弱陰イオン交換体0、SOURCE 30Q(Amersham Bioscience、ニュージャージー州Piscatawayから入手出来る強陰イオン交換体);DEAE SEPHAROSE(Amersham Bioscience、ニュージャージー州Piscatawayから入手出来る弱陰イオン交換体)、及びQSEPHAROSE(Amersham Bioscience、ニュージャージー州Piscatawayから入手出来る強陰イオン交換体)。
【0058】
当該陰イオン交換カラムは、先ず、標準緩衝液を使用して、製造元の仕様に従って、平衡化される。例えば、前記カラムは、例えば、5〜50mM、好ましくは7〜20mM、例として10mMのリン酸ナトリウム緩衝液で平衡化出来る。次いで試料を添加し、1つの低塩緩衝液と1つの高塩緩衝液の2種の溶出緩衝液を使用する。それぞれ低塩及び高塩洗浄に続いて画分を収集し、タンパク質は、当該画分中に、260nmと280nmでのUV吸収をモニターするなどの標準技術を用いて、検出する。陰イオン交換体を使用すると、低塩溶出液からのタンパク質のピークは、AAVの空カプシドを含み、高塩画分は、AAVベクター粒子を含む。
【0059】
具体的には、該陰イオン交換カラム上で、AAV粒子は、適切な緩衝液を用いて,pH約5〜pH12、好ましくはpH6〜pH10,さらに好ましくは、pH7〜pH9.5例えば、7.1、7.2、7.3、7.4〜8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5〜9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、或いは前記した範囲の間の任意のpHで、さらに精製することが出来る。前記陰イオン交換カラムでの使用に適切な緩衝液は、当技術分野において周知であり、一般に陽イオン性又は両性イオン性である。係る緩衝液は、以下の緩衝液イオンを含むが限定されない:N−メチルピペラジン;ピペラジン;ビス−トリス;ビス−トリスプロパン;トリエタノールアミン;トリス;N−メチルジエタノールアミン;1,3−ジアミノプロパン;エタノールアミン;酢酸など。試料を溶出するためには、開始緩衝液のイオン強度を、適切なpHにおいて、NaCl、KCL,硫酸塩、蟻酸塩又は酢酸塩のような塩を使用して高める。
【0060】
本発明の一実施形態では、前記陰イオン交換カラムは、まず、低塩濃度、例えば10〜100mMNaClであって、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65〜100mMなど、またはこれらの範囲内で任意の濃度で処理される。初期処理後、不純物を溶出するために、次いで当該カラムは、より高塩濃度、例えばより高いNaCl濃度で、或いはより高いイオン強度の別の緩衝液で処理される。第2緩衝液として使用する一例は、100〜300mM、好ましくは、125〜200mM、例えば125、130、140、150、160、170、180、190、200mM、またはこれら記述の範囲内で任意の濃度を有する酢酸ナトリウム緩衝液またはトリス−基剤緩衝液である。さらなる不純物がカラムから溶出された後、前記AAV粒子は、より高濃度の塩を使用して回収出来る。該溶出緩衝液として使用するための一例は、10mMトリス緩衝液であって、100〜500mMの範囲、好ましくは130〜300mM、例えば130、150、200、250、300、350、400、450、500mM濃度またはこれらの記述の範囲内で任意の濃度の酢酸ナトリウムである。
【0061】
陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂の使用と、使用樹脂(すなわち、強または弱イオン交換体)の性質と、塩濃度、使用緩衝液、およびpHの状態とは、AAVカプシド変異型(つまり、AAVカプシド血清型または偽型)によって異なる。既知のAAVカプシド変異体は、すべて、サイズや形状のような特徴を共用するが、分子トポロジーと表面電荷分布の細かい点で異なる。したがって、すべてのカプシド変異体は、イオン交換クロマトグラフィーによる精製に適していると想定され、関連する方法は、クロマトグラフィー樹脂および緩衝液の選別実験を用いて系統的に決定することが出来るが、効率的なAAV粒子の精製を達成するためには、各AAVカプシド変異体向けに異なった条件が必要になる。係る条件は当業者にとって容易に明白である。
【0062】
カラムクロマトグラフィー工程は、効率的に共通の分子形状と類似した電荷分布とを共有する分子種を、異なった分子形状及び電荷分布を有する他の種(例えば不純物)から離れて精製するのに適している。産生細胞培養系で形成される組換えAAVベクターの場合には、粗生合成収集物について知られている特徴は、多種類のAAV粒子がその中に存在していることである。これらの多様な粒子は、真正AAVベクター(すなわち、内部に目的とするDNA断片を含むベクターカプシド);空のカプシド(すなわち、内部に何も無いベクターカプシド);および他のベクター関連不純物(他の(目的としない)DNA部分を内部に有するベクターカプシド)を含む。これらの多様なAAV粒子(すなわち、真正ベクターとベクター関連不純物)の他に、他のタイプの不純物(例えば、宿主細胞のタンパク質、脂質および/または核酸および/または細胞培養培地成分)が多量存在する。カラムクロマトグラフィーは、望ましくない不純物からAAV粒子を精製するのに特によく適している。勾配超遠心分離は、多量の物質を用いて実施するのが困難であるが、大抵のAAV関連不純物を、目的とするAAVベクターから、これら個々の粒子の密度の違いに基づいて分離するのによく適している。勾配超遠心分離は、今日まで一般に拡張不能と考えられ、したがって、これまで大規模な製造プロセスでの使用に適した製造プロセス工程ではないとされてきた。勾配超遠心分離工程は、拡張不能であるというこの認識は、一つには当該技術において、比較的少量の組換えAAVを回収するのに、比較的大量の物質を処理するという必要条件によるものである。しかし、すでに上記のように一つまたはそれ以上のカラムクロマトグラフィー工程によって精製されたAAV粒子は、例えば,100kDa分子量カットオフに対応する公称孔径を有する中空糸膜を用いて接線流ろ過により、効率的に高濃度に濃縮することが出来るので、精製ベクター粒子を含む溶液約400mlを扱える標準的超遠心分離操作一回で大量のベクターを調製出来る。例えば、10%の真正AAVベクター(従って、空のカプシドのような90%ベクター関連不純物)を含む、クロマトグラフィーで精製したAAV粒子は、mL当たり1014粒子(mL当たり1013AAVベクター粒子及び関連ベクター不純物mL当たり9×1013粒子を含有)にまで濃縮することが出来るし、また、一回の超遠心分離操作で処理することができ、例えば、バッチあたり約400mlは、Beckman Ti50 Rotorを使用した結果、約4×1015の真正AAVベクター粒子(1013vg/mL×400mL = 4×1015vg)を生ずる。このAAVベクター収率は多くの臨床応用に多くの投与量を提供するのに十分であって、AAVベクター関連不純物の大部分からAAVベクター粒子の効率的な分離を達成する。より高い投与量を必要とする臨床応用には、10%の真正AAVベクターを含む精製AAV粒子は接線流ろ過(tangential flow filtration、TFF)でmL当たり1015粒子に濃縮することが出来るし、次いで一回の超遠心分離操作で処理して、約4×1016ベクターゲノム(真正AAVベクター)にすることが出来る。さらにより多量の投与量を必要とする臨床応用には、10%の真正AAVベクターを含む精製AAV粒子はTFFでmL当たり1016粒子に濃縮することが出来るし、次いで一回の超遠心分離操作で処理して、約4×1017ベクターゲノム(真正AAVベクター)にすることが出来る。精製AAV粒子をmL当たり1016粒子に濃縮することは実現可能である。これはミリリットル当たり約100ミリグラムの質量濃度であって、例えばモノクローナル抗体のような他の精製生体分子について達成することが出来る濃度に対応する。係る高濃度は、凝集のような望ましくない安定性の問題を回避するために調剤に適切な注意が必要である(Wrightら、2005)。カラムクロマトグラフィーによる、清澄宿主細胞溶解物からAAV粒子の精製と、接線流ろ過のような既知の拡張可能な製造工程による精製AAV粒子の濃縮(必要な場合)とのこの新しい組み合わせは、等密度勾配超遠心分離と組み合わせれば、多量の高度に精製した 組換えAAVベクターを提供する。勾配超遠心分離の使用は、より高度の柔軟性(例えば、様々なAAV血清型由来のベクターへの適用)と純度(例えば、ベクター関連不純物の効率的な除去)を提供するが、これらは対費用効果及びヒトへの臨床応用での長期的効果に就いての重大な考慮事項である。効率的なカラムクロマトグラフィーと接線流ろ過の組み合わせは、両方とも容易に拡張可能で、バイオ医薬品業界標準の製造工程であり、続く密度勾配超遠心工程を拡張可能にする。これらの工程の新規な組み合わせは、上記のように実施すれば、適応性、拡張可能性があり、すべてのAAVカプシド変異体に一般的に適用可能な精製構築基盤(platform)を提供し、大幅に遺伝子導入効率を向上し、ヒト被験者への遺伝子治療向けの投与後の宿主の免疫応答を制限する効力の可能性を最小限にするために十分に高い純度(一般的な不純物及びベクター関連不純物が無いこと)を決定的に提供する。
【0063】
空のカプシドとパッケージされたゲノムを有するAAVベクター粒子とをアッセイする方法は当該分野で知られている。例えば、Grimmら、Gene Therapy(1999)6:1322〜1330;Sommerら、Molec Ther.(2003)7:122〜128参照。変性したカプシドをテストするためには、該方法は、処理したAAVストックを、3種のカプシドタンパク質を分離可能な任意のゲル、例えば、当該緩衝液中に3〜8%のトリス−酢酸を含有する勾配ゲルから成る、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、次いで、試料物質が分離するまで前記ゲルを操作し、前記ゲルをナイロンまたはニトロセルロース、好ましくはナイロン膜にブロットすることを含む。抗AAVカプシド抗体は、その後、好ましくは、抗AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくはB1抗AAV−2モノクローナル抗体を、変性カプシドタンパク質に結合する一次抗体として使用する(Wobusら、J.Virol.(2000)74:9281−9293)。次いで、二次抗体を用いるが、このものは一次抗体に結合し、一次抗体との結合を検出するための手段を含んでいて、より好ましくは、それに共有結合で結合した検出分子を含有する抗IgG抗体であり、最も好ましくは、西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼに共有結合で連結したヒツジ抗マウスIgG抗体である。結合を検出する方法を使用して、半定量的に前記一次および二次抗体間の結合を求めるが、好ましくは、放射性同位元素の放射能、電磁放射、或いは比色変化を検出可能な検出法であり、最も好ましくは、化学発光検出キットである。
【0064】
感染力価をテストするには、その方法は、約100,000の宿主細胞、好ましくはヒト由来のもの、最も好ましくは、HeLa細胞を、組織培養処理した,プレートに、好ましくは24ウェル組織培養処理したプレートに、播種することを含み、約24時間インキュベートし、その後、アデノウイルス、好ましくはアデノウイルス−2血清型、および処理したrAAVストックが前記宿主細胞に添加される。前記宿主細胞、アデノウイルス、およびrAAVストックはすべて、24時間インキュベートし、その後、該宿主細胞は、好ましくは、ホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドとで固定し、rAAVが発現した導入遺伝子を検出する適切な薬剤で染色する;例えば、rAAV−LacZでは、X−galを染色剤として想定している。他のレポーター遺伝子に対する他の薬剤は、当技術分野で既知である。任意の導入遺伝子を含むベクターの感染力価を決定するためのより一般的な方法も当該分野で知られている。例えば、次を参照:Zhenら,"An Infectious Titer Assay for Adeno−associated Virus (AAV) Vectors with Sensitivity Sufficient to Detect Single Infectious Events"Hum. Gene Ther. (2004) 15:709−715。
【0065】
ウイルスベースのベクターは、非ウイルス性の方法に比して、標的細胞へ高度の遺伝子送達効率をもたらすので、治療的遺伝子導入に大きな利点を提供する。しかし、ウイルスベースのベクター使用時の特有のリスクは、免疫毒性の可能性である。すべてのウイルス抗原は、異なるタイプと種々の重症度の免疫応答を引き起こすことが知られている。例えば、これらに接触するヒトでは、係る抗原とこれらの抗原随伴細胞は、抗体および細胞傷害性Tリンパ球のような免疫エフェクター機能の対象になる。既知のウイルスの中では、AAVは、免疫原性が最も少ないものの一つであって、高度の免疫毒性の可能性が最低であるので、遺伝子導入ベクターの投与に関聯して認められている利点を提供する。しかし、AAVカプシドタンパク質は、猶望ましくない免疫応答を引き起こし得るウイルス抗原の発生源であることを意味する。AAVベクターを受領するヒト被験体中のAAVカプシド蛋白質によって引き起こされる免疫毒性の重症度は、投与AAVカプシドタンパク質の量に比例すると仮定するのが妥当である。したがって、AAVカプシドのより高い投与量は、高度の免疫毒性のリスクが高いと相関出来る。ヒト被験者投与用の係るベクターの最も安全な使用を確保するためには、ベクターゲノムの有効な投与量に関連するAAVカプシドタンパク質の量を最小限にすべきである。通常の細胞培養ベクターの産生物中に生成するAAV粒子の通常50〜90%を占め、90%以上を占め得る、ベクター関連不純物、特にAAV空のカプシドを効率的に削除する、AAVベクター精製法は、ヒト投与受領者の免疫毒性のリスクを大幅に減少させる。ベクター関連不純物を実質的に含まない組換えAAVベクター(すなわち、実質的に空のカプシドを含まないベクター)を2×1012vg/kg(総体重)投与(肝投与)されたヒト受領者は、ベクター投与後約3週間で開始した肝酵素上昇で示すように、明らかな、わずかの、自己限定的な免疫毒性を経験したことが報告されている(Mannoら,2006,Nature Medicine)。評価は、この軽度で一過性免疫毒性の性状は、AAVカプシド由来のペプチドを発現する肝細胞を除去した、AAVカプシド特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導であったことを支持した(Mannoら、2006、Nature Medicine)。若し同じベクターゲノム投与量(2×1012vg/kg)の組換えAAVを、実質的にベクター関連不純物(例えば、ベクター調製物中のAAV粒子の約80%が空のカプシドであった)を除去しなかった方法を用いて調製した場合、係る調製物は、著しく高い肝酵素が示すように、遙かに深刻な免疫毒性と関係付け得るであろう。
【0066】
本明細書に記載の前記精製方法は、拡張可能な方法でベクター関連不純物(例えば、空のカプシドなど)の効率的な除去によって安全面の向上した特性を有するベクターを提供する、即ち費用対効果の高い方法でAAVベクターの大量の調製が今可能である。
【0067】
以下の実施例は、本発明の幾つかの実施形態を説明するために提供される。実施例はどのような方法でも本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0068】
このプロセスは、6種の一般的で臨床的に有望なAAV血清型(AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV8及びAAV9)のAAVベクター用に拡大された。この精製プロセスは、すべてではないが、大抵のAAV血清型とカプシド変異体に基づくベクターの精製に適用可能と思われる。各血清型またはカプシド変異体について、カラムクロマトグラフィーの詳細内容は異なる(すなわちクロマトグラフィー樹脂の個々の特性(identity)および特定AAV粒子精製条件)。以下の表は、AAV血清型に対応するAAV粒子の精製を成功裏に達成させるのに使用された樹脂を提供する。
【0069】
【表3】

【0070】
効率的なAAV粒子の捕獲と、大抵の非ベクター不純物の除去と(即ち、AAV粒子が樹脂に結合したままである条件下で不純物を洗い流すこと)、次いでAAV粒子の溶出とを、達成するための条件は、確実に定義することが出来る。該クロマトグラフィー工程から回収後、精製AAV粒子(すなわち、真正AAVベクター、空のカプシド、および他のベクター関連不純物)は、イオン強度を高くした緩衝液(Wright et al.,(2005) Mol Therapy)、或いは粒子の凝集を防止する必要に応じて他の緩衝液の条件を使用して、接線流濾過により、通常ミリリットル当たり1×1012〜1×1016AAV粒子の範囲の濃度(ミリリットルあたりほぼ0.1〜100ミリグラムに相当応する)になるように濃縮することが出来る。次に、実験室規模の塩化セシウム勾配超遠心工程を、例えば、それぞれ約40mL含有する遠心管12本を含むT150 Rotorを使用して、実施する。この工程は、真正AAVベクターを効果的に大抵のベクター関連及びその他の非ベクター関連残留不純物から分離する。このプロセスの工程の組み合わせと順序では、以下の重要な主要部の順序:1)カラムクロマトグラフィー;2)接線流ろ過による濃縮(ベクター含有カラム溶出液の量を減らすために、必要に応じて使用);及び3)勾配超遠心分離を含んでいて、ベクターの拡張可能、効率的で、直交性(orthogonal)精製が達成される。この順序で構成されて、1×1015を超える高度に精製されたAAVベクターが、実験室規模の超遠心分離操作一回で、通常的にベクター関連不純物から分離される。
【0071】
真正AAVベクターと大部分のベクター関連不純物との密度差と併せて、塩化セシウムでの合理的なタンパク質濃度の負荷に基づいて、我々は、4×1016AAVベクターを効率的に、実験室規模の超遠心分離操作一回でベクター関連不純物から分離することができ、また大規模な遠心分離装置を使用すれば操作一回当たり少なくとも10倍量分離されることを予測する。本明細書中で使用する場合、語句「真正AAVベクター」は、標的細胞を感染させることが出来る、目的とする導入遺伝子を含むベクターを指す。この語句は、空のベクターおよび完全な挿入を欠くベクター、或いは宿主細胞の核酸を含むベクターを除外する。したがって、遠心分離工程は、拡張可能であって、ヒトの病気を治療するための多くの予測可能なAAVベクター製品の商業規模の製造に限定はない。実験室規模の超遠心分離(すなわち、カラムで精製したAAV粒子約400mL)及びカラムで精製したAAV粒子を接線流ろ過によって、ミリリットル当たり1×1015個のAAV粒子(ミリリットルあたり1×1014真正AAVベクターを含有)の濃度に濃縮することを仮定すると、以下の投与数量が調製出来るはずである:1)眼に投与して失明を治療するための導入遺伝子を発現する1×1011AAVベクターの投与量を仮定すると、1回の勾配操作で最大400、000投与量生成出来る;2)パーキンソン病のために中枢神経系(CNS)に投与する導入遺伝子を発現する、1×1012AAVベクターの投与量を仮定すると、1回の勾配操作で最大40,000投与量生成出来る;3)血友病のために肝臓に投与する導入遺伝子を発現する、1×1014AAVベクターの投与量を仮定すると、1回の勾配操作で最大400投与量生成出来る。我々は、前記勾配超遠心分離工程前に、AAV粒子をさらに10倍(mL当たり1016AAV粒子に到達−約100mg/mLに相当するが、これは、モノクローナル抗体などの他の生体分子では日常的に達成している生物学物質の濃度に対応する)濃縮出来るはずであって、またこの高いが合理的に達成可能な濃度は、各標準超遠心操作(バッチあたり約400mlの処理することが出来る)からの真正ベクターを10倍高い収率で生じ、即ち、4×1017ベクターゲノムまで到達するであろうと予測している。さらに、より大規模な超遠心分離機は、合理的に少なくとも10倍高い濃縮AAV粒子をプロセスし、少なくとも4×1018ベクターのゲノム(すなわち4×1018の高度に精製した真正AAVベクター)を生ずると想定され、後者は血友病Bのヒト被験者当たり1×1014ベクターの40,000投与量に相当する。これらの計算は、前記塩化セシウム超遠心工程を本明細書に記載の新規精製構築基盤(platform)で実施した場合、AAVベクターの製造に予想されるすべての要件を満たせるよう直ちに拡張出来ることを示している。少なくとも現在既存のバイオプロセス産業の、勾配超遠心はその拡張が可能ではないという考え方によれば、予期しないことであるが、当該新規バイオプロセスの工程(および重要なことは、諸工程実行の順序)は、勾配超遠心工程がAAVベクターの精製における律速工程ではないことを示している。
【0072】
我々の精製工程の一つの利点は、現在使用中の「業界標準」の拡張可能なAAVベクターの精製プロセスに比べて、効率的に製品関連の不純物を除去するように設計した工程を包含することによってより高純度を達成する能力である。図1及び図2参照。AAVカプシド特異的な免疫応答の臨床的意義は、Mannoらによる研究で示されており(2006:Nature Med)、又,多量の不要な過剰のカプシド抗原(例えばAAV空のカプシド)および潜在的に免疫賦活性AAVカプシド形成核酸、すなわちベクター関連不純物の存在が科学文献に記載されている:(Smith et al.,(2003)Mol Therapy(abstract); Chadeufら (2005)Mol Therapy;European Medicines Agency(2005) Report from the CHMP Gene Therapy Expert Group Meeting; Hauck et al.,(2009)Mol Therapy)。翻訳研究と臨床製品開発のための大規模で、組換えAAVを生成、精製する他のグループからのデータは,図3(Hauckら、(2009) MolTherapyから)に提供されている。
【実施例2】
【0073】
本方法を使用して精製したAAVベクター(AAV2−hRPE65)は、患者に投与され、Leber先天性黒内障(Leber Congenital Amacurosis)の臨床試験では長期的な有効性を示した(Maguire ら (2008) N Engl J Med)。特に、他のグループが使用した、ベクター関連不純物を除去しない製造プロセスで精製した類似のAAV2−RPE65ベクターは、より高い投与量で投与した場合でも、効果が有意により弱い証拠を示した (Bainbridgeら (2008) N Engl J Med、及び Hauswirthら (2008) Human Gene Ther)。
【0074】
以下の表1は、このデータの要約を提供する。
【0075】
【表4】

【0076】
前記AAV2ベクターである、AAV2−hRPE65v2は、翻訳開始部位で遺伝子操作した修飾Kozak配列を有する1.6kbヒトRPE65 cDNA4−6を含有する。当該cDNAは、ハイブリッドニワトリβアクチン(CBA)プロモーターの制御下にある。AAV2−hRPE65(具体的にはAAV2−hRPE65v2)は、本明細書に報告したベクター精製方法を使用して、Children’s Hospital of Philadelphiaで適切な現行の優良製造規則(cGMP)を使用して製造した。特に、AAV2−RPE65は、HEK293細胞の一過性形質移入によって生成した。収集した細胞と細胞培養上清は、100kDa分子量(Molecular Weight)カットオフ中空繊維膜を用いる、接線流ろ過により濃縮した。濃縮された収集物は、3回微流動化して細胞を溶解し、AAV粒子を放出させた。細胞可溶化液を濾過し、(Sartorius 0.2ミクロン・フィルターカートリッジを使用して)、当該清澄細胞可溶化液をPoros50HSS樹脂を用いた陽イオン交換カラムクロマトグラフィーにかけた。詳細には、該清澄細胞溶解液は、約200mMNaClの塩濃度の中性緩衝食塩水で樹脂に添加し、5mM sarcosyl(界面活性剤)を含む中性緩衝食塩水を用い、100mMNaClの塩濃度で洗浄し(即ち、該樹脂を、結合したAAV粒子ではなくて、不純物を除去する溶液に接触させ)、さらに中性緩衝化生理食塩で洗浄し、残留sarcosylを除去し、100単位/mL濃度のヌクレアーゼ(Benozonase)を含む中性緩衝塩溶液中でインキュベートし、消化して、核酸不純物を除去し、さらに中性緩衝食塩水で洗浄して残留ヌクレアーゼを除去した。最後に、約400mMNaClの塩濃度で中性緩衝生理食塩水を用いて、十分に高度のイオン強度を与え、AAV粒子の結合をクロマトグラフィー樹脂から破壊して、AAV粒子を溶出した。陽イオン交換クロマトグラフィーカラムから溶出した前記精製AAV粒子は、高純度塩化セシウムで補充し、約1.35グラム/mLの密度に相当する最終濃度にし、0.2μ滅菌膜を通してろ過し、次いで、実験室規模のBeckman Ultracentrifugeで固定アングルローターを使用し,50,000rpmで等密度超遠心分離を行った。遠心分離後、滅菌注射針及び注射器を使用してAAV2−RPE65に対応する可視バンドを各遠心管から回収した。AAV2−RPE65に対応する、収集したバンドは、合併して100kDa分子量カットオフ中空繊維を使用して接線流ろ過によって透析ろ過(diafiltration)して、前記AAV2−RPE65ベクター含有溶液から塩化セシウムを除去した。次いで、該ベクターを約180mMNaCl、20mMリン酸ナトリウム、及び0.001%のPluronic F68(また、Poloxamer 188としても知られている)、pH7.3に調剤した。これらのベクターは、適切に希釈し、ヒトRPE65遺伝子の完全な形態を欠如しているヒト被験者(したがって、失明の一形態であるLeber先天性黒内障に罹患)に投与した。これらのベクターを受けたヒト被験者が得た利点は、Maguire et al.(2008,2009)及びSimonelli et al.によって報告されている。別の二つのチームが同時にAAV2−RPE65(すなわちヒトRPE65遺伝子を含む組換えAAV2ベクター)の臨床試験を行い、それらの研究の結果が報告されている。これら別チームは、カラムクロマトグラフィーを利用したが、勾配超遠心工程を欠いた精製法によって自分達のAAV2−RPE65ベクターを精製していた。Hauswirth et al.(2008)が要約したように、本明細書に報告した方法(すなわち、カラムクロマトグラフィーと勾配超遠心分離の両者を、該勾配超遠心分離を拡張可能にする方式で組み合わせた工程による構築基盤(platform)AAVベクター精製法)を用いて調製したAAV2−RPE65を低投与量(前記別2チームがヒトに投与した投与量よりも約4〜7倍低い)でヒト被験者に投与したが、それでも最良の結果をもたらした。特に、視力で最高の有意な改善(3のうち3、表1を参照)は、Maguire et al.(2008)によって認められた。対照的に、Bainbridge et al(3のうち0)とHauswirth et al(3のうち0)は両者共に治療した被験者の中でいずれでも視力に有意な改善を報告していなかた。他の因子がこれらの臨床試験で観察された違いに貢献しているかもしれないが、Maguireらが報告した試験に使用したAAV2−RPE65精製法は、観察された優れた効果の原因である重要な因子だったことは明らかである。
【0077】
本研究で用いたベクターは二つのメカニズムで標的細胞への送達を最適化するように修正された。1)ベクターが注射器具に結び付くのを防ぐために、最終製剤に界面活性剤を添加すること、これは、送達されるベクターが比較的低投与量であることから、重要な考慮事項であり、2)ベクター関連不純物の除去は、標的細胞に取り込まれたベクター粒子はすべて、RPE65発現をもたらす可能性を有することを保証する。空のカプシドの除去工程無しで精製された標準的なベクター調製物は、一般的に80%以上、空のカプシドであるが、一方これらの研究で使用された調製物は、95%以上完全カプシドである。
【0078】
上述したように、網膜下注射でAAV2−hRPE65v2を受けたLCA2患者3人は皆網膜機能の改善の証拠を示した。客観的な生理学的検査による瞳孔の光反射の改善は、主観的な心理物理指標に改善した値を随伴していた。検査は6週間で視力の向上を示し、その後より緩やかな速度での改善があった。眼振の減少は、我々が以前に犬の研究で報告した該減少と同様に、患者2の左眼(未注射)の改善した視力の原因である可能性がある。注射を受けた目の改善は、検査−再検査のばらつきの限界を超えて、機能的に重要であると考えられる程度であった。
【0079】
AAVベクターへの接触によって誘発される明白な局所または全身の不利な事象は認められなかった。網膜下注入2週間後患者の右眼で発現した黄斑円孔は、炎症や急性網膜毒性の兆候は認められなかったので、AAV2−hRPE65v2投与に関連するとは思われなかった。それは手術自体の直接的な結果であった可能性があるが、我々は、黄斑円孔の手術で刺激された既存の膜の収縮によって引き起こされたと仮定する。黄斑円孔の発現は、我々の患者のそれに類似した中心視力の低下患者における網膜機能に影響を及ぼすことが予想されないのに対し、それが網膜変性の程度が低い患者の視力に重大な影響を与える可能性がある。
【0080】
患者への臨床的利点は、患者1のLCA2の実験的な治療から6ヶ月間持続している。投与する製剤から空のカプシドを除去する、本明細書に記載の前記改良精製プロセスは、明らかに、この臨床的利点に貢献したのである。
【0081】
本発明を詳細に、そして具体例を参照して説明してきたが、様々な変更および修飾が本発明の精神範囲から逸脱することなくなし得ることは当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAVベクター粒子、空のカプシド、および宿主細胞不純物を有するAAV調製物から治療タンパク質またはそれらのフラグメントをコードする導入遺伝子を有する真正(bona fide)AAVベクター粒子を精製する方法であって、これにより実質的にAAV空のカプシドを含まないAAV産物を提供するものであり、この方法は、
a)組換えAAVを有する細胞を採取する工程と、
b)接線流ろ過を用いて前記細胞を濃縮する工程と、
c)溶解物を形成するために顕微溶液化によって前記細胞を溶解する工程と、
d)ろ過する工程であって、これにより工程c)の前記溶解物を浄化するものである、前記ろ過する工程と、
e)イオン交換カラムクロマトグラフィーによってAAV粒子を精製し、且つ選択的に接線流ろ過によってカラム溶出液を濃縮する工程と、
f)前記溶出液と塩化セシウムを混合し、且つ当該混合物を遠心分離にかける工程と、
g)工程f)に続いてウイルス粒子を収集し、且つ接線流ろ過によって同一の緩衝液交換を受けさせる工程と、
h)AAV粒子製剤を提供するために界面活性剤によって精製されたAAV粒子を製剤化する工程と、
i)任意の残留不純物を除去するために前記製剤をろ過する工程であって、前記真正AAVベクター粒子が前記AAV産物において少なくとも95%の量で存在するものである、前記ろ過する工程と、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記AAVベクター粒子は、100mg/mLの濃度で存在するものである、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、工程i)の前記AAV粒子は1mLあたり1015粒子の濃度で存在するものである、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、工程i)の前記AAV粒子は1mLあたり1016粒子の濃度で存在するものである、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、工程i)の前記AAV粒子は1mLあたり1017粒子の濃度で存在するものである、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記AAVベクター粒子は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV8およびAAV9からなる群から選択されるAAVに由来するものである、方法。
【請求項7】
薬学的に許容可能な担体中に、請求項1記載の方法を使用して精製されたAAV粒子を有するAAVベクター製剤。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記導入遺伝子は、siRNA、アンチセンス分子、およびmiRNA、リボザイム、およびshRNAからなる群から選択される核酸をコードするものである、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記導入遺伝子は、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮成長因子(VEGF)、アンギオポエチン、アンギオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリトロポエチン(EPO)、結合組織成長因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子α(TGFα)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン成長因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGFβ、アクチビン、インヒビン、骨形態形成タンパク質(BMP)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニュートロフィンNT−3およびNT4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞成長因子、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ、およびチロシン水酸化酵素からなる群から選択される遺伝子産物をコードするものである、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記導入遺伝子は、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL1からIL−17)、単球走化性タンパク質、白血病抑制因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンド、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子からなる群から選択される遺伝子産物をコードするものである、方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記導入遺伝子は、カルバモイル合成酵素I、オルニチン・トランスカルバミラーゼ、アルギニノコハク酸合成酵素、アルギニノコハク酸分解酵素、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ、フェニルアラニン水酸化酵素、アルファ−1 アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルホビリノゲン・デアミナーゼ、第V因子、第VIII因子、第IX因子、シスタチオニンβ合成酵素、側鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリルCoA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、ベータ−グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝臓ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、RPE65、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)配列、ジストロフィンcDNA配列からなる群から選択された、代謝の先天的異常の修正に有用なタンパク質をコードする核酸を有するものである、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記遺伝子産物は、第VIII因子または第IX因子である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−517798(P2013−517798A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551228(P2012−551228)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/022371
【国際公開番号】WO2011/094198
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(510226358)
【Fターム(参考)】