説明

ウイルスワクチン用のヘルペスウイルス骨格およびそれに基づくワクチン

異種DNAが組み込まれたヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)デオキシリボ核酸(DNA)を含む組換えデオキシリボ核酸であって、前記異種DNAがRINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする組換えデオキシリボ核酸;それを含む組換えウイルス、免疫化のためのウイルスワクチンおよび方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年7月28日に出願された米国仮特許出願第61/271,938号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願の全体を通して、ある刊行物が参照される。これらの刊行物の完全な引用は、特許請求の範囲の直前に見出すことができる。全体としてのこれらの刊行物の開示は、本発明が関係する技術水準をより十分に記述するために、本出願に参照により援用される。
【0003】
本明細書に開示されている研究は、米国国立衛生研究所からの助成番号AI−024021の政府支援によりなされた。したがって、米国政府は本発明においてある権利を有する。
【背景技術】
【0004】
ウイルスワクチンは、歴史的には、不活性化ワクチンかまたは生の弱毒化ワクチンのいずれかであるが、しかし、これらの種類のワクチンは、ヘルペスウイルスまたはHIVなどのある種のウイルスを追跡するには実施不能とされてきた。単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)などのウイルスベクターを含む新種のワクチンは、現在、調査中である。単純ヘルペスウイルスにおいて、HSV−1タンパク質ICP0の発現は、ウイルスゲノム由来の遺伝子の効率的な発現を可能にするために必要とされ、より重要なことには、ウイルス力価を改善し、したがってワクチン収率を改善する。しかしながら、ICP0の発現はまた先天性免疫を妨げ、その特性は理想のワクチンベクターと適合しない。
【0005】
ICP0の機能の1つは、細胞核ドメイン10(ND10)複合体を解離させ、前骨髄球性タンパク質(PML)をユビキチン化し、それを分解へともたらすことである。PMLは、インターフェロンの誘導に関与する細胞のゲートキーパーの1つである。
【0006】
本明細書では、骨格として単純ヘルペスウイルスゲノムを用いる組換えウイルスが開示されるが、しかし、ICP0の置換を伴う。組換えウイルスは、相対的に高い力価に複製し、インターフェロンに感受性である。したがって、ベクターのみが、ワクチン開発に必要とされるICP0の特性を保持する。
【発明の概要】
【0007】
異種DNAが組み込まれたヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)デオキシリボ核酸(DNA)を含む組換えデオキシリボ核酸であって、前記異種DNAがRINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする組換えデオキシリボ核酸。
【0008】
RINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする異種DNAを含む組換えヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、異種DNAが(a)HSVゲノムの非必須領域内に挿入され、(b)組換えHSVが導入される宿主細胞において発現される、組換えHSV。
【0009】
(1)薬学的に許容される担体と、(2)(a)RINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする異種DNAが組み込まれており、(b)各々が糖タンパク質をコードする1または複数個の異種DNAが組み込まれている、ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)を含む組換えデオキシリボ核酸を含むウイルスとを含むワクチン。
【0010】
水痘帯状疱疹ウイルス感染に対して対象を免疫化する方法であって、対象において水痘帯状ヘルペスに対する免疫応答を誘発し、それにより対象の免疫化をもたらすのに有効な量の上記ワクチンを投与することを含む方法。
【0011】
ウイルスによる感染の予防に有用な組成物を調製する方法であって、当該組成物を調製するように、上記組換えウイルスを生ワクチン安定化剤と併せることを含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ICP0およびORF61p(配列番号1(ICP0)および2(ORF61))のアミノ酸配列のアラインメント。ICP0およびORF61pのアミノ酸配列(それぞれNCBIタンパク質データベース受入番号NP 044601.1およびNP 040183.1)は、Gonnet Matrix、オープンギャップペナルティ10.0、および拡張ギャップペナルティ0.1を用いて整列された。C3HC4のRINGフィンガー共通配列のCysおよびHis残基にマークを付している。また、ICP0のICP0 C末端におけるND10標的ドメイン(18)もマークを付している。ICP0およびORF61pのNLS領域に下線を付している(52,63)。USP7相互作用部位は、黒色のボックスでマークを付し、相互作用に必要とされるアミノ酸は矢印で特定する(19)。また、E3ユビキチンリガーゼ活性をコードする2つの領域(30)にもマークを付す。
【図2】ICP0またはORF61p発現細胞におけるPMLおよびSp100の再分布。カバーガラス上で増殖されたMeWo細胞を模擬処理するか(AおよびD)、またはICP0(BおよびE)もしくはORF61p(CおよびF)を発現するプラスミド構築物を用いて形質転換した。形質転換の48時間後、細胞を固定し、ウイルスタンパク質およびPML(A−C)またはSp100(D−F)の局在化を間接免疫蛍光顕微鏡によってモニタリングした。核をHoechstで染色した。100倍の対物を用いて撮像し、ボリュームデコンボリューションによって分析した。
【図3】ICP0またはORF61p発現細胞におけるPMLおよびSp100の存在量。MeWo細胞を模擬処理するか、またはMOIを5にして、Adempty、AdICP0、またはAdORF61で感染した。感染の48時間後、全細胞溶解物をSDS−PAGEによって分析した。PML、Sp100、ICP0、ORF61pおよびチューブリンのレベルをウェスタンブロッティングによって分析した。異種のPMLおよびSp100をアステリスクで特定している。
【図4】ORF61pのND10への標的化はPML分解をもたらさない。(A)ICP0、ORF61p、およびICP0のC末端へのORF61p翻訳融合物の略図。(B)MeWo細胞を模擬処理するか、またはICP0、ORF61pもしくはORF61p融合タンパク質を発現する構築物で形質転換された。感染の48時間後、全細胞溶解物をSDS−PAGEによって分析した。ICP0、ORF61pおよびチューブリンのレベルをウェスタンブロッティングによって分析した。(C−E)カバーガラス上で増殖させたMeWo細胞を模擬処理するか(C)、またはORF61p融合タンパク質を発現するプラスミド構築物で処理した(DおよびE)。48時間後、細胞を固定し、ORF61pおよびPMLの局在化を間接免疫蛍光顕微鏡によってモニタリングした。核をHoechstで染色した。100倍の対物を用いて撮像し、ボリュームデコンボリューションによって分析した。
【図5】HSVおよびVZV感染中のPMLの局在化。カバーガラス上で増殖させたMeWo細胞は、MOIを1にしたHSV(A)、またはMOIを約0.01にした細胞不含VZV(B−D)で感染された。HSV感染細胞を感染6時間で固定し、VZV感染細胞を感染24時間で固定し、ICP0(A)、ORF61p(B)、ORF62p(C)、gE(D)およびPML(A−D)の存在を間接免疫蛍光顕微鏡によってモニタリングした。核をHoechstで染色した。100倍の対物を用いて撮像し、ボリュームデコンボリューションによって分析した。
【図6】HSVおよびVZV感染中のSp100の局在化。カバーガラス上で増殖させたMeWo細胞は、MOIを1にしたHSV(A)、またはMOIを約0.01にした細胞不含VZV(BおよびC)で感染された。HSV感染細胞を感染6時間後に固定し、VZV感染細胞を感染24時間後に固定し、ICP0(A)、ORF62p(B)、およびgE(C)ならびにSp100(A−C)の局在化を間接免疫蛍光顕微鏡によってモニタリングした。核をHoechstで染色した。100倍の対物を用いて撮像し、ボリュームデコンボリューションによって分析した。
【図7】HSVおよびVZV感染中のPML、Sp100およびDaxxの存在量。(A)MeWo細胞は、MOIを5にしたHSV、またはMOIを約0.01にした細胞不含VZVで感染された。感染の所定時間後、PML、Sp100、Daxx、ICP0、ORF61pおよびチューブリンのレベルをウェスタンブロッティングによってモニタリングした。(B)MeWo細胞を模擬処理するか、または1000もしくは2000U/mlのインターフェロンアルファ含有培地とともにインキュベートした。処理の48時間後、全細胞溶解物をPML、Sp100、Daxx、STAT1、リン酸化STAT1、STAT2およびリン酸化STAT2についてモニタリングした。
【図8】VZV複製に対するPML、Sp100およびDaxxの効果。(A)si対照、siPML、siSp100およびsiDaxx細胞由来の全溶解物をPML、Sp100、Daxxおよびチューブリンについてウェスタンブロッティングによって分析した。(B)si対照、siPML、siSp100およびsiDaxx細胞を連続希釈したVZVで感染した。感染5日後、単層を固定し、染色し、プラークをカウントし、si対照細胞において形成された数と比較した。誤差バーは、5つの独立した実験からの標準偏差を示し、各々は2点測定で行われた。(C)si対照、siPML、siSp100およびsiDaxx細胞は、MOIを約0.01にした細胞不含VZVで感染された。感染の所定時間後、溶解物をORF29p、ORF63pおよびチューブリンについてウェスタンブロッティングによって分析された。バンド強度は、ImageJを用いて定量化され、チューブリンについて標準化された。(D)si対照、siPML、siSp100およびsiDaxxは、MOIを約0.01にした細胞不含VZVで感染させた。感染の所定時間後、細胞を回収し、新鮮なMeWo単層上で感染中心の数を決定するために滴定した。感染の4日後、単層を固定し、染色し、プラークをカウントして、感染中心の力価を計算した。パネルDは、細胞株の各々における増殖曲線を示す典型的な実験である。各データ点は、2試料の平均を表す。パネルEは、4つの独立した実験からのデータ点の平均を示し、誤差バーは標準偏差を表す。
【図9】si対照、siPML、siSp100およびsiDaxx細胞上の感染巣の形態。si対照、siPML、siSp100およびsiDaxx細胞は、MOIを約0.01にして感染された。感染の2および3日後、細胞を固定し、ORF63pおよびgEの局在化を免疫蛍光顕微鏡によってモニタリングした。核をHoechstで染色した。10倍対物を用いて撮像した。
【図10】水痘帯状疱疹ウイルスORF61pを発現する単純ヘルペスウイルスの構築。(A)ICP0遺伝子座の略図。(B)dl1403またはHSV−ORF61感染細胞から調製されたpCPC−061およびHirt DNAは、以下の結果IIの材料および方法において特定されたプライマーセットを用いて増幅された。(C)MeWo細胞は、模擬処理されるか、またはMOIを5にして、野生型HSV−1、dl1403もしくはHSV−ORF61で感染された。感染8時間後、細胞を回収し、材料および方法に記載の抗体を用いたウェスタンブロッティングによってICP0、ICP4、ORF61pおよびチューブリンの存在量をモニタリングした。
【図11】水痘帯状疱疹ウイルスORF61pを発現する単純ヘルペスウイルスの増殖分析。(A)Vero細胞またはL7細胞は、連続希釈した野生型HSV−1、dl1403またはHSV−ORF61で感染された。感染の3日後、単層を固定し、染色し、プラークをカウントした。相対的なプラーク形成効率はX100である。誤差バーは、4つの独立した実験からの標準偏差を示し、各々は2点測定で行われた。(B)MeWo細胞は、MOIを0.1にして、野生型HSV−1、dl1403またはHSV−ORF61で感染された。感染の2、12、24および48時間後、感染細胞を回収し、3回の凍結−融解に供し、収量は、L7細胞についての滴定後に計算された。
【図12】ウイルス特異的タンパク質の発現の時間経過。MeWo細胞は、moiを0.2にして、野生型(HSV−1)、ICP0−(dl1403)およびHSV−ORF61で感染させた。感染された細胞を所定時間で回収し、ウェスタンブロットによって、ICP4、ICP27、ICP0およびORF61pの合成および存在量について試験した。全てのレーンは抗チューブリン抗体で染色され、等量の細胞タンパク質が各レーンにおいて泳動されたことを示した。
【図13】水痘帯状疱疹ウイルスORF61pを発現する単純ヘルペスウイルスによる感染中のPMLおよびSp100の運命および要求条件。(A)MeWo細胞は、模擬処理されるか、またはMOIを10にして、野生型HSV−1、dl1403もしくはHSV−ORF61で感染された。感染2および4時間後、細胞を回収し、ウェスタンブロッティングを用いて、PML、Sp100、ICP0、ORF61pおよびチューブリンの存在量をモニタリングした。(B)空細胞、siPML細胞、およびsiSp100細胞は、連続希釈された野生型HSV−1、dl1403またはHSV−ORF61で感染された。感染3日後、単層を固定し、染色し、プラークをカウントし、空細胞において形成された数と比較した。誤差バーは、3つの独立した実験からの標準偏差を示し、各々は2点測定で行われた。
【図14】インターフェロンαに対する水痘帯状疱疹ウイルスORF61pを発現する単純ヘルペスウイルスの感受性。模擬処理されたか、または一晩インターフェロンαを用いて処理されたMeWo、VeroまたはU2OS細胞は、連続希釈された野生型HSV−1、dl1403またはHSV−ORF61で感染された。感染3日後、単層を固定し、染色し、プラークをカウントした。各細胞株上の各ウイルスの相対的なプラーク形成効率は、模擬処理された細胞における力価/インターフェロンα処理された細胞における力価×100として計算された。
【図15】VZVゲノムの略図。ORFをコードする糖タンパク質を特定する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
HSVの非制限的な例には、グラスゴー(Glasgow)菌株7;ヒトヘルペスウイルス1(HSV−1)HF VR−260(商標);ヒトヘルペスウイルス1(HSV−1)MacIntype VR−539(商標);ヒトヘルペスウイルス1(HSV−1)KOS VR−1493(商標);ヒトヘルペスウイルス2(HSV−2)G VR−734(商標);ヒトヘルペスウイルス2(HSV−2)MS VR−540(商標);およびヒトヘルペスウイルス、ATCC(Manassas,VA 20108,USA)で受託された組換えGHSV−UL46 VR−1544(商標)が挙げられる。VZVの非制限的な例には、Jones菌株;VZVのOka菌株、ATCC(Manassas,VA 20108,USA)で受託されたVR−795が挙げられる。
【0014】
「組換え」とは、本明細書で使用するとき、核酸またはウイルスに関連して、それぞれ、核酸またはウイルスの単一形態に合わせられる2つの別々の起源の供給源を有する分子実在物またはウイルス実在物を意味する。例えば、組換えデオキシリボ核酸は、単一のDNA分子において、単純ヘルペスウイルスゲノムと水痘帯状疱疹ウイルス由来の遺伝子の両方から作製され得る。例えば、組換えウイルスは、外来または異種のコード配列/遺伝子を含む核酸をその中に有するウイルスである。一実施形態では、2つの異なる経路は、異なる種である。
【0015】
「異種」とは、本明細書で使用するとき、例えば、異種のデオキシリボ核酸に関連して、DNAが比較して異種なものとして記載される生物のDNAとは異なる生物(またはそれと同一な配列を有する)に由来することを意味する。非制限的な例には、単純ヘルペスウイルス由来のDNA内に挿入された水痘帯状疱疹ウイルス由来のDNAは、単純ヘルペスウイルス由来のDNAと比較して異種なDNAである。
【0016】
「RINGフィンガードメイン」とは、2つの亜鉛陽イオンを結合するCys3HisCys4アミノ酸モチーフを含む亜鉛フィンガーポリペプチドを意味する。RINGは、実に興味深い新しい遺伝子(Really Interesting New Gene)を意味する頭字語である。
【0017】
「組み込まれる」とは、本明細書で使用するとき、ウイルスDNA内に組み込まれる異種遺伝子またはコード配列と関連して、ウイルスDNAが当該ウイルスに感染された宿主細胞によって発現された場合、当該遺伝子またはコード配列が発現するようにDNA内に異種遺伝子またはコード配列の機能的包含を意味する。
【0018】
ウイルスDNAの「非必須」遺伝子または領域は、当業者に知られているDNAの領域であり、宿主細胞に感染し、その中で複製するウイルスの能力を妨げないDNA配列の挿入である。
【0019】
水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質およびそれらをコードする核酸配列は、当該技術分野において、例えば、糖タンパク質H、BおよびE(それぞれgH、gBおよびgE)であり、例えば、全体として参照により本明細書に援用されるMaresovaら,2005,J.Virol.79(2):997−1007を参照されたい。
【0020】
水痘帯状疱疹ウイルス中和エピトープは、当該技術分野において周知であり、例えば、各々が、全体として参照により本明細書に援用されるAkahoriら,Journal of Virology,February 2009,p.2020−2024,Vol.83,No.4;およびForghaniら.J Clin Microbiol.1990 November;28(11):2500−2506を参照されたい。
【0021】
感染細胞ポリペプチド0(ICP0)は、ヘルペスウイルスのDNAにコードされたタンパク質である(全体として参照により援用される、NCBIタンパク質データベース受入番号NP 044601.1を参照されたい)。ORF61は、オープンリーディングフレーム61タンパク質(水痘帯状疱疹ウイルス)である(全体として参照により援用される、NCBIタンパク質データベース受入番号NP 040183.1を参照されたい)。
【0022】
免疫化とは、本明細書で使用するとき、免疫応答を引き起こし、その後のウイルス抗原(単数または複数)への暴露において防御体液性および/または細胞性免疫を誘発する対象の免疫系、例えば、ヒトの免疫系に対するウイルス抗原(単数または複数)(例えば、ワクチンにおいて)の提示である。
【0023】
ウイルスワクチン用の組成物は、当該技術分野において知られ、米国特許第6,616,931号,Burkeら,2003年9月9日;米国特許第6,258,362号,Loudonら,2001年7月10日;および米国特許第6,787,351号,Chenら,2004年9月7日に記載され、各々は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示されているウイルスベクターワクチンは、薬学的に許容される溶液、例えば、これらに限定されないが、無菌生理食塩水または無菌緩衝生理食塩水において投与することができ、当該技術分野において知られているワクチン用アジュバントとともにまたはアジュバントを伴わないで投与され得る。ワクチンを「投与すること」は、当業者に公知のいずれかの種々の方法および送達システムを用いてもたらされるかまたは実施され得る。ウイルスワクチンは、当該技術分野において公知の方法、例えば、これらに限定されないが、局所的におよび粘膜/鼻粘膜に注射によって投与され得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、「薬学的な担体」は、上記ウイルスベクターを動物またはヒトに送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤またはビヒクルである。担体は、液体、エアロゾル、ゲルまたは固体であってもよく、計画された投与方法を考慮して選択される。一つの実施形態では、薬学的な担体は、無菌の薬学的に許容される溶媒である。
【0025】
ウイルスワクチンを製造および貯蔵する方法は当該技術分野において知られ、さらに、全体として参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO/2006/012092号に記載されている。そこに記載されているように、一般的に、麻疹、風疹および流行性耳下腺炎などのウイルスの生ワクチンにしばしば使用される安定化剤には、1または複数の糖、アミノ酸、糖アルコール、ゼラチンおよびゼラチン誘導体が含まれ、ウイルスを安定化し、多くの場合、濃縮工程中に変性からウイルスを保持する。本明細書中に記載されている組換えウイルスは、この目的のために、安定化剤、または天然もしくは組換え血清アルブミンを含む他の添加物を用いて、ワクチンに配合されてもよい。また、米国特許第6,210,683号;同第5,728,386号、同第6,051,238号、同第6,039,958号、および同第6,258,362号には、安定化剤の詳細、および生ウイルスワクチンをより穏やかに処理するための方法が含まれる。これらの開示の各々は、特に、安定化剤組成物および安定化させる方法を記載するそれらの部分は、全体として参照により具体的に組み込まれる。安定化剤を用いて調製後、ワクチンは、例えば、凍結乾燥ワクチン、凍結乾燥混合ワクチン、液体ワクチンまたは液体混合ワクチンとして保存されてもよい。これらを形成する方法は公知である。典型的には、凍結乾燥ワクチンは、約3〜30ml容量のバイアルまたはアンプル中でワクチンを凍結乾燥させ、きつく密封し、5℃またはそれより低い温度で保存することによって調製される。保存された調製ワクチンは、典型的には、製品の同封説明書またはバイアルもしくは他の容器上の注意書きとして、そこに貼り付けられた使用説明書に従って使用される。多くの場合、凍結乾燥ワクチンは、使用前に無菌の蒸留水の添加によって再構成され、得られた溶液は、例えば、0.5ml/用量の量で皮下注射によって接種される。また、ワクチンは経口または鼻腔内に与えることができる。
【0026】
異種DNAが組み込まれたヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)デオキシリボ核酸(DNA)を含む組換えデオキシリボ核酸であって、前記異種DNAがRINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする組換えデオキシリボ核酸。
【0027】
一つの実施形態では、HSV DNAはゲノムDNAであり、異種DNAは、HSV感染細胞ポリペプチド0(ICP0)をコードする、ゲノムHSV DNAの一部に代えて、HSV DNA内に組み込まれる。一つの実施形態では、異種DNAは、HSV ICP0 5’非翻訳領域(UTR)とHSV ICP0 3’非翻訳領域(UTR)との間のゲノムHSV DNA内に挿入される。一つの実施形態では、挿入された異種DNAは、ICP0プロモータおよび3’UTRの制御下にある。一つの実施形態では、RINGフィンガードメインを含むポリペプチドは、水痘帯状ヘルペスウイルスORF61タンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、RINGフィンガードメインを含む異種ポリペプチドは、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、または仮性狂犬病ウイルスのタンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、HSV DNAはHSVゲノムである。
【0028】
一つの実施形態では、組換えデオキシリボ核酸は、糖タンパク質をコードする異種DNAをさらに含む。一つの実施形態では、組換えデオキシリボ核酸は、各々異なる糖タンパク質をコードする最大8つの異種DNAをさらに含む。一つの実施形態では、糖タンパク質は、水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、糖タンパク質は、水痘帯状ヘルペスウイルス中和エピトープを含む。
【0029】
一つの実施形態では、組換えデオキシリボ核酸によってコードされるポリペプチドは、哺乳動物の前骨髄球性白血病タンパク質(PML)を分解しない。
【0030】
一つの実施形態では、ポリペプチドをコードする異種DNAは、組換えデオキシリボ核酸が適切な宿主細胞のゲノム内に組み込まれた場合、ポリペプチドを発現するように組み込まれる。一つの実施形態では、糖タンパク質をコードする異種DNAは、HSV DNAの非必須遺伝子または領域内に挿入される。
【0031】
RINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする異種DNAを含む組換えヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、異種DNAが、(a)HSVゲノムの非必須領域内に挿入され、(b)組換えHSVが導入される宿主細胞において発現される、組換えHSV。
【0032】
一つの実施形態では、異種DNAは、HSV感染細胞ポリペプチド0(ICP0)をコードする、HSVゲノムの一部に代えて、HSVゲノム内に組み込まれる。一つの実施形態では、異種DNAは、HSV ICP0 5’非翻訳領域(UTR)とHSV ICP0 3’非翻訳領域(UTR)との間のHSVゲノム内に挿入される。一つの実施形態では、RINGフィンガードメインを含むポリペプチドは、水痘帯状ヘルペスウイルスORF61タンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、RINGフィンガードメインを含むポリペプチドは、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、または仮性狂犬病ウイルスのタンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、組換えHSVは、糖タンパク質をコードする異種DNAをさらに含み、HSVゲノムの非必須領域内に挿入される。一つの実施形態における、水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列。一つの実施形態では、糖タンパク質は、水痘帯状ヘルペスウイルス中和エピトープを含む。一つの実施形態では、糖タンパク質をコードする異種DNAは、HSVゲノムの非必須遺伝子または領域内に挿入される。一つの実施形態では、組換えHSVゲノムによってコードされるポリペプチドはPMLを分解しない。一つの実施形態では、組換えHSVは、各々異なる水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質をコードする最大8つの異なる異種DNAを含む。一つの実施形態では、組換えウイルスは、当該技術分野において公知のそれらの方法によって弱毒化される。
【0033】
(1)薬学的に許容される担体と、(2)(a)RINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする異種DNAが組み込まれており、且つ(b)各々が糖タンパク質をコードする1または複数個の異種DNAが組み込まれているヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)ゲノムを含む組換えデオキシリボ核酸を含む組換えウイルスとを含むワクチン。
【0034】
一つの実施形態では、異種DNAは、HSV感染細胞ポリペプチド0(ICP0)をコードする、HSV DNAの一部に代えて、HSVゲノム内に組み込まれる。一つの実施形態では、異種DNAは、HSV ICP0 5’非翻訳領域(UTR)とHSV ICP0 3’非翻訳領域(UTR)との間のHSVゲノム内に挿入される。一つの実施形態では、RINGフィンガードメインを含む異種ポリペプチドは、水痘帯状ヘルペスウイルスORF61タンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、RINGフィンガードメインを含む異種ポリペプチドは、EHV、BHV、または仮性狂犬病ウイルスタンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、糖タンパク質は、水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を有する。一つの実施形態では、糖タンパク質は、水痘帯状ヘルペスウイルス中和エピトープを含む。一つの実施形態では、糖タンパク質をコードする異種DNA、およびRINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする異種DNAは、各々、HSVゲノムの非必須遺伝子または領域内に挿入される。一つの実施形態では、組換えウイルスは、当該技術分野において公知のそれらの方法によって弱毒化される。
【0035】
水痘帯状ヘルペスウイルス感染に対して対象を免疫化する方法であって、対象において水痘帯状ヘルペスウイルスに対する免疫応答を誘発し、それにより対象の免疫化をもたらすのに有効な量の上記ワクチンを対象に投与することを含む方法。
【0036】
ウイルスによる感染予防に有用な組成物を調製する方法であって、該組成物を調製するように、上記組換えウイルスの1つと生ワクチン安定化剤とを併せることを含む方法。
【0037】
本明細書に記載されている方法の一つの実施形態では、対象は哺乳動物である。一つの実施形態では、対象はヒトである。該方法の一つの実施形態では、宿主細胞は哺乳類であるかまたは哺乳動物由来である。一つの実施形態では、宿主細胞はヒトから得られる。
【0038】
本明細書に記載されている種々のエレメントの全ての組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0039】
本発明は、続く実験の詳細を参照することによってより良く理解されるが、当業者は、詳述された具体的な実験が、以下に続く特許請求の範囲においてより十分に記載される本発明の単なる例示であることを容易に認めるだろう。
【0040】
実験の詳細
以下に開示された研究は、水痘帯状ヘルペスウイルス(VZV)におけるHSV ICP0の対応するオルソログであるORF61がPMLを分解することができず、したがって、宿主の先天性免疫を妨げないことを示す。本明細書では、組換えHSVの構築が開示され、ここで、α遺伝子ICP0のコード配列はORF61pをコードする配列で置換される。
【0041】
結果I
核ドメイン10(ND10)は、PML核小体およびPML発癌性ドメインとしも知られ、核において染色体間空間内に形成する細胞タンパク質の動的高分子包含物である(2,65)。これらの小体の大きさおよび頻度は、それぞれ0.2〜1μmおよび2〜30/細胞の範囲であり、細胞種および細胞周期の段階に依存している(2,17,62)。これらの部位で蓄積される細胞タンパク質は、2つのグループに分けられる:常在コンポーネントであるタンパク質、例えば、PML(前骨髄球性白血病タンパク質)、Sp100(100kDaの斑点(speckled)タンパク質)、Dann、SUMO−Iおよびブルーム症候群ヘリカーゼ、ならびに特定の条件下(例えば、DNA修復機構)または過剰発現(例えば、BRCA1)下においてND10とのみ結合するタンパク質(70)。
【0042】
DNAウイルスゲノムは、それらの複製周期の初期段階でND10コンポーネントと結合する。新たに形成した転写物および複製部位は、通常、ND10内に存在するタンパク質近傍に局在化する(61)。ウイルス複製がND10に影響を及ぼす最初の示唆は、PML染色が単純ヘルペスウイルス(HSV)感染後に消失したという実証であった(46)。その後、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)およびパピローマウイルスの親ゲノムが、ND10と結合することが示された(10,14,32,33,35,47)。
【0043】
HSVとND10のコンポーネントとの間のアンタゴニスト関係は、広範囲にわたって研究されている。ウイルスタンパク質であるICP0の発現は、核構造の破壊に必要十分である(18,45,46)。ICP0は、見掛けの分子量が110kDaである核リン酸タンパク質を含むC3HC4 RINGフィンガーであり(56)、ウイルス遺伝子と細胞遺伝子の両方の乱交雑アクチベーター(promiscuous activator)として挙動する(12,23,59)。ICP0遺伝子を欠損するウイルス変異体は、プラーク形成単位(pfu)に対して増大した粒子比、実質的に低い収率、およびα遺伝子発現レベルの減少を有する(13,64)。また、ICP0は、プロテアソーム分解のための宿主タンパク質のリスト増加を標的とするためのE3ユビキチンリガーゼとして機能し、ND10小体のコンポーネント、例えば、PMLおよびSp100のSUMO−I改変形態が含まれる(8,15,18,26,41,53)。
【0044】
ICP0を発現しないHSV変異体は、ND10コンポーネントを修飾および分解するそれらの能力を欠いている(46)。PMLおよびSp100の枯渇は、ウイルス遺伝子発現を加速させ、HSV ICP0欠損ウイルスのプラーク形成効率を増加させるが、野生型ウイルスには影響を及ぼさなかった。これらのデータは、効率的なウイルス複製および増殖を確実にするICP0 E3リガーゼ活性によって対抗される固有の抗HSV防御機構のコンポーネントであることを示す(21,22)。
【0045】
水痘帯状ヘルペスウイルス(VZV)は、アルファヘルペスウイルスとしてHSVとともに分類される共通のヒト病原体である。VZVは、ICP0と類似し、ウイルスプロモータを転写的に活性化し、ウイルスDNAの感染性を高めるICP0オルソログ(ORF61p)(49,57)をコードする(49,50)。重要なことには、ORF61pは、ICP0のトランス活性化、ならびにND10の解離活性および分解活性に必須であるものに相同なRINGフィンガードメインを含む。
【0046】
HSVによるICP0の発現は、ウイルス遺伝子発現およびタンパク質蓄積を刺激する宿主コシャペロンタンパク質であるBAG3の枯渇を克服するために必要とされることが従来示されている(38)。ORF61pはICP0と機能的に類似していると考えられるが(49)、VZVはBAG3の枯渇によって影響を受け(37)、ICP0およびORF61pが、別々に、ウイルス複製に異なる機能を付与するように発展してきたことを示唆する。
【0047】
本報告は、ORF61pおよび他のVZVをコードするタンパク質が、HSV感染細胞におけるICP0と同じように、ND10コンポーネントを分解しないことを示す。また、VZV感染中のPML、Sp100およびDaxxの役割が研究され、本報告は、2つの関連したアルファヘルペスウイルス間の主な相違を強調する。
【0048】
材料および方法:哺乳動物細胞。ヒト黒色腫(MeWo)、siBAG3(37)、siPML(38)および293A細胞は、従来報告(37)されるように維持された。siRNA標的のSp100およびDaxx mRNAを発現する安定な細胞株を生成するために、MeWo細胞はレトロウイルスで感染され、200μg/ml、続く500μg/mlのハイグロマイシンを含む増殖培地中で選択された。
【0049】
DNA形質転換。Fugene HD[Roche,Indianapolis,IN]を用いて適切な細胞株にDNAを形質転換した。
【0050】
薬物処理。インターフェロンαをPBL Biomedical[Piscataway,NJ]から購入した。
【0051】
ウイルス。[i]VZV.Jones,野生型臨床単離物は、報告(24)されるように増殖され、力価決定された。細胞不含ウイルスを報告(36,58)されるように調製した。[ii]レトロウイルス。プロウイルスベクターpCK−Super.retro.hygro(38)、pCK−siSp100またはpCK−siDaxxおよびpgag−polgpt(44)およびpHCMV−G(75)を用いて293T細胞の一過性の同時形質転換によってレトロウイルスを構築した。
【0052】
[ii]アデノウイルス。アデノウイルスであるAdempty、AdICP0およびAdORF61は従来報告された(74,76)。
【0053】
ウイルス増殖アッセイ。[i]プラークアッセイ。MeWo、siPML、siSp100またはsiDaxx細胞を10倍に連続希釈したウイルスストックを用いて感染させ、感染細胞を固定し、染色し、およびプラークをカウントした。[ii]増殖曲線。MeWo、siPML、siSp100またはsiDaxx細胞の感染後の細胞に結合したVZVの力価は、未感染のMeWo細胞で感染した細胞を混合し、固定および染色後に得られたプラークをカウントすることによって決定された。
【0054】
プラスミド構築物。[i]siRNAプラスミド。従来報告されているsiRNAオリゴ標的のSp100およびDaxx mRNA(22,68)は、pCK−super.retro.hygro(38)にクローニングするために修飾された。pCK−siSp100およびpCK−siDaxxを生成するために、アニーリングされるオリゴ対のsiSp100 上流:5’−GATCCCCGTGAGCCTGTGATCAATAATTCAAGAGATTATTGATCACAGGCTCACTTTTTA−3’およびsiSp100 下流:5’−AGCTTAAAAAGTGAGCCTGTGATCAATAATCTCTTGAATTATTGATCACAGGCTCACGGG、またはsiDaxx 上流:5’−GATCCCCGGAGTTGGATCTCTCAGAATTCAAGAGATTCTGAGAGATCCAACTCCTTTTTA−3’ siDaxx 下流:5’−AGCTTAAAAAGGAGTTGGATCTCTCAGAATCTCTTGAATTCTGAGAGATCCAACTCCGGG−3’は、BglII/HindIII開裂させたpCK−super.retro.hygro(38)に連結された。
【0055】
全てのプライマーをOperon Biotechnologies[Huntsville,AL]から得て、全てのベクター挿入物をDNA配列決定によって確認した。
【0056】
抗体。ORF29pのアミノ酸[aa]1086〜1201、およびORF63pのaa1〜265に対するウサギポリクローナル抗体は(43)に記載されている。
【0057】
ICP0に対するポリクローナル抗体はすでに報告されている(40)。モノクローナルICP0およびORF62p抗体は、Rumbaugh−Goodwin Institute[Plantation,FL]から購入した。ORF61pのアミノ酸136〜248を含むGST融合タンパク質に対するポリクローナル抗体をウサギに発生させ、以前に報告(37)されるように、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。PML、GAPDHおよびチューブリンに対するモノクローナル抗体、およびDaxxに対するポリクローナル抗体をSanta Cruz Biotechnology[Santa Cruz,CA]から得た。PMLおよびSp100に対するポリクローナル抗体をChemicon[Temecula,CA]から購入した。STAT1、STAT2およびリン酸化STAT1に対する抗体をAbeam[Cambridge,MA]から得た。リン酸化STAT2に対する抗体をSanta Cruz Biotechnologyから購入した。
【0058】
Alexa Fluor 488をコンジュゲートした抗体マウス抗体、およびAlexa Fluor 546をコンジュゲートしたウサギ抗体をMolecular Probes[Carlsbad,CA]から得た。免疫ブロッティングのための西洋ワサビヤギペルオキシダーゼに結合された抗ウサギ抗体および抗マウス抗体をKPL[Gaitherburg,MD]から得た。
【0059】
間接免疫蛍光顕微鏡。従来報告(37)されるように、カバーガラス上の細胞を固定し、抗体およびHoechstで染色した。全ての試料は、Zeiss Axiovert 200M倒立顕微鏡[Carl Zeiss Microimaging Inc,Thornwood,NY]で視覚化し、Openlab 5ソフトウェア[Improvision,Lexington,MA]を用いて、Hamamatsu C4742−80−12AGデジタルCCDカメラ[Hamamatsu Photonics,Hamamatsu−City,Japan]を用いて撮像した。画像は、Openlab 5を用いてデコンヴォルブされ、Photoshop CS3[Adobe Systemx,San Jose,CA]に集めた。
【0060】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティング。感染させたかまたは生化学的に形質転換された細胞を冷PBSで2回洗浄し、1.5×SDS試料緩衝液[75mM Tris HCl pH 6.8,150mM DTT,3%SDS,0.15%ブロモフェノールブルー,15%グリセロール]中で溶解し、沸騰し、SDS−PAGEでタンパク質分析を行った(39)。ウェスタンブロッティング前に、ニトロセルロースメンブレンにタンパク質を移した。5%脱脂粉乳を含むPBST中でメンブレンをブロッキング後、固定したタンパク質を1%脱脂粉乳を含むPBST中の適切な抗体と反応させた。メンブレンをPBSTで3回、各々5分間洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合された抗ウサギ抗体または抗マウス抗体とともにインキュベートし、次いで、PBSTで再び3回、各5分間、およびPBSで2回洗浄した。LumiGLO基質[KPL]の添加によって抗体を視覚化し、X線フィルムに暴露した。
【0061】
STATタンパク質に対する抗体を用いた場合、ブロッキングおよび抗体インキュベーションは、50mM NaFおよび1mM Na3VO4および3%BSAが補足されたPBST中で行われた。
【0062】
配列アラインメント。ORF61p(NP 040183.1)およびICP0(NP 044601.1)のアミノ酸配列は、Gonnet Matrix、オープンギャップペナルティ10.0、および拡張ギャップペナルティ0.1を用いたMacVector ver 10.0[MacVector Inc,Cary,NC]により整列された。
【0063】
ICP0とORF61pとの間の配列類似性。従来の報告は、アルファヘルペスウイルスオルソログ、ICP0およびORF61pが、遺伝子発現のアクチベーター、およびウイルスDNA感染性のエンハンサーとして機能するそれらの能力を含む、いくつかの生物学的特徴を共有することを示唆した(49,50,57)。しかしながら、ICP0とは異なり、ORF61pは、ウイルス感染中、BAG3の代わりにならなかったことも報告され、これらのタンパク質がそれらの自然な状況において同一の機能を果たさないことが示唆されている(38)。ICP0の多機能は、特定ドメインについてマッピングされている(16)。これは、これらのタンパク質間のアミノ酸配列のアラインメントがそれらの相違に洞察を与えるという仮説へと導いた。ICP0およびORF61pのアミノ酸配列は、NCBIタンパク質データベース(それぞれ受入番号NP 044601.1およびNP 040183.1)から得られ、整列された(図1)。それらの核酸配列のいくつかの保存(9)にも関わらず、それらの間でアミノ酸配列の保存が全体で僅かしかないことが見出された(アミノ酸レベルで10%類似性)。しかしながら、その両方は、それらのN末端近傍でC3HC4 RINGフィンガー[C−X2−C−X(9−39)−C−X(1−3)−H−X(2−3)−C−X2−C−X(4−48)−C−X2−C](3)を含む。これらの2つのタンパク質間の顕著な相違は、ORF61の配列において、ICP0のC末端(青色で付される)がないことである。重要なことに、この領域は、ICP0をND10小体に標的化し、次いでそれらのコンポーネントを分解するために必要とされる(16,18,45)。したがって、PMLおよびSp100の分解を媒介するORF61pの能力の調査を行った。
【0064】
ORF61pは、効率的にPMLおよびSp100を分解することができない。ORF61pおよびICP0の2つのオルソログをコードするプラスミドで形質転換されたMeWo細胞におけるPMLおよびSp100の局在化に対するORF61pおよびICP0の効果は、免疫蛍光顕微鏡を用いてモニタリングされた。模擬処理された細胞では、PMLおよびSp100は、点状の核小体として出現した(図2Aおよび2D)(2)。従来報告されるように、ICP0の発現は、両方の細胞タンパク質の消失をもたらした(図2Bおよび2E)(46)。しかしながら、ORF61pを発現する細胞は、異なる表現型を提示した。PML含有小体は、模擬処理された細胞と比較してより消失され、小さいが、タンパク質は、点状の細胞内構造の大部分においてなおも検出された(図2C)。ORF61pを発現する大部分の細胞から消失されたSp100核小体の染色として、ORF61pおよびSp100の効果はICP0の効果とより類似しているようであった(図2F)。PMLおよびSp100量に対するウイルス産物の効果を直接アッセイするために、MeWo細胞は模擬処理されるか、またはヘルペスウイルスタンパク質なし(Adempty)、ICP0(AdICP0)もしくはORF61p(AdORF61p)のいずれかを発現する複製欠損アデノウイルスで感染され、ウイルスおよび細胞タンパク質レベルをウェスタンブロッティングによってモニタリングした(図3)。5の感染の多重度(MOI)を用いて、全ての細胞が感染し、対象のタンパク質を発現したことを確認した。模擬感染細胞またはAdemptyで感染された細胞では、異なる分子量の一連のバンドとしてPMLが出現した。これらは、PMLの選択的スプライシングされ、翻訳後修飾形態を表した(54)。Sp100(Sp100A、Sp100A−SUMOおよびSp100−HMG)の3つの優勢型が従来報告(27,66)されるように検出された。ICP0発現は、多様なPMLアイソフォームの完全な消失とSp100のより遅い移動種とをもたらした(図3)(8)。対照的に、ORF61pの発現は、このアッセイによって検出されたPMLの存在量および種に影響を及ぼさなかった。ORF61pは、Sp100レベルを一貫して減少させたが、ICP0ほど効率的ではなかった(図3)。並行して感染させた免疫蛍光分析によって、全ての細胞は感染され、ICP0またはORF61pを発現したことが確認された(データ示さず)。Ademptyで感染された細胞のPMLは、恐らくはアデノウイルスE4 ORF3の発現に応答して、延長されたトラックとして再構成された(6)。AdICP0によるICP0の発現はPMLの消失をもたらし、一方、AdORF61p感染された細胞におけるPML染色はAdempty試料と同じであった(データ示さず)。この観察は、ICP0とORF61pとをさらに区別する。
【0065】
まとめると、免疫蛍光データおよびウェスタンブロッティング分析は、ORF61pがND10小体の全体性および染色パターンを変更するが、その発現はPMLの消失に至らなかった。しかしながら、ORF61p発現はSp100レベルに影響を及ぼさない。
【0066】
ORF61pのND10への標的はPML分解を引き起こさない。上述した通り、ICP0のC末端は、ND10への標的およびPMLの効率的分解に必要とされ(16,18,45)、ORF61pは存在しない(図1)。β−ガラクトシダーゼのこのドメインの追加は、PMLによるその部分的な同時局在化を引き起こした(18)。PMLレベルの減少に対するORF61pの不具合が、このドメインの欠損に起因して、ND10を標的化できないという結果であるかどうかを試験するために、ICP0のC末端の188個のアミノ酸を用いてORF61pの翻訳融合を作製した(図4A)。得られたタンパク質は、PML標的化および分解に必要とされるICP0の全ての領域(相同RINGフィンガーおよびC末端標的領域)(16)を含んでいるべきであった。
【0067】
MeWO細胞は、模擬処理されるかまたはICP0、ORF61pもしくはその融合タンパク質を発現する構築物で形質転換された。細胞溶解物のウェスタンブロッティングにより、全てのタンパク質産物は類似したレベルで蓄積され、ICP0のC末端領域の追加はORF61p安定性を変更しないことが示された(図4B)。次に、これらのタンパク質の局在化および量をモニタリングした。上記した通り、ICP0発現は、PML染色の消失をもたらし、一方、ORF61pの発現は、その細胞内染色パターンにほんの僅かな変化をもたらした(図2Bおよび2C)。融合タンパク質は、ICP0またはORF61pとは異なる細胞内局在化パターンを有した。大部分の細胞(約80〜90%)では、融合タンパク質は主に細胞質にあった(図4D)。このドメインに対するβ−ガラクトシダーゼ融合を用いて観察されるもの(18)と類似して、細胞質PMLを含有する小体の部分集団は融合タンパク質と共局在化した。タンパク質が核にある集団の10〜20%では、クロマチンは辺縁性となり、融合タンパク質が残りの核空間を満たした(図4E)。しかしながら、両方のケースでは、PML分布が変更されたが、なおも検出された。このようにして、PMLの細胞内レベルを低下させるORF61pの不成功はタンパク質の固有の性質であり、ORF61pがND10標的ドメインを欠損するために生じない。
【0068】
VZV感染中のPMLおよびSp100の分布および存在量。ORF61p単独では、効率的にPMLおよびSp100を分解しない(図2および3)。他のVZVタンパク質が感染中のこれらのタンパク質の分布に影響を及ぼすかどうかという問いに答えるために、MeWo細胞をHSVまたは細胞不含VZVで感染させ、ウイルスタンパク質および細胞タンパク質の細胞内分布を免疫蛍光顕微鏡によってモニタリングした。従来報告されるように、HSVで感染された細胞では、PMLおよびSp100の染色は消失した(図5Aおよび6A)。最初の分析中、ORF61pの染色は、ウイルス感染された細胞のマーカーであった。ORF61pを発現する細胞では、PML含有小体は、未感染細胞と比較すると、大きさが小さく、明るさが少ないようであった。しかしながら、HSVで感染された細胞の場合とは異なり、PMLは、VZV感染細胞においてなおも検出された(図5B)。それにも関わらず、VZVをコードしたタンパク質の発現動力学は十分に理解されず、ORF61p後に発現した他のタンパク質が感染中にPMLの消失に寄与するという可能性があったため、ORF62pを感染細胞の代替マーカーとして使用した。このタンパク質は、初期には感染細胞の核に局在化する;しかしながら、その後リン酸化され、感染の後期に細胞質に移行する(11)。したがって、その細胞内局在化パターンは、感染細胞のマーカーとして、およびウイルス複製サイクルの段階の指標として有用である。ORF62pが核にある細胞では、PMLおよびSp100は球形構造として現れ、未感染細胞に見られるものと非常に類似していた(図5Cおよび6B)。感染後の後期時間点での感染細胞は、糖タンパク質gEの染色を用いてモニタリングされた。VZV感染の後期では、ND10コンポーネントの局在化は、形質転換細胞において観察されるものと類似していた(図2)。具体的には、PML小体は、それらの存在量は減少するように見えるが、依然として存在し、それらの染色強度は、未感染細胞において見られるものよりも少なかった(図5D)。対照的に、Sp100の特徴的な点状染色は観察されなかった(図6C)。
【0069】
VZV感染中のND10コンポーネントの運命をさらに調査し、それらの存在量を定量的に測定するために、MeWo細胞をHSVまたは細胞不含VZVのいずれかで感染させ、細胞タンパク質レベルをウェスタンブロッティングによってモニタリングした。従来報告されるように、HSV感染は、PMLおよびSp100の多数のアイソフォームの急速な分解をもたらした(図7A)(8)。VZV細胞不含の力価は低く、ウイルス複製の動力学はHSVと比較して非常に遅い。したがって、これらのタンパク質に対するウイルス感染の効果を評価するために、それらのレベルは感染後の数日間追跡した。HSV感染中に生じたものと比較して、PMLとSp100との両方のレベルは、感染のこの期間中に増加した(図7A)。PMLおよびSp100の増加速度は、チューブリンの増加速度よりも有意に高く、これは、これらのタンパク質の量の増加が細胞増殖および複製の結果ではないことを示した。これを確認するために、ND10の別の構成コンポーネントをモニタリングした。PMLおよびSp100とは異なり、Daxx細胞レベルは、観察の経過中にほぼ一定のままであった(図7A)。
【0070】
PMLおよびSp100はインターフェロンによって誘導されるため(25,60)、この実験は、これらのタンパク質の発現がMeWo細胞においてインターフェロンに感受性であるかどうか、およびインターフェロンがDaxxに影響があるかどうかという問いに答えるために試みられた。MeWo細胞は、2つの異なる濃度のインターフェロンαで処理された。インターフェロン経路がMeWo細胞において刺激されたことを確認するため、STAT1、STAT2レベルおよびそれらの活性化されたリン酸化形態をウェスタンブロッティングによってモニタリングした(図7B)。これらのシグナル伝達分子の増加量およびリン酸化によって明らかにされるように、インターフェロン反応はMeWo細胞において活性であった。3つのDN10コンポーネントの存在量を測定した。PMLおよびSp100発現が誘導されたが、Daxxレベルは、インターフェロン処理によって不変のままであった(図7B)。
【0071】
これらの実験は、VZV感染中のPMLおよびSp100の増加レベルが、感染細胞によって分泌されたインターフェロンに応答して誘導すること、およびVZVが分解のためにこれらのタンパク質を標的とできないことに起因する。
【0072】
VZV感染中のPML、Sp100およびDaxxの機能。PMLおよびSp100のICP0指向された分解はHSV複製に有益である(21,22)。DaxxはHCMVおよびアデノウイルスによる感染を制限する(34,68,72)。VZVはND10コンポーネントのレベルを効率的に減少しないため、この実験は、これらのタンパク質の下方制御がVZV複製動力学および収量を変更したかどうかという問いに答えることを試みた。
【0073】
無し、PML、Sp100またはDaxx mRNAのいずれかを標的とするsiRNAを発現する組換えレトロウイルスを用いて、MeWo細胞を形質導入し、安定な細胞株(それぞれsi対照、siPML、siSp100およびsiDaxx)を生じさせた。標的とれたタンパク質の存在量および局在化は、これらの細胞株においてウェスタンブロッティング(図8A)および免疫蛍光顕微鏡(データ示さず)によってモニタリングされた。従来報告(21,22)されるように、PMLの枯渇は、ND10小体の完全性の消失、Sp100の発現パターンの変化をもたらしたが、Daxxレベルでは有意な差がなかった。対照的に、Sp100またはDaxxの下方制御は、他のND10コンポーネントのレベルおよび分布を変更しなかった。
【0074】
次に、これらの細胞株を用いてVZVプラーク形成効率を測定した。コンフルエントな単層を細胞不含ウイルスストックのいくつかの希釈を用いて感染させた。感染の数日後、単層を固定し、染色し、およびプラークをカウントした。各細胞株上で形成されたプラーク数を対照細胞上に形成された数に標準化した。結果は、PMLレベルが減少した場合、プラークの数が約2.5倍(t(val)=0.0017)に増加したことを示した(図8B)。この結果は、HSVのICP0-変位体を用いて観察されたものを模倣していた(22)。対照的に、Sp100の下方制御は小さい(1.2倍)が、VAV力価の一定の増加をもたらした(t(val)=0.031)。Daxxの枯渇は影響を及ぼさなかった(図8B)。
【0075】
VZV増殖に対するND10コンポーネントの役割をさらに調査するために、siRNA細胞株を細胞不含ウイルスで感染させ、ウイルスタンパク質の蓄積を経時的にモニタリングした(図8C)。各枯渇した細胞株におけるウイルスタンパク質に対応するバンド強度は、同じ時間点での対照細胞において存在していたものに標準化された。ORF63pの細胞内レベル、前初期タンパク質、およびORF29p、初期タンパク質は、siPMLおよびsiDaxx細胞の感染後の初期時間点で増加した。しかしながら、後期時間では、そのレベルは対照細胞において観察されたものと類似していた。プラーク形成効率の結果と同様に、Sp100の枯渇は、ウイルスタンパク質レベルにほんの小さな影響を有した。
【0076】
感染中心の形成を研究するため、siRNA細胞株を細胞不含VZVで感染させ、感染後の種々の時間で、細胞に結合したウイルスの力価を測定した。ウェスタン解析(図8C)と一致して、siPMLおよびsiDaxx細胞において形成された感染中心の数は、si対照細胞において生じたものと類似したプラークに到達する前に感染初期で増加した。Sp100の枯渇は、感染中心の収量にほとんど影響がなかった(図8Dおよび8E)。細胞変性効果(CPE)はsiPML細胞の感染中により顕著であり、プラークは他の細胞株よりも約24時間早く視認された。対照的に、siDaxx単層におけるプラークサイズは、全ての他の細胞株と比較して顕著に小さく、ウイルス誘導CPEは感染の後期時間でさえ最小であった。さらに、タンパク質蓄積および感染中心アッセイはsiPML細胞において生じたものと類似した、加速されたウイルス複製を示したが(図8C−E)、驚くべきことに、siDaxxにおけるプラーク形成効率は対照細胞と同じであった(図8B)。これらの相違の理由を調べるために、カバーガラス上で増殖させたsiRNA細胞を感染させ、感染の2および3日後、細胞を固定し、前初期タンパク質(ORF63p)および後期糖タンパク質(gE)の発現を免疫蛍光顕微鏡によってモニタリングした(図9)。感染2日後の対照細胞の核は、細胞融合および有効なウイルス伝播の指標となる特徴的な環形状構造を形成した(37,71)。Sp100枯渇細胞における感染巣は、si対照細胞において形成されたものと類似した大きさであった。対照的に、VZVは、感染2日後により大きな病巣の形成によって明らかなように、PMLとDaxxとを欠損している細胞において非常に速く伝播した。しかしながら、広範な誘導を生じたsiPML細胞とは異なり、siDaxx細胞の感染は見掛けのCPEがない状態で伝播した。さらに、感染2日後に、細胞は、siPML単層から脱着しただけであり、これはプラークとして記録されるホールをもたらした。
【0077】
感染3日後(図9)、CPEは、siDaxxを除く全ての細胞株の単層において明らかであった。広範囲な細胞融合は、融合細胞形成、およびウイルスタンパク質の均一な染色パターンによって明らかにされるように検出された。他の細胞株とは対照的に、siDaxx細胞における感染の伝播は異なっていた。VZVは伝播し、隣接する細胞に影響を及ぼしたが、個々の無傷な感染細胞が検出され、細胞融合のいずれの証拠もなかった。この形態は、si対照細胞とは顕著に異なっていた。重要なことに、細胞は、ウイルス感染におけるこの後期段階でさえ検出されず、これは、顕著に小さなプラークサイズについて説明する。重要なことに、感染した細胞は単層状態のままであり、丸くはならないため、それらは、多くの場合、siDaxx数においてプラークとして記録されず、これは、外見上、より低いプラーク形成効率をもたらした(図8B)。
【0078】
ND10小体の主要なコンポーネントを欠損している細胞におけるウイルス複製のこの分析により、PMLは野生型VZV増殖のリプレッサーであり、一方、Sp100はこのプロセスにおいてほとんど役割をもたないことが示された。Daxxは異なる機能を有するようであり、これは、このタンパク質のサイレンシングが、初期には、加速された複製とタンパク質複製とをもたらしたが、ウイルス指向の融合細胞形成を欠いていたためであった。
【0079】
検討
PML、Sp100およびDaxxを含むND10小体のコンポーネントは、DNAウイルスゲノムと結合し、これらのゲノムの発現を抑制するように作用する固有の抗ウイルス機構に貢献する(10、21、22、32、35、47、67−69)。ヘルペスウイルスは、それらの効率的な複製と伝播とを確実にするこの細胞抑制機構をバイパスする対向手段を進化させた。HSVは、プロテアソーム分解についてND10結合タンパク質を標的とする、強力な転写アクチベーターであるICP0をコードし、これは前初期ウイルス遺伝子の発現増加をもたらした(21,22)。
【0080】
VZVは、密接に関連したアルファヘルペスウイルスであり、ICP0オルソログであるORF61pをコードする。従来の研究は、これらのタンパク質間の生物学的活性の保存を強調し、これらの両者が遺伝子発現のアクチベーターであることを示した(49,50)。しかしながら、従来、ICP0とは異なり、ORF61pは、ウイルス複製中にコシャペロンタンパク質BAG3についての要求条件を克服しないことも示され、オルソログが多機能を有することを示唆した(38)。
【0081】
これらのタンパク質のアミノ酸配列アラインメントは、ORF61pがICP0の保存されたRINGフィンガー残基を保持する一方で、そのHSVオルソログのC末端を欠如していることを示した(図1)。これらの領域の両方は、ND10小体へのICP0の効率的な標的、およびそれらのコンポーネントの分解に必要である(16)。ICP0のC末端およびその結合したND10標的ドメインのORF61p欠損は、ORF61pがPML小体のコンポーネントを分解することができないという可能性を生じさせた。ICP0またはORF61pを一過性に発現する細胞の免疫蛍光分析、およびヘルペスウイルスタンパク質を発現する組換えアデノウイルスを用いて感染させた細胞由来のタンパク質のウェスタンブロット解析により、ORF61pがPMLを枯渇せず、Sp100レベルがICP0を発現する細胞よりも、非常に低い効率で減少したことを示した(図3)。さらに、ICP0標的ドメインの追加によるND10にORF61pを標的化する試みは、この表現型を変化させなかった(図4)。
【0082】
ICP0は2つの別々のE3ユビキチンリガーゼ活性を含むため、2つのユビキチンリガーゼとして報告された((30)に概説される)(図1)。単純ヘルペスウイルスユビキチンリガーゼ(HUL)−1は、ICP0のエクソン3によってコードされ、cdc34の分解に関与する(28,29,31)。しかしながら、PMLおよびSp100の分解を促進するHUL−2活性は、ICP0のRINGフィンガードメインについてマッピングする(4,31)。適切な分子環境におけるRINGドメインは、プロテアソーム分解に関わっている(42)。重要なことに、ICP0のC末端へのユビキチンプロテアーゼ(HAUSP−USP7)の結合は、RINGフィンガー基質の分解を促進することが示唆された(30)。この結合は、新たにユビキチン化されたHUL−2基質由来のUSP7の遊離をもたらし、プロテアソーム分解にそれらの効果的な標的を確認することができた(5,20,30)。
【0083】
これらの観察に基づけば、ORF61pがPMLおよびSp100の消失を生じさせない理由を説明する2つのシナリオが描かれる。RINGフィンガードメインはその転写活性化活性に必要とされるが(48)、ORF61pの残りの分子環境は、それがE3ユビキチンリガーゼとして作用するには不適切である可能性がある。あるいは、ORF61p内のユビキチン特異的プロテアーゼ結合部位の欠損は、USP7の利用可能性、その標的の迅速な脱ユビキチン化、したがって、プロテアソーム分解からの保護をもたらす可能性がある。後者の仮説が好ましいとされ、それは、蓄積されている証拠が、USP7の結合に依存する(5)ICP0の自己保存特性とは異なり、ORF61pは、機能的RINGフィンガードメインを必要とするプロテアソーム分解的に急速に分解されるためである(Kyratsous、DeLong and Silverstein、未刊行)。この観察は、ORF61pのRINGフィンガーがE3リガーゼ活性を有し、自己ユビキチン化を駆動することができるが、しかし、プロテアーゼ結合部位の欠損がその枯渇をもたらすことを意味する。これを支持して、USP7の結合に必要とされるICP0の配列内のアミノ酸はORF61pに見出されない(図1)。VZVタンパク質とND10のコンポーネントとの関係のさらなる分析により、HSV感染中に生じるものとは異なり、PMLおよびSp100の存在量はVZV感染中に増加することが観察された(図7A)。この増加は、インターフェロン刺激されたND10のコンポーネントに特異的であり(図7B)、それは、Daxxレベルが感染の経過を通じて変化しないためである(図7A)。VZVはインターフェロンを誘導するため、ウイルスタンパク質はND10の合成を直接誘導せず、したがって、PMLおよびSp100の量の増加はインターフェロン刺激の間接的な効果であると考えられる。インターフェロンに関係しない他の経路は、感染細胞におけるPMLおよびSp100レベルの増加に寄与する可能性を排除することができない。
【0084】
驚くべきことに、ORF61pの自主発現はSp100レベルの減少をもたらすが(図3)、VZV感染は増加に至らない(図7)。感染中のインターフェロンによる誘導は、ORF61pによるSp100の分解を隠すことが推測される。これは、HSV感染中に観察されるものと対照をなすが、ICP0は、ORF61pと比較した場合、Sp100のより効果的な減少を引き起こすという本発明者らの観察と一致していた(図3)。
【0085】
ICP0を欠損しているHSV変異体はインターフェロンに過敏であり(51)、この効果はPMLによって媒介される(7)。対照的に、VZVはインターフェロンに感受性であるが、ORF61変異体は、ICP0変異体とは異なり、インターフェロンに過敏ではない(1)。これらのデータは、PMLがVZV感染中に分解しないという観察とともに、インターフェロンが、異なる機構によってこれらの2つのヒトアルファヘルペスウイルスの複製を阻害し、これらのウイルスが異なる特異的な対抗手段を発展させていることを示唆する。結果として、HSVと対照的に、VZVは、インターフェロンによる阻害を克服するためにPMLの分解を必要としない可能性がある。PML、Sp100およびDaxxは、ヘルペスウイルス複製の初期段階を抑制することが報告された(21,22,6−69)。これらのタンパク質の各々を枯渇した安定な細胞株を用いて、これらのタンパク質が、VZVの複製動力学および収量にも影響を及ぼすかどうかを分析した(図8A)。HSV感染におけるその役割とは異なり、Sp100は、VZVを用いて感染させた細胞において、プラーク形成効率、遺伝子発現、および感染中心力価にほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながら、siPMLとsiDaxxとの両方の細胞株への感染は、初期時間での力価およびウイルスタンパク質の蓄積の増加をもたらした。したがって、これらのタンパク質は、ウイルス複製の初期段階を特異的に阻害する。これらの相違にも関わらず、VZVの細胞結合力価は、全ての細胞株において感染の後期時間で同じピーク力価に達した。VZV複製は、2つの独立した宿主媒介段階:PML、Daxxおよび可能な他の宿主タンパク質によって媒介される初期ブロック、およびウイルス収量を決定する後期ブロック、によって制御されることが推測される。ウイルスのライフサイクルの初期段階を阻害するように初期に機能するタンパク質の枯渇が加速された複製動力学をもたらすが、感染中止の伝播および発生を増加するのに十分ではない。
【0086】
野生型HSV感染中のND10コンポーネントの機能は研究するには困難であり、それは、これらのタンパク質がICP0発現後に急速に分解し、感染細胞に存在しないためである。したがって、これらの宿主産物の枯渇は、野生型ウイルス複製動力学および収量に対する影響がないが、分解を指向しないICP0-ウイルスの複製を増大させる(21,22)。この研究の結果は、野生型VZVがPML枯渇細胞においてICP0-ウイルス複製を模倣し(図8)、ND10小体の主要なコンポーネントの分解を指向しない(図4)ことを示す。PMLとは対照的に、Sp100量は、ORF61pが発現する場合に特に減少し(図3)、タンパク質の枯渇はウイルス複製のほんの僅かな効果を有する(図8)。このようにして、VZVは、効率的な複製に必要とされる程度までSp100レベルを力価決定するように進展されたといっても差し支えない。あるいは、siRNA複製後の細胞内に残る少量のSp100は、それがVZVをサイレンスにするのに十分であったといっても差し支えない。
【0087】
結論として、この研究は、細胞培養において増殖されたVZVが、アルファヘルペスウイルスファミリーの固有のメンバーとして振る舞うことを示す。他のICP0オルソログ(55)とは異なり、ORF61pはND10コンポーネントの分解を指向しない。この固有の防御機構とのVAV相互作用は、アデノウイルスが宿主媒介性サイレンシングをどのように処理するかに最も類似している(72,73)。いずれのウイルスもND10タンパク質を分解することができないが、両方ともインターフェロンによる制限を克服することができる。さらに、アデノウイルスと同種であるが、HSVと比較して、VZV複製は、Sp100の枯渇によって影響を受けないが、しかし、その複製はPMLおよびDaxxがサイレンスでる場合に加速される。HSVおよびVZVは非常に類似していると考えられるが、この研究は、それらが、それらの増殖および伝播を確認するために、宿主細胞抑制を妨げる、固有であり、特有の方法を進展させてきたことを示す。
【0088】
結果II
アルファヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)α遺伝子産物であるICP0のオルソログをコードする。ICP0は、ウイルス遺伝子と細胞遺伝子との乱交雑アクチベーターとして振る舞う核リンタンパク質である(83,87,104,105)。また、ICP0は、プロテアソーム分解のためのいくつかの宿主タンパク質を標的とするE3ユビキチンリガーゼとして機能する(80,86,87,104,105)。この活性を通じて、ICP0は、前骨髄球性白血病(PML)タンパク質およびSp100を含む、核ドメイン10のコンポーネントの分解を促進する。これらのタンパク質は、ヘルペスウイルスゲノムのサイレンシングに関与する(86,87,98,110)。したがって、ICP0を媒介したND10コンポーネントの分解は、効率的な遺伝子発現を可能にするために、HSV遺伝子のサイレンシングを崩壊し得る。この仮説は、どのようにしてICP0が遺伝子活性化を誘導するかについての説得力のある機構説明を与える。
【0089】
また、HSV、ウシヘルペスウイルス、ウマヘルペスウイルスおよび水痘帯状ヘルペスウイルス(VZV)由来のICP0オルソログをコードするDNAの導入は、核構造およびタンパク質に影響を与えることができる(103)。本報告に加えて、さらに具体的には、VAVオルソログであるORF61pは、この遺伝子ファミリーの原型であるICP0と同様に、ウイルスプロモータを活性化し、ウイルスDNAの感染性を高める(100,101)。しかしながら、HSVとVZVオルソログとの間の2つ主な生物学的相違は、従来示されている。ICP0とは異なり、ORF61pは、宿主コシャペロンタンパク質であるBAG3の枯渇を補完することができない。結果として、VZVは、BAG3のサイレンシングによって影響を受ける(91)一方で、HSVの増殖は、ICP0が発現しない場合にも単に変更される(93)。さらに、両方のタンパク質はND10のコンポーネントを標的とするが、ICP0の発現はPMLとSp100の両方の分解をもたらす一方で、ORF61pはSp100レベルを特異的に減少させる(92)。これらの所見は、これらのタンパク質がウイルス複製について、別々に異なる機能を与えるように進化してきたことを示唆する。
【0090】
ICP0を欠損しているウイルス変異体は、プラーク形成単位(pfu)に対して増大した粒子比、実質的に低い収率、感染多重度(moi)および細胞型に依存したα遺伝子発現のレベルの減少を有する(78,80,84,109)。また、これらの変異体はND10コンポーネントの分解を欠いている(99)。PMLおよびSp100の枯渇は、ウイルス遺伝子発現を加速し、HSV ICP0欠損ウイルスのプラーク形成効率を増加させるが、野生型に対しては影響がなく、これは、PMLおよびSp100がICP0のE3リガーゼ活性によって対抗される固有の抗HSV防御機構のコンポーネントであることを示唆する(86,87)。興味深いことに、ICP0ヌルウイルスはまた、インターフェロン(IFM)に過敏であり(102)、これはPMLを介していることを示唆する特性である(79)。
【0091】
ICP0に代えてORF61pを発現するHSV変異体ウイルスは、2つのオルソログの活性を直接比較するために構築された。得られたキメラウイルスは、ICP0ヌル表現型を部分的にのみ救済する。このような研究は、ICP0とORF61pとの間の生物学的相違を強調し、感染中のPMLおよびSp100に対する要求条件を明らかにする。
【0092】
材料および方法:哺乳動物細胞。ヒト黒色腫(MeWO)、siPML(93)、siSp100(92)、L7(106)およびUS0S細胞は、従来報告(91,111)されるように維持された。
【0093】
DNA形質転換。Fugene HD[Roche,Indianapolis,IN]を用いて、適切な細胞株にDNAを形質転換した。
【0094】
薬物処理。インターフェロンαをPBL Biomedical[Piscataway,NJ]から購入した。
【0095】
ウイルス。[i]HSV。使用される菌株は野生型HSV−1(グラスゴー菌株17)および菌株17のICP0ヌルウイルス誘導体(dl1403)であった(109)。[ii]HSVを発現するVZV ORF61p(HSV−ORF61)。dl1403ヌクレオカプシドは、線状化pCPC−061を用いてMeWO細胞内にコトランスフェクトされた。巨大プラークを拾い上げ、PCRによって組換えウイルスについてスクリーニングした。ORF61pについては陽性であるが、ICP0をコードする配列については陽性ではないプラークは、5回精製したプラークであった。
【0096】
ウイルス増殖アッセイ。[i]プラークアッセイ。MeWo、siPML、siSp100、L7またはU2OS細胞のコンフルエントな単層は、10倍に連続希釈したウイルスストックで感染され、単層を固定し、染色し、プラークをカウントした。[ii]増殖曲線。全てのHSVストックの力価は、ICP0を補完する細胞株L7に対する滴定による分析前に決定された。ウイルス収量は従来報告(93)されるように決定された。
【0097】
Hirt DNA抽出。Hirt DNAを報告(90)されるように調製した。
【0098】
プラスミド構築。VZV ORF61は、RV61(5’GGGTCGACTTGCATTACCCTATCCCAGTATT−3’)(配列番号:7)と3’Sal61(5’−CCGTCGACCCCAACAAACTAGGACTTCT−3’)(配列番号:8)とを用いてVZVゲノムDNA(Jones菌株)からPCR増幅された。PCR産物をpCR2.1−TOPOにクローニングし、pCPC−T61cJを生じさせた。ORF61コード配列は、pCPC−061を得るために、NcoI/SalI消化されたpDS17(113)においてICP0をコードする配列を置換するために使用されるNcoI/SalI断片として抽出された。
【0099】
全てのプライマーをOperon Biotechnologies[Huntsville,AL]から得て、全てのベクター挿入物をDNA配列決定によって確認した。
【0100】
組換えウイルスゲノムの分析。Hirt DNAは、プライマー:0for:5’−ACAGAAGCCCCGCCTACGTT−3’、0rev:5’−GGTGCCCGTGTCTTTCACTTTTC−3’、61for:5’GGGAATTCGGGGCCCCTTCAATCGTCGGCTAG−3’、61rev:5’−TGCGGCCGCGAATCTCGCGTTTCCCTCTGTTCC−3’(それぞれ配列番号3−6)を用いてPCRを行うことによって、ORF61配列の存在およびIE−0コード配列の不存在について調べた。
【0101】
抗体。ICP0に対するポリクローナル抗体は報告された(20)。ICP0およびICP4に対するモノクローナル抗体は、Rumbaugh−Goodwin Institute[Plantation,FL]から購入された。ORF61pに対するポリクローナル抗体は(92)に報告された。チューブリンに対するモノクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology[Santa Cruz,CA]から得られた。PMLおよびSp100に対するポリクローナル抗体は、Chemicon[Temecula,CA]から購入された。西洋ワサビペルオキシダーゼに結合されたヤギ抗ウサギ抗体および抗マウス抗体をKPL[Gaithersburg,MD]から得た。
【0102】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティング。感染させたかまたは生化学的に形質転換された細胞を冷PBSで2回洗浄し、1.5×SDS試料緩衝液[75mM Tris HCl pH 6.8,150mM DTT,3%SDS,0.15%ブロモフェノールブルー,15%グリセロール]中で溶解し、沸騰した。宿主タンパク質およびウイルスタンパク質をSDS−PAGEに供した(94)。ウェスタンブロッティング前に、ニトロセルロースメンブレンにタンパク質を移した。5%脱脂粉乳を含むPBST中でメンブレンをブロッキング後、固定したタンパク質を1%脱脂粉乳を含むPBST中の適切な抗体と反応させた。メンブレンをPBSTで3回、各々5分間洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合された抗ウサギ抗体または抗マウス抗体とともにインキュベートし、PBSTで再び3回、各5分間、およびPBSで2回洗浄した。LumiGLO基質[KPL]の添加によって抗体を視覚化し、X線フィルムに暴露した。
【0103】
結果
VZV−HSV組換え発現ORF61pの生成。VZVを用いたコインフェクションはHSV−ICP0変異体の増殖を補完した(109)。次いで、条件付けでORF61pを発現した細胞株を用いて、ICP0ヌル変異体を補完した(24)。この後者の実験は、これらのウイルスオルソログがいくつかの生物学的活性を共有することを示唆した。しかしながら、これらのタンパク質は、ND10コンポーネントに特異的に影響を及ぼし、野生型VZVは、HSVではないが、これらのコンポーネントに異なる要求を示した(92)。したがって、ORF61pの機能をさらに分析するために、この研究は、それが二重の前初期0(IE−0)遺伝子座を置換する場合に、HSV ICP0と置き換わる可能性があるかどうかを調べた。
【0104】
ICP0 HSVをコードする遺伝子座を置換するために、ウイルス骨格としてdl1403を使用した。dl1403は、IE−0遺伝子の第2と第3のエクソンのフレーム融合外から誘導される最初の105aaと追加の56aaをコードする。ORF61pをコードする配列は、材料および方法に記載されるように、増幅され、NcoI/SalI消化されたICP0クローンに挿入された。NcoI部位は、それらの各タンパク質の合成を開始するために、両方の遺伝子によって使用されるAUGコドンを含む。得られたプラスミド(pCPC−061)の構造的完全性は、IE−0プロモータおよび3’UTRを保持し、制限エンドヌクレアーゼ開裂およびDNA配列分析によって確認された。次いで、pCPC−061は線状化され、dl1403ヌクレオカプシドを用いてMeWo細胞にコトランスフェクトされた(107)。得られた組換えウイルスは、MeWo細胞に対して滴定され、巨大プラークは、ORF61pの発現がICP0欠陥を補完するであろうという推測により拾い上げられた(100,109)。これらのプラークから調製されたHirt DNAは、IE−0の上流と下流のプライマー、およびORF61pに相同な2つの内部プライマーを用いてPCRによってスクリーニングされた(図10A)。ORF61pをコードする配列を有し、ICP0をコードするDNAを欠損している配列を有するウイルスDNAを含むプラークをさらに精製し、これを用いて、細胞がORF61pを発現するかどうかを決定するために細胞に感染させた。この分析の結果は図10Cに示され、次のように概要される:dl1403またはHSV−ORF61で感染された細胞のウェスタンブロット分析は、細胞が感染後6時間で類似した量のICP4を発現し、ICP0は発現されなかったこと、およびHSV−ORF61はORF61pを発現したことを示した。このようにして、HSV−ORF61では、欠損IE−0の両方のコピーがORF61pコード配列と置換され、得られたウイルスがIE−0プロモータの制御下でORF61pを発現した。
【0105】
HSV−ORF61の増殖およびプラーク形成効率。2つの実験は、ORF61pの発現がICP0ヌル表現型を救済するかどうかを試験するために行われた。第1に、野生型のdl1403とHSV−ORF61は、L7とVero細胞について滴定され、相対的プラーク形成効率は、L7細胞についての力価対Vero細胞についての力価の割合として計算された。HSV dl1403、および他のICP0変異ウイルスは、それらの力価がL7などの補完細胞について測定され、親のVero細胞株についてのそれらの力価と比較した場合に明らかである高い粒子/pfu比を有する。3つのウイルスのプラーク形成効率は以下の通りであった:野生型=0.9、dl1403=340、およびHSV−ORF61=9.5(図11A)。このようにして、ORF61pの発現はdl1403に対するHSV−ORF61のプラーク形成効率を約35倍に増大させたが、野生型プラーク形成を回復するには十分ではなかった。次に、この研究は、どのようにしてORF61pの発現が、MeWo細胞において組換えウイルスの増殖動力学に影響を与えるかを調べた。細胞を低moiで感染させ、試料を経時的に回収し、細胞あたりの感染ウイルスの収量をL7細胞においてプラークアッセイによって決定した。増殖曲線の分析は、HSV−ORF61が野生型とdl1403との間を媒介する動力学で置換されることを表した(図11B)。これらの2つの実験は、プラーク形成効率とウイルス収量の観点から、ORF61pがICP0の欠損を十分に補完することができなかったという結論へと導いた。
【0106】
HSV−ORF61で感染させた細胞におけるウイルス特異的タンパク質の蓄積。低moiでのICP0変異体の増殖欠損は、全種類のウイルス特異的タンパク質の発現遅延と蓄積減少として現れた(2,4)。したがって、MeWO細胞は、moiを0.2にして、野生型、dl1403およびHSV−ORF61を用いて感染された。ICP4についての免疫蛍光分析(データ示さず)を用いて、各ウイルスが等しい数の細胞を感染したことを確認した。細胞溶解物を所定時間で調製し、ウェスタンブロット分析用に処理された。タンパク質の存在量および分析の動力学の分析は、低moiのこの条件下で、ICP4の蓄積が、感染4時間後に野生型ウイルスで感染された細胞において検出されたことを表した。対照的に、このタンパク質は、感染6時間までdl1403またはHSV−ORF61のいずれかで感染された細胞において検出されなかった(図12)。さらに、感染8時間後のICP4の存在量は、野生型感染細胞と比較して、変異ウイルスで感染させた細胞において有意に減少した。従来報告されるように、ICP27の合成および蓄積の動力学は機能的ICP0の発現に依存している(97)。この表現型は、ORF61pが発現された場合、部分的に逆転されただけであった(図13)。予想した通り、ICP0およびORF61pは、これらのタンパク質を発現したウイルスで感染された細胞において検出されただけであった。これらのデータは、プラーク形成効率および増殖に関する研究と一致し(図11)、ORF61pがICP0の生物学的特性を十分に表現型模倣しなかったが、ICP0−ウイルスの複製を明らかに高めたことを示した。
【0107】
感染後のND10コンポーネントの運命。ICP0は、プロテアソーム分解のためにND10を解離し、それらの2つの主なコンポーネントであるPMLおよびSp100を標的とするには必要であり、十分である。対照的に、ORF61pは、PMLを分解しないが、Sp100レベルを減少させる(92)。したがって、PMLおよびSp100の運命は、HSV−ORF61による感染中に追跡され、野生型またはdl1403で感染された細胞において生じたものと比較された。ウェスタンブロット分析は、PMLの分解が、感染2時間後の初期程度で、野生型で感染された細胞において検出されたことを表した。対照的に、PMLレベルは、dl1403またはHSV−ORF61のいずれかで感染された細胞において変化しなかった(図13A)。これらの結果は、従来の所見を確証し、他のHSV前初期または初期タンパク質が存在する場合でされ、PMLの安定レベルに影響を及ぼさないことを示した。Sp100は、ND10の別の主なコンポーネントであり、ICP0に依存して、HSVでの感染後に効率的に分解されることは周知である(80)。この研究は、HSV遺伝子発現に照らして、ORF61pがSp100の分解を効率的に指向することを示した(図13A)。
【0108】
野生型HSVおよびVZVは、PMLまたはSp100の枯渇によって特異的に影響される(92)。siPMLおよびsiSp100におけるHSV−ORF61の相対的なプラーク形成効率を測定し、HSV−ORF61が宿主タンパク質であるPMLまたはSp100の下方制御によって影響されるかどうかを決定するために、野生型HSVとdl1403の効率と比較した。従来報告されるように、野生型ウイルスのプラーク形成効率は、PML(siPML)またはSp100(siSp100)について枯渇した細胞に対して滴定される場合に影響を及ぼさなかった(図13B)。対照的に、dl1403は、これらのND10コンポーネントの不存在において部分的に補完された(図13B)。HSV−ORF61の相対的なプラーク形成効率はVZVと表現型模倣した(92)。より具体的には、ウイルス力価はsiPML細胞において増加した一方で、siSp100細胞においては未変化のままであった(図13B)。
【0109】
ウイルス複製に対するインターフェロンの効果。従来の研究は、HSVインターフェロン(IFN)感受性がPMLを媒介することを示唆し、ICP0−ウイルスがこの細胞タンパク質を分解できないため、幾分過敏であることを提唱した。HSV−ORF61はPMLを分解することができないことが示されたため、この研究はどのようにしてIFN処置がこの変異ウイルスの増殖に影響を及ぼすかを調べた。IFNの有無において、MeWo、Vero(IFNに反応するが、発現しない(82))およびU20S(ICP0変異ウイルスを補完する細胞株(112))に対するHSV−ORF61p、野生型HSV−1およびdl1403のプラーク形成効率の比較を行った。MeWo細胞およびVero細胞におけるdl1403とHSV−ORF61の両方のプラーク形成効率は、IFNに反応して推定上合成されたインターフェロン刺激遺伝子(ISG)によって影響された(図14)。MeWo細胞とVero細胞に対して野生型ウイルスで見られた感受性における小さな相違(4〜5倍)は、絶対的なプラーク形成効率における相違の結果ではないが、むしろVero細胞におけるIFNの効果に対する全てのウイルスのより大きな感受性を反映していた(表1)。
【表1】

【0110】
これを支持して、Vero細胞においてIFNに対するdl1403の感受性が増加する。従来報告(102)されるように、U2OS細胞は、IFNに対するICP0変異体の感受性を救済した。同じようにして、IFNによる処理後のHSV−ORF61のプラーク形成効率もまた救済された(図14)。これらの分析は、VZV ORF61pはICP0機能のいくつかと置き換わったが、野生型IFN耐性表現型をHSV−ORF61が反復しないことによって明らかなように、dl1403におえる欠陥の全てを補完しなかったことは明らかであった(図14)。
【0111】
検討
HSV ICP0は、遺伝子発現の強力な無差別的な転写アクチベーターとして作用するRINGフィンガータンパク質である。ICP0のオルソログは、アルファヘルペスウイルスファミリーの他のメンバーに存在する。これらのタンパク質は、ウイルスゲノム内のそれらの局在化、および遺伝子発現に影響を及ぼす能力によってICP0と関連する。全てのオルソログにおけるN末端近傍のRINGフィンガーを除いて、配列類似性が制限される。具体的には、VZVにおけるICP0オルソログであるORF61pは、同時発現した場合、ICP0−ウイルスの複製を加速し、さらに遺伝子発現に影響を及ぼす(100,101)。これらの類似性にも関わらず、ORF61遺伝子内の相同なICP0配列の欠損は従来強調され、これらのタンパク質が多機能を有するという示唆(92)がなされている。
【0112】
この研究は、ICP0プロモータおよび3’UTRの制御下で、ICP0に代えてORF61pを発現する変異HSVウイルスを構築することによってICP0とORF61pの活性を比較する。したがって、オルソログは同一の遺伝的背景において発現され、2つのウイルスの生物学的活性において観察された任意の相違は、ウイルスタンパク質が発現される単なる結果であるべきである。
【0113】
野生型、ICP0−およびHSV−ORF61による感染中の増殖とタンパク質発現プロフィールとの比較は、ORF61pがICP0ヌル表現型を部分的に救済するが、HSV−ORF61pの複製は野生型ウイルスの複製よりも効率が低いことを示した。これらのタンパク質が異なるレベルに発現され、異なる半減期を有し、および別々にHSVタンパク質と相互作用するという可能性があり、ならびにこれはHSV−ORF61の増殖表現型に影響を及ぼし得るという可能性がある。結果は、ORF61pが発現されると、ICP0機能のいくつかを欠損するということである。
【0114】
アデノウイルスから発現されたICP0は、2つの主なND10コンポーネント、PMLおよびSp100の効率的な枯渇を引き起こした一方で、ORF61pを発現するアデノウイルスがSp100レベルだけを減少させた。ここで、ウイルス複製中のND10コンポーネント存在量に対するこれらのタンパク質の効果を比較した。他のHSVタンパク質が発現されたときでさえ、ORF61pは特異的にSp100を減少させ、PMLに対して効果がないことが観察された。
【0115】
ND10は、先天性免疫の核形態を与えることが示唆されている。具体的には、ND10コンポーネントは、ヘルペスウイルスおよび他のDNAウイルスゲノムの発現を抑制するように作用する。その流れでは、野生型ウイルスではなく、dl1403の複製およびプラーク形成効率は、PMLまたはSp100を欠損する細胞において増加されることは興味深い(85,86)。対照的に、野生型VZVの複製およびプラーク形成効率は、Sp100の枯渇によって影響を受けず、siPML細胞において増加する(92)。これらの観察、およびICP0とORF61pだけが異なる細胞株において観察されたプラーク形成効率に必要とされるという仮定に基づいて、ICP0の代わりにORF61pを発現するHSVがVZVを表現型模倣することが期待され得た。したがって、siPMLおよびsiSp100細胞におけるHSV−ORF61のプラーク形成効率はそれらの親対照細胞株と比較された。ウイルス複製は、PMLが枯渇された場合に部分的に補完されたが、Sp100レベルの減少はウイルス複製に影響を及ぼさなかった。これは、ORF61pが効率的なウイルス複製を可能にするSp100レベルを滴定するために進展してきたというさらなる実証であった。しかしながら、ICP0とは異なり、ORF61pはPMLを標的としない;したがって、ORF61pだけが発現される場合、PML宿主タンパク質は、ウイルス増殖と複製を抑制するために利用可能なままである。
【0116】
ICP0またはORF61を発現するウイルスはSp100分解に特異的に影響を及ぼす。Sp100は、通常、SDS電気泳動中に3種として分解される(89,108)。研究抗体によって認識された種は、電気泳動の移動速度に照らして、Sp100、Sp100−SUMOおよびSp100−HMGであった。野生型ウイルスで感染された細胞では、Sp100の高分子量種が徐々に消失する一方で、Sp100Aは安定化された(図14)。Sp100のこの電気泳動パターンは、siRNAによってPMLが枯渇した細胞において観察されたものと模倣した(85,92)。対照的に、ORF61pがICP0に代えて発現された場合、Sp100の全てのアイソフォームおよび改変種は、感染中に徐々に消失し、PMLの電気泳動パターンにおいて見掛けの相違がなかった。これは、siRNA実験と一致し、PMLの枯渇とは異なり、Sp100の下方制御がND10小体の他のコンポーネントに効果がなかったことを示す(85,86,92)。さらに、ICP0を発現するアデノウイルスを用いた細胞の感染は、PMLとSp100Aを除くSp100の消失をもたらした一方で、ORF61pを発現するアデノウイルスは全てのSp100形態を減少させ、PMLに対して効果がなかった(92)。
【0117】
これらの結果は、これらのアルファヘルペスウイルスオルソログがND10コンポーネントを標的とする一方で、それらは異なる方法でそうするという提案をもたらした。HSV ICP0はプロテアソーム分解についてPMLを標的とする。PMLレベルの減少は、Sp100Aを除いて、Sp100種の消失をもたらす。したがって、PMLを標的とすることによって、ICP0は、両方の主要なND10コンポーネントを直接的または間接的に標的とする。対照的に、ORF61pは、独立して、分解についてSp100を標的とする。ICP0とは異なり、Sp100の減少は他のND10タンパク質に対して見掛けの効果はない。これらのオルソログによるND10タンパク質の特異的標的化は、それらの生物学的活性において観察された相違の少なくともいくつかの原因となり得る。
【0118】
ウイルス感染中のPMLの正確な役割は捕らえられないままである。しかしながら、ICP0を欠損しているHSV変異体とORF63pを欠損しているVZV変異体はインターフェロンに過敏であり(102)、この効果はPMLによって媒介される(79)ことは知られている。対照的に、野生型HSV(102)およびVZV(77)は、IFNにあまり感受性でない。これらのデータは、PMLがVZV感染中に分解されないという観察(92)とともに、インターフェロンが異なる機構によってこれらの2つのヒトアルファヘルペスウイルスの複製を阻害し、これらのウイルスが異なる特異的な対抗手段を進化させてきたことを示唆する。結果として、HSVとは対照的に、VZVはインターフェロンによる阻害を克服するためにPMLの分解を必要としない可能性がある。これらの研究は、HSV ICP0とVZV ORF61pとの間の機能的相違の分子的理解の根拠を与える。未公開の観察は、その機能的ハンディーキャップにも関わらず、ORF61pはVZVプロモータとHSVプロモータの両方をなおも活性化するという従来の報告と一致している。しかしながら、上述した通り、ORF61pは、ICP0の免疫調節活性を欠損する。これらの観察に基づいて、Sp100枯渇はウイルス遺伝子発現を高めるために必要とされる一方で、先天性免疫系のインターフェロンアームの徴発に影響を及ぼす活性はPMLによって媒介されるだけであり得るという可能性がある。したがって、これらのオルソログの機能のさらなる詳細な分析は、感染中のND10コンポーネントの役割に洞察を与えることができた。
【0119】
これらの結果は、ワクチンベクターとしてHSV骨格に関して重要である(19)。ICP0の発現は、クロマチン修飾、およびウイルス遺伝子の効率的な発現を可能にするリモデリングに必要とされる(81,88,95)。しかしながら、ICP0の発現は先天性免疫を妨げる。さらに、ICP0の枯渇はウイルス力価の減少をもたらす。このようにして、ICP0に代えて、骨格の基礎としてのHSV−ORF61の使用は、現在のヘルペスウイルスに基づくベクターの有利な代替物を提供する。
【0120】
結果III
アルファヘルペスウイルスはHSVα遺伝子産物のオルソログであるICP0をコードする。ICP0はウイルス遺伝子および細胞遺伝子の乱交雑アクチベーターとして振る舞う核リンタンパク質であり、プロテアソーム分解のために宿主タンパク質を標的とするE3ユビキチンリガーゼとしても機能する。この活性を通じて、ICP0は、PMLおよびSp100を含むND10小体のコンポーネントの分解を促進する。これらのタンパク質は、ヘルペスウイルスゲノムのサイレンシングに関与する。したがって、ICP0を媒介したND10コンポーネントの分解は、効率的な遺伝子発現を可能にするHSV遺伝子のサイレンシングを崩壊し得る。この仮説は、どのようにしてICP0が遺伝子活性化を誘導するかについての説得力のある機構説明を与える。ORF61pは、VZVオルソログであり、ウイルスプロモータを活性化し、ICP0のようなウイルスDNAの感染性を高める。しかしながら、HSVオルソログとVZVオルソログとの間の2つの主な生物学的相違が示されている。第1に、ICP0とは異なり、ORF61pは、宿主のコシャペロンタンパク質であるBAG3の枯渇を補完することができない。結果として、VZVは、BAG3のサイレンシングによって影響されない一方で、HSVの増殖は、ICP0が発現しない場合に変更されないだけである。さらに、両方のタンパク質はND10のコンポーネントを標的とし、ICP0の発現がPMLとSp100の両方の分解をもたらす一方で、ORF61pはSp100レベルを特異的に減少させた。このようにして、これらのタンパク質は、ウイルス複製について異なる機能を提供するために別々に進化してきた。これらのオルソログを直接比較するために、ICP0の代わりにORF61pを発現するHSV変異ウイルスを構築した(図10)。
【0121】
添付のグラフでは(図11b)、ICP0−ウイルス(dl1403)から欠損しているORF61pが力強い増殖を回復する一方で、得られたキメラウイルスは、単にICP0ヌル表現型を部分的に救済したことが示される。この所見は、ICP0とORF61pとの間に顕著な生物学的相違があることを示した。より重要なことには、VZVワクチンを考慮するとき、HSVではないVZVがインターフェロン(IFN)に感受性であるということを想起する必要がある。したがって、HSV−ORF61は、PMLを分解するその能力について試験され、野生型VZVのように、分解しないことが示された。したがって、IFN処理がこの変異ウイルスの増殖に影響を及ぼすかどうかが問われ、MeWo細胞とVero細胞において、dl1403とHSV−ORF61の両方のプラーク形成効率がIFNに反応して推定上合成されたISGによって減少したことが示された。これらの分析は、VZV ORF61pはICP0機能のいくつかと置き換わったが、野生型IFN耐性表現型をHSV−ORF61が反復しないことによって明らかなように、dl1403における欠陥の全てを補完しなかったことを表した。
【0122】
この組換えウイルスは、VZV Okaワクチン菌株のIFN感受性を反復する特徴を有する。VZVは、主要な中和ウイルスエピトープを表す8つの糖タンパク質をコードする(図15)。HSVのUs領域をコードする糖タンパク質は、VZVの対応するUs領域に位置される主要な糖タンパク質遺伝子ORF67および68で置換され得る。これは、ICP0をコードする配列の代わりに、ORF61pを含むHSV−1バクミドを用いて行われる。組換え構築物は、次に回復されるウイルスを作製するために細胞内にトランスフェクトされる。当該技術分野において知られるように、組換えウイルスは、プラスミド/バクミドにおける所望のDNA断片を宿主細胞内に、それとの組換えを可能にするウイルスと組換えウイルス産物とともに同時に導入することによって構築され得る。VZV由来の対応する配列によるHSV糖タンパク質の1つずつの置換は、糖タンパク質遺伝子がVZV糖タンパク質遺伝子を用いて完全に置換されるHSV菌株を再構築するために行うことができる。これは、天然のVZVと比べて改善された安定性を提供し、ワクチン産物について高い力価まで増殖可能である。
【参考文献】
【0123】


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種DNAが組み込まれたヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)デオキシリボ核酸(DNA)を含む組換えデオキシリボ核酸であって、前記異種DNAがRINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする組換えデオキシリボ核酸。
【請求項2】
請求項1に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記HSV DNAがゲノムDNAであり、前記異種DNAが、前記HSV DNA内に、HSV感染細胞ポリペプチド0(ICP0)をコードするゲノムHSV DNAの一部に代えて組み込まれる組換えデオキシリボ核酸。
【請求項3】
請求項2に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記異種DNAが、HSV ICP0 5’非翻訳領域(UTR)とHSV ICP0 3’非翻訳領域(UTR)との間のゲノムHSV DNA内に挿入される組換えデオキシリボ核酸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記RINGフィンガードメインを含むポリペプチドが、水痘帯状ヘルペスウイルスORF61タンパク質のアミノ酸配列を有する組換えデオキシリボ核酸。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記RINGフィンガードメインを含む前記異種ポリペプチドが、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、または仮性狂犬病ウイルスタンパク質のアミノ酸配列を有する組換えデオキシリボ核酸。
【請求項6】
請求項4または5に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記HSV DNAがHSVゲノムである組換えデオキシリボ核酸。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、糖タンパク質をコードする異種DNAをさらに含む組換えデオキシリボ核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記糖タンパク質が水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を有する組換えデオキシリボ核酸。
【請求項9】
請求項8に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記糖タンパク質が水痘帯状ヘルペスウイルス中和エピトープを含む組換えデオキシリボ核酸。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項の組換えデオキシリボ核酸であって、前記組換えデオキシリボ核酸によってコードされたポリペプチドが、哺乳動物の前骨髄球性白血病タンパク質(PML)を分解しない組換えデオキシリボ核酸。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記組換えデオキシリボ核酸が適切な宿主細胞のゲノム内に組み込まれた場合に前記ポリペプチドが発現されるように、前記ポリペプチドをコードする前記異種DNAが組み込まれている組換えデオキシリボ核酸。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の組換えデオキシリボ核酸であって、前記糖タンパク質をコードする前記異種DNAが、HSV DNAの非必須遺伝子または領域内に組み込まれている組換えデオキシリボ核酸。
【請求項13】
RINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする異種DNAを含む組換えヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、前記異種DNAが、(a)前記HSVゲノムの非必須領域内に挿入され、(b)前記組換えHSVが導入されている宿主細胞内で発現される組換えHSV。
【請求項14】
請求項13に記載の組換えHSVであって、前記異種DNAは、HSV感染細胞ポリペプチド0(ICP0)をコードする前記HSVゲノムの一部に代えて、前記HSVゲノム内に組み込まれる組換えHSV。
【請求項15】
請求項13または14に記載の組換えHSVであって、前記異種DNAが、HSV ICP0 5’非翻訳領域(UTR)とHSV ICP03’非翻訳領域(UTR)との間の前記HSVゲノム内に挿入される組換えHSV。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の組換えHSVであって、前記RINGフィンガードメインを含む前記ポリペプチドが、水痘帯状ヘルペスウイルスORF61タンパク質のアミノ酸配列を有する組換えHSV。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の組換えHSVであって、前記RINGフィンガードメインを含む前記ポリペプチドが、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、または仮性狂犬病ウイルスタンパク質のアミノ酸配列を有する組換えHSV。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれか1項に記載の組換えHSVであって、糖タンパク質をコードし、前記HSVゲノムの非必須領域内に挿入された異種DNAをさらに含む組換えHSV。
【請求項19】
請求項18に記載の組換えHSVであって、前記糖タンパク質が、水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を有する組換えHSV。
【請求項20】
請求項18に記載の組換えHSVであって、前記糖タンパク質が、水痘帯状ヘルペスウイルス中和エピトープを含む組換えHSV。
【請求項21】
請求項18に記載の組換えHSVであって、前記糖タンパク質をコードする前記異種DNAが、非必須遺伝子または前記HSVゲノムの領域内に挿入される組換えHSV。
【請求項22】
請求項13〜21のいずれか1項に記載の組換えHSVであって、前記組換えHSVゲノムによってコードされたポリペプチドがいずれもPMLを分解しない組換えHSV。
【請求項23】
請求項13〜22のいずれか1項に記載の組換えHSVであって、最大8つの異なる異種DNAを含み、各々が異なる水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質をコードしている組換えHSV。
【請求項24】
(1)薬学的に許容される担体と、(2)(a)RINGフィンガードメインを含むポリペプチドをコードする異種DNAが組み込まれており、且つ(b)各々が糖タンパク質をコードする1または複数個の異種DNAが組み込まれているヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)ゲノムを含む組換えデオキシリボ核酸を含む組換えウイルスとを含むワクチン。
【請求項25】
請求項24に記載のワクチンであって、前記異種DNAが、HSV感染細胞ポリペプチド0(ICP0)をコードする、HSV DNAの一部に代えて、HSVゲノム内に組み込まれるワクチン。
【請求項26】
請求項24または26に記載のワクチンであって、前記異種DNAが、HSV ICP0 5’非翻訳領域(UTR)とHSV ICP0 3’非翻訳領域(UTR)との間のHSVゲノム内に挿入されるワクチン。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか1項に記載のワクチンであって、RINGフィンガードメインを含む前記異種ポリペプチドが、水痘帯状ヘルペスウイルスORF61タンパク質のアミノ酸配列を有するワクチン。
【請求項28】
請求項24〜27のいずれか1項に記載のワクチンであって、RINGフィンガードメインを含む前記異種ポリペプチドが、EHV、BHV、または仮性狂犬病ウイルスタンパク質のアミノ酸配列を有するワクチン。
【請求項29】
請求項24〜28のいずれか1項に記載のワクチンであって、前記糖タンパク質が、水痘帯状ヘルペスウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列を有するワクチン。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれか1項に記載のワクチンであって、前記糖タンパク質が水痘帯状ヘルペスウイルス中和エピトープを含むワクチン。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか1項に記載のワクチンであって、前記糖タンパク質をコードする前記異種DNA、およびRINGフィンガードメインを含む前記ポリペプチドをコードする異種DNAが、各々、HSVゲノムの非必須遺伝子または領域内に挿入されるワクチン。
【請求項32】
水痘帯状ヘルペスウイルス感染に対して対象を免疫化する方法であって、前記対象において前記水痘帯状ヘルペスウイルスに対する免疫応答を誘発し、それにより前記対象の免疫化をもたらすのに有効な量の請求項26〜31のいずれか1項に記載のワクチンを対象に投与することを含む方法。
【請求項33】
ウイルスによる感染予防に有用な組成物を調製する方法であって、前記組成物を調製するように、請求項13〜23のいずれか1項に記載の組換えウイルスを生ワクチン安定化剤と併せることを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−500044(P2013−500044A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522801(P2012−522801)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/002010
【国際公開番号】WO2011/016830
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(592104782)ザ・トラスティーズ・オブ・コランビア・ユニバーシティー・イン・ザ・シティー・オブ・ニューヨーク (21)
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】