説明

ウイルス変種およびその検出方法

【課題】ヌクレオシドアナログ療法をモニターするためのアッセイ、および変異の影響をマスクしうる作用剤をスクリーニングするためのアッセイの開発などを行うための有効な手段を提供する。
【解決手段】特定の薬剤に対する感受性の低下および/または免疫学的試薬との相互作用活性の低下を示すウイルス変種、より詳細には、ヌクレオシドアナログに対する完全もしくは部分的な耐性および/またはウイルス表面成分に対する抗体との相互作用活性の低下を示すB型肝炎ウイルス変種;ならびにかかるウイルス変種を検出するためのアッセイ等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的には、本発明は、特定の薬剤に対する感受性の低下および/または免疫学的試薬との相互作用活性の低下を示すウイルス変種に関する。より詳細には、本発明は、ヌクレオシドアナログに対する完全もしくは部分的な耐性および/またはウイルス表面成分に対する抗体との相互作用活性の低下を示すB型肝炎ウイルス変種に指向される。さらに本発明は、かかるウイルス変種を検出するためのアッセイを企図し、該アッセイは抗ウイルス療法のモニタリングにおいて有用である。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、衰弱性の疾病状態を引き起こす可能性があり、さらに急性肝不全を引き起こす可能性がある。HBVはDNAウイルスであり、RNA中間体を経て複製し、その複製方法において逆転写を用いる(非特許文献1参照)。HBVゲノムは複雑であり、表面、コア、ポリメラーゼおよびX遺伝子をコードしている読み枠と重複する部分的2本鎖DNA構造を有する。HBVゲノムの複雑な性質を図1に示す。
【0003】
HBV DNAポリメラーゼの存在はヌクレオシドアナログが有効な抗ウイルス剤として作用しうるという考えを導いた。現在試験されているヌクレオシドアナログの例はペンシクロビルおよびその経口形態であるファムシクロビル(非特許文献2〜5参照)ならびにラミブジン(非特許文献6、7参照)である。かかる作用剤が慢性HBV感染の治療に使用される可能性がある。
【0004】
最近、ペンシクロビルは、アヒルのHBV DNA合成に対してインビトロで阻害活性を有することが示され、また、HBV DNAポリメラーゼ−逆転写酵素活性をインビトロで阻害することが示された(非特許文献8、9参照)。同様に、経口ファムシクロビルは、アヒルのHBVウイルスの肝臓内複製をインビボにおいて阻害することが示されている(非特許文献10参照)。ヒトにおいては、ファムシクロビルは、正所性肝臓異色(OLT)後の重篤なB型肝炎患者におけるHBV DNA複製を抑制することが示されている(非特許文献11参照)。
【0005】
本発明に至る研究において、ヌクレオシドアナログ抗ウイルス療法を用いて重篤なOLT後のHBV感染再発が抑制された(非特許文献12参照)。患者が免疫抑制され、HBV複製速度が非常に速い場合、長期治療が必須である。しかしながら、かかる状況下において、感染病原体に対する長期化学療法によくあることだが、使用治療剤に対する耐性または感受性の低下が起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Summers J, Mason W. Cell (1982) 29:403-415
【非特許文献2】Vere Hodge RA. Antiviral Chem Chemother. (1993) 4:67-84
【非特許文献3】Boyd MR, et al. Antiviral Chem Chemither. (1987) 32:358-363
【非特許文献4】Kruger T, et al. Hepatology (1994) 22:219A
【非特許文献5】Main J, et al. J. Viral Hepatitis (1996) 3:211-215
【非特許文献6】Scverini A, et al. Antimicrobial Agents Chemother (1995) 39:1430-1435
【非特許文献7】Dienstag JL, et al. New England J Med (1995) 333:1657-1661
【非特許文献8】Shaw T, et al. Antimicrobial Agents Chemother (1994) 38:719-723
【非特許文献9】Shaw T, et al. Hepatology (1996) 24: in press
【非特許文献10】Tsiquaya KN, et al. J. Med Virol (1994) 42:306-310
【非特許文献11】Boker KHW, et al. Transplantation (1994) 57:1706-1708
【非特許文献12】Angus P, et al. J. Gastroenterol Hepatol (1993) 8:353-357
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ヌクレオシドアナログ療法をモニターするためのアッセイ、および変異の影響をマスクしうる作用剤をスクリーニングするためのアッセイの開発などを行うための有効な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意研究を重ね、特定の薬剤に対する感受性の低下および/または免疫学的試薬との相互作用活性の低下を示すウイルス変種が提供される。より詳細には、本発明により、ヌクレオシドアナログに対する完全もしくは部分的な耐性および/またはウイルス表面成分に対する抗体との相互作用活性の低下を示すB型肝炎ウイルス変種を提供することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、特定の薬剤に対する感受性の低下および/または免疫学的試薬との相互作用活性の低下を示すウイルス変種が提供される。より詳細には、本発明により、ヌクレオシドアナログに対する完全もしくは部分的な耐性および/またはウイルス表面成分に対する抗体との相互作用活性の低下を示すB型肝炎ウイルス変種が提供される。さらに本発明により、かかるウイルス変種を検出するためのアッセイが提供され、該アッセイは抗ウイルス療法のモニタリングにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、部分2本鎖DNA HBVゲノムをダイヤグラム的に示したものであり、表面(S)、コア(C)、ポリメラーゼ(P)およびX遺伝子をコードする重複した読み枠を示す。
【図2】図2は、移植患者における血清生化学的プロファイル(ALT)およびウイルス学的プロファイル(HBV DNA)ならびに種々の抗ウイルス剤治療プログラム導入後の応答をグラフで示したものである。治療GCV+PFF、GCVおよびFCV[I]およびFCV[II]は実施例において詳細に説明されている。治療GCV+PFFはガンシクロビルおよびフォスカルネットの組み合わせ(Angus P, et al. J Gastroenterol Hepatol (1993) 8:353-357)であり、治療GCVは非経口ガンシクロビル維持療法であり、治療FCV[I]およびFCV[II]はそれぞれ250mgまたは500mgを1日2回投与する経口ファムシクロビル療法である。各治療日数をカッコ内に示す。ALT(●−●)およびHBV DNA(□−□)応答を、OLT後6カ月における抗ウイルス療法開始からの時間に対してプロットしてある。配列分析の5つの鍵となる時間ポイント、すなわち治療前(PRE−)、および抗ウイルス治療から87、600、86および1329日後を示す。
【図3】図3は、ファムシクロビルでの治療前および治療後370日目(全抗ウイルス療法は816日行った)のHBV由来のアミノ酸、マーモット肝炎ウイルス(WHV)由来、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のDNAポリメラーゼ配列モチーフ、ならびに単純ヘルペスウイルス(HSV)のDNAポリメラーゼ(Poch O, et al. EMBO J. (1989) 8:3867-3874、Delarue M, et al. Protein Engineering (1990) 3:461-467)の比較可能領域のアミノ酸を並置比較したものである(配列番号:31〜35および50〜57)。ポリメラーゼモチーフ中の保存されたアスパラギン(D)およびグリシン(G)残基を太字で示し、ファムシクロビル治療後に見出されたアミノ酸変化を太字として下線を付して示す。HBVポリメラーゼ中の合致アミノ酸残基の位置を示す。HSVポリメラーゼ中の太字かつ下線を付したグリシン(G)残基はペンシクロビル治療中にシステイン(C)になる(Chiou HC, et al. Antiviral Chem Chemother (1995) 6:281-288)。
【図4】図4は、HBVのドメインAからEまでの保存された領域(下線部)を示す。YMDD中のMはアミノ酸番号550である。*はコンセンサス配列のこの位置において3つよりも多いアミノ酸の存在可能性を示す(配列番号:29)。
【図5】図5は、HBV由来のRNA依存性DNAポリメラーゼ配列モチーフのアミノ酸並置比較を示し、ファムシクロビルおよび3TC存在下で選択されたアミノ酸変化を記載する(配列番号:36〜41および45〜49)。HBVコンセンサス配列はGenebank/Entrez中の公表配列に由来する。ポリメラーゼモチーフ中の保存されたアスパラギン(D)およびグリシン(G)残基を太字で示す。ファムシクロビル治療後に見出されたアミノ酸変化を緑の太字として下線を付し、3TC治療後に見出されたアミノ酸変化を青の太字として下線を付す。ファムシクロビル治療中に患者Aおよび患者B、ならびにファムシクロビルに応答せず、後で3TCで治療された患者Cから単離されたHBVのアミノ酸配列を示す。その中から耐性変異を選択した。Lingら(16)により検出された公表されている3TC治療後の変化を3TC 1に示す。
【図6】図6は、HVB DNAポリメラーゼおよびHVB表面抗原に関する、HBV変種のヌクレオチド配列および対応アミノ酸配列を示し、ポリメラーゼ中の変異R/W499Eならびに表面抗原中の変異D144EおよびG145Rを太字で示す。
【図7】図7は、HVB DNAポリメラーゼおよびHVB表面抗原に関する、HBV変種のヌクレオチド配列および対応アミノ酸配列であって、図6の7/10の位置に記載されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
【図8】図8は、HVB DNAポリメラーゼおよびHVB表面抗原に関する、HBV変種のヌクレオチド配列および対応アミノ酸配列であって、図6の8/10の位置に記載されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
【図9】図9は、HVB DNAポリメラーゼおよびHVB表面抗原に関する、HBV変種のヌクレオチド配列および対応アミノ酸配列であって、図6の9/10の位置に記載されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
【図10】図10は、HVB DNAポリメラーゼおよびHVB表面抗原に関する、HBV変種のヌクレオチド配列および対応アミノ酸配列であって、図6の10/10の位置に記載されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において多数引用される刊行物についての書誌学的な詳細を説明の終わりにまとめてある。明細書に記載されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列についての配列番号(SEQ ID NO)は書誌学的な詳細の後に示してある。
【0012】
本明細書全体にわたり、特記しないかぎり、用語「含む」、あるいは「含む」または「含んでいる」または「包含する」またはそれらの違った言い回しは、記載された要素または数または要素もしくは数の群を包含することを意味すると理解されるが、他の要素または数または要素もしくは数の群を除くものではない。この点において、特許請求の範囲の構築にあたり、1またはそれ以上の特徴がいずれかの請求項に付加された具体例は本発明の範囲内であるとみなされ、権利請求された本発明の必須の特徴はかかる具体例に包含されている。
【0013】
本明細書において、アミノ酸配列における特定の変異を「XaanXaa」と表し、Xaaは変異前の元のアミノ酸残基であり、nは残基番号であり、Xaaは変異アミノ酸である。略号「Xaa」は3文字または1文字アミノ酸表記である。B型肝炎ウイルスDNAポリメラーゼに関するアミノ酸残基を、モチーフTyr Met Asp Asp(YMDD)中のメチオニン残基を550番とすることにより番号付けする。先の出願であるオーストラリア特許出願第PO3519号(1996年8月11日出願)においては当該メチオニン残基は530番となっていた。本明細書のDNAポリメラーゼに関するアミノ酸残基は番号付けし直してある。
【0014】
本発明によれば、本発明者らは、ヌクレオシドアナログに対するHBVの感受性が様々な程度にまで低下した、HBV DNAポリメラーゼ遺伝子における変異を有するHBV変種を同定した。これらのHBV変種の同定は、ヌクレオシドアナログ療法をモニターするためのアッセイ、および変異の影響をマスクしうる作用剤をスクリーニングするためのアッセイの開発にとり重要である。さらに、HBVゲノムは一連の重複した読み枠を含むので、1の読み枠におけるヌクレオチド変異は別の読み枠の翻訳産物に影響しうる。さらに本発明によれば、本発明者らは、抗体および免疫細胞のごとき免疫学的試薬のウイルス表面成分に対する相互作用活性を低下させる変異を観察した。本明細書において、存在している免疫学的記憶から潜在的に脱出するという点から、かかるウイルス変種を「エスケイプ変異株(escape mutants)」と称す。
【0015】
したがって、本発明の1の態様は、RNA中間体を経て複製する単離DNAウイルスの変種に指向され、該変種はDNAポリメラーゼをコードする遺伝子におけるヌクレオチド変異を含み、該変異は該DNAポリメラーゼに対して少なくとも1のアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせる。
【0016】
本発明のもう1つの態様は、RNA中間体を経て複製する単離DNAウイルスの変種に指向され、該変種はウイルス表面成分をコードする遺伝子におけるヌクレオチド変異を含み、該変異は該ウイルス表面成分に対して少なくとも1のアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせる。
【0017】
本発明のさらなる態様は、RNA中間体を経て複製する単離DNAウイルスの変種に指向され、該変種は少なくとも2つの読み枠の重複部分におけるヌクレオチド変異を含み、該変異は読み枠の翻訳産物に対してアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせる。
【0018】
好ましくは、DNAウイルスは肝炎ウイルスまたは関連ウイルスであり、最も好ましくはHBVである。
【0019】
本発明における「関連ウイルス」は、遺伝学的、免疫学的、伝染病学的および/または生化学的レベルにおいて関連するものである。
【0020】
好ましくは、DNAポリメラーゼにおける変異は、ヌクレオシドアナログに対するHBVの感受性を低下させるものである。
【0021】
好ましくは、ウイルス表面成分における変異は、ウイルス表面成分に対する抗体および免疫細胞のごとき免疫学的試薬の相互作用活性を低下させるものである。
【0022】
最も好ましくは、ウイルス表面成分はウイルス表面抗原である。一般的には、ウイルス表面成分に対する免疫学的試薬の相互作用活性の低下は、ウイルス表面成分を認識または実質的に認識する免疫学的記憶の不存在を包含する。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、ウイルス変種は、DNAポリメラーゼまたは表面抗原いずれかにおいてのみ変異を有していてもよく、あるいは両方の分子において変異を有していてもよい。用語「変異」は最も広い意味に解釈され、
DNAポリメラーゼまたは表面抗原の正常な機能に実質的に影響しないサイレント変異を包含し、また、ヌクレオシドアナログ耐性またはエスケイプ変異株の表現型の誘導に影響する活性のある変異であってもよい。本発明により複数の変異が生じる場合、あるいは複数の表現型が単一の変異から生じる場合、少なくとも1の変異が活性を有するか、あるいはウイルスが少なくとも1の変化した表現型、例えばヌクレオシドアナログ耐性または表面抗原に対する免疫学的相互作用活性の低下を示す。
【0024】
HBVポリメラーゼの領域は、他のRNA依存性DNAポリメラーゼおよびRNA依存性ポリメラーゼとのアミノ酸類似性を示す(Poch O, et al. EMBO J. (1989) 8:3867-3874)。本明細書において、Pochら(Poch O, et al. EMBO J. (1989) 8:3867-3874)によりドメインBおよびCと定義されている保存された領域について言及が行われる。
【0025】
好ましくは、変異は、HBV DNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインまたはそれらに近い領域におけるアミノ酸配列の変化を引き起こすものである。本発明はHBV DNAポリメラーゼのCドメインのYMDDモチーフのみにおける変異は包含しないが、別の位置における1またはそれ以上の変異と組み合わされて生じる場合には、かかる変異は本発明により企図されるものである。
【0026】
好ましくは、ウイルス表面成分における変異は、蛋白の主要親水性領域中、詳細にはHBVウイルス表面抗原のアミノ酸配列118〜169、あるいは蛋白の外部表面上のアミノ酸配列169〜207由来の領域における1またはそれ以上のアミノ酸残基におけるものである。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、DNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列における変異を含むHBV変種であって、該変異がDNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインまたはそれらに近い領域におけるアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである変種が提供される。ただし、該変異はCドメイン中のYMDDモチーフのみにおけるものではなく、該変種はヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示す。
【0028】
本発明のもう1つの好ましい態様は、ウイルス表面成分をコードするヌクレオチド配列中の変異を含むHBV変種であって、該ウイルス表面成分に対する免疫学的試薬の相互作用活性の低下を示す変種を企図し、該変異はHBV DNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインまたはHBV DNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインに近い領域に対応する領域中のウイルス表面成分におけるアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである。
【0029】
本発明のさらにもう1つの好ましい態様は、ウイルス表面成分をコードするヌクレオチド配列中の変異を含むHBV変種であって、該ウイルス表面成分に対する免疫学的試薬の低下した相互作用性を示す変種に関し、該変異はHBVのアミノ酸118から169まで、あるいは169から207までにより画定される領域または機能的に等価な領域中のウイルス表面成分におけるアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである。
【0030】
本発明のさらにもう1つの態様は、ゲノム中の重複した読み枠における変異を含むHBV変種に指向され、該変異はDNAポリメラーゼのBおよび/またはCドメインにおけるものであり、CドメインのYMDDモチーフのみにおけるものではない。また、該変異は、HBV表面抗原のアミノ酸118から169まで、あるいは169から207までに対応する重複領域または等価な領域におけるものであり、該変種は、ヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示し、HBV表面抗原に特異的な免疫学的試薬に対する低下した相互作用活性を示す。
【0031】
変異により表面抗原上のBおよび/またはT細胞エピトープが変化してしまっているため、ウイルス曝露前またはワクチン投与後のHBVに対する抗体または他の免疫学的応答がもはやウイルス表面成分を標的とするには有効でないので、免疫学的試薬に対する低下した相互作用活性を示すウイルス変種はエスケイプ変異株である。
【0032】
本発明により企図されるヌクレオシドアナログは、ペンシクロビルおよびその経口形態ファムシクロビルならびにラミブジン(3TC)を包含する。異なる変種が異なるヌクレオシドアナログに耐性であるかもしれない。例えば、1の具体例において、HBV DNAポリメラーゼのBドメインにおける変種はファムシクロビルに耐性であるかもしれず、Cドメインにおける変種は3TCに耐性であるかもしれない。
【0033】
BドメインはHBV DNAポリメラーゼのアミノ酸残基505から529までを含むと考えられる。この配列を以下に示す:

(配列番号:24)
【0034】
Bドメインという場合、当該ドメインの両側約20アミノ酸までを包含する近接領域を含むものとする。好ましくは、変異は下記のアミノ酸の1つまたはそれ以上におけるものである:

(配列番号:25)
【0035】
Cドメインは下記のアミノ酸546から556までを含む:

(配列番号:26)
【0036】
これはYMDD(配列番号:30)ドメインを含み、その中のメチオニン残基は残基番号550(以前は残基番号530)である。本明細書における残基番号付けは新しい番号付けによるものであり、YMDDのメチオニンは550である。
【0037】
Cドメインという場合、当該ドメインの両側約20アミノ酸までを包含する近接領域を含むものとする。
【0038】
用語「耐性」は最も一般的な意味において用いられ、ヌクレオシドアナログに対する完全または不完全な耐性ならびに低下した感受性を包含する。
【0039】
好ましくは、変種は天然の体液から少なくとも1の精製工程を経るようにして単離される。別法として、変種を単離体液中に維持してもよく、あるいはDNA形態であってもよい。また本発明は、変種HBV由来のゲノムまたはその一部を含む感染性分子クローンを企図する。
【0040】
HBV DNAポリメラーゼにおける好ましい変異は、Arg/Trp499Glu、Thr530Ser、Ile509Val、Phe512Leu、Val519Leu、Pro523Leu、Leu526Met、Ile533Leu、Met550Val/Ileおよび/またはSer559Thrのうちの1つまたはそれ以上の変異を包含する。HBV表面抗原における好ましい変異は、Asp144Gluおよび/またはGly145Argのうちの1つまたはそれ以上を包含する。これらはDNAポリメラーゼの位置498および499にそれぞれ対応する。より好ましくは、変種は2つまたはそれ以上の上記変異を含む。
【0041】
1の特定の変異HBVは配列番号:17に示すヌクレオチド配列を有し、DNAポリメラーゼをヌクレオシドアナログに対して耐性にし、多表現型変異を示すものである。HBV表面抗原に対する抗体との相互作用活性を減じるように変化した表面抗原を示す。変異は、DNAポリメラーゼ読み枠におけるR/W499Eならびに表面抗原におけるD144EおよびG145Rである。これは、配列番号:17のヌクレオチド番号226および227におけるGおよびAへの二重変異により生じる。HBVのポリメラーゼ蛋白は単純ヘルペスウイルス(HSV)のDNAポリメラーゼにも類似している(並置比較については図3参照)。HSVポリメラーゼにおける変異(Gly841Cys)がファムシクロビル存在下において選択された(Chiou HC, et al. Antiviral Chem Chemother (1995) 6:281-288)。
【0042】
本発明は、配列番号:17に示すヌクレオチド配列ならびにそれに対して少なくとも60%の類似性を有するヌクレオチド配列(DNAポリメラーゼおよびHBV表面抗原のアミノ酸配列における二重変異を担持している)を包含する。したがって、本発明は、配列番号:17に示すヌクレオチド配列を有するHBVあるいは単一または複数のヌクレオチド付加、置換および/または欠失を有するその誘導体(例えば、配列番号:17に対して少なくとも60%の類似性を有するヌクレオチド配列)に指向される。誘導体は、配列番号:17の一部分、フラグメント、部分および相同体を包含する。本発明のこの態様は、42℃における低い厳密性の条件下において配列番号:17にハイブリダイゼーションしうるヌクレオチド配列も包含する。
【0043】
42℃における低い厳密性とは、少なくとも約1体積%ないし少なくとも約15体積%のホルムアミドおよび少なくとも約1Mないし少なくとも約2Mの塩(ハイブリダイゼーション時)、および少なくとも約1Mないし少なくとも約2Mの塩(洗浄時)を包含するものである。必要ならば、培地の厳密さのごとき別の厳密さの条件を用いてもよく、その厳密さの条件は、少なくとも約16体積%ないし少なくとも約30体積%のホルムアミドおよび少なくとも約0.5Mないし少なくとも約0.9Mの塩(ハイブリダイゼーション時)、および少なくとも約0.5Mないし少なくとも約0.9Mの塩(洗浄時)包含するものであり、あるいはまた、高い厳密さの条件(少なくとも約31重量%ないし少なくとも約50重量%のホルムアミドおよび少なくとも約0.01Mないし少なくとも約0.15Mの塩(ハイブリダイゼーション時)、および少なくとも約0.01Mないし少なくとも約0.15Mの塩(洗浄時))を用いてもよい。
【0044】
したがって、本発明のもう1つの態様は、ヌクレオシドアナログに対する低下した感受性および野生型HBV表面抗原に対する抗体に対する低下した相互作用活性を示す変種HBVを企図し、該HBV変種は以下の特徴の1つまたはそれ以上により特徴づけられる:
(i)配列番号:17に示すゲノムのヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも60%の類似性を有する配列;
(ii)42℃における低い厳密さの条件下において配列番号:17にハイブリダイゼーションしうるヌクレオチド配列;
(iii)DNAポリメラーゼおよびHBV表面抗原の読み枠の重複部分における変異;および
(iv)HBV DNAポリメラーゼのBおよび/またはCドメイン、および
HBV表面抗原のアミノ酸118から169まであるいは169から207までに対応する領域における変異。
【0045】
本発明のもう1つの態様によれば、下記アミノ酸配列:

(配列番号:27)

(配列番号:28)
[式中、XはSまたはA;
はIまたはV;
はFまたはL;
はIまたはL;
はLまたはVまたはG;
はPまたはL;
はLまたはM;
はIまたはL;
はCまたはL;
10はAまたはV;
11はSまたはA;
12はMまたはIまたはV;
13はVまたはLまたはM;
14はKまたはR;そして/または
15はSまたはTである]
を有するDNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む変種HBVであって、ファムシクロビル(ペンシクロビル)および/またはラミブジン
(3TC)のごときヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示す変種が提供される。
【0046】
本発明のもう1つの具体例は、下記アミノ酸配列:


[式中、X16はQまたはK;
17はYまたはF;
18はG;
19はRまたはWまたはE;
20はYまたはL;
21はSまたはA;
22はIまたはV;
はFまたはL;
はIまたはL;
はLまたはVまたはG;
はPまたはL;
はLまたはM;
はIまたはL;
はCまたはL;
10はAまたはV;
11はSまたはA;
12はMまたはIまたはV;
13はVまたはLまたはM;
14はKまたはR;そして/または
15はSまたはTである]
を有するDNAポリメラーゼに対応する表面抗原のアミノ酸残基番号118から169まであるいは160から207までに対する少なくとも1個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を有する表面抗原をコードするヌクレオチド配列を含む変種HBVに指向され、該変種は、該表面抗原に対する、抗体のごとき免疫学的試薬との低下した相互作用活性を示す。
【0047】
好ましい変種の例は図4に示すアミノ酸配列を含む。特に好ましい変異配列の例を図6(配列番号:17)に示す。
【0048】
本発明変種の同定は、かかる変種を検出するための広範囲のアッセイを可能にする。かかる変種の検出は、耐性変種を同定して適当な形態の化学療法を決定し、そして/あるいはワクチン投与プロトコールをモニターすることにおいて重要でありうる。
【0049】
したがって、本発明のもう1つの態様は、ヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示すHBVの潜在能力を調べる方法を企図し、該方法は、DNAまたは対応mRNAを該HBVから単離し、ついで、該DNAポリメラーゼのBドメインまたはCドメインまたはそれらに近い領域中に少なくとも1のアミノ酸置換、欠失および/または付加を生じさせる、HBV DNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列中の変異に関してスクリーニングを行うことを含み、かかる変異の存在が該ヌクレオシドアナログに対する耐性の可能性を示すものである。
【0050】
本発明のさらなる態様は、HBV表面抗原に対する抗体との低下した相互作用活性を示すHBVの潜在能力を調べる方法を提供し、該方法は、該HBVからDNAまたは対応mRNAを単離し、該表面抗原のアミノ酸118から169までおよび/または169から207までまたは該表面領域中のそれらに近い領域における少なくとも1のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を生じさせる、HBV表面抗原をコードするヌクレオチド配列中の変異についてスクリーニングすることを含み、かかる変異の存在が該変異した表面抗原に対する該抗体の相互作用活性低下の可能性を示すものである。
【0051】
好ましくは、アッセイは、Glu/Val519Leu置換および/またはLeu526Met置換および/またはPro523Leu置換および/またはSer559Thr置換、および/またはArg/Trp499Glu置換を生じさせる変異を決定するものである。
【0052】
DNAまたは対応mRNAをアッセイしてもよく、別法として、DNAポリメラーゼまたは表面抗原を変異についてスクリーニングしてもよい。
【0053】
本発明による検出は核酸に基づく検出であってもよく、例えば、核酸ハイブリダイゼーション法またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であってもよい。さらに本発明は、上記核酸に基づく検出手段の異なるアッセイフォーマットの使用も包含し、かかるフォーマットとしては、特に、制限フラグメント長多型性(RFLP)、増幅フラグメント長多型性(AFLP)、1本鎖多型性(SSCP)、増幅およびミスマッチ検出(AMD)、散在繰り返し配列ポリメラーゼ連鎖反応(IRS−PCR)、逆ポリメラーゼ連鎖反応(iPCR)および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)等が挙られる。
【0054】
本発明は、変種HBV DNAポリメラーゼまたは表面抗原を検出するための免疫学を基礎にした広範囲のアッセイを包含する。これらのアッセイは、変種HBV DNAポリメラーゼまたは表面抗原と相互作用しないかまたは実質的に相互作用しない、天然に存在するHBV DNAポリメラーゼまたは表面抗原に指向された抗体に基づくものである。別法として、天然に存在するHBV DNAポリメラーゼまたは表面抗原と相互作用しないかまたは実質的に相互作用しない、変種HBV DNAポリメラーゼまたは表面抗原に対する抗体を用いてもよい。
【0055】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体を用いてもよいが、大量かつ均一な形態で得られるので、モノクローナル抗体が好ましい。米国特許第4016043号、第4424279号および第4018653号に記載されたような種々のイムノアッセイ法が利用可能である。
【0056】
便利には、DNAポリメラーゼのアミノ酸変種の検出を、図4に示すコンセンサスアミノ酸配列を対照とすることにより行う。示される多型性は、活性のある病原性HBV株に関する種々のデータベースに示される変化を示すものである。HBV変種が示されたアミノ酸の相異を含む場合、かかる単離体は、変化したDNAポリメラーゼ活性を有する推定上のHBVであるとみなされる。
【0057】
したがって、本発明のもう1つの態様は、HBVが変種DNAポリメラーゼをコードしているかどうかを調べる方法を企図し、該方法は、DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を直接的に、あるいはヌクレオチド配列を介して決定し、ついで、それを下記のアミノ酸配列:
【化1】

と比較することを含み、コンセンサス配列とは異なるアミノ酸の存在が推定上のHBV変種を示すものとなる。
【0058】
さらに本発明は、ヌクレオシドアナログ耐性HBV変異をマスクする作用剤を企図する。かかる作用剤はヌクレオシドアナログによる長期治療において有用であろう。作用剤はDNAまたはRNAまたは蛋白性または非蛋白性化学分子であってよい。マスキング作用剤の潜在的に有用な源として、植物、サンゴ類および微生物のごとき天然産物のスクリーニングも企図される。作用剤は単離形態または違約組成物形態であってよく、ヌクレオシドアナログに次いで、あるいは同時に投与してもよい。
【0059】
本発明は変種HBVアッセイ用のキットを包含する。かかるキットは、例えば、PCRまたは他の核酸ハイブリダイゼーション法のための試薬あるいは免疫学を基礎とする検出法のための試薬を含んでいてもよい。
【0060】
本発明は、以下を提供する。
(1)RNA中間体を経て複製する単離DNAウイルスの変種であって、DNAポリメラーゼまたはその一部をコードする遺伝子におけるヌクレオチド変異を含み、該変異がDNAポリメラーゼに対する少なくとも1個のアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである変種;
(2)RNA中間体を経て複製する単離DNAウイルスの変種であって、表面成分またはその一部をコードする遺伝子におけるヌクレオチド変異を含み、該変異が表面成分に対する少なくとも1個のアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである変種;
(3)RNA中間体を経て複製する単離DNAウイルスの変種であって、少なくとも2つの読み枠の重複部分におけるヌクレオチド変異を含み、該変異が2つの読み枠の翻訳産物に対するアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである変種;
(4)該DNAウイルスがB型肝炎ウイルス(HBV)である上記(1)または(2)または(3)記載の変種;
(5)アミノ酸変異がHBV DNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインに存在する上記(1)または(3)記載の変種;
(6)アミノ酸変異がHBV DNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインに対応している上記(2)または(3)記載の変種;
(7)HBV DNAポリメラーゼの配列:


中の1個またはそれ以上のアミノ酸における変異を含む上記(1)または(3)記載の変種;
(8)HBV DNAポリメラーゼの配列:


中の1個またはそれ以上のアミノ酸における変異を含む上記(7)記載の変種;
(9)下記アミノ酸配列:


[式中、XはSまたはA;
はIまたはV;
はFまたはL;
はIまたはL;
はLまたはVまたはG;
はPまたはL;
はLまたはM;
はIまたはL;
はCまたはL;
10はAまたはV;
11はSまたはA;
12はMまたはIまたはV;
13はVまたはLまたはM;
14はKまたはR;そして/または
15はSまたはTである]
を有するDNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む変種であって、ファムシクロビル(ペンシクロビル)および/またはラミブジン(3TC)のごときヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示す変種;
(10)HBV表面抗原のアミノ酸118から169までまたは169から207までの1個またはそれ以上のアミノ酸における変異を有する、上記(2)または(3)記載の変種;
(11)下記アミノ酸配列:

[式中、X16はQまたはK;
17はYまたはF;
18はG;
19はRまたはWまたはE;
20はYまたはL;
21はSまたはA;
22はIまたはV;
はFまたはL;
はIまたはL;
はLまたはVまたはG;
はPまたはL;
はLまたはM;
はIまたはL;
はCまたはL;
10はAまたはV;
11はSまたはA;
12はMまたはIまたはV;
13はVまたはLまたはM;
14はKまたはR;そして/または
15はSまたはTである]
を有するDNAポリメラーゼを含み、ファムシクロビル(ペンシクロビル)および/またはラミブジン(3TC)のごときヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示す上記(10)記載の変種;
(12)Ile509Val、Phe512Leu、Val519Leu、Pro523Leu、Leu526Met、Ile533Leu、Met550Val/Ile、Ser559Thr、Arg/Trp499Glu、Thr530Serから選択される上記(1)または(2)または(3)記載の変種;
(13)DNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列における変異を含み、ヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示すHBV変種であって、該変異がDNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインまたはそれらに近い領域におけるアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものであり、さらに該変異がCドメイン中のYMDDモチーフのみにおけるものではない変種;
(14)ウイルス表面成分をコードするヌクレオチド配列中の変異を含み、該ウイルス表面成分に対する免疫学的試薬の相互作用活性の低下を示すHBV変種であって、該変異がHBV DNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインまたはHBV DNAポリメラーゼのBドメインおよび/またはCドメインに近い領域に対応する領域中のウイルス表面成分におけるアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである変種;
(15)ウイルス表面成分をコードするヌクレオチド配列中の変異を含み、該ウイルス表面成分に対する免疫学的試薬の低下した相互作用性を示すHBV変種であって、該変異はHBVのアミノ酸118から169まで、および/または169から207までにより画定される領域または機能的に等価な領域中のウイルス表面成分におけるアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである変種;
(16)ゲノム中の重複した読み枠における変異を含み、ヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示し、HBV表面抗原に特異的な免疫学的試薬に対する低下した相互作用活性を示すHBV変種であって、該変異がDNAポリメラーゼのBおよび/またはCドメインにおけるものであり、CドメインのYMDDモチーフのみにおけるものではなく、さらに該変異がHBV表面抗原のアミノ酸118から169までおよび/または169から207までに対応する重複領域または等価な領域におけるものである変種;
(17)配列番号:17に示すヌクレオチド配列を有するHBV、あるいは単一または複数のヌクレオチド付加、置換および/または欠失を有するその誘導体(例えば、配列番号:17に対して少なくとも60%の類似性を有するヌクレオチド配列);
(18)ヌクレオシドアナログに対する低下した感受性および野生型HBV表面抗原に対する抗体に対する低下した相互作用活性を示す変種HBVであって、以下の特徴:
(i)配列番号:17に示すゲノムのヌクレオチド配列またはそれに対して少なくとも60%の類似性を有する配列;
(ii)42℃における低い厳密さの条件下において配列番号:17にハイブリダイゼーションしうるヌクレオチド配列;
(iii)DNAポリメラーゼおよびHBV表面抗原の読み枠の重複部分における変異;および
(iv)HBV DNAポリメラーゼのBおよび/またはCドメインにおける変異、およびHBV表面抗原のアミノ酸118から169までおよび/または169から207までに対応する領域における変異
の1つまたはそれ以上により特徴づけられる変種HBV;
(19)ヌクレオシドアナログに対する低下した感受性を示すHBVの潜在能力を調べる方法であって、DNAまたは対応mRNAを該HBVから単離し、ついで、該DNAポリメラーゼのBドメインまたはCドメインまたはそれらに近い領域中に少なくとも1のアミノ酸置換、欠失および/または付加を生じさせる、
HBV DNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列中の変異に関してスクリーニングを行うことを含み、かかる変異の存在が該ヌクレオシドアナログに対する耐性の可能性を示すものである方法;
(20)HBV表面抗原に対する抗体との低下した相互作用活性を示すHBVの潜在能力を調べる方法であって、該HBVからDNAまたは対応mRNAを単離し、該表面抗原のアミノ酸118から169までおよび/または169から207までまたは該表面領域中のそれらに近い領域における少なくとも1のアミノ酸の置換、欠失および/または付加を生じさせる、HBV表面抗原をコードするヌクレオチド配列中の変異についてスクリーニングすることを含み、かかる変異の存在が該変異した表面抗原に対する該抗体の相互作用活性低下の可能性を示すものである方法;
(21)アッセイが、Ile509Val、Phe512Leu、Val519Leu、Pro523Leu、Leu526Met、Ile533Leu、Met550Val/Ile、Ser559Thr、Arg/Trp499Glu、Thr530Serから選択される変異を検出するものである、上記(19)または(20)記載の方法;および
(22)HBVが変種DNAポリメラーゼをコードしているかどうかを調べる方法をであって、DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を直接的に、あるいはヌクレオチド配列を介して決定し、ついで、それを下記のアミノ酸配列:

と比較することを含み、コンセンサス配列とは異なるアミノ酸の存在が推定上のHBV変種を示すものとなる方法。
【0061】
さらに本発明は、以下の非限定的な図面および実施例により説明される。
【実施例1】
【0062】
症例の研究
1.患者A
本発明者らは、肝臓移植後ほぼ4年間にわたりHBV感染再発に対する抗ウイルス療法を受けた患者からの一連の単離体由来のHBVポリメラーゼおよびX読み枠を配列決定した(図2)。
患者(42歳の男性)は慢性HBV感染による末期肝不全であったため移植を受けた。移植後の最初の治療コースは著しいものではなく、5カ月までに感染再発の証拠および非常に高レベルの油複製および肝機能の悪化が見られた(Angus P, et al. J Gastroenterol Hepatol (1993) 8:353-357)。OLTから約6カ月後に抗ウイルス治療を開始した。最初は、患者は静脈経路(iv)でガンシクロビル(GCV;10mg/kg/日)をivフォスカルネト(PFF;50〜125mg/kg/日;腎機能に応じた用量)と組み合わせて投与された。これは図2のGCV+PFF治療であり、86日間継続された。抗ウイルス治療の87日目に、1週間に3回ivGCV(3.3〜6.7mg/kg/日)を開始した(図2のGCV)。治療446日目に経口ファムシクロビル(250mg,1日2回)を開始し(図2のFCV[I])、500日目に1日2回、500mgにまで増量した(図2のFCV[II])。現在患者はこの治療規則を継続している。ファムシクロビル治療以前のこの患者の臨床的およびウイルス学的詳細はすでに報告されている(Angus P, et al. J Gastroenterol Hepatol (1993) 8:353-357)。
血清試料を日常的に収集し、−70℃で保存した。これらの試料を研究目的で使用するためにインフォームドコンセントを患者から受けた。図2は、抗ウイルス治療の全コースにわたるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびHBV DNAレベルを示す。さらなる研究のための5つの試料はほぼ4年間をカバーする。
【0063】
2.患者B
患者Bは、最初の肝臓移植から14カ月後にプレ−コア変異株(pre-core mutant)に関連したHBV関連アログラフ損失(allograph loss)のため、再移植を受けた。GCV(7.5mg/kg/日)での抗ウイルス治療を10カ月受け、その後中止された。次いで、経口ファムシクロビル治療(1日3回、500mg)を受けた。
移植後、FCV治療850日目に患者Bの血清HBV試料から得た全HBVポリメラーゼ遺伝子を配列決定した。移植前のFCV治療前の血清試料から得た血清試料HBVポリメラーゼ触媒ドメインを含む領域を配列決定した。
【0064】
3.患者C
この患者はファムシクロビルに応答せず、後でラミブジン(3TC)で治療され(6、7)、耐性変異が選択された。
【0065】
4.患者D
この患者はファムシクロビルで治療され、耐性変異が選択される。
【実施例2】
【0066】
血清中のウイルスマーカー
B型肝炎表面抗原(HbsAg)、Be型肝炎抗原(HbeAg)、抗HBe、B型肝炎コア抗原(HbcAg)特異的IgGおよびIgM、A型肝炎特異的IgM、デルタ肝炎抗原および抗体、ならびに抗C型肝炎ウイルス抗体を、市販イムノアッセイ(Abbot Laboratories, North Chicago, IL)を用いて測定した。HBVマーカーのみが陽性であった。製造者(Digene Diagnostics Inc., Beltsville, MD)の指示に従ってキャプチャハイブリダイゼーションアッセイ(capture hybridisation assay)を用いてB型肝炎ウイルスDNAレベルを測定し、定量した。この患者はOLT前にプレ−コアHBV変異株に感染し(12)、この状態はOLT後も変わらなかった。
【実施例3】
【0067】
HBV DNAの配列決定およびクローニング
1.血清からのDNA抽出:
血清50μlを、150μlのTE(10mmol/L Tris−HCl(pH7.5)、2mmol/L EDTA)、1% w/vドデシル硫酸ナトリウムおよび1mg/mlプロナーゼと混合し、37℃で2時間インキュベーションした。フェノール/クロロホルムによりDNAを脱蛋白し、イソプロパノールで沈殿させ、25μlのヌクレアーゼ不含水に溶解した。
【0068】
2.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるウイルスポリメラーゼ遺伝子およびX遺伝子の増幅:
Bresatec, Adelaide, Australiaによりオリゴヌクレオチドが合成された。ポリメラーゼ遺伝子の増幅には、センスプライマーは5’−GGA GTG TGG ATT CGC ACT CC−3’[配列番号:1](ヌクレオチド(nt)−40から−21まで)であり、アンチセンスプライマーは5’−GCT CCA AAT TCT TTA TA−3’[配列番号:2](nt 2381から2847まで)であった。X遺伝子の増幅には、センスプライマーは5’−CCT TTA CCC CGT TGC CCG GC−3’[配列番号:3](nt 2055から2074まで)であり、アンチセンスプライマーは5’−GCT CCA AAT TCT TTA TA−3’[配列番号:4](nt 2831から2847まで)であった。すべてのヌクレオチドはポリメラーゼ遺伝子の最初から番号付けされている。5μlの鋳型抽出DNA、1.5ユニットのTaqポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)、1μmol/Lのセンスおよびアンチセンスプライマー、200μmol/Lの各デオキシリボヌクレオシド三リン酸、50mmol/LのKCl、3.5mmol/LのMgCl、10mmol/のTris−HCl(pH8.3)および0.01% w/vのゼラチンを用いて各反応を行った。変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1分)および伸長(72℃、1.5分)を40サイクル行い、ついで、7分の最終伸長を行うことにより増幅を行った(Perkin-Elmer Cetus, Norwalk, CT)。1.5% /アガロースによるゲル電気泳動を行い、臭化エチジウム染色後にUV照射を行うことによりPCR生成物を分析した。
【0069】
3.HBV DNAのポリメラーゼ遺伝子およびX遺伝子の配列決定:
特異的に増幅された生成物をGeneclean II(Bio 101 Inc., La Jolla, CA)を用いて精製し、Sequence version 2.0(United States Biochemical Corp., Cleveland,OH)を用いて直接配列決定した。PCRプライマーを配列決定プライマーとして用い、さらに内部プライマーを合成してPCR生成物の内部領域を配列決定した。下記の内部プライマーおよび配列決定プライマーを用いた。5’−GCC GCG TCG CAG AAG ATC TCA AT−3’[配列番号:5](nt104〜126)、5’−GGT TCT ATC CTA ACC TTA CC−3’[配列番号:6](nt341〜360)、5’−GCC TCA TTT TGT GGG TCA CCA TA−3’[配列番号:7](nt496−518)、5’−TGG GGG TGG AGC CCT CAG GCT−3’[配列番号:8](nt731〜751)、5’−CAC AAC ATT CCA CCA AGC TC−3’[配列番号:9](nt879〜899)、5’−AAA TTC GCA GTC CCC AAC−3’[配列番号:10](nt1183〜1195)、5’−GTT TCC CTC TTC TTG CTG T−3’[配列番号:11](nt1429〜1447)、5’−TTT TCT TTT GTC TTT GGG TAT−3’[配列番号:12](nt1683〜1703)、5’−CCA ACT TAC AAG GCC TTT CTG−3’[配列番号:13](nt1978〜1999)、5’−CAT CGT TTC CAT GGC TGC TAG GC−3’[配列番号:14](nt2239〜2262)。
【0070】
4.pUC18中へのHBVポリメラーゼ遺伝子のクローニング:
試料中のHBV DNAが少量であるため、クローニング前に、プライマー5’−GTT TCC CTC TTC TTG CTG T−3’[配列番号:15](nt1429〜1447)および5’−ATA CCC AAA GAC AAA AGA AAA−3’[配列番号:16](nt1703〜1683)を用いてHBVポリメラーゼ遺伝子のnt1429〜1703を含む領域を増幅した。Geneclean IIを用いてDNAを精製し、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)を用いて、SmaI消化され脱リン酸化されたpUC18プラスミド(Pharmacia Biotech, NJ)中に連結した。上記のごとくクローンを直接配列決定した。
【実施例4】
【0071】
DNAポリメラーゼアッセイ
血清試料(100μl)をTNE(20mmol/L Tris−HCl pH7.4、150mmol/L NaCl、1mmol/L EDTA)中の20% w/vクッションにアプライし、Beckman Model L8超遠心機中でSW41ローターを用いて、10℃において3時間、200000gで遠心分離した。1.5% v/v Triton−X100、100mmolKClおよび0.01% v/v2−メルカプトエタノールを含有する50mmol/L Tris−HCl pH7.5にペレットを再懸濁し、4℃で一晩放置した。本質的にはPriceら(Ling R, et al. Hepatology (1996) 24:711-713)により記載されたようにして、少量の懸濁液を内在性HBV DNAポリメラーゼ活性についてアッセイした。20μlの部分精製HBVおよび(最終濃度)30mmol/LのTris−HCl pH7.5、30mmol/LのMgCl、各10μmol/LのdATP、dTTPおよびdGTP、および0.01μMの[α−32P]−dCTP(3000Ci/mmol)(Dupont NEN, Boston, MA)を含有する全体積30μl中において各アッセイを行った。ペンシクロビル三リン酸(PCV−TP)感受性を試験するために、過剰(100μmol/L)のペンシクロビル三リン酸を各ペアーのアッセイの一方に添加して、各試料につき1ペアーのアッセイを行った。37℃で2時間後、各反応混合物から20μlを取り、前以て10% w/vトリクロロ酢酸(TCA)に浸しておいた25mm径のガラス繊維ディスク(Advantex, Tokyo, Japan)にスポットすることにより反応を停止させた。ディスクを乾燥させ、次いで、10mmol/Lピロリン酸ナトリウム含有10% w/v TCAで洗浄した。最後に、洗浄したディスクを無水エタノールですすぎ、風乾し、放射活性を測定した。PCV−TPによるHBV DNAポリメラーゼ活性の阻害を、対照と比較した場合のPCV−TP含有アッセイ混合物中の活性の相違%値として表した。試料の量が限られていたため、酵素活性の標準化または繰り返しアッセイは不可能であった。アッセイ固有のばらつきにもかかわらず、PCV−TPに対するHBV DNAポリメラーゼの感受性の、時間に関連した全般的な低下が明らかであった(表1参照)。
【実施例5】
【0072】
抗ウイルス療法の効果
抗ウイルス治療GCV+PFFの開始により、87日目にはOTL後のHBV DNAレベルは100000pg/ml以上から10800pg/mlにまで低下した(図2)。ウイルス血症のこの低下は臨床的、生化学的および組織学的改善と関連していた(12)。ファムシクロビル療法(処置GCV)の継続により、359日間にわたりHBV DNAレベルは2つのピークを伴って変動した。446日目の経口ファムシクロビルへの切り替えは、HBV DNAレベルの上昇にも関連していた。このことは、治療の成功というよりはむしろ不十分な投与の結果であった可能性がある(図2のFCV[I])。1日500mgに用量を増加させた後、HBV DNAが減少した。しかしながら、HBV DNAレベルは時間とともに除々に上昇し、600日目(ファムシクロビル治療154日目)に3000pg/mlであったのが816日目(ファムシクロビル治療370日目)には8800pg/mlとなり、1302日目(ファムシクロビル治療856日目)には29000pg/mlのピークとなり、その後1329日目(ファムシクロビル治療883日目)には12000pg/ml付近で安定した。816日目から1329日目までの治療期間におけるDNAレベルについてのStudent検定により、統計学的に有為な上昇が明らかとなった。同時期に1.5ないし2倍のALTレベルの上昇があり(図2)、臨床的状態には変化がなかった。
【実施例6】
【0073】
ヌクレオチド変化
HBVのX遺伝子およびポリメラーゼ遺伝子を5つの時点(図2)で配列決定した。ほぼ4年間の抗ウイルス療法において、X遺伝子については治療前の配列に対して変化がなかった。しかしながら、816日目および1329日目の試料からのポリメラーゼ遺伝子において5個のヌクレオチドの変化が検出された(表1)。これらの変化は別個のPCRにおいて検出され、さらにそのうえ、両鎖の配列決定により変異が検出されたので、PCRにより生じたエラーの結果である可能性はない。ポリメラーゼ遺伝子におけるヌクレオチド変化は、はじめは治療816日後に検出され、その時点で患者はファムシクロビルで370日間治療を受けていた。しかしながら、位置1498および1519における2つのヌクレオチド変化のみが、それぞれVal519−LeuおよびLeu526−Metのアミノ酸変化を引き起こした。これら2つのヌクレオチド変化は同時に出現した。816日目に、異なるヌクレオチド(C、G、T)が位置1498において検出された(それらはすべてValからLeuへの変化を引き起こした)。治療から1329日目に、位置1498においてチミジンが優勢種となった。治療から826および1329日目のアミノ酸変化は、PCV−TPに対する血清HBV DNAポリメラーゼの感受性低下と一致していた(表1)。これらのヌクレオチドは、OLT後にHBV感染再発している、FCV治療を受けていない6人の患者において見られた。
【0074】
1329日目の試料から、アミノ酸変化を生じさせたヌクレオチド変異を含む領域をクローン化し、配列決定した。3つの亜種が検出された。75%(20個のうち15個)のクローンは1498および1519における両変異を含んでおり、それらは同時に生じていた。治療前の配列が20個のうち3個のクローンにおいて検出された。位置523のプロリンをロイシンに変化させるヌクレオチド1511におけるさらなる変異が20個のうち2個のクローンにおいて検出された。この変異は2つの主要変異(1498(Val519−Leu)および1519(Leu526−Met))と一緒には検出されず、さらに直接PCRによっても検出されず、おそらく低頻度であることが示された。600日目(FCV治療150日目)の試料からのウイルスDNAもクローン化し、配列決定した。しかしながら、治療前の配列のみが検出された。
【実施例7】
【0075】
患者B、CおよびDにおけるヌクレオチド変化
患者BおよびCから単離されたHBVにおけるアミノ酸変化を図5に示し、患者Dから単離されたHBVにおけるアミノ酸変化を図6に示す。図5において、患者Aは図3に示した患者と同一患者である。患者Bは長期のファムシクロビル治療(850日以上)を受けていた。ファムシクロビル治療期間中に選択されたアミノ酸変化を、HBV(患者B)として図5に示す。患者Cはファムシクロビルに応答せず、後で3TC(ラミブジン[6、7])で治療された。FCV治療期間中に患者Cから単離されたHBVを、HBV(患者C−FCV)として示す。3TCでの治療期間中に発生したすべての3TC耐性変異をHBV(患者C−3TC)として示す。配列分析により、HBVポリメラーゼのCドメイン近くに変異(Thr−Ser置換)が示されたが、最初はYMDDモチーフ中には変異は検出されなかった。Thr−Ser置換を含むHBVが単離されてから32日目(治療後333日目)に、YMDDモチーフにおけるMet550からIleへの変異が検出された。
【実施例8】
【0076】
エスケイプ変異株
上記方法を用いて、HBV変種をエスケイプ変異についてスクリーニングした。これらは、HBV表面抗原のごとき表面成分における変異であり、抗体または他の免疫学的試薬に対する表面成分の相互作用活性を低下させる。HBVゲノムの重複した読み枠があると、単一の変異が複数の表現型に影響しうる。例えば、HBV DNAポリメラーゼ中の変異はHBV表面抗原に対しても影響しうる。
HBV表面抗原中の好ましい変異はアミノ酸118から169までおよび/または169から207までにおける例えばD144EまたはG145Rのごときものである。これらに対応するDNAポリメラーゼの変異はR/W499Eである。
特に好ましいエスケイプ変異株およびヌクレオシドアナログ耐性変異株は、DNAポリメラーゼおよび表面抗原のアミノ酸配列に対応する、図6に示すヌクレオチド配列を有する。
【0077】
当業者は、本明細書記載された以外の本発明のバリエーションおよび修飾物もありうることを理解するであろう。本発明はすべてのかかるバリエーションおよび修飾物を包含することが理解されよう。また本発明は、本明細書において個々に、またはまとめて言及し、または示したすべての工程、特徴、組成物および化合物、ならびに2つまたはそれ以上の該工程または特徴のすべての組み合わせを包含する。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明により、特定の薬剤に対する感受性の低下および/または免疫学的試薬との相互作用活性の低下を示すウイルス変種が提供される。より詳細には、本発明により、ヌクレオシドアナログに対する完全もしくは部分的な耐性および/またはウイルス表面成分に対する抗体との相互作用活性の低下を示すB型肝炎ウイルス変種が提供される。本発明により、かかるウイルス変種を検出するためのアッセイが提供され、該アッセイは抗ウイルス療法のモニタリングにおいて有用である。したがって、本発明は、ウイルス性疾患の診断薬および診断キット、ウイルス性疾患のモニタリング用試薬およびキットなどの製造分野ならびにかかる試薬およびキットを用いる研究および医療関連分野において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA中間体を経て複製する単離DNAウイルスの変種であって、DNAポリメラーゼまたはその一部をコードする遺伝子におけるヌクレオチド変異を含み、該変異がDNAポリメラーゼに対する少なくとも1個のアミノ酸付加、置換および/または欠失を生じさせるものである変種。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−55322(P2012−55322A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276121(P2011−276121)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2008−14075(P2008−14075)の分割
【原出願日】平成9年8月15日(1997.8.15)
【出願人】(507421474)
【氏名又は名称原語表記】Melbourne Health
【Fターム(参考)】