説明

ウイルス感染に対する免疫魚

【課題】Cyprinus carpinoに感染する単離された病気の原因物質およびその単離のための方法の提供。
【解決手段】錦鯉の尾鰭よりCyprinus carpinoを含む細胞片を採取し培養後、培養液よりウィルスを単離・精製したのち錦鯉の鰭細胞で植継ぎ弱毒化を作成し、該ウィルスを感受性魚のワクチン接種のために使用する。また、紫外線照射で弱毒化されて不活化形態のウィルス及び、ウイルスの遺伝的に修飾された形態。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類のウイルス感染の制御に関する。
【0002】
以下の参照文献は、本発明のよりよい理解のためにここに提示され、本発明の特許性に解釈されるべきではない。
【0003】
- Body A., LiefRing F., Charlier G., Collard A., Bull.Europ.Assoc.Fish Path., 20,87-88,2000.
- Calle P.P., McNamara T., Kress Y., J.Zoo and Wild Med., 30,165-169, 1999.
- Dawes J., OFI Journal, 39, 2002.
- Gray W.L., Mullis L., LaPatra S.E., Groff J.M., Goodwin A., J.Fish Dis., 25,171-178,2002.
- Hedrick R.P., Groff J.M., Okihiro M.S., McDowell T.S., J.Wild Dis., 26,578-581,1990.
- Hedrick R,P., Gilad O., Yun S., Spangenberg J., Marty G, Nordhausen R.,
Kebus M., Bercovier H., Eldar A., J.Aqua Animal Health 12,44-55,2000.
- Kim C.H., Dummer D.M., Chiou P.P., Leong J.A., J.Virol., 73,843-849,1999.
- Miyazaki T., Okamoto H., Kageyama T., Kobayashi T., Dis. Of Aqua Organ., 39,183-192,2000.
- Oh M.J., Jung S.J., Choi T.J., Kim H.R., Rajendran K., Kim Y.J., Park M.A., Chun S.K., Fish Path., 36,147-151,2001.
- Sano T., Fukuda H., Furukawa M., Fish and Shel. Path., 32,307-311,1985.
- Sano T., Morita N., Shima N., Akimoto M.,J. Fish Dis., 14,533-543,1991.
- Shchelkunov I., Shchelkunov T., J.Fish Dis., 13,475-484,1990.
- Walster C., Fish Vet.J., 3,54-58,1999.
【背景技術】
【0004】
魚の病気は、米国において魚を飼育するのに費やされる費用1ドル当り20〜30セントの費用がかかることが推定される。魚の病原体は、真菌類、原生動物および細菌性病原体を含むが、魚卵の孵化場所有者が最も関心を寄せるのは、ウイルス性疾患である。これらの大部分が抑制し難いからである。実際、魚のウイルスに対して効果的に作用する有効な抗生物質またはその他の抗ウイルス物質は存在しない。
【0005】
種Cyprinus carpioの大量死が、多くの国の食用および観賞用取引魚の養殖場で観察され、深刻な財政的損失を受けている。致死性の疾患は伝染性が高く非常に悪性であるが、罹患率および死亡率は、錦鯉(Koi)および真鯉(Common carp)の集団では制限される。金魚のような他のCyprinoidsを含む幾つかの近縁種は、同じタンクを共有する罹患した魚との長期間の共同生活の後であっても、疾患に対して完全に無症候性であることが解っている。
【0006】
池および捕獲地における錦鯉、真鯉および他のCyprinoidsの集中的な養殖は、これらの集団中にウイルス性疾患をしばしば蔓延させる。コロナ様ウイルス(Miyazaki, 2000)、ラブドウイルス(Kim, 1999)、イリドウイルス(Shchelkunov, 1990)、およびヘルペスウイルス(Sano, 1985; Hedrick, 1990, 2000; Calle, 1999)は、Cyprinoidsの深刻な疾患の原因となっている。ヘルペスウイルスは、北米の錦鯉の乳頭状の皮膚の成長の中で検出された(Hedrick, 1990; Calle, 1999)。このコイヘルペスウイルス(CHV)は、日本の錦鯉の集団において知られているherpesvirus cypriniと一致している(Sano, 1985, 1991)。イスラエルのCyprinoidsで観察された致死性の疾患は、北米、欧州および韓国においても観察されている(Hedrick, 2000; Walster, 1999; Oh, 2001)。
【0007】
種Cyprinus carpioの大量死を引き起こす疾患は、錦鯉ヘルペスウイルス(KHV)によって引き起こされることが示唆されている。しかしながら、実際にはKHVウイルスは、部分的にのみ特徴づけられている(Hedrick, 2000; Gray, 2002; Body, 2000)。ウイルスの個性とは無関係に、疾病は明確な進行パターンを示す。発病した魚は、緩慢な挙動を示して死に至る。死に至る前に、白色斑点が鰓上に現れる。これらは壊死した鰓組織と大量の粘液生成によって生み出され、出血を伴うことがある(Dawes, 2002)。
【0008】
現在、感染した系統の破壊および孵化場施設の汚染除去を除いて、前記疾患を制御する方法は無い。死亡率は100%程度の高さに達し得るが、ある魚類は生き残り、時には生存率が20%を上回る。これらの魚類はウイルスの二次感染に対して抵抗性となり、これらを再感染させる試みにもかかわらず正常であった。
【0009】
これらのおよび他の関連した観察に基づいて、イスラエルの地方養殖家が、安全で、健康で、販売に適していると考えてよい免疫魚を自然に作り出す7つの工程手順を確立した。
【0010】
この7つの工程手順は、3月に産卵および孵化させ、7月まで選別せずに飼育し、7月の時点で異なる品質分類ごとに選別する。次に、選別された魚をタンク内への罹患魚の導入を通して4日間にわたってウイルスに感染させ、続けて2〜3ヶ月の回復期間を与えた。その後、10月の始めに温度の低下として起こる最適な感染窓を魚に経験させ、最後に1月頃に免疫性について試験を行う。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、Cyprinus carpioに影響を与える疾病の単離された原因物質を提供する。本発明によって、当該物質が未だ未分類のDNAウイルスであることがわかった。
【0012】
本発明の単離されたコイウイルスDNA(本明細書では「CV DNAウイルス」として命名)は、二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな二本鎖DNAのウイルスである。キャプシドは電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさである。コイウイルスのDNAは、パルスフィールドゲル電気泳動および制限酵素の切断から得られた生成物の分析によって決定されたときに約250,000〜300,000塩基対を構成することが解った。このウイルスは、前記文献中に記載されたKHVウイルスとは明らかに異なる。
【0013】
本発明のコイウイルスは、1以上の以下の特徴(以下に記載された特定の単離物質のために見出された)を有することがある:(a)感染性が高い、(b)水を通して伝染させることができる、(c)野外プール中および実験室条件下で観察されたときに18〜25℃の温度範囲で疾病を誘導する、並びに(d)狭い宿主範囲をもつ(cyprinoidsの近縁魚はこのウイルスに対して抵抗性があり、ウイルスはコイ(cyprini)の乳頭状上皮腫(EPC)培養物中では増殖することができなかったからである)。
【0014】
1つの側面として、本発明は、魚のウイルス疾患を引き起こす単離されたCV DNAウイルスを提供する。ここで魚とは、特にCyprinus carpioをいう。
【0015】
1つの実施形態として、本発明の単離されたウイルスは、エンベロープに包まれた、二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな二本鎖DNAウイルスである。キャプシドは電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、ウイルスのDNAは約250,000〜300,000塩基対をもつ。
【0016】
他の実施形態によれば、本発明の単離されたウイルスは、エンベロープに包まれた、二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな二本鎖DNAウイルスであって、キャプシドは電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、ウイルスのDNAは約260,000〜285,000塩基対をもつ。
【0017】
さらに他の実施形態によれば、本発明の単離されたウイルスは、エンベロープに包まれた、二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな二本鎖DNAウイルスであって、キャプシドが電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、ウイルスのDNAが約277,000塩基対をもつ。
【0018】
本発明のCV DNAウイルスを、純粋形態、すなわち他のウイルスまたは微生物材料を含まないように調製することができる。
【0019】
別の側面として、本発明はまた、前記CV DNAウイルスを単離する方法を提供する。当該方法は、CVに関連した症状を示す魚を同定し、感染魚から組織を採取し、細胞変性効果が魚細胞で現れるまで感染組織を魚細胞と共培養し、共培養の培養液を収集してウイルス粒子を単離する。前記細胞は、好ましくは培養された鰭細胞である。魚がコイの場合、細胞はコイの細胞であり、好ましくはコイの鰭細胞(CFCs)である。魚が錦鯉の場合、細胞は錦鯉の鰭細胞である。
【0020】
病原性ウイルスは、典型的には罹患した魚の組織、好ましくは腎臓および肝臓組織または血液から単離することができる。コイの場合では、CFCとの共培養は、典型的には5〜6日間であり、このとき細胞変性効果を観察することができる。
【0021】
本発明はまた、2003年12月12日にフランス、パリ所在のパスツール研究所のthe Collection Nationale de Cultures De Microorganismes(CNCM)に寄託された寄託受け入れ番号CNCM I-3145の病原性CV DNAウイルスに関する。
【0022】
本発明によれば、本発明の単離されたCV DNAウイルスの用途の1つは、CV DNAウイルスによって引き起こされる感染に対する魚のワクチン接種のために使用することができる非病原性のウイルス形態を調製することにある。CV DNAウイルスの非病原性形態は、例えばウイルスの弱毒化された形態、ウイルスの不活化形態、ウイルスの遺伝的に修飾された形態、裸のDNAウイルスおよびこれらの類縁体とすることができる。
【0023】
従って、魚の致死性ウイルス疾患を引き起こすコイDNAウイルスの非病原性形態であって、前記DNAウイルスが二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな二本鎖DNAウイルスであり、キャプシドが電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、ウイルスのDNAが約250,000〜300,000塩基対をもつコイDNAウイルスの非病原性形態が提供される。
【0024】
また、魚の致死性ウイルス疾患を引き起こすコイDNAウイルスの非病原性形態であって、前記DNAウイルスが二十面体形態をもつウイルスキャプシドをもつ大きな二本鎖DNAウイルスであり、キャプシドが電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、ウイルスのDNAが約260,000〜285,000塩基対をもつコイDNAウイルスの非病原性形態が提供される。
【0025】
さらに、魚の致死性ウイルス疾患を引き起こすコイDNAウイルスの非病原性形態であって、前記DNAウイルスが二十面体形態をもつウイルスキャプシドをもつ大きな二本鎖DNAウイルスであり、キャプシドが電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、ウイルスのDNAが約277,000塩基対をもつコイDNAウイルスの非病原性形態が提供される。
【0026】
本発明の1つの特定の実施形態では、単離されたCV DNAウイルスを、前記CV DNAウイルスによって引き起こされる感染に対する魚のワクチン接種のために使用することができるウイルスの生きた弱毒化された形態の調製に使用する。
【0027】
本発明はまた、弱毒化された生ウイルスの単離のための方法を提供する。この方法によれば、上述したように単離されたウイルスの病原性形態をCFC中に播種し、低減した病原性を示すウイルスによって引き起こされるプラークを同定し、このプラークからウイルスを単離する。望ましくは、その後ウイルスを精製することができる。好ましくは、単離されたウイルスを、真鯉または様々な他の魚種{例えば、これに限定されないが、銀コイ(Hypophthalmichthys molitrix)、金魚(Carassius aurata)、および黒コイ(Ctenopharyngodon idella)}から誘導された魚細胞培養液上に再度播種した。その後、実質的に弱毒化された生ウイルスを得るまで何度も同じプロセスを繰り返してもよい。
【0028】
本発明はまた、2003年12月12日にフランス、パリ所在のパスツール研究所のthe Collection Nationale de Cultures De Microorganismes(CNCM)に寄託された寄託受け入れ番号CNCM I-3146のCVウイルスの生きた弱毒化された形態に関する。
【0029】
他の好ましい実施形態では、単離されたCV DNAウイルスを、CV DNAウイルスによって引き起こされる感染に対する魚のワクチン接種のために使用することができるウイルスの不活化形態の調製に使用する。
【0030】
また、上述したCV DNAウイルスを不活化させる方法が、本明細書によって提供される。
【0031】
当該方法は、病原性ウイルスを単離し、これに化学的処理または物理的処理を施し、不活化されたCVウイルスを得る。化学的および物理的処理は、当業者に知られた如何なる処理でもよい。化学的処理は、文献中で当業者に知られた手順に従って、例えば(本発明をこれに限定するものではない)、ホルマリン、アセトン、メタノール、エタノール等の有機溶剤へのウイルスの曝露を伴うことができる。物理的処理は、例えばUV照射または高温または低温を伴うことができる。
【0032】
本出願中に記載された方法または当業者に知られた任意の他の方法によって得られた不活化ウイルスは、最小濃度でもプラークを形成する弱毒化された生ウイルスと比較して、高滴定濃度でもプラークを形成せず、非常に高濃度でのみプラークを形成することができる。
【0033】
さらに他の実施形態では、単離されたCV DNAウイルスを、前記CV DNAウイルスによって引き起こされる感染に対する魚のワクチン接種のために使用することができるウイルスの遺伝的に修飾された形態の調製に使用する。
【0034】
他の側面によれば、本発明は、上述したコイの病気を引き起こすCV DNAウイルスの弱毒化されて生きている形態を提供する。上述したように、前記ウイルスの弱毒化されて生きている形態はワクチン接種のために使用することができる。
【0035】
また、上述したコイの病気を引き起こすCV DNAウイルスの不活化形態を提供する。前記ウイルスの不活化形態はまた、ワクチン接種のために使用することができる。
【0036】
さらなる側面として、本発明は、前記CV DNAウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するためのワクチン製剤を提供する。前記ワクチン製剤は、活性成分として前記ウイルスの非病原性形態を含む。このような非病原性ウイルスの形態は、例えば弱毒化された生ウイルス、不活化ウイルス、またはこれらの組み合わせとすることができるがこれらに限定されない。この態様では、本発明はまた、非病原性ウイルス、例えば弱毒化された生ウイルス、活性化ウイルスまたはこれらの組み合わせの使用方法を提供する。
【0037】
不活化ウイルスはまた、一成分ワクチンとして使用することができ、あるいは上述した弱毒化された生ウイルスまたは当業者によく知られている少なくとも1つの他のワクチンと組み合わせて多成分ワクチンとして使用することができる。不活化ウイルスを、前記少なくとも1つの他のワクチンと同時にまたは異なる時間に投与することができる。例えば、弱毒化された生ウイルスの投与数日前に不活化ウイルスを投与することができる。
【0038】
1つの好ましい実施形態では、非病原性ウイルス形態を含むワクチン製剤は、乾燥形態、例えば粉末形態、凍結乾燥、圧縮されたペレットまたはタブレット形態などである。他の実施形態では、前記ウイルスは組織培養液体の形態とすることができる。前記液体は、好ましくは-70℃の環境で、最も好ましくはグリセロールを含む溶液として貯蔵することができる。1つの特定の例では、組織培養液体は、20%のグリセロールを含む。
【0039】
さらに他の態様では、本発明は、前記CVウイルスによって引き起こされる感染に対する魚の受動免疫のためのワクチン製剤を提供する。前記ワクチン製剤は免疫された魚の血清を含む。前記血清は、前記CVウイルスの弱毒化されて生きている形態で免疫された動物、すなわち魚、馬、豚、ウシ、マウス、ウサギなどから得られる。1つの好ましい場合では、前記動物は魚である。
【0040】
この態様に関して、本発明はさらに、前記CV DNAウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を治療するための方法を提供する。当該方法は、本発明の非病原性CVウイルスで動物を免疫する工程と、免疫された動物の血清を採取する工程と、前記血清で魚を治療する工程と、魚の免疫化を達成する工程とを含む。
【0041】
本発明で開示された様々なウイルス形態は、数多くの方法によって乾燥形態に転換させることができる。特に好ましい乾燥の形態は、凍結乾燥形態である。乾燥、例えば凍結乾燥手順を行う前に、種々の成分、例えば防腐剤、酸化防止剤または還元剤、種々の賦形剤等を溶媒に添加してもよい。また、乾燥工程後にこのような賦形剤を乾燥された(例えば凍結乾燥された)活性弱毒化されたウイルス(active-attenuated virus)に添加してもよい。
【0042】
免疫化は、典型的には非病原性ウイルス形態、例えば弱毒化された生ウイルス、または不活化ウイルス、またはこれらの組み合わせを、免疫対象の魚を含む水に加えることによって行われる。また、ワクチン製剤を魚に直接注入することもできる。免疫応答を増幅させるために、特に注入を目的とした製剤の場合には、製剤は種々のアジュバント、サイトカインまたは他の免疫賦活剤を含んでいてもよい。ワクチン製剤はまた、特に魚を含む水に投入される場合、種々の安定剤、抗生物質等を含んでいてもよい。
【0043】
本発明の他の態様では、本発明のCVウイルスまたはその成分に選択的に結合する抗体が提供される。1つの実施形態では、抗体は、魚のDNAウイルスまたはその成分に特異的に結合する。
【0044】
他の1つの態様では、本発明は、上述したCVウイルスに関連した疾患の診断のための方法に関する。前記方法は、感染の疑いのある魚から組織を単離する工程と、CV DNAウイルスに関連したウイルス標識の存在を判定する工程とを含み、前記ウイルス標識の存在が、検査対象の魚がウイルスに感染していることを示す。
【0045】
本発明はさらに、魚の中のコイウイルスの治療のための、CV DNAウイルスの非病原性形態、例えば本発明の弱毒化された生ウイルスおよびその使用方法についての説明書を含むキットに関する。
【0046】
本発明はさらに、CVウイルスに関連した疾患の診断のための、少なくとも1つの抗体または少なくとも1つの抱合抗体およびその使用方法についての説明書を含む診断用キットに関する。前記キットはさらに、少なくとも1つの対照抗原または前記対照抗原を含む対照組織サンプルを含んでいてもよい。
【0047】
本出願の診断用キットは、本発明のウイルスの存在について、生きているまたは死んでいる魚を診断するために使用してもよい。
【0048】
略語
CFC-コイの鰭細胞; CHV-コイヘルペスウイルス; CNGV-コイ腎炎および鰓壊死ウイルス; CPE-細胞変性効果; CV-コイウイルス; EPC-コイ科の乳頭状上皮腫; HSV-ヘルペス単純ウイルス; KHV-錦鯉ヘルペスウイルス; KFC-錦鯉鰭細胞;PBS-リン酸緩衝食塩水; PFU-プラーク形成単位; PTA-タングストリン酸塩; SDS-ドデシル硫酸ナトリウム; TCI-感染CFCから抽出された全DNA ; TCU-未感染CFCから抽出された全DNA。
【0049】
本発明を理解し、かつ本発明が実際にどのようにして行われるかを見るために、添付の図面を参照しながら、何ら制限のない単なる例として、好ましい実施形態について説明する。
【発明の詳細な説明】
【0050】
以下、いくつかの制限のない特定の実施形態を参照しながら本発明を例示する。
【0051】
上記および下記に使用された用語「コイDNAウイルス」(CV DNAまたはCVウイルス)または「コイ腎炎および鰓壊死ウイルス」(CNGV)は、上記および下記に概略された特徴をもつ本発明の新規なウイルスを示すのに使用される、代替的かつ同義的表現として使用される。これらの用語、すなわちCVまたはCNGVは、前記ウイルスの如何なる特定の単離にも本発明を限定するものではない。本明細書中に記載された新規な特徴をもつあらゆるウイルスが本発明に含まれる。
【0052】
用語「ウイルス」とは、本出願の中では、下記の特別に単離された株の近縁株に限定されず、この単離された株と類似の遺伝子型および/または表現型の特徴を共有するあらゆる株をいう。これは、同じ機能的活性を保つ多少修飾された形態やウイルスの変異体、すなわちアミノ酸またはヌクレオチドの付加、欠失、交代を含む。
【0053】
用語「非病原性ウイルス形態」とは、本発明の中では、全ての疾患発生能力を欠損しているウイルスをいうがこれに限定されない。このような非病原性ウイルスは、弱毒化されたウイルス、不活化ウイルスおよび能動および受動免疫を含む全ての種類の免疫に使用される類縁物質としてもよい。また、本明細書中に記載された疾患を引き起こす能力が弱められたあらゆる天然の非病原性対応物質が本発明の範囲内に含まれる。
【0054】
用語「魚」とは、CVウイルスによって影響を受けるあらゆる水産養殖魚をいい、食用および観賞用取引魚を含み、これらの魚の発育の全ての段階、例えば幼生、稚魚、成魚を含む。また、この用語のもとでは、CVウイルスによって影響を受けるおそれのあるあらゆる他の水産養殖生物が含まれる。さらに、CVウイルスに感染した罹患コイのあらゆる特徴的挙動を発現または表示しない感染性動物が含まれる。
【0055】
図1では、汚染された孵化場から採取された感染試料に捕獲したナイーブ魚をさらした。汚染試料に接触した魚は、高い死亡率を示した。平均で74%(各々、87および84匹)の魚が接触後8〜13日で死亡した。しかしながら、対照魚の全ての魚は実験の21日期間中生存していた。
【0056】
死亡する3〜4日前、魚は摂食を止め、異常な挙動、例えば浅水における疲労およびあえぎの動きを示した。さらに、魚は、神経疾患の特徴であるぎこちない動きおよび迷走性の泳ぎを示した。神経性の徴候、例えば尾鰭の動きの回数の減少、平衡感覚の喪失が数匹の魚で観察された。似たような症状がアメリカ合衆国の錦鯉および真鯉において報告されている(Hedrick, 2000)。これらの徴候に続いて鰓組織の激しいネクローシス、表在性出血および表皮上の粘膜分泌の増加が起こる。罹患魚の検死によって、二次的感染の症状として現れる肝臓の点状出血および他の一貫性のない病的変化が明らかになった(データは示していない)。
【0057】
タンク内で行われた類似の実験において、29℃の温度で魚を孵化したところ、全ての感染魚が22日間にわたって生き残った(データは示していない)。これらの結果は、疾患を引き起こすウイルスが水を通して簡単に伝染し、強い感染性があることをはっきりと示している。ウイルスは高い死亡率を与えるが、疾患の発症は、18〜25℃の水温に限定される。
【0058】
本発明に基づいて、上記に特徴づけられたCVウイルスを単離する方法を提供する。前記方法は、CVウイルスと関連した症状を発症する魚を同定する工程と、感染した組織とコイ鰭細胞とを細胞変性効果が起こるまで共培養する工程と、CFCと感染した組織との共培養から培養液を採取する工程と、ウイルス粒子を単離する工程とを含む。
【0059】
1つの特定の例では、以下の手順に従って、ウイルスを感染試料から単離した。感染した魚の腎臓(11試料)および肝臓(5試料)から採取された細胞とCFCとを共培養すると、接種後5〜6日で細胞変性効果(CPE)が現れた。一方、罹患コイから採取された脳の血液細胞または血清との共培養ではCPEは現れなかった。共培養10日目で培養細胞はフラスコ底への付着性を喪失し死に至った。腎臓または肝臓細胞と共培養したCFCから採取された培養液(感染後5〜7日)を、最初に遠心処理によって細胞および細胞破片から浄化し、次に新鮮なCFCフラスコ中でウイルスの力価を測定するのに使用した。
【0060】
感染CFC培養物から採取した培養液を遠心処理によって浄化し、スクロース勾配上で精製した。37〜39%スクロースでの明確なバンドを勾配から取り出し、PBS中で10倍に希釈し、遠心処理によってペレット化した。前記ペレットを500μlのPBSで懸濁し、CFCでの力価測定および電子顕微鏡分析のためのサンプルを調製した。培養液中の精製されたウイルス標本の力価は、106〜107PFU/mlであった。図2は、細胞破片を完全に取り除いたこの標本の一対のウイルス粒子を示す。前記粒子はネガティブ染色され、ヘルペスウイルスのコアに類似している103nmの平均コア直径をもつ、対称性の正二十面体の形態を示す(Riozman et al., Exp. Med. Biol., Vol.278, 285-291, 1990)。
【0061】
表1Aは、未感染CFCからの浄化された培養液を播種したナイーブ魚は無症候性を保つことを示す。しかしながら、感染した細胞の抽出物または感染した培養物から採取された浄化された培養液を播種した魚の75%および82%が、腹腔内注入後15日以内に死亡した。これらの魚は、池で生育した感染魚に観察される病理的徴候と同一の典型的な病理的徴候を発現した。
【0062】
疾患症状を示す播種された試料から取り出された腎臓細胞をCFCと共培養した。共培養された培養物から採取されたウイルスの滴定濃度は、表1Bに示したように、プラーク検定によって決定されたときにCFC上で1.5×102〜1.8×102PFU/mlであった。これらの感染CFCから採取された培養液をナイーブ若年魚に再注入するために使用した。10匹のうち4匹の魚が感染後9〜14日で疾患が原因で死亡した(表1C)。
【0063】
3回連続的に繰り返されたこの「ピン-ポン」型の実験は、感染魚から単離されたウイルスおよびCFC中で増殖したウイルスが実際に疾患の病的因子となっているという事実をはっきりと証明している。
【表1】

【0064】
図3Aは、フェノール抽出によって精製されたウイルスから得られたウイルスDNAゲノムの比較を示す。これらの様々な手順を以下に示す:プロテイナーゼKおよびSDSでのインキュベーション(図3A、レーン2)、SDS単独でのインキュベーション(レーン3)、プロナーゼおよびSDSでの処理(レーン4)および前処理なし(レーン5)。DNA標本をアガロースゲル電気泳動(0.8%)によって分析した。ゲノムCV DNAは、アガロースゲル中においてλファージマーカーDNAに基づいた25〜35Kb DNAのところまで移動している。マーカーとして使用したCla Iで開裂された鎖状アデノウイルスプラスミド(pAdEasy-1)DNA(レーン6)は、おおよそ同じ距離まで移動した。
【0065】
CVゲノムDNAの重量を決定するために、図3Bに示すように、図3Aに記載された同一のDNA標本をパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によって分析を行った。4つのCV DNA標本の全てが、λDNAマーカーの250〜300Kbマーカーのところまでゲル中を非常にゆっくりと移動した。また、鎖状プラスミドDNAではない環状pAdEasy-1は、150〜200KbのλDNAマーカーのところまでゲル中をゆっくりと移動した。
【0066】
CVが約275kbの大きなDNAウイルスであることのさらなる支持が、CV DNAの制限酵素消化によって得られた。これを図3Cに示す。図3Cのレーン1は、約275kbである未切断CV DNAのサイズを示す。Swa Iでの切断物質は、20および255kbの2つのバンドを生じた(レーン2)。
【0067】
クーマシーブルー染色を使用するCVウイルスタンパク質の分析は、CVがアデノウイルスおよびHSV-1ウイルスとは明確に異なることを示した。
【0068】
さらに、図4に示すように、ウサギ抗コイウイルス抗体で染色すると、血清はCVタンパク質のみと反応し、ヘルペスまたはアデノウイルスタンパク質とは反応しないことが明らかになった。
【0069】
従って、本発明の他の態様では、本発明のCVウイルスまたはその成分と選択的に結合する単離された抗体を提供する。1つの実施形態では、抗体は固定化形態である。
【0070】
BamHI-EcoRIウイルスDNA断片をBluescriptプラスミドにクローン化し(Alting-Mees et al., Nucl. Acids Res., Vol. 17, 9494, 1989)、ウイルスDNAのクローンをBLASTプログラムによって配列決定および分析を行った(Altchul et al., Nucl. Acids Res., Vol. 25, 3389-3402, 1997およびShort et al., Nucl. Acids Res., Vol. 16, 7583-7600, 1988)。クローンA〜Dの配列から誘導された内部プライマーを使用することによって、クローンがウイルスDNAを発現することを証明した。図5は、クローンDから誘導されたプライマーが、例えば未感染CFCおよびナイーブ魚由来のものではなく、ウイルスDNA、感染培養細胞のDNAおよび罹患魚由来の適切な断片を増幅させるのに有効であることを示す。また、同様の結果をクローンA〜Cから得た(結果は示していない)。CVゲノムから誘導された3,500bpを越える分析物は、ジーンバンクに登録されたウイルスゲノムに対して45bpよりも長い断片の相同性を示さなかった(図6)。CVクローンは他のウイルスに対して小さな断片の相同性のみを有するが、これらの配列の多くがヘルペスウイルスおよびバキュロウイルスファミリーの一員から誘導される。
【0071】
1つの態様として、本発明は、CVウイルスと関連した疾患を診断するための方法に関し、前記方法は、感染の疑いのある魚から組織を単離する工程と、CV DNAウイルスに関連したウイルス標識の存在を判定する工程とを含み、前記ウイルス標識の存在が、検査対象の魚が本発明のウイルスに感染していることを示す。
【0072】
用語「組織」とは、ある特定の器官から得られた任意の組織、幾つかの器官から得られた組織、魚全体、または血液に関する。さらに、この用語のもとでは、病気の診断のために使用された任意の器官またはこれらの一部分が含まれる。好ましくは組織は、鰓、腎臓、脾臓、肝臓、または腸から採取された組織である。
【0073】
前記診断方法によれば、疾患を上述したようにPCRによって診断することができるがこの方法に限定されない。また、以下に説明するように免疫組織化学によって診断することもでき、および/または以下に説明するように抗ウイルス魚血清をELISAによって試験することによって診断することもできる。
【0074】
また、前記方法では、例えばAP(アルカリホスファターゼ)、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)、およびFITC(フルオレセインイソチオシアネート複合体)を様々な診断手順の中で使用する(例についての実験の部を参照)。
【0075】
別の態様によれば、本発明は、前記CV DNAウイルスの弱毒化されて生きている形態を提供する。用語「弱毒化されて生きている」または「弱毒化」とは、病原性を喪失したウイルス形態またはウイルスがその疾患を生み出す能力を失う過程をいう。様々な手法が弱毒化された生ウイルスの開発のために知られている。弱毒化は、疾患が発生しない体のある部位に感染を制限することによって達成することができる(Virology, 2nd ed., Raven Press, NY, 1990)。また、弱毒化は、アンナチュラルな宿主から調製された細胞培養物中でのウイルスの連続的継代によって達成することができる。継代の間、ウイルスは変異を維持する。
【0076】
弱毒化された生ウイルスワクチン、例えば本発明のものを使用する幾つかの利点がある。一般に、生ウイルスワクチンは、免疫系の全ての段階を活性化させる。その結果、全身的および局所的に免疫グロブリンおよび細胞が介在し、バランスのとれた応答をもたらす。生ウイルスワクチンはまた、ウイルスの各々の防御抗原と反応する免疫を刺激し、不活化ワクチンの調製中に生じるおそれのある防御抗原の1つの選択的破壊から生じる困難性を取り除く。さらに、生ウイルスワクチンによって導入された免疫は、一般に不活化ワクチンによって導入された免疫よりも持続性、有効性および交差反応性に優れている。また、コストがかからず、投与が容易である(Virology, 2nd ed., Raven Press, NY, 1990)。
【0077】
さらなる態様として、本発明は、魚細胞の培養物、好ましくは錦鯉または真鯉の尾鰭および背鰭から得られた培養物中の病原性ウイルスを播種する工程と、低減された病原性をもつウイルスによって引き起こされるプラークを同定する工程と、このプラークから後代ウイルスを単離する工程とを含む、前記弱毒化された生ウイルスを単離する方法を提供する。
【0078】
単離されたウイルスを、真鯉または様々な他の魚の種、例えばこれらに限定されないが銀コイ(Hypophthalmichthys molitrix)、金魚(Carassius aurata)、および黒コイ(Ctenopharyngodon idella)から得られた魚細胞培養物に再度播種してもよい。好ましくは、前記他の魚の種は、金魚(Carassius aurata)であり、弱毒化された生ウイルスが実質的に得られるまで当該プロセスを何度も繰り返した。
【0079】
当該方法は、さらに前記単離されたウイルスを精製する工程を含んでいてもよい。
【0080】
1つの特定の例では、第4トランスファー(P4)からのウイルスは病原性が認められたが、第20トランスファー(P20およびそれ以上)からのウイルスでは病原性の減少が認められ、弱毒化が認められた。第25トランスファー(P25)以降では、ウイルスは疾患を引き起こす能力を完全に失った。非病原性ウイルスのクローンを単離し、その非病原性特性およびワクチン接種の可能性について評価した。
【0081】
細胞培養物中のP4のウイルスから採取された培養液および細胞抽出物を、若年ナイーブコイの腹腔内注入および浸漬によって疾患誘導のために使用した。
【0082】
1つの好ましい実施形態では、弱毒化された生ウイルスを単離する方法は、前記弱毒化された生ウイルスを含む培養液を乾燥する工程、好ましくは凍結乾燥を通して乾燥する工程をさらに含む。
【0083】
他の実施形態によれば、前記方法は、防腐剤および/または還元剤および/または糖類を培養液および/または乾燥粉末に添加する工程をさらに含んでいてもよい。
【0084】
弱毒化されたウイルスを安定化させ、野生の表現型への復帰を防止するために、ランダムな変異を例えば化学的または物理的処理を通してウイルスゲノムに導入してもよい。化学的処理は、種々の異なる変異誘導物質、例えば5-ブロモデオキシウリジンまたは5-アザシチジンを使用してもよく、物理的処理は、紫外線照射を利用してもよい(サンプルから10cmの距離で260nm、5〜30秒間)。ウイルスに感染した細胞を変異誘導物質で処理し、各薬剤の用量反応曲線を決定することができる。変異体を単離する確率を最大にするために、致死量の半分を使用してプラークを採取するべきである。変異の入ったウイルスをCFCまたはKFC中で増殖させ、10グラムの魚に注入することによってワクチンとしての可能性について試験を行った。上述したようにP4で感染させた。物理的処理の場合において同じ処理を必要な変更を加えて行ってもよい。
【0085】
前記コイウイルスを単離する方法と前記弱毒化された生ウイルスを単離する方法に関して、本発明は、前記プロセスのいずれかによって得られたコイウイルスをさらに含む。
【0086】
本発明は、上述したCVウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するためのワクチン処方の調製のための弱毒化された生ウイルスの使用を含む。前記処方は、上述したように生成された弱毒化された生ウイルスを活性成分として含む。
【0087】
本発明の文脈における用語「ワクチン」とは、本発明のウイルスによって引き起こされる感染に対して免疫反応を生み出すことができる物質をいう。このようなワクチンは、予防目的または治療目的で免疫を引き起こすことができる。ワクチンは、生きているまたは不活化された(もしくは「死んでいる」)ウイルスまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0088】
本発明の文脈における用語「免疫化」または「免疫反応」とは、ウイルス感染に対して体液性および/または細胞性免疫反応を誘導することができる免疫、あるいはウイルスの活動、蔓延、または増殖を妨げることができる免疫をいう。本発明のワクチンによって免疫された魚では、感染性ウイルスの増殖および蔓延を制限または排除することができる。
【0089】
本発明の1つの実施形態では、前記処方は、免疫調節アジュバント、安定剤、抗生物質、免疫賦活物質または他の物質をさらに含む。
【0090】
アジュバントは貯蔵効果をもち、ゆるやかに機能して長時間にわたって免疫を刺激する。魚では、弱い抗原のみが効力を生じ、ワクチンがアジュバントを組み込んだときに長期間の保護作用を与える。これらのアジュバントは、医学および獣医学において既に使用されているものから採用される。アジュバントは、親水性アジュバント、例えば水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウム、または疎水性アジュバント、例えば鉱油ベースのアジュバントとすることができる。
【0091】
安定剤、例えばラクトースを、種々の条件、例えば温度変化または凍結乾燥プロセスに対してワクチン処方を安定化させるために加えることができる。抗生物質、例えばネオマイシンおよびストレプトマイシンを添加し、病原菌の増殖を防ぐことができる。免疫賦活物質は、ワクチンによって与えられた保護作用を増強することができ、数多くの疾患に対して非特異的な保護作用を提供することができる。多くの化学物質および他の物質は、多くの化学物質および他の物質、すなわち化学物質およびグルカン、藻類アルギン(アルギン酸シリリック(silylic)エステル)からの抽出物およびサイトカインが、魚の免疫を刺激する性質をもつ物質として報告されている。
【0092】
弱毒化された生ウイルスは、ワクチンの乾燥形態中で使用されたとき、再形成液体、好ましくは滅菌水、生理食塩水または生理的溶液をさらに含むことができる。また、製造プロセスからの小量の残留物質、例えば細胞または細菌タンパク質、卵タンパク質、DNA、RNAなどを含んでいてもよい。これらの物質はそれ自体は添加物ではないが、それでもワクチン処方中に存在していてもよい。
【0093】
他の態様では、本発明は、CVウイルスに対する魚の免疫のためのワクチン処方を提供し、前記ワクチン処方は、上記に特徴づけられたような弱毒化された生ウイルスを含む。1つの好ましい実施形態では、前記ワクチン処方は、上述したように免疫調節アジュバント、安定剤、抗生物質、免疫賦活物質または他の物質をさらに含む。
【0094】
1つの特定の実施形態では、前記処方は、前記乾燥形態の弱毒化された生ウイルスを含む。他の実施形態では、前記処方は、前記弱毒化された生ウイルスを含む組織培養液または魚の生理食塩水を含む。前記液体は好ましくは-70℃で維持され、最も好ましくは前記液体はグリセロールを含む。
【0095】
他の別の実施形態では、前記処方は、細断化された感染魚または細断化された魚の器官を、好ましくは乾燥形態で含む。前記細断化された感染魚または魚の器官は、弱毒化されたウイルスに魚を感染させる工程と、前記感染魚またはその任意の器官を感染後5〜6日して細断化する工程とを含むプロセスによって調製することができる。
【0096】
1つの実施形態では、前記プロセスは、前記細断化された魚または魚の器官を乾燥する工程、好ましくは凍結乾燥を通して乾燥する工程をさらに含む。別の実施形態では、前記プロセスは、防腐剤および/または還元剤および/または糖類を、細断化された魚または魚の器官および/またはその乾燥粉末に添加する工程を含む。
【0097】
1つの好ましい実施形態では、ワクチン処方は、アジュバントまたは免疫賦活物質を含まない少なくとも1つの再形成液体中に乾燥形態の弱毒化された生ウイルスを溶解または懸濁させることによって調製される。
【0098】
本発明はさらに、上述したCVウイルスによって引き起こされるウイルス感染に対して魚を免疫するための方法に関し、前記方法は、感受性の魚に対して弱毒化された生CVウイルスで構成されたワクチン処方を投与する工程を含み、上述したようにワクチンは、CVウイルスによる後の感染に対する免疫を導入するのに十分な量で投与される。
【0099】
弱毒化された生ウイルスを、経口的に、例えば、餌を介してもしくは強制的な経口投与によって、または注射によって水産養殖魚個々に投与することができる。代わりに、弱毒化された生ウイルスを、水域中に含まれる魚の集団全体に対して、水域中にウイルスを散布、溶解および/または浸漬させることによって同時に投与してもよい。これらの方法は、全ての種類の魚、例えば食用および観賞用魚のワクチン接種について有用であり、様々な環境、例えばこれに限定されないが、池、水族館、天然生息地および清水貯水池において有用である。
【0100】
他の態様では、1日齢の幼生、餌を最初に摂取する頃の稚魚、または成魚に対してワクチンを投与する。
【0101】
本発明はさらに、前記CVウイルスによって引き起こされる感染に対する魚の受動免疫のためのワクチン製剤を提供する。ワクチン製剤は、免疫化された魚の血清を含む。前記血清は、前記CVウイルスの弱毒化されて生きている形態で免疫された動物、すなわち魚、馬、ブタ、ウシ、マウス、ウサギ等から得られる。1つの好ましい場合では、前記動物は魚である。
【0102】
受動免疫は、接触前後の予防法として使用することができる。しかしながら、魚が既にウイルスにさらされている池および水産養殖地において最も有用である。上記に開示された任意の1以上の方法、好ましくは経口的に、より好ましくは注射によってワクチンを投与することができる。
【0103】
本発明はさらに、この態様に関して、前記CVウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を治療するための方法を提供する。前記方法は、本発明の弱毒化されたCVウイルスで動物を免疫する工程と、免疫化された動物の血清を収集する工程と、魚を前記血清で治療する工程とを含み、これによって魚の免疫化を達成する。
【0104】
本発明はさらに、CVウイルスの少なくとも一部から誘導されたヌクレオチド配列を含む遺伝子構築物を提供する。前記遺伝子構築物は、コイウイルスの全ての自然に生じるゲノム、そのcDNA等価物、および/またはCVウイルスの少なくとも一部のゲノムから誘導されたヌクレオチド配列を含む全ての組換え型構築物を含んでいてもよい。
【0105】
特定の実施形態では、魚、好ましくは錦鯉および真鯉の免疫反応を誘導するために、ウイルスタンパク質、特に本発明のCVウイルスのエンベロープタンパク質の発現を誘導できるヌクレオチド配列をもつ発現ベクターを含むワクチン処方が提供される。発現ベクターは単独で投与してもよいし、あるいは少なくとも1つの他の疾患に対する同時免疫のために、同じまたは別の発現ベクターにおける少なくとも1つの他のヌクレオチド配列と組み合わせて投与してもよい。魚における標的細胞のタンパク質の発現が免疫反応を誘導する。発現ベクターが異なる疾患に関連したタンパク質またはポリペプチドをコードする場合、得られる免疫反応は、本発明のCVウイルスと他の疾患の両方に対する免疫を提供することができる。
【0106】
本発明の他の態様では、ウイルスタンパク質、特に本発明のCVウイルスのエンベロープタンパク質の発現を誘導することができるヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0107】
前記ベクターの使用の1つは、免疫反応を誘導するためのワクチン処方を魚に投与することを含む、水産養殖魚に免疫反応を誘導するものである。前記処方は、前記コイウイルスの1以上のタンパク質についてコードするヌクレオチド配列と、コイ細胞の前記ヌクレオチド配列の発現についての調節配列とをもつ発現ベクターを含む。
【0108】
本発明はさらに、魚におけるコイウイルスの治療のための弱毒化された生ウイルスおよびその使用方法についての説明書を含むキットに関する。弱毒化された生ウイルスは、乾燥形態であってもよいし、または溶液で、好ましくは-70℃の環境で維持された組織培養液の形態で、もしくはグリセロールを含む溶液として再構成されてもよい。前記キットはまた、細断化された魚または魚の器官の形態(好ましくは乾燥形態)における弱毒化された生ウイルスを含む。ウイルスが乾燥形態にある場合では、前記キットはさらに液体に戻すための液体を含む。1つの好ましい実施形態では、弱毒化された生ウイルスは乾燥状態である。他の実施形態では、弱毒化された生ウイルスを-70℃で維持した。前記キットは、大気環境下、好ましくは真空下で貯蔵することができる。
【0109】
本発明はさらに、本発明のCV DNAウイルスまたはその断片に対して選択的または特異的に結合する抗体を提供する。用語「抗体」とは、IgG、IgM、IgD、IgA、およびIgG抗体をいう。この定義は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含む。この用語はまた、抗-CLH産物抗体の抗原結合ドメインを含む抗体全体または抗体の断片、例えばFcタンパク質を持たない抗体、一本鎖抗体、特に可変領域のみからなる断片、抗体の抗原結合ドメインなどをいう。本出願の内容における用語「選択的」とは、上記に定義したような抗体であって、他のDNAウイルスと比べてCV DNAウイルスに対してより高い親和力をもって結合する抗体をいう。この親和力は統計試験に基づいて有意であるとみなされる。
【0110】
本発明はさらに、CVウイルスに関連した病気の診断のための少なくとも1つの抗体または少なくとも1つの抱合抗体およびその使用方法についての説明書を含む診断用キットに関する。前記キットはさらに、少なくとも1つの対照抗原または前記対照抗原を含む対照組織サンプルを含んでいてもよい。少なくとも1つの抗体または前記少なくとも1つの抱合抗体は、溶液状態または乾燥状態にある。少なくとも1つの抗体または少なくとも1つの抱合抗体が乾燥形態にある場合、前記キットは、反応のための適切な溶液をさらに含む。本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つの抱合体は酵素であり、この場合において、前記キットは、検出反応のために必要な少なくとも1つの基板をさらに含んでいてもよい。
【0111】
本出願の診断用キットは、本発明のウイルスの存在下で生きている魚または死んでいる魚を診断するために使用することができる。1つの実施形態に基づいて、診断用キットは、本出願のワクチンまたは当業者に知られた任意の他のワクチンで処理後の魚の免疫化の程度を評価するために使用することができる。この場合、生きた魚から血液を採取し、診断キットを使用して免疫化の程度(すなわち、試験魚が病気であるか否か)および蔓延の程度を評価することができる。魚が感染していないことがわかった場合、これらの魚を水産養殖場に戻すことができる。
【0112】

概要
魚: 42グラムの平均体重をもつ錦鯉または真鯉を、500Lタンク中22〜24℃に保った水温
で0.9L/minの新鮮な水を加えながら飼育した。
【0113】
電子顕微鏡: 精製されたウイルス製剤を、2%リンタングステン酸塩でネガティブ染色した。グリッドをフィリップス120電子顕微鏡で80kVで調査した。
【0114】
例1:細胞培養物の調製
50グラムの錦鯉または真鯉の尾鰭を麻酔をかけた魚から切り取った。1%次亜塩素酸ナトリウム溶液中に1分間浸し、その後、70%エタノール中で数秒間すすいだ。次に、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むPBS中で0.5分間で3回洗浄を行った。鰭をペトリ皿に移し、はさみを使って縦横に細断し、約1mm3の半乾燥の小組織断片を乾燥50ml培養フラスコ中に静置した。室温での60分間のインキュベーション後、フラスコに付着している凝集塊を、1%HEPESおよび抗生物質が追加された、60%ダルベッコ改変エッセンシャル培地(DMEM)および20%リーボビッツL-15培地(Biological Industries, Kibbutz Beit Haemek, Israelによって供給)、10%ウシ胎仔血清(FCS)(Biological Industries, Kibbutz Beit Haemek, Israel)、10%トリプトースリン酸塩を含む培養液で覆った。22℃で10〜14日間にわたりインキュベーションを行い、細胞を組織で増殖させ、各凝集塊の周辺に単層を形成させる。単層の培養物をトリプシン処理し、新鮮培地の入った新しいフラスコに移した。鰭凝集塊を新しいフラスコに移し、一次細胞の新しい単層培養物を形成させてもよい。
【0115】
例2:培養液からのウイルスの精製
感染CFCから収集した培養液から、10,000×gで10分間にわたって遠心分離することによって細胞および細胞細片を取り除いた。その後、ベックマンTi-60ローター中で10,000×gで50分間にわたって遠心分離することによってウイルスをペレット化した。ペレットをPBS中で懸濁し、PBS中で調製された15〜65%(w/v)スクロース勾配上にロードし、ベックマンSW28ローター中で110,000×gで60分間にわたって遠心分離した。バンドをチューブからアスピレートし、PBSで10倍に希釈して再ペレット化した。ペレットをPBS中で懸濁し、さらなる調査のために-75℃で凍結した。
【0116】
例3:ウイルスDNAの精製およびプラスミドの構築
精製したウイルスペレットを、0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むTNE緩衝液(l0mM トリス pH7.8, 100nM NaClおよび1nM EDTA)中で懸濁した。ウイルスをプロテイナーゼK(50μg/ml)で3時間にわたり処理した。ウイルスDNAをフェノールで抽出し、エタノールによって沈殿させ、DNAペレットをTNEで懸濁した。
【0117】
ウイルスDNAをBamHIおよびEcoRIで開裂し、断片をBluescript II KSプラスミド中でクローン化した(Alting et al., Nucl. Acids Res., Vol. 17, 9494, 1989)。挿入したウイルスDNA断片を、T7およびT3プライマーを使用してPCRによってシークエンスし、その配列をスタンダートBLASTプログラムによって分析した(Altschul et al., Nucl. Acids Res., Vol.25, 3389-3402, 1997およびShort et al., Nucl. Acids Res., Vol.16, 7583-7600, 1988)。
【0118】
例4:PCR分析による病気の診断
細胞のDNAをフェノールによって細胞から抽出し、例3で示したようにエタノールによって沈殿させた。Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 2001, pp 6.7-6.10で記載したようにpH7.4のTE(トリス-EDTA)緩衝液中にDNAペレットを懸濁した。ウイルスDNAのクローンD(図6を参照)から誘導された、プライマーAP1、AP2およびAP3、すなわち:5'-CCCATGAGGCTGAGGAACGCCG-3', 5'-GCACCCCCGTGATGGTCTTGC-3', および5'-GGAAGATGAGGGCCAGTATGTG-3'を、ウイルスDNA断片のPCRによる増幅のために使用した。94℃45秒間、55℃30秒間、および72℃45秒間の30サイクルによってDNAを増幅した。1%アガロースゲル(w/v)および0.5×TAE上でPCR産物を分離して分析を行った。
【0119】
例5:間接免疫蛍光顕微鏡による疾患の診断
コイウイルス(CV)に対する抗体を産生するために、フロイントの完全アジュバントで1:1に乳化された0.1mgの精製CVでウサギを免疫した。10日間隔で3回、フロイントの不完全アジュバントで1:1に混合された0.05mgの精製CVでウサギを追加免疫し、一次免疫7〜10週間後の間に3回にわたり採血を行った。抗体を含む血清を血餅から分離し、正常な魚の組織から調製した乾燥粉末上に吸収させ、非特異的かつ非ウイルス性の細胞性抗体を除外した。
【0120】
腎臓、脾臓、肝臓および脳を、正常および罹患魚から取り出し、タッチインプリントスライドの調製のために使用した。タッチインプリントスライドを、3%パラホルムアルデヒド中で固定し、PBSで洗浄し、50%FCSを含む低脂肪ミルクで60分間にわたってインキュベーションすることによってブロックした。次に、前記スライドをウサギ抗CV抗体で1時間にわたってインキュベートし、PBSで洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート抱合ブタ抗ウサギ抗体で1時間にわたってインキュベートし、PBSで洗浄し、40×planapochromat対物レンズを備えたNikon Microphot-FX顕微鏡で紫外光下で分析を行った。
【0121】
ウサギCV抗血清を使用して感染魚のウイルスの局在性を決定した。ナイーブ魚からではなく感染魚から取り出された腎臓のタッチインプリントは、ウサギCV抗血清でポジティブ標識し、ウイルスが腎臓中に大量発生していることを示した。これらの結果は、PCRの実験および腎臓に大量の感染性ウイルスが潜むことを示す他の実験と一致した。罹患魚の脳および肝臓のウイルス量はかなりの量であるが、腎臓中のウイルス量よりは少ないことがこの技術によって明らかになった。免疫されていないウサギ血清で処理されたナイーブ魚または罹患魚から調製された同じ器官の対照タッチインプリントスライドは、蛍光物質抱合ブタ抗ウサギ血清では染色されなかった。脾臓タッチインプリントまたは罹患魚由来の血液塗沫標本ではウイルス抗原を検出することはできなかった。
【0122】
例6:抗ウイルス魚血清の試験による疾患の診断
ELISAプレートを、精製されたウイルス製剤でコートし、ミルクおよび/またはゼラチンでブロックした。PBSで3回洗浄した後、ウェルを試験魚の血清で覆い、室温で1時間にわたってインキュベートした。プレートを再度洗浄し、ウサギ抗魚IgBで1時間にわたって処理し、再度洗浄を行った。ELISA基体でインキュベートされ、ELISAリーダーによって読み取られた魚抗ウイルス血清の力価を、アルカリフォスファターゼ抱合ヤギ抗ウサギ血清を使用して決定した。
【0123】
例7:免疫化のための最適な魚の年齢の決定
200日齢の幼生のグループを、10mlのP4溶液を加えた5Lプール中で50分間にわたって遊泳させることによってP4で感染させた。幼生を感染後20日間にわたって23℃の水温に維持し、疾患を進行させた。感染させた幼生は、未感染幼生と比較してより低い生存率を示した。感染から生き残った幼生を45日経過まで維持した。この段階で、幼生についての上述したのと同じ手順で、この稚魚をP4溶液に再感染させた。
【0124】
詳述したように感染した稚魚に加えて、ウイルスには予め感染していない同じ孵化場の45日齢魚の第2グループを、初めてウイルスにさらした。1日経過時点で感染から生き残った稚魚は、初めてウイルスにさらされた同じ日齢の魚と比べて45日経過時点で疾患に対する十分な抵抗性を示した。
【0125】
これらの実験は、45日齢以上の魚(7グラム)が非常によく免疫されることを示した。より軽量の魚、すなわち2.5〜3グラムでもよく免疫されたが、約20%のより高い死亡率が観察された。
【0126】
例8:病原性ウイルスでの魚の感染
50匹の10グラムの魚を含む幾つかのグループを、各々の魚に0.2mlのウイルスを(I.P)注入することによってP4病原ウイルスで感染させた。対照グループは、生理学的溶液(PBS)で感染させた魚からなる。図7Aが示すように、80%の魚が注入後10〜25日で死亡した。
【0127】
感染で生き残った魚、すなわち感染グループの20匹の魚と対照グループの50匹の魚を35日後に再感染させた。再感染を、疾患魚との共同飼育によって達成した。図7Bが示すように、初期感染で生き残った魚は、ウイルスに対して免疫を獲得し、30%の魚だけが疾患で死亡した。しかしながら、初めてウイルスにさらされた魚では、100%近い高い死亡率が観察された。
【0128】
例9a:弱毒化された生ウイルスでの魚の感染
25匹の10グラムの魚を含む魚の2つのグループに対して、0.3mlのP25弱毒化されたウイルスを6×103 PFU/mlの濃度で注入した。ネガティブ対照グループとして、25匹の魚に生理食塩水を注入し、ポジティブ対照グループとして、25匹の魚に病原性P4ウイルスを0.3×103 PFU/mlの濃度で注入した。注入後、30日間にわたり病気を進行させる条件下で魚を維持した。
【0129】
図8Aから観察されるように、弱毒化されたウイルスを注入したほとんど全ての魚は、病原性形態を注入したものと比較して病気を進行させなかった。
【0130】
弱毒化されたウイルスを注入して生き残った魚に対して、初期感染30日後に罹患魚と共同飼育することでウイルスへの再感染を行った。図8Bが示すように、魚は、病気に対して高度の耐性を示した。注入によって弱毒化されたウイルスに最初にさらされた魚の約5%のみが感染した。
【0131】
この実験は、コイウイルスに対して魚を免疫する弱毒化された生ウイルスの能力を実証する。このタイプの実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。
【0132】
例9b:弱毒化されたウイルスの有効性
錦鯉の鰭細胞(KFC)を、トランスファーP26の希釈されたCVウイルスに感染させ、その後寒天の上に置いた。4つの別々のプラークからのウイルスを採取し、力価を測定し、ナイーブ魚に腹腔内注入を行った。対照グループの魚にはPBSを注入した。魚の死亡率を25日間にわたってモニターした。この時点では非常に少数の魚が死亡した。25日目、罹患魚との共同飼育によって魚を再感染させ、疾患に対する抵抗性を評価した。図9から結論づけられるように、95%の未感染対照魚が共同飼育後の短い期間に死亡した。クローンのウイルスを注入した魚では病気の症状が現れず、死亡率は観察されなかった。これらの結果は、トランスファーP26から誘導されたクローンが、CVウイルスによって誘導された感染に対して免疫を獲得することをはっきりと示している。
【0133】
例10:乾燥状態の弱毒化された生ウイルスの調製
例1で詳述したように単離されたウイルスを、一連のコイ細胞株中に少なくとも30回播種し、制限条件および高希釈条件下に移した。得られたプラークは、病原性ウイルスによって生成されたものとは形態学的に異なることが観察された。第4トランスファーからのウイルスP4は病原性が認められた。第20トランスファー(P20)以降から、病気を引き起こすウイルスの能力は減衰した。第25トランスファー(P25)以降のウイルスおよびそのクローンおよびサブクローンは、全体として病気を引き起こすその能力を失った。
【0134】
トランスファーP20の感染細胞培地からの培養液を採取し、2つの異なるチューブに分けた。2つのチューブのうちの1つは-70℃で貯蔵した。第2のチューブを凍結および凍結乾燥し、黄色粉末を得、室温で2時間にわたってインキュベートした。還元剤または糖といった保存剤は加えなかった。乾燥ウイルスを、好ましくは真空下のバイアル中に維持することができる。
【0135】
凍結乾燥ウイルスの病原性を決定するために、乾燥ウイルスのサンプルを元に戻し、新鮮CFC上で力価を求めた。並行して、第1のチューブから得られた凍結サンプルを解凍し、対照サンプルとして新鮮培養物を感染させるために使用した。プラークの数をカウントし、乾燥ウイルスの力価が、対照サンプルと比較して5〜10倍低いことが解った。
【0136】
乾燥ウイルスの復元は、精製された無菌水で達成した。
【0137】
例11:弱毒化されたウイルスで免疫した後の抗CV抗体形成の動態
5匹の魚のグループを0日目に弱毒化されたウイルスで注入した。その後、注入後の所定日に魚から採血を行い、血清中の抗CV抗体のレベルを次の手順に従って評価した。ELISAプレートのウェルをCVウイルスで覆い、ミルクでブロックした後に魚の血清を添加した。正確に言うと、魚の血清を、次の希釈率: 1:100, 1:500, 1:2500, および1:12500で希釈した。各ウェルを激しく洗浄し、上述したように、室温で60分間にわたってウサギ抗魚Fcで覆った。さらにAP抱合のヤギ抗ウサギIgGで処理を行った。
【0138】
図10がはっきりと示すように、魚の血清は、高いレベルの抗CV抗体を含む。抗体は、感染後7〜14日間で発生する。これらの力価は増加し、21日で高い値に達する。この高いレベルは感染後少なくとも51日目まで続く。この研究は、弱毒化されたウイルスが高いレベルの抗CV抗体を誘導することをはっきりと示す。
【0139】
例12:受動免疫のためのワクチンの調製
15匹の魚のグループに対して、15日間隔で200〜2000PFU/Injの濃度で本発明の弱毒化されたウイルスを3回注入した。最後の接種後15〜20日目に魚から採血し、抗CNGV血清を、当業者に知られた方法の1つによって単離し、-70℃で貯蔵した。代わりに、血清サンプルを凍結乾燥し、使用するまで保管した。50匹の魚のグループを、2〜4日の間に罹患魚との共同飼育によってCVウイルスにさらした。その後、50匹の魚の各々に抗CNGV血清を注入し、病気の進行をモニターした。
【0140】
抗CNGV血清を注入した魚では病気は進行しなかったが、非免疫魚では病気が進行して罹患魚との共同飼育から18日以内に死亡することがわかった。
【0141】
例13:不活化ウイルスの調製
病原性ウイルスをUVランプから10cm離れた場所に置き、260nmで約2分間照射した。この2分間の終わりに照射を終了し、先の例に記載されたようにウイルスを魚に投与した。
【0142】
照射終了後、上述したようにウイルスをプラークの発達について試験した。プラークを発達させなかったサンプルを不活化されたものとみなし、魚の免疫のために使用した。
【0143】
繰り返しの実験は、病原性ウイルスサンプルへのほんの数秒間の照射が、ランダムな変異を受けた活性化ウイルスを生み出すことを示した。
【0144】
例14:不活化ウイルスと弱毒化された生ウイルスとの組み合わせ処理での魚の免疫化
32匹の健康魚のグループに不活化ウイルスを注入した。5日後、先に詳述した手順に従って弱毒化された生ウイルスを魚に注入した。魚を10日間にわたって罹患魚と共同飼育した。免疫化された魚は、感染性疾患で特徴的な行動を示さなかった(結果は示していない)。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1は、共同生活による感染後の錦鯉の死亡率の変化を示す。成体魚を114匹、114匹および115匹の3つの魚の群に分けた。群1(□)および群2(■)を汚染された試料にさらし、群3(▲)を未感染対照群として使用した。生存数を毎日モニターした。
【図2】図2は、感染したコイの鰭細胞(CFC)から採取したCVの電子顕微鏡写真を示す。
【0146】
精製されたウイルスを2%のタングストリン酸塩(PTA)でネガティブ染色した。粒子の大きさは96〜105nmの範囲で平均103nmであった。
【図3A】図3は、アガロースゲル電気泳動によるCV DNAの分析を示す。図3Aでは、フェノール抽出によって精製されたウイルスからウイルスDNAゲノムを得た。各レーンは、異なる手順を示す:プロテイナーゼKおよびSDSでのインキュベーション(レーン2)、SDS単独でのインキュベーション(レーン3)、プロナーゼおよびSDSでの処理(レーン4)、および前処理なし(レーン5)。Cla Iで開裂された鎖状アデノウイルスプラスミド(pAdEasy-1)DNA(レーン6)および非開裂のもの(レーン7)をマーカーとして使用した。λファージDNAマーカーをレーン1および8に流し、0.8%アガロースゲル中で分析を行った。
【図3B】図3Bでは、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によるCV DNAの分析を示す。図3Aに示したものと同一のDNA標本をレーン2〜7に流し、プロテイナーゼKによって精製されたCV DNAの追加のサンプルをレーン8に流した。使用された分子量マーカーは、Hind IIIで開裂されたλファージDNA(レーン9)および結合された(ligated)λファージDNAのラダー(λDNA 50〜1000kbの連続的に大きくなるコンカテマー)(レーン1)とした。
【図3C】図3Cは、制限酵素によるCV DNAの消化から得られた結果を示す。ウイルスDNAを、反応バッファー(100mM NaCl, 50mM Tris-HCl, 10mM MgCl2, 1mMジチオスレイトール、100μg/ml BSAで補足)中、25℃で3時間にわたってSwa I制限酵素でインキュベートした。Contour-clamped Homogeneous Electric Field (CHEF)ゲルを介したPFGEを使用して、反応生成物を1%アガロースゲル上で条件(6V/cm、14℃、14時間)のもとで分離した。スイッチタイムは5〜35秒で立ち上げた。レーン1-未切断ウイルスDNA;レーン2-Swa I制限酵素で消化されたウイルスDNA。
【図4】図4は、CVウイルスタンパク質の分析を示す。アデノウイルス、HSV-1およびコイウイルスを、スクロース勾配によって組織培養液から精製した。ウイルスのペレットをLaemeliバッファー中で煮沸し、2枚の平行な10%アクリルアミドゲル上で電気泳動によって分離した。1枚のゲルをクーマシーブルーで染色し、パネルAに示した。もう1枚のゲルをPVDF膜に移し、ウサギ抗コイウイルス抗体で染色し、パネルBとして示した。血清は、CVタンパク質とは反応したが(右のレーン)、ヘルペスまたはアデノウイルスタンパク質とは反応しなかった。
【図5】図5は、CFC DNAおよび魚の器官からPCRによって増幅されたCVゲノム断片の同定を示す。感染CFCから抽出された全DNA(TCI)、未感染CFCから抽出された全DNA(TCU)、ウイルスDNA(CV)、罹患魚の肝臓由来のDNAおよびナイーブ魚の肝臓由来のDNA(各々、LIおよびLU)、罹患魚の腎臓由来のDNAおよびナイーブ魚の腎臓由来のDNA(各々、KIおよびKU)。M=DNA分子量マーカー。DNA増幅のために使用されるプライマーをクローンDから誘導した。AP1-AP2およびAP1-AP3プライマーをPCR中で使用した(各々、パネルAおよびパネルB)。
【図6】図6A〜Fは、CVゲノムの配列と他のウイルスの配列のホモロジーを示す。ウイルスDNAのクローンを、PubMedのBLASTプログラム(NIH)を使用することによって配列決定および分析を行った。この図中に使用された略語は以下の通りである:ヘルペス単純ウイルス1、2、5および8(各々、HSV-1, HSV-2, HSV-5およびHSV-8);仮性狂犬病ウイルス(PRV);Gallidヘルペスウイルス(GHV); Macaca mulata rhadinovirus(MMRV); ツパイアヘルペスウイルス(THV); マウスサイトメガロウイルス(CMVm); ヒトサイトメガロウイルス(CMVh); マーモセットヘルペスウイルス(MarHV)。上述したウイルスの全てがヘルペスウイルス科に属する。Spodoptera exigua核多角体病ウイルス(SENHV), Xestia c-nigrum granulovirus(XcNGV)、Lymatria dispar核多角体病ウイルス(LDNV); Orgyia pseudosugata核多角体病ウイルス(OPNV)およびCulex nigripapusバキュロウイルス(CNBV)は、バキュロウイルス科の一員である;シオミドロウイルス(ESV)は藻類ウイルスである。ヤバ様疾患ウイルス(YIDV)はポックスウイルスである。I型ヒト免疫不全症ウイルス(HIV-1)、ヒト内在性ウイルス(HEV)およびブタ内在性レトロウイルス(PERV)は、レトロウイルス科の一員である。ブタアデノウイルス(PAdV)およびヒトアデノウイルス(HAdV)は、アデノウイルス群の一員である。ウシウイルス性下痢性ウイルス(BVDV)はフラビウイルスである。感染性膵臓壊死ウイルス(IPNV)はビルナウイルスである。風疹ウイルス(風疹)はトガウイルスである。27型ヒトパピローマウイルス(HPV-27)。
【図7】図7A〜Bは、無毒性ウイルスでの魚の感染の結果を示す。図7Aは、病原性ウイルスに感染させた50匹のナイーブ魚の一群における累積死亡率を示す。図7Bは、初発性感染を生き延び、且つ罹患魚との共同生活によって二次感染(challenge)させた魚の死亡率を示す。
【図8】図8A〜Bは、弱毒化された生ウイルスでの魚の感染から得られた結果を示す。図8Aは、6×103PFU/mlの濃度で弱毒化された生ウイルスを腹腔内注入(I.P)した後の魚の死亡率を示す。図8Bは、弱毒化されたウイルスへの初発性感染を生き延び、且つ罹患魚で二次感染させた魚の死亡率を示す。
【図9】図9は、感染後にワクチン接種した魚の死亡率を示す。魚(n=100 各群の魚の個体数、50gの平均重量)に対して、トランスファーP26由来のCVウイルスから誘導された4つのクローンウイルスのI.P注入によってワクチン接種を行った。PBSを注入した魚をネガティブコントロール(N.C)として使用した。注入後25日間、5群の魚を、罹患魚との共同生活によって再感染させた。
【図10】図10は、弱毒化されたウイルスに対して免疫されたコイの抗CV抗体形成の動態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚の致死性ウイルス疾患を引き起こす単離されたコイDNAウイルスであって、前記DNAウイルスが、正二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな2本鎖DNAウイルスであり、前記キャプシドが電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、前記ウイルスのDNAが約250,000〜300,000塩基対である単離されたコイDNAウイルス。
【請求項2】
魚の致死性ウイルス疾患を引き起こす単離されたコイDNAウイルスであって、前記DNAウイルスが、正二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな2本鎖DNAウイルスであり、前記キャプシドが電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、前記ウイルスのDNAが約260,000〜285,000塩基対である単離されたコイDNAウイルス。
【請求項3】
魚の致死性ウイルス疾患を引き起こす単離されたコイDNAウイルスであって、前記DNAウイルスが、正二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな2本鎖DNAウイルスであり、前記キャプシドが電子顕微鏡によって決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、前記ウイルスのDNAが約277,000塩基対である単離されたコイDNAウイルス。
【請求項4】
前記魚がCyprinus carpio種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項5】
前記ウイルスが他のウイルスまたは微生物材料を含まない純系である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項6】
寄託受け入れ番号CNCMI-3145の単離されたコイDNAウイルス。
【請求項7】
魚の致死性ウイルス疾患を引き起こすコイDNAウイルスの非病原性形態であって、前記DNAウイルスが正二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな2本鎖DNAウイルスであり、前記キャプシドが電子顕微鏡で決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、前記ウイルスのDNAが約250,000〜300,000塩基対であるコイDNAウイルスの非病原性形態。
【請求項8】
魚の致死性ウイルス疾患を引き起こすコイDNAウイルスの非病原性形態であって、前記DNAウイルスが正二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな2本鎖DNAウイルスであり、前記キャプシドが電子顕微鏡で決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、前記ウイルスのDNAが約260,000〜285,000塩基対であるコイDNAウイルスの非病原性形態。
【請求項9】
魚の致死性ウイルス疾患を引き起こすコイDNAウイルスの非病原性形態であって、前記DNAウイルスが正二十面体形態のウイルスキャプシドをもつ大きな2本鎖DNAウイルスであり、前記キャプシドが電子顕微鏡で決定されたときに約90〜110nmの大きさであり、前記ウイルスのDNAが約277,000塩基対であるコイDNAウイルスの非病原性形態。
【請求項10】
前記非病原性形態が、弱毒化された生ウイルス、不活化ウイルス、またはコイDNAウイルスの遺伝的に修飾されたウイルスである請求項7ないし9のいずれか1項の非病原性ウイルス形態。
【請求項11】
前記非病原性形態が、コイDNAウイルスの弱毒化されて生きている形態である請求項10のウイルスの非病原性形態。
【請求項12】
前記非病原性形態が、コイDNAウイルスの不活化形態である請求項10のウイルスの非病原性形態。
【請求項13】
コイDNAウイルスの遺伝的に修飾された形態である請求項10のウイルスの非病原性形態。
【請求項14】
前記魚が、種Cyprinus carpioである請求項7ないし13に記載のウイルスの非病原性形態。
【請求項15】
前記ウイルスが、他のウイルスまたは微生物材料を含まない純粋形態である請求項7ないし14のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項16】
凍結形態の請求項7ないし15のウイルス。
【請求項17】
乾燥形態の請求項1ないし16のいずれか1項に記載のウイルス。
【請求項18】
寄託受け入れ番号CNCMI-3146をもつ弱毒化された生コイDNAウイルス。
【請求項19】
前記コイウイルスと関連した症状が現れる魚を同定する工程と、前記感染魚から組織を採取する工程と、細胞変性効果がコイ鰭細胞で起こるまで前記罹患組織を前記細胞と共培養する工程と、コイまたは錦鯉鰭細胞と罹患組織との前記共培養液から液体を採取する工程と、ウイルス粒子を単離する工程とを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコイDNAウイルスを単離する方法。
【請求項20】
前記罹患器官が腎臓および肝臓組織であり、CFCとの共培養は、細胞変性効果が前記細胞中に起こるまでに5〜6日の期間を要する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1ないし3のいずれか1項の病原性ウイルスを魚の細胞培養物中に播種する工程と、低減された病原性をもつウイルスによって引き起こされるプラークを同定する工程と、前記プラークから後代ウイルスを単離する工程とを含む請求項10に記載の弱毒化された生コイウイルスを単離する方法。
【請求項22】
単離されたウイルスを魚細胞培養物上に再播種し、実質的に弱毒化された生ウイルスが得られるまで前記プロセスを複数回繰り返す請求項21の方法。
【請求項23】
前記細胞培養物が、錦鯉または真鯉細胞株の培養物である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞培養物が、銀コイ(Hypophthalmichthys molitrix)、金魚(Carassius aurata)、および黒コイ(Ctenopharyngodon idella)から選択された他の魚の種の培養物である請求項22の方法。
【請求項25】
前記他の魚の種が、金魚(Carassius aurata)である請求項24の方法。
【請求項26】
前記細胞培養物を、錦鯉または真鯉の尾鰭および/または背鰭から調製する請求項21ないし25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
単離された弱毒化された生ウイルスを精製する工程を含む請求項20ないし26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
弱毒化された生ウイルスを含む培養液を乾燥させ、乾燥状態の弱毒化された生ウイルスを得る工程を含む請求項20ないし27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記乾燥を凍結乾燥を通して行う請求項28に記載の方法。
【請求項30】
-70℃の培養液中でウイルスを凍結する工程を含む請求項20ないし29のいずれか1項の方法。
【請求項31】
ウイルスゲノムにランダムな変異を導入することによって弱毒化されたウイルスを安定化させる工程をさらに含む請求項21ないし30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
請求項19または20の方法によって得られたコイウイルス。
【請求項33】
請求項21ないし31のいずれか1項の方法によって得られた弱毒化された生コイウイルス。
【請求項34】
コイウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するワクチン処方の調製のための請求項7ないし17のいずれか1項のウイルス形態の使用。
【請求項35】
弱毒化された生ウイルスが、細断化された魚または細断化された魚の器官の形態にある請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記細断化された魚を、弱毒化されたウイルスで感染後5〜6日目の前記魚またはその任意の器官を細断することによって得る請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記処方が、免疫調節アジュバント、安定剤、抗体、免疫活性剤または他の物質をさらに含む請求項34ないし36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
ワクチンが再構成用の液体をさらに含む請求項34に記載の使用。
【請求項39】
コイウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するためのワクチン処方であって、請求項7ないし9の非病原性ウイルス形態を含むワクチン処方。
【請求項40】
コイウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するワクチン処方であって、請求項11の弱毒化された生ウイルスを含むワクチン処方。
【請求項41】
コイウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するワクチン処方であって、請求項12の不活化ウイルスを含むワクチン処方。
【請求項42】
1以上の免疫調節アジュバント、安定剤、抗体、免疫活性剤または他の物質をさらに含む請求項39ないし41に記載のワクチン。
【請求項43】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のウイルスまたはその成分に対して選択的に結合する抗体。
【請求項44】
固定化された形態の請求項43に記載の抗体。
【請求項45】
請求項1ないし3のいずれか1項のコイウイルスと関連した疾患を診断する方法であって、前記方法は、疑陽性の魚から組織を単離する工程と、試験魚が本発明のウイルスに感染していることを示すCV DNAウイルスと関連したウイルスマーカーの存在を決定する工程とを含む方法。
【請求項46】
前記組織を、特定の器官、幾つかの器官、または魚全体、または血液から得る請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記器官は、鰓、腎臓、脾臓、肝臓、または腸である請求項46の方法。
【請求項48】
請求項7ないし13のいずれか1項の非病原性ウイルス形態で構成されたワクチン処方を、コイウイルスによる後の感染に対する免疫を誘導するのに十分な量で感受性の魚に投与することを含むウイルス感染に対して魚を免疫するための方法。
【請求項49】
請求項11の弱毒化された生コイウイルスで構成されたワクチン処方を、コイウイルスによる後の感染に対する免疫を誘導するのに十分な量で感受性の魚に投与することを含むウイルス感染に対して魚を免疫するための方法。
【請求項50】
請求項12の不活化コイウイルスで構成されたワクチン処方を、コイウイルスによる後の感染に対して免疫を誘導するのに十分な量で感受性の魚に投与することを含むウイルス感染に対して魚を免疫するための方法。
【請求項51】
請求項11の弱毒化された生コイウイルスと請求項12の不活化ウイルスで構成されたワクチン処方を、コイウイルスによる後の感染に対して免疫を誘導するために十分な量で感受性の魚に投与することを含むウイルス感染に対して魚を免疫するための方法。
【請求項52】
不活化ウイルスを、弱毒化された生ウイルスを投与する数日前に投与する請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ワクチンを水産養殖魚に対して投与する請求項48ないし52のいずれか1項の方法。
【請求項54】
前記投与する工程が、個々の魚に対する注射、または水産養殖への前記処方の噴霧もしくは浸漬を含む請求項48ないし53のいずれか1項の方法。
【請求項55】
前記ワクチンを、飼料を介して経口的に魚に投与する請求項54の方法。
【請求項56】
前記魚が、幼生、稚魚および成魚を含む請求項54の方法。
【請求項57】
請求項1、2または3のウイルスの1以上のタンパク質についてコードするヌクレオチド配列と、前記ヌクレオチドのコイ細胞における発現のための調節配列とをもつ発現ベクター、およびキャリアー、賦形剤またはアジュバントを含む、魚の免疫反応を誘導するためのワクチン処方。
【請求項58】
前記魚が、錦鯉および真鯉である請求項57に記載のワクチン処方。
【請求項59】
魚に免疫反応を誘導するワクチン処方を水産養殖に投入することを含む水産養殖魚に免疫反応を誘導する方法であって、前記処方が請求項1、2または3のウイルスの1以上のタンパク質についてコードするヌクレオチド配列と、前記ヌクレオチド配列のコイ細胞における発現のための調節配列とをもつ発現ベクター、およびキャリアー、賦形剤またはアジュバントを含む方法。
【請求項60】
コイウイルスに対する魚の治療のための請求項11の弱毒化された生ウイルスおよびその使用方法についての説明書を含むキット。
【請求項61】
コイウイルスに対する魚の治療のための請求項12の不活化ウイルスおよびその使用方法についての説明書を含むキット。
【請求項62】
前記ウイルスが組織培養液体の形態にある請求項60または61のキット。
【請求項63】
前記液体が凍結状態である請求項62のキット。
【請求項64】
液体がグリセロールを含む請求項62のキット。
【請求項65】
ウイルスが乾燥形態である請求項60または61のいずれか1項のキット。
【請求項66】
再構成溶液をさらに含む請求項65のキット。
【請求項67】
請求項1、2または3のコイウイルスと関連した疾患の診断のための少なくとも1つの抗体または少なくとも1つの抱合抗体を含むキットであって、前記抗体および抱合抗体が、本発明のCVウイルスまたはその成分に選択的に結合するキット。
【請求項68】
少なくとも1つの対照をさらに含む請求項67に記載のキット。
【請求項69】
前記対照が抗原または抗原を含む組織である請求項68に記載のキット。
【請求項70】
少なくとも1つの抗体または少なくとも1つの抱合抗体が溶液状態または乾燥状態である請求項67に記載のキット。
【請求項71】
前記キットが再構成溶液をさらに含む請求項67ないし70のいずれか1項に記載のキット。
【請求項72】
生きている魚の前記疾患の診断のための請求項71のキット。
【請求項73】
コイウイルスによって引き起こされた感染に対して魚を免疫するワクチン処方であって、前記ワクチン処方が、請求項7ないし13に記載のCVウイルスの非病原性形態で免疫された動物の血清を含むワクチン処方。
【請求項74】
コイウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するためのワクチン処方であって、前記ワクチン製剤が、請求項11に記載のCVウイルスの弱毒化された生ウイルス形態で免疫された動物の血清を含むワクチン処方。
【請求項75】
コイウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を免疫するためのワクチン処方であって、前記ワクチン製剤が、請求項12に記載のCVウイルスの不活化ウイルス形態で免疫された動物の血清を含むワクチン製剤。
【請求項76】
前記動物が魚である請求項73ないし75に記載のワクチン。
【請求項77】
コイウイルスにさらされる前またはさらされた後に魚に対して使用される請求項73ないし76のいずれか1項のワクチン処方。
【請求項78】
前記CVウイルスによって引き起こされる感染に対して魚を治療する方法であって、前記方法が、本発明の弱毒化されたCVウイルスで動物を免疫する工程と、前記免疫化された動物の血清を採取する工程と、前記魚を前記血清で治療して魚の免疫化を達成する工程とを含む方法。
【請求項79】
前記動物が魚である請求項78に記載の方法。
【請求項80】
請求項1、2または3のウイルスの1以上のタンパク質をコードするヌクレオチド配列をもつ発現ベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−24584(P2011−24584A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−185273(P2010−185273)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【分割の表示】特願2004−564397(P2004−564397)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(399042546)イッスム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム (10)
【出願人】(505249872)ミニストリー・オブ・アグリカルチャー・アンド・ルーラル・ディベロップメント・デパートメント・オブ・フィッシャリーズ・アンド・アクアカルチャー (2)
【Fターム(参考)】