説明

ウイルス感染に対する抵抗性に関連する遺伝子である、OAS1における変異の検出

【課題】OAS1をコードする遺伝子に関する変異を検出するための方法の開発。
【解決手段】この開示された変異および他の開示された変異は、C型肝炎を含むウイルス感染に対するヒトの抵抗性に関連する。変異した遺伝子によってコードされるタンパク質もしくはポリペプチド、またはこのタンパク質もしくはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる治療因子が、提供される。ヒトOASIに対して特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、方法、および組成物を含む、ヒトOAS1のインヒビターもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.技術分野)
本発明は、ヒトのオリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子中の変異を検出するための方法(ここで、変異は、C型肝炎ウイルスによる感染を含む、フラビウイルス感染に対する抵抗性を与え、そして変異は、前立腺癌および糖尿病を含む、他の疾患の状態に関する)、ならびにそのコードされるタンパク質およびそれに対する抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.発明の背景)
多くの疾患は、これまでに、ヒト集団において感染に対する自然抵抗性が存在するということについて同定されてきた。非特許文献1は、注射薬物使用者のような高危険率群において、90%程度高いC型肝炎ウイルス(HCV)感染率を報告する。しかし、残りの10%が、感染に対して明らかに抵抗性であることの機構は、この文献中には確認されなかった。HCV感染に関与するタンパク質としては、2’,5’オリゴアデニレートシンセターゼが挙げられる。OASは、アデノシンの2’,5’オリゴマー(2−5A)の合成を触媒するその能力によって特徴付けられるインターフェロン誘導性タンパク質である。非特許文献2は、インターフェロンで処理されたヒト細胞が、40kDのタンパク質(OAS1)、46kDのタンパク質(OAS1)、69kDのタンパク質、および100kDのタンパク質に対応する数種のOASを含むことを見出した。非特許文献3は、p69に対して高度に特異的なポリクロナール抗体である、69−kD OASを産生した。抗p69抗体を含む、インターフェロンで処理されたヒト細胞の発現ライブラリーをスクリーニングすることによって、非特許文献4は、部分的なOAS2 cDNAを単離した。この研究者らは、この部分的なcDNAを用いて、さらなるライブラリーをスクリーニングし、そして2つのOAS2アイソフォームをコードするcDNAを回収した。このより小さいアイソフォームは、3’非翻訳領域の長さが異なる2つのmRNAによってコードされる。
【0003】
ノーザンブロット分析は、OAS2が、ヒト細胞中で4つのインターフェロン誘導性のmRNAとして発現されることを示した。この予測されるOAS2タンパク質は、共通の683アミノ酸の配列および異なる3’末端を有する。インビトロでの転写/翻訳産物のSDS−PAGEによれば、2つのアイソフォームは、69kDおよび71kDの分子量を有する。両方のアイソフォームは、インビトロでのOAS活性を示す。配列分析は、OAS2が、プロリンが豊富な推定リンカー領域によって隔てられる2つのOAS1相同性ドメインを含むことを示した。このN末端ドメインおよびC末端ドメインは、それぞれOAS1に対して、41%および53%同一である。
【0004】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーションおよび地図化されたクローン内の封入によって、非特許文献5は、このOAS1遺伝子、OAS2遺伝子、およびOAS3遺伝子が、12q24.2上の130kb領域でクラスター化されることを決定した。2−5Aは、RNase Iに結合し、そしてそれを活性化し、この活性化されたRNase Iは、ウイルスのRNAおよび細胞のRNAを分解し、細胞のタンパク質合成の阻害およびウイルス複製の障害を生じる。
【0005】
OASLと称される4番目のヒトOAS遺伝子は、OASLが酵素活性を欠く点で、OAS1、OAS2およびOAS3とは異なる。このOASL遺伝子は、ユビキチンの縦列反復に対して相同的な164アミノ酸のC末端ドメインに融合されるOASユニットで構成される2つのドメインを有するタンパク質をコードする。(非特許文献6;非特許文献7。)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】AlterおよびMoyer、「J.Acquir.Immune Defic.Syndr.Hum Retrovirol.」、1998年、18 補遺 1、S6−10
【非特許文献2】Hovanessianら、「EMBO」、1987年、6、1273−1280
【非特許文献3】Marieら、「Biochem.Biophys.Res.Commun.」、1989年、160、580−587
【非特許文献4】MarieおよびHovanessian、「J.Biol.Chem.」、1992年、267、9933−9939
【非特許文献5】Hovanianら、「Genomics」、1998年、52、267−277
【非特許文献6】Eskildsenら、「Nuc.Acids Res.」、2003年、31、3166−3173
【非特許文献7】Kakutaら、「J.Interferon & Cytokine Res.」、2002年、22、981−993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウイルス複製およびウイルス感染を阻害するこれらの役割に起因して、当該分野において、OAS1活性に関してウイルス複製を抑制する方法および組成物に対する必要性(HCV複製を抑制するインヒビターに基づく治療についての大きな必要性を含む)が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、オリゴアデニレートシンセターゼ1遺伝子中の点変異として特徴付けられる、C型肝炎耐性に関連する変異の検出に関する。
【0009】
1つの実施形態において、ヒトの遺伝学的スクリーニング方法が、企図される。この方法は、ヒトから単離された核酸試料を、Genbank配列登録番号NT_009775.13を参照するオリゴアデニレートシンセターゼ1遺伝子(OAS1)(配列番号19として図2に示される2,130,000〜2,157,999ヌクレオチドの連続したヌクレオチド)における、ヌクレオチド位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、もしくは2156638における塩基の置換、またはヌクレオチド位置2156595における塩基の欠失として特徴付けられるオリゴアデニレートシンセターゼ1遺伝子の点変異の存在についてアッセイする工程を包含する。
【0010】
好ましい実施形態において、この方法は、増幅条件下で、ヒトから得られたゲノムDNAの試料を、オリゴアデニレートシンセターゼ1遺伝子(NT_009775.13)の、ヌクレオチド位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638を含むヒトゲノムDNAの領域を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマー対を用いて処理する工程を包含する。このPCR処理は、上記領域を含む増幅産物を生成し、その後、この産物は、点変異の存在についてアッセイされる。
【0011】
さらなる実施形態において、本発明は、NT_009775.13の位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、およびウイルス感染に対する抵抗性について、好ましくはフラビウイルス感染に対する抵抗性について、最も好ましくはC型肝炎ウイルスに対する抵抗性についての診断薬を調製するタンパク質の使用を提供する。特定の実施形態において、この診断薬は、抗体である。
【0012】
なおさらなる実施形態において、本発明は、ウイルスによる感染、好ましくはフラビウイルスによる感染、最も好ましくはC型肝炎ウイルスによる感染を防ぐかまたは阻害するための治療用化合物を提供し、ここでこの治療用化合物は、NT_009775.13の、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異を有するOAS1遺伝子によってコードされるタンパク質である。他の実施形態において、この治療用化合物は、このタンパク質をコードする、DNAまたはRNAのようなポリヌクレオチドである。
【0013】
なおさらなる実施形態において、本発明は、ウイルスによる感染、好ましくはフラビウイルスによる感染、最も好ましくはC型肝炎ウイルスによる感染を防ぐかまたは阻害するための治療用化合物を提供し、ここでこの治療用化合物は、以下の配列のタンパク質である:配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号46、配列番号47、および/または配列番号48。
【0014】
なおさらなる実施形態において、本発明は、ウイルスによる感染、好ましくはフラビウイルスによる感染、最も好ましくはC型肝炎ウイルスによる感染を防ぐかまたは阻害するための治療用化合物を提供し、ここでこの治療用化合物は、NT_009775.13の位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異の有利な効果を模倣する。この治療用化合物は、小分子、タンパク質分子、ペプチド分子、DNA分子もしくはRNA分子、または抗体であり得る。
【0015】
なおさらなる実施形態において、本発明は、癌、好ましくは前立腺癌を防ぐかまたは処置するための治療用化合物を提供し、ここでこの治療用化合物は、NT_009775.13の、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異の有利な効果を有するOAS1遺伝子によってコードされるタンパク質である。他の実施形態において、この治療用化合物は、このタンパク質をコードする、DNAまたはRNAのようなポリヌクレオチドである。
【0016】
なおさらなる実施形態において、本発明は、癌、好ましくは前立腺癌を防ぐかまたは処置するための治療用化合物を提供し、ここでこの治療用化合物は、以下の配列のタンパク質である:配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号46、配列番号47、および/または配列番号48。
【0017】
なおさらなる実施形態において、本発明は、癌、好ましくは前立腺癌を防ぐかまたは処置するための治療用化合物を提供し、ここでこの治療用化合物は、NT_009775.13の、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異の有利な効果を模倣する。この治療用化合物は、小分子、タンパク質分子、ペプチド分子、DNA分子もしくはRNA分子、または抗体であり得る。
【0018】
さらなる実施形態において、この治療用化合物は、OAS1の活性、またはこのタンパク質全体の少なくとも1つの小領域もしくは下位の機能の活性を阻害し得、そしてこのような化合物は、OAS1ポリヌクレオチドに特異的に結合し得るアンチセンス分子、リボザイム、およびRNAi分子として示され、そしてOAS1タンパク質およびOAS1ポリペプチドに特異的に結合し得る抗体およびそのフラグメントとして示される。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、OAS1のインヒビターを提供する。本発明のインヒビターとしては、アンチセンス分子、リボザイム、RNAi、抗体または抗体フラグメント、タンパク質またはペプチド、ならびに小分子が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアンチセンス分子は、配列番号19のポリヌクレオチドの、少なくとも10個、少なくとも15個もしくは少なくとも20個の連続したヌクレオチド、または配列番号19のポリヌクレオチドに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするこれらの連続したヌクレオチドを含む。配列番号19の配列の少なくとも25個の連続したヌクレオチド、または配列番号19の配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするこの連続したヌクレオチドが、さらに好ましい。
【0020】
なおさらなる実施形態において、OAS1のインヒビターは、配列番号30のポリペプチドによって定義されるタンパク質の領域に特異的に結合することが想定される。本発明のインヒビターとしては、抗体、抗体フラグメント、小分子、タンパク質、またはポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
なおさらなる実施形態において、OAS1のインヒビターは、配列番号31のポリヌクレオチドに、特異的に結合するかまたは特異的にハイブリダイズする、アンチセンス分子またはRNAi分子で構成されることが想定される。
【0022】
さらなる実施形態において、薬学的に受容可能なキャリア中の1つ以上のOAS1インヒビターを含有する組成物が、提供される。
【0023】
さらなる実施形態は、OAS1遺伝子発現またはOAS1の生物学的活性を減少させる方法を提供する。
【0024】
さらなる実施形態は、NT 009775.13の、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異を有するOAS1遺伝子の特定の形態の発現を、特異的に上昇させるか、または特異的に減少させる方法を提供する。
【0025】
本発明は、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチド間結合を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0026】
本発明は、ホスホロチオエート結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを、さらに提供する。
【0027】
本発明は、少なくとも1つの修飾された糖部分を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、なおさらに提供する。
【0028】
本発明はまた、2’−O−メチル糖部分である少なくとも1つの修飾された糖部分を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0029】
本発明は、少なくとも1つの修飾された核酸塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを、さらに提供する。
【0030】
本発明は、5−メチルシトシンである修飾された核酸塩基を有する、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、なおさらに提供する。
【0031】
本発明はまた、キメラオリゴヌクレオチドであるアンチセンス化合物を提供する。
【0032】
本発明は、インビボの細胞またはインビボの組織と、ヒトOAS1をコードする核酸分子に対して標的化された、8〜35ヌクレオチド長のアンチセンス化合物またはリボザイムとを接触させて、その結果、ヒトOAS1の発現が、阻害される工程を包含する、ヒトの細胞またはヒトの組織におけるヒトOAS1の発現を阻害する方法を提供する。
【0033】
本発明は、アンチセンス化合物もしくはRNAi化合物、またはリボザイムを使用して、インビボでのOAS1の特定の形態の発現を、減少させるかまたは増加させる方法を提供し、このような形態は、NT_009775.13の、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異を有することによって定義される。
【0034】
本発明は、インビボの癌細胞と、ヒトOAS1をコードする核酸分子に対して標的化された、8〜35ヌクレオチド長のアンチセンス化合物またはリボザイムとを接触させ、その結果、ヒトOAS1の発現が、阻害される工程を包含する、癌細胞の増殖を調節する方法をさらに提供する。
【0035】
本発明は、OAS1ポリヌクレオチドの標的領域を同定するための方法を、なおさらに提供する。本発明はまた、インサイチュハイブリダイゼーションによってOAS1ポリヌクレオチドを同定するための標識されたプローブを提供する。
【0036】
本発明は、HCV感染を防ぐかまたは阻害するための医薬を調製するための、本発明のOAS1インヒビターの使用を提供する。
【0037】
本発明は、OAS1タンパク質の特定領域に対してか、またはこのタンパク質の特定の機能にOAS1インヒビターを指向する工程を、さらに提供する。
【0038】
本発明はまた、OAS1の発現を阻害するための薬学的組成物を提供し、この組成物は、生理学的に受容可能なキャリアまたは生理学的に受容可能な希釈剤を含む混合物中に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する。
【0039】
本発明は、OAS1 RNAを特異的に切断し得るリボザイムおよびこのリボザイムを含有する薬学的組成物を、さらに提供する。
【0040】
本発明はまた、OAS1の小分子インヒビターを提供し、このインヒビターは、OAS1の活性を減少し得るか、またはOAS1 mRNAの発現を、減少し得るかもしくは阻害し得る。
【0041】
本発明は、2’−5’オリゴアデニレートの合成以外のOAS1タンパク質の特定の機能を改変するOAS1のインヒビターを、さらに提供し、このような機能としては、他のタンパク質(例えば、C型肝炎ウイルスのNS5Aタンパク質)との相互作用が挙げられる。
【0042】
本発明は、OAS1の翻訳後修飾(グリコシル化およびホスホリル化が挙げられるが、これらに限定されない)を変化させる化合物を、さらに提供する。
【0043】
本発明は、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子の変異を同定するための、ヒトの遺伝学的スクリーニング方法を、さらに提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)増幅条件下で、ヒトから得たゲノムDNAの試料を、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子の、ヌクレオチド位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638を含むヒトゲノムDNAの領域を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマー対を用いて処理し、この領域を含む増幅産物を生成する工程;および(b)ヌクレオチド位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638におけるヌクレオチドの点変異の存在を、工程(a)の増幅産物において検出し、それによってこの変異を同定する工程。
【0044】
本方法の特定の実施形態において、上記領域は、配列番号1〜配列番号7および配列番号57〜配列番号64からなる群より選択される配列によって示されるヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、この領域は本質的に、配列番号1〜配列番号7および配列番号57〜配列番号64からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなる。ハイブリダイゼーション条件下で、上記点変異に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて上記の工程(a)の増幅産物を処理する工程、およびハイブリダイゼーション産物の形成を検出する工程を包含する検出方法もまた、提供される。この方法の特定の実施形態において、このオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号12〜配列番号18からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0045】
本発明はまた、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子(OAS1)の、ヌクレオチド位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における、野生型ヌクレオチドに対する非野生型ヌクレオチドの置換を包含する点変異を含むC型肝炎感染抵抗性の疾患対立遺伝子を、ヒトにおいて検出するための方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)PCR緩衝液中で、上記ヒトから得たゲノムDNAの試料と、配列番号8および配列番号9ならびに配列番号10および配列番号11からなる群より選択されるオリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子に特異的なPCRプライマー対とを組み合わせることによってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物を形成する工程;(b)このPCR混合物を、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子の増幅産物を生成するために複数回のPCRの温度循環に供する工程;および(c)ハイブリダイゼーション条件下で、配列番号12〜配列番号18からなる群より選択されるプローブを用いて工程(b)において生成された産物を処理し、それによってこの変異を検出する工程。
【0046】
アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、小さな抑制性(small inhibitory)RNA(RNAi)、タンパク質、ポリペプチド、抗体、および小分子からなる群より選択される単離されたOAS1インヒビターが、また提供される。この単離されたインヒビターは、配列番号19の配列の少なくとも15個の連続した核酸を含む、アンチセンス分子またはその相補体であり得る。他の実施形態において、この単離されたOAS1インヒビター(アンチセンス分子またはその相補体)は、高度にストリンジェントな条件下で、配列番号19の配列にハイブリダイズする。
【0047】
この単離されたOAS1インヒビターは、抗体および抗体フラグメントからなる群より選択され得る。薬学的に受容可能なキャリア中に治療有効量の少なくとも1つのOAS1インヒビターを含有する組成物がまた、提供される。
【0048】
本発明はまた、哺乳動物細胞中のOAS1の発現を阻害する方法に関し、この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、タンパク質、RNAi、ペプチド、抗体、および小分子からなる群より選択されるOAS1インヒビターを、この細胞に投与する工程を包含する。
【0049】
本発明は、被検体においてOAS1遺伝子発現の発現を阻害する方法に関し、この方法は、薬学的に有効なビヒクル中の、このOAS1遺伝子に由来する選択された標的核酸配列の全てまたは一部に対して特異的にハイブリダイズするのに有効である量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、このヒト被検体に投与する工程を包含する。
【0050】
本発明はなおさらに、感染に対して感受性のヒト被検体においてフラビウイルスによる感染を妨害する方法に関し、この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNAi、タンパク質、ポリペプチド、抗体、および小分子からなる群より選択されるOAS1インヒビターを、ヒト被検体に対して投与し、ここでこのOAS1インヒビターが、フラビウイルスによる感染を妨害する工程を包含する。
【0051】
本発明はなおさらに、感染に対して感受性であるヒト被検体においてフラビウイルスまたは他のウイルスによる感染を、防ぐかまたは治癒する方法に関し、この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNAi、タンパク質、ポリペプチド、抗体、および小分子からなる群より選択されるOAS1インヒビターを、ヒト被検体に対して投与する工程を包含し、ここでこのOAS1インヒビターは、このフラビウイルスまたは他のウイルスによる感染を防ぎ、そしてここでこのOAS1インヒビターは、NT_009775.13の位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における変異によって定義されるタンパク質の1つ以上の特定の形態に対して指向される。
【0052】
本発明はなおさらに、以下の配列のポリペプチドの1つを投与することによって、感染に対して感受性のヒト被検体における、フラビウイルスまたは他のウイルスのいずれかによる感染を防ぐかまたは治癒する方法に関する:配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号46、配列番号47、および/または配列番号48。
【0053】
本発明はまた、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染に対する処置を具体化する。
【0054】
本発明はなおさらに、ヒト被検体においてインスリン依存性糖尿病(IDDM)を防ぐ方法に関し、この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNAi、タンパク質、ポリペプチド、抗体、および小分子からなる群より選択されるOAS1インヒビターを、ヒト被検体に対して投与し、ここでこのOAS1インヒビターが、IDDMを防ぐ工程を包含する。
【0055】
本発明はなおさらに、ヒト被検体においてIDDMを防ぐ方法に関し、この方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNAi、タンパク質、ポリペプチド、抗体、および小分子からなる群より選択されるOAS1インヒビターを、ヒト被検体に対して投与する工程を包含し、ここでこのOAS1インヒビターは、IDDMを防ぎ、そしてこのOAS1インヒビターは、NT_009775.13の、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における変異によって定義されるタンパク質の、1つ以上の特定の形態に対して指向される。
【0056】
本発明はなおさらに、癌(例えば、前立腺癌)を、OAS1遺伝子の発現の増加によってか、または本明細書中に開示されるポリペプチドの治療的投与によって処置する方法に関する。
【0057】
インビトロの細胞においてOAS1標的遺伝子の発現を阻害するための方法もまた提供され、この方法は、OAS1標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量での、リボ核酸(RNA)の細胞中への導入を包含し、ここでこのRNAは、本質的にOAS1標的遺伝子のヌクレオチド配列に対応するリボヌクレオチド配列からなる第1の鎖、および本質的にこのOAS1標的遺伝子のヌクレオチド配列に対して相補的なリボヌクレオチド配列からなる第2の鎖を有する2本鎖の分子であり、ここで第1のリボヌクレオチド鎖および第2のリボヌクレオチド鎖は、この2本鎖の分子を形成するために互いにハイブリダイズする、別々の相補的な鎖であり、この2本鎖の分子は、上記標的遺伝子の発現を阻害する。
【0058】
本方法の特定の実施形態において、上記第1のリボヌクレオチド配列は、OAS1標的遺伝子に対応する少なくとも20個の塩基を含み、そして上記第2のリボヌクレオチド配列は、OAS1標的遺伝子のヌクレオチド配列に対して相補的な少なくとも20個の塩基を含む。なおさらなる実施形態において、この標的遺伝子の発現は、少なくとも10%阻害される。
【0059】
本方法のなおさらなる実施形態において、上記2本鎖のリボ核酸構造は、少なくとも20塩基の長さであり、そしてリボ核酸鎖の各々は、少なくとも20塩基にわたるOAS1標的遺伝子のデオキシリボ核酸鎖に対して特異的にハイブリダイズし得る。
【0060】
本発明は、遺伝子変異に起因して減少するかまたは消失し得るOAS1の機能を回復し得る、ポリペプチドまたはタンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、このポリペプチドまたはタンパク質は、配列番号19を含む遺伝子によってコードされる野生型OAS1のアミノ酸配列を有する。他の実施形態において、OAS1遺伝子中の変異は、OAS1タンパク質に、上昇した活性、上昇した安定性、および/または増加した半減期を与え、または抗ウイルス活性に、より適したOAS1タンパク質をなす他の変化を与える。上記変異したOAS1遺伝子によってコードされるタンパク質またはポリペプチドが、好ましい。
【0061】
任意の上記のタンパク質および上記のポリペプチドは、治療用組成物の成分として提供され得る。
【0062】
治療用組成物の成分として、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号46、配列番号47および/または配列番号48からなるタンパク質のいずれかの使用もまた、提供される。
【0063】
さらなる実施形態において、OAS1タンパク質をコードする核酸、OAS1変異タンパク質、またはOAS1ポリペプチドは、遺伝子治療の形態で投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1−1】図1は、OAS1遺伝子における本発明の変異の配置、対立遺伝子改変体(塩基の置換)、ゲノム配列上の変異の座標、およびNCBI dbSNP番号(存在する場合)を示す表である。
【図1−2】図1−1の続き。
【図1−3】図1−2の続き。
【図1−4】図1−3の続き。
【図2−1】図2(配列番号19)は、NCBI登録番号NT 009775.13の位置2,130,000〜2,157,999における連続したヌクレオチド塩基からなるポリヌクレオチド配列である。
【図2−2】図2−1の続き。
【図2−3】図2−2の続き。
【図2−4】図2−3の続き。
【図2−5】図2−4の続き。
【図2−6】図2−5の続き。
【図2−7】図2−6の続き。
【図2−8】図2−7の続き。
【図2−9】図2−8の続き。
【図3−1】図3は、配列番号20〜配列番号64を示す。
【図3−2】図3−1の続き。
【図3−3】図3−2の続き。
【図3−4】図3−3の続き。
【図3−5】図3−4の続き。
【図3−6】図3−5の続き。
【図3−7】図3−6の続き。
【図3−8】図3−7の続き。
【図3−9】図3−8の続き。
【図3−10】図3−9の続き。
【図3−11】図3−10の続き。
【図4】図4は、白色人種集団におけるOAS1遺伝子中の、近接したハプロタイプの分布を示す。
【図5A】図5Aおよび図5Bは、本発明によって開示される種々の転写改変体、および本発明によって開示される変異に対する関係を示す。図5Aは、転写改変体(TV)形態1〜6を示し、そして図5Bは、TV形態7〜10を示す。図5Cは、ヒトと比較した、チンパンジーの改変体およびゴリラの改変体の推測される構造を示す。
【図5B】図5Aおよび図5Bは、本発明によって開示される種々の転写改変体、および本発明によって開示される変異に対する関係を示す。図5Aは、転写改変体(TV)形態1〜6を示し、そして図5Bは、TV形態7〜10を示す。図5Cは、ヒトと比較した、チンパンジーの改変体およびゴリラの改変体の推測される構造を示す。
【図5C】図5Aおよび図5Bは、本発明によって開示される種々の転写改変体、および本発明によって開示される変異に対する関係を示す。図5Aは、転写改変体(TV)形態1〜6を示し、そして図5Bは、TV形態7〜10を示す。図5Cは、ヒトと比較した、チンパンジーの改変体およびゴリラの改変体の推測される構造を示す。
【図6】図6は、ヒトと比較したOAS1遺伝子における非ヒト霊長類の変異および対応するヒトゲノム配列における変異の座標を記載する表である。
【図7】図7は、E.coliにより発現され、そして回収された場合の、本発明の例示的なポリペプチドの酵素活性を実証する。
【図8】図8は、HeLa細胞中で発現された場合の、本発明のポリヌクレオチドから生じる例示的なポリペプチドの酵素活性を実証する。
【図9】図9は、本発明の例示的なポリペプチドに対する抗体の発生を実証する。
【図10】図10は、例示的なタンパク質導入ドメインポリペプチドを詳述する表である。
【0065】
(発明の詳細な説明)
(導入および定義)
本発明は、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子における新規な変異、ウイルス感染についての疑いの診断または、ウイルス感染に対する抵抗性の診断のためのこれらの変異の使用、本発明の変異を有する遺伝子によってコードされるタンパク質、ならびにこのタンパク質、抗体および関連する核酸を使用するウイルス感染の防御または阻害に関する。これらの変異は、フラビウイルス(特に、C型肝炎ウイルス)による感染に対するキャリアの抵抗性に相関する。
【0066】
現存の医学的調査の多くは、疾患を生じるかまたは疾患に寄与する変異および欠失を同定することが中心である。このような調査は、疾患の状態に合わせた処置の、化合物および方法を導くために計画される。感染因子および他の危険因子に対する曝露にもかかわらず人々に健康を維持させる遺伝子の影響を研究することは、あまり注目を集めていなかった。本発明は、疾患に対する抵抗性を与える遺伝子の変化または遺伝子変異を発見するために、ヒト被検体の特定の集団を確認しそして分析することによって、本発明者らにより開発されたプロセスの成功した適用を示す。特定の疾患または生物学的状態に対して天然の抵抗性を有する一部の集団区分はさらに、薬学的な介入、診断的評価、または予防用ワクチンのような予防に関する適切な標的である遺伝子およびタンパク質の同定を可能にする。
【0067】
本明細書中で特定されるこの一部の集団区分は、コホート(cohort)が、感染している(血清陽性)一方で、C型肝炎ウイルス(HCV)に対する度重なる曝露にもかかわらず、血清陰性を維持する個体で構成される。研究された集団は、度重なる輸血に供される血友病患者、および使い回しの針および他の危険因子に曝される静脈内用薬物の使用者を含んだ。
【0068】
HCV感染は、タンパク質および免疫系の構成要素の複雑な組み合わせを伴い、これらの構成要素は、一緒になって働いて疾患を生じる一方で、感染細胞中にウイルスの低い定常状態を生じ得る感染のレベルをもたらし、このことはHCVを宿主免疫の監視システムから明らかに逃れさせ、一方で持続的なウイルス感染を可能にする。(Dansakoら、Virus Research 97:17−30,2003)。本発明は、このシステムの1つの構成要素(インターフェロン誘導性の2’−5’−オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子(具体的には、OAS1))に焦点をあてる。このOAS1遺伝子は、ウイルスRNAを切断するリボヌクレアーゼL(RNase L)を活性化することによって、ヒトにおける宿主細胞の抗ウイルス活性において重要な役割を果たす。HCVのRNAは、この2’−5’−OAS/RNase L経路を活性化する。Dansakoらが指摘するように、ウイルスRNAの切断を生じる経路を活性化することはHCVのRNAにとって矛盾するようにみえるだろう。しかし、このような活性は、宿主の免疫防御と宿主を殺傷し得る感染のレベルとの間の平衡を維持するように作用し得る。
【0069】
OAS1遺伝子のこの複雑な役割に照らして、本発明が、これらの変異のキャリアにおいて、OAS1遺伝子中の変異とHCV感染に対する抵抗性との間の強い相関関係を同定したことは、非常に興味深い。ここで、このような個体の存在は、感染レベルのウイルスに対する曝露を繰り返すにもかかわらずHCV感染に対して抵抗性であることに対して、OAS1がどのように寄与するのかの解明を可能にする。次いで、この情報は、天然の抵抗性を欠く個体において、この抵抗性の機構を再現するための、方法および組成物の開発を導く。
【0070】
したがって、本発明は、上記機構に関係なく、本明細書中で同定される変異が、HCV感染に対して抵抗性である個体を特定するために有用であることを提供する。この抵抗性は、OAS1タンパク質の機能に損失を通して生じ得、この場合、HCVウイルスのレベルは、このウイルスが宿主免疫の監視システムから逃れるのを防ぎ、したがって、このウイルスの破壊を促進するのに、非常に十分であると予測される。この抵抗性はまた、OAS1タンパク質レベルが上昇し、このタンパク質の半減期は上昇し、そして/またはこのタンパク質の構造はある意味、ウイルスRNAを切断するリボヌクレアーゼLを活性化する能力を向上させることに影響するという機能の獲得を生じる。この抵抗性はまた、HCVウイルスタンパク質またはHCVウイルスヌクレオチドによる正常なOAS1タンパク質の機能の阻害を防ぐ、OAS1タンパク質に対する修飾を通して生じ得る。この抵抗性はまた、OAS1タンパク質と、通常のHCVウイルスの生存期間に必要なHCVウイルスタンパク質またはHCVウイルスヌクレオチドとの相互作用を妨害する、OAS1タンパク質に対する修飾を通して生じ得る。本発明は、1つの機構に限られない。さらに、数種の異なる点変異が、本明細書中に開示さる。このことは、各変異がOAS1タンパク質の構造または機能に対して同じ効果を有するということを示すということを意図されない。
【0071】
OAS1は、HCVがメンバーであるフラビウイルスファミリーの他のウイルスによる感染において作用する。このフラビウイルスファミリーはとしてはまた、黄熱病、デング熱、セントルイス脳炎、日本脳炎、および本明細書中に開示される他のウイルス性疾患を引き起こすウイルスが挙げられる。これらのウイルスに対する上記宿主の防御としては、ウイルス誘導性インターフェロンが挙げられる。このインターフェロンとしては、2’−5’−オリゴアデニレートシンセターゼが挙げられ、2’−5’−オリゴアデニレートシンセターゼは、上で議論されるように、RNaseLの活性化に関する。次に、RNaseLは、ウイルスRNAを切断する。本明細書中に開示される方法による防御および/または阻害に従う他のウイルス感染としては、RSVが挙げられ得る。
【0072】
詳細な説明および好ましい実施形態についての参照において、以下の定義が、使用される:
A:アデニン;C:シトシン;G:グアニン;T:チミン(DNAにおいて);およびU:ウラシル(RNAにおいて)。
【0073】
対立遺伝子:特定の遺伝子のDNA配列の改変体。二倍体の細胞において、2つの対立遺伝子(各々一対の染色体の相同的染色体上の同じ相対的位置または相対的遺伝子座にある)の最大値が存在する。任意の1つの遺伝子座における対立遺伝子が、同一である場合、この個体は、その遺伝子座に関してホモ接合的であるといい、そしてこれらが異なる場合、その個体は、この遺伝子座に関して異種接合的であるという。任意の1つの遺伝子の異なる対立遺伝子が、単一の塩基のみによって変化し得ることに起因して、任意の1つの遺伝子に対する対立遺伝子のあり得る数は、非常に多い。対立遺伝子が異なるとき、多くの場合、一方は、他方(劣性であるという)に対して優性である。優性は、表現型の特性であり、そして優勢な遺伝子による劣勢対立遺伝子の不活性化を意味しない。多くの例において、正常に機能する(野生型の)対立遺伝子は、いくぶん不完全な機能の変異対立遺伝子の全てに対して優勢である。このような場合における一般的な説明は、2つのうち1つの機能的な対立遺伝子は、生物の正常な発達を支援する、十分に活性な遺伝子産物を産生するのに十分である(すなわち、遺伝子産物の量において、通常、2倍の安全域が存在する)。
【0074】
ハプロタイプ:多くの存在し得る複数の対立遺伝子の一方(染色体の位置確認および一組の染色体の1つの特定の相同染色体によって保有される対立遺伝子の組を示すことによって連続的に順序付けられる)。
【0075】
ヌクレオチド:糖部分(ペントース)、リン酸、および窒素性の複素環式塩基からなるDNAまたはRNAのモノマー単位。塩基は、グリコシドの炭素(ペントースの1’炭素)を介して糖部分に結合され、そして塩基と糖との組み合わせは、ヌクレオシドである。このヌクレオシドが、ペントースの3’位または5’位に対して結合されたリン酸基を含む場合に、これは、ヌクレオチドと称される。作動可能に結合されたヌクレオチドの配列は代表的には、本明細書中で「塩基配列」または「ヌクレオチド配列」と称され、そしてこれらの文法的な等価物を指し、これらは本明細書中で、左から右への方向性が、慣習的に5’末端から3’末端への方向である式によって示される。
【0076】
塩基対(bp):2本鎖DNA分子における、アデニン(A)とチミン(T)との協調、またはシトシン(C)とグアニン(G)との協調。RNAにおいては、ウラシル(U)が、チミンに対して置き換えられる。本明細書中でRNAを指す場合、記号Tは、RNA分子の特定の位置におけるウラシルを示すUと、交換可能に使用され得る。
【0077】
核酸:ヌクレオチドのポリマー(1本鎖または2本鎖のいずれか)。
【0078】
ポリヌクレオチド:1本鎖ヌクレオチドまたは2本鎖ヌクレオチドのポリマー。本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」およびその文法的等価物は、核酸の全範囲を含む。ポリヌクレオチドとは、代表的に、直鎖状の2つ以上のデオキシリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドで構成される核酸分子を指す。この正確な大きさは、多くの要因に依存し、そして、この要因は、当該分野において周知である最終的な使用条件に依存する。本発明のポリヌクレオチドとしては、プライマー、プローブ、RNA/DNAセグメント、オリゴヌクレオチドまたは「オリゴ」(比較的に短いポリヌクレオチド)、遺伝子、ベクター、プラスミドなどが挙げられる。
【0079】
RNAi:RNA干渉(RNAi)は、小さな干渉するRNA(siRNA)(代表的に、約21〜23ヌクレオチド長の2重鎖)が、細胞中に導入される方法であり、これは最終的に、同一配列または相補的配列を含む標的化された遺伝子のメッセンジャーRNAの分解を生じ、そしてこの遺伝子を有効にサイレンシングする。
【0080】
遺伝子:ヌクレオチド配列が、RNAまたはポリペプチドについてコードする核酸。遺伝子は、RNAまたはDNAのいずれかであり得る。
【0081】
2重鎖DNA:2重鎖の塩基対に存在する相補的塩基の各々の間の1つ以上の水素結合によって、一つに保たれる実質的に相補的なポリヌクレオチドの2本鎖を含む2本鎖の核酸分子。塩基対を形成するヌクレオチドは、リボヌクレオチド塩基またはデオキシリボヌクレオチド塩基のいずれかであり得、語句「2重鎖DNA」とは、2つのDNA鎖を含むDNA−DNAの2本鎖(ds DNA)、または1つのDNA鎖および1つのRNA鎖を含むRNA−DNAの2本鎖のいずれかをいう。
【0082】
相補的塩基:DNAまたはRNAが、2本鎖構造をとる場合に、通常対となるヌクレオチド。
【0083】
相補的ヌクレオチド配列:結果的な水素結合によって別の1本鎖上のヌクレオチド配列に対して特異的にハイブリダイズするのに十分に相補的である、DNAまたはRNAの1本鎖分子中のヌクレオチドの配列。
【0084】
保存的:前もって選択された(参照)配列が、その前もって選択された配列の正確な相補体に対して無作為でなくハイブリダイズする場合、ヌクレオチド配列は、前もって選択された配列について保存的。
【0085】
ハイブリダイゼーション:相補的塩基対の間の水素結合の確立によって、2重鎖またはヘテロ2本鎖を形成する実質的に相補的なヌクレオチド配列(核酸の鎖)の塩基対形成。それは、特異的である(すなわち、競合的に阻害され得る2つの相補的ポリヌクレオチド間の無作為ではない相互作用)。
【0086】
ヌクレオチドアナログ:A、T、G、CまたはUとは構造的に異なるが、核酸分子における通常のヌクレオチドを置換するのに十分に類似している、プリンヌクレオチドまたはピリミジンヌクレオチド。
【0087】
DNAホモログ:前もって選択され、保存されたヌクレオチド配列を有する核酸、および前もって選択されたリガンドを結合し得るレセプターについてコードする配列。
【0088】
上流:DNA転写の方向に対向する方向であり、したがって、非コード鎖上の5’から3’にか、またはmRNA上の3’から5’に向かう方向。
【0089】
下流:やはりDNA配列に関してDNAの非コード鎖に沿った3’方向から5’方向、またはRNA転写物に沿って5’方向から3’方向に向かう、配列の転写または配列の読み出しの方向。
【0090】
終止コドン:アミノ酸をコードせず、代わりにタンパク質合成の停止を生じる3つのコドンのいずれか。これらは、UAG、UAAおよびUGAであり、そしてまた、ナンセンスコドンまたは停止コドンと称される。
【0091】
リーディングフレーム:翻訳に使用される連続する3連のヌクレオチド(コドン)の特定の配列。このリーディングフレームは、転写開始コドンの配置に依存する。
【0092】
イントロン:介在配列とも称され、初めはRNA中に複製されるが、最終的なRNA転写物においては切り出される、DNAの非コード配列。
【発明を実施するための形態】
【0093】
(発明を実施するための形態)
本発明は、フラビウイルス(特に、C型肝炎ウイルス)による感染に対する抵抗性に関するオリゴアデニレートシンセターゼ対立遺伝子についてヒトをスクリーニングするための新規な方法を提供する。本発明は、このような抵抗性が、ヒトOAS1遺伝子をコードするGenbank登録番号NT_009775.13(配列番号19)の、ヌクレオチド位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638におけるオリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子のDNA配列中の点変異(塩基置換)に関するという発見に基づく。
【0094】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)による感染に対して抵抗性であるか、または一部抵抗性である被検体の集団を特定した研究結果、およびこの有益な効果を与える遺伝子の変異をさらに同定した研究結果を開示する。2’−5’−オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子中の数種の遺伝子変異が同定され、これらは、HCV感染に対する抵抗性に大きく関連する。使用された研究計画は、事例−対照対立遺伝子関連分析であった。事例は、連続的にHCVに対する曝露を実証されたかまたは推定され、しかしこのウイルスに対する抗体の発生によって実証されるような感染を発症しなかった(すなわち、HCV血清陰性)被検体として与えられた。対照の被検体は、HCV陽性に血清型が変化した、連続的に曝された被検体であった。事例の被検体および対照の被検体は、3つの集団(カナダのブリティッシュコロンビア州のバンクーバーからの血友病患者;北西フランスからの血友病患者;およびシアトル大都市圏からの注射薬物使用者)から募られた。
【0095】
事例の定義および対照の定義は、血友病の群とIDUの群との間で異なり、そしてそれらは、本明細書中に記載されるような、文献において公開される感染危険率の疫学的なモデルおよび本発明者らによって開発された他のモデルに基づく。血友病の集団に関して、対照の被検体は、市販の診断用研究試験を用いて、HCVに対する抗体について陽性であることが実証された。事例の被検体は、HCV血清陰性であり、5%未満の正常な凝固因子を有し、そして1987年1月より前に濃縮凝固因子を投与されたことが実証された。対照の注射薬物使用者は、HCV血清陽性実証済みとして定義された。事例の注射薬物使用者は、HCV血清陰性実証済みであり、10年間より長く、薬物を注射しており、そして1つ以上のさらなる危険行為に関与していることが報告されているものとして定義された。さらなる危険行為としては、注射器、調理器、または綿を別のIDUと共有することが挙げられる。1つの特定の白色人種集団において、20の事例および42の対照が、この研究に含まれた。事例の被検体およびコントロールの被検体の選択は、基本的に、危険に冒された(「対照」)個体群および危険に冒されていない(「事例」)個体群を用いて米国特許出願第09/707,576号に記載される通りに行われた。
【0096】
HCV感染に対する抵抗性に関わる遺伝子変異を同定することについての本発明のアプローチは、候補遺伝子の選択を包含する。細胞表面に対するウイルスの結合、細胞内でのウイルスの増殖、インターフェロン応答、ならびに先天性免疫系および抗ウイルス応答の局面に関係する約50個の候補遺伝子が、データベース検索された。候補遺伝子は、各被検体のゲノムDNAからの標的配列を増幅するポリメラーゼ連鎖反応を使用して、事例および対照において配列決定された。候補遺伝子から得たPCR産物は、自動化された蛍光ベースのDNA配列決定およびABI3730自動シークエンサーを使用して直接的に配列決定された。
【0097】
ゲノムの変異は、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子(OAS1)において、単独かまたは組み合わせで同定され、HCV感染に対する抵抗性に有意(p<0.05)に関連した。これらの変異を構成する塩基置換および塩基欠失は、図1に示される。OAS1遺伝子の改変体形態(「OAS1R」)は、1つ以上の本発明の変異の存在によって形成される(配列番号1〜配列番号7および配列番号57〜配列番号64として同定される)。OAS1遺伝子のこれらの改変体OAS1R形態は、ウイルス感染に対する抵抗性を与えると考えられる。
【0098】
複数のOAS1変異(配列番号1〜配列番号7および配列番号57〜配列番号64)を含む集団の親ハプロタイプおよび被検体の親ハプロタイプは、当業者に公知のExpectation Maximation法(ExcoffierおよびSlatkin,Mol.Biol.Evol.12:921−927,1995)によって設定される、事例−対照の遺伝子型データから、計算により推測される。本発明は、ハプロタイプの分析のためのOAS1変異の全範囲の使用ならびに計算の便宜のためのOAS1変異のサブセットの使用の両方を包含する。事例群および対照群を用いたハプロタイプおよびハプロタイプサブセットの分離の様式の比較分析は、ウイルス抵抗性またはウイルス感受性に対する特定の効力の変異を同定する。
【0099】
1つの例示的な例において、ハプロタイプは、配列番号2〜配列番号6によって同定される、複数のOAS1変異の含有について計算される。数種のハプロタイプが、この分析によって白色人種の事例集団および白色人種の対照集団において同定される。これらのハプロタイプの定義は、図4に示される。2つの共通するハプロタイプ(HAP1およびHAP2として同定される)が同定され、これらは、推測されたハプロタイプの約85%を説明し、そしてハーディ−ヴァインベルク平衡にある(特に、この集団中のハプロタイプホモ接合体の出現に対して)。種々のヒト集団および霊長類におけるOAS1のさらなる分析は、HAP2が、旧世界ザルおよび原人の分岐点にさかのぼる、祖先の霊長類ハプロタイプであることを示す。1つのさらなるハプロタイプ(HAP3として同定される)は、この特定の集団中の、持続的にHCV抵抗性である事例群に関連する。したがって、HAP3ハプロタイプを保有する被検体は実質的に、HCV感染の危険がより低い。HAP3ハプロタイプは、祖先のハプロタイプが起源とする、複雑な一連の組換えおよび変異を通じて生じたようである。このような事象の組み合わせの稀少性は、ハプロタイプHAP3の多くの出現と組み合わせて、おそらく長期にわたるウイルス負荷の繰り返しに対する応答として、この集団中のハプロタイプHAP3を発生しかつ維持するように作用した正の選択を示唆する。この例において、ハプロタイプHAP3は、単一の前駆体RNAにおいて、配列番号2の変異におけるGヌクレオチドの効果を配列番号4の変異におけるAヌクレオチドの効果と一緒に組み合わせる、かなりの集団頻度にて出現する唯一のハプロタイプである。
【0100】
本発明は、上記の説明的な例に限定されない。特定のOAS1変異の関連性および有用性に対する見識を与える他の説明的な例によっても、本発明は限定されない。別の説明的な例において、配列番号2におけるAヌクレオチドに対するGヌクレオチドの置換は、セリンからグリシンへの予測されるアミノ酸置換を生じる。当業者にとって公知である計算的予測は、セリンが、ホスホリル化の部位であり、一方グリシンは、ホスホリル化されないということを強く示唆する。
【0101】
さらなる説明的な例において、配列番号4の変異におけるGヌクレオチドに対するAヌクレオチドの置換は、OAS1において、野生型の6番目のエキソンに関する共通スプライシングアクセプター部位(consensus splice acceptor site)中に生じる。この置換は、このスプライシングアクセプター認識シグナルにおいてこの必要なGを置き換えるが、このプロセスは、1塩基対下流の新しいスプライシング認識部位を生じる。したがって、この変異形態は、この翻訳タンパク質におけるフレームシフトを形成する。この変異部位はまた、効果の弱いスプライシングシグナルであり、そして結果として、このフレームシフトされたエキソン6のスプライシングに加えて、前駆体RNAのさらなる代替的なスプライシングを促す。これらの代替的なスプライシング形態の好ましい実施形態は、図5Aおよび図5Bにおいて提供される。遺伝的分析のさらなる例示的な例は、以下に提供される。
【0102】
OAS1転写改変体の無差別なスプライシングは独立して、リンパ球細胞株および新鮮なヒト血清から単離される末梢血単核細胞(PBMC)の両方に由来するRNAの逆転写によって確認される。種々の、ハプロタイプ保有細胞株およびハプロタイプ保有PBMCから得た逆転写されたRNA産物のPCR分析は、OAS1R形態の多数の転写改変体において生じる、配列番号4の変異に関するAヌクレオチドを保有するRNA形態を示した。これらのOAS1R転写改変体は、図5Aおよび図5Bにグラフで示され、そして図3において提供されるような配列番号36〜配列番号47を含む。
【0103】
このOAS1遺伝子のこれらの改変OAS1R形態および対応する転写改変体は、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号32、配列番号35、配列番号46、および/または配列番号47からなる1つ以上のポリペプチドをコードすると考えられる。上記のポリペプチドは、単数または複数のいずれかで、本明細書中において交換可能に、OAS1RポリペプチドまたはOAS1Rタンパク質と称され得る。上記のポリペプチドの多くの一般的な特徴は、これらが主に、そのアミノ末端部分を保存する一方で、そのカルボキシル末端部分において異なることである。
【0104】
代替的な転写物それ自体の産生に加え、この遺伝子のOAS1R形態はまた、特定の転写改変体についての選択的な優先度を改変する、特定の配列コンテキスト(context)(例えば、エキソンスプライシングのエンハンサー)を含んでも失くしていてもよい。そして、このことは、生じるタンパク質の発生量の種々の相対的レベルを生じ得る。このOAS1遺伝子のこれらの改変OAS1R形態はまた、生じるタンパク質の局在または翻訳後修飾を改変し得る。当業者は、特定のOAS1タンパク質形態の活性、安定性、もしくは利用能を改良する、発生量の増加または他の修飾が、2’−5’−OAS/RNase L経路の抗ウイルス性能全体を改良し得ることを理解する。同様に、当業者は、特定のOAS1形態の活性または利用能を低下させることもまた、この特定のタンパク質が、他の特定のOAS1形態に対して有利でないかまたは不利でさえある事例において、2’−5’−OAS/RNase L経路の抗ウイルス性能全体を改良することを理解し得る。不利なOAS1タンパク質の1つの実施形態は、この特定のOAS1タンパク質の酵素活性を妨げるような様式でウイルスタンパク質によって特異的に標的化されるタンパク質であるが、これに限定されない。有利でないOAS1タンパク質のさらなる実施形態は、他の活性形態と重合し、それによってこの重合されたタンパク質の酵素活性全体を低下させるかまたは排除する(したがって、抗ウイルス効果全体を減少させる)より低い酵素活性を有するタンパク質である。1つ以上の上記の機構は、ウイルス感染に対する抵抗性に寄与し得る。しかし、本発明は、開示された改変ポリヌクレオチドまたは改変ポリペプチドの作用の特定の機構に限定されない。
【0105】
したがって、本発明は、ヒト2’−5’−オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子の新規な形態、新規なmRNA転写物、および関連するタンパク質を提供する。本発明はまた、この新規なmRNA転写物および新規なタンパク質に関する有用性を開示する。これらの新規な形態は、公のデータベース中に開示されない、数種の稀な遺伝子変異またはハプロタイプの1つ以上を有する遺伝子の存在によって特徴付けられる。OAS1のこれらの新規な形態(OAS1R)は、C型肝炎ウイルスおよび関連するフラビウイルス(西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マリーバレーウイルス、ポーワッサンウイルス、ロシオウイルス、跳躍病ウイルス、バンジ(Banzi)ウイルス、イルへウスウイルス、ココベラ(Kokobera)ウイルス、クンジンウイルス、アルフイ(Alfuy)ウイルス、ウシ下痢症ウイルス、およびキャサヌール森林病ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない)に対するあるレベルの抵抗性を、キャリアに与える。このOASタンパク質はまた、実験的なRSウイルスおよびピコルナウイルスの細胞培養感染システムにおける感染を減弱するのに重要であることが示された。ウイルスを放出するヒト免疫不全ウイルス−1(HIV−1)感染細胞の不全は、高濃度のOASおよび/または2−5Aに相関した。さらに、HIV−1トランス活性化因子タンパク質(tat)は、OASの活性化を遮断することが示され(Mullerら,J Biol Chem.1990年5月5日;265(7):3803−8)、したがってこのことは、OASの新規な形態が、HIV−1の防御機構を回避し、そして有効な治療を提供し得ることを示す。したがって、本明細書中に開示されるOAS1のこれらのOAS1R形態は、これらの非フラビウイルスの感染性因子に対する抵抗性を与え得る。
【0106】
本発明はまた、OAS1のチンパンジー(Pan troglodytes)形態およびゴリラ(Gorilla gorilla)形態(それぞれ、有用性を有する新規なmRNAおよび新規なポリペプチドを生じる)の新規な記載を提供する。遺伝子は代表的に、近縁関係にある霊長類(例えば、ヒト、チンパンジーおよびゴリラ)において非常に高度に保存されているが、OAS1における重要な違いが、この3つの種の間で観察される。最もヒトに近縁であるチンパンジーは、切断されたタンパク質産物を生じるOAS1エキソン5内の1塩基置換(ヒトにおけるNT_009775.13中の2,142,351に対して等価な部位における置換であり、そして配列番号53によって定義される)を有する。このチンパンジーの、OAS1ポリペプチド配列およびOAS1 mRNA配列は、それぞれ、配列番号51および配列番号55によって提供される。ゴリラもまた、翻訳の早期の停止を生じるエキソン6内のアクセプタースプライシング部位近傍の2塩基対欠失(ヒトにおけるNT_009775.13中の2,144,089〜2,144,090に対して等価な部位における欠失であり、そして配列番号54によって定義される)を有する。このゴリラの、部分的ポリペプチド配列および部分的mRNA配列は、それぞれ、配列番号52および配列番号56によって提供される。ヒトと比較したこのチンパンジー転写物およびゴリラ転写物の推測される構造は、図5Cにおいて提供される。ヒトOAS1Rポリペプチドのように、これらの事例の各々は、そのカルボキシル末端尾部の構造および内容において最も著しく異なる、高度に保存されたポリペプチド配列を有する。これらのポリペプチドの共通のアミノ末端部分は、OAS1酵素活性に必要とされることがこれまでに実証された要素の全てを含む。チンパンジーおよびゴリラが、アフリカにおけるヒトのウイルス負荷と同様のウイルス負荷に供されるので、これらの、異なるが機能的に類似する霊長類の改変体の有病率は、より長いOAS1形態のカルボキシ末端部分が、ウイルス負荷に対して生き残ることにおいて、不必要であるかまたは不利でさえあるという証拠を、さらに提供する。チンパンジーが、ヒトにおける転写改変体の異質性とは対照的にOAS1ポリペプチドの明らかな短縮を有するという事実は、チンパンジー(HCV感染に対して感受性であることが知られる唯一の他の霊長類)が、ウイルスクリアランスの高い頻度、および感染の結果として生じる線維症または肝細胞癌の欠如によって特徴付けられる、ヒトと比較して異型の感染を有するという知見と一致する。
【0107】
それぞれの新規なOAS1R cDNAは、これらの変異のキャリアであるヒト被検体からクローニングされる。クローニングは、細胞または組織からのRNAの単離、RNAからcDNAへの変換、およびcDNAからクローニングに適した2本鎖DNAへの変換を包含する標準的なcDNAクローニング法によって行われる。当業者が認識するように、これらの工程の全ては、慣習的な分子生物学的分析である。他の方法としては、逆転写PCR、5’RACE(cDNA末端の迅速増幅(Rapid Amplification of cDNA Ends))、または従来のcDNAライブラリーの構築およびサザンハイブリダイゼーションによるスクリーニングが挙げられる。本明細書中に記載される全てのOAS1R対立遺伝子は、キャリアの患者から回収される。新たにクローニングされたOAS1R cDNAの各々は、野生型に対するその同一性を確認するため、および野生型に対する任意のさらなる配列の違いを同定するために配列決定される。
【0108】
新規なOAS1R遺伝子変異は、生じるOAS1 mRNAの特性を改変することによってウイルス感染に対する抵抗性に影響し得る。したがって、OAS1R対立遺伝子のキャリアとホモ接合野生型の被検体との間のmRNA安定性における違いが、評価される。RNA安定性は、Taqman(登録商標)および単純なノーザンハイブリダイゼーションを含む公知のアッセイを使用して評価され、そして比較される。これらは、分子生物学における慣習的な方法である。
【0109】
OAS1R変異は、上記OAS1遺伝子の調節を改変することによって感染抵抗性に影響する。OAS遺伝子の発現が、インターフェロン処置により、およびウイルス感染の間に誘導されることは、公知である。上記OAS1R対立遺伝子は、構成的な発現、過剰発現、または他の無調節性の発現を通じてウイルス感染に対する抵抗性を与え得る。数種の方法は、インターフェロンの刺激またはウイルスの刺激を伴う遺伝子発現およびそれを伴わない遺伝子発現を評価するために使用される。これらの方法としては、発現のマイクロアレイ分析、ノーザンハイブリダイゼーション、Taqman(登録商標)などが挙げられる。試料は、末梢血単核細胞のようなOAS遺伝子を発現することが知られている組織から収集される。OAS1Rキャリアから得た組織と、非OAS1Rキャリアから得た組織との間で比較される。1つの実施形態において、末梢血単核細胞は、キャリアおよび非キャリアから収集され、培養によって増殖され、そしてインターフェロンによって刺激される。インターフェロン誘導の間のOAS1R対立遺伝子の発現レベルは、野生型対立遺伝子と比較される。別の実施形態において、ヒト被検体は、インターフェロンによって処置され、そしてOAS1遺伝子の誘導のレベルは、上記OAS1R変異のキャリア 対 非キャリアで評価される。当業者が理解し得るように、組織、実験設計、および分析の方法の多くの組み合わせが、OAS1R遺伝子調節を評価するために使用される。
【0110】
一旦、各OAS1Rについての新規なcDNAが、クローニングされると、それは、多くの異なる公知の発現クローニングシステムのいずれかを使用して、組換えOAS1Rを生産するために使用される。このアプローチの1つの実施形態において、OAS1R cDNAは、標準的な分子生物学的方法によって、ポリヒスチジンポリペプチドをコードするDNAの配列を含むエピトープタグに隣接する、Escherichia coli発現ベクター中にクローニングされる。その後、この組換えタンパク質は、固定化した金属アフィニティークロマトグラフィーまたは類似の方法を使用して、Escherichia coli溶解物から精製される。当業者は、組換えタンパク質を精製するために使用され得る多くの異なる発現ベクターおよび宿主細胞(酵母発現系、バキュロウイルス発現系、チャイニーズハムスター卵巣細胞などが挙げられるが、これらに限定されない)が存在することを認識する。
【0111】
計算的方法は、OAS1Rタンパク質を野生型OAS1タンパク質から一意的に区別する、OAS1Rタンパク質に由来する短いペプチド配列を同定するために使用される。種々の計算的方法および市販のソフトウェアパッケージは、ペプチドの選択のために使用され得る。これらの計算的に選択されたペプチド配列は、FMOCペプチド合成化学または類似の方法を使用して製造され得る。当業者は、供給された配列による短いポリペプチドを合成するための、多くの化学的方法が存在することを認識する。
【0112】
OAS1R遺伝子に由来するペプチドフラグメントおよび組換えタンパク質は、この遺伝子産物に対して特異的な抗体を開発するのに使用され得る。当業者が認識するように、複数の異なる宿主生物、アジュバントなどの使用を含む、抗体開発のための多くの方法が存在する。1つの古典的実施形態において、少量(150マイクログラム)の精製された組換えタンパク質は、ニュージーランド白ウサギの背部に皮下注射され、その後、同様の量が、数ヶ月ごとに追加免疫として注射される。その後、ウサギの血清は、静脈穿刺によって収集され、そしてこの血清、精製されたIgG、または上記免疫を与えるタンパク質に対して特異的なアフィニティー精製された抗体が、収集され得る。当業者が認識するように、同様の方法は、ラット、マウス、ヤギ、および他の生物において抗体を生じさせるのに使用され得る。上記のようなペプチドフラグメントはまた、上記OAS1Rタンパク質に対して特異的な抗体を生じさせるため使用され得る。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方の発生は、本発明を実施するのに適切である。このOAS1Rタンパク質に対して特異的モノクローナル抗体を分泌するマウスハイブリドーマ細胞株の産生は、標準的な分子的技術によって行われ得る。
【0113】
上記のように調製された抗体は、細胞、組織、および器官におけるOAS1Rタンパク質の、存在または非存在を評価するための診断方法を開発するのに使用され得る。このアプローチの1つの実施形態において、酵素結合イムノソルベントアッセイは、精製された組換えOAS1Rタンパク質、およびヒト血清中のこれらのタンパク質を検出するための特異的抗体を使用して開発され得る。これらの診断方法は、上記の遺伝子変異のキャリアおよび非キャリアの組織におけるOAS1Rタンパク質の、存在または非存在を確認するのに使用され得る。
【0114】
上記のように調製された抗体はまた、これらの変異を保有する患者からネイティブなOAS1Rタンパク質を精製するために使用され得る。多くの方法が、ヒト細胞およびヒト組織からネイティブなタンパク質を精製する抗体を使用するのに利用可能である。1つの実施形態において、抗体は、ホモジナイズされたヒト組織およびプロテインAを使用する抗体捕捉を包含する免疫沈降実験において使用され得る。この方法は、変異OAS1Rタンパク質の、濃縮およびさらなる評価を可能にする。OAS1Rのネイティブな形態を単離するための多くの他の方法が利用可能であり、その方法としては、カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、塩析、透析、電気泳動、等電点電気泳動、分画遠心法などが挙げられる。
【0115】
プロテオーム的方法は、2次タンパク質構造、3次タンパク質構造、および4次タンパク質構造上のOAS1R変異の効果を評価するために使用される。プロテオーム的方法はまた、このOASタンパク質の翻訳後修飾に対するOAS1R変異の影響を評価するために使用される。タンパク質に対する多くの公知の考えられる翻訳後修飾が存在し、これらとしては、プロテアーゼによる切断、グリコシル化、ホスホリル化、硫化、化学基および錯体分子の付加などが挙げられる。2次タンパク質構造および3次タンパク質構造を評価するための一般的な方法は、核磁気共鳴(NMR)分光法である。NMRは、野生型OAS1タンパク質とOAS1Rタンパク質との間の2次構造および3次構造の違いを精査するのに使用される。機能的部位の活性を評価するための方法を含む、従来のNMRに対する改変もまた、適切であり、この方法としては、転移核オーバーハウザー分光法(Transfer Nuclear Overhauser Spectroscopy (TrNOESY))などが挙げられる。当業者が認識するように、このアプローチおよび結果のデータ解析のための方法に対する多くの軽微な改変が、利用され得る。これらの方法の全ては、本発明の実施に含まれることが意図される。結晶化およびX線回折によってタンパク質構造を決定するための他の方法が利用される。
【0116】
質量分析もまた、変異OASタンパク質と野生型OASタンパク質との間の違いを評価するために使用され得る。この方法は、タンパク質の構造的な相違、ならびにタンパク質の翻訳後修飾における相違を評価するために使用される。このアプローチの1つの代表的な実施形態において、この野生型OAS1タンパク質および変異OAS1Rタンパク質は、上記の方法の1つを使用してヒト末梢血単核細胞から精製される。これらの細胞は、このOASタンパク質の発現を増加させるために、上記のように、インターフェロンを用いて刺激され得る。精製されたタンパク質は、特定のプロテアーゼ(例えば、トリプシン)を用いて消化され、そしてそれは、質量分析を使用して評価される。当業者が認識するように、多くの代替的な方法もまた、使用され得る。本発明は、これらのさらなる代替的な方法を企図する。例えば、マトリックス支援レーザーイオン化(MALDI)法またはエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析法が使用され得る。さらに、質量分析は、包括的な前精製に代わるものとしての細胞タンパク質の2次元ゲル電気泳動分離の使用と組み合わせられ得る。質量分析はまた、ペプチドフィンガープリントデータベースおよび種々の検索アルゴリズムの使用と組み合わせられ得る。ホスホリル化またはグリコシル化のような翻訳後修飾における違いもまた、質量分析と種々の前処理(例えば、グリコシラーゼおよびホスファターゼを用いる)の使用とを組み合わせることによって精査され得る。これらの方法の全ては、この適用の一部として検討されるべきである。
【0117】
OAS1は、テトラマーの場合に活性であり、そして自己会合に干渉する変異は、酵素活性に影響する。公知の方法が、テトラマー形成に対するOAS1R変異の効果を評価するのに使用される。例えば、OAS1とOAS1R特異的抗体との免疫沈降は、患者の細胞、細胞培養物、またはこのOAS1もしくはOAS1Rを過剰発現するトランスフェクトされた細胞から得たOAS1/OAS1R複合体を単離するために行われる。その後、これらの複合体は、当業者に周知である、ゲル電気泳動または他のクロマトグラフ的方法によって評価され得る。
【0118】
OAS1は、他のタンパク質との相互作用によってウイルス抵抗性を与え得る。上記酵素は、bcl−2ファミリーのBH3ドメインに対して構造的な相同性を有する領域を含む。このドメインは、OAS1の上記機能について重要であり得る。本発明にしたがって、OAS1特異的抗体は、上で議論されるような種々の供給源に由来するOAS1タンパク質を含むタンパク質複合体を単離するために使用され得る。その後、これらの複合体は、この相互作用複合体のメンバーを分離するゲル電気泳動によって評価され得る。ゲルは、多くの方法(ウェスタンブロッティングが挙げられる)を用いて精査され、そして新規な相互作用タンパク質は単離され、そしてそれは、ペプチド配列決定を使用して同定され得る。野生型抽出物およびOAS1R抽出物中のOAS複合体の含有量における違いもまた、評価される。当業者が認識するように、記載された方法は、このOAS複合体中の相互作用タンパク質を精製し、同定し、そして評価するために使用され得る多くの異なるアプローチの、ごく一部である。さらなる方法としては、ファージディスプレイおよび酵母2−ハイブリッド法の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
OAS1は、C型肝炎ウイルスのNS5Aタンパク質と相互作用することが公知である(Taguchi,T.ら,J.Gen.Virol.85:959−969,2004)。したがって、本発明は、このNS5Aタンパク質と相互作用しないOAS1タンパク質に関する(ここで、このタンパク質は、本発明のポリヌクレオチドによって発現される本発明のポリペプチドであり、これは、OAS1のスプライシング改変体によってコードされるmRNA、少なくとも1つの本発明の変異を含むOAS1ポリヌクレオチドによってコードされるmRNA、コード領域中に少なくとも1つの変異を有するOAS1ポリヌクレオチドによってコードされるmRNA、および/または少なくとも1塩基の置換、欠失または付加を有するOAS1ポリヌクレオチドによってコードされるmRNAによって発現され、ここでNS5Aタンパク質に対する結合は、変化するかまたは妨害されるが、機構に拘泥されることはない。
【0120】
NS5Aタンパク質は、インターフェロンの抗ウイルス活性を阻害することによって、生物学的活性を発揮し得る。この抗ウイルス活性は、インターフェロンが2本鎖RNAのような補因子の存在下でOAS1活性を刺激する場合に正常に実行される、1つのモデルである。OAS1は、2’−5’結合型オリゴアデニレートに対してATPを重合し、これは、1本鎖RNA(mRNAが挙げられる)を切断するRNase Lを活性化する。OAS1に対するNS5Aの結合は、その活性を阻害し得、したがって、このウイルスRNAの破壊を生じる活性のカスケードを、阻害するかまたは妨害する。
【0121】
本発明は、このモデルに依存しないが、OAS1に対するNS5Aの結合は、OAS1の変異形態がNS5Aの結合およびNS5Aの阻害を回避し、したがって、ATPを重合する通常の機能を実行し得るモデルと一致する。このような場合において、本明細書中に記載される臨床上の結果と一致して、このような変異を保有する者は、C型肝炎ウイルスによる感染に対して抵抗性である。同様に、チンパンジーが有するOAS1の短縮形態は、上記の通り、NS5Aまたは他のウイルスタンパク質による結合を逃れ、したがって、観察される高頻度のチンパンジーのウイルスクリアランスを可能にする。いくつかの場合において、この変異は、NS5Aに対するOAS1の結合部位に直接影響し得る。他の場合において、この変異は、実際の結合部位から離れた部位にあり得るが、NS5Aに対するOAS1の結合が、阻害されるか、遅くされるかまたは妨害されるようなコンホメーションの変化を生じる。
【0122】
したがって、生理学的および病理学的に関連する様式での、このNS5Aに対するOAS1の結合は、コードされるOAS1タンパク質の生物学的機能に対する、OAS1ポリヌクレオチド中の塩基の変異、欠失または付加の効果をアッセイするための客観的試験を提供する。このような結合は、当該分野において公知の様式でアッセイされる。Taguchi,T.ら(J.Gen.Virol.85:959−969,2004)によって記載されるような、限定ではないが、1つの例示的な方法において、HeLa細胞は、GSTタグ化NS5AおよびHAタグ化OAS1をコードする発現プラスミドによって、一過性にトランスフェクトされる。この例におけるOAS1に関しては、本発明のOAS1が意味され、これとしては、OAS1のスプライシング改変体によってコードされるOAS1、コード領域中に少なくとも1つの変異を有するOAS1ポリヌクレオチドによってコードされるOAS1、および/または少なくとも1塩基の、置換、欠失、もしくは付加を有するOAS1ポリヌクレオチドによってコードされるOAS1が挙げられる。適切なインキュベーション時間(例えば、12時間〜16時間)の後、この細胞は、洗浄され、溶解され、そして遠心分離され、そして生じた上清は、GSTタグ化タンパク質を分離するのに役立つグルタチオン結合セファロースビーズと混合される。GSTタグ化NS5Aタンパク質とHAタグ化OAS1たんぱく質との複合体は、NS5Aに対する抗体および抗HA抗体を使用しかつ画像化することによって同定される。この方法における改変は、個々のタンパク質に対して他のタグ(例えば、FLAGタグ)を使用することを含む。本発明の内容において、主に変化するものは、上記OAS1タンパク質またはOAS1ポリペプチドである。1つの生物学的に関連する活性(すなわち、宿主中で複製するウイルスの能力に関して保護性であることが公知であるC型肝炎タンパク質に対する結合)を実行する、このOAS1タンパク質またはOAS1ポリペプチドの活性は、これらのアッセイを使用して客観的に試験される。NS5Aに対して結合しないOAS1タンパク質およびOAS1ポリペプチドは、治療用タンパク質として適切な候補である。
【0123】
このOAS1タンパク質は、ATPのオリゴアデニレート分子への変換を触媒する酵素である。数種の方法が、OAS1酵素の活性を評価するのに利用可能である。これらの方法は、野生型酵素に対する変異タンパク質の活性に対するOAS1R変異の効果を決定するのに使用される。例えば、オリゴアデニレートシンセターゼ活性は、ポリアデニレート中への、32Pで放射標識したATPの取り込みを定量することによって測定され得る。この放射標識されたポリアデニレートは、多くのクロマトグラフ的方法(電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる)によって、長さに関して定量され、そして特徴付けられ得る。これらのアッセイはまた、基質(ATP)の結合および酵素反応速度の特徴付けを可能にする。本明細書中に記載される活性アッセイおよび当該分野において記載されるような合成dsRNAを使用して、OAS1は、dsRNAによって活性化される。この活性化の速度は、OAS1において分析され、そしてOAS1Rと比較される。
【0124】
本発明のポリペプチドは、オリゴアデニレート合成活性を有する、当該分野において公知であるこれらの方法および他の方法によって、実証される。図7および図8は、本発明の数種の例示的なポリペプチドの活性を実証する。それらの活性の定量的レベルにかかわらず、この2’−5’−オリゴアデニレートを生成する能力は、RNaseLの活性化を通じて抗ウイルス効果を生じることが当業者に良く理解される。このように、本発明のポリペプチドがオリゴアデニレート合成活性を有するという事実のみでも、(特に、以下に開示されるそれらの治療的使用についての検討において)有用性を有することを示す。
【0125】
生物学的研究は、OAS1R変異遺伝子が、ウイルス感染から保護する程度を評価するために行われる。これらの生物学的研究は、一般的に、この変異OAS1R遺伝子もしくはOAS1Rタンパク質を細胞または生物体全体に導入する形態、ならびに野生型の対照に対してそれらの生物学的活性および抗ウイルス活性を評価する形態を採る。このアプローチの1つの代表的な実施形態において、このOAS1R遺伝子は、培養中のアフリカミドリザル腎臓(Vero)細胞中に、本明細書中に記載される通りに単離されたcDNAを、SV40プロモーター配列からクローニングされたcDNAの発現を駆動する哺乳動物発現ベクター中にクローニングすることによって導入される。このベクターはまた、このOAS1Rの効率的な発現、を許容する、SV40エンハンサー要素およびサイトメガロウイルスエンハンサー要素ならびに培養における選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を含む。その後、このOAS1R発現の生物学的効果は、デング熱ウイルスによって感染されたVero細胞において評価され得る。OAS1Rが複数のフラビウイルスに対する広範な抵抗性を与える場合において、このことは、OAS1のこれらの変異形態を発現する細胞株における、野生型に対するウイルス増殖の減弱を予期させる。当業者が認識するように、細胞および生物中のOAS1R遺伝子およびOAS1Rタンパク質のこの生物学的効果、ならびに異なる感染性因子に対するそれらの生物学的効果を評価するのに使用され得る、複数の異なる実験的なアプローチが存在する。例えば、上記の例において、異なる発現ベクター、異なる細胞型、および異なるウイルス種は、このOAS1Rの抵抗性効果を評価するのに使用され得る。培養物中の初代ヒト細胞は、細胞株に対して評価され得る。細胞は、上記ウイルスの導入前に2本鎖RNAまたはインターフェロンによって刺激され得る。代替的なプロモーター配列および代替的なエンハンサー配列を含む発現ベクターが、評価され得る。フラビウイルス以外のウイルス(例えば、RSウイルスおよびピコルナウイルス)は、評価される。
【0126】
トランスジェニック動物モデルは、生物の全身性ウイルス感染に対する保護におけるOAS1の変異形態の有用性を評価するために開発される。1つの実施形態において、OAS1R遺伝子は、フラビウイルス感染に対して感受性のマウス(例えば、C3H/He実験室近交系)のゲノム中に導入される。これらのOAS1R遺伝子は、感受性マウスにおいて、感染を改変するか、または感染に対する抵抗性を与えるそれらの能力について評価される。当業者が理解するように、多くの標準的な方法は、マウス中にトランスジェニックヒトOAS1R遺伝子を導入するのに使用され得る。これらの方法は、組織特異的な発現パターンに影響するか、または内因性化学物質の導入、誘導プロモーターもしくは組織特異的プロモーターの使用などを介する導入遺伝子の調節を可能にする他の方法と組み合わせられ得る。
【0127】
C型肝炎感染についてのモデルのように、OAS1R遺伝子を発現する細胞株は、ウシ下痢症ウイルス(BVDV)による感染の、感受性、抵抗性、または改変について評価され得る。BVDVは、抗ウイルス剤の潜在的な抗HCVの効力を試験するために、一般的に使用されるモデルである(Buckwoldら,Antiviral Research 60:1−15,2003)。1つの実施形態において、このOAS1R遺伝子は、本質的に上記のような発現ベクターを使用してKL(仔ウシ肺)細胞中に導入され得、そしてこの細胞におけるBVDV感染を改変するそれらの能力について試験され得る。さらに、HCV感染のマウスモデル(例えば、ヒト肝臓のマウス中への移植、ヒト肝細胞のマウス肝臓中への注入など)はまた、OAS1R遺伝子の遺伝子導入環境におけるHCV感染の改変について評価され得る。実験が行われ、それによってOAS1R遺伝子の発現の効果が、HCVウイルス培養系において評価され得る。
【0128】
細胞培養系はまた、種々の条件下で、アポトーシスの促進に対する変異OAS1R遺伝子の影響について評価するために使用され得る。1つの実施形態において、OAS1Rの細胞培養における変異形態は、多くのウイルス(BVDV、HCV、および他のフラビウイルスが挙げられる)によって感染された細胞においてアポトーシスを促進するそれらの能力について、野生型OAS1に対して評価され得る。当業者が認識するように、アポトーシスを測定するための多くの方法が、利用可能である。最も一般的な方法は、アガロースゲル電気泳動と組み合わせた蛍光結合法を使用する、アポトーシス細胞において特徴的なゲノム「DNAラダー」効果の検出を含む。
【0129】
OAS1R変異形態の効果を増強する不完全干渉ウイルスの能力は、細胞培養モデルおよび小動物モデルにおいて試験され得る。
【0130】
OAS1R遺伝子型の存在または非存在が、他のヒト表現型に影響する程度もまた、検査され得る。例えば、OAS1R変異は、HCV感染被検体におけるウイルス力価および自然に起きるウイルス負荷とのそれらの関連について評価される。他のフラビウイルス感染の過程と宿主OAS1遺伝子型を関連付ける同様な方法もまた、行われ得る。HCV感染患者におけるインターフェロン処置またはリバビリンを伴うインターフェロン処置の際に、首尾よい結果を促すことに対するOAS1R変異の影響もまた、検査される。
【0131】
これらの変異は、あるレベルの感染抵抗性を与え得るだけでなく、インターフェロン−リバビリン処置を伴うかまたは伴わない感染被検体において自然に起きるウイルスクリアランスを促進し得る。さらに、精神分裂病は、フラビウイルス感染についての地方流行がある地理的区域において高頻度で起こることが報告された、これは、フラビウイルス抵抗性の対立遺伝子と精神分裂病についての素因との間の関連を示唆する。この関連は、精神分裂病の表現型およびOAS1R変異を含む、さらなる遺伝子的関連の研究を行うことによって評価される。IDDM、前立腺癌および他の癌、ならびに精神分裂病に対する感受性に対するOAS1R変異の影響もまた、評価される。
【0132】
本発明は、新規でありかつ有用性を有するOAS1R改変体mRNA(配列番号36〜配列番号43として同定される)を開示する。本発明は、開示された改変体mRNAの使用の形態に限定されない。1つの好ましい実施形態において、これらの改変体mRNAは、ウイルス(HCVが挙げられる)の感受性を上昇させるかまたは減少させるために、ヒト被検体を示差的にスクリーニングするのに使用される。他の好ましい実施形態において、これらの改変体mRNAは、IDDM、前立腺癌および他の癌、ならびに/または精神分裂病に対する感受性についてスクリーニングするのに有用である。このような示差的スクリーニングは、所定のヒト被検体に由来する試料中に存在する1つ以上の改変体OAS1R mRNAの相対量を決定する、当業者に公知の発現分析によって行われる。対照試料に対するヒト被検体の試料における1つ以上のOAS1R mRNA改変体の、増加量または減少量は、検討される試験に応じて、ウイルス、IDDM、前立腺癌および他の癌、ならびに/または精神分裂病に対するこの被検体の感受性の程度を示す。
【0133】
本明細書中で議論されるように、2’−5’−オリゴアデニレートシンセターゼ(OAS)は、ATPから短い2’−5’結合型オリゴアデニレート(2−5A)分子を合成する、IFN−α−誘導性のRNA依存性エフェクター分子酵素のファミリーである。OAS酵素は、ウイルス感染に対する非特異的免疫防御の重要部分を構成し、そしてウイルス感染についての細胞マーカーとして使用されてきた。本明細書中で議論されるC型肝炎感染における役割に加えて、OAS活性は、特に、ウイルス感染が役割を果たす他の疾患状態にかかわる。
【0134】
特定の病原性機構は、現在の分析の対象であるが、ウイルス感染は、糖尿病のような疾患の発症において役割を果たすと考えられる。リンパ球性のOAS活性は、1型糖尿病を有する患者において顕著に上昇され、このことは、OASが、ウイルス感染と疾患の発症との間の重要な連関であり得ることを示唆する。1組の一卵性双生児から得た糖尿病の双子に関する研究において、Bonnevie−Nielsenら(Clin Immunol.2000年7月;96(1):11−8)は、OASが、発症から間がない1型糖尿病および長期にわたる1型糖尿病の両方において、持続的に活性化されることを示した。1型糖尿病において持続的に上昇したOAS活性は、正常な抗ウイルス応答とは明確に異なり、そしてこの活性は、この酵素の慢性的な刺激、下方制御機構の不全、あるいは内因性もしくは外因性のウイルスまたはそれらの産物に対する異常な応答を示し得る。
【0135】
ウイルス感染と糖尿病の発症との間の、より直接的な連関は、慢性C型肝炎を有する患者の、13%と33%との間が、対応する健康な対照または慢性B型肝炎を有する患者におけるレベルと比較して顕著に上昇したレベルの糖尿病(2型糖尿病)を有することを示す多くの研究によって例証される(Knoblerら、Am J Gastroenterol.2003年12月;98(12):2751−6)。これまで、OASは、C型肝炎感染に続く糖尿病の発症において役割を果たすことが報告されていなかったが、これは、抗ウイルス応答システムのために有用なマーカーであり得る。さらに、本発明により報告された結果は、C型肝炎感染が糖尿病に原因として(causally)関連している場合に、本明細書中に開示される組成物および方法を使用するC型肝炎感染の阻害または排除は、糖尿病の発症の妨害または軽減において有利であり得ることを示す。
【0136】
さらに公開された研究は、静脈性の潰瘍および糖尿病関連性の不良な創傷治癒の事例において、OASが、創傷治癒およびその病理学的障害について本質的な役割を果たすことを示した(WO 02/090552)。不良な創傷治癒の事例において、影響を受けた組織中のOAS mRNAレベルは、1型糖尿病に苦しむ患者由来のリンパ球におけるように上昇されるよりも、むしろ減少される。これらの所見は、OASを、糖尿病および糖尿病関連性の創傷治癒における免疫応答についての病原学的に重要なマーカーとして提示する。
【0137】
OASはまた、前立腺癌に関する細胞プロセスにおいて、仲介役を果たす。OASの主要な生物学的機能は、RNaseL(2−5A分子によって酵素的に刺激される独自に調節されたエンドリボヌクレアーゼ)の活性を促進することである。RNaseLは、IFNの抗ウイルス効果の媒介において良好に確立された役割を有し、そしてRNaseLは、遺伝性前立腺癌1対立遺伝子(HPC1)についての有力な候補である。RNaseLにおける変異は、男性における前立腺癌の高発生率の素因であることが示され、このことは、いくつかにおいて、RNaseLが連関しない事例と比較してより攻撃的な疾患および/または発症年齢の低下を反映する。Xiangら(Cancer Res.2003年10月15日;63(20):6795−801)は、2−5Aの生物安定性(biostable)のホスホロチオエートアナログが、RNaseL活性を誘導し、そして後期の転移性ヒト前立腺癌細胞株の培養においてアポトーシスを引き起こしたことを実証した。それらの所見は、2−5Aレベルにおける同時的な増加を伴うOAS活性の上昇が、強力なアポトーシスの経路を介して癌細胞の破壊を亢進し得ることを示す。したがって、本明細書中に開示される組成物および方法の使用は、前立腺癌の、検出、処置および/または妨害における有用性を見出し得る。
【0138】
OASはさらに、RNaseLの調節を介してか、またはいまだ未発見の経路のような別のものを介して、正常な細胞増殖調節における役割を果たす。細胞増殖のネガティブな制御におけるOASの重要性を支持する考慮すべき、重要な証拠が、存在する。Rysieckiら(J.Interferon Res.1989年12月;9(6):649−57)は、グリア芽腫細胞株中へのヒトOASの安定なトランスフェクションが、細胞増殖の減少を生じることを実証した。OASレベルはまた、増殖細胞株に対して静止状態の細胞株を比較するいくつかの研究において測定可能であることを示し(例えば、HasselおよびTs’O,Mol Carcinog.1992年;5(1):41−51ならびにKimchiら,Eur J Biochem.1981年;114(1):5−10)、そしてそれぞれの事例において、このOASレベルは、静止状態の細胞において最大であった。他の研究は、S期の後期の間に急増し、その後、G2期において急激に下降するOASレベルを伴う、OASレベルと細胞周期との間の相関関係を示した(WellsおよびMallucci,Exp Cell Res.1985年7月;159(1):27−36)。いくつかの研究は、OASの誘導と、種々の形態のインターフェロンによる刺激に続く抗増殖性効果の開始との間の相関関係を示した(PlayerおよびTorrence,Pharmacol Ther.1998年5月;78(2):55−113を参照のこと)。OASの誘導もまた、細胞分化の間に示された(例えば、Salzbergら,J Cell Sci.1996年6月;109(Pt 6):1517−26ならびにSchwartzおよびNilson,Mol Cell Biol.1989年9月;9(9):3897−903)。血小板由来成長因子(PDGF)による(Zulloら,Cell.1985年12月;43(3 Pt 2):793−800)、および熱ショック誘導性増殖の条件下での(Choustermanら,J Biol Chem.1987年4月5日;262(10):4806−11)OASの誘導の他の報告は、OASの誘導が、正常な細胞増殖の調節機構であるという仮説を導く。したがって、本明細書中に開示される組成物および方法の使用は、癌の検出、処置および/または予防における幅広い有用性を見出し得る。
【0139】
(ポリヌクレオチド分析)
オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子は、そのヌクレオチド配列が、オリゴアデニレートシンセターゼ、変異オリゴアデニレートシンセターゼ、またはオリゴアデニレートシンセターゼ偽遺伝子についてコードする核酸である。これは、ゲノムDNAの形態、mRNAの形態またはcDNAの形態であり得、そして1本鎖形態または2本鎖形態であり得る。mRNAと比較しての、生物学的試料におけるその相対的安定性に起因して、(好ましくは、ゲノムDNAが)用いられる。参照オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子の完全なゲノム配列の、連続したヌクレオチド2,130,000〜2,157,999からなるポリヌクレオチドの配列は、配列番号19として配列表中に提供され、そしてそれは、Genbank登録番号NT_009775.13に対応する。
【0140】
この核酸試料は、細胞(代表的に、末梢血の白血球)から得られる。mRNAが使用される場合に、上記細胞は、RNase阻害条件下において溶解される。1つの実施形態において、第1の工程は、細胞の全mRNAを単離する工程である。その後、ポリA+mRNAが、オリゴdTセルロースカラムに対するハイブリダイゼーションによって選択され得る。
【0141】
好ましい実施形態において、この核酸試料は、オリゴアデニレートシンセターゼ対立遺伝子物質の存在について増やされる。増加は代表的に、上記ゲノムDNAまたはmRNAを、本明細書中に記載されるようなポリヌクレオチド合成プライマーを利用するプライマー伸長反応に供することによって達成される。アッセイすべきサンプルを生成するための特に好ましい方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるプライマーのような、前もって選択されたポリヌクレオチドを使用して増幅(PCR)産物を形成する。
【0142】
(ポリヌクレオチドプライマーの調製)
プライマー、プローブおよびプライマー伸長によって合成される核酸フラグメントまたは核酸セグメントに関連して本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、2つ以上の(好ましくは、3つより多い)デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドで構成される分子として定義される。その正確な大きさは、多くの要因に依存し、そして、最終的な使用条件に依存する。
【0143】
本明細書中で使用される場合、用語「プライマー」とは、核酸の制限酵素消化から精製されたか、または合成的に生成されたポリヌクレオチドを指し、これは、核酸鎖に対して相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチドおよび重合のための因子(例えば、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素など)の存在下、ならびに適切な温度およびpH)においた場合に、核酸合成の開始点として作用し得る。このプライマーは、好ましくは最大効率のために、1本鎖であるが、代替的に2本鎖形態であり得る。2本鎖の場合、このプライマーは最初に、伸長産物の調製に使用される前に、その相補鎖から分離するように処理される。好ましくは、このプライマーは、ポリデオキシリボヌクレオチドである。このプライマーは、重合化のための因子の存在下で、伸長産物の合成を開始(prime)するのに十分な長さである必要がある。このプライマーの正確な長さは、多くの要因(温度およびプライマーの供給源が挙げられる)に依存する。例えば、標的配列の複雑性に依存して、ポリヌクレオチドプライマーは代表的に、15ヌクレオチド〜25ヌクレオチド、またはそれ以上のヌクレオチドを含むが、より少ないヌクレオチドを含み得る。短いプライマーは、概して十分に安定なハイブリッド複合体を鋳型とともに形成するために、より冷たい温度を必要とする。
【0144】
本明細書中で使用されるプライマーは、合成されるかまたは増幅されるそれぞれ特定の配列の異なる鎖に対して「実質的に」相補的であるように選択される。これは、このプライマーが、そのそれぞれの鋳型鎖に無作為的でなくハイブリダイズするのに十分に相補的である必要があることを意味する。したがって、このプライマー配列は、上記鋳型の正確な配列を反映しても反映しなくてもよい。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントは、このプライマー配列の残部はこのプライマーの5’末端に対して付着され得、この鎖に対して実質的に相補的である。このような非相補的フラグメントは代表的に、エンドヌクレアーゼの制限酵素認識部位についてコードする。
【0145】
代替的に、非相補的塩基、またはより長い配列は、上記プライマー中に組み込まれ得る。但しこのプライマー配列は、それと共に無作為的でなくハイブリダイズするために合成されるかまたは増幅される鎖の配列と十分な相補性を有し、それにより、ポリヌクレオチド合成条件下で伸長産物を形成する。
【0146】
本発明のプライマーはまた、DNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーター配列またはその相補体を含み得る。例えば、Kriegら,Nucl.Acids Res.,12:7057−70(1984);Studierら,J.Mol.Biol.,189:113−130(1986);およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Maniatisら編,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)を参照のこと。
【0147】
DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターを含むプライマーが使用される場合、このプライマーは、増幅されるべきポリヌクレオチド鎖に対してハイブリダイズされ、そしてこのDNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターの第2のポリヌクレオチド鎖は、誘導因子(例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、またはE.coli DNAポリメラーゼのKlenowフラグメント)を使用して完成される。この出発ポリヌクレオチドは、RNAポリヌクレオチドの生成とDNAポリヌクレオチドの生成との間の行き来によって増幅される。
【0148】
プライマーはまた、鋳型配列またはRNA依存性RNAポリメラーゼについての複製開始部位を含む。代表的なRNA依存性RNAポリメラーゼとしては、Lizardiら(Biotechnology,6:1197−1202 1988)によって記載されるQBレプリカーゼが挙げられる。RNA依存性ポリメラーゼは、鋳型配列または複製開始部位を含む少数の鋳型RNA鎖から多数のRNA鎖を産生する。これらのポリメラーゼは代表的に、Kramerら,J.Mol.Biol.,89:719−736(1974)に記載されたように、この鋳型鎖の100万倍の増幅を生じる。
【0149】
上記ポリヌクレオチドプライマーは、例えば、ホスホトリエステル法またはホスホジエステル法(Narangら,Meth.Enzymol.,68:90,(1979);米国特許第4,356,270号、同第4,458,066号、同第4,416,988号、同第4,293,652号;およびBrownら,Meth.Enzymol.,68:109(1979)を参照のこと)のような適切な方法のいずれかを使用して調製され得る。
【0150】
プライマーのヌクレオチド配列の選択は、検出されるべき変異についてコードする領域へのハイブリダイゼーション点からの核酸上の距離、使用される任意の第2のプライマーに対する核酸上のハイブリダイゼーション部位などのような要因に依存する。
【0151】
この核酸試料が、PCR増幅によってアデニレートシンセターゼ遺伝子物質に関して増やされる場合、2つのプライマー(すなわち、PCRプライマー対)は、増幅されるべき核酸の各コード鎖のために使用されなければならない。第1のプライマーは、非コード(アンチセンスまたはマイナスまたは相補)鎖の一部となり、そしてプラス鎖またはコード鎖上のヌクレオチド配列に対してハイブリダイズする。第2のプライマーは、コード(センスまたはプラス)鎖の一部となり、そしてマイナス鎖または非コード鎖上のヌクレオチド配列とハイブリダイズする。この第1のプライマーおよび第2のプライマーの、一方または両方は、エンドヌクレアーゼ認識部位を定義するヌクレオチド配列を含み得る。この部位は、増幅されるオリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子に対して非相同的であり得る。
【0152】
1つの実施形態において、本発明は、プライマーの3’末端に配置されるプライミング領域を有するプライマーを形成する1組のポリヌクレオチドを利用する。このプライミング領域は代表的に、最も3’(3’末端)の15〜30ヌクレオチド塩基である。各プライマーの3’末端のプライミング部分は、核酸合成を触媒するプライマーとして作用し得る(すなわち、その3’末端からプライマー伸長反応を開始する)。このプライマーの一方または両方は、5’末端(最も5’)の非プライミング部分(すなわち、その好ましい鋳型に対するハイブリダイゼーションに関与しない領域)を、さらに含み得る。
【0153】
PCRにおいて、各プライマーは、第2のプライマーとの組み合わせて働き標的核酸配列を増幅する。PCRにおける使用のためのPCRプライマー対の選択は、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子領域を生成するように、本明細書中で議論されるような検討によって決定される。プライマー配列が、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子の対立遺伝子イントロン内の標的配列に対してハイブリダイズ(アニール)するように選択される場合、この標的配列は、アッセイされるべき標的配列の生成を保証するために、上記対立遺伝子間で保存されているべきである。
【0154】
(ポリメラーゼ連鎖反応)
オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子は、ポリヌクレオチドコード鎖(例えば、mRNAおよび/またはゲノムDNAのセンス鎖)で構成される。アッセイされるべき遺伝子物質が、2本鎖のゲノムDNAの形態である場合、それは通常、代表的に融解によって最初に一本鎖に変性される。この核酸は、この試料をPCRプライマー対(上記対の各メンバーは、前もって選択されたヌクレオチド配列を有する)とを処理する(接触させる)ことによってPCR反応に供される。このPCRプライマー対は、オリゴアデニレートシンセターゼ対立遺伝子内に保存されるヌクレオチド配列(好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長)とハイブリダイズすることによってプライマー伸長反応を開始し得る。PCRプライマー対のこの第1のプライマーは、それが、核酸の非コード鎖またはアンチセンス鎖(すなわち、コード鎖に相補的な鎖)に対してハイブリダイズすることに起因して、ときとして本明細書中で「アンチセンスプライマー」と称される。PCRプライマー対のこの第2のプライマーは、それが、核酸のコード鎖またはセンス鎖に対してハイブリダイズすることに起因して、ときとして本明細書中で「センスプライマー」と称される。
【0155】
上記PCR反応は、PCR反応混合物を形成するPCR緩衝液中で、好ましくは前もって決められた量のPCRプライマー対と、好ましくは前もって決められた量のこの試料の核酸とを混合することによって行われる。この混合物は、多くのサイクルの間、温度循環され(このサイクルは代表的に、前もって決められておりPCR反応産物の形成に十分である)、それによってオリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子物質についてアッセイされるべき試料を増やす。
【0156】
PCRは代表的に、温度循環(すなわち、下限が、約摂氏30度(30℃)から約55℃であり、上限が、約90℃から約100℃の温度範囲内で、PCR反応混合物の温度を、反復的に上昇および下降させること)によって行われる。この上昇および下降は、持続的であり得るが、好ましくはポリヌクレオチド合成、変性およびハイブリダイゼーションに都合の良い温度の各々にて、比較的温度安定な時間を有する一過性なものである。
【0157】
複数の第1のプライマーおよび/または複数の第2のプライマーが、各増幅に使用され得る(例えば、第1のプライマーの1つの種は、多くの異なる第2のプライマーと対にされて数種の異なるプライマー対を形成し得る)。あるいは、第1のプライマーおよび第2のプライマーの個々の対が、使用され得る。いずれの場合でも、第1のプライマーおよび第2のプライマーの同じかまたは異なる組み合わせを使用する増幅の増幅産物が、変異についてアッセイするために組み合わされ得る。このPCR反応は、任意の適切な方法を使用して行われる。一般的に、それは、緩衝化水溶液、すなわち、PCR緩衝液中で、好ましくはpH7〜9で、最も好ましくは約pH8で起こる。好ましくは、過剰なモル濃度(ゲノムの核酸に対して、通常、約10:1 プライマー:鋳型)のプライマーが、その鋳型鎖を含む緩衝液に対して混合される。大きく過剰なモル濃度は、このプロセスの有効性を改良するために好ましい。
【0158】
上記PCR緩衝液はまた、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(ポリヌクレオチド合成の基質)である、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、ならびに代表的には耐熱性のポリメラーゼを、全てプライマー伸長(ポリヌクレオチド合成)反応のために適切な量で含む。生じた溶液(PCR混合物)は、約90℃〜100℃で、約1〜10分間(好ましくは1〜4分間)加熱される。この加熱時間後、この溶液は、プライマーのハイブリダイゼーションにとって好ましい54℃まで冷却される。この合成反応は、室温から、それより高温ではこのポリメラーゼ(誘導因子)がもはや有効に機能しない温度までにおいて起こり得る。この温度循環は、所望の量のPCR産物が生成されるまで繰り返される。例示的なPCR緩衝液は、以下を含有する:100マイクロリットルの緩衝液あたり50mMのKCl;10mMのTris−HCl(pH8.3);1.5mMのMgCl.;0.001%(重量/体積)のゼラチン、200μMのdATP;200μMのdTTP;200μMのdCTP;200μMのdGTP;および2.5単位のThermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼI(米国特許第4,889,818号)。
【0159】
上記誘導因子は、プライマー伸長産物の合成を達成するために機能する、任意の化合物または任意のシステム(酵素を含む)であり得る。この目的のために適切な酵素としては、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、E.coli DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、他の利用可能なDNAポリメラーゼ、逆転写酵素および他の酵素(熱安定性の酵素を含む)などが挙げられ、これらは、適切な様式で、上記ヌクレオチドの組み合わせを促し、それぞれの核酸鎖に対して相補的である上記プライマー伸長産物を形成する。一般的に、この合成は、各プライマーの3’末端において開始され、そして合成停止まで鋳型鎖に沿って5’方向に進行し、種々の長さの分子を生成する。しかし、5’末端において合成を開始し、そして上記と同じプロセスを使用して上記の方向に進行する誘導因子が存在し得る。
【0160】
この誘導因子はまた、RNAプライマー伸長産物の合成を達成するために機能する化合物またはシステム(酵素を含む)であり得る。好ましい実施形態において、この誘導因子は、DNA依存性RNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼまたはSP6RNAポリメラーゼ)であり得る。これらのポリメラーゼは、相補的なRNAポリヌクレオチドを生成する。このRNAポリメラーゼの高回転率(high turn−over rate)は、Chamberlinら,The Enzymes,P.Boyer編,87−108ページ,Academic Press,New York(1982)に記載されたように出発ポリヌクレオチドを増幅する。転写に基づく増幅システムは、Gingerasら,PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,245−252ページ,Innisら編,Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。
【0161】
上記誘導因子が、DNA依存性RNAポリメラーゼであり、したがってこの因子が、リボヌクレオチド三リン酸を取り込む場合、十分な量のATP、CTP、GTPおよびUTPがプライマー伸長反応混合物に対して混合され、そして生じた溶液は、上記のように処理される。
【0162】
新しく合成された鎖およびその相補的な核酸鎖は、上記プロセスに続く工程に使用され得る2本鎖分子を形成する。
【0163】
上記PCR反応は、オリゴアデニレートシンセターゼ遺伝子中の変異を検出するのに有用な、前もって選択された制限酵素認識部位をこの生成物中に組み込むために、有利に使用され得る。
【0164】
PCR増幅法は、米国特許第4,683,192号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号、ならびに少なくとも、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H.Erlich編,Stockton Press,New York(1989)およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innisら編,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)を含む数種の教科書に詳細に記載される。
【0165】
いくつかの実施形態において、第1のプライマーおよび第2のプライマーの2つの対は、増幅反応にごとに使用される。複数の異なるプライマーをそれぞれ使用して、複数の異なる増幅から得られた増幅反応産物は、別個に組み合され得るかまたはアッセイされ得る。
【0166】
しかし、本発明は、第1のプライマーおよび第2のプライマーの1つの対のみを使用する増幅を企図する。本明細書中に開示される変異を含むDNAのセグメントを増幅するための例示的なプライマーは、以下の表1に示される。単位複製配列Aは、配列番号1〜配列番号3において参照される変異を含むポリヌクレオチド配列に対応する。単位複製配列Bは、配列番号4〜配列番号7および配列番号60において参照される変異を含むポリヌクレオチド配列に対応する。単位複製配列Cは、配列番号57において参照される変異を含むポリヌクレオチド配列に対応する。単位複製配列Dは、配列番号58において参照される変異を含むポリヌクレオチド配列に対応する。単位複製配列Eは、配列番号59において参照される変異を含むポリヌクレオチド配列に対応する。単位複製配列Fは、配列番号61において参照される変異を含むポリヌクレオチド配列に対応する。単位複製配列Gは、配列番号62〜配列番号64において参照される変異を含むポリヌクレオチド配列に対応する。
【0167】
【表1】

【0168】
表2は、上記の本発明の単位複製配列の変異の位置を開示する。
【0169】
【表2】

【0170】
(核酸配列分析)
核酸配列分析は、(a)プローブ鎖とその相補的な標的とのハイブリダイゼーションまたは変性に基づく生理化学的技術と、(b)エンドヌクレアーゼ、リガーゼおよびポリメラーゼによる酵素反応との組み合わせによって取り組まれる。核酸は、DNAレベルまたはRNAレベルにてアッセイされ得る。前者は、個々のヒトの遺伝子的可能性を分析し、そして後者は、特定の細胞の発現情報を分析する。
【0171】
核酸のハイブリダイゼーションを使用するアッセイにおいて、本発明のプロセスにおけるDNA2重鎖の存在の検出は、種々の手段によって達成され得る。
【0172】
DNA2重鎖の存在を検出するための1つのアプローチにおいて、DNA2重鎖にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドは、2重鎖を検出可能にさせる標識または指示基を含む。代表的に、このような標識としては、放射活性元素、化学的に修飾されたヌクレオチド塩基などが挙げられる。
【0173】
上記オリゴヌクレオチドは、標識され(すなわち、指示手段または指示基に対して作動可能に連結され)、そして標的鋳型中の特定のヌクレオチド配列の存在を検出するために使用され得る。
【0174】
オリゴヌクレオチドプローブ(標識オリゴヌクレオチド)に対して作動可能に連結されるか、またはその一部として存在する放射活性要素は、DNA2重鎖の検出を容易にする有用な手段を提供する。代表的な放射活性元素は、β線放射を生じる要素である。β線を放射する元素(例えば、H、12C、32Pおよび35S)は、ベータ線放射を生じる放射活性要素の標識の分類を示す。放射活性ポリヌクレオチドプローブは代表的に、DNAキナーゼを使用する放射性に標識されたヌクレオチドの核酸中への酵素的な取り込みによって調製される。放射活性的に標識されたオリゴヌクレオチドについての代替物は、金属錯化剤、ビオチン含有基、蛍光化合物などを含むように化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドである。
【0175】
1つの有用な金属錯化剤は、ランタニドおよび芳香族β−ジケトンによって形成されるランタニドキレートであり、このランタニドは、蛍光ランタニド錯体が形成されるように、キレート形成化合物(例えば、EDTAアナログ)を介して核酸またはオリゴヌクレオチドに対して結合される。米国特許第4,374,120号、同第4,569,790号、ならびに公開特許出願EP0139675および公開特許出願WO87/02708を参照のこと。
【0176】
ビオチン標識オリゴヌクレオチドまたはアクリジンエステル標識オリゴヌクレオチド、およびそれらの標識ポリヌクレオチドの使用は、記載されている。米国特許第4,707,404号、公開特許出願EP0212951および欧州特許第0087636号を参照のこと。有用な蛍光マーカー化合物としては、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、NBDなどが挙げられる。
【0177】
DNA2重鎖中に存在する標識されたオリゴヌクレオチドは、それ自体が標識された2重鎖を提供し、それにより、アッセイされるべき試料中に存在する他の核酸に対して区別可能である。2重鎖中の標識の存在によってこの2重鎖の存在を検出する工程は、代表的に、DNA2重鎖に対してハイブリダイズしない標識されたオリゴヌクレオチドプローブのいずれかからこのDNA2重鎖を分離する工程を含む。
【0178】
DNA2重鎖からの1本鎖オリゴヌクレオチド(例えば、ハイブリダイズしていない標識されたオリゴヌクレオチドプローブ)の分離のための技術は、周知であり、そして代表的には、それらの化学的特性に基づく2本鎖核酸からの1本鎖核酸の分離を含む。さらに多くの場合に、分離技術は、ハイブリダイズしていないプローブが、代表的には洗浄することによって不溶性マトリックスに結合されたDNA2重鎖から分離される異種のハイブリダイゼーション形式の使用を含む。例示的には、このマトリックスがニトロセルロースのシートであり、そして上記標識が32Pである、サザンブロット技術である。(Southern,J.Mol.Biol.,98:503(1975))。
【0179】
上記オリゴヌクレオチドはまた、代表的には5’末端かまたは5’末端近傍にて固体マトリックス(すなわち、水に不溶性の固体支持体)に有利に結合され得る。有用な固体マトリックスは、当該分野において周知であり、そしてこのマトリックスとしては、商品名SEPHADEXとしてPharmacia Fine Chemicals(Piscataway,N.J.)から入手可能な架橋デキストラン、アガロース、直径が約1ミクロン〜約5ミリメートルのポリスチレンビーズまたはラテックスビーズ、塩化ポリビニル、ポリスチレン、架橋ポリアクリルアミド、ニトロセルロース網またはナイロンビーズ網(例えば、シート、ストリップ、パドル、プレート、マイクロタイタープレートウェル)などが挙げられる。
【0180】
メンバーのオリゴヌクレオチドの5’末端または3’末端に対して「連結」オリゴヌクレオチドを付加し、そして上記固体支持体にこのメンバーを作動可能に結合するように、この連結オリゴヌクレオチドを使用することが可能である。
【0181】
ヌクレオチドがハイブリダイズするアッセイにおいて、このハイブリダイゼーション反応混合物は、企図される方法において、鋳型上の所定の配列に対して相補性を有するオリゴヌクレオチドにとって、ハイブリダイゼーション産物(すなわち、オリゴヌクレオチドおよび標的核酸を含む複合体)を形成する鋳型に存在する相補的な核酸配列に対してハイブリダイズするのに十分な時間、ハイブリダイズ条件下で維持される。
【0182】
語句「ハイブリダイズ条件」およびその文法的等価物は、保守時間を伴って使用される場合、このハイブリダイゼーション反応混合物を、この混合物中の反応物および付随する試薬の濃度の状況に応じて、核酸2重鎖を形成するために1つ以上のオリゴヌクレオチドを標的配列とアニールさせるのに十分である時間条件、温度条件およびpH条件に供することを示す。当該分野において周知であるように、ハイブリダイゼーションを達成するために必要とされるこのような時間条件、温度条件およびpH条件は、ハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドの長さ、このオリゴヌクレオチドとその標的との間の相補性の程度、このオリゴヌクレオチドのグアニン含有量およびシトシン含有量、望まれるハイブリダイゼーションの厳密さ、およびハイブリダイゼーションの速度に影響し得るような、ハイブリダイゼーション反応混合物中の塩またはさらなる試薬の存在に依存する。所与のハイブリダイゼーション反応混合物のためにハイブリダイゼーション条件を最適化する方法は、当該分野において周知である。代表的なハイブリダイズ条件は、pH4とpH9との間での緩衝化された溶液の使用を含み、そして4℃〜37℃の温度にて行われ、好ましくは約12℃〜約30℃にて行われ、さらに好ましくは22℃にて行われ、そして0.5秒間〜24時間行われ、好ましくは2分間〜1時間行われる。
【0183】
ハイブリダイゼーションは、周知であるような、同種(homogeneous)の形式または異種(heterogeneous)の形式において行われ得る。均一なハイブリダイゼーション反応は、全て溶液中で起こり、オリゴヌクレオチドおよびハイブリダイズされる核酸配列(標的)の両方が溶液中に可溶性の形態で存在する。不均一な反応は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドプローブまたは標的核酸のいずれかが結合される、反応媒体において、不溶性であるマトリックスの使用を含む。
【0184】
標的配列を含む核酸は、2本鎖(ds)形態である場合、ハイブリダイゼーション反応を行う前に、加熱またはアルカリ処理によって、初めにdsDNAを変性することが好ましい。このdsDNAの変性は、ハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドとの混合前に行われ得るかまたはオリゴヌクレオチドとdsDNAとの混合後に行われ得る。
【0185】
上記オリゴヌクレオチドと上記鋳型との間の所定の相補性は、2つの代替的様式において達成される。この鋳型DNA中の配列は、公知である(例えば、形成されるプライマーが、公知のオリゴアデニレートシンセターゼ配列に対してハイブリダイズし得、そして配列決定目的、ならびにその後の、本明細書中に記載されるようなアッセイ目的のためにDNAの領域中にプライマー伸長を開始し得る場合、またはこれまでの配列決定が、ヌクレオチド配列の領域を決定し、そしてこのプライマーが、先だって配列決定された領域から未知の配列の領域中に伸長するように設計される場合)。この後者のプロセスは、配列決定の各回が、これまでに決定された配列に基づいて設計されたプライマーによって方向付けられることに起因して、「有向配列決定(directed sequencing)」と称される。
【0186】
ハイブリダイゼーション反応混合物中に存在するオリゴヌクレオチドの有効量は一般的に周知であり、そしてこれは代表的に、ハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドとこの鋳型との間のモル比に関して表される。好ましいモル比は、この標的配列およびこのオリゴヌクレオチドの当モル量を含むハイブリダイゼーション反応混合物である。周知であるように、等しいモル濃度からの逸脱は、ハイブリダイゼーション反応混合物を形成するが、その効率は、より低い。したがって、1つの成分が、その他の成分に対して100倍程度モル過剰であり得るモル比は望ましいが、50倍未満過剰であるモル比、好ましくは10倍未満過剰であるモル比、そしてより好ましくは2倍未満過剰であるモル比が、本発明の実施において望ましい。
【0187】
(膜に固定された標的配列の検出)
DNA(サザン)ブロット技術において、これまでに議論されたように、DNAは、PCR増幅によって調製される。このPCR産物(DNAフラグメント)は、アガロースゲル中で、大きさに従って分離され、そしてニトロセルロース膜またはナイロン膜上に移される(ブロットされる)。従来の電気泳動は、100塩基対〜30,000塩基対の範囲のフラグメントを分離するが、パルスフィールドゲル電気泳動は、2000万塩基対の長さまでのフラグメントを分離する。含まれる特定のPCR産物の膜上での配置は、特定の標識された核酸プローブを用いるハイブリダイゼーションによって決定される。
【0188】
好ましい実施形態において、PCR産物は、ドットブロット(スロットブロット)器具を使用して固体マトリックス(ニトロセルロース膜)上に直接固定され、そしてプローブハイブリダイゼーションによって分析される。米国特許第4,582,789号および同第4,617,261号を参照のこと。
【0189】
固定されたDNA配列は、対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチド(ASO)プローブを用いる精査によって分析され得、このプローブは、約15ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長または約30ヌクレオチド長までの合成DNAnオリゴマーである。これらのプローブは、ゲノム中の固有の配列を示すのに十分な長さであるが、それらの標的分子に対するハイブリダイゼーションにおける内部のミスマッチによって不安定化するために十分短い。したがって、1つのヌクレオチドにおいて異なる任意の配列は、慎重に制御されたハイブリダイゼーション条件下での、ASOプローブと正常な標的または変異標的との間のハイブリッドの変性挙動の違いによって区別され得る。例示的なプローブは、配列番号1〜配列番号7および配列番号57〜配列番号64として本明細書中に開示される(表3)が、任意のプローブは、それらが、目的の点変異を保有する上記OAS1遺伝子の領域に対して特異的にハイブリダイズし、そして点変異ポリヌクレオチドを保有するポリヌクレオチドと野生型ポリヌクレオチドを保有するポリヌクレオチドとの間の特異的な区別が可能である限りは適切である。
【0190】
(溶液中の標的配列の検出)
核酸の精製または核酸の固定を必要としない数種の迅速な技術が、開発されてきた。例えば、プローブ/標的ハイブリッドは、2本鎖核酸を優先的に結合するヒドロキシアパタイトのような固体マトリックス上で選択的に単離され得る。あるいは、プローブ核酸は、固体支持体に固定され、そして溶液から標的配列を捕捉するために使用され得る。標的配列の検出は、競合型アッセイにおいて標的配列によって上記支持体から動かされるか、またはサンドウィッチ型形式においてこの標的配列の架橋作用を介してその支持体に結合されるかのいずれかである第2の標識されたプローブの補助によって達成され得る。
【0191】
オリゴヌクレオチド連結アッセイ(OLA)において、酵素DNAリガーゼは、合成オリゴヌクレオチドが、正確な頭−尾の近位において標的配列と塩基対形成し得るように2つの合成オリゴヌクレオチドを共有結合するために使用される。2つのオリゴマーの連結は、結合領域におけるミスマッチヌクレオチドの存在によって妨害される。この手順は、DNA精製を必要とせずに、細胞の試料における公知の配列改変体の間の区別を可能にする。2つのオリゴヌクレオチドの結合は、この2つのオリゴヌクレオチドの1つを固定し、そして上記第2の標識されたオリゴヌクレオチドもまた捕捉されるか否かを観察することによってモニタリングされ得る。
【0192】
(塩基置換の検出のための走査技術)
3つの技術は、未知の1ヌクレオチド置換または他の配列の相違に関する数百塩基対の長さのプローブ/標的2重鎖の分析を可能にする。リボヌクレアーゼ(RNase)A技術において、この酵素は、標識されたRNAプローブが、標的RNA配列または標的DNA配列に対してミスマッチである位置にて、このプローブを切断する。このフラグメントは、変異のおおよその位置の決定を可能にする大きさにしたがって分離され得る。米国特許第4,946,773号を参照のこと。
【0193】
変性勾配ゲル技術において、プローブ−標識DNAの2重鎖は、強度が増加する変性勾配における電気泳動によって分析される。変性は、移動率における減少によって達成される。ミスマッチ塩基対を有する2重鎖は、完全にミスマッチである2重鎖より、より迅速に変性する。
【0194】
第3の方法は、ミスマッチ塩基対の化学的切断に依存する。Tと、C、GまたはTとの間のミスマッチ、ならびにCと、T、AまたはCとの間のミスマッチは、ヘテロ2重鎖において検出され得る。四酸化オスミウムとの反応(TミスマッチおよびCミスマッチ)またはヒドロキシルアミンとの反応(Cミスマッチ)と、その後のピペリジンによる処理は、適切なミスマッチにおいて上記プローブを切断する。
【0195】
(OAS1機能を復元および/または向上するための治療因子)
OAS1遺伝子中の変異が、不完全なOAS1機能を生じ、そしてこの不完全な機能が、病原体の感染に対する患者の上昇した感受性に関連する場合、OAS1タンパク質の低レベル、その機能に影響を与えるタンパク質中の変異、または他の機構を介するか否かにかかわらず、それは、野生型OAS1タンパク質を有する患者を処置するのに有利である。
【0196】
さらに、この変異が、感染抵抗性のキャリアにおいて生じて、この野生型タンパク質と異なり、そしてHCV感染の阻害に関して利点を有するタンパク質の形態を与える場合、変異遺伝子によってコードされるタンパク質を投与することは、有利であり得る。これまでに記載されるように、OAS1タンパク質もしくはOAS1ポリペプチドの、ネイティブな形態または変異形態はまた、他の兆候(癌、糖尿病、および創傷治癒が挙げられるが、これらに限定されない)の処置において有利であり得る。以下の議論は、前述のタンパク質またはポリペプチドの任意の投与に関連する。
【0197】
OAS1Rによってコードされるポリペプチドを含む本発明のポリペプチドは、天然から精製された生成物、または化学合成手順の生成物であっても、本発明のポリヌクレオチド配列の、原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、培養における、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞によって)からの組換え技術によって産生されてもよい。組換え産生手順において利用される宿主に依存して、本発明のポリペプチドは、哺乳動物の炭水化物または他の真核生物の炭水化物によってグリコリル化されてもグリコリル化されなくてもよい。本発明のポリペプチドはまた、先頭にメチオニンのアミノ酸残基を含む(位置マイナス1にて)。
【0198】
本発明のポリペプチドはまた、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号46、および配列番号47において定義されるタンパク質配列ならびにそれらの誘導体を含む。
【0199】
上記ポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子の形態に加えて、本発明はまた、天然に存在する対立遺伝子の形態と同様に機能する、それらのアナログおよびフラグメントを包含する。したがって、例えば、このポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基は、上記OAS1Rタンパク質の機能が維持される限り、保存的アミノ酸残基によって置換され得る。以下の実施例8〜実施例10は、本発明のポリペプチドに関する適切なアミノ酸置換の代表的な例示を提供する。別の例として、本発明のポリペプチドは具体的に、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51および配列番号52に定義されるOAS1Rの短縮形態またはアナログ形態を含む。これまでに議論されたように、配列番号51は、チンパンジーが有するOAS1の短い形態を示し、そして配列番号52は、ゴリラが有する、より長いが、なお短縮された形態のカルボキシル末端フラグメントを示す。配列番号49および配列番号50は、それぞれ、対応するチンパンジーの切断部位およびゴリラの短縮部位について短縮された、合成のヒトOAS1R構築物を示す。配列番号48は、上記チンパンジーの形態およびゴリラの形態に対して中間の長さに切断された合成のヒトOAS1Rポリペプチドを示す。配列番号48は、本明細書中の他で開示されるように、当該分野において公知の方法によって酵素的に活性であることがさらに実証された。対応して、残りの非常に類似する短縮形態もまた、酵素的に活性であることが実証された。当業者が理解するように、OAS1Rの、短縮されたが機能的である形態の治療的使用は、そうしなければこのポリペプチドの治療的効力を妨げ得る抗体反応の発生を防止し得る。前述の短縮ポリペプチドおよび当業者によって想定され得る他のポリペプチドは、機能を維持するが、全長OAS1Rポリペプチドを内因的に有しない個体における抗体反応を誘導し得る上記ポリペプチドの非偏在性の部分を除去する。当業者はまた、より小さいポリペプチドが、代表的には治療薬の開発において直面する、製造、送達およびクリアランスの複雑性の影響を、一般的に、より改善しやすいことを理解する。さらに、当業者は、チンパンジーおよびゴリラにおける別の相同的な短縮改変体の出現もまた、本開示の短縮型OAS1形態の広い抗ウイルス効力について、強く示唆していることを理解する。具体的に上で開示されたこの短縮ポリペプチド形態は、このポリペプチドのカルボキシル末端に対する短縮を示すが、本発明は、このフラグメントの形態に限られず、そして特に酵素的機能を維持する、アミノ末端の短縮および内部のアミノ酸欠失を含む。
【0200】
具体的に開示されたポリペプチドの少なくとも1つの活性を維持するが、開示されたアミノ酸配列と異なるポリペプチドもまた、本発明の範囲に含まれる。好ましくは、このようなポリペプチドは、アライメントの標準的な方法を使用して計算される場合に、対応する開示された配列番号に対して、少なくとも80%の配列相同性を有し、好ましくは85%の配列相同性を有し、より好ましくは90%の配列相同性を有し、最も好ましくは95%より高い配列相同性を有する。
【0201】
上記ポリペプチドはまた、インビボでのこのようなポリペプチドの発現によって、本発明にしたがって利用され、これは、多くの場合、遺伝子治療といわれる。したがって、例えば、細胞は、エキソビボで上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)によって形質転換され、この形質転換細胞は、その後、上記ポリペプチドを用いて治療される患者に対して提供され得る。このような方法は、当該分野において周知である。例えば、細胞は、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含むレトロウイルス粒子の使用による当該分野において公知の手順によって形質転換され得る。
【0202】
同様に、細胞の形質転換は、例えば、当該分野において公知の手順によってインビボでの上記ポリペプチドの発現についてインビボで達成され得る。当該分野において公知であるように、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含むレトロウイルス粒子を産生するための生産細胞は、インビボでの形質転換およびインビボでのポリペプチドの発現のために患者に投与され得る。
【0203】
このような方法によって本発明のポリペプチドを投与するためのこれらの方法および他の方法は、本発明の教示により当業者に明らかにされるべきである。例えば、細胞を形質転換するための発現ビヒクルは、レトロウイルス以外(例えば、適切な送達ビヒクルとの組み合わせ後に、インビボで細胞を形質転換するために使用され得るアデノウイルス)であり得る。
【0204】
上記ポリペプチドが液体処方物として調製され、そして注射によって投与される場合において、好ましくは、この溶液は、pH7.4で、140ミリモルの塩化ナトリウムおよび10ミリモルのカルシウムを含む等浸透圧の塩溶液である。この注射は、例えば、治療有効量で投与され得、投与経路、患者の健康などに応じて、好ましくは約1μg/kg体重/日〜約5mg/kg体重/日の用量で投与され得る。
【0205】
本発明のポリペプチドは、適切な薬学的キャリアとの組み合わせで利用され得る。このような組成物は、このタンパク質の治療有効量、および薬学的に受容可能なキャリアまたは薬学的に受容可能な賦形剤を含む。このようなキャリアとしては、生理食塩水、緩衝化された生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。この処方物は、投与の形態に適するべきである。
【0206】
本発明のポリペプチドはまた、このポリペプチドを、このポリペプチドの活性、細胞の分布もしくは細胞の取り込みを向上させる、1つ以上の部分または抱合体にこのポリペプチドを化学的に連結することによって修飾され得る。このような部分または抱合体としては、例えば、米国特許第5,514,758号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,597,696号、および同第5,958,773に開示される通り、コレステロール、コール酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質およびそれらの誘導体のような脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミトイル部分などが挙げられる。
【0207】
本発明のポリペプチドはまた、特定の疾患の兆候について特異的な細胞型を標的化するために修飾され得、この細胞型としては、C型肝炎感染の場合における肝細胞が挙げられるが、これに限定されない。当業者によって理解され得るように、適切な方法は、上記の標的目標を達成し、そしてこの方法としては、リポソームによる標的、レセプター媒介性エンドサイトーシス、および抗体−抗原結合が挙げられるが、これらに限定されないことが記載されてきた。1つの実施形態において、このアシアロ糖タンパク質(asiaglycoprotein)レセプターは、上記ポリペプチドに対するガラクトース部分の付加によって肝細胞を標的化するために使用され得る。別の実施形態において、マンノース部分は、マクロファージおよび肝細胞において見出されるマンノースレセプターを標的化するために、このポリペプチドに対して結合され得る。本発明のポリペプチドはまた、当業者に公知の方法によるサイトゾル送達のために修飾され得、この方法としては、エンドソーム回避機構またはタンパク質導入ドメイン(PTD)システムが挙げられるが、これらに限定されない。PTDシステムは、例えば、Vives Eら、(1997)J.Biol.Chem.272:16010−16017,Derossiら、(1994)J.Biol.Chem.269:10444−10450,Elliott,Gら、(1997)Cell 88:223−233,Wadia,JSら、(2004)Nat.Med.10:310−315,およびKabouridis,PS.(2003)Trends Biotech.,21:498−503に開示される。公知のエンドソーム回避システムとしては、ポリ(プロピルアクリル酸)のようなph応答性ポリマーのキャリアの使用が挙げられる。公知のPTDシステムは、HIV−1 TAT、HSV−1 VP22、Drosophila Antennapedia、またはジフテリア毒のような天然のペプチドから合成のペプチドキャリアにおよぶ(WadiaおよびDowdy,Cur.Opin.Biotech.13:52−56,2002年;Becker−Hapakら,Methods 24:247−256,2001)。図10は、数種のこれらの例示的PTDの詳細な説明を提供する。当業者が認識するように、複数の送達方法および複数の標的方法は、組み合わせられ得る。例えば、本発明のポリペプチドは、アシアロ糖タンパク質レセプターに対して標的するためにガラクトースに結合されるようなリポソーム内への封入によって肝細胞に対して標的され得る。
【0208】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で満たされた1つ以上の容器を備える、薬学的パックまたは薬学的キットを提供する。ヒト投与に関する製造、使用または販売についての行政機関による承認を反映する、医薬品もしくは生物学的製剤の、製造、使用または販売を規制する行政機関によって定められた形式の通知は、このような容器に付属し得る。さらに、本発明のポリペプチドは、他の治療用化合物との組み合わせで使用され得る。
【0209】
本発明のOAS1改変体が、医薬品として使用される場合、これらは、適切なビヒクル中で哺乳動物に対して投与され得る。本発明のポリペプチドが、上記のように、医薬品として使用される場合、これらは、例えば、投与経路、患者の健康などに応じて、約10μg/kg体重/日〜約4mg/kg体重/日の治療有効用量で投与される。この与えられる量は、好ましくはウイルス(好ましくはフラビウイルス、最も好ましくはHCV)による感染の防御または阻害を達成し、したがって、本明細書中に開示されるようなOAS1R対立遺伝子を保有するヒトにおいて見出される天然の抵抗性を再現するのに適する。
【0210】
NT_009775.13の、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638における少なくとも1つの変異の有益な効果を模倣する、インヒビターに基づく薬物治療はまた、以下に詳細に議論されるように想定される。これまでに議論されたように、このようなインヒビターを開発するための1つの例示的な理論的根拠は、有益な変異が、OAS1の1つ以上の特定のアイソフォームの発現、翻訳、もしくは機能を消失させるかまたは排除する事例である。本発明は、この有益な変異の効果もしく正確な形態にも、それによって影響されるこの特定のアイソフォームの生物学的活性によっても制限されない。このような場合において当業者は、OAS1の上記特定のアイソフォームを治療的に阻害することの有用性を理解する。これらのインヒビターに基づく治療は、化学的実体、ペプチドまたはタンパク質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小さい干渉RNA、および抗体の形態を採り得る。
【0211】
上記タンパク質、それらのフラグメントもしくは他の誘導体、またはそれらのアナログ、あるいはこれらを発現する細胞は、それに対する抗体を産生する免疫原として使用され得る。これらの抗体は、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、1本鎖、Fabフラグメント、またはFab発現ライブラリーの生成物であり得る。当該分野において公知である種々の手順は、ポリクローナル抗体の産生のために使用され得る。
【0212】
本発明のOAS1Rによってコードされるポリペプチドに対して産生される抗体は、このポリペプチドの動物中への直接の注射によってか、または動物(好ましくは非ヒト)このポリペプチドを投与することによって得られ得る。その後、そうして得られた抗体は、このポリペプチド自体に結合する。この様式において、このポリペプチドのフラグメントのみをコードする配列でさえ、ネイティブなポリペプチド全体に結合する抗体を産生するのに使用され得る。さらに、多数のポリペプチドに対して特異的な、このような抗体の一団は、このような組織を同定しかつ区別するために使用され得る。例として、図9は、本発明の特定の例示的なポリペプチドに対して特異的な抗体の発生を実証する。
【0213】
モノクローナル抗体の調製に関して、継続的な細胞株培養によって産生される抗体を提供する任意の技術が、使用され得る。例としては、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein,1975年,Nature,256:495−597)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら,1983年,Immunology Today 4:72)、ならびにヒトモノクローナル抗体を産生するEBVハイブリドーマ技術(Coeら,1985年,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.77−96ページ)が挙げられる。
【0214】
1本鎖抗体の産生について記載された技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明の免疫原性ポリペプチド産物に対する1本鎖抗体を産生するのに適合され得る。
【0215】
上記抗体は、本発明のタンパク質配列の局在および活性に関する方法(例えば、これらのタンパク質を画像化すること、適切な生理学的試料におけるそれらのレベルを測定することなど)に使用され得る。
【0216】
本発明は、細胞内のOAS1ポリヌクレオチドを画像化するための、直接的に標識されたオリゴヌクレオチドを提供する。このようなオリゴヌクレオチドは、遺伝子増幅が生じたか否かを決定するため、および、例えば、当該分野において公知であるようなインサイチュハイブリダイゼーションを使用して細胞および組織における発現レベルをアッセイするために有用である。
【0217】
(OAS1機能の阻害のための治療因子)
本発明はまた、OAS1ポリヌクレオチドの正常な機能と干渉するように設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。アンチセンス技術に広く適用できる当該分野において公知であるアンチセンス分子の、任意の修飾または改変は、本発明の範囲内に含まれる。このような修飾としては、米国特許第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,563,253号、同第5,571,799号、同第5,587,361号、同第5,625,050号および同第5,958,773号に開示されるようなリン含有結合の調製が挙げられる。
【0218】
本発明のアンチセンス化合物としては、米国特許第5,958,773号およびその中に開示される特許に開示されるような修飾された塩基が挙げられ得る。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、このアンチセンスオリゴヌクレオチドについての活性、細胞の分布もしくは細胞の取り込みを向上させる、1つ以上の部分または抱合体にこのオリゴヌクレオチドを化学的に連結することによって修飾され得る。このような部分または抱合体としては、例えば、米国特許第5,514,758号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,597,696号、および同第5,958,773に開示される通り、コレステロール、コール酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミトイル部分などのような脂質が挙げられる。
【0219】
キメラアンチセンスオリゴヌクレオチドもまた、本発明の範囲内であり、そして、例えば、米国特許第5,013,830号、同第5,149,797号、同第5,403,711号、同第5,491,133号、同第5,565,350号、同第5,652,355号、同第5,700,922号、および同第5,958,773号に記載される方法を使用して本発明のオリゴヌクレオチドから調製され得る。
【0220】
好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、実施例に記載されるアッセイを使用する慣習的な実験によって選択され得る。本発明は、作用の特定の機構に拘束されないが、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Watson−Crickの塩基対形成を使用する細胞内の標的ポリヌクレオチドの相補的領域に対して結合することによって阻害効果を達成すると考えられる。この標的ポリヌクレオチドがRNAである場合、実験的証拠は、このハイブリッドのRNA成分がRNase Hによって切断されることを示す(Gilesら,Nuc.Acids Res.23:954−61,1995年;米国特許第6,001,653号)。一般的に、10塩基対を含むハイブリッドは、RNase Hに対する基質として働くのに十分な長さである。しかし、結合の特異性を達成するために、この長さの配列が、ヒト遺伝子間で独特である確率が高い場合、少なくとも17ヌクレオチドのアンチセンス分子を使用することが好ましい。
【0221】
本明細書中に参考として援用される米国特許第5,998,383号に開示されるように、上記オリゴヌクレオチドは、この配列が、それらの相補的な鋳型とのオリゴヌクレオチド2重鎖の形成に重要な、適切なエネルギー関連の特徴を示し、そして自己二量体化または自己相補性についての低い可能性を示すように選択される(Anazodoら,Biochem.Biophys.Res.Commun.229:305−09,1996年)。コンピュータープログラムOLIGO(Primer Analysis Software,Version 3.4)は、アンチセンス配列の融解温度、自由エネルギー特性を決定するため、および自己二量体形成および自己相補性特性の可能性を見積もるために使用される。このプログラムは、これらの2つのパラメーター(自己二量体化または自己相補性の可能性)の定性的な見積りの決定を可能にし、そして「可能性なし」または「いくぶんの可能性」または「本質的に完全な可能性」の表示を提供する。OAS1ポリヌクレオチドのセグメントは一般的に、これらのパラメーター中に可能性なしの見積りを有するように選択される。しかし、この分類の1つにおける「いくぶんの可能性」を有するセグメントは、使用され得る。パラメーターのバランスは、この選択に使用される。
【0222】
アンチセンス技術において、ある程度の慣習的な実験は、特定の標的のための最適なアンチセンス分子を選択するために必要とされる。有効であるために、このアンチセンス分子は、好ましくは標的RNA分子の接近可能であるかまたは露出される部分に標的する。いくつかの場合において、標的mRNA分子の構造についての情報は、入手可能であるが、アンチセンスを使用する阻害に対する現存のアプローチは、実験を介する。本発明にしたがって、この実験は、実施例に記載される方法を使用するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクトすることによって慣習的に行われ得る。この細胞中のmRNAレベルは、このmRNAの逆転写およびcDNAレベルをアッセイすることによって、処理される細胞および対照細胞において慣習的に測定され得る。この生物学的効果は、当該分野において公知であるように、細胞増殖または細胞生存度を測定することによって慣習的に決定され得る。
【0223】
cDNAレベルをアッセイしそして分析することによるアンチセンス活性の特異性を測定することは、アンチセンスの結果を確認する当該分野において認識された方法である。処理された細胞および対照細胞から得たRNAは、逆転写されるべきであること、その結果として生じたcDNA集団が分析されるべきであることが示された。(Branch,A.D.,T.I.B.S.23:45−50,1998年)。本発明にしたがって、細胞の培養物は、OAS1を標的化するために設計された2つの異なるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクトされる。OAS1に対応するこのmRNAのレベルは、処理された細胞および対照細胞において測定される。
【0224】
さらなるインヒビターとしては、リボザイム、タンパク質またはポリペプチド、抗体またはそのフラグメント、ならびに小分子が挙げられる。これらのOAS1インヒビターの各々は、それらが、OAS1の発現および/またはOAS1の生物学的活性を減少させるという一般的な特徴を共有する。本明細書中に開示される例示的なOAS1インヒビターに加えて、代替的なインヒビターは、本明細書中に具体的に開示されるか、またはそうでなければ当業者にとって容易に入手可能でありかつ当業者の専門知識内であるような方法論を利用する慣習的な実験を通じて得られ得る。
【0225】
(リボザイム)
OAS1インヒビターは、リボザイムであり得る。リボザイムは、RNA基質(例えば、mRNA)を特異的に切断し、細胞の遺伝子発現の特異的な阻害、または干渉を生じる。本明細書中で使用される場合、用語リボザイムとしては、特異的認識のためのアンチセンス配列、およびRNAを切断する酵素活性を含むRNA分子が挙げられる。この触媒的な鎖は、化学量論の濃度より大きい濃度にて、標的RNA中の特定の部位を切断する。
【0226】
多種多様なリボザイムが、本発明の状況において使用され得、このリボザイムとしては、例えば、ハンマーヘッド型リボザイム(例えば、ForsterおよびSymons,Cell 48:211−20,1987年;HaseloffおよびGerlach,Nature 328:596−600,1988年;WalbotおよびBruening,Nature 334:196,1988年;HaseloffおよびGerlach,Nature 334:585,1988年に記載されるもの)、ヘアピン型リボザイム(例えば1993年10月19日に公表された、Haseloffらの米国特許第5,254,678号、および1990年3月26日に公開された、Hempelらの欧州特許公開番号0 360 257に記載されるもの)、およびテトラヒメナのリボソームRNAに基づくリボザイム(Cechらの米国特許第4,987,071号を参照のこと)が挙げられる。本発明のリボザイムは代表的に、RNAからなるが、これはまた、DNA、核酸アナログ(例えば、ホスホロチオエート)、またはそれらのキメラ(例えば、DNA/RNA/RNA)で構成され得る。
【0227】
リボザイムは、任意のRNA転写物に対して標的化され得、そしてこのような転写物を酵素的に切断し得る(例えば、米国特許第5,272,262号、同第5,144,019号、ならびにCechらの米国特許第5,168,053号、同第5,180,818号、同第5,116,742号、および同第5,093,246号を参照のこと)。本発明の特定の実施形態にしたがって、このようなOAS1 mRNA特異的リボザイムのいずれか、またはこのようなリボザイムをコードする核酸は、OAS1遺伝子発現の阻害を達成するために、宿主細胞に送達され得る。したがって、リボザイムなどは、真核生物のプロモーター(例えば、真核生物のウイルスプロモーター)に連結されるリボザイムをコードするDNAによってこの宿主細胞に送達され得、したがって、核中への導入により、このリボザイムは、直接転写される。
【0228】
(RNAi)
本発明はまた、部分的な2本鎖性質もしくは完全な2本鎖性質を有するRNAの、細胞または細胞外環境中への導入を提供する。阻害は、OAS1発現に対して特異的であり、ここで標的OAS1遺伝子の部分由来のヌクレオチド配列が阻害性のRNAを生成するために選択される。このプロセスは、(1)遺伝子発現の阻害を生じるのに有効であり、そして(2)標的化されたOAS1遺伝子に対して特異的である。この手順は、標的OAS1遺伝子に機能の部分的な喪失または完全な喪失を与える。少なくとも99%の、標的化された細胞における遺伝子発現の減少または喪失が、他の標的遺伝子を用いる同等の技術を使用して示された。より低い用量の注射用物質およびdsRNAの投与後のより長い時間は、より少ない部分の細胞における阻害を生じ得る。細胞中の遺伝子発現の定量化は、標的mRNAの蓄積のレベルまたは標的タンパク質の翻訳のレベルにおける、同様の量の阻害を示し得る。RNAiを調製する方法およびRNAiを使用する方法は概して、本明細書中に参考として援用される米国特許第6,506,559号に開示される。
【0229】
上記RNAは、重合されたリボヌクレオチドの1つ以上の鎖を含み得;それは、リン酸−糖骨格またはヌクレオシドのいずれかに対する修飾を含む。この2本鎖構造は、単一の自己相補性RNA鎖、または2つの相補的RNA鎖によって形成され得る。RNA2重鎖の形成は、細胞の内側または細胞の外側のいずれかで開始され得る。このRNAは、1細胞あたり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入され得る。より高用量の2本鎖物質は、より有効な阻害を与え得る。
【0230】
阻害は配列特異的であり、上記RNAの2重鎖領域に対して対応するヌクレオチド配列が、遺伝子の阻害のために標的化される。上記OAS1標的遺伝子の一部分と同一のヌクレオチド配列を含むRNAは、阻害に関して好ましい。この標的配列に対して挿入、欠失および1つの点変異を有するRNA配列もまた、阻害に関して有効であることが見出された。したがって、配列同一性は、当該分野において公知のこのヌクレオチド配列間の違いの存在を計算しアライメントアルゴリズムによって最適化され、得る。あるいは、このRNAの2重鎖領域は、標的遺伝子転写物の一部分とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列として機能的に定義され得る。
【0231】
RNAは、インビボまたはインビトロのいずれかにおいて合成され得る。その細胞の内因性のRNAポリメラーゼが、インビボにおいて転写を媒介し得るか、またはクローニングされたRNAポリメラーゼが、インビボもしくはインビトロにおける転写のために使用され得る。インビボの導入遺伝子または発現構築物由来の転写に関して、調節領域は、このRNA鎖(単数または複数)を転写するのに使用され得る。
【0232】
RNAiに関して、このRNAは、この細胞中に(すなわち、細胞内に)直接導入されても、窩洞中、間質腔中、生物の循環中に対して、細胞外に導入されても、経口的に導入されても、RNAを含む溶液中に生物を浴することによって導入されてもよい。経口的導入のための方法としては、RNAとその生物の食物との直接的混合、ならびに食物として使用される種がRNAを発現するように操作され、その後、影響を受けるべき生物に食べられる、操作されたアプローチが挙げられる。核酸を導入する物理的方法としては、RNA溶液の、細胞中への直接的な注入、またはこの生物中への細胞外の注入が挙げられる。
【0233】
この方法の利点としては、2本鎖RNAを細胞中へ導入する容易性、使用され得るRNAの低い濃度、2本鎖RNAの安定性、および上記阻害の有効性が挙げられる。
【0234】
遺伝子発現の阻害は、OAS1標的遺伝子由来のタンパク質および/またはmRNA産物のレベルの欠如(または観察可能な減少)を与える。特異性は、この細胞の他の遺伝子における明白な効果を伴わずに標的遺伝子を阻害する能力を与える。阻害の結果は、この細胞もしくは生物の見かけ上の特性の検査によってか、または生化学的技術(例えば、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイを用いた発現のモニタリング、抗体の結合、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ウェスタンブロッティング、放射免疫アッセイ(RIA)、他の免疫アッセイ、および蛍光活性細胞分析(FACS)によって確認され得る。細胞株または生物体全体におけるRNA媒介性の阻害に関して、遺伝子発現は、タンパク質産物が容易にアッセイされるレポーターまたは薬物抵抗性遺伝子の使用によって、都合良くアッセイされる。このようなレポーター遺伝子としては、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ(LacZ)、βグルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、およびそれらの誘導体が挙げられる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノスリシン、ピューロマイシン、およびテトラサイクリンに対する抵抗性を与える複数の選択可能なマーカーは、利用可能である。
【0235】
上記アッセイに依存して、遺伝子発現の量の定量化は、本発明にしたがって処理されない細胞と比較して、10%、33%、50%、90%、95%または99%より大きい阻害の程度を決定させる。より低い用量の注入用物質およびdsRNAの投与後の、より長い時間は、より少ない割合の細胞における阻害を生じ得る(例えば、標的化された細胞の、少なくとも10%、20%、50%、75%、90%、または95%)。
【0236】
細胞中のOAS1遺伝子発現の定量化は、OAS1標的mRNAの蓄積のレベルまたはOAS1標的タンパク質の翻訳のレベルにおいて、同様の量の阻害を示す。例として、阻害の有効性は、この細胞中の遺伝子産物の量を評価することによって決定され得る:mRNAは、阻害性の2本鎖RNAとして使用される領域の外側にヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブによって検出され得る。または翻訳されたポリペプチドは、その領域のポリペプチド配列に対してもたらされた抗体によって検出され得る。
【0237】
上記RNAは、1つ以上の重合したリボヌクレオチドの鎖を含み得る。それは、リン酸−糖骨格またはヌクレオシドのいずれかに対する修飾を含み得る。例えば、天然のRNAのホスホジエステル結合は、少なくとも1つの窒素へテロ原子または硫黄へテロ原子を含むように修飾され得る。RNA構造中の修飾は、dsRNAによって引き起こされるいくつかの生物における一般的なパニック反応(panic response)を回避しつつ、特異的な遺伝子の阻害を可能にするのに適切であり得る。同様に、塩基は、アデノシンデアミナーゼの活性を遮断するために修飾され得る。RNAは、酵素的に生成されても、部分的/完全有機合成によって生成されてもよく、任意の修飾されたリボヌクレオチドは、インビトロの、酵素的合成または有機合成によって導入され得る。
【0238】
上記2本鎖構造は、単一の自己相補性RNA鎖または2つの相補的RNA鎖によって形成され得る。RNA2重鎖の形成は、その細胞の内側または細胞の外側のいずれかで開始され得る。このRNAは、1細胞あたり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量で導入され得る。より高い用量(例えば、1細胞あたり少なくとも5コピー、10コピー、100コピー、500コピーまたは1000コピー)の2本鎖物質は、より有効な阻害を与え得る;より低い用量もまた、特定の適用について有用である。阻害は、配列特異的であり、上記RNAの2重鎖領域に対して対応するヌクレオチド配列は、遺伝子の阻害のために標的化される。
【0239】
上記OAS1標的遺伝子の一部分と同一のヌクレオチド配列を含むRNAは、阻害に関して好ましい。この標的配列に対して、挿入、欠失、および1つの点変異を有するRNA配列は、阻害に関して有効であり得る。したがって、配列同一性は、当該分野において公知の配列比較およびアライメントアルゴリズム(GribskovおよびDevereux,Sequence Analysis Primer,Stockton Press,1991年,ならびにその中に引用される参考を参照のこと)によって最適化され、そして例えば、初期値パラメーター(例えば、University of Wisconsin Genetic Computing Group)を使用するBESTFITソフトウェアプログラム中に使用されるようなSmith−Watermanアルゴリズムによって、このヌクレオチド配列間の違いのパーセントを計算し得る。上記阻害性RNAとこのOAS1標的遺伝子の一部との間の、90%より大きい配列同一性、または100%の配列同一性でさえも好ましい。あるいは、このRNAの2重鎖領域は、OAS1標的遺伝子転写物の一部分とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列として機能的に定義され得る(例えば、400mMのNaCl、40mMのPIPES(pH6.4)、1mMのEDTA、50℃または70℃にて12〜16時間のハイブリダイゼーション;その後、洗浄される)。この同一のヌクレオチド配列の長さは、少なくとも25塩基、50塩基、100塩基、200塩基、300塩基または400塩基であり得る。
【0240】
上記RNAとOAS1標的遺伝子との間の100%の配列同一性は、本発明の実施に必要とされない。したがって、この方法は、遺伝子変異、血統の多型または進化的分岐に起因して予測され得る配列を許容し得る利点を有する。
【0241】
OAS1 RNAは、インビボまたはインビトロのいずれかにおいて合成され得る。その細胞の内因性のRNAポリメラーゼが、インビボにおいて転写を媒介し得るか、またはクローニングされたRNAポリメラーゼが、インビボもしくはインビトロにおける転写のために使用され得る。インビボの導入遺伝子または発現構築物由来の転写に関して、調節領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、スプライシングドナーおよびスプライシングアクセプター、ポリアデニル化)は、このRNA鎖(単数または複数)を転写するのに使用され得る。阻害は、生物、組織、もしくは細胞型、環境条件の刺激(例えば、感染、ストレス、温度、化学的誘発物質)、および/または発達段階もしくは年齢にて転写を操作する工程における特定の転写によって標的化され得る。このRNA鎖は、ポリアデニル化されてもされなくてもよく、このRNA鎖は、細胞の翻訳装置によってポリペプチドに翻訳されてもよく翻訳され得なくてもよい。RNAは、手動の反応または自動化された反応によって、化学的または酵素的に合成され得る。RNAは、細胞のRNAポリメラーゼまたはバクテリオファージのRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、SP6)によって合成され得る。発現構築物の使用および生成は、当該分野において公知である((WO 97/32016;米国特許第5,593,874号、同第5,698,425号、同第5,712,135号、同第5,789,214号、および同第5,804,693号;ならびにその中に引用される参考を参照のこと)。化学的かまたはインビトロでの酵素的合成によって合成される場合、このRNAは、上記細胞中への導入前に精製され得る。例えば、RNAは、溶媒または樹脂を用いる抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせによって混合物から精製され得る。あるいは、このRNAは、そのままで使用され得るか、または試料の処理に起因する損失を回避するため最小限の精製で使用され得る。このRNAは、保存のために乾燥されても水溶液中に溶解されてもよい。この溶液は、アニーリングを促進する、緩衝液もしくは塩、および/もしくは2重鎖の安定化剤を含み得る。
【0242】
RNAは、この細胞中(すなわち、細胞内に)に直接導入されてもよく、あるいは窩洞中、間質腔中、生物の循環中に対して、細胞外に導入されても、経口的に導入されても、またはRNAを含む溶液中に生物を浴することによって導入されてもよい。経口的導入のための方法としては、RNAとその生物の食物との直接的混合、ならびに食物として使用される種がRNAを発現するように操作され、その後、影響を受けるべき生物に食べられる、操作されたアプローチが挙げられる。例えば、このRNAは、植物上に噴射され得るか、または植物が、その植物に感染する公知の病原体の、いくつかまたは全てを殺傷するのに十分な量のこのRNAを発現するように遺伝子的に操作され得る。核酸を導入する物理的方法(例えば、細胞中への直接的な注入、またはこの生物中への細胞外の注入)もまた使用され得る。血管循環または血管外循環、血液系またはリンパ系、および脳脊髄液は、上記RNAが導入される部位である。組換え構築物由来のRNAを発現するトランスジェニック生物は、接合体、胚性幹細胞、または適切な生物に由来する別の多分化能細胞中にこの構築物を導入することによって産生され得る。
【0243】
核酸を導入する物理的方法としては、RNAを含む溶液の注入、このRNAによって覆われた粒子による砲撃(bombardment)、このRNAの溶液中に細胞または生物を浸漬すること、このRNAの存在下における細胞膜のエレクトロポレーションが挙げられる。ウイルス粒子中に詰められたウイルス構築物は、細胞中への発現構築物の効率的な導入、およびこの発現構築物によってコードされたRNAの転写の両方によって達成され得る。脂質媒介性のキャリア輸送、化学物質媒介性の輸送(例えば、リン酸カルシウム)などのような、細胞に核酸を導入するための、当該分野において公知である他の方法が使用され得る。したがって、このRNAは、以下の1つ以上の活性を果たす構成要素と一緒に導入され得る:この細胞によるRNA取り込みの向上、この2重鎖のアニーリングの促進、このアニールされた鎖の安定化、またはこの標的遺伝子の他の阻害向上。
【0244】
本発明は、単独で使用されも、試験試料もしくは試験被検体に対する、RNAのインビトロまたはインビボでの導入を行うのに必要な少なくとも1つの試薬を有するキットの構成要素として使用されてもよい。好ましい構成要素は、上記dsRNA、およびこのdsRNAの導入を促すビヒクルである。このようなキットはまた、このキットの使用者に本発明を実施させるための説明書を備え得る。
【0245】
適切な注入混合物は、動物が平均して0.5×10〜1.0×10個のRNA分子を受け取るように構築される。センス活性、アンチセンス活性、およびdsRNA活性の比較のため、注入は、等しい質量のRNAと比較される(すなわち、この1本鎖の半分のモル濃度でのdsRNA)。成人1人あたりに注入される分子の数は、注入される物質中のRNAの濃度(エチジウムブロマイド染色から見積もられる)および注入容量(注入の部位における目に見える置き換えから見積もられる)に基づく概算として与えられる。個々の動物間において、注入容量の数倍の変動が可能である。
【0246】
(タンパク質およびポリペプチド)
本明細書中に開示されるアンチセンス分子およびリボザイムに加えて、本発明のOAS1インヒビターとしてはまた、OAS1遺伝子の発現を減少させるのに有効であるか、または1つ以上のOAS1の生物学的活性(酵素活性、1本鎖RNAとの相互作用、立体配置、およびC型肝炎ウイルスのNS5Aまたはそのフラグメントのような他のタンパク質との結合が挙げられるが、これらに限定されない)を減少させるのに有効な、タンパク質またはポリペプチドが挙げられる。当業者が、慣習的な実験を通じてこのようなOAS1インヒビターを迅速に同定し得る種々の方法は、当該分野で容易に利用できる。本発明は、以下の例示的な方法論に限定されない。
【0247】
タンパク質−タンパク質相互作用を検出および分析するための方法を記載する文献は、当業者にとって利用可能である。本明細書中で参考として援用されるPhizickyら,Microbiological Reviews 59:94−123,1995年における総説。このような方法としては、例えば、タンパク質親和性クロマトグラフィー、アフィニティーブロッティング、免疫沈降および架橋結合のような物理的方法、ならびに、例えば、タンパク質プローブ、ファージディスプレイおよび2−ハイブリッドスクリーニングのようなライブラリーに基づく方法が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質−タンパク質相互作用を同定するのに利用され得る他の方法としては、遺伝子外のサプレッサー、合成的な致死効果および結合されない非相補性の使用のような遺伝子的な方法が挙げられる。例示的な方法は、以下でさらに詳細に記載される。
【0248】
本発明のOAS1インヒビターは、OAS1タンパク質と、有力なインヒビタータンパク質のパネルまたはライブラリーとの間の、直接的な相互作用に依存する生物学的スクリーニングアッセイを介して同定され得る。種々の「n−ハイブリッド技術」を含む生物学的スクリーニング方法は、例えば、Vidalら,Nucl.Acids Res.27(4):919−29,1999年;Frederickson,R.M.,Curr.Opin.Biotechnol.9(1):90−96,1998年;Brachmannら,Curr.Opin.Biotechnol.8(5):561−68,1997年;およびWhite,M.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:10001−03,1996年に記載され、これらは各々、本明細書中に参考として援用される。
【0249】
この2−ハイブリッドスクリーニング方法論は、阻害性特性を有するOAS1結合タンパク質についての、新しい標的cDNAライブラリーまたは既存の標的cDNAライブラリーを調査するために利用され得る。この2−ハイブリッドシステムは、レポーター遺伝子の転写の増加よってタンパク質−タンパク質相互作用を検出する遺伝子的方法である。このシステムは、部位特異的転写活性化因子が、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを有するという事実に依存する。このDNA結合ドメインは、発現される特定の遺伝子に対する活性化ドメインを標的化する。転写活性化因子のモジュール状の性質に起因して、DNA結合ドメインは、いずれのドメインの活性の損失も伴わずに、転写活性化ドメインから共有結合的に切断され得る。さらに、これらの2つのドメインは、転写機構に関連しない2つのタンパク質間の、タンパク質とタンパク質との接触によって、近位にもたらされ得る。したがって、2つのハイブリッドは、機能的システムを形成するために構築される。第1のハイブリッド(すなわち、餌)は、目的のタンパク質に対して融合される転写活性化因子のDNA結合ドメインからなる。第2のハイブリッド(標的)は、タンパク質またはポリペプチドのライブラリーを用いる転写活性化ドメインの融合によって形成される。この餌タンパク質とこの標的ライブラリーのメンバーとの間の相互作用は、DNA結合ドメインと転写活性化因子ドメインとの近接および結果的なレポーター遺伝子の発現の上方制御を生じる。
【0250】
種々の2−ハイブリッドに基づくシステムは、当業者にとって利用可能であり、当業者は、酵母のGal4またはE.coliのLexA DNA結合ドメイン(BD)、および酵母のGal4または単純ヘルペスウイルスのVP16転写活性化ドメインのいずれかを最も一般的に利用する。Chienら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:9578−82,1991年;Daltonら,Cell 68:597−612,1992年;Durfeeら,Genes Dev.7:555−69,1993年;Vojtekら,Cell 74:205−14,1993年;およびZervosら,Cell 72:223−32,1993年。一般的に使用されるレポーター遺伝子としては、E.coliのlacZ遺伝子、ならびにHIS3およびLEU2のような選択可能な酵母遺伝子が挙げられる。Fieldsら,Nature(London)340:245−46,1989年;Durfee,T.K.,上述;およびZervos,A.S.,上述。多種多様な活性化ドメインのライブラリーは、当該分野において容易に利用でき、したがって、相互作用するタンパク質についてのスクリーニングが、慣習的な実験を介して行われるような。
【0251】
OAS1相互作用タンパク質を同定するための適切な餌タンパク質は、配列番号19として本明細書中に提示されるOAS1 DNA配列に基づいて設計される。このような餌タンパク質としては、完全長のOAS1タンパク質またはそのフラグメントのいずれかが挙げられる。
【0252】
例えば、pBTM116およびpAS2−1のような、OAS1の餌構築物および標的ライブラリーを調製するためのプラスミドベクターは、当業者にとって容易に入手可能であり、そして、例えば、Clontech(Palo Alto,CA)、Invitrogen(Carlsbad,CA)およびStratagene(La Jolla,CA)のような販売元から入手され得る。これらのプラスミドベクターは、それぞれ、LexAまたはGal4BDのようなDNA結合ドメインとcDNAとの、インフレームの融合を可能にする。
【0253】
本発明のOAS1インヒビターは、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するための、あるいは、当該分野において利用可能な、物理的方法または生化学的方法の1つを介して同定され得る。
【0254】
上記タンパク質アフィニティークロマトグラフィー方法論を介して、潜在的OAS1インヒビターのような試験されるべきリード化合物が、例えばセファロースビーズのような固体マトリックスに対して共有結合されるかまたは非共有結合で結合される場合の、OAS1に対する特異的保持によって同定され得る。タンパク質アフィニティーカラムの調製は、例えば、Beeckmansら,Eur.J.Biochem.117:527−35,1981年,およびFormosaら,Methods Enzymol.208:24−45,1991年に記載される。細胞タンパク質の全てを含む細胞溶解物は、OAS1アフィニティーカラムに通され得る。OAS1に対して高い親和性を有するタンパク質は、低濃度の塩条件下で保持される一方で、細胞のタンパク質の大部分は、カラムを通過する。このような高い親和性のタンパク質は、カオトロピックな溶媒またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いる高塩濃度の条件下で、固定されたOAS1から溶出され得る。いくつかの実施形態において、OAS1特異的結合タンパク質を同定するのに役立つような溶解物を調製する前に、上記細胞を放射標識することが好まれ得る。哺乳動物細胞を放射標識するための方法は、当該分野において公知であり、そして、例えば、Soptaら,J.Biol.Chem.260:10353−60,1985年に提供される。
【0255】
アフィニティーカラムクロマトグラフィーに対して適切なOAS1タンパク質は、適切な親和性樹脂上の迅速な精製を可能にするために、タンパク質またはポリペプチドに対して融合され得る。例えば、OAS1 cDNAは、グルタチオン−アガロースカラムに対する融合タンパク質の吸着を容易にするグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)についてのコード領域に融合され得る。Smithら,Gene 67:31−40,1988年。あるいは、融合タンパク質は、免疫グロブリンGを有するカラム上で精製され得るプロテインA、Ni2+を有するカラム上で精製され得るオリゴヒスチジン含有ペプチド、アミロースを含む樹脂上で精製され得るマルトース結合タンパク質、およびメトトレキサートカラム上で精製され得るジヒドロ葉酸レダクターゼを含み得る。本明細書中に提示されるOAS1融合タンパク質の調製に適した1つの例示的なタグは、モノクローナル抗体が容易に利用でき、そしてそこからアフィニティーカラムの抗体が調製され得る、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)ついてのエピトープである。
【0256】
OAS1アフィニティーカラム上に保持されるタンパク質は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供される工程の後に同定され得る。したがって、細胞は、細胞溶解物の調製およびOAS1アフィニティーカラムの通過前に放射標識され、OAS1に対して高い親和性を有するタンパク質は、オートラジオグラフィーによって検出され得る。OAS1特異的結合タンパク質の同一性は、Mathews,C.K.ら,Biochemistry,The Benjamin/Cummings Publishing Company,Inc.,1990年,166−70ページのような当業者にとって容易に利用できるタンパク質配列決定技術によって決定され得る。
【0257】
(小分子)
本発明はまた、ハイスループットスクリーニング(HTS)方法論の慣習的な適用を通じて容易に同定され得る、小分子OAS1インヒビターを提供する。Persidis,A.,Nature Biotechnology 16:488−89,1998年による総説。HTS法とは一般的に、リード化合物(例えば、小分子)の治療的可能性についての迅速なアッセイを可能にするこれらの技術を指す。HTS方法論は、試験物質陽性シグナルの検出およびデータの解析のロボット操作を利用する。このような方法論としては、例えば、可溶性分子ならびに上に詳細に記載される2−ハイブリッドシステムのような細胞に基づくシステムを使用するロボット利用のスクリーニング技術が挙げられる。
【0258】
種々の細胞株に基づくHTS法は、それらの操作の容易さ、および溶液中とは対照的に細胞環境内で起こる相互作用の臨床上の関連性からくる利益を利用できる。リード化合物は、放射活性の取り込みを介して同定されても読み出し値としての吸光度、蛍光、または発光に依存する光学的アッセイによって同定されてもよい。例えば、本明細書中に参考として援用される、Gonzalezら,Curr.Opin.Biotechnol.9(6):624−31,1998年を参照のこと。
【0259】
HST方法論は、例えば、OAS1の生物学的活性の1つを遮断するリード化合物についてスクリーニングするために利用され得る。この方法によって、OAS1タンパク質は、このタンパク質を発現する細胞から免疫沈降され、そしてロボットを利用したスクリーニングに適したアッセイプレート上のウェルに適用され得る。その後、個々の試験化合物は、免疫沈降したタンパク質と接触され得、そしてOAS1に対する各試験化合物の効果と関係付けられる。
【0260】
(OAS1インヒビターの効力を評価するための方法)
リード分子またはリード化合物(アンチセンス分子またはリボザイムであっても、タンパク質および/またはペプチドであっても、抗体および/または抗体フラグメントあるいは小分子であっても)は、本明細書に記載される方法の1つによってか、またはそうでなければ当該分野において利用可能な技術を介して、種々のインビトロ、エキソビボ、およびインビボの動物モデルアッセイシステム中で、これらのOAS1遺伝子発現を阻害する能力またはこれらの生物学的活性について、さらに特徴付けられ得る。以下に提供される実施例おいてさらに詳細に議論されるように、本発明のOAS1インヒビターは、OAS1の発現レベルを減少するのに有効である。したがって、本発明は、当業者に候補のインヒビターの効果を評価させる方法を、さらに開示する。
【0261】
候補のOAS1インヒビターは、内因性のOAS1を発現する細胞、または組換えOAS1プラスミド構築物を用いる哺乳動物細胞のトランスフェクションによってOAS1を発現するように作製される細胞に対する投与によって試験され得る。
【0262】
有効なOAS1阻害性分子は、OAS1の酵素活性、またはIFN誘導に対して応答するOAS1の能力を減少させるのに有効である。OAS1酵素活性およびIFN誘導を測定する方法は、例えば、本明細書中に参考として援用されるEskildsenら,Nuc.Acids Res.31:3166−3173,2003年;およびJustesenら,Nuc.Acids Res.8:3073−3085,1980年に記載されるように、当該分野において公知である。所与の候補アンチセンス分子の有効性は、哺乳動物細胞に対して投与したとき、OAS1発現に対して実質的な効果を有さないことが公知である、対照「アンチセンス」分子との比較によって評価され得る。
【0263】
上で議論される1つ以上の方法によってOAS1遺伝子発現を減少するのに有効なOAS1インヒビターは、デング熱ウイルスのようなフラビウイルスによる感染によって負荷されたVero細胞の使用に関連して、本明細書中に記載されるような容易に利用可能な確立された細胞培養または初代細胞培養モデルシステムのうちの1つにおける有効性について、インビトロでさらに特徴付けられ得る。
【0264】
(薬学的組成物)
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムは、リボヌクレオチドのヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのヌクレオチドについて当該分野において公知である任意の方法によって合成され得る。例えば、このオリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems 380B DNA合成機におけるような固相合成を使用して調製され得る。このオリゴヌクレオチドの最終的な純度は、当該分野において公知である通りに決定される。
【0265】
本発明の方法を使用して同定されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、腫瘍細胞の増殖を調節する。したがって、薬学的組成物および方法が、ウイルス感染(好ましくはフラビウイルス感染、最も好ましくはHCV感染)を妨害するために提供され、これらは、本発明の方法を使用して同定された1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドと組織または細胞とを接触させる工程を包含する。
【0266】
本発明は、治療的適用のための活性成分として、上記OAS1 mRNAの遺伝子配列に対して相補的な、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムの薬学的組成物を提供する。これらの組成物はまた、本発明の方法に使用され得る。必要な場合、上記化合物は、ヌクレアーゼ抵抗性である。一般的に、哺乳動物においてウイルス感染を阻害するための上記薬学的組成物は、本発明の実施のために必要とされる、少なくとも1種の上記のようなアンチセンスオリゴヌクレオチド、または同じ効果を有することが示されたそのフラグメントの有効量を含み、そしてこの組成物は、薬学的かつ生理学的に受容可能な、キャリアまたは希釈剤を含有する。
【0267】
この組成物は、経口的か、皮下か、または非経口的(静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、および鼻腔内投与を含み、そして必要な場合、鞘内技術および注入技術を含む)に投与され得る。薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、アジュバントおよびビヒクル、ならびに移植キャリアは、一般的に、本発明の活性成分と反応しない、不活性であり無毒性の、固体賦形剤または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化用物質を指す。カチオン性脂質もまた、オリゴヌクレオチドの取り込みを容易にするために、この組成物中に含まれ得る。この化合物の移植物もまた有用である。一般的に、この薬学的組成物は、無菌である。
【0268】
生物活性(発現可能)によって、上記オリゴヌクレオチドが、上記細胞に直接送達され、そして/または適切なプロモーターによって発現される場合に、この細胞中で生物学的に活性であり、そして以下に記載されるようなベクターにおいてこの細胞に送達される場合に活性であることが意味される。ヌクレアーゼ抵抗性は、本明細書中に記載されるような生物学的活性に対して実質的に干渉しない、当該分野において公知である方法のいずれかによって提供される。
【0269】
「細胞と接触する工程」とは、直接であろうと、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターによってであろうと、細胞に対して、アンチセンスオリゴヌクレオチドを曝すかまたは送達し、このアンチセンスオリゴヌクレオチドが、送達の際に生物活性である方法をいう。
【0270】
本発明のヌクレオチド配列は、直接的にか、またはウイルスベクターもしくは非ウイルスベクターによって送達され得る。直接送達される場合、この配列は概して、ヌクレアーゼ抵抗性を与えられる。あるいは、上記配列は、この配列がその細胞中で発現されるような、発現カセットまたは発現構築物中に組み込まれ得る。一般的に、この構築物は、その標的化された細胞中で上記配列を発現させる、適切な調節配列または適切なプロモーターを含む。
【0271】
一旦、上記オリゴヌクレオチド配列が、送達される状態になると、それらは、当該分野において公知であるように、細胞中に導入され得る。トランスフェクション、エレクトロポレーション、融合、リポソーム、コロイド性ポリマー粒子、およびウイルスベクター、ならびに当該分野において公知である他の手段は、上記細胞にオリゴヌクレオチド配列を送達するのに使用され得る。選択された方法は、少なくとも、処理される細胞、およびこの細胞の配置に依存し、そしてこのことは、当業者にとって公知である。局在化は、このリポソームを方向づけるためのその表面上に特異的マーカーを有するリポソームによってか、標的細胞を含む組織中に直接注入することによってか、標的細胞と空間的に近くでデポーを会合させることによってか、特定のレセプターを媒介する取り込み、ウイルスベクターなどによって達成され得る。
【0272】
本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含むベクターを提供する。本発明は、適切な真核生物細胞および適切な原核生物細胞から選択される宿主細胞をさらに提供し、これらは、必要な場合にこれらのベクターによって形質転換される。
【0273】
ベクターは、当業者にとって公知であるか、または当業者によって構築され、そして上記配列の所望の転写を達成するのに必要な、全ての発現要素を含むべきである。異なる形態のオリゴヌクレオチドの回収のための機構のような、他の有益な特徴はまた、ベクター中に含まれ得る。ファージミドは、このような有益なベクターの具体的な例である。なぜなら、それらは、プラスミドベクターとしてかまたはバクテリオファージベクターとして使用され得るからである。他のベクターの例としては、バクテリオファージ、バキュロウイルス、およびレトロウイルスのようなウイルス、DNAウイルス、リポソームならびに他の組換えベクターが挙げられる。このベクターはまた、原核生物宿主系または真核生物宿主系のいずれかに使用するための要素を含み得る。当業者は、宿主系が、特定のベクターと適合性であることを理解する。
【0274】
上記ベクターは、当該分野において公知の種々の方法のいずれか1つによって、細胞または組織中に導入され得る。このような方法は、一般にSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York,1989年,1992年;Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD,1989年のAusubelら;Changら,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.,1995年;Vegaら,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor,Mich.,1995年;Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston,Mass.,1988年;およびGilboaら,BioTechniques 4:504−12,1986年に記載されることが見出され、そして、この方法としては、例えば、組換えウイルスベクターを用いる、安定的または一過性の、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションおよび感染が挙げられる。
【0275】
当該分野において公知である組換え方法はまた、標的核酸のアンチセンス阻害を達成するために使用される。例えば、アンチセンス核酸を含むベクターは、上記標的核酸の発現を減少させ、それによってその活性を減少させるアンチセンスメッセージを発現するために利用され得る。
【0276】
本発明はまた、化合物が、OAS1遺伝子の転写または翻訳を阻害し、それによってRNaseLを活性化する細胞の能力を調節する(すなわち、減少させる)か否かを評価する方法を提供し、この方法は、OAS1、この核酸の転写または翻訳のために必要な要素をコードする核酸配列を含む発現ベクターによって、細胞をトランスフェクトする工程、試験化合物を投与する工程、およびこの試験化合物の非存在下で対照によって得られた発現のレベルと、このOAS1の発現のレベルとを比較する工程を包含する。
【0277】
(好ましい実施形態)
上記の方法および当該分野において公知である他の方法を利用して、本発明は、増幅条件下で、オリゴアデニレートシンセターゼ(OAS1、配列番号19)のオリゴヌクレオチド(nt)位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638のいずれかを含むヒトゲノムDNAの領域を増幅するためのPCRプライマー対によって、ヒトから単離されたゲノムDNAの試料を処理する工程を包含するスクリーニング方法を企図する。増幅条件としては、DNA合成のために有効な量のPCR緩衝液の存在、および温度循環の温度が挙げられる。したがって、このPCR産物は、関連するヌクレオチド位置における点変異の存在についてアッセイされる。1つの実施形態において、このPCR産物は、5’方向から3’方向に書き込まれた約358塩基対(bp)を含み、そして位置2135728(変異1)、2135749(変異2)、2135978(変異3)、2144072(変異4)、2144088(変異5)、2144116(変異6)、または2144321(変異7)および各側における位置に隣接する約175塩基を含む連続したヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、表1および表2における上記のような単位複製配列は、例示的なPCR産物および対応するプライマーである。
【0278】
1つの好ましい実施形態において、このPCR産物は、ハイブリダイゼーション条件下で、対応する変異に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いてこの増幅産物を処理し、そして任意のハイブリダイゼーション産物の形成を検出することによって対応する変異についてアッセイされる。好ましいオリゴヌクレオチドプローブは、以下の表3に示されるヌクレオチド配列を含む。標的核酸に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、米国特許第4,530,901号に記載される。
【0279】
【表3】

【0280】
したがって、形成されたPCR混合物は、OAS1遺伝子の増幅産物およびOAS1R遺伝子の増幅産物を産生する複数のPCR温度循環に供される。その後、この増幅産物は、ハイブリダイゼーション条件下で、各変異に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて処理される。その後、任意のハイブリダイゼーション産物が、検出される。
【0281】
以下の実施例は、例示することを意図されるが、決して本明細書および特許請求の範囲の限定として解釈されることを意図されない。
【実施例】
【0282】
(実施例1)
(ゲノムDNAの調製および予備的スクリーニング)
この実施例は、患者の2つの特定の集団から得たDNAのスクリーニングに関するが、HCVに対する度重なる曝露が実証され、ここでこの曝露は、感染を生じない他の患者群に対して等しく適用できる。この実施例はまた、上で議論されるような他のフラビウイルスに対して曝された患者のスクリーニングに関し、ここでこの曝露は、感染を生じなかった。
【0283】
ここで、2つの集団が研究される:(1)中等度から重篤な血友病の基準、および1987年1月より前の濃縮凝固因子の投与によって選択された血友病患者の集団、ならびに(2)10年間より長い注射の経歴、および使い回しの針のような他の危険行為の証拠を有する静脈内用薬物使用者の集団。この研究は、HCVに曝露されるがHCV陰性の患者、およびHCVに曝露され、かつHCV陽性の患者を含む。
【0284】
高分子量DNAは、IV薬物使用者、血友病患者、およびC型肝炎感染の危険または他のフラビウイルスによる感染の危険にある他の集団から得た白血球から抽出される。ゲノムDNAの最初のスクリーニングに関して、血液は上記の群の患者から、インフォームドコンセント後に収集され、そして0.14Mのクエン酸、0.2Mのクエン酸三ナトリウムおよび0.22Mのデキストロースの混合物によって凝血が防がれる。この凝血がふせがれた血液は、室温にて15分間、800×gにて遠心分離され、そして血小板が多い血漿の上清は廃棄される。ペレットにされた赤血球、単核細胞および多核細胞は、再懸濁され、そして冷却された0.14Mのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)によって最初の血液容量と等しい容量に希釈される。末梢血白血球細胞は、18℃(18℃)で10分間、400×gにて低エンドトキシンFicoll−Hypaque(Sigma Chem.Corp.St.Louis,Mo.)による遠心分離によって、希釈された細胞懸濁液から回収される。その後、このペレットにされた白血球細胞は、再懸濁され、そして高分子量DNAの供給源として使用される。
【0285】
高分子量DNAは、当業者にとって周知でありかつManiatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,第9.16節−第9.23節,(1989)および米国特許第4,683,195号に記載される方法を使用して、単離された白血球細胞から精製される。
【0286】
その後、DNAの各試料は、オリゴアデニレートシンセターゼ1遺伝子(OAS1)に対応するGenbank登録番号NT_009775.13のヌクレオチド位置を参照して、位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638におけるヌクレオチドのいずれか1つの点変異について検査される。
【0287】
(実施例2)
(HCV感染に対する抵抗性に関連するOAS1遺伝子中の変異)
実施例1に記載される方法を使用して、血友病患者および静脈内用薬物使用者に関係のない集団を研究し、そして配列番号1〜配列番号7および配列番号57〜配列番号64に開示されるようなOAS1における変異の存在または非存在を決定した。
【0288】
白色人種集団における20の事例および42の対照での研究において、これらの変異を、C型肝炎感染に対する抵抗性というコンテキストにおいて見出した。HCV感染に対する抵抗性と、OAS1における点変異の存在との間の、統計学的に有意な相関関係が存在した。
【0289】
(実施例3)
(cDNAの調製および配列決定)
細胞の全RNAは、C型肝炎抵抗性の表現型を有する患者から得た、培養したリンパ芽球または培養した線維芽細胞から精製される。この精製手順は、Chomczynskiら,Anal.Biochem.,162:156−159(1987)に記載される通りに行われる。要約すると、この細胞は、実施例1に記載されるように調製される。その後、この細胞は、4.0Mのグアニジンチオシアネート、0.1MのTris−HCl(pH7.5)、および0.1Mのβ−メルカプトエタノールを含む10ミリリットル(ml)の変性溶液中でホモジェナイズされ、細胞溶解物を形成する。その後、ラウリルサルコシン酸ナトリウムは、0.5%の最終濃度になるまでこの細胞溶解物に混合され、その後この混合物を室温にて10分間、5000×gで遠心分離した。この得られた全RNAを含む上清は、5.7Mの塩化セシウムおよび0.01MのEDTA(pH7.5)のクッション上に重層され(layered)、そして遠心分離によってペレットにされる。この生じたRNAペレットは、10mMのTris−HCl(pH7.6)および0.1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む1mMのEDTA(TE)の溶液中に溶解される。フェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈殿の後、この精製された細胞の全RNAの濃度は、260nmにおける吸光度を測定することによって見積もられる。
【0290】
上記の調製された全RNAは、ファーストストランド合成のための、逆転写を使用するcDNA合成、および指定された2つの重複フラグメント(5’フラグメントおよび3’フラグメントと称される)においてcDNAを増幅するために設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRのための、鋳型として使用される。本発明の実施に使用されるオリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems 381A DNA合成機上で、その製造業者の説明書にしたがって合成される。PCRは、当該分野において公知の方法を使用して行われる。PCR増幅法は、米国特許第4,683,192号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号、ならびに少なくとも、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H.Erlich編,Stockton Press,New York(1989);およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innisら編,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)を含むいくつかの教科書に記載され、そしてプライマーは、本明細書中の表1に記載される。
【0291】
HCV感染を有するかまたはHCV感染を有さない患者由来の、PCRで増幅されたDNAから直接決定された配列は、分析される。上記OAS遺伝子のコード領域より上流の変異の存在は、上記ウイルスに対する度重なる曝露にもかかわらす、HCVに対して血清陰性である患者において検出され得る。
【0292】
(実施例4)
(点変異を含むPCRで増幅されたゲノムDNAの調製および対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによる検出)
ヌクレオチド位置2135728、2135749、2135978、2144072、2144088、2144116、2144321、2131025、2133961、2139587、2144294、2144985、2156523、2156595、または2156638の1つにおける、オリゴアデニレートシンセターゼ(OAS1)遺伝子中の点変異は、その変異を含むPCRで増幅されたゲノムDNAが、その領域に対してハイブリダイゼーションしたオリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションによって検出されるアプローチによって決定され得る。オリゴヌクレオチド特異的プローブを用いるハイブリダイゼーションについて、この点変異を有する領域を増幅するために、PCR増幅は、例えば、180ngの表1に示されるプライマーの各々を用いて、本質的に実施例3に記載される通りに行われる。
【0293】
上記PCR増幅の後、2μlの増幅されたオリゴアデニレートシンセターゼDNA産物は、ニトロセルロースの分離シート上にスポットされる。このスポットされた増幅DNAは乾燥され、このニトロセルロースは、0.5NのNaOHで2分間、1MのTris−HCl(pH7.5)で2分間処理され、その後、このDNAを変性し、次いで中和するために1.5MのNaClを含む0.5MのTris−HCl(pH7.5)で2分間処理される。得られたフィルターは80℃にて1時間、真空下で焼かれ、6X SSC(1X=0.15MのNaCl、0.15Mのクエン酸ナトリウム)、5X Denhardt’s溶液(5X=0.1%のポリビニルピロリドン、0.1%のフィコールおよび0.1%のウシ血清アルブミン)、5mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、0.5mg/mlのサケ精巣DNAおよび1%のSDSからなるプレハイブリダイゼーション溶液によって、42℃にて少なくとも20分間プレハイブリダイズされる。
【0294】
プレハイブリダイゼーション工程の後、このニトロセルロースフィルターは、プレハイブリダイゼーション緩衝液中に希釈された32P標識オリゴヌクレオチドプローブに対して別個に曝される。32Pによるこのプローブの標識は、2.5μlの10X濃度のキナーゼ緩衝液(10X=0.5MのTris[ヒドロキシメチル]アミノメタンヒドロクロリド(Tris−HCl)(pH7.6)、0.1MのMgCl、50mMのジチオスレイトール(DTT)、1mMのスペルミジン−HCl,および1mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA))、1.1μlの60μg/μlの選択されたオリゴヌクレオチド、18.4μlの水、2μlの6000Ci/mMのγ32P ATP(150mCi/μlの濃度)、および1μlの10U/μlポリヌクレオチドキナーゼを混合することによって行われる。この標識混合物は、37℃にて20分間維持され、その後、68℃にて2分間維持される。その後、この維持された混合物は、取り込まれなかった32P標識ATPを除去するために、Sephadex G50(Pharmacia,Inc.,Piscataway,NJ)スピンカラムに適用される。
【0295】
上記変異を含む領域に対してハイブリダイズするのに使用されるオリゴヌクレオチドプローブは、上記の表3に示される。下線を引かれたヌクレオチドは、変異ヌクレオチドに対応する野生型(正常)を検出するためのプローブにおいて、下線を引かれたヌクレオチドは、野生型のヌクレオチドに置換される。
【0296】
10X 10cpmの正常標識プローブおよび変異標識プローブは、別個に各フィルターと混合される。その後、このニトロセルロースフィルターは、ハイブリダイゼーション産物を形成させるために、42℃にて一晩維持される。上記正常プローブに曝されたニトロセルロースフィルターは、46℃にて、0.1%のSDSを含む6X SSCによって洗浄されるが、上記変異プローブに曝されたフィルターは、52℃の、よりストリンジェントな温度にて、同じ溶液によって洗浄される。その後、このニトロセルロースフィルターは乾燥され、そしてラジオオートグラフィーに供される。
【0297】
上記点変異を有するこれらの産物のみが、上記変異プローブとハイブリダイズする。ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールは、PCR増幅が成功したか否かを決定するために各アッセイ中に含まれる。したがって、実施例1で調製された親のゲノムDNAが、上記示された位置において野生型ヌクレオチドに対して置換された非野生型ヌクレオチドの固有の点変異を有することが、このアプローチによって決定される。
【0298】
(実施例5)
(標的RNAのアンチセンス阻害)
(A.トランスフェクションのためのオリゴヌクレオチドの調製)
リピトイド(lipitoid)またはコレステロイド(cholesteroid)のいずれかを含むキャリア分子は、トランスフェクションのために、水中に0.5mMになるまで希釈され、その後、均一な溶液を生成するために超音波処理され、そして0.45μmのPVDF膜を通して濾過されることによって調製される。その後、このリピトイドまたはコレステロイドは、最終濃度が、オリゴヌクレオチド1μgあたり約1.5〜2nmolリピトイドであるように、適切な量のOptiMEMTM(Gibco/BRL)中に希釈される。
【0299】
アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび対照オリゴヌクレオチドは、最初に滅菌したMillipore水中に100μMの作業濃度になるまで希釈され、その後、OptiMEMTM中に2μM(約20mg/mL)になるまで希釈される。その後、この希釈されたオリゴヌクレオチドは、直ちに上記希釈されたリピトイドに添加され、そしてピペットで吸引と排出を繰り返すことによって混合される。
【0300】
(B.トランスフェクション)
HCV感染に対して感受性であり、かつHCV複製を支持するヒトPH5CH8肝細胞が使用される(Dansakoら,Virus Res.97:17−30,2003年;Ikedaら,Virus Res.56:157−167,1998年;NoguchiおよびHirohashi,In Vitro Cell Dev.Biol Anim.32:135−137,1996年)。混合直後に、この細胞は、上記オリゴヌクレオチド/リピトイド混合物を、オリゴヌクレオチドの最終濃度が300nMになるまで添加することによってトランスフェクトされる。その後、この細胞は、5%のCO、37℃で一晩、上記トランスフェクション混合物と一緒にインキュベートされ、そしてこのトランスフェクション混合物は、この細胞を3〜4日間維持する。
【0301】
(C.全RNAの抽出および逆転写)
全RNAは、RNeasyTM kit(Qiagen Corporation,Chatsworth,CA)を使用して、この製造業者によって提供されるプロトコルにしたがって、上記トランスフェクトされた細胞から抽出される。抽出の後、このRNAは、PCRの鋳型として使用するために逆転写される、一般的に、0.2〜1μgの全抽出RNAは、滅菌したマイクロフュージチューブ中におかれ、そして水が、全量3μLになるまで添加される。7μLの緩衝液/酵素混合物は、各チューブに添加される。この緩衝液/酵素混合物は、以下に記載される順序で混合される:
4μLの25mM MgCl
2μLの10X反応緩衝液
8μLの2.5mM dNTPs
1μLのMuLV逆転写酵素(50u)(Applied Biosystems)
1μLのRNaseインヒビター(20u)
1μLのオリゴdT(50pmol)。
【0302】
上記マイクロフュージチューブの内容物は、ピペットで吸引と排出を繰り返すことによって混合され、そしてこの反応は、42℃にて1時間インキュベートされる。
【0303】
(D.PCR増幅および標的配列の定量化)
逆転写の後、標的遺伝子は、Roche Light CyclerTMリアルタイムPCR機を使用して増幅される。PCR増幅混合物の20μLのアリコートは、以下の構成成分を、以下に記載される順序で混合することによって調製される:2μLの10X PCR緩衝液II(10mMのTris(pH8.3)および50mMのKClを含む、Perkin−Elmer,Norwalk,CT)、3mMのMgCl、140μMの各dNTP、0.175pmolの各OAS1オリゴ、1:50,000希釈のSYBR(登録商標)Green、0.25mg/mLのBSA、1単位のTaqポリメラーゼならびに20μLまでのHO。SYBR(登録商標)Green(Molecular Probes,Eugene,OR)は、2本鎖DNAに結合したときに蛍光を発する色素であり、このことは、各反応において生成されたPCR産物の量が直接的に測定されることを可能にする。完了した逆転写反応の2μLは、PCR増幅混合物の各20μLのアリコートに添加され、そして増幅は、標準的なプロトコルによって行われる。
【0304】
(実施例6)
(OAS1 RNAを用いる細胞の処理)
アンチセンス処理のために実施例5の方法を使用して、細胞は、上記OAS1配列(配列番号19)に基づくオリゴヌクレオチドを用いて処理される。3’末端におけるデオキシ−TTを有する2つの相補的なリボヌクレオチドモノマーが合成され、そしてアニールされる。上記PH3CH8肝細胞株は、1:3のL2リピトイドを含む50〜200nMのRNAiによって処理される。細胞は、1日目、2日目、3日目および4日目に収集され、そしてDansakoら,Virus Res.97:17−30,2003年に記載されるようなウェスタン分析によってOAS1タンパク質に関して分析される。
【0305】
(実施例7)
(C型肝炎ウイルスのNS5Aタンパク質とのOAS1相互作用)
本発明のOAS1タンパク質またはOAS1ポリペプチドの、C型肝炎ウイルスのNS5Aと相互作用する能力は、Taguchi,T.ら,J.Gen.Virol.85:959−969,2004年に記載される方法を使用してアッセイされる。OAS1タンパク質およびOAS1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、上記のように調製され、そしてプラスミドは、Taguchi,T.らに記載されるような慣習的な方法を使用して構築される。1つのプラスミドは、OAS1タンパク質またはOAS1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、そして第2のプラスミドは、NS5Aをコードするポリヌクレオチドを含む。このプラスミドはまた、それぞれのタンパク質に対して適切なタグ(例えば、FLAGタグ、HA、またはGST)をコードする。適切な細胞(例えば、HeLa細胞)は、タグおよびNS5Aタンパク質をコードするプラスミドならびに異なるタグおよびOAS1タンパク質またはOAS1ポリペプチドをコードするプラスミドによって一過性にトランスフェクトされる。インキュベーションおよび(Taguchi,T.ら)に記載されるような上清の調製後、種々の分析技術が、OAS1タンパク質またはOAS1ポリペプとNS5Aとの結合を、検出および定量するために使用され得る。このような技術は、当該分野において公知であり、これらとしては、共沈分析、免疫蛍光分析、および免疫ブロット分析が挙げられる。NS5Aに対する結合を示さないOAS1タンパク質およびOAS1ポリヌクレオチドは、C型肝炎感染のインヒビターとしてのさらなる分析にふさわしい。
【0306】
(実施例8)
(OAS1の化学的かつ立体的に保存された領域)
当業者が認識するように、酵素活性または治療的可能性を改良するためにOAS1の構造を修飾する場合、特定の残基または残基の領域は、化学的かつ構造的に保存される必要がある。例として、数種の保存的ドメインが、以下に記載される。当業者が認識するように、このタンパク質の構造および機能を妨害する、いくつかのアミノ酸に対する化学的に保存された変化が許容され得る。例えば、Asp75およびAsp77の両方は、OAS1機能について本質的である、触媒的な2価の金属イオンを配位する。これらの塩基に対する修飾(例えば、アスパラギンまたはグルタミン酸)が許容され得、これらの残基の本質的に極性の性質および酸の性質は、保存される必要がある。
【0307】
例として、配列番号26〜配列番号29、配列番号33、配列番号34、および配列番号50に関して、以下のポリペプチドフラグメントは、保存的ドメインを示す:
アミノ酸40〜アミノ酸47:FLKERCFR(配列番号75)
アミノ酸55〜アミノ酸82:VSKVVKGGSSGKGTTLRGRSDADLVVFL(配列番号76)
アミノ酸94〜アミノ酸112:RRGEFIQEIRRQLEACQRE(配列番号77)
アミノ酸128〜アミノ酸138:NPRALSFVLSS(配列番号78)
アミノ酸145〜アミノ酸158:VEFDVLPAFDALGQ(配列番号79)
アミノ酸182〜アミノ酸198:KEGEFSTCFTELQRDFL(配列番号80)
アミノ酸201〜アミノ酸217:RPTKLKSLIRLVKHWYQ(配列番号81)
アミノ酸225〜アミノ酸241:KLPPQYALELLTVYAWE(配列番号82)
アミノ酸296〜アミノ酸307:PVILDPADPTGN(配列番号83)
アミノ酸337〜アミノ酸343:GSPVSSW(配列番号84)。
【0308】
(実施例9)
(酵素活性部位を改良するアミノ酸の変化)
OASアミノ酸配列における変化は、上記タンパク質の酵素活性の改良を想定し得る。1つの好ましい実施形態において、この酵素の活性部位内のアミノ酸は、ATPまたは金属イオン結合、酵素の有効性、および酵素の進化性を改良するために改変され得る。このような変化の例は、配列番号26、配列番号27、配列番号33、配列番号34、配列番号35、または配列番号48のアミノ酸位置61におけるグリシンに対するチロシンの置換である。化学的に不活性なグリシンから極性のチロシンへの置換は、ATPのN3原子とこのアミノ酸位置との間の水素結合を容易にするはずであり、それによって、この相互作用の解離定数およびエネルギー特性を改良する。チロシンは、例えば、より進化したポリ−Aポリメラーゼにおいてこの位置に見出される。当業者が認識するように、他の改変が想定され得る。
【0309】
(実施例10)
(2本鎖RNAの結合を改良するアミノ酸の変化)
酵素活性を改良する、OASに対するアミノ酸改変の第2の例は、このタンパク質と2本鎖ウイルスRNAとの間の相互作用を安定化する改変であり得る。以下の表は、このタンパク質に対してRNAが結合する溝におけるそれらのアミノ酸、および基本的に、正に荷電したアミノ酸側鎖と負に荷電したリボ核酸との間の相互作用を安定化するように設計された数種の変化案を記載する。当業者が認識するように、RNAが結合する溝に対する同様の型の改変が、想定され得る。
【0310】
【表4】

【0311】
(実施例11)
(遺伝子変異の分析)
当業者は、多くの他の分析方法が、遺伝子の分析における特定の変異の進化の重要性を評価するために存在することを認識する。1つの例は、一般的にD’と称される連鎖不平衡係数の周知の算出である(Lewontin,Genetics 49:49−67,1964年)。他の特に関連する方法は、遺伝子座における、高頻度、中頻度、または低頻度の変異の相対的な量を比較することによって、その遺伝子座内の選択圧および/または最近の進化的事象(例えば、選択的蔓延(selective sweep))を推定することを試みる。これらの試験で最もよく知られたものは、Tajima D統計量(Tajima,Genetics 123:585−595,1989年)である。FuおよびLi,Genetics 133:693−709(1993)はまた、Tajima統計量および他の統計量に対する変形を開発し、これはまた、各変異に対する祖先の対立遺伝子に関する知識を使用する。これらの方法および他の方法は、上記観察された効果に対する相対的寄与率を評価するために、本発明の変異に適用される。
【0312】
特定の実施形態および実施例を含む本明細書は、本発明の例示であることが意図され、そして限定として解釈されるべきではない。多くの他の変更および改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく達成され得る。引用された全ての特許、特許公開物、および非特許刊行物は、本明細書中に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.配列番号20〜30、配列番号32〜35及び配列番号46〜52からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチド、
b.配列番号75〜84からなる群から選択される少なくとも一のアミノ酸配列からなり、配列番号20〜30、配列番号32〜35及び配列番号46〜52からなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも80%配列類似性を有する単離されたポリペプチド、
c.配列番号75〜84からなる群から選択される少なくとも一のアミノ酸配列からなり、
(1)配列番号22又は配列番号25のアミノ酸219〜アミノ酸238、
(2)配列番号23のアミノ酸231〜アミノ酸250、
(3)配列番号26〜29、配列番号33〜34及び配列番号50のいずれか一のアミノ酸347〜アミノ酸366、
(4)配列番号32のアミノ酸295〜アミノ酸314、
(5)配列番号46のアミノ酸189〜アミノ酸208、及び
(6)配列番号47のアミノ酸61〜アミノ酸80
からなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも80%配列類似性を有する単離されたポリペプチド、
d.タンパク質導入ドメインを含むポリペプチドに共有結合により結合したa〜cのいずれか一のポリペプチド、
e.タンパク質導入ドメインが配列番号85〜94からなる群から選択されるポリペプチドから構成されるdに規定されるポリペプチド、
f.タンパク質導入ドメインが配列番号85〜94からなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも80%配列類似性を有するポリペプチドから構成されるdに規定されるポリペプチド、及び
g.タンパク質導入ドメインがアルギニン、リジン又はヒスチジンの付加又は置換により、配列番号85〜94からなる群から選択されるポリペプチドとは異なるdに規定されるポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号31、配列番号36〜45及び配列番号55〜56からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項4】
発現制御配列に作動可能に連結した、請求項1及び2のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の発現ベクターにより形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項6】
ウイルスベクターである請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項7】
アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、トリポックスウイルスベクター、アビポックスウイルスベクター、鶏痘ウイルスベクター、カナリア痘ウイルスベクター、アルファウイルスベクター及びレンチウイルスベクターからなる群から選択されるウイルスベクターである請求項4に記載のベクター。
【請求項8】
薬学的に許容可能なキャリアからなる群から選択される第一の成分と、請求項3、4及び6のいずれか1項に記載の発現ベクターからなる群から選択される第二の成分とを含む組成物。
【請求項9】
配列番号48のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含む請求項1に記載の単離されたポリペプチド。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図3−9】
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【図3−10】
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【図3−11】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−183069(P2012−183069A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−111782(P2012−111782)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【分割の表示】特願2006−536883(P2006−536883)の分割
【原出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(506139417)イルミジェン バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】