説明

ウイルス感染を処置するための組成物および方法

【課題】感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおける免疫応答は誘導しないが、ヒトでない哺乳類における免疫応答を誘導するウイルスタンパク質の中和領域を同定する方法の提供。
【解決手段】(a)HIV株のリゼートからHIVタンパク質を抽出すること;
(b)該抽出物でヒトでない動物を免疫すること;
(c)該免疫した哺乳類から抗血清を得ること;
(d)ヒトHIV抗血清との競合イムノアッセイにおいて該抗血清を使用し、該抗血清によって認識されるが該ヒト抗血清中の抗体によっては認識されないHIVタンパク質の領域を同定すること;および
(e)該領域が中和または不活化領域である領域を決定すること
を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にウイルス感染の処置および防止に関する。特に、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の処置および診断に有用な抗体およびペプチドの製造のための組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染の診断、処置および防止は、多くの医学研究者の主たる興味の中心である。数多くのウイルス感染に対する診断、処置およびワクチン接種のための組成物および方法が知られているけれども、人間において検出することが困難で、それに対する処置またはワクチン接種の方法が有効でないことが知られている数多くのウイルスが依然として存在している。勿論、最も重要なウイルスのひとつがHIVである。
【0003】
後天性免疫不全症候群(AIDS)およびその前駆段階、AIDS関連症候群(ARC)およびリンパ節腫脹症候群(LAS)に関与し得る感染因子は、LAV、HTLV−III、ARV、および最近ではウイルス分類学の国際委員会(文献299)によって推奨されているHIVと呼ばれる向リンパ性レトロウイルスである。本明細書における命名法には、AIDSに関連する指定されたウイルスおよびその株に対するこれらの推奨を用いる。LAVおよびARV−2を含む株についての歴史的な言及は、現在では、それぞれHIV1 LAIおよびHIV1SF2と命名されている。
【0004】
HIVの広がりは、世界的流行の程度に達しているので、感染した人の処置、およびさらされる危険のある感染していない人への伝染の防止は、主要な関心事である。様々な治療上の戦略は、ウイルスのライフサイクルの種々の段階を標的としており、Mitsuya および Broder, 1987, Nature 325: 773に概説されている。ひとつの方法は、ウイルスに結合して、ウイルスの宿主への侵入を妨害することによるかまたは他の機構によってウイルスの複製を阻害する抗体を使用するものである。抗体の介入を受けやすいウイルスの成分が同定されると、ウイルスの感染性を中和するに十分な抗体反応性を生じさせて、HIV感染患者に免疫グロブリンまたは精製された抗体の形態で投与することができ、この受動免疫法がHIV感染の進行を変化または逆行させるであろうと期待された。さらに、改変してMHC相互作用を増強させた選択されたエピトープによる感染していない人のワクチン接種は、HIVへの曝露の結果としての感染からの保護をもたらすであろうと期待された。
【0005】
大部分のレトロウイルスのエンベロープ糖タンパク質は、感受性である細胞の表面上のレセプター分子と反応し、それによってある特定の宿主に対するウイルスの感染性が決定されると考えられている。これらのエンベロープ糖タンパク質に結合する抗体は、ウイルスと細胞レセプターとの相互作用をブロックすることができ、ウイルスの感染性を中和する。一般的に、The Molecular Biology of Tumor Viruses, 534 (J. Tooze編, 1973); および RNA Tumor Viruses, 226, 236 (R. Weiss ら編, 1982); Gonzalez-Scarano ら, 1982, Virology 120: 42 (La Crosse Virus); Matsuno および Inouye, 1983, Infect. Immun. 39: 155 (Neonatal Calf Diarrhea Virus); および Mathewsら, 1982, J. Immunol., 129 : 2763 (Encephalomyelitis Virus)。今日まで、HIVタンパク質/ペプチドでワクチン接種することによる、人間における保護的な免疫応答の誘導を目的とした治療方法は失敗に終わってきた。さらに、HIV感染した患者から回収された高い力価の中和抗体も、マウスにおいて産生したモノクローナル抗体も、AIDSおよび死につながるHIV感染の進行を変えることに成功しなかった。HIV感染の過程を変え得る免疫応答を誘導し得る、HIVにおける既存のものに代わる免疫学的標的を同定することが当分野において必要とされている。
【0006】
HIVの一般的構造は、感染した宿主細胞の膜からの出芽の過程の間にウイルスが獲得する脂質含有エンベロープで囲まれたリボヌクレオタンパク質コアの構造である。ウイルスがコードした糖タンパク質は、エンベロープ内に包まれ、外へ突き出ている。HIVのエンベロープタンパク質は、感染した細胞において、150,000〜160,000ダルトンの前駆分子(gp160)として最初に合成された後、細胞内で、外部糖タンパク質を生じる110,000〜120,000ダルトンのN末端断片(gp120)と、膜貫通エンベロープ糖タンパク質になる41,000〜46,000ダルトンのC末端断片(gp41)にプロセシングされる。
【0007】
上記の理由のために、HIVのgp120糖タンパク質は、ウイルスのライフサイクルを遮断する可能性を秘めた標的として多くの研究の対象とされてきた。HIV感染した人に由来する血清は in vitroでHIVを中和し、精製されたgp120に結合する抗体がこれら血清中に存在していることが示された(Robert-Guroffら, 1985, Nature 316: 72; Weiss ら, 1985, Nature 316:69; および Mathewsら, 1 986, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 83: 9709)。精製されたおよび組換えgp120を使用して、動物 (Robeyら, 1986, Proc. Nati. Acad. Sci. U.S.A., 83: 7023; Lasky ら, l986,Science, 233 : 209) およびヒト(zagury ら,1986,Nature 326 : 249)を免疫したとき、中和血清抗体の産生を刺激した。CD4レセプターへのgp120分子の結合もさらに示され、CD4レセプターのある特定のエピトープを認識するモノクローナル抗体がHIV結合、シンシチウム形成および感染性をブロックすることが示された。McDougalら,(1986,Science 231: 382)および Putneyら(1986, Science, 234: 1392)は、gp120分子のカルボキシ末端側の半分を含む組換え融合タンパク質による免疫後、動物において血清抗体の中和を誘導し、さらにエンベロープタンパク質のグリコシレーションが抗体応答の中和に必須ではないことを示した。
【0008】
HIV感染後間もなくして、ヒトの免疫系は、抗体産生および細胞が介在する免疫応答によりウイルスに応答する。レトロウイルスに対する免疫応答の概説は公開されている(Norley, S., および Kurth R., 1994: The Retroviridae, Vol E, J. A. Levy編, pp. 363-464, Plenum Press)。gp160、gp120、p66、p55、gp41、p32、p24およびp17を含む数多くのHIVタンパク質に特異的なヒト抗体が報告されている (Carlson,1988, J. Am. Med. Assoc. 206: 674)。ヒトにおけるHIVに対する最初の抗体応答は、p17およびp24に対するものであり、その後gp120/160、次いでgp41、p66/55、そして最後にp32に対するものになる(Lange 35ら 1986, Br. Med. J. 292: 228)。HIV感染がAIDSへ進行するにつれて、p17およびp24に対する抗体レベルは検出不可能な限界にまで著しく減少し、p17およびp24抗原血症にとってかわられる。しかしp32およびp55に対する抗体力価もまたより低い程度まで減少する(McDouga1ら 1987 J. Clin. Invest. 80:316)。しかし、gp160/120に対する抗体の実質的な量は、HIV感染の全過程を通じて持続する。HIV感染の初期の段階の間は、総免疫グロブリン量の上昇が観察され、抗体のこの量の増加はHIVに対して特異的であり、おもにgp120に対するものである(Amadoriら, 1988, C1in. Immunol. Immunopathol. 46: 342; Amadori ら, 1989, J. Immunol 143: 2146)。このHIV特異的高ガンマグロブリン血症に対する可能性ある機構は、Barker E.ら 1995: The Retroviridae Vol 4, J. A. Levy 編 pp 1-96 Plenum Press によって概説されている。HIV感染中に産生したこれらの抗体が標的とする機能的特性およびエピトープが記載されており、抗体が介在する中和を受けやすいエピトープが記載されている。これらの主要な標的エピトープは、おもにエンベロープタンパク質gp160(gp120/gp41)およびgagタンパク質p17に位置している。概説については、Levy, 1994 Am. Soc. Micro; Nixon ら, 1992 Immunol 76: 515を参照。HIVエンベロープタンパク質に対する中和抗体は同定されており、gp120の保存およびダイバージェント領域に結合する。これらには、CD4結合領域(Linsley ら 1988および Thali ら 1992);第2および第3可変ループ領域(Fung ら, 1992および Haigwood ら 1990);炭水化物部分(Benjouad ら, 1992および Feizi および Larkin, 1990)が位置する領域が含まれる。その他の中和部位は、gp41の外側部分およびp17の結合部位で同定されている(Changh ら, 1986)。初期の研究は、より好ましい臨床結果を導く中和抗体の存在を示唆した(Robert-Guroff ら, 1985)。しかしながら、これらの研究は、自己のHIV単離物に対してではなくHIVの実験室的な株に対して、高い中和許容範囲を有する選択された血清を用いていた(Homsy ら, 1990; Tremblay および Wainberg, 1990)。その後の研究により、自己抗体が、自己のHIV単離物に対して中和活性をほとんどかまたは全く有しないことが示された(Homsy ら, 1990)。中和抗体存在下での抗体介在の中和に対する感受性の欠失は、新たな抗体特異性が生じるので、セロコンバーション後(Arendrup ら, 1992)および感染の間中に出現するエスケープ突然変異体の発生に起因すると考えられている。HIV感染の結果として産生した中和抗体の臨床的関連性は明らかでない。しかし、HIVに感染した人におけるHIVに対する強力な免疫応答にもかかわらず、免疫機能不全の結果としてのAIDSへの進行および遂には死が勝ることは明らかである。したがって、処置のための新たな方法が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ヒトにおける免疫応答は誘導しないが、ヒトでない哺乳類における免疫応答を誘導するウイルスタンパク質の中和領域を同定し、これら領域と反応する抗体を製造することである。本発明の更なる目的は、タンパク質のこれら同定された中和領域およびそれと反応する抗体を、そのウイルスによって引き起こされた疾患の診断、処置および防止において使用することである。本発明の更なる目的は、以下に詳述する発明の記載から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ウイルスタンパク質の領域と反応して、ウイルスのライフサイクルにおける機能上必須の事象を中和および不活化する抗体を使用することによって、ウイルス感染を処置、診断および防止するための方法および組成物を提供する。抗体は、感染または環境曝露に遭遇したときに、ヒトにおける免疫応答は誘導せず、ヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するウイルスエピトープを認識する。
【0011】
非ヒト抗ウイルス抗体と反応し、ヒトの抗ウイルス抗体には反応しない選択されたエピトープを同定する。これらエピトープは、ヒトのタンパク質に対する分子的模擬によってヒトの免疫系の監視を逃れ、いくつかの場合では、抗原プロセシング細胞における酵素的開裂を受けやすいアミノ酸から構成されている。望ましいエピトープは、ヒトの酵素によって酵素的に開裂され、したがって免疫提示のためのプロセシングを受けない。
【0012】
これらエピトープを示すペプチドは合成することができ、場合により修飾、およびマクロ担体アジュバントにコンジュゲートして非ヒトにおける抗体応答を誘導することができる。好ましいアジュバントは、Propionibacterium aciniから抽出されたムラミルジペプチドの多重反復(multiple repeat)を含む微粒子である。
【0013】
本発明の抗体およびペプチドは、イムノアッセイ配置(configuration)において使用して種特異的なエピトープを同定し、ヒトの組織および体液中のウイルス抗原を定量する。好ましい態様においては、本発明は、ウイルスに感染した人の処置および診断に有用な、抗体およびペプチド組成物および方法を提供する。
好ましい態様では、目的とするウイルスはHIVである。
【0014】
本発明は、ウイルス感染を診断および中和するための新規組成物および方法を提供する。本発明を、目的とするウイルスがHIVである好ましい態様に焦点をあてて詳細に記載する。しかし、本発明の原理が、他のウイルスのタンパク質の中和領域を同定するために使用でき、そして他のウイルスによって引き起こされた感染も同様に診断、処置および防止するために使用できるそのようなタンパク質と反応する抗体を製造するために使用できることは理解される。
【0015】
ここでHIVに焦点を当てれば、本発明はHIV感染を中和し、HIV感染性、細胞から細胞への伝染、および感染した宿主におけるウイルス産生を阻止または実質的に阻害するための新規の組成物および方法を提供する。より具体的には、感染または環境に自然に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導することができないエピトープを含むHIVタンパク質配列を、以下に詳細に記載するように使用して、HIV感染性を中和し、感染したCD4リンパ球の殺傷を促進し、およびHIVのライフサイクルにおける必須の段階を不活化するために投与することができる抗体をヒトでない哺乳類において産生させる。「中和領域」なる語は、単独でまたは本発明の他の抗体と組み合わせてHIV感染を中和することができる抗体と反応する1またはそれ以上のエピトープを決めるアミノ酸断片を含むHIV、特にHIVタンパク質の部分を示す。中和を評価するための適当なアッセイはよく知られており、T細胞系におけるHIV感染の減少、HIVのエンベロープ糖タンパク質を有するVSV(HIV)偽性型(pseudo type)のプラーク形成単位の減少を測定するアッセイ、細胞融合阻害(syncytial inhibition)試験、およびビリオン−レセプター結合試験が含まれる。「不活化領域」なる語は、単独でまたは組み合わせて本発明の抗体と反応させたときにHIVのライフサイクルの機能的に重要な事象を不活化する1またはそれ以上のエピトープを含むHIVタンパク質の断片を表す。HIV感染したリンパ球の、抗体が介在する破壊を評価するための適当なアッセイはよく知られており、抗体依存性細胞細胞性傷害、補体介在性溶解、およびナチュラルキラー(NK)アッセイが含まれる。HIVのライフサイクルの必須の段階の抗体介在性不活化を測定するための適当なアッセイには、逆転写酵素の不活化を測定する、またはポリメラーゼおよびプロテアーゼ活性を測定する、またはウイルスRNAをリボヌクレアーゼ破壊にさらすヌクレオキャプシド透過性における抗体介在補体依存性の変化を評価するアッセイが含まれる。記載するように、中和活性は、免疫蛍光、免疫ブロット、酵素結合イムノアッセイ、およびラジオイムノアッセイなどの免疫化学分析において、抗体反応性と比較することができる。
【0016】
本発明は、HIVのライフサイクルにおいて機能的に重要でありヒトにおいて免疫原性でないエピトープを、ヒト以外の選択された哺乳類の種で産生させた抗体を用いて同定し、特徴づけることができるという発見に基づく。さらに、これら領域に対してヒトにおける免疫学的な非応答性は、分子の模倣性の機能、必須のMHC HLAクラス1およびHLAクラス2関連事象による抗原提示を含むMHC関連事象の欠失であるということを発見した。分子の模倣性に関しては、正常な環境でエピトープは自己として認識され、応答されない。抗原提示におけるMHC関連事象の欠失に関しては、いくつかの段階が関与しており、いずれか1つの段階の機能不全が、抗原に対する免疫学的応答の欠失を引き起こし得る。
【0017】
多重複エピトープ(multiple overlapping epitope)を含むペプチド領域およびこれらのエピトープに対する抗体が製造され、HIVのライフサイクルにおける必須の段階をin vitroで中和および不活化することが示されている。さらに、HIV感染したAIDS患者がこれらペプチド領域に対する抗体で処置されており、全組織培養感染価(TCID)によって測定される血液由来(born)感染性の迅速な減少をもたらしている。これら抗体による慢性のAIDS患者の処置は、体重の増加、日和見感染の解決、発生率および感染の重篤度および医師の往診の減少およびHIVに関連する神経障害の解決を含む、顕著な臨床上の改善をもたらした。患者はさらに、HIV−RNAの減少、CD4数の増加、CD8数の増加およびCD4およびCD8数と機能の改善に関連したサイトカイン系の回復によって明らかであるように、免疫学的な回復を示した。
【0018】
エピトープの同定および抗体の製造
大多数の免疫反応は免疫優位エピトープを標的とする。HIVエピトープは、最も頻繁に同定されており、HIVに対する抗血清、HIVエピトープ標的に対する細胞毒性Tリンパ球反応性およびHIVエピトープのヘルパーリンパ球抗原提示を用いる様々な免疫学的方法によってマッピングされている。HIV配列を模倣した既知の配列の合成ペプチドを、これら観察結果を確認するために、よく知られたアッセイを用い競合的にまたは非競合的に使用することができる。免疫系の刺激は、免疫応答の増強または抑制のいずれかにつながり得ると理解されている。これを支配する因子には、
A.免疫原によって刺激されるリンパ球の副次集団(サプレッサー対ヘルパー)
B.最初に免疫源と接触するそこに存在している細胞集団を含む微視的環境
C.エフェクター細胞が免疫原と接触する時点で微視的環境に存在しているサイトカインのタイプ
D.エフェクター細胞が免疫原と接触した後に誘導されるサイトカインのタイプ
E.免疫原の構造的および生化学的構成
F.免疫原のアミノ酸配列と微視的環境におけるプロテアーゼによるプロテアーゼ分解に対するその感受性
【0019】
予備実験から、ヒトにおける疾患過程、特にAIDSを含む全ての段階におけるHIVによる感染の処置または軽減において受動免疫治療の適用を意図する抗体の製造に使用するための、あるタンパク質およびペプチドの潜在的価値の決定において、以下の特性が根本的に重要であると決定した:
A.以下の場合を除き、免疫原は、受動免疫治療において使用するための抗体を製造するために使用するときに、ヒトの細胞および組織において発現するエピトープ決定基を欠いていなければならない。
1.抗原の分布が抗体にとって隔離されたおよび/または利用できない位置に制限されている。
2.発生サイクルの間の特定の時点において抗体の使用が可能な発生段階の間に抗原が発現する、このとき抗原は利用できない。
3.宿主内のエピトープの位置が致命的な構造に隣接していない。
4.宿主細胞における抗原の分布が、傷害を生じるに必要な密度よりも低い密度であるが、選択的な標的化をもたらす所望の標的においては好都合である。
5.正常な割合に対する標的が十分に異なっており、所望の標的への抗体送達に好都合でなければならない。
B.抗原提示細胞に送達されるペプチド反復の数が、免疫応答の規模に直接影響を及ぼす。
C.エピトープが抗体を中和し標的化を阻止する濃度で体液中に存在していてはならない。
【0020】
今日まで、ワクチン開発は、ヒトの免疫系がそれに対して応答する標的に対する応答を増幅するためのよりよい技術を設計することに焦点が当てられてきたが、受動免疫治療は要領を得ない結果に終わってきた。従来達成できなかった、免疫反応をもたらす抗原をHIVへ送達する新たな形態とともに、人間において免疫事象を誘導しない、既存のものに代わるHIVの標的を本明細書に開示する。本明細書に開示する方法は、HIVおよびAIDSの処置に焦点を当てているが、本発明の製剤が広い応用範囲を有するということは理解されよう。ヤギにおける抗体応答は、HIVの鍵となる標的に対する抗体産生により、そしてAIDSの臨床的改善をもたらす処置により本発明の有用性を実証している。この技術は、ワクチン開発において広い応用範囲を有する。
【0021】
抗原投与に対する好結果の免疫誘導は、MHC事象における抗原提示細胞(APC)による多重エピトープ反復の提示を必要とする。最も免疫原性であるエピトープは、一方の末端における疎水性アミノ酸、他方の末端における親水性アミノ酸を有する両親媒性の形態をとっており、両親媒性らせんの形成に矛盾しないアミノ酸を含んでいる。すなわち、それらは、プロリンのようならせんを破壊するアミノ酸を欠いており、炭水化物を欠いている。微視的環境におけるプロテアーゼによるプロテアーゼ分解に感受性であるアミノ酸を欠く配列は、特に望ましい。
【0022】
機能上重要性を有するHIVの免疫学的標的を同定するために、人間以外の動物種におけるHIV関連タンパク質の免疫原性領域を決定した。ヤギを、炭水化物基を除去したまたは除去していない精製したHIVリゼートで免疫した。HIVタンパク質からの炭水化物基の除去は、そのタンパク質に対する免疫学的応答にはほとんど影響しないが、隠れたエピトープを曝露させることができる。商業的に得られたHIVリゼートをさらに精製して、ヒトHLAクラスI抗原、HLAクラスII抗原、およびβ−2−ミクログロブリンを含む組織培養由来のタンパク質を除去した。免疫後、ヤギ由来の抗血清を競合イムノアッセイ法を用いて試験して、HIV感染した患者からプールした抗体によって認識されないHIVペプチドを同定した。ヒトHIV抗血清のプールを高い中和活性とウエスタンブロット活性を有する選択された患者の抗血清から調製し、標準的な競合イムノアッセイ法を用いる競合抗体として用いた。ヤギ抗体の広範なスペクトルが同定され、ヒト抗HIV抗血清プールによって認識されるものと免疫学的に別個のHIV決定基と反応した。
【0023】
当業者は、他の動物種を使用してこれらエピトープに対する抗体を産生させること、そしてこのような抗体がADCCおよび補体が介在する反応において機能し得ることを認識する。抗体産生のための他の適当な動物種には、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシおよびマウスが含まれるがこれらに限られない。
【0024】
抗HIV抗体のエピトープ反応性は、HIV1SF2の直鎖状アミノ酸配列に存在する12マーペプチドを使用して特徴付けた。このサイズのペプチドは抗体とよく反応し、容易に合成でき、高度に精製された形態で調製することができる。ペプチドは、Purification Systems, Inc.によって合成され、そこから購入した。その合成ペプチドを、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗HIV抗体と混合し、HIVで被覆したマイクロタイタ−ウェル2組のそれぞれに加えた。1組はヒトIgG抗HIVでブロックし、もう1組はブロックしなかった。ヒト抗HIVでブロックしたHIVタンパク質部位に対する、ヤギ抗HIV結合のペプチド阻害の百分率を測定した。
【0025】
特定の合成ペプチドによって結合の阻害が観察された場合、もとの阻害ペプチドのアミノ酸配列と重複するアミノ酸配列を有する更なるペプチドを合成してエピトープ配列をさらに明確に決定した。
【0026】
ヤギ抗HIV IgGによって認識されヒト抗HIV IgGによって認識されないHIVタンパク質のエピトープの位置をさらに調べ、同定マーカーとしてHIVペプチドHRPコンジュゲートを用いて確認した。このアッセイでは、HIVタンパク質をマイクロタイタ−プレートウェルまたは精密なポリスチレンビーズなどの支持体に吸着させた。HIV1SF2の直鎖状アミノ酸配列に位置する12マーペプチドを、西洋ワサビペルオキシダーゼに共有結合させた。ヒトおよびヤギ抗HIV反応性を、支持体およびペルオキシダーゼに共有結合したペプチドエピトープに吸着させた天然のエピトープを架橋するヒトおよびヤギ由来の抗HIV反応性について独立に測定した。この方法により、実施例8に詳述するように合成ペプチドに含まれる正確なエピトープのみが認識された。
【0027】
ヒトのタンパク質を有意に模擬しているペプチドが同定されたら、HIVのライフサイクルにおいて機能的な重要性を有するそのペプチドの配列を決定する。これは、以下に記載し実施例8で説明するように、ぺプチド候補に対する抗体を生じさせた後、その抗体のHIV感染性とウイルス中和に対する効果について試験することによって行う。
【0028】
上に記載したように、数多くの特異的なエピトープ領域が同定されており、特記しない限り、9つの領域をHIV1SF2配列に関して以下に詳細に記載する。HIV1SF2に関して、以下および本願を通して記載するアミノ酸残基の命名法は、ロス・アラモス・データ・バンク(エイズウイルス配列データベース、Los Alamos National Laboratories, Theoretical Division, Los Alamos, N.M. 87545)から得られるものである。HIV2NZに関して、以下および本願を通して記載するアミノ酸残基の命名法は、ジュネーブ大学病院およびジュネーブ大学の Ex Pasy World Wide Web Molecular Biology Server、および Weizman Instutute, IsraelのCompugen Ltd.および Akira Ohyama, BioScience Systems Department, Mitsuey Knowledge Industry Co., Ltd.,Tokyo, Japan を通して入手できる BioAcceleratorから得られる。当業者は、様々な単離物に由来する関連したタンパク質内のそれらの位置に基づいて、他のHIV単離物に由来する更なる同族領域(「ホモローグ」)を同定することができることを認識するであろう。実際問題として、そのようなホモローグは、以下のように、HIV1SF2配列データを参照することにより同定することができる。
(a)HIV単離物のアミノ酸配列とHIV1SF2を並べて、2つの配列間の最大の相同性を得ることができ、一般に配列間で少なくとも75%が同一である;
(b)アミノ酸配列を、HIV1SF2タンパク質内の対応する位置に並べたら、模擬されたまたはホモローガスな配列に対する抗体反応性の保持によって定義される、HIV1SF2に対する免疫学的な模擬、類似性または同一性が示される。
【0029】
同定された他のHIV単離物に由来するペプチドおよびそのアミノ酸配列は、HIV1SF2の領域に対応して典型的に免疫学的に模擬的であろう。
【0030】
鍵となるペプチドを同定するこの方法は、未だ発見されていないHIV株に適用することができる。例えば、HIVの新たな株が同定されたとき、それらのエンベロープおよびコアアミノ酸配列をHIV1SF2のアミノ酸配列と並べて、その株に関する最大の配列相同性を得ることができる。配列を並べる方法は、当業者に知られている。配列を並べることにおいて、できるだけ大きなシステイン残基間の相同性が維持されることが望ましい。本明細書に特に開示したペプチドの位置に対応する新たなHIV株または種のアミノ酸配列を合成して、本発明にしたがって使用することができる。
【0031】
そのような配列内に含まれるエピトープがHIVのすべての株または種に対する抗体と交差反応することは、本発明にとって必要ではない。1つの種または血清群を他のものと区別する免疫学的エピトープを含むペプチドは、特定の種または血清群を同定することにおいて有用であり、HIVの1またはそれ以上の種または血清群によって感染した人を同定することを助けるであろう。それらを、治療レジメにおいてホモローガスな領域か別の中和領域に由来する他のペプチドと組み合わせても有用であろう。
【0032】
本発明のアミノ酸配列は、約5〜約50のアミノ酸を典型的に含み、感染または周囲との接触に遭遇したときに、ヒトにおける保護的な免疫応答は誘導しないが、ヒトでない動物においては応答を誘導する、HIVタンパク質上に位置するあるエピトープ領域または複数のエピトープ領域を含んでいる。好ましくは、配列は、約5〜35個のアミノ酸を含む。所望のアミノ酸配列を含む合成ペプチドまたは天然HIVの処理されたリゼートを使用して、それに対して免疫学的に応答する動物を免疫し、HIV感染の処置において治療的価値を有する抗体を製造する。
【0033】
目的のアミノ酸配列またはペプチドは、ヒトおよび他のタンパク質におけるエピトープの模擬により、ヒトにおける免疫応答を誘導しない。特に興味があるのは、HIVタンパク質およびヒトアルファフェトプロテイン、アスパルチルプロテアーゼ、デオキシウリシン5'−三リン酸ヌクレオチドヒドロラーゼ、好酸球陽イオン性タンパク質、好酸球由来ニューロトキシンおよびリボヌクレアーゼ4前駆体および Bangaris Naja、Dendoaspis、Psudechis、または Androctonus Centruoides由来のニューロトキシンによって模擬されたペプチドエピトープ領域の間で共有されるペプチドエピトープである。
【0034】
以下の考察において、そのタンパク質に関する標準的な識別用略号を用いて数多くのヒトのタンパク質およびニューロトキシンについて言及する。以下の記載は、そのタンパク質が対応するそのタンパク質の略号およびフルネームを記載した表である。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0035】
上で述べた高度に保存されたエピトープ領域の9つのアミノ酸配列を以下に記載する。これら領域のうち3つがエンベロープ糖タンパク質gp120(2つの標的)およびgp41(1つの標的)に存在し、1つは逆転写酵素ヘテロダイマーp66/55に存在し、1つはプロテアーゼp10に存在している。更なる標的は、p17(2つの標的)、p24およびp7の部位でGag前駆体(p55/Gag)に存在している。
【0036】
HIV1SF2gr120の1つのエピトープ領域は、HIV1のアミノ酸残基4〜27に存在し、もうひとつの領域はアミノ酸残基54〜76に存在している。gp120に位置するエピトープ領域に対する抗体は、相乗的に機能してgp41からのgp120の遊離を引き起こす。gp41からのgp120の遊離は、抗体用量依存的であり、HIV感染性を測定するTCIDなどの中和アッセイによって実証することができる。
【0037】
HIV2NZのgp120の領域を中和または不活化するエピトープ領域もまた決定されている。HIV2NZエンベロープ糖タンパク質gp120の配列は、マッピングされており、アミノ酸残基約7〜43がHIV1SF2gp120およびある種のヒトタンパク質の配列を模擬する領域である。その領域を標的とする抗体は、gp41からのHIV2gp120の解離をもたらし、それは感染性の減少と相関している。
【0038】
HIV1SF2に関する第3のHIVエンベロープ糖タンパク質標的は、gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜541に位置していた。補体の存在下でこの領域を標的とする抗体は、HIVエンベロープタンパク質の抗体依存補体介在性の溶解とHIV感染性の顕著な減少をもたらす。
【0039】
エンベロープ糖タンパク質エピトープ領域に加えて、目的とするもうひとつのHIV1エピトープ領域には、逆転写酵素ヘテロダイマーのp66/55アミノ酸残基254〜295が含まれる。この領域を標的とする抗体は、逆転写酵素活性の抗体用量依存性の減少をもたらす。さらに目的とするものは、プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜94を包含するエピトープ領域である。この領域を標的とする抗体は、プロテアーゼ活性の抗体用量依存性の減少をもたらす。
【0040】
逆転写酵素およびプロテアーゼにおける標的は、酵素活性部位に隣接する保存領域に存在し、その突然変異とその結果としての競合阻害剤に対する耐性についてよく知られている。抗体介在性の不活化は、二次的な活性の損失を伴う酵素の立体的または立体配置的変化に起因する。不活化のこの方法は独立に機能し、酵素活性部位の突然変異に影響を受けず、不可逆的である。
【0041】
Gag遺伝子内の3つのエピトープ領域もまた目的とする。具体的には、Gag遺伝子タンパク質p24のアミノ酸残基166〜181、Gag遺伝子タンパク質p17のアミノ酸残基2〜23の第1の標的およびアミノ酸残基89〜122の第2の標的、およびGag遺伝子タンパク質p7のアミノ酸残基390〜410および438〜443が本発明において有用である。これら領域を標的とする抗体は、上記した抗体によるHIVエンベロープの溶解後のヌクレオキャプシドの破壊をもたらす。この標的化はついには、HIV RNAを血漿RNAse破壊にさらすことになる。さらに、p17上の標的は、出芽後、感染したリンパ球の表面に曝露される。これは、感染したリンパ球のADCC溶解のための更なる標的を提供する。
【0042】
HIV感染した患者由来の抗体によって認識されないが、ヤギ抗HIV抗体によって認識される少なくとも1つのエピトープを含む、上記した具体的なペプチドの1つは、以下の配列を有するHIV1SF2エンベロープgp120タンパク質のアミノ酸残基4〜27を含むペプチドおよびその直鎖状のエピトープを含有する部分配列である。
【数1】

このペプチドは、ヒトタンパク質、FOL1、NTCR、PIP5、PSS1、KLTK、MC5R、ECP、INIU、INI9、VPRT、CD69、MYSE、RNKD、ACHE、TCO2、LCAT、MAG1、MAG2、MAG3 および LYOXを模擬する。
【0043】
HIV1SF2gp120エンベロープ糖タンパク質由来の第2のエピトープ領域はアミノ酸残基54〜76に存在し、以下の配列を有する。
【数2】

このペプチドは、タンパク質 CYRB および SYV を模擬する。
【0044】
HIV1SF2エンベロープにおける目的の第3のエピトープ領域は、糖タンパク質gp41のアミノ酸残基502番〜541番に存在している。このペプチドは、以下のアミノ酸配列を有している。
【数3】

このペプチドは、ヒトタンパク質 CYPC、TYK2、ACHE、NTCF、NTCR、CD81、41BL、NIDO、GSHR、CO02 および TCO2 を模擬する。
【0045】
別の具体的な態様では、目的のエピトープ領域は、HIV1SF2Gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜23の領域である。このペプチドは以下の配列を有する。
【数4】

このペプチドは、ヒトタンパク質 TFPI、PA2M、BLSA、ECP および FETA、およびNXS1および NAJAT等のある特定のニューロトキシンを模擬する。このペプチドは、宿主細胞膜に結合し、細胞の翻訳タンパク質Srcを模擬する機能を標的とする疎水性配列を有する。
【0046】
HIV1SF2p17の第2の標的は、アミノ酸残基89〜122に存在している。このペプチドは、以下の配列を有している。
【数5】

このペプチドは、FETA および TRICを模擬する。
【0047】
別の目的とするペプチドは、Gag遺伝子タンパク質p24のアミノ酸残基166〜181のペプチドおよびそのなかのエピトープを含有する部分配列である。このペプチドは以下の配列を有する。
【数6】

このペプチドは、ヒトタンパク質 FETA および TRFL を模擬する。
【0048】
第3の目的とするGag遺伝子タンパク質エピトープ領域は、Gag遺伝子タンパク質p7のアミノ酸残基390〜410および438〜443を有するペプチドおよびそのエピトープ含有部分配列である。このペプチドは以下の配列を有する。
【数7】

このペプチドは、ヒト FETA および RNA結合タンパク質を模擬する。このペプチドは、ウイルスRNAに相互作用し結合する亜鉛結合領域を含んでいる。この領域に対する抗体は、感染したCD4リンパ球の溶解後のエンベロープをもたない未成熟HIVの除去を促進する。
【0049】
さらにエピトープ領域として目的とするものは、プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜94のペプチドおよびそのエピトープ含有部分配列である。このペプチドは以下の配列を有する。
【数8】

このペプチドは、ヒトタンパク質RENI、BLSA、VPRT および CATD 模擬する。この配列に対する抗体は、HIVのプロテアーゼ活性を阻害する。
【0050】
本発明において有用な更なる具体的な配列は、HIV1逆転写酵素ヘテロダイマーp66/55のアミノ酸残基254〜295を含む配列である。このペプチドは以下の配列を有する。
【数9】

このペプチドは、ヒトタンパク質 POL1 および ECP を模擬する。
【0051】
上記のように、HIVのその他の株もまた本発明に従ってペプチドおよび抗体を得るために使用することができる。他の株に由来する有用なペプチドは、別の株の配列をHIV1SF2またはHIV2NZの配列に対して比較し並べ、HIV1SF2またはHIV2NZについて同定された目的のエピトープに対してホモローガスな配列の部分を見つけることによって決定することができる。
【0052】
本発明の方法によって同定されたHIV2NZにおける目的とする配列は、env gp120オープンリシングフレームに存在し、アミノ酸残基7番〜43番に存在する。このペプチドは、以下の配列を有する。
【数10】

このペプチドは、ヒトタンパク質 IL9、SRE1、NRM1、LBP、NOL1、S5A2、LMA1、LECH、LFA3、KPLC、FETA、3BH2、3BH1、INR2 および EV2B を模擬する。
【0053】
例えば、所望のアミノ酸配列が同定されたら、これら配列を認識する抗体が得られる。このような抗体は、HIVリゼート、合成ペプチド、細菌の融合タンパク質および所望のエピトープを含む系統進化的に関連しない供給源に由来するタンパク質/ペプチドから単離したペプチドを含むタンパク質を用いて得ることができる。
【0054】
ウイルスのリゼートを使用する場合は、HIVの単一の株のタンパク質リゼートを使用することができるか、または2またはそれ以上の異なる株のリゼートの混合物を使用することができる。リゼートの混合物を使用する場合は、混合物は、異なるHIV1株または少なくとも1つのHIV1株と少なくとも1つのHIV2株の組み合わせのリゼートを含むことができる。好ましい混合物は、HIV1BAL、HIV1MN、およびHIV2NZ由来のリゼートの組み合わせである。
【0055】
ウイルスのリゼートは、最初に処理してHIVタンパク質由来の脂質および他の不純物を除去する。次いでHIVタンパク質混合物を処理してヒト白血球抗原(HLA)クラスIおよびII抗原を含む培養細胞由来の汚染物質を除去する。これら抗原を除去する方法は、当分野において知られており、モノクローナル抗HLAクラスIおよび抗HLAクラスII抗体を使用することおよび免疫アフィニティー法が含まれる。1つの方法を以下の実施例3に詳細に記載する。
【0056】
さらに、HIVの炭水化物を除去しなければならないことが分かっている。さもなければ、系統進化的に保存された炭水化物決定基が、HIVタンパク質を動物に投与したときに免疫応答を刺激し、ヒトの組織に対して細胞毒性であろう抗体の産生をもたらす。タンパク質を当業者に知られた酵素で処理してPGNase、ノイロミニダーゼ、およびグリコシダーゼを含む炭水化物を除去する。そのような方法の1つを実施例3に詳細に記載する。
【0057】
次いで、処理したHIVタンパク質の混合物を使用して動物を免疫し、目的のペプチドに対する抗体を産生させることができる。望ましくは、混合物は、大体等量の目的のペプチドまたはエピトープ領域を含むタンパク質を含む。すなわち、好ましくは、それらは、約1:1の割合で提供され、いずれかの2つのペプチド間のモル比における差は、約10:1、好ましくは3:1よりは大きくない。
【0058】
別法として、合成ペプチドを免疫原として使用することができる。合成ペプチドを使用する場合、いずれかの所望のペプチドのアミノ酸配列は、例えば、置換されたまたは先端が切り取られた形態のアミノ酸配列を用いることによって改変し得る。
【0059】
アミノ酸置換を行って、特定のアミノ酸部分での抗原プロセシングの間に起こり得る予想される酵素的開裂を回避し、両親媒性のコンフォメーションを、必要なMHC関連抗原提示に適うようにし、エピトープ境界でまたはその近くで開裂を起こすHLA提示に十分な長さを与えるようにすることができる。先端が切り取られた配列は、MHCクラスIおよびクラスII抗原提示モチーフによって予想される、エピトープの長さの要求に対する適合性を維持するよう選択する。望ましいアミノ酸置換についてのより詳細な指針を、合成ペプチドに関する節の一部として以下に記載する。置換されたおよび先端が切り取られた配列に加えて、固相の支持体および巨大分子担体への結合を助長する目的で、更なるアミノ酸を選択したエピトープ領域の一端に付加した延長された配列を調製することができる。
【0060】
例として、上記のHIV1SF2gp41のアミノ酸残基502〜541に存在する有用な先端が切り取られたペプチドの配列には、以下のアミノ酸残基512〜531の配列:
【数11】

およびさらにアミノ酸残基518〜アミノ酸残基527のアミノ酸配列:
【数12】

を有するペプチドが含まれる。
【0061】
別の特に有用な先端が切り取られたペプチドは、HIV2NZのgp120のアミノ酸7〜43のペプチドの先端が切り取られた配列であり、以下の配列を有する。
【数13】

【0062】
ペプチドは、広く様々な方法で調製することができる。ペプチドは、その比較的小さなサイズのために、慣用の技術にしたがって溶液中でまたは固体の支持体において合成することができる。様々な自動化された合成装置が今日商業的に入手可能であり既知のプロトコルにしたがって使用することができる。例えば、Stewart および Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 第2版, Pierce Chemical Co., 1984; および Tam ら, J, Am Chem. Soc. (1983)105:6442参照。
【0063】
別法として、ハイブリッドDNA技術を使用することができる。その方法では、ポリペプチドまたはその実質的に相補的な鎖をコードする一本鎖を用いることによって合成遺伝子を調製し、その一本鎖が重複しアニーリング培地中でハイブリダイズするよう一緒にし得る。次いで、ハイブリダイズした鎖を連結して完全な遺伝子を形成させることができ、そして、適当な末端の選択によって、遺伝子を、その多くが今日容易に入手可能である発現ベクターに挿入することができる。例えば、Maniatis ら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, CSH, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982参照。または、ペプチドをコードしているウイルスゲノムの領域を慣用の組換えDNA技術によってクローニングし、原核または真核発現系において発現させて所望のペプチドを製造することができる。
【0064】
好ましくは、HIV感染のライフサイクルにおける必須の段階を中和および不活化するであろう抗体の産生によって、抗体産生Bリンパ球がそれに対して応答し得る所望のエピトープに免疫原は富んでいるであろう。本明細書で使用する「富んでいる」なる語は、所望のエピトープがHIVタンパク質の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、および最も好ましくは約95%を構成していることを意味する。より具体的には、破壊されたウイルスリゼートまたは抽出物を含有する溶液、または模擬エピトープを含む生物学的に発現した組換えタンパク質、または破壊された発現ベクターまたはタンパク質の上清を、所望に応じ、たとえばポリアクリルアミドゲル電気泳動などの精製法を使用して、そのようなタンパク質に富ませることができる。イムノアフィニティー精製、例えばモノスペシフィックなアフィニティー精製されたポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用するアフィニティー精製は、所望のHIVエピトープを含むタンパク質およびペプチドの精製にとって好ましい便利な方法である。免疫原として使用するためにペプチドが溶液から精製される程度は、幅広く変化し得る。すなわち、約50%、典型的には少なくとも75%〜95%、望ましくは95%〜99%および、最も望ましくは完全に均一である。
【0065】
所望のエピトープに対する抗体を得るために、上述のように処理して炭水化物およびHLA抗原を除去した、目的のペプチドまたはそれを含むHIVタンパク質で動物を免疫する。免疫プロトコルはよく知られており、効果を維持したままでかなり変更することができる。Colco, Current Protocols in Immunology, John Wiley and Sons, Inc. 1995参照。タンパク質および/またはペプチドは、免疫のための適当な生理学的担体中で懸濁または希釈することができる。適当な担体は、滅菌水および0.9%生理食塩水を含む、ペプチドの免疫原性を送達および/または増強するための、いずれかの生物学的に適合し得る非毒性の物質である。
【0066】
別法として、免疫原として使用する前にペプチドを担体分子に結合することができる。例えば、以下に1つの好ましい方法をより詳細に議論するが、この方法はタンパク質およびその断片を、ムラミルジペプチド(MDP)などの糖タンパク質の多重反復に結合して、典型的には直径1ミクロン未満、好ましくは0.2ミクロン未満の微粒子を形成することができる。次いで、その微粒子を、注射用の医薬用担体中に分散させることができる。この方法により、所望の免疫応答を誘導するために使用することができる高密度のペプチドが達成される。担体の選択は、投与経路および応答に依存して幅広く変化するであろう。慣用の、よく知られた滅菌技術によって、組成物を滅菌することができる。ペプチドは、経口または非経口の経路で投与することができる。好ましいのは後者である。
【0067】
所望のエピトープに富んでいる免疫原性的な量の抗原調製物を、通常1μg〜20mg/kg(宿主の体重)の範囲の濃度で注射する。例えば筋肉内、腹腔内、皮下、静脈内などの注射によって投与することができる。一回または複数回、通常1週間に1〜4回投与することができる。
【0068】
免疫された動物を、所望のエピトープに対する抗体の産生について監視する。高アフィニティー補体結合性IgG抗体は、受動免疫治療に好ましく、完全なIgG抗体またはFv、Fab、F(ab')などの断片として使用することができる。より大きな組織透過性が望ましい場合には、抗体断片が好ましいであろう。抗体および断片は、単独でまたは毒性物質もしくは放射性同位体とのコンジュゲートとして得ることができる。所望の抗体応答が達成されたら、血液を、例えば静脈穿刺、心臓穿刺、または血漿浄化によって集める。例えば塩析、イオン交換クロマトグラフィー、サイズクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーを含む慣用の方法にしたがって、抗体を複合血清または血漿混合物から精製する。組み合わせた方法がしばしば使用される。イムノアフィニティークロマトグラフィーが好ましい方法である。
【0069】
ヒトでない動物に由来する抗体を投与されたヒトにおける可能性のある抗原性を回避するために組換え抗体を構築することができる。組換え抗体の1つのタイプはキメラ抗体であり、これは免疫グロブリン分子の抗原結合断片(可変領域)が、ペプチド結合によって、ヒトによって外来として認識されない別のタンパク質の少なくとも一部、例えばヒト免疫グロブリン分子の定常部分などに連結している。これは、動物の可変領域エキソンを、ヒトのカッパまたはガンマ定常領域エキソンと融合することによって達成することができる。例えば、参考のためその開示をここに引用するPCT 86/01533、EP171496、およびEP173494に記載されている技術のような、様々な技術が当業者に知られている。組換え抗体の好ましい種類は、CDR−グラフト抗体である。
【0070】
医薬製剤とその使用
感染性を中和し、感染したCD4リンパ球を殺傷し、およびHIVのライフサイクルの機能的に重要な事象を不活化する本発明の抗体を、医薬組成物の成分として組み込む。組成物は、治療的または予防的用量の本発明の抗体の少なくとも1つ、望ましくは抗体カクテルを薬学的に許容し得る担体とともに含む。薬学的に許容し得る担体は、いずれかの適合する、抗体の患者への送達に適当な非毒性物質である。即ち、本発明は、許容し得る担体、好ましくは水性担体中に溶解した抗体の溶液を含む非経口投与のための組成物を提供する。例えば、水、緩衝化された水、0.4%生理食塩水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシンなど、様々な水性担体を使用することができる。これらの溶液は滅菌されており、一般に粒状物を含まない。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要に応じ薬学的に許容し得る補助物質、例えば pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤などを含むことができる。例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等が使用できる。これら製剤中の抗体の濃度は、典型的には約0.1mg/mL未満〜150または200mg/mL、好ましくは約1mg/mL〜約20mg/mLの間で変えることができ、好ましくは選択された特定の投与形式に関して主として流体の体積、粘度などに基づいて選択する。特定の抗体または抗体カクテルの濃度の決定は、当業者の能力の範囲内である。例えば、静脈注入のための典型的な医薬組成物を、滅菌リンゲル液250mLおよび抗体100〜200mgを含むよう製造することができる。筋肉内注射のための組成物は、1mLの滅菌緩衝水と約20〜約50mgの抗体を含むよう製造することができる。非経口的に投与可能な組成物の実際の製造方法は、当業者に知られているかまたは明らかであろう。また、例えば、本明細書の一部を構成する Remington's Pharmaceutical Science, 15版, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1980) により詳細に記載されている。このような組成物は、例えば、HIVのある株に特異的である、またはHIV株の大部分およびより好ましくはすべてによって発現する単一のタンパク質または糖タンパク質に特異的である、単一の抗体を含有することができる。別法として、医薬組成物に1以上の抗体を含有させて「カクテル」を形成することができる。例えば、HIVの様々なタンパク質および株に対する抗体を含有するカクテルは、HIVの大多数の臨床的単離物に対する治療的または予防的活性を有する万能的な製品であろう。そのカクテルは、例えば、HIVエンベロープのタンパク質または糖タンパク質上のエピトープに結合する抗体を含むことができ、または、HIV1SF2Envタンパク質gp160、gp120およびgp41;Gagタンパク質p7、p17およびp24;逆転写酵素ヘテロダイマーp66/55およびプロテアーゼp10、またはそれらのサブグループ上にある、上で定義したエピトープ部位に対する抗体の組み合わせを含むことができ、よってHIVのライフサイクルおいてきわめて重要である一連のエピトープを中和することができる。勿論、HIVタンパク質の他の中和または不活化領域におけるエピトープ部位に対する抗体もまた使用することができる。
【0071】
例えば、結合、細胞侵入、転写、翻訳、アッセンブリー、形質膜に対する成熟ビリオンの標的化およびビリオンの放出を改変する抗体は、HIVライフサイクルの事象を妨害し得る。複数の必須のHIVタンパク質を不活化するために、抗体カクテルがより頻繁に用いられるであろう。このことは、ビリオンが外側のエンベロープを欠いているが、飲作用または感染などの他の機構によって細胞侵入を獲得するなら感染性である恐れのある場合において特に治療上の利点となるであろう。種々の抗体成分のモル比は、一般に10倍以上、より一般的には5倍以上は違わないであろう。通常は、他の抗体成分のそれぞれに対し約1:1〜3のモル比であろう。
【0072】
上記9つの具体的なペプチドに対する抗体に関して、望ましい抗体カクテルは、2つのエンベロープgp120ペプチドとgp41ペプチドに対する抗体を含む。より望ましくは、カクテルは、これら3つのエピトープ領域に対する抗体に加え、プロテアーゼP10エピトープ領域に対する抗体に対する抗体を含む。さらにより望ましくは、カクテルはこれら4つのエピトープ領域に対する抗体に加え、他の5つの列挙されたエピトープ領域のうちの少なくとも1つに対する抗体を含む。最も好ましい態様では、カクテルは、9つすべてのエピトープ領域に対する抗体を含む。
【0073】
本発明の抗体および抗体カクテルは、独立にまたは他の抗レトロウイルス剤と組み合わせて投与することができる。他の抗レトロウイルス剤、および特に抗HIV剤の現在の開発段階は、Mitsuya ら, Nature 325:773-778, 1987に概説されている。
【0074】
本発明の抗体およびペプチドは、抗体活性を保つために知られている様々な温度、例えば−70℃、−40℃、−20℃、および0〜4℃の液体の形態で保存するか、または保存のために凍結乾燥し、使用する前に適当な担体中で再構成することができる。この技術は、慣用の免疫グロブリン、精製された抗体、およびタンパク質からなる免疫原、糖タンパク質およびペプチドには効果的であることが証明されている。当分野で知られている凍結乾燥および再構成技術を使用することができ、当業者は、凍結乾燥および再構成が種々の程度の抗体活性の損失(例えば、慣用の免疫グロブリンに関して、IgM抗体はIgG抗体よりも活性の損失が大きいという傾向にある)につながり得ること、および投与量を調節して損失を補なわねばならないであろうということを認識するであろう。
【0075】
本抗体またはそのカクテルを含有する組成物は、HIV感染の治療的および/または予防的処置のために投与することができる。治療的適用において、組成物を既にHIVに感染した患者へ、感染およびその合併症を処置または少なくとも阻止するに十分な量で投与する。これを達成するに十分な量を「治療上効果な用量」として定義する。この使用に効果的な量は、感染の重さと患者自身の免疫系の一般状態に依存するが、通常、体重1kgあたり約0.1〜200mgの抗体の範囲であり、1kgあたり0.5〜25mgの用量が好ましい。本発明の組成物は、生命を脅かすまたは生命を脅かす恐れのある重篤な病状において使用することができる。そのような場合、実質的に過剰量のこれら抗体を投与することが可能であり、処置を行う医師が望ましいと感じるかもしれない。
【0076】
予防的適用では、本抗体またはそのカクテルを含有する組成物を、HIVにはまだ感染していないが、最近ウイルスに最近さらされたかもしれないまたはさらされたと考えられる、またはさらされる危険性のある(例えば、HIV感染した人の新生児)、またはHIVにさらされたもしくはされされたと推定された直後の患者に投与する。組成物をHIV感染した妊娠した女性に投与する場合には、分娩前に1回または複数回投与して、母体の血液中のHIV感染性を減少させ、これによりHIV新生児へのHIV伝染の危険性を減らすことができる。危険性のある新生児を処置してHIVを含む危険性をさらに減らすこともできる。「予防上効果的な用量」であると定義される量は、通常、体重1kgあたり0.1mg〜25mgの範囲であり、患者の健康状態と一般的な免疫レベルに依存する。
【0077】
さらに、本発明の抗体は標的特異的な担体分子として使用することができる。抗体をトキシンに結合してイムノトキシンを形成するか、放射性物質または薬剤と結合させて放射性医薬品または医薬品を形成することができる。イムノトキシンおよび放射性医薬品を製造するための方法はよく知られている(例えば、Cancer Treatment Reports 68:317 (1984)参照)。本発明の抗体のヘテロ凝集体およびヒトT細胞活性化因子、例えばT細胞上のCD3抗原またはFcガンマレセプターに対するモノクローナル抗体は、T細胞またはFcガンマを有する細胞(K細胞または好中球のような)が抗体依存性の細胞介在性細胞溶解(ADCC)によってHIV感染細胞を殺傷することを可能にし得る。そのようなヘテロ凝集体は、例えば 本明細書の一部を構成する Karpowsky ら, J. Exp. Med. 160: 1686(1984)に記載のように、異種二官能性試薬N−サクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネートを用いて、抗HIV抗体を抗CD3抗体に共有結合的に架橋するこにより構築し得る。
【0078】
他の抗HIV剤、例えば3'−アジド−3'−デオキシチミジン、2',3'−ジデオキシシチジン、2',3'−ジデオキシ−2',3'−ジデヒドロシチジンなども製剤中に含有させることができる。
【0079】
抗体組成物に加えて、本発明のペプチドを含有する組成物をHIV感染した人の治療的および予防的ワクチン投与のために投与することができる。治療的な適用については、場合により上記のように修飾された単離されたペプチドとして、または上記のように処理したHIVタンパク質中に含まれ、望ましくはさらに免疫原性を刺激するためMDP微粒子に結合させたペプチドを含む組成物を、HIVに感染した患者に投与する。投与するペプチドの量は、患者の免疫系によって以前は認識されなかった機能的なHIVエピトープに対する抗体産生を刺激し、その結果刺激された抗体が感染を阻止するように選択する。予防的的な適用では、微粒子MDPに結合させたペプチドの組成物をHIVに感染していない人に投与して、それを投与しなければ認識されないようなエピトープに対する抗体の産生を刺激し、将来の感染に対して保護的な機能を与える。
【0080】
抗体および抗原の予防および診断的使用
抗体および、それによって認識され本発明において開示されるエピトープは、HIV感染の診断および管理にも有用である。典型的には、抗体および/またはその各抗原を使用する診断的アッセイは、抗原−抗体複合体の検出を必要とする。数多くのイムノアッセイ形態が記載され、この目的のために標識されているかまたは標識されていない免疫化学物質が使用されている。標識されていない場合、抗体は、例えば凝集アッセイ、抗体依存補体介在性細胞溶解アッセイ、および中和アッセイにおいて使用される。標識されていない抗体は、他の、標識された一次抗体と反応する抗体(二次抗体)、例えば免疫グロブリンに特異的な抗体と組み合わせて使用することができる。標識されていない抗体は、サンドウィッチタイプイムノアッセイなどにおいて、同じ抗原上の非競合的エピトープと反応する標識された抗体と組み合わせて使用するか、または標識された抗原と組み合わせて使用することができる。別法として、抗原を直接標識して競合的および非競合的イムノアッセイの両方において使用することができる。これらのアッセイのタイプおよび形態は、当分野でよく知られている。様々な標識が使用できる。例えば、放射性同位体、蛍光タグ、酵素,酵素基質,酵素コファクター,酵素阻害剤,リガンド(特にハプテン)など。数多くのタイプのイムノアッセイが可能であり、例として、米国特許第3,817,827号、同第3,850,752号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、同第4,098,876号に記載されているものが含まれる。
【0081】
通常、本発明の抗体およびペプチドを酵素イムノアッセイにおいて利用する。ここで、例えば、目的の抗体またはその各々の抗原を酵素に結合させて、生物学的試料、例えばヒトの血清、唾液、精液、膣分泌物、ウイルス感染した培養細胞懸濁液などにおけるHIV抗原の検出において最大の感受性と選択性が得られるようにイムノアッセイを構成する。
【0082】
HIV感染またはHIV抗原の存在の検出に使用するための目的の抗体とともに使用するためのキットも設計することができる。そのキットは、場合によりHIVの他のエピトープに特異的な更なる抗体と結合させた本発明の抗体を含んでいる。標識に結合させることができ、固体の支持体例えばマイクロタイタープレートウェルまたはポリスチレンビーズの表面などに結合しないかまたは結合することができる抗体は、Tris、リン酸塩、炭酸塩などの緩衝液、安定化剤、殺生物剤、ウシ血清アルブミンなどの不活性タンパク質と共にキットに含まれている。一般に、これらの物質は、活性な抗体の量に対して約5重量%未満で存在し、通常は抗体濃度に対して総量で少なくとも0.001重量%存在する。しばしば、不活性な増量剤または添加剤を含有させて活性成分を希釈することが望ましい。ここで添加剤は、組成物全体の約1〜99重量%で存在し得る。抗体に結合可能な第2抗体を使用する場合、第2抗体を通常別のバイアルに入れる。第2抗体は典型的に標識に結合し、上記の抗体製剤と同様の方法で製剤化する。抗体によって認識される目的のエピトープは、標識されていても標識されていなくてもよく、支持体へペプチドを結合し、支持体の表面からペプチドを延長するために使用することができるスペーサーアーム、アミノ基またはシステイン残基の付加などの修飾がなされているかまたはなされていない大きなタンパク質(合成,組換えまたは天然の)の一部として提供し得る。そのような修飾を用いて、抗体との免疫反応性を最適化するように配置されたエピトープを得る。そのようなペプチドを、上記のエピトープ含有タンパク質と同様の方法で製剤化する。
【0083】
様々な生物学的試料における、HIV抗原またはウイルス全体の検出は、HIVによる現在の感染の診断、治療に対する応答の評価、感染細胞の計数、HIV株(クレード)の血清タイピング、一次感染、進行および合併症例えば末梢神経障害、多源性白質脳症,およびカポジ肉腫などに関連する毒性因子の同定と定量において有用である。生物学的試料には、血液、血清、唾液、精液、組織生検試料(脳、皮膚、リンパ節、唾液など)、培養細胞上清、破壊された真核および細菌発現系などを含むがこれに限られない。ウイルス、ウイルス抗原、毒性因子、および血清タイピング決定因子の存在は、抗体と生物学的試料を、免疫複合体形成を誘導する条件下でインキュベーションした後、複合体形成を検出することにより試験する。ひとつの態様では、一次抗体、典型的には標識に結合させた一次抗体に結合することが可能な第2抗体の使用によって複合体形成を検出する。第2抗体は、上記の一次抗体製剤について記載した方法と同様の方法で製剤化することができる。別の態様では、抗体を固相支持体に結合させた後、生物学的試料と接触させる。インキュベーション工程の後、標識した抗体を加えて結合した抗原を検出する。別の態様では、抗体を検出標識に結合した後、細胞または組織断片などの生物学的試料とのインキュベーション工程の後、試料をフローサイトメトリーまたは顕微鏡検査法により抗原について調べる。
【0084】
合成ペプチドの調製および使用
本発明のペプチドは、ペプチドにアミノ酸置換を導入することによって修飾することができる。置換は、1またはそれ以上のアミノ酸を変更して異なるレトロウイルス株のエピトープをより効果的に模擬するため、または免疫またはワクチン投与に使用した場合に免疫学的応答またはエピトープとのMHC相互作用を増強し模擬されたエピトープのより大きな免疫原性をもたらすために望ましいであろう。さらに、ある種のアミノ酸置換を行ってペプチドの化学的安定性を増強することが望ましいであろう。
【0085】
より具体的には、本発明で使用されるポリペプチドは、HIVの少なくとも1つの株のタンパク質と免疫学的競合をもたらすことが可能である限り、いずれかの特定のHIVポリペプチド配列と同一である必要はない。したがって、目的のポリペプチドは、そのような変化がペプチドの望ましい活性を増強し得る、保存または非保存的な、挿入、欠失および置換などの様々な変化に付することができる。保存的置換は、中性、酸性、塩基性、および疎水性アミノ酸などのグループ内の類似のアミノ酸による置換である。そのようなグループ内の置換の例には、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;phe、tyrが含まれ、 metは含まれない。分子モデリングソフトウエアをHLAアロタイピングデータベース分類(DNAおよび血清学的)に適用することによって得られた更なるアミノ酸置換を示す:
【表2】

本発明の好ましい態様では、目的のペプチドのより親水性である末端の親水性残基およびそのペプチドのより疎水性である末端の疎水性残基を置換するようにアミノ酸修飾を行う。そのような置換は両親媒性らせんの形成をもたらす。D異性体における置換されたアミノ酸をブラケットエピトープに使用してエピトープを保護および安定化し、エピトープの免疫原性を増強することができる。D−アミノ酸は細胞内酵素によっては開裂しないので、このような部分は、適当な部位に挿入されたときにMHC分子と相互作用するための望ましい長さのペプチドエピトープを与える。これについては、以下の実施例8.5に詳細に記載する。
【0086】
通常、修飾された配列は、ヒト免疫不全レトロウイルスの少なくとも1つの株の配列と約20%を超えて異なることはない。しかし、本発明のペプチドを便利に固相の支持体に固定化し、巨大分子に結合し、または修飾されてMHC結合および提示を変化または増強することにより免疫原性を増大させることができるような「アーム」を与えるために、更なるアミノ酸が一方または両方の末端に付加される場合は除く。アームは、1個のアミノ酸または50またはそれ以上のアミノ酸を含むことができ、典型的には1〜10個のアミノ酸の長さである。
【0087】
チロシン、システイン、リシン、グルタンミン酸またはアスパラギン酸等のアミノ酸を、ペプチドまたはオリゴペプチドのC−またはN−末端に導入して、結合のための有用な機能を与えることができる。システインは他のペプチドへの共有結合カップリングを容易にするため、または酸化によるポリマーの形成に特に好ましい。
【0088】
さらに、ペプチドまたはオリゴペプチド配列は、安定性、支持体または他の分子への連結または結合のための増加した疎水性、重合化をもたらす、末端のNHアシル化(例えばアセチル化)、チオグリコール酸アミド化、または末端カルボキシアミド化(例えば、アンモニアまたはメチルアミンによる)によって修飾されている配列によって、天然の配列と異なっていてもよい。
【0089】
このように、例えば、本明細書に開示したペプチドの好ましい態様では、1またはそれ以上のシステイン残基、または1またはそれ以上のシステイン残基をスペーサーアミノ酸との組み合わせを、ペプチドの末端に付加することができる。個々のペプチドが望ましい場合は、グリシンは特に好ましいスペーサーである。ペプチドの多重ペプチド反復が望ましい場合は、リシンコアのペプチドを合成して4価のペプチド反復を形成することができる。その形態を例として示す。酸化的重合に使用するための好ましいペプチドは、そこで少なくとも2つのシステイン残基が望ましいペプチドの末端に付加されているペプチドである。2つのシステイン残基がペプチドの同じ末端に存在している場合、好ましい態様は、システイン残基が1〜3のスペーサーアミノ酸残基、好ましくはグリシンによって隔てられている場合に存在する。システイン残基の存在は、ペプチドのダイマーの形成を可能にし得、そして/または生成したペプチドの疎水性を増加し得て、固相または固定化されたアッセイシステムにおいてペプチドの固定化を容易にする。末端アミノ基をアシル化するため、または数多くのエピトープを含むポリマーを形成するために2つのペプチドまたはオリゴペプチドまたはその組み合わせをジスルフィド結合またはより長い連結によって連結するための、多重反復ペプチド反復などを構築するための最初のアミノ酸として使用されるシステインまたはチオグリコール酸のメルカプト基の使用は特に興味がある。そのようなポリマーは増加した免疫学的反応という利点を有する。種々のペプチドが免疫に望ましい場合、それらを個別に構築してカクテルとして組み合わせ、種々のHIV単離物のいくつかの抗原決定基と免疫反応する抗体を誘導する更なる能力を得る。抗原性ポリマー(合成マルチマー)の形成を達成するために、ビス−ハロアセチル基、ニトロアリールハライドなどを有する化合物を用いることができ、ここで試薬はこれらの基に特異的なものである。ペプチドまたはオリゴペプチドの1または2のメルカプト基の間の連結は、単結合または少なくとも2またはそれ以上の炭素原子の連結基であり得る。
【0090】
巨大分子担体への連結ペプチド
目的のペプチドを用いて、可溶性の巨大分子(例えば、5kDal未満でない)担体に連結することができる。便利には、担体は、ヒトの血清において抗体が出会いそうにない天然のまたは合成のポリ(アミノ酸)であり得る。そのような担体の例は、ポリ−L−リシン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、チログロブリン、ウシ血清アルブミンのようなアルブミン、破傷風トキソイドなどである。担体の選択は、おもに抗原について意図される究極的な使用および便宜性および入手可能性の1つに依存する。好ましい態様では、担体は、合成するかまたはProprionibacterium acini などのある種の細菌から単離することができるグリコペプチドの多重反復を含む微粒子である。この微粒子は、マルチマー形態を生じる広く架橋したムラミルジペプチドから構成される。
【0091】
ムラミルジペプチドが Proprionibacterium acini または関連する生物から単離される場合、株の選択は有用であり、選択は細菌細胞壁の化学分析に基づく。好ましい態様は、L−アラニン−D−イソグルタミンからなるジペプチドと広く架橋したムラミルジペプチドである。
【0092】
予備実験から種の間の相違が同定されており、ジペプチド組成およびペプチド長が変化している。高濃度の脂質AおよびO−アシル化βミリステートの単離物は、細胞壁の成分である。予備実験は、これらの違いが毒性の増加とアジュバント効果の減少に関与することを示した。好ましい態様の種の選択とその精製を、以下の実施例4に記載する。
【0093】
MDP微粒子は、当分野で知られている手法を用いることにより合成することができる。MDPが強力な免疫刺激剤であり、かなりの毒性を有することはよく定着している。MDP毒性を減少させる多くの試みは、リポソームまたは他の関連する化合物内へのMDP取りこみまたは末端基の修飾などの、放出を遅延させる手法を用いていた。化学的修飾は望ましいアジュバント効果の著しい減少をもたらし、送達速度を変化させる設計は制御が困難であった。例として、MDP微粒子の形態、サイズパラメーター、および抗原送達結合法を以下に記載する。微粒子形態からの脂質の除去は、MDPの抗原提示細胞(ADP)による迅速なインターナリゼーションを容易にする。抗原提示細胞は主に単球系統のものであり、単球、マクロファージ、組織球、Kuffer細胞、樹状細胞、ランゲルハンス細胞等が含まれ、MHC関連事象による抗原プロセシングと抗原提示にあずかっている。外来のタンパク質に対する免疫応答の展開に寄与する因子は、アミノ酸配列および微小的環境でプロテアーゼ開裂を受けやすい配列によって部分的に決定することができる。成功する免疫応答は、好ましくはアミノ末端に疎水性末端と、カルボキシ末端に最もよくみられる親水性アミノ酸を有する、両親媒性のらせんを形成するペプチドに最も頻繁に観察される。プロテアーゼ分解に耐性であり、両親媒性のらせん配列を形成する配列形態は、強力な免疫原であることが多い。配列中にプロリンを含む残基は、らせん形成を阻止することによって一般に免疫原性が低く、グリコシレーション部位はあまり望ましくなく、ペプチドエピトープを標的とする応答が阻害されることが多い。宿主動物において成功する免疫学的応答をもたらす抗原投与は、MHC関連事象を経由する抗原のプロセシングと提示を必要とする。外来の抗原は、エンドソームへのインターナリゼーションの後に、おもに抗原提示細胞(APC)によってプロセシングされる。この酸性環境下で存在し反応するカテプシンDなどの酵素によるタンパク質加水分解の後、上記の基準を満足するペプチド断片が、MHCクラスIIと会合し細胞表面に提示される。ペプチドが十分な密度で提示されたら、免疫事象が起こる。免疫応答のタイプは、APCあたりのペプチドの密度、微小的環境、サイトカイン環境、および抗原提示細胞によって最初に刺激されたリンパ球のタイプによって決定される。インターナリゼーションの後、微小的環境を改変し免疫事象を誘導する条件を確立するサイトカイン応答のカスケードが誘導される。
【0094】
例として、以下の実施例5に示すように、独特のMDP微粒子(0.01〜0.2ミクロン)を、免疫原性が乏しいが慣用の方法を用いて観察されないエピトープに対する免疫応答をもたらす抗原提示細胞に免疫原を送達するために使用する。
これら免疫応答の定量は、他のアジュバントと比較して10〜100倍の抗体濃度の増加を示す。
【0095】
免疫原として使用する目的のペプチドを、目的のペプチドのアミノまたはカルボキシ末端のいずれかを使用して、ムラミルジペプチドのカルボキシ末端アミノ酸部分に、または実施例に開示するように炭水化物部分のアルデヒド酸化生成物に連結する。MDP微粒子につき、少なくとも1分子の目的のペプチド、好ましくはMDP微粒子につき10〜100分子の目的のペプチド、および最も好ましくはMDP微粒子につき100〜1000の目的のペプチドが存在するであろう。したがって、担体のサイズおよび可能な連結基は、担体あたりの目的のペプチドの数に影響するであろう。
【0096】
マクロ担体組成物は、選択的な細胞取りこみ、ペプチド半減期、およびMHC免疫学的事象を経由する抗原提示に影響を及ぼすことによって免疫原性に影響を及ぼす。1またはそれ以上の異なる目的のペプチドを同じマクロ担体に連結することができるが、好ましくは単一の目的のペプチドを1価または4価の形態でマクロ担体に結合することができる。1以上の目的のペプチドによる免疫が望ましい場合、目的のペプチドマクロ担体コンジュゲートのカクテルは、カクテルに入れた各目的ペプチドの免疫原性を最適化する割合で個々のコンジュゲートを混合することにより調製することができる。この形態では、十分なペプチドが、マクロ担体コンジュゲートにおいて利用でき(100〜1000ペプチド)、単一の抗原提示細胞による抗原提示を増強する。目的のペプチドの免疫原性は、開示したように巨大分子担体あたりの目的ペプチドの数、例えばアミノ対カルボキシ結合、末端アミノ酸修飾、およびスペースアーム長および組成などの提示の形態の両方を調節することによって最適化する。この形態では、抗原提示細胞による抗原プロセシングによって、高い密度、通常100以上および最も多くの場合には500以上のペプチドが生じ、MHC相互作用を介して抗原提示細胞の細胞表面に提示される。この形態により、以下の実施例に示すように、有意に高い濃度の抗体が免疫後に産生する。
【0097】
連結の形態は、p−マレイミド安息香酸、p−メチルジチオ安息香酸、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、グルタルアルデヒドなどの試薬を用いる、慣用なものである。N末端、C末端またはその分子の両端の間の部位で連結することができる。ムラミルジペプチドの多重反復に関して、目的ペプチドのアルデヒド基への結合は、例えば過ヨウ素酸ナトリウムにより糖残基を穏やかに酸化した後、ホウ水素化ナトリウムなどにより穏やかに還元し、シッフ塩基中間体を安定な共有結合に変換する。微粒子あたりのペプチドの数は、酸化条件を変えることによって制御し、放射性トレーサーを用いることにより定量することができる。これらの方法は、当分野でよく知られている。結合方法および結合形態は、所望の応答を達成するために必要に応じペプチドごとに変わり得る。
【0098】
当業者によく知られている様々なアッセイプロトコルを、レトロウイルスタンパク質エピトープに対する各々の抗体の存在を検出するため、または複合タンパク質混合物におけるレトロウイルスタンパク質を検出するために使用することができる。特に興味があるのは、本明細書に開示した新規アッセイであり、該アッセイでは目的のペプチドを西洋ワサビペルオキシダーゼなどの検出標識に共有結合し、1つまたは複数のエピトープを発現する天然のHIVタンパク質を直接または間接的に固相の支持体に結合する。この形態では、ペプチドエピトープを認識する抗体は固相上のエピトープと標識上のエピトープを架橋する。この方法により、HIVに対する抗体のエピトープ反応性を測定することができ、標識に結合したペプチドを変えることにより定量することができる。HIV血清型、毒性因子または他のHIV特性に関連するペプチドエピトープは、本明細書に開示し、例として記載した1段階の競合イムノアッセイによって、これらのエピトープを発現しているいずれかの試料において同定および測定することができる。
【0099】
イムノアフィニティー精製法における抗体およびその各エピトープの使用
HIVタンパク質およびこれらエピトープを含む精製されたタンパク質に含まれるエピトープに特異的な抗体は、これらのエピトープを含むタンパク質およびペプチドおよびそれらと反応する抗体のイムノアフィニティー精製における使用に特に有用である。一般に、抗体は10〜1012Mのオーダーのアフィニティー会合定数をを有する。そのような抗体を使用して、目的のエピトープを含むタンパク質およびペプチドを精製することができる。しばしば、遺伝的に修飾された細菌を使用してHIVタンパク質を製造することができ、発現したタンパク質が分泌される場合は目的の組換え融合タンパク質を組換え発現系の培地から、または発現したタンパク質が分泌されない場合は破壊した生物学的発現系の成分から、またはその混合物のいくつかまたは1つの成分がHIV上のエピトープを模擬しているエピトープを含んでいる、タンパク質の複合的な生物学的混合物から精製することができる。一般に、HIVエピトープと反応することができる抗体を、基質または支持体上に結合させるかまたは固定化する。次いで、エピトープを含有する溶液を、抗体とエピトープを含むタンパク質との間の免疫複合体の形成に適当な条件下で、固定化した抗体と接触させることができる。結合しなかった物質を結合した免疫複合体から分離し、結合したタンパク質を固定化した抗体から遊離させて溶出液中に回収する。
【0100】
同様に、HIVのエピトープを含むタンパク質またはペプチドまたはHIVのも模擬エピトープを、基質または支持体に結合または固定化し、目的の抗体を溶液から単離するために使用することができる。抗体を含有する溶液、例えばアルブミンが除去された血漿などを、所望のエピトープを含む固定化したペプチドまたはタンパク質のカラムに通し、免疫複合体を形成させた後、結合した免疫複合体から反応しなかった抗体を分離し、抗体を溶出緩衝液により遊離させ、溶出液中で回収する。これは、HIVのエピトープを模擬しているがHIVに系統進化的に関連性のない供給源に由来するエピトープを含むタンパク質の精製において特に価値がある。
【0101】
典型的には、抗体を高度免疫血清から粗精製する。腹水または培養細胞上清およびHIVエピトープを模擬するエピトープを含むタンパク質またはペプチドを、支持体に結合させる前に、成人および胚の両方に由来する体液、血液、血液成分、細胞抽出物、組織抽出物、および培地上清、培養細胞の抽出物、毒素、および組換え融合産物などであるがこれらに限られない生物学的な供給源から粗精製する。そのような方法は、当業者によく知られており、高濃度での中性塩による分画を含むことができる。イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、調製用ゲル電気泳動、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの他の精製方法もまた、免疫吸着剤としてそれを使用する前に使用して調製物の純度を上げることができる。粗精製された抗体調製物を、反応性エピトープまたはそのエピトープを含むタンパク質が結合した支持マトリックスと反応させることにより、所望なら、アフィニティー精製された抗体を調製し得る。
【0102】
特に興味があるのは、天然に系統進化的に模擬されたHIVエピトープに対する抗体である。そのような抗体は治療剤として有用であり、HIVタンパク質の精製、および配列の位置および機能に関するHIVタンパク質のマッピングが可能になり、HIVを研究する為に有用である。そのような抗体は、HIVに由来するタンパク質/ペプチドによる免疫、および生じた高度免疫ポリクローナル多価抗血清と上記のように支持体に固定化した胚タンパク質、毒素、および非HIV微生物/ウイルス成分などの非HIV供給源に由来するタンパク質/ペプチドとを反応させることにより精製したイムノアフィニティー精製によって製造することができる。得られたイムノアフィニティー精製された抗体は、HIVおよびその免疫精製のために使用された系統進化的に関連のないタンパク質により共有される1または複数のエピトープに対してエピトープ特異的である。これらのエピトープ特異的抗体は、HIVおよび非HIV由来両方のタンパク質およびペプチドのイムノアフィニティー精製において特に有用である。そのような抗体を使用して、HIVにおけるエピトープの位置をマッピングし、その配列を決定し、HIVのライフサイクルにおける機能的な重要性、HIVのクレードおよび他のレトロウイルスにおけるその分布、HIV毒性との関連について調べることができ、ヒトに対して非毒性であるがHIVのライフサイクルにおける重要な機能を中和する場合、そのような抗体をHIV感染を処置するために使用することができる。
【0103】
抗体またはエピトープがそれに望ましく固定化されるような支持体は、以下の一般的特性を有する:(a)一般に非特異的結合を最小化するタンパク質との弱い相互作用、(b)高分子量物質の流動を可能にする良好な流動特性、(c)抗体またはエピトープの化学的連結を可能にするために活性化または修飾し得る化学的基を有すること、(d)抗体を連結するために使用する条件における物理的および化学的安定性、および(e)抗原の吸着および溶出に必要な緩衝液の条件および濃度に対する安定性。一般に使用される支持体は、アガロース、誘導体化ポリスチレン、ポリサッカライド、ポリアクリルアミドビーズ、活性化されたセルロース、ガラスなどである。抗体および抗原の支持基材への結合のための様々な化学的方法が存在する。一般に、Cuatrecasas P.,Advances in Enzymology 36:29 (1972)参照。本発明の抗体および抗原は、支持体に直接か、あるいはリンカーまたはスペーサーアームを介して結合することができる。抗体および抗原のクロマトグラフィー支持体への固定化に必要な一般的条件は当分野においてよく知られている。例えば、本明細書の一部を構成するTijssen, P.,1985,Practice and Theory of Enzyme Immunoassay を参照。実際のカップリング法は、カップリングする抗体または抗原の特性およびタイプに少しばかり依存する。結合は典型的に共有結合によって起こる。
【0104】
免疫血清、抗体に富む腹水または培養上清、HIVウイルスの抽出物またはリゼート、培養した生物学的発現系に由来する上清または抽出物、破壊した細胞組織または血液成分(成人または胚)の懸濁液に由来する上清または抽出物または他の複合タンパク質混合物、例えば唾液、体液またはエピトープを含む培養産物などを、次に適当な分離マトリックスに加える。混合物を、抗原抗体結合が起こるに十分な条件下と時間で、通常少なくとも30分間、より一般的には2〜24時間インキュベーションする。次いで、特異的に結合した抗体またはエピトープを含む固定化された免疫複合体を、複合混合物から分離し、吸着緩衝液でよく洗浄して結合しなかった汚染物質を除く。次いで、免疫複合体を、特定の支持体、結合したタンパク質、および溶出タンパク質に適合する溶出緩衝液で解離させる。溶出タンパク質、抗原、または抗体を溶出液中で回収する。溶出緩衝液および方法は当業者によく知られている。抗体によって認識されるエピトープを含むペプチドを溶出緩衝液において使用して抗体結合部位について競合させることができ、溶出を温和な溶出条件下で行うことができる。選択的に吸着したタンパク質は、緩衝液の pHおよび/またはイオン強度を変化させることによってまたはカオトロピック剤によってアフィニティー吸着剤から溶出することができる。溶出緩衝液の選択、その濃度およびその他の溶出条件は、抗体−抗原相互作用の特性に依存し、一度決定したらあまり変えてはならない。
【0105】
低いまたは高い pHまたはイオン強度の緩衝液またはカオトロピック剤を免疫複合体の解離に使用する場合、溶出したタンパク質を生理学的 pHおよびイオン強度に調節する必要があるかもしれない。そのような調節は、透析またはゲル濾過クロマトグラフィーにより行うことができる。これらの方法はまた、溶出したタンパク質がその天然のコンフォメーションを回復することを可能にする。
【0106】
上記の方法により、例えば、HIVのエピトープまたは模擬エピトープを含む実質的に精製されたタンパク質およびそのエピトープと反応する抗体が得られる。精製されたタンパク質は典型的に50%以上純粋、より一般的には少なくとも75%純粋、および多くの場合95%〜99%以上純粋である。
【0107】
例として本発明を記載する以下の実験の記載から、本発明のその他の特徴および利点が明らかとなろう。実施例によってさらに本発明の方法が説明されるが、本発明の限定をなんら意味するものではない。
【実施例】
【0108】
実施例1
ヒトおよびヤギの免疫反応の間のHIVエピトープの相違のマッピングに使用するためのヒト抗HIV抗体(IgG画分)プールの調製
HIV感染した患者由来のヒト血清は、患者の承諾、患者が署名したインフォームドコンセント、医師の承認および地域のIRBの承認を得、地域診療所から得た。すべての血清は、始めにAbbott Laboratoriesから商業的に入手可能な試験キットを用いて1:10の希釈率でHIV感染についてスクリーニングした。高い反応性を有する血清(1よりも大きい吸光度の試験結果によって任意に定義した)をさらにウェスタン・ブロット分析により調べ、大部分のHIVタンパク質(env、gagおよびpol)に対する抗体反応性を有する血清を同定した。所定の大部分のHIVタンパク質に対し良好な反応性を示した患者の血清をさらにミクロカルチャー中和分析によってさらに調べ、ミクロカルチャー分析においてHIV感染性を中和するであろう血清含有抗体の特異性を同定した(全組織培養感染価(TCID)中和)。gp160、gp120、p66/55、gp41、p24、およびp17およびp10に対する高い抗体力価反応性、およびマイクロカルチャーにおける中和されたHIV感染性を有する29人の患者の血清を同定しプールした(各20〜40mL)。プールした抗ヒトHIVをさらに調べ、HIVの複数の株に対する広範な中和活性および上で詳細に記載した9つのエピトープ領域に対する高い力価の抗体が示された(ウェスタン・ブロット1:100またはそれ以上で陽性)。慣用の方法を用いて、ヒトIgGをこの血清プールから精製した。精製の後、IgG全濃度を10mg/mLに調整し、その組成および純度を標準的なイムノアッセイ法により調べた。結果は、98%以上の純度とヒトIgGの組成を示した。精製された抗HIVをアリコートに分け、実験および以下に開示する方法において後に使用するために凍結した。当業者は、比較を目的とした未知の抗体または抗原に対する後の測定において使用し得る特異性を定義するために抗原および抗体プールの両方を特徴付ける方法についてよく知っているであろう。
【0109】
以下の実施例に記載するように、このヒト抗HIVを使用して粗製のウイルスリゼートからのHIVタンパク質の精製をさらに行い、ヒトの免疫系によっておよび競合EIAにおいて認識されるHIVエピトープをマッピングし、ヤギにおいて産生するがヒトにおいては産生しない抗体によって標的化されるHIVエピトープを同定した。ウェスタン・ブロット分析を用いて、目的のペプチドを含有する精製されたHIVタンパク質またはそのペプチドの合成形態のいずれかによって免疫されたヤギにおける抗体応答を特徴付け、弱い免疫原性ペプチドに対する免疫応答を増幅するために設計した微粒子担体複合体の効果を調べた。HIV感染性を中和する抗体は、モノクローナル抗体をコンジュゲートした磁性粒子を使用して不要な細胞を除去する標準的な技術を用いて末梢血単核球細胞(PBMC)から単離した、精製されたヒトCD4リンパ球を使用するミクロカルチャー法によって調べた。CD4リンパ球をミトゲンで刺激してHIV感染に対するその感受性を高め、特記しない限り、一貫してHIV感染の宿主標的として使用した。HIV1SF2は、特記しない限り一貫して参照HIV株として用いた。HIV感染性に対する抗体の効果を、当業者によく知られた技術を用いるミクロカルチャーによって測定した。感染性を感染単位(IU)として示す。抗体が介在するIUの減少はウイルス感染性の中和に関連し、感染単位の変化として示される。ヒト抗HIVプールは、ヒト抗HIV抗体を必要とする本明細書に記載したすべての実験を通して使用した。このヒトIgG抗HIVプールを、いくつかの商業的に入手可能なヒト抗HIV調製物と比較し、HIV中和活性は同等かまたはより高かった。ウェスタン・ブロット解析によって比較した場合、反応性は有意により高いものであった。
【0110】
実施例2
本明細書中で使用する商業的に入手可能なHIVウイルスリゼートのキャラクタリゼーション
HIV1MN,HIVBAL,HIV2NZを、Advanced Bio-Technology,Inc.Columbia,MDから、精製されたウイルスリゼートの形態で購入した。これら精製されたウイルスリゼートの分析によって、全タンパク量が0.8mg/mL〜1.2mg/mLの範囲でロットごとに相違していることが示された。各HIVリゼートのタンパク組成を、SDS−PAGEおよびヒトIgG抗HIVによるウェスタン・ブロット解析によって調べた。HIVリゼートをプロテアーゼ阻害剤および Nonidet P-40またはIgepal CA630などの非イオン性界面活性剤(1.0%v/v)で処理し、HIVタンパク質および糖タンパク質をモノマー形態に完全に解離し、0.22ミクロンのフィルターによる濾過により透明化した。脂質を、標準的な方法を用いてSeroClearにより除去した。HIVは、発芽過程の一部として、ヒトのタンパク質をそのエンベロープ内に取りこむことが当業者によく知られている。一度同定されたそのような汚染物質をイムノアフィニティークロマトグラフィーによって除去した。最初の精製段階において、細胞増殖を促進するために加えた増殖培地に存在する血清の汚染物質およびHIVリゼート中の汚染物質を、抗正常ヒト血清セファロースCL6B(2〜3mg抗体/gセファロース)を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーにより除去した。HIVリゼートのクロマトグラフィーは、1:1体積/体積のマトリックス対リゼート比で、10mL/時間の流速にて行った。クロマトグラフィーおよび溶出を、分光光度計により280nmの波長で監視した。HIV関連タンパク質を含むタンパク質に富む結合しなかった画分を1mgタンパク質/mLに濃縮し、将来必要なときの使用のために−70℃で保存した。アフィニティーマトリックスに結合したタンパク質を、0.9%NaCl中の pH2.2のグリシン−HCl緩衝液で溶出した。溶出液を中和し、0.1% Igepal CA630を含む pH7.8のPBS中で透析し、濃縮して、将来の分析のために−70℃で保存した。精製されたHIV調製物のSDS−PAGE並びにウェスタン・ブロットは、ヒト抗HIVIgGを用いて、gp160、gp120、p66/55、gp41、p10、p24、p17およびp7の存在を一貫して示した。HIVタンパク質は、ウェスタン・ブロットを用いるとグリシンHCl溶出液中には検出されなかったが、タンパク質の視覚化のためにクーマシーブリリアントブルーで染色したSDS−PAGEゲル染色は、2、3本の弱く染色されたバンドを示した。
【0111】
部分的に精製されたHIVリゼートに対して産生した抗HIV抗体のキャラクタリゼーション
ヤギ(n=2)は、上で得られた精製したHIVタンパク質で免疫し、HIV上の免疫優性エピトープと反応する抗体により免疫学的に応答した。この抗血清をさらに調べると、HIV感染したおよび感染していないCD4リンパ球の両方と反応する細胞毒性抗体の存在が示され、赤血球細胞(RBC)凝集素が検出された。これらの凝集素をすべてのヒトRBC血液型およびウサギおよびモルモット由来のRBC血液型と反応させた。これらの不用な抗体特異性について2つの可能性が考慮された。1つの可能性は、培養細胞由来のタンパク質を含むHIVリゼートからの汚染であり、第2の可能性は、HIVタンパク質/糖タンパク質とヒトおよび他の動物種においてみられる糖タンパク質との間の模倣性である。宿主の膜タンパク質が、HIVのエンベロープにおいてしばしば同定されていることはよく知られている。HIVのエンベロープ内への宿主膜成分の取りこみは、非特異的であり、成熟ビリオンの発芽に関連していると考えられている。成熟ビリオンエンベロープにおいて以前に同定された2つのこのようなタンパク質は、ヒトHLAクラスIとクラスII抗原である。HLAクラスIおよびクラスII抗原の両方を、酵素結合イムノアッセイを用いて定量し、結果は、これらHIV調製物において、感染していない培養細胞に由来する細胞膜調製物において測定される濃度に対し不均衡な濃度でのHLAクラスIおよびクラスII両方の存在が示された。更なる実験により、HLAクラスIおよびクラスII抗原の存在が、HIVウイルスリゼートの種々の調製物(n=17)において確認された。これら調製物において測定された濃度は、変化し得るが、感染していない対照の細胞に由来する膜抽出物において測定される濃度よりも一貫して10〜100倍高かった。ヤギ抗HIV抗体を、既知のHLAクラスIおよびクラスII単離物に対するウェスタン・ブロット解析により試験し、HLAクラスI、HLAクラスII(αおよびβ鎖)およびβ2ミクログロブリンに対する抗体特異性を含んでいることを確認した。この抗体を、HLAアロタイプ特異性について調べた。既知のアロタイプのリンパ球を含む市販のトレイを標的として用いた。分析条件下で、この抗体は、すべてのリンパ球に対して細胞毒性であり、この細胞毒性は、特に、可溶性のHLAクラスIおよびHLAクラスIIによって用量依存的に阻害された(表2.1)。
【表3−1】

可溶性クラスIおよびIIを、抗HIV抗体を含むマイクロタイターウェルに加え、4℃で一晩インキュベーションした。可溶性IおよびIIは免疫細胞傷害性を減少させたが、50μg以上の濃度でそれ以上の効果はなかった。
【0112】
更なる実験によって、gp120、ヒト赤血球および白血球細胞、およびウサギ、ラット、およびモルモットを含む異なる動物種に由来する赤血球細胞上に存在する系統進化的に保存された炭水化物抗原と反応する抗体が示された。ヒトおよびウサギ赤血球細胞による吸収試験は、S−HLA−IおよびIIによる吸収の後に残存する、RBC(表2.2)およびリンパ球(表2.1)の両方に対する抗体活性を完全に除去した。
【表3−2】

*精製されたHIVリゼートに対して産生した抗血清は、免疫後、ヤギにおいて産生したRBC凝集素を生じた。ヤギ(それぞれn=2)は、それぞれHIV1MNおよびHIV1BALおよび/またはHIV2NZで免疫した。
【表3−3】

*20週目の血液採取日でグリコシダーゼ処理なしでHIVに対して抗血清を産生させ、0〜5倍の赤血球細胞で吸収させ、リンパ球細胞毒性についてリンパ球を試験した。
【0113】
HLAおよび赤血球凝集素に対する抗体特異性の吸収および除去の後、ヤギ抗HIV抗体が、文献に既に記載されたのと同様の特異性を含むことが同定された。この情報は、HIVタンパク質を修飾して炭水化物およびHLA抗原を除去してヒト抗原を標的とする細胞毒性抗体の生成を回避する必要性を示した。
【0114】
実施例3
HIVリゼートから単離されたHIVタンパク質の精製、クラスIおよびクラスII抗原除去および炭水化物除去
HIV1MN、HIV1BALおよびHIV2MZのHIVリゼートを Advanced Biotechnologies,Columbia,MDから購入した。それらは、タンパク質を0.8〜1.2mgタンパク質/mLの範囲で含有していた。プロテアーゼ阻害剤を加えてタンパク質を分解から保護し、非イオン性洗浄剤(Igepal Ca-630、またはNonidet P-40)を加えて、HIVタンパク質を解離させた。混合物を栓をした脱脂剤を有する抽出チューブ中に入れ、脂質を除去し、混合物を透明化した。遠心後、脂質を有機層中で特異的に溶解し、水相を除去した。
【0115】
HLAを含む培養細胞由来の汚染物質を、以下のものの共有結合により調製された5つの分離アフィニティーマトリックスを用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーにより除去した:ヒト血清タンパク質に対するイムノアフィニティー精製されたポリクローナルIgG抗体、HLA−1に対するモノクローナルIgG抗体、HLA−2に対するモノクローナルIgG抗体、β2−ミクログロブリンに対するモノクローナル抗体、リンパ球および赤血球細胞膜抗原に対するイムノアフィニティー精製されたポリクローナルIgG抗体。各マトリックスは、セファロースCL6B1gあたり2〜3mgの抗体を含んでいた。カラムをタンデム配列に配置し、マトリックスを注入し、 0.1%の Igepal Ca-630を含む pH7.8のPBSで平衡化した。カラムベッド体積と等体積のリゼート溶液を、各カラム中を10mL/hの流速で順次クロマトグラフした。クロマトグラフィーおよび溶出は、分光光度計により280nmの波長で監視した。HIV関連タンパク質を含むタンパク質に富む結合しなかった画分を、1mgタンパク質/mLに濃縮した。
【0116】
SDSを、目的のHIVタンパク質を含むイムノアフィニティー精製した混合物に加え、混合物を70℃に10分間加熱した。タンパク質を、PGNaseを用いて酵素的に脱グリコシル化した。タンパク質混合物を、0.1%非イオン性洗浄剤を含む生理食塩水であらかじめ平衡化したセファロースG50を用いるサイズクロマトグラフィーにより分画した。タンパク質画分を集め、所望のHIVタンパク質を含む画分を個々にプールした。gp160およびgp120、p55/65およびgp41、およびp24,p17、およびp10に富む3つのタンパク質プールを確保した。画分は、更なる処理を行うまで、−70℃で保存した。
【0117】
ヒト白血球抗原(HLA)の定量および除去の詳細な方法は、本明細書の一部を構成する“Identification, Characterization, and Quantitation of Soluble HLA Antigens in Circulation and Peritoneal Dialysate of Renal Patients”, F. Gelder, Annals of Surgery Vol. 213,(1991)に開示されている。
表3.1は、精製により得られたデータを示す。
【表4】

上記のように精製したHIV調製物は、HLAクラスIまたはHLAクラスIIを含む汚染物質を概して含んでいなかった。プールしたヒトIgG抗HIVを用いる、精製したHIV調製物のSDS−PAGEおよびウェスタン・ブロット解析は、一貫してgp160、gp120、p66/55、gp41、p10、p24、p17およびp7の存在を示した。
【0118】
実施例4
精製されたHIVによる誘導アジュバント効果のための、MDP微粒子の生化学的およびコンフォーメション的な必要物質の調製およびキャラクタリゼーション
Proopionibacteriumu acini から単離したムラミルジペプチド(MDP)の多重反復は、この実施例のMDPミクロ担体複合体のコア構造を形成した。モノマーサブユニットの化学的要素は、
【化1】

である。
【0119】
MDPはよく知られた免疫刺激特性を有し、それは免疫機能の増加に対する効果を測定するために設計された試験において詳細に調べられてきた。当業者は、この効果についてよく知っている。
【0120】
今日まで、天然の供給源から単離されたMDPおよび合成MDPは両方とも、哺乳類に投与した場合に有意の毒性に関連していた。この毒性は、担体としてのMDPの効果を制限してきた。
【0121】
毒性成分を含まないMDPの単離の方法を本明細書において提供する。Proopionibacterium acini を定常中期まで培養し、洗浄して培養細菌細胞由来の汚染物質を当業者によく知られた技術を用いて除去した。細胞壁および細胞質に含まれている疎水性成分は、上昇させた温度で、逐次的に上昇させる濃度のエタノール/メタノール/水の中で順次洗浄することによって、順次抽出した。得られるMDP微粒子を10%エタノールに懸濁し、その濃度は540nmにおけるその吸光度を濁度標準の吸光度に対して関連づけることによって測定した。MDP微粒子の濃度は、保存および後の使用のため、1mg/mLに調整した。
【0122】
この調製物の解析によって、ムラミルジペプチドが0.1〜0.2ミクロンのサイズの微粒子と広範に架橋していることが示された。末端のジペプチドアミノ結合したL−アラニン−D−イソグルタミンは、上に示したモノマー構造と同一であった。細菌の株の間での違いが有り得るということ、そしてこれらの違いがペプチド組成の違い、例えば5またはそれ以上のアミノ酸を有する末端ペプチド、ジペプチドアミノ酸組成の変化、特にL−アラニン−L−イソグルタミン、およびO−アシル化βミリスチン酸基が挿入されている部位を生じ得ることはよく知られている。これらは望ましくなく、天然の供給源から単離されたMDPの毒性および低いアジュバント特性の原因となっている。好ましい態様では、MDP微粒子(0.01〜0.2ミクロン;好ましくは0.05〜0.1ミクロン)は、アミノ結合したL−アラニン−D−イソグルタミンジペプチドを有している。そのような微粒子は、天然の供給源から上記のように単離するか、またはよく知られた合成方法を用いて合成することができる。
【0123】
実施例5
MDP免疫原コンジュゲートの調製および予備評価
上記実施例のMDP微粒子(0.2μ)の抗体産生に対するアジュバント効果を、スルフヒドリル架橋の約22アミノ酸を欠いている免疫原性の弱いモノクローナルヒトラムダ軽鎖断片(Mr約180,000)を免疫原(I)として用いて評価した。2つのコンジュゲートを作成した。1つが免疫原がカルボキシル末端基を介してMDPに共有結合しており、もう1つがアミノ末端基を介して結合しているものであった。MDP免疫原コンジュゲートを段階的に構築した。試薬交換は、遠心、上清の除去および必要な試薬による置換による各段階の後に行い、MDP:免疫原構築を介して結合を連続的に続けた。各反応について示したモル比および各段階の後に行った試薬交換は、予備実験によれば、免疫抗体応答を有意に減少させる免疫原の複数点結合を阻止した。
【0124】
MDP:NH:免疫原:COHの合成
EDCを用いるHIVタンパク質とムラミルジペプチドの有効な2段階カップリングのためのプロトコル
Grabarek, Z.および Gergely, J., Anal, Biochem. 185:1331(1990)に記載されている方法から適合させた以下の方法は、HIVタンパク質を1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)にさらしてHIVのカルボキシルに影響を与えることなく、HIVタンパク質およびペプチドのMDPへの逐次的カップリングを可能にする。この方法は、チオール化合物で最初の反応をクエンチすることを要する。反応は、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)(pH4.5〜5.0)中で行う。
【0125】
MES(0.5mL)(pH4.5〜5.0)中で再懸濁した、水から凍結乾燥したMDP(10mg)と、MES(pH4.5〜5.0)に溶解した0.5mLのEDC(0.5mg〜2mM)とを混合して、15分間室温で反応させる。2−メルカプトエタノール(終濃度20mM)を加えてEDCをクエンチし、遠心より分離した。反応混合物をMESで1回洗浄し、0.5mLのMES(pH4.5〜5.0)中で再懸濁した。MES中に溶解したヒトλ軽鎖断片を活性化したMDPに約2:1のモル比で加えた。MES(0.5M、pH8.5)を加えることにより、反応物の pHを15分間かけて8.5にゆっくりと再生し、室温で2時間反応させた。MDPに加えたλ軽鎖断片の濃度をMDP末端COH基の定量解析から算出し、MDP1mgあたりのCOHのモル数で表した。ヒドロキシルアミンを終濃度10mMになるまで添加することにより、反応をクエンチした。このクエンチの方法は、いずれの未反応MDP活性化部位をも加水分解し、もとのカルボキシルの再生をもたらした。クエンチの他の方法には、20〜50mM Tris、リシン、グリシンまたはエタノールアミンの添加が含まれるが、これらの1級アミン含有化合物は、修飾されたカルボキシルMDPを生じるであろう。MDPをHIV合成ペプチドと共に使用し、そのペプチドの疎水性を変化させるまたは生物活性化合物を結合させるなどの修飾が望ましい場合は、最終のクエンチ工程の前に、所望の化合物を加えることにより、修飾を行うことができる。これは、HIVペプチドとの最初のカップリングの後に所望の化合物を連続的に付加することを可能にする。ペプチド免疫一般性(immunogenerity)のより高い制御が望ましい場合は、生物学的に活性なペプチドを、HIVペプチドに対して所望の割合で単一の工程として加えることができる。IL2などの生物学的応答修飾剤が当業者によく知られており、この目的のために使用することができる。
遠心、洗浄工程、および選択した緩衝液中での再懸濁により、分離した。
【0126】
MDP−COH−免疫原―NHの調製
MDP:NHCHCHNH:COH:免疫原:NHの合成
EDCを用いるタンパク質とムラミルジペプチドの有効な3段階カップリングのためのプロトコル
この方法は、タンパク質をEDCにさらしてタンパク質のアミノ基に影響を及ぼすことなく、タンパク質またはペプチドをMDPに連続的にカップリングさせることを可能にする。この方法は、連続的に行う2つの中間工程を用いる。最初の反応は、MES(pH4.5〜5.0)中で行う。pH4.5のMES0.5mL中で再懸濁した水から凍結乾燥したMDP(10mg)と、MESに溶解した0.5mLのEDC(0.5mg〜2mM)を混合して、室温で15分間反応させた。2−メルカプトエタノール(終濃度20mM)の添加により過剰のEDCをクエンチし、活性化したMDPを遠心より分離し、MESで2回洗浄し、0.5mLMES(pH4.5)中に再懸濁した。MES(pH4.5)に溶解したジアミノエタン(NHCHCHNH)を、活性化したMDPに約10:1のモル比で加えた。MES(0.5M、pH8.5)を加えることにより、pHを15分間かけてゆっくりと上げ、室温で1時間反応させた。MDP:NHCHCHNHを遠心によって分離し、MESで2回洗浄し、pH4.5のMES0.5mLに再懸濁した。 pH4.5のMES0.5mL中に懸濁したλ軽鎖断片およびMESに溶解した0.5mLのEDC(0.5mg〜2mM)を加え、室温で15分間反応させた。過剰のEDCを2−メルカプトエタノール(終濃度20mM)を加えることにより過剰のEDCをクエンチし、活性化したタンパク質を適当なサイズゲル濾過カラムを用いるサイズクロマトグラフィーにより過剰な還元剤および不活化した架橋剤から分離した。活性化されたタンパク質を、約5:1のモル比で活性化されたMDP:NHCHCHNHに加え、室温で約2時間反応させた。MDPに加えたタンパク質の濃度をMDP末端COH基の定量分析から計算し、MDP1mgあたりのCOHのモル数で表した。ヒドロキシルアミンを終濃度10mMになるまで添加することにより、反応をクエンチした。このクエンチの方法は、いずれの未反応MDP活性化部位をも加水分解し、もとのカルボキシルの再生をもたらした。HIV合成ペプチドを免疫原として使用し、そのペプチドの疎水性を変化させるまたは生物活性化合物を結合させるなどの修飾が望ましい場合は、修飾を上記のように行うことができる。遠心、洗浄工程、および選択した緩衝液中での再懸濁により、分離した。
生物活性化合物は、COH基を介する結合が望ましい場合、上記の中間の工程を必要し得ることに注意する。
【0127】
実施例6
フロイント完全アジュバント、RIBI(商標登録)、Titer Max(商標登録)およびミョウバンを含む市販のアジュバントに対するMDP免疫原コンジュゲートの比較試験
このMDP微粒子(0.1μ)の抗体産生に対するアジュバント効果を、上記実施例に記載された弱免疫原性モノクローナルヒトラムダ軽鎖断片(Mr−18,000)を免疫原(I)として用いて調べた。2つのコンジュゲートを作成した。1つは免疫原がカルボキシル末端基を介してMDPに共有結合しているものであり、もう1つはアミノ末端基を介して結合している。
ウサギ(各群n=5)を、500μgのMDPに結合させスクアレン中に乳化させたラムダ軽鎖約100μgで皮下免疫した。動物は、1ヶ月ごとに免疫し、期間中免疫前および2週間ごとに試験血液を得た。MDP:NH−I−COHおよびMDP:NHCHCHNH:HO2C−I−NHに対する抗体応答は、活性において比較可能であった。しかし、MDP:NH−I−COH刺激されたウサギは、競合EIAによって測定される少なくとも1つの更なる抗体特異性を産生した。得られた抗体応答を、フロイント完全アジュバント、Ribi(商標登録)、Titer Max(商標登録)およびミョウバン(水酸化アルミニウム)を含む慣用のアジュバントを抗体応答に使用した場合に得られた応答と比較した。MDP:HO2C−I−NHおよびMDP:NH−I−COHは、抗体の誘導において、免疫原を用いる慣用のアジュバントによりも有意に優れていた。免疫原濃度(100μg/免疫)および免疫計画は、すべてに群において同一にした。表6.1は、2週間おきに測定した抗体力価を示し、力価は、上記の陽性反応を生じる希釈率の逆数で示した。MDPコンジュゲートは両方とも慣用のよく知られたアジュバントよりも優れていた。
【表5】

T−0=最初の免疫および免疫前の血液採取
MDP:I ムラミルジペプチド:免疫原微粒子(0.2m)
* ペプチドを、カルボキシ末端が曝露しているイソグルタミンと、アミノ末端基において結合させた。(MDP:I:COH)
+ ペプチドを、ジアミノエチレンを用いてMDPのカルボキシ末端を修飾する中間の工程を経て、カルボキシ末端において結合させた。(MDP:I:NH
【0128】
実施例7
MDP:NH:I:COHおよびMDP:NHCHCHNH:O2HC−I−NH免疫原によって誘導された末梢血単核球細胞のサイトカイン応答
MDP微粒子免疫原複合体に対する抗体応答の増加に関連する機構をさらに調べるために、サイトカイン産生たは末梢血単核球細胞を測定する in vitro 法を使用し、既知のサイトカイン誘導物質と比較した。リポ多糖(LPS)およびLPSおよびフィトヘマグルチニン(PHA)を、既知のサイトカイン誘導物質として使用した。サイトカインをよく確立されたアッセイを用いて定量し、単位/mLとして表した。末梢血単核球細胞をFicol Hypagueグラジェント遠心によって単離し、組織培地中2×10/mLの濃度に調整した。細胞(100μL)をマイクロカルチャーウェルに入れた。MDP:I:COH、MDP:I:NH、PHA+LPS、LPSおよび培地単独を、希釈することなくまたは1:10および1:25(10μL)に希釈して加えた。培地を、5%CO雰囲気下、37℃で48時間インキュベーションし、上清を除き、標準のバイオアッセイおよび/またはEIA法により分析した。
【表6】

MDP:I:COHおよびMDP:I:NHは両方とも、LPS+PHAまたはLPS単独よりも高いI型サイトカイン応答を刺激した。1型サイトカイン応答は免疫事象を増強し、2型サイトカイン応答はIFNガンマおよびIL2の上昇とTNFおよびIL6の低いレベルによって示される。
【0129】
実施例8
未処理および処理により炭水化物部分を除去したHIVタンパク質に対するヤギにおける抗体応答のキャラクタリゼーションおよびMDP微粒子のアジュバント特性と慣用のアジュバントの比較
実施例8.1
HIV1MN、HIV1BALおよびHIV2NZウイルスリゼートを、Advanced Biotechnologies Inc., Columbia, MD.より購入し、各調製物の1/2を酵素的に処理して炭水化物を除去し、すべての調製物(炭水化物有りおよび無し)を上記のように精製した。それぞれのアリコートを、実施例5に記載した方法にしたがってアミノ末端残基を介してMDPに結合し、個々にスクアレン中に懸濁した。比較のため、これらのHIVタンパク質をさらに、MDPに結合させることなくフロイント完全アジュバント中で乳化した。
群1−HIV1MN、HIV1BAL1:1、炭水化物除去なし;
群2−HIV1MN、HIV1BAL1:1、炭水化物除去あり;
群3−HIV2NZ、炭水化物除去なし;
群4−HIV2NZ、炭水化物除去あり;
群5−HIV1MN:HIV1BAL:HIV2NZ、1:1:1、炭水化物除去なし;
群6−HIV1MN:HIV1BAL:HIV2NZ、1:1:1、炭水化物除去あり;
群7−HIV1MN:HIV1BAL:HIV2NZ、1:1:1、炭水化物除去なし、およびMDPに結合せずにフロイント完全アジュバント中で乳化した;
群8−HIV1MN:HIV1BAL:HIV2NZ、1:1:1、炭水化物除去あり、MDPに結合させてフロイント完全アジュバント中で乳化させた。
【0130】
ヤギを免疫群1〜8(各n=3)に階層化し、表8.1に示した間隔で100μgHIV/免疫によりそれぞれ免疫した。血液試料を、免疫前および2週間ごとに得た。抗体反応性を、Abbott LaboratoriesよりFDA承認の商業的に入手可能な試験キットを用いてEIAにより定量した。結果は、吸光度>1.0を生じる抗血清希釈率の逆数で示した。
【表7−1】

抗体応答は、免疫の期間中2週間間隔で測定した。EIAにより測定すると、MDPを使用した個々の動物群の間(群1および2、群3および4、群5および6)で抗体反応性における有意の違いはなかった。炭水化物の除去は、所望の抗HIVタンパク質に対する抗体の産生には効果がなかった。
【0131】
実施例8.2
実施例8.1に記載したように得られた抗血清を赤血球凝集抗体について調べた。表8.2から分かるように、HIVタンパク質からの炭水化物除去は赤血球凝集応答を喪失させた。
処理により炭水化物基を除去したHIV調製物は、赤血球細胞を凝集することができる抗体反応性を生じなかった(表8.2A)。炭水化物減少なしのMDP−HIVコンジュゲートで免疫したヤギ、およびフロイント完全アジュバント中で乳化させた炭水化物減少なしの精製HIVで免疫したヤギは、赤血球凝集素を産生した。MDP−HIVコンジュゲートまたはフロイント完全アジュバント中で乳化させたHIVで免疫したヤギ由来の抗血清中の赤血球凝集素の、力価における検出可能な違いはなかった。ここに記載の赤血球凝集素は、実施例2の予備実験において記載したものと本質的に同一である。これらの凝集素は、細胞毒性である(表8.2A)。しかし、HLAクラスIまたはクラスIIに対する検出可能な抗体反応性はなく、赤血球細胞による吸収は赤血球凝集および細胞毒性抗体反応性の両方を完全に除去した。
【表7−2】

【表7−3】

HIVとRBCの炭水化物基の間の模倣性の可能性について調べるために、更なる抗血清を、ヒトの赤血球細胞から単離した、精製しプールした細胞膜からなる免疫原によってヤギを免疫することにより製造した。この抗血清を用いるウェスタン・ブロット解析は、赤血球細胞糖タンパク質(〜Mr35,000)に対する反応性を示し、HIVgp41およびgp120と反応した。しかし、処理により炭水化物基を除去したHIVgp41およびgp120は反応しなかった。これらのデータは、HIVの炭水化物エピトープと赤血球細胞糖タンパク質との間の系統進化的な模倣性に一致する。
ウエスタン・ブロット解析は、gp160、gp120、gp41、p66/55、p10、p24、p17およびp7を含むHIVタンパク質の大部分に対して強力な反応性を示した。本明細書に開示されたHIVエピトープに対するこれら抗体の反応性または特異性において明らかな違いはなかった。これらの抗体は、逆転写酵素およびプロテアーゼの阻害剤に対する耐性を有することが示されているものを含めて、試験したすべてのHIV単離物と反応した。
【0132】
実施例8.3
炭水化物を減少させたHIVに対して産生した抗体によるHIV感染性の中和
この実施例は、上で開示した炭水化物を減少させたHIVに対して産生した抗体を使用するHIV感染性の中和を記載し、特徴付ける。結果は、これらの抗体が高いレベルの中和活性を含み、CEM細胞を感染から用量依存的に保護することを示している。
中和アッセイ:
高感度の中和アッセイを用いて、HIV感染性に対するヤギ抗HIVの効果を定量した。HIV感染に対して感受性の高いCEM CD4細胞系を標的細胞として選択し、HIV感染性に対するこの抗体の効果を測定した。抗体および希釈は、10%ウシ胎児血清を含有するRPMI培地中で必要なように行った。HIV1SF2の懸濁液を、対数増殖期のCEMの約4日間カルチャーから回収し、0.2または0.45ミクロンのフィルターで濾過し、アリコートに分け、−70℃で保存した。1つのアリコートを解凍し、滴定してTCID50を測定し、後のアッセイは、新たに解凍し、培地中1:500に希釈して濃度をCEM細胞の50%の感染に必要な量の約10倍(10TCID50)にすることにより行った。ウイルスの懸濁液を、1:5〜1:9,765,625の抗体の5倍希釈系列の同体積(250μL)と混合した。ウイルス/抗体混合物を37℃で60分間インキュベーションし、200μLの試料2つ一組を使用して、ウェルあたり約2×105個のCEM細胞1.0mLを含むウェルに接種した。カルチャーを、37℃の加湿5%CO雰囲気下で14日間インキュベーションした。細胞を回収し、ペレット化し、PBS中の1%Triton X−100で約10分間溶解した。溶解した細胞中に存在するウイルス(ウイルス抗原)の量を、商業的に入手可能なp24アッセイを用いて定量した。中和活性の力価は、抗体なしまたは同様の方法で調製したヤギ免疫前IgGとインキュベーションした、ウイルス対照カルチャーのp24抗原産生を50%以上阻害する抗体の希釈率の逆数として決定した。溶解した細胞懸濁液200μLを分析した。
【表8−1】

最も高い中和活性を有する抗HIV調製物は、炭水化物決定因子を除去する処理を行わなかったHIV−MDPコンジュゲートに対して産生した(表8.3A)。炭水化物を減少させたHIVコンジュゲートに対する抗体の赤血球細胞吸収は効果がなかった。しかし、炭水化物が自然のままのHIVコンジュゲートに対する抗体のRBC吸収は、中和反応性における有意の減少をもたらし、HIVとヒトとの間で共有される系統進化的に存在する炭水化物部分の存在が確認された(表8.3Aの最終行)。HIV−MDPコンジュゲートに対して産生したすべての抗HIV抗体調製物は、フロイント完全アジュバントを使用して産生した抗HIVよりも統計学的に高かった。HIVの特徴的な予想される遺伝子の変異性のため、20週目の調製物に由来する抗HIVを、HIVMN、および上記と同一の条件下で多剤耐性型株として特徴付けられた1つを含む4つのHIV野生型単離物を用いて中和活性について試験した。炭水化物を欠くHIVコンジュゲートに対して産生した20週目の抗体調製物由来の抗HIVは、すべての株を中和した(表8.3B)。
当業者は、HLAを減少させた、炭水化物を減少させたHIVタンパク質に対して産生した中和活性は、ヒト抗HIV血清において概して観察される中和活性よりもかなり高いことを認識するであろう。
【表8−2】

【0133】
実施例8.4
抗体依存補体介在細胞毒性におけるHIV感染したCD4リンパ球に対する抗HIVの効果
炭水化物を減少させたおよび炭水化物が自然のままのHIVコンジュゲートに対する抗体を、HIVに感染したおよび感染していないCD4リンパ球に富む正常な末梢血単核球細胞に対する補体介在細胞毒反応性について調べた。正常な末梢血単核球細胞を単離し、Ficol Hypagueグラジェント遠心に付し、CD4リンパ球を濃縮した。CD4リンパ球をPHAで刺激し、HIVMNによりミクロカルチャー中7日間感染させた。上清を除き、糖基を除去した、正常な細胞に対する細胞毒性を持たないことが分かっているHIV調製物に対して産生した抗HIVで置換した。表8.4に示されるように、抗HIVは、感染したCD4リンパ球を用量依存的に溶解した。
【表9】

【0134】
実施例8.5
HIVタンパク質のアミノ酸配列に対応するペプチドの合成
合成ペプチドを、HIV1SF2のアミノ酸配列を模擬する12マーのペプチドとして構築した。gp120、g41、Vif、gag p17、gag p24、nef、Rev、インテグラーゼ、プロテアーゼ、Tat:HxB2および逆転写酵素および6つのアミノ酸残基が重複している逆転写酵素のアミノ酸配列は、Purification Systems, Inc.によって固相技術を用いて合成され、そこから購入した。
触媒量の4−N,N−ジメチルアミノピリシンによりジシクロヘキシルカルボジイミドを用いてポリスチレンにカップリングしたブチルオキシカルボニル−S−4−メチルベンジル−L−シスチンを、合成のための固相担体として使用した。tert-ブチルオキシカルボニル(t−BOC)でアミノ基を保護し、側鎖を保護基は以下の通りであった:セリンの水酸基に対してはベンジルエーテル、チロシンのフェノール性カルボキシル基に対してジクロロベンジルエーテル、およびグルタミン酸およびアスパラギン酸のそれぞれのカルボキシル基に対してβベンジルエステルを使用した。トリフルオロ酢酸(CHCl中40%)を使用してt−BOCを脱離し、生成した塩をN−ジイソプロピルエチルアミン(CHCl中10%)で中和した。ジイソプロピルカルボジイミドを使用してt−BOCアミノ酸をカップリングさせた。保護基を除去し、10%アニソールおよび1%エタンジオールをスカベンジャーとして含む無水フッ化水素により、0℃にてペプチドを樹脂から開裂させた。フッ化水素試薬を真空下で0℃にて除去した後、ペプチドを沈殿させ無水エーテルで洗浄した。トリフルオロ酢酸によりペプチドを樹脂から抽出し、溶媒を15℃で蒸発させ、ペプチドを再びエーテルで沈殿させた。エーテルを遠心後に傾斜し、ペレットを5%酢酸および6MグアンジジンHCl中に溶解した。この溶液を5%酢酸中で平衡化した BioGel F2カラムで脱塩し、ペプチドを含む画分をプールし凍結乾燥した。必要に応じシステイン残基をペプチドのカルボキシル末端に付加し、ペプチドと担体タンパク質またはEIA法のための固相支持体またはMDPとの結合のために機能性SH基を与えた(実施例5)。ペプチドの多重反復が望まい場合、最初にシステイン残基を樹脂支持体に結合することにより合成を行った。様々な長さの炭素スペーサーを付加した;変化させるスペーサーの長さの選択は適用法、ペプチドの電荷、長さおよび支持体へのペプチドの結合から得られた予備データから予想される立体的影響に依存する。6−アミノヘキサン酸などの6炭そのスペーサーを、ジアミノエタンについて実施例5で上記したように、最初にリシン−(リシン)2−(リシン)4付加物と結合したが、保護基ブロッキングの順序は変更した。アミノ基を保護した後、脱保護し、2つのリシン残基が脱保護した末端に結合するのを可能にした。脱保護した後リシン付加を行い、ペプチド合成のための分岐鎖構造を構築した。特異的な生物学的機能または酵素的分解を受けやすい配列を有するペプチドを、D−アミノ酸の付加により修飾した。1つの特に有用な付加は、D−イソグルタミンのNH末端から合成した目的のペプチドへのL−アラニン−D−イソグルタミンの付加である。別の形態では、ペプチドをL−リシン−L−リシン−ペプチド−D−イソグルタミンにより合成した。カルボキシ末端のリシン基は、微小環境において多くの酵素による酵素分解を受けやすく、一方D−イソグルタミンはペプチドの半減期の増加と、レセプター結合およびMHC関連事象による免疫誘導などの機能を誘導する両親媒特性を必要とするペプチドを構築する疎水性部位の両方を与える。ペプチドから担体タンパク質への結合効率を測定し、精製の間ペプチドを同定するための125Iヨウ素による放射性標識のために、チロシン残基をアミノ末端に付加した。ペプチド機能がチロシン付加によって影響を受けない場合、125Iはさらに、生物学的系においてペプチドの半減期を追跡し、レセプター結合を評価するトレーサーも提供した。
【0135】
実施例8.6
ウイルスエピトープの同定のための、HIVおよび他のレトロウイルスのペプチド配列を模擬する合成ペプチドの使用
本発明の範囲内で、HIVおよび他のレトロウイルスにみられる高度に保存された配列を模擬する合成ペプチド配列を開示し、ウイルス感染の処置における免疫学的標的としてのその機能的な有意性を同定する。これらのペプチドは、免疫反応の非特異的な下方調節、自己免疫の誘導、HIV関連末梢神経障害へと導く毒性作用によってHIVの病原の一因となる配列を有するHIVミクロ変異体から生じるHIV感染の診断および管理において更なる応用性を有する。患者において存在するときにこれら事象のそれぞれはHIVの病原の一因となり、生活の質を低下させる。そのような事象を開始するHIVペプチド領域を同定し定量するために使用される合成ペプチドは、自己免疫および末梢神経障害の危険因子を同定することにおいて有用である。合成ペプチドは、疾患の進行および処置の結果としての進行の変化を監視するための新規の分析方法において更なる有用性を与える。
本発明の1つの工程において、酵素イムノアッセイ(EIA)を、ヒト抗HIVによって認識されないHIVに対するヤギ抗体特異性の同定のために構築した。HIV1gp120およびgp41タンパク質の精製された調製物を、37℃で20時間インキュベーションすることにより、リン酸緩衝生理食塩水(PBS< pH7.8)中5μg/mLでポリビニルマイクロタイタ−プレートのウェルに被覆した。ウェルを0.1%Tween20を含むPBS(PBS/Tween)で洗浄し、それぞれのウェルの結合しなかった部位を、5%ウシ血清アルブミンで37℃で1時間インキュベーションすることにより飽和した。プレートは直ちに使用するか、または4℃で保存した。ヒトIgG抗HIV(100μL)(実施例1)をそれぞれのウェルに加え、4℃で25時間インキュベーションし、ウェルをPBS/Tweenで洗浄した。標準的な方法によりあらかじめ製造しHRPで標識されたヤギ抗HIVを、アッセイの条件(1:10000力価)において1.0の吸光度が得られるに必要な希釈率でウェルに加え、4℃で24時間インキュベーションした。ウェルを洗浄し、基質を加えてヤギIgGの結合量を測定した。ヒト抗HIVによるHIVのブロッキングにより誘導される結合の百分率阻害を式を用いて計算した。
【数14】

ヒト抗HIVによるヤギ抗HIV−HRPコンジュゲートの最小のブロッキングは、ヒト抗HIVとは異なったヤギ抗HIVの結合を示した。
【0136】
別の工程では、EIAを構築して、ヤギ抗体に対して免疫原性であるがヒトの抗体に対しては免疫原性でないHIVタンパク質上のエピトープを同定した。HIV1gp120およびgp41タンパク質の精製した調製物を、37℃で20時間インキュベーションすることによりポリスチレンビーズに5μg/mLで被覆した。ビーズを0.1%Tween20を含有するPBS(PBS/Tween)で洗浄し、それぞれのビーズの結合しなかった部位を、37℃で1時間インキュベーションすることにより5%ウシ血清アルブミンで飽和した。ビーズは直ちに使用して4℃で保存した。ヒトIgG抗HIV(100μL)(実施例1)をそれぞれのビーズに加え、4℃で24時間インキュベーションした。ヒトIgG抗HIV(100μL)(実施例1)を各ビーズに加え、4℃で24時間インキュベーションし、ビーズをPBS/Tweenで洗浄した。合成ペプチドをウシ血清アルブミン(5mg/mL)および0.1mg/mLの濃度のTween20(0.1%)を含有するPBSに溶解した。ペプチド(25μL)をヤギ抗HIV IgG−HRPコンジュゲート溶液(100μL)に加え、4℃で24時間インキュベーションした。次いで、混合物をHIVで被覆した2組のビーズに加えた。1組は、HIVで被覆した2組のビーズに加えたヒト抗HIVでブロックした。1組は、ペプチドをヤギ抗HIV−HRPコンジュゲートに加えたときと同時に加えたヒト抗HIVでブロックした。反応物質を添加したビーズを4℃で24時間インキュベーションした。インキュベーション後、ビーズを洗浄して、ペルオキシダーゼ活性を上記のように測定した。活性をHIVタンパク質内のペプチドの位置に対してプロットした。これらのプロットは、ヒト抗体によって認識されないヤギHIV免疫IgGにより標的化されるHIVタンパク質の領域を示した。結合の阻害が特定の合成ペプチドについて観察された場合、更なるペプチドを合成して、更なる長さのペプチドによってもとのペプチドに重複させた。合成ペプチドによる阻害の欠失は、ヤギ免疫系による免疫原性標的化の欠失の存在を示すと考えられた。この方法を用いて、直鎖状のペプチドエピトープを試験のために選択した。
【0137】
本発明の別の好ましい方法では、EIAを構築して、以下に開示するように製造したペプチド−ペルオキシダーゼコンジュゲートを使用し、ヤギによって認識されるがヒトの免疫系によって認識されないHIVタンパク質上のエピトープと反応する抗体を同定した。HIV配列を模擬するペプチドをHRPに共有結合的に結合して、抗体特異性のマッピングに使用するための酵素標識したペプチドライブラリーを製造した。具体的には、HRPを、HRP 1:ペプチド 10の計算されたモル比で試験管に入れた。カップリングするべき各ペプチドをマイクロチューブに、それぞれ所望のコンジュゲートの量およびペプチドの分子量によって変わる0.1〜1μmole/mLの濃度、0.1〜1mLの体積で個々に入れた。1〜10μmole/mLの濃度のHRPを、4℃の0.1M炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.8)に溶解し、過ヨウ素酸ナトリウムを加えて最終濃度0.02Mにした。混合物をペプチドを含むマイクロチューブに直ちに入れ、ペプチドを混合し、30分間反応させた。エチレングリコール(0.02M)を加えて、残りの過ヨウ素酸ナトリウムをクエンチした。ペプチドのアミノ末端とHRP炭水化物部分の酸化によって形成したアルデヒドとの間で形成したシッフ塩基中間体を、水中のホウ水素化ナトリウム(0.2M)の添加によって還元した。セファデックスG25中での各ペプチド−ペルオキシダーゼコンジュゲートのクロマトグラフィーを用いて、反応物と過剰のペプチドを除去した。
【0138】
HIVエピトープと反応する抗体は、ペルオキシダーゼに結合した合成ペプチドエピトープと反応し得る抗原結合部位を保持するので、この好ましいアッセイにおいて抗体を使用し、HIVウイルスリゼートから調製したHIVタンパク質上で同定されたエピトープとHRPに共有結合した合成HIVペプチドとを架橋させた。ビーズを上記のようにHIVタンパク質で被覆した。被覆されたビーズはヤギ抗HIVIgGと24時間反応させ、ビーズを洗浄し、基質と反応させてペルオキシダーゼ活性したがってペプチド結合を測定した。この方法によって、合成ペプチドに含まれるまさにそのエピトープのみが認識される。このアッセイにおいて、ヤギ反応性の完全なレパートリーを同定した。ヒト抗HIVおよびヤギ抗HIV反応性を比較し、ヤギ抗HIVとのみ反応するペプチドをエピトープ標的候補として選択した。これらのデータは、反応性の間での相違とHIVタンパク質のアミノ酸ペプチド配列相同性の間での変化が、合成ペプチドの選択にとって二次的なエピトープ反応性の消失をもたらし得るので、HIVタンパク質に対するヒトとヤギとの間の反応性の相違すべてを包含しているものであるとは考えられなかった。
【0139】
実施例9
治療剤としての抗体の効力
免疫化学的に設計した抗体の群について試験を行い、HIV/AIDSの処置のための治療剤としての抗体の効力を測定した。具体的には、HIV単離物HIV1MN、HIV1BALおよびHIV2MZのリゼートの混合物を、実施例3のように処理して低分子量の汚染物質およびHLAクラスIとクラスII抗原を除去し、HIVタンパク質を脱グリコシル化した。タンパク質混合物を分析し、HIV1SF2タンパク質の以下の領域を模擬するペプチドを見い出だした:
gp120:アミノ酸残基4〜27のエピトープ領域およびアミノ酸残基54〜76の第2のエピトープ領域;
gp41:アミノ酸残基502〜531のエピトープ領域;
逆転写酵素ヘテロダイマーp66/55:アミノ酸残基254〜295のエピトープ領域;
プロテアーゼp10:アミノ酸領域69〜94のエピトープ領域;
Gag遺伝子タンパク質p24:アミノ酸領域166〜181のエピトープ領域;
Gag遺伝子タンパク質p17:アミノ酸領域2〜23のエピトープ領域およびアミノ酸領域89〜122の第2のエピトープ領域;
Gag遺伝子タンパク質p7:アミノ酸領域390〜41および438〜443のエピトープ領域。
これらのアミノ酸配列は、感染を経由してまたは周囲の環境を自然に経由して接触したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないが、他の哺乳類の種において免疫応答を誘導する。
精製され処理されたタンパク質を濃縮し、調製用SDS−PAGE電気泳動、および所望により、当分野に知られた方法を用いてそれぞれ個々にセファロースCL4Bに結合させたgp120、gp41、pp66/55、p24、p17およびp10に対する商業的に入手可能な(ICN Costa Mesa, CA and Advanced Biotechnologies, Columbia, MD)モノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーによってさらに精製した。精製の後、それぞれの精製した目的のHIVタンパク質ペプチドを、実施例4に記載のとおりにMDP微粒子に個々に結合させた。HIV−MDP微粒子コンジュゲートを、生理学的生理食塩水中に約1mgタンパク質/mLの最終濃度で等モル濃度の各HIVタンパク質/ペプチドを含むカクテルとして製剤化した。HIV−MDPカクテル(0.5mL)をスクアレン(0.05%Tween80を含む1.5mL)中に乳化し、60頭のヤギに1頭につき4〜6箇所腹腔内注射した。ブースター免疫を1ヶ月ごとに投与し、所望の抗体応答を達成した。1ヶ月ごとの血清試料を、毎月のブースター前にそれぞれのヤギから得、ウエスタン・ブロット解析、HIV中和および実施例8.6に開示した酵素イムノアッセイによって試験した。所望の抗体応答が達成されたら、Baxter A 201-A401 Autophresis 装置を用いて、ヤギを頚静脈からプラズマフェレーシスした。ヤギの赤血球細胞を生理学的生理食塩水中に戻した。それぞれのプラズマフェレーシスで各動物から集めた血漿の体積は、350mL±5.0mLであった。
【0140】
ヤギ免疫血漿をオクタン酸により分画した後、塩酸によりpHを4.8に調整した。混合物を遠心し、活性化したチャコールフィルターで濾過して塊を除去し、オクタン酸のレベルを0.05%以下まで減少させた。免疫グロブリン(IgG)を含む画分を一連のカラムに通すことによりさらに精製した:
1.20mMリン酸緩衝液を用いるセファデックスG25
2.リン酸緩衝液中で平衡化した Whatman DE53によるイオン交換
3.0.9%生理食塩水中で平衡化したセファデックスG25。
最終のカラム濾液を滅菌濾過し、次いで濃縮または希釈して、所望の生物学的活性が10mgIgG/mLの最終濃度にした。SDS−PAGEおよびウェスタン・ブロット解析は、gp120、gp41、p51/66、p24、p17、p7およびp10の7つの別個のウイルスタンパク質について、1:100希釈でヤギIgG免疫グロブリンの反応性を示した。HIV中和に関する解析は、実施例8.3に開示したように、HIV1実験室株および野生株の広い中和を示した。実施例8.3に開示した酵素結合イムノアッセイによる解析は、1:1000またはそれ以上の試料希釈率で所望の9つのエピトープに対して陽性の反応を示した。これらの基準を満たす製品ロットは、商品名HRG214が与えられているものであった。これは、開示されている通り添加剤なしで0.9%塩化ナトリウムに懸濁された、滅菌されピロゲンを含まない10mg/mLの濃度のヤギIgGからなるものである。それぞれの製品ロットを本明細書に開示した参照ロットと比較し、HRG214活性の当量を決定した。効力をmg当量/mLで表す。
【0141】
18歳以上の男性および妊娠していない女性を、AIDS判定基準、臨床的徴候、および試験に入る30日前以内のCD4Tリンパ球数<300細胞/μLに関する、彼等が受けたウェスタン・ブロットにより記録されるHIV感染の血清学的診断に基づいて選択した。臨床的および実験室的パラメーターを効力の評価に使用した。臨床的パラメーターには、日和見感染の変化、体重の変化、便の硬さおよび頻度を含む胃腸機能の変化、エネルギーレベルの変化、食欲の変化、体力および持久力、および生活の質における全体的な変化が含まれる。実験室的なパラメーターには、CD4およびCD8リンパ球数における変化、選択された血液学、血液化学および尿検査、および可能ならばPCRによるウイルスRNAの測定によるウイルス負荷の変化が含まれる。
【0142】
試験結果は、免疫化学的に設計した抗体タンパク質の使用によって、患者は、日和見感染の減少、体重の増加、ひどい下痢の減少を含む胃腸機能の変化、エネルギーレベルの増加、食欲の増加、体力および持久力の改善、および生活の質に置ける全体的な改善といった臨床的な改善を示した。実験室的パラメーターは、CD4およびCD8リンパ球数の増加、血液学、血液化学および尿検査の数における改善、ならびにPCRによるウイルスRNAの測定によるウイルス負荷の減少およびTCIDにより測定した場合の感染性の減少といった改善を示した。
試験の詳細な実験結果は、添付の表9.1〜9.13に記載する。
【0143】
実施例9.1
HIV感染した患者の処置におけるHRG214の毒性および効力の臨床的評価
25人のHIV感染した患者をHRG214で処置した。HRG214は、HIVウイルス負荷を減少させ、疾患の進行および症状を改善する効力について試験した。患者を、CD4数/mm(<200および≧200)および治療計画によって階層化した:
群1:HRG214、CD4<200、n=11;
群2:HRG214および1ヶ月ごとの再処置、CD4<200、n=6;
群3:HRG214および進行時の再処置、CD4<200、n=5;
群4:HRG214、CD4>200、n=7;
群5:HRG214および進行時の再処置(患者に悪性腫瘍に対する化学療法を実施)、CD4<200、n=6;
群6:プラシーボ対照、CD4>500、n=19;
群7:プラシーボ対照、CD4>200〜500、n=3。
【0144】
処置群の患者には、1〜1.5mg/kg体重のHRG214を21〜28日間毎日点滴した。CD4<200の患者は、1ヶ月に3日再処置したか(n=6)またはHIV進行が明らかなときに再処置した(n=11)。副作用は2°F以下の微熱、悪寒、頭痛、および筋肉痛などに限られた。処置中および処置後の臨床化学および血液学的測定は、すべての患者において、90日間変化なしのままかまたは改善した。28人の患者を栄養状態について試験した。24人が2〜22lbs、平均で4.4lbs 体重が増加した(p=0.0014)。悪性腫瘍に対して全身的な化学療法を受けた6人の患者のうちの4人は、安定を維持したか(n=2)、または体重が減少した(それぞれ2および6lbs)。体重の増加は、血清総タンパクとアルブミン測定値の増加に直接相関した。HIV−RNA測定値は、すべての処置群において減少した。
【表10】

CD4/mm減少の割合は、時間の経過とともに、対照群6および7と比較するとすべての処置群において減少した(p<0.01)。持続的なCD4増加が群2、3および4において観察された。ミクロカルチャーによって測定した感染性の測定値(TCID)は、HIV−RNA量の測定値には示されていない7〜14日目の処置によって2 logの感染性の減少を示した(p<0.001)。食欲およびスタミナの増加、並びに慢性疲労症候群、下痢、吸収不良、カンジダ症、CMV(網膜炎を除く)、単純ヘルペスおよび帯状ヘルペス、皮膚伝染性軟疣、口腔毛様細胞白血病、消耗症候群、細菌性毛包炎、および肺炎およびHIV関連末梢神経障害における顕著な改善を含む臨床的変化が観察された。
【0145】
HRG214は、HIV感染の管理を助けるための新しい薬剤を提供する。
患者群2〜5についてのデータを以下により詳細に示す:
患者群2
患者 n=6
主目的:28日間の1.5mg/kg/日の用量での投与と1か月に3回の再処置により、HIV感染のHRG214処置の安全性と効力を評価する。臨床的追跡を3年間継続する。患者は再処置オプションを繰り返し受ける。
終点:日和見感染、感染の発生率、消耗症候群、末梢神経障害における改善および異常な血液化学および血液学、CD4およびCD8における改善およびPCRにより定量したHIV−RNAの減少を含む、臨床的および実験室的パラメーターの正常化。
安全性に関する変数:血液化学および血液学および臨床的パラメーターが含まれる。
効力に関する変数:PCRによるHIV−RNA測定値、CD4およびCD8数が含まれる。
追跡期間=3年
現在までの追跡期間=>345日
試験のデモグラフィー:患者n=6;開始日10/23/95;390日目、生存=6;その後の死亡=0
患者のデモグラフィー:HIV陽性、CD4数<50/mmのAIDS判定基準
処置薬物:HRG−214 − 1.5mg/kg/日並びに毎月の再処置。
【表11】

【表12】

【表13】

【0146】
患者群3
患者 n=5
主目的:28日間の1.5mg/kg/日の用量での投与で、HIV感染のHRG214処置の安全性と効力を評価する。臨床的追跡を3年間継続する。患者は再処置のオプションを繰り返し受ける。
終点:日和見感染、感染の発生率、消耗症候群、末梢神経障害における改善および異常な血液化学および血液学、CD4およびCD8における改善およびPCRにより定量したHIV−RNAの減少を含む、臨床的および実験室的パラメーターの正常化。
安全性に関する変数:血液化学および血液学および臨床的パラメーターが含まれる。
効力に関する変数:PCRによるHIV−RNA測定値、CD4およびCD8数が含まれる。
追跡期間=3年
現在までの追跡期間=>469日
開始日6/13/95;380日目、生存=3;死亡=2;その後の死亡=0
患者のデモグラフィー:AIDS判定基準でHIV陽性の患者。患者5人のうち、5人の患者の血液がCD4<50/mm。PCRによるHIV−RNA測定値は統計的に有意な減少を示した;7日目(P=0.0179)および21〜28日目(P=0.043)。60〜90日目および120〜150日目のHIV−RNA測定値は減ってはいたが、HIV−RNA値は増加傾向にあった。5人の患者全員を再処置した(120〜150日目の間で開始する毎月の3回連続の投与)。再処置後、HIV RNA測定値における統計学的に有意の(P=0.0006)減少が250日目以降に観察された。対にして行ったT検定、Wilcoxon Signed Rank Test および Mann-Mhitney Rank Sum Testを用いて統計学的解析を行った。
開始日:06/13/95
終点:オープン
【表14】

【表15】

【表16】

【0147】
患者群4
患者 n=7
主目的:28日間の1.5mg/kg/日の用量での投与(1〜7日目および21〜23日目はIFN誘導物質とともに)で、HIV感染のHRG214処置の毒性および効力を評価する。臨床的追跡は3年間継続する。患者は再処置オプションを繰り返し受ける。
終点:OI、感染の発生率、消耗症候群など、異常な血液化学および血液学、CD4およびCD8における改善、およびPCRにより定量したHIV−RNAの減少を含む、臨床的および実験室的パラメーターの正常化。
追跡期間=3年
現在までの追跡期間=>405日
試験のデモグラフィー:患者n=7;開始日8/25/95;390日目、生存=7;死亡=0;その後の死亡=0
患者のデモグラフィー:AIDS判定基準なしのCD4数>200のHIV陽性患者
処置薬物:1.5mg/kg/日を28日間。患者は再処置のオプションを繰り返し受ける。
【表17】

【表18】

【表19】

【0148】
患者群5
患者 n=6
主目的:HRG214処置の毒性および効力を評価する。臨床的追跡は3年間継続する。患者は再処置オプションを繰り返し受ける。
終点:OI、感染の発生率、消耗症候群など、異常な血液化学および血液学、CD4およびCD8における改善、PCRにより定量したHIV−RNAの減少を含む、臨床的および実験室的パラメーターの正常化。
追跡期間=3年
現在までの追跡期間=>469日
開始日6/13/95;270日目、生存=2;死亡=4(180〜210日目の間に2人死亡、240〜270日目の間に1人死亡;270日目以降に1人死亡);その後の死亡=0
患者のデモグラフィー:CD4<200/mm血液およびカポジ肉腫の転移を含むAIDS判定基準を有するHIV陽性患者。患者に全身的な化学療法を実施した。2人の患者が180〜210日目の間に死亡し、2人の患者が240日目以降に死亡した。PCRにより定量したHIV−RNAは、60〜90、120〜150、180〜210および240〜270日目で減少を示した(p=0.018)。
対にして行ったt検定 Wilcox,Signed Rank Testおよび Mann-Mhitney Rank Sum Test をを用いて統計学的解析を行った。
【表20】

【表21】

【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するHIVタンパク質の中和または不活化領域を同定する方法であって、
(a)HIV株のリゼートからHIVタンパク質を抽出すること;
(b)該抽出物でヒトでない動物を免疫すること;
(c)該免疫した哺乳類から抗血清を得ること;
(d)ヒトHIV抗血清との競合イムノアッセイにおいて該抗血清を使用し、該抗血清によって認識されるが該ヒト抗血清中の抗体によっては認識されないHIVタンパク質の領域を同定すること;および
(e)該領域が中和または不活化領域である領域を決定すること
を含む、ヒトにおける免疫応答は誘導しないが、ヒトでない哺乳類における免疫応答を誘導するウイルスタンパク質の中和領域を同定する方法。
【請求項2】
該中和または不活化領域が、HIV単離物HIV1SF2のタンパク質の以下の領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
の1つを含むまたはそれに対してホモローガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するHIVタンパク質の中和または不活化領域上のエピトープと反応する抗体を得るための方法であって、
(a)HIV単離物のリゼートからタンパク質を単離すること;
(b)感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導する中和または不活化領域のアミノ酸配列に対応するまたは模擬するアミノ酸配列を有する該タンパク質の少なくとも1つのエピトープを同定すること;
(c)該タンパク質を生理学的に許容し得る担体と合わせること;
(d)該タンパク質および担体によりヒトでない哺乳類を免疫すること;および
(e)該免疫した宿主から該エピトープに対する抗体を得ること
を含む方法。
【請求項4】
該リゼートが処理によりHLAクラスIおよびクラスII抗原が除去されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該生理学担体と合わせる前に該タンパク質が脱グリコシル化されている、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該エピトープのアミノ酸配列が、ヒトタンパク質アミノ酸配列の一部に対応するかまたは模擬している、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
生理学的に許容し得る担体と合わせる前に該タンパク質がアジュバントと結合している、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
該アジュバントが巨大分子担体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該巨大分子担体がムラミルジペプチドの多重反復を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該ムラミルジペプチドの多重反復がL−アラニン−D−イソグルタミンの末端ジペプチドを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該タンパク質が、1を超える中和または不活化領域に対応するかまたは模擬するエピトープを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
該中和または不活化領域がエンベロープ糖タンパクまたは膜貫通タンパク質の一部を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
該中和または不活化領域の少なくとも1つがエンベロープ糖タンパクまたは膜貫通タンパク質の一部を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
プロテアーゼp10の領域を中和または不活化する領域をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該エピトープが以下の領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
を含むHIV1SF2のエピトープ領域に対応するかまたは模擬する、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
該タンパク質が1を超える中和または不活化領域に対応するまたは模擬するエピトープを含み、該エピトープが、HIV1SF2の該エピトープ領域の2またはそれ以上に対応するまたは模擬する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該タンパク質が該エピトープに富む、請求項3または11に記載の方法。
【請求項18】
該エピトープが、いずれかの2つのエピトープ間で約1:1〜最大10:1の量の比率で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
HIVタンパク質の中和または不活化領域上のエピトープと反応する抗体を得る方法であって、
(a)、HIVタンパク質の中和または不活化領域であって、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導する領域上のエピトープに対応するかまたは模擬するアミノ酸配列を有するペプチドを合成すること;
(b)該ペプチドを生理学的に許容し得る担体と合わせること;
(c)ヒトでない哺乳類を該ペプチドおよび担体で免疫すること;および
(d)該エピトープに対する抗体を該免疫した宿主から得ること
を含む方法。
【請求項20】
該ペプチドがヒトタンパク質アミノ酸配列の一部を模擬するアミノ酸配列を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
生理学的に許容し得る担体と合わせる前に該ペプチドがアジュバントと結合している、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
該アジュバントが巨大分子担体を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
該巨大分子担体がムラミルジペプチドの多重反復を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該ムラミルジペプチドの多重反復がL−アラニン−D−イソグルタミンの末端ジペプチドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ペプチドの混合物を含み、そのペプチドがそれぞれ、HIVタンパク質の中和または不活化領域であって、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導する領域上のエピトープに対応するまたは模擬するアミノ酸配列を有している、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
該ペプチドが、エンベロープ糖タンパク質または膜貫通タンパク質の一部を含む中和または不活化領域に対応するまたは模擬するアミノ酸配列を有する請求項19に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのペプチドが、エンベロープ糖タンパク質または膜貫通タンパク質の一部を含む中和または不活化領域に対応するかまたは模擬するアミノ酸配列を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
プロテアーゼp10の中和または不活化領域に対応するまたは模擬するアミノ酸配列を有するペプチドをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該ペプチドのアミノ酸配列が、以下の領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
を含む、HIV1SF2のタンパク質の中和または不活化領域上のエピトープのアミノ酸配列に、対応するまたは模擬する、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
該ペプチドが、HIV1SF2タンパク質の中和または不活化領域であって、以下の領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
を含む領域上の、少なくとも2つのエピトープのアミノ酸配列に対応または模擬する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
いずれかの2つのペプチドの量が、約1:1〜最大10:1の比率で該ペプチドが存在している、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
HIVタンパク質の中和または不活化エピトープ領域であって、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しない領域上のエピトープに対応するまたは認識するエピトープを認識しそれと反応する抗体。
【請求項33】
該エピトープが、ヒトタンパク質アミノ酸配列の一部またはニューロトキシンタンパク質アミノ酸配列に対応し、または免疫学的に模擬するアミノ酸配列を有する、請求項32に記載の抗体。
【請求項34】
該タンパク質が炭水化物を減少させたエンベロープ前駆体gp160、gp120糖タンパク質またはgp41膜貫通糖タンパク質を含む、請求項32に記載の抗体。
【請求項35】
該タンパク質が、炭水化物を減少させたgag前駆体p55または開裂したgag産物p17、p24またはp7を含む、請求項32に記載の抗体。
【請求項36】
該タンパク質が炭水化物を減少させたプロテアーゼp10または逆転写酵素ヘテロダイマーp66/55を含む、請求項32に記載の抗体。
【請求項37】
該ヒトタンパク質がアルファフェトプロテイン、アスパルチルプロテアーゼ、デオキシウリシン5'−三リン酸ヌクレオチドヒドロラーゼ、好酸球陽イオン性タンパク質、好酸球由来ニューロトキシンを含む、請求項33に記載の抗体。
【請求項38】
該抗体がHIV単離物HIVSF2の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
の1つにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する、請求項32に記載の抗体。
【請求項39】
少なくとも2つの抗体であって、そのそれぞれが、HIVタンパク質の中和または不活化エピトープ領域であって、その領域が感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しない領域上のエピトープに対応するまたは認識するエピトープを認識しそれと反応する抗体の組み合わせ。
【請求項40】
該抗体のそれぞれが、ヒトタンパク質アミノ酸配列の一部またはニューロトキシンタンパク質アミノ酸配列に対応しまたは免疫学的に模擬するアミノ酸配列を有するエピトープを認識しそれと反応する、請求項39に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項41】
該抗体の少なくとも1つが、炭水化物を減少させたエンベロープ前駆体gp160、gp120糖タンパク質またはgp41膜貫通糖タンパク質の中和または不活化領域上のエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識しそれと反応する、請求項39に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項42】
該抗体の少なくとも1つが炭水化物を減少させたgag前駆体p55または開裂したgag産物p17、p24またはp7の中和または不活化領域上のエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識しそれと反応する、請求項39に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項43】
該抗体の少なくとも1つが炭水化物を減少させたプロテアーゼp10または逆転写酵素へテロダイマーp66/55の中和または不活化領域上のエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識しそれと反応する、請求項39に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項44】
該ヒトタンパク質が、アルファフェトプロテイン、アスパルチルプロテアーゼ、デオキシウリシン5'−三リン酸ヌクレオチドヒドロラーゼ、好酸球陽イオン性タンパク質または好酸球由来ニューロトキシンを含む、請求項40に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項45】
該この少なくとも1つがHIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
の1つにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する、請求項39に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項46】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
のそれぞれにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する抗体を含む、請求項45に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項47】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域
のそれぞれにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する抗体を含む、請求項45に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項48】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
およびHIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
のうちの少なくとも1つのそれぞれにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する抗体を含む、請求項45に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項49】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する、請求項39に記載の抗体の組み合わせ。
【請求項50】
請求項45に記載の抗体の組み合わせを薬学的に許容し得る担体中に含む組成物。
【請求項51】
請求項46に記載の抗体の組み合わせを薬学的に許容し得る担体中に含む組成物。
【請求項52】
請求項47に記載の抗体の組み合わせを薬学的に許容し得る担体中に含む組成物。
【請求項53】
請求項48に記載の抗体の組み合わせを薬学的に許容し得る担体中に含む組成物。
【請求項54】
請求項49に記載の抗体の組み合わせを薬学的に許容し得る担体中に含む組成物。
【請求項55】
トキシンまたは放射性物質に結合している、請求項32に記載の抗体。
【請求項56】
ヒトT細胞活性化因子によって凝集する、請求項32に記載の抗体。
【請求項57】
3'−アジド−3'−デオキシチミジン、2',3'−ジデオキシシチジン、2',3'−ジデオキシ−2',3'−ジデヒドロシチジンと組み合わせて請求項32に記載の抗体を含む組成物。
【請求項58】
薬学的に許容し得る担体と組み合わせて請求項1に記載のタンパク質を含む組成物。
【請求項59】
該タンパク質が巨大分子担体にカップリングしている、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
該担体がムラミルジペプチドの微粒子である、請求項58に記載の組成物。
【請求項61】
薬担体とともに1またはそれ以上の請求項19の合成ペプチドを含む組成物。
【請求項62】
該ペプチドが巨大分子担体とカップリングしている、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
該担体がムラミルジペプチドの巨大分子である、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
ウイルスに感染したヒトにおいてHIVの感染を阻止する方法であって、タンパク質の中和または不活化領域であってその領域かヒトにおける免疫応答を誘導しない領域におけるエピトープに、対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する1またはそれ以上の抗体を含む組成物の、治療上有効な量を該患者に投与することを含む方法。
【請求項65】
該エピトープが、感染または周囲への曝露に遭遇したときに、ヒトのアミノ酸配列の一部に対応するかまたは免疫学的に模擬するアミノ鎖配列を有している、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
該タンパク質が、炭水化物を減少させたエンベロープゼ前駆体gp160、gp120糖タンパク質またはgp41膜貫通を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
該タンパク質が炭水化物を減少させたgag前駆体p55または開裂gag産物p17、p24またはp7を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
該タンパク質が炭水化物を減少させたプロテアーゼp10または逆転写酵素ヘテロダイマーp66/55を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
該抗体を約0.1〜約200mg/kg患者体重の日用量で投与する、請求項64に記載の組成物。
【請求項70】
抗体の組み合わせを投与し、該抗体それぞれのもう1つの他の抗体の用量に対する比率が10倍を超えない、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
該抗体それぞれの、もう1つ他の抗体の用量に対する比率が約1:1である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
該抗体が巨大分子担体に結合している、請求項64に記載の組成物。
【請求項73】
該担体がムラミルジペプチドである、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
の1つにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
少なくとも2つの抗体を投与し、該抗体のそれぞれが、HIVタンパク質の中和または不活化領域であって感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないその領域におけるエピトープに、対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する、請求項64に記載の方法。
【請求項76】
該抗体の少なくとも1つが、炭水化物を減少させたエンベロープ前駆体gp160、gp120糖タンパク質またはgp41膜貫通の中和または不活化領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する、請求項64に記載の方法。
【請求項77】
該抗体の少なくとも1つが、炭水化物を減少させたgag前駆体p55または開裂gag産物p17、p24またはp7の中和または不活化領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
該抗体の少なくとも1つが、炭水化物を減少させたプロテアーゼp10または逆転写酵素ヘテロダイマーp66/55の中和または不活化領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
のそれぞれに由来するエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
ウイルスに感染した患者においてHIVのライフサイクルにおける必須の段階を中和または不活化するための方法であって、そのそれぞれが、ヒトにおける免疫応答を誘導しないHIVタンパク質の中和または不活化領域におけるエピトープに、対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する1またはそれ以上の抗体を含む組成物の、治療上有効な量を該患者に投与することを含む方法。
【請求項81】
該エピトープ領域がヒトタンパク質アミノ酸配列の一部に対応するまたは免疫学的に模擬するアミノ酸配列を有する、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
該抗体が、HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
の1つにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
少なくとも2つの抗体を投与し、該抗体のそれぞれが、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないHIVタンパク質の中和または不活化領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域
のそれぞれに由来するエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域
のそれぞれに由来するエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域のそれぞれに由来するエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
該抗体が巨大分子担体に結合している、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
該担体がムラミルジペプチド微粒子である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
HIVに曝露した患者においてHIV感染を阻止する方法であって、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおける免疫応答を誘導しないHIVタンパク質の中和または不活化領域におけるエピトープに、対応するまたは模擬するエピトープをそのそれぞれが認識し反応する1またはそれ以上の抗体を含む組成物の、治療上有効な量を該患者に投与することを含む方法。
【請求項90】
該エピトープが、ヒトタンパク質のアミノ酸配列の一部に対応するかまたは免疫学的に模擬するアミノ鎖配列を有している、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
該抗体が、HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域
の1つにおけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識する、請求項85に記載の方法。
【請求項92】
少なくとも2つの抗体を投与し、該抗体のそれぞれが、ヒトにおいて免疫応答を誘導しないHIVタンパク質の中和または不活化領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域
のそれぞれに由来するエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域
のそれぞれに由来するエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
HIV単離物HIVSF2の以下の中和または不活化領域:
(a)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基4〜アミノ酸残基27の領域;
(b)gp120糖タンパク質のアミノ酸残基54〜アミノ酸残基76の領域;
(c)gp41膜貫通糖タンパク質のアミノ酸残基502〜アミノ酸残基541の領域;
(d)逆転写酵素p66/55のアミノ酸残基254〜アミノ酸残基295の領域;
(e)プロテアーゼp10のアミノ酸残基69〜アミノ酸残基94の領域;
(f)gagタンパク質p24のアミノ酸残基166〜アミノ酸残基181の領域;
(g)gagタンパク質p7のアミノ酸残基390〜アミノ酸残基410およびアミノ酸残基438〜443の領域;
(h)gagタンパク質p17のアミノ酸残基2〜アミノ酸残基23の領域;または
(i)gagタンパク質p17のアミノ酸残基89〜アミノ酸残基122の領域のそれぞれに由来するエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
HIVに感染したかもしれない人に由来する生物学的流体試料におけるHIVの存在を検出する方法であって、該抗体を抗体複合体形成を誘導する条件下でその人に由来する体液試料と合わせ、該抗体がHIV抗原に結合するかどうかについて測定する抗体抗原アッセイにおいて、請求項32に記載の抗体を使用することを含む方法。
【請求項97】
HIVに感染したかもしれない人におけるHIVの存在を検出する方法であって、抗体を酵素に結合し、抗体複合体形成を誘導する条件下でその人に由来する体液試料と接触させ、該抗体がHIV抗原に結合するかどうかについて測定するエンザイムイムノアッセイにおいて、請求項32に記載の抗体を使用することを含む方法。
【請求項98】
タンパク質溶液に由来するHIVタンパク質の中和または不活化領域のエピトープに対応するまたは模擬する少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質を精製する方法であって、請求項32に記載の抗体を基質または固体の支持体に固定化し、該固定化した抗体と該タンパク質を含む溶液とを、該抗体と該タンパク質との間の免疫複合体の形成に適当な条件下で接触させ、結合しなかったタンパク質を該抗体に結合したタンパク質から分離し、該結合したタンパク質を該抗体から溶出し、該タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項99】
処理によりウイルスリゼートに存在するヒトHLAクラスIおよびクラスII抗原を除去した該ウイルスリゼートから単離されたウイルスタンパク質を含む組成物であって、該タンパク質が脱グリコシル化され、該タンパク質が感染環境の曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類の種の少なくとも1つにおいて免疫応答を誘導する少なくとも1つのエピトープ領域を含む組成物。
【請求項100】
該エピトープ領域が、該ウイルスタンパク質の中和または不活化領域を含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
該エピトープ領域がヒトタンパク質アミノ酸配列の一部に対応するまたは免疫学的に模擬するアミノ酸配列を有する、請求項99に記載の組成物。
【請求項102】
該タンパク質が巨大分子担体にカップリングしている、請求項99に記載の組成物。
【請求項103】
該担体がムラミルジペプチド微粒子である、請求項102に記載の組成物。
【請求項104】
該ムラミルジペプチドがL−アラニン−D−イソグルタミンの末端ジペプチドを含む、請求項102に記載の組成物。
【請求項105】
ウイルスタンパク質の中和または不活化領域に対応するまたは模擬するエピトープ領域を含む合成ペプチドを含む組成物であって、該ペプチドが、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類の種の少なくとも1つにおいて免疫応答を誘導する組成物。
【請求項106】
該エピトープ領域がヒトタンパク質アミノ酸配列の一部に対応するまたは免疫学的に模擬するアミノ酸配列を有する、請求項105に記載の組成物。
【請求項107】
該タンパク質が巨大分子担体にカップリングしている、請求項105に記載の組成物。
【請求項108】
該担体がムラミルジペプチド微粒子である、請求項107に記載の組成物。
【請求項109】
該ムラミルジペプチドがL−アラニン−D−イソグルタミンの末端ジペプチドを含む、請求項107に記載の組成物。
【請求項110】
感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するウイルスタンパク質の中和または不活化領域を同定する方法であって、
(a)ウイルスリゼートからウイルスタンパク質を抽出すること;
(b)該抽出物でヒトでない動物を免疫すること;
(c)該免疫した哺乳類から抗血清を得ること;
(d)ヒトウイルス抗血清との競合イムノアッセイにおいて該抗血清を使用し、該抗血清中の抗体によって認識されるが該ヒト血清中の抗体によっては認識されないウイルスタンパク質の領域を同定すること;および
(e)該領域が中和または不活化領域である領域を決定すること
を含む方法。
【請求項111】
感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するタンパク質の中和または不活化領域上のエピトープと反応する抗体を得るための方法であって、
(a)ウイルスリゼートからタンパク質を単離すること;
(b)ヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導する中和または不活化領域のアミノ酸配列に対応するまたは模擬するアミノ酸配列を有する該タンパク質の少なくとも1つのエピトープを同定すること;
(c)該タンパク質を生理学的に許容し得る担体と合わせること;
(d)該タンパク質および担体によりヒトでない哺乳類を免疫すること;および
(e)該免疫した宿主から該エピトープに対する抗体を得ること
を含む方法。
【請求項112】
該生理学担体と合わせる前に、該タンパク質に処理を施してHLAクラスIおよびクラスII抗原を除去し、炭水化物を除去する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
該生理学担体と合わせる前に、該タンパク質をムラミルジペプチドを含む巨大分子担体に結合させる、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するウイルスタンパク質の中和または不活化領域上のエピトープと反応する抗体を得る方法であって、
(a)ヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するウイルスタンパク質の中和または不活化領域におけるエピトープに対応するかまたは模擬するアミノ酸配列を有するペプチドを合成すること;
(b)該ペプチドを生理学的に許容し得る担体と合わせること;
(c)ヒトでない哺乳類宿主を該ペプチドおよび担体で免疫すること;および
(d)該エピトープに対する抗体を該免疫した宿主から得ること
を含む方法。
【請求項115】
該生理学担体と合わせる前に、該タンパク質に処理を施してHLAクラスIおよびクラスII抗原を除去し、炭水化物を除去する、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
該生理学担体と合わせる前に、該タンパク質をムラミルジペプチドを含む巨大分子担体に結合させる、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
ウイルスタンパク質の中和または不活化エピトープ領域であって、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導する領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する抗体。
【請求項118】
少なくとも2つの抗体の組み合わせであって、そのそれぞれが、ウイルスタンパク質の中和または不活化エピトープ領域であって感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導する領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する組み合わせ。
【請求項119】
ウイルスに感染した人においてウイルス感染を阻害する方法であって、1またはそれ以上の抗体を含む組成物であってそれぞれの抗体が感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないがヒトでない哺乳類において免疫応答を誘導するウイルスタンパク質の中和または不活化エピトープ領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する組成物の治療上有効な量を、該患者に投与することを含む方法。
【請求項120】
該抗体がムラミルジペプチド微粒子に結合している、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
ウイルスに曝露した患者においてウイルス感染を防止する方法であって、1またはそれ以上の抗体を含む組成物であって、それぞれの抗体が感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を誘導しないHIVタンパク質の中和または不活化エピトープ領域におけるエピトープに対応するまたは模擬するエピトープを認識し反応する組成物の治療上有効な量を、該患者に投与することを含む方法。
【請求項122】
ウイルスに感染したかもしれない人に由来する生物学的流体試料におけるウイルスの存在を検出する方法であって、該抗体を抗体複合体形成を誘導する条件下でその人に由来する体液試料と合わせ、該抗体がウイルスの抗原に結合するかどうかについて測定する抗体抗原アッセイにおいて、請求項117に記載の抗体を使用することを含む方法。
【請求項123】
ウイルスに感染したかもしれない人におけるウイルスの存在を検出する方法であって、該抗体を酵素に結合し、抗体複合体形成を誘導する条件下でその人に由来する体液試料と接触させ、該抗体がウイルスの抗原に結合するかどうかについて測定するエンザイムイムノアッセイにおいて、請求項117に記載の抗体を使用することを含む方法。
【請求項124】
タンパク質溶液に由来するウイルスタンパク質の中和または不活化領域のエピトープに対応するまたは模擬する少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質を精製する方法であって、請求項117に記載の抗体を基質または固体の支持体に固定化し、該固定化した抗体と該タンパク質を含む溶液とを、該抗体と該タンパク質との間の免疫複合体の形成に適当な条件下で接触させ、結合しなかったタンパク質を該抗体に結合したタンパク質から分離し、該結合したタンパク質を該抗体から解離させ、該タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項125】
架橋によりムラミルジペプチド微粒子を形成するムラミルジペプチドの多重反復を含んでなるアジュバント組成物であって、該ムラミルジペプチド微粒子が、哺乳類に送達したときに免疫応答を刺激するための免疫原性ペプチドまたはタンパク質の担体である、アジュバント組成物。
【請求項126】
さらに、製薬的に許容し得る担体を含んでなる請求項125記載のアジュバント組成物。
【請求項127】
ムラミルジペプチド微粒子の直径が0.01〜0.2ミクロンである、請求項125または126記載のアジュバント組成物。
【請求項128】
ムラミルジペプチド微粒子の直径が0.05〜0.1ミクロンである、請求項127記載のアジュバント組成物。
【請求項129】
ムラミルジペプチドが、合成されたまたはPropionibacterium aciniもしくは関連微生物から単離されたムラミルジペプチドを含んでなる、請求項125〜128のいずれかに記載のアジュバント組成物。
【請求項130】
ムラミルジペプチド微粒子が、アミノ架橋したL−アラニン−D−イソグルタミンジペプチド及びその誘導体の多重重複から構成される、請求項125〜129のいずれかに記載のアジュバント組成物。
【請求項131】
少なくとも1つの免疫原性ペプチドまたはタンパク質がムラミルジペプチド微粒子の表面にコンジュゲートされている、請求項125〜130のいずれかに記載のアジュバント組成物。
【請求項132】
前記ペプチドまたはタンパク質の少なくとも1つが、感染または周囲への曝露に遭遇したときにヒトにおいて免疫応答を活性化しないがヒトでない哺乳類の少なくとも1つにおいて免疫応答を活性化する少なくとも1つのエピトープ領域を含んでなる、請求項131記載のアジュバント組成物。
【請求項133】
少なくとも1つの免疫原性ペプチドまたはタンパク質がペプチドまたはタンパク質である、請求項125〜132のいずれかに記載のアジュバント組成物。
【請求項134】
免疫原性ペプチドまたはタンパク質がウイルスペプチドまたはタンパク質である、請求項133記載のアジュバント組成物。
【請求項135】
製薬的に許容し得る担体が水性担体である、請求項126〜132のいずれかに記載のアジュバント組成物。
【請求項136】
製薬的に許容し得る担体が、油のまたは油性の担体である、請求項135記載のアジュバント組成物。
【請求項137】
水中油型または油中水型エマルジョンである、請求項126〜136のいずれかに記載のアジュバント組成物。
【請求項138】
請求項131〜137のいずれかに記載のムラミルジペプチド微粒子の有効量を、免疫応答の刺激を必要とする哺乳類に投与する工程を含んでなる、免疫応答を刺激する方法。
【請求項139】
以下の工程を含んでなる、アジュバントとしてムラミルジペプチド微粒子を製造する方法:
(a)天然由来または合成由来のムラミルジペプチドモノマーを得;
(b)該ムラミルジペプチドモノマーの少なくとも2つまたはそれ以上を架橋して非毒性のムラミルジペプチド微粒子を形成し、架橋ムラミルジペプチド微粒子は免疫原性ペプチドまたはタンパク質を担持することが可能であり;
(c)該ムラミルジペプチド微粒子を適当な担体中に希釈し、濃縮されたムラミルジペプチド微粒子が少なくとも1つの免疫原性ペプチドまたはタンパク質にコンジュゲートされる状態にある。
【請求項140】
前記微粒子が、0.05〜0.1ミクロンのサイズを有する請求項139に記載の製造方法。
【請求項141】
ムラミルジペプチド微粒子の末端カルボキシ基を介して少なくとも1つの免疫原性ペプチドまたはタンパク質との、またはムラミルジペプチド微粒子の末端アミノ基を介して少なくとも1つの免疫原性ペプチドまたはタンパク質との共有結合のために異種二官能性架橋剤を適用する工程を含んでなる免疫原性組成物の製造方法。
【請求項142】
架橋剤が、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等である、請求項141に記載の製造方法。
【請求項143】
温和な酸化を用いて反応性のアルデヒド基を形成した後、所望のタンパク質とシッフ塩基を形成させ、シッフ塩基を還元して微粒子と免疫原性ペプチドまたはタンパク質との間の安定な共有結合を形成する工程をさらに含んでなる、請求項141または142に記載の製造方法。
【請求項144】
哺乳類において免疫応答を刺激するため製薬的に許容し得る担体中に共有結合したムラミルジペプチド微粒子および免疫原性ペプチドまたはタンパク質を投与する工程をさらに含んでなる、請求項141〜143のいずれかに記載の製造方法。
【請求項145】
免疫応答がサイトカイン応答である、請求項138に記載の方法。
【請求項146】
免疫原がペプチドまたはタンパク質である、請求項141〜144のいずれかに記載の方法。
【請求項147】
免疫原がウイルスペプチドまたはタンパク質である、請求項145に記載の方法。

【公開番号】特開2009−80118(P2009−80118A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259812(P2008−259812)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【分割の表示】特願平10−517749の分割
【原出願日】平成9年10月10日(1997.10.10)
【出願人】(508299533)プローブ・インターナショナル (1)
【氏名又は名称原語表記】Probe International
【Fターム(参考)】