説明

ウイルス抑制剤として有用なトリテルペノイド系化合物

本発明はウイルス活性抑制のための、化学式(1)のトリテルペノイド(triterpenoid)系化合物の用途に関する。
本発明に係る前記トリテルペノイド系化合物はウイルス活性抑制効能が優秀であるため、ウイルス性疾患に対する治療剤として有効利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウイルス活性抑制のための、下記化学式(1)のトリテルペノイド(triterpenoid)系化合物の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは多様な疾患の原因となっており、特に畜産業分野において問題になっているウイルスのうち、代表的なものが鳥インフルエンザウイルスである。鳥インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科(orthomyxoviridae)に属し、主に鶏と七面鳥などの家禽類に多くの被害をもたらす。鳥インフルエンザウイルスは病原性の有無により、高病原性、低病原性、及び非病原性鳥インフルエンザウイルスの3種類に区分されて、このうち高病原性は国際獣疫事務局OIE)でリストA等級に分類しており、韓国では第1種家畜伝染病として分類している。
【0003】
インフルエンザウイルスはマトリックス蛋白質とヌクレオカプシド蛋白質の抗原性によりA、B、C型ウイルスに分類され、宿主細胞受容体結合、宿主細胞膜とウイルスエンベルロープの融合を助けて、ウイルス感染を招く血球凝集蛋白質(haemagglutinin、HA)と、増殖後ウイルスが細胞から出芽される時に重要なノイラミニダーゼ(neuraminidase、NA)の抗原構造の差により各々HAは16種類、NAは9種類の亜型(subtype)に分類される。理論的には前記二つの蛋白質の組合せによって、合わせて144種類のウイルス亜型が存在することになる。
【0004】
鳥インフルエンザの感染は鳥類排泄物と直接接触する時に主に発生し、飛沫、水、ヒトの足、飼料車、器具、装備、卵の殻に付いた糞などによっても伝播可能である。症状は感染したウイルスの病原性により多様であるが、概して呼吸器症状、下痢及び急激な産卵率の減少として現れる。場合によっては、鶏冠など頭部にチアノーゼが現れたり、顔面に浮腫ができたり、羽毛が1ヶ所に集まる現象が現れたりもする。致死率も病原性により0〜100%と幅があるが、ニューカッスル病、伝染性喉頭気管炎、マイコプラズマ感染症等とも症状が似ているため、正確な診断が必要となる。
【0005】
高病原性鳥インフルエンザは1959〜2003年まで世界的に約23回発病したが、多くは局地的な発生で終息した。2003年12月韓国で発生したH5N1亜型高病原性鳥インフルエンザは、日本、中国、タイ、ベトナム、インドネシア等の多くの東南アジアの国々と、ヨーロッパ、アフリカ等、30ケ国以上で発病して、世界的なパンデミックの様相を見せた。
【0006】
鳥インフルエンザウイルスは人間に直接伝染できないと知られているが、香港における1997年H5N1人体感染事例、1999年H9N2鳥インフルエンザウイルスの人体分離事例、及び2004年カナダで発生したH7鳥インフルエンザウイルスの人体感染事例によって、鳥インフルエンザウイルスの公衆衛生学的重要性が日ごとに増加している。世界保健機構(WHO)の報告(http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/country/cases_table_2006_06_20/en/index.html)によると、2003年から2006年6月20日までに、10ケ国において228人がH5N1亜型ウイルスに感染し、この中の130人の死亡が確認されている。韓国でも1996年H9N2亜型ウイルス感染による低病原性鳥インフルエンザが発生した以後、1999年に再び発生している。
【0007】
鳥インフルエンザが発生すると、多くの国では全羽殺処分しなければならず、これによって発生国では養鶏生産物を輸出できなくなるため、養鶏産業に莫大な被害を与えると共に、人体感染の危険がある場合には観光産業、及び運送産業など産業全般に被害が広がる。
【0008】
現在、世界的に抗ウイルス剤を開発するために莫大な努力が傾けられているが、ヒト免疫不全ウイルス1とB型肝炎治療に使われるラミブジン(lamivudine)、ヘルペスウイルス感染症治療に使われるガンシクロビル(gancyclovir)、RSウイルス(respiratory syncytial virus)、及び感染症に主に使われるが、緊急時には多様なウイルス感染症に使われるリバビリン(ribavirin)等が市販されており、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ阻害物質として人工合成されたザナミビル(zanamivir、Relenza(商標))及びオセルタミビル(oseltamivir、TAMIFLU(商品名))も市販中である。
【0009】
しかし、A型インフルエンザウイルス治療のために許可されたアマンタジン(amantadine)及びその類似物質であるリマンタジン(rimantadine)は、耐性ウイルスの出現と副作用により最近その使用範囲が縮小され、最近H5N1鳥インフルエンザウイルスのうち、オセルタミビルに対する耐性を有するウイルスも出現して、多様な抗ウイルス剤開発が急がれているところである。
【0010】
一方、榛の木(Alnus japonica)はカバノキ科(Betulaceae)榛の木属(Alnus)に属する落葉高木であり、通常ハンノキ(榛の木)と呼ばれる。榛の木属は北半球と南アメリカに約30種、韓国には約9種が分布して、湿地の近くに育ち、その高さが20mに達し、木皮は紫褐色であり、冬芽は卵を逆さまに立てた形をした長い楕円形で3つの稜線があって、袋がある。葉は交互に生えており、楕円形、披針状の卵形、披針状であり、両面に光沢があって、縁がノコギリの刃の形をしている。花は3〜4月に咲き、単性であり、尾状花序に付く。雄花は雄花穂状花序に付き、各苞に3〜4個ずつ入っており、花被裂片と雄ずいは4個ずつである。果穂は10月に成熟し、2〜6個ずつ付いて、長い卵の形をしており、松毬のように見える。
【0011】
一方、トリテルペノイド系化合物にはα−アミリン(alpha-amyrin)、α−アミリンアセテート、バウレノールアセテート(baurenol acetate)、β−アミリン、β−アミリンアセテート、ダツラオロンゲルマニコールアセテート(daturaolone germanicol acetate)、ルペオールアセテート(lupeolacetate)、ルパ−20(29)−エン−3−オン(Lup-20(29)-en-3-one)、オレアン−18−エン−3−オン(olean-18-en-3-one)、タラキサステロール(taraxasterol)、及びセスキテルペノイド(sesquiterpenoid)である11,13−α−デヒドログルコザルザニンC(11,13-α-dehydroglucozaluzanin C)、10−α−ヒドロキシ−8−デオキシグルコシド、8−エピデアシルシナロピクリン(8-epideacylcynaropicrin)、8−エピデアシルシナロピクリングルコシド、グルコザルザニンCイキゼリン(glucozaluzanin C ixerin)、ピクリシドB(picriside B)等が含まれる(M. Tamai et al., PlantaMed., 1989; S. Seo et al., J. Am. Chem. Soc., 1981; T. Akihisa et al., Phytochemistry, 1994; W. Kisiel, Phytochemistry, 1992; H. Fuchinoet al., Chem. Pharm. Bull., 1995; K. Shiojima et al., Chem. Pharm. Bull., 1996; A. Hisham et al., Phytochemistry, 1995)。
【0012】
本発明者等は韓国登録特許第10−0721703号及び第10−0769050号で榛の木抽出物の抗ウイルス活性を確認した。しかし、前記特許では榛の木抽出物を高濃度で投与した場合にだけ抗ウイルス活性を現わす短所があって、利用には限界があった。
【0013】
そこで、本発明者等は正常細胞に対して毒性が低く、低濃度で投与した場合にもウイルスの増殖抑制効能が優れた天然物質を開発するために鋭意努力した結果、榛の木で抽出したトリテルペノイド系化合物が優れた抗鳥インフルエンザウイルス効果を現わすことを確認して本発明の完成に至った。
【発明の要約】
【0014】
本発明の主な目的は、トリテルペノイド系化合物;薬学的に許容可能なこれらの塩;これらの溶媒和物、水和物またはプロドラッグを有効成分として含む医薬組成物を提供することである。
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は下記化学式(1)の化合物、これの異性体または薬学的に許容可能なこれらの塩;これらの溶媒和物、水和物またはプロドラッグを有効成分として含む、ウイルス感染による疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物を提供する。
【化1】

前記式のR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基の中から選択される。
本発明の他の特徴及び具現例は下記の詳細な説明及び特許請求の範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】榛の木の樹皮から抗ウイルス活性を示す有機溶媒分画(12B−AJ−5A、12B−AJ−5B、12B−AJ−5C及び12B−AJ−5D)を取得する方法を示した模式図である。
【図2】本発明に係る12B−AJ−5B分画からシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G分画を取得する方法を示した模式図である。
【図3】本発明に係る12B−AJ−5D分画からカラムクロマトグラフィーを行って、12B−AJ−36B、12B−AJ−37A及び12B−AJ−37B分画を取得する方法を示した模式図である。
【図4】本発明に係る12B−AJ−36B分画に対してNMRを行った結果を示した図である。
【図5】本発明に係る12B−AJ−20E分画からカラムクロマトグラフィーを行って、12B−AJ−25B及び12B−AJ−26A分画を取得する方法を示した模式図である。
【図6】本発明に係る12B−AJ−25Bの構造を示した図である。
【図7】本発明に係る12B−AJ−26Aの構造を示した図である。
【図8】本発明に係る12B−AJ−20E分画からカラムクロマトグラフィーを行って、12B−AJ−23A分画を取得する方法を示した模式図である。
【図9】本発明に係る12B−AJ−23Aの構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は一観点において、下記化学式(1)で示しトリテルペノイド系化合物を含有する医薬組成物に関する。
【化2】

前記式のR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基の中から選択される。
この時、前記R、R、R、R、R及びRは水素原子またはヒドロキシ基であり、前記Rは水素原子または−CHC−であり、前記RはH−C=Oであることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記化合物は榛の木由来化合物であることを特徴とする。
【0019】
本発明において、前記ウイルスはインフルエンザウイルスであることを特徴とし、前記インフルエンザウイルスはヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス及び鳥インフルエンザウイルスから構成された群より選択されることを特徴とする。
【0020】
本発明において、「アルキル(alkyl)」とは、線型、分枝型サイクリック炭化水素構造及びこれらの組合せを含むものを意味する。低級アルキル基とは、1つ乃至6つの炭素原子のアルキル基をいう。低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、サイクロプロピル基、ブチル基、s−及びt−ブチル基、サイクロプロピル基、サイクロブチル基などが含まれる。本発明において望ましいアルキル基は、C〜Cの低級アルキル基であり、より望ましくはC〜C低級アルキル基である。
【0021】
用語「アルコキシ(alkoxy)」は、酸素を介して母構造(parent structure)に付着した1つ乃至8つの炭素原子の直線型、分枝型、サイクリック構造及びこれらの組合せをいう。その例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イドプロポキシ基、サイクロプロピルオキシ基、サイクロヘキシルオキシ基などを含む。本発明で望ましいアルコキシ基は1つ乃至4つの炭素を含む低級アルコキシ基である。
【0022】
その他の用語は本発明が属する分野において通常分かる意味として解釈される。
代表的な化合物(I)としては、ルペオール(lupeol)またはベツリンアルデヒド(betulinic aldehyde)が含まれる。
【0023】
本発明の化合物は榛の木抽出物から当該分野において公知の技術を利用して、下記に記述するように、有機溶媒分画から純粋化合物を分離して製造することができる。
【0024】
即ち、本発明の一実施例においては、榛の木の樹皮を95%エタノールで、55℃で超音波処理した後、濃縮して、エタノール分画(12B−AJ−5A)を取得した後、図1に示したように前記12B−AJ−5AをCHCl及びエタノールに順に分画してジクロロメタン(CHCl)分画(12B−AJ−5B、139g)、エタノール分画(12B−AJ−5C、400g)及び水分画(12B−AJ−5D)を取得した。また、前記12B−AJ−5Dを20%、50%、75%、100%メタノールで処理して、12B−AJ−5E、12B−AJ−5F、12B−AJ−5G及び12B−AJ−5Hを各々取得した。
【0025】
前記12B−AJ−5A、12B−AJ−5B、12B−AJ−5C、12B−AJ−5D、12B−AJ−5E、12B−AJ−5F、12B−AJ−5G及び12B−AJ−5H分画の鳥インフルエンザウイルス活性を測定した結果、12B−AJ−5Bの活性が最も高かった。
【0026】
また、細胞毒性の有無を測定した結果、12B−AJ−5A及び12B−AJ−5Bは相対的に高い細胞毒性を示し、12B−AJ−5D、12B−AJ−5E、12B−AJ−5F、12B−AJ−5G及び12B−AJ−5Hは相対的に低い細胞毒性を示した。
【0027】
本発明の他の実施例においては、前記12B−AJ−5Bをヘキサン−エチルアセテート濃度勾配溶媒を使って図2のようにカラムクロマトグラフィーを行って、7つの有機溶媒分画を取得した(12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G)。前記取得した12B−AJ−20A〜12B−AJ−20Gの鳥インフルエンザウイルスに対する活性を測定した結果、12B−AJ−5Bと比べて、12B−AJ−20D、12B−AJ−20E、12B−AJ−20F及び12B−AJ−20Gが高い抗ウイルス活性を示し、12B−AJ−20E、12B−AJ−20F及び12B−AJ−20Gは低い細胞毒性を示した。
【0028】
前記12B−AJ−20A〜12B−AJ−20Gの鳥インフルエンザウイルスに対する効能及び細胞毒性を測定した結果をまとめた結果、効能が毒性より大きい12B−AJ−20D及び12B−AJ−20Eを有効分画として決めた。
【0029】
本発明のさらに他の実施例においては、前記12B−AJ−20Dに対して図3のようにカラムクロマトグラフィーを行って、12B−AJ−36B、12B−AJ−37A及び12B−AJ−37Bを取得し、前記12B−AJ−36Bに対してNMRを行った結果、トリテルペノイド系化合物と推定された。
【0030】
本発明のさらに他の実施例においては、前記12B−AJ−20Eに対してカラムクロマトグラフィーを行って、12B−AJ−25B及び12B−AJ−26Aを取得した。NMRを行った結果、前記12B−AJ−25Bはルペオールであり、12B−AJ−26Aはベツリンアルデヒドであることを確認することができた。
【0031】
従って、本発明は一観点において前記化学式(1)の化合物を製造する方法に関するものである。下記製造方法はそれの例示的な方法に過ぎず、有機合成分野の技術に基づいた多様な方法によって製造できることは勿論である。従って、本発明の範囲は、これらだけに限定されるのではない。例えば、本発明に係る実施例の記載されてない化合物の分離及び精製は当業者の明白な変形によって、例えば、干渉基を適切に保護したり、当該分野において公知の他の適当な試薬に替えたり、または反応条件を通常に変化させることによって成功裡に行える。または、本願に開示されて当分野において一般的に公知の他の反応は、本発明の他の化合物を製造するための適応を有するものとして認知される。
【0032】
本発明が属する分野において通常の知識を有する者なら、本発明に係る化合物(I)の製造のための具体的な反応条件などを後に説明する製造例と実施例を通して確認できるため、それに対する詳しい説明は省略する。
【0033】
用語「薬学的に許容可能な塩」とは、化合物が投与される有機体に深刻な刺激を誘発せず化合物の生物学的活性と物性を損なわない化合物の剤形を意味する。用語「水和物」、「溶媒和物」及び「異性体」も前記のような意味を有する。前記薬学的に許容可能な塩は、本発明の化合物を塩酸、ブローム酸、硫酸、硝酸、燐酸などの無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、カプリン酸、イソブタン酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸などのような有機カルボン酸と反応させて得られる。また、本発明の化合物を塩基と反応させてアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムまたはマグネシウム塩などのアルカリ土金属塩などの塩、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどの有機塩基の塩、及びアルギニン、リシンなどのアミノ酸塩を形成することによっても得られる。
【0034】
用語「水和物(hydrate)」は、非共有的分子間力(non-covalent intermolecular force)により結合された化学量論的(stoichiometric)または非化学量論的(non-stoichiometric)量の水を含んでいる本発明の化合物またはそれらの塩を意味する。
【0035】
用語「溶媒和物(solvate)」は、非共有的分子間力によって結合された化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含んでいる本発明の化合物またはそれらの塩を意味する。これに関する望ましい溶媒としては、揮発性、非毒性、及び/又はヒトに投与するのに適している溶媒である。
【0036】
用語「異性体(isomer)」は、同じ化学式または分子式を有するが光学的または立体的に異なる本発明の化合物またはそれらの塩を意味する。例えば、本発明の化学式(1)に係る化合物は、置換基の種類によっては不斉中心(asymmetric center、非対称炭素原子)を有するが、この場合、化学式(1)の化合物は鏡像異性体及び部分立体異性体のような光学異性体として存在することができる。
【0037】
用語「プロドラッグ(prodrug)」は、生体内において母薬剤(parent drug)に変形される物質を意味する。プロドラッグは、いくつかの場合において、母薬剤より投与し易いため度々使われる。例えば、これらは経口投与によって生理活性を得ることができるのに対して、母薬剤はそうでないこともある。プロドラッグは、また母薬剤より医薬組成物で向上した溶解度を有することもできる。例えば、プロドラッグは水溶解度が移動性に害になるが、水溶解度が害にならない細胞においては、物質代謝によって活性体のカルボキシ酸で加水分解される、細胞膜の通過を容易にするエステル(「プロドラッグ」)として投与される化合物である。プロドラッグのさらに他の例はペプチドが活性部位を表わすように物質代謝によって変換される酸基に結合されている短いペプチド(ポリアミノ酸)であってもよい。
【0038】
以下に別の説明がない限り、用語「本発明に係る化合物」または「化学式(1)の化合物」は、化合物それ自体、薬学的に許容可能なそれらの塩、水和物、溶媒和物、異性体及びプロドラッグを全部含む概念として使われている。
【0039】
前記化学式(1)の化合物はウイルス活性抑制、即ちウイルス感染による疾患の治療及び予防に有効である。特に、鳥インフルエンザウイルスの活性抑制に優れた効能を示す。
【0040】
従って、本発明のさらに他の観点において、本発明は患者に有効量の化学式(1)の化合物を投与して、ウイルス活性を減少させたり抑制させる方法に関するものである。即ち、前記化学式(1)の化合物を使って、ウイルス活性による疾患の治療及び予防する方法を提供する。
【0041】
本発明において、「治療する」という用語は、別に言及されない限り、前記用語が適用される疾患または疾病、または前記疾患また疾病の一つ以上の症状を逆転させたり、緩和させたり、その進行を抑制したり、または予防することを意味する。本発明において、「治療」という用語は「治療する」が前記のように定義される時、治療する行為をいう。
【0042】
本発明はまた他の態様において、治療的有効量の化合物(I)及びこれの薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関するものである。前記組成物は必要により希釈剤、賦形剤などを追加してもよい。
【0043】
用語「医薬組成物(pharmaceutical composition)」は、本発明の化合物と希釈剤または担体のような他の化学成分の混合物を意味する。
【0044】
前記医薬組成物は生物体内に化合物の投与を容易にする。化合物を投与する多様な技術が存在し、ここには経口、注射、エアロゾル、非経口、及び局所投与などが含まれるが、これらだけに限定されない。医薬組成物は塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、燐酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの酸化合物を反応させて得ることもできる。
【0045】
用語「治療的有効量(therapeutically effective amount)」は、投与される化合物の量が治療する障害の一つまたはそれ以上の症状をある程度軽減するのを意味する。従って、治療的有効量は、(1)疾患の進行速度を逆転させたりまたは癌の場合に腫瘍の大きさを減らす効果、(2)疾患のそれ以上の進行をある程度禁止させて、癌の場合にはある程度遅くすることを意味し、または望ましくは腫瘍移転を中断させる効果及び/又は、(3)疾患と関連した一つまたはそれ以上の症状をある程度軽減(望ましくは、除去)させる効果を有する量を意味する。
【0046】
用語「担体(carrier)」は、細胞または組織内における化合物の取り込みを容易にする化合物として定義される。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は生物体の細胞または組織内への多くの有機化合物の取り込みを容易にする通常使われる担体である。
【0047】
用語「希釈剤(diluent)」は、対象化合物の生物学的活性形態を安定化させるだけでなく、化合物を溶解させる水で薄められる化合物として定義される。バッファー溶液に溶解されている塩は当分野において希釈剤として使われる。通常使われるバッファー溶液はホスフェートバッファー食塩水であり、これはヒト体液の塩状態を模倣しているためである。バッファー塩は低い濃度で溶液のpHを制御できるため、バッファー希釈剤が化合物の生物学的活性を変えることは稀である。
【0048】
用語「薬学的に許容可能な(physiologically acceptable)」は、化合物の生物学的活性と物性を損なわない担体または希釈剤として定義される。
ここで使われた化合物は、ヒト患者にそれ自体として、または結合療法のように他の活性成分と共にまたは適切な担体や賦形剤と共に混合された医薬組成物として、投与される。
【0049】
(a)投与経路
適切な投与経路は、例えば、経口、鼻腔、透過粘膜、または腸内投与、直接心室内、腹腔内、または眼内注射だけでなく、筋肉内、皮下、静脈、骨髄注射を含んだ非経口伝達を含む。
【0050】
また、例えば、しばしば持続性または徐放性剤形において、固形腫瘍に直接的に注射することによって、全身方式よりは局所方式で化合物を投与してもよい。また、薬剤を、例えば、腫瘍特異的抗体でコーティングされたリポソームで、標的ドラッグデリバリーシステムとして投与することもできる。リポソームは腫瘍に標的され、それによって、選択的に取り込まれる。
【0051】
(b)組成物/剤形
本発明の医薬組成物は、例えば、通常的な混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、粉末化、エマルジョン化、カプセル化、トラッピング、または凍結乾燥過程の手段によって公知方式で製造される。
【0052】
従って、本発明に係る使用のための医薬組成物は、薬剤学的に使われる剤形への活性化合物の処理を容易にする賦形剤または補助剤を含むものとして構成されている一つまたはそれ以上の薬学的に許容可能な担体を使って、通常の方法で製造することもできる。適合する剤形は選択された投与ルートにより左右される。公知技術、担体及び賦形剤のいずれも適合に、例えば、前記説明したRemingston’s Pharmaceutical Sciencesで理解しているものと同様に使われる。
【0053】
注射のために本発明の成分は液状溶液であり、望ましくはHanks溶液、Ringer溶液、または生理食塩水バッファーのような薬理学的に相性のよいバッファーで剤形できる。粘膜透過投与のためには、通過するバリアーに適する浸透性剤が剤形として使われる。そのような浸透性剤は当業界に一般的に公知されている。
【0054】
経口投与のために化合物は当業界において公知の薬学的に許容可能な担体を活性化合物と組み合わせることによって容易に剤形できる。このような担体は、本発明の化合物を錠剤、錠、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに剤形化できる。経口使用のための薬剤調製物は、本発明の一つまたは二つ以上の化合物と一つまたは二つ以上の賦形剤を混合して、場合によってはこのような混合物を粉砕して、必要ならば適切な補助剤を透過した後に顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアとして得ることができる。適切な賦形剤はラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールのようなフィラートウモロコシ片栗粉、小麦片栗粉、米片栗粉、ジャガイモ片栗粉、ゼラチン、ガムトラガケンス、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース系物質などである。必要ならば、架橋ポリビニルピロリドン、天草、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのようなそれらの塩などの崩壊剤が添加されてもよい。
【0055】
糖衣錠コアは適切にコーティングして供給する。このような目的のために場合によってはアラビアガム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液及び適合する有機溶媒または溶媒混合物をする濃縮砂糖溶液が使われる。活性化合物容量の確認またはこれらの他の組合せを特徴付けるために染料や顔料が錠剤または糖衣錠に含まれてもよい。
【0056】
経口に使われる薬剤調製物は、ゼラチン及びグリコールまたはソルビトールのような可塑剤で作られた軟らかい封止カプセルだけでなく、ゼラチンで作られた押圧固定するカプセルを含んでもよい。押圧固定するカプセルはラクトースのようなフィラー、片栗粉のようなバインダー及び/又は滑石またはマグネシウムステアレートのような活剤との混合物として、活性成分を含んでもよい。軟質カプセルで活性化合物は脂肪酸、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールのように適合する液体に溶解または分散してもよい。さらに、安定化剤が含まれてもよい。経口投与のための全ての製剤は、そのような投与に適する含有量になっていなければならない。
【0057】
頬側投与(buccal administration)のために、組成物は通常の方法により剤形化された錠剤または菱形錠剤の形態を採ってもよい。
【0058】
吸入による投与のために本発明に係る使用化合物は、通常、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスのような適切な高圧ガス(propellant)を使って、加圧パックまたはネブライザー(nebulizer)からエアゾール噴射提供の形態に伝達してもよい。吸入剤または吹付器での使用のために、化合物とラクトースまたは片栗粉のような適切な粉末の粉末状混合物を含む、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジを、剤形化してもよい。
【0059】
化合物は注射によって、例えば、大きい丸薬注射や連続的な注入によって、非経口投入用として剤形化してもよい。注射用剤形は、例えば、防腐剤を付加したアンプルまたはマルチドーズ容器として単位容量形態で提供してもよい。組成物は油性または液状ビヒクル状の懸濁液、溶液、エマルジョンのような形態を採ってもよく、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような剤形用成分を含んでもよい。
【0060】
非経口投与用液剤剤形は、水溶性形態で活性化合物の液状溶液を含む。追加的に、活性化合物の懸濁液は適切な油性注射懸濁液として準備してもよい。適合する親油性溶媒またはビヒクルにはゴマ油のような脂肪酸、エチルオレートまたはトリグリセライドのような合成脂肪酸エステルまたはリポソームなどがある。液状注射懸濁液は懸濁液の粘度を高める物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含んでもよい。場合によっては、懸濁液に高濃縮溶液の製造が可能なように化合物の溶解度を増加させる成分や安定化剤が含まれてもよい。
【0061】
また、活性成分は使用前に滅菌無発熱物質の水のような適切なビヒクルと構成のために粉末の形態であってもよい。
【0062】
化合物は、例えば、ココアバターや他のグリセライドのような通常の座薬基材を含んでいる座薬または停留浣腸のように直腸投与組成物に剤形化してもよい。
【0063】
前記説明した剤形以外に、化合物は持続性製剤として剤形してもよい。このように長く活性を示す剤形は移植(例えば、皮下にまたは筋肉内に)または筋肉内の注入によって投与できる。従って、化合物は、例えば、適切な高分子または疎水性物質(例えば、許容可能なオイル内のエマルジョンのように)、またはイオン交換樹脂を持って、または、例えば、低溶解性塩のような低溶解性誘導体として剤形してもよい。
【0064】
本発明の疎水性化合物用剤形担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水−混和性有機高分子及び液状で形成された共溶媒システム(co-solvent system)である。共溶媒システムはVパラジウム共溶媒システムであってもよい。Vパラジウム共溶媒システムは無水エタノールから体積まで作られた、ベンジルアルコール3%w/v、非極性界面活性剤Polysorbate80(商品名)を85w/v、及びポリエチレングリコール300 65%w/vの溶液である。Vパラジウム共溶媒システム(Vパラジウム:D5W)は、水溶液中で、5%ブドウ糖で1:1希釈されたVパルジウムからなる。このような共溶媒システムは、疎水性化合物を溶解させ易く、全身投与時の低毒性をそれ自体が提供する。自然に、共溶媒システムの比は、その溶解度及び毒性特性を阻害することなく、かなり変化してもよい。さらに、共溶媒成分の同一性は変化させることができる:例えば、他の低毒性の非極性界面活性剤を、Polysorbate80の代りに使用してもよい。ポリエチレングリコールの分画の大きさは変化してもよい。他の生体適合性高分子、例えば、ポリビニルピロリドンを、ポリエチレングリコールに代替してもよい。また、他の糖又は多糖体を、ブドウ糖に代替してもよい。
【0065】
また、疎水性薬剤化合物用の他の伝達システムを採用してもよい。リポソームとエマルジョンは、疎水性薬剤用伝達ビヒクルの公知例である。通常は、さらに高い毒性を犠牲にさせても、ジメチルスルホキシドのような任意の有機溶媒が採用されてもよい。追加的に、治療成分を含んでいる固形の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスのような徐放システムを使って、化合物が伝達されてもよい。多様な徐放物質が開発されており、当業者に公知である。徐放カプセルはそれの化合物特性により2〜3週から100日まで化合物を放出することができる。治療剤の化学的特性及び生物学的安定性により、蛋白質安定のための追加的な戦略を採用してもよい。
【0066】
本発明の多くの化合物は、薬学的に許容される対イオンとの塩として提供してもよい。薬学的に許容される塩は、下記のものに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、りんご酸、コハク酸などを含んだ多くの酸によって形成される。塩はそれに対応する遊離酸または塩基形態よりも水性またはプロトン性溶媒でさらによく溶解する傾向がある。
【0067】
(c)有効量
本発明で使用に適する医薬組成物には、活性成分を、それらの意図する目的を達成するために有効量で含む組成物が含まれる。より具体的には、治療的有効量は治療されるべき対象の生存を延長したり、疾患の症状を防止、軽減または緩和させるのに有効な化合物の量を意味する。治療的有効量の決定は、特にここに提供されている詳細な開示内容を考慮すると、当業者の能力範囲内にある。
【0068】
本発明の方法で使われる任意の化合物に対する治療的有効量は、細胞培養分析から初期に推定されてもよい。例えば、用量(dose)は細胞培養で決定されたIC50を含む血中濃度範囲を得るために動物モデルで計算してもよい。そのような情報はヒトにおける有用な用量をさらに正確に決めるのに使われてもよい。
【0069】
ここに記載されている化合物の毒性と治療効率性は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)とED50(集団の50%に対して治療効果を有する用量)を決める、細胞培養または実験動物における標準医薬工程(standard pharmaceutical procedures)によって算定される。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数であり、これはLD50とED50との間の比として表現される。高い治療指数を見せる化合物が望ましい。これらの細胞培養分析から得られたデータは、ヒトに使用する用量の範囲を算定するのに使われる。そのような化合物の投与量(dosage)は望ましくは毒性がないか、殆どない状態でED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は採用された投与形態と利用された投与ルートにより前記範囲で変化してもよい。正確な算定、投与ルート及び投与量は患者の状態を考慮して、個々の医師によって選択することができる(例えば、Fingl et al., 1975, in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch.1 p.1参照)。通常、患者に投与される組成物の用量範囲は、患者体重の約0.5乃至1000mg/kgであってもよい。投与量は患者が必要としている程度により、一度に、または一日またはそれ以上の過程において二またはそれ以上のシリーズで提供してもよい。
【0070】
投与量と間隔はキナーゼ調節効果または最小有効濃度(MEC)を維持するために十分である、活性部分の血漿レベルを提供するよう個別に調整されてもよい。MECは個々の化合物により異なるが、例えば、ここに記載している分析法を使って、キナーゼの50〜90%抑制を達成するのに必要な濃度のように生体外データから予測してもよい。MECを達成するのに必要な投与量は、各自の特性と投与経路により異なる。しかし、HPLC定量または生物学的定量が血漿濃度を決めるのに使われる。
【0071】
投与間隔はMEC値を使って決めてもよい。化合物は一度に10〜90%、望ましくは30〜90%、特に望ましくは50〜90%になるように血漿レベルを前記MEC以上に維持する投与計画を立てて投与されなければならない。
局所投与または選択的摂取の場合には薬剤の有効局所濃度が血漿濃度と関連しないこともある。
【0072】
勿論、投与する組成物の量は、治療される個体により、対象の体重により、痛みの重症度により、投与方式により、そして医師の判断により異なる。
【実施例】
【0073】
[実施例1]榛の木抽出物の製造
榛の木の樹皮((株)RNLバイオ)3.5kgを95%エタノール9Lを加えて、55℃で超音波で3回処理した後、濃縮して、エタノール分画(12B−AJ−5A)900gを取得した。前記取得された12B−AJ−5Aを図1に示したようにCHCl及びエタノールで順に分画してジクロロメタン(CHCl)分画(12B−AJ−5B、139g)、エタノール分画(12B−AJ−5C、400g)及び水分画(12B−AJ−5D)を取得した。
【0074】
また、前記12B−AJ−5Dを20%、50%、75%、100%メタノールで処理して、12B−AJ−5E、12B−AJ−5F、12B−AJ−5G及び12B−AJ−5Hを各々取得した。
【0075】
[実施例2]榛の木抽出物の抗ウイルス活性測定
榛の木抽出物及び榛の木抽出物由来化合物の抗ウイルス活性測定に使った鳥インフルエンザウイルスは、2000年に韓国内で分離したA/chicken/Korea/SNU0028/2000(H9N2)ウイルスをニワトリ胚で継代しクローニングし、増殖性が優れているKBNP−0028(KCTC 10866BP)を使った。
【0076】
種卵小片培養(cultivation of hatchery egg shell pieces)は、10〜11日齢のSPF種卵(SPF hatchery eggs)(Sunrise Co., NY)の卵殻を70%エタノールで洗浄した後、ニワトリ胚と全ての体液を除去した。卵殻の内面に付着した絨毛尿膜が落ちないように横約8mm、縦約8mmの大きさで切って、24ウェル培養容器に1つずつ入れた。培養培地は199培地(GIBCO-BRL, NY, USA)とF10培地(GIBCO-BRL, NY, USA)を1:1で混合した後、重炭酸ナトリウム0.075%及びゲンタマイシン(gentamicin)100μg/mLを添加して製造した。
【0077】
前記10〜11日齢のSPF発育卵(Sunrise Co., NY)にKBNP−0028尿膜液原液を4〜10倍に薄めて、種卵小片の絨毛尿膜面に100μLを添加した後、37℃で30分間培養して、ウイルスを感染させ、前記培養培地1,000μLを添加した後、前記培養培地1,000μLを添加した後、実施例1で取得した有機溶媒分画(12B−AJ−5A、12B−AJ−5B、12B−AJ−5C、12B−AJ−5D、12B−AJ−5E、12B−AJ−5F、12B−AJ−5G及び12B−AJ−5H)を各ウェルに添加した。前記榛の木抽出物が添加されたウイルス感染液を37℃で7日間培養した。
【0078】
前記培養された培養液を採取して、平板血球凝集検査を実施した。前記培養液25μL(各々15.6、31.3、62.5、125、250及び500μg/μL濃度)と洗浄鶏赤血球(0.1%)25μLを24ウェルプレートに同量添加して、混和して、プレートを上下左右に動かして、2分以内の血球凝集塊の形成の有無でウイルスの増殖の有無を確認した。
【0079】
その結果、鳥インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性は12B−AJ−5Bが最も高く、12B−AJ−5C及び12B−AJ−5Dは活性を示さなかった。
【0080】
【表1】

【0081】
[実施例3]榛の木抽出物の細胞毒性測定
榛の木抽出物の細胞毒性の有無を確認するために、実施例1で取得した有機溶媒分画(12B−AJ−5A、12B−AJ−5B、12B−AJ−5C、12B−AJ−5D、12B−AJ−5E、12B−AJ−5F、12B−AJ−5G及び12B−AJ−5H)12.5、25、50及び100μg/μL濃度にMTT溶液(MTT0.5%水溶液)を96ウェルプレートで培養されたCEF(Chicken embryo fibroblast)細胞の各ウェルに添加して、37℃で1〜3時間培養した後、DMSO120μLを添加して、30分間攪拌した後、ELISAリーダーで、562nm波長で判読した。その結果、12B−AJ−5A及び12B−AJ−5Bは相対的に高い細胞毒性を示したし、12B−AJ−5Cは中間程度の細胞毒性を示したし、12B−AJ−5D、12B−AJ−5E、12B−AJ−5F、12B−AJ−5G及び12B−AJ−5Hは相対的に低い細胞毒性を示した(表2)。
【0082】
【表2】

【0083】
[実施例4]12B−AJ−5Bからの有機溶媒分画の分離
12B−AJ−5Bをヘキサン−エチルアセテート(20:1、100%エチルアセテート)濃度勾配を使って、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(70230mesh)を行って、7つの分画を取得した(12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G、図2)。
【0084】
前記取得した12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G(各々7.8、15.6、31.3、62.5、125及び250μg/μL濃度)の鳥インフルエンザウイルスに対する活性を実施例2と同じ方法で測定した。
【0085】
その結果、実施例2で最も活性が高く現れた12B−AJ−5BはIC50値段が51.1μg/mLなのに比べて、12B−AJ−20DはIC50:38.8μg/mL、12B−AJ−20EはIC50:22.8μg/mL、12B−AJ−20FはIC50:21.9μg/mL及び12B−AJ−20GはIC50:19.6μg/mLで、高い抗ウイルス活性を示した(表3)。
【0086】
【表3】

【0087】
前記12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G(各々15.6、31.3、62.5、125及び250μg/mL濃度)の細胞毒性の有無を確認するために、実施例3の方法と同じようにMTTアッセイを行った。その結果、12B−AJ−20A及び12B−AJ−20Bは相対的に高い細胞毒性を示し、12B−AJ−20C及び12B−AJ−20Dは中間程度の細胞毒性を示し、12B−AJ−20E、12B−AJ−20F及び12B−AJ−20Gは相対的に低い細胞毒性を示した(表4)。
【0088】
【表4】

【0089】
また、前記12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G分画が細胞毒性を示す濃度を正確に測定するために、各々7.8、10.4、15.6、20.9、31.3、41.8、62.5、83.5、125、167及び250μg/mL濃度の12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G分画にMTT溶液(MTT0.5%水溶液)40μLを添加して、37℃で1〜3時間培養した後、DMSO120μLを添加して、30分間攪拌した後、ELISAリーダーで、562nm波長で結果を判読した。
【0090】
その結果、前記12B−AJ−20A〜12B−AJ−20G分画を4.8μg/mL濃度で処理する場合、細胞毒性を示さないことが確認できた(表5)。
【0091】
【表5】

【0092】
従って、前記12B−AJ−20A〜12B−AJ−20Gの鳥インフルエンザウイルスに対する効能及び細胞毒性を測定した結果をまとめた結果、効能が毒性より大きい12B−AJ−20D及び12B−AJ−20Eを有効分画として決定した(表6)。
【0093】
【表6】

【0094】
[実施例5]12B−AJ−5Bからの分離した有機溶媒分画から純粋化合物の分離・精製
(1)12B−AJ−20Dからの純粋化合物の分離・精製
前記12B−AJ−20Dを図3に記載されたように、繰り返し、カラムクロマトグラフィーを行って、純粋化合物である12B−AJ−36B(9.0mg)、12B−AJ−37A(4.0mg)及び12B−AJ−37B(5.0mg)を取得した。前記12B−AJ−36Bに対して1H−NMRを行った結果、トリテルペノイド系化合物と推定された(図4)。
【0095】
(2)12B−AJ−20Eからの純粋化合物の分離・精製
前記12B−AJ−20Eを図5に記載されたように、繰り返し、カラムクロマトグラフィーを行って、純粋化合物である12B−AJ−25B(20mg)及び12B−AJ−26A(25mg)を取得した。NMRを行った結果、前記12B−AJ−25Bはルペオールであることが確認でき(S.K. Talapatra et al., Phytochemistry, 28:3437, 1989;表7及び図6)、12B−AJ−26Aはベツリンアルデヒドであることが確認できた(Pietro Monaco et al., J. Nat. Prod., 47(4):673, 1984;表8及び図7)。
【0096】
【表7】

【0097】
【表8】

【0098】
一方、前記12B−AJ−20Eを図8に記載したように、繰り返し、カラムクロマトグラフィーを行って、純粋化合物である12B−AJ−23A(50mg)を取得した。前記12B−AJ−23Aに対してNMRを行った結果、β−シトステロール(β-sitosterol)化合物であることが確認できた(Il-Moo Chang, et al., Platago asiaticaSwwd, Koe. J. of Pharmacog., 12(1):12, 1981;表9及び図9)。
【0099】
【表9】

【0100】
[実施例6]分離・精製された化合物の抗ウイルス活性測定
分離・精製された化合物12B−AJ−26Aの濃度による鳥インフルエンザウイルスに対する阻害活性及び細胞毒性を測定した(表10及び表11)。
その結果、下記表10と同様に12B−AJ−26Aは3.13ug/mL濃度処理した場合にも抗ウイルス活性を示した。
【0101】
【表10】

【0102】
【表11】

【産業上利用の可能性】
【0103】
以上、詳細に説明したように、本発明の化学式(1)の化合物はウイルス活性による疾病の、治療及び/又は予防に有効に用いられる。特に、鳥インフルエンザウイルスの活性抑制に役立つ。
以上、発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者には、このような具体的技術は単に望ましい実施様態に過ぎず、これによって、本発明の範囲が制限されるのではない点は明白であろう。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)の化合物、これの異性体または薬学的に許容可能なこれらの塩;これらの溶媒和物、水和物またはプロドラッグを有効成分として含む、ウイルス感染による疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物:
【化1】

前記式のR、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基の中から選択される。
【請求項2】
前記R、R、R、R、R、及びRは、水素原子またはハイドロキシであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記Rは水素原子または−CHC−であることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記RはH−C=Oであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ルペオールまたはベツリンアルデヒド、これの異性体または薬学的に許容可能なこれらの塩;これらの溶媒和物、水和物またはプロドラッグを有効成分として含む、請求項1に記載のウイルス感染による疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物。
【請求項6】
前記化合物は榛の木由来化合物であることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ウイルスはインフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記インフルエンザウイルスは鳥インフルエンザウイルスであることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−522038(P2011−522038A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512383(P2011−512383)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002994
【国際公開番号】WO2009/148279
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508033465)アールエヌエル バイオ カンパニー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】