説明

ウイルス様粒子、その製造方法、その使用、それを含有する調剤学的組成物、JCVに対する特異的抗体を免疫学的に測定する方法及び試験キット

【課題】進行性多巣性白質脳症(PML)の信頼性のある診断を簡単な方法で行うことができる方法及び試薬の提供すること、及びPML疾患の場合に治療的な処置のために使用することができる手段を提供する。
【解決手段】ヒトのポリオーマウイルスのグループに属する、JC−ウイルス(JCV)のウイルスタンパク質1(VP1)の複数の分子から構成されているウイルス様粒子、および組換体VP1から構成されているウイルス様粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のウイルス様粒子(Virus like particle)及び分析法、診断法及び治療法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
JC−ウイルス(JCV)はヒトのポリオーマウイルスのグループに属する。JCVは、ミエリン形成する乏突起膠細胞の溶解感染により及び星状膠細胞の不完全感染により脳の亜急性脱随性疾患を引き起こすことがある。この感染は臨床的には進行性多巣性白質脳病(PML)として表され、この感染は小脳内及び脳幹での脱随病巣の発生を引き起こし、通常数ヶ月内で死亡する。
【0003】
PMLの場合に、JCVに対する明らかな体液性又は細胞性の免疫応答が生じず、それにより疾病の診断が困難となっている。JCVが成人の人口のほぼ80%において存在しているように思われるが、PMLは一般に免疫系の衰弱との関係で発症するにすぎない。免疫抑制剤の使用が増加し、HIV感染患者の数が増加することにより、ここ数年来PML−疾患が著しく増加している。現在の調査によると、PMLはAIDS患者の約2〜5%に発症している。
【0004】
PML疾患の検出のための公知の診断法は、主に、例えばCT(コンピュータトモグラフィー)及びMRI(磁気共鳴イメージング)のような映像法、並びに生検もしくは死検による免疫細胞化学的な方法である。ここ数年においてPCR−検出法が次第に重要となってきており、この方法の場合、髄液(CSF)からのウイルス−DNA−増幅が信頼性のある特異的な結果を提供する(Weber et al., J. Infect. Dis. (1994), 1138 - 1141及びMc Guire et al., Annals of Neurology 37 (1995), 395 - 399)。
【0005】
先行技術から公知の診断法の欠点は、この方法を実施するのに著しく費用がかかり、従って信頼性のある日常の診断にとっては不適当であることにある。このことはPCR法にも通用し、この場合、汚染の危険性が高くなり、それにより結果の変造が生じることがある。従って、PMLの信頼性のある診断を簡単な方法で行うことができる方法及び試薬を提供することが望ましい。さらに、PML疾患の場合に治療的な処置のために使用することができる手段が必要とされる。
【非特許文献1】Weber et al., J. Infect. Dis. (1994), 1138 - 1141及びMc Guire et al., Annals of Neurology 37 (1995), 395 - 399
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の根底をなす課題は上記の目的を達成することができ、かつ先行技術の欠点を少なくとも部分的に回避できるような方法並びに試薬を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外にも、JCウイルスのウイルスタンパク質1(VP1)はJCVの免疫化学的検出のための優れた手段であることが確認された。さらに、VP1が組換体DNA技術によりウイルス様粒子(VLP)の形で高い収率で製造可能であることが見出された。
【0008】
従って、本発明の対象はウイルスタンパク質1(VP1)の複数の分子、JC−ウイルスの主構造タンパク質から構成されているウイルス様粒子(VLP)である。このVLPは特に免疫学的にアンチ−JCV−抗血清と反応する構造を有し、かつJCVと会合した核酸を有していないことにより特に優れている。
【0009】
意外にも、JVCの組換体VP1は精製の後に会合して、ウイルス様粒子(VLP)になることができることが見出された。この種のVLPは約50nmの直径を有する正二十面体構造を示す。個々のVP1タンパク質と比べてVLPの利点は特に、天然ウイルスの特性又は/及び作用を正確にシミュレートし、かつ広範囲な利用分野が開かれるという点にある。天然のウイルスと比較して、他の利点は特に高められた作業安全性にあり、意外にもVLPは精製された全ウイルスと比較してより高い免疫原性を示すことが確認された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
JVCのVP1は、例えば野生種株からのJCVの又はJCVの突然変異株からのキャプシド殻の主構造タンパク質である。特別な実施態様において、VLPは組換により製造されたVP1から構成されている。この場合、VP1の概念は、野生種のVP1とは突然変異、例えば置換、挿入又は/及び欠失により異なるタンパク質をも包含する。組換体VP1の製造のために、SEQ ID NO. 1に示された配列、遺伝的コードの同義性の範囲内でこの配列に相当する配列又はストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする配列を包含する核酸を使用するのが有利であり、この場合、この核酸配列又はこの配列を含有する組換体ベクターを適当な宿主細胞中へ導入し、この宿主細胞を、核酸配列の発現が行われる条件下でインキュベートし、このタンパク質を細胞又は細胞上澄液から単離する。ストリンジェントでハイブリダイズする条件とは有利にSambrook et al. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Pressにより定義されており、68℃で0.1×SSC、0.5%SDS中で30分の洗浄工程を包含する。
【0011】
本発明によるVLPはさらに1以上の付加的な異種タンパク質をキャプシド構造中に有することができる。これは異種タンパク質がキャプシド構造中に固定されており、この場合有利にこのタンパク質の少なくとも1部が外部からアクセス可能であると解釈される。異種タンパク質としてこのために原則的に、キャプシド構造中へ組み込むことが可能でありかつVLPの自己集合に悪影響を及ぼさない全てのタンパク質が適している。例えば、VLPに異種タンパク質を用いて、特異的な抗体によって検出可能な抗原決定基を備え付けることができる。他方では、異種タンパク質は細胞表面レセプターにとっての結合相手であることができ、それによりVLPと、相応するレセプターを有する細胞の特異的クラス又はサブクラスとの相互作用が可能である。この種の相互作用は、例えばレセプターとの結合の後で特定の信号の放出又はVLPのインターナリゼーションである。
【0012】
タンパク質の起源は特定の生物に制限されず、特別な適用形態に依存して真核性のタンパク質、特にヒトのタンパク質又は原核性の又はウイルス性のタンパク質をVLP中へ組み込むこともできる。適当なタンパク質の例は、表面タンパク質もしくは膜タンパク質及びヒト細胞表面レセプターについての例示であるCD4及びウイルス性の表面タンパク質について免疫欠乏ウイルスの殻タンパク質、例えばHIV−gp 120が挙げられる。異種タンパク質は場合により、特に天然のタンパク質がVLP中に組み込むことができないか又は自己集合に悪影響を与える場合に組換方法の使用下で変更される、例えば短縮されることができると解釈される。
【0013】
もう一つの特別な実施態様において、VLPはキャプシド構造の内部において1以上の作用物質を含有することができる。作用物質とは、本願明細書において、自己集合の際に使用される媒体中で通常存在しない各分子であると解釈される。このような作用物質は、例えば核酸のような巨大分子、例えばRNA、DNA又は人為的に変性された核酸、並びにタンパク質及び他の生理学的に活性の物質を包含し、これらは天然、合成又は組換の種類であってもよい。この種の生理学的に活性の物質の例は、例えば脂質、リン脂質、ペプチド、医薬、トキシン等である。
【0014】
本発明のもう一つの対象は、VP1タンパク質をコードし、かつ
(a) SEQ ID NO. 1で示されたヌクレオチド配列、
(b) 遺伝的コードの同義性の範囲内で(a)からなる配列に相当するヌクレオチド配列又は/及び
(c) ストリンジェントな条件下で(a)又は/及び(b)からなる配列の一つとハイブリダイズするヌクレオチド配列
を含めた核酸である。
【0015】
本発明による核酸は、有利に組換体ベクターに上で、特に発現信号の制御下で局在化されている。適当なベクターの例は、Sambrook et al., Supra, Kapitel 1, 2, 3, 4, 16, and 17に記載されている。本発明は本発明によるベクターでトランスフォーメーションされた細胞にも関する。
【0016】
もう一つの観点において、本発明はVLPの製造方法にも関しており、この場合、VP1を精製し、複数のVP1分子が会合して1つのVLPになるような形態に転換される。会合のための適当な条件は、例えばスクロース及びメトリザミドを介する分別クッション遠心分離(differentielle Kissenzentrifugation)による細胞培養上澄液からのVP1の精製の際に存在する。
【0017】
VLPを組換法で製造するのが有利であり、この場合、VP1タンパク質をコードする核酸を細胞内へ導入し、このトランスフォーメーションされた細胞を媒体中で、核酸の発現が行われる条件下でインキュベートし、発現生成物を細胞又は媒体から獲得する。組換体VP1の単離は、使用した宿主/ベクター系に依存して、宿主細胞又は/及び細胞上澄液から直接行われる。
【0018】
この組換方法の利点は、特に簡単な方法でVLPを高純度でかつ大量に獲得できる点にある。発現系として、実際にバキュロウイルスの使用が、昆虫細胞、例えば昆虫細胞系Sf 158との関連で有利である。
【0019】
キャプシド構造中に異種タンパク質が組み込まれたVLPもしくはキャプシド構造の内部に作用物質を含有するVLPの製造のために、上記の製造方法は、適当な時点で、つまりVLPの会合の前に異種タンパク質又は/及び作用物質を所望の量もしくは所望の濃度で添加し、引き続き会合を行うように変更される。この方法で、キャプシド殻に異種タンパク質を組み込まれた又は/及び内部に、封入された作用物質、例えば核酸を含有するVLPが製造できる。キャプシド殻内への異種ポリペプチドの組込は、例えばそれぞれのポリペプチド、例えばVP1ポリペプチド及び異種ポリペプチドを、適当な宿主細胞、例えば真核細胞中で組換体同時発現させることにより行われる。キャプシド殻の内部への作用物質の組込は、例えばキャプシド殻の解離、及び引き続く作用物質の存在での再会合、又は作用物質の存在でのVLPの浸透圧ショックにより行われる。
【0020】
もう一つの観点において、本発明は試料中のJCVに対する特異的抗体の免疫学的測定方法に関しており、この場合、抗体はPV1から構成された1つのVLP又はその1成分と結合することにより定性的並びに定量的に検出される。簡単な取り扱い性の理由から、組換体VP1分子から構成されたVLPの使用が有利である。
【0021】
この種の免疫学的測定方法のための試験形態は、当業者には多数のものが公知であり、従って詳細に述べる必要がない。一般に、この種の方法はVLPもしくはその成分を試料と適当な条件下で接触させて、JC−ウイルスに対する特異的な抗体とVLPもしくはその成分との結合を行わせ、形成された免疫複合体を他の試料成分から分離し、抗体の存在を検出することにより行われる。このために、例えば、吸着により、共有結合により又は適当な結合相手を介して固相と結合されたVLPを使用することができる。
【0022】
液体試料と一緒にインキュベートした後にウイルスタンパク質と結合した検出すべき抗体は、引き続き検出すべき抗体に対して特異的に結合するレセプター、例えば検出抗体、タンパク質A又はこの抗体と結合可能な抗原、例えばVLPにより検出される。このレセプターの正確な種類は重要ではなく、例えば多クローン性又は単クローン性の検出−抗体を使用することができ、例えば多様な動物種、例えばウサギ、マウス又はヤギからなるアンチ−ヒト−抗体、免疫グロブリン又は免疫グロブリンクラスのFc−部分に対して特異的に結合する抗体を使用することができる。
【0023】
検出すべき抗体と結合可能なレセプターは、さらに、検出を行う手段、例えば標識を有していてもよく、この標識は例えば特異的な結合ペア、例えばビオチン/アビジンを用いて直接的又は間接的にレセプターと会合されている。この種の標識は当業者には同様に公知であり、放射能、酵素、発光標識又は蛍光標識を包含する。特に有利な試験形態はELISAであり、この場合、レセプターは酵素標識を組み込まれる。
【0024】
上記の免疫学的測定方法は、試料として髄液(CSF)を使用した場合、進行性多巣性白質脳病(PML)の診断のために使用することができる。有利な実施態様において、PMLの診断のために平行測定を実施され、この場合、試料として同じ個体からのCSF並びに血清が使用され、その際、この両方の試料は特に有利に平行して取り出される。意味深い結果を得るために、測定された値を全免疫グロブリン濃度に関して校正するのが特に有利である。適当な標準サイズはいわゆる抗体特異インデックス(ASI)であり、このインデックスはCSF及び血清中のJCVに対する特異的抗体の力価の割合をCSF及び血清中のIg−全濃度の割合で割った値として定義される。≧1.5のASI−値がPMLの陽性の診断について信頼性のある結果を生じることが明らかになった。
【0025】
従って、本発明のもう一つの対象は、JCVに対する特異的抗体を測定するためのテストキットであり、このテストキットは空間的に別々に配置してJCVのVLP又はその成分、抗体を検出するための薬剤(手段)及び場合により通常の緩衝剤及び補助物質を包含する。有利にこのテストキットはヒト抗体を検出するために適している。抗体を検出するための薬剤は、特に検出すべき抗体と特異的に結合可能なレセプターであり、このレセプターは検出可能な標識を直接的又は間接的に備えている。このテストキットは同様に必要な支持体もしくは検出物質を含むことができる。
【0026】
本発明によるVLPは治療的にも、例えばPMLの治療のためにも使用することができる。本発明によるVLPは、JVCによる感染に対して使用することができる治療的又は/及び予防的ワクチンの製造のために適している。これに関して、特にキャプシド構造の異種タンパク質を組み込まれているのでもなく、内部に作用物質が封入されているのでもないVLPを使用するようにする。それにより、一方で乏突起膠細胞の表面上のレセプターは飽和され、さらなる感染を少なくとも延長させ、他方でJCVに対する体液性の免疫応答が刺激される。同様に、抗原特異的T細胞の増殖により検出することができる細胞性の免疫応答も、組換体VP1を投与することにより刺激することができる。しかしながら、また別に、有利にキャプシド構造中に相応する目標細胞、つまり乏突起膠細胞の表面レセプターに対する結合相手を組込かつ内部にウイルスの増殖又は蔓延を阻害する少なくとも1種の作用物質を封入された、変性されたVLPを使用することもできる。この場合、作用物質は有利にウイルス抑制剤、例えばシトシンアラビノシドである。
【0027】
もう一つの実施態様において、VLPを輸送媒介物として使用することができる。この種のVLPはその内部に適当な作用物質を封入して含有しており、かつ有利に異種の、キャプシド構造中へ組み込まれたタンパク質を含有しており、このタンパク質は意図した目標細胞の特異的表面レセプターと結合可能である。このように、意図された目標細胞との相互作用の特異性を保障することができ、適用に応じて多数の細胞種に適合させることができる。この種の使用の例は、多発性硬化症の場合にTNF−αアンチセンス−核酸を乏突起膠細胞に目標に指向的に輸送することである、それというのもこの疾患の場合TNF−α発現がいっぺんに脱髄現象を引き起こすのが公知であるためである。他の例は、遺伝子治療における核酸のためのトランスポーターシステムとしてのVLPの使用である。
【0028】
本発明のもう一つの対象は、従って、VLP、並びに場合により常用の緩衝剤、助剤、添加剤又は/及び希釈剤を含有する調剤学的組成物である。この場合、VLPは未変性のVLPであるか、又はキャプシド構造中に異種タンパク質が組み込まれた又は/及び内部に作用物質が封入されたVLPであることができる。
【0029】
本発明を次の実施例並びに添付した図面及び配列表によりさらに詳説する。
SEQ ID NO.1はJCVから単離された、VP1をコードするDNA配列の核酸配列を表し;
SEQ ID NO.2は対応するアミノ酸配列を表し;
SEQ ID NO.3はVP1をコードする配列を単離するために使用された増幅プライマーを表し;
SEQ ID NO.4はもう一つの増幅プライマーを表し及び
図1は組換体VP1の製造のための作業工程の略図を示し;
図2はVP1−VLP中の異種DNAのパッケージングを示し;
図3はアンチ−VP1−VLP−免疫血清の免疫活性を示し及び
図4はアンチ−VP1−VLP−免疫血清によるJCVの中和を示す。
【実施例】
【0030】
例1
JCV−VP1の組換方法
JCV−DNA(菌株Mad−4)をSVG−細胞から単離し、VP1−遺伝子のコードする配列をPCRを用いて増幅した。PCRのために次に記載するプライマーを使用し、このプライマーは引き続くクローニングのためにBamHIもしくはHindIII制限切断部位を備えている。

【0031】
PCR反応において、50μlの反応容量中でそれぞれプライマー100pmolを使用した。このDNAは50μlの混合物中で、95℃で45sの変性、55℃で45sのアニーリング及び70℃で45sの伸張からなる20回の増幅サイクルにより予備増幅された。最初のサイクルで変性は5分間に延長した。引き続く各伸張は1sだけ延長し、最後のサイクルは5分に延長した。この反応から10μlをプライマー及び2.0U Taq DNAポリメラーゼ(Pharmacia, Freiburg, Deutschland)と混合し、PCRを上記の条件下で合計で25サイクル行った。
【0032】
このPCR生成物を、アガロースゲル電気泳動により精製し、BamHI及びHindIIIで分割し、BamHI/HindIIIで切断されたp−BlueBac−III−ベクター(Invitrogen, Niederlande)のクローニング箇所内へ連結し、その際、VP1−遺伝子を有するベクターのpBlueBac−VPが得られた。E.coli細胞をpBlueBac−VPでトランスフォーメーションし、ポジティブなクローンを同定し、組換体プラスミドを単離し、野生種のバキュロウイルスDNAと一緒にSf 158昆虫細胞中へトランスフェクションした。SF 158細胞上の上澄液を2回パッサージした後に組換体バキュロウイルスを精製した(図1参照)。
【0033】
組換体VP1はSF 158宿主細胞中で発現し、1mlあたりタンパク質0.9mgの濃度で細胞上澄液中に分泌される。発現の検出は、ウサギ−アンチ−SV40−高度免疫血清を使用して細胞培養上澄液のウェスタンブロットにより行った。
【0034】
細胞培養上澄液から、VP1を、スクロース及びメトリザミドを介する分別クッション遠心分離を用いて均一になるまで精製することができた。
【0035】
電子顕微鏡による調査により、VP1がVLPと会合し、これが約50nmの直径及び正二十面体構造を有し、かつCsCl勾配において約1.31g/mlの密度を有することが示された。トリプシン消化後の質量分析器を用いたVLP中に含有するVP1タンパク質生化学的調査は、期待されたフラグメント材料を示した。組換体VLPはウサギの免疫により高いイムノゲンであることが証明された。
【0036】
例2
血清及びCSF中のJCウイルスに対する特異的抗体の免疫学的測定
組換体VP1をウサギからのSV40に対する高度免疫血清に対して及びPML患者の抗血清に対して滴定した。最適抗原濃度は分別クッション遠心分離により得られた生成物のタンパク質200ng(これはくぼみ当たりVP1約70ngに相当)を用いて算出された。CSF全タンパク質はトリクロロ酢酸析出を用いて測定された。血清及びCSF中の免疫グロブリンG及びアルブミンは免疫化学的にネフェロメトリーにより測定した。鞘内の抗体合成はライバー及びランゲ(Reiber und Lange, Clin. Chem. 37 (1991), 1153 - 1160)及びウェーバーほか(Weber et al., J. Immunol. Methods 136 (1991), 133 - 137)の方法に従って分析された。VP1−特異的抗体の鞘内合成は、少なくとも1.5のCSF及び血清(ASI)中の抗体力価の割合として定義される。
【0037】
測定の実施のために、96個のくぼみを有する微量滴定プレート(Grainer Frickenhaus, Deutschland)のくぼみ1つあたりpBlueBac−III−VP1で感染したSf158−細胞の細胞培養上澄液200ngを4℃で12〜14時間載せた。非特異的結合がくぼみ1つあたり5%Blotto200μlと共に1時間の間37℃でインキュベーションすることにより飽和させた。血清を、Log2−ステップにおいて1:500から出発してBlotto中で希釈し、その際、使用した最大希釈は1:80000であった。CSFを、Log2−ステップにおいて1:5から出発してBlotto中で希釈し、その際、使用した最大希釈は1:40000であった。37℃で3時間の間の1次抗体の結合の後、このプレートを0.05%Tween20を有するPBS150mMで7回洗浄した。結合した抗体を、ウサギ(Jackson Laboratories Dianowa, Hamburg, Deutschland)からのペルオキシダーゼ−接合アンチ−ヒト−IgG−抗血清と共に37℃で2時間インキュベーションすることにより検出した。PBSで7回の洗浄の後に、ペルオキシダーゼ−接合抗体を、o−フェニレンジアミンを使用して可視化した。15分後に、この反応を1.3N硫酸で停止し、Titertec MC340 MKII-ELISA-読み取り機中で495/620nmで光学密度(OD)を測定した。CSF及び血清中の抗体力価はEXEL(R)を使用して計算した。
【0038】
選択された場合に、鞘内の免疫応答のウェスタンブロット分析を実施した。12%SDS−PAGE−ゲル中で1トラックあたりVP1 1μgを電気泳動により分離した後、抗原を電気泳動的にHiBond−PVDF−膜(Amersham Buchler KG, Deutschland)上に移した。非特異的抗体結合を、5%Blottoを用いて37℃で1時間飽和させた。血清抗体又はCSF抗体を10mg/lのIgG濃度で各トラックに添加し、37℃で3時間インキュベートした。PBS中で3回洗浄した後、この膜をウサギからのペルオキシダーゼ−接合アンチ−ヒト−IgG−抗血清(Jackson Laboratories Dianova, Hamburg)と共にインキュベーションした。結合した検出抗体をECL−キット(Amersham Buchler KG, Deutschland)を使用して、製造元の記載に従ってハイパーフィルム−ECL上に可視化した。
【0039】
例3
PMLの診断的測定
189人の患者の平行CSF/血清試料を検査のために採った。PML患者の28/34(82%)においてASI≧1.5でアンチ−VP1抗体の鞘内合成が確認され、ASI≧1.5は5/155の対照患者において見られただけであった。VP1に対する血清抗体は全PML患者において、並びに多発性硬化症患者の28/37(76%)において、対照グループ43/50(86%)、血液髄液交差機能障害の患者の29/33(88%)及びHIV陽性患者の31/35(89%)において確認された。
【0040】
個々の場合に、ウェスタンブロット分析によりアンチ−VP1−抗体の鞘内合成を検査した。VP1 ASI<1.5を有するPML患者の場合、CSF及び血清においてほぼ同じ強度が得られるが、12〜107の範囲内のASIを有する患者の4つの血清は著しく弱い血清バンドを示し、かつ明らかに強いCSFバンドを示した。
【0041】
抗体特異インデックス(ASI)の統計学的評価を5つの異なる患者グループにおいて実施した。標準グループにおいて平均VP1 ASIは0.92(±0.16,範囲0.65〜1.26)であり、多発性硬化症のグループにおいて0.91(±0.38,範囲0.34〜2.49)、血液髄液交差機能障害のグループにおいて0.92(±0.22,範囲0.52〜1.36)、HIV陽性グループにおいて4.35(±12.7、範囲0.35〜67.2)及びPMLグループにおいて12.59(±24.42,範囲0.38〜107)であった。Kruskal-Wallisテストの使用の際に、5つのグループ(P<0.0001)の間の明らかな差異が生じた。Mann-Whitneyテストの使用の際に、PMLグループと対照グループの間で、血液髄液交差機能障害のグループと多発性硬化症のグループ(P<0.0001)との間で、並びにPMLグループとHIV陽性グループ(P<0.001)との間で明らかな差異が生じた。他の6つのグループペアの間の差異は明らかではなかった。
【0042】
上記の結果はJCV−VP1に対して結合する抗体の鞘内の合成の調査がPMLの診断のための適当なテストであることを示している。実施された調査において、≧1.5の統計学的に明らかなVP1−ASIの使用下で82%の感度及び96%の特異性が確認された。従って、このELISAアッセイがネスト状プライマーを有するPCRアッセイ(93%)よりも僅かな感度を示しているが、ELISAアッセイは、費用が安価で、より簡単に実施でき、汚染により誤った陽性の結果になりにくい合目的な補正がある試験方法である。重要な適用は、多数の試料を用いるスクリーニング及び検査、明らかに陽性の試料の迅速な決定、並びに明らかに陰性の試料の選択を包含する、それというのも、今まで存在する結果により血清中の陰性の抗体テストはPMLの診断を排除するためである。
【0043】
例4
組換体VP1に対する細胞性の免疫応答の検出
健康な被験者及びPML患者において、組換体JCV−VP1に対する細胞性免疫応答を検出することができた。抗原−特異的増殖は投与量に依存した。抗原1〜10μgの最終濃度の場合、抗原−特異的なT細胞の増殖が検出され、この増殖は6日目に最大値を達成した。この試験は健康な被験者及びPML患者が、JCVに対して、特にVP1−タンパク質に対して体液性だけでなく細胞性の免疫応答を有することを示唆した。
【0044】
例5
JCVの主構造タンパク質VP1のVLP中の外来タンパク質及び外因性DNAのパッケージング
5.1. ウイルスの殻糖タンパク質のパッケージング
外来タンパク質のパッケージングのためにモデル試験においてVP1及びサルの免疫不全ウイルスSIVmac32Hの殻糖タンパク質gp160を同時発現した。両方の場合に発現のためのベースのベクターとして例1に記載されたベクターpBlueBacを使用した。
【0045】
さらに、Sf158細胞を、VP1についての組換体バキュロウイルスを用いて5の多重度(細胞あたり感染単位数)で、及び0.2、0.5及び2のgp160対VP1の多重度比で感染させた。同時感染の5日後に、細胞及び細胞培養上澄液をウェスタンブロット−分析によりgp160及びVP1の存在に関して調査した。この場合、gp160及びVP1に対して結合する抗体混合物を有するgp160及びVP1の効率的な同時発現が検出された。gp160及びVP1は同様に別々に検出可能である。この場合、2の多重度比が最良の同時発現結果を生じる。gp160とVP1−VLPとの会合は、40%のスクロースクッションによる細胞培養上澄液のペレット化により実証することができた。生じたペレット中でgp160は、同様にgpq60及びVP1と別々に抗体混合物を用いて検出可能である。
【0046】
5.2. 外因性DNAのパッケージング
VP1−VLP中に外因性DNAをパッケージングできるかどうか、遺伝子治療のための効率的なトランスファーシステムの開発の範囲内で試験した。このため3つのバッチを追跡した。精製したVP1−VLPを、TBS/Ca(トリス−HCl 10mM pH:7.5、NaCl 150mM、CaCl2 0.01mM)、H2bidest又は解離緩衝液(EGTA10mM及びDTT5mMを有するTBS pH:8.5)中に懸濁させた。外因性DNAをpUC18誘導体(これはHIV−1han2の殻糖タンパク質に対するenv−遺伝子の1.2kBの長さのV1/V2領域を有し、この配列はSauermann et al.(AIDS Research and Human Retroviruses 6 (1990), 813-823)に記載されている(全ベクターは約4.1kB))の形で、1:10及び1:20のDNA対VP1−VLPの重量比で添加した。インキュベーションを37℃で60分間行った。TBS/Ca中で実施されたバッチを、次いで浸透圧ショックにかけ、さらに37℃で30分間インキュベーションした。全試料を一晩中再会合緩衝液(CaCl2 1mMを有するTBS pH:7.5)に対して透析した。引き続き全ての試料を集中的にDNase Iを用いて消化し、TBS/Caで希釈し、一晩中40%のスクロースクッションにより超遠心分離した。この粒子を再懸濁させた後にDNAを抽出し、V1/V2−領域(約1.8kB)を特異的プライマーでPCRを用いて増幅し、増幅物をアガロースゲル中で分離した。その際、全ての3つの方法を用いて(トレース1〜6)外因性DNAはVP1−VLP中にパッケージングできたことが判明した(図2)。外来性DNAはパッケージングによりDNase Iによる消化に対して効率的に保護されていた。最良のパッケージング効率は1:20のDNA対VP1−VLPの割合の場合で、解離及び再会合の進行の後に達成される(トレース6)。陽性対照から出発した評価により、精製されたVP1−VLP80g中で外来性DNA約3〜4gがパッケージングされた。
【0047】
例6
主構造タンパク質VP1のVLPをベースとするヒトポリオーマウイルスJCVに対する治療的ワクチンの開発
ヒトのポリオウイルスJCVに対する治療的ワクチンの製造のために、主構造タンパク質VP1を組換体バキュロウイルスを用いて昆虫細胞中で発現させた(例1)。発現後にVP1は典型的なウイルス様粒子(VLP)を形成した。このVLPは約50〜60nmの直径を有する「空の」又は「充填された」粒子からなる混合物を表す。VP1−VLPは均質化するまで精製され、CsCl勾配中での1.32g/ml(空の粒子)及び1.34g/ml(充填された粒子)の浮遊密度(Schwimmdichte)を示した。
【0048】
VP1−VLPの免疫原性
免疫原性の調査のために、精製されたVP1−VLP 100μgを鍵穴螺旋のヘモシアニン300μgと混合し、完全フロイントアジュバント中に懸濁し、ウサギに筋肉内で免疫接種した。補充免疫接種を不完全フロイントアジュバントを用いて4週間後に行った。図3A中では、ウサギの最後の免疫接種後の多様な検査データのELISAでのアンチ−VP1抗血清の力価の分析を示した。調査のために、精製したVP1−VLP50ngをELISAプレート(Greiner, Nuertingen)に吸収させ、対応する検査データのアンチ−VP1抗血清(+:7週;*:13週;□:15週;×:20週;◇:25週)を記載された希釈で滴定した。最終力価は、反応性が免疫前血清(−)の反応性と一致する希釈として定義した。図3Aに示したように、免疫血清は最後の免疫接種の6週間後に約105の最終力価に達した。
【0049】
アンチ−VP1抗血清の特異性はウェスタンブロット(WB)で調査した。これについてトレースあたり精製された抗原約20ngをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分離し、ニトロセルロース膜上に移した。図3B中では、抗原としてVPS1−VLPを使用し、異なる検査データ(トレース2:7週;トレース3:13週;トレース4:15週;トレース5:20週;トレース6:25週)のアンチ−VP1抗血清の反応性を、免疫前血清(トレース1)の反応性及びアンチ−SV40高度免疫血清(トレース7)と比較した。図3C中でも同様に精製されたVP1−VLPを使用し、図3Bでは精製された天然のJCV粒子が及び図3Eでは精製された天然のSV40粒子が抗原として見られる。図C〜EにおいてそれぞれトレースPが免疫前血清を表し、それぞれトレース1がアンチ−SV40免疫血清、それぞれトレース2がアンチ−VPS抗血清を表す。
【0050】
抗血清の特異性は期待値に相当した。ウェスタンブロット分析に示したように、単にVP1−VLP特異的タンパク質が認識され、最後の免疫接種の後で出血時点に依存して反応性の明らかな上昇を観察することができた(図3B、トレース2〜6)。この反応性はアンチ−SV40高度免疫血清(トレース7)と比較可能である。アンチ−VP1−VLP免疫血清の免疫反応性は、同様に多様な抗原に対して試験した。高度免疫血清は組換体VP1(図3C、トレース1)に対してさらにSV40のVP1(図3D、トレース1)及び天然JCVのVP1(図3E、トレース1)が認識された。他方で、この反応性はアンチ−SV40免疫血清の反応性と比較可能である(図3C〜E、それぞれトレース2)。
【0051】
VP1−VLPのSVG細胞との結合及び結合阻害
この試験のために、VP1−VLPは125Iを用いて放射性標識した。まず、125I−VP1−VLP及びSVGの比を測定し、これはヒト胎児グリア細胞に複製開始点に欠陥のあるSV40突然変異体をトランスフェクションすることにより得られた(Major et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 82 (1985), 1257-1261)。125I−VP1−VLP2×106cpm及び105SVG細胞を用いて飽和結合を達成した。この試験条件下で、アンチ−VP1−VLP免疫血清の結合阻害を試験した。1:5及び1:10の血清希釈で、125I−VP1−VLP結合は95%まで抑制され、1:20の血清希釈では、なお約75%の結合阻害が観察された。1:40の血清希釈の場合にはなお20%の結合阻害が測定できたが、1:80の血清希釈の場合には結合阻害は達成されなかった。
【0052】
JCVの中和
VP1−VLP高度免疫血清の中和能力の検査のために、新規の試験を開発した。この試験はSVG細胞のJCVによる感染後のVP1の細胞内の検出に基づく。図4から明らかなように、1:160のJCV感染系統の希釈の場合でかつ1:24の血清希釈の場合にJCVの完全な中和を達成することができた、それというのもVP1は検出されなかったためである。1:40の血清希釈の場合にVP1が確認されたが、減少した形であり、これは部分的JCV中和を示唆する。これは1:80の血清希釈にも当てはまるが、1:160の血清希釈の場合では対照との比較において中和作用は達成されなかった。同様の結果が1:80のJCV感染系統の希釈の場合でも達成された。
【0053】
この結果は、VP1−VLPが、効果能力を有するワクチンにより期待することができる免疫応答を誘導することを示す。中和する及び結合阻害する抗体が誘導される。さらに、VP1−VLPはJCV陽性であるが健康な個体の末梢血リンパ球中での増殖性T細胞活性を誘導することができる(例2〜4)。
【0054】
配列表
(1) 書誌的事項:
(i) 出願人:
(A) 名称:Deutsches Primatenzentrum GmbH
(B) 町:Kellnerweg 4
(C) 都市:Goettingen
(E) 国:ドイツ国
(F) 郵便番号:37077
(ii) 発明の名称:JC−ウイルスのVP−抗原
(iii) 配列の数:4
(iv) コンピュータ読み取り可能形態:
(A) データ媒体:フロッピーディスク
(B) コンピュータ:IBM PC compatible
(C) 作動システム:PC-DOS/MS-DOS
(D) ソフトウェア:PatentIn Release #1.0, Version #1.30 (EPA)
(2) 配列番号:1:
(i) 配列データ:
(A) 長さ:1121塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:両形態
(D) トポロジー:直鎖状
(ix) 配列の特徴:
(A) 特徴を表す記号:CDS
(B) 存在位置:39..1100
(xi) 配列番号:SEQ ID NO:1:



(2) 配列番号:2:
(i) 配列データ:
(A) 長さ:354アミノ酸
(B) 型:アミノ酸
(D) トポロジー:直鎖状
(ii) 配列の種類:タンパク質
(xi) 配列番号:SEQ ID NO:2:


(2) 配列番号:3:
(i) 配列データ:
(A) 長さ:29塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列番号:SEQ ID NO:3:

(2) 配列番号:4:
(i) 配列データ:
(A) 長さ:29塩基対
(B) 型:核酸
(C) 鎖の数:一本鎖
(D) トポロジー:直鎖状
(xi) 配列番号:SEQ ID NO:4:

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】組換体VP1の製造のための作業工程の略図。
【図2】VP1−VLP中の異種DNAのパッケージングを示す図。
【図3A】アンチ−VP1−VLP−免疫血清の免疫活性を示す図。
【図3B】アンチ−VP1−VLP−免疫血清の免疫活性を示す図。
【図4】アンチ−VP1−VLP−免疫血清によるJCVの中和を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JC−ウイルスのウイルスタンパク質1(VP1)の複数の分子から構成されているウイルス様粒子。
【請求項2】
組換体VP1から構成されている、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
VP1が、
(a) SEQ ID NO.1で示されたヌクレオチド配列、
(b) 遺伝的コードの同義性の範囲内で(a)からなる配列に一致するヌクレオチド配列又は/及び
(c) ストリンジェントな条件下で(a)又は/及び(b)からなる配列の一つとハイブリダイズするヌクレオチド配列
を含める核酸によりコードされる、請求項1又は2記載の粒子。
【請求項4】
さらに少なくとも1つの付加的異種タンパク質をキャプシド構造中に組み込んで有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項5】
キャプシド構造の内部に少なくとも1種の作用物質を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項6】
作用物質が、核酸、タンパク質及び生理学的活性物質から選択されている、請求項5記載の粒子。
【請求項7】
VP1を精製し、複数のVP1分子が集合してウイルス様粒子になる形に移行させることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のウイルス様粒子の製造方法。
【請求項8】
VP1タンパク質をコードする核酸を細胞中に導入し、トランスフォーメーションした細胞を媒体中で、核酸の発現が行われる条件下でインキュベートし、発現生成物を細胞又は媒体から獲得する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
集合を少なくとも1つの他のタンパク質の存在で実施し、その際、このタンパク質がキャプシド殻中へ組み込まれる、請求項7から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
集合を少なくとも1つの物質の存在で実施し、その際、この物質がキャプシド殻の内部へ封入される、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
集合を核酸の存在で実施する請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗体を、請求項1から6までのいずれか1項記載のウイルス様粒子又はその成分と結合させることにより定性的又は/及び定量的に検出することを特徴とする、試料中でJCVに対する特異的抗体を免疫学的に測定する方法。
【請求項13】
試料として、同じ患者からの髄液及び血清を使用することを特徴とする、進行性多巣性白質脳病(PML)の診断のための請求項12項記載の方法。
【請求項14】
空間的に別々な配置で、請求項1から6までのいずれか1項記載のウイルス様粒子又はその成分、抗体の検出のための薬剤、及び常用の緩衝液及び補助物質を有するJC−ウイルスに対する特異的抗体の測定のための試験キット。
【請求項15】
JVC感染に対する治療用又は/及び予防用のワクチンを製造するための、請求項1から6までのウイルス様粒子の使用。
【請求項16】
目標細胞に作用物質を目標に指向的に輸送するための輸送媒介物としての、請求項5又は6記載のウイルス様粒子の使用。
【請求項17】
遺伝子治療における核酸のためのトランスポーターシステムとしての、請求項16記載のウイルス様粒子の使用。
【請求項18】
請求項1から6までのいずれか1項記載のウイルス様粒子を含有する、調剤学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−197441(P2007−197441A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10569(P2007−10569)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【分割の表示】特願平9−519407の分割
【原出願日】平成8年11月22日(1996.11.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390014166)シエーリング アクチエンゲゼルシヤフト (12)
【氏名又は名称原語表記】Schering Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−13353 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】