ウイルス関連疾患を予防するためのウイルス遺伝子産物およびワクチン接種の方法
ウイルス関連疾患を予防するためのワクチン接種方法であって、一般的に、宿主免疫を提供するか回復させるウイルス特異的メモリーT細胞を増加させ、前記ウイルス関連疾患プロセスを制御する、方法。これらの結果を達成するためのポリペプチドおよびDNA配列も記載する。いくつかの実施形態において、前記ウイルスはエプスタインバーウイルスである。また、少なくとも2つのウイルス遺伝子産物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する被験体の免疫応答を誘導する薬学的組成物も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国仮特許出願第60/737,944号(2005年11月18日出願)(その内容全体は、本明細書中に参考として援用される)に基づく優先権および任意の他の利益を主張する。
【0002】
(政府の権利)
米国の政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
【0003】
(分野)
本開示内容は一般的に、ウイルス関連疾患およびいくつかの実施形態においてはエプスタインバーウイルス(EBV)関連疾患を予防するためのワクチン接種方法に関する。いくつかの実施形態において、本方法は、宿主免疫を改善および/または回復させるEBV特異的メモリーT細胞を増加させ、疾患を制御する。これらの結果を達成するためのポリペプチドおよびDNA配列も記載する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
エプスタインバーウイルスは、休止期ヒトメモリーT細胞および上皮細胞に感染する遍在性のリンパ球指向性ヒトヘルペスウイルスである。EBVは鼻咽腔の上皮細胞の一次感染を介してヒト宿主に達し、通常このプロセスは青少年期に行われる。この宿主の一次感染は、EBV一次感染と呼ばれる。
【0005】
健常者のEBV一次感染は無症状であることが多いが、重篤なインフルエンザ様疾患を起こすこともあり、その場合は、ヒト(宿主)における感染したEBV陽性B細胞が限られた時間だけ増殖し、その後に宿主自身の免疫系(健常な抗原特異的T細胞を介する場合が多い)により疾患が制御される。この自己限定性のB細胞リンパ増殖性疾患は、伝染性単核球症(IM)または「モノ」と呼ばれており、医原性(免疫抑制剤)、後天性(AIDS)または先天性(SCID、XLP)の免疫抑制の後に発症するより重篤な、制御不能な、または悪性のEBV感染B細胞の増殖とは区別することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本明細書には、ある被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導する方法であって、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物を前記被験体に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される。いくつかの実施形態において、ウイルスは、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8(カポジ肉腫ヘルペスウイルス:KSHV)から選択されるヒトヘルペスウイルスである。エプスタインバーウイルスには、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiといったウイルス株が含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
この他の特性および利点は、以下の説明に一部記載されているが、一部は以下の説明によって明らかになるか、あるいは本発明の実施によって認識される場合がある。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に指摘した要素および組み合わせによって実現および達成される。
【0008】
前述の概説および後述の詳細説明はいずれも、単に例示的かつ説明的なものであり、請求される本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0009】
本明細書で援用され本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を説明するものであり、説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(詳細な説明)
以下では本発明を、添付の図面を場合により参照しながら、いくつかのより詳細な実施形態を参照することにより説明する。しかし、本発明は、異なる形態で実現される場合があり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈してはならない。むしろ、これらの実施形態は、本開示内容が完璧かつ完全であり、本発明の適用範囲を当業者に完全に伝達するように提供される。
【0011】
特に断りのない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定することを目的としたものではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、特に状況下において明記されない限り、複数形も含むことを意図する。本明細書に記載するすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、全体が参考として援用される。
【0012】
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載する成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、いずれの場合にも「約」という用語によって改変されるものとして理解されたい。したがって、相反する記載がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、および等価物の教義の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効桁数および通常の丸め法を考慮して解釈しなければならない。
【0013】
本発明の広範な適用範囲を述べる数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も本質的には、それぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を含む。本明細書全体を通して定められる数値の範囲は、このようなより広範な数値範囲内に含まれるそれぞれのより狭い数値範囲が、本明細書においてすべて明記されているかのように、このようなより狭い数値範囲を包含する。
【0014】
EBVは、安静にしているヒトメモリーB細胞および上皮細胞に感染する広布リンパ増殖性ヒトヘルペスウイルスである。遺伝的多型によって区別される、それぞれ1型および2型とも呼ばれるA型およびB型の2つのEBV株が存在し、それにより種々の遺伝子は、DNA配列および/または一次アミノ酸配列が異なる。いずれのEBV型も世界中で発生するが、地理的分布は異なる。さらに、いずれのEBV型も、インビボにおける生物活性がほぼ同じであり、したがって、本発明の方法および組成物は、一方または両方の型のEBVに由来する遺伝子産物を投与することによって、1型EBVとしても知られるA型EBVと2型EBVとしても知られるB型EBVの両方に対して使用するように適合させることができる。本発明の適用範囲内に含まれるEBVのその他の株には、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiがある。表1は、1型EBVのオープンリーディングフレームに対応する核酸配列を示す。
【0015】
EBVは、鼻咽喉の上皮細胞の一次感染を介してヒト宿主に接触し、通常は青年期にEDVがこれを行う。青少年のこの第1感染は、一次EBV感染と呼ばれる。上皮内において、一次EBV感染時における溶解遺伝子プログラムの活性化により、局所的なビリオン生成や粘膜下リンパ組織の湿潤が生じ、休止期Bリンパ球の感染をもたらす。溶解性感染は、BZLF1として知られるEBVレプリコンアクチβー遺伝子産物によって開始および推進される。約80種類のEBV mRNA種が、一次感染の溶解段階中に発現し、前初期、後初期、または後期のいずれかのウイルス性溶解遺伝子として特徴付けられる。前初期溶解性感染時に検出される遺伝子は、新しいタンパク質の合成に関係なく発現し、BZLF1遺伝子産物によって活性化される。初期溶解性抗原(EA)の例には、BRLF1、BMRF1、BMLF1(トランスアクチβー)、BALF5(DNAポリメラーゼ)、BARF1(リボヌクレオチドレダクターゼ)、BXLF1(ウイルスチミジンキナーゼ)、BGLF4(CMV−UL97と相同のタンパク質キナーゼ)がある。後期溶解遺伝子の発現は、ビリオン集合に必要な構造タンパク質を主にコードする。潜伏遺伝子プログラムでその他何らかのEBV遺伝子プログラムは、一次EBV感染のこの初期段階に感染Bリンパ球において活性化される。
【0016】
健常者のEBV一次感染は無症状であることが多いが、場合によっては重篤なインフルエンザ様疾患を起こすこともあり、被験体(例えば、ヒト)の感染したEBV陽性B細胞が、限られた時間だけ増殖し、その後に被験体自身の免疫系(健常な抗原特異的T細胞を介する場合が多い)が疾患を制御する。この自己限定性のB細胞リンパ増殖性疾患は、伝染性単核球症(IM)または「モノ」として知られ、移植後リンパ増殖性障害と呼ばれる、臓器移植後に生じることがあるEBV陽性B細胞のより重篤な、制御不能な、または悪性の増殖とは区別される。この増殖は、しばしば致命的となることがあるが、これについては以下で考察する。本発明者は、これらの病態のいずれにおいても、感染したB細胞において発現するEBV溶解遺伝子産物および潜伏遺伝子産物が、宿主のT細胞免疫応答の主要な標的であることは明らかであることを見出した。
【0017】
被験体が「無症状」一次EBV感染に罹患しているか、またはIMを発症するかに関係なく、溶解段階は宿主のT細胞による制御下において生じるが、EBVは、宿主の身体から決して完全には排除されない。むしろ、EBVは、限られた数の休止期B細胞において持続的なEBVプログラムに切り替えることによって、宿主の免疫系から逃れようとする。一般的に、常にというわけではないが、ウイルスが第1潜伏形態(潜伏I型)でのみ存在する限り、溶解遺伝子プログラムは沈黙しており、潜伏遺伝子の発現はEBNA1およびLMP2Aに限られる。したがって、ウイルスは、宿主免疫監視網を回避することによってヒト宿主内に生き残ることができ、LMP1およびEBNA2などの発がん性ウイルスタンパク質は沈黙しているため、感染した免疫適格宿主に対してほとんど脅威を示さない。実際に、米国の成人の約95%が、安定した潜伏EBV感染に罹患している。しかし、以下に言及するとおり、潜伏EBV感染が再び活性化され、疾患プロセスと関連する場合もある。
【0018】
潜伏EBV遺伝子プログラムは3種類あり(図1)、それぞれが潜伏遺伝子の発現パターンと関連する。EBV陽性休止B細胞は、エプスタインバー核抗原1(EBNA1)および潜伏膜タンパク質−2A(LMP2A)を含むがこれらに限定されない潜伏I型遺伝子発現プロファイルを示す。これは、通常の健常なヒトにおけるメモリーB細胞の長期的な無症状EBV感染に関連する潜伏プログラムである。潜伏II型感染Bリンパ球は、EBNA1、LMP2A、およびLMP1の発現を含むがこれらに限定されない潜伏遺伝子プログラムを示す。活性化され、悪性の形質転換、すなわち無限の増殖が可能なヒトEBV陽性B細胞は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bの発現を含むがこれらに限定されないIII型潜伏プログラムを示す。
【0019】
一次EBV感染および以前の潜伏EBV感染の再活性化を伴う併発症は、先天性、後天性、および/または医原性免疫不全状態の患者において高い頻度で生じる。例えば、実質臓器または血液同種移植を受けた患者において集中T細胞抑制療法を行うと、患者はEBV関連PTLDに罹患する危険性がある。このPTLDの危険性は、移植片拒絶または移植片対宿主疾患(GVHD)の徴候がさらに見られる場合に高くなる。PTLDは、米国で1年間に実施される実質臓器移植の2〜20%において併発する。死亡率は50%〜70%と報告されており、最適な処置法については、依然として盛んに議論されている。免疫抑制の低減は、ほとんどすべての患者において最初に試行され、23%〜50%の症例でPTLD病変の退行が見られると報告されているが、この手法による持続的な完全寛解はほとんど得られることがないと考えられている。新規の免疫抑制療法の出現により、実質臓器の移植は、末期腎臓病、小児患者のI型糖尿病、ならびに心不全や肝不全などの治療オプションとなっている。標準的な医療診療において臓器移植が多く使用されるようになれば、PTLDを発症する頻度が高くなり、罹患率や死亡率が増大することになる。さらには、PTLDに関連する併発症の管理が、患者やヘルスケア産業にとって大きな財政的課題をもたらす。
【0020】
PTLDは、一次または再活性化EBV感染に関連する悪性B細胞リンパ増殖性障害である。EBVウイルス血症とPTLDの間の関連は、免疫抑制療法中に移植患者の末梢血液からEBV DNAを増幅させる定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)法を使用して、再現的に文書化されている。PTLDの範囲は、ポリクローナルのB細胞過形成からモノクローナルの免疫芽球性リンパ腫にわたる。ポリクローナルEBV−LPDは、免疫抑制療法の中止後に退行することが知られているが、モノクローナル疾患は、従来の療法に対して本質的な抵抗を示し、しばしば致命的である。自家Tリンパ球の存在下におけるEBV誘導B細胞形質転換の阻害がインビトロデータにより示され、異種移植重症複合型免疫不全(SCID)マウスにおけるEBV陽性リンパ芽球様細胞株(LCL)成長の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)により媒介される逆転が実証されたことで、T細胞がEBV感染とEBV形質転換B細胞の制御において不可欠であるという見解に対して納得できる裏付けが得られている。インビトロ生成CTLをEBV−LPD患者に送達し、免疫抑制療法の中止後におけるEBV特異的CTLの内因性拡大が記録されたことで、宿主免疫の回復が、この「日和見性の」悪性疾患の制御において最も有望な療法となり得ることが示唆されている。これらの所見はまた、PTLDの発症を防止するために実質臓器の移植前にEBV特異的CTL先駆物質の頻度を拡大させることを目的して、宿主の免疫網を教育する方法を考案する貴重な機会ももたらす。当然ながら、上述の再活性化EBV(または他のヘルペスウイルス)感染および悪性EBV(または他のヘルペスウイルス)関連疾患に罹患する危険性がある他の患者群に、同様の方法を適用することも可能である。
【0021】
種々のウイルス性タンパク質由来ペプチドと特定のHLA型の間の関連性は限られていることから、潜伏または溶解EBV遺伝子産物に由来する選択ペプチドによる免疫化は、比較的小さな患者群に免疫優性抗原をもたらすと考えられる。この制約は、全長EBV溶解および/または潜伏ポリペプチドもしくはタンパク質を抗原処理網に提供し、それによってすべてではないにせよ、ほとんどの型のHLAクラスIおよびII分子の状況下において最適な提示を可能にすることにより回避できることを、本発明者等は発見した。これらのより大きな分子を受容した被験体(例えば、ヒト)は、その後全長ポリペプチドを処理し、特定のHLAクラスIおよびII分子の状況下において免疫優性ペプチドを示すことができる。したがって、本明細書では、賦形剤または免疫補助剤を伴うかを問わず精製タンパク質を直接送達することによるか、あるいは組換えDNA法を介して達成することができるワクチン接種を目的とした、全長溶解および/または潜伏EBVポリペプチド免疫原を提供する。本開示内容と一貫して、本発明の方法および組成物も提供する。
【0022】
本発明は、ウイルス由来の産物を被験体の遺伝子に投与することによりウイルス関連疾患に対する被験体の免疫応答を誘導するための方法および組成物を対象とする。本発明の標的である疾患を誘発するウイルスには、ヒトヘルペスウイルス(HHV)1〜8(HHV−1、HHV−2、HHV−3、HHV−4、HHV−5、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8)が含まれる。本開示内容のほとんどでは、HHV−4(エプスタインバーウイルス)に注目して本発明を例示しているが、他のHHVにも等しく適用することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルスであり、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物は、表1に列挙する遺伝子産物から選択される。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、1型エプスタインバーウイルスに由来し、表1に列挙する配列に関連する。いくつかの実施形態において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択されるか、あるいは溶解遺伝子産物は、BZLF1およびBMLF1から選択され、潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択されるか、あるいはエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物はBZLF1であり、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物はEBNA3Cである。本発明の方法のいくつかの実施形態は、少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を投与することを伴う。
【0024】
いくつかの実施形態において、ウイルス関連疾患は、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎(renal cell tubulitis)、および肝炎から選択される。腫瘍性疾患には、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞およびT/NK細胞リンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。リンパ増殖性障害には、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および治療的介入の結果として、またはそれに関連して生じる免疫不全状態を一般的に含む医原性免疫不全の結果として、あるいはこれらに関連して生じるものが含まれるが、これらに限定されない。医原性免疫不全には、移植後リンパ増殖性疾患となることがあるこれらの免疫不全状態のいずれかが含まれる。
【0025】
いくつかの実施形態において、被験体は、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス関連疾患であると診断されている。腫瘍性疾患には、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞リンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。リンパ増殖性障害には、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および医原性免疫不全が含まれるが、これらに限定されない。医原性免疫不全は、移植後リンパ増殖性疾患を生じることがある。
【0026】
いくつかの実施形態において、投与は、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択されるエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することによって行われ、前記エプスタインバーウイルス遺伝子産物は、調節エレメントに作動可能に結合されている。いくつかの実施形態において、エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列を含む。全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列には、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、ならびにLMP1−lyt、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bコード配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、投与は、被験体において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む免疫原組成物を導入することによって行われる。遺伝子産物は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドであってもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物および少なくとも1つのエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は結合する。いくつかの実施形態において、ウイルス遺伝子産物は、皮下経路、筋肉内経路、粘膜経路、腹膜内経路、または皮内経路から選択される経路によって投与される。
【0028】
また、少なくとも2つのウイルス遺伝子産物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する被験体の免疫応答を誘導する薬学的組成物も提供される。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される。いくつかの実施形態において、ウイルスは、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8から選択されるヒトヘルペスウイルスである。いくつかの当該実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルスであり、これは、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である場合がある。
【0029】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物は、表1に列挙する遺伝子産物から選択される。いくつかの当該実施形態において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される。いくつかの当該実施形態において、溶解遺伝子産物は、BZLF1およびBMLF1から選択され、潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択されるか、あるいはエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物はBZLF1であり、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物はEBNA3Cである。
【0030】
薬学的組成物は、水、塩、緩衝剤、炭水化物、可溶化剤、プロテアーゼインヒビター、および乾燥粉末処方剤から選択される賦形剤を含む場合がある。いくつかの実施形態において、薬学的組成物はさらに、フロイントアジュバント、油中水型エマルジョン、鉱油、顆粒白血球/マクロファージコロニー刺激因子、および/またはインターロイキン2など、少なくとも1つの補助剤も含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含み、いくつかの実施形態において、薬学的組成物は少なくとも3つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む。
【0031】
また、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;およびエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、アデノウイルスベクターなどのウイルスベクターも提供される。いくつかの実施形態において、エプスタインバーウイルスは、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である場合がある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物は、表1に列挙する遺伝子産物から選択される。エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物には、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytが含まれるが、これらに限定されず、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される。いくつかの当該実施形態において、溶解遺伝子産物は、BZLF1およびBMLF1から選択され、潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択され、いくつかの当該実施形態において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物はBZLF1であり、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物はEBNA3Cである。
【0032】
また、アデノウイルスベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルスも提供する。また、アデノウイルスベクターを含むアデノウイルス部分;およびプラスミド部分を含むプラスミドも提供する。
【0033】
また、本明細書で提供するウイルスベクターを含む哺乳動物細胞も提供する。また、ウイルス遺伝子産物に対する免疫応答を産生する条件下において哺乳動物細胞を培養する方法であって、ウイルス遺伝子産物の発現に好適な条件下において細胞を増殖させることを含む、方法も提供する。これらの細胞調製物には、自家樹状細胞、線維芽細胞、筋細胞などを含むが、これらに限定されない。また、細胞療法として使用されるEBV特異的細胞傷害性T細胞(または他のエフェクター細胞)のエキソビボ生成および膨張をもたらす(いずれかの既存のEBVオープンリーディングフレームなどからの)所与のウイルス遺伝子産物の発現を可能にする方法も提供される。本明細書に記載の方法の性質は、細胞療法として使用する自家または同種抗原特異的もしくは生得免疫細胞調製物に適用される場合がある。細胞療法は、被験体に投与されると、サイトカインの分泌、共刺激分子の認識、抗原の認識、細胞傷害性療法の送達など(これらに限定されない)を介して、病原体に対する所与の応答を向上させる細胞調製物として定義される場合がある。
【0034】
また、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含むベクターも提供する。また、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および前記エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連腫瘍性または非腫瘍性疾患に対する免疫応答を産生するウイルスベクター薬学的組成物も提供する。また、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;前記エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連疾患に対する免疫応答を産生するアデノウイルスベクター薬学的組成物も提供する。
【0035】
また、エプスタインバーウイルスワクチンに対する被験体の応答を確認する方法であって、(i)エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物の存在をアッセイすること、(ii)バイオマーカーとしてサイトカインを使用して被験体から単離された免疫エフェクター細胞サブセットの存在をアッセイすること、(iii)バイオマーカーとしてモノクローナル抗体および/またはHLA4量体技法を使用して抗原特異的リンパ球の存在をアッセイすることを含む、方法も提供する。
【0036】
したがって、一実施形態において、本発明は、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される場合がある少なくとも1つのEBV遺伝子産物を含む新規のワクチンを投与することにより、被験体において少なくとも1つのEBV関連疾患を治療することを対象とする。一般的に、EBV関連疾患は、いずれかのEBV ORFによって発現/コードされたEBV遺伝子産物の直接的/間接的な結果としてヒト細胞の無制御の増殖、生存または死をもたらすものである。EBV関連病理には、EBVゲノム(DNA)を組織または体液において検出することができる任意の条件が含まれると考えられる。EBV関連疾病単位は、EBVのいずれかのオープンリーディングフレーム、あるいはウイルスまたは細胞調節機序(すなわち、miRNAなど)に参加することができるポリヌクレオチド配列をもたらす非コード配列によってコードされた1つ以上のウイルス遺伝子産物の発現による、いずれかの生理学的プロセスの調節疾患に関係する場合がある。本明細書に概説する方法はまた、関連するもしくは相同の遺伝子産物もしくはオープンリーディングフレームを有する他のウイルスに関連するか、またはこれにより生じる同様の疾患状態に適用される場合もある。これらのウイルスには、ヒトヘルペスウイルス1型および2型(HHV−1、−2)、HHV−3(水痘帯状疱疹)、HHV−4(本明細書に例示するEBV)、HHV−5(サイトメガロウイルス[CMV])、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8(KSHV)が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
特定のEBV関連疾患には、腫瘍性疾患、伝染性単核球症(IM)、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍性疾患には、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞およびT/NK細胞リンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、リンパ増殖性障害は、先天性免疫不全、後天的免疫不全、および医原性免疫不全から選択される。医原性免疫不全の状況下において生じる腫瘍には、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)およびメトトレキレート関連非ホジキンリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。EBV関連疾患は、溶解および/または潜伏遺伝子プログラムを示し、したがって、少なくとも1つのEBV溶解遺伝子産物および/または少なくとも1つのEBV潜伏遺伝子産物を含む本発明の組成物は、有効な予防および/または治療手段を提供する。
【0038】
本方法および組成物はまた、被験体(例えば、ヒト)が免疫適格であるため、定量的により多いメモリーT細胞の予備を提供する場合に、溶解および/または潜伏EBV遺伝子産物に特異的であるT細胞クローン(CD4およびCD8)の膨張を可能にするために使用することもできる。本実施形態は、臓器移植の準備において免疫抑制療法を受けようとしている被験体に使用することができる。したがって、免疫系が完全に機能している時に被験体がワクチン接種されるため、EBVに対するメモリーT細胞の予備を生成することが可能となる。メモリーT細胞の予備は、図4に示す4量体染色によって、あるいは4量体が特定のHLA型に利用できない場合はエリスポットアッセイによって、ワクチン接種前および接種後に測定することができる。フローサイトメトリーアッセイを使用する他の方法を使用して、メモリーCD3/CD8 TcおよびCD3/CD4 Th細胞の絶対数を追跡することもできる。他の方法は、EBV DNAゲノムコピー数を定量的に測定するために、または個体の白血球からIFN−γ−遺伝子多型の性質を決定するために分子法を使用する。最後に、サイトカイン/ケモカイン、またはウイルス遺伝子産物(またはその誘導)のポリペプチドは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定することができる。本発明の方法および組成物は、免疫抑制療法が開始された後、または免疫調節疾患が上述の機序によって誘発された後、EBV関連疾患(例えば、PTLD)に対してより優れた保護を提供する。
【0039】
本発明に基づき使用することができるEBV溶解遺伝子産物には、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMPl−lytが含まれるが、これらに限定されない。EBV潜伏遺伝子産物には、BEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bが含まれるが、これらに限定されない。本発明に基づき使用されるEBV遺伝子産物は単離または精製する必要はないが、EBV遺伝子産物は、当業者に周知の標準的なプロトコルを使用して単離および精製することができることに留意されたい。
【0040】
表1は、EBVに由来するオープンリーディングフレームのすべての一覧を示し、1型株に関連する核酸配列を列挙する。オープンリーディングフレームの遺伝子産物のいずれも、本発明に基づき使用される場合があるが、本明細書では特定の溶解遺伝子産物および潜伏遺伝子産物を例示する。表1に記載する特定の核酸配列は単に1型株の配列であることから、本発明がこれらに限定されるものではないことは十分に明らかなはずである。他のEBV株由来のオープンリーディングフレームは、異なる配列を有する場合があり、これらは明示的に企図されている。したがって、本明細書では全体を通して、オープンリーディングフレームの遺伝子産物の一般的な名称を参照する(例えば、「BZLF1」)。これらの一般的な名称の参照は、本明細書に開示する特定の1型配列に限定することを目的としたものではなく、他の株の配列も同様に包含することを理解されたい。特定の配列の参照が意図される場合には、その通りに当該配列を参照する。
【0041】
一実施形態において、CD8およびCD4陽性T細胞応答を産生するEBNA1は、すべてがCD8T細胞応答を誘発する(但しCD4T細胞応答は誘発しない)上に列挙する他の遺伝子産物のいずれかと組み合わされる。したがって、本発明の本組成物は、CD4およびCD8の両T細胞応答の生成においてさらに有利である。この特定の組み合わせを使用する方法は、明示的に企図されている。
【0042】
本明細書で使用される「遺伝子産物」という用語は、遺伝子またはcDNAの全長コード配列をコードするポリヌクレオチド、あるいは所与のタンパク質の全長アミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。但し、本発明の方法または組成物に対して影響を与えることなく、本明細書に記載のEBV遺伝子産物に対して、変異または改変が行われる場合があることに留意されたい。行われる変更の種類は様々である。特定のヌクレオチド塩基が欠失する欠失変異は、翻訳されたポリペプチドにおけるアミノ酸の欠失または変更をもたらすオープンリーディングフレーム配列を形成する。挿入変異は、所与のコード配列内においてヌクレオチド塩基を追加することにより起こり、ポリヌクレオチド配列のフレームシフトを生じる。また、1つのアミノ酸を他のアミノ酸と置換する変異も行うことができる。
【0043】
アミノ酸の置換に関しては、種々のアミノ酸置換を行うことができる。本明細書で使用されるアミノ酸は一般的に、以下のように区分することができる:(1)無極性または疎水性の側基(A、V、L、I、P、F、W、およびM)を有するアミノ酸;(2)非荷電極性側基(G、S、T、C、Y、N、およびQ)を有するアミノ酸;(3)pH6.0〜7.0にて負に荷電した極性酸性アミノ酸(DおよびE);ならびに(4)pH6.0〜7.0にて正に荷電した極性塩基性アミノ酸。一般的に、「保存的」置換、すなわち、1つの群のアミノ酸が同じ群のアミノ酸で置換される置換は、活性に対する影響を予期せずに行うことができる。さらに、いくつかの非保存的置換も、活性に影響を与えずに行われる場合がある。当業者であれば、活性に影響を与えずにどの置換を行うことができるかを理解するであろう。
【0044】
上では天然のアミノ酸を考察したが、非天然のアミノ酸、または改変アミノ酸も企図され、引用した遺伝子産物において置換として使用される場合がある。したがって、本明細書で使用される「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、およびアミノ酸類似体を指し、すべてDおよびL立体異性体である。天然アミノ酸には、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リシン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、およびバリン(V)が含まれる。非天然のアミノ酸には、アゼチジンカルボン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4ジアミノイソ酪酸、デモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロシン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、およびピペコリン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
EBV遺伝子産物は、一方の末端または両末端に結合するアミノ酸を含む場合もあることに留意されたい。これらの追加の配列は、結果として得られるポリペプチドの発現、精製、同定、溶解性、膜輸送、安定性、活性、局在化、毒性および/または特異性を促進する場合もあれば、あるいはその他何らかの理由により追加される場合もある。EBV遺伝子産物は、直接またはスペーサー配列を介して結合する場合がある。スペーサー配列は、アミノ酸の除去を可能にするために、プロテアーゼ認識部位を含む場合もあれば、含まない場合もある。EBV遺伝子産物に結合する場合があるアミノ酸の例には、ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、タンデム親和性精製(TAP)タグ、カルシウム調節タンパク質(カルモジュリン)タグ、共有結合であるが解離性の(CYD)NorpDペプチド、StrepII、FLAG、タンパク質C重鎖(HPC)ペプチドタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、金属親和性タグ(MAT)、および/または単純ヘルペスウイルス(HSV)タグが含まれるが、これらに限定されない。EBV遺伝子産物はまた、EBV遺伝子産物に沿って任意の位置で結合する非アミノ酸タグを含む場合もあることにさらに留意する必要がある。これらのさらなる非アミノ酸タグは、結果として得られるポリペプチドの発現、精製、同定、溶解性、膜輸送、安定性、活性、局在化、毒性および/または特異性を促進する場合もあれば、あるいはその他何らかの理由により追加される場合もある。EBV遺伝子産物は、直接またはスペーサーを介して非アミノ酸タグに結合する場合がある。非アミノ酸タグの例には、ビオチン、炭水化物成分、脂質成分、蛍光群、および/またはクエンチング群が含まれるが、これらに限定されない。EBV遺伝子産物は、さらなる群への結合を容易にするために、化学的、生物学的、またはその他何らかの種類の改変を必要とする場合もあれば、必要としない場合もある。
【0046】
さらに、以上において特定のオープンリーディングフレーム、およびこれらから得られる遺伝子産物の一般的な名称について言及してきたが、これらの変異体も具体的に企図される。本明細書で使用される「変異体」は、アミノ酸配列が基準のペプチド/ポリペプチド/タンパク質とほぼ同じであるが、それぞれのペプチド/ポリペプチド/タンパク質と100%同一ではないタンパク質(またはペプチドもしくはポリペプチド)を指す。変異体のペプチド/ポリペプチド/タンパク質は、基準配列のアミノ酸の1つ以上が欠失または置換されるか、あるいは1つ以上のアミノ酸が基準アミノ酸配列の配列に挿入されている(上述)変更された配列を有する。変異体は、欠失、置換または挿入の任意の組み合わせを有することができる。変更の結果として、変異体のペプチド/ポリペプチド/タンパク質は、基準配列と少なくとも約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有することができる。
【0047】
変異体ポリペプチドが、基準ポリペプチドと実質的に同一であるかを判定するには、変異体ポリペプチド配列を、第1の基準脊椎動物のポリペプチドの配列とアライメントすることができる。1つのアライメント方法は、BlastPによる方法であり、スコアリング行列およびギャップペナルティのデフォルト設定を使用する。一実施形態において、第1の基準ポリペプチドは、このようなアライメントにより、最低のE値、すなわち、良好以上のアライメントスコアを有するアライメントが偶然によってのみ生じる最低の可能性が得られるものである。あるいは、このようなアライメントにより、最高の割合の同一性が得られるものである。
【0048】
いくつかの実施形態において、少なくとも2つのEBV遺伝子産物は、被験体において免疫応答を誘導するために投与される。本実施形態により、EBV関連疾患に対する一次および/またはメモリーCD4ヘルパーおよび/またはCD8CTL応答を調整するために、抗原提示細胞によって効率的に処理することができる複数の免疫優性ペプチドを生成することが可能となる。本手法は、臓器を移植する前に、被験体が免疫適格であるために、メモリーT細胞のより多くの予備を提供する時に、被験体の治療に使用する場合にも実行可能である。メモリーT細胞の予備は、図4に示す4量体染色によって、あるいは4量体が特定のHLA型に利用できない場合はエリスポットアッセイによって、ワクチン接種前および接種後に測定することができる。選択される少なくとも2つのEBV遺伝子産物は、溶解遺伝子産物、潜伏遺伝子産物、または溶解および潜伏遺伝子産物それぞれの一方から選択することができる。溶解および潜伏遺伝子産物の異なる組み合わせも企図されている。
【0049】
いくつかの実施形態において、投与は、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのEBV遺伝子産物を含む免疫原組成物を被験体において導入することによって実施される。少なくとも1つのEBV溶解遺伝子産物および少なくとも1つのEBV潜伏遺伝子産物は、皮下、筋肉内、粘膜、腹膜内、皮内、またはその他何らかの適切な経路から選択される経路によって投与される。投与の頻度は、被験体が、EBV関連疾患の予防および/または治療をもたらす十分な細胞媒介免疫を生成できるようにしなければならない。投与の用量は、被験体が、EBV関連疾患の予防およびまたは処置をもたらす十分な細胞媒介免疫を生成できる適切な用量でなければならない。頻度および用量はいずれも、当業者により決定することができる。
【0050】
本発明はまた、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択されるEBV遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを投与することも対象とする。EBV遺伝子産物は、EBV遺伝子産物の発現レベル、EBV遺伝子産物の局在化、EBV遺伝子産物の特異性、EBV遺伝子産物の安定性に関して、またはその他何らかの理由により調整できるようにするために、調節エレメントに作動可能に結合されている場合がある。いくつかの実施形態において、EBV遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、全長EBV cDNAコード配列を含む。さらに、全長EBV cDNAコード配列は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、ならびにLMP1−lyt、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bコード配列から選択される。種々のEBV型の固有の変形により、前述のEBV遺伝子産物の配列は、患者が発症した、または発症する危険性があるEBV感染の型に対応するように適合される場合がある。さらに、コドン使用の縮退により、種々の一次ヌクレオチド配列がやはり、同じEBVタンパク質を生成する場合もある。ヌクレオチドにおけるコドンの変化により、予測されたタンパク質のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の両方が追加、欠失および置換される場合もある。しかし、追加、欠失および置換をもたらす配列の変化を有するEBV遺伝子産物を使用することによってもやはり、EBV関連疾患から被験体を保護する十分な細胞免疫が生成される場合がある。したがって、核酸配列の変異体も、明示的に企図されている。
【0051】
ウイルス遺伝子の送達は、ポリヌクレオチドを被験体に送達する当該技術分野の当業者には周知の方法である。ウイルス遺伝子の送達は、ポリヌクレオチドを細胞に送達することによって、細胞が自らの治療タンパク質を生成できるようにする治療の一種である。通常ポリヌクレオチドは、細胞に感染し、DNAペイロードを付着させ、所望のタンパク質を生成する細胞のマシーナリーを継承することができるウイルスを使用することによって移入される。ウイルス寿命サイクルの複製段階に必要な遺伝子(非必須遺伝子)を対象の異種遺伝子で置換することによって、組換えウイルスベクターは、通常感染する細胞型を形質導入することができる。このような組換えウイルスベクターを生成するために、非必須遺伝子は、輸送中に提供され、パッケージング細胞株のゲノムの中にまたはプラスミド上に組み込まれる。ウイルスが寄生体として発展すると、これらのウイルスはすべて、宿主免疫系応答をある程度まで誘発する。ウイルスベクターの例には、アデノウイルス、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス1型が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
アデノ随伴ウイルスは、伝染性ビリオンを増殖させ、集合するためにヘルパーウイルス(通常はアデノウイルス)に依存する、非病原性のヒトパルボウイルスである。これらは、分割細胞および非分割細胞の両方に感染することができ、ヘルパーウイルスがない場合は、高い頻度でヒトゲノムの特定の地点に組み込まれる。野生型ゲノムは、単鎖DNA分子であり、ウイルスの複製、構造遺伝子の発現、およびヒトゲノムへの組込みを調節するタンパク質をコードするrep、ならびにカプシド構造タンパク質をコードするcapの2つの遺伝子からなる。ゲノムのいずれかの末端には、プロモーターを含む145の塩基対末端重複(TR)がある。
【0053】
ベクターとして使用される場合、rep遺伝子およびcap遺伝子は、トランス遺伝子およびその関連する調節配列によって置換される。インサートの全長は、野生型ゲノムの長さの4.7kbを大きく超えることはできない。組換えベクターの生成には、ヘルパーウイルス遺伝子産物(アデノウイルスゲノム由来のEla、Elb、E2a、E4、およびVA RNA)と共に、repおよびcapが輸送中に提供されることが必要となる。従来の方法は、1つがベクターのプラスミドであり、もう1つがrepおよびcapのプラスミドである2つのプラスミドを、アデノウイルスに感染した293T細胞に共形質移入する方法である。より最近のプロトコルでは、すべてのアデノウイルス構造遺伝子を除去し、感染の前にrep耐性プラスミドを使用するか、またはrep発現プラスミドを成熟ウイルスに接合する。
【0054】
cDNAクローンは、野生型EBV関連リンパ芽球様細胞株またはその他の適切な供給源から単離される。各全長cDNAの塩基配列は、rAAV2ベクターにクローン化する前に確認される場合がある。次いで、ヒーラープロデューサー細胞に、AAVrep(トランス遺伝子複製の場合)およびcap(ウイルス性カプシド生成の場合)ならびに抗生物質耐性遺伝子をコードするrAAVトランス遺伝子プラスミドを形質移入する。形質移入したヒーラープロデューサー細胞は、抗生物質の選択下で培養され、耐性コロニーが回収、膨張、および低温保存される。耐性コロニーに由来する細胞は、ニトロセルロース膜(Dot Blot)上で固定化し、cDNAプローブで探査して、最も優れた複製活性を有するコロニーを識別する。高いトランス遺伝子複製活性を有するクローンは、ウェスタンブロット法によりrAAVトランス遺伝子発現(DNA)および全長タンパク質の存在について評価する。結果として得られたベクターは、専門の抗原提示細胞(APC)、すなわち樹状細胞(DC)に抗原を送達し、細胞免疫応答をもたらすことができる。EBV遺伝子産物を担持するrAAVビリオンは、ヒトAPCおよび/またはDCに感染することができ、APCおよび/またはDCの抗原処理マシーナリーが、クラスIおよび/またはクラスIIのMHCを介してペプチドを提示することを可能にする全長EBV遺伝子産物を発現する。
【0055】
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの1つ以上を成分として含む薬学的組成物も含む。一実施形態において、薬学的組成物は、EBVポリペプチドを含む。別の実施形態において、薬学的組成物は、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。薬学的組成物の調製において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、通常、賦形剤と混合される、賦形剤によって希釈される、および/またはカプセル、サッシェもしくは他の容器の形態であってもよい担体内に封入される。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、賦形剤または補助剤を含めた薬物を細胞の標的集団に投与することを容易にするいずれの担体またはビヒクルも使用することができる。このような薬学的組成物は、必要な材料、説明書および機器を提供する便利なキットにパッケージングされる場合がある。薬学的組成物は、摂取および当該技術分野で既知の送達方法の経路を介して、1回量または複数回の用量にて投与することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのEBV遺伝子産物は、薬学的組成物を含む。薬学的組成物はまた、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される2個、3個または4個のEBV遺伝子産物を含む場合もある。薬学的組成物はまた、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をも含む場合もある。賦形剤は、水、滅菌水、塩、緩衝液、炭水化物、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、スターチ、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゲラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、シロップ、およびメチルセルロースから選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、少なくとも1つの補助剤をさらに含む。補助剤は、フロイントアジュバント、油中水型エマルジョン、鉱油、顆粒白血球/マクロファージコロニー刺激因子、およびインターロイキン2から選択される場合があるが、これらに限定されない。
【0057】
薬学的組成物は、例えば、EBV溶解遺伝子産物BZLF1およびEBV潜伏遺伝子産物EBNA3C、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤および/または補助剤を含む場合がある。さらに、薬学的組成物は、例えば、EBV溶解遺伝子産物BZLF1およびBMLF1、ならびにEBV潜伏遺伝子産物EBNA3C、EBNA1およびEBNA3A、さらには少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤および/または補助剤を含む場合がある。薬学的組成物は、皮下、筋肉内、粘膜、腹膜内、皮内、または他の経路から選択される経路によって投与される場合がある。
【0058】
本発明はまた、少なくとも1つのEBV遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドおよびEBV遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含む、EBV遺伝子産物発現カセットを含む、非ウイルスベクターも対象とする。非ウイルスベクターは、物理的および化学的という2つの広範なカテゴリーに分割することができる。物理的方法は、プラスミドを取り入れ、電気穿孔、音波穿孔または粒子衝撃などの手段によりプラスミドを細胞内に強制的に挿入することを伴う。化学的方法は、DNAと錯体を作成し、粒子中に凝縮させ、細胞に向けることができる脂質、ポリマーまたはタンパク質を使用する。本明細書に記載のベクターは、「ネイキッド」DNAワクチンと呼ばれることがある。いくつかの実施形態において、EBV遺伝子産物は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF、BGLF5、gp350、gp220、ならびにLMP1−lyt、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される。本発明はまた、上述のベクターを含む細胞を対象とする他、EBV遺伝子産物に対する免疫応答を産生する条件下で細胞を培養する方法であって、EBV遺伝子産物の発現に好適な条件下で細胞を成長させることを含む、方法も対象とする。
【0059】
本発明はまた、EBVワクチンに対する被験体の応答を確認する方法であって、EBV溶解遺伝子産物およびEBV潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのEBV遺伝子産物の存在をアッセイすることを含む、方法も対象とする。メモリーT細胞の予備は、図4に示す4量体染色によって、または4量体が特定のHLA型に利用できない場合はエリスポットアッセイによって、あるいはその他何らかのアッセイによって、ワクチン接種前および接種後に容易に測定することができる。
【実施例】
【0060】
(実施例1:致死性のEBV陽性悪性リンパ増殖症(EBV−LPD)のhu−PBL−SCIDマウスモデルがヒト移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)に極めて類似する)
重症複合免疫不全症(SCID)マウスに、血清学的EBV陽性の正常なヒトのドナーから採取した末梢血白血球(PBL)を腹腔内投与したところ、これらのマウス(hu−PBL−SCIDマウスモデル)の大多数に、ヒトB細胞を起源とする致死性のEBV−LPDがその後、自然発生的に発現した。EBV感染のコントロールにおいてはT細胞が重要な役割を果たしているため、本発明者等は、ヒトT細胞機能疾患が外因性hu−PBL−SCIDマウスモデルのEBV−LPDの原因となっているという仮説と、T細胞由来サイトカインの全身投与によりEBV−LPDに対する防御免疫が再構築されるという仮説を立てた。本発明者等は、hu−PBL−SCIDマウスに対して極めて低い用量(500国際単位)のポリエチレングリコール修飾組換えヒトインターロイキン2(PEG−IL−2)を毎日皮下投与することにより、致死性のEBV−LPDの発現を防止し、生存率をプラセボ投与群(20% P=0.0008)に比較して有意に改善することができる(78%)ことを示した。追加のリンパ球減少型試験の結果、マウスのナチュラルキラー細胞およびヒトCD8+ T細胞によりPEG−IL−2介在性防御作用に必要な細胞性免疫が誘導される一方、CD4+ T細胞が減少したヒト末梢血リンパ球を腹腔内投与しても、PEG−IL−2療法と併用した場合、有害作用はみられず、有用である可能性があることが示された。これらの初期のデータは、極低用量のPEG−IL−2療法により、hu−PBL−SCIDマウスにおいてEBV−LPDを来すヒトT細胞免疫不全を克服できることを初めて証明するものであり、EBV−LPDに対する細胞応答とサイトカイン療法の評価を目的とした本モデルが有用であることを初めて指摘するものであった(BaiocchiおよびCaligiuri,1994)。
【0061】
(実施例2:hu−PBL−SCIDマウスモデルから自然発生的に発現するヒト腫瘍の分子および細胞特性の検討)
引き続き本発明者等は、hu−PBL−SCIDマウスモデル(Baiocchiら,1995)から自然発生的に発現したヒト腫瘍の分子および細胞特性を広範に調べた。PTLDと同様に、腫瘍はモノクローナル(図2、レーン8、9)の場合もあれば、オリゴクローナル(レーン3)、またはポリクローナル(レーン2、7)の場合もある。ヒト腫瘍は、生存、成長およびT細胞免疫抑制因子として機能する、ヒトIL−10およびIL−6を大量に分泌する。腫瘍はいずれもウイルス型EBV DNAを統合し、また腫瘍はいずれも、ウイルス遺伝子発現のEBVIII型のPTLDに類似したパターンを示す。SCIDマウスはB細胞とT細胞を欠失しているが強力なナチュラルキラー細胞は保有している。マウスNK細胞が減少している場合、低用量IL−2を投与されたhu−PBL−SCIDマウスの80〜100%にEBV−LPDが発症する(BaiocchiおよびCaligiuri,1994)ため、本発明者等は、マウスNK細胞が減少したhu−PBL−SCIDマウスモデルを使用し、サイトカインのどのような併用が、マウスNK不全に取って代わるか、また、ヒト免疫細胞の移植だけを受けたキメラマウスを、致死性のEBV−LPDから防御できるか検討した。本発明者等は、低用量IL−2とGM−CSFの併用がこの防御機能を回復させることを発見した。さらに、これらのサイトカインの一方または両方の投与に無作為に割り付けたマウスのヒトT細胞要素の特性を慎重に調べたところ、IL−2とGM−CSFを投与したキメラマウスにおいて頑健なヒトT細胞が存在し、他の場合では存在しないことが明らかとなった。この存在の事実は、悪性EBV陽性B細胞の拡大がないことと関連していた。EBV溶解抗原および潜伏抗原の4量体染色を使用してヒトT細胞の特性を調べた結果、T細胞はインビボにおいてEBV潜伏抗原および溶解抗原(図3)の両方に対して応答していることが初めて示された(Baiocchiら,2001)。非感作のヒトPBLをSCIDマウスに移植した場合にこれらのヒト腫瘍が自然発生的に発現したことは留意する必要がある。したがって、本発明者等は、ヒトEBV特異的T細胞が、インビボにおいて、致死性のEBV−LPDの発現を効果的に調べる方法に関する最初の証拠を得た。
【0062】
(実施例3:EBV−LPDのhu−PBL−SCIDモデルによりPTLDにおける免疫応答を予期できる)
次に、本発明者等は、同様の免疫応答を確認するためにPTLDを有する腎移植患者を評価した。本発明者等は、1997年から2002年までの間に本発明者等の施設において、本発明者等が免疫抑制の標準的な緩和法および標準的な抗ウイルス療法として開発した方法を使用して、11例の連続する腎移植PTLD患者を治療した。その結果、91%の完全寛解率を達成し、82%が、持続期間中央値がほぼ4年に達する完全持続寛解を維持した。再発例1例は寛解にもどり3年間にわたり持続したため、91%が現在生存し、状態は良好である(Porcuら,2002)。本発明者等は、これが、これまでに報告された腎移植患者のPTLDに関する転帰データの中で最良のものであると確信している。さらに重要なことであるが、腫瘍退縮期に、本発明者等は4量体染色を使用して、治療が奏効しているPTLD患者に、EBV潜伏抗原およびEBV溶解抗原(RAK)の両方に対するCD8+ T細胞の応答が十分に存在することを示した。その応答は、実質的に本疾患のヒトSCIDマウスモデル(図4)でみられる応答と同じである。これらのデータは、本出願に記載する取組みの裏付けとなる2つの重要なポイントを提起している。第1に、EBV陽性PTLDを抑制する免疫応答を確立でき、容易に定量できることであり、疾患の回復が期待できること、第2に、この応答はEBV潜伏抗原とEBV溶解抗原の両方に対して特異性が高いCTL応答であることである。
【0063】
(実施例4:キメラマウス−ヒトモデルおよび患者で達成したインビボにおける発見)
PTLD発症の危険性は、末梢血におけるEBVゲノムのコピー数の増加と密接に相関しているため、溶解感染の活性化は実施可能であり、本疾患の発現において重要であることは明らかである。本発明者等の研究室において得られた発見により、PTLD腫瘍に溶解性遺伝子の発現がみられることが示された(Porcu,2002;Roychowdhury,2003)。本発明者等は、PTLD患者8例から採取した16個の別々の腫瘍を使用して、溶解性遺伝子産物BXLF1の発現の有無を調べた。BXLF1は、初期溶解サイクル遺伝子産物BZLF1(表1)によって正方向に調節されるウイルス型チミジンキナーゼ(vTK)である。すべての腫瘍でBXLF1転写の発現が認められ、溶解性遺伝子活性は実施可能であり、PTLD腫瘍で維持されていることが明確に示された(図5)。
【0064】
本発明者等は、いくつかの治療法を発見しており、その治療法により、PTLDの前臨床動物モデル(Baiocchi,1994;Baiocchi,2001;Roychowdhury,2003;Roychowdhury,2004)およびPTLD患者において、有望な結果が得られている(Roychowdhury,2003;Khatri,1997;Porcu,2002)。また、本発明者等は、EBV特異抗原に対するインビボT細胞応答の特性を調べたが、それはPTLDおよび他のEBV関連悪性疾患の防止を目的とした本特許(use patent)の基礎を形成するものである。ヒトPTLDのキメラマウス−ヒトモデルを使用して得たインビボでの発見(Baiocchi,2001)、また本発明者等が治療を行ったPTLD患者の免疫応答の観察期間におけるインビボでの発見(Porcu,2002)を利用して、本発明者等は、自然発生的に拡大する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、すなわちEBV特異的CTLが、PTLDを抑制できる時に反応するいくつかのEBV抗原を同定した。ヒトPTLDのキメラマウス−ヒト前臨床モデルを使用した試験において、本発明者等はEBV抗原特異的MHCクラスIペプチド負荷4量体を使用して、マウスに低用量のインターロイキン−2(IL−2)とGM−CSFを併用投与した時にみられる、溶解性BZLF1抗原と潜伏EBNA3C抗原を認識するEBV特異的CTLの拡大を記録した。プラセボ、またはIL−2もしくはGM−CSFのうちの1種類のみを投与された動物においては、EBNA3C特異的CTLまたはBZLF1特異的CTLは認められず、ヒトEBV陽性リンパ増殖性障害により死亡例が続いた。IL−2とGM−CSFを併用投与された動物においては、EBNA3C特異的CTLおよびBZLF−1特異的CTLの、有意かつ測定可能な拡大がみられ、ヒトEBV陽性リンパ増殖性障害の発現が防止された(Baiocchi,2001)。本発明者等は、特異的ペプチドを負荷した同じMHCクラスI4量体を使用して、EBV抗原特異的T細胞の拡大を記録することにより、PTLD患者のヒトCTLがBZLFタンパク質由来の免疫優勢決定ペプチドも認識していることを発見した(Porcu,2002)。BZLFは、EBVをコードする遺伝子の産物であり、初期溶解性感染の期間では排他的に発現している(図5)(Kieff,2001)。本発明者等は、潜伏タンパク質EBNA3C由来のペプチドを負荷した4量体を使用して、同じPTLD患者(図5)中にEBNA3C特異的CTLが自然発生的に拡大していることを発見した(Porcu,2002)。さらに重要なことであるが、PTLDを有する腎移植患者で免疫抑制療法を中止した後、BZLF1特異的CTL集団の拡大が起こり、その拡大は相当な期間持続し、直接的にEBV陽性腫瘍負荷の退縮と直接相関していた。CTL応答を持続できなかった患者1例においては、その後PTLDの再発がみられた(Porcu,2002)。また、腫瘍BZLF1タンパク質由来ペプチドが、効果的なT細胞免疫サーベイランスを維持する目的で、抗原提示細胞によって持続的あるいは断続的に提示されるということが、BZLF特異的CTLの存在が持続的(免疫抑制中止後720日まで)であることから示唆される。本特許の以下に述べるように、免疫原への持続的な暴露が有効であるという推測は、PTLD防止のためにワクチンを利用するという手法の根拠の1つとなっている。
【0065】
(実施例5:インビボにおける発見の臨床応用)
本発明者等が公表したインビボ試験の結果は、潜伏EBV遺伝子産物および溶解EBV遺伝子産物は複合免疫優性ペプチドを含む重要なタンパク質であり、抗原提示細胞により効果的に処理されて、PTLDなどの悪性疾患を含むEBV疾患に対して生体防御するために、抗原特異的な、初期およびメモリーCD4ヘルパー細胞およびCD8 CTLの応答を調整する。インビボにおけるEBNA3CおよびBZLF1特異的CTLの拡大、ならびに腫瘍退縮およびPTLD患者の生存率に密接な関係があるとすれば、全長EBV潜伏タンパク質および全長EBV溶解タンパク質は理想的な免疫原であり、固形臓器移植待機でPTLD発現の危険があるすべての患者にワクチン接種をするために利用できる。このような手法により、患者に免疫能があり、したがってメモリーT細胞の十分に大きな蓄積がある場合は、臓器移植の前に、潜伏および溶解性EBVタンパク質由来の内因性ペプチドに特異性を有するT細胞クローン(CD4およびCD8)を拡大させておくことが可能になるであろう。後者は、図5上に示す4量体染色によりワクチン接種の前後に簡単に測定できると考えられる。もし、特定のHLA型に対する4量体が入手できない場合は、エリスポットアッセイまたはIFNγを測定する他の方法(イントラセルラーフローサイトメトリー)を利用できる。この手法により、一次感染(小児患者)または再発感染(成人の95%)が発生した場合に、EBV特異的T細胞のインビボにおける急速な移動と拡大が可能になると考えられる。この手法により、医原性免疫抑制療法を受けている患者の、必ずしもすべてではないとしても大部分において、制御不能なエプスタインバーウイルス血症とその後のPTLDの発症に対する防御が可能になるはずである。このようなワクチン接種後もPTLDを発症する可能性のある患者については、ワクチン防御手法により、類似の同種移植片特異的CTL反応を起こさずに免疫抑制療法を適度に抑制すれば、初期で定量的な強固なEBV特異的CTL応答を誘導するはずである。同様にこの手法により、同種移植片の拒絶反応(あるいは幹細胞移植患者における移植片−宿主疾患)の発生率がかなり低い患者のPTLDも排除できるはずである(Porcu,2002)。なお、それと比較し、ワクチン接種をせずに、生命の危険があるPTLDの排除の目的で免疫抑制療法を緩和する患者の場合は、同種移植片の拒絶反応の発生率が高い。この同様の手法を、後天性、先天性または医原性(肝細胞または臓器移植以外)免疫抑制の患者を含む、EBV関連疾患の危険性がその他何らかの患者群に拡張することができると考えられる。
【0066】
異なるウイルスタンパク質由来ペプチドと特異的HLA型の間の関連性には制限があるため、潜伏EBV遺伝子産物と溶解EBV遺伝子産物由来の選択的ペプチドによる免疫では、比較的小規模の患者群に対する免疫優性抗原になってしまうと考えられる。例えば、BZLF1由来のRAKペプチドには、HLA A2ではなく、HLA B8患者のクラスI分子と連携して提示された時、免疫優性性がある。全長のEBV潜伏および溶解ポリペプチドまたはタンパク質を抗原処理ネットワークに与えることによりこの制限から逃れることができる。そのことにより、HLAクラスIおよびII分子のすべてではなくとも大部分の分子と連携することにより最適の提示が可能になる。患者は、より大きな分子の投与を受けた場合、全長のポリペプチドを処理し、特異的なHLAクラスIおよびII分子と連携して免疫優性ペプチドを処理することができる。ワクチン接種を目的とした、全長の潜伏および溶解EBVポリペプチド免疫原の送達は、免疫アジュバントに分散させた精製タンパク質の直接送達、または以下のデータで概説する組換えDNA技術により行うことができる。溶解ポリペプチドまたは潜伏ポリペプチドは、それぞれ1本では、抗原提示細胞による処理に続いて、すべてのHLA型に対して免疫優性ペプチドを提示するためには十分な大きさを有していない可能性があるため、次に述べるように、このワクチンのために少なくともそれぞれ2本の潜伏EBV遺伝子産物と溶解EBV遺伝子産物を開発する予定である。
【0067】
固形臓器移植におけるPTLDの防止を意図して、効果的な細胞性免疫を誘導するためにワクチンの形で全長EBV潜伏および溶解遺伝子産物を提供するというアイデアには新規性があり、本発明者と他の研究者によってなされた発見による裏付けがある。本発明者等が実施した、免疫抑制療法中止後のT細胞応答を検討するインビボ研究で検出されたEBNA3CおよびBZLF1特異的CTLに加えて、他の研究所は、EBV初期抗原複合体BMRF1、BHRF1、BORF2(Pothen,1991;Pothen,1993)およびgp340/350(Wallace,1991)に対して特異的なCD4とCD8の両方の応答、さらに潜伏遺伝子産物EBNA1(Paludan,2002)に対しても特異的なCD4とCD8の両方の応答があることを示した。したがって本発明者等はまず、次の全長ポリペプチド(あるいはポリペプチドをコードするDNA配列)の送達を提案する。それは、BZLFl、BMLFl、EBNAl、EBNA3AおよびEBNA3Cである。PTLD防止の方法としてワクチン接種を選択した場合、それぞれ少なくとも2つの潜伏および溶解免疫原を使用すれば、次の2つの理由により最適な防御を提供する。1)上記のように、HLA型が何であろうと、各個体は、潜伏および溶解ポリペプチド両方に関して提示される免疫優性ペプチドを有していることを保証している。2)CTL応答の非対称性を最小にし、そのため潜伏遺伝子産物のみを発現しているEBV形質転換クローンの発生を防止する。3)抗原特異的ThおよびTc応答の両方を促進する。この方法は、無制御溶解性複製とウイルス血症も防止すると考えられる。ワクチン接種後のEBV特異的CTLの拡大によって評価される、上記のポリペプチドの免疫原性を基に、本発明者等は、EBVにコードされた次に示す他のポリペプチドを送達するために同様の方法を適用することによって応答を改善することを提案する。それは、BZLFl、BHRFl、BHLFl、BALF2、BMLFl、BRLFl、BMRFl、BALF5、BARFl、BORF2、BCRFl、BKRF3、BDLF3、BILFl、BFRFl、BXLFl、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、LMPl−lyt、EBNAl、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMPl、LMP2A、LMP2B等である。
【0068】
(実施例6:ヒトPTLDの予防ワクチン)
腎移植PTLD患者11例のうち10例が現在生存しておりPTLDの再発は見られない一方、5例がT細胞介在性臓器拒絶反応により移植片を失い、再移植または透析が必要である。したがって、腎移植PTLDを管理するための優れた方法である本手法には2つの制限要因がある。第1に、これらPTLD患者の50%が移植腎を喪失したことは、致死性の悪性腫瘍の危険性を伴っている場合であっても、高率であり受け入れがたい。第2に、抗ウイルス療法を伴う免疫療法緩和の手法は、同種移植片拒絶反応が致死的である心臓、肺、肝または小腸などの他の固形臓器移植においては適用できない。したがって、代替法を考慮しなければならない。本発明者等が実施し、これまでに部分的に述べたキメラマウス−ヒト試験データおよびヒト試験データおよび他にO’Reilly等の群(Lacerdaら,1996b;Lucasら,1996)が公表したデータに基づいて、本発明者等は初めて、インビボにおける、EBV潜伏および溶解抗原に特異的なT細胞前駆細胞頻度は、免疫抑制療法の緩和の前にPTLDが発症する確率に比例する可能性が高く、さらに同様に免疫抑制の緩和後に起こるPTLDに対するEBV特異的免疫応答の頑健さにも比例する可能性が高いと仮定するに至った。第2に、本発明者等が予備的に実施したキメラマウス−ヒト試験データおよびヒト試験データは、標的にする必要がある抗原の種類に関して本発明者等が有力な証拠と信じるものを提供している。総合的に述べると、本発明者等が確信しているところによれば、固形臓器移植待機で移植後にPTLDのようなEBV関連合併症の危険性が高い、免疫能を有する患者におけるPTLD防止を目的とした、効果的なワクチンを開発するための包括的な手法であると正当に評価できる十分な証拠がある。この手法により、対応する抗原を認識するEBV特異的CTLの発生頻度が増加し、PTLDの危険性を減少させるか、除去するはずである。さらにPTLD発現の場合には、この移植前感作により、免疫抑制の緩和後に、さらに頑健で特異的な抗腫瘍応答に至るはずであり、そのことにより移植臓器の拒絶反応を防止できる可能性もある。
【0069】
(実施例7:rAAV2系ベクターの大規模生産)
(EBV溶解抗原BZLF1およびBMLF1のrAAV2発現カセットへの分子クローン化)
本発明者等は、EBV陽性リンパ芽球細胞株B95.8およびC7M3からそれぞれ得られたEBV溶解BZLF1およびBMLF1全長cDNAをPCRで増幅し、これらの断片をrAAV2系発現カセット(図6)に分子クローン化した。rAAV2/BZLF1クローンおよびrAAV2/BMLF1クローンは制限酵素分解とDNA配列解析法を使用して正確に同定した。同様の技術を使用して3つの潜伏EBV rAAV2/EBNA1、rAAV2/EBNA3AおよびrAAV2/EBNA3Cクローンを作製し、品質を確認した。
【0070】
(rAAV2/BZLFl、BMLFlウイルスDNA複製および導入遺伝子発現の解析)
本発明者等は、標準的方法を使用して、rAAV2/BZLFlおよびrAAV2/BMLFl(図7A単量体〔MF〕)および二量体〔DF〕))の複製およびパッケージングが順調に進行していることを示した。BZLF1導入遺伝子発現を図7Bに示す。レーン3はクローン4rAAV/BZLFである。レーン1は分子量標準であり、レーン2はHeLa細胞(陰性対照)である。
【0071】
(HeLa由来プロデューサー細胞株の産生およびrAAV2/BZLFl、BMLFlの大規模生産)
機能性プラスミドを形質移入し、平板培養し、採取し、さらに96ウェルプレートに移した。個々のクローンをドットブロットハイブリダイゼーションにより選別し、最適なプロデューサー細胞株(1細胞当たり5000 rAAVベクター超)を定量的リアルタイムPCRにより同定し、DNase抵抗性粒子(DNase−Resistant−Particles 〔DRP〕)(DRP数/細胞)を得た。大規模製造後のrAAVベクターの純度をSDS−PAGE SYPROオレンジ蛍光染色法により検査したところ、3種のウイルスカプシドタンパク質(図8、VP1:VP2:VP3=1:1:10)の存在が示された。
【0072】
本発明者等は次にrAAV2/BZLF1の異なるDRPを293T細胞に形質導入し、その後、図9に示すように免疫蛍光法とウェスタンブロット法を使用してBZLF1タンパク質発現を解析した。これらのデータは、rAAV2/BZLF1には、293T細胞に対して用量依存的に形質導入する能力があることを示すものである。以上の結果本発明者等は、EBV溶解抗原BZLF1およびBMLF1を担持するrAAV2ベクターを大量に生産することに成功し、これらのベクターにより、インビトロで効果的に細胞への形質導入ができることを示した。
【0073】
ワクチンプロトコールを成功させるために不可欠な事項は、設計したベクターが、特殊に分化した抗原提示細胞(APC)、すなわち樹状細胞(DC)に抗原を運ぶ能力を有し、その結果強力な細胞免疫応答を効果的に誘導するかどうかである(Shulerら,2003)。本発明者等は次に、rAAV2/GFPによるヒト単球由来DCの感染はインビトロ分化プロセスの1日目にピークに達したこと(−7%、データ未掲載)、そしてこの感染プロセスはDCの成熟に変化をもたらすものではなく、未感染および偽感染対照の場合と異なっていることを示した(データ未掲載)。
【0074】
(実施例8:EBV潜伏抗原EBNA1、EBNA3AおよびEBNA3CのrAAV2系発現カセットへの分子クローン化)
同様の方法を使用して本発明者等は、EBV潜伏抗原EBNA1、EBNA3AおよびEBNA3Cの全長cDNAをrAAV2ベクターにクローン化した(図6)。既に図7に示し、さらに図10に示すように、rAAV2の典型的なMFおよびDF複製型が検出されており、そのことはEBV潜伏抗原EBNA1、EBNA3AおよびEBNA3Cを含むrAAVベクターの複製とパッケージングが順調に進行したことを示している。
【0075】
(実施例9:rAAV2/BZLF1を形質導入した樹状細胞(DC)と自家ヒトPBMCの共培養によるEBV特異的CD8+ CTLのインビトロ拡大)
全長rAAV−EBV導入遺伝子タンパク質の免疫原性を評価するために、本発明者等は、標的抗原提示細胞(APC)に発現したrAAV−BZLF1由来タンパク質がメモリーEBV特異的T細胞の拡大を誘導できるかどうかを試験した。そのために、APCとしてヒト末梢血単核細胞(PBMC)由来DC、およびEBV血清学的陽性ドナーから採取した自己PBMCを使用した。EBV特異的メモリーT細胞は、放射線照射自己EBV形質導入リンパ芽球様細胞株(LCL)の存在下で培養すると、EBV血清学的陽性ドナー由来のPBMCから拡大し、その拡大には再現性がみられた。その代わりに、EBVタンパク質由来の免疫優性ペプチドに専門的なAPC(DC)を適用することもできる。本発明者等は、rAAV−BZLF1ビリオンはヒトDCに感染することができ、その結果、全長BZLF1タンパク質が発現して、DCの抗原処理機序がMHCクラスIおよびIIを介してペプチドを提示することができるようになる。この後者のシナリオは、APCとしてDCを使用しているが、rAAV導入遺伝子ワクチン製剤の、抗原特異的メモリーT細胞を活性化して拡大させる効果を調べる「最良の事例シナリオ」である。
【0076】
本発明者等は、インビトロにおけるBZLF1特異的CD8+ T細胞の拡大のためのプロトコルを開発した(図11)。第III群と第IV群に関して、本発明者等は、rAAV−BZLF1存在下PBMC由来DC(ドナー147から)または対照rAAAV−GFPウイルス(1010粒子、分化プロセス1日目に添加)を調製した。他の対照群は、既に公表したプロトコルに基づいて調製した。7日目と14日目に細胞を採取し、CD3、CD8、EBV−RAKクラスI4量体併用染色を使用したフローサイトメトリーで解析した。RAK4量体は、BZLF1溶解抗原を認識するCD8+ T細胞表面のTCRに特異的である(Baiocchiら,2001;Porcuら,2002;RickinsonおよびKieff,2001)。図12下段に示すように、本発明者等は、陰性対照群(第II群および第IV群)および陽性対照群(第I群および第V群)に比べ、rAAV2/BZLF1感染DC(第III群、下段、矢印)が、BZLF1に対する頑健なCD8+ T細胞応答を誘導することを示した。図12上段は、各群についての非反応性ペプチド4量体によるバックグラウンド染色を示す。全長BZLF1ポリペプチドに、抗原提示細胞(APC)によって処理され提示された場合に免疫原性があるかどうか調べるために、本発明者等は、全長BZLF1タンパク質を合成・精製し、インビトロ実験に使用した。図13は、全長BZLF1タンパク質に、CD3/CD8+ T細胞を拡大させる能力があったことを示している。なお、CD3/CD8+ T細胞は、HLAB8の例(A)について定義した免疫優性ペプチド(RAK)に特異的な抗原である。拡大したCD3/CD8+ T細胞にエフェクター様機能の能力があるかどうか調べるために、この細胞集団が、全長BZLF1または対照BSAタンパク質のいずれかによる刺激の後に、IFN−ガンマ(IFNγ)を産生できるかどうかを調べた。(B)のように、対照BSAタンパク質に比べ、BZLF1で刺激した場合に、4倍以上のIFNγ陽性CD8+ T細胞を検出した。本発明者等が使用した4量体は抗原特異的T細胞を検出するための有用なバイオマーカーであるが、免疫優性ペプチドを定義する特殊なドナーの場合に限られるため、すべてのドナーを調べる目的で使用できないドナーの多くは、EBVタンパク質由来の免疫優性ペプチドと関連がないHLA対立遺伝子を有している。したがって本発明者等は、全長EBVポリペプチド由来のエピトープに応答できるT細胞の拡大を示すバイオマーカーとして、IFNγの使用を選択した。(C)にみられるように、HLAA2例から得られたドナーPBMCは、全長BZLF1に応答してT細胞を拡大させ、対照BSAに比べて2倍量以上のIFNγを産生した。これらのデータは、全長EBVポリペプチドは、未同定で免疫原性がある多くのペプチドを含んでおり、このようなポリペプチドは複数のHLA型を有する個体のAPCにより処理され、T細胞応答(IFNγで測定)を誘導することが可能であるということを支持するものである。全長BZLF1ポリペプチドは、HLA型またはBZLF1由来の既知/定義済の免疫優性ペプチドと無関係にT細胞応答を誘導ことができる。
【0077】
(実施例10:EBV−LPDに対する感受性およびPTLDに対する感受性)
血清学的EBV陽性の正常な個体から得られるPBLにより、hu−PBL−SCIDマウスモデルに自然発生的なヒトEBV−LPDを発現させることができる一方、必ずしもすべてのドナーが同程度の効率を示すわけではない。実際に、正常なドナーの間には成功度合に極めて広い分布がみられる(すなわち、12匹のマウスに投与後0%〜100%のEBV−LPD)。また、固形臓器移植患者の大多数はPTLDを発症しない。T細胞前駆細胞頻度がこのような1つの危険因子であるように思われる(Lacerdaら,1996a;Mackinnonら,1995)。一方、本発明者等は、対象を変えて研究を行った。本発明者等は、サイトカイン遺伝子型がEBV−LPDの発現と関連しているという仮説を立てた。IRB承認を得て、本発明者等は、HLA型を判定した正常で血清学的EBV陽性のドナーの広範な一覧を作成し、本発明者等の仮説を検討した(このドナー一覧は下記に概要を示した研究に関して利用可能)。本発明者等の所見によれば、hu−PBL−SCIDマウスに、急速で高浸透度のEBV−LPDを誘導するPBLにおいて、IFNG塩基+874に対するA/A(アデノシン/アデノシン)遺伝子型が認められる率が高く、その高さの程度は、進展が遅く低浸透度のLPDを誘導するPBL、あるいは誘導しないPBLに比べると有意であった。遺伝子型と細胞溶解性Tリンパ球(CTL)機能の間の関係を調べると、形質転換増殖因子β(TGF−β)が、IFNγ塩基+874位にアデノシンを有するPBL内のCTLの再刺激を妨害する一方、チミジンに関してホモ接合型のPBLにおいては妨害がみられなかった。A/A遺伝子型PBLを注入したhu−PBL−SCIDマウスにおいてTGFβを中和すると、LPD発現が抑制され、ヒトCD8+ CTLの拡大がみられるようになった。したがって、本発明者のデータは、TGFβが、CTL再刺激と拡大(Dierksheideら,2005)を妨害することにより、腫瘍発現を促進する恐れがあることを示した。これは、本発明者のワクチン手法の進捗状況の中で臨床的意味を有している。ヒト化中和抗TGFβ抗体が現在開発されつつあることがそのことを証明している。臓器移植受容者に関する現在進行中の遺伝子型解析データにより、PTLDの危険性が高い臓器移植受容者を判別するため、また、本提案で焦点を当てた防御策を開発するために、IFN−7遺伝子型が重要な情報となる可能性があることが示されている。
【0078】
【表1−1】
【0079】
【表1−2】
【0080】
【表1−3】
【0081】
【表1−4】
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【表1−5】
【0083】
【表1−6】
【0084】
【表1−7】
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【表1−8】
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【表1−9】
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【表1−10】
【0088】
【表1−11】
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【表1−12】
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【表1−13】
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【表1−26】
【0104】
【表1−27】
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【表1−28】
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【表1−29】
【0107】
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【表1−31】
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【表1−39】
【0117】
【表1−40】
【0118】
【表1−41】
【0119】
【表1−42】
【0120】
【表1−43】
【0121】
【表1−44】
【0122】
【表1−45】
【0123】
【表1−46】
【0124】
【表1−47】
【0125】
【表1−48】
【0126】
【表1−49】
【0127】
【表1−50】
【0128】
【表1−51】
【0129】
【表1−52】
【0130】
【表1−53】
【0131】
【表1−54】
【0132】
【表1−55】
【0133】
【表1−56】
【0134】
【表1−57】
【0135】
【表1−58】
【0136】
【表1−59】
【0137】
【表1−60】
【0138】
【表1−61】
【0139】
【表1−62】
【0140】
【表1−63】
【0141】
【表1−64】
【0142】
【表1−65】
【0143】
【表1−66】
【0144】
【表1−67】
【0145】
【表1−68】
【0146】
【表1−69】
【0147】
【表1−70】
【0148】
【表1−71】
【0149】
【表1−72】
【0150】
【表1−73】
【0151】
【表1−74】
【0152】
【表1−75】
【0153】
【表1−76】
【0154】
【表1−77】
【0155】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、EBVの遺伝子発現プロファイルおよび関連する病理を示す。EBVはCD21を介して、鼻咽腔上皮細胞および休止期Bリンパ球に感染する。一次感染(および伝染性単核球症)は、溶解(ビリオン産生)および潜伏遺伝子プログラムに関与する。抗原特異的T細胞は、一次(および再発)感染を制御し、結果としてウイルス複製(溶菌サイクル)の抑制、リンパ芽球の増殖(III型潜伏)、および休止期の潜伏段階の確立(I型潜伏)を実現する。免疫抑制(IS、臓器移植、AIDS、先天性IS)を伴う患者は、I型潜伏感染の再活性化のリスクがあり、III型潜伏遺伝子発現プロファイルを有する複製(溶解)または増殖が活発化しているEBV形質転換リンパ芽球へと移行するリスクがある。重要なIII型潜伏遺伝子は、それぞれ構成細胞においてbcl2を発現させ、NFkBおよび自己分泌生存および増殖経路を活性化させる。
【図2】図2は、Ig遺伝子再構成を示すhu−PBL−SCIDマウス10例から得た10個のEBV腫瘍のサザンブロット分析を示す。レーン1、2および4はポリクローナルであり、レーン3、5、6、7および10はオリゴクローナルであり、レーン8および9はモノクローナルである。EBVゲノムの末端反復セグメントがプローブされたサザンブロットでは、モノクローナル腫瘍がEBVゲノム(潜伏、エピソーム)の1コピーを有するのに対して、ポリクローナルおよびオリゴクローナル腫瘍は潜伏エピソームおよび複数の直鎖(複製)を有する。
【図3】図3は、IL−2(またはGM−CSF)単独ではなく、GM−CSFとIL−2の併用療法が、溶解(BのBZLFまたはRAK)および潜伏(EBNA3Aは示さず)の両EBV抗原への頑健なヒトCD8陽性T細胞の拡大(A)を引き起こすことを示す。IL−2単独に対する反応(C、D)は著明ではない。
【図4】図4は、EBV溶解遺伝子産物であるBZLF1由来のRAKペプチドをHLA四量体に負荷したHLA−B8陽性患者2例におけるEBV特異的CTLの定量を示す。HLA−B8陽性患者2例に由来する連続PBMC試料を、APC抱合MHC/ペプチド四量体によるフローサイトメトリーで分析した。代表的な結果は、EBV前初期遺伝子BZLF−1由来のRAKFKQLLペプチド(HLA−B8/RAK)を含むHLA−B8四量体により、3つの時点で得たものである。リンパ球ゲートで起こるCD3陽性事象を青色で示す。CD8陽性HLA−B8/RAK陽性事象の比率を、各プロットの右上四分円に示す。
【図5】図5は、代表的なPTLD腫瘍試料におけるvTK発現のインサイチュ(IS)RT−PCR解析を示す。(A)腫瘍生検のH&E染色で、非定型大リンパ球の瀰漫性の浸潤を認める。(B)EBER−1およびEBER−2 mRNAのIS−RT−PCRによる検出。視野内のリンパ腫細胞の大半は、これらの大量のEBV転写産物の発現に対し陽性であり、EBVの存在が確認される。(C)溶解EBV遺伝子産物、ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)mRNA(BXLF1 ORF)のIS−RT−PCR解析。ウイルスTKの発現が、EBER−1およびEBER−2を発現する細胞と同等の多数のリンパ腫細胞に認められる。(D)vTK mRNAのIS−RT−PCR解析後におけるRNaseの分解により、図Cに存在するシグナルがRNAに基づくことが示される。[Porcu,2002 #394]より。
【図6】図6は、野生型AAV2および5 rAAV導入遺伝子ワクチン構築物の遺伝子組成を示す。すべての導入遺伝子構築物は、標準的なCMVプロモーターで構成的に駆動された全長EBV遺伝子産物cDNA(上)を含み、終止コドンの次にポリAテイル(pA)を含む。rAAV導入遺伝子構築物内に存在する他の要素は、neo抵抗遺伝子であるAAV repおよびAAV cap遺伝子を含み、いずれも内部プロモーターにより駆動する。この他の対照ベクターは、βガラクトシダーゼおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする。
【図7】図7は、rAAV2導入遺伝子の複製および発現を示す。A:サザンブロット;B:抗BZLFウェスタンブロット。レーン1:ヒーラー細胞溶解物;レーン2:ヒーラー−rAAV−BZLF1溶解物。
【図8】図8は、精製rAAV2ベクターのSYPROオレンジ染色を示す。
【図9】図9は、293T細胞へのrAAV2/BZLF1の形質導入を示す。上部:免疫蛍光によるBZLF1発現量の定量;下部:ウェスタンブロットによるBZLF1発現量の定量。DRPs=DNA分解酵素抵抗粒子/細胞(テキスト参照)。
【図10】図10は、rAAV2/EBV潜伏抗原の複製を明らかにするサザンブロットを示す。
【図11】図11は、EBV特異的CD8陽性Tリンパ球のインビトロにおける拡大培養結果を示す。
【図12】図12は、rAAV2/BZLF−1に感染させたヒト自家移植APCとともに14日間インビトロで拡大培養したEBV特異的CD8陽性CTLのフローサイトメトリー解析結果を示す。Y軸はcntl(上)またはBZLF(RAK、下)四量体を表し、X軸はCD8陽性T細胞を表す。
【図13A】図13A〜13Cは、全長BZLF1ポリペプチドが、HLA型またはBZLF1由来の既知/規定の免疫優性ペプチドに依存しないT細胞の反応を誘導することができることを示す。(A)対照タンパク質(BSA)またはBZLF1タンパク質のいずれかに適用される自家移植樹状細胞/抗原提示細胞(APC)に応答するHLAB8ドナー[147]末梢血単核球(PBMC)。7日後、バイオマーカーとしてRAKペプチドを負荷したHLAB8四量体を使用すると、単一の規定の免疫優性ペプチドRAKを認識する抗原特異的T細胞の拡大が認められる。左図は、対照のミスマッチ四量体(HLAB8−FLR)である。中央図は、対照BSAタンパク質で刺激されたPBMCの四量体染色背景を示す。右図はインビトロで拡大したHLAB8−RAK四量体特異的CD8陽性T細胞を示す。
【図13B】図13A〜13Cは、全長BZLF1ポリペプチドが、HLA型またはBZLF1由来の既知/規定の免疫優性ペプチドに依存しないT細胞の反応を誘導することができることを示す。(B)全長BZLFまたは対照タンパク質に適用された自家移植樹状細胞APCの存在下で平板培養したHLAB8ドナー147由来のPBMC。12日間の培養後、(対照BSAに比べた)全長BZLF1タンパク質に反応するIFNガンマ(IFNγ)シグナルの量は、ICフローの測定によると約4倍に増加した。HLAB8ドナーに対する、BZLF由来の規定された免疫優性ペプチド(RAK)は現在のところただ1つである。
【図13C】図13A〜13Cは、全長BZLF1ポリペプチドが、HLA型またはBZLF1由来の既知/規定の免疫優性ペプチドに依存しないT細胞の反応を誘導することができることを示す。(C)全長BZLFまたはBSA対照タンパク質に適用された自家移植DC APCの存在下で個々に平板培養したHLAA2由来のPBMC。12日間の培養後、(対照BSAに比べて)全長BZLF1タンパク質に反応して拡大したCD8陽性T細胞(フローサイトメトリーでは示さず)が産生するIFNγシグナルの量は、ICフローの測定によると約2倍増加している。HLAA2ドナーに対するBZLF由来の免疫優性ペプチドは報告されていないが、HLAA2 APCは全長BZLF1ポリペプチドを処理することができ、かつエフェクター機能とともにT細胞の細胞活性化を引き起こす抗原認識を示すサイトカイン反応を駆動する免疫原性ペプチドを提示することができる。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国仮特許出願第60/737,944号(2005年11月18日出願)(その内容全体は、本明細書中に参考として援用される)に基づく優先権および任意の他の利益を主張する。
【0002】
(政府の権利)
米国の政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
【0003】
(分野)
本開示内容は一般的に、ウイルス関連疾患およびいくつかの実施形態においてはエプスタインバーウイルス(EBV)関連疾患を予防するためのワクチン接種方法に関する。いくつかの実施形態において、本方法は、宿主免疫を改善および/または回復させるEBV特異的メモリーT細胞を増加させ、疾患を制御する。これらの結果を達成するためのポリペプチドおよびDNA配列も記載する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
エプスタインバーウイルスは、休止期ヒトメモリーT細胞および上皮細胞に感染する遍在性のリンパ球指向性ヒトヘルペスウイルスである。EBVは鼻咽腔の上皮細胞の一次感染を介してヒト宿主に達し、通常このプロセスは青少年期に行われる。この宿主の一次感染は、EBV一次感染と呼ばれる。
【0005】
健常者のEBV一次感染は無症状であることが多いが、重篤なインフルエンザ様疾患を起こすこともあり、その場合は、ヒト(宿主)における感染したEBV陽性B細胞が限られた時間だけ増殖し、その後に宿主自身の免疫系(健常な抗原特異的T細胞を介する場合が多い)により疾患が制御される。この自己限定性のB細胞リンパ増殖性疾患は、伝染性単核球症(IM)または「モノ」と呼ばれており、医原性(免疫抑制剤)、後天性(AIDS)または先天性(SCID、XLP)の免疫抑制の後に発症するより重篤な、制御不能な、または悪性のEBV感染B細胞の増殖とは区別することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本明細書には、ある被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導する方法であって、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物を前記被験体に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される。いくつかの実施形態において、ウイルスは、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8(カポジ肉腫ヘルペスウイルス:KSHV)から選択されるヒトヘルペスウイルスである。エプスタインバーウイルスには、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiといったウイルス株が含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
この他の特性および利点は、以下の説明に一部記載されているが、一部は以下の説明によって明らかになるか、あるいは本発明の実施によって認識される場合がある。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に指摘した要素および組み合わせによって実現および達成される。
【0008】
前述の概説および後述の詳細説明はいずれも、単に例示的かつ説明的なものであり、請求される本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0009】
本明細書で援用され本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を説明するものであり、説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(詳細な説明)
以下では本発明を、添付の図面を場合により参照しながら、いくつかのより詳細な実施形態を参照することにより説明する。しかし、本発明は、異なる形態で実現される場合があり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈してはならない。むしろ、これらの実施形態は、本開示内容が完璧かつ完全であり、本発明の適用範囲を当業者に完全に伝達するように提供される。
【0011】
特に断りのない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定することを目的としたものではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、特に状況下において明記されない限り、複数形も含むことを意図する。本明細書に記載するすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、全体が参考として援用される。
【0012】
特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載する成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、いずれの場合にも「約」という用語によって改変されるものとして理解されたい。したがって、相反する記載がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、および等価物の教義の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効桁数および通常の丸め法を考慮して解釈しなければならない。
【0013】
本発明の広範な適用範囲を述べる数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も本質的には、それぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を含む。本明細書全体を通して定められる数値の範囲は、このようなより広範な数値範囲内に含まれるそれぞれのより狭い数値範囲が、本明細書においてすべて明記されているかのように、このようなより狭い数値範囲を包含する。
【0014】
EBVは、安静にしているヒトメモリーB細胞および上皮細胞に感染する広布リンパ増殖性ヒトヘルペスウイルスである。遺伝的多型によって区別される、それぞれ1型および2型とも呼ばれるA型およびB型の2つのEBV株が存在し、それにより種々の遺伝子は、DNA配列および/または一次アミノ酸配列が異なる。いずれのEBV型も世界中で発生するが、地理的分布は異なる。さらに、いずれのEBV型も、インビボにおける生物活性がほぼ同じであり、したがって、本発明の方法および組成物は、一方または両方の型のEBVに由来する遺伝子産物を投与することによって、1型EBVとしても知られるA型EBVと2型EBVとしても知られるB型EBVの両方に対して使用するように適合させることができる。本発明の適用範囲内に含まれるEBVのその他の株には、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiがある。表1は、1型EBVのオープンリーディングフレームに対応する核酸配列を示す。
【0015】
EBVは、鼻咽喉の上皮細胞の一次感染を介してヒト宿主に接触し、通常は青年期にEDVがこれを行う。青少年のこの第1感染は、一次EBV感染と呼ばれる。上皮内において、一次EBV感染時における溶解遺伝子プログラムの活性化により、局所的なビリオン生成や粘膜下リンパ組織の湿潤が生じ、休止期Bリンパ球の感染をもたらす。溶解性感染は、BZLF1として知られるEBVレプリコンアクチβー遺伝子産物によって開始および推進される。約80種類のEBV mRNA種が、一次感染の溶解段階中に発現し、前初期、後初期、または後期のいずれかのウイルス性溶解遺伝子として特徴付けられる。前初期溶解性感染時に検出される遺伝子は、新しいタンパク質の合成に関係なく発現し、BZLF1遺伝子産物によって活性化される。初期溶解性抗原(EA)の例には、BRLF1、BMRF1、BMLF1(トランスアクチβー)、BALF5(DNAポリメラーゼ)、BARF1(リボヌクレオチドレダクターゼ)、BXLF1(ウイルスチミジンキナーゼ)、BGLF4(CMV−UL97と相同のタンパク質キナーゼ)がある。後期溶解遺伝子の発現は、ビリオン集合に必要な構造タンパク質を主にコードする。潜伏遺伝子プログラムでその他何らかのEBV遺伝子プログラムは、一次EBV感染のこの初期段階に感染Bリンパ球において活性化される。
【0016】
健常者のEBV一次感染は無症状であることが多いが、場合によっては重篤なインフルエンザ様疾患を起こすこともあり、被験体(例えば、ヒト)の感染したEBV陽性B細胞が、限られた時間だけ増殖し、その後に被験体自身の免疫系(健常な抗原特異的T細胞を介する場合が多い)が疾患を制御する。この自己限定性のB細胞リンパ増殖性疾患は、伝染性単核球症(IM)または「モノ」として知られ、移植後リンパ増殖性障害と呼ばれる、臓器移植後に生じることがあるEBV陽性B細胞のより重篤な、制御不能な、または悪性の増殖とは区別される。この増殖は、しばしば致命的となることがあるが、これについては以下で考察する。本発明者は、これらの病態のいずれにおいても、感染したB細胞において発現するEBV溶解遺伝子産物および潜伏遺伝子産物が、宿主のT細胞免疫応答の主要な標的であることは明らかであることを見出した。
【0017】
被験体が「無症状」一次EBV感染に罹患しているか、またはIMを発症するかに関係なく、溶解段階は宿主のT細胞による制御下において生じるが、EBVは、宿主の身体から決して完全には排除されない。むしろ、EBVは、限られた数の休止期B細胞において持続的なEBVプログラムに切り替えることによって、宿主の免疫系から逃れようとする。一般的に、常にというわけではないが、ウイルスが第1潜伏形態(潜伏I型)でのみ存在する限り、溶解遺伝子プログラムは沈黙しており、潜伏遺伝子の発現はEBNA1およびLMP2Aに限られる。したがって、ウイルスは、宿主免疫監視網を回避することによってヒト宿主内に生き残ることができ、LMP1およびEBNA2などの発がん性ウイルスタンパク質は沈黙しているため、感染した免疫適格宿主に対してほとんど脅威を示さない。実際に、米国の成人の約95%が、安定した潜伏EBV感染に罹患している。しかし、以下に言及するとおり、潜伏EBV感染が再び活性化され、疾患プロセスと関連する場合もある。
【0018】
潜伏EBV遺伝子プログラムは3種類あり(図1)、それぞれが潜伏遺伝子の発現パターンと関連する。EBV陽性休止B細胞は、エプスタインバー核抗原1(EBNA1)および潜伏膜タンパク質−2A(LMP2A)を含むがこれらに限定されない潜伏I型遺伝子発現プロファイルを示す。これは、通常の健常なヒトにおけるメモリーB細胞の長期的な無症状EBV感染に関連する潜伏プログラムである。潜伏II型感染Bリンパ球は、EBNA1、LMP2A、およびLMP1の発現を含むがこれらに限定されない潜伏遺伝子プログラムを示す。活性化され、悪性の形質転換、すなわち無限の増殖が可能なヒトEBV陽性B細胞は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bの発現を含むがこれらに限定されないIII型潜伏プログラムを示す。
【0019】
一次EBV感染および以前の潜伏EBV感染の再活性化を伴う併発症は、先天性、後天性、および/または医原性免疫不全状態の患者において高い頻度で生じる。例えば、実質臓器または血液同種移植を受けた患者において集中T細胞抑制療法を行うと、患者はEBV関連PTLDに罹患する危険性がある。このPTLDの危険性は、移植片拒絶または移植片対宿主疾患(GVHD)の徴候がさらに見られる場合に高くなる。PTLDは、米国で1年間に実施される実質臓器移植の2〜20%において併発する。死亡率は50%〜70%と報告されており、最適な処置法については、依然として盛んに議論されている。免疫抑制の低減は、ほとんどすべての患者において最初に試行され、23%〜50%の症例でPTLD病変の退行が見られると報告されているが、この手法による持続的な完全寛解はほとんど得られることがないと考えられている。新規の免疫抑制療法の出現により、実質臓器の移植は、末期腎臓病、小児患者のI型糖尿病、ならびに心不全や肝不全などの治療オプションとなっている。標準的な医療診療において臓器移植が多く使用されるようになれば、PTLDを発症する頻度が高くなり、罹患率や死亡率が増大することになる。さらには、PTLDに関連する併発症の管理が、患者やヘルスケア産業にとって大きな財政的課題をもたらす。
【0020】
PTLDは、一次または再活性化EBV感染に関連する悪性B細胞リンパ増殖性障害である。EBVウイルス血症とPTLDの間の関連は、免疫抑制療法中に移植患者の末梢血液からEBV DNAを増幅させる定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)法を使用して、再現的に文書化されている。PTLDの範囲は、ポリクローナルのB細胞過形成からモノクローナルの免疫芽球性リンパ腫にわたる。ポリクローナルEBV−LPDは、免疫抑制療法の中止後に退行することが知られているが、モノクローナル疾患は、従来の療法に対して本質的な抵抗を示し、しばしば致命的である。自家Tリンパ球の存在下におけるEBV誘導B細胞形質転換の阻害がインビトロデータにより示され、異種移植重症複合型免疫不全(SCID)マウスにおけるEBV陽性リンパ芽球様細胞株(LCL)成長の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)により媒介される逆転が実証されたことで、T細胞がEBV感染とEBV形質転換B細胞の制御において不可欠であるという見解に対して納得できる裏付けが得られている。インビトロ生成CTLをEBV−LPD患者に送達し、免疫抑制療法の中止後におけるEBV特異的CTLの内因性拡大が記録されたことで、宿主免疫の回復が、この「日和見性の」悪性疾患の制御において最も有望な療法となり得ることが示唆されている。これらの所見はまた、PTLDの発症を防止するために実質臓器の移植前にEBV特異的CTL先駆物質の頻度を拡大させることを目的して、宿主の免疫網を教育する方法を考案する貴重な機会ももたらす。当然ながら、上述の再活性化EBV(または他のヘルペスウイルス)感染および悪性EBV(または他のヘルペスウイルス)関連疾患に罹患する危険性がある他の患者群に、同様の方法を適用することも可能である。
【0021】
種々のウイルス性タンパク質由来ペプチドと特定のHLA型の間の関連性は限られていることから、潜伏または溶解EBV遺伝子産物に由来する選択ペプチドによる免疫化は、比較的小さな患者群に免疫優性抗原をもたらすと考えられる。この制約は、全長EBV溶解および/または潜伏ポリペプチドもしくはタンパク質を抗原処理網に提供し、それによってすべてではないにせよ、ほとんどの型のHLAクラスIおよびII分子の状況下において最適な提示を可能にすることにより回避できることを、本発明者等は発見した。これらのより大きな分子を受容した被験体(例えば、ヒト)は、その後全長ポリペプチドを処理し、特定のHLAクラスIおよびII分子の状況下において免疫優性ペプチドを示すことができる。したがって、本明細書では、賦形剤または免疫補助剤を伴うかを問わず精製タンパク質を直接送達することによるか、あるいは組換えDNA法を介して達成することができるワクチン接種を目的とした、全長溶解および/または潜伏EBVポリペプチド免疫原を提供する。本開示内容と一貫して、本発明の方法および組成物も提供する。
【0022】
本発明は、ウイルス由来の産物を被験体の遺伝子に投与することによりウイルス関連疾患に対する被験体の免疫応答を誘導するための方法および組成物を対象とする。本発明の標的である疾患を誘発するウイルスには、ヒトヘルペスウイルス(HHV)1〜8(HHV−1、HHV−2、HHV−3、HHV−4、HHV−5、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8)が含まれる。本開示内容のほとんどでは、HHV−4(エプスタインバーウイルス)に注目して本発明を例示しているが、他のHHVにも等しく適用することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルスであり、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物は、表1に列挙する遺伝子産物から選択される。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、1型エプスタインバーウイルスに由来し、表1に列挙する配列に関連する。いくつかの実施形態において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択されるか、あるいは溶解遺伝子産物は、BZLF1およびBMLF1から選択され、潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択されるか、あるいはエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物はBZLF1であり、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物はEBNA3Cである。本発明の方法のいくつかの実施形態は、少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を投与することを伴う。
【0024】
いくつかの実施形態において、ウイルス関連疾患は、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎(renal cell tubulitis)、および肝炎から選択される。腫瘍性疾患には、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞およびT/NK細胞リンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。リンパ増殖性障害には、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および治療的介入の結果として、またはそれに関連して生じる免疫不全状態を一般的に含む医原性免疫不全の結果として、あるいはこれらに関連して生じるものが含まれるが、これらに限定されない。医原性免疫不全には、移植後リンパ増殖性疾患となることがあるこれらの免疫不全状態のいずれかが含まれる。
【0025】
いくつかの実施形態において、被験体は、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス関連疾患であると診断されている。腫瘍性疾患には、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞リンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。リンパ増殖性障害には、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および医原性免疫不全が含まれるが、これらに限定されない。医原性免疫不全は、移植後リンパ増殖性疾患を生じることがある。
【0026】
いくつかの実施形態において、投与は、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択されるエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することによって行われ、前記エプスタインバーウイルス遺伝子産物は、調節エレメントに作動可能に結合されている。いくつかの実施形態において、エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列を含む。全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列には、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、ならびにLMP1−lyt、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bコード配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、投与は、被験体において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む免疫原組成物を導入することによって行われる。遺伝子産物は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドであってもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物および少なくとも1つのエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は結合する。いくつかの実施形態において、ウイルス遺伝子産物は、皮下経路、筋肉内経路、粘膜経路、腹膜内経路、または皮内経路から選択される経路によって投与される。
【0028】
また、少なくとも2つのウイルス遺伝子産物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する被験体の免疫応答を誘導する薬学的組成物も提供される。いくつかの実施形態において、遺伝子産物は、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される。いくつかの実施形態において、ウイルスは、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8から選択されるヒトヘルペスウイルスである。いくつかの当該実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルスであり、これは、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である場合がある。
【0029】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物は、表1に列挙する遺伝子産物から選択される。いくつかの当該実施形態において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される。いくつかの当該実施形態において、溶解遺伝子産物は、BZLF1およびBMLF1から選択され、潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択されるか、あるいはエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物はBZLF1であり、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物はEBNA3Cである。
【0030】
薬学的組成物は、水、塩、緩衝剤、炭水化物、可溶化剤、プロテアーゼインヒビター、および乾燥粉末処方剤から選択される賦形剤を含む場合がある。いくつかの実施形態において、薬学的組成物はさらに、フロイントアジュバント、油中水型エマルジョン、鉱油、顆粒白血球/マクロファージコロニー刺激因子、および/またはインターロイキン2など、少なくとも1つの補助剤も含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含み、いくつかの実施形態において、薬学的組成物は少なくとも3つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む。
【0031】
また、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;およびエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、アデノウイルスベクターなどのウイルスベクターも提供される。いくつかの実施形態において、エプスタインバーウイルスは、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である場合がある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物は、表1に列挙する遺伝子産物から選択される。エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物には、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytが含まれるが、これらに限定されず、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される。いくつかの当該実施形態において、溶解遺伝子産物は、BZLF1およびBMLF1から選択され、潜伏遺伝子産物は、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択され、いくつかの当該実施形態において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物はBZLF1であり、エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物はEBNA3Cである。
【0032】
また、アデノウイルスベクターを含む組換えアデノ随伴ウイルスも提供する。また、アデノウイルスベクターを含むアデノウイルス部分;およびプラスミド部分を含むプラスミドも提供する。
【0033】
また、本明細書で提供するウイルスベクターを含む哺乳動物細胞も提供する。また、ウイルス遺伝子産物に対する免疫応答を産生する条件下において哺乳動物細胞を培養する方法であって、ウイルス遺伝子産物の発現に好適な条件下において細胞を増殖させることを含む、方法も提供する。これらの細胞調製物には、自家樹状細胞、線維芽細胞、筋細胞などを含むが、これらに限定されない。また、細胞療法として使用されるEBV特異的細胞傷害性T細胞(または他のエフェクター細胞)のエキソビボ生成および膨張をもたらす(いずれかの既存のEBVオープンリーディングフレームなどからの)所与のウイルス遺伝子産物の発現を可能にする方法も提供される。本明細書に記載の方法の性質は、細胞療法として使用する自家または同種抗原特異的もしくは生得免疫細胞調製物に適用される場合がある。細胞療法は、被験体に投与されると、サイトカインの分泌、共刺激分子の認識、抗原の認識、細胞傷害性療法の送達など(これらに限定されない)を介して、病原体に対する所与の応答を向上させる細胞調製物として定義される場合がある。
【0034】
また、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含むベクターも提供する。また、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および前記エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連腫瘍性または非腫瘍性疾患に対する免疫応答を産生するウイルスベクター薬学的組成物も提供する。また、少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;前記エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連疾患に対する免疫応答を産生するアデノウイルスベクター薬学的組成物も提供する。
【0035】
また、エプスタインバーウイルスワクチンに対する被験体の応答を確認する方法であって、(i)エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物の存在をアッセイすること、(ii)バイオマーカーとしてサイトカインを使用して被験体から単離された免疫エフェクター細胞サブセットの存在をアッセイすること、(iii)バイオマーカーとしてモノクローナル抗体および/またはHLA4量体技法を使用して抗原特異的リンパ球の存在をアッセイすることを含む、方法も提供する。
【0036】
したがって、一実施形態において、本発明は、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される場合がある少なくとも1つのEBV遺伝子産物を含む新規のワクチンを投与することにより、被験体において少なくとも1つのEBV関連疾患を治療することを対象とする。一般的に、EBV関連疾患は、いずれかのEBV ORFによって発現/コードされたEBV遺伝子産物の直接的/間接的な結果としてヒト細胞の無制御の増殖、生存または死をもたらすものである。EBV関連病理には、EBVゲノム(DNA)を組織または体液において検出することができる任意の条件が含まれると考えられる。EBV関連疾病単位は、EBVのいずれかのオープンリーディングフレーム、あるいはウイルスまたは細胞調節機序(すなわち、miRNAなど)に参加することができるポリヌクレオチド配列をもたらす非コード配列によってコードされた1つ以上のウイルス遺伝子産物の発現による、いずれかの生理学的プロセスの調節疾患に関係する場合がある。本明細書に概説する方法はまた、関連するもしくは相同の遺伝子産物もしくはオープンリーディングフレームを有する他のウイルスに関連するか、またはこれにより生じる同様の疾患状態に適用される場合もある。これらのウイルスには、ヒトヘルペスウイルス1型および2型(HHV−1、−2)、HHV−3(水痘帯状疱疹)、HHV−4(本明細書に例示するEBV)、HHV−5(サイトメガロウイルス[CMV])、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8(KSHV)が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
特定のEBV関連疾患には、腫瘍性疾患、伝染性単核球症(IM)、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍性疾患には、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞およびT/NK細胞リンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、リンパ増殖性障害は、先天性免疫不全、後天的免疫不全、および医原性免疫不全から選択される。医原性免疫不全の状況下において生じる腫瘍には、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)およびメトトレキレート関連非ホジキンリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。EBV関連疾患は、溶解および/または潜伏遺伝子プログラムを示し、したがって、少なくとも1つのEBV溶解遺伝子産物および/または少なくとも1つのEBV潜伏遺伝子産物を含む本発明の組成物は、有効な予防および/または治療手段を提供する。
【0038】
本方法および組成物はまた、被験体(例えば、ヒト)が免疫適格であるため、定量的により多いメモリーT細胞の予備を提供する場合に、溶解および/または潜伏EBV遺伝子産物に特異的であるT細胞クローン(CD4およびCD8)の膨張を可能にするために使用することもできる。本実施形態は、臓器移植の準備において免疫抑制療法を受けようとしている被験体に使用することができる。したがって、免疫系が完全に機能している時に被験体がワクチン接種されるため、EBVに対するメモリーT細胞の予備を生成することが可能となる。メモリーT細胞の予備は、図4に示す4量体染色によって、あるいは4量体が特定のHLA型に利用できない場合はエリスポットアッセイによって、ワクチン接種前および接種後に測定することができる。フローサイトメトリーアッセイを使用する他の方法を使用して、メモリーCD3/CD8 TcおよびCD3/CD4 Th細胞の絶対数を追跡することもできる。他の方法は、EBV DNAゲノムコピー数を定量的に測定するために、または個体の白血球からIFN−γ−遺伝子多型の性質を決定するために分子法を使用する。最後に、サイトカイン/ケモカイン、またはウイルス遺伝子産物(またはその誘導)のポリペプチドは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定することができる。本発明の方法および組成物は、免疫抑制療法が開始された後、または免疫調節疾患が上述の機序によって誘発された後、EBV関連疾患(例えば、PTLD)に対してより優れた保護を提供する。
【0039】
本発明に基づき使用することができるEBV溶解遺伝子産物には、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMPl−lytが含まれるが、これらに限定されない。EBV潜伏遺伝子産物には、BEBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bが含まれるが、これらに限定されない。本発明に基づき使用されるEBV遺伝子産物は単離または精製する必要はないが、EBV遺伝子産物は、当業者に周知の標準的なプロトコルを使用して単離および精製することができることに留意されたい。
【0040】
表1は、EBVに由来するオープンリーディングフレームのすべての一覧を示し、1型株に関連する核酸配列を列挙する。オープンリーディングフレームの遺伝子産物のいずれも、本発明に基づき使用される場合があるが、本明細書では特定の溶解遺伝子産物および潜伏遺伝子産物を例示する。表1に記載する特定の核酸配列は単に1型株の配列であることから、本発明がこれらに限定されるものではないことは十分に明らかなはずである。他のEBV株由来のオープンリーディングフレームは、異なる配列を有する場合があり、これらは明示的に企図されている。したがって、本明細書では全体を通して、オープンリーディングフレームの遺伝子産物の一般的な名称を参照する(例えば、「BZLF1」)。これらの一般的な名称の参照は、本明細書に開示する特定の1型配列に限定することを目的としたものではなく、他の株の配列も同様に包含することを理解されたい。特定の配列の参照が意図される場合には、その通りに当該配列を参照する。
【0041】
一実施形態において、CD8およびCD4陽性T細胞応答を産生するEBNA1は、すべてがCD8T細胞応答を誘発する(但しCD4T細胞応答は誘発しない)上に列挙する他の遺伝子産物のいずれかと組み合わされる。したがって、本発明の本組成物は、CD4およびCD8の両T細胞応答の生成においてさらに有利である。この特定の組み合わせを使用する方法は、明示的に企図されている。
【0042】
本明細書で使用される「遺伝子産物」という用語は、遺伝子またはcDNAの全長コード配列をコードするポリヌクレオチド、あるいは所与のタンパク質の全長アミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。但し、本発明の方法または組成物に対して影響を与えることなく、本明細書に記載のEBV遺伝子産物に対して、変異または改変が行われる場合があることに留意されたい。行われる変更の種類は様々である。特定のヌクレオチド塩基が欠失する欠失変異は、翻訳されたポリペプチドにおけるアミノ酸の欠失または変更をもたらすオープンリーディングフレーム配列を形成する。挿入変異は、所与のコード配列内においてヌクレオチド塩基を追加することにより起こり、ポリヌクレオチド配列のフレームシフトを生じる。また、1つのアミノ酸を他のアミノ酸と置換する変異も行うことができる。
【0043】
アミノ酸の置換に関しては、種々のアミノ酸置換を行うことができる。本明細書で使用されるアミノ酸は一般的に、以下のように区分することができる:(1)無極性または疎水性の側基(A、V、L、I、P、F、W、およびM)を有するアミノ酸;(2)非荷電極性側基(G、S、T、C、Y、N、およびQ)を有するアミノ酸;(3)pH6.0〜7.0にて負に荷電した極性酸性アミノ酸(DおよびE);ならびに(4)pH6.0〜7.0にて正に荷電した極性塩基性アミノ酸。一般的に、「保存的」置換、すなわち、1つの群のアミノ酸が同じ群のアミノ酸で置換される置換は、活性に対する影響を予期せずに行うことができる。さらに、いくつかの非保存的置換も、活性に影響を与えずに行われる場合がある。当業者であれば、活性に影響を与えずにどの置換を行うことができるかを理解するであろう。
【0044】
上では天然のアミノ酸を考察したが、非天然のアミノ酸、または改変アミノ酸も企図され、引用した遺伝子産物において置換として使用される場合がある。したがって、本明細書で使用される「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、およびアミノ酸類似体を指し、すべてDおよびL立体異性体である。天然アミノ酸には、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リシン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、およびバリン(V)が含まれる。非天然のアミノ酸には、アゼチジンカルボン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4ジアミノイソ酪酸、デモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロシン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、およびピペコリン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
EBV遺伝子産物は、一方の末端または両末端に結合するアミノ酸を含む場合もあることに留意されたい。これらの追加の配列は、結果として得られるポリペプチドの発現、精製、同定、溶解性、膜輸送、安定性、活性、局在化、毒性および/または特異性を促進する場合もあれば、あるいはその他何らかの理由により追加される場合もある。EBV遺伝子産物は、直接またはスペーサー配列を介して結合する場合がある。スペーサー配列は、アミノ酸の除去を可能にするために、プロテアーゼ認識部位を含む場合もあれば、含まない場合もある。EBV遺伝子産物に結合する場合があるアミノ酸の例には、ポリヒスチジンタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、タンデム親和性精製(TAP)タグ、カルシウム調節タンパク質(カルモジュリン)タグ、共有結合であるが解離性の(CYD)NorpDペプチド、StrepII、FLAG、タンパク質C重鎖(HPC)ペプチドタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、金属親和性タグ(MAT)、および/または単純ヘルペスウイルス(HSV)タグが含まれるが、これらに限定されない。EBV遺伝子産物はまた、EBV遺伝子産物に沿って任意の位置で結合する非アミノ酸タグを含む場合もあることにさらに留意する必要がある。これらのさらなる非アミノ酸タグは、結果として得られるポリペプチドの発現、精製、同定、溶解性、膜輸送、安定性、活性、局在化、毒性および/または特異性を促進する場合もあれば、あるいはその他何らかの理由により追加される場合もある。EBV遺伝子産物は、直接またはスペーサーを介して非アミノ酸タグに結合する場合がある。非アミノ酸タグの例には、ビオチン、炭水化物成分、脂質成分、蛍光群、および/またはクエンチング群が含まれるが、これらに限定されない。EBV遺伝子産物は、さらなる群への結合を容易にするために、化学的、生物学的、またはその他何らかの種類の改変を必要とする場合もあれば、必要としない場合もある。
【0046】
さらに、以上において特定のオープンリーディングフレーム、およびこれらから得られる遺伝子産物の一般的な名称について言及してきたが、これらの変異体も具体的に企図される。本明細書で使用される「変異体」は、アミノ酸配列が基準のペプチド/ポリペプチド/タンパク質とほぼ同じであるが、それぞれのペプチド/ポリペプチド/タンパク質と100%同一ではないタンパク質(またはペプチドもしくはポリペプチド)を指す。変異体のペプチド/ポリペプチド/タンパク質は、基準配列のアミノ酸の1つ以上が欠失または置換されるか、あるいは1つ以上のアミノ酸が基準アミノ酸配列の配列に挿入されている(上述)変更された配列を有する。変異体は、欠失、置換または挿入の任意の組み合わせを有することができる。変更の結果として、変異体のペプチド/ポリペプチド/タンパク質は、基準配列と少なくとも約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有することができる。
【0047】
変異体ポリペプチドが、基準ポリペプチドと実質的に同一であるかを判定するには、変異体ポリペプチド配列を、第1の基準脊椎動物のポリペプチドの配列とアライメントすることができる。1つのアライメント方法は、BlastPによる方法であり、スコアリング行列およびギャップペナルティのデフォルト設定を使用する。一実施形態において、第1の基準ポリペプチドは、このようなアライメントにより、最低のE値、すなわち、良好以上のアライメントスコアを有するアライメントが偶然によってのみ生じる最低の可能性が得られるものである。あるいは、このようなアライメントにより、最高の割合の同一性が得られるものである。
【0048】
いくつかの実施形態において、少なくとも2つのEBV遺伝子産物は、被験体において免疫応答を誘導するために投与される。本実施形態により、EBV関連疾患に対する一次および/またはメモリーCD4ヘルパーおよび/またはCD8CTL応答を調整するために、抗原提示細胞によって効率的に処理することができる複数の免疫優性ペプチドを生成することが可能となる。本手法は、臓器を移植する前に、被験体が免疫適格であるために、メモリーT細胞のより多くの予備を提供する時に、被験体の治療に使用する場合にも実行可能である。メモリーT細胞の予備は、図4に示す4量体染色によって、あるいは4量体が特定のHLA型に利用できない場合はエリスポットアッセイによって、ワクチン接種前および接種後に測定することができる。選択される少なくとも2つのEBV遺伝子産物は、溶解遺伝子産物、潜伏遺伝子産物、または溶解および潜伏遺伝子産物それぞれの一方から選択することができる。溶解および潜伏遺伝子産物の異なる組み合わせも企図されている。
【0049】
いくつかの実施形態において、投与は、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのEBV遺伝子産物を含む免疫原組成物を被験体において導入することによって実施される。少なくとも1つのEBV溶解遺伝子産物および少なくとも1つのEBV潜伏遺伝子産物は、皮下、筋肉内、粘膜、腹膜内、皮内、またはその他何らかの適切な経路から選択される経路によって投与される。投与の頻度は、被験体が、EBV関連疾患の予防および/または治療をもたらす十分な細胞媒介免疫を生成できるようにしなければならない。投与の用量は、被験体が、EBV関連疾患の予防およびまたは処置をもたらす十分な細胞媒介免疫を生成できる適切な用量でなければならない。頻度および用量はいずれも、当業者により決定することができる。
【0050】
本発明はまた、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択されるEBV遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを投与することも対象とする。EBV遺伝子産物は、EBV遺伝子産物の発現レベル、EBV遺伝子産物の局在化、EBV遺伝子産物の特異性、EBV遺伝子産物の安定性に関して、またはその他何らかの理由により調整できるようにするために、調節エレメントに作動可能に結合されている場合がある。いくつかの実施形態において、EBV遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドは、全長EBV cDNAコード配列を含む。さらに、全長EBV cDNAコード配列は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、ならびにLMP1−lyt、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bコード配列から選択される。種々のEBV型の固有の変形により、前述のEBV遺伝子産物の配列は、患者が発症した、または発症する危険性があるEBV感染の型に対応するように適合される場合がある。さらに、コドン使用の縮退により、種々の一次ヌクレオチド配列がやはり、同じEBVタンパク質を生成する場合もある。ヌクレオチドにおけるコドンの変化により、予測されたタンパク質のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の両方が追加、欠失および置換される場合もある。しかし、追加、欠失および置換をもたらす配列の変化を有するEBV遺伝子産物を使用することによってもやはり、EBV関連疾患から被験体を保護する十分な細胞免疫が生成される場合がある。したがって、核酸配列の変異体も、明示的に企図されている。
【0051】
ウイルス遺伝子の送達は、ポリヌクレオチドを被験体に送達する当該技術分野の当業者には周知の方法である。ウイルス遺伝子の送達は、ポリヌクレオチドを細胞に送達することによって、細胞が自らの治療タンパク質を生成できるようにする治療の一種である。通常ポリヌクレオチドは、細胞に感染し、DNAペイロードを付着させ、所望のタンパク質を生成する細胞のマシーナリーを継承することができるウイルスを使用することによって移入される。ウイルス寿命サイクルの複製段階に必要な遺伝子(非必須遺伝子)を対象の異種遺伝子で置換することによって、組換えウイルスベクターは、通常感染する細胞型を形質導入することができる。このような組換えウイルスベクターを生成するために、非必須遺伝子は、輸送中に提供され、パッケージング細胞株のゲノムの中にまたはプラスミド上に組み込まれる。ウイルスが寄生体として発展すると、これらのウイルスはすべて、宿主免疫系応答をある程度まで誘発する。ウイルスベクターの例には、アデノウイルス、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス1型が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
アデノ随伴ウイルスは、伝染性ビリオンを増殖させ、集合するためにヘルパーウイルス(通常はアデノウイルス)に依存する、非病原性のヒトパルボウイルスである。これらは、分割細胞および非分割細胞の両方に感染することができ、ヘルパーウイルスがない場合は、高い頻度でヒトゲノムの特定の地点に組み込まれる。野生型ゲノムは、単鎖DNA分子であり、ウイルスの複製、構造遺伝子の発現、およびヒトゲノムへの組込みを調節するタンパク質をコードするrep、ならびにカプシド構造タンパク質をコードするcapの2つの遺伝子からなる。ゲノムのいずれかの末端には、プロモーターを含む145の塩基対末端重複(TR)がある。
【0053】
ベクターとして使用される場合、rep遺伝子およびcap遺伝子は、トランス遺伝子およびその関連する調節配列によって置換される。インサートの全長は、野生型ゲノムの長さの4.7kbを大きく超えることはできない。組換えベクターの生成には、ヘルパーウイルス遺伝子産物(アデノウイルスゲノム由来のEla、Elb、E2a、E4、およびVA RNA)と共に、repおよびcapが輸送中に提供されることが必要となる。従来の方法は、1つがベクターのプラスミドであり、もう1つがrepおよびcapのプラスミドである2つのプラスミドを、アデノウイルスに感染した293T細胞に共形質移入する方法である。より最近のプロトコルでは、すべてのアデノウイルス構造遺伝子を除去し、感染の前にrep耐性プラスミドを使用するか、またはrep発現プラスミドを成熟ウイルスに接合する。
【0054】
cDNAクローンは、野生型EBV関連リンパ芽球様細胞株またはその他の適切な供給源から単離される。各全長cDNAの塩基配列は、rAAV2ベクターにクローン化する前に確認される場合がある。次いで、ヒーラープロデューサー細胞に、AAVrep(トランス遺伝子複製の場合)およびcap(ウイルス性カプシド生成の場合)ならびに抗生物質耐性遺伝子をコードするrAAVトランス遺伝子プラスミドを形質移入する。形質移入したヒーラープロデューサー細胞は、抗生物質の選択下で培養され、耐性コロニーが回収、膨張、および低温保存される。耐性コロニーに由来する細胞は、ニトロセルロース膜(Dot Blot)上で固定化し、cDNAプローブで探査して、最も優れた複製活性を有するコロニーを識別する。高いトランス遺伝子複製活性を有するクローンは、ウェスタンブロット法によりrAAVトランス遺伝子発現(DNA)および全長タンパク質の存在について評価する。結果として得られたベクターは、専門の抗原提示細胞(APC)、すなわち樹状細胞(DC)に抗原を送達し、細胞免疫応答をもたらすことができる。EBV遺伝子産物を担持するrAAVビリオンは、ヒトAPCおよび/またはDCに感染することができ、APCおよび/またはDCの抗原処理マシーナリーが、クラスIおよび/またはクラスIIのMHCを介してペプチドを提示することを可能にする全長EBV遺伝子産物を発現する。
【0055】
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの1つ以上を成分として含む薬学的組成物も含む。一実施形態において、薬学的組成物は、EBVポリペプチドを含む。別の実施形態において、薬学的組成物は、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。薬学的組成物の調製において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、通常、賦形剤と混合される、賦形剤によって希釈される、および/またはカプセル、サッシェもしくは他の容器の形態であってもよい担体内に封入される。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、賦形剤または補助剤を含めた薬物を細胞の標的集団に投与することを容易にするいずれの担体またはビヒクルも使用することができる。このような薬学的組成物は、必要な材料、説明書および機器を提供する便利なキットにパッケージングされる場合がある。薬学的組成物は、摂取および当該技術分野で既知の送達方法の経路を介して、1回量または複数回の用量にて投与することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのEBV遺伝子産物は、薬学的組成物を含む。薬学的組成物はまた、EBV溶解遺伝子産物および/またはEBV潜伏遺伝子産物から選択される2個、3個または4個のEBV遺伝子産物を含む場合もある。薬学的組成物はまた、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をも含む場合もある。賦形剤は、水、滅菌水、塩、緩衝液、炭水化物、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、スターチ、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゲラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、シロップ、およびメチルセルロースから選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、少なくとも1つの補助剤をさらに含む。補助剤は、フロイントアジュバント、油中水型エマルジョン、鉱油、顆粒白血球/マクロファージコロニー刺激因子、およびインターロイキン2から選択される場合があるが、これらに限定されない。
【0057】
薬学的組成物は、例えば、EBV溶解遺伝子産物BZLF1およびEBV潜伏遺伝子産物EBNA3C、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤および/または補助剤を含む場合がある。さらに、薬学的組成物は、例えば、EBV溶解遺伝子産物BZLF1およびBMLF1、ならびにEBV潜伏遺伝子産物EBNA3C、EBNA1およびEBNA3A、さらには少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤および/または補助剤を含む場合がある。薬学的組成物は、皮下、筋肉内、粘膜、腹膜内、皮内、または他の経路から選択される経路によって投与される場合がある。
【0058】
本発明はまた、少なくとも1つのEBV遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドおよびEBV遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーターを含む、EBV遺伝子産物発現カセットを含む、非ウイルスベクターも対象とする。非ウイルスベクターは、物理的および化学的という2つの広範なカテゴリーに分割することができる。物理的方法は、プラスミドを取り入れ、電気穿孔、音波穿孔または粒子衝撃などの手段によりプラスミドを細胞内に強制的に挿入することを伴う。化学的方法は、DNAと錯体を作成し、粒子中に凝縮させ、細胞に向けることができる脂質、ポリマーまたはタンパク質を使用する。本明細書に記載のベクターは、「ネイキッド」DNAワクチンと呼ばれることがある。いくつかの実施形態において、EBV遺伝子産物は、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF、BGLF5、gp350、gp220、ならびにLMP1−lyt、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される。本発明はまた、上述のベクターを含む細胞を対象とする他、EBV遺伝子産物に対する免疫応答を産生する条件下で細胞を培養する方法であって、EBV遺伝子産物の発現に好適な条件下で細胞を成長させることを含む、方法も対象とする。
【0059】
本発明はまた、EBVワクチンに対する被験体の応答を確認する方法であって、EBV溶解遺伝子産物およびEBV潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのEBV遺伝子産物の存在をアッセイすることを含む、方法も対象とする。メモリーT細胞の予備は、図4に示す4量体染色によって、または4量体が特定のHLA型に利用できない場合はエリスポットアッセイによって、あるいはその他何らかのアッセイによって、ワクチン接種前および接種後に容易に測定することができる。
【実施例】
【0060】
(実施例1:致死性のEBV陽性悪性リンパ増殖症(EBV−LPD)のhu−PBL−SCIDマウスモデルがヒト移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)に極めて類似する)
重症複合免疫不全症(SCID)マウスに、血清学的EBV陽性の正常なヒトのドナーから採取した末梢血白血球(PBL)を腹腔内投与したところ、これらのマウス(hu−PBL−SCIDマウスモデル)の大多数に、ヒトB細胞を起源とする致死性のEBV−LPDがその後、自然発生的に発現した。EBV感染のコントロールにおいてはT細胞が重要な役割を果たしているため、本発明者等は、ヒトT細胞機能疾患が外因性hu−PBL−SCIDマウスモデルのEBV−LPDの原因となっているという仮説と、T細胞由来サイトカインの全身投与によりEBV−LPDに対する防御免疫が再構築されるという仮説を立てた。本発明者等は、hu−PBL−SCIDマウスに対して極めて低い用量(500国際単位)のポリエチレングリコール修飾組換えヒトインターロイキン2(PEG−IL−2)を毎日皮下投与することにより、致死性のEBV−LPDの発現を防止し、生存率をプラセボ投与群(20% P=0.0008)に比較して有意に改善することができる(78%)ことを示した。追加のリンパ球減少型試験の結果、マウスのナチュラルキラー細胞およびヒトCD8+ T細胞によりPEG−IL−2介在性防御作用に必要な細胞性免疫が誘導される一方、CD4+ T細胞が減少したヒト末梢血リンパ球を腹腔内投与しても、PEG−IL−2療法と併用した場合、有害作用はみられず、有用である可能性があることが示された。これらの初期のデータは、極低用量のPEG−IL−2療法により、hu−PBL−SCIDマウスにおいてEBV−LPDを来すヒトT細胞免疫不全を克服できることを初めて証明するものであり、EBV−LPDに対する細胞応答とサイトカイン療法の評価を目的とした本モデルが有用であることを初めて指摘するものであった(BaiocchiおよびCaligiuri,1994)。
【0061】
(実施例2:hu−PBL−SCIDマウスモデルから自然発生的に発現するヒト腫瘍の分子および細胞特性の検討)
引き続き本発明者等は、hu−PBL−SCIDマウスモデル(Baiocchiら,1995)から自然発生的に発現したヒト腫瘍の分子および細胞特性を広範に調べた。PTLDと同様に、腫瘍はモノクローナル(図2、レーン8、9)の場合もあれば、オリゴクローナル(レーン3)、またはポリクローナル(レーン2、7)の場合もある。ヒト腫瘍は、生存、成長およびT細胞免疫抑制因子として機能する、ヒトIL−10およびIL−6を大量に分泌する。腫瘍はいずれもウイルス型EBV DNAを統合し、また腫瘍はいずれも、ウイルス遺伝子発現のEBVIII型のPTLDに類似したパターンを示す。SCIDマウスはB細胞とT細胞を欠失しているが強力なナチュラルキラー細胞は保有している。マウスNK細胞が減少している場合、低用量IL−2を投与されたhu−PBL−SCIDマウスの80〜100%にEBV−LPDが発症する(BaiocchiおよびCaligiuri,1994)ため、本発明者等は、マウスNK細胞が減少したhu−PBL−SCIDマウスモデルを使用し、サイトカインのどのような併用が、マウスNK不全に取って代わるか、また、ヒト免疫細胞の移植だけを受けたキメラマウスを、致死性のEBV−LPDから防御できるか検討した。本発明者等は、低用量IL−2とGM−CSFの併用がこの防御機能を回復させることを発見した。さらに、これらのサイトカインの一方または両方の投与に無作為に割り付けたマウスのヒトT細胞要素の特性を慎重に調べたところ、IL−2とGM−CSFを投与したキメラマウスにおいて頑健なヒトT細胞が存在し、他の場合では存在しないことが明らかとなった。この存在の事実は、悪性EBV陽性B細胞の拡大がないことと関連していた。EBV溶解抗原および潜伏抗原の4量体染色を使用してヒトT細胞の特性を調べた結果、T細胞はインビボにおいてEBV潜伏抗原および溶解抗原(図3)の両方に対して応答していることが初めて示された(Baiocchiら,2001)。非感作のヒトPBLをSCIDマウスに移植した場合にこれらのヒト腫瘍が自然発生的に発現したことは留意する必要がある。したがって、本発明者等は、ヒトEBV特異的T細胞が、インビボにおいて、致死性のEBV−LPDの発現を効果的に調べる方法に関する最初の証拠を得た。
【0062】
(実施例3:EBV−LPDのhu−PBL−SCIDモデルによりPTLDにおける免疫応答を予期できる)
次に、本発明者等は、同様の免疫応答を確認するためにPTLDを有する腎移植患者を評価した。本発明者等は、1997年から2002年までの間に本発明者等の施設において、本発明者等が免疫抑制の標準的な緩和法および標準的な抗ウイルス療法として開発した方法を使用して、11例の連続する腎移植PTLD患者を治療した。その結果、91%の完全寛解率を達成し、82%が、持続期間中央値がほぼ4年に達する完全持続寛解を維持した。再発例1例は寛解にもどり3年間にわたり持続したため、91%が現在生存し、状態は良好である(Porcuら,2002)。本発明者等は、これが、これまでに報告された腎移植患者のPTLDに関する転帰データの中で最良のものであると確信している。さらに重要なことであるが、腫瘍退縮期に、本発明者等は4量体染色を使用して、治療が奏効しているPTLD患者に、EBV潜伏抗原およびEBV溶解抗原(RAK)の両方に対するCD8+ T細胞の応答が十分に存在することを示した。その応答は、実質的に本疾患のヒトSCIDマウスモデル(図4)でみられる応答と同じである。これらのデータは、本出願に記載する取組みの裏付けとなる2つの重要なポイントを提起している。第1に、EBV陽性PTLDを抑制する免疫応答を確立でき、容易に定量できることであり、疾患の回復が期待できること、第2に、この応答はEBV潜伏抗原とEBV溶解抗原の両方に対して特異性が高いCTL応答であることである。
【0063】
(実施例4:キメラマウス−ヒトモデルおよび患者で達成したインビボにおける発見)
PTLD発症の危険性は、末梢血におけるEBVゲノムのコピー数の増加と密接に相関しているため、溶解感染の活性化は実施可能であり、本疾患の発現において重要であることは明らかである。本発明者等の研究室において得られた発見により、PTLD腫瘍に溶解性遺伝子の発現がみられることが示された(Porcu,2002;Roychowdhury,2003)。本発明者等は、PTLD患者8例から採取した16個の別々の腫瘍を使用して、溶解性遺伝子産物BXLF1の発現の有無を調べた。BXLF1は、初期溶解サイクル遺伝子産物BZLF1(表1)によって正方向に調節されるウイルス型チミジンキナーゼ(vTK)である。すべての腫瘍でBXLF1転写の発現が認められ、溶解性遺伝子活性は実施可能であり、PTLD腫瘍で維持されていることが明確に示された(図5)。
【0064】
本発明者等は、いくつかの治療法を発見しており、その治療法により、PTLDの前臨床動物モデル(Baiocchi,1994;Baiocchi,2001;Roychowdhury,2003;Roychowdhury,2004)およびPTLD患者において、有望な結果が得られている(Roychowdhury,2003;Khatri,1997;Porcu,2002)。また、本発明者等は、EBV特異抗原に対するインビボT細胞応答の特性を調べたが、それはPTLDおよび他のEBV関連悪性疾患の防止を目的とした本特許(use patent)の基礎を形成するものである。ヒトPTLDのキメラマウス−ヒトモデルを使用して得たインビボでの発見(Baiocchi,2001)、また本発明者等が治療を行ったPTLD患者の免疫応答の観察期間におけるインビボでの発見(Porcu,2002)を利用して、本発明者等は、自然発生的に拡大する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、すなわちEBV特異的CTLが、PTLDを抑制できる時に反応するいくつかのEBV抗原を同定した。ヒトPTLDのキメラマウス−ヒト前臨床モデルを使用した試験において、本発明者等はEBV抗原特異的MHCクラスIペプチド負荷4量体を使用して、マウスに低用量のインターロイキン−2(IL−2)とGM−CSFを併用投与した時にみられる、溶解性BZLF1抗原と潜伏EBNA3C抗原を認識するEBV特異的CTLの拡大を記録した。プラセボ、またはIL−2もしくはGM−CSFのうちの1種類のみを投与された動物においては、EBNA3C特異的CTLまたはBZLF1特異的CTLは認められず、ヒトEBV陽性リンパ増殖性障害により死亡例が続いた。IL−2とGM−CSFを併用投与された動物においては、EBNA3C特異的CTLおよびBZLF−1特異的CTLの、有意かつ測定可能な拡大がみられ、ヒトEBV陽性リンパ増殖性障害の発現が防止された(Baiocchi,2001)。本発明者等は、特異的ペプチドを負荷した同じMHCクラスI4量体を使用して、EBV抗原特異的T細胞の拡大を記録することにより、PTLD患者のヒトCTLがBZLFタンパク質由来の免疫優勢決定ペプチドも認識していることを発見した(Porcu,2002)。BZLFは、EBVをコードする遺伝子の産物であり、初期溶解性感染の期間では排他的に発現している(図5)(Kieff,2001)。本発明者等は、潜伏タンパク質EBNA3C由来のペプチドを負荷した4量体を使用して、同じPTLD患者(図5)中にEBNA3C特異的CTLが自然発生的に拡大していることを発見した(Porcu,2002)。さらに重要なことであるが、PTLDを有する腎移植患者で免疫抑制療法を中止した後、BZLF1特異的CTL集団の拡大が起こり、その拡大は相当な期間持続し、直接的にEBV陽性腫瘍負荷の退縮と直接相関していた。CTL応答を持続できなかった患者1例においては、その後PTLDの再発がみられた(Porcu,2002)。また、腫瘍BZLF1タンパク質由来ペプチドが、効果的なT細胞免疫サーベイランスを維持する目的で、抗原提示細胞によって持続的あるいは断続的に提示されるということが、BZLF特異的CTLの存在が持続的(免疫抑制中止後720日まで)であることから示唆される。本特許の以下に述べるように、免疫原への持続的な暴露が有効であるという推測は、PTLD防止のためにワクチンを利用するという手法の根拠の1つとなっている。
【0065】
(実施例5:インビボにおける発見の臨床応用)
本発明者等が公表したインビボ試験の結果は、潜伏EBV遺伝子産物および溶解EBV遺伝子産物は複合免疫優性ペプチドを含む重要なタンパク質であり、抗原提示細胞により効果的に処理されて、PTLDなどの悪性疾患を含むEBV疾患に対して生体防御するために、抗原特異的な、初期およびメモリーCD4ヘルパー細胞およびCD8 CTLの応答を調整する。インビボにおけるEBNA3CおよびBZLF1特異的CTLの拡大、ならびに腫瘍退縮およびPTLD患者の生存率に密接な関係があるとすれば、全長EBV潜伏タンパク質および全長EBV溶解タンパク質は理想的な免疫原であり、固形臓器移植待機でPTLD発現の危険があるすべての患者にワクチン接種をするために利用できる。このような手法により、患者に免疫能があり、したがってメモリーT細胞の十分に大きな蓄積がある場合は、臓器移植の前に、潜伏および溶解性EBVタンパク質由来の内因性ペプチドに特異性を有するT細胞クローン(CD4およびCD8)を拡大させておくことが可能になるであろう。後者は、図5上に示す4量体染色によりワクチン接種の前後に簡単に測定できると考えられる。もし、特定のHLA型に対する4量体が入手できない場合は、エリスポットアッセイまたはIFNγを測定する他の方法(イントラセルラーフローサイトメトリー)を利用できる。この手法により、一次感染(小児患者)または再発感染(成人の95%)が発生した場合に、EBV特異的T細胞のインビボにおける急速な移動と拡大が可能になると考えられる。この手法により、医原性免疫抑制療法を受けている患者の、必ずしもすべてではないとしても大部分において、制御不能なエプスタインバーウイルス血症とその後のPTLDの発症に対する防御が可能になるはずである。このようなワクチン接種後もPTLDを発症する可能性のある患者については、ワクチン防御手法により、類似の同種移植片特異的CTL反応を起こさずに免疫抑制療法を適度に抑制すれば、初期で定量的な強固なEBV特異的CTL応答を誘導するはずである。同様にこの手法により、同種移植片の拒絶反応(あるいは幹細胞移植患者における移植片−宿主疾患)の発生率がかなり低い患者のPTLDも排除できるはずである(Porcu,2002)。なお、それと比較し、ワクチン接種をせずに、生命の危険があるPTLDの排除の目的で免疫抑制療法を緩和する患者の場合は、同種移植片の拒絶反応の発生率が高い。この同様の手法を、後天性、先天性または医原性(肝細胞または臓器移植以外)免疫抑制の患者を含む、EBV関連疾患の危険性がその他何らかの患者群に拡張することができると考えられる。
【0066】
異なるウイルスタンパク質由来ペプチドと特異的HLA型の間の関連性には制限があるため、潜伏EBV遺伝子産物と溶解EBV遺伝子産物由来の選択的ペプチドによる免疫では、比較的小規模の患者群に対する免疫優性抗原になってしまうと考えられる。例えば、BZLF1由来のRAKペプチドには、HLA A2ではなく、HLA B8患者のクラスI分子と連携して提示された時、免疫優性性がある。全長のEBV潜伏および溶解ポリペプチドまたはタンパク質を抗原処理ネットワークに与えることによりこの制限から逃れることができる。そのことにより、HLAクラスIおよびII分子のすべてではなくとも大部分の分子と連携することにより最適の提示が可能になる。患者は、より大きな分子の投与を受けた場合、全長のポリペプチドを処理し、特異的なHLAクラスIおよびII分子と連携して免疫優性ペプチドを処理することができる。ワクチン接種を目的とした、全長の潜伏および溶解EBVポリペプチド免疫原の送達は、免疫アジュバントに分散させた精製タンパク質の直接送達、または以下のデータで概説する組換えDNA技術により行うことができる。溶解ポリペプチドまたは潜伏ポリペプチドは、それぞれ1本では、抗原提示細胞による処理に続いて、すべてのHLA型に対して免疫優性ペプチドを提示するためには十分な大きさを有していない可能性があるため、次に述べるように、このワクチンのために少なくともそれぞれ2本の潜伏EBV遺伝子産物と溶解EBV遺伝子産物を開発する予定である。
【0067】
固形臓器移植におけるPTLDの防止を意図して、効果的な細胞性免疫を誘導するためにワクチンの形で全長EBV潜伏および溶解遺伝子産物を提供するというアイデアには新規性があり、本発明者と他の研究者によってなされた発見による裏付けがある。本発明者等が実施した、免疫抑制療法中止後のT細胞応答を検討するインビボ研究で検出されたEBNA3CおよびBZLF1特異的CTLに加えて、他の研究所は、EBV初期抗原複合体BMRF1、BHRF1、BORF2(Pothen,1991;Pothen,1993)およびgp340/350(Wallace,1991)に対して特異的なCD4とCD8の両方の応答、さらに潜伏遺伝子産物EBNA1(Paludan,2002)に対しても特異的なCD4とCD8の両方の応答があることを示した。したがって本発明者等はまず、次の全長ポリペプチド(あるいはポリペプチドをコードするDNA配列)の送達を提案する。それは、BZLFl、BMLFl、EBNAl、EBNA3AおよびEBNA3Cである。PTLD防止の方法としてワクチン接種を選択した場合、それぞれ少なくとも2つの潜伏および溶解免疫原を使用すれば、次の2つの理由により最適な防御を提供する。1)上記のように、HLA型が何であろうと、各個体は、潜伏および溶解ポリペプチド両方に関して提示される免疫優性ペプチドを有していることを保証している。2)CTL応答の非対称性を最小にし、そのため潜伏遺伝子産物のみを発現しているEBV形質転換クローンの発生を防止する。3)抗原特異的ThおよびTc応答の両方を促進する。この方法は、無制御溶解性複製とウイルス血症も防止すると考えられる。ワクチン接種後のEBV特異的CTLの拡大によって評価される、上記のポリペプチドの免疫原性を基に、本発明者等は、EBVにコードされた次に示す他のポリペプチドを送達するために同様の方法を適用することによって応答を改善することを提案する。それは、BZLFl、BHRFl、BHLFl、BALF2、BMLFl、BRLFl、BMRFl、BALF5、BARFl、BORF2、BCRFl、BKRF3、BDLF3、BILFl、BFRFl、BXLFl、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、LMPl−lyt、EBNAl、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMPl、LMP2A、LMP2B等である。
【0068】
(実施例6:ヒトPTLDの予防ワクチン)
腎移植PTLD患者11例のうち10例が現在生存しておりPTLDの再発は見られない一方、5例がT細胞介在性臓器拒絶反応により移植片を失い、再移植または透析が必要である。したがって、腎移植PTLDを管理するための優れた方法である本手法には2つの制限要因がある。第1に、これらPTLD患者の50%が移植腎を喪失したことは、致死性の悪性腫瘍の危険性を伴っている場合であっても、高率であり受け入れがたい。第2に、抗ウイルス療法を伴う免疫療法緩和の手法は、同種移植片拒絶反応が致死的である心臓、肺、肝または小腸などの他の固形臓器移植においては適用できない。したがって、代替法を考慮しなければならない。本発明者等が実施し、これまでに部分的に述べたキメラマウス−ヒト試験データおよびヒト試験データおよび他にO’Reilly等の群(Lacerdaら,1996b;Lucasら,1996)が公表したデータに基づいて、本発明者等は初めて、インビボにおける、EBV潜伏および溶解抗原に特異的なT細胞前駆細胞頻度は、免疫抑制療法の緩和の前にPTLDが発症する確率に比例する可能性が高く、さらに同様に免疫抑制の緩和後に起こるPTLDに対するEBV特異的免疫応答の頑健さにも比例する可能性が高いと仮定するに至った。第2に、本発明者等が予備的に実施したキメラマウス−ヒト試験データおよびヒト試験データは、標的にする必要がある抗原の種類に関して本発明者等が有力な証拠と信じるものを提供している。総合的に述べると、本発明者等が確信しているところによれば、固形臓器移植待機で移植後にPTLDのようなEBV関連合併症の危険性が高い、免疫能を有する患者におけるPTLD防止を目的とした、効果的なワクチンを開発するための包括的な手法であると正当に評価できる十分な証拠がある。この手法により、対応する抗原を認識するEBV特異的CTLの発生頻度が増加し、PTLDの危険性を減少させるか、除去するはずである。さらにPTLD発現の場合には、この移植前感作により、免疫抑制の緩和後に、さらに頑健で特異的な抗腫瘍応答に至るはずであり、そのことにより移植臓器の拒絶反応を防止できる可能性もある。
【0069】
(実施例7:rAAV2系ベクターの大規模生産)
(EBV溶解抗原BZLF1およびBMLF1のrAAV2発現カセットへの分子クローン化)
本発明者等は、EBV陽性リンパ芽球細胞株B95.8およびC7M3からそれぞれ得られたEBV溶解BZLF1およびBMLF1全長cDNAをPCRで増幅し、これらの断片をrAAV2系発現カセット(図6)に分子クローン化した。rAAV2/BZLF1クローンおよびrAAV2/BMLF1クローンは制限酵素分解とDNA配列解析法を使用して正確に同定した。同様の技術を使用して3つの潜伏EBV rAAV2/EBNA1、rAAV2/EBNA3AおよびrAAV2/EBNA3Cクローンを作製し、品質を確認した。
【0070】
(rAAV2/BZLFl、BMLFlウイルスDNA複製および導入遺伝子発現の解析)
本発明者等は、標準的方法を使用して、rAAV2/BZLFlおよびrAAV2/BMLFl(図7A単量体〔MF〕)および二量体〔DF〕))の複製およびパッケージングが順調に進行していることを示した。BZLF1導入遺伝子発現を図7Bに示す。レーン3はクローン4rAAV/BZLFである。レーン1は分子量標準であり、レーン2はHeLa細胞(陰性対照)である。
【0071】
(HeLa由来プロデューサー細胞株の産生およびrAAV2/BZLFl、BMLFlの大規模生産)
機能性プラスミドを形質移入し、平板培養し、採取し、さらに96ウェルプレートに移した。個々のクローンをドットブロットハイブリダイゼーションにより選別し、最適なプロデューサー細胞株(1細胞当たり5000 rAAVベクター超)を定量的リアルタイムPCRにより同定し、DNase抵抗性粒子(DNase−Resistant−Particles 〔DRP〕)(DRP数/細胞)を得た。大規模製造後のrAAVベクターの純度をSDS−PAGE SYPROオレンジ蛍光染色法により検査したところ、3種のウイルスカプシドタンパク質(図8、VP1:VP2:VP3=1:1:10)の存在が示された。
【0072】
本発明者等は次にrAAV2/BZLF1の異なるDRPを293T細胞に形質導入し、その後、図9に示すように免疫蛍光法とウェスタンブロット法を使用してBZLF1タンパク質発現を解析した。これらのデータは、rAAV2/BZLF1には、293T細胞に対して用量依存的に形質導入する能力があることを示すものである。以上の結果本発明者等は、EBV溶解抗原BZLF1およびBMLF1を担持するrAAV2ベクターを大量に生産することに成功し、これらのベクターにより、インビトロで効果的に細胞への形質導入ができることを示した。
【0073】
ワクチンプロトコールを成功させるために不可欠な事項は、設計したベクターが、特殊に分化した抗原提示細胞(APC)、すなわち樹状細胞(DC)に抗原を運ぶ能力を有し、その結果強力な細胞免疫応答を効果的に誘導するかどうかである(Shulerら,2003)。本発明者等は次に、rAAV2/GFPによるヒト単球由来DCの感染はインビトロ分化プロセスの1日目にピークに達したこと(−7%、データ未掲載)、そしてこの感染プロセスはDCの成熟に変化をもたらすものではなく、未感染および偽感染対照の場合と異なっていることを示した(データ未掲載)。
【0074】
(実施例8:EBV潜伏抗原EBNA1、EBNA3AおよびEBNA3CのrAAV2系発現カセットへの分子クローン化)
同様の方法を使用して本発明者等は、EBV潜伏抗原EBNA1、EBNA3AおよびEBNA3Cの全長cDNAをrAAV2ベクターにクローン化した(図6)。既に図7に示し、さらに図10に示すように、rAAV2の典型的なMFおよびDF複製型が検出されており、そのことはEBV潜伏抗原EBNA1、EBNA3AおよびEBNA3Cを含むrAAVベクターの複製とパッケージングが順調に進行したことを示している。
【0075】
(実施例9:rAAV2/BZLF1を形質導入した樹状細胞(DC)と自家ヒトPBMCの共培養によるEBV特異的CD8+ CTLのインビトロ拡大)
全長rAAV−EBV導入遺伝子タンパク質の免疫原性を評価するために、本発明者等は、標的抗原提示細胞(APC)に発現したrAAV−BZLF1由来タンパク質がメモリーEBV特異的T細胞の拡大を誘導できるかどうかを試験した。そのために、APCとしてヒト末梢血単核細胞(PBMC)由来DC、およびEBV血清学的陽性ドナーから採取した自己PBMCを使用した。EBV特異的メモリーT細胞は、放射線照射自己EBV形質導入リンパ芽球様細胞株(LCL)の存在下で培養すると、EBV血清学的陽性ドナー由来のPBMCから拡大し、その拡大には再現性がみられた。その代わりに、EBVタンパク質由来の免疫優性ペプチドに専門的なAPC(DC)を適用することもできる。本発明者等は、rAAV−BZLF1ビリオンはヒトDCに感染することができ、その結果、全長BZLF1タンパク質が発現して、DCの抗原処理機序がMHCクラスIおよびIIを介してペプチドを提示することができるようになる。この後者のシナリオは、APCとしてDCを使用しているが、rAAV導入遺伝子ワクチン製剤の、抗原特異的メモリーT細胞を活性化して拡大させる効果を調べる「最良の事例シナリオ」である。
【0076】
本発明者等は、インビトロにおけるBZLF1特異的CD8+ T細胞の拡大のためのプロトコルを開発した(図11)。第III群と第IV群に関して、本発明者等は、rAAV−BZLF1存在下PBMC由来DC(ドナー147から)または対照rAAAV−GFPウイルス(1010粒子、分化プロセス1日目に添加)を調製した。他の対照群は、既に公表したプロトコルに基づいて調製した。7日目と14日目に細胞を採取し、CD3、CD8、EBV−RAKクラスI4量体併用染色を使用したフローサイトメトリーで解析した。RAK4量体は、BZLF1溶解抗原を認識するCD8+ T細胞表面のTCRに特異的である(Baiocchiら,2001;Porcuら,2002;RickinsonおよびKieff,2001)。図12下段に示すように、本発明者等は、陰性対照群(第II群および第IV群)および陽性対照群(第I群および第V群)に比べ、rAAV2/BZLF1感染DC(第III群、下段、矢印)が、BZLF1に対する頑健なCD8+ T細胞応答を誘導することを示した。図12上段は、各群についての非反応性ペプチド4量体によるバックグラウンド染色を示す。全長BZLF1ポリペプチドに、抗原提示細胞(APC)によって処理され提示された場合に免疫原性があるかどうか調べるために、本発明者等は、全長BZLF1タンパク質を合成・精製し、インビトロ実験に使用した。図13は、全長BZLF1タンパク質に、CD3/CD8+ T細胞を拡大させる能力があったことを示している。なお、CD3/CD8+ T細胞は、HLAB8の例(A)について定義した免疫優性ペプチド(RAK)に特異的な抗原である。拡大したCD3/CD8+ T細胞にエフェクター様機能の能力があるかどうか調べるために、この細胞集団が、全長BZLF1または対照BSAタンパク質のいずれかによる刺激の後に、IFN−ガンマ(IFNγ)を産生できるかどうかを調べた。(B)のように、対照BSAタンパク質に比べ、BZLF1で刺激した場合に、4倍以上のIFNγ陽性CD8+ T細胞を検出した。本発明者等が使用した4量体は抗原特異的T細胞を検出するための有用なバイオマーカーであるが、免疫優性ペプチドを定義する特殊なドナーの場合に限られるため、すべてのドナーを調べる目的で使用できないドナーの多くは、EBVタンパク質由来の免疫優性ペプチドと関連がないHLA対立遺伝子を有している。したがって本発明者等は、全長EBVポリペプチド由来のエピトープに応答できるT細胞の拡大を示すバイオマーカーとして、IFNγの使用を選択した。(C)にみられるように、HLAA2例から得られたドナーPBMCは、全長BZLF1に応答してT細胞を拡大させ、対照BSAに比べて2倍量以上のIFNγを産生した。これらのデータは、全長EBVポリペプチドは、未同定で免疫原性がある多くのペプチドを含んでおり、このようなポリペプチドは複数のHLA型を有する個体のAPCにより処理され、T細胞応答(IFNγで測定)を誘導することが可能であるということを支持するものである。全長BZLF1ポリペプチドは、HLA型またはBZLF1由来の既知/定義済の免疫優性ペプチドと無関係にT細胞応答を誘導ことができる。
【0077】
(実施例10:EBV−LPDに対する感受性およびPTLDに対する感受性)
血清学的EBV陽性の正常な個体から得られるPBLにより、hu−PBL−SCIDマウスモデルに自然発生的なヒトEBV−LPDを発現させることができる一方、必ずしもすべてのドナーが同程度の効率を示すわけではない。実際に、正常なドナーの間には成功度合に極めて広い分布がみられる(すなわち、12匹のマウスに投与後0%〜100%のEBV−LPD)。また、固形臓器移植患者の大多数はPTLDを発症しない。T細胞前駆細胞頻度がこのような1つの危険因子であるように思われる(Lacerdaら,1996a;Mackinnonら,1995)。一方、本発明者等は、対象を変えて研究を行った。本発明者等は、サイトカイン遺伝子型がEBV−LPDの発現と関連しているという仮説を立てた。IRB承認を得て、本発明者等は、HLA型を判定した正常で血清学的EBV陽性のドナーの広範な一覧を作成し、本発明者等の仮説を検討した(このドナー一覧は下記に概要を示した研究に関して利用可能)。本発明者等の所見によれば、hu−PBL−SCIDマウスに、急速で高浸透度のEBV−LPDを誘導するPBLにおいて、IFNG塩基+874に対するA/A(アデノシン/アデノシン)遺伝子型が認められる率が高く、その高さの程度は、進展が遅く低浸透度のLPDを誘導するPBL、あるいは誘導しないPBLに比べると有意であった。遺伝子型と細胞溶解性Tリンパ球(CTL)機能の間の関係を調べると、形質転換増殖因子β(TGF−β)が、IFNγ塩基+874位にアデノシンを有するPBL内のCTLの再刺激を妨害する一方、チミジンに関してホモ接合型のPBLにおいては妨害がみられなかった。A/A遺伝子型PBLを注入したhu−PBL−SCIDマウスにおいてTGFβを中和すると、LPD発現が抑制され、ヒトCD8+ CTLの拡大がみられるようになった。したがって、本発明者のデータは、TGFβが、CTL再刺激と拡大(Dierksheideら,2005)を妨害することにより、腫瘍発現を促進する恐れがあることを示した。これは、本発明者のワクチン手法の進捗状況の中で臨床的意味を有している。ヒト化中和抗TGFβ抗体が現在開発されつつあることがそのことを証明している。臓器移植受容者に関する現在進行中の遺伝子型解析データにより、PTLDの危険性が高い臓器移植受容者を判別するため、また、本提案で焦点を当てた防御策を開発するために、IFN−7遺伝子型が重要な情報となる可能性があることが示されている。
【0078】
【表1−1】
【0079】
【表1−2】
【0080】
【表1−3】
【0081】
【表1−4】
【0082】
【表1−5】
【0083】
【表1−6】
【0084】
【表1−7】
【0085】
【表1−8】
【0086】
【表1−9】
【0087】
【表1−10】
【0088】
【表1−11】
【0089】
【表1−12】
【0090】
【表1−13】
【0091】
【表1−14】
【0092】
【表1−15】
【0093】
【表1−16】
【0094】
【表1−17】
【0095】
【表1−18】
【0096】
【表1−19】
【0097】
【表1−20】
【0098】
【表1−21】
【0099】
【表1−22】
【0100】
【表1−23】
【0101】
【表1−24】
【0102】
【表1−25】
【0103】
【表1−26】
【0104】
【表1−27】
【0105】
【表1−28】
【0106】
【表1−29】
【0107】
【表1−30】
【0108】
【表1−31】
【0109】
【表1−32】
【0110】
【表1−33】
【0111】
【表1−34】
【0112】
【表1−35】
【0113】
【表1−36】
【0114】
【表1−37】
【0115】
【表1−38】
【0116】
【表1−39】
【0117】
【表1−40】
【0118】
【表1−41】
【0119】
【表1−42】
【0120】
【表1−43】
【0121】
【表1−44】
【0122】
【表1−45】
【0123】
【表1−46】
【0124】
【表1−47】
【0125】
【表1−48】
【0126】
【表1−49】
【0127】
【表1−50】
【0128】
【表1−51】
【0129】
【表1−52】
【0130】
【表1−53】
【0131】
【表1−54】
【0132】
【表1−55】
【0133】
【表1−56】
【0134】
【表1−57】
【0135】
【表1−58】
【0136】
【表1−59】
【0137】
【表1−60】
【0138】
【表1−61】
【0139】
【表1−62】
【0140】
【表1−63】
【0141】
【表1−64】
【0142】
【表1−65】
【0143】
【表1−66】
【0144】
【表1−67】
【0145】
【表1−68】
【0146】
【表1−69】
【0147】
【表1−70】
【0148】
【表1−71】
【0149】
【表1−72】
【0150】
【表1−73】
【0151】
【表1−74】
【0152】
【表1−75】
【0153】
【表1−76】
【0154】
【表1−77】
【0155】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、EBVの遺伝子発現プロファイルおよび関連する病理を示す。EBVはCD21を介して、鼻咽腔上皮細胞および休止期Bリンパ球に感染する。一次感染(および伝染性単核球症)は、溶解(ビリオン産生)および潜伏遺伝子プログラムに関与する。抗原特異的T細胞は、一次(および再発)感染を制御し、結果としてウイルス複製(溶菌サイクル)の抑制、リンパ芽球の増殖(III型潜伏)、および休止期の潜伏段階の確立(I型潜伏)を実現する。免疫抑制(IS、臓器移植、AIDS、先天性IS)を伴う患者は、I型潜伏感染の再活性化のリスクがあり、III型潜伏遺伝子発現プロファイルを有する複製(溶解)または増殖が活発化しているEBV形質転換リンパ芽球へと移行するリスクがある。重要なIII型潜伏遺伝子は、それぞれ構成細胞においてbcl2を発現させ、NFkBおよび自己分泌生存および増殖経路を活性化させる。
【図2】図2は、Ig遺伝子再構成を示すhu−PBL−SCIDマウス10例から得た10個のEBV腫瘍のサザンブロット分析を示す。レーン1、2および4はポリクローナルであり、レーン3、5、6、7および10はオリゴクローナルであり、レーン8および9はモノクローナルである。EBVゲノムの末端反復セグメントがプローブされたサザンブロットでは、モノクローナル腫瘍がEBVゲノム(潜伏、エピソーム)の1コピーを有するのに対して、ポリクローナルおよびオリゴクローナル腫瘍は潜伏エピソームおよび複数の直鎖(複製)を有する。
【図3】図3は、IL−2(またはGM−CSF)単独ではなく、GM−CSFとIL−2の併用療法が、溶解(BのBZLFまたはRAK)および潜伏(EBNA3Aは示さず)の両EBV抗原への頑健なヒトCD8陽性T細胞の拡大(A)を引き起こすことを示す。IL−2単独に対する反応(C、D)は著明ではない。
【図4】図4は、EBV溶解遺伝子産物であるBZLF1由来のRAKペプチドをHLA四量体に負荷したHLA−B8陽性患者2例におけるEBV特異的CTLの定量を示す。HLA−B8陽性患者2例に由来する連続PBMC試料を、APC抱合MHC/ペプチド四量体によるフローサイトメトリーで分析した。代表的な結果は、EBV前初期遺伝子BZLF−1由来のRAKFKQLLペプチド(HLA−B8/RAK)を含むHLA−B8四量体により、3つの時点で得たものである。リンパ球ゲートで起こるCD3陽性事象を青色で示す。CD8陽性HLA−B8/RAK陽性事象の比率を、各プロットの右上四分円に示す。
【図5】図5は、代表的なPTLD腫瘍試料におけるvTK発現のインサイチュ(IS)RT−PCR解析を示す。(A)腫瘍生検のH&E染色で、非定型大リンパ球の瀰漫性の浸潤を認める。(B)EBER−1およびEBER−2 mRNAのIS−RT−PCRによる検出。視野内のリンパ腫細胞の大半は、これらの大量のEBV転写産物の発現に対し陽性であり、EBVの存在が確認される。(C)溶解EBV遺伝子産物、ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)mRNA(BXLF1 ORF)のIS−RT−PCR解析。ウイルスTKの発現が、EBER−1およびEBER−2を発現する細胞と同等の多数のリンパ腫細胞に認められる。(D)vTK mRNAのIS−RT−PCR解析後におけるRNaseの分解により、図Cに存在するシグナルがRNAに基づくことが示される。[Porcu,2002 #394]より。
【図6】図6は、野生型AAV2および5 rAAV導入遺伝子ワクチン構築物の遺伝子組成を示す。すべての導入遺伝子構築物は、標準的なCMVプロモーターで構成的に駆動された全長EBV遺伝子産物cDNA(上)を含み、終止コドンの次にポリAテイル(pA)を含む。rAAV導入遺伝子構築物内に存在する他の要素は、neo抵抗遺伝子であるAAV repおよびAAV cap遺伝子を含み、いずれも内部プロモーターにより駆動する。この他の対照ベクターは、βガラクトシダーゼおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする。
【図7】図7は、rAAV2導入遺伝子の複製および発現を示す。A:サザンブロット;B:抗BZLFウェスタンブロット。レーン1:ヒーラー細胞溶解物;レーン2:ヒーラー−rAAV−BZLF1溶解物。
【図8】図8は、精製rAAV2ベクターのSYPROオレンジ染色を示す。
【図9】図9は、293T細胞へのrAAV2/BZLF1の形質導入を示す。上部:免疫蛍光によるBZLF1発現量の定量;下部:ウェスタンブロットによるBZLF1発現量の定量。DRPs=DNA分解酵素抵抗粒子/細胞(テキスト参照)。
【図10】図10は、rAAV2/EBV潜伏抗原の複製を明らかにするサザンブロットを示す。
【図11】図11は、EBV特異的CD8陽性Tリンパ球のインビトロにおける拡大培養結果を示す。
【図12】図12は、rAAV2/BZLF−1に感染させたヒト自家移植APCとともに14日間インビトロで拡大培養したEBV特異的CD8陽性CTLのフローサイトメトリー解析結果を示す。Y軸はcntl(上)またはBZLF(RAK、下)四量体を表し、X軸はCD8陽性T細胞を表す。
【図13A】図13A〜13Cは、全長BZLF1ポリペプチドが、HLA型またはBZLF1由来の既知/規定の免疫優性ペプチドに依存しないT細胞の反応を誘導することができることを示す。(A)対照タンパク質(BSA)またはBZLF1タンパク質のいずれかに適用される自家移植樹状細胞/抗原提示細胞(APC)に応答するHLAB8ドナー[147]末梢血単核球(PBMC)。7日後、バイオマーカーとしてRAKペプチドを負荷したHLAB8四量体を使用すると、単一の規定の免疫優性ペプチドRAKを認識する抗原特異的T細胞の拡大が認められる。左図は、対照のミスマッチ四量体(HLAB8−FLR)である。中央図は、対照BSAタンパク質で刺激されたPBMCの四量体染色背景を示す。右図はインビトロで拡大したHLAB8−RAK四量体特異的CD8陽性T細胞を示す。
【図13B】図13A〜13Cは、全長BZLF1ポリペプチドが、HLA型またはBZLF1由来の既知/規定の免疫優性ペプチドに依存しないT細胞の反応を誘導することができることを示す。(B)全長BZLFまたは対照タンパク質に適用された自家移植樹状細胞APCの存在下で平板培養したHLAB8ドナー147由来のPBMC。12日間の培養後、(対照BSAに比べた)全長BZLF1タンパク質に反応するIFNガンマ(IFNγ)シグナルの量は、ICフローの測定によると約4倍に増加した。HLAB8ドナーに対する、BZLF由来の規定された免疫優性ペプチド(RAK)は現在のところただ1つである。
【図13C】図13A〜13Cは、全長BZLF1ポリペプチドが、HLA型またはBZLF1由来の既知/規定の免疫優性ペプチドに依存しないT細胞の反応を誘導することができることを示す。(C)全長BZLFまたはBSA対照タンパク質に適用された自家移植DC APCの存在下で個々に平板培養したHLAA2由来のPBMC。12日間の培養後、(対照BSAに比べて)全長BZLF1タンパク質に反応して拡大したCD8陽性T細胞(フローサイトメトリーでは示さず)が産生するIFNγシグナルの量は、ICフローの測定によると約2倍増加している。HLAA2ドナーに対するBZLF由来の免疫優性ペプチドは報告されていないが、HLAA2 APCは全長BZLF1ポリペプチドを処理することができ、かつエフェクター機能とともにT細胞の細胞活性化を引き起こす抗原認識を示すサイトカイン反応を駆動する免疫原性ペプチドを提示することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導するための方法であって、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物を該被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのウイルス遺伝子産物が、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスが、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8から選択されるヒトヘルペスウイルスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスが、エプスタインバーウイルスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エプスタインバーウイルスが、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのウイルス遺伝子産物が、表1に列挙する遺伝子産物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶解遺伝子産物が、BZLF1およびBMLF1から選択され、前記潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1であり、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA3Cである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を投与する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルス関連疾患が、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍性疾患が、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞およびT/NK細胞リンパ腫から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リンパ増殖性障害が、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および医原性免疫不全により生じる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リンパ増殖性障害が、移植後リンパ増殖性疾患である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体が、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス関連疾患であると診断されている、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体が診断された前記腫瘍性疾患が、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、B細胞非ホジキンリンパ腫、ならびに末梢T細胞リンパ腫から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体が診断された前記リンパ増殖性障害が、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および医原性免疫不全により引き起こされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体が、移植後リンパ増殖性疾患であると診断されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
投与する工程が、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択されるエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することによって行われ、該エプスタインバーウイルス遺伝子産物が、調節エレメントに作動可能に結合されている、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列が、BZLF1コード配列、BHRF1コード配列、BHLF1コード配列、BALF2コード配列、BMLF1コード配列、BRLF1コード配列、BMRF1コード配列、BALF5コード配列、BARF1コード配列、BORF2コード配列、BCRF1コード配列、BKRF3コード配列、BDLF3コード配列、BILF1コード配列、BFRF1コード配列、BXLF1コード配列、BGLF4コード配列、BGLF5コード配列、gp350コード配列、gp220コード配列、LMP1−lytコード配列、EBNA1コード配列、EBNA2コード配列、EBNA3Aコード配列、EBNA3Bコード配列、EBNA3Cコード配列、EBNA−LPコード配列、LMP1コード配列、LMP2Aコード配列、およびLMP2Bコード配列から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与する工程が、被験体において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む免疫原組成物を導入することによって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物および前記少なくとも1つのエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、結合されている、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルス遺伝子産物が、皮下経路、筋肉内経路、粘膜経路、腹膜内経路、または皮内経路から選択される経路によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つのウイルス遺伝子産物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する被験体の免疫応答を誘導するための薬学的組成物。
【請求項26】
前記ウイルス遺伝子産物が、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記ウイルスが、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8から選択されるヒトヘルペスウイルスである、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記ウイルスが、エプスタインバーウイルスである、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記エプスタインバーウイルスが、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1つのウイルス遺伝子産物が、表1に列挙する遺伝子産物から選択される、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記溶解遺伝子産物が、BZLF1およびBMLF1から選択され、前記潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択される、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1であり、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA3Cである、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記賦形剤が、水、塩、緩衝剤、炭水化物、可溶化剤、プロテアーゼインヒビター、および乾燥粉末処方剤から選択される、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記薬学的組成物が、少なくとも1つの補助剤をさらに含む、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記補助剤が、フロイントアジュバント、油中水型エマルジョン、鉱油、顆粒白血球/マクロファージコロニー刺激因子、およびインターロイキン2から選択される、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記薬学的組成物が、少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記薬学的組成物が、少なくとも3つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む、請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および
エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーター;
を含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、ウイルスベクター。
【請求項40】
前記エプスタインバーウイルスが、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項41】
前記少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物が、表1に列挙する遺伝子産物から選択される、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項42】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される、請求項41に記載のウイルスベクター。
【請求項43】
前記溶解遺伝子産物が、BZLF1およびBMLF1から選択され、前記潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択される、請求項42に記載のウイルスベクター。
【請求項44】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1であり、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA3Cである、請求項43に記載のウイルスベクター。
【請求項45】
前記ベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項46】
請求項45に記載のアデノウイルスベクターを含む、組換えアデノ随伴ウイルス。
【請求項47】
請求項45に記載のアデノウイルスベクターを含むアデノウイルス部分;および
プラスミド部分;
を含む、プラスミド。
【請求項48】
請求項39に記載のウイルスベクターを含む、哺乳動物細胞。
【請求項49】
エプスタインバーウイルス遺伝子産物に対する免疫応答を産生する条件下において、請求項48に記載の少なくとも1つの哺乳動物細胞を培養する方法であって、該方法が、
該エプスタインバーウイルス遺伝子産物の発現に好適な条件下において細胞を増殖させる工程;
を含む、方法。
【請求項50】
請求項39に記載のウイルスベクターを含むウイルス部分;および
プラスミド部分;
を含む、プラスミド。
【請求項51】
少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項52】
少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および
該エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーター;
を含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連腫瘍性疾患に対する免疫応答を産生するためのウイルスベクター薬学的組成物。
【請求項53】
少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および
該エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーター;
を含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連腫瘍性疾患に対する免疫応答を産生するためのアデノウイルスベクター薬学的組成物。
【請求項54】
エプスタインバーウイルスワクチンに対する被験体の応答を確認する方法であって、
エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物の存在をアッセイする工程;
を含む、方法。
【請求項55】
被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導するための方法であって、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、LMP1−lyt、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物またはエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物と組み合わせて、EBNA1を該被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項56】
BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、LMP1−lyt、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物またはエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物と組み合わせてEBNA1を含む、被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導するためのワクチンであって、該ワクチンが、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、ワクチン。
【請求項1】
被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導するための方法であって、少なくとも1つのウイルス遺伝子産物を該被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのウイルス遺伝子産物が、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスが、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8から選択されるヒトヘルペスウイルスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスが、エプスタインバーウイルスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エプスタインバーウイルスが、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのウイルス遺伝子産物が、表1に列挙する遺伝子産物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶解遺伝子産物が、BZLF1およびBMLF1から選択され、前記潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1であり、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA3Cである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を投与する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルス関連疾患が、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍性疾患が、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、B細胞非ホジキンリンパ腫、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、ならびに末梢T細胞およびT/NK細胞リンパ腫から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リンパ増殖性障害が、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および医原性免疫不全により生じる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リンパ増殖性障害が、移植後リンパ増殖性疾患である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体が、腫瘍性疾患、伝染性単核球症、血球貪食症候群、腎細胞尿細管炎、および肝炎から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス関連疾患であると診断されている、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体が診断された前記腫瘍性疾患が、リンパ増殖性障害、バーキットリンパ腫、ホジキン病、胃粘膜および鼻咽頭粘膜の上皮癌腫、未分化型鼻咽頭癌、B細胞非ホジキンリンパ腫、ならびに末梢T細胞リンパ腫から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体が診断された前記リンパ増殖性障害が、先天性免疫不全、後天性免疫不全、および医原性免疫不全により引き起こされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体が、移植後リンパ増殖性疾患であると診断されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
投与する工程が、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択されるエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入することによって行われ、該エプスタインバーウイルス遺伝子産物が、調節エレメントに作動可能に結合されている、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードする前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記全長エプスタインバーウイルスcDNAコード配列が、BZLF1コード配列、BHRF1コード配列、BHLF1コード配列、BALF2コード配列、BMLF1コード配列、BRLF1コード配列、BMRF1コード配列、BALF5コード配列、BARF1コード配列、BORF2コード配列、BCRF1コード配列、BKRF3コード配列、BDLF3コード配列、BILF1コード配列、BFRF1コード配列、BXLF1コード配列、BGLF4コード配列、BGLF5コード配列、gp350コード配列、gp220コード配列、LMP1−lytコード配列、EBNA1コード配列、EBNA2コード配列、EBNA3Aコード配列、EBNA3Bコード配列、EBNA3Cコード配列、EBNA−LPコード配列、LMP1コード配列、LMP2Aコード配列、およびLMP2Bコード配列から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与する工程が、被験体において、エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む免疫原組成物を導入することによって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物および前記少なくとも1つのエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、結合されている、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルス遺伝子産物が、皮下経路、筋肉内経路、粘膜経路、腹膜内経路、または皮内経路から選択される経路によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つのウイルス遺伝子産物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する被験体の免疫応答を誘導するための薬学的組成物。
【請求項26】
前記ウイルス遺伝子産物が、ウイルス溶解遺伝子産物およびウイルス潜伏遺伝子産物から選択される、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記ウイルスが、HHV−1(単純ヘルペスウイルス1型)、HHV−2(単純ヘルペスウイルス2型)、HHV−3(水痘帯状疱疹ウイルス)、HHV−4(エプスタインバーウイルス)、HHV−5(サイトメガロウイルス)、HHV−6、HHV−7、およびHHV−8から選択されるヒトヘルペスウイルスである、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記ウイルスが、エプスタインバーウイルスである、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記エプスタインバーウイルスが、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1つのウイルス遺伝子産物が、表1に列挙する遺伝子産物から選択される、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記溶解遺伝子産物が、BZLF1およびBMLF1から選択され、前記潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択される、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1であり、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA3Cである、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記賦形剤が、水、塩、緩衝剤、炭水化物、可溶化剤、プロテアーゼインヒビター、および乾燥粉末処方剤から選択される、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記薬学的組成物が、少なくとも1つの補助剤をさらに含む、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記補助剤が、フロイントアジュバント、油中水型エマルジョン、鉱油、顆粒白血球/マクロファージコロニー刺激因子、およびインターロイキン2から選択される、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
前記薬学的組成物が、少なくとも2つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記薬学的組成物が、少なくとも3つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物を含む、請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および
エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーター;
を含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、ウイルスベクター。
【請求項40】
前記エプスタインバーウイルスが、1型、2型、SiIIA、A4、TSB−B6、ap876、p3hr1、b95.8、cao、raji、およびdaudiから選択される株である、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項41】
前記少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物が、表1に列挙する遺伝子産物から選択される、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項42】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、およびLMP1−lytから選択され、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される、請求項41に記載のウイルスベクター。
【請求項43】
前記溶解遺伝子産物が、BZLF1およびBMLF1から選択され、前記潜伏遺伝子産物が、EBNA1、EBNA3A、およびEBNA3Cから選択される、請求項42に記載のウイルスベクター。
【請求項44】
前記エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物が、BZLF1であり、前記エプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物が、EBNA3Cである、請求項43に記載のウイルスベクター。
【請求項45】
前記ベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項46】
請求項45に記載のアデノウイルスベクターを含む、組換えアデノ随伴ウイルス。
【請求項47】
請求項45に記載のアデノウイルスベクターを含むアデノウイルス部分;および
プラスミド部分;
を含む、プラスミド。
【請求項48】
請求項39に記載のウイルスベクターを含む、哺乳動物細胞。
【請求項49】
エプスタインバーウイルス遺伝子産物に対する免疫応答を産生する条件下において、請求項48に記載の少なくとも1つの哺乳動物細胞を培養する方法であって、該方法が、
該エプスタインバーウイルス遺伝子産物の発現に好適な条件下において細胞を増殖させる工程;
を含む、方法。
【請求項50】
請求項39に記載のウイルスベクターを含むウイルス部分;および
プラスミド部分;
を含む、プラスミド。
【請求項51】
少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項52】
少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および
該エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーター;
を含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連腫瘍性疾患に対する免疫応答を産生するためのウイルスベクター薬学的組成物。
【請求項53】
少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチド;および
該エプスタインバーウイルス遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されている異種プロモーター;
を含むエプスタインバーウイルス遺伝子産物発現カセットを含む、エプスタインバーウイルス関連腫瘍性疾患に対する免疫応答を産生するためのアデノウイルスベクター薬学的組成物。
【請求項54】
エプスタインバーウイルスワクチンに対する被験体の応答を確認する方法であって、
エプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物およびエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物から選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス遺伝子産物の存在をアッセイする工程;
を含む、方法。
【請求項55】
被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導するための方法であって、BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、LMP1−lyt、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物またはエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物と組み合わせて、EBNA1を該被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項56】
BZLF1、BHRF1、BHLF1、BALF2、BMLF1、BRLF1、BMRF1、BALF5、BARF1、BORF2、BCRF1、BKRF3、BDLF3、BILF1、BFRF1、BXLF1、BGLF4、BGLF5、gp350、gp220、LMP1−lyt、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、EBNA−LP、LMP1、LMP2A、およびLMP2Bから選択される少なくとも1つのエプスタインバーウイルス溶解遺伝子産物またはエプスタインバーウイルス潜伏遺伝子産物と組み合わせてEBNA1を含む、被験体における少なくとも1つのウイルス関連疾患に対する免疫応答を誘導するためのワクチンであって、該ワクチンが、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、ワクチン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【公表番号】特表2009−519229(P2009−519229A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541493(P2008−541493)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/061062
【国際公開番号】WO2007/097820
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504325287)ザ オハイオ ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/061062
【国際公開番号】WO2007/097820
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504325287)ザ オハイオ ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (24)
【Fターム(参考)】
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