説明

ウイング車のウイング開閉装置

【課題】ウイング車に設けられたウイングの開閉操作の安全性を高める。
【解決手段】
ウイング車の左側と右側のウイングはそれぞれ油圧シリンダにより開閉駆動される。油圧シリンダは、電動モータ41により駆動される油圧ポンプから吐出される作動油により駆動される。左側上昇スイッチ33aが操作されると、油圧シリンダにより左側ウイングが上昇移動し、右側上昇スイッチ33bが操作されると、油圧シリンダにより右側ウイングが上昇移動する。左側モータ駆動回路51aと右側モータ駆動回路51bは、電源切換リレー45を介してモータスイッチ駆動コイル43に接続されており、両方のモータ駆動回路51a,51bは電源切換リレー45により分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は左右のウイングにより荷物収納用の箱体が形成されるウイング車のウイング開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックの荷台に搭載される箱体やトレーラに牽引されるトレーラに搭載される箱体には、左右のウイングが上下動自在となったウイング車がある。例えば、特許文献1には、トラックの荷台に箱体が搭載されるトラックタイプのウイング車が記載されており、箱体はトラックの荷台床材の先端部に設けられた前壁と後端部に設けられた後壁との間に取り付けられた支持梁に開閉自在に装着される左右のウイングを有している。さらに、例えば、特許文献2には、トレーラに搭載されるトレーラタイプのウイング車が記載されており、箱体は支持脚が取り付けられた荷台床材の先端部に設けられた前壁と後端部に設けられた後壁との間に取り付けられた支持梁に開閉自在に装着される左右のウイングを有している。それぞれのウイングは天井壁部と側壁部とを有し、横断面がL字形状となっており、側壁部はウイングを閉じたときに煽り板に突き当てられるようになっている。トレーラタイプのウイング車としては、さらに、箱体の下面に支持脚を設けないようにしたタイプもある。
【0003】
左右それぞれのウイングは油圧シリンダにより開閉駆動され、特許文献3に記載されるように、油圧シリンダには電動モータにより駆動される油圧ポンプから電磁弁を介して作動油が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−108677号公報
【特許文献2】特開2004−142639号公報
【特許文献3】特開2000−2045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウイング車には、ウイングの上昇移動と下降移動とを指令するための押ボタン開閉器が設けられている。開閉器は左側ウイング用と右側ウイング用とがウイング車に設けられており、左側ウイングの上昇移動と下降移動とを指令するための左側の押ボタン開閉器が車両の左側に設けられ、右側ウイングの上昇移動と下降移動とを指令するための右側の押ボタン開閉器が車両の右側に設けられている。
【0006】
それぞれの押ボタン開閉器は上昇スイッチと下降スイッチとを有している。上昇スイッチが操作されるとダブルソレノイド型の電磁弁の上昇用のコイルに電源回路から電力が供給され、電磁弁は油圧ポンプから油圧シリンダの上昇用油室に作動油を供給する位置に切り換えられる。これと同時に、電源回路は油圧ポンプを駆動するための電動モータをオンオフするモータスイッチのスイッチ駆動コイルにモータ駆動回路により電気的に接続され、電動モータが回転駆動される。一方、下降スイッチが操作されるとダブルソレノイド型の電磁弁の下降用のコイルに電源回路から電力が供給され、電磁弁は油圧ポンプから油圧シリンダの下降用油室に作動油を供給する位置に切り換えられる。これと同時に、電源回路は油圧ポンプを駆動するための電動モータをオンオフするモータスイッチのスイッチ駆動コイルにモータ駆動回路により電気的に接続され、電動モータが回転駆動される。
【0007】
押ボタン開閉器は左側のウイング開閉用と右側のウイング開閉用の2つを有しており、それぞれの押ボタン開閉器のモータ駆動回路を共通させるようにすると、一方の押ボタン開閉器の上昇スイッチと下降スイッチのいずれかのスイッチが操作されると、他方の押ボタン開閉器のモータ駆動路も電源回路と電気的に接続されることになる。そのため、モータ駆動回路には、一方の押ボタン開閉器の上昇スイッチが操作されたときに電源回路からモータ駆動回路に電流を流して逆流を阻止する上昇用ダイオードを設け、下降スイッチが操作されたときに電源回路からモータ駆動回路に電流を流して逆流を阻止する下降用ダイオードを設けている。これにより、共通のモータ駆動回路を用いても一方の押ボタン開閉器のスイッチが操作されたときに他方の押ボタン開閉器には電流が供給されることが防止される。
【0008】
しかしながら、それぞれの押ボタン開閉器の上下のスイッチに対応させて2つずつ設けられたダイオードが故障してダイオードが1つでも導通状態となると、作業者が左右一方のウイングを上昇移動させるために対応する押ボタン開閉器を操作しても左右他方のウイングも上昇移動することが想定される。万一、このようなことが発生すると、ウイングの開閉操作を安全に行うことができなくなるという問題点の発生が予測される。
【0009】
本発明の目的は、ウイング車に設けられたウイングの開閉操作の安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、左側ウイングと右側ウイングとにより荷物収納用の箱体が形成されるウイング車における前記左側ウイングと前記右側ウイングとを上下方向に開閉駆動するウイング車のウイング開閉装置であって、電動モータにより駆動され、前記左側ウイングを開閉駆動する左側油圧シリンダと前記右側ウイングを開閉駆動する右側油圧シリンダとに作動油を供給する油圧ポンプと、前記左側ウイングの上昇を指令する左側上昇スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記左側油圧シリンダの上昇用油室に供給し、前記左側ウイングの下降を指令する左側下降スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記左側油圧シリンダの下降用油室に供給する左側電磁弁と、前記右側ウイングの上昇を指令する右側上昇スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記右側油圧シリンダの上昇用油室に供給し、前記右側ウイングの下降を指令する右側下降スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記右側油圧シリンダの下降用油室に供給する右側電磁弁と、前記電動モータをオンオフするモータスイッチを作動するモータスイッチ駆動コイルと、前記左側上昇スイッチと前記左側下降スイッチとの出力端子間にカソードが相互に接続された左上昇用と左下降用のダイオードを有し、前記モータスイッチ駆動コイルに電力を供給する左側モータ駆動回路と、前記右側上昇スイッチと前記右側下降スイッチとの出力端子間にカソードが相互に接続された右上昇用と右下降用のダイオードを有し、前記モータスイッチ駆動コイルに電力を供給する右側モータ駆動回路と、前記左側上昇スイッチまたは左側下降スイッチが操作されたときに前記左側モータ駆動回路を前記モータスイッチ駆動コイルに接続し、前記右側上昇スイッチまたは右側下降スイッチが操作されたときに前記右側モータ駆動回路を前記モータスイッチ駆動コイルに接続する電源切換リレーとを有し、前記左側モータ駆動回路と前記右側モータ駆動回路とを前記電源切換リレーにより分離することを特徴とする。本発明のウイング車のウイング開閉装置は、前記左側上昇スイッチと前記左側下降スイッチとを前記ウイング車の左側前部と左側後部とにそれぞれ設け、前記右側上昇スイッチと前記右側下降スイッチとを前記ウイング車の右側前部と右側後部とにそれぞれ設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウイング開閉装置においては、左側上昇スイッチと左側下降スイッチのいずれかが操作されたときに油圧ポンプ駆動用の電動モータに電力を供給する左側モータ駆動回路と、右側上昇スイッチと右側下降スイッチのいずれかが操作されたときに電動モータに電力を供給する右側モータ駆動回路とが、電源切換リレーを介して電動モータをオンオフするモータスイッチに接続されており、両方のモータ駆動回路は電源切換リレーにより分離されている。したがって、一方のモータ駆動回路を電源回路に接続しても、他方のモータ駆動回路は電源回路に接続されることがなくなり、それぞれのモータ駆動回路に設けられたダイオードが経年変化により故障しても、ウイングの誤動作発生が防止される。これにより、ウイング開閉装置の耐久性を高めることができるとともに、その開閉操作の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ウイング車を示す斜視図である。
【図2】ウイング開閉装置の油圧シリンダに作動油を供給するための油圧回路図である。
【図3】本発明の一実施の形態であるウイング開閉装置の配線図である。
【図4】比較例としてのウイング開閉装置の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示されたウイング車10はトラックタイプであり、トラックの荷台床材11に搭載されて内部に荷物収容室12を形成する箱体13は、荷台床材11の先端部に設けられる前壁14と後端部に設けられる後壁15とを有している。前壁14の車幅方向中央部の上端と後壁15の車幅方向中央部の上端との間には支持梁16が取り付けられており、支持梁16には車両の前進走行方向左側と右側とにウイング17a,17bが上下方向に開閉自在に装着されている。図1においては、左側ウイング17aが上昇限位置となって開放された状態で示され、右側ウイング17bは下降限位置となって閉じた状態で示されている。
【0014】
左右のウイング17a,17bは天井壁部と側壁部とを有し、横断面がL字形状となっている。荷台床面の左右には煽り板18が開閉自在に装着されており、煽り板18を閉じた状態のもとでウイング17a,17bを閉じると、ウイング17a,17bの側壁部は煽り板18に突き当てられた状態となる。後壁15には観音開き式の開閉扉19が設けられており、開閉扉19を閉じるととともに左右のウイング17a,17bを閉じた状態のもとでウイング車10は走行することになる。
【0015】
左右のウイング17a,17bは油圧シリンダにより開閉駆動されるようになっている。図1に示すように、左側ウイング17aを開閉駆動するために、前壁14と後壁15にはそれぞれ左側油圧シリンダ20aが取り付けられており、油圧シリンダ20aの基端部は箱体13にピン結合されており、油圧シリンダ20aにより軸方向に往復動するピストンロッド21が左側ウイング17aにピン結合されている。右側ウイング17bを開閉するために、図示省略した右側油圧シリンダが前壁14と後壁15に取り付けられている。
【0016】
図2に示されるように、ウイング車10には、左側ウイング17aを開閉駆動するための前後2つの左側油圧シリンダ20aと、右側ウイング17bを開閉駆動するための前後2つの右側油圧シリンダ20bとが設けられており、それぞれの油圧シリンダ20a,20bには、オイルパン22内に収容された作動油が油圧ポンプ23から油路を介して供給されるようになっている。
【0017】
油圧ポンプ23と左側油圧シリンダ20aとを接続する油路24aにはダブルソレノイド型の左側電磁弁25aが設けられ、油圧ポンプ23と右側油圧シリンダ20bとを接続する油路24bには同様にダブルソレノイド型の右側電磁弁25bが設けられている。それぞれの電磁弁25a,25bは中立位置と上昇位置と下降位置との3位置に作動する。左側電磁弁25aが上昇位置に切り換えられると、油圧シリンダ20aの上昇用油室26aに作動油が供給され、下降用油室27a内の作動油がオイルパン22に戻される。一方、左側電磁弁25aが下降位置に切り換えられると、下降用油室27aに作動油が供給され、上昇用油室26a内の作動油がオイルパン22に戻される。同様に、右側電磁弁25bが上昇位置に切り換えられると、油圧シリンダ20bの上昇用油室26bに作動油が供給され、下降用油室27b内の作動油がオイルパン22に戻される。一方、右側電磁弁25bが下降位置に切り換えられると、下降用油室27bに作動油が供給され、上昇用油室26b内の作動油がオイルパン22に戻される。
【0018】
左側電磁弁25aにはこれを上昇位置に切り換えるためにコイル28aが設けられており、このコイル28aに通電されると左側電磁弁25aは上昇位置に切り換えられる。左側電磁弁25aにはこれを下降位置に切り換えるためのコイル29aが設けられており、このコイル29aに通電されると左側電磁弁25aは下降位置に切り換えられる。同様に、右側電磁弁25bにはこれを上昇位置に切り換えるためのコイル28bと下降位置に切り換えるためのコイル29bとが設けられている。
【0019】
図3に示されるように、ウイング開閉装置は、左側ウイング17aを開閉操作するための前後2つの押ボタン開閉器31a,32aと、右側ウイング17bを開閉操作するための前後2つの押ボタン開閉器31b,32bとを有している。押ボタン開閉器31aは図1に示されるように車体の左前側に取り付けられ、押ボタン開閉器32aは車体の左後側に取り付けられている。押ボタン開閉器31bは押ボタン開閉器31aに対応させて車体の右前側に取り付けられており、押ボタン開閉器32bは押ボタン開閉器32aに対応させて車体の右後側に取り付けられている。
【0020】
左側ウイング17aを開閉操作するための押ボタン開閉器31a,32aは、左側上昇スイッチ33aと左側下降スイッチ34aとをそれぞれ有している。右側ウイング17bを開閉操作するための押ボタン開閉器31b,32bは、右側上昇スイッチ33bと右側下降スイッチ34bとをそれぞれ有している。4つの押ボタン開閉器31a,32a,31b,32bには、両方のスイッチを同時に操作することができないように機械的インターロックが設けられている。
【0021】
それぞれの押ボタン開閉器31a,32a,31b,32bの入力端子には、ウイング車10内に搭載されたバッテリ35が電源回路36により接続されている。
【0022】
左側の2つの押ボタン開閉器31a,32aのそれぞれの左側上昇スイッチ33aの出力端子は、上昇用の弁駆動回路37aにより左側電磁弁25aの上昇用のコイル28aに接続されている。また、左側下降スイッチ34aの出力端子は、下降用の弁駆動回路38aにより左側電磁弁25aの下降用のコイル29aに接続されている。したがって、作業者が左側ウイング17aの上昇移動を指令させるべく、左側上昇スイッチ33aが操作されると、上昇用のコイル28aにバッテリ35から電力が供給されて左側電磁弁25aは上昇位置に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ23から吐出される作動油は上昇用油室26aに供給され、下降用油室27a内の作動油はオイルパン22に戻される。一方、作業者が左側ウイング17aの下降移動を指令させるべく、左側下降スイッチ34aが操作されると、下降用のコイル29aに電力が印加されて左側電磁弁25aは下降位置に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ23から吐出される作動油は下降用油室27aに供給され、上昇用油室26a内の作動油はオイルパン22に戻される。
【0023】
同様に、右側の2つの押ボタン開閉器31b,32bのそれぞれの右側上昇スイッチ33bの出力端子は、上昇用の弁駆動回路37bにより右側電磁弁25bの上昇用のコイル28bに接続されている。また、右側下降スイッチ34bの出力端子は、下降用の弁駆動回路38bにより右側電磁弁25bの下降用のコイル29bに接続されている。したがって、作業者が右側ウイング17bの上昇移動を指令させるべく、右側上昇スイッチ33bが操作されると、上昇用のコイル28bにバッテリ35から電力が印加されて右側電磁弁25bは上昇位置に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ23から吐出される作動油は上昇用油室26bに供給され、下降用油室27b内の作動油はオイルパン22に戻される。一方、作業者が右側ウイング17bの下降移動を指令させるべく、右側下降スイッチ34bが操作されると、下降用のコイル29bに電力が印加されて右側電磁弁25bは下降位置に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ23から吐出される作動油は下降用油室27bに供給され、上昇用油室26b内の作動油はオイルパン22に戻される。なお、電源回路36にはこの回路をオンオフするための手動操作スイッチ39がウイング車10のキャブ内に設けられている。
【0024】
図2に示した油圧ポンプ23は、図3に示される電動モータ41により駆動される。電動モータ41には給電線42によりバッテリ35から電力が供給されるようになっており、給電線42にはモータスイッチ駆動コイル43により作動するモータスイッチ44が設けられている。このモータスイッチ44はモータスイッチ駆動コイル43に通電されると電動モータ41に電力が供給され、通電が停止されると電動モータ41への電力供給が停止される。モータスイッチ駆動コイル43の給電端子は電源切換リレー45の共通接点46に接続されている。
【0025】
電源切換リレー45は、可動片により共通接点46に接続される左側接点47aと右側接点47bとを有している。
【0026】
左側の押ボタン開閉器31a,32aの左側上昇スイッチ33aと左側下降スイッチ34aのいずれかが操作されたときに、電源切換リレー45を介してモータスイッチ駆動コイル43と電源回路36とを電気的に接続させる左側モータ駆動回路51aが電源切換リレー45の左側接点47aに接続されている。この左側モータ駆動回路51aは、左側上昇スイッチ33aと左側下降スイッチ34aの出力端子間に接続される短絡線54aを有し、この短絡線54aにはカソード側が相互に接続された左上昇用ダイオード52aと左下降用ダイオード53aが対となって設けられている。対をなす両方のダイオード52a,53aの中間と電源切換リレー45の左側接点47aとの間には給電線55aが接続されている。
【0027】
右側の押ボタン開閉器31b,32bの右側上昇スイッチ33bと右側下降スイッチ34bのいずれかが操作されたときに、電源切換リレー45を介してモータスイッチ駆動コイル43と電源回路36とを電気的に接続させる右側モータ駆動回路51bが電源切換リレー45の右側接点47bに接続されている。この右側モータ駆動回路51bは、右側上昇スイッチ33bと右側下降スイッチ34bの出力端子間に接続される短絡線54bを有し、この短絡線54bにはカソード側が相互に接続された右上昇用ダイオード52bと右下降用ダイオード53bが設けられている。両方のダイオード52b,53bの中間と電源切換リレー45の右側接点47bとの間には給電線55bが接続されている。
【0028】
電源切換リレー45は左側モータ駆動回路51aに接続されるコイル56を有しており、左側モータ駆動回路51aが電源回路36に電気的に接続されると、コイル56により可動片が共通接点46と左側接点47aとを接続し、コイル56に対する給電が停止されると、共通接点46と右側接点47bとを可動片が接続する。ただし、コイル56を右側モータ駆動回路51bに接続し、右側モータ駆動回路51bが電源回路36に電気的に接続されると、コイル56により共通接点46と右側接点47bとを接続し、コイル56に対する給電が停止されると、共通接点46と右側接点47bとを接続するようにしても良い。
【0029】
したがって、電源切換リレー45は左側上昇スイッチ33aと左側下降スイッチ34aの一方が選択的に操作されたときに左側モータ駆動回路51aをモータスイッチ駆動コイル43に接続して電動モータ41を駆動する。さらに、電源切換リレー45は右側上昇スイッチ33bと右側下降スイッチ34bの一方が選択的に操作されたときに右側モータ駆動回路51bをモータスイッチ駆動コイル43に接続して電動モータ41を駆動する。このように、左側モータ駆動回路51aと右側モータ駆動回路51bは電源切換リレー45により相互に分離されており、両方のモータ駆動回路51a,51bが相互に電気的に接続されることが防止されている。
【0030】
油圧ポンプ23およびこれを駆動する電動モータ41等により図3に示されるようにパワーユニット57が形成され、パワーユニット57が収容されたケースがウイング車10に取り付けられている。
【0031】
ウイング車10により運搬された荷物を荷下ろしする際には、左側ウイング17aと右側ウイング17bのいずれか一方または両方が開放操作される。図1に示されるように、左側ウイング17aを上昇させて開放操作する際には、運転席内の手動操作スイッチ39が作業者により操作されて電源回路36がバッテリ35に接続される。この状態のもとで、作業者により前後2つの押ボタン開閉器31a,32aのいずれか一方の左側上昇スイッチ33aが操作される。左側上昇スイッチ33aが操作されると、電源回路36は左側の弁駆動回路37aと電気的に接続されて左側電磁弁25aが上昇位置に切り換えられる。これと同時に、電源回路36は左上昇用ダイオード52aを介して電源切換リレー45のコイル56に電気的に接続されて、モータスイッチ44がオンとなる。これにより、油圧ポンプ23を電動モータ41が駆動されて油圧ポンプ23から左側電磁弁25aを介して左側ウイング17aを駆動するための油圧シリンダ20aの上昇用油室26aに作動油が供給される。
【0032】
右側ウイング17bを開放動作する際には、作業者により前後2つの押ボタン開閉器31b,32bのいずれか一方の右側上昇スイッチ33bが操作され、同様に油圧シリンダ20bの上昇用油室26bに作動油が供給される。開放された左側ウイング17aを閉じる際には左側下降スイッチ34aが操作され、開放された右側ウイング17bを閉じる際には右側下降スイッチ34bが操作されることになる。
【0033】
図3に示したウイング開閉装置においては、左側モータ駆動回路51aと右側モータ駆動回路51bは、共通化されておらず、それぞれ電源切換リレー45により分離されている。両方のモータ駆動回路51a,51bが共通化されていると、左側の対をなす2つのダイオード52a,53aと、右側の対をなす他の2つのダイオード52b,53bとが電気的に接続されるので、4つのダイオードのうちのいずれかが経年劣化により双方向に電気的に導通した状態となると、ウイングの開閉操作を円滑に行うことができなくなる。例えば、左側ウイング17aを上昇させるべく、左側上昇スイッチ33aを操作すると、左側ウイング17aのみならず右側ウイング17bも上昇してしまうことが想定される。
【0034】
これに対し、図3に示すように、左右のモータ駆動回路51a,51bを分離すると、左右2対のダイオードは相互に電気的に接続されなくなるので、いずれかのダイオードが経年変化により劣化しても、そのような事態の発生を防止できる。
【0035】
図4は左右2対のダイオードがモータ駆動回路により電気的に接続された場合における比較例としてのウイング開閉装置を示す配線図である。なお、図4においては、図3における部材と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0036】
図4に示す場合には、左側の押ボタン開閉器32aにおける対をなす上昇用ダイオード52aと下降用ダイオード53aの中間点に接続された給電線55aと、右側の押ボタン開閉器32bにおける対をなす上昇用ダイオード52bと下降用ダイオード53bの中間点に接続された給電線55bとが接続されている。このようにして、共通化されたモータ駆動回路50を形成すると、それぞれのダイオードが正常であれば、例えば、左側上昇スイッチ33aが操作されても、ダイオード52b,53bにより右側電磁弁25bのコイルには電力が供給されることはない。しかしながら、図4に示す比較例においては、例えば、ダイオード52bが故障して双方向に通電状態となると、作業者が左側ウイング17aを上昇させるべく、左側上昇スイッチ33aが操作されると、コイル28bにも電力が供給されて右側ウイング17bも上昇移動することが考えられる。
【0037】
これに対し、図3に示すように、左側モータ駆動回路51aと右側モータ駆動回路51bとを電源切換リレー45により分離すると、2対のダイオードは電気的に接続されないので、いずれかのダイオードが故障しても、ウイング17a,17bが誤動作することを確実に防止できる。図3に示す場合には、いずれかのダイオードが故障すると、電磁弁を作動することができなくなるので、ウイング17a,17bが誤動作することなく、作業者は開閉装置の故障であることを知ることができる。
【0038】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、押ボタン開閉器は図3に示す場合には前後に2つずつ設けられているが、図3に示すように、車体の後端部のみのあるいは前端部のみに押ボタン開閉器を設けるようにしても良い。また、図1はトラックタイプのウイング車10を示すが、トレーラタイプのウイング車にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 ウイング車
17a 左側ウイング
17b 右側ウイング
20a 左側油圧シリンダ
20b 右側油圧シリンダ
23 油圧ポンプ
25a 左側電磁弁
25b 右側電磁弁
26a,26b 上昇用油室
27a,27b 下降用油室
31a,31b 押ボタン開閉器
32a,32b 押ボタン開閉器
33a 左側上昇スイッチ
33b 右側上昇スイッチ
34a 左側下降スイッチ
34b 右側下降スイッチ
36 電源回路
37a,37b 弁駆動回路
38a,38b 弁駆動回路
41 電動モータ
43 モータスイッチ駆動コイル
44 モータスイッチ
45 電源切換リレー
46 共通接点
47a 左側接点
47b 右側接点
51a 左側モータ駆動回路
51b 右側モータ駆動回路
52a 左上昇用ダイオード
52b 右上昇用ダイオード
53a 左下降用ダイオード
53b 右下降用ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側ウイングと右側ウイングとにより荷物収納用の箱体が形成されるウイング車における前記左側ウイングと前記右側ウイングとを上下方向に開閉駆動するウイング車のウイング開閉装置であって、
電動モータにより駆動され、前記左側ウイングを開閉駆動する左側油圧シリンダと前記右側ウイングを開閉駆動する右側油圧シリンダとに作動油を供給する油圧ポンプと、
前記左側ウイングの上昇を指令する左側上昇スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記左側油圧シリンダの上昇用油室に供給し、前記左側ウイングの下降を指令する左側下降スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記左側油圧シリンダの下降用油室に供給する左側電磁弁と、
前記右側ウイングの上昇を指令する右側上昇スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記右側油圧シリンダの上昇用油室に供給し、前記右側ウイングの下降を指令する右側下降スイッチが操作されたときに前記油圧ポンプからの作動油を前記右側油圧シリンダの下降用油室に供給する右側電磁弁と、
前記電動モータをオンオフするモータスイッチを作動するモータスイッチ駆動コイルと、
前記左側上昇スイッチと前記左側下降スイッチとの出力端子間にカソードが相互に接続された左上昇用と左下降用のダイオードを有し、前記モータスイッチ駆動コイルに電力を供給する左側モータ駆動回路と、
前記右側上昇スイッチと前記右側下降スイッチとの出力端子間にカソードが相互に接続された右上昇用と右下降用のダイオードを有し、前記モータスイッチ駆動コイルに電力を供給する右側モータ駆動回路と、
前記左側上昇スイッチまたは左側下降スイッチが操作されたときに前記左側モータ駆動回路を前記モータスイッチ駆動コイルに接続し、前記右側上昇スイッチまたは右側下降スイッチが操作されたときに前記右側モータ駆動回路を前記モータスイッチ駆動コイルに接続する電源切換リレーとを有し、
前記左側モータ駆動回路と前記右側モータ駆動回路とを前記電源切換リレーにより分離することを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載のウイング車のウイング開閉装置において、前記左側上昇スイッチと前記左側下降スイッチとを前記ウイング車の左側前部と左側後部とにそれぞれ設け、前記右側上昇スイッチと前記右側下降スイッチとを前記ウイング車の右側前部と右側後部とにそれぞれ設けることを特徴とするウイング車のウイング開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46128(P2012−46128A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191947(P2010−191947)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000229357)日本トレクス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】