説明

ウインドスクリーンワイパーモータの作動方法

【課題】ワイパーブレードとウインドスクリーンとの間の摩擦条件に関係なく、同じサイズのワイピング範囲がもたらされるようにする。
【解決手段】ウインドスクリーンワイパーモータ(20)が、ワイパーブレード(11、12)に接続され、2つの反転点(UP、OP)間で異なる移動方向に往復運動させ、ウインドスクリーンワイパーモータ(20)の回転速度および回転方向、ワイパーブレード(11、12)のそれぞれの速度(v)が、センサデバイス(22)によって検出され、ウインドスクリーンワイパーモータ(20)が、それぞれの反転点(UP、OP)に到達する前に、スイッチオフ時点(ASZ)でオフに切り換えられると、ウインドスクリーンワイパーモータ(20)のドライブシャフト(21)が、停止状態までキャスター角(α)だけさらに回転し続け、ワイパーブレード(11、12)が、引き延ばし距離(NLS)だけさらに移動し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載のウインドスクリーンワイパーモータの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、一般に、慣例からすでに知られており、かつ、ウインドスクリーンワイパー駆動部の1つまたは複数のワイパーブレードが所望のワイピング範囲を確実に洗浄するように駆動する。この目的のために、ウインドスクリーンワイパーモータは、1つまたは複数のワイパーブレードの特定の位置に対してオフに切り換えられる。スイッチオフ時点で、この状況において、ウインドスクリーンワイパーモータは短絡され、ウインドスクリーンワイパーモータまたはウインドスクリーンワイパーモータのドライブシャフトは、システムの慣性により特定のキャスター角だけ動き続ける。このキャスター角は、1つは、ウインドスクリーンワイパーの基本速度、すなわち、特に、ウインドスクリーンワイパーが動作する速度段階、もう1つは、1つまたは複数のワイパーブレードとウインドスクリーンとの間の摩擦条件に大きく左右される。ウインドスクリーンが濡れていたり湿っていたりする場合には、1つまたは複数のワイパーブレードとウインドスクリーンとの間の摩擦力が、乾いたウインドスクリーンと比較して、乾燥した条件の場合よりも低減されるため、キャスター角は大きくなる。これは、実際には、ウインドスクリーンワイパーモータの駆動部が、ウインドスクリーン上での1つまたは複数のワイパーブレードの同じ角度または特定の位置で常にオフに切り換えられるか、または短絡されるが、1つまたは複数のワイパーブレードによって実際に発生するまたは洗浄されるワイピング範囲は、上述した要因に依存することを意味する。この場合には、ウインドスクリーンワイパー駆動部またはウインドスクリーンの幾何学的条件により、ワイパーブレード間の接触が回避される必要があるとともに、ワイパーブレードがウインドスクリーンの縁に強く当たることも望ましくない、ことに留意されたい。このため、実際には、スイッチオフ時点は、非常に異なる状況下でも上述した破損が生じることがないように規定される。
【発明の概要】
【0003】
例示した先行技術を開始点として取り上げたが、本発明の基本的な目的は、特に、1つまたは複数のワイパーブレードとウインドスクリーンとの間の摩擦条件に関係なく、同じサイズのワイピング範囲が、1つまたは複数のワイパーブレードによって可能な限りもたらされるように、請求項1の前文に記載したウインドスクリーンワイパーモータの作動方法を開発することにある。この目的は、請求項1の特徴を有するウインドスクリーンワイパーモータの作動方法を用いて本発明により達成されるが、本発明では、少なくとも1つのワイパーブレードの実速度が、スイッチオフ時点で、名目速度と比較され、かつ、実際の値と名目値との差を用いて、制御デバイスに規定された時間、ウインドスクリーンワイパーモータがさらに動作する。言い換えれば、これは、実際の回転速度または実速度と、公称回転速度または名目速度との間に差がなければ、ウインドスクリーンワイパーモータの駆動が、スイッチオフ時点で実際に検出されたウインドスクリーンワイパーモータの回転速度(または、1つもしくは複数のワイパーブレードのワイピング速度)に応じて短絡され、あるいは、偏差がある場合には、ウインドスクリーンワイパーモータが規定の時間駆動し続ける、すなわち、電圧が供給され続ける、ことを意味する。
【0004】
ウインドスクリーンワイパーモータを作動させるための本発明による方法の有益な発展例は、従属請求項に示される。請求項、本明細書および/または図面に開示されている少なくとも2つの特徴のすべての組み合わせは、本発明の範囲内のものである。
【0005】
ウインドスクリーンワイパーモータの作動またはウインドスクリーンワイパーモータの動作は、好ましくは、ウインドスクリーンワイパーモータの供給電圧のパルス幅変調によって、制御デバイスにより実行される。したがって、例えば、50%のパルス幅変調値は、供給電圧がオンに切り換えられている時間とオフに切り換えられている時間とがそれぞれ同じ長さであることで、結果として、ウインドスクリーンワイパーモータが最大速度の半分で動作することを意味する。これに対して、100%のパルス幅変調値とは、ウインドスクリーンワイパーモータの電圧供給が常にオンの状態にあること、すなわち、ウインドスクリーンワイパーモータがフル回転速度で動作すること、を意味する。
【0006】
本発明による方法の特に好ましい改良例では、規定の時間中、パルス幅変調値は一定であることが提案されている。このような方法は、特に、プログラミングや設定を容易に行なえる。
【0007】
しかし、規定の時間中、パルス幅変調値は、初期値からゼロに、好ましくは、継続的に、低減するようにすることも可能である。このような方法により、ウインドスクリーンワイパーモータの動作を最適化でき、または、ウインドスクリーンワイパーの動作が非常に穏やかになる。
【0008】
検出された回転速度または速度の実際値が、制御デバイスに格納された2つの限界値の間にある場合には、規定の時間中に動作するためのパルス幅変調値は、特に、実際値と名目値との間の差に応じて算出される。
【0009】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、以下に示した好ましい例示的な実施形態の記載および図面を参照しながら得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ウインドスクリーンを洗浄し、かつ、2つのワイパーブレードを使用する、ウインドスクリーンワイパー駆動部の略図。
【図2】スイッチオフ時点の後にウインドスクリーンワイパーモータを作動させるための値の決定を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、ウインドスクリーン1を洗浄するための、自動車のウインドスクリーンワイパー装置10を極めて簡略化した図を示す。ウインドスクリーンワイパー装置10は、ワイパーアーム13、14と、ワイパーリンク15と、を介して少なくとも1つのウインドスクリーンワイパーモータ20に接続された、2つのワイパーブレード11、12を備える。ウインドスクリーンワイパーモータ20は、ワイパーリンク15によってワイパーブレード11、12を動かすように働くドライブシャフト21を有する。ウインドスクリーンワイパーモータ20は、ドライブシャフト21またはウインドスクリーンワイパーモータ20の、回転速度および回転方向を検出するためのセンサデバイス22(詳細には図示せず)も備える。このような手段は、例えば、ホールセンサなどを備えてもよい。
【0012】
さらに、ウインドスクリーンワイパーモータ20を作動させるように働く制御デバイス25が設けられる。この制御デバイス25は、図1に示すように、独立した制御デバイス25として、またはウインドスクリーンワイパーモータ20のハウジングに一体化されて具現化された制御デバイス25のいずれかとして、具現化されうる。
【0013】
図1の2つのワイパーブレード11、12の各々に、下側反転点UPおよび上側反転点OPが示されている。2つのワイパーブレード11、12は、これらの2つの反転点UPおよびOP間を往復運動し、ワイパーブレード11、12が通過するワイピング範囲26がもたらされる。ワイパーブレード11、12の動きは、ウインドスクリーンワイパーモータ20を対応付けて作動させることによって、制御デバイス25により制御され、ワイパーブレード11、12の移動方向に応じて、ウインドスクリーンワイパーモータ20のドライブシャフト21は、一方の方向または他方の方向のいずれかに動く。
【0014】
ウインドスクリーンワイパーモータ20は、パルス幅変調方法を用いて制御デバイス25によって作動されるが、この方法では、動作電圧でのウインドスクリーンワイパーモータ20の(フル)供給電圧と、電圧供給のスイッチオフとの間の比に応じて、ドライブシャフト21の速度が制御される。ウインドスクリーンワイパーモータ20は、反転点UP、OPのそれぞれが、スイッチオフ時点ASZに達する前に短絡されること、すなわち、反転点UP、OPのそれぞれでパルス幅変調の値が0%になること、が必須である。ウインドスクリーンワイパーモータ20のスイッチオフ時点ASZでのワイパーブレード11、12の位置は、図1のワイパーブレード11、12の位置AWによって表される。
【0015】
システムの慣性により、特に、ワイパーブレード11、12とウインドスクリーン1との間の異なる摩擦条件により、ドライブシャフト21のキャスター角αまたはワイパーブレード11、12の引き延ばし距離NLSがもたらされ、ワイパーブレード11、12の引き延ばし距離NLSは、ワイパーブレード11、12の位置AWと、反転点UP、OPの到達との間の距離を表す。
【0016】
図1では、簡略化して、引き延ばし距離NLSが、2つの反転点UP、OPの領域において、2つのワイパーブレード11、12でそれぞれ同じであると仮定している。しかしながら、これらの値は、2つの反転点UP、OPに関して異なるものでありうることは言うまでもない。ワイパーブレード11、12が、いずれの場合も独立したウインドスクリーンワイパーモータ20によって駆動される場合には、2つのワイパーブレード11、12の引き延ばし距離NLSも異なるものでありうる。
【0017】
特に、ワイパーブレード11、12とウインドスクリーン1との間の摩擦条件に関係なく、ドライブシャフト21のキャスター角αの値またはワイパーブレード11、12の引き延ばし距離NLSの値とを可能な限り一定に保つために、ひいては、可能な限り同じサイズのワイピング範囲26を常に実現するために、本発明によれば、センサデバイス22によってスイッチオフ時点ASZでウインドスクリーンワイパーモータ20の回転速度を検出する、という条件がある。この回転速度値は、また、ウインドスクリーン1でのワイパーブレード11、12の特定の速度vに相当する。スイッチオフ時点ASZに対して、0より大きい速度(またはウインドスクリーンワイパーモータ20の回転速度)の名目値Vsollが制御デバイス25に格納され、または予め決定されるが、これは、スイッチオフ時点ASZで、ワイパーブレード11、12が元の方向に移動し続けているままであるためである。このことは、ウインドスクリーンワイパーモータ20が短絡されていても、すなわち、パルス幅変調値が0%でも、スイッチオフ時点ASZでワイパーブレード11、12が動いていることを意味する。本発明によれば、次に、制御デバイス25は、ワイパーブレード11、12の速度v(またはウインドスクリーンワイパーモータ20の回転速度)の実際値vistと名目値vsollとの間の比較を実行する。
【0018】
以下、明確にするために、図2が参照されるが、図2では、スイッチオフ時点ASZでのワイパーブレード11、12の異なる速度vist(またはウインドスクリーンワイパーモータ20の回転速度)に関して、パルス幅変調PWMのパルス占有率(%)が示されており、スイッチオフ時点ASZでワイパーブレード11、12の速度vの実際値が名目値(パルス幅変調値=ゼロ)に正確に対応する場合には、結果的に得られるPWMのデューティサイクルは0%である。
【0019】
これに対して、スイッチオフ時点ASZでの速度vが下限値x1を下回るか、または前記速度vが上限値x2を超えれば、パルス幅変調の正または負の最大定数値PVWが、図2に示すパルス幅変調のグラフ(またはデータ記録)に基づいて使用され、そして、制御デバイス25に格納されるが、この定数値PVWは、制御デバイス25にも格納される規定の時間ΔTの間、スイッチオフ時点ASZ後もウインドスクリーンワイパーモータ20を動作させ続ける。
【0020】
ワイパーブレード11、12の速度vの実際値が名目値から外れている(ただし、限界値x1、x2内にある)状態の2つの限界値x1、x2の間の中間領域において、パルス幅変調の値PWMは、図2に従って以下の式により求められる。
PWM=−(B/A)×(vist−vsoll
【0021】
したがって、パルス幅変調の値PWMは、スイッチオフ時点ASZでのワイパーブレード11、12の速度vの実際値における名目値からの偏差に応じて適応される。
【0022】
この文脈において、名目値は、パルス幅変調の特定値PWMに関係なく、この時間ΔTの間に変更されない。これは、ワイパーブレード11、12の速度vが、時間ΔTの間にスイッチオフ時点ASZでの名目値に達していない場合には、ワイパーブレード11、12の進行を少し増やせるようにするために、短時間で、ウインドスクリーンワイパーモータ20がもう一度動作することを意味する。これに対して、ワイパーブレード11、12の速度vがスイッチオフ時点ASZで超過している場合には、パルス幅変調の負の値PWMが生じることで、ワイパーブレード11、12は、ワイパーブレード11、12の進行が低減されるように、能動的に制動される。
【0023】
上述したように、特定の時間ΔTの間、それぞれ求められたパルス幅変調の値PWMは、一定ではなく、代わりに、図2の特定値PWMから戻す、特に、値0に戻すようにすることも可能である。これにより、ウインドスクリーンワイパーモータ20の特に穏やかな動作を達成できる。
【0024】
上述した本発明によるウインドスクリーンワイパーモータ20の作動方法は、本発明の概念から逸脱することなく、さまざまな方法で改良または修正されうる。したがって、ウインドスクリーンワイパー装置10が、2つのワイパーブレード11、12を互いに連結するワイパーリンク15を用いずに、ワイパーブレード11、12のそれぞれに連結される2つの別々のウインドスクリーンワイパーモータ20を有することが可能なのは言うまでもない。この場合、ウインドスクリーンワイパーモータ20は、それぞれ個々に作動/適応される。この方法は、また、例えば、後方のウインドスクリーンワイパーにも適することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
1 ウインドスクリーン
10 ウインドスクリーンワイパー装置
11 ワイパーブレード
12 ワイパーブレード
13 ワイパーアーム
14 ワイパーアーム
15 ワイパーリンク
20 ウインドスクリーンワイパーモータ
21 ドライブシャフト
22 センサデバイス
25 制御デバイス
26 ワイピング範囲
UP 下側反転点
OP 上側反転点
AW 位置
ASZ スイッチオフ時点
NLS 引き延ばし距離
v 速度
x1 下限値
x2 上限値
α キャスター角
ΔT 規定の時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドスクリーンワイパーモータ(20)が、少なくとも1つのワイパーブレード(11、12)に少なくとも間接的にドライブシャフト(21)を介して接続され、ワイピング範囲(26)の2つの反転点(UP、OP)間で前記少なくとも1つのワイパーブレード(11、12)を異なる移動方向に往復運動させ、前記ウインドスクリーンワイパーモータ(20)の回転速度および回転方向、または、前記少なくとも1つのワイパーブレード(11、12)のそれぞれの速度(v)が、センサデバイス(22)によって検出され、入力値として制御デバイス(25)に供給され、前記ウインドスクリーンワイパーモータ(20)が、前記それぞれの反転点(UP、OP)に到達する前に、スイッチオフ時点(ASZ)でオフに切り換えられると、前記ウインドスクリーンワイパーモータ(20)の前記ドライブシャフト(21)が、停止状態までキャスター角(α)だけさらに回転し続け、前記少なくとも1つのワイパーブレード(11、12)が、引き延ばし距離(NLS)だけさらに移動し続ける、前記ウインドスクリーンワイパーモータ(20)の作動方法であって、
前記少なくとも1つのワイパーブレード(11、12)の実速度(vist)が、前記スイッチオフ時点(ASZ)で名目速度(vsoll)と比較され、前記実速度(vist)と前記名目速度(vsoll)との間に差があると、前記ウインドスクリーンワイパーモータ(20)が、前記制御デバイス(25)において規定された時間(ΔT)の間、さらに動作することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記制御デバイス(25)による前記ウインドスクリーンワイパーモータ(20)の作動は、パルス幅変調(PWM)によって起こることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記規定された時間(ΔT)の間、前記パルス幅変調(PWM)の値は一定であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記規定された時間(ΔT)の間、前記パルス幅変調(PWM)の値は、初期値からゼロに、好ましくは、継続的に低減されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記スイッチオフ時点(ASZ)において、前記速度(v)の実際値に前記速度(v)の名目値からの偏差がある場合に、前記速度(v)の実際値が、下側しきい値(x1)と上側しきい値(x2)との間であれば、前記パルス幅変調(PWM)の値は、以下の式、すなわち、
PWM=−(B/A)×(vist−vsoll
により算出されることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−95419(P2013−95419A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−238709(P2012−238709)
【出願日】平成24年10月30日(2012.10.30)
【出願人】(590003744)ヴァレオ システム デシュヤージュ (74)
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
【Fターム(参考)】