説明

ウェイト装填カーテン

【課題】重量のある厚手のカーテンに装填しても、ウェイトの基本性能である重りとしての機能を十分に発揮し、吊り下げたカーテン生地がまくり上がることが無く、襞やウェーブ形状を美しく保つことができ、さらに環境上の問題および安全衛生上の問題がなく、しかも、カーテンの縫製後における磁気センサを用いた縫い針の残留検査において、磁気センサが誤動作しないウェイトが取り付けられたカーテンを提供する。
【解決手段】裾部にウェイト4が装填されたカーテン1において、前記ウェイトが、比重が6.5〜7.5、透磁率が1.00μ以下の亜鉛製であることを特徴とするウェイト装填カーテン1を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテリア用途のカーテンに関する。詳しくは、襞やウェーブ形状を美しく保つと共に、環境上の問題および安全衛生上の問題がなく、しかも、カーテンの縫製後における磁気センサを用いた縫い針の残留検査において、磁気センサが誤動作しないウェイト装填カーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り下げたカーテン生地の襞やウェーブ形状を美しく保つために、また、カーテンが風によって、まくり上がることを防ぐために、カーテン本体の裾にウェイトを挿入することが行われている。このようなウェイトとしては、多数の鉛製小片が所定間隔を置いて装填されて用いられている。鉛は比重が大きいためウェイトとして適しており、また柔らかいためカーテンの布地を傷めにくいという利点もある。しかし、鉛には毒性があるので、製造時や廃棄時における環境への悪影響が懸念されている。
【0003】
そのため、近年、鉛以外の材料よりなるウェイトが検討されている。例えば、特許文献1にはステンレス鋼を用いたウェイトが開示されている。ステンレス鋼には毒性がないので、環境への悪影響はほとんどない。しかし、ステンレス鋼は高価であるのみならず、硬いために加工性が悪いという問題点がある。さらに、カーテンを縫製する際に、当然縫い針を使用するが、縫製後のカーテンを磁気センサを用いた検針機にかけ、縫い針の残留検査をする必要がある。その残留検査時にカーテンの裾に縫い込まれたウェイトがステンレス鋼のような金属部分を備えていると、カーテンを検針機にかけたときに検針機がウェイトの金属部分を検出して反応し、誤作動を起こし、針の残し忘れの検出精度を低下させることになる。
【0004】
さらに、検針機の誤作動を防ぐために、非磁性材料からなるウェイトが検討されている。例えば、特許文献2にはガラスやセラミックスを用いたウェイトが、特許文献3には合成樹脂を用いたウェイトが、特許文献4にはFRP(ガラス繊維強化合成樹脂)を用いたウェイトが開示されている。しかしいずれのウェイトも重量が不十分で、特に厚手のカーテンには重りとしての機能を発揮できず、形状を美しく保つことができないという問題があった。
【特許文献1】特開2003−245193号公報
【特許文献2】特開2003−102615号公報
【特許文献3】特開2006−320627号公報
【特許文献4】特開2006−141795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その課題は、重量のある厚手のカーテンに装填しても、ウェイトの基本性能である重りとしての機能を十分に発揮し、吊り下げたカーテン生地がまくり上がることが無く、襞やウェーブ形状を美しく保つことができ、さらに環境上の問題および安全衛生上の問題がなく、しかも、カーテンの縫製後における磁気センサを用いた縫い針の残留検査において、磁気センサが誤動作しないウェイトが取り付けられたカーテンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、亜鉛の比重と透磁率及び安全性に着目し、亜鉛からなるカーテン用ウェイトを用いることにより前記課題を解決し、以下の手段を提供する。
【0007】
[1]裾部にウェイトが装填されたカーテンにおいて、前記ウェイトが、比重が6.5〜7.5、透磁率が1.00μ以下の亜鉛製であることを特徴とするウェイト装填カーテン。
【0008】
[2]前記ウェイトが直径1〜5mmからなり、幅10〜30 mm、長さ25〜60mmのU字型であることを特徴とする前項1記載のウェイト装填カーテン。
【0009】
[3]前記ウェイトをカーテン裾部両脇に設けられた袋状の収納部位に、折り曲げ可能に装填したことを特徴とする前項1または2に記載のウェイト装填カーテン。
【発明の効果】
【0010】
[1]の発明によれば、カーテン裾部に装填されたウェイトが、比重が6.5〜7.5であることから、吊り下げたカーテン生地の襞やウェーブ形状を美しく保ち、また、カーテンが風によって、まくり上がることを防ぐことができる。重量のある厚手のカーテンにおいても、該比重であれば重りとしての機能は低下することは無い。また、透磁率が1.00μ以下であることから、カーテンの縫製後に、必ず実施される、縫製に使用した針が残っているかどうかの、磁気センサを用いた検針機による縫い針の残留検査使用において、誤作動を防ぎ、針の残し忘れの検出精度を低下させることがない。さらに、亜鉛には毒性がないので、製造時や廃棄時における環境への影響の問題がないウェイト装填カーテンとなる。
【0011】
[2]の発明によれば、カーテン裾部に装填されたウェイトのサイズが直径1〜5mmからなり、幅10〜30 mm、25〜60mmであることから、外観上、異物が装填されていることが、判別し難く、カーテンの外観を美しく保つことができる。また、小さな該サイズであれば、検針機による縫い針の残留検査使用において、誤作動をより高い確率で防ぐことができる。またウェイトの形状がU字型であることから、カーテン裾部への装填作業が容易となり、高い生産性を有するウェイト装填カーテンとなる。
【0012】
[3]の発明によれば、カーテン裾部両脇に設けられた袋状の収納部位に、折り曲げ可能にウェイトを装填したことにより、適度な張力によって、吊り下げたカーテン生地の襞やウェーブ形状を美しく保つことができ、カーテンのシルエットが美麗になる。また、ウェイトの相互間位置に、カーテンに折れ曲がり可能な間隔を容易に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、以下に具体的に説明する。図1は、本実施形態のウェイト装填カーテン(1)の裾部を拡大して示した概略図である。
【0014】
本発明に係わるウェイト装填カーテン(1)は、カーテン裾にウェイト(4)を装填できる袋状の収納部位を縫製できるものであれば良く、天然繊維または合成繊維からなる公知の編織物を用いることができる。好ましくは、耐洗濯性等の機能面、経済性、及び外観上の観点等から合成繊維からなる織物が好ましい。
【0015】
本発明に係わるカーテン裾部両脇に装填されたウェイト(4)は、比重が6.5〜7.5、透磁率が1.00μ以下の亜鉛で構成される。
【0016】
前記亜鉛で構成されるウェイト(4)は、従来の鉛のウェイトと同様に、6.5〜7.5という高い比重によって、さらに、外観上問題の無い小片サイズの該ウェイト(4)を、カーテン裾部に等間隔に数個装填することにより、吊り下げたカーテン生地の襞やウェーブ形状を美しく保ち、また、カーテンが風によって、まくり上がることを防ぐことができる。ウェイト(4)が軽いとカーテンに自然な伸びを与えにくく、また風によるまくり上がりが生じ易い。さらに該比重の亜鉛で構成されるウェイト(4)であれば、遮光カーテンや防音カーテンなどの重量のある厚手のカーテンに装填しても、十分に吊り下げたカーテンの襞やウェーブ形状を美しく保つことができる。
【0017】
従来ウェイトに使用されていた鉛には、毒性があるので、製造時や廃棄時における環境への悪影響が懸念されていた。一方本発明に係わるウェイト(4)を構成する亜鉛は毒性が無く、人間にとって、ミネラルの一種として必須元素で欠乏症が問題になっているほどである。環境基本法では、亜鉛についての水質の環境基準は定められていません。ただし、水質汚濁防止法では工場等の排出水について濃度規制がされています。しかし、これは亜鉛そのものの毒性との観点ではなく、鉛が共存する場合に毒性が増すためと説明されています。したがって、本発明に係わる亜鉛製ウェイト(4)が装填されたウェイト装填カーテン(1)は環境上の問題および安全衛生上の問題が無いカーテンとなります。
【0018】
カーテンは縫製後に、もしも、カーテン布地内に縫い針が残留していると、カーテンの包装時、取り付け時、使用時などに、残留した縫い針によって、包装作業者、取り付け業者、使用者などを傷付ける恐れがある。そのため、縫製後のカーテンに対して、磁気センサによって、縫い針が残留していないかどうかの検査を行なっている。
【0019】
ところが、ステンレス鋼等の磁性を有する金属のウェイトを採用すると、縫い針が残留していなくても、磁気センサが磁性を有する金属のウェイトの磁性に反応して、検出信号を出力してしまうので、正確な残存する縫い針の検出検査ができないという問題があります。さらにステンレス鋼等の硬度のあるウェイトを使用すると、カーテンの縫製時に縫い針を損傷させる可能性もあり、その時に縫い針の破片がカーテンに混入し、さらに正確な縫い針の検出検査ができなくなります。
【0020】
本発明に係わるウェイト(4)は透磁率が1.00μ以下の亜鉛で構成されているために、縫い針の残留検査において誤動作を防止することができる。透磁率とは、磁場(磁界)の強さ H と磁束密度 B との間の関係を B = μ H で表わした時の比例定数 μ である。値が大きいほど磁気を通し易くなる。透磁率が1.00μ以下であることから、カーテン内にウェイト(4)を装填した後に、磁気センサによる縫い針の残留検査を実施しても、ウェイト(4)の磁性が小さいために、磁気センサが誤って縫い針の検出信号を発することがなく、縫い針が残留している場合のみ、磁気センサが正確に反応して、確実に縫い針の残留の有無を検出することができる。透磁率が1.00μを超えると、ウェイト(4)に着磁性が表れて、縫い針の残留検査で磁気センサが反応して、誤った検出結果が得られる恐れがあるので、このような誤動作を防止することができない。
【0021】
尚、磁気センサの感度を低下させれば、より磁性の高いウェイト(4)でも磁気センンサに反応し難くする事は可能だが、ウェイト(4)に比較して、縫い針は体積が小さく、縫い針を磁気センサで検出することが困難となり、却って誤作動の原因となる。
【0022】
また、本発明に係わるウェイト(4)は従来のステンレス鋼等と比較して硬度が低く、カーテンの縫製時に縫い針を損傷させる事も無いので、縫い針の破片がカーテンに混入することが無く、正確な残存する縫い針の検出検査が可能となる。
【0023】
前記ウェイト(4)が直径1〜5mmからなり、幅10〜30mm、長さ25〜60mmの小片サイズであることから、任意の個数を等間隔に装填することが可能となり、異物が装填されていることが、外観上、判別し難く、カーテンの外観を美しく保つことができる。また該小片サイズにより、磁気センサによる縫い針の残留検査を実施しても、ウェイト(4)の磁性が小さいために、磁気センサが誤って検出信号を発することがなく、より精度の高い縫い針の残留検査となる。これより大きいと、該サイズより大きいとカーテンの裾が膨らみ、商品価値
が低下する場合がある。また、これより小さいものは、製造するのが一般的に困難である。
【0024】
前記ウェイト(4)がU字型であることから、U字部分をカーテン生地裾部下方に装填することにより、手作業によるカーテン裾部への装填作業が容易となり、高い生産性を有するウェイト装填カーテン(1)となる。また、カーテン生地と直接に接する部分がU字型となっているために、カーテン生地を損傷させることはない。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
<実施例1>カーテン生地としてポリエステル繊維からなる織物を準備し、裾部両脇に袋状の収納部位を縫製にて作成した。該カーテン生地を乾熱セット加工機にて襞を形成した後に、前記袋状の収納部位に比重が6.0、透磁率が0.80μの亜鉛で構成され、サイズが直径2.5mmからなり、幅20mm、長さ35mmのU字型ウェイトを装填し、ウェイト装填カーテンを作成した。
【0027】
<実施例2>ウェイトのサイズを直径1.5mmからなり、幅20 mm、長さ35mmのU字型としたこと以外実施例1と全く同様にしてウェイト装填カーテンを得た。
【0028】
<実施例3>ウェイトのサイズを直径4.5mmからなり、幅20 mm、長さ35mmのU字型としたこと以外実施例1と全く同様にしてウェイト装填カーテンを得た。
【0029】
<比較例1>比重が11.3、透磁率が0.99μの鉛で構成されウェイトを装填したこと以外実施例1と全く同様にしてウェイト装填カーテンを得た。
【0030】
<比較例2>比重が7.9、透磁率が1.00μのステンレス鋼で構成されウェイトを装填したこと以外実施例1と全く同様にしてウェイト装填カーテンを得た。
【0031】
<比較例3>比重が1.7、透磁率が1.00μのセラミックスで構成されウェイトを装填したこと以外実施例1と全く同様にしてウェイト装填カーテンを得た。
【0032】
上記のようにして得られた各ウェイト装填カーテンに対して下記評価法に基づいて形状安定性、縫い針の残留検査の精度を調べた。その結果を表1に示す。
【0033】
(形状安定性試験)各カーテンを吊るし、襞やウェーブ形状、風によるまくれる状態を目視により次の基準で評価した。◎:襞や円弧上のウェ−ブが認められ、風によって大きくまくれない。○:襞や円弧上のウェ−ブが認められるが、風によって少しまくれる。△:襞や円弧上のウェ−ブが認められず、風によって大きくまくれない。×:襞や円弧上のウェ−ブが認められず、風によって大きくまくれる。
【0034】
(縫い針の残留検査の精度試験)各カーテン10枚に故意に縫い針を0〜3本挿入させ、検針機にかけ、残留している金属片を検知し、縫い針の残留検査の精度を求め、次の基準で評価した。○:挿入本数=検知本数△:挿入本数=検知本数±2本以下×:挿入本数=検知本数±3本以上
【0035】
【表1】

【0036】
表1から明らかなように、実施例1〜3のカーテンは、いずれも毒性は無く、形状安定性、縫い針の残留検査の精度に優れたウェイト装填カーテンであった。
【0037】
これに対し、比較例1は毒性があり、比較例2は縫い針の残留検査の精度が不十分であった。また、比較例3は重量が不十分で、形状を美しく保つことができないという問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係わるウェイト装填カーテン裾部を拡大した概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1………ウェイト装填カーテン2………カーテンレール3………袋状の収納部位4………ウェイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裾部にウェイトが装填されたカーテンにおいて、前記ウェイトが、比重が6.5〜7.5、透磁率が1.00μ以下の亜鉛製であることを特徴とするウェイト装填カーテン。
【請求項2】
前記ウェイトが直径1〜5mmからなり、幅10〜30 mm、長さ25〜60mmのU字型であることを特徴とする請求項1記載のウェイト装填カーテン。
【請求項3】
前記ウェイトをカーテン裾部両脇に設けられた袋状の収納部位に、折り曲げ可能に装填したことを特徴とする請求項1または2に記載のウェイト装填カーテン。

【図1】
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