説明

ウェザストリップ取付け用治具及び取付け方法

【課題】車体フランジ等の対象物に物品が近接配置されている場合であっても、ウェザストリップの取付け作業が容易に行えることを可能にする取付け用治具、及びウェザストリップの取付け方法を提供する。
【解決手段】基部(26)と、この基部に回転可能に支持されるとともに、対象物に対しウェザストリップを押圧可能な押圧面(211)を有する押圧ローラ(21)と、押圧面に作用している力が所定の値未満であるときは押圧ローラを基部に対して回転させず、押圧面に作用している力が所定の値以上であるときは押圧ローラを基部に対して回転可能な状態とするように構成された回転防止手段(267、212)とを有するウェザストリップ取付け用治具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボデーパネル等の対象物にウェザストリップを取付ける際に使用する取付け用治具、及び取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェザストリップとは、例えば自動車の車体(ボデーパネル)の開口部を画定するフランジに取付けられ、該車体とドアとの間をシールするものをいう。車体へのウェザストリップの取付けにおいては、正確な位置決め及び作業性向上等のために、作業者が専用の治具を使用することがある。
【0003】
例えば特許文献1には、「装着は、組付治具40を使用して、オープニングトリムウエザストリップ10の一方の端末から順次、フランジ7に装着され、装着が完了すると、他方の端末が一方の端末と接合することとなる」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェザストリップを車体に取付ける際は、取付け後にウェザストリップが車体から脱落しないように、一般に、ウェザストリップと車体との間には両面接着テープ等の接着手段が設けられる。そのため、ウェザストリップの取付け作業は、両面接着テープ等の接着手段を用いる場合、ウェザストリップを両面接着テープで車体に貼付けるために必要な所定の押圧力を加えながら行われる。従来、該押圧力を得るために、例えば特許文献1に記載されている押圧ローラ52、53のように、車体のフランジを両側から挟む構造を具備した治具を用いていた。
【0006】
しかし近年、ダッシュボードの一部が上記フランジに近接配置されたり、車内天井固定用のクリップがフランジに取付けられたりする等、車体のフランジ又はその近傍に何らかの物品が配置されることがある。このような場合、フランジを両側から挟む押圧ローラを具備する治具を使用すると、フランジの内側(車内側)に位置する押圧ローラ等が上記ダッシュボードやクリップ等と干渉してしまうため、そのような治具の使用は不可能又は困難である。一方でウェザストリップの取付け用治具には、ウェザストリップを確実に車体に貼付けるため、作業者が上記両面接着テープに所定値以上の押圧力を加えることができるように構成されていることが望まれる。
【0007】
そこで本発明は、車体フランジ等の対象物に物品が近接配置されている場合であってもこれらの物品と干渉せず、容易に、ウェザストリップの取付け作業が行えることを可能にする取付け用治具、及びウェザストリップの取付け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、ウェザストリップを対象物に取付ける治具であって、基部と、その基部に回転可能に支持されるとともに、対象物に対しウェザストリップを押圧可能な押圧面を有する押圧ローラと、押圧面に作用している力が所定の値未満であるときは押圧ローラを基部に対して回転させず、押圧面に作用している力が所定の値以上であるときは押圧ローラを基部に対して回転可能な状態とするように構成された回転防止手段と、を有するウェザストリップ取付け用治具を提供する。
【0009】
また本発明の他の態様は、上記ウェザストリップ取付け用治具を用いたウェザストリップの取付け方法であって、上記ウェザストリップ取付け用治具を用いて、対象物に取付けるべきウェザストリップを保持するステップと、ウェザストリップに貼着された両面接着テープが対象物の所定部位に当接するようにウェザストリップ取付け用治具を対象物に接近させるステップと、両面接着テープが対象物の所定部位に当接した状態で、押圧ローラを介してウェザストリップを対象物に対して、所定の値以上の押圧力で押付けるステップと、ウェザストリップを対象物に対して所定の値以上の押圧力で押付けた状態で、押圧ローラがウェザストリップに対してその長手方向に沿って回転移動するように、ウェザストリップ取付け用治具を移動させるステップと、を含む取付け方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るウェザストリップの取付け用治具又は取付け方法によれば、取付け対象物にクリップ等が近接配置されている場合であっても、該対象物に対するウェザストリップの取付け作業を容易に行うことができる。またクリップ等を対象物に取付けた後であっても取付け作業が行えるので、製造工程の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るウェザストリップ取付け用治具の斜視図である。
【図2】(a)図1のIIa−IIa線に沿った断面図であり、(b)(a)のIIb−IIb線に沿った断面図である。
【図3】ウェザストリップ取付け用治具を用いてウェザストリップを対象物に取付けている状態を示す図である。
【図4】(a)図2(a)の状態から押圧ローラが基材に対して移動した状態を示す断面図であり、(b)(a)のIVb−IVb線に沿った断面図である。
【図5】(a)本発明の第2の実施形態に係るウェザストリップ取付け用治具のストリップ押圧部において押圧ローラが第1の位置にある状態を示す図であり、(b)押圧ローラが第2の位置にある状態を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るウェザストリップ取付け用治具のストリップ押圧部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るウェザストリップ取付け用治具(以降、治具と略称する)1を示す斜視図である。治具1は、押圧ローラ21及び押圧ローラ21に押圧されているウェザストリップ(図示せず)を案内するガイドローラ22、23、24を含むストリップ押圧部2と、押圧ローラ21がウェザストリップ(以降、ストリップと称する)を好適に取付け対象物(図示せず)に押圧できるようにストリップを案内するガイドローラ31、32、33、34を含むストリップ案内部3とを有する。ストリップ案内部3は、ストリップ押圧部2に接続される接続部材35を有し、全体として治具1が構成される。
【0013】
対象物に取付けるべきストリップは、ガイドローラ31とガイド板36とにより画定された開口部37を通ってガイドローラ32、33、34によって順次案内され、押圧ローラ21の押圧面211に適切な角度で当接する。なお、以降、ストリップ案内部3については、便宜的に図示を省略し、本願発明においての特徴的部分であるストリップ押圧部2についてのみ説明を行う。
【0014】
図2は、ストリップ押圧部2の詳細な構造例を示す図である。図2(a)は、図1のIIa−IIa断面を示す図であって、治具1のストリップ押圧部2の側断面(押圧ローラの回転軸に平行な断面)を示している。また図2(b)は、図2のIIb−IIb断面を示す図である。ストリップ押圧部2は、押圧ローラ21を回転可能かつ少なくとも一方向に変位可能に支持する基部26を有する。詳細には、基部26は基材261と、基材261に対して矢印262で示す第1の方向(後述するストリップ押圧方向)及びその逆方向に変位可能なローラ支持部材(図2の例では側断面視で略L字状のステー)263とを有し、押圧ローラ21はステー263に回転可能に取付けられる。また基部26は、ステー263を第1の方向262に付勢するとともに第1の方向について伸縮可能な付勢手段(図示例では基材261内に配置されかつ第1の方向262に伸縮可能なコイルばね)264を有する。押圧ローラ21は、押圧ローラ21に力が作用していないときはコイルばね264によって第1の位置に位置し、後述する所定の押圧力が作用してコイルばね264が圧縮されたときは第2の位置に位置するように構成される。
【0015】
なお図2に示すように、ステー263の移動方向をより確実に第1の方向に規定するために、第1の方向に延びるシャフト265をステー263に取付け、さらにシャフト265をがたつきなく挿通可能なスリーブ又はベアリング266を基材261に設けてもよい。
【0016】
ストリップ押圧部2は、押圧ローラ21が第1の位置にあるときは押圧ローラ21を基部26に対して回転させず、かつ押圧ローラ21が第2の位置にあるときは押圧ローラ21を基部26に対して回転可能な状態とする回転防止手段を有する。第1の実施形態では、回転防止手段は、基部26に設けられた第1の係合部267と、押圧ローラ21に設けられた第2の係合部212とから構成される。具体的には、第1の係合部267は、基材261が有する押圧ローラ21側の面25から押圧ローラ21側に向けて突出するピン状の部材であり、一方第2の係合部212は押圧ローラ21に形成された環状凹部213の内周壁に設けられた少なくとも1つの切欠き部である。切欠き部212は、第1の位置においてピン状部材267に少なくとも部分的に係合し、これにより押圧ローラ21の回転が防止される。
【0017】
すなわち上述の第1の位置とは、第1の係合部267と第2の係合部212とが互いに係合して、押圧ローラ21が基部26に対して回転できない状態となる位置を意味し、一方第2の位置とは、第1の係合部267と第2の係合部212とが互いに係合せず、押圧ローラ21が基部26に対して回転可能な状態となる位置を意味する。つまり押圧ローラ21は、その押圧面211に押圧方向(矢印262と反対の方向)の力が作用していないとき或いは作用している力が所定の値未満(コイルばね264を圧縮できない力)であるときは基部26に対して回転できず、押圧面211に作用している力が所定の値以上であるときは基部26に対して回転可能となる。
【0018】
ここでコイルばね264のばね定数は、ストリップ4に対する押圧ローラ21の押圧力が所定の値以上となったときに押圧ローラ21が基部26に対して第1の位置から第2の位置に変位できるように決定され、該所定の値の押圧力は、後述するようにストリップ4に貼着された両面接着テープ41がフランジ5にしっかり接着できるよう、すなわち、十分な濡れ面積で接合できるような値に設定される。
【0019】
なお図2(b)に示すように、切欠き212は、押圧ローラ21がいずれの角度位置であっても第1の位置においてピン267と係合できるようにするために、環状凹部213の全周に亘って形成されていることが好ましい。但し第1の係合部及び第2の係合部は、上述のようなピン状部材、及び半円上の切欠き分を少なくとも1つ備えた環状凹部に限られるものではなく、例えばピン状部材の代わりにラッチ状部材を用いてもよい。いずれにせよ、第1の係合部及び第2の係合部は、押圧ローラ21が第1の位置にあるときは互いに係合状態となって押圧ローラ21の回転を抑制し、押圧ローラ21が第2の位置にあるときは互いに非係合状態となって押圧ローラの回転を可能にするように構成される。
【0020】
次に、上述の治具1を用いてストリップを対象物に取付ける手順について説明する。ここでは、図3に示すように、ストリップ4を自動車の車体フランジ5(断面で図示)に取付けるものとし、さらにフランジ5には、図示しない内装材等をフランジ5に固定するための少なくとも1つのクリップ6が設けられているものとする。
【0021】
作業者は、図3に示すように、治具1を用いてストリップ4を保持し、ストリップ4に貼着された両面接着テープ41がフランジ5のアウターパネル51に当接するように治具1をフランジ5に接近させる。この状態では、ストリップ4が押圧ローラ21とフランジとの間に挟まれており、かつ押圧ローラ21は基部26に対して第1の位置(図2)にある。
【0022】
作業者は、図3の状態、すなわち両面接着テープ41がフランジ5のアウターパネル51に当接した状態で、押圧ローラ21を介してストリップ4をフランジ5側(図3では左側)に押付ける。ここで作業者による押付け力が所定の押圧力以上となり、より具体的にはコイルばね264の付勢力を上回ると、図4に示すように、コイルばね264が圧縮されて押圧ローラ21が基材261に対して第2の位置に移動する。該第2の位置では、図4に示すように、第1の係合部(図示例ではピン状部材267)と第2の係合部(図示例では切欠き212)との係合が解除され、押圧ローラは基部26に対して回転可能な状態となる。
【0023】
上述のように作業者は、押圧ローラ21が基部26に対して第2の位置(図4)に移動するまで、すなわち押圧ローラ21が回転可能な状態となるまでストリップ押圧部2をフランジ5に押し付ける。ここで押圧ローラ21を第2の位置に移動させるために必要な押付け力(所定の押圧力)は、ストリップ4の両面接着テープ41がストリップ4とフランジ5のアウターパネル51とを所望の接着力で接着できる(十分なテープ濡れ面積で接着する)値に設定される。すなわち付勢手段264の付勢力(図示例ではコイルばねのばね定数)は、上記所定の押圧力が作用しなければ押圧ローラ21を第2の位置に移動させないような値に設定される。
【0024】
作業者は、図4の状態、すなわち押圧ローラ21が第2の位置にある状態を維持しつつ(つまり少なくとも所定の押圧力を加えつつ)、ストリップ押圧部2をフランジ5の長手方向に沿って移動させる。このとき、押圧ローラ21は回転可能な状態にあるので、押圧ローラ21はストリップ4の長手方向に沿って回転移動しながらストリップ4をフランジ5に押付けていくことになる。従ってストリップ4は、両面接着テープ41により、その長手方向に亘って所望の接着力でフランジ5に取付けられる。ここで図3に示すように、ストリップ押圧部2はフランジ5を両側から挟む構成、具体的にはフランジ5のアウターパネル51とインナーパネル52との双方に当接する構成を具備しておらず、片側から当接する構成を用いているので、クリップ6のような物品が設けられていても該物品に干渉することなくストリップの取付け操作を行うことができる。
【0025】
従来、2つのローラでフランジを挟むような構成の治具を使用する場合、フランジ又はフランジ近傍にクリップ等の物品が配置されているときは、先にストリップを取付けてからクリップ等を取付けねばならず、製造工程に制約が生じていた。しかし本実施形態によれば、クリップ等をフランジに取付けた後であってもストリップの取付け作業を行うことができ、製造工程の自由度を高めることができる。
【0026】
一方、フランジを2つのローラ等で両側から挟む構成を利用しない場合、すなわち本実施形態に係る治具のようにいわゆる片当て式の構成を利用する場合、ストリップの確実な取付けのために両面接着テープに所定値以上の押圧力をかけることを担保することが望ましい。そこで本実施形態では、所定値以上の押圧力が作用しなければ押圧ローラが回転しない構成を採用することにより、作業者が所定値未満の押圧力でストリップの取付け作業を行うことがないようにしている。
【0027】
なお図1〜図3に示すように、ストリップ押圧部2は、押圧ローラ21の押圧面211に当接し又は押圧されているウェザストリップを、押圧方向(押圧ローラ21の当接方向)と略垂直な方向に支持するように配置された少なくとも1つの第1のガイドローラ(図示例では2つのガイドローラ22、23)を有してもよく、これにより作業中にストリップが治具から脱落することを防止できるとともに、フランジに対するストリップの正確な位置決めが可能となる。第1のガイドローラの回転軸は、押圧ローラ21の回転軸214(図2(a)参照)に略垂直であることが好ましく、さらに第1のガイドローラを複数設ける場合は、各ローラの回転軸が押圧ローラ21の回転軸214に略垂直であってかつ互いに略平行であることが好ましい。また各ローラの配置間隔は、ストリップの物性やフランジの形状等に基づいて適宜調節可能とすることもできる。
【0028】
またストリップ押圧部2は、押圧ローラ21の回転軸214と略平行の回転軸を有し、ストリップを押圧方向(押圧ローラ21の当接方向)と略平行な方向に支持するように配置された少なくとも1つの第2のガイドローラ(図示例では1つのガイドローラ24)を有してもよく、これによりフランジへのストリップの押圧がさらに安定する。なお第2のガイドローラ24は押圧ローラ21と径が異なっていてもよいが、図4(b)に示すように、押圧ローラ21が第2の位置にあるとき(押圧ローラに所定の押圧力が作用しているとき)の第2のガイドローラ24及び押圧ローラ21の外周面(押圧面)の共通の接線215が押圧方向262に対して略垂直(或いはフランジの長手方向に略平行)であることが好ましい。これにより、ストリップをフランジに対して略平行な姿勢で押圧することができ、より安定した押圧操作が可能となる。
【0029】
なお上述の第1及び第2のガイドローラ22、23、24は、後述する第2及び第3の実施形態に設けることもできる。
【0030】
図5は、上述の第1の実施形態におけるステーの代替として、押圧ローラを基部に対して移動可動にする可動部の他の構成を含む第2の実施形態を説明する図である。第2の実施形態では、押圧ローラ21′が押圧ローラ21′の回転軸214′の方向に概ね沿って延びる棒状又は板状のローラ支持部材27′の一端271′に回転可能に支持され、ローラ支持部27′の他端272′は第1の係合部(図示例ではピン状部材)267′を支持するピン支持部材である基部28′に枢軸273′によって枢設されている。またローラ支持部材27′と基部28′との間にはコイルばね等の付勢手段264′が配置され、コイルばね264′はローラ支持部材27′の一端271′をピン267′から離れる方向に付勢する。
【0031】
上述の構成により、図5(a)に示すように、押圧ローラ21′に押圧力が作用していないときはピン267′が押圧ローラの第2の係合部212′(例えば第1の実施形態と同様の切欠き)に係合して、押圧ローラ21′の基材27′に対する回転が抑制される。一方図5(b)に示すように、押圧ローラ21′が矢印262′で示す押圧方向に押付けられて所定の押圧力が作用しているときは、コイルばね264′が圧縮されてピン267′が第2の係合部212′から外れて押圧ローラ21′がローラ支持部材27′に対して回転可能となる。すなわち第2の実施形態では、図5(a)及び(b)における押圧ローラの位置が、それぞれ第1の実施形態における第1及び第2の位置に相当する。
【0032】
第2の実施形態では、ローラ支持部材27′及び基部28′の一方又は双方が、ストリップ取付け作業を行う際の作業者のための把持部として機能し得る。また第2の実施形態においては、コイルばね264′のばね定数は、ストリップに対する押圧ローラ21′の押圧力が所定の値以上となったときに押圧ローラ21′が基部28′に対して第1の位置から第2の位置に変位できるように決定され、該所定の値の押圧力は、ストリップに貼着された両面接着テープがフランジ等の取付け対象物に十分な濡れ面積で接合できるような値に設定される。
【0033】
図6は、所定の押圧力が作用しなければ押圧ローラが回転できない形態を実現する他の構成を含む第3の実施形態を説明する図である。第3の実施形態は、上述の第1又は第2の実施形態のように押圧ローラをピンに対して変位可能にする構成や、さらに第1及び第2の係合部のように押圧ローラの位置に応じて係合状態と非係合状態とに切り替わる構成を具備していないが、その代わりに、押圧ローラの回転に所定の負荷を与える構造を具備している。
【0034】
第3の実施形態に係る治具のストリップ押圧部2″は、基部26″と、基部26″に回転可能に支持される押圧ローラ21″とを有する。押圧ローラ21″は基部26″に対して変位可能である必要はなく、故に第1の実施形態のステーや第2の実施形態の枢支構造は不要である。第3の実施形態では、押圧ローラ21″は、基部26″に対して回転可能ではあるが、いわゆる自由回転可能な状態ではなく、抵抗部材7″による摩擦力に打ち勝つ一定以上のトルクを加えなければ回転できないようになっている。また第3の実施形態では、ストリップ取付け作業時に押圧ローラと基部との位置関係が変化しないので、作業者にとってストリップ取付け作業が行いやすいという利点がある。
【0035】
抵抗部材7″は、押圧ローラ21″を基部26″に対して回転軸214″について回転可能に固定するボルト等の固定手段216″と、固定手段216″に対向する押圧ローラ21の内周面217″との間に固定配置された例えばスリーブ状の部材であり、押圧ローラ21″の内周面217″と少なくとも部分的に当接する外周面71″を有する。従ってスリーブ7の外周面71″と押圧ローラ21″の内周面217″との間には摺動抵抗が生じるため、押圧ローラ21″は基部26″に対して自由回転又は指が触れた程度の僅かな力で回転できる状態ではなく、該摺動抵抗に打ち勝つトルクが外部から付与されないと回転できない。ここで該トルクは、スリーブ7の外周面71″と押圧ローラ21″の内周面217″との間の摩擦力によって付与させることができ、該摩擦力Fはスリーブ7″の外周面71″に対する押圧ローラ21″の内周面217″の垂直抗力Nに両者間の摩擦係数μを乗じた値(F=μN)で与えられる。さらに、本実施形態では垂直抗力Nは、押圧ローラ21の押圧面211″に作用する押圧力に概ね等しい。従って該押圧力(≒N)が、上述の所定の値(ストリップに貼着された両面接着テープがフランジ等の取付け対象物に十分な濡れ面積で接合できるような値)となるように他のパラメータを選定することにより、押圧ローラに所定の押圧力が作用しているときに押圧ローラが回転可能な状態とすることができる。
【0036】
なお抵抗部材7″は上述のスリーブ状のものに限られず、押圧ローラ21″に所定の回転負荷を与えられるものであればよい。従って抵抗部材7″は例えば、押圧ローラ21″の内周面217″に当接するコイルばねでもよい。
【0037】
なお上述の第2及び第3の実施形態に係る治具を用いたストリップの取付け方法は、第1の実施形態に係る治具を用いて行うものと概ね同様でよいので詳細な説明は省略する。但し第3の実施形態に係る治具を使用した場合は、ストリップ押圧部の押付けによって押圧ローラの基部に対する相対位置が変化しない。従って第1及び第2の実施形態では、押圧ローラの相対位置が変化したことによって作業者は押圧ローラが回転可能な状態となったことを認識できるが、第3の実施形態では作業者は、治具をストリップの長手方向に沿って移動させたときに押圧ローラが回転するか否かで押圧力が所定値以上であるか否かを判断できる。
【符号の説明】
【0038】
1 ウェザストリップ取付け用治具
2 ストリップ押圧部
21 押圧ローラ
212 第2の係合部
22、23、24 ガイドローラ
26 基部
264 付勢手段
267 第1の係合部
3 ストリップ案内部
4 ウェザストリップ
41 両面接着テープ
5 フランジ
6 クリップ
7″ 抵抗部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェザストリップを対象物に取付ける治具であって、
基部と、
前記基部に回転可能に支持されるとともに、前記対象物に対し前記ウェザストリップを押圧可能な押圧面を有する押圧ローラと、
前記押圧面に作用している力が所定の値未満であるときは前記押圧ローラを前記基部に対して回転させず、前記押圧面に作用している力が前記所定の値以上であるときは前記押圧ローラを前記基部に対して回転可能な状態とするように構成された回転防止手段と、
を有するウェザストリップ取付け用治具。
【請求項2】
前記押圧ローラは前記基部に対して変位可能に構成され、前記押圧ローラは、前記押圧面に作用している力が所定値未満であるときは前記基部に対して第1の位置に位置し、前記押圧面に作用している力が前記所定値以上であるときは前記基部に対して第2の位置に位置し、前記回転防止手段は前記基部に設けられた第1の係合部及び前記押圧ローラに設けられた第2の係合部を有し、前記第1及び第2の係合部は、前記押圧ローラが前記第1の位置にあるときは互いに係合して前記押圧ローラの前記基部に対する回転を抑制し、前記押圧ローラが前記第2の位置にあるときは互いに非係合状態となって前記押圧ローラを前記基部に対して回転可能な状態とするように構成される、請求項1に記載のウェザストリップ取付け用治具。
【請求項3】
前記押圧ローラの回転軸に略垂直な回転軸を備え、前記押圧ローラに当接しているウェザストリップを前記押圧ローラの当接方向と略垂直な方向に前記ウェザストリップを支持するように配置された少なくとも1つの第1のガイドローラをさらに有する、請求項1又は2に記載のウェザストリップ取付け用治具。
【請求項4】
前記押圧ローラの回転軸に略平行な回転軸を備え、前記押圧ローラに当接しているウェザストリップを前記押圧ローラの当接方向と略平行な方向に前記ウェザストリップを支持するように配置された少なくとも1つの第2のガイドローラをさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェザストリップ取付け用治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のウェザストリップ取付け用治具を用いたウェザストリップの取付け方法であって、
前記ウェザストリップ取付け用治具を用いて、対象物に取付けるべきウェザストリップを保持するステップと、
前記ウェザストリップに貼着された両面接着テープが前記対象物の所定部位に当接するように前記ウェザストリップ取付け用治具を対象物に接近させるステップと、
前記両面接着テープが前記対象物の所定部位に当接した状態で、前記押圧ローラを介して前記ウェザストリップを前記対象物に対して、所定の値以上の押圧力で押付けるステップと、
前記ウェザストリップを前記対象物に対して前記所定の値以上の押圧力で押付けた状態で、前記押圧ローラが前記ウェザストリップに対してその長手方向に沿って回転移動するように、前記ウェザストリップ取付け用治具を移動させるステップと、
を含む取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178281(P2011−178281A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44536(P2010−44536)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】