説明

ウェザーストリップ挿入工具および挿入方法

【課題】肉体的作業負荷を軽減しかつ良好な作業性を有するウェザーストリップ挿入工具および挿入方法を提供する。
【解決手段】
ウェザーストリップと当接し、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させるためのローラ130、ローラ130に配置され、ウェザーストリップとの当接を案内するためのガイド部材132、ローラ130を浮動自在に支持するための浮動支持手段160、および、ローラ130を回転させるための回転軸152を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェザーストリップ挿入工具および挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるドアやサンルーフ等のフレームのフランジは、雨水などの浸入を防いだりするために、ウェザーストリップが配置される。ウェザーストリップは、エアハンマーが発生させる押圧力によって、フランジに挿入される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】国際公開第01/74541号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の挿入工具に係るエアハンマーは、振動を付与することで、押圧力を発揮させている。したがって、挿入する際の衝撃が、挿入工具操作者に伝達され、かつ構造上大型で重量物となるため、作業中の肉体的負荷が大きい。
【0004】
また、前記挿入工具は、フランジに対して面直となるため、上方に比較的大きな作業空間を必要とする。そのため、対象フレームの上方に隣接して位置する部材あるいは部位が存在する場合、作業性が低下したり、干渉の発生により、手作業による挿入操作が必要となる虞がある。
【0005】
さらに、前記挿入工具は、ローラとウェザーストリップとの当接を案内するための別体のガイド部材を有しており、ガイド部材をセットするための作業工数が必要である。また、対象フレームのコーナー部の形状に沿って、ガイド部材およびローラを移動させることが困難であり、手作業による挿入操作が、必要とされる。
【0006】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、肉体的作業負荷を軽減しかつ良好な作業性を有するウェザーストリップ挿入工具および挿入方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
ウェザーストリップと当接し、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させるためのローラ、
前記ローラに配置され、前記ウェザーストリップとの当接を案内するためのガイド部材、
前記ローラを浮動自在に支持するための浮動支持手段、および、
前記ローラを回転させるための回転軸
を有することを特徴とするウェザーストリップ挿入工具である。
【0008】
上記目的を達成するための請求項20に記載の発明は、
回転軸によって回転させられるローラを、ウェザーストリップと当接させることで、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させ、
前記ローラに配置されるガイド部材によって、前記ウェザーストリップとの当接を案内し、かつ、
挿入する際の衝撃を、前記ローラを浮動自在に支持する浮動支持手段によって吸収する
ことを特徴とするウェザーストリップ挿入方法である。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明は、以下の効果を奏する。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、回転軸によって回転させられるローラを、ウェザーストリップと当接させることで、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させることが可能である。押圧力は、ローラの回転に基づいているため、工具構造を小型化かつ軽量化することが可能である。押圧力を発生させるための手段を、ローラの上方に配置することが不要であり、ローラの上方に大きな作業空間を必要としない。そのため、対象フレームの上方に隣接して位置する部材あるいは部位が存在する場合であっても、作業性に対する影響が抑制される。また、ローラに配置されるガイド部材によって、ローラとウェザーストリップとの当接を案内することが可能であり、対象フレームのコーナー部の形状に沿って、ガイド部材およびローラを移動させることを容易に実施することができる。さらに、挿入する際の衝撃は、ローラを浮動自在に支持する浮動支持手段によって、吸収することができるため、挿入工具操作者に対する伝達を抑制することが可能である。つまり、肉体的作業負荷を軽減しかつ良好な作業性を有するウェザーストリップ挿入工具を提供することが可能である。
【0011】
請求項20に記載の発明によれば、ウェザーストリップを対象フレームのフランジに挿入するための押圧力は、ローラの回転に基づいているため、工具構造を小型化かつ軽量化することが可能である。押圧力を発生させるための手段を、ローラの上方に配置することが不要であり、ローラの上方に大きな作業空間を必要としない。そのため、対象フレームの上方に隣接して位置する部材あるいは部位が存在する場合であっても、作業性に対する影響が抑制される。ローラとウェザーストリップとの当接は、ローラに配置されるガイド部材によって案内されるため、対象フレームのコーナー部の形状に沿って、ガイド部材およびローラを移動させることが容易である。さらに、挿入する際の衝撃は、ローラを浮動自在に支持する浮動支持手段によって、吸収されるため、挿入工具操作者に対する伝達が抑制される。つまり、肉体的作業負荷を軽減しかつ良好な作業性を有するウェザーストリップ挿入方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、実施の形態1に係る挿入工具を説明するための概略図、図2は、図1に示される挿入工具によるウェザーストリップの挿入を説明するための断面図である。
【0014】
挿入工具100は、工具本体部110およびローラ治具120を有し、ウェザーストリップ10を、対象フレームのフランジに挿入するために使用される。対象フレームは、例えば、車両におけるドアやサンルーフなどの蓋となる部品およびボディである。
【0015】
ウェザーストリップ10は、対象フレームのフランジに挿入される部位とシール機能を発揮する部位を有し、隙間を塞ぐことで、例えば、車室内に雨水等が浸入することを抑制する機能を発揮する。ウェザーストリップ10は、適用される対象フレームのフランジに対応して複雑な断面形状を有し、例えば、押出成形によってソリッドゴムから製造される。ソリッドゴムは、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)である。
【0016】
工具本体部110は、ローラ治具120を駆動するためのモータおよび伝動機構が内蔵された充電式インパクトレンチからなり、人手により把持するための第1把持部112、チャック部114、電源スイッチ116および電源ケーブル118を有する。
【0017】
第1把持部112は、人手により把持されるグリップ部113を有する。グリップ部113は、ローラ治具120の軸に対し略直角に延長している。したがって、挿入工具操作者は、グリップ部113を把持した状態で、ウェザーストリップ10および対象フレームのフランジの側方で作業をすることが可能であり、作業スペースを容易に確保することができる。
【0018】
チャック部114は、ローラ治具120を着脱自在に連結するために使用される連結手段である。したがって、ローラ治具120を使用しない場合、別の着脱式治具を装着することで、工具本体部110を他の用途に使用することが可能である。なお、必要に応じて、減速機構を組み込んだり、バッテリを省略して外部電源のみとすることも可能である。
【0019】
ローラ治具120は、対象フレームのフランジに挿入する押圧力を発生させるために使用される。
【0020】
図3は、図1に示されるローラ治具を説明するための側面図、図4は、図3に示されるローラを説明するための断面図、図5は、図4の線V−Vに関する断面図、図6は、図3に示される回転軸を説明するための側面図、図7は、図6の線VII−VIIに関する断面図、図8は、図3に示される第1浮動支持手段を説明するための断面図、図9は、図3に示される第2把持部を説明するための断面図である。
【0021】
ローラ治具120は、ローラ130、回転軸150、第1浮動支持手段160および第2把持部170を有する。
【0022】
ローラ130は、回転軸150によって回転(駆動)させられる。ローラ130は、例えば、MCナイロンなどのエンジニアリングプラスチックから形成され、端部に配置される突縁部132、突縁部132の間に位置する当接面134、および、端部端面間を連通している貫通穴136を有する。
【0023】
突縁部132は、ウェザーストリップとの当接を案内するためのガイド部材であり、端部端面に向かって連続的に拡径しており、屈曲面を有する。つまり、ローラ130に配置される突縁部132によって、ローラ130とウェザーストリップとの当接を案内することが可能であり、対象フレームのコーナー部の形状に沿って、突縁部132およびローラ130を移動させることを容易に実施することができる。また、突縁部132はローラ130に配置されているため、ガイド部材をセットする作業自体が不要となる。
【0024】
当接面134は、略円形断面形状を有し、ウェザーストリップと当接する部位である、したがって、回転軸150によって回転させられるローラ130を、ウェザーストリップと当接させることで、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させることが可能である。押圧力は、ローラ130の回転に基づいているため、工具構造を小型化かつ軽量化することが可能である。
【0025】
また、押圧力を発生させるための手段(例えば、エアハンマー)を、ローラ130の上方に配置することが不要であり、ローラの上方に大きな作業空間を必要としない。
【0026】
したがって、例えば、車両のバックドアに対して適用されるウェザーストリップを挿入する際のように、対象フレームの上方に隣接して位置する部材あるいは部位が存在する場合であっても、作業性に対する影響が抑制される。なお、当接面134の軸方向の幅は、遊びを持たせるため、ウェザーストリップより若干大きく設定されている。
【0027】
貫通穴136は、ローラ130の中心軸と位置合せされており、略矩形状部137および略円筒部138を有する。略矩形状部137は、工具本体部側の端部端面から延長し、途中で、略円筒部138に連結している。略円筒部138は、略矩形状部137より大きな径を有する拡径部であり、逆側の端部端面まで延長している。
【0028】
回転軸150は、軸本体部152、環状突出部154および拡張軸部156を有し、ローラ130を回転させるために使用される。
【0029】
軸本体部152は、工具本体部110のチャック部114に着脱自在に連結される端部、および、環状突出部154に連結される端部を有し、工具本体部110からの駆動力が伝達される。軸本体部152の途中には、第2把持部170の工具本体部110に近接する移動を規制するための手段が配置される。当該手段は、環状凹部153、および、環状凹部153に嵌合されるサークリップ153Aからなるが、この形態に特に限定されない。
【0030】
環状突出部154は、ローラ130の工具本体部110に向う移動、および、第2把持部170の工具本体部110から離間する移動を、規制するための部材である。
【0031】
拡張軸部156は、ローラ130の貫通穴136の形状に対応する略矩形断面形状を有し、貫通穴136に摺動自在に配置され、環状突出部154に連結される端部、および、貫通穴136から突出する端部157を有する。端部157の端面には、ねじ溝が形成された凹部158が配置される。
【0032】
第1浮動支持手段160は、工具本体部110からの遠位側におけるローラ130の端部端面に配置され、ローラ130を浮動自在に支持するために使用される。第1浮動支持手段160は、ローラ130の変位を吸収するための弾性部材162、弾性部材162を弾性的に保持するための押さえ板164、および、押さえ板164を固定するための締結部材168を有する。
【0033】
弾性部材162は、例えば、バネ部材であり、貫通穴136の略円筒部138に配置さる。押さえ板164は、拡張軸部156の端部157の凹部158と位置合わせされた穴部を有し、拡張軸部156の端部157に配置される。
【0034】
締結部材168は、凹部158のねじ溝と対応するねじ溝が形成された軸部、および、押さえ板164の穴部より大きな径を有する頭部を有しており、押さえ板164を、拡張軸部156の端部157に固定することが可能である。締結部材168は、必要に応じて、押さえ板164と一体化したり、適宜複数設けたりすることも可能である。
【0035】
ローラ130は、拡張軸部156に沿って摺動自在であり、かつ、弾性部材162は、位置が固定された押さえ板164によって支持されている。したがって、弾性部材162は、ローラ130を浮動自在に支持し、拡張軸部156に沿ったローラ130の変位を吸収することが可能である。つまり、ウェザーストリップを挿入する際の衝撃は、ローラを浮動自在に支持する第1浮動支持手段160によって、吸収することができるため、挿入工具操作者に対する伝達を抑制することが可能である。
【0036】
第2把持部170は、軸受部171、ブラケット部173およびグリップ部174を有する。
【0037】
軸受部171は、回転軸150の環状突出部154に隣接し、軸本体部152に配置されており、回転軸150に連結される。軸受部171は、環状凹部153に嵌合されたサークリップ153Aによって、ローラ130の工具本体部110に向う移動が規制され、また、環状突出部154によって、工具本体部110から離間する移動が規制される。
【0038】
ブラケット部173は、軸受部171とグリップ部174とを連結するための部材である。
【0039】
グリップ部174は、人手により把持される部位であり、本体部175および支柱部178を有し、回転軸150に対し略直角に延長している。したがって、挿入工具操作者は、工具本体部110の第1把持部112のグリップ部113を持つ手と異なる手で、第2把持部170のグリップ部174を把持し、ローラ治具120を保持することが可能であり、作業性が良好である。
【0040】
また、第2把持部170の軸受部171は、回転軸150に連結されているため、ローラ130の振動は、グリップ部174の位置に影響を及ぼさず、良好な作業性を維持することが可能である。
【0041】
本体部175は、略円筒状であり、内部に配置される空間部176,177を有する。空間部176は、ブラケット部173に隣接しており、弾性部材179が配置される。弾性部材179は、例えば、バネ部材からなり、本体部175を弾性的に支持するために使用される。空間部177は、開口部を介して、空間部176に隣接し配置されており、ブラケット部173に対し、空間部176より遠位に位置する。
【0042】
支柱部178は、空間部176,177の間に位置する開口部の径より大きな径を有する拡径部、および、前記開口部の径より小さな径を有する軸部を有する。支柱部178の拡径部および軸部は、空間部177および空間部176に、それぞれ配置される。また、支柱部178の軸部は、ブラケット部173に固定される。
【0043】
支柱部178の軸部および拡径部は、本体部175を非固定式に支持するため、本体部175は、弾性部材179によって、弾性的に支持されることになる。したがって、軸受部171およびブラケット部173を経由し、回転軸150から伝達される振動を、吸収し、グリップ部174を持つ手に対する影響を、抑制することが可能である。
【0044】
次に、実施の形態1に係る挿入方法を説明する。
【0045】
実施の形態1に係る挿入方法においては、回転軸150によって回転させられるローラ130は、ウェザーストリップ10と当接させられることで、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させ、ローラ130に配置される突縁部132によって、ウェザーストリップ10との当接が案内され、かつ、挿入する際の衝撃は、ローラ130を浮動自在に支持する第1浮動支持手段160によって吸収される(図2および図3参照)。
【0046】
ウェザーストリップ10を対象フレームのフランジに挿入するための押圧力は、ローラ130の回転に基づいているため、工具構造を小型化かつ軽量化することが可能である。押圧力を発生させるための手段を、ローラ130の上方に配置することが不要であり、ローラ130の上方に大きな作業空間を必要としない。そのため、対象フレームの上方に隣接して位置する部材あるいは部位が存在する場合であっても、作業性に対する影響が抑制される。ローラ130とウェザーストリップ10との当接は、ローラ130に配置される突縁部132によって案内されるため、対象フレームのコーナー部の形状に沿って、突縁部132およびローラ130を移動させることが容易である。さらに、挿入する際の衝撃は、ローラ130を浮動自在に支持する第1浮動支持手段160によって、吸収されるため、挿入工具操作者に対する伝達が抑制される。
【0047】
ウェザーストリップ10の挿入の際、挿入工具100の工具本体部110における第1把持部112のグリップ部113は、挿入工具操作者によって、把持される(図1参照)。グリップ部113は、ローラ治具120の軸に対し略直角に延長しているため、挿入工具操作者は、ウェザーストリップ10および対象フレームのフランジの側方で作業することとなるため、作業スペースの確保が容易である。
【0048】
また、グリップ部113を把持する際、第2把持部170のグリップ部174も把持される。つまり、グリップ部113を持つ手と異なる手で、第2把持部170のグリップ部174が把持されて、ローラ治具120を保持する。したがって、作業性が良好である。
【0049】
この際、回転軸150から伝達される振動は、グリップ部174を弾性的に支持する弾性部材179によって吸収される(図9参照)。したがって、グリップ部174を持つ手に対する影響が、抑制される。
【0050】
以上のように、実施の形態1は、肉体的作業負荷を軽減しかつ良好な作業性を有するウェザーストリップ挿入工具および挿入方法を提供することが可能である。なお、グリップ部174の本体部175は、略円筒状であることに限定されず、例えば、図10に示されるように、本体部175の先端部をテーバ形状とし、人手の移動を規制することも可能である。
【0051】
図11は、実施の形態2に係る挿入工具のローラを説明するための断面図、図12は、実施の形態2に係る第2浮動支持手段を説明するための断面図である。
【0052】
実施の形態2は、第2浮動支持手段を有する点で、実施の形態1と概して異なる。なお、以下において、実施の形態1と同様の機能を有する部材については類似する符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
【0053】
ローラ230は、端部に配置される突縁部232、突縁部232の間に位置する当接面234、および、端部端面間を連通している貫通穴236を有する。
【0054】
貫通穴236は、ローラ230の中心軸と位置合せされており、略矩形状部237および略円筒部238,239を有する。略円筒部239は、工具本体部側の端部端面から延長し、途中で、略矩形状部237に連結している。略矩形状部237は、ローラ230の内部を延長し、略円筒部238に連結している。略円筒部238は、逆側の端部端面まで延長している。
【0055】
回転軸は、軸本体部252、環状突出部254および拡張軸部256を有する。
【0056】
工具本体部からの遠位側におけるローラ230の端部端面に、第1浮動支持手段260が配置され、工具本体部に対する近位側に、第2浮動支持手段261が配置される。
【0057】
第2浮動支持手段261は、略矩形状部239に配置される弾性部材263を有する。弾性部材263は、環状突出部254によって支持される。したがって、弾性部材263は、ローラ230を浮動自在に支持し、拡張軸部256に沿ったローラ230の変位を吸収することが可能である。
【0058】
以上のように、実施の形態2は、ローラ130の一方の端面のみが浮動自在に支持される実施の形態1と異なり、ローラ230の両方の端面を浮動自在に支持することが可能であり、挿入する際の衝撃の吸収能が、実施の形態1に比べて、向上しており、肉体的作業負荷をさらに軽減することが可能である。なお、必要に応じ、第2浮動支持手段261を拡張軸部256に固定するための独立した締結手段を設けることも可能である。
【0059】
図13は、実施の形態3に係る挿入工具のローラを説明するための断面図、図14は、図13の線XIV−XIVに関する断面図である。
【0060】
実施の形態3は、ローラの当接面の形状に関し、実施の形態2と概して異なる。
【0061】
ローラ330は、端部に配置される突縁部332、突縁部332の間に位置する当接面334、および、端部端面間を連通している貫通穴336を有する。
【0062】
当接面334は、略三角形状を有しており、凹凸断面形状を呈する。そのため、ローラ330が回転し、ウェザーストリップと当接する際、振動を発生させる。振動は、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を補強するため、作業効率が向上とする。
【0063】
以上のように、実施の形態3は、実施の形態2に比べて、作業効率を向上させることが可能である。なお、当接面334の形状は、略三角形状に限定されず、図15に示される楕円形状や図16に示される略矩形状などの他の凹凸断面形状とすることも可能である。
【0064】
図17は、実施の形態4に係る挿入工具のローラを説明するための断面図、図18は、図16に示されるスペーサを説明するための平面図である。
【0065】
実施の形態4は、ローラにおけるウェザーストリップとの当接面の軸方向の幅が、伸長自在である点で、実施の形態3と概して異なる。
【0066】
ローラ430は、端部に配置される突縁部432、突縁部432の間に位置する当接面434、および、端部端面間を連通している貫通穴436を有し、当接面434の略中央の位置で、軸方向に分割される。
【0067】
当接面434は、軸方向に分割された第1および第2半割部442,446からなり、その間には、スペーサ444が着脱自在に配置される。スペーサ444は、略矩形状の穴部が形成された略三角形状を呈しており、当接面と略同一の断面形状を有する。
【0068】
そのため、スペーサ444の配置数を変更することで、当接面434の軸方向の幅を、伸長させることが可能であり、ローラ治具(ローラ430)を交換することなく、多様なウェザーストリップに対して適用することが可能である。
【0069】
以上のように、実施の形態4は、実施の形態3に比べて、ローラ治具の汎用性を向上させることが可能である。
【0070】
なお、スペーサ444の形状は、略三角形状に限定されず、実施の形態1および実施の形態2のローラのように略円形状の当接面に適用される場合、図19に示されるように、略円形状を呈することとなる。また、必要に応じ、スペーサ444を第1および第2半割部442,446の間に固定するための独立の締結手段を設けることも可能である。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、実施の形態4に係るローラの当接面の軸方向の幅を伸長自在とする構成を、実施の形態1および実施の形態2に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施の形態1に係る挿入工具を説明するための概略図である。
【図2】図1に示される挿入工具によるウェザーストリップの挿入を説明するための断面図である。
【図3】図1に示されるローラ治具を説明するための側面図である。
【図4】図3に示されるローラを説明するための断面図である。
【図5】図4の線V−Vに関する断面図である。
【図6】図3に示される回転軸を説明するための側面図である。
【図7】図6の線VII−VIIに関する断面図である。
【図8】図3に示される第1浮動支持手段を説明するための断面図である。
【図9】図3に示される第2把持部を説明するための断面図である。
【図10】実施の形態1に係る第2把持部の変形例を説明するための断面図である。
【図11】実施の形態2に係る挿入工具のローラを説明するための断面図である。
【図12】実施の形態2に係る第2浮動支持手段を説明するための断面図である。
【図13】実施の形態3に係る挿入工具のローラを説明するための断面図である。
【図14】図13の線XIV−XIVに関する断面図である。
【図15】実施の形態3に係るローラの変形例を説明するための断面図である。
【図16】実施の形態3に係るローラの別の変形例を説明するための断面図である。
【図17】実施の形態4に係る挿入工具のローラを説明するための断面図である。
【図18】図16に示されるスペーサを説明するための平面図である。
【図19】実施の形態4に係るスペーサの変形例を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0073】
10・・ウェザーストリップ、
100・・挿入工具、
110・・工具本体部、
112・・第1把持部、
113・・グリップ部、
114・・チャック部、
116・・電源スイッチ、
118・・電源ケーブル、
120・・ローラ治具、
130・・ローラ、
132・・突縁部、
134・・当接面、
136・・貫通穴、
137・・略矩形状部、
138・・略円筒部、
150・・回転軸、
152・・軸本体部、
153・・環状凹部、
153A・・サークリップ、
154・・環状突出部、
156・・拡張軸部、
157・・端部、
158・・凹部、
160・・第1浮動支持手段、
162・・弾性部材、
164・・押さえ板、
168・・締結部材、
170・・第2把持部、
171・・軸受部、
173・・ブラケット部、
174・・グリップ部、
175・・本体部、
176,177・・空間部、
178・・支柱部、
179・・弾性部材、
230・・ローラ、
232・・突縁部、
234・・当接面、
236・・貫通穴、
237・・略矩形状部、
238,239・・略円筒部、
239・・略矩形状部、
252・・軸本体部、
254・・環状突出部、
256・・拡張軸部、
260・・第1浮動支持手段、
261・・第2浮動支持手段、
263・・弾性部材、
330・・ローラ、
332・・突縁部、
334・・当接面、
336・・貫通穴、
430・・ローラ、
432・・突縁部、
434・・当接面、
436・・貫通穴、
442・・第1半割部、
444・・スペーサ、
446・・第2半割部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェザーストリップと当接し、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させるためのローラ、
前記ローラに配置され、前記ウェザーストリップとの当接を案内するためのガイド部材、
前記ローラを浮動自在に支持するための浮動支持手段、および、
前記ローラを回転させるための回転軸
を有することを特徴とするウェザーストリップ挿入工具。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記ローラの端部に配置される突縁部によって構成されることを特徴とする請求項1に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項3】
前記突縁部は、前記ローラの端部端面に向かって連続的に拡径していることを特徴とする請求項2に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項4】
前記ローラにおける前記ウェザーストリップとの当接面は、凹凸断面形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項5】
前記凹凸断面形状は、略三角形状であることを特徴とする請求項4に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項6】
人手により把持するための第1把持部および前記回転軸を駆動するための伝動機構が配置される工具本体部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項7】
前記第1把持部は、人手により把持されるグリップ部を有し、前記グリップ部は、前記回転軸に対し略直角に延長していることを特徴とする請求項6に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項8】
前記工具本体部は、前記伝動機構に対して、前記回転軸を着脱自在に連結するための連結手段を、有することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項9】
人手により把持するための第2把持部を有し、前記第2把持部は、前記回転軸に連結されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項10】
前記第2把持部は、前記回転軸に配置される軸受部、人手により把持されるグリップ部、および、前記軸受部と前記第2把持部のグリップ部とを連結するためのブラケット部を有し、前記第2把持部の前記グリップ部は、前記回転軸に対し略直角に延長していることを特徴とする請求項9に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項11】
前記第2把持部の前記グリップ部は、弾性的に支持されていることを特徴とする請求項10に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項12】
前記工具本体部は、インパクトレンチからなることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項13】
前記浮動支持手段は、前記ローラの少なくとも一方の端部端面に配置されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項14】
前記浮動支持手段は、前記ローラの変位を吸収するための弾性部材を有することを特徴とする請求項13に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項15】
前記浮動支持手段は、前記ローラの端部端面に配置される前記弾性部材を弾性的に保持するための押さえ板を、有することを特徴とする請求項14に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項16】
前記ローラは、前記ローラの軸に沿って配置される貫通穴を有し、
前記ローラを回転させるための回転軸は、前記貫通穴を摺動自在に延長する拡張軸部を有し、
前記押さえ板は、前記拡張軸部の端部に固定されることを特徴とする請求項15に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項17】
前記貫通穴は、前記拡張軸部と嵌合自在の内周形状を有することを特徴とする請求項16に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項18】
前記ローラにおける前記ウェザーストリップとの当接面の軸方向の幅は、伸長自在であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項19】
前記当接面と略同一の断面形状を有するスペーサを有し、
前記当接面は、軸方向に分割された第1および第2半割部からなり、
前記スペーサは、前記第1半割部と前記第2半割部との間に着脱自在に配置されることを特徴とする請求項18に記載のウェザーストリップ挿入工具。
【請求項20】
回転軸によって回転させられるローラを、ウェザーストリップと当接させることで、対象フレームのフランジに挿入するための押圧力を発生させ、
前記ローラに配置されるガイド部材によって、前記ウェザーストリップとの当接を案内し、かつ、
挿入する際の衝撃を、前記ローラを浮動自在に支持する浮動支持手段によって吸収する
ことを特徴とするウェザーストリップ挿入方法。
【請求項21】
前記ローラにおける前記ウェザーストリップとの当接面は、凹凸断面形状を有しており、前記ローラが回転し、前記ウェザーストリップと当接する際、振動を発生させることを特徴とする請求項20に記載のウェザーストリップ挿入方法。
【請求項22】
前記凹凸断面形状は、略三角形状であることを特徴とする請求項21に記載のウェザーストリップ挿入方法。
【請求項23】
前記回転軸に対し略直角に延長している工具本体部の第1把持部のグリップ部を、把持することを特徴とする請求項20〜22のいずれか1項に記載のウェザーストリップ挿入方法。
【請求項24】
前記回転軸に連結される第2把持部のグリップ部を、把持することを特徴とする請求項23に記載のウェザーストリップ挿入方法。
【請求項25】
前記回転軸から伝達される振動を、前記第2把持部の前記グリップ部を弾性的に支持する弾性部材によって吸収することを特徴とする請求項24に記載のウェザーストリップ挿入方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2007−313604(P2007−313604A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145614(P2006−145614)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】