説明

ウェットスーツ

【課題】使用者に断熱性および暖かさを提供して、着用時に、不快感または冷たさを感じさせず、そして満足できる乾燥性能を有するウェットスーツを提供すること。
【解決手段】外側層、およびこの外側層に付着した内側層を備えるウェットスーツを提供することであって、このウェットスーツにおいて、上記内側層は、複数のクラスターで構成された複数の繊維と、相互に連結した複数のチャネルとを備え、このチャネルの各々の少なくとも一部は、隣接するクラスター間の空間により規定され、この隣接するクラスター間の空間が、クラスターの各々における隣接する繊維間の空間より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、水中で使用するための装身具に関し、より具体的には、ウェットスーツに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
ウェットスーツは、代表的に、水温が快適なレベルまたは安全なレベルを下回るときに、スイマー、サーファー、およびダイバーにより使用される。ウェットスーツは、着用時にウェットスーツが使用者の身体にフィットするように伸縮し得る、ネオプレンから構築された外側層を備える。この外側層は、使用者にある程度の断熱性および暖かさを提供する。ウェットスーツはまた、合成ニット布から構築されたさらなる内側層を備え得る。この合成ニット布は、ネオプレンの外側層に加えて、ウェットスーツに断熱性を提供する。この合成ニット布内側層はまた、ウェットスーツ内に入る水の一部を保持する。
【0003】
合成材料は、一般に、天然の断熱材料よりも低い熱保持特性を有する。従って、使用者は、このようなウェットスーツを着用したときに、不快感または冷たさを感じ得る。さらに、この合成内側層は、使用者の皮膚近くで滑らかさを感じ、そして、ウェットスーツ内に入る水を閉じ込めるために、密に詰まったニットである。結果として、合成内側層により閉じ込められる水は、簡単には水抜きされない。従って、合成内側層を有するウェットスーツの乾燥性能は、満足できるものではあり得ない。
【0004】
上記の観点から、現在のウェットスーツに関連する上記の問題の1つ以上を改善し得るウェットスーツに対する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用者に断熱性および暖かさを提供して、着用時に、不快感または冷たさを感じさせず、そして満足できる乾燥性能を有するウェットスーツを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)ウェットスーツであって、以下:
外側層;および
該外側層に付着した内側層であって、該内側層は、以下:
複数のクラスターで構成された複数の繊維;
相互に連結した複数のチャネル;
を備え、該チャネルの各々の少なくとも一部は、隣接するクラスター間の空間により規定され;該隣接するクラスター間の空間が、クラスターの各々における隣接する繊維間の空間より大きい、内側層
を備える、ウェットスーツ。
(項目2)上記クラスターの各々における複数の繊維が、上記内側層から外向きに延びる隣接するループ状の繊維を備える、項目1に記載のウェットスーツ。
(項目3)上記複数の繊維が、ウールを含む、項目1に記載のウェットスーツ。
(項目4)上記複数の繊維が、さらに、ポリエステル繊維を含む、項目3に記載のウェットスーツ。
(項目5)上記内側層が、ポリエステルおよびポリウレタンの層を含むニット布を含み、該ポリエステルおよびポリウレタンの層が、上記外側層に付着している、項目1に記載のウェットスーツ。
(項目6)上記外側層が、ネオプレンを含み、上記ポリエステルおよびポリウレタンの層が、該ネオプレンに積層されている、項目5に記載のウェットスーツ。
(項目7)背面に配置された開口部と、該開口部を開閉するために該開口部に接続された少なくとも1つのファスナーをさらに備える、項目1に記載のウェットスーツ。
(項目8)外側層および内側層を備えるウェットスーツであって、
該内側層は、以下:
外側および内側を有する第1の層であって、該第1の層の外側は、該外側層に付着している、第1の層;ならびに
該第1の層の内側に配置された第2の層であって、該第2の層は、ウールを含む複数の繊維を含み、間隔を空けた複数のクラスターで構成され、該複数のクラスター間に、互いに連結した複数のチャネルを規定する、第2の層
を備える、ウェットスーツ。
(項目9)上記クラスターの各々の複数の繊維が、上記第1の層の内側から外向きに延びる複数の隣接したループ状の繊維を含む、項目8に記載のウェットスーツ。
(項目10)上記複数の繊維が、ウール繊維およびポリエステル繊維を含む、項目8に記載のウェットスーツ。
(項目11)上記内側層は、ポリエステルおよびポリウレタンの層を含むニット布を含み、該ポリエステルおよびポリウレタンの層は、上記外側層に付着している、項目8に記載のウェットスーツ。
(項目12)上記外側層は、ネオプレンを含み、上記ポリエステルおよびポリウレタンの層は、該ネオプレンに積層されている、項目11に記載のウェットスーツ。
(項目13)背面に配置された開口部、および該開口部を開閉するために該開口部に接続された少なくとも1つのファスナーをさらに備える、項目8に記載のウェットスーツ。
(項目14)ウェットスーツであって、以下:
外側層;
該外側層に付着した内側層であって、ウールを含む複数のループ状の繊維を含み、間隔を空けた複数のクラスターで構成され、該複数のクラスター間に、互いに連結した複数のチャネルを規定する、内側層;
背面に配置された開口部;および
該開口部を開閉するために該開口部に接続された少なくとも1つのファスナー
を備える、ウェットスーツ。
(項目15)上記クラスターの各々の複数の繊維が、上記内側層から延びる隣接したループ状の繊維を含む、項目14に記載のウェットスーツ。
(項目16)上記複数の繊維が、ウール繊維およびポリエステル繊維を含む、項目14に記載のウェットスーツ。
(項目17)上記内側層が、ポリエステルおよびポリウレタンの層を含むニット布を含み、該ポリエステルおよびポリウレタンの層が、上記外側層に付着している、項目14に記載のウェットスーツ。
(項目18)上記外側層が、ネオプレンを含み、上記ポリエステルおよびポリウレタンの層が、該ネオプレンに積層されている、項目17に記載のウェットスーツ。
(項目19)上記ファスナーが、ジッパーを含む、項目14に記載のウェットスーツ。
(項目20)上記ファスナーが、Velcro(登録商標)閉鎖具を含む、項目14に記載のウェットスーツ。
【0007】
本開示の特徴および利点は、添付の図面(一例として、本開示の原理を例示する)と組み合わせれば、以下の好ましい実施形態の説明から明らかとなる。
【0008】
本開示の1つの局面に従って、ウェットスーツは、外側層および内側層を備える。この内側層は、外側層に付着しており、ウールを有する複数の繊維を含み、そして、複数のクラスターで構成される。この内側層はまた、相互に連結した複数のチャネルを備える。チャネルの各々の少なくとも一部は、隣接するクラスター間の空間により規定される。
【0009】
本開示の別の局面に従って、ウェットスーツは、外側層および内側層を備える。この内側層は、第1の層および第2の層を備える。第1の層は、外側および内側を備える。この第1の層の外側は、上記外側層に付着している。第2の層は、第1の層の内側に配置され、そして、ウールを含む複数の繊維を含み、そして、間隔を空けた複数のクラスターで構成されて、この複数のクラスター間の相互に連結した複数のチャネルを規定する。
【0010】
本開示のなお別の局面に従って、ウェットスーツは、外側層および内側層を備える。内側層は、外側層に付着しており、ウールを有する複数の繊維を含み、そして、複数のクラスターで構成される。この内側層はまた、相互に連結した複数のチャネルを含む。このチャネルの各々の少なくとも一部は、隣接するクラスター間の空間により規定される。このウェットスーツはまた、ウェットスーツの背面に配置された開口部を備える。このウェットスーツはさらに、この開口部を開閉するために開口部に接続された、少なくとも1つのファスナーを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の教示に従って構築されたウェットスーツは、ウェットスーツの外側層と、使用者の身体との間のウール繊維に空気を閉じ込め、使用者に断熱性を提供する。さらに、本開示の教示に従って構築されたウェットスーツの内側層のグリッドパターンは、内側層のウール繊維と共に、使用後その都度のウェットスーツの迅速な乾燥を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本開示の教示に従って構築されたウェットスーツの前から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1のウェットスーツの後ろから見た斜視図である。
【図3】図3は、本開示の教示に従って構築されたウェットスーツの模式的な斜視断面図である。
【図4】図4は、本開示の教示に従って構築されたウェットスーツの模式的な断面図である。
【図5】図5は、使用者の皮膚に隣接して示される、図4のウェットスーツである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
図1〜3を参照すると、本開示の教示に従って構築されたウェットスーツ10が示される。ウェットスーツ10は、外側層12、およびこの外側層12に付着されている内側層14(図3に示される)を備える。外側層12は、ウェットスーツ10が使用者により着用されたとき(示さず)に、水に直接露出され得るウェットスーツ10の層である。内側層14は、使用者の皮膚15(図5に示される)に隣接、または接触し得る。内側層14は、内側層14の上に、クラスター18で構成された、複数の繊維16を含む。複数の繊維16は、ウール繊維16を含むのみであり得る。あるいは、複数の繊維16は、ウール繊維と、他の天然もしくは合成の材料から構築された繊維との組み合わせを含み得る。内側層14はまた、相互に連結した複数のチャネル20を備える。チャネル20の各々の一部は、隣接するクラスター18間の空間により規定される。複数の繊維16の全てまたは実質的な数の繊維16の各々は、内側層14から、外向きに、すなわち、使用者の皮膚15に向かって延びる、ループ形状で構成されている。ウェットスーツ10はまた、ウェットスーツ10を着脱するために、任意の所望の方向(例えば、垂直または対角方向)で、ウェットスーツの前部または背部上に1つ以上の開口部を備え得る。開示される例において、開口部22(図2に示される)は、ウェットスーツの背部に配置され、これは、脊柱領域24に対して角度32で、肩甲骨領域26の下の脊柱領域24の近くにある第1の位置23から、首の領域30の上縁28の近くにある第2の位置27まで延びる。開口部22は、ジッパーのような1つ以上のファスナーにより開閉され得る。しかし、開示される例において、開口部22は、第1のファスナー34および第2のファスナーにより開閉される。
【0014】
全身用ウェットスーツであるウェットスーツ10が、図1および2に示される。しかし、ウェットスーツは、水中活動に使用され得る、任意の型のウェットスーツ10であり得る。例えば、ウェットスーツ10は、ベスト、トランク(trunk)、または半身用スーツのうちの1つまたは組み合わせであり得る。図1および2に示され、本明細書中に記載される例示的なウェットスーツ10において、ウェットスーツ10は、使用者の身体を足首および手首から首まで覆う、全身用ウェットスーツである。使用者がこのウェットスーツ10を着用したとき、このウェットスーツ10は、足首のカフ40、手首のカフ42、および首の領域30(本明細書中で先端部と呼ばれ得る)で、ウェットスーツ10内に入ってくる水に対して十分にシールし得る。示された先端部は、水がウェットスーツ10内に入ることを実質的に防ぐことに相当している、身体の部分に対して伸縮可能かつフィットし得る。しかし、一部の水は、ウェットスーツ10と使用者の皮膚15との間に入り得る。水は、断熱材として機能するように、ウェットスーツ10内に残り得る。こうして、首の領域34、足首カフ40および手首カフ42から入ってくる任意の水は、使用者から発散する体温の一部を実際に保持し得る。水はまた、ファスナー34および36により許容される程度まで、開口部22を通してウェットスーツ10内に入り得る。従って、ウェットスーツ10の使用の間に、内側層14は、使用者の皮膚15に隣接する空気および水の両方を保持し得る。
【0015】
図3〜5を参照すると、外側層12は、ネオプレンから構築される。ネオプレンは、伸縮自在であり、そして、水中で使用される際に浮力および断熱性を提供する、内部独立気泡を備え得る。さらに、ネオプレンは、水を通過させず、それによって、ウェットスーツ10に水に対する障壁を提供する。この独立気泡の数およびその大きさは、ネオプレンが製造されるプロセスに基づいて変化し得る。開示されるウェットスーツ10において、外側層12に使用されるネオプレンは、多数の小さな気泡を有し得、軽い重量、熱の保持、および高い伸縮性を提供し得る。例えば、外側層12は、90%以上の独立気泡率を有するネオプレンから構築され得る。
【0016】
内側層14は、外側52および内側54を有する第1の層50を備える。内側層14はまた、第2の層56を備える。第1の層50の外側52は、外側層12に付着している。第2の層56は、複数の繊維16を備え、これは、第1の層50の内側54に配置され、使用者の皮膚15と接触し得る。第1の層50は、ネオプレンにしっかりと付着、または積層され得、ネオプレンとほぼ同じ程度に伸縮性であり得る、任意の型の材料から選択され得る。開示される例において、第1の層50は、ポリエステルおよび/またはポリウレタンから構築され、この組み合わせは、ネオプレンと同程度に伸縮性であり得、そして、接着剤、または当該分野で公知の他の方法によってネオプレンにしっかりと積層され得る。第1の層50は、ジャージニットのような編まれた構造を有し、そして、約80〜95%ポリエステルおよび約5〜20%ポリウレタンで構築され得る。
【0017】
内側層14は、低パイルのポリエステルおよびポリウレタンのニット層(第1の層50を規定する)および、高パイル層を形成する複数の繊維16(第2の層56を規定する)を備える。この複数の繊維16は、クラスター18内の第1の層50に編み込まれ得、そして、第1の層50の内側54から外向きに延び得る。クラスター18間の空間が、相互に連結したチャネル20を形成する。こうして、相互に連結したチャネル20が、チャネル20の壁を形成する、隣接するクラスター18の側部と、隣接するクラスター18間のチャネル20の床面を形成する低パイルのニット層(すなわち、第1の層50)とによって規定され得る。
【0018】
繊維16は、ウール繊維を含むのみであり得る。あるいは、繊維16は、ウール繊維と、他の天然もしくは合成の材料から構築された繊維との組み合わせを含み得る。ウールは、たいていの合成材料および天然に存在する材料と比べて低い熱伝導率を有する。例えば、ウールの熱伝導率は、約0.9カロリー/cm秒であるが、これに対して、ナイロンおよびポリエステルの熱伝導率は、それぞれ、約6.0カロリー/cm秒および約5.0カロリー/cm秒である。従って、複数の繊維16の全てまたは多くをウールから構築することによって、ウェットスーツ10の使用者から発散される熱は、使用者を暖かく保つために、ウェットスーツ10内に維持され得る。ウール繊維16が、使用者の皮膚15に痒みを生じないようにするために、ウール繊維16の平均直径は、約19.5μm以下であり得る。さらに、ウール繊維16は、オゾン処理されて、ウール繊維16の縮みおよび痒みの可能性を低減し得る。
【0019】
クラスター18の各々は、複数のウール繊維16を含むのみであり得る。あるいは、クラスター18の各々は、ウール単独では提供し得ない、1つ以上の所望の特性を提供するために、他の材料から構築された繊維16をさらに含み得る。あるいは、さらに、各繊維16は、編んでまとめられ得るか、ねじられ得るか、編み込まれ得るか、または、ウール繊維および他の天然もしくは合成の繊維の複合構築物を有し得る。しかし、開示される例において、複数の繊維16は、クラスター18の各々において、ウールから構築され、一方で、クラスター18内の残りの繊維16は、ポリエステルから構築され得る。ポリエステルは、ウール繊維単独では提供し得ない、かさ高いか、もしくはバネ様の機能をクラスター18の各々に提供する。開示される例において、クラスター18の各々は、約10〜80%のウール繊維16および90〜20%のポリエステル繊維16を含み得る。例えば、第2の層56は、約67%のウールおよび約33%のポリエステルから構築され得る。従って、クラスター18の各々が、3×3の矩形配置内に9本のループ状繊維16を含む場合、3本の繊維16、または一列になった3本の繊維16が、ポリエステルから構築され得、一方で、残りの繊維16が、ウールから構築され得る。しかし、あるクラスター18は、ポリマー繊維16よりも多いウール繊維16を含み得、そして、別のクラスター18は、ウール繊維16よりも多くポリエステル繊維16を含み得る。こうして、異なる材料から構築された繊維16の分布は、クラスター18の各々で異なり得るが、複数のクラスター18を有する第2の層56の一部は、第2の層56が構築される構成材料からの、ほぼ均一な繊維16の分布を含み得る。
【0020】
繊維16は、密に詰まったニットループ構造で整列され、これは、一般に、テリーループ構造と呼ばれる。各繊維16は、第1の層50から外向きに(すなわち、使用者の皮膚15に向かって)延びるループ形状を形成する。複数の繊維16のこの密に詰まったニットループ構造は、各繊維16のループおよび繊維16の間に空間を提供し、この空間に空気が閉じ込められ得るか、または維持され得る。当業者は、空気が低い熱伝導率(約06カロリー/cm秒)を有することを容易に認識する。この閉じ込められた空気は、使用者の皮膚15から発散される熱を吸収および維持し得る。従って、第2の層50の密に詰まったニットループ構造は、複数の繊維16の全てまたは多くのウール構造に加えて、ウェットスーツ10の使用者に断熱性を提供する。
【0021】
上記のように、内側層14は、第1の層50、およびクラスター18を有する第2の層56を備える。クラスター18の各々は、第1の層50上に編み込まれた複数の繊維16を備える。クラスター18の各々における複数の繊維16は、第1の層50に編み込まれて、第2の層56を形成し得る。従って、クラスター18の各々は、隣接するチャネル20の一部によって、隣接するクラスター18から断絶され得る。しかし、開示される例において、間隔を空けたクラスター18の隣接する列は、第1の層50に連続的に編み込まれる。各列のクラスター18は、その列のクラスター18を形成する繊維によって接続される。しかし、隣接する列のクラスター18は、接続されない。クラスター18の各列を形成する繊維は、複数の繊維16のテリーループ構造と比較して、クラスター18間が比較的平坦な構成で第1の層50に編み込まれる。従って、クラスター18を接続する繊維は、比較的平坦な編み込まれた構成で、クラスター18間のチャネルの一部を覆い得る。こうして、内側層50は、第1の層50に編み込まれたクラスター18の隣接する列と共に構築されてクラスター18のグリッドを形成し得、第2の層56を規定する。
【0022】
上述のように、内側層14は、クラスター18および相互に連結したチャネル20を備える。クラスター18およびチャネル20は、均一であり得るか、または、可変の幾何学的特性を有し得るグリッドを形成する。例えば、図3〜5において、クラスター18およびチャネル20は、内側層14上に矩形のグリッドを形成するように示され、このグリッドにおいて、クラスター18の各々は、ほぼ同じ大きさであり、ほぼ等間隔に離れている。しかし、複数の繊維16、クラスター18および/またはチャネル20の大きさおよび形状は、ウェットスーツ10の任意の部分ごとに構成され得、内側層14に所望の特性を提供し得る。例えば、ウェットスーツの特定の部分は、ウェットスーツ10の他の部分と比べ、より高い断熱性と熱保持性を必要とし得る。従って、クラスター20の大きさおよび密度は、ウェットスーツ10の他の部分と比較して、さらなる熱保持性を提供するように決定され得る。別の例において、ウェットスーツ10の特定の部分は、他の部分よりもより伸縮する必要があり得る。これらの部分は、ウェットスーツ10の他の部分よりも、使用者の身体に対してより多くの複数の繊維16を圧迫し得る。ウェットスーツ10全体で同じ熱保持特性または断熱特性を提供するために、過度に伸びる部分にある複数の繊維16の高さ、厚み、形状および材料の構成は、所望の断熱特性または熱保持特性を提供するように決定され得る。チャネル20の幅、相互連結性、形状および深さもまた、所望の断熱特性または熱保持特性を提供するために、ウェットスーツ10の任意の部分で変動し得る。
【0023】
図5を参照して、ウェットスーツ10が使用者により装着されるとき、ウェットスーツ10の伸びは、複数の繊維16を使用者の皮膚15に対して圧迫する。各繊維16のループ形状は、隣接する繊維と相まって、使用者の皮膚15と第1の層50との間に空気ポケット72を提供する。さらなる空気ポケット74がまた、チャネル20により提供される。各繊維のループ形状はまた、複数の繊維16と共同で繊維16の完全な圧迫を防止し、第1の層50と使用者の皮膚15との間の空気ポケット72および74を維持する、バネ様もしくは弾性の特性を提供する。空気ポケット72の大きさを実質的に消失させるように複数の繊維16が完全に圧迫される場合でさえ、空気ポケット74の壁を形成する複数の繊維16の圧縮された高さの結果として、チャネル20により形成される空気ポケット74が、なお残存する。
【0024】
ウェットスーツ10は、ウェットスーツ10の湿った部分が、空気に曝され得るか、または、水が、ウェットスーツ10の先端部から水抜きされ得るように、整列および/または配向されることによって、使用後その都度に乾燥され得る。当業者に公知であるように、オゾン処理したウールのような脱スケールウールは、他の型の天然繊維もしくは合成繊維よりも比較的早く乾燥し得る。さらに、ウール繊維は、その外側表面に、撥水性を提供する天然油を有する。天然油はまた、オゾン処理したウールのような脱スケールウール上にも存在する。従って、繊維16に、オゾン処理したウールのような脱スケールウールを使用することによって、ウェットスーツ10の内側層12は、撥水性であり得、その結果、ウェットスーツ10は、迅速に乾燥し得る。さらに、繊維16の撥水性は、水をクラスター18からそれぞれの隣接するチャネル20へと迅速に流し、チャネル20を通してウェットスーツ10から水抜きされる。こうして、ウェットスーツ10は、ウール繊維16の撥水性と、クラスター18およびチャネル20のグリッド配置との組み合わせによって、迅速に乾燥され得、ウェットスーツの外側への水の迅速な流れを提供する。ウェットスーツ10は、ウェットスーツ10の内側にある任意の水が、先端部を通して水抜きされ得るように、物体に掛けられ得るか、または、物体から吊るされ得る。ウェットスーツ10はまた、裏返して、内側層12を空気に曝し得る。しかし、水抜きのプロセスを加速するために、使用者は、ウェットスーツ10を裏返しにして、クラスター18の上を手で少し圧力を加えながら滑らせて、水を空気ポケット72から出して、チャネル20へと絞ることができる。それゆえ、内側層14のチャネル20があるので、ウェットスーツは、過剰の水から迅速に水抜きされ得、その結果、迅速に乾燥され得る。
【0025】
本開示の教示に従って構築されたウェットスーツベストの例(試験ウェットスーツと呼ぶ)を、ナイロンニットの内側層のみを有するウェットスーツ(ナイロンニットウェットスーツと呼ぶ)と比較した。試験ウェットスーツおよびナイロンニットウェットスーツの両方が、3mm厚のネオプレン外側層を備えた。両方のウェットスーツを、乾燥時に、約20℃(68°F)の温度の室内で試験した。両方のウェットスーツを、33℃(91.4°F)の一定表面温度を有するマネキンにおいて試験した。マネキンの胸部領域での温度測定の結果は、試験ウェットスーツについて、約0.69、ナイロンニットウェットスーツについて、約0.36のCLO評点であった。CLO評点は、装身具の熱保持性を評価するために使用し、これは、一般に、21℃(70°F)の室温で快適である、休息中の被験体により必要とされる装身具の量を示す。それゆえ、示された試験条件下では、試験ウェットスーツは、ナイロンニットウェットスーツと比較して、マネキンから発散される熱量の2倍近くを保持した。
【0026】
図2を参照すると、開口部22は、脊柱領域24に対して角度32で、肩甲骨領域26の下にある脊柱領域24の近くにある第1の位置23から、首の領域30の上縁28の近くにある第2の位置27まで延びる。開口部22は、1つ以上のファスナーにより開閉され得る。しかし、開示される例において、開口部22は、第1のファスナー34および第2のファスナー36によって開閉される。第1のファスナー34は、開口部22の第1の部分82を開閉し得る、ジッパープル80を有するジッパーであり得る。第1の部分82は、脊柱領域24から角度32で、第1の位置23から肩甲骨領域26の上まで延びる。ジッパー34は、ジッパー34を引き上げることにより、第1の部分82が閉じ、そしてジッパー34を引き下げることにより、第1の部分82が開き得るように、第1の部分82に接続される。第2のファスナー36は、開口部22の第2の部分84を開閉し得るVelcro(登録商標)閉鎖具であり得る。第2の部分84は、第1の部分82から連続して、角度32で第2の位置27へと延び得る。それゆえ、第1の部分82および第2の部分84は、開口部22を規定するように接続される。開示される例において、角度32は、首の領域30において、第2の位置27と脊柱領域24との間の約2.5インチの距離により決定される。角度32は、ファスナー34および36が、このような屈曲を妨害または留まらせることなく、使用者が容易に曲げることを可能にする。
【0027】
ウェットスーツ10の首の領域は、ウェットスーツ10の先端部であり、そして、上述のように、ウェットスーツ10内に入る水に対して実質的なシールを提供し得る。第2のファスナー36は、Velcro(登録商標)閉鎖具で構築されているので、Velcro(登録商標)閉鎖具の幅は、ウェットスーツ10の使用者の首のサイズの変動を補償するために、広範囲な閉鎖配置を提供するように決定され得る。従って、使用者は、Velcro(登録商標)閉鎖具を閉鎖し得、その結果、ウェットスーツ10の首の領域が、実質的かつ伸縮自在に、使用者の首にフィットして、首の領域30において実質的なシールを提供する。
【0028】
上記のことから、本開示の教示に従って構築されたウェットスーツが、ウェットスーツの外側層と、使用者の身体との間のウール繊維に空気を閉じ込め、使用者に断熱性を提供することが理解される。さらに、ウェットスーツの内側層のグリッドパターンは、内側層のウール繊維と共に、使用後その都度のウェットスーツの迅速な乾燥を提供する。本開示の特定の形状が例示および説明されてきたが、種々の改変が、本開示の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが明らかである。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲を除いては、制限的であることが意図されない。
【符号の説明】
【0029】
10:ウェットスーツ
12:外側層
14:内側層
15:皮膚
16:繊維
18:クラスター
20:チャネル
22:開口部
34、36:ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−236549(P2011−236549A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191642(P2011−191642)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【分割の表示】特願2006−134543(P2006−134543)の分割
【原出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(502233724)パタゴニア・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】