説明

ウェットティッシュ収納容器

【課題】ウェットティッシュを通しやすいウェットティッシュ収納容器を提供する。
【解決手段】ミシン目線5を有するロール巻状のウェットティッシュ4が収納可能な容器本体2と、容器本体2の内部に収納されたウェットティッシュ4を外方へ取り出すための開口部6を形成した蓋体3と、を備えたウェットティッシュ収納容器1であって、通過するウェットティシュ4に対して摩擦抵抗を付与し、ミシン目線5に沿ってウェットティッシュ4を切断する取り出し孔15を有し、蓋体3よりも柔らかい材料で形成された取り出し孔形成部材14を備え、蓋体3は、内側の面が取り出し孔形成部材の外側面と対向する位置に形成された壁部12と、壁部12から取り出し孔形成部材14の内径方向へ突出し、取り出し孔形成部材14の外周面よりも内径側に先端が位置するように形成された爪部13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットティッシュを内部に収納するウェットティッシュ収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウェットティッシュを保管したりする際には、ウェットティッシュ収納容器(以下、収納容器という。)が用いられている。収納容器は、ウェットティッシュの形状に応じて種々の形状のものが存在する。ロール巻状のウェットティッシュの場合には、ボトルタイプと呼ばれる収納容器が従来から広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のウェットティッシュ用容器は、ウェットティッシュを収納する容器本体と、中央に穴を有する蓋体とから構成されており、ウェットティッシュの引き出し穴を備えた山高帽子状弾性部材の該頭部を蓋体の穴の内側から嵌入して構成されている。特許文献1に記載のウェットティッシュ用容器は、ウェットティッシュの引き出し穴が小径の円形状になるように形成されており、この引き出し孔を通過するウェットティッシュに対して、該ウェットティッシュがミシン目部分で切断する大きさの抵抗力を付与するように構成されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の収納容器は、おしぼり等の紙布(ウェットティッシュ)が収納された容器本体と、容器本体を密封的に閉塞する上蓋から構成されており、上蓋には、ゴム、ウレタン等の弾力性を有する素材により一体成形された口栓が設けられるように構成されている。口栓には、スリット状の切り欠きが形成されており、この切欠きを閉じてスリットを形成し、スリットから紙布を引き出すように構成されている。また、口栓は、上蓋に形成された環状壁で囲まれた空間内に配置されるとともに環状壁によって圧縮される方向へ力が加えられるように構成されている。さらに、口栓は、環状壁から内径方向に突出する環状突起によって、該空間内から離脱する方向へ抜けないように保持されている。
【0005】
また、特許文献3に記載の収納容器は、容器本体と蓋体とから構成されており、蓋体には、上面部にウェットティッシュ挿通穴が設けられ、このウェットティッシュ挿通穴が位置する部分にウェットティッシュ取出口部材が着脱自在に取り付けられて構成されている。ウェットティッシュ取出口部材は、ウェットティッシュ挿通穴を閉塞する面積を有した弾性材からなり、中央付近に小孔が形成され、外端面から小孔に達する分断部が形成されている。蓋体には、内径がウェットティッシュ取出口部材の外径よりも若干小さくなるように形成された環状の壁部が形成されており、ウェットティッシュ取出口部材は、この壁部によって圧縮された状態で保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−34177号公報
【特許文献2】実公昭58−27940号公報
【特許文献3】特開2010−280431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のウェットティッシュ用容器は、指で力を加えてウェットティッシュの引き出し穴の孔径が大きくなるように山高帽子状弾性部材を弾性変形させることが困難であった。そのため、特許文献1に記載のウェットティッシュ用容器の場合は、先端の尖ったものでウェットティッシュを押す等して引き出し穴に通さなければならず、該ウェットティシュを引き出し穴に通す作業が煩雑になるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2及び3に記載の収納容器は、口栓に形成したスリット状の切り欠きにウェットティッシュを通し、その後に口栓を上蓋に取り付けられるように構成しているので、ウェットティッシュを口栓の中に通す際に先端の尖った別の部品を使用しなくてもよいが、ウェットティッシュが口栓の切り欠きから脱落してしまった場合には、その都度口栓を上蓋から取り外さなければならないという問題があった。特に、特許文献2に記載の収納容器は、口栓が上蓋に対して着脱自在に取り付けられているので、使用中に口栓が上蓋から脱落してしまうという問題もあった。
【0009】
また、特許文献2及び3に記載の収納容器は、ウェットティッシュに対して適切な大きさの摩擦抵抗を一定に付与しなければならず、そのための環状壁の内寸法や口栓の外寸法を精度よく仕上げなければならないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたもので、ウェットティッシュを取り出しやすくすることが可能なウェットティッシュ収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
(1)張力により切断可能な切り離し部を所定間隔に複数有するロール巻状のウェットティッシュが収納可能な容器本体と、前記容器本体に取り外し自在に取り付けられ、前記容器本体内に収納されたウェットティッシュを外方へ取り出すための開口部を形成した蓋体と、を備えたウェットティッシュ収納容器であって、前記ウェットティシュに対して摩擦抵抗を付与し、前記切り離し部に沿って前記ウェットティッシュを切断する取り出し孔を有し、前記蓋体よりも柔らかい材料で形成された取り出し孔形成部材を備え、前記蓋体は、前記取り出し孔形成部材を保持する保持部を有し、前記保持部は、内側の面が前記取り出し孔形成部材の外側面と対向する位置に形成された壁部と、前記壁部から前記取り出し孔形成部材の内径方向へ突出し、前記取り出し孔形成部材の外周面よりも内径側に先端が位置するように形成された爪部とを有することを特徴とするウェットティッシュ収納容器、
(2)取り出し孔は、一部の幅が部分的に広くなるように形成されている上記(1)記載のウェットティッシュ収納容器、
を要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るウェットティッシュ収納容器は、張力により切断可能な切り離し部を所定間隔に複数有するロール巻状のウェットティッシュが収納可能な容器本体と、前記容器本体に取り外し自在に取り付けられ、前記容器本体内に収納されたウェットティッシュを外方へ取り出すための開口部を形成した蓋体と、を備えたウェットティッシュ収納容器であって、前記ウェットティシュに対して摩擦抵抗を付与し、前記切り離し部に沿って前記ウェットティッシュを切断する取り出し孔を有し、前記蓋体よりも柔らかい材料で形成された取り出し孔形成部材を備え、前記蓋体は、前記取り出し孔形成部材を保持する保持部を有し、前記保持部は、内側の面が前記取り出し孔形成部材の外側面と対向する位置に形成された壁部と、前記壁部から前記取り出し孔形成部材の内径方向へ突出し、前記取り出し孔形成部材の外周面よりも内径側に先端が位置するように形成された爪部とを有し、取り出し孔形成部材に開口形成された取り出し孔に加えられた力によって弾性変形しやすくしたので、壁部及び爪部によって、取り出し孔形成部材が保持された状態を維持しながら、取り出し孔にウェットティッシュを容易に通すことが可能になる。
【0013】
また、本発明に係るウェットティッシュ収納容器は、取り出し孔形成部材を備えているので、取り出し孔が形成されている部分を弾性変形しやすくすることができ、かつ該ウェットティッシュに対して適切な摩擦抵抗を付与することが可能になる。そのため、壁部と取出し孔形成部材は、該壁部及び爪部によって取出し孔形成部材が確実に保持できる程度の寸法精度が確保されていればよく、製造コストを大幅に低減することが可能になるとともに、加工工程も簡略化することが可能になり、製造時の効率化を図ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るウェットティシュ収納容器の外観構成を表した外観斜視図である。
【図2】ウェットティッシュ収納容器の縦断面図である。
【図3】蓋体の構成を表した分解斜視図である。
【図4】蓋体本体に取出口部材を取り付ける手順を表した説明図である。
【図5】ウェットティシュを取り出し孔に通す際の手順を表した説明図である。
【図6】ウェットティッシュ収納容器における蓋体の変形例の構成を表した斜視図であり、(a)は第1の変形例、(b)は第2の変形例を表した図である。
【図7】取出口部材の変形例の構成を表した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るウェットティッシュ収納容器の実施の形態について、図1〜図3に基づいて説明する。なお、本明細書において「ウェットティッシュ」とは、ロール巻状に形成されているものと、ロール巻状に形成されたものからミシン目線にて切断されたシート状のもののいずれをも指すものとする。また、本明細書において、「上側」「下側」「前側」「後側」「左側」「右側」とは、図1に示す方向を言うものとする。
【0016】
図1に示すように、ウェットティッシュ収納容器1(以下、収納容器1と言う。)は、容器本体2と蓋体3とから構成されている。容器本体2は、上端が開口形成された円筒状の容器であり、該開口からウェットティッシュ4を収納することができるように形成されている。また、容器本体2の上部には、蓋体3を取り付けることができるように構成されている。容器本体2と蓋体3との取り付けは従来から公知の方法を任意に選択して使用することができる。また、容器本体2及び蓋体3は、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET、ABS樹脂等により形成されているが、これ以外の材質のものを任意に選択して使用してもよい。また、これら容器本体2及び蓋体3の製造にあたっても、従来から公知の方法を適宜使用してよい。また、容器本体2及び蓋体3の材質は、どちらも同じものを使用してもよいし、容器本体2と蓋体3とで異なるものを使用してもよい。なお、図1における符号Sは、収納容器1内に形成されている収納空間である。
【0017】
ウェットティッシュ4は、薬液等が含浸された不織布等により形成されている。ウェットティッシュ4は、図1及び図2においては、二点鎖線で示してあり、本実施の形態ではロール巻状に形成されている。また、ウェットティッシュ4には、収納容器1の内部から引き出される際に加わる張力により切断可能な切り離し部としてのミシン目線5を所定間隔に複数備えている。なお、切り離し部は、張力によりウェットティッシュ4の切断が可能であればよく、ミシン目線5以外の他の構成により切り離し部を構成してもよい。また、ウェットティッシュ4の材質や該ウェットティッシュ4に含浸される薬液等には、従来から公知のものを任意に選択して使用してよい。
【0018】
蓋体3は、容器本体2の内部に収納されたウェットティッシュ4から薬液等が揮発するのを防止するためのもので、容器本体2の上部に螺合により取り外し自在に取り付けられている。図1に示すように、蓋体3は、開口部6、凹部7、上壁部8、開閉蓋9及び保持部10を備えている。
【0019】
開口部6は、容器本体2の内部に収納されたウェットティッシュ4を外方へ取り出すことができるようにするためのもので、本実施の形態では蓋体3の略中央部に開口形成されている。なお、この開口部6の大きさや形状、開口位置は、本実施の形態のものに限定されるものではなく、任意に決定してよい。
【0020】
凹部7は、後側から前側にかけては開閉蓋9を嵌め込むことが可能な形状に形成されており、前端部は、開閉蓋9が嵌め込まれた時に、該開閉蓋9よりも大きくなるように形成されている。この凹部7は、開閉蓋9を嵌め込んだ時に、該開閉蓋9と蓋体3の上面とが略面一になるように形成されている。
【0021】
上壁部8は、凹部7内において、開口部6の周囲を囲むように、上方に向けて延出形成されている。この上壁部8は、外径が開閉蓋9に形成された後述する開閉蓋壁部11の内径と略同じか、若干小さくなるように形成されており、開閉蓋9が閉じられた時に、開閉蓋壁部11と嵌合することができるように形成されている。また、この上壁部8は、高さが凹部7の深さよりも低くなるように形成されている。
【0022】
開閉蓋9は、開口部6を密閉するためのもので、後端部が蓋体3と繋がり、先端部に開閉蓋壁部11を有するように構成されている。この開閉蓋9は、閉じた時に凹部7に嵌め込まれるように形成されている。開閉蓋壁部11は、開閉蓋9を閉じた時に、上壁部8と嵌合することができるように形成されている。この開閉蓋壁部11は、内径が上壁部8の外径と略同じか、上壁部8の外径よりも若干大径となるように形成されており、開閉蓋9を閉じて開閉蓋壁部11と上壁部8とが嵌合した時に、上壁部8と開閉蓋9とで囲まれた空間、及び収納容器1内部の気密性を確保することができるように構成されている。なお、本実施の形態では、開閉蓋9と上壁部8とを嵌合させることによって収納容器1内部等の気密性を確保することが可能な構成にしているが、他の構成によって収納容器1内部等の気密性を確保してもよい。
【0023】
なお、本実施の形態では上壁部8と開閉蓋壁部11とを嵌合させることによって開閉蓋9を閉じ、収納容器1の内部の気密性を確保するように構成しているが、収納容器1の内部の気密性を確保することが可能であれば、上記した構成に限定されるものではなく、他の構成であってもよい。また、上記のように上壁部8と開閉蓋壁部11とを嵌合させる構成の場合には、上壁部8の内径が開閉蓋壁部11の外径よりも大径となるように形成し、開閉蓋壁部11の外径が上壁部8の内径よりも小径となるように形成することで、これら上壁部8と開閉蓋壁部とが嵌合するように構成してもよい。
【0024】
保持部10は、壁部12と爪部13とから構成されている。保持部10には、壁部12と爪部13により囲まれた保持空間Hが形成されている。図2に示すように、保持空間Hは、後述する取り出し孔形成部材14を該保持空間H内に保持することができるように形成されている。
【0025】
壁部12は、内周面が後述する取り出し孔形成部材14の外側面と対向する位置に形成されており、本実施の形態では、取り出し孔形成部材14の全周を囲むように全体的に形成されている。爪部13は、保持空間H内に配置された取り出し孔形成部材14が保持空間Hから離脱するのを防止するためのもので、壁部12の先端から取り出し孔形成部材14の内径方向へ突出するように形成されている。この爪部13は、壁部12の全周から該内径方向へ向けて突出し、先端が取り出し孔形成部材14の外周面よりも内径側に位置するように形成されている。これら壁部12及び爪部13は、取り出し孔形成部材14よりも硬い材料で形成することが好ましい。壁部12及び爪部13をこのような材料で形成することにより、保持空間Hの内部に配置された取り出し孔形成部材14がウェットティッシュを通過する際に弾性変形しても、取り出し孔形成部材14が保持空間Hの内部に配置された状態を確実に保持することが可能になる。
【0026】
取り出し孔形成部材14は、ウェットティッシュ4をミシン目線5で切断するためのものである。取り出し孔形成部材14は、図2及び3に示すように、円板状に形成されている部材であり、外径は、壁部12の内径よりも小径であって、爪部13先端の内径よりも大径となるように形成されている。また、取り出し孔形成部材14には、取り出し孔15が開口形成されている。取り出し孔15は、一部の幅W2が他の部分の幅W1よりも部分的に広くなるように形成されている。本実施の形態では、取り出し孔15は、二つの長孔が直角に交わった十字形状であり、これら二つの長孔が交わった位置に円形状の丸孔が開口する形状に形成されている。また、この取り出し孔15は、ウェットティッシュ4が通過可能な大きさであって、該ウェットティッシュ4が通過する際に該ウェットティッシュ4を絞るとともに、ミシン目線5に沿って切断することができるような摩擦抵抗をウェットティッシュ4に対して付与することができるように形成されている。この取り出し孔形成部材14を構成する材料としては、従来から公知の弾性材料を任意に選択して適用することができるが、弾性変形しやすさの観点から、天然ゴム、合成ゴム等のゴム材料、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、又はビニール樹脂等の弾性材料により形成されていることが好ましい。また、合成ゴムを使用する場合には、シリコンゴムやウレタンゴム等を使用することが好ましい。なお、本実施の形態では、取り出し孔15は、略十字形状をなし、一部の幅W2が他の部分の幅W1よりも部分的に広くなるように形成されているが、この部分的に広く形成するのは、取り出し孔15の中央部でなくてもよく、他の部分であってもよい。
【0027】
次に、本実施の形態に係る収納容器1において、蓋体3に取り出し孔形成部材14を配置する際の方法を図4に基づいて説明する。図4は、蓋体3に取り出し孔形成部材14を配置する際の手順を表した説明図である。
【0028】
取り出し孔形成部材14は、容器本体2へ取り付ける前の収納容器1に対して取り付ける。取り出し孔形成部材14を取り付ける際は、取り出し孔形成部材14を蓋体3に対してA方向へ移動させる(図4(a))。次に、取り出し孔形成部材14の一端部を保持空間H内に挿入して、該取り出し孔形成部材14の一端部を壁部12及び爪部13に引っ掛けた状態にする。そして、この状態で取り出し孔形成部材14の他端部をB方向へ移動させる(図4(b))。図4(b)に示すように、取り出し孔形成部材14の他端部をB方向へ移動させると、取り出し孔形成部材14の上面と爪部13の下面とが当接する。そして、この当接した状態からさらに力を加えると、取り出し孔形成部材14は弾性変形する(図4(c))。このように、取り出し孔形成部材14は、弾性変形をしながら図4(d)に示すように完全に保持空間H内に入り込む。そして、爪部13は、保持空間H内に入り込んだ取り出し孔形成部材14が、保持空間H内から離脱する方向(図4では下方向)へ移動するのを阻止する。
【0029】
次に、ウェットティッシュを取り出し孔15に通す際の方法を図5に基づいて説明する。図5は、ウェットティシュを取り出し孔15に通す際の手順を表した説明図である。ウェットティッシュを取り出し孔15に通す場合には、使用者は、指先Fにウェットティッシュを覆うようにして、取り出し孔形成部材14の下方からD方向へ移動させる(図5(a))。そして、作業者が指先FをD方向へ移動させると、ウェットティッシュ4が取り出し孔形成部材14に形成された取り出し孔15の下端面側に到達する。
【0030】
次に、作業者が取り出し孔15の下端面側から図5(a)中のD方向に力を加えると、取り出し孔形成部材14の取り出し孔15が形成されている部分は上方向に弾性変形する(図5(c))。さらに、取り出し孔形成部材14が弾性変形するように作業者が上記D方向に力を加えると、取り出し孔形成部材14はさらに弾性変形する。このとき、取り出し孔形成部材14は、取り出し孔15が拡大するように弾性変形し、その時の取り出し孔15の大きさは、作業者の指先が取り出し用孔形成部材14の上面側から見える程度になる。作業者は、取り出し用孔形成部材14を弾性変形させることにより蓋体3の上部から視認できるウェットティッシュ4を摘み上げ、その後ウェットティッシュ4を上方に引き出す(図5(d),図5(e))。
【0031】
このように、本実施の形態によれば、取り出し孔15を、二つの長孔が直角に交わる十字形状にし、これら二つの長孔が交わった位置に円形状の丸孔が開口する形状にし、取り出し孔形成部材14の長孔と長孔との間に形成されている部分が弾性変形しやすくなるように構成したので、指先で加えた力で取り出し孔形成部材14の取り出し孔15の周辺を弾性変形させることができる。そのため、保持部10によって取り出し孔形成部材14が保持された状態を維持しながら、取り出し孔15にウェットティッシュを容易に通すことが可能になる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、取り出し孔形成部材14に開口形成された取り出し孔15が、該取り出し孔15を通過するウェットティッシュ4を絞るとともに、ミシン目線5に沿ってウェットティッシュを切断するように構成されており、ウェットティッシュが絞り孔を通過する際にも取出し孔形成部材が広がることがなく、また通過するウェットティッシュの絞られ方によって変化する該ウェットティッシュの厚さの変動による影響も受けにくくすることができる。そのため、本発明に係る取り出し孔形成部材14は、壁部から圧縮力を受けなくても、ウェットティッシュに対してミシン目線が容易に切断されるだけの適切な摩擦抵抗を精度よく付与することが可能になる。
【0033】
したがって、本発明に係る収納容器によれば、壁部と取出し孔形成部材は、該壁部及び爪部によって取出し孔形成部材が確実に保持できる程度の寸法精度が確保されていればよく、製造コストを大幅に低減することが可能になるとともに、加工工程も簡略化することが可能になり、製造時の効率化を図ることも可能になるという効果を得ることが可能になる。
【0034】
なお、本実施の形態では、保持部10の構成を、環状の壁部12と、この壁部12の全体から突出する爪部13とから構成する例について説明しているが、図6(a)に示すように、環状の壁部21に対して、部分的に爪部22を設けるように構成してもよい。また、図6(b)に示すように、壁部23を部分的に設け、この壁部23に対して爪部24を設けるように構成してもよい。このように構成することで、蓋体3を製造する際に要する材料の量を減少することができ、製造コストを低減させることが可能になる。また、壁部及び爪部を部分的に設けることにより、弾性変形をしやすくすることができ、取出し孔形成部材を保持空間H内により容易に入れ込むことが可能になる。なお、図6(b)においては、壁部と爪部の幅を同じにしているが、壁部と爪部の幅は異なっていてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、取り出し孔形成部材の取り出し孔を上記した略十字型にしているが、これに限定するものではなく、例えば図7に示す形状に開口形成してもよい。図7(a)に示す取り出し孔形成部材は、直線状に形成された孔の中央部に円形の孔が開口形成してなる取り出し孔25を有する。このように形成することで、指先で加えた力によっても取り出し孔形成部材を弾性変形しやすくすることができ、ウェットティッシュを通しやすくすることが可能になる。また、直線状の孔と円形の孔とが交差する点の4か所に角部26を設けることができるため、ウェットティッシュ4は、直線状の孔を通過する際に受ける摩擦抵抗と、この角部26において受ける摩擦抵抗とが加わり、絞り孔25を通過するウェットティッシュ4により大きな摩擦抵抗を付与することができ、確実にミシン目線5を設けた箇所においてウェットティッシュ4を切断することが可能になる。
【0036】
図7(b)は、直線状の絞り孔27を120°間隔で交わらせたものである。このように形成することによっても、指先で加えた力によっても取り出し孔形成部材を弾性変形しやすくすることができ、ウェットティッシュを通しやすくすることが可能になる。また、直線状の孔が交わる箇所に3か所の角部28を設けることができるため、本形態においても、ウェットティッシュ4は、直線状の孔を通過する際に受ける摩擦抵抗と、3か所の角部28において受ける摩擦抵抗とによって、絞り孔27を通過するウェットティッシュ4に大きな摩擦抵抗を付与することができ、確実にミシン目線5を設けた箇所においてウェットティッシュ4を切断することが可能になる。
【0037】
図7(c)は、絞り孔29の幅を細くしてスリット状にしたものである。このように形成することによっても、指先で加えた力によっても取り出し孔形成部材を弾性変形しやすくすることができ、ウェットティッシュを通しやすくすることが可能になる。また、縦のスリットと横のスリットが交わる部分に形成された4か所の角部30に加えて、各スリットにおいてウェットティッシュ4に付与される摩擦抵抗を大幅に増加させることができる。そのため、絞り孔29を通過するウェットティッシュ4に対してより大きな摩擦抵抗を付与することができ、より確実にミシン目線5を設けた箇所においてウェットティッシュ4を切断することが可能になる。
【0038】
図7(d)は、直線状のスリットを120°間隔で交わらせて絞り孔31としたものである。このように形成することによっても、指先で加えた力によっても取り出し孔形成部材を弾性変形しやすくすることができ、ウェットティッシュを通しやすくすることが可能になる。また、各スリットが交わる部分に形成された3か所の角部32に加えて、各スリットにおいてウェットティシュに付与される摩擦抵抗を大幅に増加させることができる。そのため、取り出し孔15を通過するウェットティッシュ4に対してより大きな摩擦抵抗を付与することができ、より確実にミシン目線5を設けた箇所においてウェットティッシュ4を切断することが可能になる。
【0039】
なお、本実施の形態では、取出し孔形成部材を収納空間内に配置するように構成しているが、絞り孔を通過するウェットティッシュがミシン目線において確実に切断することができれば、これ以外の構成であってもよい。例えば、取出し孔形成部材を収納空間の外部に配置するように構成してもよいし、これ以外の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ウェットティッシュ収納容器
2 容器本体
3 蓋体
4 ウェットティッシュ
5 ミシン目線
6 開口部
10 保持部
12,21 壁部
13,22 爪部
14 取り出し孔形成部材
15,25,27,29,31 取り出し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
張力により切断可能な切り離し部を所定間隔に複数有するロール巻状のウェットティッシュが収納可能な容器本体と、前記容器本体に取り外し自在に取り付けられ、前記容器本体内に収納されたウェットティッシュを外方へ取り出すための開口部を形成した蓋体と、を備えたウェットティッシュ収納容器であって、
前記ウェットティシュに対して摩擦抵抗を付与し、前記切り離し部に沿って前記ウェットティッシュを切断する取り出し孔を有し、前記蓋体よりも柔らかい材料で形成された取り出し孔形成部材を備え、
前記蓋体は、前記取り出し孔形成部材を保持する保持部を有し、前記保持部は、内側の面が前記取り出し孔形成部材の外側面と対向する位置に形成された壁部と、前記壁部から前記取り出し孔形成部材の内径方向へ突出し、前記取り出し孔形成部材の外周面よりも内径側に先端が位置するように形成された爪部とを有することを特徴とするウェットティッシュ収納容器。
【請求項2】
取り出し孔は、一部の幅が部分的に広くなるように形成されている請求項1記載のウェットティッシュ収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192962(P2012−192962A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58903(P2011−58903)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(595007552)
【Fターム(参考)】